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レスキュー!アニマル!

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #レプ・ス・カム #フェアリー

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●小さなのどかな保護牧場
 そこはぽかぽか陽気な世界。
 至る所に牧草が生い茂り、お肉みたいな木の実とか、新鮮なお水の泉、ふわっふわな藁とかもある、暖かい牧場的な場所だった。
 空はどこまでも遠くにあり、定期的に昼と夜が入れ替わる。
 そこに動物達がいた。
 ひつじや牛さん、わんわん犬さんにお馬さん、ヤギさんとかも。
 幸せそうにのんびりと、彼らはこの世界でご飯を食べ、駆けまわり、夜になったら眠る。
 のんびりとした暮らしを堪能していた。

 また朝がやってきた。
 目覚めてひと鳴きする動物達を、一生懸命にブラッシングする妖精がいた。
 小さな羽を羽ばたかせ、一頭の羊の体を両手で抱えたブラシで毛並みを揃えていく。
 1頭のブラッシングを終えた先から、嬉しそうにわれよわれよとやってくる動物達。
「順番順番、並んでね。」
 その妖精は1匹しかいないが、とてもやりがいのあるお世話にとても幸せそうだった。
「みんなすっかり元気になったね!ボクもみんなが、ふわふわしてるから大好き!一生ここに居ても――」

 その時である。のどかな空が赤と紫のダークな色へと変貌したのは。

「え?あれ?」
 すると何もない所から突如空間を引き裂いたような穴が開き、中から青白いランタンを手にした兎の少女が現れた。
『中々いい所に着いたね。妖精が牧場経営してるのかい?』
 兎の少女は問う。
「わ、うさぎさんだ!噂を聞きつけてやってきたの?えっとね、ここはね」
『そう!噂を聞きつけて来たんだ!』
 兎の少女はぱちんと指を鳴らすと……突如ボカンと、動物達の密集地で爆発が起きた!
「はわー!?」
 逃げ出す動物達!
 彼らはどこまでも続く空の彼方へ走り出すと……突如金属の衝突音!何かにぶつかった!
「はわー!!?」
 それは、檻だ。
 この空間そのものを閉じ込めるかのような鳥かご状の巨大な鉄格子の檻だ。
 本来そんなものはなく、世界の果てに行けば「元の世界」に戻れたはずなのに。
『とても美味しい――』
 そして兎の少女は。
『できたて焼肉食べ放題の牧場だってね!』
 口角を異様な程に釣り上げて、笑った。

●レスキュー!アニマル!
「わ、誰か来た?……来た?おーい!こっちー!ここー!」
 この文章を読んでいる君達猟兵諸君は今、グリモアベースに居る。
 目の前では真っ白な狛犬座りわんこの氷像の上で、小さなベルをちりんちりんと鳴らしている妖精がいた。
 この妖精こそが今回のグリモア猟兵だ。その名はポーラリア・ベル(冬告精・f06947)。

「あのね、あのね、ポーラのね、お友達のフェアリーランドが大変な事になってるの!」
 妖精の背後にはグリモアベースに設置された立体映像的なものが存在した。

 その映像はどこかの牧場らしき場所。
 だが空は赤と紫に染まり、床の一部が青白い炎の噴き出るバーベキュー的な金網となり、やべーデザインの殺戮回転刃物のついた車があちこちから走ってくる、ちょっとした地獄のような感じだった。
 所々で逃げ惑う動物達がちらちらと映る。

 ポーラリアが説明するには、そこは『フェアリーランド』。
 妖精……フェアリーのユーベルコードが作り出す、壺の中の小さな世界である。
「ここはね、お友達がね、困った動物さんをここに呼び込んで、手当てして、仲良くなって、お礼としてふにゃーってしてもらう世界だったの」
 今回の妖精はこの牧場の世界に、アックス&ウィザーズの世界で群れからはぐれたり、罠にかかって傷付いたりした動物達を回収し、恩を売って見返りにちやほやモフモフと動物の毛並みを堪能させてもらう、動物ハーレムを作ろうとしていたのだという。
 だが突如、時空を裂いてやってきた兎の少女が全てを台無しにしようとしているのだ。
 具体的には動物達を食用肉に加工する感じで。
「フェアリーランドって、本当はやろうと思えば脱出できるんだけど、なんでかわかんないけどここのは外側から檻がかけられてて、みんな逃げ出せなくて困ってるの。それでね、お友達がどんどん顔色悪くなってて…!」
 ユーベルコードを解除できないせいか、どうやら妖精は衰弱しているらしい。
 そして猟兵達は、兎の少女は恐らくオブリビオンだろうと勘づく事になる。

「中からは出られないけど、外からなら転送できるの!お願い。フェアリーランドを、動物さんとお友達を、助けて……!」
 ちりんちりんと、ベルが鳴る。
 ワイヤーフレームで出来たような、不思議なベルを妖精は鳴らした。そのベルは猟兵達を転送するグリモアの一種だった。

「まずは動物さんとお友達を探して、安全にして欲しいの!それから、檻とか炎とか色々出してる元凶っぽい兎さんをしばいて、悪さしないようにしてあげて!」
 グリモアの輝きが一層強くなる。
「本当はポーラも行きたいけど……ポーラがあの世界いると、冬になって動物さん凍えちゃうからってケンカしてて。……実際会って仲直りしないとって怒っちゃう人間さんもいるかもしれないけど、ごめんね。もし会ったらよろしくね!」

 ふぁいと!と応援しながら、妖精は、心配の顔を隠せないまま猟兵達を見送った。


古塔
●シナリオ説明
 アックス&ウィザーズの猟書家戦依頼です。
 当シナリオは2章構成となっております。

●状況
 アックス&ウィザーズの世界でなく、そこに住む妖精(フェアリー)のユーベルコード『フェアリーランド』内のシナリオとなります。
(小さな【壺】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【フェアリーランド】で、いつでも外に出られる。)

 今回のフェアリーランドはアックス&ウィザーズで怪我をしたりいじめられて弱った様々な動物達の居る、小さな牧場の世界です。
 この平和な牧場の中で保護された動物達を、世話しながらモフモフしているのが生き甲斐の妖精が存在します。
(牛とかヤギとか犬とか羊とか、牧場に居そうな動物なら大体います)
 が、突如現れた【幹部猟書家】のオブリビオン『レプ・ス・カム』が、不思議な力でここを地獄の様に改変してしまいました。
 ぶったおしてやりましょう。

●1章
 突然の出来事にびっくりした保護動物と、フェアリーの保護をお願いします。
 しなければこの後の戦闘に支障が出たり、悲しい事が起きたりするでしょう。

●動物
 牧場は所々の地面が、青白い炎の噴き出る金網になってて動物を焼いたり、迂闊に触れるとミンチになりそうな殺戮機械が闊歩していたりします。
 これらを掻い潜って暴れ逃げる動物達を捕まえ、安全な状態にしてください。
 1か所に集めて柵やお家的なものに保護したり、簡単にやられないようバリアを張るとか、手段は問いません。

●フェアリー
 愕然としながらフェアリーランドを飛び交ってますが、すぐ見つかるかと思います。
 どうもこの地獄化はフェアリーの精神状態にも影響が出てるようです。
 なのでフェアリーに楽しい事を考えさせたりポジティブにさせていけば、それに引っ張られるようにして地獄が緩やかになるっぽいです。

●2章
 この事件の元凶と対峙します。
 戦闘もできますが、惑わせる事に特化してるみたいです。くれぐれもご注意を。
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第1章 冒険 『動物たちを連れ戻せ!』

