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世はサバゲーの時代ですわ!(ただしセピアリアに限る)

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #バトラー・サファイア #クリスタリアン #漿船

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●セピアリアにて
 宇宙には宝石だって輝く。それが「漿船(クリスタルシップ)」。
 クリスタリアンがのどかに暮らしていたその漿船「セピアリア」に忍び寄る影があった。
 いや、忍び寄るなんてものではない。一瞬。ほんの一瞬でバトラー・サファイアという影が実体として現れたのだ。
「さぁ、セピアリア。私と共に行きましょう。私達はあなたの力を必要としているのですから」
 バトラー・サファイアは漿船、セピアリアへと語り掛ける。
「わかっていますよ、セピアリア。あなたの中にあり、あなたの枷となる存在……クリスタリアンをこれから私が排除します。それからでも遅くはありませんから」
 転送され出現したバトラー・サファイアが部屋を抜け出してから住人のクリスタリアン達を抹殺するのに、時間はそれほどかからなかった。

●スペースシップワールド・1stラウンド
「『スペースシップワールド』で大変なことが起きそうです!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は今日も急いでいた。事件なのだから仕方がない。
「現在進行形で7つの世界を襲っている猟書家達ですが、スペースシップワールドで暗躍する猟書家の一人『バトラー・サファイア』が漿船『セピアリア』を襲う悪夢を見てしまいました!」
 猟兵達がかつて救った世界が、今また危機に晒されている。敵は強大だが、立ち向かわねばならぬのだ。
「なので、急ぎセピアリアへと赴いて、バトラー・サファイアからセピアリアと住人の皆さんを守っていただきたいんです。……それで、事件の概要なのですが」
 ロザリアは『ぐりもあのーと』をぱらりとめくる。
「セピアリア……というか漿船には、最長老プリンセス・エメラルドだけが知る転送装置があるらしく、バトラー・サファイアはそれを使って侵入したようですね。なので、転送場所を発見できれば、住人の皆さんを危険に晒すことなくバトラー・サファイアを倒すことができると思います」
 では、転送場所はどうやって探すのかという話になるが、手っ取り早いのは住人に直接聞いてみることだろうか。
 また、漿船は微弱ながら意志を持つ。セピアリアも当然そうで、住人のクリスタリアンであればテレパシーで意思疎通が可能なため、そこを頼るのもよいかもしれない。
「ですが、ちょっとだけ問題があるんです。セピアリアの住人の皆さんは、初対面の相手には何かしらで勝負をしないといけない風習があるらしく……当然、猟兵の皆さんは初対面ですよね。ですから、話を聞く前に勝負をすることになると思います。で、その勝負というのが、いわゆる『サバゲー』ってやつです」
 サバイバルゲーム。それが今セピアリアで最も流行っている勝負事なのだとか。
「セピアリアの住人は女の子達ばかりのようですが、そこは気にしなくてもいいと思います。とにかく勝負をして、情報を集めてみてください」
 クリスタリアンや漿船の協力を取り付ければ、バトラー・サファイアとの戦いにおいても何かしら有利なことがあるかもしれない。
「時間はありますから、息抜きと思ってサバゲーをやってみるのもいいかもしれません。どうか皆さん、宜しくお願いします」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 年単位ぶりくらいの勢いでスペースシップワールドのシナリオですねえ。

●フラグメント詳細
 第1章:日常『カラフルウォーター★サバイバルゲーム』
 サバゲーです。
 とはいえ漿船の中なので構造的にそんなに複雑ではないです。
 かなーり広めの部屋に床から柱がぽこぽこ突き出てて、それらの障害物に身を隠しながら相手を撃つ! とかそんな感じです。
 道具は現地で借りる水鉄砲とか水風船です。命中したのがわかりやすい色水が入ってますが、遊んだ後は専用液(これも現地にあります)で落とせばすっきり汚れナシ!
 住人は「ですわ」口調の女性クリスタリアン(精神年齢は10代後半)です。お嬢様ってやつですが本当にお嬢様かはよくわかりません。
(MSはとある文化に触れていないのでこの点過度な期待はしないでください)
 クリスタリアン達が勝っても負けても、その後の猟兵の話はちゃんと聞いてくれます。何か手掛かりになりそうなことを聞いてみるといいと思いますよ。

 第2章:ボス戦『バトラー・サファイア』
 バトラー・サファイアに特筆すべき能力はないです。
 敵のユーベルコードを参考にしつつ、普通に戦ってみてください。

●プレイングボーナス
 1.クリスタリアンや漿船の協力を仰ぐ。
 これは『全章共通』のプレイングボーナスとなります。

●MSのキャパシティ
 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 ゆったりペースで進行予定です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『カラフルウォーター★サバイバルゲーム』

POW   :    気合いだ!

