●死の先へ征く者
それは無貌なる神の姿であった。
アックス&ウィザーズ世界のある街において、その神はある時から信仰の対象となった。街のあちらこちらに石像が乱立し、人々はそれを目にすれば必ず足を止めて祈りを捧げる。
それだけ見れば、熱心な信仰者であり、敬虔為る信徒の行いであったように思えたことだろう。
「生命を司る神……不死なる獣……我等信徒に満ち溢れる生命の輝きを与え給え」
その祈りは、願いは、生命であれば当然の想いであったのかもしれない。
長く生きたい。
死を先延ばしにしたい。もっと先へ。その願いは、誰しもが願うものであったのかもしれない。
だが、彼等が信奉する無貌なる神は神ですらない。
オブリビオンである。それを知る者は今は誰一人としていない。街の中心に打ち立てられた聖堂の中で、その大神官を務める『ウィルオーグ』は穏やかな微笑みでもって信徒たちを出迎えた。
「君たちの信仰は尊い。何物にも代え難い尊きものだ。君たちの信仰が実を結び、君たちはさらに人生を奥へと歩み進めるだろう。君たちが願い、祈れば祈るほどに君たちの寿命という名の時間は増えていく」
その言葉は優しく、慈愛に満ちていた。
無貌の神が言うのだと彼は告げる。それは神託そのものだった。
「信仰を捧げよう。君たちの願いと祈りこそが、君たち自身のためになる。神は願えば与えるだろう。勝ち取れとは言うまい。ねだるなとは言うまい。神とは祈る者にこそ、与えるのだから」
だから信仰心を捧げるのだと『ウィルオーグ』は微笑みを絶やさずに言う。
その思いこそがあらゆるものを凌駕する力になると既に知っていた。だが、その慈愛に満ちた微笑みの裏にあるものを誰も知らない。
彼こそが嘗ての信仰と慈愛を歪み果てさせた猟書家『異端神官ウィルオーグ』なのだから――。
●その偽りを討て
今は誰も崇める者もほぼいなくなった神の名を知る者がいる。
彼等は『パラディン』――高潔と献身を美徳とし、他者を護る為に己の身を呈することを厭うことのない真なる殉教者と言える者たちである。
彼等の一人……今はもう僅かにその名を知る者だけになってしまった『知識の神エギュレ』の『パラディン』であるソフィアは、まるで電撃に撃たれたように体を震わせた。
彼女は聖堂も信者も、名誉も称賛もなく、清貧のままに世界をさすらい、人知れず人々の生活を護ってきた。
「馬鹿な……そんなことが……いや、この神託を疑うことはない」
彼女は未だ信じられぬという表情を浮かべながら、しかし彼女の魂に降り立った特別t為る天啓に体を震わせた。
それは自身に降り立った神の啓示に感激したわけではない。
「我等が信仰の始祖……『ウィルオーグ』が人々を洗脳し、偽りの神の侵攻を集めている」
そう、彼女に降り立った天啓。
それは『知識の神エギュレ』から示された事実。ある街において嘗て大神官とも呼ばれた「ウィルオーグ』が人々を洗脳し、その信仰心を悪しき企みに利用しようとしているのだ。
「許してはおけない。我等の始祖『ウィルオーグ』が汚濁と共に蘇ったというのならば、我等が……いや、私がそれを灌がねばならない。止めなければ――!」
ソフィアの瞳は正しく正義の心に輝く。
天啓に導かれるままに、『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアが道を急ぐ――。
●光輝
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はアックス&ウィザーズにおける事件です。今回も新たなる猟書家の存在が確認されました」
ナイアルテの瞳は暗い。
それもそうだろう。猟書家による世界への侵攻。骸の月を押し返す戦いが始まって一月が経過しようとしていた。
猟兵達の戦いは苛烈を極めているが、勝利を収めていることは理解している。だというのに次から次へと新たな猟書家が現れているという報告ばかりであり、彼女が予知した光景もまた同様であったのだから。
「ある街で猟書家『異端神官ウィルオーグ』が『大天使ブラキエル』の目論む『天上界への到達』を実現すべく、ある街において全住民を洗脳し、一体のオブリビオンを偽りの神として熱心に信仰させ、その信仰心を注ぎ込むことで『偽神』を完成させてしまっているのです」
人々の信仰心によって完成されたオブリビオンが成った『偽神』は光り輝く姿をしており、たしかに人々が信仰する神の姿のようにも思えるだろう。
だが、それは『異端神官ウィルオーグ』の目論見である。
いずれ来るであろう天上界攻略のための中心戦力として『偽神』を用いようとしているのだ。
「ですが、この企みに私たちよりも早く気がついた方がいらっしゃるのです。それが『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアさんです。彼女は今はもう信仰する者もほぼいなくなった神を信奉し、名誉も称賛も求めずに人々を救ってきた方です」
その『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアは、猟兵たちよりも早く、『異端神官ウィルオーグ』の洗脳する街へと向かっているのだとう。
単身で立ち向かうのには理由があるのだという。
「猟書家『異端神官ウィルオーグ』はかつて『知識の神エギュレ』の信仰の始祖であったのです。今は過去の化身として蘇ったことにより、その信仰は歪みきっています。そのためにいち早く神の啓示をソフィアさんは受け、街へと踏み込んでいるのです」
今からであれば、彼女に続く形で猟兵たちも戦いに向かうことができるのだという。
「どうか、ソフィアさんと協力し、『偽神』を打倒し、人々を『異端神官ウィルオーグ』の洗脳から解き放って頂きたいのです」
人の心には信仰が必要だ。
信じる力は時に途方も無い力を生み出す。ナイアルテが猟兵達を信じるように、誰かの願いや祈りが戦う者の背を押す力となることを彼女はよく知っていた。
だからこそ、ナイアルテは送り出す猟兵達の勝利を願い、祈る。
いつだってそうだけれど、彼女は見送ることしかできない。だからこそ、祈る。その祈りと願いが、彼等の力になると信じて――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアックス&ウィザーズにおける猟書家との戦いになります。猟書家『異端神官ウィルオーグ』は、ある街全ての住人たちを洗脳し、彼が用意したオブリビオンを神として信仰させることによって信仰心を注ぎ『偽神』として来る天上界攻略のための戦力として揃えようとしています。
この偽りの信仰を打ち砕くシナリオとなります。
※このシナリオは二章構成のシナリオです。
●第一章
ボス戦です。
光り輝く『偽神』と化したオブリビオン『不死獣・生命を叫ぶもの』との戦いとなります。
『異端神官ウィルオーグ』の画策通り、注がれた信仰心によって超強化されているのですが、『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアがユーベルコード『無敵城塞』を使用すると必ずその方向に攻撃を仕掛けてしまいます。
これをうまく利用し、パラディンであるソフィアと連携し戦い、『偽神』を打倒しましょう。
●第二章
ボス戦です。
パラディンであるソフィアには猟書家に対する特殊な力はありません。猟兵と比べても特別強いというわけではないのですが、使用するユーベルコード『無敵城塞』は有用であると言えるでしょう。
彼女に指示を出し、戦いを有利に進めましょう。
猟書家『異端神官ウィルオーグ』は言うまでもなく強敵です。すでに過去の化身として、その信仰心と慈愛は歪んでおり、人々の信仰心や願い、祈りを悪用することにためらいすら持っていません。
彼を打倒しなければ、街の人々は偽りの信仰心を捧げ続けることになるでしょう。
※プレイングボーナス(全章共通)……パラディンと共闘する。
それでは、偽りの信仰と神を打倒し、人々を救う物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『不死獣・生命を叫ぶもの』
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POW : 不死者・生命を望むもの
【生き抜く為に理性、思考能力、魔術】に覚醒して【鎧状の甲殻や武器のような腕を持つ巨人】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 不死獣・姿なきもの
【全身に魔力の噴射器を生成する】事で【影も残さぬ超速形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 不死竜・終着点を越えるもの
対象の攻撃を軽減する【鱗や甲殻に覆われた巨大なドラゴン】に変身しつつ、【巨躯から放たれる重撃や破壊のブレスなど】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「浅倉・恵介」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「人々に信仰が必要なのは言うまでもない。人は何かに縋らなければ、容易く折れてしまう生命であるのだから。だからこそ、人は生を望む。誰かより長く、誰かよりも優れたる人生を望む。他者と己との評価の差に苦しむのならば、それを救うのが信仰というものだよ。『知識の神エギュレのパラディン』」
『異端神官ウィルオーグ』は洗脳した街の人々の信仰心を注ぎ込んで完成されたオブリビオン『偽神』の光輝の影でほくそ笑む。
その言葉は甘やかなものであった。
人の心の弱さに付け込んで、己の欲望を満たそうとする者の甘言そのものだった。人はたしかに皆、弱いものだろう。
その言葉に真っ向から瞳を見据え、ユーベルコードに輝くのは『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアである。
「それは詭弁というものだ。我等が信仰の祖よ。確かに人は優れたるものを好む。誰かよりもより良く在りたいと思う。正義を愛する。だが、それは己のためだけに寄るものではない。人の本質が自己的なものであるというのなら、我等生命はとうの昔に滅び去っている」
誰かのために何かを為すことができるからこそ、生命はその連綿たる歴史を紡いできた。
誰かのためになりますようにと戦い、己の身を擲つ者がいたからこそ、後に続く生命がある。
自己だけで完結するのであれば、そこに紡がれる歴史はありはしないのだ。
「ソフィア、君のように誰もが在れるわけではないだよ。人は弱いものだ。だからこそ、信仰心は尊い。その想いの力が強大な者さえ打倒してしまう。ほら、このように――」
その言葉と共に現れるは無貌なる神。
この街の住人を洗脳して得た信仰心によって光輝なる光を放つオブリビオン『不死獣・生命を叫ぶもの』 。
すでに無貌とは呼びがたき獣の如き様相を放つ姿は、まさに『偽神』と呼ぶに相応しきものであった。
その無貌なる神『不死獣・生命を叫ぶもの』の咆哮が迸る。
異形の咆哮は注がれた信仰心と共に絶大なる力を放つ。だが、それでも『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアは一歩も退かない。
「大した覚悟だよ。私も祖として鼻が高い。だが、君のユーベルコードが如何に絶対無敵たる防御の力を持っていたとしても、この『偽神』を倒すことはできない。そうだろう? 私達は君のユーベルコードが途切れるまで待てばいい。終わりは必然だよ」
確かにそのとおりだった。
ソフィアは言う。
「だからなんだというのだ。私が此処に来たのは、天啓があったからでもなんでもない。私は私の心に従ったまで。お前を討てという私の心の叫びが、私を此処まで釣れてきたのだ――!」
天御鏡・百々
人々の信仰心を利用して天上界を目指す戦力を造り出そうとは…
猟書家め、許せぬ所業だ
ソフィア殿、共にあの『偽神』を倒し
ウィルオーグに天罰を与えようぞ!
「ソフィア殿、敵の攻撃を防いでくれ!」
無敵城塞を使ったソフィアの背後に隠れ
不死竜と化した敵の攻撃を神鏡に映し取る
ブレスの余波などは神通力の障壁(オーラ防御)で防御
「偽りの神よ! 己が力にて滅び去るがいい!」
『鏡像反攻儀』にて、鏡から不死竜を映し出して敵と戦わせるぞ
味方の不死竜を障壁や弓矢で援護すれば
優勢に戦えるはずだ
余裕があれば、信仰する神は偽りだと人々に告げ洗脳解除を目指す
●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
●アドリブ、連携歓迎
人の心に信仰は必要なものである。
それは時として人の柔らかい心を鎧うのに必要なものであったり、誰かの心と心をつなげる鎹であったりもする。
そこにあるのは何かを拠り所にするためのものであり、それを徒に自己的な欲望のために扱っていいものではない。
人の信仰心を受け続け、祀られていた破魔の神鏡のヤドリガミとして顕現した猟兵、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)にとって、それは許し難いものであった。
「人々の信仰心を利用して天上界を目指す戦力を造り出そうとは……猟書家め、許せぬ所業だ」
百々の声がアックス&ウィザーズ世界の、猟書家『異端神官ウィルオーグ』に洗脳された街中に響き渡る。
「おや、これはまた可愛らしい闖入者だ。いや、猟兵だな。なるほど。我等の企みを知って駆けつけたか……ですが、一歩遅かったようだ。我等が『偽神』はすでに在りて。ここに力を発揮している」
せせら笑う『異端神官ウィルオーグ』。
その前にいるのは『偽神』として顕現した『不死獣・生命を叫ぶもの』。その無貌であった姿は今は異形なる怪物の姿として猟兵たちと相対する。
「ソフィア殿、共にあの『偽神』を倒し、ウィルオーグに天罰を与えようぞ!」
百々は『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアと並び立ち、『偽神』と対峙する。
人々の信仰心を得て強大な力を得、光輝たる姿で持って迫る異形の『偽神』。それはまさに尋常ならざる、神なる力を持っていた。
その異形がさらなる変貌を遂げる。
体は強靭なる甲殻に覆われ、その姿はまさに竜。咆哮し、口腔より放たれるのは絶大なる威力を誇る炎のブレス。
「ソフィア殿、敵の攻撃を防いでくれ!」
「ああ、あのユーベルコードは私が!」
ソフィアは一歩も退くことはなかった。
あの異形を前にして、一切の恐怖を抱くこと無く構えた盾をかざし、ユーベルコード『無敵城塞』の力を押し出す。
一歩も動くことはできないが、その防御力はどれだけ強大な一撃であろうと防ぎきってみせる。
炎のブレスを割るようにソフィアのユーベルコードが輝き、百々は彼女の背後に隠れ、手にした神鏡をかざし、『不死獣・生命を叫ぶもの』の姿を映し出す。
炎のブレスは、切り裂かれたが、それでも余波が街中に及ぶ。それを百々は神通力のオーラによって拡散せぬようにと防ぎ切る。
「偽りの神よ! 己が力にて滅び去るがいい!」
百々の手にした神鏡がユーベルコードに輝く。鏡像反攻儀(キョウゾウハンコウギ)――それは防御したユーベルコードを己の本体とも言える神鏡に映し出し、一度だけであるが借用することができる。
それは確かに映し出した。
『偽神』と言えど、人々の信仰心は本物である。
その信仰が偽らざるものであるからこそ、あの強大なるオブリビオンを生み出したのだ。それをそのまま映し出す神鏡から現れるのは、まったく同一の甲殻を持った竜。
「不死の竜よ、その力を今奮え! 偽りの神に捧げられた信仰心であろうと、人々が己のためだけに祈るわけではないことを知らしめるのだ!」
解き放たれた不死竜が『偽神』へと掴みかかり、炎のブレスを放つ。
したたかに打ち据える互いの体。
それは凄まじい戦いであった。遠巻きに見ている街の人々もまた、洗脳されているが故に、同じ姿をした己達の信仰する神々の姿に何を思うのか。
「あの神は偽りの姿! 人々よ、偽りの信仰は偽りの神を呼ぶ! 目を覚ませ、その尊き信仰は、本来別の神に捧げるものであろう!」
百々の叫びが街中に響き渡る。
『異端神官ウィルオーグ』に洗脳された彼等の耳に届く百々の神通力を伴った声が、彼等の心の中の信仰心に訴える。
本来の神を。
何を思い、誰を思い、祈り願ったのかを思い出させるように。
それは信仰心を注ぎきり、『偽神』を完成させた『異端神官ウィルオーグ』にとっては、最早不要なものであった。
無駄とも言える行為であった。だが、それでも百々の声は人々の心に本来在りし、信仰の光を取り戻すには十分なものであったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私/私たち
対応武器:漆黒風
連日騒がしいですよねー、まったく。
ですが、いきましょうかねー。
ソフィア殿に共闘を依頼。
そのときに、後続の猟兵も来ますでしょうし、負傷の積み重ねが目的だと話しておきますねー。
位置取りは、できるだけ敵を挟むように。
ソフィア殿がUC発動するのに合わせて、風属性攻撃+【連鎖する呪い】つきの漆黒風を投擲。
軽減するとは、言い換えればそれだけしかできないんですからねー。
どうも寿命削るみたいですし?
