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【対猟書家戦】ハッピーウェディングを取り戻せ!

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドーラ・ワルダー #キマイラ

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●壊された幸福
 天井に吊るされたネオンのシャンデリアが、会場全体を照らしている。
 明るくテンポの良い、思わず踊り出したくなるようなBGMがスピーカーから流れる中、ホールスタッフが素早い動きで幾重にも重ねられたケーキを雛壇前に運んで来た。
 ダリアや秋の果実で飾られたゲストテーブルの席には、祝宴の格好に身を包んだキマイラ達が腰掛けている。皆一様ににこやかで、雛壇前のケーキと新郎新婦を交互に見つめ今か今かと次の工程を心待ちにしていた。

『それではァ、ケーキ入刀でっす!』

 マイクを通した司会の声につられるように、新郎新婦がはにかんでリボンが巻かれたナイフを手に取った、その時。

「――なぁにがウェディングじゃああああああああああああ!!!!」

 怨念が籠った雄叫びと共に、ケーキが突如爆発した。
 いや、正確には『ウェディングケーキに成り代わっていた』ケーキ頭をした怪人が、隠密を止め立ち上がった。ケーキ怪人は頭をブンブン振り回し、辺り一面に生クリームやら苺やら既に点火されていたロウソクやらをぶちまけ始める。会場は瞬く間に悲鳴が木霊する地獄絵図と化し、逃げ惑うキマイラ達が一斉にホールのドアへと押し寄せた。取っ手に手をかけ力強く引く。
 開かない。
「ハッハッハッ! もう逃げられんぞキマイラ達!」
「大人しくお縄を頂戴しろォ! ……あれなんか違うな。」
 絶望し目から光を失うキマイラ達の背に、モチ頭の怪人と寿司頭の怪人がじりじりとにじり寄る。
 閉ざされたドアの隙間で、みっちりと詰め込まれたお餅と酢飯が鈍く輝いていた。

●人の恋路を邪魔する奴は以下略
「――お縄頂戴すんのはお前らじゃあああああああああああ!!!!」
 グリモアベースに怒りの咆哮が響き渡る。なんだなんだと近寄って来た猛者共相手に、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は肩を揺らし、ぜぇはぁと息をすると急に頭を下げた。
「……うるさくしてスミマセン。ちょっと悪夢、いや予知を視てしまってつい。良かったら協力してくれると有難いです。」
 呼吸を整え、前を向く。一つ咳払いをすると、何事も無かったかのようなすまし顔をして空間をコンコン叩いた。途端、幾つかの映像が空中に投映される。
「猟書家が侵攻を開始したのは、皆も知ってるよね。今回の予知もその一つで、皆に相手してもらうのはドーラ・ワルダー。集団誘拐を得意としてる猟書家幹部だよ。」
 志乃の手がボンテージ姿の豊満ボディ黒髪ロング美女の画像を指し示す。いやに躍動感のあるショットで、八重歯を光らせ今にも高笑いしながら手にした鞭をしならせそうだ。
「ワルダーの目的はキマイラの怪人化……。彼女のアジトには死んだキマイラを怪人として蘇らせる用意があって、それを誘拐したキマイラ達に使うつもりらしいよ。無論、彼らを殺した上で、ね。」
 猟兵の誰かが息を呑む。
 本当だとしたら大変な話だ。何故って、キマイラフューチャーのオブリビオンと言えば、どこかお気楽暢気でちょっと抜けてて、たとえ悪事を働いていたとしてもどこか憎めない。そんな典型的なやられキャラばかりだったのだから。それが猟書家の影響で、殺戮が起きるだなんて。
「事態は急を要する。幸い誘拐される所を予知出来たから、すぐに現場に向かって欲しい。今回襲撃されたのは結婚披露宴。ワルダーに下僕怪人にされた『お祝い事トリオ』が会場のドアを開けられなくして、キマイラ達を閉じ込めてる。」
 集まっていた猟兵達の中央に、一際大きい空中ディスプレイが展開される。ディスプレイに投映されたネオン煌びやかな披露宴会場は、無残にも生クリームやスポンジが盛大に跳ね散らかされていた。ドアの周辺には恐怖に怯えるキマイラ達が立ち往生しており、寿司頭とモチ頭、ケーキ頭の怪人がロープ片手に彼らにじわじわとにじり寄っている。
 ボンテージ姿で。
「あ、それワルダーに怪人化された影響みたいだよ、そのボンテージ。皆が戦闘に失敗したらそこのキマイラ達も皆ボンテージとかいう地獄絵図が待ってるから、ホントによろしくお願いね。」
 目を丸くした猟兵達に志乃は事もなげに言い放ち、場の空気を全スルーしてそのまま言葉を続ける。
「怪人トリオを無事倒したら、異常に気付いたワルダーが会場に現れるはずだから特に捜索とかは必要ない。特殊ギミックも無いみたいだし、皆は普通に戦ってくれればOK。百戦錬磨の皆なら大丈夫だって信じてるよ。」
 いっそ清々しいほどの満面の笑みを浮かべ、黒パーカーの天使は燐光を散らすリンクチェーンを宙にかざす。しゃらり、と音を立てた鎖がひとりでに動き円を描いた。生まれたゲートの向こうからは蛍光灯の眩しい明かりと、陽気なBGMが流れ込んで来る。
「それじゃ、ホントによろしくお願いします。ハッピーウェディングをぶち壊す大馬鹿野郎を、皆の拳でぶちのめしてやってね!」


スニーカー
 !ATTENTION!
 このシナリオは猟書家の侵略に対抗する『幹部シナリオ』です。通常のシナリオとは違い二章構成で、今後の世界の行く末に影響を及ぼします。
 大変お手数ですが、マスターページをご一読の上で参加をお願い致します。
 また今シナリオは早期完結を目指し、必要最低数のみの採用とさせて頂きます。何卒ご了承下さいませ。
 !ATTENTION!

 閲覧ありがとうございます。スニーカーと申します。
 皆様の旅路の良き思い出となれましたら幸いです。

●最終目的
 キマイラ達の保護と敵怪人及び『ドーラ・ワルダー』の撃破。

●第一章
 ケーキが撒き散らされた披露宴会場で『お祝い事トリオ』と戦闘です。
 会場に有りそうな物は大体有ると思って下さい。
 コンコンシステムはここでも有効で、あちこち叩けば披露宴関連グッズが色々出て来ます。必要なら戦闘に利用して下さい。

●第二章
 猟書家幹部『ドーラ・ワルダー』との戦闘です。
 自分の美貌と能力に絶対の自信を持っているので、そこを逆手に取ってやると事が上手く運ぶかもしれません。
 ちやほやされるのがお好きのようです。

 プレイングボーナス(全章共通)……キマイラに応援される(戦力はゼロです)。
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第1章 集団戦 『お祝い事トリオ』

POW   :    モチ怪人・ウェポン
【モチ兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    スシ怪人・ジェノサイド
【スシ攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    ケーキ怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ケーキ】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

中小路・楓椛
(アドリブ連携その他歓迎)
WIZ

キマイラ誘拐殺害怪人化――有罪
食べ物を粗末にする――有罪
ボンテージによる視覚の暴力――超有罪(オーバーギルティ)
――執行許可、汝ら罪在り。

UC【にとくりす】によるカウンターカウンター返しです。
ケーキで相殺されている内にキャバリア【クロさん】を完全自律稼働で突入させ付近にある構造物を利用して盾にしたり投げつけて攪乱しつつ、
当たったら拙そうな攻撃を【残像】【カウンター】【空中浮遊】【空中戦】【滑空】で回避して、【谺(魔笛/鼓)】を二丁拳銃モードで射撃技能を全て使用して制圧します。

……ところで何でボンテージなんですか?ボンテージの加護とかそういうのあるんですか?



