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Schwarze Rose✕Schwarzwald

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #エンデリカ #プリンセス

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 ―――The rose is red, the violet blue,

 真っ暗な森の中を一人の少女が駆けていく。
 剃刀の様な肌を削ぐ冷気。
 露出した頬は強張り、吐く息は白い霧となって溶けていく。

 ―――The gillyflowers sweet, and so are you.

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ここも…こんなにっ!」
 ぐしゃりと踏み潰し、地面に散るのは黒い薔薇。
 ざわりと葉を揺らし、立ち塞がるのは黒い樹々。
「ッ! 痛っ!」

 ―――These are the words you bade me say

 突如横合いから伸びた枝が腕を掠め、白磁の肌に一筋の朱が差す。
 否、よく見ると一つではない。
 何もなければ静謐な美貌と言って良いだろう純白のローブは、点々と広がる血の染みによって今や猟奇的な壮絶さしか演出できない。
 それでも足は止められない。
 何故なら追われているからだ。
 誰に? どうして? それはわからない。
「来たぞ来たぞ!」
「居るぞ居るぞ!」
「誰が誰が?」
「誰と誰が!」
 一つだけ分かるとすれば。
 追いつかれたら、自分は死ぬと言うこと。

 ―――For a pair of new gloves on Easter day.

「見たぞ見たぞ!」
「来るぞ来るぞ!」
「もう諦めろ」
「「もう帰れない!」」
 黒い樹々がケタケタと不気味に嗤う。
(昨日までは……こんなんじゃなかったのにッ!) 
 煌めく汗を反射して、少女の頭上に王冠が輝く。
 木漏れ日の下、花や小動物達が戯れていた彼女の国は今。
 黒い森に塗り潰されようとしていた。

●in グリモアベース

「黒い森……確かグリム童話にそんなのがありましたね」
 ホログラムウインドウに並べた情報を入れ替えながら、ユノ・ウィステリア(怪異蒐集家・f05185)は、猟兵達を前にそう切り出した。
「さて皆さん、迷宮災厄戦に現れた猟書家と言う敵を覚えてますか?」
 侵略蔵書と言う魔導書を手に猛威を奮った彼らは今、かつて猟兵達が戦いの末、平和を取り戻した世界へ再び魔の手を伸ばしてきている。
 骸の月。
 夜天に浮かぶ真円の月が全て闇に取り込まれた時、猟書家が新たなオブリビオン・フォーミュラとして復活してしまうという。
 ユノが画面に二人の少女を映し出した。対象的な容姿をしている。
 片や機械の翅を広げた黒ずくめの少女。
 そしてもう一人は白銀の髪に純白のローブを纏った少女だ。
 初めに指し示したのは黒の少女。
「今回皆さんの相手となるのは、この『幹部猟書家エンデリカ』です。彼女は現在、アリスラビリンスの『静かな森の国』と言う国に狙いを定めて侵略を開始しています」
 呪われし黒薔薇の精霊である彼女は、自身の黒薔薇で強化改造した吸血植物をけしかけ、国全体を妖花が蠢く魔の森に変えてしまおうとしている。
 続いてユノはレーザーポインターで白の少女を指し示した。
「原因は不明ですが、『静かな森の国』を治める此方のプリンセスがユーベルコード「ドレスアップ・プリンセス」で飛翔している時に出る花びらで、黒薔薇を相殺する事が出来るようなのです」
 最も、彼女自身もまだ其れに気付いてはいない。逃げながら無意識的に振りまいている花びらが黒薔薇を駆除してはいるものの、それだけでは焼け石に水と言うもの。
「まずはパニックに陥っているプリンセスをなだめて、自分の花びらで黒薔薇が消せる事を教えてあげて下さい。エンデリカは吸血植物で迷路を作って彼女を絡め取り、ゆっくりと追い詰める作戦の様です。現状は彼女の花びらが功を奏して、辛うじて逃げ果せている様ですが……このまま捕まるのも時間の問題でしょう」
 そうなる前に、彼女を助けてほしい。

 天球儀が回転を始める。

「せっかく平和になった世界です。このまま再びオブリビオンの手に落ちるのを見過ごす訳には行きませんよね」


龍眼智
 定期的に血が見たくなるヤベー奴とは私の事(  ☆`ω☆´)
 龍眼智です。

 今回は猟書家シナリオとなります。
 幹部猟書家エンデリカの魔の手から『静かな森の国』を守って下さい。
 本シナリオは【二章構成】になっており、猟書家の侵攻状況に影響します。

 尚、最初に言った通り、今回はちょっと血塗れ成分多めでお届けしようと思います。
 普段のシナリオより負傷確率が高くなっておりますのでお気を付け下さい。

 プレイングボーナス(全章共通)……空飛ぶプリンセスを守り続ける。

 では以下構成。

 第一章:集団戦『迷わせの森』
 第二章:ボス戦『エンデリカ』

 第一章
 樹の迷路の中でエンデリカとの鬼ごっこを繰り広げるフェイズです。
 木々の一つ一つがオウガであるこの森は、プリンセスを狙って四方八方から鋭い枝を伸ばして串刺しにしようとしてきます。
 プリンセスの花びらで勢いを弱めない限り、伐採は困難でしょう。
 身体を張って止めるか、何らかの手段で動きを鈍らせるか、方法は色々あるかと思います。

 第二章
 エンデリカとの直接対決になります。

 それでは、行ってらっしゃいませ
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第1章 集団戦 『迷わせの森』

POW   :    絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

子犬丸・陽菜
【Lv2】(遠慮なく負傷させてOKというか希望)

追われて錯乱状態に近いのかな
無理もないよね

問題はこっちの言うことを聞いてくれるか…今の状態じゃ難しいかも
余裕ないだろうし

多少ショッキングな方法を使うよ

まず宝珠を起動して内臓を掻き回し力を得る

うぐぇ…っ、でも音が響くくらい強めに掻き回しこっちに標的を向ける意味も込めて

あえて棘は避けない、腹を貫かせる

目的は2つ

ショッキングな場面を見せてパニックを抑える
あたしが傷を負った事で助けを求め目的を与える

あとが枷でエンデリカを攻撃してみる、効けば儲けもの

うっ、ぐふっ
あ、あなたにはあたしを助けられる力があるの

たすけて…ぐふ

あなたしか頼れないから…
花びらを無効に…



『ウフフフフ、何処マデ行ッタノカシラ。キット恥ズカシイノネ。アァ…カワイイワ!』
 薄暗い森の中に鈴を転がす様な少女の声が響く。
 それは確かに無垢で、可憐で、しかし同時に、耳骨を削り、脳髄を直接舐め上げる様な悪寒を感じさせる声だった。
「ヒッ……い、イヤァァァッッ!!!」
 樹に手を付き荒い息を付いていたプリンセスは、その声を聞くや再び弾かれるように走り出す。
 宛もなく、只、森の奥へと。
 その先に現れたのは、転移ゲートを潜り降り立った子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)
(いた。きっとあの子だ)
「ねぇ! 貴女!」
「イヤッ! 離してェッッ!!」
「あっ!」
 陽菜は此方に走ってくるプリンセスに目を留め駆け寄るが、彼女は恐怖に目を見開き、陽菜を突き飛ばして走り去ってしまう。
「う〜ん、追われて錯乱状態に近いのかな……まぁ無理もないよね」
 恐怖に囚われた人間は厄介だ。特に命が掛かっている場合の恐怖は、生物としての本能が「自らの生存」を最優先に行動する為、ある種の暴徒と化してしまう。
 とは言え、その彼女の協力を得られねば状況を打破することは出来ない。
「…仕方ない、ショック療法で行くしか無いね」
 まだ辛うじて視界の彼方に見えている彼女に追い付くのは簡単だ。
 問題はこっちの言うことを聞いてくれるかどうか……。
 陽菜は自分の腹を一瞥すると、プリンセスを追って走り出した。
「逃げた逃げた!」
「何処に何処に!」
「あっちかな?」
「こっちかな?」
「どっちに行っても行き止まり!」
 目指す先では樹々が不気味に葉を揺らし、ズルリと、爆発的な速度で枝が伸び始めた。プリンセス目掛けて四方八方から鋭い枝が襲いかかる。
「あたしの、苦痛の一端……感じてみますか? ん、ぐ、んぐぅっ!!」
 
