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翳らぬ月の剣風帖

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #真田神十郎 #剣豪 #上杉謙信 #魔軍転生

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「その朱塗りの鞘に月雲の家紋……“雲切りの蘭子“殿とお見受けする」
「おやァ……?」
 月の輝く晩であった。
 江戸の地よりほど近い宿場町である。そこで、香月・蘭子は見知らぬ男に声をかけられたのだ。
「なんだい、“また”果たし合いの申し込みかい? 勘弁してもらいたいねぇ……。ご覧の通り、あたしはつい今しがた一杯ひっかけてきたところでさァ」
 ――香月・蘭子は、女だてらに名を上げた剣豪である。
 武家に生まれ、剣を志し、女であることを理由に剣を捨てよと命じた父母に反発して出奔した、流浪の剣士であった。
 三十路に差し掛かる頃合いに至り、潜った修羅場は数知れず。あくまでヒトとしての範疇であったが、その剣技の冴え渡る様は雲を吹き散らす風に例えられ、“雲切り”の二つ名をもつに至っていた。
「別に斬られるのが怖いッてわけじゃないけどね……。こんな夜更けに闇討ちしたって」
「ヘヘヘ……」
「そうはいかねエんだよな……」
 断ろうとする蘭子であったが、その路を塞ぐように男たちがずらりと居並ぶ。
「……あちゃあ。あたしも随分ともてる女になったもんだ」
 逃れられぬか。眉根に皺を寄せる蘭子が、鞘に手をかけた。
「仕方ないね――。いいさ、付き合ってやるよ。けど、口説くんならその前に名前くらい聞かせてくれたっていいんじゃない?」
 対峙する男へと、蘭子が問う。
「真田神十郎」
「……へえ」
 猟書家・真田神十郎が鯉口を切る。
 ――月明かりの下、宿場町に冷たく夜風が吹いた。

「――仕事の時間だ。わかっているな、お前たち」
 グリモアベースにて、イリス・シキモリ(f13325)は告げた。
「迷宮災厄戦の後始末がまだ続いている――という話は既にお前たちも知っての通りだ。お前たちには今からその仕事に向かってもらう」
 イリスが手元の端末を操作する。モニターに映し出されたのは――サムライエンパイアの街並みの風景であった。
「猟書家、真田・神十郎。このオブリビオンが、サムライエンパイアで『剣豪殺し』を企んでいる。お前たちは今から現場に赴き、その作戦を速やかに防ぐのだ」
 曰く。
 猟書家たちの多くが狙っているのは、本来のオブリビオンフォーミュラが滅びた世界に新たなオブリビオンを呼び込むことなどで自分たちの戦力を拡充することだ。神十郎はその中でも剣士の資質をもった者を殺すことで優秀な剣豪をオブリビオンとして自らの戦力に仕立て上げる目論見なのだという。
「場所は武蔵国の宿場町のひとつになる。木造の家が立ち並ぶ一般的なサムライエンパイアの街並みだな」
 イリスはモニターの映像を示しながら、更に説明を続けた。
「ここには敵の首魁である真田神十郎と、その手下である浪人どもが一人の剣豪を囲んでいる。お前たちは急ぎ現場に向かい、こいつらを蹴散らして剣豪を救出するんだ」
 ここでモニタが切り替わる。映し出されたのは、浪人どもと同様の袴姿の女であった。
「香月・蘭子(こうづき・らんこ)。これが今回の救出対象だ。それなりの使い手ではあるが、ユーベルコードを使うまでには至っていない。殺されないよう、しっかり守ってくれ」
 続けて画面がまた切り替わる。
「それから――敵の兵隊だが、こいつらにも注意しろ。ただのオブリビオンではないぞ」
 秘儀、超・魔軍転生。――オブリビオンフォーミュラでもあった織田信長が用いた秘術を更に発展させた技術である。
「猟書家によって敵の兵士どもは魔将“上杉謙信”の力を借り受けている。……単純に力を増しているだけじゃないぞ。上杉謙信の得意分野である『軍略』の概念も用いてくる……らしい」
 特に、地形の利用だ。
 今回は街中が舞台ということだが――それはそれで戦いようがある。建物の陰や袋小路。あるは、壁や屋根といった建材なども利用して仕掛けてくるだろう。無策で挑めば苦戦を強いられることは間違いない。
「面倒な仕事になるだろうが、めげずに立ち向かってもらいたい」
 説明は以上だ。言葉を終え、イリスは猟兵たちの姿を見回す。
「質問はないな。……では、行ってこい」
 そして、イリスがグリモアを掲げる。


無限宇宙人 カノー星人
 ごきげんよう、イエーガー。カノー星人です。
 久しぶりにサムライエンパイアです。ちょっとテンションあがりますね。
 それでは、よろしくお願いいたします。

☆このシナリオはプレイングボーナス要項があります。ご確認ください。
プレイングボーナス(全章共通)……『剣豪を守る(本人もそれなりに戦うことはできます)』
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第1章 集団戦 『浪人』

POW   :    侍の意地
【攻撃をわざと受け、返り血と共に反撃の一撃】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    怨念の返り血
【自身の返り血や血飛沫また意図的に放った血】が命中した対象を燃やす。放たれた【返り血や血飛沫、燃える血による】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    斬られ慣れ
対象のユーベルコードに対し【被弾したら回転し仰け反り倒れるアクション】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:箱ノ山かすむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エダ・サルファー
女剣豪!カッコいいねぇ!
ところでこれは何となくなんだけど、この場面には女格闘家が一人いたほうがそれらしくなるんじゃないかと思うんだよね。
なにがそれらしいのかとかはさっぱりわからないけどね!
というわけで、ここはこのエダさんが、いっちょ助太刀させてもらおうじゃないか!

相手は見た目は浪人だけど、パワーアップしてる上に軍略も使うと。
ならば!フィールドをこっちの都合の良いように作り変えてくれるわ!
具体的には私の岩盤返しが届く範囲内の路地を全部壁に変えて、高さを周りの建物の屋根と同じにするよ!
これで実質平地が戦場になるから、地形を使った軍略は立てられまい!
後は近付いてくる浪人を片っ端から殴り倒すだけさ!


上野・修介
※アドリブ、連携歓迎

調息、脱力、敵と周囲を観据える。

最優先は香月さんの安全確保。

先ず香月さんを連れて狭い路地を逃げながら、タクティカルペンを投擲して屋根瓦を落とす、道端に置いてあるの物を倒す等の『目に見える妨害』をしつつ、変な方向にTCペンを投擲、見つかり難い場所に意味深な紋様を書く等、魔術・妖術の類を用いた『見えない妨害』があるように見せ、相手に出足を鈍らせ、不信感を抱かせ、疑念が生まれてきた頃合いで屋根伝いに反転して強襲。

UC:攻撃重視
カポエイラや地功拳の如く地を這うように下から攻める。
刃を受けざる得ない時は安全靴か袖下のTCペンで受ける。

「やはり策を弄する頭があっても、迷ったらダメだな」


チル・スケイル
…(軍略。地形の利用。なるほど)
(なら、戦場に近寄らない)

…(【氷術・貫】を使用。杖に氷の魔力を集め強化。これなら敵の攻撃が届かない位置から撃てる)
(そして翼で飛行。やや寒いが…冷気を魔力で操り、動かして避ける事はできる…故郷よりマシ)
(大体2、3kmくらいの上空から狙撃)

…(相手の攻撃は…剣術は届かない。地形も届かない。返り血は凍らせる)

…(護衛対象の近くにいる敵や、その地形を優先して打ち抜き、凍らせるこれにより護衛対象を守るだけでなく、地形を固めて利用できなくしたい)

…(空の相手(今の私)に有効な軍略があったら、是非紹介して頂きたい)



 月下。白刃が閃いた。
 “雲切りの蘭子”の用いる剣は片手一刀流。疾風めいた素早くも鋭い太刀筋が特徴である。
 彼女はその腕を頼りにこれまでの旅路を渡ってきた。
 無論、切った張ったの修羅場を潜り抜けて来た回数も一度や二度ではない。生兵法の浪人くずれをあしらう程度であれば、赤子の手をひねるようなものだ。
 しかし――
「……まったく、けしからん!」
「ふはは!どうしたどうした!」
 ――相手がオブリビオンであれば、話は異なる。
 蘭子を包囲した浪人たちは、激しい剣戟で襲い掛かる。蘭子は舌打ちしながらも襲撃を捌いてゆくが、多勢に無勢。後退を余儀なくされる。
「このまま袋小路に押し込んでくれるわ!」
「はははは!“雲切りの蘭子”も年貢の納め時よ!」
「寄ってたかって嬲りながら粋がってるんじゃないよ!」
 蘭子は徐々に押し込まれてゆく――。ちらと横目で見た路地には、更なる浪人どもが手ぐすね引いて待っている。このままではじり貧だ。
 やれやれ、あたしもとうとうヤキが回ったかね――。緩やかに、蘭子が覚悟を決めようとしたその瞬間である。
「聖拳ッ!」
「――シッ!」
「ぐぶォッ!?」
「おごァッ!!」
 打撃ッ!砲弾めいて戦場に飛び込んだ影ふたつ!重い拳と鋭い蹴り足が同時に炸裂する!
「――」
「グアーッ凍結!!」
 そして――更に着弾!上方から浪人たちに浴びせられたのは術式氷弾である。
「な、何奴!?」
「なに……!?どちらさま!?」
 突然の闖入者に困惑する蘭子と浪人たち!
「助太刀ってやつだよ!」
「はい。ここは協力して切り抜けましょう」
 浪人どもを押しのけながら蘭子のもとへと駆け付けたのは、エダ・サルファー(f05398)と上野・修介(f13887)である。
「ところでこれは何となくなんだけど、この場面には女格闘家が一人いたほうがそれらしくなるんじゃないかと思うんだよね」
「……そういうものなんですか?」
「弥次喜多話にゃ道連れはつきものだけどさぁ」
「いやー!まあ、私にもなにがそれらしいのかとかはさっぱりわからないけどね!」
「そうですか……」
「というわけで、ここはこのエダさんが、いっちょ助太刀させてもらおうじゃないか!」
「同じく上野修介。……これ以上、アンタらの好き勝手にはさせない」
 かくして――2人の拳士は蘭子とともに並び立ち、浪人たちを迎え撃つ構えを見せた。
「お、おのれ……!よくも我々の計画を邪魔立てするつもりだな!」
「許せグアーッ冷凍!!」
 いきり立つ浪人たちが刀を掲げたその時、再び氷弾が飛来する。
 ――チル・スケイル(f27327)である。彼女の姿は、街並みの中央に位置する火の見櫓の屋根上にあった。
 敵は魔将上杉謙信の力――すなわち戦場を利用した軍略を用いてくることは事前の情報で確認済みだ。
 であれば、戦場に近づかなければいい。元より彼女は狙撃手としてのポジションを得手としている。
 抱えた魔杖カシュパフィロ。その先端にチルは魔力を収束させる。【氷術・貫/アイスペネトレイト】――。増大された氷の力は、直線距離にして1キロ以上の距離を置いた地点であっても容易く有効射程に捉える。
「……」
 チルは再び氷弾を撃ち放った。また一人浪人が氷像となって砕け散る。
「なんだ……!?一体どこから!?」
「お。どうやら別口も来てるみたいだね。援護してくれるっぽいぞ!」
「いいタイミングです。香月さん、こちらへ」
「ああ!」
 知覚外の位置からの攻撃に困惑する浪人たちを尻目に、修介は蘭子を伴って家々の合間の路地へと入り込んだ。エダも同じく路地へ走る。
「逃げる気か!」
「追え!」
 それを追って浪人たちが路地へと詰めかける!
「では、手筈通り」
「ああ!あとで合流だね!」
 ここで蘭子を連れた修介とエダが二手に分かれる。追う浪人たち。
「それじゃ、こっちは適当に殴ってくとしようか!」
「グアーッ頬骨!」
 エダは遊撃に回った。路地の中を適当に駆け回り、見かけた浪人を手あたり次第ぶっ飛ばすのだ。
「で、どうするんだい?」
「まずは敵の数を減らします」
「逃がすな!」
 一方、蘭子を連れた修介は狭い路地を逃げるように走ってゆく。浪人たちがそれを追う。
「――シュッ!」
 修介は振り向きざまにペンを放った。――護身用にも使える剛性と耐久力をもったタクティカルペンだ。棒手裏剣めいて投擲されたペンは、適当な家の屋根瓦を崩す。
「グアーッ頭蓋骨!」
「おのれ!」
「シッ!」
 続けざまに修介は路地に積まれた天水桶を蹴り崩した。がらがら音をたてて路地に転げる桶が道を塞ぐ。
「ヌウーッ!小癪な真似を……」
「……待て!様子がおかしい!」
 ここで浪人たちの足が鈍った。――彼らの中の数人が、気付いたのである。転げた桶に、家の壁に、見知らぬ奇怪な文様が描かれていることに。
「……」
 そして、前を走る修介が今度は明らかに何もない空間へと向けて無意味にペンを投げ放ったことに。
「先ほどからの奇怪な妖術……よもや奴の仕込みやもしれぬ!」
「そうか!あの面妖な氷の妖術は……」
 疑心!
 それこそが修介の狙いであった。修介は敵の行動を妨害するために、そうした『仕込み』をしていたのだ。
 実際、彼らは既に認識の外から謎の攻撃――チルの狙撃による凍結弾――を受けて何人かが犠牲になっている。その事実と併せ、浪人たちは修介が強力な妖術を仕掛けているのではないか――と誤認したのだ。
「ここは慎重にならねば――」
 先頭の浪人が息を呑む。無策で飛び込んではならない。心理的な抑止力が彼に二の足を踏ませた。
 その瞬間である。
「やはり策を弄する頭があっても、迷ったらダメだな」
「なるほどねえ、勉強になったよ」
 蹴り足が落ちる。続けざまに刃が閃いた。
 ――浪人たちが足を止めたその隙に、修介と蘭子は屋根上へと逃れていたのだ。そして、浪人たちが惑っている隙を好機として仕掛けたのである!
「グアーッ死ぬ!!」
 悲鳴をあげて倒れる浪人たち。修介たちを追って路地へと入り込んだオブリビオンはこれで壊滅したかたちになる。
「追ってきたのはこれで全部みたいだね」
 路地の中で浪人たちを殴り倒してきたエダがここで合流する。
「はい。だいぶ数も減ったことかと思います。表通りに打って出ましょう」
 3人は頷きあい、そして路地から飛び出した。

