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また花開く

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #機甲戦乙女ロスヴァイセ #アリスナイト

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●再建するもの
「フーレイ! ウェイヘイ!」
 アリスラビリンスにある瓦礫の街に、愉快な仲間たちの声が響く。
「おもちゃの街を作り直そう!」
「壊されちゃった街だって!」
「僕らにかかればまた元通り!」
 2頭身の小人の姿をした働き者の彼らは、昔オウガに破壊された廃墟を修復中だ。そういう仕事を好む習性なのだろう。
 その小人たちに混じってせっせと瓦礫を片付ける、人間の姿がひとつ。アリスナイトの少女で、名前はボナ・ノクス。
 この世界に召喚されたアリスであるボナは、どういう訳かユーベルコードをうまく発動できず、小人たちに匿われて一緒に暮らしていた。

「ふう……かなり片づきました、ね」
「そうだね! 僕たちとっても頑張った!」
「ふふ。そろそろ、次の作業の始まり、でしょうか?」
 ボナはふわふわした前髪の奥の優しい青い目を向けて、小人たちに問いかける。

「そうさ! でも……困ったな困ったな!」
「ど、どうしてです、か?」
「廃墟をようよう片づけて、いよいよ建てよう素敵な住居!」
「おもちゃの街の愉快な建築!」
「でも、僕たちはどんな建物がいいか思いつかない!」
「デザインやアイデアがあれば、どんな建物も建ててみせるよ!」
「ただし自分たちではデザイン出来ない! 小人ってそういうものさ!」
「ボナ、人間の君なら思いつかないかな! 楽しいおもちゃの建物を!」

 小人たちに頼まれたボナは、おずおずと頷いた。
「は、はい。考えてみます、ね」
 そっと目を閉じ、暗闇の中に思い浮かべる。心躍る造形、カラフルなおもちゃの家々。
 だがそれらのイメージが結実する前に、ボナの頭の中で一発の銃声が鳴り響き、全てをバラバラにしてしまった。

「あ……。ご、ごめんなさい。私も駄目みたい……です」
「いいのいいの! 気にしないで!」
「お茶でも飲んで気長に待とう! イメージをくれる人間が来てくれるのを!」
「そ、そうです、ね」
 小人たちは休憩を始めた。ボナは用意された紅茶にも手をつけず、あの銃声が何なのか考える。
 アリスラビリンスに来る前の記憶は曖昧で、不気味な暗闇に覆われていたが、最近はうっすらと思い出せるようになってきた。
 ボナは大きく息を吸い込み、記憶の闇へと踏み出した。

 記憶の中で、絵画教室に、ボナはいる。『先生』が絵の描き方を教えてくれる。ボナは『先生』と、絵を描くことが好きだった。
 ある日のこと、『悪者』が教室にやって来た。『悪者』は銃を突きつけて教室の皆を脅す。
 『先生』は落ち着いた態度で『悪者』と話し合おうとしたけれど、相手は聞く耳をもたない。
 そうして……『悪者』の銃で『先生』は撃たれた。命に別条は無かったが、利き腕を撃たれて、以前のようには描けなくなった。

 『先生』の優しさ、知識、技術、信念、創造する力……ボナが何より尊く思っていたそれらのものが、『悪者』には何の価値もないものだった。
 そしてたった一発の銃弾が、容易に『先生』の創造の業を破壊した。
 その衝撃以来、ボナの脳裏にあの銃声がこびりつき、筆を握る手を震えさせ、イマジネイションを閉ざしてしまった……。

「ああ、そう。そう、でした……」
 過去を思い出したボナは、小人たちに気づかれないようにそっと涙を拭う。

「強力なイマジネイション反応の兆候を検知。速やかに捜索し、排除を行います」
 そしてアリスナイトの命を狙う猟書家の影が、刻々と彼女に迫っていた。

●破壊するもの
「……というのが、現在進行している出来事です。
 予知で得た情報によると、ボナさんは本来豊かな想像力を持っているのですが、過去に受けた強い印象のために『自分のイマジネイションを否定するイマジネイション』、つまり銃弾のイメージにその想像力を費やしてしまっており、ユーベルコードを発動できない状態のようです」
 グリモアベースにて。眞清水・湧(分界簸却式超人類祖型・f02949)が集まった猟兵に説明をしている。

「そして幹部猟書家『機甲戦乙女ロスヴァイセ』が、ボナさんの命を狙っています。
 高い想像力を持つアリスナイトを殺して蘇らせることで、強大なオウガを生み出そうという計画のようです。
 推測ですが、ボナさんが殺されてオウガ化すれば、強力な銃撃で芸術を破壊して回るようなオウガに変貌するでしょうね」
 口を突いて出た自分の推測に思わず眉根を寄せて、湧は続ける。

「……どうかロスヴァイセを撃破し、ボナさんを守って下さい。
 そのために重要なのが、ボナさんの想像力を解き放ち、ユーベルコードを使用可能にしてあげることです。
 というのも、ロスヴァイセはボナさんの殺害を最優先目標に定めて行動し、そのための超高速狙撃ユーベルコードを用意しているので、ボナさん自身がアリスナイト・イマジネイションの無敵の鎧で身を守れない限り、庇いきることが困難だからです」

