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死の教えを説く者と、再来せし侵略渡来人

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #ブラザー・アポストロス #破戒僧 #コルテス #魔軍転生

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「アポストロスの奴め……よもや私をこのような畜生に憑装させるとは……!」

 ここはエンパイア。商いで賑わうとある町の外れで、ぶつくさ文句を言う誰かがいる。
 人間をゆうに超える巨体。隆々とした体躯。全身を覆う毛皮。丸いお耳とつぶらな瞳。
 なんとも可愛らしい――もとい獰猛なその生き物を、人は「もりのくまさん」と呼ぶ。

「しかもこのような些事に私を駆り出すなど、迷惑千万だ。戦闘など下等生物共に任せておけば良いものを」

 しかし今、くまさんの口を借りて喋っているのは、くまに取り憑いた別の存在だった。
 その名を『侵略渡来人』コルテス。かつてオブリビオン・フォーミュラ『織田信長』の配下としてエンパイアを危機に陥れた魔軍将の一人――傲慢なる生粋の侵略者であった。
 その魔軍将も今は猟書家の操る秘術『超・魔軍転生』によって、凡百のオブリビオンに憑装され配下とされる身。プライドの高い彼は当然ながらこの状態が非常に不満だった。

「まあいい。クルセイダーの洗脳ユーベルコードさえ発動すれば、我々は戦うまでもなく勝利する。私はあと数十日ここで待っていればいいのだからな。あの町の連中が全て無力化された暁には、大した宝も無さそうだが、住民を皆殺しにして憂さを晴らすとするか」

 ぺらぺらとやたらと大きい独り言を呟きながら、コルテスの憑装した熊はふてぶてしい態度でもしゃりと鮭を食う。まだ一度も合戦に出ていないのに、勝利を確信した様子だ。
 彼を憑装させた張本人――猟書家『ブラザー・アポストロス』の洗脳は今も密かに町を侵蝕している。誰かに気付かれさえしなければ、確かに彼らの勝利は揺るぎないだろう。

(……こりゃあ、大変なことだわい。早くお上に報告せんと)

 ――そう、誰かに気付かれさえしなければ。
 たまたまコルテスの独り言を物陰から聞いていた1人の破戒僧。彼の存在がこの戦いの行方を大きく変える事を、コルテスも、ブラザー・アポストロスも、まだ知らなかった。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「サムライエンパイアを侵略する猟書家『ブラザー・アポストロス』が、魔軍将『コルテス』を憑装したオブリビオンの大軍勢を率いて、とある町を殲滅しようとしています」
 8月の迷宮災厄戦以来行方を眩ましてきた謎の勢力『猟書家』は、天空に不気味な「骸の月」を掲げ、ついに本格的な世界侵略を開始した。オブリビオン・フォーミュラが討たれ、新たなオブリビオンが生まれなくなった世界で、再び猟兵の力が求められている。

「サムライエンパイアにおける猟書家の首魁『クルセイダー』の目的は『江戸幕府の転覆』。今回のブラザー・アポストロスの進軍もそのための行動のようです」
 標的とされた町は商業で賑わう豊かな大きな町で、ここが陥落すれば多くの人命が失われるだけでなく、経済的なダメージも深刻なものになる。何としても阻止しなければならないが――敵軍の動向を見たところ、すぐにでもこの町を陥とそうという様子ではない。
「クルセイダーの配下はかつて織田信長が用いた秘術『魔軍転生』の強化版『超・魔軍転生』によって、エンパイアウォーで死んだ信長の配下――魔軍将の魂を自軍の兵士に憑依させています。そのため戦力としては非常に強力なのですが」
 ブラザー・アポストロスが自軍に「憑装」させた魔軍将とは『侵略渡来人』コルテス。
 エンパイアの人間を同等の存在どころか知的生物とすら認めず、略奪と虐殺の対象としか見ていない生粋の侵略者である。だがその傲慢さが仇となり、長く実戦から離れすぎた彼は、猟兵と対峙した時には「戦闘の仕方を忘れて」いるほどの戦下手と化していた。

「コルテスの傲慢さと戦下手は憑装されたオブリビオンにも受け継がれてしまっています。正面きって戦えば強いことは強いのですが……はっきり言えばマヌケの群れです」
 彼らは敵を舐め腐って完全に油断しているので、奇襲や計略の類に非常に弱い。どんな罠にも面白いくらい引っかかるし、連携も取れず、"軍"としての脅威はなきに等しい。
 敵将もそれは承知しているらしく、武力で町を攻めるよりも他の作戦を考えたようだ。
「どうやらブラザー・アポストロスは遅効性の『洗脳ユーベルコード』を操れるらしく、数十日かけて町の住人を全員洗脳して無力化した後、皆殺しにする計画を立てています」
 オブリビオンらしい悪辣な作戦だが、これも盲点はあった。町外れで暮らしていた一人の破戒僧が、洗脳ユーベルコードの影響を免れて、アポストロス軍の計画を知ったのだ。

「今回、いち早く事態を把握できたのは、この破戒僧の方のおかげです。グリモアの予知が来るのを待っていたら、町は手遅れの状態になっていたかもしれません」
 敵の作戦が分かっているなら話は早い。報告をくれた破戒僧と共にコルテスが憑装したオブリビオン軍を撃破し、洗脳の効果が現れる前にブラザー・アポストロスを倒すのだ。
「戦場はおそらく町中となります。先程述べたとおり敵は非常に戦下手なので、入り組んだ道や建物などの地形を利用しながら戦えば、おそらく簡単に圧勝できると思います」
 とはいえ戦闘能力自体は非常に高いので無策での戦闘は推奨されない。また、略奪の対象でしかない町や人間に配慮するような輩でもないので、その辺りの警戒は必要だろう。
「ちなみにブラザー・アポストロス本人は憑装を行っていません。どうやら猟書家の力に制限がかかるらしく、ならば戦下手のコルテスの力を借りても無意味という事でしょう」
 戦下手で傲慢なコルテスの性質を受け継いだオブリビオン達が、辛うじて軍としての体裁を保っているのは彼の手腕あってこそ。言い換えれば彼さえ倒せれば残った敵は完全な烏合の衆となり、後はたやすく全ての軍勢を叩き潰せるだろう。

「この戦に勝てば町を救えるだけでなく、クルセイダーの計画を挫く一歩にもなります」
 猟書家達は現在、骸の月によって現世の月を侵食し、新たなオブリビオン・フォーミュラに進化する儀式魔術【Q】を実行中だ。猟書家の作戦を阻止するのはこの儀式を阻害することにも繋がり、いずれはクルセイダーに決戦を挑むこともできるだろう。
「サムライエンパイアに再び平和をもたらすために、どうか皆様の力をお貸し下さい」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、エンパイアへの道を開く。
 泰平の世を覆さんとする者との、サムライエンパイアの命運をかけた戦いの幕が開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はサムライエンパイアを侵略する猟書家「ブラザー・アポストロス」の軍勢を討ち破り、町を守るのが目的になります。

 一章は魔軍将「コルテス」を憑装した「もりのくまさん」の大軍勢との戦いです。
 1体1体が非常に高い戦闘力を誇りますが、戦下手で傲慢なコルテスの性質がモロに出ているため、こちらの作戦には簡単に引っかかります。戦場は町の中になるので、うまく地形を利用して戦えば圧倒できるでしょう。

 二章は敵将である猟書家『ブラザー・アポストロス』との決戦です。
 遅効性の洗脳ユーベルコードによって町人の支配を企んでいますが、正面きっての戦闘力も高いです。彼さえ撃破できれば残っていた軍勢も瓦解するので、どうか全力で挑んでいただければ幸いです。

 本シナリオは二章構成となり、全章共通で下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……破戒僧と協力して戦う。

 猟兵に町の危機を伝えてくれた彼は、戦闘力では猟兵には及びませんが、ブラザー・アポストロスの洗脳も効かなかったほどの強い精神力を持ち、戦場となる町の地理に詳しいです。地形を活かした戦いをする上では有利に働くでしょう。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『もりのくまさん』

POW   :    もぐもぐたいむ
戦闘中に食べた【鮭 】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    たべちゃうぞ! 
【ある日、森から 】【現れた熊が】【かわいい顔に似合わぬ鋭い爪の斬擊】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    みんなあつまれー!
【くま 】の霊を召喚する。これは【くまぱんち】や【くまかみつき】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大崎・玉恵
絡め手、計略の類じゃな。戦は久しいが、年季を見せる時がきたようじゃ。

【化術】にて身なりの良い娘に化け熊から逃げる。金持ちの娘と見えれば略奪対象と見なすじゃろう。これ即ち、賊の目の前に富をぶら下げた【誘惑】に他ならぬ。実際に金がそこにあるわけではないがのう。

【誘惑】に乗ったならば、【傾国・酔生夢死】にかけ町の広場、空き地に誘い込む。酔生夢死の幻術で、奴らにはそこに金持ちの屋敷があるように見えるはずじゃ。
そこには予め、わしに変身させた【形代】に【破魔】【焼却】の【呪詛】を込めた【霊符】を設置させておる。誘い込んだ熊共を纏めて焼いてやるかのう。
熊の筋力は驚異じゃが、こうしてしまえば他愛ないものじゃ。



「絡め手、計略の類じゃな。戦は久しいが、年季を見せる時がきたようじゃ」
 しゃなり、と。どこか艶やかな身の振る舞いでとある町外れにやって来たのは大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)。一見すれば少女のように若々しく、しかし面差しと言葉遣いには老獪さを滲ませた彼女は、霊符をすっと額に当てて変化の術を唱える。
「む……あの娘、この町の者か」
 町外れで待機していた「もりのくまさん」もとい、憑装された魔軍将コルテスの目に映ったのは、身なりの良い娘に化けた玉恵の姿だった。一目で気立てのいい彼女をこの町の武家か豪商か、どこぞの金持ちの娘と判断した彼らは侵略者としての本性を露わにする。

「まずはあの娘をこの町で得る最初の宝としよう」
「まだ洗脳は完了していないが、なに、遅かれ早かれの差だ」
 略奪の対象を前にした熊は目の色を変えてのしのしと迫り、それを見た娘は血相を変えて逃げ出す。無論それは玉恵の演技――賊の目の前に富をぶら下げた誘惑に他ならない。
(実際に金がそこにあるわけではないがのう)
 誘惑に乗った熊の群れは、玉恵を追って町中にまで入り込んでくる。一頭が堰を切れば残った者らも歯止めは効かず、敵将「ブラザー・アポストロス」にとっては不本意であろうが、かくしてなし崩しに戦端は開かれてしまったのだった。

「所詮、生とは泡沫よ。享楽にふけるがよい」
 華麗な変化による誘惑を披露した玉恵は、術中に嵌った敵軍を【傾国・酔生夢死】にかける。ふわりと香のような甘い匂いが立ち込めたかと思えば、熊コルテスの視界には目も眩むほどに立派な御殿が映っていた。
「ほう、あれがこの娘の屋敷か」
「さぞや多くの財宝を溜め込んでいるに違いない」
 それが玉恵の術による幻だとも知らず、彼らは【みんなあつまれー!】と熊仲間を喚び寄せ、ドドドドドと大挙して屋敷に押し寄せる。実際のその場所はただ広いだけの空き地であり、予めこの町の地形を把握していた玉恵による、熊狩りの罠が仕掛けられていた。

「こうも簡単に引っ掛かってくれると張り合いがないのう」
 広場に収まるギリギリの数を誘い込んだところで、玉恵は変化を解き妖狐の姿に戻る。
 果たして熊コルテスをそこで待っていたのは金銀財宝などではなく、玉恵そっくりの姿に変身した「形代」に設置させた霊符の罠だった。彼女が合図を下すと符は一斉に破魔の呪炎を放ち、邪悪なる輩共を真っ赤な帳で囲い込む。
「なっ?! なんだこれはっ!」
 状況把握もままならぬまま、気付けば大炎上の只中にいた熊共は慌てふためくが、もう遅い。火の手はあっという間に誘い込まれた敵に襲いかかり、一切容赦なく焼き焦がす。

「熊の筋力は驚異じゃが、こうしてしまえば他愛ないものじゃ」
 霊符の束で口元を隠し、くすくすと笑う玉恵。その眼差しの先で熊コルテスは本来の実力を発揮する機会もなく、破魔の呪いが込もる炎により魂ごと纏めて焼き殺されていた。
「お、おのれぇぇぇぇ……!!」
 未練がましい断末魔の叫びも火の粉が爆ぜる音にかき消され、燃え尽きる害獣の群れ。
 灰と化した彼らが風に吹き消されるのを見届けて、玉恵は炎と幻を消し去るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
見た目はかわいいのに、中身はあのコルテスくんなんだね。なんか、残念。

ちびアリスを召喚して、挑発して誘導しながら、死角から刀を持った別のちびアリスの攻撃をしかけるよ。
「こっちこっちー。」
「おにさんこちら」

他人に興味がない、コルテスくんには見分けなんかつかないだろうしね。翻弄してあげるよ。



「見た目はかわいいのに、中身はあのコルテスくんなんだね」
 もこもことした毛皮にふっくらした体躯、野獣ながらも愛嬌のある「もりのくまさん」を見て、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は呟く。生憎とそれに宿っているのはかつての大戦でも悪辣な手腕を披露した侵略渡来人・コルテスである。
「なんだ子供。宝の何たるかも知らんような原住民が私に近寄るな」
「……なんか、残念」
 見た目と中身の酷いギャップにがっかりしつつ、彼女は【アリスの世界】を発動する。
 現れるのはオリジナルの見た目をデフォルメして小さくした「ちびアリス」の群れ。総勢92体からなる彼女らはわちゃわちゃと熊コルテスの周りに集うと挑発を仕掛ける。

「こっちこっちー」
「おにさんこちら」
 ぴょんぴょんと妖精らしい無邪気な仕草と子供っぽい言葉で囃し立てるちびアリス達。
 スルーしておけば良いものを、傲慢なコルテスには「下等な原住民」にからかわれるのが我慢ならなかった。
「この餓鬼どもめ、此方が大人な対応をしてやればつけ上がりおって!」
「きゃー」
「おこったー」
 【たべちゃうぞ!】と言わんばかりに鋭い爪を振りかざして熊コルテスが暴れだすと、ちびアリス達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。煽り耐性ゼロな敵はその後を追って、まんまとアリスが望んだように、入り組んだ町の通りへ誘い込まれていくのだった。

「そろそろいいかな」
 分身と一緒になって敵を挑発しながら逃げていたアリスは、誘導が完了するとウィザードロッド型情報端末の先端をピカリと光らせる。すると、それを合図にして待機していたちびアリスの別働隊が、通りや建物の死角から熊コルテスの群れに襲いかかった。
「ええい、逃げ足の早い奴らだ……ぐぁっ?!」
「かくごー」
 飛びかかったちびアリス達の持った刀が、熊の背中に深々と突き刺さる。完全に不意を突かれたコルテスは悲鳴を上げてのたうち回り、真っ赤な血潮が大通りに広がっていく。

「やっちゃえー」
「このっ、調子に乗るな!」
 怒れる熊コルテス達が立ち上がると、奇襲を仕掛けたちびアリス達はさっと退き。目の色を変えて敵が追ってくれば、今度は別の死角からまた違うちびアリス達が襲いかかる。
「ぐぬぬ、どいつもこいつも同じ顔をしおって……本物はどこにいる?!」
 いくらコルテスでもこれが敵の分身であり策略だとようやく気付いたようだ。しかし気付いた所で彼らにはそれを攻略する知恵がない。あっちこっちから姿を見せるちびアリスに刀で攻撃され、反撃もままならずにてんてこ舞いだ。

「他人に興味がない、コルテスくんには見分けなんかつかないだろうしね。翻弄してあげるよ」
 ふふん、と得意げな笑顔を見せながら分身達を指揮するアリス。取るに足らない原住民の餓鬼だと思い込んだ者によって、熊コルテスはじりじりと戦力を削ぎ落とされていく。
 道端に散らばる熊の骸。悔しげな侵略渡来人の叫びが、戦場と化した町に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

見た目に騙されないようにしないと。

破戒僧から街の地形を教えてもらいしっかり覚える。
要点としては身を隠せてかつ狙撃ができるような場所。
逆に見渡しやすい場所も。
教えてもらった場所に身を隠し、柳葉飛刀によるマヒ・暗殺攻撃のUC無射で攻撃。
攻撃後はすぐさま移動し、射線から場所を割り出されるのを防ぐ。
移動闇をひそめる時は存在感を消し目立たず影に紛れるようにする。
以降移動しつつの攻撃を繰り返す。
見つかった時などの敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性で耐える。



「あれが今回の敵か」
 町内を一望できる高所に身を隠しながら、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は町に侵入した「もりのくまさん」の群れを確認する。外見は愛らしいものの、それは紛れもないオブリビオンであり、しかも猟書家の手によって邪悪な魔軍将コルテスの魂を憑装されている。
「見た目に騙されないようにしないと」
 正面きっての戦いは得策ではない。相手が肉弾戦を得意とする獣なら、こちらは間合いの外側――認識されない程の遠距離から仕掛ける。そのために彼はこの町に暮らす破戒僧から町内の地形を教えてもらい、事前にしっかりと頭に叩き込んでいた。

「こうして見てると、隙だらけな相手だな」
 今、瑞樹がいるのは教えてもらった狙撃地点の一つ。身を隠すための建築物があり、標的との射線も通っている。彼はこの地の利を活かして投擲用の「柳葉飛刀」を構えると、【無射】による遠距離狙撃を仕掛けた。
「穿つ!」
 ひょうと風を切って飛んでいった飛刀は、狙い過たず熊コルテスの頚椎に突き刺さる。
 致命的な一撃を受けた敵は「ぐぁ……?!」と断末魔を上げて崩れ落ちると、そのまま二度と起き上がってくることは無かった。

「!? 狙撃か!」
 仲間の死を目の当たりにした熊コルテス達は、今の今までその可能性に気付いてすらいなかった様子で愕然とする。市街地戦なら奇襲や狙撃を受ける事くらいは考慮すべきだろうに、まったく無警戒だった様子からも、彼らがいかに戦下手なのかが窺い知れる。
「これはもうただの的だな」
 とは言え瑞樹は油断せずに、一度狙撃を行うとすぐさま移動を始め、射線から場所を割り出されるのを防ぐ。その身に染み付いた暗殺者としての技量から、彼は一切の物音も立てず存在感を消して、影に紛れながら誰にも気付かれることなく別の狙撃地点に移った。

「くそっ、一体どこから撃たれている?!」
「下等生物の分際で小賢しい真似を!」
 位置を変えながら繰り返される狙撃に、熊コルテスはまんまと翻弄されていた。狙撃手の居場所を突き止めようとキョロキョロ辺りを見回す様子は格好の的であり、そうまでしても彼らは瑞樹の潜む場所はおろか、狙撃手が何人いるのかも分かっていない様だった。
「ぐはっ?!」
「がぁっ!!」
 何の成果も上げられぬまま、続々と数を減らしていく熊の群れ。軍としては既に甚大な被害を被っているが、傲慢で戦下手な彼らは退くということを知らない。しかしその執念だけは本物だったらしく、膨大な屍を積み上げた末に彼らは偶然にも狙撃手を見つけた。

「見つかったか」
 射殺した敵の一頭と目が合った。すぐさま殺到してくる敵を迎え撃つべく、瑞樹は右手に銘刀「胡」、左手にヤドリガミとしての本体である大振りなナイフ「黒鵺」を構える。
「楽に死ねると思うなよ、貴様!」
 これまで散々してやられた鬱憤を晴らすように、かわいい顔に似合わぬ鋭い爪を振りかざす大熊。これとまともに打ち合うのは愚者の選択だろう――第六感を研ぎ澄ませて攻撃の軌道を見切る。幸いにも敵の一撃は強力ではあってもひどく単調な、野獣の暴力だ。

