16
悪しき書の魔獣

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ベスティア・ビブリエ #愉快な仲間

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#ベスティア・ビブリエ
🔒
#愉快な仲間


0




●これからの話をしましょう
 本で溢れ、物語に溢れた『図書館の国』。
 どこを見ても本。書架に掛かった梯子を登って二階へ移動しても、本。
 本、本、本、本、本、本、本。
 そんな本に満ちた、静かで穏やかなその国に、突如一冊の本が現れた。
 本で満ち満ちているその国にたった一冊の本が増えたとしても、住民たちは気が付かない。けれども不自然に床に落ちていたら――?


 うさぎのぬいぐるみは、落ちている本に気が付きました。
 誰かが落としてしまったのでしょうか?
 それともうっかり者の本が、本棚からすってんころりんと転がり落ちてきてしまったのでしょうか?
 どちらにしても、このままここに置いておく訳にはいきません。うさぎは本へと、パッチワークが可愛らしいぬいぐるみの手を伸ばします。
「このほん、どこのこかしら」
 手がかりは、きっと本の中にあります。
 うさぎが、ぺらり。本をめくれば、
「わあ!」
 沢山の花や鳥や蝶、可愛らしい物語がふわりと溢れ出てきました。
 溢れ出した物語に目を奪われているうさぎは気が付きません。諱舌m縺励>鬲皮坤が、うさぎの背後に現れていることに。

 ――ぱたん。
 本が閉じて、ふたつの本が床に落ちました。
 縺�&縺�の姿はもう、どこにもありません。

 そうして図書館の国には、だぁれもいなくなりました。
 静かで穏やかな蝗ウ譖ク鬢ィ縺ョ蝗スは、いつまでも『本』に溢れ、『蟷ウ蜥�』で『幸せ』であり続けるのでした。めでたし、繧√〒縺溘@。
                                       』

 ――ぱたん。

『譛ャ蠖薙↓?』


●慌てウサギ
「大変大変たいへーーーーん! 大変だよ、大変! あのね、大変なんだ。聞いて聞いて聞いて。『愉快な仲間』のみんながいなくなっちゃうかも!」
 わあわあわあ! わあ大変!
 ひとしきり大慌て! のポーズを取ったフィオレンツァ・トリルビィ(花守兎・f19728)は大きく深呼吸をして少し落ち着きを取り戻すと、説明するねと居住まいを正した。
「行ってもらいたいところは、『図書館の国』だよ。そこにね、猟書家が現れるよ」
 それは、本の姿をしている。
 本の姿で様々な国に現れ、そこから猟書家幹部の『物語』が始まるのだ。
 そうして。
「その幹部はね、『物語』を奪うんだ」
 それは、記憶。
 それは、経験。
 それは、夢。
 それは、希望。
 汎ゆる物語を喰らい尽くし、『白紙』にしてしまう力があるのだという。
 記憶や感情のある全ての生き物にとっての脅威だが、疑似生物である愉快な仲間達にとっては更に意味が変わってくる。
「ボクもね、今回始めて知ったのだけれど……愉快な仲間たちは根本的な情報を奪われるとダメなんだって」
 しょんぼりと耳が垂れ、直接的な言葉を濁した。
 つまりは、「なんで卵やポットが喋るのか?」という根本的な情報を奪われると、愉快な仲間達はただの卵やポットとなってしまう。彼等は呆気なく、即死してしまうのだそうだ。
「見つけたら、絶対に倒さなくちゃいけない」
 フィオレンツァの瞳の奥に、強い意志が宿る。
 けれどそれも一瞬。また揺らぎ、迷うように言葉は紡がれる。
「……物語はね、すごい早さで奪われていっちゃうんだ。けれどね、その物語が複雑であればあるほど、時間が掛かるよ」
 この幹部――『ベスティア・ビブリエ』という書の魔獣の攻撃は全て、物理的なダメージにはならない。けれどベスティア・ビブリエは、ユーベルコードの使い方も、今までの戦闘経験も、直前の行動も、何故猟兵になったかも……あらゆる物語を喰らう。喰らって喰らって、喰らいつくしていく。
 そうなれば、猟兵と言えど戦えない。ただそこに在るだけの存在となってしまうことだろう。
「でもね、この魔獣は、物語が複雑であればあるほど興味を惹かれるんだ」
 君たちが持っている物語よりも複雑な物語を持っている愉快な仲間を見つければ、ベスティア・ビブリエはその愉快な仲間たちを優先的に襲うこととなる。
 正面から相対しては戦闘手段も奪われて戦えないかも知れないが、……とても心苦しくはあるが愉快な仲間たちが犠牲になっている間に攻撃をすることは可能だ。
 ベスティア・ビブリエを倒せば、全ての物語は正しい場所へと戻っていく。書物へ、人へ、愉快な仲間たちへと。
「まずはベスティア・ビブリエへ物語をけんじょ……プレゼントしようとしている手下たちをやっつけてね。少しでもベスティア・ビブリエが好きそうな物語をーって、うーんってしてるから簡単に倒せちゃうよ!」
 手下がうーんと悩むくらいの物語を持っている愉快な仲間なら、着いてきてもらうことが叶えば、きっとベスティア・ビブリエのメガネにも適うことだろう。
「……おとりって、いやだけどね」
 むずかしいよね、ごめんね。
 けれど、どうか。
 どうか、お願いだよ。
 フィオレンツァは耳を伏せ、祈るように両手を組むのだった。


壱花
 アリスラビリンスから『猟書家』幹部シナリオをお送りします。
 愉快な仲間たちが可哀想なことになりそうです、ね!

