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守ろうみんなの秘密基地

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #レプ・ス・カム #フェアリー

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●妖精の秘密基地
「……よいしょっと、おじゃましま~す!」
 頭から覗くうさぎ耳をぴょこんと揺らし、スーパーウサギ穴なるものでフェアリーランドに現れたのは、レプ・ス・カム。アックス&ウィザーズで大天使ブラキエルの目論む「天上界への到達」を実現すべく、行動を始めた幹部の一人である。
「へ~これはまた楽し気な世界だね。それにしてもほんと壺の中とは思えないくらい広い場所だよね」
 レプ・ス・カムがぐるりと辺りを見渡した壺の中の世界に広がるのは、たくさんのツリーハウス。樹木を基礎に作られた家屋は隠れ家のような秘密基地のような特別感があり、見る者をわくわくさせる。フェアリーサイズのものだけでなく、人間やもっと大きな種族が過ごせそうなものなど種類も様々だ。
「さすが旅の導き手と言われているフェアリー。冒険心にあふれているね」
 ならばきっとここにはレプ・ス・カムの求めるものがあるだろう。
 すなわち、天上界へ到達するための鍵が。
 フェアリーランドを歩きながら、レプ・ス・カムはさくさくと準備を進める。まずはこの世界を作り出した使い手がユーベルコードを解除できないようにする。そうしてこの平和で楽し気な風景をその力で悪夢のごとき風景へと変えていく。
 青々とした葉を茂らせていた大樹は朽ちかけ、その上にあった家屋も廃屋のように傷み、おどろおどろしい雰囲気へと変わる。
「じゃあ、使い手のフェアリーが衰弱死する前にササッと鍵を見つけるぞ~!」
 落とし物を探すような軽い調子で、レプ・ス・カムはこの悪夢のごとき世界の探索を始めるのだった。

●グリモアベースにて
「せっかく戦いが終わって平和になったと思ったのに……ううん、でも侵略を止めることはできるんだから、もう一度平和を取り戻すためにもできることをやらなきゃね」
 浮かない顔でそう話し始めたエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)だったが、集まってくれた猟兵たちの顔を見ては頼もしそうに頷いた。
「迷宮災厄戦に現れた猟書家たちとその幹部が各世界に侵略を始めたのはみんなも知っているわよね。あたしが今回予知したのは、アックス&ウィザーズのフェアリーランドの中での出来事よ」
 天上界への到達を目指す大天使ブラキエルの意思を汲み、幹部レプ・ス・カムがとあるフェアリーの作り出したフェアリーランドを悪夢化し、鍵を探している。
「そのフェアリーランドはツリーハウスがたくさんある素敵な場所だったんだけど……今は悪夢のような光景になっているわ。そのフェアリーランドを作り出したフェアリー……プリムって言うんだけど、彼女は自分のユーベルコードを解除することも出来なくなって、命をすり減らし続けているの」
 このままでは消耗しきって命を落としかねない。でもね、とエリシャは続ける。
「プリムが楽しいことを想像すれば悪夢化は少しは抑えられるみたい。だから、みんなで彼女が楽しいことを考えられる手助けをしてほしいの」
 今はおどろおどろしいツリーハウスになり果てているが、明るく飾り付けをしたり、新たに遊び場を作ったり。自分がツリーハウスで遊んだ体験談を語ってもきっと喜んでくれるだろう。
「そうしてこの世界で鍵を探すレプ・ス・カムを倒してきてほしいの」
 幹部を倒せば悪夢のごとき世界に変えられたフェアリーランドも元に戻り、プリムも元気を取り戻す。
「せっかく平和になった世界も、フェアリーの作る夢の国も守ってほしいの。みんななら大丈夫って信じているわ。どうかよろしくお願いするわね」
 エリシャは信頼の眼差しで猟兵たちを見つめると、フェアリーが作り出した壺の中の世界へと転送を開始した。


湊ゆうき
 こんにちは。湊ゆうきです。
 ツリーハウスはロマン! ネズミの国にあるのも大好きです!

 こちらは二章構成の幹部シナリオになります。
 プレイングボーナス(全章共通)は「フェアリーに楽しいことを考えてもらう」です。

 第一章は冒険です。フェアリーランドの使い手のフェアリー・プリムに楽しい気持ちになってもらいましょう。ツリーハウスを飾り付けたり、遊び場を作ったり。悪夢化しておどろおどろしくなっていますが、木が折れたり崩れたりはしません。あとはツリーハウスにまつわる楽しい話をしても喜んでくれます。行動例は参考までに自由に行動してください。
 第二章はボス戦です。鍵を探すレプ・ス・カムとの戦闘になります。

 プレイングはOP公開後すぐに受付いたします。
 それでは、ご参加お待ちしております!
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第1章 冒険 『いのち抱く樹』

POW   :    荷運び、命綱を使っての作業などを請け負う。

SPD   :    板の細工やロープ編み、足場の組み立てを行う。

WIZ   :    魔法などを使って作業を行う。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リゼ・フランメ
骸の月もまた問題けれど
ひとつずつ片付けていきましょう
ひとりずつ、助けていきましょう

人を闇と悪夢に堕として、辿り着ける天上界だなんて
美しいだけの地獄と変わらないのでしょうから

その為にもまずはこの妖精の悪夢を祓いましょう
悪夢を祓いのは何時だって、思いの光

UCにて紡いだ蝶で、ツリーハウスを取り囲み、輝く灯りとして周囲を巡らせましょう
属性で火、水、雷と、煌めく翅に宿して、それぞれの色を宿させれば
そこにいるのは、様々な色彩の光が宿る場所

舞踏のようなリズムをもって
光のダンスとして、私もまた躍って

……さあ、楽しい事をこの色に
歌や踊りを、奏でたい音色をこの中で

妖精の声を、今、此処に美しく照らしましょう


ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「神様プロレスラーだから力仕事は任せてよ!」とガッツポーズ!
『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して“運搬/ダッシュ/勇気/存在感”とかを駆使して手分けして荷運びや作業を手伝い、ロ^プやいたや足場の組み立てや運び『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化したり『ヴァイストン・ヴァビロン』で豪華絢爛に盛り立てて『ガディス・ブースト・マキシマム』で」協力支援をして行きます!

「ボクもレディースも出来る事なら何でも手伝うから遠慮無く気軽に呼んで、申し付けてね!♪」と笑顔で声を掛けます☆
疲れた方には『エデンズ・アップル』で黄金の林檎で甘酸っぱさで癒して貰う



