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咆哮の元へ

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #魔女猫グリマルキン #竜騎士 #竜頭と少女

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●竜の悲鳴
 竜神山脈。
 アルダワ世界の北西部に位置する霊山。
 偉大なる竜たちが住まう地の何処かでこの日、悲痛な咆哮が放たれた。

 魔力の矢に縫い留められた金色の竜が低く唸る。
『我が魔術の力の前には、爪も牙も出ませんにゃ?』
 其を嘲笑うは、骨の杖持つ魔導士めいたケットシー――否。過去にその姿で存在したもの。即ち、オブリビオンである。
『蒸気機械は趣味じゃありませんにゃ。だから……』
 にいっと猫口を歪め、魔女猫は竜の頭に仮面を近付ける。

 ――Whei!
 ――Whei!!
 ――Whei!!!

『文明の災魔化は、此の魔女猫グリマルキンの魔術と竜の力を以て』

 ――Whei,whah......Gaaaaaaaaa!!!

 同時刻、アルダワ魔法学園にて。
「どうしたの? デイビッド」
 人間の少女が傍らの竜頭の青年を心配そうに見つめている。
 ついさっきまで美味しそうにサンドイッチを頬張っていた青年が、ぴたりと動きを止めてしまったのだ。
 何かに気づいたように、はっと目を見開き――がたりと音を立て、立ち上がった時には。
「ルーナ、すまない。今日の埋め合わせはするから」
 青年はいつもダンジョンに挑む時と同じ……否、それ以上の真剣な顔をしていた。
「ドラゴンが呼んでる。俺が行かないと」

●猟書家の暗躍
「敵の次の狙いは、竜神山脈。ミスター・グースの目論む、魔導蒸気文明の災魔化を諦めるつもりはないのでしょうね」
 溜息ひとつののち、レイラ・アストン(f11422)は予知で垣間見た事件の顛末を仲間たちへ語る。

 少女曰く。
 幹部猟書家たるオブリビオンが、竜神山脈に出現する。
 敵は一体のドラゴンに呪われし「大魔王の仮面」を被せて支配し、最終目的たる文明の災魔化に利用しようとしているという。
「ドラゴンは、広い竜神山脈に点在して暮らしているの。……予知で現場の正確な位置までは特定できなかったわ。ごめんなさい」
 しかし、此度の事件に気付いた者がもう一人いるのだとレイラは告げる。
「アルダワ魔法学園に通う竜騎士の一人に、ドラゴンが助けを求める声が届いたようなの」
 彼も竜神山脈に急行しているゆえ、猟兵たちと現地で合流すれば協力してくれることだろう。
「手がかりとなり得る竜言語を聞き取れるのは、竜騎士だけだものね」
 其は猟兵も同じこと。竜騎士が現場に向かえば、竜言語を聞き取ることも可能であろう。

「ドラゴンは必死に仮面の呪いに抗っているわ。対して、オブリビオンも持ちうる魔力で支配を強めようとしている」
 オブリビオンの名は、魔女猫グリマルキン。
 魔女の予知能力による回避、飛翔しながらの魔力の矢による攻撃、配下の召喚と、使う魔術も多彩だ。
「でもね、敵はドラゴンの支配に力を割きながら猟兵と相まみえないといけなくなる。つまり、ね」
 何らかの方法でドラゴンを鼓舞してやれば、それは支配への抵抗へと繋がる。
 敵は多くの魔力を支配へ回さないといけなくなり、付け入る隙も生じることだろう。
「竜言語を聞き取れる人は限られる一方で、ドラゴンは人の言葉を解するわ。勿論、言葉でなくたって構わない」
 ドラゴンが己を見失わぬよう、手を差し伸べてあげて欲しいと。
 レイラは仲間にそう告げて、転移の準備に取り掛かるのだった。


藤影有
 お世話になっております。藤影有です。
 骸の月を押し返すべく、猟兵の皆様の力をお貸しいただけると幸いです。

 このシナリオは、二章構成の「幹部シナリオ」です。
 第一章は【冒険パート】、第二章は【ボス戦】です。

●補足
 ※プレイングボーナス(全章共通)……竜騎士の助力を得る/ドラゴンを鼓舞する。

 第一章は竜騎士の導きに従い、竜神山脈を踏破しましょう。
 竜神山脈に住まうドラゴンからの情報収集の他、危険地形を乗り越えるための行動についても竜騎士は喜んで協力してくれます。

 第二章はボスの傍らには「大魔王の仮面」を被せられたドラゴンがいます。
 ドラゴンを励まし、仮面の支配に対する抵抗を強めさせれば、幹部は支配に多くの魔力を取られ、隙が生じることでしょう。
(他、竜騎士との共闘もOKです。効果的な戦術であればプレイングボーナスが与えられます)

 なお、猟兵の中に竜騎士がいれば、現場に到着した際、その人も竜言語を聞き取る事ができます。

●竜騎士(NPC)について
 デイビッド 竜派ドラゴニアンの男性。20歳。
 アルダワ魔法学園の学生。竜騎士×マジックナイト。
 青い鱗を持つ偉丈夫。
 ドラゴンランスのアポロとルーンソードを装備。

 アポロ ドラゴンランス。
 基本、槍形態として登場します。
(プレイングに指定があれば、小竜形態に変身してのサポートも可能です)

●プレイングについて
 各章とも、断章投下と同時に受付開始します。
 〆切予定等はMSページをご確認いただけますと幸いです。

 それでは、皆様のプレイング楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『竜神山脈を踏破せよ』

POW   :    火竜の如き力で踏破する/熱意を持って竜騎士に協力を求める

SPD   :    風竜の如き俊敏さで踏破する/巧みな言葉で竜騎士に協力させる

WIZ   :    賢竜の如き智慧で踏破する/竜騎士に協力することの利を説く

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●竜神山脈の片隅で
 猟兵たちが転移した先、一人の青年の姿があった。
 青い鱗の竜派ドラゴニアン、槍と剣を携えた偉丈夫。
 ドラゴンの悲鳴を聴いて駆け付けた竜騎士・デイビッドだ。