「……」
「グオーッ!!ど、どこからだァッ!」
「グアーッ氷室!!」
 一方、チルの仕掛ける狙撃は的確に表通りの浪人たちを撃ち抜き、着実に敵の戦力を削ぎ続けていた。
「お、おのれ……怯むな、立て直すのだ!我々には謙信公がついているのだぞ!もう一度軍略を練り直し……」
「――今の私に有効な軍略があったら、是非紹介して頂きたい」
 チルは微かな声でつぶやくと、もう一発氷弾を叩き込んだ。
 そして――また、次の瞬間である。
「それじゃ、いくぞーっ!――隆起しろっ!」
 街に響き渡る轟音。エダの拳が大地を叩く音である。
「なんだ!?」
「天変地異か!?」
 拳を通じて地面に注ぎ込まれるドワーフちからが、サムライエンパイアの大地を起こす――【ドワーフ式岩盤返し】!
「……とんでもないね。これが自在符持ちの猟兵ってやつかい?」
「いえ、全員がそうというわけではないですが……」
 溝を埋めるように家々を避けて隆起される地面は建物の屋根ほどの高さまで盛り上がる。結果、周辺の地形は実質的に平坦となるのだ。見たこともない豪快なやり口に、蘭子が嘆息しながら修介をつついた。
「な、なんだ……!?何が起こったのだ!?」
「これでこのあたり一帯は実質平地ってわけだ!さあ、軍略なんかかなぐり捨てて正面からやり合おうじゃないか!」
 困惑する浪人たちへと向けて、エダは駆け出す。すぐさま拳を叩きつける音と浪人の悲鳴が響き渡った。
「――」
 その一方、修介は短く息を吐き出す。
 身体から余計な力を抜き、呼吸を整え、そして拳を握る。
 ――力は溜めず。
 ――息は止めず。
 ――意地は貫く。
 【拳は手を以て放つに非ず】。揺るがぬ精神を以って、修介もまた浪人たちの掲ぐ刃の群れへと向けて疾った。
「……」
 そして、2人を援護するようにチルは火の見櫓から氷弾を撃ち続ける。
「やれやれ……助けられっぱなしってのも、癪だよねぇ」
 蘭子もまたこれに続いた。
 かくして――猟兵たちの介入により、戦場の趨勢は大きく変わることとなる。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【華禱】
猟書家の真田が狙う剣豪は男女問わずなのですね
彼女も助けなければ……往きましょう、倫太郎

現地に着きましたら、2回攻撃となぎ払いにて周囲の浪人を倫太郎と連携して攻撃
数が多く突破が困難であれば斬撃に衝撃波を併せ、蘭子殿から遠ざけます

突然現れて申し訳ございません
彼が狙うのは剣士の素質のある者の肉体を利用すること
敵の数は多く、武人の力を憑依された浪人となれば
貴女が腕に覚えがあったとしても骨が折れるはず
私達も加勢致します

攻撃を与えれば、その血が燃えてしまう
迂闊に距離を詰めては危険、となれば……抜刀術『神風』
建物の陰まで移動して距離を離し、そこから早業の2回攻撃で放つ
追撃は頼みましたよ、倫太郎


篝・倫太郎
【華禱】
連中にとっては『使えるかどうか』それだけが全てなんだろ
あぁ……往こうぜ、夜彦

介入と同時に衝撃波と吹き飛ばしを常時乗せた華焔刀の先制攻撃
刃先返して2回攻撃
蘭子ねーさんや夜彦に血を掛けられないように距離を取る

蘭子ねーさんへの説明は夜彦に任せて
俺は突破出来そうな手薄な箇所を見つける
無けりゃ攻撃して作り出すまでだ

拘束術使用
射程内の総ての敵は鎖での攻撃と同時に拘束

建物の陰は陰で
色々仕掛けられそうなんで
蘭子ねーさんや夜彦の死角にも拘束術の鎖を展開してフォロー

任された!

夜彦の攻撃の後、フェイントを織り交ぜた華焔刀で追撃
夜彦や蘭子ねーさんへの攻撃はオーラ防御を纏って確実に庇い
ダメージは火炎耐性で耐える



「っと――!」
「逃がしはせぬぞ、“雲切りの蘭子”!」
「おとなしく首を差し出せ!」
「お断りだね!」
 丁々発止!剣と剣のぶつかる音が、夜の街に響き渡る。
「猟書家の真田が狙う剣豪は男女問わずなのですね」
「男も女もねえのさ。連中にとっては『使えるかどうか』……それだけが全てなんだろ」
 月舘・夜彦(f01521)と篝・倫太郎(f07291)は、屋根上からその様子を見下ろしていた。
「そうですね……いずれにせよ、彼女も助けなければ。往きましょう、倫太郎」
「あぁ……往こうぜ、夜彦」
 2人は頷きあい、それぞれの得物に手をかける。
 そして雲間に輝く月の下、ふた振りの刃が奔った。
「おらァッ!」
「ヌウッ!?」
「何奴!?」
 華焔刀!紅く焔が舞い踊る。倫太郎が戦場へ飛び込むと同時に叩きつけたその一撃が、浪人たちを纏めて吹き飛ばす!返す刃でもう一閃!
「よもや……猟兵どもの増援か!?」
「ええ、その通りですよ――はあッ!」
 霞瑞刀!蒼く刃が閃いた。流水めいて鮮やかに流れる切っ先が浪人たちを薙ぐ!赤と青の刃が演武のように駆け巡って浪人たちを切り伏せ、包囲網にほころびを作り出した。
「開いた!夜彦、こっちは俺が引き受けとく。向こう頼んだぞ!」
「承知しました!」
 ここで2人は二手に分かれる。倫太郎は引き続いて薙刀を構え、浪人たちへと対峙した。その一方で、夜彦は蘭子のもとへと駆け付ける。
「……おや、いい男。……とはいえ、あんたは口説きに来たクチじゃなさそうだね?」
「突然現れて申し訳ございません。私は夜彦、彼は倫太郎と申します。貴女を助けに参りました」
「へえ――」
「真田・神十郎……彼が狙うのは剣士の素質のある者の肉体を利用することです」
「なんだい、連中あたしのカラダが目当てってことか。そいつはけしからんなあ」
 ふうむ――。蘭子は眉根に皺を寄せながら、剣の柄を握りなおした。
「それで、続きを聞こうか」
「はい。敵の数は多く、しかも浪人たちは強力な武人の力を憑依されています」
「ああ――なるほど、合点がいったよ。どうもやけに強すぎると思ったんだ」
「ええ、貴女が腕に覚えがあったとしても骨が折れる相手だったはずです」
「おっしゃる通りだ。……それじゃ、ここは素直に頭を下げるとしよう。手を貸してくれるかい?」
 蘭子は肩を竦めて苦笑した。
「はい。そのために来ましたからね。……それでは、私達も加勢致します」
「ああ、ひとつよろしく頼んだよ!」
「話はまとまったみたいだな!」
 ざ、ッ!押し寄せる浪人どもを薙ぎ払いながら、倫太郎が叫んだ。そこへ蘭子を伴って夜彦が合流する。
「すまないね、待たせたかい?」
「いいや、これくらい全然平気さ。蘭子ねーさんこそ無事だったかい」
「お陰様でまだ五体満足さ。それじゃあ今からあたしら一蓮托生だ!一緒に切り抜けようじゃないか!」
「では行きましょう、倫太郎。蘭子殿!」
「ああ!」
 かくして並び立つ3人は各々に刃を携え、襲い来る浪人たちを迎え撃つ!
「まずはこっちだ。縛めをくれてやる」
 倫太郎が腕を振る。その指先から延びるのは不可視の縛鎖である。――【拘束術】!のたうつ蛇のように唸る鎖が、風切の音と共に周囲の領域へ展開される!
「なに……!?」
「なんだ……!?なんの妖術だ!?」
 鎖が浪人たちを捉えた。身体の自由を奪われた男たちが、悲鳴めいて戸惑いの叫びをあげる!
「はー、猟兵ってのはどいつもこいつも不思議な術を使うんだねぇ」
 敵が動きを止めたその瞬間こそは好機だ。身を低くしながら駆けた蘭子は勢いのまま走り抜け、すれ違い様に剣を薙ぐ――。
「お陰で楽ができるけど――」
「蘭子殿、危ない!」
 しかし、そこに夜彦が鋭く声を投げかけた!――斬られた浪人は、嗤っていたのだ。
「……おっと!?」
 【怨念の返り血】!オブリビオンとしての力の発露だ。溢れ出す返り血が炎となって燃え上がる。夜彦の警告がなければ蘭子は咄嗟の回避も間に合わなかっただろう。燃え落ちながら骸の海に還る浪人を見下ろしながら、蘭子は冷や汗を拭った。
「こっちも妙な術を使うのかい。ますます化け物じみてきたねえ……」
「お怪我はありませんか、蘭子殿」
「慎重に頼むぜ、ねーさん!」
「わかったわかった、あたしが迂闊だったよ!」
「おのれ、あと一歩のところを!」
「ええい、斬れ斬れ!あの女さえ仕留めれば我々の勝ちなのだ!」
 だが、浪人たちの攻勢は止まらない。追加戦力の投入だ!道の先からまたも新たな敵の群れが刀をかざして襲い来る!
「あちゃあ、まだあんなにいるのかい」
「では、ここは私達で食い止めましょう。いけますね、倫太郎」
「ああ。いつでもいけるぜ」
 更なる物量で襲い掛かる浪人たちの姿を見据え、夜彦は一度納刀した。――そして、短く息を吸う。
「斬れば、傷口から出る返り血が燃えて襲ってくる――迂闊に距離を詰めては危険です」
「なら、どうするんだい?」
「――」
 一拍の沈黙を置いて、夜彦は鋭く抜刀した。――剣圧!空を裂かんばかりの剣氣が不可視の斬撃となって奔る!
 【抜刀術『神風』】!更に夜彦は演舞めいて返す刀でもう一振り!続けざまに放たれる剣氣が空気を震わせた!
「……こうしました」
 残心。油断なく剣を構えなおしながら、夜彦が頷く。
「……なるほどねえ」
「グアーッ妖術!?」
「グアーッかまいたち!!」
 ざ、ッ!刻まれる刀傷。不可視の斬閃が浪人たちを切り裂いたのである。返り血を燃やしながら浪人たちが悲鳴をあげる!
「追撃は頼みましたよ、倫太郎」
「任された!」
 悲鳴をあげる敵群のもとへと、続けざまに倫太郎が飛び込んでゆく!その手の中で再び輝く華焔刀の赤!
「き、さまら――!」
「役者不足なんだよ!いい加減諦めな!」
「グアーッ!!」
 薙ぎ払いッ!薙刀がまとめて吹き飛ばす!地面に倒れ伏す浪人たちは次々と骸の海へ還り、増えた分だけ数を減らす。飛び散る血飛沫が燃え上がり、夜の街を赤く照らし出した。
「さて……これであらかた片付いたか?」
 纏わりつく火の粉を払い、倫太郎が周囲を見渡す。
「いえ、足音がします……まだ終わりではないようですよ」
 一方で、耳を澄ませる夜彦が次なる敵の接近を感じ取った。通りの向こうに気配。まだ襲撃は終わらないようだ。
「かーっ!しつこい奴らだねぇ。そんなにあたしのカラダが欲しいのかい!」
 もうくたびれたんだけどねえ、とぼやく蘭子は、ため息交じりに剣の柄を握りなおした。

 ――兵の数を揃えるのもまた軍略の内か。多くの兵隊を討たれながらも、首魁である真田神十郎は戦場を見下ろしながら沈黙を保つ。
 更なる戦力が街へとなだれ込んだ。この戦いはまだ続くのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月凪・ハルマ
実際強かったよなぁ、上杉謙信
軍神憑きとか、中々にめんどくさそうだ

……けどまぁ、愚痴ってても仕方ない。やるか

◆SPD

【迷彩】で姿を隠し、【忍び足】で【目立たない】様に戦場を移動
敵を倒すより、まず蘭子さんとやらを見付ける事を優先する

発見出来たら合流。天下自在符を見せて共闘を提案
まぁ拒否されても勝手に守るけど、一応

なるべく周囲の建造物からは距離を取り、手裏剣、及び
【錬成カミヤドリ】での遠距離攻撃中心に戦う

姿が見えていれば手裏剣を急所狙い(【暗殺】)で【投擲】
建物の影などに隠れているなら其処にUCで複製した宝珠を撃ち込む

敵の攻撃は【見切り】【残像】【武器受け】【第六感】で回避

※アドリブ・連携歓迎


森長・可子
槍のリーチを活かし【落ち着き】払って遠間からの【貫通攻撃】で浪人を【串刺し】に。突き刺した敵を振り回して周囲をまとめて【なぎ払い】打ち倒し【恐怖を与える】。尚も怯まず接近してくる相手には【恫喝】の声と共に懐から抜き放つ短筒で鉛玉を脳天にくれてやる。射程30cm? 悪いがそんなに近付かせてやらねえぞ。貧乏くせえのが感染っちまうからな。

何狙ってんだか知らねえがよ、わざわざ攻撃もらおうって魂胆ミエミエのヤツを悠長に近付かせるワケねーだろ。なんつってもこちとら得物に槍使ってンだぜ。
護るのは不得手だがよ。俺が目立って敵引き付けりゃ、ちったァ狙いもバラけるだろ。最低限、自分の身は守ってくれよな嬢ちゃん。


神酒坂・恭二郎
やれやれ中々に上手い敵さんだ
香月さんの腕前は見事だが、地の利を奪われては苦戦必至であろう

片膝をついて刀を立て、片目を閉じて発気
四方八方に青の風桜子の矢を放つ(失せ物探し、追跡、誘導弾、衝撃波、乱れ撃ち)
青の誘導弾が物陰や壁、屋根へと、感知した気配めがけて飛翔する
殺傷力は低いが、敵を炙り出すのに重宝する小技だ
隠密を暴けば、香月殿なら遅れは取るまい

「神酒坂風桜子一刀流・陰矢……ってなもんかね」

・方針
敵さんに対しては、無防備に間合いを詰める(覚悟)
相手の起りに、斬られたと感じさせぬ神速の太刀を合せる
大した意地だが、気づかなければ捨て身にもなれまい(見切り、早業、切断)

「そこを動くな……忠告だよ?」


御剣・刀也
上杉謙信か
あいつとの斬り合いは楽しかった
お前らが上杉謙信と同等?笑わせるな。形だけ真似ても中身がまるでない。その程度で越後の竜を語るな!