「ロスヴァイセがボナさんの前に現れるには、まだ少しの猶予があります。その間にボナさんの想像力を解放してあげるといいでしょう。
 解放の方法ですが、難しいことは必要ありません。ボナさんの精神的ダメージは回復しつつあり、立ち直るための準備は成されています。
 後は楽しく、力強く想像力を巡らせる姿を見せてあげれば、ボナさんも自由な想像のやり方を思い出せる筈です。
 勿論、優しい言葉をかけて勇気づけたり、一緒に想像力を働かせて想像の手助けをしてあげたりするのも効果的です。
 想像を形にする作業は、小人さん達がやってくれます」

 更に湧は敵のユーベルコード情報などを伝えた後、
「どうかよろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げて猟兵たちを送り出した。


魚通河
 トラウマを抱えたアリスナイトを守り、彼女の命を狙う幹部猟書家を撃退するシナリオです。

●第1章
 おもちゃの街を修復するボナと小人さん達を手伝います。
 デザインのアイデアを出す以外に、力や器用さを生かした作業をしながらボナと話すことも出来ます。

●第2章
 ボス戦です。ロスヴァイセは通常のユーベルコードとは別に、高速自動狙撃ユーベルコードを常に使用してボナを狙い続けます。
 1章が上手くいっていれば、街を離れた平地で猟兵と「アリスナイト・イマジネイション」を使用可能になったボナがロスヴァイセを迎え撃ちます。

●プレイングボーナス(全章共通)
 アリスナイトを励まし、「アリスナイト・イマジネイション」の威力を増加すること。
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第1章 日常 『おもちゃの街修復作戦』

POW   :    瓦礫をよける、大きな資材を運ぶ

SPD   :    おもちゃを組み立てる、高所作業を行う

WIZ   :    設計図を引く、道を整備する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 昔オウガに滅ぼされたというおもちゃの街。そのオウガがいなくなった今でも、破壊の爪痕は消えはしない。
 ほとんどの建物は崩壊して面影もなく、まだ片づけきれない瓦礫や残骸も散らばっていた。
 しかし街に注ぐ微風と陽光は穏やかで、復興作業を続ける小人たちの歌は賑々しい。再生の予感が廃墟を覆っていた。

「君たちが街づくりを手伝ってくれるって!?」
「感謝感激!」
「よ、よろしくお願いします、ね」
 街に到着した猟兵たちは、ボナと小人たちに手伝いを申し出、快く受け入れられた。
 ボナに迫る危機などの詳しい事情を伝えると話がややこしくなりそうなので、そこはまだ伏せてある。
 今はとにかく、ボナのイマジネイションを解放することが重要だろう。
 猟兵たちは思い思いの行動を開始する。
海藻場・猶予
食事も原稿も進まぬ程の物想い、さては恋煩いですね
……あら
いつもの冗談の心算でしたのに

閑話休題
鼻で絵を描く印度象と話した経験がありますが、彼女は見た事のある物しか描けないと云っていましたよ
哺乳類である以上、人間も同じなのでは?
現実《インプット》がなければ想像《アウトプット》は生まれない
しかし心的外傷以外の記憶がなく、新しい記憶を作ろうにも出歩くだけで危険が伴うと――

ああそうだ
わたくしの不思議の国なら安全ですから、休憩がてら案内しましょうか
見たままを受容して下されば宜しいので

海月の傘を屋根にした家だとか
海藻で編んだアーチに
生きた巨大蟹を骨組みにした移動テントもありますよ
お気に召す題材はありました?



●海底散歩へ
「食事も原稿も進まぬ程の物想い、さては恋煩いですね」
 海藻場・猶予(衒学恋愛脳のグラン・ギニョル・f24413)はどこまで本気か解らない言葉を、どこまで本気か解らない声音で、ふわふわ宙に漂わせた。
 一方、それを受け取るボナは何事も真面目に解釈する性質らしい。そして表情も解り易い。
「そ、そうなんでしょう、か?」
 あなたは恋をしているのだ、と指摘されて驚いたようだが、満更でもなさそうだ。
「……あら。いつもの冗談の心算でしたのに」
「ええ……そ、そうでしたか……!」
 意外、という素振りを見せると、ボナは気恥ずかしさからかあたふたしだす。

 と、そんなやり取りをいつまでも続ける訳にいかないので、猶予は話を本筋に戻した。
「閑話休題。わたくし、鼻で絵を描く印度象と話した経験がありますが、彼女は見た事のある物しか描けないと云っていましたよ。
 哺乳類である以上、人間も同じなのでは?」
「象さんが……。でも、それはそうかも知れません」
「現実《インプット》がなければ想像《アウトプット》は生まれない。
 しかし心的外傷以外の記憶がなく、新しい記憶を作ろうにも出歩くだけで危険が伴うと――」
 しゅん、とするボナ。その翳りを打ち払うように、猶予は手を鳴らした。
「ああそうだ。わたくしの不思議の国なら安全ですから、休憩がてら案内しましょうか。
 見たままを受容して下されば宜しいので」
「い、行ってみたい、です」
 食いついたボナに、それならばと猶予は【受容(メテフィラ)】の入り口、小さな海月を差し出す。
 海月の刺胞に触れたボナと猶予は、その中へ吸い込まれていった。