連鎖する不幸で、さらに弱められればー。
猟書家による世界への侵攻はすでに一月を数えようとしていた。
すでに現れた猟書家たちの他にも、次々と世界を蝕もうとする過去の化身は増えている。それを憂う者は、絶望するだろうか?
答えは否である。
どれだけ過去の化身たる猟書家が現れようとも、その目論見を全て看破し打ち倒す者こそが猟兵である。
世界の悲鳴を聞き届け、駆けつける者。
その到来を『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアが知っていたのかどうかはわからない。
だが、彼女に降りた天啓は、たしかに彼女の見返りを求めぬ清貧たる心に応えるようにして、次々と猟兵たちが転移してくる。
「連日騒がしいですねー、まったく。ですが、いきましょうかねー」
舞い降りた猟兵の一人である馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、その身に宿る複合型悪霊の一人である『疾き者』の人格を主として戦場と成った街中を駆け抜ける。
すでに猟書家『異端神官ウィルオーグ』によって洗脳された街中には人々が、己たちが信仰していた異形なる神の姿を見ている者もいるだろう。
猟兵に寄って洗脳を解除された者もいたが、大半は未だ洗脳されたままだ。
「次から次へと猟兵がやってくる。それは承知していたはずですが、この光輝なる『偽神』の姿を見てもひるまないとは。神の威光を前にしても反逆するとは愚かな……」
オブリビオン『不死獣・生命を叫ぶもの』は、洗脳された人々によって注ぎ込まれた信仰心を得て、『偽神』と呼ぶに相応しき甲殻に覆われた竜の姿へと変貌し、炎のブレスを放ち、咆哮を迸らせる。
そこにあったのは神と名乗るにはおこがましき姿であったが、それさえも『異端神官ウィルオーグ』は利用し、洗脳した人々から信仰心という力をかき集めて強力なオブリビオンを『偽神』として生み出すのだ。
「ソフィア殿。これより私たちの後にも猟兵が現れましょう。私達の力であの個たる『偽神』は倒しきれないかもしれませんー。ですが、それでも負傷の積み重ねこそが、勝利への一歩」
確かに個としての力は『偽神』に分があるだろう。
それはわかっている。いつだって猟兵の戦いとは、個としての戦いではない。どれだけ強大なる存在であったとしても、猟兵たちは諦めない。
「ああ、ありがとう。私のユーベルコードは未だ健在。私を使ってくれ! この『偽神』は討たねばならない!」
益々輝く『無敵城塞』のユーベルコードは、『知識の神エギュレのパラディン』たるソフィアの心を受けて輝く。
それを目映いものを見るかのように『疾き者』は細まった目をさらに細めて微笑む。
それでこそ、と駆け抜ける戦場にあって、互いの位置でもって『偽神』を挟み込むよにして立ち回る。
「そのユーベルコード……不死の竜たる姿……如何に此方の攻撃を軽減するとは、言い換えればそれだけしかできないんですからねー。どうも寿命を削るユーベルコードのようですし?」
放つ棒手裏剣が次々と甲殻を罅割らせ、穿つ。
貫くことはできなくても、それでも連鎖する呪いによって癒えない傷跡となって『偽神』の力を削ぎ落としていく。
さらに次々と発生する不慮の事故の如き不幸の連鎖が『偽神』の力を削ぎ落としていく。
「猟兵殿、私の背後に!」
放たれた炎のブレスを真っ向から『無敵城塞』の輝きで押し留め、『疾き者』をかばうソフィア。
さらにその背後から『疾き者』は棒手裏剣を投げ放ち、次々とその甲殻に罅を入れていく。
小さな一撃であったかもしれないが、それでも『偽神』に蓄えられた信仰心がこぼれ落ちるようにして消耗していく。
「ありがたい……では、引き続きこのまま消耗戦といきましょうかねー。さらに弱めてまいりましょうー」
それはまるで漆黒の風のように、じわじわと『偽神』を追い詰め、消耗させていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
まぁ、ある程度宗教ってのは洗脳に近いもんがあるだろうけどさ。
でもこれは違うと思う。
存在感を消し目立たない様にし、ソフィアにUCを使って貰えるよう頼む。
俺の戦い方は隠密からの奇襲。無敵城塞が使えて、さらにそちらに向くというのなら好都合だ。
ソフィアに向いた隙をついてUC剣刃一閃で攻撃。一撃必殺とはいかないだろうけど、マヒ攻撃・暗殺を仕込み、少しでも戦闘が楽になるように、ダメージが増えるようにする。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性で耐える。
不死の獣、無貌の神たる異形『不死獣・生命を叫ぶもの』の咆哮が猟書家『異端神官ウィルオーグ』によって洗脳された街に響き渡る。
それは苦痛にあえぐわけではなく、ただ己の存在を世界に知らしめる家のような咆哮であった。
不死。
それは暴力的なまでの生命力に満ち溢れるが故の特性であったのだろう。だが、過去の化身として存在する以上、その不死性は打ち破られたが故のものである。
しかして、それを祀り、『偽神』として人々の信仰心を持って強化されるのであれば、まさしくそれは『不死なる神』そのものであった。
「人の心は何時だって不死に憧れを抱くもの。永遠を望み、手を伸ばそうとする。金、権力、財宝、あらゆるものを手にした者が行き着く先が永遠の生命。であればこそ、人々はこの『偽神』へ祈りを捧げるでしょう。人より多くを望むために、人より多くを得るために」
その言葉は甘言。
『異端神官ウィルオーグ』は微笑むようにして言う。
「まぁ、ある程度宗教ってのは洗脳に近いもんがあるだろうけどさ。でもこれは違うと思う」
手にした黒い大ぶりのナイフと嘗て奉納されたサムライブレイドを構えた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)が言う。
彼の目の前には『偽神』。
その姿は変貌し、鎧状の甲殻と武装を持つ騎士のようであった。その『偽神』の中にあるのは生存への欲求のみ。
信仰心によって強化された体ではあったが、それでも猟兵という己を滅ぼす存在を前にして、生存への欲求が高まっていく。
「己のために人々の信仰心を捻じ曲げる。それが貴様のやり方か、我等が祖よ」
『知識の神エギュレのパラディン』たるソフィアが叫ぶ。
かつては同じ神を信奉した神官であったウィルオーグであったが、過去に捻じ曲げられた存在と成り果てた今、袂を分かつことになったのは言うまでもない。
その瞳がユーベルコードに輝き、『無敵城塞』の力に寄って爆発的に増加した『偽神』の一撃を盾によって防ぐソフィア。
瑞樹は気配を消し、目立たぬように立ち回る。
すでにソフィアとの連携の目処はついているのだ。彼女が防御し、その攻撃の隙を瑞樹がつく。
ソフィアがユーベルコードを発言させている間、『偽神』は彼女ばかりを狙う。その特性を利用し隠密からの奇襲の一撃を加える。
「一撃必殺とはいかないだろうけど!」
放たれた剣刃一閃が『偽神』の殴打を続ける甲殻に覆われた槌となった腕を切断せしめる。
その切れ味の凄まじさは言うまでもない。
その黒きナイフの切れ味を己自身が一番理解している。返すサムライブレイドの一撃が甲殻の鎧に覆われていない隙間へとねじ込まれ、切り結ぶ。
「宗教とは人の寄す処。人の心がありしところに在るものでしょう。私は確かに人々に信仰を説きましたが、何処に何を奪われた者がいるのでしょう。何も奪ってなどいない。彼等の形なき、数無き信仰を分けていただいたにすぎない」
『異端神官ウィルオーグ』の言葉は何処まで行っても、耳障りの良い言葉でしかない。
そこに真実はないのだと瑞樹は悟る。
決して本心を見せない。人の前に胸襟を開くことなどしない者の言葉だ。
「誰だって人は誰かより多くを望む。優れていたいと思うでしょう。長く生きたいと願うでしょう。私はそれを後押し下だけに過ぎない。なぜなら、思うだけならば誰も傷つかないからです」
「それを詭弁だというんだ!」
即座に変化し膨れ上がる切り捨てたはずの『偽神』の腕が注がれた信仰心によって復元し、槌の形をした甲殻が瑞樹を襲う。
放たれた鉄槌の一撃を黒いナイフで受け止める。骨が軋み、受け止めた身体が痛む。だが、それも人々の心を思えば、痛みとして認識することはない。
「だからといって人の願いをお前が利用していい理由なんて無い――!」
放たれたサムライブレイドの一撃が、『偽神』の槌を再び切り払い、切断せしめる。
祈りと願いは誰かのために。
だからこそ、瑞樹は『異端神官ウィルオーグ』の言葉を否定するように刃を振るうのだった――。
成功
🔵🔵🔴
月夜・玲
雨後の筍みたいに、どんどん生えるなあ猟書家も
面白ければ良いけどね
信仰心での神造り…
ま、確かに方向性で言えばそういう方向の方が手っ取り早いか
でも、そういうまどろっこしいの嫌いだし
気分の良いやり方じゃ無いし私はノーサンキューかな
●
あーうん無敵城塞…そっか無敵城塞…うん…
ソフィア殿、是非とも協力して敵を倒しましょうとも!
つきましては今此処で無敵城塞を発動して頂きたく…
出来ればずっと解除しないで頂けると…
よし、発動確認
【アームデバイス起動】
圧縮空間より副腕転送
片手でソフィアを掴んで前に出し盾に
偽神に近付くまで辛抱してね
近付いたら偽神を掴んで思いっきり叩き付ける!
これがわいの協力プレイや!
…すまんかった
「雨後の筍みたいに、どんどん生えるなあ猟書家も」
それは呆れ混じりの言葉であった。
オブリビオン・フォーミュラ亡き世界へと侵攻を開始した猟書家たち。此処アックス&ウィザーズに侵攻した猟書家『大天使ブラキエル』は、この世界の何処かに在ると言われる天上界への侵攻を画策している。
天上界攻略のための戦力として猟書家『異端神官ウィルオーグ』は人々を洗脳し、その信仰心でもってオブリビオンを『偽神』へと完成させた。
「面白ければ良いけどね。信仰心での神造り……ま、たしかに方向性で言えば、そういう方向のほうが手っ取り早いか」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はすでに完成した『偽神』たるオブリビオン『不死獣・生命を叫ぶもの』の光輝なる姿を前にして、そうつぶやいた。
UDC――限定的であれど模造神器によって、その力を再現した玲にとって、信仰心を注ぐことに寄って完成した『偽神』の存在はアプローチの方向性の違いはあれど、彼女にとっての研究のテーマに近しいものがあった。
「おお、理解されますか。私の為した事を。信仰心とは形の見えぬ力の流れ。それは人の心の中には必ず存在するもの。人の心の寄す処であるならばこそ、その力は強大なもの。一人ひとりの存在の力は微弱なれど、それが数千、数万と集まれば――」
玲の言葉に『異端神官ウィルオーグ』が微笑む。
猟兵と言えど、己の為したことに一定の理解が得られたことが喜ばしいことであるように微笑むのだ。
「でも、そういうまどろっこしいの嫌いだし。気分の良いやり方じゃないし、私はノーサンキューかな」
だが、その微笑みを言葉でもって玲は一刀両断する。
談義するつもりなど毛頭ない。
彼女にとって、研究とは、追い求めることとは、結局の所彼女が如何に思うかである。気に入らないのであれば斬って捨てる。
それがオブリビオンの為したことであればなおさらである。
「理解していながら、それをしないというのは如何なることか。あの『偽神』の力を前にして……」
「だらだらとオブリビオンと問答する趣味はない。以上!」
玲は駆け出す。
目の前には『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアがユーベルコード『無敵城塞』を発動させ、『偽神』の甲殻に覆われた武装に寄る打撃を耐えている。
構えた盾に張り巡らされた防御の力はほぼ無敵と呼ぶにふさわしく、叩きつけられる衝撃を完全に殺している。
「あーうん無敵城塞……そっか無敵城塞……うん……ソフィア殿、是非とも協力して敵を倒しましょうとも! つきましては今此処で無敵城塞を発動し続けて……できればずっと解除しないでいただけると……」
言葉の字面はとても頼もしいのだが、玲の何か考える表情がなんとも後に来る展開を思わせてただならぬ雰囲気を醸し出していた。
ソフィアはわかっていたのかもしれない。
あの猟兵は――『なんかやる人』だ、と!
