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海道一の弓取りと虎忍者

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #今川義元 #羅刹 #武田信玄 #魔軍転生

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 サムライエンパイア、その関東の一部にある山にその羅刹の隠れ里はあった。

「この先か」

 大量のからくり忍者軍団を引き連れるのは、幹部猟書家――今川義元だ。紅葉も終わりを見せ、冬の姿を見せるようになった山を見上げ、今川義元は告げる。

「クルセイダーの名の元に、超・魔軍転生を執行する! 今ひとたび蘇り、我が軍勢に憑装せよ。我が盟友にして魔軍将、甲斐の虎「武田信玄」よ!」

 義元の宣言と共に、からくり忍者軍団に魔軍将「武田信玄」が憑装されていく。クルセイダーの秘術「超・魔軍転生」――死んだ魔軍将の魂を「大量に複製して召喚」し、配下全員に憑装させる荒業だ。甲斐の虎、武田信玄の魂を宿したからくり忍者軍団が侵攻を開始した。

「新たなる軍勢の礎となるがいい、羅刹どもよ――」



「今川義元、そういう武将がかつておったらしいな」

 ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はそう切り出すと、言葉を続けた。

「今回はサムライエンパイアの世界で羅刹の村を襲おうとしておる。それを防いでくれ」

 幹部猟書家である今川義元は、羅刹の死体を利用して強力なオブリビオンを生み出そうとしている。そのために山岳地帯にある羅刹の村を襲い、虐殺しようとしているのだ。

「問題は義元の使う超・魔軍転生じゃな。あの織田信長も使っておったが、それを配下全員に使うことで、配下を強化しておる。数もおるからな、かなり厄介じゃ」

 強化された配下、問題はそれだけではない。義元が超長距離から、命中箇所を破壊する「仕留めの矢」を次々と放ってくるのだ。これに対処しながら、配下を退治。義元へと襲撃しなくてはならない。

「ただ、こちらにもよい材料はある。羅刹の里の者達に、強力を頼むのじゃ」

 里の羅刹達は戦闘能力は猟兵に劣るものの、山の地理に詳しい。からくり忍者軍団を撃退しながら義元の元へたどり着くルートを知っている可能性は高い。

「何にせよ、まずは羅刹の里で事情を話して協力を求めるとよいじゃろう。後はおぬしたち次第じゃ。よろしく頼むぞ」


波多野志郎
ふーりんかざーん!(絶叫) どうも、波多野志郎です。
今回は山の羅刹の里を狙う幹部猟書家今川義元とその配下達と戦っていただきます。

まず第一章は羅刹に協力を得て、有利な地とルートを知るのが重要です。戦闘スタイルによって、有利な地は違うでしょう。そのあたり、キャラ性とアイデアで勝負いただければ幸いです。

それでは、戦国の臭い立ち込める戦場でお待ち致しております。
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第1章 集団戦 『からくり忍者軍団』

POW   :    からくり・自己犠牲術
【死角から超高速で接近し、忍刀】による素早い一撃を放つ。また、【壊れたパーツを破棄する】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    からくり・自己複製術
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【からくり忍者】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    からくり・麻痺拘束術
【麻痺毒の煙幕爆弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖】で繋ぐ。

イラスト:なかみね

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鹿村・トーゴ
捨て身の絡繰り忍に信玄公憑けるとか悪りぃ奴だ

いきなりで信じて貰えるか解んねーが実はこの郷を皆殺しにしようって軍が来てる
【聞き耳】で得た敵方向をさし
オレら羅刹を恨む亡霊とそいつに操られた絡繰り忍共だ
高所から岩砂礫や水、材木なんかで足場を悪くして
絡繰りに詰まれば儲けモンか
郷の人には後方から投げ武器の援助して貰った上攻めてやろーと思うんだが…敵に見え辛いとか背後の心配か少ない
もしくは奴ら間近に接近できる抜け道…そんな所って有る、かな?

>敵
仕掛けの合間UC使用【念動力】も使い回転させたクナイと手裏剣を【投擲】
それを追って接近
【野生の勘】で躱すが被弾承知で【串刺し/暗殺/カウンター/激痛耐性】

アドリブ可


エスタシュ・ロックドア
よう同族、助太刀に来たぜ
この辺りに崖に挟まれたような狭い谷合はあるかぁね
なんかあってもすぐにゃ逃げられねぇような

ここも俺の実家じゃねぇ、か
だからって何か変わるわけでもねぇがな
行くぜ

敵に押されて谷合に入り込んじまった風を演出して油断させる
フリントもうまく振りぬけねぇって感じで【地形の利用】
今川の矢はフリントを盾に防ぐ
敵が攻撃してきたら敢えて喰らう
【激痛耐性】で耐えつつ【カウンター】
『群青業火』発動
至近距離で業火を【範囲攻撃】で浴びせて【焼却】
逃げる奴がいたら鴉衣纏って【空中浮遊】
宙を踏んで【ダッシュ】で追いかけ、
今度こそフリントを振るって【なぎ払い】【吹き飛ばし】

誰一人として同族は殺させねぇよ



●羅刹の里にて

 今川義元とからくり忍者軍団――その侵攻を、羅刹の里とて気付かない訳がなかった。

「どういう事だ、あれは!?」
「……さてな」

 慌てる者、動じぬ者、逃げ出そうとする者、戦おうとする者。反応はそれぞれだが、誰もが共通している事は、敵を理解していないと言う事だ。

「まさか、幕府が……?」
「将軍様はそんなお人じゃねぇ。だとすりゃあ別口だ!」
「――逃げるか?」
「子供や年寄り連中が、この深い山で逃げ切れるとでも?」

 集まった羅刹達は、次々と意見を交わす。いや、垂れ流すと言った方が早いか。正しい答えなど、この場にはない。だからこそ、唯一の正解も否定される。

「……戦う、か?」
「あの数に勝てるとでも?」

 当然だ。戦力が足りない。だから、この正解も間違いとして切り捨てられる――そのはずだった。

「よう同族、助太刀に来たぜ」

 そんな羅刹達の前に現われ、エスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)はそう告げた。身構える羅刹達に、その隣にいた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が続ける。