 アルダワ魔法学園の学生である彼は、猟兵たちの事情にも明るい。
 状況を察し、彼が先んじて得ていた情報を快く提供してくれる。

①件のドラゴンがいるのは山脈の奥地である。
 上空から位置は捉えられない。己の足で進んでいくしかないようだ。

②道中には危険な場所が点在している。具体的には以下の三つ。

 1.竜瘴花
 毒の瘴気を発する、人の背丈程の植物。
 これが群生している場所を通るなら、瘴気への対策が必要だろう。

 2.竜雷
 何処からか落ちてくる魔力の雷。
 これが発生している場所を通るなら、雷や魔力そのものへの対策が必要だろう。

 3.眠っているドラゴン
 敵の魔術を受けてか、眠りに落ちたドラゴンが巨体で道を塞いでいる。
 外部からの刺激で目覚めてしまうと、錯乱状態で襲ってくる可能性大。
 ここを通るなら、ドラゴンをそっとしておく工夫が必要だろう。

「どうしても、全部を避けては通れねえんだよ。どれか一つでも対策が取れれば、どうにか進んでいけるんだが……」
 肩を竦めながらも、デイビッドは信頼に満ちた瞳で猟兵たちを見つめている。
 さあ、どう進もうか?
リゼ・フランメ
竜の力と想いを利用として災魔と化す
そのやり口は、かつての魔王のそれと同じで、全てを踏み躙るもの
ええ、とても気に入らないわね
人も竜も、今を生きる心は、その感情と理想が侭に向かうべきもの
魔の手で穢してよいものではないの
それを、私の手と炎で教えてあげるわ

対処するのは

1.竜瘴花

デイビッドに群生している場所や、瘴気の発生している状態の見極めを聞き
翼の羽根に瘴気を焼き払うべく破魔の力を宿して周囲に散らし、浄化して焼却してしまいましょう
名に竜を冠するのなら、或いは、竜の力が有効かもと
アポロにも焼却の手伝いを願いつつ、私自身の竜騎士としての力も

――この世界に産まれた身として、骸の月の影を灼き払うが為に




 山道を歩む最中、リゼ・フランメ(f27058)がぽつり呟く。
「竜の力と想いを利用として災魔と化す……ええ、とても気に入らないわね」
 そのやり口は、かつての魔王のそれと同じ。全てを踏み躙るものであると彼女は思う。
 静かな口調ながら、その言葉にはリゼの胸に滾る熱が宿っていて。
 同感だ、と共に歩むデイビッドも頷いた。
 その直後のこと。
「……っと、ここで足止めか」
 猟兵たちは竜瘴花の生い茂る領域にぶつかった。

 岩の隙間から伸びる茎は子供の背丈程のものから、中には大人の男を超えるものまで。
 先端に鈴なりに咲く花は、竜の鱗の形を思わせる。
 他世界でも一般的に見られる植物に例えるならば、巨大な鈴蘭という表現が近いだろうか。
「この花、あなたの鱗に似ているわね」
 此処に咲く一面の青に、リゼがちらりとデイビッドを見やれば。
「お前の髪や瞳に似た色のやつもあるぞ」
 そう青年は教えてくれる。
 さあっと弱い風が吹き、花から出づるは黄金色の瘴気。
 硫黄にも似た臭いを放つ其を吸い込まぬよう、リゼが一歩下がって鼻と口を押さえた刹那。

 ――……“……”!!

「……っ。今のは、ドラゴンね」
「そうか。お前にも聴こえるんだな」
 ほとんど言葉としては意味をなさぬ、苦悶の叫び。
 それでも、竜騎士たるリゼには確かに届いた。
「デイビッド。竜瘴花に炎は通る?」
「なるほど、豪快にやる気だな? ああ、通るぞ」
 竜瘴花はそのサイズと毒の瘴気を発することを除けば、特別に変わった植物ではないという。
「岩の隙間の根まで焦がしちまえば、瘴気は止まるはずだ。……いけるか?」
「ええ、任せて」
 ひらりと舞うように空へ上がるリゼ。
 その後を、地から追う小さな影がひとつ。
「あ、アポロ! お前、勝手に……」
 青年の竜槍が姿を変えた、金の鱗に赤眼の小竜であった。
「あら、手伝ってくれるの?」
 娘が問えば小竜が頷き、よく似た色の目が合った。
「ありがとう。では――」
 広げた翼は天使のもの。白き其の先の先まで想いと力を込めて、いま。
「夢へと翔る翼と炎を」
 解き放つ。
 はらはらと舞う天使の翼は、炎へと姿を変え燃え広がっていく。
 小竜のブレスでさらに勢いを増し、辺り一面を焦がしていき――。

 しばしの後。
「瘴気が晴れた。もう進んでも問題無いぞ!」
 デイビッドの合図を受け、リゼはアポロを伴い地に舞い降りる。
 炎は役目を終え、風に煽られ、ゆらり揺らいで消えていく。
「……急ぎましょう」
「ああ」
 リゼの静かな口調は変わらない。
 されど、滾る想いはより熱く熱く。
 人も竜も。今を生きる心は、その感情と理想が侭に向かうべきものであると。
 けして魔の手で穢してよいものではないのだと。
「私の手と炎で教えてあげるわ」
 “屈するものか”と、囚われし竜の確かな意志を風が届けてくれたから。
「――この世界に産まれた身として、骸の月の影を灼き払うが為に」

大成功 🔵​🔵​🔵​

サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

私も一応アルダワ魔法学園の生徒なのでデイビットさんは先輩ですね!
眠っているドラゴンの対策なら任せてください!【子竜の遠足】で召喚した子達に通れそうな隙間や反応が鈍い所を探してもらいます。そこをそっと通ることができれば起こさずに済むはずです!

