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何でもないことを何でもないままに

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●それは何でもない日の夕暮れ時
 アックス&ウィザーズにある高くもなく低くもない山。その麓にある、大きくもなく小さくもなく、飛び抜けて裕福でもないが暮らしに困るほど貧しくもない村。
 時折山賊が略奪をしにきたり、それを冒険者が追い返したり。うまく撃退できる日もあれば、泣く泣く金品や食糧を差し出す日もある。勇敢に戦った男を讃える像も、無念にも犠牲になってしまった命を嘆く碑も、この村の片隅には在る。
 それがこの村にとっての日常で、ささやかだけれども確かな積み重ねが、今日も、明日も、明後日も続いていくのだと、村人たちは信じて、疑わぬまま。
 まさか明くる朝、愛する妻に、愛しい我が子に、親しき隣人に、気の置けない彼奴に、「おはよう」と言えなくなるだなんて思ってもみないまま、彼らは言葉を交わすのだ。
「おやすみなさい、また明日」

●「おはよう」をもう一度
「けっ、サルかっつーの」
 忌々しげな舌打ちと共に、不機嫌な声がグリモアベースの一角に零れ落ちる。
 その主であり鮮やかな4枚の翅を持つ男、クロヴィス・オリオール(GamblingRumbling・f11262)は、どこにでもありそうな安っぽい色の灰皿に煙草を押し付け、呼びかけに応じてくれた猟兵たちに向き直る。サルとは、と問いたげな多くの視線をその小さな体に浴びながら、つい先ほどまで煙草を咥えていた唇をゆっくりと開いた。

「今からアンタらをアックス&ウィザーズのとある村に送る。山賊にカモられちまいそうな村の護衛だ、よくある話だろ?」
 だがまぁ、とそこで一旦言葉を区切り、2本目の煙草に火をつける。紫煙を吐き出すその口から紡がれる声も、猟兵らを見渡す切れ長の目も、険しいものに変わった。

「1人や2人程度、いや頑張りゃ10人くらいの山賊なら、地元の腕自慢のオッさんやら依頼を受けた冒険者やらが何とかしてくれるンだろーが、……わざわざアンタらを呼んだっつーのは、つまりはそういうこった。とにかく異常なんだよ、その数が。オッさんや冒険者に何とかできるレベルじゃねェ。……金目のモンや食糧を差し出すっつー、力がないヤツなりの命を守る術も、あのバカみてぇな人数の前では無力に等しいだろうよ」
 数が増えすぎ、物資が足りなくなり、山を降りてくる。……な、サルだろ?と先ほどの言葉なき問いに、解を出す。
 これまでもこの村を山賊が襲う事や、それによる犠牲者が出る事こそあったものの、それはほんの少しの、やはりよくある不幸に過ぎない程度のものだった。しかし此度、このグリモア猟兵の瞳に見えたものは、度を越している。
 彼らにとっての日常が潰えるほど、明日の朝の「おはよう」がなくなるほど、……即ち村一つが壊滅するほどの、不幸。

「村人たちは実直で真面目な奴らばっかだよ、……今年の冬は一段と冷える日が続いてるようだが、春までうまく、村人全員が多少の余裕をもって越せるだけの蓄えを、きちんと秋までにしてあるくらいにはな」
 そんなどこにでもよくありそうな村が、村人たちが、粗暴な山賊の無計画な増殖に食い潰されようとしている。オレには一切関係ないが、きっとこんな小さな村が消えたところで世界は何も変わりやしないが、しかしてどうにも、見えちまった以上は、見過ごすのは面白くないわけだ。と、不機嫌そうに続ける男は、集まった猟兵の中の幾人かが「素直じゃないな」という目を向けているのに気づいているか否か。
 一通りの説明を終え、半分ほどの長さになった2本目の煙草を気を取り直すように咥える。やや深めにその煙を吸い込み、吐き出しながら、改めて呼びかけに応じた猟兵たちの面々を見渡して……その重々しい空気を打ち消すように、2本目の煙草も揉み消した。
 何処かわざとらしいほどにからりとした声色で、猟兵たちの目線の高さまでひらりと飛び上がり、ぱちりと片目を閉じて見せる。

「……ま、よくある話は最後までよくある話にしとこうぜ。そんな真面目な村人たちのことだ、自分たちの村を壊滅の危機から救ってくれた奴らに、何のお礼もナシってこたァねぇハズさ」
 先に言った通り、裕福でこそないものの蓄えは充分な村だ。ちょっとした祝勝会くらいは開いてくれるだろう。また山賊らが蔓延っていた山にはいわゆる山の幸も豊富だという。山賊らを蹴散らした暁には、その恩恵にもあやかれることだろう。
 そうそう、そこにはオレも混ぜてくれよな、と冗談混じりにのたまうフェアリーのギャンブラー。
 その顔に浮かべた笑みは、さながら見渡した猟兵たちの勝利に賭けているかのようだった。


黒羽
 当たり前、というのは、きっととてつもない奇跡の連続の上に成り立っているのだと思います。黒羽です。
 オープニング情報の補足をさせて頂きます。

●第一章~第二章
 集団戦→ボス戦です。山賊さんがたくさんいます。
 1人1人は決して強くありませんが、クロヴィスの言う通りとかく数が多いです。
 村に攻め入ってきた山賊たちを、一般人を避難させつつ蹴散らし蹴散らし、その根城である所の山まで攻め入り、待ち構えるボスを倒し、ひとまずこの山に巣食う山賊たちだけでも根絶やしにしてしまえば、このどこにでもあるような村はきっと、ずっと「おはよう」の言える朝を迎え続けられるはずです。

●第三章
 山には獣肉も木の実も山菜もあります。とにかく自然の恵みがいっぱいです。それらを調理したりする頭や技術は山賊たちにはなかったみたいです。享受してもしきれないほどの恵みをふんだんに使って、お料理パーティー兼祝勝会といきましょう。
 討伐のお礼に村人総出で調理器具や調理環境を提供してくれますので、大抵の調理は可能かと思われます。

 ひとり真剣に向き合い作るもよし。
 お友達と作ったお料理を見せ合いっこ、食べ合いっこするもよし。
 誰かが作ったお料理を食べ歩くもよし。
 知らない間に山賊が討伐されてたけど、良い匂いにつられてやってきた人もきっと歓迎されることでしょう。
 クロヴィスにお声かけ頂ければ、作ってくださったお料理に対するリアクションをしたり、食べさせてくれよっておねだりしたりすると思います。

●全ての章において、他の参加者との連携・掛け合いをする場合がございます。
 おひとりで行動したい場合はその旨をプレイングにご記載ください。

●プレイング内にクロヴィスの存在(クロヴィスの名前・呼び掛けるセリフ等)が何もない場合は、採用時にクロヴィスの描写をする事はございませんのでご安心下さい。
(他の参加者様と掛け合いがある場合はございますので、おひとりで行動したい場合は、その旨をプレイングにご記載ください)

 村人たちの何でもなく掛け替えのない毎日を護りたいあなたからも、ストレス解消に山賊を蹴散らしたいあなたからも、山の幸でお料理とか楽しそう!なあなたからも、『あなたらしい』プレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●明日また、「おはよう」を紡ぐ人たち
 近頃は晴れの日が続く。どこにでもある村の中にある、どこにでもある家。その台所では、薪が燃え、レードルと鍋がぶつかり、陶器が触れ合う音が絶え間なく聞こえてくる。冷たい風がひゅるりと吹き、それに吹かれた落ち葉が小さく窓をノックする音も、時々。ほっぺたと耳、それから鼻まで真っ赤にしながら、もういいかい?まーだだよ。と楽しげな声は、どこにでもある家の、どこにでもある庭からだろうか。
 乾いたパンを一切れ。干した果物を少し。それから今日も寒いから、ささやかな具材と、たくさんの愛情が入ったあたたかなスープ。それらを昼の食卓に並べた母親が、外にかくれんぼをしにいった子どもたちを呼ぼうと、冬の風と落ち葉、それから子どもたちの声に揺れる窓を開けようと手を伸ばす。
 どこにでもある日常。なんでもない冬のある日。いつもどおりのお昼ご飯――……を、思い返しながら、母親は夫の夕飯分のスープが残った鍋を覗き込む。
 ――明日は何のスープにしようかしら。今日はじゃがいもだったから、明日は玉ねぎ……は、昨日と同じだっけ。変わり映えしないってあの人に怒られちゃうわ。嗚呼、でも他に食糧のバリエーションがあるわけでもないのよね……。
 夫は夜の見張り番に出ていた。帰ってくるのは夜遅くだろう。子どもたちに「おやすみなさい、また明日」とキスをしてベッドに寝かしつけてから、少しだけ暖炉の前で編み物をして、寒い外から帰ってきた彼が温かなスープを飲んで、あちち、と独り言をこぼす姿を想像したりなんてしていたら、聞こえるはずもないのに、村の入り口で見張っている彼がくしゃみをした気がして、いつしか母親の顔から少女の顔に戻っていた女性は、昼には子どもたちを呼ぶために開けた窓に、何気なく近寄ってみたりするのだった。
エスチーカ・アムグラド
ふふふふー、そうですよね!
見えてしまったら、見過ごせませんよね!
チーカにだってよーっく分かります!

チーカは村の人たちが危険な目に遭わないように、山とは反対の方向へ避難の誘導をしようと思います!
だって……村が無事でも「おはよう」って言う誰かが、言ってくれる誰かが居なくなっちゃったら悲しいですから

怖がってしまっている村人さんが居たらチーカの勇気をお裾分け!鼓舞してあげます!
それでも足りなかったら、チーカの手はちょーっと小さいですが手を繋いで、笑顔で励ましてあげます!

勿論、村人さんを導くのが山賊たちに邪魔されるなら、チーカは剣を抜いて戦います!
チーカはアムグラドの剣士ですから!


セシリア・サヴェージ
【POW】

無辜なる者を護るのが私の、暗黒騎士の使命です。
我が暗黒剣に誓って村を護り切りましょう。

山賊と交戦する前にユーベルコード【ブラッドウェポン】で暗黒剣を強化します。
「斬り捨てられたい者から前へ出なさい。望み通り両断して差し上げましょう」【恐怖を与える】
一対一なら【武器受け】【カウンター】を駆使してじっくり戦ってもいいのですが、複数同時に来るなら…面倒ですから【なぎ払い】でまとめて斬り捨てます。
村人や他の猟兵の方に山賊の攻撃が向きそうなときは【かばう】で護ります。護ることこそが暗黒騎士の使命…被害が出てしまってはいくら山賊を倒そうとも意味はありませんから。


メア・ソゥムヌュクスス
誰かの明日を、「おはよう」を奪うだなんて、絶対に許せないよー。

私は村の人の避難や救出をメインに行動するよー
【優しさ】【手をつなぐ】【コミュ力】で、村の人を安心させつつー、【地形の利用】【学習力】で安全な場所に誘導するよー。
もし、安全な場所がないなら他の人と協力してー、どこかの家を占領するよー

もし攻撃される人が居たら【かばう】、怪我した人が居るなら【UC:生まれながらの光】で癒やすよ

あ、私の声はよく通るって評判なんだよー、騒ぎの中でも遠くまで届くぐらいにはー【歌唱】

後は、うん、盗賊の人は全員UCで眠らせてナイフでトドメ。
オブリビオンだから倒さなきゃだもんね…
…大丈夫、自分で出来るよ【微睡みの刃】



●そんな人たちを護るために
「山賊が出たぞォ!!!」
 昼間は冬の風と落ち葉、それから子どもたちの声に揺れていた窓。
 今、それを揺らしたのは、おだやかでささやかで、どこにでもある何でもない一日が終わろうとしている日常に、非日常を告げる、見張り番の声。

「大丈夫! 大丈夫ですから、どうか落ち着いて、チーカに着いてきてくださいっ!」
 続いて聞こえるのは、明日の朝の「おはよう」を護ろうとする、小さくも確かな、鼓舞の声。
 先ほどまで見張りの男が立っていた村の入り口では、今しがたこの村へと転送されてきた自分の仲間たちや、雇われの屈強な冒険者がなんとか食い止めているはずだ。
 非日常はすぐそこまで来ているが、けれどもまだ日常が失われたわけではない。明日の朝、「おはよう」を言う村人たちは、まだ誰ひとり命を落としていない。今日の朝と同じだけの数の「おはよう」を、明日もまた言えるように、明日もまた聞けるように。
 ほんの僅かだが、村人たちを避難させる時間はある。エスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)は、見張り番の声、そして遠く聞こえる下卑た叫びに狼狽え、家々から飛び出してきた村人たちの間を縫うように飛び回り、花の香りを振りまいていく。
 目指すは山と反対側、山賊がやってくるのとは逆方向へ。

「で、でも……ほんとに、ほんとにだいじょうぶ……?」
「こわぁい山賊が、追いかけてきたりしない……?」
 村人たちを先導するエスチーカを引き留めたのは、おそらく山賊の襲来が初めてなのだろう、幼い子どもたちの震え声。
 いいから早く逃げるんだ、と周囲の大人が急かすも、その大人たちだって恐怖に駆られているのを子どもたちは敏感に察知する。説得力が足りない。竦んでしまった小さな足は、動いてくれない。

「……帰ってきたら、この村がなくなってたりして」
「そんなのやだよ! あの大きな木を使ったかくれんぼが、もう出来なくなるって事でしょう?」
 「おはよう」を言う相手はもちろんだけれど、それでもやっぱり、何度も「おはよう」を重ねてきた場所は離れがたい。
 ひとりが愚図れば、ひとり、またひとりと恐怖が伝染していく。幼い足は次第にぽつぽつと立ち止まり、生まれ育った村を振り返る。

「大丈夫ー。怖くない、怖くないよー。帰ってきたら、またいつも通りだよー」
 子どもたちを筆頭に恐怖と不安の声が行きかう中、お構いなしに、歌うように。ぼんやりと眠たげなのに、はっきりと通る。
 エスチーカをはじめとする猟兵たちが、村人たちが、そして子どもたちが。その場にいる誰もが、メア・ソゥムヌュクスス(夢見の羊・f00334)の発するその不思議な声を聞き届けた。
 
「だからー……すこーしだけ、私たちとお出かけしよー?」
 ふぅんわり。
 まるで昨日の夢に出てきた、食べられる甘い雲みたいな桃色の髪と同じくらい、ふぅんわりとした優しい笑顔を浮かべて、愚図る子どもたちのひとり、今にも泣きだしそうだった女の子の手を優しく取る。
 ね、と笑うメアに、その笑顔の後ろでふわふわと揺れる優しい色の髪に。
 ――あの、食べられる甘い綿雲に包まれたなら、きっとこんな気持ちになるのかな。メアと手をつないだ女の子は、そんな事を思いながら小さくうなずき、ゆっくりと歩き出した。

「チーカの手は、ちっちゃいですけれど! でもでも、たっくさんの勇気を分けてあげられるんです!」
 その様子を見ていたエスチーカも、暗い顔で俯いていた男の子の視線の先にすいっと潜り込み、覗き込むようにして声をかけた。
 え、と小さな声を漏らす男の子に、にっこりと花のような笑顔を咲かせて、見ててくださいね、と今度は男の子の手元に舞い降りる。
 恐怖を握り込んだ男の子の小さな拳。それよりももっと小さなエスチーカの両の手のひらが、包み込むように、そっとその拳に触れて、

「チーカたちは、絶対にこの村も、皆さんも護ります! ですから、きっと……いいえっ! 絶対、絶対大丈夫ですっ!」
 自分たちを信じて、着いてきてほしい。エスチーカの力強い決意の気持ちは、思わず男の子の手を握る力を強めた。
 ――ぼくよりもちっちゃなこの女の子に、こんなにも勇気があるのなら……ぼくにだって。
 男の子の瞳に光と勇気が灯ったのを見て、エスチーカは嬉しそうに頷き、再び人々を先導するために羽ばたいた。

 勇気をもたらす鼓舞の声を、安堵をもたらすやわらかな声を、暗黒の鎧を纏った背中に聞きながら。
 村人たちの足音が遠のいていくのを、数の暴力でもって山賊たちの足音が近づいてくるのを、確かに感じ取りながら、暗黒剣に血を注ぐ。
 与えられた鮮血をみるみる内に飲み干し、禍々しくその姿を変えていく大剣。その持ち主、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、夜闇に吹く夜風に、夜闇に溶けるような色のドレスを揺らし、ひとり静かに目を閉じる。

「―――我が暗黒剣に誓って」
 浅ましく野蛮な声と足音が接近してくる。その数を数えることなど無意味に等しい。
 「すまん、さすがに限界だ!」時間を稼いでくれていた仲間か、それとも現地の冒険者か。村に押し入ってきた山賊たちを追い打ちしつつ叫ぶ声も聞こえてきた。
 護るべき無辜の人々の多くは、2人の少女の勇気と優しさに導かれていった。時間稼ぎは充分だ。
 ……ならば。暗黒騎士は、暗黒剣の柄を握り直す。

「あァ!? おいおい何だァ、女が1人いるだけだ! ナメられたモンだ―――ぐあアァあっ!?」
 山賊が振りかぶった得物を力任せに振り下ろす、風を切る音。武器と武器がぶつかりあう音。男の身体が地に臥す、鈍い音。
 自身の持ち主に捧げられた血を飲み干してなお、まだ飢えているのだろうか。
 この夜、この村で、初めて血を流させた暗黒の一閃。それを放った暗黒剣は月あかりにぎらりと反射する。
 その冷えた月あかりによく似た銀色の瞳は、鏑矢程度にはなったかもしれない男の身体が霧散するのを一瞥し、すぐにその興味はこの男に続いてきた山賊の群れに移った。
 ぐるりとセシリアを取り囲み、ある者はナイフを手に、ある者は鉈を手に前傾姿勢で下卑た笑みを浮かべる山賊たちの視線を厭うように、得物に滴る赤を払い、構え直す。

「斬り捨てられたい者から前へ出なさい」
「上ッ等じゃねえかゴルァアあああ!!!」
 放たれるは凛とした声。我先にと飛び掛かるは山賊。
 その叫び声に怯む事など一切なく、むしろその瞳の色はさらに温度を下げたほど。
 引き締まった身体を大きく捻り、真一文字に大剣を振るう。セシリアのまとめあげられた銀髪が、自ら巻き起こした風に踊った。

「……望み通り、両断して差し上げましょう」
 暗黒を纏った騎士の声、氷の手で心臓を鷲掴みにされたような恐怖。それが、小さな村の長閑な土地を汚すことなく、ただただ塵となり消えていく山賊たちの最期の記憶だ。
 尚も続々と襲い来る山賊の群れを迎撃すべく、セシリアは再び暗黒剣を構え直すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェット・ラトリオック
依頼として成立している以上、仕事は果たすとも。
必ずな。

村人には、夜が明けるまで家から一歩も出てくるな、と戦闘前に忠告を行う。

【拷問具:断割鉈】を鞭のように変形させ、「怪力」「ロープワーク」「なぎ払い」「二回攻撃」も使用して、命中率重視で攻撃。
「逃げ足」も使いながら、距離を取りつつ戦闘を行う。
死角からの攻撃もAW-Sunの「範囲攻撃」で掃射して隙を消す。

獣に情けをかける道理もない。「覚悟」を決めて、気を緩ませず、きっちりと役目を果たすとも。


ロー・オーヴェル
【WIZ】

思いがけないとはいうけれど
人生ってやつにはいつか必ず終わりが訪れる

早いか遅いかだけの差しかない
そこで命を落とすなら
「そういう運命だったってことさ……なあ、山賊の皆さん?」

ここで村人に死なれてしまうと
俺の『おはよう』が爽快なものにならなくなるんでな

後方で一般人を守りつつ
ナイフを投擲して山賊を倒す

乱戦になるだろうが
傷深い敵から確実に倒していけるように
敵の負傷状態を見逃さぬよう冷静に目を凝らし観察する

同時に山賊が此方に接近してこないよう
敵味方の行動は常に注視し
その場に留まるか移動するかを的確に判断して導く

……この山賊たちもここで『終わり』になるとは
思ってなかったかもしれない

でもそれが運命さ



●「おはよう」を交わすこの場所を <村の西集落>
 村人の避難はほとんど完了していた。ただでさえ静かな村。そこでささやかな日々を営んでいた人々の声、その多くが村から遠ざかった今。
 その営みの場を、人としての在り方を棄て、獣として生きる選択をした者たちが、粗暴な足音でもって踏み荒らしていく。

