『僕の名前はレモネード・ボーイ。アウトドア少年、少女たちのヒーローさ――』
想い出の中の彼のまばゆく光る歯は、真夏のレモンをきりりとかじった。
私? 私はマシュマロ・ガール。あの夏、レモネード・ボーイに憧れた少年たちの中で、ただ一人ヴィジランテになった女。
彼は子供たちが好きで、子供たちが集まって活動するアウトドアの場をいつもパトロールしていた。子供たちの安全を守ることがこの街の未来を守ることだからと言って。そして予測のつかない悪事を働くものたちへの抑止力になっていたのだ。
けれどある日を境に彼の必殺技に巻き込まれて子供たちが大勢怪我をするようになった。助からなかった子供もいる。
レモネード・ボーイは変わってしまった。みんな口々に言うけれど。私にはわかるの。あれはレモネード・ボーイを騙る誰か。あの輝く笑顔を誰より近くで見つめていた、私にはわかるのだ。
●「猟書家たちが動き始めているヨ」
集まった猟兵達を見回したロバート・ウォン(東方妖怪の猟奇探偵・f30564)は語りだした。
「今回の敵はラグネ・ザ・ダーカー。一般のヒーローに紛れて、事故を装い残虐な殺人を繰り返す。それによって人々の間に不和の種を蒔き、いずれは人々が怪物『スナーク』の存在を信じる根拠を作る。極悪の極みネ。そして厄介なことに、かなり高精度の擬態能力を有しているヨ。今回擬態によって成り代わられたのはレモネード・ボーイというヒーローアル。レモネード・ボーイは子供たちを率先して守るヒーローで、彼に憧れていた子供も多いヨ。ケド、彼の戦闘の巻き添えで一般人が命を落とすアクシデントが連発。子供を守るヒーローだカラ、当然被害者は子供が多い……痛ましい話ネ」
ロバートは一瞬うつむき、悲しくてやりきれないという表情を見せるが、すぐに顔を上げる。
「ワタシの予知でも見破れなかった擬態なのに、彼が偽物だと気づいた人物がいるヨ。マシュマロガールと名乗るヴィジランテ。彼女はレモネード・ボーイを誰よりも近くで見つめていたカラ、感じた違和感を確信に変えたようアル。自分からヴィジランテになった彼女の憧れは本物ヨ。ケド猟書家に彼女だけで立ち向かうのは並大抵のコトではない……。共に戦ってあげて欲しいネ。では、張り切って行ってきチャイナ」
星野ユキヒロ
星野ユキヒロです。ヒーロー物、好きなのですよね。
さて、今回は二章構成のシナリオです。
●一章
病院にて。生き残ったが怪我を負い、ヒーローを信用できなくなっている子供たちを励ましてください。子供の中には『レモネード・ボーイ』がどこに行ったか見ている子がいて、安心させれば情報を教えてくれるかもしれません。
●二章
猟書家、『ラグネ・ザ・ダーカー』との戦闘になります。倒せば、成り代わられたヒーローがどうなったかわかるかもしれません。
●プレイングボーナス(全章共通)
ヴィジランテと共に戦う、もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害します)。
第1章 日常
『子供とふれあおう』
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POW : 子供たちを抱っこしたりして力自慢!
SPD : お手玉や手品で楽しませるよ!