SPD   :    スピードを生かす!

WIZ   :    戦略的行動!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘスティア・イクテュス
ふふふ…グリードオーシャンのとあるサバイバルゲームで2位をとったわたしに挑むとは命知らずね…
ということでその勝負乗りましたわ!
私こそが頂点だと思い知らせてやりますわ!!(感染った)

勝負にティターニアは無粋ですわ!この脚で勝負!!
敵の攻撃を『見切り』、躱して撃つ!ミスティルテインと少し勝手は違いますが基本は同じ!負けるはずがなくてよ!!

終わったら友情の握手を、貴方も中々やりましてよ…
…はて?この船に来たのは何が理由だったかしら……あっ!?



●戦火を交えるお嬢様……?
「サバゲーで勝負といきますわよ!」
 セピアリアに住むクリスタリアンの少女と出会ってからものの数秒の出来事だった。
 二言目には、とかいうやつだが、一言目が「まあ」とかいう感嘆詞だったので実質一言目のようなものだ。
「ふふふ……グリードオーシャンのとあるサバイバルゲームで2位をとったわたしに挑むとは命知らずね……」
 挑まれたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は薄く不気味な笑みを浮かべていた。知らぬは罪、とでも言わんばかりに。
「その勝負乗りましたわ!」
「威勢がいいですわね! わたくしの腕前を思い知らせて差し上げますわ!」
「その言葉、そっくりお返ししましてよ。わたしこそが頂点だと思い知らせてやりますわ!!」
 壮絶な言葉の応酬だった。ここにお嬢様サバゲー頂上決戦が幕を開ける。
 ……ヘスティアの口調はこんなものではなかったはずだが。
 全く、サバゲーとは恐ろしい。


 互いに譲らぬ戦いが繰り広げられていた。戦場を駆け、相手の姿が見えた一瞬の攻防。ぱしゅぱしゅと水鉄砲から射出された色水が交差する。
 戦場はカラフルだ。的を外した色水が互いの領地を主張するかのように広がっていた。
 柱から柱へ、移動に合わせて攻撃を繰り返す。円を描くように二人が駆け巡る光景は周囲の色彩も相まって眩暈がしそうだった。
「そこですわ!」
 クリスタリアンの少女が柱の陰から半身乗り出して水鉄砲を発射した。接近のためにヘスティアが飛び出したところを、足音を頼りに狙っていた。
「甘いですわ!」
 しかしヘスティアも、少女が姿を見せてからの数瞬で狙いの場所を見切り、急停止のフェイントをかけて回避した。反撃に水風船を投擲しながら柱の陰へと飛び込んだが、少女が身を引っ込めるほうがわずかに早く、柱の脇をすり抜けて床の上で割れていた。
 ヘスティアは次の動き出しのタイミングを計る。
 このままではいけない、と思考を働かせる。何か相手の予測を上回るような行動を取らなければ勝機は見えてこない。
 なんでもありなら簡単だ。ジェットパック――ティターニアを使えばよい。事実、少女はその他の道具について使用を禁じてはいなかった。
 だが、この勝負には無粋とヘスティア自身が使用を封じていた。己の足で勝利を取りにいかなければ意味がない。
(この水鉄砲も、基本はミスティルテインと同じ……なら!)
 手の中の水鉄砲は普段の武装に比べれば軽い。それでも照準を合わせる動作などは、普段の動きを流用できる。
 ヘスティアは最後の一発を決めに出た。少女が潜む柱へと大きく回りながら疾駆する。姿をかなり晒すことになるが、相手の予測を上回るために己の銃の腕前に賭けた。
「現れましたわね! これで終わりでしてよ!」
 ヘスティアの動きは少女に見えていた。ヘスティアと少女を遮る最後の柱の先、ヘスティアが飛び出してくるであろう場所へ先読みで水風船を放る。
 水風船は緩い放物線を描いていた。そしてそのまま――ヘスティアの真上を通過した。
 ヘスティアはスライディングで柱から飛び出していた。もし少女が水鉄砲を向けていたなら、逆に撃たれて終わっていたかもしれない。
「なっ――」
 少女の顔が驚愕の色に染まった直後、ヘスティアの水鉄砲から放たれた色水がぺちゃんと少女の胸元に命中していた。


