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天へ捧ぐ文

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●差出人:不明
 何時から抱いた想いだったか。
 胸の内側に残る、此の言葉を伝えたい。
 遠い願望を抱えながら、俺は何処へ向かっているのだろう。

 早く、行かなければ。
 一刻も早く、向かわなければ。
 此の言葉を『彼女』に伝えたい、届けたいと。
 緩やかな足取りとは裏腹に、逸る気持ちが抑え切れない。
 其の気持ちの根源も、理由も、曖昧になってしまったというのに。

『一翔さん、またいらしてくれたのね』
 花の様な笑みを浮かべている。
 彼女の儚げな声が、耳にこびりついて離れない。
 己の言葉に力など無く、木の葉よりも軽いと理解していても。
 ……俺は、絶対に足を止める訳にいかない。

 周囲の騒めき、悲鳴も聞こえぬまま。
 妄執に囚われた影朧が歩む様は、さながら幽鬼の如く。

●宛先:未定
「至急、サクラミラージュへ赴いてほしい」
 リカルド・アヴリール(機人背反・f15138)は鈍色のグリモアを手に、短く告げる。
 どうやら彼曰く、帝都に影朧が出没したとの事だ。

 だが、不思議な事に……其の影朧の存在はとても儚く、弱い。
 其れに加えて、積極的に破壊活動を行っている訳では無い。
 敵意や殺意を向けるのは、己の進路を塞ぐ者達のみ。
 ただ、向かうべき場所へ辿り着く為に。

「帝都の住人の避難誘導は、現地の學徒兵が行うだろう」
 現地に到着次第、猟兵達は影朧の沈静化に集中してほしい。
 倒しても即座に消えないが、彼はとても儚い存在。
 帝都の住人達の負の感情、己が希望の灯が消えた時……ふと、消えてしまう様だ。

「次に、影朧の情報についてだ」
 今回の影朧――男の名は『一翔』と呼ばれている、らしい。
 断定出来ない理由は、生前の彼が詐欺師である為だろう。
 但し、基本的に騙す相手は悪人に限る……所謂、義賊と呼ばれる者の様だが。

 真か、其れとも偽りか。
 今の彼自身にも解らないままに、ひたすらに目的地へ向かおうとしている。
 其処に居る筈の、とある女性へ『言葉』を伝える為に。
 儚くも弱い存在を突き動かすのは、妄執にも似た強き願望だ。

「普段ならば、倒すだけで済むだろうが……」
 仮に無害化に成功したならば。
 生前に抱いた願いを果たす事で、影朧を救済出来るのならば。
 其の助力を頼むと力強く告げた後、リカルドは転移準備に取り掛かっていた。


ろここ。
●御挨拶
 皆様、お世話になっております。
 もしくは初めまして、駆け出しマスターの『ろここ。』です。

 四十一本目のシナリオの舞台は、サクラミラージュ。
 其の男には『言葉』や『想い』を届けたい、と願う相手が居た。
 ……ただ、其れだけがすべてだったのだ。

●第一章(ボス戦)
 帝都に突如現れた、影朧との戦いとなります。
 彼は己の執着を果たすべく、立ち塞がる者は強引に押し退けようとする事でしょう。
 戦闘に勝利する事で、彼を止める事が可能となります。

●第二章(冒険)
 無害化した影朧と共に、彼が望む場所へと向かいます。
 影朧は人々の悪意に晒されたり、生きる希望を失うと消滅してしまいます。
 また、話す事で彼の記憶が少しずつ鮮明になるかもしれません。
 詳細は導入にて……。

●第三章(日常)
 辿り着いた場所で、手紙を書く事が出来ます。
 友人知人、両親や兄弟姉妹、或いは大切な人へ。
 言葉では伝えられない気持ちを伝えてみませんか?
 此方につきましても、詳細は導入にて……。

 以上となります。
 グループでの参加の際はグループ名を、お相手がいる際にはお名前とIDを先頭に記載をお願い致します。迷子防止の為、恐れ入りますが御協力をお願い申し上げます。

 それでは、皆様のプレイングをリカルド共々お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『謎の人物』

POW   :    Thousand succored 
戦闘力のない、レベル×1体の【無名の援助者 】を召喚する。応援や助言、技能「【盗み】」を使った支援をしてくれる。
SPD   :    I am There
【事件の小道具や被害者 】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
WIZ   :    Twin
【もうひとりの自分 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠寧宮・澪です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付開始は『12月11日(金)8時31分(予定)』からとなります。
 導入は今暫く、お待ち下さいませ……。
**********

●『一翔』の妄執
 ――喧々囂々。
 猟兵達は帝都に足を踏み入れると同時、悲鳴を耳にした。

 人であり、人ではない者。
 不意に現れた事に対する衝撃は、直ぐに恐怖へと変わりゆく。
 歩みを止めようとする者を、影朧が軽く払い除けただけで……恐怖は膨らみ、あっという間に周囲へと伝搬してしまう。
 いち早く駆け付けた學徒兵達の働きにより、怪我人は最初の一人のみ。
 また、其の人物も軽傷で済んだ様だが……安心するのはまだ早い。

 ざっ、ざっ、ざっ。
 騒ぎなど知らぬ、存ぜぬと言う様に。
 引き摺る様な足取りで、ただ一点を見つめながら進む男。

『――く。はや、く……俺、は……』
 男――影朧、一翔。
 彼は譫言の様に呟き続けていたが、再び口を閉ざす。
 己の視界に、立ち塞がる者の姿――猟兵達を捉えたからだろう。

 ――どうして、邪魔をするんだ。
 ――俺は、ただ、伝えたいだけなのに。

 未練や妄執が、一翔の感情を酷く歪める。
 猟兵達の善悪にかかわらず、憎悪を抱かずにはいられない程に。
 そして――彼は鋭い眼差しを向けながら、猟兵達へと駆け出した。

**********

【プレイング受付期間】
 12月11日(金)8時31分 ~ 12月12日(土)23時59分まで
猪野・清次
生けるものに
傷を付けたな――!
弱者には牙を立てぬと、矜持を持ったのは
生前の貴様自身では無かったのか

この際、詐欺だの義賊だのは構わない
骸の海に、己の志すら棄て置いたのなら
失望の限りだ
貴様は処すべき影朧に過ぎない
…其れだけのことなのだな

戦闘は冴々白刃で交戦
肉薄して斬り込む
召喚された援助者は相手にしない
盗みを働かれそうになった時だけ
【カウンター】攻撃で斬り伏せよう
何一つ奪えると思うな

影朧の心など解せない
分かりたくもない、はずだ
だが――もしも、自分が同じ境遇だったなら
現世に還りたいと、あのひとに逢いたいと
願わず居られるのだろうか
その命よ散れと、唱えたい筈なのに
…同情か、共感のような感情に襲われて



●影もまた、人か
 影朧への憎悪、敵視。
 猪野・清次(徒野・f22426)の内に渦巻く感情が、退魔刀の刃を冴えさせる。
 ――影は悪。ただ斬るのみ。
 其の上、此の影朧は踏み越えてはならぬ一線を越えた。

「弱者には牙を立てぬと」
 矜持を持ったのは、生前の貴様自身では無かったのか。
 此の際、詐欺だの義賊だのは構わない。
 生けるものに傷を付けたならば、彼が迷う理由など消え失せる。
 ……やはり奴も、此れまでの影と同じだという事。
 グリモア猟兵は救済の助力を願っていたが、悪は即座に斬り伏せるのみ。

「往くぞ」
『――っ!?』
 只、突き進む。
 猪野は退魔刀を手に、力強く地を踏み締める。
 跳躍するかの様に。己の間合いまで肉薄し、即座に刃を振り下ろす!

『そこを、どけ!』
 次々と召喚された無名の援助者達が猪野を囲み、得物を盗もうと試みるも。
 其の度に、愚行を冒した者は瞬断される。
 一翔もまた隙を見て、向かうべき場所へ駆けようとするが――。

「この刃の下に――ただ、散れ」
 猪野が、其れを許さない。通すつもりなどない。
 骸の海に己の志すら棄て置いたのなら、失望の限り。
 此の影朧もまた、処すべき対象に過ぎない。
 ……其れだけのことなのだな、と。
 冴々白刃を以って、影朧の生を散らそうとした刹那――零れる様に、声が。

『一、花さ――』
 ぴたり、と。
 猪野の握る刃が止まる。
 似て非なる名。影朧ならざる者の名。
 恐らく……此の影朧が会いたいと願う者の名、だろうか。

 あゝ、自分は愚かだ。
 その命よ散れと、唱えたい筈なのに。
 影は悪だと、忌むべき存在だと思うのに。
 影朧の心など解せない。分かりたくもない、筈だ。

『……?』
「(もしも、自分が同じ境遇だったなら……)」
 其れでも、彼に刃を収めさせた理由。
 脳裏に過ぎるは、或る喫茶の娘か。或いは、別の人物か。

 どちらにせよ、仮に志半ばで命を落とした時……。
 現世に還りたいと、あのひとに逢いたいと。
 そう、願わず居られるのだろうか。

 影朧に対する同情、共感。
 猪野自身は認めたくないと、強く思うかもしれないが。
 其れが、一翔の命を拾わせたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘭・七結
その歩みは何方へと向かうのかしら
そう問うてみたとしても
答えをくださらないのでしょうね
あなたは、眼前のわたしたちを見ていないのだもの

けれども、嗚呼。問いは溢るるばかり
しりたいと云う思いは尽きることを知らないよう
『あなたは、なにを遺したのかしら』
――ねえ。お答えいただける?

問うたものが満つるまで消えないいと
あかいあかい色のいとで、情念纏うあなたを結いましょう
避けられたとて構わないわ
想いを潜める胸へと数多の留め針が向かうでしょう

あなたの望みが叶うのならば
手を貸し出すことだって出来るはずだわ
くすんだあなたの眸に映るひとは、誰なのかしら
秘めたる感情は如何なるものなのかしら

それをしりたいと、こころが唄うの


榎本・英
すまないね。
私は君に何の感情も抱いてはいないが
此処で止めねばならないのだよ。

君には何か伝えたい思いがあったのかな?
それ程までに強い思いを抱いて私の前に現れたのだから
何かしらの理由があるのだろう?

著書から情念の獣を呼び出す
筆の先を彼に向け、私は獣の言葉を赤い文字で綴る。
君は言葉を綴れなかったのかな
彼等の様に。そして私の様に。

君が手を出さないのであれば
私もまた手を出さまいと思っていたが
それも無理そうだね
残念だ

私は戦う事が苦手でね
私自身が深手を負わないように避けながら戦おう
彼へ牙を向けるのはあくまでも情念の獣だ

私たちにはまだ口がある
君にも今は口がある
ぜひとも様々な思いを聞きたい所だよ



●あかは問ふ
 牡丹一華、ただの人。
 あゝ、奇しくも歩み出すは同時。
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)と榎本・英(人である・f22898)は目を合わせて――影朧、一翔へと目を向ける。
 まるで正気と狂気を彷徨う様に、彼の双眸はくすんでいた。
 伝えたい言葉があると、早く行かなければと。譫言の様に呟くばかり。
 ……成程、確かに幽鬼の様だ。
 暗闇の中で藻掻き、視えぬ何かを必死に振り払っている様にも見えるが。

「彼は一体、何を見ているのだろうね」
「そう問うてみたとしても、答えをくださらないのでしょうね」
 ――きっと、眼前のわたしたちを見ていないのだもの。
 蘭の言葉を聞いて、榎本も同意を示す様に頷く。

 此れまでの戦いの最中、そして今も尚。
 時折、正気に戻ったかの様な素振りを見せる時はあるが。
 其れも一時の間に過ぎず、何かに取り憑かれた様に歩みを進めようとしている。
 ……情念とは、かくも不可思議なものだ。
 人に幸いを齎す事もあれば、こうして狂わせる事もある。
 されど、此のままにする訳にもいかないだろう。止めねばならない。

 ――すまないね。
 榎本は小さな呟きと共に、著書と筆を手にする。
 そして、其の先端を一翔へと向けようと。

「君は、言葉を綴れなかったのかな」
 著書から溢れ出る、彼等の様に。そして、私の様に。
 あかで書き綴られた情念の獣の群れが、声無き声で吼え猛る。
 ……だが、獣達は彼と蘭の傍らに留まるだけ。
 一翔は此れ幸いにと、もう一人の自分を召喚しては共に駆けるが――。

「私は戦う事が苦手でね」
 ふと、榎本は小さく息を吐き出した。
 手を出さないのであれば、己もまた手を出すまいと考えていたが。
 ……どうやら、それも無理そうだね。残念だ。
 情念の獣の群れを前に嗾け、距離を取る様に彼が後退を試みようとした瞬間。

 ――たっ、と。
 榎本と獣達の眼前を、牡丹香る春風が通り過ぎた。
 ただ、こころのままに。蘭は笑みを湛えて、言葉を紡ぐ。

 あなたは、なにを遺したのかしら。
 その歩みは、何方へと向かうのかしら。
 くすんだあなたの眸に映るひとは、誰なのかしら。
 しりたいの。ええ、しりたいわ。湯水の様に、問いは溢るるばかり。

「――ねえ。お答えいただける?」
 己の思いを連ねて、束ねて。
 生まれ出ずるは、あかいあかい色のいと。
 蘭の渇慾を満たすまで決して消えない、鮮やかな縫糸。

 あかいいとは一翔と、彼の分身も地に縫い付けようと。
 ……例え、結う事が出来ずとも構わない。
 影朧の情念が消えぬ限り、留針が狙いを違える事は無いのだから。

『こ、の……っ!』
「嗚呼、そうはさせないよ」
 蘭の近くで、縫い留められた分身が消える前に。
 一翔が彼女の元へ、テレポートを試みるも。
 其れよりも早く、情念の獣の群れが彼に突撃。体勢を崩させていた。
 たたらを踏み、肩で息をし始めた一翔の姿を見て……榎本は静かに呟く。

「私からも問おうか。君には、何か伝えたい思いがあったのかな?」
『……っ』
「私たちにはまだ口がある。君にも今は口がある」
 獣の言葉に、くちはなし。
 されど人ならば。一翔の生前は不明だが、今ならば。
 此れ程までに傷付きながらも現れたのだ、相応の強い理由があるのだろうと。
 榎本は言葉を以って、彼の足を止めようとしていた。

「ぜひとも、様々な思いを聞きたい所だよ」
「ええ、そうね。わたしもしりたいの」
 ――それをしりたいと、こころが唄うの。
 蘭は柔らかに。再び、一翔へと問い掛けようと。

「あなたの秘めたる感情は、如何なるものなのかしら」
『俺、は……。ただ、あの人に。一花さん、に……』
 伝えたい言葉が、あった。
 早く伝えなければと思って、いたのに。
 そう強く思う度に、前へ進む度に、途方も無い虚ろが一翔の胸を占めていた。
 嗚呼、問い掛けに答えようとする意思はあれど。
 彼は蘭を見ながら、空気を吐き出すだけ。言葉が、出ない。

「(愛情、いや……)」
 ほんの僅かに、垣間見えた表情。
 彼の様子から見える感情に、榎本は思考を巡らせる。
 恋慕の情よりも深い、此れは。
 空虚よりも重き、息を奪う様な感情……哀切、だろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木槻・莉奈
シノ(f04537)と

一般人とこれ以上不用意に接触させられないわね
…どちらの為にも、きっとならないでしょうし
シノごめん、しばらく任せるわ

うん、ありがと

シノが一翔へ話し掛けている間に、『高速詠唱』『全力魔法』で【神様からの贈り物】
巻き込まれる人や悪意を向ける人が出ないように、一般人との間を阻む様に使用
殺傷力は弱め、長時間用に『継戦能力』、触られないように『結界術』でフォローする
攻撃は『見切り』で回避

届けたい言葉があるんなら、周りの声も無視しちゃダメよ
受け入れるかどうかは別としてね
悪事ならともかく、そうじゃないなら私達だって手伝う事は出来るわ

人探しなら得意分野よ
話、聞かせてもらえないかしら


シノ・グラジオラス
リナ(f04394)と

じゃあ、そっちは任せた
適材適所だ。気にしなくていいからな

なあ、何をそんなに急ぎ足なんだ色男?女でも待たせてるのか?
そんなに睨むなって。急がば回れって言うだろ?
んな怖い顔してちゃ、人に会うのもままならねぇよ
と『コミュ力』で話しかけ『情報収集』で相手の状態をチェックする

積極的に攻撃や言葉で足止めに重きを置く
挑発ではなく宥める行動に近い
記憶の整理はまだ先だが、キッカケを作っておくに越した事はないだろうしな

『マヒ攻撃』を乗せた【洞映し】の『2回攻撃』で足元と無名の援助者を燃やして『時間稼ぎ』
攻撃や盗みは『見切り』や『野生の勘』で避けて『武器受け』で弾く
リナへの攻撃は『かばう』



●適材適所
 不意に現れた災いに対する恐怖、怒気、様々な悪意。
 其れら全てを意に介さず、ただ一点を見つめて歩き続ける影朧。
 双方の様子を確認した上で……シノ・グラジオラス(火燼・f04537)と木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)の二人は目を合わせて、頷いた。

「シノ、ごめん。しばらく任せるわ」
「気にしなくていいからな。そっちは任せた、リナ」
「……うん、ありがと」
 恐らく、此の場所へ着く前に相談を済ませていたのだろう。
 二人は言葉を交わした後、其々動き始める。
 シノは影朧『一翔』の元へ向かい、木槻は其の場で詠唱を開始。

 今は學徒兵達が壁となり、影朧から一般人を遠ざけてくれている。
 しかし……此の後、何が起こるかは解らない。
 此れ以上、一般人と不用意に接触させられない。そう、木槻は考えていた。

「(……どちらの為にも、きっとならないでしょうしね)」
 薄花桜の刀身が、少しずつ形を崩してゆく。
 代わりに生み出されるのは、真白の花弁。茉莉花の花雨。
 其れらは静かに降りゆくと共に、木槻は過去と現世を隔てる結界を作り出す。

 ――過去が過去へと、還る前に。
 ――どうか、小さな奇跡を。神様からの贈り物を、此処に。

 ふわり、と花弁が揺れるにつれて。
 茉莉花の優美な花香が、周囲の人々の心を少しずつ落ち着かせてゆく。
 殺傷力を出来る限り抑えた上で、花雨を長時間降らせ続ける。
 ……精緻な術には、時間を要するものだ。
 彼女自身、其れを理解している。

「(でも、大丈夫)」
「(こういうのは、適材適所だからな)」
 正面を見据えた先で、木槻とシノの目が合う。
 大丈夫だ、と。互いに伝えるには、其れで充分だった。
 彼らの立ち位置は違えど、心は常に隣に並び立っているのだから。

「なあ、何をそんなに急ぎ足なんだ?女でも待たせてるのか、色男?」
『そこを、どけ……!』
「そんなに睨むなって、急がば回れって言うだろ?」
 ――洞映し。
 名も無き援助者が現れる度、シノは地獄の蒼炎を以って焼き尽くしてゆく。
 木槻が詠唱を始めた後、何度か会話を試みたが……。

「成程、な」
 文字通り、我を忘れているらしい。
 恐らく、自分がどんな顔をしているかも分からないのだろう。
 一翔の進路を塞ぐ様に、シノが彼の足元を蒼炎で燃やすと……眼差しは更に鋭く、殺意にも似た感情を宿らせていた。

「んな怖い顔してちゃ、人に会うのもままならねぇよ」
『黙れ……俺は、早く行かないと……!』
「必死な気持ちは解らないでもないけど、な」
 囚われる程の願望、我を忘れる程の激情の度合い。
 ……前者に関しては、シノは似た様な覚えがあったのかもしれない。

 だからこそ、多少なりとも気持ちは理解は出来る。
 しかし、今の一翔を放っておく訳にはいかない。
 彼が会いたいと願う人物が、本当に大切な人ならば尚更だ。

「悪事ならともかく、そうじゃないなら私達だって手伝う事は出来るわ」
「リナ、終わったのか?」
「勿論よ。ありがと、シノ」
 茉莉花の結界を張り終えたのだろう。
 シノの隣に駆け寄り、木槻は強く頷いた。
 そして、一翔へ視線を向けながら、彼女は言葉を続ける。

「届けたい言葉があるんなら、周りの声も無視しちゃダメよ」
 受け入れるかどうかは、別としても。
 周りを顧みず、傷付けて、自らが生み出した悪意に呑まれて消えてゆく。
 其れ以外の結末を選ぶ事も、きっと出来る筈だから。

「良かったら……話、聞かせてもらえないかしら」
「人探しなら、リナの得意分野だからな」
「勿論、シノにも頑張ってもらうからね?」
 義賊と言えど、生前は詐欺師だった男。
 一時、己を取り戻したとしても……他人の言葉を簡単には信じられない。
 其れでも――。

『……っ』
 シノと木槻の瞳に。言葉に。
 嘘偽りが無いと理解したのだろう。
 一翔は、思わず言葉を詰まらせていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カルディア・アミュレット
アドリブ大歓迎

たいせつな人のもと…いく途中なのね
…わたし達は、あなたの邪魔をしない…
言葉をつたえにいくこと…ぜったい、叶えてあげたい

でも…
わたしが立ちふさがるのは
あなたに…こころを鎮めてほしいと感じたから…
いまあなたが…どんなお顔をしているか…わかる?
…こわいお顔で、たいせつな人に…会いにいく、の?

