エルフの森とか燃やしちゃえばよくない?
●予知
「――じゃ、とりま囲んで端から焼いてく感じでよろー」
「りょ」
独特な言葉遣いで意思疎通を図る女戦士たち。
彼女らがトリガーを軽く引けば、鈍く光る筒から竜の息吹にも似た炎が噴き出す。
「なにこれめっちゃ燃やすじゃんエグすぎてハーブ生える」
「もう火矢とか使えんわ。てかエルフ詰んだな」
木々の悲鳴が響く暴虐的な景色の中に、けらけらと軽い笑い声が起こった。
其処はアックス&ウィザーズに点在する、エルフの森の一つ。
世界樹イルミンスールから株分けされた“聖木フェンネル”を抱く、深き緑の国。
他種族との交流を断ち、慎ましく平穏に暮らしていたエルフたちを脅かすのは、この世界に似つかわしくない武器を携えたオブリビオンの一団と、そして――。
●詳説
「――猟書家の一人、チーフメイド・アレキサンドライトです」
テュティエティスが語ると、揺らぐグリモアベースの風景が一面の緑に変わった。
樹上には幾つもの家々が並び、とがり耳の者たちの姿も彼方此方に窺える。
「アックス&ウィザーズのエルフたちは世界中で暮らしていますが、その中でも他種族との交流に消極的な方々は、深い森の奥深くで同胞のみの集落を築いているようです。そうした“エルフの森”は、各地に数多く存在しているとか」
それらに共通するのは、他種族の侵入を阻む“迷いの森”であること。
そして、世界樹より分かたれし聖なる木を一本、何処かに備えていること。
「此度、猟書家に狙われた森にもフェンネルという名の聖木があるようです。それこそが森を迷宮たらしめている根源であり、侵略を受けた要因でもあります」
聖木フェンネルは神秘の力によって炎すらも拒む。
その性質を逆手に取り、猟書家は“森全体を焼き払う”ことで聖木を見つけ出そうとしているのだ。さらに焼き殺したエルフを、オブリビオンとするつもりでもいるらしい。
「オブリビオンの攻撃開始には間に合いませんが、それでも炎が森全体へと広がる前に食い止めることは出来るはず。しかし今を逃せば、平穏な森も住人も悉く灰となります」
転移先は、エルフたちの集落。
長命による他種族との時間感覚の差異を厭ってフェンネルの森に篭もった彼らは、自然への信仰を重んじている為、神秘的事象への順応力が高い。猟兵たちが突然現れても、それをすんなりと受け入れ、協力してくれるはずだ。
「エルフたちの指示で動けば迷う心配もありません。一方、敵は侵略を始めて間もなく彷徨いだすでしょう。そこを樹上から一方的に攻撃すれば、素早く撃破できるはずです」
敵の集団は蛮族の女戦士たちだが、装備は石や鉄の武器ではなく、猟書家から与えられたと思しきスペースシップワールドの携行砲台“アームドフォート”。
射程の長さや破壊力だけでなく、ユーベルコードで反応速度を増大させてからの精密な連射や、獣の咆哮じみた叫びで相手を竦ませてから放つ砲撃には気をつけるべきだろう。
「蛮族を退ければ、幹部猟書家のチーフメイド・アレキサンドライトも姿を現すかもしれませんが……ともかく、まずは侵攻と延焼を食い止めなければなりません。聖木と、そして何より、無辜のエルフたちを守るため。皆さんの力を貸していただきたいのです」
頭を下げて語り終えると、テュティエティスは神秘の森に通じる道を開く。
天枷由良
●1章:サヴェージ・ギャルズ(集団戦)
集落から樹上を移動して迎撃します。
エルフたちは猟兵の出現も敵の侵略も冷静に受け止めてくれるので、普通に話をすれば必ず一人は道案内をしてくれますが、神秘的な雰囲気を醸し出してみると、より多くのエルフたちの篤い信頼や畏敬の念を得られるかもしれません。
敵は全て、砲撃と火炎放射を行えるアームドフォートを装備しています。また理由は不明ですが、少々癖のある喋り方をするようです。
●2章:チーフメイド・アレキサンドライト(ボス戦)
サヴェージ・ギャルズが全滅すると現れます。
作戦失敗の憂さ晴らしとして、猟兵やエルフたちを攻撃します。
●プレイングボーナス……エルフたちと協力し、共に戦う。
エルフたちは道案内だけでなく、ロングボウによる援護射撃や、水弾・風刃の魔法攻撃、消火活動も行ってくれます。個々の力は猟兵に及びませんが、扱い方次第で頼もしい戦力になってくれるかもしれません。
猟書家を撃退できれば、今後“聖なる木の力が必要とされる状況”になった時、フェンネルの森のエルフたちは必ず協力すると約束してくれるでしょう。
よろしければマスターページ等もご確認ください。
ご参加、お待ちしております。
第1章 集団戦
『サヴェージ・ギャルズ』
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POW : アマゾネス・スマッシュ
単純で重い【武器または素手、素足】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : バーサーカー・ドライブ
【トランス状態になる】事で【狂戦士モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : フィアー・ビースト
【口】から【野獣のような咆哮】を放ち、【恐怖を与えて萎縮させること】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:Nekoma
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「筒持ってるだけで燃えてくとかくっそ楽~みたいな?」
「てか楽勝すぎて逆にしんどい」
「……あれ? どっちから来たんだっけ?」
「なんかみんないなくなってるんですけどー! ぴえん」
森の四方は火の海であり、混沌でもあった。
他方、エルフたちは集落の其処彼処で祈りを捧げていた。
迫る絶望には気付いている。
それが、彼らだけでは抗いがたいものであることにも。
「……フェンネルの木を捨てて逃げるなど出来ぬ。我らが祈りも虚しく、焔に焼かれるが運命というのならば、せめて終焉の時まで共に在ろうではないか」
一際立派な大木の側に跪き、長らしき老エルフが両手を合わせた。
神咲・七十
アドリブ・連携お任せ
神秘的・・・
(それ出来そうな人でこの場に会う人が思いつかない)
が、頑張りますので協力してくださ~い(ぴょんぴょん)
(エルフの人達には案内と消火、弱らせて無防備になった敵のトドメをお願いし、自分はUC『制約:独裁者』を使い、迷ってる敵に空中から気づかれないよう飛びながら接近して、大剣で攻撃し弱らせて、空中に投げ飛ばしトドメをエルフさん達にお願いし、効率的に次々と同じような方法で倒します。)
何か、さっきからあの敵たちの会話を聞いてると変な感じの喋り方してますね・・・(どこかで聞いたような気もしますが)
・・・もしかして、今回の猟書家の人も同じような喋り方だったりするのでそうか?
●神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)
神秘とは、人知で推し測れないような物事を指す。
つまりそんなもの、如何に猟兵が生命の埒外にある存在であろうと、気軽に醸し出せと言われて「はいどうぞ」なんて容易く出るものでもない。
(「ど、どうしましょう……」)
エルフの集落へ跳ぶ間際となっても、七十は未だ思案の迷宮に囚われたまま。
しかし、事態は彼女の心中など関わりなく進む。景色が歪み、うねり、光と闇の合間に漂うような奇妙な感覚を経て、再び両足に大地の感触が戻ってきた時。七十の前にはとがり耳の青年が数人ばかり、跪いて祈りを捧げていた。
「……あ、貴女様は、いったい……?」
気配を感じて顔を上げた一人が、驚愕を露わに呟く。
その視線を浴びて、いよいよ七十の緊張は頂点に達した。
「えと、あの、その……」
如何なる言葉を返すべきなのか。
答えには辿り着けないまま、ぱくぱくと口を繰り返し開閉する事暫く。
進退窮まった七十は――もはや自分の方が助けてほしいとばかりに、半ば涙目で声を上げた。
「が、頑張りますので協力してくださ~い!」
ぴょいんぴょいん。
困惑が小さな跳躍として発現すれば、意外や豊かな胸元も揺れる。
それを呆然と眺めた後、エルフの若者の一人が拳を握りしめて立ち上がった。
「……ぼ、僕に出来ることならなんでも! 精霊様!」
果たして、他に当てはめられるものもなかったのだろう。
集落は森の奥深く。其処を住処とするエルフ以外の者は、聖木の力によって彷徨い、外界に追い返されるのが常。
ましてや、今は四方が火の海と化しているのだ。常人が何かの間違いで紛れ込むなど万に一つも有り得ない。
ならば、内から湧いたとするのが道理であって。エルフたちにとって忽然と現れる理外の存在とは、即ち森に宿る超自然の精霊たち……という事のようだった。
「聖木フェンネルの御使いたる精霊様。どうぞ何なりと、僕らを手足の如くお使いください」
「え、ええと。それでは……」
特別、何をしたと言うわけでもないのに敬服されるのは妙な気分だ。
依然として困惑を抱いたまま、しかし七十は為すべくを為そうと指示を出す。
手始めに消火と戦の備え。それが整い次第、侵略されている森の外縁部への案内。
「私が敵を弱らせますので、トドメはお願いします」
木々を跳び渡る最中に呼び掛けると、弓を手にしたエルフたちが引き締まった表情で頷く。
精霊(と思い込んだもの)の頼みとあらば、否が応でも気合が入るものらしい。
その気合を解き放つ時は、すぐに訪れた。
「まじエルフとかどんだけ奥に引きこもってんだよ」
「そろそろ飽きてきたんですけどー!」
森一つを焼き払うという暴虐も、今の彼女たちには単調な作業でしかないのだろう。
口々に不満を語りながら、女戦士たちはぞろぞろと気怠げな足音を立てている。
(「……確かに変な喋り方ですね……」)
七十は首を傾げる。
何処か耳にしたような覚えもある言葉遣いだが――。
(「……まあ、いいでしょう」)
ともすれば、女戦士たちを差し向けた猟書家も似たような喋り方なのでは……なんて疑いも過るが、今はとにかく敵を倒し、延焼を食い止めなければならない。
「では皆さん、手はず通りに――」
言うが早いか、七十は己に夜を纏って空へ飛んだ。
「……あ?」
突如差した影に、女戦士の一人がぼんやりと天を仰ぐ。
刹那、訪れた衝撃に悲鳴を上げる間もなく、高々と打ち上げられたその姿は、射掛けられた数多の矢によって一瞬で針鼠のように変わった。
アームドフォートが手から滑り落ちて大地に刺さり、その後を追ってきた女戦士の身体は崩れて骸の海へと還る。
「は?」
何が起きたのか。
理解するより先に二人目が宙を待って、そこでようやく野蛮な女戦士たちも事態を察した。
――が、それでは何もかもが遅すぎた。
もはやこの戦場は、奪略せし血と生命を闇として纏う七十だけが支配する世界。
蛮族たちが幾ら威力のある携行砲台を唸らせても、その姿は誰にも捉えられない。
「これで……終わりです!」
振り抜く大剣の一撃で今際の際まで追い込んだ敵を、七十は勢いよく空へと投げ飛ばす。
其処に幾度目かの一斉射が注がれれば、最後の女戦士も同胞たちのところへと葬られていく。
しかし、その余韻に浸る暇もない。
「すぐに消火を!」
七十が促せば、エルフたちがあちらこちらに水の弾を飛ばす。
それらが爆ぜる度、森を飲み込もうとする炎の勢いは、少しずつ弱まっていく――。
大成功
🔵🔵🔵
卜一・アンリ
エルフさんたち、祈る暇があるなら手を貸して頂戴。
敵も周囲の状況を把握してないお間抜けさん揃い、そこに付け込みましょう。
事前にエルフさんに私の血がついたガラスの破片を渡し
UC【アリスの鏡の国】で私自身を収納。
ガラスの破片を括り付けた矢で孤立してる敵を狙撃してもらうわ。
まさかその程度も出来ないなんて言わないわね?
