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被虐・絶命・ラプソディ

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ダークセイヴァーのある村――否、そこは既に村ではなくなりつつあった。
 明るさは無いながらも平和で、交流のあった村。農民たちは皆、貧しいが命を繋ぐことができており、問題なく明日が訪れると信じきっていた。
 しかし、その信頼は裏切られる。突如襲来したオブリビオンによって。
「ハロー。元気かイ?」
 巨大なかぼちゃ。その中には燃え盛る炎。そして、無数の人の髑髏。
 あまりに異様な風貌を前にして、村人の男は震えていた。顔に照りつける炎が日差しなどより遥かに熱いというのに、体の芯は氷のように冷えている。
「あ、あ、あんた……何でこんなこと……」
 男がオブリビオンの背後に見ていたのは、血と肉で象られたオブジェだ。人間で出来た冒涜的な作品が、村の中にはすでに複数作成されている。
「近頃、一部の領主や吸血鬼なんぞが猟兵という者どもに始末されているらしイ」
 オブリビオンは黒く巨大な手を男の首に伸ばす。
「たまらない話だと思わないカ? 彼らは様々な武器を持ち、無数の戦いで我々を殺しに来るのダ」
「な、何を言ってやがるんだ……!」
「僕のこの拷問器具を装着した時並にワクワクするヨ。一体彼らが……どんな苦痛を僕にもたらしてくれるのカ!」
 オブリビオンは彼を高々と持ち上げると、その全身をカボチャの口内に突っ込んだ。
 灼熱が全身を焦がす中で、男は無数の髑髏の中に一つだけ肉のある頭を見た。その頭は恍惚とした表情で、男が燃えていくのを眺めている。
「ああ、楽しみダ。彼らは気に入ってくれるだろうカ? ヒヒヒヒ……」
 周囲に生きた人間が見当たらなくなったのか、オブリビオンは村から去っていく。
 村に残されたのは悪趣味なオブジェの数々。それらには皆、『ウェルカム・イェーガーズ!』と刻まれていた……。

「み、皆。すごく嫌な予知なんだけど……聞いてもらえるかな」
 グリモアベース。UDCアースの学生服を着た少女、白神・杏華(普通の女子高生・f02115)が青ざめた顔で猟兵たちに声をかけた。
「場所はダークセイヴァー。事件があったのは小さな村で……その村はもう、すでに壊滅していて間に合わないみたい」
 オブリビオンによる蹂躙は非常に気まぐれだ。村一つが壊滅されることも、歯痒いことに珍しい話ではない。だが今回のその動機はあまりにも悪辣だ。
「村には『ウェルカム・イェーガーズ』って書いてある死体のオブジェがたくさんあるみたい……目的はわからないけど、明らかに猟兵を呼び寄せることが目的だね」
 それは猟兵たちへの挑発であり挑戦状であろう。それだけの事をするからには、ある程度敵も何かを企んでいるに違いない。
 死人は喋ることはないが、その傷は犯人の存在を語る。彼らの亡骸から敵の情報を得ることができれば、戦いを有利に進められるはずだ。
「それと、周囲にはまだ生きてる人もいるみたい。どこかに隠れてると思うけど、その人たちを見つけたら……なんとか、保護してもらえるといいな」
 杏華は沈んだ様子でそう言った。凄惨な事件であるが、元凶のオブリビオンを倒さねば第二第三の犠牲が出ることは想像に難くない。
 災いは絶たねばならない――彼女は頭を下げ、猟兵たちを見送った。


玄野久三郎
 玄野久三郎です。オープニングをご覧いただきありがとうございます。
 今回は猟兵を呼び寄せるべく殺戮を働いたオブリビオンを追い、それを倒すというシナリオになっております。
 過去最高にゲスい敵です。皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『冒涜者を討て』

POW   :    死者の安寧のために祈りや祝福など出来る事を地道に行う

SPD   :    町を見回り、生存者がいないかを確認する

WIZ   :    町の状況から推測される敵の戦力を考え、対策を講じる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アンナ・フランツウェイ
何時も思うけど、オブリビオンはこんな惨い事が出来るんだろう…。いや今そんなことは考えるな…。犠牲者が増える前に、少しでも出来る事を!

オブジェにされた死体達を下ろして、死体達の死因…どのような攻撃方法で殺されたかを観察する。観察を開始する前にはその事を謝ってからにする。どんな理由が合っても今からするのは、彼らを辱める行為に変わりはないから…。

攻撃方法を特定出来たら、処刑人として犠牲者達に「祈り」を捧げ、貴方達の仇は必ず討つと誓おう。死んだ彼らに私が出来るのはこれくらいしか無い。

…彼らを殺したオブリビオン、アンタだけは絶対に地獄へ叩き落としてやる。


荒谷・ひかる
ひっ……!
こんな……こんなのって……酷いよ……!
(凄惨な状況に思わず竦み上がるも、心を奮い立たせ歩みを進める)

村に残された死体のオブジェを検分して、犯人の攻撃手段や大きさを推測するよ。
傷があればどんな凶器か……切り傷なら刃物、打撲傷なら鈍器、火傷なら炎、とか。
殺し方が解ればどういう奴なのかもわかるかも。
オブジェ作りのためにさっくり殺したのか、それとも苦しむようにじっくりやったのか。
それから「オブジェそのもの」から何か読み取れそうなものがあれば、それも。

吐き気を堪えながら、涙を零しながら。
辛いけど……がんばるん、だよ。

もし生き残りの人が怪我していたら、【生まれながらの光】で治療するよ。



「ひっ……!」
 転移後、目に飛び込んできた光景に荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は息を呑んだ。
 出入り口に設けられていたアーチ状の門は開け放たれ、村人の一人がそこから首を吊るされていた。
 ゆらゆらと揺れるその死体からは血が滴る。腹部には、近くから引きぬかれたであろう看板が突き刺さっている。「ルディ村」という彫り込みの上から、血文字で「ウェルカム・イェーガーズ!」と上書きされていた。
「こんな……こんなのって……酷いよ……!」
 思わず竦み上がるひかるの肩に手を置き、アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)は村人の首を括るロープを処刑剣で切断。彼の体をその場に下ろした。
「どうしてオブリビオンはこんな惨い事が出来るんだろう……」
 常なる疑問が口を衝く。しかし今は考えても仕方のないこと、と彼女は死体の傷口に軽く触れた。
「……ごめんなさい」
 そして、祈るように手を合わせ頭を下げる。仇を討つためとはいえ、それは死者を辱めることに他ならない。謝罪の意を込め、アンナは死体を調べ始めた。
 一方で、ひかるもまた己の心を奮い立たせ死者の傍らに座り込んだ。彼女の持つ癒やしの光も、すでに終わった命には通じない。
 ならば、できることをやるまでだ。傷口は何か、死因は何か。それを知ることができれば、敵の戦い方に一歩近付く。
「目を引くこの傷……酷いけど、出血が少ない。多分、心臓が止まってから刺されたんだね」
 アンナは処刑人としての経験からそう判断した。死因はまた別にある。まだ抵抗する力のある村人の意気を奪ったものがあるはずだ。
「アンナさん、この口元……」
 ひかるが指摘したのは男の口の周りだ。男は大きく口を開いて絶命している。首を吊られたため酸素を求めたとも見えるが、そうではない。
 男の口内と口の周囲は黒く焦げていた。そして、顎関節が外れている。何か大きな、そして焼けたものを口の中に押し込まれたのだ。
 そうして男の呼吸と体力を奪ったうえで、首にロープを結び吊り下げたのだろう。オブリビオン本来の攻撃手段は、その初撃。焼けた巨大な何かによる攻撃に相違ない。
 死ぬまでの彼の苦しみが、苦悶の表情からよく伺えた。その悲惨さにひかるは吐き気を催し、涙が溢れ出た。
「この人だってきっと、悪いことなんか何もせずに生きてきたのに……!」
 ……焼けた武器を口内に射撃したのか、或いは接近して無理やり押し込んだのか。そこまではわからないが、敵の武器の一つを特定したのは大きな一歩だ。
「この死体からわかることはもう無いね。……ありがとう。そして、あなたの仇は必ず討つ」
 アンナはオブリビオンへの無言の抵抗を残してくれた遺体に祈りを捧げる。
 同時に、この惨劇を引き起こしたオブリビオンを地獄に叩き落とす――彼女は黙する死者に誓った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シェイド・レーム
WIZ
クク…猟兵サマに相手してもらえないから八つ当たりか。ひゃははは!人気のないオブリビオンも辛いこった!ま、そんなオトモダチのいねぇ陰気な野郎の招待に乗ってやろうかね!

使用技能は【情報収集】と【第六感】だ。弔いなんぞ後だ、死体や周囲から使えそうな情報を探り出す。冥界の炎で同じ目に合わせてやって初めてこいつらは報われる…報復!報復だ!俺様はいつも冷静で美形だがキレてねーわけじゃねーんだぜ!

さて、周囲を探索するとしても後手後手だ、地の利なんぞ活かせるわけもねぇ。口封じだか知らんが俺様は死者と縁があってな、残留思念とでも交信できれば話がはえーが…残ってるもんかね。あぁ、また探偵みてーな事してんな…


デナイル・ヒステリカル
猟兵を誘い出すために人々を狙う……
このオブリビオン、どういった考えの持ち主か定かではありませんが、思考は極めて論理的です。
こちらの嫌がることを的確に実行しています。
つまり、ここで僕たち猟兵が行動を躊躇するようなら、このような凶行が続く可能性が高いということに他ならない。

罠があるとしても、これ以上の悲劇を見過ごすことは出来ませんね。
必ず打倒します。

惨劇の現場には痕跡が残っているはずとの予測の元、電脳ゴーグルを使用して電脳空間を形成、【情報収集】を開始します。
集積したデータを未来予知プログラムへと入力し、この場所で敵がどういった行動をしていたのかを把握します。



「クク……猟兵サマに相手してもらえないから八つ当たりか。ひゃははは! 人気のないオブリビオンも辛いこった!」
 シェイド・レーム(ナイトハンター・f13612)はそう嘲笑った。だが、その笑みの裏にあるのは死者たちへの冒涜ではない。むしろ彼らへの憐れみ、そしてオブリビオンへの怒りだ。
「ま、そんなオトモダチのいねぇ陰気な野郎の招待に乗ってやろうかね! んで、同じ目に遭わせてやらなきゃこいつらも報われねぇ」
「同感です。しかし、このオブリビオン、どういった考えの持ち主か定かではありませんが、思考は極めて論理的です」
 デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)は努めて冷静にオブリビオンを分析していた。
 猟兵の活動――特にダークセイヴァーでのものは、多くが窮地にある人々を救うためのものだ。
 その猟兵の行動理念を理解した上で、最も嫌がる行動。救うべき人々を先んじて抹殺するということをしてみせたのだ。
「つまり、ここで僕たち猟兵が行動を躊躇するようなら、このような凶行が続く可能性が高いということに他ならない……」
「あぁ、だが続けさせるつもりなんかねぇぜ。奴の命は今日までだ」

 シェイドは周囲を探る。どこを見回しても死体ばかりだが、その中で彼が求めていたのは武器を手にした死体だ。
 もっとも、このような場所にまともな武器などない。せいぜい農具くらいのものだが――そして、彼はそれを発見する。
 農作業で鍛えられたのだろう、簡素な服の上から発達した筋肉が伺える男の死体だ。その手はしっかりと桑を握り、二つに割られた額から胸にかけて黒く炭化している。
「やはり敵は炎を使うようですね。彼の死体だけでなく、周辺の柵などにも焦げ跡が観測できます」
 デナイルは電脳ゴーグル越しに周囲の残留物のデータを収集した。学者が地層の堆積物を見て当時の環境がわかるように、その場にあったものは未来においても投影されうる。
 これらのデータを、彼は未来予知プログラムで検証した。未来の予知と過去の予知は互換プログラムに近い。集積されたデータによる予測は、短い映像を映し出した。
 それは、男がカボチャ頭の奇妙なオブリビオンと相対している様。彼がカボチャ目掛けて桑を振り下ろすも、ヒビ一つ入ることなく受け止められてしまっている。
 次の瞬間、オブリビオンは炎によって形成された桑のようなものを手に持っていた。それを男の額に振り下ろすと、男はその場に崩れ落ちる。
「これは……敵の力をコピーしているのでしょうか」
「どうだかな……ひとつ聞いてみるか」
 聞く? とデナイルはシェイドに向き直る。シェイドは死体の傍らで、倒れ伏す男の背に触れていた。
 死者と縁深いシェイドにとっては、いわゆる降霊術のようなものも朝飯前であった。思念が残っていることを願いつつ、男の魂を呼び起こす。
『ア……アァ……無念だ……』
「おう、おっさん。まぁ、そりゃそうだろうよ」
 ぶっきらぼうに自らの後頭部を撫でつつ、シェイドはため息を吐いた。
「で、アイツの力はどんなもんだ。素人の意見だろうが、とりあえず何でも言ってみろ」
『アァ……アイツの手に現れた桑は……俺が握っているものと全く同じだ……。渾身の力で殴ったはずなのに、奴はどんな攻撃を受けても笑っているばかり……』
 語りながら、男の魂は薄れ始めていた。本人の無念が消えゆくわけではないだろう。しかし、それを託せる相手が目の前に現れたのだ。
『頼む……俺の、みんなの仇を……』
 そう言い残し、彼の魂はあるべき所へと還っていった。あとにはただ、無惨な死体が野ざらしに残されているのみである。
「チッ……この俺に探偵みてーな事させた挙句、言いたいこと言って消えやがってよ……」
「例え奴を追う先に罠があるとしても、これ以上の悲劇を見過ごすことは出来ませんね。必ず打倒します」
 二人は決意を新たに、異なるオブリビオンの痕跡を探しはじめた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レナ・ヴァレンタイン
※他猟兵との絡み、アドリブ歓迎

――明確に名指しでケンカを売ってくるとはな。ふざけた奴だ
その愚昧の代償は兆倍にして返してやるとも

まずは死体のオブジェの検証
この手のバカは「わざと生かして餌にする」とか「思わず破壊したくなるように誘導してブービートラップ」とか、その手の嫌がらせが好きな奴もいる。罠の有無と一緒に要救助者がいないかも確認だ
殺害方法からもどんな得物を使ったくらいは分かるだろうよ


事前に治療薬や携行食料、水を用意
無事な民家、物置、井戸、近場の背の高い草陰
確認すべきとこは全て確認し、隠れている村人がいれば彼らに供給する

復讐代行屋としては、依頼人がいなくては話にならないのでな
一人でも多く救うさ


アリーシャ・マクファーソン
小さな抵抗を繰り返していれば、いつかこういうこともあるだろうとは思っていたけど……やるせないわね。
村に着いたら、まずは鎮魂の祈りを。死体周りに氷の花を咲かせましょう。
せめてもの死者の慰めになれば、と。