侍の意地で、こちらの攻撃を受けた後、反撃の一撃が来るのがわかってるので、勇気で反撃を恐れず捨て身の一撃で、反撃を打たせないで斬り捨てる
浪人が集まってきたら、走って逃げながら近づいた奴を斬り捨てつつ、狭い路地に入って壁を背にしつつ、一対一になる環境をつくって斬り捨てる
「雑魚ばっかりだな。この程度の野郎がよく上杉謙信の名を語れたもんだ。お前らじゃまるで及ばねぇよ」


ヴィクティム・ウィンターミュート
ゲットセット、レディー
『VenomDancer』
上から剣豪殿の前に降り立ち、浪人どものヘイトを引き受ける
「猟書家なんてペテン師が居なきゃ、剣豪一人討ち取れねえ雑魚どもが…格の違いを教えてやる」
なんて【挑発】しながら全力【ダッシュ】し、引き撃ちで2種類のパルスを撃ち込む

向こうも謙信の力で多少頭が働いている
袋小路に追い込もうとするだろう…それを利用する
曲がり角付近で自分から敢えて袋小路に入り、急いでクロスボウ展開
【マヒ攻撃】で動きを止めるスタン・ボルトを数本設置
追い込もうと躍起になってる連中を動けなくさせてっと
その隙に爆発性──エクスプロシヴ・ボルトを撃ち込みまくる
追い込んだのは俺の方だったわけだ



「ええい怯むな!我々には謙信公のお力がついているのだ!」
「追い込め!」
「よぉし、策が整ってきたぞ……」
 浪人たちは叫びながら夜の街を駆け、香月・蘭子を追い立てる。
「まったく、随分としつこい……!」
 追われる女剣豪は表通りを走っていた。猟兵たちの活躍で敵の数は減り、包囲にほころびが生まれつつある。容易ではなかろうが、戦場から逃れることは不可能ではないだろう。
「――馬鹿め!手薄にした場所に逃れてこようことなど想定済みよ!」
「おおっと……!」
 だが、それも軍略の内!道を塞ぎに現れる浪人の姿!蘭子はすぐさまUターン!
「やれやれ、中々に上手い敵さんだ」
 神酒坂・恭二郎(f09970)は、屋根上からその状況を見下ろしていた。
「向こうも謙信の力で多少頭が働いている、ってことだろうな。スクィッシーどもがイキがりやがる」
 同じくヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)が戦況を俯瞰し、デバイスを起動する。
「魔軍転生だっけか。実際強かったよなぁ……軍神憑きとか、中々にめんどくさそうだ」
 月凪・ハルマ(f05346)がぼやく。けどまぁ、愚痴ってても仕方ない。まずは襲われている蘭子との合流が最優先――。ハルマはここからの作戦行動予定を頭の中で組み立ててゆく。
「上杉謙信か……あいつとの斬り合いは楽しかった」
 その一方で、御剣・刀也(f00225)が鍔を鳴らす。
「だが、奴らは形を真似ただけの雑魚だ」
「おうおう、その通りだぜ兄ちゃん」
 刀也の横で、森長・可子(f21640)が呵々と嗤った。
「連中は借り物の力で威張ってるだけだ。とっとと潰して終わりにしちまおうぜ」
 先に行くぜ、と手を振って、可子は真っ先に飛び出した。屋根上を蹴り、敵群の中へと飛び込んでゆく。
「だからって先走るんじゃねえ!」
「遅れをとるわけにはいかないな――俺も行くぞ」
 一拍遅れてヴィクティムもまた飛び降りた。続いて刀也が剣を抜き、戦場へと降り立ってゆく。
「こっちは先に蘭子さんとやらに合流しましょう」
「ああ。香月さんの腕前も見事なようだが、地の利を奪われているうちは苦戦必至であろう。まずは助太刀にいかないとな」
 一方、ハルマの恭二郎は静かに移動を開始する。屋根上から見下ろす街並みの中に、追手の浪人たちと切り結ぶ蘭子の姿が見えた。2人は彼女のもとへと駆ける。

「Get set.ready!」
 ヴィクティムは着地と同時にプログラムを起動する。デバイスの内側で、電脳が疼いた。高速の演算が0と1を奏で、電脳魔術が組み上がる。
「なんだァ!?」
「また猟兵どもか!?」
「おうとも、ご期待通りだ!」
 その一方で、先んじて敵群に飛び込んでいた可子が力いっぱいに槍をブン回した。人間無骨。貫いた浪人を早贄めいてその穂先に突き刺したまま、可子は暴れまわる!
「死ねッ!」
「グアーッ死ぬ!!」
 薙ぎ払われる浪人たちが悲鳴をあげて吹っ飛んだ。長屋の壁にぶつかり、そのまま爆発四散する!
「目的を違えるなよ!我々の仕事はあの女を殺すこと!」
「ここは二手に分けてゆこうではないか!」
 しかし、腐っても謙信の軍略の力を宿した者たちだ。生存している中でも比較的冷静だった男が指揮官めいて声をあげる。そう、彼らの目的は剣豪殺しを成すことである。誰かしらがことを成せばよいのだ!
「……いいや、そうはさせねえぜ」
 電子音。――ノイズが走り、不可視の電磁パルスが戦場を走った。ヴィクティムがデバイスを繰り、そしてユーベルコードが励起する。
 【Extend Code『VenomDancer』】。起動したプログラムはブレインハックツールを通して人体に影響を及ぼす危険電磁波と化し、戦場に拡散する。
「お、お、おおおおおおお」
「おのれ……得体の知れぬ妖術を!」
 そのコードは、ヴィクティムに対して強烈な敵意と憎悪を催させるものだ。浪人たちの脳内物質が異常分泌され、その視線がヴィクティムへと釘付けになる!
「さあ来いよ、猟書家なんてペテン師が居なきゃ女一人討ち取れねえ雑魚どもが……格の違いを教えてやる」
 更にヴィクティムは挑発を重ねた。――あからさまなアピールであったが、プログラムの影響下に置かれた連中であれば、この程度で十分目を引ける。
「おのれ!あの男を殺せ!」
「殺せ!」
「殺せ!」
 結果として、浪人たちの一団はその半数近くがヴィクティムへと剣を向けた。戦力の分散こそがヴィクティムの狙いだったのである。その目論見は完全に成功していた。
「よし、こいつらは俺が連れてく。残りは任せるぞ!」
「おいおい、欲張って持ってきすぎじゃねえか!……しょうがねえ、なら、残りを平らげちまうとすっか」
 引きつけた敵に自分を追わせながら、ヴィクティムは路地へと後退していく。それを見送りながら、可子が十文字槍を構えなおした。
「ちょいと数が減って物足りなくなったが……まだ暴れさせてもらうぜ。俺が目立って引き付けりゃ、ちったァ狙いもバラけるだろうしなァ」
 口の端をつり上げて可子が嗤う。狩猟者めいた笑みは恫喝と同じ意味をもつのだ。可子は残る浪人たちを睨めつけながら槍を掲げる。
「お、おのれ……!」
「怯むな!我々には謙信公のお力があるのだ!」
 しかし、未だ戦意を失わぬ浪人たちは尚も諦めることなく攻勢を続ける!
「『謙信公のお力』――か」
 だが――斬閃、ッ!閃く白刃が浪人たちを襲う!抜き放たれた剣の銘は獅子吼!刀也が仕掛けたのである。
「むうッ!」
 浪人の一人がそれを剣で受け止める。鍔迫り合い!刀也と浪人の剣が圧し合った。
「お前らが上杉謙信と同等?」
「そうだ、我々は秘儀・魔軍転生によって謙信公のお力を――」
「笑わせるな」
 ぎ、ッ――刃が軋む!押される浪人のこめかみに汗がじわりと浮かんだ。刀也はその両腕に力を込める。
「形だけ真似ても、お前たちには中身がまるでない……その程度で越後の竜を語るな!」
「グア……!」
 押し切る!刀也の膂力が押し勝ち、浪人の態勢を崩す。そこへすかさず放つ袈裟懸けの一撃――【剣刃一閃】!
「だ、だが、拙者にも意地が……」
 斜めにざくりと切り裂かれた浪人は、しかしふらつきながら剣に手をかける。【侍の意地】を見せようというのだ!
「意地の張り合いなら――」
 だが、刀也は恐れることなく更に踏み込んだ。同時に放つ斬り上げ一閃!剣が浪人にとどめを刺す。
「俺も、負ける気はない」
「くそ……どうする……!」
 猟兵たちの実力は浪人どもよりも格上だ。それを悟って、浪人たちは戸惑い始める。
 ――その最中、すこし離れた路地で煙が吹きあがる。爆発の音に夜の街が揺れた。
「今度はなんだ……!?」
「さあな。おおかた、お前らの仲間がこっちの策に嵌ったんだろう」
「ああ、さっきのだな」
 可子は路地の方角を仰ぎ見た。――丁度、ヴィクティムが敵を連れて行った方向だ。炸裂したエクスプロシヴ・ボルトは、彼が誘引した浪人どもを一網打尽にしていた。
「な、何故だ……我々は謙信公のお力を……」
「この程度の連中がよく上杉謙信の名を語れたもんだ。お前らじゃまるで及ばねぇよ」
「まったくだ。こんくらいだったら信長様だって手取川で負けてねえな」
 既にこの場の趨勢は決していた。
「それじゃ、潰しちまうぜ」
 振るわれる人間無骨。続けて閃く獅子吼の刃が浪人たちを断ち切った。

「ッ――物陰から!」
「ふはははは!死ねい!」
 蘭子を襲う浪人の群れ。伏兵として路地に隠れていた者たちが躍り出る!
「お命頂戴――」
「そうはいかないな」
 しかし、その瞬間である――手裏剣!飛来する刃が浪人の背に突き立った! 血を吐きながら男が倒れる!
「ゴァッ!」
「なに!?」
「どこから!」
「――こっちだ!」
 次の瞬間、蘭子を囲む浪人たちへと斬りかかったのは恭二郎である。まばたきひとつに満たぬ刹那で間合いを詰め、そして抜き放つ神速の一刀――鍔鳴りの音とともに、一陣の風が吹いた。
「貴様、今、何を……」
「そこを動くな……忠告だよ?」
 納刀の仕草と共に、恭二郎は警告する。
「なに……?」
 しかし浪人はそれを意に介することもなく、剣の柄に指をかけた――その瞬間である。
「ごぶッ」
 浪人は血を吐きながらもんどりうって倒れる。
 【神酒坂風桜子一刀流・虎落笛】――。神速の域に達した速度の太刀筋が、『斬られた』という認識さえさせることなく敵を断つ、恭二郎の剣技のひとつである。
「……おお、こいつは随分とお上手」
「貴様ァ!」
 その見事な剣技に感心する蘭子。激昂する浪人たち。浪人たちは再び剣を手にしながらいきり立つ!
「この程度か。軍神憑きとは思えないな……」
 だが――そこへ再び襲い掛かる手裏剣の投擲!対応が遅れた浪人たちの頭や胸に次々と刃が突き立ち、そのまま骸の海へと還る!
「……どうも。そちらが蘭子さん、で合ってます?」
 ここで蘭子を囲んでいた浪人たちはこれでひとまず全滅した。暗がりから手裏剣の主――ハルマが顔を出す。手にした自在符を蘭子に見せるように掲げながら、ゆっくりと近づいた。
「ほー……、あんたも自在符持ちかい。いやあ、助かるねえ」
 蘭子は安堵するようにため息をついた。
「で、そちらの兄さんも?」
「ああ、スペース剣豪の神酒坂だ。よろしくな」
 視線を向ける蘭子へと、恭二郎は挨拶を返して頷く。
「すぺえす剣豪……」
「歓談してる時間はないですよ。そこらじゅうの物陰に伏兵がいるみたいだ」
 ハルマが路地に視線を向ける。――暗がりで、ぎらと光るものがあった。何人もの敵が潜んでいるのだろう。漏れ出る殺気をハルマは鋭敏に感じ取っていた。
「であれば、俺に任せてくれ。まずは炙り出すとしよう」
 ここで恭二郎が片膝をついた。――静かに息を吐き出し、精神を研ぎ澄ます。その身の内で高まるフォースが、燐光となって浮かび上がった。
「そういうことなら俺もやりましょう」
 その横に並ぶハルマが、手の中に一粒の宝珠を握った。
 ――そして、放り上げる。
 まず、花火が炸裂するように青白い光が飛び散った。恭二郎のフォースが形作る風桜子の刃である。一拍遅れて同じくハルマの宝珠が爆ぜるように分かたれ、飛び散った。【錬成カミヤドリ】!
「グアーッ!!」
「なに……!?こ、これは一体!?」
「ヤ、ヤメロー!ヤメロー!」
 そして、そこかしこの路地裏から悲鳴。物陰から転げるように飛び出してくる浪人たち!2人の技は周辺一帯の空間に拡散しながらオブリビオンの反応を追い、隠れていた浪人たちに攻撃をしかけたのである。それを受けて、敵はたまらず飛び出してきた――というわけだ。
「神酒坂風桜子一刀流・陰矢……ってなもんかね」
「ありゃあ……でっかいネズミじゃないか。まだこんなに隠れてたのかい」
「なんだ、まだこんなに残ってやがったのか」
 それとタイミングを同じくして、足音が鳴った。
 槍を担いだ可子が、路地から飛び出す浪人たちを睥睨する。
「とはいえ、いるのは雑魚ばっかりだ。このまま一人残らず斬り捨ててやればいい」
「ああ。とっとと全部掃除しちまおう」
 時を同じく到着した刀也とヴィクティムが、再び得物を構えなおした。これで猟兵たちは再合流を果たしたかたちとなる。
「あんたたちも自在符持ちかい」
 合流する3人に、蘭子が目を向けて会釈する。
「おう、あんたが蘭子とかいう嬢ちゃんだな。雑魚どもはこっちでどうにかしてやるから、最低限自分の身は守ってくれよ」
「おや、嬢ちゃんなんてトシに見えるかい」
 そして、愉快気に喉を鳴らしてから、蘭子は剣の柄を握る。
「ま、いいさ。……足手まといにならないよう、精一杯やらせてもらうよ」
 敵群は既に膨大な数の犠牲を出していたが、未だ襲撃の止む気配はない。これだけ屠っても、遠くの方からまたしても追加の戦力が来る気配があるのだ。
 しかし――それも完全に無尽蔵、というわけではないだろう。決着の時は必ず訪れるのだ。
 戦いは続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

鍋島・小百合子
SPD重視

剣客たる女子を数名で囲むとは武士共の風上にも置けぬな
その性根を切裂いてくれよう

「我が小太刀に宿りしは戦に散りし者の霊…蘭子殿に助太刀いたせ」
UC「武装霊憑依」発動にて霊を憑依させた小太刀を自分の周囲を配し、主にわらわと蘭子殿を武器受け防御で敵の凶刃から守るように動かす
基本は自身の背に蘭子殿を預け守りつつ、複数人を相手取れる位置を意識しながら薙刀で浪人共と刃を交える(なぎ払い、範囲攻撃、乱れ撃ち、鎧砕き併用)
残像を纏い翻弄し隙を見て咄嗟の一撃を当てていこうぞ
敵の返り血は薙刀を前方に回しての武器受け防御で反らし、わらわや蘭子殿が炎に巻き込まれぬように立ち回る
受けた場合は火炎耐性で凌ぐ