敵に着弾したらガラスの破片から敵の傍に出て
すかさず悪魔憑きの拳銃を【零距離射撃】【乱れ撃ち】で始末。
敵UCもエルフに向いてるのをやり過ごせばいいだけ。
後はこれを繰り返して各個撃破しましょう。
エルフさんが複数人で分担してくれると助かるのだけれど
まぁ手間の差だけだし、そこは向こうの協力次第ね。
●卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)
それを無価値と蔑みはしないが、しかし今は他に為すべき事があるはず。
「エルフさんたち、祈る暇があるなら手を貸して頂戴」
木々から降り立つようにして現れたアンリは、毅然とした態度で語りかけた。
「……あ、貴女は……」
「私が何者かだなんて、そんな事はいいのよ」
おずおずと放たれた疑問を切り捨てて、アンリは尚も言葉を継ぐ。
「あなたたち、そうして手を合わせたままで焼け死ぬつもりなの?」
「それは……」
無論、そんな未来を望んでいるはずがない。
しかし、事此処に至って今更何が出来るのか。
言外に仄めかすエルフたちの想いを受けて、そこでようやくアンリは僅かに微笑む。
「火を放った連中は、自分たちが森で彷徨う事も考えなかったお間抜けさん揃いよ。そこに付け込めば――」
侵略者共を退け、森の全てが喪われる最悪の事態だけは避けられよう。
その橋頭堡を築く尖兵として、アンリは最前線に立つつもりだ。
「こうして……ね」
語る最中、ガラスの破片を指でなぞったアンリの姿が忽然と消え、程なく再び現れた。
エルフたちは動揺を隠せない。ざわめき立つ集団の中で一人が跪き、深々と頭を垂れる。
「かくも摩訶不思議なる力、もしや聖木を護る精霊――」
「だから、そういうのはいいのよ」
信心深いのは構わないが、付き合っていては一面灰となってしまう。
「この欠片を括り付けた矢で、敵を狙撃してもらいたいの。……まさか、その程度も出来ないなんて言わないわよね?」
微かに嘲るような調子で曰えば、暫しの間を挟んでまず一人のエルフが手を挙げた。
それに続いた幾人かを伴い、アンリは森を焼く敵の元へと急ぐ。
とは言っても、既に彼女自身は紅い雫滴るガラスの内側、不思議の国の中。
木々を跳び渡って行くのは、その煌めく欠片を弓に番えたエルフの狩人。
(「……いました! 荒くれ者が何か、筒のようなものから火を放っています!」)
小声でそう告げるやいなや、狩人は弦を引き絞る。
其処にアンリの介在する余地はない。今はただ、彼らの勇気が実ることだけを期待して、待つ以外には――。
「あー!!」
いよいよ、という段になって響く声。
アンリ曰く“お間抜けさん”なそれは、その予想に相応しい間の抜けた態度で樹上を指し示して叫ぶ。
「エルフ! エルフじゃん! え、なに、どしたん!? 自分から焼かれにきちゃった感じ!?」
「……ふざ、けるな!」
歯噛みしつつ、狩人が引き留めていたものを離した。
ガラスの破片を括り付けた矢が、空を裂いて、飛んで。
「――いった!!」
どすりと鈍い音を伴い、切っ先が肉を貫く。
途端、お間抜けさんは粗暴な一面を覗かせた。無造作に引き抜いた矢を放り投げると、怒りと痛みに歪む顔で樹上の反抗者を睨めつける。
「いきなりなに!? まじありえないんだけどお前! 死ねよ!」
直情的な咆哮は枝葉を薙ぎ払いながら、エルフの狩人を飲み込んで縮み上がらせる。
「ひっ……あ……」
「あ、じゃねーんだよこら! 降りてこい! 降りてこないなら――」
「――野蛮ね」
構えた砲台がエルフたちを脅かす前に始末すべきだろう。
ガラスの欠片から飛び出したアンリは、抜き出した拳銃を何の躊躇いもなく蛮族の後頭部へと添えた。
「な……あんた、どっから……なんなの、いったい……」
「今日はそんな質問ばかりね」
嘆息混じりに言って、同じ答えを繰り返す。
「私が何者かだなんて、そんな事はいいのよ」
貴女は此処で死ぬのだから。
囁き、引き金を引けば、悪魔の力で装填される弾が惜しげもなく注がれていく。
そして幾度も重なる銃声が全て彼方に流れた後、アンリはエルフたちを呼び寄せると、またガラスの欠片に血の跡をつけて淡々と語る。
「……さ、次よ。敵はまだまだいるのだから」
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
同族の仕業と知らされる前に何としてでもエルフの方々の評価を稼がねば。
とりあえず、消火活動はマストとしてどこでも熱湯風呂を起動! 蒸気の力で空気中から水を精製して溜めてバケツリレーと参りましょう。発達した科学は魔法と大差ないのよー。それに油火事じゃないなら水ぶっかけでも大丈夫でしょうし!
ほら祈ってないでこれを燃えてる木にかけろー! 自然を守る種族なら座ってないで動け!
で、犯人を見かけたら忍び歩いて後ろを取り、怪力で無理矢理押さえつけて車輪に捕縛するなり直接引きずるなりして……熱しておいた金属板に顔から押し付けるとしますか。
どうせ死に方は同じなんだから、いつどう死のうと同じでしょ?
●カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)
隔絶した世界に齎される情報は修正されにくい。
元より猟兵の知識を持たぬアックス&ウィザーズの、それも深い森で集団隠遁生活を営むエルフたちに、異界スペースシップワールドを起源とするクリスタリアンの暴虐が刻み込まれれば、どうなる事か。
(「同族の仕業と知らされる前に、何としてでも印象を良くしておかねば」)
カーバンクルは気合を漲らせて集落に降り立つ。
それと同時に取り出したるは、蒸気の力で湯を沸かす浴槽。
無論、森林浴を楽しみながらのほほんと湯に浸かるつもりで持ち出したのではない。それを用いて大気中より水を精製し、消火に使おうと目論んだのだ。
「ほら祈ってないでこれを燃えてる木にかけろー! 自然を守る種族なら座ってないで動け!」
騒がしい蒸気機関に負けじと声上げれば、何事かと驚いたエルフたちが駆けつける。
其処に声を飛ばしてずらりと並ばせれば――水源から火元まで続くバケツリレー軍団の出来上がり。
「油火事じゃないなら水ぶっかけでも大丈夫でしょう! ほら運んだ運んだー!」
火消しのめ組ばりに激飛ばすカーバンクルの前では、もはや神秘だの祈りだのと考えている暇もない。
考えるより手を動かせ――というのは、日々を安穏として生きるエルフたちにとって中々に刺激的な一幕だったかもしれない。
とはいえ、それにばかりかまけてはいられない。
幾ら消火作業に勤しんでも、火元がまだそこら中を歩き回っているはずなのだ。
その不埒者共を仕留めなければ、正しく焼け石に水。カーバンクルは一人のエルフを導き手として、迷いの森へと犯人探しに赴く。
それは存外、手間な事でもなかった。神秘の森を右へ左へと彷徨うばかりの敵の姿は、案内人と共に征く木々の上から実によく見える。
故に、背後へと密やかに下りるのも容易い。
「――もがっ!」
まさか、火事場でいきなり取り押さえられるとは梅雨ほども思わなかったのだろう。
携行砲台が明後日の方向に弾を放って、木々が幾つか爆ぜる。
けれど、悪あがきもそこまでだ。怪力と呼ぶほかにない腕力で押さえつけられた蛮族は、針があちこちについた巨大な車輪へと括り付けられていく。
嫌な予感しかしない。彼女らの言葉遣いで表すなら――。
「ヤバヤバのヤバなんですけど!」
青ざめた顔で叫ぶ女戦士。
しかし悲しいかな、カーバンクルの手は止まらない。
「どうせ死に方は同じなんだから、いつどう死のうと同じでしょ?」
実に晴れ晴れとした笑みと共に、身動きの取れない敵へと炎を発する巨大盾が近づいていく。
程なく、焦げ臭さの中に異なる異臭が漂い始め――案内役を務めるエルフは、思わず鼻を押さえた。
成功
🔵🔵🔴
大豪傑・麗刃
神秘的な雰囲気……
考えた事もねえ
とはいえやるだけやってみよう。
まず顔に戦化粧を塗る。ヴィジュアル系ぽくなったけど神秘的の範疇だろうたぶん。そして上から下まで黒で統一しポーズなんかとってみる。
ガイアがわたしにもっと輝けと囁いている
かくしてエルフの信頼を得た(?)ので戦闘。
せっかく神秘的に決めた(?)ので神秘的ぽく戦おう。右手に刀、左手に脇差を構え、静かに立つ。そして相手がマゾですまんっすとやらで攻撃してきたら見切って脇差で武器受けの要領で斬り防ぎ、返す刀で敵本人を斬る。
可能ならエルフには「主な相手は猟兵だがエルフも無視できない」程度に弓撃って敵の注意力を多少なりともわたしからそらしてもらえれば。
●大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)
言うは易く行うは難し。
神秘、神秘。ああ、神秘的とはなんぞや。
「考えた事もねえ」
さりとて無知を無知のまま放り投げるのは凡愚の振る舞い。
麗刃は、そうした者共と一線を画す存在である。
頭を捻り、知恵を絞り、己が思う“神秘”を具現化するのだ――。
「――ガイアがわたしにもっと輝けと囁いている」
集落の一角がざわめいた。
迫る滅びを前に祈るばかりであったエルフたちの前に、忽然と現れたのは顔に戦化粧を施した全身黒ずくめの男。
泰然と構えたまま顎をしゃくる、その姿は……斜め上に突き抜けたセンスの、いつまで経っても芽が出ないヴィジュアル系のようであった。
町中に放り込めば奇異の視線を浴びることは必至。
集落の文化ともかけ離れた容姿と存在感に、エルフたちも暫し呆然とする他ない。
その微妙な沈黙を破ったのは、やや年老いたエルフの一言。
「……ガイア……ガイアと、申されたか」
「――ガイアがわたしにもっと輝けと囁いている」
急場ゆえ、語彙のレパートリーに等しい麗刃は同じ台詞を繰り返す。
途端、老エルフは勢いよく跪き、眼前の奇人へ拝み倒すようにしながら言葉を吐いた。
「ガイア! おおガイア! 間違いない! この御方は喪われし聖典“elkcunk snem”に語られた地母神ガイアの御使い! 聖木の民である我らの危機を救うべく参られたのだ!」
「聖典……なんだって?」
エルフに伝わる古語なのだろうか。
聞き返す麗刃に対して、しかし老エルフは答える事なく熱弁を振るう。
「祈りの時間はここまでじゃ! 立てぃ皆の衆! この深き森を腕に抱きし大地の女神が、救いを差し伸べてくださったのじゃぞ! 今こそ一丸となり、この御方と共に炎へと立ち向かおうではないか!」
「お、おおー!!」
些か困惑混じりのようではあったが、それでも決起したエルフたちは次々と頭を垂れる。
「地母神の御使いよ。どうか、どうか我らをお導きくだされ……!」
「う、うむ。まぁ、やるだけやってみよう」
あまりの熱意に気圧されつつ、麗刃はぽつりと呟いた。
「……道案内されるのは麗ちゃんの方ではなかったのか?」
かくして、狂信じみた信頼を得た御使い。
もとい、麗刃はエルフたちの先導で森を駆けていく。
「麗ちゃ……えほんごほんうぉっほん! わたしが敵を始末するゆえ、皆さんは無視できない程度に弓を射掛けてもらえればと」
「お任せくだされ!」
ギンギンに漲りまくっている老エルフが力強く答えれば、続く若人たちも弓や杖を掲げてみせる。
