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クリスタル・パニック!

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #バトラー・サファイア #クリスタリアン #漿船 #ペンギン

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●招かれざる異邦人
「お集まり頂きありがとうございます。宇宙の敵が帰って来ました」
 グリモアベースの会議室、いつになくやる気に満ちたユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)は集った猟兵達へ一礼し、早速用件を語り始める。
「奴らは帝国継承軍などと名乗り、宇宙の平和を乱さんと活動を開始したのです」
 先の戦争で現れた猟書家『プリンセス・エメラルド』は『帝国継承規約』を利用し『オウガ・フォーミュラ』となり、銀河帝国残党を束ね、更にはクエーサービーストをも配下に加えようとしているらしい。そんな連中が一体、何を狙っているのだと誰かが尋ねた。
「――皆さんは漿船(クリスタルシップ)をご存じでしょうか?」

「漿船は全てが宝石で出来た、失われた技術で建造された古代宇宙船なのです」
 かつては自身も同じ様な船に居た――沈痛な面持ちで言葉を続けるユーノ。だが喜ばしい事に、未だ生き残った同胞達が密やかにそこで暮らしているのだ。更に漿船には他の宇宙船には無い特徴があった。
「そして微弱ながら『意志』を持ち、住人のクリスタリアンとのみテレパシーで意思疎通が出来るのです。それともう一つ」
 つまり船の住人は船そのものと意思疎通し、今に至るまで生き延びる事が出来た。正に一心同体の存在と言えよう。そして隠されたもう一つの機能、それは……。
「どうやら、かつての最長老であるプリンセス・エメラルドだけが知る『転送装置』が、漿船のどこかに仕込まれているらしいのです。それを探す為、漿船のクリスタリアンと交流し、いち早く転送装置を発見してください。でないと」
 転送装置(インフィニティゲート)とはスターゲイザーの血族――銀河皇帝の血に連なる者以外が持ちえる、もう一つの長距離移動を可能とする力。この力を奪われれば、きっと帝国継承軍はかつての銀河帝国の様に宇宙を蹂躙するだろう。そして問題はそれだけでは無い。力を狙って現れる敵によって、住民の生命が危険にさらされる。つまり。
「……敵が来て、住人が皆殺しにされます」

「彼女は『バトラー・サファイア』を名乗るプリンセス・エメラルドの側近です。その力は並のオブリビオンとは比較にならない程強大でしょう。ですが」
 モニターに映されたのは瀟洒な姿のクリスタリアン。サファイアの肌を持つ美しいそれは、冷静沈着な女性執事にして凄腕の暗殺者。只者ではない雰囲気を漂わせる彼女に、それでもとユーノは力強く言い放った。
「銀河最強を誇るあの帝国を倒した私達がそう遅れをとる筈がありません!」
 そうだ。黒騎士に白騎士、ドクターオロチに銀河皇帝。更にはクエーサービーストだって、これまで猟兵は幾度となく倒して来たのだ。例え恐るべき過去の骸が甦ろうと、手に入れた平和を必ずや守り通す。その気概がそこかしこから伝わってくる。
「油断なく、確実に、彼女を仕留めて下さい。どうかよろしくお願いします」
 ぺこりと一礼し、ユーノは青白く輝くグリモアを展開した。転送先は古代宇宙船『ゲルニカ』――ひと際古い風習の残った漿船だ。光の先から微かに柔らかな自然の匂いがグリモアベースに届く。のんびりしてはいられない……姿なき敵はすぐ傍にいるのだから。

 古代宇宙漿船『ゲルニカ』は元々リゾート船だったらしい。航行は殆ど船自体に任せて、住人達は船内の手入れを何世代にも渡り、ずっと続けていた。
『おや、またお客さんかい。いらっしゃい』
 緑溢れるゲルニカ船内に突然現れた猟兵に驚きもせず、クリスタリアンの老婆がぺこりと頭を下げる。
『まあ、ゆっくりしていきなさい――ええ、聞きたい事がある?』
 どうやらサファイアはまだ現れていないらしい。奴が来る前に、早くこの船の謎を解き明かさなければ。伝承や現象、それに彼彼女らが知らない事。それらをかき集めれば、必ずや道は開かれる筈だ。


ブラツ
 宇宙に帰って来ました。ブラツです。
 今回の舞台はスペースシップワールドにて漿船の転送装置を探り、
 猟書家の襲撃から人々を守る事が目的です。

 第1章は日常です。オープニングを基に自由にプレイングをしてください。
 調査にあたり、漿船や船の人々の協力を得る事でプレイングボーナスになります。
 第2章はボス戦です。敵は猟書家バトラー・サファイアです。
 第1章と同じく、漿船や船の人々と協力するとプレイングボーナスになります。

 以上、2章構成のシナリオとなりますのでご注意ください。
 その他、詳細はオープニングに準じます。
 アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。

 プレイングは開幕後すぐに募集致します。状況はオープニングの通りです。
 今回は当方都合で恐縮ですが、最大で8名様前後の採用になるかと思います。
 可能な限り努めてまいりますので、よろしくお願い致します。
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第1章 日常 『古代文明船の一日』

POW   :    普段口にしない食べ物を体験する

SPD   :    普段入れない遺跡を体験する

WIZ   :    普段目にしない儀式を体験する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クネウス・ウィギンシティ
「流石、漿船(クリスタルシップ)。煌びやかですね」

【POW】(UC無し)

●交流
 食堂なりの集団の食事提供施設へ赴き、普段口にしないレーションやチューブ等の低コストだけが取り柄の宇宙食をクリスタリアンの方と食します。
 同じ窯の飯を食べた間柄であれば、多少は協力して貰いやすいかと。

●探索
 クリスタリアンの方への聞き取り調査&自前のサーチドローンを飛ばして地形【情報収集】を行い艦内の見取り図を作ります。
 『プリンセス・エメラルドだけが知る『転送装置』』、通常の方法では入ることは出来ない空白地点を探す狙いです。
「艦内の誰も入ったことが無いエリア。何か糸口さえ掴めれば……」


メイスン・ドットハック

【SPD】
ふむ、漿船のー
もしかしたら僕もこのタイプの船に乗っておったかものー

子供の頃なんで全く記憶にないけー、今は感傷に浸っておる場合ではないのー
とりあえずバトラー・サファイアはこの船の知らない機能で飛んでくるわけじゃし、それに追随するところから調査するかのー
つまりはあまり人が入らない所、手入れされていない所を中心に調査していくぞ
ま、セキュリティは僕の電脳魔術のハッキングで何とかなるじゃろー

そう言った場所が見つかったらUC「迷宮主の領域に踏み込みし権能」で劣化コピーを増やして手を増やしてから機能修繕・把握に努めるとしようかのー

隠された機能を解明して、敵の先手を打つ
現地民からの協力も仰ぐ



●リフレクション
「流石、漿船(クリスタルシップ)。煌びやかですね」
『まあ来客用さ。どこもかしこもこれじゃ、目に来るよ』
「……もしかしたら僕もこのタイプの船に乗っておったかものー」
 クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)とメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は船内の食堂で、先導を務めてくれたクリスタリアンらと共に食事を摂っていた。内容は普段口にしない様なレーションや保存性の高いチューブ状の宇宙食ばかり。長きに渡り自然環境を保ってきたこの船『ゲルニカ』とは真逆の産物と言えよう。
『何か、変な感じ。でも思ったより美味し』
『訓練ぶりだね、こういうのは』
 意外とクリスタリアン達には評判が良かった。何せ代わり映えの無い生活を送っている彼彼女等だ。普段とは違う体験を得る事が出来ただけでも、それは喜ばしい事だったから。
「でも子供の頃なんで全く記憶にないけー、今は感傷に浸っておる場合ではないのー」
「ええ。ですからこうして……」
 次はクリスタリアンが用意した、この船ならではのランチセットが振舞われる。簡素な造りのサンドイッチやおかず類……そのどれもが、船内で育てられた動植物を加工して作ったもの。決して合成食料やコアマシンによる被造物では無い、人の手が加えられた、天然由来の食料だ。
「やっぱり、思い出さんのー。とりあえずバトラー・サファイアはこの船の知らない機能で飛んでくるわけじゃし、それに追随するところから調査するかのー」
 別の船じゃしのー。サンドイッチを片手に、器用に端末を操作しながらメイスンが話を続ける。開かれたのは船内見取り図。それもゲルニカに直接アクセスして承認を貰った物だ。いわばお墨付き、無茶なハッキングをしなくとも、ゲルニカや船の人々は非常に好意的だった。
「成程。では私も探索を再開しましょう」
 続けてクネウスも端末を――映し出されたのはドローン越しの船内の映像。それも一つでは無い。飛行許可を得て飛ばしたドローンに、地上用のセントリーガン(無論、セーフティは機能している)が、普段人が入らないような場所を重点的に調査しているのだ。そしてクネウスが見つけたのは、船内の巨大な湖に隣接する、小さな洞窟だった。

「ここから先は、入っても大丈夫でしょうか?」
『ああ。どこ行っても問題ねえよ。むしろこの機械欲しい』
 笑顔で返すクリスタリアン。幾らゲルニカと意思疎通が出来ると言っても、細かな所まで手が届かないことも多々あるそうだ。そういう時にドローンは便利……この後カタログを送ると了承したクネウスが、続けてクリスタリアンに質問する。
「では、ここは普段立入禁止とか……?」
『いや、立入禁止とか無いからなあ。知らない場所はあるかもだけど』
 そもそもゲルニカが目を光らせているこの船の中において、立入禁止などは無いのだという。ならば転送装置は――それについては、誰も存在自体を認識していない様であった。
「やっぱり、そこかのー」
 そして用途がはっきりしない謎の洞窟についても、誰もよく分かっていない状態だった。しかしメイスンはそこが『湖の排水ポンプ制御室』であると断定する。解析と対話を繰り返し、エネルギー経路の状況を鑑みた上の結論。既に自身の複製を多数送り込み、安全に調査が出来る事を把握していた。
『排水ポンプ、なのか。まあ行く事は出来るかな……?』
 メイスンの回答にそして、クリスタリアン達は動じる事無く言葉を返す。それだけゲルニカを信頼しているという事だろう。道中の案内を買って出て、皆は一斉に立ち上がる。全ては転送装置を見つけ、猟書家を迎え撃つ為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン

帝国継承軍の野望を阻む為、尽力は惜しみません
必ずやこの漿船をお守りいたします

そして、この船を一番よく知る住人の皆様にご協力頂きたいのです
この船の自然を良く手入れし、ゲルニカ…様の意志を強く伝え聞くことが出来る方にご同行願えますか?

