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我が鉄躰を、どうか『貴方』の掌へ(作者 月見月
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#UDCアース  #ロシア  #銃  #戦争モノ  #途中参加歓迎  #プレイング受付中 


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 ――ひゅるり、ひゅるりと。白い結晶混じりの風が原野を走り抜けてゆく。
 大地は穢れなき雪に覆い尽くされ、所々に走る間隙の内側には光の屈折によるものだろうか、蒼い輝きがうすぼんやりと浮かび上がっている。暦の上ではそろそろ寒さも和らいで良い頃合いだが、実際は濃密な冬の気配が満ち満ちていた。人々の手によって文明の火が灯されてから幾年月、この大地に置いては未だ自然が人間を凌駕いていると言って良い。
 故に、この地に生きる者たちが様々な意味で迷信深いのもある種当然かもしれなかった。臼に乗ったバーバヤガーを筆頭に、彼らは深い森、果て無き雪原、湖の水底に旧き脅威の残り香を感じ取っていたのだろう。それは危険を避ける術であり、同じ幻想を共有する事による連帯感の醸成を成してくれる。

 さて、では――それを翻って見るに。
                         雪原に一人佇む『ソレ』を。
            彼等ならばどう評するのだろうか。

 其れは酷く小柄な影だった。
 其れは黒のコサック帽と暗緑の軍装に身を包んでいた。
 其れは齢十に届くかどうかという少女であった。
 其れはまるで花嫁衣裳のようであった。
 其れは一つで在り、一人で在り、複数で在り、また大勢でも在った。

 魔女と評するには極めて幼く、人と見るには余りに冷たく、神と尊ぶには俗に過ぎる。
 だが、其れが確かに確固たる信仰を得ているのであれば……。

 ――やはり、神と形容すべきであろうか。
                   ――そう、望む望まざるを問わずに。


「Добрый день、ルゥナさんだよぉ! ちょっと遅くなったけど、新年明けましておめでとう! さてさて、お年玉ならぬ落とし弾という訳で、早速依頼の説明をしようかねぇ!」
 グリモアベースへと集結した猟兵たちを前に、ルゥナ・ユシュトリーチナはにこやかな笑みを浮かべつつそう口火を切った。彼女はぺらりと世界地図を広げると、ユーラシア大陸の大半を占める或る国家を指先でコツコツと叩く。
「今回の舞台はUDCアースがロシア連邦、その僻地に在るとある小村さね……そこで長年に渡り、住民たちによって信仰されているUDC存在の兆候が予知されてねぇ。今回はこの邪神の討伐をお願いしたい、って寸法だよ」
 今でこそマシになったものの、ロシアの前身となる連邦国家では共産主義の元、表向きは宗教が否定されていた。とは言え雪深く厳しい環境柄、その地に住まう人々の心には様々な伝承や迷信に対する畏怖が強く根付いている。このUDCも、そんな人々の信仰心を糧として動乱を越えて生き続けてきたのだろう。
「まぁ尤も? それは信仰心以上の代償……つまりは生贄の要求を伴う関係だ。仲間内の誰かを捧げるのならまだしも、場合によっては外部の人間を拉致したり騙して連れてきているらしくてねぇ。これはちょいと見過ごせないって訳なのだよ?」
 加えて厄介なことに、このUDCは封印されていた訳でも偶発的に召喚された訳でもない。百年以上に渡って信仰と生贄を得続けている『生きた』邪神である。その戦闘力や強大さは推して図るべきだろう。

「という訳で、正面からいきなり殴り込みをかけるのはおススメ出来ないねぇ……それに加えて、信者たちも馬鹿じゃない。表面上は普通のどこにでもある寒村を装っているし、まずは調査を行う必要があるだろうねぇ」
 信者たちは『祝祭』と呼ばれる特殊な儀式によって邪神と交流を行っている。故にそれが行われるまでは直接的な危害を加えてくることは無い。旅人なり観光客なりに扮して、村の実態を調査してゆけばUDC存在の詳細などを得る事も出来るだろう。
「ただねぇ……ちょっとばかし、気になる事があるんだよ。百年も信仰が続けばさ、儀式とか伝承の細々とした部分にどうしたって変化は免れない訳だ。それも結構大きな戦争だって経ているし、存外そういった出来事によって『現代風』になっている可能性も否めない。まぁ、具体的にどんな風にって聞かれれば明言は難しいけど……『銃』ってのが重要になってくるみたいだねぇ」
 詳細に関しては現地で要調査、という訳だ。そうして『祝祭』が始まれば、あとはUDC存在との戦闘へと移行する。
「信者たち自体は儀式の運行に注力しているから、メインの戦闘は邪神とその眷属が相手になるかねぇ。彼らに戦闘力はないし終わるまで放置していても問題は無いよ。UDCが倒されれば茫然自失になって、逃げる事すらしなくなるだろうしねぇ。後はUDC組織が引き継いでくれるさね」
 ともあれ、説明は以上となる。まだまだ寒さが厳しいが、彼の地のそれは世界でも指折りだ。防寒対策はしっかりしておくに限るだろう。
「という訳で、よろしく頼むよ~」
 そういってひらひらと手を振りながら、ルゥナは仲間たちを送り出すのであった。