そうしてやる気を示すのは、麗刃を神の使徒と信じているからだけではない。
集落を出てから強烈さを増すばかりの異臭、燃える木々に煽られて来る熱風が、迫る戦を否が応でも思わせるからだ。
「なに、ウラヌスとなり全てを手に入れたわたしが来たのだ。もはや勝利は必然!」
「おお! 地母神のみならず天の神からの加護まで!」
もう盛りに盛ったれ。
付け焼き刃の台詞でも、エルフたちにとって益となるならそれに越したことはない。
麗刃は努めて神秘的(っぽい)ことを宣うだけでなく、いざ戦いの時が来てもその姿勢を崩さない。
樹上に潜むという優位性を捨て、右手に刀を、左手に脇差を携えて立つ。
それがどれほど密やかに行われようと、女戦士たちが一人でも頭上を見上げれば姿は丸見えだ。
「うわなにあれ!? やばい! やばいっていうかエグい! 顔が!」
「え、ちょ、何かこっち来ようとしてない?」
「無理~! 無理無理無理! 来ないで! てか来るな!」
「吹っ飛ばすしかなくない!? ……アマゾネス・スマッシュ!」
ご丁寧に叫んだ蛮族の傍ら、彼女らには不釣り合いな砲台が火を噴く。
――が、しかし。
「……マゾですまんっす?」
何をどう聞き間違えたか、麗刃の方が「うわぁ」と気色の悪いものでも見るような表情を覗かせて。
同時に振るわれた脇差が――実にあっさりと、砲弾を受け流す。
「は!?」
その人並み外れた技に驚いたのも束の間。
今度は本命となる刀が麗刃ごと落ちてきて女戦士を両断すれば。
「御使い様に続くのじゃ! 射てい! 射てい!」
エルフたちからの援護射撃も始まり、戦場は一気に混沌の様相を呈していく。
無論、それを制したのはヴィジュアル系な御使いwithエルフハンターズの面々。
射掛けられた矢を囮として、次々に麗刃が敵を切り伏せる。
即席ながらも、その連携が中々に上手く運んだのは――麗刃の珍妙な風貌が齎した小さな奇跡であった。
大成功
🔵🔵🔵
イネス・オルティス
なんて事、こんな暴挙が許さるわけがないわ
急いで対処しないと……
でも原因を叩かないと消火もままならないわね
私たち猟兵が、あいつらを引き付けるから消火よろしくね
【薄衣甲冑覚醒 弐】の高速移動なら
敵の狂戦士モードってやつのスピードに対応できるでしょう
野生の勘や戦闘知識から敵の動きの隙を見つけ、一気にダッシュで近づき攻撃
面白半分でこんな事をやるんじゃないっ!
周りの火は火炎耐性のオーラ防御があるから耐えられるでしょう
敵の攻撃は武器受けで受け流したりすればいいわ
恥ずかしさ耐性のあるイネスは、ビキニアーマー姿の存在感で
無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません
アドリブ・絡み・可
●イネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)
転移を終えた途端、焦げ臭さが鼻をついた。
未だ炎はエルフの集落にまでは及んでいないようだが、それも時間の問題だろう。風に乗って来るのは焼け焦げる臭いばかりでない。枝幹の割れ砕ける悲痛な音もまた、着実に迫りつつある。
「……なんて事」
呟きながら、イネスは長柄を握り締める。
許されざる暴挙への怒り、刻一刻と近づく滅びへの焦燥は其処に纏めて押し込み、思考は冷静に。
猟兵として為すべくを為せば、全てを喪う未来だけは避けられるはず。
「――私が敵をひきつけている間に、火を消してほしいの」
忽然と現れた女戦士の言葉を、エルフの若者は呆然としたまま聞いていた。
人の身であるイネスは、この森の奥深くの集落に在り得ざる存在。
そのような万が一にも予期せぬ事態と出会した時、頭が事実を受け入れるまでに幾らか時間を要するのは、外界で暮らす人々も隠遁生活を送るエルフも、さして違いはないのだろう。
差異があるとすれば、その後。受け入れ難い事実を如何に消化するか。
「……滅びの危機に瀕する我らへと、聖木が遣わしたのでしょう」
エルフは跪き、手を組んで言葉を継ぐ。
「聖きものよ。その名も知らぬ事、どうかお赦しください。そして――」
ちらりと、エルフはイネスの姿を見やり、また目を背ける。
聖木の使徒やら精霊やらだと思っている相手の身形が、所謂“ビキニアーマー”の女戦士では、確かに目のやり場に困ると言うもの。それでも不敬を承知で視線を向けてしまうのも、また若人の性というもの。
しかし、当のイネスにはまるでその意識がない。繰り返し、一瞬ばかり盗み見るようなエルフの仕草には気付いていても、それを羞恥と感じる事はない。
故に、イネスは若者の言葉を待った。
若者もまた、自らを律して誓うように言った。
「そして、聖きものよ。貴方が、そうせよと仰るのであれば。私は臆する事なく、炎にも立ち向かいましょう」
かくして協力を取り付けたイネスは、信心深いエルフの導きで森を征く。
右往左往する敵の姿は、すぐに見つける事が出来た。迷いの森を彷徨っているせいか、放火しておきながら炎に巻かれている阿呆のようにしか見えないが、しかし憐れんでやる道理などない。
「――面白半分でこんな事をやるんじゃないっ!」
渦巻く怒りを解き放ち、イネスは樹上から矢の如く落ちて女戦士の一人を穿つ。
その手応えの余韻が消える間もなく、さらに一つ。
目にも留まらぬ連撃は、一族伝統の薄衣甲冑に纏う戦女神のオーラの為せる技。
蛮族の女戦士たちには悲鳴すら上げる暇もない――が、違う種の台詞ならば幾らか溢れてきた。
「ちょ、なんか痴女みたいなBBAきたし!」
「キツいんですけどー!」
「ばっ……!?」
羞恥はなくとも憤激はする。
オブリビオンと年齢を比べるなど不毛極まりないが、それでも女戦士たちをざっくりと見積もれば十七、八くらいのように映った。
一方で、イネスもまだ齢二十一。まかり間違っても年増と罵られる謂れはない。
というか――。
「あなたたちだって肌を出してるじゃないのよ!」
臍も脚も胸の谷間も悉く露わにしておきながら、人を痴女呼ばわりとは何たる事か。
重ねて言うが、其処に羞恥は存在しない。あるとすれば侮蔑を後悔させようとする意志だ。
元より持ち合わせていた怒りと合わせ、イネスは力強く槍を振るう。
女戦士たちもただやられているばかりでなく、頻りに「アゲてこー!」だのと叫んで秘めたる力を解き放ちはするが――それでようやく“見える”ようになったところで、イネスを捉える事はできない。
遮二無二放たれた砲撃などは、戦の勘と巧みな槍捌きで受け流して。炎すらも跳ね除けるほどの闘志を湛えたイネスは、取り回しの良くない砲台をせこせこと動かす敵までの間合いを一息で詰めると、槍とその切っ先から放たれる衝撃波を用いて次々に敵を屠っていく。
豪胆な戦いぶりに感化された案内役のエルフも、水の魔法弾を方々の燃える木々へと撃ち放てば――その成果が挙がり始めるのと同時に、戦場の喧騒も段々と鎮まっていった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私/私たち のほほん
対応武器:漆黒風
私たちね、故郷が壊滅して(、そして死んで)るんですよー。
…そのような『誰か』を増やしてたまるか。
エルフに共闘を依頼。
消火活動をお願いしましょうかねー。だって、大切な森なんでしょう?
それに、武器に頼りっぱなしで、消火されることを考えてない気がするんですよー。
あ、あなたには結界術で防御の結界張っておきますねー。
森は私向きですねー。
UC使用での呪詛+風属性の投擲攻撃。狙いは眉間ですかねー。
攻撃の度に位置取りを変えて、どこにいるかをわかりづらくさせますよー。
私自身の防御は、四天霊障でのオーラ防御でー。
●馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)
来る終焉を前に為す術なく。
跪き、手を合わせ、祈るばかりの人々。
その心中、無力を嘆く苦しさを慮れば、薄笑いの下にも怒りが滲む。
(「……“私たち”のような“誰か”を増やしてたまるか」)
決意と共に、義透は森の奥深くへと降り立つ。
それを目にしたエルフの男は、己が目の前に忽然と現れた存在について、如何なる理由付けをすべきか暫し悩んだようだった。
「……もしや、風の精霊様でございますか?」
義透は言葉で応じず、ただ薄い笑みだけを見せる。
凝った芝居の筋書きなど立てていない。まして真を語れば、己はとても“精霊”などと崇め奉られるような善き存在ではないだろう。滅びの果てに生まれた、酷く歪な――。
だが、エルフの彼が風精と呼ぶのなら、今はそれでよいのだ。語るべきことは他にある。
「消火をお願いできますかねー?」
穏やかに呼び掛けると、エルフはまたも口を噤んだまま立ち尽くす。どうやら彼なりに“神秘”を消化しようとしているらしいが――悠長に待っている暇はない。
「大切な森なんでしょう?」
声色は変えず、しかし急かすように投げ掛ければ、エルフの男は何度も頷いた。
それに頷き返して、義透は黒煙立ち昇る方への案内も頼む。
「派手に付け火をして回っているようですが……」
どうにも武器に頼りっぱなしで、火を放った後の事など考えていない気がする。
推測を語りつつ、義透はエルフの後にぴたりと付いて樹上を跳んでいく。
「さすが、風の精霊様は軽やかに渡られますね」
「そうですねー。森は私向きといいますかー」
嘘は言ってない。忍びが木々を駆け巡るのにあたふたとしていては間抜けもいいところだ。
「昔取った杵柄、というやつですかねー」
「きね……?」
「そんな事より」
聞き慣れない言葉に首を傾げたエルフを余所に、義透は印を結んで防御結界を築く。
それが奏功するような事態を招くつもりはないが、しかし念には念を。
不埒者を成敗した傍らで、お供のエルフが焼け死にでもすれば寝覚めが悪いどころの話ではない。
そうして唯一と言っていい憂いに備え、義透は樹上から敵に狙い定めた。
手には慣れ親しんだ得物、何の変哲もない棒手裏剣。
其処へ纏わせるは風。織り込むは――呪い。
「――――」
音もなく放たれたそれは、蛮族の眉間を貫く。
正しく神業と呼ぶ他ない投擲。しかし義透は己の技量を誇るでもなく、エルフと共にすぐさまその場を離れる。
位置取りを細かに変えて、姿も凶器の出処も掴み取りづらいようにするのだ。如何に野蛮で原始的な振る舞いの敵でも、必ず樹上を探り出す。今は優位に在るからと踏ん反り返ってはいられない。
それでも全ての蛮族を屠る前に露見するだろうが――雄叫び上げて時間の流れを引き伸ばしたところで、義透の姿は捉えられない。
もっとも、よしんば砲撃を当てられたとして、義透の中に渦巻く無念は此処で終わる事を許さないだろう。
つまりは相手が悪かったのだ。彼が此処へ来た時点で、もはや全ては決着していた。
「……まあ、悔いたところでどうにもならないですけどねー」
敵が悉く倒れ伏した後、エルフが水弾で消火を始める中で密やかに呟く。
時は戻らない。
その現実を、義透は己が存在で以て、嫌というほど実感しているはずだ。
大成功
🔵🔵🔵
仙巌園・桜
せんちゃんきゃわわなエルフのコスプレしてくるから
神秘的で尊いでしょ?
