「所詮キミは、そんなものだったのだな」
短く吐き捨てるように投げ掛けられた言葉に、その少女――バロックメイカーは粗末な服をぎゅ、と、握りしめる。
「期待、愛情、興味……キミにとってそんなものはどんな高級品よりも贅沢だ」
だからこそ私は哀れなキミにそれを与えるのだ。
期待が欲しいのだろう? 愛が欲しいのだろう? 興味をもって欲しいのだろう?
キミの回りの連中はロクなヤツがいなかった。
キミに期待せず、愛さず、興味すら抱かなかった。
だから私が全て与えてあげよう。全てを与えてあげられる唯一の存在である私がキミから離れたら、キミはどんな表情になるかな?
「いや、ぁ……」
お願い、お願い。見捨てないで。一人にしないで。
一人はいやだ。無視されるのはいやだ。打たれるのはいやだ。
泣き腫らした顔、早く脈打つ鼓動。傍らにいつの間にか産み出された『バロックレギオン』の質は……中の下、と言ったところだろうか。
生産性も去ることながら質が落ちてくるのは頂けない。
少々面倒であるが甘やかす必要がありそうだ。
「すまない。キミにも少し休憩が必要」
暖かいお茶を飲もう。甘いクッキーを食べよう。
沢山、沢山。君が今までで受け取れなかった分の愛情をあげよう。
「私はキミを見捨てない」
見捨ててなるものか。これ程生産性の高い兵器を産み出せる存在を。
だから、今日も彼は嘘を吐く。
「キミを誰よりも愛しているよ」
およそ30日の争いによって、一度は平和を取り戻した世界を再び襲う怪しい影。
その姿を予見した者は少なくないだろう。
そしてそれは彼の元にも、予兆として現れた。
「アリスラビリンスに猟書家が現れたんだよ」
ぺらりと手帳をめくる青景・黒影は端的にあなたたちにそれを告げた。
「ボクが見たのは白衣姿の男が少女を地下室に連れ込んだところ。少女はバロックメイカーで、レギオンを産み出されるように強要されてるみたい」
白衣の男の真意はわからないが、きっと録なものではないだろう。
例えば、自身が強要して産み出させたバロックレギオンを改造して最強の私兵を作るつもり……、だとか。
「キミたちにお願いしたいのは少女の救出。それからそのいけすかない科学者? をぶん殴って来てほしいなー、って」
任務の内容的にはそんなに難易度の高いものではなさそうだ。
相手が猟書家であることを除けば、だが。
「少女の元へ行くまでには少女の産み出したバロックレギオンが行く手を阻んでくると思うんだ。そのコのトラウマを癒すことも必要かもしれないね」
ほら、気を遣えるコはモテるっていうじゃん。
青景の言葉はよくわからなかったが、貴女たちは少女を救うためにアリスラビリンスへと向かった。
樹志岐
お久しぶりです。もしくははじめまして。
マスターの樹志岐と申します。
マッドサイエンティストは性癖ドストライクなのですが、もう少し平和な研究をしてほしいものです。
以下、補足です。
【第一章】
少女の産み出したバロックレギオンが皆さんの行く手を阻みます。
対処しながら少女の元へ向かってください。
【第二章】
猟書家『ドクターハデス』との戦闘になります。
やっつけて少女を救ってください。
【プレイングボーナス】……バロックメイカーをなぐさめ、トラウマを取り除く。
ボーナスは全章共通です。
それでは、今回も宜しくお願いいたします。
第1章 冒険
『バロックレギオンと過去のトラウマ』
|
POW : バロックレギオンの攻撃を正面から受け止め、その過去のトラウマごと、バロックレギオンを殴り倒す
SPD : バロックメイカーのトラウマのヒントとなるような物を探しながら、バロックレギオンと戦う
WIZ : バロックレギオンの外見や言動、戦い方などから、過去のトラウマが何か推理しながら戦う
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
響く。
木霊する。
「いやだ、いやだ」
一人はいやだ。寂しいのはいやだ。痛いのはいやだ。