●シナリオについて
 このシナリオは【二章構成】です。
 受付や締切はMSページまたはTwitterでお知らせします。お手数ですが、送信前に確認して頂けると幸いです。

●プレイングボーナス
『へんてこな「愉快な仲間」を連れてくる』
 第一章でナンパしてください。

●図書館の国
 書架がどこまでもずらりと並ぶ図書館の国。
 住民の愉快な仲間は、みんな何かの本を所持しており、ぬいぐるみやくるみ割り人形と言った『おもちゃ』の姿をしています。所持している本の登場人物の姿をしているようです。どんな姿をしているか等の設定を創作し、プレイングで指定をお願いします。
 死んでしまうと、所持している本だけが残ります。
 見た目は様々ですが、精神年齢はみんな10歳ぐらいのようです。

●第1章:集団戦
 他所の国から来た愉快な仲間の振りをして、主人である幹部に捧げる為に住民を連れ去ろうと企んでいます。
 いい感じの愉快な仲間を見つけると、隙だらけの「吟味モード」になっていて簡単に倒せるので、倒したら住民に適当な理由を告げてナンパしてください。

【第1章のプレイング受付は、11/20(金)朝8:31~でお願いします】

●第2章:ボス戦『ベスティア・ビブリエ』
 書の魔獣との戦闘になります。
 SPDにあります通り、本は使い捨てが効く物なので本体ではありません。
 状況等の詳細は、二章幕間にて。

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合は冒頭に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。また、送信日も同じになるようお願いいたします。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
150




第1章 集団戦 『アンメリー・フレンズ』

POW   :    アフィッシュ・ストラクチャー
対象の攻撃を軽減する【醜くいびつに膨れ上がった異様に巨大な姿】に変身しつつ、【異形化した手足や所持している道具等】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ポートマント・ビーイング
【周囲の仲間と合体する、又は合体させられる】事で【禍々しく歪んだ恐ろしい姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    スライシー・フルード
自身に【影響を及ぼしたオウガに由来する悪しき力】をまとい、高速移動と【状態異常を引きこす毒液や汚染された血等】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

真月・真白
♢♡

『物語』を奪い『白紙』に変えていく
その所業は歴史書として生まれながら一節も『物語(れきし)』を記述される事無く白紙だった僕にとって決して見過ごせない所業

●攻撃
「再演せしはA&W!」
蒼炎で風の精霊の加護を宿したエルフの射手を再現します
歴史に刻まれたその神速の矢は敵の速度にも対応できるはず

●ナンパ
住人
手足のついた絵筆
最も美しい色を求めて世界を旅し様々な汚れを纏っていく物語
旅と汚れの果てに彼が見つけたその色とは

囮にする以上騙して連れ出す事は出来なくて、現状を全て正直に話しその上で同行を願い出ます
「必ず僕が貴方の『物語』を守ります。絶対に救い出します、だからどうか力を貸していただけませんか?」



●旅する絵筆の物語
「やあ、こんにちは」
「こんにちは、旅人さん」
 様々な地に訪れては人々と触れ合いながら、絵筆は旅をします。
 旅をして、絵筆は求めます。最も美しい色を。
 その色に身を浸して染まることこそが、その色を纏い世界を彩ることこそが、絵筆の望みなのでした。
 けれどもなかなか、絵筆は求める色に出会えません。これこそが最も美しい色かと思えば、もっと綺麗な色があるよと教えられるのです。
「いやいや違うこの色だ」
「いいや、こっちの色の方が美しいよ」
 人々はみんな、違うことを自由に口にします。それもそのはず、ひとによって『美しい』と感じる色は違うのですから。
 けれど『最も美しい』のならば、万人が美しいと思う色であるはずだと絵筆は信じていました。
 いいから試してご覧よと身を浸し、塗って描いて染まって、旅をする内に絵筆は段々と汚れていってしまいます。
 次こそは、次こそは。ただひたすらに、最も美しい色を求めて。
 そんな彼が、旅と汚れの果てに見つけた色とは――……。

「再演せしはA&W!」
 真月・真白(真っ白な頁・f10636)の声とともに再現した、風の精霊の加護を宿したエルフの射手が、歴史に刻まれたその神速の矢を放つ。
 真っ直ぐに放たれた矢は、狙いを違うことなく対象へと突き刺さり――本を所持した手足のついた絵筆の前で『吟味モード』になっていた『アンメリー・フレンズ』 は、放たれた矢に気付くこと無く消滅した。
「こんにちは、危ないところでしたね」
「わ、わあ、びっくりした。あぶなかったの?」
 手足がついた絵筆は驚いたのだろう、その場で立ち竦んでしまっていたが、危ないと聞いて、ぎゅうと大切そうに本を両腕で抱いた。
 ほっそりとした小さな手に抱かれたその本の中には、真白に記されなかった『物語』がある。
 歴史書として生まれながらも、一節も物語(れきし)は記述されることなく、白紙で有り続けた真白。彼にとって、物語を奪って白紙に変えるなど見過ごせない所業だ。
「貴方から『物語』を奪おうとしている敵がいます」
 その上で、囮となるべく力を貸して欲しいと真白は正直に願う。
 騙して連れて行くことなんて出来なくて、隠しておくことも出来なくて、解って貰えそうな言葉を選んで、真白は真摯に絵筆と相対した。
「必ず僕が貴方の『物語』を守ります。絶対に救い出します、だからどうか力を貸していただけませんか?」
 真白が差し出した手に、ほっそりとした絵筆の手がそっと乗った。
 ぼくのものがたりをたくすよ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真白・時政
♢♡

ユカイな仲間のコをナンパしなくちゃなンだね
ンンンウサギさんナンパの仕方なんてわかんなァい
困った困ったウサギさん誰か助けてくれるコ、いなァい?