一翔
たいせつな人に会いにいくときは
優しいお顔がいいわ
こわいお顔でいったら…そのひと、びっくりしちゃう…

一翔が優しいきもちで相手に会いにいけるよう
わたしはあなたのゆく道…守る…
信じて…
誰にもあなたの邪魔はさせない

足を止めるよう説得
それでも戦闘になれば
UC:浄化を秘めた青焔を発現

熱くして…ごめんなさい…



●道しるべの灯り
 早く、早く、行かなければ。
 僅かに取り戻した一翔の理性が、妄執に塗り潰されてゆく。
 再び、彼は地を駆けようとするも――淡い、青の光が其れを遮った。

「だめ」
『くっ……!』
「……おねがい、Calme」
 制止を呼び掛ける声も、今は届かない。
 故に、カルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)は青に瞬く灯の精霊――Calmeに小さく願い、不滅の青焔を生み出す。
 其の青焔は傷付ける意思を含まず、一翔の足元へと放たれた。

 ……どういうつもりだ。
 一翔は足元の青焔を避けた直後、カルディアの目を見据える。
 ぼんやりとした眼差しには、ゆらり。
 赤色の瞳の奥に、優しい青色の灯りが見えた気がした。

「わたし達は、あなたの邪魔をしない……」
 カルディアはぽつり、と言葉を紡ぎ始める。
 大切な人の元へ行く途中ならば、ぜったい、叶えてあげたいと。
 あなたのゆく道を守る、誰にもあなたの邪魔はさせない。
 ……会いたい人に会えないのは、きっと、寂しいことだから。

『だったら――どうして立ち塞がるんだ、俺の邪魔をするな!』
 一翔は叫ぶと同時、無名の援助者を召喚するも。
 主の危険を感じ取ったのか、不滅の青焔が現れた者達を燃やし始める。
 そして……カルディアは、彼の目を真っ直ぐに見つめ続けて。ぽつりと。

「あなたに……こころを鎮めてほしいと感じたから……」
『は……?』
「一翔……いま、あなたが、どんなお顔をしているか。わかる……?」
 そんな、簡単な事を。
 必死な気持ちを隠し切れないでいる、かもしれないけれど。
 本人はきっと、そんな風に考えていたのだろう。

「こわいお顔で、たいせつな人に……会いにいく、の?」
 ――怖い、顔。
 先にも、言われた事だ。
 一翔に其の自覚は無く、多少平静を装えないでいる認識だったらしい。

「たいせつな人に、会いにいくときは……優しい、お顔がいいわ」
 怖い顔で行ったら、大切な人が吃驚してしまうから。
 優しい気持ちで相手に会いに行ける様に、あなたのゆく道を守る。
 未練と妄執が歪める闇の中、あなたを照らす灯りとなると。

「一翔。わたし達を、信じて……」
 カルディアの声を聞き、一翔は彼女から目を背けるも。
 本当に信じてもいいのか、どうか。
 彼の心が、ゆらゆら、揺れる。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡島・嵐
届かなかった言葉、届けられなかった想い、か。
……気持ちは、わかんなくもねえ。長い人生、そういうモンは珍しくねえんだろうし――届かないってわかってても、貫きたいモンがあるってことも。
だけど……悪ィ。今はアンタを止めなきゃならねえ。
正直すごく怖ぇし、誰も傷つけたくねーけど、それでもおれは立ち塞がってみせる。

他の仲間や學徒兵が近くに居るなら、そいつらの攻撃を〈援護射撃〉で支援したり、攻撃されそうになってるんなら影朧に〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉を〈スナイパー〉ばりに狙い撃ちして妨害したりして、味方を助ける。
向こうがユーベルコードを使ってくるなら、こっちも《逆転結界・魔鏡幻像》でそれを打ち消す。



●貫きたい想い
 届かなかった言葉。
 届けられなかった想い。
 ……其れでも尚、届けたいと。伝えたいと。
 ただ其れだけを切に願い、心の底から望んで。一翔は今、此処に居る。

「……気持ちは、わかんなくもねえ」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は其の姿に、一定の共感を示していた。
 長い人生の中で、そういうモンは珍しくねえんだろうし。
 一翔の中に、届かないってわかってても貫きたいモンがあるってことも。
 其れが今、彼を突き動かし続けている事実も。

「だけど……悪ィ、今はアンタを止めなきゃならねえ」
『どう、して……』
「守りたいものを守るためだ」
 とても儚く、弱い。
 しかし……目の前で敵意を滲ませている一翔は、影朧だ。
 凄く怖い。恐ろしい。両足だけではなく、全身が震えているのが解る。
 其れでも――鏡島は、立ち塞がってみせるのだ。

 言葉の通りに。
 ただ、守りたいものを守るために。
 誰も傷付けたくないと強く思うからこそ、彼は其の場から離れない。

『……っ』
 真っ直ぐな眼差しに、一翔は思わず息を呑んだ。
 本当に、此れが己にとって正しい選択なのだろうか。
 ……誰かを守ろうとする人を傷付けて、振り払って進む事が。

 一翔の内に迷いが生まれるが、妄執が其れを覆ってしまったのだろう。
 荒い呼吸と共に、鏡島へ嗾けられるのはもう一人の一翔。
 憤怒の形相、邪魔者への怨嗟の咆哮。

「彼方と此方は触れ合うこと能わず、魔鏡が映すはアンタの心」
 ――幻遊びはお終いだ。
 僅かに声を震わせながら、鏡島は全身鏡を召喚。
 鏡が映し出し、飛び出した一翔の姿は……ただ、泣いていた。
 涙をぽろぽろと零しながら、もう一人の自分を必死に止めようとしている。
 振り上げられた拳を受け止めて、蹴撃を胴体で受け止めて。
 声無き声で何かを叫んだ後、幻像は共に消失した。

『そん、な……』
「……アンタだって、解ってるんだろ?」
 鏡島が、静かに問い掛ける。
 彼が守りたいと思ったのは、帝都に住む人々だけではなく。

「こんなやり方、ホントは望んじゃいないって」
 義賊と呼ばれていた、彼自身の心も含まれていた……かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライナス・ブレイスフォード
あー…邪魔しねえからご勝手に…って言いてえとこだけどよ
予知を視たあいつが助けてやって欲しいと願うなら…ま、偶には人助けっつうのもしてみてもいいかもしれねえかも、な

敵の姿を視認したなら立ちふさがる様に身を滑らせつつ【愛しき百足】にてその動きを止めんと試みんぜ
そこのあんたさ、何処に向かってんのよ
急いでるみてえだけど…んな怖い顔してたら待ってる奴が怖がるんじゃねえの?
軽口を投げつつも現れたもう一人の敵を捉えれば手にした『Fortuna』を構え『クイックドロウ』
『制圧射撃』にて動きを止めつつ足を狙い『部位破壊』を試みてく
ちいと頭に血が上りすぎなんじゃねえの?
少し血抜いといてやっから、頭冷やせって、な?



●誰が為に
 伝えたい言葉がある。
 胸の内に渦巻く想いを言葉にして、届けたい相手が居る。
 ……伝えたい相手とやらも、伝えようとする本人である影朧も。
 ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)には関係の無い、他人の内の一人に過ぎない。

「邪魔しねえから、ご勝手に……って言いてえとこだけどよ」
 どうにも、自分は『あいつ』に弱い。
 予知を視た以上、放っておけない性格である事も知っている。
 ……そして、本人が行けないならば。
 助けてやって欲しいと願うなら、偶には人助けっつうのもしてみてもいいかと。
 ライナスは飄々とした足取りで身を滑らせ、一翔の進路を塞ぐ。

「そこのあんたさ、何処に向かってんのよ」
『お前も、邪魔をするのか……!』
「邪魔っつーか……あんたさ、ちいと頭に血が上りすぎなんじゃねえの?」
 鬼の様な形相を浮かべているのは、急いでいるからか。
 其れとも、妄執とやらに囚われている為か。
 一翔の傍らに、もう一人の彼が現れては……即座にライナスへと襲い掛かる。
 ――邪魔をするな。俺は行かなければならないんだ。
 切羽詰まった様子を見せるのは、本体の心境を表しているのか。

「ったく、少しは話を聞けよ」
 ライナスは敵が伸ばす手をひらり、と軽く躱して。
 代わりに、己の影から百足を嗾けようとする。
 無数に現れた其れは地面を這い、分身体と共に足を絡め取ろうと動いていた。

「んな怖い顔してたら、待ってる奴が怖がるんじゃねえの?」
 尤も、ライナスは一翔が会いたいと願う誰かの事など知らない。
 だが……もし、『あいつ』ならばどう思うか。
 どんな顔を浮かべるだろうか。
 脳裏に過ぎる表情を見て、彼は思わず噴き出す様に笑った後。

「それに……普段のあんたを知ってる奴なら、心配とかするんじゃねぇの」
 少し血抜いといてやっから頭冷やせって、な?
 動けない敵に対して、ライナスは『Fortuna』の銃口を向けては告げる。
 狙うのは急所ではなく、百足の群れが押さえている両足。

 ――心配すんな、殺さねぇよ。
 遠くの誰かへ向けて、内心呟いた直後――発砲音が二回、響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
こんな風に未練が…そして自我がはっきりとしたした影朧に会うのは初めてだな。
その分その未練を晴らす方法も導ける訳だけど…。

俺達はそれを害する者ではないよ。
今は言葉はきちんと届かないかもしれないかも知れない…。

けれど、少しだけ気分を落ち着けようか。
UC【誘い桜】
この世界由来の人ならば桜には少なからず癒されると思うから。

君の未練は必ず。



●浄桜
「こんな風に未練が、自我がはっきりとした影朧に会うのは初めてだな」
 ぽつり、と。
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は影朧を目にして、小さく零す。
 己の内側が揺らいでも、足を痛めても。
 大切な人の名前を譫言の様に呟きながら、一翔は未だ歩みを止めていなかった。
 ……未練を晴らす方法を導く為にも、まずは彼を止めなければならない。

『……どいて、くれ』
「俺達は、君の目的を害する者ではないよ」
『それでも、俺は……!』
 進路を塞ぎながら、紡がれる言葉。
 其れが己を案じるが故かもしれない、と。
 そんな考えが、一翔の脳裏を過ぎるが。そうだ、解っている。
 其れでも、止まってはいけないと己の内が叫んでいるからこそ。
 強引に押し通るべく、分身と共に刃を――。

「おっと――」
 彼の迷いの表れ、だろうか。
 攻撃の狙いが、読み易い。
 逢坂は愛用の薙刀――墨染桜を手に、二人分の斬撃を受け流す。
 どうやら今の彼は、自分達の言葉を受け止めるだけの余裕は無さそうだ。

「少しだけ気分を落ち着けようか」
 逢坂が呼び招くは、夢へと誘う桜。
 此の世界由来の人ならば、桜には少なからず癒されると思うから。
 再び、一翔が其の刃を振るおうとする前に――彼は決意を込めて、力強く。

「君の未練は、必ず」
 逢坂の一言を切っ掛けに。
 桜の花吹雪がそっと、一翔へと優しく降り注ぐ。
 地に膝を突く事を。眠る事を許さないのは、彼自身の妄執の強さ故か。
 彼が顔を上げた瞬間、視界に映ったのは――。

『えっ……?』
 数多の花弁が舞う中、一翔は目を見開いた。
 嗚呼……俺は今、白昼夢でも見ているのだろうか。

 ――また、一緒に桜を見ましょうね。
 そうだ。俺は、彼女とそんな約束を交わしていた。
 幻朧桜は一年中咲き誇っていると言うのに。
 其れに……俺はどうして、彼女の笑顔に苦しさを覚えるのだろう。

 桜の花弁が溶ける様に、消えてゆく。
 其の中心、逢坂は確かに目にしていた。
 誰かを想い、静かに涙を流す……儚げな一翔の姿を。

成功 🔵​🔵​🔴​

歌獣・藍
【藍玉】
まぁまぁ、
どうなされたのかしら

まどか、
あのような人も『イカれた』人
というのかしら?
何だかこちらが悪者のような
言葉が聞こえたけれど
……気の所為ね
えぇ、えぇ。おっけー、よ。

宝石糖…
美味しいのかしら。あれ。
糖、というのだからきっと
とびきり甘いのでしょう
まどかに今度、頂いて……きゃ、
まぁ、まどかの衝撃波も
すごく殺戮嵐の様よ?
髪が吹き飛んでしまいそう

足止めすればいいの?まどか。
わかったわ
…あぁ、ごめんなさいね
あなたにも
訳があるのでしょうけれど
まどかのお役にたちたいの
…貴方の宝石糖の色?
というのも、気になるわ

浮かぶ無数の剣を操れば
あなた専用の
剣の檻のできあがり

素敵な宝石糖になぁれ……♪


百鳥・円
【藍玉】

あーらら、暴力はんたーい
事情は知りませんが巻き込みは勘弁ですよん
正義の味方じゃあないのでサクッといきましょーね
かじゅーのおねーさんもそれでオッケー?
オッケーですね?ではでは行きますよん

歩まれる度に周りを巻き込むんじゃあ困ります
殺戮嵐のよーなあなたにはこう!ですん
爪と翼の衝撃波で足止めしちゃいましょっと
あらら?足りないですかね
それなら宝石糖をたーんと食らってドーピングですん
風属性の力を付与して威力増し増しですよう

おねーさーん
足止め出来るななにか良い方法あります?
わたしはこの人の宝石糖の色が気になってきちゃいました

んっふふ。ステキ
触れたら色が付く牢じゃあないですか
テンションあがっちゃいます



●あなたのココロ
「あーらら?事情は知りませんが、巻き込みは勘弁ですよん」
「まぁまぁ、どうなされたのかしら」
 暴力はんたーい。
 百鳥・円(華回帰・f10932)は歌う様に呟いて、微笑みを浮かべる。
 猟兵の言動に足を止めたり、かと思えば取り憑かれた様に攻撃を仕掛けたり。
 ――なぁんて、気紛れな殺戮嵐なんでしょう!
 楽しげな彼女の傍らで、不思議そうに首を傾げているのは――藍の瞳が美しい、歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)だ。
 真白の兎耳を前に傾けながら、一翔の様子を眺めている。

『俺は、一花さんに伝えたくて……何、を……?』
「まどか。あのような人も『イカれた』人、というのかしら?」
「そーかもですね?さあさ、正義の味方じゃあないのでサクッといきましょーね」
 ――かじゅーのおねーさんもそれでオッケー?
 目を合わせて、百鳥が歌獣へ問い掛ける。
 尤も、結論ありきの質問の様で……歌獣が口を開くよりも先に、彼女はくるりと。

「オッケーですね?ではでは、行きますよん」
「えぇ、えぇ。おっけー、よ」
 ……気の所為ね。
 何だか、こちらが悪者のような言葉が聞こえたけれど。
 殺戮嵐に紛れて聞こえた、空耳の様なものと歌獣は判断したらしい。
 彼女が承諾したのを見て――百鳥は迅速に爪で空を裂き、漆黒の翼を羽搏かせる!

『なっ、速――ッ!?』
「殺戮嵐のよーなあなたにはこう!ですん」
 さながら、雀が遊ぶ様に。
 広範囲に飛び交い、一翔へと迫るのは真空波の刃。
 ――足を止めたら最期ですよ。ほーら、逃げろー!

