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アリスとブラックヒストリー

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #ホワイトアルバム #アリス適合者

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●塗り潰したい過去
「うぐわああああああ!!」
 少年が――アリスが悶えている。その体には傷一つ付いていないというのに、鋭い爪で引き裂かれたかのように、内臓をかき回されたかのようにのたうち回っている。
「どうして苦しむの? せっかく取り戻した記憶なのに」
 それを傍らで眺める少女――否、オウガ『ホワイトアルバム』。心底不思議そうな顔でこてんと首を傾げる可愛らしい姿は、しかし偽りの物である。
 猟書家であるホワイトアルバムの力によって、少年は確かに楽しかった記憶を思い出したはずだった。それがどうしてこのようなことになっているのか、人ならざる彼女には理解できない。理解できないからこそ、無邪気に追い討ちをかける。
「ごっこ遊び、いいじゃない。えっと確か――」
 それは禁忌。それは過ち。深く深く封じられていた、忌まわしき記録。

「――漆黒の闇を斬り裂く魔竜剣士アレックス、だっけ」

 世の中には。
 例えその時は楽しくても、後から思い出すと恥ずかしくなる物事もあるのだ!

「ドラゴンの力を秘めた魔剣を自由自在に操る無双の剣士で」
「ぐふっ」
「伝説級の魔法も楽々使える世界最高の叡智の持ち主で」
「がはっ」
「とても強くて格好いいから、女の子はみんなあなたを大好きになるの」
「いっそ殺せえええええ!!」

●人それを黒歴史と言う
「あちゃー……」
 グリモア猟兵、イデア・ファンタジア(空想の描き手・f04404)の第一声がそれだ。咳払いを一つ、気を取り直して説明が続けられる。
「アリスラビリンスで猟書家の活動が確認されたよ。ホワイトアルバムっていう少女の姿をしたオウガで、アリス適合者を狙った事件をこれまでに何度も起こしてるね」

 不思議の国に突如として迷い込むアリス達。彼ら彼女らは、こちらに来る前の記憶を全て失っている。記憶を取り戻すため、そして元の世界に帰るため、『自分の扉』を探して様々な不思議の国を渡り歩くのがアリスの本来の在り方なのだが――ホワイトアルバムはそれを捻じ曲げるのだ。
「彼女はアリスが忘れていた嫌な記憶だけを思い出させるの。わざとかどうかは知らないけどね。で、真っ白だった記憶にそれだけポンと浮かぶものだからアリスは錯乱して……終いにはオウガになってしまうのよ」
 それを防ぐには、アリスが完全にオウガと化してしまう前に倒すしかない。強く励ましたり心を通わせたり、呼びかけることで命を救える可能性が高まることも既に分かっている。

「ただ、ねぇ。今回のアリスの忌まわしい記憶っていうのが、その……ね?」
 かくかくしかじか。
 『忌まわしいってそういう方向?』――何とも言えない顔をする猟兵達だが、それでもアリスにとっては死活問題。どう説得するか頭を悩ませていると、イデアから助け舟が出される。
「本人も忘れたがってるみたいだし、意外と普通にしばくだけでいけるんじゃないかな。こう、すぱーん、と」
 よし、最悪それでいこう。


渡来あん
 初めまして、あるいはお久しぶりです、渡来あんです。
 そういう訳でギャグテイストです。

●第1章
 オウガに成りかけているアリスを止めましょう。
 命が助かるかどうかはそれまでの呼びかけ次第です。(という建前)

●第2章
 猟書家『ホワイトアルバム』との戦いです。
 第1章の結果次第ではアリスが共に戦って……くれるといいですね。

 それでは、ご参加をお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『力に溺れた少年』

POW   :    ドラゴンの力を秘めた、無双の魔剣
無敵の【魔剣『ドラグカイザー』】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    魔法創造
無敵の【魔法】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
WIZ   :    魅了の魔眼
【両眼】から【レベル10未満の女性だけを魅了する呪詛】を放ち、【自身に対して、強い恋愛感情を抱かせる洗脳】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフェル・カーモルトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●現在進行形
 猟兵達が現場に到着した時、その場にホワイトアルバムの姿は無く、アリスだけがそこにいた。
 だが、アリスの様子がおかしい。どうやらオウガとしての意識にほとんど乗っ取られてしまっているようだ。
「お、新しい敵キャラか。男はいらねぇけど、女の子はハーレムに加えてやるよ」
 早く彼を止めなくては。これ以上新しい黒歴史が作られる前に!
シャムロック・ダンタリオン
(「アリス」の様子を見て)あー…、これはひどいな。
しかし、平凡な現実を都合のいい幻想で忘れようというその気持ち、わからんでもないぞ。

