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咲き誇りし花よ、黒に染まれ

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #エンデリカ #プリンセス

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●優しい国に迫る色
「お花さん、こんにちは」
 さわさわと優しい風に頬を撫でられ、少女は広がる花畑でお花たちにご挨拶。
「みんな元気にしてる? 今日もお空がきれいだね」
 金の髪に青い瞳の少女はエプロンドレスの裾が汚れぬように注意を払ってしゃがみ込むと、揺れる花ひとつひとつ丁寧に愛でていく。
「どうしたの? もしかしてお水が足りてない? じゃあ、あとでお水をいっぱいあげるね」
「あ、新しいつぼみ。綺麗なお花が咲くといいね」
「栄養? 大丈夫。ちゃんとごはんは食べたよ。心配してくれてありがとう」
 お花たちへと優しく声をかける少女だが、頭にちょこんと乗る可愛らしい王冠がなければこの国の王――プリンセスだと気付くものはいないだろう。
「じゃあお水を汲みに行ってくるから、みんな待っててね」
 立ち上がるプリンセスは持参していたじょうろを大事そうに抱えて泉まで歩き出す。本当は走りたい気持ちでいっぱいだけど、転んだ痛みで泣いてしまったから急がず焦らずゆっくりと。
 小さな鼻歌と一緒に歩き出したプリンセスだが、その背後にすべてを染める存在の脅威が迫っている事に気付く事は出来なかった。

 美しく優しい色は、無慈悲な黒に染まる――。

●侵略せし黒
「楽しいハロウィンもオウガ・フォーミュラの侵略で大騒ぎ、ってな」
 テーブルにカボチャを置いたまま海老名・轟(轟く流星・f13159)は誰に言うでもなく口にした。
 グリモアベース内はカボチャやオバケのオーナメントがそこかしこに飾られたままだが、その余韻を楽しむ暇さえ敵は与えてはくれない。
「お前達、『猟書家』は覚えてるな? ああ、迷宮災厄戦に現れた謎の勢力だ」
 そう話す轟によれば、猟書家はオウガ・オリジンから奪った力を利用して、猟兵達が平和にした世界の侵略を開始したという。
 全て。
 全力で戦い平和を取り戻した世界が再び『オウガ・フォーミュラ』を名乗る猟書家とその幹部達の脅威に晒されるのだ。
「一度は救った世界だ。再びその世界を救うにはお前達の力が必要だ」
 放つ声に返る言葉はないが、猟兵達の表情をみれば聞こえぬ言葉は聞かずともわかるというもの。
 並ぶ表情を目に轟は資料を手に説明をはじめた。

「幹部『エンデリカ』もしくはその意志を継ぐオブリビオン達は『オウガ・フォーミュラ』である鉤爪の男が目論む『超弩級の闘争』を実現すべく、アリスラビリンスで行動を始めている」
 轟によればプリンセスが治める平和な『不思議の国』にエンデリカはこの国に侵食させた『黒薔薇』と共にオウガの軍勢を率いて侵略するという。
 侵食する薔薇は呪詛を宿した黒い薔薇。舞えば住民達を眠らせ、地に敷き詰められればその上を歩くオウガ達を強化する。
 なんと厄介な花だろう。
「確かに厄介極まりない黒薔薇だけどな、何故か国を治めるプリンセスの能力がそれを消せるんだよ」
 理由は全く分からない。だが『ドレスアップ・プリンセス』で飛翔している時に出る花びらには、何故か『黒薔薇を消し去る効果』があるというのだ。
「四季折々の花が咲き誇る『色彩の国』のプリンセスは幼くか弱い女の子だ。厄介な攻撃を消し去る力を持つ彼女を敵がそうやすやすと見逃しはしないだろう。確実に潰しにかかるだろうから守ってやってくれ」
「プリンセスを守りつつ戦うのか」
「なかなか大変そうだな……」
「守りつつ戦うのは確かに簡単な事じゃないだろうが、お前達ならできる筈だ」
 説明を聞く猟兵の会話に信頼が込められた言葉が返る。

「さて、楽しいパーティーのあとは楽しい戦いってな!」
 広げた資料もそのままに、轟の背には咲き誇る花畑が広がっているが――迫る黒もまた、広がり始めている。
 あれが国を覆えば全てが黒に染まる。
「楽しいかどうかはまあさておき、平和の為に頑張ってくれ、頼んだぞ!」
 こうして猟兵達は花畑が広がる国へと向かっていった。


カンナミユ
 カンナミユです。
 楽しいハロウィンも終わって一息つきたいところですが、新たな事件ですね。
 皆さんの力で解決をお願いします。

 第1章は【集団戦】です。
 幹部がこの国に侵食させた『黒薔薇』によって敵はパワーアップしています。
 この『黒薔薇』をプリンセスに消してもらわなければ勝利は難しいでしょう。

 第2章は【ボス戦】です。
 幹部である猟書家エンデリカは呪詛を宿した黒薔薇を自在に操る存在です。
 この幹部を倒す事ができれば、倒した場所にアリス適合者が元の世界に戻る『自分の扉』が現れます。

 なお今回のシナリオにはプレイングボーナスがあります。
 プレイングボーナス(全章共通)……空飛ぶプリンセスを守り続ける。

 それではよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『ジャバオウガ』

POW   :    喰らいつく顎
【噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    かきむしる爪
【爪】による素早い一撃を放つ。また、【翼を限界まで酷使する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    燃え光る眼光
【視線】を向けた対象に、【額のクリスタルから放たれるビーム】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:白狼印けい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「たいへん、たいへんよ!」
 じょうろを抱え、プリンセスは足早に森の中を駆けていく。
 一緒にお花の手入れをしてくれる優しいウサギさんはベッドで眠ったままで、温かなスープをごちそうしてくれる木こりのクマさんは冷めきったスープの前で眠ったまま動かない。
「起きて、ねえみんな起きて! どうしてみんな眠っているの?」
 小鳥の親子もキツネ一家も、みんな、みんな眠ったままで目を覚まさない。
 起きているのはじょうろを抱えたプリンセスただ一人。
「だれか! だれか返事をして! おねがい! おねがいだから――きゃっ!」
 森を向け、お花畑まで目と鼻の先というところでプリンセスは躓き転んでしまう。
「うう……」
 落としたじょうろからは水がこぼれ、プリンセスは泥だらけ。
 転んだ時のきの痛みと誰もいない寂しさに突っ伏したままの瞳は涙でいっぱいになってしまう。
 ぼろぼろ溢れる涙は頬を伝ってぽたりと流れ落ち、それでも泣くのを我慢したがまんしたプリンセスが顔を上げると青い瞳に暗い、とても暗い闇が飛び込んだ。
 綺麗な青空が真っ黒な花で埋め尽くされ、ふわりと舞い落ちるそれが綺麗なお花さんたちが真っ黒になっていく。
「やめて、おねがい、やめて……」
 涙でくしゃくしゃになってしまうプリンセスだが、ふと視界にころんと落ちた王冠が映り込む。
 王冠はプリンセスのあかし。わたしはこの国のプリンセス。この国を守れるのはわたししかいないのだ。
 立ち上がり王冠を頭に乗せ、ぐいと涙を両手で拭ったプリンセスは瞳を染まる闇をきっと睨みつけた。
「おねがい、みんなを守る力を!」
 泥だらけのエプロンドレスはフリルとお花を沢山あしらった可愛らしいドレスに姿を変え、涙が乾かぬ頬は可憐な少女のものとなる。
「わたしの国をまっくろにはさせないわ! だいじょうぶ、まけないから!」
 大きなリボンがふわりと揺れ、幼いプリンセスは黒い空へと立ち向かうのだった。

====================
※1章のプレイングについて
 幹部である猟書家エンデリカが侵食させた『黒薔薇』によって敵はパワーアップしています。
 この『黒薔薇』は『ドレスアップ・プリンセス』を展開させたプリンセスの能力、飛翔している時に出る花びらによって打ち消す事ができますが、妨害すべく敵はプリンセスを狙うでしょう。
 プレイングボーナスもありますので、それを踏まえて戦ってみるといいですね!
====================
空桐・清導
POWで挑みます
協力も大歓迎だ

―そこまでだぜ、オウガ共!
沢山のオウガに[誘導弾]を当て、気を引くぜ。
「その人に手を出すのは、このブレイザインが許さねえ!」
プリンセスの前に黄金のオーラを纏って現れる。(UC発動)
「俺が来たからにはもう大丈夫だ。
ただ、ちょっと手を貸してほしいんだ、お姫様。
難しいことじゃねえ。この花を降らせてほしいんだ。」
プリンセスを背に隠して今回のことを簡単に伝える。
頷くのを確認出来たら、オウガに向き直る。

[勇気]と[覚悟]から光焔を生み出す。
「お姫様とこの場所は、絶対に護り切る!」
プリンセスへ常に注意を向けながら、
目にも止まらぬ速さでオウガ共をぶっ飛ばす。
噛みつく隙は与えねえ!


