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二人の門出に祝福を

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●祝宴を阻む領主
 その日。村の小さな集会場は、祝宴の準備がされていた。
 近くの花畑で集めた、少しの花々を会場に飾って。とびきり綺麗ないくつかは、束ねてブーケにする。
 贅沢はできないけれど、彼らなりの『ご馳走』だって用意した。
 普段奏でる機会のない祝いの歌も、皆で少しずつ練習した。
 主役の二人を祝うため、できる限りの晴れ着に袖通し、皆が集まる、はずだった。
 ――そこに、ヴァンパイアが訪れなければ。
「……お前達、誰の許可を得てこんなことをしたのかしら?」
 白い髪を、指先でつまらなさそうに弄びながら。この村を領地とするヴァンパイアの少女は、集めた村人に詰問していた。
 絶対の支配権を持つ領主を前に、俯いた村人達は答えない。否、答える権利などないことを、彼らは知っていたのだ。
 彼らの領主――リーシャ・ヴァーミリオンは、いつだって気まぐれに村を訪れ、何かしらの難癖をつけては搾取していく。そういう人だ。口答えなどすれば搾取されるものが増えるばかりで、村人達にとっていいことはない。今まで何度も味わってきた経験から、彼らは皆、一様に口を噤んでいた。
 そんな領民の反応に、やはりリーシャはつまらなさそうな表情のまま。コツ、と靴音鳴らして村人達へ近付き――白いドレス纏った女の前で、立ち止まった。
「お前が、この宴の『主役』? ふん、結婚式なんて――私の許可なく、こんなことしていいと思ったの?」
 ヴァンパイアの青白い指が、女の顔を掴む。怯える顔で花嫁はその行為に耐えるけれど――隣の男はたまらずに、その手を払い領主に声を荒げた。
「やめろ! 彼女に触るな! この宴を計画したのは……俺なんだから!」
 女と揃って白い服。愛する花嫁を守ろうと勇気振り絞ったその姿に、リーシャは赤い瞳を細めて小さく嗤った。
「あら、そう。わかったわ。私に歯向かったらどうなるかはわかっているわよね?」
 ――連れて行きなさい。少女の声に、後ろに控えていた鎧の男達が動き出す。花婿を捕まえ、近くにいた男達も数人捕まえ。
 嗚呼、こうなっては成す術はない。諦めるしかない村人達は、俯いたままで領主の蛮行を見送る。
 ただ一人、花嫁は慌てて追いすがろうとしたけれど、それは他の村人に止められて。
 何故、よりによって今日だったのだろう。そんな不運を呪いながら、残された花嫁はただ涙を流すのだった。

●二人の門出に祝福を
 急ぎ、頼みたいことがある。集った猟兵達を金の瞳で見つめながら、クロード・ロラン(人狼の咎人殺し・f00390)はそう語り出した。
「ダークセイヴァーで圧政を敷くヴァンパイア……ああ、残念ながらよくある話だけど、俺はある領主の館が手薄になるのを予知した」
 その領主はヴァンパイアの少女、リーシャ・ヴァーミリオン。普段は彼女の住まう領主館は警備が厳しく、攻め滅ぼすのは困難となっている。
 けれどこの少女は時折、領地内の村を巡って『搾取』をする。それは食料だったり、人だったりするのだけれど――此度クロードの『視た』日は、はじめに訪れた村で男を三人捕まえて、リーシャは少数の配下と領主館へ戻る。その他の配下は領主とは別行動となり、他の村々を巡っていく。つまり、館の警備が手薄となるのだ。
「リーシャが配下と別行動になって、館に戻った後。そこが撃破のチャンスだ。悪いが、その前に接触することはできない。逆に館に戻った後、襲撃までに時間がかかれば……今回連れ去られた男達の、命が危ない」
 そこでクロードは、リーシャが従える配下の特徴へと話題を移す。血に濡れた闇色の鎧、盾とフレイルとマスケット銃を装備した姿。――その『中身』は、かつての村人の成れの果てなのだと。
「皆まで言いたくねぇけど……リーシャが連れ去った男達に何をしてるかは明らかだろ。でも、急げばこの日の男達は救える。あくまでも依頼内容はヴァンパイアの討伐だけど、できる限りこいつらのことも助けてほしい」
 クロードが猟兵達を転移させられるのは、領主館の入り口だ。裏口を探す時間はない、正面口を蹴破り侵入することになる。そこにいるリーシャの配下と戦闘を始めれば、他の場にいる配下達も集まってくることだろう。先を急ぎたいところだけれど、ヴァンパイアの元には村人の男達がいる。彼らを救出するには、配下を片付け安全な退路を確保する必要もある。
 それに、配下達の成り立ちを考えれば、倒さず放置ってわけにもいかねぇだろ。語る黒衣のグリモア猟兵は不快そうに眉寄せながら、残さず倒すようにと告げた。
「配下を倒したら、そのまま奥の大扉を開けて、広間に突入してくれ。この部屋の出入り口は、お前達が突入する大扉のみ。リーシャの傍に男達がいるが、なんとか引き離して扉の外へと誘導できれば、ひとまず安全は確保できる」
 そうなれば、後はヴァンパイアと戦うのみ。リーシャは鮮血槍と血液を操り、近接戦闘を得意としている。一筋縄ではいかない相手だろうが必ず倒してほしいと、語ったクロードはそこで大きく息を吐いた。
「そんで、戦いが終わり、無事に村人を救出できたら……彼らを村へ帰すついでに、祝宴に参加してほしい」
 クロードの視た内容によると、この日村では結婚式が行われる予定だったのだと言う。連れ去られた花婿が無事に戻れば、結婚式が行える。領主を倒したことも教えれば、村人達は心置きなく祝いの席を楽しむことができるだろう。
 貧しい村だ、祝いと言ってもささやかなもの。けれど領主を倒した旅人達も参列すれば、彼らもきっと喜ぶだろう。
「戦いも、宴も、お前らに託すからな」
 だから、二人にどうか祝福を。語ったクロードは深々と礼をすると、猟兵達を送り出した。


真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。

●お願い
 プレイングの受付期間につきましては、マスターページの「お知らせ」にて都度ご案内します。
 期間外に届いたプレイングは不採用とさせていただきますので、お知らせをご確認の上ご参加ください。

●シナリオの流れ
 第1章:集団戦(朱殷の隷属戦士)
 第2章:ボス戦(リーシャ・ヴァーミリオン)
 第3章:日常(結婚式)

●戦闘について
 集団戦は、吸血鬼の館のエントランスホール。
 ボス戦は、その奥の広間にて戦います。
 どちらも広さは十分にあり、戦闘に支障となるものはありません。
 調度品や家具も置かれています。館の破損を気にする必要もありませんので、使いたいものがありましたらご自由に活用してください。
 また、戦闘行動だけでなく心情も寄せていただけましたら、積極的に描写します。
 ボス戦開始時、攫われた村の男達も3人その場にいます。放置しておくとリーシャが危害を加える可能性がありますが、猟兵達が解放すれば広間の外まで逃走してくれます。

●第3章について
 リーシャの撃破に成功した場合、オープニングの村へ解放した男を連れていき、ささやかな結婚式に参加することになります。
 第2章の被害状況に応じて、描写に若干の変化があります。
 能力による選択肢にとらわれず、お好きに行動してください。
 貧しい村ですので、用意された宴は本当にささやかです。何か持ち込むと喜ばれるかもしれません。

 第3章のみ、お声がけがあればクロードもご一緒します。
 結婚式の参列は初なので勝手のわからない少年ですが、お手伝い等できるかと思います。

●その他
 ・ペアやグループでのご参加の場合は、プレイングの冒頭に【お相手のお名前とID】か【グループ名】をお書き下さい。記載なき場合は迷子になる恐れがあります。プレイング送信日を同日で揃えていただけると助かります。また、4名様以上のグループはリプレイ執筆までに時間がかかったり、キャパ的に不採用となる場合があります。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、または不採用とさせていただく場合があります。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『朱殷の隷属戦士』

