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にゃんこと花時間

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 迷宮の中を沢山のもふもふ毛並みが逆侵攻していた。
 水路を舟で一生懸命に進み、地上を目指すそれは──にゃんこ。
 水平服に身を包んだ、明色の柔らかな毛を持ったもっふりの個体達が、軍勢で攻め上がっているのだ。
 水上を進軍する様はまるで猫の大波。
 にゃ、にゃ、と気合を入れながら頑張る姿は可愛らしくも中々の迫力であったろう。
「にゃ。ご主人、ほんとにもっとお魚もらえるにゃー?」
 にゃんこ達が声を向けるのは、場を指揮する唯一の人型のオブリビオンだ。
 その少女は白衣を翻し応用に頷いた。
「無論じゃ。上手くことが運べば、前払いの倍は払ってやろう」
 にゃっ、とその言葉ににゃんこ達の士気が高揚する。
 少女は笑みを浮かべて見回した。
「そのかわりしっかりと働くのじゃぞ。俺様の技術をしかと実験したいのじゃからな」
「技術にゃ?」
「うむ。振りかけたものににゃんこ的な見た目を加えてしまう薬じゃ。手始めに、倒した敵がしっかりにゃんこ化するか試してみたい」
「仲間が増えるにゃー」
「ゆくゆくは、この世界をにゃんこで満たしてみる──そんな実験も悪くないの」
 少女は笑って、迷宮を突破していく。
 出口の先には学園がある。花の咲き誇るカフェがあるそこに、大量のにゃんこが迫っていることを、学生達はまだ知らない。

「アルダワ魔法学園の世界において、オブリビオンの迷宮逆侵攻が予知されました」
 グリモアベース。
 冷山・霊音(人間の戦巫女・f00468)は真摯な瞳で猟兵達を見回していた。
 その迷宮というのは、学園内のカフェの敷地から繋がるという場所で──中は沢山の水路が広がっているらしい。
 オブリビオンは奥深くに潜んでいたようだが、ここに来て一気に攻め上がっているようだ。
 それなりの軍勢のようで、生徒達だけで対応できるレベルではあるまい。
「そこで皆さんには、迷宮に赴いて頂き──敵の侵攻を阻止。撃破してほしいのです」

「迷宮の中は主に水路になっていて、複雑というわけではありませんが、戦場が水場になるということは理解しておくと良いかも知れません」
 こちらはそこへ攻め入って、敵の侵攻を阻止する形になる。
「その敵ですが……軍勢の大半は、猫さんのような見た目をしているみたいですね」
 勿論普通の猫というわけではなく、水兵の謂れに違わず舟を駆り、手旗信号まで駆使してみせるという個体だ。
「こちらが迷宮に入る頃には、丁度猫さん達は舟に乗って水路を進軍している状態でしょう」
 水中から攻撃するなり、舟に飛び乗るなり、誘き寄せるなりして何とか軍勢を倒してくださいと霊音は言った。
 軍勢の大半を倒すことができれば、逆侵攻を指揮するオブリビオンと戦えるはずだ。
「この敵こそ強敵なはずなので気をつけてください。何でも、普段から怪しげな実験を繰り返していたオブリビオンらしいので……警戒に越したことは無いと思いますから」
 全力での討伐をお願いします、と言った。

 それから、と霊音は言葉を続ける。
「迷宮の入り口近辺は、勿論学園施設ですが……そこは沢山の花が植えられた明媚な場所となっているそうです」
 併設されているカフェは学生の間で人気ということで、無事に作戦が成功したら寄っていってみるのもいいかと思います、と言った。
 ケーキを中心に、花を使った材料のスイーツが楽しめることだろう。
「花を眺める為に来る人もいるそうですから、景色を楽しむだけでも良いかも知れませんね」
 その憩いの時間の為にも、逆侵攻阻止は必須だ。
 霊音はグリモアを煌めかす。
「では、行きましょう。戦いの場へ」


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 アルダワ魔法学園の世界でのオブリビオン討伐となります。

●現場状況
 水路が広がる迷宮。
 入り組んでいるというよりは、広い水場のようなイメージです。迷ったり行き来に困ることはないでしょう。

●リプレイ
 一章は集団戦、二章でボス戦となることと思います。
 三章では花園のカフェに寄ることが出来ます。
 二章や三章からでもご参加頂ければ幸いです。
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第1章 集団戦 『水兵にゃんこ』

POW   :    水兵にゃんこのボクの船~~クラッシュか?
自身が装備する【七曲りするシップ(船) 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    ご主人様からもらった前払いのお魚なのにゃ
戦闘中に食べた【前払いの 魚】の量と質に応じて【魚の漢字に隠された言葉の特性を取り込み】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    手旗戦闘指令
【 手旗信号】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【対象の近くにいる仲間が指示通りの方法】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アウグスタ・ヴァイマール
愛らしいにゃんこ、捕まえて心行くまでもふもふと……

――ハッ

あ、アルダワを守護するヴァイマールの名にかけて、災魔を見逃すわけにはまいりませんわ!

空中舞踏による立体機動で上から仕掛けさせてもらいますわ!

空中舞踏がしやすい様、比較的壁や柱が多い場所の死角にてまずは待ち伏せを
高い位置で待つには【クライミング】も役立つかしら

にゃんこが船で通りかかったら上から奇襲を仕掛けますわ
まずは足を奪うこと、UCで船そのものを次々に蹴り壊してしまいましょう
私の【怪力】なら簡単ですわね

ついでににゃんこが持っているお魚も奪ってしまいますわね
お魚は別の船に投げ込んで注意を逸らさせつつ
ヒット&アウェイで華麗に立ち回りますわ



 天井が窺えない程に雄大な迷宮。
 その中に広がる水路に、沢山の舟が見えていた。
 大きめの船体や、ごく小型のもの。無数の舟が衝突もせず滑らかに進行している。
 そのどれにも乗船しているのが──。
 にゃ、にゃ、にゃ。
 ぷにぷにとした鳴き声と共に操舵し、オールを握る姿。
 水兵服と毛並みを穏やかな風に靡かせる、にゃんこの軍勢だった。
「まぁ、なんと──」
 と、水路の一角に、口元を抑えて目を奪われている少女の姿がある。
 艷やかなプラチナブロンド。白磁のような透き通った肌に、どこか高貴さも隠せぬ面立ち──アウグスタ・ヴァイマール(魔法学園のエリートお嬢様・f02614)。
 石柱の上から様子を窺いつつも、水をこぎこぎしているにゃんこの姿に、少々夢想するような瞳だった。
「愛らしいにゃんこたち。捕まえて心行くまでもふもふと……」
 ほわぁ、と自分の胸に飛び込んでくるにゃんこ達を想像しつつ──ハッとする。
 首をふるふる振るって、視線をきっ、と向けた。
「ち、違いますっ。あ、アルダワを守護するヴァイマールの名にかけて、災魔を見逃すわけにはまいりませんわ!」
 気持ちを引き締める声音には、まだどこか名残惜しさもあったけれど。
 たん、と跳ぶその仕草は、嫋やかにして開戦の狼煙に他ならない。
 宙でひらりと廻り、別方向へ鎖を投げてスイング。速度を活かして蹴った壁の反動を使って、高空から舟の直上に舞う。
 ヴァイマール流空中舞踏(ヴィントタンツ)──それは文字通り、宙を踊る軽やかな機動。
 にゃんこが気づく前に降下すると一撃。勢いを殺さぬまま蹴り下ろし、破砕音と共に小舟を真っ二つに割っていた。
「にゃっ!?」
 よろめいて驚くにゃんこ達は、ようやくこちらの出現に気づく。
 だがその頃には、アウグスタが二撃目で舟を粉砕しつつ跳び上がっていた。
「ごめんあそばせ!」
「ボクのお魚~!」
 にゃんこが手をのばすのは、アウグスタが空に上がりながらお魚を奪っていたからだ。
 じたばたと宙を泳ぐ手も、虚しく。にゃんこは水に投げ出されていく。
 アウグスタはそのまま数匹が乗る舟に飛び移っている。
 降り立つ上品な仕草に反して、発揮するのは紛うことなき怪力。再び舟を蹴り壊すと、慌てるにゃんこが反撃を目論む前に、お魚を別の舟へ投げていた。
 にゃんこ達の注意が逸れると、その隙にまた攻撃。素早く舟を沈めていく。
 奇襲によってにゃんこが騒ぎ始める中、アウグスタは戦法を継続。止まらずに次々と舟を巡り、藻屑にしていった。
「さあ、どんどん参りますわよ」
 お嬢様の意気は尚軒昂に。まずは猟兵の先手が敵をかき乱し始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スピレイル・ナトゥア
「わ~猫さん、かわいいです!」
自前の猫耳をフリフリしながら叫びます
私も猫(のキマイラ)さんなのですよ~

しかし、アルダワ魔法学園を守るためには彼らを倒さなければいけません
……とても悲しいことです
ですが、私は猟兵として、この世界を平和にするためにこの拳を振るいましょう(少し自分に酔っている)
土の精霊の力を宿した拳で水路の底を殴って、地面を無数の槍に隆起させることで水兵にゃんこさんたちの船を座礁させようとします
グラウンドバーストを放つ隙がない場合は、精霊の突撃銃で仲間を【援護射撃】します
遊牧民族の出身なので、こんな見た目でも獣狩りは得意なのです
心が痛みますが、世界の平和のために猫さんたちを狩ります!



 にゃんこ達の声が響いている。
 猟兵達の存在に気づき始めた敵陣は、水上の交通整理をすることで指揮を乱さぬようにしているようだった。
 にゃ、にゃ、と聞こえる鳴き声は一層規則正しい。
 スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)はその渦中に攻め入りながら、青い瞳を煌めかせていた。
「わ~猫さん、本当にかわいいです!」
 にゃんこは目が大きくて、耳がぴこぴこしていて愛らしい。だからスピレイル自身も、その自前の猫耳をフリフリして笑みを浮かべていた。
 その姿はまさしく、にゃんこに負けず劣らずのキュートなキマイラ。
 そんなスピレイルを眼前にして、にゃんこ達は驚く。
「にゃっ? ……お仲間にゃ?」
「間違いではないかも知れませんね~。私も猫さんなのですよ~」
「にゃにゃ……」
 にゃんこは思ってもみなかった敵の登場に、逡巡してしまっているようだ。
 その仕草もまた可愛らしいものだったけれど。
 スピレイルはふっと目を伏せる。
「しかし、アルダワ魔法学園を守るためには敵は倒さなければいけません。……とても悲しいことです」
 嗚呼、と嘆くように胸に手を当てていた。
 しなりと体を傾けて。ちょっとだけ自分に酔いつつも──意志を漲らせて手を握る。
「ですが、私は猟兵として、この世界を平和にするためにこの拳を振るいましょう」
 同時、スピレイルはその拳に土の精霊の力を宿していた。
 淡く耀く橙の光。
 潜ったスピレイルは水底を殴りつけ、地面を鳴動させる。轟音を響かせた大地は、直後に無数の槍のように隆起していた。
 ──グラウンドバースト。
 水面から突き出た土槍は、鋭利にして豪速。舟を貫いて敵を吹っ飛ばしていく。
 にゃーっと彼方に消えるにゃんこ達。移動するスピレイルは、突撃銃を携えて仲間の援護も忘れない。
 哀しくも運命であろうか。遊牧民族出身のスピレイルは獣狩りを得意としていたのだ。
「心が痛みますが、世界の平和のために狩らせてもらいます!」
 燃ゆる弾丸がにゃんこのおヒゲを燃やし、土の槍がその体を空に飛ばす。
 奇襲の波状攻撃に、にゃんこ達の前線が段々と崩れ始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢羽多・景
僕のバディはアンテロ(f03396)だよ。

うわぁ!見て見てアンテロ!
猫の水兵さん、かっわいいなぁ。
あぁぁ…手旗振ってるぅ…

あ!可愛いけど、猫は凄いんだ
目も耳も鼻も効くし、素早いからね。
船に乗ってるって事は…もしかしたら水は苦手かもしれない。
それにマタタビも効くかな?

僕は【SPD】水鏡演舞を使用

二手に分かれて試しに薙刀のなぎ払いで
…ちょーっと可哀想だけど、水の中に猫ちゃんを数匹落としてみよう。

薙刀が長過ぎて振り回せないなら、柄の中央から二本に分けて攻撃!
こっちに注意を惹きつけるからよろしくね?

アレンジ歓迎


アンテロ・ヴィルスカ
どれ、少し景君(f05729)と遊んでやろう


…しかし動物の事となると煩いな、君は
要は猫ごときと舐めてかかるなと言いたいのだろう?
ならばそのマタタビとやらを【おびき寄せ】に利用しようじゃないか

…おっと、手元が狂った
君の大事な薙刀に掛かってしまったな、すまないね
まぁ、はたいておけばいいさ

猫の感覚がいかに優れていようとも、混乱は生じるもの…
先ずはSPD【聖の檻】に【迷彩】を施し、死角から襲うよ

猫達がひるめば船に乗り込み、双剣で蹴散らしてやろうじゃないか

俺も水に濡れるのは御免被りたいからね
その辺りの猫の気持ちならよく分かるのだがなぁ…?