まあ多少不愉快だが、僕もあちらに合わせるとするか。
「我こそはソロモンの七十二柱の一、ダンタリオンなるぞ。貴様の力がどれ程か、見せてもらおうぞ!」
(で、出される魔法を【即席写本】で返しつつ)
「どうした、貴様の究極魔法とやらはその程度か?(と、相手の【傷口をえぐる】ように【言いくるめ】てる)」
「ならば真なる魔神の力を見せてやろう。地獄を見るがいい!(で、【選択UC】で変身し、【恐怖を与え】つつ【蹂躙】してる)」

※アドリブ・連携歓迎



「あー……、これはひどいな」
 率直な感想がつい口を出てしまったシャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)だが、幸いアリスの元には届かなかったようだ。
 まあ、彼の気持ちは分からなくもない、ともシャムロックは思う。
 空想、幻想。平凡な現実から逃れようと非現実を求めるその想いは、決して悪いものでは無い。潤沢な知見と瑞々しい感性で熟成されたそれらは、紙に綴られ、世界中の人々に愛される名作となり得る。
 シャムロックの住む図書館にも何冊も蔵書はあるし、今この瞬間にもどこかで新たな一冊が生み出されている。

 しかし、目の前のそれはあまりにも稚拙に過ぎた。
「我こそはソロモンの七十二柱の一、ダンタリオンなるぞ。貴様の力がどれ程か、見せてもらおうぞ!」
「ソロモンの悪魔……!? ちっ、究極魔法『エターナルフリーズブリザード』!」
 効果:相手は死ぬ。
 当然ながらそんな曖昧な魔法が通じるはずも無い。難なく防ぎ、片手間で相手へと返してみせるシャムロック。
「どうした、貴様の究極魔法とやらはその程度か?」
「馬鹿な、コキュートスに棲むアスタロトの権能を破るなんて!?」
 語彙が足りない、想像力が足りない、ついでに知識も誤っている。その程度で『本物』の前に立とうなど、多少を超えて不愉快だ。
「囀るな、紛い物め。――真なる魔神の力を見せてやろう。地獄を見るがいい!」
 そして、古の魔神が顕現する。

 頭に冠。右肩には猫を、左肩には蛙を。蜘蛛の下半身を持つ異形の姿は果たしてそれの真実か、それとも誰かの描いた虚構か。
 それは現実を侵食する非現実――ではない。幻想ではない、実在する存在である。
 ソロモンの悪魔、序列第一位。数多の軍団を率いる大いなる王。
 七十二柱が筆頭――邪神バエル!

 アリスに許されたのは、己が言動を悔やみ蹂躙されることだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

隣・人
「これは……なんと言いますか。筆舌に尽くし難い暗黒ですね。ほら、隣人ちゃんの脳味噌がぷるぷるしています」
無敵の魔法が何ですか。空間切ったり瞬間移動したり竜の力纏ったりなんて時代旧れ、今の流行はやはりめまいですね
どっきり目回し(アイテム)使って体勢崩しましょうか。そんな状態で何が出来るってんです?
さあ、混沌四天王『殺戮』の隣人(まえ)で跪きなさい――ユベコ発動して三半規管手繰ります

「さあ。吐け。今直ぐに吐け。その力はどうやって手に入れた。さっさと吐かねぇと吐かせてやるおら吐けや究極野郎――たとえ隣人ちゃんを倒してもこの身は四天王最強……そう考えるとまずいのでは」
めまい状態のアンタにはぶん殴りです



「これは……なんと言いますか。筆舌に尽くし難い暗黒ですね。ほら、隣人ちゃんの脳味噌がぷるぷるしています」
 首を小刻みに動かし、自らの頭部を指さして見せる隣・人(🌈・f13161)。
 灰色の――もしくはもっと別の何か――脳細胞が震えると嘯いて見せる彼女の真実は果たして。笑顔と目隠し、二重の仮面で隠されたそれを暴いてはいけない、理解してはいけない。ソウルボードを繋ぐなどもっての外。
「『エターナル――』」
「空間切ったり瞬間移動したり竜の力纏ったりなんて時代旧れ、今の流行はやはりめまいですね」
「!?」
 なのでアリスはただただ彼女の言動に翻弄されるのみ。流行とは乗っかるものではなく作るもの、今年のコーデはこれで決まり、大体EFBなんて何年前のネタだと――これ以上はいけない。
 驚愕、空隙、暗転、消失。
「……女が消えた!? 一体どこに行きやがった!」

 ビハインド・ユー。

「さあ、混沌四天王『殺戮』の隣人(まえ)で跪きなさい」
 ところで読者諸君は頭の中に存在する三半規管、あれをカタツムリみたいだと思ったことは無いだろうか。筆者は無い。だが隣・人はある。
 カタツムリなら――動くよね?
「う、うおええええぇ」
 蹲るアリス! 猛烈に襲い来るめまいと、頭の中に何かいるという生理的嫌悪感のコンビネーション! 辛うじて一線を超えることは耐えているが、それも時間の問題だ。
 主人公はゲロなんて吐かない。逆説的に、吐いたら主人公失格である。
「さあ。吐け。今直ぐに吐け。その力はどうやって手に入れた。さっさと吐かねぇと吐かせてやるおら吐けや究極野郎――たとえ隣人ちゃんを倒してもこの身は四天王最強……そう考えるとまずいのでは」
 などと言いつつも容赦無く、駄目押しにぶん殴り。
「あ」
 あ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リアナ・トラヴェリア
魔竜剣士?
割と私達の世界だと普通にいたけどなあ
ドラコニアンの魔法剣士とか私とかそうだし?