「きゃ……まぁ、まどかの衝撃波もすごく殺戮嵐の様よ?」
「あらら?でもでも、まだ足りないですかね」
 髪が吹き飛んでしまいそう、と。
 小さな呟きの最中、歌獣の視線は百鳥の手へと向けられていた。

 きらきら、煌めく宝石……の様な菓子。
 百鳥は其れを舌先で受け止めて、ぱくり。ころころ。
 一つ、二つ。たーんと食べるにつれて、風が更に強く吹き荒ぶ。
 影朧や其の分身だけではなく、周囲の人々も思わず髪や帽子を押さえる程。
 そして……艶やかな宝石を美味しそうに食べる彼女の姿を見て、歌獣は思うのだ。

「(宝石糖……美味しいのかしら、あれ)」
 糖、というのだから。
 きっと、とびきり甘いのでしょう。
 まどかに今度頂いて、食べてみようかしら。
 とても美味しかったら。いつか、出会えた時、ねぇさまにも……。

「おねーさーん」
「なぁに、まどか?」
「足止め出来るなにか良い方法あります?」
 暴風、乱刃を収めて。
 分身が消えて、とうに一人になった一翔を指差し、百鳥が笑みを浮かべる。
 ――わたしはこの人の宝石糖の色が気になってきちゃいました。

 たった一つの願望を抱いて、現に戻ってきた儚き影朧。
 ……あなたのココロはどんな色?
 じっくり、ゆーっくりと見てみたい。此の目で堪能したい。

「わかったわ、まどか」
 歌獣が頷いて、手にしたのは『あの日の剣』だった。
 あの日の罪を忘れない為、償う為。
 ……あなたにも訳があるのでしょうけれど、まどかのお役にたちたいの。
 其れに、あなたの宝石糖の色というのも気になるから。

「ごめんなさいね」
 ――素敵な宝石糖になぁれ。
 言葉とは裏腹な思いを抱きながら、歌獣は剣の切っ先を一翔へと向ける。
 直後、彼の頭上に現れたのは複製された『あの日の剣』の数々。
 藍色のリボンを揺らして、複雑に飛翔した後……剣は地面へと突き刺さった。

 ……だが、痛みが来ない。
 一翔が顔を上げると、数多の剣が己を取り囲んでいるではないか。
 其の檻の隙間は殆ど無く、無傷で抜け出す事は難しいだろう。

『……っ!』
「まぁ……」
 歌獣は目を瞬かせる。
 其れでも、一翔は剣の檻からの脱出を試みたのだ。
 間隙を縫う様に、腕や足が傷付いてでも。彼は願いの為に進み続ける。
 其の途中、百鳥は血が付着した刃を見て……ふと、蠱惑的な笑みを見せた。

「あらら、キレーな色が付いちゃいましたね」
 ――んっふふ、ステキ。
 テンションあがっちゃいます、と。
 どうやら、様々な感情が混ざり合っている様に見えるけれど。
 赤紫色の刃に、藍のリボンに付着したのは……さて、何色だったのだろうね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

コミュ力で張り詰めた空気を和らげるよう話しかける

一翔さんですよね?
突然すみません
心残りがあって何処かに行こうとしてるんですよね
でも今の精神が不安定な貴方を通すことはできません
わー!待って
私達は貴方を倒しにきたんじゃないんです
助けに来たんです

攻撃を仕掛けられたらダッシュや残像で回避し
一翔さんと対話を続ける
どなたをお探しなんですか?
その人を探して必ず貴方の言葉を伝えますから

とはいえ会ったばかりの私達のことを彼は信じない可能性が高い
生前、詐欺師をしていたのならば尚更
それなら実力行使するのみ

アヤネさんが一翔さんを拘束したら直ぐにUC仮面劇場を発動
少しだけでもいい
どうか私達の言葉を聞いて下さい


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
目的は影朧の沈静化
油断せず冷静に対応

そんなに必死になって
どこに行きたいの?

ま、聞いてもはいそうですかって通すわけにもいかないんだけどネ
人通りがあるから素早く無力化したい
ところが
あらソヨゴは話し合うつもり?
仕方ない付き合おうか
でも少しでもソヨゴを傷つけたら許さない
大鎌を両手に持って立ち向かうが
直接攻撃せずに受け流しに専念する
ソヨゴへの攻撃は割って入って通させない
もう一人の自分は斬り伏せる
こっちは構わないネ?

隙をみてUC発動
相手を拘束する
ソヨゴ!
呼吸はぴったり事前の打ち合わせは不要

相手の戦意喪失を確認して大鎌を袖口からするりと体内に収める

じゃ、行こうか?
助けてやるよ
それがソヨゴの望みならネ



●相応しき名は
「突然、すみません。一翔さんですよね?」
 城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は、穏やかに声を掛ける。
 張り詰めた空気を、少しでも和らげたい。
 そんな彼女の考えが伝わったのか、一翔は彼女……そして、隣に立つアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)と向き合おうと。

「そんなに必死になって、どこに行きたいの?」
『……君達には、関係ない』
「つれないネ」
「私達は、貴方を倒しにきたんじゃないんです」
 アヤネの言葉に、城島が続ける。
 自分達はただ、助けに来たのだと。
 心残りがあって、何処かに行こうとしている事も知っていると。
 一翔は怪訝な様子だったが、彼女の話を静かに聞き続けていた――のだが。

「でも、今の精神が不安定な貴方を通すことは――」
『……やっぱり、邪魔をするのか』
「わー!待って!?」
「やれやれ、せっかちにも程があるよ」
 ――ま、はいそうですかって通すわけにもいかないんだけどネ。
 一翔が援助者達、もう一人の自分を呼び出し始めると同時。
 アヤネはウロボロスの大鎌を展開。両手に持ち、立ち向かおうと。
 だが……城島はまだ、武器を手に取らない。

「ソヨゴは話し合うつもり?」
「アヤネさん……はい、もう少しだけ時間を下さい」
「仕方ない付き合おうか。それが、ソヨゴの望みならネ」
 但し、あの影朧が少しでもソヨゴを傷付けたら許さない。
 其れを告げた後、アヤネは背後の気配に対して、大鎌を勢い良く振り下ろす。
 召喚された存在ならば、構わないだろうと。
 次々に襲い掛かる敵に怯む事無く、彼女は得物を以って斬り伏せていた。

 一翔はまだ、動かない。
 呼吸を整えようと試みながら、彼は城島と向き合い続けていたのだ。

「一翔さん。探している人の名前は、一花さんですよね?」
『そうだと、言ったら?』
「その人を探して、必ず貴方の言葉を伝えます。だから――」
『……それじゃあ、駄目なんだ』
 誰かを通してではなく、自分の言葉で伝えたい。
 彼女に伝えたい内容は曖昧で、まだ思い出せないまま。
 もしかしたら、伝える事も出来ずに消えてしまうかもしれない。

『これ以上、邪魔をするなら……』
「そうはさせない」
 UDC形式名称、ウロボロス。術式起動。
 ――二重螺旋の蛇よ、来たれ。かの者の自由を奪え。

 からん、と。
 短剣が地面に落ちる音がした。
 城島へ迫ろうとする足を、危害を加えようとする腕を。
 影から伸びた異界の触手を使い、アヤネが素早く拘束したのだ。
 無論、一翔は振り払おうとしていたが……残念、叶わない。

「ソヨゴ!」
 事前の打ち合わせなんて不要。
 ただ、名前を呼ぶ。其れだけで、城島はきっと分かる筈だから。
 そう断言出来る程の信頼が、彼女とアヤネの間にはあるのだ。

「お願いです、どうか――私達の言葉を聞いて下さい!」
 花髑髏の柄を確りと握り締めて、城島は足早に駆ける。
 出会ったばかりの私達の事を、一翔はまだ信じ切れていない可能性が高い。
 生前、詐欺師をしていたのならば尚更だ。

 だからこその、実力行使。
 此の刃が断つのは彼ではなく、彼自身の苦悩や悲嘆。
 ……少しだけでもいい。もう、これ以上苦しまなくていいのだと。

「届け――ッ!」
 あゝ、元より儚い存在。
 此れまでの連戦による負傷、援助者や分身は既に消え失せている。
 故に……城島による一閃を避ける事は出来ず、一翔は息を詰まらせた。

 其方に相応しき名を与えん。
 伝えたい事があった、其れが何なのか解らないままだった。
 だが……負の感情という曇りが晴れた事で、一翔は少しだけ思い出す。
 そうだ、名前。俺はずっと、彼女に――。

『謝り、たかった……』
「えっ?」
『俺は、謝らないといけないんだ……』
 其れだけの為に、罪の無い人々を傷付けた事実は変わらない。
 そんな自分が、誰かの手を取ってもいいのだろうか。
 ……其れが、本当に許されるのだろうか。

『すまない』
 一翔は迷った末……ふらつきながらも、己の力だけで必死に立ち上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
なんというか……
手負いの獣って感じだな。

俺に敵意がなくても牙を剥かれると、応戦しなきゃい。
少しだけ、ごめんなさい。

雷の精霊様の力を絞った[属性攻撃]をお願いしたい。
精霊様に足を痺れさせて、デコピンして貰えたら、話を聞いてくれるかな。

相手のUCの分身は、容赦なく倒したい。
[カウンター]でUC【狐火】を撃ちたい。
本人には手を出さない。

まず落ち着いて話を聞いて欲しい。
俺はしがない妖狐の猟兵だ。
俺は貴方に協力したい。

但し、他の人に危害を加えない事。目的を果たしたら転生か消滅する事。
これを破ったり暴走して危害を加えると、俺は貴方を殺さないといけない。
出来れば、貴方の目的を手伝わせてくれないか。


クロム・エルフェルト
……もし。其処の方。
急ぐ気持ちは酌むけれど
人を撥ね飛ばしてはいけないよ。

胡乱な目、断片的な呟き
心が溢れる程、強い思いが渦巻いてるよう
先ずは少しでも吐き出させないと
話すら聞かなそう

打ち合い乍らの問答
そんなに急いで、どちらまで?
逢い引き、御見舞い、敵討ち?
兎に角、胸中の燻りを喋らせる

狙いはあくまで無力化
攻撃は強めの峰打ち
関節を狙い痺れさせる

鞘、懐刀、道具袋まで
極細の「忍鋼線」を結わえておく
……手癖の悪い援助者(お仲間)ね
態と盗ませ、戦いながら糸絡め
強く引き斬り取り戻す

ある程度喋らせたら
予備動作見せずUC放って戦意を砕く

……君、お縄。
少しは頭すっきりした?
暴れないなら、悪いようにはしないよ。



●妖狐捕物帳
 こん、こん、こん。
 一翔の前に現れるは、二人の妖狐。
 ……おっと、忘れてはいけない。傍らには小さな狐さん。

 精霊術の繰り手、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)。
 仙狐式抜刀術の使い手、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)。
 そして、彼らの足元でじっと彼を見つめる……月の精霊の子、チィだ。

 胡乱な目、断片的な呟き。
 幾度吐き出しても、未だ渦巻く強い思い。
 ――なんというか……手負いの獣、って感じだな。
 木常野の呟きに、クロムは同意を示す様に頷いてからぽつりと。

「先ずは吐き出させないと、話すら聞かなそう」
「そうですね。チィ、俺とクロムさんから離れない様にな」
「チィ!――チチッ、チィ!」
 素直な鳴き声を上げて直ぐ、チィは警戒を促す様に再び鳴いた。
 ……無名の援助者達、もう一人の一翔。
 其の姿は、彼の戸惑いを示す様に朧げなれど。敵意、殺気は確かなもの。

「(牙を剥かれると、応戦しなきゃいけない)」
 木常野が持つ精霊の石から現れるは、雷の精霊様。
 更に……彼の周囲にぽつぽつと、百近くの狐火が生まれ始めた。

 ――少しだけ、ごめんなさい。
 まずは、クロムと雷の精霊様が近付く為の道を焼き拓く!
 召喚された者達へと目掛け、狐火が一斉に迫る。
 紅蓮の波にも似た攻撃に対して、敵は回避を試みるが……。

「『焔』封ぜし刀を以って、押し通る」
 右へ、左へと敵が移動する中。
 クロムは恐れる事無く、狐火舞う戦場の真ん中を突っ切ろうとしていた。

 木常野が繰り出す炎、其の火力。
 彼女が其れを、知らぬ訳は無いけれど。
 刻祇刀・憑紅摸に宿る劫火も、また苛烈なる『焔』故に。

 ――露と消えよ。
 神速剣閃、壱ノ太刀。
 クロムが静かに刀を納めた時、眼前には一翔へと繋がる道一つ。
 間断無く、彼女は一直線に駆けてゆく。
 一翔も片手で額を押さえながら、護身用の短剣で応戦しようとしていた。

「そんなに急いで、どちらまで?」
『ぐっ……!?』
「急ぐ気持ちは酌むけれど、人を撥ね飛ばしてはいけないよ」
『俺は、一花さんに……彼女に、謝らないと……』
「……何を?」
『――っ!』
 逢い引き、御見舞い、敵討ち?
 嗚呼、駄目だ。肝心の内容が思い出せない。
 振り下ろされた短剣は……そんな、彼の悔しさの表れか。
 此れ以上、燻りを喋らせる事は難しいだろう。

「都月くん」
「任せて下さい」
 援助者と分身は皆、狐火に呑まれて消えている。
 後は、一翔自身を捕縛するだけ。
 雷の精霊様が、待ってましたと言わんばかりに宙返りをした後――。

「精霊様、お願いします!」
 迸る雷を、一翔の両足へ向けて放つ!
 クロムも同時に動き出し、再び抜刀術を仕掛けようと。
 ――二人が振るうのは消滅の為では無く、一翔の戦意を砕く為の力。
 戦いを重ねて、疲弊した影朧に避ける事能わず。
 両足が動かないと気付いた瞬間、目を見張る様な強い衝撃が彼を襲った。

 ぐらり……。
 身体が、頭が、揺れる。
 嗚呼。どうして、俺はあんなにも周りが見えなくなっていたのだろう。
 憑き物が完全に抜け落ちる感覚と共に、一翔は其の場に倒れ込んだ。

「……君、お縄」
「やりましたね、クロムさん!」
「ん……」
 こくり、と。
 クロムは小さく頷き、僅かに笑みを浮かべていた。
 木常野の嬉しそうな様子に、思わず釣られたのかもしれない。
 一方……ゆっくりと上体を起こした一翔は、ただ放心していた。

「少しは頭すっきりした?」
「俺達は貴方に協力したい。その為に……まずは落ち着いて、話を聞いて欲しい」
 他の人達に危害を加えない事。
 目的を果たした後は転生か、消滅を選ぶ事。
 此れらに背くか、或いは暴走した時には殺さなければならないけれど。
 ……其れでも、木常野とクロムは思うのだ。

「出来れば、貴方の目的を手伝わせてくれないか」
「此れ以上暴れないなら、悪いようにはしないよ」
『……ああ、分かったよ』
 一翔はもう、痛い程に理解していた。
 此の二人を含めて、彼らの言葉は『本心』なのだと。
 追い立てる様な感情の波が、漸く落ち着いたからか。彼は今、思う。

 他の誰かを、傷付けてでも。
 そんな風に思い、行動していた事実は消えない。
 本当なら罰せられても仕方がない、かもしれないけれど。

 まだ、消える訳にはいかない。
 一花さんに、どうしても伝えたい事があるから。
 ……其れが何なのか。何を、どうして伝えたいと思ったのか。

『どうか、協力してほしい』
 彼らと進む内に、思い出せると信じて。
 一翔は深々と、猟兵達に頭を下げて頼むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付開始は『1月8日(金)8時31分(予定)』からとなります。
 導入は今暫く、お待ち下さいませ……。
**********

●『??』の忘失
 本当に、大丈夫なのだろうか。
 今は大人しくなったけれど、また暴れたりはしないのかしら……?

 ――疑心暗鬼。
 猜疑心、恐怖心は、そう簡単に拭えない。
 其れらが込められた視線は、『一翔』の息を少しずつ乱していた。

 他者の視線は、時に人の心を穿つもの。
 ましてや……存在自体が儚き影朧を苛むには、充分過ぎる。
 だが、彼は消える訳にはいかない。
 己が願いを果たすまで、消える事は出来ないのだ。

『何から、話せばいいかな……』
 『一翔』の問い掛けに対して、猟兵の誰かが答える。
 貴方が覚えている事を、少しずつ話して欲しいと。
 其れに対して、彼は静かに頷いた後……口を開き始めた。

 伝えたい相手は、『一花』という名の女性。
 何処かで偶然会って、話をして……少しずつ交友を深めた相手らしい。
 ベンチに座っていた様な気がするから、場所は公園だったかもしれない。
 そして、肝心の伝えたい内容なのだが――。

『どうして君達が知っているのか、俺には解らないけれど』
 ――『一翔』とは、『一花』に名乗っていた偽名だった。
 義賊とは言えど、詐欺師。他者を騙す以上、要らぬ恨みも買ってしまう。
 彼女に害が及ぶのを避ける為、彼は偽名を使っていたのだ。

 いつか、謝らなければと思っていた。
 ……彼女を騙し続けてきた事。いいや、其れ以外にもあった筈だ。
 其れを思い出せず、何処へ向かおうとしているのかも解らず。
 『一翔』と名乗る男は、猟兵達と共に歩み続ける。

**********

【プレイング受付期間】
 1月8日(金)8時31分 ~ 1月9日(土)23時59分まで

【補足】
 本章では下記二点の行動の内、どちらかを選んで頂ければと思います。
 恐れ入りますが、両方選ぶよりは
 どちらかに絞って、プレイングを書いて頂ければ幸いです。

 ・会話によって、『一翔』の記憶を取り戻させる。
 ・周囲の人々を宥めながら、『一花』について尋ねる。

 皆様のプレイング、心よりお待ち申し上げております。
鏡島・嵐
探し人がいる。んでもって、どんな人か、どこにいるのかは覚えてねえ、と。……雲を掴むような話だなぁ。
まあ、戦うよりはずっと気楽だし、協力はするけどさ。

とりあえず、今は歩くだけでダメージを受け続けるみてえな状態なんだよな。
なんで適宜《大海の姫の恋歌》を使っておく。これで気力を補う助けになるといいんだけど。

あとはやっぱ手掛かりが欲しいんで、道すがら一翔と会話して、少しでも記憶が戻る手助けを。
人を騙すってのは、よくねえことだ。どんな言い訳をつけても、それで本当の幸せなんて掴めねーよ。
ただ……なんでそうまでして、って気持ちはある。だから納得がいく答えが欲しい。
おれのためにも……一花さんのためにも、さ。



●雲の隙間
 彼には、探し人がいる。
 どんな人か、どこにいるのかは覚えてねえ、と。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は其れを聞いた後……静かに空を見上げながら、彼は自然に浮かんだ言葉を、ぽつりと溢した。

「……雲を掴むような話だなぁ」
『そうなる、よね』
 傍らから聞こえて来た呟きに、一翔は困った様に眉尻を下げていた。
 正気に戻る事が出来たまでは良いものの、思ったよりも手掛かりは数少ない。

 ――まあ、戦うよりはずっと気楽だし。協力はするけどさ。
 会話の前に鏡島が行うのは、大海の人魚姫の召喚。
 其れは、己の哀しみか。或いは、一翔から感じ取った切なさなのか。
 多くの感情を込めた声で、人魚は静かに歌い始める。
 彼の痛みを遙かに運び去り、少しでも心を軽くする為に。