転送装置その物は見つからなくとも、痕跡ならゲルニカ様が把握しているかもしれません
微弱な意志を少しでも強く感じ取る為に船内を移動する必要がありましたら私と機械馬が脚となりましょう

ゲルニカ様への謁見の為にUCで地形を●情報収集し●推力移動も併用し●騎乗技術活かし住人の導きに従い船内や自然を駆け巡り

導きのままに宝石の森や洞窟を駆ける…御伽噺は未だ故郷にも生きていたとは!


鏡島・嵐
うーん、謎多き宝石の船か。SSW以外でも、魔法か何かで作られた船にそういうのがありそうだな。
内装とか、結構古そうだ。依頼じゃなかったら、ゆっくり見て回りてえとこだけど、今はこっちが優先か。

転送装置が何かのきっかけで動作したりとか、そういうことは今までになかったんかな。他所から見知らぬ何かが転移してきたり、或いは神隠しみてえにある日突然誰かが居なくなったり。
……船の手入れを手伝いながら、〈コミュ力〉を活かしてそういう聞き込みをしてみる。何世代も経ってるんなら、それ以外にも不思議な話は聞けそうだし、そういうのも当たってみる。
あとは勿論、仕入れた情報を他の仲間と共有だな。



●漿船冒険譚
「帝国継承軍の野望を阻む為、尽力は惜しみません。必ずやこの漿船をお守りいたします」
 蒼銀の騎士――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が勇ましく、クリスタリアン達に話しかける。ここは船内のホール。突如現れた巨大な騎士の姿を一目見ようと、多くのクリスタリアン達が集まっていた。
「謎多き宝石の船か。SSW以外でも、魔法か何かで作られた船にそういうのがありそうだな」
 その傍ら、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)が人々と共に船の構造物をじっくりと眺めていた。このホールも船同様、大半が結晶質の美しい素材で構成されている。
「内装とか、結構古そうだ。依頼じゃなかったら、ゆっくり見て回りてえとこだけど、今はこっちが優先か」
「だからこそ、この船を一番よく知る住人の皆様にご協力頂きたいのです。この船の自然を良く手入れし、ゲルニカ……様の意志を強く伝え聞くことが出来る方にご同行願えますか?」
 事実、年代物の船だからこそ蓄積された知識も豊富にあるだろう。嵐とトリテレイアの言葉に人々は二つ返事で頷き、かくして探索隊が結成された。

「導きのままに宝石の森や洞窟を駆ける……御伽噺は未だ故郷にも生きていたとは!」
「観光用のナビゲータじゃないかねえ、これ」
 天の声、ゲルニカの導きに従い一同は洞窟を進んでいた。興奮するトリテレイアを若干窘める様に言葉を吐いた嵐。珍しくトリテレイアがそれに対して憤る――無理も無い。夢にまで見た御伽噺が現実にあったのだから。
「もう少し、何というか、言葉に手心をですね」
「転送装置が何かのきっかけで動作したりとか、そういうことは今までになかったんかな。他所から見知らぬ何かが転移してきたり、或いは神隠しみてえにある日突然誰かが居なくなったり――」
 しかし冷静に、嵐は状況をクリスタリアンに尋ねる。そしてあっけらかんと、意外な答えが返ってきた。
「……しょっちゅうあるだって?」
 頷き、何かに向けて指を差すクリスタリアン。何やら鳥類の様なモノがウロウロと――こちらに気付き、一目散に外に出てしまった。
「あのペンギン、ですか」
 どうやら、この洞窟だか隣接する湖だかに突然現れたらしい。中には湖から現れて、救助されて別の船に渡された人もいるとの事。逆神隠しみたいなものだろうか……それは誰も、ましてやゲルニカが何かをした訳ではない。いつも突然、そういった事が起こるらしいのだ。
「では、転送装置は……」
 ゲルニカに尋ねても、それが何なのか、どこにあるのかは全く分からない。周辺を走査したトリテレイアのセンサーも、空間や次元を揺るがす程の巨大なエネルギーの形跡は発見できなかった。
「成程、取り急ぎここが終点なのは間違いないみたいだ」
 しかし事実、ここに何かが現れるというのならば警戒を怠るべきではない。猟書家だろうとそれは同じ筈……。
「ゲルニカ様へ、ここに突然召喚された方々について、思い当たる節が無いか聞いて貰う事は可能でしょうか?」
 それ位なら、とクリスタリアンが念話を始める。しかし、結晶質の船体に意思のある船とは……心躍る世界が宇宙にもまだ残っている。
「ありがとう……そうか、そういう」
 続けて嵐がクリスタリアンから念話の詳細を聞き、猟兵向けに情報を共有する。
「念動力が高いモノが無差別に召喚されているらしいぜ」
「成程、クリスタリアンの特性……」
 クリスタリアンは種族的に念動力が高い傾向にある。ゲルニカはもしかして、無意識に同胞を求めていたのかもしれない。あるいはそれが、主たるプリンセス・エメラルドの復活による影響なのかもしれない、と……。
 だからこそ守らねばと、トリテレイアは決意を新たに、原因と思われる湖と洞窟の姿をしっかりとカメラに納めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・ファル

漿船に、インフィニティゲートか
ボクとしては技術復古してボクの知見に加えたいところだけど、
そうも言ってられない状況だね

住人達の困り事に手を貸したりしつつ、話を聞いていこう
(優しさ、救助活動、情報収集)

めぼしいところをマッピングし、ソナーや各種センサーを動員
(学習力、偵察、視力、聞き耳)

確実に手がかりを掴もうじゃないか

「うん、皆のお陰で良い手がかりが掴めそうだ。
上手く行けばこのまま見つけられるかもしれないね」

それじゃあ最後は、UC【森羅明察】で
インフィニティゲートの位置(の手がかり)をココに掴もう!

ふふ、沢山勉強になったよ


ヘスティア・イクテュス

転送装置…まさかそんなものがあったなんてね…
今までエメラルドのみが知るはずだった装置
それの存在を知り此方からも利用できるようになる!これは大きな収穫ね

それじゃあ、早く見つけて相手にはお帰り願いましょうか



今まで知られてなかった…
つまり今まで触れられることの無かったということ

この船で近寄っては行けない場所…
または船の外観と内部構造から考えられる隠し部屋の存在…
そういった情報を集めてアベルでマッピング…【情報収集】

これで調査範囲を絞って効率化し他猟兵へも共有…
後は探すのに人手ね、船内で協力してくれる人とプチヘス達を使って虱潰しに!


シャルロット・クリスティア
古代から伝わるリゾート船、ですか。
まぁ、娯楽というのは古来から生活には必要だったんでしょうねぇ……。
……なんてことを考えてる場合でもないですか。

皆さんは……来客には、慣れているようですね。
では、少し案内でも頼みましょうか。
名所とか少し回らせてもらうとしましょう。

名所と言うのは、何かしらの所以があるが故に名所となるもの。
来歴、歴史を知り、紐解いていけば何かしら収穫もあるでしょう。
古い建造物とか、原風景……と、船内でもそう呼ぶのかはわかりませんが。
蘊蓄とか伝承とかがあれば、可能な限り聞きつつ幾つか回ってみたいところですね。



●蒼玉より愛を込めて
「古代から伝わるリゾート船、ですか」
「それに転送装置……まさかそんなものがあったなんてね……」
「ボクとしては技術復古して知見に加えたいところだけど、そうも言ってられない状況だね」
 雑踏を歩くのはシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)――物珍し気に煌びやかな船内を眺めては、感嘆の息を漏らしていた。
「まぁ、娯楽というのは古来から生活には必要だったんでしょうねぇ……なんてことを考えてる場合でもないですか」
「急ごう。いつ来るか分からない敵程、厄介なものは無い」
「それじゃあ、早く見つけて相手にはお帰り願いましょうか」
 状況は逼迫している。先手を抑える為の情報は粗方揃ったとは言え、決定的な結論は導き出せないでいるのだから。足早に三人の少女達は改めて住人達に話を聞き回った。

「皆さんは……来客には、慣れているようですね」
『はい。時々どこからか、いきなりやって来るもので』
 シャルロットは同い年くらいのクリスタリアンに、船内の名所案内を頼みつつ話を聞き出した。場所は古めかしい市街地を模した商店街。変に狙い澄ました場所よりも情報が集まると踏んでの事。そしてその答えは意外にも、大勢から同じ様に返って来たのだ。
「? いきなりとは、接舷して渡って来るとかでは無く」
『ええ。気が付いたら居るんですよ』
 来訪者は招かれる訳でもなく、突然そこに居るらしい。昼夜関係なく、気が付いたらそこに……まるで、他所の世界で起こっている現象みたいに。
(神隠しの逆……? そしてそれが、当たり前になっているの?)
 しかし隠し事をしている様には見えない。むしろ困っている風に、シャルロットには見受けられた。