「この夜が明けるまで一歩も出てくるなよ、いいな」
 そんな足音に怯える息遣いをジェット・ラトリオック(黒玉の蛸・f01121)は聞き逃さなかった。
 足が悪く断念した者、家畜を置いて行けずに留まった者、……ささやかな日々を営んできたこの村を、離れがたかった者。
 理由は様々だが、村からの避難に合流しなかった村人たちがまだ幾人か残っている。
 その忠告に重みを持たせたのが、鉄兜越しのためにより低くくぐもった声だったのか、あるいはジェットの手に握られた鉄製の大鉈だったのかは定かではないが、残った村人たちは皆そろって、表情が見えないジェットの声に無言のまま大きく頷いた。

「俺の明日の『おはよう』を爽快なものにするための下準備が、これで完了したってわけだ」
「……油断するなよ」
 ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)のサンキュ、と唇を軽く動かすだけの謝辞に、ジェットが短く返す。
 残った村人たちが固くドアを閉じた民家からゆっくりと離れていくふたつの足音を出迎えたのは、囂々たる足音たち。
 ――わかっているさ。その足音の主らを見据えた灰色の瞳は言葉なく語った。

「さぁ、仕事を果たすとしよう……巻き込まれるなよ」
 相も変わらず鉄兜に覆われたその表情は伺えず、その言葉と行動から彼の意志を汲み取るより他ない。
 こちらへと向かってくる山賊を注視していたローが、言葉の意図を理解するべく隣にいるジェットに目をやれば、そこには鈍い色をした大鉈をあろうことか鞭の如くしならせ、今まさに大きく振るおうとしている剛腕があった。
 思わず乾いた軽い口笛を吹きながら、再びローの視線は、重く打ち据える鞭が捉える先へ。

「力比べなら負けねえってンだ!!」
「ぐおぉぉおおッ!」
「形が変わろうが所詮は鉈だろ! 目には目を、歯には歯を、鉈には鉈をだ!!」
 山賊たちは、隆々とした腕でジェットの断割鉈を受け止めようとし、雄叫びでもってその打撃を堪えようとし、無骨な鉈でジェットの武器を打ち割らんと試みる。
 断割鉈の太刀筋は、隆々とした腕を鋭利に切り裂き、薄汚い叫びで耐えられるほど軽い打撃ではなく、山賊の持つ無骨な鉈を大きく薙ぎ払った。
 ――ひとりが呆気なく黒霧となり、夜風に吹かれ散った。
 残ったのは、負傷した腕を抑えうずくまる山賊と、哀れ得物を彼方遠くへ飛ばされて丸腰になった山賊。
 長く長く伸びた鉈の先が、遠くの地面へ、大地を断ち割るが如く、鈍い音を立てて刺さるのが聞こえたのと同時。
 先刻の乾いた軽い口笛のような、ひゅっ、と短い音が鉄兜越しにジェットの耳に届く。
 先の口笛も、此度の口笛に似た音も、その出所は同じ――残る2人の山賊も塵となり夜闇に消えるのを見送って、ジェットは隣にいる男に目を向ける。
 確実に仕留めるために断割鉈の第二撃目を用意するまでもなく、目にもとまらぬ速さでナイフを2本投擲し、目の前の山賊を始末してみせたロー・オーヴェルという男。

 (……油断なんて微塵もなかったか)
 人知れず胸中で撤回したのは、先ほどローに向けた言葉。
 フランクな物腰からは想像しがたいほどの冷静で的確な判断を下してみせた当の本人は、ジェットの視線に気づいたか口元に笑みを浮かべる。
 
「まだまだ山賊の皆さんは元気なようだ。さっきのアレ凄かったな、もう1回……いや、奴らがここらから居なくなるまで頼むよ」
 こっちの弾倉はまだまだあるんだ、と投擲用のナイフを見せるローの言う通り、仲間を3人失ったところでその勢いは衰えず、むしろ足音に雄叫びは増える一方だ。
 望むところだ、とまるでロープでも引き寄せるかのように地面に刺さった鉈を引き抜きつつ、ジェットは答える。
 角度を付けながら手元に引き寄せる事で、その動線近くを走る山賊らは次々と薙ぎ払われてゆき、足音や雄叫びの中には時折短い断末魔が混じった。

 「なンでだよ! 話が違ぇだろうがよ! 村に来たら、女も肉も食べ放題なンじゃなかったのかよォ!!」
 しかして屈強な身体を持ち合わせてしまったがために、その薙ぎ払いを半端に耐えてしまったがために。
 激痛に見舞われその場に転げながら、こんなはずじゃなかった、と醜く嘆く声が一際大きく村に響き渡った。

「あぁああぁぁあクソックソッ!! オレは! オレはなァ! この村中の女という女を――」
 ――――ひゅっ。

「……お前さんの運命は、そういう運命だったってことさ」
 人生というものにはいつか必ず、等しく『終わり』が訪れる。
 よもやこの山賊も、ここでそれに出くわすとは思っていなかったのかもしれない。
 しかしてそれは、早い遅いの差はあれど、時として思いがけず、突然に訪れるものなのだ。

 人ならざる者と化した男に灰色の瞳が刺さってから、およそ0.05秒。
 『終わり』を告げたのは、――やはり短い口笛のような、あるいは冷たい北風のような――鋭く空気の揺れる音。
 形なきものには、視線もナイフも刺さらない。夜風に連れ去られていく黒塵を一瞥することすらなく、ローの瞳は、既に次の標的を探していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アズール・ネペンテス
…山賊か。
まぁこっちも盗賊だしある種同類みたいなもんだろうが流石にマナーが悪い連中のようだからしっかりお仕置きしてやらねぇとな。普段ならこっちもその手の依頼にゃ報酬貰ったりちゃっかりやってるが今回ばかりは真面目にヒーローしてやる。


山賊ども。極まった盗賊なら形のない技で盗む本物の『略奪』って奴を見せてやんよ?
…ついでに目的達成寸前で心の中に抱いた下種な希望もな

(アドリブ歓迎)


アリス・イングランギニョル
同じ展開が続く、なんてのは物語においてはあまりよろしいものではないけれど
お約束というのは逆に好まれたりするものだ
村人の危機を助けに現れる正義の味方、なんてのもお約束だよね
生憎とボクの柄ではないけれど……こういう物語もたまには悪くはないさ
ま、悲劇で終わってもボクは一向に構わないのだけれど
今日の所はその役目はキミたちに引き受けてもらおうか

狼さんと猟師さんを召喚したら、思う存分暴れてもらおう
さぁさ今日は食べ放題の狩り放題だ
たーんと召し上がれ?
猟師が銃で撃った山賊を狼に食べてもらうよ
仲間がどんどん食べられていく光景なんてのは【恐怖を与える】ことができるんじゃないかな?

【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】


ヴィクティム・ウィンターミュート
はー、俺もスタンスとしちゃクロヴィスと同じだ。猟兵ではあるが、ヒーローじゃあない。他者から奪って糧とする、大いに結構だ。
──だが、悪党としちゃ、三流以下だ。真の悪党は誰にも従わず、群れない。
悪党にすら満たないサルを駆除するだけ。それで見返りがあるなら、やってやるよ。

ちっと趣向を凝らすか。怯えた村人のフリして、たくさん寄って来たところに【騙し討ち】と【先制攻撃】でユーベルコード使用。殲滅開始だ。
以降は【ダッシュ】と【早業】で駆けまわりながら、範囲攻撃でキル!キル!キル!ってな。ヤバそうな攻撃は【見切り】で避けるぜ。

「あぁー!差し出します!──地獄へのチケットを、な」

アドリブ、他猟兵との絡み歓迎



●「おはよう」を交わすこの場所を <村の東集落>
 決して大都市ではなく、かといって過疎というほど寂れてもいないこの村の人口に、侵略する山賊の数が追いつこうとしていた。
 けれども家という家に明かりは灯っておらず、外を出歩く村人も見当たらない。聞こえるのは交戦の音ばかり。
 おかしい、こんなはずではない。弱き者を嬲り、悪逆の限りを尽くし、酒池肉林に浸りにきたのではなかったか。
 醜き昂りを足音に込め、卑しく眼をぎらつかせ、肩を揺らして練り歩く。いるはずだ、必ずどこかにいるはずだ。溢れ出さんばかりの欲望を受け止めてくれる、愛しいほどに哀れな、脆く弱い生き物が。

「ひぃっ……あ、あ、あぁぁ……どうか、どうか命だけは……」
 ――ほぅら、いた。かわいそうに、逃げる途中でつまづいてしまったのだろうか。不幸にも山賊たちの前に転がり出てしまって、こんなに怯えて。

「あぁー! 差し出します! いくらでも差し出しますから!」
 青年の悲痛な叫びが村の一角にこだまする。その声が救いの女神に届くはずもなく。
 ただただ山賊たちが蛮刀片手に下卑た笑みを浮かべて集まってくるばかり。
 飢えた獣たちがやっと見つけたひとつの餌を、取り合うように群がるばかり。

「おいおい、ちょっとこいつはヤベぇんじゃねぇの……」
 機を伺いながら物陰に隠れてその様子を観察していたアズール・ネペンテス(お宝ハンター・f13453)は、次々とやってくる山賊の数に辟易しながら独り言ちる。
(報酬もねぇ仕事な上に、俺もヤツらと同類みたいなもんだろう、が……マナーの悪い連中には、しっかりお仕置きしてやらねぇとな)
 盗賊だの、ならず者だのと称されることもある。ヒーローマスクという種族名を冠するほど、そもそもヒーローという柄でもない。
 けれども譲れないものはある。アズールは利き手にダガーを携え、盗賊でもなく、ならず者でもなく、シーフ故の静かな足取りで物陰を飛び出した。

 温かなスープが恋しい、冬の冷たい風吹く夜。
 しかしてむしろ熱気を感じるほどに押し寄せたった1人の獲物を取り囲み、口々に薄汚い言葉で青年に詰め寄る山賊たち。
 その中央で恐怖にうずくまる、哀れな哀れな青年は、可哀想に、もう声も出なくなり、――代わりに、その口元に三日月を描く。

「いくらでも、いくらでも………あぁ、いくらでも差し出しますよ、」
 ゆらり。青年、ヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)が立ち上がる。
 その周囲には、いつのまにか電子の花弁がちらついていた。

「!! ……てめぇ、何モンだ」

 鋭利な刃となって切り裂いてくるだろうか。それとも礫のように降り注ぐのだろうか。
 その場にいた山賊の全てが、彼が村人でも何でもないことを瞬時に理解し、各々の武器を構える。

「……っと、なんだ。 戦れんじゃねぇか」
 山賊たちの中央にいた青年、ヴィクティムの笑みを、そっと山賊たちの屈強な身体ひしめく中の微かな隙間を縫って盗み見る。
 それは戦う者が勝利を確信したときの笑みである事を、アズールは同じ猟兵として悟った。
 そしてそれは『なにか』をする時の笑みである事を悟ったのも、戦う者としての本能かもしれない。
 シーフとして完璧に殺し切ったアズールの足音は、山賊たちはおろか、ヴィクティムさえ気づいていない。
 そう、その場にいた山賊のだれ一人、気づいていなかったのだ。

 ――すぐ背後、いつでもその命を"略奪"できる位置にまでアズールが迫っていることに? もちろんそれもある。
 ――自分たちに怯えたフリをしていたこの青年が、村人でもなんでもなく、猟兵だったということに? 否、それ以上に。

「そんなヒラヒラしたモン繧九ャ縺ヲでなァ出来るッォ縺悟?てン上@!?」
「なん、だ…これァあッ、あ、ア鬆ュ縺檎オ李縺」
「おいどk縺うし。縺た!」
「オイて≧縲?縺薙s縺め≧縲?ぇ、一体何s縺ゥをしやg縲?縺。縺上@あg繧?ェ縺ッ縺壹§繧」

「……!?」
 その光景に思わずアズールが目を見張る。

「いくらでも差し出すって言っただろ? ――地獄行きのチケットさ」
 彼らが気づいていなかったこと。それは肉を切り裂くより、骨を砕くより、もっと効率的でもっと直接的な殺人プログラムが"実行"されていたこと。
 山賊たちは誰ひとりとして気づかぬまま、次々と地面に崩れ落ちてゆく。
 Killing Program『Execute』(ショケイニンノミナゴロシ)。
 肉壁となっていた山賊たちが揃って地面にのたうちまわった事で、ヴィクティムの開けた視界にアズールが映り込む。
 人の形をした、人の言語を話していたモノたちが、人ならざる者に身を堕としたとはいえ、かつては人だったモノたちが、およそ人の言語とは言えない『なにか』を叫びながら、頭蓋を抱えて転げまわる。さながら地獄そのものといった光景に、マジかよ、と乾いた笑いと共に小さく唇を動かしているのが見えた。
 そんなアズールに少しだけ得意げにも思える笑みを浮かべ、また地獄の呼び声に耳を傾ける間もなく、ヴィクティムは軽やかに地面を蹴り、我に返ったアズールもそれに続く。
 彼の周囲には未だ電子の花弁が、残酷なまでに可憐に舞っている。そう、地獄行きのチケットはまだまだあるのだ。
 この名役者に着いていけば面白いものが見られそうだと、脳の破壊が致命傷に至らずに図太くのたうち回る山賊たちを手あたり次第にダガーで切り裂きながら走るヒーロー。なお、その名役者が自らを「端役」と呼んでみせる天邪鬼っぷりに関しては、彼はまだ知らないままだろう。

「ははっ、こんだけ集まって鳴くだけか? 群れたサルの方がまだマシな声で鳴くぜ、悪党にすらなりきれねぇスクィッシー共!」
「絶好調だな、おかげでこいつの切れ味も絶好調だ。いや悪くないぜ名役者!」 

「……おや本当だ、こいつは入れ食い。さぁさ、今日は食べ放題の狩り放題だ」
 飛ぶように売れていくチケットをばらまき駆けまわるヴィクティムの、音もなく命を盗むダガーの切っ先を赤に濡らすアズールの。
 ふたりの耳を揺らしたのは、互いの声以外には久しく聞いていなかったようにも思えた、人の言語だった。
 風に乗ってきた獣の臭いに、アズールが気づく。山賊たちにとっての獲物のフリをしていたヴィクティムは、また別の者にとっての獲物――否、餌を集めていたのだろう。
 長閑な村の、これまでで一番騒がしい夜に一際物騒な音、すなわち銃声が鳴り響く。

「……こいつァ驚いた。赤ずきんちゃんってのは猟師も狼も手なずけてんのか」
 自らのばらまくチケットを受け取らなかった――即ち敵ではない事が明らかな女性に、ヴィクティムが投げかける。
 黒塵となる前にと山賊に食らいつく狼の食べっぷりを見ていた女性、アリス・イングランギニョル(グランギニョルの書き手・f03145)は、さてどうかな、と不敵に笑った。
 
「この子がたーくさんゴハンのある所を見つけたみたいだからね、ボクはついてきただけさ。猟師さんもお手伝いしてくれるって言うからねぇ」
 くつくつと笑いながら喋る彼女の言葉は、真実かどうか分からない。暗い夜にぽっかりと浮かんだ白い手が持つ、やはり暗い夜のような色の装丁の古びた本。
 その中に綴られているのかもしれない『赤ずきん―Rotkappchen―』はどんな結末を迎えているのか、果たして。
 召喚者であるアリスのたったひとつの指示、彼女の頭巾を紅く、朱く。ルビーよりもワインよりも、薔薇よりも真っ赤に染め上げるべく、破裂音が立て続けに轟いては、獣の牙が蹂躙してゆく。
 仲間たちが次々と不可解な言語を口走りながら悶絶し、いとも容易く左胸を一突きか、あるいはいとも容易く撃ち殺され、どちらにせよ黒塵となって消えることすら許されぬまま、その血肉を獣に啜られる。
 地獄に更に地獄を注いだような光景を目の当たりにした山賊たちの多くは、まるで山賊を恐れた子どもたちのごとく足を竦ませる。彼らには勇気を与えてくれる者も、安堵を与えてくれる者も居ないのだ。
 ―――居ないのだが。

「くォんな縺縲 ふざけた事が!! あって!! たまァ?笆るかよォ!!!」
「こンッ譌・譛っなマスクヤロー相手に!瑚ア?ガキ相手に!女相手に! くたばッ譌ってンじゃねェぞ!」
「村中の野郎を繧医≧いたぶって! 村中譁?ュの女を嬲り尽くして! 村中の縺?ォ食いモンも酒も金もッ蟆何もかも!! 全部奪いイ蜷とりにきたン譁?ュだろうがオレたちゃァ!!」

 電子の花弁をその身に受けてなお、2本の足で踏ん張り、立ち、破壊されゆく前頭葉は必死にその蛮勇を奮い立たせ、破壊されゆく言語野の中から必死に言葉を絞り出し、かろうじて理解できるか否かの瀬戸際の声を発する者はあった。……虚しくも、残る山賊らのほとんどに彼の雄叫びは届かなかったようだが。
 しかして人として生きる権利は棄てても、その矜持は棄てられずにいるという事か。
 ――なるほどね、とアズールがいつのまにかその両耳に突っ込んでいた、両手の人差し指の栓をすぽんと抜いて。

「聞こえちゃいねぇが、なーんか一生懸命言ってたのは分かったぜ。だがまぁ、極まった盗賊ってのは、形のない技で盗むもんだ、……まぁ、そういう俺の言葉も、もう分かっちゃいないんだろうが」
 その雄叫びは最期の力で絞り出したものだったのか、それともクラッキングが完了したのか。敵ながら勇ましい姿を見せた男は、短な演説を終えるが早いか崩れ落ち、文字通り頭が割れるような痛みに呻くばかりだ。
 その姿をほんの一瞬だけ見てから、すぐにヴィクティムとアリスへと視線を移す。

「悪いが盗らせてもらったぜ。 よう、そこのなかなかエグい戦い方するおふたりさん、よーく聞きな」
「ヒーローって柄じゃないかもしれない、よくある悲劇だと言って見過ごす事だってできた。俺だってそうだ」
「でも、こうして此処にいて、山賊どもを倒してるってのは『そういう事』なんだろう?」
 彼のシーフとしての真骨頂ともいえるであろう、技能:略奪者(スナッチャー)。盗んだのは、『下賤の雄叫び』。
 盗んだ技を使えるのは1度きりだが、きっと今この場こそが、その使いどきで間違いないのだろう。

「山賊どもを!! ひとりのこらず!!! ぶっ殺すぞ!!!!!」

 静かで長閑な村の土地に、確りとその足をつけて、踏ん張り、立ち、その叫びを轟かせる。

「……地獄行きのチケットはいくらでもあるんだ、俺が奴らを這いつくばらせる」
「さっきみたいな脳みそが筋肉製のヤツは任せろ、こいつでサクッと一突きだ」
「じゃあ、ボクの狼さんが余さず残さず、それを美味しくいただくとしよう」

 悪くねぇ組み合わせなんじゃねぇの、とヴィクティム。
 あんまり気持ちのいい光景じゃねぇけどな、とアズール。
 此度の悲劇の主役は彼らだからねぇ、とアリス。
 漲り、湧き立つものを確かに感じながら3人は顔を見合わせ、それぞれの唇に弧を描く。

 この村に押し寄せた山賊たちを殲滅すれば、その根城である山へ攻め込んでいけるはずだ。

「オーケイ、それじゃあ行くとしようぜ。
 スリー、ツー、ワン――………フューミゲイション!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天命座・アリカ
それが、どこにでもあるものだとしてもさ!大事な事に変わりはない!
世界が不幸を見逃してもさ!天命座はね見ているよ!
一人の天才よりもだね、幾人もの平凡の方が!よっぽど価値ある宝物!
では、悲劇を喜劇に変えようか!貴重な「いつも」を守るとしよう!

お腹を空かせる運動と行こう!
たまには最前列にね出るとしようか!スポットライトを当てとくれ!
飛んで跳ねて回って踊る!ウインクだってね忘れない!
ついでに囮にもなるだろう!天才美女はね目立ってしまう!できるだけ敵を引き付けるのさ!【存在感】
お見舞いするのさ私のキック!リズムに乗ろうぜ過激にロック!

