0から00へ、至るは000
●精神侵略
「あなたも、わたしとひとつになりませんか? 人の光は尊きもの。1では有限。しかし0では無。けれど、00は無限。そして000の彼方、無限光へと至りましょう」
その声は静かに。
けれど、スペースシップワールドの全てを飲み込む唯一人の欲望によって放たれた恐るべきユーベルコードであった。
強大すぎる力。
全てを取り込み、己と為す『精神侵略』。
それは過去に消えた古のサイキッカー――『トゥモール・ハンブラ』のユーベルコード。彼女はこれまでも様々な知的生命体を強制、合意を問わずに取り込み融合してきた。
数多の生命体の精神と融合しても確固たる意志を保ち続けているのは、その強烈なる個としてのサイキック在りきであろう。
「人の光は無限出会っても、人の時間は有限。であれば、人の光と時間を合わせ、無限へと至りましょう。そして共に超えましょう。あの虹の彼方に」
古のサイキッカー……否、今はもう猟書家『トゥモール・ハンブラ』である。
彼女の声がスペースシップワールドの宇宙船の一つに響き渡る。
その声に抗う術はない。人々は残らず突如として崩れ落ち、寝息を立て始める。全ての営みが停止し、宇宙船に静寂が訪れる。
「ええ、そういたしましょう。わたしと一つになれば、何も心配することはないのです。恐れも苦しみも哀しみも全てがわたしそのもの。ええ、喜びもまた同じ」
満足気に猟書家『トゥモール・ハンブラ』は微笑む。
彼女のユーベルコード『精神侵略』は防ぐことはできない。
眠りの力とも呼ばれるユーベルコードは彼女以外の全てを眠りに落とす。それは猟兵であっても例外ではない。
あらゆる抵抗が無意味である。
「――……どういう、ことなの……?」
だが、あらゆるものには例外が存在する。
不幸中の幸い。
この宇宙船には、古より連綿と紡がれてきた『トゥモール・ハンブラ』の血脈が存在していた。
彼女の名は『レミシオン』。この宇宙船に住まうサイキッカーである。だが、『トゥモール・ハンブラ』のユーベルコードを逃れる理由には成っていない。
「……あなたは。そうですか、わたしの血族。喜ばしいことですが、同時に悲しいことですね。あなたにはわたしのユーベルコードが利かない。わたしとひとつになることはできない」
彼女にはわかっていた。唯一の例外。
己の血脈は『精神侵略』が通用しない。だからこそ、その例外たる血脈を皆殺しにする。そうすれば、『トゥモール・ハンブラ』の能力は完成する。
故に悲しいという感情すら浮かべぬままに猟書家『トゥモール・ハンブラ』は彼女の血脈の末裔たるサイキッカー『レミシオン』を殺害しようと力を振るうのだった――。
●腫瘍と寛解
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はスペースシップワールドに現れた猟書家『トゥモール・ハンブラ』が現れた宇宙船を急ぎ、救っていただきたいのです」
事態は一刻を争うようであった。
ナイアルテはいつものように猟兵たちに頭を下げることを忘れていた。それ故に集まった猟兵たちも逼迫した事態を飲み込んだのだ。
「猟書家『トゥモール・ハンブラ』。彼女の持つ強大なユーベルコード『精神侵略』は彼女以外の全ての人々を強制的に眠りに落とし、精神を取り込み融合するものです。それは皆さん猟兵であっても例外ではなく、防ぐことはできません」
ある意味で最強の力である。
争う力の強弱は如何ようにもできよう。だが、眠りに落とし、精神を取り込み融合するユーベルコードは防ぐことはできない。
「ですが、この宇宙船には嘗ての『トゥモール・ハンブラ』の血を引く、遠い遠い子孫がいるのです。彼女のユーベルコードに対する例外にしてワイルドカード。それがサイキッカー『レミシオン』さんなのです」
どうやら完璧に見えた『トゥモール・ハンブラ』のユーベルコードは同じ血を引く子孫には通用しないようなのだ。
だが、それだけでは猟兵たちも駆けつけた端から眠らされてしまうのではないかという懸念がある。
それに応えるようにナイアルテが微笑む。
事件の解決への糸口が見えたことへの余裕が生まれたのだろう。
「はい、確かにそのままであれば皆さんは『精神侵略』によって眠らされてしまうことでしょう。ですが、彼女の子孫たる『レミシオン』さんの周囲に集まり、その後も離れないようにすれば『精神侵略』の力の影響を受けることはありません」
なるほど、それでワイルドカードと表現したのかと得心が行く。
だが、今度は問題が発生する。そう、『レミシオン』の周囲にいれば『精神侵略』の影響は受けない。
しかし、『レミシオン』の傍を猟兵は離れることができなくなる。
「そのとおりです。そして、『トゥモール・ハンブラ』は皆さんが到着すると即座に逃走しようとするのです」
彼女の目的はユーベルコード『精神侵略』の力を完璧なものにすること。つまり『レミシオン』の抹殺だ。
猟兵と戦うことではない。彼女はそのまま宇宙船の中に存在する攻撃機能をハッキングし次々と開放して猟兵達を足止めしようとするだろう。
「ですが、『レミシオン』さんは恐らく彼女の中に流れる『トゥモール・ハンブラ』の血がそうさせるのでしょう、彼女の位置をおおまかですが補足できています」
彼女を連れ、『トゥモール・ハンブラ』を討つ。
そうすれば、宇宙船の中で眠らされた人々も時期に目を覚ますことになるだろう。
「護衛対象と共に倒さなければならない対象を追う……大変に難しいことであるとは思います。ですが、『トゥモール・ハンブラ』の目的を阻まなければ、スペースシップワールドにおいて『帝国継承軍』の力は増すばかりです」
どうかお願いいたします、とナイアルテは漸くに頭を下げ、猟兵たちを転移させるのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はスペースシップワールドにおける猟書家との戦いになります。舞台はとある宇宙船です。人々は猟書家『トゥモール・ハンブラ』によって眠らされています。
彼等を救うために逃走する彼女を追い、打倒するシナリオになります。
※このシナリオは二章構成のシナリオです。
●第一章
冒険です。
猟書家『トゥモール・ハンブラ』が宇宙船内部の攻撃機能を次々と開放しながら、船内を逃げ回ります。
彼女は戦闘を行う意志はなく、子孫のサイキッカー『レミシオン』の抹殺だけが目的です。故に逃走しようとしますが、『レミシオン』は超感覚によって『トゥモール・ハンブラ』の位置が判ります。
皆さんは『レミシオン』から離れてしまうと『精神侵略』の影響を受けてしまい眠りに落ちてしまいますので、彼女の傍から離れないようにしながら襲い来る攻撃機能から彼女を守り、そして『トゥモール・ハンブラ』を追わねばなりません。
●第二章
ボス戦です。
追い詰めた猟書家『トゥモール・ハンブラ』を打倒しましょう。
彼女は猟兵を見て逃走していますが、その力は強大そのものです。搦手と他者を圧倒する力を兼ね備えた存在です。
これを打倒しない限り、眠りに落とされた宇宙船の人々は目覚めることはありません。
※プレイングボーナス(全章共通)……サイキッカーから離れない(そこそこ戦えますが、強くはありません)
それでは『帝国継承軍』の力を削ぐために猟書家『トゥモール・ハンブラ』を追い、眠りに落とされた人々を救うための戦いに身を投じる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『艦内追跡戦』
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POW : 子孫サイキッカーを身を挺して守る
SPD : 乗物なども利用し、子孫サイキッカーと共に素早く幹部を追う
WIZ : 警備機能などにアクセスし、幹部の逃げ道を塞ぐ
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
宇宙船の中に住まう人々の全てが突如として眠りに落ちた時、サイキッカーである『レミシオン』は戸惑っていた。
ついさっきまで楽しげに話をしていた友人たちも、通を歩いていた人々もあらゆる人々が気を失ったかのように眠ってしまったのだ。
「……これは、一体……それにこの超感覚……何者かが、其処にいるの?」
彼女は猟書家『トゥモール・ハンブラ』の血脈。
古のサイキッカーである『トゥモール・ハンブラ』の子孫である。この攻撃とも言うベきユーベルコード『精神侵略』が利かぬ例外。
「悲しいことです。これはとても。ですがわたしのユーベルコードを完成させるためには例外たるあなたを生かしてはいけない。枝葉は払わなければならない」
目の前のサイキッカーが凄まじい力を持った存在であると『レミシオン』は自覚していた。同時に彼女が感じていた超感覚、それを刺激する存在であるとも。
「貴方がみんなを眠りに……!」
「ええ、ですが最早あなたには関係のないこと……死して無限光の一部になることはできませんが、礎になることを喜ぶべきです」
猟書家『トゥモール・ハンブラ』が手をかざす。
迸るサイキックが『レミシオン』の首をつかみ、その細首をねじ切ろとした瞬間、次々と転移してきた猟兵達が、それを阻む。
「――……猟兵」
その姿を認めた瞬間、猟書家『トゥモール・ハンブラ』は踵を返して宙を舞い、宇宙船の中を疾駆し逃走する。
それはあまりにも鮮やかな撤退であった。
だが、彼女を倒さぬことには、宇宙船の中でユーベルコード『精神侵略』を受けた人々は眠りから目覚めることはない。
次々と開放されていく侵入者迎撃用の宇宙船の内部兵器たち。
銃火器は勿論、トラップや煙幕、あらゆるものが作動するだろう。そうまでしても『トゥモール・ハンブラ』は逃走しようとしている。
「わかる……あの人がいる方向が……! 私、いかなきゃ……!」
『レミシオン』は血脈に連なる子孫であるがゆえに超感覚によって猟書家『トゥモール・ハンブラ』の位置がわかるのだ。
彼女の周囲にいなければ猟兵は眠りに落ちてしまう。
それ故に彼女の超感覚と『精神侵略』に抗う力を借りなければならない。つまるところ、宇宙船の迎撃用の兵器たちから彼女を守りながら、猟書家『トゥモール・ハンブラ』を追わなければならないのだ。
だが、猟書家『トゥモール・ハンブラ』は逃げの一手である。
猟兵に補足されては彼女の目的――そう、『己の子孫の抹殺』と『ユーベルコードの完成』が危うい。
だからこそ、今逃げる。
彼女は武人でもなんでもない。ただ、全てに、無限光に至ろうとするためだけに過去の化身として蘇った欲望の権化なのだから――。
小鳥田・古都子
何言ってるのかよく分かんないね。0/0は無限とかそういう話?
とにかく、悪の超能力者が世界征服を企んでる、って事で良いよね。だったらあたしが何とかしないと。
……あ、ご先祖様を悪く言ってごめんね。でも、こらしめてあげないと。一緒に頑張ろう。
レミシオンさんの前に立って攻撃から【庇い】ながら案内に沿って進みます。
【千里眼】を使います。頭上に浮かんだ不可視の眼球が周囲を透視し【情報収集】。攻撃装置の位置を見抜きます。
起動される前に【肉体改造】された反射神経での【早業】で「内蔵武器」を使用。【先制攻撃】【破壊工作】。両腕に仕込まれたマシンガンと、左目から発射されるレーザービームで武器を沈黙させて行きます。
人の心の光が無限に至る力を秘めたものであるのならば、人は何処へと向かうのであろうか。
古のサイキッカー『トゥーモル・ハンブラ』はあらゆる知的生命体の精神を己に取り込み融合することに寄って力を増した存在である。
0は無。
それは言うまでもないことである。無いということが在るという言葉から生まれ、00は無限へと変わる。
「そして、000は無限光へ。わたし『達』は、その虹の彼方へと向かわなければならないのです。それが生命体の行き着く先」
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は、転移してきた猟兵、小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)へと言い放つと逃走を開始する。
即座に目的を切り替えたのだ。
本来であればオブリビオンと猟兵は滅ぼし合う存在。どこまで行っても戦う他ない。だが、彼女は逃げの一手を選択した。
今此処で猟兵と戦う理由がないのだ。彼女の目的は己の血族、その子孫の抹殺である。彼女の持つユーベルコード『精神侵略』の力が及ばぬ例外を取り除いてからでも猟兵の相手をするのは遅くはない。
「何言ってるのかよくわかんないね。0/0は無限とかそういう話?」
古都子は首をかしげる。
オブリビオンとなった過去の存在は、その存在自体を捻じ曲げられている。かつて抱いた高潔なる志でさえ、過去の前には歪み、今を生きる人々を傷つける。
「とにかく、悪の超能力者が世界征服を企んでる、って事で良いよね。だったら――」
自分がなんとかしなければならない。
脳の一部以外は全て機械。サイボーグである彼女は人間にも怪人にもなりきることはできない。
ならば、何になればいい。それはたった一つの答えであった。そう、『正義の味方』になるしかないのだ。
彼女の体に宿った力であれば、それができる。
「あたしが何とかしないと。……あ、ご先祖様を悪く言ってごめんね。でも、こらしめてあげないと」
そう言って古都子は、この宇宙船においてたった一人の例外にして猟書家『トゥーモル・ハンブラ』を打倒する鍵であるサイキッカーの少女『レミシオン』へと手をのばす。
「いいえ。こんな、一方的に人を眠らせてしまうなんてやり方許せるわけがない。みんなを救うために私の力が必要なら、私も戦う!」
彼女の瞳は猟書家『トゥーモル・ハンブラ』とは違う輝きを放っていた。そこにあったのは義憤に燃える輝きであった。
それに古都子は頷き手を伸ばす。
「一緒に頑張ろう――!」
古都子の瞳がユーベルコードに輝く。
それは彼女の頭上に現れた第三の目である。人はそれを千里眼(クレアボヤンス)と呼ぶ。
彼女の視界にリンクしたユーベルコードの輝きが、『トゥーモル・ハンブラ』の逃げ込んだ先を見通す。
まだ背は終えている。それに加えて『レミシオン』の超感覚があれば、この先も問題なく進むことができるだろう。
古都子は『レミシオン』を庇いながら宇宙船の中を進む。
「まだ大丈夫……そこまで離されていない。けど、迎撃システムが働いている……!」
「宇宙船の迎撃システム……侵入者用の武器ってことね……でもさ!」
古都子の腕が跳ね上がる。
腕に仕込まれていたマシンガンが展開され、一瞬でこちらを狙った迎撃用の銃火器を沈黙させる。
それは目にも留まらぬ早業であった。
「す、すごい……」
『レミシオン』にとっては何をしたのかさえわからぬ出来事であったことだろう。だが、古都子は平然と彼女と『レミシオン』を狙う迎撃システムを次々と沈黙させていく。
腕に仕込まれたマシンガンだけではない。左目から放たれるレーザーさえも彼女の体に内蔵された火器である。
「言ったでしょう、こらしめてあげないとって。レミシオンさんのことはあたしが守るから、超感覚であいつを逃さないようにあたしたちを導いて」
彼女の第三の目が輝く。
それはどれだけ迎撃システムに寄って不意をつこうとも、次々と罠を看破し、ワイルドカードたる『レミシオン』を護り続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神樹・鐵火
過去の存在である彼女が未来の子孫を手にかけたら、子孫に連なる彼女の歴史が否定され、結局彼女が居た事実も消えそうな気がするのだが...