ところで先輩、聞こえるドラゴンの声なんですけど、何か重要なことを言っていたりしてませんでした?あと、そのドラゴンの性格がわかりそうな言葉とか、性格がわかればどう鼓舞すればいいのかもわかりますから。

アドリブ協力歓迎です。




 初めの難所を越えた後は、しばらく道中は平穏であり。
「私も一応アルダワ魔法学園の生徒なので、デイビッドさんは先輩ですね!」
「ああ、そういうことになるかな」
 サフィリア・ラズワルド(f08950)が青年に話しかける余裕も十分にあった。
 戦場を共にする仲間とのコミュニケーションは大切なものだ。
 例えば。
「先輩、ドラゴンの声なんですけど。何か重要なことを言っていたりしてませんでした? ドラゴンの性格がわかりそうな言葉とか……」
 そう、竜騎士のみが解する竜言語について。
 もしかしたら、猟兵たちの到着前にデイビッドが何か聴いているのではないか。
 ドラゴンを鼓舞するに当たり、重要な手掛かりが含まれているかもしれないことにサフィリアは思い至ったのだ。
「重要なことに、性格か。そうだな、俺も断片的にしか聴き取れてねえんだが」
 青年が語るところによると。
 ほとんど悲鳴に近い咆哮に混ざり“決して屈さない”“竜と人との絆にかけて”と繰り返し伝わって来ているという。
「竜と人との絆、ですか」
「ああ。既に知っているかもしれねえが……」
 竜神山脈は人類と共に災魔と戦った竜が住まう地だ。
 一時は絶滅寸前に追い込まれたこともあったが、彼らは今なお人々に力を貸し災魔との戦いを続けている。
「囚われてるドラゴンはお前や俺も含めたヒト、皆との繋がりを誇りに思ってくれてるのかもな」
 繋がり、誇り。
 造られしモノでない、生まれながらの竜の心。
 想い馳せながら歩くサフィリアを、青年の手がそっと制す。
「待った。厄介なのがいる」

 向かわんとした先、崖に挟まれた道は相応の広さがある。
 されど、そこにオレンジ色の竜がすっぽり収まっていびきを掻いていた。
 猟兵たちの方に向けられた尻尾が、いびきに合わせてぴくぴく動く。
「起こしたら、間違いなく追いかけてくるぞ……」
「そういうことなら、私に任せてください!」
 ひそひそ声での相談ののち。
「みんな、おいでおいで!」
 サフィリアの小声での呼びかけに応じ、何処からともなく子竜の集団が現れた!
「お昼寝の邪魔をしないよう、通れる道を探してくれる?」
 娘の頼みにきりっとした顔で了解の意を示し、子竜たちはひょこひょこ四方八方に散らばっていく。
 ある者は崖に耳をぴたりと付けて、またある者は眠り竜の上空ぎりぎりを見て回り――。
「どうだった?」
 わらわらと集合した子竜が示した先に、道はあった。
「先輩、こっちです! 回り道になりますけれど」
 自然に崩れたのか、或いは何らかの要因で崩されたのか、崖の一部にでこぼことした箇所がある。
 其を足場に上に登れば、眠り竜の尻へ直撃するルートは免れそうだ。
「助かる」と青年が礼を言うと同時、眠り竜が大きな欠伸をひとつ。
 気付かれたか――否、問題は無さそうだが。
「早く先へ進みましょう、先輩」
「だな」
 何ゆえか肩を震わせながら、猟兵たちはそそくさと崖に刻まれた足場を登り始めた。

 竜騎士は竜言語を解する。
 それが、寝言であったとしても。
「く、くく。いや、まさか」
「“もう食べられない”なんて、そんな……ふふ」
 サフィリアたちが思わず噴き出したのは、安全な道に入ってから。
 どうやら竜にも様々な性の者がいるらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
春乃です。こっちは恋人のwith。よろしくお願いします!
…ところで私、竜派ドラゴニアンの友達いなくて
ちょっと触ってみてもいいですかっ?
はー、へー、とか言いながらぺたぺたと触ってみます
あっ、すみません!先に進まないとですね!

山道は『wanderer』が支えてくれるから問題ないです
竜瘴花なら対応出来そう
UCの風で瘴気を吹き飛ばしつつ
『with』で切り払いつつで進みます
タオルを巻いて口と鼻も塞いでおこうかな
更に念を入れてゴーグルで目を…
へ、怪しい?しょ、しょうがないやないですか
痛いのは平気だけど毒には弱いんです…!

ドラゴン、なんて言ってます?
猟書家の力に抵抗できるなんて
きっとすごく心が強いんやろうね


花澤・まゆ
ディビットさん、どうぞよろしくね
そして情報をありがとう
んー…そうだな、じゃあ、あたしは「竜瘴花」への対策を整えようかな

ディビットさんとあたしを中心に【結界術】で結界を展開
同時に【破魔】と【浄化】の念を符に込めて
花に次々に放っていきます
これでたぶん瘴気も抑えられると思うんだけど
もし無理なようだったら
UCで一気に花を吹き飛ばす覚悟も
あんまり乱暴なこと、したくないんだけどね