んフフ~こんにちは、こんにちは
おててが長くてもふもふでかわいいキミ。お名前は?
ソッカソッカァ~困ったウサギさんを助けてくれるの?イイコだねェ~
ギューってスるとフカフカであったかァ~い

ネネ、ナンでキミはそんなにおててがながァいの?カラダがまんまるなのはナンで?毛皮がふかふかなのは~?
不思議がタクサンでオモシロ~イ!

あのね、あのね、ウサギさんは悪いコをエイってシにいかなくちゃいけないの
その為にはキミのお手伝いが必要なンだァ
ウサギさんのコト、助けてくれる?


琴平・琴子
♡♢

これだけ本が沢山あるのに
狙うのは生きた物語だけなんでしょうか
他人の生に興味がないので不思議です

ひとつになったところで輝石ランプの光で闇を濃くし
黒い狂気を大きな手二つ分作らせ
逃げられない様に囲い込んでぺしゃんこ

私が見つけた愉快な仲間さんは手風琴を持った黒猫の玩具の方
変わった蛇腹本を持っております

色んな国を、色んな場所を演奏しながら旅してきたんですか?
それ、演奏するのすごく難しいんですよね
小さな手は音を奏でるだけではなく
弛まぬ努力も合ったのでしょうね

囮の事は素直に説明
私の小さな手で貴方を守れるか分からないけれど
貴方の協力が必要なんです
この国を、貴方を、守らせてください



●まん丸ウサギの不思議な話
 まん丸ウサギは、まん丸なウサギ。
 身体はまん丸、お顔もまん丸、眸だってまん丸。
 ふかふかもこもこまん丸で、けれども手だけは自慢の耳のように長いのです。
 変なのって言うひともいるけれど、まん丸ウサギは気にしません。だってこの手はとっても便利なのです。悲しい誰かをぎゅうってできるし、困った誰か助けることだってできるのだから、まん丸ウサギはまん丸じゃない手も大好きでした。
「へんなの」
 今日また、言われてしまいました。
 けれどまん丸ウサギは気にしません。
 気にしないったら、気にしません。
 ……ウソ。本当は本当は、とっても気になります。
 みんなが変って言うことも、ひとりぼっちなことも。
 ひとりぼっちでは、ぎゅうってできません。
 ひとりぼっちでは、困った誰かを助けることはできません。
 だからまん丸ウサギは――……

 ぴょんぴょん、ぴょん。
 宙を蹴る度、頭上の真白の長耳が跳ねる。
 図書館の国の空――どこまで行っても室内めいてはいるけれど――を跳ねた真白・時政(マーチ・ヘア・f26711)は、ゆるぅく首を傾げて困った困った困ったな。
 わるーい敵をえいっとしにいくには、愉快な仲間の助力が不可欠だ。けれどナンパの仕方なんて解らないし、時政は困ったなァと笑顔のまま書架を見下ろした。誰か助けてくれるコ、いなァい?
 そうして見下ろした書架と書架の間に生えた、ウサギの耳。時計ウサギが居るとは聞いていないから、きっと愉快な仲間だろうと着地をすれば。
「あ」
「ンンン?」
 地面が何だかとても柔らかいと思ったけれど、何かの上に降りてしまったようだ。しかも既に消えていっているのか、足に感じた感触も徐々に消えていく。
「んフフ~こんにちは、こんにちは」
 ウサギさんはしーらない! なぁんにも見ていないし、ふんでもいないよォ?
 気付かなかったことにして、驚いた顔のまん丸なウサギへとご挨拶。
「おててが長くてもふもふでかわいいキミ。お名前は?」
「え……ぼ、ぼく? ……まん丸ウサギ。君は?」
「ぼくはか弱くて~今と~っても困った困ったしているウサギさんだよ」
「こまっているの?」
 どうしたのとまん丸ウサギが首を傾げれば、時政はニコニコ笑いながら距離を詰めた。
「あのね、あのね、ウサギさんは悪いコをエイってシにいかなくちゃいけないの」
「えっ、かよわいのに?」
「そォなの。ウサギさんか弱いのに……ネネ、ウサギさんのコト、助けてくれる?」
 やんやんくすんとポーズを取れば、大変だ! とまん丸ウサギは口を開けた。
 どうやら一緒に行ってくれる気になったらしいウサギと、時政は手を握る。手のひらに感じるウサギの手は、ふかふかでさわり心地が良くてあったかい。
「ネネ、ナンでキミはそんなにおててがながァいの? カラダがまんまるなのはナンで? 毛皮がふかふかなのは~?」
 ぽんぽんぽんと飛び出た質問に、まん丸ウサギは首を傾げて。
 あっそうだ! これを読んでと本を時政へと差し出すけれど、
「ウサギさんね、キミから教えてほしいなァ」
「それじゃあ、あるきながらおはなししよっか」
「ウンウン、さんせェ~」
 ひとりぼっちでは出来ないことをして、ふたりは書架の森を歩いていく。

●調べ猫の旅物語
 手風琴を持った黒猫は、あらゆる場所へと身軽に足を運びます。
 知らない国で演奏しては、次の国へ。
 知っている国に戻ってみても、また演奏をして。
 黒猫の奏でる調べは風に乗り、噂となって沢山の人々の耳へと届き、そうして訪れると知った人々は黒猫の演奏を聞きにいきました。
 黒猫は奏でます。広場で、酒場で、公園で。
 小さな手で、器用に手風琴を操って。
 気持ちよさそうに尾を揺らして、黒猫は人々の心に音を届けます。
 人々は、黒猫が何処から来たのか、何処へ行くのかも知らず、ただその音を楽しむのでした。