POW   :    慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●悲しき戦士達
 転移終えた猟兵達の前には、豪奢な建物がそびえ立っていた。
 白い石造りの館は、丁寧に掃除をされており――その管理にどれほどの人を使っているのか、想像すればこの主の圧政が見て取れる。
 領主館の正面口、閉ざされた扉もまた白く。集まった猟兵達は鍵かけられたそれを、力づくで破壊した。
 ドオン、と衝撃音が周囲に響く。倒れる扉の向こう、エントランスホールには果たしてグリモア猟兵の予知の通り、数人の戦士がいた。奥の通路や、二階からも。物音聞きつけたヴァンパイアの配下達が、続々とホールへやってくるのが見える。
 まずは、この戦士達を全て倒さなければいけない。もうその姿を元に戻すことは叶わないから、せめて。
小読・灯
もう助けられないのね、分かっては居るの。

もう助けることが叶わないのなら、せめてこれ以上かつてのお友達を、仲間達を傷つけさせたくないわね。

だから【ウィザード・ミサイル】で焼き尽くしましょう。マッチを擦って頭上に【属性攻撃】で強化した炎の矢を大量に展開。
床に同じタイミングで着弾するように放って、点ではなく面で攻撃しましょう。

ごめんなさい。私にはもうどうしてあげることもできないの。そして、生きてる人を少しでも助けるためには、時間をかけていられないの。

だから、今は簡単なお祈りしかできないけれど、代わりに貴方達のかつての仲間は助けるから。悔しい思いは一緒に連れていって、ヴァンパイアにぶつけてあげるから。


九尾・へとろ
婚礼の儀に水を差すとはのう。
領主とやらはよほどの粗忽者じゃな、ひょひょ。
よいよい、ウチも舞う甲斐があるというもの。
死出の旅を寿ぐへとろの武舞。しかと見遣れよ、缶詰共。

タンタンと足で節をとり、躍動的に舞うとしよう。
九尾の武舞は暗殺の技。愚鈍な得物などかすりもせんわい。
手刀、足刀、尾の撓り。当たればことりと首が落ちようぞ。

ウチの異能、舞い遊ぶ手足尾先が虚空に描きたる色を飛ばす【武舞姫の彩】
炎殺の赤、毒殺の緑、そして圧殺の黒。
いずれも折り紙付きの死出の色よ。ありがたく受け取るがよい。

なに、外れて出でるはウチの舞台。
より強く、美しく舞い、首を狩ろう。

ひょひょひょ、拾ったところで嬉しい首でもないがのう。




 次々と現れる戦士を見て、猟兵達は武器を構える。
 無言で得物向ける彼らの動きは、機械的で――傀儡の如き様子に、もう助けられない事実を改めて感じ、小読・灯(灯火・f01972)は空色の瞳を僅かに伏せた。
(「もう助けることが叶わないのなら、せめてこれ以上かつてのお友達を、仲間達を傷つけさせたくないわね」)
 願い、腕の中の籠へと手を伸ばす灯。その横を、小さな妖狐が風の如く駆けた。タンタン、と地を蹴る足は節とるように、九尾・へとろ(武舞の姫・f14870)は軽やかに舞う。
「婚礼の儀に水を差すとはのう。領主とやらはよほどの粗忽者じゃな、ひょひょ」
 よいよい、ウチも舞う甲斐があるというもの。そう言の葉紡ぎながら、へとろは狙い定めた戦士の背後へ回り込む。
『――!』
 振り返った敵がマスケット銃構えるが、もう遅い。その銃声が戦場に響くより、へとろの手刀が戦士の首へ叩き込まれる方がずっと早いのだから。
 当たれば、それだけで終い。再びトトン、と舞い距離取れば、敗北した戦士の首がことりと落ちる。
「死出の旅を寿ぐへとろの武舞。しかと見遣れよ、缶詰共」
 紡ぐ言葉も、舞に乗せ詠うように。へとろの暗殺術を目の当たりにし、周囲の戦士は警戒するように盾構えるけれど――その頭上から、ゴウ、と炎が襲い掛かる。
 それは、灯が放った炎の矢だった。彼女がマッチ擦ればたくさんの炎の矢が敵の頭上へ出現し、一斉に降り注いだのだ。
「ごめんなさい。私にはもうどうしてあげることもできないの。そして、生きてる人を少しでも助けるためには、時間をかけていられないの」
 今は、簡単なお祈りしかできないけれど。代わりに貴方達のかつての仲間は助けると、灯は炎に包まれた村人の成れの果てへと優しく声掛ける。
「悔しい思いは一緒に連れていって、ヴァンパイアにぶつけてあげるから」
 それは、彼らの無念を引き受ける言葉。優しいそれとは打って変わって激しい炎は、鎧すらも燃やし戦士達を消し去っていく。
 しかし、その場の全てを焼くほどの規模ではない。範囲の外となった戦士達は、抵抗しようと銃を構えた。――そこへ、へとろの異能が彩を生み出す。
「炎殺の赤、毒殺の緑、そして圧殺の黒。いずれも折り紙付きの死出の色よ。ありがたく受け取るがよい」
 手から、足から、狐の尾から。虚空に描き出した色は、狙った者へと死を届ける。
 転がる骸に感慨向けず、へとろはそのまま美しく舞いながら、次に狩る首を求める。
「ひょひょひょ、拾ったところで嬉しい首でもないがのう」
 笑いながらも、彼女の金の瞳は真っ直ぐに敵を捉えて。躍動感溢れる舞は、戦士達のかりそめの生を次々に摘み取り、骸へと還していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノエマ・アーベント
闇に閉ざされた世界に於いて、希望を夢見るのは悪くない
でも新たな門出の祝福を、二人の幸せな未来を引き裂く権利は誰にもない
ならその罪は、命を対価に償ってもらうべき、ね

嘗ての村人たちの成れの果て……己を殺したモノに操られ、服従するのはどんな気分かしら
嘆きの声が聞こえてきそうで、どこか苦しそうにも見えるけど
せめてこれ以上は苦しまないよう、ひと思いで楽にしてあげる

【錬成カミヤドリ】でギロチン刃を複製し、広く展開させて相手を攪乱
注意を分散させて仲間を援護し、攻撃しやすいように隙を作る
盾刃の突進は、敵の動作を見切って武器で受け、血に塗れた鎧の隙間に刃を走らせ、その首を断つ

せいぜい冥福くらいは祈ってあげるわよ


リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼らも吸血鬼の犠牲者なのね。
本来ならこれ以上、傷付けずに無力化してあげたいけど…。
…ごめんなさい。今は連れ去られた人を優先する。

事前に防具を改造。
攻撃の気配や存在感を感知する呪詛を付与する。
【影絵の兵団】を自身の影に変装して潜ませておく。

一撃だけ保てば良い。壊れれば捕縛も封印も出来ない…。

他の猟兵と連携して行動し、前に出て敵を引き付ける。
敵の攻撃を暗視で見切り、最小限の動作で回避。
力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い生命力を吸収し、
影兵で傷口を抉る2回攻撃のカウンターを試みる。
避けきれない攻撃は影兵を盾に武器で受ける。