アドリブ歓迎



 交戦が始まると、敵の進軍速度が落ち始める。
 猟兵と舟がぶつかり合う形になるために、敵も容易に水上を進めないのだ。
 だからこそ、にゃんこ達は懸命にぴしりぴしりと信号を送り合い、交通の便を保とうとしていた。
「うわぁ! 見て見てアンテロ!」
 矢羽多・景(獣降しの神子・f05729)はそんな光景に、嬉しさを隠せない。
 翠の瞳を右左に動かして。平素よりも朗らかさを見せて、にゃんこ達を指さしていた。
「猫の水兵さん、かっわいいなぁ。ほら、あれ、あぁぁ……手旗振ってるぅ……」
 にゃ、にゃ、と手を動かす姿に景は釘づけだ。
 一方、隣のアンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は好対照。
 淡々とした顔を崩さずに。声音も、冷静に戦力を見て取る視線もいつもと同じだった。
「猫も手旗も、見れば判ることだ。全体として見れば、中々統制が行き届いているようだが」
「うん、あ、それだけじゃないよ!」
 くるっと振り返った景は、どこか年齢相応の少年のような眼差し。
「可愛いけど、猫は凄いんだ。目も耳も鼻も利くし、素早いからね。見たところ水は苦手みたいだけど──もしかしたら、マタタビも効くかな?」
「判った判った……しかし、動物の事となると煩いな、君は」
 形のいい眉根を動かしてみせながら、アンテロはちょっと息をつく。
 それからちら、と景の手元に目をやって。そこにある粉末状マタタビを手にとった。
「要は猫ごときと舐めてかかるなと言いたいのだろう? ならばそのマタタビとやらをおびき寄せに利用しようじゃないか」
「あ、うん。そうだね……って、わっ?」
「……おっと、手元が狂った。君の大事な薙刀に掛かってしまったな、すまないね」
 もやっと刃が煙立つ。
 偶然、かはさておき、アンテロの手から景の武器へマタタビが振りかかっていた。
「あぁっ、僕の薙刀がマタタビまみれに──!」
「まぁ、はたいておけばいいさ」
「……大丈夫かな……?」
 乱雑に粉を落とすアンテロに、不安が拭いきれない景だった。
 アンテロはどこ吹く風というように黒い双剣を握り、既に戦いに赴こうとしている。なれば景もまたその黒刃を携えて、前進するしかなかった。
 と言っても、愚直に攻めはしない。
 景はそっと視線を落とすと、声音を自身の奥へと向けていた。
 ──出ておいで、もう1人の僕。
 空気が揺らいで形になるように、顕れたのは景と同一の見た目を持つ影。景の意を汲んだように、それは別の軌道へ疾駆し始めている。
 水鏡円舞(スイキョウエンブ)。
 文字通り、鏡に映した舞いのように。景と影は同じ身体能力で舟へと飛び乗っていた。
 そして敵に近づけば、濃すぎるマタタビの匂いが漂わぬはずもない。
 にゃんこ達はしっぽをぴんと立てて目を見開く。
「にゃ……?」
「なんにゃ、この香りは」
「マタタビにゃ?」
「とにかく行くにゃ!」
 ぱたぱたと駆けてくるにゃんこ。景は予想以上の効果に驚きつつも、薙ぎ払うように剣撃を加えていた。
「……ちょーっと可哀想だけど、ね」
 隙だらけのにゃんこは避けることも出来ず、マタタビにまみれて水に落ちていく。
 挟まれそうになれば、敵の背を影に襲わせつつ。マタタビの効能を活かしながら、景はひとまず何艘かを奪って水上の道を確保していた。
 沢山のにゃんこが迫ってくれば、そこで後退してアンテロと視線を躱す。
 ──よろしくね?
 その心の声に頷くように、アンテロは剣先を宙に突き付けていた。
 攻撃はその正面から、ではない。
 空中に無数の刃が出現し、雨のように降り注ぐ。
 聖の檻(ヒジリノオリ)──短剣へと変化させたロザリオ。アンテロの意のままに飛び交うそれは、迷彩によって気づかれぬうちに死角から敵を襲い、次々に滑落させていた。
「……猫の感覚がいかに優れていようとも、混乱は生じるもの」
 言葉通り、にゃんこ達は惑うように左右を見回している。
 アンテロはその只中へ跳んだ。
 甲冑の姿なれど、動作は素早く身軽ですらある。舟に着地した黒騎士は──双剣に円を描かせて敵を蹴散らしにかかっていた。
 鳴き声と共に、次々とにゃんこが水柱を上げていく。
「卑怯にゃ!」
「水は怖いにゃ!」
「相手の嫌がることをするのは当然だろう」
 これは戦いなのだから、と。
 自身も水に濡れるのは御免こうむりたいと思うからこそ、アンテロには敵の心が手に取るようだった。
「この辺りの猫の気持ちならよく分かるのだがなぁ……?」
「もっと普段の猫も見てあげて……っと、今はとにかく進もうか」
 景もにゃんこの突進を避けつつ、上手く払い除けて前を向く。
 軍勢はまだ残る、けれど猟兵達の進軍が確実にそこに喰い込み始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルフトゥ・カメリア
……うわ、猫……。
たっく、これ敵かよ気が抜ける……。
まあ良い、敵は敵だ。猫の丸焼きなんて食えたもんじゃねぇけど、道中の焚き火代わりにはなんだろ。

手首の古傷を掻っ切って、ユーベルコード使用と共に溢れる地獄の炎をバスターソードに纏わせ、翼の付け根からの炎をブースター代わりに勢いを付けて敵に突っ込む。ユーベルコード自体も殺傷能力はあるし、ついでに良い目くらましにもなんだろ。【怪力、2回攻撃、鎧砕き、フェイント、だまし討ち、第六感】

敵の攻撃は【武器受け、かばう、オーラ防御、カウンター】で対処。
周囲に他に狙われた者がいれば、罵声と共に庇いに入る。
自分がいる限りは傷付けさせないと身を呈す、傲慢な守護天使。



 まるで潮風のように、窟内には空気の流れがあった。
 ひんやりとしたそれに髪花を揺らしながら、ルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)は戦場に入っている。
 舟の残骸を道にして進みながら、前方に見える敵影に息をつく。
「……うわ、猫……」
 瞳に映るのは、にゃ、にゃ、と声を上げ前進してくる水兵達。
 端正な面立ちに浮かべた表情はそのままに、ルフトゥは肩を少しだけ竦めていた。
「たっく、これ敵かよ、気が抜ける……」
「気が抜けるとはなんにゃ!」
「ボク達はりっぱな水兵にゃ!」
 敵は反抗するように言うと、合図を取り合って舟の模型を形成し、飛ばしてくる。
 ルフトゥはしかし怯まず。浅い吐息を零して手首の古傷を掻っ切っていた。
「まあ良い、敵は敵だ。猫の丸焼きなんて食えたもんじゃねぇけど、道中の焚き火代わりにはなんだろ」
「にゃっ……!?」
 敵達の恐怖の表情にも、ルフトゥは構わない。傷から溢れ出す獄炎を煌々と立ち昇らせて、バスターソードに纏わせていた。
 眩いほどの焔。それに照らされて煌めくのは、周囲に舞うネモフィラの花びらだ。
 追想花嵐(イマジナリーファイア)──美しくも鋭い花嵐は、水兵達を取り巻くように宙を踊って、その目をくらませてしまう。
 そこへルフトゥは翔けていた。
 燃え盛るのは翼の付け根からも吹き出す炎。それによって速度を増し、一息に駆け抜ける。すれ違うように刃を振るうことで、一息に数体を切り伏せていた。
 敵が複数で集まって、舟を弾丸のように撃ち出してくれば──それすら花弁の風で吹き飛ばしながら。直後にはその敵にも肉迫し、纏めて撃破していく。
 視界に入る敵を切って捨て、ルフトゥは高速で進んだ。徐々に舟の道が増え、敵の前線は壊滅間近と言っていいだろう。
 その最中にも、ルフトゥが油断を見せるわけもなく。
 否、それは心を引き締めていると云うよりは“傲慢”さの顕れなのかも知れない。
 前進を続ける猟兵は他にもいる。
 その中の一人を、遠くの大船から狙う水兵達がいた。その敵は頭上から降らすように小型船を撃ち出してきたのだが──。
「──ボサッとしてんじゃねぇ!」
 つんざく声に閃く焔。ルフトゥは豪速で飛来して彼の前に滑り込み、その躰をもって攻撃のすべてを受け止めていたのだ。
 視線は乱暴で、声音は乱雑。だが、自分がいる限りは何ものも傷つけさせない。それが守護天使としての自負心でもあった。
 ──咲けや歌えや滔々と!
 ルフトゥは花弁を降り注がせて、高台の甲板にいる水兵達も撃ち落とす。
「無傷で済んだんなら、そのままでいろよ」
 言いながら、前進を再開する。
 それを機に敵の前線は総崩れとなった。猟兵達ははずみをつけて、一気に中枢に踏み込んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
ケモショタ男の娘キタコレ☆
水路?レビテーションで浮遊移動する私には関係ないわー。
そんなことより水兵にゃんこ“で“遊ばないとね♪
ラブフェロモンとマインドジャックで催眠誘惑を試みるわー。
なんなら手土産にお魚の人工未知霊体もつけちゃう♪餌付けよ、餌付け☆
首尾よく誘惑できたらワンダフォーランドに連れ込んで妄想世界でなんやかんやするわ♪
残念だけどオブビリオンは飼えないのよね、エナジードレインでイーファルニエフィルフィンの糧にしましょ。



 前衛ともいえる船団が崩壊し、猟兵達の進軍はその速度を増していた。
 とはいえ、にゃんこの頭数は未だ数えきらぬほど。小さな舟も複数体で搭乗する船も、纏まって猟兵を迎え撃とうと警戒を始めていた。
 けれど、魔の少女はそんな危険も意に介さない。
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)。
 ピンクブロンドの髪をふわりふわりと揺らして、にゃんこ達を高所から見下ろすのは空中遊泳(レビテーション)による浮遊の力のためだ。
「ふふ、水路も水場も船も、私には関係ないわー」
 文字通りに空中を泳ぐように、滑らかに軽やかに空気に揺蕩ってみせる。
 にゃんこ達は、当然それを見上げて撃墜しようと目論んでいた。けれどその敵意もまたアリスには心地良いものでしかない。
「さあ、遊ばせて貰おうかしら♪」
 飛んでくる小舟のミサイルをひょいひょいと躱しつつ、アリスは一夜の経験値(ラブフェロモン)を頭上から漂わせている。
「にゃっ……?」
 敵の攻撃が緩んだのもさもあろう。それは催眠効果を有した行動阻害の能力であった。意識を揺らがせるように、甘い感覚に閉じ込めていく。
 間髪を入れず、アリスはマインドジャック。念動力によって脳に支配権を及ばせて、その思考を誘惑していた。
 心身に自由が利かなくなりつつあることに、にゃんこ達は惑う。
「なんか、おかしいにゃー?」
「いい感じね。なんなら、手土産にこれもつけちゃう♪」
 そこへトドメとばかり、アリスは人工未知霊体(タルパ)を創り上げていた。イマジナリーフレンドとしてにゃんこ達の前に顕れたそれは、お魚そのもの。
「お魚にゃ!」
「あっ、逃げるにゃ!」
「待つにゃー!」
 それを目にしたら、立ち止まっているわけにも行かず。にゃんこ達は釣り餌となった魚を追ってアリスの元へやってきた。
 アリスはそのにゃんこ達にそっと触れていく。
 するとにゃんこは立ち消えたように、水場から別の世界へと連れてこられていた。
 腐敗の果てに成り立つ楽園(ワンダフォーランド)──アリス自身が作り出した、妄想世界だ。
「さあ、こっちよ♪」
 にゃんこ達と一時を楽しむアリスだったが、敵をそのままにしておくつもりはない。
「残念だけどオブビリオンは飼えないのよね」
 だから糧にしてあげる、と。
 エナジードレインでにゃんこ達の生命を吸い取ると──そのエナジーを糧にして、魔力を増幅させていく。
 真なる夜は静かに到来の刻を待つ(イーフィルニエフィルフィン)。
 陽炎が揺らめく程に力を蓄えたアリスは、次々に敵の意識を奪い、その命を喰らう。
 まるで無垢な子供の残虐性を具現化したように。躊躇うこともなく、中枢の一角を全滅させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

犬曇・猫晴
同行者:織譜・奏(f03769)

えっ、あんな可愛い姿の猫さんを、ぼくの手で……!?
奏ちゃんすんごい強かだね……
ぼくもそういう所見習わなきゃいけないね

【POW】
マタタビをばら撒いて猫さん達をおびき出すよ
おびき出しに成功したら、苦しまない様に<夜鳥>でひと思いに猫さんを倒すよ
恨むならそそのかした奴とオブリビオンに生まれた事を恨んでね!
ぼくの事は恨まないで!絶対!精神的にきっちぃから!!

うっへぇ、しばらく猫カフェとか行けないや……

アドリブ歓迎


織譜・奏
【同行者】犬曇・猫晴(f01003)
ほわぁ確かにこれは猫さんですねぇ、可愛い。でもオブリビオンですから容赦はしませんよ。

※水辺なので、濡れても動きやすい服(ショートパンツ等)で挑む
【WIZ】
犬曇さんの後ろを陣取って、後方支援を。
『蛮勇の戦歌』で戦闘力を高め、一撃もしくは少ない手数で始末できるように。
「勇猛なる者へ。届け、私の歌!――犬曇さん、やっちゃってください!」

見た目が愛らしいので騙されそうになりますが、数が多いとやりにくいですね。
犬曇さんが撃ち漏らした敵がいたら、私も本体(竪琴)で殴って応戦します。ていていっ!

