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鍵と涙とバウムクーヘン

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #プレステル・ピスティ #テレビウム #システム・フラワーズ #バウムクーヘン怪人

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#バウムクーヘン怪人


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●深刻そうなそうでもなさそうな前置き
「結婚したのか……俺以外の奴と……」
 なんだかちょっと旬の過ぎたセリフと共に、とぼとぼと街を往く怪人が独り。
 ここはキマイラフューチャー。きらびやかな地上の楽園。
 手に入らないものは何もない。コンコンコンで手に入るものならば。
「だが心は……あいつの心は、コンコンコンでは手に入らない」
 怪人はバウムクーヘンのような頭部をしていた。ような、というよりそのものであるらしい。まるで自傷行為のように頭の一部をむしりとってはむしゃむしゃと食べている。よくよく考えればとてもグロテスクな光景だが、何せバウムクーヘンなのでいまいち深刻さに欠ける。
 怪人は引き出物であった。誰かが恋焦がれたあの子が、知らない誰かと永遠の誓いを交わした、そんな決別の日。その悲しさ、やるせなさが、いつしかバウムクーヘンを怪人へと変貌させてしまったのだ。
「こんなに辛いのならば恋などしなければ良かった……それに、美味しいバウムクーヘンを生み出すコンコンコンなんて存在しなければ良かったんだ」
「あなたは自分の心を疎い、コンコンコンを恨んでいるのですね」
「ああ……そうだ」
 怪人は咄嗟に頷き、それから訝しげにぽろりと生地をひとかけらこぼした。
「誰だ、あんた」
「私は『プレステル・ピスティ』。我らが機械軍の一員となれば、あなたの願いは叶えられるでしょう。哀しみと無縁のマシン怪人となるのです」
 ミニスカートの軍服に身を包んだ、幼ささえ感じさせる少女だった。ただしその聲はひどく抑揚に欠け、青い眸には感情を示すゆらぎが一切感じられない。
「哀しみと……無縁の……」
「ええ」
 ぞっとするほどの透徹さに見据えられた怪人は、ふらふらと吸い寄せられるように彼女へと歩み寄っていく。
「本当にこの心の痛みから解放されるのか」
「我らがキング・ブレインの忠実なるしもべに、そのようなものは不要です」
 静かに頷いた少女が、怪人をどこかへ連れ去っていく。
「そしてコンコンコン……すなわち、「システム・フラワーズ」を掌握すれば、あなたの望まぬ物体が生み出される事もなくなるでしょう」

●ここからが本題です
「テレビウム・ロック……そのような名で呼ばれる事件について、ご存知でしょうか」
 猟兵たちに召集をかけた女、無供華・リア(夢のヤドリギ・f00380)はそう切り出した。
「以前、キマイラフューチャーのコンコンコン……システム・フラワーズに目をつけたドン・フリーダムの配下たちがテレビウムを狙った事件です。その理由は、彼らがメンテナンスゲートへの鍵となる存在であるからでした。幸いテレビウム達は猟兵によって護られ、キマイラフューチャーの戦役も勝利を収めました。皆様もご存知の通りコンコンコンは今まで通り機能しております。
 ですが先日の迷宮災厄戦――オウガ・オリジンを幽閉し力を奪った猟書家『キング・ブレイン』達が、再びキマイラフューチャーに戦乱を巻き起こそうとしているのです」

 その中でも、かのドン・フリーダムと同じように、コンコンコンを掌握しようと動いている者がいる。
 ブレインの率いる幹部、その中の一人プレステル・ピスティだ。
「彼女は今もキマイラフューチャーに存在する怪人たちを巧みな話術で誘い、血の通わぬ『マシン怪人』へと改造しているようです。彼らの出す怪電波を浴びたテレビウムは、その顔モニターに鍵マークが浮かび上がります。文字通りコンコンコンへの『鍵』であり、この状態のテレビウムを沢山集める事によってメンテナンスゲートを開き、あの時のようにキマイラフューチャーを二つに割る事が可能となってしまうようです」
 そうなれば、護りが手薄なシステムを防衛するのは至難だ。その前に阻止しなければならない。

「今から皆様に向かって頂きたいのは、キマイラフューチャーの大きな広場です。パフォーマーであるテレビウム達が集まって、ダンスの動画を配信しようとしていたようですわね。そこにマシン怪人が現れ、彼らを攫おうとしております。これを正義の味方よろしく格好良く阻止して頂きたいのですわ」
 ぐっと拳を握り、ちょっと気合を込めてリアは云った。彼女の手に抱かれている人形も、ぐっと小さく拳を握っていた。
「何と言っても配信中ですからね。キマイラフューチャーでは、猟兵はどんな配信者よりも大人気のスーパーヒーローです。突然のアクシデントからの猟兵の助太刀とあらば、きっと画面の向こう側もこちら側も大盛り上がり。皆さん喜んでくださるはずですわ」
 とはいえそれはおまけである。ついでに喜んでもらえるならハッピーではあるが、メインはあくまでマシン怪人退治と、そして。
「鍵を投影したテレビウムを攫うのに失敗したとあらば、プレステル・ピスティ自ら赴いて猟兵を葬ろうとしてくる事でしょう。こちらも倒して頂きたいのです」
 頼みましたわ、とリアは微笑んで、猟兵達を転送するのだった。

「キマイラにテレビウム。ヒーローマスクにバーチャルキャラクター……一風変わった人々が楽しく過ごすこの楽園に、戦火は似合いませんもの。訪れた平和を護り通せるように、どうかお願いいたしますね」


ion
●お世話になっております。ionです。
 このシナリオは二章構成です。どちらも戦闘パートです。

 第一章:集団戦『バウムクーヘン怪人』
 第二章:ボス戦『プレステル・ピスティ』

 どちらも敵は逃げたりはしません。彼女たちの主目的は鍵テレビウムの奪取ですが、猟兵がいる限り猟兵の討伐を優先します。戦闘に集中して頂いて大丈夫です。
 テレビウム達はその場に留まって猟兵を応援したり、配信してモニターの向こうの応援を届けてくれたりしますが、これ自体に何か力があるわけではありません。演出程度に思って頂ければと。

 一章・二章とも、章のはじめに追加OPを投下します。その時にプレイング募集スケジュールなどもお伝えします。
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第1章 集団戦 『バウムクーヘン怪人』

POW   :    結婚したのか…俺以外の奴と…
【青春時代の甘酸っぱい思い出】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【バウムクーヘンに仕込んだ苦い涙】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    お前と結婚するのは俺だと思ってた…
【失恋の嘆きをたっぷり含んだバウムクーヘン】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    涙のバウムクーヘンエンド
【引き出物の入った紙袋】から【涙で濡れているバウムクーヘンの包み】を放ち、【憐れみを誘うこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 キマイラフューチャーのとある街。
 街の中心にある広場はHIP-HOPからサイリウムダンス、はたまたゴッドペインターの路上ペイントパフォーマンスまで、ありとあらゆるパフォーマーたちに人気のスポットだ。
 広さはそれほどではなく、そのため観客席らしきものも数が十分とはいえないが、それは然程問題ではない。36の世界の中でも群を抜いて配信文化が発達したこの楽園では、いつだって好きな場所で好きなアーティストのパフォーマンスを観る事が出来るのだから。

 今日はテレビウム達が集まって、楽しいダンス動画の配信真っ最中。
「テレビウムは小さくて手足が短いからダンスには不向き、そんな風に苦手意識を持ってる子はいない?」
「僕らにしかできないパフォーマンスもあるよ、ぜひぜひ真似してみてね!」
 どうやらメインターゲットは同種族の少年少女たちであるらしい。簡単なステップが中心の踊りやすい振り付けに合わせて、テレビウムの顔をぴかぴかとカラフルに点滅させたり、可愛い表情づけをしてみたり。軽快なポップナンバーに乗せて楽しく動画が配信されていた……筈だったのだが。
「あれっ、ペロちゃん。今はお花の映像を流すはずだったでしょ?」
「おかしいな、さっきからこのマークしか出せなくなってるんだよ」
「ぼくもだ! どうしたんだろう!?」
 口々に騒ぎ立てるテレビウムたちの顔は、システムへの『鍵』に侵食されていく。
「これ、聞いたことあるよ。このマークが出てると怪人に狙われちゃうんだ!」
「怪人!? あたし達戦えないよ、どうしよう!?」
 わあわあ、きゃあきゃあとテレビウム達は大パニック。そんな彼らに、機械と化したバウムクーヘンの怪人が迫りくる。
「『鍵』を確認……これより命令を実行」
「きゃー! 美味しくなさそうなバウムクーヘンだー!」
「バウムクーヘンのお化けだー!!」
 しっとり美味しい層になっていた筈の怪人の顔は、今では金属の層が幾重にも重なった似て非なるものに変貌を遂げていた。

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 プレイング募集:11/19(木)朝8:31~
 終了日時はMSページにてお知らせいたします。
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馬飼家・ヤング
不幸なのは自分だけやと思たら大間違いやでこの甘ちゃんがぁー!(くわっ)
一見綺麗に見える披露宴のフルコース料理なんてな、実際には新郎新婦に食われもせんで、そのまま廃棄処分になるんやで!
やけ食いでも何でも食うてもろたら菓子の勝ち組や!