アドリブだって歓迎さ!この私に、やってやれない事はない!多分!


浅葱・シアラ
ひぅ……でも……よくある話、で済ませたくないよ……
クロヴィスの願い通り、村の人達の願い、当たり前の日常、取り戻して見せるよ……!


使用するユーベルコードは「神薙胡蝶蘭」
異常な数の山賊が相手なら、沢山の数を同時に攻撃しちゃえばいいんだよね……!
任せて、鉄塊剣を胡蝶蘭の花弁に変えて、花弁の刃を嵐に乗せて、山賊の群れの中心へと向けて放つよ

技能【属性攻撃】で風属性を、【全力魔法】で魔法そのものを強化して、【高速詠唱】で速く何度でも放って攻撃するよ


この世界は広くて、小さな村一つ消えても変化はないかもしれない
それでも、シアたち猟兵はそんな小さな希望を守るのもお仕事だから


ミーユイ・ロッソカステル
――あの妖精の男とは、気が合いそうかもね。
なんて、そんなことを考えては。
そう、知ってしまったからには……蹂躙されるのを黙って見ているなんて性に合わない。


汚ならしい野次や罵倒、罵声。
おまけにそんなもので高揚して襲いかかってくる醜男たち。
……はぁ。

聞くに、耐えないわ。
そう言って、「魔物 第2番」を紡いでは、周囲の猟兵に活力を満たし

……ふぅん、同じことをしているように見える?
おまえの罵声と、私の魔歌が?
……はっ、耳まで腐ったのかしら。
仲間を鼓舞するという結果は同じでも……決して、そこには埋まらない溝がある。
そんなこともわからないからこそ、おまえたちは世界に魔物と、災魔と謗られ、猟兵に討たれるのよ。



●「おはよう」を交わすこの場所を <村の北側にある山>
 一体どれほどの叫びを、鈍い断末魔を、銃声を、獣の声を聴いただろうか。
 一体どれほどの黒塵を夜風に見送っただろうか。
 猟兵たちはようやく静けさを取り戻した村の、その北側。山にしては高くなく、けれど並みの人から見ればそびえていると言って過言ではない程の山へとその行軍を進めていた。
 山賊たちの勢いを山へと押し戻したとしても、いずれまた同じ事が起きない保証はない。ならばその根源も絶つべきだ。
 敵の本拠地へと乗り込めば、そう歩を進めないうちから、再びあの喧しく品のない足音と叫びが猟兵たちの耳へと飛び込んでくる。

「なァにがどうなってンだごるぁああ!!」
「村に降りたヤツはみんなやられちまったってのかぁ!? 情けねぇヤツらだぜ、冒険者ごときによォ!」
「冒険者も村人も、オレたちがまとめて皆殺しにしてやんぜぇえ!!」

 続いて、その叫びに賛同するかのような、およそ言語として認識できない野蛮な雄叫びが山の枝葉をびりびりと揺らす。

「ひぅ………!」

 そしてその叫びは、浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)の木の葉よりも可憐な翼をも揺らした。
 その可憐な翼よりも小さな肩をびくりと震わせ、木の葉よりも鮮やかな緑の瞳を微かに潤ませる。
 それでもフェアリーの少女は決してその羽ばたきを止めることはなかった。

「村の人達の願い、当たり前の日常、取り戻して見せるよ……!」
 きっ! と、その叫びの主を力強く眼差す緑の瞳。自身の身の丈ほどもある大きな――フェアリーである彼女にとっては、大きな――剣を握りしめた、その隣。
 山賊どもの野蛮な叫びに歓声や喝采のような華やかさはなかったが、それでも緞帳を上げるだけの声量はあったか。
 それとも、健気に、気高く咲く傍らの胡蝶の華やかさが緞帳を上げたか。
 あるいは、そのどちらもがなくとも舞台に躍り出ずにはいられなかったか。

「ああそうだとも、その通り!」
「それが、どこにでもあるものだとしてもさ!大事な事に変わりはない! 世界が不幸を見逃してもさ!天命座はね見ているよ!」
 天命座・アリカ(自己矛盾のパラドクス・f01794)の歌うように高らかな声が、山賊の声に対抗するかのように山の枝葉を小気味良く揺らした。
 さぁ天命座の開幕だと言わんばかりに、桃色の長い髪をなびかせ、すらりと伸びた長い足で颯爽と舞台に上がる。
 夜空に上った煌々と照る月は今宵の彼女のスポットライト、常緑になんてさえぎらせない。
 ……けれども舞台と名の付く場なら、喜劇も悲劇も変わりなく、それを彩る音楽は必要だろう。
 山の土にヒールは鳴らないが、それでも夜が、この時間が、彼女の時間であることに変わりはない。
 夜風にふわり、なびく桃色がもうひとつ。ミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)だ。

「……はぁ。聞くに、耐えないわ」
 対峙した魔物たちの、お世辞にも旋律とは呼べない轟音に心底不愉快そうに大きなため息をついた。ましてやそんな物で士気を高揚させるなど、低俗の極み、と。
 大きく吐き出した息は白く細い線を描いて、彼女の呆れたようなつぶやきと共に夜へ消えてゆく。
 汚らしい醜男どもに聞かせてやるほど安いものではないが、小さな体躯に大きな願いを背負う騎士、それから舞台の真ん中に堂々と立つこの役者になら、聞かせてやってもいい歌がある。
 この夜が自身のものであることを示す刻印。
 その中に内包された譜面を捲り、五線譜を辿り、音符をなぞるための、形のいい唇がゆっくりと開いた。
 
 ――イントロダクションは、ステージの始まりを告げるように吹いた夜の風。それから冷えた空気を吸い込む、小さな音。
 次の瞬間、勇ましくも厳かな旋律が、男たちの雄叫びさえも圧倒して夜の山林に響き渡る。
 開かれた楽譜は『魔物 第2番』。
 眠っていた鳥が目覚め、羽ばたく音がした。山の枝葉は、その歌声の邪魔をすまいと頭を垂れるように静まり返った。
 夜を統べる者の旋律は月まで届き、そのスポットライトが強まった気さえした。

「わぁ……! すっごく、かっこよくってきれい……!」
「おぉっ! 素敵じゃないか流石だね!舞台に音楽は欠かせない!」
 その女性らしい体つきからは想像もできないほどの力強い歌声が、シアラとアリカの士気を高めていく。
 聴衆たちの歓声に応えることなく、ミーユイは奏で続ける。
 お前たちの醜い罵声とは違うのだ、と言外に。金色の瞳は、敵意露わに山賊たちを睨みつけて。
 
 ――――いざ、滅ぼさん。

「……そう、だよね…! 村の人たちを怖がらせる、悪い人……シアたちが、やっつけなきゃ…!」
 ミーユイの歌声を受けて、ハッとしたようにシアラが小さな手に力を込める。
 それに応えるように鉄塊剣、制裁紫光蝶剣は無数の舞飛ぶ胡蝶にも似た花弁へと姿を変え、時折そよぐ程度だった風はその勢いを増した。

「お前みてぇなちっこいヤツに、オレたちがやられるワケねぇだろうが!!」
「邪魔すンじゃねぇよちっこいの!!」
「女3人でオレたちを相手にしようってかぁ!? お前みたいなフェアリーの小せぇカラダでナニがデキるってんだ!!」

 「ひぅ……!」
 口々に罵ってくる山賊たち。心無い数の暴力に、言葉の暴力に、ほんのすこしだけ、怯みそうになるけれど。
 ……でも、大丈夫。怖くない。だって、

 ――――我らこそ猟兵、いざゆかん。

「…そう……シアたちは、猟兵……。
 …たとえ小さな村でも、小さな希望でも……それを守るのが…、シアたち猟兵のお仕事だもん…!」
 美しくも力強い歌声が、勇気をくれる。シアラの呼ぶ風は、どんどんと勢いを増してくる。
 いつしか少女の双眸、その輝きの内のひとつが、炎のように赤く染まっていた。
 
「たくさん居るなら……たくさんの数を、同時に攻撃しちゃえばいいんだよね…!」
 胡蝶蘭の花弁が嵐に乗って、山賊たちの群れの中へ蝶のように羽ばたき、薄汚れた体を次々と切り刻んでいく。
 とめどなく吹き荒れる真白い花の嵐に、山賊たちの悲鳴がいくつもこだました。

「ちきしょう! あンなちっこいのに何を手こずってンだ!! あんなモン握りつぶしてしまいだろうが!!」
「そうだそうだ! オレはあっちのおっぱいのでけぇ歌の姉ちゃんに用があんだよ!!!」
 ひとり、またひとりと黒塵に姿を変えて消えていく仲間たちに焦りながら、何とかその嵐の中を掻い潜り前進してくる者たちもある。
 この花嵐の出所を叩こうと、生のある内にその醜い欲望を発散しようと、彼らを突き動かすものはそれぞれだが、しかしてこの嵐の中を突き進んでくるその体躯は凶悪なまでに逞しい。
 シアラとミーユイが思わず身構えたその時、

「おぉっとそうはいかないさ! 天才美女を忘れてないかい?」
 絶えず音楽が鳴り響き、惜しみなく花吹雪の舞う舞台。
 ――役者がいないはずがない。
 ひらりくるりと躍り出て、立ちはだかるは天命座。
 スポットライトを当てとくれ、『天命座・アリカ』はここに在り!
 アリカは舞台の、否、部隊の最前列、シアラとミーユイをかばうように、向かってくる山賊らの前へと出た。
 必然、山賊たちの標的はアリカへと移る。

「あ゛ぁ!? オレの邪魔をすンじゃねぇぐほっ!?」
「おっ何だよこっちの姉ちゃんも良くみりゃイイ脚んごっ!?」
 山賊たちの首から上を薙ぎ払うような回し蹴りが華麗に炸裂する。
 死の間際に彼女の魅力に気づいた山賊の内のひとりは、その魅力に殺されたのだから本望だったことだろう。
 2人ぶんの黒塵が夜風にさらわれていくのを見送り、これで終わりかい? と得意げに口角を上げるアリカに、残る山賊たちが大挙して押し寄せるが

「……!」
「危ないっ……!」
 ミーユイの声量が、より力強いものとなる。いつまでだって、歌ってみせる。
 すかさずシアラが再び花弁を乗せた突風を呼ぶ。何度だって、呼んでみせる。

「ありがとうありがとう! 花も歌も、尽きては舞台が陰るというもの!」
 そんな2人からの支援に、まるで歓声や拍手に答えでもするかのように。
 ぱちんとウインクを飛ばしながら片手をあげて、アリカは駆ける。
 ――華麗に踊りて死線を越えて、山賊どもの視線をロック!
 ――花嵐に歌い手歌劇も超えて、リズムに乗ろうぜ過激にロック!
 台本のない舞台に、高らかな声が響く。
 白い嵐を辛うじて耐えた山賊たちも、スポットライトを浴びて輝くアリカの敵ではない。
 演出も役者も全て揃い踏みの絢爛豪華なステージは、みるみるうちにマナーの悪い観客たちを駆逐していくのだった。

 ――やがて歌がやみ、嵐がやみ、山賊があらかた夜の彼方に消え去ったころ。
 爽快な集団戦を終え、シーンを変えるために少しの間ステージの幕がおりる、ほんの少し前。
 私の歌はロックではないのだけれど、とやや納得いかない様子でこぼす歌姫の姿が、あったとか、なかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『山賊親分』

POW   :    強欲の叫び
【酒!】【金!!】【女!!!欲望に任せた叫び声をあげる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    剛斧一閃
【大斧】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    手下を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【山賊子分】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 やがて再び舞台の幕は上がった。
 猟兵たちを待ち受けていたのは明らかにこれまでの山賊たちとは違う、大男。

「なンだなンだ、全員やられちまったってのか?」
「お前らがみーんなやっつけちまったってのか?」
「あンなちっぽけな村を守るために?」
 理解しがたい、と言わんばかりに、ぎょろりと猟兵たちを睨みつける。
 何人かの猟兵は本能的に悟る。手下が死んだことを、命を奪うことを、敵でも味方でも、命が失われるという事を、何とも思っていない目だ。
 ぴり、とした緊張が走る、静まり返った山の頂上。
 開けていたのか、それともその大斧で無理やり開いたのか。
 山賊たちの本拠地はどんな得物を振り回すのにも申し分ない、けれど何一つ文明を感じられない、あの村にあったような細やかな積み重ねも営みも何一つ感じられない、だだっ広いだけの場所だった。

「がっはっは、わからん! 全ッ然わからん!
 わからんが、アイツらを皆殺しにしたって事はそれなりに腕がたつンだろうって事はわかるぜぇ!!
 悪くねぇ、悪くねぇ! 強いヤツはキライじゃねェんだ!
 だから……よっこいせ、っと」
 歯茎まで剥き出しにして豪快に笑い、掛け声とともに男が立ち上がり、巨大な斧を、ペンでも回すかのようにぐるんと回転させて、構える。
 ――そのついでに、傍らに控えていた、手下であろう山賊の一人の首を刎ね飛ばしながら。

「まずはお前らを皆殺しにして、それから村へ降りるとしよう」

 猟兵なら、否猟兵でなくとも。
 オブリビオンとはいえ、哀れ、たった今目の前で消えた命。
 その黒塵を目障りだと言わんばかりに片手で払う姿を見れば、もう分かるだろう。
 ――この男は、生かしておくわけにはいかない存在だと。
アロンソ・ピノ
刀の錆にもしたくねえクズ山賊だが、ぶった切らねえと話が始まらなねえしな。POW判定でぶん殴るだけだ。
ユーベルコードによる刀身変形を主体に闘うからスタイルとしては剣術というより抜刀術だな。あとバーバリアンなので気合入れる時は脱ぐぞ、上だけでも。筋肉はある。

後剣の変形は不可逆だから収まらないくらい変形したら納刀する前には毎回刀身指の力で折ってる。
刀身変形の形は鞭型で薙ぎ払い、巨大な剣型で一撃必殺、抜刀した瞬間に刀身すっぽ抜けるようにして遠距離攻撃、後普通の刀型で切り結びの4種だ。
この山賊ほど品性を売り渡してる輩は―何もかける言葉がねえや。疾く死ねくらいのもんだべ。
春夏秋冬(ひととせ)流、参る。


アズール・ネペンテス
…まごうことなき山賊だなこりゃ。
流石にさっきまでの有象無象の群れよか首領なら強いとは思うがもっと手下を大事にするべきだな。まぁどうせ力づくだったりなんだかんだついてきたような手下どもだと思うが。

それに…先の言葉を借りるならば
「ヒーローって柄じゃないかもしれない、よくある悲劇だと言って見過ごす事だってできた。俺だってそうだ」
「でも、こうして此処にいて、山賊どもを倒してるってのは『そういう事』なんだろう?」

…つまりてめぇの価値観で計れねぇことってのが世の中にはあんだよ。
だからお前の命も『頂く』ぜ?

(アドリブ歓迎


アリス・イングランギニョル
やれやれ、これはまた如何にもな悪役だね
もう少しテンプレートから外れてくれもいいんだぜ?
なにせ、面白味というものがまるでない

これはまた、聞くに堪えないとは正にこのことだ
正直耳を塞いでいたい気分だね
そんなに欲しいならいくらでもプレゼントしてあげようか

マッチ売りの少女を呼び出したら、炎で幻惑を見せてしまおうか
見せる幻惑は勿論、彼が見たいもの
ああ、勿論詳しい内容については知りたいとは思わないけどね
いかにも趣味が悪そうだ……ボクの言えたことじゃないけどね

【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】


浅葱・シアラ
ひぅ……!
おっきい……山賊の首領……怖い、身体が震える……でも……
負けない、許せない、あなたは、シアたちがやっつける!


使用するユーベルコードは「胡蝶閃」
許さないよ、絶対に……だから。
力を貸して、お母さん。
巨悪に立ち向かった光の蝶
その娘たるシアは、こんなちっぽけな悪に負けたりしないから

お母さんから受け継いだ蝶の閃光
技能【高速詠唱】を使って、早く、何度も何度も放つよ

蝶の閃光は命中すれば脱力する、だから、何度も何度も当てて、皆を襲うその力を奪わせてもらうよ


あなたは小さな村って言った。
でもあそこに住む人たちは懸命に生きている
当たり前の毎日だけど、それを幸せに思ってる
その権利は、誰にも奪わせない!




「刀の錆にもしたくねえクズ山賊だな」
「あぁ…、こりゃまごうことなき山賊だ」
 山の頂上を吹く風は冷たい。その風を押し返すように、春の麗らかな色をした髪を揺らしながら、アロンソ・ピノ(一花咲かせに・f07826)は愛刀・瞬化襲刀の柄に手を掛ける。
 傍らでその声にうなずくアズールはといえば、先ほどまで相手をしてきた子分たちと比べれば明らかに違うその力量をはかるかのように、また己が盗むべきものを見定めるように、斧を片手に立ちはだかる首魁を、そのマスク――否、兜と言った方が適切か――の隙間から見据えていた。

「ひぅ……! おっきい……!」
 立ち上がるだけで山の木々を揺らした気さえするその男は、フェアリーであるシアラには殊更大きく、恐ろしく映っている事だろう。
 びくびくと震える妖精の声を背中に聞きながら、アリスはやれやれと、自分から見ても充分に大男と呼べるその体躯にじっとりとした視線を向ける。
 どこにでもありそうな村を襲う山賊団という、どこにでもありそうな悲劇を救いに来てみれば。
 そのどこにでもいそうな安っぽい山賊達の親玉は、醜悪な見た目、命を命と思わずに、力なき者を怯えさせる大男ときた。

「もう少しテンプレートから外れてくれてもいいんだぜ? なにせ、面白味というものがまるでない」
 彼女の心底がっかりしたような口調は無理もない。何せ彼女は100年の時を経た書物に宿った魂、つまるところその手にある、古びた本のヤドリガミ。
 ならばこの物語のボスであるところのこの大男、余りにもお約束が過ぎる彼という存在は、彼女にとってチープ極まりないものだった。
 そんな事も露知らず、ボスを目の前にして不満を述べるだけの余裕があるアリスの事を、大した女だ、と笑うアズールが言うことには。

「確かにな、絵に描いたような山賊だ。 それが不満だっていうんなら、せめてその倒し方には面白味ってヤツを持たせていこうじゃねぇの」
 彼らの目の前に山のようにそびえたつ大男。残念ながらチェンジというわけにもいかないのもまた物語のお約束だ。
 まぁ一理ある、とピノが頷き、そうは言うがどうやって?とアリスが問おうとしたその時、どうした誰も来ねぇのか、来ねぇンならこっちから、とがなり立てるうるさい声。

「ひぅっ……!」
「っしゃぁあ! まずはあのちっこい女からだァア!!」
「……っ!」
 その声に再びびくりと肩を震わせたシアラは、大量に召喚された山賊子分たちの恰好の的となってしまった。
 山賊親分によって召喚された山賊子分たち、命などあってないような彼らの攻撃はひとつひとつが捨て身の一撃。
 ナイフ片手に一直線に突っ込んでくる山賊、シアラが震えそうになる手で武器を構えようとした――その瞬間。
 金属と金属が強くぶつかり合う、重たい音が3回。
 シアラの目の前には、ダガー1本で山賊3人のナイフによる刺突を捌いてみせたアズールの姿。

「っと、危ねぇ危ねぇ……よぅ、大丈夫か?」
「あ、…ありがと……! …突然で…すこしだけ怖かったけど……
 ううん、でも…! シアは、もう大丈夫……!」
 少女の見た目でも聞こえてくる声は男性的。そのギャップにほんの少しだけ戸惑いながらも、シアラは力強く頷く。
 そんな少女の戸惑いなど知る由もなく、けれどもう彼女の手が震えていないのを確認して、アズールは頷き、山賊たちに向き直る。

(……まーた、柄にもねぇことしちまったなぁ。)
 この山へと登ってくる前、先ほどの村での戦闘がふとアズールの脳裏をよぎった。
 山賊たちの技を盗み、それをそのまま拝借したとはいえ、随分と熱い名演説をしたものだ、と。

「でもまぁ……つまりは、てめぇの価値観で計れねぇことってのが世の中にはあんだよな」
 結果として村人たちのささやかな営みを守っている自分も、咄嗟に体が動いて少女を庇った自分も、もちろん報酬ありきでちゃっかりと仕事をこなすいつもの自分も、うまく理由をつけられなくとも、その全てが。ヒーローなんて柄じゃなくとも、時にはヒーローをしてやる時もあるヒーローマスク、それがアズール・ネペンテスか――なるほど、そんなことも世の中にはあるのだろう、と。