POW   :    騎乗して従わせたり、力ずくで動物たちを連れ戻す

SPD   :    速さを活かして追い込んだり、罠を仕掛けて動物たちを捕える

WIZ   :    動物たちと心を通わせたりして、穏やかに連れ戻す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒珠・檬果
モフモフ好き仲間の危機と聞きました(どーん!)
行きましょう、赤兎馬。あなたとなら動物を落ち着かせられそうです。
罠も、貴方の俊足をもって切り抜けましょう。
赤兎馬(任せろ)

まずは地形の利用と結界術で、安全地帯を作成。結界には念のため、水属性を付与。護衛にバトルキャラクターズを。
そこへ動物さんたちを保護しましょうね。
落ち着いてください。あちらに安全な場所を確保しましたから。
赤兎馬(あっちだよ)

妖精さんには会い次第、声をかけまして。
赤兎馬に触れてもらいます。落ち着いてくださいね、私たちが助けますから!
なんなら、しばらく一緒に乗りながらモフトークします?
赤兎馬(どうぞという気配)

※赤兎馬は初陣です。



●緑の救世主、参上。
 どこまでも晴れ渡る空は邪悪な暗雲に包まれ、どこまでものどかな妖精の牧場は青白い炎に包まれた。
「み、みんな、どこー…!はぐれたら、危ないー…!」
 突然の吹き上がる炎に驚き散り散りになった動物を探す為、フェアリーランドの妖精は飛び駆ける。
 
 羊毛の一部が焼け焦げながら、一心不乱に檻に体当たりしている羊を見つける。
「だ、だめーっ!?」
 妖精はそれに乗っかると、ぺふぺふ叩いて方向転換をさせ、明後日の方に羊を走らせる。
 何が駄目か?羊の反対方向から恐ろしい回転のこぎりが複雑に絡み合って高速回転させたものを前方に突き出した殺戮車両が走って来ていたからだ。
「ど、どうなってるの、あの兎さん何なの。変な所から入ってきたよーなー!」
 1匹、2匹、羊に馬に、もふもふの毛の一部が焦げたり削げたりしている動物を何とかかき集めながら、フェアリーランドを1周するように走り続ける妖精と羊。
「確か、あっちのほーに林が……」
 元々は肉食獣用の、世にも不思議なおにくの果実がなっていた木々へと向かう妖精。
 優れた森林は水分を吸収しており、風にも強く、簡単には燃えない。妖精は意図してなかったがそこは都合良く防火林の役割をしていた。

「とりあえず、こっちに逃げ込めば――わーっ!!」
 妖精も羊達も、気づくのがワンテンポ遅れた。
 あと少しの所で……林から殺戮車両が飛び出し、目の前に迫ってきたのだ!

 ――1秒後にはフェアリー共々ミンチになるという、その瞬間の出来事であった。
 殺戮車両の横腹から赤き馬が渾身の飛び蹴りを喰らわせたのは。

「よくやりました、赤兎馬。初陣でしたがやはり頼りになります。」
 馬に乗っている女性声の主がそう言った。
「え……赤い、お馬さん……?」
 このフェアリーランドには冒険の先々で数々の傷ついた動物を招き入れてきた妖精だが、赤き馬を招き入れた覚えはなかった。
 赤い毛並みの馬に乗ったその女性は、モフモフしているような襟巻をつけた、エメラルドの鳥の頭をした、二足歩行の……羽の無い鳥人間というべきだろうか。
「大丈夫ですか!モフモフ好き仲間の危機と聞きました!ここは安全じゃありません!」
 彼女の名は荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)。
 その衣装は背中に刀を背負った、お祭りに出かけるような浴衣姿だった。

 ……わかる。うっかりステータスシートを夏仕様のまま再設定し忘れ、肌寒くなった秋の空でもうっかり浴衣姿でいてしまう現象……えっ、素?えっ……。
 神杜寺在住、主に式神を扱う、シャーマンズゴーストと呼ばれる種族の猟兵だった。

「えっ、誰?誰!?」
 その姿の初見的な異質さに一瞬動物達はびくっとした。反射的に数匹が明後日の方に向かおうとしてる。
「…………」
 だが妖精はその姿に、赤い馬にまたがる緑の鳥?人間という様相をまじまじと見ると、以降の言葉は感嘆を込めるようになった。
「……もしかして、森の精霊さん……!!」
「えっ」
 妖精の眼がきらきらしている。
「自然のピンチにどこからともなくお馬さんに乗って現れる……あれお馬さんそのものだたような……?兎に角救世主さんな存在がフェアリーの伝説で!助けに来てくれたんだ!」
「落ち着いてくださいお嬢さん。一体何を――」
 誤解だとの声に口を割こうとした時である。乗っている馬が檬果に目を向けた。
(待て)
 そして首を檬果と妖精、交互に目配り。
(合わせた方がうまくいきそう)
 そんな事を言ってるように見る仕草をした。
「え、えー……こほん、左様。妾……じゃなかった私は荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す森の精・f02802)。まずは落ち着いてくださいね。あなたと、そのモフモ……変えなくていいか。モフモフさんを助けにきました。」
「もふもふを!?しかも分かる森の精だ!」
「というわけで助けに行きましょう。(はぐれると心配なので)この赤兎馬にあなたもお乗りください。」
 妖精はぴょんと羊から飛び込み、檬果の後ろに乗った。
「もふもふだ…!」
 妖精は早速その戦馬の毛並みに触れていた。戦馬特有のさらりとした感触が気持ちいい。
「そうでしょうそうでしょう。とりあえず此処は危険です。林は既に逃げた動物を待ち伏せする様に殺戮マシンがひしめき合っています。今から私の避難所に誘導しますので、しっかりつかまっててください。」
 それと同時に赤兎馬がひひんと前足を上げ、周囲の動物に見せつけるような動きをし、駆ける。
 まるでついてこいと言わんばかりの走りに、何を感じたか周りの動物達も導かれる様についていく。

「折角ですから、着くまでモフトークしません?」
 飛将軍の異名を持つ赤兎馬に乗りながらの出来事であった。
「えっこんな時に!?えっと、えとー……お馬さんもいいけどおおかみさんもいいよね」
 赤兎馬は飛んでくる殺戮機械に飛び上がり、踏みつけて壊した。
「分かります。あの大柄に構えた体格にふさりと生え揃った毛並み。夏場のからっとした毛触りもいいですが」
 赤兎馬は地面から突然吹き上がった青い炎を軽やかなステップで躱していく。
「冬毛になるとごわごわしてブラッシングが大変。でもその分すっごいふさふさなんだ!手を入れたら入っちゃいそうなくらい。」 
「成程……!ちなみにどの辺りが好きです?やっぱりお腹です?」
 赤兎馬は二人を振り落とさない様にしながら飛んでくる丸ノコの間を潜り抜けるように疾走する。
「どの動物さんもお腹は柔らかくて、お日様の上でごろーんってした後だとすっごい気持ちいいけど……裸の胸をさわるみたいな感じだから、向こうから誘ってこなかったらいつもは背中にしてるー」
 赤兎馬は地面から突き上がるトゲに一旦大回りに横に逸れる。後続の動物達にも配慮したようだ。
「尻尾って意外と硬かったりしますよね」
「ううん。さっきの狼さんとか、お馬さんとかね、直接触るといやーんって嫌がるけど、横を通ったりする時にしなっとボクの身体に尻尾が当たる時があるんだ」
 赤兎馬は襲い掛かる殺戮車両に正面からかちこみ、刃の間に瞬間的な前足蹴りをねじ喰らわせて吹き飛ばす。
「ああー……!流れモフ!上手い事恩恵が出た時に頂くという、尻尾の流れモフ!舐めるようにしゅっとされるアレ!こちらから触ってはいけないのが本当悔やまれるというか…いえ、待ってください指トンネルはいかがでしょうか」
「指トンネル?」
 赤兎馬は避難所の目前まで来た。だが殺戮車両の背後から立て続けで追加の殺戮車両が殺到してくる!
「手でもいいですね。スキンシップの一環で尾の根元を囲むように0の字で指の輪っかを作って待機、離れ際に尻尾が輪っかから引き抜いてくれれば……!」
「あ、あーっ!筆みたいに尻尾モフが指に!手に!でもそれ気づかれると尻尾じゃなくて頭からすり寄ってきそう」
 赤兎馬はそれに目もくれず一直線に駆けた。殺戮車両は突如横から飛んできた大量の光のような矢に突き刺され、訳も分からぬ内に爆散した。 

