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殺戮者の饗宴、嗤うは凶獣

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ディガンマ #殺人鬼

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「……お前達もご苦労なことだな。縁もゆかりも無い連中のために、ここまでするか」

 森の木々が紅葉に色づいたとある不思議の国で、猟書家『ディガンマ』はそう呟いた。
 無頼のように振る舞いながらも隙のない立ち居振る舞いに、野獣を思わせる鋭い眼光。
 口元に不敵な笑みを浮かべて彼が見回すのは、自身を取り囲む若い少年少女達だった。

「縁もゆかりもない、じゃない。この国のみんなは僕らのことを恐れなかった」

 数はおよそ十名前後だろうか。代表と思しき1人の少年が殺戮刃物を突きつけて語る。
 風貌だけを見ればどこにでもいる普通の子供達。だが彼らが放つ殺気はとても子供が放つようなものではなく――それどころか"人間"の域を逸脱しているようにすら感じる。

「いらっしゃい、と言ってくれた」
「いっしょにご飯を食べた」
「たくさん遊んだ」
「私達を、普通の人間として扱ってくれた」

 魂を賭けるには、それで十分過ぎる――血塗られし"殺人鬼"達の意志は共通していた。
 この国を守るために、彼らは全てを擲つ覚悟でディガンマの前に立ちはだかったのだ。

「健気な忠誠心だ。しかし分かっているのか? その決断がお前達に何をもたらすのか」
「―――っ?!」

 ディガンマを包囲する殺人鬼達のさらに外側から、木陰に紛れた"何か"が姿を現す。
 風貌は若い人間のようだが、ひと目で人ではないと感じられる異質な気配。それは偶然か、あるいは必然か、殺人鬼の子供達が纏う"それ"と不気味なほどに酷似していた。

「我らは『咎鬼』。咎人の宿命を悟り、殺戮の輪廻に魂を委ねし者なり」

 鮮血で出来た赤黒い殺戮刃物を構えて、彼らは"後輩"達にそう名乗った。
 秘められし殺戮衝動を解き放った者の末路。衝動に支配された殺戮の鬼。
 彼らが刃を振るうは、ただ「殺したい」という純然たる狂気のみである。

「これ以上殺戮衝動を解放すれば、お前達も"こう"なる。その覚悟はあるのか?」
「……だったら。相打ちになってでも、ここにいる"全員"皆殺しにするだけさ」

 挑発するようなディガンマの問いかけに、殺人鬼の子供達は凶暴な笑みで答える。
 決めたのだ。人であることを捨ててでも、この国にいるみんなだけは守り抜くと。
 この国からもらったぬくもりを返すために、自分達ができるのはこれだけだから。

「いいだろう。なら教えてやる。お前達が全てを捨てても届かない『例外』を……!」

 "例外"の名を冠する魔獣が吠える。血風が舞い、紅葉をより深い朱に染め上げる。
 殺人鬼と殺人鬼。宿業に憑かれた者達の争いの果てに、生き残る咎人は誰か――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「アリスラビリンスを侵略する猟書家『ディガンマ』が、配下を率いてとある不思議の国を殲滅しようとして……いました」
 あえて過去形で語ったということは、まさかもう手遅れになってしまったのだろうか。
 顔色を変える者もいる中、リミティアは首をふるりと横に振り、詳しい説明を始めた。

「この猟書家の襲撃はすでに"ある者達"に察知されていました。彼らはディガンマがやってくる前に住民を避難させ、逆に敵を"狩る"為に罠を張っていたのです」
 猟書家の計画を未然に頓挫させたその者達とは、「殺人鬼」の業を背負うアリス達だ。
 彼らは普段抑えている殺人衝動を完全に開放し、不思議の国を守るためにディガンマとオウガの軍勢に襲いかかった――もう二度と"戻ってこれない"覚悟と引き換えにして。
「殺人衝動を全開にした殺人鬼達の戦闘能力は驚くべきものです。その力はこの一戦のみなら猟兵に匹敵するかもしれません。ですがそれはあくまで一時的なもの……この戦い、勝つにせよ負けるにせよ、彼らは最終的に殺戮衝動に飲まれてオウガ化してしまいます」
 生きながらにして人がオブリビオンになるという異常事態。猟書家からすればこの妨害は予想外だっただろうが、結果的には僥倖とさえ言える。強力な殺人鬼達がオウガ化すれば、彼らの首魁『鉤爪の男』が目論む「超弩級の闘争」の実現は大いに近付くだろう。

「しかも今回の敵は彼らにとって"相性が悪い"相手です。なぜならディガンマが引き連れてきたオウガとはまさに、殺戮衝動に支配されオウガ化した殺人鬼なのですから」
 自らを『咎鬼』と名乗るオウガの集団は、今だ「人」の側に留まっている同族達に嬉々として戦いを挑む。彼らが発する狂気は敵・味方問わず伝染し、殺人衝動を加速させる。自分達の末路と言える者と戦わされた殺人鬼達が、闇に堕ちるのはあっという間だろう。
「このままではどちらが勝つとしても、残るのは狂気に支配された真正の化け物だけです。皆様は殺人鬼達が正気を失う前にこの戦いに介入し、彼らの暴走を止めて下さい」
 全てを捨てる覚悟の成せる技か、戦況は殺人鬼達がオウガの大軍に対して優位を取っている。だが、このままでは彼らが『咎鬼』の仲間入りをするのは時間の問題。猟兵は彼らと共にオウガと戦いながら、殺人衝動を適度に抑えるよう働きかけなければならない。

「咎鬼は数が多く、ディガンマも強大なオブリビオンですので、彼らの力なしで勝つのも困難です。必要なのは殺人鬼達に人としての一線を超えさせない、この一点に尽きます」
 同族である咎鬼との戦いは加速度的に彼らの正気を削っていくが、今ならばまだ言葉は届くはずだ。一度は化け物になることも覚悟した彼らに「まだ人間でいたい」と思わせるのは簡単なことでは無いだろうが――ここで諦めてしまえば待っているのは悲劇だけだ。
「説得の手段は皆様にお任せします。殺人鬼達の人間性を守りながら咎鬼の軍勢、そして猟書家ディガンマを撃破してください」
 全ての戦いが終わるまで殺人鬼達の心を守り抜けば、生き延びた者は元通り殺人衝動を抑えながら生きていくことができるだろう。けして容易な依頼ではないが、猟兵達ならば不可能ではないと、リミティアは確信を抱いている様子だった。

「この戦いに勝てば殺人鬼達を救えるだけでなく、敵の計画を挫く一歩にもなります」
 骸の月で現世を侵食し、新たなオブリビオン・フォーミュラとなってアリスラビリンスに「超弩級の闘争」を引き起こさんとする猟書家達の野望は、阻止しなければならない。
「不思議の国に本当の平和をもたらすために、どうか力をお貸し下さい」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、不思議の国への道を開く。
 待ち受けるは咎鬼の群れ。闘争を求める者達から、殺人鬼達の魂を守る戦いが始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はアリスラビリンスにて、猟書家の軍勢と戦う殺人鬼達のオウガ化を阻止し、猟書家『ディガンマ』を撃破するのが目的です。

 第一章はディガンマが連れてきた『咎鬼』の大軍との集団戦です。
 殺戮衝動に支配された殺人鬼の成れの果てであり、その狂気を伝染させる力を持つ彼らは、まだ闇に堕ちていない殺人鬼の衝動をも加速させます。殺人鬼達が咎鬼の仲間入りをしてしまわないよう、肉体以上に心を守りながら戦う必要があるでしょう。

 無事に敵軍を撃破できれば、二章は『ディガンマ』との決戦です。
 殺戮衝動を全開にした殺人鬼達が全力で戦っても彼を倒すには至りません。猟兵と共闘してようやくというレベルの強敵ですので、一章同様彼らの正気を守りながらの戦いになります。どうか油断なく挑んでいただければ幸いです。

 本シナリオは二章構成となり、全章共通で下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……殺人鬼達を適度に抑えながら、共に戦う。

 殺人衝動を解放した殺人鬼達は戦力としてはとても強いですが、このままでは戦闘後にオウガ化してしまいます。逆に彼らを戦わせずに猟兵だけでオウガを倒そうとしても、一章は数、二章は質の問題から難しい戦いとなるでしょう。
 なるべく彼らと連携しつつ、殺人衝動に呑まれないよう助けてあげて下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『咎鬼』

POW   :    生ある者、皆咎人なり!
【伝染する狂気に耐えられぬ者全員が殺戮鬼】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    殺戮の輪廻
自身の【魔剣】が輝く間、【殺戮衝動に侵された者全員】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    魔道への誘い
【今まで殺してきたアリスの残骸】を披露した指定の全対象に【正気を失う程の怒りの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

廻屋・たろ
守る為に戦う、すごくいいことだ
その気持ちを絶対に忘れないでね
お前達が同類である限り俺も力になるから

自分と同類へ【想影】を飛ばして[狂気耐性]を付与
同類、名前を教えてくれる?俺の名前も教えるから
お互いに呼びかけ合うことで衝動から呼び戻し合おう
大丈夫、あんな負け犬なんかよりお前達はずっと強い
だからみんなで帰ろう

『類同』、お前達は衝動を解放して自由になったつもりか?
それでやってることが猟書家の言いなりワンコとか最高にダサいな
向こうがこちらを激情させ、衝動を加速させるならUC【傷嘆】でそれすら呑み込んでやろう
[切断][串刺し]、遠くにいる奴には[投擲]
自分の衝動に負けるような奴に、俺達が負ける筈がない



「守る為に戦う、すごくいいことだ。その気持ちを絶対に忘れないでね」
 殺人鬼と咎鬼が睨み合う一触即発の戦場に、ダウナーな雰囲気を纏った少年が現れる。
 一体いつからそこに居たのか、声を発するまで誰にも気配を感じさせなかったその少年こそ、殺人鬼達を闇堕ちから救うために駆けつけた猟兵の一人――廻屋・たろ(黄昏の跡・f29873)だった。
「お前達が同類である限り俺も力になるから」
「あんたも……僕たちと一緒なのか?」
 衝動を解放した殺人鬼の1人が問いかける。その表情は見るからに殺気立っていたが、まだ敵味方の区別がつく程度の理性は残っているらしい。どうやら間に合ったようだと判断した猟兵の「アリス」にして殺人鬼は、真黒のカトラリーを手にして戦線に加わった。

「同類、名前を教えてくれる? 俺の名前も教えるから」
「ハインツ……仲間内からはそう呼ばれてる」
「いい名前だ。俺はたろ、よろしくハインツ」
 たろは肩を並べる殺人鬼達の名を尋ね、呼びかける。悠長に自己紹介している暇など――と思われるかもしれないが、"それ"が衝動から呼び戻すのに有効な手立てであることを彼は知っている。かつて信念のために大切なものを犠牲にし続けた彼に、唯一つ残された"それ"こそが、自分を見失わずにいる為のよすがなのだから。
「同類同士で慰めあいか? 下らない……お前達も堕ちてしまえば楽になれるものを」
 互いに呼びかけあう彼らの様子を咎鬼達は嘲笑い、【魔道への誘い】を仕掛けてくる。
 その手に掲げるのは何者かの指や髪、あるいは耳といった――今まで殺してきたアリスの残骸。まるでコレクションを披露するようにそれを見せつけられた瞬間、殺人鬼の少年少女は正気を失うほどの怒りを覚え、衝動のままに襲い掛からんとする、が。

「落ち着けハインツ、それにお前達も」
 ただ1人、咎鬼の挑発にも動じなかったたろが「想影」の包帯を同類達に巻きつける。
 彼がいつも両腕に巻いているそれには、装着者を狂気から保護する力がある。そのお陰で殺人鬼達は間一髪、殺人衝動に呑まれる前に我に返ることができた。
「大丈夫、あんな負け犬なんかよりお前達はずっと強い。だからみんなで帰ろう」
「ああ……ありがとう、たろ。行くぞ皆!」
 瞳に理性の光を取り戻した彼らは「おう!」と力強く叫びながらオウガに挑み掛かる。
 魔道への誘いを拒まれた咎鬼達も、血で出来た殺戮刃物を構え。殺しの宿業を背負った者達の戦いは、いよいよ本格的な血戦へと移行する。

「『類同』、お前達は衝動を解放して自由になったつもりか?」
 同類達の中に混ざったたろは、道を踏み外した元・同類に皮肉げな言葉を浴びせながら得物を振るう。一見すればごく普通の黒ずんだカトラリーも、彼の手にかかれば真剣よりもずっと危険な凶器に変わる。
「それでやってることが猟書家の言いなりワンコとか最高にダサいな」
「何を言う。お前達の方こそ、下らない理性だの常識だのに飼いならされた犬だ!」
 咎鬼はなおもこちらを激情させ、衝動を加速させようとして来るが、全身を包帯で覆ったたろには通じない。【傷嘆】を発動させた彼は否応なく精神を揺さぶるはずのそれすら呑み込んで、自身の戦闘力に変換する。

「そんな言葉じゃ俺は壊せない」
 常に心を苛む忌まわしき殺意の衝動、しかしこれは自分が其処にいた証明。己を見失わぬまま殺意と共に生きると決意したたろの心は『類同』如きの言葉に惑わされはしない。
 返礼とばかりに振るわれたカトラリーが咎鬼の骨肉をざくざくと断ち、心臓をぶすりと串刺しにする。洗練されたその手並みは、まさしく殺人技巧の粋を尽くしたものであり。
「自分の衝動に負けるような奴に、俺達が負ける筈がない」
 けして揺るがない彼の姿に感化されたように、同類達もまた我を失わず敵を惨殺する。
 暴走しかねない程の殺戮衝動と理性の奇跡的なバランスを保った彼らの力は、衝動に呑まれた者を圧倒し――その力に驚愕と戦慄を覚えながら、咎鬼の群れは駆逐されていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
瑠璃「行くよ、緋瑪」
緋瑪「行こう、瑠璃!」
「「殺人姫として、まだ戻れる弟妹達を救う為。そして、もう戻れない弟妹達を救う為に」」

緋瑪「わたし達は殺戮の業を負う者。それでも、守りたい者はある」
瑠璃「気持ちを昂らせないで。衝動に支配されず、大切な者を守る為の戦いを!」

【チェイン】で分身

瑠璃がK100の銃撃で牽制し、緋瑪が大量の接触式ジェノサイドボム【範囲攻撃、爆撃、蹂躙、早業】で広域爆破。
敵集団の足を止めた隙に「みんな」による連続攻撃で押し込み、瑠璃と緋瑪が機巧大鎌による爆発推進【推力移動、ダッシュ】で一気に接近。
敵集団を刈り取るよ

瑠璃「殺戮に捕らわれた弟妹達」
緋瑪「解放するよ、その殺戮の宿命から」



「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃!」
 血腥い殺戮現場と化した不思議の国で力強く声をかけあうのは、四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)の主人格と、彼女の中にいる別人格「緋瑪」。人格ごとに性格も嗜好もがらりと異なる彼女"達"だが、今その意志と目的はひとつになっていた。
「「殺人姫として、まだ戻れる弟妹達を救う為。そして、もう戻れない弟妹達を救う為に」」
 【チェイン・シスターズ】を発動させた彼女は異名の通り2人で1人の殺人姫となって踊るように戦場を駆ける。互いが互いの影であり主であるように、連携の取れた動きで。

「気持ちを昂らせないで。衝動に支配されず、大切な者を守る為の戦いを!」
 普段は多重人格のストッパー役であり常識担当の瑠璃が、自動拳銃「UDC-K100カスタム」で敵を牽制しながら殺人鬼達に呼びかける。衝動に侵され【殺戮の輪廻】に呑まれかけていた彼らは、その言葉ではっと我に返ったように目を瞬かせた。
「何を抗う? この衝動のままに全てを殺戮することが、我らのあるべき姿だろう!」
 咎鬼は凄まじい速さで血の刃を振るって銃弾を叩き落とし、なおも殺人鬼達を魔道に誘うが、そこに生じた僅かな隙を突いて、緋瑪が大量の「ジェノサイド ・ボム」を放つ。
「わたし達は殺戮の業を負う者。それでも、守りたい者はある」
 瑠璃達の魔力から生成された接触式の爆弾は、敵や地面に触れた瞬間に大爆発を起こして広域を爆炎に包む。爆風と衝撃によって敵軍の足並みが乱れたところに、追加召喚された別人格の分身達が一斉に切り込んだ。

「みんなお願い!」
「弟妹達の為に!」
 【オルタナティブ・ダブル】の戦闘用強化版と言える【チェイン・シスターズ】によって召喚された瑠璃の別人格達は、一時的に大きく戦闘力が増加している。メイン人格達と同じ銃や爆弾を操り、元が同一存在である故に巧みな連携を行う「みんな」の連続攻撃は、数で勝る咎鬼の群れと拮抗――どころか押し返してすらいた。
「私たちも続くよ!」
「ああ!」
 そこに殺戮衝動を解放した殺人鬼の子供達が加われば、戦いの天秤は一気に傾きだす。
 守りたい者の存在を心の支えにして、衝動に呑まれることなく戦う彼女らは強い。あっという間に押し込まれていく咎鬼達は、憎々しげな形相で鮮血の殺戮刃物を振り回す。