「この船で近寄っては行けない場所……または船の外観と内部構造から考えられる隠し部屋の存在」
『ところがですね、お嬢様』
 一方、プチヘス部隊をばら撒いて機関部を調べるヘスティアは、執事AIのアベルの答えに面食らう。凡そ想定していた答えとは、大きくかけ離れていたからだ。
『そんなモノが無いのです』
「馬鹿な、転送装置が隠されて……いないの?」
 今までエメラルドのみが知るはずだった装置。それが隠されている……と思ったら、そうでも無いらしい。だからこそ、平時は船の補助AIでもあるアベルの答えに納得せざるを得なかった。
『恐らくは、この船の構造そのものが転送装置』
「木を隠すには森の中、どころか森そのものが目的のモノという訳なのね」
 つまり、私達は既にその装置の中にいるという事。後はどうやって制御され、何がどこに送られてくるのか――それさえ分かれば、先手を打てるだろう。

「うん、皆のお陰で良い手がかりが掴めそうだ。上手く行けばこのまま見つけられるかもしれないね」
 リアは道すがら困りごとに手を貸して、あっという間に人々の信を得ていた。猫探しに機械の修理、大抵の雑事はこなせる故の選択。
「ハイ。最新のデータベースにアップデートしましたよ」
 そして今は、クリスタリアンの子供が持つ古めかしい端末のOSを、現状の最新版にアップデートしてあげていた。その裏で魔術師はこの船の絡繰りを解き明かさんと、自身らが知る情報を最新のモノに更新したのだった。
「シャルロットさんとヘスティアさんの情報から、この船のエネルギー経路を立体的に照合してみたよ。ビンゴだ」
 端末より浮かび上がるのはこの船、ゲルニカの透視立体図。ヘスティアが機関部で仕入れた情報と、シャルロットが実際に聞いた情報を重ねて、まるで樹木の根の様にエネルギーのパイプラインが散逸し、集合していく様が見えた。
「恐らくはあの湖、そこがゴールなのは間違いない」
 それこそが、リアが超常も踏まえて導き出した結論だった。

 三人は湖へ辿り着き、改めてリアが映した漿船の立体図を見る。まるで植物の種子の様に、数多の生命と歴史を内包した宇宙に輝く宝石。その力が解き放たれた時、かつては船同士が繋がり合っていたのだろうか。あるいは――。
「そして、ボク達より前にいた来客……」
『ゲェッ、猟兵!?』
 リアが二人に統合した情報を見せたと同時に、隻眼のペンギンがわたわたと羽根を振るわせてこちらに気付き……観念した様に座り込んだ。
「ん? あなた何処かで会った事……」
『クッ……殺せ! よもやこんな所で』
「いや殺しませんって。それよりどうやってここに?」
 ペンギンはどうやら過去に猟兵にひどい目に遭ったらしい。ヘスティアの記憶では恐らくアレがアレしたアレだろうが、それよりもシャルロットの言う通り、彼がどうやってここに現れたのかを確かめねば。
『知るか! 爆発に巻き込まれたらここに跳ばされたんだ!』
「跳ばされた、か。矢張り無作為に念動力の高い個体を……」
 そんな検知機能、何の為に使っていたのだろうか。訝しむリアはしかし、正面に僅かな空間の歪みを捉え身構える。
『皆様、重力震反応検知。艦船級の巨大なエネルギーが実体化します』
「どうやら、間に合ったみたいですね」
「ふふ、沢山勉強になったよ。それじゃあ仕事の時間だ」
『な、何じゃあれは……』
「アンタ引きなさい。もうあの頃とは戦いの規模が違う……!」
 それぞれが思い思いに言葉を吐いて、手にした得物を中空の歪み――湖の中心へと向ける。ぐにゃりと、歪んだ空から醒める様なサファイアの青い肌が姿を現して、そして視線が絡む。
(あれが、猟書家……)
 アリスラビリンスの戦争で対峙したプリンセス・エメラルドを想起させる禍々しい怨讐の念。ニヤリと口元を歪ませたそれがするりと水面へ降りたって。
 
『『「「「あ、落ちた」」」』』

 派手な音を立てて、彼女は沈んでしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『バトラー・サファイア』

POW   :    ナイブスストーム
【サファイアでできた無数の暗器】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    アカンプリッシュメント・オブ・アサシン
レベル分の1秒で【麻酔針】を発射できる。
WIZ   :    サファイア・フラッシュ
【サファイアの肌】から【蒼く眩い閃光】を放ち、【目を眩ませること】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:白菜ポンズ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エリル・メアリアルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●古強者の夢の跡
 バトラー・サファイアは主たるプリンセス・エメラルドの言葉を思い返す。スターゲイザーの血族が操る「ワープドライブ」以外に、唯一長距離移動を可能とする『転送装置』――この力を手中に収めれば『帝国継承軍』の侵攻はより盤石のものとなる。その為には、一隻でも多くの漿船を我らの傘下へ納めなければならない。
(そろそろ、か……)
 歪んだ景色が均整の取れた幾何学模様に――そして、緑と青が視界を埋め尽くす。漿船ゲルニカ。今はリゾート船らしいが、この船はかつて……。

 歪んだ空が割れ、極彩色の血みどろの中に清浄なる青――サファイアのクリスタリアンが姿を現した。
『フフ、猟兵……こちらの動きを察知していましたか。ならば』
 地を見下ろしたサファイアは視界に入った埒外、猟兵の姿を確認し口元を歪める。そのままふわりと優雅に着地……しなかった。あれ、何か冷たい。あれ。
(しまった、ここ湖の上じゃない! 我が主確かただの広場だって、話が違う……)
 そのままぼちゃんと、悪しき青は透明に近い青に飲み込まれる。ちなみにゲルニカの気候は現在冬のシーズンである。
(寒い! ああ早く念動フィールドを厚めに! あ、酸素)
 オブリビオンとは言え身体の基本構造はクリスタリアンのそれ。突然の水没にわずか正気を失ったサファイアは、そのまま静かに湖底へと没した。

 とはいえ放っておけば、やがて活動を再開して船内のクリスタリアンが虐殺されることは必定。止むを得ず洞窟の排水装置を起動して、その間に湖を猟兵や若いクリスタリアン達が完全に包囲する。正に怪獣退治の様相だ。
『見えたぞ……何だこりゃあ!?』
 ざあざあと大音を立てて抜けていく湖の水――排水装置で暴かれた湖底は、すり鉢状に深くなる、まるで古代の闘技場めいた構造。その中央の神殿めいた石造りの椅子の上で、サファイアはうずくまる様に座り込んでいた。
『思い出した』
 不意にゲルニカが発声した。全艦に轟く大きな電子音は、そのままサファイアの耳へと届く。
『旧き盟約に従い当艦は戦に関するあらゆる事を放棄したのだ。ここは元々、兵士たちが跳躍する為の巨大な空間カタパルト――すなわち』
 それが、この船の転送装置の正体。そして戦が終わり、何もかもを湖の奥底に封印させたのだ。その装置が時折暴走して、何がしかの要因を持つモノを手繰り寄せていたとゲルニカは語る。

『フ、フフ……では、ここが転送装置クシュン!』
『実際はどこにいても転送出来るけどね』
 あくまで戦へ赴く兵士達や機動兵器を集める為の場所であったに過ぎない。その様な血の歴史を受け継がせぬ為、かつてのゲルニカが全てを湖の底へ隠したのだった。
『とにかく……あなたを頂きますよ、ゲルニカ』
『いいや、そうはさせない!』
 ゲルニカの声に続いて湖の縁に並ぶのは若きクリスタリアン達。その誰もがリゾート船のショーで鍛えた、屈強な肉体の持ち主だった。
『左の彼は100㎏近い装甲服を着て平然と動ける。真ん中の彼は一人で20役近い形をを極めたマスター。もう一人は』
『所詮演技だろうに!』
 嘲笑うサファイア。所詮、かつて暗黒の宇宙を駆け抜けた自分達とは比べ物にならない念動力。幾ら束になろうと負ける気はしない。
『だが、魂は本物だ』
 ゲルニカは咆えた。戦なき世界の為に、高潔な戦士の戦いを今に伝えよう。その意志は、幾星霜の時を経ても決して色褪せない。彼等とゲルニカの力があれば、少なくともここからサファイアを外へ出す事は無いだろう。それに。
『そして、ここには今の戦士達がいる』
 それは猟兵。悪しき過去を骸へ還す埒外の戦士達。
 戦場は闘技場の様な、かつては機動兵器も含めた空間カタパルトだった広場。
 時空を超えて再び、古強者の戦が始まろうとしていた。

※プレイング募集:11/7(土)8:31~ その他諸条件はMSコメントに従います
チトセ・シロガネ
魂は本物、いいコト言うじゃナイ!戦士の魂はいつの時代だって絶えることはないネ。
マント姿が上から現れ、レーザーを乱れ撃ち。挑発代わりの奇襲攻撃を仕掛けるヨ。

ボクは宇宙のサムライ、戦いで磨き上げた心眼があるネ!
反撃で飛んでくるであろうサファイア・フラッシュで動体センサーが焼け付き使い物にならなくなる。ケド、ノープロブレム!目元にバイザーを展開させて第六感でサファイアの動きを見切るヨ。

ユーの光じゃボクの魂は焼くことすらできないヨ!
推力移動と早業で攻撃を回避し、同時にカウンターでUC【破邪光芒】を発動、BZファントムを射撃モードから斬撃モードへチェンジ。リミッター解除して返し刃で光刃を振り上げる!



