11
血煙を絶つ

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #『刀狩』 #妖剣士

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#『刀狩』
🔒
#妖剣士


0




●嗤う鬼
 真っ赤な水が足元染めた。
 徐々に変色したそれが、土の色を独自に染めてはや数刻。
 刃を滴る液体をびゅ、と無作為に払って濃厚な血生臭さにふと気づいた武家のある娘。
「あ……」
 転がるズタズタの人だったモノはよく話す友――だった。
 戦場に身を賭した事がないわけでではないが、普段よりもより一層、血の匂いを感じて眉を顰める。
 ……妖気を感じ、武家の者として妖刀を振るうと、意識がぷつりと途切れて気がつけばいつもこれだ。
 犬や猫、可愛げのあるなしに関わらず斬って捨てて、刃はただ血を欲する。
 今宵は座敷の畳も含めて、娘が切り裂き朽ち果てさせたのだ。
 何も差別すること無く。何に躊躇することもなく。
 意識は鬼に、――妖刀に喰われてしまう日が恐ろしく増えてきた。
「あ、ああああっ……!?」
 怯んで擦る、自分の口元。手は真っ赤に染まっていて、紅いそれが自身のものではないと悟るに時間は掛からない。
 理解してしまったのだ――切り裂き壊した友。
 身体が一部欠損している……まるで、歯型。
 ああ、――ついに戻れないところまで来てしまった。
 友を喰らう、血肉を喰らう?
「これではもう、……私は鬼ではないか……」
 絶望は心の隙を塗り潰して現実を、娘すら喰らう。
 娘の姿は刃に憑くバケモノに唆されて――真の鬼に、姿を変えていくのである。
『我が計画通り。容易い、実に容易く壊れるものよ』

●血溜まりに嗤え
「残酷な大虐殺ってやつをさ、行わせた猟書家がいるんだって」
 ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は苦笑する。
「自分の大事な武器に……いつのまにかある悪意が憑依していたとするよ?考えてもいないことを、勝手にやる悪意の塊さ。…………ふふ、気が付いた?武器が持ち主の意識を奪って、勝手に"やってほしくない"ことをしてくれるのさ」
 サムライエンパイア、陸奥の方角。
 羅刹の大名が収める雪国の藩。
 その中でも羅刹と人間が多くを占める、参勤交代に護衛を必要とする者が立ち寄る宿場町。腕に自身のある羅刹または人間が、大名の命を守り送り届けるのが使命。
「……大名がね、護衛の報酬に刀を優秀な人材を提供した武家にくれることもあったんだって。鍛錬と精神修養を欠かさず、次もよろしく!って感じに、気軽にね」
 それは、羅刹が使ってなんとも無い"妖刀"。
 人間が使えば呪われた武器となって戦闘力を代償に、使用者の精神を四六時中蝕むそれ。人間と羅刹とでは、味わう傷みが違う刀だが、遣うに見合うと見込まれたのだ。
「20に満たない年齢で、一振り専用の刀を与えられた娘さんがいるようなのだけれど……彼女は"全てを守りぬくこと"を刃に誓っていたんだ」
 敵に振るって退けて。
 それが自分の生き方だと父の姿を見て育ったからこそ、疑わなかった。
「ただ、刀に憑いた悪意は彼女の世界の"全てを壊した"。そうだね、ストレートに言えば彼女の父親、友達、飼い犬それら幅広く皆殺しにしたんだ。意識を奪って、……殺させた。大事なものを彼女は自分の手で殺し尽くしたことになるね」
 憑いた悪意は、『刀狩』。
 幹部猟書家に名を連ねた妖怪だ。妖刀を使う、妖剣士を修羅の道に落としてそれこそ本物の"鬼"に変じさせる事を目標として動いている。
「『刀狩』は"鬼"を作り出して、遣える主君に献上したいようでね。鬼に堕ちた彼女も、……連れて行こうとしているみたい」
 変じた鬼もまた、一筋縄ではいかない。
『刀狩』の憑く刀を帯刀して、娘の生家から隣近所へと足を伸ばし殺して殺して殺して。
 人や獣、死体となったそれらを喰らうバケモノと成ってこの地を離れようとしない。
 死者の骨を継ぎ接ぎ作り出しす配下の骨獣たちと、人の皮を、骨を調達しては満喫した日々を送っているらしい。
「……鬼らしく傍若無人に振る舞って、皆殺しを続けてるみたい」
 計画通りに"鬼"にすることには成功したが、鬼の"狡猾さ"を妖怪は見誤った。
 これは全ては彼女が今も"『刀狩』"を所持していている為、続く惨劇。惨劇のループに終焉を撃ち込むためには、刀を遠ざけるようにしなければならないだろう。
「刀が悪いんじゃないよ?あくまでも、憑いているモノがわるいのさ」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 これは、猟書家の侵略に関わる感じの"二章編成"のシナリオです。

 武家の娘(20未満の妖剣士)が鬼に変じて、宿場町の中で最大級の湯屋に邪悪な巣穴を作り出し、占拠しています。
 具体的には骨と頭蓋と色々わさああってしている地獄のような穴蔵(座敷)です。猟兵が訪れるまでの間にせっせと殺し、配下と一緒に集めてフフフしていたようですね。

 宿場町はほぼ無人となっていて、湯屋の中に大集合している感じです(死体)。
 壁だ柱だ、畳だなんだと考える必要はあまりありません。
 全てを見境なくぶち抜いて、地獄のような光景を作り出しているのです。
 よくわからないよ、と思われましたら想像で補う大丈夫。

●一章のボス戦
 鬼は、刀を帯刀しています。
 鬼の気風としてどうやらあまり抜いて遣う鬼ではないようですが、刀が正気を失わせて鬼化させているので、"刀を鬼から遠ざける"などを行い正気を取り戻させる必要があります。幹部(刀)の魔の手から引き離しましょう。
 正気が全くない鬼って、のらりくらりで交渉が通じないイメージ。
 鬼と彼女は全く他人という認識でOK。
 狡猾で、闘いを好むけれど情念の通りに動く炎の鬼です。

●二章のボス戦
 武器に取り付いていた妖怪が現れます。幹部です。シナリオは、基本室内ですが、一章の状況によっては派手に破壊して青空教室化するかもしれません。

●プレイングボーナス
 正気に返った妖剣士と共に戰う(第2章)です。
 大事なものを自分で殺してしまった原因を作った妖怪に仇討ちを。
 怒りと恨みのぱわーで猟兵レベルに匹敵する戦闘力を爆発させて、共闘します。

●娘の名前
 友を殺した彼女に名乗るべき武家の姓はなく、名は八(はち)です。
 もし、名前を呼びたい方がいれば、どうぞ。
156




第1章 ボス戦 『『嗤う火車』籃火』

POW   :    相対
自身に【喰った生き物達の怨念】をまとい、高速移動と【受けた者の胸に抱く地獄を見せる炎】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    回天
自身の【操る火車】が輝く間、【負傷した配下の骨獣達】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    影炎
攻撃が命中した対象に【記憶を奪い味方を敵と見做す呪い】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【レベルm半径を覆う炎の檻内にいる猟兵同士】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は冴島・類です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●血みどろフィーバー

 宿場町自体が血生臭い。
 濃厚な死肉の臭いが、充満しているのである。
 これは簡単に染み込むものではなく、また、簡単に落ちるものでもない。
「これ、これ。そこの……ふふふふふ」
 笑う女怪は骨の獣を連れていて、昏い昏い湯屋の入り口で猟兵を手招いている。
「さあこちらへ……ゆっくりと休んで逝かれるとよろしいでしょう」
 休む伴に地獄を観るか、記憶を奪われて正気を無くして暴れるか。
 鬼はどれでも歓迎しよう。人間が何かに溺れる様は、おそらくきっととても滑稽で。おかしくておかしくて、炎を猛らせる滑車を派手に回して、すぐにでも殺したくなるだろうけれど。
 見世物代を貰うまでは、お預け。
「頭蓋と骨の敷物と死人の皮を鞣した敷物。どちらをお貸ししましょうね?」
ルパート・ブラックスミス
正気に戻れても待っているのはこの生き地獄か。
いっそ死んでお終い、の方が慈悲に思えるが…選ぶのは本人か。

見える地獄は『知人達に敵と認識される光景』。
『誰も俺をルパートと認識しない世界』と言ってもいい。
生前の記憶を失い、己のルーツなど猟兵としての力と人間関係が精々。
それが消え失せれば…成程、地獄の有様だ。

だがあえて謳おう。素晴らしい地獄だな。
俺が狂うても、仲間が凶行を止めてくれるわけだろう。
どのような気分なのか?…一足先に味わって貰おうか。

【狂気耐性】で凌ぎ【指定UC】抜剣。
あまり使わん手だが、魔剣から【呪詛】を放ち敵を【捕縛】、刀を【武器落とし】。
戻ってこい妖剣士。地獄が貴様を待っているぞ。



●例え誰もが敵になっても

 踏み入れた足場。
 かしゃり、と崩れる躯の残骸。
 つい最近命を絶たれただろう死体は、血液を何処へと消したのか。
 肉も臓器も血もない姿で白き白骨を晒し、これでもかとバラバラにされている。
 頭蓋から足先まで規則正しく揃った骨はどこにもいない。
 頭蓋だけが廊下という廊下の隅でびっしりと整列してる分、余計に不気味だ。
 ――正気に戻れても待っているのはこの生き地獄か。
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)をしても、狂いきっている鬼の所業。
 壊して並べて、集めて、並べる美の観点すら狂った地獄の庭。
「まあ、お気に召しました?」
『嗤う火車』籃火、鬼はそう名乗ってルパートの視線を追う。
 見ているだろうものは誰とも知らぬ、潰えた命の証明だ。
 首を振る鎧の姿に拗ねたように、ため息を吐いて返答を待つ。
「いっそ死んでお終い、の方が慈悲に思えるが……?」
 ――……選ぶのは"本人"か。
「そうだろうとも。でも死なせてやらないのが私なのさ」
 きゃりきゃりきゃりと滑車の廻る音がする。
 古い糸車のように軋む不快な音が籃火から燃えるように広がっていく。
 炎に混ざって立ち上って揺れる人の気配は、チロリと舐める女の口から足元から。
 此処にあってもう無い怨念を薄布を羽織るように身に纏う。
「どおれ、私の"慈悲"をお目にかけましょう?遠慮なんていりません」
 女とルパートの間には、大分距離があったものだが滑車から生まれた怨念の炎が廊下を焼き、それどころか湯屋ごと焼く。
 高速移動する必要はなく、炎の放射だけで室内のルパートは炎に囲まれた。
 "地獄の中で地獄を見せる炎"に――胸の内を撫でられる。