 辿り着いたそこはフェアリーランドの中心辺り。丘の上にそびえるは水のドームの様だった。
 円を描くように配置された神秘的な色の珠と鎖のサークル。それに沿って薄い水の結界がカーテンの様に地から天へと張られていた。
 そして林から切って作られたかのような仕切りの柵や動物達が上に乗れるような長方形テーブルの如き椅子。敷き詰められた藁の山なんかもある。
 赤兎馬達が水の膜を通る。

 結界の外には檬果が展開したバトルキャラクターズの式神。
 額に「1」と書かれた、二足歩行の豚のような猪が弓矢を装備して円の外に並んでおり、強力に太い腕を以て矢をつがえ、襲い来る殺戮車両に撃ち放つ。
 光の矢の如き一撃が車両を貫通し、破壊して食い止めていた。

「はわー!みんな大丈夫!?」
「すみません敵の炎対策で」
「べ、べしょべしょだ……」
 通った動物は瞬く間に火傷を消し、塞いでいったが、モフモフの毛皮は濡れて台無しになった。
「せめて乾燥できる……ドライヤーなんかがあればいいのですが。」
「どらいやー?」
「暖かい風で乾かす機械なのですが……」
「暖かい風、濡れた毛を乾かす……うーん……」
 すると妖精は目を閉じ、こんこんとその光景を考え……。
「……zzz」
 考えている内に寝てしまった。

 そこはうららかな日差しの牧場。
 動物達は湖で行水を果たし、のどかな丘の上でぷるぷると水を弾き飛ばしていた。
 そんな所に…… 暖かくて乾いた風が吹けば……。
 きっと幸せそうに……。

 その時である。フェアリーランドの空が少し、明るく光り、突風が吹いたのは。
「え、これは……!?」
 それは水の結界を貫通し、保護ドームの中にいた動物達の毛を瞬く間に乾かしていくではないか。
 幾つかの動物はそれを尻で受け、何らかの射幸的なものをくらって、微睡み、眠っていく。
「ふぁ、ごめん寝ちゃってた!まだまだ逃げた子がいっぱいいるのに……どしたの?」
 空がさっきよりも明るくなっていたのを檬果は確認した。
「妖精さん、今何か夢を見ていましたか?」
「えっと……ドライヤーって言ってたから、暖かい風に吹かれてる夢を……」
「……!」
 檬果は何事か思い、そして妖精に言った。
「妖精さん、出来るだけ可能な限り、前向きで、動物が元気になれる想像をしてください。もしかしたらそれでフェアリーランドが何とかなるかも――」

成功 🔵​🔵​🔴​

黒城・魅夜
悪夢を弄ぶ浅薄な愚か者には
後でその存在をとくと後悔させる目に逢わせてあげるとして
まずは動物さんたちを保護するのが急務ですね

しかし動物さんたちが興奮して走り回られると護るのも一苦労
私の胡蝶たちの舞で、すやすやお休みになってもらいましょう
本来ならこれは敵の精神を破壊するUCですが、もちろん威力は抑えて
動物さんたちに静かでのどかな安眠を与えます

そして同時にこの胡蝶の鱗粉は
おそましい殺戮機械たちを粉々に崩壊させていくでしょう

いかがですか、フェアリーさん
ちょこちょこ動く動物さんたちも可愛いものですが
ぐっすりと眠っている動物さんたちの寝顔も可愛いものでしょう?
ふふ、すこしは気分が落ち着きましたか?


シホ・イオア
はーい、みんなー! 避難所はこっちだよー!
存在感と生まれながらの光で注目を集めつつ
動物会話でシホのフェアリーランドへの避難を促す。

そこら辺の障害物は残像と空中戦で回避だね。

フェアリーちゃんも手伝ってー
動物ちゃんたちを守れるのはシホ達だけなんだから!
ここは素敵な所だったんだよね。
こんなにたくさんの動物たちがいるんだもの。
この騒動を終わらせてもとのフェアリーランドを取り戻そう!


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

わわわっ、動物さんが大変だ!ボクも助けに向かうよ!!

地獄のようなフェアリーランドの中を飛び回って逃げ回る動物達に話しかけるよ!
みんな、ひとまずボクの【フェアリーランド】の中に一端避難するんだよ!
また閉じ込められてしまうんじゃないかと心配する動物さん達に真摯に話しかけて
ここも絶対にすぐに戻してあげるからしばらく我慢してって説得するよ!

ここのフェアリーに出会ったらもふもふを思い出して頑張るんだーと元気づけるよ☆
こんなのすぐに解決してひつじさんと一緒にお昼寝するぞー!おー!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●魅惑に眠る夜を運ぶ者
「悪夢を弄ぶ浅薄な愚か者には、後でその存在をとくと後悔させる目に逢わせてあげるとして――」
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)はフェアリーランドを駆ける。
 未だ逃げ遅れている山羊や狼が闊歩している世界。
 突如、魅夜の眼前に、チェンソーがびっしり装備された殺戮車両が飛び出した。
「こんなものがあってはおちおち休む事もできません。――滅びの日、最期に舞うもの、紅き翅よ――」
 魅夜が両手を広げると、無数の深紅の胡蝶が羽ばたいて舞う。
 胡蝶の放つ深紅の鱗粉は殺戮車両に吸い込まれると、その車両はたちまち自壊し、崩壊していく。
 崩れた車両の後ろから、恐怖にひきつった数頭の山羊が今にも逃げようとしていた。
 だがその背後、逃げる先には金網。炎噴き出るトラップが待ち構える。
「動物達には眠ってもらいましょう。大丈夫です。出来る限り悪夢を見せないようにしますから……」
 右手を優雅に差し伸べると、竜巻の様に紅い胡蝶が羽ばたき、逃げようとする山羊を通過する。
 鱗粉に晒された山羊達はそれによる毒のような力で、たちまち力が抜かれ、へたり込むように眠っていく。
 悪夢を見せて崩壊させる胡蝶の毒を操作し安眠作用に切り替えた、応用技である。
「せめてこの地獄よりは良い夢でありますよう。……さて、どこに集めておきましょうか?」
 魅夜はまだ、先の猟兵が構じた避難所を見つけていなかった。
 とりあえず引きずり、一か所に集めた山羊だが、このまま放置していればやがて何らかの殺戮機械がやってきてミンチにする事だろう。
「ここは胡蝶を分散しましょうか。数が減ればそれだけ不利になりますが四の五のは……」
 現在胡蝶は87体、どれだけの数があれば一度に機械を壊し尽くせるだろうか?
 とりあえず10匹ずつを動物達の守りに……。
 そう考えていた時である。魅夜の視界の先に、何かまばゆい光が見えた。

