猟書家討伐ミッション[パチモノ猟兵大量発生事件]
●キマイラフューチャー某所にて
「オーッホッホッホッホッホ!」
お手本のような高笑い。エナメル製のボンテージスーツ。最近キマイラフューチャーを騒がせる悪の組織「ワルドーラ」の女首領、ドーラ・ワルダーが居並ぶ怪人たちの前でムチをピッシャンピッシャン鳴らして示威行動を行っていた。
「いやぁワルダー様いつも通りですね。ただやっぱりボンテージはその歳で無理があるのではと」
「そう! 今日もいい天気! ……OKそこは言わないで頂戴実は気にしてたから」
側近が持ち上げた後年齢について言及するという見事な「上げて落とす」メソッドを披露すると、ワルダーは高笑いとムチによる示威行動をやめてげんなりと肩を落とした。
「だってキング・ブレイン様がさ……『やはり形から入るのが良いのではないか?』って仰ってたから……」
「だからって別に今どきボンテージスーツ着なくても。最近の女幹部って普通にビジネススーツ着てたりしてますよ」
「そこはリサーチ不足だったわ……」
悪の組織ワルドーラ。部下の自由な意見具申が許されるホワイトな職場である。
「……さて今回の作戦について、この私自らプレゼンするわ」
「ほう! ワルダー様御自ら作戦を立案なされましたか! して、具体的にはどのような。ちなみにこれまでワルダー様が提案された作戦企画書ですが、幼稚園バスジャックは誘拐した所で怪人として即戦力になるキマイラがいなさそうなのでボツ、行列のできるラーメン屋の行列まるごと誘拐作戦は意外とラーメン屋が激戦区で客が分散しまくる恐れがあってボツ、超巨大クレーンゲームで物理的に誘拐作戦は建設コストを回収するのに凄い時間がかかるのでボツですぞ」
「わかってるわ! 色々と今回の作戦は……これよ!」
ツクテーン、とどこからともなくドラムの音が鳴り響き、背後で布をかぶっていたホワイトボードが顕になる。そこにはこう書いてあった。
『偽物の猟兵に群がるキマイラたちをまとめて改造しちゃおう作戦』
それを見たワルドーラ構成員は「意外とガチだ」という顔をする。
「ワルダー様にしてはかなり悪どいこと考えますね」
「でしょ? いや気づいちゃったのよ、猟兵って人気じゃない? 猟兵が現れたらそれはもうその場で即席サイン会が始まるくらいには人気なわけよ。つまりその猟兵のブランドイメージを利用すれば簡単に怪人候補が集まるでしょ」
「さらに『君も猟兵になれるんだ!』って言って怪人への改造手術を始めてしまうわけですか」
「ぶっちゃけ私猟書家でしょ? 猟兵と猟書家ってほら、『猟』の字が入ってるから似てると思うわけよ」
「ただ……これ言ってしまえばパチモノで釣ろうとしてるわけですよね」
それまでほうほう、と話を聞いていた側近がポツリと漏らした言葉に、ワルダーはさめざめと涙を流す。
「言わないで……自分でも『うっわせっこい』とか思っちゃったから……」
●パチモノに怒りの炎を燃やす元営業
「……と、いうわけなんですが」
グリモアが見せた予兆を元に3Dアニメーションと機械合成音声による忠実な再現フィルムを作る手の込みように、グリモアベースに集まった猟兵たちは「いつの間にそんな事していたのか」と揃って呆れた表情である。
「ね、ね、見ました!? 許しがたい悪ですよこれは!!!」
のっけから珍しく激昂しているジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵・f29697)。彼は元々営業畑のサラリーマンであり、自社製品のパチモノがまかり通るのはマーケティング的に非常によろしくない。そんなわけでパチモノ許しがたし、訴訟も辞さないという強硬姿勢を見せていた。
今も怒りのあまり机をバッシンバッシン乱打している有様である。
「ついうっかり似てしまった、というのならばまだいいでしょう! しかしですよ! よりにもよって猟兵のブランドイメージを利用してやろうという悪意をもって偽猟兵を生み出すとは!! ドーラ・ワルダーには出るところに出ていただかないことには収まりがつきません!!」
ついに怒りのあまり肩で息をするジェイミィ。落ち着け、という声が猟兵の一部から飛び、ようやくジェイミィは深呼吸していつもの冷静さを取り戻した。
「……まぁ、そんなわけで。キマイラフューチャーにて猟書家ドーラ・ワルダーが活動を開始するようです。実は数回活動の兆候はあったんですが諸般の事情で企画倒れしたようで。それで今回、ようやく実現の目処がついたのがこの偽猟兵作戦です。皆さんの姿になりすました猟兵がキマイラフューチャーの街に解き放たれ、キマイラの集団誘拐を画策しようとしているのです」
ジェイミィは今回ドーラ・ワルダーが街に解き放った怪人の概要をプロジェクターに表示させる。模倣怪人ノッペロイド、という名で、仮面を装着することで姿から何から仮面に描かれた対象に変わってしまうという能力を持つ怪人だった。
「猟兵の姿を立ち居振る舞いまでほぼ完全に模倣してしまうので、非常に厄介です。ただし、ここで注意していただきたいのは『ほぼ完全な模倣』、という点です。所詮はパチモノなのでどこかに穴があります。現地住民の方々も『どこかおかしい』と内心では思っていることでしょう。そういった違和感をはっきりさせるためにも、パチモノがパチモノであることを指摘しましょう。パチモノ側が論破されれば誘拐されそうになっているキマイラの方々も真実に気がつくはずです」
自分のパチモノがキマイラフューチャーで好き放題しているのか、とげんなりした顔をする猟兵たちに、気持は痛いほどわかります、とジェイミィも同意する。
「おそらく、皆さんの前に現れるのは皆さんとほぼそっくりな怪人です。しかし、パチモノはパチモノ、リスペクトのない模倣は必ずどこかで致命的な穴があるのです。パチモノの跳梁跋扈を許してはなりません。絶対に、絶対に阻止をお願いします」
ジェイミィのスリットアイが光り、猟兵たちを見回す。グリモアが起動し、複雑そうな表情の猟兵たちはキマイラフューチャー行きのポータルへと歩き始めたのだった。
バートレット
皆さんどうもバートレットです。
今回はキマイラフューチャーにて、猟書家ドーラ・ワルダーが仕掛ける「偽物の猟兵に群がるキマイラたちをまとめて改造しちゃおう作戦」を阻止するミッションです。そう、皆さんそっくりの怪人と対峙していただきます。
第1章では、皆さんの前に自分そっくりの姿をした怪人が現れます。偽物は本物とほとんど同じ姿、ほとんど同じ仕草でファンのキマイラたちを言葉巧みに連れ去ろうとします。しかし、誘拐されようとするキマイラはどこかがおかしいという違和感を感じています。偽物である根拠を指摘し、誘拐されようとしている被害者たちに違和感の正体を気づかせてあげましょう。正体が露見した偽物は猟兵に襲いかかってきますので、これを撃退してください。
第2章では、猟書家ドーラ・ワルダーとの戦いになります。第1章で誘拐を阻止できれば、現地住民のキマイラたちの応援を受けることができます。キマイラの応援を力に変えて、ドーラ・ワルダーとの決戦を制しましょう。
第1章のプレイングボーナスは「偽物のどこがおかしいかを指摘する」、第2章のプレイングボーナスは「キマイラたちの応援を受ける」です。なお、偽物のおかしい点については、皆さん自身で考えてプレイングに記述してください。服の一部が違う、仕草が違う、技がちょっとしょぼい、などが例として挙げられると思います。指摘が具体的であればあるほどプレイングボーナスがプラスされます。
第1章は2011/11/12 18:00からプレイング受付を開始します。断章をそれまでに執筆しますので、それ以前のプレイング送信はご遠慮ください。締め切りや第2章のプレイング受付開始はMSページをご確認ください。
それでは、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『模倣怪人ノッペロイド』
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POW : 倒錯のマスク
自身の【なりきっている役柄にふさわしい振る舞い】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 対策のマスク
いま戦っている対象に有効な【役になりきれる絵柄の仮面】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 贋作のマスク
対象のユーベルコードを防御すると、それを【使い手の猟兵の顔が描かれた仮面に変換して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
イラスト:傘魚
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●パチモノの跳梁跋扈
「おぉ、猟兵さんだ! すげー! 本物だ!」
「あぁ、前に見たことある! コンコンコンの戦争の時すっげーカッコよかったんだぜ!」
「他の世界の活躍が中継されてるのを見たんだ! この間宇宙ででっかいロボットに乗ってた!」
猟兵たちが街中に現れると、すぐに通行人のキマイラたちが集まってくる。その猟兵はにこやかに声援に応えていた。
これだけならば、ヒーローたる猟兵の突然の登場にファンや野次馬が群がるいつもの光景だ。しかし、グリモアから転送されてきた猟兵が目の当たりにしたのは……自分とほとんど同じ姿をした者が、あたかも本人であるかのように振る舞う光景だった。
もちろん、本物は自分だ。いまあそこで声援に応えている猟兵はパチモノ……怪人が偽った姿であることは自分が一番良く知っている。そう、あのパチモノは自分のふりをして無辜の住人たちを騙して連れ去ろうとしているのだ。
こんなことは色んな意味で許しておけない。本物は自分であることをアピールしなければ。
猟兵たちは、自らのパチモノと対峙する。仁義なき舌戦の火蓋が切って落とされた。
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
俺の模倣で惑わせる?いや、さすがに見過ごせないと思ってきたが俺でいいの?
一周回って面白かったよ、まるでお遊戯会だな
SPDで判定
【迷彩】で人込みに紛れ、俺の振りをした敵を見つけたら近づいて一般人の【演技】をしながら【視力】【聞き耳】で観察し【情報収集】
十分な情報が集まったら迷彩をといて姿を現す
俺と違う点
メガリスが付いている目と腕が逆側になっている
俺はメガリスを得て猟兵になったわけだから、一般人へ猟兵になろうと誘える訳がない、下手すると相手が死ぬ
【言いくるめ】て【挑発】しながら指摘し攻撃されたら【見切り】【早業】で避けて剣に【武器改造】した銀腕ですれ違いざまに【切断】する
●Case:ルイス・グリッド
「俺の模倣で惑わせる? いや……さすがに見過ごせないと思ってきたが、俺でいいの……?」
実際に目にしてみると確かに目の前には自分がいる。そんな光景にルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は戸惑うやら呆れるやら1週回って面白く感じるやらで、やれやれとため息をつく。
現在、ルイスは群がる一般人に紛れて偽物の様子を観察している。しかしほとんど自分と同じ姿な上、立居振舞いも「仮に自分があの場にいればそういう反応だろうな」というところをほぼ抑えている。背の低いキマイラ相手にはしゃがんで視線をしっかりと合わせて応対するところなど、以前どこかの依頼でまさに自分が子供相手にやっていた仕草だ。
「俺、憧れてたんだ! ルイスさんみたいなかっこいい人になりたいって!」
「俺はそんな憧れられるような人間じゃないさ」
キマイラの少年がキラキラとした目で偽ルイスを見つめ、偽ルイスは謙遜したような言葉を返す。
(あぁ、あの偽物は二重の意味で憧れられるような奴ではないな)
そんな様子を見る本物のルイスは思わず苦笑してしまう。そもそも少年が見ている相手はルイスではないのだから。
「ただ……君だって俺と同じ猟兵になれる可能性はあるんだ」
「本当!?」
ここだ、とルイスは感じた。偽ルイスは自分が偽物だと証明する決定的な言葉を口にしたのだ。ルイスはここで人混みから抜け出し、偽ルイスの前へと躍り出る。
「騙されるな、嘘っぱちだ」
「……え?」
少年は思わず目を丸くする。そう、そこにはもうひとりのルイスが立っていたのだから。
少年をかばうように偽ルイスの前に立ちはだかる本物のルイス。
「……そいつは俺の偽物だ」
「人を捕まえて偽物呼ばわりとはな。お前の方こそ俺の偽物じゃないのか」
その時、少年は気がついた。
「……確かに、2人のルイスさん、何か違う……ただ、どっちが本物なんだっけ……」
うーんうーん、と考える少年を見て、ルイスは先程の偽物と同様に身をかがめて視線を合わせる。
「俺に憧れていたんだっけ?」
「そうだよ! いろんな世界で戦ってるんだよね、ルイスさん。活躍はこっちのテレビでも放送されてたりするから、よく見てたんだ!」
「そうか。……じゃあ、その俺の眼帯と手袋、どっちについていたか覚えてるよな?」
「うん、左目の眼帯と右腕の長い手袋……あっ」
そう、少年の言う通り、本物のルイスはメガリスを隠すために左目に眼帯を、右手に長い手袋をそれぞれ装着している。そして、目の前の偽物はというと。
「今君が話していた俺は、右目に眼帯、左手に手袋がはまっている。……つまり、あんたのメガリスは右目と左手についているのかい? 偽物さん」
「……ッ!」
偽ルイスはギリッ、と歯を鳴らして後ずさる。
「それに、俺はそもそも人を無闇に猟兵にするなんてことは口が裂けても言えない。何しろ俺はデッドマン、一度死んだ身だ。それに……メガリスを得て猟兵になったんだ、死の危険があるメガリスの試練をその子供に受けさせるのか? お前は」
「く……! だが、俺もお前もどちらが本物かなんて証明できるわけがない! 記憶が無いんだぞ、俺には!」
偽ルイスは本物ルイスの指摘に対して額に汗を浮かべながらなおも食い下がる。もうひと押しだ、と本物のルイスはさらに畳み掛けた。
「まるでお遊戯会だな。……そうだ、俺には記憶なんてないさ。だが、それがどうした。今ここに、俺がいる。俺は自分が本物だと確信しているからこそ、お前に自信を持って言えるんだ。お前は俺ではない、とな!」
「詭弁を言うな……!」
本物のルイスは指をつきつけ、相手が偽物だと断言する。偽物は怒りに打ち震えて、左手を構えながら本物のルイスに襲いかかってきた。
「あぁ、それともうひとつ偽物のポイントがある。──見切りが遅い」
交錯する瞬間、本物のルイスは偽ルイスの左手を最小限の体の動きでかわしつつ、右の銀腕を剣に変じて振るう。
「ぐ……っ」
偽物はどうと倒れると、その正体を現した。黒ずくめの怪人の顔から、ルイスの顔が描かれた仮面がぽとり、と落ちて無貌を晒した。
「……やっぱり、カッコいいよルイスさん! ってことは、本物なんだね!?」
「あぁ、そうさ。俺が本物だ。……そして、さっき言ったとおりだ。猟兵になるのは、俺はおすすめしない。猟兵になるっていうことは、決してカッコいいことってわけじゃないんだ。それに……さっき、俺の姿をしっかりと覚えてくれていただろ?」
興奮に飛び跳ねる少年を前にして、ルイスは諭すように語りかける。その言葉に、少年ははっと気がついた。
「俺を助けてくれたんだ。お前は猟兵よりも強く、カッコよくなれるさ」
「……俺、いつかルイスさんに負けないくらいカッコいい人になってみせるよ」
「応援してるよ、小さなヒーロー。俺を超えるデカい男になってみせてくれ」
メガリスのない右手で、ルイスと少年はがっちりと握手を交わす。少年はこの日のことを一生忘れない思い出として胸に秘めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エインセル・ティアシュピス
【アドリブ連携歓迎】
にゃーん”?すごーい、ぼくがもうひとりいるー!