「か、構わないが……一体何を――!?」
「デバイス転送。動力直結。攻勢用外部ユニット、起動完了」
彼女の背面ユニットに備え付けられたアームデバイス起動(アームデバイスキドウ)によって圧縮空間より転送されたサブアームが片手で『無敵城塞』を展開したソフィアを掴み上げて前面に押し出す。
「ま、まさか――!? 私を!?」
「そのとおりー『偽神』に近づくまで辛抱してね」
凄まじい勢いで突進する玲とソフィア。
ユーベルコード『無敵城塞』は無敵の防御力を発揮する凄まじき力である。だが、その代償に一歩も動くことができなくなってしまう。
その問題を無理やり解決するのが玲の副腕である。まさに鉄壁の城塞が人間サイズになって突っ込むようであり、その強度は言うまでもない。
「これがわいの協力プレイや!」
迫る玲を前にして迎撃しようとする『偽神』であったが、絶対無敵たる盾――ソフィアのユーベルコードの前にはどれだけの攻撃を放っても、彼女の突進を止めることはできない。
「捕まえた!」
もう片方の副腕で無理やり『偽神』の身体を掴み上げると無敵城塞のユーベルコードを展開したソフィアの盾へと叩きつける。
矛盾の故事に習うのであれば、それは互いに破壊されてしまうことだろう。だが、ソフィアの無敵城塞は本当の意味で無敵であり、貫くこと能わず。
だが、『偽神』の矛はどうだ。
如何な信仰心によって注がれた強化であっても、彼女の無敵城塞を破ることができないのであれば。
「――ッ!?!?」
砕け散るのが必定であろう。
ひしゃげた甲殻の甲冑が砕け散り、『偽神』は絶叫するように傷口から注がれた信仰心を溢れださせる。
これこそが玲の考える『無敵城塞』の最大限に利用したやり方であった。
だが、凄まじ衝撃はソフィアの目を回させるには十分であったことだろう。それを見た玲はなんとも言えない表情で一言詫びるのだ。
「……すまんかった」
きっと後でしこたまソフィアに搾られることになるであろう未来は、きっと玲の瞳に幻視されることであろう――!
成功
🔵🔵🔴
バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
よォ騎士サマ!一銭にもならねェ慈善事業か?気合いだけじゃどうにもならねェのにご苦労なこった!
そんだけ根性?信仰?どっちでもいいか。
あの神モドキを前にしてもソレを持ち続けられるって言い張るなら、守りを固めて奴を引き付け続けろ!そんで…何あっても技解くンじゃねェぞ?
オレぁ神だろうが人だろうが差別しねェぜ?【人狼咆哮】、まとめて平等に聞かせてやらァ!
影が無かろうが音はよく響くだろ?生やした噴射器ごと<部位破壊>で壊してやんよ!
それとも聞こえねェ距離まで下がってみるか?退く神に信徒がついて来てくれるかは疑問だがなァ!
気張れよソフィア!気ィ抜くとお前も奴みてェに壊れちまうからな!
『偽神』と呼ばれるオブリビオンの完成は猟書家『異端神官ウィルオーグ』にとっては、『大天使ブラキエル』の天上界攻略における戦力拡充の計画の一端にしか過ぎない。
彼等が見据えるのはあくまで天上界。
そこに何が在るのか、何を求めて『大天使ブラキエル』やアックス&ウィザーズに侵攻するのかは未だわからない。
「『偽神』に注ぎ込んだ信仰心が漏れ出している……やはり急造の神ではいけませんね。手駒にするのが精々ですか」
『偽神』と呼ばれたオブリビオン『不死獣・生命を叫ぶもの』の光輝なる光が陰ってきていることに『異端神官ウィルオーグ』は気がついた。
確かに『知識の神エギュレのパラディン』たるソフィアだけならば、如何ようにもできたのだ。
だが、世界の楔としてソフィアの存在があるのだとすれば、猟兵は世界をつなぎとめる者である。
「しかし、猟兵を個で圧倒するほどの力は、これからも必要になるでしょう」
「そんな『これから』は来ない! 我等が祖にして歪みきった『異端神官』である貴様には!」
ソフィアが叫び、ユーベルコード『無敵城塞』の圧倒的な防御と引き換えに一歩も動けぬままに『異端神官ウィルオーグ』を睨めつける。
嘗ての『知識の神エギュレ』の大神官であったウィルオーグが、こうも変わり果て蘇ったことに憤りを隠せないのだ。
「よォ騎士サマ! 一銭にもならねェ慈善事業か? 気合だけじゃどうにもならねェのにご苦労なこった!」
それは突如として降って湧いた声であった。
乱暴な口調、そして、その発する言葉はどこか皮肉めいたものに聞こえたことだろう。
その言葉の主、バルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)は勢いよく駆け出す。
かつてダークセイヴァーにおいて支配への反旗の象徴にさえいたろうとした彼の生き様を示すように戦場となった街を駆け抜ける。
「貴方は……!」
「それだけ根性? 信仰? どっちでもいいか」
バルドヴィーノの目の前には全身を魔力の噴射機で覆った凄まじき速度で動く『偽神』の姿があった。
「あの神モドキを前にしてもソレを持ち続けられるって言い張るなら、守りを固めて奴をひきつけ続けろ! そんで……何があっても技解くンじゃねェぞ?」
「だが、あの速さは……!」
ソフィアの言葉を無視してバルドヴィーノは『偽神』を追う。
圧倒的な速度で戦場たる街中を駆け巡る『偽神』の姿は目で追うことすら難しい。
「神モドキとは手厳しい。これ為るはたしかに『偽神』と名付けては居ますが、注がれた信仰心は本物です。人々は偽りの神であったとしても関係ないのです」
『異端神官ウィルオーグ』が笑う。
それは偽りの神に祈り、願い、信仰心を捧げる人々を滑稽だと笑うようでもあった。
「オレぁ神だろうが人だろうが差別しねェぜ? 纏めて平等に聴かせてやらァ――!」
それは激しい咆哮であった。
吠えたけるバルドヴィーノから発せられるのは、ただの音の振動ではない。ユーベルコードに輝く彼の瞳がその証拠である。
どれだけ『偽神』が残像すら残さぬほどの速度で持って動くというのであれば、バルドヴィーノは全てに向かって人狼咆哮を迸らせ、その音を響かせる。
どれだけ影なき程の圧倒的速度で持って戦場を駆け抜け、無敵城塞たるソフィアの守りを打ち破らんとしていたとしても、バルドヴィーノの咆哮はまさに逃げることのできぬ広範囲に渡る砲撃そのものであった。
「影がなかろうが音はよく響くだろ? 逃げ場なんてあるわきゃねェだろうが!」
ソフィアはバルドヴィーノの言葉の意味を知る。
確かに少しでも気を抜けば、ユーベルコード『無敵城塞』を突き破って彼女にまで累が及ぶかもしれないほどの圧倒的声量である。
だからこそ、彼はソフィアに気を抜くなと伝えたのだ。
それは不器用な優しさにも思えたのかも知れない。
「それとも聞こえねェ距離まで下がってみるか? 退く神に信徒が付いてきてくれるかは疑問だがなァ!」
続く激しい咆哮がついには『偽神』の体中に生えた魔力を噴出する噴射機を破壊する。砕け散るようにして全身の噴射機が爆ぜて、その身を焼き焦がすのだ。
「ぐっ――……! なんたる声量! だが、これで『偽神』も……!」
「まだまだこんなもンじゃァねェ! 気張れよソフィア! 気ィ抜くとお前も奴みてェに壊れちまうからな!」
続けざまに迸る咆哮が散々に『偽神』の身体を打つ。
それは決して止むことのない破壊の咆哮として、扇状となった街中に信仰すら届かぬ、己の力のみを頼りとする脱獄狼の遠吠えを響かせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
相手は偽神なので真の姿で参戦。
信仰とは人の心を救う為のもの。
私利私欲の道具ではありませんが、貴方(ウィルオーグ)のような輩はいつも現れる。
オブリビオンならば遠慮は要りません、神として貴方達を討ちます!と宣言。
相手のUCによる変身は全て初発之回帰で無効化し、ソフィアさんと連携して戦う。
自分とソフィアさんに防御結界を施し、第六感と見切りで相手の動きを読み、オーラ防御を纏う天耀鏡で自他共に盾受け。
空中浮遊して、自身への念動力と空中戦能力で自在に空を舞い、煌月に光の属性攻撃と神罰を籠め、衝撃波を放ちつつなぎ払います。
また多重詠唱による雷と光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・貫通攻撃で偽神を撃ち抜きます!
人の心はいつの時代、何処の世界であったとしても弱いものである。
だが、その弱さが強さへと変化することもまた同様である。誰もがそう在ることができるわけではないが、そう在ることのできる可能性をも秘めているのが生命というものであろう。
だからこそ、想いの力、信仰の力は凄まじいのだ。
それを猟書家『異端神官ウィルオーグ』は知っていたからこそ、アックス&ウィザーズ世界の街を一つまるごと洗脳し、人々の信仰心をオブリビオンである『不死獣・生命を叫ぶもの』へと注ぎ込んで『偽神』として完成させた。
「ああ、ここまでの猟兵を相手取っても未だ健在とは。素晴らしきはやはり信仰心です」
感激したように笑う『異端神官ウィルオーグ』。
その信仰心と慈悲は過去に染まり、歪みきっていたと言う他無い。
そんな彼の洗脳した街に舞い降りるのは一柱の神にして猟兵である大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)であった。
光輝放つ姿は、同じく光輝纏う『偽神』と同じであったが、その光が内側から発せられる詩乃と、外側に纏う『偽神』とでは決定的に違うものであった。
「信仰とは人の心を救う為のもの。私利私欲の道具ではありませんが。貴方のような輩はいつも現れる」
その言葉は荘厳なる響きでもって天上より『異端神官ウィルオーグ』が洗脳した人々の住まう街に降り注ぐ。
その光輝たる輝きが街中に溢れかえれば、人々は自然と見上げることだろう。膝を降り、手を組み合わせて仰ぎ見る。
それこそが本物の神性であろう。
「オブリビオンならば遠慮は要りません、神として貴方達を討ちます!」
それは目映いまでの宣言であった。輝く神性のままに詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。
「……! あの輝き、神性……! 外なる世界の一柱……!」
『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアが見上げた先にある詩乃の姿。
それは彼女の知るところの神とは違うものであったが、それがこの街中にある『偽神』とは異なる存在であることを彼女は知っているだろう。
「私のユーベルコードの力が増している……!?」
ユーベルコード『無敵城塞』。
それは一歩も動けなくなる代償に絶対無敵たる防御の力を宿すユーベルコードである。その上からさらに詩乃の防御結界が施されていくのだ。
空中を舞うようにして詩乃はユーベルコードに輝く。対峙する『偽神』たる『不死獣・生命を叫ぶもの』が困惑したように己のユーベルコードの輝きを発しようとするが、それは無意味な行為であった。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう」
詩乃のユーベルコードが輝きを増す。それは、初発之回帰(ハジメノカイキ)。彼女が対峙する『偽神』の放つユーベルコードを発動前の状態に時間遡及する神力である。
それは恐るべき力である。
どれほど強力なユーベルコードであったとしても、詩乃の前では全てが逆巻き、無に帰すのだ。
「馬鹿な――! 時間遡及だと!? ありえない……そんな力が……!」
『異端神官ウィルオーグ』がうろたえる。
それもそのはずだ。この街の人々すべての信仰心を注いだ『偽神』のユーベルコードが一切発動しないのだから。
恐るべき神性を備えた敵が、猟兵が迫っているなど彼等が予想できただろうか。
「ソフィアさん……どうか今一度、かの『偽神』を引きつけてください。動くことのできぬ貴女の代わりに……私が『偽神』を討ち果たしてみせましょう!」
手にした神力宿りし薙刀を構え、自在に空を舞う詩乃の姿は流麗なる舞いを思わせたことだろう。
光の力に宿りし神罰の一撃が『偽神』の身体を打ち貫く。
頼みの綱であるユーベルコードが発動しても発動前に戻されてしまってはどれだけ信仰心によって強化されていたとしても意味がないのだ。
ソフィアのユーベルコード『無敵城塞』を破らんと攻撃を加える『偽神』を打ち据える神罰の一撃。
さらい多重詠唱に寄って空に浮かび上がる詩乃が放つ雷と光の雨が逃げることすら叶わずに『偽神』の身体を穿ち続ける。
「人の切なる願いを! 無垢なる祈りを! 己のためにだけ利用する者には……この私が裁きましょう。この雷を持って――!」
それは人々の善良なる信仰心を己の欲望のために扱った者たちへの詩乃の静かな怒りが籠められるように、空が明滅し雷鳴が戦場となった街に鳴り響くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フェミルダ・フォーゼル
本来、異なる神のパラディン同士はあまり関わらない方が良いのです。私達は大抵融通が利かないものですから。
でも、法と知識の神様は仲良く出来そうですし、何よりオブリビオン絡みですからね。お手伝いしますよ。
彼女を狙う敵の隙を突いて接敵し、手を当て【デュエリストロウ】。「法と秩序と正義の神の御名において、ソフィアさんへの攻撃を禁じます!」
違えれば天からの【神罰】の光が邪神を貫きます。
彼女ではなく私を攻撃すれば良いだけ。とても簡単な制約です。
ですが神とは理と律に縛られるもの。歪な信仰から造られた偽神なら尚更です。ソフィアさんが無敵城塞を使えば『必ず攻撃』してしまうのでしょう?