「負けましたわ。お強いですわね」
「貴方も中々やりましてよ……」
 勝敗はあれど、互いに健闘を称え合い友情の握手を交わす。負けはしたが少女の表情はすっきりと晴れやかだ。
 ヘスティアも充実感に満ちていた。2位を取ったというあの時のような、素晴らしい勝負だった。
 ……はて? この船に来たのは何が理由だったかしら……とヘスティアは首を傾げる。
 サバゲーをしに来た? そんな気もするけれど、何かもっと重要なことがあったような。
「……あっ!?」
「な……なんですの?」
 ヘスティアは手短に説明した。バトラー・サファイアと転送装置。忘れてはならない大事なことだ。
「そのようなことが……わかりましたわ」
 ヘスティアの話に驚きはしていたが、快く協力してくれそうだ。
 少女は目を閉じ、セピアリアにテレパシーで問いかける。
 ややあって、
「怪しい場所がある、と……こちらですわ」
 少女に導かれ、ヘスティアはセピアリア内部を進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アニカ・エドフェルト
水鉄砲、ですか…。
こういった、飛び道具は、正直苦手、ですが、気楽に、やってみます。
でも、やるからには本気、ですっ
(水鉄砲を柱に向かって撃って感覚確認してる)

《飛翔天使》で、素早く動き回って、相手が狙いきれないように、してみます。
近づかないと、当たらなさそう、ですから、隙をついて、相手の背後に飛び込んで、逆さまに、飛びながら、狙いをつけて…
もらい、まし……えっ?
ひゃっ、わっ、きゃあっ!?
(撃とうとして止まったところを集中砲火されて色水塗れ)

はぁ、はぁ…ま、まいりました…。
でも、こういうのも、楽しい、ですね。
後は、感想とか、雑談とか、話しながら、転送装置のこと、訊いてみます、ね。

(アドリブ歓迎)



●ストップ・アンド・シューティング
「水鉄砲、ですか……」
 アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)の両手に乗った水鉄砲は妙に大きく見えた。
「あら、こういったものの扱いは慣れていらっしゃらない?」
「飛び道具は、正直苦手、です……」
 心情を吐露するアニカに、クリスタリアンの少女はくるんとカールした髪を揺らしながらアニカの正面まで顔を下げて、揺れ動く瞳を見つめた。
「何も命を取ろうと言っているわけではないのですから、肩の力を抜いて楽しめばよいのですわ。わたくしも、『少しくらいは』手加減してあげてもよくってよ?」
 少女はアニカに微笑みかけていた。それがキラキラ輝いて見えたのは、彼女が宝石の体を持つクリスタリアン、というだけではなさそうだ。
 初対面ではあるが強引さはなく、優しく手ほどきしてくれる。
 アニカは胸の辺りがほわんと温かくなっていくのを感じた。
「どう? 少しは不安も薄れたかしら?」
「……はい、気楽に、やってみます。でも、やるからには本気、ですっ」
 ちょっぴり語気を強めながら、ぱしゅぱしゅと水鉄砲で柱を撃ち感覚を確かめる様子を、クリスタリアンの少女は姉のように見守っていた。


「その可愛らしい翼、どうぞ使ってみなさいな」
 少女のアドバイスもあり、飛行するアニカを地上の少女が追うという対空戦が繰り広げられていた。翼のオーラを箒星のように宙に残しながら柱の間を飛び回り、少女に的を絞らせない。
「なかなか……やりますわね!」
 アニカの飛行速度は少女にとって予想外だったらしく、声にも熱が入る。
 ガトリングのような連射がアニカを追っていた。しかし捕まえきれない。天井にぺちゃぺちゃと色水の染みが広がっていく。
「ですが……逃げ回ってばかりでは勝てませんわよ!」
「わかって、ますっ」
 勝つためには撃たねばならない。しかし元より飛び道具の類の扱いは不得手。しかも自身は高速飛行を続けているので狙いなどあったものではない。
 とは言え、逃げ続けていれば負けもしない。そうしてアニカはじっと機会を伺っているのだが。
 相手の少女も移動、攻撃、退避を流動的に行い、アニカの逆襲を警戒している。
(勝つ、ためには、隙を、つかなきゃ)
 時間が経つにつれ、動きが読まれてきているような感覚もあった。何度か危うく色水が命中しそうなところを急旋回で回避していた。
 このままではいずれ当たる。そうなる前に――飛び込まねば。
 アニカは意を決した。翼のオーラが強く輝く。
 少女が駆け込んで隠れた柱。その上を目指した。天井との間にある隙間を狙っていた。
 少女はまた回り込んでくると思っているだろう。
 その通り。しかし、回り込むは回り込むでも、それは横からではなく――上からだ。
 柱に圧迫されていた視界が開けた。眼下に少女の頭のてっぺんが見えた。
「まさか――」
 見上げる少女と一瞬視線が合った。驚いたように目を見開いていた。
 アニカは宙に弧を描きながら天地がひっくり返った世界を見ていた。「天井」に立つ少女に水鉄砲の口を向けて。
「もらい、まし――」
 タイミングとしてはアニカの勝利だった。
 そのまま流れるように水鉄砲を撃っていれば。
 アニカはしっかりと狙いをつけるため、ぴたり、宙に止まってしまった。そうしなければ当たらないのだから仕方ない。
 しかし当然、
「そうは問屋が……卸しませんわ!」
 構えてから撃つまでの速度勝負では少女が圧倒的だった。ぴゅぴゅん、と飛んだ色水は正確に的を捉えて、
「ひゃっ、わっ、きゃあっ!?」
 水鉄砲を持つ手からお腹の辺りまでに集中砲火を受け、アニカは色水塗れになって撃ち落とされてしまった。


