15
ユかイナサツじん鬼

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ディガンマ #殺人鬼

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#ディガンマ
🔒
#殺人鬼


0




●君が為
 その日、彼等は集まっていた。他でもない彼等にとっての、かけがえのないモノの為に。

「……ほう、なかなかやるじゃないか」
 獣のような男を取り囲んでいたのは、不思議の国の小さな住人達だった。
 ネズミ、小鳥、イヌ、ネコ。本来ならば迷い込んできたアリスを助け、出口へと誘う森の動物達。そしてそんな彼らと共に生き、それぞれの世界を楽しむ小人達。それは大好きなアリスを守り、不思議の国を愛する愉快な仲間達だった。
 しかし、本来であれば人懐っこく温厚な彼らは、皆一同に視線で獣のような男を睨んでいる。
「お前の、好き勝手にはさせない」
 小さな手に、口に冷たい鋏を携えて彼らは視線で男を射抜く。氷のように冷たく普段は押し殺している――どす黒い衝動を織り交ぜて。
「随分可愛らしい殺人鬼もいたものだな」
 獣の男が口元を吊り上げて笑う。それに対し、愉快な仲間達は――そう名付けられた種族の殺人鬼たちは、笑わなかった。
 ただ、静かに宣言する。
「この国は、アリスは、わたし達が守る」
「どのような見た目をしていようと、俺もお前らも所詮同じ咎人だ。その魂の奥底に刻まれた衝動は消えない。それなのに、お前達は守ると宣うのか」
 せせら笑う男に、小人がギリリと奥歯を強く噛む。
 彼が言うことは本当だ。きっと彼と自分達、違う所など無い。殺人衝動を常に抱えて生きることを定められた自分達はきっと本来なら、不思議の国の中でも異物なのだろう。
 それでも、受け入れてくれる人たちがいた。それでいいと言ってくれた人たちがいた。恐ろしいオウガから守ってくれて頼もしいと、言ってくれた。
 だから。
「……わたし達が、お前を殺して此処を守るんだ」
 静かに言った言葉を最後に、小人は鋏を振り上げて男へと襲い掛かった。
 続くように、他の仲間たちもキョウキを掲げて飛び掛かる。
 振るう、振るう。抑えていた衝動の全てをぶつけて。本能のままに、戦う。この身が、この心がいくら傷付こうと。己の色がどんなに赤く染まろうと。
 全てはアリスと、不思議の国の為。
 アリスを守らなきゃ、不思議の国を守らなきゃ。こんなやつらの好きにはさせない。その身体を赤げ汚すようなことはあってはいけない、この国に彼女の血は似合わない。守らなきゃ、守らなきゃ。アリスを、国を、僕達が守るんだたとえ傷ついてもアリスをアリスをアリスをアリすあリスを血を怪我を不思議のアリス肉赤くアリスアリスのアリスススアリアリスアアアアリスヲ――!

 アリスノ血肉ヲ喰ラウノハ、オレタチダ。

 そうして彼らの意識は、真っ暗闇に堕ちていった。

●グリモアベースにて
「……以上が、私が視た未来の光景です」
 白い顔をした真多々来・センリ(手繰る者・f20118)はそう一度話を区切り、そっと息を突いた。
 猟書家達の侵略。平和が訪れた筈のアリスラビリンスの空に浮かび上がった骸の月により、不思議の国は再びオブリビオンの危機に晒されている。その内の一人、「ディガンマ」の侵略をいち早く察知したとある不思議の国の住人達は、彼に対抗するべく一つの奇策に打ってでた。
「事前に国の住人達を避難させて、殺人鬼達だけが残り彼と戦い、これを討つ。周りの被害を気にせず、普段抑えている殺人衝動を完全に開放すれば、確かにその戦闘能力は飛躍的に上がります。……ええ、実際彼らはとても、とても、善戦します」
 ディガンマに付き従うオブリビオンの配下を殺し、引き裂き、圧倒し。爆発的な勢いで彼らを屠り、ディガンマへと向かっていく。
 けれど、守るべきものの為に支払った代償はあまりにも大きくて。
「例えこの戦いに勝っても負けても……殺人衝動に呑まれた彼らは戦闘後程なく、オウガへとその身を堕とすでしょう」
 一度振り切ってしまえば、その一線を越えてしまえば。元居た場所へと戻り何も知らなかったところへ戻ることはあまりにも難しい。
 それなのに。そこまで支払って尚、目の前の敵は強大だった。
「そして私が見た光景では――それでも、彼らはディガンマには敵いません」
 このままでは、勇敢なる殺人鬼達は一人残らず無駄死にとなってしまうだろう。
 だから、センリは彼らに助太刀をしてほしいと猟兵達に依頼する。
「殺戮衝動のままに戦う彼らがその一線を越えてしまわないように、その衝動を抑えながら、共に戦って欲しいんです」
 そうすれば、きっと彼らは猟兵達の味方となってくれる。彼等の力を借り、共に戦えばディガンマを斃すことも難しくはないだろう、と。
「これから案内する世界には、不思議の国の『愉快な仲間達』が集まっています。その姿は動物だったり、小人の姿だったりと様々ですが、ディガンマを待ち受けている以上、やはり皆、殺人鬼です」
 そして、ディガンマの配下としてまず攻めてくるのはアリスの姿を偽った時計ウサギのオブリビオンの群れである。彼女達は愛くるしい姿とは裏腹に薬瓶や煮えたぎる熱湯の入ったティーポットを投げて襲いかかってくるだろう。
「彼女達の力は対したことはありません。殺人衝動を全開にした殺人鬼だけでも斃すことは可能でしょう。けれど、先ほどの説明の通り、やりすぎてしまえば今度は住人達がオウガとなってしまうので注意してください」
 ただ戦いに加勢するだけではなく、溢れる殺人衝動を適度に抑えることが重要となるだろう。
「……彼等はただ、自分達が大好きだった場所を守りたかっただけなんです」
 ぽつりと、センリは痛みを堪えるような顔をして言う。
「殺人鬼としての業を抱える彼らを受け入れてくれた不思議の国を、笑顔で迎えてくれた住人達を失いたくなくて。だから自分の全てを捨てて、戦いに挑んだんです」
 だからどうか、その気持ちを忘れさせないで欲しいとセンリは訴えた。それこそが彼らを踏み留める楔となるだろうと。
「オブリビオンの群れを全滅させれば、いよいよディガンマとの戦いになります。オウガ化を免れた殺人鬼たちも加勢してくれますが、その力の差は歴然です。彼らを守りつつ、一緒に戦ってこれを撃退してください」
 もしも無事、ディガンマを斃し、全てを終わらせることができたなら。殺人鬼達の殺戮衝動は徐々に抜けていくということだ。その後は再び元の日常に戻ることも可能な筈だ。
「殺人鬼たちだって、覚悟の上の事でしょう。私の願いは、もしかしたらそんな彼等の決意を踏み躙ってしまうかもしれない。……けれどどうか叶うなら。彼らを彼らの愛すべき日常へ戻してあげて下さい」
 そして、他ならぬ彼らの手で、彼等の大切なものを壊してしまわないように、どうか守ってあげて下さい。
 最後にセンリは深く頭を下げると、スペードのグリモアを展開させ転送を開始するのであった。


天雨酒
 満月の夜って色々特別でずるいと思います、天雨酒です。
 わっと増えて大変なこととなっております猟書家さんの幹部シナリオ、まずはアリスラビリンスよりご案内したいと思います。純戦系、心情寄りのシナリオの予定です。
 このシナリオには全章共通してプレイングボーナスが存在します。積極的に狙って行動してみて下さい。
 プレイングボーナス:殺人鬼達を適度に抑えながら、共に戦う。
 詳細はOPの通りとなりますが、下記補足となります。

●殺人鬼達
 種族は全て『愉快な仲間達』です。具体的にはお伽噺の森に住む動物や小人達が多く、共通して鋏を武器として装備し、愉快な仲間達と殺人鬼のユーベルコードを使用します。

●第一章:集団戦
『偽アリス』アリーチェとの戦いです。殺人鬼だけでも十分圧倒出来ますが、放置しておけばこの戦闘後に殺人鬼達はオウガ化してしまうでしょう。

●第二章:ボス戦
『ディガンマ』との戦いです。その力は強大で、殺人鬼達が衝動を全開にしても彼を斃すことは不可能です。猟兵でも真っ向から戦っては苦戦は必須でしょう。殺人鬼達を守りつつ協力を仰ぎこれを斃して下さい。

●プレイング受付について
 各章ごとに断章を挟んでからの受付のご案内となります。
 第一章は断章投下後より。以降はMSページ、Twitterにてご案内致します。お手数ですがそちらをご確認下さい。
 また、可能な限りの数をご案内したいと思っておりますが、人数により一部不採用の方も出てしまうかもしれません。ご了承いただけたら幸いです。

 それでは、宜しくお願いします。
87




第1章 集団戦 『『偽アリス』アリーチェ』

POW   :    ミルクセーキはいかが?
【怪しげな薬瓶】が命中した対象に対し、高威力高命中の【腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    甘いおねだり
レベル×1tまでの対象の【胸ぐら】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
WIZ   :    お茶を楽しみましょ?
【頑丈なティーポット】から【強酸性の煮え滾る熱湯】を放ち、【水膨れするような火傷】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●命を、絆を
 たちきる。断ち切る。絶ち斬る。
 口に咥えた小さな刃物を肉に突き立てて、金の糸のような髪を刻んで切り捨てて。彼らはまた一つ、己の故郷への危機を切り捨てる。
 赤い水がばしゃりと弾ける。被るのも気にせず突っ込んで、顎を開けて四肢を食いちぎる。上がる悲鳴を無視して鋏を振り上げて、また一つ。憎き命を断ち切って走り出す。
 カシャン、カシャン、カシャン。
 敵が赤く染まる度、また一つ、断ち切れる、絶ち途切れる。
 最悪の結末への未来が。そして彼らの――日常への帰り道が、また一つ。
 甘くて柔らかい肉。綺麗な綺麗な赤い水。
 憎悪に燃えた光景は何時しか甘美で心躍らせるときへと変わり。
 
 蹲ったウサギの命を斬り裂くために凶器を振り上げながら、小人はふと予感するのだ。
 
 鋏は糸を断ち切るものだから。
 敵を斬るたびに、己の周りの糸もまた、一つ一つ途切れていくのを。
黒鵺・瑞樹
◎右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

とどめを掻っ攫えばある程度衝動は抑えられるんじゃないか。
殺しの勢いを削ぐ感じで。
あと多分だけど、殺すという一線を越えるかどうかなんじゃないかと。

敵と殺人鬼たちの間に割り込んでいく形でUC五月雨と飛刀の投擲で仕留める。
掴み攻撃には直接腕を切り落として対処。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。

殺人鬼たちの気持ちはわかる。
先の戦争の時俺はエンパイアを守りたかった。
俺はどうなってもいい、そう思った。
エンパイアに限らす今でもそう思ってる。



●被る
 かしゃん、かしゃんと金属の音が鳴り響く。
『アリスを、守る……』
 傷だらけの偽アリスと相対するのは、青い小鳥の群れだった。愉快な仲間の小鳥が呼び出した群れでウサギの逃げ道を塞いで、追い込んで。疲労させたところで、裁ち鋏を咥えた一匹が襲い掛かっていく。群れとしての力と、殺人鬼としての本能を掛け合わせた戦いで、アリーチェを刻み、追い詰めていた。
『お前を殺して、守るんダ……ッ!』
 そうして、小鳥が咥えた裁ち鋏でまた、一つ。彼らの愛しい存在とよく似たそれを斬り裂いて、より深く、その身を鬼へと堕としていく。
 ――その、寸前に。
「そうはさせられないな」
 割り込んだ白い影の手によって、ウサギの背中から無数の刃が生えた。 
『え……?』
 上がった驚きの声はどちらの物だったか。確認する暇もなく白い影――己の複製と共にナイフを投擲した黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は刀を手に取り、刃物だらけになったウサギに向けて斬りつける。
 新たな傷が生み出す痛みで我に返ったのだろう。ごぼりと血を吐き出しながらも、彼女は瑞樹の胸ぐらに掴みかかる。そのまま少女の細腕からは想像もつかないような力で持ち上げ地面へと叩きつけようとする。
 しかしそれよりも、瑞樹の手の中で刀が閃く方が先であった。
 瑞樹を掴んだ少女の腕が宙へ飛ぶ。掴んだ手首ごと切り捨てられた腕を彼方へ放り捨てれば自然、少女の視線は己の一部だったものへ。そうして生まれた隙に再び瑞樹は黒い刀身のナイフ、【黒鵺】の複製を呼び出し、射出。今度こそ、アリーチェに止めを刺す。
 不思議の国を愛する愉快な仲間ではなく、目に入るもの全てを鏖す殺人鬼として。その本能を惜しげもなく晒す彼らを留める方法として瑞樹が選んだのは、彼らから敵の命を狩るとどめの時を奪うことであった。
 彼等の殺戮衝動は、目的を果たしたところで満たされる類のものではない。潤せば潤すほどに渇いて、詰め込めば詰め込むほどに飢えていく底無しの沼。ならば、その衝動からの達成自体を阻害してしまえば、満たされる快楽自体を奪ってしまえば、ある程度の衝動は抑えられるのではないかと考えたことだ。
「それに多分、殺すという一線を超えるかどうかは、大きいからな……」 
 誰かを傷つけることと殺すということ事は、行為は近しくても決定的な差異がある。その一線は曖昧で、ほんの弾みで超えてしまうような脆いものだけれど、きっとそこが彼らを踏みとどまらせる楔なのだろうと、思ったのだ。
「なんで……」
 先程まで殺気立っていた小鳥たちが呆然と呟く。
 目の前で、呆気なく、もともと赤かったその身体をさらに赤く染め上げて、斃すべき敵が消えてしまった。その事実が認識できないというように、小鳥は鋏を取り落とり、飛ぶことも忘れて地面へと。
 そんな小鳥に向けて、瑞樹はそっと声をかける。
「お前達の気持ちはわかるよ」
 それは、かつての話。世界を流れた果てに行きついた、サムライエンパイアのの世界が第六天魔王の襲来を受けた際のこと。
 瑞樹もまた、今の彼等と同じ様な気持ちだった。
 自分のことはどうなってもいい、ただ、守りたい。その為にならどんな存在になってしまっても構わない。あの時の気持ちはたしかに、目の前の小さな彼らに通じるものがある。
 だからこそ、このまま放っておくことなどできなかったのだ。
「……正直俺は、エンパイアに限らず今でもそう思っているけれど」
 けれど、その感情はとても強いものと同時に、とても脆いものだと知っているから。
「お前達まで、こちらに来ることはないよ」
 彼らの代わりに、その感情に終止符を打つために、瑞樹は新たな敵へ向けて走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜

「こういう殺人鬼もいるんだねぇ…。」
初めて見たよ、僕。

さてと、出来るだけ派手にたくさん殺す事にしようか。僕が敵さんを殺しまくって注意を引けば、殺人鬼達が頑張る必要も無くなるだろうしね。たぶん。

血界形成のUCを発動し、周囲の無機物を紅い血に変換。んでもって、血で作った鎖で敵さんらを縛って、更に作った槍で串刺して、もういっちょ作った剣でバラして殺す。もちろん吸血も狙って行きます。

ティーポットも変換出来るようなら血に変えて、僕の武器に変えちゃおうか。
あ、Ladyを持たせた悪魔の見えざる手にも防御をお願いしとくのも忘れずに。

「守りたいなら、一線を越えちゃダメじゃない?」
味方殺しはルール違反だしね。



●奪う
 木々の隙間を疾駆するリス、歩けばほてほてと音がしそうな小さなクマ、二足歩行の子犬。
 視界に映るその姿は、およそそれとは言えないものばかりだった。
「こういう殺人鬼もいるんだねぇ……」
 なんと表現してよいか困る彼等の姿形に、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はしみじみと呟く。莉亜自分も目の前の彼らと同じく殺人鬼という身上を持つが故、その驚きは大きい。
 けれど、此処は戦場で彼らは皆必死に戦っているのだ。そうのんびりと見物はしていられない。
「さてと、じゃあ出来るだけ派手に、たくさん殺す事にしようか」
 軽く、そんなことを口にして。莉亜はとんと足で地面を叩いた。
 途端、彼を中心として地面が融解する。命を育む土の茶色が濃くなり、じわりと赤黒く染まり、液体となる。地面だけではない、道に転がる小岩も、砕け散った硝子の瓶と陶器の破片も。見る見るうちに赤に侵され液体となっていく。
 【血界形成】。莉亜から一定の距離内の無機物を万物を生み出す紅い血液へと還す異能。彼の降り立つ世界の無機物は、今や全て彼の手足と同義である。
「僕が敵さんを殺しまくって注意を惹けば、殺人鬼達が頑張る必要もなくなるでしょう?」
 莉亜が軽く片手を上げる。それだけで、波打つ血液の海から鎖が飛び出し、殺人鬼達の目の前で偽のアリスを拘束した。
 目の前に突如出現した物体に殺人鬼達が虚を突かれる。その隙に莉亜は二つの間に滑り込み、彼等の視界から敵の姿を隠した。
「守りたいなら、一線を超えちゃダメじゃない?」
 だって莉亜は知っている。彼らの持つその刃は振るう度に己を、他者を傷つけるから。其れを繰り返せば彼らの刃が向く先は、誰にも定められなくなってしまうから。
「それに、味方殺しはルール違反だしね」
 だから、森の住人達たる殺人鬼が再び戦意を取り戻すその前に。莉亜は開いた手をアリーチェ達へ向け、そっと握り込む。紅い血だまりが彼の意に従い瞬く間に槍を生み出し、ウサギを貫いた。
「もういっちょ」
 おまけとばかりに槍の影から剣が飛び出した。アリーチェの身体を抉りながら宙へと回転して飛ぶそれをキャッチすると、莉亜は流れる動作で振り下ろし、ウサギを細切れの肉へと変える。
「このッ……!」
 仲間を屠られた怒りに、別の時計ウサギがティーポットを掲げた。中に入った強酸性の熱湯を振り撒き莉亜へと攻撃をしかけるも、それは彼の従えた悪魔の見えざる手によって阻まれ、届かない。
「……それも『変え』ちゃおうか」
 莉亜の紫の瞳がアリーチェの手の中のティーポットを射抜いた。
「ヒッ……!」
 とたんに、どろりと。ティーポットが液体化し、彼女の手が紅く染まる。
 既に此処は莉亜の領域の中なのだ。例えそれが敵の得物であったとしても、こうして彼がほんの少しそう思うだけで、生命を持たない物質は全て彼の一部と変貌するのだ。
 己の武器を中に入っていた熱湯ごと莉亜の血液へと変えられたウサギにもはや反撃の手段はなかった。
 血液が生み出した鉄の鎖が踊り、アリーチェを捕らえる。莉亜の手が彼女の細い体を掴み、白い頸へと牙を突き立てた。
 そして血を啜る。吸って。吸って、奪って、飲み干して、命を奪う。
 干からびたそれを打ち捨てて、莉亜は次の哀れなウサギを探し始めた。
 この場の全てが莉亜の血で満たされるように。この場の全てを、吸いつくすように。彼等よりもずっと多く、彼等よりももっと早く。
 これ以上、優しい愉快な殺人鬼が必要以上に赤く染まることが少しでも減る様に、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
なるはど、殺人鬼ではあるかもしれないけど……獣のお前らよりも俺のほうが余程人でなしで笑えるね。
善性の衝動というか守りたい意志があるだけマシだ。お前らはそういう存在かもしれないけど、俺はそういうのナシに好きにやってる人殺しだしな?