というかなんで恥ずかしいのかな?
だって誰だってどんな望みがあったっていいわけでしょ?
それって恥ずかしいと思っているのは自分がまず最初に思ってるわけでしょ?
自分の好きな事をそんなに悪く思うのは、きっと良くない事だよ。

男の子が女の子に好かれたいってのはよく聞くし、そのための手段としては多分間違っているとは思うけど。
でも私のお父さんは言ってたよ。『男はだいたい皆恥ずかしい過去を持っている』って。きっとそれは皆同じだから苦しむ必要は無いんじゃないかな?

って事を魔術師の手で剣を掴んで言うよ。余裕があったら折っちゃえ。



「魔竜剣士……割と私達の世界だと普通にいたけどなあ?」
 私とかそうだし、そう指摘するリアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)はドラゴニアンの魔法剣士だ。アリスの彼が妄想した架空のジョブに極めて近い、いわば『本物』である。
「というかなんで恥ずかしいのかな? 誰だってどんな望みがあったっていいのに」
「ぐっ、黙れええぇ!」
 リアナの冷静な指摘に逆上し襲い掛かってくるオウガ――もとい、アリス。一体何が彼をここまで傷つけるのか、リアナには薄々分かっていた。
「結局、自分がまず最初にそう思っちゃってるんだよね。自分の好きなことをそんなに悪く思うのは、きっと良くないことだよ」

「男の子が女の子に好かれたいってのはよく聞くし、そのための手段としては多分間違っているとは思うけど」
 弱い自分が嫌だ。愚かな自分が嫌だ。異性と向き合う自信が無い。変わりたい、今すぐに。
 何かが間違っていたとするなら、それは短絡的だったことだけ。始まりの想いを、憧れた姿を、否定する必要はどこにも無いのだ。
 力無く振り下ろされる剣を素手で受け止め掴むリアナ。そのまま手首を捻って剣を折ろうとして――折れない。先程までは鈍らだったその中に、一本芯が通る感触。
 ふと彼と目が合えば、その中には確かに意志の光が見え始めていて。
「……いいのか? こんな俺でも、あんたみたいになりたいって、そう思っていいのか? なぁ、答えてくれよ!」
「……もちろん! いいね、そうこなくちゃ!」
 剣ごと相手を突き飛ばして距離を取り、利き手に剣を持ち替える。ここからはお互いに全力だ。
 聞かれたならば答えよう。背を追われたなら顧みよう。本物として立ちはだかり、少年にかつての憧れを取り戻させよう。
 偽物が本物になれないなどと誰が決めた。

 さあ、未来の後輩に手本を見せてやろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイリス・レコード
「こういう時、どういう言葉を掛ければいいのか、私にはわかりませんが……
それでも、あなたを止めます。“悲劇の最期”を迎えさせないために。」

アリスランスを構え、《破魔》の力を込めた後
相手の攻撃には《激痛耐性》での我慢比べで、大真面目に受けて立ちます

が、いつの間にかUC【断章「箱の中で嗤うチェシャ猫」】で現れた姿の見えない「チェシャ猫」が好き放題言いつつ(※《精神攻撃》)加勢しています

猫「あんなの相手に真面目だねぇアリス、他の断章連中も出る気はないようだし……仕方がない。手伝うさ」
猫「ん?ボクは“チェシャ猫”さ。それよりさっさとあの寝ぼけたコンパチ剣士様の目を覚ましてやろう」

※アドリブ他歓迎です



「こういう時、どういう言葉をかければいいのか、私には分かりませんが……それでも、あなたを止めます」
 人助けの騎士、アイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)。自分へ言い聞かせるように決意を口にする彼女へ、突如、誰とも知れない声がかけられる。
『こんな時でも真面目だねぇ、アリス』
「だ、誰ですか!? あなたは敵……いえ、味方?」
 声は聞こえど姿は見えず。どうやら敵ではないようだが、やけに笑い声が気に障る。そんな声の主がアイリスに投げかけたのは、一つの提案。
『ん? ボクは『チェシャ猫』さ。それよりほら、あのコンパチ剣士様はそろそろお目覚めのようだ。他の断章連中も出る気は無いようだし……このまま黙って見てる気は?』
「……いいえ、戦います。『悲劇の最期』を少しでも遠ざけるために」
 転んだ相手が一人で立ち上がれるとしても、それは手を差し伸べない理由にならない。そして、差し出された手がその者にどれだけ心強く映ることだろうか。
 だからアイリスは、人助けの騎士なのだ。
『そこまで言うなら仕方がない。手伝うさ』