「人を騙すってのは、よくねえことだ」
『…………』
「どんな言い訳をつけても、それで本当の幸せなんて掴めねーよ」
 生前、似た様な言葉を聞いたかもしれない。
 其れでも、鏡島は言わずにはいられなかったのだろう。
 一翔に騙され、奪われた事で……嘆いた者も少なからず居た筈だから。

「ただ……なんでそうまでして、って気持ちはある」
『俺の言葉を、信じてくれるのかい?』
「ああ。だから、納得がいく答えが欲しい」
 ――おれのためにも……一花さんのためにも、さ。
 裏表の無い、真っ直ぐな眼差し。
 琥珀の両目には、迷いは一切感じられなかった。
 迫力の度合いは違えど、己を真っ直ぐに見つめる姿を見て……一翔は思わず、既視感を抱いていた。

 ――ふふっ、まるで本当にあった話みたい。
 ――もう少しだけ、聞いてもいいかしら。ね、一翔さん。

『最初は……他人の役に立てるなら、それだけで良かったんだ』
「今は、どうなんだ?」
『今は――後悔、していると思う』
 理由はまだ、わからない。
 彼女の笑顔を思い出せそうだったのに。
 其の度に強い後悔の念が、一翔の胸の内を苛む。

 ただ、ほんの少しだけれど。
 厚い雲の隙間から、光芒が差した気がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘭・七結
人々に宿った懐疑の念
そう易々とは消えないのでしょうね

嗚呼。責め立てているのではないの
こうして語らえることを喜ばしく思うわ
あなたの語りに興味があるの

公園、と耳にすれば情景が浮かぶけれど
脳裏の光景は現代世界
桜舞うこの世とはたがう場所
何か目印を憶えている?
歩み続けるこの道には、憶えがあるかしら

そのひとは、どのようなひとかしら
眦を緩めてわらうのかしら
あなたは如何なる情を懐いたのでしょう
探求のこころは溢るるばかり

あなたの手を引くこと
それはわたしの役目ではないけれど
そのこころに宿るひとの元まで
道を示して、導く手助けならば叶うはず

どこか危うげに揺れるひと
ねえ、今のあなたは
この眸と視線をかさねてくださるかしら



●こころは憶えている
 人の夢が形と成った、影朧。
 ゆらり、ゆらり。どこか危うげに揺れるひと。
 ねえ、今のあなたは……この眸と、視線をかさねてくださるかしら。

 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)が、緩やかな足取りで歩み続けると。
 気付けば、隣には『一翔』と呼ばれていた影朧。
 少しばかり穏やかになりつつあるが、息はまだ乱れている。

 人々に宿った懐疑の念。
 恐怖に塗り潰されたこころ。
 ……そう易々とは消えないのでしょうね。
 尤も、彼女は其れを責め立てるつもりはさらさらないが。

『確か……君も、俺を止めてくれた人だね』
「ええ、こうして語らえることを喜ばしく思うわ」
 ――あなたの語りに興味があるの。
 彼の言の葉の断片を繙いてみたけれど、蘭はまだ足りないと感じていた。

 例えば、公園。
 脳裏に過ぎる光景は現代世界のもので、桜舞う此の世とはたがう場所。

 一輪の花と書いて、一花と呼ぶ女性。
 彼のこころに宿るひとの元まで、導く手助けならば叶うはず。
 手を引くことは出来ずとも、道を示すことは出来る。
 だからこそ――もっと、識りたい。おしえて。
 ……嗚呼。探求のこころは溢るるばかり。

「歩み続けるこの道には、憶えがあるかしら」
『そうだね……何となくだけれど、懐かしさは感じているよ』
「何か目印を憶えている?」
『…………』
 蘭の問い掛けに、一翔は静かに首を横に振る。
 恐らく……彼が懐かしさを感じる場所と、目的地は別の場所。
 また、二ヵ所は彼の進行方向、其の延長線上に存在しているのだろう。

『一花さん……』
「……そのひとは、どのようなひとかしら」
 微笑みと共に、蘭が柔く問い掛ける。
 眦を緩めてわらうのかしら。
 あなたは、如何なる情を懐いたのでしょう。
 揶揄う意図など無く。彼女はただ、本当に識りたいだけなのだろう。

『情、か……君にはどう見える?』
「わたし?」
『客観的な意見を聞きたいと思ったんだ』
 其れは彼が、詐欺師故か。
 蘭は少しばかり間を置き、目を合わせて……小さく呟いた。
 ――あいしていたのかしら、と。

 一翔は寂しげに、微笑んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎本・英
先程の君の言葉が、やはり気になるのだよ。
哀切。その情を私は確かに感じ取った。

記憶と云うものは、実に曖昧だ。
その者の情次第で美しく美化される事もあれば
忘れてしまいたいほどに物哀しくもなる。

思い出しても良い物なのか判断しかねるね。

しかし君は思い出さなければならないのだろう。
ではまず最初に、彼女の事を聞こうか。
君と彼女が出会った経緯ではなく
彼女自身の事だよ。

そこから何かを思い出す事が出来るかもしれない。
今の君の記憶にある場所を歩いてみるのも良いだろうね。

記憶は無くとも習慣が身についている事もあるよ。
君の足の向くままに歩いてみるのも良いだろうとも。
私は君に着いて行くだけさ。



●記憶
 先の戦いで紡がれた、一翔の言葉。
 其れに籠められた情――深く、強き哀切。
 榎本・英(人である・f22898)は気になるのか、顎に手を添えては思案を巡らせていた。
 くるる……。
 彼の興味を代弁するかの様に、足元の使い魔――ふわもこな仔猫のナツが静かに鳴いている。どうやら、のんびりと散歩を楽しんでいるらしい。

「(思い出しても良い物なのか、判断しかねるね)」
 記憶と云うものは、実に曖昧だ。
 美しく美化される事もあれば、忘れてしまいたいほどに物哀しくもなる。
 そう……すべては、本人の情次第。
 一翔にとって思い出す事は、身を引き裂かれる事と同義かもしれない。

『…………』
 目に映る不安の色は、拭えずとも。
 思い出したい。何を伝えたかったのか、はっきりとさせたい。
 一翔の思いを受け取り、榎本はふと小さく息を吐いた。

「では……まず最初に、彼女の事を聞こうか」
『何から話せばいいかな?』
「出会った経緯ではなく、彼女自身の事を聞きたいね」
 そこから、何かを思い出す事が出来るかもしれない。
 また、記憶は無くとも習慣が身についている事もある。
 ――君の足の向くままに、歩いてみるのも良いだろうとも。

 榎本の言葉を聞いて、一翔はゆっくりと歩きつつ。
 少しずつでも、思い出しながら……話し始めようとする。

『一花さんと会う時は、いつも同じ場所だったと思う』
 同じ時間に、あの公園のベンチで。
 もしかしたら、待ち合わせをしていたのかもしれない。
 他愛のない会話を楽しんで、少し経ったら彼女を送っていく。
 見目麗しく、儚い雰囲気をした……名前の通り、花の様な女性だった。

「送るとは……彼女の家に、かな?」
『確か、違った筈――あっ……』
 不意に、一翔が足を止めた。
 榎本もまた、彼が視線を向けた先を見ると……其処は、雑貨屋だった。
 色取り取りの小物が並ぶ中、一翔が見つめていたのは――。

 ――もし、いつか。本当の事を言えたなら。
 ――図々しい願いかもしれないけれど。

「いいのかい?」
『……ああ、いいんだ』
 視線の先に在る物。
 其の簪から目を背ける様に、一翔は再び歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

カルディア・アミュレット
アドリブ可

一翔の話を聞く
謝ること…大事なこと
大切な人だからこそ
偽る事は続けずに謝りたいと考える素直な姿に
最後まで寄り添ってあげたい

彼の服の裾を引いて隣に立つ

思いだせること
すこしずつ話してみて
会話をしてるうちに思い出というのは不意に浮かぶもの

一花と出会う公園は
どんな風景なのかしら?
なにかお花は咲いていた…?
どんな事でもいい
言葉にしてみましょう
わたし、この街にきたことある
だから…ふたりでお喋りすれば
わかることも、あるはずよ…」

ゆらり…自分のランタンを優しく灯す
彼が落ち着いて話せるよう
わたしなりにコミュ力

ねぇ
いつも一花とどんな話をしていたの…?
そういう話も…聞いてみたい

なんて他愛もない事も聞いてみる



●しるべ
 ゆらり、ゆらり。
 ランタンの灯りが優しく灯る。
 拭い切れない不安を和らげる様に、しるべとして寄り添う様に。
 其れは、祝福を祈る優しき橙の灯り――。

「一翔、大丈夫?」
『ああ……まだ、消える訳にはいかないから』
 カルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)は一翔の隣に立ち、見上げながら……彼の服の裾をそっと引く。
 其の目からは狂気の色は失せて、眉尻は困った様に下がっている。
 心配を掛けてしまった、申し訳なさからか……本人が語らぬ以上、真意は不明。

 きゅっ、と。
 ランタンの持ち手を握る力が、少しだけ強くなる。
 謝ることは、大事なこと。大切な人ならば、尚更だ。
 偽る事は続けずに、謝りたいと考える素直な姿に……カルディアは力になりたい、と強く思ったのかもしれない。

「一翔、お喋り、しましょう」
『え……?』
「わたし、この街に、きたことある。だから……」
 ふたりでお喋りすれば、わかることもある筈だと。
 会話をしてるうちに、思い出というのは不意に浮かぶものだから。
 すこしずつ、すこしずつ。カルディアの言葉を聞いて、一翔は静かに頷いた。

 其の公園では、幻朧桜が鮮やかに咲き誇っていたらしい。
 ベンチに腰掛けて、桜を見上げながら……穏やかな時間を過ごしていたと。
 毎日会える訳でもなく、共に居る時間も短かったけれど。
 一翔にとっては心温まる、夢の様な時間だった様だ。

「ねぇ、いつも一花と……どんな話をしていたの……?」
 ――そういう話も……聞いて、みたい。
 其れは、カルディアの好奇心?否、其れだけではない。
 他愛のない事も、もしかしたら記憶を取り戻す切っ掛けになるかもしれないから。
 首を傾げる彼女と目を合わせながら、一翔は口を開き始めた。

『互いの好きなもの、かな』
「すきな、もの……?」
『読書とか、花見とか……ああ、そっか』
 彼女に、伝えなければならない事があったけれど。
 自分を偽り続けていたけれど。
 好きなものの話をしている時は、本心を見せる事が出来たのかもしれないね。

「一翔……」
 僅かに浮かべた笑みは、何処か嬉しそうに見えたから。
 カルディアはほっとした様に、小さく笑みを浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・理彦
人の悪意が害をなすのならば【破魔】を込めて簡単な【結界術】で結界を張ろう。完全には防げはしないだろうけど少しでも歩みが楽になればいいんだけど。

もう、分かってもらえたと思うけど俺たちは君を救うために来た。
少しずつでいいから大事なことを思い出していこう
(【鼓舞】しながら【コミュ力】で気さくに話しかけて)

君は一花さんに会いたい?何かを伝えたい?
影朧になった今も残るその気持ちは決して弱い気持ちではないから。



●気持ち
 視線が、針の様に突き刺さる。
 耳に届く声に込められた感情は、好意的なものなどありはしない。
 ……自業自得だと、解っている。
 其れでも、消える訳にはいかないのだと。
 再び、歩みを進めようと呼吸を整えている内に――身体が、軽くなった気がした。

「完全には防げはしないだろうけど、楽になったかな?」
『あ、ああ……?』
「それなら良かった。疲れているなら、おじさんの尻尾でよければもふる?」
『いや、それは流石に悪いから……気持ちだけ受け取っておくよ』
 思わぬ申し出に、一翔が小さく噴き出す様に笑えば。
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)もまた、柔らかい笑みを浮かべていた。
 小規模且つ破魔の力を込めた結界は、どうやら効果があったらしい。
 此れまでの猟兵達との会話から……自分達が一翔を救う為に来た事は、理解してくれた様だ。

「少しずつでいいから、大事なことを思い出していこう」
『本当に、ありがとう』
「どういたしまして」
 どうしても伝えたいと願う、一翔の気持ち。
 影朧になった今も残る其れはきっと、決して弱い気持ちではないから。

「君は、一花さんに会いたい?」
『会いたいさ。でも……会えない、と思う』
 悲しげに呟かれた言葉に、逢坂は目を丸くした。
 其の理由は、一翔が嘘偽りを告げている様には見えないからか。

 会いたくても、会えない。
 されど、どうしても伝えたい事がある。
 逢坂は其の真意を察したかもしれないが……敢えて、話題を変えようと。

「さっき、桜を見て泣いていたけれど……心当たりはあるかな」
『約束をしていたんだ』
「約束?」
『また、一緒に桜を見ようって……不思議だよな』
 幻朧桜は一年中、咲き誇っているのに。
 次は無いかもしれない。不安を、希望で上塗りしようとする様な。
 そんな、約束を……別れる度に交わしていた気がする。
 ――嗚呼、そうだ。

『病院……』
「何か、心当たりが?」
『一花さんと会っていたのは、病院の近くの公園だったと思う』
「…………」
 嗚呼。俺の勘、当たっちゃったかな。
 一翔の言葉を聞いて、逢坂は密かに思っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

木槻・莉奈
シノ(f04537)と
周囲の人々を宥めながら『一花』について尋ねる

【Venez m'aider】で、町の人が親しみがありそうな小動物で人慣れしてる子を呼び出し
不安そうな人の元へ優先的に寄り添い、何かあっても守れる様に

そんなに不安そうな顔しないで、私達がついてます
それに、その子達も貴方達を守ってくれるって言ってるわ
だから、絶対大丈夫よ

出来るだけ視線を合わせ威圧しない様に気を付けつつ、声をかけて回るわ
シノ…知ってはいたけど、本当こういうの得意よね

一翔への負担を減らせたなら、余裕があれば『動物と話す』で現地の動物から『情報収集』
一花の居場所、2人が逢っていた場所の情報、一翔の匂いのする場所等聞き取り


シノ・グラジオラス
リナ(f04394)と周囲の人々を宥めながら、『一花』について尋ねる

『存在感』で周囲の人の注意を惹き、『コミュ力』で安心感を与えて話しかけ『情報収集』を行う

俺達はユーベルコヲド使いなので、もう大丈夫
彼には悪さは出来ませんし、皆さんの安全は保障しますよ

落ち着いた声と表情で視線を合わせてゆっくりと話しかけ、周囲をまずは安心させる
(必要あれば眼帯も外す)
できれば子供やその母親を中心に攻略したいんで、
リナ、できればそっちを頼む

落ち着いた人の中から最初は噂好きそうな人、そこから詳しそうな人を絞り込む

聞き込みは一花の情報か、この周囲の逢瀬ができそうな公園や場所
何も拾えないのなら、最近の義賊の目撃情報を



●義賊
 一翔から離れた場所で、動く者達も居る。
 周囲の人々の視線を和らげた上で、情報収集を行う為だ。
 此の二人――木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)とシノ・グラジオラス(火燼・f04537)の様に。

「俺達はユーベルコヲド使いなので、もう大丈夫」
『で、でも……』
「彼には悪さは出来ませんし、皆さんの安全は保障しますよ」
 狼の耳と尻尾は、見えない状態に。
 眼帯を外して、爽やかな笑顔を浮かべつつ。
 シノは周囲の人々と出来る限り視線を合わせて、落ち着いた声で説得を試みる。
 体格が良い彼の姿に、一部の子供が憧れの眼差しを向け始めているが……大半の大人はまだ、鋭い視線を一翔へと向けている。すると――。

『えっ……!?』
『あっ!猫さんだー!』
 ――視線を遮る様に、何かが跳び出した!?
 華麗に着地をした猫の姿に、歓喜の声が上がり始める。
 別の子供達が近付くが、人慣れしているのだろうか。
 或いは、一翔に何かしらの恩がある動物だったのかもしれない。
 猫以外の小動物が、不安げな人々の元へ寄り添うのを確認した後……木槻もまた、シノの言葉に続く。

「そんなに不安そうな顔しないで、私達がついてます」
『本当、に……?』
「ええ。それに、その子達も貴方達を守ってくれるって言ってるわ」
 ――だから、絶対に大丈夫よ。
 自信に満ち溢れた雰囲気、堂々たる言葉。
 そこに威圧感は無く、あるのは『信じてほしい』という願いだ。
 小動物達も同様の思いを伝える為に、次々に鳴き声を上げ始めていた。
 子供達が少しずつ声を上げて、親もまた迷いながら……信じてみようと頷く。

 二人の行動は、期待通りの結果を齎した。
 ……尤も、子供やその母親を中心に攻略したいと発案したのはシノの方だが。

「シノ……知ってはいたけど、本当こういうの得意よね」
「おっ、少しは見直したか?」
「どうかしらね?」
「……こりゃ手厳しいな」
 他愛のないやり取りも、いつもの事。
 一翔の負担を少しでも減らす事が出来たと解れば、二人は次の行動に移る。
 少しでも、特に一花の情報を集めるべく。
 木槻はまず、現地の動物達から話を聞こうと、其の場にしゃがみ込んだ。

「みんな、少しいいかしら?」
 木槻の一言に、動物達が一斉に大集合!
 其の様はまるで、ボスの掛け声に集まる様だったとか……?
 其れはさて置き、彼女は動物達へ幾つか問い掛けようと。

 一花の居場所、二人が会っていたとされる公園。
 そして、一翔の匂いがする場所。
 心当たりがあるらしい動物達から、彼女が順番に話を聞いている間に、シノも周囲の人々に尋ね始めていた。

『一花……もしかして、あの子かしら』
「知っているんですか?」
『偶々、病院で看護師さんが呼んでいたのよ。確か、そんな名前だった様な……』
 覚えはあるが、どうやらかなり前の話らしい。
 ぱっと見た様子から、恐らくは入院患者だったと思われる。
 既に退院しているかもしれないし、まだ病院に居るかもしれない。
 ……付近の住人から聞いた情報を纏めたが、此処までが限界の様だ。

「シノ、こっちも色々と聞けたわ」
 木槻が動物達から得た情報は、主に二人が会っていた公園の事だ。
 其処は幻朧桜が綺麗に咲いている公園で……其処には似た様な服を着ている人達が、札の様なものを着けていたらしい。
 其の中に一花さん、一翔さんと呼び合っていた男女を見たらしい。
 ただ……二人共、ここ最近はぱったりと見掛けなくなったとか。

「二人共?一花もか?」
「ええ、そうみたい。それから……」
 とある猫が、捨てられた猫から聞いた話。
 今はぱったりと途絶えてしまったが、以前は彼ら……困窮していた人々や動物達に、食べ物を分けてくれた人物が居たらしい。
 名前は聞いていない。ただ、自分を『義賊の様なもの』と言っていたと。

 そして、殺されたのだ。
 お前のせいで一花は死んだ!偽善者め!
 見知らぬ男にそう罵られながら……義賊は涙を流して、息絶えた。

「それが、一翔か」
「多分、そうだと思う……」
 謝りたい、という一翔の言葉の意味。
 其の理由の一端に成り得る事実を、二人は知った気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライナス・ブレイスフォード
『一花について尋ねる』
ま、さっきまで暴れてたんだしそりゃ警戒もするわな
そう周囲の人々へ視線を向けつつも、ま。でも今はさっきみてえじゃねえだろ?
闇雲に怯えても疲れるだけなんじゃねえのとそう声を
つうかさ、怖えなら近くに居ねえでさっさと家帰れば解決すっと思うんだけど
何であんたら、留まってんのよ?