 ――一体何が起きているのか、僕にはまるで分からなかった。
 ありったけのコンコンで集めたネオンのライトと装花は、汚く飛び散ったクリームで白く彩られて行く。テーブルの上に綺麗に並べられていたお皿も、慌てて逃げたゲストがひっくり返して粉々だ。僕が恋人と一生懸命選んだウェディングケーキはと言えば、醜いボンテージ姿の怪人になってあちこちにケーキをぶん投げている。
 もう訳が分からない。
「おい、とりあえずグルグル巻きにしとけばいいんだよな?」
「らしいぞ。」
 怪人共がロープ片手に僕達キマイラに近寄って来る。
 腕の中で震える花嫁を、僕は力いっぱい抱きしめた。彼女に贈られた白薔薇のブートニアが押し潰れてかさりと音を立てる。大丈夫、大丈夫だと彼女の耳元で何度も繰り返すけど、何一つ大丈夫な要素なんて無い。僕達はヒーローでも何でもない、ただの無力なキマイラなのだから。
 こんな時に役立たずな自分を恥じる。せめて、せめて誰かに助けを呼ばなきゃ――ふと思いついて近くの壁を叩き、転がって来たマイクを掴み取る。出力ボリュームを最大まで上げ、肺が潰れるのも構わず思い切り息を吸った。
『誰かーーーーっ!!』
 ――頭が割れんばかりの声量と共に、僕らの眼前で眩しいほどの光が瞬いた、気がした。

●神罰執行
 すとん、と小さな足がベージュ色のカーペットを踏む。もふりと音がしそうな尾を揺らし、ともすればキマイラにも見間違えられそうな子狐の化生、中小路・楓椛(流しの家事手伝い狐・f29038)は周囲を見回した。
 テーブルもカーペットも照明も花も、どこもかしこもホイップだらけ。雛壇前に設置されている小さな台車にはケーキの土台『だったもの』が乗っているが、スポンジは文字通り弾け飛んだように裂かれ、修復は最早不可能だろう。背後を振り返れば呆然と立ち尽くすドレスアップ姿のキマイラ達と、封鎖されたという白い布団張りの扉が目に入る。すんと鼻を利かせれば、扉の隙間から得も言われぬ米の香りが漂って来た。
「んだァ、お前?」
 声のした方に向き直れば、見るも無残な姿となったウェディンクケーキヘッド怪人が腕を組み仁王立ちしていた。威嚇のつもりなのだろう、筋肉をこれ以上無いほど隆起させ、無駄に胸を反らしふんすふんすしている。
 エナメル素材がつややかな全身タイツボンテージ姿で。
 
 ――薄く開けた狐の瞳から、赤い眼光がちらと揺れる。
 途端、暖房がきいている筈の会場に凍り付くような風が吹いた。
 まるで外宇宙の真空を誘ったかのように。

「…………へ?」
 キマイラ誘拐殺害怪人化――有罪。
 食べ物を粗末にする――有罪。
 ボンテージによる視覚の暴力――超有罪(オーバーギルティ)。
「――執行許可、汝ら罪在り。」
 魂の根源に触れるような声が、静かに空気を震わした。
 鳥柄『らしき』風呂敷包みを背負って立つ、まだあどけない奉公人姿の子狐少女から出た声だ。怪人は一瞬、感情を抜かれたかのように呆け、しかしすぐに顔を振り床に落ちていたケーキくずを拾い上げる。
「おのれ、子供騙しなぞ効かんぞ!」
 剛腕から放たれる正確無比な投擲を、しかし楓椛は咄嗟に柱の陰に隠れていなした。そのまま素早く抜いた大型二丁拳銃『谺』で今度は怪人を狙い撃つ。銃口から放たれた光の粒子は、ケーキ男のエナメる脇腹を確かに貫通した。
 今度こそ唖然とする怪人を他所に、子狐は不思議そうに鼻を鳴らす。
「加護がある、と言う訳でもなさそうですね、そのボンテージ。」
 何で穿いてるんです? なんて、こてんと可愛らしく首を傾ける。
「キサマッ……これはワルダー様への絶対服従の証であり、我らの正装だ! 誇り高きボンテージへの侮辱は許さんぞ、猟兵!!」
「ソレのどこが誇り高……。」
 怪人の主張に半ば呆れて言葉が漏れた――瞬間、背後から爆発的な歓声が上がった。
「猟兵! 猟兵って言ったぞ今!」
「うっそ、あの小さい狐ちゃんが猟兵!?」
「助かった! 私達助かったんだ!!」
「猟兵様のお通りだーっ! おいドローン飛ばせ録画用意出来るか!?」
 わあわあ、きゃあきゃあ、先程までの怯えっぷりが嘘のように騒ぎ出したキマイラ達に、楓椛は内心苦笑する。
 また、猟兵と呼ばれた。
 何故か行く先々で猟兵と呼ばれ、不思議と争いに巻き込まれる自身を楓椛は常日頃から疑問に思っていた。今回はともかくとして、普段の行動に落ち度は無いと確信さえしている。もし戦わずに生き残れるのなら、それが良いとも思っているのだが……。
 ――たとえこの身が、狐ならざる■■だとしても。
「余所見するかキサマァ!」
「おっと。」
 怒りの籠った暴投が、しかし狐の化生に当たることはない。楓椛の体はふわりと宙に浮き上がり、まるで風の階段があるかのように空中を闊歩する。
「クロさん。」
 同居人の名を呼べば、まるで今まで姿を隠していたかのように楓椛の傍らに一体のキャバリアが突如出現した。キャバリアはボンテージ怪人を赤い三つ目に捉えると、右手を思い切り振りかぶり――、
「そうはさせんっ!」
 攻撃に気づいた怪人の手がウェディングケーキの土台だったスポンジを持ち上げ、キャバリア目掛けてぶん投げ相殺する、
 はず、だった。
「――ぬわーッッ!!」
 何故か体積が増えたウェディングケーキごと後方の壁に叩きつけられた怪人の腹を、クロの右ストレートが容赦なくえぐり込む。ぱらり、崩れた壁が落ちたその後に観客達(キマイラ)の黄色い声が続いた。
 反撃の余韻に息をつく楓椛の手には、ネオン輝く会場の中でただ一つ暗闇を映す古めかしい鏡が握られている。
「いいぞー、嬢ちゃーん!」
「隣の機械? もカッコイイー! 騎士みたい!」
「狐さーん、クロさーん、頑張れーっ!!」
 この世界の住人からかけられる声援に、思わず楓椛の口が緩い弧を描いた。
 しかしそれを彼らには見せず、妖狐はやおらに怪人へと迫る。何故って、この一撃で終わりなはずがない。壁に激突し腹を抉られた男の手はまだ、立ち上がろうと前に伸びているのだから。

 出力を抑えた一撃とは言え、即座に動けるとは流石オブリビオンか。ならば此方も全力でお相手しよう。今ばかりは、彼(騎士)を携えたカミ(主)として。
「まだ神罰は、始まったばかりですわよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

結婚式を邪魔するとか馬に蹴られたいのかしら?
キマイラ達の応援を得るために最近キマFで流行りの鬼なんちゃらの妖柱に
コスプレしていくわ。刀は武器改造した結界術で再現。
ええ、ええ、キマFですものきっと作品内に今の状況と似たようなシチュがあったのでしょう。仮になくても魔術的パラダイムシフト(結界術)であったという世界観に転換するわ。
妖の息吹 神憑りでシチュ再現すればノリのいいキマイラ達はきっと応援してくれるでしょう。