お願いします、ソフィアさん。
奉じる神の違いは、パラディンにとっては重要なものである。
それを知るのは、同じく『正義と法と秩序の神』のパラディンであるフェミルダ・フォーゼル(人間の聖者・f13437)であった。
本来であれば、異なる神のパラディン同士はあまり関わらない方が良いと彼女は考えていた。
『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアもそうであるかはわからないが、フェミルダを含め、信仰を捧げる神が違えば大抵融通が利かないものであるからだ。
「とは言え、法と知識の神様は仲良くできそうですし、何よりオブリビオン絡みですからね。お手伝いしますよ」
舞い降りた戦場たる街中にあって、未だ猟書家『異端神官ウィルオーグ』が人々を洗脳し、その信仰心を注いで完成させたオブリビオン『偽神』である『不死獣・生命を叫ぶもの』は健在であった。
万雷の如き猟兵達の攻撃を受けてなお、その名に不死を関する生命力は伊達ではないということだろう。
「貴女は……! ありがたい! かの『偽神』の攻撃はこちらで引きつけます……! どうかやつに有効な打撃を……!」
『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアの持つユーベルコード『無敵城塞』はその名の通り、ほぼ無敵の防御能力を得ることができるが、その代償に一歩も動くことができなくなってしまう。
『偽神』としての圧倒的な力を受け止めることはできても、攻勢に出ることができないのだ。
「そのとおり。だからこそ、私達は消耗戦を強いればいい。そのはずだったのですがね……貴女方、猟兵の存在はあまりにも都合が悪い」
猟書家『異端神官ウィルオーグ』が言う。
確かに未だ『偽神』は健在である。今もその体は甲殻の鎧に覆われ、巨人の如き威容へと姿を変えている。
攻撃が『無敵城塞』を貫くことができなくても、ユーベルコードを消耗させさえすればいいのだ。
「絶え間ない攻撃にさらされ続ければ、ほころびもあるでしょう。そうなれば、後は貴方たちだけ……」
だが、その目論見はフェミルダにカンパされていた。
「法と秩序と正義の神の御名において、ソフィアさんへの攻撃を禁じます!」
一瞬の隙をついてフェミルダが投げつけた手袋が『偽神』に当たる。
それは攻撃と呼ぶこともできぬものであった。
だが、その宣言こそがフェミルダのユーベルコード、デュエリスト・ロウのトリガーである。
彼女が投げはなった手袋が命中した『偽神』に課せられたルールは単純であった。
ソフィアへの攻撃の禁止。
それは言葉であり、本来であれば誓約を課せられるものではない。だが、これはユーベルコードである。
「やはりそうですか……ソフィアさんへの攻撃は止められない。無敵城塞の力を目の前にすれば、必ず彼女を打ち倒そうとする……だからこそ、このルールは簡単に護られるが故に簡単に破られるのです」
それは最早条件反射であったのだろう。
振りかぶった『偽神』の拳が『無敵城塞』の力宿ったソフィアの盾を殴りつけた瞬間、天から神罰の光が『偽神』を貫く。
その一撃は凄まじきものであった。
デュエリスト・ロウは課したルールが単純であり、簡単であればあるほどに破ったと時、与えられる力は増す。
「彼女ではなく私を攻撃すれば良いだけ。とても簡単な誓約のはずです。ですが神とは理と律に縛られるもの」
フェミルダはうなずく。
それは神という存在であるが故に縛られるもの。
人は法を侵し、破ることを厭わぬこともある。それに対する罰も相応に存在しているが、その罰は人が人に課すものであるがゆえに軽いものである。
だが、神は違う。
信仰心によって力を増し、信仰によって己の形を成すものであるのならば、そのルールからは逃れられるはずもない。
「『偽神』であることを逆手に取る、だと……? 馬鹿な、そんなことで、私の完成させた『偽神』が敗れるなど!」
ウィルオーグの声が響く。
それは今まで余裕を持った慈愛すら感じさせる彼からすれば、驚きを通り越したような感情の発露であった。
しかし、もう『偽神』は止まらない。
どれだけ神罰の光が迸るのだとしても、ソフィアが『無敵城塞』を展開している以上、避けられぬものである。
「歪な信仰から造られた『偽神』なら尚更です。『無敵城塞』に『必ず攻撃』してしまうのでしょう?」
ならば、後はその自動的とも言えるルール違反による罰則を受け続けさせるだけである。
『偽神』の特性を利用し、消耗戦を強いるはずであった彼等を逃れ得ぬ法によってフェミルダは追い詰め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
私は神に祈りを捧げたことは一度もありませんが……言わんとすることは理解できます。
私の暮らしていた世界でも信仰に救いを見出す人はいました。生きるために信仰が必要な人はいるでしょう。
が、それとあなたの行動の是非に何の関係が?
方法はどうあれ、強大な怪物を作るための行動など、妨害されて当然でしょう。
動きが速い……!
この後ウィルオーグとも戦うことを考えると消耗は避けたいところですし、ソフィアさんに協力してもらいましょう。
ソフィアさんに「無敵城塞」を使用してひきつけてもらい、無敵状態のソフィアさんごと【絶対氷域】で敵を凍てつかせ、ソフィアさんの無敵城塞が切れる前にこちらも絶対氷域を解除します。
人の営みに信仰は必要な者であるが、誰しもが必要とするわけではない。
祈る神すら亡き世界にありては、何に祈れというのだろう。
即ち絶望だけが暗闇に横たわる世界において、人はすがる物なく己の人生を歩まねばならない。
だからこそ、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は言う。
「私は神に祈りを捧げたことは一度もありませんが……言わんとすることは理解できます」
その言葉は確かに彼女の中に信仰の光が芽吹く土壌があることを示していた。
猟書家『異端神官ウィルオーグ』は眉根を潜めて、その言葉の意味を疑う。祈ることもなく、己の信仰心を捧げる神を持たぬものがどうして己に言うところを理解できるのかと。
「私の暮らしていた世界でも信仰に救いを見出す人はいました。生きるために信仰が必要な人は要るでしょう」
「然り。そのとおりです。猟兵のお嬢さん。人の生活には信仰は切って切り離せぬもの。密接に関係しているのです。人が食物を食べる時、神に祈るでしょう。今日も無事に食にありつけたことを感謝するでしょう。そして、同時に明日も同じ様に、変わらぬ色をと願うでしょう」
同時に、今日よりも良き明日を願う。
それが人という生命であると『異端神官ウィルオーグ』は笑う。尽きぬ欲望、渇望が在る限り、信仰心は途絶えず、『偽神』と成った『不死獣・生命を叫ぶもの』の糧となるのだ。
「が、それとあなたの行動の是非に何の関係が? 方法はどうあれ、強大な怪物を作るための行動など――」
セルマから発せられるユーベルコードの輝きが勢いを増す。
その瞳に宿るのは静かな怒りであったのかもしれない。人々の信仰心。それを否定すること無く、かすめ取るようにして奪っていく。
人の願いを聞き届けぬ神どころか、信仰する者たちすらも食い物にする行い。
それはいわば、彼女のが生まれ育って街と同じだ。
見た目は平穏なこの街であるが、セルマが育った街となんら変わることはない。緩やかに死へと向かっているだけに過ぎない。
「妨害されて当然でしょう」
「ええ、だからこそ『偽神』の完成が必要だったのです」
咆哮する『偽神』の全身を覆う噴射機。それは一瞬でセルマとの彼我の距離を詰める。凄まじい速度。
「動きが速い……!」
速いというレベルではない。
影すらも、残像すらも残さぬ超スピード。その凄まじき速度で戦場と成った街中を駆け回る『偽神』の光輝たる姿は、今まで猟兵に寄って消耗させられていることを先引きしても脅威であった。
「銀髪の方! 私の背後へ!」
ユーベルコードの輝きが満ち溢れ、セルマに呼びかけるのは『無敵城塞』の力を発現させた盾を構える『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアであった。
彼女のユーベルコードが発現している間は『偽神』の攻撃は彼女へと集中する。
それはともすれば彼女の危険につながることであったが、『無敵城塞』の名は伊達ではない。
凄まじき速度で叩きつけられる拳を受け止めても、びくともしない。
「助かりました……この後のことを考えると消耗は避けたいところです……貴女の『無敵城塞』と私の――」
絶対氷域(ゼッタイヒョウイキ)が合わされば、どれだけ素早く動く『偽神』であったとしても捉えられぬ理由などない。
セルマのユーベルコードが眩く輝く。
それは全てを凍てつかせる絶対零度の冷気。彼女を中心に放たれる冷気は全てを凍りつかせる。
どれだけ素早く動く『偽神』であったとしても、大気中の水分すら凍りつかせ魔力噴射機を塞ぎ、その動きを鈍らせる。
「この領域では全てが凍り、停止する……逃がしません」
構えるはフィンブルヴェト。マスケット銃のスコープの向こうにいるのは、『偽神』ではない。
そう、彼女の覗くスコープに見えるのは常に『獲物』でしかない。
「例え神の名を持っていたとしても――殺せぬ道理などないのです」
放たれる氷の弾丸が、『偽神』の胸を貫く。
それはこれまで洗脳し奪ってきた善良なる人々の心を、信仰を取り戻す一撃となって、深く『偽神』に刻まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
ふむ…言ってることに理はあるけどお前が言うな感が凄いな…
…宗教・信仰は必要なものだけど劇薬でもある…だから扱う人間はそれを弁えなければならないわけで…悪意を持って扱うのならば止めなきゃいけないね…
…ソフィア…だっけ、そういう訳で協力するよ…
…ひとまずは…うん、ドラゴンに変身してきたね…無敵城塞を遮蔽として利用させて貰うよ…
…その身を竜に変えるならば話は早い…【竜屠る英雄の詩】を起動…装備に竜殺しの力を宿そう…
…鱗や甲羅で覆っても攻撃を軽減しても…竜を殺すこの力からは逃れられない…
…術式組紐【アリアドネ】…で不死竜を拘束…黎明剣【アウローラ】から魔力の刃を伸ばして切り裂くとしよう…
『偽神』の穿たれた胸から溢れ出すのは信仰心であった。
その身に捧げられ、完成を見た『偽神』たる『不死獣・生命を叫ぶもの』は、数多の猟兵達の攻撃に寄って与えられた傷口から不当に得た信仰心を溢れ出させながら、咆哮する。
それは痛みに叫ぶのではなく、奪われた己の力、生命力を取り戻さんとするための咆哮。
不死の名を関していながら、圧倒的な生命力の塊でしかない獣。『偽神』に至ったとしても、その行動原理は変わらない。
「おお、なんということだ。人の信仰心は力。思いは力へと代わり、強大なものとなるのです。故に人の心にある信仰の光は絶えることなく連綿と紡がれてきた。それが人が人たる証明でも在るのですから」
猟書家『異端神官ウィルオーグ』が叫ぶ。
それは彼自身の歪んだ信仰と慈愛の心に寄って叫ばれた言葉であった。『不死獣・生命を叫ぶもの』はただ生きていたかっただけなのだと。
その生命に執着する過去の化身を哀れであると慈愛の心でもって彼は『偽神』へと祀り上げたのだ。
「ふむ……言ってることに理はあるけどお前が言うな感がすごいな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は冷静であった。
彼女の瞳、そして電子型解析眼鏡『アルゴスの眼』が冷ややかに猟書家『異端神官ウィルオーグ』を見つめる。
「……宗教・信仰は必要なものだけど劇薬でもある……だから扱う人間は弁えなければならないわけで……悪意を持って扱うのならば止めなきゃいけないね……」
街の人々を洗脳し、捧げた信仰心は、人々の望んだものではない。
信仰の先に在るであろう悟りも、寄す処もどこにもない。
その信仰が行き着く先は世界の破滅でしか無い。ならば、それは悪意あるものである。許されることではないのだ。
「そのとおりだ。故に知識がいる。悪意に拐かされぬようにと、己を律する心を育む知識が!」
『知識の神エギュレのパラディン』たるソフィアが叫ぶ。
彼女はこれまで猟兵たちと戦い続けていた。ユーベルコード『無敵城塞』の力は確かにほぼ無敵であったが、消耗も激しくなってきている。
「……ソフィア……だっけ、協力するよ」
彼女の言葉には真なる信仰が宿っていた。
誰かに見返りを求めるわけでもなければ、称賛を求めるわけでもない。
ただ偽りの信仰によって傷つけられるものがいてはならぬと、その義憤の心だけでオブリビオンに立ち向かっていたのだ。
そんな彼女たちの前には巨大な甲殻に覆われた竜の如き姿へと変貌した『偽神』の姿があった。
咆哮するほとばしりは、それだけで街中を震撼させる。
「……その身を竜に変えるならば話は早い……すべての人々の恐怖の象徴。それが竜であるのならば、それは悪意そのもの」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
確かに竜の姿は恐ろしいものであろう。絶対強者であり、理不尽の権化とも言える姿である。
『偽神』がその姿を取ったことの合理性はよく理解できる。
だが、此処にはメンカルがいる。
彼女が紡ぐのは、竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)。
そう、竜が恐怖の象徴であるというのならば、メンカルはその詩にて希望の象徴となろう。
「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
『無敵城塞』の力に守られたメンカルの詩が戦場と成った街中に響き渡る。
竜にまつわるものを殺す竜殺しの概念術式。
それらが編み込まれたメンカルの術式組紐が『無敵城塞』から飛び出し、『偽神』を捉える。
それは即ち、抒情詩に謳われる『竜殺し』そのもの。
竜である限り逃れることなき絶対である。
「……竜を殺すこの力は逃げられない。どれだけ鱗や甲殻があろうとも……」
決して逃れることのできぬ組紐の拘束にのたうちまわる『偽神』の前にメンカルが駆け抜ける。
手にするは『黎明剣』――名を『アウローラ』。その一撃は即ち、竜をも殺す一撃となって『偽神』の甲殻に覆われた巨体をまるで雲を引き裂くように切り裂き、その希望の象徴、黎明のように光を放つのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
皆様の信仰を騙し取るなんて許せませんの
私に祈って下されば加護を差し上げますのに
普通の人が祈る長生と
お前の言う加護は絶対違うだろ
ソフィアさんと協力して偽神と戦うよ
若干気配が怪しいかもしれないけど
目的は同じだと信じて貰おう
神に誓って大丈夫ですの
冗談はさておき偽神の動きを停滞させ力を削ぎますの
ソフィア様前衛をお願いしますの
ソフィアさんが偽神を抑えてくれている間に
使い魔のマヒ攻撃で足を奪いつつ
ガトリングガンで攻撃するよ
ソフィア様の武具の状態を固定して
防御力を強化しますの
それにしても素晴らしい覚悟ですの
このまま永遠にしてしまいたいくらいですの
あそこまでの信仰とは申しませんけど
晶はもっと私を敬うべきですの
邪神であれど神である。
その身を構成するものは信仰心に他ならず、人の生命の中で芽吹く信仰心こそが神たる者たちの力の源である。
故に信仰無き神は力を失い、喪われてしまう。
「皆様の信仰を騙し取るなんて許せませんの」
そう憤慨するのは、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の身の内に融合し、宿る邪神の分霊である。
彼女は勝手に邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)とでも言うかのように晶の身体から現れる。
「私に祈ってくだされば加護を差し上げますのに」
人々の祈りが供物であるというのならば、邪神にとって加護とは恩寵である。
それを授けることに寄って信仰心が集まり、彼女たち邪神もまた力を増すのである。そのための信仰であるはずなのに、猟書家『異端神官ウィルオーグ』は街一つを洗脳し、偽りの信仰で人々を染め上げた。