【SPD】
さぁ、生存者を探すとしましょう。
この惨状を目にしていたら、とてもじゃないけど外に出てこようとは思えないでしょう。

家屋が見える位置についたら、使ってみましょうか。
【氷雪之茨鞭】
用心に越したことはないわ。なんせ敵は私たちを歓迎する準備をしているみたいだから。
不可視の氷の鞭で、強引に扉を引き破りましょう。
中にいるのが生存者なら万々歳。それ以外の者なら……そのまま扉を投げつけてやろうかしら。



「――明確に名指しでケンカを売ってくるとはな。ふざけた奴だ」
 レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)は村の入口付近に作られたオブジェの検分を始めた。
 目の前にあるそれは、磔にされた死体の周りに多くの人間が絡みついたものだ。絡みついた、というのは比喩でなく、関節や骨の可動域を無視して人間が結び付けられている。磔台にはやはり「ウェルカム・イェーガーズ」の看板がぶら下がる。
 レナは冷静に、そのオブジェの内容物を観察した。それらの内部に刃やトラップのようなものはないか。こういった挑発に付き物なのは、破壊するよう仕向けてブービートラップにすることだからだ。
 しかしどうやら、このオブジェに関してその心配はなさそうだ。彼女は死体の体を壊さぬように、慎重にオブジェを解体した。
「小さな抵抗を繰り返していれば、いつかこういうこともあるだろうとは思っていたけど……やるせないわね」
 アリーシャ・マクファーソン(氷血の小悪魔・f14777)はそれらの死体の周りに氷の花を咲かせた。冷ややかな空気が吹き流れ、歪んだ暑さを追いやる。
 それは鎮魂の祈りだった。被害者の多くは炎による攻撃を受けて倒れている。その熱さと苦しみを少しでも慰められればと、美しく小さな花は咲き誇った。

 程なくして、生存者の探索が始まった。
 アリーシャは固く閉ざされた家屋の扉を、不可視の氷の鞭で切り開く。中から押し殺したような悲鳴が微かに聞こえてきた。
「誰かいるの? 助けに来たわ」
 彼女がそう呼びかけるも、声は帰ってこない。屋内のどこかにいる事は確かなようだが、それだけ住人の恐怖は深いのだろう。
「私はレナ。復讐代行屋だ。此度の非道を聞きつけて来た。復讐の為には依頼人が必要だ……出てきてはもらえないか?」
 彼女の言葉に誘われたのか、或いは二人目の声ということが幸いしたのか。クローゼットが開き、憔悴しきった様子の少女が中から現れた。
「お姉さんたち、どこから来たの? 魔物はいなくなったの?」
 少女の目の下には乾いた涙の跡が張り付いていた。レナは静かに革袋の水筒を彼女に差し出す。
「魔物は……今はどこかに逃げただけだ。だが必ず見つけ出す。そして……」
 レナは言葉を切った。少女の前でその言葉を続ける事がどこか躊躇われたためだ。
「お姉さんたちも殺されちゃうよ……村の大人たちがみんなやられちゃったんだよ……」
「心配はいらないわ。私たちも慣れているから」
 アリーシャは少女を安心させるように言い聞かせ、その頭を撫ぜた。すると静かだった少女は堰を切ったように涙を流し始める。
「じゃあ、じゃあ……っ。あいつを、殺して。皆が可哀想だよぉ……!」
「……ああ。承ったよ」
 恐らく齢八か九の少女にとって、何者かに明確に殺意を向けるという経験は初めてであろう。それを汲み、レナはゆっくり立ち上がる。
「じゃあ、お嬢さん。皆の住んでいる家を教えてもらえるかしら? 生きている人を少しでも多く探さなくちゃ」
「うん……!」
 膝を折りアリーシャがそう伝えると、少女は涙を拭い、二人の案内を買って出た。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

柚々・奈七音
アドリブ・絡み歓迎

(こ、恐い……死ぬのは怖い…死を見るのも恐ろしい…っ)
ですけれど、生き残っている人がもしいるのでしたら、わたしが助けます。絶対に!
声をかけながら町の生存者を探して、もし傷ついて居たら【生まれながらの光】で何人でも癒します。少し、疲れますけれど…誰かが死ぬより、ずっといい…!

凄惨な事件で、きっと酷く怯えているでしょうから、出来る限り心のケアもして差し上げたいです。わたしにできることなんて、限られているけれど…まだ、生きているなら、希望はありますから、ね。


夜月・クリスタ
ひ、酷い…。何でこんな残酷なこと平気で出来るの…?そ、そういえば白神さんの話通りなら生存者がいるはず…!なら早く助け出さないと!

村中の移動は【ダッシュ】で素早く移動しながら、「誰かいませんか!」と呼びかけ続けるよ。同時に【聞き耳】を立てて、生存者が立てる物音や声がしないか確認する。もし物音がしたらその方向へ向かう!

生存者がいたら【優しさ】で優しく語りかけて、僕たちは敵じゃない事を伝え落ち着かせよう。発見後は他の猟兵達がいる場所へ連れて行こう。
もし怪我をしているなら【医術】で出来る範囲で応急手当を行うよ。少なくてもしないよりはいい筈…!



「ひ、酷い……。何でこんな残酷なこと平気で出来るの……?」
 そうとしか言いようのない惨状に、夜月・クリスタ(怪盗・フォックステール・f13971)は思わず声を漏らした。傍らに立つ柚々・奈七音(終焉を忌む者・f14778)もまた、心の中で恐怖に震える。
(こ、恐い……死ぬのは怖い……死を見るのも恐ろしい……っ)
 だが二人にとっての希望は、未だ残されているという生存者だ。命という命が絶えたようにも見えるこの村にも、まだ生きているものがある。
 彼女たちは顔を見合わせ、走り出した。事態は一刻を争うかもしれない。
「誰か……誰かいませんかー!」
「いたら返事をしてください!」
 大きな声を発しながら村を巡る。誰かがそれに声を返すならば事は楽だったのだが、恐怖に沈んだ者たちの耳には届かない。
「あ……ちょ、ちょっと待って!」
 クリスタは前を走る奈七音を呼び止める。彼女は聞いた。こちらに応えるものではないが、声のようなものを……。
「確か、こっちから……!」
 彼女が駆け込んだ先は馬小屋であった。本来そこにいるはずの馬はどこかに逃げたらしく、一頭もいない。
 床にはひたすらに藁が敷き詰められており、人がいるようには見えなかった。
「出てきて! 僕たちは敵じゃないよ!」
 それでも、いるはずなのだ。残り少ない生存者がこの中に。クリスタがそう信じて声をかけると、藁の一部がゆっくりと持ち上がり、中から少年がひとり顔を覗かせた。
 彼は二人を見ると、「大丈夫みたい」と小さく囁いた。するとその隣から、藁を押しのけもう一人の少年が現れる。二人は兄弟のようで、似た顔形をしていた。
「もう出ても大丈夫……?」
「う、うん。おいで」
 奈七音がその場にしゃがみ込むと、二人は藁を払い近づいてきた。先に顔を出した少年は左半身に酷い火傷を負っているようだ。
「た、大変です! 今治してあげるから……!」
「僕も手伝うよ!」
 クリスタはまず彼の火傷部分を水でよく冷やし、洗った。本来ならば火傷直後に行いたい処置ではあるが、痛みを和らげるには良い。
 簡易的な処置を施すと、今度は奈七音の番だ。生まれながらの癒やしの光をもって、その傷を徐々に消していく。その奇跡を目の当たりにし、少年は目を輝かせた。
「すげぇ! お姉ちゃんすげーよ! そんな力があればきっとお母さんも治せるよね!」
「え、お母さん? 近くにいるのですか?」
 確かに、生きていれば治すことはできる。近くにいるならば治療可能性も上がる。もっと多くの人を助けられるかもしれない……奈七音の胸に希望が広がった。
「今どこにいるのかはわかんないけど、俺らに馬小屋に隠れてろって言ってどこか行っちゃったんだ。うまく隠れ続けられたらご褒美に何でも欲しい物買ってあげるって!
 でもお母さんも怪我してたから、見つけて治してあげてよ。お買い物行けなくなっちゃうからさ」
 少年は歯を見せてそう笑った。だが、その状況と外の惨状から察するに、彼らの母親はすでに……。
「そっか……なら、探してくるね。まだもう少し、ここで待ってて」
「? うん、わかった!」
 少なくとも、彼らに今のままの村を見せるわけにはいかないだろう。そこら中に転がる死体のどれが母親かもわからない。
 まずは埋葬を。二人は一旦、馬小屋を出ることにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヘスティア・イクテュス
うっ…(死体のオブジェを見て)悪趣味ね。
ウェルカム・イェガーズ…猟兵をおびき寄せるために犠牲になったのね…

いえ、考え込んでも仕方ないわ。まずは次の犠牲が出る前に元凶を!


わたしはじゃあ生き残ってる人を探そうかしら?
ティターニアで少し飛んで周囲を見渡しやすいように
アベルを使った音響探知と熱源探知で人のいないかを探してみるわ

オブリビオンに襲われたなら
警戒心とか恐怖心が強いはず

接触時は地に降りて同じ高さから
離れた位置から自身の素性や保護しにきたと目的を伝えて
警戒を和らげるように

もし瓦礫とかで埋まって身動きができないなら…
力仕事は誰かお願いするわ


リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴方達の無念は必ず晴らす…だけど、ごめんなさい。
その無惨な姿から解放するのは、少しだけ待っていてほしい。
今は、生き残った人を優先したいから…。

事前に防具を改造して第六感を強化
暗視と同時に目立たない痕跡や存在感を見極め、
周囲を警戒しつつ隠れている生存者を探し出す

…生存者を見つけたら敵では無い事を告げ、
救助活動の知識を活かし、手早く怪我の確認を

混乱しているなら、誘惑の呪詛で精神を鎮静化し、
治療の確認を取った後【限定解放・血の聖杯】を発動
怪我を癒した後、私達の目的と何があったのか聞いてみる

…私達は猟兵。この村を蹂躙したモノを追っている。

怨んでくれても構わない。でも、今は手を取って欲しい…。



「うっ……」
 村の中心に置かれたオブジェを見てヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)は口元を押さえた。
 ある一人の男が足先から頭まで一本の槍で串刺しにされている。彼の衣服は上半身が裸になるように破られており、その体には無数の腕が突き刺してある。
 それらの腕はまた他の村人が切断されたであろうもので、それぞれが皆引き抜かれた萎れた花を持っていた。
「花で歓迎、って言いたいわけ……悪趣味ね」
 男の胸にはまた「ウェルカム・イェーガーズ」と刻まれている。それらから血が滴っているところを見るに、刃のあるもので体に彫り込んだものだろう。
「何とかしてあげたいけど……今は生存者優先ね。サポート頼むわよ、アベル」
『了解しました』
 ヘスティアはサポート端末アベルを起動し、ジェットパック「ティターニア」による推進で村を飛び回った。また、その飛行能力を活かして空高くから村全体を俯瞰する。
「! いた!」
 地上から見て回ったのでは死角になる位置。瓦礫の裏に人影が見えた。彼女は急降下し、瓦礫の中に降り立つ。
 その中にいたのは一人の男性だ。おそらく家屋に向かって勢い良く投げつけられたことで、壁を破り倒壊した家の中に埋められたのだろう。だが、どうやらまだ息はある。
「もしもし!? 大丈夫!? ああっ、この瓦礫が……! 誰かいない!?」
「……ん。今行く」
 崩れた壁の裏から姿を表したのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だ。彼女は男を圧迫する瓦礫を片付け、彼を安全な場所まで運び出した。
「頭から血が出てる……結構重い怪我みたいね」
「……限定解放。傷ついた者に救いを……血の聖杯」
 さらにリーヴァルディが行ったのは、生命力を凝縮した血液による治療だ。自らの血液を分け与えることで傷を癒やす力。それは功を奏し、男はゆっくりと目を開けた。
「こ……ここは……?」
「ここはあなたの村よ。とてもひどい状態だけど……あなた達を助けに来たの」
「あんたらは……」
「……私達は猟兵。この村を蹂躙したモノを追っている」
 猟兵、という言葉を聞き男の目が見開かれる。猟兵。イェーガーズ。それはこの村に幾度も刻み込まれた言葉だ。
「そうか……あんたらが件の猟兵……」
「怨んでくれても構わない。でも、今は手を取って欲しい……」
 リーヴァルディは男を助け起こすべく手を差し出した。間接的にとはいえ、村を滅ぼす原因は猟兵だった。彼女らに咎はないとしても、恨まれる可能性は十分にある。だが……。
「恨むことなんてあるはずがない。来てくれてありがとう」
 男は諦めたような笑みとともに彼女の手を取り、立ち上がった。
「俺は勘違いしちゃいない。悪いのは明らかにあのイカレカボチャ野郎で、猟兵っていうあんたらじゃない。いわば被害者なんだ。俺達被害者同士で恨みつらみなんて、馬鹿馬鹿しいじゃないか」
 男は埃を払うと、辺りを軽く見回した。それは地獄のような光景である。
「ここで何があったのか、聞いてもいいかしら?」
「ああ……昨夜のことだ。突然悲鳴が聞こえてきたんで飛び出したら、デカイ燃えるかぼちゃを被った男が村人を襲っていた。
 それを男たちみんなで止めようとしたんだが、全員返り討ちさ。俺が怯えてるうちに、アイツは死体で遊びはじめた。頭に血が上っちまって後ろから突撃したが……結果はこのざまだった」
 男が語るのは凡そ想定の通りだった。だが一つ、有力な情報を彼女らは手に入れる。
「意識がかなり朦朧としてたけど、アイツが北の方へ歩いて行ったのを見た。奴を追うなら北だ」
「……ありがとう。貴方達の無念は必ず晴らす……」
 リーヴァルディはその決意を固めた。ヘスティアもまた、その機動力を用いて新たに得た情報を他の猟兵たちと共有していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

弥久・銀花
【POW】
(アドリブ、大きな負傷、ピンチシーン、他の人との絡みOKです)



一体誰がこんな事を……!

