SECRET LETTER
#アルダワ魔法学園
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小刻みに揺れる計量器。回る歯車と伸縮するバネ。
頭上の排気管からゴウゴウという音が聞こえる。
早く帰らないと間に合わない。
なのに、こんな日に限って先生のおつかい当番だ。
急いで終わらせたらあの温室に寄ろう。
きれいな花と美味しいものを買って行こう。
少しくらいなら、お父さん、食べられるかな。
食べられたらいいな。
そうしたら、ちゃんと謝る。
謝って無事に手術が終わるのを待つ。
手にあるものは、やっとの思いで書いた手紙。
それを見つめたとき、パラララッと紙を繰る音が聞こえた。
巻き起こる冷たい風。
あ、という間もなかった。
手紙が……!
●
「来てくれたか、ありがとう」
グリモアベースの光景はアルダワの地下迷宮を象っている。
辻村・聡(死霊術士・f05187)は古いエボナイトの万年筆から視線を上げた。出身地にもよるだろうが、ネットワークを使い慣れると疎遠になる品だ。
「アルダワ魔法学園で一人の女子生徒が困ったことになっている。聞いてくれ」
少女の名前は、ミリ。
少しばかり元気が良過ぎる彼女は、お淑やかを良しとする厳格な父親とどうしても反りが合わない。
数日前にも大喧嘩をしたばかりだった。
その時は正直、死んじゃえくらいのことまで思った。
いつものことと言えばいつものことだが、その日の顛末はいつもと違っていた。
父が家に帰って来なかった。
急病で入院してしまったから。
「仲が悪いというのとは違ったのだろうな。面と向かうとつい喧嘩をしてしまう彼女は、やっとの思いで見舞いの手紙を書いたのだが」
そこで最初の光景となる。
「あの辺りには書物の魔物が出没する。手紙を吹き飛ばしてしまったのは、恐らくそいつだろう」
数が多い。手紙を探そうと必死の彼女が一人でなんとかできる相手ではない。
「その上、手紙という言葉に反応して、今の彼女にとっては最悪の災魔が現れる。やぎだ」
「やぎ?」
とベース内の声。
「やぎだ。さらに言うならば、くろやぎだ」
「くろやぎ」
「手紙を食べる」
変わらぬ調子で言い切り、聡は自身の眉根を指で押す。
「ほのぼのとはしているが、このくろやぎは手紙の内容を読んだ上に吟味して食べてしまう。後悔に苛まれている今のミリには耐え難い事態だろう」
手紙を探して守るために自分が倒されてしまうかもしれない。
「なので申し訳ないが、飛ばされた手紙が災魔の手に渡らないよう助けて、これを撃破してくれないか。彼女には急ぐ理由がある」
明日から手術のための事前準備が始まる。見舞いが許されるのは今日までだ。
戦いはそこまでだが、今回はその後にもう一つあった。
「そういえば、アルダワには花を添えたカフェメニューを出してくれる温室があるらしい。テイクアウトもできるというから、仕事の後に良ければ立ち寄ってみてくれ」
皆はどのようなものを頼むのだろう。目尻を微かに緩めると、聡は万年筆を差し出した。
「くろやぎは手紙に惹かれて現れる。皆の真に大切なものを食わせてしまっては申し訳が立たないが、仮に囮の一筆でも用意して貰えたならば上手くいくかもしれない。どうか、よろしく頼む」
小さく見えて大きな願い。
歯車の回る音が、ガチンと鳴った。
来野
こんにちは、来野です。
今回の舞台はアルダワ魔法学園です。蒸気機関、良いですね。
紙の手紙はずいぶんとご無沙汰しています。
皆様はいかがでしょう。
シナリオ開始時点で、ミリは風に飛ばされてしまった手紙を探しています。
ミリや彼女の手紙に万が一のことがあっても、それ自体がクリアに影響を与えることはありません。お気軽にお付き合いください。集団戦、ボス戦ともに皆様の戦い方をご披露願います。
第三章は日常パートとなります。戦闘終了後ですので、存分に楽しんで頂けましたら幸いです。
温室の中は、きっと暖かいです。
少女が見舞いに間に合うよう、皆様のお力をお貸しください。
どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『書物の魔物』
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POW : 魔書の記述
予め【状況に適したページを開き魔力を蓄える】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ページカッター
レベル分の1秒で【刃に変えた自分のページ】を発射できる。
WIZ : ビブリオマジック
レベル×5本の【毒】属性の【インク魔法弾】を放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
迷宮の中のある通路。
随所に蒸気機関の姿があるが、見通しはそう悪くない。
指先をすり抜けた手紙は宙を舞い、伸ばした手では届かない。
そのまま暗がりへ舞うのを追いかけて気づいた。
パラララ。
パラララ。
パラララ。
振り返るのが怖い。
けれど無視もできない。
何かが、たくさん押し寄せてくる。
オーガスト・メルト
家族の絆、か…
失ってから間違いに気づいた俺からすると、彼女はとても羨ましいよ。
『うきゅー』『うにゃー』
ああ、分かってるさ【デイズ】、【ナイツ】…彼女はまだ間に合う。
まだ間に合うのなら、守ってやらなきゃなぁ!
【POW】他の方との連携、アドリブ歓迎
小太刀・焔迅刀を手に【見切り】と【2回攻撃】で敵と戦う。
手紙を探すミリには近づかせない。
間合いに入ったら【赤光一閃】で吹っ飛ばしてミリとの距離を離す。
絶対に見舞いに間に合わせてやるからな!
●空隙
少女が身を固くしたその時だった。
「……!」
足元に影が差す。
振り返った先に見たのは赤い髪。
「家族の絆、か……」
オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)が災魔と少女の間を隔てていた。
抜く手の一閃、真横に振り抜いた切っ先を返し、瞬く間もなく下段に降ろす。
ザンッ。
十字に断たれた魔書からあまたのページが飛び散り、オーガストの頬を細く傷つけて消えた。
(「失ってから間違いに気づいた俺からすると、彼女はとても羨ましいよ」)
ぷつぷつと浮く血玉を拭うでもなく、次の敵へと視線を走らせる。
その肩の上で羽ばたくものは饅頭と大福、いや、ドラゴンランスのデイズと竜核二輪乗騎のナイツ。
『うきゅー』
『うにゃー』
左右の声に頷いて、オーガストは小太刀・焔迅刀を一度引いた。
「ああ、分かってるさ【デイズ】、【ナイツ】……彼女はまだ間に合う」
古い排気管が語尾を反響させた。
まだ、間に合う。
二頭に見入っていたミリは、はっとした面持ちで竜騎士の背を見つめ直す。
「まだ……?」
わたしは、まだ間に合う。あなたは?
だが、芽生えた疑問ごと叩き潰すがごとくに書物の魔が襲いかかってくる。
そちらへと回り込み、オーガストは真っ直ぐに踏み込んだ。
「まだ、だ。まだ間に合うのなら、守ってやらなきゃなぁ!」
赤光一閃、速さに追いつくことのできない災魔は綴じの全てを断たれて配管にぶち当たり、紙吹雪をまき散らして地へと落ちた。
はたはたとはためくのも束の間、やがては消え失せる。
「絶対に見舞いに間に合わせてやるからな!」
少女は、オーガストの気迫に目をみはる。そして、大きく頷いた。
成功
🔵🔵🔴
チガヤ・シフレット
ははぁ……。子供ってのは難しい年ごろもあるもんだからなぁ。
しかし、手紙書いて仲直りしたいなんて、健気じゃないか。
無事に手紙を渡せるように、ちょっとばかり手助けするとしようか。
手紙探しはミリ自身に任せよう。私は安全確保の方だな。
押し寄せてくる書物とか、妙な性癖があったら興奮できそうだな。
生憎と私にその性癖はないが!
手紙探しの邪魔ものは綺麗に吹き飛んでもらおうか。
ガジェットショータイム!
本が相手ならやるべきは焚書か、裁断か!