それにな、あんさん自分の強みを分かっとらん
結婚式の引き出物だけがバウムクーヘンの生き方ちゃうで
さ、これでも食うて元気出し
(パッケージに「バウム食わへん?」と書いたナニワみやげの箱差し出し)

…って既にカチカチの金属ボデーになっとるやんけワレ!?
焼きたてバウムが食べ放題やと聞いて来たのに!
あの美味そうなしっとり生地はどこ行ったん!?
ウワァァァァン!!(八つ当たりタコ殴り)




「ちょおーっと待たんかーい!!」
 てんやわんやの実況会場に、颯爽と現れる猟兵が一人!
「テレビウムだ!」
「ぼくたちと同じテレビウムのヒーローだ!」
 鍵ビウムたちが大喜びでカメラを向けた先には、その通りちっちゃなテレビウム。どこかで見た事あるよな赤白青のユニフォームに身を包んだ、その名も馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)!
「とぅッ」
 しゅたっと格好良く着地をキメた。そのままバウムクーヘンを睨みつけ一気に捲し立てる。
「不幸なのは自分だけやと思たら大間違いやでこの甘ちゃんがぁー! 一見綺麗に見える披露宴のフルコース料理なんてな、実際には新郎新婦に食われもせんで、そのまま廃棄処分になるんやで! やけ食いでも何でも食うてもろたら菓子の勝ち組や!」
「お菓子の勝ち組?」
 バウムクーヘン怪人の成り立ちを知らない鍵ビウムたちにしてみれば、頭のテレビさえ正常に動いていればそこにハテナマークを浮かべた事だろうか。
 クワッと目を見開きすごい剣幕で喋りたてた直後、ヤングの表情がふっと和らぐ。
「……それにな、あんさん自分の強みを分かっとらん。結婚式の引き出物だけがバウムクーヘンの生き方ちゃうで」
 やけ食いとはいえあんなにもぐもぐ食べれるくらい美味いんやろ。売り込み次第でいくらでも道は拓けるはずや。優しく怪人の肩をぽむっと……しようとして身長差に阻まれたヤングだが、代わりに「まあこれでも食うて元気出し」と紙袋から箱菓子を取り出す。
 それはパッケージに「バウム食わへん?」とナニワ・ジョークの書かれた、インパクトも味もついでにオーサカ人の大好きなコスパも文句なし! というヤングお勧めの一品だった、のだが。
 べしーん!
「ああっ! 何するんや!?」
 哀れ、愉快な手土産は心無きマシン怪人によって地面にべしゃりと叩きつけられてしまった。
「あんさんには人の心っちゅーもんが無いんか!? いやそういえば無いんやった! どころか既に身体もカチカチの金属ボデーになっとるやんけワレ!?」
 一生懸命ジャンプしてマシン怪人の顔に触れてみたヤングの顔が悲痛に染まる。
「焼きたてバウムが食べ放題やと聞いて来たのに! あの美味そうなしっとり生地はどこ行ったん!?」
 グリモア猟兵はそんな事は云っていなかったが、それはそれ。無垢な38歳の期待を裏切った罪は重い。
「ウワァァァァン!! この時のために朝飯抜いて来たっちゅーのにー!!」
 食べ物の恨みは恐ろしい、とはよくいったもので。
 八つ当たりのタコ殴りは、金属ボデーすらもぼこぼこ凹ませたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榊・ポポ
※休憩時間に昼ドラ見てしまい不機嫌ポポちゃん

バウムクーヘンエンド、つらみーつらいわー
こういう「大人になるって悲しい事」な展開苦手ー
む、リアルドロドロ展開の予感!(野生の勘)
ドロドロ展開やめろォ!おめーの事だよ!今北産業!

食べ物武器にするの、いっけないんだー!
MOTTAINAI!
武器にするくらいならくれよぉ
なぁ、ポポちゃんのオヤツにくれよぉ
\よーこーせー!/
\よーこーせー!/
ミニポポちゃんが包囲して憐みなんてどうでもよくするね!
(団体行動・ダンス)
お気持ち表明やめてよね!
その手に持ったバウムクーヘンをよこせぇ!!
\蹂躙だー!/




 ポポちゃんはとってもご機嫌ナナメであった。
「バウムクーヘンエンド、つらみーつらいわー」
 ポポちゃんはフルネームを榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)という。見た目はふっくらボディの愛らしいカカポだが、その正体は賢い動物かも知れないし、彼女が自称する通り高性能アニマロイドかもしれない。とにかくただのカカポでない事だけは確かなので、喋るしテレビだって観る。そして、今日の休憩時間中に観た昼ドラの展開がお気に召さなかったのだ。
「こういう「大人になるって悲しい事」な展開苦手ー。どうせ現実なんて不条理だらけなんだからフィクションの中でくらい夢見たいしぃ……む、リアルドロドロの予感!」
 ポポちゃんの野生の勘が告げていた。燃料のサラダ油をたっぷり注いだ原付『バリバリ君』を駆って向かったにはまさにバウムクーヘンがいた。バウムクーヘンエンドを体現したり悲しみのあまりマシン化しちゃった怪人が。
「食べ物武器にするの、いっけないんだー! MOTTAINAI!」
 そのままギュイーンと怪人を轢いた。
「鳥さんがバイクに乗ってるよ!」
「ちっちゃくてかわいいね!」
 鍵ビウムたちも大きさ的にはポポちゃんと左程変わらないのだが、その姿はやたらと好評だ。画面の向こうもポポちゃんへの応援コメントであふれ返っている。
「見て見て、もっとちっちゃい鳥さんがいる!」
 ポポちゃんの斜めかけバッグから飛び出してきたのはその名もミニポポちゃん。起き上がった怪人を複数羽で取り囲む。
「武器にするくらいならくれよぉ、なぁ、ポポちゃんのオヤツにくれよぉ……」
 ポポちゃんとミニポポちゃんが狙っているのは怪人の手の中にある武器、すなわちバウムクーヘン。奇跡的にというかなんというか、まだそちらは機械化してはいなかった。
 \よーこーせー!/
 \よーこーせー!/
 マシン怪人がマシンになる前の嘆きがたっぷり詰まったバウムクーヘン。そのバックボーンやら効力やらがどうであれ、美味しいには違いない。ならば憐みなど起こす前に理不尽なエンドごとポポちゃんとミニポポちゃんが美味しくむしゃむしゃしてしまえばいい。怪人の気分もいつか晴れる事だろう。
「お気持ち表明やめてよね! その手に持ったバウムクーヘンをよこせぇ!!」
 いや、単にポポちゃんはむしゃくしゃしているうちにお腹が減ったのかもしれない。ただでさえポポちゃんは多忙を極めているのだ。家賃の催促とかで。
 \蹂躙だー!/
 クワッと一斉に飛び掛かったポポちゃんズが、怪人のバウムクーヘンを容赦なく平らげていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
●WIZ



>新種の怪人による侵攻を捕捉しました

躯体番号L-95
当機は怪人出現に対する哨戒_及び_排撃に高い適性を発揮します

――友軍機、投下開始


・鎧装騎兵のプラズマジェットでお空カッ飛んで来る(推力移動)

・【ウイングキャット『マネギ』】発動
・羽生やした変なデブ猫をMAX450体一挙召喚、空飛んで上空をいっぺん通り過ぎざまマネギ達をフヨフヨ投下

・無駄に頭数居るマネギをふんだんに用い【団体行動】展開!

・テレビウムには「おう落ち着きたまい」って感じで前脚で頭撫でたげる保護や避難誘導を
・バウムクーヘン怪人(メカ)らには『憐みとか感じる前に食欲優先でバウムクーヘン食べに行く』という牽制――っていうか攻撃を




『>新種の怪人による侵攻を捕捉しました』
 電脳ゴーグルで目元を覆った無機質な女性。その口元が機械じみた滑らかさで動き、システムメッセージを読み上げるように抑揚の薄い聲を発した。
『躯体番号L-95。当機は怪人出現に対する哨戒_及び_排撃に高い適性を発揮します』
 アルダワの深部で発見されたミレナリィドールが、どのようにして生を受けたかは明らかになっていない。ただその躯体番号になぞらえたもう一つの名を彼女は持っている――エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
 怜悧な聲で告げると同時、鎧装騎兵のプラズマジェットがごうと爆ぜ。
 凄まじい勢いで上空を飛んできた物体に、鍵ビウムたちがわあっと歓声を上げる。
「あれなあに?」
「飛行機?」
「違うよ、人のカタチをしてる!」
『――友軍機、投下開始』
 かっこいいー! と手を振る鍵ビウムたちに手を振り返す代わりに、一度通り過ぎて行ったエルが次々と投下していくのはウィングキャットの『マネギ』。見た目こそ小判を抱えたふくよか翼にゃんこだが、実際は色々こなす高性能な小型機械兵器だ。その数なんと、450体!
「にゃんこだ!」
「かわいい~!」
 すっかり緊迫感も忘れてはしゃぐ鍵ビウムたちを、ふよふよ降り立ったマネギたちは安全な場所に連れて行く。まだ怪人に出くわしたショックで戸惑っているビウムには、優しく前脚で頭を撫でてあげて落ち着かせる心遣いも忘れない。ふとめの前脚でぽむぽむしている姿は包容力を通り越して一種の貫禄さえある。セリフをあてるとしたら『おう落ち着きたまい』という感じだろうか。
 たまーにマシン怪人が冷酷なる一撃を浴びせてきたところで、焼け石に水というものだ。何せマネギたちの頭数はやたら多い。
『ギギ……涙ノ、結末……』
 バウムクーヘンが袋をごそごそしつつ、涙に濡れたバウムクーヘンで精神攻撃を飛ばそうとしてくるけれど。
 そこはにゃにゃにゃーん! と一斉に飛び掛かったマネギたちが、憐みだの何だのを感じる前に食べ尽くしてしまった!
 そのままポコポコとバウムクーヘン怪人に猫パンチを食らわせたり、頭部を食べてみようとしたらやっぱりマシン化していてダメだったりと、マネギたちは大活躍。
 フルスピードで上空を駆けて行ったエルが緩やかに速度を緩め、大きく弧を描きながら戦場に戻って来る頃には、バウムクーヘンはすっかり食べ尽くされ、本体も斃されていたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
【MJA】
旅団の仲間3人とあたいで猟書家をやっつけに来たよっ!