ヘルガ・リープフラウ
この美しい花園を、純真で心優しいプリンセスを
恐ろしい黒薔薇の犠牲になんてさせないわ

人々の笑顔と幸せを祈るそのあなたの勇気と優しさ
命を懸けて守ってみせますわ
今こそ【奇しき薔薇の聖母】となって、あなたに助力いたしましょう

翼飛行で空を飛び、敵の攻撃がプリンセスに向かわないよう自ら囮となって注意を引きつける
ビーム攻撃の射程内に彼女が入らないようオウガとの間に位置取り、万が一の時は自ら身を盾にして彼女を庇い、オーラ防御、激痛耐性、覚悟で耐える

茨の蔓で敵を打ち据え、額のクリスタルを破壊
白薔薇の花びらに破魔と浄化の力乗せ、敵に神罰

白薔薇が司るのは「真実の愛」
邪悪な黒薔薇になど、決して負けるものですか……!


花澤・まゆ
プリンセス、いい子!
あたし、全力で守っちゃう!

【空中戦】モードで空を飛びながら
黒い空を飛ぶプリンセスへ声が聞こえるくらいに近づくよ
助けに来たよ!
あたしね、貴女を偉いと思うの、それでこそプリンセスだよっ
だから、その気持ちをなくさずにいてね
あたしは貴女の騎士となって、絶対に貴女を守り抜くから!

宣言するとUC起動、【小夜啼鳥】抜刀
衝撃波で敵を一閃するよっ
加速合戦なら負けないんだから!
えいえいえいってどんどん衝撃波を放ち倒すつもり

大丈夫、プリンセス
貴女が笑えば、うさぎさんもくまさんも目を覚ますよ、きっと
だって貴女は「プリンセス」
この世界の希望なんだもの!

アドリブ、絡み歓迎です


神樹・鐵火
護衛か...
私は最前線で戦う事が多かったから守られるというのと無縁だったな
おっと、だたの独り言だ
昔の事さ、あまり覚えていないがな

姫君に付き従う形で護衛しよう
君は黒薔薇を消す事に集中すればいい
私の事は気にするな
この程度の雑魚、強化された所で多少毛の生えた雑魚の域を出ぬわ

遠い敵は宝珠化した龍拳を魔力で衛星の様に振り回し
遠心力で勢いを付け殴りつけて攻撃
近寄るヤツはダッシュで割り込み、聖拳で殴り飛ばす
敵のUCによる光線は魔力を溜めた轟拳をぶつけ、相殺する
それにしても数が多いな
少々危険だが、ある程度の数を引き付けて陰陽魔弾で一掃する

こういう時、弟子が居ると楽なのだが...ヤツは銃火器専門だからな


司・千尋
連携、アドリブ可

一人でも守る為に戦う、か
格好良いじゃん
俺も手伝ってやるよ


攻撃は最大の防御とは言うが
プリンセスを守る事を自分の攻防対応可能な範囲内なら優先する
範囲外の時は敵の数を減らす事に注力


近接や投擲等の武器も使いつつ『翠色冷光』で攻撃
範囲攻撃や2回攻撃など手数で補い
回避されても弾道をある程度操作して追尾させる
範囲外なら範囲内に入るよう位置調整
30cm以上距離を取る事を優先し行動


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
速度や威力を相殺し回避や防御、迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
プリンセスへの攻撃は最優先で防ぐ



「護衛か……」
 仲間達と駆ける中、神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)はぽつりと口にした。
 最前線で戦う事が多く守られるというのと無縁だったな過去を思い返せば、数え切れぬ年月の記憶は覚えていない事が多い。
「大丈夫?」
「おっと、だたの独り言だ」
 独白が聞こえたのか心配そうな顔の花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)に答え、鐵火もまた頭上をかすめる薔薇を手で払う。
 『色彩の国』の名のごとく四季折々の花が咲き誇る優しい国だというのに、猟書家エンデリカの黒薔薇がすべてを覆いつくそうとしているのだ。
「あたり一面真っ黒だね」
「なんて酷い事を」
 悲しむまゆにヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)もまた瞳を伏せる。
 民はみな眠りにつき、鮮やかな花々は無慈悲な色へ塗りつぶされ、このままではオウガ・フォーミュラが目論む超弩級の闘争が現実のものとなるだろう。
 それだけは絶対に阻止せねば。
「あれだな」
 司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)が指さす先、黒く染まる中に淡い輝きがきらきらと、まるで花に水をやるように光が降り注いでいた。
 ただ一人眠らなかった少女――この国を治めるプリンセスの輝き。
「一人でも守る為に戦う、か。格好良いじゃん、俺も手伝ってやるよ」
 水たまりをひょいと飛び越え、緑の瞳は幼いプリンセスの姿を捉えるが――、
「まずい!」
 鋭く放たれる空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の声に仲間達も『それ』に気が付いた。
 輝く光に禍々しい群れが迫りつつあるではないか。
「急がなきゃ!」
「ええ、この美しい花園を、純真で心優しいプリンセスを恐ろしい黒薔薇の犠牲になんてさせないわ」
 まゆとヘルガは羽ばたき空へと躍ると仲間達もプリンセスの元へと向かっていった。