 変わった蛇腹本を持つ黒猫を、狂った愉快な仲間めいた『アンメリー・フレンズ』たちが追い回す。書架に背をドンとぶつけた黒猫にはもう後がない事を知ると、いやらしい笑みを浮かべたアンメリー・フレンズたちは取り囲み、そして集ってむくむくと大きくなっていった。
「囲まれたのは、どちらでしょうか」
 少女が手にした輝石ランプを高く掲げれば、光に照らされた影が濃く伸びる。
 するすると音もなく伸びた影は狂気を孕んだ大きな手となって――ぺしゃん。アンメリー・フレンズを両手で包んで潰してしまった。
「大丈夫ですか?」
「あ、えっと、ありがとう」
 助けてもらったんだよねと首を傾げる黒猫に、琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は心に従って行動したまでのことですと笑みを向けた。
 疑問形だった黒猫が、再度ありがとうと告げながら微笑んで。
「お礼に一曲どう?」
「聞きたいのは山々なのですが……すみません、今は時間があまりなくて」
 さっきの怪しい愉快な仲間めいた敵がまた襲ってくるかも知れない。
 あの敵の主人が、既にこの国の住民を食べてしまっているかも知れない。
 そうした不安に琴子は僅かに顔を曇らせて、事情を丁寧に説明する。
「私の小さな手で貴方を守れるか分からないけれど、貴方の協力が必要なんです」
「ぼくでも力になれるのなら」
 手風琴と蛇腹本を大切そうにに抱えた黒猫は小さな手を琴子へと差し、琴子はその手にそっと手を重ねた。
「この国を、貴方を、守らせてください」
「ぼくも、きみとこの国をまもるよ」
 お互いの小さな手は、弛まぬ努力をしてきた手。
 お互いの小さな足は、勇気を持って前へと進む足。
「良ければ道中、貴方の旅のお話を聞かせて頂いても?」
 黒猫の応えは、旅の歌で返ってきた。
 黒猫の歌に耳を傾け、邪魔をしないように気をつけながら時折質問を投げかけていれば、「コトちゃ~ん」と聞き覚えのある声を琴子の耳が拾う。耳が良いのだろう、黒猫の視線は既に向けられていて。
 視線の先には、ブンブンと大きく手を振る長身の男性の姿があった。琴子もよく知るひとの姿だ。
「うさぎさんもいらっしゃっていたのですね」
「よかったァ~、ウサギさんってばとォっても運がいい~!」
 心細くて泣いちゃうところだったよと泣き真似をする姿に小さくため息を吐き、大きいけれど怖い人ではありませんよと黒猫へと告げれば小さな笑みが返ってくる。
 その間に泣き真似をやめた時政は、コトちゃんも助けてねェ~とニコニコ笑顔で機嫌よく笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
『物語』を奪う、だって?
読者に許されるのは、辿るだけ
作家にだって、許されない

憤慨したように呟いて
辿り着くのはやさしい『物語』

『頭にランプを乗せた錻の子
ぴかぴか光るランプの色は
感情次第で変わりゆくから
好きな色には、変えられない

そんな彼は、最近、ずっと
夜空の星を見上げてばかり
「ぴかぴか光る星の色」
「とっても、素敵だなあ」

頭で光るランプの色を
同じ色にしようとしても
どうしたって、なりません

だから、探すことにしました
星のような、感情の色を』

唸る姿の隙は逃さずに
物語が欲しいなら、と頁を花へ
片付けば、錻の子に声掛けて

――君も探したい?
そんな綺麗な感情の色
それなら、一緒に冒険しよう
ハッピーエンドに向かって、さ



●星色の物語
 頭にランプを乗せた錻の子の、ぴかぴか光るランプの帽子は、移り変わる彼の心の色。
 空のように変わりゆき、感情次第のその色は、好きな色には変えられません。
 今日もぴかぴか、心のままに。
 明日もぴかぴか、心のままに。
 そんな彼は、最近ずっと、夜空の星を見上げてばかり。
「ぴかぴか光る星の色」
 小さく、遠く、ぴかぴかの。
「とっても、素敵だなあ」
 憧れてしまう、空のランプ。
 ぼくのランプもあの色になれたなら。
 頭で光るランプの色を同じ色にしようとしても、どうしたって、なりません。
 だから、探すことにしました。
 星のような、感情の色を。
 きらきらぴかぴか、輝く色を。

 ――『物語』を奪う、だって?
 口から飛び出そうになった言葉を、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は奥歯で噛み潰した。
 物語は作者の手によって生まれ、読者に愛され、長く永く続いていくものだ。読者に許されるのは、綴られた言葉を辿るだけ。物語の世界に身を投じ、浸る幸せを身いっぱいに感じればいい。
 それなのに、奪って、喰らって、白紙にしてしまうだなんて。そんなことは――。
「作家にだって、許されない」
 自身の著書と万年筆を手に、苦虫を丹念に磨り潰したような声で呟き歩むライラックの歩は荒い。辛うじて駆け出さずにいられるのは、ここが『図書館』だからだろう。図書館ではお静かに、図書館では走らない。身体にインクのように染み込んだルールだ。
(――見つけた)
 書架の角を曲がった先に、本を持たぬ狂気に飲まれた愉快な仲間。
 更にその奥には、見られている事に気付かずに歩む、錻の愉快な仲間の姿があった。
 迷うことはない。物語がほしいなら、くれてやろう。
 著書を捲れば花となり、『アンメリー・フレンズ』に終わりの物語を与えた。
「あれ?」
「やあ」
 錻の子が振り返るのとライラックが声を掛けたのは同時だった。
 お互いにどちらから話そうか譲り合いながらも、ふたりはふたつひとつと言葉を交わしていった。
「君の物語は、どんな物語なんだい?」
「この本だよ」
 手渡された本をライラックは感謝の言葉とともに受け取り、ぺらりと頁を捲る。
 綴られる、やさしい物語。
 錻の子の気持ちが柔らかな絵と文で丁寧に描かれ、読むものを穏やかな心地にさせる。そんな物語だった。
「――君も探したい?」
 そんな綺麗な感情の色を、この物語の錻のように。
 問えば素直に返される肯定に、ライラックは柔和に瞳を細める。
「それなら、一緒に冒険しよう」
「見つけられるかな」
「見つけられるさ。ハッピーエンドに一緒に向かおう」
 作家は物語の子を誘い、連れて行く。
 錻の子の物語を新しく綴るように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八津崎・くくり
♢♡
物語ってお腹にたまるのだろうか