東雲・深耶
蘭子とやら、助太刀いたす...
ウム、『助太刀いたす』と一度言ってみたかったぞ。

それはともかく、まずは蘭子を連れて町中の建物の影や袋小路等に入り込み、【閃空の波紋】で周囲の状況を知覚して把握。その後にユーベルコードを起動させる。
「さて、奴等にはどのような術理だと思われるかな?」
空間座標、距離を無視して放たれる斬撃が遠く離れた場所、または遮蔽物越しにあり得ない方向から斬られたような攻撃を放つ。
その「どうやって攻撃しているのかわからない」状況を作り出して相手を混乱させ、その隙をついて強襲し壊敵の軍を壊滅させていく。


アロンソ・ピノ
猟兵じゃねえとは言え、雲切れるって剣豪が使う刀に興味が無くはねえが…護衛対象だ。まあ守るか。
…いや待て護衛終わったら太刀筋見せてもらっても良いな。

…んで、まずは街中で地形も使ってくる剣士の対処だが…
こっちも地形を使う。ついでに言えば奴らよりも上手くな。
ユーベルコードは秋弦。刀身を鋼糸にする型でもって、瓦なんかを絡めつけて振り回して武器にするなり
柱やらに括りつけて移動するなり
相手の刀奪うなりで
振り回して逃げ回って罠にハメて奴らの戦略をとにかく崩す。
こっちは数で負けてんだ。戦い方が剣士じゃねえことくらい許せ。
そんな訳で
―――春夏秋冬流、参る。


ミスト・ペルメオス
【SPD】

こういう時は、確か……
「スケダチゴメン」、でしたっけ? カタナではなく射撃装備ですが。

歩兵装備を纏い、生身で戦闘に加勢。
相手はオブリビオン、それも悪党ならば一切の容赦はしない。

デバイス等を介して念動力を活用。超感覚による敵の行動の見切り、自身の戦闘力強化などに活かす。
剣豪を邪魔しない程度に近くに位置取りして援護に回るほか、機を見て敵に射撃を加えていく。

わざわざ接近戦に応じてやるつもりは無い。
必要に応じて【シュラウド・ジャンプドライブ】も駆使。
瞬間的な移動、ゲートを介することによる死角からの遠隔射撃、果ては敵をゲートに飛び込ませて空中から落下させる、など。

※他の方との共闘等、歓迎です



「そ、相当斬ったはずだぞ……。だのにあんたら、まだいるってえのかい!」
「「「おうっ!!」」」
 夜の街を蘭子が走る!その後ろを追い回す浪人の群れ!
「ああもう!けしからん!実にけしからん!すっかり酔いが醒めちまったじゃないか!」
「ふはは!この期に及んで未だ酒の話とは!」
「“雲切り”も落ちたものよ!」
「女一人によってたかって来る連中の言うことか!」
 振り向きざまに抜いた刀で蘭子は浪人の剣を弾いた。――だが、浪人たちは瞬く間に蘭子を取り囲む!右!左!そして背後!取り囲む浪人どもが白刃閃かせ蘭子にその切っ先を――
「剣客であるとはいえ、数にあかせて女子を囲むとは――武士共の風上にも置けぬな」
「よし、では今が好機だな!」
「こういう時は、たしか――」
 しかし、次の瞬間である。
「――蘭子殿に助太刀いたせ」
「グアーッ何事!?」
 【武装霊憑依】!風を切り裂き、閃く刃が浪人を襲った!それは戦場に至った鍋島・小百合子(f04799)のユーベルコードである。投げ放った小太刀に霊魂を宿し、その剣でもってオブリビオンの剣を弾いたのだ。
「ウム――蘭子とやら、助太刀いたす……」
「グアーッどこから!?」
 それと殆ど同時!甲高い金属音と共に、浪人の手にした剣が跳ね上がりあらぬ方向へと飛んでゆく――それは不可視の斬撃!座標を超越した次元斬撃の一刀だ。東雲・深耶(f23717)は手の中で鍔を鳴らす。
「『スケダチゴメン』、でしたっけ?」
「グアーッ不意打ち!!」
 閃光!その最中に光ったのはミスト・ペルメオス(f05377)の手の中でぎらりと輝く熱線銃アナイアレイターMk.6!吼ゆる銃口が続けざまに浪人の剣を弾き飛ばしたのである。
 そして――
「……」
「……」
「……」
 『助太刀する』のワードが見事に3人カブってしまった――やや気まずい雰囲気で、3人の猟兵が蘭子のもとへと姿を見せたのである。
「……いやあ、助かったよ!」
 ぱしん、と手を叩いて蘭子が場の空気を強引に切り替える。
「ウム、『助太刀いたす』と一度言ってみたかったのだぞ」
「それちょっとわかります」
 頷く深耶に、ミストが頷いた。彼もまたスペースシップワールドにおいて、データアーカイブでいくつかのスペース時代劇を見た記憶があるのだ。ミストはその内容をおぼろげに思い出す。
「あー……そりゃいいんだが、敵、まだ来てるぞ」
 ここでしれっと合流したアロンソ・ピノ(f07826)はつとめて冷静に戦況を仲間たちへと伝えた。
「むっ。まだ来るというのか……。多勢に無勢を恥じもせぬとは、まっこと情けない連中よ。であれば、その性根切り裂いてくれよう」
 小百合子は手にした薙刀を構えなおす。竜王御前。その刃はぎらりと美しくも獰猛に輝いた。
「んじゃ、どうする?」
 アロンソは猟兵たちの顔をぐるりと見渡して問う。
「敵の数自体は、最初に比べれば減っているのは間違いありません。このまま蘭子さんを護って戦うのがベストだと思います」
「うむ。わらわも同意見じゃ。とにかく敵の狙いは蘭子殿のようじゃからのぅ。放っておいても集まってくるはずじゃ」
「よし、ではそのようにしよう。敵も策を弄してくるようだが――こちらも、きっちりやり返そうではないか」
「……なるほどな。ほっといても集まってくるんだし、あとはとにかく捌いてきゃいいか……。そうだな、シンプルでわかりやすい話だ」
「とはいえ、いっぺんに相手をすると包囲されて押し込まれる可能性があります。ここは二手に分かれてはどうでしょう」
「わかった。そのテでいこう」
 蘭子を護りながら群がる敵を迎撃してゆく、という方針が定まる。話をまとめながら、アロンソは手の中に宝剣の柄を握った。
「そういうことでいいよな、蘭子さん」
「ああ。ここはあんたたちに命預けるともさ」
 そして、蘭子が頷いた。

「おのれッ!」
「猟兵どもめ……よくも我々の邪魔ばかり!」
 怒声と悪罵!激昂と共に押し寄せる浪人の群れが、刀を掲げて襲い来る!
「ふーむ」
 しかしてその姿を目の当たりにしながらも、深耶は落ち着き払った様子でいた。
「――」
 呼気ひとつ――閃空の波紋。呼吸を通して、研ぎ澄まされた精神が大気の流れを読み、その中に敵の気配を読み取る。――ざっと数えて4、50人ばかりか――否。路地に潜む別の気配がある。伏兵を置いていたか。深耶はそちらへと視線を向けた。
「来たぞ!準備はよいな!」
「はい、問題ありません」
 一方で、正面から迎撃の構えをとるのは小百合子とミストである。小百合子は愛用の薙刀を手に身構え、ミストはその手に歩兵用火器を携えた。
「ウム!では我々は向こうに回るとしよう。ゆくぞ蘭子、桃色頭」
「あいよ!」
「桃色頭!?」
 反対方向へと向けて得物を構えるのは深耶とアロンソ、そして蘭子であった。3人は路地の方面へと向けて同時に走り出す!
「さあ、始めるとしよう――奴等にはどのような術理だと思われるかな?」
 深耶は涼しい顔で手にした剣の柄に指をかけ、短く息を吐き出した。――次の瞬間、居合抜きめいて跳ね上がる切っ先。同時に、風切りの音がした。
「ヌオッ!」
 その時である。蘭子を追ってきた浪人の中の一人が、突如血を吐いたのだ。
 【第一魔剣・幻も現も割する一振りの鋼にして空】――。それは、空間を超越した斬撃を放つ秘剣。時空間切断剣術のひとつのかたちである。
「な……何事だ!?」
 不可視の攻撃――どのような手段による攻撃かわからぬ攻め手に、浪人たちが困惑の声をあげる!
「答える義理はないですね――いきます!」
 そして、その次の瞬間である。戸惑う浪人の群れへと向けて、光が迸ったのだ。それは迎撃のためにミストが携えたランチャーデバイスの光であった。
「グアーッ爆発!!」
「まだまだ――ッ!」
 更に、続く刹那!敵群の正面にいたかと思いきや、ミストの姿は忽然と掻き消え、そして瞬き一つの間をおいて次は敵群の側面へと姿を現した。――【シュラウド・ジャンプドライブ】!サイキックエナジーの応用である。空間を繋ぐゲートを利用した、短距離空間跳躍の技術だ。ミストはこれを利用し、側面から――続けざまに再び空間を跳躍し、次は背後から。更にまた側面から!オブリビオン集団へと制圧射撃を仕掛けてゆく!
「悪党ならば一切の容赦はしません。このまま一網打尽にします」
「うむ、このような悪辣な者どもを捨て置くわけにはいかぬ!」
 そして、制圧射撃に重ねるように小百合子が飛び込んだ。甲冑に身を包みながらも損なわれることない素早い身のこなしで、小百合子が竜王御前の刃を薙ぎ払う。剣圧!強烈な一撃に浪人どもがまとめて吹き飛んだ!
「グアーッやられた!」
「ヌウウーッ!だ、だがやられたとてただでは……」
 しかして、血が燃ゆる!【怨念の返り血】!オブリビオンとしてのユーベルコードの発露である。
「そのような小細工、わらわが見切れぬと思うてか!」
 だが、小百合子はその手を読み切っていた。薙刀の間合いを活かし、鮮やかな体捌きで噴き出た返り血を躱してみせる。巧みな技で炎を避けながら、小百合子は更に薙刀を突き込んだ!
「……向こうはうまくやってるな」
「いやあ、まったくもって」
「では、こちらも負けずにうまくやろう」
 その一方、深耶とアロンソ、そして蘭子は表通りを避けて路地の方面を目指していた。
「そこに隠れてるっぽいな。炙り出すぞ」
「わかった。では切り込み役は任せよう」
 ここで一度アロンソが足を止める。路地に潜む敵の気配を察知したのだ。3人は一旦立ち止まる。深耶が頷き、アロンソを促した。
 アロンソは剣を抜き、その刀身に意志を通す。――抜刀する度に形状を変えるのが、彼の瞬化襲刀だ。此度、その剣は細く長く伸びる鋼糸として顕現する。
「では―――春夏秋冬流、参る」
 【春夏秋冬流・秋の型 弐の太刀 秋弦】。
 アロンソは手にした剣の柄を振り、鋼糸を繰る。意志持つ生き物のようにうねりながら奔る瞬化襲刀の刃は、鞭めいて路地を形作る家々の屋根瓦を叩いた。
「グアーッ瓦!!」
 がらがらと音を立てて落下する瓦を浴びせられ、路地に潜んでいた浪人がたまらず顔を出す。
「出て来たね。――それじゃ、あたしも少しは働くとしようか」
 そこですかさず蘭子が抜刀した。凄まじい反応速度。跳ねるように加速しながら前進し、一瞬のうちに間合いを詰め、そして刃を振り上げる。迎え撃つべく浪人が剣を振り上げるも、遅い。瞬く間に蘭子の剣は浪人の首筋を捉えていた。その鋭さが故に雲を切り払う風に例えられる高速の剣舞。片手一刀流の妙技である。
「おお……」
 その一瞬に繰り広げられた攻防と、見えた剣の技にアロンソは思わず声を漏らす。
 彼とて武の道をゆく剣士の一人だ。猟兵のような人智を超えた領域のものではないとはいえ、“雲切り”とまで謳われる剣豪の太刀筋に興味がないわけではない。
「ぐ、ぐグ……!」
 しかし――敵はオブリビオンだ。人智を越えたところにある、埒外の生命である。であるが故に、人間であれば致命傷になるダメージであっても、殺しきれぬ場合は多々ある。その例に漏れず、首筋から血を流しながらも浪人は刀を握り、反撃の構えをとっていた。
「おっと――詰めが甘かったようだな!」
 そこで深耶が素早く反応し、剣を振るった。不可視の斬撃が奔り、とどめを刺されたオブリビオンが骸の海へと還る。
 ――そう、蘭子の剣は間違いなく浪人の首筋を捉えていたが、敵は人を越えた領域にあるオブリビオンだ。凄腕であるとはいえ、人間の範疇にある蘭子では対オブリビオン戦闘を行うには力不足だったのである。
「いやあ、こいつは失礼したね」
「気にするなよ、あんたの腕が悪かったわけじゃないんだ」
 アロンソは更に刃を振り下ろし、路地に隠れた浪人たちを引きずり出してとどめを刺してゆく。そして深耶の次元斬撃もまた乱れ飛び、潜んでいた伏兵たちもまた瞬く間に数を減らしていったのである。

 そうして暫しの時間が経った頃、猟兵たちは敵の気配が殆ど失せたことに気が付いた。
「……どうやら、いい加減向こうもネタ切れらしいな」
 アロンソは剣を鞘に納めながら、表通りへと引き返す。
「ああ、だいぶ静かになったな。向こうも片付いたらしいぞ」
 アロンソに続いて深耶も表通りを目指した。浪人たちの気配は、もはや感じられない。夜の街には既に静寂が戻りつつあった。
「……うむ。惰弱な奴らであった」
「はい、こちらは掃討できたようです」
 路地から戻った猟兵たちを、小百合子とミストが迎え入れる。
 どうやら、配下として呼び出されていたオブリビオンの群れはこれで全滅らしい。一時は街中埋め尽くさんばかりにいた浪人どもであったが、今となってはもはや完全にその気配は失せていた。一人残らず骸の海へと還されたのである。
「ってことは――残るはあの男前だけ、ってことかい」
 そして、蘭子が仰ぎ見る。
「そうか。全滅か。……なるほど。謙信殿の力を宿したまではいいものの、役者不足は否めなかった――ということだな」
 ざ、っ。
 月下。瓦屋根を踏みしめて、首魁である猟書家・真田神十郎が猟兵たちを見下ろしていた。
「然らば――かくなる上は、この真田神十郎が直々に剣を交えよう。主君の天下布武がため、我が力と命の全てを賭す事を誓おう」
 屋根瓦を蹴立て、猟書家が猟兵たちの前へと降りる。
 そして、男は刃を向けた。