「こないで! こっちにこないで!」
 悲鳴に近い声を上げ、プリンセスはオウガの群れから逃げていた。
「こないで! こないで!」
 一生懸命に逃げるが数が多すぎる。追いつかれるのも時間の問題だ。
「――そこまでだぜ、オウガ共!」
 ドドドドドド……!!
 裂帛の気合と共に放った攻撃でオウガ達は一斉の振り向いた。
 深紅のマントがばさりとなびき、放たれる黄金の輝きに機械鎧がきらりと光る。
「その人に手を出すのは、このブレイザインが許さねえ!」
 ぐっと拳を握り構える姿は注目を浴びるには十分だった。一斉に襲い掛かるジャバオウガの群れを前にブレイザインは攻撃に構えなおすと、対の人形と共に千尋も出る。
「消えろ」
 細かい指定も必要ない。数多の尾を引き青い光弾が襲い掛かるとジャバオウガの大群を狙い撃つが、黒薔薇の影響か二人の弾は致命傷に至らなかった。
 細かく分割した鳥威を展開させて攻撃を防ぎ、打ち払いながらも視線を向ければ、羽ばたく仲間がプリンセスに話しかけている。
「助けにきたよ!」
「お怪我はありませんか?」
「あ、あの……たすけにきて、くれたの?」
 突然現れた猟兵達を前にプリンセスは少し戸惑いの表情を見せたが、不安にさせまいとするまゆとヘルガ、そしてジャバオウガと戦う3人の姿に助けに来たという言葉を信じたようだ。
「あたしね、貴女を偉いと思うの、それでこそプリンセスだよっ。だから、その気持ちをなくさずにいてね。あたしは貴女の騎士となって、絶対に貴女を守り抜くから!」
「人々の笑顔と幸せを祈るそのあなたの勇気と優しさ、命を懸けて守ってみせますわ。今こそ奇しき薔薇の聖母となって、あなたに助力いたしましょう」
 宣言と共に霊刀をしゃんと抜き放ったまゆは真摯な瞳を向け、今にも落ちそうな王冠を乗せなおすヘルガにプリンセスは何か言おうとしたが、
「俺が来たからにはもう大丈夫だ。ただ、ちょっと手を貸してほしいんだ、お姫様。難しいことじゃねえ。この花を降らせてほしいんだ」
 千尋と共に戦うブレイザインからの声にふわりと着地した。
「お花を?」
「実はな――」
 幼い姿を敵に見せる訳にはいかない。背中越しに今回の事を簡単に説明していると数体のジャバオウガが飛び掛かって来た。
 恐ろしい速度で迫る顎から守る為に身を挺するブレイザインの前に千尋と鐵火が立ち塞がると鳥威と青白く輝く拳が打ち払う。
「心配するな、俺達が守る」
「ああ、私達は君を守り助けする為に来た。君は黒薔薇を消す事に集中すればいい。私の事は気にするな。この程度の雑魚、強化された所で多少毛の生えた雑魚の域を出ぬわ」
 背の向こうにある気配がすうと上がり、ブレイザインの視界にひらひらと淡い光が下りてきた。
 プリンセスの力によって降り注がれるそれはあたたかな、柔らかい光の花びらはあっという間に足元を染める黒を白くする。
 国を救うには、悪い敵をやっつけるには、もっと、もっとお花が必要だ。
「わたし、がんばる!」
 はらはらと花をそそぐプリンセスの動きに注意しつつ、猟兵達の戦いはさらに続く。
 ぶおぉおんっ!
 赤黒い宝珠を遠心力で振り回し――、
「せいっ!」
 ごっ。
 鋼鉄と炎を司る戦神が放つ鈍重な一撃にジャバオウガは一撃で粉砕した。
「先ほどとは大違いだな」
 十分な手ごたえを感じながら上を見る。幼いプリンセスは守られつつ一生懸命に花を降らせていた。
 説明を受けた通り、敵を強化する黒薔薇はプリンセスが打ち消す事ができるようだった。
「――む」
 懸命な姿に迫る殺気に鐵火は駆け抜け、
「たあっ! はっ!」
 ごっ! めきっ! どず、ん!
 鈍い音を響かせジャバオウガを一撃で叩き潰す。
 もちろん敵もやられてばかりではない。人睨みと共に放たれるビームを飛び避けかいくぐるが、数が多い。
「それにしても数が多いな」
 一体一体倒していてはきりがない。少々の危険は承知と意図的に敵がこちらに来るよう引きつけ――今だ!
「破ァ!!!!」
 ごお、っ!!
 垂直に放たれた波動弾が数多の敵を一度に消し去った。さすが軍神である。
「こういう時、弟子が居ると楽なのだが……ヤツは銃火器専門だからな」
 ふと弟子の事が脳裏に浮かぶが、今は戦いの中。新たな敵へと鐵火が一撃を叩きつける奮闘をまゆは見ていた。
「全力で守っちゃうからね!」
 視線を戻すとプリンセスは一生懸命に黒い場所を探しては花を降らせていた。やはり大変なのだろう。時折ふらついたり高度が落ちそうになる。
 まずい――来る!
「絶対に守り抜くからね!」
 鋭い爪はプリンセスを狙っている。霊刀を構え、迫りくるジャバオウガを正面から捉えたまゆは応戦にでた。
 素早い攻撃には素早い攻撃を。
「桜の香りで惑わせて」
 ふっと漂う幻朧桜の香りが体を包むと、まゆの身体は上空を高速で移動する。
「加速合戦なら負けないんだから!」
 速く、速く、もっと速く。
 敵の攻撃がゆっくりに感じてしまうほど、いまのまゆは高速で上空をかけていた。
「あたしの方が速いからねっ! いくよっ!!」
 ざんっ!
 一閃に生じる衝撃波がジャバオウガの群れを切り裂いて、
「もう一撃!」
 ざ、ざんっ!!
 返す手で放つ衝撃波は更に敵を切り裂いていく。
 ――と、
 戦いの中の隙を塗ったジャバオウガがプリンセスの背を狙っているではないか。
「あぶないっ!」
 微かに高い音が響くと凶爪を刃が打ち払い、
「絶対に守り抜く!」
 ざ、ん!
 真っ二つになったジャバオウガはそのまま消えていった。
「まだまだいくよ!」
 一体、また一体と敵を倒していく中で一生懸命のプリンセスを見れば、囮となって敵を引きつけるヘルガが視界に飛びこんできた。
 ばさりと翼を羽ばたかせて空を切りながらも追いかけてくる数を数えてみれば、1、2、3……10は超えるだろう。十分すぎるほどだ。
「さあ、しっかりついてきて下さいませ」
 追いかけてくるジャバオウガ達は小さな群れになるまで増えていた。額のクリスタルがきらりと光ると小さな群れから幾筋ものビームが放たれると乳白の髪がなびき、聖歌姫の体はビームの間を縫い飛んでいだ。
 ――と、
「こないで!」
 悲鳴に近い声に見れば、守る仲間達の隙を狙って敵がプリンセスへと攻撃を仕掛けたのだ。
 引きつけた敵を引き離してしまうほどの速さで駆けるが間に合うかどうか。
「大地の恵みと生命を司る慈悲深き聖母様、どうかわたくしに、人々を守るための奇跡をお与えください……!」
 キイィン……!!
「きゃっ!」
 放たれたビームに悲鳴を上げるプリンセスだが、幼い姿の前にヘルガは立ち塞がった。
「っ……!」
 一筋のビームは身を挺したヘルガの腕をかすめ、じわりとにじむ紅を見たプリンセスは慌てて駆けつける。
「だいじょうぶ? いたくない?」
「心配には及びませんわ」
 安心させようと白いベールの奥で聖母となったヘルガは優しく微笑んだ。
 白いベールに白い薔薇。
 白薔薇が司るのは――『真実の愛』。
「邪悪な黒薔薇になど、決して負けるものですか……!」
 ビームを放とうとするジャバオウガの群れに茨は放たれ、数多の神罰を打ち据えた。
 ぎゃっという叫びがいくつも響き、茨の蔓によってクリスタルを砕かれ、破魔と浄化の力乗せた白薔薇の花びらに触れたジャバオウガ達は神罰というダメージを受けて絶命していく。
 白薔薇はプリンセスが注ぐ花と一緒に黒薔薇に染まる地へと舞い落ち、
「うぉおりゃあ!!」
 正義の拳が悪を砕く。
 地を蹴り深紅の正義は電光石火の勢いで迫る敵へと突き進み、ブレイザインは一切合切を打ち砕いた。
「「「グルオオオオォオオ……!!!」」」
 低い唸り声をあげ、かみ砕こうと襲い掛かるジャバオウガを拳で撃ち、大きく蹴り上げ、
「お姫様とこの場所は、絶対に護り切る!」
 ドゴオ、ッ!!!
 勇気と覚悟の思いが光焔を生み出すと、辺り一面の敵を一掃した。だが、まだまだだ。
 パワーアップした力もプリンセスの力よって打ち消され難なく倒せるようになったものの、まだ数は多い。
 降り注ぐ花の中を紅は駆け、駆け抜けた。
 襲い掛かろうとする敵はその姿を捉える事もままならず、気付けば倒される。
 敵を叩き伏せ見上げると、幼いプリンセスが一生懸命に花を注いでいた。疲れが出はじめているようでぐらりと高度が落ちるも力を振り絞ってまた上昇する。
 汗をぬぐう余裕さえもなく、一生懸命に頑張る姿に邪悪な敵が迫りくる。
「させるか!!」
 だんと地を蹴り高々と上がり――、
「これでもくらえ!!」
「「「ギャアーッ!!」」」
 とっておきの一撃が炸裂し、ジャバオウガは撃ち消える。
「どれほど敵がいようとも俺は絶対に負けない!」
 ぎりっと拳を握りしめ構えなおすと、新たな敵が現れ千尋の鳥威が展開された。
 圧倒的な数で襲い掛かるジャバオウガだが、その数は明らかに減っている。あと少しですべてを一掃できる筈。
「あと少しだ、頑張ってくれ!」
 手を振って応える幼い姿に千尋も手を振り、
「さて、残りを片付けるか」
 襲い掛かってきたジャバオウガの群れへと青い光弾を撃ち放つとまとめて数体が撃ち落とされ、新たに放つ光弾が逃げる敵を追尾し貫いた。
「まだだ」
 伸ばす指をくいと動かせば光弾は大きくカーブを描き、どどっと大きな音を響かせ撃破する。
 攻撃は最大の防御とは誰かが言っていたが、まさしくその通りだ。
 急接近する敵をには短刀を放ち、青白い閃きが牙を剥く敵を切り裂いていく。
 ――と、猛攻をかいくぐった敵の攻撃が千尋に迫るも問題はない。
「おっと」
 頭を砕かんとした牙は瞬時に展開した鳥威で阻み、小太刀で斬る。
「残念だったな」
 ぶんと斬り払ったもう片方の手には短刀。攻撃に攻撃を重ね、更に攻撃を重ねて敵を倒し、注意深く周囲を見渡し、新たな敵へ光弾を放った。
「狙われてはいないな」
 光弾を放つ手を止めずにちらと視線を上げると、上空で仲間が囮となってプリンセスから敵を引き離しているのが見えた。懸命に動く幼い姿を守る仲間もいる。
「俺もしっかり守ってやるからな」
 見上げる瞳を正面へ向け、新たな光弾を敵へと放った千尋だが、ふと足元でなにかがちかりと輝いた。
 戦いの終わりは目前である。