第2章 集団戦 『灰色の軍勢』

POW ●ときは はやく すぎる
【腕時計】を向けた対象に、【時間の奪取による急激な疲労】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD ●ひかる ほしは きえる
【触れたものを塵に変える手のひら】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ ●たとえ だれもが のぞんでも
【奪った時間を煙草に変えて吸うこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【老化・劣化をもたらす煙】で攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※マスターより
 第二章断章につきましては本日中ないし18日夜に投下予定です。
 第一章ではこちらの不手際により早々に受付を締め切ってしまい申し訳ございません。最低限の情報は1章リプレイ内にて提示しておりますが、その他詳細についても断章中にて補足させて戴きます。
 参加をご検討されていた方は大変恐縮ですがそちらをご参照頂き、その上で参加しても良いと思って頂けましたら、プレイングお送りして貰えますと幸いです。
 どうぞよろしくお願い致します。
●Худой мир лучше доброй ссоры.
 ――さて、猟兵たちの活動によって明らかになった事実を整理すれば、概ね二つに大別することが出来る。
 まず一つ目は寒村に伝わる伝承について。この一帯には雪の娘とも称される存在『スネグーラチカ』に纏わる話が語り継がれているらしい。現在でこそクリスマス行事に登場する善き人物というイメージが流布しているが、それは飽くまでも近年になってから定着した新しいものだ。この村に伝わっているのはそれよりも旧い原型、それもこの村独自の内容である。
 曰く、雪像に命を吹き込まれた妖精。
 曰く、或る青年に想いを寄せた乙女。
 曰く、儚くも陽に溶けた冬陰の象徴。
 曰く、恋しさから人を連れ去る脅威。
 人魚姫や雪女を思わせる逸話だ。尤も、これらに何処まで真と偽が含まれているのかは定かではない。十中八九、村人たちの信奉する邪神の事を示しているのは間違いないと思われるが、それ故においそれと部外者へ全てを詳らかにする可能性は低いだろう。
 それらを繋ぎ合わせれば、か細い真相の糸を手繰り寄せる事も不可能ではないかもしれないが――二つ目の事実が、より事態の混迷さに拍車を掛けていたのである。