(何ということでしょう!この子猫には見分けがつかなかった!)
ねえねえ、どこいくの?ぼくもいっしょについてってもいーい?
ぼくとおんなじかおだし、なまえもおんなじエインセルなのかにゃ?
(そんな感じで色々とお話したがる子猫。【指定UC】が発動して大猫が出てきてストップをかける)
にゃーん?ねこさんどうしたの?
……え、ぼくのにせものなの!?そうなんだ……!ぜんぜんわかんなかった……!
(【動物と話す】で大猫に猫語で色々耳打ちされた後大声で言う子猫)
え、にせもののしょーこ?
んっと、んっとー……じゃあ、ねこのすがたにいっしょになってみよう?
●Case:エインセル・ティアシュピス
エインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)。ドラゴニアンの兄弟の愛猫……だったが、迷宮災厄戦をきっかけに少年の姿を得た上に猟兵として覚醒するという数奇な運命を辿る守護神霊である。そんな神霊すらも、模倣怪人ノッペロイドは完コピするという仕事人ぶりを見せつけていた。
「にゃーん!」
偽エインセルは元気に飛び出して、エインセルファンのキマイラたちに愛嬌を振りまこうとする、が……。
「にゃーん!? すごーい、ぼくがもうひとりいるー!」
あぁ、あぁ、何ということであろうか。何も知る由のない本物エインセルとばったり鉢合わせてしまったではないか!
「ええええええエインセルきゅんが二人ィィィィ!?」
「おぉうガッデム……エインセルにエインセル足した光景は我々には尊すぎる……エインセルのオーバードーズは我々には耐えきれぬ……あぁ、天から無数のエインセルが舞い降りるのが見える……」
その場に居合わせたエインセルファン、揃って卒倒。ダブルエインセルが生み出したエインセル成分のスーパーセルはキマイラフューチャーに非公式ながら設立されていた「エインセルきゅんを見守る会」のメンバーたちにとって、もはや尊死による殺戮が行われる条約違反級の戦略兵器に等しい。見る人が見ればそこかしこで天使の輪っかをつけたエインセルファンがいい表情で昇天していく光景を目の当たりにしただろう。
なお偽エインセルだが……こともあろうにこちらも自分がエインセルを演じていることに気がついていない。本末転倒どころの騒ぎではない。
「にゃーん……ぼくもびっくりだよ。ぼくがもうひとりいるなんて。なんでだろうね? キマイラフューチャーってこういうことがあるのかな?」
「ねえねえ、どこいくの? ぼくもいっしょについてってもいーい? ぼくとおんなじかおだし、なまえもおんなじエインセルなのかにゃ?」
「ぼく、ひとりでここきたのはじめてだし、いろいろとみてまわろうとおもったんだ。エインセルどうしでいろいろとみてまわらない?」
完全に偽エインセル、自分がやるべき仕事を忘れている。先程このエインセルに化けた怪人を仕事人と表現したが、その評価は早くも訂正の憂き目を見る。何故よりによってエインセルを選んでしまったんだ。ちなみに余談だが後にこの光景を側近から見せられたドーラ・ワルダーはあまりのトンチキな事態に胃薬を用意する羽目になったそうな。
「にゃーん」
「にゃーん? ねこさんどうしたの?」
「……どうしたの?」
そこへ事態は急転する。大猫が突如虚空から現れたのだ。あまりにもあんまりな状況を見かねたバステト神の眷属たる大猫が、本物エインセルに助け舟を出すべく現れたのである。
「にゃんにゃーん」
「……え!? ぼくのにせものなの!? そうなんだ……! ぜんぜんわかんなかった……!」
「え!? ぼくはにせものなの!? ぼくもぜんぜんわかんなかった……!」
「にゃん……!?」
大猫、エインセル2人が揃ってこの反応をしたことに思わず宇宙を幻視する。大猫から宇宙猫に進化しかけたところをどうにか心のBボタンを連打して抑える始末。
「で、でも、でもにせもののしょーこってどうするんだろう」
「みためがおんなじだしどっちがどっちかわけわかんないよう」
うーん、うーんと悩む2人を見て訳わかんねーのはこっちだ、と大猫は言いたかったがぐっとこらえる。確かに外見も性格も違いがない。外見的特徴では判断がつかないし、ほぼ詰んだか……と思われたその時、本物エインセルが名案を思いついた。
「んっと、んっとー……じゃあ、ねこのすがたにいっしょになってみよう?」
「それだ!」
再び宇宙に意識を旅立たせる大猫を他所に、2人は目をつぶる。すると、エインセルは白猫に、偽エインセルは黒猫に変わる。
「にゃ、にゃー!」
(特別翻訳:そ、そう来たかーッ! そうだ、確か予知にあった『模倣怪人ノッペロイド』の体表は黒い! そっちに引っ張られて黒猫になったのか!)
大猫、宇宙の深淵へに霧散しようとしている意識を取り戻し、猫語で解説台詞を喋る。もちろんエインセルと偽エインセルにしか通じない。
「これでみわけがつくね! ……でもかいじんなんだよねぇ?」
「うん……でもいいんだ、ぼくはもうまんぞくしたから。これいじょうはなにもしないよ」
何ということでしょう。エインセルの精神性までコピーしたせいでやさしい性格になってしまった偽エインセルはこれ以上この世界に留まるのは無意味と、光になって骸の海へと消えようとしている。この偽エインセルがもたらした被害は周りで倒れている「エインセルを見守る会」の皆さんだが彼らはぶっちゃけ尊さのあまり尊死しているだけなのでおそらく放っておけば蘇生するだろう。
「みじかいあいだだったけど、たのしかったよ」
「うん、またね」
そんなありきたりな別れの言葉を告げて、偽エインセルの姿はそのまま消えてしまう。エインセルは偽物と言えど、少しの間自分と遊んでくれた自分と同じ姿の怪人を笑顔で見送っていた。
「……にゃあ」
大猫は(え、なんでこんな感動的な話になってるんだ)と混乱しながら意識を三度宇宙へ旅立たせる。バステトの眷属である程度の神格を有する猫と言えど、宇宙の深淵を覗くかのような超展開にはついていけず、ただ呆然とエインセルのいるあたりを焦点の合わない目で見ているだけなのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイ・ランス
【SPD】※アドリブ、連携歓迎
パチモノ…パチモノねえ。
リスペクトがないのはいかんねー。やっぱそういうのってさーお互いの尊敬の念ってのが必須になってくるじゃん?そーゆーのがないのっtすっげー!めっちゃ似てる~!?うわすっげ、すっげ、オレこれソンケーするわー、あ、サインもらえますー?
いやーりょーへーさんにサイン貰えるなんて一生もんだわ~オレサイン書いたことないけど。へー、すっげー、かっけー。
あ、一緒におうたとかいっすか……いっすか?
わーらう声までおんなじね~ ハハハハ お~ん~なじ~ね~♪
あ、JA●●ACさんこいつです。
え、何?こういうときって本物が責任取るんじゃないの?え、違うの?
はーつっかえ…
●Case:ジェイ・ランス
「パチモノ……パチモノねぇ……」
ジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)は故郷であるキマイラフューチャーの街を散策しながら偽物を探していた。
「やっぱそういうのってさーお互いの尊敬の念ってのが必須になってくるじゃん?」
ぼやきつつも、ちょっとした人だかりになっているところを発見して近寄るジェイ。自分の名前が聞こえる辺りおそらくあそこに偽物がいると見て間違いないだろう。やはり自分を真似るならばリスペクト精神は持ってもらいたい、そう感じながら偽物をひと目見ようと人だかりの中心地を見てみた。
「そーゆーのがないのっtすっげー! めっちゃ似てる~!?」
偽物の面構えをひと目見てダメ出ししてやろうとしたら予想以上に似ていたことに驚愕したジェイ、掌を即刻リバース。似ているどころの話ではなく完全に瓜二つであった。
「ウッソだろおいオレがいるじゃん! え、何、ドッペルゲンガー?」
偽物は偽物で驚いている。2人のジェイがガッチリと握手を交わす意味不明の状況が発生していた。
「うわすっげ、すっげ、オレこれソンケーするわー、あ、サインもらえますー?」
「いいぜ! 書いてやるよ! オレの格好するくらいそっくりさんだもんな!」
「いやーりょーへーさんにサイン貰えるなんて一生もんだわ~……オレサイン書いたことないけど。へー、すっげー、かっけー」
実のところジェイは特にファンに囲まれた経験もないのでサインを書いたことがない。契約書類なども基本的に電子認証で済ませているので不要なのだ。
自分自身(偽物)のサインをためつすがめつ眺めて感嘆の声を上げるジェイ。確かにすごいが偽物は懲らしめなければならないので皮肉も込める。そしてそろそろ本格的にお灸を据えてやろうと、ジェイは偽ジェイに対してこんな提案をした。
「あ、一緒におうたとかいっすか……いっすか?」
「いいねぇ、歌おう歌おう!」
そうして何故か偽物と本物は2人で歌うことになったのだが、その選曲が何故か1975年初出の某国民的アニメの火曜再放送版なのは如何なものか。知らない世代のキマイラの子供や若者は呆然としている。一方一定以上の世代の大人は「よく知ってるなぁ」とか「懐かしい」などと感想を口々に言い合っている。ちなみに余談だが、件の某アニメ、1997年まで火曜のゴールデンタイムに再放送を行っていた。
さて、なんだかんだフルコーラスをきっちり歌い切ったジェイと偽ジェイ。その瞬間、本物ジェイはさっと挙手する。
「あ、JA●●ACさんこいつです!!!」
本物ジェイ、偽物ジェイを思いっきり著作権管理団体に通報しようとしている。フルコーラスでの無断演奏のかどで出るところに出る心算である。
「いやいやいやお前も同罪じゃん」
「え、何? こういうときって本物が責任取るんじゃないの? え、違うの?」
「はー、言ってくれるわオレとおんなじ格好しやがって。そっちがその気なら俺だってお前のことパクリ疑惑で訴えてやるわ」
「うわーそこ度量見せろよスラップ訴訟かよ……はーつっかえ……」
「なんだよお前こそ折れろよ……はーつっかえ……」
先程までの仲よさげなところから一転、ぎゃいぎゃいと互いの非を押し付け合う2人。見かねたジェイファンの一人が手を挙げる。
「あのう……それで結局どっちが本物なんですか」
「オレ」
「こいつ」
実にややこしいことこの上ないのだが、偽ジェイが自分が本物だと主張、一方本物ジェイは敢えて偽物を本物という。
「それにパクリなんて言うなよな、オレのこの格好はあくまでコスプレの範疇だから。それにアレだぜ、世の中には自分と似てるやつが4人いるって言葉もあるんだ。お前はたまたま生まれ持った顔立ちと格好が似ているやつをパクリ認定するのか?」
「ぐ……」
偽ジェイ、ここへ来て本物ジェイの怒涛の攻勢に押され始める。
「確かにそうだよな……オレが親からもらった大切な顔を人様のパクリなんて言われたらそりゃあ傷つくよなぁ……」
「……ニヤリ」
ついに決定的なフレーズを口にした偽ジェイに、本物ジェイはついに相手を指差す。
「引っかかったな。お前が偽物だ、そして真の本物はこのオレさ!」
「……え?」
集まった群衆が、あぁ、と理解する。
「そうなんだよ。こいつ、大昔にやってた『シュバルツローヴェ』ってアニメのキャラクターなんだよ。そのアニメについて知ってるのは考古学者か歴史マニアくらいのもんなんだけどな」
群衆のうちの一人が代表して説明する。
「……え、ってことはつまり」
「そもそもオレに両親って概念は存在しませーん!! ついでに言うとさっき歌ったのはアカペラだったよな? アカペラでストリートライブする分には演奏権が及ばないのでお咎めなしでーす!! やーい引っかかったー!!」
説明しよう。アカペラでストリートライブを行う場合、ライブハウスなどと異なり曲を聞かせるために入場料やドリンク代などの料金を取っているわけではないので、著作権の一種である演奏権の侵害に該当しないのだ。
完全に本物に騙された偽物ジェイはしばらく目を白黒させていたが。
「てめぇぇ絶対許さねぇぞこの野郎ォォォ!!」
「お? やるかこの野郎!?」
本物に向かって飛びかかり、本物も拳を固めて迎え撃つ。そして始まるのは取っ組み合いの喧嘩である。何故電脳魔術師の彼が取っ組み合いの肉弾戦という泥仕合を選んだのか、後に彼はこう語る。
「だって偽物とは言えオレだぜ? 絶対電脳魔術で勝負したとしても千日手になるだろ。だったらもう、実力行使(物理)しかねぇかなぁってさ……」
そんなわけで。
本物ジェイは顔に青アザ作りながらもどうにか偽物ジェイを拳で撃退。
偽物ジェイはこの取っ組み合いの結果仮面が剥がれてノックアウト。
現地住民たちは「結局いまのは何だったんだ?」という神妙な表情でジェイを見つめる。
そんな、上手いこと落ち着いたような落ち着いてないような、そんな結果に終わるのであった。まぁ結果的に現地住民の誘拐は阻止できたし良いんじゃないかな。終わりよければ全て良しなのだ。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
対応武器:白雪林
この世界は初めてなんですが、まあ…たくさん戦いましたからね…。
偽物は前髪というかサイドの配色が逆ですし、人格『静かなる者』だと名乗ってるのに持ってる武器が『黒燭炎』なんですよね。
私は持ったことありませんよ?