「はぁ、はぁ……ま、まいりました……」
 水鉄砲を返却しながら負けを認めるアニカ。少女はそれを受け取ると、
「あなたの翼も、素晴らしいものでしたわよ?」
 代わりに色を落とす専用液を渡してくれた。
「それで……実際にやってみた感想はいかが?」
「はい……こういうのも、楽しい、ですね」
 勝ち負けが全てではない。アニカはできる限りのことをして精一杯頑張った。力を出し切ったからこそ、その先には楽しい世界が広がっていた。
「水鉄砲の、使い方……もっと、上手くなれば、役に、立つかも……」
「あら、何の役にですの?」
「あ、実は……」
 アニカは自身がここに来た理由を少女に話した。バトラー・サファイアのこと、転送装置のこと、そしてバトラー・サファイアが現れる場所を突き止めたいこと。
「そうでしたのね……ここで会ったのも何かの縁。わたくしもお手伝い致しますわ」
 それは、クリスタリアンの少女にも関わることだ。少女は協力を申し出てくれた。
「このセピアリアには普段あまり立ち入らない倉庫区画がいくつかありますわ……ちょっと聞いてみますわね」
 聞いてみる、とはテレパシーのことだ。少女は口を閉ざしてぼんやりと天井に視線を向けた。
「F区画……そう、ありがとう。アニカさん、行きますわよ」
「わかり、ましたっ」
 アニカは力強く返事をして、少女の後を追っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
そういえば、クリスタニアンの船に乗るのは初めてですね。
いったいどんな方たちでしょうか。
しかし、初対面の方と勝負する風習というのは変わってます。
人の本性を明らかにするにはひと勝負、ということでしょうか。

ともかく猟書家の魔の手が迫ってますから、サクッと勝負を付けて、転送装置の場所を教えてもらいましょう。

サバイバルゲームですから、本来は戦術とか作戦とかあるんでしょうけど、ここはあえて西部劇スタイルでいきましょう。
どこからでも掛かってきていいですよ。

水鉄砲で戦います。
相手の動きは【第六感】やスマートグラスで読んで、撃ち抜きます。
そして、相手の弾は【念動力】で軌道を逸らして回避します。



●勝負は一発の弾丸で
 漿船に乗り込んだ黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は少し観光気分で船内を歩いていた。
「そういえば、クリスタリアンの船に乗るのは初めてですね」
 ぺたぺたと壁を触るとつるつるしていた。無機的な質感ながらどこか温かい、不思議な感触だった。
 こんな船に住む人々とはどんな人なのだろう、と思いを馳せていると、
「あなた……見かけない顔ですわね」
 住人の少女に出会ったのはそんな時だった。ロングヘアーですらりとした背の高い少女で、
「ここで会ったが百年目……いざ、尋常に!」
 どこか古風で面妖な少女だった。
(見た目とのギャップが凄いですね……)
 初対面の相手とは勝負をしなければならない風習といい、やっぱり宇宙は広くて知らないことがたくさんあり面白い、と摩那は思った。


 グリモア猟兵の予知により、少女と一勝負するくらいの時間的猶予は確保されている。とは言え一分でも一秒でも多くあるに越したことはない。
 サバイバルとは生き残る術。当然戦術などがあるのだろうが。
「さぁ、どこからでも掛かってきていいですよ」
 戦場となる部屋の中央、やや広く敷地が取られた場所で、開始の合図を前に摩那は宣言した。西部劇で見るような光景だ。
「いい心掛けですわね……では遠慮なく、この水鉄砲の錆にしてくれますわ!」
 少女が持つ水鉄砲はおそらく摩那に貸し与えられたものと同じものだろう。感触はプラスチックのようだが、果たして錆びるのだろうか。
 どこまでも不思議な少女だが、眼光は鋭かった。互いに公平な合図を、と一つ高く放られた水風船が地面に落ちて割れた瞬間、少女は横っ飛びから水鉄砲を発射した。
 即座に撃ってくるはず――そう感じ取っていた摩那は双眸に力を込めた。念動力で捻じ曲げられた色水がぎゅんと摩那の耳の横を通り過ぎていく。
「――そんな力がありましたの!?」
 虚を突かれた少女は距離を取る方針にシフトしていたが、スマートグラス『ガリレオ』から熱情報を受け取っていた摩那はその揺らぎから一秒先の未来を読む。
「そこですね」
 摩那から放たれた色水も一発。これで丁度おあいこだ。宙を走った青色は、
「ひゃんっ!」
 ぺちゃり、と少女の胸元に広がった。