●フェアリーレスキュー、コンビで出撃!
「はーい、みんなー!集まってー!」
 そこにいたのは妖精、フェアリーだ。
 しかしグリモアの映像に映っていたフェアリーではない。
 宝石のような紫の瞳をした、空のような明るい青の髪と翅を持つ彼女はシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)。
 旗を振り、ぴかぴか光りながら周囲の動物達を集めていく。
 そして取り出したるは、壺だ。
「フェアリーランドの中だけど、シホのフェアリーランドに入れないわけないもんね。こっちだよー!順番に!はーい!」
 まるで青い光の中に吸い込まれていくように、逃げてきた羊や山犬がシホのフェアリーランドに吸い込まれていく。
 その光景に魅夜は思わず息をのむ。
「あれは……別の妖精。フェアリーランドの中でフェアリーランドってなんだか凄い事になってるわね。」
 しかしチャンスだ。落ち着かせるだけで安全地帯を設けなかった自身の策をこれでカバーできる。
「すみません、こっちの寝ている動物達もお願いできますか。」
 魅夜はシホに向かって手を振り、そう言った矢先のことである。
「うんわかった!ボクに任せて!」
「…あら?ボク?」
 違う声、違う一人称。
 ふと後ろを振り返った時である。
 オレンジの髪と青い瞳をしたもう一人のフェアリーが、元気よく壺を掲げて山羊を吸い込もうとしていたのだ。

「ん?……わわわっ、フェアリーがもう一人!」
 彼女の名はティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。
 妖精のピンチに駆けつけたもう一人の妖精である。
「まあいいや。このヤギさんはひとまずボクの『フェアリーランド』に一時避難させておくよ!」

 眠ったヤギを吸い終えると、ティエル達は合流した。
「同じ作戦でやってきたフェアリーが二人も来るなんて、フェアリーは魅かれ合うというものでしょうか。」
 魅夜がごちる。
「フェアリーちゃんも動物もいじめる世界なんて、やっぱり許せないもんね。ここは素敵な所だったはずだもの。」
 シホが、ゆっくり休んでいる動物を見せるように壺を掲げながら。
「そうだよね。こんな大変な世界間違ってるもん。すぐに解決してひつじさんと一緒に日向でぐっすりお昼寝するんだからっ☆」
 それで、とティエルが切り出す。
「同じフェアリーランドを持ってきたし、とりあえず二手に分かれよっか。」
「さんせーだよ☆それじゃあシホは」
 シホがその辺にあった棒でざっと線を引き、その内一方に陣取り。
「こっちから先に。」
「じゃあボクはこっち半分だね。いってみよー!」
「あ、ちょっと待ってください。」
 二人の作戦会議に魅夜が割り込むと、二人の周りに22匹ずつの紅い蝶が舞う。
「落ち着かせる時はこの胡蝶を使ってください。安眠策です。」
「えっと、無くしたら困ったりするかな?」とシホ。
「大丈夫です。私の分の胡蝶は確保してますから。……それとも何か仕置きが欲しく?」
「えっ!?いやいやいいよ別に!」
「ふんわりひらひら蝶さんだね♪恩に着るよ!それじゃあ作戦……」
 ティエルが名付けては、日向取り戻しぐっすり大作戦。
「がんばるぞー!」
「おー!」
「…いいですねこの元気な感じ」
「魅夜も魅夜も!一緒にやろう!せーの!」
「お、おーっ」
 こうして3人は分かれて走り出した。

●動物回収 ~日向取り戻しぐっすり大作戦~ 始動
 明るい空色のシホが舞う。
 飛んでくる金網ワイヤーの細切りトラップをひらりひらりと飛び避け、燃え盛る炎に当たるかと思いきや残像を残して高速で飛んでいく。
 モーモーと悲鳴を上げて鳴きながら暴れ回る牛を見つけると。
「大丈夫だよ安心して!もしかして怪我してる?」
 高速で飛び、背に乗る。足を怪我して血を流しながら、首をぶんぶん振っている牛。
「良い子だから大人しくして!今治すよ……」
 シホの光がより強くなる。生まれながらの光は牛の傷をみるみる内に塞いでいく。
「ふぅ。よしよし治った?ゆっくりお休み」
 痛みのやわらぎで安心した牛は、そのまま魅夜の胡蝶に包まれて眠り、シホのフェアリーランドへと吸い込まれた。

 向こうではより強いオレンジ色の光が飛んでいる。ティエルの光だ。
 ミンチ用のハンマーをやたらめったら振り回す機械に、攻撃をかわしながら頭上に陣取ると、壺の中のフェアリーランドの湖の水を上空からどばどばと垂らし、ショートさせる。
「ここはまるで悪夢みたいな所だね。こっちの世界はまだ大丈夫だよ。」
 目の前でおびえる山犬の兄弟らしき動物達にぱたぱたと近づくと、壺の中を覗かせる。
 壺の中には居心地よさそうに安らかに眠っている山羊達が見えたが、それでも警戒している山犬。
 そんな彼らの頭をティエルは優しくなで、抱きしめる。
「また閉じ込められるかもって?」
 くぅんと鳴る鳴き声にティエルは察するも、撫で続けてなだめていき。
「うん……でも、ここにいるともっと大変だから、一旦こっちに避難してくれると嬉しいよ。……大丈夫。避難して眠ってる間にボク達が絶対すぐにここを戻してあげるから!」
 だから、と、言う間に魅夜の胡蝶が山犬達を包む。
「しばらく我慢してね。……うん。良い子。」
 眠りながら壺に吸い込まれていく山犬をティエルは見送った。

 そんな地獄全般を駆け巡るは魅夜だ。

 その辺にある木を力任せに引き抜くと、ぶん投げる。それは殺戮機械の破壊でなく、動物を逃がさぬよう先回りで木々の壁を作っての囲い込み。
 そして少なくなった胡蝶の鱗粉で眠らせては、他の妖精が分かるように数匹胡蝶を光らせながら残して、動物達を確保していた。
「それにしてもこの中で、猟書家の姿をとんと見ませんね。……一体どこにいるのでしょう。」
 その時である。檻の外、暗闇の中でぴかりと光る何かを見たのは。
 そしてその光に手を差し伸べている兎少女の姿を見たのは。
「みんなー!」
 とすると突如横から声がかかる。
 それはシホの声でもティエルの声でもなかった。
 緑がかった金髪にフェアリークロースを羽織る、見知らぬ妖精。
 勘で察した。あれこそがグリモア猟兵のフェアリーが言っていた、友達のフェアリーだ。
「お話は森の精様から聞いてるの!こっち、こっちに避難所、作ってる、来てー!」
 精一杯手振りをするフェアリー。
「森の精……?」
 ちょっと一瞬聞きなれない言葉に首を傾げつつも、魅夜はフェアリーについていった。