全集中もとい神仏降霊神憑り 妖の息吹 拾の型 馬頭羅刹

必殺技は派手に多重詠唱で馬頭観音のエフェクトを纏い限界突破した暴力で怪人達を蹂躙するわ。



●鬼を滅せよ
 その猟兵が会場に降り立った――瞬間、先までの戦いで色めき立っていたキマイラ達が、水を打ったように静まり返った。
 雪の如く清らかな白無垢に、目深に被った綿帽子。ちらりと覗く艶やかな唇は、真っ赤に彩られ緩く弧を描く。披露宴会場に唐突に現れたもう一人の花嫁は、獣達を背にボンテージ姿の怪人と対峙した。
「なんだ、キサマも猟兵か?」
 既にケーキ頭がボロボロと崩れている怪人の言葉に、白無垢は緩慢に笑んで口を開く。
「猟兵? さぁ……知らないわね。」
 赤い唇から紡がれる、鈴のような声音。
 一度聞けば忘れられない、否、忘れさせてくれない妖艶な声。思わず会場に居た誰もが息を呑み、次の言の葉が流れるまで彼女から目が離せなくなる。
「婚礼を邪魔する無粋な鬼が居るって聞いたから、潜入しただけの只の鬼斬りよ。」
 その声に心囚われれば、指一本動かせない。
 その姿に心奪われれば、瞬き一つ許されない。
 白い玉のような肌の手が、綿帽子を掴み遠くへと放り投げる。ふわりとした赤色混じりの銀髪が肩になびき、紅玉の如く輝く瞳が鋭く怪人を睨み付けた。
 白無垢に手をかけするりと取り去れば、中から出でるは兎の柄した真白の羽織。
 ――鬼共よ、刮目せよ。
「鬼斬隊が一柱、妖柱・二色 菖(ふたしき あやめ)……馬に蹴られて死になさい、坊や?」
「「「「「ッッッきゃああああああああああああああああああああーーーっっ!!!!!」」」」」

 割れんばかりの歓声が、会場中を覆った。一部黄色い声が上がっていたのは、多分気のせいではないだろう。興奮のあまり鼻血を噴き出して倒れた者から、既に撮影機材を取り出して一挙一動を全て録画せんと息巻く者まで、菖を前にするキマイラ達は熱狂の渦に包まれた。
 こうなってしまえばもう大騒乱は止まらない。先程までの恐怖や狼狽は今や遠い昔。会場は突如現れた英雄に沸き立ち、次の展開を期待する熱気は声援となって菖の体を震わせた。
 どうやら上手く行ったらしい。
「……ふふっ♪」
 菖に化けた猟兵――アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)は観衆に隠れてこっそり笑った。

 ――鬼斬の刀。
 今キマイラフューチャーの電子の海を圧巻している、和風ファンタジー冒険譚だ。家族を鬼に惨殺された主人公が、厳しい修行の末鬼と戦う力を会得し、鬼斬隊の一員となって鬼を滅して行くストーリーの漫画作品。
 関連動画はミリオン超え必至。グッズを売れば即完売。オンリーイベントがあちこちで開催されコスプレ姿のキマイラが多数目撃されるなど、キマイラフューチャーはまさに『鬼斬の刀』時代が訪れている。
 その中でもアリスがコスプレしたのは、鬼斬隊の中で最も位が高い六名の剣士『柱』の一人、妖柱の菖。妖の名の如く変幻自在な技と敵を惑わす手練手管、周囲を魅了する美貌は多数の読者をノックアウトさせた。当然、キマイラ達からの人気は高く、その上――。
「ねぇっ、今のって原作再現だよね!」
「間違いない、菖の初登場だった婚礼襲撃シーンだ!」
「狙われてた花嫁に化けて潜入するんだよね!! あの話一番好き!!」
「あ、も、むり……おれしぬ……。」
 どうやら転送直後の白無垢登場からして、原作再現の一環だったらしい。なんというファン垂涎ものの寸劇であろう。当然のことながら観客(再三断っておくが、さっきまで拉致殺害されかかっていた)のボルテージは最高潮に達し、今ここにアリスへの声援は絶対のものとなった――!
「き……はしらァ……? さっきから何言ってんだキサマらァ!」
 しかして流行の波に乗れぬ憐れなヤツもいるようで。相変わらずホイップ頭をふよんふよんさせているケーキ怪人は、躊躇なくその体を揺らしケーキをアリスにぶちまけにかかる。
 隊服に着替えたアリスは、咄嗟に腰に下げた刀に手をかけた。
「――神仏降霊神憑り 妖の息吹 五の型。」
 天狗舞。
 ひらり、アリスの体が浮き上がったかと思うと、音もなくシャンデリアの上部に着地する。刀を振る際の風圧で器用にバランスを取ると、そのままひらり、ひらりと物から物へと涼しい顔で飛び移り始めた。怪人は狙い定まらぬ標的にわななき、憤怒に任せ苺やロウソクを投擲すれども哀しいかな、その全てが彼女に届かない。結界を多重展開し、その力で世界の理すら歪めてしまう欲望の権化にとって、神霊を降ろし空間を自由に飛翔することなど造作もないことなのだ。
 それこそ、まるで天狗のように。
「ちょこまかと逃げやがって、めんどグハーッ!!」
 動きあぐねていたボンテージケーキの横っ腹に、不可視の一閃が連続で斬りかかる。先ほどまでバランスを取るのに利用していた『と見せかけていた』風圧の衝撃波が、壁に当たって跳ね返り、黒光りする怪人の体に傷を付けた。再び観衆から歓声が上がる
 妖の息吹 三の型 木霊。
 物に反射させた剣戟を対象に当てる型だが、この型の習得には先に二の型の鎌鼬を覚えなければならない。余談だが木霊が初登場した際は、漫画内でのエフェクトと説明が随分アッサリしたものだったせいで、考察スレがしばらく型の話題で埋まったというエピソードもある。
「……あら、もうおしまい?」
 妖しく微笑んで、菖と成り代わったアリスは自身の髪を掻き上げる。何の変装もしていない、菖と同じストロベリーブロンドヘアーを揺らした彼女の笑顔は、キマイラ達にとっては女神の微笑み。怪人にとってはこれ以上無い挑発であった。
「キ、サマ、調子に乗りおっ」
「いっけえええええええ菖ぇえええええええ!!」
「最強の型見せちゃってーっ!」
「俺っ……生きててよかっ……。」
「おい死ぬな来るぞ必殺技が!!」
 怪人の言葉を遮り、咆哮にも似た観客のエールがアリスの体に力を漲らせて行く。
 どうやら彼らもフィナーレをお望みのようだ。例え仮初の姿なれど、今この場限りは柱の一人として鬼を斬ろう。
「神仏降霊神憑り 妖の息吹――。」
 声援に気圧され、先の攻撃の痛みから思うように動けずにいるボンテージをアリスの眼光が捉える。素早く絨毯を蹴り、風のような速さで接近する彼女の顔は既に笑ってはいなかった。
「拾の型、馬頭羅刹ッッ!!」
 妖艶な美女に重なって見える、数多の武器を手にした般若の馬頭観音像。
 彼の一振りに合わせるように、大きく振りかぶった刀で勢いよく横薙ぎの一閃を放つ。
「グッ――!?」
 間髪入れず垂直に振り下ろす二の太刀、間合いに踏み込んで繰出す突きの三の太刀、もう片方の手に生み出した結界術の刀と共に挟み撃ちにする四ノ太刀。五の太刀、六の太刀、七、八、九、そして拾の太刀!!
 目にも留まらぬ早業で体中に刀傷を受けた怪人は、朦朧とする意識の中自分の脳天に迫る音を聞いた。火の子がぱちぱち爆ぜる音が、一刻ごとに近づいて来る。
 それはまさしく神罰の音色。燃え盛る業火を纏った野太刀が、刑を執行せんと罪人に向かって刃を向ける裁きの音。
「これで終わりよ!!」
 ――烈火を宿す結界の刀が、怪人の体を引き裂き燃やして行った。