「……さて、これで外部からのお客人は全部かな? 本来であればもう少し数が居たのだがねぇ。逃げられたのは極めて残念だよ」
「尤も、ここから一番近い村までは軽く見積もって三十キロはある。しかも今は冬の真っただ中。着の身着のままで逃げ切れるほど甘くはない。大人しく残っていれば、少なくともかの乙女に看取られて逝けたものを」
 村の中央部、ぽっかりと開けた広場。其処へと引きずり出された猟兵たちを取り囲む村人の手には、武骨なシルエットの銃器が握られている。AK-47カラシニコフ小銃。二度目の大戦後まもなく開発されたそれは、驚異的な頑丈さと高い信頼性を誇る傑作品である。 
 しかし、それに伴う製造の安易さによって世界各国で密造され続け、遂には『小さな大量破壊兵器』と呼ばれる程の悪名を得てしまった暴力の象徴。二つ目の真実とは、この村もそうした密造拠点の一つであったという点だ。
 しかし、彼らは金儲けの為にこれを製造していた訳ではないらしい。全てはただ、崇拝する神へと捧げんがため。確かに、神格へ武具や宝物を捧げる行為は様々な宗教でも見られる。だが、凍てつく氷の少女と近代的な銃が何故結びついたのか。その真相は未だ不透明なままだ。
「まぁ良い。生贄は揃い、条件も整った。では、これより……『祝祭』を始めるとしよう」
 村長と思しき老爺が口火を切ると、村人たちが雄たけびと共に頭上目掛けて勢いよく銃を発砲し始める。硝煙の匂いがツンと鼻を突き、冷気に交じって灰色の煙が周囲に満ちてゆく。すると一陣の風が広場へ吹き込んだかと思うや、煙は幾つもの塊を形成していった。またそれと同時に、ちらちらと粉雪も舞い散り始める。
「かつては共に在りし者。いつかに捧げられし者。いずれその手を取りし者。雪の娘が懸想して、不壊の銃が求めしは、常に寄り添う誰かの手。されど汝の手にあらず。我を握るは何者也や……」
 銃声に交じって村人たちが紡ぐ言の葉。それは祈りの様な清らかさと、妄執を孕む汚濁が入り混じった輪唱。急速に異様な空気が満ちてゆく中、姿を現したのは灰色の衣服に身を包んだ無数の青年であった。
 ざっと一瞥しただけであるが、猟兵たちは本能的に直感する。彼らがかつて邪神へと捧げられた生贄、その成れの果てである事を。百年にも及ぶ儀式によって、その存在そのものが神の求める姿へと捻じ曲げられてしまったのだろう。
「雪の娘に新たなる伴侶を捧げよ! さすれば冬の寒さは遠のくだろう! 不壊の銃へ担い手を与えよ! されば我らに降りかかる災いは打ち払われるであろう!」
 老爺の叫びを受けて、村人たちは手にしていた銃器を灰色の軍勢へと放り投げた。すると彼らはそれを受け取るや否や、慣れた手つきで弾倉を取り付け、槓桿を引いて初弾を薬室へと送り込む。その銃口が向けられるのは当然、猟兵たちだ。
 村人の発言を聞く限り、武器と人間を捧げる見返りとして、冬の寒さや外敵から身を守る加護を得ていたと言うところだろう。

 斯くして、此処に祝祭の前段が幕を開けた。まず相対するは銃器を手にせし灰色の兵士たち。彼らを突破しないことには、目的の邪神まで辿り着くことなど出来はしない。
 さぁ、猟兵たちよ。取り囲む村人たちへと見せてやれ。
 百年変わることの無かった『祝祭』へ齎される、何よりも痛烈な予想外を。

※マスターより
 プレイング受付は若干間が開いてしまい恐縮ですが、22日(金)8:30から開始致します。
 第二章は『灰色の軍勢』との集団戦です。彼らは保有する異能に加え、武装としてAK-47を使用してきます。村人たちは『祝祭』の進行に専念しており、横やりなどの心配は不要です。
 天候は雪交じりの曇り空。戦場は村中央部の広場で、戦闘を行うのに支障がない程度の広さがあります。周囲には民家が立ち並んでいますので、足場や障害物として利用することも可能です。

 1章で得られる情報はリプレイと断章内に記載しておりますが、改めて取り纏めますと
・村人たちが信奉する存在は雪の娘『スネグーラチカ』。しかし語られた内容は不正確であり、かつ長い年月を経たことで何らかの変化が生じているらしい。
・村人たちはAK-47を密造しており、いつしか生贄に加えてそれも邪神へ捧げるようになりました。彼らの信仰が邪神に影響を齎したのか、それとも邪神の変化に村人側が合わせたのか、現時点では不明です。
・小屋から聞こえていた甲高い音は工作機械の稼働音、漂う異臭は使用する油や薬品によるものです。大きな倉庫は彼らが作り上げた銃器の保管場所でした。
・あばら家には猟兵たちとは別に、一般人の生贄たちが拘束されていました。1章の行動結果により彼らは既に解放され、村外に待機していたUDC組織によって保護されています。

 現在判明している情報と補足については以上となります。
 1章ではこちらの不注意でご迷惑をお掛け致しましたが、どうぞよろしくお願い致します。
フォルター・ユングフラウ
【古城】

【WIZ】

弾を込め、引金を引く
そんな単純な動作で、命を奪える
肉を裂く音も、手応えも感じず、返り血すらも浴びずにな
まさに、弱者の為の『手段』であろうよ

弱者の『手段』に合わせてやる理由も無いが…強者の余裕として、あえてやってやろう
黒の弔銃の発砲と同時、UCを発動
亡者の腕で操られた弾丸は、狙い違わず目標を穿つ─どうだ、ちょっとした『魔弾』であろう?