図書館を歩いて、吟味状態の敵を見つけたら、愉快な仲間の視界の外で素早く仕留めていこう
蛇みたいに伸ばした髪も上手に使って攻撃したい

狙われてたのが食べがいありそうならナンパを
頭がマジック8ボールの子とか良さそうではないかね
占いとか情報の宝庫だろう?

ごきげんよう。素敵な頭をお持ちだね
良ければ私のことも占ってくれないかな?
それから、向こうに私の連れが居るんだが、彼も占いが好きでね――

という感じで誘導
うん、これは中々に胸が痛い

●物語
異界に迷い込んだ少女と、歩く占い玉の旅のお話
少女の帰還には占いによるヒントが不可欠だけど、やたらと当たるこの占い玉は、悪人達にもよく狙われる



●占い玉と少女の物語
「ねえ、次はどこへいけばいいの?」
「そうだね、まっていて。今占うから」
 異界に迷い込んだ少女のおともは、たったひとつの小さなボール。
 幼い頃から少女の家にもある『マジック8ボール』が「じゅんびはできたよ、さあふってみて」とまぁるい体をころがしました。
 手足を縮めた占い玉を手にして、ころん。
「あっちにいい出会いがあるかも」
「それじゃあ、向かいましょう」
 右も左もわからない土地から少女がお家に帰るには、この占い玉のヒントは必要不可欠。ころんと転がって出た占いに、少女は素直に従います。何故ならこの占い玉の占いは、とてもよく当たるからです。
 けれどもやたらと当たる占いならば、ほしがる人も居るわけで――。
「やいやいやいやい!」
「やいやい! その玉おいていけ!」
 とうぞく風のイノシシがふたりの道をふさぎ、手にした刀を見せつけてきました。
「いい出会いじゃないの!?」
 占いなのではずれることだってあります。
 けれども、もしかしたらこの出会いが――……

 ――物語ってお腹にたまるのだろうか。
 書架の間を歩き、時折他の道を覗き込みながら八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)は敵を探した。
 ひとつ覗き、みっつ越えて、そうしていつつめ。
 見えた黒い頭に、武器を手に掛けかける。
 けれど。
「おっと」
 本を所持しているからあれは敵ではない。
 書架の間から乗り出しかけた体を引っ込め、住民と思われる愉快な仲間の周囲に他に何も居ないか確かめる。黒い頭はマジック8ボールをしていた。あんなに面白そうな存在を、敵が見逃すわけはないだろう。そう、踏んで。
(――居た)
 ボール頭の周りを索敵すること暫し、くくり同様書架からこっそりと窺う存在を発見した。手に本を持っている様子はなく、狂った愉快な仲間と言った風貌で、物語の登場人物とは明らかに違う存在だ。
 気取られること無く距離を詰めたくくりは蛇のように髪を伸ばし、口を塞ぎ、手を縛り、封じ込めながら書架の影へと引きずり込む。そうして暗闇にナイフの銀が閃いたならば――悲鳴を零させること無く『アンメリー・フレンズ』を始末した。
 そうして邪魔者を排除したくくりは、ボール頭の子へと近寄り声を掛ける。
「ごきげんよう。素敵な頭をお持ちだね」
「こんにちは、旅の方? この頭を知っているの?」
「知っているとも。有名だからね。良ければ私のことも占ってくれないかな?」
「うれしいな。何を占おう?」
 今日は美味しい食事にありつけるだろうか。今知りたいことを適当に口にすれば、お姉さん食いしんぼうなの? とくすりと笑いながら占ってくれる。
「うーーん。あ、けっこういい感じみたいだよ。きたいしていいかも」
 結果は上々。明るい声で、おいしいものが食べれるといいねとボール頭が明るく笑う。
 その姿にこれからの事を思えば口の中に苦さが広がる心地だが、占い結果に満足した様子でくくりは感謝を口にし、そういえばと言葉を繋げた。
「向こうに私の連れが居るんだが、彼も占いが好きでね――」
 よければ彼のことも占ってくれるかな?
 請われる声にボール頭は嬉しそうに頷き、先導するくくりの後についていく。
 素直な姿を見れば見るほど、くくりの胸はつきんと痛むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ベスティア・ビブリエ』