「何故だ、何故分からない! 『守る』など下らない、他人など全て殺せばいい!」
 殺戮の狂気に完全に取り憑かれた咎鬼は、もはや敵味方の区別もつかない様子で、無差別に近くにいる者に斬り掛かる。殺人鬼の末路とも言えるその姿に、瑠璃と緋瑪は憐れみの眼差しを向け――そして毅然とした表情で告げる。
「殺戮に捕らわれた弟妹達」
「解放するよ、その殺戮の宿命から」
 戦いの趨勢を決定付けるために、彼女らが構えるのは大鎌型の魔導可変機巧武装『死姫』。その機巧内に装填したボムの爆発を推進力に換えて、一気に敵陣の中に飛び込む。

「――――ッ!!!!」
 爆速で駆け抜けた瑠璃と緋瑪の一閃は、その軌道上にいた敵の命を余さず刈り取った。
 "斬られた"瞬間を認識することさえできぬまま、咎鬼の群れは骸の海へ還っていく。
 痛みを知ることもない速やかな死。それは2人から成れ果てた弟妹に送る慈悲だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルカ・ウェンズ
十名前後の少年少女達だけで、住民をみんな逃がしたのよね。すごいわ!
これは、いい鬼に違いないから殺人衝動に呑まれるとオブリビオンになるって聞いたし、それを伝えないと。私と少年少女達に【オーラ防御】を使いながら説明してみるわ。

殺人衝動に呑まれる→オブリビオンになってしまう→ヴァルハラにも修羅道ってところにも行けなくなる!だいだいあってると思うわ。

敵は咎鬼?悪い鬼でしかもオブリビオンだから、陸戦の王者で【先制攻撃】離れた場所にいる昆虫戦車に頼んでおいた【一斉発射】これで敵を攻撃したら、次に念のため【狂気耐性】がある私が【怪力】で叩き潰し、まだ生きていたら止めを刺すのは少年少女達に任せるわ。



「十名前後の少年少女達だけで、住民をみんな逃がしたのよね。すごいわ!」
 少人数でオウガの目論みを挫いてみせた子供達に、心からの称賛を送るのはルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)。これは、いい鬼に違いないからという理由で、彼女はこの若き殺人鬼達を全力で救けることに決めた。
「殺人衝動に呑まれるとオブリビオンになるって聞いたし、それを伝えないと」
 現場に駆けつけたルカはまず、すでに交戦中の少年少女達にオーラの防護膜を張り、身の安全を少しでも確保しつつ説明を行う。このまま殺人衝動を完全に解放してしまえば、あの咎鬼のようになってしまうと――だが殺人鬼の多くはそれでも構わない、と答えた。

「どうせ、僕たちは世界から捨てられた咎人」
「みんなを守るためなら、それでも……」
 忌まわしき衝動を捨てられない自らを嫌悪し、命どころか魂を犠牲にしてでも皆を守ろうという、悲壮な覚悟を少年少女は語る。だがルカはそんな彼らを"人"の側に引き止めようと、真剣に説得を試みる。
「このまま殺人衝動に呑まれる→オブリビオンになってしまう→ヴァルハラにも修羅道ってところにも行けなくなるわ! それでもいいの?」
「……??」
 あまりに端的過ぎて逆に分かりづらい部分もあったが、要するにこのままでは現世のみならず死後の安息すら失ってしまう、と言いたいのだろう。生きながらオブリビオンと化せばもはや自然に死ぬこともなく、永劫に殺戮衝動を抱えて彷徨うという事なのだから。

「お姉さんは、僕達が死んだ後のことまで心配してくれてるんですね……」
「だいだいあってると思うわ」
 ルカの気遣いは年若い少年少女の心に少なからず訴えかけるものがあったようで、それまで捨て鉢に戦っていた殺人鬼達はいくらか落ち着きを見せる。ルカはにこりと彼らに微笑みかけ、そして敵であるオウガの群れと改めて対峙する。
「敵は咎鬼? あっちは悪い鬼でしかもオブリビオンだから、遠慮はいらないわね」
「舐めるなよ……貴様も我らが魔道に屍を晒すがいい!」
 【殺戮の輪廻】を発動し、鮮血の魔剣を輝かせながら斬り掛かる咎鬼の群れ。だが彼らの刃がルカに届くよりも早く、彼女は後方待機させておいた「昆虫戦車」に指令を下す。

「撃て!」
 【陸戦の王者】により射程を強化された昆虫戦車は、咎鬼達のいる戦場から遥か遠方より、搭載された火砲を一斉発射する。放物線を描いて標的の頭上に降り注ぐ砲弾の雨は、轟音と共に見事な爆炎と血飛沫の花を咲かせた。
「ぐあッ?!」
「何だっ!!」
 予期せぬ遠距離からの先制攻撃に悲鳴を上げて吹き飛ばされる咎鬼達。彼らが体勢を立て直すよりも早く、変形式オーラ刀を構えたルカが疾風のような勢いで駆けこんでくる。

「これ以上悪さをする前に、悪い鬼は叩き潰さないと」
 狂気に耐性があるルカは咎鬼達が発する殺戮衝動に侵されることもなく、正気を保ったままオーラ刀を振るう。人間離れしたその怪力から繰り出される斬撃は殺人鬼にも劣らぬ鋭さを見せ、算を乱した敵を豪快にぶった斬っていく。
「まだ生きていたら止めを刺すのはあなた達に任せるわ」
「はいっ!」
 殺人鬼の少年少女もその後に続き、ルカが斬り捨てた敵の息の根を確実に止めていく。
 黒衣の仕事人を先頭にして、勇ましく戦う彼女らの様子は、まさに戦乙女に率いられるヴァルハラの英雄の如し――とまで言うのは流石に誇張が過ぎるだろうか。しかし誰かを守るためにオウガに立ち向かう志の気高さは、古の英雄にも決して劣ってはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
ん、みんなとってもいい人たち、だね。だからこそ、こんなところで心を失っちゃ、だめ。

わたしはアリスで、それなりに長くアリスラビリンスに、いたの。アリスの亡骸もそれなりに見てるし、「狂気耐性」もあるから正気を失うほどにはならない、はず。それはそれとしてむかつくけど、わたしが怒りに支配されちゃだめ、だよね。心を落ち着かせて、フルートを演奏してみんなにも落ち着いて、もらうよ。

そしたら今度はこっちの、番。【陽はまた昇る】で亡骸を浄化しながら敵を、攻撃。周りを光らせてみんなの力を高めて追撃してもらう、ね。ん、わたしはこの国も、全てを懸けてそれを守るあなたたちも助けたい、の。だから一緒に、頑張ろ?



「どれだけ人間ぶりっこを続けようが、人の世が咎人を受け入れる事はない」
 鬼と鬼とが命を奪いあう戦場は、猟兵が加勢した殺人鬼の子供達の優勢が続いていた。
 だが、堕ちた殺人鬼の成れの果てである「咎鬼」は、なおも少年少女を自分達と同じ道に引き込もうと余念がない。これ見よがしに彼らが振りかざす紅い魔剣は、今までに殺めたアリスの血を集めて創られたもの――言わば彼らの忌まわしき所業を示す残骸である。
「お前達もこちら側に来るがいい。無垢なの命を刈り、鮮血を浴びる愉悦に浸るがいい」
「貴様……ッ!」
 聞くもおぞましき行いをまるで武勇伝のように披露する咎鬼に、少年少女の怒りは沸点に達する。もう戻れなくてもいい、こいつらだけは生かしておけない――激情に身を委ねたまま彼らが敵に襲い掛からんとした時、どこからか穏やかなフルートの音色が響いた。

「この、音は……?」
 心を落ち着かせる不思議な笛の音に、ふっと我に返る殺人鬼達。それを奏でていたのはミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)――彼らを助けるために来た猟兵の1人。
「ん、みんなとってもいい人たち、だね。だからこそ、こんなところで心を失っちゃ、だめ」
 表情に変化こそないものの、彼女の言葉は笛の音と同じように穏やかで、優しく心に染み透る。誰かを守るために自らを犠牲にすることも厭わない、そんな者達だからこそ救われなければならないのだと、藍色の瞳には静かな決意が秘められていた。

「貴様、なぜ正気を保っている……?」
「わたしもアリスで、それなりに長くアリスラビリンスに、いたの」
 【魔道への誘い】を受けても動揺すら見せない相手に、訝しむように首を傾げる咎鬼。
 オウガの脅威に満ちあふれたこの世界を生き延びてきたミアは、その過程で同じアリスの亡骸もそれなりに見てきたし、同時に理不尽や狂気に耐える心の強さも培ってきた。非道な敵の行いに怒りを感じているのは皆と同じだが、正気を失うほどにはならなかった。
(それはそれとしてむかつくけど、わたしが怒りに支配されちゃだめ、だよね)
 ここで自分まで怒りに身を委ねてしまえば、皆の心を繋ぎ止める者は誰もいなくなる。
 ミアはすうと深呼吸して気持ちを落ち着かせると、再び「やすらぎフルート」を奏で、優しく穏やかな音色で殺人鬼達の心も落ち着かせていく。

「……そうだった。まだ僕たちは、心を失うわけにはいかない」
「馬鹿な……!?」
 一度は完全に殺人衝動に呑まれかけた者達が正気を取り戻していく様を見て、咎鬼達は信じられないと言わんばかりに声を上げる。伝染する狂気から皆を守り抜いた少女は、そんな連中を睨みつけ、フルートに代わってトランプのスートがあしらわれた杖を構える。
「今度はこっちの、番」
 唱えるのは【陽はまた昇る】。かざした「スートロッド」から一条の光が天に向かって伸びていき、魔法でできた太陽が蒼穹に浮かび上がる。その輝きは敵には浄化を、味方には強化をもたらし、大地を希望の光で満たしていく。

「ッ……なんだ、この光は……ぐあぁっ!!」
 浄化の陽光を浴びた咎鬼達は、まるでおとぎ話の吸血鬼のように苦しみだす。彼らが持っていたアリスの亡骸――鮮血の殺戮刃物は消失し、耐え難いほどの激痛が全身を襲う。
 ミアはロッドを通じて太陽に魔力を送り続けながら、殺人鬼の少年少女に呼びかけた。
「ん、わたしはこの国も、全てを懸けてそれを守るあなたたちも助けたい、の。だから一緒に、頑張ろ?」
「ん……ありがとう。わかったよ、私たちももう少し、頑張ってみる」
 まっすぐな想いを乗せた言葉を、諦めるなと励ますように射し込む光を受けて、殺人鬼達は今一度決意を固める。己を犠牲にしてでも誰かを守る覚悟ではなく、全てを守り抜いて、生き延びる覚悟を。

「諦めなければ、誰にもきっと、光は射す」
「いくぞーーーっ!!」
 陽光に満ちた戦場で、咎鬼の大軍に挑みかかる殺人鬼の少年少女。ユーベルコードの加護により強化された彼らの力はこれまで以上に高まり、もはや敵を完全に圧倒している。
 ただでさえ浄化の光に苦しんでいる咎鬼に、この攻勢に耐える術はなく――ミアと太陽が見守るなかで、殺人鬼達は一気に悪しき鬼を駆逐していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
大切な人達を護る為に、自分の命や魂を擲ってでも戦う。
その気持ちが有る限り人間です。
貴方達がこの国で笑顔で暮らしていけるよう、お手伝いします!
と、殺人鬼さん達を鼓舞しながら戦いますよ。

咎鬼達のUCは詩乃の初発之回帰で打ち消す。
その分、攻撃力は落ちますので、殺人鬼さん達と連携。

攻撃を受けそうな殺人鬼さんの周囲に結界術で防御結界を形成したり、咎人の動きを念動力で押さえたり、雷の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃・貫通攻撃で咎鬼達を痺れさせて、殺人鬼さん達の攻撃に繋げたりと。

詩乃自身はオーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防御しつつ、光の属性攻撃・神罰を籠めた煌月によるなぎ払い・衝撃波・範囲攻撃で斬り伏せます!



「大切な人達を護る為に、自分の命や魂を擲ってでも戦う。その気持ちが有る限り人間です」
 気高い覚悟を秘めてオウガと戦い少年少女に、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は慈しみをもって語りかける。尊ぶに値する善良な心を持つ者を、彼女はけして見捨てない。
「貴方達がこの国で笑顔で暮らしていけるよう、お手伝いします!」
 伝染する狂気から彼らを守るように前に出て、薙刀「煌月」の矛先を敵に突きつける。
 神としての威厳を感じさせる凛とした声と振る舞いに、衝動に呑まれかけていた殺人鬼達の心も奮い立った。

「無駄だ……どれだけ人の心にすがり付こうとも、貴様らもいずれ闇に堕ちる」
 狂気の淵から遠ざかろうとする少年少女に、咎鬼達は再び【魔道の誘い】を仕掛ける。
 その手で殺めたアリスの残骸を晒し、怒りと共に殺人衝動を加速させようと――だが、その試みは詩乃の【初発之回帰】によって阻まれる。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう」
 彼女の真の力――植物の神アシカビヒメの神力は僅かながら時間さえも操り、敵のユーベルコードを発動前に遡及させる。持っていたはずの残骸が消え、何が起こったのか分からず咎鬼達が困惑する、その虚を突いて殺人鬼達が殺戮刃物を手に一斉に斬りかかった。

「咎鬼達の異能や攻撃はこちらで防ぎます。その分、攻撃力は落ちますので」
「まかせて! 僕達も一緒に戦うから!」
 勇ましい殺人鬼達と連携して、詩乃は咎鬼との戦いを有利に運んでいく。攻撃を受けそうな者の周囲には結界術による防御壁を形成して、咎鬼の動きを念動力で押さえつける。
「少し派手にいきます、合わせてください!」
 結界と念力に阻まれて敵の攻撃が止まれば、お返しとばかりに雷撃を広範囲に放つ。
 閃光と共に稲妻の矢が咎鬼を射抜き、痺れさせた直後に殺人鬼の追撃が襲い掛かる。
 普段は抑えている殺人衝動を解放した彼らにかかれば、標的に一瞬の隙さえあれば、その命を刈り取るのは容易いことだった。

「がは……ッ」
 詩乃と殺人鬼達の巧みな連携により、次々と命脈を断たれていく咎鬼の群れ。いきり立つ彼らは鮮血の剣を振りかざして襲ってくるが、所詮殺人衝動に呑まれた外道の剣など、詩乃にとっては恐るるに足らない。
「人の道を外れた者に、容赦はしません!」
 鮮血の一閃はオーラを纏った神鏡「天耀鏡」に受け止められ、詩乃自身には傷一つ付けるられない。間髪入れず彼女は煌月に神罰の光を籠めて、思いきり横薙ぎに切り払った。

「斬り伏せます!」
 光を帯びた斬撃は、その得物の名のように半月の軌跡を描き。一拍の間を置いて、噴水のように鮮血を散らしながら咎鬼達が倒れ伏す。一太刀にて神罰を執行された彼らが、立ち上がってくることは二度と無かった。
「すごい……!」
「僕たちもやるぞ!」
 凛々しい詩乃の勇姿に鼓舞されて、殺人鬼達もここぞとばかりに追撃を仕掛けていく。
 数の上では圧倒しているはずの咎鬼は、今や完全に彼女らの連携に圧倒されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

自らの心が壊れても、大切な者達を守る…か
フッ…輝く黄金のような素晴らしい覚悟だ

デゼス・ポアを敵の周囲を素早く飛び回りながら攻撃
それに反応した敵の隙を付いて急所を見切りエギーユ・アメティストの紫水晶で部位破壊する
こうすれば超耐久力があろうと関係あるまい

君達の覚悟を私は心から尊敬する
故に、此処で君達を鬼にはさせないさ

共に戦うアリス達の殺人衝動が高まったらUCを発動
罪悪感を増幅させて人としての良心を思い起こさせる
潰れるほどの良心の呵責を与えれば、彼らも狂気に飲まれず戻ってこられるだろう

君達の罪は、君達を縛る枷となる…
そして、その枷があるから君達は人でいられるんだ
それを忘れないでくれ



「自らの心が壊れても、大切な者達を守る……か」
 生きながらオウガに――完全なる咎鬼となることを覚悟の上で、戦い続ける殺人鬼達。
 悲壮なまでの決意を宿した彼らを見つめながら、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は深い敬意を抱いていた。
「フッ……輝く黄金のような素晴らしい覚悟だ」
 まだ年端もいかない少年少女が、これほどの覚悟をもって戦いに臨めるのは、まさに逸材という他ない。そんな彼らだからこそ、ここで無碍にその命を散らしてはならないと、紫髪の戦場傭兵は呪いの人形「デゼス・ポア」を連れて戦線に突入する。

「行くぞ、デゼス・ポア」
「キャハハハハハハッ」
 オペラマスクを被った呪いの少女人形は、不気味な哄笑を上げながら敵の周囲を素早く飛び回り、全身を飾る錆びついた刃で切り刻む。異形なる者に対する強い憎しみと怨念が籠もったその攻撃は、咎鬼達にダメージと共に激しい苦痛をもたらした。
「ぐぁ、っ!!」
 それに反応して敵の動きが強張れば、その隙を突いてキリカが純白の革鞭「エギーユ・アメティスト」を振るう。紫水晶の針を意味するその名の通り、鞭の先端にあしらわれたアメジストが、蠍の尾のように敵の急所に突き刺さった。

