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The sins never die

#アリスラビリンス #戦後

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#アリスラビリンス
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#戦後


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●No mercy
 重々しい鉄錆が、石畳をずるずる、ずるずると擦る。
 首輪から垂れる鎖は、長さの余りが引きずられ、軌跡を作る。
 少女の顔は俯いたまま、その表情は誰の目にも映らない。

 フードをかぶった男のひとりが巻物を広げる。
「この者、アリスは大罪人である。周囲からは頼れる者として敬愛を受け、家族からも自慢の姉であると持て囃されていた」
 しかし、と男は言葉を切る。
 その言葉を、少女はただ聴いている。
「その姉は、家族を救わんと奔走する弟を見て見ぬふりをして放置し、その結果として弟は散る事となった!」
 ――少女の肩が、ぴくりと動く。
「弟の無念の落命を、この者は避けられた。しかし、この者はその働きを怠った!」
 言葉を連ねる男とは別の男が少女の首輪を外し、代わりに首を縄の輪に潜らせる。
 なんてひどい。
 薄情者。
 人殺し。
 地獄に落ちろ。
 鬼に喰われてしまえ。
 口々に、民衆は少女を罵った。

「――裁きを下す時が来た!」
 男が片手を掲げ、縄が張り、その拍子に少女の顔は上がる。
「罪深きアリスよ、その命を持って贖え。やれ!」
 民衆が見守る中心、絞首台の足場が落ちる。
 ……その直前、見えた少女の顔にはもはや希望はなく。
「…………ナオ」
 虚空を見つめる、涙を涸らした少女の姿がそこにあった。

●グリモアベース
「今回の仕事はアリスラビリンスで発生するアリスへの対処だ」
 そう言い、写真を広げるのは古きウォーマシン、萩原・誠悟(屑鉄が如く・f04202)である。
 写真には十代半ばと見られる少女の姿が写っている。
 話からすると、彼女が今回不思議の国という名の迷宮に迷い込んでしまったアリスだろうか。
 情報を集めたメモを眺め、誠悟は続ける。
「彼女の名は『ハジメ』。17歳の女子高生」
 何の事はない、ごく普通のプロフィール。
 誠悟は仏頂面で、メモのページをめくる。
「弟に『ナオ』という者が居たようだが……ハジメが不思議の国に迷い込む数日前に亡くなってしまったようだ」
 曰く、弟のナオは集団による暴行を受け……その集団とは、ハジメの事を快く思わない同級生と、それに同調した不良達であったという。
「弟のナオは、ハジメに危害が及ばないように同級生と不良達を説得してまわっていたようだが、結果は先に伝えた通りだ」
 と、誠悟はメモをめくる。
 ここまでは飽くまで身の上話。猟兵の仕事に直接関係のある事柄ではない。
「問題は、このハジメという少女が弟の死を自分のせいだと思っている点だ」
 その罪の意識は深く、裁判から処刑に至るまで彼女はまったく抵抗するそぶりを見せないほどであるという。
 そのため、放っておけば彼女の処刑は必ず執行される。本人でさえも、半ばその罪を認めてしまっているのだから。

「……ひょっとしたら、猟兵の中にも彼女を糾弾する者は現れるかもしれない」
 一旦、誠悟はメモを閉じる。
 まとめあげた情報は伝え終え、あとは猟兵達をアリスラビリンスに送り込むのみ。
 それでも、誠悟は話を続ける。『仕事』と直接関係のない『訴え』を続ける。
「だが……家族を助けられなかった者に対する罰として、これはどうなんだろうな」
 裁判で徹底的に罪を糾弾され、処刑場で罵声を浴び、喝采と共に首を括る。
 オウガの催し物とはいえ、その所業自体はかつて人間達も歩んできた歴史に存在し、今も何処かで行われているかもしれないもの。
 真っ当かどうかはさておき、それは彼女の罪を裁く為のもので間違いはない。
「彼女の心境に関係なく、淡々と仕事をこなすのも勿論ありだろう。だが」
 何の気もなく、誠悟はハジメの写真を手に取る。
 写真の中の彼女は、屈託なく笑っていた。
「本人ですら許せなくなっている罪の意識……それを『それでも』と言い、寄り添う者が居たとしたら」
 大きなお世話で、お節介。しかし。
「彼女の『希望』を守るのに、それは非常に重要なものであると、私は思う」
 ――この古きウォーマシンは『それでも』と言い続ける。
 彼女を救うのは仕事か、それともお節介か。
 それを決めるのは、猟兵達である。


あるばーと。
 こんにちは。あるばーと。と申します。
 今回はアリスラビリンスのお仕事となります。
 第1章のみやや心情に寄ったシナリオとなります。

●第1章:冒険
 アリス適合者が裁判官と陪審員達によって裁かれようとしています。
 罪状はともかく、彼女を助ける為に働きかける必要があります。

●第2章:集団戦
 処刑人に扮した暗殺者集団との戦闘です。

●第3章:ボス戦
 アリス適合者の裁判、処刑を企てた元凶のオウガとの対決です。
 撃破しましょう。
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第1章 冒険 『アリス裁判』

POW   :    無理矢理力づくでアリス適合者を助ける

SPD   :    論理的に容疑の矛盾を突き無罪に持ち込む

WIZ   :    陪審員の心象に訴えかけて無罪を勝ち取る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アリス裁判
 ――カン、カン。
 それは乾いた、低い音である。
 それまで騒ついていた民衆は話を止め、音の主に注視する
「これよりアリス、『ハジメ』の裁判を開廷します」
 裁判官と見られる男は座に付き、巻物を伸ばす。
「本法廷はアリス・ハジメを被告人として立て、審理します。……被告人」
 裁判官が目をやる先に、ボロ布にような衣類を纏う黒髪の少女が居た。
 裁判官は少女、ハジメに声を掛ける。
「何か言う事はありますか?」
 ハジメは俯いたまま。
 顔を上げる事もしない。……できない。
「……よろしい。では検事」
「ハッ。……検察側は被告人が被害者、弟のナオを間接的に殺害した罪を主張、告発するものであります」
 ――ハジメの髪が、密かに揺れる。
「面を上がらぬ無様さ、装いの如き賤しい性根。その罪を白日の下に曝す事で、検察側は必ず被害者の無念を晴らすでしょう!」
 冒頭弁論としてはあまりに乱暴で挑発的な内容。
 しかし、それに異議を唱える者は現れなかった。
「……よろしい。それでは審理を進めます」
 裁判官ですら、飽くまで『そういうもの』であるかのように振る舞う。
 興味も疑問もなく、巻物を眺めるのであった。

 弟であるナオは、姉であるハジメが同級生や不良達の私刑の対象になる事がないように奔走していた。
 その結果として、私刑の対象はナオへと移り、激しい暴行の末にナオはこの世を去った。
 ……ハジメはどこか、ナオが動いている事は察知していた。
 であるというのに、ハジメはナオを止める事ができなかった。
 後悔は罪として、ハジメにのしかかる。
 彼女の罪に、寄り添う者は現れるのか。
 それは、猟兵達次第である。
サンディ・ノックス
「何言ってるの?」
乱入してとりあえずオウガに一言

お前達は彼女の罪を裁いてなんかいないよ
食べるのに都合がいいから適当なこと言ってるだけだろ?
裁判なんて馬鹿馬鹿しい
登場人物全員が彼女を食べるという結論ありきな飯事なんてくだらない
くだらないから壊す
UC伴星・傲慢な飛輪を発動
肉体を魔法物質に変換し武器を構成、会場を物理的に滅茶苦茶に壊してやる
会場を壊すために変換する身体の量は相当必要だけど、自分を維持できる限界までは使う

……俺は
ヒトの絆がわからない
生まれつき理解できなくて、身近なヒトを悲しませていた存在だ
だからハジメさんにどう言えばいいのかわからない
でも一番彼女を裁いているのは彼女自身
それだけはわかる



●後悔
 ――変わり果てた弟の姿を見た。
 殴られ、焼かれ、折られ……死因が何なのか、素人には判別もつかない状態。
 遺留品の眼鏡とか、他にも身体的特徴が一致していた為に弟とわかったそうな。
 その話を……聞いては、いられなかった。
 正義感の強い弟なら、行動に出てしまう事くらい想像できた筈なのに。
 弟の死も、身内の涙も、混ざり合って泥のように胸の奥へ。
 泥は感覚を麻痺させ、光を抑え込む。
(……これが)
 これが『罪』なのか。
 ハジメはこの暗黒を、そう理解した。
 であれば、責められて裁かれるのも当然か。
 いっそ、その方が楽かもしれない。
 弟には会えないかもしれないが、それもまた罰か。