 世界の転変。
 瞬きの後、ふたりは海の中にいた。不思議と呼吸は出来るし、彼方からの光がぼんやりと、碧い世界の底を照らしている。
「わあ……!」
「さあ、どうぞこちらへ」
 猶予は水の流れを漂い、ボナは泳ぐとも歩くともつかない動きでついていく。
 揺らめく影と小さな足跡が不思議の国を横切る間に、ふたりは様々なものを見た。

 珊瑚の林を通り、巻貝の螺旋を登って、透き通る海月の傘を屋根にした家々を一望した。
 雲のように群がり過ぎていく魚影の下、海藻で編んだアーチの連なりを見上げて歩いた。
 生きた巨大蟹を骨組みにした移動テントを見送り、あれは誰にも行先が知れないのだと噂した。
 鯨の骨の橋を渡り、真珠貝のライトに照らされ、また海月の家の傘の下へ。

「夢の中にいるみたい……。ありがとう、ございます。素敵な世界を見せてもらって」
「どういたしまして。お気に召す題材はありました?」
「はい。沢山……」
「それはよかった。それでは、そろそろ夢から覚めるとしましょう」
「出口はどこでしょう、か?」
「出ようと思えば、いつでもどこからでも。ええ、このように」

 水のうねる音、潮の残り香が感覚の上を通り過ぎると、ふたりは元通り、廃虚の街に立っていた。
「す、すごい……これもユーベルコードの力、なんですよね?」
 ボナは声音にユーベルコードへの憧れを滲ませる。
「ええ。あなたも直にユーベルコードを扱えるようになりますよ。
 ……巷ではよく言うでしょう。恋する心の前に不可能は無い、というようなことを」
 思い出したように付け加えた猶予の一言に、ボナはまたあたふたするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レーヌ・ジェルブロワ
アドリブや連携OKです

辛い過去をお持ちの方。そこから立ち上がり、また花開こうとするその姿はとてもご立派です。その哀しみを越えて、善い方向へと導きましょう。

先ずはイマジネイションですね。
ボナさん、花のアーチと噴水など如何でしょう。おもちゃの兵隊さんたちがその下をくぐり行進する様子など、愛らしいと思いませんか。お姫様と王子様がそのアーチの下で永遠の愛を誓う時もくるかもしれません。花は枯れてもまた必ず咲きます。薔薇は年に二度咲くものもある…再生の街にはぴったりではないでしょうか。
小人さんたちは歌ってくださるのですね。ではご一緒に、楽しくなる歌を歌いましょう。お花が再び咲きますように。



●未来視の談話
「フーレイ! ウェイヘイ!」
 廃墟の広場。小人たちが輪になって踊る。
「小人さん達、歌が好きなのですね。わたしもご一緒しても?」
「どうぞどうぞ!」
 レーヌ・ジェルブロワ(いやはての白薔薇・f27381)の問いに、小人たちは同意する。
「では、楽しい歌を歌いましょう」
 レーヌの歌に合わせてくるくる回る小人たち。その様子を、ボナがぼんやりとした顔で眺めている。イマジネイションを膨らませようとしているのだろう。

 ゆるやかに歌いながら、ボナの横顔を見守るレーヌ。その眼差しは慈母を思わせる。
(「辛い過去をお持ちの方。そこから立ち上がり、また花開こうとするその姿はとてもご立派です」)
 哀しみを越えて、善い方向へと導けますように。
 ボナはイメージが上手くいかないらしい。浮かない顔で溜息をひとつ。それから何か見つからないかと視線を泳がせて、レーヌと目が合った。

「ボナさん、わたしもご一緒に、想像を語らせていただいても?」
 歌は小人たちが引き継いでくれた。レーヌはボナの隣に腰かける。
「あの、はい。どうぞ」
 ボナとレーヌは同じ目線で広場の跡地を眺める。
「あそこの入り口に、花のアーチなど如何でしょう。中央には噴水があって、水は陽を受けてきらきらと」
「お花……水……光……」
 ボナは夢見るように低く呟く。想像力を喚起しつつあるようだ。レーヌは更に続けて、見えないものを語った。
「おもちゃの兵隊さんたちがアーチの下をくぐり行進する様子など、愛らしいと思いませんか。
 お姫様と王子様がそのアーチの下で永遠の愛を誓う時もくるかもしれません」
「わあ……」
 ボナはレーヌと同じものを見ようと目を凝らす。
「ふ、ふたりを囲んでお祝いする花は……白い薔薇、ですか?」
「ええ、わたしもそう思っていました」
 薔薇の花束のヤドリガミの口元が綻んだ。
「花は枯れてもまた必ず咲きます。薔薇は年に二度咲くものもある……再生の街にはぴったりではないでしょうか」
「ふふ、素敵です、ね」
 同じ景色を見たことを確信して、ボナも微笑んだ。
 それから少女は更に先の光景までも語り出す……イマジネイションは解き放たれたのだ。