いやだ。その言葉を重ねる度に過去が現在を侵しにやってくる。
辛い、辛い記憶。思い出したくない。けれど
、
「いやだ……」
口に出さずにはいられない。
少女がいるとされる建物の外観はちょっとした城のようだった。
ここが城なら少女は姫、猟兵は王子様。ドクターハデスは……まぁ、ヴィランだろう。
そんな配役であったなら、この一階のフロアを埋め尽くすバロックレギオンたちは姫を守る騎士、だろうか。
そんなことを思いながら貴方たちは一歩、足を踏み出す。
あぁ、不規則に動いていた騎士達が一斉に猟兵達を見た。
檪・朱希
アド◎
……許せない。
必ず、女の子を助ける。私が、鏡のあの人に助けられた時のように。
刀の【霞】は持つけれど、護身の為。
「破魔、なぎ払い」で凌ぐだけ。
UCを詠唱。「歌唱、優しさ、祈り、慰め」を、この歌に込めて。
私はまだ知らない、白い蝶が少女の希望になるように、歌を届かせる。
大丈夫。助けに来たよ。
もう、寂しくない。……痛かったよね。辛かったよね。
私も同じ、バロックメイカー。負の感情を糧に力が具現化する、"蝶"。制御が不安定で、一度暴走してしまったことがあった。
……嫌いな『音』が、ずっと響いていたから。
でも、生きていたら、必ず、素敵な思い出が待ってるんだ。
だから、生きることを諦めないで。一緒に帰ろう。
「熱烈な歓迎……ね」
重々しい足音を響かせ、こちらとの距離を少しずつ詰めていくバロックレギオンの様子を見て短く息を吐いた。
檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)もまた護身用の薙刀の柄を握りしめたまま、一歩踏み出す。
この話を聞いたとき、朱希はかつての自分を重ね合わせていた。
辛い過去だ。思い出したくない記憶だ。それでも、現在の自分を作る大切な要因だ。
私は『あの人』に救ってもらった。生きる術を与えてもらった。
だから今度は――、
「助けに来たよ」
私が誰かを助ける番。
大丈夫、怖くない。あなたが思っているほど世界は酷くない。
「……紡ぐ歌は、私の大切な旋律」
のせる想いは、私の願い。―― 旋律・神楽歌(センリツ・カグラウタ)
痛かったよね、辛かったよね。寂しかったよね。
一人でいることが死ぬことよりも辛い貴女に、同じ痛みを知っている先輩から捧ぐ歌。
少女の傷を癒すための祈り。母の愛情にも似た優しさをのせて。
それにほら、私たちが来たっていうことが貴女の求めている物を手に入れたことになるでしょう?
生きていたら必ず、素敵な事があるから。同じだった私が保証する。
「生きることを諦めないで、一緒に帰ろう」
それは風に揺蕩う花弁のように、花から花へ自由に飛んでいく蝶のように。
ユーベルコードの効果か、やや動きが緩慢になったレギオン達の間をすり抜けて彼女のもとへ一羽の蝶が、その最奥へと飛んで往った。
大成功
🔵🔵🔵
メドラ・メメポルド
さみしいのは、冷たいよね
いたいのは、くるしいよね
大丈夫よ、助けてあげる
メドは聖女なんですもの
でもまずはこの子達が邪魔ね
いいわ、残さず全部食べてあげる
あなたの苦しみ、かなしみ、いたみ
全部をメドのごはんにしてあげましょう
【POW:ブラッド・ガイスト】
メドの血をひとしずく、右肩の月へ捧げるわ
青から赤へ、月の色が変わったらごはんの時間
くらげの腕を伸ばしましょう
捕まえたならいただきます
わたしに近付く『さみしい』を食べ尽くしてあげましょう
平気よ、わたし、ずうっと腹ぺこなの
ああでも
さみしいって美味しくないわ
あなたに会えたらもっと美味しいものを半分こしないとね
おなかがすいた。
どうしようもない空腹を覚え、メドラ・メメポルド(フロウ・f00731)が訪れたその場所には淀んだ空気が満ちていた。
重々しいのは空気だけではなかったが。
「大丈夫よ、助けてあげる」
――だってメドは『聖女』だから。
そう言いながら彼女は愛用のカラトリーで自身の指先を傷つける。