大物はもらうつもりだけど、雑魚はお前らにくれてやるさ。せいぜい守るって心で勝ってみせろよ。

ユーベルコードで巨大化した刀で間合いを取りつつ攻撃。
獣達に攻撃しようとするなら、リーチを利用してそれを邪魔する。

なるべく、わざと大振りして懐に入れれば隙があるように見せる。

懐に入ろうとしたところを、獣達に合図をして攻撃させる。俺も喰らわないよう一歩下がるがね。



●嗤う
 なるほど、とゼイル・パックルード(囚焔・f02162)は戦いに赴く殺人鬼達を見て嗤う。
 こちらに向けられていなかったとしても、伝わってくる気迫に自然と肌が泡立つのがわかる。胸の内に冷たいものが降り、同時にそれに同調する様に己の内の本能が揺さぶられる。断言できる、彼らの殺意も衝動も、紛れもなく本物だ。
 けれど、言ってしまえばそれだけの話。
「確かに殺人鬼ではあるかもしれないけれど……」
 それでもゼイルは嗤ってしまうのだ。確かに彼らは紛れもなく人殺しの性を持つ獣だけれど。
「獣のお前らよりも俺の方が余程人でなしで、笑えるね」
 ――そんな彼らの方が、自分よりもずっと救いようがあると、一目見て解ってしまったから。
 善性の衝動、とでも言えばいいのだろうか。彼らの戦いには理由があって、何かを守りたいという意思がある。壊したくないから戦い、帰るために戦っている。
 けれどゼイルは違う。
「お前らはそういう存在かもしれないけど、俺はそういうのナシに好きにやっている人殺しだしな」
 戦う理由がないとは言わない。拠るべきところ持っているし、善きと言われることも理解できる。
 けれどそれ以上に、ゼイルという男は戦いを求めるのだ。
 戦い合い、血を流し、殺し殺される。そんな衝動を躊躇いなく振るうことを望む。ほら、どちらが人でなしかなど一目瞭然ではないか。
 だから此処でも同じこと。ゼイルはゼイルの赴くままに、彼ら以上に殺人鬼として振る舞うだけだ。
 大物を逃す気はないが、雑魚くらいはくれてやる。
「せいぜい守るって心で勝って見せろよ」
 ゼイルの言葉に獣達からの返事はない。けれど、声は間違いなく届いている筈である。それで十分だ。
 あとは行動で示し、行動で応えるだけだ。
 大太刀を手に、ゼイルがアリーチェ達の前に押し入る。彼のユーベルコードにより強化されたそれは、刃渡り6m以上を誇る巨大な刃物となり、殺人鬼と時計ウサギの間を両断した。
 そのまま勢いをつけて振り回す。土埃が舞い、動物の姿をした殺人鬼達が吹き飛ぶが気にしない。刃を通しての手応えはない、おそらく勢いに負けだけだろう。
 問題は、退避する動物達を追いすがる様に手を伸ばし、叩きつけようとするアリーチェ達の方だ。
「目の前で素通りとは妬けるね」
 皮肉を込めて言いながら、ゼイルが刀を返す。地面すれすれを薙いだ刃物を振り上げて、獣を追うウサギへと叩きつける。目標まではそれなりに距離はあったが、強化された大太刀のリーチはいとも簡単にその差を埋め、アリーチェを斬り飛ばした。
「……今なら」
 そこで、ウサギの一人は気付く。ゼイルの攻撃は一撃一撃の威力こそ脅威だが、その動きはどれも大振りで単調であることに。そして武器にはそれぞれの間合いがある。あの猟兵の刃物が届く範囲の内は彼が絶対的に強者であるが、一度そこを潜ってしまえば、刃物が届く距離よりも内側に入って仕舞えば、あの巨大な得物は逆に彼の不利となる。
 仲間が一人斬られる。それを見捨てて、ウサギが走る。ポットを捨て、薬瓶を捨て、持ちうる限りの速さで駆けて、跳ねて――憎き猟兵の懐へと潜り込んだ!
 そしてそれこそが、哀れなウサギの敗因であったと気付く。
 ゼイルの背後に、赤い瞳があった。ウサギのそれよりも赤く、鋭く、血に飢えた瞳。獰猛な人殺しの獣達が舌舐めずりをする飢えた目。
「ほら、出番だぜ。好きなだけ食えよ」
 ――それでも残ったやつは貰うがね。
 巻き込まれるのはごめんだとゼイルが武器を引き、一歩下がる。前のめりの体勢で突撃したアリーチェは、下がれない。
 そして彼女が次に見たものは。
 ゼイルの合図に従い一斉に襲いかかった、森の住人達の牙と爪、そして命を断つ鉄の刃の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
味方の殺人衝動を適度に抑えながら戦えと。
わたしに良い考えがある。

敵が殺人鬼たちに攻撃をかけると、それ自体が殺人衝動を助長しかねない。よって敵の攻撃はわたしが引き受ける。その目的で、敵に気合の入ったギャグという名の精神攻撃で挑発をかける。

えっときみの名はアヒージョくん?
違った?ごめんごめんグラッチェくん。
そんな怒るなアリアリアリアリアリーデヴェルチくん。
その攻撃はミルクセーキではなく見ろ臭せー液なのだ!?むしろその臭いはミルクせ(PG12)

そして今回ユーベルコードの効果を敵のみならず味方にも及ぼさせる。これで殺人衝動が適度にやわらいでくれるという寸法なのだ。
んで平常心ゆらいだ敵を二刀流で斬る。





●壊す
 場所は戦場の中。辿り着いた先は戦いの真っ最中。
 事態はこちらの優勢で、おそらくそう苦戦することなく敵は殲滅される。
「それなのに、わたし達は味方の殺人衝動を適度に抑えながら戦えと」
 何故ならこのまま放置しておけば、優しい味方達は一人残らずオウガへと墜ちてしまうから。
 なるほど、と大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は状況を整理して一つ頷く。戦う殺人鬼達は衝動を全開にしているからか、見るからに殺気だっているようであの中に割って入ることだけでも困難そうだ。それでいて、戦いを続行しつつ彼等が元に戻れるよう言葉をかけてやらければならないと。なかなかどうして、物事はうまく運ばないらしい。
 けれど、麗刃はとても自信満々に、神妙な顔をして宣言するのだった。
「わたしに、良い考えがある」


「はいはいお邪魔しますのだ」
 殺人鬼と偽アリスであるウサギとの間に麗刃は文字通り滑り込んだ。当然、激しい戦いを繰り広げていた双方の表情に驚きと戸惑いの表情が浮かぶが、麗人は何も構う事なく堂々とウサギへ向き直る。
 そして大声で問いかけた。
「えっときみの名はアヒージョくん?」
 間。というか一瞬空気が別の意味で凍った。
「……そんな美味しそうな名前じゃないわ! わたしの名前はアリーチェよ!」
 斜め上のとぼけ方に顔を真っ赤にしてウサギが反論する。それに対しても麗刃は軽く笑うのみ。
「違った? ごめんごめんグラッチェくん」
「それはありがとう! じゃなくて、お礼言ってどうするの!ア・リー・チェ!」
「そんな怒るなアリアリアリアリアリーデヴェルチくん」
「今度はお別れになってるー! っていうか人の名前を敵を連続で殴って止めを刺すときみたいな掛け声にしないでくれる⁉」
 地団駄を踏んで己の名前を訂正するアリーチェ。その様子は、つい先程まで殺し合いをしていた姿とはまるで別人の様だった。
 これこそが、麗刃の妙案。敵前で気合の入った渾身のギャグ、という名の精神攻撃で挑発を仕掛け戦意を削ぐあいすぶれーくな作戦なのである!
 一見簡単そうに見えて生半可な覚悟でこんな行為はできない。自ら望んで敵の怒りを買うこの行為は、ともすれば一斉攻撃を喰らいあっという間に消し炭となる危険を孕んでいるのだ。
 そうこう言っている内に、ほらこの通り。
「アンタなんてこれでもくらえーっ!」
 予想通り怒り狂ったアリーチェが薬瓶を投げつける。もはや彼女の思考から殺人鬼達の存在など微塵も無いようで、瓶は真っ直ぐに麗刃へ向けて飛んでいった。
 よっと、勢いをつけて麗刃はその場を飛び退き、これを回避する。たしかに攻撃は集中するが、怒りで冷静な判断が失われた分、彼女が狙っている先は明確。落ち着いていれば避ける事など容易いことなのである。
 目的を失った薬瓶が地面へと辺り砕け散る。中に入った腐った卵と牛乳が強烈な悪臭を放ち、麗刃は思わず顔をしかめる。
 きゅぴん。そしてひらめいた。
 これぞ大豪傑・麗刃渾身の必殺ギャグ!
「その攻撃はミルクセーキではなく見ろ臭せー液なのだ⁉」
「違うわよッ!?」
 違ったようだった。
「じゃあむしろその匂いはミルクせ――」
「言わせないわよ⁉」
 秒速でアリーチェが突っ込み麗刃の第二派は防がれた。良い子の住む健全な不思議の国であわや大惨事であった。
 壮絶(?)な麗刃とアリーチェの舌戦に、くすくすと小さな笑い声が混ざってきた。麗刃が後ろを見れば、先ほどまで殺気立っていた殺人鬼達は皆一同に口元を抑え、笑っている。
(うんうん、これで狙い通りなのだ)
 麗刃のギャグの効果は何も目の前の敵の為だけにあるのではない。シリアスな空気をぶち壊す効果はやり取りを耳にした味方にも及ぼさせるのだ。これにより、多少なりとも彼らの中の殺人衝動は緩和されることだろう。
 それを確認し改めて、麗刃は二刀を構え、怒りまくるアリーチェへと向き直る。
「んで、さよならなのだ、アリーチェくん」
 怒りで我を忘れたウサギは、やっぱりあっという間に倒されたのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

蝶ヶ崎・羊
【羊と雀】

愉快な仲間で殺人鬼ですか…衝動を理解して抑えられるからこそオスカーさんとは違って見えるのでしょうか

壊れる前に抑えてあげなくては…敵への攻撃はオスカーさんに任せてワタシは瀕死寸前の殺人鬼さん達には【気絶攻撃】
それ以外の方には説得を試みます
『任されました。オスカーさんもお願い致します』
『ワタシ達は貴女方の力になりに来ました。ですので、これ以上ご自身を傷付けすぎないでください。それにその衝動は別の方に向ける為のもの…そうでしょう?』

敵の攻撃が来れば【見切り】や【武器受け】でミルクセーキを回避します
説得が終われば加勢します
上記の回避法で次も当たらない状況を作ってからUCで回し蹴りします


オスカー・ローレスト
【羊と雀】

愉快な仲間で、殺人鬼……
……同じなのに、俺とは違う……彼らは衝動を、恐れてないように見える、から……(殺人衝動を抑えられてる自信が無い小雀

お、俺は説得とか、抑えるよりも、アリーチェ達への攻撃や妨害に専念する、よ……そっちは、羊に任せる、ね……しょ、衝動を抑えられてる気がしない俺が何か言っても、説得力ない、だろうし……

アリーチェ達に向けて【暴風纏いし矢羽の乱舞】を放つ、よ……攻撃、するだけじゃなくて、彼女たちの持ってるティーポットを取り落とさせるのも、狙い……俺達だけじゃなくて、殺人鬼達にも、せめて、かからないようにと、思って……(【武器落とし】使用



●逸らす
 愉快な仲間で、殺人鬼。
 オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)はそっと、震える己の手を見下ろした。
 小さな弓もつ、雀の射手。オスカーもまた、彼らと同じ種族で、同じ殺人鬼の性質を持つ者である。
 表面的になら、そう、見えるだろう。
「……同じなのに、俺とは違う」
 けれど直感で、オスカーは否定する。
 幾度となく愛しの駒鳥をこの手で射殺して。嫌で嫌でしかなかった筈が、いつしかその感覚が忘れられず、求めてしまった。それがオスカーを作り上げた何もかもだ。
 逃げようとして、逃げようとして。逃げられなくて、抑えられなくて。
 けれど、彼らは違う。同じであって、オスカーとは違う。
「愉快な仲間で殺人鬼ですか……衝動を理解して抑えられるからこそ、オスカーさんとは違って見えるのでしょうか」
 その横で、共に不思議の国に降り立った蝶ヶ崎・羊(罪歌の歌箱・f01975)が冷静に判断を下す。彼の言葉に、オスカーは俯きながら小さく頷いた。
 それは、まさに今、自分が思っていた通りの言葉だった。
「そうだね……彼等は衝動を、恐れていないように見える、から……」
 逃げて、それでも追いかけられて追い付かれて。自分の中の衝動を抑えきれていると言い切れない自分とは違い、彼らはその衝動をよく理解している。
 理解しながらも不思議の国で穏やかに暮らしていて――そしていま、向き合っているからこそ、恐れずに戦う勇気を持っている。
 自信とか、心の持ちようとか、そう言えてしまえばそうなのかもしれないけれど。そんな彼らが墜ちてしまうを、オスカーは耐えられなかった。
 俯いていた顔を上げ、ゆっくりと傷付きながらも戦う愉快な仲間と、敵のウサギの少女を睨む。
「お、俺は説得とか、抑えるよりも、アリーチェ達への攻撃や妨害に専念する、よ……」
 だから愉快な仲間は、羊に任せるよ。言いながら、オスカーは背中の翼を広げ、戦闘の体勢をとる。
「任されました。オスカーさんもお願い致します」
 そう言ってその場をから離れる羊を背中で見送って、その成果を祈りながら。オスカーはこっそりと先の言葉の続きを胸の中で続けた。
(しょ、衝動を抑えられている気がしない俺が何かいっても、説得力ない、だろうしね……)
 だからきっと、彼の方が。衝動とは縁遠い冷静な彼の言葉の方がよく届くだろう。
 オスカーと、ここにいる愉快な仲間達は違う。
 違うからこそ、オスカーにはやらなければならないことがある。
 不自然に千切れた跡の残るを翼を広げ、羽根を散らす。風の魔力を集め、飛び散った羽根に纏わせた。
 小さな羽根だって、研ぎ澄ませればナイフよりもよく切れるのだ。
 矢羽が走る。退避する愉快な仲間の殺人鬼を追い縋ろうとするアリーチェ達の足を止める為に。足元に突き刺し、白い肌を傷つけて。それでもオスカーの羽根が尽きることなく、アリーチェへと向かっていく。
 あれを、とオスカーが少女の手の中のティーポットを指さした。可愛らしい模様と形をした陶器だが、その中身は凶悪な凶器の液体。
 それがもう、自分達だけでなく、優しい彼らにかかることのないように。矢羽でアリーチェの手を狙う。射抜く。赤が散る。もう一度射抜き、弾き飛ばす。
「す、少しでも守れるように……!」
 舞い踊る羽根と吹き荒れる魔風の中、ここから先は通させないとオスカーはアリーチェ達の前に立ちはだかるのだった。