「こうすれば超耐久力があろうと関係あるまい」
 殺戮の狂気に身を委ねた咎鬼は、理性と引き換えに凄まじい攻撃力とタフネスを誇る。
 しかしそれは技量と戦術によって覆せない差ではない。歴戦の戦場傭兵であるキリカにとっては、むしろ理性なき獣と化した敵はあしらいやすい相手ですらあった。
「あ、貴女は……? うぅっ……!」
 華麗なほど鮮やかに咎鬼の群れを退けるキリカの姿は、殺人鬼の少年少女も見ていた。
 伝染する狂気と内なる殺戮衝動に苛まれ、今にも正気を失いそうなアリス達に、彼女は優しい表情で語りかける。

「君達の覚悟を私は心から尊敬する。故に、此処で君達を鬼にはさせないさ」
 エギーユ・アメティストの紫水晶が輝きだし、疾風のような一打ちが殺人鬼達を叩く。
 それは肉体を傷つける攻撃ではなく対象の精神と気力に作用する【罪過の棘】の一撃。
 心を強く揺さぶり「罪悪感」という感情を増幅させることで、殺人衝動にかき消されかけた人としての良心を思い起こさせる、叱咤と激励の一打だった。
(潰れるほどの良心の呵責を与えれば、彼らも狂気に飲まれず戻ってこられるだろう)
 多少の荒療治ではあるが、強い覚悟を持った彼らであれば、完全に心が押し潰されはしないだろうと信じてのこと。白鞭に打ちのめされた少年少女は最初こそ苦しげに呻いていたものの――やがて顔を上げた時には、彼らの瞳には理性の光が戻っていた。

「君達の罪は、君達を縛る枷となる……そして、その枷があるから君達は人でいられるんだ。それを忘れないでくれ」
「……はい。僕達はもう逃げません。この罪から……魂に刻まれた衝動から」
 潰されることなく己の咎と向き合う決意を新たにした殺人鬼達からは、これまで以上の気魄が漲っている。それは咎鬼達が発する殺戮の狂気をかき消してしまうほどに、強い。
 狂気に折れぬ心の芯を得た彼らは、キリカと共に咎鬼の掃討にかかる。どれほどの数がいようとも、今や彼女達の前には余程の「例外」でもなければ、敵になりはしなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
大切なモノを守ろうとするこの子達は間違いなく人間よ

殺人鬼の子達を【念動力】【サイコキネシス】で覆い、外部からの狂気影響を遮断すると共に精神干渉で殺戮衝動を能力を十全に発揮できる状態で抑制。抑えきれない分はわたしが負荷として引き受ける事で助けるわ。

大切なモノを守ろうとする子達を見捨ててなんておけないものね。

自身も【血統覚醒】で真の姿にならないまでも一部力を解放。
敵の動きと伝染する狂気を【サイコキネシス】で封じ込めつつ、速度重視の魔力弾【高速詠唱、誘導弾】を牽制・敵のUCの囮にし、殺人鬼の子達を率いて【怪力】と連携により、敵を圧倒。
最後はあの子達に手を汚させない様に自身で全員仕留めるわ



「何故抗う。お前達も我々と同じ咎人であろうに……!」
「いいえ。大切なモノを守ろうとするこの子達は間違いなく人間よ」
 魔道へと誘う咎鬼達の言葉を否定し、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は殺戮衝動に抗いながら戦う殺人鬼達の人間性を肯定する。魂に殺戮の業を抱えていても、否それゆえに誰かを守ろうとする彼らの有り様は、愛おしくさえある。
「大切なモノを守ろうとする子達を見捨ててなんておけないものね」
 慈しむような微笑と共に、彼女が広げるのは【サイコキネシス】による念動力の波動。
 強固な精神力とサイキックエナジーから練り上げられた防御膜が殺人鬼の子供達を覆い、咎鬼からの狂気の伝染を遮断する。

「なんだろう……すこし、心が軽くなったような……」
 今にも呑みこまれそうな狂気と衝動に耐えてきた子供達は、頭の中を覆っていた靄がふっと晴れたような感覚に包まれる。フレミアの念動力は外部からの狂気を防ぐだけでなく、内なる殺戮衝動を抑制しつつ能力だけを十全に発揮できるよう精神に干渉していた。
「抑えきれない分はわたしが負荷として引き受けるわ。だから存分に戦いなさい」
 真祖の血を継ぐ吸血姫の精神は、たかだか十人前後の心的負担を肩代わりした程度で折れはしない。殺人鬼の子供達とそれほど変わらない外見年齢でありながら、その佇まいには生来の誇り高さがにじみ出し、どこか大人びた風格を漂わせていた。

「おのれ小癪な……貴様も我らと同じ狂気に染まるがいい……!」
 狂気の伝染を阻むフレミアに、咎鬼達は歯ぎしりしながら鮮血の魔剣を振りかざして襲い掛かる。自らの狂気に侵されたその精神は理性を失い、純然たる殺戮鬼と化している。
 大切なものを守ろうとする殺人鬼達が人間なら、何もかもを殺戮のために捨て去った彼らはただの怪物。嫌忌の眼差しを向けながらフレミアは【血統覚醒】を発動、真の姿にならないまでもヴァンパイアの力を一部解放し、強化された【サイコキネシス】を放った。
「これ以上、この子達に手出しはさせないわ」
「ぐぅッ?!!」
 不可視のサイキックエナジーは咎鬼の動きと伝染する狂気を強力に押さえつけ、心身共に封じ込める。紅く輝く吸血姫の瞳は一度捉えた標的をけして逃さず、指先をすっと虚空に踊らせれば、魔力の弾丸が敵陣に降りかかった。

「ッ……!!!!」
 理性を失った殺戮鬼の群れは、高速で飛来する魔力弾に反射的に気を取られてしまう。
 その隙を突いてフレミアに率いられた殺人鬼の子共達は、一気に攻勢へと打って出た。
「今よ!」
「はいっ!」
 精神干渉により安定した心のまま殺人鬼の力を最大限に発揮できる今の彼らにとって、囮の弾幕に気を取られた咎鬼など相手ではない。各々が扱い慣れた殺戮刃物を振るい、巧みな連携で標的を仕留める様子は、まるで猟犬の狩りを見ているかのようだった。

「その調子よ、貴方達」
 フレミアもまた人外の怪力をもって魔槍「ドラグ・グングニル」を振るい、殺人鬼の子達と共に敵を圧倒する。同時に戦闘不能となった咎鬼がいれば、止めは自らの手で刺す。
(あの子達に手を汚させないわ)
 人間としてあり続けるために衝動を押さえ込む彼らの手を、魔道に堕ちたとはいえ同類の血で汚させたくはない。言葉にはしないものの、それはフレミアなりの気遣いだった。
 かくして強大な力と誇り高さを示す吸血姫と、彼女に心を守られた殺人鬼達によって、咎鬼の群れは次々と蹴散らされていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
大切な人達を守ろうとする人間は強く「例外」なんて無い…。
守る為の強さ…今、見せてあげる…。

呪力による破邪の防御術【呪詛、オーラ防御、高速詠唱、破魔】を構築し、符に込めてみんなに付与…。
破魔の力で殺戮衝動を抑え、敵の狂気から防御するよ…。
後はミラ達を見れば可愛さできっと狂気なんて吹っ飛ぶ…(ふんす)

後は常に互いをフォローする様に指示し、みんなと連携して交戦…。
凶太刀の高速化で加速しつつ、敵の魔剣を凶太刀、神太刀で捌き【神滅】を発動…。
咎鬼のオウガとしての核…殺戮衝動と力の源を斬り捨てるよ…。

彼等も元は人間なら、これで戻れるかもしれない…。
殺人鬼だとしても、彼等は人間だよ…。
救える命は、救いたい…



「大切な人達を守ろうとする人間は強く『例外』なんて無い……」
 人であろうとする殺人鬼と人であることを捨てた咎鬼とが鎬を削る戦場で、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は彼方にいる猟書家「ディガンマ」の姿を捉え、そう呟いた。
 自らを「例外」と名乗る男は今だ戦いに加わることなく眺めている。あるいは殺人鬼が闇に堕ちるのを待っているようにも見えるその態度に、彼女は静かな憤りを感じていた。
「守る為の強さ……今、見せてあげる……」
 この殺人鬼達と同様に、璃奈が戦う理由の根底にも、命を救いたいという想いがある。
 その意志がもたらす力を、高慢なる猟書家に示すために――魔剣の巫女は呪符と妖刀を構えて戦線に立った。

「生ある者、皆咎人なり! 共に魔道に堕ちようぞ!」
「っ、黙れ……僕達は、お前らとは違う……っ」
 敵は放埒なまでに狂気をさらけ出し、殺戮衝動のままに闘争の愉悦に浸る咎鬼の群れ。
 敵味方問わず伝染するその狂気は、対峙する殺人鬼の子共達の心を急速に蝕んでいく。
「っ……だめ……だ……っ?」
「きゅー!」
 彼らの意識が衝動に呑まれそうになった時、ふいに可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
 はっと振り返ってみれば、そこには3匹の仔竜がぱたぱたと翼を羽ばたかせ、つぶらな瞳で殺人鬼達を見つめていた。

「ミラ達を見れば可愛さできっと狂気なんて吹っ飛ぶ……」
 これぞアニマルセラピーならぬドラゴンセラピー。自慢の家族のかわいさにふんすと心なしか得意げな顔をしつつ、璃奈は符に込めた呪力による破邪の防御術を付与していく。
 貼り付けられた符から放たれる破魔の力は内なる殺戮衝動を抑え、外からの狂気を防御する。仔竜達の働きでほっと心が和んだお陰もあったのだろう、一時は咎鬼になりかけていた子供達の心は無事に闇の淵から引き戻される。
「あ、ありがとう……あなた達がいなかったら、私はもう……」
「気にしないで……それよりも今は戦いに集中……」
 お礼を言おうとする子らを制して、璃奈は右手に「九尾乃凶太刀」、左手に「九尾乃神太刀」の二刀を構える。狂気の侵蝕を防いでも、その元凶たる咎鬼の群れはまだ健在だ。

「常に互いをフォローする様に、みんなで連携して戦おう……」
「うん、わかった!」
 正気を取り戻した殺人鬼達は璃奈の指示のもとで一丸となり、敵の大軍に立ち向かう。
 理性を捨てて完全な殺戮者となった咎鬼は強大だが、皆で戦えば付け入る隙はある。まずは璃奈が凶太刀の呪力によって自身を加速させ、猛スピードで敵の注意を引き付ける。
「こやつ、速い……ッ?!」
「いまだ! 切り込めっ!」
 翻弄された敵の懐に殺人鬼が肉迫し、殺戮刃物の一撃が血飛沫を散らす。怒った咎鬼は反撃を仕掛けるが、すかさず割って入った璃奈が二振りの妖刀で鮮血の魔剣を捌ききる。

「神をも滅ぼす呪殺の刃……あらゆる敵に滅びを……」
 直後に璃奈は【妖刀魔剣術・神滅】を発動。飛躍的に高まる呪力を妖刀に籠めて、目にも止まらぬ速さで目前の敵を斬り捨てる――だがその一太刀は咎鬼の肉体には傷一つ付けることなく、かの者のオウガとしての核、すなわち殺戮衝動と力の源のみを断ち斬った。
(彼等も元は人間なら、これで戻れるかもしれない……)
 祈るように刀を引く少女の前で、倒れ伏した咎鬼の心身から邪悪な気配が消えていく。
 どうやら彼は殺人鬼達がなりかけていたように、生きながらにしてオウガとなった者だったようだ。オウガ化の原因である殺戮衝動が消えたことで、元の生者に戻れたらしい。

「ほう……そっちのガキどもだけでなく、こいつらまで助けるのか。実に酔狂なことだ」
 殺さずに咎鬼を狂気から救った璃奈の行為を、遠くから眺めていたディガンマが嗤う。
 彼からすれば敵をわざわざ助けるなど、無意味で無価値な行いでしかないのだろう。
「殺人鬼だとしても、彼等は人間だよ……。救える命は、救いたい……」
 しかし璃奈からすれば可能性がある命に救いの手を伸ばさないほうが、あり得ないことだった。時として不利ともなり得るその信念は、しかし彼女の力の支えともなっている。
 たとえオウガが嘲笑おうとも、彼女はこの戦い方を変えるつもりはない。"守る為の強さ"を示す魔剣の巫女の勇姿は、共に戦う殺人鬼達の心にも深く刻まれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
彼らは…あの殺人鬼たちは、かつての俺と同じだ
人狼としての闘争本能と焦燥感を持て余していた
そして「守るべき者」を得て、人として生まれ変わった俺と

「何気ない日常という安らぎをくれたから」
それだけで、命を懸けて守る理由には十分だ
その想いだけは決して手放すな
俺達もまた、君たちの「絆」を守るために来たのだから

敵は速く動く者を狙ってくる
なら俺は、不利を承知で敵地に飛び込み囮となろう
君たちは落ち着いて、その隙を突き敵を討て

この胸の「フェオの徴」に刻んだ、彼女のくれた優しさと共に
【守護騎士の誓い】を抱いて駆け抜ける
何者も恐れぬ勇気と覚悟を決めた
この身を襲う激痛や狂気にも耐えてみせよう

ヘルガ……俺に力を……!



(彼らは……あの殺人鬼たちは、かつての俺と同じだ)
 内なる殺戮衝動に苛まれながら、邪悪なるオウガの大軍と懸命に戦う少年少女の姿に、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は昔の己を重ね合わせていた。
(人狼としての闘争本能と焦燥感を持て余していた、そして「守るべき者」を得て、人として生まれ変わった俺と)
 獣のように戦場を彷徨うだけの己に聖騎士としての生き方を、そして「人を愛する心」という大切な芯を与えてくれた、あの出会いと同じ人生の岐路に彼らは直面している。
 ならば己が為すべきは、"先達"として彼らがこの試練を乗り越えられるよう力を貸すことだろう。その胸に希望の灯を燃やしながら、蒼き狼騎士は勇ましく戦線に立つ。

「我ら皆咎人なり! 汝もまた殺戮鬼となろうぞ!」
「い、嫌だ……私にはまだ、守らなきゃいけないものが……っ!」
 衝動のままに鮮血の魔剣を振りかざし、気炎を吐き散らしながら暴れ回る咎鬼の群れ。
 伝染する狂気に耐えかね、1人の殺人鬼が膝をついた時、頭上から鮮血の魔剣が振り下ろされる――その刹那、差し込まれた片手半剣の刀身が凶刃を受け止めた。
「『何気ない日常という安らぎをくれたから』。それだけで、命を懸けて守る理由には十分だ」
「あ、あなたは……?」
 致命の一撃を防いだ狼騎士ヴォルフガングは、目を丸くしている殺人鬼に語りかける。
 自分もそうだからこそよく分かる。人には時に命よりも大切なものがあり、それを守るためならどんな苦境にも耐えられる。強き想いこそが闇を照らす希望の道標となるのだ。

「その想いだけは決して手放すな。俺達もまた、君たちの『絆』を守るために来たのだから」
「……はい!」
 立てるか、と差し伸べられた手を取って、その殺人鬼は力強く立ち上がる。一度は狂気に染まりかけたその瞳には、若い情熱と信念の光が宿っている――それを見たヴォルフガングは莞爾として笑い、肩を並べて敵の軍勢と対峙する。
「敵は速く動く者を狙ってくる。なら俺は、不利を承知で敵地に飛び込み囮となろう。君たちは落ち着いて、その隙を突き敵を討て」
「それは……大丈夫なんですか?」
 彼が告げた作戦は、彼自身の負担があまりに大きいものだった。実力からすれば適任とは言え、心配そうな顔をする者もいる。だが彼は一同を安心させるように力強く笑った。

「心配はいらない。さあ、往くぞ」
 バスタードソードを両手で構え、全速力で敵陣の真っ只中に飛び込むヴォルフガング。
 その胸に抱くのは【守護騎士の誓い】。刻まれた「フェオの徴」が、愛する彼女のくれた優しさが、この身を盾と成して命を懸けて守り抜くという志をより堅固なものにする。
「ヘルガ……俺に力を……!」
 理性を捨てた殺戮鬼達は容赦のない攻撃を仕掛ける。だが何者も恐れぬ勇気と覚悟を決めた彼の足を止めることは何者にもできない。我が身を襲う激痛や狂気にも耐えてみせ、意思力に裏打ちされた驚くべき身体能力で、蒼き狼騎士は戦場を駆け抜ける。

「今だ……!!」
 敵群の注目が全てヴォルフガングの元に集まった瞬間、待機していた殺人鬼達が一斉に打って出る。騎士の覚悟に報いようとする彼らの刃はより鋭く、敵の命脈を確実に断つ。
 完全に気を取られていた咎鬼達に、この奇襲を対応する術はなかった。囮役を果たしたヴォルフガングが振り返った時、そこには敵軍を駆逐してゆく少年少女の勇姿があった。
「よくやった」
 守るべき者を自らの手で守り抜いた若者達に、騎士は満足そうな顔で微笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
アリスの残骸を披露する咎鬼。
その瞬間、カビパンは大笑いした。
地面をハリセンで叩き転がり可笑しくてたまらないと笑う。