「よう、赤ずきんの……アリスっつったか。さっき、どうやって倒し方に面白味を持たせんのかって顔してたよな」
 ――なら、こういうのはどうだ?
 ニヤリと笑ったような声音が呼び出したのは、山賊子分の群れだった。
 急に、それも味方側から増えた敵に思わず武器を構えた猟兵もいたのも束の間、アズールの呼び出した山賊子分たちは思い思いの武器を手に、山賊子分に、あるいは山賊親分に突撃していく。

「くくっ、なるほどね。さっきあの子を庇ったときに略奪(スナッチ)したってワケかい?
 敵の味方だったヤツらが、急に敵を襲い始めるっていうのは、うん、なかなか痛快だ」
 その手口は変わらずとも、奪う技によっていくらでも化ける。先刻の村で一度は見た彼の鮮やかな手口に、悪くないね、と笑うアリス。
 そんなアリスに少しだけ得意げに、ヒーローマスクは返すのだ。

「理解が早ぇな、そういうことだ。
 ……さぁ、この調子でアイツの命も『頂く』としようぜ」



「だあああクッソ! クソぉっ! 親分に立てつくたァ使えねェヤツらどもめ!!」
 力任せに斧を振り回す音が、木々を揺らす。
 大男にナイフを突き立てようとした山賊子分と、そのナイフから親分を庇おうとした山賊子分が、同時に消し飛んだ。
 この男には、自分自身の呼び出した子分も、アズールの呼び出した子分も、見分けがついていないようだった。

「ひぅ……そんな、ひどい……あの子分の方は、味方なのに……!」
 その様子を目の当たりにしながら、再び恐怖に飲まれそうになるシアラは、ふるふると首を横に振る。
 小さな村に懸命に生きること。その懸命に生きることを当たり前と感じながら、そしてその当たり前を幸せと感じながら、日々を紡いでいくこと。
 シアラには覚えがあった。これまで、母親に、父親に、その小さな体いっぱいに受け取ってきた『当たり前という幸せ』。
 それを、奪うことなんて。

「……許せない! あなたは、シアたちがやっつける!」
 ――力を貸して、お母さん!
 少女の目には、もう恐怖は映っていなかった。
 村人たちの幸せを脅かす大男、まずは召喚された手下から。
 両親の愛情を一身に受けて育った少女の優しい瞳には、例えそっくりな見た目でも、敵の召喚した山賊子分と、先ほど自分を庇ってくれたアズールの召喚した山賊子分の見分けが付いていた。
 かつて巨悪に立ち向かった、気高き光蝶の騎士を母親に持つフェアリーの少女は、その母親から受け継いだ蝶を解き放つ。
 何度も何度も煌き輝く、光の蝶。放たれるのは1匹ずつでも、シアラの詠唱速度にかかれば、およそ群れといって過言ではない数の閃きが夜闇を照らした。
 少女に『幸せ』を教えてくれた母親の、戦う力としてだけでなく、娘を想う心までも受け継いだか。蝶たちはシアラを守るかの如く、次々と山賊子分たちを無力化していく。
 そうして光の蝶が舞い飛んでは無数の子分たちを順々に消し去っていく、その傍から。
 ――ごう、と風ごと薙ぎ払う音。

「まどろっこしい。 オレはあのでけえのに用があるんだ」
 その音と共に消し飛んだ、大量の山賊子分たちがサラサラと消えていく。
 鞭の如くしなった刀身をバキボキと――そう、バキボキと、事も無げに指で折りながら、ピノは残る山賊子分たちを無視して、その奥に立つ大男を睨みつけた。
 その腰に提げた鞘の長さからは想像もつかないほどに遠くまで届いた刀身を、そして木の枝でも折るようにそれを折ってみせるその指先を。思わず見ずにはいられない、アズールの、シアラの、アリスの、山賊子分たちの、『信じられない』という眼差しを物ともせず、静まり返った山頂にただ響く、がちゃりと刀を納める音。

「……さぁ、次はどれが見たい?」
 『閃変蛮化の太刀』。その場の全員が目を疑ったその光景こそが、彼のユーベルコードの名に所以するところなのかもしれない。
 覗くたびに姿を変える万華鏡のごとく、春夏秋冬の移り変わりのごとく。鞘から抜くたびにその姿を変えるその技、――まさしく千変万化。
 斬り応えのない有象無象、品性の欠片も感じられないその親玉。どちらもこの家伝の宝剣に斬らせるには惜しいのだが、斬らねば話は始まらない。
 ならば致し方なかろうと、その柄に再び手をかけるピノ。その視線の先にいる大男が応えるようにニタリと笑った。

「面白ェ武器じゃねぇか、そこのピンクの くく……ぐふ、ふふふはははは!!」
「てめェをぶっ殺して、その刀を売り飛ばしたらいくらになるンだろうなぁ!?」
「そいつはアレか、伝家の宝刀ってヤツだろう!? ってェことは、がはは! いくらほども酒が飲めそうじゃあねェか!!」
「金があればいくらだって女も買えるときた! 無理やり犯して泣き叫ぶ女も嫌いじゃあねェが、自分から傅く女ほど気持ちイイもんはねェからなぁ!!」

「ちっ!」
「……待ちなよ、挑発だ」
 代々伝わる愛刀を醜く喧しい声に穢され、怒り露わに舌打ったピノを制したのはアリスだった。
 下卑た叫びにしか聞こえないが、しかして確かにその斧を振るう力が強まったのを、彼女は見逃していなかった。
 冬の外套と見まごうほどに長い黒髪を微かに揺らして彼の肩を掴む。
 春の気まぐれな突風のように飛び出そうとしていた桜色の髪が、慣性の法則で大きく揺れる。
 春の陽射しのような金色の瞳を覗き込み、まぁ見ていなよ、と続けた。
 ……アリスの瞳は、戦場を包む冬の夜よりも暗かった。
 見た目の歳はあまり違わぬはずなのに、有無を言わせぬ不思議な圧を感じながらも、ピノは「でも、」とアリスを振り切ろうとして、気づく。
 いつの間にかアリスの傍らには、冬の寒さに凍える女の子の姿があった。

「……その子、」
「あぁ、キミも聞いたろ? アイツの聞くに堪えない欲望の限りをさ」
 ――そんなに欲しいなら、いくらでもプレゼントしてあげようじゃないか。
 アリスの召喚した女の子――マッチ売りの少女は、かじかんだ手でバスケットからマッチを取り、凍えた手で火をつける。

「あン? 何だ、さっきまでそんなガキは居なかったハズだろ、う、が…!?
 なンだてめぇ!! 山で火遊びしちゃいけねぇってママに教わらなかったのかあ!?」
 その灯火に気づいた大男の慌てたような声に、その場の猟兵全員が「なんか急にまともな事言い出したな」と思ったが、そんなのにはおかまいなしに、マッチ売りの少女は無邪気にトコトコ大男の元へ歩いていく。
 山賊子分たちが止めようとしても、大男が斧を振りかざしても、召喚された女の子はちっとも怖がる様子を見せず、トコトコ、トコトコ。
 彼女の目的はたったひとつ。だって、そうしないとこの寒さから逃れられないのだ。あたたかいご飯が、食べられないのだ。
 一心不乱に、トコトコ、トコトコ。
 この山には、北風から守ってくれるおうちも、あたたかなストーブも見当たらないから、きっと大きなあの人は欲しいと言ってくれるだろう。

『あのぅ……マッチ、要りませんか?』
「いらねぇいらねぇ! こっちに来るンじゃねぇ!
 いらね――……お、女だ! おいお前らこっちにこい、ぐっへ、こいつぁ上物だ!!
 ボインボインでブルンブルンの女が山ほどいる! お前らの分もあるぞォ!!」
 山賊子分たちが、気の触れたようなことを言い出した親分を一斉に振り返る。もちろん、そんな女たちなど何処にも居やしない。
 ごうごうと燃える自分の足に灯った炎を見て大興奮している大男の滑稽な姿の意味もわからぬまま、山賊子分たちはその火を消しに慌てて親分の足元へ走った。
 ……えい、と女の子が放ったマッチの火は、山賊親分の足元、いかにも燃えやすそうな毛皮に落ちていた。
 その油分を吸い上げて勢いよく燃え上がる炎は御伽噺のとおり、対象の見たいものを幻として映し出す。
 ――燃え尽きてしまえばそれでおしまいの、ほんのひとときの、美しくも儚い救い……では、到底なさそうな様子に、「想像したくもないな」とアリスは肩を竦める。
 少なくとも、あたたかなストーブや、美味しそうなターキーや、クリスマスツリーや、愛しい人ではないことは分かるねと呟いて、アリスはピノに声をかける。

「さ、今なら邪魔もない上に隙だらけだぜ」
 そう言ってくく、と笑うアリスの声は、つい先ほど感じたのとは打って変わって、それはまるで少女のように悪戯な声。
 その落差に思わず面食らいながらもピノは頷き、再び柄――ではなく、手を掛けたのは、その衣服。

「………おや」
「おぉ」
「……きゃっ…!」
 月明かり注ぎ、寒風吹きすさぶ山の頂上。
 その明かりに、その冬の風に、そしてその場に居た者たちに見せつけるかのごとく。
 さらされたのは、形よく引き締まった上半身。

「あれほど品性を売り渡してる奴に、何もかける言葉はねえや。
 ……疾く死ねくらいのもんだべ」
(………………………"だべ"?)
 つい先ほど脱ぎ捨てられた都会風の出で立ち。
 そこから想像しづらかった彼の言葉尻に、クエスチョンマークが浮かんだ者は……居たかもしれないし居なかったかもしれない。
 何にせよその疑問を誰一人として言葉にしなかったのは、優しさか、それとも彼のその気迫に押されてか。
 火の脅威に慄く山賊たちの悲鳴ばかりがこだまする戦場に、ともあれ鯉口を切る音が割り入った。

 ―――――春夏秋冬流、参る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミーユイ・ロッソカステル
そう、私は嫌いよ、お前。

なんて、すげなく呟いて


村で手下どもを片付けたと思ったら、また数を用意したという訳。
……まぁ、丁度いいわ。私も直接痛い目を見せてやりたいと思っていたから。
あるのよ。お前たちのような、浅ましくて、醜いものたちにぴったりの演目が。
歓声は、断末魔で結構。

脳裏から選び取った曲目は、「不愉快で耳障りな狂想曲 第1番」
唇から紡がれるのは、美麗な歌声などではなく。不快さで頭を叩き割るような、不協和音のオンパレード
ユーベルコードで作り出された「音を反響する領域」の中に、狂気のリズムが満ちて、山賊たちの間に響き渡る

……さて、親分なら、これでも致命には至らないでしょう。
――後は、任せたわ?


天命座・アリカ
生命を奪う事を、少しは悔いていたのだがね。
それでもだ、君は駄目だねなってない!君の在り処はここじゃない!
悲劇の渦をね終わらせようか!
おはようにはおはようを、笑顔にはだね花束を、悪意にはそうさ天罰を!

先ほどは、スポットライトを浴びたから!ここらで少しクールダウン!
最前列をね明け渡そうか!裏方もできるのが天才ならば!
現れたまえよ人形兵!整列してねはいポーズ!
雑兵相手は引き受けようか!露払いをね任せておいて!
紙一重の勝負なら!指揮者の差がね物を言う!私のタクトについてこられるかい?

雑兵がだねいないなら?親玉にちょっかいをかけようか!
うろちょろわらわらチクチクと!舞台の袖で踊るのさ!

アドリブは歓迎さ!




「はぁーっ………はっ……はーッ……! くそッ……くそっ!!」
 山のようにそびえた巨体が、大きく肩で息をする。不規則な上下運動、それに伴って吐き出される息は、熱風のようだった。
 顔をしかめたくなるような臭気を帯びたそれに、隠すそぶりすらなく、ミーユイは顔をしかめる。
 こんな人間らしからぬ巨体にも心の臓はある。腹から肩にかけて大きく入った太刀傷から、男がひとつ脈打つたびに赤黒い血が噴き出し、山頂を汚していく。

「ふ…ふはっ……ははははははっ!! 面白ェ! 面白ェ!!
 アイツらを皆殺しにしただけのこたァある!! 強ぇな!! 強ぇんだなァ!!!
 へへっ……へへへへへ……、……気に入ったぜェ……!」
 そしてなお、大男は血気を上げる。声を発するたびに噴出す血にも構わず、耳障りな笑い声をあげる。
 鉄の臭いの混じった冷たい空気が、ミーユイの肺を満たした。

「……そう。私は嫌いよ、お前」
 そうして紡いだ声もまた、冷たく。
 彼女のゆるりとした仕草に連なる桃色の髪が、月明かりに照らし出される。
 隣から一歩踏み出した彼女を見送るのは、もうひとつの桃色。

「これは麗し夜の歌姫、今再びの開演かい?」
 またあの歌が聞けるのかと、開演を告げる支配人のように、恭しくお辞儀をしてみせようとしたアリカを、手のひらだけでミーユイが制する。
 目の前に出された白い手に、おや、と不思議そうな顔をしたアリカを振り向くこともしないまま。

「悪いけれど、今度はあなたに聞かせるようなものではないの。
 ……あるのよ。あいつらのような、浅ましくて、醜いものたちにぴったりの演目が」
 アリカには彼女の背中しか見えていなかった。故に、ミーユイの冷たい声でしかその感情をはかれない。
 けれども演目というからには、彼女の立ったその場その地こそがステージだ。
 この山での大舞台、極上の美声で彩られたのが記憶に新しい。ならばそのお返しをするのが筋というものだろう。
 よぅし、と意気込む天才美少女、その声変わらず高らかに。

「そういう事なら任せておくれ、悪意にはそうさ天罰を!
 成功させようそのためのステージ! 裏方もできるのが天才ならば! 現れたまえよ人形兵!!」
 一歩前に出たミーユイが何かを仕掛けてくる気配を悟ってか、子分の何人かがミーユイへと向かってくる。
 村で、山で、あれほど蹴散らしたというのに、無限にも思えた山賊たちの絡繰りはこういう事だったかと思いながら、アリカはそれらに立ち向かう総勢百体を超える人形兵を呼び出した。
 整列してねハイポーズ! というアリカの掛け声に従順に応えた人形たちは、まるでタクトを振るような彼女の手の動きに倣って一斉に走り出す。
 大男の生み出した山賊達も、アリカの生み出した人形達も、戦闘能力こそあれどひ弱だった。
 ナイフの一振り、拳の一振り。そのほとんどは相打って、あっけなく互いに消滅してしまう。
 つまりは互角と言えるはずの戦いで、けれども山賊子分たちの薄汚い手は一向にミーユイの元へ届くことなく……むしろ。

「うおォいどうなってンだ! そんなちっぽけな人形どもに何を手こずってやがる!!」
 大男の怒号が飛ぶのも無理はない。どう見ても同種の技のはずなのに、どう見ても戦況はアリカの生み出した人形たちが優勢なのだ。
 その怒鳴り声と地団駄に揺れる振動に、心底不愉快そうに眉を顰めたミーユイは、当たり前でしょうと呆れた声をこぼす。

「同じ楽団だって、指揮者が違えば違う音色を奏でるに決まっているでしょう。……その実力に差が出るのだって当然」
「おや? おやおや?
 ……やっはっは、こいつは嬉しいお言葉だ! いやはや光栄、恐悦至極!
 つまりはこの指揮このタクト! お眼鏡にかなったということかい!」
 歌姫からの答えはないが、構わず指揮者はタクトを振った。
 少しずつだが確実に、ただありふれた日常で、穏やかな日々を紡ぐがごとく。
 少しずつだが確実に、山賊たちの数を減らして、大男の元へと追いやっていく。
 ――ミーユイが息を吸う音が聞こえた。
 さて、かの魔物たちにどんな歌を聞かせてやるのだろう、いや彼らにあの歌は勿体ないくらいだがと、アリカは耳を澄ましてその背中を見守る。

「―――――――――――――――」
「………え、」
 『あなたに聞かせるようなものではない』。そう言った彼女の歌声が、アリカの耳に届くことはなかった。
 けれども幸福にも彼女の美声を向けられた山賊たちはどうだ。親玉である大男はうずくまり頭を抱え、何かを叫んでいるように見える。似たような動きをする山賊子分は次々と黒塵と化し、消え去っていく。
 しばらくして、ミーユイの唇の動きが止まった。ややあって、血走った目でミーユイを睨みつける大男がノロノロと立ち上がる。
 どうやら彼女のステージは終わったらしい。盛大な歓声を浴びたらしい歌姫は、指揮者の、何か問いたそうな顔にくすりと笑う。

「……あら、言わなかったかしら、あなたに聞かせるようなものではないのよ」
 ――あとは、任せたわ?
 『不愉快で耳障りな狂想曲 第1番』。
 開かれた楽譜の、その名前すらも知るべきではないとでも言いたげに、歌姫はステージを降りるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
【POW】

わからない、というのであればそれで結構。こちらも相容れる気はありませんから…ただ斬られ霧散するがいい。

大斧の一撃は【武器受け】【怪力】で受け止める。味方が攻撃されそうなら【かばう】
この山賊親分とやらが実力者であると認めたら【アンリーシュ】で鎧の力を全解放します。
「人々を護るためならこの身などどうなっても構わない…命など惜しむものか!」
戦闘能力を増大させ、さらに【力溜め】【2回攻撃】を駆使した渾身の打ち込み、耐えられるものか。


メア・ソゥムヌュクスス
私は、他のみんなが怪我をしたら【生まれながらの光】で治癒して回るよー。
眼の前で攻撃される人が居たらその人を【かばう】よー。

大丈夫だよー、私は機械人形だから、痛くはないよ。【激痛耐性】
自分で自分を直せるしねー。

そんな風に、みんなの支援を頑張ってするよー。


どれだけ人を救いたいと願っても、どうしても考えてしまう。
相手が救いようの無いくらいすごく悪い人で、その人に与えるべき安息があるのかと。
私は…、偽物の聖者だから、この人を許せないと思ってしまうの。

私に貴方は救えない。

安らかに、なんて言えないけども…

おやすみなさい。




 音のない大演奏会、そのあまりに静かな幕引きに割って入ったのは、大斧の一撃だった。
 怒り露わに、力任せに、重く、鈍い音を立てて風を切り裂き、振り下ろされる。
 かの歌姫の、あとは任せた、との言葉は一体誰に向けられたものだったのだろうか。
 返事をする者はなかったが、けれど剣を取り戦う者であるのなら、これこそがその返答に他ならない。

「………くっ…!」
 強い衝撃音をもって斧を受け止めたのは、セシリアの大剣、ダークスレイヤー。その刀身から、剣を握る手に、腕に。さらには腕を伝って胴に、地につけた足に、その振動が伝わっていく。
 強く食いしばった奥歯が微かに鳴ったが、構わずさらに食いしばり、渾身の力でもって押し返す。
 ……山賊親分とやら。ある猟兵は言っていた。絵に描いたような、面白味のない悪役だと。
 ささやかな日々を営む村人たちを守らんとする自分たちの行動を、まるで理解できないと断言した、悪逆の化身。
 相容れられる気も、相容れる気も一切ない。しかしこの男の放つ一撃は、その凶悪に巨大な体躯にふさわしいものであった事は、たった今それを受け止めたこの手が、足が、何よりも直に受け止めた暗黒剣こそが、認めざるを得ないと言っている気がした。

「わわ……大丈夫ー……? びりびりーって、…こっちにまで、振動がきたよー。
 でも、助かっちゃったよー、…ちょうど、治療を、してた所だったから……」
 覚悟を決めようとしたセシリアの背後から、ありがとー、と羊雲のような声が飛び込んでくる。
 夜に包まれた戦場だというのに、ふわふわとした薄桃色の羊雲が、ぼんやりとした光を携えながら地上に浮いている。何とも不思議な光景だった。
 その羊雲の正体メアは、聖者として生まれ持った、眩い治癒の光をそっとおさめて、少しだけ疲れたような笑顔をセシリアに向ける。どうやら微かに息切れもしているようだ。
 先の山賊たちとの戦いに加えて、また山賊子分たちとの乱戦が続いている。戦場のあちこちで、その治癒の光を振りまいていたのだろう。