「いいねいいね! 早速作り始めよう!」
「まず広場の噴水! 周りの白薔薇園!」
「楽しい歌をお願いするよ!」
 作るべきものを示された小人たちは、待っていたんだとばかりに働き出す。
「ええ。ではこの歌を」
 レーヌは再び歌い始める。お花が再び咲きますように。街がもういちど生まれるように。
 小人たちは歌に合わせて軽快にステップを踏み、ボナは(歌も踊りも苦手なのか)身体を揺らして聞いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
想像の翼を銃弾が撃ち落とす、か。
なれば。それは必ずしも破壊を齎すものではないと、示してくれようか。
…些か荒療治となろうがな。

黄昏大隊・歩兵部隊にて召喚した兵を瓦礫撤去に回す。
大きなものはグレネードを用いて発破し片づけるとしよう。

武器の本懐は戦闘、そして敵対するものの殺傷。心なき者の手に渡れば、善良なる民を傷つける事も確かにあろうが…
(平らな瓦礫を前に魔導小銃を構え、発砲)
其は必ずしも破壊にしか用い得ぬものではない。時に創造も成し得るものだ。このようにな。
(瓦礫に弾痕で絵を描いてみせ)
破壊の後の想像、創造。ボナとやら、それはきっと貴殿にこそ為し得る行為であろうと余は思う。思うが儘、やってみよ。



●描く銃弾
「想像の翼を銃弾が撃ち落とす、か」
 ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は腕を組み、考える。瓦礫に立てられた戦旗は微風にはためかず、未だ戦いの時ではない。
「なれば。それは必ずしも破壊を齎すものではないと、示してくれようか。……些か荒療治となろうがな」
 戦争狂は深く頷くと手を掲げ、号令を下した。
「歩兵部隊、前へ!」

「ここだよ! 片づけられないのは!」
「うむ。危険である。みな離れよ!」
 街に残されている瓦礫は、小人たちの力で持ち上げられない巨大なものばかりだ。
 案内した小人たちが離れると、ギージスレーヴに召喚された【黄昏大隊・歩兵部隊(アーベントロート・ゾルダート)】はグレネードを使用した。
 爆破、粉砕。
「撤去!」
 そうやって砕かれた破片を、歩兵たちは速やかに運び去る。この作業を繰り返し、街の瓦礫は全て片付いた。
 そして、彼女たちの様子を物陰からこそこそ見ている者がひとり……ボナである。どうやら撤去作業は気になるが、武器を用いる歩兵部隊が怖くて近づけないらしい。
「(やはり恐れられているか)」
 ギージスレーヴは自覚しつつも、ボナに振り向いて声をかけた。
「ボナとやら、そのままでよい。暫し余の話に耳を傾けよ」
「は、はいぃ……」

「武器の本懐は戦闘、そして敵対するものの殺傷。心なき者の手に渡れば、善良なる民を傷つける事も確かにあろう。しかしだ……」
 歩兵たちが、手頃な大きさの鋼板を運んで来た。ギージスレーヴは魔導小銃でそれに狙いをつける。
「必ずしも破壊にしか用い得ぬものではない。時に創造も成し得るものだ。このようにな」
 発砲。少し狙いをずらして、また発砲。
「ひゃああ……、……?」
 銃への恐怖に目を覆うボナだったが、リズムよく続く発砲音に、勇気を出して目を向けてみる。
「あ……!」
 ギージスレーヴは、弾痕で鋼板に絵を描こうとしていた。手近にいて描きやすいもの……小人の姿を。
「も、もう少し……」
 少しずつ完成に近づく弾痕アートを見たくて、いつしかボナは歩み寄って来ている。更に続く発砲。

「……うむ。自作ながら、悪くない出来ではないか」
 多少歪みながらも、小人の姿を描ききったギージスレーヴが銃を降ろした時、ボナはすぐ隣に立ってそれを眺めていた。
「い、いいです、ね……街の広場に、飾りたいです。小人さんたちが廃墟を建て直した、記念に……」
「ああ、寄贈しよう。……ボナよ」
「は、はい」
「恐れることはない。破壊の後に来るべき想像と創造。それはきっと貴殿にこそ為し得る行為であろうと余は思う。思うが儘、やってみよ」
「や、やってみます……」
 まっすぐに見つめるギージスレーヴの視線を、ボナはおどおどしつつも受け止めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』

POW   :    モード・ラグナロク
【リミッターを解除して鏖殺形態】に変形し、自身の【寿命】を代償に、自身の【攻撃力・射程距離・反応速度】を強化する。
SPD   :    ヴァルキュリアバラージ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【装備武器】から【全方位への絶え間ない射撃】を放つ。
WIZ   :    死天使の騎行
レベル×1体の、【翼部】に1と刻印された戦闘用【少女型支援機】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギージスレーヴ・メーベルナッハです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●再生
「ええと、あそこにはこんな建物を……」
 猟兵の導きによって、自由な想像力を取り戻したボナ。塞き止められていたものが溢れ出すように、スケッチブックに次々とイメージを描き写す。
 猶予の世界に影響を受けた、海月と海棲生物の街並み。
 レーヌと共に想像した、祝福を告げる白薔薇の鐘楼。
 ギージスレーヴにヒントを得た、瓦礫を再利用した小人さん像。
「どんどん建てるよ!」
 小人たちは建てるべきもののイメージさえ示されれば、不思議な力で次々とそれを形にしていく。
 見る間に、廃墟は新たな街へと生まれ変わっていった。