槍と剣なんて心強いな
ドラゴン、必ず助けてあげようね
そのためなら、色々な協力は惜しまないよ
頑張ろうねっ

アドリブ、絡み歓迎です




 「デイビッドさん、改めてどうぞよろしくね」
 「よろしくお願いします!」
 花澤・まゆ(f27638)と春乃・結希(f24164)が揃って挨拶すれば、青年は目を細め頷いて答える。
 青い鱗に覆われた竜頭は表情の変化こそ分かりにくいが、目と目を合わせれば伝わることもある。
 彼が猟兵たちに深い信頼を寄せていることも。
 ゆえに。
「ところで私、竜派ドラゴニアンの友達いなくて。ちょっと触ってみてもいいですかっ?」
 結希の申し出に対しても、青年は快く応じてくれる。
 装備していた籠手をするりと外し。
「これでいいか?」
 差し出された前腕は人間のそれとは違い、びっしりと鱗に覆われている。
「はー……」
 ぺたぺたぺた。
 滑らかで硬質ながらもあたたかく、姿は違えど彼もまた生きたヒトなのだと伝わってくる。
「ねえ、どんな感じ?」
 思わず覗き込んだまゆに、「お前もどうだ」と青年は笑いかけるが。
「……っ! いえ、また後でお願いします!」
 オラトリオの娘は、丁寧に断りを入れると同時に花符を展開する。
 猟兵たちを守るように、現れるは結界。
 阻まれた毒気のその先で、竜瘴花が揺れていた。

 岩場の細い道に咲き乱れる竜瘴花。
 狭い場所に密集しているゆえか、瘴気も特に色濃くて。
 黄金色の霧の向こうがどうなっているのか、視認するのは難しい。
「これは、根こそぎやっちまわねえと厳しいか?」
 籠手を嵌め直すデイビッドの傍ら、まゆは僅かながらに躊躇する。
「あんまり乱暴なことはしたくないけれど……」
 囚われたドラゴンを救うためなら、協力は惜しまぬ所存だ。
 しかしながら、まゆにとっては竜瘴花もまた命のひとつであると思えて。
「風で瘴気を吹き飛ばすだけでは駄目でしょうか?」
 思考を巡らす二人に、意見を述べるもう一人の声。
 提案の主たる結希へと向き直ったまゆたちは。
「な!?」
「ゆ、結希さん……だよね?」
 思わずぽかんと口を開けた。
「!! しょ、しょうがないやないですか! 痛いのは平気だけど毒には弱いんです……!」
 タオルを巻いて口と鼻を守り、おまけにゴーグルを装着しての完全防備。
 もはや顔を見ての認識は困難な程。
 さて、これは誰でしょう?
 紛れもなく結希である。携えた大剣が何よりの証拠。
 良かった、怪しい人物は紛れていなかった。
 各々が理解したところに、穏やかな風が吹き込んで。

 ――…………。

 デイビッドが空を仰いだ。
「もしかしてドラゴン、ですか? なんて言ってます?」
 青年とぐいぐい距離を詰める結希。苦しみの最中であろうドラゴンに想い馳せ、心配そうに見つめるまゆ。
 二人の猟兵に、青年が伝えてくれる。
「今届いたのはな、囚われてんのとは別のドラゴンの声だ」
 曰く。
“我らでは、同胞の元へは向かえない。”
“一刻も早く助けてやって欲しい。”
 娘らは顔を見合わせる。
 心は決まった。
 選ぶべきは最も早く、確実に先に進める方法だ。

「それじゃあ、結界を解くね」
 まゆの言葉に、結希とデイビッドが頷いて。
 三、二、一。
「――それっ!」
 結界のほどけた箇所より、幾枚かの符が放たれる。
 破魔と浄化の念を込めた符であれど、瘴気を抑えきれる時間は長くない。
 されど。
「いくよ、with」
 結希にとっては、それで十分過ぎた。
 身に纏うは、渦巻く強大な風。
 手に取るは、最愛の漆黒の大剣。
 心の深く、奥深くまで、強くなれると暗示をかけて。
「どこまでも、一緒に!」
 一歩踏み出し、大きく薙ぐ。
 風で瘴気は吹き飛ばされ、剣圧で千切れた花がそれに続き。
 黄金の霧は晴れ、道が見えた。
「続くよっ!」
 飛ぶように進む結希の後を、すらりと刀を抜いてまゆが追う。
 退魔の霊刀が生み出す衝撃波は、竜瘴花の根までを刈り取って。
(「……ごめんね」)
 切り開かれた道には、微かに桜の香りが残った。

 *****

「流石の力量だな」
 殿を務めたデイビッドが合流し、猟兵たちを素直に讃える。
「どうしたら、それだけ強くなれる?」
 青年の問いの答えは、猟兵の数だけあるだろう。
 例えば、まゆにとっては。
「……助けたいから、かな。この先にいるドラゴンだけじゃなくて。もっと、沢山」
 救える命は救いたい、助けを求める手は取りたい。
 それが、今の彼女の在り方だ。
 また、結希にとっては。
「愛するwithと一緒やから、強くあれるんです。ね、with?」
 最愛の存在が傍にあるから。
 其は依存とも呼べるかもしれないが、生み出される力はまさしく本物なのだ。
 大剣に語り掛ける娘の表情は、恋人に向けるそれであり。
 その様子に首を傾げるまゆと青年に対して。
「……ところで。二人は好きな人、いるんですか?」
「「!!!???」」
 どこまでもマイペースさを崩さない結希であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蒼・霓虹
良い方向性に進化する文化の魔改造なら兎も角、ドラゴンの尊厳の侵害も、文化の災魔化も捨て置けませんね