「負けましたわ……お強いですわね」
 自信があったのか、少女は火が消えた焚き火のようにしゅんとしていた。
「これで『私』という人間をわかってもらえたでしょうか」
「ええ……それで、あなたはセピアリアの住人ではないようですし、どういったご用件で?」
「この船のどこかにある転送装置……それを使って、あなた達を殺そうとする敵が現れます。私はそれを未然に防ぐために来ました」
「そんな、でもまさか……少々お待ちを」
 始め驚きを見せていた少女だったが、何か思い当たる節があるようで、部屋の壁に手を触れ何かを探っていた。
 摩那は少女が再び口を開くのをじっと待つ。
「……ありましたわ。倉庫として使われているF区画の、最奥の大部屋……そこに、あなたが仰る転送装置があると」
「F区画……そこへはどうやって?」
「ご案内致しますわ」
 勝負を繰り広げた部屋を抜け通路を駆ける。
 間に合うことを信じて、摩那は少女の背中を追った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『バトラー・サファイア』

POW   :    ナイブスストーム
【サファイアでできた無数の暗器】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    アカンプリッシュメント・オブ・アサシン
レベル分の1秒で【麻酔針】を発射できる。
WIZ   :    サファイア・フラッシュ
【サファイアの肌】から【蒼く眩い閃光】を放ち、【目を眩ませること】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:白菜ポンズ

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エリル・メアリアルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蒼玉、到来
 猟兵達が集う、漿船セピアリアのF区画。
 普段あまり立ち入らない区画の最奥には、何を入れるためのものなのかよくわからない大部屋があった。
 ただ広いだけの空間であり、障害物もあまりないのでサバゲーには向かない、と少女達は見向きもしない。

 そこへ現れたのは、プリンセス・エメラルドの元より空間を渡ってきたバトラー・サファイア。
 それは、猟兵達が部屋へ飛び込んだのとほぼ同時の出来事だった。
ヘスティア・イクテュス
サバゲで向かないから放置ってどうなのかしら…
いえ、まぁ物とかでごちゃごちゃしてて戦いにくいよりはいいけれど…

この世界に銀河帝国の支配はもういらない
バトラー・サファイア貴方はここで倒れてもらうわ


グレムリンズを複数機を周囲に待機し敵の攻撃の備えに【盾受け】
残りでサファイアへの攻撃へ【鎧無視攻撃・範囲攻撃】
前後左右上下…退路を断ち、四方八方からグレムリンズで切り刻ませてもらうわ

執事って言うだけあって荒事には慣れてなかったのかしら?