鈍い痛みとともに時間経過によって現れた赤い、紅いしずくは彼女の右肩へと、聖なる月へと捧げる。
ブルームーンがブラッドムーンへ変わる。白いキャンパスに赤い絵の具を乗せたように、彩(いろ)が塗り替えられていく。
それは、少女の空腹を癒す為の準備運動。
腕を、手を。長くしなやかな触手をそれらに伸ばす。
救いを求めるようで、救いを与える為の行為。
「苦しみを、かなしみを、いたみを。全部メドにちょうだい?」
貴方が感じている悲しみは全て私が食べてあげる。
伸ばされた触手はレギオンを捕え、力強く締め上げて小さく、小さく、分解していく。
だって、あまりに大きすぎると食べ辛いじゃない? 女の子の口はそれを食べきるのにあまりに小さすぎると思うの。
どんなにおいしいパンケーキも、まるごとかぶりつく子は居ないわ。
やがて頬張れる程度の大きさになったそれを、少女の手が口元まで運ぶ。
「頂きます」
囁くように小さく呟いて、それを――レギオンを形作る要因を口腔内に放り込む。
わたしに近付く、あなたの『さみしい』はわたしが食べてあげる。
そうしたらあなたはきっと、さみしくなくなるわ。
「あら、おかわり? いいわ。わたしずぅっと腹ペコなの」
悲しみを分け合いましょう。痛みは半分こになるから。
あぁ、でも……悲しみはおいしくないわ。
「早く、あなたに会いたいわ」
そうすれば、喜びを分け合える。嬉しさは二倍になるから。
「食べても食べても失くならないほどのうれしさとよろこびを、半分こしましょう」
きっとそれは、どの世界の食べ物よりもきっと、おいしいから。
成功
🔵🔵🔴
空桐・清導
POWで挑む
これが彼女のトラウマだというのなら、真正面から向き合う。
そうでなくちゃ、彼女を救うことは出来ない!
レギオンの攻撃を正面から[気合い]で受け止める。
痛え。けど、彼女の心はこれよりもっと痛い。
なら、耐えられる!
歩みを進める
「1人は寂しいよな、辛いよな。
泣いていいんだ。怒っていいんだ。
助けを呼んでいいんだ!
俺が、俺達が全部受け止める!!」
さらに一歩
「でもな、1歩を踏み出すのはキミの[勇気]だ!
新しい世界を、明日を見たいなら叫んでくれ!
ココから出たいって!助けてって!」
彼女が助けを呼んだなら、笑ってみせる。
レギオンをUCでぶっ飛ばし、彼女の前に立つ。
「待たせたな!キミのヒーローが来たぜ!」
待鳥・鎬
※他参加者との連携歓迎
世間一般には、自分のために投資することを「愛」や「情」とは言いません
科学者? 博士? ペテン師の間違いでしょう
破壊的な音は怖がらせてしまうかもしれないので、擲弾で強力な睡眠薬をばら撒きます
UC【回復薬】で底上げを
[第六感]でも良いから、Bレギオンからその子のことが垣間見えないかな
彼女が経験したこと、抱えた気持ち…その痛みを、少しでも一緒に支えてあげられたら…
此処にはあなたを助けに来て、心配して、笑って欲しいと願っている人達がいます
勿論、私も
過去の上に今があるけど、過去は決して今じゃない
笑って過ごす未来を作れるよう[祈り]を込めて
お会いしたら、改めてお名前聞かせてくださいね
低く、地響きのような唸り声を上げてレギオンは拳を振り上げる。
それは彼女が、自分が傷つかないために貼った予防線。自分を守るための、唯一だった味方。
彼らは今も、彼女を守るために働く。
彼女と、彼女を守るための強大な力を与えてくれたオブリビオンのために。
振り下ろされた拳。避けることもできただろうにそれをしなかったのは空桐・清導(ブレイザイン・f28542)だった。
痛い。しかし耐えられないほどのものではない。
なぜなら彼女の感じている痛みはもっと辛いものだっただろうから。
「無理をしたらだめですよ?」
そのやや後方で片方の手に回復薬を持ち、もう片方の手に催眠薬を持った待鳥・鎬(町の便利屋さん・f25865)慌てた様子で歩み寄る。
「下がってください」
鎬がアンプルを投げれば、中の液体がすぐさま気化し、強力な眠気を誘う機体が辺りに充満する。
