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不可逆ライヴズ

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #ラグネ・ザ・ダーカー #ヴィジランテ #『神月円明』

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#『神月円明』


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●大罪の火
 ヒーローズアース、アメリカ合衆国のある大地で一人のヒーローが膝をつく。
 その息は荒く、その身から噴出する炎も最早風前の灯火のように弱々しく明滅するだけであった。
「私の侵略蔵書には、あらゆるヒーローとヴィランの死が記されている。だからこのように君を追い詰める事も、君を殺して『成り代わる』事も、いとも容易く行えるのだよ」
 女性の声が響き渡る。
 その声の主、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』は言う。その手にあるのは侵略蔵書『キル・ジ・アース』。
 その血文字で描かれた背表紙に刻まれたタイトルの本を片手にページをめくり上げ微笑む。相対するヒーロー『ブラック・サン』は並のヒーローではなかった。
 超高熱の炎を操り、ヴィランを打倒してきたアメリカ合衆国が誇るトップヒーローの一人でもあった。
 だが、今はその炎は弱々しい。追い詰められているのだ。

「馬鹿な! 私に成り代わって何の意味があるのだ!」
 ヒーロー『ブラック・サン』が叫ぶ。
 彼はどこまでも理由がわからなかった。己を狙うヴィランがいることは疑うこともしない。それだけ数多のヴィラン組織を壊滅してきたのだ。
 その残党が己を狙う理由など、いくらでもあるだろう。
 だが、己が此処まで追い詰められる理由がわからないのだ。
「どうして? という顔をしているね。言ったじゃあないか。私の侵略蔵書にはあらゆるヒーローの死が記されている。つまり、君というヒーローの死に様……死因が乗っているのだよ。そして、最期の質問に応えよう」

 その微笑みは残虐そのものであった。
「安心したまえ。君に成り代わって、ヒーローの役目は果たすよ。君と同じく弱きを助け、強気をくじく。それが力を持つ者の責任だからね。これからも君が敵対するヴィラン組織を壊滅させていこうじゃあないか。ただ……少しだけ『やむを得ぬ事故』が増えてしまうかもしれないね?」
 いいかい? と『ラグネ・ザ・ダーカー』は人差し指を立てて『ブラック・サン』へと微笑む。どこまでも嗜虐的な微笑みであった。

「君の炎は超高熱だ。戦いの最中に巻き込まれる者だっているだろう。ああ、罪のない人々が巻き込まれてしまうのは戦いにおいては常にあることさ。仕方ない。正義の前には些細な事故といえよう。あまりにも頻発するだろうさ。そうすれば、人々はこう考える。『ヒーローの中にヒーローのフリをした見えない敵がいて、密かに世界征服を狙っているんじゃあないかってね。そう、『スナーク』さ……!」
 己の語る言葉に酔いしれるように『ラグネ・ザ・ダーカー』が言い放った瞬間、彼女めがけて放たれる『ブラック・サン』の炎。
 だが、今やその炎は弱々しいばかりで、『ラグネ・ザ・ダーカー』の肌を焼くことすらできなかった。

「そんな馬鹿なことが……! させるものか!」
「ヒーローとはそういうものだね。わかっているとも、追い詰められてから力を発揮するのがヒーローという存在だ」
 そんな荒野の戦いの勝敗がどちらに傾いたかは言うまでもない。

 そして、その日を境にヒーロー『ブラック・サン』の戦闘に巻き込まれて焼け死ぬ人々が跡を絶たなくなるのだった――。

●ヴィジランテは睨めつける
 テレビ画面の中でかつてあった戦いの映像が流れている。
「プロメテウス――……バーンッ!!」
 極大の炎が街中に上がる。
 それは巨大な火柱となって吹き上がり、周囲の人々を焼き殺すほどの超高温であった。ヒーロー『ブラック・サン』が放った攻撃が偶然居合わせた人々を巻き込んでしまったのだ。
「痛ましい事故でした……私の力が及ばないばかりに……! このようなことは起きてはならない……! ヴィラン組織の悪事が続く限り、私は戦い続ける! 私の炎に巻き込んでしまった人々の贖罪なのです……!」
 テレビ画面の中でうなだれながらも力強く宣言する『ブラック・サン』。それをにらみつける少年。
 彼はただの人間である。イオという名の少年でしかなかったのだ。
 だが、彼は『ヴィジランテ』となった。ユーベルコードもない。
 けれど、直感でわかっているのだ。

「あいつは嘘をついている……!」
 ヒーローではない。彼が知るヒーロー『ブラック・サン』は、街中で極大の炎を使うような者ではなかった。
 己の使う炎がどれだけ危険極まりない力であるのかを知っていた。
 戦う場所もいつも人を巻き込まぬ場所ばかりであった。
「あいつはヒーローじゃない……!『ブラック・サン』じゃない――!」

●その偽りを追え
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はヒーローズアースにおける事件なのですが……ヒーローに変装した猟書家が人々を虐殺し、人々の間にヒーローに対する不審そして、不和から『超生物スナーク』の存在を信じる根拠とするべく暗躍しているのです」
 だが、ナイアルテはまた申し訳無さそうに頭を下げる。

「ですが、私の予知ではどのヒーローに猟書家が変装しているのかわからなかったのです……」
 グリモア猟兵であっても見通すことの出来ぬ変装。
 それを猟兵たちが探らねばならぬのだが、闇雲に探しても猟書家は煙に巻くように逃げ去ってしまい、益々持って人々に『スナーク』の存在を植え付けていくことになるだろう。

「ヴィジランテ……はご存知でしょうか? 母親を殺された少年『イオ』さんが今回そうなのですが、彼は理屈ではなく本能でヒーロー『ブラック・サン』がヒーローではないということを見抜いているのです」
 だが、ヴィジランテはユーベルコードを使えぬ者。
 そんな彼が単身で猟書家を追い詰めることはできない。

「はい。みなさんには猟書家が変装し悪評を振り撒く『ブラック・サン』を追いかけていただきたいのです。『ブラック・サン』は秘密を握る少年『イオ』を今まさに追いかけて殺そうとしています」
 その凶行を止めるためにヴィジランテである少年『イオ』を助け、彼を追いかける『ブラック・サン』を妨害しなければならない。
「きっと猟書家は『イオ』さんを殺さぬ限り逃げることはできないと悟っているのでしょう。まさに彼の存在が猟書家が別のヒーローに変身し逃走できぬ唯一のウィークポイント。彼を護りながら、人々を巻き込まぬ場所まで誘導し、これを打倒して下さい」

 それはきっと困難な戦いになるであろうことは容易に想像できた。
 けれど、それでもやらなければならない。
 たった一人で決意し、正当な怒りを持ち立ち向かおうとした少年『イオ』を見殺しにはできない。
 猟兵達を見送り、ナイアルテは凄まじき力を持つであろう猟書家との戦いの行く末を案じるのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はヒーローズアースにおける猟書家との戦いになります。猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装した偽ヒーロー『ブラック・サン』を追い詰め、母を焼き殺された少年『イオ』を助け出すシナリオとなっております。

 ※このシナリオは二章構成のシナリオです。

●第一章
 日常です。
 ヴィジランテである少年『イオ』は、その正当な怒りと共に偽ヒーロー『ブラック・サン』が猟書家であることを見抜きました。
 ですが、逆にそれ故に猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』は彼を殺して証拠を隠滅しようと追いかけています。
 アメリカ合衆国の街中を逃げる少年『イオ』を護るためにあの手この手で、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が逃げられないように、戦いの場へと誘導しましょう。

 この段階ではダメージを与えることはできません。あくまで少年『イオ』へと危害を与えぬように立ち回り、同時に猟書家を戦わざるを得ない戦場へと誘い込むことが目的となっております。

●第二章
 ボス戦です。
 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』は変身能力を持つため、逃してしまえばまた別の偽ヒーローとなって怪物スナークの誕生のために暗躍し続けるでしょう。此処で確実に仕留めなければなりませんが、その力は強大そのものです。
 強敵です。単身でも凄まじい力を持ちますが、そのユーベルコードはさらに強力なものばかりです。

 ※プレイングボーナス(全章共通)……ヴィジランテと共に戦う、もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害します)

 それでは予知でも見抜けぬ変装を正当な怒りによって見抜いたヴィジランテである少年を助け、猟書家による『スナーク』誕生の礎を気づかせぬために戦う物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『ヒーローの秘密を守れ!』

POW   :    威圧することで時間を稼ぐ

SPD   :    退路を見極めて先導する

WIZ   :    話術や魔法で煙に巻く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ヒーロー『ブラック・サン』の炎が路地裏を走るヴィジランテの少年『イオ』の背中をかすめた。
 本来であれば、それはあってはならぬ光景であった。
 なぜ少年が追われるのか。ヒーローである者が彼に炎を向ける光景は人気のない路地裏であるが故に誰の目にも触れることはなかった。
「ふむ。なぜ私の正体が露見したのか。私の変装は完璧であったし、今も些かの乱れもない」
 だというのに猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』はヴィジランテの少年『イオ』にヒーローではないと看破され、彼を抹殺せんと追っているのだ。

「私の侵略蔵書には全てのヒーローとヴィランの死が記されている……ふむ、なるほど。ヴィジランテというやつか。ならば私の侵略蔵書の範疇ではない。だからこそ見破られたのか」
 総分析しながらヒーロー『ブラック・サン』に変装した『ラグネ・ザ・ダーカー』はほくそ笑む。
 ならば、この少年を始末してしまえばいい。
 そうすればもう露見することはなく、人々に不和の種を蒔き、その心の中から見えぬ怪物『スナーク』を生み出す計画が着々と進むことになる。

「ヒーローだとかヴィランだと関係ない! お前は母さんを殺した! 見せかけて殺したんだ! お前は言ったな。こんなことがもうあってはならないと。だから僕がそうするんだ。お前を止めて! もう他の誰も犠牲になんてさせない! 僕は怒っているんだ!」
 少年『イオ』が叫ぶ。
 それは正当なる怒りがもたらした心からの咆哮であった。
 母親を事故に見せかけて殺された。
 それはもう乗り越えた。
 けれど、いつまた他の誰かが己と同じ境遇になってしまうかわからない。それだけが許せぬと駆け出したのだ。己の力はヒーローにもヴィランにも及ばないだろう。

「ユーベルコードの使えぬ者。ヴィジランテ。ああ、その義憤だけでは世界はどうにもならない。悲しいけれど、これが現実というやつさ。君は死に、これからも私は人知れず人々を殺し続ける。止められないさ、君の怒り程度ではね」
 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』は変装したヒーロー『ブラック・サン』の顔のまま哄笑する。
 これだから人間は救い難くも、面白い生き物なのだ。
 自身の玩具になるにふさわしい。弄び、飽きたら壊せばいい。また自然と生まれてくる。こんな愉快なことなど無い。
「君を助けるものなどいない。ヒーローである私と、ヴィジランテである君、第三者から見て、信用するに足るのはどちらか? そうだろう? 君の言葉を信じる者など、誰一人としていないさ――」

 それでもヴィジランテの少年『イオ』は走る。
 息が切れても、足が引きつろうとも走る。この人気のない路地裏を走り抜ければ、そこは人々が行き交う大きな交差点。
 人の目しか無いところに、この偽ヒーロー『ブラック・サン』を引きずり出せばいいい。そうすれば、やつは大衆の前でヒーローを演じなければならない。

「そうすれば! やつの行いを全て洗いざらいぶちまけてやれる……!」
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
イオには貴方呼び