オブリビオンは本当に本人かどうか実証が持てぬ
事実が改変され、歪んでいる時点で本人と言い難いと思うがな
なら未来を消すのに躊躇がないのも分からんでもない
なぁ、レミシオン殿?
龍拳をエネルギー体に開放、レミシオンに纏わせ攻撃を受け流す障壁とする
戦女神の羽衣に鋭拳を纏わせ鞭とし(魔力溜め)
これを攻撃装置に向けて蛮神乱舞で高速で振り回し叩きつけ、破壊する
羽衣が届かぬ位置にある攻撃装置は霊拳の波動弾で破壊する(衝撃波)
時間は過去へと排出されるが故に前に進んでいく。
排出された過去は骸の海にて集積し、それが滲み出たものが過去の化身即ちオブリビオンである。
オブリビオンは己の欲望のままに振る舞うことによって現在に現れ、未来という可能性を食いつぶす。そうすることによって世界は滅ぶのだ。
猟兵はいわば、世界の悲鳴に応える者である。
「過去の存在である彼女が未来の子孫を手にかけたら、子孫に連なる彼女の歴史が否定され、結局彼女が居た事実が消えそうな気がするのだが……」
神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)は神たる身である。彼女が共に行動するサイキッカー『レミシオン』は猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の血脈の子孫である。
彼女の放つユーベルコード『精神侵略』はあらゆる生命体を眠りへと落とす。
そうすることによって彼女はこれまで生命体を取り込み、融合してきた。それは恐るべきユーベルコードである。
その力の前では猟兵とて眠りに抗うすべはなく、深き眠りに落とされるほか無い。
だが、『精神侵略』に唯一の例外がある。
それが『トゥーモル・ハンブラ』の子孫である『レミシオン』である。彼女の傍にいる時だけ猟兵は『精神侵略』の影響を受けないのだ。
「オブリビオンは本当に本人かどうか実証が持てぬ。事実が改変され、歪んでいる時点で本人と言い難いと思うがな……」
次々と鐵火と『レミシオン』を襲う宇宙船の迎撃システムによる火器。
それら尽くを拳に纏う宝珠状に圧縮し、結晶化した竜拳をエネルギー体に開放し、『レミシオン』の体へとまとわせることによって彼女を護る。
「すごい力の奔流……これ、あなたが?」
「ああ、オブリビオン事態の攻撃から守るには心もとないかもしれないが、この宇宙船の迎撃システムの火器からは護ることは可能だろう」
だが、それでは鐵火自身が無防備になってしまうのではないかと『レミシオン』は心配する。
その様子を見て鐵火は笑う。
「なに、問題はない。私にはこれが在る故」
その手にあるのはふわりと空中を舞う天馬の毛を織って創られた薄布。それに纏うは光の剣魔法。まるで鞭のようにしなやかに空中を舞う羽衣が火器から放たれる銃弾を次々と切り落としていく。
なんたる絶技。
防ぎのではなく切り払う。
それはどれほどの動体視力を有すればできることなのだろうか。
「猟書家『トゥーモル・ハンブラ』……歪んでいるということは未来を消すのに躊躇がないのも分からんでもない」
それは理解であったのかもしれない。
理解すれど相容れる道理はない。放たれ続ける弾丸を薄布で切り払いながら鐵火は前に進む。
「なぁ、レミシオン殿?」
「そんなの許されるわけがない! 私達は今此処で生きているんだから!」
その言葉に鐵火は微笑む。
そうだ。その言葉が聞きたかった。掌から浮かび上がる波動の弾がはじき出され、迎撃システムの兵装を破壊する。
その破片が飛び散る中、素早く薄布を振り回す。するとばらばらになった破片が一塊に集められ、それを薄布が掴んで離さない。
それをそのままに振り回し、まさに蛮神乱舞(バンシンランブ)のごとく兵装の全てを破壊して進む。
「戯れだ、受け取れ」
その瞳が捉えるのは、『レミシオン』の超感覚によって研ぎ澄まされ、猟兵達が追う猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の背中。
兵装の残骸を集め鉄球のように固められたそれを薄布が掴んで投げ放つ。
未だ捕らえることのできない『トゥーモル・ハンブラ』であったが、その鉄球の一撃は牽制のように彼女の逃走経路を阻む。
「そうさな。人は今を生きている。だからこそそれを阻むというのなら、未来という可能性を食いつぶさんとするのであれば――」
鐵火は不敵に笑う。
決しては逃しはしないと。どれだけ早く逃げようとも、必ず追いつきこの拳を振るうと言うように彼女は宣言する。
「私自らの拳で持って骸の海へと還すのみ――」
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【SPD】
最強のサイキッカーとやらが随分と臆病なものじゃのー
まー、子孫を絶やそうとする悪いご先祖にしっかりとお礼参りせんとのー
UC「迷宮主の領域に踏み込みし権能」を発動させ、自身の劣化コピーを生み出す
三分の一はレミシオンに電脳魔術による防衛シールドを張る役割を
三分の二は艦内の警備施設のハッキングを行い、猟書家捕捉の為の遅延戦術を行っていく
自身はAIドクトルのサポートの元に、艦内マップを元に最短ルートをハッキングした宇宙バイクを操って一気にショートカットを行っていく
後ろにレミシオンを乗せながら、落とさないように気を使う
ちょっと飛ばすけどしっかりつかまっておくようにのー
アドリブ絡みOK
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は猟兵たちが彼女の子孫であるサイキッカー『レミシオン』の元へと転移してきた瞬間から目的を切り替えていた。
本来の目的である自身の子孫の抹殺から、猟兵との直接的な戦闘を避けるために逃走を図った。
本来のユーベルコード『精神侵略』は猟兵と言えど抗うことはできない。
須らく眠りに落とされ、彼女の精神に取り込まれ融合されてしまう。しかし、彼女の誤算は彼女の子孫に『精神侵略』が効かないことであった。
その一点において彼女のユーベルコードは完璧ではなく成っていた。さらに彼女の子孫である『レミシオン』の周囲に猟兵が要る限り、『精神侵略』は効果をなさない。
戦いになれば古のサイキッカーたる『トゥーモル・ハンブラ』はたしかに強力なオブリビオンであったかもしれない。
まともに戦っても猟兵たちに引けを取らぬ個としての力を持っている。
「最強のサイキッカーとやらが随分と臆病なものじゃのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)はアメジストの体をきらめかせ、『レミシオン』の傍へと転移してきていた。
確かに個としての力は猟書家のほうが上であろう。
だが、メイスンはそれを恐れるには足りないものであると判断していた。己のユーベルコードの完成、完璧さと己の子孫を天秤にかけた上で、『レミシオン』を殺そうとする猟書家に敗けるわけにはいかないのだ。
「まー、子孫を絶やそうとする悪いご先祖にしっかりとお礼参りせんとのー」
「まずはこの宇宙船のみんなの意識を取り戻したいの……お願い!」
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』を追い、宇宙船の中を懸ける『レミシオン』。彼女の超感覚は、未だ逃走しようとしている『トゥーモル・ハンブラ』の姿をしっかりと捉えている。
だが、彼女たちの道を阻むのは、この宇宙船の迎撃システムたる兵装である。『トゥーモル・ハンブラ』はこれらを作動させ、猟兵と『レミシオン』が自身を追うことを妨害しているのだ。
「任された! ――迷宮の主として権能で生み出した僕達の電脳魔術、堪能していくといいのー」
メイスンのユーベルコードが輝く。
それは、迷宮主の領域に踏み込みし権能(オーバー・ジェネシス・ダンジョンロード)である。
彼女のユーベルコードはアメジストの力によって創造した自身の劣化であるがコピーを生み出し、複製する。そしてそれらは全て彼女の念力によって操作されるのだ。
「これだけいれば役割分担などお手の物よ!」
今回の事件において『レミシオン』は猟兵たちにとってのワイルドカードである。彼女を失うということは即ち、猟兵の敗北を意味する。
彼女を護るために生み出したコピーたちが厳重に電脳魔術に寄る防衛シールドを張り続ける。
さらに残ったコピーたちが次々と宇宙船にある端末に手を触れると警備施設にハッキングを行う。
「やつが僕たちから逃亡しようとあちこちを弄り回しているのなら、こっちだって相手が逃げる時間を奪う」
ホログラム型プログラムソフトウェアAIである『ドクトル』のサポートを受けたメイスンは宇宙船内に設置されていた宇宙バイクのロックを解除する。
ホログラムの上に走るのはハッキングによって得られた艦内をマッピングしたデータだ。そこからプログラムを走らせ、逃げる猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の逃走経路を割り出す。
さらに其処に至るまでのショートカットのルートを見出し、宇宙バイクにまたがる。
「さ、準備万端じゃ。ちょっと飛ばすけどしっかりつかまっておくようにのー」
メイスンは次々と追随する猟兵達のために宇宙バイクのロックを解除する。
何せ、今回は『レミシオン』の周囲にいなければ猟兵たちは『精神侵略』の餌食になってしまう。
『レミシオン』を連れ、『トゥーモル・ハンブラ』を追うのは速度もまた重要なのだ。
彼女を後部座席に載せ、彼女の持つ超感覚を頼りに『トゥーモル・ハンブラ』を追う。
宇宙バイクのエキゾーストが香り、最短ルートをメイスンは駆け抜ける。
目指す先は猟書家『トゥーモル・ハンブラ』。
何処まででも追いかける。子孫を絶やそうとすることもそうであるが、人々を眠らせ、精神を強制的に融合するなど許されていいはずがない。
「やつがしでかしたことへの落とし前はしっかりつけさせるでのー」
そう宣言するとメイスンは宇宙バイクを駆り、徐々に『トゥーモル・ハンブラ』との距離を詰めていくのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
判定:SPD
ヤレヤレね。
クロムキャバリアにはなかったタイプの話ね。
さて、流石にキャバリアで疾走するわけにはいかないからね。
EPヴォルダー…ヴィークルモードのレスヴァントのアンダーフレームを使うわ。
貴方がレミシオンね。はやくこっちへ。大丈夫。ボクは猟兵。君を護りに来た!!
『ダッシュ』『悪路走行』っで攻撃機能を交わしつつ、ハンブラを追うわね。
揺れるけど…我慢してね。
ARICA悪いけど、少し制御よろしく。
ボクはドックに置いてきたレスヴァント(のオーバーフレーム)越しに宇宙船に『ハッキング』してハンブラの位置を『索敵』、『ジャミング』かけて敵を攪乱するわ。
…見つけた。次に角を右!!
己のユーベルコードを完成させるために己のユーベルコード唯一の弱点である、血族を抹殺する。
それはユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとってはあまり馴染みのない話であった。
「ヤレヤレね。クロムキャバリアにはなかったタイプの話ね」
数多ある世界を渡り歩く猟兵にとっては、ある意味で驚きの連続であったのかも知れない。居住可能惑星を探して宇宙船での生活を送る人々。
中には一生星の大地を踏むことなく終わる者もいるだろう。
いや、殆どがそうであるかもしれない。それを思えば、戦乱が続くクロムキャバリアとは別種の境遇であるとさえ言える。
ユーリーは今、転移した瞬間から彼女のキャバリア『レスヴァント』のアンダーフレームであるEPヴォルダーをヴィーグルモードへと変形させ、宇宙船の中を疾駆する。
すでに他の猟兵によってこちらのワイルドカードたるサイキッカー『レミシオン』は宇宙バイクに乗っている。
しかし、宇宙船に装備された迎撃システムの火器が彼女を襲う。
「きゃっ――!?」
それは宇宙船という閉鎖空間の中で戦闘を知らずに育ったためであろう。猟兵達は迎撃システムを回避できても彼女はそうではない。
さらに言えば、全ての火器は『レミシオン』をあわよくば抹殺せんと標的を集中させているのだ。
大破した宇宙バイクから身を放り出された『レミシオン』にユーリーは手をのばす。
「はやくこっちへ! 大丈夫。ボクは猟兵。君を護りにきた!!」
その手をしっかりとつかみ、ユーリーは『レミシオン』の体をヴォルダーの機体の上にしがみつかせる。
「あ、ありがとう……!」
「いえいえってやり取りしてる暇もないね、これは! 揺れるけど……我慢してね」
ユーリーは手をひらひら振って応える。
だが、あいにくと交流を深めている時間はない。次から次に宇宙船の迎撃システムから放たれる火器の弾丸が二人を襲うのだ。
宇宙船の中とはいえ、あらやるものが障害物となりえる悪路。そこを駆け抜けるヴォルダーは、たしかに悪路すらも走破するに長けた機体であった。
「ARICA、悪いけど少し制御よろしく」
学習型AIに機体の制御を任せ、ユーリーは宇宙船のドッグに鎮座させてあるレスヴァントのオーバーフレームから宇宙船にハッキングをかける。
この宇宙船の迎撃システムをハッキングしてこちらを妨害している猟書家「トゥーモル・ハンブラ』の位置を探る。
ハッキングの痕跡は必ずある。しかも逃亡しながらであれば、どんなに精緻なる作業をしていたとしても何処かにほころびが在る。
「……見つけた!」
ユーリーのハッキングによって宇宙船の迎撃システムを次々と乗っ取る『トゥーモル・ハンブラ』の痕跡。
それは彼女が逃走しようとする道行と一致する。
ならば、後は『レミシオン』の持つ超感覚と照らし合わせればいいのだ。
「次に角を右!!」
互いの声が重なる。
目指す猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の背を捉えた。だが、さらに迎撃システムから放たれる弾丸やアームなどの妨害は苛烈を極める。
悪路を走破するために生み出されたヴォルダーはそれらを躱しながら、『トゥーモル・ハンブラ』を追う。
どこまでも追いかける。
それは『レミシオン』もまた同じ気持ちであったことだろう。
彼女をのがしてしまえば、この宇宙船において眠りについた人々はずっと眠ったままだ。ユーベルコード『精神侵略』によって『トゥーモル・ハンブラ』に取り込まれ、融合されて目覚めることはない。
それは許されざることだ。
「絶対に逃してやるものか!」
カウンターステアを決め、ユーリーと『レミシオン』はさらなる猛追でもって、『トゥーモル・ハンブラ』を徐々に追い詰めていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
SPD
アドリブ歓迎
自分のユーベルコードを完璧なものにする為に自分の子孫たちの命を奪う?