「何言ってるの?」
 それは、カーテンを開けた時に差すような、強烈な光だった。

●闖入者
「……傍聴人は発言を控えるように」
 突然の傍聴席からの声に、審理は中断。場は静まり返った。
 不快感を滲ませた面持ちでその青年、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は傍聴席を立った。
「お前達は彼女の罪を裁いてなんかいないよ。食べるのに都合がいいから適当なこと言ってるだけだろ?」
 裁判官の静止も構わず、サンディは悪態を吐き続ける。
 他の傍聴人は騒ついてその場を見守る。
「……おい、奴をつまみ出せ!」
 痺れを切らした検察官は声を荒げ、その周囲の男達はサンディを取り囲んでいく。
「…… 登場人物全員が彼女を食べるという結論ありきな飯事なんてくだらない」
 サンディが手をかざす。
 手に集まる魔力……魔法物質は形を得て、武器となる。
 その手の物質はやがて、漆黒のチャクラムに姿を変える。
 その名を【伴星・傲慢な飛輪】。サンディが持つ、数ある武器のひとつである。
 そう、くだらないから。
「くだらないから壊す。……さぁ、身体も心も刻んであげる」
 そう呟くと、チャクラムがサンディの手から放たれる。
 まずはサンディを取り押さえようとしていた男達がチャクラムによって刻まれる。
「き……凶器だ! あの男、凶器を持っているぞ!」
「逃げろ!」
 サンディが次のチャクラムを用意すると、またそれをばら撒いていく。
(……やっぱり、結構消耗するな)
 サンディのユーベルコード、【伴星・傲慢な飛輪】とは魔法物質をチャクラムの形に構成して攻撃するもの。
 その魔法物質とは、サンディの持つ『悪意』……さらにもとを辿れば『肉体』そのものであるという。
 対象を絞るのであれば、何ら不安の無いコスト。
 しかし、サンディはあえて裁判所の『会場』を相手取って行動を起こしている。
 それならば、コスト……即ち変換する『身体』の量は、相当なものとなる。
(関係ない。滅茶苦茶に壊してやる)
 この茶番を潰すために、身体を維持できる限界まで使う。
 この不愉快な裁判を終わらせるために、サンディは前進する。

 先ほどまで、この場の誰もが責める視線を向けていた。
 しかし今、顔をあげると……今は誰も『こちら』を見ていない。
 あるのは縦横無尽に飛び回る飛輪に、逃げ惑う人々。阿鼻叫喚の現場。
 そして……前に立つのは、茶色の髪の青年。
「……俺は、ヒトの絆がわからない」
 彼は背中越しに、辿々しく言葉を紡ぐ。 
 おそらく背後に居る『こちら』に語りかけてきているのであろう事は、何となくわかる。
「生まれつき理解できなくて、身近なヒトを悲しませていた存在だ。……だからハジメさんにどう言えばいいのかわからない」
 彼は今まで饒舌に、静止を振り切ってこの裁判自体を糾弾してきた。
 であるのに……今の彼は、持てる数少ない言葉を、さらに選んで話しているような。そんな慎重さを感じる話し方だった。
「だけど、これだけは言える。……裁判なんて馬鹿馬鹿しい」
 それは吐き捨てるような言葉。『邪悪』を自負する青年の本音。
「だって……一番ハジメさんを裁いているのはハジメさん自身だ」
 目の前の『敵』を前に、それでも背後の『こちら』に対しては努めて穏やかだった。
「それだけはわかる。……見てられないんだ」
 敵には悪意、味方には優しさをもって接する。
 それこそは青年、サンディ・ノックスの在り方だった。

 彼の背は、ハジメの心に僅かに光を差した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ビビ・クロンプトン
…簡単に【情報収集】したけれど
そんなの、めちゃくちゃだと、思う
悪くない
ハジメさんは、何も悪くないよ
何もしなかったハジメが罪人だというのなら、ナオさんを殺した人たちは、どうなの?
罪人は、そっちの方じゃ、ないの?

…それでも、ハジメさんが間違ってるって言うのなら…力ずくで、なんとかする
どのみち、オウガは倒すのだから
UC【シンクノダンガン】で、焼き尽くすよ…オウガを

…ハジメさん
私には、家族がいない
私には、心がよくわからない
だから、私にはあなたの心は救えない
だから、私にはオウガを倒すことしかできない
だから、これから先のことは…あなた次第
私はあなたは悪くないと思うけど、そう思うのは、私だけかもしれないから



●視線の先に
 弟は聡明だった。
 家族を立てる事を第一に考えていた弟はその実、頭もよく働き、それは『贔屓目』で見てもよく出来たものだった。
 家族を立てるあまり、自らに向く視線に疎いのは困りものではあったが、それを含めても可愛い弟であった。
 ……妙なところで不器用で要領が良くない事は家族みんな知っていたし、弟自身も自覚していた。
 思うに、会話するだけでも良かったのだ。
 コミュニケーションを取るだけで、弟を止めるための取っ掛かりを得られたのではないか。やはり、やれる事をやらなかった自分が悪いのではないか。
 ――後悔は泥のように沈殿して溜まっていく。

「――悪くない」
 その声は、責める声よりも近く。
 ハジメよりも幼い、少女の声だった。
「ハジメさんは、何も悪くないよ」
 顔を上げると、ハジメと向き合う声の主がそこに居た。
 目線を合わせて語り掛ける、少女の姿をしていた。

●火事の修羅場
「……そんなの、めちゃくちゃだと、思う」
 その銀髪の少女、ビビ・クロンプトン(感情希薄なサイボーグ・f06666)は会場に向き直る。
 彼女もまた、アリスであるハジメの処刑を阻止するべく降り立った猟兵のひとりである。
「何もしなかったハジメさんが罪人だというのなら、ナオさんを殺した人たちは、どうなの? 罪人は、そっちの方じゃ、ないの?」
 裁判官や検察官を見据えて、率直に言葉を投げかける。
 騒ぎの中、一部の冷静な傍聴人はその言葉にざわつき始める。
 ビビは検察官の舌打ちを聞いた気がした。
「……彼らももちろん『こちら』に流れ着き次第お縄を頂戴しますよ。こちら側の法に則ってね。しかし」
 検察官が指を鳴らすと、一際体躯の大きい男がビビの前に立ち塞がる。
「その者達と、この審理は無関係です。ここは、そこに居るアリスの裁判なのですからね!」
 検察官の合図で大男はビビを取り押さえようと飛び掛かる。
 ……幼い少女にとって、この大男はまさに壁のような圧があった筈。
「……どのみち、オウガは倒すのだから」
 それが迫ってくる状況。そんな中、ビビの表情は『無かった』。
「ハジメさんが間違ってるって言うのなら……力ずくで、なんとかする」
 その表情に大男は違和感を……抱く寸前、その胸を熱線が貫く。
 貫かれた胸は熱を帯び、痛みと同時に大男を襲う。
 大男を貫いた熱線銃を持つ手を下ろし、ビビはうずくまる大男を見下ろす。
「……焼き尽くすよ」
 次の瞬間、大男の熱線痕から真紅の炎が噴き出す。
 ビビの熱線銃は、ただの熱線銃ではない。
 使用者に合わせて調整された特別製。『特注ブラスター』。
 それに内蔵された【シンクノダンガン】による炎は、包んだ者を捕らえて放さない。
「……ハジメさん」
 苦しみ悲鳴をあげる大男に背を向け、ビビは再びハジメと向き合った。
 今度は明確にハジメを呼ぶ声だ。
 ここに来る前に、ビビはハジメ周りの情報をあらってきている。
 かける言葉は、まとまっているわけではない。それでも、言いたい事はあった。
 銀色の少女が主張する。
「私には、家族がいない」
 最後の家族は、病に没した。
「私には、心がよくわからない」
 自身が今、なぜこうして居るのか。その記憶にすら靄がかかる。
 無表情だった銀色の少女の、唇がきっと結ばれる。
「私はあなたは悪くないと思うけど……私にはあなたの心は救えない。そう思うのは、私だけかもしれないから」
 背後で燃える大男に対しても崩れない表情が、ハジメの前では少し哀しげで。
「私にはオウガを倒すことしかできない」
 熱線銃を持っていない、空いている左手を差し出し、銀色の少女、ビビはハジメの顔を覗き込む。
「だから、これから先のことは……あなた次第」
 それは、ただの慰めかもしれない。
 いっそ、気休めなのかもしれない。
 それでも、そのどちらであったとしても。
 きっとこの銀色の少女は、命をすり減らして手を差し伸べてくるのだろう。

 ハジメは、この強くも危い少女が差し伸べてきた手に……自らの手を、伸ばそうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱鷺透・小枝子
彼女の心の内は自分にはわかりません。
自分の兄弟達の多くは戦場で良く死んでいきました故。

ただ自分に分かる事は、ナオ殿はハジメ殿を救おうとした。
敵を前にハジメ殿の為に戦った…!
それはきっと、ハジメ殿に生きて欲しかったからでしょう!
この裁判は、ハジメ殿の為、敵と戦ったナオ殿の行いを侮辱し、穢す行為だ!