薩摩~
エルフから聖木の位置を聞いて延焼防止目的に燃える前の木を
切り倒しなさい
勿論外側になればなるほど良いけど火の勢い見ながら適当によろ~
せんちゃんはエルフの真似して敵の前に出て囮になるから~
なんでって?あいつらの攻撃を避けて地形を変えさせるのよ~
勿論ちゃんとルートは選んでね~
わざわざ自分達で火を付ける時間を削って更に燃やす木まで
減らして活動を阻害するなんて馬鹿過ぎて草
ぴえんぴえん言わせよう
対策の目途が付いたらエルフと一緒に
せんちゃんを追い回してる敵を木の上やらから奇襲
聖木中心に火元に向かって水弾・風刃で攻撃で消火活動も兼ねるの
●仙巌園・桜(+薩摩・f00986)
変装と書いてコスプレと読む。
「どう? せんちゃんきゃわわ~でしょ?」
集落に降り立ち、あどけない笑みを浮かべた桜は、エルフたちの前でくるりと回ってみせた。
森の民らしい天然繊維の簡素な服と、種族の最重要ポイントであるとがり耳。
確かに、ぱっと見た限りではエルフっぽい。
とはいえコスプレであるが故、本物に間近で眺められれば、割とすぐ露見する程度のものだろうが――。
「どう? どう? 神秘的? 尊い? 尊くない~?」
圧が強い。
もはや答えは『はい』か『YES』の二択だ。それ以外を口にする権利など与えられていない事を、エルフたちは恐らく生存本能じみた何某かで悟っていた。
ああ、その心中が偲ばれる。
桜のお供を務める小竜、薩摩は茶番劇をじっと見守りながら小さく息を吐くが、しかし主はそんな事などお構いなしにふふんと鼻を鳴らして、神秘的で尊き存在からの有り難ーいお言葉を一つ、エルフたちへと下す。
「ねえねえ、聖木ってどこ~?」
それを問われれば、然しものエルフたちも暫し言葉を失った。
眼前の少女が、たとえば聖木の御使いか何かであるなら、それをわざわざ尋ねる必要もあるまい。
まして、この非常事態の最中だ。もっとも重要な聖木の在り処を集落の住人ではない者、それもエルフの仮装をした少女(としか思えない相手)に告げるというのは、勇気と信心に討論会をさせなければ決められない。
その答えは――程なく、一人の老エルフによって齎された。
「我らの祈りが至る結末ならば、それは如何様なものであっても聖木のお導き。……何れにせよ、滅びが迫っておるのだ。たとえそれを告げた事が仇になろうと、終焉が少しばかり早まるだけであろう」
滾々と語った後、老エルフはすぐそばの大木に目を向ける。
「竜を従えし者よ。貴方が何処より遣わされたのかは存じ上げませぬが……我らが宝、聖木フェンネルは、あちらに御座します」
「あー、あれねー」
仰々しい語り口のエルフとは対照的に、桜は淡白な反応を返してから小竜を呼び寄せた。
「じゃ、とりあえずあんたはそっち適当によろ~」
ひどくざっくりとした指示だ。
しかし、それで通じるからこそ薩摩は薩摩足り得る。
小竜はひらりと飛び上がり、聖木から少し離れたところで木々を薙ぎ倒し始めた。
所謂、破壊消火というやつだろう。炎が延々と燃え広がるのは、火元から集落までひたすらに植物が叢生しているからだ。つまり何処かに空白地帯を作ってしまえば、其処から先は再び着火されない限り、被害が及ぶことはない。
加えて、聖木を守る為のちょっとした偽装工作にもなるだろう。万が一にも森の全てが焼き払われれば、炎すらも跳ね除ける聖木はただ一本残ってその存在を隠しきれないが、しかし一部でも緑が残っていれば――。
「せんちゃんにだって分かんなかったんだし、分かるわけないでしょ~」
未だ見ぬ敵、猟書家チーフメイド・アレキサンドライトを嘲りつつ、桜自身はエルフを一人従えて集落を出る。
延焼対策は小竜に任せて、此方は間抜けな放火犯を誂いに向かうのだ。
その居所など悩むほどでもない。
「……あー、いたいた」
炎の方へと進むこと暫く。
樹上から認めた敵は、進むべき道を見失って右往左往しているようだった。
「なにあれ馬鹿すぎて草~」
「くさ……え……?」
「あ、案内はもういいから。後はさっき言った感じでよろよろ~」
そう呼び掛けるやいなや、桜は木々から降りて放火魔たちの前に姿を晒し、一言。
「ちょす~!」
顔の横にピースサインを添えて、満面の笑みで言ってのけた。
「はあ~!?」
エルフと違って、此方からは非難轟々。
「何おまえ?」
「せんちゃんはせんちゃんで~す。見ての通りのきゃわわなエルフだけど何か~?」
「何か~? じゃねーんだよ! 舐めてんのか!」
蛮族たちから、もはや単なる不良じみた罵声が飛ぶ。
しかし、その程度で怯むなら桜は桜でない。
「いきなりキレ散らかしててわろわろ~!」
けらけらと笑い声を上げながら反転、至極楽しげに走り出す。
当然、蛮族たちも全力で追い始めた。怒号と共に砲台も唸り、次々に落ちる塊が桜の間際で激しく爆ぜる。
「きゃ~! ヤバ~い! 鬼ヤバ~!」
「何かムカつかないあいつ!?」
一帯を包む炎の熱さなど余所に繰り広げられる、酷く温度差の激しい追走劇。
それは無秩序なようでいて――しかし、猟兵とエルフによる周到な計画。
「――あ、あれ!?」
ただひたすらに桜を追い回していたせいで、気がつくまでにはそれなりの時間を要した。
故に、もはや手遅れなのだ。
“砲撃で破壊した大地が四方を塞いでいる”と、それを理解した時には、もう。
「黙って火付けてればいいのに~、その時間を削って必死に追いかけっこして~? 延焼に必要な木まで吹き飛ばした上に~、自分たちの逃げ道も塞いで迷子迷子~とか……やっぱこいつら馬鹿すぎて草~」
「こ、こんのクソガキ……」
「クソガキじゃありませ~ん。……あ、草じゃなくてハーブ生えるんだっけ? 何が生えんの? パセリ?」
「ぶっ殺す!」
立ち往生していても砲撃は出来る。
蛮族たちは樹上へと逃げ延びた桜に砲口を向けて――。
「じゃ、ばいば~い」
けろりとして言う桜が片手を振った瞬間、伏せていたエルフたちが一斉に攻撃を仕掛けた。
雨のように矢が降り注ぎ、水の魔法弾と風の刃が消火も兼ねて乱れ飛ぶ。
愚かな放火魔たちに逃げ場など無い。針鼠の如く全身に矢を突き立て、ずぶぬれのずたぼろとなったそれらは、一人、また一人と力尽きては骸の海へと葬られる。
その終幕を飾るのは、延焼対策を一段落させてきた小竜。
「――ぴえん!」
木々すら薙ぎ倒す強靭な尾に引っ叩かれて、最後の女戦士は錐揉みしながら炎の海へと沈んでいく。
其処に幾つかの水弾が炸裂すれば、森を脅かす何もかもは綺麗さっぱり、洗い流されて消えたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エアリーネ・シルベンスタイン
エルフの里にも天上界に繋がる何かが…?
……ええと、私、都市の出なのであまりこういう同族と話した事ないんですよね…
地元エルフさんには道案内をお願いします
あ、そうだ、今は下手に物音を立てないでくださいね…?
遭遇すれば狙うは奇襲と先手必勝、です
毒を塗ったダガーでの盗み攻撃で一撃見舞って、
出来ればその武器も取り落とし動けなくしてしまいたいですが……
咆哮?更に騒がしくするつもりですか?