気体はレギオン達にもいくらか効力があるようで、いくらか動きが緩慢になってきたのが目に見えて分かった。
(これなら、声が届くかもしれない)
名前も知らない貴女へ。
彼女の貼った防衛線(レギオン)達の向こう側に見えた扉。そこに向けて呼びかける。
「私達は猟兵です、貴女を助けにきました!」
返答は、返ってこない。それでも鎬は続ける。
「そこにいるのは貴女を愛する人じゃない。自分のために投資することを愛とは呼ばない。そこにいるのは博士でも科学者でもない、ただのペテン師です」
そこまで言ったところで、奥まったところにいたのか……あるいは催眠薬が効かないタイプだったのか、なおも活動を続けるレギオンがこちらに突進攻撃を仕掛けてきた。
「させねぇ!」
ユーベルコードを使用し、戦闘能力を向上させた清導がその攻撃を真っ向から受け止める。
「1人は寂しいよな、辛いよな。」
泣いていいんだ。怒っていいんだ。
助けを呼んでいいんだ!
「俺が、俺達が全部受け止める!!」
レギオンを一体投げ飛ばし、さらにもう一歩。
「でもな、1歩を踏み出すのはキミの勇気だ! 新しい世界を、明日を見たいなら叫んでくれ!」
ココから出たい、と。たすけて、と。
「ここにいる人たちは皆、貴女を心配して、笑って欲しくて、助けに来た人たちです」
鎬が重ねて語りかける。
過去の上には現在があるけど、過去は決して今じゃない。
「私たちが来た現在を信じて」
その刹那、部屋に響く小さく大きな声。
それが響いた瞬間、清導は駆け出し、レギオン達が守るようにして立ちふさがっていた扉を勢いよく破った。
「待たせたな、キミのヒーローが来たぜ!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『ドクター・ハデス』
|
POW : 行け、我が創造せし怪物よ!
無敵の【人造生命体】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 我がしもべに加えてやろう、光栄に思うがいい!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【即席で改造し、意思なきしもべ】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : 進化し続けること、其れこそが我が天才たる所以!
【工具】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アイ・リスパー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……けて」
小さな口が言葉を紡ぐ。
今まで否定ばかり吐いていた口があその言葉を唱える。
不思議と、胸の痛みはなかった。
「た、けて……」
堰を切ったようにそれはどんどん溢れる。
同時にそれは、そこにいたもう一人の苛立ちを募らせていった。
「うるさい、うるさいうるさい! 使えないヤツめ、私の崇高な、完璧な計画を邪魔するなァ!!」
もう一人が声を荒げる。しかしその声は彼女の耳には届かない。
「たすけて!」
彼女自身の心が生み出したレギオン達は、もう猟兵達を阻まない。
檪・朱希
アド◎
WIZ
うん、いつかじゃない、
今……助けるよ。
ハデスの『音』には、狂気と恐怖を感じる。
守護霊の雪と燿……青と橙の蝶から「慰め、優しさ、落ち着き」を受け取り、制御しながらUCは詠唱する。
使えないとか、関係ない。私達バロックメイカーは、自分と……トラウマと戦っているんだ。
「聞き耳、情報収集」で、的確にハデスの位置を捉えて、工具を使えないように拳銃【暁】で「制圧射撃」。
私達は、道具じゃない……あなたの思い通りなんて、ならない!!
はさみのような『音』がしたら、一瞬硬直するだろうけれど……
私の蝶は、少女を導く。そして、私の蝶は、あなたを許さない。
「精神攻撃」も兼ねる。この力で、あなたを倒す!
