死の眠りをもたらす者、その名はターリア
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「ぅ……ここ……は……?」
どんよりとした瘴気が立ち込める不気味な沼地の真ん中で、その少女は目を覚ました。
名はクララといい、年の頃は十代の半ば。身を包む修道服と首からかけた聖印は、彼女が言葉の神『シャルムーン』の信徒であることを示している。
「わたし……確か、あの女の人に『死んで欲しい』って言われて……」
深い眠りの奥から、霞がかった記憶が蘇ってくる。最初に思い出したのは、薔薇と茨を敷き詰めた棺の中に、眠るように収まった黒いドレスの女。自らをターリアと名乗ったその女は、少女――シャルムーンのクレリックに伝わる「破邪の言葉」が必要だと言った。
今際の際にのみ解放されるその力を使うということは、すなわち少女に死ねと言うこと。それをまるで「ドアの鍵を開けて欲しい」くらいの軽い頼み事のように告げて――。
『おやすみなさい。次に目覚める時、あなたは群竜大陸にいます』
――そうして意識が遠くなって、気がついた時にはもう、クララはこの場所にいた。
帝竜ヴァルギリオスが支配していた伝説の地『群竜大陸』。勇者達の英雄譚と共に語られる、この地の恐るべき脅威の数々は、吟遊詩人の詩としてクララの耳にも届いていた。
「ど……どうしよう……ごほっ、ごほっ!」
冒険者でもないクララには、伝説の地を訪れた興奮よりも不安と恐怖のほうが大きかった。逃げ出したくてもどこへ行けば良いのかも分からず、安全と危険の判断もつかない。
そんな彼女の身体を密やかに蝕むのは『生々流転沼』に漂う瘴気の毒。そして"外"から迷い込んだ生物の気配を察してか、危険なモンスターの群れも近付いてきていた――。
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「アックス&ウィザーズを侵略する猟書家の一人『眠りの森の魔女ターリア』が、言葉の神シャルムーンのクレリックを浚い、群竜大陸で殺害する事件を予知しました」
8月の迷宮災厄戦以来行方を眩ましてきた謎の勢力『猟書家』は、天空に不気味な「骸の月」を掲げ、ついに本格的な世界侵略を開始した。オブリビオン・フォーミュラが討たれ、新たなオブリビオンが生まれなくなった世界で、再び猟兵の力が求められている。
「アックス&ウィザーズを侵略する猟書家の首魁『大天使ブラキエル』が望むのは『天上界への到達』。ターリアはそのために封じられた天上界への道を探る幹部の一人です」
この世界のどこかに存在するとは言うが、いまだそれ以上の手がかりのない未知の大陸『天上界』。そこへ至る道は帝竜ヴァルギリオスによって封印され、帝竜の死後も解かれぬまま。ゆえにターリアはまず、この封印を解く方法を考えているようだ。
「そのために彼女が目をつけたのが、アックス&ウィザーズで信仰されている神々のひとつ、『言葉の神シャルムーン』に仕えるクレリックです。シャルムーンを信仰するクレリックは皆、命尽きるときに強力な『破邪の言葉』を放つ事ができるとされています」
ターリアはこれを利用して群竜大陸に隠された封印を幾ばくかでも解こうとしている。しかし「破邪の言葉」とはすなわちシャルムーンの神官が今際の際に放つ断末魔。意図的にこれを放たせるとはつまり――群竜大陸でクレリックを殺す、という事に他ならない。
「今回、ターリアの魔法で眠らされたシャルムーンのクレリックが送られたのは『生々流転沼』。かつては『帝竜ガルシェン』が君臨していた広大な沼沢地です」
帝竜戦役でガルシェンが討たれてからも、今だここは毒ガスが充満する危険地帯となっている。猟兵やオブリビオンにはさしたる毒ではないが、一般人にとっては命に関わる。
「加えて周辺には毒や病をばらまく妖精のオブリビオンも群れで徘徊しているようです。無防備なまま放置されては、クレリックの方は保って数時間と言ったところでしょう」
このクレリック――名をクララという少女は気弱な人物で、クレリックとしての力は優秀なのだが、自分から積極的に苦難や敵に立ち向かえるタイプではない。いきなり見知らぬ地に捨て去られて、状況を理解するだけでも精一杯だろう。
「このままターリアの思惑通りにさせる訳にはいきません。至急救助に向かって下さい」
幸いにして予知が間に合ったため、今ならクララが群竜大陸に送り込まれてすぐに駆けつけることができるだろう。彼女の身の安全を保護し、襲い掛かるモンスターの群れを撃退するのが最初の依頼となる。
「クララさんも帝竜戦役にてヴァルギリオスを討伐した冒険者――猟兵のことは噂に聞いているようです。皆様が素性を明かせば信用を得ることは難しくないでしょう」
毒ガスが蔓延する土地で少女一人を守りながらの戦闘は楽ではないだろうが、敵となる『病をばらまく妖精』は毒薬を扱う能力を除けば、大きさも小鳥ほどのサイズで、さほど強力なモンスターではない。上手く対策を講じて対処してほしいとリミティアは語った。
「いつまでもクララさんが死なず、破邪の言葉が放たれなければ、いずれ痺れを切らしたターリア自身がやって来るでしょう」
彼女は「眠りの呪い」を操ることに長け、自らも眠ったままですら魔法の行使を可能とする強力な魔法使いだ。正面切って戦っても厄介な相手だが、当初の予定通りに破邪の言葉を使わせるために、クララの殺害と邪魔をする猟兵の排除を優先する。
「ターリアは生々流転沼の環境も把握しているので、それを積極的に利用してクララさんを死の眠りに誘おうとするでしょう。情緒は穏やかですが、手口は非道かつ残忍です」
同じ"魔女"を名乗る者として思う所があるらしく、リミティアは微かに眉をひそめる。
猟書家の幹部としてふさわしい実力をターリアが持っていることは間違いない。しかし目的が分かっているのならそれを逆手に取ることもできるはずだ。か弱いクレリックの少女を守りながら眠りの森の魔女を討伐する――困難だが、けして不可能な作戦ではない。
「この戦いに勝てばクララさんを救えるだけでなく、敵の計画を挫く一歩にもなります」
猟書家達は現在、骸の月によって現世の月を侵食し、新たなオブリビオン・フォーミュラに進化する儀式魔術【Q】を実行中だ。猟書家の作戦を阻止するのはこの儀式を阻害することにも繋がり、いずれは大天使ブラキエルに決戦を挑むこともできるだろう。
「アックス&ウィザーズに再び平和をもたらすために、どうか皆様の力をお貸し下さい」
そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、生々流転沼への道を開く。
天上に至らんとする者達との、アックス&ウィザーズの命運をかけた戦いの幕が開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
ついに猟書家の侵略が開始されました。今回の依頼は天上界の封印を解こうとする猟書家『眠りの森の魔女ターリア』の陰謀を阻止し、クレリックの少女を救うのが目的です。
一章は生々流転沼に生息するモンスター『病をばらまく妖精』との集団戦です。
猟書家の力で群竜大陸に放り出されたクレリックのクララに妖精達が襲い掛かろうとする所に、猟兵達が駆けつけるところから依頼はスタートとなります。
生々流転沼に蔓延する毒ガスは一般人でも即死するほどのものではありませんが、それでも戦いが長引けば命に関わります。敵が使用する毒攻撃と合わせて対策は必要でしょう。
二章は『眠りの森の魔女ターリア』との決戦です。
いつまでたっても死なないクララに痺れを切らしたターリアは、自らの手で彼女を殺害し「破邪の言葉」を発動させようとします。戦場の環境を利用した間接的な毒殺も視野の内です。
さりとて帝竜を討伐した猟兵達の力を警戒していないわけでもありません。皆様もどうか全力で挑んでいただけると幸いです。
本シナリオは二章構成となり、全章共通で下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……襲われるクレリック(クララ)を守る。
クララは敬虔なシャルムーンの信徒でありクレリックとしては優秀ですが、根はごく普通の気弱な少女であり、あまり戦力として期待はできません。年頃らしく冒険者や勇者にはちょっぴり憧れがあるようで、猟兵の指示には素直に従います。
彼女が死ぬと今回の依頼は失敗になるので、身の安全にはなるべく気を配っておいたほうが良いでしょう。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『病をばらまく妖精』
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POW : あなたをむしばむ毒
【毒液】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : あなたをこわす香
【甘い毒の芳香】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : わたしたちをいやす薬
【鱗粉】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:エル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雛菊・璃奈
シャルムーンっていうのはこの世界では一般的な神様の一人なのかな…?
なんにせよ、邪な目的の為にその命を利用しようとするなんて…絶対に許せない…。
【呪詛、オーラ防御、結界術、破魔】でクララに呪力の結界を展開…。
破魔の力で不浄を跳ねのけ、沼地や妖精達の毒の効果を無効化するよ…。
後は妖精達に自分達を見逃してくれるようお願い…。
聞き入れられない場合は仕方なしとして、【狐九屠雛】を展開し、黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】…。
広域の敵を呪力で侵食しつつ敵の放つ毒液や毒香を吹き飛ばしたり、凍結させて殲滅するよ…。
説得に応じる妖精や逃げ出す子は特に追わず見逃すよ…。
ここに住んでるだけの子達だしね…
「シャルムーンっていうのはこの世界では一般的な神様の一人なのかな……?」
サムライエンパイア出身の雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、耳に馴染みのない神の名に首を傾げながらも生々流転沼を早足に進む。広大なアックス&ウィザーズ世界ではクレリックが信仰する神も様々であり、シャルムーンはその一柱という事らしい。
「なんにせよ、邪な目的の為にその命を利用しようとするなんて……絶対に許せない……」
クレリックのシャルムーンが命と引き換えにして放つという「破邪の言葉」。それを本人の意思を無視して強要するターリアの行いは非道極まる。璃奈の表情にあまり変化は乏しいものの、ぎゅっと握りしめられた拳が彼女の怒りを静かに物語っていた。
「こほっ、こほっ、こほっ……な……なんですかあなた達は……?」
一方、ターリアの手で生々流転沼に転移させられたクレリックのクララは、この地に生息するモンスターの群れに囲まれていた。毒々しい色の薬瓶を抱え、瞳には生者への敵意を宿したフェアリー――『病をばらまく妖精』達である。
「人間……きらい……」
彼女達の発する芳香や羽ばたきには毒がある。加えてこの土地自体が毒ガスが蔓延する危険地帯である。何の備えもなしに人がこんな場所に放り込まれれば、長くは保たない。
「こほっ……こ、来ないでくださ……えっ?」
だが。怯えながら苦しげに咳をするクララの周りを、ふいに黒い呪力のオーラが包む。
それは璃奈が展開した呪力の結界。半球状のオーラに籠められた破魔の力が不浄を跳ねのけ、沼地や妖精達が発する毒の効果を無効化する。
「間に合ったみたいだね……」
「あ、あなたは……?」
手遅れになる前にクララの前に駆けつけることができ、璃奈はほっと安堵の息を吐く。
クララは彼女が何者かは知らない。しかしここに来てから感じていた息苦しさがふいに消えたのは、彼女のおかげなのだと分かる。そして彼女が敵ではないということも。
「人間……増えた……」
クララに襲い掛かる寸前だった妖精達は、結界外から憎々しげな目つきで璃奈を睨む。
彼女らはモンスターとはいえ、元からこの地に住んでいた者達。こちらの都合だけで殺してしまうのは忍びないと考えた璃奈は、まずは交渉を持ちかける。
「この人もわたし達も、貴女達の縄張りを荒らすつもりはない……どうか見逃してほしい……」
しかし妖精達の敵意は収まらず、璃奈達を逃すまいとするようにぱたぱたと結界の周りを取り囲む。もしかすると生前に人間に対する嫌な思い出があったのかもしれないが――とにかく無傷で帰してくれるつもりは無さそうだ。
「あなたたち人間は嫌い……だからこわす……」
「そう……なら仕方ないね……」
願いは聞き入れられないとみた璃奈はやむなく戦闘態勢を取り、呪槍・黒桜を構える。
その周囲に展開するのは九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】。妖しげに燃え上がる八十九の霊火は熱の代わりに絶対零度の冷気を発し、周辺の沼地を凍りつかせていく。
「しね……しんじゃえ……!」
対する妖精達は小さな翅を羽ばたかせて猛毒をまき散らす。だが璃奈が呪槍をひと振りすると、穂先から放たれた呪力が黒い桜の花吹雪となって、毒液や毒香を吹き飛ばした。
「……!!」
吹き荒れる呪力は毒だけではなく妖精達も巻き込み、その小さな身体を侵食していく。
その直後、放たれた【狐九屠雛】の霊火群が彼女達を襲い、骨の髄まで凍りつかせた。
猛毒を操るとはいえか弱い妖精が、歴戦の猟兵である璃奈に正面から敵うはずもなかった。力の差を理解した彼女らは凍結した仲間を置いて、ぱたぱたと逃げ去っていく。
「ぁ……追いかけなくて、いいんですか?」
「ここに住んでるだけの子達だしね……」
ほっと安堵しつつも見逃して良いのかと問うクララに、璃奈は槍を収めてそう答える。
今はそれよりも彼女を無事にここから脱出させるほうが先決だろう。まだ状況を理解しきれていないクレリックの少女に、魔剣の巫女はそっと手を差し伸べた。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
土地由来にせよオブリビオンの物にせよ、毒であれば私も少しは【毒耐性】で耐えられそうですね。
お役に立てるかも知れません。
さて、今回の敵は的が小さいですね。
ユーベルコードで風を起こしてまとめて吹き飛ばし、クレリックの方から遠ざけつつ弱らせた所を刺すなり斬るなりしていきましょう。
回復されると厄介なので【早業】で仕留めていきたいですね。
風が私の戦闘力を高めてくれますし、回復に必要な鱗粉も吹き飛ばしてくれるでしょう。
クレリックの彼女には下手に動かず、毒の回りを抑えて貰いたいですね。
魔法で自分を治療して貰えるならより良いです。
……オブリビオンの鱗粉で、私や彼女を治療出来たりしませんかね?
「土地由来にせよオブリビオンの物にせよ、毒であれば私も少しは毒耐性で耐えられそうですね。お役に立てるかも知れません」
そう考えて今回の依頼に参加したのはハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)。謙遜しがちに言うものの、幼い頃から吸血鬼と戦うべく鍛錬を積まされてきた彼女の肉体は、生々流転沼に蔓延る毒ガス程度はものともしなかった。
「貴女は後ろに下がっていてください。私が、私と剣達がお守りいたします」
「はっ、はい……どうかお気をつけて……!」
レイピアを鞘から抜きながら告げると、クレリックのクララは言われた通りに下がると、武運を祈るように両手を組む。背中から感じるすがるような視線とは対照的に、ハロの正面には敵意に満ちた妖精の群れが立ちはだかっていた。
「さて、今回の敵は的が小さいですね」
数は多いものの小鳥くらいのサイズしかない敵を見て、ハロはどう攻めるかと考える。
小さいというのは、言い換えれば軽いということ。ならばと愛剣「リトルフォックス」を一閃すると、空を裂いた斬撃が風を巻き起こす。
「クレリックの方には近付けさせません」
「きゃ……っ!」
斬撃にて風を操る【嵐の出撃】。沼地の表面を逆巻く暴風は妖精の群れをまとめて吹き飛ばし、クララの元から遠ざけつつ体勢を崩させる。その隙を突いてハロは軽やかな歩法で踏み込み、小さな的に向かってレイピアの刃を突き立てる。
「この風に乗り、音速を超えて……!」
自らが起こした気流を味方につけたハロの剣速はまさに疾風の如く、目にも留まらぬ早業で病をばらまく妖精を討つ。下手に仕留め損なえば回復されて厄介なことになる恐れもある、その前に迅速に数を減らすのが彼女の作戦だった。
「やってくれたわね……?!」
妖精達は【わたしたちをいやす薬】を撒いて傷を癒そうとするが、今なお吹き荒ぶ風は薬を付与した鱗粉を散らしてしまう。この風が止む前に片をつけてしまおうと、少女剣士はなおも素早さを増して敵を斬り伏せてゆく。
「すごい……! っ、こほっ、こほっ……」
クララはハロの華麗な立ち回りに見惚れていたが、その間にも生々流転沼の毒はじわじわと彼女を蝕んでいた。ただの人間が長時間滞在するには、この地の環境は過酷すぎる。
「下手に動かず、毒の回りを抑えてください。魔法で自分を治療して貰えるならより良いです」
「は、はい……シャルムーン神よ、どうかご加護を……」
指示に従って少女は癒やしの祈りを唱えるが、その効果はユーベルコードのように劇的とはいかない。他に何か回復手段はないかと考えたハロは、敵の技の利用を思いついた。
「……オブリビオンの鱗粉で、私や彼女を治療出来たりしませんかね?」
指揮棒のようにレイピアを振って風を操り、鱗粉を含んだ風をこちら側に引き寄せる。
すると、ここに来てから感じていた息苦しさがいくらか改善され、クララの顔色も良くなった。どうやら妖精達の薬はオブリビオン以外にも効果があるようだ。
「ぁ……少し身体が楽になりました」
「良かった。もう少しだけ辛抱していて下さい」
ハロは生真面目な表情に少しだけ笑みを浮かべると、再び毒妖精の群れに立ち向かう。
暴風吹き荒れるこの戦線を彼女達が突破するのは、それから程なくしてのことだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
可愛い子が非道に命を狙われているとあれば、黙ってはいられないわ♪
【ブラッド・オブリビオン】で「荒野に飛来する氷鳥達」の「氷雪の鷲獅子」を召喚。
沼地は足場が悪いし、一般人のクララには厳しいでしょうしね。鷲獅子に二人で【騎乗】して進むわ。
更に自身やクララ、鷲獅子に【念動力】の防御膜とクララには更に【属性攻撃、高速詠唱】による風のフィルターで毒を寄せ付けない様に防御。
襲ってくる妖精は【極寒の風】や【凍てつく息吹】で敵本体や敵の毒を凍結させつつ、雷撃や凍結の魔力弾【属性攻撃、高速詠唱】で妖精達を撃退。
降りかかる火の粉は払わせて貰うわ。
後は(【魔眼】出力弱も使いつつ)クララに話を聞いたりしようかしらね
「可愛い子が非道に命を狙われているとあれば、黙ってはいられないわ♪」
そう言ってどこか楽しげな様子で、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)はクレリックの少女の元に駆けつける。彼女が乗騎として跨るのは、獅子の後半身に鷲の前半身、そして白銀の翼を持ったグリフォンだった。
「こ、これって氷雪の鷲獅子……? あの危険な魔物を手懐けているなんて……」
「沼地は足場が悪いし、一般人のあなたには厳しいでしょうしね」
危険なモンスターが馬のように使役されているのにクララは驚くが、フレミアはこともなげにそう言って彼女の手を掴み。鷲獅子の背中に二人乗りして沼地の上を進んでいく。
「わっ、わわわっ……はやい……!」
「落ちないように、しっかり掴まってなさい」
鷲獅子に乗って空を飛ぶ経験など、普通の人間はまず無いだろう。怯えながらぎゅう、とクララがフレミアにしがみつくと、少女特有の柔らかさと体温が背中に伝わってくる。
一方のフレミアは空からの景色を楽しむほどの余裕を見せつつ、自身とクララ、鷲獅子の周囲に念動力で防御膜を張る。クララには更に魔法による風のフィルターを張って、毒を寄せ付けないよう入念に保護している。これなら余程のことが無い限り彼女は安全だ。
「人間……何しにきたの……?」
「キライよ……キライ……」
そんな彼女達の行く手を塞いだのは、病をばらまく妖精の群れ。仄暗い眼差しに生ける者への敵意を宿したそれらは、鬱々とした恨み言を呟きながら猛毒の鱗粉を撒き散らす。
すでにその危険性を知っているクララは、妖精達を見るなり「ひっ」と怯えた表情を見せるが、フレミアは余裕の表情のまま真紅の魔杖「クリムゾン・シュテル」を構える。
「降りかかる火の粉は払わせて貰うわ」
杖先から放たれる雷撃と氷雪の魔力弾。それと同時に氷雪の鷲獅子が大きく両翼を羽ばたかせ、自身を中心に【極寒の風】を巻き起こす。【ブラッド・オブリビオン】によって召喚された鷲獅子はただの乗騎ではなく、自らを倒した召喚者に仕える忠実な眷属だ。
「すこし揺れるわよ」
「はは、はいっ!」
両翼からは風を、口からは【凍てつく息吹】を放ち、毒や妖精本体を凍らせる鷲獅子。
クララは振り落とされないよう必死にしがみつき、フレミアはそれを宥めながら魔力弾を放つ。非戦闘員を一人連れているとはいえ、これしきの敵に遅れを取ることはない。
「なにこれ……さむい……」
「こおる……わたしたち、こおる……?」
凍風に毒を吹き散らされ、寒さに震える妖精達を、魔力の弾幕が容赦なく撃ち抜く。
完全に凍結するか、あるいは電撃に撃墜されるか、彼女らの末路はその二択だった。
「もう大丈夫よ。今のうちに少し話を聞かせてもらってもいいかしら」
「よ、良かった……あ、はいっ、なんなりとお聞き下さいっ」
毒妖精の襲来を撃退したところで、フレミアはクララにこれまでの経緯を訪ねてみる。
緊張をほぐすために出力を弱めた【魅了の魔眼・快】も使うと、クララも大分落ち着いた様子でこれまでの事を話してくれた。
「わたし、遺跡都市ヴェルニスにいたんです。けど、そこに突然知らない女の人が現れて。『破邪の言葉』を使ってほしいと言ってわたしを眠らせて、気が付いたらここに……」
クララの前に現れた女性とは、間違いなく猟書家『眠りの森の魔女ターリア』だろう。
彼女の狙いは群竜大陸で帝竜が施した封印を解くこと。そのために本人の意思などまるで無視して、シャルムーンのクレリックであるクララをここに連れ去ったようだ。
「大変な事に巻き込まれたわね。でも安心しなさい、わたし達があなたを守るから」
フレミアが優しく微笑みかけると、クララはほっとしたようにこくんと小さく頷いた。
しかしまだ油断はできない。広大な生々流転沼を抜けるまでの道程は、まだ長いのだ。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
『相棒よりもヒロインしとるなぁ』
(はっ?)