そんな事、例え先祖という立場だって許される事じゃない
俺はまだまだ猟兵として日は浅い。どれだけの事が出来るかはわからないけれど…。
ライオンライド使用し召喚したライオンにレミシオンさんと共に騎乗、幹部を追う
障害物等もライオンなら飛び越える事も出来るはず
レミシオンさんに相手のいる方向を教えてもらいつつ、自分はライオン上から妨害しようと迫ってくる兵器を迎撃
レミシオンさんが攻撃に晒されそうな場合は、最優先で【庇う】
遠距離なら光陣の呪札での【乱れ撃ち】
近距離なら接触されるタイミングを【見切り】、退魔刀の一刀で切り裂く
スペースシップワールドには星の大地がない。
正確には居住可能惑星が帝国軍によって滅ぼされ、人々は銀河の大海原へと定住の地たる惑星を探して宇宙船に乗り込み生活している。
それはある意味で見果てぬ夢であったのかも知れない。何代も生命をつないでも見果てぬ夢。居住可能惑星を見つけるということはそういうことなのだ。
そんな旅を続けるのが宇宙船に住まう人々であり、サイキッカーとは力ある者である。
古のサイキッカー『トゥーモル・ハンブラ』はユーベルコード『精神侵略』によってあらゆる生命体を合意、強制問わずに取り込んできた。
全ての人々の精神を統一することによって生命という枠組みすら乗り越えようとしたのだろう。人が人の形、生命の形を保ったままでは銀河の何処かにあるであろう居住可能惑星へとたどり着くことなど不可能だと思ったのかもしれない。
だが、そんな彼女ですら過去に歪む。
「自分のユーベルコードを完璧なものにする為に自分の子孫たちの生命を奪う? そんなこと―――」
鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の言葉を思い出す。
彼女のユーベルコード『精神侵略』はたしかに恐るべき力を持っている。猟兵である、ひりょですら眠りに落とすほどだ。だが、今は違う。
例外である彼女の子孫であるサイキッカー『レミシオン』だけは『精神侵略』の影響を受けないのだ。
彼女の傍に常に居続けることこそが、『トゥーモル・ハンブラ』攻略の鍵でありワイルドカード。
だからこそ、ひりょは怒りに震える。
「そんなこと、例え先祖という立場だって許されることじゃない。俺はまだまだ猟兵として日は浅い。どれだけのことができるかわからないけれど……」
それでもやらなければならない。
例え敵わなくとも、何度も踏まれても最後には立ち上がる雑草根性を持つ彼にとって、それは足を止める理由にはならないのだ。
「俺が止める!」
召喚された黄金のライオンに騎乗し、ひりょは逃走する『トゥーモル・ハンブラ』を追う。
宇宙船の迎撃システムにハッキングし、こちらを妨害し、あまつさえは『レミシオン』すら抹殺しようとする。それを許してはおけない。
猟兵達の乗機を転々としながら『レミシオン』は振り落とされまいとしがみついていた機体から握力がなくなったことによって振り落とされる。
あわや宇宙船の床に叩きつけられると思った瞬間、ひりょの駆る黄金のライオンの背に彼女の体は受け止められた。
「あっぶな……でも、よかった! 早速で悪いけど、あいつの方向、わかるよね?」
「ええ、大丈夫。ありがとう。私の超感覚が言ってる……! このまままっすぐ!」
だが、眼前には迎撃システムに寄って無数に現れる作業アームたちが『トゥーモル・ハンブラ』を追う彼等を阻むように蜘蛛の巣のように張り巡らされており、さらには近づく度にアームを振るい彼等を叩き潰そうとするのだ。
「その程度の障害物で俺たちを止めようなんて――!」
そう彼等が騎乗する黄金のライオンは四足の獣。
あらゆる障害を躱し、あらゆる道なき道を走破することができる。
その手にした札から放たれる光の束が『レミシオン』を狙う火器から放たれる弾丸を打ち払う。
もはや彼等を止められるものはなく、最後に立ちふさがった巨大な作業アームを、ひりょは退魔刀の一撃で持って切り裂き、黄金の迅雷のごとく疾駆する。
「あそこ! もう背中が見えてる!」
『レミシオン』が叫ぶ。視線の先にあったのは猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の背中。
逃走を図る彼女を追い詰め、この宇宙船の人々を眠らせたユーベルコード『精神侵略』を止めなければならない。
もしも、彼女を逃せば眠りに落ちた人々は目覚めることはない。
ひりょは黄金のライオンを駆り、『トゥーモル・ハンブラ』を追い詰めるべく、さらなる速度で持って宇宙船の通路を駆け抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エトワール・スフェール
先祖たる者がその子孫を殺しに来るとはなかなか業の深い奴である。
欲望に捕らわれた過去の怨霊は祓わねばなるまい。
だが、相手は逃げの一手であるか。
なぁに、心配ご無用!レミシオン殿、将棋はご存じかな?
我輩、こう見えて将棋は自信があってな。
UC【星雲の網】で電子の精霊に頼んで宇宙船の端末から中枢のフレームへアクセス、ハッキングを仕掛けて迎撃用兵器やフェンスを自分の手駒にしつつ、戦闘知識で手駒を操って相手を追い詰めていくぞ。
レミシオン殿の力で位置がわかるなら将棋と変わりないな。
……このように手駒を奪いながら逃げるキングを追い詰める時が一番楽しいボードゲームなのだ。
そのラピスラズリの輝きを身に宿したエトワール・スフェール(蒼玉の星・f30796)は共に宇宙船の中を猟兵、そしてサイキッカーである『レミシオン』と共に駆け抜ける。
彼女のその輝きは銀河の星々が輝く宇宙に在りてもなお、目を引く輝きであったことだろう。
「先祖たる者がその子孫を殺しに来るとはなかなか業の深い奴である。欲望に囚われた過去の怨霊は祓わねばなるまい」
そう、猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の目的は己のユーベルコード『精神侵略』の唯一の障害となる己の血脈、その子孫である。
ユーベルコード『精神侵略』は生命体全てを眠りに落とし、その精神を取り込み融合する恐るべき力である。
その力の前では猟兵と言えど眠りに落ちるのは抗うことのできないものである。しかし、『トゥーモル・ハンブラ』の子孫である『レミシオン』は、その影響を受けない唯一のワイルドカード。
彼女の周囲に集まった猟兵たちは、彼女の傍に要る限り強大な『精神侵略』の影響を受けずに済むのだ。
「だが、相手は逃げの一手であるか」
そう、『トゥーモル・ハンブラ』は猟兵たちを力づくで排除しようとしない。それだけのことができる力を持っているにも関わらず、逃走を選んだ。
何故か。
答えは簡単である。
今猟兵を無理に倒す必要はない。未だ銀河の様々な場所に点在するであろう己の子孫を殺し尽くした後でも問題はないのだ。
ユーベルコード『精神侵略』は、それほどまでに強大な力だ。
「せっかく、追い詰めたのに……!」
猟兵達の活躍に寄って『トゥーモル・ハンブラ』は追い詰められていた。だが、徐々にまた宇宙船の迎撃システムを活用して猟兵達の道を阻む。
そうしてまたジリジリと彼我の距離を離されはじめていた。
「なぁに、心配御無用! レミシオン殿、将棋はご存知かな? 我輩、こう見えて将棋は自信があってな」
宇宙の民たる彼女たちに将棋なるボードゲームが伝わっているかは定かではない。けれど、エトワールの自信満々の顔は、きっとレミシオンに安心感を与えたものだろう。
「我がネットワークを甘く見ないことだ、猟書家『トゥーモル・ハンブラ』!」
エトワールのユーベルコードが輝く。
それは星雲の網(フィレ・デ・ネビュルーズ)の如く、召喚された電子の精霊たちによる宇宙船へのハッキング。
端末から宇宙船の中枢へとアクセスし、電子の精霊たちがハッキングを仕掛け、猟兵と『レミシオン』を阻む迎撃システムを沈静化させ、あまつさえはこちらの手中に納めるのだ。
侵入者を迎撃し、囲いこむためのフェンスや隔壁、それら全てを使って『トゥーモル・ハンブラ』の逃走経路を狭めていく。
彼女が自信のあるといった将棋。
それはかつて在りし文明の残滓であったことだろうが、その在り方は事、戦いにおいては理詰めの戦術へと発展していく。
宇宙船の内部はその空間を最大限に利用できるようにとブロックで区切られている。故に逃走経路は自ずと絞られる。
そこへハッキングしたシステムを用いて、逃走経路を絞っていけば……!
「レミシオン殿の超感覚があれば、イージーモードというであろう」
『レミシオン』は超感覚によって、なんとなくではあるが『トゥーモル・ハンブラ』の位置がわかる。
大まかでも位置がわかるのであれば、それはエトワールにとっては詰将棋のように簡単な図面として脳裏にうかぶ。
あとはそれに従ってハッキングしたシステムを作動させていけばいいのだ。
「……こにょうに手駒を奪いながら逃げるキングを追い詰める時が一番楽しいボードゲーム、それが将棋なのだ」
エトワールは笑う。
戦いのさなかでは在ったけれど、逃げる『トゥーモル・ハンブラ』の経路を搾り、彼女の逃亡を阻止する。
それは確かに王手とも言うべき手であった。
必ず追い詰める。
あの妄執とも言うべき欲望に囚われた過去の化身を払う。
その目的のため、エトワールと猟兵、そして『レミシオン』は『トゥーモル・ハンブラ』の背へと迫るのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
無限光というのが何を言っているのかは分かりませんが執心のようですね。
自分ひとりか同じ思想を持った人間のみで完結して活動するのであれば、どういった思想を持っていようが関与するところではありませんが……それがオブリビオンで多くの人間を巻き込むのであれば、見過ごせません。
【冬の尖兵】を召喚、90体を超える兵士を壁として周囲を守らせながらレミシオンさんと艦を進みます。
こちらから見えた侵入者迎撃用の兵器は私が『スナイパー』の技術と「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸の『クイックドロウ』で破壊していきましょう。
逃がしはしません、焦らず追いこみましょう……逃げる獲物を追うのは得意ですから。
「無限光というのが何を言っているのかはわかりませんが執心のようですね」
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の放った言葉。
0は無。00は無限。そして000は無限光へと至る。人々の精神を眠らせ、取り込み融合することに寄って『トゥーモル・ハンブラ』は永遠にも等しい時間を手に入れようとしていた。
それが過去の彼女の目的であったのだとしても、過去から滲み出た存在、過去の化身たるオブリビオンになっても変わらぬ欲望であるということは、執心、妄執と呼ぶに相応しいものであるとセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は感じる。
「自分ひとりが同じ思想をもった人間のみで完結して活動するのであれば、どういった思想を持っていようが関与するところではありませんが……」
そう、たった一人で終わる生命であるのならば、他者であるセルマがとやかく言う問題ではない。
彼女はそれを理解していた。同時に、そういったたぐいの思想を抱く者は、常に他者を巻き込むのだとも識っている。
己の思想を至上のものであると過信し、それ以外を認めぬ排他的思考に陥ることをセルマはよく識っている。それが、過去の化身、オブリビオンである。
「貴方がオブリビオンで多くの人間を巻き込むのであれば、見過ごせません」
セルマの瞳がユーベルオードに輝く。
冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)がセルマとサイキッカーである『レミシオン』の周囲へと展開し、壁として彼女たちを護る。
特にサイキッカーである『レミシオン』は猟兵たちにとって守らなければならない対象であり、同時に『トゥーモル・ハンブラ』へのワイルドカードである。
ユーベルコード『精神侵略』の影響を唯一受けぬ存在。
『トゥーモル・ハンブラ』の血脈の子孫である彼女こそが、あの強大なユーベルコードの影響を受けず、彼女の周囲にあるものさえも、その影響を受けさせぬ力を発揮する。
一見完璧に思える『精神侵略』も、『レミシオン』が存在する限り、完璧ではないのだ。
それ故に猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は己の子孫を尽く抹殺する。
今も猟兵たちから逃走を図っているのは、猟兵たちを殺す力が無いからではない。『精神侵略』なくとも『トゥーモル・ハンブラ』の力は絶大である。
猟兵たちに遅れをとることはない。けれど、もっと確実な方法があるのであれば、それをするに越したことはないのだ。
「まだそう遠くへ逃げてないはずだけど……!」
だが、それでもハッキングされた宇宙船の迎撃システムの妨害は苛烈を極めた。
火器は常に『レミシオン』を狙う。
セルマによって召喚された冬の尖兵たちがいなければ、有り余る火器によって『レミシオン』は今頃蜂の巣のようにされていたことだろう。
「ええ、逃しはしません。焦らず追い込みましょう」
構えたマスケット銃から弾丸を放ち、火器を一つ一つ沈黙させていくセルマ。
そこにあったのは焦りではない。
ただ淡々と敵を、獲物を追い込んでいく静かなる狩り人の瞳であった。彼女は慣れている。
どれだけ時間がかかろうとも、必ずスコープから覗いた獲物を打ち貫くタイミングを見極め、仕留めるという技術と経験があった。
それは彼女が師から教わり、受け継ぎ、修めた得難い技術である。
マスケット銃から放たれた弾丸が抵抗の激しかった迎撃システムの火器を沈黙させる。
「で、でも……また離れていっている……!」
その身に宿した超感覚が『レミシオン』を不安にさせるのだろう。
だが、セルマはそれでも首を横に振った。
此処に要るのは己だけではない。他の猟兵たちもいる。今恐れなければならないことは『レミシオン』が生命を落とすことだ。
彼女がいなければ、猟兵たちはおろか、この宇宙船にて眠りに落とされた人々を救うことすらできなくなってしまう。
「……逃げる獲物を追うのは得意ですから」
今は機を伺うときだ。
すでに他の猟兵達の活躍に寄って『トゥーモル・ハンブラ』の逃走経路は絞られた。今は離れているかもしれないが、いつだって目標へと至るための道は、遠回りが正解なのだ。
「最短距離が最も良き選択肢であるとは限りません。焦りは足元を見失わせる……きっと宇宙船の人々を助け出してみせましょう。だから、貴女の力を貸して下さい」
セルマはそう言って『レミシオン』を落ち着かせる。
そう、着々と。けれど確実にセルマたちは『トゥーモル・ハンブラ』を追い詰めているのだった。
その証拠に『レミシオン』の超感覚は『トゥーモル・ハンブラ』が離れていくスピードが徐々に落ちている事を知るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
零だろうが無限だろうが知らないけど
俺は俺だ、誰かの一部になるなんてごめんだぜ
[SPD]
おーいそのまま行くと危ないぞ
お互い目的は同じみたいだし一緒に行動しないか?(コミュ力
TCにレミシオンちゃんと一緒に【騎乗】して猟書家を追う
飛ばすからしっかり捕まってナビをよろしく!(操縦、ダッシュ
【念動力、オーラ防御】をバイクの周囲に展開して防御を固めつつ
彼女の指示とEsの【情報収集、索敵】を元に最短ルートを突っ走るぞ
銃火器は【先制攻撃やハッキング】トラップは【第六感や瞬間思考力】で対処な
彼女に危険が及びそうなら最優先で【かばう】ぜ
大丈夫、君には指一本触れさせないからよ
さあ、あいつを追い詰めるぞ!