刀を抜いてオブジェにされてしまった人達をなるべく楽な姿勢に解体します。
死体とは言えこれはそのまま墓穴に押し込むのは気が引けますからね……。

とりあえず大雑把にでも一通りオブジェを解体してから、墓穴を掘ります。

身元や名前が分からないと墓碑銘にも困りますね、墓穴を掘ってる最中や亡骸の調査をしている間に生き残ってる人が見に来たりしてくれると聞けるんですが……。


墓穴を掘り終えたら埋める前に、当座の墓標として木組みで十字架を作っておきますか。


ピオニー・アルムガルト
行動【POW】
私自身ダークセイヴァーの出身で、弱肉強食の世界と言えば聞こえは良いかもしれないけど、不自然にオブリビオンに支配された世界。見せしめにする為だけに殺すなんてやっぱり不愉快になるわね。

敵はわざわざ手の込んだ事をして『ウェルカム・イェーガーズ』と歓迎までしてくれているんだから、黙っていてもその内出て来るでしょう。他の猟兵の人達も情報収集をしているし、私は殺された人達の埋葬と【祈り】を捧げるわ。野ざらしのままでは可哀そうだからね。
土葬か火葬かはその土地の風習で。

今は怒りは胸の内に秘め、その分敵が出てきたらぶん殴ってやるわよ!
(絡みアドリブ歓迎)


上野・修介
※絡み・連携OK
別に正義感から猟兵になったわけではない。
だが、この惨状を見て何も感じないほど薄情ではない。
「気に食わねぇな」
この胸に渦巻くコレは紛れもなく『怒り』だ。

まずは周囲の探索、安全を確保し同時に破壊状況を確認。
生存者がいれば保護。

犠牲者たちを丁重に弔い、手を合わせる。
とともに遺体と周囲の破壊状況から敵の攻撃手段、戦力を量る。【情報収集+学習力+戦闘知識】
彼らの死に様を目に焼き付け、決して無駄にはしない。
「貴方たちの無念は俺が引き継ぐ」【覚悟】
怒りは頭を鈍らせる。故にそれを丹念に四肢に込めていく。

検分の中で不審な点等あれば、他の猟兵に共有。


シェーラリト・ローズ
(これは…イラッとするねぇ)
理不尽は、必ず終わらせるよ

町の中をゆっくり歩く
被害は町の人だけなのか建物もあるのか
亡くなった方が目を開いたままオブジェにされているなら目を閉じさせる
「こんな目に遭わせた奴は必ず後悔させる。だから、ゆっくり休んで」
どのようにして殺されたかも見る
目は逸らさないよ
この人達の沈黙が何よりもの訴えだからね

命は蘇らないけど、【慈悲深きコンソラトゥール】を
彼らが約束の地に辿り着き、もう苦しい思いをしないよう祈りを込めて歌う
オブジェ1つ1つの前で全て歌う
歌を聴いて、脅威はひとまず去ったと生き残っている人にも示せればいいんだけど
生き残っている人と遇えたら彼らにもコンソラトゥールを歌う


荒谷・つかさ
……悪趣味ったらありゃしないわ。
ともあれ、後始末と調査の必要があるわね……

オブジェにされた死体は予め撮影しておき、考察をする人たちに写真を渡しておくわ。
それが済んだら、可能な限り元の人間の形に戻してから埋葬してあげるとしましょう。

非業の死を遂げた彼らは、恐らく無念を抱いた霊としてこの場に留まっている。
ならば、何があったか……直接聞くのが手っ取り早いわね。
ということで、埋葬が終わったら、墓地の端に移動して【怨霊降霊・迷晴往生】を発動し、周辺の霊を私に取り込むわ。
その無念の記憶を受け取るのと並行して彼らを慰め、浄化して天へと送り出すわね。


花盛・乙女
■SPD

猟兵を呼ぶ為に、か。
気に入らんな、気に入らんとも。
斯様な悪逆を弄せずとも、我らは彼奴らがいる限り世界を渡る。
外道の所業だな。

オブジェとされた遺体を一人ずつ、飾られた姿から降ろし安置をする。
その際遺体の損傷などから敵の攻撃方法を推測しておこう。
忌々しい書き文字は、消せるなら全て消しておく。

村の中央か、どこか良きところを見定め、大地を【黒椿】で持って切り抜こう。
剣刃一閃。心のほむらは盛っているが、それでも一閃の怜悧さは損なわない。
空いた穴に遺体を安置し、『怪力』で土をかけ、手持ちの酒を注ぐ。
エンパイアの…というより私の里の弔いの流儀だ。

生存者がいれば、救助する。
…そして、謝罪をする。



「一体誰がこんなことを……!」
 弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)は村を見てそう漏らした。悪逆非道の限りを尽くしたオブジェの数々がさらに彼女の胸を抉る。
「……悪趣味ったらありゃしないわ。ともあれ、後始末と調査の必要があるわね……」
 荒谷・つかさ(焼き肉担当・f02032)はその建築を撮影した。写ったその写真は傷口や怪我の程度から敵の力を理解するのに役立つだろう。
 そして現状を撮影することが終わればあとは解体だ。悪意を煮詰めたようなこれをいつまでも残して、生存者たちの目に触れさせるわけにはいかない。
「……猟兵を呼ぶ為に、か。気に入らんな、気に入らんとも。
 斯様な悪逆を弄せずとも、我らは彼奴らがいる限り世界を渡る」
 刻まれた猟兵を呼び寄せる文言を見て、花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)は怒りを滲ませた。死してなお辱めを受ける彼らを救わねばならない。
 銀花、つかさ、乙女の三名は己の武器で、或いは腕で、それらオブジェを解体して回った。
 場合によっては、もはや元の形に戻すことはできない者もいた。両手足や首をグチャグチャに縫い付けられ、糸の絡まった操り人形のような有様にされた若者もいた。
 出来る限り彼らが人の形に戻るよう配慮しつつ、三人はオブリビオンの作った悪趣味を村から消し去った。

 解放された死者たちは村の中心の広場に一列に並べられていた。オブジェから切り離したことで、彼らのそれぞれの死因もまたわかりやすくなっている。
「気に食わねぇな」
 上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)は集められた死体を見てそう漏らした。
 胸に込み上げる怒りが彼を支配しようとする――だが、彼はすでに理解していた。怒りは頭を鈍らせるのみ。そしてオブリビオンがここまでの攻撃を村に行ったのは、猟兵を怒らせることが目的なのだと。
 握った拳を開き、彼は深い呼吸を続けた。怒りは分散し、彼の四肢に力となって篭められていく。
(これは…イラッとするねぇ)
 死体を目に焼き付けていたのはシェーラリト・ローズ(ほんわりマイペースガール・f05381)も同様であった。
 彼女は目を閉じることなく、黙する死者を見続けた。彼らは喋ることはもはやできないが、体に刻まれたのは彼らの最後のメッセージだ。少しも見逃さないよう、細部までしっかりと見る。
「こんな目に遭わせた奴は必ず後悔させる。だから、ゆっくり休んで」
 修介、シェーラリト、乙女らの鑑識からわかったのは、敵は「焼けた髑髏を射出する能力」を持つという点だ。
 幾人かの死体にはデスマスクのように骸骨の顔が火傷後として残っていた。そのような傷跡が残るのは上述の攻撃でしかあり得ない。
 加えて敵が持っているのは、「武器ないし攻撃をコピーする能力」らしい。
 村人の中には抵抗のために武装していた者がいた。それらは皆、手にした武器に応じた傷を負って殺されているのだ。村人相手では武器のコピー程度に留まっているが、一度猟兵を相手取れば、おそらくユーベルコードすらもコピーしてくるだろう。
「貴方たちの無念は俺が引き継ぐ」
 だが例えそうだとしても、退く事などありえない。修介はそう誓い、彼らに向けて手を合わせた。

 それからしばらくして、死者の埋葬の準備が始まった。
 銀花とピオニー・アルムガルト(ランブリング・f07501)はそれぞれシャベルで穴を掘っていた。この村は再起不能だ。であれば、もはやどこを墓に使っても問題はない。
 死体を並べた近く、村の中心。彼女らは人一人が入る程度の大きさの穴を次々に掘っていく。
「見せしめにする為だけに殺すなんてやっぱり不愉快になるわね。せめて野ざらしのままにはさせたくないわ」
 ザクザクとシャベルを土に突き刺す。胸に秘めた怒りからか、ピオニーの腕にも力が入る。
 一方で乙女は、墓穴を掘るために刀を使っていた。彼女の持つ悪刀黒椿は、事も無げに大地を切り裂き土を払う。
 彼女自身の心にも怒りの炎は燻ぶる。だがその太刀筋には歪みはなかった。
「それにしても、身元や名前が分からないと墓碑銘にも困りますね……」
「あぁ、猟兵さん。それなら俺に確認させてくれ」
 銀花の悩みに名乗り出たのは生存者の村人だった。瓦礫から助け出された彼は、ヨロヨロとした足取りで埋葬の現場に近付く。
「いいの? 死体を眺めるなんて辛くないかしら?」
「あぁ、まぁもちろん辛いが……どうにも、俺以外に生き残ったのがガキばっかりだったみたいなんでね」
「そうか……すまない」
 仕方がないことだ、と男は並んだ死体を確かめ始めた。これはいつも口うるさかった頑固親父。これは厳しいが優しい隣の家の母親。これはこの村を出て街に行きたがっていた若者。一人ひとりに名前と人生とがあった。それを確かめるように、銀花は木組みの十字架に名前を彫っていった。

 そして埋葬は行われた。墓穴に死者が入れられ、その上から土が被せられる。十字架をその上に立てれば、簡易的ではあるが彼らの墓の出来上がりだ。
「――主よ、彼らの魂を受け止め、安らぎを与えて下さいますよう」
 ピオニーはダークセイヴァー流の祈りの文言を唱え終える。ここが彼女の出身世界といえど、死者への祈りに慣れているわけではない。時折躓きもしたが、ともかく葬式らしい葬式が終わった。
 すると、乙女はそれらの墓に手持ちの酒を振りかけた。
「これはエンパイアの……というより、私の里の弔いの流儀だ」
 死者を悼むのに方法は関係なかった。猟兵たちは思い思いの方法で、死者の安寧を祈る。
「さて……じゃあ、私もやろうかしら。無念を抱く迷える魂よ、我が元へ集え……お前たちの怒りも悲しみも、全て私が受け止め、晴らして見せよう!」
 つかさが短く詠唱を唱えると、墓の下より薄い灯火のような光が彼女の体に集まっていく。それは無念を抱えた彼らの魂だ。その記憶が彼女の中に流れ込んでくる。
「うっ……」
 その凄惨な記憶の奔流につかさの体がよろめいた。と、その時――伸びやかな歌声が彼女の、そしてその中の魂たちに届く。
「我ら手の届かぬ遙かなテール・プロミーズ
 久遠なりし豊穣の地より恵みの雨を風にて運び慈しみの陽光と安寧の夜を
 此の歩みに勇気の火を」
 それはシェーラリトの歌声だ。聴く者に癒やしを与えるその旋律は、つかさに宿る魂たちを鎮め、浄化の一助となった。
「どうか安らかに。そして、天から見守っていて」
 つかさの体から魂たちが天に登っていく。その際、埋葬に集まった猟兵たちは確かに声を聞いた。
『ありがとう』
『我々の体を埋葬してくれて、祈ってくれてありがとう』
『ありがとう……』
 声は薄れゆき、魂の姿ももはや見えなくなった。時刻は正午頃。渇いた空気が太陽を霞ませる。
 村人の埋葬は終わった。では次は、彼らの無念を晴らさねばならない。猟兵たちは北に向かって歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『秘密の拠点への通路』

POW   :    罠や障害を力尽くで突破する

SPD   :    発動した罠を素早く回避する

WIZ   :    慎重に罠を見つけ出して安全に進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 北に向かった猟兵たちはしばらくして、中規模程度の城を見つけた。
 看板には血文字でまたしても「ウェルカム・イェーガーズ」。どうやら間違いはないようだ。
 城の中に入ると、どこかから声が聞こえてくる。甲高い男の声だ。
「やっぱり来てくれたんだネ! 歓迎するヨ、イェーガーズ!」
 男の声に呼応するように、城の入り口の扉がひとりでに閉じた。同時に、城のあちこちで金属のこすれる音が聞こえ始める。
「怒り心頭の君達をすぐにでも迎えたいんだけどネ。フフフ……君達は、追い詰められれば追い詰められるほど力を増すんだロ?」
 男の声は、明らかに猟兵の真の姿について言及しているようだった。やはりこのオブリビオンは狂人ではあるものの、どこか冷静な面も持ち合わせている。
「調べたヨ。君達の事なら何でも調べタ……だからネ」
 そして、猟兵たちの前にギロチンの刃が降ってくる。地面が抉れ、瓦礫が飛び散る。
「君達を追い詰める罠もちゃんと用意しタ。上がってきなヨ、イェーガーズ……! ウヒヒヒ、イヒヒヒヒヒ……!」
 男の声が消える。城の内部はいくつかの廊下と広場で構成され、計四階建てになっているようだ。
 入口から伺える限りでも、先ほどのギロチン、移動と開閉を繰り返すアイアンメイデン、何かのスイッチで作動するであろう煮えた油の入った壺などが確認できる。
 まずはこれらの罠を潜り抜けなければ敵のもとに辿りつけないようだ。村人の無念を晴らし鉄槌を下すべく、彼らは進む……!
デナイル・ヒステリカル
この罠の数々には少し手間取りそうですね……。
こちらを追い詰める目的で作られたトラップハウスらしいですが、
相手の思惑に乗る必要はありません。
味方の被害を最小限に抑えるよう、十分に注意を払って進みましょう。

【情報収集】による観測と【世界知識】による罠への理解を駆使して安全に進みたいと思います。
万が一、起動してしまった罠には、即座に【見切り】を持って臨機応変に対応します。

また、UC:レギオンを召喚し、味方よりも先行させて、
予め小規模な罠ならば起動させてしまうのも良いかもしれませんね。

どういった罠があるかを理解すれば、攻略の役に立つと考えます。



「こちらを追い詰めるためのトラップ、ですか」
 オブリビオンは猟兵の真の姿を引き出すためにトラップを作ったと言った。だが、態々その思惑に乗って傷を受けてやる必要はない。
 デナイルは自分と、そして侵入した味方たちの被害を最小限に抑えるべく細心の注意を払い行動した。
 彼の持つ世界知識を持ってすれば、ダークセイヴァーで製作可能な罠の限度はお見通しである。何に注意すべきかは既に分かっていた。
 この世界において罠を起動するためには何事にも「重み」が必要だ。落とし穴にせよトラバサミなどにせよ、床を慎重に歩いていけば罠は起動しない。
 さらに、この城は元々罠と共に作られたというわけでもないだろう。必ず目印はある。床の色、出っ張り。僅かな差を彼は探した。
「ん、これは……」
 四角いタイルの床の中に、やや新しく張り替えられているものが目に入る。そしてその周囲を見渡すと、壁際にアイアンメイデンが飾られていられるのが確認できた。
「なるほど。これが何なのかはわかりました……では、後に続く人のためにも。状況開始だ」
 彼は無数の電子精霊をその場に召喚した。そのうちの一体が色の変わっている床を踏んでみる。
 床はゴトリと凹むと、その側面から刃が僚属に食らいついた。それを受け、ユーベルコードの兵士は一撃で消滅する。
「この床はトラバサミ。そして壁のあれは……」
 床の罠の起動と連動し、壁際のアイアンメイデンが二つに開き、内部の血が染み付いた棘を見せつける。そのままゴリゴリと近づいてくると、トラバサミの前まで進み、その体を勢い良く閉じた。
「トラバサミで動けなくなった相手をアイアンメイデンで仕留める罠、という訳か。種が割れれば恐るるに足りません」
 彼は引っ込んでいくアイアンメイデンを尻目に床に目立つバツ印を付け、先に進んだ。後に続く猟兵も、この罠に引っかかる者はもはやいないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ピオニー・アルムガルト
行動【SPD】
わざわざ手の込んだ事をしといて、まだ自分は隠れて高見の見物を決め込むなんて面倒くさい奴ね!
さっさと【ダッシュ】で駆け上がって一発デカいのをお見舞いしてやるわよ!