《POW》1:竜瘴花
開幕UCで攻撃力重視で真の姿になり
デイビッドさんとわたしに【毒耐性&呪詛耐性&オーラ防御】込めた【結界術】を張り

ビスマス結晶クラスター型浄化【弾幕】
〈蒼月鉛「ヒーツァンユエグァン」〉を〈彩虹(戦車龍形態)※以下、彩虹と略〉さんの主砲から

【高速詠唱】で【範囲攻撃】の【砲撃】を放ち毒の瘴気を消し去り

竜瘴花を【浄化】を込めた〈虹色の焔「レインボーバーナー」〉で【高速詠唱】し〈彩虹〉さんの主砲から放ち【焼却】

デイビッドさんにも手伝って貰いつつ突き進みます。

《アドリブ絡み掛け合い大歓迎》




「あの奥でしょうか?」
「ああ、間違いない」
 蒼・霓虹(f29441)が遠目に捉えるは、悠々と聳える岩山の麓の一点。
 そこには、洞窟がぽっかりと口を開けていた。
 竜の巨体で通っていくには、洞窟の広さはまるで足りないだろう。
 件のドラゴンが上空から捉えられぬ場所にいることを鑑みれば、同族らがヒトを頼らざるを得ないのも頷ける。
「行きましょう、彩虹さん。デイビッドさん」
 一刻も早く辿り着かんと、霓虹は己が駆る戦車龍の速度を上げようとするが。
「待て、手前をよく見ろ」
 傍らの青年に軽く制される。
 目を凝らして見てみると、うっすらと大気が濁っているような。
 危険を感じ取り、霓虹の尾に震えが走る。
「風上に回ってみるか」
 青年に促され、風向きを確かめ回り道。
 改めて、別の位置から洞窟前を見てみれば。
「……っ! こんなに咲いているなんて」
 彩虹の角を握る霓虹の手に、力が篭ったのはどうしてだろう。
 行く手を阻むように、広く広く咲き乱れる竜瘴花を警戒してのことか。
 それとも、皮肉なことに七色であった毒花畑が美しくも思えたゆえか。
「どうする? 残された時間は多くねえぞ」
 手の中で槍を滑らせながら、青年が少女に問う。
 今必要なのは、助けを求める手を取ること。
 ならば、猟兵たる霓虹の答えは決まっている。
「進みましょう」
 彩虹さん。
 その名を呼べば、相棒と魂が通じ合う。
「トゥルーライズ・コンクルージョンッ!」
 顕現するは、虹龍の真の力。

「こいつは……驚いたな」
 霓虹に与えられた結界の力の中、デイビッドが感嘆の声を漏らす。
 竜騎士たる青年には、少女らが解放した虹龍の力が強く感じ取れるのやもしれない。
「思いっきりいきます。協力、お願いしますね」
 青年が力強く頷いたのを見て取って。
「コレが虹龍としてのわたしと彩虹さん――」
 主砲、用意。
 砲撃順設定、完了。
 各属性指定、完了。
 着弾地点予測、軌道修正、完了。
 全行程終了、命令ヲ。
「――二柱の本気ですっ! 主砲、ってー!!」
 少女の号令に従って、虹色の戦車龍がごうっと吠える。
 まず放たれるは浄化の弾幕。
 着弾地点から効力を発し、辺りの瘴気を無害化していき。
「次弾装填完了! ってー!!」
 続けて放たれるは、虹色の焔。
 音もなくゆらゆらと幻想的に燃える焔を。
「道を開けろっ!」
 青年が風属性を宿した槍を振るって広げていく。
 虹を模した毒花畑は、虹龍の焔に塗り替えられていき――。

「瘴気の臭いも残ってねえ。これで進めるな」
 ゆらりゆらり。
 虹色の残り火が揺れる地に、デイビッドの声を受けて霓虹と彩虹も降り立った。
「この先に……」
 文明の災魔化の贄として、囚われたドラゴンがいる。
 文化や文明といったものの改造や進化そのものは、霓虹も悪とは思わない。
 ただし、それが良き方向性であればの話だ。
 災魔化など、捨て置けるものでは在り得ない。
「進みましょう」
 今いちど、少女は強く宣言する。
 何より、竜の尊厳を害するなど、到底許されることではないと思うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『魔女猫グリマルキン』

POW   :    不完全なる終焉視
【疑似的な『魔女』の予知能力により】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    遺失魔術『フライハイ』
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【魔女より賜った大切な杖】から【無数の魔力の矢】を放つ。
WIZ   :    魚霊群の回遊
【空を舞う無数の鬼火纏う魚】の霊を召喚する。これは【鬼火の勢いを増した突撃】や【鬼火の延焼による精神汚染】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:いぬひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠クーナ・セラフィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●竜の誇り
 天然の洞窟を駆け抜けた先、そこに広がるはドーム状の空間。
 水晶の如く美しく変質した岩で構成された、その最奥。
『にゃあ……予想以上に粘りますにゃ』
 魔力の矢に貫かれ、目を閉じ地に伏せた金色のドラゴン。
 その頭部を足蹴にし、ぴょいと飛び降りて。
『でも、残念でしたにゃ。もう我が手に落ちるも時間の問題。何しろこやつ、無様に吠える力すら残っていないのですにゃあ』
 猟兵たちに向かって、魔女猫は邪悪に嘲笑って見せた。

 ――…………。

 被せられた大魔王の仮面の下、ドラゴンの弱々しい呼吸の音が反響し、天頂に向かって抜けていく。
 今は闇色の雲に覆われ視認できないが、本来は空へ通じているのだろう。
 ゆえに、竜の悲鳴は届き、救わんと誓った者らが此処にいる。

「なるほど。ドラゴンを押さえつける程の魔女猫さんでも、言葉までは理解できねえんだな」
『それは……このグリマルキンへの侮辱と受け取ってよろしいですにゃ?』
 右に左に。魔女猫の手の中で弄ばれ、揺れる骨杖の先を見据えたまま。
「竜騎士の皆には聴こえてたかもしれねえが、もう一回だけ伝えるぞ」
 デイビッドは猟兵たちに、ドラゴンの言葉を託す。

“我は人を信じている。”