それは『侵掠如火』体現者『侵す者』の持ち物で、私は『徐如林』の体現ですよ。
もとより、私は純粋後衛ですからね。護身で借りるのは『漆黒風』ですし。
いい機会です。意趣返しのUCで攻撃後、早業で破魔矢2回攻撃を。
あなたの時間は、確実に止まっていたのですよ。
※ステシの絵で持ってるのが白雪林です。
●Case:馬県・義透
すでに何人かのファンが自身の偽物に群がっているのを見て、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はため息をつく。
「この世界は初めてなんですが、まあ……たくさん戦いましたからね……」
どこかの依頼でキマイラフューチャー出身の猟兵が自分の世界に向けて生放送でもしていたのか、自分の活動はすでに知られていたようだ。
義透は多重人格者であり、人格ごとに自身の得物を変える。現在の人格は「静かなる者」。冷静沈着な霊力使いの武士であり、長弓「白雪林」を扱う。
「では、指摘をするとしましょうか。何、そこまで難しいことではありませんしね。……真似しづらい題材を選んだものだと思いますよ、自分でも」
難儀だなぁと苦笑しながらつかつかと偽物の前へと歩み寄ると、周囲に群がっていたキマイラたちは驚く。
「……義透さんって物理的に複数人いたっけ」
「そんなはずはないんですがね」
偽義透はつとめて冷静に返す。これでおおよそのアタリはついた、と
「まずは確認のために問いましょうか。別人格が物理的に肉体を得た可能性も考えなければなりません。貴方は『どれ』です?」
「『静かなる者』、と答えておきましょうか」
冷静に答える偽義透、だが想定通りの答えだった。そして、だとするならば義透が用意する次の問いについて、偽義透は説明ができないはずだ。
「なるほど、つまり私と同じ、と。しかしまず、そもそも前髪……というか、サイドの配色が逆ですね。そして『静かなる者』だと名乗っているが、持っている武器は『白雪林』ではなく『黒燭炎』、これについて納得のいく説明をいただきたい」
まずは一手詰める。しかし相手も「静かなる者」を名乗る以上、これについて回答を持っていた。
「髪については染め直した、気分を変えた……そんな説明がいくらでもできる部類です。そして、武器について。別人格から借りたのですよ、よく行うでしょう? 武器の持ち替えは。遠距離戦闘で対応できない時の自衛用の武器を借りることができないなんてことはない」
なるほど、と本物の義透は頷く。しかし、これについての答えも用意は可能だ。
「それで槍の『黒燭炎』を借りたと。一見すると理には適っていますが、残念ながら私は前衛につかないのですよ。純粋後衛であるが故に、近接戦闘の武器は必要としない。まず、『黒燭炎』は『侵掠如火』の体現者、『侵す者』の得物。『徐如林』の体現者『静かなる者』たる私と相性が悪すぎます。そして、そんな私が自衛で借りるのは相性が比較的良好な『疾き者』の得物、『漆黒風』ですよ」
義透が指摘したこの事実を聞くと、途端に目の前の偽義透の表情が変わる。
「はは、なるほど。……確かに良い指摘であった。なかなか上手く騙すことは出来ぬものだな。何故ならば本来、武装は『わし』を参考にしておった故。しかし群衆の懐柔に『わし』は相応しくなかろう?」
「……『侵す者』に切り替えましたか。戦闘態勢と見るべきですね」
偽義透は演じる人格を切り替えた。そう、これで矛盾がなくなる。しかし、だからといって、本物の『静かなる者』が偽物の『侵す者』に戦闘で遅れを取るとは限らない。
「さぁ、覚悟せよ!」
「黒燭炎」を構えて襲いかかる偽義透。その構えは、ユーベルコード「それは火のように」の発動を予期させた。しかし『侵す者』の戦術を熟知する本物の義透は最適な対抗戦術を取る。
「では、これに対応出来ますか? ……凍れ、そのままに」
長弓「白雪林」から放たれる霊力で編まれ冷気を纏った無数の矢が、偽義透を縫い止めて時間ごと動きを止める。驚愕に目を見開く偽義透はそのまま凍りついたように動かなくなった。
「あなたの時間は、確実に止まっていたのですよ」
続けざまに放たれた2発の破魔矢で、偽義透は木っ端微塵に砕け散り、怪人が手にしていた仮面のみがぽとりと落ちる。途端に周囲の群衆はその見事な手際におぉ、と感嘆のため息を漏らす。
「すげぇ……自分の偽者に対峙しても眉一つ動かさずに冷静に指摘するとは……」
「本物の義透さんが偽物を詰めてる時声が出なかったわ……流石は『静かなる者』ね……」
「最初から勝機は見えていましたからね」
群衆に取り囲まれても務めて冷静に対応する義透。人格「静かなる者」の面目躍如といった活躍は、キマイラフューチャーの住人の間に、文字通り静かな熱狂を生み出したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アスカ・ユークレース
離れなさい偽物!…えっ?見分けがつかない?
良く見なさい、全然違うわよ!(自身の写真を掲げ)あっちは前髪が5ミリ長い!目の色も左右逆!姿勢も身のこなしも最悪!何より……私の方が可愛い!QED!
複数の誘導弾で追跡
あえて弾速、軌道をバラバラにしフェイントをかける
迷彩を施した隠し弾による騙し討ちの揺さぶりも
攻撃は最低限の動きとUCでのクイックドロウ狙撃で防御&回避
私に成り代わりたいなら、相手の弾全部打ち落として相殺くらい出来るようになってから出直しなさい?
●Case:アスカ・ユークレース
「ふふっ、そうね……あなた達だって戦える力は持っているはずよ」
「ほう? 俺にも戦う力があると」
「マジっすかアスカさん! 太鼓判押してもらっちゃったぜ!」
アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)が現場に馳せ参じた時、すでに何人かの一般市民が偽アスカと接触してしまっていた。しかも、このままだと確実に偽アスカは哀れな被害者を連れ去ってしまうだろう。間一髪間に合った、という安堵と同時に偽物をすぐに制止すべく動き出す。
「離れなさい偽物!」
「あ、アスカさん!? えっ、偽物ってどういうことなんです!?」
「言葉通りの意味よ。そいつは私の偽物よ!」
「で……でも見分けがつきませんよ!」
キマイラの青年の言葉通り、アスカと偽アスカはほとんど同一と言っていいほど容姿が近似している。
「そうよ、どこに私との違いがあるっていうの? 貴方が偽物という可能性もあるのに」
偽物は皮肉げに笑う。その不遜な態度にアスカははぁ、とため息をついた。
「よく見なさい!」
そうしてアスカが掲げるのは自分の写真。SNS映えするように角度から何から絶妙な計算をした自撮り写真であった。
写真を見たキマイラの青年は、目の前の偽アスカと写真を見ながらうーむと考え込む。
「確かに違うような……いや難易度高いですよこの間違い探し。確かに違和感はありますけど」
キマイラの青年に期待していては埒が明かない、と判断してアスカは答えを言っていくことにする。
「あっちは前髪が5ミリ長い!」
「誤差よね」
「目の色も左右逆!」
「光の加減でそう見えるだけよね」
「姿勢も身のこなしも最悪!」
「貴女の主観では?」
本物アスカの指摘に偽アスカは逐次反論する。それでもアスカはめげずに本物と偽物の細かい違いを大量に挙げていく。体型はこっちが細いだの、背はこっちが高いだの、声が生み出す音波の周波数が2Hz違うだの……もはやあら捜しのレベルである。だんだん周囲のキマイラたちのほとんども困惑の表情が顕になって行き、「で、結論は?」と言外に問い始めた。
「そして何よりも!」
「何よりも?」
長きに渡る指摘の末、ようやく決め手となる情報を出したか、とキマイラは身を乗り出した。そしてアスカは決定的な一言を口にする。
「私の方が……かわいい! Q.E.D.!!!」
ご丁寧に決めポーズ。一瞬の沈黙があり、アスカは流石に戸惑ったが……。
「……そうだわ」
「本物はかわいいわ」
「アレだよ、偽物はあざとすぎるんだよ、本物の自然なかわいさが出ていない」
「例えるなら野菜エキスを抽出したりして本物の味に近づけたラーメン屋プロデュースのカップ麺と、実際に店で出汁をとったラーメンの違いだ。どっちが『本物』か、そしてどちらが上かは動物園の猿でもわかる」
「……その例えはどうなのかしら」
最後の頭にタオルをバンダナのように巻いた職人風のキマイラの男の論評はともかくとして、アスカは見事キマイラを味方につけることに成功した。そう、これこそが本物の魅力。紛い物のかわいさに惑わされるキマイラフューチャーの住人ではなかったのだ。
「……そう、つまりかわいさではあちらが上と。……でもね! 私だって女としての意地がある! そうまで好き放題言われては黙ってないわ!」
偽アスカは支持が得られないと見るや実力行使の構えに入る。
「さぁ、来なさい! 本物の実力を見せてあげるわ!」
アスカもこれを受けて迎撃態勢をとる。2人はほぼ同時に誘導弾を射出。その全てが相殺される。しかし本物のアスカにとってはこれは小手調べ。徐々に不規則かつばらばらに誘導弾を放っていくと、次第に偽アスカは対応しきれず、身をかわして避けるなどの行動が目立ち始める。ここがチャンスとばかりに迷彩を施した弾によるだまし討ちすら混ぜる本物アスカ。徐々に本物側が圧していく。
「くっ……やりづらいっ!」
「当然よ、迷宮災厄戦では『昨日の私』とも戦っているのよ! 『私』と戦うのはこれが初めてじゃないの! やりづらさは承知の上……そして!」
偽物のアスカが状況打開のためにフェイルノートを構えて撃ち放ったユーベルコード「メテオストーム」に、本物のアスカは天から降り注ぐエネルギーの矢の核を全て見切り、撃ち落としてみせる。
「く……『コメットストライク』……!」
「よくご存知じゃない。自分との戦いではこの技が最も有効よ」
乾坤一擲のユーベルコードすら防がれた偽アスカはついに力尽きた。無数の誘導弾をその身に浴び、仮面が剥がれて倒れ伏す怪人の姿が顕になる。
「私に成り代わりたいなら、相手の弾全部打ち落として相殺くらい出来るようになってから出直しなさい?」
倒れ伏した模倣怪人ノッペロイドにそう言葉を投げかけていると、先程の群衆の中にいた職人風の男がやってくる。
「良い腕だった。俺も物の真贋は見極めているつもりだったが、まだまだ修行が足りないということか。学ばせてもらったよ。良かったら今度、うちにラーメンを食いに来てくれ。俺のおごりだ」
ラーメン店の無料券を渡して去っていく男を、アスカはきょとんとした表情で見送る。
「……いや、なんでラーメンなのかしら」
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
「…」
一寸待って頂戴?