貴方達の葬送は後で必ず果たすから…。
だから、今は眠りなさい。安らかに…。




 仲間がまとめて蹴散らしても、まだ戦士達は多くいる。
 血がこびりついた闇色の鎧、武器構えて無感情に迫ってくる敵。その様はまるで呪いのようで、ノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)は今にも嘆きの声が聞こえてきそうだと感じる。
(「嘗ての村人たちの成れの果て……己を殺したモノに操られ、服従するのはどんな気分かしら」)
 兜の下の顔は、死してなお苦しそうに歪んでいるのではないか。であればせめてこれ以上は苦しまぬようにと、ヤドリガミの娘は自身の分身を周囲へ展開した。血濡れたギロチン、咎人の首を刎ねるもの。それらを不規則に操れば、動きに対応しようとした戦士達の意識が刃に向けられる。
 その隙に、踏み込んだのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。手に握るは大鎌、『過去を刻むもの』。彼女はそれを振り上げ、一薙ぎして、周囲の戦士を蹴散らした。
(「……ん。彼らも吸血鬼の犠牲者なのね。本来ならこれ以上、傷付けずに無力化してあげたいけど……」)
 鎧穿たれ、倒れる闇色の戦士達。彼らを想う気持ちもあるけれど――ちらり、閉ざされた奥の大扉見れば、その先にいる男達が気にかかるから。
「……ごめんなさい。今は連れ去られた人を優先する」
 ぽつ、と零した言葉と共に、少女の影が大きく膨らむ。『影絵の兵団(タイプ・レギオン)』。あらかじめ発動させたユーベルコードは影絵の兵士を形作り、倒れた戦士達へ終わりをもたらしていく。
 しかし、中には倒し損ねた者もいた。その一体は、手にしたフレイルとマスケット銃を捨て、盾を構えてノエマへと突進してくる。
 その動きは直線状、見切るのは容易い。ノエマは敵の軌道上から僅かに体をずらし、盾の突進を武器で受け止める。重い一撃に武器持つ手がじいんと痺れる。けれどその衝撃に構わず、ギロチンの娘は血濡れた敵の鎧の隙間へと刃を滑り込ませ、そのまま首を断ち切った。
「せいぜい冥福くらいは祈ってあげるわよ」
 どさり、倒れる戦士へ、言葉送って。銃撃を影兵で受けたリーヴァルディもまた、残った戦士達へ大鎌を揮いながら、弔いの言葉を紡ぐ。
「貴方達の葬送は後で必ず果たすから……。だから、今は眠りなさい。安らかに……」
 終わらせることでしか、安らげぬ命。それを知っているから、二人は躊躇ない攻撃を繰り出し、一瞬の内に彼らを眠らせていくのだ。
 こんな、闇に閉ざされた世界の中。希望を夢見ることは決して悪いことではないと、ノエマは思う。そして、新たな門出の祝福を、二人の幸せな未来を引き裂く権利は、誰にもない。
(「ならその罪は、命を対価に償ってもらうべき、ね」)
 胸の内に激しい想いを秘めながら、灰色髪の女は大扉を見つめる。ヴァンパイアの待つ、大広間。そこへの路は、あと少しで拓かれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

死之宮・謡
ククク、愉シソウダネェ?尤モ、此奴等ハヴァンパイアノ前ノ前座、残念ダケド溺レルニハ脆過ギルカナ?

さて、殺そう、鏖だ、殲滅だ。私の大好きな流血と慟哭のお祭りさ!

元が村人だった?関係ねえなぁ…此奴等が弱かったからこうやって死後も奴隷のように搾取され続けてるんだ、私からすりゃ同情の余地はねえよ。抑、この世界でどれだけこんな案件が溢れてると思うんだ?救おうなんざ無駄な話だよ。だったら、今この瞬間の闘争を愉しまなきゃねぇ?

征クゾ…【殺戮感染】発動…




 領主館へ入った猟兵達は、素早く戦士達を撃破していった。
 あちらこちらで聞こえる剣戟に、死之宮・謡(狂い果てし王・情緒不安定の狂戦士・f13193)は笑い声を漏らす。
「ククク、愉シソウダネェ? 尤モ、此奴等ハヴァンパイアノ前ノ前座、残念ダケド溺レルニハ脆過ギルカナ?」
 倒れた戦士に、抱く感慨もなく。黒き女は武器を振り上げ、襲い掛かる者達へ深紅の瞳を向けた。
「サテ、殺ソウ、鏖ダ、殲滅ダ。私ノ大好キナ流血ト慟哭ノオ祭リサ!」
 元が村人だったとて、関係ない。彼らが弱かったから、死後も奴隷のように搾取されているだけ。同情の余地はないのだと、謡は思う。
 この世界には、こんな案件が溢れていて。救おうなんて無駄な話。
 ――だったら、今この瞬間を闘争を愉しまなきゃねぇ?
「征クゾ……【殺戮感染】発動……」
 紡ぐ言葉は、謡の血を、心を沸騰させる。まずは振り上げた剣で、近付いた戦士を袈裟掛けに。続いて迫る者には、槍を突き出し鎧ごと穿つ。
 敵の数は多く、傀儡の如き彼らは謡の勢いに臆すことなく向かってくる。切っては捨ててを繰り返すほどに、謡の感覚は研ぎ澄まされ、攻撃の精度を増していく。
「殺セバ殺スホド殺シ易クナリマタ殺ス……素晴ラシイサイクルジャナイカ!」
 だから、もっともっと愉しもう。殺戮鬼としての力を存分に揮う謡は、その場に敵が一人もいなくなるその時まで、攻撃の手を止めないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

モリオン・ヴァレー
相変わらずこの世界は理不尽で満ちているわね

突入と同時に【クリスタライズ】発動
<忍び足><目立たない><ダッシュ>素早く目立たず移動し
<投擲><地形の利用>壁に霊力で硬化した針を複数投擲
それを足場に2階へ移動
隠密性を維持し2階敵の攻略にかかるわ

<誘導弾>あたしとは別な場所に針を投げて敵の意識を逸らし
<敵を盾にする>隙を見せた敵を背後から拘束
<鎧砕き><暗殺><毒使い><マヒ攻撃><気絶攻撃>
硬化した毒針で一思いに沈めるわ
<見切り>敵の攻撃が来そうだったら『盾』を使ったり避けたりするわ

だけどそんな世界だからこそ
まだどうにかなる幸せを奪わせる訳にはいかないわ
……せめてあなた達には
二度と目覚めぬ眠りを


グリツィーニエ・オプファー
ああ、成程
この方々がそうで御座いますか
なんと血腥い…貴人方の主は、随分と無慈悲でいらっしゃる
『母』とは月と鼈に御座います
――ええ、ええ、ハンス
分かっております
彼等は既に死した身
もう戻せぬならば、私は鬼となりましょう

鳥籠の扉を開き、解放するは青い蝶
【母たる神の擒】にて戦士達の動きを一時的に抑えましょう
この蝶を広範囲に放つ事により、叶う限り大勢の戦士を無効化致したく存じます
業を制限されるのは極力避けたいと思います故、武器で受け流すか見切りを試みたい所で御座いましょうか
ハンスにも周囲の状況把握をお願い致します
…この子は賢い故、成し遂げてくれる事でしょう

共闘する猟兵と行動を合わせられれば積極的に支援を




 戦いが続くうちに、奥より新たに現れる者はいなくなっていく。
 これだけ派手に暴れたのだ、ヴァンパイアの配下は全てこの場に誘い出されていると考えていいだろう。
 後は、この場にいる者達を相手にするだけ。
 そう状況を把握しながら、グリツィーニエ・オプファー(ヴァルプルギス・f13858)は眼前の敵へと視線を移し――ああ、成程と小さく呟く。
「この方々がそうで御座いますか。なんと血腥い……貴人方の主は、随分と無慈悲でいらっしゃる。『母』とは月と鼈に御座います」
 藤色の瞳に憂いの想いが滲めば、傍らの精霊――黒き鴉が翼を広げる。警戒促すようなその動作に、グリツィーニエはゆるりと鳥籠持つ手を敵へ向けた。
「――ええ、ええ、ハンス。分かっております。彼等は既に死した身」
 もう戻せぬならば、私は鬼となりましょう。
 言葉紡いだ瞬間、ハンスはエントランスの天井へと飛んでいく。離れる鴉を見送って、彼は鳥籠『Trauerzug』の扉を開いた。
 ふわり、解放されて外へ飛び出すは青色の蝶。美しき羽根持つ蝶は次々籠から飛び出して、周囲の戦士達を襲った。
「――お往きなさい」
 舞う蝶がもたらすのは、魅惑の呪。それらは戦士達の動きを封じて、グリツィーニエが刃で斬りかかるのを容易にする。抵抗を封じているからこそ、一体一体を倒す時間はそうかからなかった。ユーベルコードの影響受けず襲い掛かる敵には、剣で応戦し受け流して。
 その時、彼の頭上でハンスが鳴いた。鋭い声に振り向けば、二階へ続く階段の上でマスケット銃構える敵がいて。
 この距離では、撃たれる方が早いか。身構えるグリツィーニエだったが、瞬間敵の背後に人影が現れる。
「相変わらずこの世界は理不尽で満ちているわね」
 言葉紡ぎながら、背後取った戦士を拘束し。鎧の隙間に針差し込んで、毒によって沈めていく。
 それは、隻眼の医師――モリオン・ヴァレー(死に縛られし毒針・f05537)の攻撃だった。クリスタリアンである彼女は、ユーベルコードで己を透明な体にし、味方にすら悟られない隠密能力で二階へ上がり、追加でやってくる敵を待ち構えていたのだ。
 突如現れたように見えるモリオンへ、近くにいた戦士が慌てたように銃を構える。けれどその動きは隙だらけで、モリオンの毒針が放たれる方が早い。果たしてそれは敵の鎧すらも貫き額へ突き刺さり、戦士は成す術もなく倒れ伏した。
 ――理不尽に満ちた、世界だけれど。
「だけどそんな世界だからこそ、まだどうにかなる幸せを奪わせる訳にはいかないわ」
 そのために、今成すべきことを。紅き左目に静かに決意宿しながら、モリオンは二階に残っていた敵のことごとくへ針の雨を降らせていく。
「……せめてあなた達には、二度と目覚めぬ眠りを」
 願いは針にのせ、迷いなく戦士達を狙って。
 そうしてモリオンが二階の敵を掃討する間に、階下の敵はグリツィーニエが蹴散らしていき。最後の一体まで確実に仕留めた二人は、休むことなく駆け出した。
 ――閉ざされた、広間への大扉。この先に待つ『希望』を信じ、猟兵達は先へと進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『リーシャ・ヴァーミリオン』