WIZ : 優しく手を握って励ましの言葉を贈る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カチャカチャ……。
消毒液の匂いのする病棟をナースやドクターが行き来する。病室からは子供たちの啜り泣きが響いていた。
「痛いよぉ……お母さん」
「怖い……うう」
泣き声の主は、憧れのヒーローに傷付けられた子供たち。
守ってくれるはずの大人を信じられずにそのまま大人になってしまう子供たちを増やしてはいけない。
大町・詩乃
普通の服装で子供達と面会。
まずは子供達が興味を持ってくれるよう龍笛『響月』で楽器演奏。
子供達が好きそうなヒーロー物のドラマやアニメの主題歌を吹奏する。
そしてリクエストに応えて演奏会。
子供達の気持ちがほぐれた所で、UC使いつつ色々と話を聞きます。
少し前の事や、怪我した時の事、今の気持ち。
決して否定や疑義は挟まずに、ただ頷いて子供達の悩みや苦しみに寄り添います。
その上で、悪戯っぽく微笑んで、「お姉さんは、実は猟兵組織”秘密結社スナーク”の一員なので、皆の悩みを頑張って解決しますね♪」と約束。
「おばさん」とか言う子には「お姉さんですよ~♪」と両拳で(力緩めて)こめかみグリグリしてお仕置きします<笑>
この病院には慰安用の多目的ホールが併設されている。そこにはまだ歩いて外に出るまで回復していない子供たちが集められていた。
子供たちを見渡すのは大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)。秋用の清潔なワンピースを纏い、にこやかに着席する。手には漆と金で装飾された笛を携え、見ているだけで落ち着く雰囲気を醸し出していた。
子供たちは急に集められ、見知らぬ人に怯えの色を見せている。詩乃はそんな子供たちをにっこりと見渡し、笛にそっと唇を触れされた。
奏でられる旋律は、子供たちなら誰もが見たことのあるだろうヒーロー番組の主題歌。細く綺麗な音色が聞き覚えのある旋律をなぞっているのに気が付いて、子供たちはわぁ、と小さく歓声を上げ始めた。
一曲吹き終わると、一人の子供がおずおずと近づいてきた。
「笛のおねえちゃん、あのね、あのおうた、やってくれる?」
「あ、ずるい、俺も」
「ぼくも!」
一人がねだるのを皮切りに次々とリクエストが飛び、それをひとつひとつ拾って奏でる、詩乃の演奏会が始まった。
「みんなとってもいい子達ですね。おねえさんにお話、聞かせてくれますか?」
演奏を終えた詩乃からは、あたたかな光が発せられ、子供たちに降り注いでいた。付き添いのナースは目をこすって、きっと午後の日差しね。と自分を納得させる。
子供たちはやさしかったレモネード・ボーイとの思い出や、怪我をした時のこと、病院で今こうしている時の気持ちなど、いろいろな事柄を話してくれて、詩乃は決してさえぎらずにうんうん、そうなんですね、と丁寧に受け止めていった。
「そういえばおねえさんはだあれ? どこから来たの?」
「うちのねーちゃんよりおばさんだね」
「あっ、あなたはそういうことを言ってしまいますか? おねえさんですよ~」
おそらく、自分の姉がそう言うと怒るのだろう事を言ってみる子供のこめかみをやんわりぐりぐりしながら詩乃はいたずらっぽく笑う。
「お姉さんは、実は猟兵組織”秘密結社スナーク”の一員なので、皆の悩みを頑張って解決しますね♪」」
「すなーく? すなーくはわるものじゃなくていいもの?」
そうですよ、と子供の頭を撫でる詩乃に本物の午後の日差しが降り注いでいた。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
「チーッス! 『スナーク』から『ピザ屋』のデリバリーっすよー」
消毒液の匂いで気が更に滅入ってるかもしれないし、ここはおいしいものを食べてもらって元気になってもらうっす。
とゆーわけで簡易キッチンセットを引いた宇宙バイクで病院の敷地内まで入って、その場でピザを焼き始める。お腹いっぱいになって落ち着いたら見えるものもあると思うっすしね。子供にピザ焼くっすけど、大人にも求められれば焼くっすよ
「で、思い返して欲しいっす。今までレモネード・ボーイはあんな奴だったっすか? もしかしたら、ヴィランに操られてたりとかなら、助けに行かなきゃいけないっす。何か知らないっすか?」
などと巧みに【コミュ力】交えて情報収集
ベアト・ダッチェス
【SPD】
皆の笑顔のため、あたしにできることは…
うん、まずは皆の心にエネルギーが必要ね
「お話会」をしてみるわ
物語は心の栄養!…って誰かが言ってましたし!
UCで真珠色のネズミさんを、獣奏器で琥珀色のリスさんを召喚
あたしの語りと【楽器演奏】に合わせて、ネズミさんに物語の情景を刺繍で描いてもらうの
スクリーン代わりはあたしのドレス
病室のカーテンもこっそり使っちゃう
リスさんは主人公役
刺繍されたドレスやカーテンを飛び回って演技してもらいます。【動物使い】の本領発揮
お化けに奪われた黄金のドングリを取り戻すため、賢いリスがドタバタ冒険劇に繰り出す!…というお話
どうか、子どもたちに笑顔が戻りますように!