その結果が『偽神』と成った『不死獣・生命を叫ぶもの』である。
だが、今やその『偽神』も猟兵たちの活躍に寄って追い込まれていた。
「普通の人が祈る長生とお前の言う加護は絶対違うだろう」
晶は邪神の持つ権能、停滞と固定を思い出して言う。その加護が如何なるものであるのかを彼女はよく知っている。
彼女の言う永遠とは石像のように変わることのない不変である。
それは変わっていく生命である人にとっては、相容れぬものであった。
「……この神性、は……なんだ?」
奇妙な感覚を覚えたであろう『知識の神エギュレのパラディン」であるソフィアの眉根が訝しげに晶を見やる。
確かに神性を感じるが、彼女が知る神とは違う雰囲気に戸惑っていた。猟兵であることはわかるのだが、それでも違和感を覚えるのだ。
「若干気配が怪しいかもしれないけど、目的は同じだよ。あの『偽神』を討つ。その点に置いては、僕たちの目的は相違しないはず」
晶の瞳は真摯なる輝きを放っていただろう。
「神に誓って大丈夫ですの」
邪神の分霊の一言がなければ、もっとスムーズに戦いに移行できたかもしれないことは言わぬが花であろう。
だが、追い込まれているとは言え『偽神』の咆哮は止まらない。
その姿を竜の如き姿へと変えてもなお、己の生命を諦めぬ凄まじき生命力。竜殺しの概念による一撃を受けてなお、迸る生命力で立ち上がってくるのだ。
「冗談はさておき……力を削ぎますの」
邪神の分霊の権能が発言し、『偽神』の動きを停滞させる。
素早く動くことのできた『偽神』であっても邪神の分霊が放つ権能からは逃れることはできない。
「わかった……! だが、私もすでに消耗している……! 幾分持つかわからない……! その間に決めてくれ!」
ソフィアの言葉とともにユーベルコード『無敵城塞』の輝きが放たれる。
その光に吸い寄せられるように『偽神』が突進し、炎のブレスを撒き散らす。だが、その攻撃すら停滞させて、晶たちには届かない。
使い魔たちが『偽神』にまとわりつき、その動きを鈍らせている間に晶のガトリングガンが火を噴く。
「それにしても素晴らしい覚悟ですの。このまま永遠にしてしまいたいくらいですの」
己の役目は終えたとばかりに邪神の分霊がソフィアを品定めする。
まさに彼女のような高潔なる精神を持った者こそが永遠に残るべきだと彼女は考えたのだろう。
だが、それは人にとっては別の意味での永遠でしかない。
「ここまでの信仰とは申しませんけど……」
視線の先には晶がいる。
ガトリングガンの銃撃が凄まじい速度で『偽神』へと叩きつけられ、かの神の身体を貫き霧散させていく。
その雄々しき戦いぶりは確かに美しいものであったのかも知れない。ただ、己に対する信仰心、その欠如こそが唯一の不満点であったのかもしれない。
霧散し消えていく『不死獣・生命を叫ぶもの』の最後の咆哮が響いた時、邪神の分霊はため息を吐き出しつつ言うのだ。
「晶はもっと私を敬うべきですの」
全ては結局、そこに行き着くのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『異端神官ウィルオーグ』
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POW : 第一実験・信仰に反する行動の規制
【論文】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : 第二実験・神罰の具現化
【自身や偽神に敵意】を向けた対象に、【天から降る雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 第三実験・反教存在の社会的排除
【名前を奪う呪詛】を籠めた【蝶の形をした黒い精霊】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【縁の品や周囲からの記憶など、存在痕跡】のみを攻撃する。
イラスト:山本 流
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠クシナ・イリオム」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
偽りの信仰心によって完成された『偽神』は猟兵と『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアたちによって打ち倒された。
本来、街の人々が持っていた信仰心は洗脳の解除と共に元に戻っているだろう。
だが、ほんとうの意味での平穏は未だ訪れていない。
猟書家『異端神官ウィルオーグ』がまだ残っている。
彼はどこか悲しげな顔をしていた。まるでこれから起こる非業たる出来事を憂いているかのようだった。
いや、『不死獣・生命を叫ぶもの』が打ち倒され、骸の海へと消えたことを悲しんでいるのだ。
「なんという……人々の信仰に生きた獣を殺してしまうとは。誰も傷つけず、誰も奪わず、平穏無事に彼等と共にあっただけの獣であったというのに。かの者が何をしたでしょうか。ただ、そこに在りとしていただけ。皆様は無辜なる獣を殺したにすぎないのですよ」
その言葉は偽りなき言葉であったことだろう。
何より『異端神官ウィルオーグ』自身が、その言葉を疑っていなかった。
そこに一抹の疑念があれば、言葉にゆらぎも現れよう。
人を責め立てる言葉も、響くことはなかっただろう。だが、『異端神官ウィルオーグ』は違う。
本当にそう思っているのだ。
「ならば、私は私の信仰の元に、哀れなる獣の再誕を願いましょう。人々の信仰があれば、無貌の神、不死なる獣であったとしても再び生まれ出ることでしょう。だからこそ、私は貴方達と……」
息を吐き出す。
震える唇と共に瞳から溢れるのは涙であった。
「ああ、悲しい。それでも私は貴方達を信仰の道へと導かねばならない! ええ、許しましょう。無垢なる獣を殺した咎も、罪も、信仰の光によって導き、濯ぎましょう。人は奪う生き物であればこそ。私は私の全てを持って、貴方達を」
いびつなる信仰がユーベルコードに輝く。
圧倒的な存在感。有無を言わせぬ輝き。
そこにあったのは、過去にねじ曲がった化身ただ一人。
「私の信仰のもとに集い、友人となりましょう――!」
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『疾き者』
あれのどこが無垢なる獣だったんでしょうかねー。
まあ、問うても仕方ないんですが。
無理矢理の信仰はいただけませんねー。
できれば引き続き、ソフィア殿と共闘を。
漆黒風を早業で、UC+生命力吸収+風属性攻撃での投擲。
負傷と呪いの積み重ねを狙いましょう。
攻撃は極力、第六感で回避。
間に合わない場合は四天霊障での結界術+オーラ防御+呪詛耐性で凌ぐ。
…まあ、『私たち』の名前を奪えるものならね?
私たちは四人で一人。本来ならば『馬県義透』という男は存在しないんですから。
奪ってみよ、砕いてみよ。奪えたのなら…四つの怨念(四天霊障)が襲うと知れ。
生命のすべてが生きることを渇望し、死していくのであれば、それこそが純粋無垢なる獣であったことだろう。
全ての生命が死へと向かうことを生きることであると定義するの出れば、『不死獣・生命を叫ぶもの』は正しくはなかったのだろう。
永遠はない。
死なぬ者は果たして生命と呼べるのだろうか。
悪霊たる4つの魂が合わさった者――馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)には『偽神』と成った『不死獣・生命を叫ぶもの』が、猟書家『異端神官ウィルオーグ』の語るところの無垢なる獣であるとは到底思えなかった。
「しかし、まあ、問うても仕方ないんですが。無理矢理の信仰は頂けませんねー」
4つの魂のうちの一つ、『疾き者』にとっては、意味のない問いかけは時間の無駄に等しい。
戦いにおいて無駄は排除すべきものである。
すでに猟書家『異端神官ウィルオーグ』の周囲には黒い蝶のような精霊が無数に集まっている。
それは名を奪う存在。
あらゆるものの名を奪い、存在の痕跡を殺す凄まじき力。
「望むと望まざるとて、人の心には信仰が必要なのですよ。寄す処が誰にも必要でありましょう。貴方もそうでしょう。4つの魂が一つになった者。貴方方にも消してほしくないものがあるでしょう。忘れたくない記憶があるでしょう」
微笑む姿は、まさに敬虔為る信徒でしかなかったのかもしれない。
だが、だからこそ悪辣であると言わざるを得ない。
その信仰の名を、言葉を持って人々を洗脳して偽りの信仰心を集めて『偽神』を作った。確かに直接の被害は出ていなくても、それは世界を破滅させる一石なのだ。
「詭弁を。貴方の言う通り、私達は四人で一人」
放つ棒手裏剣に籠められた連鎖する呪いであったが、周囲に浮かぶ蝶の精霊に阻まれ、失墜していく。
「言葉をかわすな! やつは言葉から貴方達の情報を、記憶読み解く。頭の中を覗き見ているわけでもないのに、言葉の端から絡め取られてしまう!」
『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアが叫ぶ。
無敵城塞のユーベルコードは健在であるが、全てを防ぎきれるものではないい。
義透達の張り巡らせた結界術とオーラの防御は呪詛の耐性に優れるものであったが、黒き蝶の精霊が奪うのは名前である。
名前から即ち、全ての痕跡を消し去る恐るべきユーベルコードは、彼等の名を奪わんと空を舞う。
「強力なユーベルコードでありますね……ですが、本来ならば『馬県義透』という男は存在しないんですから」
細まった瞳がユーベルコードに輝く。
奪ってみよ、砕いてみよとささやく様な声が響き渡る。
「ですが、名前として存在しているのでしょう? ならば奪えぬ道理などない。さあ、奪いましょう。私は貴方を知りたい。私と貴方は友人になれるはずだ。いや、きっとそうだ。友人になるために貴方は訪れたのだから」
その言葉はやはり狂気であった。
敬虔為る信徒の皮の裏側にある狂気。あらゆるものを奪い、己の欲を、目的を果たすための道具にすることにためらいがない。
放たれた棒手裏剣が『異端神官ウィルオーグ』の肩に突き刺さる。
「戯言を。ならば、四つの怨念が襲うと知れ。その名は怨念の集合。なれば、奪うだけに終わるわけなどないのだから」
癒えぬ傷跡を刻み込まれた『異端神官ウィルオーグ』の身体へと襲いかかるのは四つの怨念そのもの。
奪ったはずの名である。
だが、その名が齎すのは即ち存在ではない。
すでに喪われ、そもそも存在しないもの。それ即ち虚無であると同時に、全てを苛み、飲み込むものである。
「やはり奪えませんでしたねー。我等が怨念、オブリビオンに対する憎しみ、それは幾千、幾万過ぎようとも擦り切れることなどはないのですからー」
それは深く、深く刻まれた『異端神官ウィルオーグ』にとっての誤算の一つとなるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…えぇ…いや、昔はあんなのじゃなかったんだろうな…
オブリビオンとして復活したが故、か…これは尊敬や知っている人が見たら確かに打倒したくなるか…
(ソフィアの消耗具合を見つつ)
…ソフィア、これ(医療製薬術式【ノーデンス】で創った疲労回復薬)飲んで少し休んで…そのぐらいの時間は稼ぐから…
…【神話終わる幕引きの舞台】を発動…呪詛(と加護)を極端に減衰するよ…
そして復元浄化術式【ハラエド】により破魔の力を付与した術式組紐【アリアドネ】を展開…
…蝶からソフィアと自分を守りつつ術式装填銃【アヌエヌエ】で残りの蝶を迎撃しよう…
…あとは好きに行動されないように牽制射撃だね…
ソフィアが回復したら反撃と行こう…
「……えぇ……いや、昔はあんなのじゃなかったんだろうな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は猟書家『異端神官ウィルオーグ』の言葉にあったのは、ただの狂気でしかないと思った。
過去の化身、オブリビオンとして蘇ったが故の狂気である。
如何に生前の人物像が尊敬に足る人物であったとしても、過去に歪められた者は、一様に世界を破滅へと導く。
それこそが現在に過去が染み出し、可能性という未来を食いつぶすための手段であるというように、彼等は歪められた欲求を満たすためにあらゆるものを台無しにしていく。
『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアにとっても、『ウィルオーグ』は彼女たちの祖であり、尊敬の念を持って名を口に出すべき人物であった。
だからこそ、彼女は許せなかったのだろう。
打倒せねばならないと、己の消耗しきった体を押して立ち上がろうとさえする。それをメンカルは手で制し、手にした疲労回復薬を手渡す。
「……ソフィア、これ。飲んで少し休んで……そのぐらいの時間は稼ぐから」
メンカルが手渡したのは医療製薬術式『ノーデンス』によって創られた疲労回復薬であった。
ソフィアは連戦に次ぐ連戦で疲弊していた。
だが、この戦いにおいて彼女のユーベルコード『無敵城塞』は有用かつ、あの猟書家『異端神官ウィルオーグ』に勝つためにはどうしても必要不可欠なピースだったのだ。
「ありがたい。だが、気をつけ給え。あの者が使うのは名を奪う漆黒の精霊。名を奪われれば、存在痕跡すら残さずに消されてしまうぞ」
その言葉にメンカルはうなずく。
確かに恐るべきユーベルコードである。だが、それに相対する猟兵はメンカルである。彼女の前に、種の知れたユーベルコードが対策できぬ理由など何一つないのだ。
「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
その詠唱が世界に響き渡る。
それはユーベルコードにして世界法則を改変する数多の鍵剣が降り注ぐ光景であった。
「これは……まさか」
『異端神官ウィルオーグ』の失策は、言葉を交わすことを優先するのではなく、名を奪う蝶の精霊によって有無を言わさずメンカルの名を奪うことであった。
だが、それをしなかったことが彼のユーベルコードの尽くを踏破する。
「呪詛の減衰……! 精霊の加護を減衰させ、呪詛をも失墜させる……! この鍵剣がそれを為したと……!」
驚愕に見開かれる『異端神官ウィルオーグ』の瞳。
そこにあったのは神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)である。彼の放つ精霊の力は著しく減退していく。
名を奪うことすらできず、蝶としての姿を維持することすらできなくなっていた。
まさに神代を終わらせる光景であった。
「……復元浄化術式『ハラエド』展開……アリアドネの組紐よ」
メンカルの術式が更に展開され、組紐に破魔の力を付与された力が戦場に舞い散る蝶の精霊からメンカルとソフィアを守る。
それは一方的な塗りつぶしであった。
あらゆる名を奪うというのならば、その力は神代にも遡る原始の力。
ならば、それを乗り越えてきたのが人の世の力である。その根源、その最先端を征くのがメンカルである。
「こんな、ことが……! おお、あってはならない! 神代より続きし神の御名が! 喪われる! 名が! 私はそれが――!」
だが、メンカルには『異端神官ウィルオーグ』の慟哭は響かない。
何処まで行っても過去の残影、残滓がにじみ出た、もはや嘗ての『ウィルオーグ』ですらない存在。
そこに打ち込むのは術式装填銃『アヌエヌエ』からは放たれる弾丸であった。
舞い飛ぶ蝶を撃ち落とし、ソフィアの回復を待つ。
「……ソフィア、反撃と行こう。あれはもうソフィアの知るところの『ウィルオーグ』ではない。だからこそ、此処で止める……そのために力を貸して」
メンカルの瞳はすでに勝利を見据える。
そこにはもう『異端神官ウィルオーグ』の勝利する未来など見えない。どれだけ『知識の神エギュレ』の徒としての祖であったとしても、それに連なる信仰の先、ソフィアが要るのであれば、何も恥じることはないのだと。
そういうようにメンカルは舞い飛ぶ名を奪う蝶の精霊を尽く撃ち落とし、失墜させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ごめんごめん、肉…ソフィアさん
いや宗教の勧誘は遠慮してるので…
そもそも戦力として育てといて、無辜なる獣って言い草は無いわーマジ無いわー
そう思うよね、肉壁さん!