恋心を利用されて機械化されちゃったバウムクーヘンさん
倒すのはちょっと心苦しいけど……
つらい心を忘れたいからって、心を全部を捨てちゃうのは間違ってるよっ!

機械化されてるってことは、怪人さんはほぼ無機物で構成されてるはず
だったら、あたいとライムの御神楽(UC)で無機物を裁きの神火に変換して、怪人さんの視界を炎で覆い尽くす!
これでバウムクーヘンも一瞬で黒焦げで憐れみも何もないよねっ?
あと涙は水分とミネラル……無機物で出来てるからこれも変換可能!

その恋は報われなかったけど、誰かに踏み潰されていい感情じゃなかった
やっぱり猟書家は許せないっ!


九重・白亜
【MJA】

恋、ですか。まるでドラマのような引き裂かれ方……それはもう、辛かったでしょう。
ま、だからといって、同情するわけないんですけどね。オブリビオン。

機械化されているのなら、破壊が通るでしょう。ストリーマで一発、顔面にクイックドロウした後指定UCを発動します。一発でも傷を与えれば、そこから風化が始まります。

恋は弱肉強食、そして早い者勝ちです。あなたはその敗者だ。だから、敗者は静かに去ってゆくといいでしょう。風化して崩れ消える、バウムクーヘンのように……バウムクーヘンってなんだよ。


ジェイ・ランス
【WIZ】【MJA】※アドリブ歓迎
■心情 ふーん、機械になれば心はいらぬ、と。安直だねえ。機械からすれば、心が欲しくなるもんだよ。ない物ねだりだな。
ま、ともかく、そんな独りよがりなもんで憐れみを誘ってもねえ……

■戦闘
襲われるテレビウム達に"重力制御術式"による重力障壁(オーラ防御)をし、手を出させないようにします。UCを地面に放って電脳空間を形成し、引き出物の入った紙袋を情報的に分解。事象の欠片にしてしまいます。 攻撃は"ガトリング砲"、"電送砲"による【制圧射撃】をおこない、【蹂躙】します。

ふん、未練だけで動いてるのかお前さん?正直、無意味だと思うがね。未来を見なよ?


レーヴァ・アークルージュ
【MJA】
恋をした、だけど思いは叶わなかった。この気持ちは報われなかった。それは辛いし悲しいだろうね。報われない最後なら「恋などしなければ良かった」っておもう気持ちも、否定はしないよ。
だけど……本当に恋をした思い出をなくそうとするなんて、ダメに決まっているよ。
ユーベルコードを用いて白き浄化の炎を顕現。その浄化を物質的な存在の浄滅ではなく霊性、つまり精神面での浄化に用いて悲しみを癒して涙を止めることでユーベルコードを封じ込めていくよ。
辛いことをなかったことにしたい。その気持ちは理解できるし、誰にも否定できることは出来ないと思っているんだ。だから私の我儘で貴方を浄化して止めてみせるよ。




「恋、ですか」
 清楚なメイド服に身を包んだ中性的な人物が、ぽつりと呟いた。
「まるでドラマのような引き裂かれ方……それはもう、辛かったでしょう。ま、だからといって、同情するわけないんですけどね」
 心中は察するが、それはそれ、これはこれである。何せ相手はオブリビオンだ。眉一つ動かさず九重・白亜(オルタウィザード・f27782)は云い放った。
「そういう事だ。そんな独りよがりなもんで憐れみを誘ってもねえ……」
 ウォーミングアップのように首を鳴らしながらジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)が言葉を続けた。その手を何気ない様子で宙に向けると、虚空に浮かび上がったホログラムがジェイの手によって操作され、重力を制御する術式を展開する。不可視の層がバウムクーヘン怪人と鍵マークのテレビウム達の間に立ちはだかり、彼らを護る鉄壁となった。電脳体であるジェイだからこそ出来る、媒介を必要としない電脳魔術だ。
「恋心を利用されて機械化されちゃったバウムクーヘンさん、か」
 蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)が勾玉を握りしめる。裡に宿った妹の魂魄に呼び掛けるように。
「倒すのはちょっと心苦しいけど……つらい心を忘れたいからって、心を全部捨てちゃうのは間違ってるよっ!」
「レモンちゃんの云う通りだよ」
 頷いたのはレーヴァ・アークルージュ(超学園級の烈焔魔導士・f29627)。炎のように赤く豊かな尾を持つ妖狐の少女だ。
「恋をした、だけど思いは叶わなかった。報われなかった。それは辛いし悲しいだろうし、「恋などしなければ良かった」って思う気持ちも、否定はしないけれど、だけど……」
――本当に恋をした思い出をなくそうとするなんて、ダメに決まっているよ。
想いはそれぞれ。けれど心はひとつ。
M.J.A――魔導猟兵協会に集う者達が、戦いの火蓋を切る。


「猟兵、がんばれー!」
 重力の盾の向こう、カメラ携えた鍵ビウムたちの歓声が聞こえる。
『コンナ、結末……悲シイ、結末』
 マシン怪人の聲は無機質な合成音の如き響き。紙袋から取り出すバウムクーヘンを濡らすのは、今は失ってしまった傷心の流した涙だろうか。
「それで本当に満足だったのかよ、お前さんは」
 させぬとばかり、真っ先に動いたのはジェイだ。ブラックホールのように圧縮した電脳魔術を、敵ではなく地面めがけて放つ。炸裂した電脳ブラックホールはみるみるうちに広がり、戦場となる広場全体へと根を伸ばしていく。
『コレヲ喰ラエ……ン?』
 ジェイの魔術が形成した電脳空間の中では、何であれ彼の支配下にあるも同然だ。形あるものは徹底的に分析され、それが有毒であるならば分解され事象の欠片にされてしまう。ぽろぽろと崩れ、地面に落ちる前に消えてしまうバウムクーヘンはいっそ当初より哀れなほどであったが、それには最早敵の動きを阻害する作用は残されてはいなかった。
 ならば、と怪人が新品のバウムクーヘンを取り出して己の貌の側に当てた。新しく『涙に濡れたバウムクーヘン』を作り出そうとしたのかもしれないが、マシンと化した双眸からは涙の一滴も流れ落ちることはなかった。
「しがらみを棄てたからって強くなれるわけじゃない。――それに、機械からすれば心が欲しくなるもんだよ。ない物ねだりだな」
 ガトリング砲と電送砲を構えるジェイが片眉を持ち上げて笑んだ。少し自嘲めいた笑みは、ジェイがバーチャルキャラクターであるから、だろうか。その基となったアニメの中でも、彼は生命体ではなかったのだから。
 防衛AI。人々をより良い未来へ導くための。
「どちらにせよ、未練だけで動いてるなんて正直、無意味だと思うがね」
 もっと真っ直ぐに『未来』を見つめた方がよっぽど建設的だぜ、とおどけるように肩をすくめて。
 放たれた砲撃とプラズマは、確かに新人類たちの敵となる怪人を撃ち抜いたのだった。


「機械化されているのなら、オレの破壊が通るでしょうね」
 白亜が懐から取り出したのは、片手で扱えるサイズの軽機関銃『ストリーマ』。メイド服の裾をはためかせ、早業で銃撃を浴びせかける。
 同情も躊躇もない、顔面へのクイックドロウ。魔術の心得もある白亜が放つ弾丸は只の破壊にはとどまらない。顔面を穿ち、刻み込まれた罅が、みるみるうちに広がっていく。『風化』していく。
 破壊魔術。一発でも叩き込めば、あとは自壊を待つだけでいい。
『身体ガ……アア、貌ガ、崩レテイク』
 バウムクーヘンだった怪人は小さな手で貌の綻びを押し留めようとするが、元々しっとり美味しい生地が何層にも積み重なって出来たものだ。層と層の間から広がった亀裂は、あっという間に怪人を侵食していく。
「形あるものはいつか崩れるのですよ。機械となったあなたは誰かに美味しく食べられる事もない。そして――」
 はらはらと砕けていく怪人を見下ろしながら、白亜は硝煙をふうと吹き飛ばす。
「恋は弱肉強食。そして早い者勝ちです。あなたはその敗者だ。敗者は敗者らしく、静かに去ってゆくといいでしょう。風化して崩れ去る、バウムクーヘンのように……」
役目を果たした軽機関銃を担いだメイド服の人物が『キメ台詞』を告げるさまは、まるでアニメのワンシーンのようでとても絵になっていた。メイドさんと武装の組み合わせというのはそれだけでテンションが上がるものだ。これには鍵ビウムたちもそっと貌を見合せて大喜び。画面の向こうの猟兵ファンたちも大盛り上がりだったに違いない。
 しかし当の白亜は、ふと我に返って呟くのだった。
「バウムクーヘンのように……いや、バウムクーヘンってなんだよ」
 なんなんでしょうね。