一翔には一花ってどんな奴だったのか
どんな風に普段過ごしてたのかとかまあ、聞き出してければとそう思うぜ
公園で会ってた、か。つうかその公園ってどこなのよ?
そう尋ねながらも言葉を頼りに尋ねて行ければと思うぜ
…大切な奴に会いてえって気持ちは解らねえでもねえからな
ま、偶には人助けっつうのしてみんのも悪くはねえか



●気紛れ
「(随分とまあ、殺気立ってるな)」
 自分にとっては慣れた視線でも、一翔にとっては毒に等しい。
 ……あいつなら、放っておいたりはしないかと。
 ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)は一翔から離れ、周囲の人々に足早に近付こうと。
 不意に迫り来る彼の姿を目にして、周囲が騒然とし始めていた。

『本当に、大丈夫なのでしょうか?』
「ま、さっきまで暴れてたんだし……そりゃ、警戒もするわな」
 ――でも今は、さっきみてえじゃねえだろ?
 ライナスの言う通り、今の一翔は別の猟兵達と意思疎通が出来ている。
 其れは彼の様子を注視していた、住民達も理解している事だ。

「怖えなら近くに居ねえで、さっさと家帰れば解決すっと思うんだけど」
 闇雲に怯えても疲れるだけなんじゃねえの、と。
 ……ぶっきらぼうな言い方だが、意図は伝わったのだろう。
 住民達は少しずつ視線を逸らしては、家へ戻ろうとしていたが。
 親子らしき二人は此の場に残り、不安げにライナスを見上げていた。

「何であんたら、留まってんのよ?」
『あ、あの……』
「安心しな。俺達は、あいつを取って食ったりはしねぇよ」
 ライナスの言葉に、親子は安堵した様に息を吐いた。
 其の様子から、一翔と関わりのある人物だろうと彼は推察した。
 ――何か知っている事があるのか。
 問い掛けるよりも早く、子供が口を開く。

『おれ、義賊のにーちゃんがよく行ってた公園!知ってる!』
 少年曰く、一翔とは顔見知りで、こっそり追い掛けた事があったらしい。
 幻朧桜を近くで眺める事が出来る、病院に隣接された公園の様だ。
 ……丁度、一翔が進む先にあるらしいのだが。

『でも……』
「他に何かあんのかよ?」
『義賊のにーちゃん、いなくなる前……元気なかった』
 とても落ち込んだ様子だったと。
 それから少しして、居なくなってしまったと。
 寂しそうな呟きを耳にして……無意識に、ライナスは少年へ手を伸ばす。

「ありがとうな」
 乱雑に頭を撫でながら、ぽつりと溢す。
 こういうのも人助けだと、『あいつ』が言っていた気がするから。
 少年が浮かべる笑みを見て、ライナスはふと思うのだ。

 ――ま、偶には人助けっつうのしてみんのも悪くはねえか。

成功 🔵​🔵​🔴​

猪野・清次
影朧への声掛けは他の猟兵に任せ
一花殿についての情報を集める

周囲の民間人が一翔へ向ける視線を遮るように歩み寄り
貴方がたへの手出しはさせませぬ故に、と
民間人を守ることを約束しよう
それから、この近くに一花という名の女性が居ないか
彼女について何か知ることがないか、尋ねる

影朧を仕留め損ねるなど
此れでは自分も、己の意志に背いた事になるではないか
遺憾極まりない――が
一度は同情した身だ
見届けねば腑に落ちない

…自分にとって大切なものが
人の命であることは揺るぎなく
もし彼らの安全が脅かされたなら
何を優先すべきかは分かっている
ただ、その覚悟を持った上で
協力してやってもいいと思っただけだ
あれも、嘗ては人だったのだから



●影か、人か
 貴方がたへの手出しは、決してさせませぬ故に。
 ――身命を賭して、守ることを約束しよう。
 學徒兵の力強い言葉に、住人達は心から安堵したのだろう。
 先の勇ましい戦いぶりを見ていた者からすれば、尚更の事だ。

 口々に紡がれる、信頼の声。
 其れを耳にしながら――猪野・清次(徒野・f22426)は強く、拳を握り締める。
 彼の内側で燻る遺憾、慚愧、己への苛立ち。
 其れらが、両の目に薄らと赤みを帯びさせていた。

「(影朧を仕留め損ねるなど……)」
 影は悪。悪は即座に斬り捨てる。
 其の筈だったのに、一翔はまだ現世に留まっている。
 ……此れでは自分も、己の意志に背いた事になるではないか。
 嗚呼。嗚呼。なんとも、遺憾極まりない――が。

「それから、一つ尋ねたい事が……」
『どうかされましたか?』
「一花という名の女性について、知っている事があれば教えてほしい」
 猪野の問い掛けに、とある女性が声を上げる。
 以前、彼女が入院していた先で話した事があったらしい。
 退院してからは疎遠になってしまったが……定期的に外出許可を得て、誰かに会っていた事も聞いていた様だ。

『確か、殿方の方が一目惚れした……とか?なんだか、浪漫的よね』
「成程……貴重な情報、感謝する」
 住人から聞いた病院の場所は、一翔の進行方向と一致する。
 少なくとも、其の病院に何かしらの手掛かりがある筈だ。
 猪野は丁寧に礼を告げた後、軍帽の鍔に手を添える。

「(自分にとって大切なものは、揺るぎなく)」
 今を生きる人々の命。
 もし、彼らの安全が脅かされたならば。
 過去たる影が、再び牙を剥いた時は――何を優先すべきかは分かっている。
 ただ、其の覚悟を持った上で……協力してやってもいいと思っただけの事だ。

 猪野は静かに、一翔に目を向ける。
 思い出し始めた記憶に惑いながらも、少しずつ歩みを進める姿。
 其の後ろ姿に儚さはあれど、恐ろしさは感じられない。

 だからこそ、彼は思う。
 あれも、嘗ては人だったのだ。
 一度は同情した身、最後の最期まで見届けねば腑に落ちない、とも。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
【狐々】

忘却の海から一番に取り戻した記憶は、彼女の名前
一花への思いは深い筈、公園以外にも思い出がありそう

都月くん、精霊様の方はお願いするね。

精霊様の声は私には聞こえない
こんな時は、妖力が無いのが歯痒い
都月君に「桜の精霊様」への
聞き込みを任せながら公園へ向かう

記憶は五感と結びついていると聞いた
道中、一花との思い出に繋がりそうな物を一翔と探す

聴覚、川のせせらぎ
触覚、犬の毛並み
味覚、団子の甘さ

最後は、最も強く記憶に結び付く「嗅覚」
一花と良く似た香りを纏う人と、すれ違ったりしないかな
花屋や宝飾店など、女性が多く居そうな場所も通る
ん、匂いを精霊様が教えてくれた……?
やっぱり、都月くんの妖術は頼りになるね


木常野・都月
【狐々】

記憶って、なかなか思い出せないよな。
俺も自分の事を全く思い出せないし。

さっきクロムさんに聞かれてたけど、誰かに謝りたいんだろ?

その辺りから、自分の事を思い出せないだろうか。

せめて…思い出すきっかけが分かれば…。

一花さんについて知ってる桜の精霊様がいないか、聞いてみるか。

一花さんの外見やイメージ、匂いなんかを、風の精霊様経由で聞き出したい。

俺は話術はまだ苦手だ。
聞き出す方はクロムさんにお任せしたい。

こんな時に精霊様にしか頼れない。
俺は狐としては一人前でも、妖狐としては、まだ半人前なんだろうな…。

とはいえ、今は俺にできる事を。
UC【妖狐の通し道】で妖気を半分くらい乗せて、集中したい。



●力を合わせて
 忘却の海から、一番に取り戻した記憶。
 其処から、一花に対する一翔の思いの深さを、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は感じ取っていた。
 そして……彼女達は今、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)や月の精霊であるチィと共に公園へと向かっている。

「チィー……」
「チィちゃん、嬉しそうだね」
「桜の香りに癒されているみたいです」
 恐らく、一翔と一花が会っていた公園が近いのだろう。
 少し離れた此の場所からでも、幻朧桜の一部が見えている。
 住人達の射抜く様な視線が減った為か、一翔も幻朧桜を見上げて……目を細めた。

 ――嗚呼、そうだ。
 此処から桜を見上げる度に、胸が弾む様な心地になったんだ。
 其れまでは思い出せた、のに……其の先はまだ靄が掛かって、思い出せない。

「何か、思い出せた?」
『すまない……まだ、はっきりとは……』
「記憶って、なかなか思い出せないよな」
 ――せめて、思い出す切っ掛けが分かれば……。
 事情は違えど、木常野にも思い出せない過去がある。
 気が付いた時には森の中で、妖狐ではなく狐として生きていた。
 当時はあまり気にしていなかったが……いざ、思い出そうとすると思い出せない。

 一翔もまた、そんな気持ちなのだろうか。
 彼の気持ちに共感する部分があった為か、木常野は真剣に考え始める。
 ……とはいえ、話術はまだ苦手だ。
 どう切り出せば良いのか、何から聞けば良いのか。

「……記憶は、五感と結びついていると聞いた」
『えっ?』
「一翔。この辺りに、一花との思い出に繋がりそうな物はある?」
 川のせせらぎ、葉が揺れる音――聴覚。
 犬の毛並み、柔らかな花弁――触覚。
 団子の甘さ、果実の甘み――味覚。
 そして、最も記憶に結び付くと言われている――嗅覚。

 一花と良く似た香りを纏う人と擦れ違えれば、重畳。
 或いは、花屋や宝飾店……女性が多く居そうな場所も通りながら。
 クロムは時折、一翔へと問い掛ける。

「一花と、此処を通ったりはした?」
『……いや、この辺りでお見舞いの品を買った覚えはあるけれど』
 彼女と会っていたのは、あの公園だけだったと。
 一翔が申し訳なさそうに呟いた時、彼らは逢瀬の場所へ辿り着いた。
 其の公園には幾つかベンチが設置されており、中心には幻朧桜が美しく咲き誇っているではないか。
 そして……木常野の目には、桜の周囲に揺蕩う精霊様達の姿が見えていた。
 彼らに聞けば、何か分かるかもしれない。そう、思った直後――。

「都月くん」
「は、はい!」
「精霊様の方はお願いするね」
 クロム自身、妖力が無い歯痒さは感じている。
 だが、木常野も妖狐として半人前だと、落ち込んでいるのかもしれない。
 ……同じ妖狐でも、得手不得手はあるものだ。

 けれど、今は共に居る。
 本当の姉弟ではないけれど、同じくらいの信頼が二人の間にある。
 二人ならば……足りない分を補い合って、乗り越えられる筈だから。
 チィ!鼓舞をする様に、チィも力強く鳴いていた。

「(今は、俺にできる事を)」
 ――桜の精霊様、風の精霊様。
 どうか、一花さんの事を教えて下さい。
 俺とクロムさんの意志を通す為、力を貸して下さい。
 一花さんの外見やイメージ、匂い。彼女についての手掛かりを少しでも。

「精霊様、何か教えてくれた……?」
「はい。えっと……」
 精霊様達曰く、一翔と一花が会っていた事は間違いない。
 二人はとても仲睦まじい様子で、桜を愛でる目はとても優しかったと。
 ただ……何の前触れもなく、一花が姿を見せなくなった。
 其れからも一翔は何度か足を運んでいたが、彼もまた急に居なくなったらしい。

「成程……やっぱり、都月くんの妖術は頼りになるね」
 ――ありがとう。
 クロムの言葉を聞いて、木常野は少しだけ頬を赤く染めていた。
 そして……己の内側で鮮明になりつつある記憶に戸惑いながらも、一翔は少しずつ言葉を溢し始める。

『そうだ……あの日、全てを伝えて。謝ろうと、思ったんだ』
 でも、会えなかった。出来なかった。
 偶々具合が悪くなったのかもしれないと、再び足を運んだけれど……駄目だった。
 其処から、導き出される可能性は――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

周りの皆さんの視線が痛いですね…
一翔さんのことは他の猟兵に任せて
私達はまずは周辺の人達を宥めることをしましょう

お騒がせしてすみません
あの影朧さんはもう危険はありません
彼のことは私達が全力で対応しますのでもう暫くこのまま見守っていてくれませんか?
まぁまぁそう言わないで下さいな
あっお姉さん
その指輪素敵ですねー
…とお世辞も
お店の人なら取り扱ってる商品を褒める!
コミュ力で場の剣呑な空気を少しでも和らげるよう努めましょう

落ち着いたら
一花さん関連のことを聞いてみます
にしても情報が少な過ぎますね
一翔さんがもう少し思い出してくれれば良いんだけど
ほほー!
先ずは場所から探りを入れるんですね
さすがアヤネさん


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

謝罪したい相手がわからないのでは救いようも無い
手がかりは少ないけど心当たりのある人物を探そうか

ソヨゴがうまく宥めている間に一翔と周囲の住人との距離をあけよう

まあまあ皆さん落ち着いて
彼を刺激してはいけません
別件で情報を引き出す必要があります
できれば穏便に収めたいのでご協力お願いします
ところで

滑らかな口調は演技
別件なんて知らないけど

この地域にベンチのある公園があるか
あるならその近くに住まう者はいるか
一花という若い女性に心当たりはないか
この順序で尋ねる
いずれにせよ行き先はその公園になりそうだけど

情報が集まったら現場に向かおう
一翔さん僕らが彼女に会わせてあげるネ
そう彼に声をかける



●謝罪の行方
「彼のことは、私達が全力で対応しますので……」
「できれば穏便に収めたいので、ご協力お願いします」
 あの影朧さんは、もう危険はありません。
 別件で情報を引き出す必要がある為、彼を刺激しないでほしい。
 そんな風に、周囲の住人を宥めているのは――城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)とアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)だった。

「あっ、お姉さん!その指輪素敵ですねー」
『そ、そうかしら……』
「うんうん!とても似合っていると思います!」
 城島は自身の高いコミュ力を活かして、剣呑な空気を少しでも和らげようと。
 時には商品や身に着けている物を褒めて、褒めて、褒めちぎる!
 ――もう暫く、このまま見守っていてくれませんか?
 真っ直ぐさの中に見え隠れする、責任感が伝わったのだろうか。
 すっかり上機嫌になった女性は笑みを浮かべて、店の中へと去っていく。

「皆さんに危害を加える事が無い様、慎重に進めていますので……」
『そ、そうか……』
 ――別件なんて知らないけどネ。
 別件は方便。滑らかな口調で、アヤネは演技を続けている。
 影朧の暴走を止めた者達の言葉ならば、信じるに値すると考えたのだろう。
 住人達は彼女の声に耳を傾けて、一翔から視線を逸らし始めていた。
 ……勿論、其の間に情報収集も忘れない。
 既に他の猟兵から、公園の正確な位置情報は共有している。

 後は、公園の近くに住まう者がいるか。
 前者に該当する者が居れば、一花という若い女性に心当たりはないかを尋ねる。
 城島も見える範囲を宥め終えたのか、アヤネを手伝おうと。

「ほほー!先ずは場所から探りを入れるんですね」
「頼んだよ、ソヨゴ」
「はい!……にしても情報が少な過ぎますね」
 少し離れた場所から見た限り、一翔の様子に変化は無い。
 或いは、無意識に変化を見せない様に努めているのかもしれない。
 少し思い出してくれれば良いと願いつつ、城島も情報収集の為に動き始める。

 ……程無くして。
 お日様を連想させる眩い笑顔と共に、城島が声を上げた。

「アヤネさーん!この近くに住んでいる人、見付けましたー!」
「ソヨゴ、ナイス」
 ――やっぱり、ソヨゴは頼りになるネ。
 アヤネが城島の元へ近付くと、其処にはベンチに腰掛けた老婦人が居た。
 どうやら、此の公園には良く足を運んでいるらしい。
 加えて、近くの病院は彼女の通院先の様で……一花とは顔見知りとの事だ。

『一花ちゃんね。何でも、あの子……父親から酷い暴力を受けたみたいで』
 其の際に意識を失い、其のまま入院生活となったらしい。
 時折、外出許可を得ては……此の公園で、幻朧桜を眺めていた。
 何時からかは覚えていないが、いつしか『一翔』と呼んでいた男性と眺める様になっていたと。老婦人は教えてくれた。

「一花さん、今どうしているか……心当たりはありませんか?」
『それが……急に、公園に顔を出さなくなってしまったの』
「……無事に退院した、という訳じゃなさそうだネ」
 老婦人の頷きに、城島とアヤネの脳裏にある可能性が過ぎった。
 一翔は此の事を知っているのだろうか。
 知っているとしても、其の記憶を思い出しているのだろうか。
 彼の元へ、二人が駆け出そうとした瞬間――老婦人が慌てて呼び留めようと。

「どうかしましたか?」
『貴女達は、一翔さんとも知り合いなのかしら……?』
 もし、そうならば。叶うならば。
 一花さんは、貴方に心から感謝していたと伝えて欲しい。
 老婦人の言葉を確りと受け止めて、城島とアヤネは再び走り出す。

「アヤネさん」
「うん」
「……会いたい人に会えないのは、寂しいですよね」
 本当ならば直接、伝えたかっただろう。
 きちんと向き合って、目と目を合わせて……だが、其れは叶わない。
 もしも彼が其の事実を知っていて、思い出したのならば。

 一翔の目的地とは、恐らく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

歌獣・藍
【藍玉】
しっしっしー…?
(真似をする)

そうよ。私たちがいるのだから
何も気にする事はないわ!(ふんす!)
…そうね
私も人探しをしているわ
あなたの気持ち
凄くよくわかるの
だから…手伝わせて頂戴ね

わかったわまどか。
それじゃあ情報収集にいってくるわね!(ビシッと円の敬礼を真似して走っていく)

まぁ。どうなさったのかしら
どうしてそんなに
怖い顔をしているの?
綺麗なお顔
逞しいお顔が台無しだわ

私のお歌、聞いて?
ねぇさまに教わったの

~~♪どう?たのしい?
ふふ、ご清聴どうもありがとう
私の大好きな歌なの

心が落ち着いた所で
ひとつ聞いていいかしら
一花さんってご存知…?
へぇ…そうなのね。
さっそくまどかに伝えなきゃ!