「狙撃を封じただけで勝てると思うなよ」
「ぐぁッ?!」
 左手の黒鵺で爪を受け流し、がら空きになった胴体にカウンターの一閃。血飛沫と共に胡の刃が真っ赤に染まり、熊コルテスの口から悲鳴が漏れる。狙撃や投擲術も得手とするものの、ナイフのヤドリガミである瑞樹の本領は白兵戦にこそあった。
(と言ってもやはり、このまま戦うのは得策じゃないか)
 一閃を受けた熊は深手を負ったもののまだ生きている。大分数を減らしたとはいえ、敵軍はまだ多勢であり、仮にも魔軍将の魂を憑装した熊は一頭一頭が強大な戦闘力を誇る。
 殴り合いに拘泥して痛い目を見る前にと、瑞樹は敵を怯ませた隙にさっとその場から離脱し、再び狙撃体勢に戻るために身を隠すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
戦闘力の高い相手と正面切って戦うつもりはない。
搦め手や奇襲は戦術の基本だ。

移動は全て建物の屋根を伝って行う。
拳銃での一撃離脱戦法――ヒット&アウェイだ。

気配と物音は極限まで消そう。
時折、敢えて足音を鳴らして反響波から地形を把握。

五感と直観は人を外れた領域で優れている。
視えるもの、聴こえるもの、感じるもの、全てを糧として一つの戦術を組み立てる。

狙撃は外さない。
脆弱箇所や構造的弱点を見切れば優先的に狙い、一撃で仕留められずとも深追いはしない。

狩人はこちらだ。
緩慢と俊敏の相反する動作を使い分けて翻弄しよう。

仮に屋根に登ろうとするのならそれこそ隙だらけというもの。
戦術を一から学び直せ。



「戦闘力の高い相手と正面切って戦うつもりはない。搦め手や奇襲は戦術の基本だ」
 そう呟きながら建物の屋根伝いに町を駆けるは緋翠・華乃音(終奏の蝶・f03169)。
 かなりの速度を出しているにも関わらず、彼の足元からほとんど音は立たず。影法師のような気配の薄さで、誰にも見咎められることなく疾走し、町内に侵入した敵軍を探す。
「――あそこか」
 およそ戦術というものを考えず、略奪と破壊のみを目的とした群獣を見つけるのは容易だった。目標を捉えた青年はホルスターから一挺の拳銃を抜くと、速度を一段と上げた。

(ここは仕掛けるにはいい場所だ)
 華乃音はかつんと一度だけ、敢えて足音を鳴らす。それだけで人外の域に達した五感と直感を有する彼は、反響波から周辺の地形を把握できた。それだけではなく視えるもの、聴こえるもの、感じるもの、全てを糧として、組み立てるのは一つの戦術。
(一撃離脱戦法――ヒット&アウェイだ)
 疾風の如く敵の背後を取り、瞬時に狙いをつけて撃つ。静けさと道理を極めた彼の戦闘技能から成る【終の静寂】の一撃には一切の予兆も隙もなく、ゆえに回避は極めて困難。
「がっ!?」
 後頭部に銃弾を喰らって、初めて標的は奇襲に気付き、上がった悲鳴が仲間に危機を報せる。だがその時には華乃音はとっくに、彼らの爪の届かない距離まで遠ざかっていた。

(一撃で仕留められずとも深追いはしない)
 初撃を命中させても華乃音は冷静かつ慎重に、拳銃によるヒット&アウェイに徹する。
 どれだけ高い戦闘力を誇ろうがベースが熊――獣なら生物としての脆弱箇所や構造的弱点はある。そこを優先的に狙い弾丸を撃ち込み続ければ、タフな相手もいずれは斃れる。
「ごふ……っ」
 短時間に何発もの銃撃を受けた熊コルテスは、全身から鮮血を噴き出して崩れ落ちた。
 残った敵は仲間を殺されたことでいよいよ怒り出すが、爪を振り上げるよりも速く離脱する相手に反撃する術を、彼らは持ち合わせていなかった。

「狩人はこちらだ」
 華乃音は俊敏な疾風の動きだけでなく、時に陽炎のような緩慢な動作も使い分けることで、敵を一定の速さに慣れさせないよう翻弄する。彼は既に熊コルテスの行動を正確に予測しており、次の動きを読んだ上で機先を制し、避けようのない銃撃を叩き込んでいく。
「ぐぬぬぬぬ……やってくれるな!」
 完全に手玉に取られている現状に、いきり立つ熊コルテス達。頭に血が上った彼らはどうにかして華乃音を捕まえようと、でかい図体でよじよじと屋根に登ろうとするが――。

「戦術を一から学び直せ」
 のそりと屋根の上に顔を出した熊を出迎えたのは、辛辣な言葉と無慈悲な鉛玉だった。
 熊という動物は巨体の割に機敏で、木登りなども得意である。だがそれはそれとして屋根に登ろうとしている間は両手も塞がり動きも止まり、それこそ隙だらけというもの。
「し、しまった……ぐはっ?!」
 実際に痛い目を見るまで己の迂闊さに気付かない、戦い方を忘却したレベルの戦下手。
 驕り高ぶる侵略者はその愚かさゆえに醜態を晒し、狩人の手で仕留められるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
『侵略渡来人』コルテス…
かの戦争では会わず終いだったが、このような形で遭遇するとはな。

事前に破戒僧に鮭を集めてもらい、その鮭に【物を隠す】要領で罠を仕込む。
そして自分が【おびき寄せ】た敵の目前に偶然を装いぶちまけてもらう。
噂通りのマヌケならばこれ幸いと口にするだろう。

タイミングを見計らい鮭に仕込んだ罠ことUC【燃ゆる貴き血鉛】起動。
内部から【焼却】し、息が残っているようなら大剣で追撃だ。

【だまし討ち】?生憎、当方の騎士道は勝利(じつり)優先だ。
確かに、食物を無碍にする点では下賤な策だが…
戦争の残り滓には似合いの冥土の土産だ、持って逝くがいい。



「『侵略渡来人』コルテス……かの戦争では会わず終いだったが、このような形で遭遇するとはな」
 数奇な巡り合わせ、あるいは敵の往生際の悪さに、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は独り言ちる。直接対峙した事はなくとも、かつてのエンパイアウォーにおいて特に悪辣かつ傲慢で知られた魔軍将の事は、彼も伝え聞いていた。
「おおーい、猟兵さんや。よう来て下さったな」
 そこに声をかけつつやって来たのは、僧衣に身を包んだ破戒僧。猟書家「ブラザー・アポストロス」の企みをいち早く猟兵に報せてくれた彼は今、何やら大荷物を抱えていた。

「言われた通りに持ってきたが、これで良かったんか?」
「ああ、感謝する」
 ルパートに破戒僧が集めてもらったのは、熊の好物である鮭だった。商業で賑わうこの町の地理に詳しい彼は、どこに行けば欲しい品物が手に入るかもよく知っていたようだ。街中の店から買い漁られたと思しき大量の鮭に、ルパートは物を隠す要領で罠を仕込む。
「後は自分が敵をおびき寄せるので、その目前に偶然を装いこれをぶちまけて欲しい」
「そのくらいならお安い御用よ。折角の鮭をあんなのにくれてやるのは勿体ないがね」
 任せておきなと胸を叩くと、破戒僧の男は仕込みの済んだ鮭を抱えて物陰に身を隠す。
 それを確認するとルパートは鉛滴る大剣を担ぎ上げ、敢えて正面から敵に姿を現した。

「む? なんだその格好は。下等生物風情が騎士の真似事か」
「そんな猿真似が我々に通用しない事を教えてやろう!」
 のこのこと出てきた黒騎士の鎧のヤドリガミに対し、熊に憑装したコルテス達は傲慢さを露わにして襲いかかる。言動はいかにも驕り高ぶった愚者のそれだが、その戦闘力だけは極めて高い。正面から立ち会えば歴戦の猟兵であるルパートとて危ういだろうが――。
「おおっと、ごめんよっ!」
 彼という囮に引きつけられた敵の前で、通りがかりの体を装った破戒僧が抱えていた荷物を放り出す。弾みで蓋の開いた荷物の中から、まだ新鮮な大量の鮭が地面に散らばる。

(噂通りのマヌケならばこれ幸いと口にするだろう)
 伝聞で知るコルテスの性格と、憑装された「もりのくまさん」の食性から立てた作戦。
 果たしてその成否は――目前のルパートを放置して鮭に飛びついた熊コルテスの群れを見れば、一目瞭然だった。
「むむ、この鮭は……美味い!」
「私の故郷の美食に比べれば劣るが、素晴らしい!」
 他のものには脇目も振らずに両手で鮭を抱え、もしゃりとかぶり付く。かくして始まる【もぐもぐたいむ】は熊の全身の細胞を活性化させ、戦闘力をさらに増加させるが――言うまでもないほど当然のことだが、食事中の熊コルテスは完全に無防備な状態であった。

「噂通り、いや聞きしに勝るマヌケぶりだな」
 愚か者共が何の迷いもなく撒き餌に食いついたタイミングを見計らって、ルパートは仕込んだ罠を起動させる。熊コルテスの腹に収まった鮭の中にある【燃ゆる貴き血鉛】を。
「ふう、美味かった……っ、なんだ、腹の中が熱い……っ?!」
 発火した血鉛は青い炎を上げて敵を体内から焼却する。臓腑を焼かれる激痛に熊コルテス達は悲鳴を上げてのたうち回り、口から火の粉を吐いて悶え苦しむ。なまじタフである分、即死することも出来なかったのが彼らにとっては不幸になった。

「しょ、食糧に毒を仕込んでだまし討ちするとは、なんと卑怯な……!」
「だまし討ち? 生憎、当方の騎士道は勝利(じつり)優先だ」
 悔し紛れの文句を言う熊コルテスを見下ろして、ルパートは淡々とした調子で応じる。
 その手に構えた大剣も、滴る鉛が発する蒼炎を纏い。巨大な火柱のように燃え盛るそれを、実直なる黒騎士はまだ息のある敵に向けて振りかぶる。
「確かに、食物を無碍にする点では下賤な策だが……戦争の残り滓には似合いの冥土の土産だ、持って逝くがいい」
「ま、待……っ!!!!」
 コルテスが何かを言うよりも早く、振り下ろされた一撃が熊の身体を完全に焼却する。
 憑装されし侵略渡来人の魂は断末魔の絶叫のみを遺して、再び骸の海に還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
戦下手に加えて運にも見放されているとは
敵ながら憐れとさえ思ってしまいます
もちろん、この僥倖を見逃すつもりは毛頭ありませんが
作戦としては敵を誘い出し不意打ちで各個撃破する
シンプルですがこれでいきましょう
まずは破戒僧の方に、うまく敵を分断できるよう人気の少ない入り組んだ路地を教えてもらい、そこに敵を誘い出す
誘い出す方法は...やはりダンスですね
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
自惚れ屋には心地良い栄華のリズムです
このダンスで『誘惑』し『催眠術』で幻の壁を作るなどして敵の集団を分断し
UC【蠱の宴】で動きを封じた後、破戒僧の方と不意打ちを仕掛けましょう



「戦下手に加えて運にも見放されているとは、敵ながら憐れとさえ思ってしまいます」
 各方面で猟兵の奇策に嵌まる「もりのくまさん」ことコルテスの無様な有様を、播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)はいっそ不憫に感じていた。不本意な獣の肉体を与えられ、本来の実力を1ミリも発揮できずに敗退するのは、確かに憐れではあろう。
「もちろん、この僥倖を見逃すつもりは毛頭ありませんが」
 これもまた、かの侵略渡来人が生前に為した所業の報いとも言える。すとんと様子見から町中に降り立った少女は、さっそく自分も熊コルテス討伐のための作戦を練り始める。

「作戦としては敵を誘い出し不意打ちで各個撃破する。シンプルですがこれでいきましょう」
「おうともさ。一頭ずつ釣りだして熊狩りってわけさな?」
 クロリアはまず、町の土地勘に明るい破戒僧の助けを借りて、敵の分断にうってつけの人気の少ない入り組んだ路地にやって来る。ここに敵を誘い込めば有利に戦えるだろう。
「誘い出す方法は……やはりダンスですね」
 舞台をここと定めれば、目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすとダンスを始める。
 奏でるのは蒼天に輝く太陽と、陽光に照らされ輝く大地を表現した「絢爛の旋律」。クロリアの技量によって自然の雄大さを見事に現した舞は、傲慢な侵略者の心にすら響く。

(自惚れ屋には心地良い栄華のリズムです)
 旋律に合わせて美しく舞うクロリアに見惚れるように、あるいは聞き惚れるように、熊コルテスの群れが集まってくる。絢爛の旋律は彼らを入り組んだ路地にまんまと誘い込むだけでなく、一種の催眠術のように幻覚を見せ、ありもしない壁や障害物を作り上げる。
「むむ……所詮は下等生物のやることだが、なかなか悪くはない」
 あくまで上から目線だが、当人としては最大限の賛辞を口にしつつ。熊コルテス達は踊り手の姿を求めて路地をうろつき回り、幻の壁に阻まれ、いつしかバラバラに分断され。
 危険な獣の集団が孤立した個となった頃合いを見てクロリアは【蠱の宴】を発動する。

「楽しんでますか? 私は楽しいです。リアです」
「む……なん……だ……??」
 まるで時の流れが遅くなったように、熊コルテスの動きが鈍る。傲慢さゆえにクロリアの旋律を素直に楽しめない連中は、彼女のユーベルコードの術中にまんまと嵌っていた。
 孤立無援の状態で動きまで封じたとなれば、どんなに強大な敵だろうともはや恐るるに足らず。この絶好のチャンスを逃すことなく、クロリアと破戒僧は不意打ちを仕掛けた。
「こんにちは、そしてさようなら」
「とっとと冥土に帰ぇりな!」
 旋律が生み出す衝撃波と、鍛えられた僧侶の剛拳が、熊と憑装された魂を打ちのめす。
 反撃の暇もなく「ぐはぁっ?!」と悲鳴を上げて倒れ伏す熊コルテス。無防備な状態で受けた攻撃はクリーンヒットだったようで、もはや起き上がってくる様子は無い。

「この調子でいきましょう」
「おうともさ!」
 クロリアと破戒僧はそれからも路地を駆けて、旋律に囚われた敵を各個撃破していく。
 栄華のリズムに誘惑された侵略者には、かくして残らず落日がもたらされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨナルデ・パズトーリ
ははは!此れは又嗤うしかないのう!
他者を猿と蔑んだ貴様が、よりによって妾の国では貴様らの末裔により滅ぼされた熊に宿るか!

愉快にも程があるわ!
獣の後付け装備にまで堕ちた貴様は獣以下ぞ?

ははは、はらがよじれるのう?

破戒僧には熊と言う大型獣が通りにくい場所等の地形の確認
UC発動
その上で上記の煽りを言い嗤いながら空を飛びつつ熊が動きにくい場所に追い込む様に『地形を利用』
其のまま逃げられない様にコルテスを嗤い挑発しながら空から敵の攻撃対策も兼ね霊を『浄化』する『神罰』の雷『属性攻撃』『全力魔法』の『乱れ討ち』を『範囲攻撃』で『蹂躙』
跳躍し攻撃してくるなら『野生の勘』で『見切り』『カウンター』で『神罰』



「ははは! 此れは又嗤うしかないのう! 他者を猿と蔑んだ貴様が、よりによって妾の国では貴様らの末裔により滅ぼされた熊に宿るか!」
 獣の肉体に憑装されたコルテスの魂を指差し、ヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)は呵々大笑する。彼女はエンパイアウォーにてかの魔軍将と特に強い因縁を持った猟兵の1人――と言うのもコルテスがヨナルデの好敵手にして戦友、兄にして伴侶と同じ名を持つ神を、乗騎として辱めていたのが理由である。
「愉快にも程があるわ! 獣の後付け装備にまで堕ちた貴様は獣以下ぞ?」
「貴様……覚えているぞ、その顔! ええい、なぜケツァルコアトルはいないのだ!」
 どうやらコルテスの方も、自身を16度に渡り打倒した相手の事は忘れようがなかったと見える。だが隷属の呪いにて服従させていた神の乗騎はここにはなく、魂一つで畜生に憑装されている現状。その無様を嘲笑われた男の目に、怒りと屈辱の炎が燃え上がる。

「貴様だけは、この手で八つ裂きにしてやらんと気が済まん!!」
「その手でか? ずいぶんと可愛らしい肉球が付いておるのう!」
 怒れる熊コルテスを散々に煽りたてつつ、ヨナルデは【第一之太陽再臨】を発動。ジャガーを模した黒曜石の鎧に身を包むと、血と骨で構成された翼を広げて宙に舞い上がる。
 ここまで馬鹿にされて我慢のできる輩ではない。熊コルテスは【みんなあつまれー!】と仲間の熊を喚び集めると、大軍となってヨナルデ1人を我武者羅に追いかけ始めた。
「ははは、はらがよじれるのう?」
 熊の大軍に追われながら、ジャガーの女神は相変わらず嗤う。こうも自分の思惑通りに敵が挑発に乗ってくれば、笑いも止まらないだろう。ここまで一連の言動は全て計算尽く――こちらにとって有利な、そして敵にとって不利な地形へと誘導するためのものだ。

「こいつめ、降りてこい……おい押すな!」
「貴様こそ押すな! ここは狭いのだ!」
 ヨナルデを追って熊コルテス達が誘い込まれたのは、狭く細まった町の裏路地だった。
 熊と言う大型獣が通りにくい場所はどこか、彼女は事前に破戒僧に確認していたのだ。
 こんな所に大挙して押し寄せれば、熊の体では戦うどころか身動きすらままなるまい。
「どうやら愚かさは変わっておらんようだ。いや、前よりも悪くなったか?」
 まんまと罠にかかった獣共を嗤いながら、黒曜石の戦斧を手に攻勢に転じるヨナルデ。
 ここからは狩猟の――否、蹂躙の時間だ。彼女がさっと斧を振り上げると空がにわかにかき曇り、稲光と共に神罰の雷が敵軍に降り注いだ。

「ぐおおおおおっ?!」
「ぎゃうっ?!」
 落雷に打たれた熊コルテスは獣そのものの悲鳴を上げて、無様に地べたを転げ回った。
 浄化の力を宿したヨナルデの雷は、連中に召喚された熊の霊を同時に消し去っていく。
 爪や牙が届かない高所からの一方的な範囲攻撃。狭い路地に自分から押し込められてしまった熊コルテスに、この状況を打開する術はない。
「どうした、その程度か? まるで張り合いがないのう」
「ぐぬぬぬぬ、言わせておけば……!!」
 だが、ここまで嗤われ挑発されておいて逃げるという選択肢はコルテスには無かった。
 一度退却して体勢を立て直せばまだ勝機はあっただろうに。その程度も判断もつかない傲慢な戦下手は、空中のヨナルデに向かって遮二無二飛び掛かる。

「愚か者め」
 ヨナルデは研ぎ澄まされた野生の勘で敵の跳躍のタイミングを見切ると、その攻撃の軌道上に刃を「置く」ように黒曜石の戦斧を振るう。その小柄さに見合わぬ膂力をもって。
「今一度目に焼き付けるが良い! 我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者! 民と共に在った嘗ての妾の猛き力を!」
 高らかなる名乗りと共に放たれた一撃は、飛び掛かる大熊の胴体を見事に断ち斬った。
 泣き別れとなった上下半身の断面から血の雨が降り注ぎ、地上の熊を真っ赤に濡らす。
 それから先の事は、語るに及ぶまい。大いなる女神の怒りに触れた愚かな侵略者は、今再び骸の海に叩き返される事となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
~森のかびぱん~

作詞:カビ
作曲:パン

※破戒僧はあいのて協力

あるひ もりの なか
かびぱんに であった
スタコラ サッサッサのサ
スタコラ サッサッサのサ

かびぱんの いうことにゃ
くまさん おにげなさ
スタコラ サッサッサのサ
スタコラ サッサッサのサ

ところが かびぱんが
あとから おってくる
スタコラ サッサッサのサ
スタコラ サッサッサのサ

くまさん おまちなさい
ちょっと きいてみなさい
わたしの しんきょくを
ちいさな りさいたる

それでは くまさん
わたし うたいます

ラララ↑ ラララララ↓↓
(バシバシ バシバシバシ)