(「やっぱり……この力が効いちゃうってことは、あの怪人さんは殆ど無機質になってるんだね」)
 レモンは作戦がうまくいったことを安堵すると同時、少しだけ切なさを覚えていた。同情や憐みで動きを止めさせる怪人の技は阻害したのにも関わらず、だ。
 勾玉に魂を宿した妹と力を合わせた御神楽によって、無機物を裁きの神火へと変換するレモンの技。今やバウムクーヘン怪人の頭部を形成しているのは薄い金属の層に他ならず、自然発火の如く燃え上がった怪人は涙誘うバウムクーヘンごと黒焦げだ。
 そもそもでいえば、涙とて細かく分析していけば水とミネラルで出来ている。何もかも燃やしてしまえば、憐みなどとは無縁。……だった筈、だけれど。
「何だか……悲しいね」
 レモンの気持ちを代弁するかのように、レーヴァが呟いた。
「あんなに悲しんでたってことは、きっとその人の事、すごく好きだったんだと思う」
 レーヴァの周りにも、炎がぽつり、ぽつりと顕現していく。レモン『達』の操る裁きの炎のような目を灼く輝きではなかった。霊魂のように白く、頼りなささえ感じるような純白の炎。だがそれが無数に集まれば、物質界に存在するものを無条件で浄滅させられる強大な力となる。
 けれど今、レーヴァが行使してみせた炎は。
 何でも灼き払ってしまえる暴力的なものではなく、どこまでも澄み渡っていた。
それはレーヴァが持って生まれ、更に魔法学校で磨いてきた技術の応用だ。『霊性』という『物質』を浄化させる――つまり。
(「あの人の悲しみを癒す、浄化させるための力として」)
「……その力」
 自身も霊能力を有し、神と心を通わせるレモンは、レーヴァの力の使い方に気づいたようだ。うん、とレーヴァは頷いた。
「攻撃面じゃあんまりお役に立てないかもしれないけど」
「そっちはあたいとライムにどーんと任せてよっ」
 自らの胸を叩いて笑うレモンに、レーヴァも笑い返して。
 六十九の浄化の炎。その全てを、怪人の精神めがけて解き放つ。
『アア、ア……?』
 心を無くした筈の怪人が、どこか戸惑うような聲を漏らした。とうに何の感情も浮かばなくなっていた筈の双眸から、――つ、と涙が溢れた。ふたつの線はバウムクーヘンだったものの生地を伝い、顎にあたる部分から零れ落ちて……紙袋の中身に到達してしまう前に、じゅっ、と小さな音を立てて燃え尽きていった。
「辛いことをなかったことにしたい。その気持ちは理解できるし、誰にも否定することは出来ないと思っているんだ。でもね」
 その選択だけならば、レーヴァは尊重したい。けれど怪人は辛さを忘れたいがために猟書家の傀儡となり、善良なテレビウム達を危険に晒してしまった。
「だから私は、貴方を浄化して止めてみせるよ」
 これは私の我儘だから。どこか寂しそうに、そう呟いて。
 力を失ったバウムクーヘンを燃やし尽くすように、レモンの操る焔が荒々しさを増していく。赤と白の炎が全て消えてしまう頃、怪人の姿はどこにも存在しなくなっていた。


「あんな甘言に乗ってなきゃ、また違った結末もあっただろうに」
「星の数ほど女性はいるとも云いますものね」
 重力の障壁を解除し、テレビウム達の無事を確かめるジェイに、調子を合わせるように白亜が云った。
 考え込んだ様子のレーヴァの肩に手を乗せ、レモンが眉根を寄せる。
「恋は報われなかったけど、だからといって誰かに踏み潰されていい感情じゃなかった。……やっぱり猟書家は許せないっ!」
「うん。怪人だからって、傷ついた心を利用されていいわけがないよ」
 レーヴァの言葉に、レモンは力強く頷いた。ジェイも異論はないとばかりに肩をすくめ、白亜も涼やかな眼差しをそっと伏せて同意を示したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
【ヴィクトリアちゃん(f00408)と】

美味しそうだったのに持ち味を生かして欲しかった!

『話聞くには自分から望んだみたいだけどね』
相棒の魔剣…シェル姉の容赦ないボヤキ

それはそれ、折角だし派手にいこう!
ヴィクトリアちゃん、テレビとか見たりする?

【蒼斧の武者】を召喚
青い鎧の格好いい造詣のゴーレム!流れる主題歌!
燃えろ!倒せ!ガイレツオー!必殺ガイレツブーメラーン♪
(軽快で勇壮で昭和な歌詞)

応援よろしく、その声でガイレツオーは強くなる! と、テレビウム達に
声援を受けて真っ向から勝負!

ヴィクトリアちゃんがいると場が華やぐね
あれは荒唐無稽だけど、お話の中くらいは絶対に正しい事があってもいいと思うんだ


ヴィクトリア・アイニッヒ
セフィリカ(f00633)さんと。

なんと言いますか、キマイラフューチャー世界の怪人というのは、本当にもう…。
何にせよ、他者に危害を及ぼすというのなら見過ごせません。
まずはこの場もいる人々の安全確保、ですね。

ゴーレムを召喚するセフィリカさん、そしてテレビウム達を庇う様に前へ出て、UC『陽光よ、祝福を齎せ』を使用。
目的は攻撃でなく、先んじて地を打つ事で戦場の空気を変える事。
戦場を聖気で満たし、その聖気で結界を作り、人々を護りましょう。

…それにしても、セフィリカさんもテレビウム達も楽しそうで。
私、テレビはあまり見ないのでこの雰囲気には混じれませんが…でも、見ているだけで微笑ましい気持ちになれますね。




「せっかく美味しそうだったのに……そこは持ち味を生かして欲しかった!」
『話聞くには自分から望んだみたいだけどね』
「シェル姉、容赦ないね……」
 意思ある魔剣シェルファと言葉を交わすのは、『彼女』に選ばれた少女セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)。シェルファが面倒見がよくて頼もしい女性なのは、幼い頃から彼女の聲を聞いていたセフィリカが一番よく知っているものの。どうにも物言いがぶっきらぼうなのだ。
 そんな一人と一振りの様子にくすくすと微笑みながらも、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)もバウムクーヘン怪人を見遣る。
「なんと言いますか、キマイラフューチャー世界の怪人というのは、本当にもう……」
 愉快な出で立ちだったかと思えば、いきなりシャキーンとマシン化してみたり。面白おかしく暴れ回っているだけかと思いきや、システム・フラワーズという物流システムを乗っ取るなどと結構えげつない事を企てていたり。
 由緒ある家に生まれ、神官騎士団に在籍していたヴィクトリアにしてみれば、なかなかに理解の範疇を超えている。
「何にせよ、他者に危害を及ぼすというのなら見過ごせません」
 召喚術を繰り出すセフィリカと、そして何よりテレビウム達を庇うように前に出たヴィクトリアが長柄の斧槍を構える。太陽の誇りの銘持つ穂が、その名の通り陽光のように温かく、力強い輝きを纏っていく。
「主よ、我らを守り導き給え……!」
 敵目掛けて刺突すれば、悪気を払う清浄なる一撃となる。それを攻撃には用いず薙ぎ払うように横に振るい、戦場全体に光を拡散させれば、放たれた聖なる気がテレビウム達を護る結界となった。
「わあ、きれい……!」
 きらきら輝いて降り注ぐ光に、テレビウム達もちっちゃな手を伸ばして見入っていた。
「いいねいいね、光に満ちた戦場。折角だからこっちも派手に行こう!」
 セフィリカが召喚するのは、蒼い鎧に巨大戦斧を携えた、七虹一番の伊達役者!
 舞い降りたゴーレムが戦斧を地面に突き立てれば、どこからか巨大スピーカーが現れてちょっと懐かしい感じの主題歌が流れ出す。
「ところでヴィクトリアちゃん、テレビとか見たりする?」
「テレビ、ですか? 他の世界と行き来するようになってからも、あまり見ないですね」
「そっかあ。大丈夫大丈夫、皆が盛り上げてくれるだろうし!」
 ちら、とテレビウム達の様子を伺うと。
「うわー! でかい! かっこいい!」
 基本的に楽しいものや画面映えするものが大好きなこの世界の住人たちは、巨大ロボじみたゴーレムの登場に大はしゃぎでカメラやスマホを構えていた。
 軽快で勇壮な主題歌に熱い男性ヴォーカルが乗り、最初のサビを歌い出す。
『燃えろ! 倒せ! ガイレツオー! 必殺ガイレツブーメラーン♪』
「ガイレツオー!」
「ガイレツブーメラーン♪」
 すぐに名前を憶えて声援を飛ばすビウムたち。UDCアースのロボットアニメも最近はメジャーなアーティストとタイアップしたお洒落な主題歌が増えているが、いかにもアニメソングらしい昭和なフレーズも良いものだ。覚えやすいし口遊みやすい。
「ガイレツオーは皆の聲で強くなるんだよ、応援よろしくね!」
「ガイレツオー!」
「ガイレツオー!!」
 聲を張り上げ応援するテレビウム達。画面の中のチャットも熱いメッセージで満たされてスクロールが止まらない。
 勇猛なる武者が戦斧を地面から引き抜き、その眼光がマシン怪人を真っ向から見据える。
「みんなの明日を守って、ガイレツオー!」
 振り上げた斧がマシン怪人めがけて下ろされる。怪人は涙に濡れたバウムクーヘンでガイレツオーの、皆の希望を打ち砕こうとするが、そんなもので蒼き勇者は止まらない。
 重い一撃が、悲しい過去ごとバウムクーヘン怪人を叩き潰していた。
「かっこいいぞー!」
「ブーメランは? ブーメランも見せて!」
「ふふっ、なんだか見ているだけで微笑ましくなれますね」
 ロボットアニメを嗜んだことのないヴィクトリアは、きゃあきゃあ大はしゃぎするテレビウム達のような盛り上がり方はわからないけれど。一生懸命拍手で声援を送っていた。
 テレビウムたちも、そして何よりセフィリカも楽しそうだ。
「ヴィクトリアちゃんこそ」
 サービスとばかりにガイレツオーに派手なアクションをさせつつ、セフィリカが笑った。
「さっきの結界とかすっごく綺麗だったし、ヴィクトリアちゃんがいると場が華やぐよ」
 まるでアニメのヒロインみたいにね、なんて。
「そうでしょうか? それなら嬉しいです」
 恥ずかしそうにはにかみながら、ヴィクトリアも言葉を返した。
「あれは荒唐無稽だけどさ」
 自らの編み出したゴーレムを指して、セフィリカは呟く。
「お話の中くらいは絶対に正しい事があってもいいと思うんだ」
「……セフィリカさん」
 オブリビオンではなく、他ならぬ同胞たちによって国を窮地に陥れられている王女。
 護り続けてきた国を、護りきれなかった神官騎士。
 世の中が理不尽だらけなことを、二人はいやというほど知っている。
 だからこそ。
「セフィリカさん。私も、そう思います」
 強く、ヴィクトリアは頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『プレステル・ピスティ』