「……間に合って良かったです」
 村で山賊と交戦する直前にも、セシリアは彼女の声を聞いていた。
 ふんわりと綿雲で包み込むような、ゆっくりとまどろみに誘い込むような……けれどはっきりと届く、不思議な声。
 多少の息切れが混じっても、聞き間違えるはずがない。
 怯える子どもたちを優しくなだめ、導いたその声を、セシリアは知っていた。
 ……だからこそ、その声が聞こえたことに安堵した。

「あなたが此処にいるという事は、村の人たちも無事という事ですね」
 何故、今自分が此処に立っているのか。何故、臆することなくあの巨大な斧を受け止めたのか。
 その"理由"がある限り、彼女は変わらず剣を握るだろう。

「うん、小さな子たちも、もちろん大人の人たちも、……みーんな、無事だよー。
 あなたが、村に来た山賊を、食い止めてくれたおかげ、だねー……1人も、見捨てることなく救えて…、本当によかった」
「えぇ、本当に。 迅速な避難対応、感謝します」
 暗黒騎士と聖者。見た目も性格も相反するように見える2人の願いは近しかった。
 己の持てる力、その全てを以て、護るべき全てを護り、救うべき全てを救う。
 故に、戦場を駆けまわったメアの疲労は顔や動きに出るほどで、それを見逃さなかったセシリアが決意を固めるのもまた早かった。
 回復は戦局の要を担う。メアが倒れては、この戦いは、……弱き、無辜の人々を護るための戦いは、厳しいものになりかねない。
 暗黒剣を握り直す力は、大男を見据えた銀色の瞳に灯した光は、よりいっそう力強く。
 『アンリーシュ』。 ―――全てを護ると、誓ったのだ。
 あんなにも煌々と照っていた月に、ぴったりと蓋をするように雲が重なる。
 闇は、一層深まった。それが合図とでもいうように、セシリアの纏う漆黒の鎧に、暗黒の力が満ちていく。

「……おぅ、そこの女。そうだ、オレの斧を受け止めたオマエだ。
 へへっ、随分とイイ目をしてンじゃねぇか、おぉ?
 キライじゃねぇぜ、そう、その目! 絶対ぇに相手をブッ殺してやるっていう目だろ、それ!」
 にたりと、卑しい笑みを浮かべながら斧を担ぐ大男。

「いいねぇ、いい……へへっ…ぐへへへへっ…! そういう目をした女を!
 絶望と! 屈辱に! 叩き落としてやンのが大っっっ好きなんだよオレは!!!」
 一切、その叫びに応えぬまま。真なる暗黒、誇り高き色を纏った騎士は暗黒剣を構え、大きく踏み込み、大男の懐へと斬り込んでいく。
 ―――……ただひとり。
 彼女のいちばん傍にいたメアだけが、妙な胸騒ぎを覚えていた。
 大男の元へ駆けて行ったのは、間違いなく、たった今まで言葉を交わしていた女性、セシリアのはずなのに。
 なぜ、ほんの一瞬、違う人のように見えたのだろう。

「ぐはははっ、自分からきやがったか! この命知らずめ!!」
「人々を護るためならこの身などどうなっても構わない……命など惜しむものか!」
 これだけの手傷を負わせてなお、軽々しく斧を振りかぶって迎え撃つ。
 欲望を叫びとして吐き出すことで増強しているとはいえ、大男の怪力は健在のようだ。
 しかしセシリアの力いっぱい打ち込む斬撃、その重みはあの大斧もかくやという程。
 その重みを感じさせぬほどに素早い連続攻撃を叩き込む動作は、俊敏そのもの。

「ぐっ…あ゛……! がはッ…あ゛、…女……てめェ、一体なにをした……!?」
 いともたやすく斧をいなされた男の巨体は隙だらけだった。
 わき腹に、肩口に、鋭くも重たい暗黒剣を受けた山賊は、紅血の噴出す傷を抑えながら大きくよろめく。

「お前を斬り捨て、全てを護ると誓っただけだ」
 巨大な斧を受け止め、何とか押し返して見せた時よりも、ずっとずっと強く感じられる、否、間違いなく強い、彼女の鬼気迫る覚悟。
 文字通り、命知らずの――その寿命を削ることすら厭わない覚悟を、彼女が駆けだした瞬間に感じた胸騒ぎの意味を、メアはようやく理解した。
 ――……止めさせなきゃ。
 ほんの一瞬だけ、よぎった。疲れ切った足を、動かしそうになった。
 けれどそれを、ぐっと堪える。
 だって、それはきっと。
 『全てを救いたい』という自分の願いによく似た、彼女の覚悟を踏みにじることになる。

(止めるわけにはいかない、けれど……長引かせちゃ、いけないよね……!)

 だから今は、一刻も早く。
 救えない、救うべきではない者が、目覚めのこない眠りにつくのを祈るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祇条・結月
レイラ・エインズワース(f00284)と

……あの山賊達にはちっぽけで何の価値もないものなのかもしれない
でもこの村はささやかな過去をつみ重ねて未来を作ってる
奪うことしかしない過去に、好きにはさせたくない。……だから、ごめん
レイラ、力を借りる、ね。僕の我儘

レイラをカバーできる位置でサポートに立ち回る
クナイを【投擲】して【援護射撃】での牽制や「銀の糸」で即席の【罠使い】や【敵を盾にする】を駆使して山賊親分や増えた子分の動きを制限、
効果的なタイミングを見計らって敵に銀の鍵で錠をかけて子分の召喚を封じる

散々使い棄てておいて、少し虫がよすぎるんじゃない?

アドリブや絡みは歓迎
好きに動かして


レイラ・エインズワース
祇条・結月(f02067)サンと

どんなに小さくたって、質素だって
消えていい未来ナンテ、ナイんダヨ
謝るコトないヨ
私も同じコト思ってるんだから、サ
過去の亡霊が未来を吹き消すっていうのナラ
その夢を終わらせないとネ

本体たる角灯を揺らし、呼び出すのは冥府の槍
謡うように葬送の詩を【高速詠唱】して攻撃するヨ
籠めるのは【全力】の魔力と奪われたものの【呪詛】
祇条サンの鍵には驚くケレドその隙は逃さないヨウニ
すごいジャン! ありがとうネ
油断シタ?
いけると思っタ?
使い捨てにしてタ部下にこんなに依存してるノニ
貴方を守るものはもうナニもナイ
全ての槍を集中させて射貫くヨ

アドリブ・絡み歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


ロー・オーヴェル
山ほど感じていることはあるが
俺はこんな『物体』と言葉を交わす為に来たんじゃない

とはいえその存在は侮蔑すべきものでも
戦闘力は侮れない存在だろう
感情に心を動かされず冷静な行動を心がける

仲間との戦いの中で相手に発生した隙をついて
確実にナイフで傷を与えていく

【二回攻撃】や
相手行動を掣肘できる可能性のある【マヒ攻撃】
一時的な攻撃力の低下が見込める【武器落とし】も活用

一本や二本じゃまだ終わらんだろう
何本刺せるか試すのも一興か

手下を呼んだら
親分より手下を消す事をメイン

戦闘後は煙草で一服
「……俺の人生の中で、十指に入るくらいの無駄な時間だったな」

まぁその無駄のおかげで
『ちっぽけ』な存在が救えたなら、それでいい


ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ!いいねぇ、いい悪党ぶりだ。シンプルな思考してる悪党は好きだぜ。俺だって散々奪ってきた側だからな…理解は出来る。
──だが、お前には美学が足りてない。格下から奪ってる内は二流さ。
どうせやるならジャイアント・キリング狙わねえとな?

山賊には理不尽でお帰り頂くとしよう。強酸ナノマシンで潰してやる。
狙うのは山賊子分の殲滅、そして親分の武器を破壊することだ。
【ダッシュ】しながら【破壊工作】よろしく、ナノマシンを散布しておいて、召喚されたら一気に撃滅。さらに、奴の武器のウィークポイントを【見切り】、【早業】で迅速に無力化を試みる。

前時代の二流悪党に見せてやるよ。スマートで効率的な仕事ぶりってやつを、な。


エスチーカ・アムグラド
強い事は……ええ、チーカも強くありたいと思いますから悪い事とは思いませんが、その強さを振るう心が伴わなければお話になりません!

ご自分の力に随分自信があるようですから、チーカはそれを利用させて頂きます!
チーカがあの斧を受けてしまえばきっと掠っただけでも大変なので、躱すことに重点を置いて戦います
子分の召喚もしてくるかもしれませんし、その時もやっぱり無理に攻撃はしません!
【空中戦】で逃げ回りながら、でも逃げ切らないように【おびき寄せ】て……
チーカが防戦一方だと敵が油断したら、【風精霊の加護】で反撃しましょう!
「あなたはもっと周りの事を考えるべきです!それが戦う相手であっても!」




「クソがあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!」
 いつのまにか、月は再び顔を出していた。
 物言わぬ月が照らす山頂、雲を散らし木々を揺らし、猛々しく響き渡るその音を、何と名付けよう。
 二足歩行の獣は、猟兵たちの猛攻を受けてなお立ち上がる。ぎらついた瞳の焦点は、最早どこにも合っていない。
 巨体のそこかしこを血に濡らし、荒々しく肩を上下させ、尚も猛ってみせるその姿に、多くの猟兵たちが直感する。
 人であれ、獣であれ、魔物であれ。例え美醜の差はあれど、全てに等しく訪れる、死。
 その死が間近に迫ることを知りながら――それでも、生にしがみつこうとしている姿であると。

「……ごめんね、僕の我儘に付き合わせてしまって」
 その多くの猟兵たちのうちのひとり、祇条・結月(キーメイカー・f02067)のぽつりと呟く声に、謝るコトないヨ、と応える声。
 大男の咆哮が、絶えず夜を震わせる。
 
「私も同じコト思ってるんだからサ。
 過去の亡霊が未来を吹き消すっていうのナラ、その夢を終わらせないとネ」
 エレメンタルロッド、ウィステリアに揺れるランタンに灯る紫の焔は、そんな咆哮など物ともせずに、結月の俯く横顔を照らし出す。
 ランタンの持ち主……否、ランタンそのものである少女、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)が、ネ?と短く笑う顔に、少年は微かに肩の力が抜けるのを感じた。
 ひとつ叫べば10人。ふたつ叫べば20人。叫び続けるのであれば、その数を数えることに最早意味などない。
 数の暴力とはこのことか。あれほど蹴散らしたというのに、無尽蔵に湧いてくる山賊子分たちの群れ。
 
「また子分……使い捨てにするクセに、随分と依存してるヨネ」
 呆れたように杖を構えようとしたレイラの視界に、銀色がきらめいた。思わず声をあげそうになったレイラを、しぃ、と唇に人差し指を当てるジェスチャーで結月が制する。
 慌てて出かかった声を飲み込んだレイラは、まるで夜風が目に見えているような錯覚を覚えながらも、その夜風の出所を辿る。すると辿り着いたのは、ゆっくりと唇から人差し指を離すその右手。銀色の鍵がそっと握り込まれているのに気付いて、なるほどと彼女が頷きかけた頃には、もう仕掛けが済んでいた。
 月明かりに透かして、ランタンの灯火で照らして、ようやく時折そのきらめきが確認できるほどの細い糸は、山賊親分の号令を受けて勢いよく駆けだした子分たちの足を小気味よく輪切りにしていく。

「っしゃおらあああああぶっころすぞぉぉおおぉ!!! ………ぁ…?」
「おおおおおい、おいおいおい!? な、何だか分かンねェけど足元あぶねェぞ気を付けぐあああっ!?」
 一撃でも受ければ消えてしまうという山賊親分にとってのデメリットは、山賊子分たちにとっては良い方向に働いたのかもしれない。
 野菜でも切るかのようにすっぱりと切れた断面から、血が噴き出す前に霧散する。自分の足に一体何が起きたのか分からぬまま消えていった子分も少なくないだろう。
 次々と消えていく仲間たちに恐怖を覚え、走る勢いが落ちた子分にはすかさず結月からクナイが飛び、レイラから紫の焔が飛んだ。

「子分たちは僕に任せて……レイラはあの親玉を狙えるかな」
 隙が欲しいんだ、と、細やかな動きで銀糸を操りながら、クナイ投擲する手も休めることなく、子分らの動きを注視したまま。
 策があると言わんばかりのその声に、レイラは頷き杖を握る――、が、何とか銀糸とクナイを掻い潜り、2人の元へナイフを振りかざしてきた山賊子分を、まずは焼き払う。
 消えても消えても増え続ける子分たちは、大男の盾にもなればこちらへ飛んでくる剣にもなる。ありったけの力で次々と呼び出される山賊子分の数は、これまでの比ではないほどに戦場を埋め尽くしていた。
 子分を何とかしない事には親分に剣が届かず、かといって子分に掛かりきりでは消耗の激しい底なし沼だ。
 あと一歩攻めあぐねたその時、結月の左頬を撫でたのは、レイラの右頬を撫でたのは、この山で感じていたのとは匂いも感触も違う、けれども2人の良く知る風。

「あのおっきな山賊に隙を作ればいいんですよね。……それなら、チーカがお引き受けしますっ!」
 その声の主が、同じ館に身を寄せる仲間、エスチーカであったことに気づいたころには。
 2人の髪を揺らした風はとうに吹き抜け、山賊子分たちの頭上を駆け抜け、小さな少女はたった1人、親分の元へと飛び込み叫ぶ。
 それは相手を詰るように。それは自分に言い聞かせるように。

「どんなに強くたって、どんなに力があったって! その強さを振るう心が伴わなければ、本当の剣にはならないんです!」
「……………………あ゛ぁ?」
 説教じみたその声は一体どこから聞こえるものなのか。
 先ほど子分を一斉に蹴散らした黒髪の少年は、未だ子分の相手をしている。
 カンテラをぶらさげた紫髪の少女も、その少年の隣から位置取りは変わっていない。
 右を見ても左を見ても、正面を見ても足元を見ても、果てには振り返ってみても猟兵の姿はない。
 ……それほどに、山賊親分の身体は大きく、エスチーカの身体は小さかった。
 それでも空耳というにはその声はあまりにはっきりと、力強く、大男にとって耳障り極まりなかったその声の主を探す。
 もう一度右を見て左を見て――正面を見て、ようやく自分の人差し指ほどのエスチーカの姿に気づいて、たった一言。

「………うるせえ」
 男が口を開くだけで、口腔の熱と共に赤黒い血の生臭さが小さな身体を襲った。
 反射的に風を操りその臭いを打ち消しながら、エスチーカは風の声に耳を傾ける。
 あれほど猟兵たちと打ち合ったというのに、刃こぼれひとつ見せない斧を、天の月を割らんばかりに振りかぶる音。
 怒りに任せ、エスチーカに向かって振るわれた斧が、親分の足元にいた子分たちを消し飛ばした。

(あや……あの斧を受けるのは、ちょっとマズいですよね……!)
 巨斧が起こした風にさえ乗りながら、山賊の右へ、左へ、正面、足元。
 引き付けては間一髪で斧を躱し、山賊が自分を見失えば大きな声で呼びかける。
 斧が風を切り裂くたびに、お友達が切り裂かれる音が聞こえるたびに、小さな身体の小さな左胸が、小さく小さくキュッと鳴る。
 けれども絶対に、絶対に、斧の射程外へは逃げ出さない。

(レイラおねーさんと結月おにーさんが、きっと…きっと……!)
 結月には何か考えがあるようだった。レイラはきっとその結月の案を上手く遂行するはずだ。
 だから、小さな自分の小さな役割は、その小さくとも確実な、切欠を作る事。
 大男の知らないことを、猟兵たちは知っている。
 小さくとも確かな積み重ねが未来をつくることを、猟兵たちは知っている。

「――はっ、なんだてめぇ! 煽る割に逃げるばっか、何っにも仕掛けてこねぇじゃねぇか。
 てめェみてぇなのに時間かけてンのもばからしい、………あーあ興醒めだ、所詮チビはチビだな、もういい好きに飛んでろ」
 右へ、左へ、正面、足元。
 縦横無尽に振り回されていた斧を。
 どすん、と。
 杖のように。
 地上におろした。

「――――油断、しましたねっ!」
「…あ゛? ッ、が……っ!?」
「あなたはもっと、ちゃんと周りのことを、チーカのことを見ているべきでした!」
 刹那、大男の身体を貫いたのは数えきれないほどの不可視の矢。
 エスチーカの、常にエスチーカと共に在る風の精霊たちによる加護の、……小さき者たちの、力いっぱいの反撃。
 何度も何度も斧にその身を切り裂かれた精霊たちの怒りも乗ったか、それは大男の隙を作るどころか、その動きを止めるのには充分すぎるほどの反撃だった。

「今ですっ、結月おにーさんっ! レイラおねーさんっ!」
 小さき者の、大きな声が戦場に響く。
 小さな同居人の小さな身体から、溢れ出さんばかりの勇気を目の当たりにした彼らは、どちらともなく頷き合い、見えない矢に悶絶する山賊を見据える。
 彼女の作ってくれた機会を逃すまい、レイラがその本体であるカンテラの焔を揺らした傍から、冥府から幾本もの槍が呼び起こされ、瞬く間に2人を取り巻く子分の脳天を射貫く。舞い上がった黒塵はほんの一瞬、月明かりを遮って霧散した。
 山賊親分と自分たちを川のように阻んでいた子分たちが、少なくとも今だけ、わずかにその層が薄い。
 彼女と彼女の作ってくれた機会を逃すまい、――結月は白銀の錠前をその手に浮かべた。
 『術式封鎖(クローザー)』。鍵をするのはもちろんこの、無尽蔵の子分たちを生み出すその技能。

「……これ以上、お前の好きにはさせない…っ!」
 例え召喚による仮初の生とはいえ、もうこれ以上、使い棄てられることのないように。
 ……がちゃん。錠の落ちる、重く冷たく音が戦場に響いた。

「くっそ、くそっ、はァっ、あ゛ーっ! ンっとに、くそッ、使えねェ奴らめ!何べん言わせンだ!!
 せっかく呼び出してやったンだ、ちったァまともにオレを守りやがれ!!!
 いいか次はうまくやれよ、そうでなけりゃブッたぎンぞクッソ……あ、……あ゛?」
 子分が増えない。自分が傷を負うリスクなく敵に傷を負わせてくれる子分が増えない。
 いざという時にはひとりもふたりも、必要ならば10人がかりで身を挺してかばってくれる子分が増えない。
 敵の攻撃にイラついたときに、ちょっと斧を振り回したいときに、人を斬る感覚を味わいたいときに、首を刎ねても文句ひとつ言わずに黒塵と化す子分が増えない。
 その技能が封じられたことに気づくまで、要した時間はおよそ3秒。
 もちろんこれまでに呼び出した子分の数は相当のものだが、これ以上増えないという事は売り切り終了、現品限り。
 戦場に残る子分は如何程か。あのフェアリーの言った言葉に倣うのは癪だが、それでも周りに目を向けて、残りの子分がおよそ100人ほどである事を確認するのに要した時間もおよそ3秒。
 合計6秒という時間は、レイラ・エインズワースが、その術を施した結月に「すごいジャン! ありがとうネ!」と声をかけてから、ありったけの魔力と呪詛を籠め、残りの子分たちの数をも凌ぐ本数の槍を召喚して撃ち出すための詩を紡ぐのには、あまりにも長く、永い、充分すぎる時間だった。

「…さっきカラ油断しっぱなしだネ。 貴方を守るものは、もうナニもナイヨ」
 ゆらり。その身体を、不死色の焔で充たした角灯が揺れる。
 大男の巨体を無数の紫電が穿つのを見届けて、レイラは静かに瞼を下ろした。


「―――いや、まだだな」
 ―――ひゅっ。風の鳴る音はひとつ。刺さったナイフは2本。
 男が短く呻く声。その身に無数の矢を、槍を受けてなお、地に膝をついた大男にはまだ息があり、他の子分たちのように霧散していかないということは、つまりまだこの山から降りるわけにはいかないということだ。
 村で山賊の集団をしていた時に比べて随分と口数が減ったローは、黙々と山賊子分たちを黒塵へと還す傍らで、この大男に隙ができるその時を伺っていた。