「この距離なら、必ず皆の声は……想いは、ドラゴンに届く。此処まで来たんだ。助けねえとな」
 槍を手にした青年は振り返らない。
 ただ、その広い背で猟兵たちへの信頼を物語る。
『にゃあ。あなた方が邪魔者だということは十分に理解できましたにゃ』
 魔女猫の顔から笑みが消え、骨杖の先に魔力が収束していく。
『邪魔者は、排除あるのみですにゃ』
春乃・結希
…少し羨ましいです
私は信じた誰かに裏切られるのが怖くて
『with』と歩く事を選んだから
だけど、信じる想いが力になるのは、痛いほど知ってます
あなたが私達を信じてくれるなら
絶対に、応えたい

大振りな私の戦い方は、あなたの力があれば避けるのは簡単かもしれない
だけど…私の想いの強さまで、予知出来るなんて思わないで
『with』と『wanderer』による変則的な攻撃
負傷は焔で補い、防御を捨てて攻め続け【激痛耐性】
…大丈夫。私なら絶対大丈夫。『with』と私は最強だから…っ
その中で掴んだ一瞬のスキに拳を叩き込み、繋いだ焔鎖を引き寄せる【怪力】
長くは持たないかもしれない、だから、
デイビッドさん!お願い…!


花澤・まゆ
生意気な猫だね
あたし、猫には甘いほうなんだけど、お前は猫鍋にして食らってあげたいよ

ドラゴン、聞こえる?
生き物の王、こんな猫なんかに負けないで
貴方の誇りを見せて
ええ、あたしだって猟兵の誇りを見せてあげる!

【小夜啼鳥】抜刀と同時にUC起動
どんなに相手が速くたって、あたしもスピードじゃ負けない
命をすり減らして、飛翔に食らいつき衝撃波をお見舞いしてあげるっ
敵の矢は【オーラ防御】や咄嗟に放つ符の【結界術】で防御

まずそのにやにや笑いを消してあげるから覚悟なさい!
猟兵を相手にした己の不幸を悔やむといいよ
あたしもドラゴンも、絶対に負けやしない!

アドリブ、絡み、歓迎です


蒼・霓虹
ドラゴンさん、気をしっかり

貴方と貴方の力が、そこの駄ぬこに
侵害されるのは、わたし達も望んでないですし、貴方も不本意ですよね?

わたし達を信じてくれるのなら、それに応えて見せますからっ!

《WlZ》
【火炎耐性&呪詛耐性&激痛耐性&オーラ防御】込めた【結界術】をわたしとデイビッドさんに付与後

〈彩虹〉さんを【操縦】し【悪路走破&推力移動】

彼と連携し撹乱

敵の攻撃を【第六感】で【見切り】回避し【砲撃】で牽制し

【高速詠唱】で

眷属の子達をUCで召喚

〈虹水宝玉「ネオンアクアストライク」〉を【高速詠唱】し眷属の子達と【弾幕】を【一斉射撃】

デイビッドさんと【集団戦術】で畳み掛けます

《アドリブ絡み掛け合い大歓迎》




 信じている。
 ドラゴンのその言葉を、心の内で反芻し。
「……少し羨ましいです」
 ぽつり呟いて、結希は最愛の大剣・withを構える。
 信じた誰かに裏切られるのが怖くて、自分はこの剣と歩むことを選んだ。
 けれども。
「信じる想いが力になるのは、痛いほど知ってます」
 深い漆黒の大剣が、共に在る娘の姿を映す。
 その切っ先の向こうで。
『信じる? まあ、にゃんとも』
 魔女猫は大げさにため息をついて、ぴょいと身軽に跳躍し。
『陳腐で無意味な言葉ですにゃ』
 宙に浮いたまま、骨杖より無数の魔力の矢を放つ。
 猟兵たちを取り巻くように降り注ぐ矢に対し、活路を開いたのはまゆであった。
「生意気な猫だね!」
 地を蹴るのと霊刀・小夜啼鳥を抜刀するは、ほぼ同時。
 小鳥の声に似た高い音と、桜の香りをその場に残し。
「お前は猫鍋にして食らってあげたいよ!」
 一閃。
 剣圧が風をも裂いて、魔力の矢を悉く叩き落とす。
 ああ、全く。
 猫とはやわらかくて、温かくて、何とも愛くるしい生き物のはずなのに。
「あたし、猫には甘いほうなんだけど」
 許せない、逃がさない――たとえ、命をすり減らしてでも。
 生まれ持った白き翼を広げ、まゆは飛翔する猫に食らい付かんとする。
 尽きぬ矢の襲撃を、結界と符でどうにか防いで。
 次第に、その細い身体に生傷が増えてゆこうとも。
『にゃあ。大きな口を利こうと、その程度……』
「ドラゴン、聞こえる?」
 その最中も、言葉を紡ぐことはやめない。
 届けるは想いを解さぬ魔女猫などでなく。
「生き物の王、こんな猫なんかに負けないで。貴方の誇りを見せて!」
 信じると、確かにそう言ってくれた竜へと。