「皆さんのおかげで、街を再建、できました。何とお礼を言っていい、か……」
「サンキュー! グラッツェ! ありがとう!」
 喜ぶボナと小人たちに、レーヌは優しく微笑む。
「わたし達はただお手伝いしただけ、街が蘇ったのはあなた方の働きあってこそでしょう。素晴らしい創造を見せて頂きました」
「多様性のある街並みになりましたね。時にボナさん、今ならユーベルコードを発動できるのでは?」
 猶予に促されるまま、ボナはユーベルコードを試す。
 猟兵たちによって齎された、イマジネイションの解放。ユーベルコードへの意志。恐怖の克服。
 全ての条件が少女の内に揃い、無事【アリスナイト・イマジネイション】は発動された。
「うむ、見事だ。これで次の話に進める。進まねばならぬ」
 ギージスレーヴはボナの命を狙う猟書家について語り……全てを知ったボナは自分を導いてくれた猟兵への信頼を示し、その庇護の下で戦うことを了承した。

●戦端
 再建したばかりの街に被害が及ぶことは避けたかった。
 また予知から察するに、幹部猟書家ロスヴァイセは、ボナの位置を何らかの方法で遠隔から感知している。そして彼女のユーベルコードの火力は、普通の遮蔽物などは軽々貫通する。
 例え洞窟などに身を隠しても外から狙いをつけられる上に、崩落で生き埋めになってしまう可能性もある。
 それらの事情を考えると、こちらからも相手を狙いやすい平地で迎え撃つのが得策に思われた。

「敵性存在を捕捉。排除を開始します」
 風舞う草原で。赤い機甲少女は悠然と飛翔し、高みからこちらを見下ろしていた。告げるのは予兆で聞いた言葉。
「発動カウントダウン、20、19……。最期に一言、記録に残したい言葉はありますか?」
「さ……最期なんて、嫌です。私、想像力は銃にだって負けて欲しくない……負けたくない、です……!」
「記録完了。カウントダウン、ゼロ。【ヴァルキュリアスナイプ・モード死天使の輪舞】、起動します」

 ロスヴァイセのユーベルコードによって、数体の少女型支援機が召喚された。
 それらは狙撃仕様の特別な機体であり、死者を迎える天使のように、ボナの頭上を旋回し絶え間ない高速狙撃を撃ち込む。
 しかし、ボナも負けじと【アリスナイト・イマジネイション】を発動している。
 蔓草の鎧がボナを包み、鎧に咲いた白薔薇や色とりどりの海草の花が、銃弾を受け止めて無力化していく。

「計測。着弾の度にイマジネイション反応に揺らぎあり。結論。狙撃続行により精神力を摩耗させ、防御を突破可能です」
「うぅ……」
 狙撃を防がれてもロスヴァイセに動揺は見られず、ボナは苦し気に呻く。このまま一方的に攻撃を受け続ければボナの精神力はもたないだろう。
 助勢しようとするあなた達に、ロスヴァイセ本体が銃口を向ける。
「妨害者は排除します……我等がフォーミュラの為に。大いなる闘争の為に」

●状況
 周辺に攻撃を防げる地形は無いが、ボナの近くにいれば蔓草を伸ばして守って貰うことが出来る。
 ボナは攻撃される度に恐怖で弱気になっていくが、うまく励ましてあげると回復する。
 ロスヴァイセは必要が無い限り地上に降りない。翼を破壊されると飛べなくなる。
 狙撃用支援機はボナを狙い続け、破壊しても再度召喚される。
月守・咲凛(サポート)
対空戦闘機の咲凛です。
空戦用の武装ユニットを装備してます。
私はお姉ちゃんなので、自分が怪我をしてでも戦えない人を守らなければならないのです。
後方への注意はちょっと疎かになりがちで、攻撃を受ける事もあるのです。
オブリビオンにトドメを刺す事を躊躇いませんけど、戦えない相手に対して攻撃するのはかなり躊躇します。
状況次第で武装ユニットを外して囮行動を取る事もあるのです。囮捜査は得意なのです。

戦闘傾向
アジサイユニットを盾として飛ばして身を守りながら、空中での射撃戦を好みますけど、護衛対象がある時とかはアジサイには味方を守らせて自分は敵の攻撃を躱しながらムラサメユニットで接近戦するのです。