室内が暗い様なら【暗視】でよく見ながら、罠は【野生の勘】【地形の利用】【スライディング】で避けられる物は避けて、無理そうな物は【高速詠唱】ユーベルコードにて対応し破壊するわね。
それでも罠に掛かりそうな場合は多少のダメージなら目を瞑って【勇気】と【覚悟】を決めて突貫するわ!

首を洗って待ってなさいよカボチャ頭!



「わざわざ手の込んだ事をしといて、まだ自分は隠れて高見の見物を決め込むなんて面倒くさい奴ね!」
 ピオニーはどこかで見聞きしているであろうオブリビオンに対して毒を吐いた。彼女は怒り心頭といった様子であり、罠満載の道を歩むに必須な慎重さとは無縁であった。
 彼女はほとんど床の様子など見ることなく、ダッシュで一階を駆け抜けていく。しかし、その走る先の足元にワイヤーがピンと張られていると、それをすぐさま察知し跳び越えた。
「ホッ、と!」
 それは暗闇の中に鈍く光る、罠のスイッチであった。ピオニーにはそれが見えていた。軽度の暗視能力とはいえ、持つと持たざるとでは大きく違ってくるのだ。
 さらにそれを補助するのは彼女の野生の勘だ。ピオニーの人狼としての本能が、自らを害する罠から身を守ったのだ。
 彼女は再び走り出した。数秒もすればその勢いは先程のものを取り戻す。そんな彼女を、再び罠が襲った。今度のそれは足元ではなく――頭上である。
「何っ……、芍薬の息吹!」
 頭上から降り注いだのは燃え盛る巨大なカボチャである。詳細は分からないが、質量と熱を持った危険物であることは間違いない。
 回避は間に合わないと判断したピオニーは、一瞬の詠唱とともに花弁混じる暴風を巻き起こした。その芍薬の花びらはカボチャを切り裂き、風は彼女からそれを遠ざける。
「あー、あっぶないわね……何これ? 燃えてるカボチャ……?」
 破壊し落としたそれをピオニーは確認した。カボチャはあくまで外見だけであり、どうやらそれは金属製の器具のようだ。
 内部は空洞になっており、中に大量の石炭が入れられている。カボチャの底はくり抜かれており、おそらくそこに頭を嵌めて固定するもの……。つまり、顔を固定して蒸し焼きにする処刑具の類だろう。
「キモいわね。カボチャ頭のお手製? もしかして自分でも嵌めてるのかしら」
 そんな訳がないか、と彼女は再び走り出した。一階の階段はすぐそこだ。
「首を洗って待ってなさいよ、カボチャ頭!」

成功 🔵​🔵​🔴​

シェイド・レーム
お友達もいないうえにストーカーかよ、終わってるぜ。まぁ俺様のハンサムさに惹かれて調べちゃうのもわかるけど?まぁリサーチ力不足なんだろうな、俺様の意地悪さまでは調べきれなかったか、ヒャハハハ!

俺様の真の姿でブッ殺すのはたやすいとしてもだ、これっぽっちもあいつの望みを叶えてあげるつもりはねーな!僕は見れなくて悔しいですって泣かせてやるよ!

使用ユーべルコードは『絶望の福音』だ!どうせどっかで眺めてるんだろ?手の内すらテメーには最低限しか見せねえ、震えて待ってろよ!

ま、保険として【オーラ防御】だな。傷一つ付くつもりはねーぜ?偉そうな演出家の思い通りにならないってのは心境を想うと気持ちが良いぜ、ハハハ…



「お友達もいないうえにストーカーかよ、終わってるぜ。まぁ俺様のハンサムさに惹かれて調べちゃうのもわかるけど?」
 シェイドの狙いは単純明快、傷を負うことなく最上階まで辿り着くことである。敵が猟兵の真の姿を望むならば、それに答えてやる義理などない。
(ま、俺様の真の姿で無惨にぶっ殺すか、僕は貴方様の真の姿が見れなくて悔しいですって泣かせてやるか。どっちがいいかといやぁ後者だろうな)
 その口ぶりに反して彼は慢心していなかった。まずは自らの身体の周囲に薄くオーラを纏わせる。不測の事態や、皮一枚ほどの傷も躱すためのものだ。
 シェイドはやがて広間に辿り着いた。これまでの部屋には皆何らかの仕掛けや、壁際の飾りなどがあった。だが、この広間には何もない。ただただ広い空間があるのみだ。
「フン、如何にもだな。何を見せるつもりだ?」
 そしてシェイドが一歩足を踏み入れると、轟音とともに振り子状の巨大な刃が彼の前を横切った。
 刃は一つだけではない。振れるタイミングの違う、合計七つの刃が広場全体に設置されている。そのスイングの速度と刃の大きさを考えるに、正面から喰らえば猟兵といえど真っ二つにされるだろう。
「へっ。どうせどっかで眺めてるんだろ? 手の内すらテメーには最低限しか見せねえ、震えて待ってろよ!」
 それを見てもなお、シェイドは不敵に笑った。そして迷いなく進んでいく。刃の密度は高く、通ろうとすれば一息に渡ってしまわねばならない。タイミングを十分に見計らうのが正道だ。
 だがシェイドは無造作に、張られた蜘蛛の巣をひょいと避けていくように、簡単にこれらの刃を通り抜けていく。
 その目が捉えているのは刃の動きであって刃の動きではない。十秒後の未来の位置。正確にそれを観測できるユーベルコードを発動させた今の彼にとっては、振り子刃を避ける最適な通り道もタイミングもお見通しだ。
「ちょいとリサーチ力不足なんだろうな、俺様の力も意地悪さもなーんも調べきれなかったか、ヒャハハハ!」
 目論見通り傷ひとつ負わず振り子刃を通り抜けた彼は、悠々と階段に足をかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラリト・ローズ
(見た目普通の罠だけど)
壷の中に愉しんで生きたまま放り込まれた人がいるかもしれない
その油が殺した人を絞ったものだったりとか
ギロチンやアイアンメイデンに人だった人があるかもしれない
わたしの貧相な発想の上をいくだろうから腹を括らないとねぇ

【第六感】【聞き耳】で罠を警戒
解除可能なら解除、不可能なら回避か破壊
破壊は【セイクリッド・ランス】を【全力魔法】
心身傷ついた人がいたら【慈悲深きコンソラトゥール】

2階以降は落とし穴にも注意
体重で反応する罠、熱で反応する罠、猟兵に反応する罠は先に進めば進む程あるだろうけど

「首は丁寧に洗っておいてねぇ」
待ってる場所が新たな死体オブジェだらけだろうとわたし達負けないから



(一階の罠……思ったより見た目普通の罠だったけど)
 間近で見たわけではないが、油の入った壷の中に愉しんで生きたまま放り込まれた人がいるかもしれない。或いはその油が殺した人を絞ったものだったりするかもしれない。村の惨劇を見たシェーラリトには全ての罠が邪悪で不気味なものに見えた。
 しかし恐れてばかりもいられない。例えこの先に新たなオブジェのようなものがあったとしても、それで足を止めるわけにはいかないのだ。
 そんな彼女の決意と、そして悪い予感は的中した。彼女の目の前にいたのは内側に棘のついた格子に囚われた人間である。
「だ、大丈夫!?」
「うぅ……い、いてぇ……助けて……」
 彼は中腰の姿勢を強いられており、座るか立つかすると格子の棘が刺さるように固定されていた。
 その傍らには「PULL!」と血文字で描かれたレバーが設置されていた。明からさまな誘導ではあるが、シェーラリトはそちらに駆け寄り、取っ手を掴む。
「うあっ!?」
 が、反射的に手を離してしまった。それは非常に熱せられていたのだ。
 だが、だからといって諦めるわけには行かない。彼女は掌をオーラで軽く覆い、それを掴んだ。すぐに手を離したくなる熱さが彼女の手を襲うが、それでも拳を握り、無理矢理にレバーを倒す。
「はあ……あああっ!」
 レバーを倒すにつれ、男を拘束する格子が徐々に開いていく。この上を行く罠は仕掛けられていないと踏んだ彼女は、そのまま一気にレバーを倒した。
 すると格子が開き、男はその場に倒れこんだ。室内に彼とシェーラリトの荒い息がしばし響く。
「よ……よかった……ちょっと待っててね。今その怪我も治すから!」
 彼女は【慈悲深きコンソラトゥール】を歌った。それは、本来ならば生者に届かせたかった歌声。村では届けることができなかった歌声。だが今ここでは、本来の怪我を癒やす力として機能したのだ。
「お、おぉ……」
「下に行ってて。多分下は他のみんなが罠を片付けてくれてるから!」
「あ、ありがとうございます! この御恩は決して……!」
 男は涙を流しながら頭を下げ、下の階へと走っていった。彼女自身も怪我を負ったものの、一つの命は確かに救われたのだ。
「さて……首は丁寧に洗っておいてねぇ」
 シェーラリトは先を急いだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。この程度で止められると思わないで。
お前には、あの村の報いを受けさせてあげる…。

防具を改造し第六感を強化する“見切りの呪詛”を付与。
両目に魔力を溜めて暗視を強化し、目立たない罠の存在感を探り、
罠に掛からないよう忍び足で進んでいく。

…歓迎すると宣っている以上、敵が逃げる心配は少ない。
だからここは、時間をかけてでも、消耗しないように進むべき。

どうしても罠を突破できない時や、
危険が迫った時は【吸血鬼伝承】を発動。
自身の身体を霧に変化してやり過ごす。

…伝承の吸血鬼は家主の許可が無ければ家に入れなかった。
このユーベルコードも、その影響を受けているのかな?
…いつもより、効率よく変化できる…気がする。



 リーヴァルディは自らの防具に見切りの呪詛を付与していた。それは罠の微細な動きや空気の揺れを見逃さないためのエンハンスだ。
 さらにその両目には暗視強化の魔法。全身を罠の突破に特化させたその能力で彼女は二階の攻略を開始した。
(……歓迎すると宣っている以上、敵が逃げる心配は少ない。だからここは、時間をかけてでも、消耗しないように進むべき)
 その彼女の考えは正しいものだ。確かに敵は猟兵を待っていた。であれば、焦って罠を踏む必要はどこにもないわけだ。
 既に他の猟兵が共有していたトラバサミの床やワイヤーによるトラップ、アイアンメイデンは彼女の障害にはならなかった。そもそも起点となるスイッチを見切り、勝手に発動したものは回避する。
 しばらく進むと新たなトラップが彼女の前に姿を表した。いや、それは視界に入るものですらなかった。彼女の背後から、棒のついたハンマーが飛んできていたのだ。
「……っ!」
 風圧と風切音に振り向いた時にはそれはすでに彼女の眼前にある。回避は間に合わなかった。
 その打面が彼女の顔面を打ち据える――と見たその瞬間、彼女の顔が柔らかく歪みハンマーを受け流した。そしてハンマーは後頭部を通りぬけ、彼女の背後の壁にぶち当たる。
 彼女の体は赤く細やかな霧と化していた。その形態はあらゆる物理的な攻撃を受け付けない。そのまま空に流れ、トラップを尽く無視した上で、部屋を通り過ぎると霧が集まりシェーラリトの肉体に再編される。
「……ん。この程度で止められると思わないで。お前には、あの村の報いを受けさせてあげる……」
 しかし、と。軽く自らの手を霧化させて再び戻す。
 普段のユーベルコードよりも効率よく変化できている。……伝承の吸血鬼は家主の許可が無ければ家に入れなかった。今の彼女が家主に招かれているためなのだろうか?
 首を傾げながらも、この特徴は戦いにおいても有効に使えるものかもしれない、とシェーラリトは頭の片隅にこの事を留め置いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンナ・フランツウェイ
文字通り前座ってわけか…。村人達への誓いを守る為にも、オブリビオンの所へ向かおう。…怒りではなく、憎悪を胸に。
「そんなに合いたいなら向かってやる。アンタは懺悔の準備をしていろ。」

城内を移動する前に断罪式・白詰花を発動させ、オブリビオンに殺された村人達の呪詛を身に纏う。村人の皆、コイツを許せないなら力を貸して。

道中はユーべルコードによる高速移動と、自身の翼を使った飛行を組み合わせ空中を高速で飛んで移動する。
罠が発動したら【見切り】でその罠が私に向かってくる軌道を見切り回避。間に合わないなら【気合い】と【激痛耐性】で耐え、そのまま進んでいく。


ヘスティア・イクテュス
ただの狂人…またはこちらを舐めた相手だったなら楽だったのにね…
幸いなのは時間がかかっても逃げなさそうなところかしら…


フェアリーズを先行させて罠を探らせてもらうわよ
物理で破壊できるのはミスティルテインのビームで融解させて対処ね

基本的には先行する猟兵の歩いたところ以外は歩かないように注意
もし、落とし穴的なのがあれば飛んで回避&助けるわ
その代わりミスティルテインでどうにもならなさそうなのはお願いするわよ?

電子トラップならハッキングでなんとかなるのに…
こういう罠って嫌い…


上野・修介
・POW
ボスが控えている以上ダメージ最小限に留めたい。
だが折角の歓迎だ。
「いいぜ。応えてやるよ。」


正面から罠に挑み、適切に対処し可能なら破壊していく。

自UCは基本的防御強化で使用。
突破の際、ダメージを受けることを【覚悟】する。
だが絶対に後退はしない。
腹を据えて【勇気+激痛耐性】突き進む。

罠の兆候があればまず観察【視力+情報収集】
その種類を【見切り】、破壊できるなら自UCで攻撃力を強化し拳【グラップル】で破壊し何処かで様子をうかがっているであろう南瓜頭を【挑発】しながら進む。
場合によっては走りに抜けて【ダッシュ+逃げ足】突破する。


夜月・クリスタ
【SPD】

自分は隠れながら他人を苦しめ楽しむか…、典型的な悪党だね。まあいいや。そんなに楽しみたいなら、僕が怪盗の業で楽しませてあげるよ。
「オブリビオン専門怪盗・フォックステール。任務開始!」

城内は【レガリアスシューズ・怪盗仕様】で得た駆動力を生かして【ダッシュ】で移動。罠が発動したらスピードを生かしたまま【スライディング】で身を低くして滑り抜けたり、【ジャンプ】で罠を飛び越え回避するよ。

飛んでくる系のトラップなら【見切り】で飛んでくる物の軌道を見切り、小太刀で切り払って防御。

「こんなものなの?怪盗をあまりなめないでほしいな。」

・アドリブ、絡み歓迎


荒谷・つかさ
まだ姿を見せない、か。
まあいいわ。歓迎されてるなら受けてやろうじゃない。
じゃ、まずはこの罠だらけの城の解体及び破壊を……え、ダメ?