 
「失礼」
 自らを飛び越えて無理矢理戦場に戻ろうとしたイヌを捕まえて、羊は謝罪を入れながら昏倒させた。手の中でぐったりとするその身体を見れば、既にあちこちに傷を負い、瀕死寸前の状態であった。とてもではないか、これ以上戦える状態ではない。それでもなお立ち向かおうとするのは、殺人鬼として殺戮を求めるが故の行いなのか、それとも自身の状態など顧みない程に、必死な想いが存在するからだろうか。
 その心の奥底を、羊は知ることはできない。けれど、それでは駄目であるだけははっきりとわかっていた。
 傷がついただけなら直せばいいけれど、壊れてしまったものはもう二度と元には戻らないのだ。
「ですからその前に、抑えてあげなくては……」
 気絶したイヌをそのまま小脇に抱えて、羊は愉快な仲間達の群れへと急ぐ。
 アリーチェ達の相手はオスカーが引き受けてくれている。一体多数だ、長くはもたないだろうが、それでも今この時は、愉快な仲間と敵は完全に分断されている。
 その隙に、羊は愉快な仲間達がわざとこちらに気付くように歩み寄る。抱えてきた彼らの同胞をそっと地面に寝かせてやりながら、落ち着いた声で彼らへと呼びかけた。
「ワタシ達は貴女達の力になりに来ました」
 ざわりと集まる視線。戦いの最中の、殺気立ったそれを一身に浴びながら、それでも羊は鷹揚に言葉を続ける。
「ですので、これ以上ご自身を傷付けすぎないでください」
 傷付くだけなら直せばいい。割れたなら埋めればいい。けれど――ひとたび墜ちて砕けてしまえば、幾ら張り付けようと、幾ら継いで合わせようと、二度と同じものには戻らない。その躰も、その心も。
「それに、その衝動は別の方に向ける為のもの……そうでしょう?」
 壊れて、歪んで、誤った方向へと刃を向けてしまわないために。どうかその衝動を抑えて欲しいと羊は訴えた。
『……――』
 その言葉に――愉快な仲間達から発せられた空気がふと、変わった気がした。
 返答はない、賛同もない。けれど、今にも破裂しそうだった危うげな空気が少しだけ、落ち着いたような気がする。
 白と黒の大きなイヌが羊の足元へと歩み寄り、同朋の傷を舐めた。我先にと戦いに赴くのではなく、勇敢に戦った証を労わるように。
 その様子を見て羊はほっと息を吐いた。不安定ではあるが、さしあったての危機は回避されたと見てよいだろう。
 そうして――同時に、銃を握る腕を上げ、己の背後に向けて引き金を引いた。
 そちら側を一切見ることなく、飛んできた薬瓶を疾風の弾丸で撃ち落とす。みればオスカーの猛攻を掻い潜ってきたであろう時計ウサギが悔し気にこちらを睨んでいた。
「ああ、ご安心を」
 再び投げられた薬瓶の軌道を見切り向き直って、今度はひらりと躱してみせながら羊は守るべき愉快な仲間へと微笑んで見せた。
「貴女達とこの世界。共に救うためにワタシ達は力になりましょう」
 ステップを踏むように優雅に、アリーチェの元へと向かい、その距離を詰める。次々と投げられる薬瓶を避けて、あるいは撃ち落として。愉快な観客達を前にして、人形の演舞は進んでいく。
 そして遂に、互いの手が触れる程その距離は近づいて。
 ――さぁ、ダンスはお嫌いでしょうか。
 オーラを纏った羊の回し蹴りが、可憐なウサギの身体を斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三上・桧

ごきげんよう、小さなお友達。なにやら気が立っているご様子で
火車さんでもモフって少し落ち着いては如何でしょうか?
あなた方まで暴れては元も子もありませんよ

火車さんには猫用おやつをたくさんあげて、殺人鬼さん達を軽く【誘惑】してもらいましょう
魅了で殺戮衝動をある程度抑えてもらうのです
『妾をモフり落ち着くがよい。今の妾は機嫌がよい故、少しくらい切りつけられても怒らぬ』

さて、あちらの偽アリスとやらはどうしましょうか
熱湯には【結界術】で対抗
【浄化】の力を付与した結界で強酸を中和します
後はロケットランチャーで【吹き飛ばし】てしまいましょう
命中力には自信がありませんので、トドメは殺人鬼さん達にお願いしますね



●埋まる
 ふわふわの尻尾と共に、王子様はやってくる。
 ゆったりと、優雅とも見えるようなのんびりとした足取りで、三上・桧(虫捕り王子・f19736)は愉快な仲間の前へと歩み出た。
「ごきげんよう、小さなお友達。なにやら気が立っているご様子で」
 彼女が見つけたその群れは、大小様々なネコの群れだった。黒、白、三毛、ブチ。鍵尻尾から長い尻尾、ふわふわの毛並みからショートヘアーまで種類は様々。四つ足で鋏を咥えるものから、長靴でも履いていそうな二足歩行のものまでいる。まるでネコの秘密の集会だ。
 彼らが皆、その光る眼に冷たい宿していなければ。
 そんな中で、そんな視線を集めながら。それでも桧はのんびりと恭しく、彼らに挨拶し、礼をする。挨拶をされたら挨拶で返すのが礼儀というもの。ましてや彼女はかつて不思議の国に足を踏み入れたアリスである、不思議な仲間がこれを無視できる筈が無い。
 桧のお辞儀を受け、飛び出す機会をうかがっていたネコたちは皆一同に彼女へと礼を返す為に足を止める。
 そんな彼らの様子に桧は無表情ながらも僅かに口元を上げて。握っていたシャンパンゴールドのメダルを見せながら首を傾げる。
 途端、ぽん、と軽い音を立てて。桧が掲げたメダルから、黒い長毛種の猫が現れた。桧の使い魔、齢20年以上を生きる野良猫又の『火車』である。
「火車さんでもモフって少し落ち着いては如何でしょうか? あなた方まで暴れては元も子もありませんよ」
 事前にたっぷりとクッキー(猫用)とパウチのおやつを上げて交渉していた火車は、髭と胸を張りながら妙に尊大な態度で愉快な仲間達へと声をかける。
『妾をモフり落ち着くがよい。今の妾は機嫌がよい故、少しくらい切りつけられても怒らぬよ』
 とん、と地面に降り立つと、艶の有るたっぷりとした毛並みをそよがせながら、火車は優雅にネコの群れの中に入っていく。あやかしメダルから悪魔として呼び出した今の彼には強力な魅了の術がある。ついでに言うと、その姿も一般的なネコよりも巨大で、当然そのもふもふ具合も絶賛増量中だ。
 そんな魅惑のもふもふの魅了術に抗える訳はないのである。
『わっ、ちょ、爪を立てるな! 切るのは良いと言ったが引っかくのは許してないぞ!』
 猫まっしぐらとはこのことだろう。一匹、また一匹とネコたちは飛びついていく。あっという間に毛玉に埋まり、一回り大きい毛玉になった火車を見遣って、桧はそっと口元を抑えた。
 これできっと、彼らの衝動も少しは発散されることだろう。あとは残りの問題を解決するだけだ。
 さて、それでは――。
 その時、もふもふが生む毛玉の山へと、丸い物体が飛来した。
 くるくる回ったそれは真ん丸のティーポット。山の真上まできてくるりとひっくり返ったそれから、煮えたぎる熱湯が降り注ぐ。
 即座に、印を組む。不可視の障壁に守られ、ネコたちは守られる。
 触れるもの全てを焼くそれを、浄化の術で中和し、弾き飛ばして。桧は静かに、ポットの出どころを――くすくす笑う時計ウサギの姿を睨んだ。
「あちらの偽アリスとやらはどうしましょうか」
 『慈救砲』――不動明王呪が刻まれたロケットランチャーを構え、目標を補足。次砲がくる前に引き金を弾く。
 命中率には自信がないが、問答無用で浄化を施すその威力はお墨付きだ。的中はしなくとも、爆風で吹き飛ばし、悪いウサギをおびき出すことくらいは訳がないのだ。
 転び出てきたアリーチェに、再びランチャーを叩き込みながら。桧は火車を呼び戻し、ついてきたネコたちに目配せをする。
 此処から先は、勇敢なる彼らの手に委ねよう。
 さぁきっと、悪い夢見心地も少しは冷めた頃合いだから。
「浄化の終いはネコさんたちにお任せしましょう」
 魅惑の尻尾に連れられて、ネコは、迸る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ

同類たちに[郷愁を誘う]言葉を持って話す

同類、お前はなんて名前だ?
今、その名前を呼んでくれる人はいる?
いるのなら、尚更その衝動を抑えないとね
待っててくれる人がいるなんて羨ましい、その人を裏切るなんてことしないよな?


偽物とはいえ愉快な仲間たちにアリスを刻ませるなんて、悪趣味ってやつだ
俺が出来るだけいっぱい片付けよう
小さな同類たちの負担を少しでも軽くできたら良いな

3種のカトラリーをUC【中傷】で花弁に変換、いっぺんに片付けてやろう
ある程度数が減ったら武器を戻して白兵戦へ
近くにいるやつから片っ端に[切断][串刺し]

同類たちの殺人鬼UCは必要なら一撃を受けよう
こんな奴らとの戦いで命を削る必要はないよ


向坂・要
大切なアリスを守る為、ですかぃ。
それなら尚更、お前さん達自身も元気でいなくちゃ、ですねぇ

彼等も無事に。
それこそが、アリスの心も守る方法だろう、と共感(わから)なくても理解(わか)るから

住人達と連携を意識
但しどちらかと言えばあちらにサポートに回ってもらう様【第六感】も活かし俯瞰で場を把握し立ち回り

心ってやつに関して言えばあちらさんの方が先輩でしょうしね
可愛い後輩に場を譲っちゃくれませんかぃ?

彼等が殺人鬼の技を使う際は極力一度は味方として技を受け寿命の軽減を阻止
基本は愉快な仲間達の技による援護を依頼

敵の攻撃は基本【見切り】や住人の助けや大地の精霊の加護により【地形を生かして】回避



●庇う
 少女を偽ったアリーチェ達に、イヌとキツネの姿の殺人鬼が襲い掛かっていく。強靭な足で地を掛けて、投げられる凶器を交わしていく。少女に飛びかかり、加えた鋏で肉を断つ。
 一見は殺人鬼の優勢だろう。それでも、少しずつ。その心は削り取られていく。
 柔らかい肉、愛らしい相貌。それはどうしようもなく、彼らの愛しいものを彷彿とさせて。嫌が応でも連想させ、迷わせる。
 彼らが刻んでいるのは、刻みたい形は。一体どちらで、一体誰だったろう――?
「偽物とはいえ愉快な仲間たちにアリスを刻ませるなんて、悪趣味ってやつだ」
 そんな彼らの心境を思い、廻屋・たろ(黄昏の跡・f29873)は苦々し気に呟いた。オウガへと墜ちる危機に瀕する殺人鬼達。その姿が彼らの守りたいものに酷似しているのは偶然か、それともこれすらも猟書家の狙いか――。どちらにしても、趣味が悪いことに変わりはないだろう。
 だから、たろは己の為すべきことを改めて確認する。
「俺が、出来るだけいっぱい片付けよう」
 だってそうすれば、小さな『同類』達の負担を少しでも軽くすることができるから。できたら、良いから。
「そうですねぇ」
 唇を引き結んで呟くたろにの言葉にゆったりとした相槌を打ったのは向坂・要(黄昏通り雨・f08973)だった。
「大切なアリスを守る為、ですかぃ」
 軽い口調とは裏腹に、彼の紫の隻眼は真っ直ぐに戦いに赴く愉快な仲間達へと注がれていた。
 彼らがかけがえのない何かの為に、戦うのいうのなら、要は彼らを止めなければならない。誰かの為にとその身を賭し、代わりに大切な失ってしまっては、きっと誰も幸せにになれないのだ。
 『物』として長い時間在り、ヒトとは異なる視点を持つ要には何かを守りたいと、守り遂げねばならないと思うその心は共感(わか)らないけれど。
 多くのヒトの手を渡り、その行く末を見守ってきた要だから、その選択が持つ意味を識り、理解(わか)っているから。
 脇目も振らずにすすむその道は誤っていると、示してやらねばならない。
 故に二人は同時に、迷うことなく戦場へと飛び込んだ。
 
 
 殺人鬼としての異能には、己の得物の手数を増やし、攻撃の回数を上げるものが存在する。猟兵程ではないが、発動させればその効力は大きく、瞬間的に殲滅力を跳ね上げさせることができるだろう。実際、愉快な仲間達もこれを用いることでアリーチェ達を圧倒することに成功していた。
 けれど、その異能には大きな代償がある。九つに分かれた攻撃の内、どれかひとつは己の仲間を傷つけなければならないのだ。そうしなければ過ぎた力は使用者を蝕み、その命を削ってしまう。
 支払うのは仲間の血か、己の寿命か。その選択の中で、愉快な仲間が皆一様に選んだのは――己の血肉だった。
 イヌの持つ鋏の先が僅かに揺れる。彼にとって、それは九つ目の攻撃だった。このまま敵へと刃を向ければ、殺人鬼の力はそのまま己の躰を喰らっていくだろう。
 けれど、その刃を味方に振るうという選択肢は彼には無かった。自分達は守りたい者の為に戦っている。身の内の衝動に身を任せても、その刃を向ける先を違えるつもりはない。
 そう覚悟し、鋏を敵へと向けて突き出した――その時。
「少し落ち着きなせぇ」
 白銀の大狼がイヌの前に飛び出し、己の身体をもってその刃を受け止めた。大精霊の加護により狼の姿に変化した要である。
「こんな奴らとの戦いで命を削る必要はないよ」
 その隣で、同じく寿命を削る選択をしたキツネの攻撃を受け止め、たろが嗜めるように言った。
『何故邪魔をするッ!』
 覚悟を邪魔されたことへ怒りの声を上げるイヌを要がまぁまぁと宥める。彼の刃を受けた白い毛並みには血が滲んでいるが、そんな傷はほんの些細なものだ。
「どちらかっていうと、お前さんたちにはお仲間を呼び出してサポートに回って貰いたいんだすが」
『どうして……アイツは俺達が倒すのに!』
「大切なアリスを守る為、ですかい? それなら尚更、お前さん達自身も元気でいなくちゃ、ですねぇ」
 喰ってかかるイヌを見下ろして、要は静かに説く。
 誰かを守る為には、なによりもまず彼ら自身が無事でいなければならない。そうでなければ、守られているものは悲しむだけだろう。
「それこそが、アリスの心も守る方法でしょう。心ってやつに関して言えばそちらさんの方が先輩でしょうしね、可愛い後輩に場を譲っちゃくれませんかぃ?」
 ゆるりと大きな尻尾を振って要が言えば、イヌの殺人鬼はぐっと押し黙って俯いた。
「なぁ同類、お前はなんて名前だ?」
 一方。たろもまた、己の腕で受けた刃の主を真っ直ぐ見返して問いかけていた。予想外の彼の存在にキツネは混乱しつつも、素直に其れに応え名前を名乗った。
『えっ……き、キッド……』
「今、その名前を呼んでくれる人はいる?」
『うん……優しいアリスと、お花達。戦えないから、僕が守るんだ』
 彼らの姿を思い出しているのだろう。少しだけはにかむキツネに、たろはそうか、と頷きその頭へと手を置いた。
「いるのなら、尚更その衝動を抑えないとね」
 待っててくれる人がいるなんて羨ましい。素直にたろはそう思う。
 だって自分は、かつて失ってしまったから。信念を通す為に犠牲にして、切り捨てて。気がついたら周りはなにもなくて、気付けば名前だけがそこにあって……けれどもう、その名前を呼ぶものは自分以外いないのだ。
 そうやってたろはここにいる。だから彼には、そうなって欲しくない。
「その人を裏切るなんてこと、しないよな」
 たろの瞳から、何かを感じたのだろう。キツネは少しだけ彼を気遣うような視線を送ると、こくりと一つ頷いた。
 よし、とそんなキツネに頷き返して。たろは改めてアリーチェへと向き直り、三種のカトラリーを構える。
「――『その言葉、忘れはしない』」
 その言葉は、【中傷】。黒塗りのカトラリーは瞬く間にイラクサの花へと姿を変え、失われたたろの過去と共にアリーチェ達を切り刻んだ。薬瓶を投げようとしていたウサギ達は思わずたたらを踏み、ティーポットからの熱湯をふりかけイラクサを焼こうと試みる。
「させませんぜ」
 そこに大狼の爪が迫る。巨大な前脚を薙ぎ払い、要がティーポットと薬瓶を手の中から弾き飛ばした。
 同時にイヌが呼び出した仲間たちが走り、転がった丸い陶器を拾い上げ、遠くへ放り投げてしまってしまえば。彼女にはもう、イラクサの花を防ぐ手立ては無い。
 全身を刻まれ、怯むアリーチェに大狼が止めとばかりに噛り付き。武器を戻したたろが付次ぐくように食器をウサギに突き立てる。
 そうして愉快な仲間達の助けを借り、二人は次々と偽りのアリスを殲滅していくのだった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・クールー
見覚えがある。身に覚えがある。いつかのわたし。あれは、あれが、わたし
わたしは、守りたい為に、いいえ。私欲を満たすために、力を、力。暴力を振るった
オウガだけならず、アリスを。アリスも。自分にも。そう、助けてくれたオウガにも
助けたオウガにも
《ノムノムカ?ヒルマカラカ。クサイオサケニ!ヨルニ!》

……落ち着いて。そう、思い出して。呑まれてはいけないのです
矛を盾として……守ることも、戦いなのです!!

煮え滾る。荒波は収まらない、無くしてなるものか。それでも。それでも断ち切ってはダメです!!
帰れます!帰れる場所があります!!どうかそれを捨てないで!あなたの大切を、アリスを!わたくしが、帰り道を作りますから!