『少しは見習わんかい!この子をヒロイン言わずして何が聖者や!相棒はヒロイン力が無さ過ぎやで!』
「ぶち殺すぞ、てめぇ!!」
キレたカビパンは心の中ではなく、大声をあげる。
全員の目がカビパンに集まった。もう後の祭りだ。
「…私、何か気に触るような事を?」
クララはいきなり殺すぞと言われ戸惑っている。
もうダメ。下手な言い訳など通じない。
今が最悪な状況なのだから、これ以上悪くはなるまいと。
(MSさん会心のデキのつまらないギャグが入るよ!)
こうして世界は色んな意味で停止した。
軍配を扇ぎ、鱗粉とシリアスを飛ばしながらカチン、と凍り付いた妖精達をハリセンでしばきあげた。
『相棒よりもヒロインしとるなぁ』
(はっ?)
猟兵達に守られながら生々流転沼からの脱出を目指すクレリックの少女クララ。その様子を見ていた「ラーメン大好きトリッピー」がぽつりと呟いた一言に、カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は眉を釣り上げた。
『少しは見習わんかい! この子をヒロイン言わずして何が聖者や!』
ばっさばっさと翼を羽ばたかせるトリッピーの主張の通り、わけも分からぬまま邪悪な企みに巻き込まれ、命を狙われるか弱い少女とは物語では定番のヒロイン像である。もしこの役がカビパンに回ってきたとしても、たぶん開幕数秒でスピンアウトすると思う。
『相棒はヒロイン力が無さ過ぎやで!』
「ぶち殺すぞ、てめぇ!!」
トリッピーの煽りにキレたカビパンは思わず大声を上げる。使い魔との会話なら心の中で思うだけで済んだものを――やってしまった、と思っても一度吐いた言葉は戻せない。
近くにいた猟兵、そしてクララを含む全員の目がカビパンに集まる。もう後の祭りだ。
「……わたし、何か気に触るような事を?」
不安そうな表情でおずおずとクララが問いかける。いきなり殺すぞと言われれば戸惑いもするだろう。まして彼女、今も絶賛眠りの森の魔女から命を狙われている最中である。
今ここで猟兵達に見捨てられでもしたら、間違いなく彼女は毒にやられて死ぬ。本人も自覚があるからこそ濡れた子犬のような態度で上目遣いに尋ねる――あざといヤツめといつものカビパンならツッコみそうなところだが、今はどうにもそういう空気ではない。
「人間……人間だ……」
そこに間の悪いことに、生者の気配に引かれて病をばらまく妖精の群れがやって来る。
生者への憎しみと敵意を募らせる彼女らは、カビパン達を見るなり毒を散らしだした。
「ひっ?!」
なりは小さくともそれが恐ろしいモンスターだと知るクララは、いよいよ恐怖の悲鳴を上げる。場の雰囲気はますます悪くなり、生半可なギャグでは割り込めない空気である。
(もうダメ。下手な言い訳など通じない)
高まるシリアスな空気に圧されたカビパンは天を仰ぎ、かくなる上はと覚悟を決めた。
今が最悪な状況なのだから、これ以上悪くはなるまいと。いきなり黒い軍服姿から白装束の雪女に変身すると、口が滑るままに思いついたギャグを放つ。
「毒なんてめん毒さいわ。毒を撒くのはよーせい! なんちゃって!」
【ギャグセンス皆無な雪女】による会心のデキのつまらないギャグが沼地に木霊する。
余りの寒さにクララも妖精も時間すらも凍る。こうして世界は色んな意味で停止した。
「ふう。何とかなったわね」
何ともなっていない気がするが、とにかく状況をうやむやにできたカビパンは「笑門来福招福軍配」をぱたぱたと扇ぎ、妖精が散らした鱗粉とシリアスな空気を飛ばして、ついでにカチンと凍りついた妖精達も愛用の「女神のハリセン」でバシバシとしばきあげた。
「ぎゃふんっ?!」
凍った時間が戻った瞬間、妖精達はカビパンのギャグパワーに負けて吹っ飛んでいく。
一緒に凍っていたクララは何が起こったか分からず目をぱちくりさせていたが、おそらく彼女が何かしたのだろうと好意的に解釈する。
「さすがです、勇者様……!」
さっきの「殺すぞ」発言をもう忘れて、キラキラと尊敬と感謝の眼差しを向ける少女。
この子詐欺とかに引っ掛かったりしないかと、さしものカビパンも若干不安になった。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
クララの元に駆け寄り。
「無事かい?何とか間に合ったようだね。
俺は猟兵と言えばわかるかな。
兎も角、君の事は守るから安心してくれ。」
自分から離れない様に言い
真羅天掌を発動。
浄化属性の竜巻を発生させ毒を浄化しながら竜巻で妖精を攻撃。
【範囲攻撃】で自分やクララが竜巻での被害を受けず
浄化の効果のみある様に風を調整。
妖精を此方に近づけない様に。毒を撒かせない様に
竜巻で妖精の行動を妨害。
敵をよく観察、竜巻でのダメージや
鱗粉使用の疲労を見極め
ダメージや疲労の大きいものを見つけ。
デモニックロッドの闇の魔弾で狙い撃つ。
「毒と言い妖精と言い厄介な事だ。
しかし、それ以上が控えているからね。
油断せず備えておこうか。」
「無事かい? 何とか間に合ったようだね」
生々流転沼でクララの姿を見つけたフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、まだ彼女が元気そうな様子にほっと息を吐いた。まだ毒もそれほど吸い込んでいないようだし、これといったケガもしていない。先に着いていた猟兵達の護衛の甲斐もあるだろう。
「俺は猟兵と言えばわかるかな。兎も角、君の事は守るから安心してくれ」
「は、はいっ。助けに来てくれて、ありがとうございますっ」
アックス&ウィザーズにおいて猟兵の存在は周知されてはいないが、復活したヴァルギリオスを倒した帝竜戦役の英雄達の名は伝わっている。クララは憧れと尊敬、そして安堵の籠もった眼差しでフォルクを見上げると、ぺこりと深く頭を下げた。
「まだ生きてる……キライ、キライ、キライ」
そこに甘い芳香を漂わせながら現れたのは、病をばらまく妖精の群れ。生者への敵意に満ちたモンスターとの遭遇にクララは怯えるが、フォルクは即座に彼女を背中にかばう。
「俺から離れない様に」
「は、はい……!」
こくこくと頷いて縮こまる少女を背中に隠しながら、白ローブの魔術士は風の杖「スカイロッド」を掲げ。にじり寄ってくる妖精の群れに対して【真羅天掌】の呪文を唱えた。
「大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
瘴気に満ちた生々流転沼に澄んだ空気の流れが生じ、蔓延る毒を散らしながら渦巻く。
それはフォルクが発生させた浄化の竜巻。全てを吹き飛ばし清める風が、この地に漂う毒を浄化すると共に、現世に留まる過去――オブリビオンの妖精にもダメージを与える。
「わぁ……!」
竜巻の中心にいるフォルクとクララには風の被害はない。自分では到底扱えない強大な浄化の力にクレリックの少女が目を丸くするなか、フォルクは繊細に魔力をコントロールして浄化の効果のみが此方に及ぶよう風を調整し、風圧は全て外側に向かうようにする。
「う……この……!」
妖精達はさながら突風にもて遊ばれる木の葉のように、竜巻に押し返されてフォルク達の元に近付けない。毒を撒いても浄化の力ですぐに吹き消されてしまい効果は無かった。
"不浄"とみなされ蓄積するダメージを癒そうと、【わたしたちをいやす薬】を使用して互いを治療しあうが、竜巻の発生源に手が出せない以上、ジリ貧なのは目に見えている。
「回復か。しかしそれは使用者の疲労も大きいだろう?」
フォルクは竜巻の中心から敵をよく観察し、竜巻でのダメージや薬の使用による疲労が大きいものを見つけると、風の杖から呪われし黒杖「デモニックロッド」に持ち替える。
貪欲なる魂喰らいの杖に己の魔力を喰わせてやり、放つのは闇の魔弾。狙いすました射撃が小さな標的を過たず撃ち抜き、毒妖精は断末魔の悲鳴を上げて骸の海に還っていく。
「毒と言い妖精と言い厄介な事だ。しかし、それ以上が控えているからね。油断せず備えておこうか」
この状況を作り上げた元凶『眠りの森の魔女ターリア』との戦いを見据えて、フォルクはまだ余力を残していた。魔力も、体力も、そして護衛対象であるクララの健康状態も。
群竜大陸は広大だ。一領域だけを取ってもいつ、どんな障害が現れるかは分からない。安全な場所に辿り着くまでの長い道程を、彼は気を緩めることなく風と共に進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵
ネージュ・ローラン
猟書家に封印を解かせるわけにはいきませんし、何より誰かを犠牲にしたものなど言語道断です!
急いで助けに行きましょう!
毒を放っておくと何が起こるかわかりませんので警戒していきましょう。
口元にヴェールを当てて可能な限り毒ガスを吸わないようにしながらクララさんを探します。
見つけたら風の精霊の力を借りて周囲のガスやオブリビオンの鱗粉を吹き飛ばしつつ、【再生の羽】を使用して衰弱したクララさんを治療しようとします。
回復が最優先ですので多少の疲労は仕方ありません。
もし余裕が生まれてきたらダガーを投擲する等して攻撃にも加勢したいですね。
もう大丈夫、わたし達が貴女を守ります。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
猟書家に天上界ね…
フン、平和になった世界をまた脅かそうと言う奴らには地獄こそが相応しいだろうな
UCを発動
メダルを取り出しクララに手渡して毒を防ぎ、落ち着かせよう
このメダルはお守りだ
口に含むか喉に貼り付ければ、毒気を防ぐ事が出来る
自分もメダルを口に含み敵の毒ガスに対処
毒さえなんとかできれば妖精を倒すのも容易いだろう
妖精か、可憐で優美な姿だが…
フッ、文字通り毒々しさをその身に隠し持っているな
シガールQ1210とシルコン・シジョンによる制圧射撃で敵集団を攻撃
さらにデゼス・ポアをクララの付近で待機させ、接近する妖精達を刃で斬り倒す
心配する事はないよ、クララ
我々が必ず君を助ける…約束だ
「猟書家に封印を解かせるわけにはいきませんし、何より誰かを犠牲にしたものなど言語道断です!」
天上界への道を捜索する猟書家の非道な行いに、ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は怒りを抑えきれなかった。躊躇なく誰かに犠牲を強いる冷酷さを許せないのも勿論だが、何も知らず生贄に選ばれたクレリックの少女の心境を考えると胸が痛む。
「急いで助けに行きましょう!」
生々流転沼は常に毒ガスが蔓延する危険地帯。放っておくと何が起こるかわからないと判断したネージュは口元にダンス用の「エレメンタルヴェール」を当てて、可能な限り毒ガスを吸わないようにしながらクララの捜索にあたる。
「見つけました!」
「あなたは……こほっ、助けにきてくれたん、ですか?」
ほどなくして見つかったクララは、まだ気力体力とも幾許かの余裕はあるようだった。
しかし生々流転沼の毒は着実に彼女の身体を蝕んでおり、苦しげな咳が止まらない。折悪しく生者の気配に気付いたオブリビオンも、瘴気の中からゆらゆらと集まってくる。
「人間はキライ……くるしんで、むしばまれて、しねばいい……」
敵意と憎しみに満ちた『病をばらまく妖精』の群れに、クララはびくりと肩を震わせ、ネージュは服の下に隠していたダガーを抜いて身構える――だがその時、張り詰めた緊張を引き裂くように、けたたましい銃声が沼地に鳴り響いた。
「なに……っ?!」
銃声に驚いた妖精の群れが後退する。その隙にクララ達の元に駆け寄ったのは、小銃と拳銃を構えた紫髪の傭兵――キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)だった。
「心配する事はないよ、クララ。我々が必ず君を助ける……約束だ」
雷鳴のような銃声に目をぱちくりしている少女を、優しい微笑みで落ち着かせて。キリカは懐から【秘薬・大蝦蟇之油】のメダルを何枚か取り出すと、そのうちの一枚をクララに手渡した。表面に大蝦蟇の描かれた奇妙なメダルに、少女は受け取りつつ首を傾げる。
「これは……?」
「お守りだ。口に含むか喉に貼り付ければ、毒気を防ぐ事が出来る」
毒に切り傷、病魔や内臓の疾患まで、香具師の口上そのままの薬効がこの一枚に宿っている。言われた通りにクララがぺたりとメダルを喉に貼り付けたのを確認すると、キリカは戻ってきたオブリビオンの迎撃に向かった。
「もう大丈夫、わたし達が貴女を守ります」
ネージュも穏やかな声でクララを安心させながら、マスク代わりにしていたエレメンタルヴェールをさっとひと振りする。するとヴェールに宿った風精霊の魔力が清らかな風を巻き起こし、周囲に立ち込めるガスや毒妖精の鱗粉を吹き飛ばした。
「万物を癒す霊鳥の羽よ、再び立ち上がる力を」
それと合わせて使用するのは【再生の羽】。ネージュと契約する精霊の一体、風の霊鳥の力を癒やしの力を秘めた羽として具現化させ、毒気に蝕まれたクララの治療を試みる。
「わぁ……すごい。苦しくなくなりましたっ」
再生の羽と大蝦蟇のメダルの効果により、衰弱しつつあった少女の体調は快方に向かう。自分ではどんなに頑張ってもこんな癒やしの奇跡は起こせないだろうと、素晴らしいユーベルコードの力にクララは目を丸くしていた。
「体内の毒が完全に抜けるまで、ここで安静にしていてください」
クララの顔色が良くなったのを確認しつつ、ネージュは【再生の羽】を使用し続ける。
この力は多用すれば術者を疲労させるが、クララの回復を最優先とする彼女はそれも仕方ないと受け入れ、相手には疲れた様子を見せないようにしながら毒の治療に専念する。
その最中も襲い掛かる『病をばらまく妖精』の群れは、キリカが迎撃を担当していた。
「妖精か、可憐で優美な姿だが……フッ、文字通り毒々しさをその身に隠し持っているな」
彼女らの発する甘い芳香に毒気を感じ取ったキリカは、自分も大蝦蟇のメダルを口に含んで対処する。ばら撒かれる毒さえ何とかできれば、非力な妖精を倒すのは難しくない。
右手には神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"、左手には強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"。聖なる箴言と秘術で強化された弾丸による制圧射撃が、敵を蹴散らしていく。
「こいつ強い……じゃあ、あっちの弱そうなヤツから……」
猟兵との力の差を思い知った妖精達は、ふたりに守られているクララに狙いを定める。
だが弾幕を迂回してクララに近付こうとした瞬間、その付近で待機していた呪いの人形「デゼス・ポア」が飛び出し、不気味な笑い声を上げて刃を振りかざす。
「キャハハハハハ」
「ひぇ……っ?!」
油断していた敵は驚く間もなく斬り倒され、錆びついた刃は妖精達の血で赤く染まる。
最優先で護るべき者の近くに、傭兵のキリカが護衛を付けていない筈が無かったのだ。
慌てて後退しようとする毒妖精――その背中に、ひゅっと風を切る音を立てて、氷のように研ぎ澄まされたダガーの刃が突き刺さった。
「お待たせしました。私も加勢します」
「感謝する。もう一息だ」
投じられた刃の主はネージュ。ひとまずの解毒を終えて余裕の生まれた彼女は、クララの傍に付いたまま投擲でキリカの援護に回る。すでにオブリビオン側の劣勢だった戦いは、これで完全に趨勢が決まった。
「きゃあぁぁぁぁ……っ?!」
襲ってきた群れの妖精はほとんどが倒され、逃げ延びた者も二度と彼女達に手を出そうとしないだろう。銃声の鳴り止んだ生々流転沼に、ひとたびの静寂と平穏が戻ってきた。
「猟書家に天上界ね……フン、平和になった世界をまた脅かそうと言う奴らには地獄こそが相応しいだろうな」
「罪もない誰かを犠牲にしようとした報いは、しっかりと受けてもらいましょう」
脅威を退けたキリカとネージュは、この非道を仕掛けた猟書家への怒りを共有しつつ、クララを連れて先に進む。今は彼女を安全な場所まで連れて行くのが最優先――だがその途上で、元凶たる魔女との対峙は避けられないであろう事も覚悟しながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イリス・ローゼンベルグ
うふふっ、最高!最高だわ!
またここに来る機会が巡ってくるなんて!
と喜びを抑えられない様子でクララの救助へ
「あらあら、あなた大丈夫?」
クララの傍に駆け寄り、妖精の群れと対峙
ここなら擬態をする意味もないでしょう
上半身を除く擬態を解除し【茨の触手】でクララを守るように展開
そして【茨の盾】を構成して敵の攻撃から彼女を守る
毒液は【毒耐性】で対処、【薔薇は散らず】も使用し吸収する
「うふふっ、私にとって毒は養分でしかないわ」
さて、次はこちらの番よね?
触手を鞭のように振るい、周囲の妖精を薙ぎ払い
また鋭く尖らせて【串刺し】にする
その程度の毒で私に挑もうなんて、百年早いのよ
「うふふっ、最高! 最高だわ! またここに来る機会が巡ってくるなんて!」
帝竜戦役以来となる生々流転沼への再訪に、イリス・ローゼンベルグ(毒を喰らうモノ・f18867)は喜びを抑えられない様子だった。その異名が語るとおり彼女にとって毒とは供物、毒ガスの蔓延する地においてむしろ生き生きとしながらクララの救助に向かう。
「ひっ……ま、また出ました……!」
その頃のクララと言えば、再び現れた妖精の群れに進路を阻まれ、恐怖に震えていた。
毒を操る妖精が毒沼地帯を棲家にするのも自然なこと。生者への敵意に満ちた彼女らは、毒々しい色の薬瓶を抱えながらぱたぱたと少女に近寄っていく。
「あらあら、あなた大丈夫?」
そんな現場に鉢合わせたイリスは、クララの傍に駆け寄り、毒妖精の群れと対峙する。
その佇まいは優雅で、毒の沼地に咲く大輪の薔薇のよう。その風格に妖精達が警戒を示すなか、彼女のスカートの中でざわざわと何かが蠢いた。
「ここなら擬態をする意味もないでしょう」
上半身を除く擬態を解除すると、イリスの身体は薔薇と茨の触手が絡み合った異形へと変貌する。平時は要らぬ騒動を避けるためにも人の姿をしているが、これこそが彼女の本来の姿。薔薇の因子と融合したバイオモンスターとしての本性である。
「……っ?!!」
口元まで出かかった悲鳴を、どうにかクララは抑え込んだ。たとえ半身が異形と化していても、自分を見下ろす少女の瞳は優しげなままだったから。イリスはそんな彼女ににこりと上品に微笑んでから、茨の触手を守りのために展開する。
「その茨に触れてはだめよ。私があなたを守ってあげるわ」
複数の茨が絡み合い形成された「茨の盾」は、盾でありながら触れるもの全てを傷つける攻性の守り。これで囲んだ防壁の中に入っておけば、敵も迂闊に手は出せないだろう。
邪魔をされた妖精達は怒りを露わにしながらイリスの元に殺到し、抱えていた薬瓶の栓を開けると、中身の毒液を頭上から振りかけた。
「これはあなたをむしばむ毒……」
常人であれば即死しかねないほどの猛毒の雨。しかしイリスはそれを恵みの雨かのように受け入れ、避けることなく全身に浴びた。毒液を吸った茨の触手は大きくうねりながら、みるみるうちに急成長を遂げる。
「うふふっ、私にとって毒は養分でしかないわ」
全身を活性化させ、損傷を即時に回復してより強固な物に成長する【薔薇は散らず】。
それにより全ての毒を滋養として取り込んだイリスは、呆気に取られる妖精達を見上げると、嗜虐的な笑みを浮かべた。
「さて、次はこちらの番よね?」
成長した触手を鞭のように振るうと、羽虫を落とすように周囲の妖精が薙ぎ払われる。
この茨の触手は彼女の身体の一部であり武器。本体の意思に反応して伸縮自在に形を変化させ、敵を追い詰める万能の凶器。たとえ空中にいようとも逃れることは不可能だ。
「ギャッ!!?」
鋭く尖らせた茨の触手が、小さな妖精を串刺しにする。百舌の早贄を思わせるような有様となった敵が悲鳴を上げて絶命する様に、イリスは密やかな愉悦を感じながら微笑む。
「その程度の毒で私に挑もうなんて、百年早いのよ」
身の程知らずのオブリビオンには相応しい罰を。毒沼の上で成長を続けながら食虫植物の如く暴れまわる茨の触手は、怯え逃げ惑う妖精を一匹たりとて逃がすことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
ロシナンテⅣ搭乗
●推力移動飛行から妖精達とクララ様の元へ着地
素早く降り物資収納スペース煙幕手榴弾●投擲目潰し
センサーの●情報収集でクララ様捕捉
●優しく運び去りキャバリア操縦席へ
ワイヤーアンカーの有線●ハッキングで外部から機体遠隔●操縦
(動作精度はUCに劣る)
※通信
クララ様ですね?