「いきなりで信じて貰えるか解んねーが実はこの郷を皆殺しにしようって軍が来てる」
「――それで?」

 羅刹の若者が、村を代表するように前に出た。その鋭い視線を受けながら、トーゴはまっすぐに今川義元の軍の方を指差し答える。

「オレら羅刹を恨む亡霊とそいつに操られた絡繰り忍共だ」

 ざわり、と羅刹達がざわめく。羅刹を恨む亡霊、その言葉に大きな動揺と――小さな納得が、彼等にはあった。

「この辺りに崖に挟まれたような狭い谷合はあるかぁね。なんかあってもすぐにゃ逃げられねぇような」
「もしくは奴ら間近に接近できる抜け道…そんな所って有る、かな?」

 エスタシュとトーゴの言葉に、羅刹の若者は目を細める。

「戦う気か? だが――」
「仲間達もこっちに向かっている。勝算はある」

 若者の言葉を先取りするようにエスタシュは答える。それに羅刹達は、視線を交わす。若者へそんな村の人々の視線を背負い、うなずいた。

「……わかった。協力する。いや、させてくれ」

●疾きこと、風のごとく

 からくり忍者軍団が、険しい山を超えていく。先行する彼等は、ただただ速い。その動きは峡谷を吹き抜ける風のように、険しい道を苦ともしない。

 先行し、まずは羅刹の村の退路を立つ――それが彼等、からくり忍者軍団『風』の担当だった。

『――――!?』

 だが、その一団の動きが一瞬乱れた。ヒュ、ガガガガガガガガガガガガガガガ!と上空からクナイや投擲武器が降り注いだからだ。だが、からくり忍者軍団達はそれを紙一重でかわした――はずだった。

「逃がすかよ!」

 里の羅刹有志による投擲と、自らの羅刹旋風で威力を上げたクナイに混じりトーゴがそこへ舞い降りていた。逆手に構えたクナイが、かわしたからくり忍者軍団の手脚を切り裂き、動きを封じていく――そうなれば、羅刹有志の投擲が次々と動けないからくり忍者達へと突き刺さっていった。

『――――』

 からくり忍者軍団は身を低くその場を抜けようとするが、道は既に岩砂礫や水、材木で塞がれている。このままでは抜けられない、それを悟りながらからくり忍者軍団は構わずそこを抜けようとした。

 ヒュン……と上空で鋭い風切り音がする――今川義元の、超々遠距離射撃だ。その矢が道を塞ぐ障害物を打ち砕くのを見越しての行動だった。

 だが、その矢の前に飛び出す者がいた。エスタシュだ。

「お――!」

 エスタシュが、義元の矢を盾のように構えたフリントで受け止めた。しかし、矢は止まらない。エスタシュは肘の打撃でフリントの向きを強引に変えると矢を逸らし、そのまま瓦礫に叩きつけられた。

(「――ここも俺の実家じゃねぇ、か」)

 ガラ……、と自分に覆いかぶさってくる瓦礫をどけてエスタシュは立ち上がる。こちらへ向かってくるからくり忍者達へ、まっすぐに立ち向かった。

「だからって何か変わるわけでもねぇがな。行くぜ」

 群青業火(ブレイズアズール)の群青色の炎が、火柱のごとく吹き荒れる。フリントを構え突っ込むエスタシュに合わせ、トーゴもまた挟撃するようにからくり忍者軍団へ迫った。

「誰一人として同族は殺させねぇよ」
「捨て身の絡繰り忍に信玄公憑けるとか悪りぃ奴だ!」

 激しい激突、それはこの山における今川義元軍と猟兵・羅刹達との戦闘の始まりを告げる狼煙となった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

梟別・玲頼
山岳、か
大自然の中、森の中ならオレの領域…なーんてな

羅刹の中でも猟師をしている者がいれば狩場について聞く
通行可能な木々の間や藪の少ない場所っておのずと獣道と化している筈
森の範囲も含めて簡単に地図に起こして覚えておくぜ

教えて貰った獣道の狩猟ポイントで木陰に隠れ、駆けてくる忍者達を狙撃、弓で射抜く
死角はこっちが先に戴くぜ?
敵の攻撃はUCで纏った風の結界で防ぎ、接近してきたら刀抜いて迎撃

ある程度倒したら、なるべく義元の矢に狙われないように森の木々に身を隠し、枝の隙間を縫う様にして別ポイントへ
移動時は鳥形態

山々と共に生きる羅刹の者はかつてのアイヌと重なる
ならば私が護らぬ道理は無い…全力を尽くすのみだな


月舘・夜彦
【華禱】
武田信玄が憑装したからくりとは……羅刹の彼等でも時間の問題です
倫太郎、貴方も羅刹なのですから気を付けてください

羅刹が襲われていれば間に入って援護
武器受けによる防御や手裏剣といった投擲武器は武器落としにて対処

羅刹達には猟兵であること、今川が弓で狙っていることを伝える
からくりの攻撃や弓を防げる木々や障害物がある所
彼等にはそちらで戦うよう指示

敵からの攻撃は羅刹を援護した時と同様武器受け・落とし、その後カウンター
敵が怯んだ所で早業の二刀流剣舞『襲嵐』
確実に一撃目を当て、鎧砕き併せ周囲の敵を一掃

剣舞を放った後、羅刹達と合流
弓は視力・聞き耳を活用し瞬時に対応、武器落としとなぎ払いで矢を叩き斬る


篝・倫太郎
【華禱】
段々腹立って来てンだけど、俺……
明らかに私怨で性根が女々しい

っと、判ってる

隠れ里の羅刹に接触
交戦中の場合は割って入り
攻撃は吹き飛ばしを乗せた華焔刀のなぎ払いで弾く
弓矢を使うのに適した場所や防ぎやすい場所なんかを手早く確認

拘束術使用
敵の本体に鎖で攻撃と同時に拘束と死角のフォロー
破棄しても本体が戒められてりゃ動けねぇだろ

夜彦の死角をフォローしつつ
華焔刀で範囲攻撃
刃先返して2回攻撃で傷口をえぐる

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避する事で夜彦に命中の可能性がある場合は
その場でオーラ防御を展開し防ぐ
負傷は激痛耐性で耐える