POW   :    魔槍剛撃
単純で重い【鮮血槍】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ブラッディ・カーニバル
自身に【忌まわしき血液】をまとい、高速移動と【血の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    魔槍連撃
【鮮血槍による連続突き】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●解放のために
 猟兵達が大扉を開くと、中はがらんとした広間になっていた。
 壁際には整然と並ぶ調度品。扉から先には赤く細長い絨毯が敷かれ――その先に、赤いドレスのヴァンパイアの姿がある。
 銀の髪を揺らし振り返った彼女は、まだ幼さ残る顔立ちで。けれど細められた紅の瞳に灯る光は、狂気に満ちていた。
「ずいぶん騒がしいと思ったら。お前達がここに来たということは、外に置いていた配下は全てやられてしまったのかしら? 困ったものね、また『新しいの』を作らなきゃ」
 つい、と彼女が視線移したのは、後方。そこには鉄の椅子が並べられ、三人の男達が座らされている。手と足には、拘束具。あれを破壊しないことには、男達は逃げられない。――否、破壊するだけでは恐らく不十分だろう。ヴァンパイアへの反抗は無駄と教えられ生きてきた者達は、枷を外しただけで自由になれるはずがない。彼らを救いたいのなら、物理的にも精神的にも、もう大丈夫なのだと、逃げていいのだと伝えなければならない。
 表情を固くする猟兵達を見て、ヴァンパイアの少女――リーシャは可笑しそうに声を上げた。
「あはは、怖い顔! いいわ、この地の掟を知らないお前達に教えてあげる! この私に歯向かうのが、どれ程愚かなことなのかをね!」
 口の端を吊り上げた少女が、傍らの槍を手に取る。紅き石の嵌められたその槍は、血に飢えるようにぎらりと光っていた。
西院鬼・織久
血腥い狂気、我等が狩るべき敵として相応しい
これまで喰らった者達の怨念
貴様が溜め込んだ血肉
全て我等が糧として喰らい尽してやろう

【戦闘】
五感と「第六感」を働かせる
「戦闘知識」も活かし敵攻撃の前兆や行動を「見切り」

「先制攻撃」は「なぎ払い」による「範囲攻撃」
敵の反撃を誘いつつ攻撃範囲を「見切り」回避
敵が次の行動に移る前に「カウンター」として「影面」を使用
「怪力」で引き寄せると同時に「ダッシュ」し「串刺し」
「二回攻撃」で壁か床に叩きつけ武器伝いに「影面」で「傷口をえぐる」
連続突きや血の刃の放出は「見切り」回避からの「カウンター」を狙う
回避が難しいなら「武器受け」で受け流し「カウンター」




 リーシャが武器を手にしたのを見た瞬間、広間を滑るように駆けた猟兵が一人。西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は漆黒の髪と黒き衣を翻して、そのままヴァンパイアへ肉薄する。
「血腥い狂気、我等が狩るべき敵として相応しい」
 『我等』、それは敵を狩ることに徹し、個を捨てた故の言葉。西院鬼一門としてこの戦場に立つ織久は、一切の迷いなく黒き大鎌を揮い、リーシャの身のみでなく床の絨毯までも切り裂いた。
「くっ……すばしっこさだけは立派ね。館に忍び込む鼠なだけあるわ」
 刻みつけた傷は浅い、敵もまだ余裕を見せている。けれど彼女の言葉には応じず、織久は大鎌で空切り、ついた鮮血を振り払って。
「これまで喰らった者達の怨念、貴様が溜め込んだ血肉。全て我等が糧として喰らい尽してやろう」
 赤い瞳で油断なくリーシャを睨み、紡ぐ言葉。狂気すら感じるその声に、ヴァンパイアの少女はつまらなさそうに瞳を細めた。
「ふん、全く愚かなものね。どうあってもこの私を殺したいと。歯向かう相手は選ぶべきよ!」
 言うや、リーシャは手の鮮血槍を振り上げる。幼い少女の細腕に、その槍は不釣り合いなほど重厚だったが――ヴァンパイアである彼女は、外見とはかけ離れた力篭めてその槍を黒き男へと叩きつける。
 その動きは、頭で考えるだけでは予測よりあまりに素早く強力なものだっただろう。しかし織久は、己の経験と五感、そして戦闘のセンスとも言うべき直感でもって、少女の攻撃を見事に躱し切ったのだ。
「なっ……!?」
 確かに捉えたと思ったのに、破壊されたのは館の床だけ。これには、リーシャも瞳を見開き動揺見せる。その隙を逃さず、織久はユーベルコード発動し黒い影を操った。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
 紡ぐ言葉に応え、影がヴァンパイアへ襲い掛かる。それは大きな爆発を起こし、同時に少女の体を影の腕で絡め取った。
 ぐいと力任せに影を引き、近付く敵の体へ武器を向ける。彼の操る無数の武器、『闇器』――素早く持ち替えたのは、赤黒い槍で。
 串刺し、そのまま床に叩きつけ。更に槍に影を這わせ再度爆発に巻き込めば、さすがにリーシャも顔を歪め、慌てて織久と距離を取る。
「レディに対して、礼儀のなっていない男ね……ふん、思ったよりやるようだわ」
 猟兵達を下に見ていた、ヴァンパイアの慢心が消える。紅き瞳には殺意の炎が燃え、槍を手が白くなるまで握り締めて。
 お前達は、全員念入りに殺してあげるわ――そう吐き捨てるように呟いたリーシャの意識は、すっかり猟兵達へ向けられたようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

死之宮・謡
さて…漸くメインディッシュか…愉しませてくれよ?…同じ槍使いか…久しぶりだねぇ…全く…どいつもこいつも剣ばかり使うから…はぁ…実に遺憾…

どれ程愚か…ねぇ…そっくりそのまま返してあげるよぉ?尤も此の私は、別に別にお前なにもしなくても殺すけど…限り無くバンパイアに近いんだよねぇ…それも━━━━━にねぇ…だからこんなことも出来る…【血脈回帰・鏖殺帝】発動…

武器に「呪詛・生命吸収」を自身に「怪力・見切り」をかけて「二回攻撃・傷口をえぐる」で攻撃…

サァ…愉シマセテクレヨ……此ノ私ヲネェ!


モリオン・ヴァレー
あなたが細やかな幸せすら踏みにじろうとしている件の領主様ね?