詩乃と入れ替わりに入ってきたのはベアト・ダッチェス(お菓子な槍のこうしゃくふじん・f23598)。
「わっ。いぬのおひめさまだ……!」
演奏会でかなりリラックスし始めていた子供たちは入ってきたベアトに目を輝かせた。貴婦人然とした瀟洒なドレスをまとったベアトは、子供の目にはなるほどお姫様に見えるかもしれない。
(まずは皆の心にエネルギーが必要ね。物語は心の栄養!……って誰かが言ってましたし! どうか、子供たちに笑顔が戻りますように!)
ベアトは子供たちを見渡すと、スカートの裾をつまんでお辞儀をする。
「あらあら、皆さんご機嫌よう、お話はお好きかしら? お話会を始めますよ」
つまんだスカートがぱっとひらめくと、どこからともなく真珠色のネズミと琥珀色のリスが現れた。
「真珠色のネズミさん! 器用なところ、見せてください! 琥珀色のリスさんも、冒険の始まりですよ!」
ふわりと広がったスカートの布に、真珠色のネズミは目にもとまらぬ速さで刺繍を施し、リスの演じる舞台を作り出していく。リスを呼び出した獣奏器を奏でながらベアトは物語を紡ぎ、ネズミが織りなす刺繍の舞台は、スカートから飛び出して部屋のカーテンまで広がり、その中をリスが面白おかしく飛び回る。
『やあやあ、ぬすっとおばけめ。黄金のドングリを返さないと、賢いリスのしっぽアタックが炸裂するぞ』
「いぬのおひめさま、すごい、魔法みたい!!」
「いけいけ! やっちゃえ!」
「りすさんがんばえー!!」
部屋中がおもちゃ箱をひっくり返したような色と音楽と笑い声の渦。ベアトの願い通り、子供たちの笑顔が帰ってきていた。
一方そのころ、中庭では比較的軽傷の子供たちがリハビリも兼ねて軽い運動をしていた。
「ウェーイ、チャラにちわ~っすよ!」
宇宙バイクにまたがったまま陰鬱になりがちな病院に前代未聞のウェイみを振りまき姿を現したのはリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)。顔の横に括りつけられた狐面のマスクに、子供たちは少し凍り付く。ヒーローというものにトラウマを持ってしまっているのだ。
「チーッス! 『スナーク』から『ピザ屋』のデリバリーっすよー」
有無を言わさぬ陽のオーラで、ぱっぱとバイクが引いていた簡易キッチンセットをセッティングすると、その場でピザを焼き始めた。子供たちだけでなく大人も、おいしそうなにおいに集まってくる。
「炊き出し系ヒーロー参上っす! リクエストしてくれるなら、何だって作るっすよ!」
病院側のリクエストで、病人食ピザを振舞いながらリカルドはにかっと歯を見せて笑う。それは子供たちにレモネード・ボーイを思い出させる笑顔だった。
「お、おれたちのレモネード・ボーイは変わった。あんただって、変わるんだろ?」
全員にピザが回っても、まだ受け取っていない少年がいた。一番年長で、賢そうな目に懐疑の色を浮かべている。
「え? 自分? いやー、どうだろ。わかんねーっすけど、とりま弱い人たちの力になって、みんなが笑顔で暮らせる世界を作れればいいなって思って思ってるから。それだけは変えたくねーかな。で、思い返して欲しいっす。今までレモネード・ボーイはあんな奴だったっすか? もしかしたら、ヴィランに操られてたりとかなら、助けに行かなきゃいけないっす。何か知らないっすか?」
真っ直ぐな瞳で返されて少年は何か考えていたが、何か決意をしたような顔をして答えた。
「そういえば、あの日のレモネード・ボーイは最初からおかしかったかもしれない。いつもはいつだって太陽の下で会うのに、その日は下水道の入り口から出てきて、また同じところに戻っていったんだ。怪我したみんなの手当てもせずに。これって役に立つかな?」
「アガる情報っすね! 役に立ちまくりんぐサンキュー! これお礼の焼き立てピザね。ピザ食って元気元気! うぇーい!」
尋ねる少年に、リカルドは焼き立てピザを手渡す。
「あちっ、そっか。ヒーローって熱いんだな。忘れてたよ」
受け取った少年は、ピザを一口齧ってようやく笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ラグネ・ザ・ダーカー』
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POW : ダーカー・インジャスティス
全身を【鮮血の如きオーラ】で覆い、自身の【悪意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 侵略蔵書「キル・ジ・アース」
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【侵略蔵書「キル・ジ・アース」】から【具現化された「死のイメージ」】を放つ。
WIZ : マッド・デッド・ブラザーズ