援護射撃は聞き耳と野生の勘で警戒
拘束術で射線をズラす
夜彦との情報共有は密に行う


支倉・新兵
超長距離を弓で狙撃か
…いいだろう、狙撃屋と弓取り、超遠距離狙撃戦と行こう

羅刹達には先ずは俺が陣取る為恰好の狙撃地点となる位置を教えて貰う…その上で向こうからの『超長距離狙撃』を警戒し身を隠し迷彩コートも起動
ドローンは…展開しておこう…ある程度周辺地形も羅刹に聞けるだろうが索敵以外の用途…囮として利用…『弓取り』が誘いに乗って手を出す…射貫いて来るようなら射角から位置を特定できるかもしれない

狙撃地点から羅刹の助力とドローンからの中継、更にターゲットデバイスによる目視により地形把握、弾道計算の後UC発動…超遠距離から忍者軍団を狙撃…開けた場所は勿論、遮蔽物が多い地形に隠れようとも跳弾で逃しはしない


秋津洲・瑞穂
治部大輔殿ですか。
あまり戦いたくはないけれど、オブリビオンでは仕方ないわね。

ともあれ旅行李の巫女装束に着替えて、村へ向かおう。
お伊勢に仕える霊狐だと名乗れば信も得られるでしょう。
ルートは大雑把でいい。拓けた地の場所を訊こう。
土がむき出しの場所が一番いいわ。

忍軍には狐火を。毒耐性10/医術20に加えて、狐の印籠から
取り出した毒消しを含んでおけば麻痺はない。
煙幕はどうでもいい。聞き耳10の狐は音だけで戦える。

仕留めの矢に対しては、神獣刀で地を抉っておいて、
ちんまい仔ぎつねに変身して飛び込めば済む。
トンネル掘り20で神出鬼没の地中移動もできるしね。
爆弾も含め、避けられなければ残像40だってあるわ。


ルカ・ウェンズ
羅刹の里の皆さんに、仲間の昆虫戦車が隠れられる場所を何箇所か教えてもらい、その次に私が虫の本で呼び出した昆虫型機械生命体の群れに敵を偵察してもらうわ。戦車の射程内に入ったら【一斉発射】で忍者軍団を破壊、続けて昆虫型機械生命体の群れは敵に噛り付き、私は【オーラ防御】で身を守り、変形式オーラ刀を銃に変えて敵を攻撃して残りも破壊しないと。

敵に近寄られたら【怪力】任せに殴りつけて敵を破壊してやるわ。
からくり忍者軍団を全滅させたら昆虫戦車に別の場所に隠れてもらい次の戦いの準備をしないとね。



●静かなること、林のごとく――

 先遣隊がまず、逃げ道を封じる――からくり忍者軍団『風』がその任に当たっている頃、からくり忍者軍団『林』は隠密行動で身を隠し、進んでいた。

 遥か後方、からくり忍者軍団『山』がその姿を見せて意識を釘付けにする。その隙に致命的なまでに懐に忍び込み出鼻を挫く、それがからくり忍者軍団『林』の役割だった。

「本当、考えてくるわね」

 その隠密駆動を解き放った虫の本で呼び出した昆虫型機械生命体の群れで知覚したルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)が、小さくこぼす。羅刹の里で仲間の昆虫戦車が隠れられる場所を何箇所か教えてもらっていなければ、先に知覚されてこうも上手く先手は取れなかっただろう。

 そして――からくり忍者軍団『林』がある一点を通り過ぎた瞬間、ルカは指令を下した。

「一斉掃射」

 隠れていた昆虫戦車達の砲弾が、からくり忍者軍団『林』達へ降り注ぐ! ドドドドドドドドドドドォ! と鳴り響く鈍い着弾音。森の一角を吹き飛ばすほどの砲撃に、からくり忍者軍団達は散開しようとする。

 その内一体を、不意の矢が射抜いた――梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)だ。

「死角はこっちが先に戴くぜ?」

 獣道を苦もなく駆け、玲頼は新たな矢をつがえる。既に頭の中には羅刹の里で描いてもらった森の地図が、頭に入っていた。

『……あんたなら、このぐらいの情報は必要だろう』

 羅刹の里の狩人が、言葉少なにそう告げた。その地図は見事なものだった。風向きや日の位置、高低、矢の射程、隠密のレベルなどを考慮した、事細やかなものだ。そして、狩人の見込みの通り――否、それ以上に情報を活かし、玲頼はからくり忍者軍団達の死角へ死角へ移動し、射抜いていった。

(「山々と共に生きる羅刹の者はかつてのアイヌと重なる」)

 木々に身を隠し、シマフクロウの姿で玲頼は飛ぶ。森を見れば、狩人がどれだけ自然と共に生きようとしていたかよくわかる。あるがままの形を残し、その中で狩った糧に感謝を捧げ日々生きる――それは極寒の地で生きる、アイヌの姿とよく似て懐かしさすら感じた。