俺は秘密結社スナークの一員だ、聞いた事くらいはあるだろ?
俺が君を守る、力を貸してくれ

SPDで判定
【視力】【暗視】【聞き耳】でイオの場所を見つけて駆けつける
銀腕を【武器改造】で盾にし【盾受け】【受け流し】で攻撃を防ぐ
イオを前、俺が後ろになって白瑛の背に乗り敵を人がいない場所まで【おびき寄せ】る
その際、【優しく】【落ち着いて】人がいない場所まで誘き寄せる事や自分の他にも味方がいる事を伝えて激励する
攻撃されれば【早業】【悪路走破】【地形の利用】【見切り】で回避、必要なら銀腕で防ぐ
他の猟兵の所まで護衛し、後を任せる
白瑛が走り続けるのも限界があるからな



 猟書家の変装したヒーロー『ブラック・サン』から噴出する炎が天を衝く。
 それほどまでの超火力。
 大いなる力であるが、それは同時に周囲に被害を及ぼしかねない諸刃の剣でもあった。だが、今や彼は人知れず還らぬ人となっている。
 それは猟書家によって成り代わられてしまったがためだ。
 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の変身能力は完璧である。
 生前のヒーロー、ヴィランであればあらゆるものを変装することができる。それこそが侵略蔵書『キル・ジ・アース』の力。
「うんうん、いいじゃないか。凶悪なる少年ヴィランを追うがあまりに火力の出力を見誤って尊い犠牲が出る。それに涙するヒーロー。そして新たに決意し、人々の安寧のために戦う。いかにも大衆が好きそうな見出しだ」

 だが、その完璧なる変身能力をも見破ったのは、ヴィジランテの少年『イオ』である。理屈など関係なく、『ラグネ・ザ・ダーカー』の変身能力を唯一見破った少年。あの少年だけが『ラグネ・ザ・ダーカー』にとっての誤算。
「誰がそんなことさせるか!」
 少年の足でヒーローから逃れることはできない。
 噴出した炎が彼の背中に迫る――。

 その背中に迫った炎から彼を護ったのは銀色に輝く腕であった。
 それは奇妙なことに炎を弾き飛ばし、盾のように広がっていた。その銀腕を手にするのは、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)。
「俺は秘密結社スナークの一員だ。聞いたことくらいはあるだろ?」
 ルイスの言葉は優しくヴィジランテの少年『イオ』に響いた。
「秘密結社スナーク……なるほど、猟兵も考えたものだね。こちらが見えぬ怪物として『スナーク』を生み出そうとするならば、その名を自分たちの手柄で塗りつぶすか。いい考えだ。だが――」
『ブラック・サン』に変身した『ラグネ・ザ・ダーカー』が炎を噴出させる。
 かのヴィジランテの少年だけを殺せば、後は猟兵はこちらの変装を見破ることはできない。

 ならば、少年を即座に殺して逃げてしまえば猟兵たちは詰みだ。
「させるか! 白瑛――!」
 サムライエンパイアで出会った白き大狼にまたがり、ルイスが銀腕を変形させた盾で炎を防ぐ。
「走れ! 俺が君を守る。力を貸してくれ」
 それは信用に値する言葉であったことだろう。
 どんな大人に『ブラック・サン』が偽物であると伝えても信じる者はいなかった。誰も自分の言葉に耳を貸してくれなかった。
 けれど、彼は、ルイスは違う。
 自分を守ると言ってくれた。身を挺して『ブラック・サン』と自分の間に割って入ってくれた。

「信じる……! 頼む、あいつを……! この先に交差点までひきつけてくれ……!」
 少年『イオ』が走る背中をルイスは護るように白き大狼の背に乗って『ブラック・サン』と大立ち回りを演じる。
 あのヒーローの能力、超高熱の炎は凄まじいが銀腕のメガリスで防げぬほどではない。
 このままひきつけ、『イオ』の言う交差点まで『ブラック・サン』を引きずり出せばいい。

 そうすれば、『ブラック・サン』に変じた『ラグネ・ザ・ダーカー』の正体を暴く手段があるというのだ。
「ああ、わかった。それまで俺が惹きつける。君は走れ!」
 白き大狼がアスファルトの大地を切りつけるように飛ぶ。
 炎の噴出は結局の所指向性を伴った攻撃でしか無い。その直線的な攻撃を躱すことなど容易だ。
 路地裏の建物の壁を蹴り、炎を躱しては『イオ』へと迫らんとする『ブラック・サン』の進路を妨害する。

「忌々しいな。私を足止めするつもりかい? あの少年さえいなければ、どうとでもなるんだが……まあ、これもまた一興だ。ヴィラン逃走に加担するヴィラン……その大捕物の間にも私の炎が無辜なる人々を傷つけるかもしれないね?」
 変身したヒーロー『ブラック・サン』のままに嗤う。
 その哄笑はあらゆるものを嘲るものであった。どれだけ正義の心を持っていたとしても、悪意には傷つけられる運命に在るのだというように、その炎を吹き上げさせるのだった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
対応武器:黒燭炎

炎はわしの分野。その扱いの難しさは知っておる。
故意にそう扱うなど、許せるか!
わしは基本はサポートじゃて。炎は2回攻撃で斬って捨てる。


第四『不動なる者』まとめ&盾役武士
一人称:わし 質実剛健
対応武器:黒曜山(今回は盾)

守るは我が本分なれば。
ひたすらに走れ、少年。あやつの攻撃は、わしが盾にて防ぐ(盾受け)。
秘密結社『スナーク』の一員として、我らはあやつを許さぬのよ。

※『侵す者』は『不動なる者』のことを兄者(血の繋がりはない)と呼びます。



 その炎は悪意にまみれていた。
 本来のヒーロー『ブラック・サン』の炎は悪意から人々を守るために振るわれるものであったが、今の『ブラック・サン』は猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』によって成り代わった後の姿である。
 噴出する炎は路地裏を駆けるヴィジランテの少年『イオ』めがけて放たれる。
 どういう理屈であるのか『ラグネ・ザ・ダーカー』はわからないことであったが、家族を奪われた彼の正当なる怒りが、猟兵でも見抜くことの出来なかった変身能力を見破っていたのだ。

 かの少年が生きているだけで猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の目論見である人々の間に不和の種を蒔き、見えぬ怪物『スナーク』を信じる根拠へと育て上げることが御破算になってしまう。
 だからこそ、『ラグネ・ザ・ダーカー』は執拗に彼を追い回すのだ。
「私の仕事ついでではあるけれどね。さあ、君が逃げ回れば逃げ回るほどに、無辜なる人々を私の炎が焼くかも知れない。そんな風に思いながら逃げ惑うといいさ。私は仕事がやりやすくて大変結構だけれどね」
 炎が周囲の建物へと噴出され、その炎で持って焼き尽くさんと迫る。

 だが、その炎を切って捨てる影があった。
「炎はわしの分野。その扱いの難しさは知っておる」
 その影は馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。4つの人格を宿す複合型悪霊。その中の『侵す者』が手にした黒き槍を回し、放たれた炎を吹き飛ばす。
「ほう、君もまたヒーローではない……なるほど、猟兵か。だが、超高熱の炎は何度でも放つことができるのだよ。それがこのヒーロー『ブラック・サン』の力だからね!」
 再び放たれる炎を、『侵す者』は長槍の柄を振り回し払う。
「故意にそう扱うなど、許せるか! ―――兄者!」
 炎は人の営みに欠かせぬものである。
 だからこそ、その扱いには最新の注意が必要なのだ。そうしなければ、人の営みの根底から灰燼に帰すほどの力を持っているからだ。
 それを己の悪意の為に使うなど赦されることではなく、同時に許してはならぬことであった。

「守は我が本分なれば……ひたすらに走れ、少年」
 次の瞬間、その手にあったのは漆黒の剣が変じた盾。それを構え、ヴィジランテの少年『イオ』と『ブラック・サン』の間にて立ちふさがる。
 彼が今回の事件の要である以上、彼を失うということは猟兵にとっての敗北である。必ず護り通さなければならないのだ。
「あやつの攻撃は、わしの盾にて防ぐ」
 噴出した炎がどれだけ強大なものであったとしても、『不動なる者』の持つ力を前にして侵されることなどない。
 どれだけ悪霊に身をやつしたとしても、その体に宿るのは4つの意志。
 オブリビオンから人々を護る。
 その意志だ彼等の足を進めさせるのだ。

「でも……! あいつの炎は!」
 少年『イオ』の言葉も尤もであった。あの超高熱の炎。凄まじい力であるが、結局の所借り物である。
 本来のヒーロー『ブラック・サン』のものと比べるべくもない。
 それに仮にオリジナルの力以上の力を発揮したのだとしても彼等は退かぬ。
「我等は秘密結社『スナーク』の一員として! 我らはあやつを赦さぬのよ!」
 毅然と立ちふさがる。
 オルタナティブ・ダブルによってユーベルコードの輝きを増す『侵す者』と『不動なる者』。
 二人の姿が『ブラック・サン』――猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の前に立ちふさがる。

「どこからともなく本当にやってくるものだね、猟兵は。だが、それもどこまで持つかな? 私は地の果てまででも彼を追って殺すさ。それが終われば、この姿も捨てよう。君たちに補足されてしまったからね。なあに、心配することはないさ。次は――」
 もっと上手にやるからね、と『ラグネ・ザ・ダーカー』がヒーローの顔の下で嗤う。
 猟兵であっても見抜くことの出来ぬ変身能力。
 逃げに徹すれば、猟兵たちは己を捉えることはできず、『超生物スナーク』の礎たる種子を撒き続けることができる。

「だからなんだというのだ。何度でもお前を追い詰める」
「だが、それはわしらではない。貴様の悪意の報いたる彼等ヴィジランテの怒りが、貴様を追い詰める」
 それはきっとまた自分たちを呼ぶだろう。
 何度も逃しはしない。そういうように、二人は猟書家の前に立ちふさがるのであった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
生命を喰らう漆黒の息吹を発動し花びらを纏い
イオの側に。
「よくがんばったね。此処からは一緒に戦おう。」

花びらで炎を防ぎ
目眩ましに大量の花びらを敵にぶつけた隙に
イオを連れ人込みに紛れたり
人の多い建物を移動
「良いかい?これから俺はヒーローに化けているもの
の正体を暴き倒す。
だから、それまで付き合って欲しい。
それとそれまでの間、奴の事を人に話さないでくれ
悔しいだろうが、そうしたら奴が何をするか分らないからね。」
と説得すると人の多い所を選び町外れへ。

「此処からは身を隠す場所も人もいない。
戦える所まで突っ切るよ。」
龍翼の翔靴とスカイロッドの風の力。
レッドシューターの炎の力で速力を高め一気に目的地まで移動。



 立ちふさがる猟兵を躱し、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装したヒーロー『ブラック・サン』は路地裏を疾駆する。
 その瞳が捉えているのは己の完璧なる変身能力を唯一見破る存在、ヴィジランテの少年『イオ』である。
 彼さえ殺せれば無闇に猟兵と戦う理由などない。
 そのまま新たなヒーローやヴィランに変装して逃走すればいい。
 見えない怪物『スナーク』を生み出すために人々の間に不和を植え付ける所業を繰り返していけばいい。ただそれだけで猟書家としての役目は事足りるのだ。
「そう、私はただ変身していればいいのだよ。たったそれだけで日常を護るヒーローの中から、人々を脅かすヴィランの内側から! 人々に不和の感情を植え付ける。それは『スナーク』の名で呼ばれ、いずれ見えぬ怪物を生み出すのだから」