「これで全部か?」
 ふうと息をつく鐵火は周囲を見渡した。
 白い花畑には敵の気配はなくあるのは猟兵達とプリンセスだけ。新たな第二陣がくるか、はたまたこれで最後なのか。
「怪我はないか?」
 ひとまず戦いは終わりブレイザインはプリンセスへ近づくと、ドレスの乱れはあるものの、傷一つない。全員で守りきった結果である。
 ――が、頭の上にあるはずのものがない。
「っと、忘れてた」
 思い出したように取り出す千尋の手には小さな王冠があった。何かの拍子に落としてしまっていたのだろう。
「大事なものだろ?」
「うん、ありがとう!」
 優しく乗せると喜ぶ瞳に涙が浮かぶ。
 一人で寂しかったのだろう。恐ろしい敵に追われていたのが怖かったのだろう。
 そんなプリンセスの涙をヘルガはそっとぬぐい、しゃがむまゆも乱れたドレスを丁寧になおす。
「大丈夫、プリンセス。貴女が笑えば、うさぎさんもくまさんも目を覚ますよ、きっと。だって貴女は『プリンセス』。この世界の希望なんだもの!」
「……うん、ありがとう。わたし、なかない!」
 泣き出しそうな顔のままで笑うその姿を前に、猟兵達は次なる戦いに備えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アナンシ・メイスフィールド
アリア君f19358と

幼いプリンセスを泣かせるとは見過ごせないねえ…と
ふふ、有難う可愛いマイレディ
でも心配は無用だよ。プリンセスもアリア君も、確り守って見せるからねえ、うんうん

戦闘時はプリンセスとアリア君を守る事を最優先
手にした仕込み杖にて『武器受け』で二人を『かば』いながらAriadne…鋼糸を『ロープワーク』の技術で操り敵を攻撃して行くよ
もし二人の距離が遠く駆けたとて間に合いそうにない場合は視線を向け【贄への誘い】
敵と、姫やアリア君の間に蜘蛛の足を生じさせ盾にしつつ敵を貫くよう攻撃を試みようと思うのだよ
ふふ、二人とも守って見せるといったではないね?だから安心して好きなように動いてくれ給えよ


アリア・モーント
アナンシパパと!(f17900)
アドリブ等歓迎

黒い薔薇、嫉妬の華
せっかくのお花畑を台無しになんてさせないわ
いつもパパに守られるのはわたしの特別なのだけれど
今日は素敵なお姫様に譲ってあげるのよ?あげるのだわ!

さぁ、開演よ
【硝子迷宮演目「Nigella」】
ガラスの迷宮に
わたしのステージにようこそ!
逃がしはしないわ?
行かせはしないわ?
可愛いお姫様がいるんだもの
【歌唱】で【多重詠唱】した風【属性攻撃】魔法を迷宮に
出口は一つだけ
わたしのところにいらっしゃい
その前に迷宮で倒れるかもしれないのよ!

パパに守って貰えたなら
ぱちん、とウインク
可愛いお姫様
紳士でかっこいい素敵なパパでしょう?
好きになっちゃダメよ?



 黒い薔薇が敷き詰められ、『色彩の国』は黒一色の国になりつつある。
「黒い薔薇、嫉妬の華。せっかくのお花畑を台無しになんてさせないわ」
 左右に束ねた髪がふわりと揺れれ、アリア・モーント(四片の歌姫・f19358)は足早に歩く。
 色とりどりの花が咲くという国なのに、どこまでも広がるのは嫉妬の色。ああなんてひどい景色。
「幼いプリンセスを泣かせるとは見過ごせないねえ……と」
 目を細めるアナンシ・メイスフィールド(記憶喪失の―――・f17900)の瞳はそんな色の中にぽつんと輝く希望を見出した。
 この国でただ一人眠らなかったプリンセスの輝きだ。
 説明ではプリンセスは幼くか弱い女の子という事だが――、
「いつもパパに守られるのはわたしの特別なのだけれど、今日は素敵なお姫様に譲ってあげるのよ? あげるのだわ!」
「ふふ、有難う可愛いマイレディ。でも心配は無用だよ。プリンセスもアリア君も、確り守って見せるからねえ、うんうん」
 つんと言い放つアリアと頷き笑むアナシンだが、二人の歩調はゆったりしたものから早足になる。
 黒い塊――オウガ達が阻止すべくプリンセスへ向かっているのが見えたのだ。輝きはふらふらと高度を保てなくなり、するんと落ちた。
「パパ!」
 アリアにアナンシは頷くと二人は急いで向かうと、幼い少女が真っ黒な花畑に倒れこんでいる。真っ白なドレス、頭にちょこんと乗せた王冠。
 ――眠った国の唯一眠らなかった『色彩の国』のプリンセス。
「ん……」
「怪我はない? 大丈夫?」
 真っ黒な花畑を元に戻そうと必死でいたのだろう。どうやら力を使い切ってしまったプリンセスは飛ぶ事が出来なくなってしまったようだ。
「あなたたちは……?」
「わたしはアリア。パパと一緒に助けに来たのだわ!」
 ゆっくりと起き上がったプリンセスへとアリアは言うが、禍々しい群れがこちらへとやってくるのが見えた。距離はあるが、戦闘はすぐにでも始まるだろう。
「立てるかな?」
 膝をついてプリンセスを立たせたアナンシは手にする杖でとんと黒い地を叩く。
「では、プリンセスもアリア君も、確り守って見せようかねえ」
 シルクハットの位置を直し、じっと群れを見つめるが、もうすぐそこだ。
「可愛いお姫様、あたし達が力を貸してあげるのよ!」
「ありがとう!」
 今にも泣き出しそうな少女の前に立ち、アリアの青い双眸もオウガの大群を捉えきった。

 ――この迷宮はわたしのお庭、わたしのステージ……わたしの狩場!
「さぁ、開演よ、わたしのステージにようこそ!」
 周囲の空気がざあっと震え、両手を広げるアリアの声と共にガラスの迷宮が出現した。
 それはあまりにも突然であった。すべてを区切る硝子はうっかりすれば壁を見落としぶつかってしまいそうなほどの透明さ。
「ギャッ!」
「ギャァア!」
 迷路に囚われたジャバオウガ達はそれに気づかず硝子の壁に勢いよく激突し、運悪く致命傷となったものさえいたようだ。
 壁にぶつからぬよう知恵を働かせようとしても、研ぎ澄まされた歌声が邪魔をする。
「逃がしはしないわ? 行かせはしないわ?」
 くすくす嗤う声に交じり歌声が幾重にも響き渡り、それは敵を葬る詠唱となった。
 行く手を阻むのはそれだけではない。
「グオォオオ……!!」
「悪いけどここから先へは行かせないよ」
 ようやく迷宮を進み迷宮の主へ攻撃しようとしたところで、インバネスコートに身を包んだ男が立ちはだかる。鋭い爪ならいとも簡単に砕けるだろう男の杖から白刃の輝きが現れ、次の瞬間にはジャバオウガは真っ二つになっていた。
「アリア君」
「任せてよ!」
 アリアとプリンセスに攻撃が届かぬよう仕込み杖で攻撃を打ち払い受け流し、鋼糸を駆使して敵を討つ。数は多いが回復したプリンセスが輝く花を降り注ぐおかげで容易に倒す事ができた。
 素早い攻撃を受け流し、躱す中でちらと見ればジャバオウガ達はアリアとプリンセスまで敵はたどり着いていない。いや、この迷宮からは脱出すらできないであろう。
 それに、万が一に二人が襲われた時の対策もしっかり考えてある。
「出口は一つだけ。わたしのところにいらっしゃい。その前に迷宮で倒れるかもしれないのよ!」
 歌声が響き、詠唱となり見えぬ場所の敵の断末魔が木霊する。その木霊の中から飛び出す敵をアナシンが倒し、プリンセスは敵のパワーアップを打ち消す花を降り注がせた。
「安心して好きなように動いてくれ給えよ」
 蛛を傍らに独白するアナシンは杖を手に次の攻撃に備えて身構えた。
 ――どれほど敵が束になってこようとと、必ず守り抜く。