「ならば私が護らぬ道理は無い……全力を尽くすのみだな」

 人の姿に戻り、木の枝へ着地。すぐさま玲頼は矢を射ていく。

「ここは行かせないわよ」

 変形式オーラ刀を銃に変え、ルカは昆虫型機械生命体の群れを引き連れて前に出た。からくりの体を機械生命体達は食いちぎり、動きを止めたところをオーラの銃弾が撃ち抜いていく。

 森を舞台に、ルカと玲頼は次々とからくり忍者軍団『林』を破壊していった。

●侵略すること、火のごとく――

 からくり忍者軍団『風』が退路を断ち、『林』が知られずに展開する包囲部隊だとすれば、続く『火』の部隊はわかりやすく殲滅のための戦力だった。

「武田信玄が憑装したからくりとは……羅刹の彼等でも時間の問題です」

 その侵略の動きを見て、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は静かに呟いた。からくり・自己犠牲術――敢えて自らを壊し、そのパーツを捨てて加速するからくり忍者軍団『火』の火力と速度は、凄まじいものがあった。

「段々腹立って来てンだけど、俺……明らかに私怨で性根が女々しい」

 不機嫌を隠しきれず、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が吐き捨てる。その言葉に、夜彦は宥め窘めるように言った。

「倫太郎、貴方も羅刹なのですから気を付けてください」
「っと、判ってる」

 羅刹の里で、彼等は協力を約束してくれた。そんな彼等の想いを無駄には出来ない――ヒュオン、と華焔刀 [ 凪 ]を構えて倫太郎は告げる。

「行くぜ、夜彦」
「ええ」

 同時、示し合わせたように二人が走り出した。森の中を突っ切り、迫るからくり忍者軍団『火』の前へと――。

『―――!?』

 ジャララララララララララララララン! と先頭を駆けていたからくり忍者が災いを縛る見えない鎖によって、動きを封じられる――倫太郎の拘束術だ。

「破棄しても本体が戒められてりゃ動けねぇだろ」
「振るう刃は、嵐の如く」

 侵略の速度が落ちた瞬間、逆に夜彦は加速する。繰り出されるのは、二刀から放たれ飛来する斬撃。からくり忍者軍団に届いた直後、ゴォ!! と嵐のように広範囲を巻き込む無数の斬撃が、からくり忍者軍団達を飲み込んだ。

「今だ!」

 倫太郎の指示に合わせ、森に隠れた羅刹達のクナイの投擲が降り注ぐ。一投一投が、弾丸のような射程を持つ重い投擲だ。ただ、それでも倫太郎と夜彦の足止めがなければ当てるのは、至難の技だっただろう。

 そして、当たりさえすればそれは十分な威力を発揮する。体のパーツを分離していくからくり忍者軍団は、身軽になって加速。クナイをかわすが、そこへ倫太郎が華焔刀 [ 凪 ]を豪快に振るい、両断していった。

「いい援護です」

 そして、倫太郎の背を守るように夜彦が夜禱と霞瑞刀 [ 嵐 ]を振るい死角に回ろうとするからくり忍者を斬り伏せる。羅刹達の援護がからくり忍者軍団の足を止めれば、後は倫太郎の華焔刀と夜彦のニ刀で処理できた。

 しかし、相手はからくり軍団だけではない――ヒュオ……! と遠くからする風切り音。羅刹達が身を隠している森へ、今川義元の矢が迫ろうとしていた。

「させるか」

 その矢を倫太郎は拘束術で縛り上げ、即座に夜彦が二刀流剣舞『襲嵐』で消し飛ばす!

「もう少しで、向こうも配置につくはずだ。食い止めるぞ」
「ええ、お任せを」

 倫太郎の言葉に、夜彦は彼の死角を補いながら答える。からくり忍者軍団『火』は、恐れを知らず襲いかかってくる――その姿は、まさに全てを飲み込もうとする火に似ていた。

●動かざること、山のごとし――

 最後尾、からくり忍者軍団『山』の役目は威圧と駄目押しだった。ゆっくりと圧潰するように迫るからくり忍者軍団を見て、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)はため息をこぼす。

「治部大輔殿ですか。あまり戦いたくはないけれど、オブリビオンでは仕方ないわね」

 今川義元――戦国時代において、その勇名は全国へと鳴り響いていた。海道一の弓取り――その名は、決して伊達ではない。桶狭間の戦いで織田信長の奇襲が失敗していたとしたら? 歴史にIfが許されるのなら、天下統一にもっとも近かった武将を挙げる時、今川義元はその筆頭であっただろう。

 ヒュオ――! と義元の援護射撃が、遥か後方から射られる。その矢が、不意に空中で弾けて消えた。

「超長距離を弓で狙撃か……いいだろう、狙撃屋と弓取り、超遠距離狙撃戦と行こう」

 狙撃ライフル型アサルトウェポン【ハティ】を構えたまま、支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)はこぼす。矢を撃ち抜いたのは、新兵の狙撃だ。ただし、ただの狙撃ではない。サングラス型ターゲッティングデバイスで、周囲に展開した戦術ドローン【ハミングバード】から得られるありとあらゆる情報をフィードバック、それを元にした超々遠距離からの精密狙撃だ。

「弾道、入射角……オールグリーン」

 跳弾狙撃(リコシェスナイプ)による、跳弾を計算に入れた新兵の狙撃が今度は逆に撃ち込まれた――そして、戦術ドローン【ハミングバード】から得られた観測情報は、跳弾を矢が迎撃したというものだった。

(「凄まじいな……本当に矢か?」)

 音速を優に超える弾丸が、角度を変えて迫るのだ。それさえ計算に入れて、矢を弾丸軌道上に置く――新兵からして、凄まじいというしかない弓の腕前だった。だが、それでこそと思う新兵もそこにいた。