突然のご無体をお許しください
貴女は先程のキャ…ゴーレムの内部にいます
そこならば毒の心配もありません
治療も出来る猟兵の方の元までお運びいたします
外の景色も映しますので暫しのご辛抱を
さて、私もあの機体もSSWでの運用が想定されています
(●防具改造、環境耐性)
…毒など通じると思わぬことです
機体●かばいつつUC交え掃討
「ふぅ、はぁ、ふぅ……まだ、出られないのでしょうか……」
猟兵達の助けで命を繋ぎながら、生々流転沼からの脱出を目指すクレリックのクララ。
しかし広大な沼沢地の出口は今だに見えず、心身には少なからぬ疲労が見える。蔓延する毒ガスに蝕まれながら散発的なモンスターの襲来に怯えていれば、それも当然だろう。
「わたしたちの毒を受けなさい……」
「ま、また……っ?!」
瘴気から湧いて出るように、どこからともなく現れる妖精の群れがまたもや道を阻む。
しかしその時、空から聞き慣れない奇妙な音が、こちらに近付いてくるのが聞こえた。
「あれはなに……? 鳥、いえ竜、でもなくて……巨人!?」
クララが空を見上げると、目に飛び込んできたのはジェット飛行する巨大な騎士の姿。
それはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が操縦するキャバリア「ロシナンテⅣ」。推進音を響かせながら、その機体は妖精達とクララの元へ着地する。
「ど、どうやって飛んで来……きゃうっ?!」
アックス&ウィザーズの常識を超えた未知の兵器に驚いたのは、妖精達も同じだった。
敵が混乱している間にトリテレイアは素早く機体から降りると、物資収納スペースから煙幕手榴弾を取り出して群れの中央に投げ込む。たちまちミルクのような真っ白な煙が沼沢地の上に立ち込めて、妖精達とクララの視界はゼロになった。
「失礼します」
「きゃっ?!」
狼狽えるクララの身体を、ふいに鋼の両腕が抱き上げる。全環境適応型マルチセンサーを搭載したトリテレイアは煙幕の中でも周囲の状況が把握できるのだが、相手は当然驚くだろう。しかし今は非常時ゆえ説明は後回しに、怪我をさせないよう優しく運び去る。
「ななな、なんなんですか一体……ここはどこなんですか……?」
『クララ様ですね? 突然のご無体をお許しください』
「ひゃぇっ?!」
クララが運び込まれたのは「ロシナンテⅣ」の操縦席。見たこともない装置や計器類がずらりと並んだスペースに少女が困惑していると、外からトリテレイアの通信が入った。
『貴女は先程のキャ……ゴーレムの内部にいます。そこならば毒の心配もありません』
「ご、ゴーレムだったんですかこれ……こんなに精巧なものは初めて見ました」
自分にも馴染みのある言葉に置き換えて説明されると、ようやくクララも少しは安心できた様子だった。戦乱の世界で開発された人型兵器「キャバリア」の操縦席はパイロット保護のため強固に守られており、毒ガス地帯を生身で歩くよりははるかに安全だろう。
『治療も出来る猟兵の方の元までお運びいたします。外の景色も映しますので暫しのご辛抱を』
トリテレイアは外部から接続端子を兼ねたワイヤーアンカーをロシナンテⅣに繋げ、有線ハッキングによる遠隔操縦で機体を動かす。直接操縦するよりも動作精度は大きく劣るが、これでキャバリアを要救助者を保護する移動式シェルターとして運用できるわけだ。
「こほっ、こほっ……にがさない!」
ズシンズシンとぎこちない足取りで移動する鋼の巨人を追いかけて、煙幕の中から妖精達が飛び出してくる。だがそうはさせじと立ちはだかるのはトリテレイアと、彼の肩部収納スペースから出撃する【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード】の群れであった。
「さて、私もあの機体もスペースシップワールドでの運用が想定されています」
「すぺーすしっぷ……わーるど?」
妖精達は知る由もあるまい。寄る辺となる大地のない世界で、広大な星の海を渡る人々の事など。大気も重力もない空間で有害な宇宙線に晒されながら戦うウォーマシン達の機体には、様々な環境に耐えうるための対策が施されている。
「……毒など通じると思わぬことです」
生命体に対する毒は言うに及ばず、酸や腐食性の毒もトリテレイアの装甲は侵せない。
ぱしゃりと【あなたをむしばむ毒】を撒き散らした妖精達は、相手が何の痛痒もなさそうに立ったままなのを見て、絶望に青ざめた。
「貴女がたに恨みはありませんが、ここは通して頂きます」
返礼に放たれたのは機械騎士の体に格納された銃器と、妖精型ロボ達による一斉掃射。
戦機の火力は無論のこと、本来は偵察機ながらも限界まで充電し出力の向上した妖精ロボのレーザー攻撃も、同サイズの標的に対しては侮れない威力を発揮した。
「きゃあぁぁぁぁぁ……っ!!!!」
鉛玉の嵐と光線の雨に呑み込まれ、断末魔を遺して骸の海に還っていく毒妖精の群れ。
追ってくる敵がいなくなれば、トリテレイアは再びクララを乗せたキャバリアを操縦し、一刻も早く彼女を解毒可能な仲間の元に送り届けるよう専念するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
あやかしメダルをクララさんに【投擲】。自分や仲間にも張り付けてユベコの【結界術】発動。自分や仲間、クララさんを毒から守るっす
「オブリビオンから人を助けるため、猟兵、衣更着参上っす!クララさんお助けっすよ!」
襲われる原因のシャルムーン様や破邪の言葉について教えて…って、毒を吸った?待っててっす。
そこな妖精は鱗粉で治療できるそうっす。つまり鱗粉を集めれば薬ができるはずっす!
妖精の動きを【見切り】、【化術】で【おどろかす】事で動きを誘導。一か所に集めて【ダッシュ】で近づき綿ストール【なぎ払い】で捕まえ、回復効果のある鱗粉を集めるっす。
自分で効果確認後クララさんに使って【救助活動】っす!
「オブリビオンから人を助けるため、猟兵、衣更着参上っす! クララさんお助けっすよ!」
巨大な騎士機に運ばれてきたクレリックの少女に、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は己の妖怪姿を描いた【あやかしメダル「打綿狸の衣更着」】をぺたんと貼り付ける。
「守るぜトモダチ! おいらのあやかしメダル、ペタリっす!」
このメダルは貼り付けた対象の周りから悪意を持つものを退け対象を守る結界を張る。
彼女を連れてきた仲間や、自分自身にもぺたぺた貼っておけば、当分の間は生々流転沼の毒ガスを気にせず活動することができるだろう。
「なんだか、もこもこした感触がします。ありがとうございます」
メダルの効果によって受ける綿に包まれるような感覚に、クララは不思議そうにしていたが、それが自分を守ってくれるものだと理解して感謝を述べる。いいってことっすよ、と衣更着は笑いかけながら、今のうちに彼女から情報を引き出そうと試みる。
「襲われる原因のシャルムーン様や破邪の言葉について教えて貰えないっすかね」
「それは……こほっ、けほっ!」
話そうとした少女の口から、言葉の代わりに苦しそうな咳が漏れる。結界がガスを退けているとはいえ、それまでに吸ってしまった毒が消えるわけではない。他の猟兵達の介護もあってまだ深刻な容態にはなっていないが、放置すればまた症状は悪化するだろう。
「……って、毒を吸った? 待っててっす」
どうやらゆっくり話を聞く余裕はなさそうだと判断した衣更着は、首に巻いた綿のストールをなびかせながら立ち上がる。彼自身に解毒手段はないが、幸いにして当てはある。
「そこな妖精は鱗粉で治療できるそうっす。つまり鱗粉を集めれば薬ができるはずっす!」
指差した先にいるのは生者の気配につられてやって来た『病をばらまく妖精』の群れ。
本来はこの毒沼地帯からの脱出を妨害する厄介者だが、今だけは薬瓶が羽を生やして飛んできたようなものである。
「人間……と、たぬき……? なんでもいいわ、生きているなら……」
生者への憎しみを募らせながら、オブリビオンとしての本能のまま襲い掛かる妖精達。
衣更着は彼女らの動きを冷静に見切ると、妖力を注いだ「どろんはっぱ」を頭に乗せて、得意の化術を行使する。
「ばぁっす!」
「きゃっ?!」
ドロンと真っ白い煙を出して、見上げるような大狸に姿を変える。小さな妖精達はその変身にびっくりして目を丸くすると、踏み潰されないようにわたわたと辺りを逃げ惑う。
「ほーら、食べちゃうっすよー」
「く、くるな……!」
衣更着はさらにドロロンと何度も化けるものを変えながら妖精達を追いかけ回す。相手も甘い毒の芳香をまき散らして反撃するが、打綿狸メダルの結界に阻まれて効果はない。
そうして逃げる相手を一箇所に集めたところで、元の姿に戻った彼は忍びの俊足で妖精達に近付く。また逃げられる間もなく「打綿狸の綿ストール」を振るえば、一丁上がり。
「捕まえたっす!」
「きゃー?!」
ストールでぐるぐる巻きにされた妖精達がちたぱたもがくと、背中の羽からひらひらと鱗粉が舞う。確認のためにちょんと触れてみると、確かに体力が回復する実感があった。
「どうやら妖精以外にもちゃんと効くみたいっすね」
【わたしたちをいやす薬】の効果を確認した衣更着は、捕まえた妖精達からさらにたくさんの鱗粉を回収すると、それを持ってクララの元に戻る。なお、鱗粉を取られた後の妖精達の処遇については――各自の想像に任せよう。
「どうっすか?」
「ん……少し気分がよくなってきました」
妖精の鱗粉を振りかけてみると、青ざめていたクララの顔色もだいぶ良くなってきた。
あたたかな笑顔を浮かべて感謝を伝える少女に、衣更着もまた笑顔で応じるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
己の野望の為に罪のない者を攫い命を捧げる事を強要する……これほど邪悪な魔女もそうはいないでしょう。悪しき野望は必ず打ち砕きます。
まずはUC【暗黒の冥護】でクララさんの肉体を強化して毒の抵抗力を高めます。
無論、聖職者であるクララさんにとって暗黒が受け入れがたい存在であることも分かっています。ですがここは私を信じてください。
妖精は小さく敏捷です。暗黒剣の様な小回りの利かない武器を命中させるのは至難ですが、ユーベルコードで肉体を強化しているのはクララさんだけではありません。
敵の動きを【見切り】で確実に捉え、【重量攻撃】で回復不能な状態に叩き潰す。それも暗黒の力があれば造作もありません。
「己の野望の為に罪のない者を攫い命を捧げる事を強要する……これほど邪悪な魔女もそうはいないでしょう」
弱き者の守護を誓いとするセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)にとって、眠りの森の魔女の行いはまさに唾棄すべき所業だった。平時は温厚篤実な彼女の言葉にも、静かな怒りが滲み出している。
「悪しき野望は必ず打ち砕きます」
誓いをより堅固とする女騎士の身体は深い暗黒のオーラを纏い、瘴気を寄せ付けない。
これこそが闇を以て悪を制する暗黒騎士の力の具現。生々流転沼に立ち込める毒ガスなど、彼女にとっては何ほどの物でもなかった。
「怖れる必要はありません。この力があなたを護ります」
クレリックの少女クララと合流を果たしたセシリアは【暗黒の冥護】を使用して彼女にも同様の力を付与しようとする。暗黒の力で一時的に肉体を強化して毒への抵抗力を高めれば、常人にとっては危険な生々流転沼の道中もかなり楽になるだろう。
「無論、聖職者であるクララさんにとって暗黒が受け入れがたい存在であることも分かっています。ですがここは私を信じてください」
「……恐るべき帝竜を討ち破り、世界に平和をもたらして下さった勇者様達のお言葉を、どうして疑いましょう」
御心のままに、とクララは女騎士の前で頭を垂れ、祈るように暗黒にその身を預けた。
か弱き少女の心に宿るのは勇者達への敬意と信頼。闇の力に恐れがあろうとも、見返りもなく自身を救うためにこの地に来てくれた者達を疑う気持ちなど皆無だった。
「信じてくれてありがとうございます」
無垢な少女に暗黒の冥護を与えたのち、セシリアは暗黒剣ダークスレイヤーを構える。
生者の気配を感じ取ったのか、『病をばらまく妖精』の群れが再び集まってきたのだ。
「どうしてまだ死んでいないの?」
「わたしたちの毒でむしばんであげる」
昏い瞳に悪しき意思をたたえた妖精は、沼で自然発生するより遥かに強力な毒を操る。
加えて彼女らは小さく敏捷だ。暗黒剣の様な小回りの利かない特大武器を命中させるのは至難の技だろう。
「ですが、ユーベルコードで肉体を強化しているのはクララさんだけではありません」
セシリアが足元を蹴ると、暗黒の冥護を纏ったその身は一迅の風となって地を駆ける。
毒への耐性だけではない。敏捷性や五感の鋭さといった戦闘に関わるあらゆる肉体能力を増強した彼女の身のこなしは、重武装でありながら目を見張るほどに速く、鋭い。
「な……っ?!」
妖精達は慌てて翅を羽ばたかせ、毒液をまき散らしながら散開するが、どう逃げようとも彼女らの動きはすでに見切っている。毒に構わず前進した騎士は、渾身の膂力で暗黒剣を振るう――闇を纏った特大剣が轟と唸りを上げ、斬撃の軌跡が暴風を巻き起こした。
「ギャ―――ッ!!!」
病をばらまく妖精は攻撃用の毒の他に【わたしたちをいやす薬】も操る。だが一撃にて回復不能な状態まで叩き潰してしまえば、どんな治療手段を持っていようが関係はない。
(それも暗黒の力があれば造作もありません)
確実に標的を捉え、武器の重量を活かした攻撃で粉砕する。質実剛健を絵に描いたようなセシリアの猛攻に、肉体的にはひ弱な妖精達は為す術もないまま骸の海に還っていく。
「すごい……!」
その勇ましき戦いぶりを見守っていたクララの表情には、もう暗黒への恐れはなく。その眼差しには凛々しき女騎士への憧れと尊敬が宿っていた。
大成功
🔵🔵🔵
斬断・彩萌
あなたがクララね。大丈夫、私たちはあの帝竜戦役を生き延びた猟兵よ
絶対にあなたの事は守ってみせるから……あなたも私たちを信用して
『ドラッグ・バレッド』で適宜回復しながら、防御面はクロちゃんに任せて遠距離からの二挺拳銃で戦い、なるべく近づかせないように
近距離戦にはOracleで対応、斬られたい奴から前に出なさい!
幸いにして相手もガンガン攻撃してくるタイプではなさそうだし、きっちり一体ずつトドメをさして行くわ
私、割と蝶モチーフって好きだけど……鱗粉だけはどーしても好きになれないのよねぇ
最優先事項:クララに攻撃が行った場合・もしくは毒のダメージが蓄積した場合は『ドラッグ・バレッド』を当て即時回復
「あなたがクララね。大丈夫、私たちはあの帝竜戦役を生き延びた猟兵よ」
生々流転沼にて救助対象と無事合流した斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は、まずは信用を得るために自己紹介をする。帝竜打倒のためにこの大陸を巡った冒険と戦いの日々から半年程、ヴァルギリオスを倒した英雄達の偉業は民衆にも伝わっている。
「絶対にあなたの事は守ってみせるから……あなたも私たちを信用して」
「……このような危険な地まで来て下さった方々のことを、信じないはずがありません」
毒気と魔物の脅威に晒され続け、顔色は不安と恐怖で青ざめていても、クララは気丈に微笑んでみせた。危険も顧みずに助けに来てくれた猟兵達への、無上の信頼の証として。
「ありがとう、じゃあ急ぎましょ。防御面は任せたわよクロちゃん!」
彩萌は両手に二丁の拳銃を握りしめ、影から現れた夢魔の「クロちゃん」をクララの護衛に付かせて、広大な生々流転沼の脱出を目指す。いつ敵が現れても対応できるよう常に周囲を警戒しながら、護衛対象の容態からも目を離さない。
「けほっ、こほっ……」
「苦しい? 少し待ってて」
蔓延する毒ガスでクララが不調を訴え始めると、銃口を当てて【ドラッグ・バレッド】を発射。彩萌のサイキックエナジーにより変質した医療弾が、毒のダメージを回復する。
これでまた暫くの間は大丈夫だろう。とはいえこの沼沢地に居続ける限り毒から完全に逃れることはできない。早々に出て行きたいところだが、そうは許さない者達がいる。
「……ニンゲン……しんじゃえ……」
瘴気の中からゆらゆらりと姿を現すのは、鬱々しい言葉と毒を吐き散らす妖精の群れ。
身構えていた彩萌は即座に二丁拳銃を向け、敵に近付かれる前に遠距離から迎撃する。
「おいでなすったわね。この子はやらせないわよ!」
"Executioner"と"Traitor"。使い手の精神力を込めて放つ銃弾は小さな標的を的確に射抜く。彼女の気力が尽きぬ限り銃弾が尽きることもなく、激しい弾幕を受けた妖精達はぱっと四方に散りながら憎々しげな眼差しを向ける。
「痛いのはキライ……じゃあ、あっちのヤツから……」
彩萌を与し難い相手と判断した妖精達の標的は、戦う力を持たないクララに集中する。
弾幕の範囲を迂回して毒を浴びせようとする敵に対し、彩萌は片方の拳銃を素早くホルスターに納めると、自らの精神力を一振りの刃として実体化させる。
「斬られたい奴から前に出なさい!」
"Oracle"――神託の名を冠したその剣はクララに近付く敵を容赦なく斬り伏せ、骸の海に還す。己が意志を武器とする斬断家当主の戦闘術に遠近共隙はなく、庇護する者の信用に応えんとする決意が、その刃と銃弾をより鋭利なものとしていた。
「私、割と蝶モチーフって好きだけど……鱗粉だけはどーしても好きになれないのよねぇ」
傷ついた妖精達が散らす鱗粉を見て、くしゃみが出そうだわ、と彩萌は悪態を吐いて。
再び短剣から二丁拳銃へと構えを変えると、銃撃を集中させて一体ずつトドメを刺す。
回復能力を持った集団と戦うなら、治療されないよう頭数を減らすのは定石の一つだ。
(幸いにして相手もガンガン攻撃してくるタイプではなさそうね)
妖精は元来臆病なものだと言うが、この連中も性根は同じらしい。強そうだと思った相手には近寄ってこなかったり、遠巻きに毒をまき散らすだけで積極的に攻めて来ないのなら、【ドラッグ・バレッド】で適宜回復しながら戦えば十分持ちこたえることはできる。
「大丈夫ですか……?」
「平気平気。下がってて」
夢魔の影から心配そうに様子を見ているクララに、彩萌はひらひらと手を後ろに振る。
その言葉通り彼女の気力は萎えることなく、妖精の群れを撃退するまで、完璧に護衛対象を守り抜いてみせたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
相変わらず厄介な場所だね
クララさんが死なない様に気を付けながら戦おう
害は無いから慌てないでね、と念押しした上で
邪神の施しを使用し動く石像になって貰おう
これまで受けた毒の治療をすると共に防御力を強化して
魔物の攻撃に耐えられる様にしよう
それに息をしなくて良くなるから
瘴気の影響を受けなくなるか軽微になるかすると思うよ
クララさんの安全を確保したら
自分にも使用して戦おう
先に自分に使うと魔物と間違えられかねないからね
ガトリングガンの範囲攻撃で纏めて落とそう
治癒するかもしれないけど
それ以上に削ればいいだけだし
それに向いた武器だと思うよ
範囲から外れた敵や回り込んでくる敵は
使い魔の石化攻撃で石に変え無力化しよう
「相変わらず厄介な場所だね」
毒ガスが蔓延する生々流転沼の様子を見渡して、眉をひそめるのは佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。帝竜ガルシェンの討伐後、モンスター討伐のためにこの地を訪れたことがあるが、ここの環境は相変わらず生者にとっては過酷なままであった。
「クララさんが死なない様に気を付けないと」
猟兵のような強靭さを持っているわけでもない、肉体的にはただの少女であるクララには、特にここの毒気は堪えるだろう。なにか対策を取ったほうがいいかと考えた彼女は、一計を思いついて虚空に魔法陣を描く。
「害は無いから慌てないでね」
「は、はいっ」
緊張気味に身を強張らせるクララの前で、晶は描き上げた彫像化の魔法陣を発動する。
晶と融合した邪神の権能による【邪神の施し】は、一時的に対象の肉体を石化させる。
「わ、わ、わっ」
自分の体が石に変わっていくのを見て、クララは一瞬だけ怯えた様子になるが、晶達猟兵のことを信用しているようで抵抗はしない。あっという間に彼女は動く石像と化した。
このユーベルコードには治療効果もあるためこれまで受けた毒も癒せるほか、防御力を強化してある程度まで魔物の攻撃にも耐えられるようになる等、様々なメリットがある。
「それに息をしなくて良くなるから、瘴気の影響を受けなくなるか軽微になるかすると思うよ」
「なんだか、へんな感覚です……」
生きたまま石像になる体験はそうそう無いだろう、クララは落ち着かない様子で石になった自分の身体に触れているが、少なくとも不快感はなさそうだ。彼女の安全を確保したところで、晶は自分自身にも邪神の施しを使用して毒への対策を行う。
(先に自分に使うと魔物と間違えられかねないからね)
何の前置きも説明もなく動く石像(リビング・スタチュー)が現れたら、普通は敵だろうと晶も判断する。石化した人間が二人に増えた丁度その時、瘴気の中から敵が現れた。
「人間きら……あれ、人間は……?」
生者の気配に引かれてやって来たはずの妖精達は、そこに立つ2つの石像に困惑する。
人の形をしてはいるが、果たしてこれは生物なのか。彼女らが判断しかねている内に、晶は持ってきた携行型ガトリングガンの砲身を担ぎ上げ、先制攻撃を開始した。
「纏めて落とさせてもらうよ」
「きゃぁっ?!!」
毎秒数十発を数える銃弾の嵐は、範囲内にいた者達を大小の区別なく纏めて薙ぎ払う。
いくら小さくてすばしっこい妖精でも、全ての弾丸を避けることはできないだろう。唸るような砲声に紛れて甲高い悲鳴が戦場に響き渡った。
「やって……くれたわね……」
傷ついた妖精達は【わたしたちをいやす薬】で回復しようとするが、晶の攻撃は絶え間なく続く。邪神の物質創造能力を利用した弾丸の生成により、彼女の砲に弾切れはない。
(治癒するかもしれないけど、それ以上に削ればいいだけだし、それに向いた武器だと思うよ)
という使い手の見込み通りの性能を発揮したガトリング砲によって、妖精の群れは次々と撃ち落とされていく。運良く射撃範囲から外れて回り込んできた敵にも、石化能力を持たせた使い魔が睨みをきかせている。
「そん、な……」
蜂の巣にされるか、あるいは彫像となるか。そのいずれかを選ばされた妖精達が残らず無力化されるのに、さほどの時間はかからなかった。戦いを終えた晶はガトリングガンを元通りに収納すると、後ろで様子を見ていたクララにそっと手を差し伸べる。
「行こうか」
「は、はいっ」
毒ガスが立ち込める沼沢地を歩くふたりの少女像。傍から見れば奇妙な光景ではある。
しかしそのお陰で彼女らは危険に満ちたこの領域を、比較的安全に進むことができた。
大成功
🔵🔵🔵
朝沼・狭霧
【風月華】から参加
【心情】クララさんを助ける…
妖精さんが敵…
難しいことは置いておいて、なんだか暴れたい気分ですね。
よしここを焼け野原にしてあげましょう!