 ―――ごぎゅ……ぐるる……

「ぐっ! ゴフッ!!」
 走る陽菜の腹部が不自然に波打ったかと思うと、突如うずくまった彼女は滝の様な血を吐き出す。
 陽菜の身体に埋め込まれた依代の宝珠が起動し、彼女の臓腑を食い荒らしているのだ。
「うぐぇ…っ、で、でも……もう少し…アァァァっ!!」

 ……み…ちみちみちぃぃ!

 胃が、肝臓が、膵臓が、十二指腸が、横隔膜がブチブチと音を立てて食い破られていき、視界が明滅する程の激痛が陽菜を襲う。
「な、なにアレ……」
 気付けば、プリンセスが足を止め、怯えた表情で陽菜を見つめている。
 そう、一見暴走の末の自爆のように見えるが、これが彼女のユーベルコードである。
 依代の宝珠に自らの肉を喰わせ、その痛みと苦しみを相手と共有する。
 
 ―――では、この場合の『相手』とは誰か?

「おやおや?おやおや?」
「おかしいぞ?おかしいぞ?」
「枝が枝が!」
「どんどん枯れてる!」
「血だ血だ!」
「「血が足りない!!」」
 枝の伸びる速度が一度止まり、そして、再び破裂するかの様に爆発的に伸びた。
 だがしかし、今度の狙いはプリンセスではない。陽菜だ。
 激痛にうずくまり動けない陽菜は、伸びた枝に腕を貫かれると、そのまま対面の樹に叩きつけられた!
「ギィッ! ガッアァァ!」
 一際太い血塗れの枝が、彼女の腹を突き破り現れる。
 百舌の早贄となった陽菜は、それでもプリンセスに視線を向けた。
「うっ、ぐふっ……あ、あなたにはあたしを助けられる力があるの」
「えっ?」
「貴女の出す花びら……それが……こいつらを……弱らせる……の…」
 血の逆流する喉を震わせ、渾身の力で訴える。
「たすけて…ぐふッ、貴女が花びらを出してくれたら……」
「私が……?」

「私達も……戦えるから……」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

大豪傑・麗刃
【Lv3】

プリンセスを守り、んで能力発揮させてやると。
血塗れ成分多めとか負傷確率高いとかあったが、そう簡単にぶらっでぃ麗ちゃんになってやるわけにはいかの塩辛。

まずはがんばってプリンセスを探す。それぽい花びら舞ってるならわかりやすいかな。んで遭遇したら助けに来た事を伝えつつ、ギャグ世界の住人を発動。プリンセスをかばい、黒薔薇を全て受け切る。

見たまえ。
こんなものまったく怖くないのだ!
もしかしたらきみにもこれくらい簡単かもしれないぞ!

と、彼女を鼓舞しつつ、彼女の能力で黒薔薇が消せる事を示唆するという流れで。

もしギャグ世界の住人発動してない時に黒薔薇に襲われたら?

……
気合いと根性と激痛耐性でがんばる。



『コノ花ビラハ……フッ、ウフフフフ! ソウ! 気付イテシマッタノネ! 自分ノチカラニ!』
 森に響くエンデリカの声に明確な喜悦が混じる。
 轟ッ! と、質量すら伴う殺気に、樹々が突風に煽られたようになびく。
「むむッ!? 殺気ッ!」
 その気当たりに反応したのか、奇怪なポーズで何かを威嚇している男がいる。
 珍妙な格好の男であった。
 着流しにジャージを羽織り、革のベルトを締めると言う出で立ちこの男、名を大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)と言う。
 取り敢えず大豪傑家に代々伝わる「夜道で怪しい奴をびっくりさせるポーズ」を披露してみたものの、何も襲ってこない。
(なるほど…つまりアレからプリンセスを守りつつ能力を発揮させてやると…)
「理解したのだ! まぁ〜血塗れ成分がどうとか言ってた気がするがそう簡単にぶらっでぃ麗ちゃんになってやるわけにはいかの塩辛! さぁ走っておいでよプリーンセース!」
 意気揚々と刀を振り上げ、麗刃は森の奥へと走り出した。

「本当だ……あの人の言ってた通り」
 華やかなレースで彩られた純白のドレスから舞い散る花びらが、地面を埋め尽くす勢いで増殖していた黒薔薇を、少しずつだが消し始めている。
「でも…くっ!」
 何とか錯乱状態から抜け出したプリンセスではあるが、状況は余り改善していない。
 宙を飛ぶ事で機動力は上がった者の、樹々達の攻撃もより立体的になっていた。
 走っていたときと違い、今ではもう縦横無尽に間断なく枝が襲ってくる。
 そして自分では、黒薔薇は消せても、枝を切り払うことは出来ないのだ。
「一体どうすれば……ッ!?」
 向かう先、四方から取り囲むように枝が来た。
(ダメッ、避けきれない!)
 あわや串刺しかと思ったその瞬間、救いの手は真上から来た。
「天空鬼面フラーッシュ!!」
「キャァッ!?」
「ヘブルァッ!」
 樹の上から真っ逆さまに落ちてきた麗刃の顔面がプリンセスの尻に突き刺さった!
 叩き落される様に大きく高度を下げるプリンセスだが、結果的にこれが彼女を助ける事になった。
「ッ!? あぁ……そんな……」 
 何故なら―――見上げた頭上では、麗刃が四方から伸びた枝に胴体を貫かれ、宙に縫い留められていたのだから。
 確実に致命傷だ。
 またしても自分の目の前で瀕死の重傷を負う者が出たことに絶望するプリンセス。
 しかし、

「フッ……クックックック……ギャグマンガ風になっていなければ即死だったのだ…」

 何ということだろうか。
 麗刃の全身が何やらギャグ漫画風の雑な作画になっているではないか!
 おまけに彼はその状態でギザギザの白い歯を輝かせ、満面の笑みでサムズアップを送ってくる。
「危ないところだったのだお嬢さん。だが見たまえ! こんなものまったく怖くないのだ! もしかしたらきみにもこれくらい簡単かもしれないぞ!」

「いや普通に死んじゃいますんで」
 思わず真顔でツッコミを入れてしまうプリンセスであった。
「ところで」
「はい」
「……これどうやって降りれば良いと思う?」
「考えてなかったんですか!?」
 森の中に、別の意味で絶望の悲鳴(笑)が響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルカ・クルオーレ
【Lv2】まあ、適度に。