 鬼の炎を暑いとは毛頭思わないルパート。
 しかし、ごごごと勢いよく燃え立つ火柱が、幾人か影を持つ。
 陽炎のようで、実体にも視える人影が現れるような様子を見た。
 遠目から見ても、どの影も知人だとありありと分かる。
 よく話す間柄で、顔なじみの知った者。知った闘い方をする者。
 彼らはみんな、攻撃の姿勢を"ルパート"に向けていた。
 武器を術を、その手を意志を――殺意を。
 ――知人達に敵と認識される光景……?
 ――これが慈悲。いや、地獄ではないか。
 思わず飛び退くが、見たくないものが髑髏の道を叩くのだ。
 ルパートの居た場所に、友人たちの攻撃が降ってくる。
 現実は――籃火の自前の炎が演出を加えるように叩き込まれていた。
「ふふふ、私の慈悲はそのような事が精々。ゆるりと休む気になりました?」
「……いや」
 休むという程疲れはなく。留める足も、意志もルパートには存在しなかった。
 ――生前の記憶は確かにない。喪って霞む蜃気楼と同じ。
 鎧からルパートのルーツ、猟兵としての力と人間関係までも喪えば――この場と似ても似つかぬ地獄の完成だ。
「だがあえて謳おう。素晴らしい地獄だと」
 流動鉛が疼く。狂気に染める炎など、自身の扱う炎と比べれば微風と同じ。
 普通の炎でないのなら、強く己が使う炎を意識すればこそ狂気の熱を上回って燃やし斬れるもの。
「俺が狂うても、仲間が凶行を止めてくれるわけだろう」
 ――あれを仮に、誰も俺を……ルパートと認識しない世界(地獄)だというのなら。
 敵となり立場が変わったとしても、止める者が必ず現れる暗示でもあるはずだ。
「なにをおかしなことを……ふふ」
「丁度いい。どのような気分なのか?……一足先に味わって貰おうか」
 地獄を止める者、この場ではすなわちルパートがそれだ。
 ルパートの手には折れた神殺しの魔剣。女の炎と地獄さえ、絶ってみせるものだ。
 それは折れた部分から先を青く青く燃える刃で生成したものもである。
 ルパートが決して存在を疑わない、青炎より再誕したある無敵の一振りの姿。
 女はすぐに嫌な予感でもしたのか骨の獣を差し向けてくるが、一歩間に合わない。
 誰かの骨を砕くようで忍びなかったが剣圧で薙ぎ、黙らせる。
「人を呪わば、貴殿もまたそのようにならないよう気を配るべきだ」
 魔剣からじわじわと伸ばされた呪詛の念に女は足を絡め取られ、ピタリと動きを止めた。影でも縫われたように、服を擦るおとはすれども、動けない。
「戻ってこい妖剣士。地獄が貴様を待っているぞ」
 帯刀された刃を狙い、絶つではなく、落とさせる為に向けた剣。
 ルパートに狙い通り確かに妖剣を叩き、そして狙い通り刀を落としたが……女は笑いながら、高速で何かをしてみせた。
 あまりの速さに足元を埋め尽くしていた骨がカラリと音を立てた事は分かった。
 次いで、視界いっぱい……空中に大量の骨が散らばったから。
 女は、――鞘に入ったままの剣を握って、けらけらと陽気に、妖艶に笑っていた。
 しゅうう、と地獄を見せる炎を収めて、湯屋の主を演じて女は言う。
「意識が合っても無くても死んでも生きてても地獄……なんて愉快なのかしら」
 捕縛を強引に解くために属性であるはずのルパートの呪詛すら喰らった鬼の姿。
 ――この傷み(地獄)もまた美味、と口元を舐めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

田抜・ユウナ
赤丸希望
アドリブ歓迎
抜刀はNG

娘と自分が重なって仕方ない
妖刀に憑かれた自分が引き起こした悲劇を思い出す
鬼と化して死肉を貪る己の姿を幻視する
過去と現在、現実と幻の区別が曖昧になって、地獄に呑まれていきそうに……
「……な、めるな!」
私にとっては、この程度の悪夢なんて日常茶飯事!
《守りの金鎖》を掴んで〈呪詛耐性〉を振り絞り、どうにか背中の妖刀を鞘ごと抜いて打ちかかる
当たりさえすれば、ヘロヘロでもかまわない
鞘に込められた〈呪詛〉が、名前が象徴する力――火車や炎を操る力を折る

「そんなじゃ鬼の”名折れ”ね。さっさと人間に戻った方がいいんじゃない?」



●鬼の御業

「貴方は?どうかしら、此処は血煙湯屋……ふふ、ゆるりと休んで逝かれます?」
 振り向く『嗤う火車』籃火にあるのはただ、ただ、邪悪な笑み。
 夥しい数の流血でその身を濡らし、血肉を死肉を食らった娘は、惨劇の中で別側面のように苦心なく笑うのだ。
 この場に集めて過ごす自我を忘れた狂気の鬼、それが、目の前の女。
「休める環境?これ」
「いえいえそう言わず。"みなさま"も貴方に"良い夢"を見て欲しいようですから」
 からから、と周りは始める火車。
 女の使う火と、纏った怨念でからから廻す。
 この場に集められた多くの終わった時間が滞った分だけ燃える地獄の火炎。部屋ごと喪しても苦しむものは、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)ただ一人。

 ――話に聞いた娘と、自分が重なって仕方がない。
 炎の中でより沸き立ってあぶり出されるのは、妖刀に憑かれたユウナが引き起こした過去の惨劇。
 思い出してしまう。隠れ里の家族や友人たち……。
 妖刀がカタカタと震える手応えだけは現実か?
 不思議な事に、地獄の釜は在りし日の光景を見せてきた。
 これはきっと、惨劇の起こる少しだけ前の時間の記憶。
 ああ会いたくなる母に友人にそれから父に。……会えるかもしれないという、期待に手を引かれて足はふらふらと求める場所へ向いてしまう。
 あの日あの時。
 いいやその前の里の中は、いつも笑顔で溢れていたはずだ、記憶通りならば。
 幸せな風景。夢に観ることさえある、『もしも』のその先。
「あら、……面白くないわ」
 炎を繰る女の声。メラメラ燃える火炎に怨念が溶け込んで、幸せの光景その欠片は色をどんどん現実に近いものへ変えていく。
 ざざざ、とノイズが奔ったように。
 紙芝居でもめくるように、舞台背景が一変する。
 幸せの光景は、真逆に塗られて血みどろ屍山血河の内側にユウナは立っていた。
 ユウナの幻視は時を刻み、記憶通りの結果が見渡す限りに広がっていた。
 ――ああっ、……!
 馴染み深い悪夢だ。ユウナが繰り返し観ることがある、幸福と地獄の繰り返し。
 彼女という存在が、犯した罪を突きつけてくるように何度も、何度も、何度も。
 しかし、この幻視は違う。違う歴史に徐々に溶け込んでいる。
 屍山血河の中にユウナはいた、それは間違いない。
 では、蹲り血肉を貪る"コレ"は誰だ?
 ――熾火ような瞳は陰り、何を映しているかわらないけどこれは……。
 死肉。殺し殺し殺し壊して、脈動することすら終えてしまった肉に一心不乱に喰らいつく――鬼?
 手が壮絶な顔の誰かの死肉へと手を伸ばし、ひとつふたつと飢えが収まらないのか、喰うことをやめない。
 ――あれは誰?しらない。……ううん、違う。知ってる、私よ。
 ――……私は、そんな事を…………した?
 現実と過去、現実と幻の区別がつかなくなって、今の自分の口の中を確認する事が恐ろしくなる。
 カタカタカタカタ震える妖刀が手元にあるのだ、嘘か真かもう、よく……。
「……な、めるな!」
 わからない。そんな自分の答えを否定するように、ユウナは派手に足元の髑髏を蹴り飛ばす。
 躯の誰かには後に謝罪するとして、それでやっと、現実の"今"のユウナの存在をたしかに取り戻す。
 きゅ、と掴んだ守りの金鎖がふんわりと気分を落ち着けてくれている。大丈夫、今たしかに"此処が現実"だ。
「元気な子ね。夢も現実も、幻も、どれが現実でもいいではなくて?」
「私にとっては、この程度の悪夢なんて日常茶飯事!」
 背中の妖刀を、鞘ごと引き抜いて妖艶な炎の鬼に打ち掛かる。
「抜かない刀で誰かを打つことも?ふふ」
「アンタも鞘ごと抜かせた時点で、打つでも斬るでも同じことよ」
『嗤う火車』籃火は、帯刀していた刀から刃を抜き放つこと無く……ユウナと同じく鞘で受け止めていた。
 鞘を素手で掴む技量は元々の娘に存在せず、鍔迫り合いのような力比べならば引けを取らないと妖剣士の感がそうさせたに違いない。
「……あら?いつのまに」
 考えもしなかった、という声色だったがユウナは気にせず両足を奮い立たせて鞘の呪詛を蔓延させる。
「これは七織の鞘。身に受けなかったことは正しいけれど、大間違いよ」
 名折りの法力が籠められた、その鞘の一刀による呪術は……娘の、いいや鬼の名に嵌るモノを折る。
『嗤う火車』籃火、その名に冠するもの。
 火車や炎を操る力を折る――いいや、既に折っていた。
 鞘同士がぶつかった時点で、呪詛に蝕まれていたからだ。
 骨の山にがらがらと埋もれて落ちる女の火車。力の循環が上手くいかなくなったからか、炎がフッ、と消え去る。
「この程度で鬼なんて。そんなじゃ鬼の”名折れ”ね。さっさと人間に戻った方がいいんじゃない?」
 地獄の中で地獄に落ちないユウナ。
 鬼にとって彼女はとても強敵で、鬼よりよほど鬼の所業を見せつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
羅刹のオレも力試しは好きだが
気が付けば愛刀で一切合切斬り潰すのは殺伐過ぎる
…市井にこんな業の深い刀の憑き物使いやがって…

宿場唯一の人の居る所ってのに何ともえげつないお宿だな

クナイを閃かし戦意を見せ【投擲】佩いた刀で弾くよう仕向けてみる
あんま抜く方じゃ無い?
とクナイを手に接近し斬り掛り鞘ごとでも弾き
抜刀するなら指の2、3落としても取り落とさせよう

UCの威力をクナイに乗せ娘より刀を狙い撃つ

地獄か
まだそんな長く生きてなくてね
あるならば
オレが殺めた幼馴染み
抵抗もせず殺されたあの子
郷の指示に逆らえなかったオレ
軽く入った刃と最期の息と溢れた血と…

振り払うようにクナイを娘の利き腕に突き刺し反撃する

アドリブ可


熾護・敏利
陰惨極めた地獄の宿場ですね
残念ながら貴女のもてなしは趣味ではありません

槍で骨獣をなぎ払いながら藍火へ接近
敵技発動を察し次第UC発動

おれの地獄。
血に沈む無辜の人々、殺したのは自分。
この場の血腥さもあり易々と術中に嵌るだろう
しかし代償にした感情により地獄は只の幻覚となる
…心は痛むが抵抗はない
現実に地獄を招かざるを得なかった彼女に比べれば
おれの地獄など生温いにも程がある

敵の移動先を予測し間合い詰め
破魔の力を込めた霊符で腕を攻撃、刀を持つ力の弱化狙い
直後、小太刀にて敵刀の柄付近を狙って渾身の攻撃を入れる
刀を落としたなら直ぐさま回収