【属性攻撃】で火を使いつつ、燃えすぎないように気を付けよう。
変な形の裁断機とかもあれば使って刻んでやろうか。
ちょこっと中身が気になるから、読めそうなら……なんてな。
●秘密の書
それにしても押し寄せる災魔は数が多い。
チガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)は思案する。
「本が相手なら……」
これか。
「ガジェットショータイム!」
彼女のユーベルコードに応えて空間が揺れ始める。
魔物をも切り刻む裁断機を召喚し、チガヤはミリへと目を向けた。
(「子供ってのは難しい年ごろもあるもんだからなぁ」)
不器用ともいえる仲直りの方法にも彼女の眼差しは優しい。
「無事に手紙を渡せるように、ちょっとばかり手助けするとしようか」
裁断機の刃に一手間加えると、それは見る間に白熱を始めた。
「押し寄せてくる書物とか、妙な性癖があったら興奮できそうだな」
妙な性癖。目を丸くする少女へ、チガヤは首を横に振る。
「生憎と私にその性癖はないが!」
言い終える前に魔書へと襲いかかるガジェット。
ジャキン! という音が響き渡った刹那、真っ二つとなった災魔は炎に包まれる。灼熱の刃に炙られて、それは焚書の有り様だ。
「ありがとう!」
道が拓かれたのを知り、ミリが手紙を探しに走る。舞い上がる火の粉のお陰で周囲は明るい。
延焼しないよう気を払って、チガヤは次の裁断機を呼ぶ。
「ん……?」
何やら真っ赤に焼けた刃が機械式タラバガニのハサミのようにも見えるが、使えるのならばそれで良い。襲い来る魔書を一気に切り刻む。
ついでに焼け落ちる瞬間のページを覗き込んでみた。少しばかり中身が気になる。
「ああ……ゼンマイ仕掛けのオレ」
――の嫁(じゅくぢょ)。
「……」
チガヤは不適切な書の燃え残りを踏みにじり、埃へと還した。
成功
🔵🔵🔴
レイ・アイオライト
【SPD判定】
親しい者同士は本心を隠してしまうもの。それに気付くのが遅ければ取り返しのつかないことになる、ってことかしら。……耳が痛いわね。(師匠のことを思い出しながら呟く。)
……絶対にミリに手出しはさせないわよ。書物の魔物とミリとの間に分け入って、【影ノ傷跡漏出:暗黒領域】を使用するわね。法則の境界である影の壁を作り上げて、ページカッターを遮断するわよ。
その後は雷竜真銀鋼糸で『範囲攻撃』、周囲に飛び交うページの束と書物の魔物まとめて裁断してやるんだから。
「安心しなさい、手紙を取り戻すまでは、あなたを絶対に守ってあげる。父親に伝えたいことは、もう決めてるんでしょ?」
(アドリブ、共闘歓迎です)
●慈悲の影
手紙はどこか。ボイラーの陰を覗き込んで、ミリは凍りついた。
パラララ。
そこに潜んでいた一冊が、ページの角を鋭利に立てる。
思わず目を瞑りかけたその時。
「朔月に墜ちる影、全てを塗り潰す暗黒の結界、具現しなさい!」
凛と響いた詠唱が終わるや否や、魔書は暗黒の向こうへと隔てられた。
パラリという音が悔しげにくぐもる。
「安心しなさい」
目の前にあるのはレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)の背中だった。
振り返った面差しは表情こそ薄いが、言葉は暖かい。
「手紙を取り戻すまでは、あなたを絶対に守ってあげる。父親に伝えたいことは、もう決めてるんでしょ?」
ミリは息を飲み、頷いた。
「ならば、必ず探し出しなさい」
少女に背を向け直し、レイは雷竜真銀鋼糸を手に取る。
(「親しい者同士は本心を隠してしまうもの。それに気付くのが遅ければ取り返しのつかないことになる、ってことかしら」)
彼女の脳裏にあるものは亡き師匠の姿。この世にいない理由を思い返すと、ぽつりとした呟きが口をつく。
「……耳が痛いわね」
少女が十分な距離を取れたのを目尻で確かめ、レイは瞳を持ち上げる。
風を叩く紙の音が脇から聞こえていた。
「……絶対にミリに手出しはさせないわよ」
上体を沈めると同時に、腕を大きく踊らせる。
ひるがえる超硬鋼糸は雷竜の髭とオリハルコンから成るもの。
ヒュ、と風が鳴いた後に紫電の残像が光った。雷光だ。
抗う間もなく綴じの壊れる書。帯電した紙片がレイの銀の髪に纏わりつこうとして、なせずに消えていく。パチリと痛いのはほんの一瞬。
淡い輝きだけが残るのを、手紙を探す少女は眩しげに見ていた。
成功
🔵🔵🔴
五條・桜花
雪月(f03400)と同行
関係性のイメージは祖父と孫
いつも通りの日常での喧嘩でも相手が急にいなくなるとこうなんともですよね
私はだから出かけるときには喧嘩しててもいってらっしゃいやいってきますだけは言うようにしてるのです
だから、あの時も……両親にはいってきますだけは言えたんですよね
って駄目ですね、想い出に浸っちゃ
敵を倒しつつ、お手紙捜索も私したいです
【第六感】よ頑張ってぴぴっとお手紙のヒントを頂戴!
まずは目の前の敵をですか
私に毒の攻撃を仕掛けるとはいい度胸です
私の【毒使い】の力といざ勝負ですよ
毒とはこういうものですよ……じんわりもだえ苦しみなさい
さあ、我が桜よ、毒を纏いてその花びらを散らせ!
叶・雪月
桜花(f03321)と同行
関係性のイメージは祖父と孫
喧嘩した後になかなか会えたとはつらかろう
しかも心配であるだろうしな
そうだな、あの日もみんなで見送ったりしたしな
何気ない一言も重要だ
まあ、なんて口にできるようになっただけ少しはマシになったってことだろうさ、桜花は
状況に適したページか
んじゃどんなの開いているかで避けやすいわけだ
後ページにない攻撃ならねらい目ってことだよな
桜花の毒で動きが鈍ってるところを狙わせてもらおうか!
我が刃は予想手斬ると思うなよ、俺の刃を防げると思うな!
さあて、手紙もあの子も無事に届けられるように頑張るか
●地の下の雪月花
迷宮の一角に、寄り添うようにして現れた影がある。
「喧嘩した後になかなか会えぬとはつらかろう。しかも心配であるだろうしな」
手紙を探す少女の背を見て太刀のヤドリガミたる叶・雪月(六花舞う夜に煌めく月の刃・f03400)が呟くと、
「いつも通りの日常での喧嘩でも相手が急にいなくなるとこうなんともですよね」
と、応じる五條・桜花(六花の元に咲く桜・f03321)の姿。
「私はだから出かけるときには喧嘩してても、いってらっしゃいやいってきますだけは言うようにしてるのです。……だから」
桜花は、この場ではないどこかを見るかのように視線を漂わせる。
「あの時も……両親にはいってきますだけは言えたんですよね」
その姿を黙って見ていた雪月は、やがて一つ頷いた。
「そうだな、あの日もみんなで見送ったりしたしな。何気ない一言も重要だ」
その言葉を耳にして桜花ははっとした面持ちとなり、目を瞬く。
「って駄目ですね、想い出に浸っちゃ」
「まあ、なんて口にできるようになっただけ少しはマシになったってことだろうさ、桜花は」
在りし日の記憶が二人を繋ぐのか、見目はともかくその場を包む空気は祖父と孫を思わせる。
よぎる蒸気も霞の趣と化す光景だが、二人は猟兵。災魔と対峙した瞬間から、その横顔は戦う者のそれとなった。
「さあて、手紙もあの子も無事に届けられるように頑張るか」
雪月が刃を抜くと、桜花は飛来する魔の正面へと出る。
はためくページからいくつもの文字が踊り、見るも禍々しい色彩へと変わり行く――あれは、身を蝕むものだ。
「私に毒の攻撃を仕掛けるとはいい度胸です」
ユーベルコードは桜の乱舞。
桜花は自身の武装を時ならぬ花の嵐へと変えていくが、今はそれだけにとどまらない。花びらに宿るものの恐ろしさは災魔のそれをしのぐものだった。
「さあ、我が桜よ、毒を纏いてその花びらを散らせ! 」
地の下にあって、どっと吹き荒れる花吹雪。
それに取り巻かれた魔書たちはなす術もなく変色し、縁から朽ち始める。
「毒とはこういうものですよ……じんわりもだえ苦しみなさい」
苦しげにページを繰る魔物を見て、雪月は脇へと回り込んだ。視界を開けるよう切っ先を下げる。
(「状況に適したページか」)
腐食した紙は黒ずんでいるが、間合いに入ることさえ躊躇わなければ見切ることはたやすい。
「我が刃は予想できると思うなよ」
狂った動きで刃を噛み止めようとする魔書よりも、ヤドリガミの動きの方が速かった。
「俺の刃を防げると思うな!」
ザ……ッ!