 魔剣が肩に食い込む痛みに耐え、アリスランスを突き返す。僅かにぶれた穂先をチェシャ猫が補正する。少年と少女は一対一で向き合い、互いの底をさらけ出す。
「がっ! ――あんた、同い年位なのにどうしてそこまで出来るんだ?」
「私も、記憶がありませんから。ですからあなたには『自分の扉』を見つけてほしいんです。アリスには確かに希望があるんだって、示してほしいんです」
「……いつか俺が帰れたら、全部思い出したらその時は――」
 と、そんな一幕が演じられていたのだが。

『はいそこまで。ボクらのアリスに粉かけるんじゃないよ』
 すぱーん、そんな小気味良い音と共に強制終了されるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ホワイトアルバム』

POW   :    デリシャス・アリス
戦闘中に食べた【少女の肉】の量と質に応じて【自身の侵略蔵書の記述が増え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    イマジナリィ・アリス
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【虚像のアリス】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    イミテイション・アリス
戦闘力が増加する【「アリス」】、飛翔力が増加する【「アリス」】、驚かせ力が増加する【「アリス」】のいずれかに変身する。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ライカ・リコリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●白き書、来たる
 倒れたアリスが目覚めるまでそうはかからなかった。
「う、ここは一体……そうだ、俺は何てことを……」
 少年が起きるまで見守っていた――現場の後始末もしていた――猟兵達が思い思いに慰める。ああこれで一安心、とはいかない。

「あれ、もう終わっちゃったの? じゃあ約束通り、食べてあげるね」
 その場に現れたのは一人の少女。青と白の衣装に身を包み、ある種アリス以上にアリスらしい姿のその存在は、しかし目だけが妖しい光を帯びている。その姿を知る者も、知らぬ者もまた等しく、瞬時に危険性を悟るだろう。
 これこそが、猟書家『ホワイトアルバム』!

「忘れて幸せ、空っぽ幸せ。うふふふふ……いただきまぁす」
ティー・アラベリア(サポート)
家庭用人形ティー・アラベリア。ご用命を受け参上致しました!
あの敵はどんな攻撃をしてくるのかな?どんな弱点があるのかな?
とっても、とーっても楽しみですね!

・基本行動
他の猟兵をサポートするように行動します。
魔導波探信儀(偵察・第六感・地形利用)で敵を分析し、92式魔杖(制圧射撃・砲撃)を用いた火力支援で他の猟兵が攻撃・防御する隙を作り出します。
必要に応じて90式魔杖(貫通攻撃・スナイパー)を使用した対装甲戦闘、95式魔杖(対空戦闘・一斉発射・誘導弾)を使用した対空戦闘も実施します。

・UC使用
火力が必要な場合:砲撃妖精突撃射撃
弱点を探す必要がある場合:斥候型妖精召喚

※アドリブ・連携歓迎です※


木元・祭莉(サポート)
「よっし、おいらに任せといてー♪」

グラップラー×サウンドソルジャー、13歳の人狼少年です。
前衛肉弾派で、積極的に行動します。
まだまだ未熟なアホの子ですが、やる気だけは人一倍!

あまり悩まずさっと決断して、臨機応変に切り替えて、いつも楽しそうにテンション高く行動します。
本人マジメでも、結果コミカルになりがちです。

ユーベルコードは、地味に戦闘力底上げに使うことが多いです。
最後は、グラップルの正拳一撃で締めるのが理想形。

多少の怪我は耐性のおかげで気付かず、肉を切らせて骨を断つ、がモットー。
いつも笑顔で、後先考えず。でもちょっとビビリ。

あとはおまかせで。よろしくおねがいします!


紫洲川・珠璃(サポート)
キャラの雰囲気は落ち着いたお姉さんの感じです
口数はどちらかというと少なく物静か

戦闘は果敢に攻め入り、
足は止めず常に動き回り、奇策より正攻法を好みます
武器は主に一振りの刀(虚鐵)を両手持ちで使い、たまに脇差として所持している二本目を抜きます

ボスのような大物相手ではまず相手の機動力を削いでから有効打を狙いにかかるので特に序盤は機動部位(主に足)を手数を多くして攻撃し、
中~終盤は基幹部位(頭や胴体など)を高威力の一撃で狙います

ユーベルコードは以下の順で制御しやすい(と彼女が思っている)ので利用しますが、
状況に応じて適切なものを利用します

【使いやすい】⇔【使いづらい】
炎狐=妖剣解放<黒狐召喚<神狐召喚


シャムロック・ダンタリオン
ふん、現れたか猟書家。
確かにこいつ(助けた「アリス」)は身の程知らずの愚か者ではあるが、だからといってこのまま貴様の餌にしておくわけにはいかぬのでな(「アリス」の【傷口をえぐる】ような言動も含まれているがそれはそれ)。