貴女がナオ殿を殺したと思うのなら、ナオ殿の為にも、生きねばなりません!
生きて幸せになって、ナオ殿へ感謝する事が、貴女の為に戦ったナオ殿への贖罪でありましょう!

邪魔をするなら、『来い』ディスポーザブル!
ディスポーザブル01を召喚、遠隔操縦で暴れさせ撹乱。
自分は迷彩外套で姿を隠し、ハジメ殿の確保に走ります!



●贖罪
 時が経つにつれ、騒がしくなっていく裁判。
 その中で、いつの間にか手を引いてくる存在があった。
 その人影は決して大柄ではなかった。
 しかし、握る手と引かれる腕は、何故だか力強さを感じさせられる。
 自身と同じか、あるいは小さいのではないか。そんな体躯の少女を、ハジメは訳も分からず、見つめていた。
「――貴女は生きねばなりません!」
 そんなハジメの視線に気付いた彼女は、まずはそれだけを告げた。

●外套の兵士
 時は数分前に遡る。
 猟兵が現れ始めた事に焦りを隠せない裁判所は、猟兵から逃げるように法廷を移しては早くハジメに判決を下そうとしていた。
 そこへ、新たな猟兵は現れる。
「この裁判、待った!」
 轟音を上げ、開け放たれた扉に視線が集中する。
 そこには、やや小柄な少女……アンサーヒューマンの朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)が立っていた。
「くっ、またか」
 何度目かになる闖入者に、警備の者が悪態を吐いて小枝子に近付いていった。
「彼女の心の内は自分にはわかりません……自分の兄弟達の多くは戦場で良く死んでいきました故」
 しかし、そんな接近など意に介さず、小枝子は語りだす。
「ただ自分に分かる事は、ナオ殿はハジメ殿を救おうとした。敵を前にハジメ殿の為に戦った……!」
 ここに至るまでに確認していたハジメとナオの境遇。それらに対して、かつて祖国の為に戦い、死ぬ筈だった己の姿が、小枝子の中ではどこか重なって見えた。
 侮蔑され、痛めつけられ、恥辱に塗れる。それでも、ナオは戦った。
 かつての兵士たる小枝子には、そのナオの姿が目に浮かぶようであった。
「……それはきっと、ハジメ殿に生きて欲しかったからでしょう!」
 それは目を覚まさせる、平手打ちのような言葉。
 言葉に殴られたかのように、ハジメは顔を上げた。
「この裁判は……ハジメ殿の為、敵と戦ったナオ殿の行いを侮辱し、穢すものだ!」
 口上の最中、取り囲まれた小枝子は拳を振り上げる。
 言いたい事は言った。あとは、この場をなんとかする。
「――来い、ディスポーザブル!」
 閉じたままの扉から虚空が切り裂き、現れる。
 これこそは小枝子の乗機、量産型キャバリア『重装甲ディスポーザブル01』。
「な、なんだあの鉄塊は!?」
「あ、暴れるぞ!」
 突然現れたそのキャバリアに怯えた傍聴人は、我先にと出口へ向かう。
 キャバリア自体は猟兵に周知されて久しいが、ここはアリスラビリンス。不思議の国に、キャバリアが馴染もう筈がない。
 コックピットに操縦手を乗せないまま、ディスポーザブルは動き出す。
 小枝子の【オペレート】……遠隔操作によって、ディスポーザブルは持てる武装を駆使して、狭き裁判所を暴れ回る。
 傍聴席は『拳』が衝撃波を乗せて吹き飛ばし、裁判官や検察官の席は肩のレーザーが焼いていく。
 その様は、蹂躙と言ってよかった。
 そのような状況で、正しく現場を見られる者は居らず。
 つまり、消えた被告人の事など、その時ばかりは誰も彼もが忘れていたのである。

 法廷という空間の隅、比較的安全な場所へ、ハジメの手を引き移動して、小枝子は外套を脱いだ。
 UCである【オペレート】の迷彩効果を持つ外套である。
 その性質上、暴れているディスポーザブルに目が行く関係で、しっかり気にしておかなければ誰も気付かないほどに目立たない。
 その裁判所に居る者、全ての目を奪い、小枝子は上手くハジメとの合流を果たしていた。
「……貴女がナオ殿を殺したと思うのなら、生きねばなりません」
 特別大きくはないその背中は、手だけを握る。
 罪の意識は、否定しない。
「生きて幸せになって、ナオ殿へ感謝する事が、貴女の為に戦ったナオ殿への贖罪でありましょう!」
 しかし、だからと言って死なせはしない。
 見た目よりも強く握りしめたその手には、意思があった。
「――貴女は生きねばなりません!」
 投げかけられたその言葉は、先ほどの言葉と同じで。
 ハジメの意識を、鮮烈にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『影縫い・シャッテンドルヒ』

POW   :    これは君を飲み込む影の群れ
【紐付きのナイフ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【レベル×1の自身の影】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    僕らは影、君の命を刈り取る影
【漆黒の影】に変形し、自身の【意思や心情】を代償に、自身の【攻撃力と影に溶け込み影伝に移動する能力】を強化する。
WIZ   :    僕らの狩場、君の墓場
戦場全体に、【影に覆われた暗い街】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●引き渡し時間
「――おい、裁判にいつまでかかっている!」
 裁判所の扉が乱暴に開け放たれ、入ってくるのは黒いローブの者達。
 それぞれが怒りを滲ませて、ぞろぞろと法廷に流れ込んでくる。
「な、貴様らは……そうか、それで判決が下りなかったのか!」
 猟兵達を見た奴らは、敵意を包み隠す事もせずにナイフを手に取る。
 ……ローブの色に目立たないが、この者達は密かに血の臭いを漂わせている。
 それはこの者ひとりひとりが、先ほどの裁判所に居た者よりも断然、人を殺し慣れている事を物語っていた。
「予定変更だ! 貴様ら全員切り刻んで、それで絶望したアリスを処刑するとしよう!」
 その者達、処刑人は得物を持ち出し、ハジメや猟兵達に襲い掛かっていった。
ビビ・クロンプトン
サンディ(f03274)と共闘

ハジメさんを、私の仲間を、傷一つつけさせはしない…私が、みんなを守る
あなたたちは私が、倒す

…サンディさん?いつもと、様子が違う…すごい、怒りを感じる
私の知っているサンディさんじゃ、ない
すごく残酷な戦い方…

…サンディさん、落ち着いて
オウガを許せないのは私も同じ。けど…そんな戦い方、よくないと思う
そうして"喰らう"姿は、まるで…オウガみたいだから
…私は、サンディさんがとても心優しい人って、知っている、から

前衛はサンディさんに任せて、私はハジメさんをかばいつつ、後方から特注ブラスターで【援護射撃】
敵の動きを【見切り】、隙を見せたら【シンクノダンガン】を撃ちこむよ…


サンディ・ノックス
血の香り…
ああ、こいつらはたくさんのヒトを殺し喰らってきたんだろうね
俺達を切り刻む?
馬鹿言うなよ、切り刻まれるのはお前達だ

黒剣を抜き真の姿開放
赤き竜人と化し大地を蹴って敵の中に身を躍らせる
UC解放・宵を発動、攻撃力を重視し敵もその攻撃も斬り捨てる
喰らった者への裁きは喰われること
お前達の魂はひとつ残らず喰ってやる

ビビ(f06666)の言葉には
俺の戦い方は以前から変わってないし
オウガみたいとの指摘は事実その通りだとしか思わない
ただ、俺の考えは口に出さず
俺の行動を見てそう感じるほど成長したビビに
そうだねと微笑むことができる程度には落ち着く

ハジメさんやビビに攻撃が極力行かないように
前で淡々と敵を葬ろう



●コロシアイ
 目の前には黒衣を纏った人影。
 先ほどまでの裁判ですら向けられた事のない、純然たる殺意を、そのひとりひとりが向けてくる。
 その変化は『死んでしまえ』から『殺してやる』へ。彼ら自身が、こちらを手にかけようと凶器を取る。
 その時、ようやく感じた事がある。
 あれを……彼らを『怖い』と。
 その恐怖を自覚した時、呼び水のようにして恐怖は流れ込む。
 自分は殺されても仕方がないと思っていたのに。死んでも仕方がないと思っていたのに。
「……ひっ」
 気が付けば、声が漏れていた。
 足がすくみ、後ずさる。
 その背中を……小さな手が、受け止めた。