 アリスは炎の終焉を確認すると、元の大きさまで刀を戻しコスプレ用の鞘に卒なくしまう。
 再び返って来た静寂にほぅと息をつき、くるりと後ろを振り返って目を細めた。
「『お怪我はございませんか、皆さん』。」
 ……原作のシーンそのままの台詞に、割れんばかりの大喝采が一人の英雄を褒め称えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

コンコンコン、本当に便利だな。
その場で欲しいものが出てくるとか、本当にやりたい披露宴できるんじゃないか?
予算とか関係なさそう。

披露宴のテーブルとかに身を隠し、かつ存在感を消し目立たない様に立ち回る。そして可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC五月雨で攻撃。
同時に投げられるだけの飛刀もマヒを乗せて投擲、なるべく多数へダメージを与えるもしくは動きの阻害をするようにする。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。

応援は相手の気を逸らして貰えると助かる。


御形・菘
はーっはっはっは! ゴンドラの中から、妾、推参!
まったく…妾はとても悲しいぞ?
お主らとは幾度もバトってきたが、このやり口はナシであろう?
妾が喝を入れてやるとしよう!

しかし、バトる前にちょっと待て!
会場の皆には、バトルの余波を受けんよう距離を取ってもらわんとな
テーブル倒してバリケードにしてはどうかのう、そして応援よろしく!
よければ後で披露宴の司会をしてやろう!

キマフュで! 皆の応援を直に浴びる妾に! 負ける要素など何一つない!
全力で投げ込んでこい! 色々な意味で美味しいケーキを!
はっはっは、ケーキ塗れとはなんと素晴らしいシチュエーションよ!
さあ、左腕の一撃にボコられ、精々派手にブッ飛ぶがよい!



●猟兵様のお通りだ
 突如会場の照明が落ち、囚われの身のキマイラ達(ついさっきまで有名漫画のコスできゃいきゃいやっていた)が騒然となる。
 再び点灯したレインボー色のスポットライトが、雛壇の天井から降りて来たゴンドラを一斉に照射した。
「うわっ」
 眩しっ。とか思っていても思っていなくても、『彼女』が聴衆に聞こえるよう素の発言を漏らすことはない。ゴンドラに乗って舞い降りるその姿が徐々に露になるにつれて、一般キマイラ達の中からどよめきが起きる。
「うっそ、あのお方は……。」
「いやいや、あり得ないサプライズ過ぎるだろ。」
「(満足気に昇天)」
 黒い肌に走る白い紋様(多分メイク)。鱗輝く下半身に悪魔のような山羊の角。真っ赤な舌は敵を見定めるようにしゅるりと伸びて。会場中に響き渡る高笑いを合図に、彼女は現世に降臨する。
「はーっはっはっは! ゴンドラの中から、妾、推参!」
 キマフュを統べる配信界の一番星、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が高らかに宣言すれば、入り口側に追いやられていた被害者達の大歓声が割れんばかりに巻き起こった!
「「「邪神様アアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」」」
「御大来ちゃったよコレ勝ち確だわ。」
「大好き!! マジで好き!!」
「(撮影許可取らずに焚かれる無数のフラッシュ)」
 既に他猟兵達の活躍で高まっていたボルテージはまたも最高潮に達する。何故って、菘は怪人との戦闘動画において人気配信者なのだ。猟兵は閲覧数ミリオン越え必至なキマフュにおいて、それでもあくなき探求を続け動画映えを意識し、戦闘台詞は圧勝から惨敗のシチュエーションまで全て想定して練習しているとんでもない努力家。しかも動画の構成上、一動画につき同じ必殺技は二度使わないポリシーまで持つ。こんなん面白いに決まっている。
 狂喜乱舞する無辜の民達を前に、菘はゴンドラを出て不適に笑み軽く手を振った。
「皆の衆、声援ありがとう。握手とサイン会は怪人をボコった後にやるからのう。」
 しかぁ~~し! とこれまた大きい声に、色めき立っていたキマイラ達の背筋がピシィッと伸びる。
「バトる前に注意事項! 妾と怪人の戦闘を見る時は、近くにバリケードを作ってバトルの余波を受けんようにのう。 丁度都合良くテーブルが倒れておるな?」
 アニメ視聴の際流れる注意喚起の如く観客に行動を促せば、楽しいこと大好きなキマイラ達は慌てて会場設営に勤しみ始める。
 その隙を突いて菘と同時に転送されていた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)が、存在感を消し怪人近くの花瓶の背に身を潜めた。正直菘のインパクトがぶっちぎり過ぎて、目立たないように行動する意味も何も無いような気はしたが念には念を入れておく。途中横を通るキマイラ達が怪訝な顔をしたが、気付かず通り過ぎて行ってくれたようだ。界渡のシーフは安堵して軽く息をついた。
 周囲を見回し、次の戦闘の為に形作られて行く地形を確認する。――それにしても便利な世界だ、と瑞樹は動き回るキマイラ達を見ながら考えていた。壁を叩き落ちてきたガムテープでテーブルの足同士をグルグル巻きにしたかと思えば、バリケードが足りないからと再度のコンコンでテーブル自体を増やしてしまう。他の世界には無いシステム。キマイラフューチャーの理であり、いつもの日常。自身の故郷では――思い出せる限り最古の記憶を辿っても、他では見たことのない景色。
 何がどこから出てくるのか把握していれば、きっと予算など関係のない挙式が可能なのだろう。着崩れたドレスとタキシードで懸命に駆け回る新郎新婦も、あちこち叩いて欲しい装飾を掻き集めたのだろうか。
(彼らの未来の為にも、俺はこの刃を振るおう。)
 和らぐ表情を自覚しつつ、瑞樹は自身の本体と打刀サイズに擦り上げられた刀を手に取った。

●誰か誉めてあげて下さい
 さてここまで完全放置された怪人はと言えば、椅子に座り込んで口から白い息をプシューしていた。どうやら怒りを通り越して呆れが脳をショートさせたらしい。まだ戦闘始まってないぞ!
「待たせたな。」
 菘が自信満々に近寄って声をかければ、意識が飛んでいたケーキ怪人がブルブルと頭を振って跳ね起きる。ホイップを撒き散らしたボンテージケーキは、体を震わせて菘に詰め寄った。
「キサマー! 俺がどれだけ」
「妾はとても悲しいぞ怪人!!」
 はぇ?
 怪人の頭が疑問符に埋まる。
「まったく……お主らとは幾度もバトってきたが、このやり口はナシであろう?」
「このやり口???」
 怪人は周囲を見回した。何の変哲もない披露宴会場だ。己の飛び散らせたケーキとバリケードと化したインテリア群、そのバリケードに隠れた一般獣達が多少異様ではあるが。
 尚瑞樹の存在には一切気づいていなかった。
「これの何が……。」
「誘拐未遂及び食べ物の道具化、果てはボンテージによる猥褻物陳列罪まで……恥を知れ痴れ者ォォオオオオオオオオ!!!」
「ぶへぇぇえええええええええッッッッ!!」
 ドゴォッと音がして腹にパンチが入る。容赦なく吹っ飛ばされた怪人は壁に叩きつけられ沈んで行った。無理もない、この配信者のストレートは音速越えの衝撃波持ちである。正面から食らって無事で済む訳が無かった。
(うわ、痛そ……。)
 花瓶の背に隠れていた瑞樹は密かに心の中で合掌した。尚余談だが、彼は和尚さんに育てられていたことがある。
「妾が喝を入れてやるとしよう! さぁ全力で投げ込んで来るがいい!」
 既に真っ白に燃え尽きかけている怪人を他所に、戦いのゴングは鳴らされた――。