八、絶望に逃げてはいけない
この地獄を齎らした仇は、君自身の手で討つべきだ



●手は鮮血に濡れて

「いやね?羅刹のオレも試しは好きだが……」
 足の踏み場がない室内。
 鼻をつくのは濁った空気に混ざる腐臭。肉すら全て削ぎ落とされた躯だらけのこの地獄。作り出したのはたった一人の妖剣士。
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)にとっても、この光景は殺伐が過ぎた。
「夢から醒めて気が付けば、愛刀で一切合切斬り潰したコレが待ってるってか」
 ――……市井で、こんな業の深い刀の憑き物使いやがって……。
 娘の刀に元々何が憑いていたのか。それは今となっては些細なことだ。
 斬り殺された数々の死体、鬼から戻って受け止める現実はどれほど重いだろう。
 辺りを眺める姿を見て『嗤う火車』籃火はカラカラと乾いた笑いを喉の奥で鳴らしながら、トーゴに言葉を投げかける。
「良い光景でしょう?」
「どこが。宿場唯一の人の居る所ってのに、何ともえげつないお宿だな」
 話に聞いた通り、宿場の外に生きた人間の気配は無かった。
「同感です、陰惨極めた地獄の宿場ですね?」
 熾護・敏利(明鏡未明・f30688)もまた、畳み掛ける。
 此処が湯屋?一体どんな色の湯が焚かれているというのだろう。
 考えなくても、水の色はおそらくドロドロとした時間の経った赤褐色。
 休まる部分など、足の踏み場以上に存在しない。
「褒め言葉かしら鞣した皮の敷物を沢山沢山用意しましょうねえ、ふふふ」
「ああ、結構。残念ながら貴女のもてなしは趣味ではありません」
 カラカラと何処からともなく駆けてくる鬼の配下、この惨劇によって疑似生命を得た骨獣。犬や猫の骨で構成されているようで、なにか違う。肋骨あたりに人間の骨も組み合わせて創られた歪な獣は、猟兵たちに嫌悪感を誘った。
「ツレないことを、私はお部屋の方をご用意……っ」
 籃火が言葉をつまらせたのは、トーゴの手にクナイがキラリと光っていたから。
 忍者の暗器をチラつかせるのは、穏便な意思表示ではない。
 妖剣士である記憶がないわけではないが、正気ではない鬼が生唾を飲む。
「真似事なんてやめるこったな」
 トーゴが戦意を見せるように、素早く投擲すると鬼は部下の獣に当てて攻撃を退けようと試みる。
「無駄なことです」
 指示を受けて駆け出そうとする獣を、敏利がシャンッと鋭い凛音を響かせて錫杖槍にて薙ぎ払い、砕く。
 どんなに健康だろうと骨は骨、砕けば粉に還っておしまい。
「……ッ」
 刀を抜かすに躱す術を失った。
 鬼はトーゴの作戦通りに佩いた刀で弾しかなくなった。
「あんま抜く方じゃ無い?」
 迷いこそ見て取って、軽く挑発すれば舌打ちだけが返ってくる。
 追撃するように急激に差し迫って、クナイを手に接近して。
 斬り掛かると抜刀された刃。キィイン、なんて鋭い音を立てて金属が弾ける。
「抜けば殺すしかなくなりますから。今日は紅い紅い、雨が降りそうですね」
「殺される前に、弾いたら雨なんて降らないだろうなあ?」
 ――"視ずの鳥其の嘴は此の指す先に”。
 ――指の2,3本落としてでも取り落とさせなきゃか。
 忍ぶ武器が視える武器一つであるはずはなく。
 超圧縮した大鉄嘴の威力をクナイに乗せて。
 力任せに刀の刀身を激しく叩くと、女のバランスは大きく崩した。
 握る手は頑なで、身体のバランスを崩しても尚、妖刀を落とす気配がない。単純で重い啄みに、指の向きが一つ二つおかしなことになっているが痛みに顔を歪めている様子もない。
「小癪な……!」
 骨を踏み砕いて強引にバランスを立て直し、喰った生き物たちの怨念と今しがた感じた恨み節。娘のもとは到底思えない情念が、ぼ、ぼ、ぼ、と手に灯り、鬼火のように燃え盛って猟兵たちに投げつける。
「……その攻撃を、待っていました」
 全力でいく。敏利は明確な敵意を見て取って、己の心を一先ず殺す。殺人衝動を嫌悪し忌避する感情を殺したところに何が現れるか――答えは、簡単だ。
 鬼火が弾けて、炎の波は猟兵たちに降りかかる。
 骨を焦がしメラメラと、燃え広がるは幻想狂気の地獄の花道。

 ――おれの地獄。
 敏利の独白。
 ――血に沈む無辜の人々。
 視界いっぱいの死体。だらだらと、流れていく鮮血。
 ばたばたと倒れる、知らない誰かの群れ。
 これを殺ったのは、殺人鬼だ。
 いいや、それは言い逃れ。
 やった痕跡は、敏利の手の中に。
 ――殺したのは、自分。
 骨だらけの乾いた地獄を観た後に、この幻視は余計に血腥く思えた。
 死んだばかりの温もりもあって、転がる死体はまだ生前と変わらない。
 ――……心は痛む。だが、抵抗はない。
 ――これは只の幻覚だ。
 敏利が己の心を殺人衝動で先に殺した事で、効力は敏利の心を揺さぶらない。鬼の術中にこそ身を置いて地獄(まぼろし)をその相貌は映したが、映しただけなのだ。
 ――現実に地獄を招かざるを得なかった、彼女に比べれば。
 この炎を繰る妖となって敵対する娘と己を比べる。
 ――おれの地獄など生温いにも程がある。
 娘は地獄の蓋は開いたばかり。
 正気に戻り娘が生きようとするなら、……生きることが修羅道だ。

「地獄か。ふうん……」
 トーゴの独り言。
「まだそんなに長いこと生きて無くてね」
 地獄と呼ばれる光景は、たった一つしか思い当たらない。
「……」
 炎の幻の中に観た。
 在りし日の、トーゴの幼馴染。人間の女の子。
「オレが殺めた。うんまあ、そうだな。地獄だ……今考えると」
 トーゴの手に、抵抗する事無く命を散らしていったあの子の顔をはっきりと思い出せない。幼馴染にもトーゴにも、非は無かった。責も咎も、無かったけれど。
 最期の一瞬。あのときの表情を明確に思い出してしまえば、心がとても苦しい。
 ――郷の指示に逆らえなかったオレ。
 いつの間にかトーゴの手にあるあの時の刃物。
 組み敷かれた無抵抗の彼女。
 ぷつり、と肌に軽く入っていた刃の感触。
 記憶の再現をしているような、生々しい感触が手に残る。
『――っぁ――――』
 途切れ途切れの最期の息。
 裂いた部位からとぷりと溢れる真っ赤な血の華が彼女に咲き乱れる――。

 熱いはずの炎の壁に、二人が見たものは、異なる。
 炎を振り払うようにクナイで切り裂き、トーゴは迷いの種を振り払う。
「狂って壊れて壊れると思ったかよ?」
 喰らいつくように、籃火の利き腕に暗器を突き立てる。
「っ……!骨獣、髑髏の盃を…………!」
 ――回復に務めるつもりか。
 トーゴの反撃を予測して間合いを詰めた敏利がぺたり、と霊符を貼り付ける。
 鬼と相性の悪いそれによってばちぃと凄まじい破魔の力で焼かれて大いに爛れた。
 ――握力は相当みた。離させないように、要らない力が働いているな。
 クナイの突き立った利き手を焼き、刀を持ち続ける腕から弱める。
「八、絶望から逃げてはいけない。この地獄を齎した仇は、君自信の手で討つべきだ。違うか?」
 声を掛けても落とさない鬼の硬い意志は本当に娘のものか?
 ――往生際の悪い……。
 素早く小太刀を手に、敵刀の柄付近に潜り込んで渾身の攻撃で叩く!
 落とさないのなら、強引に。
『我が主君のもとへ届けるまで簡単には逃さぬ。鬼は鬼、我が献上品は主君以外の者へはやらぬ』
 鬼の口から出た言葉には、違和感だけが大いに合った。
 それは、娘の言葉ではなく……妖刀から沸く、威圧的な殺意から聞こえた気がしたのだ。鬼に変えた元凶……『刀狩』の、声が。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

吉備・狐珀
【路地裏】

同じ地獄なら望まぬ殺生をやめられる方がましかもしれませんね
この地獄を見て正気を保てれば、ですが

UC【神使招来】使用
剣士には剣士を
ウカは八殿の相手を
八殿から刀を遠ざけるのが目的ですから傷つけぬように戦うのは少々骨が折れるでしょうが、お願いします
ウケは八殿が刀に近づけぬよう、その弓矢で補助をお願いします

私は皆が怪我をしないように結界をはり、この場の穢れを浄化に努めます
本当は戦闘に加わりたいところですが…
破浄の明弓を手にし、その矢で己に傷をつけ正気を保つ
穢れを祓うこの弓矢なら呪詛にも耐えられるでしょう

友に手をかけるなどまっぴらごめんです
そして友に手をかける姿も見たくありません
地獄は終りです


ペイン・フィン
【路地裏】

地獄、か
あまり、好きな光景ではないね
それは、貴女も同じじゃない、かな?

かつては自分も、こういう形ではないけど、地獄を作ったこともあった
それでも、その後まで、地獄を続ける必要は無い

鬼で有り続ける必要は、無い

だから、ね

貴女は、どう在りたいのかな?
八さん?

コードを使用
自身の属性を、怨念から浄化へ変換
ツバメ型飛行機で、鬼の心を削いで、八の正気を取り戻させる

大丈夫
貴女は、そんな鬼に負けるような人ではない
自分たちが、力を貸すよ

地獄を作って終わり、なんて物語
登場人物に取ってさえ、払い下げ、だよ



●Now Call of

「地獄、か」
 目の前に広がる終わった躯の山。
 瓦礫と大差のない、バラバラの骨身は骨獣によって荒らされている。
「馴染みの深いお好きな光景ですか?ふふふ」
「……あまり、好きな光景ではないね」
 ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)が周囲から視線を外して、見据えるのは燃える炎が似合う鬼。
「それは、貴方も同じじゃない、かな?」
「同じ地獄なら望まぬ殺生をやめられる方がましかもしれませんね」
 地獄の終わらせ方を、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)もまた説く。
 此処は、殺せるものすら居なくなった宿場町。
 娘にとって全ての終わりが産まれ――。
 未来も過去も息を潜めた今の姿では――ただ、時間はひたすらに空虚なり。地獄の沙汰の造り手は、この場を根城に死肉を喰っては殺した数に嘲り嘲笑って過ごしていたことだろう。
 修羅道に堕ちた鬼として、どこまでも気まぐれに。
 この地に飽いて別の場所に手を出さずに居たことだけは、誰にとっても幸運なことだったかもしれない。
「この地獄を、真の目で見て正気を保てれば、ですが」
 既に人生を狂わされていた娘が、狐珀の方法で悪意から逃げられなかったのは明白である。
 ただ、悪意は此処にあって、今もずっとほくそ笑むものだろう。
 この場においてたった一つ鞘のうちに睡る――妖刀に。