ラララ↓ ラララララ↑↑
ラララ↓ ラララララ↑↓
(バシバシ バシバシバシ)

ラララ← ラララララ→←



「むむむ。このような下等生物に遅れを取るとは、"私"ともあろうものが情けない」
 秘術『超・魔軍転生』により複製・憑装されたコルテスの魂のひとつは、同じ境遇にある魂達が猟兵の策によりやられていく様を、熊の目を通じて苦々しい気持ちで見ていた。
「このような畜生ではなく、本来の身体であれば遅れなど取らぬものを!」
 自分の戦下手を棚に上げて、勝てない理由をあくまで自分以外の要因に求める。
 そういった点でも彼はつくづく傲慢であり、救いようがないほどに愚かである。

 あるひ もりの なか
 かびぱんに であった
(ハードッコイショ)
 スタコラ サッサッサのサ
 スタコラ サッサッサのサ

「……む? 今なにか聞こえたか?」
 そんな熊コルテスの耳にふと届いたのは、町とは反対方向の森から聞こえる歌だった。
 いや、それを本当に歌と呼んでいいものか。メロディこそ正常だがテンポはめちゃくちゃで、所々で絶妙に外れた音程が不快感を煽る。控えめに言っても酷い、そのくせ妙に頭にこびりついて離れない、そんな悪夢のような音楽がこちらに近付いてくる。

 かびぱんの いうことにゃ
 くまさん おにげなさ
(ホイサッサァ)
 スタコラ サッサッサのサ
 スタコラ サッサッサのサ

 果たして森の中から現れたのは、聖杖をマイクのように持って熱唱するカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。お供には合いの手で協力する破戒僧もいる。
 これは彼女の新曲となる~森のかびぱん(作詞:カビ 作曲:パン)~。かの有名な動揺を元に大胆なアレンジを施した、子供が聞けば大号泣間違い無しの地獄級音楽である。
「な、なんだ貴様は? いや何でもいい、とにかくその歌をやめろ!」
 カビパンが近付くほど歌も大きくなり、それを聞く者の精神に及ぼす影響も悪化する。
 熊コルテス達は両手で耳を塞いで彼女から離れようとするが、そうは問屋が卸さない。

 ところが かびぱんが
 あとから おってくる
(ナーンテコッタイ!)
 スタコラ サッサッサのサ
 スタコラ サッサッサのサ

「くそっ、来るな、来るな!」
 歌いながらだというのに妙に走るのが早いカビパン。いや流石に平然とはいかないようで、ランニングに伴う呼吸の乱れや抑揚のブレが、ただでさえ酷い音痴に拍車をかける。
 どれだけしっかり耳を塞いでもその歌を完全にシャットアウトすることはできない。もうやめてくれと全コルテスが思う中、しかし彼女は無慈悲にもこう歌い上げるのだ。

 くまさん おまちなさい
 ちょっと きいてみなさい
 わたしの しんきょくを
 ちいさな りさいたる

「もう十分だ! もう十分だろう!?」
 どうか勘弁してくれと全力で止めるコルテス。その必死さはもはや懇願の域だったが、それで止まってくれるようなブレーキや安全装置は彼女には搭載されていないらしい。
 ここまでは前奏だったと言わんばかりに、本気の【カビパンリサイタル】が始まる。

 それでは くまさん
 わたし うたいます
(ソイヤ ソイヤ!)
 ラララ↑ ラララララ↓↓
(バシバシ バシバシバシ)

「ごふっ! がはっ! ごほっ?!」
 歌に合わせてリズミカルに、カビパンの振るうハリセンにしばき倒される熊コルテス。
 それはあらゆる奇跡を雲散霧消させる「女神のハリセン」――だがそんなもの以上に、地獄の音痴歌によって彼らが受けたダメージは深刻だった。

 ラララ↓ ラララララ↑↑
 ラララ↓ ラララララ↑↓
(バシバシ バシバシバシ)

「も、もう、ダメだ……」
 コルテスの精神が耐えきれなくなった時、「もりのくまさん」の憑装は解除され、魂は骸の海へと還っていく。カビパンの歌とハリセンが猟書家の秘術を破った瞬間であった。
 それは割りかし偉業と言ってもいいのかもしれないが、当のカビパンはそんなことは気にもせず、破戒僧の合いの手にあわせてノリノリでリサイタルを続けていた。

 ラララ← ラララララ→←

 ――やがて彼女が飽きるまでに、一体何頭の熊コルテスが地獄に召されるのか。
 そればっかりは、たとえお天道様でも、閻魔様でも、知る由もないことだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
戦とは相手の弱みを突いてこそ
コルテスの性質という幸運に感謝しつつ街を解放いたしましょう

破戒僧の方に簡易地図を書いて頂きその映像を記録
地の利を得ます(情報収集+地形の利用)
あとは…この杭(UC)をある地点の四隅に仕掛けて頂けますか?

先ずは一当て…
確かに強い! 囲まれれば…

スラスターでの●推力移動で滑走、敵群を引き連れ人気が無い道を移動
振り返り、適宜鮭を格納銃器で撃ち抜き挑発

敵に背を向けるのは騎士として思うところありますが…
人々を護れるならば下らぬ拘りですね

広場に到着

私も覚悟を決めました
逃げも隠れもいたしません

…しゃがみはしますが

熊達の首の高さの四隅に仕掛けたUC起動
防御障壁を刃として展開し一掃



「戦とは相手の弱みを突いてこそ」
 戦争における摂理のひとつを語りながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は町に降り立つ。敵は秘術『超・魔軍転生』により全ての兵士が魔軍将の力を得た猟書家軍、尋常の戦いを挑めば脅威――ならばこそ搦手にて確実に弱みを突く。
「コルテスの性質という幸運に感謝しつつ街を解放いたしましょう」
 もしもブラザー・アポストロスが憑装させた魔軍将が別の者であれば、今回の戦法はまったく異なっていただろう。根本にして最大の敵失を見逃すほど機械騎士は甘くはない。

「時間がなかったんで大雑把になっちまったが、これでええかい?」
「ええ、感謝致します」
 戦闘が始まる前に、トリテレイアは破戒僧に頼んでこの町の地図を書いて貰っていた。
 素人の手書きによる簡易なものだが、主要な通りから細かい町並みの構造まで、欲していた情報は一通り書き込まれており、彼はそれを映像データとしてメモリーに記録する。
「あとは……この杭をある地点の四隅に仕掛けて頂けますか?」
「ほいよ、お安い御用さね」
 地の利を得た騎士は【多機能型電磁障壁発振器射出ユニット】から杭状の発振器を取り出して破戒僧に手渡す。それを持って地図のある地点を示されると、彼はどんと胸を叩いて仕込みを引き受けてくれた。

「これで準備は完了。先ずは一当て……」
 全ての仕込みが終わると、トリテレイアは町に乗り込んできた敵軍に攻撃を仕掛ける。
 正面から最速で肉迫しつつ儀礼用長剣をひと振り。雑兵ならば蹴散らせたであろうその一撃は、しかしコルテスを憑装した「もりのくまさん」の手でがしりと受け止められた。
「なんだ貴様は? カラクリ人形ごときが騎士の真似事か!」
 コルテス熊はもしゃもしゃと鮭を頬張りながら片手で騎士の剣を振り払うと、傲慢な物言いと共に反撃の爪牙を振るう。技巧も何もない獣そのものの動きだが、その膂力と速度は恐るべきものだ。

「確かに強い! 囲まれれば……」
 盾で受けた反撃の手応えから、敵の戦闘力を把握したトリテレイア。一対一ならまだしも、このレベルの敵が何十何百と群れを成して襲ってくれば流石に持ちこたえられない。
 そう判断した彼は脚部スラスターから推力を噴射して反転、予め記録した地図情報を元に、人気がない道を選びながら一時撤退に移行する。
「逃がすか!」
 当然ながら敵群は追いかけてくるが、むしろ追わせる事が彼の作戦のうち。滑るように地面を疾走しつつ、時折機体に格納された銃器で牽制を仕掛けるなど挑発も欠かさない。
 本体にダメージは軽微でも、常食している好物の鮭あたりを撃ち抜いてやれば――略奪と食事の邪魔をされたコルテス熊は怒りながら猛追してきた。

(敵に背を向けるのは騎士として思うところありますが……人々を護れるならば下らぬ拘りですね)
 自身が華々しく誉れ高く戦うよりも、機械仕掛けの騎士は護るべき者を常に優先する。
 敵群を引き連れてトリテレイアが到着したのは、町外れにある誰もいない広場だった。
「私も覚悟を決めました。逃げも隠れもいたしません」
「ほほう、ようやくこの私に破壊される覚悟ができたか!」
 騎士らしい堂々とした佇まいで剣と大盾を構える彼に、押し寄せるコルテス熊の群れ。
 多勢が展開できる広所では、どちらが有利かは自明の理。戦下手にもその程度の戦法は理解できるのか、勝利を確信した侵略者に対して――騎士はぽつりと一言、付け加える。

「……しゃがみはしますが」
「は?」

 すっと首の位置を下げるようにその場に屈んだ瞬間、仕掛けられていた罠が牙を剥く。
 広場の四隅に仕掛けられていたのは、事前に託していた発振器。四つの杭を起点とした電磁障壁は地面と水平に――ちょうど熊の首と同じ高さに展開するよう計算されていた。
「は―――っ?!」
 本来は防御のために活用される障壁は、巨大な刃となって敵群の首を纏めて刈り取る。
 トリテレイアのようにしゃがむ暇もなく、驚愕の顔のままコルテス熊の首が宙を舞う。

「排除完了です」
 機械騎士が障壁を解除し立ち上がった時、彼を追ってきた敵群は全て一掃されていた。
 広場に集った何十頭というコルテス熊は、ただの一太刀で骸を晒すことになったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
フン…随分と精力的だな
そうまでして欲しいか?カスどもが
指一本でも害を振りまくなら、徹底的に駆除する
全員滅ぶまで、何億回でも殺してやる

コルテス…よく覚えてる
確かに強かった。だが『強いだけだ』
ただ強いだけで格上ぶってる連中なんざ、何百何千も葬った
ニューロンの出来の違いを見せてやる
セット、『Territory』
この戦場では、あらゆる理不尽が起こりうる

まずは行き止まりに当たった一団に、後ろから追加の壁を精製して挟み、圧死させる
突然壁が飛び出して、進む一団を潰し
床が抜けて落ち、すかさず塞いで出られなくする
突然後ろにタレットが精製され、穴だらけにする
或いは──迷路が変化して猟兵が奇襲
出られるのは何匹かな?



「フン……随分と精力的だな。そうまでして欲しいか? カスどもが」
 破壊と略奪を愉しむために町に乗り込んできた敵に、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は嫌悪と侮蔑を隠さなかった。美学も誇りもまるで感じられない、ただ下劣な欲望を満たすだけの「畜生働き」を見過ごすつもりはない。
「指一本でも害を振りまくなら、徹底的に駆除する。全員滅ぶまで、何億回でも殺してやる」
「フン、この私を誰だと思っている。この身体でも貴様らごときに遅れを取るものか!」
 明らかな挑発も兼ねた抹殺宣言に、魔軍将コルテスが憑装した「もりのくまさん」達はいきり立った。傲慢に肥大化した彼のプライドは"下等生物"からの侮辱を看過できず、【みんなあつまれー!】と仲間を喚び寄せて、この不届者を圧殺せんとする。

「コルテス……よく覚えてる。確かに強かった。だが『強いだけだ』」
 ヴィクティムの脳裏に浮かぶのはエンパイアウォーでの交戦記録。幾つもの国々を滅ぼしてきたその手腕と実力は本物、『超・魔軍転生』によって魂のみが熊に憑装された現状でも、正面から戦えば苦戦は必至だろう――そう、あくまでも「正面から戦えば」。
「ただ強いだけで格上ぶってる連中なんざ、何百何千も葬った。ニューロンの出来の違いを見せてやる」
「知的生物ですらない貴様らが、私と知能の優劣を競うなど―――っ?!」
 以前とまるで変わらない傲慢な物言いは、最後まで続かなかった。ヴィクティムを八つ裂きにせんと襲いかかるコルテス熊の前に立ちはだかったのは、未知の材質でできた壁。
 それはあっという間に彼らの周りを取り囲みつつ、複雑怪奇な迷路を作り上げていく。

「セット、『Territory』」
 ヴィクティムのユーベルコードが構築した領域は彼の意のままに望む状況を作り出す。
 囚われの身となったコルテス熊達は慌てて脱出を図るが、連中が論理的な迷路の脱出法を知っているはずもなく、ただ当て所無く迷路の中をうろつき回るばかり。
「くそっ、行き止まりか!」
 熊の爪牙でもビクともしない壁を前にして、あるコルテスの一団は舌打ちしながら来た道を引き返そうとするが――後ろを向いた先に立ちはだかっていたのも、また壁だった。
「は? 待て、さっきまでこんな壁は無かったはずだ」
「一体どうなって……おい、この壁動いているぞ!」
 驚く連中の前で動き出した壁は、元からあった壁と挟み込むようにスペースを埋める。
 ぐしゃり、べきり、と肉や骨が潰れる音に紛れて、獣のような絶叫が響き――その場にいたコルテス熊は一頭残らず圧死した。

「なっ、何なのだこの迷路は……ぎゃっ!!」
「こんな所に落とし穴が……おい、ここから出せ!」
 それからもコルテス達の元には、自在に変化する『Territory』の脅威が襲いかかる。
 ある一団は迷路を進んでいる途中、床から飛び出してきた壁に圧し潰され。あるいは逆に床が抜けて落下し、直後に穴を塞がれて生き埋めになったコルテスもいた。
「この戦場では、あらゆる理不尽が起こりうる」
 ヴィクティムは迷路の外側から敵が七転八倒する様を眺めながら、休みなく妨害を仕掛け続ける。彼が義腕と一体化したサイバーデッキを操作すると、今度はコルテス達の後ろに突然タレットが精製され、小気味良い発砲音と共に標的を穴だらけにする。

「く、くそっ、出口はどこだ……!」
 次々と仲間を削られていく焦燥からコルテスの視野は狭まり、さらなる不注意を招く。
 そこに再び迷路がまた変化を始め――他の猟兵が戦っている戦場へと彼らを送り出す。
「ここは俺"達"の狩場だ。勘違いするなよ」
「なッ……!?」
 迷路の攻略にばかり気を取られていた敵は、突然の遭遇に対応する事ができず。いかに戦闘力が高くとも不慮の奇襲を仕掛けられては、戦場に屍を晒すのは時間の問題だった。

「出られるのは何匹かな?」
 減っていく生命反応と断末魔の絶叫をカウントしながら、ヴィクティムはそう嘯いた。
 無論、出してやるつもりなど微塵もない――彼の領域に囚われた者達が、生きて日の目を見ることは一人として無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あの無能が呼び出されるなんて…憑依先も可哀想ね。

あの無能にはさっさと帰って貰わないとね

【虜の軍勢】で雪花、異国の少女剣士、『雪女』雪華、狐魅命婦、罠うさぎ、猫又、花魁猫又の和風メンツ+αを召喚。

土地勘のある破戒僧に協力して貰い、長屋の裏通り等に罠うさぎが【えげつない多段トラップ】を設置。
花魁猫又が囮になり誘い込み、罠に掛けたり【いい夢見せてあげるニャ♪】で催眠して足止め。
そこへ雪花、雪華、猫又、狐魅命婦が【ふぶいてみる】【氷柱散華】【フォックスファイアフィーバー】【猫又の妖術なのニャ】による遠距離攻撃を叩き込み、最後は私の魔槍や少女剣士の【縮地】による一撃で仕留めるわ。

さあ、みんな行くわよ!



「あの無能が呼び出されるなんて……憑依先も可哀想ね」
 戦力強化のはずが、逆に足枷となるようなモノを憑装された「もりのくまさん」達に、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は若干の哀れみを抱く。かの魔軍将コルテスの戦下手がどれだけ酷いかは、彼女も過去の戦いでよく知るゆえに。
「あの無能にはさっさと帰って貰わないとね」
 敢えて「あの無能」と二度も言ったところに、彼女のコルテスへの厭気が感じられる。
 だが決して敵を侮っているわけではない。確実に、絶対に、敵軍を壊滅させるために、彼女は【虜の軍勢】から自らの眷属を召喚する。

「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
 フレミアの呼びかけに応えて現れるのは、雪女見習いの「雪花」、異国の少女剣士、雪女の雪華、狐魅命婦、罠うさぎ、猫又、花魁猫又――エンパイアや幽世出身の者を中心にした、和風メンツ+αといったところか。
「まずはトラップの設置からね。貴方も協力して貰えるかしら?」
「おうともさ。この町のことなら何でも聞いてくんな」
 土地勘のある破戒僧の助けも借りて、長屋の裏通りや人気のない路地等の待ち伏せのしやすい場所に、アルダワ出身の罠うさぎが【えげつない多段トラップ】を設置していく。
 その他の眷属は物陰に潜ませ、敵がトラップにかかると同時に奇襲を仕掛ける手筈だ。

「囮役は花魁猫又、よろしくね」
「お任せ下さいニャ♪」
 赤い金魚柄の着物を艶やかに着崩した猫又の娘は、蕩けるような笑顔で主人に応じる。
 人を化かし惑わせるのは妖怪の十八番とばかりに、彼女らは町中で暴れまわるコルテス熊の前に姿を現す。
「そこのお兄さん、ウチらとイイコトしないかニャ?」
「ほう? 面白い獣だな」
 美しい女性を略奪の対象と見做したコルテス達は、まんまと彼女に釣られてトラップの仕掛けられた場所に誘い込まれていく。ひらりひらりと着物の裾を揺らしながら、捕まらないよう軽快な足取りで敵を誘導する、猫又花魁の手腕は実に見事であった。

「逃げるな貴様……っ?!」
「なんだっ?!」
 猫又花魁を追って細まった通りにコルテス熊がなだれ込んだ瞬間、罠うさぎ謹製の拘束トラップが起動する。トリモチ、落とし穴、トラバサミ――通りのあちこちに仕掛けられた無数のトラップに、まるで警戒していなかった敵は面白いように引っ掛かった。
「さあ、いい夢見せてあげるニャ♪」
 さらに猫又花魁がキセルから催眠効果を持つ桃色の煙を放ち、敵をめくるめく夢の世界に誘う。これで意識を失わせられるのは一時的だが、戦場ではその一時が致命的になる。

「さあ、みんな行くわよ!」
「「はい、フレミア様!」」
 コルテス熊の群れが動きを止めた瞬間、満を持して吸血姫率いる眷属達が襲い掛かる。
 雪花と雪華の雪女チームは吹雪と氷柱の嵐を起こして凍てつかせ、狐魅命婦と猫又達が狐火と妖術の鬼火で焼き焦がす。冷気と熱気の遠距離攻撃を一斉に叩き込まれては、タフなコルテス熊でも一溜りもあるまい。
「ごああああっ?! き、貴様らぁっ?!」
「くそっ、卑怯な下等生物共め……ぐはあっ!」
 嵌められたと知ったコルテス達がどれだけ悔しがっても、もはや後の祭りだった。罠にかけられ動けない彼らには反撃の機会すら与えられず、一方的に氷と炎に苦しめられる。

「さあ、仕留めるわよ」
「はい、主君殿!」
 最後のトドメを刺すのは、真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を手にしたフレミアと、縮地の構えを取る異国の少女剣士。目にも留まらぬ早業で敵に急接近した彼女達は、至近距離から必殺の一撃を刻みつける。
「がは……っ! ば、馬鹿な……」
 一矢報いることもできず、心の臓を穿たれたコルテス熊は愕然としたまま倒れ伏した。
 吸血姫と眷属達による作戦と巧みな連携によって、無能な愚か者が駆逐されるまでに、それからさほどの時間はかからなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
この世界はわたしの故郷…侵略なんてさせない…

「くま?」
「熊鍋?」
「お料理?」

流石に人が憑依した熊は食べたくないかな…。
ラン達と参加…。
破戒僧にお願いし、近隣住民の速やかで密かな避難を依頼…。

後は路地裏や物陰、建物の中等に呪力の縛鎖や呪殺弾等、多様な呪術トラップ【呪詛、高速詠唱、呪殺弾】が込められた呪符を配置…。

後は罠に掛かった敵を黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】や【unlimitedΩ】の一斉斉射、ラン達の【暗殺】による暗器の一斉攻撃で殲滅するよ…。

久しぶりだね…。コアトルは解放されてるみたいで良かった…。
貴方には略奪も殺戮も、一切何もさせない…。
疾く骸の海へ還るが良い…!