 変装したヒーロー『ブラック・サン』の炎が放たれ、ヴィジランテの少年『イオ』へと迫る。
 だが、それを既のところで防いだのは冥界にしか咲かぬとされている鳳仙花の花びらであった。
 それはまるで生命を喰らう漆黒の息吹(イノチヲクラウシッコクノイブキ)のように放たれた炎の尽くを吸収し、霧散させる。
「よくがんばったね。此処からは一緒に戦おう」
 ヴィジランテの少年『イオ』と偽ヒーローである『ブラック・サン』の間に割り込むようにして立つのは目深にフードを被ったフォルク・リア(黄泉への導・f05375)であった。

「あなたは……危ない!」
『イオ』が叫ぶ。
 フォルクへと放たれる炎は、しかし彼に届くことはなかった。鳳仙花の花びらが尽く炎を散らす。
 それがユーベルコードに寄る力であると『イオ』は知らない。それは彼がどれだけの決意を持ってしても会得できななかったユーベルコードの力である。
 それ故に彼はヴィジランテとなり、『ブラック・サン』が偽のヒーロー、即ち猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』であると見抜くことができたのだ。
「いいかい? これから俺はヒーロに化けているものの正体を暴き倒す。だから、それまで付き合ってほしい」

 少年『イオ』をかばうようにしながらフォルクは駆け出す。
 炎は今だ彼等を追ってきてはいるが、フォルクの履く空の精霊力の籠められたブーツが風の力で空を翔け飛ぶように走る。
 炎の幻獣を封じた魔導書を再生成した手袋から噴出する炎が風を受けて一気にスピードを上げる。
「それは構わないけど……! 本当にあいつはヒーローなんかじゃないんだ!」
「ああ、それはわかっている。だけど、それまでの間、ヤツのことを人に話さないでくれ。悔しいだろうが、そうしたら奴が何をするかわからないからね」
 フォルクはそのまま『イオ』を抱えるように、目的地でも在る人の多い場所……つまりは路地裏から駆け抜けた先にある交差点を目指す。

 だが、彼の目の前に炎のカーテンが張り巡らせる。
 それは猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装したヒーロー『ブラック・サン』の放つ超高熱の炎の壁であった。
「此処からは身を隠す場所も人も居ない……戦えるところまで突っ切るよ」
「そうはさせないさ。君たちにはここで行き止まりになってもらわなければ。そうでなければ、私の目論見が露見してしまうからね。たしかに言ったもの勝ちではるのだが、それでも『スナーク』に僅かな疑念も入り込んでは困るのだよ」
 その背中に追いつく『ブラック・サン』を冥界の鳳仙花の花びらが振りはら様に舞い散る。

「お前に彼の悔しさがわかるものか。どれだけお前が隠そうとも、俺達が必ず暴く。お前の悪意も、目論見も、全て。『スナーク』の名を恐怖と混乱の象徴にはさせやしない。お前を追い詰めるのは力じゃない。彼の正当なる怒りだ」
 フォルクは『ブラック・サン』の前に立つ。
 手にしたスカイロッドから放たれる風の弾丸が炎のカーテンに穴を開ける。さあ、と『イオ』を促す。

 きっと此処で『ブラック・サン』を止めることはできないかもしれない。
 だが、それでも『イオ』を目的の場所まで走るための時間稼ぎはできる。猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の目的は『イオの抹殺』だ。
 未だこちらに手を出すつもりはないだろう。
 だからこそ、徹底的に足を止める。フォルクは目深にかぶり直したフードの奥に輝く瞳で猟書家の持つ悪意と真っ向から対峙するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
己を偽らぬ義心
数え切れぬ「誰か」が抱くこの眩さこそ。俺の戦うべき理由

秘密結社スナークの者としてイオの元へ
『天光』にて見出し『刻真』で無限加速し即座に

着後は他の味方の元へイオを誘導
向けられる攻撃は魔眼・停滞で残らず打ち消す
空間内の事象を初期化すれば何を行おうと無に帰す
戦域全て対象としてしまえば周囲への「余波」で被害という企みも叶わぬ

打撃その他の直接的な手段、及び万が一にも超えてくるなら己が受ける
無数の薄膜状に分割展開したオーラに『絶理』『刻真』を作用させ、向けられる攻撃を触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給

※アドリブ歓迎



 立ちふさがる猟兵を躱すヒーロー『ブラック・サン』に変装した猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が炎を噴出させながら飛ぶ。
 その姿は確かに第三者から見れば、逃走しているヴィランを追い詰めるものであったのかもしれない。
 内情は知らずとも、他者とは常にそう見たいと願うように物事を見るものである。そこには正義と悪があるのではなく、個という主観があるだけなのだ。
「悲しいな。いくら人気のない路地裏とは言え、これだけの大立ち回り。誰かが気づいてもおかしくはないのに、誰もが無関心を装っている。これが人の世界だ。私を悪意にまみれた者であるというのなら、無関心こそが悪意の本質であると知るがいい」

 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が言う。
 その言葉はまさしく正しいことであったのだろう。誰もがそうであるように、心の中に光と闇を持つ。
 陰陽併せ持つからこそ、人の心は変化していく。
「だからといってお前の悪意を許しておいていい理由になんてなっていない!」
 ヴィジランテの少年『イオ』が背に迫る『ブラック・サン』の炎から転げるようにして走る。
 彼の怒りは正当なるものだ。
 不慮の事故に装って殺された己の母親。誰もが裁かぬと、罪なしというのであれば、己が裁かねばならぬと立ち上がったのだ。

「己を偽らぬ義心。数え切れぬ『誰か』が抱くこの眩さこそ。俺の戦うべき理由」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)はヴィジランテの少年『イオ』と偽ヒーロー『ブラック・サン』の間に立ち、その周囲に淡青の光を漂わせながら言う。
 彼が戦う理由は、その義心に報いることだ。
 噴出するように放たれた炎がアルトリウスに直撃する手前で霧散し消えていく。
 彼の魔眼がユーベルコードに輝く。

 魔眼・停滞(マガン・テイタイ)の力は空間の自称を初期化する原理の力。
 それを放たれれば、力は相殺され何処にも届かない。たとえ、どれだけの炎が噴出しようともアルトリウスの前では無いに等しい。
「ほう、事象を初期化するか。せっかく盛大に、派手に炎を打ち出したというのに。これでは巻き添えを食う者も出てこない。私の目論見を君たちは知っているようだね」
 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の変装する『ブラック・サン』が嗤う。
 それは面白がっているようでもあり、己の変身能力を見破るヴィジランテの少年さえ殺せばいいという目的の気軽さもあったのだろう。
 狡猾であり、猟兵に見破れぬ変身能力を持つ『ラグネ・ザ・ダーカー』にとって猟兵とは正面切って戦うべき相手ではないのだ。

「お前がなそうとしていることはわかっている。余波で他者に危害を加えよう画策しても、俺がいる限りそれは叶わぬと知れ。停滞の原理はすでに此処に在る」
 淡青の光が宙に浮かぶ。
 それはどれだけ超高熱の炎の流れ弾が周囲の建物、人々に降り注ごうが瞬時に原理より編まれた事象を初期化する魔眼の力に寄って打ち消されるだろう。
「だが、その原理も君が視認していないと効果は発しないだろう? 君を上回る速度であの少年を殺せばいいだけはの話さ。何、逃げ足には自身があるんでね」
 アルトリウスの脇を噴出する炎と共に瞬時駆け抜ける『ブラック・サン』。
 だが、たしかに躱したアルトリウスが、次の瞬間『ブラック・サン』の眼前に現れる。

「――!」
「言ったはずだ。お前の目論見は叶わぬと。お前がどれだけ炎に寄って無辜なる人々を殺そうとしても俺の目が見ているぞ」
 無限加速で持って『ブラック・サン』の行く先々へと転移するかのように追いついてくるアルトリウス。
 その姿に初めて『ラグネ・ザ・ダーカー』の表情が固くなる。
「なるほどな。世界の外から汲み上げているというわけか。私の侵略蔵書が言っているよ。君が視ているものは全て無に還ると。ならば――」

 吹き荒れる極大の炎。
 それは竜巻のように周囲へと膨れ上がり、アルトリウスを飲み込む。
 超高温の炎。それはいかなるものをも溶断せしめる人外なる力。だが、それはアルトリウスの魔眼の前では無意味と化す。
 初期化された炎は、けれどどこへも到達することはない。アルトリウスを前にして二次被害を目論むことこそ無駄であった。

「……煙に巻いたつもりか」
 眼前から忽然と消え失せた『ブラック・サン』の姿。
 あの炎をアルトリウスが初期化すると知って、目くらましとして攻撃したのだろう。だが、再びアルトリウスは追い続ける。
 あの義心に応えるために――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……なるほど……偽物になりすますとはまた狡猾だね……
で、力が無くとも怖れず怯まずそれを暴こうとする…うん、この件について彼は誰よりも『ヒーロー』だ…助けないと…
…まずはヤタを飛ばしてイオ少年と『ブラック・サン』を見つけて合流しよう…
…そして路地裏を逃げながら術式組紐【アリアドネ】により周囲の地形を利用した罠を設置…
そのうちのいくつか、引っかかるとゴミが飛んできて邪魔する罠に【想い転ずる妖硬貨】を紛れさせて取り憑かせよう…
…イオが「正体を暴こう」としてくれたお陰で…あいつは今まさに「正体を隠そう」と強く意識している…これが逆転したらどうなるか…
…そう、お前の企みはイオ少年の所為で崩れ去るんだよ…



「はぁ――っ、はぁ――っ!」
 息が荒い。
 ヴィジランテの少年『イオ』が人気のない路地裏を駆ける。背後に迫るヒーロー『ブラック・サン』の炎が迫る。
 これまで何度も彼は助けられてきた。
 猟兵たちが駆けつけ、あわやというところを救われてきたのだ。だが、それは偶然のようなものであると彼は考えていた。
 必然ではない。この身を突き動かす怒りが、引き寄せた偶然にしか過ぎないのだ。本来であれば、彼は『ブラック・サン』の炎を防ぐことなどできない。
 最初に用意していた耐火素材のコートもあの超高熱の炎の前には無意味だった。

「そう何度も君を救う者が現れるとは思わないほうがいい。苦しいだろう? 辛いだろう? 今君は心の底から後悔しているはずだ」
 背に迫る『ブラック・サン』が嗤う。
 その怒りも、行いも、全てが無駄であると嗤う。
「後悔なんてするもの、か! お前は許さない。お前が弄んだ人の生命も、ヒーローの名も、全て許されることじゃない!」
 足がもつれ、路地裏の地面に倒れ込む『イオ』。
 あっけなく逃走劇は終わりを告げる。立ち上がる。膝が痛むし、体のあちこちが痛む。けれど、足は止めない。止められないのだ。

「なんとも滑稽なことだ。もうこれで終わりに――ッ!?」
 偽ヒーロー『ブラック・サン』が炎を端等とした瞬間、彼の側頭部に飛来するダストボックス。
 それを振り払って『ブラック・サン』がよろめいた瞬間、彼の足が何かを踏みつけた。まるで何かが仕込まれていたように踏みつけたもの……マンホールの蓋が外れ、彼の足が穴の中に沈む。
「なんだ……? これが君の仕込んだことなのか?」
 訝しむ。おかしい。こんな風に罠を仕込むことがあのヴィジランテの少年にできようはずもない。
『ブラック・サン』の足を捉えている組紐……頑丈であり、それが魔力に寄って強化されていることを知る。

「これは――猟兵か!」
 彼が見上げた先にあったのは自己判断型伝令術式『ヤタ』の姿。精霊AIであるそれは、目的の情報を捜査し、持ち主の元へと送り込む。
 飛ぶ、その姿を見た『ブラック・サン』は炎を噴出させるが、その手が組紐によって引っ張られ炎の弾の軌道をそらされてしまう。
「……なるほど……偽物になりすますとはまた狡猾だね」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、魔力に寄って強化された組紐アリアドネをたぐりながら、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装したヒーロー『ブラック・サン』と対峙する。

「今の攻撃は……確かにあの空飛ぶ精霊を狙ったはずだが……何故攻撃をそらした? 私は確かに狙ったはずだ。組紐ごときにそらされた程度では……」
 無意識だった。
『ブラック・サン』は己の言動に違和感を覚える。
 いや、そもそも行動にすら違和感を覚えた。正反対のことをしている。こんなにも己の指向を垂れ流すことなどしない。だというのに、今も『ブラック・サン』は己の中の思考を垂れ流す。
『してはならないということをしていしまっている』――!