しかし、殉教の阻止か
件の邪神は、どうせ我等しか眼中に無かろうに
些か、慎重に過ぎる…いや、それが汝の性分であったな
我としては、派手な景色が楽しければ何でも良い
この黒の小瓶の中身、好きに使うが良い
愚かな邪神が、戦の狼火と勘違いして出てくるかもしれぬしな


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】

(弾から味方かばい、妖精乱れ撃ちスナイパー射撃で時計や煙草持つ手撃ち●武器落とし
操縦妖精で煙草と銃回収)

フォルター様
騎士を駆逐した銃の利点
そして同じ生産物でも『戦の代行者』たる私達戦機との違いは分かりますか?
是非は兎も角、弱者が容易に戦う力得る『手段』なのですよ

ましてあのUDCEの銃は…(世界知識)
皮肉な仮説ですが、儚き雪の精に捧ぐに良き象徴やもしれません

銃倉庫爆破の為
小瓶をありたけ頂けますか
(物資収納Sの手榴弾で破壊工作)


供物に手を出す愚か者は怒り買うが御伽噺のお約束
邪教徒への心理的制裁
神の制裁という名の殉教の阻止と此方への誘導
力削げれば僥倖という訳です

それに

派手な趣向がお好みでは?


●氷鋼の信仰に上がるは反撃の狼煙
『ただ、永久に消えぬ氷の様に……決して裏切らぬ伴侶の如く』
『積み上げ、積み上げ、積み上げて。真なる一を求め、瓦落多を重ね続けた』
 戦闘開始直後、まず先手を取ったのは灰色の兵士たちであった。彼らは投げ寄こされた銃器を構えるや、一斉にその引き金を引く。瞬間、立て続けに上がる発砲音と共に弾丸が吐き出され始めた。使用されている7.62x39mm弾は威力・貫通性能に長けている上、邪神の影響によるものかその殺傷力に更なる拍車が掛かっている。常人であれば一斉射で肉塊と化すであろう暴威である事は間違いない……が。
「製造されてから、早七十年近く。長年に渡って採用され続けている以上、それを支える長所があるのは当然でしょう。邪神の強化込みとは言え、旧式と侮る事は出来ません」
 如何な弾丸とはいえ、城壁の如き大盾を貫徹するのは些かばかり骨らしい。しかし、その背後からぬっと姿を見せたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、装甲表面に刻まれた傷や弾痕を見て敵戦力を上方修正する。一発二発は耐えられようと、これが百発千発と浴びせ掛けられれば無事では済まないだろう。
 彼は敵の様子を伺いながら、そっと背後へと声をかけた。
「……フォルター様。かつて戦場より騎士を駆逐した銃の利点。そして同じ生産物でも、『戦の代行者』たる私達ウォーマシンとの違いは分かりますか?」
「無論だとも。知識としては元より、周りを取り囲む有象無象共を見れば嫌が応にも理解出来てしまうというものだ」
 問いかけに応じたのは漆黒の装束に身を包んだ半魔半人の乙女。フォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)は先の銃撃に動じた様子もなく、視線をそのまま横へとスライドさせる。彼女の視界に映るのは見世物でも眺めるような表情を浮かべた老若男女と、彼らの手に握られし突撃銃。
「弾を込め、狙いを定め、引金を引く。そんな単純な動作で、命を奪える。肉を裂く音も、手応えも感じず、返り血すらも浴びずにな。あれでは命を奪ったという、負って然るべき感慨すらも得られまい。まさに、弱者の為の『手段』であろうよ」
「ええ、ご賢察の通りです。是非は兎も角として、あれらは弱者が容易に戦う力得る『手段』なのですよ」
 銃が剣や弓より優れている点は幾つもある。威力は勿論の事、種類によっては有効射程もキロ単位。同じ時間で攻撃を叩き込める回数・速度など比較にすらならない。だがそれ以上に優越している点を挙げるとすれば、その習熟の容易さであろう。目玉が一個、腕が一つに指一本。それだけあれば極論、銃は扱えてしまう。
 そして、それは大抵の人間に備わっているものだ。小さな幼子であろうと、年老いた老婆であろうと、荒事と無縁な淑女であろうと。手にした瞬間から、その者は他者を害せる『手段』を得るのだ。習得までに年単位を要する武術とは根本からして異なる。
「……騎士を自負する身としては、些か以上に複雑な心境か?」
「ええ、少しばかりは。装備しているにも関わらず今更何を、と思われるかもしれませんが……あの銃の来歴を考えますと、ね」
 相手の射線を大盾で巧みに切って背後の仲間を庇いながらも、一方で鋼騎士は電子頭脳内に収められた情報を再度掘り起こしていた。かつて、ある男がこの銃を作り上げた理由は何だったのか。いまこの銃を誰が手にし、何の為に求め、そして何処へと向けているのか。華々しき御伽噺とは違い、戦場の現実はいつだって赤い血に塗れている。
「……皮肉な仮説ですが、儚き雪の精に捧ぐには良き象徴やもしれません」