 アリアとアナシンの作戦は完璧で、ダメージを受ける事無く敵をすべて倒してしまった。
 戦いが終われば硝子の迷宮は輝きと共に消え、花畑にはアリアとアナンシ、プリンセスの3人だけとなった。
「二人とも怪我はないね?」
「大丈夫よ」
 問われたアリアはぱちんとウインク。
 アナンシの守りによって怪我どころか一度の攻撃も受ける事なく、アリアとプリンセスはなすべきことを十分に行えたのだ。
 少しばかり乱れたインバネスコートをさっと直したアナシンは杖を手に周囲を見渡せば、敵は倒し切ったようで今のところ敵の気配は全くない。だが、空はいまだ黒い薔薇が広がっている。
 一体どこに――。
「あの、たすけてくれて、ありがとう」
「二人とも守って見せるといったからね」
 幼い声に見れば、見上げるプリンセスがちょこんと小さくお辞儀した。
「可愛いお姫様、紳士でかっこいい素敵なパパでしょう? 好きになっちゃダメよ?」
 けなげな姿にそっとしゃがんで目線を合わせたアリアはプリンセスと一緒にアナンシを見上げ、パパだけに見えるよう小さくウインクをした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『エンデリカ』

POW   :    咲キ誇リナサイ
自身の【体を茨に侵蝕させること】を代償に、【機械の翅から召喚する黒薔薇蝶々の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【黒薔薇に体の自由を奪われる呪いの鱗粉】で戦う。
SPD   :    コレガ「自由」ノ形
【機械に侵蝕された姿】に変身し、武器「【機械仕掛けの翅】」の威力増強と、【羽ばたき】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ   :    ドウゾオ静カニ
自身の装備武器を無数の【戦意と生命力を奪う黒薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:ろまやす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メリー・アールイーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 覆いつくした黒薔薇は打ち消され、猟兵達の前には淡く輝く花畑が広がった。
「よかった! これでお花さんたちも元気になってくれるわ!」
 淡く輝く花をはらはらと舞わせて幼いプリンセスは花のような笑顔を猟兵達へと向ける。
 一人残った寂しさと、襲われた怖さで青ざめていた顔には紅がさし、猟兵達の尽力が本来の顔を取り戻したのだ。
「ありがとう! これもみなさんのおかげだわ!」
 嬉しさのあまり目からぽろぽろと涙がこぼれ――、
「素敵、本当ニ素敵!」
「きゃっ」
 ざああぁっ!!
 知らぬ声と共に突如、吹き荒れる突風に目をつむったプリンセスだが、風が収まり目を恐る恐る開けるとそこには悪夢が広がっていた。
 黒く、どこまでも黒く広がる大地。
 消滅したはずの黒薔薇が一面を覆いつくしているではないか。
「……なんで? なんでなの? わたし、がんばったよ? なのに、どうして?」
 ざざざ、ざあっ!!
「ナンテ素敵ナ『優シイココロノ証』! 本当ニ素敵ダワ! 私モ、アナタミタイニナリタイ!」
 黒の嵐が吹き乱れ、黒薔薇舞い降る空に機械の羽が鈍く光る。
 長い黒髪に黒いドレス――黒い薔薇。
「あなた、だれ?」
「私ハ『エンデリカ』」
 ぎぢり。
 茨がまきつく羽を軋ませエンデリカは嗤う。
「フタリデ、幸セニ暮ラシマショウ? コノ国ヲ壊シタラ、アナタヲ丁寧ニ捕マエテ、少シズツ分解シテアゲル。ユックリト、丁寧ニ。私ガアナタヲ理解スルマデ、目ヲクリ抜キ手足ヲ引キ抜イテモ、絶対ニ生カシテアゲル」
 クスクス、クスクス、フフ、アハハハハ……!
「フタリデ、幸セニ暮ラシマショウネ……!」
「いやよ、お花さんやみんなにひどいことをするなんていけないわ! あなたとはなかよくなんてできない!」
 ぎぢぎぢ、ぎぎりり。
 羽の歯車が不気味な尾を響かせ、猟書家エンデリカは不気味な笑みを浮かべるのだった。

====================
※2章のプレイングについて
 この章では猟書家エンデリカとの戦いになります。
 新たに侵食させた『黒薔薇』によってエンデリカはパワーアップしています。
 この『黒薔薇』は1章と同様に『ドレスアップ・プリンセス』を展開させたプリンセスの能力、飛翔している時に出る花びらによって打ち消す事ができます。
 打ち消される事を知っているエンデリカはそれを良しとせず、プリンセスを狙うでしょう。
 プレイングボーナスを参考にしつつ、エンデリカ撃破をお願いします。
====================
花澤・まゆ
あー、本当に腹が立つ敵だなあ!
絶対にプリンセスを守り抜くからねっ

敵の攻撃はプリンセスに向くだろうから
あたしは可能な限り【空中戦】でプリンセスの傍に
攻撃が飛んできたら【武器受け】や【オーラ防御】で
あたしがその攻撃を受け止める
プリンセスには傷ひとつつけさせやしない

UC起動
さあ、おいで黒き竜
この狂ったお嬢さんに質問させてもらおうか
「プリンセスみたいになりたいって、どうやって?」
納得いく答えなんて返ってくるはずないから
プリンセスを守りながら竜に攻撃をさせ続けるよ

プリンセス、安心して
絶対に守るから、貴女は笑顔でいて
貴女が笑ってくれれば
あたしはどんな攻撃でも受け止めてみせる

アドリブ、連携歓迎です


ヘルガ・リープフラウ
ああ、やはり黒薔薇は邪悪の花
その司る意味は「呪い」「憎しみ」
そして偏愛を注ぐ相手を束縛する執着心

プリンセスには指一本、花びらの一枚すら触れさせはしないわ

祈りを込め歌うは【怒りの日】
花々の命を踏み躙り、悍ましい欲望でプリンセスの心を傷つけた
エンデリカも、その黒薔薇も、許すべからざる世界の敵
神の怒りよ、裁きの光となって悪を悉く打ち砕け

黒い花弁がその毒で戦意を奪おうとしても
プリンセスを庇って我が身が傷ついても
世界を守る覚悟を決め、決して一歩も退きはしない

故郷のダークセイヴァーでは、オブリビオンの黒い欲望で
いくつもの村や町が蹂躙され多くの命が奪われた
あの惨劇を、二度とここで繰り返しはしない


神樹・鐵火
虫けらを放って足止め、その程度か...
だが、姫君に群がられると厄介だ
あえて私が囮となり、引き付けよう
羅気で呪詛から守りつつ、
茨は聖拳の力場で押し返し時間稼ぎをし
反撃の為に耐える(激痛耐性・魔力溜め・力溜め)
耐えきって、私の姿が茨と蝶で群がって見えなくなった頃合いに反撃だ

この程度で侵略者を騙るとな...
笑わせるな

纏わり付いた茨と蝶を、轟拳の衝撃波で一気に跳ね除け引き裂く
ジャンプとダッシュで敵に急接近し
両手の指先から鋭拳をバーナーの様に出し
技の代償で動きが鈍った敵を至近距離で徹底的に切り刻み(傷口をえぐる)
背中の羽も引き千切り破壊する(怪力・部位破壊)
最後は腹に闘心破拳を打ち込む