毒ガスを避けられるように風上から近づきます
風がないなら起こせばいい
UCスターダストレボリューションでガンガン流星を落として風を起こします
敵しかいなさそうな沼地だからいいですよね
とりあえず、集団の妖精の一番多そうな所に絨毯爆撃
「香とか薬とかしらなーい。ここまでやっちゃえば関係ないでしょ」
「たまやー、かぎやー♪」
…冷静になってみてみると8歳のミューちゃんとレイカちゃんの方が
ずっと品行方正な気がしてきました(ぁぁ
二人を優しくなでなでしてごまかします
ミュー・ティフィア
【風月華】から参加
暴れたいって気分で焼け野原って狭霧すごいこと言いますね?!
慈愛・アドリビトゥムを使ったオーラ防御と盾受けで妖精の攻撃からクララを護ります。
オーラ防御はクララ以外にも展開して毒ガスを遮った方がいいですよね。
安心してください、クララ。
私達が必ずクララを護ります!
レイカが防御と回復に専念してくれるので私は次々と妖精達に矢を向けてアナイアレイションで狭霧の討ち漏らしや妖精の塊を敵の回復が追い付くよりも前に倒しちゃいましょう。
ついでに属性攻撃と全力魔法で追い打ちです!
うん、レイカが居てくれて心強いですね♪
敵の攻撃は第六感と戦闘知識を駆使して回避します。
狭霧とっても楽しそうですね!
レイカ・ヴァンスタイン
【風月華】から参加
妖精に対して、同族とは思えないので
「生まれが違うとこんなにも変わるものなの?」
暴れたい狭霧お姉ちゃんが居るから、ウチは専守防衛として彩光隊でクララおねーちゃんを守るですの。
近づいてきても、人形達の射撃で近づかせないの。
毒には治癒を、UC雪明で全身を輝かせて皆を癒すの。
「クララさんを助ける……妖精さんが敵……難しいことは置いておいて、なんだか暴れたい気分ですね。よしここを焼け野原にしてあげましょう!」
「暴れたいって気分で焼け野原って狭霧すごいこと言いますね?!」
物騒なやる気に満ちたことを言う朝沼・狭霧(サギリ先生・f03862)に、すかさずツッコミを入れるミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)。生々流転沼にやって来た学生寮【風月華】の面々は、今日もかしましく元気そうだった。
「あの、あちらの方は何を……?」
「あんまり気にしないでほしいの」
今焼け野原とか聞こえたんですけど、と困惑するクララの頭の上にちょこん、と乗っているのは、同じ【風月華】の仲間であるレイカ・ヴァンスタイン(銀光精・f00419)。
暴れたい仲間が居るなら、自分が専守防衛として彼女を守ろうということか、周囲には「彩光隊」と名付けられた7色の人間大の人形たちがボディガードのように立っている。
「さわがしい……うるさい……」
狭霧達のかしましさに引き寄せられたか、毒沼のあちこちから妖精の群れが姿を現す。
生者に対する敵意と破滅の意志を宿した『病をばらまく妖精』達は、甘い芳香を漂わせながら、羽ばたきに乗せて死の猛毒をまき散らす。
「生まれが違うとこんなにも変わるものなの?」
「それ以上に魔物化した影響もありそうですね」
同族とは思えない鬱々とした様子の彼女らを見て、ダークセイヴァー育ちの妖精であるレイカは思わず呟く。生前にあの妖精達がどんな仕打ちを受けてきたのかは定かではないが、オブリビオンとなった今では説得も通じないだろうと、ミューがその傍らに並んだ。
「これはあなたたちをむしばむ毒……」
「みんなみんな、苦しんで死ねばいい……!」
ともあれ毒をまき散らす彼女らを放置していれば、自分達よりもクララの身が危険だ。
レイカの操る7色の人形はがっちりとガードを固め、ミューが大盾「慈愛・アドリビトゥム」を宙に浮かべると、清浄なるオーラの防壁が辺りに立ち込める毒ガスを遮断した。
「安心してください、クララ。私達が必ずクララを護ります!」
「ウチもクララおねーちゃんを守るですの」
頼もしい言葉と笑顔で宣言するエルフとフェアリーに、クララはこくんと小さく頷く。
不安や恐怖が完全に消え去ったわけでは無くとも、その顔は猟兵達を深く信頼している様子だった。
「結界なんて……こざかしい……」
離れたままでは毒が届かないと悟った妖精は、毒瓶を抱えてぱたぱたと近付いてくる。
だがその瞬間、レイカ率いる彩光隊が一斉射撃を始め、敵を寄せ付けまいと牽制する。
「ここから先は通しませんの」
衣服の色ごとに役割を分けられた人形のうち、本来の射撃攻撃担当の「蒼」と牽制担当の「葵」が中心となって妖精の翼を狙い、「茜」が弾幕による飽和攻撃で威嚇。「籐黄」は徹底して敵の妨害に励み、「緑」「朱華」「翠」は補助や防御でサポートに回る。
これら全ての人形の複雑な操作を、レイカは己の思念と指に繋げた糸だけで行っているのだ。熟練の技術と高度な並列処理が要求される動きを、彼女はこともなげに実行する。
「うん、レイカが居てくれて心強いですね♪」
惚れ惚れするような友人の思念繰糸操作に感嘆しつつ、ミューは奏弓・コンチェルトの弦を爪弾き、奏でた音色を魔力の矢に変えた。その鏃を妖精の群れに向ければ、自律行動する彼女の武装が攻撃を開始する。
「ひぇ……っ?!」
宙を舞い襲い掛かる12本の「星剣・パルティータ」。標的を追尾しながら斬撃と射撃を浴びせる銃剣に合わせ、後方からは魔導書「禁忌・ポリフォニー」が魔法攻撃を放つ。
優美な武器達による【アナイアレイション】により、彩光隊の足止めを食らった妖精達は容赦なく倒されていく。いくら敵が【わたしたちをいやす薬】を持っていたとしても、それを上回る火力を叩きつければ、いずれ回復が追い付かなくなるのは自明の理だった。
「レイカちゃんもミューちゃんも頑張ってますね」
敵を護衛対象に寄せ付けないように戦っている2人の様子を見ながら、狭霧は毒ガスを避けられるよう風上から敵に近付く。そう都合のよい方角とタイミングで風が吹いてくれないのも世の常だが、風がないなら起こせばいいと考えるのが彼女のスタイルである。
「敵しかいなさそうな沼地だからいいですよね。落ちてきなさい、私の地平へ」
詠唱時間はそこそこに、放つは【スターダスト・レヴォリューション】。純粋なる破壊の力を宿した流星が天より落下し、轟音と衝撃そして爆風を巻き起こして沼に着弾する。
これは風向きがどうこうというレベルではない気がするが、突然の流星に妖精達はびっくり。毒ガスも爆風に吹き飛ばされ、接近には絶好のチャンスとなったのは確かだった。
「香とか薬とかしらなーい。ここまでやっちゃえば関係ないでしょ」
狭霧は余裕で敵との距離を詰めると、とりあえず敵の一番多そうな所に絨毯爆撃を仕掛けてみる。どごーん、と再び流星の着弾音が響き渡り、遅れて妖精達の悲鳴が上がった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?!」
か弱い妖精が哀れに見えるほどの圧倒的な破壊の暴力。小さなその身に流星を受け止められる力があるはずもなく、すばしっこく避けようとしても蹂躙する「面」の爆撃には無意味。沼沢地の地形が変わっていくのに合わせて、敵の数はみるみるうちに減っていく。
「狭霧とっても楽しそうですね!」
「す、すごいです……けほっ、けほっ」
ミューは宣言通りに大暴れしているもう1人の友を見て楽しそうに笑い。対照的にクララのほうは猟兵の規格外の力を目の当たりにして呆気に取られていたが――3人と出会う前に吸い込んでいた毒が回ってきたのか、苦しそうに小さく咳をする。
「むりをしたらダメなのですの、ウチがしっかり癒しますの」
すかさずレイカが使うのは【雪明】。小さなフェアリーの全身から放たれる燐光は生々流転沼をあたたかく照らし、クララのみならずこの場にいる全員から毒素を消し去った。
毒を治癒している最中でも、その両手の十指は彩光隊を操り続け、専守防衛の体制を崩さない。彼女が防御と回復に専念してくれている間に、ミューは次々と妖精達に矢を向けて、狭霧が討ち漏らした妖精を仕留めにかかる。
「たまやー、かぎやー♪」
「殲滅します!」
降りしきる流星群が妖精の群れを崩壊させ、追い打ちとばかりに放たれる銃剣の乱舞、そしてミュー自身が唱えた全力の魔法攻撃が、病をばらまく妖精を一匹残らず駆逐する。
沼地に再び静寂が戻った時、残っていたのは地面を穿つ巨大なクレーターだけだった。
「もう大丈夫ですよ、クララ」
「悪い妖精はやっつけたですの」
「ありがとうございます、皆さん」
自分を守りながら脅威を追い払ってくれた猟兵達に、クララは心からの感謝を述べる。
ミューは大人びた微笑で、レイカは年相応の笑顔でそれに応え。3人が和気藹々とした雰囲気でいるところに、ひと暴れしてスッキリした様子の狭霧が帰ってきた。
(……冷静になってみてみると8歳のミューちゃんとレイカちゃんの方がずっと品行方正な気がしてきました)
クララを保護しつつ戦っていた2人と異なり、今回の彼女はフリーに暴れていたのみ。
キルスコアで言えば断然首位なので卑下する必要はないし、広い意味での連携は取れていたのだから問題もないのだが、果たして年長者として良かったのかと今更にして思う。
「…………」
「狭霧?」
「なんですの?」
とりあえずなでなでしてごまかすことにしたらしい狭霧。優しく撫でられながらきょとんとするミューとレイカ。どうにも噛み合わない感じだが、3人とも気分は良さそうだ。
そんな風月華の面々の様子を見て、とっても仲がいいのですね、とクララは微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
……毒か
悪くない戦法だ。俺もよく使うぜ
だからこそ、対処の方法は何時でも確立するようにしてる
今回はちょうどいいことに、それを向こうから持ってきてくれた
その愚かな判断に感謝しよう
封印指定解除───『Hyena』
巻き込まれないように離れておけ…そうすりゃあ死ぬことは無い
【ダッシュ】で接近、妖精を鋼の腕で掴んで力を吸い取り、握り潰す
投げナイフにクロスボウ…中距離で潰して潰して潰しまわる
毒がヤバくなってきたなら、奪ったユーベルコードの出番だ
鱗粉で周囲を一気に治療し、疲労した分は『奪って』回復する
これは獣の戦いと同じだ
誇りも何もありゃしない…勇者様を期待してたなら、すまんね
どこまでいっても、これが現実さ
「……毒か。悪くない戦法だ。俺もよく使うぜ」
ニヤリと黒い笑みを浮かべて呟いたのはヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)。上手く扱えば少ない手間で命を奪えるうえ、種類によっては殺さず無力化することも可能。敵が生々流転沼に目をつけた理由も分かるというものだ。
「だからこそ、対処の方法は何時でも確立するようにしてる。今回はちょうどいいことに、それを向こうから持ってきてくれた」
蔓延する毒ガスを克服するために彼が目をつけたのは、この地に棲息するモンスター。
わざわざ呼ばなくとも生者の気配を嗅ぎつけて『病をばらまく妖精』の群れが現れた。
「その愚かな判断に感謝しよう」
この連中がターリアの配下なのか、元から生々流転沼に棲み着いていたモンスターなのかは知らないが、どちらにしても好都合だ。ヴィクティムは右腕に仕込みクロスボウ、左手に投げナイフを用意しつつ、不安そうにしているクレリックの少女に告げる。
「巻き込まれないように離れておけ……そうすりゃあ死ぬことは無い」
「は、はいっ」
クララがこくりと頷いたのを見てから、妖精の群れに向かって走り出す。その身体は徐々に黒い異形のものに変じていき、狂おしいほどの乾きが胸の奥から湧き上がってくる。
「封印指定解除───『Hyena』」
それはヴィクティムが有する中でも特に危険性の高いユーベルコードのひとつ。禍々しく変じた鋼の腕で近くの妖精を掴むと、まるで干からびるように小さな体が萎れていく。
「ひ……ぁ、ぎ……わ、わたしのちからを、うばってる……っ?!」
毒も武器もユーベルコードも、全ての力を吸い取ると、抜け殻をぐしゃりと握り潰す。
今の彼は凍える静寂(ウィンターミュート)に非ず。常に何もかもを欲し続け、満たされない乾きを鎮める為に奪い、喰らい、呑み干さんとする魔人――『強奪の反逆者』だ。
「貰うぞ、お前達の力も、命も、全て」
たかが妖精一人分で強奪者の乾きは満たされない。ヴィクティムは目についた敵にクロスボウの矢を射掛け、投げナイフを放ち、中距離から妖精共を潰して潰して潰しまわる。
戦いと呼ぶには荒々しく、狩りと呼ぶにも暴力的に過ぎる、その振る舞いはまさに人の形をした獣。妖精達は恐怖に駆られながら食い殺されまいと毒の雫や芳香をまき散らす。
「ひ……く、くるなっ」
沼沢地に立ち込めるガスと合わせて、それは着実にヴィクティムの身体を蝕んでいく。
だが彼はまるで意に介していないような様子で攻撃の手を緩めず、慌てふためく妖精を片端から蹴散らしていった。
「……と、そろそろヤバくなってきたか」
いよいよと毒が全身に回ってきたという段階になって、ヴィクティムは敵から奪ったユーベルコードを発動する。妖精を握り潰した『強奪の両腕』から【わたしたちをいやす薬】の鱗粉が放出され、本人だけでなく周囲にいる者の受けた毒も一気に治療していく。
「わぁ……?」
治癒の鱗粉はクララの元にまで届き、急に体調の良くなった少女は目を丸くしている。
このユーベルコードは使用するたびに術者を消耗させるが、疲労した分は『奪って』回復すればいいと、鱗粉を使い終えたヴィクティムは再び妖精の群れに襲い掛かった。
「これは獣の戦いと同じだ。誇りも何もありゃしない……勇者様を期待してたなら、すまんね」
乾きのままに妖精達を屠り喰らいながら、強奪の反逆者はひっそりと謝罪を口にする。
どこまでいっても、これが現実さ――そう嘯く彼の表情は皮肉げで、英雄や主役などに自分がなれっこないと、諦めているようでもあった。
「…………」
その言葉がクララの耳に届いたかどうかは分からない。ただ彼女は、ヴィクティムが群れの最後の一匹を喰らい尽くすまで、彼の戦う姿から決して目を離そうとはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
コーディリア・アレキサンダ
> 鳴宮(f01612)と
折角落ち着いたのだから、静かに過ごさせて欲しいのだけどね
厄介なものに目を付けられて――祭司様も大変だ
《諭し、癒すもの》
不定形の光の姿をした悪魔の権能を顕現させ、周囲の毒を癒すことに集中するよ
敵への対応はよろしくね。クレリックさんとボクに向かって敵が抜けて来たら、流石に魔法で応戦するよ
……悪魔に癒されるとは思っていなかったかい?