「……っ、…はーっ……はァ゛ッ…、まだだ……そうだ、まだだ……!!」
 ローは男に声をかけたつもりはないが、男はローの言葉を自分に向けられたものと取ったようだ。
 ジャケットのフードを目深にかぶり、ち、と低く舌を打ち鳴らす。
 藤色の長いおさげを揺らす少女は、この大男を守るものはもう何もない、と言っていたが。

「子分が呼べなくなった所でなンだ……! オレぁひとりでも!! 充分!! 強ェんだぁぁああ!!!!」
 彼女の言葉を真とするためには、今まさに振りかぶられた、その斧さえも取り上げなくてはならないのではなかろうか。
 だとするならば、この馬鹿げたサイズの斧の間合いから、さらに詰めなくてはならない。
 近づきたくもないが、投擲用のナイフとはまた違う、刃背にセレーションの付いたナイフを片手に地面を蹴ろうとした、その時。

「おっと、ジャイアント・キリングか?
 いいねいいねぇ、こちとらちょうど一仕事終えてきたトコだ! 花添えてやるぜ、フェリーマン!」
 その足並みに並ぶように駆けつけた男、ヴィクティムが、この戦場で何をしていたのかローは知らない。
 いや、ともすれば誰よりも冷静に、感情を殺して戦況を見ていた彼の灰色の瞳は、確かにヴィクティムがこの戦場にいたことを知っていた。
 より正確に表現しよう。
 戦場にいたことは知っていた。何をしていたのかが分からなかったのだ。
 そう、村の西側と東側。
 同じ村の中とはいえ、正反対の方向で山賊の相手をしていたヴィクティムが、どんな手を使って山賊たちを蹴散らしたのか、知らない。
 ―――知らないままで、良かったのかもしれない。
 それは戦場が山頂に移っても同じことで、ローの目には、ただただヴィクティムはこの戦場を駆けまわっているように見えていただけだった。
 時折何かを呟きながら、時折何かを叫びながら、山賊子分のひしめく中を、ナイフを躱し、鉈をいなし、疾駆していたことは知っている。
 それが意味するものを、知らない。

「「「ぎゃあぁあぁぁあああぁああああッ!!」」」

 ―――だからこそ、理解した。
 およそ100名の断末魔が同時に戦場に響き渡っても、辺り一面に砂嵐の如き黒塵が吹雪いても、木の葉が枝から落ちるのを気にしないように、顔色一つ変えなかった男。ヴィクティム・ウィンターミュートの『一仕事』が、今ここに完了したことに。
 それは、斧を振りかぶった山賊がその振り下ろし先を忘れるほどの、断末魔の大合唱だった。
 それは、山賊子分の掃討にあたっていた猟兵たちが呆気にとられるほどに、呆気なかった。
 何をした、と問うのも無粋だろうか。新たな山賊子分が生まれる懸念もなくなった今、ようやくあの厄介な山賊子分たちが居なくなったという戦果を受け入れるに留めるべきだろうか。
 ローの沈黙に、ストリート育ちの悪ガキが得意げに笑う。

「シンプルなことさ。 理不尽相手にゃ理不尽なリキダイザかましてやんのがスジってモンだろ?」
 さぁてそれじゃあ本題だ、と見据えた先。
 子分を失った感傷にひたるでもなく、手ごまを失ったことに狼狽えるでもなく、その目に宿すはただただ明確な殺意。
 無論、この男に子分の弔い合戦なんて思考はない。

「……さっきの、コイツの斧にも効くのかい」
「強酸性だぜ、オレのプログラムに不可能はねぇ。 ……ちっと距離はあるがな」
 斧を肩に担いでしまえば、ローからもヴィクティムからも大きく離れる。
 フェアリーやオラトリオのような翼でもあれば命中率もあがったのだろうが、生憎とそんなファンシーなものを持ち合わせているような種族でもなければ柄でもないと肩をすくめるヴィクティムに見えたのは、微かに吊り上がったローの口元だけだった。

 ――――任せな。 と、聞こえた気がした。
 ――――ひゅっ。 と、聞こえた。

「避けろっ!」
「っ!? ワックド! カウントくらい頼むぜフェリーマン!?」
 ローは右に、ヴィクティムは左に飛びのいた。
 しかして天才ハッカーは、存分に蓄えた位置エネルギーを惜しむことなく解放しながら落下してくる標的にだって忍び込める。地面に突き刺さるその前に、――これまでに数えきれないほどの命を奪ってきたことが、嘘のように――じゅっ、と短い音を立てて空気中に霧散したのが、最悪で災厄な力が叩き込まれた何よりの証拠だ。
 右手首の神経を殺すように深々と刺さったナイフを見て、子分を失い、得物を失い、丸腰になった山賊を見て。

「……よう、ここまで来たら何本刺さるか試すってのも一興じゃないか」
 目に見えぬ矢も、目に見える槍とナイフも突き刺さって尚、息を続けるこの『物体』には、かける言葉も慈悲もない。
 投擲用のナイフを手に漏らしたローの言葉は誰に向けるでもなく、紫煙のごとき白い息となって、夜風に溶けたかのように思えた。

 ―――が、足音が3つ、羽の鳴る音が1つ、ローの隣に並ぶ。
 
 結月がクナイを。
 レイラが紫槍を。
 エスチーカが風の矢を。
 ヴィクティムが最悪で災厄なナノマシンを。

 誰一人として、言葉なく。ただひとつの、合図もなく。
 それら全ては撃ち込まれ。
 山頂には何もなくなった。


 「……俺の人生の中で、十指に入るくらいの無駄な時間だったな」
 携帯灰皿を片手に、ローは冬の長い夜に紫煙を吐き出す。
 怒鳴り声や断末魔、何より多種多様な武器の入り乱れた戦場とは思えないほどに静まりかえった山の頂。
 そこからほんの少しくだった所では、やれあんな木の実があっただの、やれこんなキノコが生えてるだの、ついさっきまで死闘を繰り広げていたとは思えないほど無邪気な声が、年少組を中心に聞こえてくる。
 夜が明けたら避難していた村人たちを、「おはよう」を交わすだろう人々を迎えにいくことになるだろう。
 彼の無駄な時間のおかげで、『ちっぽけ』な生活は、村人も、村も、そこに聞こえる明日の朝の「おはよう」も、「おやすみ」も、「また明日」も、その次の「おはよう」も。何一つ欠くことなく守られて、この先ずっと、当たり前のように積み重ねられてゆくのだろう。

 煙を上げる先端が、蛍のように小さく赤らむ。
 夜明け前の冷えた空気と一緒に、肺に煙を落とし込み、もう一度、ゆっくりと吐き出す。

 ―――彼の明日の「おはよう」が、さわやかなものでありますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『幻想的な食材でレッツクッキング!』

POW   :    私は食べ専です。豪快に食べる!

SPD   :    幻想的な食材も、私の技量にかかればたちまち美味しい料理に!

WIZ   :    まさにファンタジーな料理を生み出してしまう。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 やがて夜が明け、朝がやってくる。昨日「おはよう」と言った時、昨日かくれんぼをした時、昨日窓の外を見た時、と何一つ変わっていない村に、村人たちは戻ってきた。
 なんでもないような、奇跡を積み重ねていく毎日がまた始まっていく。昨日まではなんでもないと思っていたそれは紛れもなく奇跡的なことであり、そしてその日々は紛れもなく彼らによって守られたことを、今の村人たちは知っている。
 
「本当に、何とお礼を申し上げたら良いか……」
「あなた達が来てくれなかったら、今頃と思うと……本当に有難うございます」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんが守ってくれたんでしょ! ありがとう!」
 口々にお礼を言っては深々と頭を下げる大人たち、その大人たちに倣うように無邪気にお礼を口にする子どもたち。
 きっと彼らはこれからも、種をまき花を愛でて、陽射しに汗をかきながら畑を耕し、来るべき冬に向けて蓄え、あたたかなスープを作って愛しい人の帰りを待つのだろう。
 確かな未来を予感した猟兵たちは、なんでもない毎日を彩るもうひとつの贈り物を用意した。
 それは誇らしい凱帰の途中、右を見れば果物が、左を見れば山菜が、足元を見ればキノコが、また道中には程よく引き締まった獣たちが。
 村の人たちは、あるいは彼らのその前や、その更に前の代の頃から、たとえその恵みを享受したくとも、山賊たちの恐怖に立ち入ることが出来なかったのだろう。
高くもなく低くもない、どこにでもあるような山には、どこにでもあるような山らしく、山ひとつぶんの——この村の人たち全員が、享受してもしきれないほどの恵みを蓄えていた。
そうして思い思いに集めてきた山の幸を、村人たちの前にずらりと並べてみせる。
 
「すごい、こんなにたくさんの……!」
「村中で分けても分けきれないほど、たくさんの……!」
 大人も子どもも、見たこともないほど沢山の山の幸に目を輝かせた。
 その視線がまた誇らしく、少しだけ得意げに顔を見合わせる猟兵たちに、ひとりの女性がひときわ嬉しそうに続ける。
 
「こんなにたくさんの種類の食材が、こんなに身近にあっただなんて! これでもうスープの具材に困らないわ!」
「……でもどうしましょう、せっかく取ってきてくださったのにごめんなさいね。どれもこれも見たことがないものばかりなの」
「その……助けて頂いた上に、重ねてのお願いになってしまうのが心苦しいのですが……」
 葉を食べればいいのか根を食べればいいのか。皮をむけばいいのか丸かじりしたらいいのか。
 焼けばいいのか煮ればいいのか、蒸せばいいのか揚げればいいのか。
困ったような顔をして笑う女性に、子どもの無邪気な声が助け舟を出した。
 
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ママにお料理おしえてよ!」
 そうだそうだそれがいい、村にあるものはなんでも使ってくれ、と大人たちが続いていけば、先ほどの女性も、はにかみながら上目遣いで見上げてきて。

 見たことのある食材も、見たことのない食材も。守りきった日常の中で作ったものは、きっと格別の勝利の味となるだろう。
セシリア・サヴェージ
【POW】

まずは山賊たちから村を救えたことを喜び、そして仲間の猟兵たちの健闘を称えましょう。
私一人では成し得なかった…皆の力があったからこそこの村を護ることができました。

さて、祝勝会…ですか。私のような者が参加してよいものかどうか…。
ええ…しかし、村の方々のご厚意を無下にするわけには参りません。
そう、そうなのです。決して食い意地が張っているとかそういう訳ではないのですよ?
あっ、おいしそうなお肉料理…あっ、お酒まで…。
…コホン。騎士として恥ずかしい行いはできません。この世界の【礼儀作法】を守りながら楽しい会といたしましょう。


浅葱・シアラ
えへ……よかった……皆の日常、取り戻せたんだね……
シアたちは猟兵
世界を守る猟兵なの、一番大きなお仕事は「これからも続く明日の保護」だよ……!


【WIZ】で判定
わ……これ、アックス&ウィザーズならではの幻想的な食材、一杯だね……。
えへ……、シア、幻想世界の食べ物の料理は初めてだけど、がんばるね

生野菜としても食べられそうな山の幸はサラダにしちゃおう!
焼いたら美味しそうなのは……野菜炒め?
やっぱりスープも王道かな!
えへ、大丈夫だよ煌びやかなサラダも、艶々した野菜炒めも、暖かそうなスープも、皆味見したから食べられるし美味しいよ!

ちょっとすっごくファンタジックなお料理だけど……きっと大丈夫!


アズール・ネペンテス
【選択:SPD】
…意外かもしれないが実は料理はできるのだ。(ただし野外料理と一部の家庭料理に限る)だから【料理】【情報収集】を使いここはいっちょ盛大に料理提供しまくるぞ。

しかしこれだけじゃ足りないだろうからUCでしまっといた食材も追加しておこう。ついでに山賊が盗ってったと思しきアジトに残ってた略奪品もついでに持ってきたから持主がわかる限りは返しておきたいし

いくら盗賊でも流石に奪ったものを更に奪ってくことは流儀に反するし…まぁそこは置いといて祀りだから盛大に祝え!


アロンソ・ピノ
すまん……料理は切って焼くか煮るしか分からん……
なもんで食い専だ。動いて腹減ったし味見役で良いから色々食わせてくれ。地元はド田舎だから舌は基本的に田舎者だぞ。
とりあえずちゃんと料理してあれば美味い美味い。範囲攻撃となぎ払いと捨て身の一撃が料理に通じるなら使う。…通じるのか…?
手伝うにしても力仕事だろうな。食材運ぶなりなんなりで使うなら使ってくれ。
めちゃくちゃ美味いか不味い料理があったら……方言が出るだろうな。語尾に「だべ」とか「んだ」とか付いてしまうかも知れん。恥ずかしいので即座に訂正するがな!

あ、あと着替え持って来てねえや。半裸だが気にしないでくれ。




 村のあちこちで白い湯気が立ち上り、食欲を刺激する匂いが鼻をくすぐりだした。
 戦いの刻は去ったというのに、依然として兜を脱ぐ様子のない少女を不思議に思いながらも、その手際の良さに村人たちは感嘆の息を漏らす。
 その村人たちの中に混じって、セシリアもまた彼女の――否、彼、アズールの手元を覗き込んでいた。

「おいしそうなお肉……」
「意外かもしれないが、こう見えて料理は得意なんでな」
 獲れたて新鮮な獣肉の赤身には、程よく焼き目がついてきた。鉄製のフライパンにあふれ出た肉汁が跳ねる音。サッとまわしかけたソースが焦げる香ばしい匂い。
 五感のそこかしこから胃袋をつついてくるステーキは、豪快にして豪勢。思わずこくりと唾を飲み込む暗黒騎士に気づいたアズールが笑えば、その笑顔を向けた先を追った村人から声が上がる。

「あぁ、あんた! 村に入ってきちまった山賊を次々に蹴散らしてくれた騎士様だろう!」
「うん? おぉ、本当だ! オレたちぎりぎりまで村にいたからよ、ちょこーっと後ろ姿だけ見てたんだ」
「いんやァかっこよかったなぁ!黒い剣で、ズバーッてさ! ほんっと、今こうしてられんのもアンタのおかげだよ、ありがとうな!」
 慌ててステーキから顔を上げたセシリア、その銀の瞳に飛び込んできたのは、――彼女が命を賭してでも守りたかった、村人たちの満面の笑顔だった。ほんの一瞬だけきょとんとした彼女の顔を、アズールだけが、そっと"盗み"見る。そして何食わぬ顔で、一見何も入ってないように見える箱から魔法のように食材を取り出し、ステーキの付け合わせの仕込みに取り掛かるのだった。
 ……その表情を、シーフに盗まれたことを知ってか知らずか。すぐにクールな相貌を取り戻したセシリアは、けれど少しだけ穏やかな口調で。

「いいえ、私一人では成し得なかった…皆の力があったからこそ、この村を護ることができました」
 ですからお礼は私だけでなく、とフライパンを振るうアズールや、そのすぐ傍、一生懸命に調理をするシアラ、そしてその様子を見守るアロンソたちへと視線を向ければ、村人たちもそれに倣う。

「わわ……えへ……シアたちは猟兵、世界を守る猟兵なの。 ……シアたちの一番大きなお仕事は「これからも続く明日の保護」だよ……!」
 視線が集まったのがちょっとだけ恥ずかしいのか、温かいスープが煮込まれる鍋の影に隠れて、ひょこっと顔を出しながらシアラがはにかむ。そんなかわいらしい仕草をする少女の手から生み出された、ファンタジックな食材をふんだんに使った料理の数々は、きっと村人たちの『これからも続く明日』の食卓にも並んでいくのだろう。

「えと…そ、そろそろ……具材、煮えたかも……!」
「おいおい、無理すんなって」
 照れ隠しをするように紫の翅をひらりとはためかせて鍋の影から飛び上がり、自分の身長の倍近くはあるかというレードルを抱きしめるように抱える。よいしょ…!という小さな掛け声と共に、スープ皿目指してレードルを持ち上げようとすれば、どこか危なっかしい様子に思わずアロンソが手を添えた。
 シアラからすれば一抱えあるレードルも、アロンソが持つならただのレードルだ。調理は手伝えずともこのくらいなら、とシアラの作ったスープを次々にスープ皿によそって並べていく。テーブルには、何やらきらびやかなサラダ、何やらツヤツヤした野菜炒めも並んでいた。何を使えばこんな見た目になるのかはさておき、どれもシアラが一生懸命に作ってくれた料理たちだ。
 キラキラした料理もツヤツヤした料理も初めて見るが、いかに山の幸を使っているとはいえ、やはり都会育ち(に見える)の子が作る料理は輝いて見えるものなのだろう。……そんなことを思ったかどうかはさておき、激しい運動による空腹も手伝ってか、はたまた冬の空気にさらされたままの上半身にとって、湯気を立てる食べ物はそれだけで魅力的に映るのか。
 アロンソはその料理の見た目に何の疑問も持たず、むしろ何処かそわそわしながらシアラからの「召し上がれ」を待つ。

「……あ、ありがとう…! えと、全部、味見はしてるよ…どれも、美味しかったから……大丈夫…!」
 一方アロンソほど素直に受け入れられなかった村人たちは、普段の質素な食卓に比べて随分とファンタジックにきらびやかな料理たちに少々戸惑い気味のようだった。が、可憐なフェアリーの少女が頑張って作った料理、ましてや「いっぱい食べてね」と言わんばかりの笑顔を向けられようものなら、その戸惑いもどこへやら。セシリアやアロンソと並んで、シェフたちからの「召し上がれ」を待つ。
 サラダにスープ、野菜炒め。そして最後に、じゅうじゅうと音を立てるワイルドステーキがテーブルに運ばれてくれば、見るも華やかなフルコースの完成だ。
 村人たちから大きな歓声が上がる。

「ひゃー、すげェな! 祭りの日でもこんなご馳走にありつけねぇぜ!」
「あぁどれもうまそうだ! いやぁ酒が飲みたくなるねぇ!」
「おい、それを言うなよ……オレだって飲みたくなるし、この方たちにだって飲んでもらいたかったのによぉ。あーくそっ、山賊のヤツらに奪われてなけりゃァなぁ……」

「……なぁ、あんた達の言ってる、奪われた酒ってのは、」
 そんな村人たちの声を聞いたアズールが、もしかして…と先ほどは食材を取り出していた箱に手を伸ばす。やはり何も入っていないように見える箱だが、箱から取り出されたのは、いや、どんどんと取り出されてくるのは、麦酒に葡萄酒、蒸留酒、その他さまざまなラベルの貼られた何本もの酒瓶。
 村人たちが顔を見合わせる。それは実直で真面目な村人たちが、大切な日に大切な人たちと幸せを分かち合うために、何でもない日には一滴も飲むことなく、大事に大事に貯蔵されていたものたちだった。

「アンタが取り返してくれたのか……?」
「奴らのアジトに残ってたんだ、やっぱりこの村から略奪されたものだったか」
 飲み干されちまう前で良かったな、と最後の1本を取り出しながら言うアズールに、再び村人たちから歓声が上がる。

「ありがとう! 本当にありがとう!! こういうときのためにオレたち、普段は飲まず、色んな酒を造ったり買ったりしては大事にとってあるんだよ!」
「さぁ開けよう開けよう、飲める人はどうぞ飲んでくれ! 食べて飲んで祭りだ宴だ! おい騎士の姉さん、アンタ飲める歳だろう!」

「お、お酒……………コホン、いえ……」
 種類も量も豊富な酒を手に、その場にいた猟兵の中で唯一成人していそうなセシリアに声がかかる。次々と取り出される酒瓶に彼女の目が一瞬だけ輝いたのを見逃さなかったのは、やはりシーフの鮮やかな盗み技。
 そんな彼女の左右から差し出される、深い赤や琥珀色が蠱惑的に揺れるグラス。その揺れに思わず揺れ動きそうになる心をぐっと抑えこんで、咳払いをひとつ。

「き、騎士として恥ずかしい行いは……すべきでは、ありませんので……」
「んんっ!!! なんっだコレ、すんげぇうまいべ!? あ、…じゃなくて……す、すごいうまいな!」
 断腸の思いで誘惑を振り切ろうとするセシリアの耳に、感動に打ち震えたような声、続いて慌てたような気まずそうな声が飛び込んでくる。声の主を探そうと振り向けば、アルコール類の飲めない未成年組が一足先に、料理に手を付け始めていた。
 シャキッとした程よい歯ごたえを残す山菜たちに、コクのある獣肉の脂が絶妙に絡み合う野菜炒め。その艶めきは山の幸の新鮮さによるものだったのかもしれない。
 その美味しさのあまり思わず出てしまった故郷の訛りを慌てて撤回しながらも、次々と料理に手が伸びるアロンソの手が止まる様子はない。村人たちも彼の太鼓判を受けて、サラダにスープにステーキにと、思い思いにフォークを伸ばしては舌鼓を打っていた。

「……ほ、ほんと? シアのお料理、おいしい……? えへ…えへへ……村の人たちも、たくさん食べてね…!」
 その様子にホッとしたように、何より嬉しそうに笑うシアラに、アズールが頷き、こちらを見ていたセシリアに声をかける。

「俺は礼儀とか作法とか、そういうのは詳しくないんだが……遠慮するほうが失礼、って時もあるんじゃないか」
「……!」
 はっとしたようにセシリアが振り返ると、そこには行き場を失ったグラスを手に、「すまん、無理に勧める気はなかったんだ」と眉尻を下げて肩をすくめる村人の姿。
 礼儀作法、というのは往々にして、世界によって、時によって、場合によって、正しい在り方が変わるもの。
 この場この時、この場合においては、きっと――……

「……ご厚意を無下にするわけには参りませんね。……えぇ、お酒は嗜む程度ですが」
 食べたい気持ち、飲みたい気持ち、勝利を、平和を、喜び分かち合う気持ちを我慢しない事こそが、相手の喜びに繋がるだろう。あくまでも嗜む程度ですが、と念を押すように言いながら白い手を伸ばすセシリアに、おかわりはいくらでもあるからな! と村人は嬉しそうにグラスを手渡した。
 その様子をやれやれと見守っていたアズールが、景気づけと言わんばかりに声を張り上げる。

「今日は祭りだ! 盛大に祝え!!」

 まだまだ、勝利の宴は始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミーユイ・ロッソカステル
残念ながら、私はこの手の収穫作業に向かないのよ。

……日の光を浴びれば眠ってしまうのだから、それはそうでしょう。
まさか日傘を差しながら収穫をする訳にもいかないし。

……とはいえ。集められた食材を調理する側なら、少しは役に立てるでしょう。
――あぁ、そこの甘党妖精?
なんて、その場に居るであろうグリモア猟兵のクロヴィスを呼び止めて。

野イチゴやら木の実やらも、収穫の中にはあるみたいだから。
これを使って何が出来そうか教えて頂戴。……タルトとかかしら、とは思うけれど。
……何よ、まさか食べ専などと言わないでしょうね。
その体躯で料理をしろとは言わないわ、頭だけ貸しなさい。
好物なら、そのくらいは存じているでしょう?