守りつつこっちも向こうも頑張れってことだよねえ、どうしようか。

まあ、多少くらった方が色々やりやすい……うん、問題ないね。
プリンセスが枝を避けられないようなら割り込んで盾になるよ。
……流した血も武器になるからねえ。
【Fulmine di sangue】
邪魔なんてできない位に一気に刈り取ってしまおう。
僕に傷をつけたんだ、それ相応の報いは必要だよねえ。

さて、お姫様は力の使い方は分かったのかな?
必ず守るから、この世界の為に君は君の役割を果たしてもらえると良いなと思うよ。



『アァ……ステキ…ステキヨ。早クアナタノ綺麗ナ姿ガ見タイワ。昆虫標本ミタイニピンデ止メテ飾ッテ上ゲルワネ』
 エンデリカとプリンセスの距離は確実に縮まって来ている。
 蠢く黒い枝に阻まれてこそいるものの、既にお互いの姿を視界の片隅には捉えている。
 だが、敢えて簡単に追い付きはしない。

 ―ダッテコレハオニゴッコデスモノ―

 だから簡単に終わってはつまらない。
 もっともっと追い詰めて追い詰めて、彼女から最高の絶望を引き出さなくては!
(……て言う所かな。全く、中々いい趣味をしてるよ)
 枝から枝へと巧みに飛び移りながらその様子を観察していたルカ・クルオーレ(Falce vestita di nero・f18732)は、エンデリカの心中を想像し、苦笑した。
「まあ、適度に守りつつこっちも向こうも頑張れってことだよねえ、これ」
 どうしようと、朗らかな笑顔を浮かべながら、彼は手にした黒鉄製の大鎌【Falce della Morte】で行く手を阻む枝を切り払っていく。
「どうしようどうしよう!」
「どうするどうする?」
「いつのまにか腹ペコ青虫が一杯!」
「しっかり駆除しておかないと!」
 プリンセスの花びらの効果か、漸く枝の伐採は出来るようになってきた。
 しかし、樹々の成長速度は未だ健在。
 切り払っても切り払っても即座に再生する枝が、彼の全身に無数の傷を刻んでいく。
「アハハハ、鬱陶しいなキミ達は。まあ、多少くらった方が色々やりやすいけどね……」
 しかし、このままプリンセスの元に辿り着けないのも問題だ。
 ルカは自らの血糊でべったりと汚れた軍服を見下ろし、笑みを深くした。
「そろそろ良いかな。僕にこれだけ傷をつけたんだ、それ相応の報いは必要だよねえ」
 見開いた彼の真紅の双眸に呼応するように、【Falce della Morte】の柄にあしらわれた宝石が不気味な紅い光を放つ。
「さあ、現れたよ。お前の死を告げる者が」 
 赤光が薄暗い森を一瞬、昼間の様に照らす。
 そして再び森が闇に沈む時、ルカの周囲に数人の分身が出現していた。
「たいへんたいへん!」
「お邪魔虫が増えたぞ!」
 黒い雷を纏った分身達が一斉に周囲の樹々を焼き払い始める。
 一気に手数が数倍になったルカは、トンネルでも掘るかの様に樹々の間を突き進み、遂に飛び回るプリンセスの元へと辿り着いた。
「さてお姫様、力の使い方は分かったのかな?」
「はい! 皆さんのおかげです」
「アハハ、お礼を言うのはまだ早いな。でも……」
「?」
「必ず守るから。この世界の為に君は君の役割を果たしてもらえると良いなと思うよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

藤塚・枢
命がけの鬼有り迷路アトラクションか。
体力に自信はないけれど、何かを切断するのは割と得意なんだ。
少ない根性を見せて、伐採に励むとしよう。

UCで移動しつつ、プリンセスとエンデリカの間に入る様に位置取り。
木々の間に鋼糸を使って罠を張り続け、追跡を妨害する。
枝は鋼糸で切断したり、焼夷弾で焼き払ったりして撃退。
プリンセスへある程度近づけていたら、人形を護衛のような形で配置。
攻撃が来たら人形に庇わせる。
最悪の場合、自分もプリンセスを庇う。
このお姫様がいないと、勝利条件を満たせないからね。
戦術的敗北なぞ、最終的な勝利の前では塵芥みたいなものさ。
そういった行動をしつつ、根性で迷路の出口を頑張って探すとしよう。



「ッ!? そんな! 行き止まり!?」
 茨に囲まれた直線ルートの最奥。そこで、遂にプリンセスの動きが止まった。
 眼前にそびえ立つのは、捻れた枝が絡まり合って形成された棘の壁。
 それが、三方を囲んでいる。
『マァ大変、行キ止マリネ! ソロソロ鬼ゴッコモオシマイカシラ』
 そして、背後に聞こえるエンデリカの声。それはもう、吐息すら聞こえる距離まで迫っていて―――

「残念だね。まだ終わらせるわけにはいかないよ」

 次の瞬間、二人の間の『何もない空間』が、突如爆炎を上げ爆ぜた。
『ッ!? ……ナァニアレ……?』
 エンデリカの声に怪訝な響きが混じる。
 樹々に燃え移った残り火に照らされて、空中の至るところでキラリと何かが光っている。
 糸だ。
 目に見えない程に細い鋼の糸が、通路全体を塞ぐように蜘蛛の巣めいて張り巡らされている。
 所々に手榴弾のピンが引っ掛かっているところを見るに、今の爆発はこれの仕業と見て間違いない。
 藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)が仕掛けたブービートラップだ。
「やぁお姫様、危ないところだったね」
「キャァッ!?」
 突如頭上から糸にぶら下がって降りてきた巨大なぬいぐるみ(を背負った少女)に目を白黒させるプリンセス。
「今なら奴は追ってこれない。私が壁を壊してあげるから、そこから逃げるんだ」
「あっ、は、はい!」
 プリンセスが目を白黒させながら何とか頷いたのを確認すると、枢は宙を蹴り枝の壁へと身を投げた。
「なんだなんだ!」
「なにかきたぞ!」
「でもでもここは行き止まり!」
「王様だろうと通れない!」
 表面を剣山の如く埋め尽くした棘が蠢き、プリンセスへと枝が殺到する。
 それを弾くのは枢の相棒、からくりぬいぐるみ『フォリーくん』だ。
 プリンセスを背後から抱き抱えるような姿勢を取ったフォリーくんの全身から刃が飛び出し、襲い来る枝を次々と刈り取っていく。
 その隙に枢は自分に向かってくる枝を鋼糸で刈り取りつつ、壁を伝ってPE4爆薬をセット。
「今だ! 耳を塞いで!」
 枢の声が響き渡るのとほぼ同時、真四角に走った閃光が樹々の壁をくり抜いた。
 直様枝が再生し穴を塞ごうとするが、フォリーくんが自ら支え棒となって穴の向こう側にプリンセスを押し込む。
「何とか間に合ったか……そう、キミさえ無事なら幾らでもやりようはあるからね。さて、私は別の道を探すとしようか」
 枢は腕に突き刺さった枝の破片を引き抜くと、再び樹々の間に姿を消した。