●嵐を切り裂いて
「【ヴァルキュリアバラージ】起動。制圧します」
 上空からの全方位への射撃が始まった。辺りに鉄と火花の雨が降り注ぎ、破壊を免れるものは蔦の鎧と、その中に守られている猟兵たちのみだ。
「むー。このままやっても埒が明かないのです」
 鎧の内側から、様々な火器で反撃を試みる月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)だったが、効果を得られずじれったそう。
 常軌を逸した速さで飛翔するロスヴァイセに、ユーベルコードの弾幕を越えて命中させるのは容易ではない。
「やはり私は対空戦闘機。空に出ます! アーマーフルパージ、シフト【スコール】!」
 咲凛は装備している武装ユニットを全て合体・変形させ、それに乗り込む。
「だ、大丈夫なんです、か……?」
「私はお姉ちゃんだから平気なのです。お姉ちゃんは皆を守るものですから」
 心配そうなボナに、咲凛は得意気だ。
「お、お姉さん、だったんですね。お気をつけて……」
「任せて欲しいのです。お姉ちゃんの勇姿を見ていて下さい!」
 ボナが素直に信じた為、ご満悦で、咲凛は嵐の中へ飛び込んだ。ロスヴァイセに匹敵し得るそのスピードは、到底ボナの肉眼では追えなかっただろうけれども。

「行きますよー!」
 咲凛はまっすぐにロスヴァイセを追った。正面から目前に迫る弾だけを相殺、回避して、他の攻撃は気にする必要もない。
「私について来られる……?」
 相手の速度に驚きながらも、ロスヴァイセは複雑な機動で咲凛の追跡を躱そうとし、咲凛は離されまいと抗う。
 しかし空中戦の技術においては、咲凛がヴァルキュリアを上回っていたようだ。とうとう 咲凛はロスヴァイセの背後に迫った。

「追いつかれましたか。ですが……!」
 ロスヴァイセは急速反転すると同時に左手のビームソードを一閃。咲凛の乗機を両断する。
「!?」
 しかしそこに咲凛の手応えは無く。
「危なかったのです」
 最低限の飛行ユニットと腕部武装のみ身につけて離脱していた咲凛が、ソードを振り切ったロスヴァイセに反撃した。
 ガトリングが火を噴き、戦乙女の翼を叩く。

「翼部損傷……ですが飛行は続行可能です」
 翼に弾丸を受けたロスヴァイセはコントロールを失い、体勢を立て直すことに専念するしかなく、その隙に無事なユニットを全回収した咲凛は追い打ちをかける。
「次はそっちが雨に降られる番ですからね!」
「迎撃開始します」
 2機は再び撃ち合ったが、咲凛に押されてロスヴァイセは徐々に高度を落としていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蒼月・暦(サポート)
 デッドマンの闇医者×グールドライバー、女の子です。

 普段の口調は「無邪気(私、アナタ、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 嘘をつく時は「分かりやすい(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

無邪気で明るい性格をしていて、一般人や他猟兵に対しても友好的。
可愛い動物とか、珍しい植物が好き。
戦闘では、改造ナノブレード(医療ノコギリ)を使う事が多い。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ディルク・ドライツェーン(サポート)
実際の年齢より無邪気で子供っぽい言動です。
好奇心旺盛で素直なので、楽しい事などは積極的に行動し
友好的な相手には仲良く接します
戦闘以外の知識には乏しいですが、戦闘時は本能的に考えて戦います。
拳に【怪力】を乗せて戦うのが主ですが、敵が多い場合はオウガ刀で【なぎ払って】【吹き飛ばし】て戦います。
敵の攻撃には【野生の勘】で回避したり【激痛耐性】で耐えます
バディペットのアインや海竜のシュタインと連携して戦います。
仲間が危なければ【かばい】ます。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●花と鬼と
「【ヴァルキュリアバラージ】再起動。イマジネイション反応枯渇までのカウント、320」
「ま、まだ終わらない……」
 また降り注ぐ銃火の雨に、震えるボナ。蔓草の鎧は未だ完全に銃弾を防いでいるが、末端から萎れ始めていた。
「ボナちゃん、平気だよ。こんなに素敵な鎧なんだから」
 不安げな少女に、蒼月・暦(デッドマンの闇医者・f27221)は敢えて明るく声をかける。
「そ、そうですか?」
「そうだよ。綺麗な花がいっぱい……この紫の花は何?」
「それはウミヒルモ……海の中で見たんです」
「珍しい!」
 目を輝かす暦の様子に、ボナははにかみながら続けた。
「あの……もっと他の花も、咲かせられますよ」
「本当? それじゃあ……」
 暦は様々な植物の名を挙げ、ボナが新しい蔓草にそれを咲かせてみせる。ボナが知らない花は暦が語り聞かせて想像し……ふたりは戦火をすっかり忘れて話し込んだ。

「カウント120……160……200……イマジネイション反応増大。何故……?」
 鎧の耐久力が回復していくことにロスヴァイセは困惑し、
「ふふ。アナタにはわからないんだね」
 暦は少しだけ勝ち誇った顔で、敵を見上げる。
「……火力の不足と推測。【モード・ラグナロク】鏖殺形態に切り替えます」
 弾幕が止んだ。戦乙女は全身からパルスを噴き上げ、より攻撃的な形態となって襲い来る。
「スゲー! なあ、オレとも遊んでくれよっ!」
 その威容に、恐れるよりも興味津々のオウガがひとり。ディルク・ドライツェーン(琥珀の鬼神・f27280)だ。