アドリブ歓迎



 にゃーにゃーと鳴き声がエコーする。
 軍勢が半壊し、船は沈み──にゃんこ達は傾き始める形勢に慌て始めていた。
 とは言え、いまさら後退するわけにも行かないのだろう。大型の船を前進させて尚攻勢に打って出ようとしていた。
「ほわぁ、確かにこれは猫さんですねぇ。可愛い」
 それを操舵するにゃんこ達を見上げながら、あっけらかんと呟く影一人。
 織譜・奏(冥界下り・f03769)。銀の三つ編みを柔い風に揺らしながら、水辺に苦労しないようにボトムはショートパンツ。すらりと伸びた脚を動かして、舟の道を転々と渡り歩いていた。
 言葉は素直な感想ながら、しかしその表情に戦いへの躊躇は一切ない。
「まぁ、オブリビオンですから容赦はしませんけど。ね、犬曇さん」
「え!? うん……」 
 視線を向けられ頷くのは犬曇・猫晴(亡郷・f01003)。もちろん、敵と戦わないわけにはいかないと判っている。
 けれどちょっとだけ見上げると、にゃっ、にゃっ、と船を進めるにゃんこ達。
 あれを迷わずに討てるだろうか、とちょっとだけ思った。
 だが奏は既に陣取る場所を決め、猫晴に目をやってきている。
「私は後方支援を行いますから、前衛をお願いします!」
「──了解」
 となれば、猫晴もひとまずは奏の前へ向かった。
 戦いの準備が整うと、奏は息を吸って──湿気を含んだ空気に、澄んだ声音を乗せ始める。
「──勇猛なる者へ。届け、私の歌!」
 美しく、伸びやかな歌声。
 それは徐々に勇壮な色を帯びていき、魂を震わせる旋律となっていた。
 蛮勇の戦歌(ブレイヴ・レイヴ)。
 聴いたものの心を昂ぶらせ。意志を強く研ぎ澄ませ。いつしか勇気さえ宿らせて、戦いの為の力を増強する一曲だ。
 奏はぴしりと敵の方を指していた。
「さあ犬曇さん、やっちゃってください!」
「だよね。やっぱり、ぼくの手でやるんだね……!」
 猫晴が気合を入れながらも言うと、奏は力強く頷く。
「私も物理攻撃でお手伝いしますから!」
「奏ちゃん、すんごい強かだよね……」
 猫晴は言いつつも、前に向く。
「まあ、ぼくもそういう所見習わなきゃいけないね」
 ならばやってやろう、と。
 手に携えたのは紛れもないマタタビであった。
 前方にばらまいて成分を十分に漂わせると、すぐに船の上が騒がしくなり始める。
「この香りはなんにゃ?」
「マタタビにゃ!」
「よくわからにゃいけど、体が勝手に動くにゃ!」
 ふんすと高揚したように、にゃんこ達は操舵を放り投げて船を降りてきた。
 そうして猫晴に近づくほどに、濃いマタタビに触れて──ふらふらになる。
「にゃ~……?」
「これは……何か申し訳ない気がするなぁ」
 まじまじと見ていた猫晴は呟きながら、それでも剣鉈“夜鳥”を握っていた。
 飛び石を進むように船の瓦礫を蹴ると、酔っ払っているにゃんこに肉迫して刃を振りかぶる。
 せめて苦しまないように一思いにと。全力の剣閃を奔らせて一匹を斬り伏せた。
 にゃーっと鳴き声を上げて、にゃんこは水に投げ出されていく。
 すると遠くにいたにゃんこ達が声を上げた。
「ひどいにゃ!」
「ずるいにゃ!」
「恨むならそそのかした奴とオブリビオンに生まれた事を恨んで! ……ぼくの事は恨まないで! 絶対! 精神的にきっちぃから!!」
 にゃあにゃあと斬って捨てられていくにゃんこ達に、猫晴は願わずには居られない。
 とは言え敵は次々とマタタビに誘われて出てくるし──遠くのにゃんこ達も、小型船を飛ばして攻撃してくる。
 実際、全力で討たねば苦戦する相手ではあった。
 そのうち手数も足りなくなってくるが──そこで疾駆するのが奏。本体たる竪琴を大振りに一撃、飛んでくる船体を殴り落としている。
「見た目が愛らしいので騙されそうになりますが、中々厄介ですね。それに数が多いとやりにくいです」
「言葉の割に豪快だね……」
 猫晴が言う間に、奏はにゃんこ達へも殴打を加えている。
「ていていっ!」
「にゃ~っ!」
「……とにかくやるしかないか」
 猫晴も夜鳥を振るってにゃんこをどんどん減らした。
 けれど戦果の割に、猫晴の眉尻は下がる。にゃんこを倒しまくったのが少しばかり尾を引いているのだった。
「うっへぇ、しばらく猫カフェとか行けないや……」
「倒さなければいけない敵ですから。とにかく今は攻めましょう!」
 奏が言えば、猫晴はとりあえず気を取り直して前進していく。
 こうして大型の船も沈み、敵の中枢は崩壊。軍勢の残りも数少なくなってきていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

曙・聖
なるほど。猫たちによる侵略、というワケですか。
見た目は愛らしいですが、オブリビオンである
以上、倒さなくてはいけませんね。

敵の姿が見え次第、「高速詠唱」で「先制攻撃」を仕掛け、「エレメンタル・ファンタジア」の「氷の津波」で船ごと凍らせてしまいましょう。
出し惜しみはしません。仲間を巻き込まないように注意を払いながら、氷の「属性攻撃」の「全力魔法」で行きます。
水路ですから、恐らく綺麗に凍ることでしょう。
残存している敵が多いようなら、「2回攻撃」でもう一度、「氷の津波」を使用しましょうか。仲間の皆さんと協力して、倒して行きますよ。


アルバ・ファルチェ
猫…もふもふは好きだけど、僕は犬派だから。
うちのコルノの方が可愛いから。

…じゃ、無くて。
可愛いけど、害をなすなら退治させて貰うよ。

【情報収集】して魚好きを把握したら、煮干しとか鰹節を準備して【コミュ力】を発揮しての【誘惑】【おびき寄せ】。
それにつられて近寄ってきたらコルノの【援護射撃】と【空中戦】【串刺し】【槍投げ】で確実に倒して貰おうかな。

僕自身は引きつけつつ仲間やコルノを【かばう】。
攻撃は【武器や盾で受け】たり【第六感】で【見切ったり】、【オーラで防御】したり、【耐性】で耐え抜くよ。

可愛いんだけど、可愛いんだけど、もふもふしたくても我慢するしかないよね…ホント残念。


逢坂・宵
アルダワですか
僕にとっては色々な意味で思い入れのある世界ですが……
事件はなかなか尽きませんねぇ

ところで今回の敵は可愛らしいですね
女性の方々に人気のありそうな容姿をしています
攻撃しづらい気持ちもありますが、
やむなしということで戦いましょう
……魔法生物であるのならば、いささかの興味はあるのですけれども

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう



 遠くに水路の奥部が見える。
 にゃんこの軍勢の数が減り、ついにその向こうの水場が望めるようになっていた。
 そして一帯は静けさもまた取り戻しつつある。
 とは言え、残党は未だ大勢。今こそ交通整理をしっかりするべきだとか、自分のお魚がないだとか、やいのやいのと騒いでいた。
 空いた舟の一つに陣取って、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)はそんなにゃんこ達を見つめている。
「しかし、今回の敵は可愛らしいですね。こう、女性の方々に人気のありそうな容姿とでも表現できるでしょうか」
 夜空のような藍の瞳を向けて、にゃーにゃー騒いでいる水兵服を観察する。自身はあくまで落ち着いた声音で、ふむと頷いてみせていた。
「何にせよ猫の名に違わぬ、というところでしょうか」
「ええ、確かに見た目は愛らしいですが」
 ふわりと同意をするのは曙・聖(面影草・f02659)。仄かな風に裾と鳶色の髪を揺らがせて、にゃんこ達を視界に捉えていた。
 ただ、柔らかな表情に宿すのはそれを愛でる心ばかりではない。
「──オブリビオンである以上、倒さなくてはいけませんね」
「攻撃しづらい気持ちもありますが……やむなしということで戦いましょう」
 静やかに応える宵もまた、退くつもりはなく。精緻な細工が美しい魔杖を携えると、改めて敵の侵攻を見やっていた。
 敵の残存勢力は、数が減って身軽になった利点もあろう、舟の残骸を避けて壁伝いに航行してきている。
 先頭のにゃんこはびしっと前を指し、気合十分という風情だ。
「進軍再開にゃ! このまま地上をにゃんことお魚でいっぱいの世界にするにゃ!」
「……なるほど。猫たちによる侵略、というワケですか」
 聖が呟くと、それにもにゃんこはもちろん! と反応する。
「最後は世界制覇とご主人も言ってたにゃ。もふもふが一杯になれば皆幸せになるって」
「……確かに、もふもふは好きだけど」
 と、そこにふと耳を惹く声。
 アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)。にゃんこの言葉を途中までは大いに認めてみせながら、それでも譲らぬ一言を続けていた。
「でも僕は犬派だから」
「にゃっ?」
「うちのコルノの方が可愛いから」
「にゃにゃっ?」
 にゃんこ達が舟から目を向けると、そこにふわふわと漂うもふもふの毛玉があった。
 コルノ──小さな翼に立派な角を持つ、ドラゴンランス。
 小竜だけれど、その毛並みと姿形は可愛らしい犬といっていい見目なのだ。
 にゃんこ達は天敵を見つけたかのように色めき立つ。
「わんこがいるにゃ!」
「どうしてにゃんこじゃないにゃ!」
「だから、それは僕が犬のほうが……じゃなくて」
 アルバはコルノをもっふりと愛でてみせながら、思い直して首を振る。
 わんにゃん論争をしに来たわけではないから。その手に盾を携えていた。
「とにかく、猫は可愛いけど。害をなすなら退治させて貰うよ」
「ええ、こちらは一切出し惜しみはしませんよ」
 言って、空気が軋む程の氷気を漂わせたのは聖だった。
 高速詠唱によって即時に魔力を練り、自然へと働きかける。それによって水を大きく流動させて大波を作り出していた。
 ごう、と響く轟音が船団を襲うと──同時に水に氷の力が巡る。
 ばき、ばき、と硬質な音が聞こえたかと思うと、波は一瞬にして氷へと変貌。周辺の水を固めながら、船ごと凍結させていった。
 にゃんこもかなりの数が巻き込まれ、氷に閉ざされている。
「攻め続けましょう」
「では、次は僕が征きます」
 きらりと星色の光が煌めく。宵が杖先から美しい輝きを生み出していた。
 それは星属性の魔力の塊。
 天撃アストロフィジックス(テンゲキ・アストロフィジックス)──光が宙に昇ったかと思うと、次の瞬間。流星のごとく全てが降り注いでにゃんこ達を襲っていた。
 光の尾が宙に描かれ、敵陣が貫かれていく。
 壮麗たる衝撃の応酬は、敵の数を半数以上削っていた。しかしにゃんこ達もただではやられまいとばかり、皆で一斉に攻め立ててくる。
 複製した小舟を操る姿を見て、宵は微かに表情を動かした。
「珍しい能力を使うのですね」
 あれで可愛らしいだけでなく、魔法生物であったならばいささかの興味もあるのですけれど、と。呟きながらも、無論攻撃の手は緩めない。
 それはアルバも同じ。
 迫りくるにゃんこ達に、煮干しや鰹節を取り出してみせていた。
「ほら、お魚ならいっぱいあるよ?」
「にゃっ!」
「お魚にゃ!」
「急ぐにゃ!」
 一目散にアルバ一人へと方向転換するにゃんこ達。
 それによって読みやすくなった舟攻撃を、アルバは軽く跳ぶことで回避していく。同時に敵本体にはコルノを飛行させていた。
 にゃんこへ迫るわんこドラゴン──相克する二者はしかし、鋭利な槍と化すコルノに軍配が上がる。風に乗って刺突を繰り出すことで、にゃんこを水へと打ち落としていったのだ。
 残る敵の舟も、既に聖の連撃によって氷に蝕まれていた。
「このまま、全て倒してしまいましょう」
「ええ」
「うん、コルノ、行くよ」
 二人と小竜は頷いて前進。流星を落とし、角で突き破ることで残るにゃんこ達も難なく撃破していく。
 舟から逃れたにゃんこも、氷の上ではつるつる滑って上手く動けない。にゃーにゃーと苦闘しているのを狙うのは難しいことではなかった。
「うーん……可愛いんだけど、可愛いんだけど、もふもふしたくても我慢するしかないよね……ホント残念」
 アルバは名残惜しさを覚えつつも、コルノの一撃を見舞う。宵の魔法が同時に命中すれば、最後のにゃんこも吹き飛ばされていった。
 聖は見回す。
「一先ずは、うまく運んだようですね」
「ええ」
 宵も少しだけ、視線を巡らせた。
 アルダワ──巨大な迷宮とそれを抱くこの世界は、色々な意味で思い入れのある場所でもあるから。
「しかし、事件はなかなか尽きませんねぇ」
 改めて呟く。
 何しろこれほどの軍勢を撃破しても、まだ敵は全滅とは相成っていないのだから。
 宵が視線を向けたその先に、一人の少女の姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『アストネージュ・トーマスライト・ヒラーガ』

POW   :    にっしっし、俺様こそ一番の技術の変態じゃよw
いま戦っている対象に有効な【妖しい発明品】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    いっしっし、ようこそ俺様のラボへ。歓迎しようw
戦闘用の、自身と同じ強さの【自立行動型実験器具】と【敵と同数の防衛ゴーレム】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    爆発☆オチ
【暴走した発明品の自身も巻き込む自爆】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蒼汁之人・ごにゃーぽさんです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●科学者
「中々興味深い力を使うではないか」
 歩んできたのは白衣を着た少女だった。
 年若い見目ではあるのだが、言葉遣いはどこか老成しているようでもある。とはいえそれが骸の海から還った存在である以上、年齢に意味は無いのだろう。
 何か不穏な空気を漂わせているのは、彼女が持っている薬だった。
 少女は不敵に笑む。
「これぞ俺様の技術の結晶の一つよ。無機物から有機物まで、あらゆる物ににゃんこ要素を加える秘薬じゃ!」
 恐ろしきかな、それは大量に投与することで路傍の石すら猫っぽい魔物にしてしまうという。
「にゃんこの良さを理解して貰えんで、残念。じゃが、脅威はまだまだ終わらんぞ!」
アリス・セカンドカラー
アストちん相変わらずだなぁ、昔は猫耳バニースーツ型強化外骨格とかも作ってたわねー。
なんかもうオチが見えてる気がするけど話が進まないから気がつかなかったことに。……爆発オチか(  ̄- ̄)
一応保険としてオリュンポス腐海四天王に連絡して万が一の時の後始末お願いしておこっと。

オリュンポス遊撃艦隊『アーテー』を召喚。先ほど美味しく頂いたにゃんこ水兵がセイラーバニーにゃんこ鎧装騎兵男の娘のゴーストシップ船団として大復活☆
アストちんの防衛ゴーレムもにゃんこ型になってるだろうし、見た目“だけ“なら和む戦いになりそうねぇ。

さぁてアストちん、キマシタワーって知ってる?
真なる夜の到来でちゅっちゅぺろぺろよ☆


アンテロ・ヴィルスカ
やれ、数は力とは言ったものだ
やっとボスのお出ましか…アレも可愛いの範囲内かい景君(f05729)
動物好きの君からしたら奇跡の薬だな。

俺はあまり科学とは御縁がないものでね、警戒に越したことはない
少々防御に比重を置いておこう。

【POW】
契約通り協力して貰うぞビジネスパートナー

ロザリオの刻印に血を滴らせ、ドーピング・ブラッドで防御を上げたら
そのままロザリオを揺らし、催眠術をかけた水兵猫を盾にアストネージュを斬りつける。

何か面白い物を持っているよ?ご主人様に戯れついてくるといいさ。

様子をみつつ状況に応じて身を盾に
景君をかばえるよう、猫含め敵の動向には注意を。
ギブアンドテイクだからね?