百鳥・円
【藍玉】

あーあー視線が突き刺さるかのよーです
んふ、痛いこと痛いこと
心を読まずとも分かりますよう

しっしっしー!見世物じゃあないんです
わたしたちが居ますから
どーぞ安心して向こうへ行ってくださーい
今夜も良い夢見たいでしょ

んで、影朧のおにーさん
あーコレだとなんか不便ですね
おにーさん、お名前はなんでしたっけ

薄らとだけど思い浮かぶひとが居るんでしょ?
じゃあ探しにいきましょーよ
幸い、ひと探し仲間が居るんです
ね。かじゅーのおねーさん
情報収集は任せましたよう
わたしは人払いに専念ですん
あとでちゃーんとお話聞かせてくださーい

んふふ。どんなひとなんでしょーね?

さてさて張り切っていきましょ
スマイルもトークもお任せあれ!



●真意
 周囲の住人の多くは、猟兵や學徒兵達の説得に応じたものの。
 ごく一部、憎悪や忌避の視線を向け続ける者も居る。

 ――あーあー、視線が突き刺さるかのよーです。
 んふ、痛いこと痛いこと。
 まるで本当に、目に見える様な鋭利な感情。心を読まずとも分かる程。
 其れは、百鳥・円(華回帰・f10932)や歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)に向けられたものではないけれど。

「しっしっしー!」
「しっしっしー…?」
「見世物じゃあないんです。ね。かじゅーのおねーさん?」
「そうよ。私たちがいるのだから、何も気にする事はないわ!」
「そーいうわけなので。どーぞ安心して向こうへ行ってくださーい」
 ――今夜も良い夢見たいでしょ。
 嗚呼。どうやら、彼らの宝石糖の色に興味は無いらしい。
 煩わしい視線を遠ざける様に、百鳥は何かを振り払う様に手を動かす。
 其の隣で、歌獣も真似をする様に小さく振り振りと。

 ……其れでも尚、此の場に残る者も居る様だ。
 身嗜みが整っている男性を見て、一翔は目を見開いている。
 まるで、見覚えがあるかの様な反応を見て……百鳥はふふり、と笑む。
 ――かじゅーのおねーさん。
 呼び掛けと共に、彼女と歌獣は二人の間に割って入った。

『君達……』
「薄らとだけど思い浮かぶひとが居るんでしょ?」
「私も人探しをしているわ。あなたの気持ち、凄くよくわかるの」
 ――だから……手伝わせて頂戴、ね。
 歌獣の言葉に込められた、静かな決意。
 一翔は其れを有難く思いながらも、己を睨み続ける男を放っておけなかった。

『でも、あの人は……』
「んふふ。あちらはお任せしますよう、かじゅーのおねーさん!」
「わかったわまどか」
 ――ビシッ!ビシッ!
 百鳥の敬礼に一拍置いて、歌獣も真似をする様に敬礼を。
 そして、向かうは射殺す様な眼差しの男性へ。
 まぁ。どうしてそんなに、怖い顔をしているのかしら。

「綺麗なお顔、逞しいお顔が台無しだわ」
『は……?』
 何を言っているんだ、と惑う声。
 奴の味方をするつもりなら――男はそう続けようとして、ぴたりと止まった。

 歌が、聞こえて来る。
 透き通る声で紡がれる言葉は、まるで言祝ぐかの様。
 歌獣が、ねぇさまに教わった歌。大切な、ねぇさまとの繋がり。
 彼女の姿があまりにも綺麗だったからか、男はいつの間にか目を奪われていた。

「ふふ、ご清聴どうもありがとう」
『あ、いや……』
「たのしかった、かしら?」
 首を縦に振る様子を見て、歌獣は嬉しそうに微笑みを浮かべて。
 男性の心が落ち着いたと判断したのか、彼女は問う。

「一花さんってご存知……?」
『知っているも何も……』
 其の男は、一花の幼い頃からの友人だった。
 尤も、彼女の父親が悪事に手を染めた事は後から知ったらしいが。
 義賊が父親から全てを奪わなければ、一花はまだ生きていたかもしれないのに。
 ……其れが、八つ当たりに近い考えだと解っていても。

「そう……なら、一花さんは」
 ――既に、亡くなっている。
 其処まで聞いた後、さっそくまどかに伝えなきゃ!と。
 歌獣は二人の元へと駆け戻り、知り得た情報を少しずつ伝える

「ひと探しに……とは、いきませんねえ」
『そう、だね』
 一翔に落胆の色は見えるが、悲壮は見えない。
 記憶が徐々に戻るにつれて、ある程度は想像していたのだろう。
 ……そして、恐らくは。もう。
 百鳥はある程度の確信を持ちつつ、首を傾げながら。

「んで、影朧のおにーさん……あーコレだとなんか不便ですね」
 ――おにーさん、お名前はなんでしたっけ。
 百鳥の問い掛けに対し、返答をしようとしたが……口を結ぶ。
 彼女が生きていると思いたかった。
 そんな願望が、記憶を曇らせ続けていたのかもしれない。
 其れが晴れた今……此処までしてくれた、彼らの思いに報いたいと思うから。

『まこ、と。真って名前なんだ』
 詐欺師には不釣り合いな名前だけれどね、なんて苦笑を浮かべて。
 困った様に眉尻を下げたまま、一翔改め――真は猟兵達に向き合う。

 どんなひとか、どんな宝石糖の色か。
 見られないのは残念無念。
 それでも、お仕事完遂まで張り切っていきましょ!
 百鳥が一歩前へ出ては、真へ尋ねた。

「まことおにーさん、ですね。さてさて、行き先はどちらまで?」
『俺が、行きたいのは――もう少し先にある、彼女のお墓なんだ』
 せめて、彼女の墓前で全てを打ち明けたい。
 己の偽善に巻き込んでしまった事、素性を偽り続けてきた事。
 もう、遅過ぎるかもしれないけれど……其れでも、謝りたいのだと。

 はらり、ひらり。
 落ちるは桜の花弁か、或いは影朧の涙か。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『言葉にならない気持ちを伝えて』

POW   :    決意を伝える

SPD   :    謝罪を伝える

WIZ   :    感謝を伝える

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付開始は『1月15日(金)8時31分(予定)』からとなります。
 導入は今暫く、お待ち下さいませ……。
**********
●閑話
 困っている、誰かの役に立ちたかった。
 弱者を虐げて、私腹を肥やす輩が許せなかった。
 そんな思いを抱き続けた末――俺は、悪人を騙す詐欺師になった。
 真っ当な仕事を選ばなかったのは、影の存在に対する憧れ故かもしれない。

 切っ掛けは、あの日。
 騙した相手が無理心中を図り、家族を道連れにしようとしたという噂を聞いた。
 其の相手に対しては、自業自得としか思わなかったが……。
 巻き込まれた家族の事は、少しだけ気になっていた。

 父親同様、どうしようもない悪人なら放っておけば良い話。
 ただ、もし……何も知らず、巻き込まれただけならば。
 其の時は――。

「私、一花と言うの。一輪の花と書いて、一花」
 ――貴方のお名前は?
 今思えば、素直に伝えるべきだったと思う。
 けれど、彼女を巻き込みたくない……いや、嫌われたくないと思ってしまった。
 罪無き人には嘘を吐く訳にはいかない、そう誓った筈なのに。

『……俺は、一翔。一番早く翔ける、で伝わるかな』
「一翔、さん……ふふ、お揃いね」
 儚くも、美しい、其の笑顔に。
 思わず目を奪われてしまった、優しい雰囲気に。
 俺は……恐らく、一目惚れをしてしまったのだと思う。

 全てを打ち明けるつもりだったのに。
 謝らなければならないと、思っていたのに。
 ――俺は、決してしてはいけない事をしてしまった。

●『真』の切願
 墓地の管理者が案内してくれたお陰か。
 然程時間を掛けずに、一花のお墓を見付ける事が出来た。
 ……だが、真は今も思い悩んでいる様子だった。

 本当ならば出会ったあの時、全てを打ち明けるべきだった。
 其れが出来なくて、先延ばしにして……結局、面と向かって伝えられず。
 墓前ならば、少しでも届くだろうか。
 そんな一縷の望みに縋る心地が、管理者にただならぬ雰囲気を感じさせたのか。

『差し出がましいとは思いますが……何やら、伝えたい事がある様子』
 ――もし良ければ、手紙を書いてみるのは如何でしょう。
 提案と共に、墓地の管理者は静かに続ける。

 煙は昇り、天へと向かう。
 亡くなった人へ、言葉を届けてくれると言われている。
 本当に届くか、どうかは分からない。分かる筈も無いけれど。
 ……少しでも心が救われるならば、試してみるのもいいのではないかと。

 筆記用具各種は、墓地の管理者が貸与してくれる。
 便箋、封筒も多種用意されている様だ。
 真は早速便箋を貰い受けては、震える手で筆ペンを握り締めていた。

 音ではなく、文字で。
 己の心を綴り、溢れる感情を文字に起こして、思いを形にする。
 彼女に届く様に祈りながら、一文字ずつ書き進めていく。

 猟兵達もまた、此の間に手紙を書く事が出来る。
 真の様に亡くなった人に宛てて、伝えたい言葉を綴っても良い。
 其れに限らず、普段は伝えられない様な言葉を手紙を認める事も可能だ。

 書き終えた手紙を手渡すか、胸にしまっておくか。
 勿論、其れは君達次第。

 ――さあ、何から書き始めようか。

**********

【プレイング受付期間(予定)】
 1月15日(金)8時31分 ~ 1月16日(土)23時59分まで

【補足】
 本章では、誰かに対して手紙を書く事が出来ます。
 但し、お一人様につき一通までとさせて頂ければと思います。

 友人、知人、両親や兄弟姉妹など。
 普段は伝えられない言葉、胸に秘めた思い。
 或いは……亡くなった人へ伝えたかった言葉、思い出など。

 宜しければ、手紙に認めてみては如何でしょうか。
 皆様のプレイング、心よりお待ち申し上げております。
逢坂・理彦
手紙…。そうだね俺も文を認めてみようか。
大切な人に宛てた手紙。
きっと彼が読むのは俺が死んでから俺の部屋を片付けた時。
今、彼との思い出を日記にして残してるんだけどその中に一緒に挟んでおこう。

俺がいなくなって寂しい思いをさせてるかな?
人と居る幸せを教えたのは俺なのに酷いやつだよね。今は君の本体を預かってるからそれを壊せば君を道連れには出来るけれど。
俺は君の本体が本当の意味で壊れるまで生きて欲しいから。
君に出会えて。君と生きることが出来て俺は幸せでした。ありがとう。

書いたはいいけど結構堪えるもんだね…でも…残しておきたい言葉だからさ。



●いつかの為に
 ――そうだね、俺も文を認めてみようか。
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は墓地の管理者から筆と便箋を受け取りつつ、大切な人を静かに想う。

「(文字が、震えないといいな……)」
 此れから逢坂が綴る手紙は優しくも、寂しいもの。
 大切な人が此れを読むのは、きっと自分が亡くなった後。
 逢坂の部屋を片付けている時、彼との思い出を綴っている日記を手にして……此の手紙に気付くのだろう。

 心を落ち着かせるべく、逢坂が息を吐く。
 あの日、敵討ちを終えた後も……自分は生きて、守る為に戦い続けている。
 離れ家に帰っては、おかえりとただいまを交わし合って。
 縁側で彼謹製の和菓子を堪能しながら、其の日の出来事を語り合う。
 大切な人の隣で過ごす時間はとても穏やかで、幸せに満ち溢れていて。

 ――俺がいなくなって、寂しい思いをさせてるかな?
 文字を綴りながら、酷いやつだと思う。
 人と居る幸せを教えたのは、他ならぬ逢坂自身なのに。
 此の手紙を読む時には、きっと彼の涙を拭ってあげる事さえ出来ない。

 大切な人の本体。
 雁首に小さな翡翠が埋め込まれた、美しい煙管。
 死の間際、大切に預かっている此れを壊せば道連れに出来るだろう。
 でも……酷なお願いかもしれない、けれど。
 逢坂は願うのだ。大切な人の本体が、本当の意味で壊れるまで生きて欲しいと。

「(煙ちゃん、ありがとう)」
 君に出会えて。
 君と生きることが出来て、俺は幸せでした。
 俺と出会ってくれて、傍に居てくれて、本当にありがとう。
 ……最後の一文字を綴り終えたのか、逢坂はそっと筆を置いた。

「書いたはいいけど、結構堪えるもんだね……」
 逢坂は手紙を、日記に挟む。
 無論、そう簡単に死ぬつもりは無い。
 寿命を大事に。出来る限り長生きして、大切な人の傍に居たいと思うけれど。

 其れでも、先に逝くのは自分の方だろうから。
 ……此の言葉を残しておきたいと、強く思ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎本・英
昔から心の裡を言葉にする事が苦手でね。
手紙もあまり書かないのだよ。
しかしそうだね、たまには良いかもしれない。

……祖父へ宛てて書こうか。

近況報告、母の事、それから執筆している本の事に家族が増えたこと。
おおよそ手紙とも言えない物になってしまったがそれでも良い。

家族である三毛猫と仔猫は祖父も気に入りそうだ。
彼は生き物が好きだったからね。

煙草屋の婆さんはまだまだ元気だと言う事も知らせてやろうか。
二人は昔からとても仲が良かった。

書き終えた手紙は思っていたよりも長くなった。
これは出さないよ。
持ち帰って直接渡しに行こう。

この世にいないのだから渡せはしないがね
誰かに託すのではなく、私の足で運びたいのだよ。



●近況報告
 さて、どうしたものか。
 榎本・英(人である・f22898)は少しばかり、悩んでいた。
 彼は昔から、心の裡を言葉にする事が苦手の様で。
 故に、手紙もあまり書かないのだが……しかし、偶には良いかもしれない。
 差し当たって、まずは誰に宛てて書くかだが――。

「(……祖父へ宛てて書こうか)」
 榎本の祖父もまた、ミステリー作家だった。
 著書『ひとでなし』の完結前に、亡くなってしまった人物。
 そんな彼に宛てて……榎本は筆を手に、文字を綴り始めようと。
 普段小説を書き始める時とは違った心地に、彼は数度目を瞬かせて。

 まずは、榎本が執筆している本の事。
 それから、あの日から増えた家族の事を。
 三毛猫と仔猫。二匹の名前は、ナナとナツ。
 ……祖父は生き物が好きだったから、彼も気に入りそうだ。

 そういえば、煙草屋の婆さん。
 二人は昔からとても仲が良かったから、彼女の事も書いておこう。
 まだまだ現役だと笑い飛ばす様子は目に見えて、元気だったと。

「それから――」
 母――榎本・誉の事。
 愛を識らぬ、ひとでなし。
 影朧と化した母は愛、心について識ろうとしていた。
 刃を交えて、言葉を交わして。
 冷たい水の中でやっと、温かな愛を感じ取った母は。

 ――いきなさい、英。
 名前を、呼んでくれた。
 ほんの少しだけだったが、親子として話す事が出来た。
 水に溶けた彼女の生命は廻って、いつかまた『ひと』と成るのだろうと。

「…………」
 嗚呼。
 思っていたよりも長くなってしまった。
 榎本は書き終えた内容を見返すが、おおよそ手紙とも言えない物で。

 だが、其れでも良い。
 此の手紙は持ち帰って、直接渡しに行こうか。
 ……此の世に居ないのだから、実際に渡せはしないが。其れでも。

「(誰かに託すのではなく、私の足で運びたいのだよ)」
 認めた手紙をそっと、榎本の懐の中に。
 みゃあ。彼の懐で昼寝をしていた仔猫が、嬉しそうな鳴き声を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木槻・莉奈
シノ(f04537)と

うーん…手紙、手紙…
伝えたい気持ちは言葉に出すよう努めているせいか、手紙を書きたい相手がすぐには浮かばず
少し考えた後、手紙と言うよりは楽譜を綴り

シノの視線に気付けば首を傾げて
私の顔見たって答えは書いてないわよ?
考え過ぎずに、今伝えたい事だけでもいいんじゃない

これはパパに
色んな世界で色んな音楽聞いたから、偶にはお裾分けもいいかなって
直接伝えたら長時間捕まりそうだし、手紙で渡すくらいが丁度いいわ
(※父親はアルダワで音楽を生業とする音楽馬鹿な一般人

もうシノったら
ほら、私じゃなくて手紙に集中!

…そうね、その方がいいと思うわ
UDC、じゃないわよね
花とか持っていくなら見繕うの手伝う?