違った、ソフィアさん
●
準備万全、全パーツ転送
真の姿、開放
《RE》Incarnation、Blue Bird、空の記憶、Key of Chaos
4刀抜刀
ソフィアさん、連携で行こう!
背中にしっかり掴まって、剣を高く掲げて!
UCの準備はOK?
じゃあ行くよ?
【Code:C.S】起動
時間加速、四刀流の連撃でいく!
敵の雷は避雷針…もといソフィアさん経由で誘導して『エネルギー充填』に使わせて貰う!
あとは此方が畳み掛ける
四刀全てで『串刺し』にしてあげよう
『知識の神エギュレのパラディン』、ソフィアは連戦によって消耗しきっていた。
ユーベルコード『無敵城塞』はほぼ無敵たる圧倒的な防御力を誇るが、その消耗の度合は猟兵たちと共に戦うことによってさらに深いものとなっていた。
だが、猟兵の一人の手渡した薬剤のおかげで回復し、再び立ち上がったのだ。
「もうあんなことは御免被る。後で貴方には言いたいことが山程あるのだから、覚悟しておいてほしい」
そんな軽口のような、冗談を口にすることができるほどに回復したことは幸いであったが、この後こってり絞られることになる予定の月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとっては、ありがたいことではなかったのかもしれない。
「ごめんごめん、肉……ソフィアさん」
めんごめんご。そういうように軽い口調で今肉っていいかけた? と言いたげなソフィアの言及を避けて玲は猟書家『異端神官ウィルオーグ』と対峙する。
「なんたる咎。なんという傲岸不遜……! だが、私は許しましょう。我が『偽神』を滅した罪も、罰も必要ありません。私と友人になりましょう。そうしましょう。そうすれば、貴方の信仰が『偽神』を再び蘇らせる。これは尊きことです。さあ!」
涙を流しながら、信仰へと誘おうとする狂気。
それは嘗ての慈愛に満ちた『ウィルオーグ』とはあまりにもかけ離れたものであったことだろう。
それが過去に歪められた結果なのだとすれば、それはあんまりなことであるとソフィアは感じたのかも知れない。
『ウィルオーグ』の名に汚泥を塗りつけるような行いに彼女は立ち上がったのだ。
「いや宗教の勧誘は遠慮してるんので……そもそも戦力として育てといて、無辜なる獣って言い草は無いわーマジ無いわー」
オブリビオンの存在は必ず世界を破滅に導く。
それは猟兵であれば知るところである。今は人々に安寧と平穏を与えていたとしても、戦うために信仰心を注いだ時点で、それは悪意にまみれたものである。
それをして無辜というのは、語るに落ちる。
「そう思うよね、肉壁さん! 違った、ソフィアさん!」
「貴方は後で覚悟しておいてくように」
肉壁ってはっきり言った。
確かに『無敵城塞』は大変心強い盾ではあるが、その言いぐさは無いわーと、ソフィアは内心思っていたのだろう。
だが、玲の戦い方は否定できない。有効に活用するという点においては、防御の力を持ってして攻勢に出る手段へと変えたのだから。
「圧縮空間より転送。全パーツ、セレクト。コントロールは私に!」
空間より現出する玲の真なる武装。
彼女が生み出し、作り上げ、鍛え上げた技術の結晶。それこそが模造神器を振るうための力。
副腕が唸りを上げ抜き払うは模造神器。
彼女自身の手にあるのもまた模造神器。四振りの刃は、再誕より還りつく遠き空の記憶にして、混沌を齎す鍵。
それら全ての力が抜刀される。
「ソフィアさん、連携でいこう! 背中にしっかり捕まって、剣を高く掲げて!」
限定的であれど、模造であれど、その力の奔流は凄まじき神性。
街一つの人々の信仰心を注ぎ込んだ『偽神』に匹敵する圧倒的な力の発露は、相対する『異端神官ウィルオーグ』にとっては敵意そのものであった。
天より飛来する雷撃の一撃が玲とソフィアを撃つ。
「その敵性! その神性! 全てが烏滸がましい! 人の身でありながら、神の力を模造しようなど! それが如何に不遜なるふるまいであるか! 神成ろうというのでられば――!」
それは許しておけぬ。
人は人のままでいいのだと。神へと近づこうとすることこそが不敬であり、不遜。必滅の身であるが故に人の思いは強く輝く。
だが、それを否定するは混沌。
「じゃあ、行くよ?」
玲の声が雷撃の痕から響く。確かに神罰の如き雷撃は命中したはずだった。だが、その一撃は『無敵城塞』の力と共に天に掲げたソフィアの剣から玲の装着したアームデバイスへと流れ込む。
その凄まじき電力は全てが模造神器へと充填させられる。
「起動には十分なエネルギーありがとうねー! ――封印解除、時間加速開始」
神罰の一撃がトリガーとなって玲のユーベルコードを起動させる。
凄まじき力の名はCode:C.S(コード・クロノシール)。四振りの模造神器に施された封印は、『時間加速』を止めるもの。
それを解除した瞬間、彼女は一線を画する。
「畳み掛ける!」
一瞬で間合いを詰める。
いや、間合いなどという概念は既に不要であった。玲が思考するより早く、彼女の体は『異端神官ウィルオーグ』の体を四振りの模造神器で貫いていた。
まさに神速を越えた斬撃。
「ガッ――な、にも、見えない、だと――!?」
驚愕に見開かれる瞳。
そこにはもう玲の姿はない。一瞬で背後に回り込み、アームデバイスと玲自身の手による四つの斬撃の軌跡が、深々と『異端神官ウィルオーグ』の体へと刻まれるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
天御鏡・百々
人々の信仰をも弄びし其方の所業
我らが此処で断罪してくれようぞ!
ウィルオーグの能力はユーベルコードに依存し
身体能力自体は高いようには見えぬな
で、あれば……
「ソフィア殿! 奴の力は我が封じ込める! あの邪なる神官に聖なる鉄槌を与えるのだ!」
『至上の光』を使用して、敵のユーベルコードを封じ込めるぞ(神罰)
ソフィア殿は防御に秀でているようだが、相手にユーベルコードが無くば接近戦で後れを取ることはあるまい
至上の光は余裕をもって1分程度で解除
そのタイミングでソフィア殿には無敵城塞で盾になってもらい
我は後ろから光の矢を放ってさらにダメージを積み重ねようか
(誘導弾、スナイパー)
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
その身、たしかにオブリビオンであれど猟書家『異端神官ウィルオーグ』は傷つく。
超常なる精霊の力を持ち、そのユーベルコードでもって猟兵たちに相対する。それは過去に歪められる前には持ち得なかった力であろう。
それと引き換えに敬虔為る信徒であったころの信仰心を喪ってしまっているのであれば、それは皮肉と言わざるを得ないだろう。
結局のところ、今の『異端神官ウィルオーグ』には歪んだ信仰心しか持ち合わせていない。
「ああ、なんという。信仰の光を見出すこともできず、さりとて私を排斥しようとする。それが如何なる所業かわかっておいでか。洗脳されていたとはいえ、彼等の、街の人々の信仰心は本物。私は何一つ彼等に強制していない。ただ己の人生が良きものであるようにと説いただけなのです」
ふわりと浮かぶ漆黒の蝶の精霊。
それは名を奪い、存在の痕跡すらも消失させる恐るべきユーベルコードであった。
「人々の信仰を弄びし其方の所業、我等が此処で断罪してくれようぞ!」
天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、その小さな体で戦場と成った街を駆ける。
対する猟書家『異端神官ウィルオーグ』はユーベルコードの強力さに依存した存在である。
生前が神官であったこともあるのだろうが、そこまで尋常ならざる身体能力があるわけでもない。
ならば、百々はどうするか。
此処には猟兵達だけではなく、『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアもいるのだ。
消耗激しかった彼女も猟兵の助けによって体力を取り戻している。
まだまだ彼女のユーベルコードはこの戦いに必要なのだ。
「ソフィア殿! やつの力は我が封じ込める! あの邪なる神官に聖なる鉄槌を与えるのだ!」
「心得ている……! 私の力が及ぶのであれば、死力を尽くそう」
彼女の言葉は力強いものであり、百々には心強いものであった。同時に百々の本体である器物…神鏡が聖なる神光を放つ。
それは至上の光(シジョウノヒカリ)。
その輝かしくも優しい光の前に名を奪う闇色をした蝶の精霊たちはたちどころに霧散し消えていく。
「我が全霊を持って、悪しき者どもを封じ込めようぞ!」
放つ光は百々の力量に寄って効果を発揮する時間が限られる。
ユーベルコードを無力化する光の凄まじさは言うまでもない。だからこその制限。その時間は一分程度である。だからこそ、此処で百々は『異端神官ウィルオーグ』の力を削ぎ落としきらねばならない。
猟兵の戦いは個の戦いではない。
常に一人ひとりの猟兵が戦いを紡いでいく。傷つきながらも、あとに続く猟兵がきっとオブリビオンを倒してくれると信じて戦うのだ。
だからこそ、自身たちよりも強大な敵を討ち続けてきた。
「我は信じている! 人の心の強さを。汝のように利用するばかりを考えることはない」
「想いは力ですよ。利用しない力に価値がありましょうか。いや、あるわけがない。力はそのままにしておくにはあまりにも非効率だ。誰かが正しく遣わなければならない。そうでしょう?」
百々の放つ光が消える。
同時にあふれかえる闇色の蝶の精霊。
触れた物の名を奪い、存在を記憶からすらも抹消するユーベルコード。
それが百々に迫る。
「ソフィア殿!」
そこへ駆け込む『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアが『無敵城塞』を展開する。その光に阻まれ、闇色の蝶の精霊は霧散し消える。
如何な名を奪うユーベルコードと言えど、無敵城塞の力を消し去ることはできないのだ。
「正しき力は正しき魂にこそ宿る! 過去に歪められた汝が使う力は、歪みきっているがゆえに他者を、世界を徒に傷つけるのみ! それを許す我等ではない!」
断罪の光の矢が飛ぶ。
それは百々の放った一撃であった。『異端神官ウィルオーグ』の胸に突き刺さり、光が弾けてその肉体を焼く。
『異端神官ウィルオーグ』に罪ありきというのならば、それは他者の信仰を弄んだことである。
してはならぬことであり、その断罪の一撃を持って百々は『異端神官ウィルオーグ』の力を削ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
これ一番始末悪いタイプだな。
あぁそうだった。宗教に関わらず自分に都合の悪い事は捻じ曲げて潰すのが人のやり方。そういう人の自分勝手さに絶望した事もある。
それでも。それでも人を厭えないんだよな。
真の姿に。
ソフィアのそばに控える。あえて殺気をウィルオーグに向け雷を誘発、先程と同様にソフィアのUCで防いでもらい、その隙に俺自身が接近。UC菊花で攻撃を。代償は寿命。
防ぎきれなった雷は胡を避雷針代わりに回避。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性で耐える。
断罪の弓矢の一撃が猟書家『異端神官ウィルオーグ』の胸を貫く。
光が弾け、肉体を焼きながらも『異端神官ウィルオーグ』は痛みに笑うのだ。
「敵意! やはり私に敵意を剥くのですね。私に敵意を向けるということは天に唾すること。それ故に御覧なさい。私は貴方達の咎を許さんとする。だが、天はどうでしょう? その敵意を決して許しはしない」
戦場となった街中に雷鳴が迸る。
それは『無敵城塞』の力を盾に宿した『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアへと直撃する。
ほぼ無敵と言われた彼女のユーベルコードであっても軋むほどの威力を持った雷撃。それこそが天罰と称する『異端神官ウィルオーグ』のユーベルコードである。
彼に敵意を向けるもの全てに落とされる雷撃の一撃は凄まじいの一言であろう。
「これ一番始末悪いタイプだな」
黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は静かにそう呟く。
手にした漆黒の大ぶりなナイフとサムライブレイドを構え、雷撃の一撃をソフィアの『無敵城塞』のユーベルコードによって防ぐ。
「あぁ、そうだった。宗教にか関わらず自分に都合の悪い事は捻じ曲げて潰すのが人のやり方。そういう人の身勝手さに絶望したことも在る」
だが、それでも捨てきれぬ人の心の暖かな光が在る。
人の心は千差万別であろう。
どれだけ人の心の中を覗き込もうとも、光だけ、闇だけが存在する者などいようはずもない。
「だが絶望の中にこそ光が輝く。その暖かさが人の歩みを止めさせない。それを私は識っている」
ソフィアが『無敵城塞』のユーベルコードに輝く。
今だってそうだろう。彼女一人であれば、きっと彼女は敗北していたことだろう。だが、猟兵たちが駆けつけてくれている。
共に敵を、人々の信仰心を弄ばんとした猟書家『異端神官ウィルオーグ』を倒さんと戦ってくれる。
「それでも。それでも人を厭えないんだよな。識っているよ。だから戦うんだ」
真なる姿、その瞳が金色に輝く。
その輝きは菊花(キッカ)の如く。雷撃の一撃をやり過ごした瑞樹は、その瞳を金色に輝かせながら戦場を駆け抜ける。
明滅するような雷撃が降り注ぐが、サムライブレイドを避雷針のように投げ放ち、その脇をすり抜ける。
ジリジリとした高熱が肌を焼く。
だが、痛みよりも先に心が叫ぶのだ。
人を弄ぶものを許してはならないと。
どれだけ人の心に光と闇が存在していたとしても、それを守ることをほうきしてはならないと。
どこまで行っても人は人でしかないのだと。だからこそ、厭うことなどできない。
「ああ、何という自己犠牲。誰かのために戦うことを良しとする。己の生命を削ってでも敵を穿たんとする。なんという献身! やはり、私は貴方と――!」
『異端神官ウィルオーグ』が叫ぶ。
友人に成りたい。
瑞樹の魂が削れる。己が振るう刃の力は常時のおよそ9倍。それほどの力を振るう代償は己の寿命である。
だが、それでいい。
「俺の刃が誰かを傷つけるくらいならば、俺自身が、削れるほうがいい!」
放つ黒き刃の斬撃が無数に放たれる。
その斬撃の軌跡は目で追えるものではなかったが、それでも確かに瑞樹のナイフの連撃は『異端神官ウィルオーグ』へと刻み込まれる。
「なればこそ、っ――私は」
再び落ちる雷撃。
それを受け止めてもなお、瑞樹は止まらない。皮膚が焼ける。傷みが全身を駆け巡る。
だが、手は止めない。斬撃は止めない。
止まれるわけがない。振るった刃は必ず誰かのために成る。
「人のために! 絶望を越えていく――!」
鋭き斬撃の一撃が、全ての絶望を振り払って人々の未来のために振るわれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
引き続き真の姿で。
戦いの駒として使う為に生み出した偽神。到底、無辜とは言えませんね。
かつての貴方は真摯な信仰者であったのでしょうが、オブリビオンとして歪められた今は討つべき存在。
疾く骸の意味に還りなさい。
UCを発動し、結界術・破魔・浄化で呪詛を防ぐ防御結界を自分とソフィアさんに施す。
「もはや貴方が奪えるものはありません。」
天候操作で雷雲を呼び、UCで高めた神力と、多重詠唱による雷と光の属性攻撃・全力魔法・神罰・破魔・浄化・高速詠唱にて、眩く輝く神聖で巨大な雷を(周囲に被害が出ないようスナイパー・貫通攻撃により照準をピンポイントに絞り)ウィルオーグに落とす!