目を瞑って開いても眼前の光景は変わらないのだわ
いつも表にでてる俺も私に対してこう思ってるのかしら…
愛し甲斐のありそうな(壊すor虐める)敵がいると聞いてきたのだけれど
これはない
「貴方今どの人格でいらして?
私の真似事するのであれば相応の態度が必要なのでは?」
皆(剣)を鉄扇に変えて顎をくいっとしてぺち
流石に酷いのだわ…
これ、男人格の私が女装してるだけじゃない
私は私(女性人格)
だけど肉体その物は男よ?
それが嫌だから所作、声の出し方、服、見た目の差異を隠すとか諸々してるのよ?
違い分かりやすくする為に呼んだ私(普段の俺)とか程度の低い自分の女装に吐きそうにしてるの見えないのかしら
●Case:尾守・夜野
尾守・夜野(墓守・f05352)。彼もまた多重人格者である。
先に挙げた事例を見れば一目瞭然だが、多重人格者のコピーは慎重を極めなければならない。とりわけ多重人格者の猟兵は、人格によって使用する武装やユーベルコードが異なることがある。ここに矛盾があれば容易に見破れてしまうのである。
夜野のケースはさらに厄介であった。女性人格の存在だ。
「……一寸待って頂戴?」
夜野は今回の依頼に赴くにあたり女性人格で臨んでいた。彼女なりの愛し方、即ち壊すか虐める上で非常に適した敵であると聞いてきたのであるが、今の彼女はアテが外れたとばかりにこめかみを指で抑えて目を閉じている。目を瞑って開いても眼前の光景は変わらない。
「いつも表にでてる『俺』も私に対してこう思ってるのかしら……」
これはない、と呟く夜野。
彼女にとってそれだけ、眼前で自分のふりをしている偽物の姿は非常に納得の行くものではなかった。
「貴方今どの人格でいらして? 私の真似事するのであれば相応の態度が必要なのでは?」
あまりのことに偽物に詰め寄り、故郷の村人が姿を変じた愛剣「怨剣村斬丸」を鉄扇に変えて偽物の顎をくいっと持ち上げる。
「な、な、なんのことかしら?」
偽物の目が泳いでいる。口調もどこかぎこちない様子で、違和感は更に募る。
「……とぼけても無駄よ全く」
ぺち、と鉄扇で額を叩く。
「いってぇ……あ」
思わず声を上げた偽物。とっさに口をついて出たそれは本来、女性人格が出すものではなかった。
「流石に酷いのだわ……これ、男人格の私が女装してるだけじゃない」
なんということだろうか。偽夜野のコピーは不完全だった。姿こそ女性人格だが肝心の人格が男性であり、それが女性のふりをしているだけという奇妙な状態であったのだ。
「私は私……性自認は女性。だけど肉体その物は男よ? それが嫌だから所作、声の出し方、服、見た目の差異を隠すとか諸々してるのよ?」
女性人格の夜野にとって、自身のパーソナリティの確立には並々ならぬ努力を行っている。過日、猟兵の間で行われた浴衣の催しではこの努力がひとつの結実を成したほどだ。
いつの間にかユーベルコード「オルタナティブ・ダブル」で表出された基本人格の夜野も顔を覆っている。
「正直こんなことあんまり言いたかねぇんだけどさぁ……俺だってもうちょっと女装するときは上手くやるよ……」
「で、でもさぁ本物の俺! 俺だってこれ結構頑張ったほうだと思うんだけど!?」
「だからって『私』に成り代わるのだけは絶対にしねぇから。何言われるかわかったもんじゃねぇもん」
「何か言った!?」
「なんにも!?」
偽夜野、ついに観念して自分から偽物と暴露する。偽物はこの後も女性人格の夜野から罵倒に告ぐ罵倒を受け、心をズタボロにされてしまい、
「やるんなら早くしてくれ……介錯は任せたぞ本物の俺……」
ついに本物の夜野に介錯を依賴する始末。完全に心がポッキリ折れてしまったらしい。
「はぁ……」
本物の夜野もまた心に深い傷を追いながらも偽物の願いを叶えてやる。眉間に一発、単発銃「Nagel」を撃ち込み、仮面を吹き飛ばされながら偽物怪人ノッペロイドは絶命した。
「……それにしても頑張ってたんだな、『私』って」
「貴方が一番良く知ってるでしょう、『俺』。今後も『私』の時はこだわらせてもらうからそのつもりでよろしく頼むわね」
「程々にしてくれよ……」
どこか消化不良の女性人格と頭痛を覚える基本人格はそんな会話を交わしながら、ひとまずはその場を立ち去るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フロッシュ・フェローチェス
・アドリブOK
偽者でも、いつもどおりだ、蹴り潰す。
しかしアタシのファンか……気乗りは、しないけど猟兵として守ろう。
メカゴーグルでの情報収集で、まずは索敵だ。
いたね……いや、待って。待てよ偽者。……アタシの方が偽者?なら、言わせてな?
どことは言わないけど、アタシ、そんなに体形強調しないからな。刺青も目も、左右が逆だし。うん。
あとアタシの目的は、オブリビオンを倒す、それだけだから。ファン相手でもそう、話さないからね。勧誘なんてもっての外。……それじゃ、戦おうか。
残像でのフェイント、ダッシュでのかく乱、早業の連撃を組み合わせて、ぶつけるよ。速さで負ける気は無い。
じゃ、UC発動だ……衝撃波で砕け散れ。
●Case:フロッシュ・フェローチェス
故郷に降り立ったフロッシュ・フェローチェス(疾咬スピードホリック・f04767)。自分の偽者相手でもやることは変わらず、自慢のスピードで蹴り潰すだけだ、と気合い充分だ。
「しかしアタシのファンか……気乗りは、しないけど猟兵として守ろう」
いつの間に自分もファンがついていたのか、とぼんやり考える。ファンにちやほやされるのは柄ではないが、故郷の人々が誘拐の被害に遭うのも寝覚めが悪い。猟兵としての務めを果たすだけだ、と額のメカゴーグルを下ろす。雑踏の中を索敵すると、果たして公園に人だかりがあり、その中心に自分とほぼ同一の反応があった。おそらくそいつが偽フロッシュだ。
「いたね……」
雑踏を音もなく駆け抜け、公園の人だかりに紛れ込む。しかし、そこでフロッシュの目に飛び込んできたのは驚愕の光景であった。
「……いや、待って」
その偽物の姿に流石に困惑する。問答無用でケリをつけようとしていたが流石にこればかりは物言いをつけたい。そんな衝動に駆られた彼女は偽物の前に躍り出る。群衆は現れたもうひとりのフロッシュに驚愕した。
「な……フロッシュさんが二人!?」
「なんだよ……キマイラフューチャー最速決定戦が始まっちまうのかよ……!?」
群衆は呑気に歓声を上げているが、フロッシュは構わず偽物に詰め寄る。
「待てよ偽者」
「いきなり現れてなんだよ。そっちが偽物の癖して」
「……アタシの方が偽者? なら、言わせてな?」
偽物の反応に盛大に溜息をつく。この反応自体は予想していたが、どうしても指摘したいことが山程あった。
「どことは言わないけど、アタシ、そんなに体形強調しないからな。刺青も目も、左右が逆だし。うん」
そう、偽フロッシュはこれでもかと自分のボディラインを見せつけるセクシーなボディスーツに身を包んでいた。よくある肌密着型のパイロットスーツのようなものである。本物のフロッシュが着用するシルフィード・ウェアは、空気抵抗こそ考えられたデザインではあるがそこまでぴっちりと身を包むものではない。そして、入れ墨と大きさの違う目も左右が逆だった。
「むしろこっちが本物のアタシじゃないの」
「黙れ。あとアタシの目的は、オブリビオンを倒す、それだけだから。ファン相手でもそう、話さないからね。勧誘なんてもっての外」
「随分と淡白だね」
「……それが本来のアタシなんだ。……じゃ、戦おうか」
淡白だ、と偽物に言われても本物のフロッシュには届かない。早くこの無駄にセクシーで不愉快な自分の偽者を排除しなければ。そう言ってフロッシュは先手を取って駆け出す。
残像でのフェイント、ダッシュでのかく乱、早業の連撃。偽物も同様にスピードを活かして本物の猛攻を相殺していく。互角にも思えたが、次第に優劣が明らかになる。
「ボディにスーツを密着させたからって、空力特性を考えないと結局スピードに差が出るよ」
「……っ、こいつっ!」
偽物は本来、一般人の拉致のために敢えて本物との差異を承知でこの格好をしていた。そう、一般人の気を引くためにはボディラインを強調したほうが効果的と考えたのだ。しかし、それが本物との直接戦闘で仇となる。空力性能が犠牲となり、本物のスピードについていけなくなっていたのだ。
「じゃ、UC発動だ……衝撃波で砕け散れ!」
スピードの差がはっきりしたところで、フロッシュのユーベルコード「トリニダード・スコーピオン」の蹴撃から繰り出されるソニックブームが偽フロッシュの身体を粉々に粉砕する。蹴撃の嵐が止むと、そこには仮面だけが残されていた。
「……すっげぇ! 流石本物、スピードは段違いだぜ!」
「やっぱ本物が最速だったか!」
彼らは偽物のボディラインに惑わされてはいなかった。ただ、速さを求めるスピード狂。フロッシュを応援するのも、そんな同志としての共感からだった。
「……ありがとう」
実際に応援されると悪い気はしないな、とフロッシュは心のどこかで満ち足りた思いが芽生えるのを感じていた。
大成功
🔵🔵🔵
夕闇霧・空音
【アドリブOK】
私の偽物とは…なかなか許しがたいわね。
…なんだか意外とかっこよさそうに見えるわね
でもまぁ、はっきりとしてあげるわ。
【偽物とわかる理由】
偽物!あなたの大事な妹は!?
天音?まぁそれくらいは調べているか
天音は私と同じ髪型をしていてしかもおそろいのリボンを付けているわ
そしてサラサラとした赤っぽい髪があって
(以下、語りだす内容は一日に何回くらいトイレに行くかとか
髪の毛が一週間で何ミリ伸びたとか、食べ物を咀嚼した回数とか
様々な妹の話を始める)
…と、これくらいのことを知っている私が本物よ!
(周りから「偽物のほうがマシに見えるシスコンだ」という視線が飛ぶ)
さて、何故か固まっている偽物に止めよ!
●Case:夕闇霧・空音
「私の偽物とは…なかなか許しがたいわね」
偽物の出現には怒りすら覚える夕闇霧・空音(凶風・f00424)。彼女の偽物はすぐに見つかった。人だかりができている。
もしや妹も誑かされていないだろうな、と群衆の中に妹を探す空音。そう、彼女は重度のシスコンであった。しかしここはキマイラフューチャー、愛する妹はこんなところにいるはずもない。
「……なんだか意外とかっこよさそうに見えるわね。でもまぁ、はっきりとしてあげるわ」
偽物は本物とほぼ瓜二つ。心なしか偽物の方が幾分凛々しく見える。しかし彼女は己が確固たる本物であるという自負があった。そう、すでに偽物を喝破する用意はできている。
早速空音は偽物の前に躍り出て、指をさす。
「貴女は偽物よ! それを証明してあげる!」
「……へぇ、いきなり出てきたと思ったら偽物呼ばわり? 上等じゃない」
偽空音、突如現れて自身を偽物と断ずる本物を前にしても余裕を崩さない。そんな偽物を前に、空音はすぅっと息を吸い、そして問うた。
「偽物! あなたの大事な妹は!?」
「決まってるじゃない、天音よ!」
そこまでは調べがついているか、と空音は考える。しかし本番はここからだった。
「天音は私と同じ髪型をしていてしかもおそろいのリボンを付けているわ。そしてサラサラとした赤っぽい髪があって……」
「うん、そうね……そうよ……あれ?」
本物の空音は愛する妹・天音の様々な魅力や身体的特徴、最近妹が可愛いと思った瞬間などを続々と暴露していく。中には一日に何回くらいトイレに行くか、髪の毛が一週間で伸びたミリ単位の長さ、食べ物を咀嚼した回数といった明らかにストーカー一歩手前の常軌を逸した情報すらも暴露され、周囲の群衆も「偽物の方がマシに見える重度のシスコン」という零下の視線を空音に向けていた。
「……と、これくらいのことを知っている私が本物よ!」
肩で息をしながら宣言する。偽物も、群衆もこの重度のシスコンを前に身動きが取れない。
彼女はスキを見せた偽物に容赦なくトドメを刺すべく動いた。選ばれたのは奇しくもこの場の空気感に最適な封印兵装「フリーズゼロ」。冷凍光線が偽物を氷漬けにする。氷結した仮面が落ち、凍りついた怪人はそのまま砕け散った。
群衆の視線は冷たい。一部の者は十字を切る有様だった。あぁ、重度のシスコンに愛された少女・天音の将来に幸あれ、と。
大成功
🔵🔵🔵
ティー・アラベリア
アドリブ歓迎です
クスクス、今回は随分と愉快な怪人さんなのですね♪
ごきげんよう、皆さま。
ご家庭用奉仕人形ティー・アラベリア。罷り越しましてございます☆
(わぁ、本当にそっくり!と喜びながら、偽物にカーテシー)
こうして客観的にみても、やっぱりボクは可愛らしいですね☆
魔杖もしっかり再現していらっしゃる。
しかしながら、致命的な点が異なってございます。
ボクは人形ですよ?どうして関節がシームレスに繋がっているのです?
ボクの関節はこの通り、球体関節でございます♪
では偽物さん、楽しい戦闘と参りましょう☆
その偽物の魔杖、頑張って使いこなしてくださいね♪
いつもの通り魔杖を展開し、4本を次々と使用して爆殺いたします!
●Case:ティー・アラベリア
「クスクス、今回は随分と愉快な怪人さんなのですね♪」
自分とそっくりな怪人を見て、ティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)は快哉を上げる。
「ごきげんよう、皆さま。ご家庭用奉仕人形ティー・アラベリア。罷り越しましてございます☆」
集まった群衆と偽物に向けてカーテシー。偽物も同様にカーテシーで応じる。
「ごきげんよう、もうひとりのティー・アラベリア。本当にそっくりですね」
どうやら偽物はもうひとりの自分としてこの場を切り抜けようとするようだ。本物のティーは偽物の周りをぐるっと周りながら視線を偽物の身体の上に運ばせる。
「こうして客観的にみても、やっぱりボクは可愛らしいですね☆ 魔杖もしっかり再現していらっしゃる」
しかし、その物言いに偽物は引っかかった。
「待ってください? 『再現』? まるでボクが偽物のようじゃないですか」
「そのつもりで言ったんですよ?」
ティーはニッコリと偽ティーに告げる。
「何故ならば致命的な点が異なってございます」
「……ほう?」
そう、偽ティーは致命的に異なる点を備えてしまっていた。それこそが。
「ボクは人形ですよ?どうして関節がシームレスに繋がっているのです? ボクの関節はこの通り、球体関節でございます♪」
「……ッ!?」
そう、ミレナリィドールであるティーは関節部が球体関節で構成されている。一方偽物のティーは明らかに人間のように関節が肌で覆われていた。これが決定的な相違点。集まった群衆も息を呑む。
「迂闊だった……! そうだよ、球体関節フェチの俺が見抜けなかったなんて!」
「ドール好きの俺も流石にティーさんに会えると思ったら冷静さを欠いちまってたみたいだな……すまん、ティーさん」
「良いのですよ。これを機会に本物のボクをしっかり見ていてくださればよいのですから」
群衆の声ににこやかに応えると、愛用の魔杖を展開する。複数の魔杖を距離や用途によって使いこなすのがティーの戦闘スタイルだ。偽物も負けじと魔杖を展開し、ここに戦闘が始まる。
「では偽物さん、楽しい戦闘と参りましょう☆ その偽物の魔杖、頑張って使いこなしてくださいね♪」
「さぁ、どうでしょうか!? この魔杖、そちらの魔杖と遜色ないことをお見せしましょう!」
90式には90式、92式には92式と同じ魔杖を次々とぶつけ合う限界ギリギリのバトル。しかし、徐々に偽物は動きに精彩を欠いていく。当然だ。偽物は「生体」として再現してしまったのだ。ミレナリィドールよりも疲労が速く訪れてしまう。
「おや、もう終わりですか!? 生身として再現しまったことを十分反省してください……骸の海でね!」
4本の魔杖の一斉射撃が火を吹き、偽物は爆風の彼方に姿を消す。後に残された仮面もどこか煤けてしまっていた。
ふわり、と降り立つティーは再びカーテシー。その舞台挨拶を思わせる所作に、万雷のスタンディングオベーションが群衆から贈られたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◆SPD
※アドリブ歓迎
あれが“偽物”か、確かによく似せている
…しかし奴の持つ銃と、進んでキマイラに声をかける応える様子は違和感をおぼえる
キマイラに接触する偽物に声をかけ拉致を妨害する
「あんたはいつから、そんなに目立ちたがり屋になったんだ?」
俺は目立つ事を好まない、その点と銃の外見の差を指摘する
偽物の銃にはキマイラの注目を集める為か華美な装飾が施されているが、本物はこの通り派手さのかけらも無い
戦闘中の映像が出回っているようだから、見比べればわかる筈だ
偽物が襲ってきたら『クイックドロウ』で素早く銃を構えユーベルコードで攻撃
周囲へ被害を広げないよう手早く倒したい
事が済んだら、キマイラの無事を確認する
●Case:シキ・ジルモント
群衆に紛れ込んだシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、自分の偽者を早速発見していた。
「あれが“偽物”か、確かによく似せている……」
気配を殺し、まずはじっと偽物を観察する。偽シキは体格や顔の造形などが完全に瓜二つであり、見分けがほとんどつかない。どこからアプローチを仕掛けたものか、と考えたときに、ふとシキの目を惹くポイントを発見する。
「……ここを突いて崩しにかかるか」
偽物を追い詰めるための情報を得たシキは意を決して、積極的にキマイラたちに声をかけていた偽物の前に進み出る。シキがもうひとり現れたことで群衆が明らかに動揺しているが、シキは意を介さない。
「……なんだあんた、俺と瓜二つの格好だが。偽物ってやつか?」
偽シキは皮肉げな笑みを浮かべる。シキはそんな偽物の不敵な様子にも眉一つ動かさない。
「その言葉はそっくりそのまま返すとしようか。あんたはいつから、そんなに目立ちたがり屋になったんだ?」
「どういう意味だ」
偽シキから笑みが消えた。シキはさらに畳み掛ける。
「俺は目立つ事を好まない。見ていて思ったんだが、あんたの銃は目を引く彫刻が施されているな」
「そんなことか? 俺の愛銃はワンオフだ。装飾の一つや二つ施されていてもおかしくないだろう?」
偽シキが持つ銃には華やかな彫刻が銃身に施されている。グリップの部分にも蔦のような彫刻が彫られており、遠目から見ても目立つものだった。
「その彫刻がもたらす戦術的優位性は無い。その証拠に、俺のシロガネはこの通り派手さのかけらも無い。銃のカスタムは見た目じゃない、性能だ。あんたも俺を名乗るならそれくらいは学んでいると思ったが」
「俺がその銃を普段から使っている証拠は?」
そう問い返す偽シキに、本物のシキは答えようとした。しかしその時、周囲の群衆から剣呑な雰囲気を感じ取る。一人のキマイラが前に進み出た。目つきが鋭く、フライトジャケットを着用した男だ。
「残念だが、俺達の間で語り草になっているシキさんの戦いの映像が出回っていてな。迷宮災厄戦と呼ばれる戦いで、シキさんは書架の王と呼ばれる強大な敵と戦った。その時、決め手となったのはこの銃なんだよ」
「何故それを……」
シキは驚く。その時の映像が出回っていたというのか。
「あんな戦い、忘れたくても忘れられませんや。俺達はあんたの戦いに惚れ込んだんですぜ。それにそのシロガネ、誰かを護る意思と共に譲り受けた大切なものなんでしょう」
目付きの鋭い男を含め、群衆は全員不敵な笑みを浮かべている。そして、全員が懐に手を入れ……揃って拳銃を抜き、偽シキに銃口を向けていた。
「その思いを踏みにじり、さらにシキさんを騙るたぁふてぇ野郎だ。覚悟は出来てるんだろうな?」
「……はっ、お前ら風情が束になった所で!」
偽シキもまた銃を構え、目付きの鋭い男に向けようとする、が、その銃が火を吹くことはない。本物のシキがそれよりも早く愛銃シロガネを構え、偽シキの構える銃に狙いを定めて一発撃ち込んだのだ。
「……終わりだ」
「やってくれたな……!」
偽シキは怒りに任せて飛びかかるが、次の瞬間表情をこわばらせてそのまま倒れる。シロガネが致命の一撃を吐き出したのだ。
「……皆無事か?」
「あぁ、お陰さんで。怪我したやつはいないよな!?」
目つきの鋭い男が皆に呼びかけると、全員が拳銃を上に掲げて無事をアピールする。代表して目つきの悪い男が空に向かって手にした拳銃の引き金を引くと、ぽすっ、という気の抜けた音と共にBB弾が撃ち出された。
「モデルガンでさぁ。俺達はサバゲーサークルの者でね」
「全く……無茶をする。だが助け舟を出してもらったことには感謝しよう」
シキは苦笑してキマイラたちに礼を言う。彼らの言う通り、彼の愛銃シロガネは譲り受けられたものだった。かつて、最期まで誰かを護るためにこの銃を手にして戦い続けた者から、意思と共に受け継いだ銃。迷宮災厄戦における書架の王との戦いをはじめとして、様々な依頼でこの銃はシキを助けてきた。その思いと戦いぶりは、この場にいたキマイラたちの目にしっかりと焼き付いている。だからこそ、キマイラたちもシキに憧れているのだ。
「なに、猟兵さんとして皆を護ってくれてるんだ。これくらいの恩返しはしねぇと割に合わねぇです」
「多少の無茶をするのがキマイラフューチャー流っすよ!」
「よく言うぜ、足が震えてたくせに」
軽口と笑いの応酬に、シキは苦笑交じりに思う。
彼らのような者に、自分の思いは根付いている。きっといつか、自分が斃れるようなことがあろうとも、その思いだけはきっと皆の中で生き続けるのだろう。
「まぁ……当分はくたばるつもりはないがな」
自分を慕うキマイラに囲まれながら、シキは心の奥底でどこか嬉しさを感じている。その口元にはわずかに笑みが溢れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
グラディス・プロトワン
※アドリブ歓迎
確かに本物と瓜二つ…見事な模倣であるのは認めよう
装備や振る舞いを見ても、ともすれば俺の方が偽物と言われてしまうかもしれんな
だが試作機である俺がニ人いるはずがないのでな
俺に組み込まれている吸収機構まで真似できるとは思えんが、どうだ?
…少し侮っていたか
吸収機構があるわけではないが、うまく錯覚させているのか
このままでは奴が本物という事になってしまうぞ
お互いの吸収機構をぶつけ合えば、どちらが本物か分かるのではないか?
本物は燃費が悪いので大食いだしな…これでいこう
別に空腹だからというわけではないぞ?
俺のイメージが悪くなるような気がしないでもないが…住民が拐われては元も子もないからな
●Case:グラディス・プロトワン
(確かに本物と瓜二つ……見事な模倣であるのは認めよう)
ウォーマシン、グラディス・プロトワン(黒の機甲騎士・f16655)。彼はスペースシップワールドの古代帝国で試作された機体である。その最大の特徴はエネルギー吸収機構「E.Dシステム」。エネルギーや生命力を奪取することで己のエネルギーに変換することで、補給が困難な状況でも活動を行えるという開発コンセプトだった。
しかし、この機能には大きな欠陥があった。エネルギーや生命力を吸収する対象を選ぶことが出来ない上、吸収効率や燃費の問題を解決することができなかったのだ。結果として当時の帝国の開発チームはこの機体の開発を断念し、試作機である彼のみが残された。
今、グラディスは自分と瓜二つのウォーマシンがキマイラに取り囲まれているのを遠くから観察している。吸収機構は意図的に発動しない限り安全とは言え、とてもじゃないが自分には無辜の市民から生命力を奪う危険性のある真似はできない。
「……だが、まともに対峙しては分が悪いと見た。装備や振る舞いを見ても、ともすれば俺の方が偽物と言われてしまうかもしれん」
どうしたものか、と思案するグラディス。しかし自分は試作機であり、古代帝国での開発・運用データも散逸してまともに残っていない。ならば本物は1機だろう。
グラディスは偽物への対処方針を固めると、群衆の只中に向けてスラスターを吹かして飛び出した。空に現れたもう1機のグラディスを指差して、偽グラディスの周りに集まる群衆が指をさして驚愕の声を上げる。
「……ほう、同型機か? 試作機は1機しかないと思っていたが」
偽グラディスは自分の前に舞い降りた本物にも動じる様子はない。互いに対峙しにらみ合う2人のグラディス。集まった一般市民の間にも緊張感が走る。
「……その通り。試作機である俺がニ人いるはずがないのでな。どちらかは偽物ということになる。さて、偽物であるならば俺に組み込まれている吸収機構まで真似できるとは思えんが、どうだ?」
本物グラディスは偽グラディスに対してそう問いを投げかける。偽グラディスはその問いに、黙ってカメラアイを怪しく光らせた。すると、一番近くにいた本物グラディスは唐突に自らのエネルギーが消費されているのを感じる。
「……これは驚いた」
偽グラディスをスキャンすると、エネルギーが増えた様子はない。そう、相手のエネルギーを強制的に「消費」させているだけだった。本物と違い、消費させているだけとは言え、それを吸収と言い張ってしまえば、スキャン機能のない者には本当に吸収されたように錯覚してしまうだろう。
(少々よろしくないな……このままでは奴が本物という事になってしまうぞ)
焦燥感を覚えるグラディス。そう言えば、とグラディスは自らの記憶をたどる。アルダワで繰り広げられた魔王戦争、その際に、同様に自分の能力を模倣する敵と対峙したことがあった。その際に取った戦術は……。
「……お互いの吸収機構をぶつけ合えば、どちらが本物か分かるのではないか?」
「ほう? しかし俺の吸収機構は見境がない。このままでは周りの一般市民に危害が及ぶぞ?」
そう、今ここで吸収機構を発動させてしまえば、周囲にいる群衆の生命エネルギーを吸い取ってしまうことになる。範囲を限定すれば問題なかろうが、偽物が擬態吸収機構の出力を上げてしまえばどのみち結果は変わらない。
しかし、キマイラフューチャーの一般市民は伊達ではなかった。
「なに、心配は無用! 俺達は普段からバイタリティが有り余ってるんだ、多少エネルギーを吸収された所でへたばってたまるかってんです! ここでどっちが本物か、遠慮なく白黒つけてください!」
刹那的なノリに身を任せるキマイラフューチャーの住人、流石に一筋縄では行かない。覚悟の決まった面構えが並ぶのを見て、グラディスは覚悟を決めた。
「住人もこう言っているぞ。……さてどうする?」
「……良いだろう、では始めるとしようか!」
互いに吸収機構と擬態吸収機構を発動し、命がけのチキンレースが始まった。グラディスも偽グラディスも互いのエネルギーを消費するが、本物は消費した端から吸収を続けている。周囲の住人も脂汗を浮かべ始めたが、どうにか耐えてグラディスに自らの生命力を送り込んでいた。
エネルギーを消費させるだけだった偽グラディスは補給手段がなく、ついに偽グラディスが力尽きてその場にどうと斃れる。仮面が剥がれて模倣怪人ノッペロイドの姿を顕にした。
「……大丈夫か?」
空腹感は解消されたが、周囲の住人が心配だ。グラディスは即座に群衆の様子を気遣う。群衆はフラフラとしながらも命に別条はない。
「な、なんとか……しかしすっげぇもん見れましたよ、吸収対決。限界ギリギリのチキンレース、カッコよかったです、グラディスさん!」
覇気こそないが、群衆からは口々に暖かな歓声が上がる。グラディスは住人に無茶をさせてしまったことを侘びながらも、無事耐えきった群衆たちの姿を見て安堵に胸を撫で下ろすのだった。
(ともすれば俺のイメージが悪くなる可能性もあったが……住民が拐われては元も子もなかった。こうして皆無事で本当に良かった)
機能こそ凶悪だが、グラディス本人は決して冷酷なウォーマシンではない。今この瞬間は住人たちの笑顔こそが、グラディスにとって最高の「ご馳走」であった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ドーラ・ワルダー』
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POW : わたくしにひれ伏しなさい!
【鞭】が命中した対象に対し、高威力高命中の【踏みつけ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 下僕達、やっておしまいなさい!
戦闘用の、自身と同じ強さの【力自慢の下僕】と【テクニック自慢の下僕】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : こうなったら奥の手よ!
自身が戦闘で瀕死になると【巨大なびっくりメカ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ガジル・コリアンダー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●再生怪人が即死すると誰が決めたのよ? byドーラ・ワルダー
「オ~ッホッホッホッホ! 良くぞ我らワルドーラが用意した偽物猟兵を見破ったわ!」
カツン、カツンとハイヒールを鳴らして現れるのは悪の組織ワルドーラが女首領、ドーラ・ワルダーである。
「そう、まずは本物を叩き潰さないと始まらなかったのよ……さぁ行きなさい、戦闘特化型模倣怪人ノッペロイド・アドバンス!」
現れたのは無数の模倣怪人ノッペロイド……の戦闘特化版。それぞれが仮面をかぶると、なんと猟兵を模した姿へと変わっていくではないか。しかも今度は戦闘特化型……なのだが、その姿が問題だった。
顔だけ変わって身体は筋骨隆々の大男かドーラ・ワルダーの体つきそのまんまの女体。つまりは凄まじい手抜き模倣であった。
「……戦闘特化ってそういうこと?」
呼び出したドーラ本人も死んだ目つきで戦闘特化型の模倣怪人を眺める。どこがアドバンスやねん、とついてきていた側近を見やれば、
「コストカット精神はすごくアドバンスしてます」
というコメント。しかも仮面というか縁日のお面が張り付いたかのように表情が固定されている。想像してみて欲しい。半笑いしている自分の顔が顔面に張り付いたゴリマッチョとセクシーボディが群れをなしているのである。夜道で会ったら多分夢に出てくること間違いなしだ。
ドーラ・ワルダー自らも戦うようだ。そして彼女はさらなる切り札を用意している。
「しかしこんな趣向も用意しているわよ!? 今回のびっくりメカ……模倣ロボ・キャバリア百面相!!」
背後に降り立つのは棒人間のようなロボ。しかしまるで有機的な変形をしたかと思うと、突如猟兵の一人が保有するキャバリアに変貌を遂げる。キャバリアの持ち主は認める。外見、武装、それらをそっくりそのままコピーされている、と。
「あなた方が『キャバリア』なる巨大兵器を運用するのは承知の上。であれば、それを模倣して全く同じ戦術で戦ってやるまで! さぁ……ケリを付けましょう! この猟書家、ドーラ・ワルダーと猟兵たちの大一番に!」
割と抜けている部分もあるがそこは猟書家、強大な敵であることには間違いない。ドーラ・ワルダーと猟兵たちの死闘が幕を開ける──!
※SPD戦術を選んだ場合、ドーラ・ワルダーが召喚する下僕は「戦闘特化型模倣怪人ノッペロイド・アドバンス」となり、自身の顔が張り付いたマッチョマンやセクシーボディの集団と戦うことになります。
※WIZ戦術を選んだ場合、貴方がキャバリアを保有している場合は、ドーラ・ワルダーが追い込まれた際にそのキャバリアと全く同じ機体を召喚、搭乗して戦います。
なお、WIZ戦術かつあなたがキャバリアまたはそれに類する機動兵器を保有していない場合、機体は「オブシディアンMk4」の姿を取ります。
エインセル・ティアシュピス
【アドリブ連携歓迎】
にゃーん。
おねえさん、いまはふゆがちかくてさむいさむいだよ。
そんなかっこうしてたらかぜひいちゃうんだよ?
たたかわないのかって?
にゃーん、たたかうけどぼくのにせものさんいいひとだったから……
わるいひとじゃないんじゃないかなっておもったからおはなししようとおもったんだよ。
でも、やっぱりわるいひとなんだね。
じゃあぼくは、おねえさんをたおしてきまひゅ(※噛んだ)のへいわをまもるよ!
ろぼっとかっこいい!
でもぼくのにゃんげいざーはもーっとかっこいいんだよ!いっくよー!
【式神使い】でいっしょに【全力魔法・破魔・浄化・レーザー射撃】【指定UC】でこうげきだー!
わるいことしちゃめーなんだよ!
●「我々はいつでも新規入会者を歓迎中です」byエインセルきゅんを見守る会
「にゃーん。おねえさん、いまはふゆがちかくてさむいさむいだよ。そんなかっこうしてたらかぜひいちゃうんだよ?」
高笑いと共に仁王立ちするドーラの前に現れたエインセルは早速正論をぶつける。これが無垢な子供の恐るべき正論力。ドーラお姉さん早速撃沈である。
「うん……そうだね、お姉さんもちょっと後悔してるわ。せめて何かこう、上着とか羽織ってくればよかったなーって……」
しゃがみこんで視線を合わせて会話するドーラお姉さん。早速猟書家としての威厳がどっか飛んでいって普通のお姉さんとして会話を始めてしまった。げに恐ろしきは無垢さである。
「……ってそうじゃなくて。お姉さん一応敵だからね。戦わないといけないんだけど」
「にゃーん、ぼくもたたかうけどぼくのにせものさんいいひとだったから……わるいひとじゃないんじゃないかなっておもったからおはなししようとおもったんだよ」
ヴッッ、とドーラお姉さんは喉の奥で奇妙な声を上げた。
(いやいやいや無理無理無理なんでこんな無垢な男の子と戦わなきゃいけないのよ……なんで猟書家なんだ私)
ついに己の存在意義にすら疑問を感じ始めるドーラお姉さん。
「うん……そうだよねにせものさんと遊んでたもんね。楽しかった?」
「たのしかったー!」
満面の笑みで答えるエインセルにすでに戦わずして瀕死のドーラお姉さん。それを見た側近は現地住民とひそひそ話を開始した。
「……いや、あれ我々のボスなんですけれども。これ傍から見たら事案ですよね?」
「……未成年略取的なアレですよねぇ……心中お察しします」
「いや私も就職先間違えたかなぁって……」
そんな会話が繰り広げられているなど露知らず、ドーラお姉さんはとにかく自分の仕事をしなければと思い直す。
「……ごめんね。でもほら、お姉さんは猟書家で、エインセルくんは猟兵でしょ? だったら戦わなきゃ」
「うーん……」
「お姉さんこのままだとこの世界の平和を乱しちゃうのよ? いいの?」
どうにか心を鬼にしてエインセルを説得するドーラお姉さん。エインセルは意を決して言った。
「……そっか。やっぱりわるいひとなんだね。じゃあぼくは、おねえさんをたおしてきまひゅ(※噛んだ)のへいわをまもるよ!」
「キマフュね」
「きまひ……きまふゅ! きまふゅのへいわをまもるよ!」
「よく言えました!」
満面の笑みで拍手するドーラお姉さんに、えへへと照れるエインセル。到底これから死闘を演じる猟兵と猟書家とは思えない光景だがこれぞまさにエインセルワールド。みんなやさしい。
そんなわけでようやく戦闘態勢に入る二人だが、互いに自らが搭乗する鉄騎を呼び出す。エインセルが呼び出すのは心優しきスーパーロボット、鋼鉄猫帝ニャンゲイザー。対するドーラも模倣ロボ・キャバリア百面相をニャンゲイザーと瓜二つの姿に変形させる。ご丁寧に色だけダーク系統でまとめており、あえてこの姿に名付けるならば「ダークニャンゲイザー」といったところか。
「いっくよー!」
「負けないわよ! さぁ行きなさいダークニャンゲイザー!」
がっぷり四つに組み合うニャンゲイザーとダークニャンゲイザー。両者の力は五分と五分。互いに一歩も譲らない。
「つよいねおねえさん! でもまけないぞー!」
ニャンゲイザーとエインセルの双方から魔を滅する必殺の光線がゼロ距離で放たれる。ダークニャンゲイザーも負けじと闇色に染まった光線を放ち、ビームのクロスカウンターの格好となる。したたかに攻撃を受けた両者はよろめいて距離を離すが、エインセルの力が乗ったニャンゲイザーの攻撃の方が与えたダメージは大きかったようだ。
「く……やるわねエインセルくん!」
事実上撃ち負けた格好となるダークニャンゲイザーを見て焦りの表情を浮かべるが、エインセルはさらに畳み掛けた。
「わるいことしちゃめーなんだよ!」
空から光り輝く巨大な猫の手が降ってくる。それを見たドーラはふっ、と笑ってダークニャンゲイザーはドーラごと地面に叩きつけられた。
「やーらーれーたー!」
エインセルの一撃をあえて受けたドーラは断末魔とともに地面にうつ伏せに倒れた。
(私……来世ではエインセルきゅんを見守る会に入会するんだ……)
なんかやられたのに妙に幸せそうな表情をするドーラお姉さん。しかしエインセルの無垢さにやられた彼女を誰が責められようか?