【死せるヴィラン】の霊を召喚する。これは【強化された身体能力】や【悪辣な罠】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:津奈サチ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠鏡繰・くるる」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ダストブロンクス。未だ廃液滴る陰鬱な下水道迷宮。その片隅で、マシュマロ・ガールとレモネード・ボーイは対峙していた。
「マシュマロガール、どうした? こんなところに君の居場所はないぞ?」
「ハイ、レモネード・ボーイ。レモネード・ボーイにこそ、こんなくそったれ下水道は似合わない。まあ、あんたみたいなドブネズミには似合いかもしれないけど。あんた、レモネード・ボーイをどこにやったの?」
目の前に立ちはだかる男を睨みつけるマシュマロ・ガール。
「ほう、お前ごときになぜわかった?」
「つまんないこと聞かないで。私は誰よりも近くでレモネード・ボーイを見てたんだから、そんじょそこらのニワカとは違うんだよ」
吐き捨てるように言い放つマシュマロ・ガールの言葉を聞いていたその人物は、筋骨隆々の爽やかなハンサムガイから官能的なボディラインの美女へと姿を変形させていた。ばさりと髪をかき上げると、そいつは笑みを浮かる。
ラグネ・ザ・ダーカー。駆け出しのマシュマロ・ガールに相手が務まるかと言われたら正直厳しいかもしれない。しかし、今の彼女は一人ではない。彼女の勇気に、猟兵たちが駆け付けているのだ!
リカルド・マスケラス
「ヘイ!そこのガール、ちょっとエキゾチックなマスクはいかがっすか?」
などと言って颯爽と登場。お面(リカルド本体)を装着してもらえば、マシュマロガールをかばって守りやすくなる
「復讐を望むなら手を貸すっすけど、あんな他人の姿を借りないといけないの三下、復讐するにも値しないっすよ。美人でも性格きつそうっすし」などと敵をディスって軽く【挑発】
敵の攻撃は【視力】を込め、【鏡魔眼の術】で跳ね返す。相手の悪意や敵意が強いほど、跳ね返る力は大きい。ものすごい飛行速度でそこらじゅうの壁にでもぶつかるといいっす
「せまっ苦しい下水道を拠点に選んだのが致命的っすよ。地獄のピンボールでも勝手に楽しんでるといいっすよ」
「ヘイ! そこのガール、ちょっとエキゾチックなマスクはいかがっすか?」
薄暗い下水道に響く底抜けに明るい声。誰何の問いを放つ間もなく、狐の面がマシュマロ・ガールの側頭部に吸い付いた!
「ちょっと、何!!?」
エイリアンに飛びつかれた乗組員のように取り乱すマシュマロ・ガール。その瞳と髪の色は、先ほど病院にピザを届けに来たリカルド・マスケラスのものと同じ色に変化していた。
「ちょいちょいちょい、そんなに嫌がらないでほしいっすね、自分傷ついちゃうっすよ? 別にとって食いやしないっすから。まあ、健康的なガールは別の意味でおいしそうと思うっすけど!」
近くで見るマシュマロ・ガールの顔が案外可愛く、スタイルも悪くないのでリカルドは来る前よりやる気が出ていた。よく見ると横の路地にどうやらここまで体を借りてこられたらしい人物が眠っており、これはそういうヒーローなのだとマシュマロ・ガールは理解する。
「復讐を望むなら手を貸すっすけど、あんな他人の姿を借りないといけない三下、復讐するにも値しないっすよ。美人でも性格きつそうっすし」
手にした本を時折めくりながらつまらなそうにやり取りを見ていたラグネ・ザ・ダーカーはリカルドのディスに不愉快そうに眉根を寄せた。
「道化の面か? 呼ばれてもいないのにけたたましいものだ。少しは珍しいかと思ったがもういい。立ち去ってもらおう」
ラグネ・ザ・ダーカーの全身から鮮血のごときオーラが立ち昇り、その身を浮き上がらせる。そして彼女はリカルドとマシュマロ・ガールに向かって飛翔した。
「攻撃は無駄っす。全て己自身に返るんすから」
「ぐっ!!?」
リカルドがそう言うなり、オレンジに変わったマシュマロ・ガールの瞳からギリリと強い光を伴った視線が放たれた。その瞬間、襲い掛かろうとしていたラグネ・ザ・ダーカーが跳ね返され、はじき返される。
「何これ、私こんな力持ってない!」
「そりゃそうっすよ。言ったしょ? 自分が手を貸すってさ。さてキッツそうなおねーさん。せまっ苦しい下水道を拠点に選んだのが致命的っすよ。地獄のピンボールでも勝手に楽しんでるといいっすよ」
「痴れ者が、いい気になるなよ」