●荒らう
 見覚えがある。身に覚えがある。
 己の血液を流し贄として。共犯者の肉を削ぎ落し糧として。赤錆び、刃毀れした鉄の武器を手に取り振るいながら、マグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)は目の前で起こる光景に絶句していた。
 鋏を持つ小人達。その目は爛々と輝き、嬉々とした表情でウサギの少女を刻んでいる。その目的は守る為に。戦う、守る為に。戦っていた、何のためにかも忘れながら。
 まるで氷塊を押し付けられたような心地だ。
 マグダレナは気付いていた。小人達の目に、見覚えがあることを。
「――あれは、わたしだ」
 いつかのわたし。あれは、あれが、わたし。
 不思議の国へと墜ちた時。マグダレナは戦った。
 守りたい為に、いいや。私欲を満たすために、力を、力。暴力を振るった。
 全てを屠るために。失われたものを奪う為に。殴って、挽いて、潰して、晒して、砕いて。
 それは暴力だった、力だった。それを振るった。持てる全てをもって全てに振るった。
 オウガだけならず、アリスを、アリスも。自分にも。忌々しいオウガには勿論、助けてくれたオウガにも、助けた筈のオウガにも。
 余すところなく振るった。蹂躙した。尽力を尽くした。
 守るという大義のもとに衝動に身を任せて、鋏の代わりに紅い槍と斧を手に持って。目の前の彼のように赤を撒き散らして。
 だからあれは、わたしだ。わたしなのだ。わたしだから。
 だから――どうすればよいのだろう?
《ノムノムカ?ヒルマカラカ。クサイオサケニ!ヨルニ!》
「……リィー」
 渦巻く思考を覚まさせたのは、マグダレナの足元から響く声だった。見れば彼女の共犯者たるオウガは巨大な鋏を振り回し、此方に向けて投げられた薬瓶を打ち返していた。どうやら彼はマグダレナが酩酊していると思っていたらしい、呆れるような、避難するような視線がこちらに突き刺さってくる。
 そんな彼に向けて曖昧に首を振り、マグダレナは己の頬を叩く。
「……落ち着いて」
 通した声は自分に向けてか、彼らに向けてか。一度唾を呑み込み、渇いた喉を潤して、マグダレナは声を張り上げる。
「そう、思い出して。呑まれてはいけないのです」
 過去に呑まれている時ではない。記憶に酔っている場合ではない。目の前で戦う小人はたしかに『わたし』だけれど。同時に彼らは間違いなく、『不思議な国の愉快な仲間』なのだから。
 だから、呼び戻す! 脇目も振らず進む彼らに、戻る道があることを、呼びかける!
「飲み込めとは言いません。けれどそれでも……それでも断ち切ってはダメです!」
 心は煮え滾る。荒波は収まらない、収めてはいけない。この感情はこちら側のものだ。だから失くしてなるものか。
 我先にと、マグダレナポールアックスをアリーチェに向けて叩きつける。不思議の国の芝生に赤が散る。集まる小人達と共に、パルチザンで貫いてウサギに止めを刺す。
 戦いたいなら戦えばいい。マグダレナだって戦おう。
「帰れます! 帰れる場所があります! どうかそれを捨てないで、あなたの大切を、アリスを! わたくしが、帰り道を作りますから!」
 けれどどうか。その全てを捨てないでとマグダレナは叫ぶ。
「矛を盾として……守ることも、戦いなのです!」
 だからどうか、その心の寄る辺だけは守り通してほしいと。
 戦って、戦って、戦いながら。
 荒れ狂う感情を抱きしめながら、それでもマグダレナは小人達に心の帰路を示して見せたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(騎士としては己を顧みず戦いに赴く彼らの覚悟を尊重すべきなのでしょう
人々を害す前にその果てに行き着いた者を討つ
戦機の騎士として、その覚悟も備えも胸中に)

…ですが、御伽の騎士は
そんな結末など迎えはしませんね

主な攻撃と防御は私がお引き受けいたします(武器受け盾受け、かばう)
皆様はオウガへの牽制と追い立てを

殺人鬼達の挙動に浮足だち体勢崩したオウガへ脚部スラスターでの推力移動で一気に接近
苦悶、出血等の味方への刺激考慮
UCで制御し振るう剣盾で頸椎のみ折り即死

…今すぐ戻って来なさい!

(衝動で惨殺し始めた味方にUC格納銃器を発砲。首の薄皮削り、死を意識させる乱暴な方法で制止)

この国で貴方を愛した人々の為に!



●反する
 どちらの選択が、果たして正しいのだろうか。
「主な攻撃と防御は私がお引き受けいたします。皆様はどうかオウガへの牽制と追い立てを」
 息を巻くシカ達に協力を呼びかけ、共に戦地を走りながらトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は逡巡していた。
 辛うじてこちらの言葉は通じてはいるものの、動物達は皆興奮し、闘志を露わにしている。
 そんな彼らを、トリテレイアは本当に制して良いのだろうか。
 彼らの決意は本物だ。皆自らの意思で判断し、この場に残り戦いに赴いている。
 トリテレイアの中で、騎士としての思考が訴える。己を顧みず戦いに赴く彼らの覚悟を尊重するべきではないか。生半可な感情では、彼らの尊い覚悟を蔑ろにするだけなのではないか。
 その心が本物であるならば、彼らの戦いを見届ければいい。そしてその先で、人々を害す前に、その果てに行きついたものを討つ。それが戦機の騎士としてのあるべき姿なのではないか。
 勿論、万が一のことはある。トリテレイアとてその腹も備えもとうの昔に決めている。
 そこに躊躇いはない。臆する事もある訳がない。
 けれども、もう一つ。彼の記憶(メモリー)の中で、囁くものがいるのだ。
「……ですが、御伽の騎士はそんな結末など迎えはしませんね」
 そんな終幕は、彼らにも、彼らが守りたかったものにも相応しくないと。
 脚部のスラスターを展開。獣の本能のままに走り出す彼らに負けじと地を滑り、アリーチェ達へと疾走する。
 道中で投げつけられた薬瓶には腕部に格納された銃の使用を承認。目標物を撃ち落とそうとして――即座にそのコマンドを取り消した。
 銃を元の場所に納め、大盾を構える。眼前で響く硝子の砕け散る音。腐臭が辺りに広がるが、それくらいでは鋼の体は怯むことを知らない。
 脚部の出力を増大。盾を構えたままの体勢で、シカに囲まれたアリーチェへと突進する。 肉薄する、勢いのままに振るい、殴りつけた。鈍い音と共に伝わる手応えで、目標個体の頸椎が砕け、活動を停止させたこと確認する。
 トリテレイアはあくまで銃も、大剣も用いることを選ばなかった。殺人衝動を抱える動物たちにとって、少女の姿をした兎の苦悶の声も、出血も、きっと毒になるだろうと考えてのことである。可能な限り、今の彼らには大きな刺激を与えずに振舞おう。そうすればきっと、彼らの衝動を抑えることは可能な筈だ。
 その、筈だったのに――。
 甲高い嘶きが響き、トリテレイアははっとしてそちらを向く。見れば一匹のシカが大きな角を振るい、別のウサギの少女を薙ぎ倒しているところだった。
「いけない……!」
 それだけならばまだ良いだろう。しかし、獣は止まらない。膨れ上がった衝動をぶつけるように、鋏で突き刺し、蹄で踏みつける。骨を砕き、肉を削り、惨たらしく嬲理始める。
 このままではいけない。トリテレイアのセンサーが恐れていた危機を感知した。
 同時に先程の迷いが首をもたげる。
 もしもその果てに行きついたのならば。その手で守りたかったものを害する前に、騎士として。
 ――いいや、その判断はまだ早計だ。
「……今すぐ戻って来なさい!」
 腕の格納銃を即座に展開。瞬時に標準を定め、発砲した。
 狙うはシカの首。毛並みを僅かに抉り、首の薄皮一枚のみを削り死を予感させるだけの牽制射撃。機械の躰と知能もつトリテレイアだからこそ行える、乱暴でありながら有効的な制止だった。
 素早く銃を納め、死線に動きを止めた彼へと駆け寄る。
 させない。させる訳にはいかない。不思議の国の住人たる彼らには、戦機の騎士の矜持など似合わない。
 彼らに相応しい、御伽の国の結末は――。
「戻りなさい、この国で貴方を愛した人々の為に!」
 必死に呼びかければ、夢遊していたような視線はやがて定まり、ぱちくりとシカは黒い瞳で彼を見返して。
 トリテレイアはそっと、安堵の息を漏らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天瀬・紅紀
僕は殺人鬼じゃないけど…うん、自分の衝動を抑えるって点は何か良く解る
強い負の感情って自分が自分ではなくなる感覚に陥る時、無くは無いしね
あの子達が本当に自分を失う前に…

UC発動
敵に向けて降らすのは炎の雨
熱湯も蒸発してしまえばまぁ恐くない
直後の戦場は湿度100%超えで、毛皮着てる愉快な仲間の皆にはちょっとキツいかな?
少しばかり暑さで朦朧として、殺戮衝動どころじゃ無くなれば良いけどね

僕はまぁ暑(熱)いの平気なんだけど
耐熱コートだしお湯かけられても平気…って穴空いた!?
くっそ、酸性…! お気に入りなのに!
大体ウサギの分際でアリスのフリしてんじゃねぇよ、この×××(※検閲削除)が!
(残りを刀で撫斬りし)



●燻る
「雨上がりからの暑さを知ってる?」
 ティーポットからばら撒かれた熱湯があちらこちらの地面に水たまりを作る戦場で、天瀬・紅紀(蠍火・f24482)は炎の矢を呼び出す。
 降り注ぐ矢はまるで雨の如く。着弾と同時に燃え上がらる炎はその場にいるアリーチェ達を焼くだけでなく、当たり一帯の戦場を飲み込む。炎はウサギが残した熱湯の名残を瞬時に蒸発させ、生み出された蒸気も相まって異常ともいえる熱帯地帯を作り出した。
 いくらアリーチェ達が追加で熱湯を浴びせてこようと、流れる端から蒸発させてしまえばまぁ恐くない。加えて、彼女達が攻撃を続ければ続けるほど、戦場の温度と湿度は上がり、暑さはさらに過酷なものとなる。抵抗を続ける彼女達は、自分自身の手で己の首を締めているようなものだ。
 こんな自然現象が恒例のように発生する土地の生まれである紅紀はまぁ、平気なのだけれど。おそらく、そう思えるのはこの戦場の中では彼一人であるだろう。
 そんな身から出たような暑さに疲弊の色を見せるアリーチェ達をあしらいながら、紅紀はそっと背後の愉快な仲間達を見遣った。
「僕は殺人鬼じゃないけれど……うん、自分の衝動を抑えるって点は良く分かる」
 ぽつりと、漏らす。能力者として意図的な生を受けた紅紀には彼らの様な生まれながらの業をもつことはなかったが。自身の抱える性質として、時に抑えきれないほどの激情と狂暴性を持っていることは自覚しているから。
 強い負の感情は強さを得ることができる反面全てを塗りつぶす。自我を喰い、正確な判断を狂わせ、合理性も一貫性をも全てを打ち壊す。
 そんな自分が自分ではなくなる感覚に陥る時が……紅紀とて無くは、ない。
 だからこそ、止めなければならないのだ。彼らが本当に自分を失う前に。
「まぁ、この暑さだとそうそう動けないだろうし。これで多少は収まってくれればいいんだけれど」
 傍でぐったりとする長毛種のネコを見ながら、紅紀は苦笑する。
 何しろ、この場にいる愉快な仲間達は森の動物の姿をしているものも多いのだ。ただでさえ森の中ではありえない高温の中、自前の毛皮を持つ彼らにこの暑さは少しばかりキツいだろう。これで多少でも朦朧としてくれて、ついてでに殺戮衝動どころじゃなくなれば幸いだけれど。
 そんな動物たちの様子を見守る紅紀の視界の端で白い影が動いた。なんとか己を奮い立たせ、アリーチェの一人が術の主を攻撃しようと飛び掛かったのだ。
 そんな彼女によって、懲りずに振り撒かれる熱湯を見た紅紀はやれやれと溜息をつく。
 幾ら熱湯を振舞っても、彼の炎はたちどころに蒸発させてしまうのに。さらに言えば紅紀の着るコートは耐熱性。熱湯くらいの温度なら着用者への影響は限りなく薄い。だからたとえ蒸発し損ねた飛沫がかかったとしても、ダメージなどになりはしない。
 無い、のだけれど。
「……えっ」
 穴が開いた。アリーチェの熱湯がかかったところに。
「……あっ、酸⁉」
 残念かな、彼女のお湯は強酸性。紅紀のコートは耐熱性はあっても、耐酸性はなかったのである。
「くっそ、これお気に入りなのに! 」
 途端、紅紀の紅い目がぎろりとアリーチェを睨む。先程までのおっとりとした雰囲気はどこへやら、険のある表情で腰の刀を抜く。
 そして舌打ち。
「大体ウサギの分際でアリスのフリしてんじゃねぇよ、この×××が!」
 ちょっと公開するには憚れるような言葉と共に、アリーチェ達を撫で斬りにしていった。

 ……まぁ、感情に身を任せて戦うとことも、たまに、こんな時には、必要なのかもしれない――おそらく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー

愉快、愉快……見た目に似合わず素晴らしい狂態だ、殺人鬼共。
アンタ達だけに美味しい獲物を独占させてなるものか。
甘い柔肉も綺麗な赤水も全てオレによこせ!

高まれ、『冥き殺戮衝動の波動』よ!
暗黒オーラから【殺気】の【呪詛】を飛ばし【恐怖を与える】
怯ませた隙に【切り込み】
殺人鬼達が攻勢にでたらUC発動
アンタ達はもう充分楽しんだだろう?
超スピードで先回りし彼らの獲物を横取りする【早業・先制攻撃】

お楽しみを邪魔されて不満か?同類達よ。
だがアンタ達はまだ引き帰せる奴等だよ……きっと。
何となくだが分かるんだ、オレはもうそこには戻れないからさ。



●分ける
 鋏の振るう音。砕ける陶器と、肉の千切れる音。嗅ぎ慣れた鉄の匂い。
「愉快、愉快……見た目に似合わず素晴らしい狂態だ、殺人鬼共」
 繰り広げられる凄絶な戦いに、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)がくつりと喉の奥を震わせた。
 いや、或いはその名の通りなのかもしれない。目の前に広がる光景の、なんたる甘美なことか。こんな戦いを生み出すのだ、確かに彼らは『愉快な仲間』なのかもしれなかった。
 けれど、そんな旨そうなものを独り占めにしてしまうのだけはいただけない。
 アンタ達だけに美味しい獲物を独占させてなるものか。そんなずるいことはさせない。
「甘い柔肉も綺麗な赤水も、全てオレによこせ!」
 ナギが叫ぶ。目の前の殺人鬼達と同様の、いやそれ以上の衝動を暗黒のオーラとして具現化させ、彼らの戦いの中へと飛び込んだ。
「ひっ――」
 殺意の呪詛が偶然視界に入ったアリーチェを射抜く。ころされる――そう錯覚する程の圧力が彼女の心を押しつぶした。
 恐怖に心を支配されたウサギにはもう、逃げることも、反撃にナギの胸ぐらを掴むこともできなかった。それどころか指の一本すら動かせない。悲鳴の一つも上げられない。オウガとしての彼女の膂力なら、ナギの攻撃に対抗することができるかもしれないのに、それを本能が拒む。逃げたいと思うのに、震える身体は言うことをまるで聞かない。
 そんなアリーチェの姿にナギの口元が吊り上がる。
 そして――無言で鉈を振り下ろした。
「まだだ――」
 一匹。まだ、一匹。
 こんなものでは足りないと、ナギは次の敵を探す。
 次に目に付いたのは、フクロウの群れとぶつかるアリーチェだった。しかも戦いは少し見ただけでも殺人鬼達が優勢なのが見て分かる。既に敵は満身創痍、あとは抱えた鋏をその胸に突き刺すだけ、といったところだ。
 駄目だ、とナギは嗤う。
 赦さない。それはオレの獲物だ。
 己の首に向けて、薬物の入った注射器を打ち込む。一度に過剰に投与された特殊薬は瞬時に身体を廻り、ナギの寿命と引き換えに五感を研ぎ、能力を飛躍させる。
 ゆっくりと進む世界。その中で己だけが通常に動ける錯覚。走る、ナギだけの高速の世界で、その距離を詰める。
「アンタ達はもう十分楽しんだだろう?」
 フクロウの凶刃がアリーチェに刺さるその前に先回った。そのままウサギの首を刎ねる。
 夥しい赤を全身で受け、ナギはうっとりと目を細めた。
『――』
 そんな彼に突き刺さる視線。見ればアリーチェと戦っていたフクロウ達が、もの言いたげな目でこちらを見ている。
 当たり前だ、ナギは彼らの目の前で得物を横取りされたのだから。
「お楽しみを邪魔されて不満か? 同類達よ」
 返ってくる答えはない。けれど、否定の気配もない。
 そんな張りつめた空気の中で再び、ナギが喉を震わせる。敵はまだいる。このまま三つ巴の乱戦となるのもまた面白いだろうが、生憎それは彼らの『本当』が望むことではない。
「だがアンタ達はまだ引き返せる奴等だよ、きっと」
 なんとなくだが分かるのだ。
 殺戮に興じる彼らは確かに愉快だけれど、彼らの目的は別で有る筈だ。だから彼らがそれを忘れなければ、まだ、一線を越えることはないだろう。
「オレはもう、そこには戻れないからさ」
 戻れるのなら、戻りたいのなら――戻ればいい。
 あとに残した獲物は、ナギが全て喰らうだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ

……数秒だけ
狂気に堕ちかけている殺人鬼たちを呪瘡包帯で縛りましょうか
鋏で呪瘡包帯を切られても構いません
一瞬だけ冷静になってくれればいいので
その間にも敵が投げる薬瓶を霊障で弾き返しつつUCで攻撃
念の為殺人鬼たちにオーラで防壁を張っておきましょう

ダメですよ
その鋏を持つ意味を決して忘れてはいけない
その衝動を向ける先を決して違えてはいけない
それが力ある者の――『アリス』を陰から支える者としての、責務です

どんなに醜くとも、恐ろしくとも
受け入れてくれた人が居たんでしょう
その人の為に何かをしたいと思えたのでしょう
……私も同じです
こんな姿になっても、生きてほしいと願ってくれた人がいたから――戦えるんです