アドリブ歓迎


矢羽多・景
引き続きアンテロ(f03396)と共闘するよ。
…え、あの人?うん。可愛いと言えば可愛いんじゃない?
でも僕は猫がいい!

アンテロの剣先で指を切って、彼に差し出すよ。
痛いのは嫌なんだけど約束だし、その分力を貸してよね?
それに水兵にゃんこに頬が緩みっぱなしだから、気合いが入って丁度いいや。

戦いが始まればアンテロの動きに合わせて、薙刀の斬撃で攻める。
危なくなったらしっかり守ってよ!
(そして怪しい薬いっぱい被れば良い…)

【WIZ】巫覡載霊の舞の使用はここぞと言う場面で。
まだ猫だっているもんね、油断できな…ああっ!僕の帽子に怪しい薬がっ!可愛い!

アレンジ歓迎


逢坂・宵
無機物から有機物まであらゆるものににゃんこ要素をプラスする秘薬とは、なかなかに厄介ですねえ
しかし僕は、猫派犬派というより魔法生物派なんですよね
それに猫は可愛らしいだけでなく、気まぐれな女王様のような気質を持ち合わせていなくては
―――ということで、残念ですが戦わせていただきます
あなたの秘薬が魔法生物に関するものであったら
もしかしたら何かお伺いすることもあったかもしれませんが

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天航アストロゲーション』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう


茲乃摘・七曜
心情
…石すら猫っぽい魔物にするのはすごいですね、えぇ(困惑

指針
相手は災魔、意識を切り替え後方支援に徹する
※守りは味方を信じ、もしもの時は激痛耐性で耐えきる
「多量の防衛ゴーレムが予測されますからそちらを対処致しましょう

行動
『流転』で自立行動型実験器具の足を止め狙い
「まずは着実に手が届くように致しましょう

雷撃で防衛ゴーレムの先頭集団の動きを止め仲間の援護をする
・AngelsBitsの自律演奏で雷の投網
・自身の歌唱で雷光の槍
※雷撃は仲間を巻き込まないよう注意
「素材はわかりませんが…雷撃で動きを制限できないでしょうか…?
「あと、可能な限りの援護も歌い上げましょう
※衝撃波で敵を揺らす等して攻撃を逸らす等


アルバ・ファルチェ
猫の良さを理解できないんじゃなくて、僕は犬がより好きなだけだからね?
そこは勘違いしないで欲しいかな。

ほら、犬も良いものだよ?触ってみる?
って僕自身の耳と尻尾、あとは僕が毎日丹精込めてブラッシングしてるコルノの毛並みで【おびき寄せ】【誘惑】。
【存在感】【コミュ力】も駆使すれば無視は出来ないでしょ?

そうやって敵を引き付けておくからその間に仲間が攻撃してくれると嬉しいな。

敵が我に返って攻撃してきたらいつものように【かばう】【盾/武器受け】【見切り】【オーラ防御】なんかで皆を守る。

あと、怪我した人がいたら即回復を飛ばすよ。
囮や防御、回復は任せて!
代わりに攻撃は任せた!


スピレイル・ナトゥア
妖しい発明品って、にゃんこ的な見た目にしてしまう薬のことですよね?
プレイヤーとして、ここはキャラの思考に一切関係なく振りかけられに近づくしかありません
ボケにはツッコミが必要なように、ネタ振りにはネタを受ける人間が必要となるのです!

そんなプレイヤーの考えにはまったく気づかずに、精霊の幻想的な光に包まれて剣と鎧と盾のフル武装形態になります
「にゃんこさんたちを戦場に出そうとするなんて、にゃんこ好きのひとがやることとは思えません。絶対に許しません!」
たとえ、剣に、鎧に、盾に、私自身ににゃんこ要素が加えられたとしても、かわいく驚きはしても絶対に退いたりはしません
にゃんこさんたちの仇を取らせてもらいます!


アウグスタ・ヴァイマール
貴方ですわね、にゃんこ達を唆し、死地へ送り出した人物は
その罪、万死に値しますわ
今こそ、にゃんこ達の仇!

――仇は私達の方じゃないかですって?

……

問答無用!細かい話はどうでもいいですわ!

アウグスト、フィリップ、ヨハネス、ベルンハルト、本気で行きますわよ!
赤青黄緑に淡く光る人工精霊達が魔法力を供給すれば、私の精霊銃は無敵ですわ
炎、氷、雷、風、【属性攻撃】の雨あられをお見舞いしますわ
雷鳴の如き砲火の音色に合わせて、さあ、美しく舞ってごらんなさい


犬曇・猫晴
同行者:織譜・奏(f03769)

にゃ、にゃんこ要素を加える秘薬!?
……ちょっと欲しい、かもしれないけど。
待って、奏ちゃん?それどういう意味?

【SPD】
こういうのは先手必勝。奏ちゃんが癒やしてくれるから多少の攻撃は気にせず敵に攻撃を当てる事だけに集中。
行く手を実験器具が遮るなら掴んで白衣少女に【投擲】
ゴーレムが遮るなら、当たるとちょっと痛そうだから出来る限り避けようかな。掠る程度なら無視。

……にゃん?

負傷、アドリブ歓迎


織譜・奏
【同行者】犬曇・猫晴(f01003)
にゃんこの良さは死ぬほど理解してますよ!この犬、いや、ね、ね……(むず痒そうになりながら)猫晴さんが体現してます!!
(ドーン)(隠れながら言う。そのくせなんか誇らしげ)

【WIZ】
強化で時間をかける余裕があれば良いんですが、まずは犬曇さんの体力に気を使うのが最優先。『シンフォニック・キュア』でHPを保ちつつ、余裕があったら強化の曲も奏でる感じに。
それにしても効能すごいですね、世が世だったら一儲けできたかもしれません。

楽譜帳なりなんなりで薬品は極力ガード。犬曇さんに掛かりそうだったら身を挺して守りますニャン。……にゃん?

アドリブ歓迎


ルフトゥ・カメリア
また変なのが出て来やがった。
つーか、猫が好きなのと猫になりてぇのは別だし、猫と猫に似せただけの何かは別に決まってんだろうが。

この天使、動物の中で猫が一番好きだったりはするけれど、猫っぽいナニカをかわいがる気にはなれない。
薬品避けも兼ねて、大きく炎を振り撒く。怪しげな発明品だろうが金属だろうが、溶かし斬っちまえば一緒だろ。【怪力、2回攻撃、鎧砕き、フェイント、だまし討ち】
背の翼の付け根にある古傷からもブースターのように炎を噴き出し、スピード強化と背面の護り兼カウンターに応用。何も燃やし尽くしてやる。

たっく、帰ったら近所の猫でも触りに行くかな……。



 にっしっし、と怪しげな笑い声が響く。
 白衣の少女──アストネージュ・トーマスライト・ヒラーガは愉快そうな顔で三角フラスコを掲げていた。
 奇妙な色に光るその液体を、凍った水面にどばどばと大量に注ぐ。
 するとぱきぱきと氷が形を取って、透明なにゃんことして動き出していた。
「見よ、この技術力。どんなものでもにゃんこ一直線じゃ」
「おぉっ、凄い……!?」
 猫晴は目の前に現れた氷猫に、驚きを浮かべざるを得ない。
 思わずまじまじと見つめてしまう。
 あれで本当に何でもにゃんこっぽくなるのなら──。
「……ちょっと欲しい、かも知れない」
「ふふ、簡単には譲らんぞ?」
 アストネージュは、秘薬のストックをゆらゆら揺らしてみせる。
「ましてや、にゃんこの良さを理解しないお前達にはな」
「──理解しない? さっきからそれだけは、聞き捨てなりませんね!」
 と、響く声は奏のものだった。
 アストネージュが見回すと、奏は少しばかり船べりに体を隠して……むず痒そうになりながら声を張り上げた。
「にゃんこの良さは死ぬほど理解してますよ! この犬、いや、ね、ね……猫晴さんが体現してます!!」
「待って、奏ちゃん? それどういう意味?」
 ドーンと誇らしげな奏に、猫晴は一瞬怪訝──だが奏はすぐに戦闘態勢に入っていた。
「とにかくこっちも負けてないってことです! いきますよ!」
 唄い上げるのは力強い戦歌。
 魂を彩るメロディは、すぐに場を勇猛な空気で満たして猟兵達の力を底上げする。
 猫晴も力が強まると、ひとまずは敵に向き直って夜鳥を構えていた。
「まあ、こういうのは先手必勝だからね」
 言うが早いか、氷の地面を蹴って加速。高まった身体能力を活かして一気に直進する。
「……むう!」
 だがアストネージュも反応は遅くない。
 かっと目を見開くと、ポケットからピペットを投擲。空気を吐くそれをミサイルのように放ってきた。
 だが猫晴とて退かない。
「予測済みだよ」
 刃で飛んできたそれの速度をいなすと、手で掴んで投擲。逆にアストネージュへ弾丸の如く命中させた。
 この間にも、猫晴の体にアイスにゃんこが噛み付いてきていたが──猫晴は焦らない。
 多少体が傷つこうとも、奏が治癒の歌を歌い上げているからだ。涼風のような旋律に傷が消えていくのを感じながら、猫晴はにゃんこを斬り払ってアストネージュへ肉迫。痛烈な刺突を叩き込んでいった。
 立ち位置に戻った猫晴の無事に、奏は安堵する。
 ただ油断していないのは、敵が再度猫の魔物を生み出していたからだ。普通の氷が元気なにゃんこになるのをみて、奏はうーんと唸る。
「あの薬、本当に効能すごいですね、世が世だったら一儲けできたかもしれません」
「技術は利益ではなく、探求と実証の為にあるべきじゃよ」
 このようにな──と。
 アストネージュはこちらへ向けて秘薬を撒いてきていた。これは流石に猫晴も驚く。
「うわっ?」
「おっと、大丈夫ですよ、犬曇さん!」
 と、そこには奏が滑り込む。楽譜帳を盾にして猫晴を薬から守っていた。
「心配しないでくださいね。身を挺して守りますニャン。……にゃん?」
「……にゃん?」
 ふと二人は視線を合わせる。
 見ると、薬の飛沫の掛かった奏に、ぴこりと猫耳が生えているのだった。
「ニャン!?」
「えっと、……奏ちゃん、平気?」
「だ、大丈夫ですニャン」
「うーん、大丈夫じゃなさそうな気が……まあ時間経過で治る、かな?」
 その辺りはいまいち確証のない猫晴だった。
 どのみち、今は戦うしか無い。引き続き奏に背を任せ、猫晴は素早い機動で疾駆。舟を蹴って飛び上がり、接近を試みる。
 アストネージュはプレパラートをブーメランのように撒いて猫晴を削ってくるが──それでも奏が癒やしの歌声を響かすことで対応した。
『ニャン、ニャン──♪』
 その歌声は若干にゃんこ感も交じっていたけれど……問題なく体力を保った猫晴は、そのまま敵へゼロ距離へ迫り一撃、上方からの斬撃を見舞う。