●不可視の暗殺者と常世の邪神様
「不意打ちとは卑怯だぞキサッッ、いったーーぃ!?」
 はて怪人の訴えなど全スルーで瑞樹の飛刀が投擲される。菘に気を取られていたボンテージケーキは思いの他サックリ刺され、体中あちこちにナイフを生やしまるでハリネズミのような様相と化してしまった。
「あれ、今邪神様って攻撃した?」
「してねぇよ。そもナイフ使わないだろあの方。」
「えっじゃあもう一人猟兵来てるんだ!」
「姿無いじゃん!! NINJA! NINJAみてぇ!」
(正確には忍者じゃなくてシーフなんだけどなぁ。)
 まぁ戦乱とは程遠いキマイラフューチャーで、その違いを教えるのは難しいか――。瑞樹は観客達の賞賛を一身に受けつつも、怒りに燃える怪人の足音に気を引き締め息を潜め直す。
「太古の昔より汚いとか卑怯とか言われるNINJAを仲間にしてるだと……? 配信者、汚いぞキサマ!!」
「妾の迎えたスペシャルゲストよ。口『汚く』罵るのは止めて貰おうか?」
「フン、ならば我が仲間をもってしてキサマラを倒してやろう!」
(忍者じゃないよ二人とも。)
 菘と怪人の掛け合いに心の声が届くはずもなく、ドア付近でキマイラ達を見張っていたボンテージスシ怪人が喜び勇んで雛壇に参上する。呼ばれるまで悠長に待ってたあたり、猟書家の影響があっても怪人は怪人らしい。
「ケーキ、呼ぶのが遅ッッてええええええええええええ!?」
 一度ある事は二度ある。仲間の方に振り向いたその背後を狙って、またしても瑞樹の投げナイフと本体がスシ頭にぶっ刺さった。マグロのネタ頭をしたスシ怪人は、ふらりと倒れ込みそのまま動けなくなる。ナイフの持ち手から垂れる紐が、子供達が皆帰った後のブランコのようにゆらゆら虚しく揺れていた。
 ――スシ怪人。ワルダーにボンテージ怪人にされてからその命は十日と持たなかった。
「俺の仲間を勝手に殺すなー!! ……ぅ、なんだこの眩暈は。」
 勝手に殺すわ。猟兵だもの。
 周囲の心の呟きとは別に、急にボンテージケーキの動きが悪くなる。あっちへふらふら、こっちへふらふら、それでもスポンジをむんずと掴み、菘に投擲するフォームは無駄に美しかったが。
「妾の邪神たる覇気と、ゲストのスペシャルな攻撃のおかげであろうな。」
 なかなかの剛速球(ケーキ)を浴びクリーム塗れになるも、菘は変わらず勝気に笑んで見せる。実際に彼女はその圧倒的とさえ言える存在感を元にしたユーベルコードを所持しているし、先ほどから瑞樹が投げていたナイフ、柳葉飛刀は相手を痺れさせる特別製だったのだが――まぁ、それを今この場で怪人に説明する必要は無いだろう。
「さぁ、妾は満足していないぞ! もっと! もっと投げ込んでこい!!」
「……ちっくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
 半狂乱となったボンテージケーキが己の頭をわし掴み、スポンジごと裂いては菘に放る。されど信仰を糧に強くなる神が、普段からファンサにだって気を配っている彼女がこの大一番で弱くなろうはずがない。よろめきながらも激しくなる怪人の攻撃に、会場の声援は、キマイラ達の期待はより大きく強くなって行く。
「はっはっは、ケーキ塗れとはなんと素晴らしいシチュエーションよ!」
 肢体に絡み付いたスポンジに大笑し、菘はクリームを纏った指先を舐める。邪神メイクの裏から覗くその妖しさに、一部の観客がノックアウトされた。
「ぬかせっ、俺はキサマらぁぁあああああああああッッ!?」
 二度あることは三度ある。
 少し本気を出した瑞樹の五月雨のような刀の雨が、トドメ攻撃直前のボンテージケーキをおあつらえ向きに壁に縫い止めて行った。聴衆の間でまたNINJAコールが上がったが、怪人の気を逸らすのに都合が良かったので●猟兵様のお通りだ
 突如会場の照明が落ち、囚われの身のキマイラ達(ついさっきまで有名漫画のコスできゃいきゃいやっていた)が騒然となる。
 再び点灯したレインボー色のスポットライトが、雛壇の天井から降りて来たゴンドラを一斉に照射した。
「うわっ」
 眩しっ。とか思っていても思っていなくても、『彼女』が聴衆に聞こえるよう素の発言を漏らすことはない。ゴンドラに乗って舞い降りるその姿が徐々に露になるにつれて、一般キマイラ達の中からどよめきが起きる。
「うっそ、あのお方は……。」
「いやいや、あり得ないサプライズ過ぎるだろ。」
「(満足気に昇天)」
 黒い肌に走る白い紋様(多分メイク)。鱗輝く下半身に悪魔のような山羊の角。真っ赤な舌は敵を見定めるようにしゅるりと伸びて。会場中に響き渡る高笑いを合図に、彼女は現世に降臨する。
「はーっはっはっは! ゴンドラの中から、妾、推参!」
 キマフュを統べる配信界の一番星、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が高らかに宣言すれば、入り口側に追いやられていた被害者達の大歓声が割れんばかりに巻き起こった!
「「「邪神様アアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」」」
「御大来ちゃったよコレ勝ち確だわ。」
「大好き!! マジで好き!!」
「(撮影許可取らずに焚かれる無数のフラッシュ)」
 既に他猟兵達の活躍で高まっていたボルテージはまたも最高潮に達する。何故って、菘は怪人との戦闘動画において人気配信者なのだ。猟兵は閲覧数ミリオン越え必至なキマフュにおいて、それでもあくなき探求を続け動画映えを意識し、戦闘台詞は圧勝から惨敗のシチュエーションまで全て想定して練習しているとんでもない努力家。しかも動画の構成上、一動画につき同じ必殺技は二度使わないポリシーまで持つ。こんなん面白いに決まっている。
 狂喜乱舞する無辜の民達を前に、菘はゴンドラを出て不適に笑み軽く手を振った。
「皆の衆、声援ありがとう。握手とサイン会は怪人をボコった後にやるからのう。」
 しかぁ~~し! とこれまた大きい声に、色めき立っていたキマイラ達の背筋がピシィッと伸びる。
「バトる前に注意事項! 妾と怪人の戦闘を見る時は、近くにバリケードを作ってバトルの余波を受けんようにのう。 丁度都合良くテーブルが倒れておるな?」
 アニメ視聴の際流れる注意喚起の如く観客に行動を促せば、楽しいこと大好きなキマイラ達は慌てて会場設営に勤しみ始める。
 その隙を突いて菘と同時に転送されていた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)が、存在感を消し怪人近くの花瓶の背に身を潜めた。正直菘のインパクトがぶっちぎり過ぎて、目立たないように行動する意味も何も無いような気はしたが念には念を入れておく。途中横を通るキマイラ達が怪訝な顔をしたが、気付かず通り過ぎて行ってくれたようだ。界渡のシーフは安堵して軽く息をついた。
 周囲を見回し、次の戦闘の為に形作られて行く地形を確認する。――それにしても便利な世界だ、と瑞樹は動き回るキマイラ達を見ながら考えていた。壁を叩き落ちてきたガムテープでテーブルの足同士をグルグル巻きにしたかと思えば、バリケードが足りないからと再度のコンコンでテーブル自体を増やしてしまう。他の世界には無いシステム。キマイラフューチャーの理であり、いつもの日常。自身の故郷では――思い出せる限り最古の記憶を辿っても、他では見たことのない景色。
 何がどこから出てくるのか把握していれば、きっと予算など関係のない挙式が可能なのだろう。着崩れたドレスとタキシードで懸命に駆け回る新郎新婦も、あちこち叩いて欲しい装飾を掻き集めたのだろうか。
(彼らの未来の為にも、俺はこの刃を振るおう。)
 和らぐ表情を自覚しつつ、瑞樹は自身の本体と打刀サイズに擦り上げられた刀を手に取った。