●問う
 ――ほんの一瞬だけでいい。たとえ、たった数秒だけでも。
「ダメですよ」
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)が伸ばした黒包帯が、飛び出しかけた大きなネズミを絡め捕る。殺戮にその身を染め、狂気に堕ちかけている殺人鬼達を、彼らを傷つけないギリギリの力加減で縛り上げた。
 たとえその効果が少しだけでも、すぐにその手の中の鋏で斬られてしまったとしても構わない。ただほんの少し、彼らの思考に割り込み、一瞬だけでも冷静になってもらえればそれでいいのだ。
 そうしている間、愉快な仲間が虚を取られ、スキアファールが彼らに向かっている間にも、
偽りのアリスの攻撃は止まないけれど。投げられた薬瓶を影人間としての霊障で弾き飛ばし、スキアファールはアリーチェを睨み唇を噛んだ。
 嗚呼、鬱陶しい。彼女達に構っている暇など、今の自分にはないというのに。
 片手を上げ、彼女達に向けて振り払う。スキアファールの足元から形なき影の群れが立ち昇り、アリーチェ達に殺到する。
 どうせ何処にも行けない骸の名残、一変も残さず奪い喰え。
 影たちが少女達を呑み込むのを最後まで見届けることはなく、念のためにと殺人鬼達の周囲に影の防壁を張って。スキアファールは改めて、勇敢なる森の動物たちへと向き直った。
 何故なら彼は、伝えねばならない。彼らに思い出してもらわねばならないから。
「……ダメです」
 拘束から逃れた彼らに。同じ言葉を、繰り返した。
 その鋏を持つ意味を決して忘れてはいけない。
 その衝動を向ける先を、決して違えてはいけない。
 誰かを守る為の力は、裏を返せば誰かを傷つけることの出来る力だ。
 鋏は断ち切る。敵への縁を、敵の命を。けれどそれは、敵へとその切っ先を向けた場合のみである。
 だから、決して間違えてはいけないのだ。 大切なものを見失えば、『我々』は簡単に、化け物になってしまうから。
「それが力ある者の――『アリス』を影から支える者としての、責務です」
 アリス、とネズミの誰かが言った。そんな一匹に、スキアファールは頷く。
 『アリス』。それが彼らの道標。己の灯台を思い出した愉快な仲間に、言葉を続ける。
「……どんなに醜くとも、恐ろしくとも。受け入れてくれた人が居たんでしょう。その人の為に何かをしたいと思えたのでしょう」
 壊したい、殺したい。けれどそれ以上に、護りたい。そんな感情を持てるくらいに。己の性を受け入れてくれて、共にいてくれる人が。
 居るのだ。彼らにも、自分にも。
「……私も同じです」
 スキアファールは己の胸元を握りしめる。
 冒涜的な『恐怖の影』、包帯に包まれた肉体。
 人の形をした影、影の様な、ヒト。
 そんな傷を心と躰に持ちながらも、それでも彼は『人間』として此処にいる。
「こんな姿になっても、生きて欲しいと願ってくれた人がいたから――戦えるんです」
 だから、と包帯だらけの片手を差し出して。スキアファールは問いかけるのだ。
 ――貴方は、戦えますか。
 殺戮を好む殺人鬼ではなく、誰かを守りたい愉快な仲間達へ向けて。
 気が付けば、動物たちの危うい程の殺意は掻き消えていた。それを感じて、スキアファールはもう大丈夫だと確信する。
 
 
 彼らは、彼らのままで戦える。
 あとはこの後に来る本当の障害を斃すだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ディガンマ』

POW   :    引き裂く獣腕
単純で重い【獣腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    恩讐の獣霊
【周囲の廃品や不用品と融合する】事で【獣性を露わにした姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    縫い留める獣爪
命中した【獣腕】の【爪】が【怯えや劣等感を掻き立てる「恨みの針」】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠虚空蔵・クジャクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●遺棄された言葉
 猟兵達の制止と説得を受け、寸前のところで最後の一線を踏みとどまる愉快な仲間達。そんな彼らの助けを受け、アリーチェ達は次々と撃退されていった。
 そして、最後のウサギが倒れた時。
 『彼』は姿を現した。
「――これは、驚いたな。俺が出るまでもなく、こいつらは手遅れになると思っていたんだが」
 ぼろぼろのコートに昏い瞳。獣のような左腕。六六六の業を刻まれし猟書家、『ディガンマ』である。
 鋭い威嚇の声を上げながら、愉快な仲間のネズミが後退った。彼だけでなく、その周りの動物たちも。戦意を露わにしてはいるが、その瞳にはどこか恐れの色が見える。
 『こちら側』に踏みとどまることを決めた愉快な仲間達。その選択故に、彼らの本能は感じたのだろう。
 目の前の男から発せられる、生物として絶対的な強者の気配に。
「少しは頭も回る余裕があると見える。しかし、そんな状態で、俺を倒せると本当に思っているのか」
 動物たちをゆっくりと睨め付けて、ディガンマは嘲笑った。
 きっと、彼は知っているのだ。例え目の前の動物たちが全てを捨て、全てを殺す殺戮と化したとしても、自分だけはその『例外』にあたると。
 そしてそれは猟兵達にも当てはまる。
 個々での戦いであれば、間違いなく相手は格上。数人で取り掛かってようやく並ぶといったところか。闇雲に戦えば押し負けるのはこちらの方だろう。
 しかし、此処には勇敢なる彼らがいる。心を定め、揺るがずに立ち向かう愉快な仲間達がいる。彼らの協力を仰げれば、その状況は変わってくるだろう。
 不思議の国に今一度平和をもたらす為に。
 世界から打ち捨てられた『例外』を討ち取らんと、猟兵達は立ち向かう――!
大豪傑・麗刃
まずギャグもとい精神攻撃で挑発

ガンマンくん?銃はどこなのだ?
違った?ごめん大顔マンくん。でかいのは顔より態度なのだ。

だがこの類はネタに対し塩対応かボケ殺しと決まっている(違うなら苦戦以下か不採用もやむなし)

きみには失望した。

(伝説の超変態人発動!)

巨大化と怪力で今のわたしはキャバリアソードすら持てる。これは戦闘ではない。蹂躙だ。ぐさ、ではなく、ぷち、だ。

と言ったが気を抜ける相手ではない。殺人鬼たちにうまいこと立ち回ってもらい「主な敵は猟兵だが殺人鬼も無視できない」状況にする。必要なら九死殺戮刃の1回はわたしを斬りたまえ。今のわたしには蚊が刺したようなものだたぶん。
で相手の隙を突き、ぷちっと。





●ぷちる
「なるほど……君が……」
 大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は胸の腕の前で両腕を組み、じっくりと相手の姿を観察した。
 それこそ、爪先から頭のてっぺんまで。髪の一本余すところなく。一見するとめちゃくちゃガンを垂れてるように見えなくもないが、そんなことも気にせずとりあえず麗刃は全力で、精密な機械がスキャンするかの如く獣の男を観察した。
 麗刃の只ならぬ空気を悟ったのだろう。ディガンマも無闇に攻める事は無く、臨戦態勢のまま無言でこちらを見返している。
 そのまま、時に置き換えて数十秒。
 静かに麗刃は目を閉じ、息を吸う。直ぐに目を開く。
 そして彼に言った。
「ガンマンくん? 銃はどこなのだ?」
 大豪傑・麗刃は先祖代々の武人であるが、それ以上に変態で奇人で変人である。
 そんな彼は、こんな緊迫した戦場においても、やっぱり変態なのであった。
「…………」
 沈黙を守るディガンマ。麗刃は畳みかける。
「違った? ごめん大顔マンくん。でかいのは顔より態度なのだ」
 やっぱり沈黙。ちょっと心なしかディガンマの目が廃棄物を見る様な目になった気がする。
「悪い悪いデイリーボーナスくん。日々の積み重ねは大切だのだ」
 なんちゃって。
 とっても沈黙。二人の間に底冷えするような風が吹く。
 そして、長い長い無言の後、ようやくディガンマは口を開いた。
「……俺は、思うがままに狩るだけだ」
 麗刃の逆に怒るでもなく、呆れるでもなく。ただ淡々と受け止め、流す。こちらのギャグになど欠片も興味がないという態度を全力で占めるディガンマの言葉。
 その言葉に。
「……きみには失望した」
 麗刃は激怒した。
 必ず、かのつまらぬ猟書家を除かねばならぬと決意した。麗刃にはシリアスが分からぬ。麗刃は変態である。けれども、人一倍逆ギャグ対しては敏感であった。

 そんな麗刃の深い怒りと悲しみをきっかけに、斯くして【伝説の超変態人】は現れる!

 荒ぶる感情を糧にみるみる内に巨大がディガンマを見下ろす。その姿は、不思議の国のどの大木よりもはるかに大きな姿となっていた。本来であれば人型兵器たるキャバリアが扱うバスターソードであれ、今の麗刃なら操ることは容易い。
「これは戦闘ではない。蹂躙だ。ぐさ、ではなく、ぷち、だ」
 堂々と宣言し、文字通りの鉄塊となった剣がディガンマへと向けて振り回される。
「出鱈目か!」
 これには獣の男も予想外だったのだろう。ディガンマが驚愕の声を上げ、バスターソード目掛けて殴りかかる。一度当たれば地形を破壊する程の獣腕の力も、圧倒的な質量を伴う麗刃の一撃には相殺するので手いっぱいだった。
 しかし、これで終わるのならば、彼は世界の侵略者たりえない。
「むむむっ!」
 ディガンマがすぐさま立て直す。器用に麗刃の武器に飛び乗り、体格さとも呼べないようなリーチの差を逆手にとり、彼の視覚へと滑り込む。
 だから、麗刃も負けじと声を張り上げた。
「愉快な仲間兼殺人鬼くん諸君!」
 それを合図に、森の動物たちが次々とディガンマへと突撃していく。目の前の巨大生物に集中していたディガンマは咄嗟に対応に送れる。次々と鉄の凶器走る。これを避ける。そこに、麗刃が大剣を振り回し、風圧に吹き飛ばされた。
「必要なら攻撃の1回はわたしを斬りたまえ。今のわたしは蚊が刺したようなものだ、多分!」
 なんたって今の麗刃は伝説のスーパー麗くんなのだから。仲間の代償だって背負っちゃう。
「小癪な奴らどもめ……!」
 ディガンマが苛立ちを隠さずに吐き捨てる。麗刃の隙を突こうとすれば、すかさず殺人鬼達が突いてくる。そちらに気を遣れば、今度は規格外のリーチと物量の麗刃の攻撃の対応に追われていく。そんな板挟みの状況に、ディガンマの動きはみるみる精彩を欠いていった。
 そんな隙をついて。
「ぷちっとな」
 麗刃の大振りホームラン(剣)が遂に、獣の男を打ちのめしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜

「隙は僕が作ってあげるから、遠慮なく攻撃すると良いよ。可愛い同胞さん達。」
さてと、一気にバラして吸い殺す事にしよう。

自分の寿命を代償に時喰らいのUCを発動。
敵さんの動きを遅くし、廃品とかと融合される前に、敵さんに反撃を許さず周囲の同胞さん達と一緒に全力で攻撃するという事で。
僕は二振りの大鎌で手足を斬り刻んで、全力で吸血して生命力吸収。
融合された後もUCは維持して攻撃して行く事にするかな。
今度はArgentaも使って、全方位から攻撃。
殺気ダダ漏れな動きは見切り易いし、的確に動いてこう。

「ビビる必要はないよ、同胞さん達。」
だって、こんなにも楽しそうで美味しそうな敵さんなんだよ?楽しまなきゃね。



●啜る
 大丈夫、と須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はいつもと変わらないのんびりとした口調で動物たちを宥めた。
「隙は僕が作ってあげるから、遠慮なく攻撃すると良いよ。可愛い同胞さん達」
 その言葉通り彼らを先導するように一歩前へと踏み出しながら、莉亜は小さく唇を舐め上げた。
「隙など、作れると思うか?」
「どうだろう、やってみなければ分からないでしょう?」
 油断のない構えでこちらを睨み、問いかけるディガンマ。その視線を真向から受けても、莉はあくまで余裕の態度を崩さない。
 実際、相手は強敵であるし、そう簡単に隙など作れる保証などないけれど。それでも彼は恐怖など感じない。
 だって恐がるなんてとんでもない。折角の、何の気兼ねも要らない敵なのだから。遠慮何てしては勿体ないではないか。
 さてと、一気にバラして吸い殺す事にしよう。
 ゆっくりと細められた莉亜の紫の瞳が怪しく光る。
 そして、二振りの大鎌を構えた彼は――『喰った』。
「……む?」
 真っ先に気が付いたのはディガンマの方だった。
 莉亜の様子を警戒しつつ、己の左腕へと視線を走らせる。獣のかたちをした、けれども何も変化の起きない左腕。本来であればここに、そして躰の隅々までに、廃棄された遺物と融合し恩讐の獣霊を纏う筈であった。
 それがどうだ。いくら廃品を呼び寄せても、取り込もうとしても、一向にそれが叶わない。如何なる能力封じの異能だろうか。
 ならば、先に術者を潰すのが定石。ディガンマが憎らし気に莉亜を睨み付け、彼の元へと飛び掛かる。そしてさらに、異常に気付く。
 動けない。いや、動けている。しかし、酷く緩慢に。獣の俊敏さを持っていた筈のディガンマの体は、いまや森の住人たる殺人鬼にも劣る。
 何故。異能封じではなく拘束の技か。驚きを隠せないディガンマに、莉亜がにたりと笑い、
「時間なんて食べても美味しくはないんだけどね」
 そう、嘯いた。
 そしてディガンマは気付いた、彼の時間。彼の速度だけが、この世界において遅々たるもへと変えられたのだと。
 【時喰らい】。代償として己か仲間の命を対価に、莉亜のユーベルコードは敵の速度を喰らう。いくら相手の動きが速かろうと、9分の1にまで抑え込んでしまえばこちらの方が上回る。
 これなら、隙など突くまでもない。
 その間に、森の住人達が駆ける。鋏を振り回し、牙を振り上げて。ゆっくりと時を進めるディガンマを切り刻む。たとえ一度で生まれる傷が微々たるものだったとしても、何度も、何度も、全力で、全員で。そうすれば掠り傷もいつしか致命傷になると信じて。
 彼らに続くように、莉亜の大鎌が風を切った。黒い大鎌がディガンマの足を斬り裂く。瞬時に溢れ零れる血を、すかさず白い刃で受け止め、生命を喰らう。
 さぁもう一薙。思ったところで突風が吹き上がる。莉亜と愉快な仲間達は諸共吹き飛ばされた。
「お、オオオッ……!」
 ディガンマが吠える。見ればそのヒトの形の身体は大きく膨れ、気配はより濃く、獣のそれを宿している。傷付きながらも強引に融合を進め、獣性を解放したのだ。
 地を蹴る。9分の1という制約を受けてなお、強化されたディガンマの速さは莉亜達を上回る。あっという間に距離を詰められ、莉亜の首目掛けて爪が奔る。
 散る赤。
 それでも、尚。
「ビビる必要はないよ、同胞さん達」
 莉亜は常と変わらない態度で、そう言葉を発するのだった。
 赤い血が滴り、地面に水たまりを作る。
 それは莉亜の命であり――また、ディガンマのそれでもあった。
「おのれ……!」
 ディガンマが忌々し気に呻く。その身体には、細い銀の槍が突き刺さっていた。彼が莉亜に肉薄したその瞬間、全方位から一斉に狙い、射出したものだ。
 その代償に、莉亜は彼の爪をその身に受けることになってしまったけれど。敵の攻撃は殺気がダダ洩れ、何処を狙っているかなど始めからお見通しだ。避けきれずとも、見切り、致命傷から逸らすことなど簡単だ。
 全身を赤く染めながら、莉亜はもう一度、周囲の動物たちに呼びかける。
 大丈夫、怖がる必要なんてない。
 だって、こんなにも楽しそうで美味しそうな敵なのだから。
 愉しまなきゃ、勿体無い。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
どんなに力が強くても、知性のないやつなんて罠にかかって終わりだろ?お前の部下がそうだったみたいにな

残像を使ってとりあえず速さで勝負……前情報が確かなら負けるだろうけどな
不要品を融合か、この場にあるのは偽アリス共の遺したポットや薬瓶とか
草木の多い場所へ逃げ込めば、葉の揺れる音で反応できなくても陶器とかの硬い音で判別はできるかもな

逃げつつ敵の気配を探りつつ、カウンターで火焔災禍をぶちこめば、獣紛いのヤツの癖を見切れる
それでもあの速度は脅威、変わらずカウンター狙いで行動

集中すれば気配を探るのが鈍り、炎が燃えれば焦げた匂いが鼻を鈍り、潜む獣、殺人鬼に気づかない

作戦を立てるのが知性あるモノの強さだぜ?



