4
The sins never die(作者 あるばーと。
6


#アリスラビリンス  #戦後 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦後


0



●No mercy
 重々しい鉄錆が、石畳をずるずる、ずるずると擦る。
 首輪から垂れる鎖は、長さの余りが引きずられ、軌跡を作る。
 少女の顔は俯いたまま、その表情は誰の目にも映らない。

 フードをかぶった男のひとりが巻物を広げる。
「この者、アリスは大罪人である。周囲からは頼れる者として敬愛を受け、家族からも自慢の姉であると持て囃されていた」
 しかし、と男は言葉を切る。
 その言葉を、少女はただ聴いている。
「その姉は、家族を救わんと奔走する弟を見て見ぬふりをして放置し、その結果として弟は散る事となった!」
 ――少女の肩が、ぴくりと動く。
「弟の無念の落命を、この者は避けられた。しかし、この者はその働きを怠った!」
 言葉を連ねる男とは別の男が少女の首輪を外し、代わりに首を縄の輪に潜らせる。
 なんてひどい。
 薄情者。
 人殺し。
 地獄に落ちろ。
 鬼に喰われてしまえ。
 口々に、民衆は少女を罵った。

「――裁きを下す時が来た!」
 男が片手を掲げ、縄が張り、その拍子に少女の顔は上がる。
「罪深きアリスよ、その命を持って贖え。やれ!」
 民衆が見守る中心、絞首台の足場が落ちる。
 ……その直前、見えた少女の顔にはもはや希望はなく。
「…………ナオ」
 虚空を見つめる、涙を涸らした少女の姿がそこにあった。

●グリモアベース
「今回の仕事はアリスラビリンスで発生するアリスへの対処だ」
 そう言い、写真を広げるのは古きウォーマシン、萩原・誠悟(屑鉄が如く・f04202)である。
 写真には十代半ばと見られる少女の姿が写っている。
 話からすると、彼女が今回不思議の国という名の迷宮に迷い込んでしまったアリスだろうか。
 情報を集めたメモを眺め、誠悟は続ける。
「彼女の名は『ハジメ』。17歳の女子高生」
 何の事はない、ごく普通のプロフィール。
 誠悟は仏頂面で、メモのページをめくる。
「弟に『ナオ』という者が居たようだが……ハジメが不思議の国に迷い込む数日前に亡くなってしまったようだ」
 曰く、弟のナオは集団による暴行を受け……その集団とは、ハジメの事を快く思わない同級生と、それに同調した不良達であったという。
「弟のナオは、ハジメに危害が及ばないように同級生と不良達を説得してまわっていたようだが、結果は先に伝えた通りだ」
 と、誠悟はメモをめくる。
 ここまでは飽くまで身の上話。猟兵の仕事に直接関係のある事柄ではない。
「問題は、このハジメという少女が弟の死を自分のせいだと思っている点だ」
 その罪の意識は深く、裁判から処刑に至るまで彼女はまったく抵抗するそぶりを見せないほどであるという。
 そのため、放っておけば彼女の処刑は必ず執行される。本人でさえも、半ばその罪を認めてしまっているのだから。

「……ひょっとしたら、猟兵の中にも彼女を糾弾する者は現れるかもしれない」
 一旦、誠悟はメモを閉じる。
 まとめあげた情報は伝え終え、あとは猟兵達をアリスラビリンスに送り込むのみ。
 それでも、誠悟は話を続ける。『仕事』と直接関係のない『訴え』を続ける。
「だが……家族を助けられなかった者に対する罰として、これはどうなんだろうな」
 裁判で徹底的に罪を糾弾され、処刑場で罵声を浴び、喝采と共に首を括る。
 オウガの催し物とはいえ、その所業自体はかつて人間達も歩んできた歴史に存在し、今も何処かで行われているかもしれないもの。
 真っ当かどうかはさておき、それは彼女の罪を裁く為のもので間違いはない。
「彼女の心境に関係なく、淡々と仕事をこなすのも勿論ありだろう。だが」
 何の気もなく、誠悟はハジメの写真を手に取る。
 写真の中の彼女は、屈託なく笑っていた。
「本人ですら許せなくなっている罪の意識……それを『それでも』と言い、寄り添う者が居たとしたら」
 大きなお世話で、お節介。しかし。
「彼女の『希望』を守るのに、それは非常に重要なものであると、私は思う」
 ――この古きウォーマシンは『それでも』と言い続ける。
 彼女を救うのは仕事か、それともお節介か。
 それを決めるのは、猟兵達である。