POW   :    強制忠義ビーム
【キング・ブレインへの忠誠心】を籠めた【パペットからのビーム】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【敵対心】のみを攻撃する。
SPD   :    パペットビーム乱射
自身の【左胸のキング・ブレイン・バッジ】が輝く間、【パペットからのビーム】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    「キングの覇道を阻む奴ぶっ殺す!!」
【パペット】を向けた対象に、【破壊光線もしくは罵詈雑言】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠テュティエティス・イルニスティアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「やられてしまったのですか、不甲斐ないですね。我らが機械軍に足手まといは不要です」
 悪の幹部のお手本のようなセリフと共に、現れたのはかのミニスカ軍服少女、プレステル・ピスティ。
 至る所に敬愛するキング・ブレインの意匠をあしらった軍服。左襟に燦々と輝くキング・ブレイン・バッジ。
 哀れなる怪人を心無き機械に作り替えたのだという女性は、自身も感情などとは無縁のような、極端に抑揚のない聲をしていた。
 けれどその右手がしきりにぱくぱくしているのは、まるで子供でもあやすかのような愛らしい造形のわんこパペット。
「なんで?」
 鍵ビウムが首をかしげてしまうのも無理はなかった。
「なんで、と申されましたか」
 わんこがぱかっと大口を開ける。
 ただならぬ殺気を察知した猟兵たちが咄嗟に防御術を張り巡らせ、あるいは鍵ビウムを抱きとめて離脱させる。極太の破壊光線が眩いばかりに光り輝き、先程まで彼らがいた場所を薙ぎ払っていった。
「ひぇ……」
「何故ならば、これは武力だからです。何故武力が必要か、おわかりですか」
 怯えながらもふるふると首を横に振るテレビウムたち。ふう、と息を吐いたプレステルが、突然に双眸を見開いた。
「我らがキングの覇道を阻む奴をぶっ殺すためだッ!! あのお方の気高き理想を阻む者は、プレステルの名のもとに此処で消し炭にするッ!!!!!!」
 そこに今までのクールさは微塵も感じられなかった。
 なるほど確かにキング・ブレインの忠実なる腹心だ。キャラとして軸がブレている。ブーレブレブレ。

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 プレイングはすぐに送って頂いて大丈夫です。
 🔵が溜まってきた段階で締め切りを決定します。(MSページで告知します)
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馬飼家・ヤング
※アドリブトンチキ超展開大歓迎!

あんたやな、あの美味そうなバウムクーヘンをカッチカチのメタルクーヘンに変えたんは!
なんちゅーもったいないことすんねん!
くらえっ!

(強制忠義ビーム浴び)

……あかん、こんなかわいこちゃんを攻撃なんてでけへん
ちゅーか一目会ったその日から、恋の花咲くこともある!
お嬢さん!わいとケッコンしてください!!
わいのために毎朝モーニングバウムクーヘン焼いてください!
38歳彼女イナイ系魔法使いです!
わいと一緒に笑顔の絶えないほかほか家族を!さあ!さあ!

わいとあんたは一心同体、運命の赤いゴム紐で結ばれてるんやで!
逃げてもゴムの縮む勢いで食らいついて離さへんでー!
わいは死にまへーん!!




「あんたやな、あの美味そうなバウムクーヘンをカッチカチのメタルクーヘンに変えたんは! なんちゅーもったいないことすんねん!」
 食べ物の恨みは恐ろしい(二回目)。馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)ののび~るのび~るゴムがプレステルのベルトに絡みつく。
「ふっふーん、これだけピーンと張ったゴムを手放したら一体どうなるか……くらえっ!」
「させません」
「ギャアッ!?」
 伸ばしたゴムをパッチンする前に、敵対心を破壊する強制忠義ビームがわんこパペットから放たれた。じりじり後ずさりながらゴムを伸ばす事に気を取られていたヤングは、避ける間もなく真っ向から食らってしまった。ヤング、大ピンチ!
「マシン化と違って効果は短期間ですが、弾避けの捨て駒程度には使えるでしょう……今からあなたは私の、いえ、我々の忠実なる部下となるのです」
 つかつかと靴音鳴らし、プレステルがヤングに歩み寄る。
「さあ、貌を上げなさい」
 うずくまっていたヤングの頬に手を添えて前を向かせる。そのモニターに映る顔文字がハートマークのおめめになっていた。プレステルが怪訝そうに眉を顰める。
「……あかん、こんなかわいこちゃんを攻撃なんてでけへん。ちゅーか一目会ったその日から、恋の花咲くこともある!」
「……恋?」
「お嬢さん!」
 思わず後ずさり距離を置こうとしたプレステルの両手を、有無を云わさずガシッと掴んだ。
「 わ い と ケ ッ コ ン し て く だ さ い ! ! 」
「…………は?」
「わいのために毎朝モーニングバウムクーヘン焼いてください!」
「何ですか、モーニングバウムクーヘンって」
 逃れようとするプレステルだが、ヤングの握力は思ったより強かった。
「38歳彼女イナイ系魔法使いです! 一途さには自信があります!! わいと一緒に笑顔の絶えないほかほか家族を! さあ! さあ!」
「私はキング・ブレインに忠義を誓う者ですので、婚姻は今の所考えてはいません」
「そんなに照れる事あらへんで、お嬢さん」
「遠回しに嫌と云っているんです」
 ヤングの手を振り払えないプレステルは、せめてゴム紐の方をどうにかしようと身を捩るが、こちらもベルトにがんじがらめになっていてびくともしない。
「わいとあんたは一心同体、運命の赤いゴム紐で結ばれてるんやで!」
「なんて悪質な。離してください」
「逃げてもゴムの縮む勢いで食らいついて離さへんでー!」
「離せと云っている!」
「わいは死にまへーん!!」
 言葉のキャッチボールどころかドッヂボールである。結局、自らの洗脳光線の効果が無くなるまで、プレステルはたっぷり追い回されたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空・ミナイ(サポート)
『見える範囲を探していこうかな』
 ヤドリガミのアーチャー×ビーストマスター、22歳の男です。
 普段の口調は「気弱な青年(僕、~くん、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、心を許したら「丁寧(僕、~様、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


雛里・かすみ(サポート)
 バーチャルキャラクターの戦巫女×UDCメカニックの女性です。
 普段の口調は「明るく朗らか(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
寝起きは「元気ない時もある(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

明るく朗らかな性格の為、
男女分け隔てなくフレンドリーに会話を楽しみます。
どんな状況でも、真面目に取り組み
逆境にも屈しない前向きな性格です。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「あれが、猟書家?」
 そう問いかける色の白い貌は、性別を表す特徴が極めて希薄だ。
 それは彼――空・ミナイ(求める物・f01988)が、ヤドリガミという仮初の肉体を持つ存在だからかもしれない。
 女性のように繊細な貌立ち。睫毛の長いブルーグレイの眸は伸ばした前髪で片方が隠され、線の細い身体は青のラインが特徴的な隠密装束に覆われている。
「うん、折角平和になった世界に、またオブリビオン・フォーミュラを誕生させようとしているらしいよ」
 勘弁してほしいよね、と頬を膨らまし腕を組んだのは雛里・かすみ(幻想の案内人・f24096)。豊かな黒髪を尖ったシニヨンのついたツインテールに纏めた快活な女性だ。
「オブリビオン・フォーミュラ……それがいると、また世界に新たなオブリビオンが出現してしまうんだよね」
「そう。皆が護った平和が全部無駄になっちゃう。この世界はダンスに音楽、楽しいものがいっぱい溢れているのに、また戦乱に巻き込もうとしているなんて!」
 仮初の肉体という点では、かすみもミナイと似通っている。但しかすみはミナイと違い、本体を持つわけではない。彼女はバーチャルキャラクター。電子の存在なのだ。
 楽しい事、映える事なら何でも大歓迎という気質の者が多いキマイラフューチャーと縁の深い種族故だろうか。彼女も勉強から芸術まで、様々な分野に関心を持ち打ち込む多芸な一面がある。当然、この世界の文化にも惹かれるものがあっただろう。
「絶対に止めなきゃ」
「うん。……僕も、最善を尽くすよ」
 魔法物と蒸気物を組み合わせた風変わりな弓を構え、ミナイが敵を見据える。
 ――プレステル・ピスティ。その胸元にあしらわれた髑髏の眼窩がぎらりと赤く光った。
「我々の野望を阻害する者は、何であれ排除します」