――音が。
希望に満ちた声(おと)が、聞こえる。
「うん、今……助けるよ」
一歩、二歩。オブリビオンたる彼に向けて歩を進めるとどこからともなく朱希の傍へやってきた青と橙の気を纏った蝶。
守護者たる彼女を守るためか、励ますためか。あるいはそのどちらもだろう。
彼らがいるから、私は戦ってこれた。
少女に必要なのはそう言った自分を支えてくれる存在だ。
「使えないとか、関係ない。私達バロックメイカーは、自分と……トラウマと戦っているんだ」
ぽつり、ぽつりと自分が生きている証を残すように呟かれる詠唱。
「トラウマと戦う? 笑わせてくれる。たとえ貴様がそうだとしても、こいつはそんな大それたことは出来まいよ」
でなければ私が存在意義を与えることもなかったのだから。
「まぁいい。進化し続けること、其れこそが我が天才たる所以! 声に応え進化せよ、心的外傷の化身よ!」
「……っ」
言いながら宙へ放られたそれに、朱希の体は一瞬固まる。
はさみ、だ。
自身のトラウマ、その権化たるはさみが宙を舞い、倒れ伏していたバロックレギオンに当たる。
それはまるで王子様による目覚めのキスのように、レギオンを再び目覚めさせた。
「……、か」
しかし朱希は引かない。
「負けるもんか……! 黄昏に燃ゆる羽ばたきよ、深淵の彼方よりいでよ。禍つ音、禍つ心を静寂へと導け!!」
言の葉紡ぎきると、周囲に巻き起こる突風。そしてどこからともなく現れた、虹色の輝きを見せる蝶の群れ。
彼らは蜜に誘われるように、一目散にレギオンに。もしくはドクター・ハデスへと飛んでいき、彼らの身に傷を刻んでいく。
「私の蝶は彼女を導く。そして私の蝶は貴方を許さない!」
人を道具のように扱うモノに、道具としか思っていないモノに。
そんなやつの思い通りにはならない、なってなるものか。
ひらり、舞う虹の蝶。
そのうちの一羽が、少女の指先に止まる。
少女の心を慰めるように……。
成功
🔵🔵🔴
空桐・清導
SPDで挑む
協力も大歓迎だ
良く叫んだ!良く踏み出した!後は任せろ!
扉からそう彼女に言う。
「助けて」
この言葉がある限り、空桐清導は無敵だ。
「テメーの下らねえ計画は此処までだ。」
静かに、怒りを込めてハデスに宣告する。
UCを発動させて両腕に光焔を纏い、歩みを進める。
迫りくる意思なきしもべは
サンライザーの[誘導弾]と拳で退ける。
何度立ち上がろうとだ。
攻撃は[オーラ防御]する。
改造と扱いに更に怒りを燃やす。
「テメーは命を何だと思ってやがる。」
溢れる想いから[力を溜める]。
彼女を人質にしようとする、或いは清導の間合いに入った瞬間、
一気に接近して[限界突破]した拳を何度も叩き込む。
「さあ、ここから出よう。」
待鳥・鎬
※連携歓迎
※真の姿:髪が淡い黄金色
すぐ助ける…あと少しだけ待ってて!
…とは言いつつも、この三流ペテン師…予想以上に底が浅くて何をするか不安です
少女の拘束が緩いようなら、戦闘開始のどさくさに紛れて「山吹」で姿隠し接近&[かばい]つつ退避させましょう
戦闘は初撃から「花香」の[クイックドロウ][早業]で畳み掛け
次いでUC【ガジェットショータイム】で自立歩行型ガンマンロボを召喚
両手のマシンピストルがチャームポイント
二方向からの連撃に次ぐ連撃で、余所見をする暇は与えません
貴方が勇気を出して信じてくれたから、こうやって手を取ることができた
ありがとう
お互い過去に負けないで頑張ろ
辛い時はまた会いに来るから、ね
二人は顔を見合わせてうなづきあった。
ほんの小さな、それでいてとても大きな一歩を踏み出してくれた少女の願いにこたえなくてはなるまい。
(それにしても……)
諸悪の権化たる男を見て鎬は深く長い溜息をつく。
この科学者……いや、ペテン師と言った方が良いだろうか。それも三流の。
ともかく底の浅いタイプの人種であることは理解できた。
分かりやすい反面、何をしでかすかわからないのが難点だが。
(何をするかわからない、なら……)
目を閉じて、ゆっくりと深呼吸を数回。
大丈夫。私にはそのための力がある。
「全力で行きましょう」
いま再び、狂った科学者を見据える鎬の髪は、豊かに実った稲穂のような金色だった。
「よく叫んだ! よく踏み出した! あとは任せておけ!」
白い歯をのぞかせて清導は笑う。
助けを求める声がある限り、彼はどこへだって駆けつける。そしてその要因を決して許しはしないのだ。
「テメーの下らねぇ計画はここまでだ」
堂々、仁王立ちし静かに淡々と宣言する。
その声は怒りの色を含んでいた。
「……はッ、くだらないだと? 私は何もしていないさ。こいつは親というものに『ないもの』として扱われてきたようだから、存在意義を与えてやったまでのこと!」
資源は有効活用しなくては、だろう?