なら、少し黙っていてください…
UC【フィールドサイレンス】を使用、
召喚UCなら「私の」動きが止まっていようが関係ありません。
(天使が物理で)黙らせて、ついでにその武器も置いて逝ってもらいましょう
※アドリブ等は歓迎ですよ…
●エアリーネ・シルベンスタイン(びんぼうエルフ・f26709)
アックス&ウィザーズにおける猟書家の侵略目的。
それは帝竜ヴァルギリオスに封印されし未知の大陸、天上界の探索。
(「……ということは、エルフの里にもそこへ繋がる何かが……?」)
エアリーネは彼方此方に忙しなく視線を送る。
その好奇心で輝く瞳は、この森こそが日常であるエルフにとって奇異だったろう。
触れるべきか触れざるべきか。呼び掛けるべきか、沈黙で見守るべきか――。
などと逡巡されている内に、エアリーネも状況を察する。
「……あっ」
一人と目が合った。
しかし、何と言えば良いものか。
(「同じエルフでも暮らしぶりが違いすぎますし……」)
都市の出であるエアリーネと、隠遁生活を送る森のエルフ。
姿形に似通うところはあっても、もはやそれは別種の生き物とさえ呼べよう。
とはいえ、悩んでいても仕方がない。
刻一刻と迫る炎が、集落に滅びを齎そうとしているのだから。
「あ、あの――」
道案内をお願いできますでしょうか。
エアリーネがおずおずと話しかければ、エルフはやや身を硬くしながらも頷いた。
驚いたり怯えたりして逃げないのは、エアリーネを単なる同胞以上の者として見ているからだろう。例えば聖木の御使いだとか、木々や風の精だとか、或いは一族の始祖だとか……。
その辺りも考えればきりがなく、問い質すついでに集落の歴史などまで引っくるめて話を聞きたくなるところ、エアリーネは油断すればすぐに顔を出す知識欲を理性で叩き伏せ、エルフの案内役と共に森の外縁部へと向かった。
「……あ、そうだ」
集落を出て間もなく、エアリーネは思い出したように一つ告げる。
「今は下手に物音を立てないでくださいね……?」
迷いの森を彷徨う蛮族に対して、此方が持つ優位性。
即ち、エルフの導きと樹上からの奇襲。その後者に関しては、敵方に存在を気取られた時点で失われてしまう。
(「静かに、けれども急いで行きましょう」)
元より小さめな声をさらに密やかな音へと変えれば、エルフも無言のままで頷いた。
理解が早いのは実に助かる。
(「さすがエルフですね」)
さも当然のように独言したのは、同胞との邂逅が己でも気付かない程度の仄かな高揚を齎していたからかもしれない。
さておき、静寂を纏って森に溶け込んだ二人のエルフは、程なく眼下に侵略者を認めた。
何やら口々に不平を曰いながらも、手にした鉄筒からは炎を噴き続けている。
その煌々と燃える紅は、いつエアリーネたちを飲み込んでもおかしくはない。
(「――先手必勝、です」)
エルフに視線だけで意志を伝え、答えは待たずに樹上から飛び降りる。
手にはたっぷりと毒を仕込んだ諸刃の短剣。敵の携行砲台と比べれば明らかに射程で劣るが、しかしどれほど強力な兵器を携えていようと、懐に飛び込んでしまえば此方のもの。
足が地に触れるより先に腕を振り、蛮族の首裏から背をバッサリと斬り裂く。
「痛っ!?」
受けた傷に対して、それの口から溢れたのは随分と軽い言葉。
常人なら血を噴いて倒れるところ、まるで虫にでも刺されたような反応なのは、さすがオブリビオンと言うべきか。
しかし――。
「……あ、がっ……」
砲口をエアリーネへと向けた途端、蛮族の女戦士は顔を歪めて膝から崩れ落ちる。
早くも、毒が全身へと巡り巡ったのだろう。得物を取り落して大地に突っ伏し、辛うじて動く目で恨めしそうにエアリーネを睨めつけてはくるが、もはや罵る事も出来ないようだ。
「武器は置いて逝ってもらいますね?」
微笑みながら穏やかに呼び掛ける。
それにただの一言も返せないまま、女戦士は事切れて骸の海へと還った。
とはいえ、それはたった一人だ。
「うちらの仲間になにしてくれたし!」
怒りに燃える蛮族たちは口々に言うと、深く息を吸ってから雄叫びを上げる。
その野獣の如き咆哮は、あちこちから襲いかかってエアリーネを竦ませた。
端から見れば大きな隙が生まれたようにしか思えない。
「あいつ大したことないっしょ!」
勝利を確信した蛮族たちは、笑顔すら覗かせながら砲台で狙い定める――が、しかし
「……うるさいですよ」
ぽつりとエアリーネが呟いた途端、赤く染まっていた世界に幾つもの光が差した。
それらを手繰るように降りてきたのは――天使。
エアリーネがそう呼ぶのだから、そう表す他にないだろう。その天使たちはエアリーネと同じく蛮族の背後を取り、物理的な力で次々に“黙らせて”いく。
「武器は壊しちゃだめですよ」
神々しい者たちによる粛清が進む中、エアリーネが語ったのはただ一言だけ。
彼女が動かずとも全ては片付く。天使たちは恐怖のあまりに逃げ惑う女戦士すらも容赦なく追い回して、主が望む静粛な空間を作り上げると、また光と共に消え失せた。
成功
🔵🔵🔴
霧島・絶奈
◆心情
猟兵が普段している事ですが…
他世界由来の技術は存外厄介なのですね
◆行動
【空中浮遊】を活用
移動補助としてだけでなく、【オーラ防御】と併せて神性を強調する演出としても利用します
さて、エルフの皆様
迅速に動き、森への被害を抑える為に協力して頂けますね?
【罠使い】の技を活かし「魔法で敵を識別する指向性散弾」を複数設置
頭上への警戒を薄めさせる、逆に頭上に集中した敵に損害を与える…
どちらに転んでも損はありません
会敵後は『涅槃寂静』にて「死」属性の「濃霧」を行使し【範囲攻撃】
私自身も【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】し追撃
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
真に神秘的な存在と出会した時。
理の内側で暮らすものは、誰が何を言わずとも本能で理解するのだ。
それを直接見続けてはならないと。
それに気安く語りかけるべきではないと。
頭を垂れ、手を合わせて、その常ならざる強大な力の矛先を向けられぬように、祈りを捧げるしか無いのだと。
故に、神々しい気を纏って忽然と宙空へ現れた絶奈を認めた瞬間。
エルフたちは無言のまま跪いて両手を組み、ただひたすらに待った。
それが何をするのか。何を語るのか。
願わくば、齎されるものが災いでなく幸いであらんことを――と、祈りながら。
「……さて、エルフの皆様」
森の民を暫し眺めてから、絶奈はゆっくりと口を開く。
そして告げるのは、実に現実的な要請。
正しく“神”の座に在る彼女でも、聖木が生み出す自然の迷宮をエルフの案内人なしで進むのは難しい。
「森への被害を抑える為、協力して頂けますね?」
厳かな問いには、すぐさま首肯と短い言葉が返る。
そうして幾人かのエルフが立ち上がれば、絶奈も宙を滑るようにして後に続く。
樹上を渡る最中も、戯言一つ零れはしない。
畏れとは、即ち怖れなのだ。触らぬ神に祟りなし。果たしてエルフの集落にそうした意味合いの諺があるかは分からないが、しかし絶奈を案内するエルフは、求められた以上も以下も行わないのだという意志を全身から醸し出していた。
もっとも、絶奈の方も道案内以上を求めるつもりはない。
程なく眼下に敵を認めれば、エルフたちの務めは終わりだ。
僅かに退く彼らを余所に、絶奈は魔法で敵を識別する指向性散弾を淡々と設置していく。
彷徨う敵を先回りするようにして、相当数を仕掛け終えれば――後は獲物が掛かるまでの間、暫し待つだけ。
その僅かな空白に、不埒な放火魔を眺めて思うのは。
(「……存外、厄介なのですね」)
もはや己の中では当たり前になっていたであろう、世界と世界の交わり。
其処に在るべきではない技術や文明の利器が忽然と投げ入れられた時、起こり得る事態は大方“ろくでもない”事になるようだ、ということ。
此度の敵、蛮族の女戦士とて、ただそのまま過去から滲み出したのならば、エルフの森を危機に晒すまでは至らなかっただろう。
それを本来以上の脅威としたのは、異世界スペースシップワールドから猟書家が齎したと思しき携行砲台、アームドフォート。
(「貴女方には過ぎた力でしたね」)
それさえなければ――。
――否、それがあろうとなかろうと、オブリビオンである限り、迎える結末は変わらないか。
指向性散弾が爆ぜて、天から鉄の礫が降り注ぐ。
あっという間に一人が肉片と化して、その非常事態に蛮族たちは樹上へと砲口を向ける。
だが、彼女たちには己を攻撃する兵器への知識がない。
不用意な砲撃がさらなる被害を呼び、姿の見えない敵に対する疑念と焦燥が、彼女たちから瞬く間に自由を奪っていく。
そうして一塊になった敵など、絶奈からすれば鴨でしかない。
死の霧を垂れ込ませながら、得物で薙ぐ。
悲鳴なのか雄叫びなのか分からない声が聞こえたが、そんなものは絶奈にとって毛ほどの意味もない。
一帯は、すぐさま静寂が支配した。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『チーフメイド・アレキサンドライト』
|
POW : カラーチェンジ
対象の攻撃を軽減する【赤紫色のボディ】に変身しつつ、【100発/秒で弾丸を発射するガトリング砲】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : メイドの嗜み
【カラーチェンジした腕】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、カラーチェンジした腕から何度でも発動できる。
WIZ : 掃除の時間
【ガトリングからサイキックエナジーの弾丸】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:サカサヅキミチル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠月夜・玲」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵の活躍によって、蛮族は悉く倒れた。
エルフたちの消火活動によって炎もあらかた収まり、森はひとまず滅びを回避したと言っていいだろう。
「なんと申し上げてよいものか……」
老エルフが呟き、礼の代わりにまた祈る。
――だが、まだ全てが終わった訳ではなかった。
血相を変えて来る一人のエルフ。
曰く、森の外れで再び火の手が上がった、と。
それが何者の仕業であるのか、猟兵たちはすぐに思い至ったはずだ。
此度の元凶。
猟書家、チーフメイド・アレキサンドライト――。
「――掃除一つもまともにこなせないとは。未開も同然の世界の蛮族如きに、少々期待しすぎましたか」
猟兵とエルフたちが駆けつけても、それは悠然とした態度で機関砲を唸らせ続けた。
木々が爆ぜて、燃える。
しかし、どう見ても散らかし放題の光景を前にして、それは『掃除』と宣う。
「……ええ、掃除の時間ですよ、猟兵。そしてエルフども。予定通りにはいきませんでしたが、しかしお前たちをぶっ飛ばした後で、失敗を取り戻す事も出来るでしょう」
――全てはお嬢様<プリンセス・エメラルド>の為に。
従者らしい誓いの言葉と共に、アレキサンドライトは暴力的な機関銃を構え直した。
エルフたちと共に彼女を打ち負かさなければ、森に真の平穏は戻らないだろう。
大豪傑・麗刃
敵の攻撃は全てわたしが引き受けよう。
エルフの皆様は半分は消火活動。残りは
ガヤ
を頼む。
ネタに爆笑してくれることがわたしの力となる。
ということで。
ギャグもとい精神攻撃で敵を挑発。敵はネタに対して塩対応かボケ殺しにも見えるが、苦戦とか不採用引いたら次から考えよう。
えっときみはアレクサくん。明日の天気予報を頼むのだ。
違った?ごめんごめんアレルギー性鼻炎くん。
きみの武器。
いわゆるメイドの土産というやつかね。
わたしも掃除で対抗。
卒業生の今後の健闘をお祈りする!
送辞!!
バンザーイ!!