レイラ・エインズワース
祇条・結月(f02067)サンと

コレが守った日常なんダネ
変わらない挨拶、変わらない日の出
普通のはずなのにありがたいなって、私は思うんダ
祇条サンは、どうカナ
生まれたトコのコトとか、いつか聞いてみたいカモ
私?
私のはなァいしょ、なんてネ

こんなに豊かな山だったなんてネ
果物がいいカナ
お肉の方が喜ばれるカナ
多少お料理はできるシ
分からないのはかつての所有者の記録カラ【世界知識】と【情報収集】で探してみるヨ
よぉし、そしたらお肉!
祇条サンの取ってきた肉と集めたキノコに野菜を合わせてでシチューを作るヨ
こういう寒い時期にはぴったりだと思うからサ
よかったら、食べてミテ?

アドリブ・絡み歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


祇条・結月
レイラ(f00284)と

猟兵になるまでは、変わらない日々は何もしなくても続くんだ、って思ってた
だから、わかるかも。誰かの居場所が変わらず続くって、小さな奇跡みたいなものだよね
……僕の? いいけど、その時はレイラのことも訊いていい? なんて、ね
あ、ずるい。ま、いっか。今度話すよ

料理は手伝いくらいなら……
とは言え、獲物の調理法もわからないくらい、山に入れてないなら狩猟も廃れてるのかな
必要そうなら猟に参加がてら【罠使い】で簡単な仕掛け罠を教えに行くね
村の皆は大丈夫だと思うけど、獲り過ぎ厳禁
山もあなた達の日常の一部だから

採れたてをレイラが調理してくれるなんて贅沢じゃない?
うん。美味しいし……温かい


ロー・オーヴェル
おのれ無邪気な子供め……
さらりと山賊以上の強敵を登場させるとはやってくれるぜ

てことで料理スキルゼロの俺は
食べることに専念

「おじさん料理しないの?」
と言われたら「おじさんじゃないお兄さんだ」と訂正しつつ
料理はするだけじゃなくて食べることでも覚えるんだ
だから子供のうちはたくさん食べておけとアドバイス

ある程度食ったら
離れた所で一服

このちっぽけな村の日常に
山の幸という新しい物が加わったんだな

とはいえいずれは山の幸も
「おはよう」や「おやすみ」のように
『日常』の一つになるんだろう

『どこにでもある日常』という
ちっぽけで当然な……特別な存在の一つとして

「……うん、いいことなんだろうな。それは」

ああ
煙草が美味い


ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッハー!!飯だ飯だ!燃費が悪ィから腹減ってしょうがねえ。ニューロンモ疲れたし、とにかく補給がしてえ。じゃあ早速……え?作る?俺が?飯を?またまた御冗談を。俺がそんな家庭的な奴に見えるか?超一流の端役にもできないことはあるんだよ。じゃあ俺は食べるだけにするから。
俺はめっちゃ食うぞ。甲状腺を改造したおかげで代謝が上がってるんでな。

とにかく食う。片っ端から食う。よほどの物ではない限りは美味い美味い言うながら食う!村の連中もオラ食えっ!今日は宴会だ!たまには贅沢に食いたいもん食いな!

俺は飯は作らねえ…絶対にだ…いや、マジで作れねえから。フリじゃねえから!やめろ!俺を調理場に立たせようとするじゃない!


エスチーカ・アムグラド
あやー……チーカにとっては山の幸というか、幸の山ですね。すっごい量です!

チーカは皆さんが料理をされた時に出た切れ端とかを集めてお料理しますよ!
何が集まるか分かりませんからー……ここはスープですね!(煮れば大丈夫という勇気)

出来上がったらクロヴィスお兄さんにも食べて貰いましょう!
クロヴィスお兄さんが予知してくれなかったら味わえなかったお料理ですし!
同じフェアリーですからね、量もきっと丁度いいはずです!
……あ、出来上がったらと言わず味見の時からお願いした方がいいでしょうか……?
チーカ、お料理に自身があるという訳でもありませんしね
食材を斬るのは得意ですけれど!


アリス・イングランギニョル
【WIZ】

料理、料理、ね
任せ給え、伊達に図書館で知識を貯めこんでいるわけではない、というとこをお見せしようじゃないか

ある本にはこうあった
……火を通せばなんでも食べられると
とりあえず焼こう、なんか、こう、焼けば、なんとか、なる、はず
ちょっと黒みがすごいような気がするけど、気にしないよ
ほら、ボク黒いし、お揃い
それに、ほら、本だからね、火は苦手なんだよ

おや。おや、おや
そこに居るのはクロヴィスくんじゃないかい
丁度いい所に。ボクの料理のじっけ、どく……味見をお願いできないかな?
淑女からのお願いを断るだなんて紳士らしくないことしちゃやだぜ?

【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】


天命座・アリカ
めでたしめでたしその後は!皆が笑顔のエピローグ!
カーテンコールはまだ鳴らず!むしろここから本番さ!
ここに生きる皆が主役なれば!主演の出ない劇はなく!
つまりはつまり、騒ごうじゃないかパーティーだ!

え?自分達で作るのかい……?
……社会の秩序は適材適所!素晴らしきかな支え合い!
一つ講釈しておくと!天才にもね、苦手はあるんだしょうがない!それこそが生の証と言える!
(ウインク一つ、くるくると回りながら逃走)

暇になったね!
賭けでもしようぜクロヴィス君!
投げたコインは表か裏か!シンプルに行こう天運さ!
負けた方は……勝者に一品作る事にでもしようか!
メリット?今この時が楽しいだろう?

勝っても負けても大笑い!




「ハッハー!! 飯だ飯だ、俺のニューロンがエネルギーを欲してる!」
「カーテンコールはまだ鳴らず!むしろここから本番さ! 騒ごうじゃないかパーティーだ!」
 祝勝会と聞いて駆けつけたのは、超一流の端役と天才美少女。それぞれ『仕事』と『舞台』を成し終えたヴィクティムとアリカの2人もまた、酷使した脳へと栄養補給すべく、あるいは『楽しさ』というある種の脳への栄養を補給すべく、意気揚々とやってきた。
 そんな彼らに、ただ一片の悪意なく、にこやかに村の少女が尋ねる。

「それで、おふたりは何を作ってくださるのですか?」

「え?」
「え?」
「作る? 俺が?」
「私が作るのかい……?」
 ………………………長い、長い、長い、沈黙。
 時として仕事では、それが金となる事も少なくない。
 時として舞台では、それもなくてはならない演出だ。
 けれども時として、必要ならば名優となるこの名端役。
 けれども時として、沈黙は耐えがたいのがこの天命座。

「あー……またまた御冗談を」
 わざとらしく肩をすくめてみせ、波風立てずにやりすごそうとしたヴィクティムの横。
 舞台は再び幕を上げる。そう、カーテンコールはまだ鳴っていないのだ。

「社会の秩序は適材適所! 素晴らしきかな支え合い!」
 沈黙を破る声高らかに、くるりくるりと踊ってみせる。
 ……しかしそれは、何の解決にもなっていない。
 ピシッと止まってポーズを決めて、呆けた少女にパチンとウインク。
 ……しかしそれも、何の解決にもなっていない。
 ならば致し方ないとばかりにポーズを解いて、真剣な眼差しで少女に向き直る。

「…………ひとつ、講釈しておくとだね」
 ふわり、一陣の風。ポーズを決めたアリカの、長い桃色の髪を揺らし、吹き抜けていった。
 村の女性は、そしてなぜか釣られてヴィクティムも、ミュージカルのように高らかな語り口から一転、厳かな口調になったアリカに固唾をのむ。

「天才にもね、苦手はあるんだしょうがない!それこそが生の証と言える!」
 華やかなシーンから暗転させてシリアスシーン、そして再び華やかなシーンを映すことで、どちらのシーンもより効果的に映える。舞台の演出とはそういうものだ。
 かくして頭脳明晰、容姿端麗、才色兼備に(中略)完璧にして究極の生命たる猟兵、天命座・アリカは軽やかなステップでその場から立ち去ったのだった。
 ……もとい。

「ビフ……! チップ・トゥルースかますだけかましてバグ・アウトしやがって、アリカのヤツ…!」
「お料理、苦手だったんですね……」
 もしかしてあなたもですか? と言いたげな目で遠慮がちに見てくる女性に、ヴィクティムはがしがしと頭を掻いて。

「ちっ…天才とやらにも苦手があるってんだ。超一流の端役にだってできないことくらいある!」
 ヤケクソ気味に吐き捨てると、女性はおかしそうにクスクス笑う。

「うふふ、ごめんなさい。
 あの怖い山賊たちをやっつける冒険者さんでも、できないことってあるんだって思ったら…何だか安心しちゃって。
 あ、あっちの方でおいしそうな匂いがしますよ! 冒険者さんもお腹すいてたんですよね、行きましょ行きましょ!」
 屈託のない笑顔で駆けだした女性に、どことなく調子が狂うのを感じながら。
 きっと補給が足りていないせいだなと、なるほど確かに良い匂いのする方角へヴィクティムもまた向かうのだった。


 料理自慢の猟兵たちが、また彼らに教わりながら未知の食材と向き合う村人たちが、味も見た目も実に多種多様な料理を次々にテーブルへ並べていく。
 それらを片っ端からつまんで歩き、時に余りに前衛的な食材にシナプスが焼ききれそうになりつつも、それらが概ね美味と分類されていくのは作り手の腕の良さ故か、それとも彼の味覚の寛大さ故か。
 まるでデータの海を渡り歩きでもするかのように、あちこちのテーブルへと顔を出していたヴィクティムが辿り着いたのは、レイラと結月、それからローが鍋を覗き込んでいるテーブルだ。周囲には匂いに釣られた村の子どもたちも集まって、その中心で鍋をかきまわしているのはレイラ。小皿によそって味見をし、納得したように頷き、他の2人や子どもたちに笑いかけた。それを見て頷き合った3人の様子を見るに、どうやら丁度完成した頃合いらしい。
 ――ウィズ・タイミング、と彼は口の中で小さくつぶやく。
 一流のハッカーというものはありとあらゆる侵入において、最高のタイミングを見逃さない。なにせ、およそ一晩に渡った頭脳労働による消費エネルギーは、まだまだ補填しきれていないのだ。

「さぁさ、並んデ並んデ! こんな寒い時期にはぴったりな――……」
「よう、うまそうな匂いだ。その鍋の中身はなんだいチューマ?」
 鍋から立ち上る湯気ごしに、3人がヴィクティムを視認する。全くいいタイミングで来やがったぜ、とローが肩をすくめれば、食べる人は多い方が楽しいヨ、とレイラが笑う。そしてレイラがそういうなら、と結月も頷き、クラッキングの必要は微塵もなく、子どもたちの声でひときわ賑やかなテーブルは、快く彼の介入を受け容れた。

「祇条さんがお肉を獲ってきてくれたカラ、シチューを作ってみたんだヨ」
 村人たちが汗水流して育てた小麦、結月の獲ってきた獣肉、それから皆で集めたキノコや山菜。具沢山のシチューがたてる湯気でふやけたかのように、にへー、と笑うレイラ。
 彼女の前に行儀よく並んだ子どもたちは、シチューの入った深皿を受け取った傍からスプーンですくいあげ、次々に口へ運ぶ。熱いだの美味しいだの――こんなにたくさんのお肉は初めて食べた、だの。飛び交う黄色い声に、結月はこの村に罠を使った狩りを残していく事を決心し、ヴィクティムやローは彼らに目線を合わせるようにしゃがみこんで、おう、こんな時くらいたくさん食え、と乱暴に頭を撫でた。
 やがて猟兵たちにも温かい皿が行き渡り、青空の下で食べる冬の味もまた格別と笑いあうそんな中、子どもというのは時に――無邪気に、正直に、残酷で。

「そういえばおじさん、ずっと居たけどお料理してなかったね。 おじさんは、お料理しないの?」
「ぶっふ!! おいロー、無邪気なジューヴのカワイイクエスチョンだ。是非とも答えてやってくれよおじさ……くくっ、チューマ!」
「…………」
 汚れたものひとつ映さぬ純粋な瞳で見上げてくる少年を小突けるはずもなく、ひとまず隣で声を殺して肩を震わせるヴィクティムを無言で小突いてから。
 ……おじさんじゃなくてお兄さんだ、と少しだけ強い口調で言いきって。

「料理はな、するだけじゃなく、こうして食べて覚えることだってあるんだ。だから子どもの内は、お前らもたくさん食べとけ、な?」
 今日食べて美味しかったものをまた食べたいと思うこと。今日食べたあの美味しかったものを誰かに作ってあげたいと思うこと。
 そんな気持ちはきっといつか、彼らを助ける日が来るだろう。その気持ちに寄り添えるように、食材のある場所を、食材の知識を、食材の獲り方を、食材の調理法を、自分たちはこの村へと残していく。
 今はまだ彼らにとって物珍しい非日常でも、いずれこの食材たちや、今食べているこのシチューのレシピに味だって、この村で営まれていく「おはよう」で始まり「おやすみ」で終わる、日々繰り返される日常へと溶け込んでいくのだろう。

「うん、わかったよ! じゃあぼく、おかわりする!」
「はいはい…ふふっ、嬉しいナァ。 他のみんなも、まだまだたくさんあるからネ」
 素直にうなずいた少年は、果たしてローの言葉の意味を理解したのか否か。ともあれ元気よく差し出されたお皿を、レイラが嬉しそうに預かる。
 それを見ていた子どもたちが次々に、ぼくも、わたしも、とシチュー鍋に殺到した。

「贅沢だよね、獲れたての食材をレイラが調理してくれるなんて」
 子どもたちの整列を手伝いながら、体も心も温まる気持ちで結月がこぼす。
 ちょっと大げさじゃナイ? と返しつつ子どもたちにシチューを渡していくレイラの顔は、やはり嬉しそうに緩んだまま。

「…コレが、私たちの守った日常なんだネ」
 無邪気な顔で温かいシチューを頬張り、鼻や頬を赤くして口々においしいとはしゃぐ子どもたち。最後のひとりに深皿を手渡して、ありがとう! と嬉しそうに友達のところへ駆けていく少女の背中を見送ったレイラが、しみじみと呟いた。
 沈んで昇る太陽のように、その太陽に合わせておはようといったり、おやすみといったりするように。
 温かい食事をお腹いっぱい食べて、おいしいね、と笑いあうこと。
 もちろん世の中の全ての子どもがそういう訳にはいかないかもしれないが、それでも、こんな何処にでもあるような村に生まれた彼らには、それがきっと当然の権利で、当たり前の日常であるべきだ。

「普通のコトのはずなのに、ありがたいなって思うんダ」
 レイラの赤い瞳がゆっくりと細まるのを見て、分かる気がするよ、と結月が頷く。

「猟兵になる前はさ、変わらない日々は何もしなくても続くんだ、って思ってたから。誰かの居場所……この子たちにとっては、生まれ育ったこの場所かな。それが変わらず続くって、小さな奇跡みたいなものだよね」
 この子たちの故郷となる場所。いつか何処かへ旅立つことがあったとしても、この村が故郷であることはずっと変わらない。いつまでだって居ていい場所、いつだって帰ってきていい場所で在り続ける。
 それを、結月は、レイラは、猟兵たちは、守ったのだ。

「生まれ育ったトコかぁ……祇条サンの生まれたトコのコトとか、いつか聞いてみたいカモ」
「……僕の? 別にいいけど、その時はレイラのことも訊いていい?」
 なんて、と続けようとした結月に、すかさずレイラがにっこりと笑う。

「私のは、なァいしょ」
「あ、ずるい」
 焔が揺らめくようにその笑顔は掴めない。少しだけとがらせた唇を、……ま、いっか。とすぐに緩める。
 今はまだナイショでも、いつか。
 この村のように、「おはよう」と言って、温かいご飯を食べて、懸命に働いて、小さな幸せを抱きしめて、「おやすみ」と言って、また明日がきて。そんな当たり前の日々が、自分たちにもずっと流れていくのであれば、――いつか、聞ける日が来るかもしれないのだから。
 だから、いつか。……彼と彼女の付き合いが、そういう長いお話になれば、いいだけのことだ。
 今度話すよ、と言って頬張るシチューは――――美味しくて、温かい。

 そんな様子を後目に皿を片付け、未成年や子どもたちのいる前で出すものでもないのだろう、革製の小袋を片手で弄びつつ、ローはその場を後にしようとして……ちら、と子どもたちを振り返る。

「あぁそうそう、料理ならきっとそこのガキ……じゃなくて、ヴィクティムオニイサンがきっと美味いの作ってくれるぜ」
「はぁ!?」
 ……オトナをからかう悪ガキには、ちょっとだけ痛い目をみせてやろう。
 心なしか意地の悪い笑みを浮かべてから背を向けたローに、思わずおかわりしたての並々と注がれたシチューの皿を取り落としそうになりながら。
 反論すべく開口するより先に、子どもたちの「ほんと?」という純粋な視線がヴィクティムに突き刺さる。助けを求めようとレイラを見れば、楽しいことになりそうダ、とニコニコしているし、その隣の結月はといえば、シチューを食べながら子どもたちに罠づくりを教え始めていてそれどころではない。

「くふふ、一体何を作ってくれるのカナ。 楽しみだネ?」
「おい、俺は作らねえぞ…絶対にだ……いや、マジで作れねえから」
 じり、じり、じり。
 燃え尽きかけた蝋燭の火のような音をたてて後ずさるヴィクティムの背中に、残り僅かな蝋が垂れていくような嫌な汗が伝った。
 そんなことはお構いなしに、レイラの笑顔が、子どもたちの視線が、天才ハッカーを容赦なく追い詰めていく――。