●色彩の輪舞
 アックス&ウィザーズの地に転送され、壺の中のフェアリーランドの世界に飛び込んだリゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)の目の前に広がるのは、たくさんのツリーハウス。けれど今はこの場所にやってきた幹部猟書家のせいで楽しいはずの世界が悪夢じみたおどろおどろしいものと化していた。
「こんな風になっているのはきっとここだけじゃないのね」
 このフェアリーランド以外にも、またアックス&ウィザーズの他の地でも。もっと言えば、他世界でも。先の戦争で現れた謎の勢力が、猟兵が平和をもたらした世界を「骸の月」で覆い侵略を進めようとしているのだ。
「骸の月もまた問題だけれど……」
 リゼもまた他世界の幹部猟書家と既に戦ってきた。全ての世界の侵略を押し返すにはたくさんの力が必要であり、まだまだ時間がかかるだろう。それでも、それらをひとつひとつ片付けていくしかない。目の前にいる困っている存在をひとりずつ助けていくことが、やがては世界を平和にすることに繋がるのだと。
「人を闇と悪夢に堕として、辿り着ける天上界だなんて」
 書架の王が探し求めた天上界。それが彼らにとってどれほど素晴らしいものなのかは知らないが、妖精の作り出した安全な世界を悪夢化し、踏みつけて見つけた世界に果たしてどれほどの価値があるのか。
「……美しいだけの地獄と変わらないのでしょうから」
 リゼは決意の感情を秘めたルビーの瞳でこの悪夢化した世界を見据える。まずはこの悪夢を払う必要があるだろう。
「あなたは誰?」
 唐突にかけられた声にリゼは振り向く。きのこの陰からリゼの方を窺っているのは、桃色の髪をした背中に透き通った翅を持つフェアリー。
「あなたがプリムさん? 安心して。あなたとこの世界を元通りにしにきたの」
 冒険者としても世界を渡ってきたプリムにとって、リゼが猟兵であることはすぐにぴんときたのだろう。
「ありがとう……急に壺の中がこんなことになって、ユーベルコードも解除できなくなって困っていたの……」
 そう言うプリムの顔には疲労の色が濃く表れていた。
「あ、キミがこの世界を作り出した妖精さんだね!」
 そこへ大蛇の脚を持つティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)が黄金の翼を羽ばたかせてやってきてはプリムに大きく手を振った。
「元の世界に必ず戻してみせるからね……そのためにはキミに楽しい気持ちになってもらわないと」
「楽しい気持ち……?」
「ええ、プリムさん。あなたが楽しいことを想像すれば悪夢化が抑えられるそうなの」
 リゼも安心させるように付け加えると、ティファーナが手近なツリーハウスを指差して問いかける。
「遊び場が増えたりしたら嬉しい?」
「ええ、それはもちろん……!」
 生命力を失いかけていたプリムの瞳に活力が蘇り、リゼとティファーナは顔を見合わせて頷く。
「オッケー! 神様プロレスラーだから力仕事はボクに任せてよ!」
 可愛らしくガッツポーズを決めるティファーナは美しいプロポーションをしているが、その細い腕にもしっかり力仕事をこなすだけのしなやかな筋肉がついている。けれど一人で全てをこなすのは時間がかかるので、ユーベルコードでレディースと呼ぶ従属神群を召喚することにした。
「あのツリーハウスに、ロープで遊び場を作っちゃおう。あとはブランコもいいね!」
 レディースたちはロープを手にツリーハウスへと向かうと木の枝に器用にロープを結んでは手際よくアスレチックのようなロープの遊び場を設置していく。
「わあ、ああいった遊び場はなかったの。嬉しいわ」
 顔を輝かせたプリムに対し、ブランコにちょうどいい板を担いで運んでいたティファーナはにっこりと笑顔を向ける。
「ボクもレディースも出来る事なら何でも手伝うから遠慮無く気軽に呼んで、申し付けてね♪」
 しっかりとした太い枝にロープでブランコをとりつける。人用のサイズのものと、フェアリー用のサイズも用意して。
 プリムが顔を輝かせる度、暗い影を落としていた世界に光が射すように、世界から悪夢の影が和らいでいく。
「悪夢を祓うのは何時だって、思いの光」
 リゼはそう呟くと、更なる悪夢を払うために、煌めく水晶の蝶たちをツリーハウスの周辺へと飛翔させる。煌めきを纏う蝶たちはその翅に属性を宿すことができる。リゼが火や水、雷を宿らせると、それぞれの色彩を得た蝶たちが舞うさまは美しいイルミネーションの如く。
「まあ、なんて綺麗なの!」
 幻想的な色彩の光に照らされて、悪夢に晒されていたツリーハウスが美しい輝きを取り戻す様子にプリムは瞳をますます輝かせる。
「……さあ、楽しい事をこの色に」
 光の蝶が舞う中、リゼはふわりとマントを揺らして躍り出る。軽くステップを踏んでくるりと回転すれば、蝶たちと舞う光の舞踏会。
「歌や踊りを、奏でたい音色をこの中で」
「歌と踊りなら、ボクも得意だよ!」
 祭りと賑わいの活気を好むティファーナが元気に蝶たちのダンスの輪に混じる。腕につけた金銀の腕輪が蝶たちの光を受け美しく煌めいた。歌や踊りでみんなに楽しんでもらっていつか超☆太陽神になるという夢を持つティファーナの人を楽しませる踊りに、プリムも笑顔になり、自然とその唇から歌が零れる。
 プリムの歌声に合わせてリゼとティファーナ、そして色彩の蝶にレディースまでもが光を纏って美しく舞う。
 フェアリーランドに立ち込めた悪夢のごとき闇が、美しい光と舞踏によっていくらか払われたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

ツリーハウスね。野外生活が長くてね。試しに子供達と作ってみた事がある。(おどろおどろしいツリーハウスを見て)これはいけない。何とかしてやろうか。

奏は不器用なたちでねえ。細かい作業は私がやろうか。フェアリーサイズの椅子やテーブル、ベットの組み立ては私がやろう。余裕があればブランコも作ろうかね。ああ、子供達とツリーハウスを作ったのは本当だよ。手探りだったが、子供達と住む場所を作るのは楽しかった。こうやって(板に飾り細工をしながら)手取り足取り教えたものだ。いい思い出だよ。

さあ、出来た。アタシ達家族手作りのツリーハウスだ。住み心地が良ければ嬉しいねえ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

むむ、不器用なたちとは失礼な!!人間サイズのベットとかテーブルとかは作れますよ!!フェアリーサイズは難しいでしょうけど。はい、夢のあるツリーハウス作り、いいですね!!

(ちょっと歪んだベットとテーブルセット完成)実用には耐えられるはずですっ。あとは飾りつけ、します!!お花を家に一杯飾りますよ~。昔ツリーハウス作った思い出が思い出されますね。勝手が分からないのでいろいろ苦労しましたけど、楽しかったですよ。

さあ、出来ました!!プリムさん、どうでしょう。少しでも満足して頂けたら嬉しいです。


神城・瞬
【真宮家】で参加

ツリーハウスの世界、いいですねえ。はい、確かに僕達家族はツリーハウスを作った経験がありますね。お手伝いしましょう。

僕は遊び場を作りましょうかね。ターザンロープ、すべり台、まるた渡り。僕1人の手で作れるのはこれぐらいですね。

はい、ツリーハウスの作成の経験があるのは本当ですよ。野外生活が長いですからね。あの時は僕と奏も子供でいろいろ大変でしたが、実際出来たツリーハウスに住んでみて、とても楽しかった思い出があります。

さあ、一通り出来ました。僕達家族が作れる範囲だと実にささやかな物になりますが、プリムさんが楽しめる一助になれればと。



●思い出のツリーハウス
 壺の中に広がるフェアリーランドの世界にはたくさんのツリーハウス。
「フェアリーサイズのものや私たちが住めそうなものまでいっぱい!」
 紫色の瞳を輝かせては、真宮・奏(絢爛の星・f03210)はぐるりとフェアリーランドを見渡す。そこへ透明な翅を羽ばたかせたフェアリーの少女がやってきた。
「あなたたちも助けに来てくれたのね」
 桃色の髪をしたフェアリーの少女・プリムは奏たちを見て心強そうに微笑んだ。
「ツリーハウスの世界、いいですねえ。僕たちにもお手伝いさせてくださいね」
「野外生活が長くてね。試しに子供達と作ってみた事があるんだ」
 安心させるように切れ長の瞳を細めて進み出た神城・瞬(清光の月・f06558)と、懐かしそうにツリーハウスを眺める真宮・響(赫灼の炎・f00434)がプリムにそう語り掛けた。
「まあ、あなたたちもツリーハウスを作ったことがあるのね。とても嬉しいし、心強いわ」 
「はい、確かに僕達家族はツリーハウスを作った経験がありますね」
 瞬の言葉を受け、プリムがふわりと微笑むと、悪夢化した影響で淀んでいた暗い空気が少し晴れていく。それでも、この世界は突然現れた幹部猟書家によって悪夢化されている。本来の明るく楽しい雰囲気は影を潜め、まるでお化け屋敷のようなおどろおどろしい空気を醸し出している。
「これはいけない。何とかしなくちゃね」
「ありがとう……突然こんなことになって、ユーベルコードも解除できなくて困っていたの」
 響が表情を真剣なものに改めると、奏と瞬を振り返る。
「さあ久しぶりにみんなで作ろうか。ただ奏は不器用なたちでねえ……細かい作業は私がやろうか」
「むむ、不器用なたちとは失礼な!! 人間サイズのベッドとかテーブルとかは作れますよ!!」
 でも繊細な作業を必要とするフェアリーサイズは難しいでしょうけど……と奏は小さく呟いて。
「僕は遊び場を作りましょうかね」
 ツリーハウスで過ごす時間がもっと楽しくなるように、真宮家で力を合わせて楽しい小道具の手作りを開始する。
「材料はここにあるものを使ってもらって構わないわ」
 プリムが示した先には、ロープや木材に丸太など。のこぎりや釘などの道具も人間サイズのものまで用意されていた。
「たまに冒険仲間のお友達を招待していてね。だからフェアリーサイズ以外のものもあるのよ」
 材料と道具を手に、響が指示を出し、瞬と奏が木材をちょうどいい大きさに切っていく。
「私だってちゃんと作れるんですからね!」
 奏は人間サイズのテーブルやベッドの作製に取り掛かる。そんな娘の様子を笑顔で見守った響はフェアリーサイズの椅子やテーブルを組み立てていく。豪快な性格の響ではあるが、過去に作ったもののミニチュア版ならばその経験から上手に仕上げることができるのだ。
 瞬はロープをツリーハウスの高い場所に括り付け、ターザンロープとして遊べるように準備する。
「すごいすごい。あっという間にたくさんできていくね」
 プリムの笑顔が増える度に、悪夢の闇が少しずつ払われていく。手際がいいのね、と呟くプリムに響も笑顔で応える。
「ああ、子供達とツリーハウスを作ったことがあるのは見ての通りだよ。手探りだったが、子供達と住む場所を作るのは楽しかった」
「野外生活が長いですからね。あの時は僕と奏も子供でいろいろ大変でしたが、実際出来たツリーハウスに住んでみて、とても楽しかった思い出があります」
 実際には、箱入り娘だった響が駆け落ち同然に家出をして、夫との間に授かった奏が五歳になった時に夫とも死別している。決して楽な生活ではなかったはずだが、響は子供たちが楽しめるように守りながら暮らしてきたのだ。
「こうやって、手取り足取り教えたものだ。いい思い出だよ」
 板に飾り細工を施しながら、響は昔を思い出し目を細める。
「はい、昔の思い出が蘇りますね。勝手が分からないのでいろいろ苦労しましたけど、楽しかったですよ」
 奏もそう言って朗らかに笑う。家族でツリーハウスを作るのは幼心にも本当に楽しくて。だから夢のようなツリーハウスをこの世界でも再現したいと思ったのだ。
「出来ました!」
 奏が人間サイズのテーブルセットとベッドを完成させる。ちょっと歪んでいる気がするのはご愛敬だ。
「実用には耐えられるはずですっ」
「ふふ、素敵よ。ありがとう」
 けれどそれで終わりではない。もっともっと楽しくなるように、奏はツリーハウスを花で飾り付けるのだ。
「お花を家に一杯飾りますよ~」
 近くで咲いている花をプリムに許可を得て摘んできては、花のリースを編んで飾り付ける。
 フェアリーサイズの椅子やテーブルにベッドを完成させた響はブランコ作りにも取り掛かる。子供たちが遊び場を作る度に喜んでいたことを思い出す。
 そして瞬もまた黙々と遊び場作りを進めていた。簡素ながらもすべり台にまるた渡りといった楽しい遊具が作られていく。
「さあ、一通り出来ました。僕達家族が作れる範囲だと実にささやかな物になりますが、プリムさんが楽しめる一助になれればと」
 作業を終え、瞬がそう微笑むと、プリムは新しくできた家具や遊び場を透明な翅を羽ばたかせてはじっくりと見て回り、瞳を輝かせる。
「すごいすごい。遊んで休憩出来て……お花もとっても綺麗だわ」
「プリムさん、どうでしょう。少しでも満足して頂けたら嬉しいです」
「アタシ達家族手作りのツリーハウスだ。住み心地が良ければ嬉しいねえ」
 真宮家にとって思い出のツリーハウス。このフェアリーランドにおいても、楽しめるものであってほしいという願いが込められた家具や遊び場。その思いは深く深くプリムの胸にも届いていた。
「ええ、ええ。とっても気に入ったわ。この悪夢が晴れたら、お友達も呼んで楽しみたいわ」
 楽しい未来を想像することで、フェアリーランドに影を落としていた暗い闇が少し拭い去られる。
 プリムに浮かぶ明るい笑顔に、三人は安堵の想いを抱くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
ツリーハウス……懐かしいわ
あれは帝竜戦役が終わって間もない頃
旦那様と一緒に時蜘蛛の糸の力で子供になって、無邪気に遊んだの
この家も、猟書家の呪いさえなければ、きっと美しかったでしょうに