●誰か誉めてあげて下さい
 さてここまで完全放置された怪人はと言えば、椅子に座り込んで口から白い息をプシューしていた。どうやら怒りを通り越して呆れが脳をショートさせたらしい。まだ戦闘始まってないぞ!
「待たせたな。」
 菘が自信満々に近寄って声をかければ、意識が飛んでいたケーキ怪人がブルブルと頭を振って跳ね起きる。ホイップを撒き散らしたボンテージケーキは、体を震わせて菘に詰め寄った。
「キサマー! 俺がどれだけ」
「妾はとても悲しいぞ怪人!!」
 はぇ?
 怪人の頭が疑問符に埋まる。
「まったく……お主らとは幾度もバトってきたが、このやり口はナシであろう?」
「このやり口???」
 怪人は周囲を見回した。何の変哲もない披露宴会場だ。己の飛び散らせたケーキとバリケードと化したインテリア群、そのバリケードに隠れた一般獣達が多少異様ではあるが。
 尚瑞樹の存在には一切気づいていなかった。
「これの何が……。」
「誘拐未遂及び食べ物の道具化、果てはボンテージによる猥褻物陳列罪まで……恥を知れ痴れ者ォォオオオオオオオオ!!!」
「ぶへぇぇえええええええええッッッッ!!」
 ドゴォッと音がして腹にパンチが入る。容赦なく吹っ飛ばされた怪人は壁に叩きつけられ沈んで行った。無理もない、この配信者のストレートは音速越えの衝撃波持ちである。正面から食らって無事で済む訳が無かった。
(うわ、痛そ……。)
 花瓶の背に隠れていた瑞樹は密かに心の中で合掌した。尚余談だが、彼は和尚さんに育てられていたことがある。
「妾が喝を入れてやるとしよう! さぁ全力で投げ込んで来るがいい!」
 既に真っ白に燃え尽きかけている怪人を他所に、戦いのゴングは鳴らされた――。

●不可視の暗殺者と常世の邪神様
「不意打ちとは卑怯だぞキサッッ、いったーーぃ!?」
 はて怪人の訴えなど全スルーで瑞樹の飛刀が投擲される。菘に気を取られていたボンテージケーキは思いの他サックリ刺され、体中あちこちにナイフを生やしまるでハリネズミのような様相と化してしまった。
「あれ、今邪神様って攻撃した?」
「してねぇよ。そもナイフ使わないだろあの方。」
「えっじゃあもう一人猟兵来てるんだ!」
「姿無いじゃん!! NINJA! NINJAみてぇ!」
(正確には忍者じゃなくてシーフなんだけどなぁ。)
 まぁ戦乱とは程遠いキマイラフューチャーで、その違いを教えるのは難しいか――。瑞樹は観客達の賞賛を一身に受けつつも、怒りに燃える怪人の足音に気を引き締め息を潜め直す。
「太古の昔より汚いとか卑怯とか言われるNINJAを仲間にしてるだと……? 配信者、汚いぞキサマ!!」
「妾の迎えたスペシャルゲストよ。口『汚く』罵るのは止めて貰おうか?」
「フン、ならば我が仲間をもってしてキサマラを倒してやろう!」
(忍者じゃないよ二人とも。)
 菘と怪人の掛け合いに心の声が届くはずもなく、ドア付近でキマイラ達を見張っていたボンテージスシ怪人が喜び勇んで雛壇に参上する。呼ばれるまで悠長に待ってたあたり、猟書家の影響があっても怪人は怪人らしい。
「ケーキ、呼ぶのが遅ッッてええええええええええええ!?」
 一度ある事は二度ある。仲間の方に振り向いたその背後を狙って、またしても瑞樹の投げナイフと本体がスシ頭にぶっ刺さった。マグロのネタ頭をしたスシ怪人は、ふらりと倒れ込みそのまま動けなくなる。ナイフの持ち手から垂れる紐が、子供達が皆帰った後のブランコのようにゆらゆら虚しく揺れていた。
 ――スシ怪人。ワルダーにボンテージ怪人にされてからその命は十日と持たなかった。
「俺の仲間を勝手に殺すなー!! ……ぅ、なんだこの眩暈は。」
 勝手に殺すわ。猟兵だもの。
 周囲の心の呟きとは別に、急にボンテージケーキの動きが悪くなる。あっちへふらふら、こっちへふらふら、それでもスポンジをむんずと掴み、菘に投擲するフォームは無駄に美しかったが。
「妾の邪神たる覇気と、ゲストのスペシャルな攻撃のおかげであろうな。」
 なかなかの剛速球(ケーキ)を浴びクリーム塗れになるも、菘は変わらず勝気に笑んで見せる。実際に彼女はその圧倒的とさえ言える存在感を元にしたユーベルコードを所持しているし、先ほどから瑞樹が投げていたナイフ、柳葉飛刀は相手を痺れさせる特別製だったのだが――まぁ、それを今この場で怪人達に説明する必要は無いだろう。
「さぁ、妾は満足していないぞ! もっと! もっと投げ込んでこい!!」
「……ちっくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
 半狂乱となったボンテージケーキが己の頭をわし掴み、スポンジごと裂いては菘に放る。されど信仰を糧に強くなる神が、普段からファンサにだって気を配っている彼女がこの大一番で弱くなろうはずがない。よろめきながらも激しくなる怪人の攻撃に、会場の声援は、キマイラ達の期待はより大きく強くなって行く。
「はっはっは、ケーキ塗れとはなんと素晴らしいシチュエーションよ!」
 肢体に絡み付いたスポンジに大笑し、菘はクリームを纏った指先を舐める。邪神メイクの裏から覗くその妖しさに、一部の観客がノックアウトされた。
「ぬかせっ、俺はキサマらぁぁあああああああああッッ!?」
 二度あることは三度ある。
 少し本気を出した瑞樹の五月雨のような刀の雨が、トドメ攻撃直前のボンテージケーキをおあつらえ向きに壁に縫い止めて行った。観客達の間からまたしてもNINJAコールが上がるが、怪人の気を逸らすのに有効なので瑞樹はもう訂正しないことに決めたらしい。
 ――最早まな板の上の鯉と化した怪人に、蛇のように忍び寄る影。
「ナイフデコレーションとはまた斬新なケーキであるな! さあ、妾の一撃にボコられ、精々派手にブッ飛ぶがよい!」