成功 🔵​🔵​🔴​


 そうして―――逃げて、逃げて、逃げて。
 
 一体、どれほどこの茨の迷路を彷徨っただろうか。
 絶え間なく襲い来る枝を避け、背後に迫る狂気のプレッシャーに晒され、
 そしてその間も、ユーベルコードによって絶え間なく花びらを産み出し続けている。
 でも薔薇は減らない。
 否、自分が花びらを持って駆除することでようやく拮抗しているのだ。
 それはつまり、自分が力尽きた瞬間に、再び黒薔薇が国を埋め尽くしてしまうと言う事。
(一体……いつまで続くの……)
 盛り返していた心が、ゆっくりと絶望に沈んで行くのを感じながらT字路を曲がったその時、エンデリカの声に焦りが混じった。
『アラ……ソッチハ……マァ! ダメヨ、ダメダメッ! ソッチニイッテハイケナイワ! ダッテソッチハ……』
 彼方より差し込む陽光に、思わず目を覆うプリンセス。
 今までよりも少し幅を広げた大きな一本道。
 光は、その最奥から漏れている。
「出口だ……」
灰神楽・綾
【不死蝶】【Lv2】
遅ればせながら俺達参上、ってね
お姫様はだいぶ落ち着きを取り戻したようだね
もうひと踏ん張りだよ

じゃあ梓はちゃんとお姫様を守ってあげてね
俺のことはなぁんにも気にしなくて大丈夫だから

UC発動
いつもなら俺を守らせる紅い蝶は
プリンセスの周囲を舞いに行かせる
今回は俺には必要ないからね

Duoを構え、先陣を切る
飛翔能力で高速で飛び回りながら
立ち塞がるうるさい木々を次々と伐採していこう
敵の攻撃は急所だけは気を付けつつ
敢えて避けずに激痛耐性で持ち堪え
その直後、枝を引っ込める暇も与えず切り落とす

血を流せば流すほど
俺の五感は研ぎ澄まされ
得物の切れ味は増していく
攻撃は最大の防御ってやつさ


乱獅子・梓
【不死蝶】【Lv2】
よく頑張ったな、プリンセス
あと少しだけ頑張ってくれ

その言い方、お前の場合この上なく心配なんだが!

UC発動し、雷属性のドラゴンを複数体召喚
プリンセスを囲むように配置し敵からの攻撃に備える
綾は能動的に敵を殲滅していき
俺は受動的に敵の攻撃に対処、ってところか

炎とかで一気に全部燃やしてしまえば話は早いんだが
プリンセスの花びらまで燃やしかねない
なので襲いかかる枝を一つ一つ見極め、雷のブレス攻撃で迎撃
敵の攻撃が激しくて間に合わない場合は
身を挺してプリンセスを庇いに行かせる
先陣を切った綾が敵の勢いを削いでくれてる事を祈ろう
その分あいつに負担をかけてしまうことになるのが申し訳ないが…



「彼処……彼処まで行けば…!」
 極限状態の最中、遂に見出した終わりの光。
 それは心折れかけていたプリンセスを奮起させるには十分と言ってよかった。
 疲労に喘ぐ身体に鞭を打ち、ラストスパートとばかりに一気にトップスピードへと移行する。
 しかし―――
「残念残念!」
「ところがどっこい!」
「まだまだ僕らは逃さない!」
「ッ!?」
 瞬時に通路を網の目状に覆った茨の蔦が、ネットと化してプリンセスを絡め取ってしまう。
 勢いよく突っ込んだ所為か、全身に絡まった茨で身動きが取れない。
『アァ、ヨカッタ! ヤッパリ万ガ一ノ備エッテ大事ヨネ。ウフフ、トッテモ素敵ヨ! マルデ蜘蛛ノ巣ニカカッタ蝶々ミタイ!』
(そんな……後少しなのに……!)
 万事休すかと思われたその時―――ふと、自身の手に本当に蝶々が止まっているのに気付いた。
 鮮血を思わせる、鮮やかな真紅の蝶。
 それは一匹、また一匹と何処からともなく現れ、やがてプリンセスの全身を覆い尽くす程の大群となった。
「なっ、なにっ!?」

「遅ればせながら俺達参上、ってね」
 
 次の瞬間、茨を切り裂いて割り込んだ黒い影がプリンセスを攫っていく。
 黒いコートを羽織った長身の男だ。
 蝶の翅と同じ真紅に光るサングラスが、彼女に言い知れぬ不安を感じさせる。
「よく頑張ったな、プリンセス」
 文字通りのお姫様抱っこの体勢で着地した黒尽くめの男に、今度は白いコートの男が駆け寄ってきた。
「あ、あなた達は?」
 身を縮こまらせたプリンセスの問いに白い男が応じる。
「あぁ、俺は乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)。で、その黒いのが灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)。まぁ、通りがかりのナイト様ってところだな」
「ブフッ!」
 親指で自分を指差し白い歯でスマイルをキメる梓だが、それを聞いた綾が盛大に吹き出した。
「……………………何だ綾?」
「いや、ごめんごめん。良いと思うよ? ナイト様」
「よし、お前後で殴るわ」
「ハハッ、怖い怖い。じゃあ梓はちゃんとお姫様を守ってあげてね」
 一瞬戯けた様子を見せたかと思うと、綾は大鎌Duoを構え、出口へ向け飛び立っていった。
「あっ! おいっ!」
「俺のことはなぁんにも気にしなくて大丈夫だからー!」
「その言い方、お前の場合この上なく心配なんだが!」
 全く信用できない【大丈夫】を残し飛び出した相棒の背中を見送りながら、梓は改めてプリンセスに目をやる。
「悪いがあと少しだけ頑張ってくれ。先陣を切った綾が道を切り開いてくれるはずだ」
「はい。フフッ……ありがとうございます。仲が良いんですね」
「あぁ、まぁ、腐れ縁でね……んッ!?」
 サングラスを摺り上げた梓は、突如何かに気付いた様にプリンセスと飛び去った綾を見比べる。
 普段綾の周囲を取り巻いている筈の紅い蝶は、未だにプリンセスに張り付いたままだ。
 攻撃を肩代わりする能力を持つこの蝶の群れは、謂わば彼にとっての鎧。防具の役割を果たす物だ。それが此処にいると言うことは―――。
「アイツ……ッ! 全ッ然大丈夫じゃねぇじゃねぇか!」
 冷や汗を浮かべた梓が見上げた先。
 既に綾は樹々の伐採を始めていた。
「まだくる?まだくる?」
「まだきた!まだきた!」
「煩い樹だな……」
 瞬時に走る幾筋もの剣閃が、黒薔薇諸共伸びる枝を伐採していく。
 隔壁の様に組み合わさる枝が連続して何重にも待ち受けている様は、差し詰め巨大な蟲の顎と言ったところであろうか。
 今や剣山の様な密度で迫る枝は、Duoの剣閃をすり抜け、次々と綾の身体を貫き血を啜ってくる。
 血飛沫を撒き散らしながら縦横無尽に宙を駆けるその姿は明らかにジリ貧だ。
 しかし、その顔には相変わらずにこやかな笑みが浮かんでいる。
「あ、あの…あの人大丈夫なんですか?」
 後方、梓の召喚した雷属性のドラゴンの群れに護衛されたプリンセスが、心配そうに聞いてくる。
 綾の斬り損ねた枝の何割かがプリンセス目掛けて伸びてくるが、その度に雷のブレスがピンポイントに枝を焼き払っていた。
「あぁ、炎とかで一気に全部燃やしてしまえば話は早いんだが、それだと花びらまで一緒に燃やしかねない。この場で一番重要なのはアンタだからな」
 その分あいつに負担をかけてしまうことになるのが申し訳ないが…と付け足す梓の言葉に、プリンセスは前方の綾を見る。
(あれ……?)
 そこにあるのは、血塗れになりながらも樹々と奮闘する綾の姿だ。
 だが気のせいだろうか。
 彼に一つ傷が増える毎に、繰り出す斬撃の数もまた増えているのだ。
 速さも、鋭さも、傷を負う度に際限なく上がっていく。
 それはまるで、血で洗われ、研ぎ澄まされていく一振りの剣のよう。
『ダメッ! モドリナサイ! ソッチハ違ウ道ヨ!』
 背後からエンデリカが猛追してくる。
 