POW   :    縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励◆
攻撃が命中した対象に【埋まることの無いぽっかりと空いた心の穴】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【一秒毎に記憶を次々と失っていき、衰弱】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    譏疲�縺ゅk縺ィ縺薙m縺ォ
自身の【憑依しているが、使い捨てる本のページ】を代償に、【Lv×1体の幸せそうな物語の登場人物達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【世界の『正』を『負』に捻じ曲げた幻想】で戦う。
WIZ   :    蟷ク縺帙↓證ョ繧峨@縺ヲ縺�∪縺励◆
いま戦っている対象に有効な【精神攻撃をする『物語』を演じられるもの達】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フィオレンツァ・トリルビィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そうして物語は
 書架の森を抜け、住民たちの憩いの場らしき閲覧スペースを抜け、また書架たちがひっそりと列を成すその場所に、一冊の本が落ちていた。
 その本に気付いたのはうさぎのぬいぐるみだった。彼女は首を傾げると、ぴょこぴょこと跳ねながら本へと近付いていき、拾い上げようと本へと手を伸ばす。
「待ってください」
「アリス?」
 静謐を割くように響いた声に、うさぎは動きを止めて振り返った。
 そこに居たのは、アリスと、アリスではない旅人さん。それから知った顔の愉快な仲間たち。柔らかな気配ではない、緊迫した気配にうさぎは首を傾げ――た瞬間、背後で何かが溢れるような気配も感じ取り、うさぎは反射的に振り返った。
 本から、春の風が溢れる。可愛らしい花弁が暖かな空気とともに舞い、蝶が飛び立つ。本を中心とした床には緑が茂り、ぽぽぽと花が咲いていく。
 幻想めいた美しさに、うさぎは眸と心を奪われた。その光景を見て、逃げようとは思わない。より本へと触れてみたくなる。
 どんな物語が描かれているのだろう。
 書物が好きであればあるほど、書の誘惑からは逃れられない。

 数多の美しいものが溢れて。
『縺昴l縺ッ縺ゅk譌・縺ョ蜃コ譚・莠九〒縺』
 ――そうして最後に、本から魔獣が現れました。

======================
⚠ MSより ⚠
 本から現れたベスティア・ビブリエと対峙しているところからリプレイは始まります。
 危険を察知すると、うさぎのぬいぐるみはぴょんぴょん跳んで逃げていくので、対処は不要です。
 ベスティア・ビブリエの意識が愉快な仲間へ向かっている場合、猟兵が選択した属性の攻撃が愉快な仲間へと向かいます。これは体を傷つけず、精神を攻撃し、『物語』を奪うものです。
 ベスティア・ビブリエを攻撃することでベスティア・ビブリエの攻撃が一時的に猟兵に向かったりすることもありますが、すぐに身を引けば目の前の『食事』に専念します。
 また、愉快な仲間たちの生死や『白紙』は成功判定に影響しません。
八津崎・くくり
そう、あれが私の連れだよ
どうやら君が気に入ったらしい

占い玉くんに気を取られている隙に仕掛けよう
ナイフとフォークでざくざくと
標的にされたなら一旦引く
心の穴とかこれ以上増やされても困る

占い玉くんが衰弱しているようなら話しかける
ああ、気をしっかり持って、彼の事も占ってあげてくれたまえ
少しでも物語を追加して、根源情報を食われるのを遅らせられれば

それでも保たないならこちらも攻撃に身を晒す
手段は選ばない主義だが、死ぬのを見るのは忍びない

はらぺこなのは分かるが独り占めはよくない
返したまえよ、怪物殿
機を見たら攻撃を受けてでもUCを使用
食欲と、先の占い結果は覚えていたいね

「繧上◆縺励′鬟溘∋縺ヲ縺ゅ£繧九o」




「お姉さんのおともだち?」
「そう、あれが私の連れだよ」
 本から出てきたベスティア・ビブリエを見て、くくりは占い玉へと頷き返す。
 突然出てきた魔獣に驚いてぴょんぴょん跳んで逃げていったうさぎのぬいぐるみの背を見送った占い玉が「あの人を占えばいいんだね」と無防備に近付いていくのを、さてお眼鏡に適うかどうかと見守れば、ベスティア・ビブリエは大きく口を開けた。どうやらお気に召したご様子だ。
『縺願�縺檎ゥコ縺�◆縺ョ縺ァ鬟溘∋縺セ縺励◆』
「わあ」
 ベスティア・ビブリエが腕を振るい、悲鳴――と言えなくもない声が上がったのは一度だけ。くたりと力なく倒れ込んだ占い玉の前に、ベスティア・ビブリエが座り込んでいた。
 魔獣が食事を始めたら、後はもう、隙を見付けるのは容易だ。
 両手にナイフとフォークを握ったくくりは背後から近寄るとざっくり斬りつけて、視線が向けられれば素直に引いて、標的にされるのは避ける。これ以上心の穴を増やされたら溜まらない。
 魔獣の注意は、すぐに逸れる。魔獣は貪欲に『物語』を求めている。腹を空かせた獣の目の間に逃げない上等な餌があれば、それに食らいついた方が無駄がない。すぐに食事を再開する魔獣にくくりは再度近寄り、今度はざくざくとフォークで刺してやった。
「大丈夫かい、占い玉くん」
「……あれ。お姉さん、えっと、」
「ああ、気をしっかり持って、彼の事も占ってあげてくれたまえ」
「あ、そうだ。占いをするんだったね。何を占おうか?」
 占い玉が根源情報を失わないように気に掛け立ち回れば、ぼんやりとしながらも占い玉は魔獣を占おうとする。彼がどうしてそこまで占いをしようとするのか、ベスティア・ビブリエはまだ知らない。
『蜈ィ驛ィ鬟溘∋縺ヲ繧り憶縺?〒縺吶°』
「はらぺこなのは分かるが独り占めはよくない」
 美味しそうだなぁと言いたげに大きく開かれた口に、全部食べてしまう気だと悟ったくくりは踏み込む。攻撃を喰らっても構わない。『物語』を喰われても構わない。
 けれど、ああ。
 ――食欲と、先の占い結果は覚えていたいね。
「返したまえよ、怪物殿」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
頁に広がる素敵な物語
けれど、それは、継ぎ接ぎで
標本と云うのが正しいのだろう