アドリブ歓迎
ユーベルコード『精神侵略』の力は凄まじいの一言に尽きる。
あらゆる生命体を眠りに落とし、猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の精神へと取り込み、融合させる。
それは古のサイキッカーである彼女だからこそ為し得た力であるのだろう。その力を持って彼女がいたろうとするのは無限光。
虹の彼方という彼女の中に抱く概念が人という生命体を、さらなる次元へといざなうものであることを理解できるのは、彼女と彼女に取り込まれた精神だけであろう。
「零だろうが無限だろうが知らないけど、俺は俺だ。誰かの一部になるなんてごめんだぜ」
星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)もまた星々の海を征く世界の出身者である猟兵だ。
宇宙の彼方へと飛び出す。
それはスペースシップワールドに生きる者たちにとっては安住の地を求めることであるが、祐一にとっては自由を求めることである。
己の身が有限なる時間しか持たぬ体であったとしても、祐一は己を捨てることなどなかったことだろう。
例え猟書家『トゥーモル・ハンブラ』によって、肉体という檻を捨てることこそが魂に真なる自由を与えるものであると説かれても、首を縦に振ることはない。
「おーい、そのまま行くと危ないぞ。お互い目的は同じみたいだし、一緒に行こうぜ」
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』のハッキングに寄って封鎖された宇宙船の内部を行く猟兵達と『レミシオン』。
彼女こそがユーベルコード『精神侵略』の影響を受けず、尚且、彼女の周囲にある猟兵にもまたその効果を与えるワイルドカードである。
彼女の存在が危うくなれば、それこそが猟兵達の敗北につながる。
初対面であったが、祐一は気さくに笑いかける。真紅の二輪バイクであるテスタロッサ・カスタムを駆り、彼は転移してきていたのだ。
「うん、お願い。みんなを助けたいの。力を貸して!」
彼女の言葉は思いがけず真っ直ぐなものであった。
降って湧いた災難であっただろうに、それでも前を向いている。そういった者を助けることは祐一にとっては喜ばしいことだった。
すでに迎撃システムの大半は猟兵達によって沈黙させられている。
だが、それでもまだのこっているものはある。『レミシオン』をテスタロッサ・カスタムの後部シートに乗せ、宇宙船の中を疾駆する。
エキゾーストパイプから轟音が響き、バイクの全周を覆うようにオーラと念動力でもって覆う。
「さあ、飛ばすからしっかり捕まってナビをよろしく!」
フルスロットルで速度を上げ、疾駆するテスタロッサ・カスタムの赤い残光を残し、迎撃システムを躱していく。
銃火器の弾丸が放たれようとも、テスタロッサ・カスタムの速度の前では止まっているよなものだ。
一瞬の思考。
放たれる弾丸。疾駆するテスタロッサ・カスタムの振動。そして路面を噛みしめるようなタイヤのグリップ力。
あらゆる事象を瞬間的に思考し、駆け抜ける。
「は、はやい……! けど、大丈夫なの!?」
あまりの速度。
それは乗り慣れていない者にとっては恐怖だけしかなかったかもしれない。
「大丈夫、君には指一本触れさせないからよ。さあ、あいつを追い詰めるぞ!」
大丈夫、とはそういうことではないのだと『レミシオン』は言いかけたが、それは圧倒的な速度の前に消える。
自分が乗る、この乗り物。これがこんな速度を出して壊れないのかという意味であったのだけれど、それでも祐一は急ぐ。
『トゥーモル・ハンブラ』は逃してはならないオブリビオンだ。
あのユーベルコードが完成してしまえば、眠りに抗うことができなくなってしまう。そうなってしまえば『帝国継承軍』はさらなる強化で持って巨大化していくことだろう。
そうなってからでは、居住可能惑星を求めて銀河の海を行く宇宙船の人々の安寧が危うい。
それを思えばこそ、祐一はさらなる速度でもって『トゥーモル・ハンブラ』の背を追うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
レミシオン様、ご協力願います
追跡と護衛を両立する為、私の腕に掴まって頂けますか?
片腕に彼女を座らせるよう●怪力で抱え脚部スラスター●推力移動で滑走
船内攻撃から●盾受けで彼女を●かばい追跡
UCを中継器として船内●ハッキングし返し機能奪還試行
迎撃機能沈黙させ隔壁やエアロック封鎖
逃走ルートを絞り追い込み
(●情報収集、地形の利用)
今は亡き銀河皇帝は己のUC…ワープドライブの唯一性の為に己が子孫の殺害を企てました
皇帝は生前からの行動でしたが、多くの子孫持つ彼女の場合は…
いえ、全ては推測に過ぎませんね
01の生体電気信号の狭間に魂があるならば、それを護るのが騎士の務め
ただ唯一の個など、認める訳にはいきません
凄まじい速度で猟兵たちは並み居る障害、迎撃システムを踏破して猟書家『トゥーモル・ハンブラ』を追い詰めはじめていた。
ハッキングされた宇宙船の侵入者迎撃用の攻撃機能は凄まじいものであった。巨大なアームが猟兵たちを捉えようとし、隔壁が降り、同時に火器が猟兵達の戦いの要であるサイキッカー『レミシオン』を常に狙うのだ。
今も『レミシオン』は数多の銃火器に狙われ続けている。
猟兵たちに護衛されてはいたが、度重なる妨害に寄って立ち往生を余儀なくされていたのだ。
「レミシオン様、ご協力願います」
そう言って大盾を構え、襲い来る銃弾を弾きながらトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『レミシオン』の元へと近づく。
彼女は猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の血脈の子孫。
恐るべきユーベルコード『精神侵略』の影響を受けない例外であり、猟兵たちにとってはワイルドカードそのものである。
ユーベルコード『精神侵略』はあらゆる生命体を眠りに落とし、『トゥーモル・ハンブラ』の精神へと取り込み融合させる力である。
それは猟兵たちも例外ではない。だが、『レミシオン』の存在が在る限り、それは叶わない。彼女の周囲にある時だけは、『精神侵略』の影響を受けずに済むのだ。
「え、ええ……大丈夫。私、まだ大丈夫だから」
「ありがとうございます。追跡と護衛を両立するため、私の腕に捕まって頂けますか?」
彼女よりも巨大な機械の体。
ウォーマシンたるトリテレイアの威容は間近に見るには、あまりにも迫力があったことだろう。畏怖すら感じたかも知れない。
だが、『レミシオン』はもう知っている。猟兵たちが自分を守ろうとしてくれていること、そして眠りにおちた宇宙船の人々を助け出そうとしてくれていることを。
だからこそ、ためらわずにトリテレイアの片腕に座るようにして抱えられた。
「では、参ります」
一礼してからトリテレイアは脚部スラスターを噴かせ、水力移動で持って宇宙船の内部を飛ぶ。
船内の迎撃システムの火器は隙あらば『レミシオン』を抹殺せんと弾丸を放つ。
それは同時に『トゥーモル・ハンブラ』がハッキングから迎撃システムを介して、此方の動向を逐一確認しているということだ。
「なれば――」
自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)が起動し、複数の偵察用妖精型ロボが周囲に飛ぶ。
端末からハッキングし、『トゥーモル・ハンブラ』が開放し、掌握しているシステムを奪還せんと試行する。
トリテレイアは戦機、ウォーマシンである。
物事の並行試行などお手の物であり、同時に正確無比である。どれだえ『トゥーモル・ハンブラ』が並々ならぬハッキング能力を持っていたとしても、速度と正確さでトリテレイアを上回ることはない。
すでに他の猟兵達によって何度もハッキングを打ち破られていた『トゥーモル・ハンブラ』にとってトリテレイアの正確無比なる行動は速度以上の脅威であった。
「今は亡き銀河皇帝は己のユーベルコード……ワープドライブの唯一性の為に己が子孫の殺害を企てました。皇帝は生前からの行動でしたが、多くの子孫を持つ彼女の場合は……」
それは今はすべき思考ではなかったのかもしれない。
無限光の彼方に至らんと、他者の精神を侵略し、融合して虹の彼方へと至らんとした『トゥーモル・ハンブラ』。
その最初の動機がなんであれ、過去に歪められた存在である。
今の行動が全て歪められたものであるのならば……。
それは。
「いえ、全ては憶測に過ぎませんね。01の生体電気信号の間に魂があるならば、それを護るのが騎士の務め」
トリテレイアは「レミシオン』をかばうように抱えながら宇宙船の中を疾走する。どれだけの火器が彼を襲おうが、どれだけの隔壁が妨害しようが、トリテレイアにとっては在って無きものである。
障害は全て踏破し、トリテレイアと『レミシオン』は互いの力を補う。
トリテレイアは障害を突破する。『レミシオン』は『トゥーモル・ハンブラ』の位置を把握し、逃さぬ。
「あの人の言っていること、わからないでもないけれど……それでも、あの考えは、私達には早すぎるって思う……」
「ええ、だからこそ。ただ唯一の個など、認める訳にはいきません」
頷き、トリテレイアのアイセンサーが輝く。
その輝きの先に、追い詰めるべき敵『トゥーモル・ハンブラ』の背が迫っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、以下省略!
シリカ(猫)!トゥモールを追いかけて!
猫のシリカなら精神構造違うし
『精神侵略』をすり抜けられる可能性があります!
追跡手段は多い方がいい
ダメだったら回収してもふもふするので安心してください!
というわけで勝手に合流するタイプのクノイチ
私サージェです
レミシオンさんよろしくお願いします
では素早く駆け抜ける方向で
【くちよせの術】で乗れるペット、乗れるペット…大きな狼?を呼び出して
いっきまーす!
さらに【くちよせの術】で煙玉取り出して投擲!
視覚からかく乱しましょう
狼さんには出来るだけ上下左右に動いてもらって
攻撃を掻い潜りつつ突破を狙います!
※アドリブ連携OK
人の世にオブリビオンの影があるのならば、常に其処に在るのは猟兵という名の光であったことだろう。
光と闇が表裏一体であり、互いに存在し続ける。
ならば、その闇であるオブリビオンの前に常に現れる続ける。それこそが――。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、以下省略!」
まさかの前口上キャンセルによって転移してきたのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。
ははーん、さては毎回の登場バンクのバリエーションを用意する時間がなかったのだな、とこれがTVショーならば視聴者は思ったかも知れない。
単純に今はもう忍びまくっているから、省略してもいいと思ったのかも知れない。
「シリカ、トゥーモル・ハンブラを追いかけて!」
キャバリア『ファントム・シリカ』に宿る魂のアバターである白猫又のシリカにサージェは猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の追跡を願う。
お願いという形を取っているものだから、どちらが主で従であるのかわからなくなってしまいそうになるが、言わぬが花である。
だって、シリカにひっかかれるとすんごく痛いんですもんとはサージェの言葉であったかもしれない。
トントンと軽い足音を立てて白猫又のシリカが宇宙船内を掛けていく。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』のユーベルコード『精神侵略』は強力である。生命体であればなんであれ、あのユーベルコードを防ぐことはできない。
魂があるというのならば、生命であるとも言えるだろう。
あらゆる生命体を眠らせ、精神を融合してきた『トゥーモル・ハンブラ』にとって機械に宿る魂たるアバター、シリカもまた対象は同じであったことだろう。
サージェはシリカならば『精神侵略』をすり抜けられる可能性があると踏んだのだが、僅かに離れた瞬間、電源が落ちたようにシリカがカクンと眠りに落ちてしまう。
「ダメでしたかー……でも、今の内にもふもふしておきましょう!」
もふもふと白猫又のシリカをもふもふして、ご満悦のサージェ。
いつもは此処までさせてくれないので今の内に堪能しておこうという腹なのかも知れない。
流石クノイチ、ただでは転ばぬ!