「神罰とはこのようなものを言うのです」
斬撃の嵐が猟書家『異端神官ウィルオーグ』を打つ。
だが、それでも『異端神官ウィルオーグ』は倒れない。健在と呼ぶには消耗しているが、力を振るうことに淀みはない。
未だ諦めていないのだ。
人々を洗脳し、偽りの信仰心を持ってオブリビオンに注ぎ込み、新たなる『偽神』を生み出す。
それこそが彼の目的。
歪んだ信仰心がもたらした執着であるとも言えたことだろう。もはや天上界を攻略するための戦力という目的以前に、人々を洗脳し信仰心を集めることに喜びさえ見出しているのだ。
「ああ、ですが、あの無辜なる獣は惜しかった……あれだけのあふれる生命力が在れば、如何なる者であっても倒し切ることはできなかったはずでしょう。唯一の誤算は『知識の神エギュレ』の遣わせたパラディンのみ……如何な猟兵と言えど、もっと消耗させることができるはずでしたが……」
そう、全ては『知識の神エギュレ』の神託が招いた原因だ。
あの神託さえなければ、パラディンであるソフィアはこの街にやっては来なかったのだ。そして猟兵も、その光景を予知することなどなかった。
「戦いの駒として使う為に生み出した『偽神』。到底、無辜とは言えませんね」
降り注ぐ光を見上げる『異端神官ウィルオーグ』。
その瞳の先に在るのは、目映いばかりの神性を放つ大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)の姿であった。
彼女本来の姿である神としての姿。
それは凄まじき神性を周囲に顕現させ、彼女が如何なる神であるのかを『異端神官ウィルオーグ』に思い知らせたことだろう。
「いいえ、無辜でありましょうとも。アレはただ『生命を叫ぶもの』。ただそれだけの存在。強いて言えば、私の存在に寄って多少……ええ、多少ですが、いずれ人々を害するかもしれなかった無貌なる神。ですが、それもまた神罰と同じでありましょう」
数多の猟兵達によって刻まれた傷跡。
だが、それでも『異端神官ウィルオーグ』は笑う。微塵も己の行動に疑いを持っていないのだ。自身が為したこと、そして訪れる人々への害。それすらも神罰と言い放つ無神経さ。
「かつての貴方は真摯な信仰者であったのでしょうが、オブリビオンとして歪められた今は討つべき存在」
その言葉を聞き、詩乃は神威発出(シンイハッシュツ)によってユーベルコードの輝きを増す。
即ちそれは神罰である。
人を弄び、人の信仰心を持って害をなそうとした者への神が下す鉄槌の輝き。それは詩乃が本来持つ神性の高さに由来する強大さであった。
「――疾く骸の海に還りなさい」
その輝きは『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアをも包み込む。
彼女の神性によって強化された『無敵城塞』の力は最早どこにも隙のない無敵の盾となって、この戦場に誇るだろう。
「ありがたい……植物を司る女神よ……今再び私は貴方の盾となりましょう」
そう宣言するソフィアの盾はユーベルコードに光り輝く。
「もはや貴方が奪えるものはありません」
厳かな光。
どれだけ『異端神官ウィルオーグ』が闇色の蝶の精霊――その名を奪わんとする力を奮ったとしても詩乃とソフィアには最早届かない。
結界の力によって破魔と浄化の力でもって呪詛を防ぐのだ。そこに詩乃の神性まで加わったことによって、より大きな光に寄って闇色の蝶の精霊は塗りつぶされるのだ。
それは全てを許すと同時に悪しき者を決して許さぬという純然たる光であった。許す前に罰を。罪は罰によってのみ灌がれるのであれば、それこそが詩乃の齎すものであった。
彼女のたおやかな指先が天を差す。
「神罰とは――」
その指先が呼ぶは雷雲。
彼女の神性の高まりは、天候すらも操作せしめる。紡がれる詠唱は早すぎるがゆえに、流麗なる歌声のように戦場に響き渡り、その美しさとは裏腹なる力の現出でもって応える。
詩乃の歌声のような詠唱に寄って呼び寄せられた雷雲は、眩く輝く神性なる雷。
それは弄ばれた人々の心の傷跡を思えばこそ、詩乃は許せぬ思いで持って力を振るう。
「――このようなものを言うのです」
厳かに言い放った詩乃の指先から迸る雷撃は、過たず『異端神官ウィルオーグ』を穿ち、その身を焼く。
神罰として、そして猟兵として、詩乃は赦されざる者へと神の鉄槌を下すのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
フェミルダ・フォーゼル
強敵ですね。ならばソフィアさんの力をお借りしましょう。
「私の名前はフェミルダ。正義と法と秩序の神のパラディン。どうか覚えていて下さい。」
無敵城塞の強さではなく、知の神を信じる彼女の信仰を信じます。
【神鎗】発動。【破魔】の力を込めた無数の聖鎗を召還。
悪意や害意に反応して自動追尾する鎗です。【武器受け】【カウンター】で飛び回る呪詛の蝶を迎撃。
その間、自身は「神気」を纏い【祈り】【オーラ防御】【呪詛耐性】で呪いに対抗。世界中から私の名が消えても、神様と、出来ればソフィアさんだけでも覚えていてくれれば存在は保てます。
蝶を全て落とせば残る悪意はウィルオーグのみ。全ての鎗が集束する様に彼に撃ち込まれます。
巨大な雷雲から生み出された雷撃の一撃はまさに神の鉄槌の如き一撃であったことだろう。
その一撃が撃ち落とされたのは、猟書家『異端神官ウィルオーグ』の頭上であった。放たれた雷撃は過たずに彼を穿つ。
全身から煙が吹き上がり、その身を焼いてもなお過去の化身として蘇った嘗ての敬虔為る信徒である『ウィルオーグ』は倒れない。
「神罰、これが! ああ、過去に私はこれを受けたことなどなかった! やはり信仰とは凄まじい。これこそが信仰の力厚き神の持つ力! 思い後からの凄まじさ!」
狂気に笑う。
神罰といえど、それさえも『異端神官ウィルオーグ』は己の信仰への試練であるとさえ捉えてしまう。
過去にねじ曲がった信仰があればこそであろう。
それはあまりにも皮肉であった。悔い改めることもなければ、己を省みることもない。それ故に強大な力、猟書家として顕現することこそが、オブリビオンの邪悪である。
「私の名前はフェミルダ。正義と法と秩序の神のパラディン。どうか覚えていて下さい」
フェミルダ・フォーゼル(人間の聖者・f13437)は名乗る。
同じパラディンであるが、ともに戦う以上奉ずる神の違いの垣根は越えなければならない。
そうしなければ勝てぬ強敵であるのだ。
力を貸してほしい。
それは切なる願いであった。同時に真摯なる祈りでも在ったのだ。
「無論。私の方こそ、貴方に乞おう。どうかご助力を。『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアだ」
どれだけ『異端神官ウィルオーグ』の放つ名を奪う呪詛をまとった闇色の蝶の精霊が乱舞しようとも、決して奪われぬものがあると知らなければならない。
「Spears……」
フェミルダの周囲に浮かぶのは神鎗(ホーリージャベリン)――聖なる槍である。彼女の齎す力の顕現によって現れるそれは、宙に浮かび、名を奪う呪詛をもって放たれた闇色の蝶の精霊を次々と追跡打ち払っていく。
「正義と法、秩序! ああ、それからは何者も生まれはしない。人々に制約を齎すものでしかない。常に悪と罪、無秩序こそが混沌たる世界を生み出し、その混沌からこそ強大な力が生まれるのです。混沌は人々の心に寄す処を求めさせるでしょう。その思いが、信仰こそが強大な力へと変わるのです!」
『異端神官ウィルオーグ』はすでに狂気に呑まれている。
信仰心を生み出すために混沌を是とする。それは本末転倒も良いところであった。最早、フェミルダにとってそれは語ることではなかった。
無数に宙を飛ぶ蝶の精霊。
それに触れてしまえば、フェミルダと言えど名を喪ってしまう。
「祈る……私にできることは、それだけ。例え世界中から私の名が消えても、神様と、できればソフィアさんだけでも覚えてくれれば」
そう、存在は保つことができる。
フェミルダは膝を降り、神気を纏いて祈りを捧げる。
彼女の願いはあらゆる呪詛を打ち払うこと。戦場を乱舞する闇色の蝶を聖なる槍が打ち払い、戦場と成った街に溢れる偽りの信仰心を霧散させていく。
「どれだけ私の名を奪おうとも。それでも奪い尽くせぬものがあると知りなさい」
「ああ、そのとおりだ。フェミルダ殿。貴方の行いは正しい」
ソフィアが呼ぶ声が聞こえる。
名を奪う呪詛によって存在痕跡すらも消し去られてしまったとしても。それでもフェミルダの名はソフィアが覚えている。
彼女の奉じる神が覚えている。
たったそれだけで、『異端神官ウィルオーグ』のユーベルコードは完膚なきまでに打ち破られたのだ。
「残る悪意は――貴方のみ」
そしてフェミルダのユーベルコードが真に輝く。
宙に浮かぶ聖なる槍が空にあって円を描き舞う。それは回転するような軌跡を描きながら『異端神官ウィルオーグ』へと収束するように打ち込まれ、どれだけの精霊をもってしても防ぐことはできないだろう。
フェミルダは悪意と戦うことを決意している。
それは決して折れぬことのない絶対なる遵守によって彼女という存在を世界に示し続ける。
「骸の海へと叩き還してさしあげましょう。貴方の行いこそが『悪』であると『正義と法と秩序の神――そのパラディンである私が断じましょう」
『異端神官ウィルオーグ』の絶叫と共に、神鉄の槍が降り注ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
あれが無辜がどうかはさておき、自分のために他の生物を殺す、人が生きるとはそういうことです。
それを罪というのであればそうなのでしょうが……そうだとしてもそれは私の罪。あなたに許される謂れはありません。
ソフィアさんと共闘、彼女を前衛に時間を稼いでもらうようにお願いをします。
時間を稼いで……私が合図をしたら「無敵城塞」をお願いします。あの黒い蝶も、ウィルオーグも逃しません。
フィンブルヴェトの銃剣でこちらに抜けてくる黒い蝶を払いつつ、弾丸は撃たずにチャージを続け、十分に威力が溜まったら合図を送り【ブリザードショット】を。ソフィアさんのそばにいる黒い蝶ごとウィルオーグを猛吹雪で飲み込みます。
聖なる槍の雨が降り注ぎ猟書家『異端神官ウィルオーグ』の身体を散々に貫く。
すでにその身は満身創痍。
だが、未だ骸の海へと還らぬは如何なることか。並のオブリビオンであれば、すでに霧散し骸の海へと還るほどの打撃を加えてもなお残り続ける姿には一種の怖気すらも感じさせるかもしれない。
「なんたる暴力。私の信仰は今、まさに試されている! これこそが私の信仰! 試練在りきの信仰こそが、私に活力を与えてくれる」
傷口から噴出するのは闇色の蝶の精霊。
それは名を奪う呪詛を籠められたものであり、『異端神官ウィルオーグ』の身体を構成する一部でもあるのだろう。
名を奪い、その存在痕跡すらも消し去る恐るべきユーベルコード。
それこそが『異端神官ウィルオーグ』の力の源であるのだろう。『知識の神エギュレ』に嘗て信仰を捧げた『ウィルオーグ』は過去に歪むことによって『名』という知識を独占するために闇色をした蝶の精霊を扱う。
「あれが無辜かどうかはさておき、自分のために他の生物を殺し、人が生きるとはそういうことです」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は『不死獣・生命を叫ぶもの』を無辜と呼んだ『異端神官ウィルオーグ』を前にして、その言葉を緩めるつもりはなかった。
確かに人は他の生命を喰らって生きるものである。
それは否定しない。人は他を殺して喰わねば生きていけない。誰ひとりとしてその摂理から逃れることはできぬ。他の生命を犠牲にせずに生きてきたものなど何一つありはしないのだ。
「ああ、それこそが人という生命の原罪。生まれながらに生命は常に等しく罪ありき。故に人は生涯を賭してその原罪を払拭するために己の魂を磨かねばなりません」
笑う信仰者、『異端神官ウィルオーグ』が言う。
それは信仰者としての矜持であったがねじ曲がっている。その原罪を煽り、他者の行動を抑圧しようとする意図が透けて見える。
「そのとおりなのでしょうが……そうだとしてもそれは私の罪。あなたに許される謂れはありません」
許すと言った『異端神官ウィルオーグ』を前にしてセルマはユーベルコードに輝く。
それは彼女の紡ぐ詠唱に寄って威力が上昇するユーベルコード。彼女を取り巻く冷気が徐々に吹きすさぶ嵐のように高まっていく。
だが、同時にそれは彼女自身に大きな隙を生むものであった。