「私がSATSUGAIしてきた連中に比べれば可愛いもんよ」
背後も意味不明な発言だが殺人鬼達を始め、咎鬼達が驚愕。
そして一斉に叫んだ。

「カ、カビパンさんが降臨されたんだ!」
「あの敵味方関係なく、音痴でSATSUGAIする邪神。サインください!」

「デビル・カビパン様が真のSATSUGAIを教えてやる!」
デビルな怒号が響き渡り、聖杖を構えた。
その場にいる全員が合いの手を打ち、コールが始まる。

カビパン・ワールドは敵・味方問わず伝染する。
殺人鬼達も咎鬼達も音痴歌で狂気と正気を失って気絶した。



「愚かな奴らめ。正気など捨て去ってしまえば楽になれるぞ?」
「それとも、この連中のように無惨な屍になるほうが望みか?」
 戦いが激しさを増していく中でも、オウガは殺人鬼に【魔道への誘い】を続けている。
 今まで殺してきたアリスの残骸を披露し、怒りの炎を煽り立てようとする咎鬼。だがその瞬間、返ってきたのは怒号ではなく爆笑だった。
「あははははははは! こりゃ可笑しいわ!」
 バシバシと地面をハリセンで叩いて転げまわり、可笑しくてたまらないとばかりに大笑いする、彼女の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。一体何がそこまで可笑しいのかと咎鬼達は訝しむが、それからの展開は彼らの理解を超えていく。

「私がSATSUGAIしてきた連中に比べれば可愛いもんよ」
 ひとしきり笑ってからカビパンはすっくと立ち上がり、さっきまでの爆笑が嘘のようにキリッとした顔でのたまう。誰が聞いても意味不明な発言だが、それを聞いた敵はもちろんのこと、味方である殺人鬼達までもが驚愕し、そして一斉に叫んだ。
「カ、カビパンさんが降臨されたんだ!」
「あの敵味方関係なく、音痴でSATSUGAIする邪神。サインください!」
 一体どこの不思議の国でどんな噂を聞いたのだろうか。目をキラキラと輝かせる彼らの表情は尊敬と崇拝のそれであり、たぶん絶対にロクな噂を聞いていないのは確実である。
 【ハリセンで叩かずにはいられない女】が降臨した戦場では、全てのシリアスはボケとツッコミの嵐によってギャグの世界に塗り替えられる。それまでの狂気に満ちた空気ががらりと変わったのに咎鬼達も気付いてたが、さりとてどうすることもできなかった。

「デビル・カビパン様が真のSATSUGAIを教えてやる!」
 ファンになった殺人鬼をサインの代わりにハリセンで引っ叩きつつ、カビパンはデビルな怒号を響き渡らせ、聖杖をマイクのように構えた。事前に彼女の噂を聞いていた者はこれから何が起こるのかを察して、嬉々として合いの手を打ち、コールを始める。
「「「かーびーぱん! かーびーぱん!」」」
 熱狂は彼女のことを知らなかった者さえも巻き込んでいき、やがて敵味方を問わずその場にいる全員の大合唱となる。奇しくもそれは咎鬼が本来使用するユーベルコードと似た結果である――この状況、明らかに全員の理性がどこかに吹っ飛んでいるのも含めて。

「聞け! デビルでアグレッシヴなSATSUGAIソングを!」

 かくして始まる【カビパンリサイタル】。どのへんがデビルなのかはさっぱり不明だが、地獄めいているのは間違いない音痴歌が聴衆のメンタルをメタメタに破壊していく。
「き、聞きしに勝る破壊力……」
「これが真のSATSUGAI……」
 殺人衝動と同じようにカビパン・ワールドも敵・味方問わず伝染する。その頃にはすっかり侵されきっていた殺人鬼と咎鬼達は、狂気も正気も失ってバタバタ気絶していった。
 結果的に敵を倒した上で殺人鬼達がオウガ化することも無かったので、成功か失敗かで言えば間違いないだろう――これを期に殺人衝動とは違う何かが目覚めなければいいが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
彼らの覚悟汲み全力で戦わせ、後の対処をするのも騎士としての務めかもしれません
…ですが、御伽の騎士はそうではありませんね!

彼らの言葉に耳を貸してはなりません
何故この地に残り戦うのか、その理由を常に思い浮かべ戦いなさい!

盾背負い片手は空手、もう片方にUC握りつつ戦闘
●操縦しロープワークで操るワイヤーアンカーを接続した剣を囮として高速でなぎ払いながら格納銃器で攻撃
殺人鬼達の挙動を●情報収集して●見切り敵の止め担当

呑まれた者が…!

推力移動で接近
怪力で抑え付けUC浅く突き刺し

(事前に)睡眠剤と鎮痛剤抜きにした鎮静剤の様な物です
心も狂気も生理機能と捉える乱暴なアプローチ
私にはこれしか…

さあ、行きなさい!



「彼らの覚悟汲み全力で戦わせ、後の対処をするのも騎士としての務めかもしれません」
 殺戮衝動に呑まれてでも敵を討たんとする殺人鬼達の気高い覚悟には、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)も感じ入るものがあった。正道の騎士であればここは彼らの覚悟を見届け、最期に介錯をしてやるのもひとつの選択かもしれない。
「……ですが、御伽の騎士はそうではありませんね!」
 おとぎ話における"騎士"とは、善き行いをする者達を助け、悪しきを討ち、ハッピーエンドをもたらす――少なくとも彼にとっては、そう。今だその境地には届かずとも、その理想像を目指し続ける機械仕掛けの騎士は、迷うことなく彼らを救けると決めた。

「彼らの言葉に耳を貸してはなりません」
 身の丈ほどもある大盾を背負い、片手は空手、もう片手に【慈悲の短剣】を握りつつ、血風舞う戦線に立つトリテレイア。その各部から射出されたワイヤーはまるで生きているかのように自在に動き、先端のアンカーに取り付けられた儀礼剣がオウガ共を斬り裂く。
「何故この地に残り戦うのか、その理由を常に思い浮かべ戦いなさい!」
「は、はい……!」
 力強く響く彼の言葉は、衝動に苦しむ殺人鬼達の心を鼓舞し、戦う理由を今一度思い起こさせる。自分達はオウガのように喰らうために殺すのではなく、守りたい大切なものを守るために戦うのだと。

「己の咎から目を背けてなんとする! 我らは皆咎人なり!」
 懸命に殺人衝動に抗う彼らを嘲笑うように、咎鬼達は完全な殺戮鬼と化して荒れ狂う。
 敵味方問わず狂気を伝播させ、理性を捨てて暴れ回る彼らはひどく楽しそうで――あるいは、楽そうだった。何もかもを捨てて衝動のままに生きれは、確かに何の呵責も重荷もあるまい。
「咎人ならば咎と向き合い、償いを忘れてはなりません……!」
 トリテレイアは確固たる意志でその狂気を拒み、剣を取り付けたワイヤーアンカーを高速で振り回す。敵が反射的にその動きを追って気を取られれば、その隙を突いて各部に格納された銃器が火を噴く。
「ぐが……ッ!!」
 獣のような断末魔を上げて、倒れ伏す咎鬼。戦況は猟兵と殺人鬼達の優位ではあった。
 だが時間が経過するにつれて、己の内にある衝動に、いよいよ耐えられなくなる者も現れる――。

「騎士さん!」
「呑まれた者が……!」
 ひとりの子供の叫び声に応じてトリテレイアが振り返ると、そこには今まさに"咎鬼"に堕ちかけている殺人鬼がいた。周囲にいた仲間達は必至に彼をこちら側に呼び止めようと声をかけているが、もはや言葉のみでは狂気を押し止めることができない様子。
「少々、荒療治となりますが、私にはこれしか……!」
 トリテレイアは覚悟を決めて、慈悲の短剣を彼に振るう。突き刺さった刃には幾つかの薬剤と、オブリビオンの悪影響を除去するナノマシンが封入されており、本来は安らかな最期を与えるための介錯の刃。だが今回は生者に振るうにあたって薬効を換えてある。

「なんだか急に頭がスッキリした……これは?」
「睡眠剤と鎮痛剤抜きにした鎮静剤の様な物です」
 心も狂気も生理機能と捉え、薬理的にその作用を制御しようという乱暴なアプローチ。
 真なる御伽の騎士であれば言葉や魔法で彼を救うのだろうが、トリテレイアにはこれしかない。だが、宇宙の科学理論に基づいたそれは間違いなく効果を発揮した。
「さあ、行きなさい!」
「はいっ!」
 背中を押すように力強く叫ぶと、正気を取り戻した少年は仲間と共に再び戦線に立つ。
 その姿に機械仕掛けの騎士は内心で安堵を覚え。彼らの心身を最後まで守り抜くために、自らは彼らの挙動に合わせて敵の止め担当として戦うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ…随分とはしゃいだ連中だ
殺しに悦楽を覚えるってのも、衝動が抑えられないってのも…わからねえな
殺しはただの方法…言うなれば作業の一つだからな
まぁ…出来る限りは面倒を見てやるさ
どうやらお前らは必要なピースらしいからな

なるほど、焚きつけて来るか
なるほど確かに下劣だが……生憎と殺人は山ほどやってきた身だ
が、こいつらはかなりやる気になってるようだし…そのままにしておくか
ヤバそうなら『Nighty night』に巻き込んで眠らせ、落ち着かせよう
つーわけで、ちょっと眠っておけよ
ほら、お前を解体したいって連中が沢山いるんだ
受け入れたまえ
さて、殺してる間に昂ってくるだろうし
もっぺん皆眠って貰って、鎮静化かな



「ハッ……随分とはしゃいだ連中だ」
 場に満ちた血の匂いに酔ったように戦う殺人鬼と咎鬼どもを目にして、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は皮肉げな笑いを漏らす。熱に浮かされたような戦場とは対照的に、彼は平時と変わらずクールであった。
「殺しに悦楽を覚えるってのも、衝動が抑えられないってのも……わからねえな。殺しはただの方法……言うなれば作業の一つだからな」
 恐らくはそれに取り憑かれた者にしか分からないのだろう、殺人衝動という宿痾の苦しみと悦びは。ゆえにこそ異端であり排斥される――今戦っている両者の違いは、その衝動と孤独にどう向き合ったかという結果に過ぎない。

「まぁ……出来る限りは面倒を見てやるさ。どうやらお前らは必要なピースらしいからな」
 あくまでもビジネスライクに殺人鬼を戦力とみて、ヴィクティムは彼らと肩を並べる。
 咎鬼どもはともかく、それを率いる猟書家「ディガンマ」は強敵だ。自らを例外と嘯く奴を確実に倒すためには、まだここで彼らに潰れてもらっては困る。
「どうした。もっと怒れ、もっと狂え! 我らを許せないのだろう?!」
 だがそんな算段をぶち壊すつもりか、咎鬼達はこれまでに殺してきたアリスの髪や肉体の一部といった残骸を披露し、挑発的な言葉と共に【魔道への誘い】を放つ。懸命に衝動に抗う者を嘲笑うようなその振る舞いは、少年少女の心を怒りに染めるのに十分だった。

「なるほど、焚きつけて来るか。なるほど確かに下劣だが……生憎と殺人は山ほどやってきた身だ」
 不快感を覚えこそすれ、その程度の挑発で心を揺らされるほどヴィクティムの戦歴は浅くはない。ゆえに怒りに我を忘れることもなく、その双眸は冷静に戦場を俯瞰している。
(が、こいつらはかなりやる気になってるようだし……そのままにしておくか)
 誘いを受けて明らかに殺気立っている殺人鬼達。湧き上がる怒りのままに敵に襲い掛かる連中を、彼は止めなかった。ヤバそうなら敵ごと巻き込んで眠らせて落ち着かせてやればいいと、ドライな思考のもとでサイバーデッキを操り、ユーベルコードを起動させる。

「つーわけで、ちょっと眠っておけよ」
 発動するのはSleep Code『Nighty night』――まどろみの海へ誘うプログラム。これに囚われた者は安らかな眠りと引き換えに、時間経過に伴い戦闘力が徐々に低下していく。
「う……っ、なんだ、これは……?」
「ふわ……? なんだか、急に眠く……」
 ヴィクティムの周囲にいた咎鬼と、怒りに狂いすぎた殺人鬼は、このコードによる強烈な睡魔に襲われる。殺人衝動による異常な興奮状態にあることを加味してなお、その眠りは抗いがたく、一人、また一人と意識を失ってぱたりと倒れ込む。

「ほら、お前を解体したいって連中が沢山いるんだ。受け入れたまえ」
 ヴィクティムにとってこの戦いは自分が手を下すまでもない。完全に眠らせる、あるいは戦闘能力を半減させてやれば、後は言わずとも殺人鬼達が進んで敵を始末してくれる。
 彼のプログラムは咎鬼を蕩けるような夢の世界に誘い、その間に現実では殺戮刃物が切り刻む。抵抗力を失った標的を起こさないよう仕留める程度、殺人鬼の技なら朝飯前だ。
「死ね……ッ!」
 目を爛々と血走らせながら、洗練された手付きで刃を急所に突き立てる殺人鬼の子ら。
 断末魔の悲鳴を上げることすらなく、咎鬼の群れは二度と覚めない眠りに堕ちていく。

(さて、殺してる間に昂ってくるだろうし、もっぺん皆眠って貰って、鎮静化かな)
 程なくして周辺にいた咎鬼が全て仕留められたのを見計らい、ヴィクティムはもう一度『Nighty night』を起動する。このユーベルコードによる眠りには戦闘能力低下に加えて負傷回復の効果もあり、インターバルの小休止として使うのにも適した能力だった。
「うぅぅ……っ、ふぁ……」
 標的を殺めてなお殺人衝動の昂りを抑えられずにいた殺人鬼達は、たちまち糸の切れた人形のように眠りにつき。来る猟書家との戦いに備えて、つかの間の夢を見るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・モーント
ここは素敵な不思議の国
少年少女をいじめるお兄さんたちは
踊り狂っていただかなくちゃ!

分かるのよ?分かるのだわ?
だってわたしもそうなのだから
手を取って、一緒に
家族みたいに、笑い合うの
その尊さはきっと恋に狂うよりも大切で何物もを捨てていいと思えるのだわ?

だからこそ
ああなってはいけないのよ?
いけないのだわ!
だってそれを悲しむ家族がいるのだから!

さぁ、家族の元へ帰るために
衝動になんて負けないのだと【鼓舞】し
狂おしい程の衝動という狂気への【狂気耐性】を乗せた
【恋歌狂奏曲「Viburnum」】を!

敵は【誘惑・誘き寄せ】て攻撃を【ダンス】するようにかわしたら
【傷口をえぐる・早業】の【暗殺】をおみまいするのよ!



「ここは素敵な不思議の国。少年少女をいじめるお兄さんたちは、踊り狂っていただかなくちゃ!」
 紫陽花色のドレスを翻し、結わえた赤い髪を揺らし、愉しげに、歌うように、戦場に躍り出るのはアリア・モーント(四片の歌姫・f19358)。透き通るような響きにどこか狂気をはらんだその声は、敵味方を問わずに聴衆の耳を惹きつける。
「キミは……」
 戦いの手を止めて目を丸くした1人の殺人鬼に、その少女はそっと近寄って手を握る。
 詩歌の一節を歌うように抑揚を付け、衝動に呑まれそうな彼を励ますように微笑んで。

「分かるのよ? 分かるのだわ? だってわたしもそうなのだから」
 アリアもまた殺人鬼の宿業を背負わされた「アリス」の1人。猟兵となっても仕立て上げられた本質は変わらず、その歌は自然と世界の理を歪ませて、骸の海からの使者をねじ曲げる――そんな彼女だからこそ、ここで殺人鬼の子らが戦う理由にも共感できる。
「手を取って、一緒に、家族みたいに、笑い合うの。その尊さはきっと恋に狂うよりも大切で、何物もを捨てていいと思えるのだわ?」
「うん……あのキラキラした瞬間を守るためなら、命だって、魂だって賭けられるんだ」
 歌姫の言葉に少年少女は頷く。逃れられぬ殺人衝動ゆえに、常に孤独だった自分達を受け入れてくれたこの世界と愉快な仲間たち。望んでも得られないと諦めかけていた、ごく当たり前の人としてのひと時――それを与えてくれた世界を、彼らは守りたいと願った。

「だからこそ、ああなってはいけないのよ? いけないのだわ!」
 アリアは微笑み、そしてくるりと踵を返すと、咎鬼の群れにぴしりと指を突きつける。
 無秩序に狂気をまき散らしながら【魔道への誘い】をかける、殺人衝動に支配された者の成れの果て。何を捨てる覚悟があったとしても、ああなってはいけないと彼女は説く。
「だってそれを悲しむ家族がいるのだから!」
 大切で愛おしい"家族"の笑顔を、曇らせるようなことはしてはいけない。ここで殺人鬼達が犠牲になるのをこの国の住民達は望まない。もう一度手を取り合って笑いあう、それは殺人鬼と愉快な仲間たちのお互いにとって、共通した願いのはずだから。

「さぁ、家族の元へ帰るために」
 衝動になんて負けないのだと彼らを鼓舞し、アリアは恋歌狂奏曲「Viburnum」を歌う。
 その唇から紡がれるのは魔法の歌。甘く蕩ける蜜のような、熱く燃え盛る炎のような、恋を題材にした旋律に少年少女が心震わせれば、何者にも負けない確信が彼らに宿る。
「歌って踊って追って逃げて、愉しい時間のはじまりよ?」
「うん! みんな行こう、家族のために!」
 力強い「おう!」という掛け声が少女の歌声と唱和し、刃物を握りしめた少年少女が駆けていく。その身のこなしは狂おしいほどの衝動に苛まれていたこれまでとは違い、踊るように軽やかで素早い。解き放たれた風のような動きに、咎鬼達が思わず目を丸くする。