 プレステルの携えたわんこパペットの口がぱかりと開き、光り輝くビームが放たれる。
 身を翻した二人のすぐそばを蒼白い光線が駆けて行った。
 鮮やかに着地したかすみの足元を狙い澄まし、追撃が炸裂する。
「わっ! ……とと」
 ダンスのステップを踏むような足取りでそれを躱せば、フリルをあしらった袖元がふわりと可憐に舞った。
「猟書家の名は伊達じゃないってことね」
 自身の命を削り、攻撃回数を九倍にも高める捨て身の技だ。必ずや任務を遂行してみせるという意思の強さを、かすみは敵ながらに感じ取った。
 ――ひゅ、と空気を貫くような音と共に、光るものがプレスティ目掛けて襲い掛かった。彼女の操ってみせた光線に比べればあまりに細く、頼りないもの。
 だがそれは、まるで未来を予知していたかのような正確さで光線の嵐を掻い潜り、プレスティまで届いた。
「……っ」
 彼女を強化する左胸のバッジめがけて放たれたそれは、咄嗟に翳されたプレステルの左腕によって阻まれてしまった。矢の突き刺さった腕を怜悧な眼差しで見下ろしながら、プレステルはパペットわんこの右腕でそれを引き抜いた。
 血が飛沫き、それが地面に投げ捨てられる。ミナイの放った矢が。
(「まるで、いつかの僕を見ているようだね」)
 空を追いかけるような眸で、そんなことを思った。泥塗れで転がされていた、包むものを失ったただの鞘。それが『ミナイ』。
 しかし新たに得た肉体で、その眸で、敵を視認し極限まで集中力を研ぎ澄ませば、それは千里眼の如く敵を穿つ道筋を見出す一手となる。
 畳みかけるように、衝撃波がプレステルを襲った。膝をつくプレステルが忌ま忌ましげに見つめる先には旋風刃――巨大な薙刀を構えたかすみの姿。
「そっちがその気なら、私も本気でお相手するよ」
 巫覡載霊の舞。神霊体となる事で敵の攻撃を軽減し、なぎなたから衝撃波を放つことを可能とする、攻防一体の舞だ。強力な代わりに、術者自身の寿命を削り続ける。
 再び放たれたパペットの光線に、かすみは真っ向から飛び込んでいった。衝撃波で打ち消せるものは打ち消し、往なしきれないものはそのまま受ける。いかに神霊体といえど無傷では済まないが、プレステルの覚悟を打ち破るには多少の犠牲は必要だろう。
「……かすみさん。ありがとう、助かる」
 再び矢をつがえたミナイの千里眼が、真っ向からプレステルを射抜いた。
 絶大な命中率を誇る反面、十秒間の集中を必要とする技だ。たった十秒だが、激しい戦場ではそれが命取りとなる局面もある。
 ヤドリガミのミナイは本体が壊されぬ限りは不死身だ。それでもこうして矢面に立ち、攻撃を逸らし続けてくれるかすみの存在はとても有難かった。
「無駄にはしないよ」
 放たれた矢は美しい軌道を描き、プレステルの左胸を穿っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

榊・ポポ
ヘイヘイヘーイキャラがブレてるぞー♪
(ミニポポちゃんズと共に挑発ダンス)
ヘイヘイヘーイどこ狙っているんだー♪
(野生の勘でクソウザいムーブで回避)
死角から不意打ちや騙し討ちでヘイトをこっち向けるね!
狙うは罵詈雑言攻撃をあえて受けて逆ギレアタックさ
仕事のストレスも溜まってるからね!
ストレス解消のサンドバッグにしてやるッ♪
......
あ"?おめ今なんつった
ポポちゃんの事バカにした?
ボボぢゃ"ん"の"事バガに"じだな"ぁ"!!(きたない声)
ゆ"る"ざん"!
蹂躙してやるッ!
二度とシャバを拝めない様にしてやるッ!
ポポちゃんブレてるよ!
物理的にな!




 蒼白い破壊光線が放たれ、広場のアスファルトに亀裂を刻んでいく。
「ヘイヘイヘーイどこ狙っているんだー♪」
 ちいさな羽と丸っこいボディをひょこひょこさせて、榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)が器用に身を翻して破壊光線を躱していた。
「ちょこまかとやかましい鳥ですね」
「ヘイヘイヘーイキャラがブレてるぞー♪」
 ずんぐりむっくりボディのおしりを向けてポポちゃんが挑発すれば、ミニポポちゃんも一緒になって囃し立てる。
「ブレてるぞー♪」
「ぶっ殺す!!!」
「やってみなー♪」
 パペットの口元が白く光り輝く。光線が爆ぜる。ポポちゃんはプレスティの持ち合わせていない野生の勘であっさり避ける。
「くそっ……」
 どうやら見た目の印象よりも相当怒りの沸点が低いらしいプレステルが、すっかり頭に血の昇った様子でポポちゃんを睨みつける。
(「しめしめ、あの女、もうポポちゃんの事しか目に入ってないね♪」)
 怒りで視野の狭まった視界の死角から、ミニポポちゃんズが容赦なく嘴アタックをお見舞いする。
「っ! 痛い、痛い!! この駄鳥どもが……!」
 追い払っても追い払ってもミニポポちゃんズは何羽も湧いて出てくる。あちこちをつっつかれたプレスティは当初のクールっぷりはどこへやら、すっかり涙目である。
「あー愉快愉快。仕事のストレス発散は大事ね♪」
 四方八方からサンドバッグにされるプレスティを見物しつつ、ポポちゃんはつぶらな瞳であくどいスマイルを浮かべていた。
「くそっ、この……!」
 渾身の破壊光線で何とかミニポポちゃんズを追い払ったプレスティが、目を血走らせながら叫んだ。
「この、飛べもしないデブ鳥の分際で!!!!!!」
「…………あ゛?」
 ポポちゃんの笑顔が一気に凍り付いた。
「おめ今なんつった? ポポちゃんの事バカにした?」
「聞こえなかったか? 耳かっぽじってよく聞け。飛べもしないデブ鳥n」
「ボボぢゃ"ん"の"事バガに"じだな"ぁ"!!」
 同一鳥物とは思えないくらい野太いきったない声でポポちゃんが吼えた。
「ゆ"る"ざん"! 蹂躙してやるッ!」
 ミニポポちゃんが突如七色に光り出した。頭を激しく動かしながらプレステルに突っ込んでいく!
「二度とシャバを拝めない様にしてやるッ! その綺麗な顔をフッ飛ばしてやるッ!!!!!!」
 追尾力も嘴の破壊力もマシマシになったポポちゃんがプレステルに群がっていった。
 激しく頭を振るポポちゃんもブレている(物理的な意味でも)。しかし本物のカカポは七色には光らないし、多分この動作は威嚇に用いない。
 やっぱりポポちゃんは高性能アニマロイドなのかもしれない。真相は闇の中だが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
●POW



仕える主君を持つロボ属性女子……
深刻なキャラかぶりを捕捉しました
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します

【嵐の王・蹂躙円舞】、発動(推力移動&空中戦)
高速空中機動にて敵攻撃射線に対し回避を講じると共、フルオートで投射し続ける【誘導弾】群にて畳み掛けます

敵のビームを被弾しようとも、当機の【継戦能力】への支障は皆無
躯体番号L-95、常駐タスク第一位――『全てのオブリビオンを狩り尽くせ』

当機のオブリビオンに対する攻撃コマンドは、当機の情動となんら紐付かない次元にて実行されるものです

真にクールなロボ属性女子のなんたるか
キマフューの無表情ジト目女子を代表し、教育を開始します




 電脳ゴーグルを額に持ち上げ、現れた金色の双眸で敵を黙視する。
「仕える主君を持つロボ属性女子…………」
 どこかで聞いたことのあるようなフレーズである。いや、どこかでというよりも。
「……深刻なキャラ被りを捕捉しました」
 そう、まさにそれは自分自身、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)のカテゴライズではなかったか。
「あなたにも忠誠を誓った主君がいるのですね」
 プレステルがパペットの口元をエルへと差し向ける。
「ならばその指令を妨げる者への敵対心は強大なものとなるでしょう。全て破壊して差し上げます」
 放たれた光線が届くよりも早く、エルは空中へと身を躍らせていた。
「これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」


「広域殲滅空戦モードに移行」
 ――嵐の王・蹂躙円舞。翼のように左右に大きく広がった機械に備え付けられた数多の砲身が、一斉に火を噴いた。
 一撃一撃は幹部級のオブリビオンに即座に有効打を与えるものではないが、フルオートで対象を超追尾する誘導弾が戦場中を駆け巡るのだ。
「くっ……!」
 そして最小限のリロード時間でそれを投射し続けるエル自身も、もはや目視することさえも困難な速度で空中を飛び交っている。ただでさえ絶え間なく誘導弾が襲い掛かって来るというのに、敵を視野に収めて撃ち落す事も困難なのだ。
 こうなってくれば戦闘というよりも、一方的な蹂躙に等しい。プレスティの冷静ぶった顔にも焦りが生まれていた。
 でたらめに撃ち続けた強制忠義ビームが、まぐれでエルを掠めていく事もゼロではなかった。狙いをつける事を諦めたやみくもな連射だからこそ、エルもあたりをつけて回避する事が難しかったからだ。しかし、その攻撃の手が緩まる事は一向になかった。
「馬鹿な。私の強制忠義ビームが効かないのか?」
 正確には少し違う。ビームの影響によりこのミレナリィドールの精神が揺さぶられるたび、最も重要な『指令』が上書きされ続けているのだ。
 躯体番号L-95、常駐タスク第一位――『全てのオブリビオンを狩り尽くせ』。
「当機のオブリビオンに対する攻撃コマンドは、当機の情動となんら紐付かない次元にて実行されるものです」
 精神よりも重視されるもの。そこに干渉する事は、いかにプレステルといえども出来なかったということだ。
「何という事……」
「真にクールなロボ属性女子のなんたるか」
 エルの砲身が一斉に光り輝いた。
「『教育』を開始します」
 一斉に誘導弾を浴びたプレステルが甲高い悲鳴を上げたとて。
 敢えてゴーグルを上げる事で見せつけたエルのジト目も、その表情も、ぴくりとも動かなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
【ヴィクトリアちゃん(f00408)と】

流石猟書家、キャラブレしても実力は確か
ビーム弾幕の密度が凄いや、迂闊に突っ込めない

『中々面白い相手じゃない』
シェル姉、相棒の魔剣…ってば強い敵が相手だと、割と嬉しそう
根が闘争心溢れてるんだよね

ヴィクトリアちゃん、ちょっとでいいの。私のカバー、頼める?
損はさせないからさ!