 アリスであるハジメが、初めて声を漏らした。
 その事実に、ビビ・クロンプトン(感情希薄なサイボーグ・f06666)はむしろ安堵していた。
 先の法廷での戦いで彼女を守った時、ハジメはほとんど気力を失っていた。
 肉親を失った罪悪感と喪失感に苛まれていた彼女だが、自我を取り戻す程度にはそれらから解放されている。
 その状態のハジメを見たビビは、先の法廷で彼女を守った事は間違っていなかったと改めて感じていた。
 そう、彼女は『悪くない』。しかし最終的にそれを決めるのはハジメ自身のはず。
 であれば、その判断のためにはハジメ自身が罪と向き合う時間が必要なのだ。
「――あなたたちは私が、倒す」
 熱線銃……ビビに合わせて調整された『特注ブラスター』を構え、ビビはハジメを庇うように前に出た。
「……ふんっ、ならば貴様から切り刻むまでよ!」
 敵の黒いローブの処刑人こと『影縫い・シャッテンドルヒ』のひとりがビビとハジメに切りかかる。
 ハジメを庇って前に居る以上、ビビ自身がどう避けるかは重要だ。
 残念ながら、ビビは防御に向いた武装は持っていない。となると、最善は回避一択だ。
 ハジメの手を取り、どちらに避けるかを一瞬考えた。
「――切り刻む?」
 その時、ハジメの前に居るビビの、さらに前に躍り出る者が居た。
 ビビの回避行動より先に、シャッテンドルヒの刃が黒い剣に弾かれる。
「……馬鹿言うなよ、切り刻まれるのはお前達だ」
「な、何ィ……?」
 思わぬ力に刃を弾かれたシャッテンドルヒは衝撃に震える腕を抑えている。
 黒い剣とそれを振るう姿に、ビビは見覚えがあった。
「……サンディさん?」
「やぁ、ビビ」
 横顔のみでチラリと後方のビビに微笑みかけるのは茶髪に青い瞳の少年、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)。
 サンディもまた先の裁判の妨害で活躍した猟兵のひとりで、ビビとは見知った仲である。
 変わらぬ顔に、いつもの声。
 であるのに。
「血の香り……ああ、ビビ。こいつらはたくさんのヒトを殺し喰らってきたんだろうね」
 ビビは言いようのない違和感を覚えていた。
(すごい、怒りを感じる。私の知っているサンディさんじゃ、ない)
 ビビがうすら寒さすら感じる怒りと殺気は、サンディの周りを取り巻く。
「さぁ、宴の時間だよ。お前達の魂はひとつ残らず」
 それらを纏うかの如く、サンディの姿は変容する。
「――喰ってやる」
 そこに現れたのは、黒剣を携えた、赤き竜人・サンディであった。

「――殺れぇ!!」
 誰かがひとり声を上げると、シャッテンドルヒは一斉にナイフを投げ始める。
 標的はサンディただひとり。急に現れたのと、攻撃を防いだ事で警戒度が上がったがゆえの結果だろう。
 サンディにとって、それは実に都合が良かった。
(ふたりに……ハジメさんやビビに、手は出させない)
 黒剣で投擲されたナイフを振り払い、そのままサンディは駆け出す。
 ナイフを落としたばかりの黒剣を、往復するかの如く振り下ろす。
「……ぁ……ッ」
 反撃というには短く速い動作。それに反応できず、シャッテンドルヒのひとりが黒剣に胴を斜めに両断される。
 そして、斬ったという事実のみを確認し、構えなおさずに走り出し、今度は黒剣を振り上げる。
「……うッ」
 横なぎに振るわれた黒剣に、またひとり倒れていく。
 ふたり倒されたところで、シャッテンドルヒはようやく状況を把握し、サンディを取り囲み始めた。

(すごく残酷な戦い方……)
 ひと振りひと振りが確実に敵を屠るサンディのその様を見て、サイボーグたるビビもそう感じずにはいられなかった。
 それはサンディが【解放・宵】を使用した荒々しく、喰らうような剣戟。確かに、敵は減っている。
 それでも。
(……私は、サンディさんがとても心優しい人って、知っている、から)
 だからこそ、ビビは彼にこのままやらせるわけにはいかなかった。
 少なくとも、サンディに負担が集中するこの状況が、良いはずはない。
(ハジメさんも、私の仲間も、傷一つつけさせはしない)
 戦う意思を再び固め、ビビは熱線銃を握りしめた。
「――焼き尽くす……!」

「――ぐわ!」
「……おっと」
 サンディが、背後に気配を感じた瞬間だった。
 敵陣に突っ込むのだから、後ろから攻撃を受ける事もサンディはもちろん考えていた。
 振り向きざまに斬り付ければ十分に間に合う、そう考えていた。
 しかし、黒剣が振るわれる前に、シャッテンドルヒは【シンクノダンガン】に貫かれ、燃えていた。
「……サンディさん、落ち着いて」
 熱線を放った張本人、ビビは熱線銃の銃口をシャッテンドルヒに向けながら、サンディに視線と言葉を投げかけてきていた。
「……ビビ?」
 自身の戦法や戦術に不備があっただろうか。サンディはそのように一瞬考えた。
「オウガを許せないのは私も同じ。けど……そんな戦い方、よくないと思う」
「――」
 思わず、呆気にとられる。
 そんなサンディがシャッテンドルヒに攻撃されないよう、ビビは熱線銃で牽制する。
「その姿は、まるで……オウガみたいだから」
 悲しい声色と、その銀色の目が、サンディに訴えていた。
 それは、純粋な指摘だった。
 大多数の猟兵は耳にしたくないし、言われたくもない言葉。もちろん、サンディも実際の戦い方はどうあれ耳の痛い指摘ではある。
(……そうか)
 サンディ自身は以前よりこの戦い方を変えたつもりはまったくなく、もちろんビビと出会ってから変えたという事もない。
 今ビビから受けた『オウガみたい』という指摘はサンディ自身も否定する気は毛頭ない。
 だが、それよりも。サンディにとって、このビビの言葉は無視できなかった。
(成長したね、ビビ)
 改めて自身の戦い方を見て、以前とは違う感想を述べられるようになったビビに、サンディは内心驚きながら、しかし喜んでいた。
「……そうだね」
 返す言葉は思い浮かばず。しかし、ビビの言葉に偽る事もできない。
 その肯定の言葉と微笑みだけが、サンディの本心だった。

 立ち上がり、目を開ける。
 銃と剣。それらが、処刑人を撃って、斬って、血の池に沈めていく。
 思わず目を背けたくなるその光景は、しかし否が応でも目に焼き付く。
 銃を撃つ銀髪の少女がこちらに気が付いた。
「ッ……あまり、見ない方がいいよ」
 処刑人を撃ちながらも、その少女はこちらを気遣ってくれていた。
 さらに前に居る茶髪の少年も、口にはしないが気にしてくれているようだった。
 その気持ちは、今だけでなく、先ほどからずっと向けられているものだと、ようやく気付く。
「……だい、じょうぶ……」
 そうだ。『私』のためにしてくれているのに、目は背けられない。
 ふたりの猟兵の戦いに、アリス・ハジメは光を指した瞳で向き合い始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱鷺透・小枝子
ハジメ殿を安全な場所へ…安全な場所…
ディスポーザブル01の元へ

機体のコックピットに乗せます。
操縦しなくていい、シートベルトを付けて、ジッとしていて!
……よし、『 戦え 』

壊れぬ躯体を得た01で、敵の刃を防ぐ。
あまり動かなくて良い。まず守れ。そして戦え!

代償の流血は継戦能力で無視。キャバリアの頭上へ上がり、刃の軌道を動体視力で捉え、弾き、騎兵刀を投擲。
同時にホーミングレーザー射撃で援護。今だ。
敵へ向かってジャンプ。騎兵刀を手に、推力移動で更に加速。

ああああッ!
上段から騎兵刀を振り下ろし、叩き斬る。
瞬間思考力、状況把握、即座に別の敵へ向かって切り込み、戦闘を継続する!オブリビオンは敵だ!壊せ!!