仕方ないので、普通に進むわ。
罠走査の定番は、杖で先をつついて行くのよね。
私もそれに倣おうかしら。
(ただし、用いているのは「丸太」)
……そんなにおかしいかしら、コレ。
武器としては威力あるし(障害になりそうな罠を丸太で殴って破壊)
盾代わりにもなるし(矢の罠を丸太で受ける)
落とし穴にかけて橋にしたり釣り天井のつっかえ棒にしたり、便利よ?(実践しつつ進む)

丸太でなんともならない、遠くの物の操作とか細かい作業が必要なら【妖術・九十九髪】を使うわ。



「そんなに合いたいなら向かってやる。アンタは懺悔の準備をしていろ」
 城主に向けて、アンナは啖呵を切った。猟兵たちを傷つけるための罠をこれだけ用意する相手だ、ただ作ってそのまま満足するとは考えがたい。きっとどこかで確認しているのだろう。
 その上で、彼女はユーベルコードを発動する。それは自らに敵の被害者の呪詛を身に纏うもの。村人たちの無念は今再び現世に呼び戻され、そしてアンナと共に敵を討つ力となる。
「断罪の時は来たれり。復讐の時だ」
 血のような色のオーラが噴き出す。それは彼女の寿命を縮めながらも、高速移動と飛行を可能にするものである。まずは彼女が二階攻略のための先陣を切った。
 そんな彼女に並走するものがあった。電子的でありながら妖精のようでもある「フェアリーズ」。ヘスティアの能力で召喚されたドローンである。
「その子たちを連れて行って。あなたを導いてくれるはずよ」
「あ……ありがとう。活用させてもらうね」
 アンナとフェアリーズが高速で先行し、ヘスティア、修介、クリスタ、つかさはその後ろをついて行く。
(ただの狂人……またはこちらを舐めた相手だったなら楽だったのにね……。幸いなのは時間がかかっても逃げなさそうなところかしら……)
 ただならぬ不気味さを感じつつヘスティアはそう考えた。相手がその両者のどちらでもないとわかっているからこそ、その動きは読みづらくなる。
 敵の本拠地であるこの城ではとにかく慎重さが重要視される。その点でこのフォーメーションは、スイッチ式などの侵入者の行動により発動するタイプの罠を全て無視して通ることができていた。
 そして辿り着いたのは、一階で見たものと同様。階段前の広間である。
『悲しいねェ。せっかく作った罠なんだかラ、もっと動かしてもらわないト……』
「ッ!」
 再び響いてきた男の声に一同は体を硬直させた。入り口で聞いたものと同様の男の声だ。
『あァ、そうカ。それなら僕が手動で動かせばいいネ?』
「何をするつもり……!?」
『ポチッとナ』
 直後、五人を囲む四方の壁からゴトゴトと音が鳴り始める。飾られていた複数の絵画が全て上にスライドすると、中から穴の空いた筒が姿を表した。それはまるで、銃の砲塔のようである。
『グッド……ラック!』
 それらから一斉に石が射出され始めた。それ自体は大した殺傷力を持たないものであるが、発射速度はダークセイヴァーの技術にしては相当なものである。
 一個や二個ならばともかく、数個直撃すればかなり体力を奪われると見ていいだろう。速やかに階段に辿り着かなければならない。

「折角の歓迎だ。いいぜ。応えてやるよ」
 危機的状況でありながらも、修介は冷静さを崩さない。彼のこめかみに射出された石が飛来すると、彼はそれを避けつつ拳で打ち砕く。
 荒削りでありながら、彼の喧嘩格闘術はこれらの石打から身を守るのに十分と言えた。飛んでくる攻撃を回避し、或いは拳で落とし。あっという間に彼の周りには石の欠片が積み上げられていく。
 そうしながらも彼は少しずつ前進していた。続けていくうちに腕には疲労が溜まり、石を追い続ける目は動きが鈍り始める。
「どうした、この程度か! トレーニングにもならないな!」
 それでも彼の口はオブリビオンへの挑発を紡いだ。石の勢いは止まず、確実に彼の体力は奪われていく。度々石の芯を捉え損ねたものが彼の体を打ち据える。
 それがどうした、と彼の歩みは止まらず、ペースもまた崩れない。この程度の痛みはとっくに覚悟を決めていたのだ。彼はまたジリジリと進んでいく。

 その傍らで、クリスタは回避をベースにこの部屋を対処することを選んでいた。
「まったく、こういうトラップもさぁ。典型的な悪党だね。まあいいや。そんなに楽しみたいなら、僕が怪盗の業で楽しませてあげるよ――オブリビオン専門怪盗・フォックステール。任務開始!」
 それは一種のルーチンであり、意識のスイッチングのようなものであった。名乗りと任務開始の宣言。口に出したそれが、自らが戦地にいるのだと彼女に思い起こさせる。
 周囲の時間が鈍化し、石がどこからどこへ進んでいくのかが見て取れた。クリスタは或いは跳ね、或いは体を屈め、柔らかな関節を駆使して自らを取り囲む投石を避けていった。
 そうした回避をしながらも、ダッシュによる前進も忘れていない。早くこの部屋から抜け出せば、それだけ体力の消耗も抑えられる。だが一気に進みすぎれば回避が疎かになる。
 顔の近くに飛んできた石を小太刀で叩き落とし、更に二歩前進する。
「こんなものなの?怪盗をあまりなめないでほしいな」
 余裕綽々、と言った様子で彼女は石を潜り抜けていく。階段は近付いてきていた。

「電子トラップならハッキングでなんとかなるのに……こういう罠って嫌い……」
「まあいいわ。歓迎されてるなら受けてやろうじゃない」
 ヘスティアは自動防衛衛星ガーディアンの発するバリアで何とかこれらを受け止めていた。一方のつかさは手にした巨大な丸太を盾代わりにして石を受け止めている。
「いやホントでかいわねそれ!」
「そんなにおかしいかしら? 使い勝手いいのよ」
 つかさはそう言いながら前進していく。いかに太い丸太といえど耐久には限度がある。いつまでも石を受けてはいられない。速やかに通り抜けなくては――そうした心理を、オブリビオンは利用した。
 石を防ぎつつ歩いていた彼女は突如、足元の抵抗が消えるのを感じた。
「つかさ!?」
 ヘスティアが叫ぶ。目の前にいたつかさが突如床に吸い込まれた。そう、急いで通らざるを得ないこの広間には落とし穴があるのだ。
「大丈夫!? 今助、け……」
 幸いヘスティアはジェットパックによる浮遊がある。助けようと穴を覗き込んだ彼女は言葉を失った。
「いや、危ないところだったわ」
 つかさは丸太を穴に挟み込み、それに掴まって辛うじて耐えていたのだ。その足元には煮えた油がある。一階から見えていたものだ。
「なるほど、一階で罠を踏めば一階にぶち撒けられる。そうでなくても、二階の落とし穴の先に油があると……合理的ね」
「言ってる場合? とりあえず手を貸すわ」
 ヘスティアはぶら下がるつかさの手を掴み引っ張りあげた。丸太はもはや挟まって取り出せず、使えない。とはいえ、すでに広間の出口はすぐそこだ。
 もはや回避や防御に気を使うまでもない。五人はそれぞれ、多少の石の激突にも構わずに広間を走り抜けた。
「はぁ、はぁ……二階、攻略だね」
 広間を抜けた先で肩で息をしつつ、アンナは確かめるようにそう呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アリーシャ・マクファーソン
はぁ……また「ウェルカム・イエーガーズ」使い回しとは書いた相手の高が知れるわね。

奴の挑発に乗るのは癪だけども、さっさとこのちんけな罠を突破して、そのそっ首落としてあげましょう。

【POW】
ご要望通り真の姿で蹂躙してあげましょう。
金色の瞳に、真紅の蝙蝠翼。それが私の忌み嫌うヴァンパイアと似た真の姿。
だから、さっさと終わらせたいの。あなたの用意した罠、踏みにじるわね?

【氷雪之茨鞭】
見えない透明な氷の鞭で目に映る罠を薙ぎ払ってやりましょう。
罠同士をぶつけてみるのも面白いかもしれないわね。
道を塞ごうとする罠があるなら、魔力を通した血を撒いて凍らせてしまいましょう。
所詮南瓜頭で思いつく罠はこの程度ね。


柚々・奈七音
アドリブ・絡み歓迎

許しません…あなたたちは、絶対に!
残念ながら、わたしは罠に通用する能力は持ち合わせておりませんので…
力づくで突破、させて頂きます。
見える罠は【怪力】で何とか破壊しますっ!
あまり先陣を切る能力でもありませんから、後は他の猟兵さんの援護をしつつ、でしょうか。
少し厳しいですが…こんな程度の罠で、つまづくわけには、参りませんっ…!

罠で怪我をした方がいらっしゃったら仰ってください。
UC【生まれながらの光】で、いつでも癒せるようにしておきます!


花盛・乙女
■POW

こいつ…ふざけているのか。
まるで自らを窮地に追い込むためにそうしたと言っているようではないか。
気に入らん。私たちが動くこと自体手の平の上と言った体が特に気に入らん。
目の前に落ちたギロチンは『怪力』で握り砕き、歩を進めよう。

くだらん罠などこの花盛乙女の刀の錆にもならん。
斬り、断ち、砕き、進む。
窮地に追い込もうという腹積もりだそうだが、この程度の児戯で窮地とは片腹痛い。

徹底的に罠を壊して進んでやろう。
煮え湯を浴びようが、傷を負おうが構わん。
村の民達の痛みはこの程度ではなかった筈だ。
彼奴めの目論見通りにはならん。『激痛耐性』の前では窮地とは呼べん。

必ずや、首を落としてやる。待っていろ。


弥久・銀花
(アドリブ、他の人との絡み、ピンチシーンとか歓迎です)

歓迎すると来ましたか、ならば歓迎してもらいましょう

適当に床材や窓枠や家具それから絨毯などを壊したり裂いたりして罠にドンドン噛ませて置きます

油壺は壁によじ登ってから何か物を投げ付けてみましょう


こうした泥臭い悪く言えば素人っぽいやり方で攻略するのは、殺されてしまった村人でもこんな城、楽勝で攻略できるって思い知らせる為です



おや? どうしました? 歓迎の趣向が機能してませんねぇ
村人向けアトラクションとしてはギリギリ及第点、って所でしょうか

ですが楽しんでくれる村人は貴方が殺してしまいましたし、後で貴方も同じ場所に送ってあげるのでそっちで頑張って下さい



「はぁ……また「ウェルカム・イエーガーズ」使い回しとは書いた相手の高が知れるわね」
 階段を登った先に再び現れた血文字に辟易した様子でアリーシャは呟いた。
『ヒヒヒ……そう言わないでヨ。僕の歓迎の気持ちの現れサ。君たちがここまで来てくれて嬉しいんだヨ』
「こいつ……ふざけているのか。まるで自らを窮地に追い込むためにそうしたと言っているようではないか」
『ククク……そうかもしれないねェ』
「……気に入らん。私たちが動くこと自体手の平の上と言った体が特に気に入らん」
 乙女は降り注ぐ声に怒りを滲ませる。それすらもオブリビオンは意に介さないようだ。
『ここはこれまでの罠のオンパレードサ。頑張ってネ!』
 そう言い残し、声は消える。その宣言通り、まず四人を迎えたのは振り子刃の広間だ。タイミングと揺れ幅の違う巨大な刃が行く手を阻む。
 だがその先頭にある振り子は、直ぐ様床に落下。大きな音と共に床を抉り、動きを止めた。
「くだらん罠などこの花盛乙女の刀の錆にもならん」
 乙女は抜刀していた刀を鞘に再び収める。振り子は刃は彼女の刀により破壊されていた。
「ご要望通り真の姿で蹂躙してあげましょう」
 アリーシャがその言葉と共に真の姿を開放する。その赤い瞳は金色の瞳に、その背中には真紅の蝙蝠翼が出現する。
「これ、私の忌み嫌うヴァンパイアと似ているのよね。だから、さっさと終わらせたいの。あなたの用意した罠、踏みにじるわね?」
 乙女に続き、彼女もまた真の力による膂力と氷の鞭で罠を破壊していく。まずは一つの振り子刃を破壊。進んだ先に飛んできたハンマーを鞭で絡めとると、勢いを殺さぬままこれを次の振り子にぶつける。これにより、更に振り子は減少した。
「く、少し厳しいですが……こんな程度の罠で、つまづくわけには、参りませんっ……!」
 後に続く奈七音はすでに破壊され落下した振り子の刃を掴むと、それを怪力で持ち上げた。続いてそれを前で揺れる刃に向けて放り投げると、ドミノ倒しのように次々に刃が天井の支点から千切れ落ちていく。
「おお、やるではないか! この調子だ、徹底的に罠を壊して進んでやろう」
「は、はい! 罠で怪我をした方がいらっしゃったら仰ってください。いつでも癒やす準備はできています!」
「ええ、頼りにしているわ」

 その後も彼女たちの快進撃は止まらなかった。罠などまるでなかったかのように進み、そしてそれらを破壊していく。
 特に銀花は破壊が顕著であり、罠のみならず床や窓枠、壁や絨毯に至るまで破壊の限りを尽くし、破壊された罠の傍らに添えていった。
 この破壊はオブリビオンへの怒りを表明するためという側面もあるが、その本質は、猟兵でなくても攻略できるというアピールのためであった。その上で、挑発を続ける。
「おや? どうしました? 歓迎の趣向が機能してませんねぇ。村人向けアトラクションとしてはギリギリ及第点、って所でしょうか」
『グゥ……』
 そうしながらも、彼女らの歩く跡には破壊された罠の残骸が散らばりゆく。かつてオブリビオンが村人を蹂躙しその足跡に血を散らしたように、今度は猟兵が彼の罠を破壊し蹂躙する番だ。
「窮地に追い込もうという腹積もりだそうだが、この程度の児戯で窮地とは片腹痛い。必ずや、その首を落としてやる。待っていろ」
『グググ……』
 或いは誰かが怪我をしたとしても、それはすぐに奈七音の光により治療されていく。幾多の罠がぶつかろうと、彼女らに傷が増えることはない。
「所詮南瓜頭で思いつく罠はこの程度ね」
『グゥゥ〜……』
 どこか苦しげな声がしばし城内に響いた。恒例となった階段前の広場であっても、やはり役には立たない。もともと耐久力に乏しいダークセイヴァーの素材では、猟兵による攻撃を受け止めきれる道理はないのだ。
 そして、容易く突破した彼女らはついに階段を登る。村を蹂躙した悪党との対面の時が来た。

「許しません……あなたは、絶対に! 覚悟してください!」
「グ、グゥ……!」
 四階はたった一つの広間だけがあった。そこは趣味の悪い拷問器具や処刑道具に溢れており、どれにも等しくおびただしい血がこびりついている。
 その中心で階段に背を向けているのはかぼちゃ頭のオブリビオン。変わらず、苦しげに呻く。
「グ、ググ……グ、フフ……グフフフハハハハハハハ、ヒャハハハハハ!」
 ところがその苦悶の声が笑い声に様変わりする。オブリビオンは勢い良く振り向くと、同時にその頭に炎が灯った。
「素晴らしかっタ……予想以上だヨ、君たちの力ハ! ヒヒヒ、ヒャハハハハ!」
 男は狂ったように笑い始めた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ジャック・ザ・カーニバル』