●見切る
「どんなに力が強くても、知性のないやつなんて罠にかかって終わりだろ? お前の部下がそうだったみたいに」
 正気を保つ殺人鬼達を嘲笑うディガンマの言葉に、ゼイル・パックルード(囚焔・f02162)はたっぷりの皮肉をつけてお返しした。
 ディガンマの眉がぴくりとあがる。
「……奴らは純粋に力が劣っていた、それだけだ」
「さて、どうだか。弱くはなかったが、闇雲に突っ込んでくる分倒すのは楽だったぜ」
 あくまで挑発し続けるゼイルにディガンマは押し黙る。ゼイルの態度が勘に触ったのか、それとも戯言を交わすつもりはないとの意思表示だったのか。
 おもむろににディガンマの体が揺れる。
 そして次の瞬間、彼の姿が掻き消えた。
 来る。圧倒的なさっきが見えぬ敵から叩きつけられ、ゼイルのうなじが総毛立つ。途端、五本の三日月が閃いた。ゼイルの身体を貫き、ずたずたに引き裂きにかかる。
 否。たしかに彼の姿を捕らえたと思ったディガンマの爪は、虚しく空を切る。彼が斬りかかったのは残像だった。本物のゼイルは既にその場を退き、草むらへと飛び込み身を隠している。
 力で叶わないのなら、速さで攻めるのみ。このまま距離を保ちつつ、足でかき回して機を伺う。
「なるほど、速いな」
 そんな彼の思惑を、すぐ背後囁かれた低い声が打ち砕いた。
 確認するまでもない。転ぶように無我夢中で躰を動かす。背中に痛み。それでも止まらずに、森の奥、草木の茂る場所を目指して足を動かす。
 真っ向からぶつかって敵わないから、速さで勝負する。しかし、速さで勝てる保証だって、どこにもある訳がない。
 ――しかし、それがどうしたというのか。前情報から負けることは承知の上。
 それでも、いくらでもやり様はあるのだ。
 足を動かしながら、そっと背後の気配を探る。
 聴こえるの草木が踏まれ、折れる音。小石が蹴飛ばされる音。そして、硝子が、陶器が転がり擦りあう音。
 取り込んでいるのだ、とゼイルはすぐに相手の状況を悟る。周辺に討ち捨てられた、偽アリスの遺物。それらを取り込み融合することで、ディガンマは己の力をさらに増大させるつもりなのだろう。
 けれど、その物音がゼイルに彼の技を知らせてくれる。触れ合う草木の音が彼の場所を知らせてくれる。
 こうして逃げ回っていても、音で敵の姿を見ることができる。戦闘に向いた開けた場所ではなく、わざわざ草木の多いこの場へ戦いを変えたのもこれが狙いだった。
 背後から気配。猛スピードで駆ける音、斬り裂かれそうな殺意。視覚に頼ることなく、タイミングを合わせて躰を捻った。頬を打つ風圧、掠めた腕から血が弾ける。構わずに足へと炎を纏わせ、振り上げる。突き出した爪が空を切った、その隙に、ディガンマの腹めがけてゼイルは蹴りを叩き込んだ。
 鈍い手応え。――だが、浅い。こちらの攻撃を予期していたのだろう。防御の構えを取った彼は、ゼイルの攻撃の威力を半減させていた。
 そして後には勿論、相手の攻撃が飛ぶ。受けたゼイルの足を無造作に振り払い、ディガンマの爪が振り下ろされる。その速さは今まで受けたどの攻撃よりも近い距離からで――。
「見飽きたぜ」
 その一言で。するりとゼイルは彼の爪の間合いから逃れた。『火炎災禍』。炎を纏う彼の打撃。それが命中することで、彼の中でディガンマの行動の癖は蓄積される。次の手も、その先の次の手も、ゼイルは紙一重でディガンマの攻撃を見切り、カウンターを仕掛けていく。
 命中した数はは微々たるものではあるけれど。敵がこちらに集中すればするほど気配を捕らえる五感は鈍り、ゼイルが燃やす炎が盛れば盛るほど、獣の鼻は鈍る。
 そして、遂には――彼に紛れて潜んでいた獣の殺人鬼達を、彼は捕らえることができなかったのだ。
 何度目かのカウンター。それがディガンマを止めた、そのひととき。
 森の獣人の鋏が一斉に降り注ぎ、彼の体を斬り裂いた。
「作戦を立てるのが知性あるモノの強さだぜ?」
 其れを含めて力というのだ、とゼイルは血を流すディガンマを嘲笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
◎右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

UC月華で真の姿に。
代償ゆえに疲労がきついから長くは使えないが、使える限り継続。
正面切ってディガンマと対し、遠距離攻撃できる殺人鬼たちの援護なり守るなりできればいい。
ある程度無茶がきくからこそできる事ではあるけれど。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性で耐える。

強者への怯えなんて戦争で対する相手に比べれば、大したことないとは言い難いかもしれないがそれでも気力でねじ伏せる。
劣等感も常日頃同類から感じてる俺が今さら行動に支障なんて起こすものか。
殺意がある分軽い。


マグダレナ・クールー


バラバラでは、勝てません。全員で協力を。役割を持って……力の分担を、しませんか
わたくしがあなた達を治療します。アリスの為に、ご自身の為に力を振るってください
何度だって治します。でも、出来る限りは身を大切にしてください
痛いのは痛いのです。戦闘から身を引くことを恐れずに、お願いします

そう、守る。今度こそ、皆を守るのです
わたしは矛先を敵に向けています。だから仲間に刃は届かないのです
見据えています。対象はあの男一人だけ。オウガではない? けれど
あれは強者です。あれはひどいことをします
……あなたの思い通りにはなりません。させません
倒します。皆で。誰一人欠けることなく。生きて、アリスの元へ帰るのです



●分ける
 怯えなんて。恐怖なんて。
「そんなの、今回が特別なことじゃないさ」
 これまでだって、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はいつでも感じてきた。
 例えば戦闘の時。圧倒的なまでの戦力と力量の差が、何度も目の前を立ち塞がり、覆い被さってきたではないか。
 それでも、戦い抜いた。何度も何度も、無我夢中になって切り抜けてきた。
 あの時に比べれば。そう、己に言い聞かせて瑞樹は二刀を持つ手に力を籠める。
 ディガンマの殺気は、圧力はまぎれもないものだ。心の奥底、本能に近い部分は彼は危険だと警鐘を鳴らし続けている。これまでの敵に比べたら大したことはないなど、本当は言えないのだろう。
「それでも、言いきってやる」
 震える心を気力でねじ伏せて、立ち向かってやろう。
 此の身は彼の身にあらじ、降ろし奉るは、月読尊の分御霊。
 真の姿を解放した瑞樹の瞳が黄金へと変化する。黒塗りのナイフから刀の形へと変化した本体たる【黒鵺】、そし縁ある地へと結ぶ【胡】を翼のように構え、瑞樹は正面切って草むらで呻くディガンマへと斬りかかった。
 獣の男の爪と、瑞樹の刀かち合う。散らす火花を超える様な速さで一合。すぐに離れ、互いの急所を狙って二合目。三合目の前に下方から殺気。瞬間に見えた敵の動きに合わせて無理矢理身体を引けば、鼻先を男の爪先が通り過ぎていく。追い打ちが来る前に、後退して距離を稼ぐ。
 靴が地を擦る音。それに弾かれたように、愉快な仲間の小鳥たちが一斉に飛び立った。
 自分達も、戦わなくては。奮戦する彼に続き、かの猟書家を討たなければ。
 鋏を咥え直し、切っ先を敵へと向ける。狙うは一直線、決死の覚悟をした特攻の一撃。そう構えた彼らの行動を。
「――いけません!」
 旗杖を振り上げ、マグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)は鋭い声で制止した。
「バラバラでは、勝てません。あなた達も、わたくしも、ただ屠られるだけでしょう」
 なぜならディガンマは強力だ。いくら猟兵達が強くても、いくら殺人鬼達が衝動を全開にしても。彼を圧倒するには及ばない
 だから協力をするのだ、全員で。
「役割を持って……力の分担をしませんか」
 前衛は、瑞樹が抑えてくれている。鳥たちの小さな身体では彼のように獣の爪を受け続け、仲間を守ることはできないだろう。
 けれど小鳥には、空を駆ける力強い翼がある。十分に距離を取り、不意を突けば、必ずその殺意はディガンマへと届くだろう。
 その後ろに控える小人達には、速く動く術は無いけれど、低い位置から飛び掛かる刃は敵の死角を突くのにきっと有効だ。
 そしてマグダレナは何をするか。自身の胸の上に手を置き、彼女は毅然として宣言する。
「わたくしがあなた達を治療します」
 彼女は、全てを治そう。何度だって治そう。彼らの命を終わらせないために、彼らが戦い抜ける為に。
 戦うなとは言わない。逆だ。アリスの為に、自身の為に、彼らには存分に力を振るって貰いたい。
 個々を一つに纏めて、補い合えば、きっと彼の獣は討てる筈なのだ。
 だから。
 どうか、そうマグダレナが繰り返す前に。森の住人達は一斉に散らばった。
 しかし、その動きには先程までの闇雲な様子は見えなかった。
 小鳥たちは空を駆け、ディガンマとの間合いを十分に取っている。小人達も草むらにその身を隠し、その時を待っていた。
 そのすぐ傍では、再び瑞樹がディガンマと打ち合いを始めていた。
 瑞樹も、冷静に気を伺う殺人鬼達の存在には気が付いていた。
 だからこそ尚更、ここで瑞樹が退くわけにはいかない。ここに瑞樹がいることは、そのまま彼らへの援護となるのだから。
 それは或る程度無茶がきくからこそできることではあるけれど。それも、寿命を削る代償故、長くは続けることはできないものであるけれど。
 出来る限りは、やりきってみせる。
 ディガンマの首目掛けて黒鵺を薙ぐ。荒れた黒髪が数本、宙を飛ぶも、本体にまでは至らない。返礼とばかりに叩きつけられる獣腕。これは寸前で見切り胡で受けた。咄嗟に刃を立て、微かにだがその腕を斬り裂くことに成功する。
 被撃した。血が流れた。
 その一瞬、瞬きにも満たない間。ディガンマの気がそれたその時に、殺人鬼達が仕掛ける。
 上から、下から。無数の鋏がディガンマへ向けて襲いかかっていく。獣の腕がそれに抗する。打ち落とし、弾き、操りてたる動物達を引き裂く。
 先程以上に弾け飛ぶ血。翼を裂かれた小鳥がなす術もなく地へと堕ちる。
 その前に。
 果たしてその傷は塞がった。
「そう、守る。今度こそ、皆を守るのです」
 マグダレナが次々と投げる光が瞬く間に動物達の傷を癒す。
 何度だって、何度だって治す。獣の腕が動物達の命を奪うというのなら、奪い取られるその前に、マグダレナはその傷を治してやろう。癒しの光を放てば放つほど、彼女の体は疲労し、鉛の様に重くなるけれども。それでも、躊躇うことなどない。
「……でも、出来る限りは身を大切にしてください」
 唯一、彼女が気にかけるのは、彼女が癒してしまう、彼ら自身のこと。
 だって、痛いものは痛いから。マグダレナは傷を癒すことはできても、痛みまで失くしてしまうことはできないから。
「どうか戦闘から身を引くことを恐れずに、お願いします」
 それでも彼らは征くから。マグダレナはできるだけ、彼らを引くのだ。
 斬られる、すぐに塞ぐ。赤が飛ぶ。治す。そして斬りかかる。
「貴様達、しつこいぞ!」
 何度倒しても立ち上がってくる愉快な仲間に、苛立った様にディガンマが声を荒げ、獣の爪を立てる。
 いくら傷つけても戻ってくるというのなら、その心を叩き潰すのみ。獣の爪は恨みの針へと変わり、動物達の心を縫い止めんと突き出された。
 三日月が二つ、閃く。衝突音。
 いち早く察した瑞樹が強引に割り込み、自らの体を以って受け止めた。
 心の底から、怯えが湧いてくる。劣等感が相手の存在を大きく見せ、叶う筈がないと訴える。
 けれど――それも、今更だ。
「……そんなの、常日頃から同類から感じてる」
 まま成らないことも多くて、周りばかりが大きく見えて。そこに届く気なんて全然起きなくて。そんな思いがこの身の中にはずっとあって。
 それでも、彼は諦めきれず、瑞樹はここにいる。ここで、踠いている。
 だから。黒鵺の切っ先を真っ直ぐに向ける。反撃に繰り出された刺突が、ディガンマを切り裂く。
「そんな俺が今さら行動に支障なんて、起こすものか」
 寧ろ、こちらにも、あちらにも。明確な殺意がある分。この刀の重みは、ずっと軽いのだ。
 そう言って見せた瑞樹の瞳に迷いはなかった。
「……あなたの思い通りにはなりません、させません」
 マグダレナが旗杖をディガンマに向ける。
 今、彼女の殺意は、彼女の矛先は敵へと向けられている。だから、仲間にこの刃は届くことはない。
 マグダレナが見据えているのは彼一人。
 あの男はなんなのだろう。きっとオウガではない。
 けれど、あれは強者だ。あれはひどいことをする。
 なら、守ために、殲滅しなければ成らない。
 動物達と共にマグダレナが進む。疲労しきった体はすでに限界だけれど。
 それでも、向かう。
「倒します。皆で。誰一人かけることなく。生きて、アリスの元へと帰るのです」
 愉快な仲間たちの強襲に合わせて、マグダレナの旗杖が獣の男を打ち据えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蝶ヶ崎・羊
【羊と雀】

これは恐ろしい(恐怖の出し方を学んでる風)

…ええ、恐ろしいですが彼等の為にも
そして、楽しいお茶会を開けるように頑張りましょう

元気な殺人鬼の皆様には攻撃を手伝って貰い、重傷になれば下がるよう頼みます

オスカーさんが敵の動きを妨害すればUC発動
止まっている間に風の【全力魔法】を【高速詠唱】し、足に纏わせて蹴り落とします(鎧無視攻撃使用)
『お任せを』

攻撃は【見切り】で回避
地形破壊の衝撃は【衝撃波】で相殺
オスカーさんに被害が来ないようエリザベスの【オーラ防御】で守ってもらいます
『はァ…ワタシの友も彼等モ…殺人鬼ですガ…守る為二戦う彼等は…紛れもなク騎士デす…貴方とは違イます…』




オスカー・ローレスト
【羊と雀】

ぴぃ……!(動物たちと同じくらい警戒態勢に……というより怯えて鳴いて涙目になる

お、怯えてる場合じゃない、ね……俺は、俺の……やるべき事、を……

今度も俺は、後衛で、妨害役をやる、よ……【堕とす鳥】を呼んで、ディガンマの動きを止めてもらおうと、思う……振り払われる恐れもあるから、風の属性を乗せた魔法の矢で足元を狙っての【援護射撃】もする、よ(【スナイパー】【属性攻撃】併用

……その、皆に当たって欲しくもないけど、あの爪、当たったら俺、迷惑かけちゃうかも、だし……(敵に対する怯え、怯えを抱くことや衝動を抑えきれない劣等感を抱えている為

お、俺達が止めてる間に、羊達は、お願い……





●向かう
 濃密な殺気におや、と蝶ヶ崎・羊(罪歌の歌箱・f01975)は目を瞠る。
「これは恐ろしい」
 口調こそあくまで冷静。常と変わらないそれだが、羊はそこそこ、彼の放つ気迫に驚いていた。なるほど、恐怖という感情は、この様にして人に与えるものか。これは参考になる、と作り物の胸中はやや一般と外れたものであったが。
 一方、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)はというと、森の動物達同じくらいにディガンマの気迫に呑まれていた。
「ぴぃ……!」
 元は彼らと同じ、不思議の国に住む種族だったからだろうか。警戒態勢といえば聞こえがいいが、漏れる鳴き声は怯えた小鳥のもの。かろうじて目を背けることはしないが、視界が滲んでいるのは涙のせいだろうか。
 怖い。戦わなければいけない。でも、怖い――!
「大丈夫ですか、オスカーさん」
 その声に、我に返る。
 呑まれるオスカーの様子に気が付いたのだろう。羊がこちらを見ていた。
 こんな時でも冷静を失わない彼の、緑の瞳。それを見つめて、ようやく呼吸ができた、気がした。
「お、怯えている場合じゃない、ね」
「……ええ、恐ろしいですが、彼等の為にも。そして、楽しいお茶会を開ける様に頑張りましょう」
「……うん」
 彼のその言葉で。やっと、覚悟が決まった。
 そうだ、今回ばかりは怯えてはいけない。恐怖に呑まれて、従ってはいけない。
「来るのか、そのまま怯えていれば苦しむことなく終わったものを」
「やる、よ……!」
 ディガンマの嘲笑を振り切って、オスカーは睨む。
 自分は、自分のやるべきことを。
「今度も俺は、後ろから援護するよ。……俺が、あいつの足を止めるから」
 どうか、あいつを。オスカーの呼びかけに、虚空から一羽の小鳥が放たれる。
 キーウィット、キーウィット。小鳥は歌う。己の身の上を、己の美しさを。
 そして殺めし者への報復を。
「これは……重力か……!」
 小鳥が堕とす贈り物。重さという縛りがディガンマを押さえつける。
 それでも、警戒には警戒を重ねて。オスカーはクロスボウを構える。無慈悲な【堕とす鳥】を振り払おうとする彼の足元へ向けて牽制の矢を打ち込んだ。
 すぐに次の矢を手に取り、番える。続け様に狙うのは、ディガンマの獣の爪。
 あの爪は危険だ。オスカーは他の猟兵達の戦いを見て、本能的にそれを察知していた。あれは人の心を狂わす呪いの針。誰も、あれに刺されてしまうわけにはいかない。
「……その、皆に当たって欲しくもないけど」
 それ以上に、自分が、あの爪に触れてしまったらと、押し殺していた恐怖が頭をもたげる。
 あれは心を狂わせ、挫けさせる。敵への怯えを止められない、己のうちから湧き上がる衝動すら抑えられないオスカーがあれを受けてしまったら、きっと、抗うことはできない。
 そうしたら、きっと自分は皆に迷惑をかけてしまう。
 だからこそ、先に――射る。
 再び放たれた矢は、ディガンマの獣腕。その先にある鋭い爪を押さえつける様に、寸分なく打ち抜いた。
 ディガンマの顔が苦痛に歪む。
 その機を悟って。オスカーは声を張り上げる。
 たとえあの小鳥の様に美しくなくても。大きな声にならなかったとしても。
 仲間を、好機へ導くために。
「お、俺達が止めてる間に、羊達は、お願い……!」
『お任せを』
 是と答えの代わりに返ってきたのは歌声だった。
 そして旋律であり、呪文であった。
 歌唱を詠唱に。羊が造り物の躰に寄り降ろしたのは黄衣の王。己の真の姿である操り人形の、紛い物。
 歌にって高められた魔力を足へ集中させる。周囲に集う愉快な仲間たちを引き連れながら、一気に加速。ディガンマとの距離を詰めた。
『はァ……』
 漏れる溜息は呆れを示すもの。その対象は、至近距離に迫った獣の男。
 彼も、殺人鬼? 皆と同じ?
 全くもって、解らない。
『ワタシの友も彼等モ……殺人鬼ですガ……守る為二戦う彼等は……紛れもなク騎士デす』
 だから、羊は言い放つ。
 あなたと彼等とは、決定的に異なる存在だと。
「守るだの、戦うだの、所詮は建前だよ。そうやって誤魔化さなければ世界から外れる。そんな存在さ!」
 ディガンマが吠える。強引に小鳥の贈り物を振り払い、重力による縛めから逃れ、腕を振り上げる。
 純然たる力だけで叩きつけられる獣腕。その軌道を見切り、羊はステップで回避する。同時に余剰分の魔力使って衝撃波を生み出し、攻撃の余波をぶつけて相殺させた。確認はできないが、後方では残した眷属の子羊がオーラによる壁を作り出し、撃ち漏らしたものがオスカーを害さない様にと防御を固めている筈だ。
 だから安心して、踏み込む。させないと、再びディガンマが獣腕を振り回す。押さえつける様に、羊に付き添っていた白い犬がその腕へと噛みついた。
 悪態を吐きながらイヌが叩きつけられる。止めを刺そうと爪を向ける男。そこに再び、子羊に守られたオスカーの牽制の矢が疾る。
「ぐっ……!」
 足を引きづりながらイヌが退がる。入れ替わる様に、羊がさらに前へ。身を低くし、ディガンマの腕をすり抜ける。土埃が、余波により吹き荒れる突風が頬を打つが、ダメージと呼べるほどではない。
 疾く、疾く。歌を、紡ぐ。
 風が吹いた。今度は衝撃が生み出すものではないい、純然たる魔力によって生まれた嵐だ。
 炉を燃やし、持ちうる魔力の全てを練り上げて。
 そうして集まった風を全て、己の足へと纏わせ。
『お終イです』
 幕引きの言葉と共に羊の踵落としがディガンマを捉え、爆発した風の魔力が獣の体を引き裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ

お前と同じ、本当にそうかな?
ここにいる同類はみんな、守るために戦えるんだ
殺すだけでその先に何もない、だからなにものにもなれない
獣はお前だけなんだよ、『類同』

引き続き同類たちと共闘、基本援護と追撃に回ろう
アイツくそムカつくけど強いから一緒にボコボコにしようと少し茶化しつつ
殺人鬼UCの一撃を自分に当てるように最初に伝え、受けるときは[激痛耐性]で

恩讐の獣霊を使うのなら無理に追わずこちらに向かうよう誘導
挑発して自分ひとりに向かうよう[おびき寄せ]
ダメージは気にせず[武器受け]で攻撃を受け止め、UC【相棒】を[カウンター]で撃込む
UCを封じたところで同類たちへ一斉攻撃の号令
今だよ同類、みんなを守ろう



●並ぶ
 ディガンマは言う。彼等は同じ殺人鬼であると。同じ抗えぬ業をたたえた罪人であると。
「お前と同じ、本当にそうかな?」
 その言葉を廻屋・たろ(黄昏の跡・f29873)もまた、正面から否定した。
 不思議の国の生還者たる自身にもその素質は潜んでいる。そう言う意味で、たろと愉快な仲間は文字通り近しい存在だろう。
 けれど、目の前の獣の男とも同じであると言われると――虫唾が走る。
「ここにいる同類はみんな、守る為に戦えるんだ」
 彼等は踏み止まった。それは彼等の守りたいと言う思いが勝ったという確かな証拠。
 オウガではなく愉快な仲間として。殺人鬼ではあるけれど、れっきとした不思議な国の住人でもある彼等に、ディガンマは足元にも及ばない。
「殺すだけでその先に何もない、だからな何もにもなれない。獣はお前だけなんだよ、『類同』」
 『同じ類のもの』ではなく。ただ『類が同じもの』。種として近しいだけであり、その本質は違うと断言して、たろは黒塗りの己の得物を構えた。
「……只の言葉遊びにすぎんな」
「それでも、言葉は事実だ」
 切り捨てるディガンマを、たろもまた即座に切り捨てて、愉快な仲間達へと目配せをする。
 先程まで共に戦っていたキツネは今も、そこにいてくれた。たろは敢えて軽い口調で声をかける。
「アイツくそムカつくけど強いから。一緒にボコボコにしようぜ」
『……うんっ!』
 茶化した様な言葉に、キツネが緩く尾を振った。応と答えたその姿は、少しだけ緊張が解れている様で。
 だから今なら、さっきと同様に戦える。
「一撃目は俺が受ける! だから思いっきり、やってくれ!」
『……ごめん!』
 キツネの爪が、たろの腕を傷つける。
 殺人鬼としての力が彼自身を侵してしまわない様に。それも先程までの戦闘と同様だった。
 制約から放たれたキツネの攻撃が向かう。白ウサギを蹴散らす程の刃でも、ディガンマの前では児戯に等しい。
 けれど、そこに合わせるなら。
 視線がキツネに言った瞬間に死角から、別方向から。全く異なる攻撃が彼を襲ったら――。
 ぎゃり、と金属が擦れる耳障りな音。
 死角からから突き出したたろのフォークを、ディガンマの獣爪が受け止めていた。
「甘いな」
 ニヤリと、ディガンマが笑う。そのまま力任せに腕を振るわれる。力負けしたたろのフォークは呆気へし曲がり、砕け散る。
「戦うならまともな刃物を持ってくるといい」
「いいや、これでいいんだよ。お前には」
 顔色ひとつ変えないたろ。ディガンマの片眉が上がる。
 ならば試してみろ。獣の男は不敵に笑い、壊れた食器の残骸を、合わせて周囲の無機物を取り込み始めた。遺物の恩讐を受け止め、ディガンマはみるみる獣霊へと変貌していく。
「こっちへ!」
 たろがキツネに向けて叫ぶ。変化を止めようとしていたキツネが、即座に彼の元へと戻ってきた。
 たろは正面を睨む。
 なんとしても、止める。彼に信頼を寄せてくれた、愉快な仲間の為にも。
 突進してくるディガンマ。それを残る食器で受け止めた。
 衝撃にスプーンが罅割れる。ナイフが砕け散る。
『――予想済みだよ』
 即座に新たな『それ』を袖口から出す。敵の勢いを利用して、それらをディガンマへと突き刺した。
 ナイフを、スプーンを。一つ刺されるごとに、ディガンマの突進の力は大きく削がれていく。
 そして最後に、先程彼の手によって壊された、フォークを。
「ぐゥッ……!」
 三つの武器に、そこに宿るたろの力押さえつけられ、ディガンマの獣霊化が解かれた。
 同時に力の反動で、たろの食器達は音を立てて砕けてしまったけれど。やっぱり彼は冷静に、己の袖口から、新しい『それら』を取り出した。
 彼の技は【相棒】(ツカイステ)。振るう武器は無限と言っていいほどに持っている。だからたとえ敵に壊されても、たろの手で壊してしまってもすぐに補充は効くから支障はないのだ。
 封印の影響でディガンマは動けない。
 さぁ、たろがゆっくりと宣言する。
「今だよ同類、みんなを守ろう」
 その号令を合図に、守るための殺戮の刃がディガンマへと襲い掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
皆様冷静に
彼のようになっては出来ぬことがあるのですから

共に戦う殺人鬼達●かばい接近戦
●瞬間思考力で攻撃動作●見切り腕を振り抜かれる前に●怪力盾受けで防御したり、牽制の剣の突きで不発に

全身の格納銃器で●不意打ちの一撃…!

回避からの反撃は織り込み済み
ある地点…味方UCのトンネル堀りで密かに地下に掘られた落とし穴への誘導の布石なので

自己●ハッキングで●推力移動出力●限界突破
大地●踏みつけ後方宙返り
空に逃れ穴を自ら掘り抜いた敵を眼下に

私が騎士で戦機であるように、彼らも殺人鬼であり愉快な仲間たち…
その狭間は中途半端で苦しいものですが…だからこそ見え、為せる事もあるのです

剣を投擲、穴に串刺し
着地後一斉攻撃



●踏み込む
 深い傷を負い、徐々にディガンマの動きが精彩を欠いてくる。それを好機と見て、一匹のシカが彼へと突進を仕掛けた。
「……いけないっ!」
 それを見たトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が焦りの声を上げる。大楯を構え、スラスターによる高速駆動でシカの前へと疾走する。
 彼がシカの前へと滑り込んだのと、大楯がディガンマの爪とかち合ったのはほぼ同時だった。
「……皆様、どうか冷静に。彼のようになっては出来ぬことがあるのです」
 シカを抱え即座に前線を離脱しながらトリテレイアは動物達へ訴える。
 焦ってはいけない。咄嗟の判断で動いてはいけない。士気を高めるのはいいだろう。けれど、衝動のままに向かっては返り討ちに遭うのはこちらの方なのだ。
 目指すものは完全なる勝利。その条件は、全員での帰還。理想と笑われる類のものかもしれないが、トリテレイアはそのためにここにいる。
「ですから――」
 そのために。出力音声を最小限に絞り、トリテレイアは動物達に向けて一つ、ある提案をした。


「内緒話は終わったか?」
「ええ、お陰様で」
 傷ついてなお見せるその余裕は、己の力に自信があるからだろうか。作戦の伝達が終わったトリテレイアはそう思考しながら改めて彼と対峙する。
 彼に追随する愉快な仲間の数はほんの数匹。それ以外のものは退がらせた。数での優位性を失くした上での戦闘は苦しいものとなるだろうが――『今は』それでいい。
 ディガンマが仕掛ける。トリテレイアは大楯を持ち迎撃の構え。
 数歩、足を運ぶ。相手の間合いをずらす様に移動して、振り下ろされる獣腕に盾をぶつけた。ディガンマが僅かに驚きの表情を浮かべる。しかしすぐに弾かれた腕を引き、今度は大きく体を捻る。己の膂力に加え、回転の力をも加えた振り回しの次点の攻撃。一度大地に当たれば周囲の地形を砕く程の威力だ。まともに受けてはトリテレイアとてただでは済まないだろう。
 だから、数歩、さらに足を運ぶ。剣を水平に構え、獣腕の軌道を見切る。狙うは彼の力が腕へと乗り切る前。先の先を往く牽制の突き。
 獣の爪と剣がぶつかり合う音。純然たる力のぶつかり合いが、ディガンマとトリテレイアに拮抗の間を作った。
 瞬間。トリテレイアという機体に装備されていた格納銃が一斉に展開される。 
 間髪入れず、一斉銃撃。至近距離からの、不意を討っての最大火力がディガンマに叩き込まれる。
 しかしそれでも尚。
「……今のは、なかなか良かった」
 殺意に忠実たるこの獣は、電脳の殺気にすら反応して、寸前で回避してのけるだろう。
「ええ――それすらも織り込み済みです」
 頭部に衝撃。今度こそ獣の腕がトリテレイアを捕らえたのだ。しかしそれよりも重要なのは、敵の足、立ち位置。
 あと一歩。よろけた振りをして一歩引く。ディガンマの足が前へと滑り出て――。
「――そこです!」
 ぴたりと『目標』の位置へと彼がたどり着いた時、トリテレイアは大地を強く踏みつけた。損傷の為にエラーを吐き出す演算思考の制御を外し、限界を超える出力で、強く、強く――!
 大地が罅割れる音。繰り返される戦闘にディガンマの攻撃。そしてとどめの、トリテレイアの一撃。『とある理由』により脆くなった岩盤は呆気なく崩れ落ち、穴となってディガンマを呑み込む。
「なんだと……⁉」
 落下しながら、ディガンマは見た。突然開いた大穴。その影に、落下物に巻き込まれないように隠れながら愉快な動物達が潜んでいるのを。
 其れはトンネル掘りを進めた殺人鬼達の仲間達。トリテレイアの傍につく動物が少なかったのは、こちらに人数を裂いていたからなのだ。
 ディガンマが地上を見上げる。そこには大剣を此方に向けて投擲の構えるトリテレイアと、森の住人達がこちらをのぞき込んでいた。
「私が騎士で戦機であるように、彼らも殺人鬼であり愉快な仲間たち……。その狭間は中途半端で苦しいものですが……だからこそ見え、為せる事もあるのです」
 ですから、このように。策さえ労せば貴方すら超える。
 そう言い残し、地下へ向けて。
 鉄の塊は獣を縫い留めんと落下する。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

三上・桧

猫さんたち、もう一度力を貸してくれますか?
先程ご覧の通り、自分の愛用武器は大雑把ですので、あの敵に当てることは難しいでしょう
ですので、攻撃はあなた方に任せます
一緒にこの国を守りましょう

「飛び出す虫図鑑」よりトノサマバッタの大群を召喚、敵にまとわりつかせます
敵がバッタに気をとられた隙に、敵の背後にいるバッタへテレポート。三鈷剣で斬りかかります
剣が届かずとも問題ありません
負傷も覚悟の上です
自分は囮
大量の黒いバッタの中、輝く白馬はさぞ目立つでしょう
さあ、こちらを見なさい
一瞬でも自分だけに注目してくれたなら、それで充分
頼みますよ、猫さんたち



●見届ける
 ねぇ、ねぇ、猫さんたち。
 三上・桧(虫捕り王子・f19736)はゆっくりと話しかける。その先に居るのは、先ほどまで桧の相棒たる火車さんと戯れ、戦ってくれた様々なネコの愉快な仲間達。
 火車さんのもふもふを堪能したあの時、少しでもお互いに分かり合えたと思うから。きっともう、桧と彼らはもふ友だ。
 だから桧は彼らに依頼する。
「もう一度、力を貸してくれますか?」
 彼女の愛用とする攻撃は浄化(物理及びロケラン)。その方法は自分でいうのもなんだが、かなり大雑把なものである。素早い上に頭が回る、ディガンマとはすこぶる相性が悪い。桧だけでは彼に満足に当てることも難しいだろう。
「だから、攻撃はあなた方に任せます」
 だから、桧はそう宣言する。今回の自分は支援に回り、攻撃の本命は愉快な仲間である猫たちに譲ると。
 だってここは、彼らの国だから。
「一緒にこの国を守りましょう」
 ロケットランチャーを置き、魔法の図鑑を開きながら。無表情の中に少しだけ優しさを滲ませながら桧は猫たちを見回した。
 守るなら、彼らの手で、一緒に。
 
 
 いつの間にか、小さな黒い影が空を支配していた。
 それは虫だった。愉快な仲間の眷属ではない、桧が【飛び出す虫図鑑】より召喚した、トノサマバッタの群れだった。空を埋めるほどの大群が跳ね回り、次々とディガンマへと纏わりつく。
「目くらましのつもりか?」
 胡乱気な声を上げるディガンマ。彼の言葉通り、バッタの群れ自体に攻撃力は殆どない。虫の一匹一匹は確かに桧の使い魔ではあるけれど、その力は獣の男を傷つけるにはあまりにも脆弱だ。
「ええ、そうですね」
 だから、その言葉通りそれはあくまで目くらまし。あくまで彼の気を引くもの。
 その隙に、桧は移動する。空間を転移する光輝く白馬に乗って、三鈷剣をその手に携えながら。味方である使い魔の一匹の直ぐ傍――ディガンマの背後へ向けて。
 完全に死角を取れたと思った。タイミングは良い方だと思った。
 けれど、赤い血を流したのは剣を振るった桧の方で、斬ったのは獣霊を纏ったディガンマの方だった。
「舐められたものだ。六六六の業を持つ者が、この程度の殺気に気付けないとでも思ったか」
 ディガンマは獣のような、殺人鬼。本能は野生に近いし、殺戮は彼の領分。少しばかり不意をついたところで桧が勝つことは難しいのだ。
 ざっくりと、胸から肩を斬り裂かれて吹き飛ぶ桧。馬から落ち、倒れていく彼女にディガンマは追い討つように爪を振り下ろす。
「それに、お前は目立ちすぎる。この黒い群れの中、お前の白馬はよく視えたよ」
「――ふ」
 その言葉に、笑いが漏れた。
 きっとその顔はちっとも動かなかっただろうけれど。それでも確かに、笑った。
「ええそうですね。『だから』ですよ」
 黒いトノサマバッタを呼び出したのは桧。白馬を呼び出したのもまた、桧。
 嗚呼そうだろう。黒い中、輝く白馬はさぞ目立つ。だから”そう”選んだのだ。
「さぁ、こちらを見なさい。見れればいい」
 剣が届かなくても問題は無い。負傷だって覚悟の上。
 だって全ては囮。不意を討って見せる桧までもが、囮。
 一瞬でも、こうしてこちらを見てくれたのならそれで充分なのだ。
 ネコが鳴く。あちらで? こちらで?
 四方八方、捕らえられる数ではない。彼らは爪を研ぎ、鋏を咥え。待っていた。
 友が傷付くことに耐えながら。
 今、この瞬間を。
「頼みますよ、猫さんたち」
 気が付いたってもう遅い。
 地面へと転がり、周囲を赤く染めながら。桧は愉快な仲間によって獣の男が斬り裂かれる様を見届けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天瀬・紅紀
帽子もコートも脱ぎ捨て、髪振り乱して対峙
いつもの自分繕ってる場合じゃ無いな

只の殺戮狂じゃないなアンタ
まさに獣、生態系の上位存在のようで
俺達は言うなれば獲物か

心のリミッターは解除済
決して大人しくは無い己の激情そのままにまずは一太刀
刺さる向こうの爪、そして針
掻き立てられる後向きの感情

俺は自分自身が怖いんだ
感情に振り回され、全てを壊し、肉体精神共に自滅する事への怯え
――そして、常に冷静な兄への劣等感

膝折れそうになるけど、愉快な仲間達が寄り添ってくれて
ああ、そうだな
君達の様に最後の一線、留まる事――俺にも出来るよな?