●護る兵士
「ハジメ殿を安全な場所へ……」
 呟きながら、ハジメの手を引く女の兵士が居た。
 朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)だ。
 一所にハジメを置くよりは猟兵全体で身柄を渡すように場所を移して守る方が良いらしく、今度は小枝子の番というわけである。
 小枝子の戦い方は兵士としての色が強い。それならば、戦術的にハジメを護衛しやすい場所をと、小枝子はひた走る。
「安全な場所……」
 結論としては、その『安全な場所』は身近に存在した。
 量産型キャバリア『重装甲ディスポーザブル01』。このコックピット内であれば、下手な場所より安全な筈だ。
「これに!」
 ディスポーザブル01を跪かせ、コックピットを開け、促す。
「操縦しなくていい、シートベルトを付けて、ジッとしていて!」
「……は、はい」
 見慣れない乗り物に乗るという行動に戸惑いつつ、ハジメは言われた通りにシートに座る。
 小枝子はシートベルトを付けるのを手伝い、コックピットを閉じた。
「……よし」
 ディスポーザブル01と少し距離を取り、小枝子は振り向く。
 準備は整った。
「 戦え 」
 言霊。
 それを小枝子が口にした時、ハジメが乗っているディスポーザブル01のモノアイが強く灯る。
「――死ねぇ!」
 行動後、シャッテンドルヒ数体が一斉に小枝子に襲い掛かる。
 追いついた、と考えているのだろうが、当の小枝子にしてみれば護衛対象は自らのキャバリア、ディスポーザブル01の中。気兼ねなく戦う準備はすでにできている。
 小枝子の背後に居るディスポーザブル01が腕を伸ばし、マニピュレータがシャッテンドルヒの刃から小枝子を守る。
「あまり動かなくて良い。まず守れ……そして戦え!」
 ディスポーザブル01の腕を伝い、そのまま頭部まで駆け上がる。
「逃がすな!」
 シャッテンドルヒのひとりがそう叫び、小枝子に目掛けて紐付きのナイフを投げつけてくる。
(これは……UCだな)
 一本程度ならば喰らっても行動可能ではあるが、敵のUCである事を鑑みると後の展開に良くない。仕方なく、一瞬足を止める。
「狙いは悪くない……だが!」
 左右の腰に二振りずつ指す鞘から騎兵刀を引き抜き、まずナイフを弾く。
 さらに、弾いた後はそのまま振りかぶり、今度は小枝子が騎兵刀を投擲する。仕込んだワイヤーで微調整し、正確にシャッテンドルヒひとりの肩に騎兵刀が沈む。
「ぐあッ……」
 怯むシャッテンドルヒ。そこへ空かさずディスポーザブル01が肩部の砲台からホーミングレーザーを照射。周囲の敵を散らす。
「今だ」
 投げた分の騎兵刀を『亡国の騎兵刀鞘』が生成したのを確認し、小枝子はこれを引き抜く。
 突撃するなら、今。小枝子は今にも駆け出すところだった。
 足元のディスポーザブル01のコックピット内部から、何か叩く音が聞こえる。
「……ん?」
 コックピットの中にはハジメを乗せている。搭乗員は他にいない。ということは、この音はハジメが出しているものか。
「……が……出てる……!」
 次いで、声も聞こえる。内部のマイクがわからないのか、内部からかすかに聞こえる声。
「血が……大丈夫……!?」
 ようやく聞き取れた声は、小枝子を案ずる言葉だった。
(……ああ)
 一瞬何の事か考えたが、小枝子はすぐにその理由を理解する。
 小枝子のUC【狂わし機】の代償、流血。どうやら、ハジメはこれを心配しているようだった。
(それが貴女の『素』でありますか)
 手を差し伸べなければそのまま殺されていた彼女。手を引かれるがまま、キャバリアに乗せられて。
 そこでようやく、ハジメ本人の意思を見た小枝子は感慨深いものを感じていた。
 それと同時により一層、小枝子の『戦意』は燃え始める。
 血が流れるのは別に良いが、血が流れるのを見せすぎるのは良くない。
 頭から流れる血のみを腕で拭い払い、小枝子は騎兵刀を手に跳躍する。
「――ああああッ!」
 地を蹴るように、足の『メガスラスター』を点火。急降下し、そのまま上段から騎兵刀を振り下ろす。
「が……ぁ……!」
 斬り付けられたシャッテンドルヒひとりが血しぶきを上げ、倒れ伏す。
 まだだ。戦闘は終わっていない。
「……戦闘を継続する!」
 ハジメは正気に戻りつつある。このような戦闘を、見せ続けるべきではない。
「――オブリビオンは敵だ! 壊せ!!」
 叫ぶような言葉で、小枝子は追従するディスポーザブル01と共に戦場をひた走る。
 一刻も早く、この戦いを決着させるために。

 駄目な姉だった。
 優秀だなんだと持て囃してくれたが、それを言う弟の方が断然出来が良かったように思う。
 そんな弟の行動の意図を汲み取れず、彼は死んでしまった。
 それだけでも苦しかったのに……今また、目の前で同じ年代の少女が血を流して戦っている。
「……どうして」
 わからなかった。自身にそこまでの価値があるのか。
 しかし、彼女は言った。『貴女は生きねばなりません』と。
 あんなに血を流しておいて、お前は生きろだなんて。
 そう嘯く彼女の手を……ハジメには、振り払える筈もなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
真の姿継続
ビビ(f06666)の言葉を受け戦闘以外にも考えが及ぶ状態に変化

数は減ってきてるけど一匹でもハジメさんの命を脅かすことはできる、油断できない
あぁ、彼女は戦いを見てるのか
狙いは彼女だ、見えてしまうかぁ
でもこの状況で同業者を気遣うって…恐怖よりその心が勝るなんてね

ヒトを害する者への怒りと魂喰いである己の本能のせいで意識の外に行っていたけど
そもそも俺はわからないなりに彼女へ手を差し伸べたくてここに来たんだ
ただ戦うだけじゃいけない

迷路が展開されても動じず
敵の存在を把握次第、斬ったりUC解放・夜陰で貫く

戦闘しながらハジメさんに声をかける
大丈夫
必ず貴方の命を守って弟さんが作った未来に送り届けるよ


ビビ・クロンプトン
サンディ(f03274)さんと引き続き共闘

大丈夫。ハジメさんは、私が守ってみせるから
そう言って、真の姿(パワードスーツを纏った姿)になるよ

【ミライヲミルメ】で相手の行動を予測して【見切り】
特注ブラスターによる【クイックドロウ】【援護射撃】で攻撃…
貴方たちには、ハジメさんに指一本だって触れさせない…

…ハジメさん
私たちは貴方の意思に関係なく、オウガを倒す
貴方が罪だと考えているものを裁く者を、倒す
そしてこの戦いの後、それにどう向き合うかは…さっき言った通り、貴方次第
少なくとも私には、貴方を裁く権利なんてない、から

だけど、これは私の憶測に過ぎないけれど…
弟さんは、ハジメさんの死を望んではいない筈、だよ



●護る戦いへ
(しまった、俺とした事が)
 赤き竜人の姿を取るサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、ふと周囲を観察する。
 同行するビビ・クロンプトン(感情希薄なサイボーグ・f06666)の言葉を受け、ひたすら振るわれていた剣を一度下ろした。
 前の猟兵からの引継ぎにより、現在ハジメの身柄は後方でビビが預かっている。
 一方、敵であるシャッテンドルヒはサンディやビビ、他猟兵の活躍により順調に数を減らしてはいる。が、相手はひとりひとりが暗殺者。
(一匹でもハジメさんの命を脅かすことはできる、油断できない)
 サンディの静止した精神は、状況の分析を終える。
 ……そういった分析とは別に、サンディは後方に居るハジメに視線を向けていた。
(あぁ、彼女は戦いを見てるのか)
 先ほどのサンディやビビの戦いを、目をそらさずに見続けていたハジメを思う。
 暗殺者集団・シャッテンドルヒの狙いはアリス……他ならぬハジメ自身である。見る見ない以前に、見えてしまうのが実際のところか。
 ヒトを害する者への怒りと魂喰いの本能。戦いを駆り立てるそれらにより、見失いかけた目的を見つめなおす。
 サンディは、ヒトの絆がわからない。それでも。
(わからないなりに彼女へ手を差し伸べたくてここに来たんだ)
 ただ戦うだけじゃいけない。
 ハジメの姿やビビの言葉に、サンディは冷静さを取り戻していた。