嘆いていても仕方ないわ
わたしくしたちの手で輝きを取り戻しましょう

色とりどりの布を花びらの形に切って
細い枝を芯にして幾重にも巻き付ける
沢山の造花を作り、枯れ枝や家に飾りましょう

【創世の歌】
紡ぐ言霊に忍ばせた魔法
命与えられた花々は、元は布で出来たとは思えぬほどの瑞々しさで
背を伸ばし、芳わしく香り、甘い蜜と果実さえ実らせる
これで飢えることもないわ

残された種は新たに芽吹き、再び花を咲かせるでしょう
命の巡りと希望を受け継いで



●受け継がれるもの
「ツリーハウス……懐かしいわ」
 壺の中に広がる、フェアリーランドの世界。ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の胸に懐かしさと共に温かい気持ちが蘇る。そう、ツリーハウスは彼女と最愛の旦那様との思い出の場所。
 あれは帝竜戦役が終わって間もない頃。戦いが終わったあとも群竜大陸には常識を凌駕した不思議な場所が存在し続けている。
 依頼で訪れたのは時蜘蛛の峡谷。触れた者を幼児化させる時蜘蛛の糸で、二人は子供の頃に戻って無邪気に遊んだ。オブリビオンを穏便に骸の海に還すため、ツリーハウスでフルーツを食べて、それぞれの過去の話を語り聞かせたのだ。
(「この家も、猟書家の呪いさえなければ、きっと美しかったでしょうに」)
 悪夢に晒されたツリーハウスは青々と茂っていたはずの葉もしおれ、今にも朽ちてしまいそうだった。
 けれど嘆いていても仕方ない。悪夢にだって終わりはある。
「わたしくしたちの手で輝きを取り戻しましょう」
 青い瞳に宿るのは決意の色。そうして持参した布を取り出した彼女の前にふわりと妖精が舞い降りた。
「まあ、あなたも助けに来てくれたのね」
 桃色の髪に透明な翅をしたこの壺の中の世界を作ったフェアリー・プリムがヘルガを頼もしそうに見上げる。
「はい、わたくしにとってもツリーハウスは大切な思い出のひとつなのです」
「そうなのね。嬉しいわ!」
 ヘルガの言葉に笑みを浮かべたプリムはヘルガの手元を不思議そうに覗き込む。
「これは……?」
「この布を花びらの形に切るのです。そうして細い枝を芯にして幾重にも巻き付けて……」
 色とりどりの布たちがあっという間にたくさんの造花へと変化を遂げる。
「うわあ、すごいわ。まるで本物みたい」
 その言葉に優しく笑みを返すと、ヘルガは丁寧に枯れてしまった枝や家屋に飾っていく。
「プリム様、どうぞ見ていてくださいね」
 すう、と息を吸い込んでから、ヘルガは美しい歌声を響かせる。
 それは創世の歌。紡がれた命、その思いを受け継いだ魂はこの世に二つとないかけがえのないもの。
 命の尊さを讃える清らかな声が辺りに響き渡れば、造花だったものに命が宿っていく。瑞々しい花びらに彩られた花たちは蝶を引き寄せる甘い香りを放つ。それは植物たちが命を繋ぎ、後世へと残す手段。
「え、本物みたいだと思ったけど……本当に本物になったの?」
 ヘルガの歌声に呼応するように、花は美しく咲き誇り、芳しい香りを放てば甘い蜜と果実をも実らせていく。
「これで飢えることもないわ」
 天使の歌声を持つ歌姫は慈愛に満ちた瞳で微笑んだ。
 果物たちはのどを潤し、空腹を満たす。そうして残された種はまた新たに芽吹き、再び花を咲かせることだろう。
「命の巡りと希望を受け継いで」
 人も動物も植物も、そうして命を受け継いできたのだ。そのことを理解し、感謝しているからこそヘルガの歌声は心に響くものがある。
「うん、咲かせてくれた植物はこれからも大切に育てていくね」
 胸に手を当てて、その思いを大切そうに受け止めたプリムは温かな笑顔を見せる。
 ふわり、と悪夢化した世界の闇がまたひとつ和らいでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
悪夢化? 「悪夢の滴」たる私の前でそのような妄言を吐く愚かさ
いずれ思い知らせてあげましょう

さて、ツリーハウスですか
ふふ、御存じですか妖精さん
異世界……いえ、遠いある地域では、この時期
大きな木に飾り付けをして楽しむのです
キラキラ輝く飾りを付けたり、可愛いお人形をぶらさげたりね
咄嗟のことであまり用意がありませんが、それでも……

私の武器である108本の鎖を「ロープワーク」でツリーハウスに差し渡し、
これに「オーラ」を纏わせてキラキラに輝かせます
さらに軽く「衝撃波」を放ち、風に揺らして
鎖同士を触れあわせ、鈴のような音を響かせましょうか