「この世界はわたしの故郷……侵略なんてさせない……」
 エンパイア出身者である雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)にとって、この国を侵略する猟書家達や『超・魔軍転生』により再臨した魔軍将は、けして許すまじき敵だった。
 恐るべき第六天魔王・織田信長を討ち、泰平の世を取り戻したこの国で、幕府転覆など以ての外。表情にこそ出ないものの、彼女の内には決意の炎が静かに燃え上がっていた。
「ここも戦場になったらみんなが危ない……近隣住民の避難をお願いしていい……?」
「おうともよ、任せな嬢ちゃん。奴さんらに気付かれんよう、静かにじゃな?」
 璃奈の依頼を受けた破戒僧は、戦闘に巻き込まれないよう速やかに、かつ密やかに町民を避難させていく。もぬけの殻となった町の一角で、彼女は敵を迎え撃つ準備を始めた。

「くま?」
「熊鍋?」
「お料理?」
 一緒にやって来たメイド人形のラン、リン、レンが見やる先には「もりのくまさん」の群れ。冬も近付くこの季節、もこもこの毛皮の下には栄養をたっぷり蓄えていそうだが、あれに憑装しているのはかの傲慢なる侵略渡来人、コルテスである。
「流石に人が憑依した熊は食べたくないかな……」
 違う意味で料理することにはなるけど、と璃奈はお手製の呪符をぺたりと貼り付ける。
 この符には呪力の縛鎖や呪殺弾など、多様な呪術トラップが込められている。これを路地裏や物陰、建物の中などに配置することで、一区画を丸ごと敵にとっての死地とする。

「さて、この町にはどんな宝があるだろうか」
「この私に略奪される事を光栄に思うがいい」
 そうとは知らないコルテス熊は、何の警戒もなくのそのそトラップ地帯にやって来る。
 璃奈達が物陰に身を潜めて様子を見ていると、彼らは略奪の対象を求めて周囲を物色しはじめ――。
「この家には何か……ぐおっ?!」
「なんだ、どうし……がはっ!!」
 配置されていた符に一定距離まで近付いた瞬間、仕掛けられた罠が彼らに襲い掛かる。
 熊の巨体を呪いの鎖が縛り上げ、動きが止まったところに浴びせられる呪殺弾の雨霰。
 それは油断しきっていた連中には効果覿面で、愚かな敵の悲鳴や絶叫が町に木霊する。

「前にも言ったけれど……貴方の馬鹿は何回死んでも治らないみたいだね……」
「お、お前は……!!」
 そこに璃奈が姿を現すと、罠にかけられたコルテス熊達の表情が変わる。かつてエンパイアウォーにて彼女に敗北した際の記憶を、どうやらここにいる魂は覚えていたようだ。
「久しぶりだね……。コアトルは解放されてるみたいで良かった……」
 隷属の呪いにより使役されていた神の乗騎はここには居ない。魂ひとつで熊のオブリビオンに憑装させられた状態のコルテスは、憎しみと殺意のこもった眼差しを璃奈に向けるが――逆に言えば、呪いの縛鎖に捕えられた彼らにできるのは、その程度のことだけだ。

「貴方には略奪も殺戮も、一切何もさせない……」
 【Unlimited curse blades Ω】を発動し、終焉の力を帯びた妖刀・魔剣の現身を何百と顕現させる璃奈。展開された刃の一振り一振りに、その手に握りしめた呪槍・黒桜に、凄まじい呪力が宿っているのをコルテス達は感じ取った。
「ま、待て……ッ!」
 慌てふためく馬鹿の言い分になど、彼女は耳を貸さない。その眼差しに揺らぎ無く。
 仕えるメイド達もどこからともなく暗器を取り出し、主の動きに合わせて身構える。

「疾く骸の海へ還るが良い……!」

 呪槍から解放された呪力の桜吹雪、終焉の魔剣の斉射、ラン達の暗器による一斉攻撃がコルテス熊の群れに放たれる。それは仇なす者に完全なる終焉をもたらす刃と呪いの嵐。
「わ、私はまだ敗れるのか……ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?!」
 末期の際に彼らの脳裏にフラッシュバックしたのは、エンパイアウォーの敗北の記憶。
 断末魔の悲鳴を遺して、傲慢なる侵略渡来人の魂は熊の肉体諸共、残らず殲滅された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ
ニコ(f02123)と一緒にイケてる親父を見る…前に熊退治ね

今回は餌罠作戦
レプリカクラフトで作った鮭っぽいもので誘導よ
本物の鮭っぽく見えるよう、食紅で鱗風に催眠模様アートを表面に書いた、偽の鮭(偽物なので強化不可)を道に置きまくるの
最終地点はニコと破戒僧さんの選んでくれた交差点ね

大量の鮭の周りに
走行の邪魔にならぬ程度の足絡めの罠や浅い落とし穴、虎鋏を仕掛けるの
で、ニコの待機する方向の反対側の道にぐっつぐつの鍋&油を準備しておくわ

熊さんが現れたら
「ひええ、山の神様!
この鮭でどうか気を静め、山へお帰り下さい!

和服姿でおびえた町人風パフォーマンスでだまし討ち

さぁ、ニコ!今よ! 熊鍋ホールいんわーん!


ニコリネ・ユーリカ
リダン隊長(f03694)と熊退治
この晴明
ドングリの不作で人里を襲う熊みたいね
同じ運命を辿らせてあげるわ

🐻破戒僧
街の内外の地形を教えて下さいな
侵攻方向や経路、軍勢の密になりそうな箇所を尋ねる
万一の時には人々をお守り下さい

🐻コルテス
街は構造上、道路が伸びる方向に進路を制限される
よさげな交差点に身を潜めて【FAB】!
営業車『Floral Fallal』を高速機動が可能なバックホーに変身させ
隊長の罠に掛かった隙に側面を強襲!
熊にも負けない重量で轢いた後は上部を旋回してバック推進
熊にも負けない鉄のバケットで大鍋に運ぶ

まぁ可愛いくまさん
あなた美味しそうねぇ(わるいかお)
隊長!今晩は熊鍋にしましょう!



「この連中、ドングリの不作で人里を襲う熊みたいね。同じ運命を辿らせてあげるわ」
「イケてる親父を見る……前に熊退治ね」
 悪意がある分野生よりも厄介そうなコルテス熊を見て、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)はふふっと微笑み。ブラザー・アポストロス目当てで一緒について来たリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)も、その言葉にこくりと同意する。
 ロクでもない侵略者を狩るための罠と作戦はすでに考案済み、あとは実行に移すだけ。二人は目配せを交わしてそれぞれの役目を確認すると、一旦別れて行動を開始する。

「街の内外の地形を教えて下さいな」
「おうともさ。なんでも教えるさね」
 ニコリネはまず、この町の地理について詳しい破戒僧に、敵の侵攻方向や経路上、軍勢の密になりそうな箇所を尋ねる。都市とはその構造上、道路が伸びる方向に軍隊は進路を制限される――その中で敵を一網打尽にできそうなポイントを破戒僧の話から絞り込む。
「ここならよさげかしら」
 やがて目をつけたのは道幅がそれほど広くなく、いかにも渋滞を引き起こしそうな交差点だった。彼女はその道端に愛車である「Floral Fallal」と一緒に身を潜めて【FAB】を発動、花売り用の営業車両を高速機動が可能なバックホーに変形させる。
「万一の時には人々をお守り下さい」
「おう。万一がないことを祈ってるさ」
 案内役の破戒僧には町人達の護衛を頼むと、後は敵がやって来るまでじっと待つのみ。
 待ち時間はそれほど長くはならない筈だ。こうしている間にも別行動中の"隊長"が、敵を誘導するための罠を張ってくれている筈だから。

「今回は餌罠作戦でいくわ」
 そのリダンのほうに視点を移せば、彼女は【レプリカクラフト】で複製した罠を仕掛けている最中だった。熊を誘き寄せる餌なら好物の鮭だろうと、それっぽく見えるように食紅で鱗風に催眠模様のアートを表面に書いた、偽の鮭を大量に作っては道に置きまくる。
「最終地点はニコと破戒僧さんの選んでくれた交差点ね」
 敵を上手くそこまで誘導できるよう、点々と路上に偽鮭を並べていき。終点となる交差点の真ん中にはこれ見よがしに山のような偽鮭と、その周りにはニコリネが戦うことを考慮して走行の邪魔にならない程度に、足絡めの罠や浅い落とし穴、虎鋏などを仕掛ける。
「で、あとはこのぐっつぐつの鍋&油を……」
「うわあ、すっごく熱そう」
 仕上げとばかりにずしん、とニコリネが待機する方向の反対側に置かれる大鍋。これで全ての準備は整ったとリダンは額の汗をぬぐい、じきにやって来るであろう得物を待つ。

「むぐむぐ……誰だか知らんが……」
「私の好物を用意しておくとは、下等生物にしては気が利いている……もぐもぐ」
 ほどなくして姿を現したのは、魔軍将コルテスを憑装した「もりのくまさん」の群れ。道端に落ちている偽物の鮭をひょいと拾い上げてはもしゃもしゃと頬張り、また次の鮭を見つけては拾う。それが自分のものだとまるで疑っていない傲慢で意地汚い態度である。
「ひええ、山の神様! この鮭でどうか気を静め、山へお帰り下さい!」
 それを見たリダンは甲高い悲鳴を上げて、大袈裟なほどガタガタと震えだす。もちろん敵を油断させるためのパフォーマンスだが、あらかじめ着ておいた和服姿と相まって、コルテスの目からはただの怯えた町人のようにしか映らないだろう。

「ふん。そうだな、この鮭が美味ければお前のことは見逃してやってもいい」
 偉そうな態度でふんぞり返りつつ、コルテス熊は交差点に山積みになった鮭に群がる。
 びくびくと熊に怯える演技をしていたリダンは、それを見て袖の下でにやりと笑う――その直後、仕掛けられていた捕獲用の罠の数々が一斉に作動した。
「んなっ?! なんだこれはっ!」
「どういう事だ! まさか罠か?!」
 足を絡まれる者、虎鋏に挟まれる者、落とし穴に落ちる者。油断しきっていた連中はものの見事に引っかかり、無様な醜態を晒して喚き散らす。事ここに至ってリダンはそれまでの演技を放り捨て、高らかに叫んだ。

「さぁ、ニコ! 今よ!」
「了解です、リダン隊長!」
 敵群がリダンの罠に掛かった直後、ニコリネのバックホーが側面より強襲を仕掛ける。
 エンジンを響かせ突っ込んでくる巨大な建設車両に、コルテス熊達は目を丸くしつつも迎え撃とうとするが――。
「こ、こんなもの、満腹の我らにかかれば……なぜだ、力が入らん?!」
「そりゃあ偽物の鮭だものねえ」
 どんなに【もぐもぐたいむ】を発動させても、本物の鮭を食べていない熊の能力は平常のまま。バックホーの重量を押し返すには馬力が足らず、あえなく轢き倒される羽目に。

「まぁ可愛いくまさん。あなた美味しそうねぇ」
 熊を轢いたニコリネは操縦席で悪い顔をしながら、バックホーの上部を180度旋回。
 そのままギアをバックに入れて、巨大な鉄のバケットですくい上げるように敵を運ぶ。
「隊長! 今晩は熊鍋にしましょう!」
「許可する! 熊鍋ホールいんわーん!」
 ノリノリのニコリネに応じてリダンもニッコリ悪い笑顔で。憐れコルテス熊達は反撃の機会すら与えられないまま、ぽいぽいぽいと油の煮えたぎる大鍋に放り込まれていった。

「ままま、待て待て待て……ギャーーーッ!!!?!!」
 どぼーん、ぐつぐつ、じゅーじゅー、と、跳ねる油と煮える音に紛れて悲鳴が上がる。
 これはもはや料理と言うより釜茹での刑である。かくして鮭に釣られたコルテス熊は、一頭残らず鍋にされたのだった――が、それを本当に食べたのかは、彼女達のみぞ知る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆穂結(f15297)と


別に、特攻するなんて思ってないけど……無茶しそうとは思ってるかな
ま、そうさせないためについてきたんだけど

破戒僧に周辺の地形を聞いてから動くよ
【無貌の輩】を先行させて周辺の状況を逐次把握
穂結は先で待ち伏せておいてくれ
捕り物はこっちでやるからさ

敢えて姿を見せて敵の注意を引くよ
周辺の地形は把握してるし、相手よりは身軽だ
段差や障害物を利用して追いつかれないように
時々銃撃を交えて、音で周辺の敵も誘き寄せる

――さて、ここで終わりだぜ
俺じゃなくて、お前らがだけど
仕留め損なう――なんて思っちゃいないが
銃撃で援護出来るよう備えるよ

これ以上お前らをのさばらせておく理由はないんだ
逃がさないぜ


穂結・神楽耶
匡さん/f01612と

…よくもまあ、あそこまで吼えられたものです。
大丈夫、特攻なんてしませんよ。
確実に、灰のひと欠片だって残さぬよう、きちんと片付けなければいけませんからね。

破戒僧様、案内をお願いします。
お願いしたいのは人気がなく、数を追い込める袋小路。
場所を確認次第先行しておきます。
了解、あちらで待っていますね。

追い込んで頂たらあとはこちらの仕事。
お願い、【焦羽挵蝶】。
鮭を食べるために開いた口の中から焼いて差し上げます。
一匹たりとも逃がさない。
あなた達が食らっていいものはそれだけです。
あなた達には何も奪わせない。
あなた達が殺していいものなんて、この世界のどこにも、ひとつだってありません!



「……よくもまあ、あそこまで吼えられたものです」
 人を人とも思わぬコルテスの言動と振る舞いを目の当たりにして、穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は氷のような冷たい表情を浮かべる。激昂するのではなく淡々と感情を押し殺したような声色が、逆に彼女の怒りのほどを示しているようで空恐ろしい。
「大丈夫、特攻なんてしませんよ。確実に、灰のひと欠片だって残さぬよう、きちんと片付けなければいけませんからね」
「別に、特攻するなんて思ってないけど……無茶しそうとは思ってるかな」
 ま、そうさせないためについてきたんだけど――と応えるのは鳴宮・匡(凪の海・f01612)。花のような慈愛に満ちた平素の姿に秘められた、苛烈な焔と刃をよく知っているからこそ、今回の彼は神楽耶のサポートとフォローに回るつもりでいた。

「破戒僧様、案内をお願いします。人気がなく、数を追い込める袋小路はあるでしょうか」
「お、おうさ。それなら丁度ええ場所があるでな」
 確実に敵を追い詰めるために、神楽耶は土地勘のある破戒僧に待ち伏せに適した場所を尋ねる。穏やかな振る舞いの裏に爆発しそうな激情を感じ取ったか、破戒僧は若干気圧されつつも、条件に合致する場所に彼女を案内する。
「穂結は先で待ち伏せておいてくれ。捕り物はこっちでやるからさ」
「了解、あちらで待っていますね」
 目的地と周辺の地形を聞いたところで、匡は神楽耶とは別行動に移る。自身と同等の知覚機能を持つ【無貌の輩】を先行させて周辺状況を把握し、どこから敵軍が近付いてくるのか、またその数や布陣などを仔細に確認すると、誘導のためにあえて姿を見せに行く。

「む、貴様は猟兵か。以前はよくもやってくれたな……!」
 匡が姿を現すと、エンパイアウォーでの敗戦の記憶が残っていたらしいコルテスは怒りを露わにして襲い掛かってくる。その動きは熊のくせして猪突猛進そのものだが、腐っても魔軍将の力を憑装されたオブリビオン、正面から戦っても分が悪いのは分かっている。
(周辺の地形は把握してるし、相手よりは身軽だ)
 彼の役目はあくまで敵の注意を引いて、神楽耶の待つ場所まで追い込むこと。そのためにも真っ向勝負は避けて、段差や障害物を利用して追いつかれないように町を逃げ回る。
 戦下手なコルテスの脳内に、それが罠かもしれないという危機感は皆無であった。

「待て貴様! 大人しく八つ裂きにされろ!」
 コルテス熊は【みんなあつまれー!】と仲間の熊を召喚し、大群で匡を追いかけ回す。
 その体躯から繰り出されるパンチや噛みつきの威力は確かに脅威だが、それなら近付かなければいいだけのこと。匡はひょいひょいと身軽な動きで町内を自分の庭のように駆け抜け、時折銃撃も交えて敵を挑発する。
「ほら、こっちだ」
「ぐぬぬ、こやつめ!」
 銃声は周辺にいた他の敵の注意も引きつけ、追跡の群れはどんどん膨れ上がっていく。
 もし彼らにもう少し戦の知恵があれば、数の利を活かして匡を包囲することもできただろう。だが傲慢な性格ゆえに自分同士ですら連携の取れない彼らでは、それも不可能だ。

「――さて、ここで終わりだぜ。俺じゃなくて、お前らがだけど」
 やがて匡が敵を引き連れて来たのは、神楽耶が待機する袋小路。待ち伏せの存在を知らないコルテス熊は、彼が自分から逃げ場のない場所に追い込まれたと思ってほくそ笑む。
「ふ、なにを馬鹿なことを。そろそろ観念したらどうだ」
 あくまで傲慢な態度を崩さない彼らは、ここまで町を駆けずり回された疲労を回復しようと【もぐもぐたいむ】を始める。だがまさにその瞬間、待機していた神楽耶が燃え盛る炎の蝶々を引き連れて、物陰からゆらりと姿を現した。

「追い込んで頂いたらあとはこちらの仕事。お願い、【焦羽挵蝶】」
 抑えてきた怒りを爆発させるのは今とばかりに、神楽耶が操る四百を超える焦色の蝶は矢のように空を翔け、鮭を食べるために開かれたコルテス熊の口にひらりと飛び込んだ。
「口の中から焼いて差し上げます」
「ご、がぁッ?!」
 口腔から胃や肺に、さらには別の臓腑に広がる灼熱。体内から焼き焦がされる激痛を味わったコルテス熊達は、口から暗く渋い赤色の火の粉を吐き散らしながらのたうち回る。
 世界に破滅をもたらす過去の亡霊に、彼女がかける情けは一切なく。ひらりひらりと舞い飛ぶ蝶の群れは、さらに外側からも敵を燃やし尽くしていく。

「い、いかん、このままでは……!」
 ようやっと自分達が罠に嵌められたことを悟ったコルテスは、慌てふためきながら炎の蝶より逃げようとするが、ここは袋小路で出口は一方向しかない。やたらと数を増やしたのが仇となって、仲間同士で押し合いへし合いする有様だ。
「一匹たりとも逃がさない。あなた達が食らっていいものはそれだけです」
「これ以上お前らをのさばらせておく理由はないんだ。逃がさないぜ」
 そんな彼らの唯一の逃げ道すらも塞ぐように、神楽耶は炎蝶の群れに敵を包囲させる。
 さらに出口側には誘導を終えた匡も控え、いつでも銃撃で援護できるよう備えていた。