跳ね返されたラグネ・ザ・ダーカーは空中で回転すると、ブーツの靴底で壁を蹴って着地した。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「微力ながら、マシュマロ・ガールさんのお手伝いをしましょう。」「再び戦争を起こそうとする存在は見逃すわけにはいきません。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【高速詠唱】で【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『ラグネ・ザ・ダーカー』と召喚された者たちを纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
「微力ながら、マシュマロ・ガールさんのお手伝いをしましょう」
着地したラグネ・ザ・ダーカーの耳に新手の声が届いた。火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)。黒いポニーテールを弾ませて駆け込んでくる。
「再び戦争を起こそうとする存在は見逃すわけにはいきません」
「邪魔をするものには退場してもらおう」
ラグネ・ザ・ダーカーがめくるページに呼応するように呼び出されるのは死せるヴィランたちの霊。世を憎む負のオーラを立ち昇らせながら明に殺到する。いくつかは、マシュマロ・ガールの方へも飛んで行った。
「我、求めるは、冷たき力!」
明の高速詠唱に呼応して浮かび上がる465本の氷の矢が向かい来る亡霊たちへ轟音と共に放たれた。それはまるで氷の弾幕。次々と亡霊たちを撃ち落としていく。
「!!」
撃ち落とされ行くものをすり抜け、明の元へと到達した亡霊の鉤爪が明の体を引き裂く!
「残念、それは残像です」
不敵に笑う明。服がやや切り裂かれたようだが、ダメージは微々たるものだ。敵に当たって砕けた氷が浮き上がり、再び氷の矢となって敵に降り注ぐ。やられたふりをして明の隙をつき、飛び掛かってきた亡霊たちが次々と撃ち落とされた。
「忌々しい……」
流れ矢が肩にかすったらしく、滲む血を手でぬぐったラグネ・ザ・ダーカーが明を睨む。
「すごい、なんて数の氷の矢……」
思わず呟いたマシュマロ・ガールの声に無事を確認し、明は安堵する。
(少しでも、ダメージを与えて次の方に)
明の奮闘は、次に駆け付ける猟兵の戦いを必ず助けるだろう。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
マシュマロガールさん、加勢しますね!
到着後すぐに結界術で彼女と自分を護る防御結界を形成。
同時に病院で交流した子供達の顔を思い浮かべながらUC発動。
「レオネード・ボーイの誇りと子供達の心を傷つけた!その罪は万死に値します。よって此処で私とマシュマロガールさんで断罪します。」と宣言。
相手のUCによる攻撃や罠は、防御結界とオーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで無効化し、【除霊・破魔・浄化・範囲攻撃】で悪霊を強制成仏。
そのまま突撃し、【雷の属性攻撃・神罰】を纏わせた煌月による【なぎ払い・貫通攻撃・マヒ攻撃】で相手に痛打を与えつつ動きを止めて、マシュマロガールさんの必殺技が相手に決まるように持っていきます。
「マシュマロガールさん、加勢しますね!」
マシュマロ・ガールを亡霊たちから守ったのは詩乃が滑り込みざまの結界術により展開した防御結界だった。
「レオネード・ボーイの誇りと子供達の心を傷つけた! その罪は万死に値します。よって此処で私とマシュマロガールさんで断罪します!」
口上を述べた詩乃が光と共に戦巫女の姿に変身する。頭に浮かぶのは病院で見た子供たちの姿。
「世の為、人の為、これより祓い清め致します!」
「謳ったな? あらゆるヒーローとヴィランの死を知るこのラグネ・ザ・ダーカーの前で、死を!!」
めくられた書物のページから再び死せるヴィランたちが現れる。先ほどの攻撃よりもさらに多い数の、亡霊の群れが二人に向かって放たれた。
「マシュマロ・ガールさん! しっかりついてきてください!!」
詩乃はオーラを纏わせた纏った天耀鏡の盾を掲げ、霊たちを除霊、成仏させながら突撃する。利き手に握られるのはオリハルコンの薙刀、煌月。マシュマロ・ガールも詩乃について駆けだした。
弾け飛ぶ膨大な数の霊たちに阻まれ、ラグネ・ザ・ダーカーの反応が一瞬遅れる。そこを見逃すことなく、詩乃は薙ぎ払った。
ラグネ・ザ・ダーカーは片腕で身をかばい、詩乃をうっとおしそうに払う。身をよじってそれを避ける詩乃。その時、ラグネ・ザ・ダーカーが持っていた本を取り落とした。
「……麻痺だと?」
詩乃の狙い。それは敵の動きを止めて、マシュマロ・ガールの攻撃を成功させることだったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ベアト・ダッチェス
誰よりも彼を信じているから…あなたは騙されなかったのね、マシュマロガール
強い信念と勇気に、あたしも力をもらった気がします
あなたの「憧れ」を取り戻す戦い
どうか手伝わせて下さいな!