 後方にて、ハジメの傍で彼女の身を守っていたビビは、サンディの姿勢が変化している事にいち早く気付いていた。
 自身の言葉が届いていた事に安堵すると同時に、状況が変わる事を察知したビビは、ここで一歩前に出る。
「……大丈夫。ハジメさんは、私が守ってみせるから」
 ビビは前に出て背を向けたまま、その姿を変えていく。
 装甲、機械関節。……サイボーグたるビビの、真の姿。
 パワードスーツへの換装を終え、ビビはその手で熱線銃……『特注ブラスター』を構えた。
「――全て、見通す……!」
 眼を開き、戦場を見る。
 まずはサンディの援護だ。
 依然として前線に居るサンディをシャッテンドルヒが取り囲まない理由はない。孤立させるわけにはいかない。
 サンディの死角から近づこうとするシャッテンドルヒを優先し、熱線銃で射撃する。
 そして……『こちら』の方も気を付けなければならない。
 それを『視た』ビビは、唐突に伸びる影に熱線銃を撃つ。
「ぐ、がぁ!?」
 熱線が貫いた影は姿を変え、そこからシャッテンドルヒが姿を現した。
 影に姿を変え、別の影に潜み、攻撃する。シャッテンドルヒのUCの効果だ。
 これに対し、ビビが使用したのが【ミライヲミルメ】。10秒先の未来を見通したかのような回避を可能にするUC。
 これにより、シャッテンドルヒの不意打ちはほぼ無効化された。
「くそ……こうなったら、別の手だ!」
 そう言い放ったシャッテンドルヒのひとりが手を突き出すと、ビビやハジメ、サンディの周囲の様相が目まぐるしく変化していく。
 その影に覆われた暗い街のような景色、入り組む壁。シャッテンドルヒの作り出した迷路である。
「……こ、これは……!?」
 急に変わった光景に、ハジメは動揺を隠せない。このような不気味なものなら、それは尚更だろう。
 その様子のハジメに、ビビは駆け寄っていく。
「……ハジメさん」
 パワードスーツに身を包んだビビは、そのままハジメの手を取る。
「私たちは貴方の意思に関係なく、オウガを倒す。貴方が罪だと考えているものを裁く者を、倒す」
 両手で手を包む。銃を持つ手としては、存外なほどに柔らかい。
「この戦いの後、それにどう向き合うかは……さっき言った通り、貴方次第。少なくとも私には、貴方を裁く権利なんてない、から」
 それでも、ビビは言わずにはいられない。
 ビビはハジメの手を引いて、迷路を走り出す。
「だけど、これは私の憶測に過ぎないけれど……弟さんは、ハジメさんの死を望んではいない筈、だよ」
「――ああ、その通りだよ」
 ビビの言葉に同意を寄せたのは、サンディだった。
 迷路の岐路で、手に『漆黒の水晶』を踊らせている。
 不意に、サンディの目が左に向く。
「――あぁ、見えちゃったんだ?」
 漆黒の水晶は、サンディの向いた方向に、無数に分かれて突き進む。
「気付かず“俺”に染まっていれば幸せだったのにねぇ」
 それはサンディの秘めた悪意の欠片の具現。
 同化を渇望する悪意の弾の、ひとつひとつが獲物を求める。
「なっ……うわぁぁあ!?」
 であれば、当然進んだ先には獲物が居る。
 その悲鳴を聞いたサンディは、別の方向に向けて歩き出す。

「……大丈夫」
 ヒトを安心させるのは、難しい。
 先ほどまでの戦いをハジメが見ていたなら、尚の事。
 それでも、サンディは努めて穏やかに声を絞る。
 ビビが引いてきた手を、今度はサンディも膝を折って手に取る。
「必ず貴方の命を守って……弟さんが作った未来に送り届けるよ」
 つい先ほどまで剣を握って放さなかったサンディ。
 その手は今度こそ、救いたい者へと差し伸べられる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『希望を摘み取る者』

POW   :    絶望の光槍
全身を【輝く槍から放たれる光】で覆い、自身の【受けた傷を癒やし、猟兵が習得した🔵の数】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    否定されたご都合主義
対象のユーベルコードに対し【輝く槍の一撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    バッドエンド・イマジネイション
無敵の【自分が有利になる状況】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はユナ・アンダーソンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●No hope
 処刑人役である暗殺者集団、シャッテンドルヒを退けた猟兵達は、アリスであるハジメの様子を確認する。
 目まぐるしい展開に混乱の色は滲んでいるものの、裁判の審理を受けていた時に比べれば表情はくっきりと浮かんでいる。
 猟兵の働きかけにより、ハジメの状態は好転してきている。
 しかし、それを良しとしない者は居る。
「騒がしいし、アリスは来ないし……何かと思えば」
 コツコツ、静かな足音。それに乗せるは絶望に似た威圧感。
 輝く槍を携えた女は、ハジメを一瞥した。
「うんざりするわ。せっかく摘み取った『希望』が復活しかけているじゃない」
 女は苛立たし気に槍を地に打ち鳴らす。
 一瞬辺りを照らすほどの光が槍から放たれる。
「まあ、いいわ」
 溜息を吐いて、女は猟兵とハジメに向き直る。
「希望は無限じゃない。今度こそ枯渇させてあげるわ」
 女は輝く槍を、まっすぐに猟兵とハジメに向けた。
 希望を忌々し気に見つめているこの女。その正体は『希望を摘み取る者』。
 ハジメに絶望を与えるべく、最後に立ちはだかる者の名前である。
朱鷺透・小枝子
このふざけた裁判の主か。壊す。
駆けだし、散弾銃を向ける。
(真の姿、紅に染まった自覚なき悪霊へ)

散弾を放ち、推力移動、胴体視力で敵の動きに合わせ、騎兵刀を突き出し、切り結ぶ。
…希望は無限じゃない…つまり自分達が希望だッ!

『奏でろ』眼頭共!
瞬間思考力で眼頭達を操縦、オブリビオンホーンを伸ばし、串刺し攻撃。
集団戦術、無数のホーンによる連続刺突ついで騎兵刀を投擲、
騎兵刀を対処した隙に貫通攻撃、四方から一斉に超音波催眠術、
相手の動きを止め、散弾銃を戦鎌へ変形。

お前が!絶望が!!壊れろ!!!
怪力で戦鎌を振り下ろし、切断。たたっ斬る!



●Red ghost
「――このふざけた裁判の主か」
 この女、『希望を摘み取る者』の口上が述べられた時、すでに殺気を向ける存在が居た。
 殺気と共に駆け抜ける紅い影。殺意と共に銃口を向ける。
 至近距離から放たれた散弾を『希望を摘み取る者』は顔を傾けて回避。その迎撃に、輝く槍が横なぎに振るわれる。
 対し、紅い影は撃った散弾銃の反動を推進力にして身を伏せて槍を回避。空いている手で脇の鞘から騎兵刀を抜き、突き出し……それを『希望を摘み取る者』は返す槍で受け流す。
「壊す」
「とんだご挨拶ね」
 ここでようやく『希望を摘み取る者』と紅い影……朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)の視線が重なった。
 互いに騎兵刀と槍を打ち付けあい、距離が離れる。
「随分とアリスに余計な希望を与えてくれたようね。兵士気取りのクローン人間が」
「知ったような口を利くな」
 その『希望を摘み取る者』の言葉に、小枝子の『紅』は燃え上がる。
 自身の存在を貶める発言に怒りを滲ませるが、そこで行動を乱して後方のハジメに被害が及んでは元も子もない。
 小枝子は落ち着いて、息を整える。
「……希望は無限じゃない……」
 先の『希望を摘み取る者』の言葉を反復し、呟く。
 人ひとりが持てる希望には限りがあり、それが無くなれば残るのは絶望のみ。道理ではある。しかしそれに対する反論は、すでに小枝子の中にはあった。
 希望は無限じゃない。ならば。
「つまり、自分達が希望だッ!」
「気でも狂った?」
 一蹴する『希望を摘み取る者』。しかし、小枝子は止まらない。
 自分や他の猟兵が分け与えた希望で、ハジメに活力は戻ってきている。
 今は、その結果こそが小枝子の希望であった。
「奏でろ――眼頭共!」
 小枝子は両手を広げ、RBXS-F浮遊箱型兵器……『眼頭』を無数に展開。それらが『希望を摘み取る者』の周りを取り囲んでいく。
 無線のオールレンジ兵器でもある『眼頭』。小枝子に思考によって動くそれらはいちいち命令を口に出さずとも、小枝子には忠実だ。
「小癪な真似を」
 兵器『眼頭』はそれらひとつひとつがオブリビオンホーンとビーム砲を搭載している。
 オブリビオンホーンの刺突やビーム砲の砲撃は『眼頭』の数も相まって捌ききるのは至難を極めるだろう。
「くっ……ちょろちょろと!」
 それはもちろん『希望を摘み取る者』も例外ではない。
 それでも先の暗殺者集団なら避け続けられなかったであろうその猛攻を、あの『希望を摘み取る者』は捌いている。たまに小枝子自身も騎兵刀で攻撃するが、それも寸でで回避して見せる。
 暗殺者集団のボスは伊達ではない、と小枝子は思う。
 先のやり取りを思い返せばわかる通り、『希望を摘み取る者』は好戦的な性格だ。それが防戦一方になっている今が好機でもある。
「いい加減……目障りよ!」
 そのうち『希望を摘み取る者』は腹立たし気に槍を振り上げ、振り回す。
 その槍が次々と『眼頭』を打ち、地に落とす。
 兵器『眼頭』が小枝子の思考によって操作できているのは小枝子のUC【小さな恐楽隊】によるものだ。ならば、それを打ち消すのもやはりUCである。
 それこそは『希望を摘み取る者』のUC【否定されたご都合主義】。その槍の一撃は、UCを相殺する効果を持っていた。
 しかし……小枝子はむしろ、このタイミングを待っていた。
「今だ、超音波催眠術!」
 口頭で『眼頭』に命令を下すと、丁度『希望を摘み取る者』の四方を囲んでいた四機が同時に超音波を放つ。
 それらは互いに干渉せず相殺しない角度を計算し、すべてを『希望を摘み取る者』に向けて放出する。
「なッ……う、頭が……!?」
 超音波に当たり、たまらず膝をつき頭を抱える『希望を摘み取る者』。
 防戦一方の戦況にストレスを抱え、そして痺れを切らして強引な攻勢に出る。このタイミングにこそ最大の隙が生まれる。
 小枝子は跳躍する。
 その時、最早小枝子の怒りを抑える必要は無く、ただただ小枝子は怒りを燃やした。
 この者こそが、ハジメの希望を奪い、襲う絶望。この者のせいで、ハジメは一時は死を受け入れるまでになった。
「お前が! 絶望が!!」
 手にした『亡国の機械鎌散弾銃』は音を立てて変形する。より確実に『希望を摘み取る者』を葬るために。――その姿は戦鎌。
 両手で力いっぱい握りしめ、それは落下と共に振り下ろされる。
「――壊れろ!!!」
 振り下ろされた戦鎌の一撃は、槍による防御を貫通し……『希望を摘み取る者』に届いた。