領主の攻撃に合わせてマルカジットを召喚
<ハッキング>召喚の際に右義眼と霊力の糸で繋ぎ
領主の前に陣取る様に細工を組み込み
以後攻撃を肩代わりして貰うわ

その装甲を甘く見て貰っては困るわ
全速力で正面から隕石に衝突してもどうにかなる装甲だからね

今のうちに……
<鍵開け><鎧砕き>囚われている人達の拘束具を針で解除を
そして【サルース・ライン】発動
<医術>まずは外側の傷の治療を

この世界は闇に満ちているわ
だけど希望も確かにある
その希望を護る為に、あたし達が居る
結婚式は潰させないわ

救助に成功したら彼らを連れ後退
<破魔>最後に領主様に銀の弾丸をプレゼントよ




「あなたが細やかな幸せすら踏みにじろうとしている件の領主様ね?」
 殺気迸らせるリーシャへ、語りかけるは涼やかな声。
 声の主たるモリオンは、ヴァンパイアの返答を待たずに宇宙バイクの『マルカジット』を呼び寄せる。自身の右義眼と霊力の糸で繋いだそれは、騎乗せずともある程度は操ることができる――だから彼女は少女へと愛車を突撃させて、敵の動きを阻害する。
「くっ、こんなもの……!」
 リーシャが槍を揮うが、宇宙バイクの装甲は固い。ギリ、と歯を鳴らしたオブリビオンは、次の瞬間顔上げて武器を構え直した。バイクの向こうから、もう一人猟兵が近付いてきたことに気付いたのだ。
「サテ……漸クメインデッシュカ……愉シマセテクレヨ?」
 くつくつと笑いながら、神殺しの槍を揮う謡。槍遣いを相手に殺し合うのは久しぶり。最近の相手はどいつもこいつも剣ばかりで――そう胸中で零しながら、彼女は自身が高揚していくのを感じる。
「次から次へと、愚か者が多いこと! どこから湧いてきたんだか!」
 苛立たしげに言葉を吐き出すリーシャに、謡は表情ひとつ崩さない。
「ドレ程愚カ……ネェ……ソックリソノママ返シテアゲルヨォ?」
 尤も、この私は別に何もしなくたってお前を殺すけど。紅き瞳を目の前の玩具に向けて、ダンピールの女はユーベルコードを発動する。
「我ガ身ニ流レルハ殺戮ノ血脈……遥カ太古ヨリ破滅ヲ齎スモノ也」
 紡ぐ言葉が、彼女の体を、その身に流れる血を回帰させる。血に飢えたように笑う彼女は、爆発的に増大させた力で手の槍を握り直して。
「サァ……愉シマセテクレヨ……此ノ私ヲネェ!」
 身を低くし、弾けるように駆けて。だん、とバイクを飛び越えて、謡はリーシャの心臓目掛けて大槍を突き出した。高速で仕掛けられた攻撃に敵は慌てて槍を揮って弾き返そうとするけれど、そこまで謡は見切っている。一度ぐっと槍を引き戻し、再度怪力で突き出す。その二度目の攻撃は避けきれず、胸穿たれたヴァンパイアは苦悶の声を響かせた。
「ああああっ! お前……この私に何てことを……!」
 怒りに狂える領主の叫び。それを耳にしながらも、今のうちだとモリオンは広間を駆けた。辿り着いたのは椅子に拘束された男達の元。拘束具の状態を確かめると、彼女は針を操りその鍵を破壊した。
 男達は未だ領主の存在に怯えているのか、拘束解かれても動き出す様子がない。見ればその体にはいくらか傷があって、モリオンは即座に癒しの力を呼び起こす。
「暗殺者に身を堕としたあたしだけれど……それでも誰かを救えるのなら」
 癒しの力篭めた針を、三人の男へ。複数同時の高速治療は彼女への負担が大きいが、今は迷っていられない。少しでも痛みを取り除いて――そして、心の痛みへも呼びかける。
「この世界は闇に満ちているわ。だけど希望も確かにある」
 中央の椅子に座った男――白い衣装、恐らく彼が新郎だろう。彼女は彼の手を取り立たせて、目の前の戦いを示す。
 歯を食いしばりながら、漆黒の女と戦う彼らの領主。その姿にいつもの余裕や高慢さはなく、戦えぬ男達が見ても、劣勢に焦る様子が見て取れた。
「その希望を護る為に、あたし達が居る。結婚式は潰させないわ」
 それは、彼らへの、そして帰りを待つ人々へも誓うように。紡いだ彼女の言葉に、取ってくれた手の温かさに――新郎の男の瞳から、涙が零れ落ちる。
「ああ、もう死ぬんだと思ってた。彼女を幸せにするはずが、独り悲しい想いをさせてしまうって……でも、ああ、俺は本当に彼女の元に帰っていいんだな?」
 潤んだ男の眼には、確かに生への希望が満ちていた。傍に立つ、男達も同じこと。心の拘束からも解放されたその表情に、モリオンはしっかりをうなずいた。
「いきましょう。領主は任せて」
 声で促し、男達を連れて後退する。しかし広間は隠れて進めるような物陰はなく、部屋出る前にリーシャに見咎められた。
「っ、こら、お前達! 私がおとなしくしていろと言ったのを忘れたの!」
 びくり震える男達だが、モリオンがその肩叩く。そしてヴァンパイアの方を振り向きざまに、小型銃の引き金を引いた。
「最後に領主様に銀の弾丸をプレゼントよ」
 呪いや魔術の抵抗を否定する弾――それは真っ直ぐ、リーシャの額を撃ち抜いた。仰け反る少女に更に謡の槍が襲い掛かり、ヴァンパイアは血を流しなら悔しそうに叫ぶ。
 ――これで、村人の無事は確保された。後は、この少女を骸へ還すだけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。生憎とお前の定める掟とやらに興味は無い。
だって…これからはもう必要なくなるもの、ね?

事前に防具を改造して存在感を強化する“誘惑の呪詛”を付与
両目に魔力を溜め、第六感が感知した殺気を暗視して見切り、
【吸血鬼狩りの業】を応用して怪力任せに大鎌をなぎ払い武器で受け、
敵の意識を引き付け男達から引き離す囮になる

…ん、本気をだしなさい、吸血鬼。
それともまさか…これが全力?

安全を確認したら【限定解放・血の獄鳥】でカウンターを。
吸血鬼化した生命力を吸収して魔法陣を纏った黒炎鳥を突撃させ
傷口を抉る2回攻撃を行い自身は忍び足で離脱しておく

…死者の尊厳を愚弄した報い、その身で味わえ、リーシャ・ヴァーミリオン。




 大扉の外へ消えていく男達の背中を、リーシャは不愉快そうに睨み付けていた。
「私の言うことを聞けないなんて、有り得ないわ……!」
 紡ぐ言葉は呪詛のように、鮮血槍をきつく握り締めて。そんな、今にも男達へ追いすがり襲い掛かりそうなヴァンパイアの前に、リーヴァルディが立ち塞がる。
「……ん。生憎とお前の定める掟とやらに興味は無い。だって……これからはもう必要なくなるもの、ね?」
「勝手なことを!」
 紫の瞳でひたと見つめて少女が言えば、リーシャは激高し槍を突き出してきた。高速の突き、けれどリーヴァルディはそれを僅かに横へ移動するだけで回避する。彼女はその動きを予測したのだ――それこそが、代々伝わる秘奥。
 そのまま大鎌をくるり操れば、弧描く刃が槍の穂先を受け止める。ギィン、と鈍い金属音が周囲に響き、動き抑えられたリーシャは大きく舌打ちした。
 二人の後ろでは、大扉がばたんと閉まる音。――周囲には猟兵の仲間もいる、それらを全て振り切り扉の外へ出ることは、今のリーシャには不可能だろう。
「……ん、本気をだしなさい、吸血鬼。それともまさか……これが全力?」
 静かに語るリーヴァルディに、ヴァンパイアがは、と笑う。そして一度槍を引いた少女が、赤の瞳細めて構え直す。
「そんなわけないでしょう。お前達如き、全力を出すまでもない。……でも、ええ。ここまで好きにされたらもう容赦は無しよ!」
 叫ぶ少女は、もう一度鮮血槍を繰り出す。しかしその穂先が届くより先に、リーヴァルディを中心に風が巻き起こった。
「……限定解放。呪いを纏い翔べ、血の獄鳥……!」
 展開される血の魔法陣、そして生まれる黒炎の獄鳥。突然現れた呪いの鳥は、リーシャの懐――槍の届かぬ位置から、少女の体に突撃する。
「ぐっ……は……!」
 鋭い嘴が胸部を襲い、先に刻まれた傷口を広げる。
 その痛みに悲鳴上げる吸血鬼を静かに見つめ、リーヴァルディは凛と声を響かせた。
「……死者の尊厳を愚弄した報い、その身で味わえ、リーシャ・ヴァーミリオン」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエマ・アーベント
結婚式という、人生における最も大事な一日を
二人の未来の幸せを、奪う権利は貴女にないわ
その罪は、命で以て償うだけでは物足りない
貴女には、むしろ死すらも生温いから