(仕留め損なう――なんて思っちゃいないが)
 匡の見立てではこの状況に陥った時点で敵に逆転の手立てはない。熊の図体の大きさと数の多さが狭い袋小路では全て裏目となり、反撃することさえままならない有様である。
 何より、彼は神楽耶が自分の口にした言を曲げるような女性ではないと知っている。彼女が"灰のひと欠片だって残さぬよう"と言ったなら、それは確実に実行されるだろう。
「あなた達には何も奪わせない。あなた達が殺していいものなんて、この世界のどこにも、ひとつだってありません!」
 烈火の如き気魄と共に、邪悪なる侵略渡来人に宣告する神楽耶。その意気に応じて焦羽挵蝶は舞い、煌々たる劫火の渦となって、内と外から敵を骨の髄まで焼き尽くしていく。

「ぐがああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!!!!」
 焦色の炎の中から響く侵略者の断末魔。それが途切れると同時に炎も消え、後には何一つ残らない。ひゅうと袋小路に吹き込んだ一陣の風が、戦いの余熱をかき消していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
戦下手…国を滅ぼしたヤバイ奴だと思ってたっす

まず破戒僧に町の地理を聞き【地形の利用】して戦う準備っす。
その後、破戒僧には町の人の避難誘導と召喚された霊への対処を優先してもらうっす

妖怪煙を放出し、自分の妖力を【化術】と【催眠術】で破戒僧や猟兵を【残像】として煙に映して敵を誘導したり、同士討ちさせるっす
戦う場合は【罠使い】で用意した罠や池などの地形にはめる事で【体勢を崩し】、攻撃を受けないよう【見切り】つつ『綿ストール・本気モード』で個別撃破を狙うっす

逃げ遅れた住民がいた場合、敵を【化術】で【おどろかす】ことで隙を作り、その間に【救助活動】して避難させるっす

熊は寝てろっす。冬眠ではなく永眠っすが



「戦下手……国を滅ぼしたヤバイ奴だと思ってたっす」
 エンパイアウォーを経験していない家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は、伝聞でイメージしていた「侵略渡来人」コルテスと、現実とのギャップに肩透かしを感じていた。
 彼奴が幾つもの国を滅ぼしたヤバい奴だというのは間違いない。征服した国から奪ったものを利用して、また次の国を侵略する――それを繰り返すうちに「自分で戦う」方法を忘れてしまった、というだけで。
「何ともマヌケな奴っす」
 ともあれ、そんなマヌケにエンパイアをこれ以上好き放題させてやる謂れもない。彼はまずこの町に詳しい破戒僧に地理を聞き、有利な地形を利用して戦う算段を立てていく。

「破戒僧さんには町の人の避難誘導と召喚された霊への対処を優先してもらいたいっす」
「うむ、引き受けよう」
 どんと胸を叩いて力強く頷く破戒僧。それを確認した衣更着は「では、いくっすよ!」と妖怪煙をドロンと放出し、自らの妖力をそれに投影させる。白い煙をスクリーンのようにして浮かび上がるのは、破戒僧や衣更着、そして各方面で戦う猟兵達のシルエット。
「む? 敵か!」
 コルテスの魂を憑装した「もりのくまさん」の群れは、【たべちゃうぞ!】とばかりにその像に襲い掛かる。突撃しか知らない戦下手な彼らには、衣更着の幻術と催眠術によって作り出された幻の残像が、本物か否かを見極められるような器量など持っていない。

「ホントにあっさり引っかかったっすね」
 衣更着は煙に映した残像を動かして不利な地形に誘導し、時には同士討ちを誘発する。
 猟兵だと思って振り下ろした爪の先にいたのは、煙に紛れた味方だったという具合だ。
「ぐあっ?! 何をする貴様!」
「紛らわしい所にいるのが悪いのだ!」
 とかく傲慢な性格をしたコルテスは、同じ魂同士であっても反りが悪く。同士討ちにて一度火が付いてしまった不和はたちまち燃え広がり、大規模な乱闘にまで発展していく。
 煙の中で大混乱に陥っている敵軍の様子を見た衣更着は、そろそろ良いかと「打綿狸の綿ストール」を揺らめかせ、気取られないようひっそりと距離を詰めていく。

「いい加減にしろ、今は敵を……ぐおっ?!」
 比較的冷静なコルテスが仲間の争いを仲裁しようとした時、ドボンという音と共に突然その足元が沈み込む。煙のせいで見えていなかったが、そこには小さな池があったのだ。
 妖怪煙に巻かれ妖術に化かされたまま進撃を続けた彼らは、気が付かないうちに衣更着が用意したトラップ地形に誘い込まれていたのだ。
「こうも簡単すぎると化かし甲斐もないっす」
 罠使いとしての技量で用意した各種トラップや、足止めのために選定した地形。それらにまんまと引っかかった敵に、綿狸忍者はため息一つ。連中が嵌められたと気付いて反撃してくる前に、ユーベルコードで強化した綿ストールでの個別撃破を狙う。

「打綿狸の本領発揮、誰にもこの綿は捉えられないっす!」
 煙の中から放たれた【綿ストール・本気モード】の一撃は蛇のように、あるいは槍のように鋭く敵の心臓を突く。まるで隙だらけだったコルテス熊は何が起こったのかを理解しきるよりも先に倒れ伏した。
「熊は寝てろっす。冬眠ではなく永眠っすが」
 マヌケ共に辛辣な言葉を浴びせつつ、颯爽と戦場を駆ける衣更着。彼が視線を巡らせると、煙の中には大きな熊のシルエットだけでなく避難の遅れた町民の姿も混ざっていた。

「ここは危ないんであっちに避難しといて下さいっす」
「は、はい……!」
 衣更着は引き続き化け術で敵を驚かせ惑わせつつ、破戒僧が誘導を行っている場所まで町民達を避難させる。こんな戦いであんな輩のせいで犠牲者が出れば、それこそ悔やみきれない結果となろう。
「目指せ被害ゼロでいくっす」
 目標を掲げながら救助活動と敵の撃破を並行して行い、町を駆け抜ける白いストール。
 彼の迅速な働きによって、町内に侵攻してきたコルテス熊は次々と撃破されていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ブラザー・アポストロス』

POW   :    悔悟せよ、汝罪深き者
対象への質問と共に、【自身の侵略蔵書】から【野心の獣】を召喚する。満足な答えを得るまで、野心の獣は対象を【引き裂く爪と牙】で攻撃する。
SPD   :    報いを受けよ、愚かなる者
【侵略蔵書の表紙】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、侵略蔵書の表紙から何度でも発動できる。
WIZ   :    来たれ我らが同胞よ
【火縄銃】で武装した【聖戦士】の幽霊をレベル×5体乗せた【ガレオン船】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠枢囹院・帷です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「まさかもう突破されてしまうとは……やはり配下に憑装させる魂を誤りましたか」

 "侵略渡来人"コルテスを憑装したオブリビオンの軍勢を撃退した猟兵達は、その勢いに乗って敵将たる幹部猟書家「ブラザー・アポストロス」との対峙まで持ち込んでいた。
 大軍を突破して自分の元までやって来た猟兵達を見て、エンパイアにおいては異質な西洋式のカソックを着たその男は、やれやれと深いため息を吐いた。

「私の言葉に耳を傾けてくれた町民もごく僅か。作戦は失敗ですね」

 コルテスとは異なり、アポストロスには戦況を理解するだけの戦術眼が備わっていた。
 用意した軍勢の大半は撃破され、今や戦力として数えられるのは己の身一つ。戦としては目も当てられないほどの大敗である――が、まだ逆転の可能性が無いわけではない。

「こうなれば私自らあなた方を"教化"するほかありませんか」

 残った戦力は自分だけだが、逆に言えば自分さえ残っていればまだ計画は続行できる。
 洗脳ユーベルコードが効果を発揮すれば、兵などおらずとも町民の命は握ったも同然。
 最大の脅威となる猟兵さえ排除できれば、この地で彼に敵う者などいないのだから。

「では来なさい、愚かなる子らよ。神に祝福された蘇生者であるこの私が、あなた方を真の救済へと導きましょう……」

 厳かにそう告げるアポストロスはいかにも徳高き聖職者といった風情。しかしその実は生きている事自体を「悪」と断じ、救済と称して人々を惑わせ、死に追いやる邪教の徒。
 遅効性ゆえにこの戦闘中は洗脳ユーベルコードのことは気にする必要はないが、それを抜きにしても幹部猟書家として一軍を任されるだけの実力者であることに違いはない。

 神の御名のもとに死を救済と騙り、生を否定する猟書家「ブラザー・アポストロス」。
 その悪しき言葉から町の人達の心と生命を守るために、猟兵達は今日の大一番に臨む。
播州・クロリア
(破戒僧にそっと耳打ちする)
作戦はさっきと同じく私が囮になりますので
不意打ちを仕掛けてください
その瞬間、貴方の側に移動しますので
一斉攻撃を仕掛けましょう
(敵に目をやり救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後{晩秋の旋律}で『ダンス』を始めると同時に『催眠術』による視線誘導で敵を惹きつけようとする)
死が救済というのであれば
私が貴方を救って差し上げます
訪れる冬を待つ虫のように
心静かに死を受け入れなさい
(UC【蠱の共犯者】を発動し破戒僧の元へテレポート後、{晩秋の旋律}によって生まれた『呪詛』を込めた蹴撃を『衝撃波』と共に敵に叩き込む)



「死が救済というのであれば、私が貴方を救って差し上げます」
 ついに相対した敵将ブラザー・アポストロスに正面から対峙し、告げるのはクロリア。
 一触即発のひりついた緊張感が漂う中、彼女は隣にいる破戒僧にそっと耳打ちをする。
(作戦はさっきと同じく私が囮になりますので、不意打ちを仕掛けてください。その瞬間、貴方の側に移動しますので、一斉攻撃を仕掛けましょう)
(相分かった。拙僧も全力を尽くそう)
 敵の邪悪さと強大さを肌で感じながらも、その破戒僧は泰然自若の精神で静かに頷く。
 それを見たクロリアはこくりと頷き返すと、敵将の注意を引くために前に歩み出した。

「訪れる冬を待つ虫のように、心静かに死を受け入れなさい」
 敵に目をやり、救いを求めるように天を仰ぎ手を伸ばした後、奏でだすのは「晩秋の旋律」。暮れゆく秋の紅葉が散りゆくさまの寂寥感、喪失感、退廃的な死を表現した旋律に合わせて儚げなダンスを踊れば、ブラザー・アポストロスの視線は彼女に釘付けとなる。
「惑わせようとしても無駄です。私は愚かな民を救済する者であって、救済される者ではないのですから」
 クロリアの踊りとリズムには催眠効果もあるが、アポストロスがコルテスのような劇的な影響を受けた様子はない。一軍を任された猟書家の将は、武勇のみならず精神力も強固である――だがこの場合においてはその傲りが、彼女に望み通りの結果をもたらした。

「私だけだと思いましたか?」
「せいやぁッ!!」
 敵の注意がクロリアに惹きつけられた隙を突き、破戒僧が不意打ちを仕掛ける。大連珠を握った拳から繰り出されるのは渾身の【灰燼拳】――その名の通り、並大抵の相手なら灰燼に帰するであろう超高速かつ大威力の一撃。
「私に拳を向けますか。なんと愚かな」
 だが、ブラザー・アポストロスは手にした侵略蔵書で、その一撃を受け止めてみせた。
 一冊の本で破戒僧の拳が防がれる。涼しげな男の表情が彼我の実力差を物語っていた。
「……やはり、半端ねえなぁ、お前さん」
「理解するのが遅かったですね。報いを受けよ、愚かなる者」
 つうと汗をかく破戒僧の前で、アポストロスは彼のユーベルコードをコピーし、たった今の拳撃の威力をそのまま返還しようとする。だがそれよりも刹那早く、鈴虫のような凛とした音色と共に、金髪の少女が忽然と姿を現した。

「彼だけだとも、思いましたか?」
「なんですと……っ?」
 まだ離れた距離にいたはずのクロリアが突然至近距離に現れ、これにはアポストロスも驚きを隠せない。旋律による誘導からの不意打ちは失敗したかのように見えて、その実は彼女が【蠱の共犯者】を発動させるための布石となっていたのだ。
「だとすると騙してしまい申し訳ありません。ついでに観覧料も徴収したく……」
 仲間である破戒僧の元へ――言い換えるなら敵の目前にテレポートを果たしたクロリアの脚には、これまで奏でた旋律によって生まれた呪詛のエネルギーが籠もっている。彼女のダンスはただ注目を集めるだけの芸ではない、敵を討つための最大の武器でもあった。

「行きますよ」
「おうともさ!」
 今一度放たれる破戒僧の灰燼拳と、呪詛を込めたクロリアの蹴撃。一度は奇襲を防いでみせたブラザー・アポストロスも、二人の同時攻撃を一冊だけで受けることはできない。
「ぐ……っ!!」
 インパクトの瞬間に強烈な衝撃波が叩き込まれ、アポストロスの体がくの字に曲がる。
 二人がかりで奏でた連携、そして死を表現したリズムが生み出した力は、死の教えを説く邪神官への見事な意趣返しとなって、かの者に膝を突かせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「女神の加護ある悪霊の聖職者で教皇なんですけど、教化されなきゃダメ?」
開幕ツッコミせざるを得ない空気を生み出した。

「私も猟書家になりたいんですけど」
どこぞでスカウトしているんじゃないかと噂を聞いたカビパンは、
猟書家のことを芸術家と勘違いしている。
「フン、まぁいい」
しばし迷ったが、アポストロスは利用できそうだと適当に許可した。
わぁいと喜ぶカビパン。

しかし
「誰に向かって命令しとんじゃいワレ!」「ねるねるねるね買ってこいボケ!」とカビパンが急変しチンピラのような態度を取った。
話を無理やり自分のペースにもっていくカビパン・ワールドへと巻き込まれたアポストロスは、逆にギャグにより教化されてしまったのだ。



「女神の加護ある悪霊の聖職者で教皇なんですけど、教化されなきゃダメ?」
「聖職者の悪霊が教皇に居座るような教団は、どう考えてもおかしいのでは?」
 一言で開幕ツッコミを入れざるを得ないような、微妙な空気を生み出すのはカビパン。
 思わずブラザー・アポストロスも指摘した彼女の肩書きのおかしさは、しかし厄介なことに全て事実である。ついでに不思議な首飾りの妖力で雪女に変身できたり、俗世間ではカレー屋を営んでいたりもするが、そこまで語りだすと明らかに属性を盛りすぎである。
「異教徒とあらば尚更教化しないわけにはいきません。我が教えを受け入れなさい」
 いかにもな宣教師の口ぶりで、アポストロスは【来たれ我らが同胞よ】と配下を喚ぶ。
 どこからともなく現れた火縄銃で武装した聖戦士が、銃口を突きつけて改宗を迫るのは、明らかな恫喝行為だが――対するカビパンの回答は予想の斜め上を行くものだった。

「私も猟書家になりたいんですけど」
「はて?」
 どこぞで猟書家が現地のオブリビオンを幹部にスカウトしているんじゃないかという噂を聞いたカビパンは、自分も猟書家になる機会を虎視眈々と窺っていたのだ。ただし彼女は猟書家のことを世界を侵略するオブリビオン集団ではなく、芸術家と勘違いしている。
「……まあいいですが。我らの同胞として働くというなら歓迎しましょう」
「わぁい」
 しばし迷ったものの、憑装させたコルテスが思いの外役に立たず手駒に不安を抱えていたアポストロスは、利用できそうだと適当に許可した。もちろん実際に幹部に取り立ててやるつもりはなく、現地調達した捨て駒扱いだろうが、そうとも知らずカビパンは喜ぶ。

「では新たな同胞に最初の使命です。かつての仲間達に貴女の手で引導を渡しなさい」
 アポストロスがカビパンに最初に命じたのは猟兵の撃破。彼女一人でそれができるとは思っていないが、忠誠心を測るいい機会になり、オブリビオンにとっては同士討ちで猟兵を消耗させられるのだからメリットしかない。まさに完璧な作戦命令――だったのだが。
「誰に向かって命令しとんじゃいワレ!」
 猟書家に任命された途端、カビパンはそれまでの様子から急変しチンピラのような態度を取った。上司であるはずのアポストロスにオラつきだし、睨みをきかせて喚き散らす。

「ねるねるねるね買ってこいボケ!」
「な、なんですかその態度は?! ねるねるねるねとは一体?!」
 聖戦士達に銃を突きつけられてもまるで無視。【ハリセンで叩かずにはいられない女】はバシバシと「女神のハリセン」を振り回し、話を無理やり自分のペースにもっていく。
 ボケとツッコミの嵐によって戦場をギャグが支配するカビパン・ワールドに塗り替える彼女のユーベルコード。それに巻き込まれたブラザー・アポストロスは目を白黒させる。
「大体さっきの腑抜けたツッコミは何だ! お前には芸人としてのセンスが足りん!」
 芸人でもない相手に理不尽な言いがかりをつけ、ハリセンでしばきながら持論の押し付け。世が世ならパワハラ問題になりそうな態度だがここではお咎めなしである。いつの間にか攻守は逆転し、カビパンはすっかりアポストロスに対する精神的優位を取っていた。

「ナウなヤングにバカウケするよう、私が一からギャグについて教えてやる!」
「や、やめなさい……これ以上は、頭がおかしくなる……ッ!!」
 愚かな民草を教化するはずが、逆に理不尽なカビパンのギャグにより教化される立場となったアポストロスは、頭を抱えながら苦しみだす。基本的に真面目な彼にとってこの世界に適応するのは難しく、容赦のない激寒ギャグがメンタルを着実に蝕んでいった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

死は幸福とかいう奴とつい先日相対したが本当にそれが幸いだと信じてた様だった。
それと比べたらアポストロスは騙ってる感じでなんか嫌だな。
騙りはあんまり好きになれない。

先程と同様に存在感を消し目立たない様に立ち回る。そして隙を見てマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。蔵書を狙い召喚の妨害を試みる。
問いに対しては悔いがないとは言わない。けれどそれでも膝をつかないのは「誰かの為」だからだ。その為に俺は生まれたから。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らうものは激痛耐性で耐える。



「死は幸福とかいう奴とつい先日相対したが、本当にそれが幸いだと信じてた様だった」
 別の依頼で会った敵の言葉を思い返しながら、瑞樹はブラザー・アポストロスを見る。
 それに同意できるか否かとは異なるベクトルで、一つの信念を持つ者の言葉には凄みがある。たとえ相容れないものであっても、その姿勢自体には敬意を払いたいと思える。
「それと比べたらアポストロスは騙ってる感じでなんか嫌だな」
「おお、何ということでしょう! 私の教えが偽りだというのですか?」
 宣教師のような黒服を纏った男は、瑞樹の指摘に大仰なりアクションで嘆いてみせる。
 果たして彼が自分の「教義」をどれだけ自分で信じているのかは定かではない。ただ少なくとも彼は、それを世界侵略の「方便」として利用するのに一切躊躇いはないだろう。

「騙りはあんまり好きになれない」
 虚言の匂いに眉をひそめながら、瑞樹は再び存在感を消して影に紛れる。元暗殺者の使い手に愛用されたナイフのヤドリガミである彼は、その想いと共に隠密の技を受け継ぐ。
 一度潜めば幹部猟書家といえどもすぐには見つけられないだろう。標的の姿を見失ったブラザー・アポストロスは、ならばと自らの侵略蔵書を手にユーベルコードを唱える。
「悔悟せよ、汝罪深き者。汝の犯した罪はいかに?」
 問いかけと共に召喚される「野心の獣」は、アポストロスが満足のいく答えを得るまで標的を追い続ける。この性質を利用して隠れている瑞樹をあぶり出そうというつもりか。

「させないよ」
「な……っ?!」
 だがアポストロスが蔵書を広げた時にはもう、瑞樹は彼を刀剣の間合いに収めていた。
 召喚が為されるよりも早く、右手の「胡」より放たれる【剣刃一閃】。それは過たず敵の侵略蔵書を捉え、開かれたページから今まさに飛び出そうとした獣を切り裂く。
『ギャウッ!』
 悲鳴と共に鮮血が散り、マヒしたように獣の動きが止まる。その機を逃さず瑞樹は左手に握る本体の「黒鵺」で追撃を仕掛け、今度はアポストロスの身体をさっと切り裂いた。

「悔いがないとは言わない。けれどそれでも膝をつかないのは『誰かの為』だからだ。その為に俺は生まれたから」
 問いかけに対して瑞樹が答えたのは受け継いだ意志。主亡きあとも棺の中で抱き続けたこの想いこそが、彼をヤドリガミに至らしめた原点。たとえ罪に塗れようとも、それが誰かの為になるのであれば、その黒塗りの刃はけして迷いはしない。
「そんなものは、他人を己の罪の言い訳にしているだけに過ぎません……!」
 無論アポストロスはどんな返答が来たところで満足はしないだろう。傷を押さえながら今度こそ完全に召喚された「野心の獣」が、爪と牙にて瑞樹を引き裂かんと襲い掛かる。
 しかし彼はその攻撃の予兆を第六感で感知すると、即座に軌道を見切って身を翻す。牙を躱し、右の刀で爪を受け流し、左のナイフでカウンターの一撃を叩き込む。

「何と言われようと、これが俺だ」
「ッ……!!」
 初撃よりもさらに深く、ヤドリガミのナイフはアポストロスの肉体を深く切り裂いた。
 ぽたりぽたりと血を滴らせながら、邪教の宣教師は苦痛に顔を歪めて後退していく。彼の騙る言葉は瑞樹の心に、さざ波ほどの動揺さえ立てさせることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
間に合ったみたいだね。それも破壊僧のカレが教えてくれたおかげだね。
アポストロくん、ここまでだよ!