 出口は―――すぐ目の前まで迫っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『エンデリカ』

POW   :    咲キ誇リナサイ
自身の【体を茨に侵蝕させること】を代償に、【機械の翅から召喚する黒薔薇蝶々の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【黒薔薇に体の自由を奪われる呪いの鱗粉】で戦う。
SPD   :    コレガ「自由」ノ形
【機械に侵蝕された姿】に変身し、武器「【機械仕掛けの翅】」の威力増強と、【羽ばたき】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ   :    ドウゾオ静カニ
自身の装備武器を無数の【戦意と生命力を奪う黒薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メリー・アールイーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【追って幕間を更新致します。受付は更新後となりますのでしばしお待ちを】
「ナァンテ……ネ……」
 黒い樹々のトンネルを抜けた先、そこは確かに『静かな森の国』であった。

 一瞬の間だけ―――ではあるが。

 ぞわり、と地面が芽吹く。
 それは瞬く間に太い茨の茎へと成長し、絡み合い、黒薔薇の花を咲かせながら増殖していく。
 時間にして恐らく10秒と経っていないだろう。
 そこには再び、薄闇に沈む広大な黒い森が広がっていた。
「そん……な……」
 呆然とした表情でへたり込むプリンセス。
 その後方。闇の中から滲み出る様に『彼女』は現れた。

「フッ、フフフフフ……キャハハハハッハハハハハハッアハッアハハハハ!!!」
 
 一見して、小柄な少女に見える。
 黒薔薇のあしらわれたシックなドレスで着飾ったシルエットは、少女の可憐さと女の妖艶さが絶妙に混じり合っていた。
 背中に広がる茨の絡みついた機械の翅は、薄闇の中にあって尚輝きを失わず、神秘的なオーラを振りまいている。
 しかし。ドレスの裾から覗くのは人間の足ではない。
 ずるぅり、ずるぅり、と地を這いながら蠢く茨の蔦だ。
 そして何より―――。
「アァ! ソウ! ソウヨ! ソノ顔ガ見タカッタノ! 極限ノ恐怖ノ中デ遂ニ見ツケタ希望ノ光! デモ、手ニシタソノ時、ソレハ蜃気楼ミタイニ消エチャウノ……悲シイワヨネ……悲シクテ悲シクテモウ壊レテシマイソウ!! アァ……カワイイワ……トッテモ素敵ヨ! 今ノアナタ!! アハッ! アハハハハハハハ!!」
 彼女は笑っていた。嘲笑っていた。嗤っていた。
 芝居がかった大仰な身振りで狂気を謳う。
「どうして……」
「……エ?」
「どうしてこんな事をするの!!!! 私が……皆が何をしたって言うの!!」
 とうとう感情が爆発したプリンセスの血を吐く様な叫びにも、彼女は慈愛すら感じさせる微笑みを浮かべ応える。
「ソレハネ、アナタヲ愛シテルカラヨ! アナタガ一生懸命頑張ッテオ友達ヲ救オウトスル姿。ソノ『優シイココロノ証』ガ、壊シ、散ラシ、終ワラセル為ノ黒薔薇ヲ散ラシテシマウ……アァ! ナンテ素敵ナノ!」
 うっとりと、夢見る少女は情熱的に愛を語る。
「コンナ幸セガアッタナンテ知ラナカッタ! 素敵! 本当ニ素敵! 私モアナタミタイニナリタイ! アァ…‥ダカラネ……?」
 高まっていく興奮に呼応するように、茨が蠢き、四方を壁の様に取り囲んでいく。
「アナタノ事ガモット知リタイノ……モット、モット、モット、手モ、足モ、眼モ、耳モ、口モ、鼻モ、髪ノ毛モ全部!! オナカノ中ハ!? 頭ノ中ニハ何ガ入ッテルノカシラ!? 心ノ中モ全部ミタイワ! 一ツ一ツ、ユゥックリ、丁寧ニ分解シテアゲル。私ガアナタヲ理解スルマデ……ズット、ズット、永遠ニ!!! ネ? 素敵デショウ!?」
「ふざけないで……」
 掌の皮が破ける程に拳を握り締めたプリンセスが立ち上がる。
 震える身体を無理やり立たせ、涙で滲んだ瞳で敢然と黒の少女を睨み付ける。
「私は貴方の物になんてならない。私の国も、これ以上侵させない。皆さん、手を貸して下さい! あれはこの国に、いえ、この世界に存在してはいけない者です!!」
 
 そう、『彼女』の名はエンデリカ。
 猟書家『エンデリカ』である。
大豪傑・麗刃
希望の光とやらは消えたと思うのかねエンドルフィンくん。名前の通り脳内麻薬出まくったように興奮してるけど。
光を見たいかねプリンアラモードくん。
この状況で何を馬鹿な事を言ってると思われるかもだが、シリアスオンリーは頭痛が痛くなるのだ(強調表現としての重言肯定派)。
ネタ分補給したトコで

希望の光はここにある

はああああああ(それっぽい気合)

(スーパー変態人2発動!)

わたしにシリアスさせた罪は重いぞエンゼルフレンチくん。
まず希望の光ことわたしのオーラに火炎属性を付与、燃える男と化す。炎のオーラ防御、刀による切り払い、希望の光で(たぶん)鼓舞されたプリンターくんの援護で敵の攻撃を防ぎ、高速突撃し本体を斬る。



 決死の号令で対決の意を示したプリンセス。
 対するエンデリカは恍惚の表情を浮かべ、足元の茨を蠢かせた。
「フフ、フフフフフ……ソウ、抗ウノネ。オ友達ニ助ケラレテイケナイ子ニナッチャッタノカシラ! 待ッテテネ、ソコノネズミサン達ヲオ掃除シタ後、ユックリオ話シマショウ!」
 あくまで楽しそうに。だが同時に、そこには確かに嗜虐の色が見て取れた。
 蝶の足を一本ずつ毟り取って遊ぶ子供の様な残酷さ。
 その狂気は、機械の翅から漆黒の蝶々となって湧き出し、猟兵達に襲いかかってくる。
 大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は刀で蝶を切り払うと、指をビシッとエンデリカに突きつける。
「希望の光とやらは消えたと思うのかねエンドルフィンくん。名前の通り脳内麻薬出まくったように興奮してるけど」
「エ、エン……?」
 自分の事か?とでも言いたげな様子で首を傾げるエンデリカ。
「マァヨクワカラナイケド…エイッ」

 麗刃に放たれる蝶々が数倍に増えた。

「ヌワァァァァァーーー!!」
 黒薔薇の茨にギュウギュウ締め付けられる麗刃。
「麗刃さんッ!」
 上からプリンセスの悲痛な声が聞こえるが彼は構わず続ける。
「光を見たいかねプリンアラモードくん」
「ふざけてる場合じゃないんです! 今ここで彼女を倒さないと!」
「だって……だって……」
「?」
 何やら劇画調の悲痛な表情で震え始める彼に、思わず耳を傾けてしまうプリンセス。
「シリアスオンリーは頭痛が痛くなるのだ!!」
 ※大事なことなので二度言いました。