月下氷雪。一刀のもとに両断された災魔は黒い雪のごとくに舞い乱れ、雪月の足元へと降り注ぐ。一歩を踏み出せば足の底のただの塵芥に過ぎない。
その時、迷宮の片隅で一幅の絵を見る面持ちでいるミリに気づき、桜花は片手の指先を天へと向けた。
「お手紙の捜索ならば、方角は……」
恐らく、あちら。
第六感の導く先へと指を倒す。
「大歯車の方だな」
指し示された方を見て雪月が言うと、ミリは表情を輝かせた。
「探してきます!」
駆けて行く先は二人の導きの元だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イルザ・ヒイラギ
ヴィーちゃん事ヴィクトリア(f02591)と一緒に行動
大事な大事な、思いの篭った手紙を奪うなんて、そんな事が許される訳ないでしょう?
ちゃんと返してくれないと、お仕置きしちゃうぞ?
ね、ヴィーちゃん。迷える女の子の為に、私達が出来る事は、何かな?
手にはレヴァインテイン・アインス、妖剣としての力を開放して縦横無尽に高速移動
大鎌を逆に構えて薙ぎ払い、書物達を一箇所に纏めていく
敵の攻撃はヴィーちゃんの影に隠れてやり過ごし、衝撃で吹き飛ばしていく
やっぱりヴィーちゃんが護り、私が刈り取るって戦い方は鉄板だねぇ
それじゃ、次行くよ?
敵の攻撃を無効化する彼女を頼もしげに笑い、次々と狩っていく
アドリブや絡み歓迎です
ヴィクトリア・アルダーノヴァ
イルザ(f02584)と共に参加だ。
ふふ、何とも可愛らしい少女だ。
ああ、ああ。これは一肌脱がねばなるまいよ。
仲違いした父を思う手紙……なんとも心温まる
ミリといったか。
きっと笑顔にしてくれようじゃないか。
さあ、書物の魔物をばしばしと焼却処分と行こうか。
ああ、手紙を焼いてしまわないように気をつけねばいけないな。
敵のユーベルコードを迎え撃って無効化しよう。
イルザが敵を集めてくれるようなので、纏めて雷で焼き払うのも良いな。
うん、今日もイルザは元気で良いことだな。
終わったらたくさん褒めてくれよう。
◆アドリブや他の者との絡みも大歓迎だ。
●お手本
「大事な大事な、思いの篭った手紙を奪うなんて、そんな事が許される訳ないでしょう?」
駆けて行く少女の背を見送ってイルザ・ヒイラギ(銀月の殉死者・f02584)はレヴァインテイン・アインスを手にする。この武具は定形を持たない。
「ちゃんと返してくれないと、お仕置きしちゃうぞ?」
そう告げて災魔へと掲げて向ける時の姿は、大鎌だった。
大きく鋭利な刃を見て、一気に押し寄せようとした書物たちは一旦、動きを止める。行き場を失った鳥のように。
「ふふ、何とも可愛らしい少女だ。ああ、ああ。これは一肌脱がねばなるまいよ」
応えたのはヴィクトリア・アルダーノヴァ(銀星の守護者・f02591)。長柄の武器を振るう連れを良く知ったものか、互いが自由に動けるよう十分な間合いを保っている。
「仲違いした父を思う手紙……なんとも心温まる。ミリといったか。きっと笑顔にしてくれようじゃないか」
それを聞き、ゆらゆらと宙を漂う魔書たちは軌道を変えた。戦闘力の高い猟兵よりも一介の生徒である少女の背を追おうとする。
堅実と言えば聞こえは良いが、要は怖じ気づいたのだろう。『お仕置き』が怖いのだ。
「ね、ヴィーちゃん。迷える女の子の為に、私達が出来る事は、何かな?」
イルザは訊いた。
訊いた時には、もう駆けていた。
「訊ねるまでもないだろう」
後を追うヴィクトリアの前で、イルザの全身は解放された妖刀の怨念を纏う。寿命の一部を犠牲に払ったその速さに災魔が敵うわけもなかった。
バサバサとページの騒ぐ音。
大歯車に向かう少女が風を感じて振り返る。
「あ……っ」
立ち竦んだその目の前で、イルザが急停止をした。地を抉りかねない程の勢いを乗せて、逆構えの大鎌を振るう。描く軌跡は綺麗な円弧。
ザンッ!
刈り取られた魔書の群れが、竜巻のように舞い上がった。衝撃波に呑まれている。
ダクトに叩きつけられて鋭角に落ちてくる先に佇むのは、ヴィクトリア。
「さあ、ばしばしと焼却処分と行こうか」
魔書は落ちる勢いに乗じて猛毒のインクをまき散らしてくる。
だが、どす黒い弾の雨あられは、ヴィクトリアの銀の髪に触れる直前で一気に跳ね返る。
因果逆光の雷霆が、眩い光と共に毒のつぶてを相殺していた。しゅうしゅうと上がる黒い蒸気には、もう物を蝕む力がない。ただただ薄れて消えるばかり。
「やっぱりヴィーちゃんが護り、私が刈り取るって戦い方は鉄板だねぇ」
頷きながらイルザが顔を覗かせるのは、ヴィクトリアの背後から肩口へ。しっかりと黒い蒸気を避けている。安全な位置を確保するのも速い。
「それじゃ、次行くよ?」
頼もしげに笑って新たな獲物を狩りに行く。そんなイルザの背へとヴィクトリアの声が追いついた。
「うん、今日もイルザは元気で良いことだな。終わったらたくさん褒めてくれよう」
最初の災魔の判断は間違っていなかった。しかし、逃げ足が遅すぎた。
次から次へと魔書を狩り進む二人を見て、ミリは感嘆の息をつく。
「いいなあ」
与えられたものは眩い在り方だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鳴宮・匡
【アドリブ・連携OK】
◆弟子のアヤメ(f03307)と
後悔なんて、取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだ
どんなに悔やんだところで、二度と手なんて届かないんだから
……何でもない、独り言だよ
さて、仕事だぜアヤメ
久々の協働だ、どんくらい腕を上げたか見せてくれよ
アヤメの戦闘をサポートする形で【援護射撃】
撃ち漏らしや、アヤメの死角にいる相手を排除していく形だな
援護の傍ら相手の動きはしっかり観察して
動きの癖、攻撃動作などを把握
隙の見えるタイミングを読み取り
それをもとに【確定予測】で回避しつつ戦闘を運ぶ
必要に応じてアヤメにも注意喚起・助言はするかな
ま、口出さずに済むならそれにこしたことはないけどさ
斬断・彩萌
師しょッピ(f01612)と一緒!
ね~ね~、今日の師しょッピ、何気暗くなーい?どうかしたん?……むっ、またそうやって流すし~。弟子的には隠し事よくないと思いま~す(頬を膨らます)
【WIZ】
UC『Killing Salvation』で、武器に強化を施して戦闘開始。へっへ~良いとこ見せるから元気出してこ!