 ―――フリじゃねえから! やめろ! 俺を調理場に立たせようとするんじゃない!!
 そんな声が聞こえた気がするし、聞こえなかった気もする。
(……ま、なんとかなるさ。そう思えばだいたいなんとかなる)
 そっと心の中で呟いた悪ガキへの言葉が、しかし彼には届かないことは知りながら。
 シチュー鍋を囲むテーブルから離れて少し歩いた場所に、立ち上る紫煙が一筋。
 自らの瞳によく似た色のそれが行く先をぼんやりと眺めながら、ローは村の一角にある大きな木の幹に背を預けていた。
 自分たちの守ったこのちっぽけな村。どこにでもある日常。
 ちっぽけで当然な……特別な存在。
 何でもない、どこにでもある、ちっぽけな村の、奇跡的で特別な、掛け替えのない、昼下がり。
 空を仰ぎ、細く長い息を吐けば、肺に入れていた煙は、真っ直ぐ青空へと向かっていった。

「ああ、………」

 ………―――――。


(………煙草が美味ェ)
 
 時を同じくして、場所を違えて。青空に立ち上る紫煙がもう一筋。
 村のあちこちから聞こえてくる楽しげな笑い声。一緒に混じって騒ぎたいわけじゃないが、……なかなかどうして、聞いていて悪い気はしない。
 それに、笑い声と同じくらい村のあちこちからただよってくる料理の湯気と香り。
 彼らと違い、剣を抜いて戦ったわけではないがそこはそれ。動かなくたって腹は減る。
 そろそろ何処かのテーブルにつまみ食いに行ってやろう、席によっては酒もあるという話だと、携帯灰皿に煙草を揉み消した所で、

「おや。おや、おや。そこに居るのはクロヴィスくんじゃないかい」
 聞き覚えのある声が、グリモア猟兵が揺らす四色の翅を呼び止めた。ふと足、ならぬ翅を止めて振り返れば、そこには重たげに長い黒髪を引きずるアリスの姿。
 丁度よかった、と言いながら近寄ってくる彼女もひょっとして何かを作っていたのかもしれない、アリスとの距離が縮まるにつれて、徐々にクロヴィスの鼻孔に香ばしい―――否。

「おうアリスじゃねぇか、……………で、何をした」
「やだなぁ、開口一番淑女に向ける言葉とは思えないぜ、それ」
 彼女の真っ黒い髪からは、彼女の髪と同じくらいに焦がしたような、端的に言って焦げたような、っていうかもうフォローのしようがないくらい焦げた匂いがした。
 戦闘時のそれとはまた違った、妙に胡散臭……さわやかな笑顔で、自らを淑女と言い張りながら彼女は続ける。

「いや丁度いい所で逢ったね、ボクの料理のじっけ、…どく……味見をお願いできないかな?」
「漏れてる漏れてる、サイズのせいでラットか何かと勘違いされてねぇかオレ」
「なんだよキミ、紳士の癖に淑女からのお願いを断ろうってのかい」
「オレぁ紳士じゃねぇ賭博師だ」
 しかも丁度いいと言う割には辺りに調理場らしきものは見当たらない、さてはこいつ食べさせても良さげなヤツ探して歩いてたな?
 断固断るとその場を立ち去ろうとするクロヴィスにアリスは食い下がる。

「まぁ待てよ、ボクだって伊達に図書館で知識を貯めこんでいるわけではないんだ」
 なるほどそれは一理ある。 ……一理ある?
 本のヤドリガミである彼女の歴史、100余年。つまりあれだ、老舗の味。
 老舗だから多少焦げるとかもあるかもしれない、あれあれ、あの、わびさび?的な。
 焦がしてこその渋みみたいな、苦みみたいな。それを味わうのが通的な。
 いやほら老舗だし。100余年だし。100余年だぞ。100余年だっつってんだ。
 ……そんなこんなで押し問答、というかクロヴィスが葛藤すること数十分。

「………チッ、まぁ見るだけ見てやる」
 自分がうっかり見てしまった村のピンチに駆けつけてくれた淑女(自称)の頼みを無下にするほど、この人間、もといフェアリー腐っちゃいない。……などと思ったかどうかはさておいて、舌打ちと共にポキリと折れた。彼女の長い髪の如く、重たい足取りで、もとい翅取りで、アリスの後についていく。

「……とまぁ、こんな具合なわけなんだけどね」
「具合も何も救いようのねェ丸焦げだよ」
 果たしてそれが肉だったのか山菜だったのかキノコだったのか。
 もはや今となってはアリス以外は誰も分からないが、ともかく目の前に広がっている光景が食材への冒涜であることに変わりはない。
 ちょっと焦げてるくらいなら彼女を傷つけないように一先ずは食べて、後でこっそり口直しをする、くらいのエセ紳士っぷりを見せる気概はあったのだが。いや甘かった。この男はチョコレートのように甘かったのだ。
 あれだけ調理場から離れても分かるほどの焦げ臭い匂いだったのだ。予想できていはずだ、先手を読むのは賭博師にとって必要なスキルなのだ、いやそれにしたって見事に真っ黒だ。
 目の前の『物質』と同じくらい真っ黒な手袋を嵌めた手を額に当てて、クロヴィスは天を仰ぐ。
 ――――あぁ、空が蒼い。
 これ見よがしにそんな事をしてみせるクロヴィスをよそに、淑女(自称)のアリスは気遣いが出来る(淑女のため)ので、フェアリーにも食べやすい大きさに、丁寧に『物質』を切り分ける。彼にこれを食べさせるという意志は固いようだ。

「……火を通せばなんでも食べられる、って、本にはあったんだけどね?」
 身長150センチ強の彼女からすればひとくちサイズに切り分けられたそれをまじまじと見るアリスの声音は、一応この『物質』が焦げていて、人に食べさせるには忍びないものである事は分かっているのだと言いたげな、ほんの少しだけ申し訳なさを帯びているようなものだった、が。

「それに、ほら、本だからねボク。火は苦手なんだよね」
 ほら、とそのひとくちサイズの『物質』を指でつまんで差し出しながら続いた言葉は、随分と開き直っていた。
 ―――けれどクロヴィスは知っている。

「山賊と戦うとき、思い切り火つかってたじゃねェかアンタ」
 それが、アリスの聞いたクロヴィスの最後の言葉だった。


 さて、平和を取り戻したどこにでもある村で起きた、何でもないようなちっぽけな惨劇を、実は見ていた者がいた。

「あやや……何だか大変なことに……! うーんうーん……となると、焼くのは危険かもしれませんね……。
 よし、でしたら煮れば!煮れば何とかなるのではないでしょうか!」
 アリスの立ち去った、まだ少し焦げた匂いの残る調理場。そこに降り立ったのはエスチーカだった。
 フェアリーサイズの調理器具を借りてきて、空いた調理場を探して飛んでいたようだ。
 傍らで倒れ伏して唸っているクロヴィスお兄さんは、……意識はないがひとまず息はあるようだし、目覚めたら声をかけることにしよう。
 あちこちのテーブルから出た食材の切れ端をもらっては自身の調理場に運ぶこと、数往復。一度に運べる量は決して多くはないが、これもまた、小さくとも確かな積み重ね。エスチーカの調理場には、肉も野菜も様々な種類が程よく集まりだしていた。

「………ん、」
 蕾を食べる山菜を抱えて飛ぶ姿は、誰かに花束を届けようとするかのようで。
 輪切りにされた根菜を抱えて飛ぶ姿は、――チップを運んできてくれる妖精にも見えて。

「んしょ…んしょ……っ、と! えへへっ、皆さん快く分けてくださって、たーくさん集まっちゃいましたねー!」
 最後の食材を調理場に降ろして、集まった食材――山の幸ならぬ、幸の山を築いてご満悦。かと思えば、煮るとなればやっぱりスープですよねっ!と小さな拳を握る。
 ようやく意識を取り戻しだしたクロヴィスが、ぼんやりと霞んだ視界に捉えたのは、そんな、自分より一回り以上も年下の同種族の姿だった。

「…………包丁とか火、気ィつけろよ」
「あやっ? お目覚めでしたかっ、おはようございますクロヴィスお兄さん!」
「…………あー……。 ……おう」
 未だ口の中に残る強烈な苦み。思わず額に手を当てながらも重たい体を起こしたところで、無意識のうちに言ってしまったのか、聞こえてきた自分の言葉に内心きょとんとする。エスチーカからの「おはよう」に即座に返せなかったのが、その何よりの証拠だ。
 グリモアベースでこの村の説明をしていた時、妙にニコニコしながら自分のことを見ていた彼女のことを思い出す。いつか彼女の身てしまったという予知もまた何となく見過ごせず、此処アックス&ウィザーズに出向いた記憶もある。
 ―――どうにも、女と子どもには弱いのだろうか。
 そんなクロヴィスの胸中など露知らず、エスチーカは集まった食材を綺麗に並べながら笑う。

「えへへっ、チーカは包丁つかわなくっても平気ですから大丈夫ですよ! ……あ、でもでも火の扱いには気を付けますね! せっかくの山の幸、焦がしちゃ大変ですし!」
 実はこっそり見ちゃってました、そう言って少しだけ悪戯っぽく笑うエスチーカの髪を揺らすように、この村の風が吹いた。
 すっかりお友達になったこの地の風は、調理場に並んだ食材の切れ端たちを、さらにフェアリーである彼らが食べやすい大きさに切っていく。

(……心配いらない、ってか。)
 風の声が、クロヴィスにも聞こえた気がした。が、いくら風の精が寄り添っているとはいえ、それでも何となく、9歳の少女がひとり火を扱うというその場を離れがたかったか。

「……贅沢いわねぇから、胃に優しいモンが食いてェ」
「あ、じゃあじゃあ、クロヴィスお兄さんには味見をお願いしたいです! ほらほら、この山の幸の味って、クロヴィスお兄さんがこの村のことを予知してくれなかったら、食べられなかったものですし!」
「……別に、たまたま見たのがオレってだけだろうよ」
 自分が見つけようが見つけまいが、この村に危機は迫っていた。ならば遅かれ早かれ、別のグリモア猟兵が……ひょっとしたら、目の前の彼女が見つけていたかもしれない。――だろ、と言いたげに、癖のように煙草を取り出しかけたところで、ニコニコ笑うエスチーカの顔が目に入る。素直じゃないですねー、とでも言いたいのだろうか、それとももっと別のことが言いたいのだろうか。
 彼女の笑顔の意味するところがクロヴィスには分からなかったが、何にせよその笑顔に毒気を抜かれたように煙草をしまい、口寂しさにがしがしと頭をかいて立ち上がった彼に、更にエスチーカの言葉が続く。

「それにそれに、……あの、チーカ、お料理に自信があるわけじゃなくってですね!」
「自信ねぇっつったって、スープなんてマズく作る方が難し――……いや。……じゃあ、作ってる途中で味見してやるよ」
 食材に火を通しただけで意識を奪った強者がいることを思い出す。苦い思い出はまだ記憶に新しく、何せ舌の上にまだ残っているほどだ。
 もしも彼女の言うように、自分が予知したことでこの村が救われて、自分が予知したことで山の幸にあやかれるというのなら、その救いの象徴たる山の幸に二度も意識を奪われるというのもおかしな話ではなかろうか。
 お願いします! と元気に笑う彼女の作るスープは、きっとこの捻くれた男の胃を温めたことだろう。


「……ふむ、暇になったね!!」
 くるりくるりと逃げてきた先、あちらこちらでつまみ食い。
 そこそこお腹もふくれたところで、皆が笑顔のエピローグ。
 楽しい時間はまたたく間、一番星がまたたく頃合い。
 けれど何かが物足りない。カーテンコールにはまだ早い。
 ……少なくとも彼女、天命座・アリカが暇であると感じたからには、この物語は、まだ終わってはいけない。

「賭けでもしようぜクロヴィスくん!」
「いや唐突だな、っていうか居たの気づいてたのな」
 温かなスープで口直しができたところで、桃色の髪の少女と分かれた矢先。また別の桃色の後ろ姿を見つけたもので、ひらりひらりと飛んできてみたのだが。振り向きざまに急に名前を呼ばれては、さすがにクロヴィスのポーカーフェイスも一瞬崩れるというもの。
 そんなクロヴィスに、アリカは楽しそうににこにこと笑いながら、1枚のコインを取り出した。細い指でピンと弾かれたコインが、薄暗くなってきた空をクルクルと舞う。
 落ちてきたコインを、ぱし、と乾いた音でもって手の甲に受け止めて。

「さぁ、投げたコインは表か裏か、シンプルに行こう天運さ!」
 さて、唐突な展開とはいえ、賭けと聞いたなら乗らないクロヴィスではない。けれどギャンブルをするときは、ひとつ確認しておくべきだ。

「賭けってことは、勝ったら何かしてもらえンのか?」
「そうだね、負けた方が勝者に一品作るってことにしようか!
「オーケー、悪くねェ。 ……そうさな、じゃ、表で」

 そして、開かれたアリカの手。
 あ、と小さく漏れ出た彼女の声。
 ギャンブラーは、にやりと笑う。

「悪ぃな。勝利の女神サマは、まだオレのそばにいるようだ」
 何せ賭博師は、『猟兵たちが山賊たちを殲滅し、この村を守りきる』という大きな賭けに勝ったばかり。


 ―――それは、何でもない日の夕暮れ時。
 社会の秩序は適材適所、素晴らしきかな支え合い、いくら私が天才でもね、苦手はあるんだしょうがない、考えてもみたまえよクロヴィスくん、それこそが生の証と言えるだろう!?
 数時間前に村の少女に言ったのとほぼほぼ同じ言葉を再び口にしながら、アリカは前方を飛ぶクロヴィスの後を歩く。
 特に何かをリクエストすることもなく、ただ一言「オレの勝ちだな、じゃあ着いてこい」とだけ言ってひらひらと飛び出したこの男の行く先に。

「あら、舞台を見せてと言った覚えはないのだけれど」
 また、別の桃色がいた。

「手があるのに越したこた無ぇだろ? それに、コイツは今からオレに一品作らなきゃなンねぇんだ」
 事情がわからずにきょとんとしているアリカを、ぴっと親指で指し示しながら得意げにクロヴィスが笑ってみせた。
 夕暮れ時、少しずつ眠気もさめてきたミーユイは、ふぅん、と鼻に抜けるような声をこぼし、そして蜜が零れ落ちるようなゆるやかな視線で、アリカを見る。

「……それならさっさと支度なさいな。 それで、そこの甘党妖精? これで何が出来そうなの?」
 ミーユイの立つ調理場には、山で獲れた野イチゴをはじめとした果実や、たくさんの木の実が置かれている。
 そのまま食べても美味しいだろう山の幸は、手間をかければもっと美味しくなるはずだ。

「その呼び方でオレを呼び止めたっつーコトは、そういうのがお望みってコトでいいのかね?」
「……わかっているならもったいぶらないでちょうだい、好物なら作り方くらい存じているのでしょう?」
「う……い、一体全体何なんだい、そろそろ種明かしをしておくれ!」
 クロヴィスとミーユイのやり取りに痺れを切らしたアリカが、両手を大きく上下させて大きく喚く。その様子にくくっと笑って、いや悪い悪いとクロヴィスが両手をあげた。

「デザートがなくっちゃ食事は終わンねぇだろ? 昼間は眠たそーーーにしてたそこのお嬢さんが、夜なら作ってくれそうだったンでな」
 いやぁいいね、菓子作りが出来るっていうのは、いいオンナの条件のひとつだ。そんな事をのたまいながら、彼女の時間となる夜になるまで時間をつぶそうとしていたら、何やら黒い物質を食べたり、小さな子のスープ作りを見守ったり、ひょんなことから賭けに勝ったりしたもので。
 30センチ強の体躯では出来ることの限られる自分に代わって、彼女のアシスタントを務めて欲しいのだと説明する。
 歌い手と踊り手、ふたりの見目麗しい桃色の女性が並んでお菓子作りをする様は、きっと自分の目にも楽しいだろう……という心の内は、明かさぬまま。
 クロヴィスの説明にようやく納得がいったのか、アリカは快く頷いて。

「なるほどなるほど理解した! 賭けに負けたのは本当だしね!
 キミとのセッションは最高だった、アンコールに応えるのも悪くない!」
「前置きが長いのよ……で、何を作らせるつもり?」
 作るのやめるわよ、と言わんばかりの溜息を交えながらこぼすミーユイに、まぁ焦るなとクロヴィスが笑う。
 砂糖や卵、小麦粉は村人たちが快く提供してくれる。野イチゴや木の実が主役となって、この祝勝会を締めくくるのに相応しいデザート。

「祝い事にはケーキ、って昔っから相場が決まってンだ」
 いつの時代、どこの世界でも、きっと共通の認識さ、と、アリカにつられたか何処か芝居がかった口調で、甘党妖精が鼻を鳴らす。

「ま、その材料ならケーキっつーかタルトのが美味そうだな、タルトにすっか。
 ほれ、じゃあアリカはとりあえず、野イチゴとかの果物を洗って、ヘタを取ってくれ。
 で、ミーユイは砂糖とバターと卵を混ぜて、そしたら小麦粉を――……」
 存外、レシピなど見ずともスラスラと出てくるものだな、などと思いながら調理場の隅に腰掛け、まずは踊り手に、そして歌い手に、とタクトを振る。
 ……それぞれの手際を確認して、こりゃ主演は歌い手の方だな、とも思いながら。

 やがて。
 タルト生地の焼ける匂い。アーモンドクリームの焼ける匂い。
 煮詰めた野イチゴの甘酸っぱい匂いに、キャラメリゼされた木の実の香ばしい匂い。
 辺りはすっかり暗くなり、一番星の輝く夕暮れ空が満天の星空に変わりだした頃、それらは一つに合わさりだす。

「………」
「……そんなに黙られるとやりづらいのだけれど」
 いやすまん、とクロヴィス。
 それならばとアリカが声を張り上げようとしたのを、いやそれはいい、とミーユイが制すれば。
 3人の間には、再びの沈黙が流れて。
 ――――――――ちょん。

「…! やったねすごいや完成だ!! 正真正銘最高傑作、出来立てタルトにハイ拍手!!」
 ミーユイから、クロヴィスから、はぁぁ…と長い溜息が零れた。お互いにお互いの溜息に気づき、ふと顔を見合わせ、微妙な間が流れる。
 そんな2人を後目に両手を高々とあげて大はしゃぎするアリカは、いつのまにか甘い香りに集まっていた村人たちに喝采を煽った。
 煮詰めずに幾つかとっておいた野イチゴ、その最後のひとつを飾り付けて、タルトの完成とする。その緊張の一瞬を――いや、その最後のひとつを置くのに5分ほど時間をかけているので、実際は一瞬というにはあまりに長い時間だったのだが――アリカとクロヴィス、それに集まったギャラリーたちが固唾を飲んで見守っていた、というだけだったのだが。

「か………完成か!? これで完成なんだな!?」
「うおおおおお俺まで緊張しちまったぜ!!」
「で、このタルトっていうのは何だかしら? すっごく甘くて、幸せな匂いだわ!」
「ねぇママ、すっごくおいしそう! あれ、お姉ちゃんたちに作り方教わっておいてね!」
 アリカに煽られるまでもなく村人中から沸き起こった歓声は、――なかなかどうして、聞いていて悪い気はしない。
 そう、甘い匂いは幸せな匂いなのだ、などと頷きながら、クロヴィスはたった今タルトを完成させた歌姫を見やる。
 大袈裟すぎるのよとこぼしながら、手際よく使った器具を片している彼女は果たして、歌以外のものでここまでの拍手や歓声を受け取ったことがあるのだろうか。彼女のこれまでの生を知らぬ以上、クロヴィスには予想することしか出来ないが――……満更でもなさそうなその表情をうかがうに、なかなかどうしてこの歓声、聞いていて悪い気はしていないようだった。


 それは、何でもない日の1日の終わり。
 食べて、飲んで、騒いで、学んで、また食べて、過ぎていく時間。
 朝起きて「おはよう」というくらいに当たり前のことだけれど、
 明日また「おはよう」というくらいに奇跡的な時間が、過ぎ去って。
 ――そうして、どこにでもある村の、どこにでもいる人たちの、何でもない1日が終わっていく。

 猟兵たちが守ったその場所で、猟兵たちが帰ったそのあとで。
 今日も人々は交わすのだ。

「おやすみなさい、また明日」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト