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甲駿同盟再び? 海道無双の強弓精兵!

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #今川義元 #羅刹 #武田信玄 #魔軍転生

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●虎に鴉翼
「クルセイダーの名の元に、超・魔軍転生を執行する! 今ひとたび蘇り、我が軍勢に憑装せよ……我が盟友にして魔軍将、甲斐の虎・武田信玄よ!」
 異形の大弓を携えた和装の男が号令する。
 と、彼の周囲を飛び回っていた大鴉の群れが、一斉にボウッと燐光を纏う。橙色のようで白色のようで赤色のようで、見る者に言い知れぬ不安感を与えるような光である。
 その様を見回した男は、満足げに「よし」とうなずいた。
 手勢はこれにて十二分に揃った。
 あとは、羅刹の里へ攻め入るのみ。

●海道一の弓取り
 今川義元。
 戦国時代、東海道に大勢力を張り、その戦巧者ぶりから『海道一の弓取り』とあだ名された名将である。
 勢力を西に伸長させるにあたり、武田信玄の姉を妻に迎えたり娘を信玄の嫡子に嫁がせるなどして同盟を結び、後顧の憂いを断ったという。
「ってまあ、あたしが知ってるのはUDCアースの歴史だから、サムライエンパイアじゃ細かいとこ違うかもしんない。でも生前に盟友だったのは確かみたいで、その縁で義元の手勢に信玄が超・魔軍転生したってわけだぁね。厄介なこった」
 わしゃわしゃと自らの頭をかき回しつつ、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)が言う。
 超・魔軍転生とは、魔軍将の魂を複製して集団オブリビオンに憑装させるという荒業である。各個体がボスクラスの強さを得るというほどではないにせよ、普段戦っているそれとは比べものにならない強敵になる。
 それらの大軍を突破し、大将義元の首を獲るというのが、この戦いの目標だった。
「義元の狙いは、山ん中にある羅刹の里だ。桶狭間絡みで何か因縁もあるみたいだが、里の住人を皆殺しにしたついでにオブリビオン化させて、さらに強力な軍勢を作るって計画らしい」
 つまり、猟兵にとって里の羅刹たちは護衛の対象ということになる。
 しかし今回、彼らはただ守られる存在に留まらない。
 実は、彼らの大半は確かな実力を持つ忍者なのだ。流石に正面切ってオブリビオンと戦えばひとたまりもないが、戦場となる鬱蒼たる杉の森は彼らにとって庭同然。彼らと連携を取ることで、猟兵たちは地の利において大きくアドバンテージが得られる。
「――つーか、羅刹たちの力を最大限借りなきゃ、多分負ける。それくらい今回の敵は多いし……何より、強い」
 脅迫めいた台詞だが、朱毘は決して誇張して言っているわけではないのだろう。余裕の全くない表情が、それを物語っている。
「それから何が厄介って、緒戦の集団戦の最中、義元が弓矢で援護射撃してくることだ。感覚としちゃ、戦車砲の榴弾が散発的にすっ飛んでくるみたいなモンだな。嫌らしいことに、こっちの攻撃の届かないロングレンジからの射撃だから、初手でカウンター当てようとしても無理だ。敵中突破して義元に肉迫する必要がある」
 そして首尾良く肉迫できたとして、そこからが正念場となる。
 何しろ、幹部オブリビオン今川義元。猟書家としての力と競合するため義元自身は信玄を憑装していないようだが、それでもその実力は折り紙付き。容易な戦いなど望むべくもない。
「何かと頭痛の種が多いが、サムライエンパイア全体の命運にも関わってくる戦いだ。何とか攻略してくれ。頼んだぜ」


大神登良
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 このシナリオは、サムライエンパイアの対猟書家幹部戦で、二章構成となっています。

 第一章は、超・魔軍転生によって武田信玄の力を得た集団敵との合戦です。一息に殲滅するには数が多すぎ、いかにして敵中を突破して今川義元の元へたどり着けるかが鍵となる、という想定です。
 また、今川義元が戦場に命中箇所をドカンと破壊するユーベルコード【仕留めの矢】を次々と放ってきますので、何らかの対策を講じておいた方が良いかもしれません。なお、猟兵のユーベルコードが届かないくらいの超長距離からの攻撃なので、この章の中で義元に直接カウンターを当てるのは不可能です。

 第二章は、幹部オブリビオン今川義元との対決です。猟書家の能力が制限されるため、義元は信玄を憑装していません。しかし、それでも並のオブリビオンとは比べものにならない武力の持ち主です。
 義元を撃破すると集団敵が大幅に弱体化し、駆逐されることになります(自動的な措置になりますので、集団敵駆逐に関してプレイングの文字を割く必要は一切ありません)

 なお、このシナリオには第一、第二章を通じて下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
『プレイングボーナス……羅刹達と協力して戦う(猟兵ほど強くはありませんが、周辺の山岳地形を熟知しています)』
 これに基づいたプレイングは有利に判定されます。
 なお参考までに、羅刹たちは山伏テイストな忍者集団で、地形(戦場)は、杉の大木が林立する山中を想定しています。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『雨告が羽』

POW   :    嵐軋みの夜戸
【広げた翼を嵐風を起こす巨大な翼】に変形し、自身の【雨雫の矢への耐性】を代償に、自身の【周囲に降る雨雫の矢】を強化する。
SPD   :    忌み雨の樋縁
【光を周囲から奪い、胸に抱いて動かぬ姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【雨雫の矢を降らせる『暗雲』】を放ち続ける。
WIZ   :    遠鳴りの呼鈴
【降る雨雫の矢】から【反響する雨音】を放ち、【空間の知覚能力にズレを生じさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●風雲急を告げる
 山肌に、杉の巨木が林立している。中には、樹齢千年を数えるものもあるとか、ないとか。
 その隙間を真っ直ぐに貫くように、約三千段から成る石階段が敷かれている。その途上を、修験者風の装束を着込んだ青年が歩いていた。
 彼はふと何やら気配を感じ、空を見上げる。その視線の先には、にわかに黒雲が湧き上がっていた。
 雨雲か。初め、そう思った。しかし、すぐにそうでないことに気付く。距離はあるが、雲にしては不自然な蠢きようがあり、また微かに羽ばたきの音がある。
(――奴らだ!)
 背筋が粟立つ。
 いえば、彼は「奴ら」というのが何なのか正確に理解しているわけではない。ただ、世に仇なす悪意の塊のような集団があって、今も各地で人々を脅かしているらしいということだけはわかっている。
 目の前にあるのは、そのうちの一党。長年の修練によって磨かれた眼力が、それを明瞭に知らせてきた。
 すぐさま法螺貝を吹き鳴らす。
 ブォウ――ブォウ――!
 それは、里に異変を告げる符丁だった。間もなく羅刹の里の戦士たちが、刀槍で武装して駆けつけてくるだろう。
 いずれ劣らぬ屈強なる忍者たち。それでも、雲のごとき大群を成す大鴉――雨告が羽にどれほど抗し得るのかは、わからなかったが。
エスタシュ・ロックドア
よう同族、ちっとタンデムしていかねぇか
道案内頼むぜ

シンディーちゃんに【騎乗】
杉林を【ダッシュ】で疾走するぜ
俺の【運転】【操縦】技術なめんなよ
【地形耐性】で多少の悪路は踏破したらぁ
よし同族、どっちだ
あっちか、りょーかい
敵が来たら『群青業火』発動
ブルーフレアドレスに点火
スピードアップに加えて全体を業火で覆って火炎弾と化す
もちろん後ろの同族や余計なモンは燃やさねぇよう適宜消火するが
近寄った敵や今川の矢は【焼却】、雨雫の矢も蒸発さしたる
念のためフリントを傘の代わりに掲げてはおこう
俺は【激痛耐性】で我慢できるが、後ろの同族はそうじゃねぇだろーしな

同族、振り落とされてねぇな?
重畳重畳、一気に行くぜ



●蒼炎疾駆
 機嫌良さげなエンジン音が杉林に響く。
 黒いボディを持つバイクの上には、黒ずくめのライダースウェアのエスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)があった。林間の、道と呼べるような道もない悪路を疾走していく。
 程なく目当ての『者』を見つけたエスタシュは、ギャッと土埃を上げつつ急制動を掛ける。
「よう同族! タンデムしていかねぇか?」
 呼び掛けられたのは、山伏装束の羅刹である。同族というのが何を指す言かは、短く刈られた黒髪から覗き見える黒曜の双角を見れば知れる。さらに。
「猟兵か。助勢ありがたい!」
「察しが良いな」
 エスタシュは口元を綻ばせた。話が早くて助かる。
「たんでむとは、同乗せよということか」
「おう。まあ安全運転は保証できねえがな」
「この状況ではな」
 後部シートに乗り込む。バイクは初かもしれないが乗馬の心得はあるのか、がっしりと両足で車体を挟み込んで保たれた姿勢はなかなか様になっている。
「よし同族、どっちに行けばいい?」
 空に目をやって、言う。雲霞の如き雨告が羽の群れはそろそろ交戦距離に入る。
「敵は空にあり、数が多い。あちら……背の高い杉の多い場所がよかろう」
「なるほど」
 杉の梢が邪魔になって数的優位の活かせない状況を作り出すわけだ。枝葉に視界を遮られるという難点はあれ、それはお互い様。七分三分で敵有利のところを五分五分には持って行ける。
「りょーかいだ。振り落とされるなよ、同族!」
 エスタシュが叫ぶと同時、バイクの排気孔からウェディングドレスのスカートほどにもなる青い炎が吐き出される。さらに、彼自身の傷跡から【群青業火(ブレイズアズール)】が噴出する。炎に包まれた彼と愛機とは黒ずくめから一転、蒼炎の巨塊となって神速を得た。
「山を燃やす気か!?」
 後部の羅刹が絶叫する。が。
「この炎は俺が燃やすつもりの物以外には延焼しねぇ!」
 疾走する炎塊に気付いた雨告の羽らが巨翼をはためかせ、生じた暴風に乗せて雨雫の矢を降り注がせる。黒く、また血のような深紅も伴うそれらは、桶を逆さにしたような密度をもって迫る。
 が、それらは蒼炎に触れた端からジュウと悲鳴を上げて蒸発した。それだけの猛熱を発揮しつつ、しかしなるほど、余計なものは葉っぱ一枚焼くことがない。
「おお……」
 感心したように羅刹がうなったところ、雨雫の矢ではない何かが飛来する。
「っ!」
 とっさにエスタシュは、黒鉄の塊に無理矢理取っ手をねじ込んだような片刃巨大剣を掲げた。
 一弾指、炎の壁を突破した【仕留めの矢】が炸裂する。ごぉん! と轟音が響き、二人の羅刹ごとバイクが大きく揺れる――が、とりあえず直接ダメージは通っていない。
「大丈夫か、同族?」
「……大事ない」
「重畳」
 安堵の吐息をもらしつつ、エスタシュは冷汗を一つぬぐった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
強固な大群に、後方からの大火力投射……個体能力に物を言わせた強引な攻めですが、それを可能とする地力があるのが厄介ですね……。
確かに、これを正面から相手するのは無茶というもの。
幸い地の利はこちらにある。存分に力を借りるとしましょう。

交戦は極力避けます。戦闘の音や光は、今川に位置を知らせる絶好の材料となってしまいますからね。
鬱蒼とした森、遮蔽や地形の起伏を最大限使って進軍。
どうしても避けられない相手は、こちらがクロークで姿を消して短剣での暗殺を。
音で攪乱してくるようですから、耳はしっかり塞いで……あらかじめハンドサインを決めておくと良さそうですね。

静かに、密やかに、忍び寄らせて頂きましょう。


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

すごーい、ニンジャさんなのー
きっとテレビで見たよーな格好いいニンポーを使うのねー
せっかくニンジャの里に来たのだし、アリスもニンポーで戦っちゃおー
妹達を沢山呼んで準備完了ー
地形に詳しい羅刹さん達に案内を頼んで、できるだけばれにくいルートを進みましょー
得意の【団体行動】で【トンネル掘り】しながら地中深くをどんどん進むのよー
地中だから【仕留めの矢】も【雨雫の矢】もへーきへーき、地上にいるルート上の敵は【地形を利用】して地中から前肢で【串刺し】、【不意打ち】攻撃して地中に引きずり込んでからみんなで【捕食】するのよー
これぞ忍法土遁の術ー!…え?何か違うー?ニンポーって難しいのねー



●遁術
 骸の海に溶けていた『過去』がオブリビオンとして顕現した際、在りし日の性質がどれほど引き継がれているかは、場合により様々だ。ゆえに、たとえ生前に指揮に長けた名将だったからといって、オブリビオン化した後も高い統率力を持っているとは限らない。
 しかし、今回はどうか。
(強固な大群……桶狭間を彷彿とさせる、強引でありつつ着実な攻勢です)
 シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が胸中でつぶやく。
 かつて今川義元は、盤石なる大軍勢を率いて織田領へ侵攻した。信長の乾坤一擲の奇襲によって敗死したものの、その直前までの戦闘では織田勢を圧倒していた。それを可能にするだけの地力があった。
 今回は桶狭間の合戦時のような油断もあるまいから、状況としてはそれより厄介といえるかもしれない――と、シャルロットが思案するかたわら。
「すごーい、ニンジャさんなのー」
 アリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)は微妙に緊張感のない様子で、周囲の羅刹たちを見回していた。
 身の丈二メートルを越す大蜘蛛たる彼女にギチギチとうろつかれ、しかし羅刹たちがどうというほどの反応を示さないのは、猟兵には世界からの加護があるためだ。大蜘蛛めいた姿形が認識できていないわけではないが、「だから異様だ」といった感情は誰も抱かない。
「アリスもニンポー使うー」
「忍法?」
 羅刹たちとシャルロットとが、首を傾げる。
 直後、アリスは軽く跳躍して身を翻し、地面目がけて頭から突っ込んだ。普通はそのまま顔面を痛打してしかるべきところ、彼女の鋏角が超常の軌道を描いて激突すべき地面を斬り刻み、押しのける。
 ぎゅどどど! と掘削機めいた轟音と一緒に、アリスの体が地面に穿たれゆく穴に呑まれた。
「これぞ、土遁の術ー! こうやって大将のところまでトンネルを掘るのー」
 瞬時にして生み出した穴の中で、アリスがはしゃぐ。
 なるほど妙計かもしれない。土中深くにあっては雨告が羽の大軍による雨の矢も、義元の長距離射撃も意味を成すまい。
「そういうわけで、地形に詳しい皆さんに案内をお願いしたいんだけどー」
「む……」
 ばつの悪そうな渋面になりつつ、羅刹の一人が言う。
「その、我らも地面を掘って散策したためしはありませぬゆえ、案内はできかねまする」
「あらー?」
「でも、義元のところまで真っ直ぐ掘り進めば……」
 そうシャルロットは言いつつ、言葉の中途でそれもまた微妙なことに気付く。
 義元は軍勢の湧き出る先、ないし矢の飛んでくる先にいることだろう。だが、まさか猟兵が迫ってくる間、一つ所で不動の構えを取ってくれるとは思えない。時折地上に出てルートを確認するとしても、うっかり敵陣の中に孤立する可能性もある。
「……いや、ここは皆さんと一緒に地上を進みましょう。敵が迫ったらその都度隠れるということで」
「むー。そうした方がいいかしらー」
 無念そうにアリスはうめいた。
 そして地上ならば自分たちの領分と、羅刹たちが先行する。
 鬱蒼たる杉の森。密に生えた杉のみならず、下生えも豊富であり、身を隠す場所には困らない。忍者たる羅刹たちにとってはもちろん、狩人として身を隠しつつ獲物を狙う作業に慣れ親しんだシャルロットにとっても、そう難しい道行きではなかった。
 では巨躯のアリスは不利かといえば、身体構造上低姿勢での移動には適しているため、むしろうまいこと隠形ができていた。
 そんなこんなで順調に進むこと、しばし。
「……焦れてきたか」
 最前を歩く羅刹が舌打ちする。見れば、上空をうろうろとしていた雨告が羽の群れから、何羽かが次第に低きに移ろっている。
 シャルロットにしてみれば必中必殺の間合いだ。ただし、銃を使えるなら、だが。
 銃声や発火炎で位置を知らせてしまっては元も子もないため、【隠れ身の外套(ハイディングクローク)】で身を隠しつつ構えるは、照り返しを抑える加工を施した短剣。
 そこまで気遣ったとて、戦ってしまえば戦わないより目立つ。
 皆して息を殺し、じっとする。やり過ごせれば御の字――だがやはり、そうそうこちらの都合にばかり合わせて事が運んではくれない。
(一、二……五体ですね)
 特に低空にあるそれらとエンカウントするのに、あと何秒もない。
 目配せとハンドサインを用いて、猟兵と羅刹たちとの意思の疎通を図る。
(三、二――)
 機を一つにして奔る。
 羅刹たちが八方から鎖分銅を投げ付けて五体の大鴉の翼を絡め取り、飛翔力を失ったそれらがつんのめるようにして地に落ちるより先に、シャルロッテの短剣が光なく閃いてその喉笛をかっさばく。
 神速と称して良い。が、三を数える前に雨告が羽らは体勢を立て直さんとする。
 しかしそれよりなお早く、ぼっ! と地面を爆ぜさせ、数体の大蜘蛛が出現する。
「――!?」
 敵も味方も一瞬だけ唖然としている間に、槍じみた前肢で雨告が羽を絡め取った大蜘蛛――アリスの妹らは、自らが飛び出た地穴にそれを引きずり込んだ。
 次の一瞬に、雨告が羽の身は音の届かぬ地中深くである。その末路は、言わずもがな。
「……鮮やかな」
 思わずといった風情で、羅刹が感嘆の吐息をもらす。
 アリスはそれに、ギチッと鋏角を鳴らして応じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鬼桐・相馬
【POW】
彼らには樹上移動、遠距離・援護攻撃をして貰い俺は囮役に
UCを発動し[鼓舞]を込め話を