シノ・グラジオラス
リナ(f04394)と

手紙…ねぇ。苦手なんだよな
送りたい人はいる。けど、何を書いていいか分からない

報いのつもりの死に場所探しは止めた
彼女の生きてと言う願いを叶えるために、リナと共に生きると決めた
けど、アイツはそれを良しとしてくれるのか。俺にはいまだに自信がない
そんなヤツが、彼女の為に何を文字にすればいいのだろう

感謝。謝罪。何を文字にしても足りない気がする
…完全に煮詰まった。リナの様子でも伺おうか

(リナの手紙が可愛いので頭を撫で)
はー。俺の彼女が可愛い過ぎる

(手紙に「生きることにした」と一文だけ書いて)
書き終えた手紙は後で墓前で燃やすよ
そっちの方が、何となくだけどセスに届く気がするからな



●世界の音色、一言に籠めた想い
「(送りたい人はいるんだけど、な……)」
 シノ・グラジオラス(火燼・f04537)は、悩み続けていた。
 手紙を送りたい相手はいる。だが、何を書けばいいのか。
 便箋と筆を受け取ってから暫し、にらめっこしているが……駄目だ。
 悩んでばかりで、未だ一言も綴れないまま。
 彼が手紙を苦手と感じるのは、こうなる事を分かっていたからかもしれない。

「うーん……手紙、手紙……」
 逆に、木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)は宛先に悩んでいる様だ。
 伝えたい気持ちが浮かべば、言葉に出す様に努めている故か。
 親友、彼女の相棒に対する感謝や友愛も。
 筆をくるくると回しつつ、手紙の内容に悩んでいる……シノに対する想いも。

 ――ああ、そうだ。
 何かを思いついた様に小さく頷き、木槻は墓地の管理者に声掛ける。
 そして定規を借りた後、彼女は便箋に筆を滑らせ始めた。
 便箋に直線を書き加えて。記すのは言葉では無く、数種類の記号。
 時に線の上へ、或いは線と線の間に……。
 彼女がすらすらと書き進めている内、じっと見つめてくる気配がする。

「私の顔見たって、答えは書いてないわよ?」
「あー、完全に煮詰まってな……リナ、それって楽譜か?」
「パパに、ね。色んな世界で、色んな音楽聞いたから」
 ――偶にはお裾分けもいいかなって。
 其の手紙……否、楽譜にタイトルを付けるならば。世界の音色、だろうか。
 木槻曰く。音楽を生業とする、音楽馬鹿な父親の事だ。
 直接伝えたりすれば、長時間捕まりかねないから。

 手紙で渡すくらいが丁度いいわ、と。
 アルダワ魔法学園以外の様々な世界を見て、知って。
 自身が感じ取った『音』を、彼女は少しずつ書き起こしてゆく。
 其の様子は楽しそうでもあり、誇らしさも感じられて。
 ……気付いた時には、シノの手が彼女の頭に伸びていた。

「はー、俺の彼女が可愛い。可愛過ぎる」
「もう、シノったら。私じゃなくて、手紙に集中!」
「解ってはいるんだけど、な……」
 木槻の頭を優しく撫でながら、シノは小さく溜息を零す。
 ……そうだ、解っている。
 手紙なのだから、何か一言でも書かなければと彼は思うのだが。

 感謝、謝罪。
 ……何を文字にしても、足りない気がするのだ。

 雪狼――セスとの死別から大分経ち、己の心境にも変化が生まれた。
 報いのつもりの死に場所探しは、もう止めた。
 セスの生きてと言う願いを叶える為、木槻と共に生きると決めた。
 無論、木槻の命が賭けられた約束を破るつもりなど、彼には微塵も無い。

「(正直、情けないと自分でも思ってる)」
 其れでも、まだ自信が無いのだ。
 己の決意をアイツは、セスは良しとしてくれるのか。
 こんなヤツが、彼女の為に何を綴ればいいのだろうか。
 伝えたい事が無い訳じゃない。しかし、上手く言葉に出来ない。
 ……嗚呼、堂々巡りばかり。
 そんな様子のシノに、木槻は解決の糸口を告げようと。

「――いいんじゃない」
「へ?」
「あまり考え過ぎずに、今伝えたい事だけでもいいんじゃない?」
 直接会った事がないから、どんな人かは分からない。
 けれど、想いを全部伝えようとして、悩み過ぎるのも違う気がするから。
 一番伝えたい事だけを伝える、其れでもいいのではないかと木槻は微笑む。
 ……彼女の言葉に、シノは思わず目を丸くしていた。

「そっか……そういうもの、か」
「ええ、そういうものだと思うわ」
 ――生きることにした。
 シノは其れだけを書き終えた後、筆を置く。
 そして……手紙は此の場では無く、セスの墓前で燃やすよと彼は呟いた。

「そっちの方が、何となくだけどセスに届く気がするからな」
「……そうね、その方がいいと思うわ」
 お墓参りの約束もあるしね。
 花とかを持っていくなら、見繕うの手伝うかと木槻が問い掛けると。
 シノは頷き、頼むな?と笑みを返していた。
 ……其れが何処か、少し吹っ切れた様にも見えた気がして。

 ――任せて。
 木槻もまた、嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カルディア・アミュレット
アドリブ可

おてがみ…
…天にとどけるには…、まだ…
わたしの大切なひとの行方…わからない…

天にいるのだろうか…
それとも…どこか、とおい…地にいる…?

便箋とペンを持ちながら悩む
…ふと真が一生懸命書く姿を目にする
わたしも、いっしょうけんめい書けば
ひともじでも、届けられるかしら…?

”あなたを、ずっと探してる
あなたの灯りは人の形をして
大切なあなたを探してる

いま、あなたは何をしていますか?
この果てない空が続く場所にいますか?

ひとりぼっちの旅は
少し寂しい…
あなたの優しい手で
また
わたしを撫でてほしい…

逢いに行くわ
待っていて”

…そらに、とどける

手紙を燃やし煙に乗せて
空の続く何処かで言葉が届くかもしれないから…



●果てしない空の先
 手紙を渡したい相手は、居る。
 とある吸血鬼さん。とても命を重んじる、主。
 カルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)は、主の為の灯りだった。

 ……でも、今は居ない。
 大切な人の行方は分からず、彼の人の生死も不明。

 天に居るのかもしれない。
 或いは、何処か遠い地に居るのかもしれない。
 差し出す先が分からない事実は、彼女の手を止めさせていた。

「おてがみ……」
『……悩んでいる、のかな』
 ふと、目を向けてから……少しの間、見つめていたらしい。
 カルディアと目を合わせて、真が遠慮がちに問い掛けた。
 一生懸命書いているのに、邪魔してしまった。
 彼女が其れを謝ると、真は気にしないで欲しいと微笑んで。

「大切なひとに……とどけたい、の」
『うん』
「でも、行方……わからない……」
 ひとりぼっちの旅は少しだけ、寂しい。
 家族は、羽耳兎のアムは寄り添ってくれるけれど。
 CalmeやPatrieも、一緒に居てくれるけれど。
 其れでも……拭い切れぬ寂しさや不安が、カルディアの内にはあるのだろう。

『天まで届くなら、地平線の彼方にも届くかもしれない』
「えっ……?」
『……もしかしたら、だけれどね』
 絶対に届かない、と思うより。
 少しでも届く、届けたいと願えば……風が運んでくれるかもしれない。
 そうであったら良いと、カルディアも小さく頷いて……少しずつ、文字を綴る。

 あなたの優しい手で……また、わたしを撫でてほしい。
 あなたの灯りは人の形をして、ずっと。ずうっと探していると。

 今、何をしていますか?
 この果てない空が続く場所に、あなたはいますか?
 今はまだ、わからない。けれど、きっと逢えると信じているから。
 ――だから、待っていて。

「ありがとう、真……」
 書き終えた手紙は、空に届けよう。
 真が手紙を燃やす時に、一緒に。
 どうか、空の続く何処かで……カルディアの言葉が、大切な人に届きますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライナス・ブレイスフォード
渡しても渡さねえでも良い手紙、な
あー…よく考えてみりゃ誰かに手紙を書くとか初めてか
そう思いつつ脳裏に過るのはもう居ない幼馴染の少女と普段隣に立つ緑の髪の男の姿
煙で天に届けるならばと思考を巡らせながらも、きっと手紙で送らねえでも天が在るなら彼女は己の事を視ているだろうと小さく笑みを零しつつペンを手に取り文字を走らせんぜ
その後は封筒に入れ封をせぬまま懐に
書いた文字は…腹減った、飯、と一言
見たら直接言えと言われるかもしれねえけど
初めて書いた手紙はあいつに渡したかったからな
それにあいつには文字でなく直接伝える方が性にあってるっつうか
ま、死ぬまでには秘めた何かも言い辛え事も全部伝え合えんだろ。なんて、な



●最初の手紙
 ――なあ、視てんだろ?
 ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)は空を見上げては、ふと小さく笑みを零していた。
 彼の脳裏に過ぎるのは、もう居ない幼馴染の少女の姿。
 彼女に宛てて、煙で天に届けるのも悪くない……そう考えるも、彼は止めた。

 天が在って、其処に彼女が居るならば。
 今頃は笑っているだろうか、其れとも……安心しているのかもしれない。
 そうだったら良いと思いながら、ライナスはペンを手に取った。
 宛先は――普段隣に立つ、緑の髪の男。

「どうすっかな……」
 良く考えれば、誰かに手紙を書くのは初めてか。
 そも……そんな機会が訪れるなど、ライナスは思いもしなかったかもしれない。
 ――これも、ちょっとした変化ってやつか。
 笑みを深めつつ、彼はさらっと書いては便箋を折り、封筒へ。
 恐らく、直ぐに渡すつもりなのだろう。
 彼は封をせず、其のまま己の懐へとしまっていた。

「(初めて書いた手紙は、あいつに渡したかったからな)」
 影朧――真の最期を見届けて、帰還したら。
 落ち着き無く待っていたであろう、あいつに押し付けようか。

 どんな反応をするのだろう。
 まあ、見かけによらず素直なあいつの事。
 驚きながら喜んだと思えば、手紙を読んだ後は呆れた様に項垂れるだろうな。
 ――腹減った、飯。
 ライナスが手紙に記したのは、ただ其れだけなのだから。

「(直接言え、とかかね)」
 そう呟きながらも、あいつの口元は緩んでいそうだけれど。
 そして、実際に書いてみて分かった事だが……。
 ライナス本人としては文字ではなく、直接伝える方が性に合っていると思う。

 言いたい事もあれば、言い辛い事もあるだろう。
 秘めたままにしたいと思う事だって、此れから出て来るのかもしれない。
 ま、其れでも――死ぬまでには全部伝え合えんだろ。

 なんて、な。
 ……そっちに行ったら、改めて紹介してやるよ。
 再び空を見上げて、ライナスは不敵な笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

猪野・清次
対話どころか、目を合わせる事すら覚束なくとも
手紙ならば想いを伝えられるだろうか
自分は、生者へ――密かに慕う御仁へ宛ててと思い立つものの

浮かぶのは拙い言葉ばかりで
とても書き起こせるものではなく
貸与された万年筆は進まず、顔に熱が集まるだけ

かの御方にしてみれば
こんなもの、他の客からも数多に受け取っている筈で
たかが自分の文一通が
彼女の心に何を届けられると思っているのだろう
…というか
此の体たらくでは渡すことすら出来やしない、のでは

文を渡すか否かはまだ決められず
震える文字をどうにか綴り

一翔…本当の名は真と言ったか
くそ、彼奴の方が自分より度胸があるような――
どこか影朧に負けた気がする感覚が腹立たしい



●花想ふ
 分厚い硝子一枚を挟んでも、霞む事無き笑顔。
 瑠璃も玻璃も及ばぬ、透き通った瞳。
 一目合わせれば瞬く間に顔は熱を帯び、言葉も上手く紡げなくなってしまう。
 心の臓は激しく脈打ち、彼女の笑顔を思い出すだけでも――。

 対話どころか、目を合わせる事すら覚束ない。
 そんな自分でも手紙ならば、少しでも想いを伝えられるだろうか。
 せめて、彼女が何を好いているのか……聞いてみたい。
 猪野・清次(徒野・f22426)は、そう思い立ったものの。
 あゝ、慕情とはかくも難しいもので。

「…………」
 書く事が、出来ない。
 浮かぶのは拙い言葉ばかりで、とても書き起こせるものではない。
 其れでも尚、書こうとする度に……万年筆を持つ手は震えてしまう。
 顔には熱が集まり、猪野は其れを払おうと頭を振っていた。

「(落ち着け、落ち着け……!)」
 ――そうだ、冷静になれ。
 かの御方にしてみれば……こんなもの、他の客からも数多に受け取っている筈。
 彼女の笑顔に魅せられた者は、自分だけではないだろう。

 たかが、自分の文一通。
 彼女の心に、何を届けられると言うのか。
 そも、此の体たらくでは……渡すことすら出来やしない、のでは。
 不安に不安が重なり、猪野は一度筆を置いてしまった。

 ……ちらり、と。
 彼は横目で一翔――否、真を見遣る。
 一筆入魂。一文字、一文字を真剣に綴る様子。
 そんな彼の姿を見て、猪野は無性に腹立たしさを覚えた。

「(彼奴の方が、自分より度胸があるような――)」
 くそ、どこか影朧に負けた気がする。
 ……負けて堪るか、と。
 猪野は深呼吸をした後、再び筆を手に便箋と向き合った。
 美しい花の笑みを想いながら、震える文字をどうにか綴り続ける。
 時に呼吸を整えて、或いは熱を払い……漸く、彼は一通の文を書き終えたのだ。

 此の文を渡すか否かは、まだ決められない。
 されど、彼女への文を認める事が出来た。
 其れは猪野にとって、確かな進歩なのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

歌獣・藍
【藍玉】

まこにぃ。
大丈夫よ
信じるものは救われるわ
あなたが
伝わると信じれば伝わるの
自信を持って…!

…あら、
まどかは私に『らぶれたぁ』
書いてくれないの…?
なぁんてね
ええ、行ってくるわ

さらさらと、手紙を綴る
夢のような鮮やかな封筒に
手紙を入れればシールを貼って
とてて、とまどかのもとへ

おまたせ、まどか
はい、これ。あなたに
…あらまどか。
鳩が豆鉄砲食べた…?顔?してる
まぁ、ねぇさまに?
まどか、あのね。
ねぇさまに
手紙で言うことなんてないわ
だってねぇさまには
全部この口から
伝えるのだから。ね?

いつもありがとう。まどか。
だいすきよ。


百鳥・円
【藍玉】

まことおにーさん
直接の言葉は告げられずとも
あなたの想いはちゃあんと伝わると思いますよ

死んだ人の気持ちは流石に読めません
ただの気休め程度かもしれませんが、ね

かじゅーのおねーさん
聞かずとも、でしょう
彼女に手紙を綴りますか?

まどかちゃんは書きませんよう
見られるのはイヤでしょ?
あちらで待ってますねーっと

文字書きはしません
言葉に乗せる魂はひと欠片もあげません
けれど。もし宛てるのなら――、
脳裏に浮かんだ黒髪
深い紫の眼差しを振り払いました

あ、おねーさんこっちこっちー
ちゃあんと書けましたか?

は、わたし?
宛先間違えてません?
はーー、まんまとやられましたよ

そーですか、んふふ
ありがとうございます。おねーさん



●藍から贈る、しんあゐ
「まことおにーさん」
「まこにぃ」
『君達……本当に、ありがとう』
 此処まで連れて来てくれて。
 一花さんへの謝罪、其の機会を作ってくれて。
 己の名を呼ぶ声を聞き、真は歌獣・藍(歪んだ奇跡の白兎・f28958)と百鳥・円(華回帰・f10932)と向き合い、深々と頭を下げる。
 ……彼に頭を上げる様に告げたのは、百鳥だった。

「あなたの想いは、ちゃあんと伝わると思いますよ」
「大丈夫よ、まこにぃ。信じるものは救われるわ」
 百鳥の言葉に続けて、歌獣は何度も強く首を縦に振っていた。
 墓前で言葉を紡いでも、言葉を煙に乗せて届けようとも。
 ……もしかしたら、届かないかもしれない。
 そんな真の不安を払う様な、彼女の頷きには真っ直ぐな気持ちが込められていた。

「あなたが、伝わると信じれば伝わるの。自信を持って……!」
『……そうだね。なんだか、君達には助けられてばかりだ』
 重ねて、感謝を告げた後。
 真は再び筆を手に取り、浮かぶ言葉を綴り始める。

 死んだ人の気持ちは流石に読めません。
 ただの気休め程度かもしれませんが、ね。

 真摯に手紙を書いている彼の姿を見て、百鳥は内心呟くも。
 直接の言葉は告げられずとも、彼の想いは届くだろうとも思うのだ。
 人のココロとは不思議に満ちた、何とも甘美な宝石なのだから。
 ……そんな夢の様な出来事が起きても、おかしくはないでしょう?

「さてさて、かじゅーのおねーさん」
「ええ、行ってくるわ。まどかは……?」
「まどかちゃんは書きませんよう。あちらで待ってますねー」
「あら、まどかは私に『らぶれたぁ』書いてくれないの……?」
 ――なぁんて、ね?
 くすり、ふふりと微笑みを交わして。
 百鳥は其の場から離れて、歌獣は便箋を手に筆を走らせ始める。

「(言葉に乗せる魂は、ひと欠片もあげません)」
 故に、百鳥は文字書きはしない。
 かじゅーのおねーさんが手紙を認める相手なんて、聞かずとも。
 おねーさんの姉上様への手紙。覗き見なんて無粋なマネはしませんよう。

 けれど。もし宛てるのなら。
 ふと、彼女の脳裏に過ぎったのは黒髪の人物。
 己に向けられる、深い紫の眼差し。呼び掛ける声を――振り払う。
 ……少し、ぼんやりとしてしまった様だ。
 とてて、と。駆け寄る足音が聞こえて来て、彼女は振り返った。

「あ、おねーさんこっちこっちー」
「おまたせ、まどか」
「んふふ、ちゃあんと書けましたか?」
「ええ――はい、これ。あなたに」
「……は、わたし?」
 彩り豊かな夢を形にした様な、鮮やかな封筒。
 描かれた雲の上で踊るは、蝶と白兎……のシールだった。
 歌獣は其れを見せて、直ぐに大事にしまうのかと。
 そう、百鳥は思っていたが――。

「……宛先、間違えてません?」
「いいえ……?この手紙は、まどかへ、よ?」
 言わずにはいられなかった。
 百鳥が思わず言葉を零す様子は、鳩が豆鉄砲食べた、顔?の様で。
 ちょっと違う気がしないでもないけれど。
 歌獣は気にせず、どうして驚いているのだろうと。小首を傾げたまま。

「姉上様、じゃないんです?」
「まぁ、ねぇさまに?」
 歌獣は漸く、百鳥が浮かべた表情の理由を知った。
 そして、また小さく笑む。ねぇさまに手紙で言うことなんてないわ、と。
 いつか出会えた、其の時に……。
 ねぇさまへの『あゐ』も、全部この口で伝えるから。
 だから……此の手紙は間違いなく、百鳥への手紙なのだと続ける。

「はー、まんまとやられましたよ」
「やられ、た……?」
「なーんでもありませんよう。そーですか、んふふ」
 ありがとうございます、おねーさん。
 百鳥の言葉を聞いて、歌獣は幸せそうな笑みを浮かべて返す。
 嗚呼、でも……彼女が手紙を読むまでは、真白の兎耳は忙しなく揺れていそうだ。

 ――いつもありがとう。まどか。
 ――だいすきよ。

 文字書きはしないけれど。
 こんな風に、ココロの籠もった手紙を貰うのは……悪くないですね。
 歌獣に聞こえぬ様、百鳥は小さく呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
言葉を連ねて筆の運びに想いを乗せる
手紙を書くことは、とてもすきよ

口では伝えられない想いたち
それらをぎゅうと懐いて
ありのままを綴ることが出来るでしょう

贈りたい言葉を浮かべてみても
次から次へと溢れ出でるかのよう
仕立てるか否か、惑っていれば
ひらりと舞う蝶の軌跡を視る
そうね、ラン

あわいろの髪に白桜を咲かす白翼のひと
遠い記憶の向こうで微笑むあなた

かあさま
蘭十萌様

お元気ですか
あなたの彩はうつくしいままですか
わたしは健やかな日々を送っています

溢るる想いを書き記したのならば
懐には納めずに、火のもとへ

あなたへの言葉は直接伝えたい
だから、もう少しだけ
わたしが冒したものたちを認められるまで

あいする和国にて待っていて



●記憶の向こうへ
「(手紙を書くことは、とてもすきよ)」
 蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はゆるく、微笑む。
 言葉を連ねて、筆の運びに想いを乗せる。
 口では伝えられない想いを、ぎゅうと懐いて……ありのままを綴る事が出来る。