そしてギャグで敵に喜怒哀楽恐の感情が起こり平常心が崩れ実力を発揮できなくなったところを斬る。
神秘的な戦い方といえよう。たぶん。
●大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)
「奴の始末はわたしが引き受けよう」
力強い宣言にエルフたちは感銘を受け、青肌の猟書家は苛立ちを覚えた。
「舐められたものですね」
声色こそ淡々としたままで構えられる機関銃。
対して、麗刃は刀と脇差を手に敵と向き合い――。
「皆の衆! 集合なのだ!」
いざ応酬を始めるかと思いきや、両腕を振ってエルフたちを集めた。
アレキサンドライトは訝しみ、何かの策や未知の罠ではないかと警戒を強める。
しかし、そんな相手よりも優先すべき事柄があるとばかりに、麗刃は森の民へと語って聞かせる。
「半分は消火活動を、もう半分は――」
「……話し合いは済みましたか?」
暫しの後、しびれを切らしたアレキサンドライトが言い放てば、麗刃を囲んでいたエルフたちは各々頷きながら散っていく。
それらに砲口を向け、葬り去る事は容易いだろう。
けれど、猟書家チーフメイド・アレキサンドライトはただ一点を狙った機関銃を動かそうとはしない。
「不気味な男。お前さえ殺せば、有象無象のエルフなど」
「随分な言い草ではないかね、きみ」
今にも唸りだしそうな凶器を前にして平然と。
麗刃は一つ息を入れてから、戦場の隅々まで響き渡る声音で言い放つ。
「アレクサくん、明日の天気予報を頼むのだ!」
「……は?」
何を言っているのか。
理解し難い男が告げた理解不能な言葉に、猟書家が首を傾げた矢先。
\ドッ!/
樹上から盛大な笑い声が降った。
慌てて猟書家が目を向ければ、其処に居るエルフたちは皆々揃って腹を抱え、手を打ち鳴らしている。
「っ、何がおかしい!」
そう怒鳴り散らしても、戦場の騒々しさは変わらないばかりか、むしろ。
「違った? えーっと、アレ……ああ! ごめんごめん、アレルギー性鼻炎くん」
\ドッ!!/
ケラケラヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノケラケラ
笑い声は増すばかり。
その元凶たる麗刃は満足げだが、交われない者からすれば恐ろしい事この上ない。
「やはり、お前はいち早く“掃除”しなければならないようですね!」
独特な空気に引きずり込まれるばかりだった己を立て直す為か、赤紫色の肌に変わったアレキサンドライトが得物の引き金を引いた。
砲身が唸り、勢いよく回転しながら次々と破壊の弾丸を撃ち放つ。
――が、然しもの猟書家も異様な空気に動揺しているのだろうか。その狙いは些か正確性に欠けていた。
「きみのそれは何だね! あれかね! いわゆる“メイドの土産”というやつかね!」
\ドッ!!!/
アヒャヒャヒャ(゚∀゚≡゚∀゚)ヒャヒャヒャ
弾丸の嵐から逃れつつ、麗刃が口を開けばまたも大笑が渦巻く。
ある者は眼下を指差して笑い、ある者は堪えきれず木々を叩いて笑い、ある者は目を潤ませながら笑い。
そうして笑い続けるエルフたちは――しかし、麗刃の発言など九分九厘理解していない。
ただ、地母神の御使いと崇め奉る存在が先に一言。
(「――もう半分は“ガヤ”を頼むのだ」)
こう告げたから、ただひたすらに笑って見せているのだ。
そりゃそうだ。ガヤという役割さえ説明されなければ理解できなかったエルフたちには、天気予報を告げる何某もアレルギー性鼻炎もメイドに冥土を引っ掛けるのも、悉く未知の概念に違いない。
だが、此処は劇場でもスタジオでもなく戦の場。何故笑っているかなどと、そんな過程に意味はない。
重要なのは、麗刃が何かを口走る度に笑いが起こるという、結果。
「そうじにはわたしもそうじで対抗するのだ!」
平常心を失ったアレキサンドライトが放つ毎秒百発の弾丸を明後日の方へ見送って、麗刃は姿勢を正すと声を張る。
「そうじ! 卒業生の今後の健闘をお祈りする!! バンザーイ!!」
「いやそれ掃除やなくて送辞やないかーい!」
仕込み丸出しのツッコミが飛んだ瞬間、今日イチの大爆笑が起こった。
刹那、理解不能の限界許容量を超えたのであろうアレキサンドライトが僅かに怯んだところを、麗刃は見逃さない。懐に飛び込み、刀を振るう。
ガヤありきのボケに比べ、その剣閃は鋭く、凄まじい切れ味だった。
成功
🔵🔵🔴
霧島・絶奈
◆心情
残念ながら、失敗を取り戻す事は叶いません
抑々失敗と言うならば、我々を敵に回した時点で手遅れです
◆行動
エルフの皆様
引き続き援護をお願いします
それから、遮蔽物を上手く使って「敵と私から」身を隠して下さいね?
【空中浮遊】を活用しつつ【目立たない】様に移動
【罠使い】の技を活かし【目立たない】様に「魔法で敵を識別する指向性散弾」を複数設置
さて、「貴女の軽減すべき対象の攻撃」は何になるのでしょうね?
そしてガトリング砲は「速く動く物」です
罠やエルフ達の援護射撃に呼応する形で『反転』し戦闘
【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】
負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
●霧島・絶奈(暗き獣・f20096)
この期に及んで、まだどうにかなると思っているらしい。
(「猟書家とは、随分な夢想家のようですね」)
ならば悉く望みを打ち砕き、真理と共に骸の海へと還そう。
猟兵を敵に回した時点で、何もかもが手遅れであると。
「引き続き、援護を」
短く呼び掛けた後、絶奈は猟書家へと向きかけた面を戻す。
「木々を上手く使って身を隠して下さいね。……敵と、私から」
エルフたちは頷き――ふと、視線に疑問符を乗せた。
だが、問うべき相手の姿は既になく。
それを執拗に求めれば宣託を無下にするだろうと理解して、見つけるよりも見つからない為の行動を始めた。
そうして蠢動するエルフの存在は、チーフメイド・アレキサンドライトも察知している。
如何に景色へと紛れても、矢を射掛けてこようとも、森の民は所詮、理の内側に在る者たち。猟書家という理外と張り合うには力不足だ。
しかし――。
「……おかしいですね」
今日この場にて、とがり耳たちを取り纏めているはずの猟兵が見当たらない。
地上にも、そして樹上にも。
「エルフを置いて逃げ果せた? ……いや」
まさかそんなはずもあるまい。
大方、何処からか仕掛ける気を窺っているのだ。
或いは悠長に策を弄しているか。ならば――。
「棚裏や溝に潜む塵のように、掃いて炙り出すとしましょう」
猟兵といえど、毎秒百発の弾丸から永遠に逃れ続ける事は出来まい。
何より、逃げれば逃げるほど森が、エルフが危機に陥る。
「いつまで見て見ぬ振りが出来るでしょうか」
既に勝ち誇った声色で木々に照準を合わせ、アレキサンドライトはトリガーを引いた。
――瞬間。
焼け焦げた森の一辺が忽然と崩れ落ちる。
エルフも近づこうとはしなかった其方から現れたのは――人。
否、それは人の形をしていても、人とは異なるもの。
理性という境界を越えてしまった、獣。
獣は放たれた弾丸に真正面から打ち当たる。
常人ならば、ただそれだけで決着がついていただろう。
けれども、獣の纏う濃霧が。万物腐らせる一種の死の具現が。迫る礫を悉く溶かし、飲み干す。
そうして突き進む獣は自身でも得物を振って、滝を遡るように弾丸の嵐を越えていく。
「そんな……っ!」
射手を攻撃するならいざ知らず、その武器を、弾丸をも無差別に攻撃してくるなど。
型破りな戦法に驚きつつ、アレキサンドライトは間合いを取ろうと後方へ飛んだ。
それが、まだ境目を跨ぐ前の絶奈に。
理性を留めていた彼女に予想できないはずがない。
逃げ腰になった猟書家の頭上で指向性散弾が爆ぜる。
一瞬、意識が其方に向かうのは自然の理。アレキサンドライトは降り注ぐ敵意を第一と定めて、赤紫色に輝く身体でそれを凌いだ――が、しかし。
その瞬きするほどの僅かな時間、彼女は迫る獣に対する術を失ってしまった。
弾丸を薙ぎ払う衝撃波が、アレキサンドライトにも襲いかかる。
それは到底、受け止めきれるものではなく。
猟書家は奇しくも、己自身が塵のように吐き捨てられる結末へと至るのだった。
成功
🔵🔵🔴
イネス・オルティス
アックス&ウィザーズは、確かに文明ってやつは
発展してないかもしれないけれど
スペースシップワールドって、天然の大地を失ってるじゃない
そんな事になるくらいなら未開でいいわ
【薄衣甲冑覚醒】を攻撃力重視で使用
ダッシュと停止を繰り返して、敵の攻撃タイミングを狂わせ移動
野生の感で隙をみつけて、怪力を活かした鎧砕き攻撃を仕掛ける
敵の攻撃は武器受けや受け流しでいなし、オーラ防御と激痛耐性で耐える
飛び道具に身をさらす勇気と覚悟がなければ、ビキニアーマーを着る資格はないわ
恥ずかしさ耐性のあるイネスは、ビキニアーマー姿の存在感で
無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません
アドリブ・絡み・可
●イネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)
「あなたの世界と比べれば、確かに文明ってやつは発展してないかもしれないけれど」
構えた槍を振るう前に、イネスはまず舌鋒で以て反撃した。
「スペースシップワールドって、天然の大地を失ってるじゃない。そんな事になるくらいなら未開のままでいいわ」
「……これだから蛮族は」
「何とでも言いなさいよ」
幾ら罵ろうとも蔑もうとも、猟書家の台詞は所詮、描いた絵図と今が離れてしまったが為の負け惜しみに過ぎない。
もっとも、そんな事さえすぐに言えなくなるはずだが。
「私もこの世界で生まれ育った戦士。あなたは蛮族と見下した相手に負けるのよ」
「戯言を……!」
募るばかりの苛立ちを吐き出すように、赤紫色のボディへと変じたアレキサンドライトが引き金に指を掛ける――が、しかし。
砲身がけたたましい音を立てて回りだすより先に駆け出すイネス。
その姿は急加速と急制動を繰り返して、追いすがる照準を翻弄する。
「ちょこまかと小賢しい!」
アレキサンドライトが堪えきれずに呟けば、いよいよ唸り始めた得物から飛び出す弾丸は毎秒百発。
それは常人ならば言わずもがな、生命の埒外にある猟兵とて容易くは凌げない暴力の嵐。
けれども。
「其処に身を晒す勇気と覚悟がなければ、これを着る資格はないわ!」
満を持して撃ち放たれた弾丸に、イネスは果敢に立ち向かっていく。
手には槍と斧。およそ銃器に対して挑むには物足りない、猟書家アレキサンドライトの言葉を借りれば――未開の文明を象徴するような原始的な武器だ。
「血迷いましたか!」
そんなもので敵うはずがない。
アレキサンドライトは益々戦意を高め、呼応するように重火器も吼える。
おびただしい量の礫は槍の穂先に弾かれ、藪を払う斧に受け流され、イネスの覚悟と等しい覇気にも押し出されて――それでも尽きることなく、ついに女戦士の引き締まった肉体を穿った。
けれども、だ。
白い肌が幾ら赤く染まろうとも、イネスの歩みは止まらない。
多少の――とは呼び難い痛みでさえも堪えて、大地を踏みしめる意志の根源は。
信頼。信仰。畏敬。
薄衣甲冑と、それに纏わる数多の存在への想い。
「くっ……!」
目に見えない何某かを拠り所として来る者ほど恐ろしいものはない。
それを遠ざけるべく、アレキサンドライトはさらに弾丸を放ち続ける。
だが、それは彼女自身をも削る攻撃。故に永遠ではなく。弾丸の嵐には僅かに一瞬、まるで息継ぎをするような切れ目が訪れた。
その刹那を、イネスは野生の感で嗅ぎつけ、怪力で以て抉じ開ける。
大地を踏みしめて繰り出される渾身の一突き。