●それは紛れもなく
『愚かな、有象無象が幾ら集まろうと――』
 広場の中央でサファイアが不敵に笑む。幾ら囲まれようと、動きを封じられようと、たかが一般クリスタリアン如きに何が出来るか。
『止められると思うな! 賽は既に投げられた!』
 私は最強の執事にして猟書家、バトラー・サファイアなのだから――周囲に精神感応金属で打たれた無数のナイフを展開して、刃を取り囲む人々へと向ける。
『ならば見せてみろ、戦士の魂とやらを!』
 嵐が起こる。がらがらと湖底の構造物が吹き飛ばされて、瓦礫に紛れた殺意の束が一斉に放たれた。しかしその嵐を、不意に放たれた光条が続々と貫いて――。
「魂は本物、いいコト言うじゃナイ!」
 光の渦が、純白の塊と共に虚空より姿を現す。乱舞する光条が瓦礫を、刃を天より貫いて、瞬く間にそれらは大地へと落とされた。
「戦士の魂はいつの時代だって絶えることはないネ」
『何者!?』
 驕る殺意に異を唱える様に、白き宇宙の戦士――チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)は戦場に舞い降りた。

「ボクは宇宙のサムライ、義によって助太刀するヨ!」
『何がサムライだ! そんなモノはとうに滅びた!』
 開幕の先制は全てチトセが放つ光子レーザーの渦が叩き伏せる。僅かにサファイアを狙った光はされど鏡の様に展開した刃が弾いて、敵意を剥き出しにした青が続けざまに吼える。
「滅びてないネ。ユー達と一緒にしないで貰いたいナ!」
『貴様……』
 着地と同時に義体に仕込んだスラスターが火を噴いて、チトセは白い弾丸と化す。異世界で手に入れた人造細胞製の義体は強靭。明らかに人の身では耐えられない様なマニューバを自在に操り、光弾を乱射しながら瞬く間にサファイアとの間合いを詰める。
『寄るな化け物!』
 しかしサファイアは微動だにせず、全身の青白い肌より眩い光を――超常の発光が戦場に放たれた。取り囲むクリスタリアン達が不意を打たれよろける程の光量だ。だがそれすらも、数多の戦いを生き抜いたチトセにすれば児戯にも等しい代物。
「ユーの光じゃボクの魂は焼くことすらできないヨ!」
 仮面の様なバイザーを展開し直ちに遮光、合わせて左右のスラスターをランダムに吹いて、爆音と共に稲妻の様な機動でサファイアへと突き進む。
『詰められた!?』
「遅すぎるネ!」
 先制で瓦礫を吹き飛ばしたのが仇となった。進路クリア、冴え渡る光子頭脳が瞬時に最適なマニューバを選択/武装切替、BZファントム斬撃モード/ユーベルコード起動【破邪光芒】出力107%オーバーブースト/その全てをゼロコンマゼロ以下で判断、最早自らの道を塞ぐモノは無い。
『させ、るかぁぁぁッ!!』
「いいや、成敗だヨ!」
 念動力で空間をレンズの様に歪ませて、再び光をチトセへ向けようにも遅すぎた。光速のサムライがすれ違い様の一太刀を浴びせると同時に、蒼玉の美しき腕が儚く空を舞う。そしてサファイアは思い知る。戦士の魂は、今の世にもしっかりと受け継がれているという事を。

成功 🔵​🔵​🔴​

クネウス・ウィギンシティ

「敵対対象:猟書家を確認、交戦を開始します」

【POW】

●UC対抗
 種族:サイボーグで四肢は機械化済み、露出している生身の顔を腕と左腕のパイルバンカーで暗器から庇いつつ接近します。周りは屈強・精強な方ばかりなので
「まあ、大丈夫でしょう」

●戦闘
「CODE:LUCIFER。仕掛ける!」
 右腕のマシンガンの【弾幕】で牽制しつつ接近。左腕のパイルバンカーのシールドバッシュからパイルで胴体を刺す狙いです。

「では、パイルバンカーの本来の運用を」
 鉱石(クリスタル)を含めた岩石へ連続で杭を打ちつけ破砕する(【貫通攻撃】)。強い衝撃を与えボディをヒビ割れさせられれば御の字。
「工事を開始します」


シャルロット・クリスティア
なんか微妙に締まりませんが。……まぁ、不慮の事故です。切り替えていきましょう。

闘技場に降り立ち、ガンブレードを手に。
正面からの接近戦を挑みます。
それなりに剣術の心得はあるつもりですが、相手はアサシン系、搦め手を得手とする模様。
馬鹿正直にやり合うのは少々骨が折れそうです。細かい動きも見逃さず、極力見切ってはいくつもりですが。

ただ、本当の目的は表に立たせ続ける事。
えぇ、私自身が餌です。狩りに来させるための。こちらも隠れてしまうと出てきてもらうのは難しいですからね。

本命は、飛び降りる前に周囲に配置していた複製機関銃の包囲射撃。
照準内にいるなら、叩き込むのみ。
無策で出てくる馬鹿が何処にいますか。



●コンバット・オープン
「なんか微妙に締まりませんが」
 派手なくしゃみをしながら、先の戦いでぶち取れた片腕を念動力で繋ぎとめる青い美女の姿を見て、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は白い息を吐く。
「……まぁ、不慮の事故です。切り替えていきましょう」
「ええ。敵対対象:猟書家を確認、交戦を開始します」
 その横にはクネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)が。動力甲冑の発する熱が蒸気を上げて、湖底の石床を蹴り上げて共に進む。目指すは猟書家――バトラー・サファイア。
『……揃いも揃って剣闘士の真似事か? 愚かな』
 対峙した猟兵はそれぞれがガンブレードとパイルバンカーを構え、一直線に向かってくる。だが多勢に無勢なのは凡百の話。猟書家にして最強の暗殺者たるサファイアにしてみれば、些か数が足りてない。
『ならば歓迎しよう、盛大に散るがいい』
 片手を振り上げるサファイア。その無拍子の挙動には無数の殺意が仕込まれていた。シャルロットとクネウスの進路上には音より早くサファイアの暗器と麻酔針、そして念動ナイフがいつの間にか配される。それぞれ軌道も速度も違う――迂闊に飛び込めばどれかが当たる寸法だ。
「溺死寸前だったあなたに言われたくありません――ね!」
 裂帛の気合と共に大きく踏み込むシャルロット。同時に引いたトリガーが魔力を炸裂させ、極小の爆発が反発力となって殺意の波を打ち消した。
「矢張り、早い……!」
『それが見切れぬと思ったか?』
 しかし殺意の波は収まらない。二つ、三つと続けざまに放たれる暗器の数々がシャルロットの足をその場へ縫い付ける。
(馬鹿正直にやり合うのは少々骨が折れそうです。ですが)
 それもまた、シャルロットの狙い。表情一つ変えずにサファイアを睨む青い瞳は、未だ戦意を失ってなどいなかった。

「ではこちらは如何でしょう?」
 もう一人――クネウスは装甲と対艦装備の攻盾兵装で露出している生身を庇いつつ、殺意の波をかき分けて前進する。スラスターの噴煙が凄まじい水蒸気を立ち上げて、まるで瀑布を掻い潜る様に進む姿は装甲ロケットの様。しかし。
『温いわ鎧装騎兵! そんな手合いは飽くほど刃を交えたぞ!』
 一つ一つが小さいのならば、それを束ねて放てばよい。念動力で結集させた暗器の塊を、まるで巨大な宝石の様なそれをサファイアは無手で投げ放つ。何も暗殺は密やかに行われる物だけではない。確実に対象を殺しさえすればよいのだ。
「計測、高密度大質量の誘導弾……ならば」
 転送――ゲオルギウス。装着/照準/射撃開始。虚空より現れた黒鉄の巨砲が火を放つ。せいぜいあの塊を砕くまで。速度を落とさぬ為には破砕後にパージを――しかし飛び散った破片はどうするか? クリスタリアン達はフィールドを張っているが、仲間達は。
(……まあ、大丈夫でしょう)
 周りは屈強・精強な方ばかりなので。多分。破砕と同時に装備を投棄し、クネウスは再びサファイアへと向かって行った。

『ハハ、随分とやるようだが仲間は大丈夫か?』
「凄い、流れ弾が……」
 ぼやくシャルロット。剣戟で破片を咄嗟に打ち払うも、サファイアの猛追と合わせ息も絶え絶えだ。そのシャルロットを庇う様に射線の前に出るクネウス。一瞬、背中越しに飛ばしたドローンで後ろのシャルロットへ声を掛ける。
「仕込みは?」
「とっくに」
 ならば重畳。サファイアは完全に術中に嵌っている。猟兵達は暗器の猛襲に彼女へ近付きたくても近付けないのだ、と。
「では……CODE:LUCIFER。仕掛ける!」
 再び、クネウスの動力甲冑が勢いよく青い炎を吐き出して突進。同時に右腕の機関銃が火を噴いて、殺到する殺意を跳ね除ける様に弾雨が青い肌へ向かう。それでもサファイアから発された念動の壁が直ちに火線をあらぬ方へと導いて、再び哄笑を上げる彼女の声が戦場に木霊する。だが、そこまでは二人とも十分に見切っていた。
『だから、温いと言っている!』
「凍えそうだった癖に」
 狙いはただ一つの火線ではない――瞬間、突如現れた無数の弾雨がサファイアの全身を貫いた。猛獣の咆哮の様に荒れ狂う機関銃の駆動音が戦場を埋め尽くし、地獄めいた鋼のオーケストラが開幕したのだ。
『何……これ、は……』
 総勢91丁の研ぎ澄まされた鋼の牙は全てシャルロットの超常――複製された機関銃は先の戦いの内に、湖の縁からサファイアを取り囲む様に配置されていた。数は既に足りていたのだ。そして全方位から撃たれ続けては最早暗器を手繰る事など不可能。ただ殺到する鋼の地獄を耐える為に、己の周囲に念動の壁を張り巡らせる他はない。
「無策で出てくる馬鹿が何処にいますか」
 そして、一度崩れた均衡を戻す事は出来ないのだ。もう一丁……クネウスが手にする魔王の名を持つ機関銃が遂にサファイアを捉える。それこそが本命の一撃。
「ターゲットロック、では……」
 策は嵌った。式は成った。この弾丸さえ当たれば良い――懐に飛び込んだクネウスは零距離、左腕に組付けたパイルバンカーの鋭い先端をサファイアの腹部へ押し当てて。
「工事を開始します」
 最大圧力、三点バースト。これこそがパイルバンカーの本来の運用。フィナーレのパーカッションが甲高い悲鳴と地響きを合わせ、湖底の戦場に大きく轟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メイスン・ドットハック