――さて、貴様がどのような姿に変貌しようが構うまい。貴様が空白を望むのであれば――「【破魔】の「落雷」でも食らうがいい!(【属性攻撃・蹂躙・恐怖を与える】)

――さてとどめは「アリス」に任せるとしよう――勿論正しい知識(【世界知識・戦闘知識】)を吹き込んだうえでな。

※アドリブ・連携歓迎



 振り抜いた虚鐵から伝わった空虚な感触に、紫洲川・珠璃(夜を追う者・f00262)は眉をひそめた。
「……幻?」
 ホワイトアルバムはただ佇んでいる。隙だらけの姿に油断せず、まずは機動力を削がんと足元を斬り払ったはずだったのだが――結果は空振り。
「うふふ、今度はわたしの番ね」
 そして敵は槍を持つ別の少女へと姿を変え襲ってきた。幻のはずなのに、一瞬たりとも目を離してなどいないはずなのに――いなした穂先からは、確かな重さが伝わってきた。実体だ。一体、何時の間に入れ替わったというのか?
 その後も応酬は続くが一方的なままだ。空高くから撃ってくる姿、見たことも無い手段で攻めてくる姿、それらに対して珠璃は良く戦ったが、やはり、かすり傷一つ負わせられない。
「どうなっているの……ティーさん、分かる?」

「先程から探査しておりますが全然駄目でございます! 正直、お手上げです☆」
 いっそ清々しい声で返事をするティー・アラベリア(ご家庭用奉仕人形・f30348)。
 だがティーがそう言うのも無理はない。何度も魔導波を発振して周囲の反応を探っているのだが、どこかに本体が隠れているような気配は微塵も無く、むしろ目の前のそれこそ本体だという証拠が積み重なるばかり。
 けれども実際には幻なのだ。訳が分からない。
「これはもう面制圧するしかありませんね。離れてください……いきますよ♪」
 92式、そう命名された魔杖を展開し火力投射を開始する。攻撃範囲は前方全て、威力の代わりに超広範囲をカバーするこれから逃れることはさしものオブリビオンでも難しい、はずなのだが。
「これでも駄目……家庭用人形の名折れですね」

「よっし、おいらに任せといてー♪」
 木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)の明るい声が暗い雰囲気を一気に吹き飛ばす。その手に琥珀を煌めかせ、裸足で敵へと駆けてゆく。
「そーれ、どーん!」
 槍が脇腹を掠めるのにも気付かずに、正拳突きが敵の胴体を捉える。ぐらり、ホワイトアルバムの体が初めて揺らいだ。
 クロスカウンターだ。攻撃時は実体だというならその際に攻撃すればいい。怪我については気にしない、即断即決が祭莉の長所だ。
「へへーん、どんなもんだい!」
 だが、開けたかに見えた活路もすぐに閉ざされてしまう。
「じゃあ我慢比べね? 大丈夫よ、わたし、ちゃあんと『待て』は出来るもの」
 カウンターである以上、相手が動かなければ手は出せない。そしてこれから先四六時中アリスを護衛し続けるのは不可能だ。やはり幻の謎を解くしかないのか。

「うふふふふ。――あれ?」
 とん、と衝撃を感じたホワイトアルバム。振り返れば、何かが自分に抱きついている。それが猟兵の使役する存在だと理解するより前に、召喚主のティーが声を上げる。
「捕まえました、もう放しませんよ♪」
 千載一遇の好機、珠璃の一振りが、祭莉の一突きが、猟書家へと吸い込まれ――。
 ――吸い込まれ、素通りした。抱きついていた斥候妖精も突然支えを失い倒れる。
「あっれぇ!?」
「そんな、『幻になった』?」

「なるほど、現実改変だな。小賢しい」
 状況を打開したのはシャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)の言だ。『他者の秘密を暴く』――権能に昇華されるほどの広く深い知識、そして観察眼。僅かな手がかりさえあれば、真実を紐解くことなどシャムロックには造作も無い。
「奴は攻撃が当たる瞬間に、『今までの自分は幻影だった』と世界を改竄しているのだ。理論上、来ると分かっていれば光さえ避けられる。長続きはしないだろうがな」
 仲間達へと説きながら書を開き、戦場の法則を操作するシャムロック。するとたちまち暗雲が立ち込めて、雷鳴が唸り始めたではないか。
「突破法は見た通りだ、意識外から討てば良い。不可視かつ無音、そして予測不能な攻撃が必要だ。目と耳は僕が塞ぐ、とにかく手数を増やせ」