呼び出された聖戦士をウィザードミサイルで火葬して無力化するよう動くよ。

さらに、攻撃しながらアポストロくんを特定の場所に追い込んでいくよ。

「外れたんじゃない。外したんだよ。なんせ、そこにはね。」

追い込んだ場所で破壊僧に一撃を決めてもらうよ。



「間に合ったみたいだね。それも破壊僧のカレが教えてくれたおかげだね」
 町民に洗脳ユーベルコードの影響が出始める前に敵将に辿り着くことができ、アリスはほっとした顔をする。今回、猟兵達がいち早く事件を察知し駆けつけることができたのは、敵の計画を未然に察知した破戒僧の働きが大きい。
「いやいや、儂なんぞ。ここまで来れたのはお嬢さんたち猟兵のお陰さね」
 あんた方がいなけりゃオブリビオンの大軍を倒すことはできなかったと、僧服を纏った男はかんらかんらと笑い。敵軍を退けてやって来た正念場に、二人は気合を入れて挑む。

「アポストロスくん、ここまでだよ!」
「ここまで? いいえ、これからです!」
 アリスがびしりと指を突きつけると、ブラザー・アポストロスは声高に言い返し【来たれ我らが同胞よ】と叫ぶ。すると陸地にも関わらず巨大なガレオン船が虚空より姿を現し、甲板上から火縄銃で武装した聖戦士の幽霊が何百人と飛び出してきた。
「安心なさい。教義を理解しない愚かな異教徒も、私は決して見捨てはしません」
 この神罰の銃弾にて救済して差し上げましょう――と、横一列に並んだ銃口が一斉に火を噴く。「死」をもって生きることの苦しみから解放せんとする猛攻に対して、アリスは【ウィザード・ミサイル】を発動、こちらも何百本という炎の矢にて応戦する。

「そのお話はあんまりおいしくなさそうだから、いらないよ」
 アポストロスの騙る教義を拒否しつつ、情報妖精の放つ火矢は銃弾を撃ち落とし、聖戦士の霊を火葬していく。ウィザードロッド型の情報端末を振って魔法を操るその姿は、さながら別世界のアニメーションに登場する魔法少女のように可憐だった。
「ちっ……」
 同胞達が次々に無力化されていくのを見て、ブラザー・アポストロスは舌打ちを一つ。火矢の弾幕は彼の元にも降りかかるが、流石に幹部クラスの猟書家は一筋縄ではいかず、さほど鍛えてはいなさそうな外見にも関わらず、素早い身のこなしで攻撃を避けていく。

「残念、外れましたね」
 アポストロスはにやりと笑いながら蔵書を広げ、そこに記された悪しき教義を唱える。
 彼が健在である限り、新たな同胞はいくらでも再召喚が可能。このまま撃ち合いを続けていれば優勢になるのは此方である――だがその慢心が彼の注意力を散漫にさせていた。
「外れたんじゃない。外したんだよ。なんせ、そこにはね」
「儂がおるんでなぁッ!!」
「ッ!?」
 その瞬間、ばっと物陰から飛び出してきたのは破戒僧。アリスの攻撃はアポストロスにダメージを与えるのではなく、彼を特定の場所まで追い込んでいくのが目的だったのだ。

「最高の一撃を決めてね」
「おうよ、任せんしゃい!」
 アリスの手で絶妙の位置に追い込まれた敵の土手っ腹に、破戒僧渾身の【灰燼拳】が炸裂する。完全に虚を突かれたアポストロスは防御もできず、その一撃をもろに喰らった。
「がは……ッ!!!!?」
 猟兵に非ずとは言え、譲れぬ信念によって鍛え上げられた鋼の拳。無防備な間隙にそれを叩き込まれてはオブリビオンと言えども無事では済まず、苦悶の呻きと共に吹き飛ぶ。
 会心の一発を決めた破戒僧はニッと笑みを浮かべ、対するアリスもニコリと微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あの無能よりは認識マシみたいだけど…生きている事を悪というなら、蘇生した貴方も悪じゃないの。
最初から破綻してる上にあんな熊を人々にけし掛けて…あまりわたし達を舐めるんじゃないわよ!

【ブラッディ・フォール】で「龍脈火山帯の大熱戦」の「帝竜ガイオウガ」の姿(魔力で帝竜の姿を完全に再現構築し、外殻として纏った姿)へ変化。

ガイオウガの巨体で睨み付け、【垓王牙炎弾】の火山弾で敵のガレオン船を破壊し、そこから炎の獣が船を蹂躙。更に竜の姿の炎の群れで聖戦士や敵本体を焼き払い、【垓王牙炎操】に溶岩の尾で敵を焼滅させるわ。

生憎、銃なんて効かないわ。炎の獣も竜の炎も生物ではないもの。
この世界から失せなさい、侵略者



「あの無能よりは認識マシみたいだけど……生きている事を悪というなら、蘇生した貴方も悪じゃないの」
 オブリビオンとは須らく現世に蘇った過去。それが現世での人生を悪と断じ、死こそが救済であると謳うアポストロスの教義の矛盾に、フレミアは呆れたようにため息を吐く。
「最初から破綻してる上にあんな熊を人々にけし掛けて……あまりわたし達を舐めるんじゃないわよ!」
 燃え上がる怒りが噴出したかのように、彼女の身体はマグマと溶岩に覆われていく。煮え滾る熱の塊がやがて形作るのは、かつて群竜大陸にて散った「帝竜ガイオウガ」の姿。
 ユーベルコード【ブラッディ・フォール】によって帝竜の力を我が身に降ろし、外殻として再現構築した彼女は、火山の如き巨体でアポストロスを睨み付けた。

「おお、それは大いなる誤解というものです、お嬢さん。死後、神に赦された者は喜びと共に蘇るでしょう。神に祝福された蘇生者……それこそが、『オブリビオン』なのです」
 教義の破綻を指摘されたブラザー・アポストロスは、しかし悪びれもなく答えを返す。
 その手に広げた侵略蔵書のページがパラパラと捲れ、巨大なガレオン船に乗った聖戦士の軍団が火山の帝竜に銃口を向ける。それはまるで物語のドラゴン退治の一幕のように。
「随分と貴方達オブリビオンにとって都合のいい教えね」
 アポストロスの反論にも憤慨を抑えきれないといった様子で、フレミアはガイオウガの外殻から【垓王牙炎弾】を放つ。凄まじい高温と質量を誇る幾つもの火山弾、それは流星群のように敵のガレオン船目掛けて降り注いだ。

「壊れなさい」
『うわぁぁぁぁぁっ?!』
 いかに巨船と言えどもしょせんは近世レベルの木造物。火山弾の直撃を受けたガレオン船はまたたく間に炎上轟沈し、乗っていた聖戦士の幽霊達は悲鳴を上げて投げ出される。
 さらに船を破壊した火山弾は炎の獣へと姿を変え、咆哮と共に敵に襲い掛かる。体勢を立て直す暇さえ与えられなかった幽霊達に為す術はなく、燃える爪牙に蹂躙されるのみ。
「なんと……これはいけません……!」
 帝竜の能力を借りたフレミアの驚異的な力に、さしものアポストロスも顔色を変えた。
 しかしまだこれで終わりではない。炎の獣に続いて今度は【垓王牙炎操】にて放たれた竜の姿の炎の群れが、聖戦士の幽霊とアポストロスに牙を剥く。

「反撃を! 迎え撃つのです!」
 アポストロスは自ら同胞達の指揮を執って反撃するよう命じるが、撃ち返された銃弾がガイオウガの眷属を撃ち抜いても、炎でできた獣や竜の群れの勢いが弱まることはない。
「生憎、銃なんて効かないわ。炎の獣も竜の炎も生物ではないもの」
 これらは全てガイオウガの力の一部であり炎そのもの。弾丸を受けても火の粉が散るだけで、致命傷になるような器官がそもそも存在しない。炎そのものを吹き飛ばすような圧倒的な火力があれば別だが――束は多くとも火縄銃では、そんな威力も見込めなかった。

「この世界から失せなさい、侵略者」
 炎の眷属に敵群を焼き払わせながら、酷薄に告げるフレミア。徐にゆっくりと振り上げられたガイオウガの尾が、超高熱の溶岩流に変わり――一切の慈悲なく叩きつけられる。
 大地を消滅させる程の【垓王牙溶岩流】に薙ぎ払われたガレオン船と幽霊は、ジュッと音を立てて跡形もなく焼滅し。アポストロスもまた慌てて身を翻すも、規格外の巨体からなる一撃を避けきることは叶わなかった。
「――――!!!!!」
 溶岩流に呑まれたアポストロスの片腕は炭化し、言葉にならない苦痛の悲鳴が上がる。
 偽りの教義にて人々を洗脳しようとした罪、吸血姫の怒りに触れた罪を、彼はその身をもって裁かれることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
貴方の救済なんて誰も望まない…。
生きる事が悪なんて、死が救いなんて…そんなものは救いでもなんでもない…!

【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!
無限の終焉の魔剣を顕現させ、敵本体及び聖戦士やガレオン船に向けて一斉斉射…。
そのまま船を侵食・崩壊させ、騎士達も殲滅するよ…。

火縄銃は一発事に装填等の手間が掛かるのが欠点…。
更に騎士達は有限だけど、わたしの魔剣は無限…。
貴方に勝ち目は無いよ…。

敵の船を沈めたら、呪力の縛鎖で敵及び野心の獣を拘束…。

凶太刀の高速化と神速の二重加速で一気に接近し、凶太刀と神太刀の二刀で攻撃…。
侵略蔵書を斬り破り、その身体を斬り捨てさせて貰うよ…

貴方に故郷を踏み荒らさせはしない…!



「貴方の救済なんて誰も望まない……」
 刃のような鋭い眼差しをブラザー・アポストロスに向け、二本の妖刀を構えるは璃奈。
 この世界を、そして誰かの命を救うために戦いに身を投じる彼女にとって、かの猟書家の教義は決して許すまじきものだった。
「生きる事が悪なんて、死が救いなんて……そんなものは救いでもなんでもない……!」
 そのような教えで人々を洗脳し、死へと追いやろうとした報いは絶対に受けてもらう。
 怒れる魔剣の巫女の身体からは莫大な呪力が放たれ、周囲に無数の魔剣が展開される。

「封印解放……!」
 【九尾化・魔剣の媛神】の封を解いた璃奈は九尾の妖狐に変身し、顕現させた無限の魔剣の切っ先を敵に向ける。対するアポストロスは侵略蔵書を手に迎え撃つ構えを取った。
「来たれ我らが同胞よ!」
 呼びかけに応じて再び召喚されるのは数百名の聖戦士の幽霊を乗せた巨大ガレオン船。
 火縄銃で武装した彼らは銃口を目前にいる妖狐の少女に向けて、一斉射撃を開始した。

「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……!」
 璃奈の詠唱と共に、展開された魔剣は矢のように放たれ、降りしきる銃弾を迎え撃つ。
 万象に終わりをもたらす"終焉"の力を秘めた魔剣は、弾丸を撃ち落とすのみの留まらず射手である聖戦士の霊体をも切り裂く。敵も撃ち負けるまいと次弾を装填しては引き金を引くが、最初の斉射から次の斉射までの間には大きなラグがあった。
「火縄銃は一発事に装填等の手間が掛かるのが欠点……。更に騎士達は有限だけど、わたしの魔剣は無限……」
 敵軍の武装の特性とその弱点を、璃奈は冷静に把握していた。弾込めを行っている無防備な時間を狙われたアポストロスの同胞は、終焉の魔剣に貫かれて次々と消滅していく。
 兵数が少なくなれば必然的に次の斉射の規模も小さくなり、無限に続く魔剣の斉射にやがて対抗し切れなくなる。船体や甲板、マストに突き刺さった魔剣は込められた呪力でガレオン船を侵食・崩壊させ、寄る辺を失った聖戦士の幽霊も一人残らず殲滅されていく。

「貴方に勝ち目は無いよ……」
「くっ……いいえ、まだです……!」
 想定を超えた力でガレオン船を沈められたアポストロスは苦虫を噛み潰したような顔をしつつ、侵略蔵書のページを捲り新たな配下を召喚しようとする。だがその瞬間、璃奈は呪力の縛鎖を放って、蔵書から飛び出した「野心の獣」とアポストロス本人を拘束する。
「ぐお……ッ?!」
 獣の爪牙が鎖を引き裂くまでの数秒の間。その隙に魔剣の巫女は手にした妖刀の片割れ――九尾乃凶太刀の呪力によって加速し、稲妻の如きスピードでアポストロスに迫った。

「貴方に故郷を踏み荒らさせはしない……!」
 揺るぎなき決意を込めて振るわれた妖刀の斬撃が、捕らわれの獣を微塵に斬り伏せる。
 媛神の封印解放によって璃奈が得たのは神速の剣技。そこに凶太刀の加速が重なることで彼女の剣速は何者にも捉えられぬ域へと達し、刹那のうちに無数の斬光を描いた。
「があぁぁぁ……ッ!!!!?!」
 凶太刀と神太刀――魔剣の巫女が愛用する二刀による超神速の連撃によって斬り捨てられるアポストロス。全身から噴水のように鮮血を噴き出し、悲鳴を上げながら崩れ落ちた彼の手には、同時に斬り破られ表紙がズタズタになった侵略蔵書があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「この世界にあんたの言うような神仏はいないし加えさせないっす」

破戒僧に今回の戦法に有利な地形を聞き、【地形の利用】し戦うっす

敵の攻撃は【見切り】で回避っす
【化術】で真の姿っぽく巨大狸(ユベコと同じ姿)に変化。煙の一部を【残像】にかく乱っす

「魔剣解放っす!」
『空亡・蒼』を【化術】でユベコに見せかけ侵略蔵書に氷の【属性攻撃】【串刺し】っす

「巨大手裏剣っす!」
手裏剣を【化術】でユベコに見せかけ侵略蔵書に【投擲】【貫通攻撃】っす

このように侵略蔵書の破壊が目的と誤認させ、ユベコで巨大狸に変化し【化術】と【演技】でそれを隠蔽、本狙いと見せかけたままストールで本体に【だまし討ち】の【なぎ払い】で【暗殺】っす



「この世界にあんたの言うような神仏はいないし加えさせないっす」
 生きることが悪であり「死」こそが唯一の救済であると説くブラザー・アポストロス。
 そんな神は不要だときっぱりと告げ、衣更着はストールを風になびかせ敵と対峙する。
(ここなら有利に立ち回れるはずっす)
 彼は予め破戒僧に今回の作戦を伝え、それに適した地形――巨体で動けるスペースのある場所を聞き、そこに敵がやって来るのを待っていた。味方の猟兵との戦闘によって深手を負った敵将に、休む暇は与えまいと、まずは得意の化術を使った攪乱戦法を仕掛ける。

「行くっすよ!」
「む、なんですかこのケダモノは?」
 ドロンと煙を上げて飛び出してきた巨大な狸を見て、アポストロスは眉をひそめながら侵略蔵書より魔力弾を放つ。対する衣更着(大狸変化モード)は変化時に生じた妖怪煙に紛れて残像を起こし、弾道を見切って回避する。
「魔剣解放っす!」
 大狸の手で器用に構えるのは試作魔剣『空亡・蒼』。高らかな宣言と共にその刀身は氷の妖力を纏い、煙幕の中から突き放たれた切っ先はアポストロスの持つ侵略蔵書を狙う。
 敵は寸でのところで攻撃を察知すると、さっと本を畳んで串刺しにされるのを避ける。だが衣更着はそれで諦めることなく、今度は懐から取り出した忍者手裏剣を投げつける。

「巨大手裏剣っす!」
 化術をかけた手裏剣は、衣更着の手から放れるなり巨大化する。攻撃のたびに逐一技名のように何かを叫ぶのは、それらを此方のユーベルコードだと誤認させる狙いがあった。
「面妖な技を使う獣ですね……報いを受けよ、愚かなる者!」
 果たして判断を誤ったアポストロスは、傷ついた侵略蔵書の表紙を盾にして巨大手裏剣を受け止めようとする。だがそれはあくまで化術による演出を加えられただけ――対象のユーベルコードをコピーする効果は発生せず、手裏剣の刃が深々と本に突き刺さる。

「これは……違う?!」
 攻撃を受けてみて初めて、それがユーベルコードではないことを悟ったアポストロス。
 衣更着は巨大狸の姿のままにやっと笑ってみせると、魔剣を振りかざして斬り掛かる。
「串刺しにしてやるっす!」
「くっ、やらせはしません!」
 侵略蔵書は猟書家にとって重要なアイテムでありアポストロスの術の起点でもある。コピーできない攻撃を敢えて受ける理由はなく、これ以上蔵書を傷つけさせまいと避ける。
 だが――実と見せかけて虚、虚と見せかけて実を巧みに入れ替えるのが化かしの真髄。最初は見た目を化術と演技力で真の姿に寄せただけだった衣更着の変化は、いつの間にか【トリプルどろんチェンジ】による戦闘力強化を伴った変化に切り替わっていた。

「隙ありっす!」
 魔剣でまた本を狙うと見せかけて、放つは首に巻いた「打綿狸の綿ストール」の一撃。
 今度こそ正真正銘ユーベルコードで強化された攻撃が、蔵書の安全を気にするあまり疎かになっていたアポストロス本人のどてっ腹に叩きつけられた。
「ご、ふッ?!!」
 手の込んだだまし討ちに見事騙された猟書家は、衝撃に耐えきれずに吹き飛ばされる。
 ――死の教義で民衆を騙してきた男が、妖怪に化かされるというのも、また因果応報の末路だろう。彼がこの交戦で負った痛手は、けして浅からぬものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨナルデ・パズトーリ
はっ、相変わらずの寝言よな
最早囀ずるな
貴様は存在するだけで生への冒涜!
疾く消え失せよ!!