「感傷に浸るのはいいが、我らまで諸共に供されては敵わん。わざわざ弱者の『手段』に合わせてやる理由も無いが……強者の余裕として、あえてやってやろう」
 黒き女帝は射撃が途切れた瞬間を狙って大盾の後ろより躍り出るや、自らもまた銃器を引き抜く。それは流麗なゴシック意匠の細工が施された回転式拳銃だった。撃鉄を起こし、押し込まれた引き金によって弾丸が放たれる。
 と、それと同時に白き雪原へ幾つもの黒き線が走ってゆく。それらはフォルターの足元より湧き出た、夥しい数の腐り爛れた腕だ。それらは飛翔する弾丸を指先で弾くや、軌道を逸らすことによって回避を試みた相手へ攻撃に弾丸を命中させる。利き腕を貫かれ、灰色の青年は堪らず銃器を取り落とした。
「亡者の腕で操られた弾丸は、狙い違わず目標を穿つ─―どうだ、ちょっとした『魔弾』であろう? 手数が些か足りぬが、得物の現地調達も戦の華だ。どれ、我もソレの出来を試してやろう」
 虚空を引っ搔くように指先を戦慄かせるや、腕の群れは敵が手放した銃器を引っ掴む。そのまま術者の命に従い、当たるを幸いにと弾丸をばら撒き始めた。無論、他の腕による追尾付きだ。
『時は流れ、打ち捨てられ、されど巻き戻ることはなく』
『なれば、ただ過ぎ去ることを望むのみ。来ることなき春を願いながら』
 流石にそれらは無視できなかったのだろう。灰色の軍勢は射撃の合間を縫って腕時計を差し向け、或いは熱を帯びた銃身で灯した煙草を吹かし、吐いた煙を硝煙へと紛れ込ませてゆく。しかし、黒き女帝の呼び出せし腕は既に死したるモノ。死者にとって時間とは流れるのではなく静止するものだ。故に、彼らの繰り出す異能との相性は控えめに見ても良いとは言えなかった。
「煙草を吸いながら戦闘とは感心致しませんね。夜陰や降雪の中でも、存外火や煙と言うのは目立ちますので……物は次いでです、そちらも回収させて頂きましょう」
 更には頭上を飛び回る小さな影が、銃器を掠め取っては腕の群れへと投げ渡してゆく。その正体はトリテレイアの操る妖精型の自律式ドローンロボットだ。それは敵の武装を奪う傍ら、頭部に内蔵されたレーザーによって煙草を焼き切り、零れ落ちた吸殻を目敏く回収する。
 そうして敵の動きを牽制し少しばかりの余裕が生まれると、トリテレイアはちらりと戦場外へと視線を向けた。その先にあるのは製造された銃器が収められている倉庫。己の立ち位置や周辺の地形を手早く把握しつつ、彼は銃撃を続けている友へと手早く耳打ちする。
「すみません、少しばかりお願いがございます」
「どうした、言ってみよ。見ての通りこちらも少しばかり忙しくてな、手短に頼む」
「銃倉庫爆破の為、お持ちの小瓶をありたけ頂けますか?」
 そう告げられ、フォルターもまた横目で一つ頭高い建物を視界へと捉える。成程、確かにあれならば此処からでも射線は通るだろう。しかし、何故わざわざこのタイミングで。そう女帝が目線で問いかけると、鋼騎士は格納スペースより手榴弾を取り出しながら理由を述べてゆく。
「供物に手を出す愚か者は怒り買うが御伽噺のお約束です。邪教徒への心理的制裁に加え、神の裁きという名の殉教の阻止と此方への意識誘導を狙います。またどうにも、アレらを残したままなのは不味い気がしまして……あわよくば、力削げれば僥倖という訳です」
「ふむ。殉教の阻止、か。件の邪神は、どうせ我等しか眼中に無かろうに。信者連中の心配までしてやるなど、些か慎重に過ぎる……いや、それが汝の性分であったな」
「ええ、ご迷惑をお掛けします。それと、強いてもう一つ利点を付け加えるならば」
 フッと、フォルターの口元にくつりと笑みが浮かぶ。それを見たトリテレイアは思い出したかのように、少しお道化た口調で言葉を続けた。
「……フォルター様としても、派手な趣向の方がお好みでは?」
「まぁ、違いないがな。我としては派手な景色が楽しければ何でも良い」
 片手で射撃を継続しつつ、女帝は鋼騎士へと数本の小瓶を放って寄こす。ぞんざいな扱いに見えるが、それはこの理想主義の戦機に対する信頼の裏返しでもある。
「この黒の小瓶の中身、好きに使うが良い。愚かな邪神が、戦の狼火と勘違いして出てくるかもしれぬしな」
「ご協力感謝します。それでは精々、ご期待に沿えるよう努力致しましょう!」
 手元に爆発物を抱いているのだ、余り時間は掛けるべきではないだろう。それを察した仲間が敵を押し返すべく攻勢へと転じる中、トリテレイアは脚部関節を全力稼働。内臓バーニアで推力を得ながら頭上高くへと飛び上がり、手にした手榴弾と小瓶を投擲する。
 それらは村人たちの頭上を飛び越え、放物線を描きながら倉庫へと吸い込まれてゆき、そして……。
「百年にも渡る悪しき信仰を打ち破るために……今こそ、反撃の狼煙を上げる時です!」
 ――凄まじい轟音と衝撃波を伴いながら紅蓮の焔が天高く舞い上がり、吹き荒ぶ氷風を打ち消してゆくのであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