錻の子を一瞥し、眉が下がる
ハッピーエンドに向かえども
頁が欠けては、意味は無いから
叶うなら、御預けにしたいが

奪われてはいけないんだ、僕も
だから、少しだけ、覚悟してる

ああ、それでも
叶わずとも、頁を繕うように
僕が再び物語を語り紡ぐよ
今宵語るは『星色の物語』
錻の友が星色に至る御話だ

友の為と語り続けるものだが
空腹なら、どうぞ召し上がれ
全力込めて弾き飛ばすよう
星影を放ち、距離を離して
召喚を防ぐ為に極力妨害し

危険を感じれば、潔く身を引けど
食事と往けば、攻撃に転じて
最後まで物語を護りたい

君のランプに星色が灯るのを
僕だって、見てみたいんだ




 ――本。
 それは、頁を捲れば物語が溢れ出し、知らない世界へ連れて行ってくれる、友。
 近くに在って、遠くに在る。
 友たらんとして多くを過ごし、そしてライラックのその手でもいくつも綴った愛しき存在だ。
 けれど眼前に在る本は――。
(標本と云うのが正しいのだろう)
 頁に広がるのは、素敵な物語。けれどそれは、継ぎ接ぎだ。『彼』の正しい物語ではないからだ。
 書物から出てきた魔獣の姿に、硝子の奥の菫が眇められるが、視界の端で光る灯りへと視線を下ろし、眉を下げた。錻の子は、不思議そうにぴかぴかと灯りを放っている。
 ハッピーエンドへ向かおうと、手を引いた彼。
 辿り着く先がそうであったとしても、頁が欠けてしまっては意味がない。
 自然と寄ってしまいそうな眉間を意識して、ライラックはため息とともに瞼を落とし、世界に一度幕を下ろした。
(――奪われてはいけないんだ、僕も)
 叶うなら、お預けにしたい。けれども叶わないのなら――覚悟を。
 決意を胸に、第二幕。
 さあ、幕は上がった。
「今宵語るは『星色の物語』。錻の友が星色に至る御話だ」
 ――今宵、千夜を語ろう。《アルフ・ライラ・ワ・ライラ》。
 叶わずとも、頁を繕うように物語を再び語り紡ごう。
 紡ぐは、星色。夜に輝く綺羅星を、言葉にして色にして、君にあげよう。君が星色に至れるように。ほうき星に願いを込め、願い星にするように。
 君へ、贈ろう。
 柔らかな声音で紡がれる物語は、優しい。
 優しくて、愛しくて、ああ、
『鄒主袖縺励◎縺?〒縺』
「空腹なら、どうぞ召し上がれ」
 星影が、飛ぶ。夜空を彩るほうき星のように、真っ直ぐに素早く、ライラックの願いの元へ。物語を傷つけさせない、欠けさせない。世に出た愛すべき物語を白紙に戻すなど、許されないことだ。
 危険を感じ取れば、潔く身を引く。けれど錻の子へと歯牙を向けるは許さない。
 ちかり、視界の端で君が光る。案じる色だ。まだ、星彩へは至らない。
 ライラックは、錻の友へと微笑む。
 大丈夫。連れて行くよ。
 ハッピーエンド――君を星の色へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

琴平・琴子

うさぎさん(f26711)私の後ろに隠れても丸見えですよ
大丈夫、私が守りますから

私はこの国も、うさぎさんも、愉快な仲間さん達も守りたい
【あの人】だったら、どうするんだろう

目の前の獣はこの国にいらない
ブリキは皆の守護を、木製は獣に向かって…

此処に居るはずの無いあの人が、王子様が
どうして此処にいるの

貴方に憧れた幼い心は
漸く自分らしく歩けると思ったのに
向いてないって言わないで
暗い所に置いてかないで

ハッとして急いで猟銃を構え
幻影と獣に怒りを込めた貫通する呪殺弾を撃つ

お早うございますうさぎさん
よくお声聞こえました
私、頑張ってますよね
王子様としてできてますよね

胸の辺りが
苦しかったのに
今は痛くない、です


真白・時政

ワァ見てコトちゃん(f27172)何かヘンのが出てきた!ウサギさんこわァ~い!
仲間になってくれたウサギさんのおててをぎゅっぎゅーってシて、魔獣に向かっていくコトちゃんをガンバレって応援するヨ
コトちゃんがケガしないヨーニ、お祈りするの~

ワ、キミも助けてくれるの?
そしたらちょっとの間あのコワイの惹き付けてくれる?
コトちゃんの様子がヘンだから、ウサギさんギューってシに行きたいの

ネ、コトちゃんダイジョーブ
コトちゃんは毎日たくさんがんばってるヨ
今もウサギさんたちを助けようとシてくれてるカッコイイオウジサマ
んフフ~オハヨォ
コトちゃんはちゃァンとオウジサマ、出来てるヨ
ウサギさんがオスミツキあげる
まだ痛い?