これでも元は神に仕える身だったからね。気持ちはわかるよ
でもね、最後に助けてくれるのは神様でも、悪魔でもなく、人なんだ
神様を悪く言うのは良くないと思うけれど、ね
鳴宮・匡
◆店長(コーディリア/f00037)と
同感だけど、オブリビオンにしてみれば知ったことじゃないんだろうな
ま、来ただけ全部、骸の海に叩き返せばいいんだよ
治療を受け持ってくれるならこっちは索敵と攻撃に専念できる
安心してくれ、そっちに危険が及ぶようなヘマはしないよ
そこのクレリックも、店長のそばにいてくれ
そこが一番、安全だからな
……ついでに目も閉じてた方がいいぜ
数を処理するなら速さが何より肝要だ
【落滴の音】、近づいた敵から順に頭を砕いて処理していくよ
動きを止めたり、甘い香りを強く纏う個体を特に優先
毒を撒き散らす間を与えない
ものは悪魔でも、主体の店長はひとだしさ
それも“人の助け”ってことでいいんじゃない
「折角落ち着いたのだから、静かに過ごさせて欲しいのだけどね」
帝竜ヴァルギリオスが倒れ、アックス&ウィザーズも平和になってきた矢先の事件に、コーディリア・アレキサンダ(双星の魔女・f00037)はふうと溜め息をつく。天上界だか何だか知らないが、猟書家というなら人が本を読む邪魔はしないでもらいたいものだ。
「厄介なものに目を付けられて――祭司様も大変だ」
「同感だけど、オブリビオンにしてみれば知ったことじゃないんだろうな」
彼女の意見に頷きつつ宥めるのは鳴宮・匡(凪の海・f01612)。今は亡き『書架の王』が目指したその場所に何があるのかは定かではないが、そこに到達するためなら如何なる犠牲や被害も猟書家達は厭わないのだろうと、それだけは確信を持って言える。
「ま、来ただけ全部、骸の海に叩き返せばいいんだよ」
「それもそうか。じゃあ鳴宮、敵への対応はよろしくね」
宿屋「巡るかもめ亭」の亭主はそう言って、自らは周囲の毒を癒やすことに集中する。
広げた掌から浮かび上がるのは小さな光の珠。与えられた銘は【諭し、癒すもの】、その真名はブエル。あらゆる命を"戻す"ことで治療する、悪魔の権能を顕現させたものだ。
「きれいな光……でも、これって……」
クララはその光の正体に気が付いたらしい。シャルムーンのクレリックとして優秀だと魔女に目をつけられるだけの事はあるようだ。コーディリアも別に隠すつもりはなかったものの、これで治療を拒否されでもしたら困るため、苦笑しながら説得の言葉を考える。
「……悪魔に癒されるとは思っていなかったかい? これでも元は神に仕える身だったからね。気持ちはわかるよ」
かつてコーディリアのいた国が悪魔の大軍に襲われた時、彼女は自らの体に全ての悪魔を封じ込めた。華奢な躰にこの世の厄災全てを詰め込んだような、歩くパンドラの箱――その危険性を常に身近に感じているからこそ、忌避したくなるのは無理もないとは思う。
「でもね、最後に助けてくれるのは神様でも、悪魔でもなく、人なんだ。神様を悪く言うのは良くないと思うけれど、ね」
この身に宿した悪魔の権能とて、使い方次第でこのように人を癒やす力になる。神への祈りが奇跡を起こすのもそう。彼らは誰かの願いや祈りなくして人を救うことはない――だからこそ最後に人を救いうるのは人が起こした行動と意志、それだけなのだ。
「ものは悪魔でも、主体の店長はひとだしさ。それも"人の助け"ってことでいいんじゃない」
「そうですね……おふたりの仰ることは、わたしも最もだと思います」
この人は信頼に足る人物だよ、とコーディリアの言葉に繋いで匡もフォローを入れる。
彼女らの言葉にクララは静かに耳を傾け、やがて悪魔の光に自らそっと手をかざした。
歪なる星の輝きが彼女の体から、そして周辺から毒の影響を消し去り、癒やしていく。
「この力が良いものか悪いものか、未熟なわたしには分かりませんけど……こんな所までわたしを助けに来てくれたお姉さんたちの心は、善いものに違いありませんから」
ふわりと日だまりのように微笑むクララの表情は、猟兵達を信頼しきっている様子だった。あまりに無垢で純粋な反応にコーディリアはすこし意表をつかれた顔をして、それからふっと穏やかな笑みを返した。
「二人共、話してる所悪いがお客さんだ。一応警戒しておいてくれ」
その時、周辺警戒に当たっていた匡が警告を発する。見れば靄のような瘴気の向こうからぱたぱたと、小さな『病をばらまく妖精』の群れがこちらに近付いてくるのが見える。
愛銃のBR-646C [Resonance]を構えて戦闘態勢を取る彼に、コーディリアは「諭し、癒すもの」の光を掌に浮かべたまま、怯えるクララを背中にかばいつつ声をかける。
「頼んだよ、鳴宮」
「安心してくれ、そっちに危険が及ぶようなヘマはしないよ」
彼女が治療を受け持ってくれるなら、こちらは索敵と攻撃に専念できる。的は少々小さいがその程度のことは問題にもならない、この程度の敵の処理なら自分だけでも十分だ。
「そこのクレリックも、店長のそばにいてくれ。そこが一番、安全だからな……ついでに目も閉じてた方がいいぜ」
「は、はいっ」
言われた通りにぎゅっと目をつむるクララ。今更かもしれないが、ここから先は修羅場を知らない娘には少々刺激の強い光景になる。トリガーのそばに指を置いた匡はそれきり無言となって感覚を研ぎ澄ませ、妖精の群れに銃口を向ける。
(数を処理するなら速さが何より肝要だ)
頼るのは思考ではなく反射。重ねた戦闘経験に基づいた超人的な反応と直感に身を任せれば意識するまでもなく――【落滴の音】が聞こえるよりも速く、彼の銃弾は命を奪う。
「これはあなたたちをこわす―――ぴっ?!」
何かをしようとした妖精の頭が、ライフルの銃弾を受けて吹き飛んだ。彼女らが毒をばら撒く際に発生させる甘い香り、それを嗅ぎつけた匡が反射的にトリガーを引いたのだ。
攻撃対象を直感に任せることで一切の思考のタイムラグを削ぎ落とした彼の射撃動作は、脳から指先までが直結しているように素早い。敵が毒を撒き散らすような素振りを僅かでも見せるか、クララやコーディリアに近付こうとすれば、即座に頭を砕いて処理する。
沼地のあちこちから「ひぃっ」「ぎゃっ!?」という短い悲鳴と銃声が聞こえ、やがて静かになる。それは匡が戦闘を開始してからまだ数分とかからないうちの出来事だった。
「……もう目を開けてもいいぜ」
匡が小銃を下ろした時、妖精達の屍はすでに骸の海へと還り、跡形もなくなっていた。
目を開けたクララはほっと胸を撫で下ろし、コーディリアはもしもの時のために広げておいた魔導書のページをぱたんと閉じる。
「流石だね。結局一匹もこっちには抜けて来なかった」
「そんなヘマはしないって言っただろ?」
店長の軽口に匡も笑顔で応じ、まだ付近に潜んでいる敵がいないか確認してから、二人に先を促す。よくよく目を凝らしてみれば、地平線の彼方に毒沼とは異なる緑が見える。
ずいぶんと長かった生々流転沼からの脱出行も、いよいよ終わりが近付き始めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『眠りの森の魔女ターリア』
|
POW : ようこそ眠りの森へ
戦場全体に、【「眠りの森」 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 醒めざる夢の茨
【棺の中から伸びる「眠りの茨」 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 忘却の眠り
【記憶を一時的に奪う呪詛 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【過去の記憶】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
イラスト:梅キチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リミティア・スカイクラッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クレリックの少女クララを護衛しつつ、広大な生々流転沼からの脱出を目指す猟兵達。
途中幾度となくあったモンスターの襲来も退けて、毒や体力を回復させながら進み続けた彼らは、安全な場所まであと一息というところまで辿り着く。
「いつまでも破邪の言葉が聞こえないと思えば、やはりあなた方が関わっていましたか」
だが、その行く手にはまるで最初から待ち構えていたように、1人の女が佇んでいた。
薔薇の花びらと茨が敷き詰められた、宙に浮かぶ不気味な棺。その中で眠るように収まった黒いドレスの女――彼女こそがクララを浚った『眠りの森の魔女ターリア』である。
「やはり、わたしたちの妨げとなるのはあなた方なのですね。帝竜戦役が起こらなければ、わたしたちがこの世界に来ることは無かったかもしれない。しかし天上界への封印が解かれぬままヴァルギリオスが倒れたせいで、わたしたちはとても困っています」
ターリアの言葉は穏やかで、困っていると言いながら強い敵意や怒りは感じられない。
薔薇の棺の中で眠り続ける彼女の言葉は奇妙なほど耳に心地よく、子守唄を聞いているように心がまどろんでいく。気を抜けばすぐにでも眠らされてしまいそうなほどに。
「そちらの方はわたしが見つけた、封印を解くための鍵なのです。破邪の言葉を使えそうなシャルムーンのクレリックをまた見つけるのは、無理ではありませんが手間ですから」
「眠りの呪い」を操る魔女は丁寧に穏やかに、クララの生命を物のように扱う。それはあくまで破邪の言葉を放たせるための器であり、人となりにはまるで興味がないように。
最初に出会った時のことを思い出したのか、クララの顔が真っ青に血の気を失っていく。このような危地に追いやられた全ての元凶が彼女なのだ、恐怖するのも当然だろう。
「適当に放置していたわたしも悪いのです、返してくださいとは申しません。この地の毒気で命を落とすまで、もう一度眠っていてもらいましょう。今度はあなた方と一緒に」
どこまでも一方的に宣言してから、ターリアは棺の中から眠りの茨を伸ばし始める。
対話や交渉の余地は最初からない。ここで永遠の眠りに付かされるのが嫌なら、彼女を打倒して道を切り開く他にない。
「おやすみなさい。もしも天国があるのなら、あなたの信じる神に会えるといいですね」
未知なる天上界に至る道を探し出すために、無辜の犠牲を重ね続ける眠りの森の魔女。
かの悪しき魔女から破邪の言葉を秘めし少女の命を守るために、猟兵達は戦いに挑む。
フォルク・リア
「寝てるだけあって寝言の様に一方的だな。
いや、起きても同じかも知れないが。」
クララに
「奴は危険だ。気をしっかり持っていてくれよ。
それとこれから使う術は少しばかり
見た目が良くない。気圧されない様に落ち着いて、ね。」
注意してから不浄なる不死王の軍勢を使用。
敵の攻撃、行動を【見切り】
死霊や魔物を盾に自身とクララを守る。
死霊も魔物も戦う理由は本能と盟約。
記憶が奪われても目前の敵を襲う事に変わりない。
過去の記憶を覚えられたら
例え呪詛を喰らったものを犠牲にしても
死霊と魔物の連携と数の暴力で圧し潰す。
「生命を何とも思わないお前にくれてやるもの等一つもない。
今度は寝惚けた事も言えない様に確り眠らせてやるよ。」
「寝てるだけあって寝言の様に一方的だな。いや、起きても同じかも知れないが」
自分の都合だけを淡々と語りかける眠りの森の魔女に、フォルクはふんと鼻を鳴らす。
相手の目的は分かった。ならばこちらの目的はそれを遂げさせないこと。油断なく敵から目を離さないようにしつつ、彼は後ろにいるクララにそっと注意を呼びかける。
「奴は危険だ。気をしっかり持っていてくれよ。それとこれから使う術は少しばかり見た目が良くない。気圧されない様に落ち着いて、ね」
「は……はいっ」
今にも倒れそうなほど震えていたクララだが、ここまで自分を護ってきてくれた猟兵達への信頼もあってか、こくりと素直に頷く。伝説の帝竜を討ち果たした勇者達は、恐ろしい魔女にもきっと負けないと――その信頼に応えるためにフォルクは大魔術を発動する。
「偉大なる王の降臨である。抗う事なかれ、仇なす事なかれ。生あるものに等しく齎される死と滅びを粛々と享受せよ」
死霊術の秘奥を記せし禁書「エンドオブソウル」を手に、召喚するのは【不浄なる不死王の軍勢】。禍々しい王笏を携えた骸骨姿の不死王を筆頭に、王に率いられし無数の死霊と魔物が現世に出現する。
「ひぇ……!」
「まあ……」
事前に注意されていなければ、クレリックのクララは卒倒していたかもしれない。自分を守るように周囲に立つ魔物の軍勢に、どうにか彼女は意識を保った。そして標的を軍勢に隠されてしまったターリアは、棺に収まったまま困ったような声を上げた。
「これほどの死霊術の使い手と出会うのは稀有なことです。厄介ですね」
棺の中からターリアが【忘却の眠り】を放つと、喚ばれた魔物の一部が動きを止める。
彼女の呪いは死者であろうとも平等に眠りを与え、さらに過去の記憶までをも奪う。こと一対一の戦いにおいては非常に驚異だが、此度フォルクが喚んだのは"軍勢"である。
「死霊も魔物も戦う理由は本能と盟約。記憶が奪われても目前の敵を襲う事に変わりない」
召喚者にして指揮者であるフォルクが眠らされない限り、軍勢全体の統率が崩れることは無い。無論、クララと同様に彼への攻撃も、死霊と魔物による分厚い盾が阻んでいた。
「お前の攻撃や行動はもう見切っている。行け」
魔女を睨みつけながら号令を発すると、不死王の軍勢は怒涛の勢いで進軍を開始する。
強力な忘却の眠りが襲ってきても、彼らは記憶を覚えられたものを犠牲にして、眠ってしまったものを踏み越えながら、一糸乱れぬ連携と数の暴力でターリアに攻め上がった。
「これは……良くありませんね」
単純な実力では不死王にも引けは取らぬであろう眠りの森の魔女は、しかし多勢に有効な攻撃手段に乏しかった。何匹、何十匹眠らせても、すぐにそれを上回る数の魔物の群れが爪牙や魔術を使って彼女に襲い掛かり、不死王は杖から全てを破壊する闇の力を放つ。
ついに仕留め切れなかったその内の一匹が、棺の中のターリアに攻撃を届かせる、裂けたドレスの下から赤い血が滲み、眠るように穏やかだった魔女がかすかに顔をしかめた。
「生命を何とも思わないお前にくれてやるもの等一つもない。今度は寝惚けた事も言えない様に確り眠らせてやるよ」
容赦のないフォルクの宣告の下、物量に物を言わせて圧し潰さんとする不死王の軍勢。
地獄の釜の蓋が開いた――とは、まさにこのような光景を指すのだろう。一向に止まる気配のない死者の群れを前にして、ターリアは已む無く後退を余儀なくされるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
「魔女は本当にやばいっす!でも絶対クララさんは護るっす!」
妖怪煙を最大放出で煙幕に自分とクララを【迷彩】。
さらに【化術】で自身の毛を質量を持った【残像】に変化、多数の猟兵やクララの姿で行動させ魔女を幻惑
こっそり【地形の利用】出来る場所に【結界術】を張る…が、これはクララをそこで守ってると誤認させる【罠使い】。
本物は『収納鏡(フレーバー)』に入れて毒や攻撃から守り、衣更着自身はクララに【化術】で変化し【演技】することで、魔女に【だまし討ち】で『魔剣憑依・神斬りの一閃』
「天国は分からんけど、あんたの行き先は骸の海っす!」
茨も呪詛も迷路も切り裂き、クララを【結界術】で毒から守りつつ逃がす
「魔女は本当にやばいっす! でも絶対クララさんは護るっす!」
敵の強大さを肌で感じながらも、衣更着は迅速に、クララを護るための手段を講じる。
まずはドロロン、と妖怪煙を最大放出し、大量の煙幕による迷彩で自分とクララの姿を隠す。さらに自分の毛をひとふさ抜いてふっと散らすと、それらは味方の猟兵やクララの姿を模した分身――質量を持った残像に化けて、魔女を幻惑すべく散り散りに動きだす。
「これは……わたしも知らない類の魔法ですね……」
いくら世界を侵略する猟書家の魔女でも、東方妖怪の妖術や化術には精通していないだろう。敵が正体の把握に手間取っている内に、綿狸忍者は煙に紛れて戦場を駆けていく。
「この辺りなら良さそうっす」
衣更着はぬかるみの多い沼沢地の地形を利用して、敵の動きを把握しやすい場所に結界を張る。自分のあやかしメダルを術の基軸にして、なるべく迅速に、かつ強固な防備を。
だが彼が結界を張った直後、残像の相手をしていたターリアがくるりとそちらを向く。
「その不自然な力の高まりは見逃しませんよ」
戦闘中もアイマスクを外さない彼女が、どのように世界を"視て"いるのかは定かではないが。結界の妖力を目印に妖怪煙と残像を看破した魔女は【醒めざる夢の茨】を放つ。
「きゃぁっ!?」
ぴしり、と鞭のように茨が結界を叩く音が響き、中にいたクララが悲鳴を上げる。本来は縛り上げたものを眠らせるための茨も、物理的な威力が無いわけではない。魔女の魔力を込めて叩きつけられる連打が、徐々に結界に綻びを生じさせていく。
「固い守りです。ですがわたしの眠りを阻めるほどではありません」
「う、うぅ……っ」
淡々と攻撃を加えるターリアに、怯えたように縮こまるクララ。このままではあと十秒と保たずに結界は破られ、眠りの茨は標的を捕らえるだろう。それは魔女の目的達成を意味する――しかし、勝利を目前にして彼女はふと違和感を覚えた。
(……この結界を張った術者はどちらに?)
もしや結界のクレリックを囮にして不意をつく気ではないかと、ターリアは自らの周囲にも眠りの茨を張り巡らせる。しかし掛かる手応えは全て残像のものばかり。奇妙な煙幕も薄れつつあり、もし近付いてくる敵がいれば見逃すようなことは無いはずだが――。
「……かかったっすね」
警戒を強めながらも攻撃を続ける魔女は、怯えてばかりいたターリアがにやりと笑みを浮かべるのを見た。茨の鞭が結界を破った瞬間、ドロンと煙を上げて姿を表したのは――一振りの魔剣を構えた衣更着だった。
「変身……? 煙と分身に紛れて、入れ替わっていたのですか……!」
相手が奇襲を狙っているというターリアの予測は当たっていた。読み違えたのはその仕込み。結界でクララを守っていると見せかけて、その中にいたのは変化した別人だった。
完全に魔女の虚を突いた衣更着が放つは【魔剣憑依・神斬りの一閃】。悪友から託された試作魔剣『空亡・蒼』の力を借りた斬撃は、空間の隔たりすら超えて全てを切り裂く。
「天国は分からんけど、あんたの行き先は骸の海っす!」
茨も「眠りの呪い」も切り裂いて、放出された妖力の斬撃は過たずターリアを捉える。
一筋の刀傷がその身に刻まれ、一拍遅れて血飛沫が薔薇の花びらのように飛び散った。
「今のうちに逃げるっす!」
「は、はいっ!」
敵に一太刀浴びせた直後、衣更着は懐にしまっていた【収納鏡】の中から本物のクララを取り出すと、毒除けの結界術を施してここから離れるように促す。鏡の中でずっと攻撃や毒から守られていた少女はこくこくと頷くと、恐ろしい魔女から一目散に逃げていく。
「逃げられては困りますね……」
「おおっと、行かせないっすよ!」
傷口を押さえながら茨を伸ばすターリアに、それを切り払って立ちはだかる衣更着。
シャルムーンのクレリックを巡る戦いは、今だどちらも一歩も退かぬ構えであった。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
なるほど、あの茨が主な攻撃手段ですか。
まずはユーベルコードを使う素振りを見せ、クレリックの方より先に狙われる様にして茨を【おびき寄せ】ましょう。
その間に彼女には出来るだけ離れて頂きたいですね。
とは言え私もあれに捕まってしまえばほぼ無力。
ひたすらに【早業】で【カウンター】を仕掛けて茨を【切断】、断片は【気合い】を入れて炎を起こし【焼却】してしまいたい所です。
そのまま少しずつでも敵に近付き【範囲攻撃】の射程内に収めれば攻撃出来ます。
茨を切り払う動きに合わせ、ユーベルコードを発動して敵を茨ごと【なぎ払い】ましょう。
その棺ごと、魂までも火葬させて頂きます。
「なるほど、あの茨が主な攻撃手段ですか」
棺の中から【醒めざる夢の茨】を伸ばすターリアを見て、ハロは敵の手札を理解する。
あの眠りの茨に捕まってしまったが最後、自分達は魔女の呪いによって死ぬまでここで眠らされることになるだろう。特にクララは一度それで群竜大陸まで拐われているのだ。
(まずはクレリックの方から狙いを逸らさなければ)
敵の標的はあくまでクララのようだが、攻撃してくる猟兵達を無視はできないだろう。
ハロはレイピアに自らの精気を食わせ、刀身に炎を纏わせながらユーベルコードの構えを取る。案の定、それを察知した敵は攻撃の矛先を変え、彼女の元に茨を殺到させた。
「邪魔はしないで欲しいのですが」
穏やかな口ぶりとは裏腹に、邪魔者を絡め取らんとする茨の動きに手心はなく。上手く茨をおびき寄せられたものの、引き換えにハロはその脅威と一身に向き合うことになる。
(今のうちに彼女には出来るだけ離れて頂きたいですね。とは言え私もあれに捕まってしまえばほぼ無力)
逃げていくクララの姿を視界の端で捉えつつ、ひたすらにリトルフォックスを振るう。
妖狐の霊力を帯びた刃は襲い掛かる茨を切断し、その断片に至るまで炎が焼き尽くす。
だが魔女の茨は蛇のように執拗で、いくら焼き切っても次々と伸びてくる。一本でも絡まれれば危ういという心理的な負荷が、少女の額につうと汗を流させる。
「その技はこちらの茨にとっては相性が悪いですね」
一方のターリアも眠りの茨を焼き切るハロの剣技には警戒を抱いていた。棺に入ったままふわりと宙に浮かび、一定の距離を保ちながら攻め立てる構えにもそれが現れている。
防戦一方の状態を強いられるハロであったが、彼女の意気と霊力は今だ尽きず。鬼灯のような赤い瞳で討つべき魔女をまっすぐに見据えながら、瞬速の剣技で茨を切り落とす。
(臆しては負けです。あと少し踏み込めれば!)
気合を込めて燃え上がらせた炎は、紅蓮の嵐となって眠りを焼却し。魔女の猛攻に敢然と立ち向かいながら、少しずつ間合いを詰めていく――彼我の距離はまだ数十メートルはあるだろうか。だがそこまで近付くことができれば、彼女にとっては十分だった。
「もう逃げ場はありません、そこは私の間合いです!」
茨を切り払う動きに合わせ、発動するのは【フレイム・スローワー】。精気を注ぎ込んだレイピアから放たれる炎が、斬撃の軌道に合わせて戦場を薙ぎ払う――ハロを中心とした半径93m内にいた標的は、無差別にこの餌食となった。
「その棺ごと、魂までも火葬させて頂きます」
「これは……!」
想定を超えた劫火に巻き込まれたターリアは、マスクで覆われた顔に驚きを浮かべる。
ハロが放った渾身の炎撃は、肉体のみならず魂までも焼き尽くす。伸ばした茨は一瞬で灰燼に帰し、棺もろとも紅蓮に包まれた魔女の心身にも、耐え難いほどの苦痛が走った。
「流石は帝竜を打倒した者達です。油断すれば討たれるのはわたしもですか……」
どうにか炎上の範囲内から脱したターリアは、背中に密かに冷や汗をかきながら呟く。
仕留めるには至らなかったが、手応えはあった。ハロは油断のない眼光で敵の次なる動きを見定めながら、炎纏うレイピアを構えなおすのだった。
成功
🔵🔵🔴
カビパン・カピパン
「なんだ破邪の言葉ね。私も使えますよ。元々は聖者&クレリックで教皇ですから」
私に任せなさいと、ターリア以上に一方的に宣言してからカビパンは破邪の言葉を発動する。
突然だがカビパンは己の作詞作曲の才能に限界を感じていた。
そこで彼女はあの伝説のアーティスト戌MSに作詞作曲を依頼(丸投げ)し、辛い訓練と猛練習を重ね…
永遠にお蔵入りになるかと思われていた、『破邪の言葉』のお披露目を迎えた。クララの顔は違う意味でも真っ青である。
~破邪の言葉~
作詞:戌MS
作曲:戌MS・produce
(アーティスト戌MSによる破邪の言葉に相応しい歌詞が入るよ!)
※クララは合いの手を入れる役
ターリアを色んな意味で打倒した。
「なんだ破邪の言葉ね。私も使えますよ。元々は聖者&クレリックで教皇ですから」
眠りの森の魔女ターリアが求めるものを聞いて、カビパンはこともなげにそう言った。
確かに彼女はサクラミラージュの帝都にて従軍聖職者として軍属し、女神の加護によって様々な奇跡を起こせる元聖者である。とはいえ彼女はシャルムーンの信徒ではないので、クララと同じ破邪の言葉が使えるわけでは無いはずなのだが。
「まあ。それは本当ですか?」
しかし彼女をよく知らないターリアは、それが真実なのかブラフなのか考えてしまう。確かにどことなく聖なる加護っぽいものは感じられなくもない気がするし、彼女の表情はやけに自信に満ちて妙な存在感がある。これを初見でハッタリと見抜くのは難しかろう。
「まあ私に任せなさい」
と、相手が迷っている間に一方的に宣言してから、カビパンはマイク代わりの聖杖を構える。その有無を言わせなさはターリア以上だが、果たして何を口にするつもりなのか。
(死の間際に放つ破邪の言葉をここで? 己を犠牲にしてわたしを倒すつもりですか?)