(ほら見て……なんか三途の川の向こう岸にエインセルくんの群れが手招きして私を地引漁しようとしてるわ……あぁ、これがヘブンズエインセル……)
そんな幻を見ながらドーラお姉さんは静かに昇天しようとしていた。多分こいつ死んでも骸の海に素直に行かないんじゃねぇかな。尊死した人が行くエインセルファンのヴァルハラ的なSomethingに向かうんじゃなかろうか。
ともかく、エインセルは猟書家ドーラ・ワルダーに(主に尊死的な意味での)致命傷を与える大金星を挙げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『静かなる者』
武器持ち替え:灰遠雷
考えたら、『馬県義透』の模倣存在と戦うの9回目でしたね(静かなる者は3:アリラビ戦争2,今回の1。あとは他三人格がアリラビ戦争2ずつ)。
『疾き者』(初恋相手。姿決めたの静かなる者)の姿をした奴倒すの、結構堪えるんですよ。
武器を持ち替えたのは、UCとの相性でして。ですから後衛というのは変わりませんよ。
相手からの攻撃は四天霊障のオーラ防御と第六感を活用してなるべく避けましょう。
攻撃は戦闘知識活用による制圧2回攻撃をUCのせて。
たとえ機体を召喚したとて不幸の連鎖は止まらない。この矢は雷の力秘めたるもの。
…機械に雷はご法度ですよね。
●模倣存在と戦うのはもう慣れっこですけれども by馬県・義透
「『疾き者』の姿をした奴倒すの、結構堪えるんですよ……今回はそんな羽目にならずに良かったですが」
やれやれ、とため息をつく義透。引き続き「静かなる者」の人格で猟書家と対峙する。
一方のドーラ、どうにか最大の強敵との戦いから身を起こして、次なる相手、義透の前に立ちはだかる。
「あら、さっきと武器が違うわね。本気モードってこと?」
「まぁ、後衛であることに変わりはありませんが。すでに晒した手を使い続ける必要もありますまい」
どうにか猟書家としての威厳を取り戻したドーラは不敵に笑うが、義透も静かに応じる。
ドーラが操る模倣ロボ・キャバリア百面相はオーソドックスな機体──クロムキャバリアで普及しているオブシディアンMk4の姿に変形させた。汎用性の高い機体で義透がどのような手を打っても対抗できるような構えだ。
「さぁ、見せてもらうわよ、猟兵としての力を!」
キャバリアライフルが火を吹く。これを余裕をもって避ける義透。
そのメカニズムこそ、四天霊障のオーラ防御と持ち前の第六感だ。キャバリアライフルの弾丸は虚しく地面を抉っていく。
「生身なのにやるわね……!」
「まぁ、鉄騎を相手にする時のコツは『侵す者』から聞いてますからね。当たらなければどうということはありません」
質量差のある相手を前にしても眉一つ動かさず、粛々と対応を続ける義透。彼の言葉通り、以前「侵す者」が戦った際の戦闘経験は身体に息づいている。そう、その戦い方とは。
「機械に雷はご法度、ですよね」
義透が手にした武器は灰遠雷。雷の力を持つ弓だ。
霊力でできた矢をつがえ、2発放つ。
「多少の雷くらいなど……!」
ドーラは撃ち込まれた雷の矢を2発とも受け止める。防御可能と判断してのことだった。しかし、その判断こそが誤りだったとすぐに痛感することになる。
「たとえ機体を召喚したとて不幸の連鎖は止まらない……!」
「……ッ!? スリップダメージ!?」
そう、この雷の矢は突き刺されば継続的にダメージを与え続ける。電子系統に致命的なダメージを与えられ、センサーや駆動部分が続々とその機能を止めていく。
「っ……! 状況判断ミスか……! ぐぅっ!?」
「あ、雷が鳴っている時には高い物の近くにいると危険ですよ。自分にも雷が飛んできますから」
オブシディアンMk4から漏れた雷がドーラ本人にも落ち、ダメージを与える。前進を駆け巡る電流に、ドーラもまた苦しめられるのであった。
成功
🔵🔵🔴
尾守・夜野
「あらぁ?ふふ
…随分と虚仮にされたものね
愛してあげようかと思ったけど
気が変わったわ
潰してあげる!」
回りのゴリマッチョ見て殺意は瞬間MAX
でもあまりのあれ具合で近寄りたくないから八つ当たり込みで首魁に接近戦を挑むわ
黒纏を紐状に変え、懐から取り出したように見せかけ構えましょう
ぱしっと地面を打つ音が心地いいわね(つまり鞭として扱う)
「…鞭っていうのはこう使うのよ!」
まぁ私鞭の扱いはあまり得意ではないのだけれど
…加減って難しいし
相手の鞭に合わせてしならせるけど、鞭に鞭当たっても落とされ踏まれるのでしょうね
「大した事ない?
いいえ!計算通りよ!」
踏まれた黒纏を針山に変えて足を包んであげましょう
ぐしゃっとね
●もう俺しーらないっと by尾守・夜野(主人格)
雷の高圧電流によるダメージを受けてもなお健在のドーラ。彼女はノッペロイド・アドバンスを差し向け時間稼ぎを図ろうとする。模倣ロボが立ち直るまでの間、猟兵たちの足を止められればそれでいい。
しかし、そのノッペロイド・アドバンスの姿に怒りを燃やす猟兵がひとり。
「あらぁ? ふふ……随分と虚仮にされたものねぇ! 愛してあげようかと思ったけど気が変わったわ……潰してあげる!」
ゴリマッチョ姿に自分の顔を貼り付けた怪人に完全にキレた夜野であった。
「だだだだだだってアレ私のせいじゃないし!?」
「知らないわよそっちの都合は!!」
あまりのキレっぷりに思わず動揺するドーラだが、怒髪天を衝く勢いの夜野には聞こえていない。黒纏を紐状に変え、懐から取り出したように見せかけ構える。どうやらノッペロイド・アドバンスには一切手を付けず、直接本体を叩く心算のようだ。
「鞭対決ってわけ? 上等よ!」
対抗するようにぴしゃん、と鞭を鳴らすドーラ。
(ま、私鞭はあんまり得意じゃないんだけど)
では何故鞭での対決を挑んだのか? 夜野にはある作戦があった。
互いに鞭を翻して相手に向けて叩きつけようとする。双方の鞭がそれぞれぶつかり合うが、鞭の扱いはドーラ側に一日の長があった。
「はんっ、甘いのよ! 威勢のいいことを言った割にはそのザマね!」
夜野の鞭が手から飛び、ドーラの鞭に絡め取られて地面に叩き落されてしまった。ドーラは鞭を拾われないように自分の足元に夜野の鞭を落とし、踏みつける。
「甘いのはどっちかしらねぇ?」
その時、夜野がニヤリと笑った。
「……なぁっ!?」
「その鞭、黒纏だってことを思い出して頂けたようね!」
黒纏は鞭から針山へとその姿を変える。踏みつけていたドーラの足に針が突き刺さり、ドーラの足を傷つけた。
「……いや、なんつーか、こえーよ……」
まだ顕現していた夜野の基本人格は、そんな女(?)の戦いをガタガタ震えながら
見つめていたそうな。
成功
🔵🔵🔴
夕闇霧・空音
アドリブOK
なんだか周りの人間の視線が冷ややかね…
猟兵の評判を貶めようとするなんて許せない!
(明らかにツッコミ待ちだが自覚はない)
敵の攻撃はムチによる一撃…
残念ながらまだロボに乗っていない私はロボ勝負はできない。
ならロボットに隠れて攻撃をやり過ごしてみるかな。
後は天井に自分の体を固定してユーベルコードを発動。
広域を制圧する射撃で一気に敵をまとめて始末するわ。
というかそんな雑なデザインじゃ妹が泣きわめくでしょうがー!!
●でもシスコンお姉ちゃんってなんだかんだ魅力的では? byごく一部の住人
空音は憤っていた。
周囲の人間の視線が冷たいのは偽物を使って本物の評判を貶めたせいであると。その元凶たるドーラ・ワルダー許すまじ、と怒りに燃える。
「猟兵の評判を貶めようとするなんて許せない!」
そんなわけでびしり、とドーラに指を突きつけ叫ぶ空音。しかし、ドーラは足にでっかい絆創膏を貼る作業をしながらこちらも氷点下の視線を向ける。
「えーと……私もね? その時の戦いを見ていたんだけどね? 貴方の偽物、特に何も発言していなかったと思うのだけれど……」
一方的にまくし立てていたのは本物側であった。住人も頷く。
「というかむしろ、本物が別の意味でも『ホンモノ』だったから皆ついて行けなかっただけというか……ねぇ?」
「その、妹さんへの愛でお腹いっぱいというか」
何故かアウェーな雰囲気に空音はうーむ、と唸る。まぁ最悪この世界で嫌われても妹に嫌われることがなければ良いのだが依頼がやりづらくなるのも事実。そこで反論(という名の話題そらしとも言う)としての一手。
「だったらアレはどうなるのよ。アレは猟兵の評判を貶めると言っても言い訳できないわよ」
そこには半笑いの空音の顔をお面のように貼り付けた、首から下がドーラ・ワルダーと同一の体つきをしたノッペロイド・アドバンスが。
「あれは……戦闘特化だから。それとコストカットの産物」
「そんな雑なデザインじゃ妹が泣きわめくでしょうがー!!」
空音は怒りの形相で指摘。ところがドーラはこれについては一言。
「返す言葉もございません」
「……は?」
「いや、確かにコストを減らそうとは思ってたのよ、戦闘能力を上げつつ自我を持たせない戦闘マシーンの方向に調整するとか、普通そっちを想定するでしょ? まさかこんなにコストカットするなんて思わなくて……」
バツが悪そうに見上げるドーラだったが。
「でも、それはともかくとして。本来の作戦を邪魔されたツケはしっかり払ってもらわないと私も引っ込みがつかないのよね……!」
流石に偽物を撃破され、作戦を邪魔されたことについては許すわけにはいかない。鞭を振るって空音に先制攻撃を仕掛ける。
未だに機能停止に陥っていた模倣ロボ・キャバリア百面相の下へ駆け寄ると、その影に隠れて鞭をやり過ごす空音。
(鞭の動きを読んでそこから反撃しないと……!)
と、そこへノッペロイド・アドバンスが空音に仕掛けるべく前に出る。流石に鞭を味方に当てるわけにはいかないのか、しなる鞭はその部分だけを避けていた。
「……今よ!」
擱座したキャバリア百面相を駆け上がり、高所──キャバリア百面相の肩だ──に身体を固定。
「全力で全開よ!フリーズゼロ、ヒューロニアンモード!」
自身の顔を貼り付けた個体を含めて、複数のノッペロイド・アドバンスごとドーラを吹き飛ばすべく、両手を超巨大な冷凍光線砲台に変形させた空音は高出力長射程の冷凍光線を放つ。ドーラは慌てて鞭を手放し後退。直後鞭が氷漬けにされてしまった。同様にノッペロイド・アドバンスも氷の中に閉じ込められ、無力化される。
「く……やるわね!」
「天音のためにも負けるわけには行かないのよ……!」
こんな時でも妹ファースト。そのブレなさには現地住民も、姉妹愛の行方について暖かく見守ろうかと思い直す程であった。
成功
🔵🔵🔴
フロッシュ・フェローチェス
・アドリブOK
なにこれ?まー、いいか、深くは考えない。
先制攻撃……ダッシュから瞬く間に、蹴り入れてやる。その後【砲撃モード】散弾銃で追撃と、見せかけて足元を砕くフェイントだ。
周囲を走りながら残像を、大量に生み出して惑わす。攻撃の隙にカウンターを、入れたり大き背後からだまし討ちの蹴りを打ちこんで、ダメージを重ねていく。
早業の連撃をひたすら、打ち込むよ。
さて次は粗悪な模倣を……?な、なんでだろ、表情以外違和感があまり……なぜ?
……いや分ってるよ。なんだよ人が気にしてること、さらけ出して来てさ!どうせデカいよ、身長も含めて!悪かったな!?
……もーいい、限界突破のスピードで文字通り、一気に決めてやる。
●何が怒りに火を付けるかわかったもんじゃないわ by ドーラ・ワルダー
「なにこれ」
ここまでのドーラと猟兵の戦いを見たフロッシュの率直な感想である。キマイラフューチャーらしいカオスと勢いに身を任せた展開にうーむ、とフロッシュは一瞬首をかしげるが、
「まー、いいか、深くは考えない」
即座に頭を振って、ドーラに向けて駆け出す。そのまま先制攻撃でご挨拶だ。速度の乗った疾走から蹴撃が鞭を失ったドーラの胸元に飛ぶ。不意打ちに近かったが、得物を失っている上先の攻撃を回避した直後とは言えこれに即応し、腕をクロスして蹴りを防いだ。
「新手ね? ……随分とスピード自慢なのね!」
「悪いけど一気に決めさせてもらうよ」
「果たして上手くいくかしらねぇ?」
フロッシュは砲撃モードに移行して、ショットガンを構える。予備の鞭を取り出してこれを叩き落とそうとするが、なんとフロッシュは銃を下に向けて一発。足元を砕きつつ巻き上げられた瓦礫で鞭を防ぐ。
残像が残るほどのスピードで手数を増やし、ドーラに攻めのスキを可能な限り与えない。僅かなスキを縫ってドーラの鞭が飛んでいくが。それをいなしてカウンターを試みる。しかしドーラもある時は複数の残像ごとフロッシュを攻撃しようと鞭を大きく振り回してみたり、カウンターもとっさに防いでみせるなど、防戦気味とはいえよく耐えていた。
しかし、攻撃機会の差がそのまま現在のフロッシュ有利の形勢を作り出していた。どこかで攻撃に転じなければと焦るドーラはノッペロイド・アドバンスを見て攻撃を試みる。
「行きなさい、ノッペロイド・アドバンス!」
ドーラの代わりに前に進み出たノッペロイド・アドバンスはフロッシュの攻撃を防ぐ。
「……ち、例の粗悪な模倣……か……?」
フロッシュは舌打ちしながら模倣を攻撃しようとするが、その手が止まってしまう。
「な、なんでだろ、表情以外違和感があまり……なぜ?」
なんと、ノッペロイド・アドバンスの欠点である「体の作りを固定化したことによる本物との差異」が、フロッシュ相手の模倣だとそこまで欠点ではない。早い話が、表情以外は「頑張って似せたなぁ」くらいの相似感を生み出してしまったのだ。
「……いや分ってるよ。なんだよ人が気にしてること、さらけ出して来てさ! どうせデカいよ、身長も含めて! 悪かったな!?」
羞恥にやや顔を赤らめながらノッペロイド・アドバンスを指差して叫ぶフロッシュ。その様子に、ドーラはニヤニヤと笑った。
「あーら、気にしてたの? 別に良いのに減るもんじゃなし……」
「絶対に許さんドーラ・ワルダー!」
堪忍袋の緒が切れたフロッシュ、先程以上のスピードで一気に突撃。ノッペロイド・アドバンスや蹴りを叩き込んで態勢を崩した後、地面に再びショットガンを一発。舞い上がった大きめの瓦礫をノッペロイド・アドバンスや本体に向けて蹴り飛ばす。
「っ、そんな手など……ッ!?」
「これで、ラストォ!!」
次の瞬間、ノッペロイド・アドバンスごとドーラの身体を大きく宙に浮かべるべく、フロッシュの足が勢いよく振り抜かれていた。ドーラも、ノッペロイド・アドバンスも、なすすべなくその一撃をまともに受け、高々と空に体躯が舞うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
グラディス・プロトワン
※アドリブ歓迎
先程の模倣怪人の強化版…心して掛からねばなるまい
身構えるが、相手の姿を見て絶句
…これは早急に討伐しなくてはならん
一気に片付けようとするが、俺の模倣のせいなのか、奴ら自身の肉体によるものなのか不明だが馬鹿力で思いの外苦戦してしまう
アドバンスという名前は伊達ではなさそうだ
出し惜しみしている場合ではないと判断しUCを起動
すると先程の戦いを見守ってくれていた住民達の応援が聞こえてくる
これは…期待に応えなくてはな
次々と敵を倒していくが、さすがに消耗が激しい
気は進まないが、体力の多そうな模倣マッチョマンに組み付いてエネルギーを補充する
これ、絵面的にまずくないか…?