いい子にしていれば贈り物がもらえるかも
そんな話もあるそうですよ、ふふ



●希望の音色
 壺の中に広がるフェアリーたちが作った楽しい世界。それがスーパーウサギ穴とかいうふざけたもので勝手に入り込んできた幹部猟書家によって悪夢のような光景に変えられている様を黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)はもう何度となく見てきた。
「悪夢化? 『悪夢の滴』たる私の前でそのような妄言を吐く愚かさ……いずれ思い知らせてあげましょう」
 魅夜にとって悪夢は宿敵だった。けれどある時、宿敵と思っていた悪夢が自分と本質的に同じものだと知ったのだ。それは自分というアイデンティティを失ってしまいそうなほどの強い衝撃を魅夜に与えた。
 けれど猟兵として歩んでいた魅夜は一人ではなかったのだ。自身が悪夢の一部であったとしても、そのことを忘れていたとしても、魅夜は様々な経験を重ね、成長を遂げた。自分の中に存在する悪夢の力さえも希望の未来を切り開く力に変えてしまうほどに。
 オブリビオンが何度も甦るのは承知している。だからその度に悪夢で希望を奪うというのなら、何度でもそれを止めに行く。希望の光を絶やさないために。
「さて、ツリーハウスですか」
 まずはその前にこの世界を作ったフェアリーを元気づけなければと辺りを見回せば、悪夢化したツリーハウスを他の猟兵たちも飾ったり、遊び場を作ったりしている様子が見えた。
「まあ、あなたも来てくれたのね。ありがとう!」
 魅夜の姿を見つけては、透明な翅を羽ばたかせて、桃色の髪のフェアリー・プリムが笑顔で近づいてくる。彼女から希望が完全に奪われていないことに安堵しつつも、まだ辺りには悪夢の気配が濃く立ち込めているようだ。
「立派な木がたくさんありますね」
「ええ、みんなが飾り付けてくれたり、遊び場を作ってくれたからもっと素敵になったのよ」
 嬉しそうにそう告げるプリムを見て確信を持つ。ならばきっと魅夜が考えているこの方法でも喜んでくれるだろう。
「木に飾り付けると言えば……ふふ、御存じですか妖精さん」
「え、なあに?」
 魅夜の言葉に興味を惹かれたプリムが身を乗り出して続きを促す。
「異世界……いえ、遠いある地域では、この時期、大きな木に飾り付けをして楽しむのです」
 異世界と言っても混乱するだろうかと言葉を選んだ魅夜だが、プリムはぱっと表情を輝かせる。
「お友達から聞いたことあるわ! 木のてっぺんに星を飾ったりするんでしょう?」
「ええ、キラキラ輝く飾りを付けたり、可愛いお人形をぶらさげたりね」
 見ててくださいね、と魅夜は武器である108本の鎖をロープワークの技能を活かして上手にツリーハウスに差し渡していく。先端についた鈎を鎖の穴に通せば木を傷つけることなく鎖を固定することができる。たくさんの鎖を賑やかに飾り付けたのなら、それらにオーラを纏わせていく。
「わあ、きらきらしてる!」
 オーラを纏った鎖が輝けば、プリムは歓声を上げる。そこへ威力を調整した衝撃波を放てば、生まれた風に鎖同士が触れあい、鈴のように澄んだ音色を響かせる。
「咄嗟のことであまり用意がありませんが……」
 可愛らしい人形やベルやリボンなどはないけれど。
「聞いたことあるわ。靴下を飾ったりするんでしょう?」
「ええ、いい子にしていれば贈り物がもらえるかも……そんな話もあるそうですよ、ふふ」
 輝きを纏う鎖が奏でるのは希望の音色。
 プリムの嬉しそうな笑い声に、この世界を覆っていた悪夢の影がまた少し和らいでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
【路地裏】

さてと
折角の、綺麗だった場所
このままって言うのは、嫌だろうね
微力ながら、自分も、どうにかしてみようかな

コードを使用
プリムの負の感情を喰らって、同時にその苦痛を和らげるよ
これで少しは、楽になるはず

あとは、皆から木片なんかを貰って、工作していようか
コードを優先するから、こっちには、あまり集中して出来ないけど
でも、ちょっとしたものなら、出来るはず、かな?

木を無心で削って、木彫り人形の作成
オコジョ、ツバメ、ビーバー、オコジョ、オコジョ、オコジョ、猫、ツバメ、オコジョ、ツバメ、ツバメ……
無心だから、出来上がりが偏っていることにも気がつかないけど
まあ、そういうこともある、よね?


吉備・狐珀
【路地裏】

本当はとても可愛らしいツリーハウスだったのでしょうに、悪夢のような場所にされてしまうなんて…
悪夢はさっさと終わらてしまいましょう

UC【一獣当千】使用
呼び出すのはビーバーさん
木を削って可愛い動物の彫刻やツリーハウスを彩る飾り作りのお手伝いをお願いしたいのです
あ、削ってもいい木はツリーハウスの建っていない木でお願いしますね
お礼にビーバーさんの好きなお野菜に今回は秋の味覚、栗も用意しちゃいます

ビーバーさんの削った気の切れ端を使って自分も小物を作ったり、完成した彫刻や飾りに色付けをしたりしてツリーハウスに彩りを。
高い所の飾り付けは月代、お願いしますね。



●手作りの温もりを
 壺の中にフェアリーが作った楽しいツリーハウスの世界。けれど今は突如現れた幹部猟書家によって、悪夢のような世界に変えられてしまっていて。先にやってきた猟兵たちがツリーハウスを飾り付けたり遊び場を作っては使い手のフェアリーを元気づけ、悪夢化がいくらかは抑えられているとはいえ、未だ木々は力を失い、生命力を失っている。
「折角の、綺麗だった場所……このままって言うのは、嫌だろうね」
 辺りを見回したペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)が悪夢化した風景に顔をしかめる。
「ええ、本当はとても可愛らしいツリーハウスだったのでしょうに、悪夢のような場所にされてしまうなんて……」
 その言葉に頷いた吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)も、その惨状に思わず目を伏せる。けれどこのままではフェアリーも衰弱し、この楽しい場所も失われてしまう。
「悪夢はさっさと終わらせてしまいましょう」
「うん、微力ながら、自分も、どうにかしてみようかな」
 狐珀の力強い言葉にペインもこくりと頷く。ペインにだってできることが、いやペインにしかできないことがあるのだ。
「あなたたちも来てくれたのね! 本当にありがとう!」
 二人を見つけて現れたのは、透明な翅を持つ桃色の髪のフェアリー・プリム。仲間たちが彼女を勇気づけたことで一見元気そうに見えるが、幹部猟書家がフェアリーランドのユーベルコードを解除できなくしたせいで、目に見えないところでも彼女は命をすり減らしているのだ。
「あなたがプリム? 苦しい? 今、その苦痛を和らげるよ」
 ペインがそう問いかけ、ユーベルコードを発動させれば、プリムの中から痛みや苦痛が抜けていく――いや、消えたのではない。ペインがそれらの負の感情を喰らったのだ。
「え、不思議……確かにすごく楽になったわ。身体も軽いし……」
 翅を羽ばたかせてその場をくるくると回ったプリムは笑顔を見せるが、ふと心配そうにペインを窺う。
「あなたがわたしの痛みを引き受けてくれたの?」
「……心配しないで、大丈夫」
 負の感情を喰らうことに没頭している間は攻撃に対しては無敵であるし、生命維持さえ不要になる。“指潰し”の拷問具のヤドリガミであるペインにとって、負の感情に触れることは苦痛ではないのだ。
「大丈夫ですよ。もっともっと元気になってもらいますからね」
 狐珀も安心させるように微笑むと、ツリーハウスを飾るために頼もしい仲間を召喚する。
「もふもふさん、もふもふさん、あなたの持っている力を私に貸してください」
 呼びかけに応え、もふっと大辞典から現れたのはつぶらな瞳のビーバーだ。
「ビーバーさんの力で、木を削って可愛い動物の彫刻やツリーハウスを彩る飾り作りのお手伝いをお願いしたいのです」
 愛らしい見かけのビーバーだが、その歯はとても硬く丈夫で、細い木ならばわずか十数分で倒せてしまうほど強靭なのだ。小首を傾げたビーバーは辺りの木を見て、そしてもう一度狐珀を見た。
「お礼ですか? ビーバーさんの好きなお野菜に今回は秋の味覚、栗も用意しちゃいます」
 召喚したもふもふたちには相応の報酬が必要なのだ。狐珀はきちんとビーバーが喜ぶ食べ物を準備して、彼らが100%の実力を出せるようにサポートする。
 ビーバーはそれに満足がいったようでこくこくと頷くと、すぐさま作業に取り掛かる。
「あ、削ってもいい木はツリーハウスの建っていない木でお願いしますね」
「あっちにちょうどいい木があるわ。ビーバーさんこっちよ」
 プリムがビーバーを先導して案内すると、ものの数分でたくさんの木片が切り出される。
「はい、ペイン殿も」
「ありがとう、狐珀」
 受け取った木片をどんなふうに工作しようかペインは少し思案する。ただ、プリムの負の感情を喰らうユーベルコードはまだ展開中だ。だからこちらに全力で集中することはできない。ならば心の赴くまま、無心で削ってみよう。
 狐珀もまたビーバーが切り出した木の切れ端を使って小物を作っていく。星やハート型にくり抜いてみたり。木の実を組み合わせてやじろべえをつくったり。さらに色付けを施せばツリーハウスに彩りを添えられるだろう。
「わあ、とっても可愛い! えーと、こっちは木彫りの動物だね!」
 プリムは狐珀の作った小物に目を輝かせると、次にペインが無心に削った木彫り人形を一つずつ観察する。
「左から……オコジョ、ツバメ、ビーバー……」
 しっかりと特徴を捉えて彫られた動物たちにプリムはすごいと歓声を上げ、まだまだ続く木彫り人形の列を追う。
「えーとそれから? オコジョ、オコジョ、オコジョ、猫、ツバメ、オコジョ、ツバメ、ツバメ……」
 なんだか一部動物に偏っているような気がするが、ペイン自身は無心のため特に気づいていないようだ。飼っているオコジョやツバメの形に姿を変えるスマートフォンを持っていることが無意識に現れたようだ。
 プリムが不思議そうにしている様子にようやく気付いたペインはじっと木彫り人形を見つめる。無心で彫った割にはなかなか良い出来だと思う。
「……まあ、そういうこともある、よね?」
 ペインがぽつりと呟くそばで、ビーバーが愛らしい仕草でちょこんと手をそろえて美味しそうに栗を頬張っていた。
「ねえ、これは木のてっぺんに飾ったらいいかな?」
 プリムが星型の飾りを抱きしめて狐珀に問いかける。
「いいですね。でもたくさんありますから……月代、お願いしますね」
 アックス&ウィザーズ出身の月白色の仔竜が狐珀の言葉に応えては、飾りを持ってふわりと舞い上がる。高い場所は月代とプリムに任せ、狐珀とペインは手近な場所へと飾り付けを行う。
「ありがとう、みんなのおかげで前よりも素敵なツリーハウスになったわ。今はまだ木々に元気はないけれど……元に戻れば、お友達も招待して楽しい時間を過ごせるわ。もちろん、あなたたちも大歓迎よ!」
 ペインの力で苦痛から解放されたプリムはとびきりの笑顔を浮かべる。
「ここを綺麗だった場所に戻さないとね」
「悪夢を終わらせましょう……私たちの手で」
 フェアリーを元気づけることに成功した。あとは――。
 この場所で鍵を探す幹部猟書家レプ・ス・カムを倒すのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『レプ・ス・カム』