その一言は、清導の怒りに触れた。
「人を、人の命を何だと思ってやがる!」
腰を低く落とし、地を蹴る。
その拳は清導の心を表すかのように激しく燃え盛っていた。
「命とて資源だろう! 何を憤慨する必要がある? 行け、我が創造せし怪物よ!」
ドクター・ハデスも黙ってやられる道理はないと言の葉を紡ぐ。
それによばれるように現れたのは深緑と黒をぐちゃまぜにしたどろりとした生物。
故郷であるヒーローズアースでよく見かけたバイオモンスターを彷彿とさせる姿のそれは、しかしバイオモンスターより醜悪な気を纏って咆哮をあげた。
「邪魔だ、どけ!」
駆け出した勢いのままその生物に殴りかかるが、手ごたえがあまり感じられない。
「ははははは! それの本質は液体だからな、物理攻撃が聞くはずがなかろう」
「ならこういうのはどうでしょう?」
戦闘が開始された室内に置いてその人物の――鎬の声はやけに大きく響いた。
そちらを見てみれば手には先端に星の飾りのついた杖が握られており、それをぐるぐると回しているところだった。
「……」
ドクターハデスを含む、一同の動きが止まる。
何をしているのだろうか、不思議を通り越して不審な視線で鎬を見ると、彼女は恥ずかしそうに『違うんだ!』と答えた。
「これが使い方だから仕方ないんだよ!」
今までかぶっていた猫がすっ飛んで行ってしまったように慌てながら彼女がその杖を放ると、それは地面にぶつかると同時に手足が生え、胴体が膨らみ、砲台が取り付けられ……。
両手に銃口を携えたガンマン風のロボが数体出現した。
「物理がだめなら特殊攻撃なら効くよね! いっけぇ!」
彼女の合図とともに銃口から発射されたのは火炎放射とレーザー。
左右からの挟み撃ちで、ドクター・ハデスの召喚した生命体も、ハデス自身も逃さぬように攻撃をし続ける。
「なんかよくわからないガジェットだが……ナイスだ!」
こうなってしまっては余裕ぶってはいられないだろう。その隙に。
「俺の拳に宿るのは正義。燃え盛るのは悪を許さぬ心。正義の鉄槌、受けるがいい!」
力を込めて放たれた渾身の一撃は、ドクター・ハデスの鳩尾にを抉るように命中し、その細身の体は壁へと吹き飛ばされていった。
「大丈夫?」
鎬が少女に声をかける。幸いにも拘束はそこまで厳重なものではなかった。
「あ、りがとう」
少女がたどたどしく礼を言う。その手をやさしくとって鎬は笑った。
「こちらこそ、ありがとう。貴方が勇気を出して信じてくれたから、こうやって手を取ることができた」
じんわり、こみ上げてくる涙(それ)をぬぐうこともせず、少女は何度もうなづいた。
これで憂いはなくなった。
残るは狂った科学者を倒し、脱出するのみ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メドラ・メメポルド
ええ、たすけてあげる
だからそこで待っててね
それで、ええと
悪いひとはあなたかしら、うるさいひと
名前を覚えるつもりはないから、名乗らなくていいわ
あなたはどんなお味かしら
まあ、メドのためにビュッフェを用意してくれるのね
無敵だなんて言ってるけど、大事なのは味よ
おいしいならいくらでも食べてあげる