遠いうちは二丁拳銃で射撃しながらじわじわ接近。撃ち漏らしは師しょッピが何とかしてくれるだろーから気にしない。
距離を詰めたらOracleでビリッビリに引き裂いてやるわ。少しでも切れたら【傷口をえぐる】ように【2回攻撃】で攻める。
後ろから声が聞こえたら返事!
※アドリブ歓迎
●光届かぬところ
迷宮に漂うものはボイラーの駆動音と歯車の軋み。猟兵たちの働きにより、次から次へと飛来する災魔は地へと落とされていく。
纏わりつく書の残骸を払い落とし、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は消えていくページを見下ろした。
「後悔なんて、取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだ。どんなに悔やんだところで、二度と手なんて届かないんだから」
周囲の物音には紛れなかったらしい。
それまで背を預け合う形で立っていた斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)が、くるりと向きを変える。脇から匡の顔を覗き込んだ。
「ね~ね~、今日の師しょッピ、何気暗くなーい?」
目と目が合う。
「どうかしたん?」
瞬きもせずに彩萌は問うが、一度そちらに向けた眼差しを匡は災魔の群へと戻す。
「……何でもない、独り言だよ」
「……むっ、またそうやって流すし~」
彩萌は匡の正面へと回り直す。
「弟子的には隠し事よくないと思いま~す」
遺憾の意を表すると共に、頬をぷくっと膨らませた。
師弟関係なのだった。
弟子の抗議を聞いていないわけではなかったが、匡は彩萌の動きを見渡せる位置まで数歩退く。
「さて、仕事だぜアヤメ」
忙しくページを繰り始めた魔書たちを視線で示し、
「久々の協働だ、どんくらい腕を上げたか見せてくれよ」
そう、促した。
向けた疑問は蒸気と一緒にどこかの暗がりへと片付けられてしまったが、彩萌は瞬きを一つしただけでまん丸だった頬を元に戻す。
「へっへ~良いとこ見せるから元気出してこ!」
自ら元気な声を上げてみせると、左右の手に携えた拳銃を正面へと向け直した。
Traitor(叛逆者)とExecutioner(処刑人)、それぞれに名付けられた二丁で災魔の初動を牽制し、少しずつ距離を詰めていく。強化を施されたその勢いに押されて、魔物たちは布陣を保てない。
「んっ?」
ひゅっと風を鳴らして一冊が高みへと逸れた。が、彩萌が動きを変える前に背後からの一発に撃ち抜かれて呆気なく落ちた。そこに確実に師がいるのだと銃声が物語る。
そして、聞こえてくる声。
「2時方向一体、毒」
「了解~!」
確定予測。匡の読みに間違いはない。返事と同時に駆け出す彩萌の手には剣。名はOracle。
ザクリと入れた刃をそのまま返してV字に刻み、前後の表紙を真っ二つに断つ。抉りも伴い威力が大きい。
魔書の詠唱は成らず。力を失った翼のようにいくつものページが、ただ滑り落ちていく。だが、その向こうからぐんっと迫るもう一体の姿が見えた。味方を盾に使っていたのか。
目をみはった瞬間、一発の銃声が鼓膜を震わせる。
咄嗟に身を低めていた彩萌の全身へ、匡に撃ち抜かれた書のページが降り注いだ。
「師しょッピ~」
「そいつは毒じゃないぜ」
良い動きだ。
そんな面持ちの匡の応えは、全くもっていつもと変わらない調子だった。
地に落ちた紙の束は春の雪のように消えていく。後には何も残らない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎
親子喧嘩と聞けば微笑ましくもあるけれど
互いの絆を深める架橋が
其の手紙であるのでしょうから
絶対に護り抜かねばなりませんね
少女を背に護りつつ
死角を補う第六感
見切りで自他共にオーラ防御
如何に短い言葉にも魂は宿るもの故に
歴史上のあらゆる愚行の中で
焚書は最たるもの
いつもは穏やかな眼差しも
書と対峙する時は無意識に幽か翳る
ですが
せめて
貴方に記された文字も
貴方を嘗て慈しんだ人々の想いも
私の胸に刻ませて下さいね
表紙を撫でるように祓う手には
幾多の護符
生じる大輪の白牡丹の花弁は
柔い布の如く愛し気に書を包む――花筐
手紙が天井や歯車に挟まっていないか共に探し
狭い場所なら
小柄な縫に取ってきて貰いましょう
●花の眠り
あと少しで歯車の前に出る。少女が肩で息をした時だった。
曲がりくねった配管の陰から災魔が襲いかかってくる。
思わず目を瞑ってしまったが衝撃はない。
開いた目の前にあったものは魔ではなく、清浄な青磁の色だった。
「親子喧嘩と聞けば微笑ましくもあるけれど」
その美しい青緑は香炉のヤドリガミの双眸。
「互いの絆を深める架橋が其の手紙であるのでしょうから、絶対に護り抜かねばなりませんね」
都槻・綾(夜宵の森・f01786)の放つオーラが互いの身を守り、災魔はすぐ目の前で跳ね飛ばされたのだった。
はたり。
大きく開いた書の内から文字が黒く踊り出し、毒のインクへと変じていく。見つめる綾の瞳に翳りが差した。
(「如何に短い言葉にも魂は宿るもの故に」)
知を好む彼の瞳は文献を愛でるものでもあるだろう。書の魔物を前に胸の内はどのようなものか。
「せめて貴方に記された文字も貴方を嘗て慈しんだ人々の想いも私の胸に刻ませて下さいね」
あまたの護符で書の面を撫で、綾はそれを祓う。インクの滴りが雨のごとく透明な雫へと変わった。
ヤドリガミであろう猟兵が魔書へと向けた言葉にミリは息をのむ。
つらくはないか。
「さて」
綾は穏やかな面持ちで自らの武具を一つ手にする。変じて柔らかく綻ぶものは富貴の花、牡丹だ。
「いつか見た――未だ見ぬ花景の柩に眠れ」
幾重にも清かな布のように折り重なる花びらが魔書を包み込む。大切に保管される書であるかのように。
花筐の内で災魔が静かに消えるのを見送り、綾は少女人形の式神を傍らに呼ぶ。
「手紙を探しましょう」
そうして仄かに笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『上司のくろやぎ』
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POW : でりしゃすれたー
【『あまい』告白の手紙】【『しょっぱい』別れの手紙】【『からい』怒りのお手紙】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : ようしゃしないめぇ!
【『するどいきれあじ』の催促状のお手紙】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : そくたつぽっぽさんめぇ!
レベル分の1秒で【頭上にいる速達担当の相棒ぽっぽさん】を発射できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠メーアルーナ・レトラント」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
あのひとたちは強い。強くて眩い。
世界とはお前が思うよりも広くて大きなものだ。
お父さんの言葉を今頃思い出すなんて。
少女の視線の先に白いものが見えた。
手紙。
駆け出す向こうから黒いものが飛び込んでくる。
弾むように軽快に。踊るように嬉しげに。
見つけためぇ。手紙だめぇ。
身軽に跳ねて手を伸ばす。ニンマリと笑う小さな口。
触らないで!
喉を裂いたかのような叫びが迷宮の空気を震わせた。
くろやぎは何よりも好んで手紙を食べる。
彼らの郵便は永劫に届かない。
チガヤ・シフレット
くろやぎさんたら読まずに食べた、とはいかせないぞ!
効果があるかどうかわからんが、囮を使うか……。
出す先ももうない……ただの個人的な苦情の手紙だがな。これでも食って腹でも下せ。
さて、奴が手紙に気を取られてくれたら上々、ダメでも一気に撃破するために動くとしよう。
両腕両脚の義手義足から内臓兵器を起動。
火力強めで行くとしよう!
中程度の距離から弾丸の雨霰を降らせて攻撃。なるべく距離を保ちつつ撃ち抜いていこう。
他の猟兵たちとも連携できるように気を配り。必要に応じて援護射撃も加えてやろう。
弾丸だけでらちが明かないときは高速移動で突撃してブレードを起動して切り込んでやろう。
人の手紙を食うのは許されないんだ。
パウル・ブラフマン
【SPD】
愛機Glanzに【騎乗】して『ゴッドスピードライド』を発動!