一切迷いのない様子に危機感を感じたターリアは、とっさに【忘却の眠り】を放った。
無防備だったカビパンは一時的に記憶を奪われ、その場に立ち尽くす。果たして彼女は「破邪の言葉」で何をするつもりか、それを知るために魔女は彼女の記憶を求める――。
――そう、それは今からさほど遠くはない過去。
突然だがカビパンは己の作詞作曲の才能に限界を感じていた。今まで音楽活動に関わる全てを一人でこなしてきた彼女だが、一人では超えられない「壁」を実感していたのだ。
そこで彼女は目をつけたとある伝説のアーティストに作詞作曲を依頼して、自分は歌唱力のレベルアップに専念することにした。なお彼女の丸投げを受けた某氏は「私伝説でもアーティストでもないんですけど?」と供述していたとの噂もあるが真偽は不明である。
ともかく、カビパンは頑張った。
送られてきた曲と歌詞を元に、辛い訓練と猛練習を重ね。それはもう、ここでは文字数が足りないくらいのいろんな事をやって――しかし披露する機会がなくて永遠にお蔵入りになるかと思われていた「破邪の言葉」は今、ついにここでお披露目の時を迎えたのだ。
「…………なんですかこれは」
そんなカビパンの過去を視てしまったターリアは、恐怖のあまりぶるりと身震いする。
こんなものを覚えているのは耐えられないと、思わず記憶を手放してしまい――はっと意識が戻ったカビパンは、何事もなかったかのように聖杖マイクを構え直す。
「それでは聞いてください。~破邪の言葉~」
かくして始まる【カビパンリサイタル】。辛い訓練を耐えぬいて磨きをかけたそれは、確かに大幅にレベルアップを果たしていた。良い方向でなく、とんでもなく悪い方向に。
「オン! ウンタラカンタラ~↑ ナントカカントカ~↓ ハジャハジャ・ソワカ↑↓」
絶望的にあまりにも酷い音痴っぷりと、頭にこびりついて離れない曲。絶妙に外れた音程やメロディが聴衆の不快感をMAXに引き上げ、精神をガリガリと音を立てて削り落とす。
それは真言をベースにした歌詞だろうか? なんだかよく分からないがなぜそもそも仏教。きっと時間がなくって適当に破邪っぽい言葉を使ってみたに違いない――。
成功
🔵🔵🔴
「や、やめてください――!」
ターリアの懇願も届かずに、カビパンは夢中になって「破邪の言葉」を熱唱しまくる。
その後ろではクレリックのクララが死んだ目で「はい、はい」と合いの手を入れている。練習にでも付き合わされてしまったのだろうか、その顔は違う意味でも真っ青である。
「ハジャジャジャジャジャ~♪」
生々流転沼に蔓延するどんな毒よりもひどい地獄めいたメロディが、戦場に響き渡る。
あまりの苦痛に耐えかねて、色んな意味で心が折れそうになったターリアは、パタンと棺の蓋を閉じてカビパンから逃げていった――。
(スケジュール調整が間に合わず、断章という形での補完になってしまいました。カビパン様には大変申し訳なく思っております by伝説のアーティスト戌MS)
ネージュ・ローラン
元々怒っていたところにターリアと相対してその言葉を聞いたことで更に憤っています。
疲労なんて知りません絶対に倒します。
クララさんへ攻撃が向かわないように、ヴェールを翻したりと全体的に大袈裟な動きで相手の注意を引こうとしながら戦います。
自然の薔薇と同じかどうかわかりませんが、冷気よりも熱の方が効きそうなので【精霊獣召喚の舞】で炎の妖狐を召喚しましょう。
騎乗したらこちらへ向かってくる茨の軌道を見切り妖狐へと指示を出していきます。
そうして回避をしながら隙を見て尾から炎弾を飛ばして攻撃していきましょう。
妖狐さんの背中、ぽかぽかして眠く……
い、いえ、術に呑まれていけません!
「人の生命を物のように……」
瞳に毅然とした怒りを宿し、涼しげな姿に燃えるような激情を漲らせるのはネージュ。
元々怒っていたところにターリアと相対してその言葉を聞いたことで、彼女は更に憤っていた。ここまでのクララの護衛や治療で蓄積した疲れも、もはや気にならないほどに。
(疲労なんて知りません絶対に倒します)
猟兵にして優れた舞手でもある彼女は、ヴェールを翻すと今の心境を現すような大袈裟な動きで敵に躍り掛かる。まさに烈火の如しと表現するに相応しいその戦舞は、苛烈ながらも美しく――眠りの森の魔女も、その姿に注意を引かれずにはいられない。
「ずいぶん怒らせてしまったようですね。何が気に障ったのでしょうか」
棺の中でかくりと首を傾げながら【醒めざる夢の茨】を放つターリア。触れたものに眠りをもたらし、捕らえればユーベルコードさえも封じる茨の群れがネージュに殺到する。
敵の攻撃をクララからこちらに向けさせることはできた。ネージュは心は熱くしながらも思考は冷静に、炎を纏う剣で茨を切り払っていた味方がいたのを思い出す。
(自然の薔薇と同じかどうかわかりませんが、冷気よりも熱の方が効きそうです)
そう判断した彼女は【精霊獣召喚の舞】を踊り、炎の精霊力が具現化した妖狐を喚ぶ。
炎の妖狐はネージュを背に乗せると嘶くような声を上げ、火の粉を散らし駆け出した。
「妖狐さん、よろしく頼みます」
ネージュは妖狐の背に跨りながら向かってくる茨の軌道を見切り、回避の指示を出す。
妖狐はそれに応じて茨を躱しながら、獣らしい俊敏な身のこなしで戦場を疾走する。そして茨の起点たる魔女を射程に収めると、尾から炎の弾丸を飛ばした。
「精霊使い……それも炎ですか。実体化させて使役できるとは相当な力量ですね」
眠りの茨を束ね合わせ、盾にして炎弾を受け止めるターリア。しかし怒れるネージュの感情も込めた精霊力の炎は呪いさえも焼き焦がし、炸裂した火の粉が魔女の肌を炙った。
しかし、何十本か焼かれようとも魔女の力は尽きず。お返しとばかりに新たな茨を棺の中から伸ばし、妖狐もろともネージュを捕らえようと、更に苛烈な反撃が襲ってくる。
「囲まれないように気をつけましょう。逃げ場がなくなればお終いです」
蛇の群れのように執拗な茨に捕まらないよう、ネージュと妖狐はジグザグな動きで敵を翻弄しつつ隙を探す。契約によって結ばれた彼女達はまさに一心同体であり、容赦のない攻撃に晒されていながらも、ネージュはどこか安心感を抱いていた。
「妖狐さんの背中、ぽかぽかして眠く……い、いえ、術に呑まれていけません!」
気の緩みからつい眠りの呪いに掛かりかけもするが、気を抜くなというように妖狐の尻尾がぽふんと頭をはたく。表情を引き締めたネージュはしっかり前を見直すと、迫ってくる茨との距離を測ってタイミングを見計らう。
「……今です! 跳んで!」
眠りの茨が妖狐の足に絡みつく寸前、ネージュが叫ぶ。たんっ、と勢いよく地を蹴った炎の妖狐は騎手と共に空へと舞い上がり、茨を避けると同時にターリアを射線に捉える。
驚きながら空を見上げるターリアと、睨みつけるネージュ。この間隙こそが最大の好機――魔女が茨の盾を展開するよりも早く、再び放たれた炎弾は今度こそ標的に直撃した。
「ッ………!!!!」
燃え盛る精霊の炎は容易には消えず、紅蓮に包まれたターリアは苦しげに身悶えしながら声にならない悲鳴を上げる。ネージュの怒りは、確かに眠りの森の魔女に届いたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
彼女は殺させない…その目論見、ここで終わらせる…!
【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印解放…。
クララに結界【呪詛、結界術】を施して防御…。
敵の忘却の呪詛を【ソウル・リベリオン】で喰らって力に変えたり、逆に強化したアンサラーで反射【呪詛、カウンター、オーラ防御、武器受け】して反撃…。
敵の茨や森を無限の魔剣で切り払い、【呪詛】を送り込んで弱体化させたり枯れさせて弱らせつつ、魔剣の斉射を続けて敵を棺に縫い止める様に串刺しにし、最後は【呪詛】を纏った強化バルムンクによる一刀で棺も蔵書も纏めて斜めに両断するよ…。
命は貴女の道具じゃない…!
他者の命を弄び、平和になった世界を脅かした罪…その身で贖え、猟書家…!
「どうあっても邪魔をするのですね……わたしは彼女さえ死ねばそれで良いのですが」
「彼女は殺させない……その目論見、ここで終わらせる……!」
封じられた天上界に至る道を探す、眠りの森の魔女ターリア。そのために無辜の生命を犠牲にする彼女のやり方に怒りを覚えながら、璃奈は真っ向より敵の前に立ちはだかる。
その背後にかばうのは怯えるクレリックの少女、クララ。万が一にも手出しはさせまいと、その周囲には呪詛による結界を施して、毒素や眠りの呪いから保護している。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
防御に万全を期したうえで、魔剣の巫女は【九尾化・魔剣の巫女媛】の力を解き放つ。
九つに分かれた尾がゆらりと揺れ、溢れ出した莫大な呪力が全身を包む。それに呼応するように、彼女が帯びた魔剣と妖刀達はカタカタと武者震いのように鍔を鳴らした。
「呪われし力を強い意志で制御している……なら記憶と共にその意志を奪いましょう」
魔剣の巫女媛の力を見てとったターリアは記憶を一時的に奪う【忘却の眠り】を放つ。
剣を取り戦う理由を、ここに至る過去を奪われてしまえば人は戦えない。しかし璃奈は抜き放った魔剣【ソウル・リベリオン】を振るい、眠りの呪いを斬り祓う。
「呪詛喰らいの魔剣よ……悪しき魔女の呪いを喰らえ……」
かの魔剣はあらゆる呪詛や怨念を喰らい力とし、呪いに囚われた者を救うための魔剣。
魔女のユーベルコードさえもその力の前では例外はなく、記憶を奪うはずの呪詛は逆に璃奈の力となり。さらに彼女はその力を報復の魔剣「アンサラー」の強化に充てると、己に向けられた呪いを相手に跳ね返した。
「っ……厄介な魔剣を何本もお持ちのようですね」
鏡写しのように反射された呪いを受け、微かに表情を歪めるターリア。眠りを操る彼女は眠らされても魔法を唱えることができるが、さりとて自らの呪いを受けたい訳がない。
呪いが効かないのなら直接拘束するまでだと、攻撃手段を夢の茨に切り替えて放つが、対する璃奈も呪力により顕現させた魔剣で応戦する。
「呪力を操るのはわたしも得意だよ……」
無限に顕現する魔剣で茨を切り払いながら、璃奈はその蔦を介して自らの呪詛を敵本体に送り込む。ぐずぐずと腐れて枯れ果てていく茨から、棺の中にまで流れこんできた呪いに、ターリアはまたも不快げに顔をしかめ――そこに生じた隙を彼女は見逃さなかった。
「呪われし剣達……わたしに、力を……!」
茨の攻勢が弱まった機を突き、逆襲を仕掛ける無限の魔剣。一斉射された刃の嵐は弱体化した眠りの森の魔女に殺到し、突き刺さり、棺の底に縫い止めるように串刺しにする。
「ぐっ……やって、くれますね……!」
両肩と両脚を魔剣に射抜かれたターリアは、なおも眠りの呪いを放つが、それらは全てソウル・リベリオンの糧にしかならない。彼女の魔法と呪詛喰らいの魔剣の相性は最悪と言ってよく、茨を刈られた魔女にもはや有効な対抗策は残っていなかった。
「命は貴女の道具じゃない……!」
敵を棺に縫い付けた璃奈は、呪詛喰らいの魔剣に代わって竜殺しの魔剣「バルムンク」を構える。比類なき切れ味を誇るその刀身には呪詛を、巫女媛の力による強化を、そして罪なき生命を利用する侵略者への怒りを込めて、裂帛の気魄と共に踏み込んだ。
「他者の命を弄び、平和になった世界を脅かした罪……その身で贖え、猟書家……!」
放つは霹靂の如き渾身の一刀。ターリアは咄嗟に眠りの茨で繭のように棺を何重にも包み込むが――その程度の守りで防ぎ止められるほど、魔剣の巫女媛の全力は甘くはない。
「―――――ッ!!!!!」
限界まで強化された竜殺しの魔剣は、棺も、蔵書も、魔女と纏めて斜めに斬り伏せる。
辛うじて即死こそは免れたものの、その身に受けた傷は深く――悲鳴と共にほとばしる鮮血がドレスを赤く染めていく。まるで、彼女自身の葬送に供される薔薇の花のように。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(睡眠欲求=休止指令を自己●ハッキングで電子防壁構築し却下し続け)
森で迷わせ眠らせた末に毒で…というのが彼女の狙いですか
クララ様、ロシ…ゴーレムへお乗りください
外気を避けこの森を抜けましょう
操縦席へ数台の妖精ロボ送り込み
精密動作と機体●ハッキングでロシナンテⅣ●(あまり揺れぬ様)操縦
キャバリア格納銃器とサブアームライフル乱射
機体と自身の怪力と踏みつけ
妖精のレーザーで森破壊しつつ●情報収集
魔女捜索
…このような戦法、騎士として甚だ不本意なのです
『開けた土地で』『救助対象に過酷な環境』での最適解をこれしか持たぬ私をお恨み下さい
ああ、クララ様
そこのボタンを押すとゴーレムが弾を撃ちますのでどうぞご随意に
「このままでは埒が明きませんね……」
猟兵達の激しい反撃を受けた眠りの森の魔女が、仕方がありませんと魔力を解放する。
すると彼女を中心として戦場の風景が変わっていく。毒々しい沼沢地から、鬱蒼とした森林に。迷い込んだ者を覚めることない眠りへと誘う、緑の迷宮に。
「ようこそ眠りの森へ」
戦場全体を己の領域へと変化させる、自らの異名を冠したターリアのユーベルコード。
対峙する猟兵達とクレリックのクララに、最大規模の「眠りの呪い」が襲い掛かる。
「森で迷わせ眠らせた末に毒で……というのが彼女の狙いですか」
トリテレイアは湧き上がる睡眠欲求――電子頭脳への休止指令に自己へのハッキングで割り込み、外部からの不正アクセスを防ぐ電子防壁を構築して睡魔なる指令を却下する。
機械すら眠らせる呪いの森、その狙いが猟兵とクララの無力化にあるのは明白だった。
「クララ様、ロシ……ゴーレムへお乗りください。外気を避けこの森を抜けましょう」
「は、はいっ。わかりましたっ」
促されるまま騎士のゴーレム――ロシナンテⅣのコックピットに再び乗り込むクララ。
毒は防げても呪いまで遮断できるかは分からないが、少なくとも野晒しにしておくよりはマシだろう。同時にトリテレイアは肩部の格納スペースから数台の【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード】を操縦席に送り込み、キャバリアの操縦を担当させる。
「こちらの妖精さんは……?」
「心強い味方というわけです。……動かしているのは私なのですが」
トリテレイアの指揮下にある妖精ロボ達は搭載されたハッキング能力を駆使してキャバリアを精密操作し、クララの身体になるべく負担をかけず揺れの少ない機動を実現する。
ズシン、と音を立てて5mの巨体が森を闊歩し、格納されていた銃器とサブアームのライフルが火を噴く。けたたましい銃声と共に木々がなぎ倒され、迷宮の壁が破壊された。
「残った者は周辺の偵察と露払いを」
操縦担当以外の妖精達はひらひらと森の中を飛び回りながらレーザーを乱れ撃ち、全機の操作を担うトリテレイアも持ち前の怪力で障害物を踏み越えて、道を切り開いてゆく。
傍目から見ればただの森林破壊だが、彼の持てる手札の中でこれが眠りの森を突破する最適な手段なのは間違いなかった。眠りの呪いをハッキングで拒み続けながら、その発生源たる森そのものを破壊しつつ、どこかに潜んでいるはずの魔女をあぶり出しにかかる。
「ずいぶん乱暴な方ですね……」
「……このような戦法、騎士として甚だ不本意なのです」
これ以上森が破壊されるのを嫌ってか、眉をひそめながら姿を現したターリアに、トリテレイアも気乗りしていない様子で返す。目的達成が最優先とはいえ、騎士の戦法からはほど遠い力任せの破壊行為が、彼にとっても面白いはずはなく。
「『開けた土地で』『救助対象に過酷な環境』での最適解をこれしか持たぬ私をお恨み下さい」
「ほんとうに困った人たちですね。手段を選ばないのはお互い様ですけど」
ターリアはため息を吐きながらキャバリアに茨を伸ばし、中にいるクララを引きずり出そうとする。そうはさせじと立ちはだかるトリテレイアは、コックピットに向けて一言。
「ああ、クララ様。そこのボタンを押すとゴーレムが弾を撃ちますのでどうぞご随意に」
「え? こ、これですか?」
ぽちり。とクララがボタンを押してみると、ロシナンテⅣの全火器が展開、正面の目標に向けて一斉射撃を開始する。ここまで眠りの森を破壊してきた巨人機の大火力、それを一身に受ければ魔女とて無傷ではいられず。
「……これはいけませんね」
砲火の雨に晒されたターリアは火傷と手傷を負い、一時撤退に追い込まれるのだった。
成功
🔵🔵🔴
斬断・彩萌
困っています、はコッチの台詞
アンタ達猟書家だの幹部サマだののお陰で、私たちはいい迷惑してるんだからね
悪いけど……いや悪くも無いか
アンタには此処で沈んで貰うわ
まぁまずはなくともクララの安全が最優先
この場合は近くに居てもらった方が良いかしら?
クロちゃん、クララの事は頼んだわよ
二挺拳銃に精神力を込めた弾丸を装填
相手をこちらに近寄らせないようにしながら迷路探索
大体……その前にアンタを潰せば良いワケでしょ?
まずは二挺拳銃による技で敵を攻撃
そのあとは急接近し咄嗟の一撃が出せるように小さくして携えておいたOracleで一気に貫く!
全く、この状況で眠れるもんですか
クララの安全には常に気を配る
「困っています、はコッチの台詞。アンタ達猟書家だの幹部サマだののお陰で、私たちはいい迷惑してるんだからね」
眠りの森に身を潜ませた魔女に向かって、厭気の籠もった言葉を投げかけるのは彩萌。
平和になった世界に侵略を仕掛けておいて、何を迷惑そうな顔をしているのか。勝手な理由で再び世界を危機に陥れ、人々を苦しめる輩の事情など考慮してやるつもりはない。
「悪いけど……いや悪くも無いか。アンタには此処で沈んで貰うわ」
どうせ姿は見えずともこちらの事は把握しているだろう。少女は二丁拳銃を構え、呪いに満ちた眠りの森の魔女に宣言する。もうこれ以上アンタ達の思惑通りにはさせないと。
(まぁまずはなくともクララの安全が最優先。この場合は近くに居てもらった方が良いかしら?)