「なら、付き合ってもらおうか。これだけの超遠距離狙撃戦はそうそう体験できない」

 当然だ、それほどの腕前の狙撃手が戦場で会敵する事など、人生において片手の指ほどあれば奇跡といえる。

「向こうは任せてよさそうね」

 義元の援護射撃に注意を払わなくていいのなら、瑞穂は眼前のからくり忍者軍団『山』に集中すればいいだけだ。ボボボボボボボボボンッ! と八十を優に超える狐火を瑞穂はからくり忍者軍団へと解き放つ。

 無数の爆炎が巻き起こる中、からくり忍者軍団はクナイや手裏剣の投擲で反撃した。瑞穂はすぐさま、神獣刀でえぐっておいた地面の穴へと小狐となって飛び込む。そして、その穴の中で呟いた。

「わざわざ拓けた場所で相手してくれて、ありがとう」

 張り巡らせた穴を駆け抜け、瑞穂は狐火を生み出しては穴の外へ。からくり忍者軍団へと撃ち放っていった。動かず密集していれば、対処さえしていればいい的だ。瑞穂は地中を移動しながら、狐火の爆撃で加速度的に敵の数を減らしていった。

 風林火山――武田信玄の魂を宿すからくり忍者軍団は、ことごとく数を減らしていく。その魂のみでは、武田信玄たり得ないのだと、そう証明するように。
 その殲滅劇が終わるまで、そう時間がかかる事はなかった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『今川義元』

POW   :    仕留めの矢
【大弓の一矢】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    鷹の目
【大弓】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【癖】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    飛鳥墜とし
対象のユーベルコードに対し【、蹴鞠の要領で体勢を崩すほどに強烈な蹴り】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ケーレス・ネメシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●海道一の弓取り

「なるほど、信玄よ。お前達が敗れた訳だ」

 今川義元は、完全に殲滅されたからくり忍者軍団に一人呟く。遊びが過ぎた、と言えばその通りだろう。久しく弓で競える相手がいなかった、だから遠撃ちを楽しみすぎたかもしれない……義元は、苦笑する。

 戦国の世で武芸者と言えば刀ではなく、槍と弓こそが勇名を轟かせるものだった。槍は長く、馬上でも活かせた。弓は遠くの敵さえ射殺す事が出来た。どちらも、多数対多数の戦場でこそ、真価を発揮する武具であった。

 だからこそ、海道一と呼ばれた弓の名手である義元の実力は確かなものだった。

「弓だけでないところも証明してみせよう、猟兵達よ」

 義元が、前へと進む。海道一の弓取りの、進軍が始まった。
エスタシュ・ロックドア
義元殿の御前に立てること、誠に恐悦至極
いざ参る――ってな

『羅刹旋風』発動
【怪力】でフリントぶん回しつつ、敵に向かって【ダッシュ】
矢が飛んで来たら【カウンター】【なぎ払い】【吹き飛ばし】
フリント振るって弾き飛ばしてやる
地獄の炎にも耐える鉄塊剣、そうそう破壊できやしねぇだろ
それでも当たりゃ【激痛耐性】で耐える
立ち止まりゃしねぇ、そのまま突っ込む
接敵したらフリントを下から地面えぐりつつ、
逆袈裟に振り上げて攻撃だ
おう、目つぶし目当て
したら続けざまに大上段から真っすぐ振り下ろすぜ

卑怯などと申されますな
ここは戦場
取れる手は全て取り、全力で当たるが礼儀と言うものでしょうや
それが御身の恨みの根源であろうとも



●六道最下から天上の彼方へ

「弓だけでないところも証明してみせよう、猟兵達よ」

 今川義元が、前へと進む。海道一の弓取りの、進軍が始まった。その瞬間だ――エグゾースト音を響かせ、その場へと迫る者がいたのは。

「義元殿の御前に立てること、誠に恐悦至極。いざ参る――ってな」

 先陣を切ってそこへ至ったのは、抜け道を愛機シンディーちゃんを駆るエスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)だ。頭上で片手一本でフリントを豪快に振り回すその姿は、まさに飛ぶ大鴉さながら、森を抜けてエスタシュが義元へ迫った。

「羅刹か」
「それがどうした!」

 振り返りざまの一矢が、狙いを違わずエスタシュの頭を射抜こうとした。羅刹旋風で振り回していたフリントを眼前に構え、エスタシュは受け止める!

「地獄の炎にも耐える鉄塊剣、そうそう破壊できやしねぇ――!?」

 だろ、と続けようとした瞬間、ガン! と衝撃にエスタシュはのけぞった。フリントは矢を受け止める事に成功した。しかし、その威力に弾かれ、自身の額に激突したのだ。

「石頭めが」

 義元の呟きには、呆れと感嘆が込められていた。本来なら鉄塊など射抜き、頭を貫いていたはずだ。だが、武具は主の信頼に応え、また振るい手も怯む事なく鉄の馬を加速させたからだ。

「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 ジャ、リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ! とフリントの切っ先を引きずりながら走ったエスタシュが、逆袈裟に振り上げた。ただ、間合いが遠い――狙いは、巻き上げられる土と石による目潰しだった。

「む」

 弓を払い、義元はその目潰しを払う。次の瞬間、振り上げたフリントをエスタシュが振り下ろしていた。義元はその振り下ろしを紙一重でかわすと、横へと駆け出した。

「ふはは! 私が死んだ後に信玄めに謙信が一騎打ちを挑んだと言うが――それ気取りか!」
「卑怯などと申されますな。ここは戦場、取れる手は全て取り、全力で当たるが礼儀と言うものでしょうや――それが御身の恨みの根源であろうとも」
「――よくぞ言った! 褒美にその首をはねてやるゆえ、来るがいい羅刹よ!」