司・千尋
連携、アドリブ可

コイツを倒せば『いつも通りの日常』だ
あと少しだけ頑張ろうぜ
大丈夫、俺達が守ってやるよ


プリンセスを守る事を自分の攻防対応可能な範囲内なら優先

近接や投擲等の武器も使いつつ『翠色冷光』で攻撃
召喚された蝶の群れを優先して数を減らす
範囲攻撃や2回攻撃など手数で補い
回避されても弾道をある程度操作して追尾させる
可能なら本体も範囲内に入るよう位置調整


敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
速度や威力を相殺し回避や防御、迎撃する時間を稼ぐ
鱗粉を防ぐ為に身体から少し離して展開
間に合わない時は双睛を使用
プリンセスへの攻撃は最優先で防ぐ


空桐・清導
SPDで挑む
協力も大歓迎だ

俺にはやっぱり理解できないな。
大切だと思う人を苦しめて、大切な者を壊そうとすんのは。

それに、オレは姫様とこの国を守ると誓ったんだ!
彼女には指一本、蔦一本触らせねえ!
「往くぜ相棒!お前の力が必要だ!」
エンデリカの姫への攻撃を[オーラ防御]で防ぐと
同時に天から光のブレスがエンデリカに降り注ぐ!
舞い降りた龍の背に乗って空中戦だ!
姫に近づけないように龍の巨体と爪で吹き飛ばし、
俺は[誘導弾]の[一斉射撃]で牽制する。

最後は背から[ジャンプ]して翅を[鎧を砕く]ように粉砕。
堕ちる彼女に向け、構える。
「龍焔必殺!ドラゴブレイズ・キィィック!!」
勇輝龍のブレスを纏った蹴りでトドメだ!



 黒き空から、きらきら淡い輝きが舞い降りる。
 ――フフ、フフフ……アハハハハハハハハ!
「かかってこい!」
 ぎりっと拳を握り構えたブレイザインの目前に機械に侵食された猟書家が迫りくる。
 ぎぢ、ぎぢぎぢっ!
 不快な音を響かせ迫る機械羽が頬を掠めるが、痛みなど気にならない。深紅のヒーローはばっと跳び避け、
「そっちへ行ったぜ!」
「了解だよ!」
 ぐんと飛び上がる黒が向かう先へと声を上げた。
「邪魔ヨ」
「っ!」
 まゆの頭を捉えたはずの攻撃は躱され空を切り、それでもエンデリカは勢いを落とさず駆け抜けていく。
 黒き薔薇を白き光が打ち消す空を駆け、プリンセスめがけて駆け抜け――捉えた!
「ミツケタワ!」
「いや! こないでっ!」
 不気味に笑む姿を目にプリンセスは必死に逃げようとするが、相手が相手である。逃げ切れるはずもない。
 捕まえようと伸びる手はプリンセスへと迫り、
「させるかっ!!」
 身を挺して立ちはだかる深紅の鎧にざりり、と攻撃が入るも一歩も引かない。引いてはいけない。
「往くぜ相棒! お前の力が必要だ!」
 グルオオオオオォォォォオオオオオ……!!
 貫く咆哮に見上げれば、光のブレスがエンデリカへと振り注ぐ!
「ギャアアァア……!!」
 輝きの中を勇輝龍――深紅のドラゴンが現れるとブレイザインはその背に乗り空を駆ける。
「大丈夫か? 姫様」
「うん、ありがとう!」
 安心させようとできるだけ優しく聞くと、頷いたプリンセスは再び空を飛ぶ。だが、当然エンデリカはそれを追いかけようと動き出した。
 速い。
「あたしに任せて!」
 退魔の霊刀を抜き放ったまゆは羽ばたき再度狙おうとするエンデリカとプリンセスの間へ割り込んでいく。
 がきんっ!
「あー、本当に腹が立つ敵だなあ!」
「ソレハコッチノセリフヨ!」
 がっ、ぎりり、きいん!
 火花が散り、打ち合うまゆだがエンデリカの瞳がぎろりと動くのを見逃さない。
「さあ、おいで黒き竜」
 召喚した黒き竜はまゆに呼応し標的へとその身を躍らせた。
 そして問う。
「プリンセスみたいになりたいって、どうやって?」
 ――私モ、アナタミタイニナリタイ。
 そう言ったエンデリカは果たしてどう答えるのか。得物を構えプリンセスを守るように立つまゆの双眸はじっと見据えるが、空色の瞳には不気味な笑みを浮かべたままの姿が映るだけ。
 グオオオオォオアアアア……!
 答えのない猟書家を取り巻くように黒竜は動くと恐ろしい勢いで襲い掛かった。
「プリンセス、安心して」
 召喚した竜と仲間が攻撃する中、ちらと視線を向けてまゆは安心させるように声をかける。
 大群との戦いから元凶である猟書家との戦い。ふたつの戦いは中で戦う力のないプリンセスにとってどれほど怖いものだろう。
 きらきらと輝きを降り注がせるプリンセスだが、その顔は緊張に強張り手も震えているではないか。
「絶対に守るから、貴女は笑顔でいて。女が笑ってくれれば、あたしはどんな攻撃でも受け止めてみせる」
「……うん、わたし、がんばる!」
 そっと優しく手を握ると手の震えは収まった。幼いプリンセスはまゆ、そしてブレイザインに守られ再び行動を再開させる。
(「俺にはやっぱり理解できないな。大切だと思う人を苦しめて、大切な者を壊そうとすんのは」)
 戦いの中、ふとブレイザインの脳裏にふとそんな考えが浮かぶ。
 なりたいと望む相手をぼろぼろになるまで壊してでも生かして共にあろうとするなんて考えられなかった。
 ただ相手はヒトならざる存在。その思考を理解するなど容易ではないだろう。
 それに相手がどんな思考だろうとすべきことは変わらない。
「それに、オレは姫様とこの国を守ると誓ったんだ! 彼女には指一本、蔦一本触らせねえ!」
「プリンセスには傷ひとつつけさせやしないんだからね!」
 ブレイザインとまゆは幼いプリンセス、そして国を守るべく、仲間達と戦いを続ける。
「ジャマダワ、アナタタチハ!」
 ぎぎ、ぎり、ぎりぎりぎりぎり……!
 苛立ちを隠さない声に呼応するように歯車を軋ませその体は恐ろしい速さで動きだした。
「そっちに行ったよ!」
「気を付けろ!」
 二人の声に共に戦う仲間達が応えた。