だから最初から【赤と黒のカデンツァ】を発動させて
全力で出し惜しみなく攻めるわよ
こちらの繰り出す攻撃で、牽制気味に注意を引き付け仲間を援護
相手の高速移動に惑わされることなく
冷静に動きを見切って、第六感で血の刃の軌道を読みながら
オーラを纏ったギロチンで、敵の刃を受け止め防御する
狙いは全てこの一点、攻撃直後に生じる隙を突き
カウンターを仕掛けてギロチン刃で斬り刻む

私は咎人を処刑する為だけに造られた『モノ』
貴女をここで葬って、貴女の罪を裁いてあげる




 度重なる猟兵達の攻撃に、ヴァンパイアは血濡れになりながらも未だ立っていた。
 リーシャの瞳に燃えるは怒りの炎。そして絶対的支配者たる自身の所業を悔いる様子は、微塵もなくて。
 彼女の手により、変えられてしまった者達。ここへ辿り着くまでに戦った戦士達のことを想いながら、ノエマは静かに声をかける。
「結婚式という、人生における最も大事な一日を、二人の未来の幸せを、奪う権利は貴女にないわ。その罪は、命で以て償うだけでは物足りない」
 貴女には、死すらも生温い――言葉は紡ぐうちに冷たさを増し、同時にヤドリガミの娘の体をユーベルコードが覆っていく。
 血染めの記憶、咎人の闇、ココロの獣。宿したそれらは力を与えるが、代償に彼女の白き衣が血に染まる。
「簡単には死なせない。貴女の罪の苦痛、魂にも刻んであげるから」
「この私を断罪? 鼠如きが戯言を!」
 『断罪ギロチーヌ』の鎖手繰るノエマに、リーシャが吠えた。傷深い自身の胸部に白い手を当てて、少女はその血を武器とする。地を蹴り、迫るは一瞬。ヴァンパイアは避けようのない至近距離まで接近し、血の刃を放出したが――それが届くまでの僅かな時間で、ノエマは的確にその攻撃を躱した。避けきれなかったのは一つだけ、それすらギロチンについた鎖で受け止め払う。
「なに……っ!?」
 自身の上を行くスピードを見せつけられ、驚いたのか。声上げ硬直する敵に、灰色髪の娘はこの瞬間を狙っていたのだと手に力篭める。
「私は咎人を処刑する為だけに造られた『モノ』。貴女をここで葬って、貴女の罪を裁いてあげる」
 響く声は、はっきりと。ノエマが手の中の鎖を力強く引けば、振り子の先のギロチンがリーシャを襲う。
「あああっ……! くそ、なんで私が!」
 死を刻む刃を受け、悲痛な声を上げるオブリビオン。その紅き瞳が今死の淵にあって僅かに揺らぐのを見て――ノエマは、そっと息を吐き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グリツィーニエ・オプファー
ふむ、愚かに御座いますか
そうですね…確かに、この世の人々からすると、我々の行動は愚か以外の何者でもないのでしょう
――然し、それにしては随分と痛手を負っている様では御座いませぬか?

ええ、ハンス…宜しくお願い致します
精霊を花と変え、放つ【黒き豊穣】
貴女様の宿す赤には良く映えましょう
せめてもの餞に、我が母からの慈悲に御座います
…さてさて、吸血鬼にも『恐怖』は伝播するのでしょうか
黒き花弁にて目を潰してしまえば連続の突きもある程度は回避出来る筈
その際は猟兵方へ声を掛ける振りをして敢えて場違いな方向へ誘導
無論、猟兵の皆様への支援は惜しみなく
恐怖の権化たる吸血鬼に対して、大きな痛手を与えてご覧に入れましょう




 幾つもの傷、ふらつく体。鮮血槍を床に突き立てたヴァンパイアは、肩で荒く息していて。
 その姿見て、グリツィーニエはリーシャの紡いだ言葉を思い起こす。
「ふむ、愚かに御座いますか」
 確かに、このダークセイヴァーに住まう人々からすれば、彼らの行動は愚か以外の何者でもないのだろうけど。
「――然し、それにしては随分と痛手を負っている様では御座いませぬか」
 藤色の瞳細めて言葉紡げば、敵はぐ、と声詰まらせながら槍を構え直す。それは見るからに最後の力を振り絞ったもので。最早、反論する気力もないのだろうが――それでも、逃げ出しはしない彼女には何か意地のようなものがあるのかもしれない。
 男の肩で、鴉姿の精霊が鳴く。その声に頷いて、グリツィーニエが手を伸ばすと、羽ばたく鴉は彼の手の甲へと移動して。
「ええ、ハンス……宜しくお願い致します」
 紡ぎユーベルコード発動すれば、ハンスの体が黒き藤の花弁へと変わっていく。
「せめてもの餞に、我が母からの慈悲に御座います」
 操る花弁は嵐のように、リーシャを取り囲み襲い掛かる。血濡れた紅きヴァンパイアの周囲を、舞い踊る黒き花。その黒は紅を埋め尽くすように――足を、腕を切りつけて、ついには両目にも傷を生んだ。
「あっああ……!」
 視界奪えば、高速の槍撃も恐れることはない。ひらり身を翻して鮮血槍を回避しながら、グリツィーニエは黒藤の勢いをさらに増していく。
「……さてさて、吸血鬼にも『恐怖』は伝播するのでしょうか」
 視界失った世界で、体中を襲う痛み。リーシャの悲鳴はここに来て激しくなり、少女の苦しみが伝わってくる。――それで、いいのだ。
「恐怖の権化たる吸血鬼に対して、大きな痛手を与えてご覧に入れましょう」
 泣き叫ぶヴァンパイアは、己の所業を悔いただろうか。彼女の揮うのと同じ『恐怖』を、感じさせることは――そう思考しながら、グリツィーニエは残る花弁全てでリーシャを飲み込む。
 苛烈な花嵐、断末魔の悲鳴。それが全て消えた時――紅のヴァンパイアは膝をつき、そのまま倒れ息絶えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ささやかな華やぎ』