 再び、Uターンしたエスタシュがフリントを下段に構える。コン、と懐から取り出した蹴鞠を蹴り上げ、義元は弓を構えた。

「猪であれば、飽きるほど狩った。違いを見せられるか?」
「御身が目で確かめられればよかろう!」

 笑みと笑みが交差し、激突する。海道一の弓取り今川義元が、渾身を持って猟兵達を迎え撃つ始まりの激突となった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
……私怨じゃん?
何が『なるほど』な訳?
武芸者だったとして、私怨で動く将は無能と同類じゃねぇか

ま、思う処がどうであれ、還すだけだ

燎火使用
召喚した神霊には攻撃力を重視した風の属性での先制攻撃を指示
同時にダッシュで近接
鎧砕きと吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返してフェイントを混ぜつつ2回攻撃

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時と回避する事で羅刹や夜彦に被害が及びそうな場合は
その場でオーラ防御で防いで凌ぐ
神霊の風属性の加護と念動力で射線をズラして直撃は防ぐ
負傷した場合は激痛耐性で耐えて
以降の攻撃には生命力吸収も乗せてく

夜彦の刃は俺の刃でもあるんだぜ?
確実の一撃、その身に刻んで還りやがれ


月舘・夜彦
【華禱】
生憎ですが……貴方も敗れる
武田を憑装させ、己は離れて弓を引けば良い
その結果、猟兵射貫けず、ただ一人
戦と言葉にするには、程遠い

羅刹達から貰った情報を活用し、障害物で弓を防ぎながら接近
普通の弓ではありませんので常に警戒を
障害物で防げなかった矢は視力と見切りで確認し、武器落としにて対処
攻撃を受けても激痛耐性にて耐え、体勢は決して崩さない

距離を詰めた所で駆け出して接近
2回攻撃のなぎ払いにて広い範囲で攻め、倫太郎と連携して仕掛けていく
弓以外の敵の攻撃は武器受けにて防御して、その後カウンター
敵の負傷時等、僅かに怯んだ所で早業の抜刀術『風牙一閃』

私の刃は彼在ってこそ真の刃と成す
この一撃は、その証明


鹿村・トーゴ
里の羅刹に先導を受け抜け道を【忍び足/地形の利用】活用し身を隠しながら敵へ接近
案内してくれた羅刹には礼を
どうか気を付けてくれよ、と

名を残す武将の必殺の弓が当たれば只じゃ済まねーからな
UCで強化
代償の流血はさっき倒した絡繰り忍の残骸に落とす
今川を目視したら血付きの絡繰りを数体【念動力】でヤツの背後からぶつけ襲わせる
同時に正面から岩や砂、手裏剣、流血を【目潰し】と撹乱に【投擲】
絡繰の後を追撃し近く低い位置からクナイを投擲
手持ちのクナイでも斬り付け【暗殺】
敵攻撃は【野生の勘】で極力躱すが
被弾時【武器受け/激痛耐性】でその場を何とかいなし【カウンター】で即クナイを間近から撃込み刺し斬り掛かる

アドリブ可


ルカ・ウェンズ
弓矢?>……もうそれはミサイルより強いと思うわ!別の世界では再評価されて名将として描かれているから成仏して。成仏しないならオブリビオンだから死んでもらわないと。

よかった!太原雪斎がいなくて本当によかったわ。う~んでも仕留めの矢で昆虫戦車が殺されると嫌だから昆虫戦車には帰ってもらって、私は【残像】で敵を惑わしながら素早く距離を詰めて攻撃するわ。

それと、この矢は直撃しなくても危険だと思うから【オーラ防御】を使い、矢が直撃したら真昆虫大戦争!これで肉体を毒虫の群れに変異させて敵に攻撃するわよ。これなら近づいても斬りつけにくいだろうし、指を食い千切られないから全力で攻撃することができるわ。


支倉・新兵
弓だけではない、ね
…生憎此方は狙撃(こいつ)だけだ、芸が無くて悪いが引き続き付き合って貰おうか

とは言え先刻までの狙撃での攻防とは違い、次から向こうは槍も使う…動いて近接戦闘を仕掛けてくる訳だ
此方は近付かれたら終わり…考えなしに撃ってもさっきみたいに迎撃されて徒に位置を悟られるだけ…一発で撃ち抜くつもりで行こうか

迷彩を展開、身を隠し狙撃体勢を取りつつ…スコープとデバイス、ドローンを駆使して位置と動きを探る
不用意には撃たずドローンを囮に牽制、誘いを掛ける…何機か墜とされるかもしれないが、寧ろそうしてくれれば向うの出方が分かる…必要経費だ

今川を捕捉し狙撃機会が来ればUC発動…一発きりの…取って置きだ


秋津洲・瑞穂
さて……本丸を落としに行きますか。

当面はトンネル掘りやら岩影やらを利用して静かに近付こう。
ある程度気付かれてはいるでしょうけれども、手間を省きたい。

行ける所まで行ったら、あとは脚で勝負するだけ。
狐の爆発的なダッシュは一瞬で最高速に達するわ。
速度さえあれば、野生の勘10/聞き耳10/見切り20も合わせ、
弓射を見てからでも半歩で躱せる。

大きく避けると速度が落ちるから、ぎりぎりを抜けるよ。
一度だけなら掠めてもオーラ防御40で止まるわ。
残像は最後の最後まで取っておく。

間合いに入ればわたしの勝ちよ。
残像40からの鎧無視攻撃40/2回攻撃40/剣刃一閃、
秋津洲流一の太刀・一刀二斬を喰らいなさい。
「推参!」


梟別・玲頼
教科書じゃサラッとしか触れないし、他の武将が規格外の逸話多いせいで有名度合いがどうしても…だけど
文武両道で優秀だったんだよな、この人

弓取りを称されるアンタ相手に弓で挑むとか
…ナメてると思われても仕方ねぇかな
ただ、今は多数対多数じゃなくて少数対一人
そしてオレの弓矢は獲物を狩る為のもの
戦の弓術とはまた違う