 ――かくして、これより猟書家・真田神十郎との戦いが幕を開けるのである。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『真田神十郎』

POW   :    不落城塞
戦場全体に、【真田家の城郭】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    神速十字斬
【両手の十字槍と妖刀による連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    侵略蔵書「真田十傑記」
自身が戦闘で瀕死になると【侵略蔵書「真田十傑記」から10人の忠臣】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:瓶底

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蛇塚・レモンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「粋じゃないねぇ、色男」
 骸の月の昏い明かりの下、香月蘭子は対峙する。
「……」
 かちり。鍔鳴りの音。
 猟書家・真田神十郎はその手に剣の柄を握った。
「あたしはね、誰かにとらわれたりとか、しがらみに縛られたりとか、そういうのはまっぴらごめんなのさ。……力づくで捕まえようったって、そうは問屋がおろさないよ」
「そうはいかない。お前は、オブリビオンとなって我が軍門に降るのだ」
「……はー、話の通じない御仁だこと」
 静かに張り詰める緊張感。空気が冷たく冴え渡る。
「いいさ。……来なよ、ハナシはこいつでつけるしかないってこったろう?」
 蘭子はその切先を向け、静かに息を吐き出した。

 そして。
「……参る」
「はッ!」
 月下。閃く白刃。かくして剣は打ち合った。
御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

勝負に割り込むのはどうかと思うがこの勝負預からせてもらうぜ
真田、こいつをオブリビオンにしたいなら、まず俺と闘ってもらおうか

不落城塞で迷路を作られたら、狙われた剣豪を後ろに下げ、覇気を全開にして真田の気を引く
此方の方が兵として申し分ないと思われたら、第六感、見切り、残像を駆使して斬り合いながら仲間の到着を待つ
槍は勇気で被弾を恐れずダッシュで一気に間合いを詰めて距離の有利を潰し、妖刀を抜いたらその妖刀ごと斬り捨てるつもりで、捨て身の一撃を打ち込む
「今の俺は強い奴と闘いたい岳の修羅。お前の前に居るのは人の形をした異形。さぁ、もっと楽しい勝負をしよう」


神酒坂・恭二郎
【血反吐】
駆ける
駆ける
駆ける
飛ぶように不落の城塞を駆け抜ける
一刻も早く駆け付けねば香月殿が危うい
青い風桜子の矢を導きに駆ける【失せ物探し、誘導弾】

「ごめんよ、ちっと遅れた!」
迷路を抜ければ、足を止めずに真田へと駆ける
言葉は不要
無言の一刀が戦場の礼だ
青の風桜子を加速度に乗せ【推力移動、残像】

自身の今の根こそぎを乗せた一閃
涼やかに放ち、行き過ぎたい【切断、覇気、早業、捨て身の一撃、鎧無視攻撃】

「神酒坂風桜子一刀流・涼風の太刀……ってなもんかね」

入魂の一撃で全力を使い果たし膝をつく
無傷で一撃を通せる相手ではなく、じわりと血が滲む

「格好がつかなくてすまんね、香月殿」
笑みだけは涼やかに格好をつけたい


森長・可子
十字槍! 俺ァそいつが見たくて此処まで来たんだ。
これ以上勿体ぶるんじゃねえよ!
てめえが逃げるってンなら、こっちはおっかけていくまでだ。
俺のしつこさを甘く見ンじゃねえぞ。さぁ、派手に死ねェ!!

迷路に逃げ込んだ敵の【殺気】を追い【悪路走破】で突き進む。途中で真面目に攻略するのに飽きて愛用の十字槍での【貫通攻撃】、【鎧無視攻撃】による【地形破壊】にて城郭破壊に切り替える。敵の気配に近づいたと判断すれば、壁越しに仕掛ける【ランスチャージ】からの『生牛目抜』で【串刺し】にしつつ、槍同士のコロシアイに雪崩込む。
全力で相手をぶっ殺さんとする戦場の【礼儀作法】に乗っ取り、【覚悟】と【激痛耐性】をもって挑む。



「十字槍!」
 森長・可子(f21640)は、狂犬めいた笑みを伴いながら飛び込んだ。
「貴様……織田の家臣か!」
 交錯!真田の十文字槍が振り抜かれ、可子の槍を受け止め、そして弾く。
「ちッ!」
 勢いに押され後退した可子は小さく舌打ちする。しかし、直後口の端に獣めいた笑みを宿した。
「アア、そいつだ……!俺ァそいつが見たくて此処まで来たんだ!」
「戦狂いの類か……だが、貴様に構っている暇はない。私にはやるべきことがある!」
 神十郎は槍の石突で地面を叩いた。カァンッ高く響く音。そして励起するユーベルコードが大地を割り、そして周囲の空間へと伝播してゆく。
「なんだい、こいつは――!」
「……我が真田の城塞だ」
 ガオン、ッ!割れた大地の隙間を抉じ開けながら空間を変質させ、周辺の領域を侵食し変換してゆくのは真田神十郎の言葉の通り【不落城塞】である!
「猟兵どもにこれ以上の干渉を赦すわけにはいかない。“雲切りの蘭子”。邪魔の入らぬ場所で貴様を殺す」
「こいつ、本当にしつっこいね!」
 凄まじい速度で構築される城郭に蘭子が飲み込まれてゆく。その領域の内部へと、神十郎もまた飛び込んだ。
「待て、真田!」
 その姿を御剣・刀也(f00225)が追った。鋭く振り抜く獅子吼の刀身が神十郎を襲う!だが、跳ね上がる妖刀の切っ先がそれをいなした。
「――貴様も剣士としては優秀なようだが!」
 神十郎はそのまま後退し、迷宮めいた城郭へと逃れてゆく――紙一重!刀也の剣を躱しながら神十郎は退いた!
「私は私の仕事を果たす。貴様の相手はその後でしてくれよう!」
 そして――その気配は、城塞の奥へと消えてゆく。
「野郎……!これ以上勿体ぶるんじゃねえよ!」
 ガン、ッ!可子は十字槍で城塞の壁を叩きながら叫んだ。
「不味いな……このままじゃ香月殿が危ない」
 神酒坂・恭二郎(f09970)は今まさに目の前で形作られつつある城塞を睨みながら、剣の柄に手をかけた。
「ンならとっとと追うぞ!あの野郎が逃げるってンなら、こっちはおっかけていくまでだ!」
「ああ、その通りだ。すぐに追おう。2人ともいいな!」
 血気逸る可子が走り出し、それに同道するように刀也もまた駆けた。
「わかった。道は俺が探ろう。一秒でも早く香月殿のところにたどり着かなければな!」
 そして恭二郎も飛び込んだ。――3人が進んだ先は、今まさに構築され領域を広げ続けている迷路じみた真田の城塞の内部だ。それは刻一刻と内部構造を変化させながら、侵入者たちを惑わす迷図となる。
「一刻も早く駆け付けねば香月殿が危うい――急ごう!」
 煌めく風桜子の光を恭二郎は放った。迸る蒼い光は迷宮めいた城郭を駆け抜け、そしてその先の気配を探る。
「こっちだ!」
 フォースの力が導きとなる。恭二郎は風桜子を通じて蘭子の気配を探り、そしてそれを追いかけた。
「……血の匂いだ。……それから、隠しきれねェ殺気もビリビリ感じるぜ。アア、そっちの方向で間違いねえ!」
 恭二郎に並走するように可子が走る――。
「――――いや、待てよ?」
 しかし、ここで急制動!可子は城塞の通路の途上で突然足を止めると、その視線を壁面に向けたのだ。
「……こっちだ」
 手にした槍の穂先で壁を叩いた。
「こっち?」
「壁……のようだが」
 同じく立ち止まった2人が、怪訝な表情で可子の様子を伺う。
「この先だよ――わかンだろ?」
「……そうか、この壁の向こうか!」
 風桜子を奔らせる恭二郎は、可子の意図するところに気づいた。探していた気配は、たしかにこの壁の向こうから感じ取ることができる!
「ああ!」
 可子は獣のように嗤い、そして僅かに後退――。そこから短く助走をつけると、十字槍を壁面に叩きつけた!轟音!漆喰と木材を粉砕し、可子は城郭に大穴を穿つ!
「おらあッ!」
「――なに!」
 そして――その向こうは開けた空間であった。そこに見えたのは、切り結ぶ神十郎と蘭子の姿だ!
「なるほど……どうやら、間に合ったようだな」
 壁に開けた大穴から、刀也が飛び込んだ。可子と恭二郎もまたそれに続く。
「武人同士の勝負に割り込むのはどうかと思うが……この勝負、預からせてもらうぜ」
 刀也は切っ先を掲げ、そして神十郎へと向き合った。
「そいつをオブリビオンにしたいなら、まず俺と闘ってもらおうか」
「……」
 眉根を寄せる神十郎が、刀也を睨めつける。
「ごめんよ、ちっと遅れた!」
「いいや、ちっとも待っちゃいないさ」
 一方、恭二郎は蘭子と短く言葉を交わしながら板張りの間を駆ける。その手に握る風桜子刀。フォースの燐光を淡く散らしながら、恭二郎は間合いを詰めにかかった。
「しつこいぞ、猟兵どもッ!」
「てめえが言えたことか!」
 続けて可子もまた駆ける。その手に握る十字槍。人間無骨を掲げながら、可子は血を滾らせる。
「だが、しつこいっていうンなら――俺のしつこさを甘く見ンじゃねえぞ!」
 そして――跳ねる切っ先。
「はあッ!」
 迎え撃つように神十郎が十字槍を薙いだ。真田の槍と可子の人間無骨が激しくぶつかり合う!
「こいつッ!」
「織田の亡霊風情が!」
「亡霊はそっちもだろうがッ!」
 剣戟!互いに一歩も退くことなく、ふた振りの十字槍が争って交錯する――だが、その間隙!
「――俺とも戦ってもらおうか、真田!」
「ちいッ!」
 側面!板張りの床を素早く走り、間合いを詰めながら刀也が白刃を閃かせる。神十郎は咄嗟に抜き放つ妖刀でその刃を迎え撃った。剣同士のぶつかる音が、甲高く迷宮に響き渡る!
「――」
 更に次の瞬間――ひゅ、ッ!風切りの音!同時に散る青白い燐光!フォース刃の剣を、恭二郎が薙いだのだ。
 戦場に言葉は無用。無言の一刀は戦場の礼か。フォースの剣が神十郎の横腹へと斬り込んでゆく!
「ぬ――!」
 その一閃は、たしかに神十郎の纏う甲冑を裂き、そしてその肉体へと刃を届けた。
「神酒坂風桜子一刀流・涼風の太刀……ってなもんかね」
 返す刃でもう一太刀!入魂の一撃!疾る刃は鋭く重い必殺の一刀――【涼風】!
「ごふ――、ッ!」
 神十郎は断たれた肉体からオブリビオンとしての躯体を構成する瘴気めいた黒霧を吹きだした。――しかし、神十郎はすぐさま切り返す。
「この真田神十郎に手傷を負わせるとは、見事――だが!」
 跳ねる切っ先――カウンター!妖刀の刀身が、恭二郎を袈裟懸けに斬り下ろした。
「ぐ……ッ!」
 受け身を取るように恭二郎は後退し、なんとか致命傷を避ける。肩口からざくりと斬られた傷口にじわりと血が滲んだ。
「恭二郎!」
「格好がつかなくてすまんね、香月殿」
 叫ぶ蘭子へと、恭二郎は努めて笑みを返してみせた。――痩せ我慢も剣士の誇り。せめて笑みだけは涼やかに。恭二郎は膝を屈した。
「おおおッ!」
「むうッ!」
 次の瞬間である!続けざまに神十郎を襲ったのは獅子吼の刃だ。振り下ろす剛剣!強力な一撃が剣ごと捨てる勢いで神十郎へと下される!だが、神十郎はこれを妖刀の腹で受け止めた。――だが、その勢いに押され態勢が崩れかける!
「今の俺は強い奴と闘いたいだけの修羅――そうだ。お前の目の前に居るのは、ヒトのカタチをした異形!」
 刀也は更に攻め立てる!膂力で押し切り、その全身から威圧的なプレッシャーを放ちながら続けて刃を振り下ろす!
「さぁ、もっと楽しい勝負をしよう」
「戦狂いめ――!よくもやってくれる!」
 しかし、神十郎もまた押されるばかりではない。慎重に間合いをはかり、刀也の呼吸を読みながら反撃の瞬間を待っていたのだ。そして――刹那!刀也が上段に構えた一瞬に、神十郎は剣を薙ぐ!
「……!」
 刀也の胸元に横一文字の傷が刻まれた。傷口から血が溢れる――しかし、刀也は怯むことなく短く息を吐き出すと、その両手に力を込めた。
「この切っ先に一擲をなして……乾坤を賭せん!!」
「なに――!」
 ――【雲耀の太刀】!
 全力の一刀。傷つきながらも繰り出される、持てる力を振り絞った一撃が神十郎の甲冑を叩き砕き、唐竹割に傷を刻んだ。
「ぐ、お……!」
「まだまだあッ!」
 そして、追撃!横合いから猛烈な勢いで可子が突進を仕掛ける!――全力でブッ殺す。戦場の礼儀作法に則った一騎討ちの作法だ!強力なランスチャージが神十郎を襲う!
「があッ!」
 神十郎は十字槍を握りなおすと、その決闘に応えるように薙いだ。可子は脇腹を抉られたが、獣めいた嗤いを崩すことなく十字槍を構えなおす。
「かは、ッ――面白ェ。面白かったがよ……これで終いだ、真田よォ!」
 咆哮。
 可子は両足に力を込め、床を蹴立てた。槍の穂先を正面に構え、爆発的な加速度で飛び込んでゆく!
「さぁ、派手に死ねェ!!」
 【生牛目抜/ブルズアイ】、ッ!槍は神十郎の身体を捉える!
「が、――ッ!」
 衝撃に吹き飛ぶ神十郎の躯体が、床上を幾度か転げて倒れ伏した。
 ――だが。
「は――っ。は、は……。まだだ。……主君たるクルセイダーの名のもとに、この真田神十郎、折れるわけにはいかぬ」
 ゆっくりと、神十郎は起き上がる。
 その身体に刻まれた傷は決して無視できるものではないように見えたが――しかし、彼の存在核を砕くまでにはまだ至ってはいないのだ。
「……死合うが望みであらば、十全に付き合ってくれよう。我が力と命の全てを賭して、貴様らを下して、剣豪殺しを成してみせよう」
 そして立ち上がる神十郎は、その両手に再び得物を構えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

篝・倫太郎
【華禱】
夜彦、事実だけになんていうか、まぁ……
嘆かわしい、って言われるんじゃないか?