 金色のドラゴンが薄っすらと目を開けた。
 鋭い牙の隙間から、吐息とともに唸り声が漏れる。
「“遠き日の友よ、迎えに来たか。”……って、おい。俺らは夢でも幻でもねえよ! 寝惚けるな!」
「ドラゴンさん、気をしっかり!」
 まゆが身を挺して作り出した隙を活かし、竜の近くへ駆け寄ったデイビッドと霓虹は力の限り呼びかけ続ける。
「貴方と貴方の力が、そこの駄ぬこに侵害されるのは、わたしたちは望んでいないです!」
『にゃ、にゃ!? 駄ぬこ!?』
「貴方だって不本意ですよね?」
『にゃあ、無駄なことを! 小童どもがぁ!』
 苛立った魔女猫の声とともに、降り注ぐは鬼火纏う魚の霊。
 この輩、どうやら猟兵たちを見下しながらも、ドラゴンへの手出しは許容できぬらしい。
 だが、霓虹らも負けてはいない。
「わたしたちを信じてくれるのなら、それに応えて見せますからっ!」
 言葉に表せる精いっぱいを伝えてのち。
「駄ぬこは黙っていてください!」
 霓虹が解放するは、虹色のオーラ。
 魔女猫の悪しき力より身を護る其で、仲間と己を包み込み。
「彩虹さん、行きましょう!」
 戦車龍を駆り、戦線へ。
 まだ余裕を見せている魔女猫に、狙いを定めるのはおそらく困難。
 ゆえに、まずは配下の霊どもを掃除すべきであろう。
「皆、やっちゃって下さいな!」
 ぶつけるは眷属たる虹色の狛犬たち。
 蒼き鉛の鎧装背負う狛犬衆が飛び回り、弾幕を放ち、戦場の空は次第に混乱を極めていく。
『にゃああ!? 数が! 数が多……』
 さらに合間を縫って飛んできた、何処ぞより投げられた竜槍をどうにか躱して。
 そこまでが、魔女猫が余裕を保っていられた限界。
「にやにや笑いは、もう終わり?」
『……にゃ』
 魔女猫が振り返るより、まゆが斬撃を繰り出す方が早かった。
 骨杖で受け止めながらも、衝撃までは軽減できず。
『こんにゃ、はずは』
 くるくる回って着地するのが精いっぱい。
 その僅かな隙を、結希は逃さない。
「絶対に、応える」
 呟きを猫耳が捉えると同時、魔女の力が発動する――。
『剣……右かにゃ!?』
 ぴょい、と跳躍する魔女猫。
 一瞬遅れて振り下ろされた漆黒の大剣が、深々と岩場に刺さる。
「予知能力? ……大丈夫。私なら、絶対大丈夫。ね、with?」
 衝撃が伝わり、じんとする手。
 されど、結希はまるで厭わない。
 魔女猫の逃げた先を確かめ、魔導蒸気ブーツで地を蹴った勢いで大剣を引き抜いて後を追う。
 直進、右、次は左――空を飛ぶ程の力は、もう敵には残っていないのだろうか。
 視線を巡らす中で束の間、金色のドラゴンと目が合って。
「あなたが私たちを信じてくれるなら」
 呟く言葉は暗示でなく、真心――大魔王の仮面が、ぴしりとひび割れた。

『そんにゃ、支配の術が!』
 慌てて魔女猫が構え直さんとした骨杖を、刀の一閃が吹き飛ばす。
「あたしも、皆も。ドラゴンも。あんたなんかに絶対に負けやしない!」
 無数の傷を負ってなお、まゆは立ち続けている。
 胸に秘めた誇りに突き動かされるかのように。
『そんな馬鹿、にゃ』
 呆然とする魔女猫の瞳が、ほんの少し先の未来すら映すことはなく。
「捕まえた。逃がさない」
 その腹を結希の神速の拳が抉る。
 紅蓮の爆焔に軽々と飛ばされた魔女猫を、繋いだ焔の鎖で引き戻さんとする結希。
 だが。
「……っ!?」
 魔女猫が鎖を外さんと鋭い爪を立てている。
 果たして、敵はどれだけの魔力を残しているだろうか。
 自分一人では長くは持たせられないかもしれない。
 ゆえに、仲間に想いを託す。
「デイビッドさん! お願い……!」
「任せろ!」
 応じた青年はとうに戦況を察し、槍投げの要領で相棒たる竜槍を構えていて。
「行くぜ、アポロ」
 其に語り掛けてのち、力の限りぶん投げる。
 空を裂く音を残し、突き刺さった竜槍に縫い留められる魔女猫。
 まるで、ドラゴンへの仕打ちそのままに。
『にゃ……』
「これで終わりと思うな。アポロ、退避!」
「虹水宝玉、発射準備完了。……ってー!」
 霓虹の指令を受け、放たれるは戦車龍の魔弾。
 其は魔女猫の位置に落ち、地を深々と抉った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
ええ、竜言語でそのままに伝わったわ
だから、私もまたその竜の言葉でドラゴンへ返しましょう

私達を信じてくれている限り―私もまた、貴方を信じる

信じるというの一方向ではなく
双方を向いてこそ力と輝きを見せるもの
ならば、抗ってと竜言語で続けて

―貴方が抗う限り、私も剣舞に身を投じるのを止めたりしないと

その言葉の通り、早業と見切りを用いて舞うように連続の剣閃を
破魔と焼却で聖なる焔を剣に宿し
全て予言で避けられても、私の思いて信じるが間々
これらは無駄や徒労ではなく、竜を信じて鼓舞するが為

―貴方が諦めなければ、私もまた

疑似とはいえ魔女の予知が僅かでも揺らげば
UCでの神速斬撃で斬り伏せ、猫の災いの魔術ごと焔蝶で焼却を


サフィリア・ラズワルド
POWを選択

先輩の話からするとこのドラゴンは強気だ、ドラゴンを鼓舞するのに一番効果的なのは怒らせること、これからすることに落ち込むのではなく怒りを露にして抵抗してくれるはず

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になり竜言語で

ドラゴンへ『なんと情けない同族よ、貴様の誇りはその程度なのか』
先輩へ『魔女ではなく支配される前にこの弱者をやれ、そうすればすぐに片付く』

内心二人に謝りながら言います。
プライドの高いドラゴンなら侮辱されたら怒るし先輩なら絶対に否と言って立ち向かってくれるはず!