【WIZ】
わざわざ水の中で待つとは、面白い演出ではあるのー
バトラーよりエンターテイナーでもなっておった方がよいのではないかのー

サファイア・フラッシュ直前にKIYOMORIを呼び出して壁となって光を遮る
その間にUC「美しき原初の紫水晶空間」で猟書家をアメジストの迷宮に閉じ込めて、サファイアの過去存在を透明化させていき、ダメージを与える
迷宮強度を上げるために他のクリスタリアンやゲルニカにサイキックエネルギーの供給をお願いする
出口に出てきた所をキャバリアKIYOMORIの全武装一斉砲撃とクリスタリアン達の攻撃を合わせるように指示

そーれ、いい的が出てきたけーのー!


鏡島・嵐

なんだかんだで、この船も戦争と関わりがあったってわけか。
でも、今は違う。古いものを伝えながら、新しい世界っていう大海原に漕ぎ出そうとしてる。……だったら!
おれだって、怖ぇけどやれることをやるだけだ!

《笛吹き男の凱歌》で、味方やこの船の人たちを強化する。ただの道化じゃねえって、見せつけてやれ!
ちょっと距離を取って〈スナイパー〉ばりに精度を引き上げたスリングショットの一撃で他の味方を〈援護射撃〉で助けたり、向こうの攻撃に〈フェイント〉を混ぜた〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉を合わせて妨害したり。
閃光で目を眩まされても、〈第六感〉である程度はカバーできる。それでも足りないなら〈オーラ防御〉で守りを固める。



●蒼玉は道化師の迷宮で舞い踊る
「わざわざ水の中で待つとは、面白い演出ではあるのー」
 煽る様に、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)が砕けたサファイアをじろりと見やり呟く。パイルバンカーで風穴を変えられた青い宝石が寄り集まって、徐々に肉体を再構築――まともなクリスタリアンではとても耐えられた代物では無い。
「バトラーよりエンターテイナーでもなっておった方がよいのではないかのー」
 その奇術めいた動きを皮肉って、紫水晶の少女は油断なく端末に指を滑らせる。幾ら莫大な念動力とはいえいつまでもこんな事が出来る訳が無い。エネルギー総量は明らかに減った――畳みかけるならば今だ。
『子供が吼えるな……貴様も同じ様にしてくれる』
「おお、怖……」
 凄むサファイアに、さもつまらなそうに言葉を返す。相対距離は十分。包囲も完成している。それに。
「なんだかんだで、この船も戦争と関わりがあったってわけか。でも、今は違う」
 湖の縁に立つもう一人の猟兵――鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)が力強く宣った。ここに立つ者は皆、過去を諦めなかった今そのもの。幾ら強大なオブリビオンが相手だろうと、決して引けをとる存在じゃあない。
「古いものを伝えながら、新しい世界っていう大海原に漕ぎ出そうとしてる。……だったら!」
 だからこそ――超常が唸りを上げて、道化師のヴィジョンを形作る。まるでメイスンが呟いたエンターテイナー……派手な舞台衣装に形の変わらぬファニーフェイスの仮面がぐにゃりと歪んで、歪な金管楽器を口元へと寄せた。
「おれだって、怖ぇけどやれることをやるだけだ!」
 そして三度目の戦いの開幕を告げる、ラッパの音が雄々しく戦場に鳴り響いた。

「主の使いも出来ん様じゃ、執事失格じゃけーのー」
『舐めるなよ、ドクトル擬きが粋がるんじゃあ……ない!』
 激高、そして発光――サファイアの肌から目も眩む閃光が放たれて……そして全て、無色の空間に吸い込まれる。
『何だと! バリアか!?』
「当たらずも遠からずという訳でも無いがのー」
 表情も変えずにメイスンが宣う。光を吸い込んだ区間が歪んでその正体、紫水晶の迷宮がドーム状にサファイアを取り囲む。
「これが今を生きる者の意地って所じゃのー」
「さあ……ただの道化じゃねえって、見せつけてやれ!」
 そして迷宮には嵐の超常――道化師の導きでその意志を、力を何倍にも増幅されたクリスタリアン達と、ゲルニカの念動力が注ぎ込まれる。触れれば自身の過去が、存在が希薄になる猛毒の迷宮。光を放とうとも、暗器をぶち当てようともそれは決して砕けない。過去という情報を今という現実が永遠に上書きしていくだけ。
『舐めるな、種が分かればこんな手品など……!』
 だがサファイアも一流の暗殺者。迷宮じみた監獄からの脱走など、闇に生きた戦士にすれば抜け出すのも難しくは無い。やるべき事は来まっているのだ――紫水晶に触れぬ様に、風を纏って高速で迷路を抜けるサファイア。今が過去を侵食などと、そんな冒涜に折れるほど蒼玉は柔では無い。
「そう簡単に進ませるかっての!」
 そこに上より俯瞰する嵐が特製のスリングショットをサファイアに放つ。その度にメイスンが射角に合わせて穴を開き、天より降り注ぐ精緻な射撃を避けながら、まるで導かれる様にサファイアは迷宮を進んで行った。
『そうか……理解したぞ、この迷宮は!』
 ユーベルコードにはルールがある。触れて消えるかゴールに辿り着かない限り、ここから抜け出す事は絶対に出来ないのだ。嵐の投射に呼応して返す刃を放とうにも、僅かに遅れたその一撃は紫水晶の壁に阻まれる。だからこそ、サファイアは本能のまま、導かれるままに早足を進めた。マッピングは粗方済んだ。ならば出口は一つ――!
『残念だが、ここが終点の様だな』
 紫水晶の裂け目から光が漏れる。間違いなく出口――音より早く出でて、ここを抜ければ反撃の時間だ。しかしそれこそが、メイスン達の真の狙い。
「おめでとう。そしてさよならだ」
「元より位置が悪かったのー」
 眩い船内照明に目が馴染んだ時、目の前には巨大な人型戦闘兵器――メイスンが搭乗するKIYOMORIが、鈍い光を放つ銃口をサファイアへと向け待ち受けていた。
「そーれ、いい的が出てきたけーのー!」
 メイスンがコクピット内でコンソールを叩き全セーフティを解除する。0-XIIドクトルが導き出した未来の答え合わせ――つまり現在の、サファイアを一網打尽にするプランの総仕上げ。
「やっちまえ皆! おれ達なら出来る!」
 応! と威勢よく嵐の号令に呼応するクリスタリアン達。迷宮に注いでいたエネルギーを全て攻撃へ転化して、嗤う道化の旋律に合わせながら極彩色の念動の渦がサファイアの頭上より降り注いだ。その威力に石造りの床がめきめきと剥がれ落ち、排水した筈の湖の水がそこかしこの亀裂から吹き荒れる。
「さて、ぶちまわすけーのー」
 続けて、ガクンとKIYOMORIの両腕が外れ、サファイアを包囲する様にレーザーを浴びせながら、機体が背負った長大な砲を大地に向けて放つ。
「後悔はしねえって決めたんだ……!」
 炸裂する破壊の渦を避けんと逃げ惑うサファイアへ、嵐は牽制のスリングを打つ手を止めない。その足元に、肩口に、僅かに体勢さえ崩せれば強烈な一撃が見舞われるのだ。痛みを堪えまるで踊る様に湖底だった石造りの大地を駆けるサファイアへ、狙い澄ました必殺の一撃が遂に届く。
『おの、れ……!』
「やはりエンターテイナーじゃけーのー」
 そして大地を舐めるように放たれたプラズマの光が、たたらを踏んで足を止めた美しき蒼玉を断末魔ごと飲み込んだ。最早後には何も無い……イオン臭を孕んだ極彩色の舞台は、吹き荒れる水と共に再び静寂を取り戻した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
【騎兵団〈渡り禽〉】アドリブ可

あれが猟書家…予兆で見た姿とは印象が異なりますが体調不良ですか? とは言え、排除すべき敵に変わりはありません。システム、戦闘モード起動。

現地住民の陽動と連動し、推力移動とダッシュで回避行動しつつマシンガンで弾幕を形成、ミサイル(誘導弾)で爆撃。敵の動きを固めてシエルさんが一撃を浴びせた後、指定UCで追い討ちします。
「クロムキャバリアの戦乱の象徴、その力をここに!」


シエル・カーネリアン
【騎兵団〈渡り禽〉】【POW】アドリブアレンジ可

噂の猟書家が可哀そうなことに…?まーでも倒さないとだから、やっていいですね?はい、チェンジアップ、モードX!