暁焔使用
飛翔能力はいざという時の為に温存

詠唱と同時にダッシュで接近
吹き飛ばしと鎧無視攻撃を乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して二回攻撃し傷口をえぐる

以降はフェイントを混ぜつつ立ち回り
夜彦の攻撃した箇所と同じ個所に部位破壊を乗せた攻撃
忠臣が召喚される可能性も考慮し
ねーさんが突出しないように気を付けとく

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防ぎ
以降の攻撃には生命力吸収も乗せてく

また、ねーさんへの攻撃はオーラ防御纏った状態で庇って対処

任された!
ねーさんも行けるよな?

戦況によってはこの時、飛翔能力を使って攻撃


月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎が真の姿になったのを見届け、同じく姿を真へ

蘭子殿は断っているというのに最早山賊と区別がつきませんね
それで真田を名乗るとは……先人が貴方の御姿を見て、如何思うやら
私は猟兵であり、この世界の侍
同じ者として嘆かわしいのです

破魔の力を付与した花弁を操って攻撃
敵からの攻撃はオーラ防御にて防ぎ、その後カウンター
鎧砕きと部位破壊にて敵の装甲を脆くしていきましょう
負傷した際には花弁を生命力吸収を付与
継戦能力で攻撃しながら体力を奪っていき立て直す

忠臣を召喚してきた際には倫太郎と蘭子殿の近くへ移動
早業の紫雨ノ舞と結界術を展開し、敵の攻撃を軽減
御二人共、私が攻撃を凌いだ後、忠臣達を攻撃してください



「いい加減に……」
「するのはあんたの方だろうがッ!」
 交錯!打ち合う刃が火花を散らし、剣豪と猟書家の剣が踊るようにぶつかり合う!
「蘭子殿は断っているというのに、潔く身を引くどころかますます強引な手に出るとは」
「往生際が悪い……というか」
 月舘・夜彦(f01521)と篝・倫太郎(f07291)の2人は、猟書家・真田神十郎へと間合いを詰めながら戦闘態勢へと入る。
「これでは最早山賊と区別がつきませんね」
「むう――ッ!」
 一閃!割り込んだ夜彦の抜き放つ霞瑞刀が、神十郎の妖刀をいなす!
「このようなざまで真田を名乗るとは……先人が貴方の御姿を見て、如何思うやら」
「夜彦、そいつは事実だけになんていうか、まぁ……」
「くッ!」
 続けざまに振り下ろされる華焔刀!神十郎はこれを躱し、僅か後退しつつ態勢を整える。
「嘆かわしい、って言われるんじゃないか?」
「……私を嘲弄し、隙を誘おうというのなら無駄だ」
 剛剣!神十郎は強烈な踏み込みと同時に刃を薙いだ!夜彦と倫太郎は間合いを開きながらこれを躱し、態勢を整える。
「いいえ、そのつもりはありません……。私は猟兵であり、この世界の侍。同じ者として嘆かわしいのです」
「侍であるならばわからいでか。主君に勝利の栄華をもたらすためならば、私はこの身を如何様にも捧ぐ!」
「それでやることが女の追っかけとはな!」
 倫太郎が踏み込む。薙刀の刃を突き込むその両腕に渾身の力を込め、神十郎を襲った。
「く、ッ――!この力……!」
 神十郎は振りかざした十字槍で咄嗟に受け止める――だが、押し負けた!衝撃に押し返されるように後退する神十郎を、倫太郎は鋭く睨み追撃の構えに入る。
 倫太郎の半身には、呪紋めいた文様が黒く浮かび上がっていた。それこそは彼の真なる力の発露である――【暁焔】。その身に宿した真なる力を顕現させながら、倫太郎は更に神十郎のもとへと攻め込んだ。
「倫太郎!」
「ああ、頼むぜ夜彦!」
 それと同時、夜彦が戦場を馳せた。夜彦もまたその身に宿せし真なる力の一端を解放し、花弁めいて麗しく輝く紫の髪を夜風になびかせながら神十郎との間合いを詰める。
「ええ、いきますよ――」
「なに……!」
 夜彦が跳んだ。――その身体から漏れ出た紫の燐光が収束し、花びらという形でもって実体をもちながら月下に咲き乱れる。
 風に流れて舞う紫の花弁は、その一片一片が魔力の塊であり、オブリビオンという邪悪を屠る破魔の力を宿した彼のユーベルコードの発露だ。
 【紫雨ノ舞】――舞い散る花弁は神十郎に触れる度に光となって爆ぜ、その躯体に傷を刻みこんでいた。
「く、ッ――!おのれ……ならばッ!」
 徐々に押し込まれつつある――神十郎は華焔刀の刃をいなし、紫雨より逃れながら書物を開いた。――【侵略蔵書「真田十傑記」】。その書物の力によって、「十傑」が顕現する。
『お呼びで、御屋形様』
 風を裂いて、夜の闇より影が出づる!
『才蔵、ここに』
『清海もおりますぞ!』
『伊三もお忘れなく!』
 轟音!真田の名のもとに馳せ参じる10の影。それらは一様に神十郎の忠臣であった!
「……おいおい、十勇士じゃあないか!」
 これにはたまらず蘭子も度肝を抜かれてしまった。思わずあげる素っ頓狂な声!
「……ゆけ、十傑よ!猟兵どもを打尽にせよ!」
『『『心得た!』』』
 神十郎はすぐさま攻撃の指示を下した。素早い挙動で10の陰が飛び立ち、蘭子と猟兵たちへ襲い来る!
「来たな……!夜彦、頼めるか!」
「ええ、任せてください!」
 しかし、ここで素早く転進した夜彦が蘭子の傍へと駆け戻った。同時に、ユーベルコード出力を上昇させる。吹き荒れる紫雨が、襲い来る十傑を迎え撃ち、その攻勢の勢いを削いだのだ!
『むう……小癪な!』
『だが、この程度で我らを止められるとでも……』
 だが、吹き荒ぶ花弁も十傑を押し切るまでには至らない。その中を、忠臣たちは強引に突破しようと前進し続けている!
「ええ、思ってはいませんよ。……ですから、倫太郎!蘭子殿!お二人とも、頼みました!」
 ここで夜彦が振り仰ぎ、叫んだ。
「ああ、任された!」
 その時である。――風を裂いて宙を舞うように、倫太郎が素早く跳び込んだ。花弁吹き荒れる中、振り下ろす華焔刀で一刀両断!
「はあッ!」
『なに……!!』
『バカな!拙僧が、こんな――!』
 薙ぎ払う一撃が、十傑を数人まとめて闇へと還す!
「ねーさんも行けるよな?」
「行けないなんて言える状況じゃないねえ!」
『ヌオ……!』
 続いて飛び出す蘭子が刃を抜き放つ――閃く白刃!跳ね上がる切っ先が影を裂いた。返す刀でもう一閃。十傑たちの影を払う。
「なに――我が十傑を、こうも易々と!」
「下っ端が信用ならないのはさっき学んだばかりだろう!」
 勢いのまま蘭子が攻め入った。素早くも鋭い剣舞!刃の連撃が神十郎を襲う!
「貴様……ッ!」
 だが、神十郎は妖刀でそれを受け流した。すぐさま反撃の構えへと移り、踏み込みと共に刃を跳ね上げる!
「死ね――ッ!」
「そうはいくかよ!」
 その瞬間、神十郎と蘭子に間に割り込むように倫太郎が飛び込んだ!纏うユーベルコード出力をオーラ防壁へと転用し、神十郎の剣を受け止める。
「おおおおッ!」
 そして続けざまに放つカウンターの一太刀!華焔刀が薙ぎ払う!
「ぐあ……ッ!!」
 斬ッ!切っ先が、神十郎の甲冑を引き裂きながらその躯体に傷を刻みこんだ!
 衝撃によろめく神十郎がのけ反りながら数歩後退し、深く息を吐き出す。
「これほどの力とは……どうやら、私の見立てが甘かったようだ」
 ぜ――ッ。荒い呼気と共に視線を上げる神十郎は、しかしてその双眸に未だ戦意を灯していた。
「だが……それでも、私は折れぬ……!」
「……流石の気迫です。オブリビオンに堕したとて、真田の家名をもつ者ということですか」
「だが、こっちも手を止めるわけにはいかねえ。俺たちだって猟兵の看板背負って立ってんだ」
 そして、夜彦と倫太郎は対峙する。
 ――街を包む夜の空気が、更に熱を帯びてゆく。
 猟兵たちと猟書家の戦いは、未だ熾烈を極めつつあるのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

チル・スケイル
…(立ち振る舞いだけで十分に伝わってくる。先のオブリビオンとはワケが違う相手だ)

…(積極的に櫓から攻撃。敵の目を引きつけこちらを狙わせる。敵は櫓を登ってくるはず)

…(敵が来たら櫓から飛び降り、空中でユーベルコードにより変身)
…(敵は跳ぶ事はできても、飛ぶ事はできないと思われる。翼に吹雪を受けて高速飛行し、空中から仕掛ける)

…(まず櫓をまるごと凍らせ、逃走を妨害する)

…(左手に冷気放射杖4本を装着。ドラゴンブレスよろしく冷気を噴射、脚部を凍らせ機動力を削ぐ)
…(右手には狙撃杖。足止めした敵を撃ち抜く)

…(悪いと思わない訳でもないが、そちらの流儀に則る余裕はない)


東雲・深耶
「蘭子、私の背に隠れていろ。何、手数を特殊としているのはこちらも同じだ」
瞬間、74分の1秒で空間を無視し精密指定して放たれる千の斬撃が十字槍と妖刀による連続攻撃を数で圧して相殺し、その相殺に回されなかった斬撃が真田を切り裂いていく。

「しかし、あの真田・信繁と刀をかわせるとはな、世の中生きてみて剣を極めて見るものだ」
そう剣戟を振るうたびに戦の斬撃が時空間を無視して精密に斬撃を飛ばし、ある分は連続攻撃の迎撃を、ある分は蘭子の護衛結界に回し、ある分は真田を切り刻む千の斬撃を最低でも十数回は放ち、十数万以上の斬撃で攻めていく。
「さぁ、私も剣豪だ。命を取って見せてみろ!!」


鍋島・小百合子
WIZ重視
真の姿解放

女への欲に溺れるとはそれでも徳川が恐れた将か
なんと情けない…!

真の姿たる黒鋼甲冑に身を包み真田の子倅に薙刀の武芸にて切り込み(先制攻撃、なぎ払い、乱れ撃ち、鎧砕き併用)
他の猟兵との連携を意識し確実かつ徹底して追い詰めていく
真田の忠臣が召喚されればこちらもUC「魔眷属降臨」でキメイエスの眷属を召喚し報酬を提示
「わらわと眷属とで5体ずつじゃ。大福餅云十人前の褒美でやれるかえ?」
忠臣共はわらわと眷属で引き付けその排除を担う
残像で敵を翻弄しての我が薙刀の技(なぎ払い、範囲攻撃、破魔、神罰、吹き飛ばし併用)と眷属の剣技とで力を合わせて忠臣共を切り結んでいく(継戦能力、集団戦術併用)