UC即発動

魔法は原則『高速詠唱』で『範囲攻撃』
『先制攻撃』で『破魔』の力を込めた吹雪の如き氷雪『属性攻撃』『全力魔法』の『乱れ討ち』で視界を遮り『目潰し』
其のまま『存在感』を消し『目立たない』様にし逆に『存在感』と『殺気』を持たせた『残像』を複数放ち撹乱

ボスの元へ向かうのに邪魔な亡霊は『破魔』の力を込めた斧で『なぎ払い』つつ高速飛行の『空中戦』でボスに肉薄
『怪力』による『鎧無視攻撃』を放ち間髪入れず『神罰』の雷『属性攻撃』『全力魔法』を『傷口をえぐる』様に『零距離射撃』で放つ『二回攻撃』をぶちかます



「はっ、相変わらずの寝言よな」
 以前にも別の依頼でこの猟書家と対峙した事のあるヨナルデは、生きる事が罪だとのたまうブラザー・アポストロスの"教義"を、心底愚かしいと言わんばかりに吐き捨てた。
 先のコルテスといい、渡来人共の言動はどうにも彼女の神経を逆撫でするらしい。決して相容れない者への怒りを込めて、メキシコの古き神は【第一之太陽再臨】を発動する。
「最早囀ずるな、貴様は存在するだけで生への冒涜! 疾く消え失せよ!!」
 ジャガーの鎧を纏った女神が黒曜石の斧を振るうと、その斬圧は破魔の力を宿した吹雪の如き氷雪の嵐となって戦場に吹き荒れる。一足早く真冬が訪れたかのような猛威は、たちまち敵の視界を真っ白に塗り潰した。

「異教の邪神如きが、我らの神の御心を妨げますか。来たれ我らが同胞よ!」
 アポストロスは本の表紙で目を覆いながらユーベルコードを発動し、配下を乗せたガレオン船を召喚する。しかしこの吹雪の渦中では聖戦士達も火縄銃の照準を定められない。あまりの寒気に指先はかじかみ、火縄を消さないよう努めるだけでも必死という有様だ。
 その隙にヨナルデは存在感を消して目立たないよう氷雪に身を潜めながら、自らの殺気を込めた残像を複数放つ。一面の雪景色の中にちらつく像の存在感に敵軍は気を取られ、反射的に引き金を引いた。
『い、異教徒に死を!』
 ダァンと銃声と共に放たれた弾丸は、雪の中に映った虚像のみを射抜き。まんまと敵が撹乱されている内に、ヨナルデ本人は血骨の翼を羽ばたかせ、音もなく敵将に接近する。

「邪魔じゃ」
 標的の元へ向かう途中に立つ亡霊は、破魔の力を込めた戦斧で木っ端の如くなぎ払う。
 闇と月の神であると同時に死を司る神でもあるヨナルデに対して、凡百な死者の群れなど足止めにすらならない。雪風に乗って空を翔ける死神は、この吹雪の中にあっても標的を見逃すことなく、最短かつ最速でアポストロスに肉薄する。
「さあ、覚悟致せ」
「ッ!?」
 忍び寄る"死"そのもののように、いつの間にか目前にいたヨナルデの一斬を、アポストロスは侵略蔵書で受け止めようとした。だが時空をも揺るがす魔力を秘めた黒曜石の戦斧はその程度の護りなどものともせず、肩口から袈裟懸けに邪教の宣教師を斬り伏せた。

「ごは……ッ!!」
 幼い少女の外見からは思いもよらぬ重い斬撃を受け、たまらず膝をつくアポストロス。
 ヨナルデはそこに間髪入れず、触れられるほどの零距離から斧の柄を握りしめ。黒曜石の刃にバチリッと紫電が爆ぜたかと思うと、全力の神威を込めた雷撃がぶちかまされた。
「疾く滅びよ、愚か者めが!」
「ご、がぁッ―――!!!」
 古来より雷とは神の怒りにして神罰の象徴。戦斧の傷を抉るように体内へと流れ込んだ電撃は、愚かなる者の肉体を内外から血肉と臓腑を焼き焦がす。想像を絶する激痛に、アポストロスはのたうち回りながら苦悶の絶叫を上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
死の救済そのものは否定せん。
だがそれは重い言葉であるべきだ。
貴様のような生の意義も見出だせん軽薄な輩が騙ったところで三文芝居にもならん。

UC【黒騎士呑み込む青き業火】。
敵UCが繰り出す野心の獣の動きを【見切り】【カウンター】、
【グラップル】で組み付きそのまま燃える鉛に変換。

どうした、次を出せ。満足な答えを得るまで、なのだろう?

片っ端から吸収・【蹂躙】を続け十分に接敵次第、
【限界突破】した戦闘能力をもって大剣で斬りかかる。

僅かな町民が耳を傾けたのは、塵が地を擦る音がそう聞こえただけの、風の悪戯だ。

貴様という塵屑は、誰の記憶にも残らずこの青炎に消えるがいい。



「死の救済そのものは否定せん。だがそれは重い言葉であるべきだ」
 死せる主の魂を鎧を身に宿し、過酷な世界の現実を目に焼き付けてきた者として、ルパートはアポストロスの教義を否定する。死によって救われる者は確かにいる、しかしそれは一条の光さえ差さぬ程の絶望的な生から脱するための、最後の救済と言うべきものだ。
「貴様のような生の意義も見出だせん軽薄な輩が騙ったところで三文芝居にもならん」
 ごく自然に暮らし、当たり前に悩み、何事もなく生きていく者の生すらも一概に「悪」と断じ、のべつ幕なしに"死"をもたらさんとする男の虚言に、なんの救いがあるのか。
 内なる憤りを体現するように、黒騎士の鎧から溢れ出た鉛が青い炎を燃え上がらせる。

「おお、罪深き者達に慈悲は届きませんか。ならばせめて悔悟なさい。己が罪を打ち明けた時、貴方は生の苦痛から逃れられるでしょう」
 嘆かわしいとばかりに天を仰いだアポストロスの侵略蔵書から、禍々しい「野心の獣」が喚び出される。それは召喚主が問いを放った相手に襲い掛かり、主の満足のいく答えを口に出させるまで、延々とその爪牙で"罪人"を苛み続ける、無慈悲なる拷問吏である。
「貴様如きに語って聞かせてやるほど、自分の罪は安くはない」
 対するルパートは冷然とした態度で、繰り出される獣の動きを見切り、距離を詰めた。
 剣の間合いよりも内、爪牙の間合いよりもさらに内。文字通りに肉迫すると黒鋼の両腕で獣の体躯に組み付き、そのまま【黒騎士呑み込む青き業火】の力を発動させる。

「我が血はもはや栄光なく……されど未だ我が業と炎は消えず……!」
「グ、ギガ……ッ?!」
 ルパートに組み付かれた獣の肉体がどろりと溶け、鎧から流れ出すのと同じ燃える鉛に変わっていく。それは黒騎士としての生命力吸収・再生能力のオーバーフロー――接触した物質や生命体を鉛に変換して身に纏うことで、彼の戦闘能力は爆発的に増大する。
「どうした、次を出せ。満足な答えを得るまで、なのだろう?」
 血の一滴も余すことなく、一頭分を丸ごと鉛に変えてみせた彼は、その分だけ体積を増しながら敵を挑発する。回答を拒んだ以上、アポストロスのユーベルコードはまだ継続している――果たして侵略蔵書からは新たな野心の獣が現れ、同じようにルパートを襲う。

「私の獣を、喰らっている……!?」
 何頭現れたところで結果は同じだった。襲来する獣のことごとくをルパートは蹂躙し、吸収して自らの力に換える。膨大な量の燃える鉛を纏ったその形態は異形感を増し、さながら魔王のような怖ろしくも雄々しい姿となって、アポストロスとの距離を詰めていく。
「と、止まりなさい……!」
 焦りを表情に浮かべながら男が発した制止の声など、もはや何の力もない。ずしりと地面を軋ませ、威圧感で大気を震わせながら、ヤドリガミの黒騎士は鉛滴る大剣を構える。

「僅かな町民が耳を傾けたのは、塵が地を擦る音がそう聞こえただけの、風の悪戯だ」
 アポストロスの説法を世迷言と断じると、ルパートは十分に距離を詰め次第、それまでの悠然とした態度から一転して嵐のように斬りかかった。大量の鉛を得たことで限界を超えたその戦闘力は絶大であり――大剣が振るわれる瞬間を、敵は目視さえ叶わなかった。
「貴様という塵屑は、誰の記憶にも残らずこの青炎に消えるがいい」
 塵芥を払うかのような無造作な一閃。青く燃える鉛を纏った斬撃が標的を焼き焦がす。
 反射的にアポストロスが取った防御など、なんの意味も持たなかった。吹き飛ばされたその身は青炎に包まれながらくるくると宙を舞い、塵屑のように地面に叩きつけられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
エンパイアウォー当時、弥助・アレキサンダーは洗脳の非道を持って戦力を確保しておりました
ですが、あの男には主君への忠義という覚悟があり、友想う意志がありました

……彼らと違い死を救済と捉えるその思考、騎士として許容出来ません

救済など無用
悔悟も罪も我が身の内に
彼らと同じく、骸の海に沈んで頂きます

野心の獣の爪牙を剣と盾で捌きながら近接戦闘
格納銃器の●乱れ撃ちも時折アポストロスに向けながら彼らの注意を牽き付けてゆきます

地理に精通した破戒僧の方が侵略蔵書狙いで●不意打ちしやすいように

成否に関わらず注意が逸れた野心の獣をUCで拘束

私か貴方か…どちらの野心の重さでしょうね?

鉄球宜しくアポストロスへ叩きつけ



「エンパイアウォー当時、弥助・アレキサンダーは洗脳の非道を持って戦力を確保しておりました」
 渡来人の至宝「メガリス」を用いた、さる魔軍将の非道な行いをトリテレイアは語る。
 主君・織田信長に勝利を齎すため、いかなる手段も辞さなかった『大帝剣』弥助アレキサンダー。今回の猟書家も、勝利のために民衆を洗脳するという点は彼と似通っている。
「ですが、あの男には主君への忠義という覚悟があり、友想う意志がありました」
 全ては信長様の為に――その一念を以て同士と共に忠義に殉じたかの者の有り方は、手段を容認することはできないものの、騎士として敬意を払うに値する傑物であった。翻って今、目の前に立つこの男はどうか。死せる魔軍将の魂すらも利用し、自らは手を汚さずして勝利を収めんとした、猟書家ブラザー・アポストロスは敬意に値する相手だろうか。

「……彼らと違い死を救済と捉えるその思考、騎士として許容出来ません」
「誰も彼も、私の教えを理解しない愚か者ばかり……」
 拒絶と敵意を込めたトリテレイアの言葉に、アポストロスは苦々しげに歯噛みを返す。
 町民全員が洗脳されるまで待てばいいだけだった筈の戦いは、猟兵の介入によって窮地に追い込まれている。深手を負った男はボロボロになった蔵書を広げて、問いを発する。
「何故そうまでして生きるという罪を重ねるのです。悔悟せよ、汝罪深き者!」
 蔵書の中から現れた野心の獣は、牙を剥き出しにして獲物に飛びかかる。対するトリテレイアは儀礼剣と大盾を構え、獣の爪牙を捌きながら格納銃器の銃口を敵本体に向ける。

「救済など無用。悔悟も罪も我が身の内に」
 頭部や肩部等から覗いた幾つもの銃口が、鉛弾の乱れ撃ちをアポストロスに浴びせる。
 獣との近接戦闘の合間に放たれたそれは密度も威力もさほどの物ではない。手負いとはいえ幹部クラスの猟書家を仕留めるには至らないだろう。この場は注意を引ければ十分。
「彼らと同じく、骸の海に沈んで頂きます」
「何を。この程度の攻撃で私を倒せるとでも?」
 アポストロスは距離を取って銃撃を避けながら、攻撃は野心の獣に任せる構えだ。自らの安全を第一とした堅実な戦法と言えるだろう――が、それは獣と召喚主の距離が離れ、孤立した状態になることも意味する。

「そこじゃい!!」
 その機を突いて不意打ちを挑んだのは、この町に猟兵を呼び寄せたあの破戒僧だった。
 町の地理に精通した彼は、物陰に潜んでずっと機会を待っていたのだ。唸る剛拳が狙うのは侵略蔵書、機械騎士のほうに意識を向けていたアポストロスはこれに反応が遅れる。
「なっ?! しまった……!」
 侵略蔵書が手から放れ、アポストロスの顔に焦りが浮かぶ。思わぬ奇襲を受けた直後の敵の警戒は破戒僧に向けられ、トリテレイアへの注意が一時的に逸れる。その間隙を見逃す彼ではなく、すかさず【両腰部稼働装甲格納型 隠し腕(通常拘束モード)】が動く。

「少し大人しくして頂きます」
『グルルッ?!』
 蛇のようにしなるワイヤ制御式の隠し腕は、目前にいた野心の獣を捕らえると高圧電流を流し込む。感電により目標を拘束したところで、トリテレイアは"それ"をぐいと持ち上げると、まるでハンマー投げの競技のように大きく振り回した。
「な……ま、待ちなさいっ」
 彼が何をするつもりか察したアポストロスが慌てて叫んだところで、もう遅かった。勢いの乗った魔獣はぶぉんと風を切って放り投げられ、召喚主の元へ勢いよく飛んでいく。

「私か貴方か……どちらの野心の重さでしょうね?」
 機械仕掛けの騎士が嘯くのと同時、鉄球よろしく叩きつけられた野心の獣は、狙い過たずにアポストロスを押し潰した。獣の質量を受けた男は「ぐえッ」と短い悲鳴を上げる。
 いかにも聖職者然とした格好と振る舞いの裏に、いかなる野心を秘めていたのかは分からないが――彼が受けたのはまさしく己の業の報いと言うべきものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リダン・ムグルエギ
ニコ(f02123)、よくやったわ
いざ行かん、親父狩リダン!

今回の作戦は説法の無力化
倒す事ではなく、町民洗脳被害の恒久的0化が目的よ

ステキなおじ様に甦りの騎士様
香辛料たっぷり美味しい熊鍋とステキな花束はいかが?
生きる喜びを楽しんじゃいましょ

ニコの商品と催眠コードの力で彼らの思想を無力化
「生きる喜びを楽しもう」的宴会ブームを仕掛け
彼らに戒律を破らせちゃうわ
真の救済は生きて楽しむ事よね

集合写真も撮りましょ
ハイチーズ!

生草坊主発言や両手の花でデレデレしてる写真が口コミで広まったら
もうこの町で説法は無理よね

銃撃されても防具改造済車両の影でやり過ごしましょ

イケオジ写真、後で焼き増ししちゃおっと(ホクホク


ニコリネ・ユーリカ
隊長(f03694)!
前方にイケオジ発見!
粛然とした黒身の長躯にイケボ
近付いちゃダメな気がします!

死の思想と熊の襲撃で町が揺らいでは大変
土地勘のある破戒僧さんに町民の保護をお頼みします
貴方の教えで人々をお守り下さい

私はブラザーの同胞に働きかけを
火縄銃を構える聖戦士に向かって【ProSEEDs】!

冬の季節にポインセチアは如何かしら
鮮やかな真紅の花が心を温めてくれる筈
くつくつ煮立った熊鍋もあるの
美味しいですよーお腹の中から温まりますよー
死こそ至高だなんて、せめてX'masまでは生きてみません?(えがお)

私も商人だもの
イケオジの口説き文句に負けない
火縄銃とガレオン船の攻撃を止めて、町を護ってみせる!



「隊長! 前方にイケオジ発見!」
 立ちはだかる敵将ブラザー・アポストロスを見るなり、そう叫ぶのはニコリネだった。
 黒いカソックに身を包み、穏やかな笑みを口元にたたえたその男は、容姿だけ言うなら確かにナイスミドルだった。その中身については言うまでもなく邪悪そのものだが。
「粛然とした黒身の長躯にイケボ。近付いちゃダメな気がします!」
「ニコ、よくやったわ。いざ行かん、親父狩リダン!」
 ニコリネの報告を受けた隊長ことリダンはぐっとサムズアップすると、意気揚々と敵将に挑む。あれを放置すればいずれ町民全員が洗脳され、"救済"の名のもとに死が下されるだろう。個人的な趣味を抜きにしても放ってはおけない相手だ。

「今回の作戦は説法の無力化。倒す事ではなく、町民洗脳被害の恒久的0化が目的よ」
「了解です隊長。死の思想と熊の襲撃で町が揺らいでは大変ですものね」
 せっかくコルテス熊による被害をゼロに抑えたのに、ここで仕損じて被害を出すわけにはいかないと協力して敵の計画を挫きにかかる二人。そのための作戦はもちろん万全だ。
「破戒僧さんには町民の保護をお頼みします。貴方の教えで人々をお守り下さい」
「戒律を破った物臭坊主の説法がどれだけ響くかは知らんが、ま、やってみるかね」
 土地勘のある破戒僧に町民の安全確保を任せて、ニコリネとリダンは敵軍と対峙する。

「次から次へと邪魔者共めが……来たれ我が同胞よ!」
 これまでの戦いにより重傷を負ったアポストロスは、配下を乗せたガレオン船を召喚して自身の警護に当たらせる。甲板上から身を乗り出した数百人もの聖戦士の幽霊達は、主の教えを妨害する"異教徒"に向けて火縄銃を構えた。
『愚かなる者に死の救済を……』
 アポストロスの思想に染まった彼らは敵意全開だが、対する二人は平然とした様子で、戦いに来たとは思えないほど朗らかな態度と笑顔で、各々のユーベルコードを発動する。

「ステキなおじ様に甦りの騎士様。香辛料たっぷり美味しい熊鍋とステキな花束はいかが?」
 そんな宣伝文句からリダンが発動するのは【トレンドブレイカー・GOATia】。どどんと用意されたのはぐつぐつとよく煮えている大きな鍋――ひょっとしなくても先刻、コルテス熊の群れが放り込まれたあの鍋である。
「冬の季節にポインセチアは如何かしら。鮮やかな真紅の花が心を温めてくれる筈」
 隊長の口上に合わせてニコリネも【ProSEEDs】を発動、本業である花売りとしての口上を述べて、移動販売車の中から美しく咲き誇るポインセチアの花束を持ってきて見せる。
 戦いの最中に何を――と本来なら思う所だろうが、ユーベルコードの域に達した彼女達の宣伝は催眠的な効果をもって対象の感情を強く揺さぶり購買意欲をかき立てる。今にも引き金を引きそうにしていたガレオン船の聖戦士達が、その瞬間ピタリと動きを止めた。

「くつくつ煮立った熊鍋もあるの。美味しいですよーお腹の中から温まりますよー」
 ニコリネは花束を置いてお玉を取ると、よく煮えて柔らかくなった熊肉をお汁や野菜と一緒に器によそう。ふっと香り立つおいしそうな匂いに、誰かがごくりと生唾を飲んだ。
「死こそ至高だなんて、せめてX'masまでは生きてみません?」
「生きる喜びを楽しんじゃいましょ」
 花のような微笑みに合わせて、リダンもぺらぺらとよく回る舌で商品をアピールする。
 本職はファッションデザイナーとして、新たな流行を生み出す側の人物である彼女は、ここに「生きる喜びを楽しもう」という宴会ブームを仕掛けることで、アポストロスが騙る「生きることは罪」「死こそが救済」という思想を無力化させようとしているのだ。
「お、お前達、何を心を乱されているのですか!」
 花と熊鍋の魅力に心揺さぶられている同胞達を、慌てて叱責するアポストロス。しかしそういう彼自身もまた膨れ上がる購買欲に抗いきれず、商品をチラ見しまくりであった。
 もう銃撃は飛んでこないだろうと判断した二人は、防弾仕様に改造した車両の側から離れ、直接本日の"お客"達に商品を売り込みにかかる。

(私も商人だもの、イケオジの口説き文句に負けない。攻撃を止めて、町を護ってみせる!)
 商人としてのプライドと猟兵としての使命感を秘めて、自慢の花束を敵の前でアピールするニコリネ。シンフォニアならではの美声から紡がれる営業トークも相まって、彼女の宣伝は死せる者達にすら生きていた頃の欲を思い起こさせる。
「真の救済は生きて楽しむ事よね」
 そこにリダンがずいっと熊鍋を差し出せば、とうとう自制心の決壊した幽霊達は火縄銃を放り出し、船から降りるとなけなしの銭を握りしめて「一杯くれよ!」と叫びだした。
 こうなってはもうアポストロスが何を言ったところで効果はない。真っ赤なポインセチアの花に囲まれて、聖戦士達による盛大な熊鍋パーティが始まってしまった。