貴方達が教えてくれた転移装置の存在
これは今を生きるこの世界の人達が更なる発展のために有効に使わせてもらうわ



●漿船に飛ぶは光る円盤
(サバゲで向かないから放置ってどうなのかしら……)
 ヘスティアはクリスタリアンの少女の背中を追って扉が等間隔に並ぶ通路を進みながら、漿船セピアリアの在り方について考えていた。
 この後の戦闘を考えれば物が乱雑に詰め込まれているよりはいいが、それにしても物事がサバゲーを中心に回りすぎてはいないか。
 サバゲーからまたブームが変われば目を向けられるようにもなるのか。それはヘスティアにはわからない。
 まあ、わたしは住人ではないし、とヘスティアは思考をそのまま頭の中に留めておいた。
「あの部屋ですわ!」
「わかったわ、ありがとう」
 目的地が見えた。ヘスティアは一段ギアを上げ、ここまで案内してくれた少女を抜いていく。部屋の扉はヘスティアの接近を感知し、左右にシュンとスライドして道を開いた。
 部屋の中では転送装置が起動し、執事風の衣装に身を包んだバトラー・サファイアが現れていた。飛び込んだヘスティアと視線が合う。
「猟兵……先回りされていましたか」
 淡々とした反応だった。排除する相手が一人増えようがどうということはない、という余裕からなのか。
「この世界に銀河帝国の支配はもういらない。バトラー・サファイア、貴方はここで倒れてもらうわ」
「それは聞けない相談ですね」
 ヘスティアとバトラー・サファイア、双方即座に臨戦態勢に入っていた。バトラー・サファイアは周囲にキラキラと星のような輝きが現れる。
「行きなさいグレムリンズ!」
 片隅に少し物資が放り込まれただけの部屋には声が良く響いた。ヘスティアは戦闘用円盤型ドローンを召喚し、攻撃と防御の両方に配備する。
「眠れば苦しまずに済みますよ」
 キラキラとしたそれは宙に現れた麻酔針だった。それをビームのように集中させて発射した。
 針の雨が降る。
「盾になりなさい!」
 防御のドローンが垂直に立ち上がり、面で麻酔針を受けた。カカカカンと軽やかな音が鳴る。
「敵を切り裂いて!」
 続けてヘスティアは攻撃のドローンを送り出した。UFOのように蛇行しながら飛行するドローンが、円盤部からビームチャクラムを展開してバトラー・サファイアを切り刻みにかかる。
 光輪を纏ったドローンの突進をバトラー・サファイアは軽く跳んで回避する。しかし着地した場所へまた別のドローンが直進し迫ってくる。
 広い戦場で飛び石の上を渡っていくような跳躍が繰り返される。バトラー・サファイアは回避を続けていたが、その度に行動範囲が狭まってきていた。
 四方八方から飛び交うドローンがついにバトラー・サファイアを追い詰めた。跳べば確実にドローン達が作る光の軌跡に触れることになる。逃げ場はない。
「くっ!」
 苦し紛れに暗器を投擲したが、一機のドローンが光輪で弾き飛ばすとそのまま突っ込みバトラー・サファイアの左肩を鋭く抉った。それを合図に檻を成していたドローンが一斉に襲い掛かり、身動きの取れないバトラー・サファイアを刻んでいく。
「ぐぅっ……!」
 端正な顔が苦痛に歪む。蒼い長髪がはらりと散った。
「執事って言うだけあって荒事には慣れてなかったのかしら?」
 バトラー・サファイアは言葉を発さず、しかしその眼は怒りと悔しさを湛えている。
「貴方達が教えてくれた転送装置の存在。これは今を生きるこの世界の人達が更なる発展のために有効に使わせてもらうわ」
「転送装置は私の主、プリンセス・エメラルドのためにあるもの……そうはさせません」
 今度はギロリとヘスティアを睨み返すバトラー・サファイア。

 戦いは続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
ぎりぎり間に合ったようですね。

来て早々申し訳ないですが、ここから先には行かせません。
さっさと帰ってください。

相手は飛び道具使いでしょうか。
ならば、先ほどのサバゲーと同じ防御方法が使えますね。
【第六感】とスマートグラスからの【念動力】避け。

攻撃はヨーヨー『エクリプス』を使います。
UC【トリニティ・エンハンス】で【風の魔力】と【炎の魔力】を付与します【属性攻撃】。ヨーヨーに炎をともし、それを風の魔力で回転させれば、炎のヨーヨーのできあがり。暗器を【武器落とし】で叩き落しつつ、一撃を叩きこみます。