「だあッ!」
「おおおおッ!」
 激突!交錯!長柄の武具が交差するように打ち合った!甲高く鳴り響くのは、真田・神十郎の十字槍と鍋島・小百合子(f04799)の愛刀、竜王御前のぶつかり合う音だ!
「女への欲に溺れるとは、破廉恥な!それでも徳川が恐れた将か!なんと情けない……!」
「何をどう勘違いしているかは知らないが――私の果たすべきことは変わらぬ!いかに謗られようともッ!」
 剛剣!膂力で押し通る!神十郎は力づくで打ち合いを制し、更に前進!踏み込む!
「……」
 ――振るわれる槍の鋭さ、力強さ。立ち居振る舞いに体捌き。いずれも、先ほどまで群れていたオブリビオンどもとは目に見えて異なる相手だ。
(流石に、『幹部級』か――)
 櫓から戦域を見下ろすチル・スケイル(f27327)は、務めて冷静に敵の戦闘力を分析する。
「……」
 チルは静かに息を吐き出し、そして氷の術式杖に手をかける。カシュパフィロの筒先が、およそ1000メートルの距離を挟んで神十郎を捉えた。
 そして、引き金を引く。
 瞬間、氷弾が夜を裂いて奔った。
「――!」
 だが、その殺気を気取り神十郎は飛び退いて術式弾頭を回避する。睨めつける視線が櫓上のチルの姿を見た。
「……流石に気づくか」
 向けられた殺気にチルは眉根を寄せる――無策でここに留まり続けることは安易な選択だろう。チルは次の一手を思索した。
「おおおおッ!」
 だがその一方である。飛び退いた神十郎は、そこから続けざまに地面を蹴立てた。その視線は再び標的である蘭子の姿を捉える!
「来、るか……!」
 身構える蘭子。剣を構え、彼女は迎え撃つ態勢を整える――だが、彼女は目に見えて消耗していた。剣豪と言えど人間の範疇にある者が猟兵とオブリビオンの戦いに付き合ってきたのだ。ここまでもっただけでも行幸と言えるだろう。
「無理はするな」
 故に、東雲・深耶(f23717)は庇うようにその前に立った。
「蘭子、私の背に隠れていろ。その様子では、彼奴の剣は受け切れまい」
「……だけど」
「何、手数を特殊としているのはこちらも同じだ」
 深耶は微かに笑みを浮かべ、そして居合めいて紫雨の剣を抜き放った。
「そこを退け、小娘!」
 刹那。地を馳せる神十郎が、十字槍と妖刀でもって攻め寄せる!両の手に携えた得物を振り回し、無数の斬撃を放ちながら疾駆するその姿はまさに死を運ぶ暴風!【神速十字斬】!
「ふ、っ。私のナリだけで『小娘』などと思っているなら――その驕りと油断こそがお前の敗因となるのだ!」
 【第一魔剣応用・一閃の刹那に宿る千撃】――!深耶は踏み込みと共に刃を薙いだ。それは人智を超越した斬撃概念とも言える次元斬の絶技となって神十郎へと襲い掛かる。
「その言葉――そのまま返してくれる!」
 だが、神十郎は押し切った。――無尽に襲い来る斬撃の嵐の中を、神十郎は力技で強引に突破したのである!
 猟兵とオブリビオンの戦いにおいては、能力の相性が重要であると同時に、それ以上に個々の存在がその身に内包したユーベルコード出力が勝敗を決定づける要素となる。
 今ここに対峙する神十郎をはじめとした上位オブリビオンが“幹部級”と称されるのは、そう呼ぶに相応しいユーベルコード出力を内包しているからに他ならない。
「なるほど……さすがは真田の武人ということか!このような剣豪と刀を交わせるとはな、世の中生きてみて剣を極めてみるものだ」
「驕るな、小娘ッ!武の道に極みなどなく、戦の道にもまた頂はない!」
 突破、ッ!甲冑と全身に無数の刀傷を刻みこみながらも、神十郎が突き進んだ!
「女一人に徒党を組んで追い回すような下郎風情が説法かえ!」
 衝突!振り下ろす竜王御前が十字槍と再びかち合った。またしても小百合子が神十郎の路を阻んだのである!
「むう、ッ!」
「あまりにも惰弱に過ぎる!恥を知るがよい!」
 鍔迫るように押し合う小百合子と神十郎――拮抗する二振りの長柄が、2人の間でぎりぎりと音をたてる。
「……」
「――む、ッ!」
 その均衡を破ったのは、再び1000メートルの距離を挟んで飛来した氷弾であった。
「おのれ、先ほどから鬱陶しい――ならば貴様から先に片付けてくれる!」
 魔力弾を躱しながら神十郎は憎らし気に櫓を見上げ、そして歯を噛み鳴らす。更にすぐさま反転。床を蹴立て、チルの座す火の見櫓へと向けて神十郎は飛ぶように駆け出した。
「……」
 チルはその姿を視界の中に捉えながら、静かに息を吐き出す。
 チルは励起させた己のユーベルコードを通して、その身に竜を宿した。【氷術・翔竜/アイスウィング】。チルは翼を開きながら氷の魔杖を携え、先端から放射する凍気を推進剤としながら宙を舞う。
「……」
 敵は飛行能力をもたないはずだ。空中からであれば、アドバンテージが得られる。――悪いと思わない訳でもないが、わざわざ相手の流儀に合わせる必要もないのだ。これはハナから命を取り合いである。手段は選んでいられない。
「面妖な……!氷の妖術か、妖めが!」
 宙を舞うチルの姿を仰ぎ見る神十郎は、立ち並ぶ家屋の合間をすり抜けるように奔った。 
「……」
 チルは翼をはばたかせながら空中を滑るように機動し、敵との彼我の距離を図る。――魔杖の有効射程圏。敵の姿を眼下に捉えた。
「ぬう――ッ!」
 そして、放射する。浴びせかけられた凍気は真田の身体を凍結させ、その機動力を奪うのである。
「……」
 足を止めた神十郎へと、チルは再びカシュパフィロの筒先を向けた。
 ――しかし。
『御屋形様をこうも追い詰めるとは、なかなかのものじゃないか』
『佐助殿、笑ってはいられませんぞ』
「……!」
 次の瞬間、チルの翼を何かが掠める!――それは忍びの暗器、苦無である!
『おっと、外したか』
『次は拙者が』
『殿、ご無事で!』
「……増援か」
 チルを襲ったのは、突如として夜闇の中に浮かんだおよそ10体の影であった。【侵略蔵書「真田十傑記」】が喚んだ、神十郎の忠臣たちである!
『さあ、今引きずり降ろしてやる!』
「頼んだぞ、猿飛」
『合点!』
 影のうち一体が、ひどく長い鉤縄を振り回し始める――飛ぶ鳥を捉えるにはあまりにも稚拙な手段であるように見えるが、ユーベルコードに由来する能力であるならば一笑に付すことはできない。チルは一旦高度を上げ、間合いを開いた。それを追うように影が縄を投げ放つ――
「やはり臣下を呼びつけたか!」
「ここまできて手下に頼るつもりとはな!」
 だが、それを遮るように二振りの刃が割り込んだ!神十郎を追ってきた小百合子と深耶が追いついたのである。剣が鉤縄を叩き落とす!
『むう――この太刀筋!』
『ただ者ではないな!』
『だが、我等真田十傑がいる限り御屋形様はやらせぬ!』
 忠臣の影は揺らめきながら陣形を再編した。
「この者どもはわらわに任されよ。東雲殿はこのまま奴を!」
「承知した!」
 影の忠臣たちの眼前へと躍り出た小百合子は、薙刀を掲げながら対峙する。
『ほう……たった一人で我々を相手取るつもりか?』
「いいや――2人じゃ」
 小百合子は口の端に微かな笑みを乗せると、一組の扇を開いてくるりと舞った。――それは奉納の演舞であり、ユーベルコードを励起するための所作である。【魔眷属降臨】――小百合子の舞が、闇の底から魔の眷属を招聘する!
『今宵は麗しくも血塗られた赤き月夜……。私が舞うに相応しい暗黒の舞台……』
 月光の下に起き上がるのは、褐色の肌を持つ女の姿をした悪魔であった。
『なに――!?伴天連の奇術か!?』
『南蛮の妖だな……!』
 現れた女悪魔の姿にざわめく十傑!
「口上はよい。眷属よ、その剣の腕をわらわのために振るえ!」
『あらあら……せっかちね、あるじどの。それで、斬るのはどちら?』
「そこの影が10!わらわとお主で半々じゃ。大福餅云十人前の褒美でやれるかえ?」
『うーん、苺大福なら喜んで』
「贅沢を!」
 寸劇めいたやり取りを交わしながら、小百合子と女悪魔が疾った。――月下、ふた振りの刃が閃く。
『ぐあ……!』
『なに……!?鎌之介がこうも簡単に!』
「所詮は滅びし者の影に過ぎぬ!」
『そうねぇ、思ったよりも楽な仕事かも』
 女悪魔の剣は踊るように跳ね、影の忠臣たちを翻弄した。――そこに生じた間隙へ、小百合子が攻め入る。見事な連携が真田十傑を押し込んでいた。
「さぁ、もうひと勝負といこう!私も剣豪だ。命を取って見せてみろ!!」
「ちいッ!」
 一方、深耶は再び神十郎と剣を交えていた。無尽の剣戟が神十郎を襲い、しかして神十郎もまた一歩も退くことなく刃を薙ぐ。一進一退の攻防であった。打ち合い、離れ、再び刃をぶつけ合い、そして切り結ぶ。互いに高い技量をもつ使い手同士だ。実力は拮抗しているとも言えた。
 しかし――!
「……」
「――むうッ!」
 頭上!空中より飛来する氷弾が神十郎を掠める!上方へ逃れたチルが援護射を仕掛けたのだ。
「とった!」
「……不覚!」
 それに気を取られた一瞬が、付け入る隙となった。――薙ぎ払い一閃!深耶の振り抜く剣が、神十郎の甲冑を切り裂いてその身体に深く傷を刻むッ!
「ごふ――ッ!」
 手応えあり!致命傷に届いた。間違いなくオブリビオンとしての存在核を捉えたはずだ。深耶は剣を通して伝わる感触から、それを感じ取っていた。
「勝負あったようだな」
「……は、は。そうか。そうかもしれぬ。……この身体はもはや持たぬであろうな」
 神十郎が膝を屈する。全身に刻まれた傷から、オブリビオンの躯体を構成する黒霧めいた瘴気が漏れ出していた。
「だが、まだ終わってはいない」
 しかし――神十郎は、その満身創痍の躯体をもってしてなお跳んだ。
「む……逃れるつもりか!」
「そうではない。この身体の動く限り、使命を果たすまで!」
 神十郎は刃を構える。その執念によって支えられた身体は、課せられた使命――剣豪殺しを果たすべく、未だ香月・蘭子を狙うのだ!
 猟書家・真田神十郎との戦いは、既に佳境に入りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月凪・ハルマ
用があるのは蘭子さんだってのは分かっちゃいるが……
俺達を無視して、勝手に話を進めないでもらえるかな

◆SPD
敵からの攻撃を【見切り】【残像】【武器受け】で回避しつつ
距離を取りながらの手裏剣の【投擲】で攻める

まぁ、手裏剣だけで決定的なダメージは与えられないだろう

だがそれでいい。向こうから見て、こちらが
『接近戦を嫌って近づいてこない』と思わせるのが主目的

同じような攻撃を続ければ、当然敵も対処できるようになるだろう
だがその『慣れ』は、ほんの僅かだとしても油断を生むものだ

【情報収集】しながら待ち続け、機が見えれば
その瞬間【魔導蒸気式旋棍・瞬撃】を発動

遠距離から【早業】一気に踏み込み、全力の一撃を叩き込む


ミスト・ペルメオス
【SPD】

もはや言葉は不要、ということか。

引き続き歩兵として参戦。
剣豪が討たれないよう注意しつつ、積極的に敵との戦いに挑む。
むしろ敵の意識をこちらに引き付けんとばかり、アナイアレイターやバラージデバイスによる弾幕を叩きつけていく。
敵が得意とする戦い方を如何に潰し、そして自身が得意とする射撃戦に持ち込むか。
スラスターを駆使しての立体的な戦闘機動を実施。空中で複雑な軌道を描き、敵の攻勢を逸らして。
念動力を最大限に活用。気配を、意志を読み取るかのように敵の狙いを見切り、攻撃も防御も許さんとばかりの連続射撃。
撃ち崩し、穿ち、蹂躙する。【“黒い鳥”】の戦いを見せてやる……!

※他の方との共闘等、歓迎です



「おおおおおおおッ!」
「くッ――!破れかぶれってわけかい!」
 ギィンッ!甲高く鳴り響く剣戟の音!満身創痍の身体を引きずりながらも尚猛火の如く攻め寄せる神十郎の妖刀が、女剣豪の命を狙う!
「この命を賭し、我が使命を果たす!」
「ぐあ……!」
 衝撃ッ!渾身の力で振り抜かれた刃が、迫り合いを押し切った。追い込まれた蘭子が姿勢を崩され、たたらを踏む――絶体絶命!
「殺(ト)った――ッ!」
「そういうわけにはいかないな」
「ええ、ここまでです」
 とどめの一撃を突き入れるべく振りかぶった神十郎であったが、その剣筋を阻むように閃光と黒鉄が襲った。神十郎は咄嗟に飛び退いて躱す!
「用があるのは蘭子さんだってのは分かっちゃいるが……俺達を無視して、勝手に話を進めないでもらえるかな」
 月凪・ハルマ(f05346)は更に続けて手裏剣を放つ。神十郎は剣を跳ね上げそれを弾くが、更に迸る閃光が神十郎の甲冑を灼いた!
「むう――!」
「私たちは猟兵として、いかなる侵略活動も許容しません。ここで終わりにしてもらいます」
 ミスト・ペルメオス(f05377)は重熱線銃の筒先を向け引き金を引いた。迸る熱線が更に猟書家を追い詰める!
「まだだ……!この身体の動く限り、私はまだ!」
「しつこい男だねぇ!」
 神十郎は血を吐きながら叫び、十字槍を構えなおす。血走る双眸が再び蘭子を捉え、そして地面を蹴立てた!
「許容しないと言ったはずです!」
 機動!プラズマスラスターの出力を上昇させ、ミストの躯体が加速した。疾駆する神十郎よりも尚速く、ミストは敵に追い縋りそして頭上からレーザー光を降らせる。弾幕が光の壁めいて神十郎の路を阻んだ!
「おのれ……面妖な!」
「こっちも忘れないでもらえるかな」
「ぬうッ!」
 ざッ!足を止めた神十郎の背に手裏剣が突き立つ。ハルマが仕掛けた追撃だ。息つく間もなくハルマは手裏剣の投射を重ねてゆく。
「このまま間合いを維持していこう」
「ええ、連携して追い詰めましょう」
「小癪な!」
 反転した神十郎がハルマへと意識を向けた瞬間に、その間隙へとミストが攻め入る。
「この攻め手、暗器の使い方――貴様ら、忍びの者か!」
「いいえ――私は、軍人です!」
 間合いと高度のアドバンテージを活かした機動戦闘――それは彼の本来の戦闘技術である鎧装を用いた宙間戦闘の応用でもあった。プラズマスラスターの燐光を翼とし、【“黒い鳥”】が夜を翔ける。
「なめるなッ!」
 しかし、神十郎とて幹部級の猟書家である。ただ黙って攻められるだけではない。方向転換と加減速のタイミングを見切り、神十郎は地面を踏み切って跳躍。砲弾めいた加速度で頭上のミストへと迫り、反撃の十字槍を突き上げた!
「はあッ!」
 だが――見切る!
 サイキックとしての念動力が敵の攻撃意思を察知し、その攻撃軌道を読み取ったのだ。ミストは紙一重で槍の穂先を躱しながらカウンター気味にアナイアレイターの熱線を叩き込む。
「ぐあ……ッ!」
 反動に押しこまれるように神十郎が落下した。背中から地面に激突し、衝撃に呻き声をあげる。――ダメージは確実に蓄積されていた。
「……今だな」
 その瞬間――ハルマが動いた。
 ハルマは決定的な隙のできる瞬間を探り、機を伺い続けていたのだ。ハルマはその手にトンファーめいたガジェットを携える。
「なに……!」
「ああ、間合いは詰めてこないだろうと思っていたかな」
 加速。地を蹴り馳せるハルマが、神十郎との間合いを一気にゼロへと詰める。
 これまで手裏剣の投擲を主な攻め手と見せていたハルマが突如接近してきたのだ。そこに神十郎は困惑を見せる。
 ――『接近戦を嫌って近づいてこない』ものだと、思いこまされていたのだ。神十郎は迎撃の構えを見せようとするが、思考の切替に要した時間はハルマにとって仕掛けるには十分な隙であった。
「はッ!」
 【魔導蒸気式旋棍・瞬撃】。
 瞬き一つの時間でよかった。秒に満たぬその刹那、一気に間合いを詰めたハルマが全霊の力を乗せた渾身の一撃を叩き込む!
「ご、――ッ!」
 轟音。衝撃の手応え。甲冑と肉体の砕ける音がした。凄まじい激突の威力に、神十郎の躯体が宙を舞い、そして再び地面の上に転がる。
「……どうですか」
 スラスターの出力を弱め、ミストが地面に降り立った。倒れ伏す神十郎の姿を見下ろし――しかし、油断なくその手にはアナイアレイターの銃把を握る。
「手ごたえはあった、けど」
 ハルマもまた警戒を解かぬまま、神十郎の挙動を見る。
 ――だが、まだ終わっていない。2人の胸中には半ば確信めいたものがあった。
「……く、は。はは、ははは……ははは」
 そして、その確信が正しかったことはすぐさま証明される。
 これだけのユーベルコードを受けたにもかかわらず、神十郎は立ち上がってみせたのだ。
「……まだ、だ。まだ、動く……。私は、まだ立っているぞ、猟兵ども」
 虚ろな笑い声を伴って、ゆらめきながら神十郎は猟兵たちを見た。
 ――しかして、それももはや気力だけで立っているようなものだ。長くはもたないだろう。
 決着のときは、間もなく訪れる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【血反吐】

奴と打ち合うのは俺がやる
俺に釘付けになってる間に、やるべきことをやってくれ

自己【ハッキング】でサイバネブースト
【ドーピング】でコンバット・ドラッグをオーバードーズ
ナイフを二刀分離──『Sword dance』アクティベート

格は向こうが上、それも達人だ
意志で食らいついていくしかない
大ぶりにになるな、小さい力で素早く打ち返せ
時間さえ経てば──俺が勝つ
こちらの手数が上回った時が勝負──槍を踏みつけ、蘭子と首を狙う

もう二度と、この世界に理不尽を持ち込ませない
そうしないと、傷付く奴が居るからよ
──幸福の障害を排除するために、悪鬼羅刹にだってなってやる
全員だ
全員滅ぶまで殺して殺して殺し尽くす


エダ・サルファー
強引な男は嫌われるよ?
まあ丁寧に話し合ったところで了承できる事じゃないけどね。
そんなわけで、そろそろお引取り願おうか!