それは敬虔な祈りの如き想いをも力に変えて、アレキサンドライトの身体をつるはしで砕くように打ち破った。
成功
🔵🔵🔴
卜一・アンリ
私は突っ込むから、エルフさんたちは矢の弾幕を張って敵の動きを止めて。
…平気よ。私も避けるし、貴方達ならその程度出来るわ。
ガラスの破片を握る手からの流血で包帯(アイテム『悪魔曰く「葡萄酒」』)を染め、
それを対価に【限界突破】した身体能力でエルフさんの矢の弾幕を【見切り】【逃げ足】【悪路走破】で避けつつ接敵。
貴女の腕はエルフさんの矢を真似られない。ユーベルコードじゃないもの。
けれど彼らに向けてその大きな鉄砲を構えれば、今度は私の銃を防いでいられない。
相手の腕を掻い潜ったらUC【黄金の雨のアリス】の【零距離射撃】【乱れ撃ち】。
ええ、掃除の時間よ、オブリビオン。
骸の海まで粉々にぶっ飛ばしてやるわ。
●卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)
弾幕を張るように矢を放ち、敵の動きを止めろ。
アンリの頼みを受けたエルフたちは次々に弓を構えて――そして、射掛ける前に一度問いかけた。
「精霊様、やはり貴方様まで巻き添えにしてしまうのでは……」
「……平気よ」
もはや己自身への訂正は脇に置いて、微笑みながら言葉を継ぐ。
「私も避けるし、貴方達なら出来るはずだわ」
そう言われたなら、エルフたちも奮起する他ない。
森の中で生きる術の一つとして磨き上げてきた弓の腕。
ただ一射では頼りなくとも、想いと共に束ねれば。
「――放て!」
樹上での号令一下、引き絞られた弦が勢いよく矢を弾く。
空裂いて飛ぶそれは、先を行く猟兵の背中へと瞬く間に迫って。
「やっぱりいい腕ね」
振り返ることなく呟いたアンリは、ガラスの破片を握りしめたままで僅かに身を捩る。
掠めたかと思うほど間近を過ぎていく矢。真後ろに目が付いているのではないかと疑わざるを得ない、正しく神業と言うべき見切りを可能とするのは、手から滴って服の下へと――全身を巻く包帯へと染み込んだ血を対価に引き出す、悪魔の力。
それが齎す超常は、猟書家をも凌ぐ。
「鼠のようにちょこまかと……!」
歯噛みしつつも、チーフメイド・アレキサンドライトが迫る猟兵へと照準を合わせる。
――だが、そうすれば矢の雨に晒されるは必定。
咄嗟に赤紫色に変じた片腕で薙ぎ払い、叩き落としても、全て躱すには至らない。ユーベルコードでもないただの矢は、能力として複写する事も出来ない。
「けれど、その大きな鉄砲を其方に構えれば」
エルフたちの攻撃を払い除けたところで、今度は猟兵への対抗策を失う。
飛び交う矢を悉く見切って逃れ、戦の最中に荒れた大地も難なく乗り越えたアンリは、さらに加速してアレキサンドライトの懐へと飛び込んだ。
其処へ至って、唯一の障害となるのは赤紫色の腕。
とはいえ、それも“ユーベルコードを受け止めなければ”ただの腕。
掻い潜り、猟書家の身体に拳銃を押し当てた時点で、勝敗は決した。
「……掃除。ええ、掃除の時間よ、オブリビオン」
「――――ッ!!」
激昂したアレキサンドライトの眼が睨めつけてくる。
しかし、もはや大砲を鈍器代わりに振る事さえ叶わない。
「ぶっ飛ばしてやるわ」
――過去から滲み出した穢れを、粉々にして再び骸の海へと。
アンリの拳銃から、一瞬で夥しい量の弾丸を吐き出される。
黄金の雨を降らせるが如き、神速の銃撃。
それはチーフメイド・アレキサンドライトを、その目論見ごと打ち砕いた。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
まあ、邪魔な木々を樵ることも「掃除」だろうよ。……本当に邪魔ならな。
エルフの方々に頼んでアレキサンドライトに気づかれないように背後の高い位置に案内してもらってフックを投擲。首に巻きつけて力任せに吊り上げてやるわ!
どれだけ頑丈とはいえ、流石に窒息しかねない状態で呑気にガトリング砲を撃ち回している余裕は無かろう? ならそんな邪魔なデカブツはワニの餌にさせてもらおうじゃないの?
え、クリスタリアンは野蛮ー? そんなこと無いよ、「目には目を歯には歯を」の精神でやり返してるだけよ? ……これで他のクリスタリアンへの風評被害は無いでしょう……無いよな?
●カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)
塵や埃を掃き払って取り除くこと。
辞書を紐解けば、掃除という言葉にはそのような意味がある。
ならば、邪魔な木々を樵ること。それもまた“掃除”だろう。
(「……本当に邪魔ならな」)
憤慨を心の内に押し留めて、カーバンクルは樹上を進む。
眼下には、猟兵やエルフを炙り出そうと木々に弾丸を撃ち込む猟書家、チーフメイド・アレキサンドライトの姿。
欺瞞の術などを持たないカーバンクルには、いつ気付いてもおかしくはない――が、正しく今の足元と同じ、踏めば折れそうなほど細い枝を渡るような博打じみた作戦を繋げているのは、同行したエルフの存在。
森を己自身のように把握するとがり耳の案内を受ければ、カーバンクルただ一人で行くよりは遥かに希望が持てる。
それでもやはり、気付かれないかどうかは賭けであったが。
(「……何とかなったわね」)
目指していた地点に辿り着き、カーバンクルは一つ静かに息を吐く。
下方で小さくなった敵の姿は此方に背を向けた状態。
(「気取られる前に、こいつで吊り上げてやるわ!」)
気合を入れ、取り出したるは巨大な釣り針のような鉤を付けた鎖。
それを密やかに垂らし、揺らし――狙い定めて、猟書家へと放る。
「――――!?」
「かかった!」
ずっしりとした手応え。
カーバンクルは一気に鎖を手繰る。首筋に手を添えて踠く猟書家の姿が、瞬く間に迫ってくる。
「どれだけ頑丈とはいえ……!」
首を絞められたままで、呑気にガトリング砲を撃ち回している余裕はあるまい。
そして続けざま――。
「舐められたものですね」
「っ!?」
追撃を仕掛けようとした間際、アレキサンドライトが器用に身体を捻って此方に向き直る。
青肌はいつの間にやら赤紫色へと変じて、鎖に返す感触をも変えていた。
「肉を縛れば苦しみもするでしょうが。石に糸を巻いて何の意味があると?」
じとりと睨めつけながら問う猟書家。
その全身は間違いなくカーバンクルの攻撃を軽減していた。変色と共に硬質化でもしたのか――。
「ともあれ、掃除の続きと参りましょうか」
刹那の思案に声が割り込む。
凶悪な砲口が、猟兵へと照準を合わせる。
「では――」
「舐められたものね!」
目には目を、歯には歯を。
形勢逆転を成したとばかりに余裕綽々でいる猟書家に鸚鵡返しを喰らわせて、カーバンクルは本命を解き放つ。
それは――機械仕掛けのワニ。
スクラップ、即ち掃除されるべき廃材から生まれた相棒は、今にも唸り出しそうだった重火器ごとアレキサンドライトの片腕を飲み込み、口を閉じると激しく回り始めた。
然しもの猟書家とて、いつ終わるともしれないそれには摩耗する。
赤紫色に変じた身体は敵の攻撃を軽減するが、しかし無効化にまでは至らない。
頼みの武器も引き金を引くことさえ出来ず。
やがて絶叫も途絶えさせたアレキサンドライトは、鎖を緩められると力を失ったまま大地に墜ちていった。
「これでクリスタリアンへの風評被害もないでしょう」
一仕事を終えて、カーバンクルは何よりもそれを案じる。
そして、案じるあまり。
「……ないわよね?」
また些か不安に駆られ、ともすれば野蛮すぎる光景だったのではないか、などと己や敵について省みるのだった。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『疾き者』のほほん
まあ、風精というのもあながち間違ってないようなー…(母が風に連なる何かな人)
ああ、そうそう。エルフには私が近接攻撃し始めたら、遠距離攻撃での援護お願いしましょう。
さてー、まあ、エルフに位置を聞いてまだ頭上にいますけど。
UC使っての風属性攻撃+呪詛。
防がれコピーされてもいいんですよー。
何せそれ、姿を現してる時点で意味がなくなりますから。
気づかれたあとは、漆黒風を近接武器として使用。戦闘知識での潜り込んでの呪詛攻撃。
それ(ガトリング砲)、鈍器にもなりますけど、基本は遠距離と見ましたー。
エルフには結界術を、私には四天霊障での防御オーラを。
●馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)
エルフがそれを繰り返すあまり、徐々に耳が馴染んできた気がする。
(「まあ、あながち間違ってもいないようなー……」)
風に連なる縁も在る。ともすれば、その辺りも神秘を醸し出すに寄与したか――などと、想像に耽るのは今でなく。
「ああ、そうそう」
猟書家にもまるで物怖じしない義透は、軽い使いでも頼むくらいの調子で言う。
「私が仕掛けたら、弓で援護をお願いしますね」
「分かりました、風精様」
どうかお気をつけて。
甲斐甲斐しくも此方を案じる台詞に、義透は穏やかな顔と結界術を返して跳んだ。
樹上を渡るのが朝飯前なのは、既に証明したとおり。
(「さてー……」)
二、三の枝幹を渡って、敵の頭上に位置したままで距離を詰める。
其処から繰り出すのは、やはり馴染みの得物。
風と呪を仕込んだ棒手裏剣――。
「――そこですか!」
義透の手元から武器が離れてすぐ、アレキサンドライトのガトリング砲が唸った。
嵐の如く撃ち出される砲弾が瞬く間に棒手裏剣を飲み干し、辛うじて越えた一本は赤紫色に変じた腕が叩き落とす。
「いやー、惜しかったですね」
欠片ほども思っていないような事を義透が言えば、猟書家は不敵な笑みと共に腕を振った。
その赤紫が受け止めたユーベルコードは、限られた時間の中でなら幾らでも模倣できる。
「己が技で散りなさい!」
腕と同じ色の飛び道具を数多作り上げたアレキサンドライトが、その全てを弾丸に代わって差し向ける。
しかし、義透には焦燥など微塵もない。
己が技。そう、自身のユーベルコードであるが故に、その効果は誰よりも解している。
「もう意味ないんですよ、それ」
投擲が真価を発揮するのは“相手に気付かれていない”時。
もはや見間違いも見失いもしない距離で射ったなら、それは単なる投擲攻撃に過ぎない。
避けるなど造作も無いことだ。樹上から降りる最中に身体を僅か捩って、ただそれだけで悉く躱してみせた義透は、着地と共に再び跳ぶ。狙うは上でなく、真正面。燕のごとく低く、低く――。
「ちっ……!」
「鈍器にもなりそうですけどねー」
エルフの援護射撃も始まる中、苦々しい顔で間合いを取ろうとする相手に肉薄しつつ、ふと呟いて視線を注ぐのはアレキサンドライトのガトリング砲。
重厚かつ超大。引き金など引かなくとも、横薙ぎに振るだけで常人なら一撃で打ちのめしてしまうだろう。
とはいえ、やはり基本は遠距離から弾丸を撃ち放つ為のもの。
「これほど近づいてしまえば――」
「ならば受けてみなさい!」
威勢のよい叫びを伴い、アレキサンドライトは義透の想像を具現化する。
大砲が鋼の棍棒と化して、迫る猟兵を真横から打ち叩く。
それは確かに侮り難い衝撃。
手頃な大きさの棒きれでも、原始の時代より武器として使われてきた意味がよく分かる。
だが――やはり本来の用途ではないからか。
義透を義透たらしめるものを、四天霊障を砕くには足りない。
「っ……なんです、貴方は……!」
理外の気配を感じ取ってか、アレキサンドライトが吐き捨てる。
けれど、其処に与えられるのは答えでなく。
呪詛を込めた棒手裏剣を握っての一閃。
義透が喉元を掻っ捌いて過ぎれば、猟書家は悲鳴すらも上げられずに膝を折った。
成功
🔵🔵🔴
神咲・七十
アドリブ・連携お任せ
・・・あれ?ちょっと口調かぶってます?