「つまりは、どうなさりたいのでしょう?宿に休みたいから招かれた、わけではありませんね?」
『嗤う火車』籃火は他の猟兵の活躍で破壊された愛用の火車を代わりに。
 指をくるくる廻すように自身が繰る炎、鬼火で代用する。
 薄暗い室内が、炎の燃え盛る勢いで照らされた。
 鬼の服装も、腕もボロボロで。
 麗しき顔の鬼は、"化けの皮"は剥がれ気味だ。丈の短い服でも着ているように、別の肌が、別の顔が覗いているである。
 衣服も装飾も、そして顔の皮すらも。
 鬼は――"誰か"から剥いで、使っていた。
 時折、猟兵の言葉に反応するように籃火はぎこちなく動きを止める。
「かつて自分も、こういう形ではないけど、地獄を作ったこともあった」
 鬼の口車を無視する形でペインは地獄湯屋の存在を否定した。
「……それでも。繰り返し地獄を再現することも、経験したその後にも、地獄を続ける必要は無い」
 地獄の助けの定番は、蜘蛛の糸。
 この場にその糸がなくても、言の葉は届くはずだ。
 鬼ではなく……剥がれた皮の下に隠された真の鬼ではない――妖刀士の娘、八になら。
「地獄を見た。だから鬼として地獄を続ける?違う、と自分は考えるよ」
「ふむふむ、解をお聞かせ願いましょう。――その心は?」
「鬼であり続ける必要は、無い」
 かたかた。何が揺れる音。
 音の正体に、狐珀はすぐに気が付いた。
 それは、鬼の所持する妖刀。
 ガタガタとひとりでに揺れて、意志と関係なく喚ばれるように鬼の手が徐々に刀の柄に動いていく。
「だから、ね。返事を聞くよ。貴女は、どう在りたいのかな?八さん?」
 ペインは質問とともに自身の属性を、反転させる。怨念から浄化へ。
 黒から白へ移る雰囲気に、鬼はいよいよ剣を取る。それが現実になるまで時間がない。
 白の衣服の内側からバサバサと喚ばれて飛来するツバメ型紙飛行機。
 暗い空間で目立つ白い紙の翼が『嗤う火車』籃火へと群がっていく。
 攻撃を拒むように、部下である骨獣が白の翼に喰らいついては引き裂こうとするが――ひらりひらりと、舞う翼は簡単に獣に捕まらない。
 満足する答えを得るまでの間に、負の感情だらけの鬼の心を削ぎ落として、正しくあるべき光を灯すのだ。
 曰く、八の正気を取り戻させる。
 負の感情さえ削って削って減らせれば、――きっと届くから。
「猛き者達よ 深き眠りか目覚め 我と共に闇を祓う力となれ」
 素早い振り抜きがペインに落ちてくる前に、がらがらと、骨の道を切り開いて誰かが躍り込む。
 受け止めるは、神剣。
「剣士には剣士を。ウカ、八殿の相手を。刀を遠ざけるのが目的ですから……」
 決して傷つけぬよう。最後までいわずとも、ウカが頷いて鍔迫り合いに興じる。
 歩みを刃を進ませず、誰かを斬らせず。
 研ぎ澄まされた剣術は、刃を押してわざと隙を作ることまで行う王道から邪道まで扱う幅広いもの。
 娘がどのように鍛錬と精神修養を積んできたか、それがありありと分かるのだ。
 気を抜けば誰であろうと――斬られる。
 ――少々骨が折れるでしょうが、お願いします。
 前衛にウカを、ウケは狐珀の傍より弓による支援。
 八が刀に近づけぬよう、常に狙いを定めて構えて、いつでも遠くへ弾けるように。
「剣士は剣士ですよ、私は。"私"がどう在りたいか……それは、ずっと決まっている」
 攻撃を命中させたウカに、鬼は呪いを付与しようとした。
 だが、狐珀と共に歩むウカは神使。呪いとの相性はとても悪く、炎で周囲を囲われようとも動じない。
 それはウカだけのことだ。術の使い手である狐珀では事情が異なる。
「影炎が私に伸びるとは思っていましたので」
 霊力に呼応して弦が張られる破浄の明弓、弦を撫でるようにして顕す弓矢であえて自分を傷つける。
「皆が怪我をしないよう……私の傍の穢れは、浄化しますから」
 ふわりと青白い雰囲気の結界を張り、呪詛と呪いの侵略を拒む。
「友を手にかけるなどまっぴらごめんです。そして、共に手をかける姿もまた、見たくありません」
「そう。これ以上に誰かに手を出す必要も、ない。大丈夫」
 結界に阻まれ、進退窮まる火車の回天が紡ぎ続ける地獄の演舞。
 鬼に殺された骨身に、攻撃回数9倍の立ち回りはあまりにも酷。誰も味方ではない故に、自然に獣たちは自滅してただの遺骨へと還っていく。
「貴女は、そんな鬼に負けるような人ではない。自分たちが、力を貸すよ」

 払い除けられることはなく。
 炎に燃やされることもなく。
 鬼の肩に、ペインのツバメが止まる。

「……此処は、地獄か?」
 鬼の目に、涙が光った。
 鬼……の姿で娘は、正しい現実をやっと"観た"。
 絶望に負ける前に観た光景と、随分と凄い量の狂気の沙汰。
 コレを本当にやったというのか。考えるのは、――後だ。負の感情、狂って堕ちた思考は、物語を宿す翼によって安らかな気持ちを分け与えられて落ち着いていく。
 気を落ち着けて、敵対の意志を失えば鬼は鬼ではなくなる。
「地獄を作って終わり、なんて物語……登場人物に取ってさえ、願い下げ、だよ」
「さあ。するべきことを。これにて地獄は、終りです」
 ウカと競り合う手が、じわじわ震える。
 その刃こそ、全てを殺し全てを壊しすように仕向けたモノが憑く元凶。
 狂った意識のなかでも絶対に握り続けた手は、緩んで妖刀を取り落すにいたる。自分の手で悪意を手放し、取り落とす。
「……ウケ」
 ――カッ!構え続けた支援は今このときのために。
 自分の意志で取り落した妖刀は、破魔の力を宿し全てを浄化する弓矢に弾かれて、骨の山の中に吸い込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『刀狩』

POW   :    刀龍変性
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【己が喰らい続けた武具が変じた鱗 】で覆われる。
SPD   :    妖刀転生
自身の【体の一部 】を【独りでに動く妖刀の群れ】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ   :    修羅道堕とし
自身の【背の刃の羽 】から【見た者を幻惑する妖刀】を放出し、戦場内全ての【遠距離攻撃】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヴァーリ・マニャーキンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟書家『刀狩』

『痛みに啼いて、武家の魂を手放すなど……なんと心の弱いものか』
 娘、八から離れた妖刀から声がする。
 妖刀よりどす黒い煙のように立ち上るそれは、怨念を身に纏い人を壊す妖怪。
 竜の如くぬるりと伸びる巨体が、妖刀の一振りから身を捩って顕れた。
 これこそが、武人の魂たる刀を狩り修羅に堕とす『刀狩』。
 刀を狩られたモノは人にあらず――心を亡くしたモノが鬼となるのだ。
『良質な"鬼"を育てられたと自負したモノを……見込み違いであったたようだ、腹立たしい』
 硬質化した鱗のような突起、煌めきは刃の如し。
『地獄に酔えるならば素質があろう。我と共に主君の元へ即座にゆけば良かったものを……』
 鬼がこの場に留まったのは。
 元々の八の信念"全てを守りぬく"が反転した、"全てを壊した"ことに影響する。
 護りたいものが全て壊れてしまったから、鬼に堕ちた八は何処へも逝く気にならなかったのである。
『まあ、いい。阻んだものを生かしては帰さぬ。娘、お前の刃など勝手に持ち帰るといい』
 八の妖刀から離れ、言葉なき竜の咆哮。
 びりびりと威圧するように吐き出した大音量は、猟兵に向く果てしない殺意。
 猟書家『刀狩』は、刀に憑いて剣士を堕とすが……堕ちないものに容赦しない。
『脆い人間に我を殺せるとは思わぬ。ここで備蓄を蓄えていたのは、一体誰だったのかを思い知らせてやろう。我は竜のあり方を身に映す、妖刀を喰らう化生。号を"刀狩"』
 無言で拾う八の妖剣。今まで通りの質量と、今まで通りの姿。
 おかしなものなど憑いていない。精神を四六時中蝕んでいた幻を、"火炎"に変え剣士は一振りをただ構えて、竜と睨み合う。
 刃に誓った言葉を覚えているからこそ――破滅を呼んだ元凶を、許せない。
『地獄の蓋は空いている。この場において、無残の死を与えられ、供養されず肉も大事なものも何もかも奪われた者は数多い。全ては、あの妖刀。娘の一振りがやったこと。さあ、――無念に殺された者のたちの上で好きに暴れ好きに壊せ。我を殺せるものならば、お前もまた――鬼だ』
ネムネ・ロムネ(サポート)
『交渉を始めるのです』
『ん。ネムに任せるのですよ』
『んん。出てくるのがはえーですよ』
『うるせーです。知らねーです』
慈悲深く、困ってる人には手を差し伸べずには居られない性格です
オブリビオンに対しては容赦なく火器を振るいます
“交渉”や“説得”と称した武力制圧で敵を圧倒する事を好み、遠距離からの狙撃や中距離からの制圧射撃を軸に戦います
事前にロケーションを入念にチェックし、地形や建物を利用した戦闘で身体能力以上のパフォーマンスを発揮する戦略を得意としています(舞い上がる花弁を隠れ蓑にした狙撃や城の柱を崩落させて死角を生み出す戦術等)
ギャグ依頼も歓迎

恋人がいる為R18な事や他者との過度なスキンシップ禁止


柊・はとり(サポート)
※アドリブ連携歓迎、御自由に

また事件かよ…
俺は柊はとり
歩けば事件に遭遇する呪われた体質のせいで
殺された後も嫌々高校生探偵をやっている探偵ゾンビだ
謎解きは特技だが好きじゃない
この場に居合わせたのも偶然だろうが
関わっちまった以上は解決に尽力する
性格は察しろ

ちなみにこいつ(剣)はコキュートス
人工知能程度の会話ができる
『事件ですね。解決しますか? 柊 はとり』
うるせえ

●戦闘
コキュートスは莫大な負担と引き換えに
戦う力を与える氷の魔剣だ
基本的に代償のある技しか使えないが
高火力を出せる超攻撃型の前衛だと思っとけ
探偵要素はかなぐり捨てていく