ストレートに狙っても避けそうですから、【念動力】でヨーヨーの軌道もいじって、回避困難にします。



●銀河に流れる炎のヨーヨー
 張りつめた空気の中にまた一人、猟兵が飛び込んでいた。摩那が部屋に辿り着いたのはバトラー・サファイアが麻酔針を放つほんの少し前のこと。
「ぎりぎり間に合ったようですね」
 とは言えほっと一息ついている場合ではない。目の前では今まさに激しい一つの攻防が繰り広げられようとしていた。
 UFOのようなドローンがバトラー・サファイアの麻酔針を堰き止め、暗器を弾き、逆にバトラー・サファイアを刻んでみせた。
「ふむふむ、相手は飛び道具使いでしょうか。ならば、先ほどのサバゲーと同じ防御方法が使えますね」
 色々飛ばしてくるようだが結局のところ、当たらなければどうということはないのだ。
 摩那はささっと戦列に加わる。
「来て早々ということでエンジンもあまりかかっていないご様子。ここから先には行かせませんので、さっさと帰ってください」
 きゅぴーん。レンズが光る。その奥に覗く瞳は自信ありげだ。
「御冗談を。あなたこそ、私の前から消えなさい!」
 バトラー・サファイアの手がすっとジャケットを撫でたかと思うと、指の間にナイフのような暗器が掴まれていた。
 ジャケットから離れた手がそのまま暗器を投擲してくる。3本の矢ならぬ3本の暗器が摩那の両目と眉間を狙っていた。
 鋭利な先端が間近に迫る様は恐怖心を煽りそうなものだ。しかし摩那はキッと暗器を睨みつけていた。
 目を狙って放ってくると感じていれば、心を強固に保ち身構えておけばいい。あとはスマートグラスに補助プロセッサを走らせて距離をリアルタイム観測し、念動力をぶつけるだけだ。
 3本の暗器がかたかたと揺れ、まるで三角形の頂点を目指すかのようにぎゅんと摩那の前から逸れていく。
「……っ! まだです!」
 バトラー・サファイアは弾幕のように次から次へと暗器を放つ。対し念動力で応戦する傍ら、摩那は超可変ヨーヨー『エクリプス』を握っていた。
 魔力を注げば、ヨーヨーは炎の玉と化す。
「これでも……食らいなさいっ!」
 炎を宿したヨーヨーを今度は風の魔力で回転させ、暗器の弾幕に向けて飛ばす。ピンと張ったワイヤーの先で炎が風を巻き込み一回り大きく成長した。
 暗器とヨーヨーが飛び交うそこは念動力の海だ。ぐにゃとワイヤーが撓んだかと思うと、念動力に操られたヨーヨーが暗器を予測不能な軌道で叩き落していく。
 バトラー・サファイアの細指から離れた暗器が、その目と鼻の先で散らされた。
 かと思えば、眼前に迫っていた炎がふっと消えた。じりっとした熱さを覚えたのは暗器の投擲のために伸ばした右腕だ。
 ヨーヨーは操られるままにバトラー・サファイアの腕の下へと潜り込んでいた。一瞬の死角。その隙が命取り。
 着弾の衝撃にバトラー・サファイアの体が浮いた。鋭いフックの一撃が脇腹に突き刺さる。炎が服を焼き焦がし、中に忍ばせてあった暗器が散らばった。
「ぐぅっ……!」
 しゅるるとワイヤーを巻き取っていくヨーヨーへバトラー・サファイアは追い縋るように暗器を放つ。しかし小石にでも躓いたかのようにヨーヨーは念動力でぴょんと跳ね、暗器をするりとかわしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダスク・ドーン(サポート)

煮るなり焼くなり。
人数穴埋めから不採用まで幅広くお使いください。
キャラの扱いはアドリブでも何でもお好きにお願いします。
口調は適当なので細かいとこは気にしない。

ただし、
他の猟兵に迷惑をかける行為や公序良俗に反する行動はしません。


『また日が沈むな』
人間のフォースナイト × スカイダンサー
年齢 27歳 男
特徴 面倒見がいい くーる 女性が好き とんでもない甘党
口調 やわらか(自分、相手の名前+ちゃん、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )


戦闘ならいずれかのフォースブレイドを使用。
シンプルな正面勝負を好む。

冒険や日常は……、
うむ、メンドウだな。
(テンション低くても仕事はきちんとやります)



●男は黙って正面突破
 ちまちま飛んでくる暗器やら麻酔針やらを掻い潜って攻撃を当てにいくなどまどろっこしい。
 そう言わんばかりにダスク・ドーン(人間のフォースナイト・f13904)は一直線に突き進んだ。
 正面突破、それが勝利への最短距離だ。
「真っ向から……向かってきますか……!」
 バトラー・サファイアは再び暗器を手に取る。こちらもまた距離を取った戦い方を徹底していた。
 互いに譲らぬ戦いの矜持。勝つのはどちらか――。
 サファイアでできた暗器が放たれた。そのどれもがダスクの急所を狙っている。
「厄介な飛び道具は……この手に限る」
 ダスクはフォースを解放した。ナイトブレイド――宵闇の如き黒刃を発生させるフォースセイバーが傘のように開きフォースの盾を作り上げる。
 カカン、と盾に弾かれた暗器が足元に落下していく中を踏み越えながらダスクが距離を詰める。
「なら……!」
 バトラー・サファイアはダスクの側面へ素早く回り込もうとした。見たところ平面の盾、正面がだめでも脇から、と考えたが。
 鈍器に打たれたような痛みがバトラー・サファイアを蝕んでいた。まるで地面から生えた手に掴まれているかのように動きが鈍る。
 猟兵達が積み上げてきたダメージが効いている。隙を逃す手はない。
「そらよっ!」
 新たなフォースセイバー、デイブレイドを握り締め、薙いだ。白刃が閃きバトラー・サファイアの胴を真一文字に斬り裂く。
「ぐっ……」
「まだまだっ!!」
 未だダスクの間合いだ。バトラー・サファイアは暗器を近接武器として振りかざしたが、ダスクの刃は軽々と弾き飛ばす。
「おらぁっ!!」
 今度は逆袈裟に斬り上げた。硬い感触が反動のように手に走り、白刃が深く食い込むようにバトラー・サファイアの体を裂く。
「っ……!」
 剣圧に押されよろめいたバトラー・サファイアの周りに、また隠し持っていた暗器がバラバラと散っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋月・透乃(サポート)
『今日も元気に食べて楽しく戦おうね!』
 人間で22歳の女性です。
いつも元気で、強敵との戦闘、食べる、スリルを味わうことを好みます。