「僕達は、みんなのところに帰るんだ。邪魔をするなっ!」
 魔歌の力に後押しされた殺人鬼の一閃が咎鬼の急所を抉る。もはや彼らが敵の誘いに我を失うことはなく、衝動と理性の均衡が保たれたことで殺人技巧に磨きがかかっている。
「馬鹿な……我らに帰る場所などない。ただ終わりなき殺戮の輪廻の彷徨うのみ!」
「そんなの、つまらないのだわ?」
 激昂する咎鬼達に、アリアがふふっと笑いかける。同じ宿業を抱える者でありながら、堕ちるのではなく、囚われるでもなく、羽が生えたように自由に振る舞う少女の様子は、堕ち果てた者にはどう映ったのか。その答えは敵意と殺意となって返ってきた。

「ならば貴様も我らが凶刃に果てよ!」
「それもお断りなのよ!」
 振り下ろされた鮮血の魔剣を、ひらりと踊るように躱して。流れるような手つきで抜き放たれたグルカナイフ「schalkhaft」の刃が、狂乱する咎鬼の喉を一振りでかき切った。
 他の殺人鬼達と比較しても、眼を見張るような早業。顔色ひとつ変えずに鮮やかな暗殺をお見舞いしてみせた少女は、返り血を浴びる前にその場を離れ、次の標的へと向かう。
「あら、もう踊り疲れちゃった?」
 可憐に舞うアリアと殺人鬼達の刃を受け、またたく間に倒れ伏していくオウガの大軍。
 やがて歌姫の喉が最後の一節を震わせた時、咎鬼達は一人残らず骸の海に去っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ディガンマ』

POW   :    引き裂く獣腕
単純で重い【獣腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    恩讐の獣霊
【周囲の廃品や不用品と融合する】事で【獣性を露わにした姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    縫い留める獣爪
命中した【獣腕】の【爪】が【怯えや劣等感を掻き立てる「恨みの針」】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠虚空蔵・クジャクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……ほう、やるじゃないか。まさか誰も正気を失わずに、この数を退けるとはな」

 全滅した「咎鬼」の屍をぐしゃりと踏みにじりながら、魔獣の気配を纏った男が嗤う。
 猟兵達の加勢によって、不思議の国を守るために立ち上がった殺人鬼の少年少女は皆、殺人衝動に呑み込まれていなかった。闇に堕ちる一線を越えさせなかった彼らの説得力と意志の強さを、猟書家「ディガンマ」は素直に称賛する。

「殺人衝動を全開にしながら理性を失わない殺人鬼に、それと同等以上の力を持つ猟兵か。これだけの戦力が揃っていれば、倒せぬ者など殆どいないだろうな」

 だが――と、男は獣化した左腕の爪をギラつかせ、前屈みの姿勢で身構える。それに伴って放たれるのは、これまでの咎鬼の狂気が稚気のように感じられる、凄まじい闘争心。
 猟兵達は本能的に直感する。たった今全滅させたオウガの大軍を束にしても、この男には敵うまい。それほどまでに彼の実力は凡百のオブリビオンとは隔絶している。

「お前達が、俺という『例外』すらも越える『例外』なのか、見せてみろ」

 眼光鋭く猟兵と殺人鬼を睨め付けるディガンマの顔には、凶暴な笑みが浮かんでいる。
 彼の根底にあるのは純粋な獣性、一度戦いだせば全てを破壊するまで止まりはすまい。ただただ圧倒的な暴力は、この国を守ろうとした殺人鬼達の想いも覚悟も踏みにじる。

 ――だが、そうはさせないために、猟兵達がここにいる。
 誰一人として命を落とすことも、人間性を失うこともなくディガンマを撃破する。それは決して簡単なことではないが、猟兵と殺人鬼が力を合わせれば不可能なことでもない。
 殺戮者の饗宴を、御伽の国にふさわしい「めでたし、めでたし」で締めくくるために、一同は「例外」を騙る者との決戦に挑む。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…『例外』を超える『例外』か
くだらん言葉遊びだな

シルコン・シジョンとオーヴァル・レイで遠距離から攻撃
一斉射撃でダメージを与えて敵を引き付ける
敵が接近して来たらナガクニとデゼス・ポアで対応
ナガクニの武器受けで防御しつつデゼス・ポアで斬撃を行う

さぁ、牙を振るえ
君達が守るべき者、守るべき場所のために

UCを発動
獣腕を見切り、カウンターで蹴りを振り下ろして叩きつけてそのまま怪力で抑え込み、一時的に敵の動きを封じたら少年少女達に合図
故郷のために戦う彼らの一撃を奴に浴びせ、とどめに蹴りを叩き込む

今此処にあるのは、お前が敗れ去るという『事実』だけだ
そして、その『事実』に『例外』は存在しない



「フン……『例外』を超える『例外』か。くだらん言葉遊びだな」
 傲慢なまでの自信に満ちたディガンマの発言を、キリカはつまらなさそうに鼻で笑う。
 己を「例外」だと嘯く凶暴なる猟書家。しかしそれを豪語するだけの実力が備わっているのを、彼女は幾多の戦闘経験から肌で感じ取っていた。
(油断はできないな)
 冷静な思考と共に気を引き締めて、神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"を構える。
 照準を合わせトリガーを引き絞れば、放たれるのは聖書の箴言が込められた洗礼弾。さらに滞空させていた浮遊砲台「オーヴァル・レイ」からも強力な粒子ビームが放たれた。

「ほう、変わったオモチャだな」
 実弾とビームによる一斉射撃に対して、ディガンマはにやりと笑みを深めると獣のように身を翻す。その俊敏さは弾速すらも上回り、数発の弾と光線のみがコートを射抜くが、さしたるダメージは与えられていない。
「だが俺の相手をするには力不足だ」
「さて、それはどうだろうな」
 獣のそれと化した左腕を振りかざし、無風の中を行くように弾幕をくぐり抜けるディガンマ。キリカもまた涼しい表情を崩さぬまま銃撃を続行し、敵を自身の元に引き付ける。

「では見せてみろ、お前の牙を」
 ディガンマは白兵戦の間合いまで距離を近付けると【引き裂く獣腕】の一撃を見舞う。
 単純で重く、それゆえに強烈な暴虐の技。キリカは瞬時にシルコン・シジョンを手放すと短刀「ナガクニ」を抜き放ち、それを受け止める。
「くっ……!」
 直撃を避けて受け流すようにしてもなお、骨が軋むような衝撃が襲う。それが龍骨の粉末を混ぜ込んで強度を高めた特殊鋼鉄製の短刀でなければ、刀身ごとキリカの身体は真っ二つに引き裂かれていただろう。

「行け……!」
 獣腕の一撃を辛くもキリカが凌いだのと同時、デゼス・ポアが反撃の斬撃を仕掛ける。
 人形の躯体から飛び出す錆びついた刃は異形の腕を切り裂き、走る激痛にディガンマが初めて顔をしかめた。
「……なかなかやるな」
 ならばもう容赦はすまいと、男は再び獣腕を振るう。一度でも直撃を喰らえば敗北は必至の猛打――だが一度受け止めた時点で、キリカはその単純な軌道を既に見切っていた。
 今度はナガクニで受けるのではなく最小限の動作で躱す。獣腕が轟と唸りを上げて間一髪の差を掠めていった直後、彼女は【サバット】の構えからカウンターの蹴撃を放った。

「"伏せ"だ」
 脚に装着した「アンファントリア・ブーツ」の強化術式により、キリカの身体と運動能力は極限まで向上している。そこからを振り下ろされた一蹴りは艦砲射撃すらも凌駕する破壊力を以て、ディガンマを地面に叩きつけた。
「ぐ……ッ!」
 地べたを這わされたディガンマは即座に立ち上がろうとするが、上から押さえ込むキリカの怪力がそれを許さない。ブーツの補助があってもなお猟書家の膂力はそれを凌駕するほどだったが、体勢の有利が力の差を覆し、一時的に動きを封じ込めることができた。

「さぁ、牙を振るえ。君達が守るべき者、守るべき場所のために」
「はいッ!!!」
 キリカが身を張って作り上げた好機に、打って出たのは殺人鬼の少年少女達。寄る辺なき彷徨の果てに見つけた"故郷"のために戦う彼らは、秘められし殺人衝動を今一度全開にして、持てる渾身の一撃をディガンマに浴びせた。
「お前達……ッ!!」
 極限まで研ぎ澄まされた殺人技巧の数々が『例外』を切り裂き、血飛沫を撒き散らす。
 その直後、止めとばかりにキリカはもう一度脚を振り上げ、全力の蹴りを叩き込んだ。

「今此処にあるのは、お前が敗れ去るという『事実』だけだ。そして、その『事実』に『例外』は存在しない」
 勝利への確信をもって叩きつけられた一撃は、敵を踏み砕くとともに大地を粉砕する。
 轟音とともに大きく陥没したクレーターの中心で、ディガンマは血の混じった唾を吐き――面白い、と凄絶な笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「貴様が同業のディガンマか」

ディガンマは別の意味で『例外』すらも越える『例外』で関わり合いになりたくない人種に指さされ、顔をひきつらせていた。
本音は力一杯「違います」と言いたかったが、猟書家というボスキャラの手前そんな事は言えず、無言で首を縦に振った。

「ロック勝負を申し込む。お前もSATSUGAIされファンになるだろう!」

聖杖に手をかけるデビル・カビパンを殺人鬼達が慌てて止めようとしたが、彼女の目にはデビルの癖に邪なモノなどなく、純粋にロックな闘魂が燃えており止められなかった。

ただただ圧倒的な音痴とロックが敵の純粋な獣性=ロックな心に火をつけた。

めでたし、めでたし
本当にありがとうございました。



「貴様が同業のディガンマか」
 己を『例外』と豪語する猟書家の前に、瀟洒な将校用の軍服を着た女が立ちはだかる。
 別の意味で『例外』すらも越える『例外』で、敵としては関わり合いになりたくない人種であろう彼女――カビパンに指をさされ、ディガンマは思わず顔を引きつらせていた。
「…………」
 本音としては力一杯「違います」と同業扱いを否定したかっただろうが、猟書家というボスキャラの手前そんな事を正直に言うことはできず。彼はただ無言で首を縦に振った。

「ロック勝負を申し込む。お前もSATSUGAIされファンになるだろう!」
 沈黙の肯定を受け取ったカビパン、もとい殺人鬼達より崇められし邪神デビル・カビパンはおもむろに聖杖に手をかける。再びあの死のリサイタルが始まるのかと、驚いたのは彼女の信者達である。
「デビル・カビパン様、一日に二度もお歌を歌われるのは危険です!」
「短期間にそんな大量のカビパン成分を摂取してしまったら、本当に死人が出ます!」
 邪神音楽の魅力に取り憑かれたがゆえにその危険性も承知する彼らは、慌てて【カビパンリサイタル】の開催を止めようとするが、カビパンと目があった瞬間に口が止まった。
 何故ならば、彼女の目には(デビルの癖に)邪なモノなどなく、純粋にロックな闘魂が燃えていたからだ。今の彼女はただ同類と互いの音楽をぶつけ合ってみたいだけだった。
 それに気が付いてしまった殺人鬼達にはもう、カビパンを止めることはできなかった。

「いくぞ! この私が聞かせる真のSATSUGAIに酔いしれるがいい!」
 まだディガンマの承諾も得ていない内から、勝手に先行として歌いはじめるカビパン。
 その歌唱は相変わらずひどい。耳を塞いでも隙間から入り込んで頭から離れなくなる死の楽曲は、絶望的な音痴と何かがおかしいロックサウンドによって破壊力を増していく。
 ただただ圧倒的な音痴とロックを聞かされたディガンマは、しばしの間無言で、微動だにしないままそれを聞いていたが――突然、カッと目を見開くと獣のように吠えた。
「いい加減にしろおおおオオオオオオオオオオッ!!!!!!」
 あまりにも酷い音痴歌が、彼の純粋な獣性、すなわちロックな心に火をつけた。こんなもん黙って聞かされてたら脳が腐るわと言わんばかりに、己のSATSUGAI音楽を歌い出す。いつの間にか彼はすっかりカビパンのギャグ時空に巻き込まれていた。

「わたし↑は↓~癒し系↑↑↑ ~~♪」
「俺は例外! 貴様ら殺害! ブチ殺す!」

 デビル・カビパンの音痴ロックと、ディガンマの別に上手いわけではないロックがぶつかり合い、地獄の悪鬼も裸足で逃げ出すような悪魔的サウンドが不思議の国に木霊する。
 互いが互いの音楽をSATSUGAIせんとする、意地とプライドと殺意の激突の果て――両者は相手の音楽性を理解しあい、そこには奇妙な友情めいた何かが生まれたのだった。

「めでたし、めでたし。本当にありがとうございました」
「これで終わるか馬鹿がッ!!!!」

 ――と。なんかノリで終わらせようとしたカビパンの作戦は残念ながらうまくいかず。
 キャラ性を崩壊させられたディガンマは甚大な精神的ダメージを負い、獣性(ロック)を剥き出しにしながら戦闘を再開するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
自分だけが『特別』などと思い上がるな
俺たち猟兵も、彼ら殺人鬼たちも
己の中に譲れぬ矜持、守るべきもの、戦う意志がある限り
人は限界を突破し、運命を遥かに凌駕する!

敵の攻撃は野生の勘で察知し、盾受け、武器受けで受け流し
直撃を避け、バスタードソードや盾を犠牲にしてでも殺人鬼たちに地形破壊の被害が及ばないよう調整
回避しきれない時は激痛耐性、覚悟で耐える

地形破壊の影響を受けるのは俺達だけではない
同じ戦場にいる限り、敵であるディガンマとて例外ではない
刻一刻と変化する戦況を読み、変化した地形の利用で敵がバランスを崩す地点に誘導
隙を突いて【剣魂一擲】の一撃を食らわせ、殺人鬼たちと連携して追撃を食らわせる



「自分だけが『特別』などと思い上がるな」
 例外を謳う獣腕の男、猟書家ディガンマを睨みつけ、ヴォルフガングは静かに告げる。
 なるほど、確かに彼奴は強い。その規格外とも言える暴力をもって、あらゆるものを捻じ伏せながら今日まで来たのだろう。だが、彼奴からは強くとも"矜持"を感じない。
「俺たち猟兵も、彼ら殺人鬼たちも。己の中に譲れぬ矜持、守るべきもの、戦う意志がある限り、人は限界を突破し、運命を遥かに凌駕する!」
 人の想いが持つ可能性を、愛する者から教えられた人狼の騎士は、命を賭けてこの国を守ろうとする殺人鬼達と共に邪悪に立ち向かう。ここに集った全ての意志と信念こそが、『例外』を凌駕する『特別』であると信じて。

「言葉だけではどうとでも言える。ならば実力で証明してみせろ!」
 狼騎士の宣言にディガンマはニヤリと笑みを浮かべ、【引き裂く獣腕】をギラつかせながら飛びかかる。大地をも抉るその猛撃に対して、ヴォルフガングは剣と盾で迎え撃つ。
「下がれ!」
 野生の勘から殺人鬼達に警告を発し、振り下ろされる豪腕の一撃を巧みに受け流す。直撃を受ければ耐え切れないのは目に見えている――バスタードソードと盾とでダメージを分散させるが、それでもなお抑え切れなかった衝撃が、彼の装備と大地にヒビを入れた。

「そら、どうした! 俺すら超えられないようでは、運命を凌駕するなど夢物語だぞ!」
 好戦的な笑みで相手を煽りながら、さらなる一打を叩きつけるディガンマ。それを受けるたびにヴォルフガングの剣は刃毀れし、盾はひしゃげ、地面には生々しい爪痕が刻まれていく。攻撃を受け流すだけで精一杯のようだが、しかし彼は周辺への被害規模を巧みにコントロールし、味方に地形破壊の被害が及ばないよう調整していた。
(今は耐えろ。必ず隙はできる)
 一手受け違えば即座に「詰み」となりかねないギリギリの攻防を繰り広げながら、彼の精神は鋼のように揺るぎない。嵐のような暴力が戦場を破壊していく中、その中心にいる狼騎士は暴風に吹き飛ばされないようしっかりと両脚を地に付け、踏ん張り続けていた。

「随分と頑丈な男だ。だが……お前の武器はそれに付いて来れるか?」
 激しい攻防の中で先に音を上げたのは、ヴォルフガング自身ではなく彼の装備だった。
 被害を最小限に留めるために無理をさせ続けた盾が、ついに耐久限界を超えて砕ける。
 間髪入れずに叩き付けられたディガンマの獣腕が、ついに狼騎士の身体を引き裂いた。
「ぐ……っ、まだだ」
 鎧とルーンによる護りがなければ、その一撃で致命傷だったろう。真っ赤な血飛沫が白銀の鎧を染め、ヴォルフガングの口からうめき声が漏れる。だが凄まじい激痛にも彼は膝を屈さず、その双眸はなおもディガンマを睨みつけていた。

「大した奴だ。だがこれで終わり……っ?」
 手負いの騎士に止めの一撃を食らわせようと、獣の腕が振り上げられたその時、ふいにディガンマが体勢を崩す。それは彼自身の爪が刻んだ地面の亀裂に、足を取られたのだ。
(地形破壊の影響を受けるのは俺達だけではない。同じ戦場にいる限り、敵であるディガンマとて例外ではない)
 ヴォルフガングはこの時を待っていた。防御に徹しながら刻一刻と変化する戦況を読み、地形変化を利用して敵が体勢を崩すよう、足場の不安定な地点に誘導していたのだ。
 ディガンマが体勢を立て直すまでの猶予は一瞬。しかしその一瞬の隙を突いて、狼騎士はバスタードソードに替わって無骨な鉄塊剣を抜き放ると、反撃の一太刀を食らわせる。

「大地を穿ち、鋼をも裂く魂の一撃、受けてみよ!」
 愛する者と世界を守るために鍛え上げた心技体、その全てを乗せた【剣魂一擲】の斬撃が、守るべきものを持たぬ猟書家を断つ。その威力は、これまでヴォルフガングが耐え続けた獣腕の一撃にも、努々劣りはしない。
「僕たちの想いも!」
「私たちの覚悟も!」
「「受けてみろッ!!」」
 それを反撃の狼煙として、追撃を仕掛けるのは殺人鬼の少年少女達。譲れぬ意志によって殺人衝動を制御した彼らの技巧はこれまでになく冴え渡り、敵にさらなる深傷を刻む。

「はは……ッ、なるほど、これがお前達の『特別』か……!」
 鉄塊剣と殺戮刃物の連携攻撃を味わわされ、ディガンマは血を吐きながら凄絶に笑う。
 己の理解の及ばない"守る"意志による力の発露。それさえも愉しむかのように、彼はただ一匹の獣としての純粋性を高め、猟兵と殺人鬼にさらなる牙を剥いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
言ったはずだよ…。大切な人達を守ろうとする人間は強い…。
みんな、衝動に呑まれないで、彼を倒すよ…。
守る者を持った「人間」の力を見せよう…!

【九尾化・魔剣の媛神】の封印解放…!
終焉の魔剣を顕現させ、【呪詛】で強化して一斉斉射…。
みんなには一斉斉射の隙を狙って攻撃を仕掛けて貰い、更にわたしは波状攻撃の形で凶太刀と神速の二重加速で一気に接近…。
敵の爪を凶太刀と神太刀の神速二刀で受け止め、逆に連撃で押し返し高速戦闘…。

斬り合いの最中、呪力の縛鎖での捕縛や終焉の魔剣を放つ事により、付与した呪力で敵を侵食して弱体化…。

敵の動きが鈍った隙を突いて、殺人鬼のみんなと連続波状斬撃を仕掛けるよ…。



「まさか、お前達がこんな力を持っていたとはな……」
「言ったはずだよ……。大切な人達を守ろうとする人間は強い……」
 猟兵と殺人鬼達から受けた傷跡をなぞり、手負いのディガンマが感嘆したように呟く。
 それは愛する人を、帰りたい居場所を、そしてこの世界を守ろうとする者の想いの力。
 半獣の猟書家を睨み付ける璃奈の瞳にも、彼ら彼女らと同じ意志の輝きが宿っていた。
「面白い誤算だ。もっと俺に見せてみろ、その力を!」
 好戦的な本性をもはや隠しもせず、獣腕の爪をギラつかせながら咆哮するディガンマ。
 対する璃奈は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解放し。膨大な呪力を放つ九尾の妖狐に変身すると、周囲に"終焉"の力を帯びた魔剣を無数に顕現させた。

「みんな、衝動に呑まれないで、彼を倒すよ……。守る者を持った『人間』の力を見せよう……!」
「「おうッ!!」」
 少年少女の雄叫びが戦場に轟くと同時、終焉の魔剣の一斉斉射が敵に向けて放たれる。
 璃奈の呪詛によって強化されたそれは、一振り一振りに万物を崩壊させる力が込められている。対してディガンマは獣腕による純粋な暴威と蛮力をもって、これを打ち払った。
「どうした、この程度か……ッ!!」
 彼がそう言い終える間もなく、今度は殺人鬼達が攻撃を仕掛ける。一斉斉射の隙を狙った彼らの追撃は、針の穴に糸を通すような正確さで、ディガンマの急所や傷口を抉った。

「大した連携だ……だが、まだ……ッ」
「そう、まだ終わりじゃないよ……」
 殺人鬼達は反撃を受ける前に波が引くように後退し、入れ替わりに璃奈が前線に出る。
 媛神の封印を解いた彼女のスピードは神域に達し、さらに凶太刀の呪力を重ねることで神速すらも超え。全身から放つ呪力のオーラが、流星のような光の軌跡を戦場に描いた。
「疾いな……ッ!」
 それでも野生の勘のみで彼女の動きに反応してみせたディガンマの実力は、並大抵のオブリビオンとは隔絶していた。接近のタイミングに合わせて放たれた【縫い留める獣爪】を、璃奈は凶太刀と神太刀の二刀をもって受け止める。

「成程、これだけの力があれば斬れない者はないだろう。俺という『例外』を除けばな」
「『例外』なんて無いって、言ったはずだよ……」
 妖刀と獣爪が火花を散らし、一秒の間に何十という攻防が鎬を削る。超高速の連撃で相手を押し返そうとする璃奈に、ディガンマは野生の反射速度と怪力をもって応じていた。
 衝動を解放した殺人鬼達でも迂闊には踏み込めない極限の戦闘。彼らの目は激しい斬り会いの最中に、黒い稲光のように呪力のオーラが閃くのを辛うじて捉えていた。
「あれは……雛菊さんの……」
 彼女が頼みとするのは剣技だけではない。呪力で編み上げた縛鎖や終焉の魔剣を放つことで、敵の対応速度を上回ろうとしている。たとえ鎖や魔剣をディガンマに弾かれても、それに付与した呪力は遅効性の毒となって彼を侵食し、徐々に弱体化させていくのだ。

「ぐ……ッ」
 息もつけないような戦いはどれだけ続いただろうか。時間の感覚さえ曖昧になるほどの熾烈な剣戟の果てに、ついにディガンマの動きが鈍った。執拗に続けてきた呪力による弱体化が実を結んだその隙を突いて、璃奈は仲間達に合図を出す。
「今だよ、みんな……!」
 その瞬間、疾風のように飛び出した殺人鬼達は、魔剣の媛神に合わせて刃物を振るう。
 守る者を持った「人間」達による、高速の連続波状斬撃。いかに強大な猟書家であろうとも、その全てを捌き切ることは不可能だった。

「ぐ、お、おぉぉぉ……ッ!!!」
 一撃、二撃、三撃と、放たれる斬撃を獣爪で凌ごうとするディガンマ。しかし四度目の斬撃に反応が遅れたのを皮切りとして、殺人鬼たちの刃は次々と彼の身体を捉えてゆく。
 波状攻撃の締めくくりを飾るのは、璃奈による渾身の双撃。十文字の軌跡を描いた二つの妖刀の刃が、「例外」を嘯く猟書家に、誰かを守ろうとする意志の力を刻みつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
自らを例外だなんて傲慢ね…良いわ、アイツにわたし達の強さを教えてあげましょう!

みんな、わたしを信じてくれるなら、身を委ね、力を貸してくれないかしら?

殺人鬼の子達に自身を信じて欲しいと告げ【吸血姫の契り】を発動し一時的に吸血鬼化させる事で能力を超強化。
自身も相互魔力で強化した上で【吸血姫の覚醒】で真の姿を解放。

あのいけ好かない獣男を叩き潰すわよ!

凍結や雷撃の魔力弾【高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾】の連続斉射を放ち、敵の動きを止めたり隙を作る事でみんなを援護。
魔力弾による攻撃の隙を突いて、みんなには連携戦闘行う様指示し、自身は魔力をチャージ。
みんなを退避させ、【神槍グングニル】を撃ち込むわ!



「自らを例外だなんて傲慢ね……良いわ、アイツにわたし達の強さを教えてあげましょう!」
 野獣のように凶暴で不遜な男の物言いに眉をひそめて、フレミアは高らかに宣言する。
 どれだけ自信に違わぬ実力を持っていようが、敵は一人だ。ならば此方は仲間全員の力で――武力だけでなく意志さえも束ねて、獣を狩るための一振りの刃と成そう。
「みんな、わたしを信じてくれるなら、身を委ね、力を貸してくれないかしら?」
 どうか自分を信じてほしいと告げる彼女の言葉に、殺人鬼の子供達はこくりと頷いた。
 元より命も魂も擲つ覚悟でいたのだ。あのオウガを倒してみんなを守れるのなら、いくらでもこの身を預けよう――と、彼らは疑うことなくフレミアの呼びかけを信じた。

「フレミア・レイブラッドが血の契約を交わします。汝等、我が剣となるならば、吸血姫の名において我が力を与えましょう」
 殺人鬼達の信頼と覚悟を受け取ったフレミアは彼らとの間に【吸血姫の契り】を結ぶ。
 彼女の吸血を受けた少年少女の瞳は赤く染まり、口元からは牙が覗く。契約を交わした者を一時的に吸血鬼化させるこの呪法は、対象者の力を飛躍的に強化する効果があった。
「この力……すごい……!」
 今にも爆発しそうなほどのエネルギーが身体の奥底から湧き上がってくるのを感じて、殺人鬼達は高揚感に打ち震える。そして契りを交わし終えたフレミアはふっと微笑みながら、自らは【吸血姫の覚醒】で真の姿を解放する。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
 あふれ出す爆発的な魔力と共に、背中から生える4対の真紅の翼。身の丈も17~8歳程まで成長した彼女は、立ちはだかる猟書家ディガンマに槍の穂先を突きつけて、告げる。

「あのいけ好かない獣男を叩き潰すわよ!」
「「はいッ!!」」

 放たれた矢のように戦場を駆ける殺人鬼達。吸血鬼化した彼らの身体能力はもはや人間の領域を超え人外の域に達する。今ならば並大抵のオウガなど相手にもならないだろう。
「一時的なものとはいえ、人を辞めるほどの覚悟か……面白い!」
 しかしそれでもなお、純粋な身体能力においてはディガンマが勝る。【引き裂く獣腕】を振りかざし、野獣のごとく猛り笑う彼と真っ向から対峙するのは、あまりにも危険だ。
 だが、そこに後方からの援護が加われば話は変わる――真祖に連なる吸血姫の力を解放したフレミアが、己が魔力を凍結や雷撃の魔弾に変えて、殺人鬼達の近接戦を援護する。

「出し惜しみはなしよ。わたしが隙を作るから、みんなは連携して戦いなさい!」
 嵐のような雷光と氷雪の魔力弾の連続斉射が、ディガンマの動きを僅かに止める。その隙を突いて殺人鬼達は一糸乱れぬ動きで襲い掛かると、血塗られた殺戮刃物を閃かせる。
「ッ……やるな」
 契約で結ばれた彼女らの連携攻撃の威力は、ディガンマにとっても侮れるものでは無かった。吸血鬼化した殺人鬼達だけではなく、契約主であるフレミアも彼らとの相互魔力によって強化されているのだ。氷雷と斬撃を浴びせられた男の表情が、微かに苦痛に歪む。

「そのまま休みなく攻め続けて。敵に体勢を立て直す暇を与えないように!」
 さらにフレミアは皆に指示を飛ばして連携戦闘を行わせ、自らは魔力をチャージする。
 吸血鬼化した殺人鬼がディガンマを抑えている間に、決定的な一撃を。覚醒と契約により高まった莫大な魔力を注がれたドラグ・グングニルが、眩いほどの真紅の輝きを放つ。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
 高密度に超圧縮された魔力は、魔槍を芯として数メートルに及ぶ真紅の槍を形成する。
 彼女はそれを投擲のフォームで構え、穂先をディガンマに向けると、背を弓のようにしならせながら仲間達に叫んだ。

「退避!」
 その一言で、ディガンマとの攻防を繰り広げていた殺人鬼達は蜘蛛の子のように散る。
 刹那、撃ち込まれた【神槍グングニル】は狙い過たず、ディガンマただ一人を捉えた。
「消し飛びなさい……!」
「―――ッ!!!!」
 覚醒フレミアの全魔力を注ぎ込んだ超威力にして最大級の一撃。それは紅い流星が墜落するかのように着弾と同時に大爆発を引き起こし、標的ごと周辺の地形を吹き飛ばした。
 声を上げる余裕すらなく、ディガンマの姿は閃光の中に消えた。その刹那に彼が見せた表情は、受けたダメージに対する驚愕と感嘆、そのどちらとも取れるものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ
類同、お前を見る度に思うよ
俺達もお前の様に成れればきっと楽なんだろうって
だけどそれは出来ない、俺達は人だから

ここからは手加減なしじゃ駄目だね、自分のできる限りに頑張って
同類の名前を呼び、戦いへの[覚悟]
味方へ攻撃を撃たないといけない時は遠慮なく俺に攻撃しても構わない[激痛耐性]で耐えるから

カトラリーで[切断][部位破壊]して獣腕の威力を削ぎ、同類がつけた[傷口をえぐる]
【引き裂く獣腕】は動きを見てくるタイミングを測り
直前に同類たちに下がるよう指示、負傷を厭わず[武器受け]で受け止める

UC【群像】を発動し[カウンター]
『アンタは例外にもなにものにもなれずに死ぬんですよ、六六六(ダークネス)!』



「類同、お前を見る度に思うよ。俺達もお前の様に成れればきっと楽なんだろうって」
 傷を負っても、傷を負わせても愉しげに、獣の如く殺意と暴威を撒き散らすディガンマの姿を見て、たろは心の底からそう思った。あんなふうに本能や衝動に身を任せ、しがらみを捨てて自由に生きて死ねれば、きっと今のように悩み苦しむ必要もないのだろう。
「だけどそれは出来ない、俺達は人だから」
 自分も、ここに集った殺人鬼達も、誰一人としてそんな道は選ばない。まだ人であるために、自分が自分であるために、彼らは己の衝動に抗いながら守るべきものの為に戦う。

「ここからは手加減なしじゃ駄目だね。ハインツ、みんな、自分のできる限り頑張って」
「うん……たろも、ちゃんと戻ってきてよね」
 殺人鬼達は同類の名前を呼びあい、戦いへの覚悟を固める。内なる殺人衝動の解放――【九死殺戮刃】を発動した彼らの瞳は獣のように爛々と輝き、狩るべき獲物を見据える。
「行くよ」
「うんっ」
 駆けだした彼らの刃は、これまで以上に疾く、鋭く。対するディガンマは獣の俊敏さと怪力をもって応戦し、ただ一人でありながら暴風のごとき激しさで殺人鬼達に逆襲する。

「まだだ。その程度で『例外』を超えられると思うなよ!」
 すでに浅からぬ傷を負っているディガンマは、血まみれの顔で闘争心に満ちた笑みを浮かべる。殺戮刃物の連続攻撃がその身を捉えても、まるでお構いなしの暴れようだった。
 その暴威を少しでも削ぎ落とそうと、たろは敵の獣腕に狙いをつけて攻撃を仕掛ける。カトラリーナイフ「ざくざくさん」の刃が黒い軌跡を描き、獣腕の爪先が僅かに欠けた。
「愉しそうだね。だから俺はお前が嫌いだよ、類同」
「ほう……」
 その切れ味にディガンマが感嘆を示した直後、殺人鬼達の全力の連続攻撃が彼を襲う。
 一瞬のうちに九度刻まれる斬撃の嵐は、たろを巻き込みながらディガンマを切り刻む。

(味方へ攻撃を撃たないといけない時は遠慮なく俺に攻撃しても構わない。耐えるから)
 【九死殺戮刃】が持つリスクを踏まえた上で、たろは予めに同類達にそう伝えていた。
 痛みに耐性を持つ彼は、味方の攻撃に巻き込まれても顔色ひとつ変えない。だがダメージそのものは確実に蓄積し、彼の着ているパーカーとシャツが赤い血に染まっていく。
「ははっ……味方を斬る覚悟すらある、ということか。楽しませてくれるな!」
 いよいよもって興奮の極みに達したディガンマは、【引き裂く獣腕】を振り上げると渾身の一撃を放つ。単純だがそれゆえに重いこの攻撃は、小手先の技術で防げるようなものではなく、周辺の地形ごと殺人鬼達を八つ裂きにするのに十分過ぎる威力を秘めていた。

「下がって」
「え、たろっ?!」
 その時、敵が大技を仕掛けてくるのにいち早く気付いたらろは、同類達に下がるよう指示を出し、自らは負傷も厭わず前に出た。交差させたナイフとフォークで、引き裂く獣腕を受け止めようと――だがしかし、それが尋常の一撃でないことはすでに述べた通り。
「まずは、一人!」
 獣の爪がカトラリーを弾き飛ばし、たろの身体を深々と引き裂く。肋骨が断たれ、心臓まで達しかけた傷口からは夥しい量の血があふれ、失血のショックが意識を遠のかせる。
 ディガンマの爪がほんの少し欠けていなかったら、その傷は即座に彼の命を奪っていただろう。同類達が上げる悲鳴じみた声を、たろはどこか遠くからのように聞いていた。

『まったく我ながら無茶をしますねえ!』

 ――彼のユーベルコード【群像】が発動条件を満たしたのは、まさにその瞬間だった。
 瀕死の傷を負ったたろの影から現れたのは、彼の真の姿・群像英雄の幻影。かつて特別に憧れたヒーローの肖像、愚かで美しい理想の幻。
「なんだ、お前は? もうそいつは戦える傷ではないはず……」
『倒れて再び立ち上がる、それがヒーローってもんですよ!』
 大技を放った直後のディガンマは、新手の出現に対して反応が一手遅れる。その隙を逃さずに群像英雄の幻影はたろが取り落としたナイフを拾い上げ、カウンターを仕掛けた。

『アンタは例外にもなにものにもなれずに死ぬんですよ、六六六(ダークネス)!』

 平時のたろが振るう以上に、疾く、鋭く、そして華麗な一閃。殺人鬼ならぬ英雄の技。
 それは過たずディガンマを斬り裂いて、薔薇の花弁のような血飛沫を戦場に散らせた。
「チッ……」
 予期せぬ深手を負った敵は後退し、その内に殺人鬼達が重傷のたろを抱えて退避する。
 彼らの離脱を見届けてから、群像英雄の幻影はふふっと愉快げに笑い、そして消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
私が前に出ます、
皆様は機を伺い何時でも攻勢に出れるよう準備を

UC近接戦闘
センサーの●情報収集で殺人鬼達と彼我の位置関係を●瞬間思考力で把握
彼らの攻撃の可能性を意識させる位置取りや動きで『やり辛く』させた上で攻撃を誘う事で敵を制御し●見切り回避や防御
腕を振り抜かれる前に●怪力●武器受け盾受けで攻めを潰し受け流し反撃

攻め切れない理由はお判りでしょう?
例外とも呼べぬ些細な要素の積み重ね…彼らが立ち上がり踏み止まる尊き理由もありふれたささやかな物です
ですがそれが強大な『例外』に抗せぬ訳では無いのです

それらを束ねて悲劇を覆してこその騎士、遅れを取りはしません!