 その時、森の中を乾いた風が吹き抜けた気がした。
 
 なんかもーこいつどうしようみたいな空気が流れ始めたところで、ようやく茨から抜け出した麗刃が立ち上がった。
「ふ、ふふ……」
 パリッと彼の髪を青白いスパークが走り抜ける。
「わたしは超怒ったのだーーー!!!!!」
 怒髪天の如く噴き上がる黄金のオーラ!
 おお、見よ! 金色に染まった髪を逆立て、強力な眼力をエンデリカへと送る彼の姿は、まるで何処かの龍の玉が願いを叶えてくれる世界の様だ!
 うん、色々危ない。主に大人の事情が(CV:天の声)
「わたしにシリアスさせた罪は重いぞ……エンゼルフレンチくん!」
「モウッ、ヤッパリ私ノ事ナノネ! ソンナ変ナ名前ジャナイワ!」
 燃え盛るオーラに身を包み突撃する麗刃を迎撃するように、エンデリカが黒薔薇の蝶をけしかけてくる。
 だが、それで彼を止めることは出来ない。
 蝶は麗刃のオーラに当たった瞬間に燃え尽き、次々に塵と化していく。
「因みに私はぁぁぁぁぁぁぁぁポン・デ・リングの方が好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 遂にエンデリカへと肉迫した麗刃の剣閃が、彼女の足元で蠢く茨を、バッサリと刈り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

子犬丸・陽菜
【LV2】

なんて禍々しいの、悪夢が目の前に広げられてるみたいだよ
それにだいぶ歪んでるね、あなたのそういうのは欲望をぶつけてるだけだよ
独りよがりなだけ、姫様はあたしが守る

けど、ぐふ…っ
内臓が傷ついて、それどころか…
お腹を突き破られたせいではらわたが、っぐ
片手じゃ抑えきれないよ、自分のはらわたを見るのは初めてじゃないけど
やっぱりくるものがあるかな…

姫様、あなたの力が必要なの

姫様に執着しているのであれば拒否されれば相当な苦痛のはず
あたしの苦痛で最大限に呪いの力を放っている剣を渡す、それに姫の力がプラスされれば

エンデリカには枷を、臓物があふれるくらいの苦痛なら相当な威力のはず
ただ、使うと中身があふれ…



(なんて禍々しいの……悪夢が目の前に広げられてるみたいだよ)
 その時、子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)は戦慄を覚えていた。
 好きだから興味がある。
 好きだから、もっとよく知りたい。
 それ自体は、至極真っ当な感情だ。
 しかし、だからといって、愛する相手を生きたまま解体したい等と思うだろうか。
 そしてそれは、日頃、血生臭い地下室で自ら産み出した拷問具の責め苦にのたうち回り、あまつさえそこに快楽を見出している自分と、何か違うのか……。
 ―――だとしても。
「あなたは歪んでる。そういうのは欲望をぶつけてるだけだよ。独りよがりなだけ。姫様はあたしが守る」
「アハッ……アハハハハハハハハハハハハハ!!」
 エンデリカが一瞬、吹き出したかと思うと、すぐにそれは哄笑へと変わった。
 騒狂的な、この世のあらゆる悪意を大鍋で混ぜ合わせたかの様な声。
「ドウヤッテ!? オナカニ大穴ガ開イタ状態デドウヤッテ守ルノ!? 知ッテルワヨ、アナタサッキ私ノ樹ニ磔ニサレテタ娘デショウ? モウ手デ抑エテナイト中身ガ出テ来チャウンジャナイノ!?」
「……ぐふっ」
 陽菜がえづき、咄嗟に食い縛った口元からどす黒い血が溢れ出る。
 実際、エンデリカの指摘は的を得ていた。
 先程図太い枝に串刺しにされた彼女は、腹部に重傷を負っている。
(ダメ……片手じゃ抑えきれないよ……)
 赤黒く染まった腹に感じる滑りの中に、ブヨブヨした管のような感触を感じる。
 腸が、溢れ出して来ているのだ。
「姫様、これを……」
 陽菜は腰から漆黒に染まった禍々しい形状の剣を抜き放つと、プリンセスに差し出した。
「え? こ、これは……?」
「悔しいけどあいつの言う通り。私はもう動けないわ……でもあいつの動きを止める手段ならある。その隙に……斬って」
「そ、そんな! 私剣なんて持ったことありません!」
「お願い姫様、あなたの力が必要なの……」
 段々と顔が土気色になってきている陽菜の必死の願いが通じたか、プリンセスがぎゅっと、剣の柄を握りしめる。
「わ、分かりました……やってみます」
「マァ怖イ! 私ソノ剣デブスットヤラレチャウノカシラ! シッカリ保タナイト手ヲ切ッチャウワヨ?」
 当然エンデリカは余裕の表情だ。へっぴり腰で振るわれるプリンセスの剣等どうとでも出来ると思っているのだろう。
(でもそこに……いや、もうそこにしか勝機はない!)
「えぇぇぇぇぇええーーーい!」
 振り回すのは無理と悟ったか、腰溜めに剣を構えたプリンセスがエンデリカに特攻を仕掛ける。
「デモ、剣ナンテアナタニハ似合ワナイ……捨テチャイナサイ!」
 機械の翅を羽撃かせ、黒薔薇の花吹雪が吹き荒れる。
「あっ……」
 陽菜は、花びらに触れたプリンセスが見る見る高度を落とし、地面にへたり込んでしまうのを見た。
 同時に、自分の身体を襲う得体の知れない虚脱感に気付く。
 失血による貧血症状ではない。もっと別の、生命エネルギーそのものが流れ出していく様な感覚。
(この花びらの所為?)
「サァ……ソノ剣ヲ渡シテ…?」
 目の前ではエンデリカがプリンセスから剣を取り上げようとしている。
(やるなら今しかない。臓物があふれるくらいの苦痛なら相当な威力のはず……ただ、使うと中身があふれ……)
 刹那の逡巡。
 やったら、一体自分はどうなってしまうのか。
(でも、やるしかない!)
「依代の宝珠よ!」

 次の瞬間―――二つの事が起きた。
 
「「ッ!?」」
 一つは、陽菜の腹から雪崩の様に腸が飛び出した事。
 もう一つは、ビクリと全身を痙攣させたエンデリカの口端から、どす黒い血が溢れ出た事だった。
「今よッ!!」
 文字通り血を吐くような陽菜の叫びが、プリンセスの腕を動かした。
「ア゛ア゛アァァ゛ァァアアアアア゛アァアアアア!!」
 漆黒の刀身に貫かれたエンデリカの絶叫が、森に響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルカ・クルオーレ
【LV2】

くだらないな…あんなのに負けちゃったらダメでしょお姫様。
手を貸す?いや、僕が気に入らないから…全力で潰すよ。
こんな傷位でどうにかなる様な身体じゃないし。
まあ、長引かせるのも好きじゃないからさっさと終わらせようか。
「これ以上お前みたいなのにかける時間も、勿体ない。消えろよ」
薄く笑みを浮かべ挑発し、大鎌を構えるとなぎ払いを連続でぶつける事で相手の体勢を崩す。