レナ・ヴァレンタイン
やれやれ、このまま待ちぼうけを喰らうかと
潜伏活動も楽ではないね

我が「劇団員」たちにはカウボーイ、野盗、娼婦、保安官、原始的な槍を掲げるインディアン…場違いな西部劇の仮装をさせて襲撃
武器も身体も「虚構」なので当たらんが、その放つ音と映る姿は本物だ
眼を盗め、耳を奪え、臭いを偽れ
撃たれる者、時を奪われ倒れ伏す者、古いライフルを手に反撃する者、ナイフを手に襲い掛かる者…様々な被害者と加害者を演じて奴らを虚構に躍らせろ


私は敵の混乱に乗じて暗殺行動
喉にナイフを突き刺し、銃撃に自身の銃声を紛れ込ませて脳天を穿ち、劇団員の動きに合わせてライフルを放つ

卑怯卑劣に立ち回らせてもらうぞ
さあ、ショータイムだ


●慌てふためく観客ども、それ見て嗤うは劇団員
「はぁ……っ!? 爆発、した? いや待て、あそこって、確か倉庫が……!?」
「собака! あの騎士崩れめ、半年分の成果を吹き飛ばしやがった!」
 吹き荒ぶ白を消し飛ばす、どこまでも暴力的な赤。完成した銃を仕舞っていた倉庫には当然、弾薬や油の類も収められている。そこに引火すれば当然、引き起こされるのは凄まじいまでの爆発だ。村人たちはそれまでの物見遊山気分から一転、冷や水を浴びせ掛けられたかの様に浮足立つ。呆然とする者、怒りを露わにする者、神の眷属がどう動くか恐れる者などその反応は様々。
 しかし、まだ彼らの中にそこまでの深刻さはない。生贄の苦し紛れが偶々悪い方向へと転がっただけ――そんな考えが根底に存在している。
「やれやれ……このまま待ちぼうけを喰らうかと思ったぞ。まったく、潜伏活動も楽ではないね。ただ、開始の合図としては悪くない」
 そんな混乱と楽観を見据え、スッと目を細める者が居た。それはこのタイミングまで村人との接触を断ち、裏方での情報収集に徹し続けてきたレナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)だ。彼女は口元へうっすらと笑みを浮かべながら、今この瞬間こそが己の打って出るタイミングだと直感する。
「予想外はあっても、最終的には何とかなるだろう。だってこれまでも上手くいっていたのだから……大方、そんなところか。残念だが、そんな筋書きは今日までだ」
 このまま時間を置けば、いずれ混乱も収まってしまうだろう。そうはさせまいと、レナはパチリとひとつ指を鳴らす。現実から目を逸らし、神という都合の良い幻想に浸り続けた者たちには、同じ“虚構”の存在がお似合いだろうと考えながら。
「“彼はなんて言ったと思う?”“答えはこう、『ここは新世界だ』『ここでは、なりたい自分になれる』”。幕開けの時間だ、お前が信じるものだけを見せてやる。そのまま墜ちろ」
 ――さぁ、せいぜい楽しめ。
 瞬間、一発の銃声が広場に鳴り響く。何事かと村人たちがそちらへ目を向けると、そこに居たのは『ピースメーカー』を手にしたガンマン。鬨の声を上げて突っ込んで来るアウトローの背後からはカウボーイ、野盗、娼婦、保安官、原始的な槍を掲げるインディアンと言った、まさに西部劇に登場する人物たちが大挙して押し寄せていたのである。
「な、なんだコイツら! 部外者は逃げたやつら以外、広場へ全員集めたはずだぞ!?」
「何であれさっさと撃ち殺して……駄目だ、このままじゃ他の連中も巻き込んじまう!」
 村人たちも咄嗟に応戦しようと銃を構えるものの、下手に密集していたのが裏目に出た。同士討ちを躊躇したところを薙ぎ倒され、アウトローたちの侵入を許してしまう。レナもまた彼らに乗じて広場へと雪崩込み、灰色の軍勢と交戦を開始する。この突然の乱入者は全て、彼女の仕込みだ。こんな時を想定して伏せさせていた『虚構』を操る劇団員たち。
(武器も身体も『虚構』なので当たらんが、その放つ音と映る姿は本物だ。リアルではないが、リアリティは十二分。例え気付いたとしても、そう無視は出来ないだろう)
 彼らは飽くまでも舞台に立つ存在。刃も銃弾も全てがイミテーション。しかし、それ以外は限りなく本物に近い。無論、交戦を続ければいずれ相手もそれに気づくだろうが……そこに一つでも本物が混じれば、さてどうなるか。
(眼を盗め、耳を奪え、臭いを偽れ。撃たれる者、時を奪われ倒れ伏す者、古いライフルを手に反撃する者、ナイフを手に襲い掛かる者……様々な被害者と加害者を演じて、奴らを虚構に躍らせろ。神も眷属も信者も、纏めて騙して引きずり込め)
 レバーアクションライフルを構えた者が居れば、それに合わせてリボルバーを抜き放ち脳天を吹き飛ばす。ボウイナイフを振りかざす者が居れば、別方向から目標へと忍び寄り黒き短剣で喉を掻き切る。敵群が弾丸をばら撒き、或いは腕時計を翳してくれば、身を翻して群衆の中へ。レナは巧みに虚実を織り交ぜながら、周囲全てを疑心暗鬼の渦へと叩き落してゆく。
(これまで数え切れぬほどの他人を騙して、神へと捧げてきたのだろう? なら、こちらも卑怯卑劣に立ち回らせてもらうぞ。さあ……)
 ――ショータイムだ。
 そうして、探偵にして復讐者は村人たちが積み重ねた因果へ報いるように、灰色の軍勢を着実に駆逐してゆくのであった。
成功 🔵🔵🔴

ブラミエ・トゥカーズ
銃は避けない。鉛玉では退治できない。
ただし、日光で焦げている。化粧品で誤魔化しているが焦げ臭い。
従者に急ぎ日傘を用意させる。

言の葉は式で、式は枷を作る。
その枷が邪神であるなら、枷の中身は何であろうな。

教えてはくれぬかな?
最初の引き金は誰で、誰を向けてであったかを。

自身に【攻撃が命中した対象】に返り血を浴びせ、
UCを感染させる。
血球に感染するウィルスも自身であるため、血球と共に【老化・劣化】を発生させる。
感染した者に幻覚と渇きを与え吸血鬼の様に仲間割れを誘発させる。
ワクチン接種している様な村人には効果はない。
山奥の村なので期待薄だが。