 雷の嵐が巻き起こる。絶え間なく落ちる稲妻の極光と轟音が、逆に戦場から明るさと音を遠ざける。
 被害を被るのは双方同じ。けれども猟兵達はオブリビオンに対し、手札の多さで勝っているのだ。
「我、此処に求むるは、火軍の尖兵。我が喚び声に応えて赤熱の森より姿現せ、焔纏いし我が眷属」
 炎狐。珠璃の呼びかけに応えた数十もの炎の狐が地を走り空を駆ける。敵を中心にぐるぐると回り続け、何時でも何処からでも攻撃が可能だ。多少見えづらくとも相手が少々移動しようとも問題なく不意を討てる。
「ぴよこ、ひなこ、まっきー! よし、ちゃんとついてきてるな!」
 雌鶏、向日葵、狼――三体の相棒達とはぐれていないことを確認し、祭莉は駆ける速度を上げた。彼らと一緒ならば祭莉は何処へでも行ける。
 文字通り、何処にでもだ。炎狐達一匹一匹を仲間と認識することで、任意のタイミングで任意の地点に転移が可能となったのだ。
「さぁ、趣向を変えましょう」
 魔杖を変更し95式へ。ティーが持つ数々の魔杖の中でも、手数に関してこれに勝る物は無い。思念誘導型であることも、軌道を変えて着弾のタイミングをずらせるという利点となる。
 それともう一つ。先程も使用した魔導波探知によって、ティーだけは戦場を詳細に把握できるのだ。
「家庭用人形の名誉挽回です☆」

 今この場において合図は不可能。しかし、そもそも猟兵達には不要だった。
「――今よ。行って、私の眷属達」
 珠璃の炎狐が次々と突撃を開始する。並走する者同士が合体し、かと思えば分裂し、変幻自在に相手を化かす。ただでさえ劣悪な環境の中でそれら全てを把握するなど、猟書家だろうと不可能だ。すぐに炎は目標へ着弾し始め、髪が、服が燃えていく。
「えーいっ! あ、声出しちゃだめなんだっけ、でも聞こえないからいっか!」
 狐を追って現れた祭莉の拳が唸る。例え空振りに終わっても気にせず、すぐに次の攻撃準備へ入っていく。防がれる以上に攻撃出来ればそれでいいのだ。タイミングの測り方はまだまだだが――人一倍頑張れば、それでいい。
「ここから逆転する手はありますか? あるなら早く見せてくださいませ☆」
 それらの隙間を縫って飛び交う誘導弾の数々。着弾の直前に方向転換してフェイント、かと思えば再び方向転換して着弾、ティーの意思により虚実織り交ぜた軌跡が描かれる。これこそ奉仕人形の真髄、その一側面だ。
 炎が、拳が、砲撃がオブリビオンを襲う。幻影化し続けてやり過ごすことは出来ない。シャムロックが見抜いた通り、無効化はあくまで一時的な能力なのだ。

 そして、シャムロックは少年と共にいた。
「あの……ありがとう、ここまでしてくれて」
「ふん、確かに貴様は身の程知らずの愚か者ではあるが、だからといってこのまま奴の餌にしておくわけにはいかぬのでな」
 手厳しい、と苦笑するアリスに、当然だ、と返す。確かに少年は少しは気概を持ち直したのかもしれない。けれどもそれがこの先も続く保証はどこにも無いのだ。
 だからこそ、証明してみせろと悪魔は求める。一歩を踏み出し、目の前の災厄を退けてみせろと。そのための知識は与えたはずだと。
「感謝しろ。僕らから対価も無しに何かを得られるなど、そうは無いのだからな」
 その時、最後に一際大きな雷が落ちた。目晦ましとは仮の姿、本命の一撃が意識の隙間から猟書家を穿つ。
「破魔の力をたっぷりと込めてある、しばらくは改竄も変貌も出来まい――やれ!」
 魔法、即ち悪魔の法則。本物から手ほどきを受けて、アリスは深淵の一端を覗き見る。序列四十九位、クロケルの氷剣を借り受け、その冷気を敵対者に叩きつける。
 そうしてホワイトアルバムの左腕は完全に凍てついて――硝子細工のごとく砕け散るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


●デリシャス・アリス
 幻影化も、変貌も封じ込められた。髪と服は焦げ、あばらは折れ、口からは血を吐き、あまつさえ左腕を失った。
 満身創痍。そう表現するより無い所まで追い詰められてなお、ホワイトアルバムの顔に浮かんだ笑みが消えることは無かった。いや、むしろ増している――より狂気的に。
「――あ」
 ふと口を開いた彼女は、残された右腕を目の前に持ってきて。

 がぶり、と齧りついた。

 ぐちゃり、ぐちゃり。水気のある音を立てながら、少女の肉を腹に収めてゆく。最初はゆっくり、次第に早く、終いには地獄の餓鬼もかくやとがっついて。
 大事な大事な白き書が、赤黒く染まるのも意に介さずに。
 そうして血の一滴まで舐めとって再び音を発したその瞬間、骨だけになった右腕が――変化する。
「あ、は」
 骨の鉤爪。だがしかし、余りにも異形だ。肘から先だけだというのに、少女の全身より長い。
「あはは、あはは、あはは、あはは」

 化けの皮が剥がれた、と言うのだろう。犠牲者達の姿が使えなくなり、とうとうオウガの本性を露わにしたのだ。
 借り物の理性さえ脱ぎ捨てて、意味も無く嗤う悍ましきその姿。
 ああ、これこそが人喰いの怪物――オウガ!