【POW:あなたを奪う青の腕】
まずはつまみ食い
まあ、そうね、それなりね
あなたにとっては無敵なんでしょうが、おいしくないものなんて強くもなんともないわ
おさとう、スパイス、素敵なものをいっぱい
さめさん、シャチさん、他にもたくさん
海のお友だちを作るの
さあ行きましょう
おいしくなくても食べないと
お残しは、しちゃいけないもの
穏やかな海中を漂う海月は退屈なあくびをひとつ落とした。
男の大層な演説は彼女にとって海の中で話しているようなもの。
つまり何を言っているのか理解できないのだ。
理解したくないから、ともいうが。
「それで……えぇと、あなたが悪いひと? そろそろそのおくちを閉じてくれると助かるのだけど」
何を言っているのかわからないが、やかましすぎるのは頂けない。
だってディナーはもっと優雅なものであるべきなのだから。
「あなたはどんなお味なのかしら。……あぁ、お返事は聞かないわ。全部、ちょうだい」
自身を無敵と豪語する自信家に小さな手を、しなやかな指を、青く透き通った触手を伸ばす。
「は、くれてやる謂れはない! 次のこそ特別だ、いけ!」
ドクター・ハデスが再び号令をかけると次に現れたのはブリキの兵隊のような姿の生命体だった。
金属を擦り合わせた不快な音を響かせ、メドラへと歩み寄る。
その圧倒的な重量で、彼女を踏み潰さんと進軍するそれに彼女は臆することはなかった。
「あぁ、おいしそう」
思わずこぼれた感情。自分より弱いものら食べてもいいと教わった。
でもそれは、きっと正しいことなの。
だって、彼だって弱い者を食い物にしているのだから。
成功
🔵🔵🔴
だから、わたしは正しいことをする。真似をする。
あなたのようなブリキの兵隊は出せないけれど、それと同じくらいの圧力の攻撃で。
「残さず食べてあげるから、ぺしゃんこになって?」
くらげの触手が生命力を吸い取り、徐々に体が重くなっていく、そんな感覚を覚える。
次第に足ががくがくと震えだし、仕舞いには膝をついた。
あぁ、すてき。でも少しざんねん。
「あんまりおいしくなかったわ」
唇をとがらせて少女はむくれる。
これはもう、デザートに期待するしかない。
お砂糖、スパイス。それから数えきれないほどのすてきなもの。
沢山の世界のどんなたべものより甘くて、おいしいもの。
それは囚われていた少女の、最高の笑顔。
待鳥・鎬
※連携歓迎
※真の姿開放中
少女を安全な場所に隠れさせて、と
…さ~て…このペテン師のせいで酷い恥をかきました
どうしてくれよう
え、八つ当たりなんかじゃないですヨ
「薬物撒布型擲弾」を宙にばら撒いたら、UC【染花嵐】で毒の嵐に変えて
自称天才さんは[毒使い]の攻撃をどこまで耐えられるかな?
ちなみに武器は「輪胴式拳銃『花香』」もあるので、UC発動中も接近させない
そもそも
人を資源として数値化することは思考方法としておかしいと思わない
でも、それは個々の命を尊厳なく扱うこととは関係ない
それは科学的思考故ではなく、君の人間性の問題だ
この世界に留まるとしても、元の世界に戻るとしても、彼女が笑って暮らせるよう[祈り]を
(あぁもう! さっきは酷い恥をかきました……!)