「夜空色のシカさん」「薄荷色のイノシシさん」を召喚
シカさん、マシュマロさんを乗せてあげて!
あたしもイノシシさんに【騎乗】
一緒に【ダッシュ】して敵の張る罠をくぐり抜ける
UCを撃って亡霊を攻撃
本体ががら空きになる時を逃さずに
マシュマロガールさん!
今です、一緒に!!
マシュマロさんに合わせて、イノシシさんの全速力を乗せた【ランスチャージ】を放ちます
ヒーローたちは、卑怯な暗躍なんかに負けません!
信じてくれる人が一人でもいる限り!
目の前で突然飛びのいた詩乃に驚き、遅れてついてきていたマシュマロ・ガールの足が止まる。そんな彼女の手を引く者がひとり。見上げたそこにあった穏やかな長毛犬の瞳は慈愛の藍色を湛えていた。
「誰よりも彼を信じているから……あなたは騙されなかったのね、マシュマロガール。強い信念と勇気に、あたしも力をもらった気がします。あなたの「憧れ」を取り戻す戦い、どうか手伝わせて下さいな!」
「え? あ、喜んで……」
「夜空色のシカさん、薄荷色のイノシシさん!」
驚いてぱちくりと瞬きするマシュマロ・ガールの返事に微笑むと、ベアトは頼もしいお友達を呼び出す。
「シカさん、マシュマロさんを乗せてあげて!」
呼び出されたシカは首をくっとうまく使ってマシュマロ・ガールを背中に乗せると走り出す。ベアトもイノシシに騎乗し、駆けだした。
麻痺攻撃を受けたラグネ・ザ・ダーカーにできる攻撃はもう二度はじかれた亡霊攻撃しかない。しかし彼女の本はあらゆる死を知っているのだ。さらに悪辣で、罠を張るような亡霊を呼び出してぶつけてくる。
「ヒーローたちは、卑怯な暗躍なんかに負けません! 信じてくれる人が一人でもいる限り! ベリー、アップル、アプリコット!チェリーもオレンジもバナナも全部ぜんぶ……季節の恵みよ、悪者を砕いて!!」
ベアトから放たれた桃、緑、赤、白の4色の光線は悪霊を罠ごと撃破し、駆け抜ける足元からフルーツパイの香り漂う花畑が広がっていく。マシュマロ・ガールはその香りに自らの勇気がぐんぐん湧いてくるのを感じた。横を見ると、イノシシにまたがったベアトは焼き菓子のような槍を腰だめに構え、突入の姿勢になっている。
「マシュマロガールさん! 今です、一緒に!!」
「わかった! くそっ、私たちのレモネード・ボーイを私に返せぇええええええ!!!!!」
マシュマロ・ガールの必殺技、マシュマロバズーカと、ベアトのランスチャージが炸裂し、戦いは決した。
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その場にいた猟兵たちと私の必死の捜索により、レモネード・ボーイは発見された。命に別状はなかったが、手足の腱を切られており、すぐヒーローに復帰するのは難しいようだった。
今は子供たちのいる病院でリハビリに励んでいる。レモネード・ボーイが友達を殺したんじゃないのがわかって、子供たちは嬉しそうだ。助けられなかった子供たちのことを彼はとても悔いているけれど……。
「一緒にたくさんの子供を助けようよ。助けられなかった子供たちの何倍も何十倍も何百倍も何千倍も。あなたは子供たちのヒーローなんでしょ?」
「マシュマロ・ガール、君って……」
「私? 私はマシュマロ・ガール。あなたに憧れてた子供のひとりだよ」
大成功
🔵🔵🔵