「儘ならぬ心よ、変われ、逆らえ。汝は反転、汝は心変。魔女が望むは思えど叶わぬ裏表――というやつ。お前は今、こう思っているね。どうしてこんな行動を己はしてしまっているのかと」
 本来であれば、『ラグネ・ザ・ダーカー』の目的は『ヴィジランテの少年イオの抹殺』である。
 猟兵と対峙する理由など無いのだ。
 自身の変身能力を見破る存在を殺してしまえば、猟兵から姿をくらますことなど容易である。それほどまでに『ラグネ・ザ・ダーカー』の変身能力は完璧なのだ。

 だが、今追わなければならない『イオ』を前にして猟兵の前に立ちふさがっている。
「考えても無駄……イオが『正体を暴こう』としてくれたお陰で……お前は今まさに『正体を隠そう』と強く意識している……すでにお前の中の思考と行動、言動は逆転している」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝いている。
 それは今まで積み上げられてきた地形を利用した罠。
 最初のダストボックスが『ブラック・サン』の側頭部へと放たれたときにすでに攻撃は完了している。それに紛れて一枚のメダルが、『ブラック・サン』の背中に張り付いているのだ。

 彼女の放ったユーベルコード、妖怪メダル……妖怪『うらはら』の描かれたメダルに寄って、『ブラック・サン』は真逆の行動、言動をしてしまうようになっている。
「……そう、お前の企みはイオ少年の所為で崩れ去るんだよ……」
 そう、ヴィジランテの少年『イオ』が抱く正当なる怒り。
 それがなんてことのない取るに足らぬ存在であると小石を弾くようにした『ラグネ・ザ・ダーカー』の足元を掬うのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェミルダ・フォーゼル
「助けに来ました。もう大丈夫です。」

イオさんを庇い逃走を援護します。

「あのブラック·サンは間違いなく偽物なのですね?」
【聖審】の【読心術】を使用し彼の心の中の本物のヒーローの存在を確認します。
「確かに、あれは紛い物の様ですね。信じます。」
指先を敵に向け【催眠術】、「本物のブラック·サン」の幻覚を生み出します。
『姿や能力を奪おうとも、私の魂は私が守ってきた人々の心の中で生き続けている!
その蔵書には私が死ぬ所までしか書かれていない。復活した私には通用しないぞ!』
神の現す幻覚です。即ち、現実と何も変わりません。
本物の放つ炎の壁に触れれば実際に肉体が焼け滅びますよ。

さぁ、今の内に走りましょう。



 猟兵達の登場と妨害に寄って猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の目論見は瓦解し始めていた。
 己の完璧なる変身能力を見破る唯一の存在であるヴィジランテの少年『イオ』の抹殺。これさえ為してしまえば、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の目的である『超生物スナーク』の創造への礎は完璧なものとなる。
 ヒーローによる無辜なる人々の尊い犠牲という名の虐殺。
 それによって植え付けられる見えぬ怪物の所業。それこそが『超生物スナーク』をより強固なものに変え、人々の心のなかに『スナーク』を刻み込む。
 そうするだけでいいのだ。
 何も猟兵と戦うことなどない。自身は逃げに徹していれば事はなせるのだ。

 だが、あの少年『イオ』と関わってから歯車の何もかもが狂っていくのを感じていた。
「助けに来ました。もう大丈夫です」
 フェミルダ・フォーゼル(人間の聖者・f13437)は、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装したヒーロー『ブラック・サン』から逃げる少年『イオ』の元に駆けつけた。
 彼女の瞳は真っ直ぐに少年『イオ』の瞳とかわされる。
 彼女もまた猟兵である。猟兵に猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の変身能力は見破れない。
 彼を追うあのヒーローが偽物であるという確証はいまだ得られていないのだ。
 だからこそ、彼女のユーベルコード、聖審(ジャッジメント)が輝く。視線を向けた『イオ』の思考と記憶を読み取る。

 その怒りはもっともなものであった。
 母親を殺された怒り。それは筆舌に尽くしがたい。理屈ではない。本能で感じる怒りと、『ブラック・サン』の正体への不信。
 何度も彼が無辜なる人々を巻き添えにして要るところを目撃していた。その度に彼の表情は悔恨ではなく、唇の端を釣り上げて嗤っていた。
 何もかもをも嘲笑っていたのだ。
 それを許せぬと感じる怒りだけが、彼を此処まで釣れてきたのだ。
「そうだ……あいつが、『ブラック・サン』じゃない……あいつが母さんを殺したんだ!」
「確かに、あれは紛い物のようですね。信じます」
 その言葉にフェミルダはうなずく。

 読心術によって、その心に流れ込んできた怒りは正当なるものであった。
 そのユーベルコードに輝く指先が己達を追う『ブラック・サン』へと向けられる。
「Infermal……」
 その輝きが見せるのは幻覚である。
 彼等を追う『ブラック・サン』の前に立ちふさがるのは、彼と同じ姿をした『ブラック・サン』であった。

『姿や能力を奪おうとも、私の魂は私が護ってきた人々の心の中で生き続けている! その蔵書には私が死ぬところまでしか欠かれていない。復活した私には通用しないぞ!』

 それは侵略蔵書によって成り代わった本物の『ブラック・サン』の幻覚であった。
「馬鹿な――! 『ブラック・サン』は私が殺したはずだ! 何故、此処に……!」
 放たれる極大の炎がぶつかりあい、凄まじい勢いで大気を震わせる。
 その熱波を受けながらフェミルダと『イオ』は路地裏を掛けていく。
「本物の放つ炎の壁に触れれば実際に肉体が焼け滅びますよ」
 フェミルダの言葉がさらに猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変じた『ブラック・サン』へと動揺を走らせる。

 それは幻覚であるとわかっていても、噴出する炎を恐れさせるには十分であった。
 僅かな時間にしかならないかもしれない。
 だが、それでも『イオ』は走る。体力の限界は等に過ぎているのだろう。もつれそうになる足。吐き出す息は絶え絶えであり、いつ力尽きても仕方のないほどに消耗している。
 それでも走る。
「さぁ、今の内に走りましょう。がんばって――」
 フェミルダは知っている。
 読心術で彼の心の内側に渦巻く激しい怒り。己の母親を殺されただけではない。他の人々をも巻き込んで殺したことへの怒り。そして、本物のヒーロー『ブラック・サン』の名を騙り、その名を貶めようとしている者への怒りを感じていた。

 だからこそ、叱咤する。
 足を止めてはならないと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…とりあえずアンブッシュ!(【VR忍術】水遁・水鉄砲の術!)

「大丈夫ですか?」
イオさんに話しかけつつ【VR忍術】突風の術とかでブラック・サンを押し戻します
「あ、私ただのクノイチです」
その辺は気にせずに
さあ逃げてください!
あなたの後ろを守ります!

ん?ヒーローからなぜ守るか?ですか?
私、正義とか知りませんし
悪いことは止めますけどね
いつでもどこでも子供は未来に咲く花の種
それを問答無用に殺そうとすることが
悪いことじゃ無ければ何だと言うんです?

だからあれを倒すのに
私も協力しますよ
さ、今は逃げの一手です
気を緩めないで

※アドリブ連携OK



「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……とりあえずアンブッシュ!」
 どっせい! とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装したヒーロー『ブラック・サン』の背後からの不意打ちの一撃――VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によって具現化した水遁・水鉄砲の術によって打ち出された水弾の一撃を彼の後頭部へと見舞うのだ。

「ぐっ――!? 私の背後を取る……!?」
「クノイチですからね! 不意打ち闇討ちはお手の物です!」
 くるりと身を翻してサージェは今の内とばかりにヴィジランテの少年『イオ』へと駆けつける。
「大丈夫ですか? あ、私ただのクノイチです」
 そのへんは気にせずに、とサージェは明るい笑顔を少年へと向ける。
 久方ぶりに見たであろう誰かの笑顔は、疲労困憊した少年の心に暖かなものを与えた。それがサージェが意図して行ったことではないにせよ、それでも誰かの心に暖かなものが宿るのであれば、それはある意味でサージェを生み出す元となった電子の海に漂う『忍者』の概念の大本にあるものにとっての冥利に尽きるのではないだろうか。

「させるか……! その少年さえ殺してしまえば!」
 追いすがろうとする『ブラック・サン』を前にしてサージェがユーベルコードを輝かせる。
「メモリセット! チェックOK! 参ります! 突風の術!」
 放たれる風の壁が炎を押し戻し、『イオ』と『ブラック・サン』の間に見えぬ壁となって展開される。
「さあ逃げて下さい! あなたの後ろを護ります!」
 吹き荒れる風がいくつもの層となって壁となり、『ブラック・サン』の進路を阻害する。
 専用メモリからコンソールにインストールすることによってサージェのVR忍術は効果を発揮する。
 それは様々な現象を再現するものであり、彼女がバーチャルクノイチであるが故になせる技であった。

「何故、ヒーローである私が追う者をかばう。私はヒーローだ。その少年が何者であるか、君は知らないだろう!」
「私、正義とか知りませんし。悪いことは止めますけどね」
 ヒーロー『ブラック・サン』が言う。
 それは正当性を持った言葉であったのかも知れない。ヴィジランテの少年を追うヒーロー。その図式は第三者から見てもヒーロー側に正しさが在るように映ったかも知れない。

 人は何時だって信じたいものを信じ、見たいものを見て、聞きたいものだけを聞く。そういう生き物だ。
 だが、サージェにとってはそうではない。
「いつでもどこでも子供は未来に咲く花の種。それを問答無用に殺そうとすることが、悪いことじゃなければ何だと言うんです?」
 彼女にとって子供とは守るべきものだ。
 バーチャルキャラクターである彼女にとって子供とはいつだって自分と向き合う存在だろう。だからこそ、それを一番に信じないで何を信じるというのか。

「だから、あれを倒すのに私も協力しますよ」
 微笑み、少年『イオ』から離れないサージェ。
 それはどんなに彼の心を温めたことだろうか。誰に言っても信じてもらえぬ不信。けれど、理屈では説明できない本能が言うのだ。
 あれは偽のヒーローだと。
 それを信じてくれて助けてくれる者がいる。それだけで彼の心は再び燃えがる。

「さ、今は逃げの一手です。気を緩めないで」
 サージェの放つVR忍術の突風が『ブラック・サン』を打つ。
 僅かな時間稼ぎにしかならないかもしれない。だが、それでもあの猟書家を追い詰める一手になるのだ。
 そのために『イオ』を傷つけさせはしない。サージェはそのために舞い降りたのだから――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
悪辣なやり方をする奴だね
スナークの一員としてイオ君を助けるよ
この世界は故郷とよく似た世界だから
放っておくと寝覚めも悪いしね