 1t余裕で持ち上げる剛腕から繰り出される、衝撃波を伴った轟音の左ストレート。
 怪人の星が打ち上げられると同時に、キマイラ達の大喝采が会場中を包んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ドーラ・ワルダー』

POW   :    わたくしにひれ伏しなさい!
【鞭】が命中した対象に対し、高威力高命中の【踏みつけ攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    下僕達、やっておしまいなさい!
戦闘用の、自身と同じ強さの【力自慢の下僕】と【テクニック自慢の下僕】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    こうなったら奥の手よ!
自身が戦闘で瀕死になると【巨大なびっくりメカ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ガジル・コリアンダーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※断章を投稿しますので少々お待ちください。
●ハッピーウェディングを取り戻せ
「――一体、これはどういうことかしら?」
 底冷えするかのような低い声音が地を這う。ホイップクリームがベトつくカーペットの上を、黒いロングブーツの脚がしなやかに闊歩した。しんと静まり返った会場の中、彼女一人の足音だけが異様に、響く。
「せっかくわたくしが下僕にしてあげたというのに、この体たらく……。」
 呆れた、と。言わんばかりに軽いため息を吐いた。
 恐怖に震えるキマイラが、インテリアで組み上げられたバリケードの奥で小さく鳴く。
「仕方ありません、直々に誘拐してあげま――、」
 円卓の影から放られたマイクが、悲鳴のようなハウリングをあげて仮面の女性の脳天に直撃する。痛みにひしゃげた赤い瞳の先で、マイクを投げた腕の付け根に咲く、白薔薇のブートニア。
「なにがっ……下僕だ! 誘拐だ!」
 震える体を必死で抑え、新郎のキマイラが大声で叫ぶ。
「僕たちは誰一人、お前なんかに屈しない! せっかくの式をめちゃくちゃにしてっ……絶対に許さないぞ怪人ッ!!」
 憤怒と、興奮と、焦燥と、恐怖と。
 綯い交ぜになった感情のまま、壁を蹴って落ちて来たマイクを拾い、出力ボリュームをMaxまで上げる。肺が潰れるのもお構いなしで、今できうる限りの力を籠め思い切り、息を吸った。
「――みんなっ、猟兵を、全力で応援するぞー!!」
--------------------------------------
※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
--------------------------------------
ラング・カエルム(サポート)
「なんだ、さては楽しいことをしているな!よし、私も混ぜるといい!」
何かと首を突っ込みたがる。とても偉そうだけど人類みな友達だと思っている毎日ご機嫌ハイカラさん。
別に男に間違われてもなんら気にしない。そもそも自分の性別を意識していない。
とてもポジティブ。人類みな友達だけど、悪いことした奴に叱るのも友達。なので誰にだって容赦もしない。容赦なく殴る。容赦なくUCも使う。だって友達だからな!



 ぴし、と鞭が床を打つ。キマイラ達の思わぬ反抗にわなわなと肩を震わせ、美貌の女幹部は眦を吊り上げた。そして――。
「小癪なキマイラどもね! 良いでしょう、全員わたくし自らひっとらえて、従順で忠実な下僕怪人にしてあげま――」
「なんだなんだ、さては楽しい事をしているな!!」
「なんなのお前はっ!?」
 渾身の高笑いを横から窓を破って突っ込んできたラング・カエルム(ハイカラさんの力持ち・f29868)に止められた。物理で。出会い頭のドロップキックに咳き込みつつもドーラ・ワルダーが吼えれば、ラングはふふんと胸を張って。
「皆の友達、ラング・カエルム! 気軽にラン様と呼ぶがいい!!」
 突き付けられた人差し指の先で、ドーラは小さく鼻を鳴らした。その口元に浮かぶのは妖艶な笑みと、確かな怒りの色。
「……そう。そう、お前、猟兵ね? わたくしの素敵な計画を、よくも、よくも……」
「計画とやらはよく分からんが、このパーティ会場を滅茶苦茶にしたのはお前達なんだな?」
 そうだそうだー、やっちゃえ猟兵ー、怪人なんかやっつけろー。背後からわあわあ響くキマイラたちの大声におおよその事情を理解して、ラングは大きく拳を引いた。皆の友達と、確かにラングはそう名乗った。その信条は目の前のオブリビオンに対しても例外ではない。そしてラング曰く、『友達が悪いことをしたなら叱って止めてやるのも友達だ』。
「つまりまずはこれを喰らえーっ!」
「へぶっ!!」
 力持ちの圧倒的パワーから繰り出された友情の鉄拳が横面を見事に捉え、そうしてドーラの体が宙に舞った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギルティナ・エクスキューション(サポート)
わ…私はギルティナと申します…
鞭のヤドリガミでして…その…人を様々な方法で苦しませ追い詰めることが得意…です…
それと…人から情報収集したりとかも…

戦闘はあんまり得意じゃないですけど…
鞭をふったり針を投げたり…最低限はなんとか…

あ…それとですねぇ…
人体の構造とかに結構詳しくてですねぇ…壊す方は勿論ですけどぉ…治す方もちょっとだけ自信が…あるかも…
やりすぎても…治してしまえばまた…やりすぎれますから…

あぁ…最後に私の趣向の話なんですけどもぉ…
女の人が大好きでしてぇ…
味方にいても張り切っちゃいますし…敵にいてもいっぱい張り切っちゃいますから…
いえ、男の人も普通に相手できるんですけど…やる気が…ねぇ…



「わ、わたくしの顔をよくも……許さない、許さなくてよ猟兵ども!!」
 しっかりパンチ跡を刻まれた頬を擦りつつ、ドーラは鞭を唸らせる。瞬間、その音に呼ばれたように閃光が走り、彼女と猟兵たちの間にふたりの手下が召喚された。ひとりはいかにも力自慢そうな大男。もうひとりは大量の工具をぶら下げた器用そうな男。やっておしまい、と命じるドーラの号令に応じて突っ込んでくる彼らを前に、ギルティナ・エクスキューション(有罪死刑執行人・f14284)は僅かに眉を下げた。
「あ……あなた方が、その……お相手……ですか……?」
 男性が苦手というわけではない。それにギルティナとて、彼らと戦える程度の力は備えている。ただ、どうせやり合うならむさ苦しい男どもよりも豊満な美女であるところのドーラを前にした方がやり甲斐がある……というのが、彼女の正直な感想だ。
「……いえ……違いますね……」
「何が違うって言うのかなァ、お嬢さ~ん?」
「おふたりに……勝てば……次は、あの方と……」
 ふふ、と小さく笑みが零れる。そう。ドーラ・ワルダーとぶつかりたいなら、こいつらをさっさと始末してしまうに限る。そんな風にして自分のやる気スイッチを入れることに成功したギルティナは、自身の得物にして本体である鞭をきゅっと握り締めた。
 よくしなる革で作られ、金属製の棘が無数に突き出た茨鞭は、控えめに言って悪の女幹部であるところのドーラが持つそれより数段は凶悪な代物だ。淡く薄暗い笑みを浮かべたまま、鞭を振り回してふわりふわりと歩み寄って来る少女の一種異様な姿に、手下どもの顔が刷毛を引いたように青ざめる。
 ――そして、高い天井に茶色い悲鳴がこだました。