フルスロットルの猛【ダッシュ】でくろやぎさんに特攻。
持ち前の【操縦】テクを駆使して【先制攻撃】を仕掛けるよ。
手紙を【かばう】ように【スライディング】。
接敵したらそのまま【なぎ払い】でくろやぎさんをブッ飛ばーす☆
仲間が手紙の確保に動いたら
Glanzと一緒にくろやぎさんの前に立ちはだかって盾になるよ。
今日のオレは郵便を運ぶ運転手さんだからね。
【零距離射撃】で蜂の巣にしてやっぞオラァ!
▼緊急対応
手紙を回収できそうな仲間が居ない場合は
そのまま手紙を大事に手にしてUターン。
手紙を安全圏の子に渡したら前線へ戻るよ!
※アドリブ&絡み歓迎!
●届かぬ思い
くろやぎが急に立ち止まった。ミリの手紙から注意を逸らす。
「んんうんっ?」
視線の先にいるのはピンクのポニーテールに風をはらんだサイボーグレディ、チガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)。
片手は腰。逆の手にあるものは。
「手紙めぇ!」
くろやぎは、しゅびっという勢いでそれを奪い取った。いきなりかぶりつく。
(「くろやぎさんたら読まずに食べた、とはいかせないぞ!」)
彼女の胸の内を知らないまま旺盛に口を動かしたやぎは、その後――
そっと自分の腹を押さえた。
「こ、こここ、これは……にっ、苦っ、いや、良薬口に苦し、お腹がいっ、痛くなんて」
「あるんだよな?」
さっと後ろに飛び退き、四肢の義手義足を起動するチガヤ。十分な距離を取った上で照準を災魔へと合わせる。
「なっ、ないめっ」
冷や汗をかきながら強がるくろやぎ。これは、かなり効いている。
チガヤは首を傾けて見せた。
「そうか。出す先ももうない……ただの個人的な苦情の手紙だがな。そうか」
そうして始まるバッドランペイジの連続射撃。火力は強め。バラララッという音が周囲の金属に反響する。
「なぁっ? だから苦かっためっ? い、一体何が……っ、め、めええっ!」
腹を押さえて逃げ回るくろやぎはまるで反撃へと移れない。窮したあげくに自分で跳ね飛ばしたミリの手紙に飛びついた、が。
蒼い光のラインが手紙と災魔の手とを隔てた。白銀の宇宙バイクGlanzだった。
「んなっ?」
「今日のオレは郵便を運ぶ運転手さんだからね」
フルスロットルで滑り込んだパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は、ぐっと前ブレーキを効かせる。搭載した戦闘機エンジンの一吼え。
車体ごと片膝を落とし、後方の大旋回でくろやぎの横っ面を張る。
地に残るものはブラックマーク、虚空に残るものは蒼の残照。そして。
「めっ、ええぇぇぇっっ!」
ドップラー効果を伴い、やぎが吹っ飛んだ。
宙を舞うミリの手紙は、パウルの手を経て援護の位置のチガヤの元へ。
配管にぶつかって二回転したくろやぎは、よろめきながら着地し、猟兵たちの連携を前に拳を震わせた。
「ぐ、ぐぬぅ、これは……配達車両の導入が急務だめぇ」
「だったら急いだ方がいいよ!」
片目で手紙の無事を確認すると、災魔の目と鼻の先に車体を寄せて運転手さんことパウルは言った。エンジンの鼓動が地に響く。力強い盾だ。
「でも、予算が……ええいっ、督促状を受け取るといいめっ!」
手紙を大きく振りかぶったやぎだったが、腹が痛んで力が入らない。
督促状だ? 眉根を上げるパウル。
「申請が先じゃないのかな? 蜂の巣にしてやっぞオラァ!」
バラララッ!
二人から降り注ぐ銃撃の雨霰に紙屑となった督促状は地へと落ち、配達車両が届く目処は永遠に立たないのだった。
跳弾がいい音を立ててやぎの額へと飛び、Glanzの排気が封書であった塵を舞い上げる。黒い魔物は真後ろへと転がった。パウルという盾を抜くことはできない。
「人の手紙を食うのは許されないんだ」
やり返された今、チガヤの一言はさぞや沁みることだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イルザ・ヒイラギ
ヴィーちゃん(f02591)と共に護るべき手紙を護りましょう
ミリちゃんの手紙は何よりも、届くべき相手が居る手紙だもん
なら、その手紙は何があっても守られるべきだよね
だから、この手紙を食べられても私は惜しくない
普段だと言葉に仕切れない内容の手紙で、読まれたら多分恥ずか死ぬだろうから
囮の手紙を斬撃による衝撃波で黒ヤギの鼻先へ飛ばしミリの手紙を庇う
『ヴィーちゃんへ
言葉にするのは照れくさいので出せない手紙をしたためます
諦観と絶望に囚われて一歩も動けない私に、貴女が光を導きをくれた
貴女と共になら何処へでも行ける、なんでも出来る
貴方の輝きが世界中を照らせる日まで、共に有り続けられるように
祈りを捧げよう』
ヴィクトリア・アルダーノヴァ
イルザ(f02584)と共に手紙とミリを守ろう。
くろやぎさんにもお仕置きだ。
あまり無理をするな。
お前に何かあれば、父親を悲しませることになるぞ
こういうものは、専門家に任せておけ
とかなんとかミリを諭しておこう
ふん、文を読みたいというのは理解出来ないでもないが
それを食らうというのは許しがたいな
そんなお前の身勝手さについてしっかり書いてきてやったぞ
ありがたく吟味するがいい。
因果逆劫で文ではなくそれを持つくろやぎさんの方を斬り捨てよう
お前がいくら可愛い姿でも、私の雷は容赦を知らないのでね
イルザの手紙の内容は見せてくれなかったから
ちょっと気になってむう、となるぞ
いや、同志といえどプライバシーは尊重だ…
●秘密
手紙は持ち主の手へと戻ってきた。
ぐっと唇を噛んでいるミリを見て、ヴィクトリア・アルダーノヴァ(銀星の守護者・f02591)は肩の力を抜くよう促す。
「あまり無理をするな。お前に何かあれば、父親を悲しませることになるぞ」
「で……」
「こういうものは、専門家に任せておけ」
「でも……ううん、はい」
素直に答えた少女へと頷き、ヴィクトリアは背を向ける。
どれだけ諦めが悪いのか、くろやぎがすぐ傍まで迫りつつあった。
「それを、よこすめぇぇ!」
全身で飛びかかろうとしたやぎの鼻先で、パシッという小気味良い音が響いた。
「これをあげましょう」
イルザ・ヒイラギ(銀月の殉死者・f02584)の衝撃波により叩きつけられた、それは念願の品だった。
「いだっっ……うん? 手紙めぇっ!」
くろやぎは尻餅をつき真っ赤になった鼻を押さえながら、凄まじい速さで書簡を開封し、文面へと視線を落とす。
無言。チラ、とイルザを見た。
「……こ、これは大事な……」
「惜しくはありません。食べないのですか?」
ならば手紙ごとと武器を構えるイルザに向けて、やぎはぶんぶんと首を横に振る。急いでかじり付いた。
(「ミリちゃんの手紙は何よりも、届くべき相手が居る手紙だもん。なら、その手紙は何があっても守られるべきだよね」)
イルザは黙って目を伏せる。
『ヴィーちゃんへ
言葉にするのは照れくさいので出せない手紙をしたためます。
諦観と絶望に囚われて一歩も動けない私に、貴女が光を導きをくれた。
貴女と共になら何処へでも行ける、なんでも出来る。
貴方の輝きが世界中を照らせる日まで、共に有り続けられるように。
祈りを捧げよう』
読まれたら恥ずか死ぬ。イルザ自身にそう思わせた手紙は、ほんのりと甘くてとても美味い。
「うう……甘っ、うんまいめぇ」
一心不乱に頬を動かすくろやぎは、全身に力をみなぎらせておきながら肝心の注意を怠った。食欲全開。そこに一つの影が差しかかる。
「ふん、文を読みたいというのは理解出来ないでもないが」
「う……?」
「それを食らうというのは許しがたいな」
絶好の機会を逃さずに腕へと斬りつけるのは、本来の受取人であるヴィクトリア。ワールド・エンドの雷撃が凄まじい音と共に大気を裂いた。
敵の見た目がどうであろうと、本質を思えば容赦は無用。手紙だけは傷つけない。
「んめ゛ぇっ、ぇっ、ぇっ、ぇっ!」
青白い火花に包まれて手紙の端っこを取り落とすくろやぎ。開いたまま固まっている口にヴィクトリアが叩き込むのは、お叱りの一筆だった。
「そんなお前の身勝手さについてしっかり書いてきてやったぞ。ありがたく吟味するがいい」
「うぶっ、めえぇぇっ!」
からい。とてもからい。怒りというよりは諭しでもあるから薬味系のからさだ。体には良い。
くろやぎはその衝撃を麻痺の力に変えてつかみかかろうとしたが、イルザに引き剥がされて悶絶した。水と騒ぐも、そんなものはない。
ヴィクトリアの足許に落ちているのは便箋の余白の小さな三角形だけ。それをそっと拾い上げて汚れを払う。
「……ヴィーちゃん」
「……。いや、同志といえどプライバシーは尊重だ……」
せっかくのイルザの手紙は、やぎの腹に消えてしまった。
ヴィクトリアの頬は微妙にむぅと膨らんでいるが、誰がそれを責められるだろう。
やぎの角の上で、名残の火花がパチリと爆ぜた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
【アドリブ・連携OK】
◆弟子のアヤメ(f03307)と
別に俺が一番じゃなくても全然構わないんだけど……
(というか男の一人でも作ってくれたほうが始終付き纏われなくて楽なんだけど)
まあ、さすがにこの世界じゃまだ手紙が主流なんじゃないか?
強化されると面倒だな
手紙を手にした様子なら腕を狙って狙撃
あとはなるべく近づかれないよう
できるだけ距離を空けて立ち回るかな
動きが素早そうだし、しっかり動きを視て
次の動作を予測しながら戦闘を運ぶよ
隙が生まれたらアヤメに合図して
多方向からタイミングを合わせて攻撃する
回避の隙は与えないぜ
……ああ、アヤメの手紙も一応食われる前に取り返してやるか
誰に宛てたのかは知らないけどさ
斬断・彩萌
師しょッピ(凪の海・f01612)と一緒なり~🌠
甘い手紙とか私も欲しいわー。ってウソウソ、今は師しょッピが1番だょ(ワラ
しかしな~今の世の中SNS中心だし普段飢えてそーな子だねー。ここは手紙で誘き出してみよっと!
【POW】
サイコキネシスで周囲にある廃材やら機械を盾にしながら前進。
間合いを詰めて、師しょッピの銃撃に合わせ私も発砲。
タイミングを合わせる為に事前に用意した手紙を投げつける。
……手紙ってさ、軽い気持ちで書く人少ないじゃん。それを食べるとか、いくら可愛くてもダメってコト!
上手いこと誘き寄せられたら、一気にやっちゃえ!
手紙の内容:師匠宛。丸文字でびっしり文句、1割の感謝
※アドリブ歓迎
●くろやぎは知っている
「甘い手紙とか私も欲しいわー」
赤錆の浮いた鉄材を飛び越え、斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は足を止めた。師匠、鳴宮・匡(凪の海・f01612)の顔を見上げる。
「ってウソウソ、今は師しょッピが1番だょ」
付け加える語尾の辺りに軽い笑いのような何かがくっ付いていた気がしないでもない。ワラ、とか。
「別に俺が一番じゃなくても全然構わないんだけど……」
匡はそこで口を閉じる。
(「というか男の一人でも作ってくれたほうが始終付き纏われなくて楽なんだけど」)
とは、声にすることなく胸の内。
続かない続きを待って顔を上げていた彩萌は、くるんと正面を向いた。
「しかしな~今の世の中SNS中心だし普段飢えてそーな子だねー」
彼女の視線の先では、めぇめぇ大騒ぎのくろやぎが性懲りもなく少女を追い回している。
「まあ、さすがにこの世界じゃまだ手紙が主流なんじゃないか?」
やぎのポストマンバッグがパンパンに膨れているのを見て、匡が首を捻った。大事なレーションがちょっとこぼれているが良いのか。
「食べ物はやっぱり、鮮度が肝心ってこと?」
ふむ、という顔つきで彩萌は駆け出した。
「ここは手紙で誘き出してみよっと!」
壊れた金属扉をサイコキネシスで持ち上げ、その陰からくろやぎの動向を確認しつつ接近する。
万が一の時は匡が援護してくれるはずだ。それを見越して脇から覗かせるものは、まず、手紙。
「うん?」
気づいたやぎが足を止めた。パッと顔を輝かせて駆け寄ってくる。
「貰った、っめ!」
投げつけられた手紙を空中キャッチし、盾に激突して金属面を滑り落ちた。
「う゛、ううう。うん? ……し……っ」
めげずに開封し声に出して読み上げようとするが、そこまで。匡の初撃が黒い手の甲を撃ち抜き、取り落とされた便箋は排気に吹かれて宙を舞う。ひらりひらり。
「視えてるどころか、丸視えだよな?」
慌てて便箋に飛びつこうとするその眼前へと次弾を撃ち込み、匡は彩萌の斜め後方へと移動した。目が小さいせいで視線は読みにくい。しかし動きを予測することは可能だった。
後ろからの情報に従って彩萌は銃口を持ち上げる。手で盾を支える必要はない。
「……手紙ってさ、軽い気持ちで書く人少ないじゃん。それを食べるとか――」
二人の猟兵は大きく外回りの布陣を取り、至近と遠距離の二段攻撃で銃弾を撃ち込み始める。
やぎの動きが目に見えて鈍り始めた。消耗を隠し切れていない。
「お、重いくらいが腹にどっしり……じゃなく、て、てがみ……めぇ」
一度飛ばしてしまった手紙を惜しむが、もう手は届かない。
かくなる上は督促状を。
ビッと構えたその一通にも、彩萌の銃弾が風穴を開けた。転がるくろやぎ。
「いくら可愛くてもダメってコト!」
「ぐ、ぐぬぅ」
歯噛みする災魔だったが、飛ばされた手紙は匡に拾われてもはや彼の手の中だ。
くろやぎは知っている。悔しいから黙っている。
彩萌の手紙は。
丸文字でびっしりと書かれた弟子から師匠への文句9割と――1割の感謝。
匡が気づくのはいつだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
息が切れる。追うくろやぎも追われる少女も。
頭上ではどこかの大時計の歯車が回る。
急がないと。焦った少女が転び、やぎが笑った。
レイ・アイオライト
他人の手紙を吟味するですって?趣味が悪いわね。アンタに吟味されようがされまいが、手紙は送られた人が見ることで完結するの。アンタの意見なんて聞いてないのよ。
ガルンと一緒にエセ配達員を始末するわよ。雷撃と鋼糸をつかって『マヒ攻撃』、『恐怖を与える』。黒ヤギからの攻撃はあたしの背中の傷跡から漏れ出した影で『オーラ防御』よ。ミリが必死に書いた手紙、アンタなんかに食われてたまるもんですか。
●口出し無用
「いただくめぇ。その手紙、どんな味がするめぇぇ?」
「趣味が悪いわね」
「め?」
やぎの動きがぴたりと止まった。
「聞こえなかった? 趣味が悪いと言ったの」
それはレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)の声だった。
心に突き立ったのだろう。くろやぎの愛らしいはずの口の端が、ひくりと捲れた。
「めっ、めっ、めっ! ひとの秘密は蜜の味めぇ! 誰だってほんとは独り占めしたいものだめぇっ!!」
えげつない。
災魔の魔と呼ばれるゆえんを目の当たりにしても、レイは顔色を変えない。
「来なさい、鳴雷の大狼! アンタの出番よ!」
召喚するものは雷電を纏う大狼、ガルン。
「う……」
くろやぎが後退りをした。根源的な恐怖心を煽られたとしか思えない。
「アンタに吟味されようがされまいが、手紙は送られた人が見ることで完結するの」
「さ……差出人のものはやぎのもの、受取人のものもやぎのものめぇ」
狼の正面を避けて脇に回ったくろやぎは、一通の書簡を虚空に放つ。卑劣にも狙いはミリだ。
「アンタなんかに」
レイは身を捻って少女を庇った。背に広がるものは闇のオーラ。それは彼女の負う傷痕からあふれ出している。
「食わせてたまるもんですか」
督促状は弾かれ少女には届かない。地に落ちた紙切れを踏みにじり、レイはガルンの背へと騎乗して駆けた。紫電の軌跡が宙を裂く。
「だったらお前のを、食っ、め……っ、えええっっ!」
鋼糸に巻き取られた災魔の全身が雷撃で真っ白に光り、ガクガクと震えながら地に落ちる。
「アンタの意見なんて聞いてないのよ」
チリ……ッ。火花の散る音は響くとも、やぎは身動き一つできもしない。
大成功
🔵🔵🔵
●
「な、なんて、ことめぇ」
ふらつきながら立ち上がったくろやぎは、頭の上の鳩を撫でた。手紙を抱いた少女が逃げる。
かくなる上は、このぽっぽさんで。
オーガスト・メルト
手紙ねぇ…これでも食っとけ(用意しておいた便箋を放り投げる)
俺たちを呪いながら死んだ末妹への謝罪の手紙だ。相当に苦いだろうよ。
…こんなのは俺だけで充分だろ。
【POW】連携・アドリブ歓迎
さっきまでの戦いで動き回りながら張り巡らせておいた鋼糸の罠【糸砦【潜焔】】で動きの止まった連中を一気に切り刻む。
倒しきれなかったやつらは普通に斬ってトドメをさす。
戦いが終わったらナイツをバイク形態に変形させて、ミリを乗せて病院まで送っていくぞ。
【騎乗】と【ダッシュ】を使って最短・最速・かつ安全に走る。
いくぞ、ナイツ!全速全霊だ!『うにゃー!』
ちょっと飛び跳ねたり回転したりするから、ミリは舌噛まないようにな!
●送り火
「手紙を……」
「手紙ねぇ……」
「よ……こ、う?」
「これでも食っとけ」
「ぶ……っ、ふ、めぅっ!」
黒い顔面にヒットしたのは、オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)の放った便箋。はためく紙に視界を遮られながらも、やぎはその隅をそっと咥えた。旺盛に口を動かし、手も使わずに食べ始める。
「俺たちを呪いながら死んだ末妹への謝罪の手紙だ」
ビクリ。
肩先を震わせたのはやぎだけではなかった。
ミリも立ち止まり、目をみはっている。
「相当に苦いだろうよ」
くろやぎの顔から便箋が離れ、口から覗いた半分が揺れる。
「……ぅ」
苦い。これは苦いのだろうか。胸がつぶれる。
なのに吐き出せない。
やぎは喉を大きく上下させて、全てを飲み込んだ。
細く息を吸い、喘ぐ。
「う……受取人は……これを、受取れ、ない、め……」
骸の海から染み出た者が、言葉を淀ませた。
竦んで踏み出せない足の周囲にはオーガストが張り巡らせた鋼糸の罠、糸砦【潜焔】が潜んでいるが、気づきもしない。
「……こんなのは俺だけで充分だろ」
まだ、の意味を知ってミリが両手で口許を覆った瞬間、罠が発動した。
ゴッ!
焔の燃え上がる音が大気を膨らませる。
鋼糸の砦は災魔の全身を切り刻み、真っ黒な紙片の渦へと還す。
黒い黒い紙吹雪。届かなかったあまたの言葉と想いが焔の中に消えて行く。
くろやぎはただ静かに消え失せて、最後に鳩の紙吹雪が燃えるぽぅっという音だけが小さく鳴った。
オーガストが地上を指差す。
これなら見舞いに間に合うだろう。
瞬きを止めて、ミリは頷いた。涙をこぼさないように。
猟兵全員へと向き直り、大きく手を振る。
「ありがとう、ございました」
やっとの思いで声を振り絞り、精一杯笑った。
バイク形態の古の竜、ナイツの後部に乗ってあとはその速さに助けてもらう。
「いくぞ、ナイツ! 全速全霊だ!」
『うにゃー!』
「ちょっと飛び跳ねたり回転したりするから、ミリは舌噛まないようにな! 」
「はいっ!」
いい返事の割に、いつまでもいつまでも片手を振り続ける少女は、ぐるりと回転するたびに世界の全てを見ようと目をみはる。
――この日を忘れない。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『花やかなお茶会』
|
POW : カフェでまったり過ごす
SPD : お菓子を購入する
WIZ : 温室の花を観賞する
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
多くの手に助けられて、少女は見舞いに間に合った。
立ち寄ったという温室は、隠れ家にも似たひっそりとした佇まいを見せる。
燻した金属の枠組みに厚い二重の玻璃の壁。絡繰り時計のオルゴール。
池には睡蓮、天井にはブーゲンビリア、ラティスに絡むのは時計草。
蒸気の熱に恵まれて、緑という緑、花という花を育むカフェへようこそ。
初老のドラゴニアンが銀のトレイを携え、出迎える。
ホールケーキはお好きな数だけ切り分けましょう。焼き菓子、プディング、アイスクリーム、いずれにも花を添えましょう。
他にも様々ございます。お飲み物はポットでお席まで。
お好みのものはございますか?
どうか、ゆっくりとお過ごしください。
レイ・アイオライト
あたしにできるのはここまでね。後はミリの問題だし、仕事終わりに温室のカフェでゆっくり過ごしましょうか。(角砂糖の瓶をスタンバイ、紅茶に大量に入れるつもり)
花、ねぇ。あたしに似合う花なんてないと思うんだけど。(周囲に存在する花を眺めながら)
……ミリみたいに誰かのために必死になって、誰かのために勇気を振り絞る。
そういう善人になれるなら、なんて一瞬思っちゃったけど、あたしみたいなアウトローは自己満足で人を救うぐらいが丁度いいのかもね。
(アドリブ歓迎です)
●Sugar is sweet
「あたしにできるのはあそこまでね。後はミリの問題だし」
温室を訪れたレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)のオーダーは紅茶。さらりと告げて案内された席へと向かう。温室の中は丈の高いグリーンで区切られており、彼女の席は煉瓦で囲まれた水辺の傍らだ。
猫足の椅子に腰を降ろし、持参の瓶をテーブルの上に置く。
「これ、構わない?」
店主はティーコージーを被せたポットと薔薇の絵付けをされたカップを並べ、目尻に細い皺を刻んだ。
「どうぞ。甘いものがお好きですか」
瓶の中身はたくさんの角砂糖。
添えられた砂時計の砂が落ち切ると、レイは紅茶で満たしたカップに角砂糖を落とし始める。
ぽとっ、ぽとっ。小さな音がいつまでも続くのが答えだった。
砂糖の角が崩れ、揺れる靄となる。銀のスプーンを一回転させてテーブルの周囲へと眼差しを投げた。
「花、ねぇ。あたしに似合う花なんてないと思うんだけど」
ぽつりと口にする義賊にして剣豪。彼女の足許に並ぶものはすらりとした花菖蒲だった。水にかかる淡く小さな虹のように。
伝票を置いた店主は竜に独特の縦に細い瞳孔でレイを見る。
「そうでしょうか」
疑問なのか否定なのか、曖昧な言葉を返した。
「……ミリみたいに誰かのために必死になって、誰かのために勇気を振り絞る。そういう善人になれるなら、なんて一瞬思っちゃったけど」
口にした紅茶はとても甘いだろう。それなのに顔色を変えない猟兵を、白いたてがみのドラゴニアンは黙って見つめている。
「あたしみたいなアウトローは自己満足で人を救うぐらいが丁度いいのかもね」
そうでしょうか。
もう一度同じ言葉を口にして店主は下がった。
レイのスプーンの上に一つ残したものは、青いスミレの砂糖漬けだった。
大成功
🔵🔵🔵
斬断・彩萌
師しょッピ(f01612)と一緒
ああああ!さっきの手紙、師匠にとられたんですけど~~??(頭抱え)
いやね、想いが篭もってないと効果ないと思って割ガチ目で書いたから、いざ見られるとむっちゃ恥かしいっていうね!?
ってわけで、返して!いや返して下さいお師匠様!!(手を眼前で合わせてお願いポーズ)
え、いいの?あっさりすぎでは?こ、これはこれでなんかモヤモヤする! ちょっとは気にかけてくれてもよくない!?師しょッピのばーかばーか、ニブチーン!!
(ヤケクソでケーキを4切れくらい平らげる。美味しい!)
師しょッピはさ、いないの?面と向かっては言えないけど、気持ちを伝えたい相手。
私はね、いるよ――すぐ近くにね。
鳴宮・匡
【アドリブOK】
◆弟子のアヤメ(f03307)と
……なんかアヤメが変な顔してんだけど
ああ、もしかしてこれのせいかな
誰宛だかわかんねーけど、確かに他人が持ってたらいい気はしないか
とりあえずほら、アヤメ
手紙、返しとくぜ
……何って、渡す相手がいるんだろ
俺が持ってても仕方ねーよ
……え、待て、なんで今俺罵倒されたんだ?
よくわからない奴だな……
あとそれ俺の分、……いやいいけど
アヤメに問われて少しだけ目を伏せる
そんなものはいない、と昔なら言えたんだろうけど
今は――
「さあな。……忘れたよ」
浮かんだ姿から意識を逸らす
もう、そういうのにも慣れてしまった
……?
いや、近くにいるなら面と向かって言えばいいんじゃね……?
●複雑にして繊細なるもだもだ
仕事は無事に終了。危なくやぎの腹に収まるところだった手紙も回収した。
あとは茶でも飲んで帰るばかりという段になって、斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)の様子がどうもおかしい。
(「ああああ! さっきの手紙、師匠にとられたんですけど~~??」)
鳴宮・匡(凪の海・f01612)はテーブル越しの弟子を訝しげな面持ちで見る。
(「……なんかアヤメが変な顔してんだけど」)
頭を抱えているのはなぜなんだ。疑問を抱きつつじっと見る。
つむじの辺りで視線を感じたものか、彩萌がそっと目を上げた。
「いやね、想いが篭もってないと効果ないと思って割ガチ目で書いたから、いざ見られるとむっちゃ恥かしいっていうね!?」
何を?
聞き返そうとして、匡は戦場で手にしたものを思い出す。
「ああ、もしかしてこれのせいかな」
まずは、テーブルの上に小振りにカットされたケーキの盛り合わせが置かれるのを待つ。店主が去ってから、きれいに畳んだ便箋を取り出した。
誰に宛てたものかはわからないが、他人が持っていたのでは良い気はしないだろう。そうした匡の配慮を知ってか知らずか、彩萌は目の前できちっと両手を合わせる。
「それ! ってわけで、返して!」
「とりあえずほら、アヤメ、手紙」
「いや返して下さいお師匠様!!」
「返しとくぜ」
ぽすっ。
合わせた中指の上に乗せられる当の師匠宛ての手紙。
「……」
彩萌は瞳を上向けた。揃えた指の先を開いて、返ってきた手紙を挟み取る。
「え、何? いいの? あっさりすぎでは?」
「……何って、渡す相手がいるんだろ。俺が持ってても仕方ねーよ」
「こ、これはこれでなんかモヤモヤする! ちょっとは気にかけてくれてもよくない!?」
「……え」
「師しょッピのばーかばーか、ニブチーン!!」
「待て、なんで今俺罵倒されたんだ?」
銀のフォークをぐっと握り、ケーキを寸断する彩萌。その勢いを目の前で見ても、匡の表情はまだ要領を得ていない。彩萌のフォークはその動きを止めることなく、次、その次とケーキを取り皿に移し、彼女の口へと運び続ける。美味しい!
「よくわからない奴だな……あとそれ俺の分、……いやいいけど」
気づけば四つめ。大皿の上に残っているものは飾りのチョコレートソースとミントの葉っぱだけだ。
満足の笑顔でケーキ(二人分)を平らげると、彩萌はフォークを置いた。
「師しょッピはさ、いないの? 面と向かっては言えないけど、気持ちを伝えたい相手」
白磁の上に銀を横たえるカチリという音。そちらに向けて匡は目を伏せる。
(「そんなものはいない、と昔なら言えたんだろうけど」)
今は――
「さあな。……忘れたよ」
フォークから視線を外すと同時に、脳裏に浮かんだ姿からも意識を逸らす。
そうすることにも慣れた。
銃の照準を正確に合わせるのとどちらがたやすいだろう。
口許をペーパーで押さえて黙ってその様子を見ていた彩萌は、唇から離したそれを二つに畳む。
「私はね、いるよ」
「……?」
「――すぐ近くにね」
え、という顔で匡は目を瞬く。
「……? いや、近くにいるなら面と向かって言えばいいんじゃね……? 」
彩萌の手の中で、ペーパーがぐしゃりと音を立てた。
大成功
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オーガスト・メルト
【デイズ】も【ナイツ】も今日はお疲れさん。
これにて一件落着、という事だな。
【POW】アドリブ歓迎
俺には紅茶と…ケーキを1ホール貰えるかな?カットはしなくていい。
今日は魔力をかなり消耗したからな、デイズもナイツもしっかり食べて補給してもらわないと。
こんな小さなナリして、こいつらいくらでも食べるんだよ。
全部魔力にして蓄えてるんだけど。
俺は紅茶を飲みながら外でも眺めてようかね。
……間に合って良かった。
どうもあの子に妹の影を重ねてしまってたみたいだ。
姿も性格も全然違うのになぁ。
でも、今日の一件で改めて俺の目標が定まった。
……絶対に、生き返らせてやるからな……アリア。
●硝子の中の砂
「俺には紅茶と……」
オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)はショーケースを覗き込む。
「ケーキを1ホール貰えるかな? カットはしなくていい」
オーダーの通りを伝票に記し、店主は顔を上げた。
「お持ち帰りでしょうか」
オーガストは首を横に振り、きちんと肩の上に収まっている丸い小さなドラゴンたちを手で示す。
「今日は魔力をかなり消耗したからな、デイズもナイツもしっかり食べて補給してもらわないと」
彼らのためのケーキ。
それを知って眼差しを和らげた店主は、少し大きめのテーブルへと案内する。
「こんな小さなナリして、こいつらいくらでも食べるんだよ」
運ばれたケーキは、デイズとナイツが揃って上に乗れそうなほどの大きさだ。
「全部魔力にして蓄えてるんだけど」
「収納効率が良いですね」
紅茶のカップとポットを並べると、緑を添えたテーブルの上はいっぱいになる。
「……間に合って良かった」
オーガストの口からこぼれた声を聞き、店主は縦長の瞳孔を彼の口許へと向けた。カップの脇に置くものは淡い金色の砂を封じた砂時計。
「どうもあの子に妹の影を重ねてしまってたみたいだ。姿も性格も全然違うのになぁ」
ミリはここに立ち寄って見舞いの品を買っている。送って往復する猟兵の姿を温室のスタッフたちは見ていた。
「でも、今日の一件で改めて俺の目標が定まった」
オーガストの唇が確かに動く。
「……絶対に、生き返らせてやるからな……アリア」
伝票を置く店主の手が、ピタリと動きを止めた。
暖かな温室の一角で竜たちと竜騎士の姿は和やかな一枚の絵にも見える。周囲を囲むものは青いローズマリーの花。
そして、砂時計の砂は――。
大成功
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