 ぱきりと、足元で氷片が割れる。
 一度よろけたアストネージュは、氷面を踏みしめて留まっていた。
「流石に、やるようじゃの」
 戦意は未だ変わらずも、零す声音はこちらの力を認めて見せるようでもある。
「あのにゃんこ達では太刀打ち出来ぬはずじゃ。失策であったの」
「──仰っしゃりたいことは、それだけですの?」
 声を返すのはアウグスタ。
 気品ある瞳をきっ、と真っ直ぐに向けていた。
「貴方がにゃんこ達を唆し、死地へ送り出しさえしなければこうはならなかったはずでしょう? その罪、万死に値しますわ」
 声と共に握るのは、精緻な細工の美しい二丁。
 精霊銃【メルツェル】、そして【ウィットナー】。魔力を湛えて鮮やかな陽炎を棚引かすそれを、アウグスタは真っ直ぐに向けていた。
「今こそ、にゃんこ達の仇!」
「判らぬでもない。じゃがどっちかと言うと仇はお前達の方では?」
「……。……問答無用! 細かい話はどうでもいいですわ!」
 ちょっと口を噤んだアウグスタだったが、ここで気勢を弱めてはならぬとばかり、高らかに呼び掛ける。
「アウグスト、フィリップ、ヨハネス、ベルンハルト、本気で行きますわよ!」
 淡く耀く光が、渦を巻くようにその手元へ招来された。
 赤は燃ゆる火、青は煌めく氷、黄は眩き雷、緑は鋭き風。収束するように色の渦を作った人工精霊達が、銃口から衝撃の奔流を形作っていた。
 ヴァイマール流雷鳴舞踏(ドンナータンツ)。
「雷鳴の如き砲火の音色に合わせて──さあ、美しく舞ってごらんなさい」
 生まれいづるは銃撃の雨。途切れの無い乱射攻撃がまるで嵐のように飛来。アストネージュの全身を飲み込んでいく。
 回避を試みようともその隙間が生まれない。アストネージュは文字通りに無限の衝撃に襲われ、まるで舞うように転倒させられていた。
「こちらとて、数では負けんぞ!」
 だが言ってみせると、倒れ込みながらも秘薬をばら撒く。
 地面に広く散布される形となったそれは氷のにゃんこだけでなく──水のにゃんこ、木彫りのにゃんこ、岩のにゃんこと、環境から次々に魔物を作り出した。
「にゃんこ勢力は永遠に尽きぬぞ!」
「……そうやってまたにゃんこを酷使するのですね!」
 真っ直ぐな瞳で言ってみせるのはスピレイルだった。
 増強する敵の戦力に怯まずに。
 ……同時に、近づけば自らまでにゃんこ化の危機があるとも気づかずに、凛と踏み出している。
「あの水兵さんだって、斃れずに済んだかもしれないのに。にゃんこさんたちを戦場に出そうとするなんて、にゃんこ好きのひとがやることとは思えません!」
 心にあるのは、ただ真摯で、戦いから退かぬ意志。
 スピレイルを包むのは幻想的な光だった。
 手元に耀くのは炎の精霊の加護による剣。体を纏うのは土の精霊の加護による鎧、そして盾。淡く、しかし美しく全身を煌めかせるのは雷の精霊による能力向上の加護だ。
 精霊闘姫(トリニティ・エレメンタル・フルドレス)。
 優美で力強く、端麗で眩しい。
 闘姫の名に相応しいその姿で、光の直線を描くように疾駆。スピレイルは一気に敵の至近に踏み込んでいった。
 アストネージュは顕微鏡を小型ロボにして放ってくる。だがスピレイルはそれも一刀に斬り伏せて眼前に迫っていく。
「そんなものでは止められません! にゃんこのことを思えば──あなたを絶対に許しはしません!」
「ぬう、ならばこれでどうじゃ!」
 アストネージュは避けるより、真正面から秘薬を投げ放ってきた。
 ぱりん、と割れた試験管から液体が降りかかると──スピレイルの剣の鍔が突如、デフォルメされたにゃんこマークに変貌する。
「……えっ!?」
「まだまだ!」
 スピレイルがびっくりしていると、敵はさらに薬を投擲。耀く鎧と盾を、にゃんこの顔のドット柄に変えてしまう。
「あっ、私の装備が……!?」
「お次はこれじゃ!」
 仕上げとばかり、アストネージュは高く放った薬をスピレイルの頭からかぶせた。
 すると──にゃーん。
 スピレイル自身にぴょこっと猫耳が生えてくる。
「ひゃっ!?」
「ふん、どうじゃ。これでお前もにゃんこじゃ」
「……こんなことで、下がりはしません!」
 だがスピレイルは尚勇壮に、アストネージュに斬りかかっていた。
 にゃんこソードを振り上げて一刀を見舞い、相手の攻撃はにゃんこアーマーとシールドで回避。スピレイル自身はどこまでも真面目に戦いを続けゆく。
「なんというやつじゃ!」
「逃しません。にゃんこさんたちの仇を取らせてもらいます!」
 一歩下がろうとした敵にも追いすがり。猫耳を揺らしながら強烈な刺突を叩き込んだ。

「くっ……!」
 アストネージュは僅かに苦痛の色を見せて後退していた。
 とはいえ未だ、その体力が尽きる様子はない。
 力や体力に特化せずとも、その躰はオブリビオン──斬り刻まれても簡単には朽ちはしなかった。
「……とっておきの一つを出してやろう。現れい、遠心にゃんこ機!」
 言ってみせると、小型の丸薬を氷面に叩きつけた。
 立ち昇った煙の中から現れたのは、人を超える大きさのにゃんこロボット。遠心分離機を改造したものらしく、ドラム型の胴体を持ったシルエットをしていた。
 同時にゴーレムも召喚。機械のミニチュアのような姿を多数配備して、守りも固めていく。
「うーん、アストちん相変わらずだなぁ」
 アリスはそんな様子を小首をかしげながら眺めている。
「昔は猫耳バニースーツ型強化外骨格とかも作ってたわねー。まあ、とにかく」
 と、自身もゆらりゆらりと魔力を漂わせると、空中に巨大な魔法陣を浮かび上がらせていた。
「軍勢には軍勢。こっちも勿論、負けてないわよ?」
 アリスはぴしりと真っ直ぐに指差す。
 すると光の円陣から出現するのは──無数の船の影。
 轟音を上げて船首を露わにするそれは、ゴーストシップ。先刻相手した水兵にゃんこを鎧装騎兵として復活させ……バニー要素も加えた上で乗船させていた。
 オリュンポス遊撃艦隊『アーテー』。
 敵の軍勢にも劣らぬ、文字通りの艦隊が水路を進軍していく。
「むう、これは……」
「さあ、全軍前進よ♪」
 見上げるアストネージュに、アリスが言えば艦隊は真っ直ぐにその方向へ進行した。
 敵は無論、ロボで対抗しようとする。だが船がどんどんと氷を砕いていくと、足場も不安定になっていた。
 ゴーレムの数体が着水していくうちに、アリスは指揮を執るように前方を示す。
「そのまま、アストちんへ進むのよ」
「にゃ!」
「にゃ!」
「にゃ~!」
 すっかりアリスの手先となったにゃんこは、迷うこともなく操舵。船体ごと突撃するようにアストネージュへ強烈な打撃を加えた。
「おのれ!」
 アストネージュも氷片をにゃんこに変じさせて射撃の如く突撃させる。が、艦隊もまた対射撃能力は有していた。
「今よ♪」
 声と同時に水兵にゃんこ達が艦載の砲塔を向け一斉射撃。にゃんこ型の弾丸でアイスにゃんこを撃ち落とし──敵のにゃんこ勢力を全滅させていった。

 凍っていた水面が割れ、迷宮には再び波音が帰ってきている。
 アストネージュは着水する前に後方へ。舟の一艘に足場を取って態勢を整えていた。
 アンテロは平坦な氷塊の上にとどまり、攻撃の機会をうかがう。
 それにしても、と、敵を見つめつつ呟く。
「やっと現れたボスだけあって、簡単には斃れないようだな」
 ここに来るまで、景曰くの可愛いものと散々やり合ってきたが……最後に立ちはだかるのは、強さも見た目とは猫とは違うものというわけだ。
「それとも、アレも可愛いの範囲内かい景君」
「……え、あの人? うん。可愛いと言えば可愛いんじゃない? でも僕は猫がいい!」
 その上でにゃんこを倒してきたのだから、あの敵相手に戦うのを躊躇うはずもない。
 景は明瞭に言ってみせると、アンテロへと視線を遣っていた。
 アンテロもまた、景へと目を合わせる。
「では──契約通り協力して貰うぞビジネスパートナー」
 そっと構えたのは剣の切っ先だ。
 うん、と頷いた景はそこへ自分の指先をあてていた。
「痛いのは嫌なんだけど約束だしね。その分、力を貸してよね?」
 ぷつりと小さな音がして紅い血が滴る。
 流れる雫を、アンテロはロザリオの刻印へ注いだ。すると体へと脈打つような感覚が満ち──防御力が劇的に向上していく。
 そんなアンテロと共に、景も前を向いた。
 指の血は軽く拭って、それで済ませる。ほんの少しの痛みも、先刻まで頬が緩みっぱなしであったこと思えば気合を入れるには丁度いい。
 破魔の力を湛える薙刀を、さらに淡い光で包むのは──景自身が神霊体となって強力な力を宿したからだ。
「それじゃ、行こうか」
「ああ」
 アンテロはまだ息のある水兵にゃんこを見つけると、ロザリオを揺らして催眠術を掛けていた。
「何か面白い物を持っているよ? ご主人様に戯れついてくるといいさ」
「にゃ……」
 にゃんこは命じられるままにアストネージュへ突撃。とはいえそれはすぐに退けられてしまうが──一瞬でも盾の役割になれば十分。
 この間に、アンテロは既にアストネージュへ肉迫していた。
 振るう双剣は黒色の旋風が吹くかの如く、豪速で躊躇いない。アストネージュは防御態勢を取る暇もなく、腹部と胸部を深々と切り裂かれていた。
「むう──!」
「さあ、今だ」
「うん」
 応える景も光の尾を引いて、斜め方向から接近している。
 弧を描くように振るわれた薙刀は、眩いほどの衝撃波を生み出してアストネージュを直撃。凄まじい威力で後方へ煽っていた。
 唸るアストネージュは、舟に掴まって留まると秘薬を散布。水面から水で出来たにゃんこを飛ばして反撃してくる。
「全く、何でも猫か。動物好きの君からしたら奇跡の薬だな」
「確かに……でもあの猫も危ないから、危なくなったらしっかり守ってよ?」
 景が目を横にやるとアンテロは当然とばかり頷いた。
「ああ、ギブアンドテイクだからね」
 瞬間、言葉通りに前面に出るとにゃんこの突撃を防御。逆に一刀で斬り伏せてみせた。
 流石に頼れる背中だと、景は思った。
 同時に、心のどこかではこのまま盾となり、あの薬をいっぱい被ってみてほしい──などと思っていると。
「突撃するのはにゃんこばかりではないぞ!」
 期待通り──否、危惧通りにアストネージュが前進。秘薬入りビーカーを投げてきた。
 そうなればアンテロは景を庇わざるを得ない。結果、藍色の髪の間からにょきりと猫耳を生やしていた。
 わぁ、と景は感心した様子だ。
「アンテロ。中々似合ってるよ? 鏡見てみる?」
「……君も面白がっている場合ではないぞ」
「え?」
 敵は連続で薬を放ってきていた。アンテロが防御を続けるが、飛び散る飛沫は完全に防ぎきれない。そのうちいくらかが景の頭上に降り注ぎ──。
「ああっ! 僕の帽子に怪しい薬がっ! 可愛い!」
 帽子にぴこんと突起ができて、猫耳のようにぴこぴこ動き出していた。
「これはこれで、いいかも知れないね……」
「薬を浴び続けたら魔物になるのだろう。それでもよければの話だな」
 勿論、アンテロは受け続けるつもりはない。ダメージが少ないと見ると前進し、再び斬撃を叩き込んでいた。
「景君も油断せずに攻撃を続けることだよ」
「そうするよ!」
 猫耳帽子はそのままに、景も攻勢へ。飛んでくる薬も衝撃波で弾き返し、アストネージュ自身をもふっ飛ばしていく。