「プリンセス! ドコへ行クノ!」
 きらきら輝きを降り注がせプリンセスは必死に逃げる。
「ジャマヨ!」
「プリンセスには指一本、花びらの一枚すら触れさせはしないわ」
 エンデリカからどうっと沸き上がる黒薔薇の波に追われながらもヘルガはプリンセスの場所を確認した。
 攻撃をなんとか避けつつ振り切れば合流できるだろう。
「ああ、やはり黒薔薇は邪悪の花」
 憎悪の花弁をばさりと払い、ぐんと上昇して振り切り攻撃して消滅していく黒薔薇を目にふと呟いた。
 邪悪の花が司る意味は『呪い』『憎しみ』、そして偏愛を注ぐ相手を束縛する執着心。
 ぢぢぢ、ぢぎぎぎ、ぎぢぎぢぢっ……!!
 ふと見ればエンデリカの体に絡む茨がさらに絡み、軋む羽から数え切れぬ黒薔薇蝶々があふれ出しているではないか。
「気を付けてくださいませ、攻撃が向かっていますわ」
「了解!」
 上空からの声に千尋はオーラを重ねた鳥威で防いでみせた。一波、二波と襲い掛かるそれを防ぎ、すり抜けてきたものは青い光弾で撃ち落とす。
「虫けらを放って足止め、その程度か……だが、姫君に群がられると厄介だ」
「キリがないな」
 千尋と言葉を交わす鐵火だが、すうと前へと躍り出ると呪詛から身を守るべく羅気を纏い、だんと地を蹴った。
「私が囮となり、引き付けよう」
「ああ、頼んだ」
 黒い蝶の大群を引き連れた背を目にばっと青い光弾を再び展開。
「消えろ」
 ドドド……!
 大群を任せたとはいえ、すべてがあちらへ向いた訳ではない。こぼれた蝶や薔薇が猟兵達、そしてプリンセスへと牙を剥いた。
「本当に厄介だな」
 蝶からぱらぱらとこぼれる鱗粉が風に乗ってこちらへ小さく、それでいて大きなダメージを与えようとする。それに気づいた千尋はできるだけ蝶が近距離にこないよう距離をとって光弾を放ち続けた。
 距離をとり、急接近する蝶は細かく展開させた鳥威で防ぎ、大きく飛び避け光弾で撃ち砕く。
 ――と、
「いやっ! こないで!」
「プリンセス!」
 聞こえる悲鳴に思わず千尋は声を上げた。
 光弾の向こうで輝きを注ぐプリンセスに薔薇と蝶が迫っているではないか。
「まずい!」
 プリンセスに当たらぬよう細心の注意を払いつつも撃ちもれがないよう正確に光弾と短刀を放ち、
「プリンセス! ……っ、く!」
 身を挺してヘルガはプリンセスへの攻撃を防ぎ切った。
「だいじょうぶ? いたくない? だいじょうぶ?」
「これくらい大丈夫ですわ」
 プリンセスは不安そうに聞くも攻撃で頬や腕に細かい傷が生じたヘルガは心配させまいと優しく微笑んだ。
 エンデリカの攻撃はちりちりと痛みを伴うものであったが、プリンセスの心の痛みに比べればこの痛みは耐えられた。
 世界を守る覚悟を決め、決して一歩も退きはしない。
「攻撃はわたくし達が防ぎます。たとえ我が身が傷ついてもプリンセスには指一本、花びらの一枚すら触れさせはしない」
「大丈夫、俺達が守ってやるよ。だからこの国の為に頑張ってくれ」
「うん! わたし、がんばる」
 ヘルガと千尋に大きく頷くプリンセスは憎しみ広がる黒の中、再び光を降り注ぐ光景にヘルガは思う。
 花々の命を踏み躙り、悍ましい欲望でプリンセスの心を傷つけた。エンデリカも、その黒薔薇も、許すべからざる世界の敵。
 幼いプリンセスは絶対に守る。
「神の怒りよ、裁きの光となって悪を悉く打ち砕け」
 欺瞞を暴き邪悪を滅する裁きの光は降り注ぎ、光弾が流星のごとく閃いていく。
 その様子をちらと目に囮となった鐵火は蝶の大群を引き連れ駆けていた。
 速く駆ければ引き離してしまうので速すぎず遅すぎず、適度な距離を保って走りぬく。
「……む」
 体に妙な違和感を感じ、思わず眉を寄せてしまう。
 身体の自由を奪おうとする鱗粉がその違和感の正体だろう。だが羅気がある。多少の違和感を感じつつも行動には差支えなく、鐵火は更に敵を引き連れた。
 茨は聖拳の力場で押し返して時間稼ぎし、迫る敵を絶妙な距離で引きつけるがさすがに多くなってきた。
「っ……だが、まだだ」
 受ける攻撃の痛みに眉を寄せ、駆け、攻撃は増え、更に痛みも増え。
「ああっ!」
 それを見てしまったプリンセスが思わず声を上げてしまった。
 大群を引き連れ囮となっていた鐵火だが、大群に囲まれ茨と蝶で群がって見えなくなったのだ。
「たいへんだわ! たいへんだわ!」
 悲鳴に近い声を上げ、プリンセスは近づこうとするが、
「この程度で侵略者を騙るとな……笑わせるな」
 どお、っ!!
 衝撃波が群がった茨と蝶を吹き飛ばしたのだ。
「すまない、余計な心配をかけてしまったな」
「ほんとう? だいじょうぶ?」
「ああ、大丈夫だ」
 不安そうなプリンセスへとまっすぐな瞳を向けた鐵火はぐっと拳を握って見せた。
「このとおり私は大丈夫だ」
「よかった。じゃあわたし、またがんばるね!」
 ふわりと飛び上がる幼い姿を目に鐵火も再び戦う為に動き出す。

 攻撃は続き、ついにその時がきた。
 ぐらり。
 猟兵達の猛攻の中、エンデリカの身体がぎこちない動きになったのだ。
「チカラガ……私ノ、チカラガ……!」
 あれ程まで鋭かった勢いは削げ、動きもどこか鈍くなっている。蓄積されたダメージに限界が近いのだろう。
 ならばあとは畳みかけるだけ。
「コイツを倒せば『いつも通りの日常』だ。あと少しだけ頑張ろうぜ」
 降り注ぐ輝きの中を青い光弾と漆黒の短刀と放つ千尋の声に仲間達は最後の攻撃を畳みかける。
「相棒!」
 その一声だけで悟る勇輝龍は大きく天に吼え、深紅は天高く舞い上がり――、
「龍焔必殺! ドラゴブレイズ・キィィック!!」
 ブレスを纏ったブレイザイン渾身のキックが炸裂し、
「この国を、プリンセスをあたし達は守る!」
 黒き焔と共に小鳥の声がしたかと思えばまゆの霊刀はぼろぼろになったエンデリカの翼を捉える。
 プリンセスみたいになりたいと口にしていたが、返って来る筈がないのだ。納得いく答えなど。
「覚悟っ!」
 しゃんと閃き翼は断たれ、ヘルガは再び祈りを歌う。
「無辜の願いを冒涜し命を愚弄する者よ。何者も因果応報の理より逃れる術は無し。今ここに不義は潰えん。悪逆の徒に報いあれ」
 聖歌姫の祈りは怒り――オブリビオンの黒い欲望でいくつもの村や町が蹂躙され多くの命が奪われたあの惨劇を、二度とここで繰り返しはしないという決意。
 決意と祈りに応えた光が天より降り注ぐと、裁きの光となりエンデリカへと襲い掛かる。
「グ……ァァアアァア……!!」
 エンデリカは裁きに呻き悶えて大きくのけぞった。
 大ダメージを受けたエンデリカへ鐵火は距離を一気に詰めて接近するとこれでもかと猛攻を叩きつける。
 徹底的に切り刻み、渾身の力をもって羽を引き裂き――今だ!
 ず、ん!!
「ガラ空きだ」
「ッ、グア……!」
 打ち込む拳はエンデリカの腹にめり込んだ。
「ァ……イ、イヤ……嫌……」
 ぼろりと歯車が零れ落ち、ふらつくエンデリカはよろよろと後ずさり――、
「イ……ィ、嫌ヨ……私……マダ……マダ、アア、ア、嫌アァア……!!」
 ざわざわざわざわざざざざざざざざ!!!
 プリンセスが一所懸命降り注がせた輝きはエンデリカから噴き出す黒薔薇によって覆い隠されていく。
 あれほど攻撃をしかけたというのにまだ戦えるのか。
 ――いや、見れば歯車はいくつも零れ落ちているし金属の羽は傷つきガタついているし、絡みつく茨も落ちている。
 あと一押しのはずだ。
「プリンセス、アア! 素敵ナプリンセス! サア、私ト幸セニ暮ラシマショウ! 早ク! サア早ク!!」
 猟兵達の間をすり抜けプリンセスめがけるエンデリカ。こちらの攻撃は間に合わない。
「大丈夫、わたし達に任せるのだわ!」
 遠くから頼もしい声が聞こえてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリア・モーント
アナンシパパと(f17900)
アドリブ等歓迎

可愛い小さなお姫様
何度だってくじけないのがプリンセスなのだわ
ね、パパ?

茨姫?
いいえ、いいえ
あなたは黒い影
くるくる回る機械人形
黒い薔薇の狂ったおもちゃ
そんなものに負けるわけないのだわ!

お姫様が羽ばたけるように【鼓舞】する歌を
【ダンス】するみたいに
【誘惑】するみたいに
遊びましょう
踊りましょう
歌いましょう
いつまでも…わたしと一緒に
あなたの手がお姫様に届くことはないのだわ!
【忘我狂殺曲「Tuberose」】
花びらを【見切り】わざとわたしへ【おびき寄せる】のだわ

ふふ、黒い薔薇の機械人形さん
あなたの終わりは、すぐそこに
わたしのパパはとってもとっても強いのよ?