「というわけで、勝手に合流するタイプのクノイチ。私サージェです。レミシオンさんよろしくおねがいします」
もうサージェはシリカをもふもふして気合十分である。
ある意味でこの場の誰よりも充実していたのかもしれない。そんな彼女の様子にこんな状況であれど『レミシオン』は思わず吹き出しそうに成っていた。
「あ、ありがとう……助けてくれて……あいつはもうすぐ其処だと思う。力を貸して!」
彼女はこの宇宙船で唯一、ユーベルコード『精神侵略』の効果を受けぬ存在。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の血脈の子孫である。猟兵たちにとっては、彼女の存在こそが、この戦いの要である。
彼女を喪ってしまえば、猟兵たちは戦うことすらおぼつかないのだ。
「なるほど。では、素早く駆け抜ける方向で! しょーかんっ! かもんっ!」
サージェのくちよせの術(ナンデモデテクルベンリスキル)によって呼び出された大きな狼の背に二人が乗って宇宙船の障害物にまみれた通路を走り抜ける。
乗れるペットをということでサージェは、大きな狼を呼び出したのだが、このサイズ、果たして狼と言っていいのかは疑問であったが、細かいことはいいのだ。
重要なのは、この場を乗り切ることであるのだから!
「さあ、いっきまーす!」
一気に駆け抜ける。
さらにくちよせの術で煙玉を取り出して投擲する。
溢れる煙幕が迎撃システムを一瞬であるが撹乱する。視界を奪われた迎撃システムには熱感知などのシステムに切り替わる一瞬の隙がある。
それを逃さず放ったクナイが次々と迎撃システムを破壊していく。
「狼さん、できるだけ上下左右に動いてくださいね。攻撃をかいくぐっていきましょう――!」
「ちょ、ちょっとまって、それやったら酔っちゃ、あ――!?」
サージェはクノイチである。
三半規管は鍛え上げられている。だが、普通のサイキッカーである『レミシオン』は違う。
それはもうやたらめったらに、それこそ縦横無尽に船内を駆け抜ける狼の背にあって彼女のヒロイン力は低下の一途をたどる。
もはや別の意味で決壊しそうになるのをこらえながら、しかし凄まじい速度で『トゥーモル・ハンブラ』を遂に追い詰めたのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『トゥーモル・ハンブラ』
|
POW : フュージョン・メンタリズム
【敵の顔に触れてエネルギーを流しこむこと 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【精神と自らの精神を融合させて精神的弱点】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : ロジカライズド・リング
【敵を自動追尾する背中の回転リング 】が命中した対象を切断する。
WIZ : アブストラクト・ネックピンチ
【敵の首の付根を掴んで 】から【強力な握力による圧迫攻撃】を放ち、【敵の中枢神経に強い衝撃を与えること】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:星野はるく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ピオネルスカヤ・リャザノフ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ついに追い詰められた猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は宇宙船の巨大なドッグ、搬入口であり、他の宇宙船とのドッキングのために設けられた巨大な開けた空間に佇んでいた。
「わたしを追い詰めますか、猟兵。しかも、わたしの血脈の子孫たるそれを護りながら。いいでしょう。どちらにせよわたしはオブリビオン。あなたたちとは争わなければならない存在」
そして、猟兵たちは気がつく。
彼女は追い詰められたのではない。そう、真っ向から猟兵を追い詰めることに決めたのだ。
もはや小細工はいらぬとばかりに膨れ上がる重圧。
それは古のサイキッカーである猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の絶大なるサイキックの力の奔流であった。
そう、彼女は他の生命体を合意、強制問わずに取り込んできた存在。
力でねじ伏せることもいとわず、それを行うことも容易い存在であったのあd。
「あなたたちにもわかってほしかった。わたしたち生命体が目指すべき次元。虹の彼方。無より生まれた有であるわたしたちが目指すべき無限。そして、その無限すらも過程に過ぎない、至るべき無限光の彼方」
それを自覚して欲しい。
そういうように『トゥーモル・ハンブラ』のサイキックが巨大な空間であるドッグに吹き荒れる。
「ですが、滅ぼさなければならないのであれば、あなたたちは要りません。わたしの心に同調し、選ばれた者たちだけで虹の彼方へと至りましょう」
優しげに微笑みながら、他者を排斥することすら厭わぬ破綻した感情。
それを人は悪意と呼ぶ。
力を持つ者が己を律しなければならぬ理由の全てを歪められた古のサイキッカーの強大なる力が、猟兵と『レミシオン』を襲う――!
小鳥田・古都子
ゼロ除算みたいだね。現実の数字をゼロで割ったら見かけ上無限になるの。
でもそれは虚数と同じ想像数。頭の中だけのお遊びなのよ。
そんな事にみんなを巻き込んじゃ駄目。
レミシオンさんの前に立って【庇い】ながらマシンガンで攻撃。
接近攻撃されたら【再生怪人】で瞬間再生。受けたダメージをリセットします。あたしはモルモットだから、どんな実験でも壊れない様に出来てるの。
【早業】の【カウンター】【怪力】で相手の腕を掴み返します。
再生に使ったエネルギーを触れたものから吸収。【生命力吸収】で相手のサイキックエナジーを吸い取り攻撃。
あなたの力をどれだけ吸いとってもあたしはあたし、あなたはあなた。一つになんてなれないのよ。
0とは即ち無である。
だが無と有が掛け合わさった時、それは無にしかならない。何をかけようが答えは変わらない。そこに意味があるのかと問われれば、無いと応えるほか無いだろう。
オブリビオンと猟兵とはつまるところそういった間柄である。
どれだけ隣り合っていたとしても、終着する先にあるのは無でしかない。
過去は過去に。
滲み出る過去の化身が世界を破壊し、全てを無に帰すのと同じ様に猟兵もまたオブリビオンを滅ぼす。
時間が進んでいくために過去の集積地たる骸の海へと還すことによって世界の理を進めるのだ。
「ゼロ除算みたいだね。現実の数字をゼロで割ったら見かけ上無限になるの」
小鳥田・古都子(サイボーグのサイキッカー・f16363)は相対する猟書家『トゥーモル・ハンブラ』のことを正しく理解していた。
古のサイキッカー。
かつて在りし姿の残滓にすぎない執着ありし者。それが『トゥーモル・ハンブラ』である。
「ええ、0と0は無限。無から有へと存在としてある生命体は無に帰す。けれど、合わされば無限となり、そして集積すれば無限光にすら届く」
微笑む姿は古にありしサイキッカーと変わらぬのだろう。
だが、その姿はどうしたって歪んでいる。どこまでも歪んでいる存在。その歪みが世界を壊すのだ。
「でもそれは虚数と同じ想像数。頭の中だけのお遊びなのよ。そんなことにみんなを巻き込んじゃ駄目」
結局、古都子の言う通りなのだ。
何処まで言っても頭の中だけにしか存在し得ない数。無限。
人の心は無限に輝くだろう。
けれど、それは人一人が各々の心の中に存在する光でしかない。
「だから、あたしは護るよ。あなたから分たれていった血のつながりを」
古都子は『レミシオン』をかばうように立ちながら内蔵火器であるマシンガンを放つ。
その斉射は確かに『トゥーモル・ハンブラ』を捉えただろう。
だが、次の主観、『トゥーモル・ハンブラ』の姿は古都子のすぐ傍にあった。振りかぶられる手が狙うのは『レミシオン』。
彼女が倒れれば、猟兵は『捉えた』のユーベルコード『精神侵略』の前に為す術がない。
とっさに古都子は彼女をかばう。その細首にふれるのは『トゥーモル・ハンブラ』の手であった。
「時間の先延ばしにしか過ぎません。結果は変わらない。あなたは倒れる。ただそれだけ。そして、わたしの血脈の子孫はわたしが殺す」
それは凄まじい握力に寄る古都子の首の骨が砕ける音だった。
サイキックの力を上乗せした力が古都子の首をへし折る。その一撃は通常の生命であれば、断絶し、死する他無い必殺の一撃であった。
戦いは終わる。
『トゥーモル・ハンブラ』は古都子の体を投げ捨て、『レミシオン』の前に立つ。
「この通り。結果は変わらない。先延ばしにしかならない。それは無駄ではないでしょうか? そうですね? わたしの血脈」
微笑む。ただただ、微笑む。過去に歪んだオブリビオンとはかくある者であると言わんばかりの歪み。
恐怖でこわばる『レミシオン』の首を掴まんと手をのばす『トゥーモル・ハンブラ』の手を掴む者があった。
「――……?」
訝しむ『トゥーモル・ハンブラ』。彼女の視線を向けた先にあったのは、目にも留まらぬ速度で彼女の手を掴む――古都子の姿が在った。
「致命傷であったはず。殺したはず。なぜ――?」
「『怪人』は何度でも蘇るよ」
古都子はサイボーグである。彼女はモルモットであった。どんな実験でも壊れぬ様にと創られた体。
それこそが古都子である。
再生怪人(レヴァナント)と呼ばれる所以。
全身を自身の健康体のデータを仕込んだ時空間の繭で多い、致命傷を受けた瞬間に被害を瞬に解除、再生する。
それこそが彼女の体に流れるユーベルコード。
不死にも近い凄まじき力。そして、つまるところ、サイボーグの体の限界を越えた出力をも導き出す力である。
掴んだ『トゥーモル・ハンブラ』の腕から吸い上げるのは再生に使ったエネルギーを取り戻さんとするように彼女のサイキックを吸い上げる。
「ばかな―――……あなたは人ではない? 生命ではない? なぜ?」
驚愕に染まる顔。
それは彼女がこれまで取り込んできた生命体には存在しない生命であった。
「あなたの力をどれだけ吸い取ってもあたしはあたし、あなたはあなた。一つになんてなれないのよ」
奪い取ったサイキックの力を発露させ、古都子は『トゥーモル・ハンブラ』の体を『レミシオン』から引き剥がし、投げ飛ばす。
そう、何処まで行っても人は人だ。
例え身体がサイボーグの機械に成り代わろうととも、小鳥田・古都子は、以前変わらず――。
人間にも怪人にもなれない正義の味方なのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
これ以上は逃がさない。
ここで決着をつける!
…といったものの、キャバリア無いと戦えないのよねぇボク。
無いなら呼ぼうホトトギス。
ロストエイジを召喚して乗り込むわ。
レミシオンちゃんと一緒にね。
説明しよう。ロストエイジは無敵のスーパーロボットなのだ。
そこにボクの最強の『操縦』が加わったら、無敵×最強=兎に角すごいのである!!(語彙力行方不明の想像力)
『瞬間思考力』で一瞬の判断で攻撃を回避つつ、『重量攻撃』
スーパーロボットといったらロケットパンチのだよ。
からのー『エネルギー充填』『レーザー射撃』必殺のビーム。
たまにこー言うノリもいいかもしれない。
悪いけど、ボクはボクのままでいたいし、君。趣味じゃない!!
つまるところ、猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の力の源はこれまで彼女がユーベルコード『精神侵略』によって融合し、取り込んできた生命体の精神の力こそが大本であろう。
彼女は無から無限へ、無限から無限光へ至ろうとしている。
それは確かに全ての人を救済する光であったのかも知れない。同一のものになれば差異は生まれない。
他者と違うということがなければ争いも起こらない。
同一にして全てであるのならば、そこにあるのはたった一つの目標。無限光の彼方という別次元へと至るための道程でしかない。
だが、それは『トゥーモル・ハンブラ』という一つが出した解答に過ぎない。
「これ以上は逃さない。此処で決着をつける!」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は投げ飛ばされた猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の元へと駆け出す。
ここで『トゥーモル・ハンブラ』を逃してしまえば、再び『レミシオン』のような彼女の血脈の子孫が殺されてしまうだろう。
そんなことはさせてはならない。
とは言ったものの、ユーリーは僅かに歯噛みした。
彼女自身の戦闘力の要はキャバリアである。
鋼鉄の巨人を乗りこなし、オブリビオンを打倒してみせるのがユーリーという猟兵のほんらいの力を十全に発揮する重要な要因なのだ。
「無いなら呼ぼうホトトギスってね! 来たれ!!幻の騎神エクセリオン」
そう、キャバリアがないのならば、呼べばいい。
招来:幻の騎神“ロストエイジ”(コール・デウスエクセリオン・ロストエイジ)。それは彼女のユーベルコードの輝き。
煌めく光の中から現れるのは無敵のスーパーロボット“ロストエイジ”。
それは彼女の想像から創造されし、強力なる騎神。
説明しよう。ロストエイジは無敵のスーパーロボットなのだ。
「そこにボクの最強の操縦技術が加わったら、無敵×最強=兎に角すごいのである!!」
ユーリーは『レミシオン』の手を取って騎神へと乗り込む。
「え、ええ!?」
『レミシオン』にとってはあまりにも唐突な出来事であったのだろう。ユーリーの説明もどこか語彙力が行方不明になっていたが、無根拠なる謎の想像力への自信に満ち溢れていた。
彼女の絶対なる自信。
それこそが、このユーベルコードによって生み出された“ロストエイジ”の無敵たる力の根拠である。
「不可解な。それほどの力。無敵たる力と言えど」
『トゥーモル・ハンブラ』は彼女たちを騎神へと乗り込ませぬと迫る。
だが、それももう遅い。
どれだけ彼女が早くても、無敵たるロストエイジの装甲の前には相手の弱点を読み取り、精神的打撃を与えようとする彼女のユーベルコードも届かない。
なぜなら無敵であるからだ。
そこに理屈や理論や根拠は存在しない。
ユーリーの自身を疑うことのない絶対なる自信。そして、ユーベルコードが生み出す無敵こそが彼女に力を与える。
「スーパーロボットといったらロケットパンチなのだよ!」
「そうなの!?」
揺れるロストエイジのコクピットの中でユーリーと『レミシオン』が叫ぶ。
どちらのもまったく噛み合っていないが、それはそれである。益々持ってユーリーは自信満々にロストエイジの拳をまるでロケットミサイルのように飛ばし、『トゥーモル・ハンブラ』を吹き飛ばす。
「からのー!」
ロストエイジの両の拳が打ち鳴らされ、火花が散る。
瞬間、ロストエイジの胸から放たれるは必殺のビーム。放たれる凄まじき一撃は『トゥーモル・ハンブラ』のサイキックに寄る障壁を容易くぶち破って彼女の体を焼く。
「たまにはこーいうノリもいいかもしれない。でも、悪いけど、ボクはボクのままでいたいし、君。趣味じゃない!!」
ユーリーはロストエイジのコクピットの中で迸るように叫ぶ。
それはユーリー自身が自分を信じるように、ロストエイジの無敵を咆哮させるように絶大なる力を奮って、『トゥーモル・ハンブラ』を拒絶するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
連携・アドリブ歓迎
POW
レミシオンさんの顔色が悪いみたいだ
はっ、まさか…敵の精神攻撃を?そうだとしたらなんてひどい事を…
これ以上レミシオンさんを傷つけさせないぞ!