 自分達が希望だ。
 そう口にした彼女、小枝子はハジメの前で戦い続ける。
 軍人、兵士としてのシビアな感性を持つが、一方で戦いの先に不器用ながら希望を見ようとする。
 その姿は、すでに幾度もハジメは見てきたものである。
 不器用な姿は、どことなく弟のナオに似ている気もした。
 その時、朱鷺透・小枝子はすでに、ハジメの『希望』のひとりとなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ビビ・クロンプトン
…希望は無限じゃないかもしれない
けれど、絶望だって無限じゃない
あなたがもたらす絶望は、私が撃ちぬく

真の姿は継続
前衛は引き続きサンディ(f03274)さんに任せるよ
私は後方から特注ブラスターで【援護射撃】
相手に余裕なんて与えない…
相手の動きを【ミライヲミルメ】で予測し【見切り】狙い撃つ…!
大丈夫。相手の動きをきちんと見切れば、相殺されないタイミングで撃てるはず…!

ハジメさん、大丈夫だよ
アレに…『希望を摘み取る者』なんかに、ハジメさんの希望を…想いを、消させたりしない
…ハジメさんを、絶対に死なせたりなんか、させない


サンディ・ノックス
女に言うことは無い
価値観の違う者同士話したって殺し合う結末は変わらないし
ハジメさんの障害だという認識だけで充分

真の姿継続
UC青風装甲で加速、一気に敵の懐に飛び込む
黒剣を振るい敵がどのように行動するか見る
――槍が厄介だな
ならば仮に全ていなされようとダメージを無にされようとひたすら攻め立て
槍を俺以外に振るわれないように注意を引きつける
致命傷を与える役はビビ(f06666)、任せたよ
ビビの攻撃を打ち消す余裕も与えるつもりはない

ハジメさん
良かったら見えてきた希望を口にしてくれないかな
断片でいい
想いは口にすると力が強くなるんだよ

彼女の希望を聞いて敵が苛立てば一石二鳥
苛立ちは隙を生む
一気に畳み掛けてやろう



●雪崩れ込む
 猟兵の攻撃によりダメージが蓄積する『希望を摘み取る者』。
 一度猟兵やハジメから距離を取り、静止する。その動きは、回復のあてがある行動だ。
 そこへ、空かさず熱線を浴びせる者が居る。
「余裕なんて与えない……」
 パワードスーツ姿のビビ・クロンプトン(感情希薄なサイボーグ・f06666)は、手に持った『特注ブラスター』……熱線銃を『希望を摘み取る者』に向けていた。
「確かに……希望は無限じゃないかもしれない」
 背に庇うハジメを一瞥し、ビビは両手で熱線銃を構える。
「けれど、絶望だって無限じゃない。あなたがもたらす絶望は、私が撃ちぬく」
 ごつごつとしたパワードスーツから聞こえる少女の声に、『希望を摘み取る者』は舌を打つ。
「生意気な小娘ね……そんな玩具みたいな銃で私を倒す気なの?」
 防御した体勢を解き、立ち上がる『希望を摘み取る者』。その足で、ビビに歩み寄っていく。
 ビビが持っている得物が熱線銃と見て、接近戦を仕掛けるつもりのようだ。
 それは確かに有効な戦術であっただろう。相手がビビひとりであれば。
 ……そこへ『青い風』が駆け抜ける。
「……ッ!?」
 通る風に違和感を覚えた『希望を摘み取る者』は咄嗟に槍を縦に構えなおす。
 次の瞬間には、そこに剣が打ち付けられ、高く鋭い音が鳴り響く。
「……へぇ、今のをかわすんだ」
 距離を取ろうとする『希望を摘み取る者』を、青い風と赤い竜人は追いすがる。
 行く手を制限するかの如く、上段中断下段、上下左右、あらゆる方向から剣で斬り付ける。
「でも……逃げられると思ったの?」
 赤き竜人の姿をした少年、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の剣を槍で抑え、『希望を摘み取る者』は睨みつける。
「ッ……あなたも私の邪魔に来たクチ?」
「そうさ。……ああ、お前に言うことは無いよ。価値観の違う者同士話したって殺し合う結末は変わらないし」
 ただ、とサンディは言葉を切る。
「お前はハジメさんの障害だという認識だけで充分だよ」
「気に入らないわね」
 その次の瞬間から、また剣と槍は拮抗し始めた。

 ……動きが速い。
 ハジメを連れたビビは、サンディと『希望を摘み取る者』の戦いを俯瞰していた。
 先に相手をした暗殺者集団に比べるとなるほど、この『希望を摘み取る者』は戦い慣れしているのが行動の端からうかがえる。
 ただ剣に対して槍で対処しているだけのように見えて、その実はサンディでビビの射線を遮るような位置取りで立ち回っている。
 一発でもサンディを誤射してしまえば、大きく不利が付いてしまう。そうでなくとも、あの『希望を摘み取る者』はUCでこちらのUCを相殺してくる。
 そのおかげでビビの熱線銃の引き金は、いつも以上に重かった。
 また、その様子を眺めているのはビビだけではない。
「だ……大丈夫なの……?」
 ビビに手を引かれるハジメも、サンディの戦いをハラハラとした表情で見ていた。
 一般人であるハジメには、これも『なんだかすごい戦い』という認識なのだろうが、それでもハジメはしっかりと目をそらさずに戦いを見ていた。
「ハジメさん、大丈夫だよ」
 ハジメの手を放し、かわりにハジメの肩に手を置く。
「アレに……『希望を摘み取る者』なんかに、ハジメさんの希望を……想いを、消させたりしない」
 ここ今に至るまで、ビビは何度もハジメを励ましてきた。
 その甲斐あって、ハジメの感情は今やしっかりと機能している。
 今回は単に、ハジメとビビ自身が安心するための、そんな言葉だった。
 改めて、ビビは熱線銃を構える。
(大丈夫。相手の動きをきちんと見切れば、相殺されないタイミングで撃てるはず……!)
 深呼吸し、一度目を瞑る。
 この戦いは、おそらく目を酷使する。
「全て、見通す……!」
 それは決意と共に、ビビの【ミライヲミルメ】は開かれた。

 ――槍が厄介だな。
 それが、何合か立ち会ったサンディの印象だった。
 長物による防御能力はもちろんの事、その槍はこちらのUCを打ち消すUCを使う要だ。
 思っていたよりビビの援護射撃が来ないのもそのためだろう。誤射対策もあるが。何より闇雲に撃っていると、そのうち熱線銃自体が通用しなくなってしまうかもしれない。
(それでも、ビビには撃ってもらわないと)
 サンディの青い風を纏うUC【青風装甲】によって、UC【絶望の光槍】を使った『希望を摘み取る者』を追いかける事は出来ている。
 しかし、何度か打ち合ってみたが今のところ有効打は与えられていない。
 好戦的な態度とは裏腹にこの『希望を摘み取る者』という奴は無理には攻め入ってこない。おそらく、こちらにハジメが居るためにそのうち息切れすると踏んでいるのであろう。
 そして、その状況を嫌がるあまり無理にこちらが攻めれば敵の思うつぼ。それだけは避けたかった。
 サンディはそのまま、常に『希望を摘み取る者』に接近し、剣で牽制し続ける事を選ぶ。ビビやハジメに攻撃の手が向く事を防ぐために。
「……ねぇ、ハジメさん」
 目の前の『希望を摘み取る者』と切り結びながら、サンディはふと、ハジメに語り掛ける。
 敵にかける冷酷な声からは想像もできない、優しい声で。
「良かったら見えてきた希望を口にしてくれないかな? 断片でいい」
 それはサンディやビビ、その他猟兵が補填した希望だ。
 希望を取り戻しつつある今のハジメならば、それが口にできるのではないか。
「……想いは口にすると、力が強くなるんだよ」
 敵と戦うサンディの動きは速かったが、おそらくその表情は笑っていたはずだ。
「わ、私は」
 そして、その問いを受けて、ハジメは震える唇で言葉を紡ぎ始めた。
「私は、行きたい。生きて帰りたい」
 震える肩、腕。俯く顔。
 しかし、顔はすぐに上がる。
「そして……強くなる。誰にも心配されないように……私はナオのお姉さんだって、胸を張って言えるように!」
 目に涙をため、それでもハジメはサンディの問いに、真っ向から答えてみせた。
「上出来」
 これを受けて、サンディはハジメの希望を満足げに見届け、背を向けた。
 その正面には、眉間にしわを寄せた『希望を摘み取る者』が立っている。
「希望、希望、希望、希望! ああ、もううんざりだわ!」
 槍からの光を一気に纏い、『希望を摘み取る者』は閃くように駆け始める。
「今ここで殺してあげる! あなたの希望諸共!!」
 狙いはビビとハジメに移ったようだ。それは目にもとまらぬ速さで、接近する。
 サンディは笑う。これなら対処可能だと。
「ビビ、頼んだよ」
 言うが速いか、銃声が鳴り響く。その数、十数発。
「……な、ぁ!?」
 その熱線は銃声と同じ数だけ放たれ、その全てが『希望を摘み取る者』を貫いていった。
 おそらく最大速度だったのだろう、それを的確に撃ち抜かれた『希望を摘み取る者』は怯み、その場に停止する。
「苛立ちは隙を生むのさ。……もう、攻撃を打ち消す余裕を与えるつもりはないよ」
「……ハジメさんを、絶対に死なせたりなんか、させない」
「ぐっ……おのれ、猟兵……おのれ、希望!!」
 動きの止まった『希望を摘み取る者』に対し、今まで控えめだった分を取り戻すほどの熱線を、苛烈だった斬撃はさらに切れ味を上げ。
 それらを、阻む物はすでになかった。