アナンシ・メイスフィールド
アリア君f19358と

ふふ、そうだね可愛いレディ
プリンセスは可憐で美しく、そして強くなければならないのだよ
この国を、皆を護れるのは君だけなのだから
さあ、顔を上げて侵略者達を退けに行こうではないね

戦闘時は手にした左手のAriadneにて己やアリア君、プリンセスに向かう蝶や花びらを『なぎ払い』『武器受け』しつつ
口から漏らした炎を纏った糸【蜘蛛の毒炎】にて向かい来る蝶を燃やし絡めとらんと試みながらアリア君におびき寄せられた敵へと向けてゆくよ
ふふ、蝶が蜘蛛に何をしようと言うのだね?
その後は間合いを詰め右手の仕込み杖を貫く様『暗殺』を試みようか
…悪い蝶は確りと縫い留めて置くべきと、そう思わないかね?



「プリンセス、素敵ナプリンセス! アア、私ト幸セニ暮ラシマショウ……!!」
 ぎしぎしと不快な音を響かせエンデリカは猟兵達の間をすり抜け、プリンセスへと一直線に向けっているのが見えた。
 間に合うか? いや、絶対に間に合う。間に合わない訳がないのだ。
「わたし達に任せるのだわ!」
 自信に満ちた声を上げるアリアが見上げれば、パパの姿は既に黒き空にあった。
 すうと伸ばした手から音もなく放たれたしなやかな糸がエンデリカの攻撃を受け流すと、返す手で黒薔薇と蝶を一気にざくりと薙ぎ払う。
「怪我はないようだね」
「あ、ありがとう!」
 猛追する薔薇を払い、蝶を落としながらもアリアの元へとアナンシは戻る。乱れたスカートをそっと直しながらプリンセスの様子を確認するとリボンや裾が少し裂けているようだが、それ以外に怪我はしてないようだ。
 幾度も恐ろしい目に遭い強張るプリンセスの手にアリアはそっと自分の手を重ね、
「可愛い小さなお姫様、何度だってくじけないのがプリンセスなのだわ。ね、パパ?」
「ふふ、そうだね可愛いレディ。プリンセスは可憐で美しく、そして強くなければならないのだよ。この国を、皆を護れるのは君だけなのだから」
 くしゃっとなってしまったドレスのリボンをふわりと直すアナンシも汚れてしまった頬を取り出したハンカチでぬぐってあげた。
「さあ、顔を上げて侵略者達を退けに行こうではないね」
 空からは絶望を散らしたような黒薔薇が降り注いでいた。だが、その絶望にも希望の兆しは十分に見えている。
「ア、アァ、ア……ソコニイルノネ! プリンセス! 私ト幸セヲ! サア早クモウ待テナイワ!」
 金属の羽からはぼろぼろと歯車が零れ落ち、絡む茨も徐々にその力を失っていく。
 ああ、まるで茨姫のようであった姿も今は見る影もなく。
「茨姫? いいえ、いいえ。あなたは黒い影。くるくる回る機械人形。黒い薔薇の狂ったおもちゃ。そんなものに負けるわけないのだわ!」
「プリンセス! プリンセス! サア早ク早ク早ク!!」
 ざ、ざざ、ざああああああっ!
 アリア達が眼中にないのか狂ったような声のエンデリカから一気に黒薔薇が噴き出した。
「きゃっ!」
「大丈夫、私達が絶対に守ってみせるのだわ」
「あの空はプリンセス、キミにかかっているのだよ」
 嵐のように吹き荒れる薔薇にに怯えるプリンセスだがアリアとアナンシに励まされると、ふわんと空へと舞い上がり、ほどなくして黒の空から輝きが降り注ぐ。
「アリア君とプリンセスには指一本、いや花びら一枚さえ触れさせはしないよ」
「邪魔! 邪魔ヨ! オ前達ハイラナイ! 消エテ!!」
 どうっと押し寄せる黒薔薇と蝶の群れを前にシルクハットの奥の瞳がすうと細まると、両手から放たれる糸が辺り一面に広がり、蝶も薔薇も一切を薙ぎ払った。
 一波を払えば二波がすぐ押し寄せる。周囲に注意を払って両手を閃かせると、視界には踊るようにレディが歌い上げていた。
「遊びましょう。
 踊りましょう。
 歌いましょう。
 いつまでも……わたしと一緒に。
 あなたの手がお姫様に届くことはないのだわ!」
 伸びやかな歌声に優しい光が降り注ぐ。見上げなくともわかる。プリンセスはアナンシの奮闘とアリアの歌声に勇気を持ち、己ができる事を精いっぱい行っているのだ。
 大きく両手を広げて伸びやかに歌い上げ、誰もが釘付けになるだろう優雅で魅力的なダンス。それらは敵を引きつけるには十分だった。
 アリアに引き寄せられたそれらをまるで指揮でもするようにアナンシが両手を動かせば縦に払い、横に薙ぎ、猛進するエンデリカの羽をも絡めとり、
「溶けるが先か燃えるが先か……まぁ、何方でも変わりはしないのだがね?」
 蜘蛛の毒炎が糸を伝い邪魔なすべてを燃やし尽くす。
「ふふ、蝶が蜘蛛に何をしようと言うのだね?」
 哀れ黒き花蝶はなすすべもなく神の掌ならぬ蜘蛛の糸の中で果てていく。
「ヨクモ……ヨクモヨクモ! 私ノ邪魔ヲスルナ!!」
 ぼろぼろのエンデリカは羽どころか声までも軋んでいた。
 今にでも外れそうな機械羽に傷だらけの身体。これでは終わりも近いだろう。
「ふふ、黒い薔薇の機械人形さん。あなたの終わりは、すぐそこに。わたしのパパはとってもとっても強いのよ?」
 ほうら、終わりはもう目の前。
 さあ、振り返っては駄目。
「ああ、可愛いレディの言う通りだよ」
 ――どずり。
 アリアばかりへ意識が向いていたのが仇となり、まったく気づかなかったアナンシの仕込み杖が猟書家の身体を貫いた。
「ァ……ア……」
 血の代わりに黒薔薇がどろりと零れ落ちる。
「……悪い蝶は確りと縫い留めて置くべきと、そう思わないかね?」
「アア……私……私私、ワ……ア、ア、アアアァアアァァァァアアアアア……!!」
 切り裂かんほどの悲鳴を上げた猟書家の姿は黒薔薇の塊となったが、一陣の風に吹かれ、なにひとつ残さず消え去った。

 絶望に染まる黒は柔らかな風に吹かれ、瞬く間に元の色を取り戻す。
 よかった。これで戦いは終わったのだ。
「姫さまー!」
 安堵の息をつき武器をしまう猟兵達だが遠くからの声に振り向くと、キツネ一家がこちらへ走ってくるのが見えた。
 小鳥の親子も飛んでいるし、ウサギおばさんも一生懸命に駆けている。
「どうやらずっと眠っていたみたいなんだ」
「姫様は大丈夫だったかい?」
「うん、わたしは大丈夫よ!」
 本当は怖い思いをしたけれど、国の皆を心配させまいとプリンセスはいつもの格好に戻るとにっこり笑顔で答え、猟兵達へとウインク一つ。
「たすけてくれて本当にありがとう。この国がたすかったのは、みなさんのおかげよ!」
 うれし涙を流すプリンセスの元に遅れてやってきた木こりのくまさんがたどり着くと、お水いっぱいのじょうろを差し出した。
「お花さんにお水をあげるんだろ?」
「うん! くまさんありがとう!」
 能力を使って舞い上がるとプリンセスはじょうろいっぱいのお水を降り注がせる。
「おはなさん、おそくなってごめんね。さあお水よ!」
 きらきら降り注ぐ花に優しい水が降り注ぎ、空には大きな虹がかかる。
「ありがとう、みなさん、本当にありがとう!」

 こうして猟兵達によって平和を取り戻した色彩の国は、再び彩り豊かな国となる。
 輝きと彩りに満ちた光景を猟兵達しばらく見つめていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月13日
宿敵 『エンデリカ』 を撃破!


挿絵イラスト