基本的に自分の楽しみのために行動し、敵味方問わず他人の心情等には配慮しません。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用します。
戦闘では真っ正面からの突撃を好み、負傷は気合いで耐えれば良いと考えています。
戦闘以外のことも大体気合いと力でなんとかしようとします。
脳筋です。

武器は主に『重戦斧【緋月】』を使用しますが、他の武器の方が有効そうならそちらを使用することもあります。

クロムキャバリアでも生身で戦います。

不明な点はおまかせします。よろしくお願いします。


リーズ・リヴィエール(サポート)
 時計ウサギの力持ち×ゴッドハンド、18歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「女性的(私、あなた、呼び捨て、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●ティータイムは突然に
「あと少しのようです。ではここで……ティータイムにしましょう」
 ポン、と魔法のように戦場に現れたのはエレガントなティータイムセットだった。リーズ・リヴィエール(時計ウサギの力持ち・f24468)が給仕役となりティーポットを持てば、
「ティータイム!? キャロットケーキとか、あるかな!?」
「えぇ、ご用意しましょう」
 緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)が早速テーブルについた。戦闘かティータイムかちょっぴり迷った気もしたが、キャロットケーキが用意されるなら断然ティータイム優先だった。
 ポン、と音を立てて出てきたキャロットケーキが透乃に差し出されると、透乃はフォークを手に、すっと一欠け切って口に入れた。人参の風味がよく利いたキャロットケーキだった。
 リーズがカップにこぽぽと紅茶を注ぎ、透乃がそれをこくりと喉に流す。
 実に優雅なティータイムだった。
「何を、いきなり……」
 困惑しているのはバトラー・サファイアだ。猟兵が敵である自分へ見向きもせずにティータイム。
 警戒心の無さには沸々と怒りも込み上げてくる。バトラー・サファイアは無言で右手に暗器、左手に麻酔針を取った。
「ふざけているのなら……そのまま死になさい!」
 麻酔針を撃ち込み暗器で確実に仕留める。その算段だった。
 しかし――。
「どうやら効いてきたようですね」
 それまで給仕に徹していたリーズが急に戦場へ視線を戻した。効いてきた、とは何か――。
「……ぐっ、こ、れは……!」
 体がまるで泥の中にでもいるかのように重く感じる。バトラー・サファイアはさらに困惑していた。
「キャロットケーキも紅茶もおいしかったー! じゃ、いこうか!」
 透乃が席を立ち、リーズと共にバトラー・サファイアへと襲い掛かる。重戦斧【緋月】を左手に掲げ戦場を駆けた。
 このカラクリはリーズのユーベルコードによるものだ。
「『紅茶の時間』はちゃんと楽しまないとダメですよ?」
 リーズが給仕する紅茶を楽しまない者の行動速度を一気に落とす強力なユーベルコード。バトラー・サファイアが投擲しようとしていた暗器も麻酔針も、まだ手を離れていない。
 オーラを纏ったリーズと重戦斧を手にした透乃がもう目前に迫っているというのに。バトラー・サファイアはようやく飛ぶために足元を踏み締めていたところだった。
 当然、回避行動など間に合わない。
「時計ウサギのパンチもバカになりませんよー!」
 リーズはオーラを拳に集中させてバトラー・サファイアの鳩尾へ叩き込んだ。ごきん、と何かが砕ける音がしてバトラー・サファイアの体が高く打ち上げられる。
 そこへ、
『力の限りぶっ壊せー! 必殺の左! 緋迅滅墜衝!!』
 跳んだ透乃が左手一本で重戦斧を軽々と振り回し、思い切り大振りで薙ぎ下ろした。打ち上がったバトラー・サファイアへカウンターで重戦斧の刃が突き刺さり、ついにその体をばきんと砕いた。
 宙で真っ二つにされたバトラー・サファイアは驚愕に目を見開きながら、
「あぁ……プリン、セス……」
 使命を果たせなかった無念を詫びるように呟いて、落下しバラバラに砕け散るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年11月14日


挿絵イラスト