私も手伝いますの
ヒーローとしてというのが残念ですけれど
力を取り戻す為にこの世界の方から得られる信仰は重要ですの
そしてイオ様が失われるのは忍びないですの

私はイオ様を狙う炎を神気で停めて防ぎますの
周囲に被害が出ない様に確り固定しますわ

僕は状況を見つつイオ君の手を引いて走るか抱えて走ろう
イオ君よく頑張ったね
もう少しだよ

アースクライシスの件でヒーローとして
少しは顔と名前を知られてると思うから
使えそうなら小っ恥ずかしいけどうまく使おう

天網恢恢疎にして漏らさず
全てを騙しきれると思うなよ



「猟兵どもが――! 私の邪魔をする……何故此処まで手間取る……! たかだが子供の一人を始末するだけだというのに……!」
 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変じたヒーロー『ブラック・サン』は歯噛みする。
 取るに足らぬ存在であったヴィジランテの少年『イオ』。彼を抹殺するだけでよかった事件は、今まさに彼の存在が楔となって次々と猟兵が現れるようになっていた。
 猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が持つ侵略蔵書『キル・ジ・アース』はヒーローとヴィランの死を記したものである。
 だからこそ、ヒーローもヴィランも『ラグネ・ザ・ダーカー』の前には強敵足り得ない。
 そして、猟兵もまた完璧なる変身能力を見破る術はなく、人々の間に不和を植え付け、『超生物スナーク』を誕生させる礎を築く事は容易であったはずなのだ。
「どこだ……どこから計画が狂ったのだ? 私の目的が、私の計画が……! ヒーローという存在の裏側から『スナーク』という見えぬ怪物を人々の心に植え付ける計画がこうも破綻するとは」

「悪辣なやり方をするやつだね。スナークの一員として……僕が彼を助けるよ。この世界は故郷とよく似た世界だからね。放っておくと目覚めも悪いしね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、このヒーローズアースにおいて、ヒーローズ・フォーティナイナーズと呼ばれるアースクライシス2019において特に活躍した猟兵の一人でも在る。
 彼女の姿は、ヒーローの中でも特別に露出の多い存在であった。

 ヒーローが追う少年。
 それはヒーローが追うからこそ、何かしらの事情、背に指を向けられるようなことをしでかした存在であると第三者には認識されていたことだろう。
 だが、晶の登場に寄ってそれは覆される。
「私も手伝いますの。ヒーローとしてというのが残念ですけれど、力を取り戻す為に、この世界の方から得られる信仰は重要ですの」
 そして、イオが喪われるのは忍びないと、邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)とでも言うように邪神の分霊が降臨する。
 その姿は晶と融合した邪神であり、邪神と言えど猟兵側に立って手助けしてくれることには違いないの。

 噴出する炎を分霊が発した停滞の神気が抑え込む。
 周囲を巻き込みかねない超高熱の炎であったが、停滞の権能を持つ邪神の分霊にとっては意味を成さないものであった。
「何故……! そうか、あの少年……! ヴィジランテが私の邪魔をするか! ヒーローでもなければヴィランでもない存在が!」
 すでにもう『ブラック・サン』、それに変装した猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』には余裕がなかった。
 それほどまでに追い込まれている。
 ここで逃げても、必ずヴィジランテの少年『イオ』は己の変身能力を見破る。全てが御破算になってしまう。
 そうならぬために抹殺しようとしたというのに、これでは――!

「イオ君、よくがんばったね。もう少しだよ」
 晶は微笑んでイオの手を引いて路地裏から表通り、交差点へと駆け出す。それはもはや『ラグネ・ザ・ダーカー』が逃げも隠れもできない。けれど、戦わざるを得ず、同時に広い交差点であるが故に周囲への被害を考えなくて済む決戦の場でもあった。
 交差点にあるビルの壁面に掲げられた大画面のスクリーン。
 そこにはヴィジランテの少年『イオ』が今まで密かに撮影していた動画のデータが映し出されていた。

 それこそが『ブラック・サン』がヒーローでなく、『偽ヒーロー』であることを示す映像。それこそが、もはや猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』を逃げられぬようにする作戦であった。
「天網恢恢疎にして漏らさず。全てを騙しきれると思うなよ」
 晶の瞳は噴出する炎とともにある『ブラック・サン』を見据える。
 すでに大画面のスクリーンの中では、故意に炎によって無辜なる人々を殺したと猟兵たちとのやり取りで発した言葉、映像が流れている。

 ヴィジランテの少年『イオ』が楔であるというのなら、猟兵たちは鎹だ。
 世界を壊す超生物『スナーク』を生み出さんと暗躍する猟書家によって傷つけられ、引き裂かれようとしていた人々の心をつなぎとめる。
「もう、どこにも逃げられないぞ、偽ヒーロー……いや、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』!」
 晶はその視線を向ける。
 けっして逃しはしないと。
 幼き少年から母親を奪った罪、無辜なる人々を殺めた罪、そして、ヒーロー『ブラック・サン』の名を貶めんとした罪。
 それを裁かんと、その身に宿したユーベルコードが輝くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ラグネ・ザ・ダーカー』

POW   :    ダーカー・インジャスティス
全身を【鮮血の如きオーラ】で覆い、自身の【悪意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    侵略蔵書「キル・ジ・アース」
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【侵略蔵書「キル・ジ・アース」】から【具現化された「死のイメージ」】を放つ。
WIZ   :    マッド・デッド・ブラザーズ
【死せるヴィラン】の霊を召喚する。これは【強化された身体能力】や【悪辣な罠】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:津奈サチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鏡繰・くるるです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ヴィジランテの少年『イオ』が猟兵と猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が変じた偽ヒーロー『ブラック・サン』とのやり取りを盗み撮りしていた映像が、駆け出した交差点のそばにあるビルの壁面に掲げられたスクリーンの画面に映し出される。

『うんうん、いいじゃないか。凶悪なる少年ヴィランを追うがあまりに火力の出力を見誤って尊い犠牲が出る。それに涙するヒーロー。そして新たに決意し、人々の安寧のために戦う。いかにも大衆が好きそうな見出しだ』

『馬鹿な――! 『ブラック・サン』は私が殺したはずだ! 何故、此処に……!』
 
 それは今まで猟兵たちと躱した『ブラック・サン』の言葉であった。
 その表情はヒーローと呼べるものではなく、その姿こそがヴィランそのものであるように映し出させる。
 これまでどれだけの人々を巻き込み、不慮の事故として虐殺してきたかを物語るものであった。

 口元が歪む。
 嗤っていた。己の炎に巻かれ焼けていく人々を見て彼は嗤っていたのだ。それが偽物であることを知らしめる大スクリーンの映像。
 ヴィジランテの少年『イオ』が叫ぶ。

「お前がしたことは許されない! お前は必ず裁く。他の誰もが言うだろう! ヒーローであるのだからと! だけど、僕は知っている。お前が『ブラック・サン』ではないことを!」
 その言葉に徐々に変身していた『ブラック・サン』の変装が解かれ、真なる姿……猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の姿が顕になる。
 女性の姿をした猟書家。
 それこそが『ラグネ・ザ・ダーカー』の真の姿。

「ふぅ……まさか此処まで覆されるとはね。仕方ない。なら……真向勝負と行こうじゃあないか。猟兵を殺し、君も殺す。そして、また私はいずれかのヒーローかヴィランに成り代わる。そうすれば、また元の木阿弥さ。簡単なことだ」
 侵略蔵書を開き、『ラグネ・ザ・ダーカー』は変わらぬ悪辣なる笑みを浮かべる。

「言っておくが――私は許されざる者でもなんでもない。ただ、何者でも在る者。これまでも、これからもずっとね――!」
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『侵す者』
武器持ち替え:灰遠雷

何者でもある、ということは何者でもないと言い換えれるの。
まあ、考えても仕方がない。

UCつきの雷霊力矢を、早業で2回攻撃。防ごうにも防ぎきれまいに。
簡単にはやられぬよ。癒えぬ傷跡とこれから連鎖する不幸が、お主を逃さんのでな。
霊力矢ゆえに、召喚された霊にも当たる。
相手からの攻撃は、第六感を活用しつつ四天霊障のオーラ防御と結界術で防ぐ。
また、少年に攻撃がいきそうならばかばうぞ。

わしらは死なぬよ。わしらは…人を守ると誓う悪霊である。



「何者でも在る、ということは何者でもないと言い換えれるの。まあ、言葉の意味など考えても仕方ない」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は4つの人格が合わさった複合型の悪霊である。
 その言葉を発したのは、そのうちの一人である『侵す者』である。
 手にした雷の力秘めし強弓を引き絞り、その瞳が見据えるのは猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』である。

 その変身能力は如何なるヒーローもヴィランをも成り代わることができる。
 猟兵であっても、その変身能力を見破ることは出来ず、ヴィジランテの少年『イオ』の持つ正当なる怒りがあったからこそ見破ることが出来たのだ。
「猟兵とオブリビオン。相容れる存在ではないのさ。君たちが私を滅ぼさなければならないと感じるように私もまた君たちを滅ぼさなければならないと感じる。考えても詮無きことではあるけれど、それでも私は君たちを殺そう」
 彼女の周囲から現れるのは死せるヴィランたち。
 彼等は嘗て『ブラック・サン』によって壊滅させられたヴィラン組織の霊たちである。

 彼等はすでに死した存在であるが、その身体能力は強化され凄まじい力を有している。
「私の計画を脅かしてくれたヴィジランテの少年は殺す。君たち猟兵も殺す。過去の化身たる私たちに食いつぶされる未来しかないのだよ」
 一斉に大量のヴィランの霊たちが義透たちに迫る。
 だが、『侵す者』は淡々とした表情で雷の弓矢を放つ。

「簡単にはやられぬよ」
 放たれた雷の弓矢が召喚されたヴィランの霊たちを貫いていく。
 強弓で放たれた雷の矢は、一度に二つの矢を放つ。その一撃で倒せなくても、そのや傷は癒えない傷跡となって彼等を苛む。
 さらに自身の近くにいれば、次々と彼等を襲うのは不慮の事故である。
 まるで連鎖する呪いのように次々とヴィランの霊たちが駆逐されていく。
「そうは言うけれど、君だってこの大量のヴィランの霊たちを相手取るのに手一杯だろう? その弓矢が原因か……私の侵略蔵書『キル・ジ・アース』には猟兵の死は記されていないのが厄介だ」

 放たれた『ラグネ・ザ・ダーカー』の拳を『侵す者』の張り巡らせた四人の思念が集まった四天霊障の防壁で受け止める。
 だが、その一撃はまさに猟書家と呼ぶにふさわしい拳であった。オーラを罅割らせるほどの一撃。
「固いな……だが、いいのかい? 私にかかりきりになって! あのヴィジランテの少年を殺せば私の勝ちだ!」
 その言葉に義透は『イオ』の姿を探す。
 そこにあったのは、一人のヴィジランテの少年『イオ』がヴィランの霊を相手取って戦う姿であった。

 彼もまた一人の戦士である。
 しかし、彼はユーベルコードを持たぬ者。劣勢を強いられてしまうのは無理なからぬことだった。
「そうやって他人を気にしにしているから!」
『ラグネ・ザ・ダーカー』が義透の体を吹き飛ばし、『イオ』へと迫る。
 その拳を受けてしまえば、ヴィジランテである『イオ」は殺されてしまうだろう。
 それだけはさせてはならぬと義透の体が駆ける。身を挺して『イオ』を拳からかばうも、その身に刻まれたのは拳の一撃。

 けっして軽くない一撃であったが、義透は立ち上がる。
「わしらは死なぬよ。わしらは……人を守ると誓う悪霊である」
 もう誰も喪わさせはしない。
 己の目の前で喪われた生命があった。けっして喪われてはならぬ生命であったのに、己達の掌から零れ落ちていった生命。