少女を安全な場所に避難させ、現場に戻ってきた鎬が頭を乱雑に掻く。
別に八つ当たりと言うわけではない。いや、本当に。
しかしこの男、見た目通りというか余程ねちっこい性格のようだ。
「さて、自称天才さんは……、この攻撃にどれほど耐えられるかしら?」
弧を描くようにばら撒かれる手榴弾。それが丁度てっぺんに差し掛かったころ、それは桃に似た白いの花へと姿を変え、ひらり、はらりと周囲に花弁を撒き散らす。
夾竹桃と呼ばれるその花は本来、葉、枝、根、果実すべての部分と、周辺の土壌に至るまで毒性を有する。
それを再現したこの透き通った花弁は、口にすると中毒症状を発する本来の性質をさらに強力にしたものだ。
「は、先程から蝶だの花だの、随分と舐められたものだな」
ドクター・ハデスは低く笑う。ふりかかる花弁は体に当たる度にパキリと音を立てて割れるが、差すような痛みは感じない。
空気を裂くように手元にあったスパナで殴りかかろうと距離を詰めた。
かっこいいとは言えないが、この際形振りは構っていられない。
インテリ派にしては素早い動きで鎬の懐へと踏み込もうとする彼。それを牽制するように弾丸を放つ。
「そろそろ、かしら」
「……あ?」
鎬が呟く刹那。ドクター・ハデスへ降りかかり割れた夾竹桃の花弁がじくじくと鈍く痛みを発する。
何だ、何が起きた? いや、解る。花弁が原因だ。
それが夏場の飴細工のように溶けて、熱をもって彼の体を蝕む。
その芳香を吸い込めば、肺が、内蔵が、ドロリと溶けるような錯覚を覚えた。
「あ、が……」
「ふふ、本当のあの花は経口摂取で中毒症状を引き起こすものですが、これはこの場に在るだけであなたを蝕むユーベルコード(とっておき)です」
曰く、人を資源として数値化することは思考方法としておかしいと思わない。
しかし、それは個々の命を尊厳なく扱うこととは関係ない。
彼の人間性の問題。故に性根の歪んだ彼を正さねばならない。
あるいは、倒(ころ)すか。
その為に自分達はきっと、ここにやってきた。
さぁ、この悲劇の終幕はあともう少し。
成功
🔵🔵🔴
高階・茉莉(サポート)
『貴方も読書、いかがですか?』
スペースノイドのウィザード×フォースナイト、26歳の女です。
普段の口調は「司書さん(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「眠い(私、キミ、ですぅ、ますぅ、でしょ~、でしょお?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
読書と掃除が趣味で、おっとりとした性格の女性です。
戦闘では主に魔導書やロッドなど、魔法を使って戦う事が多いです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
(あわわ、とんでもないところに来てしまいました……)
歳のわりに幼さの残る司書、高階・茉莉(秘密の司書さん・f01985)は少女が寝かされていた手術台の影で身を潜めていた。
決して派手な戦いとは言えない。が、叫びも届かないこの建物のなかで行われているそれに、戦わなければならない理由が茉莉にはあった。
猟兵だし、かつて故郷を奪われた者の末裔としてオブリビオンを許すことは出来ないし、なにより。
「読書の素晴らしさを知らないなんて、もったいない」
カツン、と高い音を響かせて杖を――ブライクと呼ばれたそれを垂直に置けば、それは意思を持っているかのように地に立った。
「――告げる。書架よ、我が図書館に眠る叡智達よ。我は知識を求める者。汝は知識を与える物」
高らかに響く詠唱。そこでようやく彼は彼女の存在を知る。
「貴様どこに……! くっ!」
彼は駆け出す。目指すはこれまでの戦いで既に物言わぬ残骸と化した彼お気に入りの兵器達。
しかし、茉莉の方が一寸ほど早い。
「――知を刃に。……いきますよ!」
「我がしもべに加えてやろう、光栄に思うがいい! 今再び目覚めよ! 我が最強の軍隊よ!」
詠唱が、刃と拳が、交差する。
茉莉の手に握られた光の粒子を具現化した刄は、再び動き出そうとしたバロックレギオン兵の核を的確に砕き、その勢いのままドクターハデスを狙い打つ。
「あ、ぐ……、くそ……」
終わる。あぁ、終わってしまう。
この感情が、悔しさか。これが敗北か。
天才である私が、こんな者らに、やられるなど。
「許さん、許さんぞ猟兵! いつか必ず骸の海より舞い戻り貴様らを……」
「読書の邪魔なので、そろそろ居なくなってください」
止めの一刺し。もはや彼に叫ぶほどの余力はなく。
満月の浮かぶ空に、塵が舞い上がって散った。
成功
🔵🔵🔴