「排除します」
 威力を増した斉射がディルクを狙う。大人しく蔦の中に引っ込んでなどいないディルクは、オウガ刀を振り回して急所への銃撃を弾く。
 手足には何発かが命中し、赤い血が迸るが、激痛耐性と戦いの喜びがディルクに痛みを忘れさせる。
「おお、やっぱり強いっ。でも……まだまだオレは戦えるぜっ!」
 叫びに応えるように、手の甲に埋められたメガリスが輝く。【鬼神の闘気(キシンノトウキ)】がディルクの総身を覆っていく。
「攻撃続行します」
「どんどん来い!」
 続く斉射を、オウガ刀のガードと強化されたオーラ防御によって、ディルクは完全に防ぎきってみせた。

「威力不足……全出力をソードに」
 銃が通じないとみたロスヴァイセは、左手のビームソードを激しい輝きの奔流と化し、更に無数の残像を纏いながら急降下。
「見切ることも受けることも出来ません」
「確かに。すごい攻撃だな……」
 自分を目掛け落ちてくる脅威を前に、ディルクは思わず薄く笑みを浮かべる。胸中に湧くのは強敵と力を競う嬉しさ。それから、ふっと真剣な表情へ。
「だったらオレも!」
 気合と共に、闘気を纏った拳を地面に叩きつけた。
 拳が起こした衝撃波と闘気は混ざり合い、咆哮となって戦場を吹き渡る。
 ディルク本人と蔦の鎧以外の全てが、【鬼神の咆哮(キシンノホウコウ)】の凶暴な勢いによって吹き飛ばされた。
 特にディルクに向かって降下していたロスヴァイセは正面から衝撃を浴び、ホームランボールの如く空に舞い上げられる。
「な。避けることも受けることも出来ない攻撃!」
 見上げるディルクの表情は、満面の笑みだった。

「この時を待っていたんだよ!」
 一方、蔦の中で推移を窺っていた暦は、機会を逃さず【デルタ・フォース】を発動。
 ジェットエンジンを背中に装着し、ロスヴァイセを追って飛翔する。
「私も攻撃しちゃうんだから。さあ、この改造された肉体に、恐れ戦くが良いよ」
 ナイトメアスクリームを通した叫びと、血の色をした魔術弾の連射でロスヴァイセを怯ませ、更に上へ回っての改造ナノブレードの降り下ろし。
「くっ……装甲破損!」
 空に打ち上げられた敵を、今度は地面に叩き落とした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
良いぞボナ。
貴殿の想像力は、あの恐るべき狙撃にも決して負けぬ。余はそう確信する。
後は、余が奴らを殲滅するのみ。暫し辛抱せよ、其は決して無駄にはせぬ。

さてロスヴァイセよ。
かつての戦にて果たせなんだ決着、今こそつけてくれよう。

黄昏大隊・歩兵部隊召喚。戦場に広く展開し、ロスヴァイセに対し【制圧射撃】をかけ機動を制限。そこに余が魔導小銃にて【スナイパー】。翼を撃ち抜き墜落を狙う。
墜落後は兵士らに上空の狙撃支援機の撃墜を行わせ、ロスヴァイセに直接対峙。
魔導小銃の【乱れ撃ち】で追い込み、隙が生じた処を撃ち抜いてくれよう。

案するな。貴様の指揮官なれば、己のみにても超弩級の闘争を巻き起こすであろうよ。



●天使墜つ
「もっと、咲いて、私のイマジネイション……」
 未だ超高速狙撃は続いているが、猟兵たちの勇姿を見、激励を受けたボナの精神力は安定しているようだ。
「良いぞボナ」
 ギージスレーヴが更に勇気づける。
「もはや貴殿の想像力は、あの恐るべき狙撃にも決して負けぬ。余はそう確信する。
 後は、余が奴らを殲滅するのみ。暫し辛抱せよ、其は決して無駄にはせぬ」
「は、はい……!」

「さて、ロスヴァイセよ。かつての戦にて果たせなんだ決着、今こそつけてくれよう」
「そうでしたか。では……今度こそ貴女に敗北を」
 睨み合うふたりは互いにユーベルコードを発動、戦力を召喚する。
 地上に展開したギージスレーヴの【黄昏大隊・歩兵部隊(アーベントロート・ゾルダート)】、79体に対し、ロスヴァイセの【死天使の騎行】はその倍以上の少女型支援機で空を埋める。
「彼我戦力差、約2倍……圧倒しなさい、妹たち。戦闘開始」
「数で全てが決まると思うな。黄昏大隊、戦闘開始!」

 互いの指揮の下、空と大地とで射撃が飛び交う。当初、黄昏大隊は不利に見えたが、戦況はすぐに覆った。
「わ、私だって……」
 ボナが蔦の鎧を伸長させ、大隊を防御したのだ。流石に疎らにではあるが、兵士を覆う蔦と花は上からの銃撃を受け止め、無力化する。
 反対に、空を埋める数の天使たちは広げた翼に次々と弾丸を受けていった。
「ボナよ、良い。最高の支援である!」
「イマジネイション反応、450……480……なぜ減らないのです。計算不能。予測不能……!」
「ではロスヴァイセよ、こちらの勝ちだ。……余には勝利への道筋が見えている!」
 ロスヴァイセが見せた僅かな困惑。その隙を突き、ギージスレーヴの狙い澄ました魔導小銃の一射が、戦乙女の翼を貫いた。