「まったくお前達は……こんな敵の作ったものを口にするなんて……(もぐもぐ)」
「そう言いながらあなたも食べてるじゃない」
 いつの間にやらアポストロス自身も配下に紛れて熊鍋を突っついている。それを見たリダンににんまり指摘された彼は、うぉっほんとバツが悪そうに咳払いしつつ目を逸らす。
「ま、まあ……時には英気を養うのも必要でしょう。我々には民を教え導く使命がありますから」
「はいはい、じゃあそういうことで。集合写真も撮りましょ」
 リダンはひょいと録画編集機能付きスマホ「万魔電」を取り出すと、ニコリネも呼んで左右からアポストロスを挟む。まさに両手に花といった構図をしっかり画面に納め――。
「ハイチーズ!」
 カシャリという電子音と共に、欲に負けたアポストロスの姿は動かぬ証拠として記録された。その写真はブームの仕掛け人の手によって町民に伝えられ、たちまち口コミで町中に広まっていく。

(もうこの町で説法は無理よね)
 これだけの醜態が広まってしまえば、どんなに真面目くさって「死が救済」だのと唱えても滑稽にしかならないだろう。物欲パワーでアポストロスの威厳と説得力を失墜させるという、リダンとニコリネの作戦は見事に成功をおさめたのだった。
「隊長、もうお鍋が空っぽです! お花もあと少ししかありません!」
「あらほんと? じゃあそろそろ撤退よニコ!」
 そこに飛び込んできたニコリネからの報告。プロ二人による過剰なまでの宣伝によってあまりに商品が売れすぎたためか、気付けば在庫は切れかけ寸前。このままでは死んでしまう――とリダンは急いでユーベルコードを解除し、敵が満腹の隙に販売車に飛び込む。

「イケオジ写真、後で焼き増ししちゃおっと」
「確り稼がせてもらったわ! ありがと!」
 画像の映ったスマホを抱えてホクホク笑顔のリダンと、操縦席から聖戦士達にニッコリ手を振るニコリネ。それぞれの本分と目的を存分に果たした二人は、満足げな表情で去っていった――空っぽになったお鍋と、紅いポインセチアの花束だけを戦場に残して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
遅かったな、空き巣が趣味のペテン師野郎
クルセイダーどもは揃いも揃って、無謀で、無知で、愚かなカスしかいねぇのか?
自殺が趣味だって正直に言ってみろ

…なるほど、これがお前のガレオン船か
破戒僧殿、ちょっとでいいからあのカスペテン師をちと抑えててくれ
何するかって?なに、ちょっとした『皮肉』ってやつだよ
──解析開始
構成情報を把握、複製実行、管理者権限を変更
それでは始めようか…一方的な嬲り殺しをな
奴が呼び出したガレオンが──470隻
聖戦士の数は総勢、22万と900人
総員射撃用意──消し飛ばせ

テメェらの信仰も、忠誠も、大義も、希望も何かも
無意味で、無駄で、無価値だ
骸の海の果てまで、それを思い知れ…カスどもが



「遅かったな、空き巣が趣味のペテン師野郎」
 ようやく対峙を果たした敵将アポストロスに、ヴィクティムは敵意と侮蔑を隠さない。
 生きることが「悪」だの、死の教唆が「救済」だの、この宣教師面した男が語る教義は何から何まで、ふざけたペテン師の世迷い言としか思えなかった。
「クルセイダーどもは揃いも揃って、無謀で、無知で、愚かなカスしかいねぇのか? 自殺が趣味だって正直に言ってみろ」
 さも正義の聖人のような振る舞いで恥ずかしげもなく悪びれもしない、その傲慢さは余程彼の癪に障ったのか、いつにも増して彼の言動は辛辣だった。機関銃のように放たれる罵倒に、さすがのアポストロスも鼻白む。

「愚かな異教徒を教化するのは、やはり難しいようですね……来たれ我らが同胞よ」
 洗脳の猶予はないと判断したアポストロスは、強制的に猟兵達を"救済"するために、またも配下を呼び寄せる。数百名の兵力を乗せた巨大な船が虚空より姿を現し、火縄銃で武装した聖戦士が甲板上から銃口を向けた。
「……なるほど、これがお前のガレオン船か」
 しかしヴィクティムはレトロな銃をいくつ向けられても動じることはなく、逆に何かを思いついた様子で口元を歪めた。ユーベルコードのプログラムを起動させながら、近くにいる破戒僧に声をかける。
「破戒僧殿、ちょっとでいいからあのカスペテン師をちと抑えててくれ」
「む? 構わんが、一体何をするつもりさね?」
「なに、ちょっとした『皮肉』ってやつだよ」
 その酷薄な表情に秘策ありと受け取った破戒僧は「承知した」と頷き、拳を固めてアポストロスに挑み掛かる。猟兵ではない彼が猟書家を抑えていられる時間はそう長くはないだろう――ヴィクティムはその間に迅速に【Program:『Dead Copy』】を発動させる。

「──解析開始。構成情報を把握、複製実行、管理者権限を変更」
 神秘と超常を01に置き換えるロジックが、標的とした事象を解析・模倣・再現する。
 ヴィクティムが使ったのは彼の周囲で発生したユーベルコードを複製するプログラム。それによって敵が召喚したガレオン船を、搭乗する兵士や武装まで含めて我が物とする。
「それでは始めようか……一方的な嬲り殺しをな」
 一度オリジナルの解析が完了すれば、あとはコピー&ペーストの要領でそれを量産するのは彼にとって造作もない。パチンと指を鳴らすと共に現れたのは、アポストロスが呼び出したのとそっくり同じ見た目のガレオン船――その数470隻。

「な……っ?!」
「こりゃあ驚いた……!」
 突如虚空より出現した大船団を目の当たりにして、アポストロスは元より抑えに回っていた破戒僧までもが目を丸くする。精度面においてはデッドコピーと言うべき急拵えの品だが、こと攻撃性能においては1隻ずつがオリジナルと遜色のない性能を誇っている。
「総員射撃用意──消し飛ばせ」
 ヴィクティムの号令の下、複製された聖戦士の亡霊が火縄銃を構える。その数は総勢で22万と900人。圧倒的な数の暴力による集中砲火が、アポストロスただ一人を襲う。
 その瞬間、轟く銃声はまるで雷雨のように、戦場からありとあらゆる音をかき消した。

「―――!!!」
 アポストロスは自身のガレオン船に隠れるが、たった1隻で470隻の攻撃に耐えきれるはずもない。またたく間に破壊された船体の風穴から、突き抜けた銃弾が彼を射抜く。
「テメェらの信仰も、忠誠も、大義も、希望も何かも。無意味で、無駄で、無価値だ」
 鳴り止まない銃声の中でヴィクティムは告げる。弾丸よりも冷たく容赦のない言葉を。
 彼が率いる船団の砲火は苛烈を極めていた。塵芥や血痕一つ残すまいとするように、あるいはその存在そのものを否定するかのように。
「骸の海の果てまで、それを思い知れ……カスどもが」
「ぐ、おぉぉ……っ、よくも……!!!」
 ヴィクティムの皮肉な意趣返しはアポストロスに深手を負わせ、配下共を消し去った。
 戦いの趨勢は決まりつつあり、邪教を騙る猟書家の命運は、今や風前の灯火であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
匡さん/f01612と

あなたに教わることなど何もありません。
悔悟することだって。
生ある事が愚かだと謳う宗教こそ、この世界に必要ないんですよ。
さあ、実践の時間です。
ここで速やかに、何も為さずに滅んでいきなさい。

狙うはアポストロスの首ひとつ。
最短距離の直線経路だけを見て走ります。
余分な力は使わない。
他に目を向けることもしない。
なぜなら、わたくしより銃弾の方が先に辿り着くと知っているから。

信じてますから。
死を乞う宗教より、明日へ向かう心の方が強いって。

追い越していく黒星が獣を殺してしまえば、阻むモノはもう何も無い。
ありがとう匡さん。
歪んだ摂理で蘇った命ごと。
断ち散らし、焼き祓え。──【神業真朱】!


鳴宮・匡
◆穂結(f15297)と


他人の信仰に口を出すつもりはないが
お仕着せされるのは御免だぜ
死が救済だ、なんて言うなら――自分でその教えを体現すればいい

走る穂結と、迫る獣、後方に控えた宣教師の男
全ての動きを見定めて臨む

使い慣れた拳銃から撃ち出すのは影の魔弾
駆け出す背を追い越して、迫る獣を穿つように
――初撃が当たるのはどこだっていい
当たればそれだけで意味を為すものだから

続けて放つ二撃目は、“力”を殺す虚無の影
向かい来る獣がどれだけ強大で、どれだけの脅威であっても
それは“ユーベルコードで作られたもの”だ
殺せない道理はない

――そしてそれが消えれば、道を遮るものはない
断ち切ってやりな、穂結



「あなたに教わることなど何もありません。悔悟することだって」
「他人の信仰に口を出すつもりはないが、お仕着せされるのは御免だぜ」
 生を否定し死を救済と説くアポストロスの教えを、神楽耶と匡は真っ向から拒絶する。
 自分だけで完結しているのであればまだ救いようもあったろう。だがこの猟書家はその教義で無辜の民草を洗脳により皆殺しにしようとしている。断じて許せる所業ではない。
「生ある事が愚かだと謳う宗教こそ、この世界に必要ないんですよ」
「死が救済だ、なんて言うなら――自分でその教えを体現すればいい」
 己の本体である「結ノ太刀」を構えて走りだす神楽耶に、自動拳銃[Stranger]を構える匡。悪しき布教の報いをその身に受けさせようという、二人の意志は一致していた。

「さあ、実践の時間です。ここで速やかに、何も為さずに滅んでいきなさい」
 神楽耶が狙うはアポストロスの首ひとつ。それ以外のものには脇目もふらず、最短距離の直線経路だけを見て戦場を走る。放たれた矢のようなその直進を迎え撃つアポストロスは、ボロボロになった侵略蔵書のページを広げて「野心の獣」を召喚する。
「ああ、なんと嘆かわしい。貴女は自分がどれほど罪深いか理解していないのですか?」
 呼び出された野心の獣は主が問いを放った対象、すなわち神楽耶に猛然と襲い掛かる。
 しかし彼女はそんな明白な脅威にさえ目を向けることもしない。アポストロスの撃破に全力を注ぐために、他に余分な力は使わない――なぜなら、自分より銃弾の方が先に辿り着くと知っているから。

(――初撃が当たるのはどこだっていい。当たればそれだけで意味を為すものだから)
 走る神楽耶と、迫る獣、後方に控えた宣教師の男。全ての動きを見定めて臨むのは匡。
 凪いだ心で落ち着いて狙いを定め、使い慣れた拳銃から撃ち出すのは黒き影の魔弾。遠ざかっていく友の背を追うように放たれたそれは、そのまま追い越して、迫る獣を穿つ。
『グルル……ッ!』
 銃撃を受けた野心の獣が唸り声を上げるが、多少のダメージを与えた程度でその疾走は止められない。同じく進路を変えずにアポストロスに向かって直進する神楽耶と、このまま激突するかに思われたその時――匡は矢継ぎ早に二発目の弾丸を放った。

「殺すぜ、その力ごと」
 一撃目の弾道に沿うように、野心の獣に撃ち込まれた二撃目は"力"を殺す虚無の影。
 向かい来る獣がどれだけ強大で、どれだけの脅威であっても、それがユーベルコードで創られたものであるからには、匡の【虚の黒星】に殺せない道理はなかった。彼の裡に潜む"全てを滅ぼす影"を宿した魔弾は、あらゆるユーベルコードを無効化する。
『ギャゥ――――!!!?!』
 獣の爪牙が神楽耶に突き立てられようとしたまさにその寸前、虚無の魔弾に射抜かれた野心の獣は甲高い悲鳴を上げて消滅する。力も命も、滅びの前では等しく無意味――頼みにしていた眷属をたった2発で殺されたアポストロスは驚愕し、そして神楽耶は微笑む。

「信じてますから。死を乞う宗教より、明日へ向かう心の方が強いって」
 迷いなく敵将に狙いをつけ、それのみに専念できたのも、友の実力を信頼すればこそ。
 追い越していく黒星が獣を殺してしまえば、彼女の行く道を阻むモノはもう何も無い。
 遮るものが消え失せたことで、神楽耶はより一層の力強さをもって戦場を駆け抜ける。
「く、来るな……ッ!」
 アポストロスは慌てて次の配下を召喚しようとするが、それよりも彼女の接近が疾い。
 もっとも何を喚んだところで、次弾を装填済みの匡が控えている以上は、どんな抵抗も無意味に終わっただろうが。

「断ち切ってやりな、穂結」
「ありがとう匡さん」
 後ろにいる友からの声援に背中を押され、疾駆する少女は太刀に炎を宿す。その色合いは黒みのある鈍い赤――一足一刀の間合いに踏み込むのと共に、構えし業は太刀の神髄。
 其は滅びをもたらす因子なれど、今は過去を断つ力として、直刃の如き意志を込めて。

「歪んだ摂理で蘇った命ごと。断ち散らし、焼き祓え。──【神業真朱】!」

 轟、と唸りを上げて放たれた炎の一太刀は、苛烈でありながら見惚れるほどに美しく。
 アポストロスが書を盾とするより速く、一文字に斬り伏せられた身から鮮血が散った。
「かは……ッ!!!」
 太刀の宿神が身につけた技巧の中でも、純粋に切断力を極めたその業は、宣言通り敵に致命傷をもたらしていた。信じられぬといった表情で崩れ落ちたアポストロスの手から、炎に焼かれた侵略蔵書が落ち、広がりゆく血溜まりがそのページを真っ赤に染めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大崎・玉恵
ぶらざー某。死が救いなどとのたまいながら、お主は蘇っておるではないか。何故わざわざ現世に戻った?救いたる安らかな眠りを体現せずして、民がその教義を理解する訳がなかろう。
根本から矛盾しておる。
神たるわしがお主の救いを否定してやろう。

そこな坊主(破戒僧)よ、まだ拳を奮えるかのう?
わしは【式陣・朱天照】の炎に【破魔】の力を込め奴を襲撃する。
銃の戦士もこれで【焼却】できるが、書の表紙が厄介じゃ。
同じ力を使われると焼ききれるとは限らぬ故、わしが奴を攻撃し引き付ける間に煙に乗じ背後に回り奴を打て。
保険として【破魔】の力の【霊符】を渡す。握って殴ればよいことがあろう、本物の神の加護じゃからのう?



「ぶらざー某。死が救いなどとのたまいながら、お主は蘇っておるではないか」
 半死半生の醜態を晒すブラザー・アポストロスに、玉恵は彼の騙る教義の矛盾を突く。
 死が真の救いであるのならば、生死の理から外れた存在であるオブリビオンは教義から否定されるべきであるはず。だというのに彼は猟書家の一員として現世に顕現している。
「何故わざわざ現世に戻った? 救いたる安らかな眠りを体現せずして、民がその教義を理解する訳がなかろう」
 根本から矛盾しておる――と、愚かな詐欺師を見るような目つきで彼女は言い捨てる。
 対し、アポストロスは焼け焦げて血まみれになった侵略蔵書を拾い上げると、聖職者の面をかなぐり捨て、怒りと憎しみをありありとさらけ出しながら反論する。

「それは、私が神に選ばれた者だからです……! 生前の罪を神に赦された者は、死した後に喜びと共に蘇る。神に祝福された蘇生者……それこそがオブリビオンなのです!」
 血の混じった唾を吐き散らしながらそう主張するアポストロスに、当初の落ち着き払った様子は欠片もなく、傲慢で醜悪な本性が露わとなっている。見るに堪えんな、と呆れたように玉恵は呟き、指先をそっと虚空に踊らせて狐火を呼び出す。
「神たるわしがお主の救いを否定してやろう」
「やれるものか、異教の邪神ごときがッ!!」
 侵略蔵書を握りしめながら、【来たれ我らが同胞よ】と叫ぶアポストロス。ガレオン船と共にまたもや召喚された聖戦士の亡霊達が、装填済みの火縄銃を一斉に玉恵に向ける。

「そこな坊主よ、まだ拳を奮えるかのう?」
「へっ……まだまだ十分やれるさね」
 ひりつく殺気を肌で感じながら、玉恵は破戒僧に問いかける。猟兵ではない彼は長丁場の激戦で大分息が上がっているが、意地でも最後まで戦い抜いてみせると不敵に笑った。
 その意気やよしと白面金毛の神は笑い、彼にアポストロスを討つための作戦を伝える。
「わしは【式陣・朱天照】の炎に破魔の力を込め奴を襲撃する。銃の戦士もこれで焼却できるが、書の表紙が厄介じゃ。ゆえに――」
 警戒すべき諸々の要素と為すべきことを手短に伝え、保険としてあるものを手渡す。
 受け取った破戒僧がこくりと頷いて動き出したのを見ると、彼女も行動を開始する。

「夜とて、昼と染めようぞ」
 聖戦士達が一斉射撃を開始する間際、玉恵の放った【式陣・朱天照】の炎が宙を舞う。
 破魔の霊力を宿した狐火はゆらりゆらりと紅蓮の尾を引いて、弾丸を撃ち落としながらガレオン船に命中する。たちまち船は炎上し、炎と煙に巻かれた亡霊共が悲鳴を上げた。
『熱い、熱い……っ』
「ええい、何をしている、この役立たず共が!」
 アポストロスは地団駄を踏みつつ、自身は侵略蔵書の表紙を盾にして炎から身を守る。
 玉恵が警戒していたのはその蔵書が持つ、受けたユーベルコードをコピーする能力――迎え火のごとく狐火に狐火を相殺され、破魔の力は彼の元にまでは及んでいない。

「いつまでも調子に乗るな……報いを受けよ、愚かなる者!」
 本の表紙からコピーした狐火を放ち、刺し殺すような眼光で玉恵を睨むアポストロス。
 腐っても彼は幹部クラスの猟書家。同じ能力を模倣されれば単純な力比べで凌駕するのは容易くはない。戦況は拮抗するかに思われたが――その時、彼の背中から衝撃が襲う。
「隙ありってなぁ!」
「がは……ッ、貴様はッ!?」
 いつの間に回り込んでいたのか、そこに立っていたのは拳を握り固めた破戒僧だった。
 アポストロスが驚愕に顔を引きつらせるのと対照的に、玉恵がにまりと艶やかに笑う。

(同じ力を使われると焼ききれるとは限らぬ故、わしが奴を攻撃し引き付ける間に煙に乗じ背後に回り奴を打て)
 それが玉恵が破戒僧に授けた作戦だった。邪魔な兵士を片付けたうえで敵将の注意を釘付けにし、狐火同士のぶつかり合いで派手な目くらましを作り、味方が近付く隙を生む。
 全ては玉恵の思い描いた盤面通り。見事アポストロスの懐に潜り込んだ破戒僧は、彼女に与えられた保険――破魔の霊符を握りしめて拳を固める。
(握って殴ればよいことがあろう、本物の神の加護じゃからのう?)
「信じますぜ、白面金毛の神様よう!!」
 残されたありったけの力を振り絞って、乾坤一擲の【灰燼拳】がアポストロスを打つ。
 直撃の瞬間、玉恵が授けた霊符は眩い光と炎を放ち――衝撃と共に邪悪を灼滅する。

「わ、私が……敗れる……?! 神の加護を受けたはずの、この私が……!!」

 断末魔の絶叫を残して、猟書家「ブラザー・アポストロス」は一握の灰燼に帰した。
 その後に残された彼の侵略蔵書も、紅蓮の狐火に焼かれて塵一つ残らずに焼失する。
 かくして、猟兵達は猟書家の侵略から町を守り、邪教の洗脳を阻止したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月04日
宿敵 『ブラザー・アポストロス』 を撃破!


挿絵イラスト