里を守る、その為に力を貸して欲しい
この地を無断で踏み荒らす奴らを追い返す

敵の雨雫の矢は[結界術]で軽減
羅刹達には木々で身を隠し気配を殺しながら大鴉を攻撃して貰う
俺は雨に敢えて〈冥府の槍〉の炎を晒す事で蒸気を発生させ視界を阻害
僅かでも仕留めの矢の間隔増加や命中率低下を狙いつつ[範囲攻撃]

矢の飛来を五感だけに頼らず己の[戦闘知識や野生の勘]も駆使し[情報収集]
感知したら槍を地に斜めに突き刺し陰に隠れる
正面から軌道を逸らすように[怪力]で受けやり過ごす

身近な羅刹が父親だけだった俺には、彼らが少し眩しく映るな


鹿村・トーゴ
ここの羅刹は忍か…ま、此度の身バレはお互い様
もう敵に気付いてるかい?
あれは羅刹を仇と狙う今川の怨霊、郷ごと皆殺しにする気だ
…殺らせるワケないよな?
アンタ方の山の知識と力を借りたい
逃走路や木から木への樹上ルート、使い込まれた獣道から敵陣への近道になり得る道
藪の深い箇所とか目印、合図を訊く
出来るなら羅刹達には退避を
避難できたら音や獣の鳴き真似で確認できれば

教えられた最短ルートで出来るだけ敵を避け藪に紛れ枝上をかすめて進む【忍び足/地形の利用】

今川の矢
【野生の勘/聞き耳】で注意し勘付いたら着弾点を大きく避け

敵に遭遇
>手裏剣数本を【念動力】用いてUCの棒手裏剣も混じらせ【投擲/暗殺/串刺し】
アドリブ可



●合力
 危急の事態を知らせる法螺貝の音が羅刹の里に届き、戦闘を役割とした者たちが機敏に動き出す。
 鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)と鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が里に到着したのは、まさにその最中だった。
 ひりつくほどの緊張の中、見慣れぬ人間が里に紛れ込んでいるとなれば、敵意をすっ飛ばして殺意の対象になってもおかしくはない。だが、流石忍者の里というべきか、そんな短絡を起こすほど規律の甘い集団ではなかった。
「猟兵殿か」
 四十前後とおぼしき羅刹が二人の方に進み出つつ言うと、トーゴは肩をすくめた。
「身バレが早いな。けど、その方が話が早くていいや。もう敵には気付いてる?」
「見回りの者より知らせがありましたので。ご助勢に来られたということは、猟兵殿らに心当たりが?」
「ああ。羅刹を仇と狙う、今川義元の怨霊だよ」
「ほう」
 羅刹たちが目を丸くする。が、だからといって動揺が走るということもない。
 それだけ鍛えられた集団ということもあるが、そもそも少し前に織田信長という規格外の怪物の脅威にさらされた世界の人々である。今更、今川義元の名を聞いても「まあ、そんなこともあるか」という感想にもなろう。
「この地を無断で踏み荒らす奴らを追い返したい。力を貸してくれないだろうか」
 相馬が言う。表情の読み取りづらい鉄面皮ながら、その声と眼光にこめられた熱量は本物である。
「助力を請いたいのはこちらの方です、猟兵殿。我らが里を守るため、お力添えを願います」
「ああ、力を合わせよう。それで、皆には……」
 そこで相馬は自身の立案した策を述べた。
 と、羅刹の顔が強張った。
「……それでは、貴殿が危険すぎませぬか?」
「だが、他の誰かに振れる役目でもない。敵軍を構成するのは、吹けば飛ぶような雑兵というわけではないからな」
 羅刹が瞑目して考えること、およそ三、四秒ほど。
「――わかりました。我らは全力をもって援護しましょう」

 ダークカラーの軍用コートはともかく、絶えず紺藍色の炎を吹き上げる円錐状の馬上槍を肩に担ぐ様は、杉の森の中にあってそれなりに目立つ。だというのに相馬は、敢えてどこに身を隠すということもなく突き進む。
 彼に注意が引ければ、それだけ本命――木々に隠れつつ猿のように身軽に跳躍して移動するトーゴや羅刹たちは、見過ごされやすくなる。
(――来るか)
 羽音と雨音の入り混じった耳障りな音をまき散らしつつ、雨告が羽の大群が相馬を狙う。
 その翼から水滴が生み出されるのか、あるいは羽音が天より降る雨を引きつけるのか。何であれ、無数の雨雫は生命を蝕む矢となって、針の通る隙間さえないほどの濃密な弾幕を形成する。
(どれほど抗せるものか――)
 砕ける寸前まで奥歯を噛みしめつつ相馬が槍を一振りすると、瞬時にして炎が拡がり、彼の体を包む。物理存在のみならず、超常の力をも喰らい尽くす魔炎の結界である。
 どぉ! と。
 括った腹の底の底まで衝撃が響き、貫き、臓腑をかき回す。炎壁を破る矢こそなかったものの、想像を絶する圧力に相馬は片膝を突いた。
 雨雫の矢をことごとく蒸発させることができたら、隙を見て反撃の一つもしてやろうと考えてはいたのだが。
(ち、余裕がない……信玄の力の上乗せ、これほどか!)
 反撃できない以上、このままの状況が続けばいずれ押し負ける。
 だが、これはある程度予測の範囲内ではあった。
「放て!」
 号令が響く。
 同時、周囲一帯の杉の枝葉に身を隠していた羅刹たちが短弓、手裏剣、苦無などそれぞれの得物で同時に攻撃を仕掛けた。
 相馬一人に気を取られていた雨告が羽の群れは横合いから不意討ちを喰らった格好になり、翼といわず胴体といわず種々雑多な刃を突き立てられる。一撃でオブリビオン、それも武田信玄を憑装したものを絶命せしめるほどの威力は望むべくもないが、それでもよろめくなり飛翔力を奪うなりさせるには充分だったし、数と当たり所に恵まれた十に一つほどは戦闘不能にもなっている。
 羅刹たちの猛攻に混じり、トーゴもまた呪詛のこもった棒手裏剣を幾本も投擲している。
「追って貫け隠形鬼!」
 さらに手裏剣の当たった刹那、それを追って喰らうように毒鬼の宿った【呼子針】が飛ぶ。
「――!」
 回避能わず毒針に貫かれた雨告が羽は、毒と呪詛とに蝕まれて数瞬ほどもがいたかと思ったら、真っ逆さまに落ちていった。そして地面に激突するよりも前にザラリと身を崩壊させ、中空に溶けるようにして骸の海へ送り還される。
 それを横目で見送ったトーゴは、ふと、風を裂く異音を捉えた。
「! やばい、散れ!」
 怒鳴り、身を潜めていた杉の大枝を蹴る。
 羅刹たちもそれにならって跳躍すると、一瞬前までトーゴのいた枝にいずこからともなく飛来した大矢が突き刺さり、轟く爆発とともにその枝を木っ端微塵に吹き飛ばした。
 義元の狙撃だ。猟兵とて直撃すればただでは済まないし、そうでない者が喰らえば命はあるまい。
「なあ、そろそろあんたらは逃げた方がいいんじゃないか!?」
 着地したトーゴが、羅刹たちの方に目をやりつつ言う。しかし、彼らは一様に首を横に振った。
「は、何の! 里の危機というのにこの程度のことで尻尾を巻いてはおれぬ!」
「マジか……!」
「彼らも戦人だということだろう」
 相馬はそう言って、何か目映いものを見るかのように目を細めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

岩永・勘十郎
【※金麦亭で参加】

「全くだ。串刺しにしてケバブにしてやろう」

そう言って拳銃を取り出すと空中を飛び回る敵を撃ち抜いていく。6発撃ち終わり【早業】を駆使し流れるような速さで弾を込める。だが敵は多い。そして無数の矢がこちらに向かって飛んでくる。

「蠅が」

と無数に飛来する矢の鏃目掛けて3発の銃を撃ち弾き飛ばす。残った3発で近くの木の表面を撃ち、木粉を撒き散らせた。これで空中を飛んでいる敵に対し少しばかりの嫌がらせが出来るはずだ。

「おぉ! それはまた便利だな? 援護するぞ」

念力に集中するコロコッタ殿と空中を飛び回るアナスタシア殿の援護にと銃弾を撃ち放った。


アナスタシア・ムスハルト
金麦亭で参加

虎に翼は強いでしょうけど、翼に虎を押し込めて同じ効果が得られるかは疑問ねぇ

羅刹たちに天下自在符を見せて、上様のお墨付きを証明
猟書家って連中は羅刹を狙い撃ちにしてるらしくて、上様も心配していらしたわぁ
一緒に戦ってくれないかしらぁ?

地上から刀は届かないから、コロコッタさんに念動力で空に浮かせてもらうわぁ
枝を足場代わりに(クライミング・足場習熟)、アクロバティックに雨雫の矢を躱す
小さな体躯を活かして太く大きな杉の幹に隠れて、今川何某の矢をやり過ごすわぁ

知覚能力のズレ……今、私を動かしてるのはコロコッタさんだから、私自身の知覚がズレても関係ないわ
ただ真っ直ぐに「秘剣・燕殺し」で斬り裂く


コロコッタ・ラーテレイフカ
金麦亭で参加

これは鳥肉であってるアルカ?
サクッと倒して焼き鳥パーティーするアル〜!

・行動
コロは囮になる為に空に飛んでいくアル!コロの翼は飾りじゃないヨ〜!
矢の雨と援護射撃はきっと避けきれないネ・・・・・・。
それなら当たっても痛くないようにユーベルコードで、昔食べたすっごく硬かった蜥蜴の鱗を肌に再現してダメージを抑えるアル!
「ほらほら〜コロにはそんなの効かないアルヨ〜」
全く効いてない振りをして敵を引き付けながらタイミングを計って、『念動力』でアナスタシアちゃんを空中へご招待アル!
飛べるのはコロだけじゃないアルヨ!


オウカ・キサラギ
金麦亭で参加
羅刹のお友達は沢山いるからね、そんなみんなの故郷を壊させはしない!

まずは現地の羅刹さんたちに協力をしてほしいから『コミュ力』『情報収集』『礼儀作法』で敵を奇襲するのに向いた場所を聞かせてもらうよ!
「敵は見た目はともかく中身はあの武田信玄だよ!
真正面からぶつかるよりも有利な場所で戦った方が被害を少なくできると思うんだ」って説得するよ!
すぐにみんなに伝えて敵が来る予定の場所へ行って『迷彩』で隠れるよ!

姿を隠しながら風属性の宝石弾で強風を起こして敵の動きを阻害するよ!
どんな早くてもこの風の中じゃ自由に動けないでしょ!
そこで指定UCでドカーンとまとめてやっつけてやる!



●暗雲
 虎に翼。あるいは四字熟語で為虎添翼。
 元から強い虎に翼を与えれば手が付けられなくなるという意味で、強い者や勢力がより勢いを増すというたとえである。
 現況の敵を鑑みるに、元になるのは大鴉の怪異で、むしろ添えられたのが甲斐の虎・武田信玄という、あべこべの関係ではある。
「虎に翼は強いでしょうけど、翼に虎を押し込めて同じ効果が得られるかは疑問ねぇ」
 稲穂のようにすらりと伸びた東洋風の刀を肩に担ぎ、アナスタシア・ムスハルト(小さな大剣豪・f24499)はのんびりと微笑した。
 その所感はあながち的外れでもなかろう。サムライエンパイアでの大戦を経験した猟兵なら、雨告が羽と同様に魔将軍を憑装した織田信長と相対している。その単騎のオブリビオンが発していた威圧感は、眼前の群れのそれを全て合わせたよりも、なお強大だったという記憶がある。その差はやはり、元となるオブリビオンの器の大きさに所以があるものなのだろう。
「それでも中身はあの武田信玄だよ。油断はできない」
「まあ、それはそうだけど」
 本気の戦闘モードに入っているのが一見で知れる表情のオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)に言われ、アナスタシアは軽く肩をすくめつつ同意する。
 元より油断はない。だからこそ、【金麦亭】の従業員やら常連客やらで構成されたパーティは、先に羅刹たちから聞き出した情報に基づいて、奇襲に適した場所に潜んでいる。
 といって羅刹たちにしてみても、空を自在に飛び回れる軍勢の襲撃を想定したマニュアルなんぞは、あまり組み立てたためしがないようだったが。それでも「恐らくここならば」というのが、杉の密度がある程度濃い、崖ほどにも角度のある山肌だった。時間帯から、日の角度的にちょうど陰になっており、空から視認しづらくなっているはずだという判断である。
「それじゃ……」
 空を見上げつつ、コロコッタ・ラーテレイフカ(小さなベヒモス・f13584)が両腕――というか、両翼を広げる。
「みんな、準備はOKアルか?」
「ああ。だが、コロコッタ殿も気を付けろよ」
 二十六年式リボルバー拳銃を構えつつ言う岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)に、コロコッタはニカッと鮫牙をきらめかせつつ笑った。
「任せるアル。帰ったら焼き鳥パーティーするアル~!」
 言って、コロコッタは地を蹴った。彼女の体は四足肉食獣の脚力によって一瞬にして杉の梢よりも高きへと運ばれ、黒翼の羽ばたきが生んださらなる加速によってより空高くへと導かれる。
 山肌の陰から日光射す空へと舞い上がった黒い旋風は、たちまち雨告が羽の群れに注目されるところとなる。
「……!」
 即座に、コロコッタを包囲するように雨告が羽らが飛来する。
 粗雑に真っ直ぐ突っ込んでくるのではなく、明らかに高い統率力をもった動きで、陣形を組み上げつつの飛行であった。指揮官義元の差配によるのか、憑装する名将信玄の性質を反映してのことか、あるいはその両方か。
 何であれ確かなのは、たちまちにコロコッタ目がけて降り荒れる雨雫の矢の暴雨が、回避する隙のないくらい整然としたものであるということだった。
「――っ!」
 喉奥から漏れ出そうになる悲鳴を噛み殺す。この程度の事態は織り込み済みだった。
 わずかでも雨の薄いところへと身を翻しつつ、コロコッタの脳裏に浮かぶは、かつて食べたトカゲの肉の味だった。彼女の牙をもってしても鱗が硬すぎて、歯が通らなかったという思い出の逸品。それって最早トカゲじゃなくてドラゴンだったんじゃねーかなって感じの。
 暴雨の矢がコロコッタに至る寸前、【コロのびっくりショー!】で再現されたトカゲだかドラゴンだかの鱗がコロコッタの体を覆う。
 ぎぎぎぎっ! と甲高い音が鳴ったのは、その直後。
 堅牢な鱗の鎧は見事に雨雫の矢を弾き切り、コロコッタの肉に傷を刻ませなかった。
 さりとて、雨矢の持つ重圧そのものが殺されるわけではなく、従ってノーダメージとはいかない。
「くはッ――っ!」
 骨まで届く衝撃に、目眩がする――が、コロコッタは中空で踏ん張りながら、不適に笑顔を作った。
「コロには、そんなの、効かないアルヨ〜!」
 小馬鹿にするようにくるりと旋回し、飛び去る。仲間たちが伏兵となっている方へと。
 雨告が羽の軍勢は、そんなコロコッタを追った。流石というべきか、コロコッタの挑発的な行動にも取り乱すようなことはなく、陣形と保ったまま淡々と追い詰めようという態勢である。
 といって、コロコッタを追って群れなして『射程内』に来てくれるのならば、陣形が乱れていようといまいと無関係ではあった。
「来たな――撃ち落としてケバブにしてくれる!」
 六が一に聞こえるほどの早業で、勘十郎が引き金を絞る。
 銃弾は先頭を飛んでいた雨告が羽に炸裂した。両翼と頭部を破壊されたそれは、錐もみ状に身を翻しつつ落下していく。
 さらに勘十郎の弾丸を追うように、そこら中に潜んでいた羅刹たちが矢を射かけた。
「――!?」
 猛烈な対空射撃に陣形を食い破られた格好になった雨告が羽の群れだったが、即座にそれぞれ羽ばたきを強め、高度を取る。
 さらに、その身からじわりと染み出すように、昏い霧めいたものを噴出させる。入れ替わるように、燦然としていた日光が鳴りを潜め、雨告が羽の腹に吸われていった。
 呼吸一つほどの間の後、上空は【忌み雨の樋縁】の暗雲に支配された。
「む――」
 勘十郎は銃口をさまよわせた。暗雲に紛れて雨告が羽の姿が視認できない。
 さらに、暗雲から地面に向かって雨雫の矢が降り注ぐ。確たる位置が割り出せていないためだろう、それは何を狙うともない、数に任せた絨毯爆撃だった。
「蠅が!」
 舌打ちしつつ、銃を撃つ。拳銃にあるまじき精密さで吐き出された弾丸が雨雫の矢を弾き返すが、しかし、勘十郎がどれほど早業を駆使したとてあまりにも数の差がありすぎ、全てを防ぐなど不可能だった。
「――う、おっ!?」
 杉の間を駆け回るようにして、矢の雨をどうにかやりすごす。
 敵の姿を捉えられていないという点では両陣営の条件は同じだが、数の差の分だけ猟兵陣営の方が不利だった。矢の雨が降り続ければ、攻撃密度の差でいずれ押し負ける。
 が。
「行けぇっ!」
 ぼひゅん! と空を裂く音とともに、暗雲に向けて数十の石が飛ぶ。
 大きさは親指の爪ほど。弾丸めいた速度でもなし、仮に雲中に隠れた雨告が羽にぶつかったところでどうなるとも思えぬそれら。
 勢いを失って中空に静止すれば、あとは落ちるだけ――と思われた刹那、ぱきん、と自発的に砕け散る。
 同時、空に千条の烈風が奔った。
 石――いや、オウカが放ったジュエルバレットに込められた、風属性の魔力によるものだ。拘束を解かれた風は存分千万に羽を伸ばしまくり、凶猛なる空気の鞭となって暗雲を滅多打ちにする。瞬き一つか二つで、その一角の雲が千切られ、晴らされた。
「憑装で強化された翼でも、その風はキツいでしょ」
 オウカの体の周囲に、透明な石塊がいくつも浮かび上がる。内に秘められた魔力の膨大さを物語るような、刺すような輝きを放ちながら。
「ボクからの冥土の土産、受け取れ!」
 怒号に乗って【輝き放つ金剛の弾丸(ジュエルバレット・マスターダイヤ)】が奔る。
 雲の晴れ間に姿をさらしていた雨告が羽らは、果たしてオウカの言葉通り身動きが取れないでいる。そこに着弾した高純度ダイヤの弾丸は、花火よろしく苛烈な閃光と轟音をまき散らし、雨告が羽を木っ端微塵にせしめた。さらに生じた爆風が、淀むように残っていた周囲の暗雲をも粉砕して押しやり、視界をよりクリアにした。
 そこへ、刀を構えたアナスタシアが跳ぶ――いや、飛ぶ。
 飛翔能力がないはずのアナスタシアだったが、コロコッタの念動力がそれを可能にしていた。
「飛べるのは……コロだけじゃないアルヨ」
 言いつつ、コロコッタ自身は半ば落下するように地面に着地していた。ダメージの影響もあるが、高度な空中機動を維持しつつ念力を行使するのが危ういからである。どこかのタイミングでうっかり集中が切れれば、アナスタシアの身に大惨事が起きることになる。
 一方のアナスタシアは、若干の酩酊感と戦いながらの撃剣となった。
 何せ、普段のような自力の踏み込みによる体捌きでなく、他者任せで体を振り回されつつ刀を振るわなければならないので、勝手がかなり違う。意図せぬタイミングでの体の切り返しや何かが連発するので、三半規管に負担がある。
 それでも、アナスタシアはコロコッタを信頼していたし、己の腕前にも自負があった。
「んー……慣れてきたわ」
 眼前に迫った雨告が羽の顔面を蹴り飛ばし、それをもって地を蹴ったがごとき加速を得る。身に馴染んだ所作を重ねて刀の切っ先まで無駄なく力を伝え、神速を生む。
 【秘剣・燕殺し(ソニックブレイド)】の一閃が、逆側にいた雨告が羽の胴体を真っ二つにした。
「流石アルな、アナスタシアちゃん」
 と、念力に集中していたコロコッタ目がけ、凶猛なる【仕留めの矢】が迫る。
(あ――)
 と、コロコッタが思った刹那、横合いから飛来した銃弾が鏃に噛み付き、粉砕した。
「援護するぞ、コロコッタ殿!」
 銃を撃ちながらコロコッタの元に駆け寄るは、勘十郎だった。
「あ、ありがとうアル!」
 そこへさらに、羅刹の声が飛ぶ。
「猟兵殿、敵は浮き足だっておりまする! 大将首の元へ向かうなら、この機をおいて他にありませぬ!」
「――よし!」
 羅刹に応じてオウカが叫んだ。
「みんな、突っ込もう!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『今川義元』

POW   :    仕留めの矢
【大弓の一矢】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    鷹の目
【大弓】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【癖】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    飛鳥墜とし
対象のユーベルコードに対し【、蹴鞠の要領で体勢を崩すほどに強烈な蹴り】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ケーレス・ネメシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●峻険たる驍将
「ふうむ、なるほど……」
 一際大きな杉の巨木のてっぺんにつと立ちつつ、今川義元は感嘆の声を上げる。
 盟友にして名将たる武田信玄を憑装した軍勢と、自らの射撃。
 盤石の布陣と思われたそれらをかいくぐり、あるいは突き破って肉迫してくるような豪傑の集団があるとは――いや、織田信長が討伐されたと知ったときに、それが容易ならざる者共の手によるものだというのは勘定の内に入れていたはずなのだが。
「猟兵が武勇、信玄、義元に覚えなし」
 それは紛れもなく、絶賛であった。
 ただしそれは、己の敗北必至と見て諦めるなどというせっかちな潔さを導くようなものでは、決してない。
 ひゅっ、と異形の大弓を振るって風を鳴らし、身構える。
「なればこそ、我が相手に不足なし! 海道一、いやさ天下一の強弓、たらふく馳走してやろうぞ!」
フォルク・リア
「今川義元。此方の歴史は良くは知らないけど。
名将だと聞いている。」
簡単な相手じゃないのは見ればわかる。

羅刹たちに敵の動きや弓での攻撃を制限する様な
戦場を選んでもらい誘導する様に戦う。
誘導するまではデモニックロッドの闇の魔弾や
呪装銃「カオスエンペラー」の弾丸で距離を取りながら後退。
戦場についたら攻撃を蒼霊焔視に切り替え
敵の攻撃態勢を【見切り】隙をついた【早業】で
【高速詠唱】で攻撃を放ち。
敵が飛鳥墜としで相殺し様としたら
杉の大木等【地形の利用】をし
体勢を崩した時の隙を増大させ
そこを突き【2回攻撃】で再度蒼霊焔視を放つ。
「残念だったね。今この場においては
俺の方が有利だ。大人しく骸の海に還って貰う。」


アリス・ラーヴァ
アドリブ・連携歓迎

わーい、『今川義元』さんがたらふくご馳走してくれるんだってー!
みんなー、【ダッシュ】で義元さんの所へいきましょー
義元さーん、アリス甘いものがいーなー
(仕留めの矢に対し)
あ、ひどーい!アリスの甲殻に傷が入ったのー。このつやを保つ為に毎日お手入れ大変なのよー?
危ないからその辺りの大きな物を持ち上げて盾にして進むのー
アリスは【力持ち】だからおーきな物を持ってもへーきへーき
妹達と突進して大きな杉の巨木ごと引き倒しちゃいましょー
義元さんが地面に降りたら得意の【集団戦術】で取り囲んで【アリスの糸】で【束縛】するのー
これで遠くに逃げられないわー
さー、たらふくご馳走してねー



●地の利
 杉の巨木の幹に身を隠しつつ、顔の半分だけをはみ出させて敵の方を見やる。
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は歴史に明るい方ではないが、それでも今川義元の名は名将のそれとして知っている。そうでなくても、充分な距離を取っている現時点でさえ息が苦しくなるほどの重圧が感じられることから、それが容易でない敵であるのは嫌でも理解できる。
「あの大弓に対して有利な地形というと、どんなものかな?」
「さて。あんな化け物が相手となると、いささか勝手がわかりかねますが……」
 フォルクの問いに、脇で身を潜める羅刹が腕組みしつつ考え込む。
「強いて申せば、兵法においては高所が有利というのが基本。こと、弓が得物の義元めにとっては差し響くところ大と思われまする。ならばあべこべに、こちらがより高きを押さえてしまえば、少なくとも敵にとって万全ならざるということになりましょう」
「なるほど」
 一理あると、フォルクは思った。現に義元は杉の梢に立っているわけだから、視界と射界を確保できる高所の利を意識している可能性は高い。
「なら、まずは少しでも奴を引きずり落とす必要があるね」
「高所にあっては退路を塞がれることを嫌うはず。全方位から一度に攻撃を仕掛ければ、あの場を捨てて動くやもしれませぬ」
「囲むわけか。けど……」
 フォルクの顔が微かに曇る。
 里の羅刹の数を使えば、包囲からの攻撃は可能だ。しかし、猟兵でない彼らが義元の反撃にさらされた場合、かすっただけでも致命傷になる。弓や手裏剣などで安全圏からなら、と言いたいところだが、義元の攻撃射程を思えば安全圏などどこにもない。
 戦場に立つ者としての矜持と気概のある彼らは、それで落命したからといって誰に恨み言を言うわけではないかもしれないが。
「あらー、数が必要なの?」
 不意に、ギチギチと硬質な物体のこすれる音を鳴らしつつ、アリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)が言った。
「それなら、アリスに任せてくれないかしらー?」

 義元は周囲に目を走らせた。その時点で初めて、音もなく己の周囲に幾本かの糸が張られていたのに気付いた。
 半透明のそれらが鉤もなく杉の枝にへばりついた様を見やりつつ、小さくつぶやく。
「蜘蛛か」
 次の瞬間、メキメキバキバキとけたたましい音を上げつつ、糸を伝って何かが迫ってくるのが知れる。
 視線をそちらにやれば、横向きになった杉の幹がブルドーザーよろしく突進してくるのが見えた。
「大した剛力だが――」
 眉一つ動かさず、義元は大弓を巡らせた。
「そんな物で我が【仕留めの矢】を防げるとでも思ったか」
 義元が軽く弦を撫でるような仕草をしたかと思ったら、その手から悪魔的な勢いで矢が放たれる。空気との摩擦で生じた焦げ臭さを置き去りに、神速を得た矢は刹那にして杉のブルドーザーに炸裂し、次の刹那にそれを木っ端微塵に爆散させる。
 なお勢い止まらず破片の中を突き進んだ一矢は、破片の向こうにあるもの――アリスの体へと至る。
「あらー?」
 がいん! と甲高い音を上げて、曲面甲殻が矢を弾く。弾いたといって、その甲殻には決して小さくないヒビが刻まれた。
 しかし、それでもアリスは前進を、突進を止めない。
 義元が瞠目する。が、遅い。
「ひどーい! 毎日お手入れしてたのに、傷がついちゃったー!」
 微妙に危機感に乏しい抗議の声を上げつつ、アリスは全速でもって義元に体当たりした。
「ぬう!」
 義元はとっさに大弓を盾のように構えるが、それで新幹線ばりの速度をもってぶちかまされた衝撃が殺せる道理もなく、鉄槌が巨石を砕いたような轟音とともに体が宙に吹き飛ばされた。
「ぐ、む――!」
 それでも流石は幹部オブリビオン、宙にありながら身を捻って姿勢を整え、足下にある杉の枝にしかと着地してみせる。
 が、その枝をさらにフォルクの放った魔法弾が破壊した。
「ッ!?」
 体重の預け先を急激に失った義元は、そのままつんのめるようにして身を宙に投げ出され、地面目がけて落下する。
「魂を焼く青藍の炎――」
 落下する義元を、フォルクの両眼は捕捉していた。
「怨霊の如く追え!」
 刹那、竜巻めいて逆巻く【蒼霊焔視(ファントムアイズ)】の蒼炎が義元を呑み込んだ。
「がぁあッ――!?」
 魂を灼く苛烈なる猛熱に義元の喉から絶叫がこぼれる――が、それは呼吸一つ程度。勢いよく杉の幹を蹴飛ばし、炎の領域外に跳び出す。
「――ッ!?」
 一瞬驚きつつもフォルクは再び炎を放つ。が、今度は瞬時にして義元は空中にて体を旋回させ、両の足から烈風の暴圧を生み出した。超次元の脚力はユーベルコードの炎にさえ干渉し、瞬く間にそれを吹き散らしてみせる。
 それでも度重なる攻勢に着地の体勢を取る余裕はなく、義元はごきゃりと鈍い音を立てつつ背中から地面に激突した。
「……味な真似を」
 ゆるりと立ち上がった彼の目に映るは、周囲を埋め尽くして己を包囲するアリスの妹たちであった。
「これで遠くには逃げられないわー。さ、ご馳走してくれるんでしょー? アリスは甘い物がいいわー」
「ほざけ」
 口元から血を流しつつ、義元は弓を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オウカ・キサラギ
金麦亭で参加
同じ射撃型同士、射程で負けても応用力はこっちが上だ!
今川義元!天下一の弓は今日ここで折れることになるよ!

近接型の人が少しでも被害を減らせるようにボクはまず義元の矢を落とすことに集中するよ!
『属性攻撃』『スナイパー』『クイックドロウ』『範囲攻撃』で大規模な風属性の宝石弾で矢を逸らし防ぐ!
相手は強敵だからね多少の反撃が来ても『激痛耐性』で我慢して射撃を続けるよ!
ずっと同じ属性だと見切られるかもしれないから、爆破や重力属性といろんな属性で義元の攻撃を防いでいくよ!

近接組が近づいて敵の射撃が緩んだ瞬間に双短剣を抜いて鎧の力を開放!
『ダッシュ』『見切り』で敵の意識外から指定UCで滅多切りだ!


岩永・勘十郎
金麦亭で参加

「手加減なんてしたら、次は桶狭間の戦いより悲惨になるぞ?」

と【挑発】を入れて刀を抜く。敵の攻撃はオウカ殿が何とかしてくれるみたいだ。勘十郎はそれでも防げなかった矢の攻撃を刀で弾き、一気に間合いを詰める。そして刀で斬る……と見せかけて手に持っていて砂で【目潰し】攻撃を食らわせる。弓の攻撃に視力は必須。それを潰せばしばらくは攻撃できないだろう。

「さぁ! 今だ!」


アナスタシア・ムスハルト
金麦亭で参加

雨鴉との一戦で燕殺しは見切られてると見るべきねぇ

杉の森を「足場習熟」「クライミング」で駆け抜けるわぁ
ドワーフは鉱山の生き物、この程度の悪路はへっちゃらよ
射撃のできる人が矢を防いでくれているうちに、距離を詰めるわぁ

こっちに飛んできた仕留めの矢は、「怪力」でその辺の杉を引っこ抜いて叩き付けたり、岩を投げ付けたり、強引に軌道を逸らす(咄嗟の一撃)ことで、自分の身体と刀では直接触れない
あの大きな鏃、とっても剣呑だわ
下手に受けたらそこから持っていかれそう

みんなの協力で今川何某を刀圏に捉えれば――「鏖殺無尽剣」、ズッタズタに斬り裂いてあげる(切断)


コロコッタ・ラーテレイフカ
金麦亭で参加

たらふくごちそうしてやる〜だなんて太っ腹アル!
それじゃあ遠慮なく頂くヨ~!

・行動
さっきは空だったし鳥と矢と雨とっていっぱい見なきゃいけないものがあったけど、今回は鳥と雨はないからこっちのものアル!
そっちが得意な弓矢ならこっちは得意の『大食い』を活かして戦うネ!
「遠慮なくいただいちゃうアルヨ~!」
飛んでくる矢を片っ端から食べちゃうアル!
オウカちゃんが逸らしてくれる矢は避けて、コロや皆に当たりそうなのをどんどん食べちゃうヨ!
「おかわりが自分から飛んでくるネ~♪」
コロは難しいことは苦手だからみんなの前に立って突破口を開けるお手伝いするアル!



●切迫
 迅い。
 杉の根がそこら中に露出した劣悪な足場に囲まれつつ、アナスタシア・ムスハルト(小さな大剣豪・f24499)は鞠の弾むような身軽さを発揮していた。出身が刀鍛冶の里である彼女は、足場の悪い鉱山にも幼少より親しんできた。それとは多少毛色が異なるとはいえ、悪路の走破は慣れたものである。
 そんな迅速さをもって迫り来る脅威に対し、義元は寸毫の狂いもなく弓矢の照準を合わせた。
 そのまま淡泊に、必中必殺の一矢が放たれる――より、早く。
「今川義元!」
 遠間にあるオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)が怒鳴り、義元の目は反射的にそちらを向いた。
「天下一の弓、今日ここで折れることになるよ!」
 宣言と同時、オウカの体の周囲にマラカイトのような小石が数十ほど浮かび上がった。
 それらはギィと耳障りに空気を振動させたかと思ったら、疾風を纏って礫の弾幕と化し、義元へ殺到する。
「猪口才ッ!」
 照準をそちらに向け直し、矢を放つ。
 神速の鏃とオウカの宝石弾の嵐とが正面から衝突するや、宝石弾に込められた魔力が解放され、八方に風の刃と爆圧とを繰り出した。
 が、義元の【仕留めの矢】の矢勢はそれを凌駕する。十数の魔石による暴風の壁をものともせず貫き、真っ直ぐにオウカの眉間に向かって――いや。
「――ッぶな!」
 顔の横を通過して風圧を与えるに留まる。
 矢を完全に撃墜するのは無理でも、軌道を逸らす程度はできたようだ。
 さらに、数で勝つ宝石弾は五、六が矢の圧から逃れ、義元の元へと至らんとする。
「ぬ!」
 上へ跳ね、手近の杉の幹を蹴ってさらに上へ跳ねて魔石の弾幕をやり過ごす。
 そうしている間にアナスタシアはさらに距離を詰めてきている。
 オウカに追撃を仕掛けるか、アナスタシアを迎撃するか――半瞬で答えを出した義元は二指から五指までの隙を使って一息に三本の矢をつがえ、アナスタシアへと向けて連射した。
 びょう! びょう! びょう! と空を裂く音とともに、それぞれ一矢必殺の猛威を秘めたる三矢が飛んだ。
「剣呑ねぇ」
 アナスタシアの肌が粟立つ。刀術には自信のあるアナスタシアではあるが、下手に受けても押し負けるに違いないと直感した。
 刹那、アナスタシアをかばうようにコロコッタ・ラーテレイフカ(小さなベヒモス・f13584)が飛び出した。
「三本! 太っ腹アルな!」
 場違いなまでに陽気な声を上げつつ、コロコッタはギラリと両眼を光らせた。
 同時、頑強なる鮫牙を携えた獰猛なるラーテルの顎が、雄健なる鴉の羽の羽ばたきに乗って奔る。
 義元の必殺の矢に対しコロコッタが取った行動は、真正面からの噛み付きだった。
「遠慮なくいただ――!?」
 牙と鏃がかち合う。
 微塵に砕け散ったのは鏃の方だった。が、強度でこそ勝ったとはいえ、矢勢を、その凶猛な破壊力そのものを相殺するには至らない。引きちぎられそうなくらいコロコッタの顎が押し込められ、悲鳴すら許されぬ圧力が掛かる。
「――ッ――!」
 それでも気力を振り絞り、コロコッタは首を捻って鏃の砕けた矢を払う。
 次の刹那に己に迫る二の矢に、上顎を叩きつけるようにして牙をかち合わせ、弾いて逸らす――下顎は一の矢の衝撃に痺れて使い物にならず、噛み合わせるのは不可能だった。
 次の刹那の三の矢も、同様に弾く――が、今度は弾き切れずに押し負け、コロコッタは仰け反り様に吹き飛ばされた。
「コ――!」
 己の真横を吹き飛ぶ仲間を目の当たりにし、アナスタシアの喉から悲鳴が漏れる。
 真っ向から力任せにぶつかり合えば、物を言うのは地力の差である。剛強を誇るコロコッタの牙撃ではあれ、単体戦力でいえばずっと格上である義元のユーベルコードに正面から挑めば、力負けするのは致し方のないことだった。
 むしろ、吹き飛ばされつつも三矢を凌いでアナスタシアを護ってみせ、またなお脳幹を撃ち貫かれていないという時点で、奇跡に等しい大健闘といえた。
 それがわかっているからアナスタシアは、コロコッタに駆け寄るのではなく、決然と義元に迫る方を選ぶ。コロコッタが作った攻勢の好機を逃すわけにはいかない。
 義元の右手に次の矢はない。その手が矢筒に伸びるよりも、アナスタシアの踏み込みが義元を刀圏の内に入れる方が早い。霊木の鞘より刃が放たれる方が速い。
(斬り裂く!)
 アナスタシアの居合い斬りが義元の横一文字に両断せんと奔る。
 が、その刃が義元の胴に至る寸前、アナスタシアの手首に義元の大弓が打ち下ろされた。
 腕を圧し折られたかと思うほどの激痛が走り、雷速の一閃が押しとどめられる。
「ッ!?」
「近間が不得手と言った覚えはない」
 冷厳と義元が告げる。
 その言葉を無視して、自身の腕が上げる悲鳴をも無視して、アナスタシアは身を捻った。その拍子に、腕を圧していた弓がすかされる。
「むう――!」
「寸断する!」
 刹那、アナスタシアの腕は自由を取り戻し、【鏖殺無尽剣(フェイタルリッパー)】の斬撃の乱舞を生み出した。
 なまじのオブリビオンならば一弾指の間に細切れになるであろう、滂沱の雷雨のごとき幾重もの刃閃。
 が、義元は弓を縦横に振るってその斬撃を受け止めてみせる。
 速度でいえば互角か、あるいはアナスタシアの方がわずかに勝っているくらいである。それでも、義元はまるでアナスタシアの動きを先読みするかのように的確に弓を繰り出して、ことごとく防ぐ。その所以は、義元の【鷹の目】――と。
「単調だな。腕が痛むか」
 義元の言葉に、アナスタシアは奥歯をギリリと噛みしめる。実のところ、アナスタシアの剣捌きは十全のそれとは程遠い――どころか、刀がすっぽ抜けないように握力を維持するだけでも必死だった。今は手数によって拮抗できているが、あと何秒も保たない。
 そこへ。
「余裕ぶった台詞を吐いていていいのか?」
 学生服姿の岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)が、軍用刀小銃兼正を振りかざして突っ込んでくる。
「桶狭間より悲惨になるぞ!」
「っ――!」
 位置関係でいえばちょうどアナスタシアと挟撃するような格好。
 弓はアナスタシアへの対応に塞がっていて、当然ながら矢を射かける余裕もなければ、勘十郎の方に振り回して弾くなり払うなりする余裕もない。
 義元の背中、心の臓を目がけて勘十郎の片手突きが放たれる。
「ちぃ!」
 義元は強引に足を跳ね上げ、アナスタシアの腹を蹴飛ばし、吹き飛ばした。
「か、は!」
 交錯の一瞬、義元の蹴り足のすねをアナスタシアの一閃がかすめ、血風が舞い上がる。
 それを意に介さずに義元は勘十郎の方へと身を躍らせつつ、その勢いに乗せて弓を薙ぎ払った。
 膂力に勝る義元の一撃に刀の横腹を叩かれ、勘十郎はつんのめるようにして大きく体を崩した。
 しかし。
(今だ!)
 勘十郎は逆手に握りしめていた砂を義元の顔に投げ付けた。
 ユーベルコードに依拠した何かでもなく、超常の力を持つわけでもない、ただの砂だ。それでも目くらましにはなるだろうと勘十郎は目算していた――のだが、義元は厘の揺るぎもなく双眸を光らせていた。
「え――」
 瞬間、勘十郎は唖然とした。
 今川義元は生前より戦場の人であって、矢弾降る中での泥臭い乱戦組み討ちの経験を重ねている。さにあらずとも超常中の超常たる幹部オブリビオン、変哲なき砂をぶつけられて易々と怯んでくれるほど甘くはなかった、ということ。
「我が手に左文字のなきを幸運に思え」
 勘十郎の首筋目がけ、切り返された大弓の先端が振るわれる。大きく体を泳がせていた勘十郎は刀を引き戻そうとするが間に合わず、身を縮めて肩で受けるので精一杯だった。
 刹那、上半身がちぎれそうなくらいの衝撃が勘十郎をつんざく。錐もみ状に吹き飛び、受け身も許されずに杉の幹に激突する。目もくらむようなダメージ――だが、首と胴がつながったままで済んでいるのだから、実際幸運だったといえるかもしれない。
 加えて、想定といささか異なるとはいえ、注意を引くという目的は果たしたのだから、御の字ではある。
「今だ――オウカ殿」
 朦朧としつつ勘十郎がつぶやいたよりも、早く。
 ひょう、と。
 義元の耳が風の音を捉えたとき、革鎧に込められた魔力による超加速もってそれを置き去りにしていたオウカが、すでに義元の眼前に迫っていた。
「――な」
「今のボクは、一陣の風!」
 義元の意識の間隙に吹き込んだその風は、神速にて双短剣を翻して【襲撃する疾風の刃(ブレイドガスト)】を放った。
「が――ばッ!?」
 義元の両脇の下から両肩に掛けて十文字の刀傷が刻まれた。紛れもない深手から噴水めいた鮮血が吹き出し、真紅の濃霧を成す。
 【金麦亭】メンバーの粉骨砕身が結実した二太刀であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
あは
アンタらの度胸、感じ入ったよ
戦世には駆り出され太平なれば身を隠す日陰者にも矜持はある…
オレは鹿村の赭
同じく羅刹の忍、何としても郷を守ろうぜ

相手は生身とは桁違いの怨霊
高所を取る奴の弓に撃たれたら即死だ
オレら忍の得手を展開しよう
地の利【地形の利用/忍び足】活かし杉林を散開
自分達と離れた個所の杉を火薬・投石を囮に揺らし
囮に攻撃があれば背後から本命の獲物を【だまし討ち】すぐ離散を繰り返す
勘付かれたら散って隠れるか撤収…どう?

忍の鉄則通り全力で生き残ろーぜ

自分は作戦中UC強化
代償の流血付のクナイ、手裏剣を
強化した膂力と【念動力で投擲、串刺し】
【追跡/情報収集/聞き耳】敵位置を常に確認、伝達

アドリブ可


エスタシュ・ロックドア
引き続きシンディーちゃんに【騎乗】【運転】中
そんじゃ同族、いっちょやってやろーぜ

『群青業火』発動
ブルーフレアドレスに点火
【範囲攻撃】で戦場の広範囲に業火を撒きつつ、
敵の周囲を【ダッシュ】と【地形耐性】で走り回る
矢をライディングテクで躱したり、
【焼却】して防いだり
【存在感】溢れてるだろ?
同族にはこれに紛れて離脱してもらう
煙幕ならぬ炎幕に紛れて、
海道一の弓取り相手に一矢報いてくれ
同族の攻撃に敵が気ぃ取られたらその隙を狙う
シンディーちゃんは自走機能で離脱
鴉衣編んで【空中浮遊】
宙を踏んで駆け上がり、
死角からフリントを【怪力】で振り下ろす

獄卒が迎えにあがったんだ、
大人しく骸の海に引っ立てられるが良かろう


鬼桐・相馬
【POW】
弓の最大の利点は遠距離狙撃
接近戦に持ち込み攻撃阻害と羅刹達への弓を防ぎたい

羅刹達には引き続き杉の陰から援護攻撃をして貰う

先程の[戦闘で得た知識]を活かしながら戦闘
桁違いに短いとしても必ず攻撃動作はある
[視力と野性の勘]を駆使し矢をつがえる動きを[見切り]、〈冥府の槍〉で妨害・反撃を

仕留めの矢――今は敵の姿が目前
視線、動き、殺気を捉え
狙いの位置へ厚く[結界術]による障壁と[武器で受け]きる
その直後に鞄の中から本来の姿に戻った[ヘキサドラゴン]を放ち飛び掛からせよう

勿論俺もモモもブラフ
視界外から羅刹達に一気に攻撃をして貰うが、それもブラフ
次は本命のUC発動

羅刹達の里、皆で守り切らないとな



●鬼気
「うおっ!」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が首を縮めた瞬間、彼の顔があった位置を義元の【仕留めの矢】が通過する。
 矢はそのまま真後ろにあった杉に突き刺さり、次の瞬間に炸裂弾じみた爆発を巻き起こした。樹齢百年はありそうな杉は幹の九割を持って行く巨穴を穿たれ、めきめきと後方に倒れていく。
 トーゴのすぐ近くに潜んでいた羅刹の忍者は、その様にちらりと一瞥をくれただけで、動揺もなく再び義元に目を戻す。
 感じ入るばかりの度胸だった。治に居て乱を忘れずという格言があるが、日陰にあって有事に備える忍者たちの矜持を、トーゴは肌で感じた。
「なあ」
「何でしょう?」
「オレは鹿村の赭」
「……?」
 トーゴの意図をはかりかねた羅刹が、きょとんと目を丸くする。
「忍者の鉄則通り、生き残ろーぜ」
「ほう」
 羅刹の口元が綻んだ。
 死ぬことを道と見つける武士とは異なり、忍者は生きてこそである。
 どちらが上等かという問題ではなく、単純に役割の差である。忍者の役割は、諜報によって得られた情報を持ち帰ることであって、華々しく槍働きをすることではない。敵に捕縛されるのは三流、討ち死にするのは二流、何が何でも生き延びることができて初めて一流である。
 小童――というほど侮れた年齢でもないが、ともあれトーゴが忍者の何たるかを心得ていることを、羅刹は理解した。
「それがしは杉谷の善助。お互い生きていたら、酒でも酌み交わそうぞ」
「あー、オレ未成年だから、お茶で」
 言葉を交わしているところで再び矢が飛来してきて、両者は素速く跳び退いた。

 一種の験担ぎのような側面もあるのか、愛機に女性名のニックネームを付けて呼び、恋人のように愛情を込めて取り扱って機嫌を取るという行動は、バイク乗りから戦闘機乗りまで様々な分野の男性らに見られる。
 エスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)のバイクにも「シンディーちゃん」との名が付けられている。そして彼女は今、その美しき名に相応しい絢爛なる群青色のドレスで着飾り、華麗に走行している――といった具合に、漆黒の大排気量のバイクが極幅広の蒼炎をたなびかせつつ爆走している様を称されたとして、何人が納得できるのかは知れたものではないが。
 さておき、戦場にあってエスタシュとシンディーちゃんは凄まじく目立っていた。
 必然、義元の矢撃はエスタシュに寄る。三本に一本、あるいは二本に一本くらいの割合で彼に向かって飛んできた。
「へっ、狙い通おわぁ!」
 進路上の地面を矢で吹き飛ばされ、危うく横転しそうになるものの、どうにか立て直す。倒れてしまえば、そうでなくても速度や機動の精度を少しでも下げてしまえば次の矢に射貫かれ、一巻の終わりを迎えるに違いない。
 それでも、ターゲットが自分に偏っているという状況はエスタシュにとって願ったり叶ったりだった。鍛えられた忍者とはいえ猟兵ならざる里の羅刹たちには、義元の矢は荷が勝ちすぎる脅威である。
(同族は無事かね……?)
 そこら中を駆け回りつつ、エスタシュは【群青業火(ブレイズアズール)】をまき散らしている。彼の意志を反映して燃やすものを選ぶその蒼炎は、周囲一帯を覆い尽くさんばかりに拡大しているものの、杉などには延焼していない。煙幕ならぬ炎幕として、義元の目から羅刹たちを守っている。
 そして。
(……頃合いか)
 バイクを自律走行モードにして、エスタシュは蒼炎の陰で跳び降りた。
 義元の目を欺けたかどうかは博打だが、まあどちらであれ構いはしない。
 肩に担いだ巨鉄塊の大剣の柄を握りしめ、エスタシュは己の足で駆けた。

(どこだ――!?)
 歯ぎしりしつつ、義元は周囲に目を走らせる。
 本能寺の信長でも味わったかどうかという、炎にまみれた視界。辛うじて弓を扱うことはできるものの、その場を動くことも能わぬほどに満身創痍となった体。
 それでもなお諦めずに勝ちを拾おうと思うなら、義元が討つべきはまず猟兵であった。ただの羅刹ならば後からどうとでも措置できる。だが、猟兵は違う。少しでも余力があるうちに仕留めなければ、彼らの刃は必ず己の首に届くということを、義元は理解していた。
 ひょう、と短弓から放たれたとおぼしき小矢の雨が降ってくる。
「ちい、煩わしい!」
 弓を振り回し、叩き落とす。
 鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)の要請によって、羅刹たちは援護射撃に徹している。オブリビオンの中でも別格の存在たる義元にとって、それらの攻勢はさほどのダメージを与えてくるものでもないのだが、それでも神経は摩耗する。
 今度は、手裏剣や苦無が向かってくる。
「煩わしいと――」
 ごっ、と。
 振るった弓に感じる手応えが、その重さが格段に違った。
 羅刹のそれに混じって投げ付けられたそれは、【降魔化身法】によって威力を超常の域に至らせた、トーゴの手によるものだった。
(しまっ――)
 予期以上の威力を受け止めそびれ、義元は体勢を崩して片膝を突いた。
 刹那、視界を邪魔していた蒼炎のカーテンをかち割るようにして、四足と一対の翼を備えた黒鱗の獣が突進してくる。
「な――!?」
 矢をつがえて放つほどの猶予などない。
 とっさの癖だろう、義元は傷を負っていない方の足で蹴りを放った。深手を負った逆足によっては踏ん張りが利かず、本来の威力にならなかったそれは、黒竜――相馬のヘキサドラゴンの突進を押しのけるには至らない。
 さらに。
「よお、獄卒が迎えにきてやったぜ」
 凄絶な声が上から降った。
 義元がそちらに目をやれば、第二の黒竜と見まがう黒の巨影があった。広げた翼のように見えたのは、しかし翼にあらず、黒鉄の巨大剣である。
「――ッ!」
 崩れきった半端な姿勢で、それでも義元は異形の大弓を振るった。
 エスタシュの振り下ろした大剣の一閃と弓とがかち合って、飛び散った火花が両者の目を灼く。
 一連の戦闘で幾度となく猟兵の攻撃を受け止めてきた義元の弓だったが、その超重の一撃でついに閾値を超える。
 ぎぎ――がぎん!
 鈍い悲鳴を上げて、弓が両断される。
 勢いそのまま大剣は義元の左肩に食い込み、斬り裂くというよりは圧し潰すように義元の胸下までに至る。
「がぼ――!」
 義元の口から、傷口から、多量の血があふれる。
「大人しく骸の海に……」
「……――まだだ!」
「あ?」
 エスタシュが目を丸くした刹那、義元の右手が矢筒に伸びる。そして、逆握りに矢を握りしめるなり、エスタシュ目がけて突きかかってきた。
「おわ!?」
 義元の肉にがっちりと噛まれて動かない大剣から手を離し、エスタシュは跳び退かざるを得なかった。
「猟兵……一匹でも、道連れに……!」
 間違いなく、捨て置いても程なく消滅するであろうだけのダメージを負っている。それでも義元は血走った目で、握りしめた矢を脇差しよろしく振るってくる。
 そこへさらに新たな影が割り込んできた。
 それは、黒色の軍用コートをはためかせ、円錐状の大槍を構える相馬だった。
「意地か、執念か。大した物だ。が――」
 冷静な口調で言いつつエスタシュをかばう位置に躍り出るや、剛猛なる勢いでもって刺突を放つ。
 義元はそれにかち合わせるように握った矢を打ち下ろしたが、無双の弓によらぬそれは相馬の槍に抗うには脆弱に過ぎた。
 あっさりと矢を弾いた冥府の槍は、そのまま直進して義元の腹を刺し貫いた。
「こちらも、羅刹の里を――サムライエンパイアを守り切らねばならんのだ。これで終わりだ、今川義元」
「おの、れ――ッ!」
 絶叫する義元を、冥府の槍から噴出した【鬼火継ぎ(オニヒツギ)】の炎が包む。敵の悪意を燃料としてより強さを増すその紺碧の炎は、義元の執念の強さを物語るかのように、猛く、熱く、強く、天にまでも届かんばかりに燃えさかった。

 かくして、杉の森に隠れた羅刹の里に、静寂と平穏が戻った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月29日


挿絵イラスト