【月詠ノ祓・隠神】で勝負!
全身全霊を鞘を介して魔剣に込め、地面を割るほどの踏み込みとともに接近、全力を一刀に乗せる切り札だ
外せば二発目はない

狙うのは、攻撃が止まり次の攻撃に映る一瞬。その瞬間をぶち抜く!
自分の技を。
フォローしてくれるヴィクトリアちゃんを信じて自分を高め、勝機を見極める!


ヴィクトリア・アイニッヒ
セフィリカ(f00633)さんと。

キャラブレ…というのは良くわかりませんけど。
成程、冷徹非道な輩であるのは事実なようです。
その悪意、断ち切ってみせましょう。

…とは言うものの、流石は幹部猟書家。攻撃の圧が、強烈です。
結界術もそう長くは…え、セフィリカさん?
分かりました。やってみせましょう…!

結界術で攻撃を凌ぎつつ、UC【神威の光剣】を使用。
喚び出した無数の光剣を降り注がせ、敵の動きを封じる事を狙います。
…無論、簡単に動きを封じれはしないでしょう。
ですが、一瞬。一瞬でも、プレステルの意識を此方に傾けさせる事が出来たのならば。

「──今です!」

彼女の振るう刃が、きっとこの状況を変えてくれるはずです。




 命を賭して放たれる、九連撃のパペットビーム。
 プレステル・ピスティの胸元で、忠義を誓った男を模したバッジが光り輝いている。
「流石猟書家、キャラブレしても実力は確かだね」
 なんとか躱し続けているセフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)だが、それは回避に意識を集中させているからこそ。ひとたび反撃に出ようとすれば、すぐさま蒼白いビームに出鼻を挫かれてしまう。
「迂闊に突っ込めないや」
「ええ。キャラブレ……というのはよくわかりませんけど、攻撃の圧が強烈ですね」
 さすが幹部猟書家だと、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)が頷いた。
 躱し損ねたものは、ヴィクトリアが先程放った結界術の余波で和らげる事が出来るだろう。しかしそれも万全とはいかない。結界を破られ、二人の体力も尽きてしまえば、あとは敗北へと緩やかに堕ちていくしかない。
「なんとか看破しなければ」
 汗と共に滲み出しそうになる焦りを必死で押し留めながら、ヴィクトリアはプレステルの動きを、攻撃の軌道を観察し続ける。どこかに隙がある筈だ。それを突きとめなければ。
(「冷酷非道な輩。その悪意を、必ず断ち切らねばなりません」)
 自らが忠誠を誓う者、信じるものがあったとて、その為に他の誰かを踏み躙っていいはずがないのだ。テレビウムの事もだが、散っていったあの怪人のことも。
『中々面白い相手じゃない』
 どこか気だるげだった先程とは違い、魔剣シェルファの聲は心なしか弾んでいた。
「随分嬉しそうだね、シェル姉」
『遠慮が要らなそうだもの』
 やはり本質が剣だからなのだろうか。どうにも彼女はクールな物言いとは裏腹に、強い相手を見ると闘争心を滾らせてしまうような一面があるようだ。
「……遠慮が要らないって?」
 くすり、とセフィリカが笑った。返事は無かった。わかっているでしょう、と云わんばかりに。
「ヴィクトリアちゃん!!」
 ビームがアスファルトに着弾し、破壊していく。その轟音に掻き消されないように、セフィリカは聲を張り上げた。
「ちょっとでいいの。私のカバー、頼める?」
「え、セフィリカさん? カバー……?」
 鞘に納めたままの魔剣の柄に手を添えて、セフィリカが頷いた。
 真っ直ぐにこちらを見つめてくる赤き瞳に、ヴィクトリアも力強く頷き返した。
「分かりました。やってみせましょう……!」
 辺りを満たす清浄なる陽光をより一層研ぎ澄ませながら、ヴィクトリアはセフィリカを庇うように身を躍らせた。
「何を企んでいるのかは知りませんが」
 銃口を向けるガンマンのように、プレステルがパペットを嵌めた右腕をヴィクトリアへと伸ばす。
「事を成すまでに、貴方を葬ってしまえばよいだけの事」
 先程まではセフィリカとヴィクトリアに分散されていたビーム。その全てがヴィクトリア目掛けて放たれる。


 避け切れない事を、ヴィクトリアは一瞬で察した。
 だからこそ今までのように回避行動を取る事を選ばなかった。
(「一度でいい。持ちこたえてください――!」)
 張り巡らせた結界術が衝撃を和らげる。一撃。二撃。三撃。
 四撃目のパペットビームで、結界に綻びが生じるのをヴィクトリアは感じた。
「主の威光よ、悪意を祓い給え……!」
 五撃目。その綻びを的確に突き抜けるようにして、蒼白い閃光がヴィクトリアの腕を掠めていった。その腕を振り上げて、ヴィクトリアは虚空より無数の光剣を呼び寄せる。太陽神の威光を具現化した聖なる剣を。
「──『神威の光剣』よ!」
 剣がプレステルへと襲い掛かる。光線がヴィクトリア目掛けて飛来する。
 結界を砕いたのが何撃目で、自分の太腿を灼いていったのが何撃目だったか。数える事を諦めたヴィクトリアの知る事ではなかったが――光剣の一部は光線に阻害され、一部は避けられた。それでも残る一部は、プレステルの四肢を貫き、地面へと縫い留めていた。
「これ、しき……!」
 配下の骨たちが光剣を咥え、引き抜いていく。想像も絶する激痛だろうが、プレステルは微かに眉を顰めただけだった。
「――今です!!」
 おそらく光剣の束縛はすぐに解かれてしまうだろう。ヴィクトリアはありったけの聲を振り絞って叫んだ。


「――ナイスだよ、ヴィクトリアちゃん」
 柄にかけた手に。白い鞘に触れた手に。
 全身全霊を込めて、猛然とセフィリカは踏み込んでいた。蹴りだした一歩がアスファルトの地面を割る。セフィリカに応えるように、赤い宝玉がきらめいた。
(「外せば次はない。この一撃に全てを賭ける――!」)
 右腕の光剣を引き抜いたプレステルがパペットを向けるが、ミサイルの如き速度で迫るセフィリカには到底追いつけるものではなかった。
 鞘の中で極限まで高められた魔力を解放するように、シェルファを抜く。
 その居合はあまりに速く、あるはずの刃が視えぬほど。神速の一閃が、プレステルを真っ向から斬り伏せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイ・ランス
【SPD】【MJA】※アドリブ歓迎
■心情 ぶっ殺すだけだったら、別にテレビウム狙わなくてもいいだろうに…。いや、そのほうが猟兵誘い出すには好都合かね? さて、こいよ!プレプレちゃん!武器なんて捨てて……って、撃てなくなっちゃった?そっかー。

―――Ubel:Code Babel_Kanone Dame.

ま、オレは撃っちゃうんだけどね!
■戦闘
【MJA】の他のメンバーが準備を終えるまで、民間人への重力壁による防御行動(オーラ防御)と、回避行動(フェイント、滑空、ダッシュ)に専念します。皆が一様に行動を終了し次第、最後にをUCにてトドメとします。

ここは享楽の世界だぜ?楽しめないなら帰った帰った!!


レーヴァ・アークルージュ
【MJA】
さて、それじゃあ始めようか!
そう言ってユーベルコードを起動。様々な神話の炎を召喚して敵に対する命中率・回避率・ダメージを3倍にすることで相手のパペットによる破壊光線もしくは罵詈雑言攻撃を回避して行くよ。
「今だよ、白亜君!」 そして避けタンクとして動くことで、白亜君のユーベルコードの起動条件を満たしてユーベルコードを相殺してもらうよ。
「レモンちゃんナイス!」 次にレモンちゃんの封殺ユーベルコードで封印。
「止めだよ、ランス君!」 最後にランス君の武装強化型ユーベルコードを伝導熱の操作や陽炎の制御によってランス君の照準補正が有利になるよう熱を操作していくね。


九重・白亜
【MJA】

なるほど、今回の騒動は貴方が原因ですか。ではピスティ様、あなたが覇道を歩むというのならば、オレはその試練となりましょう。超えられないのなら、所詮お前はその程度だ。

ランス様が敵の注目を受けてくれるようなので、情報収集に徹します。目的は相手の解析ですから、皆様が誘発した敵UCを解析、術式をクイックドロウ、指定UCを発動します。
キングの覇道とやら、それをただのメモ用紙一枚に負かされれば相手も焦るでしょう。皆様、あとは任せました。

キャラも感情もカリスマもブレブレなら、覇道を歩むその足も揺れて脇道に逸れる。次はパペットに本心を肩代わりせず喋るんだな。


蛇塚・レモン
【MJA】
うん、完っ全に有罪だねっ?(激怒)
あんたの野望はあたいら魔導猟兵協会が砕くっ!
いくよ、みんなっ!