●一時の安息
「もふ……もふもふ……はっ、大丈夫ですか皆さん。」
 フェアリーランド中央、水のドームを抜けた先には森の精……とフェアリーが言う、先の猟兵、檬果が羊を抱きしめ、その羊毛の感触を味わっている姿があった。
「ボク一番乗り!」
「これで全部かな?かな?」
 そしてティエルとシホも呼ばれて合流。眠っている動物達をぞろぞろと取り出し、安置させる。
 なぜ出したか?フェアリーが全員確認したいと言ってきたからと、蒸し暑いこの地獄の世界の中、水のドームの中は涼しく快適だったからだった。
「…………」
 フェアリーは全ての動物を数え終わる。
「他に逃げてる動物さんとかいない?」
「ボクたち、隅々まで探したつもりだけど。」
「…………ぐずっ」
 フェアリーは突如泣き出した。
「……あ、ありがと。ありがとう……!この子達みんな今まで辛い目に逢ってきたのにこんなになったから、誰も寂しい思いしてない、間に合ったんだ。ありがとう。ありがと……ふええぇぇ!」
 フェアリーは超心配にしていたのだ。焼ける牧場世界の中一人で探し回っていた動物達が、あっという間に安全な所で今、合流し、みんな疲れてかすやすやと眠っている。
「わ、わ……でも駄目だよ。ここからが本番なの。フェアリーちゃん、動物ちゃんを守ってあげて」
「ふぇあ!?」
 涙をハンカチで拭かせてシホが奮起をさせる。
「そうだよ。まだこの地獄のようなフェアリーランドを作った黒幕を倒さなくちゃ……でも今はここでもふもふを堪能して、気合をぐっと入れていくの!」
 ティエルは先んじて檬果の隣で羊を抱きしめ、もふりだす。
「もふー……はっだめだめ。これは日向が戻ってから。」 
「ところで檬果さん、先程そのフェアリーが夢を見たら暖かい風が吹いたそうですね?」
 魅夜が問う。
「ええ。そうです。おかげで最初にいた動物達はばっちりもふもふを取り戻しました!」
「夢でしたら……私の力が役に立てそうです。」
「ふぇあ?」
 今だ半泣きだがきょとんとするフェアリーに魅夜は近づくと、その周囲に紅い胡蝶を舞わす。
「いいですか、フェアリーさん。幸せな夢を想像するのです。」
 ふわり、ふわり、フェアリーの周りで踊る胡蝶が、フェアリーを暖かくしていく。
「ふぇ……あ……」
「そこの動物達を見てください。ちょこちょこ動く動物さんたちも可愛いものですが、ぐっすりと眠っている……可愛い寝顔でしょう?……そう。心を落ち着かせて、夢の中でぐっと想像していくのです。楽しい放牧生活、幸せな日向ぼっこ、このフェアリーランドの元の姿のような、平和な妖精の牧場を……」
「楽しい…楽しい…」
「地べたで眠ると風邪をひいてしまいます。とりあえず山犬の辺りで……」
 魅夜がフェアリーを受け止め、横たわる山犬のお腹にそっと頭を置かせる。
「……すや……すや……いい風……暖か……い……もふもふ……」
 フェアリーは先程の困った様子から、もう完全に立ち直ったような、幸せそうな寝顔を披露する。
 するとどうだろう。暗黒の空がどんどん……晴れていく!
 檻は未だそこで猟兵達を捉え続けているが、バチバチと音を立て地獄色の平原があちこちで元の緑を取り戻し、炎噴き出る金網が消え、みるみるうちに無限にも増え続ける殺戮機械が消滅していく。
 機械の代わりに……巨大な、落書きのような羊が、何匹もめぇーめぇーと鳴きながら平原を闊歩していた。
 更に空には落書きで描いたようなフェアリーの姿も浮かんでいる。
「うわっ、なんだかすごい夢見てる?」
「フェアリーランドの地獄は悪夢とか誰か言ってた気がするけど……夢で、気の持ちようでこんな変わるんだ……」
 他の妖精達がまじまじと外の気配を見やりながら。
「いえ、まあ、単なる思い付きだったのですが。しかしここまで……これなら猟書家の企みも食い止められたでしょう。」

 魅夜がそうごちて、平和と悪夢がごちゃ混ぜになったようなフェアリーランドを見ていると。
「あれ?この世界こんなになっちゃったんだ。だめじゃないか。誰も焼かれてないなんて」
 不思議な事に、その体は檻をすり抜け、ゆっくり歩いてついにやってきた。
 その歩みと共に彼女の周囲はまたしても悪夢のような光景が具現化していく。

 この騒動を引き起こした兎の少女が、水のドームを隔てて、猟兵達と対面した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『レプ・ス・カム』

POW   :    ミラージュ・ラパン
自身と自身の装備、【自身がしたためた招待状を持つ】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    兎の謎掛け
【困惑】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【鬼火の塊】から、高命中力の【蒼白い炎の矢】を飛ばす。
WIZ   :    素敵な嘘へご案内
【巧みな話術】を披露した指定の全対象に【今話された内容は真実に違いないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:リタ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハーバニー・キーテセラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●レスキュー!アニマル!その後に
 彼女はやってきた。
「ふふーん、遅かったね。もう鍵は見つけちゃったよ?」
 現れた兎の少女、レプ・ス・カムは輝く鍵を見せびらかすと、胸の中にしまい込む。
「このまま帰れば君達の冒険は失敗。こっちの目的は完了さ。でも、その様子だと全然悲しんでないみたいだね。折角――このフェアリーランドの『真の姿』を見せてあげたのに」
 するとレプは手を翻す。
 空間が歪み、青空は先のより更に暗黒に、幾何学的に歪んだ悪夢のような世界を映し出す。
「目的達成ついでに善意として忠告してあげよう!そこのフェアリーはこの世界を『牧場』と言ってなかったかな?本当は食肉加工場……冒険で困った時の為、食料として溜め込んでいた家畜の溜まり場さ。フェアリーはいざという時に君達を食べようとしていたんだ。ほら、その証拠に!」
 猟兵達の避難所さえも空間が歪み、突如姿を変える。
 そこは大衆食堂のキッチン、食肉加工場の如き場所。
 動物達を安置していた長い木造りのテーブルはそのまま動物達を捌く調理テーブルへと早変わりしていく。
 そしてなんという事か。動物達にはいつの間にか四肢に足枷が付けられて、その上からは肉斬りの丸ノコが今にも落ちてきそうに回転しているではないか。
「時期が来たら必ずこうなっていた。モフモフの見返りは肉の付き具合を見ていたのさ。勿論最初からそうなら絶望しちゃう。美味しいお肉になるためにはストレスをかけさせないことが第一。安心させる必要があった……だからまず、のどかな放牧地の『幻』で世界を覆い、安心させてたに過ぎなかったんだよ。」
「……おいしい……美味しいお肉……みんなで……ふぇ?」
 異様な空気に最悪の寝言を込めて起き上がったフェアリー。その様子にレプは口角を釣り上げる。
「さあ猟兵さん、悪いフェアリーの真実を暴いてあげたよ!これこそがフェアリーランドの真実!そして彼女が隠している事はまだまだある。どっちをやっつければいいか、わかるよねぇ!」
「え?え!?」
 困惑するフェアリー。其処にレプのランタンが炎を噴き上げ、飛び出した鬼火からフェアリーの喉笛に炎の矢が放たれた!
「ぎゃっ!?……かっ……」
「ほら!今もまた君達を騙そうとしていたよ!駄目じゃないか動物達をこんなにして!」
 何とフェアリーの服の中から、ボロボロになった子羊がボロリと落ちたではないか。
「毛を駆り尽くされて、ああ可哀想。美味しそうなお肉になっているね。」
 見知らぬ子羊だった。そんなものは服に仕込んでいるはずがなかった。
 フェアリーは何か言おうとするが、喉を貫く今の一撃でまともに声を出すのに時間がかかる。