成功 🔵​🔵​🔴​

二條・心春(サポート)
『皆さんのお役に立てるよう、頑張ります!』
『助けに来ました。もう大丈夫ですよ』
UDCアースで学生をしながら猟兵の活動もしている、自分にちょっと自信がないけど心優しい普通の少女です。落ち着いて礼儀正しいですが、可愛いもの、特に動物を見るとテンションが上がります。基本的に誰にでも敬語で話します。
基本戦術としては、「UDC管理用タブレット端末」を使い、心を通わせたUDCの霊を召喚して「対UDC用量産型直槍」や「対UDC用特殊拳銃(試作型)」を使い一緒に戦います。また、一般人は優先して助けます。
戦闘以外では、タブレット端末を使って情報収集や探し物をしたり、聞き込みを行います。



「あのアンポンタンども……! 役に立たない下僕ね!」
 ハンカチを持っていたなら食いちぎりそうな勢いで苛立ちを露わにし、ドーラは鞭をしならせる。思いの他遠く伸びようとしたそれを、けれど割り込んで絡め取る長柄があった。
「私だって、これくらいは!」
 槍の主は二條・心春(UDC召喚士・f11004)。決して他の猟兵にその一撃は届かせまいと気丈な瞳を向けてくる少女に、女幹部は忌々しげに舌打ちした。
「おどき、小娘!」
「ど、どきません!」
 後ろには多くのキマイラたちもいる。せっかくの晴れの式を楽しもうとしていた彼らのことだって、絶対に守りたい。心春の勇気に応えるように、彼女の持ち歩くタブレット端末の画面が輝いた。光の方へちらと目をやり、微かに頷いて、心春は自身と共にあるUDCに呼びかける。
「……行きましょう!」
 光の輪郭を持つ獣が、この世ならざる咆哮と共に宙へ滑り出る。煌きはたちまち空気の中に溶け、心春の槍に絡みつき、その穂先とひとつになる。まっすぐに繰り出した一撃を、けれどドーラは大きく跳躍することで回避した。そのまま槍の穂を踏んでもう一段高く跳び、空中から女幹部は心春に狙いを定める。
「その生意気な頭、床に擦らせてあげます――!」
「ッ」
 振り下ろされた鞭は辛うじて槍の柄で弾き、続く踵の一撃を頭から得物の方へとギリギリで逸らす。反撃に転じるには距離が悪い。この間合いなら、有利なのはドーラの方だ。長柄で身を守りつつ飛び退り、心春は慎重に敵の動きを見定める。
 ――大丈夫。強いが、勝てない敵ではない。握り締めた手の中で、槍の柄が一瞬脈打つように熱く感じられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤崎・美雪
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

あー、式を台無しにした人が何か言ってますネ
誰も下僕にしてほしいとかお願いしていないし
そもそもキマイラの怪人化を我々猟兵が許すと思うか

…というわけでここで成敗だ
私、直接殴れないけど

そっちに奥の手があるのは知っているぞ
なら私はそれを出させないだけの話だな
「歌唱、優しさ」+指定UCでもふもふもこもこな羊をたくさん召喚
ドーラに殺到させてもふもふダルマにしてやろう
もふもふ羊たちよ、遠慮なくあの悪の猟書家に突っ込むがいい
ふかふかな毛皮を持つ羊にくるまれてグースカ寝てしまえば奥の手も出せまい?

というわけで、後に続く猟兵さん、ヤッチマイナー
…ってこれじゃ私、ドーラとメンタル同じだな



「あー、式を台無しにした人が何か言ってますネ。誰も下僕にしてほしいとかお願いしていないし」
 怒り狂って鞭を振るうドーラを前に、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)はジト目で呟く。大体罪のないキマイラを怪人に改造してしまおうだとか、そんな暴虐を猟兵が許すわけもない。けれどそんな言葉には一切耳を貸さず(或いはそもそも聞こえていないのかもしれない)、ドーラはぎりぎりと奥歯を鳴らした。
「こうなったら……」
「おっとそっちに奥の手があるのは知っているぞ」
 あると分かってわざわざ出させてやることもない。猟兵とは時に無慈悲なのだ。ドーラを遮って歌声が紡ぐのは、柔らかく優しい子守歌。そして、その歌こそは美雪のユーベルコードのはじまりを告げる旋律。歌に呼ばれて現れたのは、もふもふもこもこふっかふかの羊さんの大群だ!
「もふもふ羊たちよ、遠慮なくあの悪の猟書家に突っ込むがいい」
「な、何? 何なのこの羊どもは!?」
「問答無用ー」
 美雪の指示を受け、羊さん軍団はドーラめがけて一斉に走り出す。ぐるりと周囲を渦潮のように囲み、次第にその包囲を縮めていけば、やがて出来上がるのはそれはもうぬくぬくあったかふわふわな眠りをもたらす羊団子。いくら悪の女幹部とて、眠らされてしまえば当然戦いもままならない、という訳で。
「というわけで、後に続く猟兵さん、ヤッチマイナー」
 振り返り、そう声を上げた所で、はたと美雪は思い至る。
(「……ってこれじゃ私、ドーラとメンタル同じだな」)
 自分で自分に向けたツッコミは、彼女の胸の裡だけにそっとしまわれたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

引き続き二色・菖蒲なりきりモード。
人気の鬼狩り漫画の人気キャラになりきり原作再現でキマイラの応援を得ましょう。刀は武器改造した結界術で再現。着物も結界術を防具改造で形成したものなので護りも万全よ。

神仏降霊 妖の息吹捌の型 八岐大蛇

八頭八尾の大蛇のエフェクトを纏い(結界術)、洪水を思わせる怒涛の連撃で蹂躙してあげるわ。
人の恋路を邪魔するのはなんとやら、せっかくだし技の大盤振る舞いしちゃいましょう、須佐之男、月読、天照、三貴神をイメージした技で派手にキメましょ♪



「……つまり、今ならこっちがしたい放題のチャンスってことよね?」
 すっかり寝こけているドーラを前に、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)は悪い笑みを浮かべた。それはもうめちゃくちゃ悪い笑みを浮かべた。
 そんな彼女が纏うのは、キマイラフューチャーでも大人気の漫画の登場人物を模した衣装。武器まできっちり再現したその出来栄えに、原作ファンらしいキマイラたちから感嘆の声が上がった。
「神仏降霊、妖の息吹――」
 何しろ今の相手は無防備に床に転がっている。調息と集中を邪魔する者など誰もいない。そうして放たれた洪水を思わせる怒涛の連撃に、八頭八尾の大蛇の幻影が重なった。初撃が命中する寸前に殺気を感知したのか、ドーラの瞳がかっと開く。だが、それ以上の時間が彼女に許されるわけもなく。
「……はっ!? わたくしとしたことが、猟兵の術中に嵌るだなんて!」
「中々可愛い寝顔だったわよ?」
 からかうようにアリスが笑えば、しばしの眠りから覚めたドーラは悔しげに目を剥いた。既にボロボロの身体を引きずり、それでも彼女は拳を振り上げて。
「こうなったら奥の手よ! 来なさい、メカドーラ!」
「いいわ、大盤振る舞いでお相手してあげる♪」
 巨大な鞭を振り回すびっくりメカ相手に、けれどアリスは怯まない。むしろその猛攻を楽しむように引き付け、焦らすようにかわして、彼女は巨大なメカの機体を足元から駆け上がる。
「さあ、どれがお好みかしら――?」
 或いは、荒波のような豪刀が。或いは、静謐な月光を思わせる一閃が。或いは全てを焼き尽くす、日の神宿す太刀筋が。惜しげもなく繰り出された剣技の数々が、メカドーラのコアを叩き割り、ついでにドーラ本人をも逃がすことなく巻き込んで。
 そして、びっくりメカの大爆発が、悪の成敗を高らかに告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月14日


挿絵イラスト