POW   :    ミラージュ・ラパン
自身と自身の装備、【自身がしたためた招待状を持つ】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    兎の謎掛け
【困惑】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【鬼火の塊】から、高命中力の【蒼白い炎の矢】を飛ばす。
WIZ   :    素敵な嘘へご案内
【巧みな話術】を披露した指定の全対象に【今話された内容は真実に違いないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハーバニー・キーテセラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●兎の謎掛け
「うーん、すぐに見つかると思ったのに、なかなか見つからないなー」
 ツリーハウスの世界を歩き回りながら、天上界への鍵を探すレプ・ス・カムだが、未だ鍵を見つけられていなかった。壺の中の世界が完全な悪夢に変わっても鍵は変わらないはずなので、見つけられると思ったのだが……。
「ん? なんかさっきより賑やかになってない? 悪夢化も薄れているような……」
 探すことに集中していたレプ・ス・カムが辺りを見回すと、来た時よりもツリーハウスの装飾が増えている気がする。猟兵たちの仕業だと気づいたレプ・ス・カムは探索を中断させ、そちらへと向かうことにした。
「せっかく悪夢化したっていうのに、鍵は見つからないし、邪魔は入るし……まあ、いいよこの際。君たちが鍵を見つけてくれてもさ」
 彼女の一番の目的はあくまで天上界への鍵を見つけること。目的さえ達成すればいいのだろうが、猟兵たちがそれを邪魔するというならじっとしてはいないだろう。
「ほら、鍵だよ、鍵。どこかで見なかった? 君たちだって大切な鍵を持っていたんじゃないのかな。ほら、覚えがあるでしょ? ふふふ……ほーら、大切なこと、忘れてるんじゃないのかな……?」
 巧みな話術で猟兵を翻弄し惑わせるのがレプ・ス・カムだ。あるものをないと思わせ、ないものをあると思わせる幻術の使い手。
 その言葉に引き込まれてしまうかもしれない。けれど真実は猟兵の中にこそある。幻惑されることなく、この地に広がる悪夢を振り払うのだ。

●マスターより補足
 レプ・ス・カムの言葉により、皆さんは自分自身の何らかの過去の思い出や出来事を思い出すかもしれません。大切だったのに忘れていたこと、忘れようとしていたことなど。本当はない出来事をあると思いこんでしまったとかでも大丈夫です。内容は何でも構いません。思い出と向き合い、心を落ち着け引きずられることなくレプ・ス・カムに一撃食らわせていただく流れです。
 特に言葉に惑わされなかった! として普通に攻撃をしてもらっても構いません。自由にプレイングをかけてください。
 なお、フェアリーのプリムは1章で皆さんに元気づけてもらったので、2章は全員にプレイングボーナスが最初からあるという前提です。皆さんの戦闘は邪魔にならないよう見守っていますが、何かあればプリムに声をかけてくださっても構いません。
 
リゼ・フランメ
鍵、鍵……忘れていたもの、ね
誰にだって忘れていたいねものはある
胸の奥に仕舞い込んだものを、無理に掘り返して暴こうだなんて者
思い出の鍵という、刃に貫かれても仕方ないわね?

私の思い出した鍵は誰にも見せたくない
――私に傅いた彼の姿、私に断罪の焔をくれたあの銀の瞳
……それを求めることこそ、私の罪咎

「人の尊く、大切なものに、触れるべきではないのよ」

故に、周囲に破魔の炎を花びらのように散らして、余波で透明となった姿を燃やす事で探すわ
衣服や、纏う悪夢の気配に着火した炎までは消せないわよね
の姿を捉えれば、UCによる神速の剣閃
蝶の如く翻っての2回攻撃
斬り裂き、焼いて、求める空へ
天上へその灰を届けてあげましょう



●蝶の見る夢
 天上界への鍵を探すレプ・ス・カムが猟兵たちへと問いかける。
「ほら、鍵だよ、鍵。どこかで見なかった? 君たちだって大切な鍵を持っていたんじゃないのかな。ほら、覚えがあるでしょ? ふふふ……ほーら、大切なこと、忘れてるんじゃないのかな……?」
 手にした蒼い明かりを灯すランタンを揺らせば、まるで催眠術のようにその言葉が心の奥底に忍び込んでいく。
「鍵、鍵……忘れていたもの、ね」
 レプ・ス・カムの言葉に対し、リゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)は努めて冷静に返した。
 誰にだって忘れていたいものはある。長い年数を生きれば生きるだけ、その数は増えていくことだろう。
 リゼにだってそう言われて思い起こす過去の思い出があるのだから。
 けれど、それをこんな失礼で不躾なウサギに教えてやる義理はない。
「胸の奥に仕舞い込んだものを、無理に掘り返して暴こうだなんて者……思い出の鍵という、刃に貫かれても仕方ないわね?」
 罪咎を斬る劫火の剣を構え、リゼはレプ・ス・カムをひたりと見据える。
「大切に仕舞い込んだもの……本当は聞いてほしいんじゃないの? でもそれが武器になるというなら……ふふ、これでどうかな?」
 挑戦的な笑みを浮かべながら、レプ・ス・カムがそう言ってランタンを掲げるとその姿が透明になっていく。
 聞いてほしい? 誰かに共感してほしいわけでも、慰めてほしいわけでもない。
 リゼが思い出した鍵。それは誰にも見せたくない。
 瞼を閉じれば蘇るその光景。
 リゼに傅いたその姿。断罪の焔をくれた彼の、その銀の瞳――。
(「……それを求めることこそ、私の罪咎」)
 今更惑わされることなどない。リゼは知っているのだ。全ての命が原罪を抱いて生まれてきたのだとすれば、大切な鍵を誰しもが持っていてもおかしくない。だからこそ、その咎が人を傷つけ続けないよう、惨劇たる罪を焼き尽くすため蝶のように夢を追い、舞い続けるのだ。 
「人の尊く、大切なものに、触れるべきではないのよ」
 おとなしやかに見える神秘的な容姿。けれどその胸の内には苛烈なまでの炎が燃え盛っている。
 その心を具現化したような破魔を纏った炎の花びらを辺りに散らせば、透明化したレプ・ス・カムの衣服に火をつける。透明になったからといって、物質そのものがなくなったわけではないのだから。
「刃が踊れば、炎は奏でる――夢が紡ぎし蝶の舞踏」
 着火した炎から居場所を割り出し、リゼは優美なる劫火の剣を神速で閃かせる。ひらりと舞っては翻っての二回攻撃は悪夢を切り裂く蝶のごとく。
「君にはちゃんと見えてるようだね」
 攻撃を受けながらもレプ・ス・カムはそうリゼを称える。
「天上界へ行きたいのでしょう?」
 リゼの剣が悪夢を切り裂き、火焔の蝶たちが触れたものを焼き尽くし舞い上がらせる。
「その灰を届けてあげましょう」
 あなたの求めるその空へと。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

口が良く回る奴だねえ。まあ、そのままにしとくと被害が広がるのは確かだ。天上界の鍵だか何だかしらないが、アンタはここで終わりだ。

敵の姿が消えるようだが、歩く音とかは聴こえるようだね?【戦闘知識】を駆使して敵の位置を把握しようとした途端、暴漢を叩きのめしてアタシを助けてくれた夫の背中を思い出して顔が真っ赤になる。一瞬で夫に恋したねえ。ああ恥ずかしい。でもあの時の出会いがなかったら今のアタシはいなかった。想いを力にして、全力で【ダッシュ】、敵の攻撃は【オーラ防御】【残像】【見切り】で凌ぎ、【衝撃波】で敵の位置を特定したら、【怪力】を併せた炎の拳で殴る。


真宮・奏
【真宮家】で参加

むむ、物騒な事いう兎さんですね。何か探しているようですが、楽しい場所を悪夢に返る所業は許しませんよ。え?忘れていた事ですか?う~ん・・

思い出したのは怖い顔したお父さんに私がお説教されている事。良く危ない所行っては良く雷落とされてましたね。一瞬顔が恐怖に歪みますが、ぶんぶんと頭を振って、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御態勢を整え、母さんが敵の位置を特定するのを待って、全力で流星のタックル!!お父さん、私は頑張ってます!!お父さんの言う通り、無謀な突撃は控えるようにしてますので、見守っていてください!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

何か胡散臭いですねこの兎。話術で翻弄するタイプですか。厄介な。こういうのは調子に乗らせると厄介です。何とかしましょう。

とりあえず【オーラ防御】しておきますが、思い出されるのは依頼でウェディングドレスを着た奏。余りにも可憐なその姿が思い出されて顔が真っ赤。ええ、この愛らしい奏を護るのが僕の使命ですから!!と開き直り、母さんと奏の攻撃に怒涛の(照れ隠しの)追撃の疾風閃!!いつもの結界を展開するのを忘れているのに気付きますか、敵は態勢を崩しているようなので、大丈夫ですよね?