 可愛らしい幻想の向こうには、恐ろしい姿の魔獣が出てきました。
 けれど猟兵たちは、武器を手に果敢に立ち向かいます。

 ――とはならないのは、物語ではないからだろうか。
「ワァ見てコトちゃん、何かヘンのが出てきた!」
「……うさぎさん、丸見えですよ」
 ウサギさんこわァ~い!
 サササッと自身の背に隠れた長身の成人男性に対し、琴子は冷静に言葉を紡いだ。琴子が成長した立派なレディだったとしても、彼を隠すことは出来なかっただろう。それ程の身長差がありながらも隠れた時政を一瞥し、琴子は一歩前へと踏み出す。
「大丈夫、私が守りますから」
「コトちゃんガンバレ~!」
 小さな一歩は、常に未来へ向かう一歩だ。
 目の前の魔獣への不快を顕に玩具の兵隊たちを呼び出せば、すぐさま部隊を二手に分かれさせる。ブリキには守護を任せ、木製は魔獣へと向かって――。
「一斉射撃準備良し! 放て!」
「ワァ! コトちゃんってばカッコイイ!」
 小さな背に時政を庇い――まん丸ウサギと黒猫も庇い、琴子は兵隊たちへと命令を下した。
 愉快な仲間を囮にすればいい。不安気に耳を揺らしながら零された言葉を、覚えている。けれど琴子は、そうしない。全てを。この国も彼も愉快な仲間も、全て守りたかった。
(――『あの人』だったら、どうするんだろう)
 ふと、心が揺れた。
 こうすることは正しいのだろうか。
 あの人だったら、もっと良い手を打てたのではないだろうか。
 ケガしないでね。背後で祈る声が、小さく聞こえる。パンパンと響く射撃音も、後ろに引くように小さくなった気がした。
 ――ズドン。
 生身の誰かが撃たれる気配に、我に返ったようにハッとした。
「どうして……」
 どうして、此処にいるの。言葉は最後まで漏れず、消える。飲み込んだ訳ではない、唇が震えて紡げなかったのだ。それでも背後にいる時政は、不思議に思ったことだろう。けれど、それすらを気に留める余裕は、琴子の心に無かった。
 此処に居るはずの無いあの人――琴子の憧れの王子様が、兵隊たちの銃に撃たれていたた。信じられない。ウソ。どうして。
 手を伸ばす。
 届かない。
 ウソ。
 ――向いてないって言わないで。
 暗い所に置いてかないで。
 貴方の隣を歩きたいのに。
 歩けなくとも、漸く自分らしく歩けると思ったのに。
 手を伸ばす。
 前へと蹈鞴を踏む。
 届かない。届かない。この手は何も、つかめない。
「コトちゃん。ネ、コトちゃんダイジョーブ?」
 直ぐ側で聞こえた声。
「コトちゃんダイジョーブ。コトちゃんは毎日たくさんがんばってるヨ」
 時政には、琴子が何を見ているのか、何を苦しんでいるのかは解らない。けれど、何かに苦しんで、否定しないでと悲鳴をあげている事は解るから。
「ワルい言葉なんて聞かなくていーよ」
 細い体を抱きしめるように、小さな頭を包み込むように、少女の両耳を大きな両手で塞ぐ。末端から心まで冷えていきそうだった身体が、人の熱を、感じとった。
「うさぎ、さん……?」
「ン、ソォダヨ。ウサギさん」
 きょとん、として。それからハッと短く息を呑んだ琴子は、慌てて猟銃を構えた。
 許せない。こんなものを見せるだなんて。あの人に、あんなことを言わせるだなんて。
 睨む先には魔獣とまん丸ウサギ。時政が囮になってくれるようお願いしてくれたのだろうと、解った。愉快な仲間と後ろに隠れていた時政が、すぐ傍に来てくれている。
 近くに熱を感じながら、琴子は引き金を引く。
 反動で後ろに倒れ込む身体を、大きな手のひらがぽすんと支えてくれた。
「お早うございますうさぎさん」
「んフフ~オハヨォ」
「私、頑張ってますよね。王子様としてできてますよね」
「コトちゃんはちゃァンとオウジサマ、出来てるヨ」
 震える声に、オスミツキをあげる。
 皆を守ろうと奮闘してくれた、かっこいい王子様。
 前に立つ背中はまだ小さいけれど、とても頼りがいのある逞しさを秘めた背中だ。
「胸の辺りがとても苦しかったんです」
「まだ痛い?」
「痛くない、です」
 今は、もう。大丈夫。
 柔らかな吐息とともに琴子は時政を見上げ、微笑んだ。


『迚ゥ隱槭?縺セ縺?邨ゅo繧翫∪縺帙s?』


●縺?>縺医?√♀縺励∪縺?〒縺
 星影に押され、呪殺弾に撃ち抜かれたベスティア・ビブリエが、鋭い咆哮めいた声を上げた。
 腹を満たすにはまだ足りない。『物語』はこんなにもたくさんある。食べたい、食べたい、食べたい。満たされたい。
 貪欲に求め、ベスティア・ビブリエは足掻く。
 まん丸ウサギの物語を齧り、占い玉の物語を齧り、もっと、もっと。
 けれど、それ以上は。
 赤い髪が、ベスティア・ビブリエの視界を浚う。
「繧上◆縺励′鬟溘∋縺ヲ縺ゅ£繧九o」
 食べてあげる。そう、くくりが笑えば、くくりの髪が生き物のように蠢き『口』が大きく開いた。
 食べるのは、私。君じゃあない。
 《ないものねだりの夢を見る》のはお互い様。食うか喰われるか。ならば食い切られる前に食べてしまえばいい。




 ――ごちそうさまでした。
 大きな口が、満足そうに告げました。

 悪は必ず、滅びるものなのです。
 ハッピーエンドを紡ぐべく作家が物語を紡ぎ、青年を連れた少女によって撃たれ、暴食を巡って食べられて、ベスティア・ビブリエは倒れました。
 そうして書の魔獣は倒され、『図書館の国』――アリスラビリンスには平和が戻りました。
 静かで穏やかな図書館の国は、いつまでも本に溢れ、平和で幸せであり続けるのでした。めでたし、めでたし。
                                       』









『譛ャ蠖薙↓?』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日


挿絵イラスト