名を奪う呪詛を籠められた蝶の精霊たちが飛ぶ。あらゆるものを奪い、あらゆるものの存在を根絶させる恐るべきユーベルコード。
セルマの銃剣アルマスがそれらを打ち払うも、詠唱を続けながらでは限度がある。
「詠唱に集中を! 私が時を稼ぐ!」
『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアが叫ぶ。
彼女がセルマの前に立ち、並み居る蝶の精霊を防ぐのだ。それに小さくなずきセルマは詠唱を続ける。
それは歌うような声であった。
響くは氷雹の詩。
「無駄なことですよ。全ては奪われる。全ては信仰の光の前に屈するのです。私の信仰の礎となり、共に往きましょう。ええ、猟兵であろうと関係ありません。貴方は許される謂れがないといいましたが、私は許しましょう。それもまた私の成すべきこと。貴方が許されたくないと言っても、私は許すのです」
破綻した論理。
何処まで行っても過去の化身の語る言葉は破綻している。それが嘗て在りし『ウィルオーグ』の残滓であるということすらも捻じ曲げるほどの過去の集積。
「許しは乞いません。貴方も黒き蝶も逃しはしないのですから……撃ちます!」
輝くユーベルコード。
それこそがセルマの詠唱に寄って無限に威力を上昇させる猛吹雪の一撃。人の身でありながら、彼女が手繰るは自然の猛威、猛吹雪の一撃。
弾丸に籠められたユーベルコードの一撃は雪崩のように放たれ、ソフィアが展開した『無敵城塞』をも飲み込んで『異端神官ウィルオーグ』と黒き蝶を飲み込む。
「全ては冬の嵐の前に飲み込まれる定め。冬の時代の訪れは、如何なる生命にも降り注ぐのです」
全てを氷結させるブリザードショットの一撃は、無敵城塞の力に守られたソフィア以外の全てを凍結させ、失墜させる。
それは黒き蝶の精霊も例外ではなく。『異端神官ウィルオーグ』はその体を罅割らせるように、その身をさらなる消耗に追い込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
生前はどんな人だったのか知らないけど
オブビリオンとして蘇った以上倒すしかないね
あの感じだと問答無用で殴り倒すのが良さそうだし
ここは「私」に任せて欲しいですの
心配せずともソフィア様や街の方をどうこうは致しませんの
分霊は少女としての面が強いから割と人間ぽいけど
本体の方は神としての面が強いから悩むね
…嘘では無い様だし任せようか
神罰の具現化とは人間らしい傲慢ですの
もっとも人間相手に敵意など持ちませんから
私には関係の無い事ですけれど
ソフィア様、これが神罰では無い事はご存じでしょう
しばし耐えて下さいまし
神罰を具現化したいのであれば
わたしが協力しますの
石像と化したあなたを見れば
多くの人が神罰を感じ取れますの
「生前はどんな人だったのか知らないけどオブリビオンとして蘇った以上倒すしかないね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は猟兵の放った猛吹雪の一撃の前に凍結し、その体を罅割らせた猟書家『異端神官ウィルオーグ』が動き出すのを見た。
すでに消耗しきっているのだろう。だが、それでも動き出す。あるのは彼の心のなかで歪んでしまった信仰心のみ。それだけを頼りに彼は動く。
猟兵を前にしてもなお、その歪んだ慈愛は変わらない。
生前の彼は確かに慈愛に満ちていたのだろう。それが過去に歪められた結果、この様な存在へと成り果てたことは哀れと言う他ない。
「まだ動く。私の体はまだ動く。なんということだ。神の試練が私を突き動かす。感謝しなければ! 猟兵に! 私の信仰は未だ終わらず。頂きに至ったと思っていましたが、それでもなお、さらなる高みが在ることを教えてくれた猟兵たちに感謝を! 私は貴方達の敵意と共に高みに!」
雷撃が凄まじい勢いで降り注ぐ。
それは猟書家『異端神官ウィルオーグ』に敵意を向けた瞬間、その者へと降り注ぐ撃滅の一撃であった。
「ふざけるな! 我等が祖の名と体を愚弄する! それが信仰であるはずがない。人の寄す処を詐称した、偽りの信仰に意味などない!」
『知識の神エギュレのパラディン』であるソフィアの『無敵城塞』のユーベルコードの輝きが雷撃を振り払い、晶を守る。
「ここは『私』にまかせて欲しいのですの」
晶の体に融合した邪神の分霊が現れる。にこりと微笑む姿は、いつもと変わらない。
「心配せずともソフィア様や街の方をどうこうは致しませんの」
その言葉を信じるほかない。
晶にとっては体に融合した邪神である。その分霊が任せて欲しいということは本体たる邪神の権能を使うということだ。
「……嘘ではないようだし、任せようか」
本来の邪神は神としての側面が強い。それすらも側面であり、多角的に見ることができるのが神という存在だ。
ある時は慈愛に。ある時は憤怒に。
それを人の身は理不尽と捉えるだろう。
雷撃の嵐が街中に降り注ぎ続けている。
それは『異端神官ウィルオーグ』に敵意を抱く……猟兵に降り注ぐ神罰であるとも言えたことだろう。
「私の雷撃は神罰そのもの! 私の信仰の試練として立ちふさがる貴方たちへの祝福なのです! 滅びこそが猟兵に与えられる唯一無二の祝福!」
どれほどの打撃を与えても、その強固なる信仰は揺らがない。
それは皮肉にもかつての「ウィルオーグ』の持つ信仰心が揺らぐことのないものであるが故に。
「神罰の具現化とは人間らしい傲慢ですの。もっとも人間相手に敵意など持ちませんから私には関係のないことですけれど」
にこりと柔らかく微笑む邪神の分霊の姿。
悪意も敵意も存在しない。それはあまりにも超然としたものであった。次元が違う。同じ立ち位置にあるものであるからこそ争いが発生するのであれば、邪神にとって目の前の『異端神官ウィルオーグ』は敵意を抱くに値しない存在であったのだろう。
「ソフィア様、これが神罰ではないことはご存知でしょう。ただの雷撃。しばし耐えて下さいまし」
邪神覚醒(ウェイク・アップ)。
それは本来の権能を取り戻すユーベルコードの輝き。
「神罰を具現化したいのであれば、わたしが強力しますの」
指先を指し示す。
その先に在る『異端神官ウィルオーグ』が放つ雷撃すら停止させる。それは石像の世に固まり、落ちるのことない異様なる光景であった。
「神罰の雷撃が、落ちない――!?」
「石像と化したあなたを見れば、多くの人が神罰を感じ取れますの」
そこにあったのは悪意でも敵意でもない。
在るのはただの純粋。
その権能を振るうことこそが邪神の本分であるというように、『異端神官ウィルオーグ』の足元から石化させていく。
それに抗うことはできよう。
だが、それも全て時間の無駄である。この後に『異端神官ウィルオーグ』は滅ぶ。
それは邪神の視線が向ける未来視。
避けようのない必定であったのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
バルドヴィーノ・バティスタ
(アドリブ・連携歓迎)
勝手に罪ふっかけて許すだの、いい加減うっぜえなテメェ…
信仰信仰信仰!人の信仰だの謳っときながら要は信仰心以外はいらねェってことじゃねえか!
祈っただけで上手くいくなら誰も彼もひたすら祈り続けて一生終えてンだ!
そうじゃねェのは、人がただ祈るだけじゃなく動いてきたからじゃねェのか?
このパラディンが祖を打ち倒そうと決意したようになァ!
そう思うと…あの呪詛の蝶に触れても己を保つ、なんてことも荒唐無稽じゃねェ気がするだろ?
地に足つけてしっかり立てよソフィア!その姿はオレを含めた民衆どもへの<鼓舞>になる!
さぁ行くぜ【番狂わせへの熱望】!呪詛を潜り抜けて『氷面鏡・鏡片』で貫いてやる!
猟書家『異端神官ウィルオーグ』の足元が石化していく。
それに抗うように振るうのは精霊の力。名を奪うという呪詛を籠められた精霊の力が身体から噴出する。
「おお! なんたることだ。罪在りき猟兵の力は此処まで凄まじいか。どれほどの業を積み重ね、原罪の上にさらなる罪を重ねてきたのか! だが、私は許しましょう。全ての罪があるというのならば、それを全て濯ぎ許すのが私の信仰にして慈愛であれば!」
その言葉は生前の『ウィルオーグ』が持っていた慈愛の心であったが、それは過去に捻じ曲げられた。
「勝手に罪ふっかけて許すだの、いい加減うっぜえなテメエ……」
バルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)は歪められた慈愛こそが害悪であると吠え猛る。
その身に宿る信仰はない。在るのはただの情動。己を囚えること能わず。ただ、咆哮する。己の生を謳歌するように、己の存在が如何なるものであるかを吠えるのだ。
「おお、信仰の光届かぬ者よ。それさえも許しましょう。信仰なき者であったとしても、信仰は受け入れるのですから」
黒き蝶の精霊はあまりにも多い。
消耗しきっているはずの『異端神官ウィルオーグ』の力であったとしても、これほどまでに大量に呼び寄せられ、まるで嵐のように街中を戦場に変える。
「信仰信仰信仰! 人の信仰だの謳っときながら要は信仰心以外いらねェってことじゃねえか!」
黒き蝶の精霊がバルドヴィーノを襲う。
それは呪詛まみれの言霊のようであった。名も無きものであるがゆえに名を欲するように、他者から奪い続けることしかしない精霊。
それがバルドヴィーノの名を奪う。
「まずい――! その蝶は名を奪い、存在すら奪う!」
『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアが己のユーベルコードを発動させ、バルドヴィーノを守らんとする。
だが、それは間に合わない。大量の蝶がバルドヴィーノへと群がり、彼の存在理由すらも奪わんと呪詛に寄って彼の名を蝕む。
「祈っただけで上手くいくなら誰も彼もひたすら祈り続けて一生終えてンだ! そうじゃねェのは、人がただ祈るだけじゃなく動いてきたからじゃねェのか? 人が人として生きるのに!」
それは群がる闇色の蝶に蝕まれたバルドヴィーノから発せられた言葉であった。
あの闇色の蝶に触れて存在できる理由がない。
だというのにバルドヴィーノの名は未だ消え失せない。彼の存在も消えていない。それは如何なる奇跡か。
――否。
奇跡などではない。そこにあるのは必然にして個である。
「馬鹿な! ありえない! なぜ信仰無きものが祈りもなしに存在できる!」
『異端神官ウィルオーグ』の絶叫が響き渡る。
『知識の神エギュレのパラディン』ソフィアは見た。そこにあったのは強烈なる個。己の存在を奪うことなどできないと咆哮する生命の奔流。
「ああ、そうだ。このパラディンが祖を打ち倒そうと決意したようになァ! 人は動くんだよ! 寄す処があろうがなかろうが、生き続けるってことはそういうことだ! 抗う! 抵抗する! 己を縛るものがあれば、振りほどく。何者もオレを留めておくことなんざできやしねェ!」
闇色の蝶が吹き飛ばされる。
それは番狂わせへの熱望(ウン・クリーメン・センサシオナール)であった。『異端神官ウィルオーグ』にとっての予想通りの展開を拒絶し壊したいと願う心が呪詛の呪すらも凌駕する。
荒唐無稽。
その呪詛に触れてもなお己を保つ。
その一手のためにバルドヴィーノは咆哮する。己という存在を世界に誇示する。
「地に足つけてしっかり立てよソフィア! その姿はオレを含めた民衆どもへの鼓舞となる!」
一歩を踏みしめる度にあらゆる呪詛すらも意味をなさぬ個が征く。
「な、何を――」
『異端神官ウィルオーグ』はたじろぐ。
その強烈なバルドヴィーノの視線に気圧されたのだ。名を奪う呪詛ですら奪えぬ存在を前にして、揺らいだ。
それはバルドヴィーノだけの力ではない。
ソフィアが立ち上がり、猟兵たちが紡いできたものが彼の背を押す。人の心を弄ぶ者を許してはおけぬという人々の潜在意識が彼の背を押すのだ。
「さあ行くぜ――番狂わせってやつだ!」
凄まじ存在の圧力と共に構えた長ドスが、その感情の純粋さによって磨かれ切れ味が増す。
どれだけの防御を張り巡らせたところで防ぐことなどできようはずもない。
バルドヴィーノの一撃が『異端神官ウィルオーグ』の身体を貫く。
「めでたしめでたし――なんて、どうせ求めちゃいねェんだろ? 人の生活はこれからも続く。辛いことも悲しいことも全部ひっくるめてなァ! だからこそ、それを壊す!」
その偽りの信仰は必要ないものだ。
霧散し、骸の海へと還っていく『異端神官ウィルオーグ』。
その瞳は最早過去に歪むことのない、いつかの『ウィルオーグ』の優しき眼差しであった。
故に征くがいい。
何物にも囚われぬ者よ。その道行に祝福があらんことを――。
大成功
🔵🔵🔵