「あははハハハハHAHAHAHAHA――!!」
アイリス・レコード
あなたが何度現れようと、アリスの物語を終わらせはしない……守って見せます

猫「前回アレと戦った時は守ろうとしたアリスを食べられかけたしね」
え……実は記憶が曖昧だったんですが、そんなことに…?
「(UCでアリスに混ざってるオウガの意識が顕在化、その敵意に振り回されて守りを怠ったせいだけどね)大丈夫、他の猟兵もいたから」

それならなおさら、敵の元々の目的がアリスさんである以上、油断せずアリスさんを《庇い》つつ猫さんと連携して応戦します。
「いや自分の“肉”にも気を付けてよアリス。彼も自衛すらできない訳じゃないでしょ?さて、じゃあ見えないなりにこの爪で《部位破壊/態勢崩し》でもしてあげようか」

※アドリブ歓迎


クレア・フォースフェンサー
アリスに嫌な記憶だけを思い出させ、苦しませた挙句に喰らう……か
己が記憶は思い出せぬことの当てつけが知らぬが、見た目によらずなんとも悪どいことをしておるのう

いや、今のおぬしは、その性格に相応しい姿をしておると言えるのかもしれぬな
人の心と身体を引き裂くその鉤爪、アリスに触れさせはせぬぞ

アリスは後ろに下がらせる
元の世界に戻れば、この世界での出来事は忘れるのかもしれぬ
だが、記憶の奥には残るであろう
たとえ相手が化け物であろうと、殺しの業を背負わせる必要はあるまい

光珠を展開
敵の動きを見切り、アリスへのものも含めて敵の攻撃を光剣で捌きつつ接近
まずは侵略蔵書を斬ることで弱体化させ、後にUCを込めて両断する


リアナ・トラヴェリア
結局あなたには最初から綴れるものなんて何もなかったんだよ、ホワイトアルバム。
だからずっと代わりになるものを探して食べ歩いていたんだろうけど、それもここでお終い。
終わらせるよ、文字も絵も記せない本に価値はないんだから。

覇王の腕を使ってアレックスさんと共闘するよ。
自分で自分を記述できない相手なんか大した相手じゃないから。
呼吸を合わせて左右から、伸びた爪は片腕だけ。ならそれを片方が止めて本命をもう片方が叩き込めばいい。

どちらにせよ私は黒剣が命中する瞬間に形を変化させて、ダメージの増加を見込んだり動きを封じやすくするよ。

ここであなたは終わりだよ、鉤爪の男の通りの結果しかあなたには起こせないんだ。



「結局あなたには最初から綴れるものなんて何も無かったんだよ、ホワイトアルバム」
 だから空白を埋めるべく、代わりとなるものを探して食べ歩いていたのだろう。それもここで終わりだとリアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)は封印解除の準備に入る。180のカウントダウンが開始の合図を待ちわびている。
 ホワイトアルバムは闘争を生む、鉤爪の男がそう評したのも当然だ。このオウガに誰かを幸せにすることなど出来るはずが無い。文字も絵も記せない本など、価値の無いただの紙束なのだから。
 猟書家『ホワイトアルバム』は初めから、始まってすらいなかったのだ。
「アリス、ええっとアレックスさんでいいかな、一緒に戦おう」

「待たれよ、リアナ殿。すまぬが彼は下がらせてもらえぬかのう」
 クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)もまたアリスを案じる一人だが、その結論はいささか異なっていた。
「たとえ相手が化け物であろうと、殺しの業を背負わせる必要はあるまい」
 記憶を取り戻した者が、逆に喪失中の記憶を失う。よく聞く話だ。この少年もそうなるかもしれない。
 けれども、ここでの善き経験は必ずやどこかに残り、少年を成長させるだろう。ならば悪しき経験もまた残り、傷となりうる。
「気骨は既に見せてもらったしのう。相方はわしが務めさせていただこう」
「――うん、分かったよ。よろしくね、クレアさん」

「あなたが何度現れようと、アリスの物語を終わらせはしない……守って見せます」
 対峙するのはこれで二度目だ。以前の少女と同じくこの少年も助けてみせると、庇える位置取りをするアイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)。
 と、そこへチェシャ猫が茶々を入れる。
『前回アレと戦った時は守ろうとしたアリスを食べられかけたしね』
「え……実は記憶が曖昧だったんですが、そんなことに……?」
『…………大丈夫、他の猟兵もいたから』
 不自然な間に違和感を覚えかけたアイリス、だがそれが形となる前にオウガが襲いかかってきた!