POW   :    汝、肉に別れを告げよ
戦闘中に食べた【肉】の量と質に応じて【炎が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    ヘルファイアゴースト
レベル×1個の【髑髏】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    ジャックブレイズ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【頭頂部の炎に映し出し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はネフラ・ノーヴァです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「最初はほんの好奇心だっタ。自らの体に走る痛みに興味を抱いたんダ」
 オブリビオン――ジャック・ザ・カーニバルはひたりと足を一歩動かした。
「やがてそれは倒錯となリ、より激しい痛みヲ。自らを死に近づける感覚が心地良いものになっタ!」
 メラメラと燃える炎の中。無数の髑髏の中に一つ、恍惚の笑みを浮かべる男の顔がある。
「自分を拷問するのは最高ダ。この頭もその一つサ。人の頭蓋を薪にすることで炎を高温化させル。僕の頭を常に焼き続ける拷問器具!」
 ジャックは手袋を外す。その指先は万力のような固定具で潰され、爪の中から血まみれの鋸の歯のようなものが見えている。
「だが足りなイ。究極の快感を得るためには、やはり死を味わうほかないのダ。だが死は万物に一度きリ。どうせなら最高の痛みと苦しみの中で僕は死にたイ!」
 ジャックは手袋を再び嵌め、ギラリとした欲望の眼差しを猟兵たちに向けた。
「それが君たちだヨ。異世界から来た強者達。見たこともない武器。見たこともない技! さァ! 僕が憎いだろウ? 遠慮するナ。僕をグチャグチャにしてくレ! ヒャハハハハハハハハ!」
 オブリビオンは両手を掲げ、踊りかかってきた!
弥久・銀花
(アドリブ、他の人との絡み、ピンチシーンとか歓迎です)

【WIZ】

では年貢の納め時です、猟兵を待ち受けるには防御が貧弱でしたね。


愛刀の白嵐玉椿を抜き放ち接近戦で挑みましょう。

うーん、カボチャの様な姿ですけど、口の中にしゃれこうべが一杯……。

これは食べられそうにありませんか、潰して肥料にしましょう。


ちょっとやそっとの致命傷くらいならユーベルコードの不死身の人狼で治せますので果敢に攻めかかります。

行使する時には動けなくなりますが、そこは仲間にカバーして貰う感じで頑張りましょうか。


シェイド・レーム
究極の快感ねぇ…死の鉄門を開くときもその減らず口を叩けるか俺様が見届けてやろう。俺様の死霊術はマゾヒズムなんて生っちょろい変態性癖で受け止めれるほど甘くはねぇ…死に直面して初めて本性は暴かれる…。死は平等だ、てめぇだけ気持ち良く逝けると思うんじゃねえぞ!

全力全開で行くぜ!【高速詠唱】+【呪詛】により威力を最大まで高めた『死霊ミサイル』だ!おっさん達…俺は敵討ちなんて面倒くせぇ事はしねえぜ、てめーらの恨みはてめーらで晴らすんだな!

復讐!復讐だ!!集いし怨念どもよ、魔を穿つ矢となれ!!死霊ミサイル装填!発射ぁ!!ヒャーッハッハッハ!!残酷な死をくれてやれぇ!!



「では年貢の納め時です、猟兵を待ち受けるには防御が貧弱でしたね」
 侮蔑的な視線を送りつつ、銀花は愛刀の白嵐玉椿を抜き放つ。その輝きに、オブリビオンは期待に満ちた眼差しを向けた。
「防御だなんて勿体ないことはしないヨ。理想の快感の為に君らを呼び寄せたんだからネ!」
 聞く耳持たず、と彼女は踏み込み、刀を振り下ろす。ジャックはそれを片手で止めようとするも、あえなく手袋とその下の手は両断された。刀は彼の腕を切り裂き、肘関節にぶち当たり止まる。
「アアァァァァッ! 良いねェ!」
 常人であれば身悶えするか失神するような傷にも関わらず、ジャックはただ喜悦の声を上げるのみだ。銀花が刀に体を寄せ前方に体重を加えると、再び血が滴る。
「グウゥ!」
「うーん、カボチャの様な姿ですけど、口の中にしゃれこうべが一杯……。これは食べられそうにありませんか、潰して肥料にしましょう」
「ククク、そうかナ? もっと顔を近付けて見てごらんヨ!」
 カボチャの口元がギチギチと揺れたと思うと、重い金属音を立てて上下の口が噛み合わされる。既の所で銀花は頭を引き、そのまま刀を抜いて距離を取ろうとする。
 だが、腕の肉と肘にガチリと挟まれた刀は引き抜くことができなかった。ゆっくりと、再びかぼちゃ頭の口が開く。
「くっ、硬い……!」
「ヒヒヒヒヒ。君にも痛みを分けてあげよウ」
 抜けない刀に苦戦している最中、ジャックは頭を傾け銀花の肩口に喰らいついた。熱された金属の牙は容易く肉を破り、熱傷を与える。
「ぐあっ……!」
 だが、彼女は刀から手を離さない。ここで反射に任せ手を開けば、唯一に等しい武器を手放すことになるからだ。
 むしろしっかりと刀の柄を握りしめ、ジャックの腹を全力で蹴る。血肉を散らしつつ刀は引き抜かれ、改めて銀花は距離を離した。
「アアッ、熱ゥゥゥゥイッ!」
 かぼちゃ頭の口はしばしモゴモゴと咀嚼の動きを見せていたかと思うと、その頭の炎が猛然と燃え上がる。銀花の肉を薪として炎が強化されたようだ。その熱でジャックは喜びの悲鳴を上げている。
「とんでもない変態ですね……」
 炎が燃え上がると同時に、彼の腕の傷が塞がり始めた。自己への虐待を可能とするための回復能力だろう。
 傷を塞いでいるのは銀花も同様であった。不死身の人狼としての能力を活性化させた彼女が肩を押さえると、その組織が目に見える速度で回復していく。
「ほウ……? 同類だネ。より多くの痛みを享受できるわけダ」
「あなたなどと一緒にしないでもらえますか?」
 ジリジリと近付くジャックに吐き捨てる。更に距離を開けようとしないのは、彼女の能力の代償だ。回復に専念するために動くことができないのだ。
 それを知ってか知らずか、オブリビオンは手袋を外し痛々しい拷問器具を彼女に見せつけた。カチャカチャと万力が鳴り――そこに、苦悶の表情を浮かべた人間の顔のような霧が激突。さらに大きな音とともに、その万力を指先ごと弾き飛ばした。
「ガァァァァァッ! グッド!」
「究極の快感ねぇ……死の鉄門を開くときもその減らず口を叩けるか俺様が見届けてやろう」
 それは死霊を用いたミサイル攻撃であった。シェイドは既に十分な詠唱を終え、無数の死霊をその周囲に出現させている。
「俺様の死霊術はマゾヒズムなんて生っちょろい変態性癖で受け止めれるほど甘くはねぇ……死に直面して初めて本性は暴かれる……」
「ヒヒヒ、なるほド。見たような顔がいくつかあるネ?」
「お察しの通りさ。てめぇが滅ぼした村の死霊だよ」
 抗ったが抗いきれずに殺された者。命を乞うたが拷問され、オブジェにされた者。親しい者の復讐を誓いながらも敗れた者。
 それら村人の霊がオブリビオンを睨みつける。今の彼らは怒りを持った念そのものであり、その身全てを武器にできるミサイルだ。
「死は平等だ、てめぇだけ気持ち良く逝けると思うんじゃねえぞ! おっさん達……俺は敵討ちなんて面倒くせぇ事はしねえぜ、てめーらの恨みはてめーらで晴らすんだな!」
 そして、それが最も彼らが望むことであろう。口に出すことなく、彼は村人たちにさらなる魔力を充填する。そしてジャックは、ただそれを見て待っていた。
「どうした、足が竦んだか?」
「とんでもなイ。喜びで打ち震えているヨ」
「ケッ、いつまで言ってられるかね。さぁ、復讐! 復讐だ!!
 集いし怨念どもよ、魔を穿つ矢となれ!! 死霊ミサイル装填! 発射ぁ!!」
 死霊らが一斉に飛びかかる。カボチャの頭に、肩に、足に、腕に。一撃一撃が踏み躙られた命の重さ。それを刻みつけるようにミサイルが殺到した。
「ヒャーッハッハッハ!! 残酷な死をくれてやれぇ!!」
 死霊はさらに彼の体を食い破り、その内部で暴れ回り、爆発する。一分弱にも及ぶ集中砲火の末ジャックの体はボロ雑巾のように変わり果て、力なく膝をついた。
「さぁ、どうだ。死の恐怖が見えたか?」
「……想像しなかったと思うカ? 君たち猟兵の中に、村人の魂を利用するものがいるだろうト」
 だが、その傷をまるで厭わぬように。むしろ愛おしげに身体を抱き、ジャックは立ち上がる。
「ヒャハハハハハハハハ! 最ッ高だったヨ! 彼らの痛みがそのまま叩きこまれたようだっタ――その為に彼らをきっちり痛めつけたのだかラ!」
 ジャックは再び高笑いし、その頭の炎を巻き上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。お前の望み通りの死なんて与えない。
この世界から、その存在を抹消してあげる。

改造した防具の“見切りの呪詛”を応用し第六感を強化
精霊の存在感を感知し、自身の生命力を吸収させて誘惑
彼らの助力を得て【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)

…いくよ、世界に漂う精霊達。私に力を貸して。

大鎌に“闇”属性の“過去を世界の外側に排出する力”を溜め、
反動で感じる傷口を抉る痛みは、呪詛耐性と気合いで耐える

この一撃に、私の全てを…。

吸血鬼化した怪力を瞬発力に変えて敵に接近、
殺気を感じたら【吸血鬼伝承】で霧化して回避し、
カウンターで大鎌をなぎ払い“闇の奔流”を解き放つ

…痛みも苦しみも無い、骸の海へ還るが良い。



「……ん。お前の望み通りの死なんて与えない。この世界から、その存在を抹消してあげる」
「面白イ! 是非そうしてくレ!」
 ジャックはあくまで挑発的な態度で待つのみで、リーヴァルディが己の力を強化していくのも見守っていた。その間に、彼女は漂う精霊のマナを自らの生命力と引き換えに受け取っていく。
「……いくよ、世界に漂う精霊達。私に力を貸して。限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
 精霊より借り受けた膨大な魔力に混じるのは、身体から染み出す彼女の血液である。闇の魔力を帯びたそれは彼女の鎌に纏わりつき、グリムリーパーの刃を一層巨大に変えた。
 過去を世界の外側に排出する、猟兵固有の力を突き詰めたもの。途方もなく凝縮されたそれを手に、リーヴァルディはジャックの懐まで踏み込む。持ち主の腕を千切らんばかりに荒れ狂う刃を、力任せに敵に叩きつけた。
「グゥッ……!?」
 ジャックは刃と体の間に両腕を挟み込んで防御した。だがとても受け止めきれない。切れ味は金属相応にしても、その勢いは落下するギロチンより遥かに重い。
 その攻撃を前に彼の両腕は落ち、その胴は真一文字に斬り裂かれる。傷口は闇の魔力てブスブスと爛れ、煙を放っていた。
 振り抜かれたその刃を、リーヴァルディは膂力で無理やりに止めた。肩関節が外れ、ミシミシと音を立てる。そこまでの代償を払って彼女が刃を止めたのには意味がある。刃を返し、二撃目を放つためだ。
 闇の輝きを取り戻した刃が往復して振るわれる。リーヴァルディはさらに一歩踏み込み、深い一撃を与えようとする。
「この一撃に、私の全てを……」
 ――同時にジャックの頭の炎が形を変え、鎌となって彼の手に握られた。
「ヒィィィハァァァァ!」
 リーヴァルディの刃とジャックの炎の鎌がぶつかり合った。その威力は拮抗し、両者は同時に室内の壁端まで弾き飛ばされる。
「何……!?」
「ジャックブレイズ! これほどの大物を真似たのは初めてだがネ」
 ジャックの両腕の断面が蠢く。骨が伸び、それに筋肉が絡みついていく。腕が再生しようとしていた。
「二発目を喰らえば死んでいたかもネ。だがまだダ、まだ味わい足りないネ! 最高の死は、無数の痛苦を受けた果てになくてハ!」
 大技の反動は甚だ大きい。オブリビオンの高笑いに、リーヴァルディは一旦距離を取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ピオニー・アルムガルト
どんだけ死にたがり屋っかつーの!
まったく変な性癖に周りを巻き込むんじゃないわよ。まあ相手の策略に乗ってるようで癪だけど、今は有言実行!この拳で全力で敵を倒すだけよ!

真の力を解放!さらに黒の花装で強化を図り【野生の勘】と【ダッシュ】で間合いを詰めるわ。炎を纏った頭は、【覚悟】を持って拳を振りぬく!漆黒の花吹雪を纏ってるし振り抜いた方が炎の接触も少ないと思うからね。

「歯食いしばれカボチャ頭ぁ!」

腹に【力溜め】て【殺気】を研ぎ澄まして放った私の拳はちょっと響くわよ!
地獄にでも落ちて勝手に悦んでなさい!