現地住民の陽動と連動合わせてダッシュで接近しますよ。飛んでくる敵の攻撃はバスターの弾幕でさくっと片づけ。懐に近づいたらモードZにチェンジ、剣の重量攻撃で怯ませますよ。隙ができたらあたしの必殺剣技…と見せかけてのシエルちゃんナッコゥ!!…をぶっかましますぞー!

攻撃したら速攻離脱ー。あたしなりに頑張った!ジェイミィさん、後は任せましたぞー


数宮・多喜
【騎兵団〈渡り禽〉】【POW】
【アドリブ改変・連携大歓迎】

まぁ、うん。
アイツらもいろいろあるんだろ。
残念な奴もたまにはいるんだろうさ……きっとね。
クリスタリアンの皆が一緒にいてくれるなら、
サイキッカーとして恥ずかしい戦いはできないからね。
サイキックエナジーのテレパスを戦場に張り巡らし、
【超感覚網】を紡ぎ上げるよ!

そうして繋いだ心の絆が、アメジストの攻撃の「起こり」を
知らせてくれるはず。
そいつに『カウンター』の『マヒ攻撃』の電撃を喰らわせて、
ペースを乱してやろうじゃないのさ!

闘劇も悪かないだろ、
観客に手を出すなんていけ好かないねぇ!
骸の海のバックステージまで帰りやがれ!


ユーニ・グランスキー
【騎兵団〈渡り禽〉】【POW】
【アドリブ改変・連携大歓迎】
漿船の住人とミュージカルっぽい寸劇を行い相手を挑発する【演技】を行う
その隙をつき団員に相手を攻撃してもらう
【ハッキング】で衣装の見た目をデータを被せて七変化!
多喜素晴らしい!これで思いを一つにするんだ!
住人への攻撃はリモート・レプリカントでキャバリアが受け止めたり妨害
プリンセスとバトラーのことは喜劇としてこきおろす
「演者さんにお手を触れるのは厳禁だよー」
「嗚呼!なんという悲劇!星の果て魔の手が差し向けられるなんて!」
「でも私達は負けないー!この魂がある限りー!」
「勝利を我らに!いざ往け渡り禽(レイヴン)!」(攻撃を防ぎつつ演技続行)



●渡り禽の凱歌
 上空から四つの影が飛来する。二つは巨大な人型兵器キャバリア、もう二つは等身大の――宇宙バイクに跨った女と、小柄な金髪の少女。冷たい風と巻き上がる上昇気流に乗せられた煙を総身で受けて、眼下の戦いに思いを馳せていた。
「あれが猟書家……予兆で見た姿とは印象が異なりますが体調不良ですか?」
「まぁ、うん。アイツらもいろいろあるんだろ。残念な奴もたまにはいるんだろうさ……きっとね」
 白いキャバリア――ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵・f29697)とスターライダーの数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)がぼそりと呟く。オブリビオンは骸の海で再現させられた過去。全てが同一では無いとは言え、目の前の蒼玉の執事はあまりにも滑稽に、無様に見えていた。
「噂の猟書家が可哀そうなことに……? まーでも倒さないとだから、やっていいですね?」
「そういう事だ。戦闘モード起動、騎兵団〈渡り禽〉――さあ、狩りの時間だ!」
 高らかに名乗りを上げた闇色のキャバリア――搭乗するユーニ・グランスキー(黒縞瑪瑙の才媛・f29981)が呼び掛けて、シエル・カーネリアン(通りすがりのぐうたらひぃろぉ・f28162)が腕のデバイスを大仰な仕草で起動する。
「はい、チェンジアップ、モードX!」
「了解。確かに、排除すべき敵に変わりはありません。システム、戦闘モード起動」
 思い思いの言葉を返し、まるで悲鳴の様な駆動音が空に響き渡る。アイドリングからスロットルミリタリー、幾ら残念に見えても目の前の敵は猟書家――油断のならぬ相手である事に変わりはない。
「サイキッカーとして恥ずかしい戦いはできないからね。行くよ!」
 多喜が吼える。万感の思いを込めて――再び帰ってきた宇宙の海に、自らの帰還を大きく示す様に。

『クッ……大分、身体を持っていかれたな……』
 サムライに片腕を斬られ、パイルバンカーに懐を砕かれて、プラズマの波に呑み込まれ……並のオブリビオンでは骸の海へ早々に帰還せざるを得なかっただろう。しかしサファイアは猟書家、そして旧き戦いを潜り抜けた古強者の一人。幾ら五体を裂かれようと、念動力が続く限り引くつもりなど毛頭も無かった。
「嗚呼! なんという悲劇! 星の果て魔の手が差し向けられるなんて!」
 そんな奇術師めいた蒼玉を煽る様に、外部マイクで女の声が響く。同時にキャバリアの巨躯が大地を揺らし、無機質なカメラアイが獲物を見定める様に首をサファイアの方へぐらりと向ける。
『猟兵……数で来たか……!』
「でも私達は負けないー! この魂がある限りー!」
 続けて歌劇の様に悪道化るユーニの声へ歯噛みするサファイア。いつの間にか周囲を二体の巨大な人型兵器と空間騎兵、そして鎧装騎兵らしきものに囲まれていた。戦いに集中していて気づけなかった――彼女らが既に、戦場の遥か高くに転移していたという事を。
『やって見せよ、旧式の機動兵器如きが――!』
 ここは最古にして最新の宇宙、そんな技術はとうに廃れているのだと――振り絞った念動が全方位に無数のナイフを、暗器をばら撒いて、一斉に<渡り禽>の面々を攻撃――それだけでは無い。狙いは先程から猟兵を支援し続けるクリスタリアンの住人達にも。しかし。
「観客に手を出すなんていけ好かないねぇ!」
『! 念動力か!?』
 それは既に見切っていた。伊達に数多の戦場を潜り抜けてきた訳ではない。銀河帝国攻略戦から今に至るまで、潜り抜けてきた修羅場の数はサファイアに引けを取らない――あるいはそれ以上。口元を歪ませて多喜が片手を振るえば、超常のテレパスとテレキネシスが空間を支配して、多喜の力を極限まで高めていく。
「闘劇も悪かないだろ。お代はいらねえ……骸の海のバックステージまで帰りやがれ!」
『舐めるなッ! 格の違いを見せてやろう!』
 ぶつかり合う念動と念動。多喜の背にはクリスタリアンの思いが。サファイアの背にはプリンセスとの誓いが。それぞれの意地が力と化して、軋んだ大気が破裂音を響かせた。だが、僅かな隙にサファイアが仕込んだ超常を発露――見えざる魔の手が狙うのはユーニのキャバリア。
「ニードルガン! 関節が!?」
「焦るな! 足を止めたらやられるよ!」
 クリスタリアンを守るべく機体を飛ばしたユーニを襲ったのは、関節の隙間から捻じ込まれた麻酔針。音より早く音もたてずに放たれたそれが機体の制御系に浸食し――念動力を込めた一種の拘束具の様なモノ――ユーニは辛くも停止する機体から飛び出して一命をとりとめる。
「そうですよー。それにあたしだってぶっかましますぞー!」
 続けて飛び出したのは青い装甲に身を包んだシエルの姿。ジェイミィの援護射撃の弾幕を背後に、自身も腕に嵌めたフォトンバスターから無数の光子弾を乱れ撃ち、あるいは特大の溜め撃ちでサファイアを翻弄する。
『鎧装騎兵か、いや……!』
「当たらなければ弾幕薄いぞーって奴ですよっ! それっ!」
 暗器の束を押し返し、無数の礫を相殺すれば互いの溝など容易に埋まる。埋めて作った道を進めばターゲットは目の前に――瞬転、シエルは力ある装甲を青から赤に。世界を救った反逆者のレプリカは、果たして異世界でもその力を十全に発揮した。
「零距離ッ!」
『させるかッ!』
 抜刀――光剣の重い一閃がサファイアを僅かに退かせ、その隙をシエルの超常が、眩い光を放ったガントレットの一撃が、蒼玉を彼方へと吹き飛ばす。剣戟を囮にした文字通りの奥の手は空を揺るがし、炸裂音と共に踏み込んだ石造りの床へひびを入れる。
「あたしなりに頑張った! ジェイミィさん、後は任せましたぞー」
「任務了解。クロムキャバリアの戦乱の象徴、その力をここに!」
 騎兵団の名は伊達では無い。戦場を駆け抜けた烏達の周到な作戦は遂に最終段階を迎える。虚空に手を掲げたジェイミィの肩には、いつの間にか超常の巨砲が――それはまるで地獄を想起させる赤と、全てを焼き尽くす灼熱が濛々と水蒸気を巻き上げて、圧倒的な威容をその場に顕現させていた。
『対物兵装、いや……これは!』
「戦略兵器殲禍炎剣――異邦の方は初めてでしょうが」
 クロムキャバリアの空を支配する無慈悲な鉄槌。それを模した禁忌の兵装がゆっくりとその咢を開ける。ターゲットは既にレーザーで捉えた。アクティブセンサが相対距離を算出し、最適な射撃角を自動で計算――些か大きさに差があれど、手心を加えられる相手では無い事はウォーマシンの自身が一番知っていた。あれは、絶対に野放しにしてはならない敵だ。
「容赦はしません」
『当たるものか!』
「いいや、当たって砕けろ!」
 絶死の光線から逃れようとふわりと浮かび上がったサファイアを押し留めたのはサイキック――多喜の渾身の念動力が雷となって、蒼玉を逃さぬと再び大地へ叩き付けた。
『念動電撃……おのれ……』
 だが、奴の超常の源は周囲のクリスタリアン――力を振り絞り、ばら撒いた暗器を再び人々へと向けた刹那、それを止めたのは主のいないキャバリア――ユーニのdunkel Onyx。超常で遠隔操作したそれが、まるで守護者の様に人々との間に割って入る。
「こらこら、演者さんにお手を触れるのは厳禁だよー」
 いつの間にか派手な衣装で着飾った――まるでプリンセス・エメラルドの様な出で立ちのユーニが、片手を胸に歌う様にサファイアを翻弄する。
『主までも愚弄するか、貴様……!』
「勝利を我らに! いざ往け渡り禽(レイヴン)!」
「了解――目標確認、破壊します」
 機は熟した。放たれた禁忌の炎はプラズマを帯びて、巨大な質量弾が拘束されたサファイアへと牙を剥く。一撃必滅の巨槍はゆっくりと前進し、そして光の速さで蒼玉を撃ち貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス

現れたわね猟書家バトラー・サファイア!(アベイロンでこっそり冷風を送りつつ)
この世界の平和のためクリスタリアン達も殺させないし、ゲルニカも渡さないわ!(はい、これっと他住人にうちわを渡し猟書家を扇いでもらう)
海賊SkyFish団船長!ヘスティア・イクテュスが貴方の命を頂くわ!さぁ!何か言い残すことはあるかしら?(プチヘスを召喚し同じく扇いで…)


タロスを眼前に構え閃光を防ぐ【盾受け】
敵位置はアベルを使って把握【情報収集・見切り】
たかが視界(メインカメラ)がなくっても!やりようはある!

アベイロン出力最大!『エネルギー充填』!
マルチ・ブラスター冷凍光線モード!発射!!【属性攻撃】


リア・ファル
分かってないね、執事(バトラー)
不滅を謳う姫翠玉と共にいるから「次代へと紡ぎ、繋ぎ、継がれていくモノ」に不案内になるのさ

その為の戦艦、そのAIであるボクも戦おう
今を生きるゲルニカの明日の為に!

UC【慧眼発動】も含め、すでに演算解析は完了している
(情報収集、偵察、学習力)

アサシネイションがお得意なら、
その全てに此方も攻撃を合わせよう(カウンター)
麻酔針を避け、暗器を『ヌァザ』で受け、そのまま蹴り返し
閃光は『ライブラリデッキ』製の蓄光ペイント弾で塗りつぶす

容赦がない? それはそうさ
ボクは銀河帝国に個人的な借りもあるしね

さあ、骸の海までお帰り願おうか!



●果てしなき願いを込めて
『猟兵が、これほどとは……だが』
 サファイアは恐怖した。異世界の、まさに災厄そのものじみた恐るべき一撃を全身で喰らったのだ。念動力で補修していた一張羅も今度こそ塵と化して、暗殺者と呼ぶに相応しい漆黒の戦闘用インナーが露わになる。自慢の蒼玉の肌はそこかしこにひびが入り、灼熱に焼かれた筈なのに、染み入る隙間風が妙に冷たかった。それでも、マグマの様に煮え滾る闘志だけは決して消えはしない。全ては主――プリンセス・エメラルドの為に。
『終わらせるわけには、いかない』
「いいや。分かってないね、執事(バトラー)」
 不意に凛とした声が戦場に響く。リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)――今を生きる者達の祈り。
「不滅を謳う姫翠玉と共にいるから『次代へと紡ぎ、繋ぎ、継がれていくモノ』に不案内になるのさ」
「だからあなたは終わりよ。猟書家バトラー・サファイア!」
 そして溌溂な声が被る様に。ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)――サファイアが世界を奪う猟書家ならば彼女は世界を奪い返した宇宙海賊。
『小娘どもが……ならば、見せてみろ!』
 じわりと熱い思いが込み上げる。かつての自身らと同じ様に銀河帝国に立ち向かった解放軍。思いを果たし今を生きる者達。自らの様に宝石の肌を持たずとも、彼女らは輝いて見えた。そのどれもが羨ましく――妬ましい。だから、壊す。
「言われなくても――その為の戦艦、そのAIであるボクも戦おう。今を生きるゲルニカの明日の為に!」
「ええ。海賊SkyFish団船長! ヘスティア・イクテュスが貴方の命を頂くわ!」
 そして、宇宙を駆け抜けた過去と今が交錯する。全ては未来を手に入れる為に。

「ティターニア、スロットルマキシマム! 追い込むわよアベル!』
『了解。全ドローン展開完了。フォーメーションデルタ、包囲戦術に移行』
 手にしたビームライフルの光条が戦端を開くと共に、ヘスティアの執事たるサポートAI『ティンク・アベル』が配下のドローンに続々と指示を飛ばす。人型、円盤、防盾、砲台――単独で小隊並みの陣容を誇るヘスティアの総火力はすかさずサファイアの全周を包囲し、先制してその動きを封じに掛かる。
『チョロチョロと、小賢しい真似を……!』
 しかし多勢に無勢は幾度と無く乗り越えた。サファイアの暗器、念動感応ナイフが取り囲むドローンを潰さんと一斉に放たれて、まるで統率の取れた鳥の群れの様に一つ、また一つとそれらを無力化していく。その後に来る攻撃――それを、猟兵は狙っていた。
『解析パターン照合、来ます』
「うん。ボクもすでに演算解析は完了している」
 先の戦いからずっと、アベルもリアもサファイアの行動を分析していたのだ。あえて残した導線に彼女に意思を向ける為に。
『大人しく運命を受け入れていれば……!』
 そして、凄まじい青き光が戦場を覆う。露出の増した肌が眩い輝きを放って、サファイアに対峙する猟兵は動きを止める――筈だった。
「受け入れていれば、何ですって?」
 それでもヘスティアは止まらない。背負ったジェットパック――ティターニアが妖精の羽根の様な炎をちりちりと伸ばし、幻惑する様な機動でサファイアの方へと依然向かい続ける。
「たかが視界(メインカメラ)がなくっても! やりようはある!」
『波形解析、正面21時の方向』
 光は電磁波の一種である。発光時の揺らぎが振動を伴って――なまじ強烈な光であれば尚更――解析した波形に従いアベルが正確にサファイアの位置を割り出していた。防盾ドローン――タロスで正面を覆い目くらましを防いだヘスティアはアベルの導きに従って進むのみ。それはリアも同じ。自身の超常と超知覚が既にその手が通じない事を、自らの動きを以て証明する。
「左でいいじゃない!」
「でも、正確で助かる」
 アサシネイションが得意ならそれに合わせるだけ。起こりさえ感知出来れば、後は自然と身体が動く。大地を蹴り上げて、符の形を取ったライブラリデッキを淡い光を放つ愛銃へと流し込み、発砲――極彩色のねばついた蓄光ペイント弾がサファイアの全身を染め上げるのに、そう時間は掛からなかった。
『な、何を!?』
「コンビニ強盗対策よ!」
 仕込んだ針で軌道を逸らそうとした事が仇となる。爆ぜたペイントが全身を覆い、眩い光が一転して押さえ込まれた。それでも、と続々と暗器を投げ放つサファイア。包囲が狭まった分得物の数は増えた。故に狙うのはドローンでは無い――猟兵さえ倒せばチェックメイトなのだから。
『馬鹿にしてッ!』
「それはキミもだよ、バトラー」
 だが破れかぶれの一撃こそリアの思惑通り。間合いを詰められ、銀剣の一閃が暗器の尽くを叩き落とせば、最早自身の身を守るものは何も無い。
「言っただろう、解析は完了している」
「それじゃ皆! フィナーレよ!」
 そのまま直蹴り。スラリと伸びた足が蒼玉の魔人を真っ直ぐ吹き飛ばし――そこでようやく、サファイアは自身の異変に気が付いた。
「アペイロン出力最大!」
『エネルギー充填完了。セーフティ解除、ロックオン』
 動きが鈍い。関節がどこかぎこちない。ふと頭上を――戦場を囲むクリスタリアンを見上げれば、その手にいつの間にか団扇が握られこちらを扇いでいる。
「随分と亀裂が入っていたからね。内側から膨張する氷に押される気分はどうだい?」
『な、痛い……アアアアッ!!!!』
 幾ら排水したとはいえ元々湖だった戦場の湿度は高く、温度も低い。更にヘスティアの超常が――いつの間にか起動していた超常の光線銃が周囲の気温を一段と下げていた。そして再生の度に宝石の肉体に付着した水分が氷結し、メキメキと音を立てて膨張していたのだ。

『そこまでして……何故、戦う……!?』
 再生した声帯すら氷に侵されて、醜く変わり果てた声色でサファイアが問い、少女達が答える。胸に秘め、掲げた誓いと受けた祈りを。
「決まっているわ。やっと奪い返したこの平和」
「キミ達にくれてやる訳にはいかないんだ。それに」
 自慢のマグナムに炸裂弾を装填するリア。これで仕上げだ――横目にヘスティアを見やり、僅かに口端を歪ませて。
「ボクらは銀河帝国に個人的な借りもあるしね」
「アベル! マルチ・ブラスター冷凍光線モード!」
 そして照星に捉えた、変わり果てた蒼玉に告げる。
「さあ、骸の海までお帰り願おうか!」
「さぁ! 何か言い残すことはあるかしら?」
 撃鉄が弾くのは過去。齎すのは未来。
 一瞬の炸裂音が戦場に響いて、蒼玉は白光の奥に爆ぜる。
 今を生きる者達の祈りを、その一身に受けて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン

(あのペンギンは何方かのお知り合いでしょうか…)

この漿船で今を生きる命の為、その野望…打ち砕かせて頂きます!