抵抗が薄れたらLama di distruzione……UCの力で破壊してしまおう。
「お前の全てを破壊してあげるよ……跡形もなく、ね」

これでこの世界は守られたかな。
正義の味方とか、そういうのは得意じゃないんだよねえ、他の人に頼むよ。



 エンデリカの華奢な胴体を貫いた禍々しい刀身が、蠢く茨の蔦に押し出され地に落ちる。
 ビシャリ、と地面に夥しい量の朱がぶち撒けられる。
「イタイ……」
 先程までのテンションが嘘のように、ボソリと、呆けたように呟く。
「イタイ……イタイワ……アァァ……イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ」
 傷口を押さえて蹲っている為か、その顔色を窺い知る事は出来ない。
 だが、悲しげに、こみ上げる何かを抑えている様な様子は、同時に言い様もない不気味さも感じさせる。
 間近にいたプリンセスが思わず身を固くした瞬間―――
 もう我慢出来ないとばかりに、それは爆発した。
「素敵!!!! コレガ愛ナノネ!!!!!」
 それは歓喜。圧倒的歓喜。
 猟兵でない一般人ならばそれだけで気を失う程の濃密な殺意が、津波めいて森に広がっていく。
「愛スル事ハ傷付ケル事ダモノ!!! ソウヨ、コレガ……コレガアナタノ愛ノ味ナノネ!!!! アァ……アァ!! ナンテシアワセ!! アハッ! アハハハハッハハハハハハッハハ!!!」
 自らの血でべったり染まった両手で頬を挟み、血塗れの顔で狂笑する黒薔薇の精。
「ヒッ……」
 気圧されたか、青ざめた顔で一歩後ずさるプリンセス。
 だが、その横で逆に前に出た者がいる。
 ルカ・クルオーレ(Falce vestita di nero・f18732)だ。
「くだらないな…あんなのに負けちゃったらダメでしょお姫様」
「あ…」
 そう吐き捨てる様に言う彼の表情は、険しかった。
 此処に来るまでの戦闘でエンデリカに負けず劣らず血塗れの様相を呈しているが、それには微塵も気を止めず大鎌を構える。
「手を貸せ…だったっけ。言われなくても全力で潰すよ。単純に、僕が気に入らないからね……」
 焦点の定まらない星型の瞳孔で天を仰いでいたエンデリカが、再び前を見た。
 目が合う。
「これ以上お前みたいなのにかける時間も、勿体ない。消えろよ」
「アハハ、ソウダッタワ、ネズミサン達ノオ掃除ノ途中ダッタノヨネ、私ッタラ」
 薄い笑みを浮かべたルカが躍りかかるのと、黒蝶の嵐が巻き起こるのはほぼ同時であった。
 闇の中を、更に黒く塗りつぶした様な漆黒の空間が蠢く。
 アメーバめいて蠕動しながら宙を進むそれは、超高密度の蝶の大群だ。
 その翅に触れたものは黒薔薇の茨に侵食されてしまう、呪いの翅。
 ルカは回転しながら一瞬で何撃もの薙ぎ払いを繰り出し、蝶を吹き飛ばしながら前へと進む。
「クルクル回ッテコマドリミタイ! 今ソノ羽ヲ毟ッテアゲル!」
 しかし、蝶の壁を抜けた先でルカを待ち構えていたのは機械の翅で斬撃を繰り出すエンデリカ!
 回避不可能な軌道でチェーンソーの様にギアが回転する翅が叩き込まれる。
「甘いよ」
 だが、その刃がルカに届くことはない。
 大鎌で受け流すように軌道を変えると、その勢いを利用して一回転。
 受け流しと相手の体勢を崩す事を同時に行う攻防一体のこの技は、瞬時に背後を取ることが可能である。
「お前の全てを破壊してあげるよ……跡形もなく、ね」
 エンデリカが空振りを悟るより速く、大鎌の切っ先が機械の翅を深々と貫いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

灰神楽・綾
【不死蝶】【Lv2】
こんな状況でもふてぶてしく笑い
何処までもブレないその狂気
俺個人としては嫌いじゃないよ
だって心ゆくまで殺し合えそうだからね

狂った君にふさわしい姿で戦ってあげよう
真の姿解放
皮肉だけど、闇に包まれた戦場にこの姿はよく馴染む

生やした羽根で空中浮遊
とはいえこの姿でもエンデリカの
飛翔速度に追いつくのは厳しいだろう
梓のドラゴン達の突撃とプリンセスの花弁によって
エンデリカの力が弱まった瞬間を見逃さない

UC発動し、成功率を最大限高め
Emperorを大きく振りかぶり力溜め
地面へと叩き落とす

とどめを刺さんと地面に降り立つ
機械仕掛けの蝶々、なかなか綺麗だったよ
でも飛べない蝶に待っているのは…死さ


乱獅子・梓
【不死蝶】【Lv2】
ハハッ、最初からそのつもりだプリンセス
あいつからどうにか逃げたとしても
地の果てまで追いかけてくるか
別のプリンセスが新たな餌食になるだろう
ここで確実に仕留めるぞ

…綾のあの姿を見るのは逢魔が辻の時以来か
なんて見とれている場合じゃないな
綾が最大限の力を発揮出来るように
俺はサポートとプリンセスの守護に徹しよう

UC発動し、雷属性のドラゴンを最大数召喚
数体は道中と同じくプリンセスを守らせ
残りはエンデリカを取り囲み攻撃を仕掛ける!
機械の翅で飛び回ろうにも
100体近いドラゴンを掻い潜るのは至難の業だろう
雷属性のブレスによるマヒ攻撃を喰らわせて
動きを鈍らせ、綾が攻撃する為の隙を作る


藤塚・枢
【Lv3】
あんな状態で駆動する機械翅なぞ埒外だけれど、何とか地べたに這い蹲らせないとね
お姫様はフォリーくんで護衛しよう

敢えて相手にも見える程度に鋼糸で罠を張る
前にもやっているんだ、気付くだろう
気付かずに爆死してくれれば一番早いけれどね
見せ罠を考慮した上で、相手の思考傾向、地形、自分も囮にし、頭をフル回転して相手のルートを誘導
その地点に本命の鋼糸罠で捕縛
直前に閃光や煙幕の手榴弾で目眩しも入れる
ついでに少量の爆薬で地面を抉り、その砂を翅に巻き込ませる
歯車で駆動しているなら多少は効くだろう