弓は大きい程、弾く力も狙いも必要だろ?
的を絞らせない為に移動しながら風矢を放ち、飛んでくる矢を迎撃
手数はこちらのが多い…風矢が当たったら、相手のその時の所作を読む
回避の動きから奴の死角と先の動きを予測

風の力を乗せて、弓より矢を射る
曲線描いて、背中に矢をぶっ刺してやるぜ
そっちが鷹なら此方は梟の目だな



●戦う理由、その意味を――

「どうか気を付けてくれよ」
「……そちらこそな」

 獣道を案内してくれた里の羅刹と短い別れを交わし、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は今川義元を見た。かつて、その名を轟かせた戦国武将――その成れの果てを。

「……私怨じゃん? 何が『なるほど』な訳? 武芸者だったとして、私怨で動く将は無能と同類じゃねぇか」

 そう吐き捨てたのは、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)だ。どんな理由、どんな意味があったとしても羅刹に対する動機に、私怨がないと何故言えるのか? それが倫太郎には納得がいかなかったのだ。

「ま、思う処がどうであれ、還すだけだ」
「ほう、また来たか」

 義元は、聞こえていただろう倫太郎の言葉を否定しなかった。そして、肯定もまたしない。オブリビオンであるその身こそが、答えだからだ。

「生憎ですが……貴方も敗れる。武田を憑装させ、己は離れて弓を引けば良い。その結果、猟兵射貫けず、ただ一人……戦と言葉にするには、程遠い」

 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)のその鋭い舌下に、義元は弓を構える。ぎしり、と弦を鳴らしながら、矢を射た。

「一人がどうした? この戦、この身が落ちぬ限り負けではない」

 ドォ! と森の一角が、矢によって削り取られる。舞い散る木片と大地、それを見てルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)が唸った。

「弓矢? ……もうそれはミサイルより強いと思うわ! 別の世界では再評価されて名将として描かれているから成仏して。成仏しないならオブリビオンだから死んでもらわないと」
「教科書じゃサラッとしか触れないし、他の武将が規格外の逸話多いせいで有名度合いがどうしても……だけど。文武両道で優秀だったんだよな、この人」

 梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)の言葉の通り、今川義元は織田信長に桶狭間の戦いで敗れた武将である、というのが大体の共通認識である。しかし、桶狭間の戦いで信長が義元を討てなかった場合、もっとも天下に近かったのはこの武将であったはずだ、とも見解を示している歴史家も少なくない。

 清和源氏の正統、足利将軍家の分家という血筋――征夷大将軍になれるのは源氏か平家の血に連なる者という不文律がある――、武田信玄や北条氏康と血縁を結び、自らの代には駿河や遠江から、三河、尾張の一部に至るまでその勢力を拡大させ東海道の大部分に支配した今川家最盛期の立役者である。その政治的手腕、さまざまな行政改革を果たした点において、内政においても有能であるとされ、大いに領地の発展に貢献している。特に、当時の覇権を得る絶対条件である京へと至る東海道を支配下に置いたという点でもその先見の明は確かだったと言えるだろう。

 よりわかりやすく言えば、かの武田信玄や上杉謙信、織田信長に並ぶと評された武将でもある――そう語れば、この今川義元という武将の凄まじさが理解できるだろうか。

「後世の評価など、どうでも良い。今、この弓と我が武勇で今川義元という武将の武を示そうぞ」
(「弓だけではない、ね……生憎此方は狙撃(こいつ)だけだ、芸が無くて悪いが引き続き付き合って貰おうか」)

 迷彩を展開し、支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)が狙撃ライフル型アサルトウェポン【ハティ】を肩に担ぎ、走り出す。狙撃手の仕事は狙って、撃って、走る事だ。新兵は、その基本を誠実にこなす、それだけだった。

「どうでもいい、終わらせるぞ」
「ええ」

 言い捨てる倫太郎に、夜彦も答える。義元もまた、それを再び放った一矢で応えた。

●海道一の弓取り、その名が示すもの

(「さて……本丸を落としに行きますか」)

 小狐の姿のまま、地中のトンネルを秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)は抜けていく。時折、地面が揺れるのは義元の矢が炸裂しているからだろう。

(「ある程度気付かれてはいるでしょうけれども、手間を省きたい」)

 あの矢は、もはや理不尽な暴力だ。そんなものをまともに相手にする必要もない――ただ、それは真っ向から向かってくれる仲間がいるからこその策だった。

「弓取りを称されるアンタ相手に弓で挑むとか……ナメてると思われても仕方ねぇかな。ただ、今は多数対多数じゃなくて少数対一人、そしてオレの弓矢は獲物を狩る為のもの。戦の弓術とはまた違う」

 クンネチュプ・ク――月の弓の意味を持つ淡い金色を帯びた弓を手に、玲頼は駆ける。そして、義元の矢の爆撃をかいくぐり、風斬りの矢羽根を矢に変えて引き絞った。

「弓は大きい程、弾く力も狙いも必要だろ?」

 ヒュオン! と的を絞らせないために移動しながら、玲頼は風矢を放つ。飛んでくる義元の矢を、いくつもの風矢が迎撃。射落とす必要はない、風で煽り軌道を逸らすだけで良いのだ。結果、頭上を義元の矢が飛び抜け、森を吹き飛ばした。

「面白い矢だ。その羽根をむしれば私でも使えるのか?」

 だが、義元は構わない。玲頼の読みは正解だ。しかし、それはあくまでただの強弓であった場合の事。この海道一の弓取りにとって、一矢放つだけで十分――意味があるのだ。

「よかった! 太原雪斎がいなくて本当によかったわ」

 爆風をオーラの防御で防ぎながら、ルカがこぼす。その名に、義元が目を細めた。その目に宿るのは、懐かしさだ。

「ほう、崇孚の名も語り継がれていたか」
「ええ、太原雪斎さえいれば桶狭間の戦いの敗北もなかったって言うわよ?」
「はは! 耳が痛い。私としては、信長を褒めてやりたいがな」

 軽口を叩きながら、義元は矢を射続ける。ただ、少し威力が増した気がするのは、気の所為だろうか?