「さあ!さあ!さあ!猟兵さん!どっちを倒す!?誰が悪い!?ここはどこ!?物分かりが悪ければ、いくらでも教えて、分からせてあげるよ!何度でも何度でも!」

 気を付けろ猟兵。そのオブリビオンは話術によって幻の現実を生み出していく。
 飲まれれば全てが罪になる。このままではフェアリーの全てが悪になる。
 自分の作った悪夢が変えられた事を相当根に持って突っかかりに来ている様だった。
 嘘を打破するんだ。彼女こそを嘘としてぶっ飛ばしてやるんだ。
 意地悪な兎の最終決戦は、もう目の前で展開しているぞ!
荒珠・檬果
(真の姿になりました)
のう、赤兎。あれどう思うかえ?
赤兎馬(嘘の塊)
…そうか、そうよな。妾も同意見じゃ。
兎。森の精霊として言うぞ?
そのような戯れ言、妾らに効くと思うな。

喉を潰すなぞ、つまりは自らの言い分のみを通そうとしておると言っているものよ。
UC使用。武聖よ、あれが義にもとる行為の兎、奸計めぐらす者。存分に武(破魔+なぎ払い)を振るいたまえ。
駆けよ赤兎、武聖とともに。
文聖よ、魔法(多重詠唱+高速詠唱+破魔+焼却+結界術)にて妾とこの妖精を守りたまえ。

妾は今、戦えぬ。妖精の怪我の手当て、および元気付けに回る。
妾は助けに来た森の精霊ぞ?罰する相手は間違えぬ。
それに、モフトークをした仲ではないか。


黒城・魅夜
ふふ、なかなか面白い手品を使いますね
ユーベルコードを使われていると、頭ではわかっていますが
それでもついあなたの言葉を信じてしまいそうになります

ですがあなたの言葉がどのようにうわべを飾ろうが関係ありません
真実を偽ることは誰にもできないのです
ふふ、自分自身の心はね

見せてあげましょう
暗く淀み醜く歪み無様に腐り果てているあなたの内心を
それに対して、妖精さんの内心が
どれほど可愛らしく明るく優しいことか、よくわかりますよ、ふふ
心の美醜がはっきりとした今、もはや誰もあなたの言葉などには騙されません
そう、その場にいる者たちの内面を映し出すのが我が力

私の内心もまたこの鏡に映った通り
あなたを引き裂くという、ね


ティエル・ティエリエル
WIZで判定

あっかんべー!
お前のウソになんて騙されたりしないよ!
あの子はすんごく動物さん達のこと心配してたんだから!

羊さんをあんなにモフモフブラッシングできる子が悪い子なわけないよね♪
羊さんのモフモフを思い出してテンションアップだ☆
キラキラキラとお姫様オーラを振りまきながら【お姫様ビーム】で悪いウサギを焼いちゃうよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


シホ・イオア
シホ達はウサギの人の言葉が嘘だと信じてる。
でも動物達はこの嘘を暴かないと信じきれないかもしれない。

鍵は突然現れた子羊かな。
「ああ、酷いけが。いま治してあげるね」
まずは治療しつつ【動物と話す】【情報収集】で本物か確認。
本物ならだれに傷つけられたのか聞いてみる。
違和感があれば【破魔】で幻術破りにチャレンジしてみるよ。

さあ、モフモフパラダイスを取り戻そう!

そういえばさっき「誰も焼かれてない」って言ってたよね
希望通り焼いてあげるよ!
「輝石解放、ルビー! 偽り者を焼き尽くせ!」
幻術で逃げるかもだからまずはガトリングで弾幕&制圧射撃
敵を焙り出したら全力の炎をシュート!
鍵ごと焼けるかな?

連携アドリブ歓迎!



●騙されるもんか!
「あっかんべー!」
 その兎の前で、ティエルがあっかんべーをした。
「お前のウソになんて騙されたりしないよ!あの子はすんごく動物さん達のこと心配してたんだから!」
「そうだよ」
 次いでシホが隣でまくしたてる。
「シホ達はウサギの人の言葉が嘘だと信じてる。ここはお肉屋さんなんかじゃないもん」
「あっはっは、こんなに用意が出来ていてどこがお肉屋さんじゃないって?」
 レプ・ス・カムはあくまでも精肉場のようにしたいらしい。
 その話術は不思議な力を以て戦場を固定し続けている。

「なかなか面白い手品を使いますね」
 魅夜が鈎付きの鎖を振り飛ばし、レプ・ス・カムを縛り付けようとする。
「おや、その武器、もしかしてキミは製肉場のスタッフさんかな?ボクは違うよ!見学者さ!相手はそっち!」
 レプ・ス・カムはその鎖を避けると、話術につられたか次の鎖は隣にいた、今にも裂かれそうな動物に向きかける。
 ユーベルコードを使われていると頭ではわかっているが、それでもレプ・ス・カムの言葉を信じてしまいそうになる。
「…っ。あなたの言葉がどのようにうわべを飾ろうが関係ありません。真実を偽ることは誰にもできないのです」
「偽りじゃないさ!これが真実。ああ、いつもお仕事ご苦労さま!」
「どこまでもそんな騙しが聞くなどと思わないで……」
 鎖を引き戻した魅夜は胸に手を当てる。
 この目の前の浅薄な愚か者にいつまでも良い顔をさせるわけにはいかない。天罰を与える為のユーベルコードの光が展開されようとしていた。

 一方、魅夜の後方。
「う……く……」
 炎を喰らい、周囲にいる動物達が苦しめられようとしてる様を見る事しかできず、苦しく項垂れる妖精。
「ああ、酷いけが。いま治してあげるね」
 そこに飛びつけたシホが発光。生まれながらの奇跡の光で治そうとする。
 しかし……妖精の喉に火傷口は見当たらなかった。
「あれ?知らなかった?その子は生来から喉が悪いんだよ。君達と喋っていたのはそれでも精一杯声をひり出してたに過ぎないのさ」
「そんなわけ……!」
 だがシホは信じそうになった。床元に転がっている焼けた子羊も治そうとするも、もう手遅れといわんやな状態だった。

「のう、赤兎。あれどう思うかえ?」
 おぼろげになっていく妖精の視界に、何か別の影が映る。
 その隣には赤い馬がいた。馬は首を横に振る。奴が嘘をついているとは馬でも分かると言わんばかりに。
「…そうか、そうよな。妾も同意見じゃ。……兎。森の精霊として言うぞ?」
 影が立ち上がる。
 そこには先程まで、緑の鳥のような人物がいたはずだった。
「そのような戯れ言、妾らに効くと思うな。」
 そこには和装で長髪の、神秘的な佇まいをした人型が立っていた。
「森の精……様……」
 それは荒珠・檬果が真の姿に覚醒したものだった。
「うむ。そこで休んで居るが良い。……斯様に心配そうな顔をするな。罰する相手は間違えぬ。妾は助けに来た森の精霊ぞ?」
 檬果は七色の竜珠を帯びた鎖を纏う薙刀を振るう。
「出でませい。出でませい。二の聖よ。」
 檬果の隣に人型が呼び出される。
「武聖、あれが義にもとる行為の兎、奸計めぐらす者。存分に武を振るいたまえ。そして駆けよ赤兎、武聖とともに。」
 その内の1体が赤き馬に乗る。
「文聖よ、妾の身を依りとして、魔法にて妾とこの妖精を守りたまえ。」
 その内の1体が炎の結界を張る。