POW   :    料理をいただく

SPD   :    会場作りを手伝う

WIZ   :    様子に想いを馳せる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ささやかな祝いを、笑顔で
 戦い終えた猟兵達が広間を出ると、エントランスホールで待機していた男達が駆け寄ってきた。
 ヴァンパイアを打ち倒したことを伝えると、彼らは顔を見合わせる。
「本当……か? 俺達、帰れるのか!」
 喜び抱き合う彼らに微笑み浮かべ、猟兵達は彼らの村まで同行することを願い出る。疲弊した彼らは、それを快く受け入れた。領主がいなくなったことを村の人々に伝えるにも、彼らにいてもらった方がいいだろうと語って。
 暗き道を男達を護りながら進めば、程なくして村へと到着した。世界の理だからと諦めていただろう村人達は、男達の帰還に驚き――そして涙流して喜んだ。
 一番声を上げて泣いたのは、白いドレス纏った女だった。彼女――新婦は新郎に縋りつき、子供のように泣きじゃくる。
「よかった。本当によかった……! お願いよ、もう私を一人にしないで……」
 そんな新婦を、新郎がきつく抱き締めれば。周囲の人々はそれを涙ぐみながら見つめ、よかったよかったと語り合って。
「結婚式は、どうする? 領主のせいで台無しになってしまったし、仕切り直すか……」
「……いや、予定通り今日執り行いたい。みんながせっかく準備してくれたんだ」
 新郎が静かに語れば、新婦も深く頷く。貧しい村で用意した精一杯を、もう一度やり直すことは難しい。花も、料理も――備蓄を考えれば、今日と同じ規模は無理だと、誰もがわかったから。
「それに、今日はお祝い事が二つもできたのよ! 私達の結婚式と、村の自由の記念。ね、だからみんなにお祝いしてほしいわ」
 やっと笑顔見せた新婦は、泣いている時よりずっと美しかった。そして、その場に居合わせた猟兵達を見つめて言葉を続ける。
「みなさんにも、お礼がしたいわ」
「ああ、そうだ。ぜひ祝宴に参加してくれ。と言っても、大したもてなしはできないけど」
 笑う新たな夫婦に、頷く村人達。そして彼らはこうしちゃいられないと、祝宴の準備に走っていく。
 ――それは、この村の数少ない祝祭。
 二人の門出を祝うものであり、村の解放を祝うものであり、救ってくれた猟兵達へ感謝贈るものであり。
 思い思いに、過ごせばいい。憂いなくなったこの村には、今は楽しむことが必要なのだ。
リーヴァルディ・カーライル
掌に【常夜の鍵】が付与された手袋をして、
倒した隷属戦士の遺体に触れて回収して回る

…ん。遅くなったけど来たよ。
貴方達の故郷は何処…?そこまで送ってあげる。

可能ならば葬送の耳飾りに魔力を溜め、
周囲に漂う死者の思念から順に遺体の出身地を聞き取り、
村々を回って礼儀作法に則り彼らを遺族の元へ帰し、
身元不明な遺体は吸血鬼の館の近くに合葬する

…ついでに吸血鬼の宝も回収して村々に配り、
猟兵という吸血鬼や魔獣を討つ集団に
吸血鬼の領主が敗れたと喧伝して回る

結婚式をしている村には最後に顔を出す
祝いの席に水を差す気は無いから、
結婚式が終わってから遺族を引き取ってもらおう

…結婚、おめでとう。お幸せに…。




 領主に囚われた男達を連れ、猟兵達が村へ向かった時。リーヴァルディは後から行くと仲間に告げて、一人領主館のエントランスホールに残っていた。
「……ん。遅くなったけど来たよ。貴方達の故郷は何処……? そこまで送ってあげる」
 落とす声は、骸となった戦士達へ。元は周辺の村人だったと言うのなら、彼らにだって帰るべき場所があるはずだから。先の戦いでの約束果たすため、彼女は一人ここにいるのだ。
 そっとマントの下から手を出して、少女は遺体へ触れる。つけた手袋には魔法陣――ユーベルコード『常夜の鍵(ブラッドゲート)』の力を纏わせている。抵抗しないものであれば、遺体でも魔法陣の中の古城に吸い込み回収することができる。
 そうしてリーヴァルディは、周囲の村々を訪ねてまわり、一人でも多くの村人を遺族の元へ帰すべく動く。遺体の損傷など、あの乱戦の中ではそこまで気を使えるものではなかった。死人に口なし、身元のわかる情報は僅かで――それを調べることのできるようなユーベルコードがあれば、違ったかもしれないけれど――それでも引き渡せた幾人かにとっては、やはり遺族の元が一番だっただろう。
 帰すことのできなかった遺体は、一度安置しておく。この近くに全て埋葬してやりたいが、それにはリーヴァルディ一人では時間がかかりすぎる。村人でも猟兵でもいい、後で手を借り取り掛かるべきだろう。
 人気のなくなった領主館を探索すれば、リーシャのため込んだ貴金属や備蓄も見つかった。これらもまた、魔法陣の中に収納し近隣の村々に配るべきだろう。
 ――そうして人知れず奔走したリーヴァルディが、やっと先行した猟兵達を合流したのは、祝宴も終わりに近付く頃だった。周囲に溢れるは笑顔ばかりで、それ見た少女はほっと息を漏らす。
「……結婚、おめでとう。お幸せに……」
 そっと言葉にすれば、彼女の存在に気付いた村の人々が声掛け、リーヴァルディも宴へ誘われる。
 この村に帰すべき、人も財もあるだろう。けれどその話は、宴が終わってからでも遅くない。今は祝いの空気を見守ろうと、少女はそっと彼らの輪に加わった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジナ・ラクスパー
幸せなお祝いになりますように
私にもお手伝いさせてくださいませね!

お祝いの席にはやることがたくさんなのです
故郷の姉たちの式を思い出し、皆様と協力して会場を整えます
クロード様は参列されるのは初めてですか?
いいお式にしましょうね…!(ぐっ

持ち込んだ一抱えの花で、記憶を頼りに祭壇の飾りつけ
お嫌でなければ、花嫁さんの髪にも青い花を
青いものは、花嫁さんに幸せを運ぶのだそうです!
花婿さんの優しい眼差しに、なくてもきっとと思いながら
胸のポケットにももう一輪

人と想い合うことを私はまだ知りませんけれど
幸せそうなお顔に、
きっと素敵なことなのですねと
憧れは募るのです

花のような笑顔
お二人がずっと並んで咲き続けますように




 猟兵達が男達を連れ帰った後、村は祝宴の準備で慌ただしくなった。
「幸せなお祝いになりますように、私にもお手伝いさせてくださいませね!」
 ふわり微笑みジナ・ラクスパー(空色・f13458)が声上げれば、村人達が助かるよと答える。会場を整えるのは、主に女達の仕事。集会場の中に拵えた祭壇の飾りつけや、その後の宴のテーブルセッティング。お祝いの席にはやることがたくさん、故郷の姉達の式を思い出せばジナの心は自然と弾んで。
「クロード様は参列されるのは初めてですか? いいお式にしましょうね……!」
 近くできょろきょろ周囲を見ていたグリモア猟兵に声掛ければ、少年はああ、と相槌打つ。
「そうだな、そのために俺も何かしてぇんだけど、勝手がわからなくて……。ジナ、俺でも手伝えることがあれば教えてくれるか?」
「はい、ぜひ手を貸していただきたいです!」
 そうしてエルフの少女は人狼の少年伴って、祭壇へと近付いていく。その腕に抱えたのは、綺麗に咲いた花々。夜と闇に覆われたこの世界では珍しいその鮮やかな花に、祭壇整えていた女達が目を丸くする。
「あんた、そんな立派な花使っちまっていいのかい?」
「もちろんです。お祝いですから!」
 ふわり笑って花を挿す少女に、女達も笑顔を浮かべる。ユリやバラなど見映えのする花を中心に、周囲を小花で飾って――クロードも束ねるのを手伝って、誓いの場を華やかに飾り付けていく。
 それがある程度終われば村の女とクロードに仕上げは任せて、ジナは控室で支度中の新郎新婦の元を訪ねる。笑顔で迎える新婦へ差し出したのは、可憐な青い花。
「青いものは、花嫁さんに幸せを運ぶのだそうです!」
 お嫌でなければ、と髪に飾ることをジナが提案すれば、新婦は快く頷いた。
「ありがとう、とっても綺麗だわ!」
 髪の花を新婦が撫でれば、それを見つめる新郎の胸ポケットにも花を。――彼の優しい眼差し見れば、なくても二人の幸せはもう約束されていると、わかるけれど。
(「人と想い合うことを私はまだ知りませんけれど」)
 悲しみの先に結ばれることとなった二人の、幸せな顔。その表情見ればきっと素敵なことなのだと、少女の憧れは募るばかりで。
 その、花のような笑顔で。二人がずっと並んで咲き続けますように。願う藍色の髪の少女は綻ぶような笑顔で二人を祝福し、式の開始に期待を膨らませるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

モリオン・ヴァレー
一波乱あったけれど、無事に式が成立して何よりだわ
【WIZ】
かけがえのない二人の為の祝宴を静かに見守るわ

一通り宴が進行した後
件の新郎と話を

あなた、彼女を護る為に例の領主に抵抗したそうね?
無茶な事するわね……
でも、それ位の根性があるなら大丈夫かしらね

希望を護る為に、あたし達が居る……あの時そうは言ったものの
間に合わない場合も十分にあり得るわ
今回ほど過酷では無いだろうけど、この先もきっと困難は待ち構えている
その時頼りになるのは、他でもない一番近くに居る人よ