「災禍を祓い、往くべき先を照らし示せ」

 倫太郎の燎火(リョウカ)によって召喚された始祖の神霊が、風を吹かせる。その風に乗るように、夜彦が前へ出た。

「――ッ!!」

 夜彦の振るった夜禱の切っ先が、矢を捉える。ギン! と両断された矢が背後で2つの小さな爆発を起こした。そのまま、倫太郎の燎火の導きに従って夜彦が駆け抜けようとした、その刹那。

 ダン! と夜彦は紙一重で霞瑞刀 [ 嵐 ]で自身の顔面を狙った蹴鞠を弾く! バックスピンのかかった蹴鞠は、そのまま弧を描いて義元の元へと戻っていった。

「名を残す武将の必殺の弓が当たれば只じゃ済まねーからな」
「当然だ」

 降魔化身法によって自身を超強化するトーゴの言葉を、義元は肯定する。そして、再び矢を射て言い放った。

「死を恐れずば来い。私とお前達の距離、東海道よりも遠いと知れ」

●遠き道を駆け抜けて――

 ――いくつものドローンが、的確に射落される。それを確認しながら、新兵は走り続けた。

(「此方は近付かれたら終わり……考えなしに撃ってもさっきみたいに迎撃されて徒に位置を悟られるだけ……一発で撃ち抜くつもりで行こうか」)

 その瞬間、ふと玲頼と新兵の視線が合った。一秒にも満たない視線の交差、だが、それは新兵の足を止め、狙撃体勢を取らせるのに十分だった。

(「――任せた」)
(「――任された」)

 玲頼が、クンネチュプ・クを引き絞る。義元の矢へと数発の矢を射て、軌道を逸らす――幾度目かのやり取り、そのはずだった。

「――ぬ!」

 だが、今回は違った。義元が、わずかに体勢を崩す。玲頼の風矢の一本が曲線描いて、義元の背に突き刺さったのだ。

「そっちが鷹なら此方は梟の目だな」
「魅せて、くれる――!」

 だが、義元もただ矢を受けたのではない。自身の矢筒を盾に、玲頼の風矢を受け止める事に成功していた。だが、矢の威力は殺しきれない――体勢を崩すのは、当然の流れだった。

 ――だからこそ、その瞬間を新兵は見逃さない。

「……一発きりの……取って置きだ」

 最後から二番目の手段(ラストスナイプ)による狙撃が、義元の眉間へ放たれた。義元は咄嗟に爪先で蹴鞠を蹴り上げ――蹴鞠で、銃弾を受け止める!

「頭を使う、とはよく言ったものだ!」

 蹴鞠を額で受け止め、義元は吹き飛ばされた。だが、ハティの銃身が歪むほどの一撃を眉間に直撃を受けていれば確実に死んで終わりだった――それを防いだだけで、神業と言えた。

 義元は地面に転がりながら、矢を射る。その矢を敢えて受けたのは、ルカだ。

「戦争反対~」

 ルカの真昆虫大戦争は、射抜かれた肩かたら毒虫の群れに変異させて義元を襲わせた。義元の強弓に、毒虫が這い回る。それを義元が矢で払おうとした間隙に、地面の穴から瑞穂が飛び出した。

「推参!」

 瑞穂の神獣刀、秋津洲流一の太刀・一刀二斬がついに義元の体を捉えた。切り裂かれた義元は、しかし、なおも覇気を高め立ち上がる!

「それでこそ、ならばこそよ!」

 弓から手を離し、義元が前蹴りを放った。その袴から放たれる蹴りは、出足が見えにくい。瑞穂はそれを最小の動きで回避するも、その隙に義元は大きく後方へ跳んだ。そして、着地寸前で蹴鞠を蹴る――ズザン! と蹴鞠がバックスピンで返ると、弓を弾いて主の手へと戻して見せた。その衝撃で毒虫を振り払う事に成功すると、即座に義元は矢を射た。

「――行け!」

 トーゴがクナイを投擲すると同時、背後から半壊したからくり忍者達が義元へ襲いかかる。トーゴの血を受け、念動力で操って襲わせたのだ。クナイを矢で射落とした義元は、バックハンドの要領で弓でからくり忍者達を破壊し――。

「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 そのまま一回転! 華焔刀 [ 凪 ]を繰り出した倫太郎と弓で鍔迫り合いする。そして、倫太郎は義元の弓を迷わず掴んだ。

「夜彦の刃は俺の刃でもあるんだぜ? 確実の一撃、その身に刻んで還りやがれ」

 義元が振り払おうとする――だが、それよりも刹那速く。夜彦は、鞘に納めた夜禱の柄を手に踏み込んだ。

「私の刃は彼在ってこそ真の刃と成す。この一撃は、その証明」

 抜刀術『風牙一閃』、夜彦の神速の抜刀術が義元の胴を弓ごと切り裂いた。義元は、弓から手を離さない。しかし、力なくその場に膝から崩れ落ちた。

「は、は……この『私』は……また、届かぬ、か……だが、まだ、おわら……ぬ……」

 風に乗って、灰となった義元が掻き消えていく。その口元に満足げな笑みを浮かべたまま海道一の弓取り、そのオブリビオンは消滅した……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月22日


挿絵イラスト