熱い感情は俺が生きている証
この衝動は怒り
三倍返しで思いを焔にして居合い一閃、奴に浴びせ


向坂・要
UCで呼び出すは重力と斥力を宿した蝶の群れ
味方と敵との間を隔てるように展開させ重力による相手の動きの阻害と斥力による防御で住人と共に味方の援護メイン(【範囲攻撃】【時間稼ぎ】)
ただしいけると判断すれば重力場や武器で攻撃(【全力魔法】【属性攻撃】【毒使い】)
住人達には基本、支援依頼

特に住人への攻撃は通さない構え(【かばい】【覚悟】【見切り】)
(怯えや劣等感、てなものが何を見せてくれるのやら、興味がねぇ、って言ったら嘘になりますかね)


劣等感、って意味じゃ、お前さんも持ってたりするんですかね
踏み越えちまった身として、踏み越えずに留まれる相手に対して

なんて嘯いて

絡み
アドリブ歓迎



●示す
 留まることを知らず繰り返される猟兵達と愉快な仲間の攻撃に、さしものディガンマも焦りの色を見せ始める。
 何故ここまで、彼らに手を焼かなければならない。殺戮を上回る殺害を披露し、蹂躙して回るのは本来こちら側の筈。全てを曝け出した殺人鬼すら喰らう、その『例外』が己であるのだ。
 それなのに、これでは。このていたらくでは。
 この戦い自体が己の中の『例外』のようなものではないか――。
「ふざけるなッ!」
 こみ上げる怒りのままに牙を剥く。たまたま見上げて目に映った、ほんのそれだけの理由でオオカミの姿をした其れへと襲い掛かる。
 追い立てる。群れからはぐれるように。吹き飛ばす。誰もそれに助力などできないように。
 思うが儘に力を振るってやる。衝動のままに暴れ回ってやる。それこそが彼の誇り、彼の意義。『例外』など、彼自身の中には一変たりとも許しはしない――!
 彼は証明する。証明した、筈だった。
 そんなディガンマの眼前を、蝶が舞う。
「まぁまぁ、そう逸りなさんな」
 かけられる声はあくまで落ち着いた声。まるで突如として現れた蝶の動きを写したような、落ち着きすぎた向坂・要(黄昏通り雨・f08973)の声だった。
「そう慌てると、嫌われちまいますぜ」
 要の呼び出した蝶がディガンマの体に触れる。途端、殴り飛ばされた彼のような衝撃。思わずディガンマはたたらを踏み、追い詰めたばかりのオオカミから離れる。
「かといって、引きすぎたらそれはそれで忘れられちまう」
 今度は足に重み。見れば再び蝶がディガンマの足を射止めていた。再び起こるだろう攻撃に、ディガンマは身構える。
 しかし今度は弾かれない。不可視の衝撃は何時までやっては来ない。
 代わりに。その足はもう、一歩たりとも動かせなかった。
 ふわりふわりと。大地の重みを抜け、気ままに宙を泳ぐ蝶。それは重みの理を司る、気紛れな精霊たちが形をとったもの。
 彼らは重みを、力の流れを統べる。ある時は重力を、ある時は斥力を。彼らの意思で気ままに振るい、対象を目眩ます。その重みの行く末は、術者の要とて操ることは不可能だ。
 けれどこうして、ディガンマの動きを阻害し、仲間の援護をするには十分だった。
「さ、援護は任された。お前さんたちはお前さんがするべきことをしてきなせぇ」
 斥力を選んだ蝶が敵の時間を稼いでいる内に、要は愉快な動物達へ声をかける。心を乱すという危険な爪の対処は要が任されよう。何、蝶が足りないのならこの身を晒す覚悟だってとうに出来ている。
 ――それに、噂に聞く怯えや劣等感というものが自分に何を見せてくれるのか。そこに興味がないと言えば、嘘なのだから。
 そんな仄暗い好奇心を抑えながら、要の蝶の群れが広がっていく。


 嗚呼、邪魔だ。
 天瀬・紅紀(蠍火・f24482)は視界の妨げになる帽子を乱暴に脱ぎ捨てた。動きの邪魔になるコートも放り投げる。耐熱性繊維で織られたそれを脱ぐということは、すなわち自らの守りを捨てるということと同義だが、そんなこと、知ったこっちゃいない。
 乱れた長い髪が視界に入った。鬱陶しい、無造作にかきあげる。
 穏やかな自分、おっとりとした自分。戦いの今に、そんなものは必要ない。
 本性を隠すために取り繕っていたそんなものを放り捨てて、紅紀はディガンマを睨んだ。
「只の殺戮狂じゃないな、アンタ」
 ディガンマがこちらを見る。背筋を伝うその感覚に――紅紀は思わず唇の端を吊り上げた。
 目を見ればわかる。目で見なくても、肌で感じる。
 ディガンマから伝わる殺意はまさに獣だ。それもあらゆる生態系の上位の存在、生まれ持った爪と牙で弱者をねじ伏せ、常に喰う側に立つ、食物連鎖の頂点。
 さしずめ、紅紀達は哀れ王者の目に適った獲物といったところだろうか。
「……冗談じゃねぇ」
 沸き上がった感情のままに紅紀は吐き捨てる。
 心荒げることなかれ。感情に呑み込まれることなかれ。そんな心の箍は、とっくに解除済みだ。
 目の前の強者との、戦いを。決して大人しくはない己の本質が叫ぶ。激情が身体を支配する。
 湧き上がる衝動のままに、紅紀はディガンマへ向けて踏み込んだ。
 一足にて敵を間合いに引き入れる。同時に抜き打ちでの一太刀。薄皮一枚、血の数滴を残してディガンマはこれを避ける。まだ、まだだ。返す刀で袈裟懸けに刃を滑らせる。
 猛る心のままに。彼の繰る炎のように、熱い感情のままに。
 ぶつけて、叩きつけて。斬りかかる――!
 結果、得たものは。
「あ――」
 剣筋を見切られ、胸の内に深く潜り込んだ獣の爪だった。
 ディガンマの獣爪は、心の裡を縫い留める恨みの針。彼が許差ない限り決して抜けないそれは、貫いたものの心を侵す。
 後悔を。怯えを。劣等を。卑下を。後ろ向きの感情を掻き立てていく
 燃え盛っていた感情の熱が急速に冷めていく。空いた虚ろに、紅紀が塞いでいた感情が滲みだしてくる。
(――俺は、自分自身が怖いんだ)
 一度爆発すれば、感情に振り回されてしまう己の本質。いつかそれは全てを壊し、己の肉体も心も、自滅へと追いやってしまうのではないか。
 そして、自分とは打って変わったように、常に冷静な兄。比べるなと言われても比べてしまい、感じる劣等感。
 なんて己は。
 不出来で、不完全な存在なのだと、思い知ってしまう。
 紅紀の手足から力が抜ける。心折れた彼にはもう、抵抗の気力は無い。
「本当にそれで、いいんですかぃ?」
 その時、蝶が舞った。
 ぱん、と弾ける音がする。蝶が生む斥力に従い、針が紅紀から抜ける。
 崩れ落ちるその身体を受け止めたのは、暖かな温もりと、ふわふわの毛並み――愉快な仲間のネコたちだった。
 ああ、そうだな。
 紅紀は気付く。此の感情は決して、彼だけが持っているものではないと。
 彼らだって同じなのだ。いつか飲み込まれてしまう感情と戦っている。そして彼らは、打ち克った。
 だから、きっと紅紀だって・
「――君達の様に。最後の一線、留まる事――俺も出来るよな?」
 重力の蝶が壁を作り、時間を稼ぐ。その間に、ネコたちを支えに紅紀は立ち上がる。振り返れば、要がそんな自分たちの様子を面白そうに見つめていた。
 彼に礼を言って紅紀は再び刀を鞘に納め、構える。
「劣等感、って意味じゃ、お前さんももっていたりするんですかね」
 そんな紅紀の時間を稼ぐべく、要はディガンマへと問いかけた。
 踏み越えてしまった身として、踏み越えずに留まれる相手に対して。そこに何も感情は本当にないのか。決していけない道を往く者達へ、焦がれるような、妬みの様な感情は存在しないのか。それが、生きる者の心ではないのだろうか。
 蝶に己の魔力を乗せ、浸食の毒を乗せて飛ばす。壁となっていた蝶が一斉に集まり、巨大な重力場を生み出しディガンマを押さえつける。
「ま、答えてもらわなけりゃ分からないんですが」
 苦悶の声を上げる獣の男に、要はそう嘯いてみせた。
「……キッチリ返してやるよ」
 紅紀は呼吸を繰り返す。静かに息を整える。
 ディガンマの攻撃を受けて尚、踏みとどまれた。其れゆえに発動できる、必殺の居合。
 熱い感情はいつかを畏れる者じゃない。
 この衝動は怒り。心を壊し、不思議な国を壊す殺人鬼への。そして――
 手の中の刀が炎を纏う。赤々と燃える色が、紅紀の白い肌と髪を茜色へと染め上げる。
 この色が、彼の色。天瀬・紅紀を証明するもの。
「これは……俺が生きている証だ!」
 想いを焔へと昇華させ、紅紀の一閃がディガンマを斬り裂いた――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー

恐れるな愉快な殺人鬼達よ
奴が例外ならオレ達猟兵は埒外の生命
ディガンマの殺戮衝動ごと喰らい尽くしてやるさ……

出番だ、呪獣『ソウルトーチャー』
可愛らしいだろう
コイツもまた愉快な仲間みたいなもんだ
ソウルトーチャーと同時攻撃【2回攻撃・切り込み】
殺人鬼達とも連携し波状攻撃で追い込む
敵UCの獣爪はソウルトーチャーに受けさせる【盾受け】
そのUCの弱点は爪が突き刺さって抜けなくなる事!
受けと同時にUC「禍ツ屍蝕」を放ち奴の獣腕を腐蝕させる
あの腕を無力化させれば勝利は近い



●堕とす
 その感情を抱くなど必要など、何も無いのだ。
「恐れるな、愉快な殺人鬼達よ」
 ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は訴え、怯える愉快な仲間達の目を開かせる。
 奴には勝てない? 一体どこを見てそんな断言をしているのだ。
 無敵の化物などこの世には存在しない。そんなもの、己が自身に見せる幻に過ぎないのだ。
「奴が例外であるのなら、ナギ達猟兵は埒外の生命。ささやかなイレギュラーなど、その殺戮衝動ごと喰らい尽くしてやるさ」
 故に。ナギは殺人鬼達に言い聞かせる。
 刮目しろ。目の前の男を正しく視認しろ。
 あれは只の獣だ。しかもヤツは手負いである。あちこちを刻まれ、傷跡は焼かれ、彼自身も疲弊し追い詰められた、愚かな敵。
 いい加減気付く時だ。獣を狩る狩人は、こちらの側なのだと。
 森の動物達の纏う空気が変わる。追い詰められ、命尽きる寸前で抗う窮鼠のような苛烈で脆弱なものから、獲物を淡々と追い詰め、無慈悲に狩る捕食者の者へ。
 その変化と、心地の良い殺気に満足気に嗤い、ナギは己の武器たる下僕を呼び出した。
「出番だ、呪獣『ソウルトーチャー』」
 名を呼ばれ、姿を見せたのは悍ましき姿の生命。咎人の肉と骨で造られ、自身もまた血肉を求めて自律する拷問兵器だった。
「可愛らしいだろう。コイツもまた愉快な仲間みたいなもんだ」
 ナギの足元で従順に指示を待つそれを指し、ナギはおどけたように獣の男へ言ってみせる。
 その生まれは何で有れ、これとて獣の姿をしたものには違いない。そしてナギと、彼の周りにいる動物たちと同じく、これ自体が殺戮の業を持っている。ほら、きっと何も変わらない。
「……これは。お前達の側にもとんだ規格外がいたものだな」
 平然と埒外だと言ってのけるナギの異様性を感じ取ったのだろう。ディガンマが顔を歪める。見せる表情は微かな歓び。自分と近しいものを感じ、その上で衝動をぶつけ戦える興奮。
 それなら――時は十全だ。
 呪獣を解き放ち、自身は鋸刃の鉈を取り。ナギがディガンマへと飛び掛かる。合わせるように捕食者たる殺人鬼も獣を取り囲む。
 足を捕れ、牙を鈍らせるな。
 前方にナギ、後方にソウルトーチャー。爪と刃を合わせ挟み討つ。ディガンマの衣服が斬り裂かれる。獣の腕が鉈を弾く。
 爪を振るえ、囲い、削ぎ落せ。怯えるな。死は逃げる者ではなく、振舞うものだ。
 割り込むように鋏の群れが降りかかった。串刺しにされるは影。鉈が踊り、先へと回り込む。獣が歌い、肉を食む。
 一寸たりとも足を止めるなど許さない。折角の客人を退屈になどさせてはいけない。
 絶え間なく、惜しみなく。ナギと殺人鬼達の怒涛の波状攻撃がディガンマを追い詰めていった。
 そう思った矢先、
「――勘違いするなよ。追い詰めたのは、俺の方だ」
 ナギの目の前から、ディガンマの姿が掻き消えた。
 獣の本領たる速さ。より濃くなる殺気は追えれども、速さについていけねば意味はない。
 閃く銀閃が、ナギの精神を狙う。
 その攻撃を――ナギは掴み上げた獣の肉で受け止めた。
 ずぶりと、呪獣の身体に獣爪が食い込んだ。断末魔の悲鳴が上がる。
「……仲間に対して、随分薄情だな?」
 うすら笑いを浮かべたディガンマの声。ゆっくりとそちらを見る。
「いいんだよ。これで」
 途端。――呪獣の身体が膨れ上がる。呪われた屍肉種が爪を侵し、みるみる内に腐らせていく。
「なんだと……!」
 気付いたときにはもう遅い。
 ディガンマの恨みの針。その弱点は、突き刺さった爪は抜けなくなること!
 それ故に、肉腫の呪いが及ぶ範囲に彼は強制的に居続けることになる。
 爪を侵し融かし朽ちさせ。肉を腐らせ、泥へと還す。恨みの針を解除し抜こうにも、肉腫に捕らわれた腕は既にディガンマの意思の通りに動かすことも儘ならない。
「確かにお前の爪は強力だ。だからこそ、その腕ごと頂こう」
 そうして無力化してしまえば。ほら、勝利はすぐそこだ。
 焦るディガンマを尻目に、ナギはゆっくりと獣腕目掛けて鉈を振り下ろすのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ

……愚問ですね
"過去"が未来を斃せるとでも?

"ひかり"を呼びUC発動
力を貸して、コローロ
きみの力で怪我を負った人を癒し、励ましてあげて
怯えや劣等感を掻き立てられようと、心の奥底に在る想いは消えてない筈だ
この世界を、仲間を、『アリス』を――護るという確かな願いは、消させない

もう一度問います
あなたは戦えますか
――いえ、これこそ愚問かもしれませんね
共に行きましょう、支援しますよ

呪瘡包帯に雷(属性攻撃)を纏わせ
獣腕の一撃を阻害するように放ち、獣腕を念入りに縛り上げる
呪詛をありったけ流し込んで、圧し折るくらいに力を込めておきましょう

止めは任せます
護る為の力で仕留めてください、『例外』だと驕る殺人鬼を



●灯す
 ゆっくりと、戦場となったそこを見渡す。
 たくさんの血が流れた。
 たくさんのものが戦った。
 だから、今。彼を追い詰めるまで戦いは成った。
 それを見届けて。
「……愚問ですね。”過去”が未来を斃せるとでも?」
 スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)はじっと、獣腕を潰され蹲るディガンマを見つめた。
 猟書家であったとしても、『例外』であったとしても。彼は骸の海の産物――オブリビオンである。
 対してここにいる愉快な仲間は今を生きる者達、未来だ。先で待つ為に、戦う者達である。
「そんな眩しい彼らが、あなたに劣る訳がない」
 けれど。何かを言いかけたディガンマから視線を外し、スキアファールは地に伏す動物たちに胸を抑える。
 彼らはたくさん傷付いた。
 本能の恐れを制し、殺人鬼たる衝動を抑え。勇敢にディガンマに立ち向かった。既に彼らの多くは怪我を負い、まともに戦えるものなどごくわずかだ。
 彼らは充分、戦った。彼らは強い存在だ。
 だからスキアファールは今一度、彼らに光を灯す。
「力を貸して、コローコ」
 彼の呼びかけに、”ひかり”が灯る。
「君の力で怪我を負った人を癒し、励ましてあげて」
 だれかのために。だれかのいろに。色無き影に寄り添い瞬くひかりが愉快な仲間達へと投げられる。
 獣に裂かれた傷を塞ぐ。冷え切った体を温め、彼らの心の闇を祓う。
 ディガンマの爪に抉られた跡だ。きっとその傷は肉体だけでなく、その心の奥まで傷付いてしまっているだろう。いたいと、泣いていることだろう。
 それでも、彼らはまだここにいるから。
「怯えや劣等感を掻き立てられようと、心の奥底に在る想いは消えてない筈だから」
 此処まで来てくれたその想いを、消させはしない。この世界を、仲間を、『アリス』を――護るという確かな願いは、消させない。
「……もう一度問います」
 ようやく起き上がれるようになった彼ら。その中の小人へと向かい、スキアファールは膝をつく。細長い体を折り、小柄な彼と視線を合わせて。静かに尋ねる。
「あなたは戦えますか」
 この痛みを味わって尚。この恐れを知って尚。その気持ちは変わらないか。そう、問いかける。
 小人が真っ直ぐにスキアファールを見返した。傷が言えたばかりのその手には、傷だらけの鋏が手放されることはなく。
 彼が初めから予想していたように――問いの返答は、力強い頷きだった。
 嗚呼、やっぱり。彼らはつよいのだ。
「……これこそ、愚問かもしれませんね」
 ふっと息を吐いて。スキアフィールはひかりを消し、彼らと共に立ち上がった。そして代わりに、己の身体に巻かれた黒い包帯に雷を纏わせ、振るう。
 目標はもちろん、今や虫の息たる獣の男だ。
「共に行きましょう、支援しますよ」
 既に獣の腕は潰された。こちらの怪我は回復し、あちらの傷はそのまま。いくらディガンマといえど、その格差はもう埋める術がない。
 スキアファールの包帯がディガンマを縛り上げ、その動きを封じた。もう二度と、勇敢なる彼らを傷つけることがないようにきつく、きつく、引き絞る。
 そして、愉快な仲間達へと呼びかけた。
「止めは任せます。どうか、今!」
 どうかその手で、かの『例外』の縁を断ち切って欲しい。
 彼らが守る為に選んだ力で。『例外』だと驕る殺人鬼を。
 愉快な仲間達が一斉に地を蹴る。拘束するディガンマが藻掻く。
 包帯を通してありったけの呪詛を叩き込み、そんな彼を押さえつける。いっそ圧し折ってしまう程、力を籠める。たとえこの腕ごともっていかれたとしても、離すつもりはなかった。
 鋏が獣の男を貫く。小さい鋏、大きな鋏。断ち切り鋏、刈り込み鋏。次々に彼の肉を断ち、彼の体に無数の穴を穿つ。
「こんな、こんな、お前らなどに――!」
 細切れになった彼の断末魔が響く。呪われた包帯が彼の口元を覆い、耳障りな声を止める。
 そして最期に。力の抜けた獣の首を包帯が縊り、鋏がそれを落として。
 
 ――そうして。不思議の国に足を踏み入れた『例外』は。
 駆け付けた猟兵達と、他ならぬ不思議の国の住人たる愉快な仲間の手により、その可能性を潰えさせられたのだった。 
 
 愉快な仲間が愛した日常は、アリスは。
 もうすぐ帰ってくるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日
宿敵 『ディガンマ』 を撃破!


挿絵イラスト