彼女を、大事にね


結婚……か
血と怨嗟に塗れたあたしには
縁が無いものかも知れないわね




 そうして準備が整えば、村中の人々が集会場に集まる中、式が執り行われた。
 色とりどりの花に飾られた祭壇で、新郎新婦が生涯共にあるための誓いを交わす。それを見守る人々も、皆優しい眼差しを若い二人に向けていて――モリオンは、その式を静かに見守り、そっと瞳を伏せる。
(「一波乱あったけれど、無事に式が成立して何よりだわ」)
 村中の人と猟兵達を証人に式は滞りなく進み、終えた後はそのままこの場で祝宴が開かれる。並ぶ料理は、貧しい村には精一杯の贅沢で。食べ、飲み、笑う村人達は、今日の『一波乱』を忘れるように、大いに楽しんでいた。
 ある程度酒が入り、空気も緩んだ宴の席。モリオンはそっと新郎の元へ近付き、口を開く。
「あなた、彼女を護る為に例の領主に抵抗したそうね?」
「……ああ。それで結局、彼女を泣かせてしまったけど」
 少し離れた場所で、村人に囲まれて笑う新婦見つめて男が苦笑する。そんな様子に、モリオンの赤い瞳も柔らかな光湛えて。
「無茶な事するわね……でも、それ位の根性があるなら大丈夫かしらね」
 それから女は真剣な表情で、真っ直ぐに新郎を見つめる。彼を、リーシャの戒めから解放した時と同じように。
「希望を護る為に、あたし達が居る……あの時そうは言ったものの、間に合わない場合も十分にあり得るわ」
 此度の事件は収束したが、この先にもきっと困難は待ち構えている。その時頼りになるのは、他でもない一番近くに居る人だとモリオンは思うから。
「彼女を、大事にね」
 ゆっくりと告げた女の言葉は、新郎の胸に強く響いたようだった。男は顔をくしゃくしゃにして、こみ上げる想い堪えながらはい、と声を絞り出す。
(「結婚……か。血と怨嗟に塗れたあたしには、縁が無いものかも知れないわね」)
 医師であり暗殺者であるモリオンにとって、晴れやかな花嫁姿は遠い存在に感じる。けれど今はこの幸せな空間に身を委ねておこうと、彼女は小さく微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエマ・アーベント
恋する二人の想いが叶って、村も圧政から解放されて
これで全てがハッピーエンドというわけね

私はあくまで、ヴァンパイアの罪を裁きに来たついで
命を断つ為だけの存在が、祝いの席にいるのは相応しくはないわ
せいぜい村の片隅で、皆が喜ぶ様子を見れたらそれで十分満足よ

後はクロードにも声掛けを
そういえば、結婚式に参列するのは初めてって言ったわね
貴方の予知のおかげで取り戻せた彼らの幸せを
この光景を、しっかり目に焼き付けたらいいわ

そうして夫婦と村の未来を祈りつつ
程良いところで切り上げ、去ってくわ
でもその前に、お祝いの言葉くらいは残していこうと思う
ねえ、クロード。あの二人に伝えておいてもらえるかしら
――おめでとう、って




 祝いの宴が続く様子を、ノエマは集会場の入り口で静かに眺めていた。
 決して豪華ではない結婚式。けれどそこに参列する人々は皆、心からの笑顔に溢れていて。
(「恋する二人の想いが叶って、村も圧政から解放されて。これで全てがハッピーエンドというわけね」)
 その喜ぶ様子を、見ることができてよかった。小さく微笑むヤドリガミの女に、通りがかったクロードが気付き声掛ける。
「ノエマも、何か食わないか? あっちにあったパイの包み焼きとかうまかったぞ」
 笑顔で誘うグリモア猟兵に、しかしノエマはゆるりと首を振る。――彼女はあくまで、ヴァンパイアの罪を裁きに来たついでにここにいるのだ。命を断つ為だけの存在が、祝いの席にいるのは相応しくない。そう、ノエマは思っているから。
 多くは語らず辞退した女に、そうか? と首傾げるクロードも追及はしない。
「そういえば、結婚式に参列するのは初めてって言ったわね」
「ああ! みんな笑顔で楽しそうで、いいもんだな!」
 話題変えて尋ねれば、人狼の少年は嬉しそうに笑う。そんな彼に橙色の瞳を細めて、ノエマはそっと言葉を続けた。
「貴方の予知のおかげで取り戻せた彼らの幸せを。この光景を、しっかり目に焼き付けたらいいわ」
 それは、同じグリモア猟兵としての言葉だったかもしれない。予知により変えられた未来――その尊さをクロードもよくわかっているから、そうだなと深く頷いて。
「ねえ、クロード。あの二人に伝えておいてもらえるかしら。――おめでとう、って」
 言葉紡いだノエマは、必ず伝えると答えるクロードに頷いて、一足先に会場を後にする。
 新たな夫婦と村の未来。そのどちらもがよりよくなるように、心の中で祈りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グリツィーニエ・オプファー
皆様の心を蝕む恐怖は去りました
この幸せも、喜びも、貴人方の為のもの
私は皆様の笑顔を見られるだけで満足で御座います

さて、私は祝宴から少し離れ食事を頂くと致しましょう
私の姿は、この場には些か不釣り合いに御座います故
ハンス、貴方も召し上がるでしょう?
美味しい料理に舌鼓をしている最中
ふと目に留まったのは花の姿

思索の末、思いついたのは小さな悪戯
…一本位ならば問題ないでしょうか
美しい一本を鴉の嘴に咥えさせて
さあハンス――頼みましたよ
空駆けた先、幸せの絶頂にある夫婦へ向け花を一輪届けましょう
無論、此方を見ても素知らぬ顔で

私にも誰かの幸せを願いたい時は御座います故
――どうか、彼等に末永い幸せが降り注ぎますよう




 宴の場からは少し距離置きつつ、笑顔の人々を見守っているのはグリツィーニエも同じだった。
(「皆様の心を蝕む恐怖は去りました。この幸せも、喜びも、貴人方の為のもの」)
 私は皆様の笑顔を見られるだけで満足で御座います――そう心で呟きながら、男は用意された料理を口に運ぶ。
「ハンス、貴方も召し上がるでしょう?」
 肩の精霊に声掛ければ、その鴉は軽く翼広げて。料理求める仕草に、グリツィーニエはパンをちぎって相棒に与える。
 用意された料理は、素朴ながら美味しいものばかりだった。このビーフシチューは、固い肉がトロトロになるまで丹念に煮込んだのだろう。新鮮な野菜を手に入れるのが難しいのか、サラダは蒸した芋をたくさん使ったところに葉を添えて、上手いこと彩りに使っている。
 そのどれもに、祝福する想いが感じられて。グリツィーニエは感嘆のため息零した後、ふと飾られた花に目を留めた。
 活けられた花は、野に咲くような素朴なものだ。その中でも一番美しいものを一本、男は摘んで引き抜いて。
「さあハンス――頼みましたよ」
 鴉の嘴にそれを咥えさせる時、男の藤の花のような瞳が悪戯心に煌めいた。ハンスはそのままふわり中空へ、そして並んで笑う新郎新婦の元へ飛んでいく。
 それは、言葉に代えた祝福で。離れた場所で二人が驚く顔が見えるが、こちらに視線が向くのは素知らぬふり。
(「私にも誰かの幸せを願いたい時は御座います故」)
 ――どうか、彼等に末永い幸せが降り注ぎますよう。願い篭めたグリツィーニエは、静かに瞼を伏せた。

 笑顔溢れる宴は長く続き、祝い、歌う人々は未来を願う。
 この日猟兵達が領主を打ち倒したことは、この村だけでなく周辺の人々にも救いとなったことだろう。
 この先の人々に、どうか幸いを。願う猟兵達は彼らの笑顔を見守りながら、最後まで祝宴を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月28日


挿絵イラスト