ところで…
お召し物はもう乾いたでしょうか
従者の格好は主の面子でもありますし、騎士として風邪をひきそうな格好で相対されましても困りますので…
(至って真剣)

(ハンカチと池の水抜くまでに用意した携帯ヒーター投げ)
…改めまして
いざ、勝負!

UCの充填開始
暗器を格納銃器での●乱れ撃ちスナイパー射撃の●武器落としで迎撃
クリスタリアン達を●かばいつつ彼らと共に●怪力大盾殴打中心に接近戦

命を賭した彼らの覚悟、それを嗤う貴女にこの船に乗る資格はありません!

彼らの攻撃で出来た隙を瞬間思考力で見切りUC解放


秋月・信子
●SPD
魂は本物…
はい、私達は今を生きています
過去の闇を祓い前に進む
幾ら強大な力を持つ相手とは言え、貴方は過去に拘り続ける限り、私達は明日を、未来を信じて歩み続けるのです

住民の方を守りながら、ショットガンの制圧射撃による鉄のカーテンで麻酔針を撃ち落とします
弾に限りはある、ですか
はい、あります
ですが、彼らが装填してくれた銃に持ち替えればイーブンです

相手に隙が生まれたらハンドガンをドロー
イメージする破鎧の魔弾は、サファイアよりも硬く硬度の高い宝石『ダイヤモンド』
モース硬度ではサファイアの次に硬いのはダイヤモンドです
クリスタリアンの身体は宝石鉱物、通用するか分かりませんが…試してみる価値はあります!



(あのペンギンは何方かのお知り合いでしょうか…)
 蒼銀の機械騎士は周辺を走査して、それが既にいない事を確認する。些細ではあるが、余計な犠牲を増やす事は彼の矜持が許さない。非戦闘員の不在を改めて確認し、機械騎士はゆっくりと傷だらけの戦場へ姿を現した。

●渇望
「……お召し物はもう乾いたでしょうか?」
 変わり果てた姿――ひび割れた蒼玉の肌から漏れる念動が空間を歪ませて、凍てついた表面には薄く霜が張っている。それでも、怨嗟を込めた美しき双眸が声の主、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)へと向けられて。まるで視線で射殺さんとする凄みがあった。
「従者の格好は主の面子でもありますし、騎士として風邪をひきそうな格好で相対されましても困りますので……」
 そんなサファイアへ律儀にハンカチと携帯ヒーターを投げ寄越し――決して挑発では無い。騎士として正々堂々、正面から戦うという矜持を守る為――じわりと温もりが全身を包んで、サファイアは水の滴る素肌をさっと拭き取る。湧き上がる感情は屈辱か。否、忘れかけていた彼女の矜持。余りにも浅ましかった自身への怒り。
『フフ……ハハハハ!』
「何か、おかしな事でも?」
 ゆっくりと立ち上がり、渾身の念動を込めて五体を再構築する。内臓はズタズタ、恐らく次で最後になるだろう。ならば形振り構ってはいられない。元よりそうだったのだから……何故ならば。
『そうだな。我が命は主の為に。そんな当たり前のことを、よもや忘れるとは……』
 故にサファイアは己を諫める。自身の勝利や栄光の為ではない。侮蔑していた今を生きる者にそれを思い起こさせられるなどと、正に。
『――執事失格だ』
 だが今ならば――己が使命をはっきりと思い出したサファイアは周囲に無数の暗器をバリアの様に張り巡らせて、トリテレイアを正面から再び睨みつける。
「では。この漿船で今を生きる命の為、その野望……打ち砕かせて頂きます!」
『我が主の悲願の為に……この生命の全てを賭けて!』
 交錯する咆哮と共に機械騎士の巨躯が飛びだして、最後の戦いが始まった。

「全方位攻撃ですか。まだそれ程の力があるとは――」
 まるで群がる雲霞の如く、サファイアが投げ放った無数の暗器は絶え間なくトリテレイアを襲い続ける。更にはその先――長い戦いに疲弊したクリスタリアン達にも向けて、サファイアは無音で殺意を飛ばす。
『口だけか機械騎士、今を生きる魂とやらもその程度か?』
 全身全霊、最後の念動力。飛び交う殺意の群れを自身に仕込んだ無数の火器で叩き落として――それでも一手及ばない。トリテレイアの迎撃を躱した僅かな暗器がクリスタリアンへ飛翔する。しかしサファイアは忘れていた。これまでも、猟兵は決して一人では無かった事を。
『散弾、だと?』
 破裂音と共に暗器は砕け散った。狙いが小さいならば飛翔範囲そのものを狙えばいい。不意を打たれたサファイアが銃声の方を向けば、青と紫の強化スーツに身を包んだ秋月・信子(魔弾の射手・f00732)の毅然とした視線と絡む。
「過去の闇を祓い前に進む。幾ら強大な力を持つ相手とは言え――」
 ガシャンと次弾を装填し銃口をサファイアへ向けながら、信子はトリテレイアへ静かに近付く。未だ空を舞う暗器は無数にある。これの対処をしなければ――それに。
「貴方は過去に拘り続ける限り、私達は明日を、未来を信じて歩み続けるのです」
 魂は本物だとゲルニカは言った。その通り、自分も皆も今を生きている魂だ。だからこそ過去が未来を奪おうとするならば、断固として立ち向かうだけだ。
『新手か。全く……飽きんな、猟兵というモノは!』
 口元を歪ませて暗器を集束――まるで巨大な槍のような形に結集したそれを、並んだ二人目掛けて投げ放つ。風を裂いて、念動の壁が弾雨を退き――それでも、トリテレイアが手にした大盾が強引にそれを捻じ伏せた。背後には信子の姿が。合流した二人は言葉少なに情報を共有し、次なる策に打って出る。

「助かりました。状況は?」
「滞りなく……と言いたい所ですが」
 伏せた札はもう一枚。それを開く時は本当の最後だ。故に信子は再び散弾銃を手に前線へと舞い戻る。こちらの手の内を読ませない為に、あえて囮役となったのだ。
「……なので、迎撃を再開します」
 呟くと共に発砲、装填、発砲――リズミカルに散弾を連射して、信子は宙を舞う暗器を強引に捻じ伏せる。一方のトリテレイアは塊と化した暗器を大盾で吹き飛ばし、スラスターを吹かして一気にサファイアへの距離を詰める。
『撃ちっぱなしのつもりか? それでは弾も尽きるだろうよ!』
「ええ。ですから」
 最早ガラクタと化した暗器を念動で掬い上げ、目晦ましの礫代わりに放つサファイア。だがその攻撃も、弾切れした筈の信子の銃撃が撃ち返す。
「彼らが装填してくれた銃に持ち替えればイーブンです」
 信子が片手を上げる度に、周りのクリスタリアンが装填済みの銃を念動で飛ばして寄越していたのだ。そうすれば弾切れの心配は無い――しかし。
『そうか……あえて得物を用意してくれてありがとう!』
 念動で飛ばすならばその邪魔をすればいい。そして全ての銃をサファイア自身の念動で強引に拾い上げれば――形勢は逆転。すかさず全周に向けて、サファイアは奪った無数の銃火器で発砲を開始する。

「――それを待ってましたよ、バトラー・サファイア」
『何、これは……!』
 派手な音を立てて硝煙が立ち込める。それでも煙の奥、傷を負ったものは一人も居なかった。何故ならば弾は全て弱装弾――手負いのクリスタリアン達の念動の壁でも十分に防ぐ事が出来る。そして拾い上げた大量の銃火器の制御で手一杯になった今、最大の隙がサファイアに生まれていた。
「今を生きる者の覚悟、甘く見ないで貰いたい」
 突進――爆音が戦場に轟いて、トリテレイアは更に加速した。そのまま大盾でぶちかまし、吹き飛ばされたサファイアを信子の超常――必殺の魔弾がその身を穿つ!
「あなたが幾ら硬いサファイアだろうと、これはどうでしょう?」
 それはサファイアよりも硬度の高い宝石『ダイヤモンド』をイメージした超常の弾丸。その弾を装填したサイドアームのハンドガンの一撃が見事にサファイアの肩口を貫き、よろけると共に制御を失った銃火器が一斉に地面へバラバラと落ちていく。
「命を賭した彼らの覚悟、それを嗤う貴女にこの船に乗る資格はありません!」
『謀ったか、猟兵!』
 よろけながらも立ち上がったサファイアの前には巨躯の機械騎士の姿が。その手にはバチバチと紫電を纏った刃の無い大剣が掲げられていた。
「……充填中断、刀身解放!」
 バチリ、と柄から蛇の様にのたうつエネルギーケーブルがパージされ、獣の雄叫びの様な駆動音と共に超高温の白き刃が抜き放たれる。
『ああ、光が……』
 それがサファイアが見た最後の光景。巨剣を高く大上段に構えた機械騎士の雄姿。

『エメラルド、様……』
 ゆっくりと過去が脳裏を過る。かつての銀河皇帝との激しい戦いも、骸の海より蘇った今も、何もかもを白刃が飲み込んで。
『いつか、宇宙に、静寂を……』
 それは主の願いか、私自身の祈りか。
 最早分からない。私は骸の海へと還るのだから。
 この思いも戦いも、何もかも忘れてしまうだろう。
 ただこの一瞬、誇り高き騎士と戦士と、
 宇宙を駆け抜けた少女達と、
 勇ましい異邦人の騎兵隊と、
 紫水晶の少女と勇気ある若者と、
 練達の狩人達と、サムライと……。
 戦の無い静寂、その願いは彼等が叶えてくれる。
 サファイアは不意に思い、骸の海へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月13日


挿絵イラスト