●思い出の鍵
「口が良く回る奴だねえ」
 レプ・ス・カムの人を惑わす言葉の数々に、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は感心したような、うんざりしたような呟きをもらす。
「何か探しているようですが、楽しい場所を悪夢に変える所業は許しませんよ」
 目的のためなら罪のないフェアリーランドを悪夢化するという物騒なウサギに対し、真宮・奏(絢爛の星・f03210)の真っ直ぐな心は、希望を護るという信念のもとその悪行を許さない。
「ああ、そのままにしとくと被害が広がるのは確かだ。天上界の鍵だか何だかしらないが、アンタはここで終わりだ」
 響もまたレプ・ス・カムに対し臨戦態勢を取る。
「ふうん、なかなか意志が強そうだね……でも強がったって私にはわかるんだ。ほら、思い出してみなよ。忘れていたこと……記憶の彼方にしまい込んだ鍵があるでしょ?」
 手にした蒼い明かりを灯すランタンが揺れると、不思議とその言葉に引き込まれていく。
「え? 忘れていた事ですか? う~ん……」
 巧みな話術で惑わせてくる相手だとわかっていて、その言葉を真に受けてはいけないと知っているのに、自然と引き込まれてしまう。
 奏が思いを巡らせる様子を目にし、神城・瞬(清光の月・f06558)はレプ・ス・カムから奏を護るように前へと進み出る。
「何か胡散臭いですねこの兎。話術で翻弄するタイプですか……厄介な」
「胡散臭いとはひどい言い草だね。ふふ……生真面目そうな君には誰にも言えないような心の奥にしまった大切な何かがあるんじゃないの?」
 にやにやと笑みを浮かべながら、レプ・ス・カムはランタンを揺らす。そうしてその言葉を残して姿を消した。透明になって視覚すらも翻弄しようというのだ。
「奏、瞬、大丈夫かい? 相手の姿は消えたが物音までは消せない。アタシが相手の位置を把握するから……」
「……ほうら、君にもあるでしょ? 忘れられないあの出来事が……」
 姿を消したレプ・ス・カムが響の耳元に囁く。すぐさま拳で応戦しようとした響だが、その耳に囁かれた言葉が記憶の海から懐かしい思い出を拾ってくる。
(「……ああ、あれは……」)
 目の前には忘れることなどないたくましい背中。今と違って箱入り娘だった響を暴漢から助けてくれた頼もしい人。まるで物語に出てくる英雄みたいに颯爽と救ってくれた未来の夫。その出会いは、一瞬で恋に落ちるのに充分だった。
 あの時のときめきを思い出せば今でも耳まで真っ赤になってしまう。若さと初々しさに思い出しては恥ずかしくなる。けれど、それが全ての始まりだったのだ。
(「あの時の出会いがなかったら今のアタシはいなかった」)
 それは確かに大切な鍵なのかもしれない。だからこそ、惑わされることなく、思いを力に変えるのだ。
「奏! アタシの声が聞こえてるかい?」
 響は同じように何かを思い出している様子の奏に声をかけた。

 レプ・ス・カムの問いかけに、奏の中で一つの記憶が蘇る。それは懐かしいものではあったが、楽しいものではなかった。
 目の前に厳しい顔をした父がいて、奏を叱っていた。決して感情的に怒っているわけではない。奏が危ない場所に行っては父を心配させたから、危険であることを幼い奏に伝えるため、何度となく雷が落とされたものだ。
 厳しい父だった。だからこそお説教も生ぬるいものではなく、今思い出しても奏の顔が恐怖に歪む。優しいところももちろんあった。けれど奏の中の思い出はいつも厳しい父の姿が浮かぶ。
 父の思い出が恐怖で塗りつぶされそうになる。奏は大きく頭を振って、その思いを振り払う。父の厳しさは、自分を思ってのことだと成長した今ならわかるから。
「奏! アタシの声が聞こえてるかい?」
 響の声に、奏は現実へと立ち返る。父と母が愛情深く、大切に奏を育ててくれたからこそ、今の奏があるのだから。
「はい、母さん!」
 レプ・ス・カムが放った蒼白い炎を【エレメンタル・シールド】で防御すると、母へと力強く頷き返す。
「こういうのは調子に乗らせると厄介です。何とかしましょう」
 瞬もまたオーラ防御で守りを固め、攻撃に備える。と、姿を消したレプ・ス・カムが今度は瞬の耳元に囁いた。
「……誰にも言えないあの思い出、忘れちゃったわけじゃないでしょ?」
 囁きは呪文のように、瞬にある記憶を思い起こさせる。
 それは忘れようとしても忘れるはずがない。ただ、確かに大切にしまっておきたいもので。
 ほんのりと頬を染めて、純白のウェディングドレスに身を包んだ奏がこちらを見上げていて――。
 依頼で参加したウェディングフェスタで目にした、これ以上ないのではと思うほど可憐な奏のウェディングドレス姿。恥じらうようなその姿がまた愛らしくて、まだ先だと思っていたのに、すぐにでも挙式をあげたいと思ってしまうほどで――。
 冷静沈着な瞬の顔が真っ赤に染まる。けれどその胸にはより強い決意が宿る。
(「この愛らしい奏を護るのが僕の使命ですから!!」)
 ウサギの戯言に惑わされている場合ではない。落ち着きを取り戻して周囲に目を向けると、響が攻撃の方角やわずかに聞こえる足音を頼りにレプ・ス・カムの場所を把握しようとしていた。足元の石ころを衝撃波で飛ばし、それが跳ね返ることで位置を特定する。
「とっておきの一撃だ!! 存分に味わいな!!」
 気力が込められた赤く燃える拳が超高速で放たれる。奏もまた母と同じ場所を目指しては蒼い闘気を纏って全力で突進する。
「お父さん、私は頑張ってます!! お父さんの言う通り、無謀な突撃は控えるようにしてますので、見守っていてください!!」
 【流星のタックル】により突き飛ばされたレプ・ス・カムはその姿を現した。
「……やれやれ、思い出の鍵が君たちを強くするの?」
 思った通りにいかず、むくれるレプ・ス・カムだが、それ以上口を開く余裕はなかった。
「疾風よ、奔れ!!」
 響と奏の攻撃にさらに畳みかけるように、瞬が疾風のごとき衝撃波を解き放つ。記憶の中の奏の愛らしい姿に顔を赤くしていた瞬は照れ隠しのように攻撃に力を籠める。
「アンタの武器は口か知らないが、アタシたちは考えるよりこっちが得意でね」
 家族ですら恐れるその力強い拳骨を握りしめ、響は笑う。心の隙を突こうとしても、大切な思い出や記憶は時に人を強くするのだ。
 瞬もまた平時の冷静さを欠いて、いつもの結界を展開するのを忘れていたことにようやく気付いたが、家族の連携攻撃に徹した今、それは不要だった。
「この悪夢を払って、この世界にも希望の光を灯してみせます!」
 父の思いに恥じないように、自分にできることを全力で。
 奏の思いを乗せた言葉がフェアリーランドに力強く響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
思い出す悪夢
水葬の街でわたくしを襲った忌まわしい出来事

怨敵たる吸血鬼に愛する夫の記憶を奪われた
平和への願いを歪められ、現実の彼を救うことも叶わず
偽りの夫との夢想に耽り死に至る悪夢に囚われた

愛が悪意に敗北した
信じた全てを無残に壊され、穢された
心に刻まれた黒く醜い傷痕が疼く

思い出して
悪夢に染められたこの世界にも、命を込めた花は咲いた
みんなの想いが、この世界に光を取り戻した
何よりわたくし自身が、彼に支えられ、今こうして生きている