 強くなる、と言った。
 正直、ハジメ自身も驚いていた。強くなる、だなんてと。
 きっと、そう思ったのは、あのふたりや他の猟兵の姿を見てきたからだ。
 そう、まずは『あの人達』のように強くなる。
 サンディとビビ、他の猟兵を見て、ハジメはその決意を固めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
ほう、おぬしは傷を癒すことができるのか、なんとも大したものじゃのう。
それだけボコボコにされ、そも、オウガ・オリジンすら倒されたというのに、まだわしらに勝つ気でおるのじゃな。

希望は無限ではない。
いつかわしら猟兵に勝ち、全ての希望を摘み取れる日が来る――

そんな希望でも抱いておるのかのう。
ならば、おぬしのその希望、わしが摘み取ってやろうぞ。

動きを見切り、攻撃を捌きつつ接近。
まずはUCの力を込めた光剣で光槍を破壊し、敵のUCの源を断つ。
飛翔能力を失わせたならば、光剣を首に当て、処断する。

希望を摘み取る者よ。
いつかわしらに復讐する日が訪れる――
そんな希望を胸に抱いて骸の海に還るが良い。



●『光剣』と『光槍』
「くそっ……くそっ……!」
 その槍は、輝きを持って主の傷を癒していく。
 それだけを見るならば、まさしく奇跡のような業であるのに……その女の顔は、怒りに満ちている。
「アリスに……あの娘に、守るほどの価値があると言うの……!?」
 沸き立つ苛立ちは、計画が上手くいかない事に。猟兵の妨害に。……未だ無くならない希望そのものに。
 輝く光槍を持つ女、『希望を摘み取る者』は、その手を震わせた。
「ほう、おぬしは傷を癒すことができるのか、なんとも大したものじゃのう」
 突如として聞こえてきた呑気な声は、しかし意思を感じるものだった。

「……何、そのおべんちゃら。ナメてるの?」
「いやいや」
 その金色の瞳に金髪の女性、クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)がこの国に降り立ったのは、つい先ほどの事。
 アリスを処刑しようとするオブリビオン……オウガが居ると聞いて参上したクレアは丁度、別の猟兵によって既に痛めつけられていた『希望を摘み取る者』を発見する。
「それだけボコボコにされ、そも、オウガ・オリジンすら倒されたというのに、まだわしらに勝つ気でおるのじゃな……と、感心しておったのじゃよ」
「嫌味なヤツ……気に入らないわね」
 そんなつもりは無かったのだが……とクレアは思う。
 クレア自身も『希望を摘み取る者』を回復させるつもりは無かったのだが、如何せん、クレアが握っているのは前情報のみ。敵の技も姿も自身の目では確認していない。
 故に、『希望を摘み取る者』が回復したのはクレアがその一部始終を観察する事を選択した結果だったのだが……『希望を摘み取る者』はそれを嫌味と受け取った。
「希望は無限ではない。いつかわしら猟兵に勝ち、全ての希望を摘み取れる日が来る――」
 無論、それを訂正してやる義理は当然ながらクレアには無かった。
「――そんな希望でも抱いておるのかのう」
 義理は無いし、利用もする。彼女の『希望嫌い』は筋金入りだ。
 クレアの思惑通りならば、これに食いつかない筈はない。
「……よくもほざいたわね」
 ……『希望を摘み取る者』の額に浮かぶ青筋に、クレアは自らの思惑の的中を見た。
 光槍を手に急速に上昇し、『希望を摘み取る者』はクレアを見下ろす。
「……『絶望』の力を思い知らせてあげるわ!」
 今まさに追い詰められた【絶望の光槍】は、その日一番の輝きを見せ……次の瞬間には、光の速さで駆け抜ける。
 その光速の一突きを……クレアは『光剣』で弾く。
 一瞬、互いの視線が交差する。クレアは確かに『希望を摘み取る者』の目を見た。
「ならば、おぬしのその希望、わしが摘み取ってやろうぞ」
 言い終わる頃には、すでに『希望を摘み取る者』は距離を取っていた。
 ジグザグに動き回り、再度突撃する。
 今度は『光剣』で弾く事すらせず、クレアは『光槍』を避ける。
「……バカな!?」
「一度動きを見れば、見切るのは容易じゃ。……いくら動きを変えて、フェイントを混ぜ込んでものう」
 速度を変え、角度を変え、タイミングを変え。
 その『光槍』の攻撃を全て避ける。『希望を摘み取る者』の槍を持つ手に、焦りが乗り始める。
 それを、クレアは見逃さなかった。
「-」
「――は?」
 向かってくる『光槍』を避け、すれ違いざまに『光剣』を振りぬく。
 間の抜けた声を上げる『希望を摘み取る者』。彼女が目の当たりにしたのは『光』が『光』によって切り裂かれる瞬間であった。
 クレアの『光剣』も、ただの剣ではない。【還送機能Ⅱ】……オブリビオンやUCを骸の海に還す力を放つ、クレアの数ある『UCに匹敵する効果を持つ』機能。
 その効果を付与された『光剣』は対UC用の武装としても効果を発揮し――
「希望を摘み取る者よ。いつかわしらに復讐する日が訪れる――」
 ――首元に向けるそれは、オブリビオンに対して『特効』とも言うべき効果を持つ。
「――そんな希望を胸に抱いて骸の海に還るが良い」
 一息に斬り抜け、クレアはそのまま『希望を摘み取る者』に背を向ける。
 手応えはある。斬った当人としては、確認するまでもない。
「……いつか……」
 斬られた首を押さえ、それでも『希望を摘み取る者』は鋭くクレアと……後方のアリス、ハジメを睨みつけている。
「必ず……絶望させてやる……」
 言い切ると、『希望を摘み取る者』は糸の切れた操り人形のようにぷつり、と倒れ伏す。

 猟兵の尽力により、『希望を摘み取る者』は打ち取られた。
 それはつまり、一先ずハジメは危機を脱した事を意味していた。……飽くまで、一先ずは。
 オウガを倒したところで、ハジメは元の世界に帰れるわけではない。むしろ、帰れるかどうかはこれからの行動にかかっている。
 ハジメは、『希望を摘み取る者』にとどめを刺した金色の瞳に金髪の女性に駆け寄る。
 そして、ここに迷い込んでからの事を話した。
 弟が死に、それをオウガ達に糾弾された事。自身でもそれを受け入れていた事。
 自身の状態を「見てられない」と庇ってくれた者、手を握って「大丈夫」と何度も励ましてくれた者、そして「貴女は生きねばならない」と喝を入れてきた者が居た事。
 そして、それらを踏まえて……強く生きる事を、決意した事。
 金色の瞳に金髪の女性は、ハジメの言葉を黙って聞いていた。
「行きなさい」
 女性は、それだけ言った。
 猟兵にできる事は、せいぜい命を助けてやる事だけだと言う。つまり、ここからはハジメ次第という事か。
 アリス・ハジメはもう迷わない。
 自身を助けてくれた猟兵達に向き直り、深く頭を下げる。
「……ありがとう!」
 感謝の言葉を伝え、ハジメは振り返り、走り出す。
 助けてくれた猟兵に、家族に、弟に恥じない人間になるために。
 ハジメは、元の世界に帰るための探索を始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月27日


挿絵イラスト