そう思いつつ戦闘継続していく
●自分の燃費を改善したいとこれほど思ったことはない byグラディス・プロトワン
グラディスは目の前の光景に絶句していた。変幻自在の模倣キャバリア、これはまだいい。鞭をしならせながらも威厳があるようでない猟書家。そして自身のヘッドパーツを模したマスクを被った筋骨隆々の大男。
「……これは早急に討伐しなくてはならん」
模倣怪人の強化版と聞いて身構えてはみたものの、予想の斜め上で思わず面食らう。グラディスの頭部を頭から被った大男であるからして、覆面レスラーのような風貌になっているその模倣怪人。これはさっさと片付けてしまうに限る、とグラディスは速攻でケリをつけるべく仕掛ける。
しかし、大剣を振るってみたところ真剣白刃取りをされてしまい、そのまま膠着状態にもつれ込む。大剣を押し込もうと関節各部の駆動系統を唸らせるが、敵の膂力が想定以上に強いとグラディスは感じた。曲がりなりにも自分を模倣(頭部だけだが)しているからなのか、あるいは戦闘向けに調整されているという謳い文句が事実だからなのか。
(出し惜しみをしている余裕はないか……!)
グラディスはリミッターを解除することを選んだ。エネルギーの消費速度が上がってしまうため本来はあまりやりたくない技だが、こうも追い込まれるとどうしようもない。
「……い、意外とやるわね」
「それは俺に対してか? それともお前の想定外で生み出されたこの怪人か?」
「両方……かしらねぇ……」
意外と善戦している様子の怪人にあっけにとられるドーラ。人間とは比較にならないパワーを持つウォーマシン相手にここまでやるのか、とドーラはあっけにとられた様子でノッペロイド・アドバンスを見ている。ちゃんと戦闘面もアドバンスしてるのが解せないわなどとブツブツ呟いているので当人としては釈然としないのだろう。
しかし、このままでは埒が明かない。その時、先程自分に力を貸してくれた住人たちの声援が聞こえる。
「負けるなグラディスさん! あんたの力はそんなもんじゃないはずだ!」
「突破口は必ずあるぞ!」
応援してくれる住人たちのためにも負けるわけにはいかない。グラディスは一気に出力を上げて大剣を動かし、一度怪人を振り払った。
「しかし、このままだと消耗が激しいな」
仕切り直しに怪人が振るった拳を回避しつつ、グラディスは考える。その時、住人の一人がこんなことを言った。
「いくら相手が強くても体力は無尽蔵じゃない! そこに勝機がある!」
「……ふむ。するともうこの手しか残されていないか。あまりやりたくはないが」
グラディスはリミッター解除によって得たスピードを活かして怪人の背後に回り込む。そのまま両脇を抱え込んで羽交い締めの格好となった。自身の体躯を相手に密着させながら、吸収機構を駆動させる。
「……これ、絵面的にまずくないか?」
そんな心配もしていたが、ふと相手が「覆面レスラー風」だったことに気がつく。
(そうか、それならば!)
脇から自身の腕を絡めた状態から、相手の姿勢を崩す。すでに体力を吸収され始めていた相手はなすすべなくグラディスごと倒れ込んだ。そこへ腕関節を極めつつ、吸収機構を全開にしながら相手を身体全体で押さえつけた。そう、これならばいわゆるCQCやレスリングのような格好で、消耗を抑えつつも効率的に相手の生命力を吸収できる。
プロレスの類も大好きな群衆は大きな歓声を上げていた。
「よぉし取ったれぇグラディスさん!」
「ピンフォールだ! 一気に3カウント持っていけー!」
(……結果オーライ、か)
内心で苦笑しながら、グラディスは自身を模した強敵・戦闘特化型模倣怪人ノッペロイド・アドバンスを無力化することに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◆SPD
※アドリブ歓迎
…なんだあれは
偽物と聞いた時以上にげんなりするが…気を取り直し敵の排除に移る
あの怪人、見た目はともかく油断はできない
キマイラ達へ敵が向かわないよう周囲の敵全てに攻撃を仕掛け引き付けたい
ユーベルコードを発動、敵の数に速度で対抗する
先に助けられた借りもある、こちらも多少の無茶は通してみせよう
この場の者に手出しはさせない、何としても凌ぎ切る
敵の目を引き付けたら猟書家本体を狙う
フック付きワイヤーを手近な怪人へ向け射出
脚を絡め取り、そのまま勢いを付け猟書家へ向けて投げ飛ばす
こんなものが飛んでくれば猟書家も流石に怯むだろう
その隙に増大した速度で敵の間を抜け、猟書家へ射撃を叩き込みたい
●郷に入っては郷に従えだ byシキ・ジルモント
猟兵たちは苦戦しながらもノッペロイド・アドバンスを撃破していく。さらに模倣メカすらも復帰までには時間がかかっているようだ。猟書家ドーラ・ワルダー本人もダメージはかなり蓄積している様子だ。この瞬間こそ好機……ではあるのだが。
「しかし本当になんなんだあれは……」
シキはげんなりした様子でノッペロイド・アドバンスの群れを見る。正直、偽物以上に精神的に疲労しそうな相手だ。しかし、猟兵たちの苦戦ぶりから見た目以上の難敵と判断し、油断を捨てる覚悟は決めている。
サバゲーサークルのキマイラたちに助けてもらったこともあり、彼らを全力で守ることこそが恩返しだと実感する。だからこそ、シキ自身も無茶をしてやろうと切り札を切る。
「多少の無茶をするのがキマイラフューチャー流……だったか。ならばその流儀に俺も従うまでだ。この場の者に手出しはさせない、何としても凌ぎ切る!」
シキはユーベルコードを発動させる。「イクシードリミット」、抑えていた人狼としての獣性を開放し肉体の限界を超えた高速戦闘を可能とする大技だ。反動で自身の肉体の寿命も削れていくが、それだけの無茶をする価値はある。自らの身体が狼のそれへと変わり、ウォークライが如き遠吠えで怪人たちの注意を自分に向けた。
「人狼……! あいつは油断ならない相手よ! 撃破しなさい!」
ドーラは焦燥に駆られて怪人たちに迎撃を命じる。これに応じたノッペロイド・アドバンスは拳を固めて殴りかかるが、その拳は宙を泳いだ。シキの速度について行けなかったのだ。そのまま爪で切り裂かれ、喉笛を食いちぎられ、続々とノッペロイド・アドバンスは散っていく。
「すげぇな、生で見るとド迫力だぜ……!」
「怪人なんざ屁でもねぇ、やっちまえシキさん!」
先程シキに助力したキマイラたちもシキを応援する。ノッペロイド・アドバンスの残存数は一気に減少し、ついに本丸たるドーラへの道が開く。
「く……流石にスピードが違いすぎるわね……!」
「さて、仕上げと行くぞ!」
人狼形態を解除したシキは、フック付きワイヤーを取り出して構える。対抗するように鞭を持つドーラ。しかし、シキのワイヤーは次の瞬間、あらぬ方向へと飛んでいった。
「……どこを狙っているのかしら?」
シキが攻撃を外したと判断したドーラは鞭をしならせ、シキに攻撃を試みようとするが、次の瞬間ノッペロイド・アドバンスの一人の身体が飛んできたことに気がつく。
「……!?」
突然の出来事にドーラの表情が凍りつく。その判断の遅れが致命的だった。
「当然、投げ飛ばすための手頃な怪人を狙ったに決まっているだろう」
飛んできた怪人の身体をしたたかに身体で受け止めてしまったドーラは、そのまま吹き飛ばされてしまう。振るった鞭の先端も宙を泳ぎ、目標を見失って虚しく空を切る。そこへ追い打ちとばかりに、シキは素早く銃を抜き、引き金を引く。ドーラの肩口を銃弾が貫いた。
「っぐ……!」
「せめて人狼対策ぐらいはしておくんだったな」
苦痛に顔を歪ませるドーラに、シキは銃口から硝煙をたなびかせながらドーラが打った手の欠陥をシンプルに告げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
これは直接映しちゃダメな奴だろう!見るならモザイク処理必須だろうが!!
直接見るなら自己責任で頼む!
はっきり言って俺は夢に見そうだから徹底的に叩き潰す!
ここまで自分の記憶を消したいと思ったことは無いかもしれない
SPDで判定
まずは【大声】で注意喚起しておく
映像で見ているかもしれないさっきの少年にトラウマを植え付ける訳にはいかない
義眼の黄の災い:感電【マヒ攻撃】を【スナイパー】【全力魔法】を当てて、動きを阻害
もう一度【大声】を出して【限界突破】し【先制攻撃】
銀腕は変化させないまま【怪力】【鎧無視攻撃】【重量攻撃】【捨て身の一撃】を使ってUCで威力を上乗せしつつも全力で叩き潰す
●はっきり言って俺は夢に見そうだ byルイス・グリッド
「これは直接映しちゃダメな奴だろう! 見るならモザイク処理必須だろうが!!」
のっけから絶叫するルイス。自分の顔が貼り付けられているゴリマッチョの怪人、ノッペロイド・アドバンスの姿に恐れをなしたようだ。
「見るなら自己責任で頼む!! ここまで自分の記憶を消したいと思ったことは無いかもしれない……」
大声で注意喚起しつつ、ノッペロイド・アドバンス目掛けて魔力で生成した電撃を浴びせ、動きを止める。正直あのゴリマッチョは動きを止めないとやってられない。それに、手早く倒したい。何故ならば、あのノッペロイド・アドバンスは自分も見たくないし他人の目に一秒でも長く触れさせたくないからだ。特に自分に憧れているというあの少年には絶対に見せたくない。
「こんのおおおおおおお!!!」
大声を上げながら記憶ごと消えろとばかりに怪力でノッペロイド・アドバンスめがけて銀腕を振り抜くルイス。正直、銀腕を変形させる手間すら惜しい。はっきり言ってノッペロイド・アドバンスは一気に吹き飛び、ドーラ目掛けて飛んでいった。
「……あら?」
一方、そんなルイスの葛藤を他所に銃弾のダメージから復帰したドーラ・ワルダーであったが。突如飛んできたノッペロイド・アドバンスの体躯がしたたかに自分にぶつかると、そのまま今度は後方へと吹き飛ばされてしまう。
「あっがぁぁぁ!?」
自分の身体の上にゴリマッチョが倒れ込んできて、続けざまのダメージに潰れたカエルのような声を上げるドーラ。
「いったたた……誰よこれは……さてはルイスってデッドマンね」
「お前、子供の教育に悪いものを出すんじゃない!」
ルイスはほうほうの体で起き上がってきたドーラを指差しながら言う。
「わた、私が悪いっていうの!?」
「お前の責任だろ!」
「私だってこんなん出てくるとは思わなかったのよ! 想定外よ想定外! もっとこう、猟兵そっくりの戦闘マシーンみたいな発注だったのよ、そうすればコストも抑えられると思って……まさかこういう形でコスト削減するなんて……」
さめざめと滂沱の涙を流すドーラに、ルイスはかける言葉がなかった。
「泣きたいのはこっちなんだよなぁ……」
その時、ルイスの耳に声が届く。
「が、頑張れっ、ルイスさん! そんな出来の悪い偽物なんてぶっ飛ばせー!」
振り返れば、先程の少年が声を枯らして応援している。
「……あぁ、それなら、応えないわけには行かないよな!」
「良いでしょう! こちらも悪の組織の首領として迎え撃つまで!」
ルイスはノッペロイド・アドバンスと再び対峙する。ノッペロイド・アドバンスが拳を固めて殴りかかり、ルイスも銀腕で殴り返す。さながらクロスカウンターの格好になるが、
「……言っただろう、見切りはこちらが上だと!」
軍配はルイスに上がる。先に拳が届き、再び吹き飛ばされたノッペロイド・アドバンスはドーラ目掛けて飛ぶ。今度はドーラもしっかりと防御態勢をとっていたが、これまでの戦闘のダメージが蓄積していたのか、衝突の際にバランスを崩して倒れ込んでしまった。
「……やっぱり、スピード面では勝てないのね」
「パワーだけでなくスピードも強化すべきだったんだ。もっとも、俺達はそれでも勝ってみせるが」
膝をつきながら立ち上がろうとするドーラを見下ろしながら、ルイスはきっぱりと告げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