 あの日の悔恨を二度と繰り返さない。
 その決意が彼等を奮い立たせる。
「故に、わしらは戦うのだ!」
 放たれた雷の矢が『ラグネ・ザ・ダーカー』を貫く。
 どれだけ劣勢に立たされようと関係ない。人を守ると誓った存在。それが己たちであるのならば、自己を省みることなどしてはならない。

 英雄でもない。
 されど悪意があるわけでもない。あるのは『守らねば』という誓いだけ。
「貴様をこれから襲うのは、不慮の事故。わしらの呪いと知れ――!」
『ラグネ・ザ・ダーカー』に刻まれたのは癒えぬ矢傷。
 それはこれから彼女に次々と起こる不慮の事故を示す印であった。決してオブリビオンによって損なわれる生命がないようにと義透たちが刻んだ破滅の印――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「何者でもあるとは笑わせる。
姿かたちが変ろうが。お前は何者にもなれない
それは今証明されたはずだ。
その本性が変らない限り必ずその企みは破綻する。」

死々散霊滅符を発動し周辺に符を展開。
符をラグネ・ザ・ダーカーの
周囲で操作し足止めをする間に
符に【破魔】【除霊】の力を乗せてヴィランの霊に攻撃。
更にヴィランの霊の動きをよく見てその目的を
【見切り】仕掛けられた罠を見抜く。
敵の配置に注意しつつ
符である程度ダメージを与えたら
呪装銃「カオスエンペラー」とファントムレギオンを併用した
死霊を放つ
【誘導弾】で弾道を調整し
【貫通攻撃】の威力を持たせて2体を同時攻撃。
更に【2回攻撃】で周囲の符を爆発させダメージを与える。



 その身に刻まれた呪の一撃は猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』に癒えぬ傷跡を残す。その傷跡はマーカーとなって常に彼女に襲いかかる不慮の事故。
 それはある意味で彼女の目論見――『超生物スナーク』を生み出すために無辜なる人々を不慮の事故によって虐殺してきたことへの意趣返しであったのかもしれない。
 人々の間に不和の種として見えぬ怪物『スナーク』の存在を刻み込む。
 それを猟兵をも見抜けぬ変身能力によって為そうとしたことは、あまりにも脅威であった。猟兵は気がつくことは出来ない。されど、猟兵に何かを為そうとするわけではないものだから、対処もしきれない。
「忌々しい……やはりあの少年が私の計画を全て狂わせる……!」

 そんな猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』を追い詰めたのは、たった一人のヴィジランテの少年『イオ』である。
 彼は母親を『ラグネ・ザ・ダーカー』が変装したヒーローに寄って喪っている。
 その怒りを、理不尽を彼は忘れない。
 ユーベルコードが使えなくても、理屈よりも本能で『ラグネ・ザ・ダーカー』の正体を見破る事のできる存在。
「何者でも在るとは笑わせる。姿形が変わろうが、お前は何者にもなれない。それは今証明されたはずだ。その本性が変わらない限り、必ずその企みは破綻する」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)の言葉はまさしく正鵠を射るものであったことだろう。

 彼は既に見ている。
 ヴィジランテの少年『イオ』の何者にも曲げられぬ徹底した怒りを。その怒りの矛先が『ラグネ・ザ・ダーカー』に向けられている以上、どれだけ彼女が変装しようが、全ての目論見は看破されることだろう。
「ならば、少年諸共、猟兵たちも皆殺しにするだけさ。力押しはスマートではないけれどね――!」
 呼び出されるは大量のヴィランの霊たち。
 彼等はすでに身体能力を強化されている。嘗て『ブラック・サン』によって壊滅させられたヴィラン組織の一員であった者たちであるが、強化された力は侮れるものではない。
「死より出でて死を招く、呪いを携えしもの。中空に散じ、我が敵を闇に葬れ」

 ならば、数には数で対抗する。
 フォルクは手にした死々散霊滅符(シシサンレイメップ)をばら撒き、彼の思念で持ってそれらを一斉に操る。
『ラグネ・ザ・ダーカー』へと迫り、周囲で爆散し彼女の足を止める。
「力押し? そんな言葉に惑わされるものか!」
 フォルクの目深に被ったフードの奥で瞳が輝く。
 ヴィランの霊たちが仕掛けようとしていた罠を見抜く。それは『ラグネ・ザ・ダーカー』が常に此方を翻弄しようとする狡猾さからの逆算であった。

 彼女の言葉が全て真実であるとは限らない。
 人を欺き、人を傷つける者。それが『ラグネ・ザ・ダーカー』の持つ悪意だ。数と力で押すと言いながら、必ず逆張りで罠を仕掛けてくるとフォルクは見抜いていたのだ。
「見抜いたからどうだというんだい? 以前私は、その少年を殺しさえすればいいのだよ」
 ヴィランの霊が張り巡らせようとした罠すらもブラフ。
 フォルクの意識が罠へと集中した瞬間、『ラグネ・ザ・ダーカー』がヴィジランテの少年『イオ』へと走る。
 その拳の一撃で事足りるのだ。
 如何にヴィジランテになったとはいえ、彼はまだ少年だ。強大な猟書家である『ラグネ・ザ・ダーカー』の拳の前では一撃で死んでしまうだろう。

「それもわかっているとも――」
 手にしたのは呪装銃。
 籠められたのはフォルクの操る死霊の集合体。弾丸として呪装銃から放たれる死霊の弾丸が即座に二連射され、回避不能なる一撃を『ラグネ・ザ・ダーカー』へと打ち込むのだ。
「お前は必ず少年を狙う。どれだけ言葉で煙に巻こうとも、それすらもブラフだ」
 放たれた弾丸の重さは言うに及ばず。
 さらにばらまかれた死々散霊滅符が次々と彼女の周囲で爆散していく。

「ぐっ――……! どこまでも私の邪魔を……!」
「いいや、お前が邪魔なのさ。人の営みの前に……! お前というオブリビオンはいてはならない!」
 更に打ち込まれる死霊の弾丸と符の爆散する爆風が『ラグネ・ザ・ダーカー』の体を一歩も進ませぬと巻き込みながら強烈なる打撃を与えるのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェミルダ・フォーゼル
どう言葉で誤魔化そうと、貴女は許されざる者ですよ?
罪を悔いろとも詫びろとも言いません。一片の躊躇なく貴女を裁きます。

【神域】のユーベルコードで、全身を光の領域で包み加速。望み通り真向勝負です。剣を抜いて切り込みます。
敵の悪意に反応して右手の「聖痕」が疼き、応じて全身を覆う「神気」が強化。【破魔】の力を武具に宿し、身体能力を【限界突破】させます。
マントを翻しての【オーラ防御】で敵の攻撃を受け流し、加速された反応速度での【カウンター】。敵の速度を逆利用して威力を高めた斬撃を放ちます。
イオさんの怒りと悲しみは未だ私の中に宿っています。この一撃は正義の裁き。覆す事の出来ない【神罰】と心得て下さい。



 猟兵のはなった爆散する符が戦場となった交差点に吹き荒れる。
 人々は既に逃げるようにして周囲に散らばり、交差点の中にいるのは猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』と猟兵たちだけになっていた。
 すでに『ラグネ・ザ・ダーカー』の目論見は見破られ、破綻している。
 どうあっても己の完璧なる変身能力を見破るヴィジランテの少年『イオ』を抹殺線と『ラグネ・ザ・ダーカー』はその力を振るう。
「何処まで行っても民衆は愚かだよ。正しさを愛するが、真実は彼等個人に任されている。どうあっても、彼等は見たいものしか見ない。聴きたいものしか聴かない。どこまでも利己的で愚昧なる民衆を『超生物スナーク』の生誕の贄としようというのだ。有効活用というものだよ」
 鮮血の如きオーラを身に纏い、『ラグネ・ザ・ダーカー』の力が増していく。
 もとより飛翔する力を持つ彼女。
 膨れ上がる重圧の凄まじさが、猟書家としての強大さを物語っている。

「どう言葉でごまかそうとも、貴女は許されざる者ですよ? 罪を悔いろとも詫びろとも言いません」
 その重圧を前にして一歩も退かぬ者がいた。
 フェミルダ・フォーゼル(人間の聖者・f13437)は毅然と『ラグネ・ザ・ダーカー』に言い放つ。
 鮮血の如きオーラをまとう『ラグネ・ザ・ダーカー』に相対するのは、自身の正義を信じる心によって、その力増すフェミルダのユーベルコードの輝き。

「一片の躊躇なく、貴女を裁きます――Concentrate……」
 神域(クレリカルハイ)纏いし、フェミルダの身体が光に包まれ、神速の勢いで踏み込む。
 振り払った剣が『ラグネ・ザ・ダーカー』の拳と激突し、火花を散らす。
 剣の間合いに対して、拳の間合いは狭きものだ。だが、それを手数で持って補う『ラグネ・ザ・ダーカー』の連打はフェミルダをしても押されてしまうほどの打撃。
「私を裁くと! 私の悪意は人の悪意だ。私のような悪意が誰しも宿している。それが大きいか小さいか。ふとした拍子に私以上の悪意を膨れ上がらせ、蛮行に及ばせる」
 それは『ラグネ・ザ・ダーカー』が身に宿す悪意。
 言葉とともに拳を叩きつけられる度に、右手の甲に浮かぶ聖痕がうずく。それに呼応するようにフェミルダの纏う神気が膨れ上がっていく。

「ええ、ですがそれは唯のごまかしに過ぎない。貴女がどれだけ言葉を弄しようとも、変わらぬ人の善性があるのであれば!」
 フェミルダの心のなかに浮かぶのは、ヴィジランテの少年『イオ』の心を垣間見た記憶。
 怒り。
 そう、彼には怒りしかなかった。

 母親を殺した者への怒り。
 己と同じ思い、境遇に他者が追いやられることへの怒り。
 ヒーローを騙り、成り代わったヒーローの名を貶める行いを続けるものへの怒り。
 ―――即ち、『ラグネ・ザ・ダーカー』への怒りだ。
 その怒りは正当なるものであり、それ故に猟兵にも見抜けぬ完璧なる変身能力をも見抜く。それは楔のように『ラグネ・ザ・ダーカー』へと打ち込まれた。
「イオさんの怒りと哀しみは未だ私の中に宿っています――」
 拳の一撃を躱す。
 マントを翻し、破魔の神気が宿ったオーラで拳を逸らす。フェミルダの神気が膨れ上がり、彼女の反応速度を加速させていく。
 それはカウンターであった。
 相手の反応速度を上回り、『ラグネ・ザ・ダーカー』が凄まじい速度を得ているのであれば、それを利用する。

 真っ向から挑んだのはこのためだ。
「この一撃は正義の裁き」
 彼女の心には決して揺らがぬ正義の心があった。弱き者の怒りを力に変える。悪意ある者を討てと、心に宿ったイオの怒りが叫ぶのを聞く。
「覆すことのできない神罰と心得てください」
 その怒りを載せた剣の一撃が『ラグネ・ザ・ダーカー』を袈裟懸けに切り払う。

 深々と鮮血を迸らせながら、『ラグネ・ザ・ダーカー』が絶叫する。
 徒に生命を弄ぶ者へと放つ力無き者の代弁。
 その怒りの一撃が遂に『ラグネ・ザ・ダーカー』を追い詰めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
お前は既に終わったもの
何一つ成すこと無く消えるが相応と知れ

戦況は『天光』で常時把握
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から供給

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びそのユーベルコード
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、上下含む周囲全方向へ斉射
更に射出の瞬間を『再帰』で無限循環、間断なく継続
戦域を魔弾の軌跡にて埋め尽くす