 さあ、どんな言葉を贈ろうか。
 筆を手に、彼女はどんな言葉を贈るか悩んでいた。
 贈りたい言葉が次から次へと浮かんで、とめどなく溢れ出るかの様。
 仕立てるか否か、彼女が惑っている内――。

 はらりひらり、と。
 桜の花弁一枚が揺れる様に。
 くれなゐを纏う真白の蝶が、蘭の視界でゆらりと舞う。

「そうね、ラン」
 白蝶は応える様に、羽搏きを一つ。
 其れを見てから、蘭は萌黄色の便箋に筆を滑らせ始めた。

 宛先は、彼女の母。
 あわいろの髪に、白桜を咲かす白翼のひと……蘭十萌。
 遠い記憶の向こうで微笑む姿を想いながら、彼女は言葉を綴り続ける。

 ――お元気ですか。
 ――あなたの彩はうつくしいままですか。
 ――わたしは健やかな日々を送っています。

「(わたしの彩は……戀を獲て、いとうつくしく染まりました)」
 無し色が、染まるまで。
 少女のかたちを演じたものが、ひとへと堕ちるまで。
 喜びも、哀しみも、沢山の出来事があったけれど。
 牡丹一華は鮮やかに、力強く咲き誇っているのだと……伝えたくて。

 伝えたい想い、贈りたい言葉。
 ありのままを綴る中で、浮かぶ思いもあるのだろう。
 叶うならば……かあさまへの言葉は直接伝えたい、と。

 だからこそ。
 溢るる想いを記した手紙は懐には納めず、火のもとへ。
 真が書き終えた後、共に燃やそうと……蘭は静かに思うのだ。

「(もう少しだけ……)」
 何時かなんて、分からない。
 季節が一巡りしても、まだ足りないかもしれない。
 其れでも……わたしが冒したものたちを、認められるまで。

 かあさま。蘭十萌様。
 ――あいする和国にて待っていて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
……そうだな、祖母ちゃんに宛てて手紙を書いてみるかな。
(筆を執り、便箋に思いを書きつけてゆく)

***
祖母ちゃんへ

これを読んでる頃、そっちは雪が降ってんのかな?
言うまでもねえけど、おれはいつもみてえに旅の空の下。
祖母ちゃんが初めて旅立つ前の日に言った「おまえはこの先、普通の人とは比べ物にならないほどの多種多様な縁を結ぶことになる」って意味、最近になってようやくわかってきた気ィする。
今日はちょっとした人助けをしたけれど、それが出来たんも「縁の力」ってヤツなんだって思う。

それじゃ。最近はタチ悪ィ風邪が流行ったりするらしいから、気ィつけて。
お土産と面白い話持って帰るの、楽しみにしててほしい。





●縁
「……そうだな、祖母ちゃんに宛てて手紙を書いてみるかな」
 そうと決まれば、話が早い。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、管理者から筆と便箋を受け取って。
 そのまま、浮かぶ言葉や思いを書き始めようと。

 宛先は、彼の母方の祖母。
 彼女は占星術師にして、天文学者だ。
 半隠居状態だが、占い業界では名を知らぬ者は居ない程。
 彼女が、鏡島が初めて旅立つ前日に告げたのは……激励にも似た言葉だった。

 おまえはこの先、多種多様な縁を結ぶことになる。
 普通の人とは比べ物にならないほど多くの縁が、おまえの力になる、と。

「(あの時は、あまり実感湧かなかったけど)」
 ――最近になって、ようやくわかってきた気ィする。
 今日はちょっとした人助けをしたけれど。
 それが出来たんも、祖母ちゃんの言う『縁の力』ってヤツなんだと。
 鏡島は小さく頷いて、更に筆を進めようとしていた。

 この手紙を読んでいる頃。
 祖母が住む場所――古い小さな田舎町では、雪が降っているだろうか。
 祖母は今も、助言を求める人々の相談に乗っているのだろうか。
 最近、性質の悪い風邪が流行ったりするらしいが……。
 気ィつけて、と書き終えた後。
 彼はどんな言葉を続けるか、思考を巡らせる。

「(二人が旅した世界が見たい)」
 始まりは、そんな思いからだった。
 両親が見た世界を、自分の目でも見て回りたいと。
 経験を積み重ねても……戦い、命のやり取りは恐ろしいけれど。
 あの日の思いは、今も色褪せず。変わらない。

 おれはいつもみてえに旅の空の下、元気でやっているから。
 祖母ちゃんが言ってくれた『縁の力』も借りて、後悔しねぇように生きる。
 お土産と面白い話持って帰るの、楽しみにしててほしい。

 最後に自分の名前を記して、鏡島は手紙を封筒の中に入れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

まぁまぁ
届かないかもしれないし
もしかしたら届くかもしれない
なんせ生きてる私達にはそれを確かめる術はありませんし断言はできませんよ?

でも私は届いたらいいなって思っておきます
折角書くのに届かないとかなんかつまんないじゃないですか

もしや書けなかったりします?
なら私が書きましょうか
「夢枕に立ってアヤネさんの乱れた食生活を正すように注意して下さい」
って書くんで

私は誰に書こう
てかお婆ちゃんくらいしかいないんだけど
毎朝仏壇に手を合わせて報告してるし特に書くことないんだよね
いつも通りみんな元気ですって書いとこ
アヤネさんが何かしら書いてるならそれで満足

お疲れ様でした
お腹空きましたね
何か食べて帰りません?


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

亡くなった人のために?
ハハッ
そんなの届くわけないじゃない
周りに聞こえないように小声で呟いて自嘲気味に笑う

人間なんて化学反応の集合体さ
反応が途切れたらおしまい
ソヨゴに対しても冷たく言い放つ

それでもソヨゴは希望を口にするのね
僕にも希望がないわけではない
歴史改編
世界改竄
そんなとてつもない事は言えるわけがないけど

はあ?夢枕?
やめてー!
親が生きてた頃から僕の食事はこんなものだったってば

手紙は書くよ
吹っ切れたようにソヨゴに微笑み

お父さん
どうして私を見捨てて死んだのですか?

短い文章を誰にも見せないようにさっさとたたみ
これは燃やそう
天に届くなら届け
返答はいつか必ず手に入れるから

僕はハンバーガーがいい



●真偽不明、でも
「ハハッ。そんなの届くわけないじゃない」
 ――亡くなった人のために?
 周りには聞こえない様に、努めて密やかに。
 アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)は自嘲めいた笑みを浮かべて、小声で呟く。

 人間なんて、化学反応の集合体。
 反応が途切れたら、其れでおしまい。
 幾ら言葉を掛けても、伝わる様に願い続けたとしても……無理なものは、無理だ。
 現実はあまりにも無慈悲で、残酷なものだから。

「まぁまぁ、届かないかもしれないし」
 もしかしたら、届くかもしれない。
 アヤネを宥める様に、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が声を掛けるも……彼女に向ける視線は酷く、冷めていた。
 其れでも尚、城島は言葉を続けようとする。

 届くか届かないか、断言は出来ない。
 なんせ、生きてる自分達には其れを確かめる術は無い。
 アヤネの言葉も決して間違っている訳じゃないと、彼女は思うけれど。
 でも――そうだったらいいな、なんて思う事は自由だから。

「私は、届いたらいいなって思っておきます」
「ソヨゴは希望を口にするのね」
「折角書くのに届かないとか、なんかつまんないじゃないですか」
「…………」
 歴史改編、世界改竄。
 そんな途轍もない事を、言える訳が無いけれど。
 アヤネとて、希望が全く無い訳ではない。
 されど、先の考えが本心である事に変わりなく。
 手紙を書く気にはなれない。彼女が、そんな風に考えていると……?

「夢枕に立って、アヤネさんの乱れた食生活を正すように注意して下さい」
「は、はあ?夢枕?」
「あっ!チーズ入り納豆オムレツは食べてくれました、って書こうかな」
「ソ、ソヨゴ……?」
「アヤネさんが書けないなら、私が書こうかと思いまして」
「やめてー!親が生きてた頃から、僕の食事はこんなものだったってば」
 ……ああ、良かった。
 慌てて制止を促す様子は、普段のアヤネらしかったのだろう。
 城島は内心安堵しつつ、柔和な笑みを浮かべていた。
 まあ……乱れた食生活を、少しでも正して欲しい気持ちはあるけれど。
 其れは今後、ゆっくりと話し合えば良い事だから。
 アヤネの吹っ切れた様な微笑みに、彼女は頷いて返す。

「手紙は書くよ。ソヨゴは?」
「私も書きますよ。誰に書こうかな……」
 城島は考えてみるものの、思い付くのは祖母くらい。
 其の上、毎朝仏壇に手を合わせて報告している為だろう。
 特にこれと言った内容は浮かばない……でも、安心してくれるかなと。
 彼女は便箋に筆を走らせて、一文を綴る。

 ――いつも通り、みんな元気です。
 書き終えれば便箋を折りたたみ、城島は封筒に入れる。
 その後、アヤネの様子を見ると……彼女も書き終えたのか、既に筆を置いていた。
 そして誰にも見せない様に、さっさと便箋を畳んでいて。
 ……誰に書いたのか、なんて聞くつもりは無い。
 アヤネが何かしら書いているならば、彼女は其れで満足なのだ。

「(天に届くなら届け)」
 ぱちり、と音が聞こえる。
 墓地の管理者が用意した焚き火に、アヤネは誰よりも早く便箋を放った。

 ――お父さん。
 ――どうして私を見捨てて、死んだのですか?

 返答は、いつか必ず手に入れるから。
 ……届かなければ、それまでの話だったという事。
 彼女は燃え尽きたのを確認した後、直ぐに焚き火に背を向ける。
 お疲れ様でした。歩み寄った先で待つ、城島の微笑みは優しかった。

「お腹空きましたね。アヤネさん、何か食べて帰りません?」
「僕はハンバーガーがいい」
 ああ、そんな気はしていた。
 或いはピザかな?なんて、城島は思っていたけれど。
 アヤネの偏食改善までの道のりは、遠いかもしれない。

 まあ、今日くらいは。
 折角だからポテトもセットにして、半分ずつ分けようと。
 焚き火に近付こうとする真を眺めながら、城島は思案を巡らせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


**********
●独白めいた手紙
 一花さん。
 ずっと、謝りたかった。

 俺の独善に巻き込んでしまった事。
 打ち明けるべきだったのに、言えなかった事。
 ……君を、騙し続けていた事。全部、謝るべきだったのに。

 もう、遅い事は解っているけれど。
 直接会う事は、叶わないから。
 せめて天に届く様に願って、この手紙を書かせて頂きました。

 俺の本当の名前は、真。
 本当はお揃いじゃなくて、名前とは正反対の嘘吐きで。
 君に、笑顔を向けてもらえる様な奴じゃなくて。
 自分の欲望の為に平気で嘘を吐く、どうしようもない悪人だ。

 君の人生を、これからを。
 踏み躙ってしまって、申し訳御座いません。
 ……本当にごめんなさい、一花さん。

 嘘だらけの、俺だったけれど。
 君と『一翔』として話していた時は、本当の自分でいられた気がしました。
 君と過ごす時間は……駄目だと解ってしても、心から幸せでした。
 ……君のお陰で、本当の意味で愛する事を知りました。
 ありがとう。

 どうか、天上で君が穏やかに、健やかに。
 君が安らかに過ごせる事を祈っています。

 真

**********
クロム・エルフェルト
心の通じる影朧、何処かお師様を重ねて見てしまうのかもしれない
害意が無くて、話が出来て、心があるのなら
……私の中では、それは「ヒト」だ
猟兵として「ヒト助け」がしたかった

一花に、会わせてあげたかった
……御免、真。力に、なれなかった。

天に文が届くのなら、せめてもの願いをしたためる
小筆と和紙の便箋を受け取り、宛先は……この世界の神様へ

桜満つる天に召します神様
真の罪を赦し清めますよう
どうか彼の転生が叶う際は
一花の傍に生まれますよう
彼等が笑い合えますよう
恐み恐み申し上げます

真は、草書が読めるだろうか……
もし読めたら、懺悔を聞かれるようで恥ずかしい
仮に読めなかったとしても、恩に着せたくないから
内容は内緒に


木常野・都月
『じいさんへ

じいさん、おねがいがある。

まことさんが、むくろの海にいる、一花さんに手紙を書いているんだ。
一花さんへ、思いを届けてほしいんだ。

むくろの海は、どうなっているか、おれには、まだ分からない。
だからこの手紙に、おれの妖気を乗せておく。
この妖気使えば、力になるかもしれない。

妖気あまったら、じいさんにあげる。
何か好きに使ってほしい。
だから、たのむ。

じいさん、大好きだ。

都月』


よし、封をしてと。
UC【妖狐の通し道】で妖気全乗せ。

真さんの手紙を一花さんへ
俺の手紙をじいさんへ
届きますようにと気を練りこんでみた。

煙と風の精霊様が舞い上がっていくのを見上げながら、風の精霊様にもよろしくとお願いしたい。



●ヒト助け
 心の通じる影朧。
 似ても似つかぬ姿なれど、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は無意識の内に真と『お師様』を重ねていた。

 オブリビオンの宿業に抗い続けていた、老武士。
 剣の稽古中は厳しく、普段は温かく接してくれた。
 石子である自分と確り向き合って、多くの事を教えてくれた……ヒト。

 害意が無くて、話が出来て、心があるのなら。
 クロムの中では、ヒトだ。故に、真もヒトという認識だった。
 だからこそ、ヒト助けがしたかった。
 一花に、会わせてあげたかった。でも、出来なかった……。

「クロムさん……」
「都月くん、大丈夫」
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の声に、クロムは小さく頷く。
 嗚呼、そんな二人の様子を目にしたからか。
 焚き火へと向かう前に、真は二人へと近付いて……彼女と目を合わせようと。

「……御免、真。力になれなかった」
『俺の方こそ……思い出すのが遅くなって、すまない』
 思い出すまでに、時間が掛かってしまったけれど。
 生前、一花と会えなくなった後、彼女の事を調べたのだろう。
 そして、調べる内に……真は、彼女が亡くなった事を知ったのだ。

 もう、二度と会えない。
 せめて、墓前に向かおうとした道中――復讐の刃に倒れ、其れすらも果たせず。

『君達には、本当に感謝しているんだ』
「え……?」
『こうして、一花さんへ伝えられるのは……君達のお陰だから』
 どうか、気に病まないで欲しいと。
 クロムを見て、木常野を見て……真は再び、焚き火へと向かう。
 二人が此れから書く手紙を覗き見しない様に、と思ったのかもしれない。

 ……そうだ。
 天に文が届くのなら、せめてもの願いを。
 彼女が管理人の元へ向かおうとした瞬間、不意に肩に重みを感じた。

「チィ……」
「チィ、チィー?」
「……元気出して、って。チィが言っているみたいです」
 ぴょーん、と。
 クロムの肩に飛び乗ったのは、月の精霊の子であるチィだった。
 彼女の心痛を察してか、励ましたい気持ちで一杯になったのだろう。
 チィの言葉を代弁した後、木常野は力強い眼差しで告げた。

「俺も手伝います、クロムさん」
「うん……ありがとう、都月くん」
 小筆と和紙の便箋を共に借り受けて、二人は共に書き始める。
 クロムは、サクラミラージュの神様へ。
 木常野は、大好きな『じいさん』へ。

「(じいさん……)」
 祈りと共に、籠めるは妖気。
 骸の海がどうなっているのか、未知数の部分が多い。
 でも、もしかしたら……じいさんが力になってくれるかもしれない。
 其の時に、何か力になる様に。木常野は妖気を文字に乗せる。

 ――まことさんの思いを、一花さんへ届けてほしいんだ。
 ――この妖気使えば、力になるかもしれない。

 余った妖気は、じいさんに。
 何かに使えるならば、好きに使って欲しい。
 そう付け加えて……彼は、より一層丁寧に一文を綴る。

 ――じいさん、大好きだ。

「(どうか、届きますように)」
 真さんの手紙を、一花さんへ。
 木常野自身の手紙を、じいさんへ。
 そして――クロムの手紙に籠められた祈りが、『かみさま』に届く様にと。

「(祈る事しか、出来ないけれど)」
 其れが少しでも、真の助けになるならば。
 便箋に筆を滑らせて、クロムは真摯に綴り続ける。
 桜満つる天に召します神様、どうかお願いがあります。

 ――彼等が笑い合えますよう。
 真の罪を少しでも赦し、清めて下さい。
 桜の精の癒しを受けた彼が、いつか転生を果たした時には。
 どうか、嗚呼、どうか。一花の傍に生まれますよう。
 恐み恐み、申し上げます……。

「都月くん、お待たせ」
「いえ、待ってませんよ!それじゃあ、行きましょうか」
 傍らに風の精霊様を浮かべて、木常野は笑む。
 チィが同意を示す様に鳴いた後、クロムもまた小さく微笑んでいた。

●一陽来復
 所詮、言い伝えに過ぎない。
 そんな風に断じる事は、きっと簡単だろう。
 墓地の管理者が言う様に、本当に届くかも分からないのだから。

 其れでも、真は信じたいと思った。
 天へと昇る煙が、思いを届けてくれると。
 一花への感謝も、謝罪も。そして、細やかな願いも。
 彼はじっと、燃えてゆく手紙を見つめていたが……ふと、猟兵達に視線を向ける。

『色々と、迷惑を掛けてしまったね』
 ――すまなかった、と。
 静かに呟く、真の身体は足元から少しずつ消え始めていた。
 此の場の猟兵達の誰かが、呼んでくれたのだろうか。
 桜の精の學徒兵達が集まり、今も真へ桜の癒やしを与え続けているのだ。

 一花へ、伝えたい事がある。
 其の執着を果たした為か、彼は凪の様な心地を覚えていた。
 ……ありがとう。本当に感謝しても、しきれないよ。
 猟兵達に深々と頭を下げて、感謝を伝えた後……彼は目を見開いた。

 ――貴方と過ごした時間、本当に幸せでした。
 ――ありがとう、一翔さん……いいえ、真さん、ね。

『あっ……一、花、さ……っ』
 あゝ、此れは幻聴か?
 或いは、桜が齎した小さな奇跡?
 微かな声は真だけではなく、猟兵達の耳にも届いていた様だ。
 ……ぽたり、ぽたり。彼の目から溢れる沢山の雫が、地面を濡らす。

 もしも、こんな俺でも転生が叶うならば。
 もう一度、貴女に会いたい。
 そして、赦されるならば。また、あの日の様に幻朧桜を二人で――。

 煙と桜花が、共に昇る。
 優しい風に乗せて、どこまでも高く。
 其処にはもう、真の姿は無い。
 だが……完全に姿が消える直前、彼は猟兵達へ微笑みかけていた。

 ぐしゃぐしゃに泣き笑う、『真』の顔で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月24日


挿絵イラスト