 白衣の裾が千切れて散っていく。
 オブリビオンたる少女も、段々とその体力の低下を自覚してきているようだった。
 それ故か、惜しげもなく秘薬を周囲に投与。小舟までにゃんこ的フォルムにして乗り込んでいる。
 また、こちらの被害も浅くはない。
 一体何人が猫耳を生やしたか……それなりの数の猟兵がにゃんこ的要素を加えられた事実は無視できなかった。
「人も環境も。……そして石すら猫っぽい魔物にしてしまうのはすごいですね、えぇ」
 感心というより困惑を隠せないのは茲乃摘・七曜(魔術人形の騙り部・f00724)。
 しなやかな物腰と婉美な立ち居は美しくも──にゃんこ化した諸々を見回す視線は、帽子の陰で何とも言えない感情を見せていたかも知れない。
 宵もそれには頷く。
「実際、なかなかに厄介ですねえ。あれを使われれば、半ば強制的に見目も性質も変化させられてしまうわけですからね──」
「俺様の発明の凄さだけは理解してもらえたようじゃな」
 アストネージュは誇らしげに言ってみせると、薬とたぷんと揺らす。
「元より、にゃんこの良さを判らぬ者達にはこれくらいの荒療治が丁度いいであろうし」
「一応勘違いしないでほしいんだけど」
 と、そこへ口を開いたのはアルバだった。
 にゃんこボートを見つめながらも──手元でコルノにもふっと触れて見せている。
「僕は猫の良さを理解できないんじゃなくて、犬がより好きなだけだからね?」
「犬じゃと!?」
 アストネージュはこの日一番に驚愕するように目を見開いていた。
「それこそ、にゃんことは相反するものではないか! 言語道断である!」
「そうかな? 可愛いものには違いないでしょ?」
 アルバは美麗な顔ににこりと愛嬌を含んでみせると、自身の耳と尻尾をぴこぴこゆらりと動かしてみせる。
「ほら、犬も良いものだよ? 触ってみる?」
「何じゃと? ……いや、俺様がそんな──」
「あとコルノも」
 惑うアストネージュに、アルバはコルノも示してみせる。
 その毛並みは毎日丹精込めてブラッシングしているだけあって、もふもふでほわほわ、それでいてふかふかだ。
「……ううむ」
 アストネージュは科学者的な興味、だけではない誘惑に惹かれたように近づいてきた。
 それからアルバの耳に触れ、しっぽを撫でてみる。
「ふむ……」
 ついでにコルノももふもふして、興味深げな瞳をしていた。
「ううむ、これは中々……」
 段々と夢中になるように、もふりは加速していたが……それは無論、文字通りのおびき寄せに他ならない。
 水面が発光しているのかと空目するかのような、眩い炎が光った。
 それは横合いから迫る、ルフトゥの湛える獄炎。
「──隙だらけだぜ」
 ごう、と音が唸るのは、焔を纏った剣を振りかぶっているから。
 蒼の流線を描くが如く、全力で振るった炎の斬撃は──慈悲無くアストネージュの体に裂傷を刻み込んだ。
 アストネージュは、飛び退いてから呻いた。
「くっ! 俺様としたことが、わんこに集中を乱されるとは」
 それから首をふるふる振るうと、思い直したように秘薬をばらまいてにゃんこを作る。
「こうなれば犬派だろうが何だろうか、にゃんこの良さを直接判らせてくれる。お前達自身も全員にゃんこ化すれば、気持ちも変わるであろう」
「……いや、猫が好きなのと猫になりてぇのは別だろ」
 黒翼でふわりと降り立ったルフトゥは、片眉を微かに動かすように声を投げる。
「それに猫と、お前が作る猫に似せただけの何かは別に決まってんだろうが」
 真っ直ぐに言ってはばからないのは、ルフトゥもまた動物の中では猫が一番好きだったりするからだ。
 だからこそ、猫ではない猫っぽいナニカをかわいがる気にはなれないのだ。
 宵も粛々と頷く。
「そもそも僕は、猫派犬派というより魔法生物派なんですよね。それに、猫は可愛らしいだけでなく、気まぐれな女王様のような気質を持ち合わせていなくては」
 ──ということで、と。
 物柔らかな素振りで、アストロラーベを模した杖を握った。
「残念ですが戦わせていただきます」
 杖先を前方に向ける。それがアストネージュを指した瞬間、空が光った。
 窟内が一瞬無限の宇宙に見えたかのように、星が瞬く。
 次の刹那に上方から降り注ぐのは、閃光の如き光を纏った隕石であった。
 天航アストロゲーション(テンコウ・アストロゲーション)──急角度の機動で落下する光の線は、重力加速度を宿して豪速で飛来する。
 アストネージュはとっさに秘薬を撒いて対応しようとするが──その液体は効能を発揮する前に、隕石の纏った空気の鎧に吹き飛ばされた。
 速度のままの衝突。
 巨大な水冠を上げて水に叩きつけられたアストネージュは、反動で宙へ投げ出され、壁の一角にまで飛ばされて叩きつけられる。
「ぐぅ……!」
 暫しうずくまるアストネージュ。だが手札はまだ全て切っていないとでも言うように、また実験器具を召喚してきた。
 それは冷却器を改造した巨大にゃんこロボ。自身のミニチュアをゴーレムとして従え、軍勢として船で進軍してくる。
「今度の守りは、簡単には突破できぬぞ!」
「ならば、着実に手が届くようにするまでの事です」
 七曜の声音はどこまでもすべらかで澱みなかった。
 僅かに角度を変えて、ハの字型に向けたのは二挺拳銃──Pride of fools。
 ぱっ、と瞬く音を立てて、その銃口は魔導弾を宙に踊らせる。
 それはまるで美しい魔力の舞い。封印術式『流転』──網のように形成された術式は、ロボの巨大な体も縛ってしまうようにその動きを止めていた。
 銃弾の舞踏が終わっても、七曜は止まらない。巨体が止まれば次はゴーレムだと、蒸気機関式拡声器“Angels Bit”を浮遊させていた。
「素材はわかりませんが──見たところ機械のようですからこれで何とかなるでしょう」
 呟きの直後に、平面上に光が耀く。
 Angels Bitの自立演奏が音律から雷を生成、投網にしてゴーレムを捕らえていた。
 同時に響き渡るのは七曜自身の歌唱だ。
 窟内に反響するその歌声は、まるでコンサートで紡ぐアリアのように、美しくも鮮烈。その印象のままに一条の雷光を創り出して、槍にして撃ち出していく。
 奔る光を、身動きできぬゴーレムが避けられるはずもなく。弾ける衝撃に貫かれて、跡形もなく四散していった。
 短時間のうちに、敵陣が次々に破壊されていく。
 ゴーレムも冷気を撒いて対抗してくるが──それに捕まるルフトゥではない。
「喰らうかよ」
 翼の付け根の古傷からも獄炎を噴射。鮮やかな加速を見せてかいくぐると、道中のゴーレムを斬り伏せながら前進。一息に水面を超え、アストネージュへも斬りかかっていた。
 ロボの制御で身動きの取れぬアストネージュは、真正面から斬撃を受けて一気に負傷の度合いを強めてゆく。
 直後には自由を取り戻して薬を投げてきた、が。
「怪しげな発明品だろうが金属だろうが、溶かし斬っちまえば一緒だろ」
 ルフトゥの振り撒いた炎──瑠璃唐草の熾火(ネモフィラ・フランメ)がその液体を蒸発させて消し飛ばす。
 勢いのままアストネージュ自身にも炎を浴びせ、その全身を灼いていった。
 苦悶しながらも、アストネージュは水面に漕ぎ出して新たなにゃんこを生成してくる。だが次々に襲ってくるそれらを、眼前に出たアルバが防いでいた。
 群がる氷や岩、水のにゃんこを盾で一手に引き受けて、仲間には傷一つ付けさせない。
「やらせないよ。ほんの少しもね」
「うぬぅ……かくなる上は!」
 万策尽きたかに見えたアストネージュは、巨大なビーカーに次々多色の薬を投入し始めていた。
 それを見ていたアリスはなんとなく尋ねる。
「アストちん、それは?」
「科学者として現状を突破する方法は一つ。今ここで新たな発明をするのじゃ!」
 ビーカーの中は焦げ臭い匂いになり、何やらもくもくと煙まで上がり始めていた。
「なんかもうオチが見えてる気がするけど……まあ、保険としてオリュンポス腐海四天王に連絡しておこうかしら」
 万が一の後始末は頼みつつ、アリスはひとまず攻撃を継続。
 真なる夜の到来(デモニックエクリプス)によって“真なる夜(デモン)”へ変身すると──アストネージュを自身の内に飲み込んでいく。
「く……離せ!」
 アストネージュはそれでも、ほうほうの体で逃げ出してきた。
 が、そこで物理的振動を受けたビーカーの液体が、発火。巨大な爆発を上げて周囲一体を巻き込んでいく。
 アストネージュ自身すら襲うそれは、至近の舟をも粉々に消し飛ばすほどだった。
 とはいえ、面前のアルバは水に沈んではいない。正面に向けた盾で衝撃を受けきり、その後方の仲間をも守りきっていたのだ。
「怪我した人は、いないね?」
「ええ」
 宵が見回し頷きを返す。
 水に揺蕩うばかりのアストネージュは、既に瀕死状態だった。
「俺様が爆発オチなどと……認めん……っ」
 朦朧としつつも、残った秘薬を全部水に流す。すると大きめのにゃんこが生まれて襲ってくるが──。
 そのにゃんこの動きが突如逸らされる。
 静波に波紋を生むような七曜の歌声が、指向性を持った衝撃波となって飛んでいた。
「後は、お任せしますね」
「判りました。これで終わりとしましょう」
 体勢を崩したにゃんこも巻き込み、宵は敵へ再度隕石を落とす。
 全てを穿つ衝撃が、まるで静謐な夜を運ぶように。その光が消えて晴れる頃にはアストネージュは散って消え去っていた。
 ルフトゥは少々疲れたように息をつく。
「たっく、帰ったら近所の猫でも触りに行くかな……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『花やかなお茶会』

POW   :    カフェでまったり過ごす

SPD   :    お菓子を購入する

WIZ   :    温室の花を観賞する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●花時間へ
 迷宮の秩序が取り戻されたことに、学生達は喜んだ。
 特に入り口が敷地にあるカフェは、周囲が傷つかなかったことや、学生に怪我人が出なかったことを大いに感謝した。
 そうして、是非カフェと花園に寄っていってくださいと猟兵達を誘った。
 そこは美しい花の世界だ。
 薔薇とほぼ同一種の鮮やかな花が広く植えられて、香りの絨毯を形成している。
 花々の間は小路になっていて、散歩するだけでもどこか華やかな時間が送れることだろう。
 カフェはケーキや紅茶が人気だ。クリームやチョコレートに花を一部使用しており、芳醇な芳香が楽しめるのだという。
 食を楽しむも、景色を楽しむも、戦いを終えた身には自由だ。
 迷宮から出て一息ついたら──さてどう過ごそうか。
逢坂・宵
やあ、こうも迎えていただけるととても嬉しいですね
働いた甲斐があるというものです

さて、どうしましょうか……
ここはアルダワですから、不思議で珍しい花などはあるのでしょうか
例えば、他の世界にないような、魔法生物に分類される花、とか
もしあるのならば、見ていきたいですねえ

なくても問題ありません
ここの花々は、こんなにも鮮やかに咲き誇っているのですから
ただ見に通りすぎるだけなどともったいない
温室の花を眺めて、ついでにカフェにもお邪魔しましょうか



 入口は花のアーチだった。
 美しい赤を中心に橙や黄と目を惹く色で作られていて、蔓の緑とのコントラストが美しい。そこを抜けて石畳を歩んでいけば、横手にカフェの建物が見えてくるという形だ。
 学生達はそんな花の世界で、是非過ごしていってくださいと言う。
 だから宵は言葉に甘えて景観の中に歩み始めていた。
 こうして迎えてもらえると、嬉しいものだと思う。
「働いた甲斐があるというものですね」
 ともすれば、この景色もオブリビオンによって破壊されていたかも知れない。だからそれが保たれたことにもまた、少しの安堵を浮かべていた。
 それから視線を巡らす。
「さて、どうしましょうか……」
 カフェに寄ってもいいだろう。けれどその前にやはり、景色を楽しむことにした。
 花は色とりどりだ。
 艷やかな紅に、発色の良いオレンジ、純な白。植わっているのは薔薇が殆どだが、その絨毯の間には別の花も沢山ある。
 そこで、花の手入れをしている生徒を見つけて声をかけた。
「何か、不思議で珍しい花などはありますか? この世界にしかなさそうなものなど」
「そうですねぇ、これならどうでしょう」
 と、その生徒が案内したのは道の少し先にある花だ。
 色合いは隣の薔薇に似ている、と一瞬思わせるが──歩いていくと、薔薇と離れている花弁ほど色が無くなり、一番遠くの花は硝子のような透明色だった。
「これはいろうつしと言われています。近くにある花の色を自分の花弁に宿す花です」
「成る程。確かに珍しい花ですね」
 宵はよく観察する。
 この世界の気候でしか育たないのだとすれば、無二のものと言っていいだろう。
「次は、あちらの花です。あれは魔法でしか育たないんですよ」
 生徒が先導し始めると、宵はほう、と柔和な表情にまた興味を浮かべる。
 そこに白色の花弁を咲かせる花があった。近くで見てみると、その花弁が固形ではないのに気づく。
「これは……光の塊ですか?」
「ええ。沢山の魔力を含んだ蒸気を当てて育てる花です。生物学には詳しくないので、自分には判りませんが……花というより魔法の生き物なのかも知れません」
「不可思議な花ですね──」
 宵は暫し観察して、その姿を心に留めた。
 そうした花は何種類か存在して、どれも独自の生態や見た目を持っている。鮮やかな眺めだけでなく、好奇心も刺激するその花園を宵は楽しんだ。
「では──カフェに参りましょうか」
 それから宵は香り高い紅茶を飲んだ。
 戦いは慌ただしいものだったが、こうして平和が戻れば時間はゆったりとしている。
「帰りに、もう少し眺めてから行きますか」
 立ち上がると、また視線は花園へ向いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

犬曇・猫晴
同行者:織譜・奏(f03769)

いえーい、お疲れ様にゃん!
そうだにゃあ、正直なところぼくにとっても大変クリティカルな敵だったにゃ。
犬だったらにっちもさっちも行かなかったにゃ……。
いやぁー、ははは…かにゃでちゃんのあぁいうしたたかな所、見習わないと駄目だなって思ったにゃ。
うさぎは平気だったんにゃけどね?

薔薇の花を使ったケーキ!いいね、食べる食べる!
あっははぁ、ぼく1人じゃあ絶対に来ないところだからね。奏ちゃんと一緒に来れて本当に良かったよ

アドリブ歓迎


織譜・奏
【同行者】犬曇・猫晴(f01003)

一仕事終えた後は、やっぱり美味しい料理ですよね。というわけでお疲れ様でしたー!(流石にカップで乾杯はしないけど、フリだけやって)
今回はとっても可愛い敵で参っちゃいましたねぇ、ああいう手法で攻めてこられたら一部の猟兵にクリティカルですね。うむむ、手ごわい。
あの時は思い切り殴っちゃいましたけど、ちょっと可哀想だったかなぁ……でもにゃんこは敵でしたし……犬曇さんはだいぶ戦いにくそうでしたけど、どうでした?
(ケーキもぐもぐ)
あ、このケーキ薔薇の花が使われてますね。お洒落~。美味しいですし、犬曇さんも一口食べますか?