毒々しい沼地から鬱蒼とした森に変化した戦場を見回して、彩萌はクララの側に寄る。
この緑の迷宮の中では、あまり離れすぎてはぐれてしまう方が危険だろう。死なせたい標的が護衛から孤立した瞬間を見逃すような敵では無いはずだ。
「クロちゃん、クララの事は頼んだわよ」
夢魔の「クロちゃん」は病をばらまく妖精との戦いに引き続いてクララの護衛を担当。
彩萌は二丁拳銃に精神力を込めた弾丸を装填し、短刀程度まで小さくした"Oracle"を懐中に携えておくと、気を引き締めて探索を開始する。
『わたしの森はすべての存在に眠りをもたらします。抵抗は無意味ですよ』
「やってみなきゃ分からないでしょ。出口のない迷路なんて無いんだから」
木霊する魔女の言葉に言い返しながら、森の迷路を進む彩萌。相手がこちらに近寄れないように警戒は怠らず、また常にクララの安全に気を配るためにも神経を尖らせている。
(全く、この状況で眠れるもんですか)
森に満ちる眠りの呪いも彼女の集中力を切らすことはできない。クララのほうはウトウトし始めているが、夢魔である「クロちゃん」が呪いを防ぐことで眠らずに済んでいる。
この戦いは時間との勝負。睡魔に負けて森の中で意識を失えば、あとは生々流転沼の毒が彼女達を死の眠りに誘うだろう。敵の作り上げた領域に囚われた時点で不利は確定的――だが彩萌は問題ないとばかりに銃を構える。
「大体……その前にアンタを潰せば良いワケでしょ?」
銃声と共に意志の弾丸が放たれ、木々に紛れていた薔薇の茨を射抜く。死角からクララを捕えようとしていたそれは、奇襲がバレるとしゅるしゅると森の奥に引っ込んでいく。
逃がすものかと追いかける彩萌。その終端には果たして、眠りの森の主たるターリアが、棺の中に茨を回収しながら悔しそうな表情を浮かべていた。
「あと少しだったのですが」
「お生憎様。あの子はやらせないわよ!」
無限の精神力を弾丸に変えて二丁拳銃のトリガーを引く。森の静寂を銃声が引き裂き、【サイコキネシス】により軌道の変化する銃弾の雨が魔女に降りかかる。ターリアは咄嗟に茨を盾にして身を護るが、その隙に彩萌は眼を見張る素早さで敵に急接近していた。
「天を斬り、空を断つ。アンタをアヤメる者の名よ」
名乗りと共に懐中より抜き放つは"Oracle"。予めこれを仕込んでおいたのは、まさにこの状況で咄嗟の一撃を出せるようにするため――刃渡りは縮めども切れ味に衰えなし。
「ッ……!!!」
身を翻す間もなく、突き放たれた精神力の刃はターリアの胸元に深々と突き刺さった。
鮮血と共に漏れる苦痛の呻き。魔女の力が乱れるにつれて、森の呪いが弱まっていく。
大成功
🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
どうかご安心くださいクララさん。悪しき魔女を討つは騎士の役目。御身は私がお護りいたします。
眠りの森の名の通りならば恐らく迷路内で彷徨う者を眠らせる効果があるはず。【環境耐性】や【呪詛耐性】で抗えればよいのですが。
クララさんは安心してお休みください。目が覚めれば全て解決していますよ。
私がクララさんの傍にいる限り魔女ターリアに手出しはさせません。故に私を排除しに魔女自らが迷路内に現れるはず。そこをUC【闇の解放】を発動して返り討ちにします。
クララが眠っていて幸いだった。この恐ろしい姿を見られずに済むからな。
他者の力を借りねば何もできぬ無能者め。我が暗黒剣にて、身に余る野望と共に露と消えるがいい。
「ぅ……また、眠気が……」
眠りの森で猟兵と魔女の戦いが繰り広げられる中、クララの睡魔は限界に迫っていた。
だめだと分かっているのに瞼が重い。押し寄せる眠気に意識を持っていかれそうになる。あの魔女の手によって群竜大陸に連れ去られた時も、そう言えばこんな感覚だった。
「どうかご安心くださいクララさん。悪しき魔女を討つは騎士の役目。御身は私がお護りいたします」
今にも眠ってしまいそうな様子のクララに、優しく声をかけたのはセシリアだった。
同じ眠りの呪いを受けていても彼女の意識は鮮明で、その瞳には一点の曇りもない。
(眠りの森の名の通りならば、恐らく迷路内で彷徨う者を眠らせる効果があるはず)
魔女ターリアが戦場に作り上げた「眠りの森」は、まさにセシリアの想定通りだった。
だが数多の邪悪との戦いを経験した彼女の心身には、過酷な環境への適応力と呪詛への耐性が備わっている。これしきの眠気に抗えないような軟弱な精神はしていない。
「クララさんは安心してお休みください。目が覚めれば全て解決していますよ」
「は……い……」
穏やかだが力強いセシリアの眼差しに見守られて、クララは安心したように意識を手放す。緩やかな寝息を立てて弛緩するその身体をそっと横たえて、暗黒騎士は剣を取った。
「私がクララさんの傍にいる限り、魔女ターリアに手出しはさせません」
全身に暗黒の波動を纏い、一分の隙もなく暗黒剣ダークスレイヤーを構えるセシリア。
周囲で動くものに油断なく目を光らせたその姿は、まさしく姫君を護る騎士であった。
彼女が護衛を解かない限りはどのような害毒もクララには届かないだろう。毒素を治療できる【暗黒の冥護】もある。眠りの森で徐々に標的を追い詰め、死の眠りへと誘わんとするターリアの目論みは、これで根本から成り立たなくなった。
「……あなたのような騎士と正面から戦いたくはありませんが、仕方ありませんね」
クララを殺めるためには騎士を排除しなくてはならない。そう理解せざるを得なくなった魔女は、物憂げな表情で自らセシリアの前に姿を現す。まさしく彼女の望んだ通りに。
「暗黒よ……この命を捧げよう。私に全てを護る力を!」
眠りの森の魔女が現れた瞬間、セシリアは鎧の封印を解いて【闇の解放】を発動する。
暗黒騎士が纏う呪われし鎧に秘められた、真なる暗黒の力。それは生命の代償と引き換えに彼女を闇の化身へと変貌させ、絶大なる力を与える。
「クララが眠っていて幸いだった。この恐ろしい姿を見られずに済むからな」
肉体ばかりか精神さえも暗黒の侵蝕を受けたことで、普段の清廉とした振る舞いは傲岸で荒々しいものへと変わり。より禍々しい形状に変形した漆黒の鎧に身を包むその姿は、騎士と言うよりも魔人――あるいは悪魔そのものであった。
「それがあなたの真の姿ですか。魔女よりもよほど恐ろしいですね」
そんな皮肉を口にしながらも、ターリアは頬に冷や汗を流しながらゆらりと後退する。
呪いや魔法を扱う彼女だからこそ分かる、今のセシリアの解き放った力の大きさが。ただひとつの誓いのために自らの生命と精神を代償とし、引き換えに得た暗黒の強大さが。
「……ですが、その力は長く維持できないはず。ここは一度退いて……」
ユーベルコードの使用限界を見定めた魔女は、再び森に潜んで時間を稼ごうと考える。
だが、一度のこのこと姿を見せた敵を、闇の化身となったセシリアが逃すはずもない。
「他者の力を借りねば何もできぬ無能者め。我が暗黒剣にて、身に余る野望と共に露と消えるがいい」
覇者のごとき威圧感をもって、セシリアがダークスレイヤーを振り上げる。燃え盛る漆黒の炎のような莫大な暗黒を纏った刀身は、平時よりも遥かに禍々しく大きく見えた。
そこには一切の容赦も慈悲もなく。渾身の力を込めて振り下ろされた斬撃は、敵が咄嗟に講じたあらゆる守りを討ち破り、収める棺もろともにその身を斬り伏せる。
「あ、ぐぅ………っ!!!!!」
凄まじき暗黒の力を受けたダーリアが悲鳴を上げ、眠りの森が幻のように消えていく。
真なる闇の化身の前では、魔女の力でさえも、蹂躙される儚きものに過ぎなかった。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン…眠りの森の魔女、ね
月並みなセリフだが言わせてもらおうか…此処で永遠に眠るのはお前の方だ、とな
デゼス・ポアとシルコン・シジョン、そしてオーヴァル・レイを駆使し、こちらを狙う眠りの茨に触れないように武器で破壊して、敵にも攻撃を行う
茨には触れないように注意をしよう
さて…そろそろお前に「おやすみ」を言う時間だな
沼の毒が回る前にUCを発動
強力な念動力で周囲の毒気を操作して防ぎ、眠りの茨を触れずに圧壊
そのまま敵本体に念動力の一撃と、武器による追い討ちを叩き込む
お前達の目的が何であれ、平和になったこの世界を掻き回すのなら容赦はしない
骸の海で永遠に微睡んでいるがいい…Bonne nuit
「フン……眠りの森の魔女、ね」
破邪の言葉の担い手であるクララをその力で眠りに誘わんとする敵を、キリカは冷たい視線で一瞥する。そうまでして封印を解きたい天上界とはいかなる地なのか、今のところは知る由もないが、猟書家をそこに到達させてはいけない事だけははっきりとしている。
「月並みなセリフだが言わせてもらおうか……此処で永遠に眠るのはお前の方だ、とな」
「それはどうでしょうか。まだ諦めるつもりはありませんよ」
戦いの中で深手を負ったターリアだが、魔力には今だ衰えはない。邪魔をするのであれば先ずはあなたから――と棺の中から【醒めざる夢の茨】を伸ばして襲いかかって来る。
「踊れ、デゼス・ポア」
キリカは宙に浮かぶ人形に迎撃を指示しつつ、自らもシルコン・シジョンの銃撃で茨を撃ち落とす。その傍らに随伴する卵型の浮遊砲台「オーヴァル・レイ」も、彼女の死角を補うように強力な粒子ビーム線を放つ。
(茨には触れないように注意をしよう)
魔女の呪いが籠もった茨は、絡まれれば身体だけでなくユーベルコードまでも封じられる。捕まらないよう隙を見せずに三体で迎え撃ちながら、魔女本人にも銃撃を仕掛ける。
聖なる箴言にて強化された弾丸は、悪しき魔女にも有効なはず。ターリアは束ねた茨を盾にして防御するが、それを貫通した一発が彼女の頬を掠めた。
「この世界には存在しない兵器……思っていたより厄介ですね」
戦場傭兵が操る銃火器の威力を再認識したターリアは、警戒を強めるとやや後退気味に茨での攻撃を続ける。ここは生々流転沼、手ずから仕留め切れずとも時間を稼げばじきに毒は回り、戦況はこちらの優位に傾くと分かっているのだ。
「さて……そろそろお前に『おやすみ』を言う時間だな」
キリカもそれが分かっているからこそ、悠長に時間をかけるつもりはない。沼の毒が回りきる前に【デュランダル】を起動、装着したバトスルーツ「ヴェートマ・ノクテルト」に掛けられた全リミッターを解除すると、持てる全力を発揮しての反撃に打って出た。
「コード【épique:La Chanson de Roland】承認。リミッター全解除……起動しろ! 【デュランダル】!」
通常時はキリカの身体能力をアシストし、ストレスや疲労の蓄積を抑えて長時間の戦闘行動を可能とする「ヴェートマ・ノクテルト」。しかしその機能を装着者への負担を考慮せずにフル稼働させた場合、闇夜の衣服は使い手の限界を突破させる増幅器へと変わる。
「何を……っ?!」
キリカを中心として爆風のように吹き荒れたのは、増幅された念動力の衝撃波。それは周囲に蔓延する毒気を吹き飛ばし、迫りくる眠りの茨を触れることなく圧潰させていく。
その波動は驚くターリアの元にも達し、不可視の一撃が浮遊する棺ごと彼女の体勢を崩す。その隙を突いてキリカは短刀「ナガクニ」を抜き放ち、疾風のごとく戦場を駆けた。
「お前達の目的が何であれ、平和になったこの世界を掻き回すのなら容赦はしない」
補助の域を超えて駆動する人工筋肉による超高速移動。その反動による苦痛に耐えながらキリカは告げる。この世界の平和は帝竜との戦いの果てに掴み取ったもの――猟書家がいかに強大な力を持とうとも、遅れを取るつもりも、何かを譲ってやるつもりもない。
「骸の海で永遠に微睡んでいるがいい……Bonne nuit」
フランス語で「おやすみ」を告げると共に、加速された短刀の一閃が魔女を切り裂く。
骨をも断つ斬撃を受けたターリアは「くぅ……っ」とうめき声を上げ、意趣返しの言葉に顔をしかめながら棺を自らの血で染めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
コーディリア・アレキサンダ
ボクも困っているんだよ
折角帝竜戦役が終わって、少しは落ち着けるかと思っていたらこんなことになってしまって
どうすればいいだろうね? お互い平行線だ
キミが考えを改めてくれないのなら――ボクも、自分の欲望に忠実になろうと思うよ
“あくま”で魔女らしく、ね
現れろ、我が怒り。炎と共に
《九王顕現・剣の王》
ボクは、何かを成し遂げるため――なんて言い訳で自分以外の誰かを使おうなんて思っているものが一番嫌いなんだ
……まあ、わかりやすく言えば、割と怒っているよ。本気で
ありがとう。神様には一度会って見たかったんだ
でも、ボクの“神様”は彼ら――いや“ボクら”だから。残念だったね。もう会っているよ
鳴宮・匡
◆店長(コーディリア/f00037)と
そっちの詰めの甘さを棚に上げて「困ってます」なんて言われてもな
第一、この世界をどうにかされちゃこっちも困るんだ
止めさせてもらうぜ
知覚と意識を全て周囲環境と敵へ集中
伸びる茨、差し向けられる呪詛を“視て”感知し
それを全て撃ち落とすよ
この両眼が捉えるのは、あらゆるものの「死」だ
目に視えない「力」そのものだろうが例外じゃない
【抑止の楔】からは逃れられないよ
時間を作るのは少しでいい、……だろ、店長
巻き込まれないように下がっておくぜ
――お怒りはごもっとも
他人をモノみたいに扱うやり口は、俺も気に食わない
攻守交代ってやつだな
守りはこっちに任せて、思いきりやってくれ
「……あくまで彼女を死なせないつもりですか。ほんとうに困りましたね」
猟兵達から想像以上の反撃にあい、深手を負ったターリアはふうと物憂げに息を吐く。
振る舞いこそ当初から変わらないが、蓄積したダメージと疲労は隠しきれていない。たった1人の少女を守るためにこれほどの猟兵が集まったのは彼女も予想外だったようだ。
「そっちの詰めの甘さを棚に上げて『困ってます』なんて言われてもな。第一、この世界をどうにかされちゃこっちも困るんだ。止めさせてもらうぜ」
「ボクも困っているんだよ。折角帝竜戦役が終わって、少しは落ち着けるかと思っていたらこんなことになってしまって」
そんな魔女の言い分に言い返しながら銃と杖を向けるのは、匡とコーディリアだった。
猟書家達の勝手な侵略で迷惑を被っているのは猟兵達も同じこと。帝竜との激闘の末に掴み取った平和をここでひっくり返されてしまっては、困るどころの話ではない。
「あなた方が退いてくれれば、これ以上争う必要もないのですが」
「どうすればいいだろうね? お互い平行線だ」
猟兵と猟書家、どちらにも譲れぬ理由があり、妥協点は存在しない。あくまでターリアはクララの「破邪の言葉」をここで発動させ、帝竜が施した封印を解くつもりのようだ。
「キミが考えを改めてくれないのなら――ボクも、自分の欲望に忠実になろうと思うよ。"あくま"で魔女らしく、ね」
その身に幾多の悪魔を封じた双星の魔女は、眠りの森の魔女に改めて宣戦を布告する。
平時は固く封じられた力の拘束が緩められ、その身から凄まじい量の魔力が溢れ出す。
「ボクは、何かを成し遂げるため――なんて言い訳で自分以外の誰かを使おうなんて思っているものが一番嫌いなんだ」
普段はぼんやりとした様子で、いつもマイペースな、悪く言えば怠惰なコーディリア。
それが今、ぞっとするような冷ややかな視線で敵を睨み、紅い瞳に激情を宿している。
「……まあ、わかりやすく言えば、割と怒っているよ。本気で」
「――お怒りはごもっとも。他人をモノみたいに扱うやり口は、俺も気に食わない」
少女の怒りに応えて匡が一歩前に出る。これから彼女がする事を分かっているように。
[Resonance]の残弾はまだ十分。少しの間、敵の攻め手を抑えるくらいは余裕だろう。
「攻守交代ってやつだな。守りはこっちに任せて、思いきりやってくれ」
「ありがとう」
ふっと匡に微笑みかけてから、コーディリアは術の詠唱に専念する。右手に杖を、左手に魔書「小さな鍵」を携えて、己が身に封じられた悪魔の権能を引き出すための詠唱を。
「拘束制御術式展開、目標の完全制圧まで能力行使を許可……」
「――いけませんね」
系統は異なれども同じ魔女として脅威を感じ取ったか、ターリアが【醒めざる夢の茨】と【忘却の呪い】を放つ。ユーベルコードを封じる眠りの茨と記憶を一時的に奪う呪詛、どちらかでも当たれば魔法の行使を中断させられると踏んで。
「動かないでくれると楽なんだけどな」
だが。眠りの魔女が差し向けた呪詛と茨は、匡の放った銃弾によって撃ち落とされた。
蛇のように自在に動く茨も、実体を持たない呪いも、容易には捉えられないはず。だが今の彼は知覚と意識を全て周囲の環境と敵へと集中させ、視えざるものを"視て"いた。
「この両眼が捉えるのは、あらゆるものの『死』だ。目に視えない『力』そのものだろうが例外じゃない」
因果さえも見通すほどに発達した彼の両瞳「Fatal Logic」は、一種の魔眼に等しい。
その視力と、戦場で培われた射撃技術をもって縫い留め、殺すのは相手の力そのもの。
ターリアが行使する「眠りの呪い」は全て感知され、標的に届く前に"封殺"される。
「【抑止の楔】からは逃れられないよ」
「死を視る魔眼の使い手とは、わたしもつくづく運がないですね」
ターリアは眉をひそめながらも矢継ぎ早に茨と呪詛を放ち、匡の護りを破ろうとする。
魔眼使いでも迎撃手段が銃撃に限られているなら、弾が切れた際に隙ができるだろう。匡もそれは承知していたが、弾切れを起こすほどの長期戦になるとは考えていなかった。
「時間を作るのは少しでいい、……だろ、店長」
「……限定状態での顕現を承諾。ああ、待たせたね鳴宮」
術式を完成させたコーディリアが顔を上げる。同時に匡は巻き込まれないよう後ろに下がる。時間稼ぎはここまで、あとは彼女が「思いっきり」やるのを見守っていればいい。
これより顕現するのは彼女が封じる悪魔の中で狂犬の如く傍若無人な――破壊の化身。
「現れろ、我が怒り。炎と共に。《九王顕現・剣の王》」
古き大いなる王の一柱、あらゆる復讐と欲望を赦すもの、その真名は"アスモダイ"。
燃え盛る劫火を引き連れて、上半身のみの姿で降臨したかの大悪魔は、赤熱する石炭のような両眼で眠りの森の魔女を睨め付ける。
「これは……!!」
大気がざわめく。大地が震える。今だ限定条件下での顕現でありながら、この威圧感。
凡百のデーモン共とは格の違う存在を前にして、さしものターリアも緊張を隠せない。
「ありがとう。神様には一度会って見たかったんだ」
九王が一柱を従えし双星の魔女は、戦いが始まる前にターリアが告げた言葉に応える。
もしも天国があるのなら、あなたの信じる神に会えるといいですね――そう彼女は言っていた。神に仕えていた頃のコーディリアなら、きっとそれを疑いはしなかっただろう。
「でも、ボクの"神様"は彼ら――いや"ボクら"だから。残念だったね。もう会っているよ」
悪魔を封じ、悪魔と同化した歩くパンドラの箱は冷笑と共に告げる。厄災の蓋はすでに開かれ、溢れ出した災いの炎は彼女の欲望と怒りを焚べられて、なおも激しく燃え盛り。
「――――滅ぼしなさい」
その瞬間、剣の王から小さな太陽のごとき火球が放たれ、眠りの森の魔女に直撃する。
想像を絶する熱量は薔薇の茨も、眠りの呪いも、悲鳴すら全て焼却して。肌を焦がし、肉を焼き、血を蒸発させ、骨の髄まで滅ぼさんと、かの魔女が眠る棺を紅蓮が満たす。
「――――ッ!!!!!!」
悪魔の炎の中、悶え苦しむターリア。双星の魔女の怒りはかくも激しく、壮烈だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイカ・ヴァンスタイン
【風月華】から参加
てんじょーかいってなーに?
UC雪消之暈で、人形達を陽にして攻め立ててもらうかな?これなら眠ることも無く、茨で捕まっても燃やせる事も出来るの。
亡くなった勇者さんたちを起こすのにもいいかも?(火の手で軽くぺちぺちしたら熱さと刺激で起きるかも?)
人形達を操作(突撃)してる間は武器も無いし、クララちゃんの頭の上でうつ伏せになっておこうかな。頭部を守る盾として。
ミュー・ティフィア
【風月華】から参加
うん、狭霧の言う通りです。
考えるのは後でも出来ます。まずは生きてクララと一緒に帰る事だけ考えてればオーケーです!
因果を超える【歌姫】を発動してオーラ防御を私達やクララ、勇者達も含めた全員に張り巡らせて眠りの茨を完全に防ぎます。
全力の支援魔法で狭霧の限界を超えさせて帝竜ガルシェンの召喚の確実性も増加させちゃいます。
レイカが起こせなかった勇者達は回復系の属性魔法で救助します。
時間感覚のズレは第六感でカバーです。
後は絆証・トゥッティと時空・オブリガードを使って自然の色んな精霊達の力を借りて、禁忌・ポリフォニーと相思・リチェルカーレでターリアに全力の属性魔法を叩きつけます!