「飛行機能停止……戦闘続行」
 翼を射抜かれ地に墜ちたロスヴァイセは、しかしすぐに起き上がり、ビームソードで歩兵を斬り捨てながら、ギージスレーヴを目指して歩き始めた。
 無言のまま一歩も退かず、ギージスレーヴは魔導小銃の乱れ撃ちを浴びせかけ、相手も無言のままそれを斬り払い続ける。
 しかしロスヴァイセは取り囲む歩兵からの銃撃にも対応せねばならず、その間隙をギージスレーヴは逃さない。
「闘争を続行します……フォーミュラの望み、大いなる闘争の為に」
「案するな。貴様の指揮官なれば、己のみにても超弩級の闘争を巻き起こすであろうよ」
 魔導小銃から放たれる呪術弾頭が容赦なくロスヴァイセの鋼の装甲を穿ち、砕いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レーヌ・ジェルブロワ
アドリブや連携OKです

イマジネイションの力は素晴らしいですね…何もないところから想像力だけでこのように人々を、街を守ることができるなんて。ボナさん、どうぞこのままご自由に想像の翼をお広げください。お守りいたしましょう。

ボナさんの傍で彼女を励ましながら戦います。
精霊銃で対象を攻撃します。近中距離武器なので、対空には不向きでしょうが…威嚇程度に。狙撃用支援機の動きに合わせ、敵の隙を待ちましょう。
ここぞという時にメイスのLumièreを敵へと構え、「裁きの光」を詠唱――狙うはロスヴァイゼの翼です。頭上から降り注ぐ光の命中率は高いはず。

人間の創り出すもの――「希望」の力を見せて差し上げましょう。



●裁きの時
「闘争を……」
 ここまでの戦いでロスヴァイセに与えられたダメージは甚大だった。
 砕かれた装甲の下から剥き出しの機械部品が覗き、壊れかけの人形のように力無く手足を揺らす。しかし深紅の瞳はまだ諦めずに蔦の鎧を見据えている。
「妹たち、私の代わりに」
 ユーベルコード【死天使の騎行】が再び160機の天使を喚び出す。
 更に、鉄の少女たちは全機合体し、巨大な戦乙女の姿となって、傷ついた指揮官を右手に掬い上げると、左手の大光剣で蔦の鎧に斬りつけた。

 蔦の外の空間が光の奔流に覆われ、地面が泡を立てて沸騰する。
 いかなる原理か、内側は無事ではあるが、そのことにボナが疑念を抱いてしまえばすぐにも灼熱が浸透してくるだろう。既に気温が上がりつつあるのを感じる。
「……!」
 声も出せず震えるボナの手を、レーヌはしっかりと握った。
「ボナさん、イマジネイションの力は素晴らしいですね。
 何もない所から生み出した鎧で、戦いの初めから今まで、私たちをこうして守っていて下さって。
 それに、小人さん達や街も守れていることになります。このような敵が街で暴れたら大変なことになっていました」
 危機にあっても穏やかなレーヌの声が、ボナの震えを取り去ってゆく。
「ボナさん、どうぞこのままご自由に想像の翼をお広げ下さい。彼女たちに、人間の創り出すもの――『希望』の力を見せて差し上げましょう」
「は、はい……!」
 恐慌を来たす寸前だったボナは、レーヌの言葉で正気を取り戻した。そして彼女から得た着想でイメージを膨らます。
「全てを包み込んでくれる……キラキラの……白い薔薇……!」
 蔦が新たに伸び、何十もの白薔薇が咲き誇った。大輪の薔薇は光の奔流を吸収、中和して、ビームソードの威力を弱めていく。
「光が薄れて……これであれば、切り開くことも……!」
 その機を逃さず、精霊銃を構えたレーヌは魔力を凝集し、幾度も放つ。
 闇属性の魔弾が弱められた輝きの中を遡り、次々とビームソードの基部に着弾、破壊した。

「……!?」
 ソード破壊の衝撃に、巨大戦乙女がよろめく。それでも、右手のロスヴァイセが下方からの攻撃に晒されないよう、庇ってはいたが。
「今です……!」
 レーヌはLumièreを敵に向けて掲げ、呪文を詠唱。メイスに嵌められた宝珠が輝きを増してゆく。
「天の裁きよ、憐れみたまえ。恐怖に囚われし彼の者を」
 空に雲が渦巻き、光の粒子に満ちる。【裁きの光(リュミエール)】が。天からの輝きが、レーヌの示す先に放たれた。
 それは機械の身でも反応できない速さで、鋼鉄の指の隙を縫い、狙い過たず。ロスヴァイセの身体を貫いた。

「……闘争、続行、不能。全ての機能を停止、します……」
 ロスヴァイセの瞳から光が消える。と同時、巨大戦乙女も、ボナを狙撃していた支援機たちも、同様に光を失い停止した。
 160と数機が軋みをあげて崩れ、骸の海へ還っていく。
「憐れみ給え。どうか争いを忘れ、安らかに眠れますように……」
 白薔薇の花束のヤドリガミは、消えゆく天使たちの為に鎮魂の祈りを捧げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月07日
宿敵 『機甲戦乙女ロスヴァイセ』 を撃破!


挿絵イラスト