『ところで私お腹が空いてきたんですよね……』

敵を見ながら呟きます。

アドリブ協力歓迎です。




『にゃ、にゃ……早く、支配、を』
「な!? まだ生きてんのか、あの猫」
 敵にはまだ息があることを察知し、竜頭の青年は驚愕する。
 されど、猛攻で生まれた爆煙に取り巻かれ、互いに互いの位置は把握できない。
 ならば今は無闇に攻めるより、ドラゴンを鼓舞するが吉であろうと。
「“意識は戻った? 私たちが見える?”」
 リゼは静かに竜の言葉で語りかける。
 紅玉の瞳をじっと見つめ、ドラゴンは肯定の意を示す。
「“貴方の言葉、届いていたわ。だから、私たちを信じてくれている限り――私もまた、貴方を信じる”」
 信じるというのは一方向ではなく、双方を向いてこそ力と輝きを見せるものだから。
 真っすぐに、ひたむきに。
 赤い娘が言葉を紡ぐ傍らで。
「“ええい。なんと情けない同族よ。何時まで敵の良いように囚われ続けているのだ!”」
 突如、大きく膨れ上がった影が嘆く。
 影は白銀の竜の姿を取ったかと思うと、リゼと同様に竜言語にて金色のドラゴンに語り掛け始める。
 デイビッドが驚いて言葉を発せぬ一方で、白銀竜の正体を直感するリゼ。
 そう、いつの間にか彼女の姿がないのだ。
 自分と同じ年頃の、同じ竜騎士としての力を持つ猟兵――サフィリアの姿が。
「“全く……貴様の誇りはその程度なのか”」
 目を瞑り、心底呆れた様子で首を振って見せているサフィリアであったが。
(「本当にごめんなさい! でも、これで怒ってくれれば、きっと……」)
 内心では申し訳なさを感じていた。
 道中、囚われたドラゴンの性格を推測した彼女は、怒りを感じさせることで支配への対抗を強められるのではと結論付けた。
 ゆえに、その言葉は厳しさに傾倒し、ドラゴンのみならず遂には仲間にまで向けられる。
「“竜騎士らよ。魔女ではなく、支配される前にこの弱者をやってしまえばどうだ?”」
「な、何言ってんだお前! 俺は乗らねえぞ!」
 竜言語で話すことすら忘れ、サフィリアの提案を否定し譲らぬデイビッド。
 その一方で。
(「二人とも……少し正直すぎるわね」)
 リゼはあえて割り込むことなく、ドラゴンと目と目を合わせ会話する。
 赤い娘と金色の竜、双方ともにサフィリアの真意を理解していたのだ。
 何しろ、白銀竜の美しい瞳は、強い言葉と裏腹に何処か哀し気であったから。

 ――……G,ggghhh.

 喉の奥で笑い、猟兵たちに言葉を掛けるドラゴン。
 サフィリアとデイビッドは、ぴたりと論争を止めて顔を見合わせる。
「あら、二人とも聴こえていたでしょう? “ありがとう”って。彼はそう言ったの」
 リゼが微笑んだ次の刹那、金色の鱗を貫いていた魔力の矢が粉々に砕け散った。

 *****

『にゃ、にゃ……杖、は』
 爆煙が晴れつつある中で。
「――ええ、貴方が抗う限り」
 魔女猫に刃が振り下ろされる。
『にゃ!?』
「私も舞い続けるわ」
 紙一重で交わした一撃の向こう、魔女猫は見た。
「この……さっさと割れちまえ!」
 ドラゴンに被せた大魔王の仮面。
 其れに入ったヒビに竜槍を差し込んで、強引に広げようとする竜頭の青年の姿を。
『にゃああ!? やめ……』
「あら、余所見している余裕があって?」
 連続の剣閃が魔女猫を襲う。
 刃は首飾りを掠め、何かの骨が音もなく宙に舞った。
 一、二、三、四。
 舞っては避けるその様は、まるで舞台の上のよう。
 信じると決めた想いを乗せて、翻る赤髪は美しく。
(「――貴方が諦めなければ、私もまた」)
 戦いの幕は下りない。
 誰かが諦める時までは。
(『次は後ろに飛んで避けて……ああ、早く! 早く支配を強めにゃいと』)
 支配に力を割くことはできず、それでも魔女猫は回避を続けて食い下がる。
 されど、終わりの時は唐突に。
『にゃ……?』
 着地できるはずの位置に、どうしてだろう。
 何故、無いはずの壁があるのだろう。
 恐る恐る振り向いた魔女猫が見たものは。
『にゃああ!?』
 白銀竜と化したサフィリアの姿。
 小さく唸る白銀の竜、魔女猫を追い詰めるながらも小さく噴き出すリゼ。
「あら、竜言語ではその猫には伝わらないんじゃない?」
『こ、このドラゴンはにゃんと?』
 リゼが訳すまでもなく、その意はサフィリア当人の口から。
「ところで私、お腹が空いてきたんですよね……そう言ったんですよ」
 敵をわざと掠めるように叩きつけられる白銀竜の前肢。
 腰の抜けた魔女猫は、もう動けない。
 全てを諦めたかのように、呆けた顔で天を仰ぐばかりだ。
「では、終わりにしましょう」
 純白の刃が赤い色を映し、閃く。
 火焔の蝶がひらりひらりと群れを成して舞い踊り――夢へと帰っていった跡には、骨すらも残らず。
「これで……どうだ!」
 ドラゴンを縛り付けていた大魔王の仮面も、跡形も無く砕け散った。

 *****

 天井を覆っていた闇の雲が晴れ、差し込むはあたたかな陽光。
 煌めく竜の巣に鎮座して、翼を広げた黄金竜は頭を垂れて言葉を紡いだ。
 ヒトの言葉に訳すと、以下のようになる。

“勇敢なる人々よ、感謝する。”
“一度は落ちた我が翼を、再び広げてくれたことを。”
“今一度、汝らヒトへの信頼を誓おう。共に災魔と戦い続けると誓おう。”
“此のアル=ゴールの名に於いて。”

「……助けられて良かった」
 竜頭の青年も礼を言う。
 猟兵たちの活躍により彼と同様、金色のドラゴンの物語も未来へ続いていくのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月08日
宿敵 『魔女猫グリマルキン』 を撃破!


挿絵イラスト