基本的な戦術としては、槍の間合いの内側に踏み込んで、神十郎が攻撃しづらいであろう超至近距離での格闘戦を挑むよ!
踏み込むときが危ないかもしれないけど、まあ気合で踏み込もう!
ただ、こいつは瀕死になると10人の忠臣を呼び出すとのこと。
……ここぞで増援頼みってのはずるくない?
なんでまあ、忠臣達が呼び出されたなら即座に震脚を放って忠臣達の動きを封じるよ!
その上で一体ずつベコボコにしていくよ!
蘭子や他の人達が神十郎への攻撃に集中できるように、忠臣達を一体でも多くこっちに惹きつけてやる!


上野・修介
※連携アドリブ歓迎

「大将のお出ましか」

――為すべきを定め、心は水鏡に
――先ずは観る。

迷宮が展開されたら、壁を登り高所から敵と味方の位置と迷宮の構造を確認。
可能なら会敵前に味方に情報伝達

飛び道具に警戒しながら迷宮を無視するように壁伝いに高所を移動、強襲を掛ける。

UCは攻撃重視

視線と体幹の向き、殺気から攻撃軌道とタイミングの予測、TCペン投擲よる牽制と視線誘導、遮蔽物の利用、左右への緩急と周囲の壁を利用した3次元的な動き、或いは地面を打撃することで急停止・急旋回による虚実を混ぜた動きを以て、可能な限り被弾回避し間合いを詰め、懐に飛び込みジャーマンスープレックス、加えてダメ押しの下段突きを叩き込む。



「逃しはせん――逃しはせんぞ、ッ!」
「こいつ――!まだやるってのかい!」
 轟音。
 大地が揺れ、神十郎の咆哮とともに周囲の空間がユーベルコードによる侵食を受ける。
 即ち、真田が【不落城塞】。再び蘭子を取り込みながら、再構成される空間は彼の城として顕現する。
「あーあー、最後までこういうやり口でいくんだね……。強引な男は嫌われるよ!」
 エダ・サルファー(f05398)はすぐさま地を蹴り、地面を割ってせり上がる城壁によじ登る。
「とにかく、今は追いましょう。敵も万全ではありませんから、急げば間に合うはずです」
「ああ。スロット・アンド・ラン、だ。すぐにいくぞ!」
 上野・修介(f13887)がエダに続いて走り出す。一方、ヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)はサイバネ仕掛けのゴーグル越しに敵の反応を捉えて追いつつ、自身の体内に仕込んだサイバネ機器を活性化させた。ブーストをかけた筋力にものを言わせ、ヴィクティムもまた城塞へと乗り込んでゆく。
「……思ったより単純な構造みたいですね」
 城壁へと上った修介は、構築された城塞の内部を見下ろして構造を把握する。――敵もここまでの戦いを経て消耗しているが故か、本来であれば複雑に入り組んだ迷宮として顕現するはずの城塞の内部は、塀壁を張り巡らせて構築された申し訳程度の回廊と屋敷めいた建造物をひとつ有するにとどまる小規模な砦となっていた。
「あそこの屋敷がいかにもって感じだね」
 3人は城壁の上から内部構造を見下ろす。
「だろうな。他に反応も無え。最短経路は――」
「いえ、このまま壁伝いで行きましょう。迷路遊びに律義に付き合う必要はありません」
「賛成だ」
「ああ、手っ取り早くていいじゃないか!」
 そして、短くやり取りを済ませ頷きあった。3人は城壁から内部へと降りると、回廊を構成する塀壁を足場としながらその上を駆ける!
「さあ、それじゃ突っ込むよ!作戦はシンプル!まっすぐ行って――ぶっとばす!」
「はは――そいつはいい。なら、速攻で決めるぞ!」
「はい、行きましょう!」
 だ、ッ!3人は足場を踏み切った。駆ける勢いのまま、猟兵たちは屋敷へと飛び込む!
「でやあッ!!」
 一撃ッ!先陣を切るように跳んだエダの蹴り足が屋敷の壁をぶち破り、猟兵たちは内部へとなだれ込んだ!

「間に合いましたか」
「づ――ッ!またしても……、ッ!」
 ひゅ、ッ!風切の音!鋭く跳ね上がる蹴り足が十字槍を弾く!屋敷の内部へと踏み込んだ修介が、神十郎と蘭子の交錯に割り込んだのだ。
「は……ッ。か、間一髪……かねぇ」
 口元の血を拭いながら、蘭子は震える腕で剣の柄を握りしめた。猟兵たちの到着まで、なんとか持ちこたえたのだ。
「遅れた分はここから巻き返させてもらうさ。――少し下がってな。奴と打ち合うのは、俺がやる」
 しゃ、と流れるような金属音。エクス・マキナ・ヴォイド。ヴィクティムはふた振りの刃を抜き、神十郎に対峙した。
「さて、それじゃあここが最終局面……ってところだね!それじゃ、そんなわけでそろそろお引き取り願おうか!」
 そして、エダが構えを取る。調息。静かに息を吐き出しながら、エダは神十郎との間合いを測った。
「否――!私はまだ、立っている。まだ潰えずここに在る!であらば、この魂魄尽きる最後の瞬間まで戦い続けるのみ!」
 カ、ッ!神十郎は十字槍の石突で床を叩いた。――再び神十郎の身体から放たれるユーベルコードの力。周囲の空間に満ちたその力はすぐさま収束し、瞬く間に形を成す――!ゆらめく影が立ち上がった。
『我等十傑、ここに』
『神十郎様、ご命令を!』
 それは【侵略蔵書「真田十傑記」】が呼び覚ます彼の忠臣たちである!
「ビフ!ここでそうきやがるか!」
「……ここぞで増援頼みってのはずるくない?」
「これも我が力の内よ」
『然様!我らの力は神十郎様のお力と同じ!』
『ひとつの力を10に分けているだけだ!』
『ぜんぜん卑怯ではない!』
「屁理屈を!」
 十傑の影が走る!――いずれも強力な戦技を繰る戦士たちだ!このまま捨て置くことはできない!
「どうしますか!」
「わかった、ここは私に任せろー!」
 ここでエダが前進する!踏み込むと同時に、前へと出した足を力強く床面へ叩きつけた!――【ドワーフ式震脚】!踏み込む脚底から伝わる強力なドワーフちからが周囲の空間に伝播する。広がる衝撃が十傑の影に叩きつけられ、その動きを押し止めた!
『グア……!なんという力!!』
『凄まじい氣ではないか……あのような女子か!』
「さあ、どうしたどうした!十傑だか十勇士だか知らないけど、お前らはその程度か!」
『むう――!』
「さあ、何人でもまとめてかかってきな!」
 更にエダは挑発するように拳を向けた。十傑はそれに応えるように、エダへと攻め寄せる!――喚び出された十傑を、エダが引きつけたかたちだ。
「……」
 その最中、修介は静かに呼吸を整えながらその双眸で神十郎の姿を真正面から見据えた。
 ――為すべきを定め、心は水鏡に。
 では、今この瞬間に為すべきとは、何か。
「……猟兵、ッ!」
「……ああ」
 ここに修介が対峙せしは、世界に滅びをもたらさんとし、そして今この瞬間も無辜の民を殺めようとしているオブリビオンである。
 であらば――それを斃すほかに、為すべきことはない。
 す――っ。修介は深く息を吸い、それから静かに吐き出した。
 ――力は溜めず。
 ――息は止めず。
 ――意地は貫く。
 そうだ。
 ――すべきことは、これまで重ねてきたことと何一つ変わらない。【拳は手を以て放つに非ず】。ただ、その拳をもって世界を脅かすオブリビオンを打ち貫くのみ。
「――参る」
 そして、修介は疾った。
「――」
 それと同時。
 その両手に刃を携えて、ヴィクティムが駆ける。
 敵は、強い。単純な戦闘技術を比したならば、真田神十郎という猟書家はヴィクティムの実力を大きく上回る――即ち、格上だ。
 その差を埋め、そして勝利するためには――意志をもって、食らいついてゆくしかない。
 根性論ではない。ヴィクティムは既に自分に出来うるあらゆる手段を駆使している。自分に出来得る手を尽くした上で――折れぬ意志でもって、挑むのだ。
 修介とヴィクティムは、ほとんど同時に神十郎のもとへと間合いを詰めた。
「おおおッ!」
「――シッ!」
 剣戟!跳ね上がる妖刀の切っ先をいなし、踏み込んだ修介が神十郎の腹に鋭く突きを叩き込んだ。短く息を吐きながら後退した神十郎が素早く反撃の刃を薙ぐ。修介は上体を逸らし致命傷を避けたが、頬を浅く裂かれた。
「そこだッ!」
「むう、ッ!」
 続けざまに攻め入るヴィクティムが刃を薙いだ。一撃――否、衝撃の反動からすぐさま態勢を立て直し、神十郎が反撃を繰り出すより先に切り込む二撃目!更に押し込み叩き込む斬撃!二刀の刃が凄まじい速度で神十郎へと襲い掛かる!
「ぐ、――ッ!」
「……貴様、よもや!」
 【Extend Code『Sword dance』】。――それは、通常の9倍の速度で戦闘機動を行うユーベルコードである。ヴィクティムは励起したその力でもって、神十郎の剣技に対抗を図っていたのだ。
「は、ッ」
「だが、それほどのユーベルコード――その身体にかかる負担は相当なものであろうッ!」
 刃と刃を打ち合わせながら2人は交錯する。だが、神十郎の武人としての力量は人智を越えた領域に在るものだ。サイバネによるアシストとユーベルコードによる強化を重ねた上で、ヴィクティムの剣はようやく互角に届いているといえた。
「その覚悟は見事だが――それで勝てるほど、この私は甘くはないッ!」
「……うるせえ」
 ヴィクティムの瞳孔が細まる。
 その双眸に灯るのは、確かな戦意の炎。決意を宿した戦士の瞳が、射貫くように神十郎の姿を真正面に捉えた。
「もう二度と、この世界に理不尽を持ち込ませない」
「……なんだと?」
 交錯!黒刃が神十郎の妖刀を捌く!
「そうしないと、傷付く奴が居るからよ」
「戯言を……ッ!」
 神十郎は後退しながら態勢を整える。その手に剣の柄を握り直し、反撃に移るべく視界の中にヴィクティムを捉え――
「いや――戯言でも、冗談でもない」
「ぐ――ッ!」
 しかし、側面からの衝撃で再び崩された。横合いから修介が放った拳撃である!
「これが、俺たちのやるべきことだ」」
「おのれ……!」
 苦悶の声と共に、神十郎がたたらを踏む!
「ああ。俺たちは、そのためにここにいる──そうだ。幸福の障害を排除するために、悪鬼羅刹にだってなってやる」
 閃、ッ!続けざまに跳ね上がる黒刃!ヴィクティムが神十郎の胸元に一文字の傷を刻む!
「そうとも!その通りだよ――でなきゃ、誰がみんなを護るんだ、ってことだからね!」
『グアアアアーーッ!!お、御屋形様アアアアアーーーッ!!』
 影が爆ぜて散る――!爆散する影を払い、真田十傑を全滅せしめたエダが再びその視線の先に神十郎を捉えたのだ。
「なに……!私の十傑が――!」
「終わりだぜ、オブリビオン――蘭子ッ!決着をつけるぞ、お前もやるべきことをやれ!」
 再び刃が跳ねる。甲高く鳴る金属音。弾かれ神十郎の手を離れた妖刀が宙を舞い、そして床板へと突き立った。
「ああ、ああ――そうだね。……やられた分はきっちり返さなきゃ、あたしも剣士の名折れだもんねぇ!」
 そして――ヴィクティムに呼ばれ、再び立ち上がる蘭子が、もう一度剣を執った。
「さ、せ、る、かアアアアアアッ!!」
 だが、神十郎は未だ戦意を失うことなくその手に十字槍を握る。そして――振りかぶった。その膂力をもって、猟兵たちをまとめて薙ぎ払おうというのだ!
「シ――ッ!」
「ぬう、ッ!!」
 打撃音、ッ!――衝突の音。神十郎の身体が揺らいだ。
 懐へと飛び込んだ修介が、再び神十郎へと拳を突き入れたのだ。
「いい加減あきらめなよ――ッ!!」
「ぐあ、ッ!」
 更に激突!間合いを詰めたエダが、その勢いを乗せて拳を撃ち込んだのである。気迫をのせた聖拳突きが、神十郎の躯体を更に砕く!
「……さあ、幕引きの時間だ!」
 駄目押しのように疾る斬閃!雲を裂くと謳われた“雲切りの蘭子”が、その刃で神十郎を切り伏せたのである!
「ああ、こいつでゲームエンドだぜ――バズ・オフ!」
 そして――黒刃が、閃いた。
「ぐ、お、おおおお――ッ!く、クルセイダーよ……どう、か、おゆるし、を――」
 もはや、耐えきることは不可能だ。
 全身の傷口から黒霧めいた瘴気と火花を吹き出しながら、真田神十郎がとうとう膝を屈する。
 力を失ったその手から十字槍が転げ落ち――そして、遂にその躯体は斃れたのであった。

 その身体が爆発するとともに、そのユーベルコードによって構成されていた城塞が霧散する。
 ――気が付けば、猟兵たちは静まり返った夜の街の真っ只中に立ち尽くしていた。
「……いや、まったく。……お陰で命拾いしたよ」
 香月・蘭子は、ため息と共に手近な家屋の壁に背中を預けてへたり込む。
「ああ、まったく。お陰ですっかり酒が抜けちまった。……なあ、あんたたち。今からでも、あたしと飲みなおさないかい。そこの店がね、随分いい酒を――」
 先ほどまでの戦いがまるでなんでもなかったかのように、本気とも冗談ともつかぬ調子で猟兵たちを酒の席へと誘い、そして蘭子は笑うのであった。

 かくして。
 猟書家・真田神十郎の企んだ“剣豪殺し”の作戦のうちひとつは、猟兵たちの活躍によって防がれたのである。
 戦いを終えた猟兵たちを労うように、月の明かりが優しく彼らを照らし出していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年11月16日
宿敵 『真田神十郎』 を撃破!


挿絵イラスト