弱点は脳
頭さえ無事なら何してもいい
痛覚はあるがいずれ再生する
人命最優先



●交渉決裂

「また事件かよ……」
 大きなため息がひとつ。
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は目の前に広がる光景に頭を痛める気分になる。歩けば事件に遭遇するのはとりには、まあ比較的よくあることだ。
 しかも、これは既に完全犯罪が起こっていて、山程のバラバラ死体の数々。
 たった一つの妖怪は、姿を顕して威圧的態度でいる始末。
「俺は柊はとり。事情聴取は、……あまり必要には思えないな」
『未解決事件ですね。迅速な解決をお勧めします。柊 はとり』
 AIを搭載した氷の大剣が、推奨してくる。
「偶然だろうが足を向けた以上、未解決のままはむず痒い。当然だ」
 一体いつ、『刀狩』は娘の妖刀に憑いたのか。
 大名に功績を讃えられて貰った時期からか。
 それとも、誰かと切り結んだ時にでも乗り移ってきたか。
 謎解きの欠片を考えてみるも、結果はこの通り。
 誰も気づかないうちに、事件の規模は町ひとつを舞台を血に染め尽くした。
「チッ……」
 この場に転がる知らない命の損害を考えても仕方がないが……自身の首の傷が疼くようで、どことなく不快な気分。
 もし事件の序盤で解決できていたのなら、骨の躯の数は減っていただろうか。
『我を討つか?そうか、そうか――殺ってみろ』
 ぬるりと長い尾をくねらせて、刀狩は大きく身体を揺らす。
 ぢぢぢぢ、と白色の鱗が鎧のような硬そうな質感を得て、黒く黒く輝いた。
 龍の姿でありながら、武者のような風貌に、至る。
『喰らい続けた我の鱗を、討てるのならば』
 ガチガチに武装していた者が、宿場町の何処かに滞在していた証拠だ。
 ――護衛が持つは身を挺する為の鎧だけにあらず。
 ――刀や槍の所持していたものもあるだろう。
 はとりが長め廻す場所にその姿を見受けられないが――。
「だったらどうした。お前が鬼武者でも名乗る気か?」
 眼鏡をくい、と上げて鋭い眼光の瞳は龍を見据えて、跳ぶ。大剣、コキュートスを大きく振り上げて龍の頭を叩けば金属質な音がキィインと耳を突く。
 事件解決への近道は、我が物顔をするモノを潰すのが良い。
 探偵要素をかなぐり捨てて、誰がどうみても犯人である撃ち込みを試みるが、龍の体は剣と同等の音がした。
『野良の鬼を殺す鬼となら、成るのも良いだろうな』
 体でコキュートスの斬撃を受けて、空いた手がはとりを掴む!
『引き裂き殺すより、喰らいて殺すのだ。妖剣士を堕とす我もまた、鬼かも知れぬ』
 くくく、と笑う龍の声。
 はとりに刺さる龍の鋭い爪。
 振り払わんとすれば何処かが派手にちぎれる予感がする。
 ――頭を抑えられなかっただけマシか。
 ため息混ざりの、弱点回避を少しだけ考えて。
 短く、端的に龍に言の葉をぶつけにかかる。
「犯人は俺達の中にいる」
 娘と、自身。それから他の猟兵と――山程の死体もまた容疑者の中に含めて、あえてはとりは宣言する。
「足元の死人が探偵ではないと、誰が言える?誰も語る口がない。答えるのは不可能だ。そして、お前は鬼ではないのに、鬼と認めるならば……死人もまた探偵の可能性は大いにある」
 探偵と探偵と探偵が同じ空間の内部に集まった中で、誰よりも間近の死が迫るはとりが"弱い"。逆に、誰よりも"強い言葉"が乘ったコキュートスの斬撃は、最強の矛へ。鎧砕きの必殺武器へと姿を変える。
「鬼であると称するならば、竜ですらない。最強の鱗、最強の防具など"あるはずがない"」
 力任せの氷属性が刃に乗って強化された鱗を砕き、龍の体に刃を穿つ!
 刺突を引き抜くと同時に、鱗の武具を刀狩の身から削ぎ落とす。
 身から剥がれてぱきぱきと凍る"鱗"はもう、着こなせまい。
『活動限界まであと10秒です。柊 はとり』
「……うるせぇ」
 はとりの意識が途絶えるそのまえに、ふわりと揺れる戦闘服が見えたから。
 事件解決を進めた探偵が、殺人現場で殺されるなら。
 "目撃者"は更に、罪の言及を繰り出せる。

「鬼とか、鬼じゃないとか関係ねーです」
 ネムネ・ロムネ(ホワイトワンダラー・f04456)の交渉術は、はとりの話の続きから始まる。
「鱗を削がれて痛いです?あと、そこの彼を返してもらっていいです?」
 手元に添える交渉道具。
 電子メガホンを手に、ネムネは比較的穏便に、刀狩へと声を投げつける。
 色々なレーダーがひゅんひゅんと飛ぶ。
 標準は、全て刀狩にターゲットとして残る。
『鱗を削ぐなど、我の逆鱗に触れたようなものだ、此奴は殺す』
「ああ、申し訳ないのですがどう答えて貰っても、選択権は無いです」
 交渉の基本は相手との意思疎通を図ること。
 ただし、相手が激昂していて意図した言葉を発しない時は、例外だ。
「此処は室内としては広い方ですが、ネムには少々狭いですね」
 拡張器が拾い拡大していく声は、龍に届きはするが交渉の余地はどうやらないらしい。足元の躯を考えれば、狭いに拍車が掛かる。
「一つ。ネムから質問があります」
『なんだ、娘』
「その背の羽は、空を飛ぶものです?」
 ずるりぬるりと、身を捩る龍はどちらかといえば空を飛ばない蛇のよう。
 大きな巨体にしては背に生えるは小柄な刃。
『必要ならば』
「そうなのです?じゃあ、最期に」
 淡々と、話を進めるネムネの不思議な、"最終通告"。
「避けられるなら除けると良いです。ん。ネムは、今あなたがしていることを、します」
 湯屋の天井より更に上、何かの飛来する音。
 微かに聞こえるウィイイインと室内の刀狩に向けて砲が動く音。
『……まさか』
 携行型照準器による捕捉が完了している敵に向けて、機械仕掛けの空賊の一斉集中砲火。
 巨大飛行船による砲撃の雨が、天井を砕き白骨を踏む龍の上に大量の木材が降る。
『娘、お前――鬼か!!』
 容赦なく、オブリビオンを瓦礫で潰す。
 死体に龍が、やっている事と同じように。
「だからすぐに、彼を離すべきだったですよ」
 勢いよく振る瓦礫から身を守ろうと、握ったままにしていたはとりからようやく手を離した。握りつぶそうと思えばできたものを、喰うことに目的を置いていたのが仇になった。
『――娘、お前もまた、瓦礫の中に道連れだ!!』
 刀狩の背の刃の羽を揺らすと、怪しいエネルギーが発生する。
 ゆらりと輝く金色で、たくさん。
 姿形状、どちらも、どことなくネムネの所持するシースナイフによく似ていた。
「……お?」
 いつ奪われたのか、いつ盗まれたのか?
 もしかしたら全く別のなにかだが、黄金というものは大抵魔力の塊だ。
 遠距離攻撃の要、携行型照準器の捕捉マーキングが、修羅道に堕ちるようにプツリと途切れる。
 標準を見失った自動操縦の砲撃がネムネの方にも流れて来てしまう――。
「途切れたら、繋直せばいいんです。トーゼンです!」
 再び追尾レーダーを刀狩につけ直すことで、難を逃れた。
「そういう風に色んな人を魔の道に落としてるのですねー」
 ――ネムは、おちねーですけど?
 仕返しに失敗し、幻惑はこれ以上無駄だと黄金の幻を潔くすぅうと掻き消す。
 瓦礫と砲撃を身に受ける刀狩は、明るい輝きが室内に入り込む中で哀れ床に伏すのである――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
へー
憑いて民草斬らせた太刀魚モドキが大層に号を名乗るじゃねーか

八さんて言った?…あんたがやった事を悔やむ時間が要るね
まずはあの喋りなアレ斬ってからだな
(共闘しても敢えて庇う等しない
まーオレら羅刹もよく鬼って言われるが血の気の多い性格を暗喩しての事で
正真正銘の鬼じゃない、が
まやかしでも鬼に近づく術はある

UCで強化
代償の殺戮を唆す呪縛を攻撃に転嫁

クナイと手裏剣+分割した妖刀「七葉隠」6本を強化した【念動力】で操り敵UCの攻撃を【追跡/武器受け/カウンター】でいなし隙があれば刺突【投擲/串刺し】
残る1本を手に強化膂力で斬り掛る【暗殺】
敵攻撃は【野生の勘】で極力躱すが被弾は承知【激痛耐性】

アドリブ可


熾護・敏利
身勝手な物言いは怒りを通り越して呆れますね
…鬼になるか否かを決めるのは、お前じゃない

敵手数が多様ゆえ皆と連携したい
全力を以て助力します

おれが標的では無い時は
敵視界外から接近、殺戮刃物でUC発動
敵反応を読み取って致命箇所を探り
以降は積極的にその部位を攻撃、敵防御を削る
八、奴の弱い箇所はあそこです

おれが標的なら
八が一撃を入れると信じて回避防御に徹する
把握した敵動きから挙動を予測し見切り回避
妖刀群には霊符を掲げ結界術を展開、弾く

八が無茶な行動をした時は
捕縛力を込めた霊符を投じて敵を鈍らせたり
敵攻撃が迫るなら庇う
死した者達を憶えているのは君だけだからこそ
どうか、生きて欲しい
…酷な事しか言えず、すまない


田抜・ユウナ
真の姿:装備参照
主目的は援護
爪による斬撃の衝撃波で敵が変じた妖刀群を片橋から叩き落とす
《【真の姿】千里眼》による〈視力〉で敵味方の動向を〈見切り〉、味方の被害を軽減。また、攻撃のチャンスを作ることを意識
【妖剣開放】
留め金を限定解除〈封印を解く〉
両手を威嚇するように掲げて――田抜流無刀、熊手薙ぎ!
両の爪で薙ぎ払っていく

……あんたみたいなのが、私は一番嫌いなのよ
だけど、あんたを斬るのは私の役目じゃない……そうでしょ?(と、妖剣士の背中を見つめて)
次に進めるよう、存分に復讐を
無事に終えられたら、「お疲れさま」とだけ言って寄り添う



●号を絶つ

「……へー。憑いて民草斬らせた太刀魚モドキが大層な号を名乗るじゃねーか」
 鹿村・トーゴは先の猟兵との攻防で地に伏した龍を哀れにそう表現する。
 のらりくらり長い胴体が瓦礫に埋もれては、龍かどうかなど判別がつかない。
「んで、八さんて言った?……あんたがやった事を悔やむ時間が要るね。まずはさ、あのお喋りなアレを斬ってから、だけど」
「……はい。全てはアレを黙らせてから」
「私達の闘い方は、結構な派手さがついて回るのだけど。"憑いて"これるかしら」
 田抜・ユウナは手で目を覆うように、顔を撫でる。
 背に感じている自身の妖刀、立ち上り続ける妖気。その身に強く強く纏いって真の姿を顕し、自身の持ち得るグリモアと同然の煌めきを眼に。
 ユウナもまた妖剣士。
 強き力のための成約は、"抜かずの誓い"を遵守することで果たす。
「身勝手な物言いは怒りを通り越して呆れますね、ほんとうに」
 静かに落ち着けた藤色の瞳に、熾護・敏利は白き龍の脅威を映して、睨む。
 ――気絶しているか?
 ――いやどちらでも良い。鬼になるか否かを決めるのは、お前じゃない。
「……実に、腹立たしい。私の剣が、私の武術で届くなら…………あの首を撥ねて、町に晒し首で飾ってやりたいくらい」
「そいつはいいね。まーオレらも羅刹もよく"鬼"って言われるが血の気の多い性格を暗喩しての事で……正真正銘の鬼じゃない」
 トーゴの気配が揺らぐ。
 魔を色濃く、オレンジの瞳の内で曇らせる。トーゴの血筋に憑き、代償を喰らうものを身に降ろすと――思考に乱入してくる、化生の唆し。
 殺せ殺せ殺せと、身体を"鬼"へと近づかせる魔性の強化の代償に、悪鬼に成れと化生はずっと、代償に囁いてくる。正真正銘の鬼に、化生に近づく術は――決して、皆殺しの上に起こすものではない。
「まやかしでも鬼に近づく術はあるんだ。血染めに両手を染めたからって、人間ってのは簡単に――鬼になれないんだよ!」
 ――今殺すべきはたった一つあれだけ。
 ――大物を殺せれば、問題なんてないだろう?