アドリブ歓迎



 猫晴と奏はカフェに立ち寄ることにしていた。
 花を眺めつつ進めば、その建物にはすぐにたどり着く。
 レンガ造りの見た目を基調にしていて、壁に這う蔦から花が咲いている。花園の中の隠れ家──そんなイメージを抱かせつつ、美しい印象も併せ持っていた。
「何だかお洒落なところって感じだにゃ」
「そうですね。こういうところって品物も美味しかったりするんですよね」
 さあ行きましょう、と奏は笑いかけて入口へ。ドアベルの軽やかな音色とともに中へ入っていく。
 猫晴もそれに続くと、へえと内装を見回した。
「すごいにゃ。学園の中とは思えにゃい……いや、中だからなのかにゃ」
 魔法学園は文明の粋を集めた場所だ。文化的にも、専門店に勝るとも劣らないものを誇っていても何ら不思議ではないだろう。
 二人は席につくとメニュー選び。ひとまずは紅茶とケーキ、それにスコーンなどの軽めのものも頼んでみた。
 程なく品はやってくる。
 食器もオリジナルらしく、白地に可愛らしい模様の描かれたものだった。
 そんなカップを手に、奏は改めて乾杯のジェスチャーをする。
「というわけでお疲れ様でしたー!」
「いえーい、お疲れ様にゃん!」
 猫晴も軽くカップを掲げてそれに応えた。
 そうしてまずは二人でスコーンを摘んでいく。
「一仕事終えた後は、やっぱり美味しい料理ですよね……ん、これいいですね」
 奏はさっくりとした食感に瞳を煌めかせつつ──ふと息をついた。
「それにしても、今回はとっても可愛い敵で参っちゃいましたねぇ」
 思い出すのは戦いでのこと。
 オブリビオンと言えど、おどろおどろしい異形ばかりではない……そんなことを痛切に感じた一戦であった。
「ああいう手法で攻めてこられたら一部の猟兵にクリティカルですね。うむむ、手ごわい……」
 呟きながら、奏は対面に目を向ける。
「……犬曇さんはだいぶ戦いにくそうでしたけど、どうでした?」
「そうだにゃあ、正直なところぼくにとっても大変クリティカルな敵だったにゃ」
 猫晴も腕組みしつつ、乱戦に思いを馳せる。その眼尻はほんの少し下がっていた。
「犬だったらにっちもさっちも行かなかったにゃ……」
「大変でしたよねぇ……」
 奏は少し感触を思い出すように自身の拳を眺めてみる。
「あの時は思い切り殴っちゃいましたけど、ちょっと可哀想だったかなぁ……でもにゃんこは敵でしたし」
 それも仕方ない、と割り切る奏に、猫晴は笑った。
「いやぁー、ははは……かにゃでちゃんのあぁいうしたたかな所、見習わないと駄目だなって思ったにゃ」
 うさぎは平気だったんにゃけどね、と加えつつ……猫晴は本心から言った。
 奏はこくりと頷いた。
「とにかく、ああいった脅威もあるんだと、今後は心構えをしていきましょうね」
「もちろんにゃ」
 猫晴も改めて頷きを返し、二人で食を進めていく。
 奏はちらと猫晴に目をやった。
「ところで犬曇さん、にゃんこ言葉がうつってません?」
「にゃ?」
 猫晴は何のこと、とでも言うように視線を向ける。
「私がしばらくにゃんこ化していたからでしょうか──平気ですか? はっ、もしかしてにゃんこの魔の手に……!」
「いやいや。平気だよ?」
 と、いつの間にかするりと普通に戻っている猫晴だった。
 よかった、と安堵する奏は、次にケーキを食べることにする。
 ショートケーキに似た形をしているが、クリームが仄かに色づいていた。口元に近づけるとふわりと芳香が鼻先をくすぐる。
 そのまま口にいれてもぐもぐすると、奏は美味さに微笑んだ。
「このケーキ薔薇の花が使われてますね。お洒落~。犬曇さんも一口食べますか?」
「薔薇の花を使ったケーキ! いいね、食べる食べる!」
 猫晴もひとかけ、頂く。
 クリームの甘味だけでなく、薔薇の甘い香りも加わって上品な風味の一品だった。
「美味しいねぇ」
「犬曇さん、こういうところに来ることあるんですか?」
「あっははぁ、いや、ぼく1人じゃあ絶対に来ないだろうね。奏ちゃんと一緒に来れて本当に良かったよ」
 猫晴が笑むと、奏も朗らかな表情を返す。
「私も、ご一緒できてよかったです!」
 そんなふうに笑い合うと、戦いの疲れも傷も一層癒える。だから二人は暫し一緒に、甘味と憩いの時間を楽しんでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茲乃摘・七曜
心情
えぇ、のんびりいたしましょう

指針
ゆったりと歩きながら温室の花を楽しむ
※外周を先に巡り、中心に向けてゆっくり移動
「薔薇のような花ということでしたから香りと色合い等楽しみつつ散策しましょうか

行動
近々こなした依頼の事や花言葉など徒然と考えつつ散歩
「綺麗ですね。ここの花が猫っぽい何かにならなくてほんとによかったです
「最後に爆発して散るのも芸術なのでしたか…?
「本数や色でも意味が違うのでしたよね。何か面白い花言葉のものがないか聞いてみましょうか
「黒色や深い紺色など夜空を思わせるものがあるといいのですけど…


口の中で軽くクラシックを奏でながら散策
服装は変わらずドレスで不思議と裾を汚さず周囲を荒さず移動



 花園を見つめる、深色の麗人が一人。
 七曜は入口のアーチへとやってきていた。
「とても広い敷地を持っているようですね」
 緩やかな仕草で、少々見回してみる。
 温室と一口に言っても、一見で見渡せないほどの広さがある。花の本数もそれに比例していて、広大な絨毯という様相だった。
「のんびりと散歩するだけでも、愉しめることでしょう」
 その色合いと香りを楽しみながら散策する経験もまた、無二の時間となるに違いない。
 だから七曜はそっと歩み出していく。
 真っ直ぐ進むより、先ずは外周を巡る形でゆっくりと回っていくことにした。
 目に入るのはやはり鮮やかな赤薔薇が多い。その濃密な色味で、訪れる人を一目で花の世界に惹き込んでしまう──そんな魅力を持っている。
 歩み進むとそこに橙色が交じり始めて、美しいグラデーションを描いていく。
「綺麗ですね。ここの花が猫っぽい何かにならなくてほんとによかったです」
 にゃんこ成分を創り出してしまう恐ろしい科学者──先刻の戦いを想起し、心から思う七曜だった。
 だけでなく、最近は特に多くの戦いをこなすようになってきている。
 七曜はそんなことも少し思い出しながら散歩を続けた。
「音楽の祭りも、ありましたね……」
 そっと口ずさむのはアヴェ・マリア。
 口の中で軽く遊ばせるような歌声。けれど伸びやかで、それでいてベルベットのような艷やかな声音だ。
 足取りは楚々として静やかに、足元までかかる程のロングドレスをふわりと靡かせながら──不思議と裾も周りも汚すことはなく。
 どこか歌劇の一場面のように、歩く姿さえ美しく。
 そして虹色に変遷する花畑もまた、劣らず芸術的なものだ。
「確か、最後に爆発して散るのも芸術なのでしたか……?」
 呟きながら、多分花の芸術性とは別種のものなのだろう、と本能的に理解しつつ。
 園の中心に近づいていくと、花の手入れをする学生も見えた。
 そこへ歩み、七曜は声をかける。
 薔薇と言えば花言葉──丁度それについて聞いてみたいと思っていた。
「何か、面白い花言葉のものはありますか? 本数や色でも意味が違うのでしたよね」
「ええ。この薔薇はもともと、別のところから持ってきたものを品種改良したものですが……花言葉もしっかり伝わっていますよ」
 生徒はまだつぼみ状態の白い薔薇を差す。
「あれは“恋をするには若すぎる”──見た目と合っていて素敵ですよね。それからトゲにも“不幸中の幸い”という言葉があるとか」
「咲いている花そのもの以外にも、人々は花言葉を付けて楽しんでいたのですね」
 七曜はそこに繊細な心や風流さを感じる。 
 それから、この花園独自の色や種類はあるかとも尋ねて──その花を見つけた。
「漆黒の薔薇、ですか」
 丁度、こんな花が見られればと思っていた。
 そこは濃色の花が集まる一角で、夜空を思わせる深い紺色のものもあった。
 目に眩しい紅や白もいいけれど。
「こういった薔薇も、素敵なものですね」
 ゆったりとした空気に美しい花。それは心を癒して余りある、和やかな憩いの時間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

曙・聖
【POW】
花々が美しく咲き誇っていて…。
とても素敵なカフェですね。
ゆっくりリラックスすることが出来そうです。
メニューを頼んだら、本を片手にまったり過ごすことにしましょう。

アルダワといえば、蜜ぷにの花蜜が有名だと言う印象がありましたが……ここはケーキと紅茶が人気なのですね。
どれも美味しそうで、迷ってしまいます。
店員さんのお勧めのメニューをお願いしましょうか。
クリームやチョコレートに花を使用していると聞きましたが、どのような味をしているのでしょう。
ゆっくり味わっていただきましょうか。



 カフェは花に囲まれている。
 建物自体が蔦と花で彩られているのは勿論だけれど、周囲にも色彩豊かな花が広がっていて、絵本や物語の中のような景色だ。
「とても素敵なカフェですね」
 聖はそこへ歩みながら、建物の全景も見つめる。
 鉢が置かれた小窓に、ひさしから枝垂れる花。花園を見渡せるテラス。色と香りに包まれた、可愛らしくも美しい眺めがそこにはあった。
 それでいて、賑やかというより和やかな時間が流れていて──。
「ゆっくりリラックスすることが出来そうです」
 聖は早速店に入って席に着く。
 小さな花飾りが置かれたテーブルで品書きを広げて、さて何があるだろうと見てみた。
「色んなメニューがあるんですね──」
 豊富な紅茶とケーキにスコーン、アイスやショコラ。目を惹かれてしまう品揃えだ。
「どれも美味しそうですね……」
 視線を左に右に動かして、聖は少々迷ってしまう。
 と、店員が笑顔で声を掛けてきた。
「何か、お気に召すものはありそうですか?」
「そうですね、お勧めは何でしょう?」 
 聖が尋ねると、なんと言っても紅茶とケーキが人気なのだといった。
「アルダワといえば、蜜ぷにの花蜜が有名だと言う印象がありましたが……ここはケーキと紅茶が人気なのですね」
「ええ。花園の中のティータイム、といったコンセプトもあるので」
 店員はそんなふうに応える。
 ならばお勧めを味わってみるのが良いだろうと、聖は注文することにした。
 頼んだのはオリジナルのブレンドによる紅茶、ケーキ、それと一口サイズのショコラ。
 本を片手に、まったりと過ごし……品がやって来れば早速頂くことにする。
「材料に花を使用していると聞きましたが──」
 呟いて、紅茶に少し口をつける。
 茶葉が香ばしく薫るけれど、確かにそこには花の芳香がほんのりと混じっている。ケーキはクリームに薔薇が香り、何とも高貴な甘味だった。
「美味ですね……」
 次はショコラ。いわゆるトリュフと表現される小さなチョコレートだが……口に入れると外郭がとろけ、中のピューレに濃厚な花の香りがした。
 かといって甘すぎるわけではなく、味はどこまでもやさしい。
「贅沢な時間、といったところでしょうか──」
 景色も味も、ゆっくりと楽しむにはちょうどよくて……聖は本に目を落としながら、暫しその時間を楽しんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・ファルチェ
折角だから綺麗な花を見て歩きたいよね。
こういう所はきっとデートとかで歩くんだろうなぁ。
残念ながら僕は一緒に行くような子が居ないわけだけど、いつかそんな日が来ると良いよね。
まぁ、今は双子の兄のセラとコルノが居たらそれで満足だけど。

…そうだ、セラのために何かお土産でも買って帰ろうかな。
焼き菓子と、花の香りの紅茶葉を持って帰って楽しむのも良いよねぇ。

コルノはどれがセラの好みに合うと思う?
なんだかお土産を探すのって楽しいよね。
これを送ったら喜んでくれるかな…とか、どんな反応するだろうとかさ。
考えるだけでワクワクしちゃう。

お土産が買えたら帰ろうか。
家でセラが心配してるかもしれないもんね。



 花園に映える銀色が、石畳を歩んでいく。
 アーチをくぐったアルバは、花々を眺めて散歩することにしていた。
 なだらかな曲線を描く道に沿って、薔薇が色の変遷を見せている。歩んでいくとその移り変わりを眼下にできて、目に楽しかった。
「一輪一輪も綺麗だけど、全体で見ても何だか絵画みたいだね」
 アルバが呟くと、横ではコルノが鳴き声を返す。
 羽を小さく動かしながら視線を左右にやる仕草は……はじめての散歩道に来た子犬のようで。アルバのそばからは離れないけれど、何か浮き立った愉しさを感じているようだった。
 それに微笑を返して、アルバは進む。
 所々にベンチや広くなっている空間があったりして、寛げるようにもなっていた。
 成る程、とアルバはそれを眺める。
「こういう所はきっとデートとかで歩くんだろうなぁ」
 残念ながら僕は一緒に行くような子が居ないわけだけど──と呟きを付け足して。
「でも、いつかそんな日が来ると良いよね」
 するとぱたりぱたりとコルノが近づいて、もふっと触れてきた。
 アルバはそんなコルノを撫でてあげる。
「まぁ、今はセラに、コルノが居たらそれで満足だけどね」
 きゅうと声を零すコルノを、ぎゅむっと抱きしめつつ……アルバは思い立った。
「そうだ、セラのために何かお土産でも買って帰ろうかな?」
 丁度花園を一巡りして、カフェの近くまで来たところだ。
 そこでは色々なお土産も売っていると聞き及んでいたから、折角ならばと立ち寄って、何か持ち帰ることができるものを選んでみようと決める。
 それはカフェスペースの隣にあった。
 カフェで提供されているものと同じケーキや、持ち帰り専用のものもいくつかある。
「結構、種類が豊富なんだね」
 アルバは少々迷うように視線を彷徨わせた。
 その中でも目についたのは焼き菓子、それに花の香りも含んだ紅茶葉だ。
「この辺りのものを、持って帰って楽しむのも良いよねぇ。コルノはどれがセラの好みに合うと思う?」
 コルノはなんとなく鼻先を近づけてみたりして……チョコクッキーと、花弁のたっぷり入った茶葉が良いとアピールしてみせる。
 アルバも、そのコルノの直感に従ってみようと購入。自分の分やコルノの分もきちんと含めてお土産にした。
 カフェから出るとまた花園が薫る。
 それを胸に吸い込んでから、アルバは笑いかけた。
「それじゃあ、帰ろうか。家でセラが心配してるかもしれないもんね」
 コルノもそれに寄り添って飛ぶ。
 花の時間は楽しくて──そして、家に帰るのもまた同じくらい楽しみだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢羽多・景
アンテロ(f03396)と【POW】

あーあ、猫耳消えちゃった…少ししか薬がかからなかったからかな?