だからきっと大丈夫
もう悪意に惑わされはしない

レプ・ス・カム、貴方はわたくしの逆鱗に触れた
歌うはレクイエム【怒りの日】
命を踏み躙り魂を弄ぶ邪悪を、神罰の光は決して許さない



●清き心に咲く花
「さあて君はどうかな? 忘れてしまったこと、忘れてしまいたいこと……記憶を失って、蘇って、そして……」
 レプ・ス・カムの持つ蒼い明りを灯すランタンが揺れるたび、まるで幻術にかかったように、その言葉が心の奥底に忍び込んでいく。
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)はこの感覚を知っている。記憶を失い、囚われた楽園。いや、あれが楽園であるはずがなかった。それはヘルガにとって悪夢に等しかったのだ。
 それは忘れてしまいたいほどの忌まわしい出来事。それがレプ・ス・カムの言葉によって深く心に呼び起こされたのだ。
 水底に沈んだ都市で怨敵たる吸血鬼に愛する夫の記憶を奪われた。夫を追っていったヘルガもまた記憶を奪われ、偽りの楽園へと囚われる。常に胸にある平和への願いは歪められ、現実の彼を救うことも叶わなかった。茨の鳥籠の楽園に囚われた無垢な雛鳥は飛び立つこともできずに、偽りの夫との夢想に耽り、死に至る悪夢に堕ちた――。
 心が悲鳴を上げている。無垢な魂に刻みつけられた黒く醜い傷跡が疼き、自分自身を抱きしめていた手と指先が、怒りと悲しみと羞恥のために震えていた。
 愛が悪意に敗北した。
 信じた全てを無残に壊され、穢された。
 悪意に屈し、自分を無力だと感じ、聖女を名乗る資格すらないのではと涙して。
 けれど、そんなヘルガを夫は愛してくれるから。共に生きると誓ってくれたから。
 だから、ヘルガは人の心を弄び翻弄する悪意に屈するわけにはいかないのだ。
 うつむいていた顔を上げ、その澄んだ青い瞳でこの世界を見つめる。
 つい先ほどのことだ。悪夢に染められたこの世界に、ヘルガが美しい歌声と共に紡いだ命の種は美しく花開いた。希望の種子は命を受け継ぎ、未来へ実りをもたらすだろう。
 ヘルガの、仲間たちのみんなの想いが、闇に沈んでいたこの世界に光を取り戻したのだ。
 (「何よりわたくし自身が、彼に支えられ、今こうして生きている」)
 悪い夢はもう終わり。悪意になど惑わされない。どんな闇もヘルガが光を与え、照らしていくから。
 ――だからきっと大丈夫。
「おやおや、ずっと過去に囚われていてもよかったのに……」
 ヘルガの指先はもう震えてなどいなかった。人の想いと願いを冒涜する存在を決して許しはしない。
「レプ・ス・カム、貴方はわたくしの逆鱗に触れた」
 いつもの慈愛に満ちた笑みはそこにはなく、悪意の塊を罰する厳しくも凛々しい表情でレプ・ス・カムをひたりと見据える。
「命を踏み躙り魂を弄ぶ邪悪を、神罰の光は決して許さない」
 ヘルガの感情に呼応し、呼び出された欺瞞を暴き邪悪を滅する裁きの光が、レプ・ス・カムへと嵐のように降り注ぐ。
 人は悪意に屈しない。一度膝を折ったとしても、そこに手を差し伸べてくれる人がいる限り、何度でも立ち上がって歩き出すのだから。
 だからこそ、ヘルガは人の尊厳を踏みにじる悪意を決して見過ごしはしない。
 弱き者が犠牲になることが当たり前の世界を見て育ってきたのだ。そのことに疑問を抱き、もう誰も泣くことのない世界を願って、その手を伸ばしてきたのだ。
 雪を割って春の到来を一番に知らせてくれる雪割草のように。
 ヘルガはその高潔な魂とともに、世界に光を与え続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ歓迎

「“過去”ってなんだ!グダグダ解んないんだ!格闘しろ!」と半ギレに怒りながら拳を向ける!
『ガディスプリンセス・レディース』で従属神群を召喚して『ガディス・ブースト・マキシマム』でSPDを強化して『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビーム攻撃をし『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回ります!
敵の攻撃を『神代世界の天空神』で空間飛翔して避けて敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化を仕掛けます。
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを更に強化して『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で髪の毛/蛇尾脚/拳で格闘を挑みます!

「黙って格闘・闘争しろ!」



●幻を切り裂く拳
「……ふう、猟兵ってのは厄介だね。大抵は揺さぶれる過去を持っているのに、時にそれが力になるっていうんだからさ」
 猟兵たちの攻撃を受けてなお、レプ・ス・カムはまだ落ち着いていた。彼女の最大の武器は巧みな話術なのだ。いつだって余裕綽々に、そうして心を欺き悪夢へと堕としていく。
「さあ、君は? とっておきの過去の思い出があるのかな?」
 蒼い明りを灯すランタンがティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)に向けられる。妖しい明りと共に囁かれる言葉にくらりと意識をもっていかれそうになるが。
「“過去”ってなんだ!」
 拳をぐっと握り締め、お腹に力を込めて、ティファーナはそう大きく叫んだ。
「神様がこんな場所にいるんだから、何かいわくつきなんでしょ?」
 輝く黄金の翼と美しい金の鱗で覆われた大蛇の脚を持つケトゥアルコワトゥル神であるティファーナは、確かに太陽神の隙を見て、天界を飛び出した。昔を過去というのならそうだろう。けれど、ティファーナの過去にこのウサギがこだわる意味がわからない。
「グダグダ解んないんだ! 格闘しろ!」
 まやかしの言葉など打ち消してしまうほどに、半ギレになりながらティファーナはレプ・ス・カムに拳を向ける。
「本当に何もないのか、それともそこに触れることすら嫌悪しているのか……どっちなのかな?」
 神の力を爆発させ、飛翔能力を増加させたティファーナがレプ・ス・カムに迫ると、ウサギはにやにやとした笑みを浮かべながらティファーナを困惑させようと問いかける。
「うるさい!」
 レプ・ス・カムが召喚した鬼火の塊から、蒼白い炎の矢が放たれる。空中を駆けながらそれらをかわしたティファーナは得意の格闘技を用いて、蛇尾脚でレプ・ス・カムを跳ね飛ばす。
 祭りと賑わいのある活気が好きなティファーナは、こんな風に楽しい場所を悪夢化した元凶を許さない。大切な鍵だの、過去だのそんなことを問答するよりも、目の前にいるレプ・ス・カムをぶちのめすことこそが解決策だとわかっているから。
 神の威光を身にまとって飛翔し、天空神の加護と祝福を得た光を放てば、心を惑わすユーベルコードを抑え込む。
「黙って格闘・闘争しろ!」
 闘神としての本来の姿を見せようと、神々しい勇姿に熱く燃える闘志をたぎらせ、【プリンセスガディスハート】からハートのビームを浴びせかける。
 問答など不要。ティファーナの熱く燃える心が悪夢を振り払うのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
【路地裏】

過去の思い出、ね
まあ、自分は、生まれが生まれだから
見えてくるものは、予想がつく

だけど、それは、すでに何度も、繰り返したこと

コードを使用
過去を思い返す片端から、それで生まれる感情を喰らっていく
自分だけではなく、狐珀や、周囲の仲間の分も
苦しい記憶の、その怨念と恐怖を
虐げられた過去の、その憤怒と憎悪を
無力な思い出の、その悲哀と絶望を
本体の指潰しを通して、喰らい、宿し、力に変える

生憎と、何度も繰り返してきたこと、もう一度する趣味は、無い
悪夢なんてもう、見飽きた
だから、早々に、お帰り願おうか

扱うのは、猫鞭"キャット・バロニス"
さてさて
兎狩りの時間だよ……


吉備・狐珀
【路地裏】

大切なこと…、忘れていること…

私は、稲荷像だから
私の力は村の人や大事が起きた時に使うもので
だからこのプリム殿を悪夢から助けたくて
でも、私は
村を護るはずの力で
兄の魂を人形に封じ込めた…
力を使い果たして成す術なく村が滅ぶのを見ているだけになって
成す術なく?
使い果たして?
私は…無力?

呆然としながら自分の手を眺めているとふわりと何かが軽くなった気がして
顔を上げればペイン殿が私の感情を食べて下さったことに気がつく

UC【協心戮力】使用
もう二度と繰り返さないと決めたではないか
支えてくれる信頼できる仲間にも出会えたというのに
兄の炎と月代の起こす風で作るは浄化の炎の竜巻
猟書家と共に悪夢は全て焼き払う



●過去を力に変えて
「本当に面白いよね。君たちが抱えている思い出ってやつは」
 言葉巧みな話術で猟兵たちを翻弄しようとするも、彼らにあるものをないように、ないものをあるように見せかけるのは難しいと感じたレプ・ス・カム。しかしその瞳には好奇の光が宿っていた。
「懐かしむ以外にも、喜んだり、悲しんだりするんだよね? さあさあ、その思い出の鍵をもっと見せてよ。案外そういうのが本当の鍵なのかもしれないし?」
(「過去の思い出、ね」)
 レプ・ス・カムの言葉を聞きながら、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は心の中でその言葉を反芻した。
 百年使われた器物に魂が宿り、人間型の肉体を得た存在――それがペインたちヤドリガミだ。長い年月を過ごしてきたからこそ、到底過去や思い出とは切り離せない。
 指潰しの拷問具としてあったペインは誰かに夢を与えたり笑顔にするものではなかったけれど。いや、むしろ真逆の存在だった。
 恐怖にひきつった顔。押し殺した悲鳴。苦痛に歪み血走った目。流れる赤い血――。
 拷問は非道な行いであり、ペイン自身も嫌悪の感情を抱いている。けれど、器物としてあった自分にとって「それ」は自分にしか成しえない仕事でもあった。拷問と無縁の自分はどこか希薄さを感じてしまうのだ。
 そのことを理解しているから、レプ・ス・カムの言葉に導かれるように見た過去の風景に対してもペインは冷静でいられた。それはもうすでに何度も繰り返したことなのだから。
 器物の時は、誰かを傷つけることしかできなかったけれど――今は違うのだ。
 過去の思い出と共に生まれる自分の感情を喰らっていく。それと共に、この場にいる仲間たちの負の感情も同時に喰らう。苦しい気持ちや恐怖、強い憤りに憎悪の念、そして無力に苛まれた者の悲哀と絶望を。
 本体である指潰しを通してそれらを喰らい、その身に宿し――力に変えていくのだ。

(「大切なこと……、忘れていること……」)
 レプ・ス・カムの持つ蒼い明かりを灯すランタンが揺れるたび、隣にいたペインの気配さえ感じなくなり、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は自らの持つ過去の記憶の海へと投げ出されていた。
 狐珀もまた吉備稲荷神社に祀られた狐像のヤドリガミだ。稲荷像として村の人々に大切にされ、有事の時にはその力で村を護るのだと。
 強い力を持つ者として、それは当然だと思っていた。
(「だからこのプリム殿を悪夢から助けたくて」)
 でも、あの時、狐珀は。
 大物主神の荒魂が災いを引き起こした戦によって村と神社は炎に巻かれた。そして兄と慕う狐像の本体が破壊された。
 大切な存在を失うのが恐ろしかった。離れ離れになることが耐えられなかった。
 狐珀はとっさに兄の魂をからくり人形に封じ込めたのだ。村を護るはずの力で――。
 力を使い果たした狐珀が村を救おうと手を伸ばしても、もはや成す術はなく。ただただ村が滅ぶのを見ていることしかできなかった。
 やり直せない過去の光景が蘇り、その度に狐珀の胸を締め付ける。
 成す術なく?
 ――その力は確かに狐珀の中にあったはずなのに。
 使い果たして?
 喪失の恐怖に怯えなければ、その力を使うこともなかったはずなのに。
(「私は……無力?」)
 助けられなかった命を思い、呆然と自分の手を眺めていた狐珀だが、突然ふわりと何かが軽くなった心地がして顔を上げる。
 そこには、白い面で顔を覆ったいつも通りのペインの姿。彼の本体である指潰しへと負の感情が吸い込まれていくのがわかった。
「狐珀、大丈夫?」
 無力感に苛まれていた絶望が消え、この悪夢を終わらせなければという強い気持ちが再び湧き起こる。
「ペイン殿が私の感情を食べて下さったのですね……ありがとうございます」
「それが、自分の、力になるから……」
 こくりと頷くペインを心強く思い、狐珀は顔を上げ、前を見据える。
 もう二度と繰り返さないと決めたのだ。支えてくれる信頼できる仲間にも出会えたのだから。
 過去の過ちをやり直すことはできなくても、だからこそそれを力に変えて。自分にできることをするのだから。
「あらら、負の感情すら力に変えるなんて、ね。えー、じゃあもう降参! ……なーんてね」
 おどけた仕草で相手を困惑させようと仕掛けるレプ・ス・カムは鬼火の塊を召喚し、蒼白い炎の矢を解き放つ。
「二つの力は一つの力に――我のもとに集いて、敵を貫く剣となれ」
 兄の魂を宿したからくり人形が繰り出す炎と月白色の仔竜が起こす風が生み出す炎の竜巻が、レプ・ス・カムの放った炎の矢をことごとく跳ね飛ばす。
「悪夢は全て焼き払いましょう……あなたと共に」
「ああ、悪夢なんてもう、見飽きた」
 だからこの場所から早々にお帰り願おうか。
 負の感情を喰らい、身体のあちこちから代償に血を流しながらも、強力な力を宿したペインは先端に鉤爪のついた九本の縄で出来た猫鞭を手にしてレプ・ス・カムへと宣言する。
「さてさて、兎狩りの時間だよ……」
 ペインの【キャット・バロニス】が伸縮自在の縄で逃げようとするウサギを捕縛すると、狐珀の炎の竜巻が悪辣な虚構を焼き尽くす。
 拷問具としても使用される猫鞭は、ウサギの化けの皮をはがすまでその鉤爪を食い込ませ続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
嗚呼、何ということでしょう
忘れかけていたのに思い出してしまいました
苦しみと悲しみを産むだけなのに
思い出さない方がよかったのに……

「範囲攻撃」「二回攻撃」「先制攻撃」「なぎ払い」で縦横に鎖を舞わせ
愚かな兎に叩きつけます
弾き飛ばされた兎を「衝撃波」で追撃
「ロープワーク」で捕縛して引き寄せとどめにUCを発動

……ええ、思い出してしまったのは『私が残酷であること』ですよ、ふふ
妖精さんとの優しい触れ合いでうっかり心が和んでいましたけれど
それを思い出させたのはあなた自身です
だから言ったでしょう?
『苦しみと悲しみを産むだけ』『思い出さない方がよかった』と
もちろんそれは「あなたにとって」ですけどね、ふふ



●悪夢の終焉
 巧みな話術で猟兵たちを翻弄しようとしていたレプ・ス・カムだが、惑うどころかより強力な力で猟兵たちに押し返され、既に満身創痍になっていた。それでもこの世界にある鍵を見つけようと、最後の力を振り絞っては言葉を紡ぐ。
「大切な鍵はどこにあると思う? 大切にしているが故に見えなくなることってあるよね。でもほら、本当は一番近くにあるんだ……きっと忘れているだけだよ……」
 その言葉に、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は忘れていたことを思い出す。
「嗚呼、何ということでしょう……忘れかけていたのに思い出してしまいました」
 悲しげに眉を寄せ、愁いを帯びた瞳が悲哀の光を宿す。
「そう、君は思い出したんだ。忘れてしまったこと。忘れていたかったこと」
 レプ・ス・カムが蒼い明かりを灯すランタンを揺らし、催眠術にかけるように、さらにその言葉で魅夜を虚構の幻へと引きずり込もうとする。
「苦しみと悲しみを産むだけなのに……思い出さない方がよかったのに……」
 うつむいて顔を伏せる魅夜。
 宿敵と認識していた「悪夢」と自分が本質的には同一のものであると知った魅夜は強い衝撃を受けた。悪夢は希望を奪い、苦しみと悲しみを生み出す存在。忌むべき存在と同じであったと知った時の衝撃は自我が崩壊してもおかしくないほどだった。
 けれど、そのことをレプ・ス・カムに言われて今思い出したわけではない。
 魅夜はすっと顔を上げると先端に鈎の付いた鎖を一瞬にして縦横に舞わせると、すっかり油断しきっていた愚かなウサギに叩きつける。
「え、そこは過去に囚われる流れじゃないの……何か思い出したんでしょ?」
 あいたたと身体を起こしたレプ・ス・カムに、もう一度鎖を叩きつけ、弾き飛ばしたところに衝撃波で追い打ちをかける。さらに鎖を操りしっかりとその身体を捕縛する。
「……ええ、思い出してしまったのは『私が残酷であること』ですよ、ふふ」
 妖艶な笑みを浮かべる魅夜の瞳に宿る残虐の色。己の内に潜む悪夢の邪な力。希望を奪う残酷な性質は悪夢が持っているものだ。
「妖精さんとの優しい触れ合いでうっかり心が和んでいましたけれど、それを思い出させたのはあなた自身です」
 だがその残酷さは、こうして希望を奪う許しがたい輩にしか発揮されることはない。今の魅夜は、邪悪なる悪夢の力を希望の道標へと変えることができるのだから。
「そんなことって……」
「だから言ったでしょう? 『苦しみと悲しみを産むだけ』『思い出さない方がよかった』と」
 ぎりぎりと鎖を締め上げ、レプ・ス・カムの動きを完全に封じては、にこやかに告げる。
「もちろんそれは『あなたにとって』ですけどね、ふふ」
 さあ、この悪夢をそろそろ終わらせよう。
 自在に鎖を操り、捕縛したウサギを引き寄せれば、108本の鎖が容赦なく襲い掛かっていく。まるで飛び散る血を糧に狂い咲く花のように。赤く染まった鋼の花は弔いの花にも見える。
「悪夢を引き裂き希望をつなぐ、この鎖は決して砕けません」
 そうして、フェアリーランドに立ち込めていた悪夢の気配は完全に消え去った。
「ありがとう、みんな。本当にありがとう!!」
 物陰から猟兵たちの戦いを見守っていたプリムが透明な翅を羽ばたかせ、満面の笑みで猟兵たちを称える。
 朽ちかけていた木々はしっかりと枝を伸ばす大樹に戻り、枯れかけていた緑は元通り青々とした葉を茂らせている。
「あれ、ねえこれって……」
 プリムが大樹のうろから何かを取り出す。それは光輝く鍵だった。これがレプ・ス・カムが探していたものだろうか。それとも別の何かだろうか。
 今はそれが何なのかはわからないけれど。いずれ必要になるときが来るかもしれない。
 プリムから受け取った鍵を魅夜は手に取り見つめる。
 悪夢を振り払った先に現れたその鍵が、希望をもたらすものであればいいと願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日
宿敵 『レプ・ス・カム』 を撃破!


挿絵イラスト