『あーだのこーだの、喧しくなく鼠が何匹増えようと、どこまでも矮小なことを。我の身体を愚弄したな、聞こえていたぞ。……よほど、この場の躯の一つに成り果てたいらしいな。地獄の屋敷にて出会ったよしみ、どれ――叶えてやろう』
 太く長い胴から、既に剥がれていた鱗がバラバラと派手に剥がれて落ちる。
 捕食して利用した武具武装の成れの果て。攻撃を受けて捲れた鱗。もう龍の身体に戻らぬ制御の効かないただの屑に、働きかけて、再び命じて与えよう。
『我の体から離れた以上、転生の効果を長く持たせることは不可能だろうが……小鼠を地獄に沈めるだけ。それだけ動けばよい』
 一枚一枚は蹴鞠より遥かに小さな鱗がキリキリと甲高い音を立てて変形していく。
 一つでは大きさが足りず、形を成すのは幾つも集まって創る妖刀の群れ。
 白色の刀身はどれも独自に独りでに動き、脆いものの集合体であることで時折空からの輝きを受ける燐光が、美しい。
『いけ!!』
 妖怪の一部が変じた妖剣が一斉に猟兵と八の元へ向けられて。
 軌道を縦横無尽に襲い始める。
「転生させたものから考えると、攻撃の装甲を極端に落としているようだし……あっちは私が」
 ユウナは身を低く白銀に煌めく妖剣の群れの下に潜り込んで、爪による斬撃と繰り出す威力が生む衝撃波が剣を叩き落とす。
 場合によっては、軌道を見切り、鋭い斬撃の餌食に――砕いてみせた。
「私には見えているの。独自の動きでもね」
 真の姿に至ったユウナの眼には、敵味方、そして妖剣の群れの動きなど予測にも等しく映る。
 千里眼。まるで時が止まった中で、動くよう。次の動きは手にとるように、誰の邪魔にもならず、敵の妨害だけが、行えるルートを導き出せる。
「ごきげんよう?私の接近にもちゃんと目を配っていて貰えないと」
『いつの間に』
 龍の視界に、ユウナは既に跳んでいた。
 背中に意識を集中し――留め金のリミッターを限定的に解除して。
 強大な力を持つ自身の封じられた妖刀を、起こす。
 爆発的なエネルギーがユウナに尋常ではない高速移動を可能とさせた。
 だからこそ、ユウナは龍の眼前に現れたのだ。
 最適なルートを駆ける中で、どれほどの元鱗を落としたことか。
 ――手刀、足刀。爪。どれでも落とせるほどの妖刀じゃあ、贋作以下ね。
 どれもこれも、ユウナの敵には成り得なかった。封じられた妖刀のほうが、よっぽど脅威に思えるくらい。
「……あんたみたいなのが、私は一番嫌いなのよ」
 両手を威嚇するように掲げて、龍の顔面鼻面に叩き込む一撃。
「――田抜流無刀、熊手薙ぎ!」
 両の爪は龍の顔を、無残なものに変えていく。
 がりがりがりがりがり。
『鼠風情が!!!!!』
 顔を振って、ユウナを叩き落とそうとするが時既に遅し。
 限界を超える前に、ユウナは危険な空域から離脱していた。
「美貌が台無しね。アンタを斬るのは、私の役目じゃない……そうでしょ?」
 妖剣士の娘、その背中を見つめて。
 言葉で、彼女の背中をユウナは大いに叩いてやった。
 ――次に進めるよう、存分に復讐を。
 ――無事に終えられたなら、"お疲れさま"とだけは言いたいね。
 ――きっと傷心に、止めを刺すだろうから。

 龍の気が逸れている間にも、続々と妖剣が転生してゆらりと数を揃えていく。
 浮かび群れとなって降り注ぐのだ。
 独りでに動く、"敵対者の意志"を拾ってどこまでも切り裂くために。
「全員が纏まっていたら狙いはどんなに不規則でも……」
 今最も鬼に近しいトーゴがクナイを投擲し、やや遅れて手裏剣を投げ放つ。
 速度重視と威力重視の二種類が、鋼の爆ぜる音を大量に立てながら標的を相打ちに次々と落とす。
『それで足りるか?我の鱗は、図体に見合う分だけあるのだぞ』
「今度は自分が殺される側のわりに、威勢がいーことで」
 手に掲げるはトーゴの妖刀、号を"七葉隠"。透明な刀身は、トーゴの認識にだけある。巨大忍刀を六つにバラし、周囲に浮かべて、にぃと笑う。
 身を超強化したことで為せる念動力で、簡単に落とせない刃を追跡し、どこまでも追いかけさせる。
 七を六に分けた。残る一本の七葉隠は、トーゴの手の内に。
「操るだけではもう足りないな?」
 八の怒気の篭もる火を帯びる妖刀の刀身を煌めかせ、動かぬままに殺しを完了させようとする龍を挑発する。
 妖刀の数をどれほど揃えても、猟兵が撃ち落とす。
 標的として八を斬らせないし、猟兵たちも斬られない。
「距離を保ったままでは、攻撃全てが届かないだろう。せめて間合いに――来い」
 怒りと恨みこそある。死ぬほど強く握る妖刀に、気力からなにまで吸われようとも、八に退く意志はなかった。
 彼女は武家の生まれ。
 武を軽んじる闘いなど、齢20の短い人生とは言え命の張り合いでこそ一番嫌う。
『助太刀に現れたものに救われて、二足で立つだけでその威勢。ハハハ。どこまでも、心弱きに堕ちた娘よ』
 ぐしゃりぐしゃりと床の上全てをすり潰す巨体が、動く。
 八の言葉を"殺してくれ"、とでも受け取ったのか。刀のように鋭い皮膚を持つ狩人が、ぬるりぬるりを勢いよく大顎を開いて喰らいついてこようとするではないか。
「敵の手数が多様ゆえ、皆と連携を……と思いましたが、全力を以て助力します」
 八より前に、猟兵が踊り出る姿に敏利もまた、鼓舞を受けたような気分だった。
 巨体が身を捩って動いた死角から、愛用の小太刀"陽炎刃"を翳して――苦々しい気持ちになる。
 嫌というほど殺戮道具は、今脳裏に思い描く望むだ光景を作り出すのに向いているハズ。斬撃は、敏利の期待に答えてくれるだろう。手に馴染み、馴染みすぎてざわつく気分など、今は何処かに放り投げてしまうのが一番だ。
 ――おれの場所が奴の死角とはいえ。まるで蛇のように動く。
 ――瓦礫を踏んだ音のひとつで振り向かれでもしたら、……いや。
「――集中しろ。致命箇所を、探せ」
 揺れ動く情緒を殺気の奥に、沈めて、沈めて、沈めて。
 ひゅ、と短い息を吸って。重く響く、致命的な殺人を、成すのだ。
 成すべき殺人相手は、もとよりこの地に在るべきではない地獄の住人。共犯者は一人にあらず。
 殺人衝動が野放しになったら……何処を狙う?何処なら堕とせる?
「……!」
 ずるずる身を這って進む龍の胴が時折、不思議な間隔で微妙に跳ねているのを敏利は見逃さない。
 その部分にだけ、"鱗がない"のだ。
 硬い自前の鎧の下は、ああ、死を恐れるほど柔いことだろう。
「成程。大量の妖剣でそれの目くらましを……」
 致命箇所を叩き斬ろうとするは、殺人鬼と見間違うほどの殺気の塊で。
 敏利の小太刀は常に同じ場所を叩く。
 簡単に身代わりに尾を斬れる生き物であったほうが、『刀狩』にはおそらく幸福だっただろう。
『……何度も、何度もぉお!!』
「八、見えますか。奴の最も弱い箇所は、鱗のないあそこですよ」
 敏利の剣にいたぶられ、じんわりと赤く染まった部位から死を予感したのか『刀狩』の標的が敏利に移る。
 龍自身の流血。そんなもの、弱み以外のなにものでもない。
「八さん。今の見えたよな?じゃあオレに続け、きっと……抉い一撃を届けてみせるから」
 頷いた娘の応答は無言。トーゴが敢えて庇うなどするつもりがないのを悟っても、自分で生き延びると強く信じているようだ。
 ――それだけ覚悟が見れれば、じゅーぶん!
 龍の体に強化膂力を大いに振るってトーゴの斬撃は、龍の生身に刺さって直に身をギギギと裂く。
「ッはああああ!!」
 刀狩に付いた真新しい生傷に、妖刀に絡みつくこの場に生まれた怨念を纏った八の一撃素早く振り抜かれる。
 振り抜いた速度で飛ばす怨念の刃は八の恨みも重なって、燃える痛みの衝撃波になって、龍の体を激しく撃った。
 追撃に、妖剣を振り抜こうとする八。
 敏利は殺す一撃をもっともっとと追求する殺人衝動に近しい何かを見て取った。
 痛みに暴れる龍の身に的確に霊符を投じ、動きの粗さ室内無駄な破壊を捕縛の力で強引に押さえつける。言うことを効かない獣を、地に縫い付けて。
 八の頭の中は殺す事で一杯のはずだ。
 復讐相手への殺害計画は、順調だ。
 だが、殺した"後"の事を思い出させなくては。
「深追いは命取りです。この場所の、そして君の近しい人々……死した者達を憶えているのは君だけだからこそ。どうか、君は生きていて欲しい」
「いえ……自分の命を顧みなかったのは確か。申し訳ない。私は、生きて償うべきなのに。殺しに殺した、命の数だけしっかりと」
「いや……酷な事しか言えず、すまない」
 叱咤の中に、進むべき道は真の修羅であってはいけないと。
 おそらく、娘にしっかりと伝わったことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
【POW】
共闘するからには言っておきたい

八、怒りと憎しみは腹の中で力に変えろ
判断と思考には込めるな、短絡的な行動に繋がる

〈冥府の槍〉の刃先を鱗や武具の隙間へねじ込み[部位破壊]と炎で内部[焼却]をメインに
飛ばれたら〈ヘヴィクロスボウ〉に連結した〈ジャバウォックの鉤爪〉を射出、[怪力]で引きずり降ろすか動きを止めよう
敵の攻撃は[戦闘知識と視力]で動きを捉え[武器受け]