宣言するね、あたいはあんたを右ストレートでぶん殴るっ!
戦闘知識+コミュ力で仲間と連携を重視
レーヴァさんへの攻撃は『白き蛇神の眼力』の念動力+催眠術で軌道を逸らして回避補助
白亜さんが攻撃を相殺後、あたいの出番っ!
蛇神様、あいつにキツ~いお仕置きしちゃってっ!
召喚した蛇神様が、敵のUCと身動きを封じる破壊衝撃波を放つね
(鎧無視攻撃+マヒ攻撃+呪詛+捕縛)

封殺した敵に肉薄を試みてオーラガンの霊力を右拳に込めてぶん殴っちゃうよっ!
呪殺弾パンチを喰らえーっ!
(念動力+神罰+怪力+衝撃波+吹き飛ばし)




「ぶっ殺すだけだったら、別にテレビウム狙わなくてもいいだろうに……」
 その方が猟兵を誘い出すには好都合ということか、とジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)が問うた。
「いえ。『鍵』を宿したテレビウムはシステム・フラワーズへの道を拓くのに必要不可欠。殺しはしません」
「……さっき明らかにテレビウム目掛けて撃ってたよね?」
「撃ってましたね」
 今更冷静かつクールなキャラぶるプレステルには、レーヴァ・アークルージュ(超学園級の烈焔魔導士・f29627)と九重・白亜(オルタウィザード・f27782)も思わず顔を見合わせてヒソヒソ話。
 ジェイの展開した重力壁のオーラ防御の向こう側で、哀れな鍵ビウムたちもぷるぷる震えていたという。
「うん、完っ全に有罪だねっ?」
 蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)も頬を膨らませて同調する。
「それにしても……なるほど、今回の騒動は貴方が原因ですか」
 プレステルの姿を矯めつ眇めつ、白亜。
「ではピスティ様、あなたが覇道を歩むというのならば、オレはその試練となりましょう」
 ――超えられないのなら、所詮お前はその程度だ、と。
「そういう事! あんたの野望はあたいら魔導猟兵協会が砕くっ! いくよ、みんなっ!」
「さて、それじゃ始めようか!」
 レーヴァが起動したのは様々な神話魔術からなる焔の数々。彼女の豊かな尻尾よりも赤々と燃える紅は槍であり剣であり、聖にして神なる存在。その数々。
「我は召喚者、身を捧げずにして神なる領域の絶炎をこの手に得る魔の道を往く存在なり!」
 炎は生命にとって本能的な恐怖を齎す破壊であり、人々にとってはそれを友に発展してきた叡智の存在である。古来より様々な書物に綴られた焔の数々が、レーヴァを取り囲み、その能力を大幅に増強させていく。
「目障りですよ。暑苦しいです」
 眉を顰めたプレステルが破壊光線を放つが、高めた身体能力をフルに活かしたレーヴァが身を翻して避ける。その上で、召喚した炎を煌々と燃やして敵の眼を惹く事と、避けた後方にて味方を巻き込まない位置取りも忘れてはいない。
(「受ける事だけが『タンク』の役目じゃないってね」)
 ゲームが豊富なUDCアースや、その中の世界観に通じるものの多いアルダワ魔法学園を行き来する事の多い、彼女らしい言い回し。敵の標的を自分に定めさせつつ見事に回避してみせるのだって、壁役の大切な立ち回り方だ。
 何度も撃ち込まれる光線が、時折はレーヴァを捉えることもあった。だがその身体に届くよりも先、深紅に染まったレモンの眼力が念動力で軌道を逸らす。
 そして、同じように立ち回っている猟兵がもう一人。
「さて、こいよ! プレプレちゃん!」
 走るたびに翻る金のマフラー。数々の武装。目を惹く外見を最大限に利用して、ジェイもプレステルの攻撃を惹きつけては回避するように動いている。他のメンバーの『準備』が整うまで、レーヴァの負担を抑えるように動いているジェイだが、彼自身鍵ビウムたちへの防御壁を行使し続けている。自らが被弾して万一にでもそちらが解除されてしまう事のないように、小柄な体格を活かしての機敏な立ち回りから時に滑空するように高台から身を翻してみたりと、ありとあらゆる動作で攻撃を往なし続けていた。
 レーヴァ目掛けて放たれる破壊光線。ジェイめがけて乱射される九連撃のパペットビーム。それらを避け続けてくれる二人に感謝しながら、白亜は赤茶色の眸を細め、ひたすらにその攻撃を見定める事に注力していた。
(「跳ね返せる可能性があるとすれば、あの破壊光線の方でしょうか」)
 四方八方に乱射されるパペットビームでは、はね返しきれない可能性もある。――それでは効果が薄い。白亜が狙うのは、あくまで『完封』なのだから。
「今だよ、白亜君!」
 何度目かの破壊光線を避けてみせたレーヴァの聲がする。白亜はそれに言葉で応える事はしなかった。ただ淡々と業務をこなすように、自分の成すべきことをしてみせた。
 携えたメモ用紙にさらさらと何かを書きつける。透明なインクで傍目からは何を書いているのかは判別がつかないが、インクの滲まない紙は白亜からの『指令』を忠実に受け止めて発動させた。
「オレがいる限り、同じ技は何度も通用はしませんよ。――この紙が見てるからな!」
 手裏剣のように放たれた紙が破壊光線の軌道に入り込み、そして蒼白き光線を一瞬で掻き消していった。
「……!?」
 プレステルの貌にあからさまな動揺が浮かぶ。
「そんな……まさか」
 光線の目映さで眼が眩み、今飛来してきたものの正体を見誤ったのだろうか。そんな混乱がありありと表情に現れていた。だってそんなはずはない。そんな――。
「キングの覇道とやらは、ただのメモ用紙一枚に負かされるくらい底の浅いものだったんですね」
 まさにその疑ってかかっていたものの『正体』を口に出され、プレステルが瞠目した。
「まさか。どんな強力な魔法を使ったというのですか」
「買いかぶらないでください。オレはただのメイドです」
 ロングスカートの裾をつまんで、白亜はからかうように会釈をしてみせた。
「……さて、皆様、あとは任せました」


「よーしっ、今だ! 蛇神様、あいつにキツ~いお仕置きをしちゃってっ!」
 レモンの召喚した白き巨大な蛇。獣が吼えるように首をもたげ、ありとあらゆる護りを貫通する破壊衝撃波を放つ。
「くっ」
「パペットからのビームだなんてナンセンス♪ そんなの使用禁止~っ!」
 無邪気に笑って子供のように煽ってみせるレモンだが、古来よりかの地に在り続ける蛇神の力も、そして神と心を通わせるレモンの才能と霊能力も本物だ。白亜の術によって冷静さを欠いていたプレステルは衝撃波に真っ向から晒され、その技も動きも封じられてしまう。
「レモンちゃん、ナイス!」
「そしてそして、今ここに宣言しますっ。あたいこと蛇塚レモンの『最後の一撃』は――右ストレートで、ぶん殴るっ!!」
 動きを止めたプレステルへと一気に肉薄したレモンは、ブレスレット型の増幅器を介して最大限まで高めた霊力を右拳に込めて、振りかぶった。
「呪殺弾パンチを喰らえーっ!!」
 真っ向から頬を殴られたプレステルの身体が木っ端のように飛んでいった。ずば抜けた霊能力を実力行使しがちな魔法系脳筋ガールの真骨頂である。
 地面に叩きつけられるプレステルへと、ジェイが歩を進めた。
「どうした、もう終いか? プレプレちゃん」
「誰が、プレプレですか……」
 血反吐を吐き棄てながらプレステルが呻いた。自慢のパペットも、今ではボロ雑巾のようになって地面に転がされたままだ。
「キャラも感情もカリスマもブレブレなら、覇道を歩むその足も揺れて脇道に逸れる……そういう事です」
 万一の時には再び術を相殺出来るように油断なく目配せしながらも、表面上は気だるげに白亜が呟いた。
「次はパペットに本心を肩代わりせず喋るんだな」
「そうそう。そんな物騒な武器なんて棄ててさぁ、……って、撃てなくなっちゃった? そっかー」
 ―――Ubel:Code Babel_Kanone Dame.
 おどけて笑うジェイの携えた仮想電磁加速電送砲が、みるみるうちに巨大化していく。ただでさえばかでかい金属の塊のようなそれが更に大きさを増し、銃口というよりも人をひとり呑み込む巨大な穴のようなそれがプレステルを見定める。
「ま、オレは撃っちゃうんだけど……ね!」
 その口径、なんと1900mm。とてもじゃないが人間に扱える代物ではないが、元より電子の存在であるジェイだ。反動も周囲への影響すらも巧みに操り、支配下へと置ける。
「止めだよ、ランス君!」
 レーヴァの聲と共に、彼女の操る焔の動きが変わっていく。護りと避けに特化した動きから、伝導熱の操作や陽光の制御によってジェイが照準を合わせやすいように変化させているのだ。
「助かるぜ、レーヴァちゃん」
 ニイ、と口角を上げたジェイに、プレステルが敗北を確信してそっと目を伏せた。
「申し訳ありません、キング・ブレイン様」
「言い残す事はそれだけか?」
「我々は何度でも蘇ります。仮に私個人の復活が阻まれたとて、別の猟書家が台頭するでしょう。キング・ブレインは不滅です」
 負け惜しみのいろは無かった。心よりそう信じている者の聲だった。そうかい、とジェイは頷いた。
「じゃあ、何度だってオレら猟兵が斃してやるさ。ここは享楽の世界だぜ? 楽しめないなら――帰った帰った!」
 すさまじい轟音とともに、高密度のプラズマが放たれる。
 猟兵達もテレビウム達もその目映さにたまらず目を瞑り――その光が収まった頃には、プレステルの姿は消え失せていた。

 ――次の『満月』まで、あと僅か。
 猟兵と猟書家の鍔迫り合い。最初の軍配は猟兵に上がったといっても過言ではないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月29日


挿絵イラスト