次があればにゃんこ化と魔獣、ギリギリのラインを狙いたいよね。
もしくは人に無害なにゃんこ薬を作るとかさ。

でもそれはまた次の機会に。
僕はアイスティーとチョコケーキをお願いします、ミッションの成功を祝して乾杯しよう!

あれアンテロケーキ食べないの?
花の香りがふんわり香ってすごく美味しいのに…もったいなぁ。
それに見て、飾りの花の模様が猫に見えるよ!
それに食器にも猫の絵がついてるっ。

ふふふ、今日はモフモフづくしで幸せな一日だった…。
あ、猫耳姿意外と似合ってたよ?(ニッコリ)

アレンジ歓迎


アンテロ・ヴィルスカ
やっと耳がなくなった…が、君はえらく残念そうだな景君(f05729)
迷宮に引きこもって、彼女の研究でも引き継げばいいんじゃないか?

鎧を脱ぎ平服に着替えたら、そうだな…
俺はアールグレイを頂こう、菓子は結構。

ティーカップを軽く掲げ、お疲れ様と互いを労う

はいはい、美味いなら良うございました…だが花の模様は君の気のせいだ。
もしかしたら目にも怪しい薬がはいってしまったのかもね?

未だ猫猫とはしゃぐ姿には呆れるな……君は動物好きではなくて、動物狂いと呼ぶに相応しい。

ため息混じりに言って、テーブルの下で足の一つでも軽く踏んづけてやろう…
獣の耳など似合ってたまるものか。


アドリブ歓迎



 景とアンテロは花園を目指して歩んでいく。
 学園の空気は平和で、路傍の石がにゃんこ化する心配もない。だからこそ戦いの緊張はそこには無いけれど──景はどこか残念そうな面持ちだった。
「あーあ、猫耳消えちゃった……」
 呟きとともに視線を向ける先は、アンテロの頭。
 鎧を脱ぎ平服に着替えたアンテロは、騎士というよりも静かな麗しさを湛えた青年。
 そして頭にあるのは艷やかな髪だけ──猫耳は、消失していた。
 景はうーんと小首をかしげている。
「少ししか薬がかからなかったからかな?」
「……えらく残念そうだな、景君」
 アンテロは薄っすらとした呆れの色を見せて言った。
 景は頷く。
「そりゃあね。だって猫耳だよ猫耳」
 面影を想起するように瞑目してみたりする。アンテロとは逆に、そこには未だ強い好奇心が残存していた。
「もし次にまた同じような機会があれば……にゃんこ化と魔獣、ギリギリのラインを狙いたいよね。もしくは人に無害なにゃんこ薬を作るとかさ?」
「……全く、迷宮に引きこもって、彼女の研究でも引き継げばいいんじゃないか?」
 アンテロは表情を変えることなく、歩を進めるのみだ。一度だけ、ちゃんと猫耳が消え去ったのかどうかと頭を触ってみたりしつつ。
 景も足は止めず、花園に入っていた。
「まあ、その辺はまた次の機会ということで」
「次があってほしくはないが──」
「あ、見えてきたよ」
 アンテロが瞑目するのとは裏腹に、景は楽しげに前方を見る。そこにカフェがあった。
「じゃ、入ろうか」
「うむ」
 そうなればアンテロも、頷いてそちらへ。薔薇に飾られた庭園を歩みつつ、入店して二人で席に着いた。
 そして早速メニュー選びと相成る。
「僕はアイスティーとチョコケーキをお願いします」
「そうだな……では俺はアールグレイを頂こう」
 注文したものは時間を待たせずにやってきた。
 或いはそれも蒸気と魔法の恩恵か。ケーキの造形も美しく、紅茶は昇る香りが芳醇であった。
 景は少しカップを持ち上げる。
「それじゃあ、ミッションの成功を祝して乾杯しよう!」
「ああ。お疲れ様」
 アンテロもまたカップを軽く掲げ、労い合った。
 景は早速ケーキにフォークを入れている。
 クリームは綺麗な花色で、スポンジはふわふわとしていながらも抵抗なく一口大にカットできた。
 はむりと口に運ぶと、滑らかな甘味が舌に広がる。そして吹き抜けるような芳香があって爽やかだった。
 景は美味さに瞳を細めつつ、アンテロの方を見て気づく。
「あれアンテロ、ケーキ食べないの?」
「まあね」
「花の香りがふんわり香ってすごく美味しいのに……もったいなぁ」
 それに見て! と景は自分の分とお皿を示してみせる。
「ほら、飾りの花の模様が猫に見えるよ! それに食器にも猫の絵がついてるっ」
「はいはい、美味いなら良うございました……だが花の模様は君の気のせいだ」
 アンテロは覗き込むまでもなく即断していた。
 景はちょっと残念そうだ。
「えー、猫に見えないかな……?」
「もしかしたら目にも怪しい薬がはいってしまったのかもね? ……しかし、未だ猫猫とはしゃぐ姿には呆れるな」
 アンテロは紅茶をすすりつつ、胡乱げな声音。ため息混じりに、テーブルの下で足の一つでも軽く踏んづけてみたりする。
「君は動物好きではなくて、動物狂いと呼ぶに相応しい」
「かわいいものをかわいいって言っているだけだよ?」
 一方の景もまた、それを意に介さないように笑んでみせるばかりだった。
 それから思い出すようにふふふ、と声を零す。
「本当に、今日はモフモフづくしで幸せな一日だったね……。あ、アンテロも猫耳姿意外と似合ってたよ?」
「獣の耳など似合ってたまるものか」
 アンテロはほんの少し口をへの字型にしてみせる。
 景はまたそれにも楽しげな様子であった。
 にゃんこは居らずとも、まだまだ話題には上る。
 何より景がその存在を心に焼き付けていたから……あのにゃんこ達も、そして猫耳も、またこうして時々話される時が来るに違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スピレイル・ナトゥア
「美味しそうなお菓子です。お兄様やお姉様にお土産として買って帰るのもよさそうですね」
自前の猫耳をフリフリと可愛く揺らしながら、カフェの品揃えを眺めます
猫にはじまって猫に終わる、たまにはこんな戦いも悪くないでしょう
「たしか、お兄様はチョコレートが好みで、お姉様はなんでもいいんでしたよね」
二人の好みを思い出しながら、お土産にするお菓子を選びます
「私のぶんはどうしましょうか……?」
花を使用したクリームやチョコレートとは、いったいどんな味なのでしょうか?
あまり紅茶は好きではないので、紅茶以外でケーキに似合う飲み物があればいいのですが……
どんな美味しいお菓子や飲み物があるのか、凄く楽しみです!



「とっても、綺麗なお店ですね」 
 花園に可憐な声が響く。
 スピレイルは花の間を歩き、カフェへとやってきていた。
 絵の具で描いたように可愛らしい色合いの建物を見上げて──からころとドアベルを響かせて入店する。
 早速眺めるのはディスプレイされている品々。
 カフェで頼めるメニューに、お土産限定品。綺麗にラッピングされた商品の見本など、並んでいるものは実に彩り豊かだ。
 お菓子一つとっても、ケーキだけではなくタルトにワッフル、スコーン。アイスにキャンディーなどなど、豊富な品揃えが魅力的だった。
「わぁ、美味しそうなお菓子です……!」
 そんな品々を、スピレイルは自前の猫耳をフリフリと可愛く揺らしながら眺めていく。猫に始まって猫に終わる──そんな景色がそこにはあった。
「お兄様やお姉様にお土産として買って帰るのもよさそうですね」
 ふと二人の顔を想起する。
 その表情が嬉しい色に染まるのを見たくなって……スピレイルはいくつか買っていくことに決めた。
「たしか、お兄様はチョコレートが好みで、お姉様はなんでもいいんでしたよね──」
 先ずはチョコレート。
 チョコだけでも沢山あって迷ってしまうほどだけれど……その中でも特に美味しそうで可愛いものを自分の感覚で選んだ。
 それは幾つかの一口チョコを合わせて綺麗な箱に入れたもの。
 生チョコはココアパウダーの香りに花の芳香が交えてあり、固めのチョコは花蜜を混ぜたガナッシュが中に入っている。花の形を象ったものもあって、味にも見た目にも拘ったというチョコセットであった。
「お姉様には、ケーキのセットを……」
 次に買ったのはミニサイズのケーキを幾種類か詰めたもの。
 お洒落な紙箱に入ったもので、花の香りのショートケーキにレモンケーキ、花色のクリームをたっぷり使ったロールケーキも含んだセットだった。
「私のぶんはどうしましょうか……?」
 お土産ついでに、ここで少し食べていっても良さそうだ。
 カフェスペースに着くと、少しメニューを眺めてみる。
「紅茶以外で何か、ケーキに合う飲み物は──あ、ホットチョコレートがありますね」
 見ると、スイーツと一緒に飲む事を考えて甘さ控えめにしているらしい。
 というわけで、定番のケーキとホットチョコを頼んでみた。
「ほわぁ、いい香り」
 思わず瞳を細めてしまう、そんな湯気が立ち昇る。
 カップに口を付けてみると、確かにホットチョコは砂糖をあまり使わず、カカオの風味に重きを置いたものだった。
 芳しくも、単体では苦味が勝つという味だが──。
「ん、ケーキととっても合います……!」
 甘く濃厚なクリームを口に運んだあとでそれをすすると、苦味と甘味がぴったりと合って得も言われぬ美味さを生んでいた。
 こちらもまた粉末状に加工したものがお土産で売られている。なのでスピレイルはそれも買って帰ることにした。
「お土産も沢山買えてよかったです!」
 カフェを出ると、笑顔で帰路へ。この美味しさを早く味わって貰おうと、足を速めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウグスタ・ヴァイマール
やはり一仕事終えた後の紅茶は格別ですわね

席に座ったまま、花々を眺めてゆったりしますわ
普段は忙しなく通り過ぎてしまう事が多い迷宮の入口付近ですけれど、こうして改めてゆっくり見てみると、このあたりの景色も美しいものですわね

ひとしきり眺めたところで、本命のケーキに
前々からこのお店の噂は聞いておりましたのよ
ああ、美味!にゃんこを喪失した私の心が癒されますわ!



「何とも高貴な花の薫りですわ──」
 かつんと雅やかに歩く、令嬢の姿。
 アウグスタはひらりとドレスの裾を靡かせて、花の間を歩いてきていた。
 目的地はカフェ。道中の花々も愛でながら入店し、そのテラス席へと着くと──早速、紅茶を注文している。
 可愛らしくも芸術性の高いカップに、美しい朱色の紅茶。しばし立ち昇る香りも楽しんでから、先ずは一口味わった。
「やはり一仕事終えた後の紅茶は格別ですわね」
 ほう、と息を吐く。
 戦いの疲れに沁みるというだけでなく、紅茶自体も勿論美味なものだった。
 大きな茶葉をふんだんに使ったタイプのもので香味が強く、さらに花の風味も加えられて華やかな味わいになっている。
 花園の中で味わうにはぴったりの一杯に、気分もまた華やぐようだった。
「とても色鮮やかですわね」
 そのまま暫し、色を見てゆったりする。
 テラス席は周りより少しだけ高い位置に造られており、花園を広く見渡すことができるようになっている。だから花の色が織りなす絨毯も、そこから漂う香りも、一挙に楽しめる特等席だった。
「普段は忙しなく通り過ぎてしまう事が多い迷宮の入口付近ですけれど。改めてゆっくり見てみると、このあたりの景色も美しいものですわ──」
 ひとしきり眺望を楽しんだあとは、本命のケーキを楽しむことにする。
 それは三角にカットされたスポンジにたっぷりのクリームが魅力的な逸品。花型にデコレーションされたクリームは仄かな薔薇色に染まっていて、苺の果実と美しいコントラストを作っていた。
「ふふ、本当に綺麗──」
 前々からこの店の噂は聞き及んでいたアウグスタである。話に違わぬ見目のケーキに期待感も浮かべようというものだった。
 淑やかに口を開いて、さっそくぱくり。ふわふわのスポンジと濃厚な風味のクリームは相性抜群で……果実の甘酸っぱさが合わさればまさに至福。
「ああ、美味!」
 思わず頬を押さえてしまうアウグスタ。
「にゃんこを喪失した私の心が癒されますわ──!」
 思い出すたび、あの可愛いにゃんこ達と戦う事になったのは残念でもあったが……それによって人々も学園も、花園も守られたのだ。
 だから戦う意義はあった、と。
 せめてあのにゃんこ達のことは記憶にとどめておこうと決めながら──アウグスタは甘味と花の時間を暫し、堪能していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月12日


挿絵イラスト