まぁ、別にいいですが(お菓子もぐもぐ)
ちょっと慣れてきましたし、次はそれっぽいことが出来そうです。
(UC『万花変生』を使用。エルフさん達の樹上からの援護を受けながら、エントのような自立歩行ができる巨大な樹木の巨人を呼び出し、それに乗って戦います。)
直接だと取られちゃいますかね?
なら、これを使わせてっと。
(UCを取られない様に巨木を巨人持たせてホームランの勢いでぶっ飛ばします)
もの凄い飛んでいきましたね。
私と巨人だけで追いますか。
(確認しに追いかけた先で隷属させる植物を植え付けて、まだ動けそうなら戦い弱らせてから取り込もうとします。)
●神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)
何だか微妙に口調が被っているなぁ、などと思いつつ。
お茶菓子を一摘み。もぐもぐ。
「……ふぅ」
舌の上で溶ける甘味が全身へと行き渡れば、頭もすっきりとしてきた。
――で、何が何でどうするんでしたっけ?
「あ、あの、精霊様……」
「ああ、そうでした」
エルフの森を滅茶苦茶にする野蛮なオブリビオンを倒したら、それをけしかけた諸悪の根源がやってきたところだ。
猟書家、チーフメイド・アレキサンドライト。
作戦を台無しにされたせいか、あれこれと憤りを言葉にしていたようだが――七十が糖分補給中だった頃の話なので、正直中身は思い出せない。
「まぁ、別にいいでしょう」
猟書家の宣う事など、ろくでもない以外にない。
「ちょっと慣れてきましたし、それっぽい感じで行きますよ……!」
気合充分。
エルフへの援護射撃を指示した後、七十は爆ぜて横たわる大木を横目にユーベルコードを発動する。
それを目の当たりにしたエルフたちは、只々奇跡と感じて敬服するしかなかっただろう。
緑を掻き分け、忽然と戦場に姿を現したのは――樹木の巨人。
「……もしや、古より語り継がれし森の護り人……!」
ぽつりと呟く老エルフが見上げる先で、巨人の肩に乗り上げた七十は意気揚々と腕を振る。
途端、巨人は大樹で織り上げたかのような足をゆっくりと一歩、前に運んだ。
大地が揺れ、戦場となってもまだ居残っていた鈍感な鳥たちが空へと羽ばたく。
「いい景色ですねー」
飛び立つ群れの行方を追いながら語る七十は、まるで散歩か観光でもしているかのよう。
無論、目的を忘れた訳ではない。眼下を見やれば――。
「何ですか、この化け物は……!」
苦虫でも噛み潰したかの如く顔を歪めて、チーフメイド・アレキサンドライトがガトリング砲を此方に向けている。
しかし、サイキックエナジーの弾丸も樹木の巨人には梨の礫。
おまけにエルフたちが矢の雨を降らせるものだから、アレキサンドライトの苛立ちは益々強くなるばかり。
――だが、遙か高みからでは猟書家の反応など些事にも満たない。
「万が一、真似されても困りますからね」
エルフたちに向けられた弾丸を巨人の片手で受けた後、七十は先程目をつけておいたものを拾わせる。
巨人の目線では棍棒と呼ぶに足りないが、猟書家からすれば紛うことなき大木。
「これで、こうして――」
「――は?」
何を、と。アレキサンドライトが思う間はなかった。
巨人が身体を捻り、勢いよく大木を振るう。重心を上手く移動させて、しっかりと体重の乗ったフルスイングが――アレキサンドライトを遙か彼方へと打ち上げる。
「おおー……もの凄い飛んでいきましたね」
エルフたちも思わず歓声を上げたくなった程の一撃だ。
然しもの猟書家も逝ったか、或いは死にかけか。
「私たちだけで確かめに行くとしますか」
そして、あわよくば――。
仄暗い企みを胸に抱きつつ、七十は打ち飛ばしたアレキサンドライトの行方を追った。
成功
🔵🔵🔴
エアリーネ・シルベンスタイン
はぁ……
戦利品の調査とか、森の話を聞くとか色々あるんです、
エセ皇女の駄メイドの相手をしてる時間も惜しいんです……
相手の範囲攻撃UC対策に結界術での魔法障壁を、
といっても周囲や地元エルフさんも守ろうとすると薄くせざるを得ませんし、削り取るような多弾攻撃には相性が悪い……
仕方ありません…幸いこの前の依頼で毒性霧を吸い込んでたせいで中を大掃除したばかりです。
結界を『ぷちぽーたるくん』の口の中へと攻撃を弾きつつ誘導する形にし、
異空間に「非生物である」弾丸を仕舞いこみ。
その隙に電撃魔法で攻撃、命中すれば【バインドチェイン・ライトニング】で追撃、です
あ、支援してくれるなら今ですよ。
※アドリブ他歓迎です
●エアリーネ・シルベンスタイン(びんぼうエルフ・f26709)
満を持して登場した此度の元凶。
猟書家チーフメイド・アレキサンドライト。
猟兵もエルフも穏やかだった森も、悉くを“掃除”するなどと宣う敵の存在は、到底見過ごせるものではない――が、しかし。
「はぁ……」
エアリーネは溜息を吐く。
世を正義と悪に塗り分けて、その片側に入れ込むのは勇者か魔王の役目。
彼女はどちらでもない。強いて言うなら遺跡荒――真理の探究者だ。
故にアレキサンドライトが息巻いたところで、心を満たすのは勇猛な闘志でなく苛立ちや憤り。
「戦利品の調査とか、森の話を聞くとか色々あるんです。エセ皇女の駄メイドの相手をしてる時間も惜しいんですよ、こっちは……」
「……あ、あの……?」
傍らのエルフが困惑しつつ呼び掛ける。
どうにも俗っぽいというか、ぶつくさ呟く様が並の人っぽく見えたのだろう。
その視線に気付いて咳払いを一つ挟むと、エアリーネは大きな魔法障壁を築き上げた。
神秘を取り繕うのでなく、猟書家の攻撃から木々やエルフたちを守る為だ。
(「……と言っても、多くを守ろうとすれば薄くせざるを得ないんですよね……」)
自身の施す術であるから、どの程度耐えられるかは勿論予想がつく。
もはや壁というよりか、幕と呼んだ方が正しいそれは今日の相手との相性もイマイチ。アレキサンドライトが携えるガトリング砲から雨あられと弾丸を浴びせられれば、瞬く間に削り取られてしまうだろう。
果たして、その予想は見事に的中した。
猟兵とエルフの姿を認め、アレキサンドライトが引き金を引けばサイキックエナジーの弾丸が滝のように注がれる。
木々を守る障壁の一辺が砕けて散り、幾つかの大木がドミノ倒しの如く雪崩込んでいく。
「ああ、森が……!」
自身も危機に晒されているというのに、エルフの一人が悲痛な声を漏らす。
それを聞いて、エアリーネは決断した。
確かに彼女は勇者でも魔王でもないが――しかし、塵芥のように薙ぎ払われていく聖なる森や、その守り人たる地元エルフたち。それらが内包するエアリーネにとっての“未知”が危ういとなれば、さらなる力を解き放つのにも躊躇いは――。
「……仕方ありません」
若干、躊躇ったかもしれない事には目を瞑ろう。
取り出したるは、その名もずばり“ぷちぽーたるくん”なる不思議なかばん。
「この間、毒霧を吸い込んでしまったせいで中を大掃除したばかりだったのが幸い――いえ、アレキサンドライトさん。あなたにとっては不幸でしたね……!」
不敵な台詞をぼそりと零して、ぷちぽーたるくんの口を広げたエアリーネは魔法障壁を操る。
広くを守る薄い幕から、敵の弾丸を不思議なかばんへと誘導する漏斗のような形へ。
「――――ッ!?」
これには猟書家も驚愕する他ない。
サイキックエナジーの弾丸が悉く“かばんの中に飲み込まれて消える”のだ。
「生き物でなければ何でも入るんですよ。便利でしょう?」
マジックアイテムの優秀さを誇りつつ、エアリーネ自身は杖を手に電撃魔法を放つ。
それは猟書家を脅かす程のものではなかった――はずだ。平時なら。
一瞬。弾丸を無効化されてしまった事に意識を奪われた、その一瞬。
僅かな隙が、軽く避けられるはずだった雷に接触を許した。
「そのまま動かないでくださいね。……お掃除が終わるまで」
猟書家のお株を奪うように言って、エアリーネは電撃の拘束を保ちつつ片手を上げる。
それを合図に、樹上のエルフたちが一斉に弓を引いた。
「――今です」
呟きは矢が空を裂く音に掻き消されて、エアリーネの前には無様な針鼠が一匹、出来上がる。
既に大砲も取り落して、それでも恨みがましく此方を見据える視線を払うように雷撃を強めれば、アレキサンドライトは小石を叩き割るかのように忽然と砕け、消え失せていった。
◆
かくして、フェンネルの森は守られた。
エルフたちは口々に猟兵へと礼を告げ、将来の協力を約束する。
「……あ、じゃあ、早速なんですけども」
エルフたちが後始末を始める最中、エアリーネはずっと堪えていたものを解き放った。
その知識欲に捕まった住人は当面の間、質問責めにされたとか、されなかったとか。
成功
🔵🔵🔴
最終結果:成功
完成日:2020年12月10日
宿敵
『チーフメイド・アレキサンドライト』
を撃破!
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