 120。
 クレアが鉤爪を引き受けてリアナが致命的な一撃を叩き込む、作戦の首尾は上々とは言い難かった。
 なまじ弱点が明白な分、敵としても猟兵達の行動を予測しやすいのだろう。挟撃される状況を避け無防備な左側からの攻撃を殊更警戒するオウガ。理性は捨てても知性は捨てていないのが厭らしい。
 90。
 もう半分を切った。焦るな、自分に言い聞かせるリアナ。時間制限は精神的な重圧を生む、分かっていたことだ。今更剣筋を狂わせるほど自分は軟ではない。
 今は耐える時、そして仲間を援護する時。長くなった黒鱗剣をこうして振るうだけで、オウガはその暴威を半端なものとせざるを得ないのだから。
 60。

 手を変えるべきか。それにしても、と戦いながらクレアは思う。
 忌まわしい記憶を思い出させ、苦しませた挙句に喰らう。何とも邪悪な所業だ。
「今のおぬしはそれに相応しい姿をしておるな。人の心と身体を引き裂くその鉤爪、アリスに触れさせはせぬぞ」
 鉤爪が通りすぎた木が、数拍遅れて倒れ込む。一瞬幻かと思うほどの斬れ味に、長物としても類を見ないリーチ。
「昔ならどう潜り込むか悩んだであろうが――今はこういうことも出来るのでな!」
 振り下ろすはフォースセイバー、光の剣。鉤爪で受け止められる寸前に短くし、通り過ぎてから再び伸ばす。刹那の早業で敵の守りを突破、懐に浮かぶ侵略蔵書を両断する!

 力の一部を失い、ついに敵に決定的な隙が生まれた。
 残り時間は既に20を下回っている、最早次の機会は無いだろう。この一撃で全てを終わらせる、その覚悟を持ってリアナはオウガに肉迫する。
 必要なのは一撃必殺。血肉が借り物だというのなら本体である骨を断つ。
 黒鱗剣が変化する。身を守る厚さを捨て、外敵を裂く鋭さを得て。
「これで、終わり!」
 そうして振り抜かれた覇王の腕が――怪物の胴を真っ二つにしたのだった!

 残心の直後に崩れ落ちたリアナを支えるクレア。
「見事な一太刀じゃった。わしも負けておれんのう、帰ったら素振りじゃ」
 そうして武装を納めた彼女を責めることは出来ないだろう。一体誰が――。

「HA」
 一体誰が、まだオウガが生きていると思うだろうか。

「HA――HA――HA――!!」
 右腕だけで、まるで節足動物のように猛烈に移動し始めるオウガ。一瞬呆けたクレアが我に返った時には既に姿は遠い。
 最後の一閃は胴、というより胸を断ち切り心臓部を確実に破壊したはずだ。侵略蔵書の方も自分が確かに斬り捨てた。なのに何故――。
 そこでハッとしたクレアは自身に搭載された還送機能を起動し、理解して叫ぶ。
「あやつの核は食欲――歯、いや顎か! すまぬアイリス殿、そちらへ行ったぞ!」

「いやあ気持ち悪い! 私あんなのと戦ったんですか!? ア、アリスさんは食べさせませんよ!」
『いやここまでキモくは無かったよ!? っていうか自分の肉にも気を付けてよアリス、彼も自衛すら出来ない訳じゃ――危ない!』
 振りかぶられる凶爪、だがそれよりも早く来た衝撃。突き飛ばされた、誰に?
 ――決まっている。
「チェシャ猫さん……?」
『ぐっ……全く、騎士が守られるっていうのはどうなんだろうね?』
「わ、私なら大丈夫でしたよ! それより姿を見せてください!」
 自分を庇って怪我をしたのか。駆け寄りたいのに、相手がどこにいるか分からない。
『――君はボクを見ようとするんだね、アイリス。……悪いけどそれは無理なんだ』
「それはどういう――」
『お喋りはここまでだ。今は猫の手も借りたい状況だろう?』
 ああ、彼の姿は相変わらず見えないけれど。皮肉気な笑みを浮かべていることだけは、何故か分かった。

『弱点は聞こえていたね? 動きを止められるのは一瞬だ、いくよ』
「は、はい!」
 オウガの怪物然とした有様。初見の衝撃こそ凄いが、見慣れてしまえばどうということは無い。
 腕の力で飛び上がったオウガが、しかし何かに掴まれたように静止して――その口蓋をアリスランスが突き砕いた。

●ブラックアウト
 ホワイトアルバムは何も残さず逝った。血肉も骨も、言葉の一つも残さずに。
 いや、一つだけ残っているか。背表紙で両断された侵略蔵書が。何も書かれていないと本人が言っていた、恐らくは名前の由来の品。
 そういえば、少女の肉を食べると記述が増えるのだったか? 今なら何か読めるかも、そう思った誰かが拾おうとして、すぐに諦めた。
 だって、白き書、白かった書はもう既に――。

 乾いた血で真っ黒に塗り潰されており、当然、中身なんて全く読めない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月20日


挿絵イラスト