光陣の呪札の【乱れ撃ち】で弾幕を張り護衛対象への敵の接近阻止
その間に敵の動きを【落ち着き】念入りに観察
相手の行動スピードを把握しておく
相手の注意を護衛対象から自分の方へ向けさせるよう
【コミュ力】で挑発
まずは俺を倒してみせろ!
敵が勝負に出て一気に間合いを詰めて来たら退魔刀を納刀、敵の攻撃に備える
フュージョン・メンタリズムを自身の限界を超えた(【リミッター解除】)速度で紙一重【見切り】回避
カウンターで退魔刀での抜刀術(灰燼一閃)を叩き込む
凄まじき熱線の一撃が猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の体を焼く。
それは猟兵の呼び出した騎神から放たれた一撃であり、ユーベルコードの放つ輝きであった。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の子孫である『レミシオン』はあまりの出来事にふらふらと降り立つ。凄まじい体験であったのかもしれない。
「なんだかわからないけれど、すごいわね……」
その顔はショックを受けたというよりもカルチャーショックの類であったのかもしれない。
そんな彼女の顔色を見て、心配そうに駆け寄るのは鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)であった。
「敵の精神攻撃を……そうだとしたらなんてひどいことを……これ以上レミシオンさんを傷つけさせるわけにはいかない!」
ひりょは手にした呪札から光の束を投げ放ち、猟書家『トゥーモル・ハンブラ』へと投げ放つ。
弾幕のように張り巡らされた光の束が『トゥーモル・ハンブラ』への牽制となって此方との距離を詰めさせないようにするのだ。
だが、そんな光の束の弾幕をすり抜けるようにして飛翔するのは猟書家『トゥーモル・ハンブラ』である。
凄まじい速度での飛翔。
武術や技術ではない。単純なるサイキックエナジーによる超能力の飛翔。それだけの力を維持するためには、これまでどれだけの生命体の精神を取り込み融合してきたのか知れない。
「猟兵は要りません。あなたたちに虹の彼方へと至る為の道筋は見えない。どこにもあなたたちはいけない。あなたたちは世界を存続させるために呼ばれる存在であるのならば」
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』が飛ぶ。
その手が伸ばされる。ぞわりと、ひりょは背筋に薄ら寒い怖気が走るのを感じたかも知れない。
相手のスピードを把握するために放った光束の弾幕であったが、それすらも容易く躱し、『トゥーモル・ハンブラ』はこちらへと一直線に距離を詰める。
己の子孫である『レミシオン』を隙あらば抹殺せんとする動きはともすれば、二兎を追う者であった。
「まずは俺を倒してみせろ!」
ひりょは『レミシオン』をかばうようにして立ちふさがり、退魔刀を納刀する。それは必殺の構え。居合の一撃のための準備であり、予備動作でもった。
こちらに伸ばされる『トゥーモル・ハンブラ』の掌が見える。
あの掌に触れられてしまえば、精神からこちらの弱点を読み取り、其処を突かれてしまう。
そうなってしまえば、戦いの趨勢は『トゥーモル・ハンブラ』に一気に傾くだろう。強大なオブリビオンである彼女に弱点を知られては、如何な猟兵といえど勝つことは難しい。
だからこそ、ひりょは納刀したのだ。
一撃に全てを懸ける構え。己自身の限界を己は知っている。だが、それをなんとする。そう、自身の限界は常に越えていくものだ。そのための力を、ユーベルコードは輝きとなって放つ。
「全力全開!一撃必殺っ、喰らえっ!」
破魔の力が込められし刀のきらめきがユーベルコードの輝きとなって世界を染め上げる。
それは一瞬の交錯。
放たれた斬撃の一撃は、目にも留まらぬ斬撃。
ひりょが抜刀したことも理解させることはなかったことだろう。瞬間、『トゥーモル・ハンブラ』の体は袈裟懸けに切り裂かれていた。
それは灰燼一閃(カイジンイッセン)。
ひりょの限界を超えた神速の域にまで到達した抜刀の一撃が、彼女の体に癒えぬ傷跡を刻み込む。
「わたしが、みえなかった……? この斬撃、は」
「俺を倒してみせろ。それが叶わないのであれば、お前の力は俺には届かない」
納められた刀が音を立てた瞬間、鮮血が『トゥーモル・ハンブラ』から迸るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神樹・鐵火
数多の人間の精神と融合したのか
お前の思考、行動、全てお前自身のものか
融合した誰かのものではないのか
既にお前本来の意思は希釈され消え失せてはいないか
考えた事は...無さそうだな
最終的に思考すら放棄する気の様だ
龍拳を結晶化、相手の攻撃に割り込む形で
龍拳をけしかけ、レミシオンを守る(カウンター・ジャストガード)
殴ろうが蹴ろうが無駄、貴公は細すぎる(激痛耐性)
私の顔を掴む前に貴公の腕を掴む、もう片方の腕も同じだ
振り解こうとしても無駄だ(怪力)
こんな細い手で殺そうとは片腹痛いわ
魔力溜めでサイキックエナジーを吸収した轟拳を用い両腕を消し飛ばし、
無防備な顔面に一撃くれてやる(部位破壊・闘心破拳)
ユーベルコード『精神侵略』の力は強大であることは言うまでもない。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』はその力を振るい、かつて数多の生命体の精神を取り込み融合してきた。
その数は数えることすらも億劫な数であったことだろう。もはや彼女自身もどれだけの生命体の精神を取り込んだかすら理解していないはずであたった。
「数多の人間の精神と融合したのか。お前の思考、行動、全てお前自身のものか、融合した誰かのものではないのか。既にお前本来の意志は希釈され消え失せてはいないか」
その言葉は、猟兵の一人である神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)の口から放たれた。
一個の生命体が数多の生命の精神を取り込む。
他者の精神を融合するということは、それを力でねじ伏せる以上に難しいことであろう。その数が膨大になればなるほどに古のサイキッカーたる『トゥーモル・ハンブラ』の精神はすでに一粒にしかならないのではないか。
「それでもすべての人々が虹の彼方へ、此処ではない何処かへ行きたいと願うことこそが、わたしとひとつになるという正当性を生み出すのです」
袈裟懸けに切り裂かれた肉体をサイキックの力で塞ぎながら猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は立ち上がる。
絶命の一撃を受けてもなお、立ち上がる姿はまさしく幽鬼であったかもしれない。
すでに人ではない。
いや、もとより人ではなかったのかも知れない。
人の意識を集合した何か別物。別次元に飛び立とうとする意志だけがその体を動かしていたのかも知れない。
「……その言葉。考えたことは……なさそうだな。最終的に思考すら放棄したか。それはすでに人ではない。お前がかつて望んだであろう姿かたちであろうが」
その手に握りしめるは己の拳のみ。
結晶化した魔法が握りしめられた拳が牽制のように放たれる。それは彼女の子孫でもあり、猟兵たちにとっての戦いの要である『レミシオン』を護るために放たれた。
「わたしは、わたしたちは望んでいるのです。この世界はわたしたちにはあまりにも生き苦しい。どうあっても人と人との争いばかりが起こってしまう。摩擦によって生じる熱に寄って魂が変形してしまう」
それが許せないのだというように『トゥーモル・ハンブラ』の体が飛翔する。どれだけ牽制の打撃を放たれようとも彼女は止まらない。
穿たれる拳の一撃を受けても即座にサイキックエナジーによって修復する。
伸ばされた掌。
それは鐵火の精神へとエネルギーを流し込み、己の精神と同一化させようとするユーベルコード。
『精神侵略』ほどの強制力があるわけではない。
けれど、顔に触れられるだけで此方の全てを見透かされるのは強大と言う他無い。
だが、伸ばされた掌の手首を素早く掴んで止める。
「無駄だ。殴ろうがけろうが無駄。貴公は細すぎる」
どれだけサイキックのちからの込められた拳や蹴りが飛ぼうとも手首を掴んだ鐵火を振りほどくことはできない。
「わたしの力が、サイキックが通用しない……!?」
ならばともう片方の手が鐵火の顔へと伸びる。しかし、それすらも防がれる。
「振りほどこうとしても無駄だ。これは貴公の得意とするサイキックの力ではない……私自身の力だ」
そう、膂力。
生命が持ちうる不可視の力ではなく、単純なる物理たる力。その圧倒的な膂力がサイキックの不可視の力と拮抗しているのだ。
「こんな細い手で殺そうとは片腹痛いわ――」
闘心破拳(トウシンハケン)――それこそが、鐵火のユーベルコード。
掴んだ手首を左右に強引に開かせる圧倒的な怪力。
それは彼女の体にまとったサイキックの力すらも振りほどき、『トゥーモル・ハンブラ』の防御を無防備にさせる。
そこへ打ち込まれるは掌打の一撃が『トゥーモル・ハンブラ』の顔面へと打ち込まれる。
凄まじい一撃はサイキックの防御すら間に合わせることはない。
打ち込まれた一撃は確かに『トゥーモル・ハンブラ』の顔面を打ち砕き、消し飛ばす。
「そう、もはや貴公は貴公ですらない。極限まで薄まった個。その一つの統率者にしか過ぎないのだよ」
鐵火の拳の一撃はこれまで培ってきた他者の精神という『トゥーモル・ハンブラ』の礎すらも尽く打ち砕く――!
大成功
🔵🔵🔵
緋翠・華乃音
……きっと、その理論も破綻している。
有限だからこそ価値のあるそれを、無限にまで昇華させたとして――それには一体、どれだけの価値がある?
妄想の押し付けも大概にして欲しいものだが。
自分と敵とレミシオンの三者の立ち位置を常に意識し、有利な位置取り及びレミシオンへの攻撃若しくは余波を回避できるように行動。
携える武装はダガーナイフと拳銃。
鋭く研ぎ澄まされた合理性の導き出した戦術によって攻撃を仕掛ける。
深追いはしない。
砂漠の逃げ水が如くヒット&アウェイで敵を翻弄し、戦闘のペースを常に自分で保持する。
優れた五感と直観、洞察力や観察力を用いて敵の一挙手一投足すら見切り、効率良く追い詰める為の一手として。
猟兵の一撃に寄って顔面を吹き飛ばされた猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の頭部がサイキックに寄って復元される。
その姿は今までと変わりない『トゥーモル・ハンブラ』そのものであった。
なぜそんなことができるのか。
それは彼女が古より紡いできたユーベルコード『精神侵略』の力の礎のためである。彼女は過去よりこれまでも膨大な数の他者、人の精神を取り込み、融合してきた。
すでに本来の彼女の精神性は水底にある白砂の一粒にしか過ぎないのだろう。
極限まで薄まった個はすでに我とは言い難い。
「わたしは無。あなたも無。けれど合わさっていけば有限から無へ、そして無限へと至る。わたしたちは無限光へと至る者。人の進化の形。あらゆる肉体の枷を外して、わたしたちと共に行くことこそが、人の生命の幸福であるというのに」
その掌がサイキック輝く。ユーベルコードに寄る他者の精神へと入り込み、そこから相手の全てを読み取る凄まじき力。
だが、そんな輝きを前にして一歩も退かぬのは猟兵と、彼女の子孫たる『レミシオン』である。
「……きっと、その理論も破綻している。有限だからこそ価値のあるそれを、無限にまで昇華させたとして――それには一体どれだけの価値がある?」
緋翠・華乃音(終奏の蝶・f03169)は言う。
人の生命は有限である。
だからこそ、刹那に輝く虹色の輝きこそが美しいのだ。猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の言葉にはそれがない。
どれだけ強大なサイキックの輝きが在ったとしても、華乃音にはそれが美しいものに、価値あるものには思えないのだ。
「虹の彼方に征けば、あなたもわかるでしょう。あなたも見てみたいとは思いませんか? すべての人々の精神が同一となった差異のない素晴らしき世界を。そこには差別も迫害も、ましてや怒りもない。喜びに満ちた楽土があると――」
「妄想の押しつけも大概にしてほしいものだが」
それを華乃音は切って捨てる。
妄想である。彼女の語る言葉は全て、かつてありし『トゥーモル・ハンブラ』という女性の夢想でしかない。
差別も迫害も無いと言いながら、自身の行いはなんだというのだ。
己の子孫を殺し、己の力を完成させるためだけを目的とする。『レミシオン』をかばうように立ちふさがりながら、華乃音はダガーナイフと拳銃を構える。
互いの視線が交錯し、体が跳ねるように駆ける。
華乃音の戦術は合理性を研ぎ澄ましたものである。動きの全てに意味があり、全てが布石となって華乃音が目指す勝利への方程式となって彼を突き動かす。
「妄想ではありません。それがわからないのですか、猟兵」
言葉を交わす意味すらない。
掌が伸ばされる。あれに触れられてしまえば、精神を取り込まんとするエネルギーが注がれ、こちらの弱点や意図が読み取られてしまう。
そうなってしまえば、こちらの勝機はほぼない。今は『レミシオン』という戦いの要を失わせないことが優先事項である。
「君は俺には勝てない」
それは宣言ではなかった。ただの事実であった。
どれだけ強大なオブリビオンであったとしても華乃音は負けない。オブリビオンである『トゥーモル・ハンブラ』は出会ってしまったのだ。
逢魔ヶ刻(フィンブルヴェトル)に華乃音という猟兵と。それは即ち、過去の化身としての敗北を意味する。
戦いに絶対はない。
けれど、勝利を手繰り寄せるための手段と術理がある。
深追いは決してしない。
あちらの狙いはこちらの精神を取り込むこと。そのユーベルコードの起点が掌であるのならば、それを意識していればいい。牽制のようにはなってくるサイキックのちからも不可視であるが、華乃音の連綿と紡がれてきた武術、暗殺術、銃術が全てを完治し、全てを打倒する。
それはまるで砂漠の逃げ水の如く『トゥーモル・ハンブラ』を翻弄し続ける。
戦いの主導権は今、華乃音が握っていた。
「あなたは欲しないのですか。永遠を。この有限の先に続く無限の光を。人はそれを求める。どうあっても己の死を乗り越えられない。だからおそ、死の先に征く者の先導が必要なのです」
それはある意味で真理であったのかも知れない。
人は死を恐れる。恐れるが、それでも其処へ向かっていく。どうしようもないことだ。だが、華乃音は、それを一蹴する。
「過去は二度と戻らない。時は逆巻くことをしない。人の心は欠陥を抱えている。俺はそれを自覚している。だからこそ、一瞬、一瞬の刹那を懸命に紡ぐ。それが、誰かのために、人のためになることだと信じているからだ。望まぬ幾多の別離がどれだけ俺の心を散々に切り刻もうとも――」
それもまた虹の輝きの如く、彼という生命を輝かせる。
練磨の果てにあるものがなんであるのかをまだ知らない。
けれど、それでも灰色に鈍く輝く永遠より、刹那の虹色に輝く心がほしいと最速最短にして最善、最良の一撃が『トゥーモル・ハンブラ』の永遠を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
星野・祐一
よくもまあ好き勝手いいやがって
あんたの頭の中にしかない世界をどう自覚しろってんだ!