手数が減ってもいい、敵の意識を極力俺に向けさせたい
巨躯な分増えた死角から八に攻撃して貰う

敵の意識が俺から逸れた隙を狙いUC発動し鎧と身体を纏めて破壊する
その部位を八、そして俺で追撃しよう

可能なら後でこの地獄を湯屋に戻す手伝いをしたい



●血煙に克て
 研ぎ澄ました剣であっても切り落とせぬほど強靭な躰。
 しかし、龍に痛みがないわけではない。
 つまりだ。あれは――殺せる。
 共闘相手は、落ち着きを取り戻したらしい。発狂の落ち着きを、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は見て取った。
「八、怒りと憎しみは腹の中で力に変えろ」
 怒気として纏って、剣を鈍らせる行い。
 相馬の指摘は確かにその通り、と八は頷いた。即興、急ごしらえの戦術となっても……剣の冴えまで鈍らせたりしない。
「判断と思考には込めるな。さっきのが最も駄目な例だ、あれは行うべきじゃない」
 短絡的な行動はすでにした。そう、ほんの少し前。
 援護が無ければ娘はもう亡くなっていたかもしれないのが、現実だ。
「……ああ。もうしない」
 迷いを断つ、決心。
 娘にとって、相打ちで死んではならぬ闘い。
 妖剣を握る手に、力が篭もる。この戦いは、必ず勝たねばならないのだ――背負わされた罪の分、地獄からの脱出は遥か遠いのだから。
『怒りと恨みを沈めた静寂の剣で、我を殺す?冗談も大概にするがいい……!』
 劣化に劣化を加速させた残骸を、猟書家『刀狩』は美醜を気に留めず喰らう。がしゃりぐしゃりと音を立てるは金属質の、鋼の成れの果て。
 それは、最初の競り合いにて変じさせた鎧を顕した元は龍の鱗だったものだ。この日までに喰らい続けて溜め込んだという、武具を変じさせた鱗の残滓。
 剥がれ落ちたそれらに無理やり働きかけ、妖刀へと転生させて。
 新たな剣へと変形させ攻撃を持ちかけて、負かされて。
 無残に砕けた鉄屑を、今度は……喰らって己の一部に取り戻す。
 転生は変性は、刀を創る工程のように――繰り返す。
 劣化を重ねた後、錆とノイズが入り交じる奇妙な鱗で覆われた。
 自前の白色の鱗に混ざり込んだ不純物。黒き鎧のような質感を、硬さを真の姿として龍は顕してみせたが――暗き赤褐色が点在して、覆われた鱗は少々綻んでいて、絶対的な防衛には不十分。
「身から出た錆。そんな言葉を知らないのか」
 時間の経った流血とも、錆の色とも取れる褐色を相馬はそう表現した。血煙霞む湯屋の攻防にて、龍の弱点への目印のようにも、見て取れる。
 ――これは、完全な鎧とならない。
 手に収める冥府の槍。
 紺青に暗く燃える槍の狙う先は、点在する不自然な色の場所。
『我が不出来なものを纏うものか!』
「そうか。じゃあ確かめてもいいわけだな」
 いつの間にか硬質化させた胴の…尾の近く。その上に相馬が居る。
 刃先が向くのは、急激に強化された褐色の鱗と自前の鱗の"繋ぎ目"だ。
 ガッ!!
 突き立つ刃の先は、柔い身を容易く傷つける。鉄製ではない、錆の脆い結び尽きを破壊して、グサリと突き刺した槍が招くものは当然――。
『あああああああ!!!!!!!』
 傷は針ほどに小さいかもしれないが、燃え続ける地獄の炎がじわじわと内側に燃え移った。
 じわじわと内側から死ぬまで焼かれる、紺青の地獄が始まったのだ。
「やはり、鉄屑は鉄屑。どこまでも出来損ないの加工だ、判断を見誤ったようだな」
 冷静に相馬に言い切られて、良いように焼かれるばかりの龍ではない。
『我が人間に殺される?その前に、我が殺し尽くせばいいだけの話だ』
 背の刃のような羽を幾つも動員して、長く大きな身体を浮かべて――飛ぶ。地を這うにも障害が多く、空からならばと考えたようだ。
「その巨体が真上から落ちてきたら死ぬかもな」
 ――手数、手段。攻撃の方法。
 ――それらから想像するに……。
 ――長い時間を飛ばないし、高くを飛ばない。
 考えながら手にするヘビィクロスボウ。
 連結を素早く完了させたジャバウォックの鉤爪で狙うのは、何処をとっても等しく龍である、胴。中でも胸部を。
 重心が一番確かな場所にぐるりと掛けてしまえば、怪力任せに空から地面への一本釣りだって夢ではない。
「いっそ勧めすらする、俺も八も、纏めて圧死だ」
 八がなにか言いたげにしたが、あえて挑発するような言葉を口にしつつ、軽い目伏で黙らせた。これがなにかの作戦だとわかれば、先の注意もある。手出しは待ってくれるだろう。
『喰い殺されるではなく、圧死がいいときたか。我相手に、圧死を……ははは。愉快な死を望むものぞ!』
 龍は会話にとてもノってくる。
 人の心を壊し、鬼に堕とすように立ち回っていた龍だ。
 言葉巧みに話すほうが得意なのだろう。
 ぽつりと相馬が呟く言葉にも、当然釣られた。
「楽しんでる所で悪いがお前のタイミングではやらせない」
 鱗の軋み、筋肉の揺らぎ。戦闘知識と視力は見逃さなかった。
 急速落下は相馬が全力で鉤爪の付いたワイヤーを引き寄せてしまえば、空中で完全に龍の優位は失われて全方位に死角しかない。
「鱗の鎧はさぞや硬いだろうが……私とて、視ていた」
 妖剣から溢れて流れる怨念を足に集めて、八は龍の体の上に跳躍して乗っていた。構えた剣が放つ、剣戟は炎として燃える衝撃波となって、龍の体を打つ。
 龍を斬れぬかもしれない、という迷いは八にもあった。だが、相馬が傷つけた生傷への追い打ちは……防ぎようがない。
 元々内側を燃やされているのだ、更に火が生身を焼く。ジュウウ、と小さくも嫌な音がして、攻撃者へと身をよじる刀狩の牙が八へと向いた。
 胴は長いのだ。よじれば体の上の鼠など、潰して喰らうは容易いこと。
 ――地に堕ちるのも。
 ――俺を圧死させるのも意識の外に出たようだな。
「もう、その部位は要らないだろう。どうせ使い物にならない」
 動いて逃げ伸びたところで、内を延焼する地獄からはどうしても逃げ出せない。
 どうせ自然落下のままでもも地に堕ちる龍、落下の誘導・引き付けはもう要らないだろうとぐっ、と握り直した冥府の槍。
 狙う先は、ニョロりと長い"尾"に近い場所へ。冥府の炎が焼き続けている内側から、シュゥウウウウと悪夢を祓うような音。
 もう燃えるものすら無くなった虚の炎が壊せと呼んでいる。
「焼き切れたこれはもう、ただの錆だ」
「斬れない断てない?否、断じて否!」
 妖刀の刀身が煌めいて、胴を斬る。
 ぶしゅぅ、と鮮血が勢いよく跳んで、青に燃えて消え果てた。追撃で加わる槍が脆くなった胴を貫き、内側も外側も破壊された尾を――斬り堕とす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
【宿神】

ん……
ファン、目が覚めたみたい、だね

それに、見覚えがあると思ったら、ルパートも
これは、まさしく100人力、だね

皆は、支援に回るようだね
なら、自分もまた、それに続こう
八が、剣を振るえるように
邪魔なものは皆、自分が何とかしようか

コードを使用
自分の本体、そして"禍惧枝"を含めた拷問具9種を使用
複製し、展開
さあ、これが、自分の地獄、だよ

武具が変じた鱗も
ひとりでに動くという妖刀も
その背に生える羽さえも
800を超える拷問具による蹂躙で
さてさて、どこまで耐えられるのかな?

そうして、こっちに気を取られると
ほら、次は本命の手番、だよ


吉備・狐珀
【宿神】4人

見知った姿を見かけたと思ったら、やはりルパート殿!
それにファン殿も来て下さったのですね!
お二人が力を貸してくださるなら鬼に金棒です

UC【神使招来】使用
ウカ、八殿を補助をお願いします
相手は猟書家です、わかっていると思いますが決して油断なきように
ウケ、貴方は私と共に妖刀の幻惑の対処を
進んで敵を遠くから攻めるのが「遠距離攻撃」
私がウケと共に破魔の力を込めて放つのは妖刀でも猟書家でもありません
御神矢が向かう先は地面

矢で描くは五芒星
血で穢れたこの場を浄化し、場を清め結界をはる

全てを護ると決めたなら
鬼になることを恐れてはなりません
鬼をも凌駕する力が貴女にはあります
その手で元凶を絶つのです


ルパート・ブラックスミス
【宿神】
奇遇だな、三人とも。共闘させてもらうぞ。

オブリビオン。貴様は白い泥鰌だな。地獄という泥沼にしかいられん虚弱だ。

今の妖剣士…八は総て喪い恨み骨髄、自然と【捨て身の一撃】を仕掛けるだろう。
止めはせんが…UC【信ずる者に殉ずる為の鋼姿】。
強化鎧に変形した己を八に装着、【鼓舞】しつつ敵の攻撃から【かばう】。

二人が言っていた。
地獄は此処にあれど、貴殿がその渦中で鬼であり続ける必要は無い。
そして…最早貴殿だけのものではない。自ら臨む以上、此処は我らの地獄。
なれば、貴殿と共にこの地獄の結末を選ぶのは道理だな?

呑まれる為に非ず、終らせる為にこそ。
あの白泥鰌諸共、この地獄を絶つぞ、八。


ファン・ティンタン
【WIZ】刃を帯びし者へ
【宿神】

(省エネ刀身姿のまま、ペインの元で目覚めて)
……ん
先の猟書家退治から眠っていたところだけれど、“刀狩”なんて輩を前に寝惚けている暇もなし、か
ペイン、私をそこの子へ

【天踊閃華】
妖剣を使う子
私を振るう必要はない、使うべき刃は既にあるだろうし
刃を扱う者なら、私をその身に帯びれば、自ずとラインは繋がる
私は電池みたいなモノ、あなたが必要と思う瞬間に、力を引き出せばいい
【勇気】を奮わせ、【祈り】を聞き届け、【覚悟】を敵に届かせるモノ、それが私

ひとたび使われれば、顛末を見届けることもままならぬだろうけれど、それは些事だ
道具は、担い手の未来を繋ぐためにある
刃は、目ではないのだし



●此処で一切を絶つ

「――っ!」
 一矢報いた妖剣士。
 だがまだ駄目だ、躍動し、跳ねる猟書家『刀狩』にはまだ息がある。
 落ち着け。落ち着け――。
 八は息を整える。猟兵たちが、なにか話ている今のうち。
『―――!!!!!』
 尾へ続く身体を強引に断たれて、龍が痛みに暴れ狂っている、いまのうちに。

「見知った姿を見かけたと思ったら」
 吉備・狐珀が見つけた姿はどちらも顔なじみだった。
「奇遇だな?」
「……ん」
「ん……ファン、目が覚めたみたい、だね」
 ルパート・ブラックスミスと、ペイン・フィン。
 そして声はペインの手元にもう一つ。つまり、3人目だって顔なじみ。
「やはりルパート殿!それにファン殿も来て下さったのですね!お二人が力を貸してくださるなら鬼に金棒です」
「先の猟書家退治から眠っていたところだけれど、どうも眠って過ごしちゃいられない」
 省エネ刀身姿のまま目覚めたファン・ティンタン(天津華・f07547)。
 やけに騒がしい音を背景にすると、この場所が戦場である事は明白だ。
「どうりで、見覚えが在ると思ったら、ルパートも。これは、まさしく百人力、だね」
 戦力と頼もしさはこれ以上無いほど。であれば、……地獄の打破に通ずる作戦を。
 手早く済ませなければ、龍がいつ反撃の牙を、爪を"刃"を、殺意を研ぎ澄ましてくるか……急がなければ。
「なにか……考えが、ありますか?」
「……“刀狩”なんて輩を前に寝惚けている暇もなし、か。ペイン、私をそこの子へ」
 弱者ではないが、脆い部分を抱える娘へ――刃を帯びし者へ。
「八さん、いいかな」
「……?」
「妖剣を使う子。落ち着いた?うん。じゃあよく聞いて、まず、私を振るう必要はない」
 ペインに渡された乳白色の直刃。
 ファンの言葉は、見た目通りの曲がりのない真っ直ぐな物言いだと娘は思った。
「使うべき刃は別に既にあるようだから。刃を扱う者なら、私をその身に帯びれば、自ずとラインは繋がる」
「……振るう必要は無いけれど、"使え"と?」
「私は電池みたいなモノ、あなたが必要と思う瞬間に、力を引き出せばいい」
 絶望に堕ちても救うモノがあるように。
 窮地の中で、手を差し伸べるモノもある。
「振るうべきなのは、あくまであなたが勇気と覚悟を示したとき」
 それが人ではなく、モノであったとして何かおかしなことがあるだろうか。
 怒りに任せた仇討ち、復讐だとしても。
「何に変えても……まずは、あれを倒したい」
「そんな祈りを聞き届け、願いを敵に届けて――絶つ。それが私」
 この一振りが、大きく戦況をひっくり返す。
 刃を借り受ける気持ちに誰にとも言わず頭を下げ、さり気なく帯刀で、猟兵への意を示した。
 ああ、そろそろニョロニョロとのたうち回る龍の屋敷破壊が深刻だ。