ユーベルコード自体を消去すれば木偶と変わらぬ
創生し最古の理に例外はない
力を失い存在を失え
物量で全て圧殺する

※アドリブ歓迎



 袈裟懸けに振るわれた剣の一撃が猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』を切り結ぶ。
 その一撃は鮮血を迸らせ、ヴィジランテの少年『イオ』の怒りを、犠牲となった無辜なる人々の怒りを刻み込む。
「私の体に傷を……! 猟兵風情が……! 生命の誕生も、スナークの誕生も理解しない者が!」
 咆哮する『ラグネ・ザ・ダーカー』の力の奔流によって呼び出されるのは無数のヴィランの霊たち。
 かつてヒーロー『ブラック・サン』によって壊滅させられたヴィラン組織の一員たち。彼等は生命在るものを恨むように何処からともなく集まってくる。

 その強化された身体能力は、かつてのそれを遥かに凌駕するものであった。
「お前は既に終わったもの。何一つ成すことなく消えるが相応と知れ」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の周囲に淡青の光が舞い上がる。
 それはユーベルコードの輝き。
 障害を無視し、万象を根源から消去する創世の権能が顕す蒼光の魔弾が空へと埋め尽くされていく。
「創世し最古の理に例外はない。お前は――行き止まりだ」
 その視線の先に在るのは猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』によって呼び出されたヴィランの霊たち。
 どれだけ強化されていようとも、蒼光の魔弾が降り注ぐように放たれる戦場では進むも退くもできない。

「やはりお前たちは何も見ない。何も聴かない。何も知ろうとしない。誕生を望む生命が在ることも知らずに、ただ徒に滅ぼす」
『ラグネ・ザ・ダーカー』が蒼光の魔弾をヴィラン達の霊を盾にしながら躱す。
 飛翔する彼女の体は消耗しているのか、それまでの勢いは喪われているように思えた。

「ユーベルコード事態を消去すれば木偶と変わらぬ。力を失い、存在を失え」
 アルトリウスの指先が『ラグネ・ザ・ダーカー』を指し示す。魔弾の軌跡が空に刻まれるように降り注ぐ。
 その弾丸の一撃一撃が彼女の力を奪い去っていく。
 強大なオブリビオンであろうとも、ユーベルコードを扱うのであれば、その障害ごと物量で圧殺すればいい。
 無尽蔵とも言える魔力があるのだとすれば、それもまた可能であろう。
 この世界にある魔力が定数であるというのならば、別の世界から汲み上げてくればいい。
 
 生命の埒外に在るものが猟兵である。
 ならば世界の悲鳴に応えるものが世界を渡る。
「どこまでも追い詰めてくる……! 過去が未来に追いつけぬ道理などあってなるものか。私は人の悪意。人の夢。おまえたちが人の善性であるというのなら、私は悪意の創意となろう」
『ラグネ・ザ・ダーカー』が吠えたける。
 それは、凄まじき物量のヴィランの霊たちを持ってアルトリウスの放つ蒼光の魔弾に対抗するものであった。

 だが、悲しいかな。
 どれだけの物量を用意しようとも、操るのがヴィランの霊である以上、定数はあるのだ。
 無限に加速していく魔弾の増殖の前には圧殺されるしかないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
いえ別に貴女が誰でもどーでもいいです
私が許さないのは貴女が自分の保身のためにイオさんを殺そうとしたこと
未来を紡ぐ命を、過去が喰い潰そうとしたこと

なればこそ名乗りましょう!
私はサージェ、猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員!
ラグネ・ザ・ダーカー!
私の誇りとイオさんとの約束の元に、貴女を倒します!

クノイチパワー全開でいっきまーす!
死せるヴィラン軍団には【かげぶんしんの術】で
いっぱい増えて分身で真正面から押し留め

その上を飛び越えつつ、ラグネに漆黒竜ノ牙を全投擲!
接近しつつ飛び蹴り!
着地と同時に【乾坤一擲】で仕掛けます!
「この一撃に誇りを賭けて、いざ勝負!」
退けない戦いがここにある!

※アドリブ連携OK



 猟兵達の度重なる攻撃の前に猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』は消耗を強いられるばかりであった。
 呼び出したヴィランの霊たちは未だ無数に湧き出しているが、その大半を猟兵に寄って消滅させられていた。
 悪辣なる罠を張り巡らせようとも呼び出す度に消滅されては、どれだけ強化されていたとしても意味がない。
「私は……人の悪意の創意だ。誰もが心のなかに悪意を持っている。善意しかない者などいない……!」
『ラグネ・ザ・ダーカー』は消耗しながらも、未だその力を振るう。
 その力の源が人の心の中にある悪意であるというように、ヴィランの霊を湧き上がらせ続けるのだ。

「いえ別に貴女が誰でもどーでもいいです。私が許さないのは貴女が自分の保身のためにイオさんを殺そうとしたこと」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は『ラグネ・ザ・ダーカー』の前に姿を晒し、指差す。
 彼女の背後にはヴィジランテの少年『イオ』。彼を護るようにサージェは言い放つ。
「未来を紡ぐ生命を、過去が食いつぶそうとしたこと。成ればこそ名乗りましょう! 私はサージェ、猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員! ラグネ・ザ・ダーカー! 私の誇りとイオさんとの約束の元に、貴女を倒します」
 その宣言は高らかに。
 彼女の言葉はどれだけヴィジランテの少年『イオ』の心を励ましたことだろう。
 ヴィジランテと言えど、彼はユーベルコードを持たぬ身。
 この場において唯一の力と言えば、『ラグネ・ザ・ダーカー』の完璧なる変身能力を見抜くことができるだけの少年に過ぎない。

 ――否。

 それは違うのだとサージェは知っている。
 彼の怒り。母親を、無辜なる人々を、『ブラック・サン』を己の欲望のためだけに殺した『ラグネ・ザ・ダーカー』を決して許さぬという怒りこそが彼の最大の武器である。
「しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
 サージェの姿が一斉に無数の分身に分たれる。
 かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)。彼女のユーベルオードが輝き、一斉に分身たちがヴィランの霊たちへと駆け込む。
 どれだけの数が呼び出されていても関係ない。サージェの持てる力の全てを使って、最大にまで増えた分身によってヴィランの霊たちを蹴散らしていく。

「『スナーク』は生まれたがっているのだ! 何故それがわからない! 怪物と呼ばれようとも生命だろう! それを貴様たち猟兵の名で塗りつぶすなど!」
 増えるヴィランの霊たち。
 まるで洪水のように溢れる波のようなヴィランの霊たちがサージェの分身に迫る。それを押しと止め、サージェ自身がその上を飛び越える。
 手にした漆黒のクナイを『ラグネ・ザ・ダーカー』へと投げ放つ。
「この一撃に誇りを賭けて、いざ勝負!」
 クナイを全て弾き飛ばした『ラグネ・ザ・ダーカー』。
 どれだけ消耗させられていたとしても、その力は強大なオブリビオンそのものである。

 だが、サージェにとってこの戦いは、退けない戦いである。
 彼――『イオ』との約束が、その胸にある。必ず叶えなければならない。あの正当なる怒りに応えなければならない。
 彼の心にあったのは復讐心ではない。
 誰かのために怒ることのできる正しさこそが輝く。だからこそ、猟兵たちは彼を楔として世界に舞い降りることができたのだ。
「何も理解しない……! そんな都合のよい怒りだけのために、『スナーク』が塗りつぶされてたまるものか!」
 放たれる拳。
 同時にサージェの放った飛び蹴りと交錯し、その一撃が『ラグネ・ザ・ダーカー』へと叩き込まれる。

「誰かのために怒れる人のために! 力なき幼い生命のために! 貴女がしようとしたことは、悪いことですから!」
 渾身の一撃。
 手にした短剣の一撃が乾坤一擲となって『ラグネ・ザ・ダーカー』に叩き込まれ、彼女の体を盛大に吹き飛ばすのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
簡単に殺せるとは思わない事だね
そしてここで倒される事で
勧善懲悪を皆に知らしめる題材になって貰うよ

全てのヒーローとヴィランの死が書いてあるってのは
凄まじい事なんだろうけど
生憎僕達やイオ君は対象外かな

具現化された死のイメージを神気で固定して防ぎつつ
本体の時間を停滞・固定させて速度を奪おう

イオ様の事は私が守ってますの
この輝きを失わせる訳には参りませんの
できれば永遠にしたいところですけれど
…諦めますの、残念ですの

速度を奪ったら使い魔の石化攻撃で拘束した後
ガトリングガンで攻撃するよ

ところでお前自身の死はどういう風に記されてるのかな
記されてないならここにいる皆が
好き放題書かせて貰うよ
悪の栄えた例なしってね



 吹き飛ばされた猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』が交差点にあるビルの壁面に掲げられた大きなスクリーンへと激突し、ずるりと崩れ落ちる。
 だが、それでも尚、強大なオブリビオンとしての力は削ぎきれていない。
 消耗しているのはわかっている。度重なる猟兵との戦いが彼女を確実に追い詰めているのだ。
「何もかもあの少年の存在からケチが付いた……! 何故、たった一人ごときの少年に此処まで追い詰められる……?」
 それは不可解な事実であったことだろう。 
 ヴィジランテの少年『イオ』。彼はユーベルコードを持たず、ただ怒りによってのみ行動してきた存在である。
 彼のような木端のような存在が強大なオブリビオンである己を此処まで追い詰めることなどあってはならないのだ。
「だが、あの少年さえ殺してしまえば――!」
 彼女の手にした侵略蔵書『キル・ジ・アース』が開かれる。

 それは数多のヒーロー、ヴィランの『死』を記した蔵書であり、その『死』のイメージが噴出し、生命を殺す。
 そう、『ラグネ・ザ・ダーカー』は何も猟兵と戦う必要などなかったのだ。ヴィジランテの少年さえ殺せればよかったのだ。
「簡単に殺せるとは思わない事だね。そして、此処で倒される事で勧善懲悪を皆に知らしめる題材になって貰うよ」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は神気を展開し、融合している邪神の権能である停滞と固定の力を奮って『死』のイメージを振り払う。

「全てのヒーローとヴィランの死が書いてあるってのは凄まじい事なんだろうけど、生憎僕たちやイオ君は対象外みたいだね!」
 侵略蔵書『キル・ジ・アース』。
 そこに記されているのは『ヒーローとヴィラン』の死だけだ。そこに猟兵は勿論、ヴィジランテである『イオ』の死は記されていない。
 だからこそ、ユーベルコードを持たぬヴィジランテである『イオ』こそが『ラグネ・ザ・ダーカー』へのワイルドカードとなり得たのだ。

「邪魔をするな!」
 再び放たれる『死』のイメージ。
 それは凄まじい量で空を覆い、『イオ』を飲み込まんと迫る。
「イオ様の事は私が護ってますの。この輝きを失わせる訳にはまいりませんの。できれば永遠にしたいところですけれど……」
 邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)のついでに己の願望をも盛り込んできた邪神の分霊に晶は視線だけで制する。
 彼女の言うところの永遠とはつまり石化し、石像にして永遠に己の隣に置くということである。
 それが許されざることであるがゆえに晶は制したのだ。
「……諦めますの、残念ですの」
 僅かにしょんぼりした邪神の分霊の顔ははたから見れば、せっかくの機会を奪われた少女にしか見えないのだが、その内面を知る晶にとっては、釘を指しておくことに越したことはないのだ。