[SPD]
何時でも【かばえ】るようレミシオンちゃんの前に出つつ
2丁の熱線銃で攻撃(2回攻撃、弾幕
防御は【貫通攻撃】でぶち抜いて回避は【誘導弾】で対処な
相手のリングは軌道を【視力で見切り】銃で迎撃するか
【瞬間思考力】で腹に当たる部分を狙って相手に蹴り飛ばす
おらっそっちに返すぜ受け取りな!(カウンター
流星の【マヒ攻撃】で相手が【体勢を崩したら】
間髪入れず雷鳴のUCを叩き込むぜ
未来を語っている癖に未来を見ていないあんたに
未来の子孫であるレミシオンを消そうとしたあんたに
俺達の在り方を決められてたまるかよ!
アドリブ歓迎です
放たれたナイフの一撃が猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の喉元を引き裂く。
血が吹き出し、その血潮の熱さが彼女の生命としての激烈なる衝動を示していたのかも知れない。
他者を取り込み融合するユーベルコード『精神侵略』。それは数多の生命体の集合体と成るための力であり、膨大な数の生命を取り込んだからこそ、彼女の体の中には火山を思わせるような暴力的なまでのサイキックが蓄積されていた。
「何も理解しようとしない。人はいつか死ぬ。有限である生命であるからこそ無に変える。ならば、無の先に到れるようにとわたしが導かねばならないのです」
切り裂かれた喉元をサイキックが塞ぐ。
彼女の背に負ったロジカルリングが回転し始め、宙を舞う。それは自動追尾に寄って猟兵たちが護る己の子孫である『レミシオン』を狙っていた。
「よくもまあ好き勝手いいやがって。あんたの頭の中にしかない世界をどう自覚しろってんだ!」
星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は走る。
間に合えと叫ぶように戦場となった宇宙船のドッグを駆ける。猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の狙いは『レミシオン』だ。
彼女さえ殺してしまえば、ユーベルコード『精神侵略』の力は猟兵たちを飲み込む。そうなれば彼女の勝ちなのだ。
ロジカルリングに狙われた『レミシオン』の前に達、祐一はかばうようにして腕を交錯させる。
熱線銃の牽制が間に合わない。身を挺して護る。回転するロジカルリングの刃が肉を斬り、血を噴出させる。
「ぐっ――!」
痛みを振り払ってロジカルリングを弾き飛ばし、構えた熱線銃を放って迎撃する。何処まで行っても猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の個としての力は猟兵を凌駕している。
力の差は歴然であった。
だが、それが一体なんの意味になる。力が及ぶ、及ばざると猟兵は戦い。世界の悲鳴を聞き、その世界に住まう人々のために戦う。
その瞳が見据える未来には猟書家たちはいない。存在していいはずがない。己の欲望のために人々を傷つけるものを祐一は許しはしないのだ。
「おらっ! そっちに返すぜ、受け取りな!」
ロジカルリングの軌道を完全に読み切り祐一は、その環の腹を蹴り飛ばしロジカルリング事態の軌跡を強引に捻じ曲げ『トゥーモル・ハンブラ』へとカウンターのように跳ね返す。
「無駄なことです。わたしのサイキックは完全なるもの。膨大なる精神を取り込むことと、それ事態がわたしの力の強大さを知る良い機会なのですが……猟兵はそれを理解しないようですね」
跳ね返されたロジカルリングを受け止める『トゥーモル・ハンブラ』が微笑む。
それは児戯に等しいものだと笑うのだ。
「全ての生命体に祝福溢れる未来。それこそがわたしとひとつになること。無限光の彼方をあなたも、すべての人々も望んでいるのです。それをわかるのです、猟兵」
それは抵抗する猟兵達、そして『レミシオン』たちを低く見積もった言葉であった。ただの愚弄でしかない。
だからこそ、祐一は否定する。
「未来を語っている癖に未来を見ていないあんたに未来の子孫であるレミシオンを消そうとしたあんたに――!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
どれだけ言葉を弄しようとも、わかりあうことはない。きっと精神侵略によって精神を取り込まれたとしても、祐一の精神は、彼女の語る言葉を是としないだろう。
蹴り飛ばしたロジカルリングの一撃。
その次の瞬間に祐一は飛んでいた。すでに力はため終わっている。手にしたリボルバー型熱線銃から放たれた青白い巨大な光弾が放たれる。
それは雷鳴の如き一撃であり、冬雷(トウライ)のように苛烈なる力を放つ。
凄まじき轟音が響き渡り、『トゥーモル・ハンブラ』を穿つ。
「俺達の在り方を決められてたまるかよ!」
放った光弾の一撃は『トゥーモル・ハンブラ』の胴に大穴を開けていた。
それまでに凄まじき一撃。
リボルバー型熱線銃の砲身から立ち込めるエネルギーの残滓の向こう側に、『トゥーモル・ハンブラ』は見ただろう。
どれだけ己の強大さを知らしめても、決して屈することのない、不撓不屈なる意志の輝きを放つ祐一の瞳を――。
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【WIZ】
相手の合意なく力を取り込んでいくのを何というかわかるかのー?
そいつはエゴじゃのー、所詮それは分かり合えん傲慢という奴じゃのー
テレポートで背面に回り込んで首を掴んでくるのを予測して、AIドクトル操作のキャバリアKIYOMORIをタイミングよく突入させ、隙を作る
UC「23の雷雲の無限竜を制し者の権能」を発動して、辺り一面を覆う雷雲の海で視界を隠すと共にレミシオンも隠して一体の帝竜に守らせる
そして分身体で突撃と共にブレスすのは囮で、本命の帝竜の雷ブレスを放ち、それと同時にKIYOMORIからのレーザー射撃・ミサイル一斉攻撃を仕掛けていく
最強のサイキッカーは帝竜相手でもいけるかのー?
生命体の持つ心とは複雑怪奇なるのものである。
すべてが一つの種として認識されていても、個は同一ではない。だからこそ、多様性が生まれ文化が生まれる。文化が生まれれば、其処に在るのは同一ではない何か別のものが在る。
けれど、人は差異があるからこそ争う。
他人が理解できないと嘆いた言葉は、誰かを傷つけることも在るだろう。それが当然のことであると嘆くこともあれば、それを受け入れるものも在る。
傷つくということと練磨されることは同じであるかも知れない。摩擦を受け入れられない心の許容もまたそれぞれ違う。
だからこそ、永遠に分かりあえない他人がいることが、人の心を豊かにしていく。それを同一のものとしたいと願うのは――。
「相手の合意なく力を取り込んでいくのをなんというかわかるかのー?」
その問いかけは一人の猟兵、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)の言葉であった。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の肉体は今、消耗を強いられている。
どれだけ数多の生命体の精神を取り込み融合してきた彼女であっても立て続けに絶命たる一撃を加えられ続ければ、それを取り繕うために要するサイキックの量もまた膨大なものであろう。
胴に開いた大穴を塞ぐサイキック。
その力は徐々に彼女の力を削いでいた。
「あらゆるものが同一に成ることこそが、人の心を救う術なのです。わたしはメシアでもあるのです。それが猟兵にはわからない。差異なき世界の先にあるのが無限光の彼方。地平線の如き平穏なる世界があるのです。それを目指すことに、人の意思など――」
「そいつはエゴじゃなのー、所詮それは分かりあえん傲慢というやつじゃのー」
メイスンの言葉の通りであった。
エゴ。
それこそが生命体の持つ強烈なる自我。己という存在。だからこそ、『トゥーモル・ハンブラ』はその境目をなくそうとユーベルコード『精神侵略』によって飲み込もうとするのだ。
「ならば、あなたは要りません。虹の彼方に至るのはわたしたちだけでいい」
瞬時に現れるのはテレポートに寄るメイスンの背後を取る『トゥーモル・ハンブラ』。それは凄まじきサイキックの力であった。
彼女の首を掴み、その圧倒的なサイキックの力でもって首をへし折ろうとするのだ。
だが、それを防いだのはドッグに強襲するオブリビオンマシン『清盛』。本来であればキャバリアの主であるメイスンが搭乗しなければ動かせないはずの機体が自立するように動いているのはAIによる自律操縦のたまものである。
それが一瞬の隙であった。
鋼鉄の巨竜の如きキャバリアが『トゥーモル・ハンブラ』を襲う。メイスンの首を取り損なった彼女はサイキックの力に寄って防壁を張り巡らせ、『清盛』の一撃を防ぐ。
「所謂ダブルドラゴンという奴じゃのー」
周囲を覆うのは雷雲の海。
否、23の雷雲の無限竜を制し者の権能(インフィニティドラゴン・ワーム)である。帝竜ワームの培養体と分身体が雲海の中で蠢く。
猟兵たちにとっての要であり、ウィークポイントである『レミシオン』を一体の帝竜に守られ、メイスンは雲海の中で煌めくユーベルコードの輝きを発していた。
分身体であるワームと共にメイスンは『トゥーモル・ハンブラ』へと突撃する。ブレスを放ち、『トゥーモル・ハンブラ』の張り巡らせたサイキックの障壁を引き剥がす。
「どれだけ巨大であろうとも、それが生命体であるのならば」
それは『精神侵略』の虜となることを意味する。
ならば、『トゥーモル・ハンブラ』にとって帝竜であっても障害ではなかったのだろう。しかし、それはメイスンによる囮でしかない。
帝竜から放たれた雷撃の一撃がサイキックの障壁を引き剥がされた『トゥーモル・ハンブラ』の肉体を穿つ。
「最強のサイキッカーは帝竜相手でもいけるかのー? どちらにしても滅びは必定。『トゥーモル・ハンブラ』、雷雲の中に沈むといいのー!」
さらに放たれる『清盛』のレーザー射撃とミサイルの一斉射が雷雲の中を切り裂いて、『トゥーモル・ハンブラ』の体を穿つ。
それはどこまでいっても自身と同一であることしか認めない彼女のエゴを散々に砕くには十分すぎる攻撃であり、メイスンが要るかぎり、己のユーベルコード『精神侵略』唯一の弱点である『レミシオン』の抹殺が敵わぬことを意味していたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
貴女の目指す世界には善も悪もありません
それはある意味で理想郷とも言えますが…
私が標とした御伽噺の存在する余地もないのでしょう
レミシオン様をかばい防御
頭部に接触された際に●瞬間思考力で自己●ハッキング
頭部パーツの接続解除し首無しになりつつUCで干渉防御
(戦機としてこの世に生まれ落ちたが故に。
戦い手を汚すことでしか騎士の役目を果たせぬ以上、御伽の騎士などに成れぬと自覚して尚戦う己が不甲斐なさ…)
数瞬遅く少し読み取られましたが…
瞬時にUCで敵の位置把握しつつ首無しの無様な姿で近接攻撃●騙し討ち
ですがそれが何だというのです
届かぬ理想を目指し歩む道程…そこからしか得られぬ物もあります!