「ひっどいなぁ!私丸腰だよ?ただ話しただけ。なんにもしてないじゃないか!」
「たわけ。この悪夢の世界を作り出したのは誰ぞ」
 武聖の薙刀を紙一重でひゅんひゅんと躱すレプ・ス・カム。
「もちろん、そこのフェアリー自身さ!」
「喉を潰すなぞ、つまりは自らの言い分のみを通そうとしておると言っているものよ。子羊も作り出したものではないか?」
「はっは!けなげだよねぇ!自分の言い訳を通す為にさ、アレを見せびらかして、『レプ・ス・カムのせいなんだ。絶対に許さない!』なんて誤解を広めようとしたんだよ?どっちが許せないと思うのさ。」
「それはもちろん――」
 突如別の声が聞こえてきた。
 魅夜だ。
 魅夜が世界を塗り替える、何かすごい光を撃ち放った。
「あなたですよ、見せてあげましょう。暗く淀み醜く歪み無様に腐り果てている、あなたの内心の世界を。」
 嘘で固められた食肉加工場が光に包まれていく。
 またしても場所が、今回は魅夜のユーベルコードによって染められていく。
「『時より遠く』『記憶より遥かに』『ただ見つめよ』『狂気と哀を』――【グレイ・グラス・エターナル・プラント】!」
 そこは鏡の世界だった。
 鏡の至る所から、刃がむき出しになっている迷宮の世界。

「この世界はその場にいる者たちの内面を映し出す我が力。心が醜ければ醜い程に刃は伸び、刺し切り裂く。」
 一部嘘である。内心を利用した鏡の刃は魅夜の意思で、レプ・ス・カムを包囲して切り裂こうとしている。
「あなたの心はこの通り。切り裂かれなさい。愚かな兎」
 迫りくる刃に、しかしレプ・ス・カムはふふんと微笑んだ。
「へえ、ふうん。そんな事するんだ。それじゃあそっちの方はどうなのかな?」
「ふふ。この空間であなたの嘘が通じると思っているのですか?美しき妖精さんの内心はこの通り――」
     ・・・・
「違うよ。それ以外の方さ」
 魅夜は一瞬刃をたじろがせた。
 猟兵か!?
 違う。猟兵への制御は効いていた。
 妖精か?
 今言ったとおりだ。よしんば刃が伸びていたとしても檬果達が防いでくれる筈。
 ……では……何!?

「いやあ、なんだかんだ物騒なのを突き立ててもキミはやっぱり精肉スタッフだ。ショーを見せてくれるんだろう?」
 動物だ!
 動物達の全方位に鏡の刃が突き立てられている。
 今はまだ貫通していない。皮膚で止まっているが、迂闊に暴れるか、これ以上心を揺さぶられると、下手をすれば八つ裂きに――。
「少しでも動けば刃も動く。食い込むねえ。バラバラになるねえ。炎なら用意してあげるからさ。良いだろ?キミ達がお守りごっこをしたいのは妖精だけならさあ!」
「っ……」
 迷宮は魅夜の心の迷宮。まさかこんな形であだになるなんて。
 赤兎馬に乗った武聖さえも一時止まってしまう。
「動かないの?そう。じゃあもういいよ。飽きた。これ以上彫像みたいに何もしないならここに居る理由が私にはないもんね」
 レプ・ス・カムの後ろの空間に黒い穴が開けられる。この世界を通ってきたのと同じ、スーパーウサギ穴が。

 どうする?
 追い詰めたと思ったら大事なものを質にとられた。
 内面の鏡が奴の話術で連動してしまう。
 思い切ってレプ・ス・カムを八つ裂きにすれば動物達も八つ裂きだ。
 少しでも攻撃が加えられればその衝撃で刃が動くかもしれない。
 どうする?
 どうする?

●楽しい発想はいつだって切り札
「――モフモフだよ。」
 その声はティエルだ。
「モフモフを思い出すんだ。」
 ティエルがフェアリーに話しかけている。
「……」
「ここにはモフモフがあった。いい日なたがあった。美味しいお水があった。幸せな動物さん達がいた。思い出すんだ。沢山、沢山、楽しい事、幸せな事。」
 そう言いながら力任せにティエルはフェアリーを抱きしめた!
「だってボク見てたもん!(グリモアの映像だけど)キミは羊さんをあんなにモフモフブラッシングできる子なんだ!悪い子なわけないよね♪」
 そのままお姫様のオーラを纏うと、社交ダンスの如く優雅にぐるんぐるん回って、ジャイアントスイングで狙いをつけ……。
「いっくよー!モフモフを思い出してテンションアップだ☆」
 ぶん投げた!
「!?」
 狙いは……赤兎馬だ!
「ぁ……っ!!」
 小さく悲鳴をあげながら、赤兎馬のモフモフのお尻にフェアリーはうずもれた!

『――尻尾って意外と硬かったりしますよね』
『ううん。さっきの狼さんとか、お馬さんとかね、直接触るといやーんって嫌がるけど、横を通ったりする時にしなっとボクの身体に尻尾が当たる時があるんだ』
『ああー……!流れモフ!上手い事恩恵が出た時に頂くという、尻尾の流れモフ!舐めるようにしゅっとされるアレ!こちらから触ってはいけないのが本当悔やまれるというか…いえ、待ってください指トンネルはいかがでしょうか』
『指トンネル?』
『手でもいいですね。スキンシップの一環で尾の根元を囲むように0の字で指の輪っかを作って待機、離れ際に尻尾が輪っかから引き抜いてくれれば……!』

 妖精は腕できゅっと赤兎馬の尻尾を抱きしめる。
 そのまましなだれるように尻尾からずり落ちて、しゅっと、尻尾のもふみを全身で味わった。
「……ぁ……ぁ、ぁ……」
 その顔はすごい夢見心地で、涎を垂らして赤兎馬の尻尾の先端にしがみついていた。
「…何か変な事してる?」
 逃げようとして唖然とし立ち止まったレプ・ス・カム。
 その視線を気にする事なく、よじよじと尻尾を上り、もう一度しゅっと、ずり落ちる。
(尾を振りたいのを我慢する赤兎馬)
「もふ……もふ……」
 時空が……歪みだす。
「やわらか世界……ボクの理想郷……どんな動物さんもふにっふにで……触っても……ふに~……」
 話術の敵意が和らぐ。魅夜の迷宮がその心に影響されて、何かおかしくなっていく。
 その時奇跡が起きた。
 ふにふに伸びるフェアリーの感情に応えて、突き刺さる刃が……柔らかくなったのだ!
「……なに?」
 よく見るとそれはブラシだ。刃状の、毛をブラッシングする毛先の優しい電動ブラシ。
「めえぇぇぇ……」
 突き刺さっていたはずの羊達はブラシ刃に、むしろ体をこすりつけていく。
 いつの間にかフェアリーのほんわかマインドに影響されてか、拘束さえも解かれている。