日光の下なのでどうしても機嫌が悪い。

アドリブアレンジ絡み歓迎


●白雪を踏むは赤黒き死
「何なんだ、これは……こんな事、今までなかったぞ!?」
「案ずるな。やられた眷属はごく一部、それにまだ乙女すら姿をお見せになっていない。どのみち、結果は変わらんよ」
 『祝祭』開始早々に発生した倉庫の爆破。そして、その衝撃も収まらぬままに乱入してきたアウトロー軍団。立て続けに発生した出来事により、村人たちの間に動揺が広がっていた。今年の儀式は何かが違うと感じる一方、しかして灰色の軍勢は未だに大半が健在である。まだ大丈夫、そう己に言い聞かせる信者たちの眼前で――。
「……不快だな。雪交じりとは言え、昼であることに変わりはないか。そろそろ化粧程度では誤魔化しが聞かなくなる。従者よ、急ぎ傘を持て」
 焦げ付く肌を上着で隠しつつ忌々しそうに空を睨みながら、ブラミエが昂然とした足取りで広場へと歩み出る。主の命を受けて従僕妖怪が歩み寄ると、柄の長い傘を広げて恭しく差し出す。それは戦場の粗雑さと余りにも対照的な振舞だったが、それでいて他者へ否を挟ませぬ超然さを帯びていた。村人たちが気圧されている中、彼女は周囲を取り囲む者たちを睥睨する。
「言の葉は式で、式は枷を作る。極東では言霊、洋の西であればプネウマとも形容される、言葉に込められた力。さて、その枷が邪神であるなら……枷の中身は何であろうな」
 ――教えてはくれぬかな? 最初の引き金は誰で、銃口は誰に向けてであったかを。
 状況がどうなろうとも、彼女の関心がブレることは無かった。即ち『雪の娘』がどの様な存在であり、何故このように変貌したのか。七十年、人が生まれて死ぬには十分すぎる時間だ。されどまだ知る者は居るだろうと、吸血鬼は突きつける様に視線を巡らせる。
 若き者は首を振り、或いは目を逸らす。年老いた者も多くは眉根を顰めるのみであったが、最年長と思しき村長だけは違った。目を見開きながら、喘ぐように言葉を零す。
「わ、儂らは悪くない。全ては、時代が……あの鉄十字どもが、来さえ、しなければ」
 きっと我知らずに漏れてしまったのだろう。それ故に言葉の内容は要領を得ていない。更なる詳細を問い質さんと、ブラミエが口を開きかけた……その時。
『……“首吊り自殺した人の家ではロープの話をするべからず”』
『余計なお喋り、野暮な好奇心こそが猫を殺すものである』
 問答を遮るように灰色の軍勢が一斉に発砲を始め、猟兵を蜂の巣にしていった。我に返った村長はハッと口を押えつつ後ずさり、ブラミエは鮮血をまき散らしながらぐらりと体を傾がせる。彼女はポタポタと白雪に赤い点線を描きながら、邪神の眷属たちを睨め付けてゆく。
「生憎、白木の杭でも無ければ退治出来ぬ体質でな。しかし、なるほど。やはり軽々しくは知られたくない類の話か。貴様らが居るとおちおち話も聞けん……だが、これはこれで好都合だ」
 吸血鬼の再生力であれば傷を塞ぐのも容易いが、ブラミエは敢えてそうしなかった。流れ出る血をそっと掌で掬い取ると、まるで手袋を投げるように相手へと叩きつける。
「如何な寒村とは言え、我自身も随分と古い存在だ。ワクチンなり抗体なりは持ち合わせていよう。まぁ、無ければ無いでその時だが……ともあれ、同じく旧き者である貴様らは果たしてどうかな」
 舞い散る血飛沫が灰色の装束へと触れた瞬間、そこを起点として一気に全身が赤黒く染め上げられる。途端に敵群は倒れこむや、悶え苦しみながら地面をのたうち回り始めた。これこそが彼女のもう一つの側面。現在では既に根絶されてしまった、致死性伝染病としての本領である。隔絶されているとは言え現代医療の恩恵を受けている村人たちは兎も角、眷属の元となったのは数十年前の生贄たちだ。時代的にもこうした病に対する免疫が低く、故にこそブラミエはその猛威を十全に発揮することが出来た。
「ほう、我に侵されてもなお抵抗を選ぶか。植え付けられたものだろうとは言え、その気概は称賛に値する」
 にも拘らず、相手は強烈な貧血感に蝕まれながらも銃の照準を合わせ、口元に煙草を運んで紫煙を呼気と共に吹き付けてくる。弾丸が体を貫き、傷口から入り込んだ煙によって老化が促進されるのを感じながらも、しかして吸血鬼に怯む様子はなかった。
「……だが、言ったはずだぞ。病そのものが我であると。本体が老化すれば、ウィルスもまた取り付いた血球と共に劣化する。そうなるとどうなるのか、身を以て知ると良い」
 血球の急激な減少とは即ち、全身へと運び込まれる酸素量の低下を示す。酸素が減少すれば代謝によってエネルギーが生成されなくなり、熱量が不足すれば脳はたちまち機能不全へと陥る。それによって引き起こされるのは……悍ましい幻覚と強烈な飢餓感である。
「全く、銃撃によって日傘に穴が開いてしまったな。取り急ぎは適当な布を宛がって急場を凌ぐより他になし、か」
 そうして眼前で繰り広げられる同士討ちの地獄絵図を横目に、ブラミエは弾痕の穿たれた日傘を見上げて不機嫌そうに嘆息するのであった。
成功 🔵🔵🔴