「その膨大な『死』のイメージと速度が君の力だろうけど!」
 神気が膨れ上がる。
 その停滞と固定の権能が膨れ上がるイメージと『ラグネ・ザ・ダーカー』の速度を奪う。
 確かのあの侵略蔵書の力は凄まじい。
『死』のイメージに触れてしまえば、それだけで致命傷になってしまうだろう。
 だからこそ、あのイメージを誰にも触れさせてはならない。神気の力を増し、勝負を一気に決める。
 使い魔たちが飛び、『ラグネ・ザ・ダーカー』の体へと取り付く。触れた端から石化していく体を振りほどき『ラグネ・ザ・ダーカー』は吠える。

「そうだ! 私の持つ侵略蔵書の力! 『死』とは即ち終焉。誰にも訪れる最期。だが、失われる生命が在るからこそ、生まれる生命がある! 『超生物スナーク』! その生誕のために――!」
 それこそが彼女たち猟書家の目的。
 過去の化身が再びヒーローズアースにはびこるための礎。

「ところで、お前自身の死はどういう風に記されているのかな。記されていないなら、ここにいる皆が好き放題書かせて貰うよ」
 ガトリングガンの弾丸が凄まじい勢いで放たれる。
 どれだけ飛翔しようとも、停滞と固定の神気の内側に要る限り、その影響を受けざるを得ない。
 放たれた弾丸が次々と『ラグネ・ザ・ダーカー』の肉体へと打ち込まれていく。

「その侵略蔵書に一行付け加えよう――悪の栄えた例なしってね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

何者でもあるが何者でもないお前の好きにはさせない
実際、君のいう少年は生きて暴露された
たとえ俺達が死んでもお前を追い詰める者は現れ続ける
俺はデッドマン、お前なんかに殺せるなんて思うなよ

SPDで判定
【挑発】で敵の狙いを俺にして、【視力】【聞き耳】で【情報収集】
攻撃が来たら銀腕を【武器改造】で盾にし【盾受け】
一度死んだ身だから死のイメージは【受け流す】
逃げようとしたら白瑛に少しの間止めてもらい、【早業】で近づいて銀腕を剣にし【怪力】【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】とUCで強化した【切断】と【串刺し】で攻撃する



 弾丸の嵐が猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の肉体を穿つ。
 すでに袈裟懸けに刻まれた傷跡も言えぬ矢傷も、数多の猟兵たちが刻んだものである。
 どれだけ猟書家たちが強大なオブリビオンであったとしても、猟兵たちは退くことはしない。決して諦めることはしないのだ。
 それこそが猟兵達が個で劣っていたとしてもオブリビオンたちを打倒してきた力である。
 一人が紡ぎ、一人がつなぐ。
 そうして猟兵たちは世界を滅ぼさんとする者たちから世界と人々を護ってきたのだ。
「何者であるが何者でもないお前の好きにはさせない」
 ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は、『ラグネ・ザ・ダーカー』の前に立ちふさがる。
 彼の義眼のメガリスが輝く。
 それは彼の意志が輝くのと同義であった。目の前の猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』を許してはおけぬというヴィジランテの少年『イオ』の怒りがルイスを突き動かしていたのかも知れない。

「ほざくな! 猟兵! おまえたが守ろうとしている者たちこそ、私の悪意の創意であると知れ。人は何処まで行っても、己のことしか顧みない。見たいものを見、聴きたいものだけを聞く。知りたい真実の真贋を確かめることもせずに鵜呑みにするだけの愚昧なる群衆を守る価値などないんだ」
『ラグネ・ザ・ダーカー』は言う。
 確かにそのとおりかもしれない。人々はどれだけ世界が危機にひんしたとしても一つにまとまらない。
 ヒーローズアースもまたそうだ。
 未曾有の危機に陥ってもまだ、まとまりきっていない。

「だが、実際、君の言う少年は生きて、お前の所業は暴露された。たとえ俺達が死んでもお前を追い詰める者は現れ続ける」
 それは世の摂理であったのかもしれない。
 猟兵とは世界が軋みあげる悲鳴に呼ばれて現れる存在である。例え、己達をここで煙に巻いたところで必ず『ラグネ・ザ・ダーカー』に追いつく者が現れる。
「ならば、お前たちが追いつけぬように徹底的に殺すまで――!」
 開かれるは侵略蔵書『キル・ジ・アース』。
 その力は記された膨大な『死』のイメージを降り注がせることである。その『死』のイメージの力は強大そのものである。

 その能力でヒーロー『ブラック・サン』をも殺したのだ。
 だが、ここに例外があることを『ラグネ・ザ・ダーカー』は知るべきであった。
 降りかかる『死』のイメージ。
 メガリスである銀の腕を盾に変形させ受け止めるが、その触れるだけで『死』のイメージは生命を侵す。
 そこに例外はない。
 そう、例外はなかったはずなのだ。

「俺はデッドマン、お前なんかに殺せると思うなよ」
 ここに例外はあるのだ。
 デッドマン。本当の意味での不死身。受け流された『死』のイメージをかき分けるようにしてルイスは駆ける。
 白き大狼が戦場を駆け抜け、『ラグネ・ザ・ダーカー』の手首へと食らいつき、その侵略蔵書を振り落とす。
「ぐっ――……! 馬鹿な、何故死なない……! 死ぬはずだ! 生命のはずだ!」
 そこへ駆け込むルイス。
 その義眼のメガリスが輝き、その瞳で捉えるのは悪意の象徴『ラグネ・ザ・ダーカー』。
 銀の腕が剣へと変形し、メガリスの力を増していく。ユーベルコードの輝きが、銀の腕をさらに輝かせ、防げぬ一撃を深々と『ラグネ・ザ・ダーカー』の胸へと突き立てる。

「言っただろう。俺はデッドマン。一度死んで、死なぬ体になった者。お前達オブリビオンが要る限り、死ぬことなど無い――骸の海へと還ってしまえ――!」
 放たれた銀の剣の一撃が『ラグネ・ザ・ダーカー』を追い込む。
 それは人の悪意の創意であるとうそぶく猟書家の終焉……『死』が近づいている証拠であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
んー…いや…企みがばれた時点で終わりと言うか…
…それ、イオに見破られて作戦失敗したから力押しでどうにかしようってだけだよね…
…ま、こっちも逃すつもりもないから好都合か…イオの周囲に【アリアドネ】を展開して守りつつこっそり術式装填銃【アヌエヌエ】を渡しておこう…

…浄化復元術式【ハラエド】の力を黎明剣【アウローラ】に付与…
…ヴィランの霊に対して【暁天踊る集い星】を発動…浄化の力を宿した花びらで切り裂いてしまおう…
…その後、花びらを操ってラグネへ攻撃を仕掛ける…こちらに注意が向くように…
…そう、あいつはイオがなにも出来ないと思ってるだろうから…
そこを照準補正機能がある【アヌエヌエ】で射撃して貰おう…



 ヴィジランテの少年『イオ』の正当なる怒りが、猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』の完璧なる変身能力を唯一見抜くきっかけであったのならば、猟兵たちはそれに呼び寄せられた存在である。
 つまるところ、『イオ』に関わった時点で『ラグネ・ザ・ダーカー』の敗北は必定であったのだ。
「まだ……まだだ、私は……」
 大量のヴィランの霊たちが交差点にあふれかえる。
 猟兵たちは未だ存在しているが、あの少年『イオ』さえ殺してしまえばなんとでもない。あの少年はヴィジランテであるが、ユーベルコードを持たぬ存在。
 ならばこそ、彼を殺すことは容易。だが、猟兵が如何せん邪魔だ。
 此処は耐えて、耐えて……再起を計るしかない。

「んー……いや……企みがばれた時点で終りというか……それ、イオに見破られて作戦失敗したから力押しでどうにかしようってだけだよね」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は大量に発生したヴィランの霊達を前にして、そう評した。
 結局の所、力押しでしか無い。
 だが、逃亡に力を全振りされなくてよかったと思った。どちらにせよ逃すつもりはなかったが故に、この状況はメンカルにとっては好都合であった。
 周囲に展開されたアリアドネの組紐が魔力を伴ってヴィジランテの少年『イオ』を護り、また同時に『ラグネ・ザ・ダーカー』を逃さぬ網とするのだ。

「だが、お前たち猟兵は個としての力は私に及ばない……だからこそ、力押しであの少年を殺す!」
 放たれた悪霊の如き形相でヴィランの霊たちがメンカルと『イオ』を殺そうと迫る。
 だが、メンカルの手に輝く黎明剣『アウローラ』が浄化の術式を搭載された輝きを放つ。
「我が剣よ、歌え、踊れ。汝は残星、汝は晨明。魔女が望むは彼誰煌めく星嵐」
 ユーベルコードが輝き、メンカルの持つ黎明剣『アウローラ』を極小の刃の花びらへと変え、舞い散らせる。
 それは一瞬で大量のヴィランの霊たちを浄化し、切り裂いては霧散させていく。
 まさに暁天踊る集い星(デイブレイク・ストーム)。
 そのユーベルコードはメンカルの積み上げた知識と研究の結果であったことだろう。連綿と紡がれてきたユーベルコードは、この場に置いて『ラグネ・ザ・ダーカー』のユーベルコードを狙い撃ちにした圧倒的な浄化能力で持ってヴィランの霊たちを無力化するのだ。

「こんな、ことが……! だが! 私は悪意の創意。人々の心に悪意が在る限り……!」
 飛翔能力は未だ失われていない。
 浄化の力を籠められた刃の花びらが『ラグネ・ザ・ダーカー』を襲うが、『イオ』へと迫る彼女を止められない。
 浄化の力は確かに作用しているのに、それでも止められぬとはどれだけの悪意を内包した存在であるのかも知れぬ。

 そして『イオ』は力持たぬ存在だ。
 メンカルさえ躱してしまえば、ヴィジランテの少年を殺すことなど造作もないはずだ。
「君を殺して、私は再び何者かに成り代わろう。君さえいなければ――!」
 拳を振るう。
 この一手で全てが覆る。『ラグネ・ザ・ダーカー』は嗤った。どれだけ人の善意が集まろうが、悪意は無限大である。
 何処まで行っても消えることなど無いのだ。人の悪意だけが増していく世界。容易く人は悪意に感化されるのだから。

「……そう、お前はそうする。『イオ』がユーベルコードを持たぬ存在、ヴィジランテであることをしっている。何も出来ないと思っている」
 メンカルの言葉が嫌に鮮明に『ラグネ・ザ・ダーカー』の耳に届いた。
 何を言っている?
 この一手で戦況は覆るというのに、何故。
 そう、『ラグネ・ザ・ダーカー』は終始、猟兵しか見ていなかった。殺す対象としてのヴィジランテ『イオ』のことは見ても居なかった。
 警戒するに足るとすら思っていなかったのだ。

 だが――。

「母さんと……みんなの。そして、『ブラック・サン』に報いるためには――!」
 彼が手にしていたのは術式装填中『アヌエヌエ』。
 それはメンカルの術式が装填された回転式拳銃。恐らく銃を扱ったことのない『イオ』では当てられないだろう。
 しかし、『アヌエヌエ』には照準補正機能が付いている。銃口を向けさえすればいいのだ。
 弾丸が放たれ、その一撃が『ラグネ・ザ・ダーカー』の眉間を撃ち貫く。

 驚愕に見開かれた『ラグネ・ザ・ダーカー』の瞳が漸くヴィジランテ――『イオ』の顔を見据えたときには何もかもが遅かった。
 メンカルの放った浄化の力宿した刃の花びらが彼女の体を散々に切り裂き、霧散させる。

 ここに猟書家『ラグネ・ザ・ダーカー』は滅びた。
 不可逆なる生命は、決して取り返すことはできない。けれど、それでも正当なる怒りの前に悪意は潰える。
 それを証明するようにヴィジランテの少年の瞳には初めて涙が溢れ、大粒の涙が零れ落ちていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月24日


挿絵イラスト