翅を捕縛できたらそのままUCに以降
そういえばキミ、丁寧に分解したがっていたね
思う存分やるといい、キミ自身の体でね



「ヤァーン、壊レチャッタワ!」
 大鎌によって大穴が開けられた機械の翅を困ったように見つめながら、此れ見よがしに翅を動かすエンデリカ。
 だがそれは、例えるならば水浴びの際に、ふと自分の髪に枝毛を発見してしまったとでも言うような物だ。
 徐々に戦況が猟兵達の側に傾いてきている今でさえ、彼女には未だ、焦りどころか怒りすらも見て取れない。
「ホントニ焦ラスノガ上手ナンダカラ……早クコノ手デアナタヲ感ジタイノニ……モウ……モゥ…」
 翅に内蔵されたギアが稼働し、エンデリカの身体が変貌を遂げていく。
 展開した背中からブースターが姿を表し、フワリと宙へ浮かび上がる。
 下半身の茨は瞬く間に鉛色に染まり、液体金属めいた艶を帯びる。
 そして頭上に咲くのは大輪の巨大な黒薔薇。
「我慢デキナクナッチャウワァ!! アッハハハハハハハハ!!」
 正に植物と、機械と、人が出鱈目に融合したような薔薇の怪物がそこにはいた。
「チッ……遂に本性表しやがったな」
「んー、俺個人としては嫌いじゃないけどね」
 相対するのは黒白一対の二人の男。灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)だ。
 プリンセスを背後に庇い、撒き散らされる圧に冷や汗を浮かべる梓。
 対象的に、綾はその微笑みを一層濃くしていた。
 こんな状況でもふてぶてしく笑い、何処までもブレないその狂気。
 ―――良い。実に良い。
 背中をゾクリと、甘い陶酔が駆け上る。
(食べ頃だ。心ゆくまで殺し合えそうじゃないか)
 気付くと、エンデリカに呼応する様に、綾の姿も変異を始めていた。
 背中に広がるのは巨大な漆黒の翼。
 爪が鋭さを増し、犬歯が杭の様に伸びていく。
 ざわめく髪から這い出るように伸びた呪装帯が、目元を固く覆い隠してしまう。
 鮮血の朱い蝶を全身に纏い、夜の王が薄闇の森に顕現した。
「…綾のあの姿を見るのは逢魔が辻の時以来か」
 ふと呟いた梓の言に、プリンセスが申し訳無さそうに言う。
「自分が情けないです…私には彼女を弱らせる事は出来ても、退治する事は出来ない。もう…皆さんだけが頼りです」
「ハハッ、気にするな、最初からそのつもりだプリンセス」
 元は美しかったのであろう、ボロボロに解れた銀髪をワシャワシャと撫でる梓。
「それにだ、仮にあいつからどうにか逃げたとしても、地の果てまで追いかけてくるか、別のプリンセスが新たな餌食になるだけだろう。ここで確実に仕留めるぞ」
「…は、はいっ!」

                  ダンス・マカブル
「狂った君にふさわしい姿だろう。さぁ、死の舞踏の始まりだ!」
 Emperorを構え、綾は爆発的な勢いでエンデリカ目掛けて舞い上がる。
「フフフ、素敵ナオ誘イネ! デモ残念、先約ガアルノ!」
 轟風を伴い薙ぎ払われるEmperorの一撃。
 エンデリカは奇怪な軌道でそれをすり抜けると、一直線にプリンセスへと突撃する!
 だが、その先に展開しているのは縦横無尽に張り巡らされた鋼糸の罠だ。
「ッ!? コレハッ!?」
「流石に今回は気付いたか。そうさ、私も居るよ?」
 薄闇の中、キラリと光るラインに目を剥いたエンデリカが急制動を掛けた瞬間。
 藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)の放った鋼糸が彼女を捕らえた―――かに見えたがしかし。
「アハハハッ! 無駄ヨ無駄!!」
「うわっ!」
 絡み付いた身体を勢いよく回転させたエンデリカによって鋼糸が巻き取られ、枢の身体が宙を舞った。
 同時、遠心力によって足の茨が360度回転、彼女の華奢な肢体を樹の幹へと叩き付ける。
「ナルホド、サッキノ謎ノ爆発ハアナタノ仕業ネ。面倒ダシ先ニオテテヲチョッキンシチャオウカシラ」
 絡み付いた鋼糸を引き千切り、枢へと迫る。
(よし……かかった。そうだ、そのまま……)
 実は、此処までの動きは全て枢の計算の内。後数メートル歩を進めれば、彼女の本命の鋼糸罠が待っている。
「ッ!」
 しかし、何を思ったか枢は直前で閃光弾のピンを抜き、投げ付ける。
 爆裂する光に、森が一瞬真昼の様に照らされ、『答え』がエンデリカの背後に立っていた。
「連れないなぁ……なら、無理にでもこっちを向いて貰うまでさ」
 大上段にEmperorを振りかぶった綾が、エンデリカの脳天目掛けて振り下ろす。
「マァ、シツコイオトコハ嫌ワレルワヨ?」
 だが、それも決定打とはなり得なかった。
 翅を翻してEmperorの斬撃をいなしたエンデリカはブースターを噴かして一気に宙へと舞い上がった。
「逃さないよ!」
 一瞬遅れて綾も飛び立ち、樹々の中を飛び回る壮絶なトレイルドッグファイトが幕を開ける。

「集え、そして思うが侭に舞え!」
 梓の召喚した雷属性ドラゴンの大群が、全方位からエンデリカにブレス砲撃をしかける。
 その合間を縫う様に枢の鋼糸が行く末を妨害し、エンデリカの移動範囲を狭めていく。
 鋼の茨が猛威を振るい、綾の斬撃が叩き込まれる。
 一合、二合と打ち合う毎にスピードを上げ、次第に残像の様に動きがブレていく。
 加速していく世界の中では最早知略も、洗練さも不要。
 只々己の衝動の許すがままに振り回し、叩き付け、弾き飛ばすだけの獣の戦い。
 それでも―――両者の顔に浮かぶのは狂気的な笑みだった。
 片やコロシアイへの愛。
 片やハカイする為の愛。
 一瞬のミスで全てが終わり、だからこそ、この瞬間が永遠に続くかの様な錯覚を起こす。
「させません!」
 
 しかし―――やはり、何事にも終わりというのはやってくる。

 プリンセスが振りまいていた花びらのシャワーの下を通り抜けたエンデリカのブースターが、遂に煙を噴いて停止した。
 その隙を逃す綾ではない。
「残念、此処までだね」
 大きく振りかぶったEmperorが不気味な紅い光を放つ。
「キャアアアアアアアアアアアアアーーーーーー!!!!」
 綾の寿命で強化された鉄槌の如き一撃が、遂に機械の翅を打ち砕いた。
 バランスを崩したエンデリカが猛スピードで地面に叩きつけられた。

「アァ……ドウシテナノ……ワタシハタダ、アナタノ事ヲアイシテルダケナノニ……小サナカワイイオ家ニ暮ラシテ……アナタノ部品ヲ……一ツ一ツ、ホルマリン漬ケニシテ飾ルノ……ウフ…ウフフフフフフフフ」
 粉微塵に砕け散った翅の欠片の中央に倒れ伏したエンデリカは、それでも尚起き上がりプリンセスへと手を伸ばす。
 だが。
「ア、アラ……?ドウシテオキアガレナイノ……?」
「残念だね。キミのその夢は、ここで終わりさ」
 そう、ここは、先程枢が仕掛けていた本命の鋼糸罠の場所。
 よく見ると、エンデリカの全身に、まるで点滴の管の様に鋼糸が突き刺さっている。
 目に見えないほどの細さの糸だ。刺さった所で痛くも痒くもなかろうが……この罠の恐ろしさはそこではない。
「全身に鋼糸が行き渡ったみたいだね。これでもう、キミの身体は私の操り人形も同然だ。例えば、ほら―――」
 次の瞬間、エンデリカが、【自分で自分の片目を抉った】。
「ギッ! ア゛ッ! アガア゛アア゛ア゛アア゛アアアア!!!!!!!」
 何が起きたのかすら分からないエンデリカに、枢の冷淡とも言える声が来る。
「そういえばキミ、丁寧に分解したがっていたね」

「思う存分やるといい、キミ自身の体でね」

「ギィッ! アギャッ! ギャアア゛ア゛ア゛アアアア゛アアアーーーー!!! ヤメテ! ヤメデェエエエエエエエエエエーーーー!!!」
 耳が毟られ、鼻が削ぎ落とされ、爪が剥がれ、指が一本ずつなくなっていく。

「機械仕掛けの蝶々、なかなか綺麗だったよ。でも飛べない蝶に待っているのは…死さ」
 
 黒薔薇の精の断末魔は、その後暫く、消える事はなかったという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月13日
宿敵 『エンデリカ』 を撃破!


挿絵イラスト