「どんだけ死にたがり屋かっつーの! 変な性癖に周りを巻き込むんじゃないわよ!」
「ククク……欲のために努力するのは当然サ」
 相手の思うとおりの行動を取っているようで癪ではあるが、ピオニーは自らの真の姿を解放した。その藍の髪は黒く染まり、装束は黒のゴシックドレスに変じた。
 部屋の中に、どこからかヒラヒラと花弁が舞った。それらは決して地に落ちることなく、散るでもなく、ドレスを彩るアクセサリーであるかのようにピオニーの周りを滞空する。
「それが真の姿ってやつかイ。さぁ、何をしてくれるんダ?」
「決まってんでしょ……ぶん殴るのよ!」
 優美な花と共に、ピオニーは駆けた。その姿はドレスに身を包んだ淑女というよりは、野生の狼のような気迫に満ちていた。
「歯食いしばれカボチャ頭ぁ!」
 十分な距離まで近付いた彼女はそのまま金属製のカボチャを側面から殴りつけた。本来ならば熱された鉄に拳を焼かれるところだが、黒の花弁はその手の周りにも吹き荒れている。それらがクッションとなり、炎の熱をシャットアウトしたのだ。
 金属の軋む高い音が鳴り、ベコベコとカボチャが横から凹んでいく。笑みを浮かべたようなカボチャの口が痛苦を味わったように歪み、そこから衝撃によりボロボロと複数の髑髏が地に落ちる。
「オ……おオッ……なかなカ、やってくれるネ。あァ、頭がグラグラするヨ。フフフ……直接貰っていたらどれだけ痛かったろうカ?」
 ジャックは金属のカボチャをグリグリと捻り、調整した。髑髏が落ちた事によってか、その火力は些か弱まったようだ。
 畳み掛けるならば今。猟兵たちにチャンスが訪れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

デナイル・ヒステリカル
実に自分勝手でこの世界のオブリビオンらしいとも言えますが、理解に苦しむ主張ですね。
ですが、死が一度きりという点にのみ同意しますよ。
骸の海からやって来る、オブリビオンたる存在がそんな事を言うとは、なんとも皮肉だ。

頼まれなくとも望み通りに。
元より僕の猟兵としての仕事は、オブリビオンを打倒することですから。

UC:オーバークロックをスタート
迫りくる髑髏の炎を【見切り】イナヅマを纏った高速移動で回避
壁や天井を蹴っての三次元起動で接近、徒手格闘と雷の【属性攻撃】で攻勢を仕掛けます
戦闘パターンを【情報収集】して炎の軌道を予測できれば、複数合体する前の個別の炎を雷で掻き消すことが可能ではないかと考えました



「『死は万物に一度きり』。骸の海からやって来る、オブリビオンたる存在がそんな事を言うとは、なんとも皮肉だ」
 俯瞰的な視野で見ればオブリビオンは不死であり、何度死のうとも蘇るような存在だ。
 だが、骸の海から蘇るのはあくまでも別個体、異なる軌跡のオブリビオン。その意味では確かに、このジャック・ザ・カーニバルの死は一度きりなのだ。
 理解に苦しむうえ身勝手、実にダークセイヴァーらしいオブリビオンであるが、デナイルはその点に関してのみ同意を持っていた。
 そして、オブリビオンはその事を理解してなお命を踏み躙り利用した。だからこそその罪は重いのだ。
「頼まれなくとも望み通りに。元より僕の猟兵としての仕事は、オブリビオンを打倒することですから」
「いいねェ。オブリビオンになってよかったヨ」
 不敵な笑みを絶やさず、両腕を完全に再生させたジャックに対し、デナイルは戦闘態勢に入った。彼の体の周囲にバチバチと稲妻が走る。その帯電は彼の身体に負担を与えるが、その対価に雷の力を授けるのだ。
「ヒヒヒ……たまには僕から行くヨ」
 カボチャ頭の口元が大きく開かれる。その中から二つの髑髏がデナイルに射出された。
 そのまま彼に激突するかのように見えたその髑髏は、突然の激しい雷光によりその対象者を見失う。一瞬の光が晴れた時、そこにデナイルはいなかった。
「どこニ……」
 左右を見渡すジャックだが、彼を見つけることはできなかった。それもその筈、デナイルは天井にいたのだから。
 天井を蹴り、発生した勢いを電磁力で加速させる。そこから放たれる両掌からの雷撃は、まさに落雷そのものだ。
「ギイィィヤァァァァ!」
 金属製のカボチャ拷問器具は雷をよく吸い寄せ、そして留めた。雷撃に合わせさらに三個の髑髏がジャックから放たれたが、どれも雷の放射で各個撃ち落とされていく。
「合体などさせませんよ」
「あレェ、バレてるノ? クク、残念。だがその攻撃は素晴らしいネ。この世界では雷の利用は難しくてネ!」
 炎の熱に雷の力。それらが組み合わされたカボチャ器具内部はまさしく地獄であろうが、構わずジャックは嗤っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・つかさ
……つまりアレか。
あなた、要するにドMのオブリビオンなのね。
(これといった感慨もなく)
じゃあその南瓜頭、真っ向から叩き斬ってあげるわ。

風迅刀の属性攻撃による風の刃で牽制し、チャンスを見てジャンプ技能で跳躍。
(可能なら更に壁を蹴り高さを稼ぎ、天井を蹴って加速)
空中で零式・改二に持ち替えながら【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】発動。
ブースターで自身を吹き飛ばして更に加速、「怪力」「鎧砕き」「衝撃波」技能を駆使した強烈な一撃を叩き込むわよ。

一つだけ言っておくわ。
確かにあの所業は悍ましいし、赦し難いもの。
でも私があなたを斬るのは、怒りからでも憎しみからでもない。
単に仕事だからよ。



「……つまりアレか。あなた、要するにドMのオブリビオンなのね」
 あっけらかんとつかさは言い放つ。それは単純であり簡単な事実だ。彼は真性のマゾヒストであり、タナトフィリア――自らの死に向かう行為に性的興奮を抱く衝動を持つ。
 その衝動を、力ある狂人が振りかざせばどうなるか。ジャック・ザ・カーニバルとはつまる所、そういったオブリビオンであった。
「そんなところサ。君は僕をどうしてくれるのかナ?」
「そうね……じゃあその南瓜頭、真っ向から叩き斬ってあげるわ」
 つかさは刀身のない刀の柄を振り翳した。すると、離れているはずのジャックの体に複数の切り傷が生まれる。不可視の真空の刃が、敵の動きを制限する。
「……そんなものじゃないだロ? こんなのはただの擽りダ」
 本来ならば、浅いとはいえ出血をもたらす切り傷。それを受けることを嫌って敵はその場を動かざるを得ない。だが、ジャックは違った。傷が増えることを承知の上で、その場から動かないのだ。
「やれやれ……牽制は無意味ってわけね」
 ならば、とつかさは獲物を持ち替えた。彼女の身の丈ほどもある出刃包丁のような刃だ。
 その重さをまるで感じさせない動きで彼女は跳んだ。十分な高さのないこの天井など、余裕で到達するジャンプ力で。頭からの激突を防ぐため、空中で姿勢を反転し足で天井に着地する。
 そして、一息で天井に辿り着いたその脚力は、今度は地面に向けて彼女の体を飛ばした。大剣による重力と彼女自身による加速。流星の如き一撃が、オブリビオンの体を轢き潰す。
「ぐげェッ……!」
 滑稽な悲鳴を上げるジャックを地面に縫い付けるように、つかさは大剣にさらに力を込める。ミシミシと鳴るのは骨の音か、床の音か。
「一つだけ言っておくわ。確かにあの所業は悍ましいし、赦し難いもの。でも私があなたを斬るのは、怒りからでも憎しみからでもない。
 単に仕事だからよ」
「……つれないネ!」
 ジャックの頭から火柱が激しく上がる。その身を焼こうとする炎から彼女は離れざるを得ない。拘束がなくなったことでジャックは立ち上がり、体の埃を払う。
「クク、内臓が潰れたようダ。こりゃ大変だネェ!」
「そう。次に潰れるのはその頭よ」
「そうはいかなイ。頭を潰すのは最後にしてもらうヨ」
 ジャックは再度、カボチャ頭から炎を巻き上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

柚々・奈七音
アドリブ・絡み歓迎

死を体験したい…それだけのためにあんなことを…!?
この世にこんなにも分かり合えない存在がいるなんて、思ってもいませんでした。
あなただけは、許しません…!絶対に…!

UC【ライオンライド】でライオンさんを召喚します!
苦痛を感じる暇も与えず、一息に、噛み砕いてやる…っ!

髑髏の炎は構わず戦闘続行です。人狼装束のおかげで少しだけ頑丈です。
それでも、捨て身の様で少し怖いですけれどっ。
今回だけは、わたし、退くわけにはいかないんです…!


アリーシャ・マクファーソン
ただの頭のおかしい南瓜頭かと思ってたけど、自傷趣味の自殺願望者だったとはね……ほんと、気持ち悪い。

こいつを滅することに躊躇いはないけれど、お望みどおりの痛みと苦しみを与えるのも癪ね……。

せっかくまだ真の姿が維持できるみたいだし、この変態には望まぬ形での死を与えてやるとしましょう。

他の猟兵の攻撃の隙間から、少しずつ【血命蒼翼】の針のような翼を撃ち込んでいきましょう。身体の端からちょっとずつ凍っていく、痛みも苦しみもなく、ただ失われていく感覚……どう、お気に召したかしら?

あなたのどす黒い欲望なんか、満たしてあげるわけがないでしょう。
ただ、飢え渇いたまま消え散りなさい。



「死を体験したい……それだけのためにあんなことを……!?」
 奈七音が目撃した幾多の悲劇。その根底となる動機は彼女の理解を大きく越えるものだった。理解不可能。獣と違い言語を解し、明確な目的意識を持っているというのに、分かり合うことができない。
「あなただけは、許しません……! 絶対に……!」
「ただの頭のおかしい南瓜頭かと思ってたけど、自傷趣味の自殺願望者だったとはね……ほんと、気持ち悪い」
 侮蔑とともに、アリーシャは紅く暗い氷の翼をその背に開く。それは光を乱反射する、凍りついた彼女自身の血。
「良いねェェ。君たちの怒りと軽蔑がよく伝わってくるヨ。そうサ、それを求めていタ。ぶつけて来て見せロ!」
 そう言ってジャックは髑髏を射出した。弾丸のようなそれは奈七音を狙っている。
 しかし直撃より先に、彼女の体は金の光に攫われ射線から消えた。彼女を守ったのは黄金の鬣を靡かすライオンである。
「苦痛を感じる暇も与えず、一息に、噛み砕いてやる……っ!」
「ヒヒヒ、いいねェ。慣れていない殺気ダ」
 ライオンは咆哮すると、奈七音を背に乗せジャックに向かって突撃した。彼は半歩下がりつつ腕をライオンの頭に伸ばし、その動きを無理やりに止める。
 だが、獅子の力は顎と牙だけにあらず。前足とその先端の爪がジャックの右足を真横から折り砕いた。
「ギャハァ! ヒヒヒ、そうそウ、たまには足の方もネ!」
 果たしてそれが効いているのかいないのか。オブリビオンの特異な反応は奈七音を混乱させる。見た目には満身創痍に見えるが、彼はまるで絶好調のように振る舞うのだ。
 だがそれでも、二度と体を動かなくさせてやれば変わらない。反撃を恐れることもなく、奈七音はさらにライオンで突撃した。
「ヒャハァ!」
 体勢を立て直したジャックは三個の髑髏を吐き出し、それを眼前で合体させた。狙いはライオンではなく奈七音本人である。
 迫る熱に恐怖心が煽られる。致命傷に至らないとわかっていても、死の足音はどこからでも聞こえてくる。――だとしても。
「今回だけは、わたし、退くわけにはいかないんです……!」
 構わず奈七音はライオンを進ませる。弾丸は彼女に直撃し、炎を纏う骨の質量は彼女の肺からすべての空気を吐き出させた。
 代わりにライオンはジャックの懐に食らいついた。牙が服の奥深くに食い込み、血が溢れ出てくる。
「旨いかイ?」
 茶化すようにそう尋ね、ジャックは直ぐ様自らを捕えるライオンの顎を下から膝蹴りした。無理矢理に牙は噛み合わされ、彼の体は食い千切られる。だが、その体は自由になった。
「ふン!」
 ジャックは腸をはみ出させながら、拳を握りこみ反撃を測る。しかし、違和感を覚えた。彼は右腕を見る。
「何だこれハ……?」
「ようやく気付いたかしら。でももう遅いわ」
 その腕には細かな針のような氷が浅く刺さっていた。その着弾点からは白い膜が広がっている。氷の膜だ。
 アリーシャは背の翼から針のような羽を撃ち出していた。ライオンによる攻撃に紛れ、少しずつ攻撃は行われていたのだ。
 刺さった針は腕全体を覆い、白く凍てつかせていた。ジャックの息が荒くなる。
「おいおイ……痛みがないじゃないカ。これじゃ楽しめないヨ」
「勿論、それが狙いよ。あなたのどす黒い欲望なんか、満たしてあげるわけがないでしょう。一番望まぬ形での死を与えてやるわ」
「……なるほド。そういう狙いかイ……! ジャックブレイズゥ!」
 オブリビオンの背に炎の翼が現れた。彼はそれをバサリと広げ、無数の細かな炎の針を空中に散布する。
 身構える奈七音とアリーシャ。だが、その針が向かう先は彼女らではなかった。針はジャックの方を向き、全身に突き刺さっていく。
「ウオオオォォォ、熱ィィィィ!」
 全身から炎が燃え上がる。それはアリーシャの翼による凍結を防ぐものであり、彼自身の被虐目的のものであった。
「しぶといわね。死にたいならさっさと死になさい」
「僕は必ず僕の望む痛みの中で死ヌ。下らない水は差させなイ」
 ジャックの声色から嘲るような笑みが消えていた。「痛みを遮る行為」。それがオブリビオン攻略の緒になる――猟兵たちは確信した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上野・修介
・POW
「言葉を交わす気はない」

得物は素手格闘【グラップル】
味方と連携し、身を焼かれても南瓜頭を叩き割る【覚悟+勇気+激痛耐性】

以前別の依頼でやり合った時の戦闘経験【戦闘知識+学習力】、なにより被害者たちから得た情報から攻撃の軌道を【見切り】、相手の攻撃の隙を縫って攻める。

【ダッシュ】で懐まで飛込【捨て身の一撃】を叩き込み、即座に離脱【逃げ足】し味方の攻撃の邪魔にならないよう気を配る。

先ずは足から潰して機動力を奪い、体勢を崩した所で頭を狙う。


UCは基本防御重視、攻撃時のみ攻撃力重視。

敵SPD系UCを使用したら迎撃優先。拳で打ち消す。
WIZ、POW系に対しては攻撃時に【カウンター】を叩き込む。


シェーラリト・ローズ
君に寄せてあげる関心は特にないけど、一言だけ言っておこー
「もう喋らないでいーよ。君と同じ言葉話してるのはずかしくなっちゃう」

まず、【慈悲深きコンソラトゥール】で回復役に徹する
【第六感】だけでなく【聞き耳】も立て攻撃を【見切り】対処しつつ【情報収集】も行う
(嫌がる攻撃ってなんだろ)
背の高い味方の背後に回り機を窺う
ジャック攻撃直後のタイミングで背後から出たら【セイクリッド・ランス】を【鎧無視攻撃】【全力魔法】【マヒ攻撃】で頭頂部>固定具か鋸の歯を狙って永続的な痛みの元を破壊(攻撃は回避か【オーラ防御】で軽減
「ずっと痛いのなくなって良かったねー」
痛そうなその傷治してあげようかー?(本当に治す気はない