朝沼・狭霧
【風月華】から参加
【心情】天上界とか、ヴァルギリオスとか難しい事を今
あんまり考えたくないです
うん、あの人ぶんなぐって立ってれば私達の勝ちですよね(いい笑顔
UC魂の先導でこの地で亡くなった勇者達を召喚
「死の…先を行く者たちよ」
斧を構えた勇者たちにクララさんを守ってもらいながら
戦って貰います
勇者たちが眠らされそうになったら
新しい勇者さんたちにバトンタッチ
どんどん呼び出しちゃいますよー
レイカちゃんもミューちゃんも元気いっぱいで嬉しい
皆で頑張って帰ったらおいしいご飯を食べましょう
UC魂の先導でこの地で倒された帝竜ガルシェンの召喚にもチャレンジ
出てきてくれたらターリアさんの上に落としてみましょう
ズドーン
「天上界とか、ヴァルギリオスとか難しい事を今、あんまり考えたくないです」
「てんじょーかいってなーに?」
今回の元凶たる魔女を前にして、その目的とか野望とかはひとまず棚に置いておく様子な狭霧とレイカ。ひとり冷静なミューも、クララを後ろにかばいながらこくりと頷いた。
「うん、狭霧の言う通りです。考えるのは後でも出来ます。まずは生きてクララと一緒に帰る事だけ考えてればオーケーです!」
「うん、あの人ぶんなぐって立ってれば私達の勝ちですよね」
それを聞くやいなや、狭霧はとてもいい笑顔を浮かべてユーベルコードの詠唱を紡ぐ。
発動するのは【魂の先導】。かつてこの生々流転沼で亡くなった人々――生前の帝竜・ヴァルギリオスと戦った伝説の勇者達の霊魂を、今ひとたび現世に喚び戻す。
「死の……先を行く者たちよ」
無骨な斧を構えた戦士らしき亡霊達が現れ、クララの周囲を護衛するように身構える。
それに合わせてレイカは【雪消之暈】を発動、操作する7体の和装人形をベースにした80個の炎を展開し、眠りの森の魔女に向けて放つ。
「人形彩光隊、延焼蔓延、こうげきかいしー」
防御は勇者の亡霊が、攻撃は炎の人形が。万全の陣容を敷いた猟兵達に対してターリアは【醒めざる夢の茨】を棺の中から伸ばし、人形を迎え撃ちながらクララに襲い掛かる。
「……全てを相手する余裕はありませんね。目的を果たすのが最優先です」
重傷を負ったターリアは冷静に、猟兵の力を理解したうえで己の勝ち筋を探っていた。
たとえ相打ちとなったとしても、クララを殺害し「破邪の言葉」を使わせれば目的は果たせる。故にオブリビオンである彼女は半ば捨て身の覚悟でクララに攻撃を集中させる。
「とつげきー」
そうはさせじと攻め立てるのは、レイカが操る彩光隊。炎と化した人形は呪いによって眠ることも無く、茨に捕まっても焼き切れる。火の玉となってひゅんひゅんと飛び回るそれらに対して、ターリアは直接的な対抗策を持たず、防戦を強いられることになった。
「やっぱりあの茨は火に弱いみたいですの。みんなとつげきー」
「凄いです……けど、あの、どうしてわたしの頭の上に……?」
レイカの思念によって縦横無尽に動く人形の火を、感動したように見つめつつ。クララはなぜか自分の頭の上でぺたんとうつ伏せになって指揮を取るフェアリーに首を傾げる。
「人形達を操作してる間は武器も無いし、クララちゃんの頭部を守る盾になっておくの」
「そそっ、そんな危ないお役目を?! だ、ダメですよわたしは平気ですから!」
どこまでが本気なのかは分からないが、小さな身体を盾にした妖精さんヘルメットに、純粋なクレリックの少女はあたふたと慌てる。だが実際のところ、脅威は頭上からではなく足元から――炎の人形との戦いを続けながら、密やかに伸ばされた茨が迫ってくる。
「シャルムーンのクレリックと人形の操り手。二人一緒にいてくれるなら幸いです」
最優先の標的は言うまでもなく、厄介な炎の動きを止めるには操り手を縛るのが最上。
彩光隊の突撃の隙間を縫ってするりと忍び寄る眠りの茨に、真っ先に気付いたのは狭霧の喚んだ亡霊達だった。
『そうはさせぬ……ぐぅっ……』
身を挺して少女達をかばった勇者達は、身代わりに眠りの茨に捕らわれて意識を失う。
かの魔女の呪いは死者さえも眠らせる。これは良くないとみたレイカは人形の一部を取って返させるが、攻撃の手が緩まったことで敵はさらに多くの茨を差し向けてくる。
「このまま拘束すればこちらのもの……」
「そうはさせません!」
無数の茨がクララ達を捕らえようとしたその瞬間、ミューがオーラの防壁を展開する。
因果を超える【歌姫】の力で強化されたそれは、猟兵達とクララ、勇者の亡霊達も含めた味方全員を覆うように張り巡らされ、眠りの茨を完全に防ぎ止めた。
「覚悟は出来てます……Lalalaー……」
歌い奏でながら魔女を超える力を発動した彼女の代償は、正常な体感時間という概念。
力を使えば使うほど、ミューの生きる時間は他の者達からズレていく。実年齢ではまだレイカと同い年のはずの彼女は、精神的にはすでに途方もない年月を生き続けていた。
「いま……の……うち……に……」
一秒が数分のように感じられる時間感覚のズレに苦慮しながらも、ミューはどうにか仲間との連携を取ろうとする。彼女の意図を汲んだレイカは呼び戻した炎の人形達を動かして、眠ってしまった勇者達を目覚めさせにかかる。
「火の手で軽くぺちぺちしたら熱さと刺激で起きるかも?」
巻き付いている茨を燃やし、大やけどをさせない程度にぺちっとしてみると、勇者の亡霊達は『あつっ?!』と悲鳴を上げながら意識を取り戻した。それでも起きないような眠りの深い者は、ミューが回復魔法で救助する。その間もオーラの防壁は維持したままだ。
「ずいぶん強固な守りですね……ですがこれほどの力に代償がないとは考えられません」
ミューの防壁を破るのは難しいと判断したターリアは、その外縁を取り巻くように眠りの茨を展開する。歌姫が代償を払いきれないほどに自らの概念を摩耗させてしまった時、無数の茨は【忘却の眠り】を伴って彼女らに襲い掛かるだろう。
「私がどうなってもこの防御は破らせません」
「人形彩光隊、もう一度とつげきですのー」
対するミューは心を削りながらも気丈に歌を奏で続け、レイカは人形による攻撃を再開する。クララを守りながら一歩も引かぬ構えの少女達――それを見ていた狭霧は微笑む。
「レイカちゃんもミューちゃんも元気いっぱいで嬉しい」
同じ寮で生活する仲間たちが共に協力しながら戦っているのは、寮長として喜ばしい。
狭霧にそれほど大層な理想や志はないが、みんなと楽しく歌って笑いあえるならそれが一番だし、そのためなら力を惜しむつもりは無い。
「皆で頑張って帰ったらおいしいご飯を食べましょう」
「約束ですよ!」
「楽しみなの」
二人の笑顔に「サギリ先生」も笑顔で応じ。そして手にした媒介道具に魔力を込める。
彼女もここまでただ戦況を見ていただけではない。眠らされた勇者の交代要員を呼び出しながら、さらなる"大物"の召喚を狙っていたのだ。この地で倒れた生命の中で、間違いなく最大にして最強の――かつての生々流転沼に君臨した帝竜『ガルシェン』の召喚を。
「人じゃないですし、ちょっと難しいかもしれませんけど」
「狭霧ならできます。ここで限界を超えてください!」
元より協力的な勇者の霊とは比較にもならない難易度の召喚にチャレンジする狭霧に、ミューが【歌姫】の力で支援する。因果を超える代償はさらに重く彼女にのしかかるが、そんなことはお構いなしと言わんばかりの全力だ。
「ありがとうミューちゃん。なんだかやれそうな気がしてきました」
歌姫の支援魔法を受け取った狭霧は意識を研ぎ澄ませ、再び【魂の先導】を発動する。
天が震え、地が慄く。命の理を超えて、骸の海の底から死せる帝竜が現世に浮上する。
「まさか、そんなことが……?!」
虚空に幻のようにゆらりと現れる巨大な影を、眠りの森の魔女は驚きの顔で見上げる。
いかに猟書家と言えどもヴァルギリオスの『再孵化』なしに、帝竜が復活するとは想像もすまい。その動揺の隙を突いて、炎の彩光隊が一斉に飛び掛かった。
「よそ見はきんもつですのー」
「しまっ……!」
舞い踊る炎の群れに取り巻かれ、魔女の茨が燃え上がる。それを好機とみた勇者の亡霊達も攻勢に転じると、大斧を振るって茨を切り払いながらターリアに猛追を仕掛ける。
「みんなで一緒に帰るんです。邪魔をしないでください!」
ミューも毅然とした表情で告げると、精霊との契約の証である「絆証・トゥッティ」のカードと媒介具となる「時空・オブリガード」を使い、自然界の精霊の力を借り受ける。
炎、水、風、土、雷、光、闇――様々な属性を束ね、聖杖「相思・リチェルカーレ」の力で増幅し。禁忌・ポリフォニーと共に放つは、今の彼女に行使できる全力の大魔法。
「これが私達の力です!」
「―――ッ!!!!」
7色の魔力の奔流に呑まれ、吹き飛ばされたターリアの身体は空へと舞い上げられる。
そして、人形と亡霊と精霊、三者の連携を締めくくる一撃が天の果てより舞い降りる。
「ちゃんと出てきてくれました。それじゃあ受け取ってくださいねターリアさん」
ゴゴゴゴゴと大気を震わせながら、生々流転沼の帝竜『ガルシェン』が再び降臨する。
またの名を「創世巨獣」と謳われるその巨体は何十kmにも及び、全帝竜でも規格外。
それがもし頭上から墜ちてくればどうなるのか――結果は火を見るより明らかである。
「ま、待っ……!!」
「はい、ズドーン」
ターリアは慌てて逃げようとするものの、レイカとミューから受けたばかりのダメージは大きく、思うように身体が動かない。そもそも、一体どこへ逃げれば良いというのか。
大陸にも匹敵する圧倒的な質量は、重力のままに眠りの森の魔女を押し潰し――その体躯を群竜大陸に沈める前に、ふっと幻のように消え去った。
「あのまま落ちてきたら私達も大変ですし」
「確かに……」
「みんなぺしゃんこになるところでしたの」
一瞬の出来事に終わった帝竜ガルシェンの召喚。だがそれでも効果の程は絶大だった。
大地との狭間で圧し潰されずには済んだものの――魔女ターリアの棺はひしゃげて見るも無惨な有様となり。放り出された本人もまたボロボロの様子で地面に転がっていた。
大成功
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佐伯・晶
やっと元凶が出てきたね
クララさんを守りつつ
皆と協力して打倒を目指すよ
眠りの森の迷路がでたら
邪神の領域を使用
呪詛耐性で眠りに耐えつつ
茨や森の時間を停滞させて悪影響を防ごう
同じくクララさんの状態を固定して
悪影響を防ぐよ
気が付いたら瞬間移動したみたいになって
驚くかもしれないけどごめんね
クララさんを抱えつつ
必要に応じて空をとんで迷路を抜けよう
ターリアの元にたどり着いたら
使い魔をクララさんの護衛につけて
自分は神気とガトリングガンで攻撃
ターリアを牽制したり
動きを停めたりしつつ削っていこう
他に大技を狙う人が居たら
隙を作ってサポートするよ
ところで何故この方法で
天上界に行けると思ってるんだろう
結界に届くのかなぁ
イリス・ローゼンベルグ
エンデリカといい、あなたといい
全くもって迷惑な話だわ……
露骨に不機嫌な様子を隠さず、ターリアに告げる
茨を使う悪党を私は許さない、ここで消えてもらうわよ
【茨の触手】の展開と合わせて【成長する災厄】を発動
「安心しなさい、あなたは私が守ってあげる」
「私は優しいから、ね……ふふっ」
クララを自身の背後に隠し、【茨の盾】で庇いながら眠りの森の迷宮を力押しで突破する
【致死の体液】を撒き散らし、森を腐り堕として進路を確保
ターリアに向けて複数方向から触手を放ち、攻撃
さらにそこから【猛毒の棘】を飛ばして相手の不意を突き、怯んだ所を【捕食触手】で一撃する
「永遠に眠っていなさい」
「やっと元凶が出てきたね」
携行型ガトリングガンの砲身を持ち上げて、晶は立ちはだかる眠りの森の魔女を見る。
天上界に至る道を捜索する猟書家ターリア。ヴァルギリオスの封印を解くために罪なきクレリックの命を奪おうとするその所業、許されるものではない。
「エンデリカといい、あなたといい、全くもって迷惑な話だわ……」
一方のイリスはそれに加えて、なぜか猟書家に薔薇や茨の使い手が多いことにも不満があった。薔薇のバイオモンスターである彼女としては、"悪"に自分と類似の力を使われるのはすこぶる不快であり風評被害も甚だしい。
「茨を使う悪党を私は許さない、ここで消えてもらうわよ」
悪を喰らう茨姫は露骨に不機嫌な様子を隠さず、ターリアに告げる。擬態を解いたその半身は今なお成長を続けており、血のような薔薇を咲かせた茨の触手が鎌首をもたげる。
「わたしも嫌われたものですね……このままでは流石に分が悪いようです」
重傷を負ったターリアは自らの足で立ちながら、クララとの間に立ちはだかる猟兵との戦力差を痛感する。このまま正面対決を挑んでも勝機はないと判断した彼女は、戦場全体を自らの魔力で満たし、再び「眠りの森」で出来た迷路を作り出す。
「やはりあなた方には、この森の中で永遠に眠ってもらいましょう」
魔女の姿が森の奥に消える。領域に満ちた呪いが猟兵達を眠らせるまで待つつもりだ。
もちろん晶にもイリスにも、相手の思惑に乗るつもりは無い。非戦闘員を連れて迷路を踏破する算段はすでに付けていた。
「安心しなさい、あなたは私が守ってあげる」
眠りに抗うすべを持たないクララを自身の背後に隠し、茨の盾で庇いながら。イリスは【成長する災厄】を発動し、自らを構成する茨を急成長させる。敵に対する嫌悪の感情を糧にして、通常の数倍のサイズにまで巨大化したその姿は、まるで移動する森のようだ。
「私は優しいから、ね……ふふっ」
「は、はいっ……信じてますっ」
茨の頂上で艶やかに微笑む少女を見上げ、こくこくと頷くクララ。そう、庇護すべきと判断した者にイリスは情け深い――だがその優しさは誰にでも与えられるものではない。
戦いには疎いクララでも思わず怯んでしまうほどの、笑みの裏に隠された強烈な敵意。それは全て眠りの森の魔女に対して向けられていた。
「眠らされる前に抜けてしまおうか」
一方の晶は眠りの森の出現に合わせて【邪神の領域】を発動し、全身から溢れ出す神気で茨や森の時間を"停滞"させていく。彼女と融合した邪神が司るものは静謐――動くものが存在しない、時さえも凍りついた沈黙の世界こそが、かの女神の領域である。
「わっ……?!」
けして禍々しくはなく、しかし恐るべきその力は、森と共にクララの時も停滞させる。"今"のまま状態を固定しておけば、これ以上呪いの悪影響を受けることもないだろう。
「気が付いたら瞬間移動したみたいになって驚くかもしれないけどごめんね」
非常時とはいえ謝罪しつつ、彫像のように動かなくなったクララの身体を抱え上げる。
これで暫くの間は時を稼げるはずだ。邪神の化身と茨の姫は互いに目配せを交わすと、眠りの森を攻略すべく行動を開始する。
「邪魔よ、どきなさい」
その巨躯で大地を震わせながら「致死の体液」を撒き散らすイリス。バイオモンスターの体内で生成される猛毒の体液は、金属を含めあらゆる物質を腐食させる――眠りの迷路を構築する森の木々はたちまち腐り堕ち、彼女が歩いた後には草一つ生えぬ道ができた。
「これなら普通に抜けるよりも大分ショートカットできそうだね」
力押しで進路を確保するイリスの背中に守られつつ、クララを抱えた晶が続く。呪詛に耐性のある彼女は森の中にいても何ともなく、神気で周囲への悪影響を防ぎながら優雅に空を舞う。その姿はまさに女神だが、引き換えにその体は封印の力により石化していく。
かの邪神を悠久の年月封じ込めてきた力は今も生きているのだ。権能を使い過ぎれば完全に石になってしまう恐れもあるが――それよりもどうやら、迷路を抜けるほうが早い。
「ところで何故この方法で天上界に行けると思ってるんだろう。結界に届くのかなぁ」
森を移動しながら晶がふと考えたのは、ターリア――ひいては猟書家の目的について。
シャルムーンのクレリックを殺し、「破邪の言葉」で帝竜が遺した封印を解くのが彼女の目的らしいが、つまり猟書家は「封印」がどのようなものか把握しているという事か。
帝竜ヴァルギリオスはここ群竜大陸の所在も「クラウドヴェール」という世界規模の幻術で隠蔽していた実績がある。が、天上界への道の封印がそれと同様のものかは不明だ。
「何にせよ好きにさせるわけにはいかないかな」
猟兵達も天上界については一切の情報がない現状、猟書家の目的を阻止するためには敵を打倒する他にない。晶は思考を切り替えると、先行するイリスに置いていかれないよう速度を上げた。
「見つけたわ。隠れんぼはもう終わりよ」
邪魔な草木を腐食させ、最短距離で眠りの森を踏破したイリスは、再び魔女ターリアを視界に捉える。これほど早く迷路を攻略されるとは思っていなかったのだろう、敵はアイマスクの下で驚きに目を見張りながら、咄嗟に棺から茨を放つ。
「その姿……まるで薔薇の怪物ですね」
「あなたに言われる筋合いはないわよ」
眠りの茨と茨の触手がぶつかり合い、互いが互いを呑み込まんとするように絡み合う。
生まれもジョブも異なれども、共に茨を武器とする者同士。互いに複数方向からの攻撃を仕掛けながら両者一歩も譲らず、鮮やかな薔薇の花弁を散らしあう。
「援護するよ」
そこに追いついてきた晶は、クララの護衛として使い魔をつけると、ガトリングガンを構えて戦線に加わる。神気により強化された銃撃が、ターリアの眠りの茨を撃ち抜いた。
一対一で拮抗していた状況。そこに援護射撃が加わったことで趨勢は傾き、ここぞとばかりにイリスは触手の攻勢を強める。対する魔女は束ねた茨を盾として身を護るが――。
「……そこよ」
自身も同じ防御手段を使うから分かる、茨と茨の隙間にできる小さな弱点。そこを狙って触手の先端より「猛毒の棘」を飛ばす。不意を突かれた魔女は、それを躱せなかった。
「っ……!」
刺さったのは小さな小さな1本の棘。しかしその1本に秘めた猛毒が魔女を怯ませる。
動きを止めるのは一瞬でいい。こちらには、その一瞬を永遠にさえできる味方がいる。
「大技、頼んだよ」
晶の放つ停滞の神気が、森と同じように魔女の時を停める。延長された無防備な隙に、最大の嫌悪を込めてイリスが叩きつけるのは、ハエトリグサに似た大型の「捕食触手」。
「永遠に眠っていなさい」
酷薄な宣告と同時――放たれた一撃は鋭い歯で獲物に喰らいつき、肉と骨を噛み砕く。
一瞬の出来事だった。眠りの森の魔女は半身をごっそりと齧り取られ、無惨な傷口から噴水のように鮮血が吹き出し、茨の触手に吸い取られていく。
「ぁ、ぐ……ッ!!!!!!!」
あまりの激痛に悲鳴を上げることもできず、自分の血溜まりの中に倒れ込むターリア。
いかに彼女が強大なオブリビオンであろうとも、その負傷は紛れもない致命傷だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、こっちはまだ眠る気なんざさらさら無いぜ
重要なのはここから……舞台の盛り上がりが最高潮になってきたんだからよ
もうちょい付き合えよ、眠りの森のクソ女
クララの前に立つ
俺を殺したいなら打ってこいよ
それとも、ビビって何も出来ねえってか?
──茨が来るのは明白だ
軌道は真っ直ぐ、速いのも予測できる
だからこそ、死への覚悟を固めて受け入れる
クララからすりゃあ、目の前で茨に捕まったように見えるだろうか
半分正解──『捕まえた』のは俺の方だ
エネルギーの変換は終わった
茨を鋼の腕で握りしめ、莫大なエネルギーを伝わせて流し込む
棺桶を用意してくれるなんて殊勝なことだな
テメェの葬儀は問題無く行われる…ご協力、どうも
「……見くびっていたつもりはないのですが。それでも想定が甘かったようです」
クララを守る猟兵達の猛攻撃にあい、満身創痍となった眠りの森の魔女はそう呟いた。
状況は有利なはずだった。力でも劣っていたつもりはない。だが事実として彼女は追い詰められている――かのヴァルギリオスをも倒した猟兵の実力とは、これほどのものか。
「敗北を認めましょう。ですが目的だけは果たさせてもらいます。眠りなさい」
「オイオイ、こっちはまだ眠る気なんざさらさら無いぜ。重要なのはここから……舞台の盛り上がりが最高潮になってきたんだからよ」
残された魔力を振り絞って立ち上がるターリアの前で、ヴィクティムがにやりと笑う。
そう、今こそがまさに戦いのクライマックス。何もかもが思い通りにいくと思っていた傲慢な魔女に引導を渡してやれる好機なのだ。瞼を閉じている暇などあるものか。
「もうちょい付き合えよ、眠りの森のクソ女」
クララの前に立ち、ユーベルコードの起動を行いながらヴィクティムは敵を挑発する。
相手が誰を狙ってくるのかは分かっている。ならそいつとの間に立ち塞がれば、魔女の攻撃は必然的に自分に殺到するだろう。見え透いた思惑の上での露骨な誘い。
「俺を殺したいなら打ってこいよ。それとも、ビビって何も出来ねえってか?」
しかし今のターリアは挑発を無視できないだろう。策を講じて迂回する余力もない。
クララを殺して破邪の言葉を発動させる為には、ここで彼を排除するしかなかった。
「嫌な人ですね、あなたは」
魔女と共に棺が浮かび上がり、その中から幾本もの【醒めざる夢の茨】が伸びてくる。
その動きは獲物を狙い定め、鎌首をもたげる蛇のようで。この期に及んで小細工は弄さないという誇示にも見えるのは、ある種のプライドなのか。
(──茨が来るのは明白だ。軌道は真っ直ぐ、速いのも予測できる)
満身創痍とはいえ幹部クラスの全力攻撃、小手先の技で避けるのはまず不可能だろう。
だからこそ、死の覚悟を固めて受け入れる――眠りの茨が放たれた刹那、ヴィクティムは全身の力を抜いて完全な脱力状態となり、魔女のユーベルコードにその身を晒した。
「あぶない……っ!!」
背後にいるクララの視点から見えたのは、目の前で茨に捕えられたヴィクティムの姿。
それがどういうものか彼女は知っている。一度絡め取られれば最後、眠りの呪いは身体のみならずあらゆる自由を奪う――その状態から自らの意思で脱するのはほぼ不可能。
「そんな……わたしを庇って捕まるなんて……」
「半分正解──『捕まえた』のは俺の方だ」
だが。全身を縛めるように絡んだ茨の中から、それまでと変わらない青年の声がする。
クララも、そしてターリアまでも「まさか……?!」と驚愕を示すなか、ヴィクティムはサイバネ化された鋼の腕で、眠りの茨を握りしめた。
「エネルギーの変換は終わった」
Reuse Program『Balmung』。それは敵のユーベルコードを無効化し、自らのエネルギーとして強奪増幅する攻防一体のプログラム。タイミングを外せば被害はより深刻になる、ハイリスクハイリターンな技だが――ヴィクティムは見事にそれを成し遂げてみせた。
「いけない……!」
「もう遅ぇよ」
彼の意図を悟ったターリアが茨を自切するよりも早く、鋼の腕から放たれた莫大なエネルギーが茨を伝って流れ込む。魔女自身の力から生まれた魔女殺しの力――それを受けた瞬間、ターリアの身体は雷に打たれたようにびくんと跳ねた。
「棺桶を用意してくれるなんて殊勝なことだな」
「あ、ああぁぁぁぁぁぁ……っ!!!!?!」
小柄な体躯に収まりきらない力の奔流は行き場を求めて体内で暴れ回り、鮮血となって外に噴き出す。たまらずターリアが悲鳴を上げても、ヴィクティムは茨を通じてありったけのエネルギーを送る。棺の中で魔女が動きを止めるまで、一切の油断も容赦もしない。
発光するエネルギーの流れはやがて眠りの茨を焼き切り、血と肉が焦げる匂いが戦場に充満し――やがて断末魔の絶叫がふっつりと途絶えた時。
「テメェの葬儀は問題無く行われる……ご協力、どうも」
「あ、ぁぁ……口惜しい、ですね……次、こそは……」
眠りの森の魔女はそう遺して永久の眠りにつき、棺に収められた屍は骸の海へと還る。
天上界に至る破邪の言葉を求めた猟書家ターリアの計画は、かくして潰えたのだった。
――魔女を退けた猟兵達とクララは、その後無事に生々流転沼からの脱出を果たした。
後日談について少々語るのであれば、クララは故郷である遺跡都市ヴェルニスに帰り、シャルムーンへの祈りを捧げるいつもの日常に戻ったという。時折、クレリックの同僚や神殿で面倒を見ている子供達に、今回の群竜大陸での"冒険譚"を語ることもあるとか。
『わたし、きっと一生忘れません。怖かったけど……でもそれ以上に、物語ではない本物の"勇者様"たちに会うことができましたから』
別れの際、猟兵達に向けてそう告げたクララの表情は、野に咲く花のように朗らかで。
この笑顔と、世界の平和を守り抜いた実感を胸に、猟兵達は次の戦いに赴くのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年11月19日
宿敵
『眠りの森の魔女ターリア』
を撃破!
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