反撃の大盾殴打でかち上げ味方の好機を作り



「私が前に出ます、皆様は機を伺い何時でも攻勢に出れるよう準備を」
 身構える殺人鬼達にそう告げると、トリテレイアは儀礼剣と大盾を構えて前線に立つ。
 敵は超弩級の闘争を求めし猟書家ディガンマ。例外を謳うその名の通り、かの者の実力は猟書家の中でも指折りに入る。尋常の覚悟や手段で打倒できる相手ではないだろう。
「お前も、俺という『例外』を上回る『例外』になれるか?」
 獣腕の男は挑発するように問いかけるなり、爪をギラつかせ猛然と襲い掛かってくる。
 対するトリテレイアは【機械騎士の戦闘舞踏】を起動。戦術モードを戦場全域の連続予測に最適なものに変更し、全センサーと電子頭脳をフル回転させて予測演算を開始する。

「さあ、お前の真価を見せてみろ!」
 叩きつけられる【引き裂く獣腕】。それは単純ながらも重く、直撃すればウォーマシンの装甲であろうとも大破は免れない、理不尽なまでの暴力と獣性を体現したような一撃。
 しかしトリテレイアは、完全に腕を振り抜かれる前に、大盾を押し付けるようにして攻撃を受け流し、ディガンマの攻めを潰すと同時に儀礼剣によるカウンターを仕掛けた。
(さて、私の予測演算で何処まで踊れるか……)
 彼の戦法は至極明快。先手を放棄する代わりに緩やかな挙動で敵の攻撃を誘い、最小限の動作で防ぎながら反撃に繋げる。正確な戦況把握と瞬間的な判断力が求められる高度な技術を、彼はただ常人よりほんの少し速く、正確に、慎重に繰り返しているに過ぎない。
 言ってしまえばただそれだけの「当たり前」の戦術で、規格外の戦闘力を誇るディガンマに太刀打ちできるのか。その答えは現実を見てみれば分かるだろう――獣腕の男の爪は紙一重のところで標的を捉えられず、機械騎士の反撃は浅くとも確実に敵を捉えている。

「攻め切れない理由はお判りでしょう?」
「……ちっ」
 トリテレイアの指摘に、ディガンマは舌打ちしながら周囲に視線を巡らせる。そこには殺戮刃物を握ったままいつでも飛び出せるように構え、敵に殺気を送る殺人鬼達がいた。
 ディガンマからすれば彼らはいつ仕掛けてくるか分からない伏兵だ。奇襲の可能性を考えれば意識を割かざるをえず、それが目の前の戦闘に集中しきれない要因となっている。
 この状況そのものが、機械騎士の考えた戦術そのものだ。殺人鬼達と彼我の位置関係を常に把握し、常に彼らの存在を意識させるような位置取りや動きで「やり辛く」させる。
 共に刃を振るうことだけが連携にあらず。機械騎士と殺人鬼達は協力してディガンマの行動を制御することに成功していた。

「例外とも呼べぬ些細な要素の積み重ね……彼らが立ち上がり踏み止まる尊き理由もありふれたささやかな物です。ですがそれが強大な『例外』に抗せぬ訳では無いのです」
 パズルを組み立てるような精緻な戦術の組み立てと、守るべきもののために戦う意志。
 それらは常識を覆すような劇的なものではないが、断じて無力なわけではない。総じてそうした「当たり前」の連続の果てにこそ、大きな結果は実るのだから。
「それらを束ねて悲劇を覆してこその騎士、遅れを取りはしません!」
 何度目かになる攻防の末、トリテレイアの叩きつけた盾は敵の獣腕をかち上げ、味方の好機を作る。それを見逃さなかった殺人鬼達は、満を持してディガンマに襲い掛かった。

「あくまで理詰めで『例外』を否定してみせるか。機械らしい手口だな……ッ!!」
 してやられたとディガンマが皮肉げに笑みを見せた直後、真っ赤な鮮血が戦場に散る。
 トリテレイアが築き、殺人鬼が繋いだ連携は、強大な『例外』に見事打ち勝ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・ミュラー
ん、この国はきっと多くのアリスにとって大切な場所になる、はず。例外でもそうじゃなくても、あなたはここで、倒す。
今度はわたしが前に出る、よ。閉じた傘で獣腕をなんとか、防ぐ。急所とか狙われて倒されなければいいから、多少の攻撃は、受ける。この人には勝てない、逃げ出したい……そんな気持ちになったらみんなに目を、向ける。大切なものを守るため、みんな逃げずに敵だけじゃなくて自分の衝動とも、戦ってる。だから、わたしも怖くても、戦うよ。
相手が近づいた今はチャンス、ね。「カウンター」で横から【水鎚】を叩きつけて吹き飛ばして、水で頭を覆っちゃう、から。その隙に攻撃して、もらうね。あなたたちの覚悟を、見せてあげて。



「ん、この国はきっと多くのアリスにとって大切な場所になる、はず」
 ここを守るために集った殺人鬼のアリス達を見て、ミアは改めてそう思う。ここは殺人衝動を抱えたせいで誰とも触れあえずにいた彼らが、ようやく見つけた憩いの地。それを破壊しようとする邪悪なオウガを、同じ「アリス」として見過ごすわけにはいかない。
「例外でもそうじゃなくても、あなたはここで、倒す」
「ああ、やってみせろ。その前にお前達が俺に倒されなければな」
 静かな声に宿った強い意志に対して、猟書家ディガンマは不敵な笑みをもって応える。
 守る者と、壊す者。けして相容れることのない両者は、譲れぬもののために激突する。

「今度はわたしが前に出る、よ」
 咎鬼との戦いとは逆に、ミアは仲間達をかばうようにディガンマを前線で迎え撃った。
 襲い来るのは【縫い留める獣爪】。豪と唸りを上げて振り下ろされる獣の腕を、彼女は閉じた「丈夫な魔法の傘」でどうにか受け止める。
「ほう? お前は魔法使いのようだが、白兵戦の心得もあるのか?」
 先の戦いでは後方からの援護や攻撃に徹していた彼女が、最前線に出てくるのは予想外だったか。ディガンマは面白そうに笑いながら獣爪を振るう。ミアの傘は盾としても十分な強度を誇るが、それでも彼女の細腕で捌ける攻撃には限界があった。最悪倒されなければいいと急所狙いの攻撃のみを防ぎ、多少の攻撃はその身で受ける。

「ぅ……」
 ミアの身体に突き刺さった獣爪は「恨みの針」に変化し、怯えや劣等感をかき立てる。
 決意をもって戦いに臨んだはずの彼女の心は、ふいに奥底から湧き上がってきた冷たい感情にかき乱され、目の前の凶暴な男の姿に思わず萎縮してしまう。
(この人には勝てない、逃げ出したい……)
 そんな気持ちが心を支配しかけ、傘を握りしめる両手がかたかたと震える。しかしミアは後ろに下がりかけた足をぐっと抑えて、そちらにいる殺人鬼の少年少女に目を向けた。

(大切なものを守るため、みんな逃げずに敵だけじゃなくて自分の衝動とも、戦ってる)
 けして己を見失わないよう、衝動を律しながら強大な敵に立ち向かう。それがどんなに大変なことなのか、ミアには想像することしかできない。けれど彼らは全てを擲つ覚悟でこの場所に留まり、そして今も弱音を吐くことなく戦い続けている。
「だから、わたしも怖くても、戦うよ」
「ほう……いいな。お前の目は、戦士の目だ」
 ミアの手から震えが止まったのを見て、ディガンマは感心したように呟く。だがそこで手心を加えるような輩ではなく、獣の腕は彼女を引き裂かんと容赦なく叩きつけられる。
 だが。怯えを克服して冷静になったミアは、四肢に精一杯の力を込めて攻撃を凌ぎながら呪文を唱える。この状況はけして防戦一方の窮地ではない、むしろ――。

「相手が近づいた今はチャンス、ね」

 敵にとっては意識の死角となる真横から、ふいに叩きつけられたのは魔法の【水鎚】。
 正面のミアに気を取られていたディガンマは、側頭部をしたたかに殴られて吹き飛ぶ。
「がぼっ……!?」
 さらに水の鎚は球状に形を変えて頭部を覆い、敵の呼吸を封じる。いかに強大な猟書家でも窒息は不慮の事態――思考が混乱し動きが止まる僅かな隙を、彼女達は見逃さない。

「あなたたちの覚悟を、見せてあげて」
「うん……いくよっ!」
 ミアの合図に応じて、待機していた殺人鬼達が一斉に攻撃を仕掛けた。研ぎ澄まされた殺戮刃物の連続攻撃は過たずにディガンマの急所を抉り、透明な水球に赤い血が混ざる。
 大切なものを守るための覚悟。強大な敵への恐れを乗り越える勇気。束ねられた「アリス」達の想いを乗せた攻勢は、悪しき猟書家を確実に追い詰めつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルカ・ウェンズ
周辺地形を破壊するのなら、私はこのユーベルコードを使い真の姿になり【空中戦】を仕掛けるわ。

引き続き【オーラ防御】で私と少年少女達の身を守り【残像】で敵を惑わしながら距離を詰めて【グラップル】組み付いたら、江戸モンゴリアンデスワーム(幼体)の【火炎ブレス攻撃】で私ごと火達磨にしてもらうわ。
火達磨になっても私は【火炎耐性や激痛耐性】を持つ猟兵だから気にせずに組み付いたまま敵を怪力任せにオーラ刀で攻撃!

ついでに倒したら消滅するかもしれないけど、虎?猫?このポーチは気に入ったから燃えないように放り投げて、そして!耐性があって物凄く熱いから少年少女達や他の猟兵にも燃えてる敵を攻撃してもらわないと。



「周辺地形を破壊するのなら、私はこのユーベルコードで仕掛けるわ」
 ディガンマの【引き裂く獣腕】に荒らされた戦場の上を、【ボーイ・ミーツ・ガール】を発動したルカが翔ける。善良なタフガイ候補や美少女を守るという誓いの下で変身した彼女の真の姿は、黒い外骨格に覆われた昆虫人間のようで、4枚の翅で自在に空を飛ぶ。
「匂うな……俺達とは違う、だが相当に"殺してる"匂いだ」
 空中から飛来する新手にディガンマはにやりと笑い、敵と己の血で真っ赤に染まった腕を振り上げる。殺人鬼と咎人殺し、性質は異なれど殺しを生業とする者同士が激突する。

「さあ、まだまだ楽しませてもらうぞ!」
 ディガンマはぐっと両脚を弛めたかと思うと兎のような跳躍力で跳び上がり、空中のルカに獣腕を振るう。だが、全てを引き裂くその爪が抉ったのは彼女の残像とオーラの残滓のみ。昆虫由来の変幻自在な空中機動とホバリングが、血に飢えた獣の目を惑わせる。
「残念、こっちよ」
 ルカはブンブンと羽音を立てて飛び回りながら、ディガンマの隙を窺う。彼が残像に気を取られて完全に背を向けると、一気に距離を詰めて掴みかかり、格闘戦に持ち込んだ。

「お前の方から来てくれるとはな」
 そのままルカはグラップルの技術で敵に組み付いたが、そこはディガンマにとっても得意の距離である。腕力にものを言わせて引き剥がそうと、獣毛に覆われた腕の筋肉が隆起するが――その直前、彼女は待機させてあったペット(?)に合図を出した。
「今よ、火達磨にしてやりなさい!」
 ゴゴゴゴと大地を震わせて、地中から飛び出してくるのは江戸モンゴリアンデスワーム(幼体)。成体ともなれば江戸城をも一呑みにするという長大な蟲は、ぽっかりと開いた頭部の口からおもむろに火炎のブレスを吐き出した。

「お前、まさか自分ごと……!?」
 ディガンマが驚愕するよりも速く、デスワームのブレスは彼とルカを諸共巻き込んだ。
 灼熱の炎は忖度無く全てを焼き焦がすが、ルカには予め張っておいたオーラの守りと、炎熱や痛みに対する強い耐性がある。たとえ火達磨になろうともディガンマに組み付いたまま、彼が腰からかけている獣の装身具に手を伸ばす。
「倒したら消滅するかもしれないけど、虎? 猫? このポーチは気に入ったわ」
 彼女はそれをむんずと掴んで紐を引き千切ると、燃えてしまわないようブレスの範囲外に放り投げる。戦いの最中にそうまでするほど欲しかったのだろうか――ちなみにオブリビオンが死んだ後にその装備品が残る可能性は、死体が残る可能性とほぼ同等だろう。

「これでいいわ。そして!」
 憂いが無くなったところでもう一度ルカが合図を出すと、デスワームの火炎ブレスが止まり、入れ替わりに殺人鬼の少年少女が飛び出す。先の戦いと同じようにルカのオーラに保護された彼らは、燃えているディガンマ目掛けて殺戮刃物を振るった。
「ぐぅ……ッ!!!」
 火の粉に混じって散る真っ赤な鮮血。二重の苦痛によりディガンマの顔が苦悶に歪む。
 ルカとて耐性があっても物凄く熱いことには変わりがない。一刻も速く決着をつけるために、少年少女の攻撃に合わせて変形式オーラ刀で斬りつける。
「さっさと滅んで頂戴」
 怪力任せに振るわれた漆黒の刃が、ディガンマの骨肉を斬り裂き、出血を増大させる。
 轟々と燃え盛るブレスの炎とは対照的に、彼の命の灯火は明らかに小さくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
全てを暴力で踏み躙ろうとしますか。
しかし貴方も最初からそうでは無かった筈!
幼い頃を思い出して下さい。

と、暴力に力で対抗するのではなく、諭しながら対する事で、殺人鬼さん達が一線を越えない様にします。

相手の攻撃は第六感と見切りで読み、空中浮遊しつつ自身を念動力で自在に動かしての空中戦で軽やかに回避。
尚も迫ってくる攻撃には、結界術で阻害した上で、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けでいなします。

更に雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・貫通攻撃・スナイパー・マヒ攻撃で相手を撃ち抜いて痺れさせ、「貴方はもう動けません。」と催眠術で捕縛して、神罰を籠めたUC:改心の一撃でなぎ払います!
人の心を取り戻して下さい!



「全てを暴力で踏み躙ろうとしますか。しかし貴方も最初からそうでは無かった筈!」
 獣性を露わにして破壊を振り撒くディガンマに対して、詩乃は暴力に力で対抗するのではなく、諭しながら対する事を選んだ。それは彼女の慈愛の発露であると共に、この戦いに参加する若き殺人鬼達が一線を越えないよう、教え導こうとする意図もあった。
「幼い頃を思い出して下さい」
 ふわりと空中に浮遊しながら穏やかに呼びかけるその姿は、神としての威厳と慈悲を感じさせるものだったが、しかし相手は心の芯まで暴力に染まりきったオウガである。詩乃の説得にも嘲るような笑みを浮かべ、返答の代わりに【引き裂く獣腕】を振るう。

「ご立派な説法がしたいなら、こんな所に来るべきではなかったな」
 ぶん、と風を裂きながら迫る重く鋭い一撃を、詩乃は念動力で自身を動かして軽やかに避ける。掠めた爪先が戦巫女装束の袖を引き裂いたが、彼女は穏やかな表情を変えない。
「こんな所だからこそ、手を差し伸べなければならない人々がいるのです」
 その言葉はただの綺麗事ではない。死闘の最中に強敵に説得を行うのは、余程の意志がなければできないことだ。少しでも気を緩めれば、それは彼女の死を意味するのだから。
 尚も迫ってくる攻撃を第六感で見切り、獣腕の動きを結界術で阻害した上でオーラを纏った天耀鏡でいなす。けして焦りを表には出さないものの、紙一重の攻防が続いていた。

「も、もう見てられないよ……っ!」
「いいえ、あなた達はそこで見ていて下さい」
 たまらず加勢しようとする殺人鬼を制し、詩乃は毅然とした態度のまま説得を続ける。
 言葉だけで敵を改心させることが叶わないのであれば――ここからは少々荒っぽい手段も必要になる。彼女が徒手のまま空を撫でると、指先から眩い稲妻が矢のように放たれ、敵を撃ち抜いた。
「ッ……ようやく、やる気になったか!」
 雷撃による痺れに肉体の動きを封じられ、顔をしかめるディガンマ。詩乃はさらに彼を精神面からも捕縛すべく、言霊を乗せた力強い言葉で呼びかけ、瞬間的な催眠にかける。

「貴方はもう動けません」
「この……ッ」
 本人の意に反して、金縛りにあったように動かなくなるディガンマの身体。心身ともに野獣の強靭さを持つ彼を戒めておけるのは精々数秒だろう。だが、それだけあれば十分。
 その間に詩乃はすうっと空中を滑るようにして彼に近付くと、おもむろにすっと片手を持ち上げ――神罰を籠めた【改心の一撃】を放った。
「人の心を取り戻して下さい!」
 バシンッと乾いた音が響く。女神の愛情が込もった平手打ちは見事にディガンマの頬を、と言うより顔面をなぎ払い、その所作からは思いもよらぬ威力で彼を吹き飛ばした。

「ごはぁッ!!!?!」
 ディガンマが痛みと共に詩乃の真心を受け取り、昔の自分を思い出せたかどうかは定かではないが。単純に物理的な威力だけでも、彼が負ったダメージは相当のものであった。
 あくまでこれは愛の鞭。ゆえに死にはしないものの、悶絶必至の痛みを味わわされた男は、しばし懺悔するように地を這いつくばるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
瑠璃「貴方は弟妹達に牙を向け、未来を閉ざそうとした」
緋瑪「死ぬには十分な理由だよ」
「「本当の殺人姫の力を見ると良い!さぁ、私達の殺戮を始めよう」」

UCで分身&能力、武装超強化

弟妹達を率いて戦闘。
瑠璃が強化し、更に雷撃【属性攻撃】を付与したK100の二丁持ちによる【弾幕】で敵の動きを封じ、その隙に弟妹達の刃と緋瑪の大鎌による高速斬撃で攻撃。
緋瑪の離脱に合わせて接触式ボムで追撃し、二人の魔力を集束!
切り札!二人分の全魔力を込めた【限界突破、力溜め】ジェノサイドノヴァをお見舞いしてあげる!

瑠璃「私達は殺人鬼…でも、信じてくれる人がいれば衝動になんて負けない」
緋瑪「みんなも自分の運命に負けないでね!」



「貴方は弟妹達に牙を向け、未来を閉ざそうとした」
「死ぬには十分な理由だよ」
 自動拳銃「UDC-K100カスタム」を二丁持ちにした瑠璃と、機巧の大鎌を構える緋瑪。親愛なる同胞を闇に堕とそうとした猟書家に対して、殺人姫の怒りは沸点に達していた。
「「本当の殺人姫の力を見ると良い! さぁ、私達の殺戮を始めよう」」
 "2人で1人"が高らかに宣言すると共に、発動するのは【殺人姫の覚醒】。彼女達が本当の本気の際にだけ使うこのユーベルコードは、【チェイン・シスターズ】と同様に別人格を分身させる能力だが――その強化率はこれまでとは比較にならないほど高い。

「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃」
「「弟妹達も一緒に!」」
 全身と装備に激しいオーラの輝きを纏った瑠璃がトリガーを引けば、二丁拳銃から雷撃を帯びた弾丸が放たれる。雷雨を思わせるその弾幕はディガンマただ一人を狙って降り注ぎ、防御のために標的をその場に釘付けにする。
「殺人"姫"とは随分と歌舞いたものだな……! 所詮お前達も俺達と同類だろうに!」
 【引き裂く獣腕】で銃弾を払い落としながら、ディガンマは哄笑する。どんな理由を並べ立てようと、所詮人殺しに優劣などは無いと――だが、そんな罵倒を切り裂くように、緋瑪が弟妹達を率いて突撃を仕掛けた。

「『例外』なんて嘯く貴方に言われたくないよ」
 緋瑪が大鎌を振ると装填されたボムが炸裂し、爆発力を加速に変換した超高速の斬撃がディガンマを襲う。雷撃の弾幕に足止めされていた敵はこれを躱すことができず、さらに殺人鬼の少年少女達が殺戮刃物で畳み掛ける。
「「僕たちは、お前のようにはならない!」」
 決意の込もった刃が悪しきオウガを斬り裂き、殺人姫の大鎌が鮮血に染まる。敵が体勢を立て直す前に彼女らはすぐに離脱し、それに合わせて瑠璃が接触式ボムを投げ込んだ。
「チィッ……やってくれる!」
 追撃の爆発がディガンマを吹き飛ばし、地面に膝を突かせる。真の力に覚醒した殺人姫達の連携、そしてこれまでの戦闘で蓄積したダメージは、確実に彼の身体を苛んでいた。

「今だね、緋瑪」
「今だよ、瑠璃」
 合流した2人の殺人姫は、互いに手を取り合って魔力を集束させる。命を削るほどのリスクと引き換えに得た力の全てをたった一発の爆弾に溜めて、あの猟書家を倒す力に。
「私達の切り札!」
「お見舞いしてあげる!」
 放たれたのは二人分の全魔力を込めた「ジェノサイド・ノヴァ」。星をも砕くという絶大な威力を圧縮した破壊力・範囲特化の爆弾が、ディガンマの目前でその力を解き放つ。
「―――ッ!!!!!!!!」
 鼓膜が引き裂かれるような爆音と、目も眩むほどの閃光が、不思議の国を震撼させる。
 覚醒した殺人姫達による渾身の一発が直撃したディガンマは、獣のような絶叫を上げて吹き飛ばされた。

「私達は殺人鬼……でも、信じてくれる人がいれば衝動になんて負けない」
 爆発が収まった後、瑠璃は敵のいた爆心地に視線を向けながら、弟妹達に語りかける。
 これまでも、これからも、自分達は己を見失うことなく、この衝動と共に生きていく。
 そんな決意の込められた言葉に合わせて、別人格にして相棒の緋瑪がにっこりと笑う。
「みんなも自分の運命に負けないでね!」
「……うん!」
 元気よく力いっぱい答える殺人鬼の子達。衝動は消えねども、その表情は晴れやかで。
 殺戮者と凶獣達による、不思議の国をめぐる戦いの饗宴は、終息に向かいつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・モーント
はじめまして、ごきげんよう

大きなお爪に大きなお口
長くてふさふさのしっぽ
あなたは悪い狼さんなのね?
健気な赤ずきんを
無邪気な子やぎを
可憐な女の子を
食べてしまう、悪い悪い狼さんにはちょっと大人なおしおきなのだわ?
不思議の国は食べさせないのよ!

怖い糸車の針が来る前に
【硝子迷宮演目「Nigella」】を発動
どんな鋭い糸車の棘でも
わたしの迷宮は壊せないのよ?
壊せないのだわ!
【歌唱】によって【多重詠唱】するのは風【属性攻撃】魔法
悪い狼さんは突風に吹き飛ばされて、風の刃に切り裂かれて
かわいい同胞には【鼓舞】するように追い風を

…あら!
わたしったらおっちょこちょいなのよ?
狼さんのお腹に詰める石がないのだわ…!



「はじめまして、ごきげんよう」
 相まみえた此度の戦いの元凶を、レディらしく丁寧な挨拶をもって迎えるのはアリア。
 歌姫にして殺人鬼である彼女の眼差しは、人と獣が混じり合ったディガンマの姿形を、興味深そうに見つめている。
「大きなお爪に大きなお口、長くてふさふさのしっぽ。あなたは悪い狼さんなのね?」
 その結論に誤りはなく。かの者こそ童話の敵役のように、不思議の国に災いをもたらす悪しき獣。その所業を見過ごしていれば、これからも数多くの国とその住民達が、悲惨な殺戮と闘争に巻き込まれるだろう。

「健気な赤ずきんを、無邪気な子やぎを、可憐な女の子を食べてしまう、悪い悪い狼さんにはちょっと大人なおしおきなのだわ?」
「ハッ……"おしおき"ときたか。だったら精々、喰われる前に見せてみろ!」
 童謡のように紡がれるアリアの言葉を、ボロボロで血に飢えた獣は一笑に付し。左の獣腕に備わった【縫い留める獣爪】をぎらりと輝かせ、一息に貫こうと襲い掛かってくる。
 突き刺した者の怯えや劣等感をかき立てる「恨みの針」に変化する魔獣の爪。だがそれがアリアを射程距離に収めるよりも速く、【硝子迷宮演目「Nigella」】が発動する。
「不思議の国は食べさせないのよ!」
 出現するのは透き通った硝子でできた迷宮。彼女の庭にして、ステージにして、狩場。
 外観だけならどの「アリス」も使える【ガラスのラビリンス】によく似ている。だが、四片の歌姫が作り出したそれには、歌が響きやすいよう独自のアレンジが施されていた。

「どんな鋭い糸車の棘でも、わたしの迷宮は壊せないのよ?」
 アリアとディガンマの間に立ち塞がった硝子の壁が、獣の爪を受け止める。一見すれば脆そうにも見える透明な壁は、ガキンと音を立ててヒビ割れこそしたものの、彼の一撃を受けても砕け散ることはなかった。
「ほう……ただのアリスが作る迷路とは違うな」
 これまで幾人の「アリス」を引き裂いてきたであろう男は、壁一枚の先で得意げに微笑む少女と目を合わせ。なおも獣腕を叩きつけて強引に迷宮を破ろうとするが――その前にアリアはかつんと靴音を鳴らしてリズムを取ると、彼に送る歌を奏で始めた。

「悪い狼さんは突風に吹き飛ばされて、風の刃に切り裂かれて」

 歌声は詠唱となって硝子に反響し、迷宮に嵐の魔法を巻き起こす。轟々と唸りを上げてディガンマに迫る暴風は、この庭を狩場とする見えざる獣の咆哮にして爪牙。それはまんまと捕らわれた獲物を噛み裂いて、うつろに揺らめく命の灯火を奪う。
「ぐ……ッ、待てッ」
 敵が風に吹き飛ばされた隙をついて、アリアは歌いながら遠くに離れていく。追いかけようとするディガンマだが、迷宮全体に響く歌は彼の方向感覚を狂わせ、道に迷わせる。
 おとぎ話の中で猛威を奮った獣は、賢い登場人物に罠にかけられ、退治されるのが常。美しい歌に惑わされながら迷路の中をさまよう狼など、いかにも童話らしいではないか。

「かわいい同胞には追い風を」

 アリアと入れ替わりにディガンマの元にやって来たのは、殺戮刃物を構えた少年少女。
 歌姫が紡ぐ風の歌はけして彼らを傷つけず、むしろ鼓舞するように獲物の元に導いて。
 すっかり迷子になった愚かな狼に、殺戮衝動を込めた白刃が容赦なく突き立てられる。
「貴様らッ……ぐ、がぁッ!!」
 飛散する鮮血と苦痛の叫びは、風と歌によってかき消され。生きたまま解体されていくディガンマを硝子越しに見ていたアリアは、ふと何かに気付いたように目を丸くする。

「……あら! わたしったらおっちょこちょいなのよ? 狼さんのお腹に詰める石がないのだわ……!」
 口元に手を当てて、うっかりさんねと恥ずかしげに。その仕草は花のように愛らしく。
 けれど壁を隔てた向こうで繰り広げられるのは、凄惨で血腥い殺戮の現場。まるで花屋のショーウィンドウで飾られた品を見るように、彼女はそれを微笑みながら眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ、なるほど確かに獣だな
ある意味じゃ俺と同族とも言える
親睦会をする気はないが、そっちがその気なら付き合ってやるよ

お前らに言っておくことがある
これから見るのは、獣同士の……醜くてら夢も希望も無いような殺し合いだ
胸に刻め、こうはなってたまるかと
此処は人の世だ
獣になって生きていくには、綺麗すぎる

さて、釘は刺した
始めようか……醜い一幕をな
強化したスピードと反応速度で、向こうの高速に喰らいつく
隙を見せれば仕留めにいくが、本命は別だ
インファイトで服を掴んで捕らえ、足を踏んでワイヤーアンカーで拘束

お前にも言っておくよ
此処は人の世…主役は人間だ
故に、獣の役目はここまで
野郎ども、殺れ
人として、舞台を終わらせな



「……認めてやろう。お前達はたしかに『例外』だ」
 激しい戦いの末に、満身創痍となったディガンマは、滴り落ちる血と共に言葉を零す。
 焼かれ打たれ切り刻まれたその身体に宿る命はもはや風前の灯。だが彼の目は今だ死んでおらず、瞳の奥には剥き出しの殺意と闘争本能がめらめらと燃え盛っている。
「ハッ、なるほど確かに獣だな。ある意味じゃ俺と同族とも言える」
 事切れるまで止まることはないと言わんばかりのその姿を、ヴィクティムは笑う。彼と奴とでは生き方も価値観も大分異なるだろうが、それでも嗅ぎ分けられる同族の臭いがある――尽き得ぬ渇望、衝動、飢えといったものに衝き動かされる、人でなしの臭いだ。

「親睦会をする気はないが、そっちがその気なら付き合ってやるよ」
 手負いの獣と対峙し、ユーベルコードを起動させたヴィクティムは、戦いに入る前に一度だけ殺人鬼の少年少女達を見る。ここから先は何か助言するような余裕もないだろう。
「お前らに言っておくことがある。これから見るのは、獣同士の……醜くて夢も希望も無いような殺し合いだ」
 瞳は爛々と輝き、声色が獣の唸りに似た荒々しい響きに変わる。その眼光は目が合ってしまった少年が思わず背筋を震わせるほど、敵であるディガンマのそれとよく似ていた。
「胸に刻め、こうはなってたまるかと。此処は人の世だ、獣になって生きていくには、綺麗すぎる」
 それは内なる獣性を露わにしたヴィクティムからの忠告だった。衝動に身を任せて堕ちていった先などロクなものではない。命や魂をかけてでも守りたい居場所があるのなら、これ以上は踏み込まずに人の世に帰れ、と。

「お兄さんは…………」
 殺人鬼達はなにかを言おうとしたが、獣の発する気迫に呑まれ、沈黙とともに頷いた。
 ヴィクティムはそれを見てふと犬歯を剥き出しにして笑い、もう一匹の獣と対峙する。
「さて、釘は刺した。始めようか……醜い一幕をな」
「ああ。獣は獣らしく、猛り喰らうのが性に合う……!」
 【そして、獣が解き放たれた】――ナイフを片手にヴィクティムが飛び出すと同時に、【恩讐の獣霊】を発動したディガンマも獣性を露わにして地を駆ける。紛れもなくこれが最後の攻防。不思議の国を巡る殺戮の宴に、決着をつける時がきた。

「ハハハハハハハッ!!」
 壊れたように笑いながら、目にも止まらぬ速さで爪を振るうディガンマ。消えかけの蝋燭が最後に一際激しく燃えるように、彼のスピードと反応速度は爆発的に増大していた。
 対するヴィクティムは研ぎ澄まされた危険感知能力と反射神経で敵の高速に喰らいつく。獣爪の連撃を受け流し、あるいは強化された生命力で耐え、負けじとばかりのスピードでナイフを振るう。両者ともに毎秒寿命を削りながらの熾烈な攻防が繰り広げられる。
「お前にも言っておくよ。此処は人の世……主役は人間だ」
 血風が吹き荒れる目まぐるしい攻防の中、ヴィクティムはディガンマに静かに告げる。
 獣には獣の領分が、言い換えるなら引き際というものがある。こんな醜い争いが最後では舞台も締まるまい――少年には、己が主役になるつもりなどさらさら無かった。

「故に、獣の役目はここまで」
 数十度に及ぶ攻防の末に、ヴィクティムは唐突に自らの"爪"を手放した。徒手となった彼はインファイトの体勢でディガンマの服を掴んで捕らえ、足を踏んで押さえつける。
「貴様……ッ?!」
 そのまま義肢に搭載したワイヤーアンカーで拘束。動きを封じられたディガンマは何のつもりだと目を剥くが、その答えは明らかだ。彼はこの戦いの決着を人間に委ねたのだ。

「野郎ども、殺れ。人として、舞台を終わらせな」

 恩讐の獣霊の動きが止まった刹那、飛びかかったのは未来ある少年少女達。殺戮衝動に呑まれることなく、瞳には守りたい信念と希望を宿して、研ぎ澄まされた刃物を振るう。
 それはまさしく、戦いの終焉を告げる幕引きの一閃。彼らに残された全ての力を込めたそれは、過たずディガンマの心臓に達した。

「……ああ。『例外』が人間に敗れるか。なんとも皮肉な幕切れじゃあないか……!」

 最期の瞬間、男はそう言って痛快な笑みを浮かべた後――まるで幻のように消滅する。
 超弩級の闘争を引き起こそうとした猟書家は、かくして骸の海に還っていった。
 衝動に負けることなく戦い抜いた殺人鬼達と、彼らを支えた猟兵達の手によって。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月05日
宿敵 『ディガンマ』 を撃破!


挿絵イラスト