「アハハハハァァ! 息をするのが苦しイ! 全身が鉛のように重いヨ! どんな拷問より重イ、死が迫っているのがわかル!」
 なおも気勢を上げるジャック。それに対する二人の猟兵の反応はもはや冷えきっていた。
「もう喋らないでいーよ。君と同じ言葉話してるのはずかしくなっちゃう」
「言葉を交わす気はない」
 修介は両腕をガードで構えながら突進した。後衛であるシェーラリトに狙いを付けさせないためにも、覚悟を持って距離を詰める。
「ヒャハハ! シンプルだネ」
 これまでの行動パターンに反し、ジャックは近付く修介から遠ざかる。彼は壁まで下がると、部屋の端にズラリと並べられた拷問器具のうち一つを手に取った。
 それは先の割れた鋭いトングのような見た目をした器具。ブレストリッパーと呼ばれるものだ。素手のリーチに持ち込もうとする修介に対し、ジャックは武器で対抗を試みる。
「さァ、おいデ!」
 ジャックは修介の攻撃に対してのカウンターを狙う。その拳の行く末に意識を向けていた彼だったが、しかし、予想外の衝撃を足に受け膝が折れる。
「何……!」
 彼の膝を折ったのは蹴りだ。投石の間においても拳での攻撃しか行わなかった修介が解禁した蹴り。それはまったくの意識外からジャックの機動力を奪った。
 力を込め殴りやすい位置に頭が落ちてくる。カボチャ頭はあくまで器具であり、本体はこの中だ。
 これまでの経験と被害者たちの痕跡から得られたオブリビオンの情報。それを照らし合わせ、彼の拳は炎と髑髏の山の中から本体の頭を探し出し、それを打ち抜いた。
「ぐおぉ!」
 苦し紛れにジャックは手にした武器を振るう。運悪くそれは修介の腕を掠り出血させた。人の肉を傷つけることに特化したその器具は容易く皮膚を裂いたのだ。
 修介が下がると同時に、シェーラリトの歌声が彼の耳に届く。それは彼の心を鎮め、負った火傷と切り傷をすっかり治してみせた。
「ずっと後ろで見ててわかったよ。君の嫌がる攻撃」
 脳震盪によってか未だ立ち上がらないジャックに、シェーラリトは人差し指を向けた。
 その指先から放たれたのは光の槍だ。槍は金属製のカボチャの真芯を捉える。もとより傷が付いていたカボチャはそれが決定打となり、二つに割れた。
「ア……?」
 カボチャが砕けたことで、その中に収められていた髑髏が床にボロボロと溢れ転がる。中から現れたのは、やや弱い炎を顔全体に纏う黒焦げの頭の男だ。
「あ……ア……? こ、これハ……!」
「ずっと痛いのなくなって良かったねー」
 シェーラリトは皮肉を込めて男に呼びかけた。ジャックは自らの頭をペタペタと触れ、そこに拷問器具がもはやないことを悟る。
「貴様……貴様、貴ッ様ァァ! なんて真似をしてくれるんダァァァ!」
 拷問の炎の弱化。それは彼に与えられていた力の一部が消えることを意味していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜月・クリスタ
最低だねあなたは。こんな奴を倒すのに躊躇はいらないよね。
…怪盗として盗ませてもらうよ。あなたの命と村にいる兄弟達の未来を!

戦闘前に【感情喪失薬】を服用し感情を喪失させる。感情を喪失しても僕の、怪盗フォックステールとしての使命は忘れない。

ジャックが肉を食べようとしたら、無銘の苦無を肉を持つ手へ投擲して阻止。投擲と同時に【残像】と【見切り】、【ダッシュ】で攻撃を躱しながらジャックへ接近しよう。

接近出来たら【怪盗術・旋風】で小太刀二刀流による斬撃を放つ。トドメを刺しきれないなら【クイックドロウ】で怪盗の仕込み拳銃を抜き、【零距離射撃】で追撃するよ。
「悪行は永遠には続かない。…これで終わらせる。」


ヘスティア・イクテュス
やっぱり狂人ね。自殺なら一人でやってほしいわ…

こいつに痛みを与えても喜ばせるだけ…
じゃあ逆に痛みと苦しみから開放してあげましょうかしら

水の妖精を模したドローン
ウンディーネでその炎と傷を癒してあげる

回復のUCなんて盗っても意味ないし
貴方に使うメリットも無しよね?死にたがりさん!

拷問器具の炎を消火し傷を癒す…
これで最高の痛みも苦しみも味合わせない!

後は苦しみも痛みも感じることなく皆が倒してくれるのを応援するだけ

あっ、怪我の治療も任せてちょうだい?火傷にはちょうどいいわよ?


荒谷・ひかる
なにあれ……気持ち悪い。
(ただただドン引きしている)

理解できそうにない相手だけど……うん、倒せば良いんだよね。
じゃあ、燃えてるし消火活動だよっ!
【水の精霊さん】、発動!
水の精霊さんにお願いして、鉄砲水を……天井(無いならお空)に向けて放射!
外したと見せかけて、本当の目的は部屋中(周辺)を水しぶきでずぶ濡れにすること。
消火には、棒水より霧状放水のほうがいいって言うし!
水でも被って、頭を冷やすといいんだよ!

わたしの方に向かってきそうなら、鉄砲水の角度を変えて迎撃するよ!
変態さんはこっちに来ないで欲しいんだよっ!



「なにあれ……気持ち悪い」
 炭化したような頭から炎を発し続けるジャックを見て、ひかるは心の奥から発されたような声を出す。
「やっぱり狂人ね。自殺なら一人でやってほしいわ……」
「何にせよ……うん。倒せばいいんだよね」
 ヘスティアとひかるの狙いは一致した。今なお彼の頭を焼き焦がしている炎。それを消すことで、戦闘力を削ぐことができるだろう。
 そして、これまで悉く猟兵の攻撃による痛みを喜びとして受け取ってきたこの敵ならば、逆に痛みと苦しみから解放することが最大の攻撃となるかもしれない。ヘスティアはそう予測していた。
「水の精霊さん、お願い!」
 ひかるは精霊を呼び出すことで室内に雨を降らせた。否、それは雨というよりシャワーや洪水といったほうが近いだろう。
 床は一面水浸しとなり、水滴はジャックの頭の炎を消しにかかる。壁際に並べられた拷問器具に付着した血液も、気味の悪い汚れとなって流れていく。
「何をすル! 貴様!」
 この水流によってジャックの炎は完全に消えてしまった。オブリビオンに力を与え、そして力を引き出す原動力であった熱は失われたのだ。
 後に残されたのは人相すらわからない黒焦げの男の顔。その近くに、今度は水の精霊を模したドローンが接近する。
「何だお前ハ……!」
 彼は本能的にそれが自らにとって好ましくないものだと理解していたのか、手で振り払おうとした。だがドローンはひらりと回避し――癒やしの波動を彼の顔に放つ。
「おオ……オオオオァァァァ!?」
 黒焦げだった頭が見る見るうちに血色を取り戻し、皮膚が再生する。そこに再現されたのは、金髪の、一見人が良さそうに見える好青年であった。
「拷問器具の炎を消火し傷を癒す……これで最高の痛みも苦しみも味合わせない!」
 しかし、青年の人相が良かったのはほんの一瞬だけであった。ヘスティアの言葉を聞くとすぐにその顔は絶望と怒りにひどく歪む。
「よくモ……よくもこんな真似ヲ……! 痛くもなイ、熱くもなイ、苦しくもなイ。こんな生温い感覚で生きていられるカ! 気持ちが悪イ!」
 ジャックは滂沱の涙を流す。その涙の奥底では、狂気に歪む瞳で二人を睨みつける。
「殺してやるヨ……お前らァ、下らない真似をしやがっテ!」
 本気の怒りを滲ませ、男は二人に歩み寄る。その目はもはや二人以外何も捉えていない。だからこそ……その喉は切り裂かれることになった。
「カハッ!?」
「……怪盗として盗ませてもらうよ。あなたの命と村にいる兄弟達の未来を!」
 クリスタは二人に夢中になるジャックの視界外の真横から割り込み、その喉に小太刀・傾国を滑らせた。血の勢いはもはや弱く、生命の終わりを予感させる。
 だが、感情喪失薬を服用した彼女に容赦はない。喉を押さえてよろめく男に、小太刀・傾城で次なる一撃を叩き込んだ。
「怪盗術・旋風」
 傾国による攻撃はあくまで相手の動きを止めるためのもの。本命は傾城による深く鋭い斬撃だ。胴から腹にかけてを切り裂かれ、男の身体が後ろ向きに倒れかかる。
「悪行は永遠には続かない。……これで終わらせる」
 敵はしぶとい相手だ。完全なるトドメのために、さらにクリスタは仕込み銃から二発、弾丸を撃ちこむ。
「グ、ガ……」
 体に穿たれた穴の勢いにより男は地面に仰向けに倒れる――かに見えた。
 だが彼は、地面に背をつける直前の不自然な体勢のまま静止した。そして血を撒きながらグイと一気に体勢を直立に戻す。
「礼を言うヨ。思い出させてくれたネ……まだ僕には、君たちから貰った痛みがこんなにもあるんだト! ヒャハハハハハハハハ! ハハ、ゲホッ、ゴボォッ! ハハハ!」
 血を吐き出しながらも狂気に塗れた笑い声をジャックは上げた。頭の炎は消えたが、確かに彼の体は元々死に体だ。かといって、そちらの痛みを下手に消そうとすれば傷を癒やしてしまいかねない。
「さぁ、ラストスパートだ! 僕の最高の死がもうすぐそこに来ているヨ!」
 ジャックは両手を掲げ天を仰いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンナ・フランツウェイ
そんな理由で村人達を虐殺したと。ならアンタには望み通り死をくれてやる。処刑人らしくアンタが望まない、一瞬での絶命を。

【先制攻撃】で相手が動き出す前に飛び込み、あえて聞こえるよう私のユーべルコードの大部分に共通する詠唱…「断罪の時は来たれり」を発しつつ、あえて防がれるよう攻撃を放つ。

ユーべルコードをコピー出来ず、奴に動揺して隙が出来たら断罪式・莢蒾花を発動。私の血液で出来た杭を背後から放ち、ジャックの動きを封じよう。

捕縛出来たら処刑斧を取り出し、【なぎ払い】と必要なら【鎧砕き】も使いジャックの首目がけて振るい頭部の切断を狙おう。
「私は拷問人じゃない。だから…アンタが望む死は与えられない。」


荒・烏鵠
(三章からの参加です、問題があれば流してください)

なーるほど、被虐趣味の方でいらっしゃる。
そんなお客さんにコレ【UC】! かわいい羊さんをプレゼント!
かわいかろ? 鳴き声もかわいかろ?

アンタから『痛覚』と『快楽』を奪ってやるよ。

襲う前から強烈な歓迎の感情ありがとさん! おかげで確実にユベコが使えるぜ!
満足したまま死ねると思うなよド外道。盛大に不満を抱け。飢え乾いたまま死んでいけ。



「なーるほど、被虐趣味の方でいらっしゃる。そんなお客さんにコレ! かわいい羊さんをプレゼント!」
「ア? 何だお前ハ」
 この場に似合わぬ軽薄な語り口にジャックは不満気に荒・烏鵠(古い狐・f14500)を睨みつけた。彼が求めたのは義憤とともに自らを殺しに来る猟兵。彼の纏う空気は異物であった。
 その苛立ちを感知し、荒の手から放たれたのは桃の花で飾られた羊の幻覚である。その羊が一鳴きすると、ジャックの顔から表情が消える。
「な……ナ……」
 直後に、表情は蘇る。怒りと絶望の顔として。
「何をしタ! 体の痛みが無くなったじゃないカ!? 何処ダ! 僕の痛みハ!?」
 ジャックは狼狽し、そして躊躇いなく自らの目玉に指を突っ込み、そのまま抉り出した。ボタボタと血が流れ落ちるが、それでも彼に痛みが与えられることはない。
「これでも痛くなイ! 一体これハ……!」
「アンタから『痛覚』と『快楽』を奪ってやったのさ」
「痛覚を奪っただト……! あり得なイ! こんな事ハ! おイ、良いのカ! 僕はあれだけ村人を苦しめ殺してやっタ! その僕が痛みも苦しみもなく死んでいっていいと思うカ!?」
 命乞いならぬ痛み乞いを繰り出すオブリビオンに対して、荒はあくまで冷酷な瞳を向ける。
「満足したまま死ねると思うなよド外道。盛大に不満を抱け。飢え乾いたまま死んでいけ」
「〜〜ッ! グ、ウウゥッ……まだダ!」
 ジャックはフラつきながら壁に近付き、立てかけてあったノコギリを掴んだ。それはこの戦いにおいて彼が初めて燃やした闘志であった。
 痛みと苦しみの中で死ぬ事がゴールであったオブリビオンは戦うことを放棄していた。だが、今の彼はそれができない。今死ねば、痛みも何もない不満の死を迎えるだけだ。
「それだけはさせなイッ! 僕の死は最高の痛みで飾らなくてハ!」
 その為には、荒を殺しこの能力を解除しなくてはならない。彼は必死であった。
 しかし必死になるにはもはや遅すぎた。彼の体は猟兵の攻撃を受けすぎてもはやまともに動くことはない。まして、猟兵と直接戦って勝てるだけの体力は残されていない。
「アンタには望み通り死をくれてやる。処刑人らしくアンタが望まない、一瞬での絶命を」
「処刑人! お前に僕の邪魔はさせン!」
「断罪の時は来たれり……!」
 アンナはジャックの前に立ちはだかり、詠唱を開始した。その詠唱はジャックが屋敷内で確認したものと同様。つまり、これから攻撃が来ると彼は予想した。
「ジャックブレイズ! その攻撃を頂いてやろウ!」
 彼は攻撃を受け止めようと身構える。もはや炎は彼にはないが、最後に一度ならば或いは。その望みをかけて、ジャックはアンナの斬撃を受け止めた。
「グ……ッ! さァ、ショータイムダ! 君の力を借リ……」
 ジャックの手から炎が湧き出し、それが剣の形を取る。……だが、ただそれだけだ。それはなんの変哲もない剣に過ぎない。
「どういう事ダ!?」
「本当のユーベルコードはここからってことだよ」
 そう、ジャックが受け止め、コピーしたのは単なる剣による攻撃。それは受け止めたところで何ら事態を好転させない。その動揺を突き、アンナは血液の杭を彼に射出。壁に磔にした。
 それらの杭は彼の腕や足にも深々と突き刺さっている。だが、やはりそこに痛みはない。
「待テ! 考えなおセ! 僕を苦しめなくていいのカ!? 凌遅刑でも車裂きでも何でも良イ! 痛めつけロ! こんな形で死ねバ、僕はこの命を無駄にすル!」
 ジャックはあくまで苦しみによる死を求める。だが処刑人が与えるのは痛みではない。むしろ、痛みをできるだけ与えないのが処刑人というものの本質なのだ。
「私は拷問人じゃない。だから……アンタが望む死は与えられない」
「ふざけるナ! こんナ……こんナ! 痛くもなんともない死なんて嫌ダ! やめろォォォ!」
 アンナは斧を振り抜いた。一拍遅れて血液が吹き出し、ジャックの首が飛ぶ。
 ギロチンで頭を落とされた時、その頭にはしばらく意識があるというが。
 彼は最後の最後まで不満と無念の表情を顔に貼り付けたまま、床をゴロゴロと転がった。

 それは痛みを求め、死を求めた者にとっては最悪の処刑だったと言えるだろう。
 そして彼の感じる最悪こそが、その被害者への慰めであった。
 痛みと快楽。アベコベになったそのオブリビオンを、猟兵たちは最も正しい形で葬ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月15日


挿絵イラスト