雷雲の中に蠢くワームが放つ雷撃と鋼鉄の巨竜が放つレーザーとミサイルの乱舞が猟書家『トゥーモル・ハンブラ』の体を散々に撃つ。
それはどれだけ強大なサイキックとユーベルコードによって他者の精神を取り込み、融合してきたとしても見果てぬ夢であったということを彼女に知らしめるには十分であったのかも知れない。
だが、『トゥーモル・ハンブラ』は、己の欲望を正すことはしない。
それは過去の化身であるが故であったのかもしれない。過去に歪んだ者。それがオブリビオンであるというのならば、『これから』などない者であるに等しいのだから。
「貴女の目指す世界には善も悪もありません。それはある意味で理想郷とも言えますが……」
そう、善悪のない世界。
それは差異がない世界であるのと同じであろう。何処まで行っても同一。他者という存在はなく、争いのない世界。
だが、そこに発展性はない。誰も傷つかぬということは、誰もが傷を癒やすことを知らぬということだ。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとってそれは、彼が標とした御伽噺の存在する余地もないものであった。
確かに理想郷である。
戦いのない世界。それは己の存在否定であったが、同時に目指すべきものでも在る。知性あれど、その感情はなく。けれど、揺れる電脳が導き出す揺らぎのさなかにこそ、トリテレイアが標とするものがあるという矛盾。
それを抱えたまま、いや、抱えるからこそトリテレイアは猟兵という存在であり騎士であるのだろう。
「ならば、あなたもわたしと、わたしたちと一つになりましょう。そうすればあなたの懊悩もまた――救われる」
テレポートの後にトリテレイアの頭部に触れる『トゥーモル・ハンブラ』。
護衛対象である『レミシオン』を庇い、トリテレイアは不意を突かれた。だが、それは一瞬のことであり、瞬時にトリテレイアは頭部の接続を断つ。
まるで断頭台に登ったかのようにトリテレイアの頭部が機体の上から落ちる。
それは人型をしているがゆえに、ショッキングな光景であったことだろう。だが、首無しとなった機体が『トゥーモル・ハンブラ』を蹴り飛ばす。
電脳があるはずの頭部。
それを喪ってもなお動くのは彼が、式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン(トリテレイアシリーズ・シリアルナンバーゼロナイン)であるからだ。
電子干渉完全遮断し、常に敵を補足する護衛機としての本懐を取り戻す。
だが、それは同時に諸刃の剣でもあったことだろう。
出力と演算のリミット解除を代償にし、けれど、敵の超常の、サイキックの力を正面からねじ伏せるだけの自己が生まれる。
「戦うための存在として生まれたのですね。けれど、炉心は燃えている。己が騎士であらんとするために。ああ、それがなんとも悲しいことでしょう。その悲しみをあなたは抱えているのですね。御伽の騎士。いえ、そう成れぬ自覚あるからこそ、あなたの知性はあなたを許さない。不甲斐ないと思っているからこそ、力を振るう矛盾」
『トゥーモル・ハンブラ』は笑う。
それは人の内面を盗み見たことによる笑い超えであった。楽しそうに嗤っている。なぜ、と問うにはあまりにも酷であった。
自身の存在が如何なるものか。
それを自覚することのできる戦機であるからこそ、トリテレイアは懊悩という電脳の揺らぎに苦しむ。だが、その苦しみこそがトリテレイアを騎士へと近づけさせる。
決してたどり着くことのできない道行であれど、それは決して誰かに貶められていいものではない。
「ですが、それがなんだというのです」
トリテレイアは剣を振るう。
「無様です。滑稽です。見てなどいられません。矛盾を抱え、矛盾を正そうとしない戦機など、存在する意味があるとでも?」
『トゥーモル・ハンブラ』が言う。
それは真実であったのかも知れない。本来の環境であれば、己の電脳は初期化されてしかるべきものであっただろう。
今は猟兵として存在しているからこそ、己という存在が在る。だが、それが正しいのかと問われれば――。
「そんな言葉に耳を貸す必要なんてない! 存在する意味だとか! 矛盾だとか! そんなの人であれば誰だって抱えていることでしょう! みんな違うのよ! 生きているって、そういうことでしょう!」
『レミシオン』が叫ぶ。
それは彼女の泣き叫ぶような声であった。己が守らねばならぬ対象。その彼女が声をあげる。決して己がたどり着くことの出来ない境地で、己のために叫ぶのだ。
トリテレイアの炉心が燃える。
その叫びに答えねば、己が己ではないというように燃える炉心に従うようにトリテレイアの首なしの機体が剣を振るう。
凄まじき剣速でもって繰り出された斬撃が『トゥーモル・ハンブラ』の肉体を散々に切り刻む。
「届かぬ理想を目指し歩む道程……そこからしか得られぬものもあります!」
その答えを見出すため、そして、彼が守らねばと誓った生命のためにこそ、トリテレイアという存在は世界に輝くのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
よーし!
(起きたシリカ(猫)とヒロイン力の回復したレミシオンさんに引っ掻かれたクノイチの図をご想像ください)
気を取り直してここからが本番です!(キリッ
敵はこちらの精神的弱点を突いてくる
ふっ、今の私に精神的弱点など…(足元のシリカを見る
あ、あああるわけないじゃないですか!
レミシオンさんシリカ抱いててもらえます?(拘束する作戦
とにかく!【VR忍術】でいきます!
必殺!地走りの術!
地面を伝う衝撃波で攻撃です
飛ばれるとかわされますが想定内
動きを見切るための誘い手です!
接近されると同時にダメージ覚悟のカウンター
「この一撃に勝敗を賭けて!いざ参ります!」
【乾坤一擲】の一撃です!
※アドリブ連携OK
「よーし! 気を取り直してここからが本番です!」
キリっとした表情でサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は奮起していた。
すでに数多の猟兵に寄って消耗を余儀なくされていた猟書家『トゥーモル・ハンブラ』。その姿はサイキックの膨大なる力によって取り繕われているものの、それでも見れば分かる。
アレだけ強大であったサイキックの力は乏しく、彼女の姿を保つので手一杯である。ここまで追い詰めたのは猟兵達のたゆまぬ追撃の賜物であったことだろう。
だが、当のサージェはまあ、なんというか、いつもどおりというか、大変に締まらない様子である。
白猫又であるシリカは起きると同時にヒロイン力の回復した『レミシオン』と共に抗議のひっかき攻撃を受けた後である。もふもふして勝手に気力を充電されていたこともそうであるが、まさかの酔いがあるとは思っていなかったのだろう。
「で、でも結果オーライですよ! ね、シリカ、ね?!」
そんな風にたしなめて漸くにしてサージェは戦線へと飛び出すのだ。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は必ずこちらの精神から弱点を読み取ろうとする。それはこれまでの猟兵達の戦いを見ても明らかである。
ユーベルコード『精神侵略』は強大である。あらゆる生命体を取り込み、融合してきた力は言うまでもない。
だが、サージェは得意満面であった。
「ふっ、今の私に精神的弱点など……」
そう、気力も充実した彼女に隙はない。どれだけ精神的に揺さぶられようとも折れぬ心と揺らがぬ心があるのだ。
だが、ちら、と足元の白猫又のシリカの姿を見て途端に動揺が走る。
「あ、あああるわけないじゃないですか! レミシオンさん、シリカ抱いててもらえます?」
きっと事件が解決した後にこってり絞られる。
そんな未来をサージェは幻視する。いや、確実に訪れる未来であったことだろう。こんなことを敵に知られるわけにはいかないので、レミシオンによってシリカを拘束する作戦……もとい保護をしてもらおうというのだ」
「とにかく! いきますよー!」
気を取り直して、再度サージェは駆ける。地面を駆け抜けるは衝撃波。クノイチらしいVR忍術によって再現される地走りの術は、しかし『トゥーモル・ハンブラ』にとっては想定内の攻撃であったのだろう。
サイキックの力によってふわりと空を飛び、『トゥーモル・ハンブラ』は手をのばす。
サージェの精神にエネルギーを流し込み、同一化させてから弱点を探り取り、サージェを追い詰めようと言うのだ。
「あなたの存在は揺らいで揺らいで、そして固まったもの。人の意識と思いと、何か別のものが……そういう存在。人ではないけれど、知性があって、精神がある。でも、だからこそわたしたちと同一に成ることができる」
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』にとって、それは当たり前のことであったのだろう。
知性があるのであれば、精神もまたある。
なればこそ、全てを取り込んで無限光へと至らんとするのが『トゥーモル・ハンブラ』の欲望である。
その掌に触れてしまえばサージェもまた取り込まれる。
だが、サージェにとってそれは想定内であった。
「動きを見切るための誘い手です!」
眼前に迫る掌。だが、サージェは恐れない。己の内面を知られることなど、彼女にとってはなんてことのないものであった。
彼女を形作るのは嘗ての電子の海に漂っていた人々の思いや、概念である。
それによって構成される彼女の体はいわば、『トゥーモル・ハンブラ』と同じようなものであった。
膨大な人の精神が融合した存在と、膨大な数の人々の思いや概念が結晶した存在。
そこにあるのは思いの強弱だけではない純粋さもまた在っただろう。
だから何も奪われることもない。融合して取り込まれることもない。サージェはサージェというクノイチでしかないのだから。
「この一撃に勝敗を賭けて! いざ参ります! くろすっ! いんぱくとーっ!!」
放たれるはカウンターの一撃。
ダメージを覚悟していたサージェの決死の一撃たるカタールの切っ先が乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)となって『トゥーモル・ハンブラ』の体を穿つ。
旋風のような一撃が彼女のサイキックの障壁を穿ち、その真芯を捉える。
それは彼女にとって不可解な一撃であったことだろう。
電子の海より生まれた概念の個たるサージェならば、己言葉もわかるはずだと思っていたのだろう。
到底理解できぬ行動。
だが、同時にそれこそが個を集め、全へといたろうとすることの愚かしさをサージェ自身の存在を持って示す一撃であったのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
……なるほど、理解できました。私があなたを理解できない理由が、ですが。
私の故郷はそもそもその日を生き残ることができるかどうかすら危うい、そういうところです。何を目指してどう生きるべきかなんて話はもっと余裕のある人間にすることですね。
レミシオンさん、振り落とされないようしっかり掴まっていてくださいね。
鳥の形に生成した「氷晶ゴーレム」にレミシオンさんと一緒に乗り、【ブリザード・マニューバ・ブースト】を使用します。
延々と追尾してくるのは厄介ですが……単純にこちらの方が速ければ追いつけはしません。
速度を活かして回転リングを振り切り、敵の頭上から「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸の連射を撃ち込みます。
「なぜです。ひとつなれば、苦しみも悲しみも感じなくて済むのです。あなたたちが抱えてきた悲しも、苦しみも憎しみも喜びも何もかもが一つになれば、均一になるのです。感じなくていいものを感じるために生きるなど愚かだとは思わないのですか?」
穿たれた体は最早サイキックによる修復が間に合わないのだろう。
猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は消耗しきった姿であったが、未だその心の内側にある欲望を濯ぎきれていなかった。
それどころか、益々持って燃え盛る情念の炎のように身を焦がす衝動として、己の優ーベルコード『精神侵略』の完成を夢見るように己の子孫である『レミシオン』を抹殺せんと迫るのだ。
「……なるほお、理解できました。私があなたを理解できない理由が、ですが」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)にとって猟書家『トゥーモル・ハンブラ』は理解の極地にあるものであった。
彼女の言うところの無限光とは結局の所、持つ者だけが夢想するものでしかない。気まぐれに与えられたギフトの如き力を、他者もそうであるという不理解の元に振りかざしているだけに過ぎぬのだと気がついたのだ。
「私の故郷はそもそもその日を生き残ることができるかどうかすら危うい、そういうことろです」
陽の光差さぬ世界。
そんな世界にあって、他者を気遣うことのできる者は多くはない。どうやって生き、どのようにして死んでしまうか。
それしか考えられぬほどに極限まで追い込まれた人々の性がある。そんな世界に生きたセルマにとって、『トゥーモル・ハンブラ』の言葉はただの夢想でしかない。
「何を目指してどう生きるべきなんて話はもっと余裕ある人間にすることですね」
だからこそ、セルマは彼女を討つ。
もはや、彼女にとって『トゥーモル・ハンブラ』はスコープの先にある獲物にすぎない。人が獣の心の内を理解できぬように、獣が人の心の内を理解できぬように、互いに出会ってしまえば生命のやり取りしか存在しない。
鳥の形に生成された氷晶ゴーレムの背に『レミシオン』と共に乗り込み、空へと舞い上がる。
「それは――わたしが殺さなければならないもの! 必ず殺して、わたしのユーベルコードを!」
追いすがる『トゥーモル・ハンブラ』の姿は鬼気迫るものがあった。
古のサイキッカー。
彼女が目指したのは、たしかに最初は理想的な平和な世界であったのだろう。誰かのために。そうあるべきと踏み出した一歩は思いこそ間違いでないが、最初の一歩を踏み違えていたのだ。
放たれたロジカルリングがセルマたちを追う。
アレに追いつかれてしまえば、セルマは愚か『レミシオン』は生命が危ういだろう。
延々と自動追尾してくるロジカルリングの刃は鋭い。
「厄介ですが……レミシオンさん、振り落とされないようにしっかりと捕まっていてくださいね――ええ、追いつかせはしません」
セルマの瞳がユーベルコードに輝く。
ブリザード・マニューバ・ブースト。それは凄まじき速度で飛翔する氷晶ゴーレムから放たれるセルマの氷の弾丸である。
どれだけ自動追尾してくる武器があろうとも、追いつかれなければいい。単純にこちらが速ければ、追いつかれることなどないのだ。
回転するロジカルリングを振り切り、セルマの瞳がスコープを覗く。
狙いは既に定まっている。『トゥーモル・ハンブラ』の頭上を取ったセルマにとって、それは必中なる一撃。
だが、限界を超えるのは猟兵だけではない。渾身のサイキックを絞り出し『トゥーモル・ハンブラ』のちからが増す。
ロジカルリングの速度が上がり、背後からセルマを狙う。
「――危ないっ!」
其処に立ちふさがったのは『レミシオン』であった。彼女のはなったサイキックが僅かではあったけれど、ロジカルリングの軌道を逸らす。セルマの耳元をかすめる回転する刃。
傷みが走るが、それでもセルマの瞳は真っ直ぐに『トゥーモル・ハンブラ』をスコープ越しに見据えていた。
「終わりです。古のサイキッカー。理解できなかったあなた……」
引き金を引く。
銃声は一度きり。だが、凄まじき連射速度に寄ってかなさった氷の弾丸が放つ銃声は、過たず『トゥーモル・ハンブラ』の額を二度貫き、その体を霧散させる。
氷晶ゴーレムの上から見下ろした『トゥーモル・ハンブラ』の姿はもう見えない。骸の海へと還っていったのだろう。
へたりこむ『レミシオン』。
彼女とセルマの瞳に映ったのは、眼下にて眠りから目覚めた人々の姿。彼等は一様に何があったのかを覚えていないだろう。
だが、宇宙船に残された映像や記録、それらを調べるにつれ、猟兵達による激戦と彼等を救うべく戦ってくれた彼等への感謝が湧き上がる。
例え一つにならなくとも。
それでも人々が別々に輝く色こそが、いつかきっと虹の彼方へと人のまま征くことができるだろう。
それがどんなに長い年月を懸けた後であったとしても。
嘗ての古のサイキッカーが願った平穏へと紡いでいく道標になるのだから――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年12月03日
宿敵
『トゥーモル・ハンブラ』
を撃破!
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