「…………違う」
 レプ・ス・カムはスーパーウサギ穴を消した。
「違う!違う!違う!違う!」
 その感情は躍起になっているようだった。自分の悪夢が、自分の世界が否定された事が、彼女に怒りを覚えさせた!
「そんな世界じゃない!絶望に落ちてなきゃ、自分の大切なものが美味しいお肉になって、打ちひしがれてなきゃ……私勝った気になれない!」
 レプ・ス・カムの周囲が暗黒に染まり、暗黒の中から炎が、刃が、無数に飛んでくる!
「武聖!なるべく妖精を落とさずにレプ・ス・カムに引導を!」
 赤兎馬とその乗り手はうなずくと薙刀を振り回す。
 炎を打ち払い、刃をいなし、いなし。
「このっ……!」レプ・ス・カムからのランタンの炎すらも振り払って、【武聖関羽】と名付けられたその乗り手の一撃がレプ・ス・カムを切り裂く!
「……っふ。ざーんねん。」
 だが切り口はなかった。まるでダメージがない?
「私がなんでこうして目の前でバカやってると思ってるの?もう勝ったからだよ。私は悪夢を通してここに来たんだ。だからこの体も夢のようなもの。攻撃が通るわけないんだ。」
「…そんな嘘が…!」
 だが通っていた。
 滅茶苦茶だが、夢と照らし合わせ、目立つ真似をした理由を入れたその話術は響いてしまった。
 レプ・ス・カムは再びスーパーウサギ穴を展開した。
「ふん。やっぱり勝敗もいいよ。鍵さえあれば目的達成なんだから。」
「その鍵って、今さっきの子羊かな?」
 別の声がした。
「……何?」
 シホだ。
「犯人は必ず現場に戻ってくる……実は一度戻ったフリをして、本当の鍵なこの子をまた取り戻しに来るんでしょ。」
 そんなはずはない。さっきの子羊はフェアリーの罪を作るために話術によって作り出した幻で、ブラフだ。
 だが、突如言われたその言葉にドキッとした。
「はっはっは。何を言ってるんだ?鍵はちゃんと胸の中に……」
 まさか、ない?
 そう思い慌てて胸の中をまさぐる!
 鍵は……鍵は……あっ!あr
「今だーっ!」
 ルビーの様に紅い目をしたシホのブーツからガトリングが放たれる!
 弾幕が土煙を起こし、レプ・ス・カムの視界を遮った!
「な、何ーっ!?」
「ティエル!妖精さん!力を貸して!」
「え、何?どしたの?」
「…ち…力…?」
「まだ喉がかすれてる所ごめんね!ここはフェアリーランド。フェアリーの楽しいなら、悪夢なオブリビオンだってあっちいけできるとおもう!」
「つまり…」
 ティエルがごくりと唾を飲む。
「合体攻撃だよ!」

「…っく、何の真似だよ。やっぱりフェアリーって話にもならない…ね…何だ!?」
 3体のフェアリーの光が宙でとどまり、赤とオレンジと黄色の光が混ざり合う。
「いっくよー!輝石解放、ルビー!」
「フェアリーテンション!お姫様☆ビーム!」
 ティエルとシホの合いの手に、黄色と赤が混ざり合った、ドリルのようなビームが放たれる!
「ボクの…もふもふの…」
 何と……ビームの先端にはあのフェアリーが!
「これが……全力だーーーっ!!!」
 光と炎のビームを纏った、黄金のもこもこオーラのフェアリーが!
「なっ……ぐあああああ!!?」
 レプ・ス・カムの胸に直撃した!

「(な…なんだ、なんだこれ!?全然ダメ―ジないじゃないか!?)」
 直撃したレプ・ス・カムはしかし、スーパーウサギ穴を破壊されてしまったが、胸から押し飛ばしていくフェアリーの突進を受けながらも。
 しかしモフモフのオーラなのが災いしてか単に吹っ飛ばされるだけの状態で吹っ飛ばされていた。
「(なら……どこかで態勢を立て直すか、話術でこれをかき消せば……!)」
 ざくり。
「(え)」
 腕が何かで切り裂かれた。
「遂に捉えました。……忘れましたか?今戦場がどうなっているのか」
 魅夜の迷宮。
 心によって作り出される、鏡の刃が。
 ざくり。ざくり。
「う……ぐあ、あああ、あああああ……!!!」
 吹き飛ばされる度に順次壁から生成される鏡の刃が次々とレプ・ス・カムを捉え、八つ裂きにしていく…!
「暗く淀み醜く歪み無様に腐り果てているあなたの身体を、遂に捉えましたよ。……あなたを引き裂く最初の願い、今ここで果たさせて頂きます。」
「ぐああああーーーっ!!!」
 やがて出口に辿り着く。
「悪い兎さんは…ここから、でてけーっ!!」
「く、くそーーーっ!!ウサ…ギ…ウサギ穴…を…!」
「否。ここでおぬしは消えよ」
 空から赤い影が現れる。
 赤兎馬に乗った、武聖の薙刀が。
「モフトーク仲間を傷つけた罪、末まで許さぬ。……断!」
 迷宮の中、あぐらをかいた檬果が九字刺しの指を切る。
「…………折角鍵も見つけたのにな……このまま騙しとおせると……思っ」
 絶望に染まった表情で降り下ろされる様を見るしかできなかったレプ・ス・カム。
 フェアリーの力で悪夢などと言う概念が楽しい力でかき消された彼女は。
 今度こそ、縦一閃の薙刀に切り裂かれた。

●サンキュー!アニマル!
「もふー!」
 全てが終わり、檻が、迷宮が、悪夢が消えたそのフェアリーランドで、ティエルは日の下で羊に抱き着いていた。
「んー!いい香り!いいふわっふわ!戦いつかれたしもうここで寝ちゃっていいかな?いいよね?」
「こんなにさんさんとした世界だったんだ」
 シホは晴れ渡るその世界の地平線を見てはえーとすごんでいた。
 あの空の果てに行けばアックス&ウィザーズに行ってしまうのだとしても。
 元はこのように平和な世界だったのだ。
「ああ、いいですね。やっぱりモフモフはいい……基本は羊。でもふさふさしたヤギや馬も」
「……うん!ありがとう!ブラッシングも体洗いも手伝ってくれて!」
 そこに住むフェアリーは、まともに喋れるようになっていた。幻の炎の怪我はウソだったかの様になくなっていた。
 フェアリーは生き延びた動物達のけがの治療等を一通り済ませた後、シャーマンズゴーストに戻った檬果にべったりくっついていた。
 むしろもふもふしていた。
「それにしても森の精様も、こんなにモフモフ!この顔の部分羽毛なんだ!もふー……」
「おおっと!鳥モフは初めて?」
 シャーマンズゴーストの顔周りのライオンのたてがみみたいな部分である。フェアリーはそれにぎゅっと全身で抱きしまっていた。
「こんなにおっきな鳥さんは初めてかも。んんっ……羽毛ってとっても暖か……」
「……あっ寝てしまいました。いえまあいいでしょう。あんな事があったすぐですもの。今はお休み……」
「(ついててあげましょうか?)」
 隣にいた赤兎馬が気になって顔を寄越していた。
「あ、お願いできます?私ちょっとあっちの方も……」
 そう言って見やったのは次なるモフモフではない。魅夜の方だった。
「(アレですか?)」
「ちょっと見た後、私もここのモフモフにあやかるとします。その後は名残惜しいですが……というわけでご褒美モフモフ、その妖精にも分けてあげるように」
「(了解)」
 こくりと赤兎馬がうなずくと、眠り地面に落ちたフェアリーの傍で座り、お腹を枕にさせた。
 フェアリーは赤兎馬のお腹に、求めるように身を寄せ、幸せそうな寝顔を見せたのだった。

「スカッとした後でなんですけど、これが、『天上界への鍵』ですか……」
 魅夜はフェアリーランドの丘の上で、レプ・ス・カムが倒れたことにより落とした、輝く鍵を拾い、見つめていた。
「此処だけじゃなく、もっと沢山存在して……また別のレプ・ス・カムが狙っていると。」
 そこに檬果が近づいた。
「厄介な事になりそうですよね。数の限りも不明瞭、とりあえず確保するとしても」
「まあまた来ても迎撃するだけです。特にあんなモフモフ仲間が――」
 檬果と魅夜がフェアリーの寝顔を見やった。
「ええ。こんな事を許すわけにはいきません。あの汚い兎(レプ・ス・カム)の悪夢の手口は、例え何度起きた所で潰して差し上げましょう。」

 3人の妖精と、ダンピールと、シャーマンズゴーストが今は居る、のどかな日差しの牧場地帯。
 さんさんとした陽光が、転送までの時間、永遠の平穏を感じさせるかの如く、猟兵達を包み込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月13日
宿敵 『レプ・ス・カム』 を撃破!


挿絵イラスト