「三人とも。共闘させて貰うぞ?……さて、オブリビオン。貴様を太刀魚モドキと称した猟兵もいたが、今の尾亡き姿は白い泥鰌だな。己が野望に八殿を真の鬼へと沈めきれず、己の作戦進行を停滞させた挙げ句…………この有様。亡者は確かに多かろう、だが……地獄という泥沼にしかいられん貴様は、虚弱だ」
 騎士道溢れるルパート。
 妖剣士の、八の心の有り様を、表面からでは見て取れないが想像は幾つかに絞られる。
「八は全てを喪い恨み骨髄反射の勢いで、自然と"捨て身の一撃"を仕掛けるだろう」
『それがどうした……斬っただけで図に乗るな。我はまだ滅んではおらぬ……!!』
「此処に集まりし宿神。選ぶ行動、方法は様々成れど……人に憑いて洗脳し、悪事を唆そうとは思わない。貴様とは違う」
 取り付き持ち主の心から壊すなどと。
「むしろ逆。支援の手ならば、可能な範囲で差し伸べよう。やろうとする行動を、我らは誰も止めはせん」
 ――我が身もまた人に非ず。
 ――我が身は尊き魂を護る、鎧也。
 黒騎士の鎧が瓦解する。信ずる対象は、孤高にして"強い願い"を持つ妖剣士の娘に。強化鎧に変形した己を、八に装着することで文字通り"地獄を共にする"。
 地獄に飲まれぬ。何者にも染まらぬカラーリングは、普段のルパート寄りも深淵寄りに黒い漆黒の鎧姿。
「ファン殿が、そして二人が言っただろう。地獄は此処にあれど、貴殿がその渦中で鬼であり続ける必要は無いのだ。そして、今この時、……最早地獄を歩むは貴殿だけのものではない。貴殿が自ら臨む以上、此処は我らの地獄」
 全てを亡くした妖剣士の前にあるは単独孤高の道は無い。
 護刀に鎧と、道連れは多い。
「なれば……貴殿と共にこの地獄の結末を選ぶのは道理だな?」
「……!」

「ウカは八殿たちの補佐を。相手は猟書家です、わかっていると思いますが決して油断なきように」
 スッ、と狐珀は神使たちに指示をだす。
 二人がいれば、八になにかあることは無いかもしれない。
 だが、もしもが遭ってならないのだ。必ず、"攻撃を届かせなくては"。
『そうころころと全てが、そう全て上手くいくと思うなよ娘!!我が赦さぬ。お前は、お前たちは必ず此処で……殺す!!』
 ばらららら、とまばら羽ばたく刀狩の背の刃。誰もが視える、その身体。
 勿論、狐珀にも放出される白銀の煌めきが視える。
 輝ける幾つもの妖刀。大きく分けて短刀、太刀、脇差それから、それから――。
 大きさも形状も何もかもがまちまちで。
 しかしどれもが簡単には折れないだろうと何の根拠もなく印象を植え付けてくる"幻惑"の華だ。沢山『刀狩』と名がつくモノから放出された幻創を、不思議と欲しいと思えてしまう。
「さあ、此処から始めましょう。今は振り向かず、突き進むのです。……ウケ、貴方は私と共に妖刀の幻惑の対処を」
 頷くウケと共に、ウカと八の走りを見送って……後方に位置を取る狐珀は、猟書家に直接勝負を仕掛けない。
 それをするのは"最高の適任者"がいる。だからこそ、別の事を行うのだ。
「進んで敵を遠くから攻めるのが"遠距離攻撃"。私がウケと共に破魔の力を込めて放つべき標的は……妖刀でも、猟書家でもない」
 ウケが破魔の力を宿し全てを浄化する弓矢を引き絞り、狐珀が隣で破浄の明弓で引く。狙うべきは、遠く大きな龍ではない。
「御神矢が向かう先は、――地面」
 破魔の力を宿した矢が突き立つ先は、術の発動を齎す頂点。
 二人が射抜き、霊力で発動させる結界。完成するは矢で描く五芒星。
「血で穢れたこの場を浄化し、場を清め……結界を此処に」
「……ん。皆は、それぞれに支援に回るようだね。なら、自分もまた、それに続こう」
 狐珀の作り出した浄化の結界は、幻惑する妖刀の妖力をも浄化して、刃の存在を無害な光に変えた。
 いくら刀狩の幻惑する刃の群れを見たところで、誰の遠距離攻撃も阻害できない。
 あまり無効化する幻惑をばらまいては、自滅して――死んでしまう限界を超えてしまう。
「八が、剣を振るえるように。決して、振り向かないように」
 幻惑する妖刀の姿を確かに、ペインも見ていたが放出している刃の翼が消えて無くなったらどうだろう。

 ばぢん。ばちんばちんばぢん。

 翼を砕くほどに大きい姿で、仕事をする膝砕き“クランツ”。
 一つとどころではない。複製された膝砕きが、羽を砕くように噛み――鋼のような質感を、完全に砕いた。
 空を統べる唯一の手段を砕かれて、龍の悲鳴は上がるばかり。
「周囲には、自分の本体。そして"禍惧枝"を含めた拷問具9種」
『いつの、間にィ……!!!』
 本物により近い複製を、ペインは刀狩を全方位に並べに並べて龍の進撃と反撃とを同時に阻む。
 龍からすれば小さきものかもしれないが、数えに数えて総数800を超える地獄。
「邪魔なものは皆、自分が何とかしようと思って。さあ、これが、自分の"地獄"、だよ」
『翼を亡くしただけだ、まだ、我は……!!』
 拷問道具に囲まれて絶望しないあたりはオブリビオン。
 怯みはしないが、ペインを"恐れ"た。
「どうする?そこから」
『手段はもう……選ばぬ!』
 刀狩は自身の腕を鋭利な爪で躊躇なく切り落とし、自身の体の一部を抉り取る。
 文字通り、毟り取る形で。拷問道具に頼らぬ、自身に働く拷問だ。
『これだけの質量があれば、妖刀を大量に準備できよう』
 抉り取った腕を空中に投げ放ち、形を変形支える。
 夥しい量の血が滴り落ちるが、些末なことだ。
『装甲などもとより信じておらん、威力を重視し一つでも多く穿ち殺せ!』
 片腕の龍の咆哮と共に、独りでに妖剣の群れが動き出す!
『腕などもういらん。どうせ滅びる命ならば、派手に散らして殺し尽くそうぞ』
 今だ健在の腕に目をつけて、最終的な最期の武装を自身に行う。
 曰く、噛みちぎって喰う。両腕を失って、翼も失って。
 身体の大半を崩壊させた刀狩は、もはや龍には見えないだろう。
『真の姿は此処に極まれり!』
 喰らった自身の腕の鱗の分だけ、自身を強化して、妖剣の群れと共に最終決戦へと挑む。

「決して足を止めてはならない、進み続けるんだ」
 飛来する妖刀を、狐珀が護衛に付けたウカの神剣が弾いて砕く。
 ウカの守備範囲を超えて八に迫る剣は、ルパート自身である鎧が受けて本来あるべき攻撃からかばう。
「……ほんとうに、だいじょうぶなのか」
「地獄が同時に存在しているのが現状。これらはどれにも呑まれる為に非ず。終わらせるためにこそ在る」
 攻撃力が重視された刃にもルパートの鎧はダメージを八に届かせない。
 ダメージ自体は、あるのだが。
「地獄を終わらせる手段は、なにも、蹴散らすだけじゃない、よ」
 800を超える拷問具による蹂躙で、妖剣の群れを蹴散らす。
 潰し砕いて、独りでに動く能力から潰す。地獄の魅せ方は、人によるという体現だろう。龍の思い描く地獄とは、絶対交わらない。
「そうして、こっちに気を取られるとほら、次は本命の手番、だよ」

 そうだ。既に準備は万全に整えられられた。
「あの白泥鰌諸共、この地獄を絶つぞ、八」
「……全力で、絶つ!」
 地面を割るほどの跳躍が!八の視界に入るのは、刀狩の、顔。
 真正面に躍り出る。

 ――ひとたび使われれば、顛末を見届けることもままならぬだろうけど。
 ――それは、大いに些事だ。
「道具は、担い手の未来を繋ぐためにある。ほら、もうそこに終焉があるよ」
 ――刃は、目ではないのだし。

 八による、左片手一本突きの構え。

 ――全てを護ると決めたなら。
 妖剣士の背中が翔ぶのを、はみた。
 ――鬼になることを、恐れてはなりません。
 ――鬼をも凌駕する力が貴女にはあります。
 ――その手で、元凶を絶つのです。

「さあさ、舞い踊れ――」
 己の全てが集約した護刀が、八の潜在能力を一時的に跳ね上げる。
 ルパートの鎧を装着していることで、何が起こるかと言えば――。

 音よりも早く、光より早い。
 認知したときには、既に一つの命が断たれている。

 神速の三枚おろしが、完成していた。
 誰の目にも留まらぬ速さと手に入れて、八の妖剣は刀狩を無残な姿に変えたのだ。
 力を貸した護刀が沈黙したと同時に、龍は炎にでも焼かれるように跡形もなく消え去っていく。思惑も何もかも、成し得ぬままに消え去るのが彼の運命だったのだろう。刀狩との戦いで破壊してしまった湯屋の天井から、明かりが指す。
 狐珀の浄化も同時に終わったようで、周囲に染み付く血腥い臭いがすぅううと消えた――ような、気がした。


 宿場町から人が消えた事はもう変えられない。
 破壊してしまった湯屋、遺骨、片付けなければならないものは数多い。
 妖剣士の八だけが、これを片付けられるものだろうか。
 いいや……今はひとりではない。
 猟兵の助けを借りて、片付けを少しずつしていくつもりだ。
 だがまずは、護りたかった人々へ弔いの線香をあげる。友の分、親の分。
 必要な数灯して、祈る。
「私は、これからも強く成る……良い鬼でいるよ、絶対」
 謝るなんてことは、できいない。だからこそ、"新たに此処に誓う"。

 沢山の線香の煙がふぅう、と高く上がって風に溶ける。
 地獄の終焉、血煙は此処に断たれたのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月30日
宿敵 『『嗤う火車』籃火』 『刀狩』 を撃破!


挿絵イラスト