第3章 ボス戦 『希望を摘み取る者』

POW ●絶望の光槍
全身を【輝く槍から放たれる光】で覆い、自身の【受けた傷を癒やし、猟兵が習得した🔵の数】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD ●否定されたご都合主義
対象のユーベルコードに対し【輝く槍の一撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ ●バッドエンド・イマジネイション
無敵の【自分が有利になる状況】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はユナ・アンダーソンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●No hope
 処刑人役である暗殺者集団、シャッテンドルヒを退けた猟兵達は、アリスであるハジメの様子を確認する。
 目まぐるしい展開に混乱の色は滲んでいるものの、裁判の審理を受けていた時に比べれば表情はくっきりと浮かんでいる。
 猟兵の働きかけにより、ハジメの状態は好転してきている。
 しかし、それを良しとしない者は居る。
「騒がしいし、アリスは来ないし……何かと思えば」
 コツコツ、静かな足音。それに乗せるは絶望に似た威圧感。
 輝く槍を携えた女は、ハジメを一瞥した。
「うんざりするわ。せっかく摘み取った『希望』が復活しかけているじゃない」
 女は苛立たし気に槍を地に打ち鳴らす。
 一瞬辺りを照らすほどの光が槍から放たれる。
「まあ、いいわ」
 溜息を吐いて、女は猟兵とハジメに向き直る。
「希望は無限じゃない。今度こそ枯渇させてあげるわ」
 女は輝く槍を、まっすぐに猟兵とハジメに向けた。
 希望を忌々し気に見つめているこの女。その正体は『希望を摘み取る者』。
 ハジメに絶望を与えるべく、最後に立ちはだかる者の名前である。
朱鷺透・小枝子
このふざけた裁判の主か。壊す。
駆けだし、散弾銃を向ける。
(真の姿、紅に染まった自覚なき悪霊へ)

散弾を放ち、推力移動、胴体視力で敵の動きに合わせ、騎兵刀を突き出し、切り結ぶ。
…希望は無限じゃない…つまり自分達が希望だッ!

『奏でろ』眼頭共!
瞬間思考力で眼頭達を操縦、オブリビオンホーンを伸ばし、串刺し攻撃。
集団戦術、無数のホーンによる連続刺突ついで騎兵刀を投擲、
騎兵刀を対処した隙に貫通攻撃、四方から一斉に超音波催眠術、
相手の動きを止め、散弾銃を戦鎌へ変形。

お前が!絶望が!!壊れろ!!!
怪力で戦鎌を振り下ろし、切断。たたっ斬る!


●Red ghost
「――このふざけた裁判の主か」
 この女、『希望を摘み取る者』の口上が述べられた時、すでに殺気を向ける存在が居た。
 殺気と共に駆け抜ける紅い影。殺意と共に銃口を向ける。
 至近距離から放たれた散弾を『希望を摘み取る者』は顔を傾けて回避。その迎撃に、輝く槍が横なぎに振るわれる。
 対し、紅い影は撃った散弾銃の反動を推進力にして身を伏せて槍を回避。空いている手で脇の鞘から騎兵刀を抜き、突き出し……それを『希望を摘み取る者』は返す槍で受け流す。
「壊す」
「とんだご挨拶ね」
 ここでようやく『希望を摘み取る者』と紅い影……朱鷺透・小枝子(ディスポーザブル・f29924)の視線が重なった。
 互いに騎兵刀と槍を打ち付けあい、距離が離れる。
「随分とアリスに余計な希望を与えてくれたようね。兵士気取りのクローン人間が」
「知ったような口を利くな」
 その『希望を摘み取る者』の言葉に、小枝子の『紅』は燃え上がる。
 自身の存在を貶める発言に怒りを滲ませるが、そこで行動を乱して後方のハジメに被害が及んでは元も子もない。
 小枝子は落ち着いて、息を整える。
「……希望は無限じゃない……」
 先の『希望を摘み取る者』の言葉を反復し、呟く。
 人ひとりが持てる希望には限りがあり、それが無くなれば残るのは絶望のみ。道理ではある。しかしそれに対する反論は、すでに小枝子の中にはあった。
 希望は無限じゃない。ならば。
「つまり、自分達が希望だッ!」
「気でも狂った?」
 一蹴する『希望を摘み取る者』。しかし、小枝子は止まらない。
 自分や他の猟兵が分け与えた希望で、ハジメに活力は戻ってきている。
 今は、その結果こそが小枝子の希望であった。
「奏でろ――眼頭共!」
 小枝子は両手を広げ、RBXS-F浮遊箱型兵器……『眼頭』を無数に展開。それらが『希望を摘み取る者』の周りを取り囲んでいく。
 無線のオールレンジ兵器でもある『眼頭』。小枝子に思考によって動くそれらはいちいち命令を口に出さずとも、小枝子には忠実だ。
「小癪な真似を」
 兵器『眼頭』はそれらひとつひとつがオブリビオンホーンとビーム砲を搭載している。
 オブリビオンホーンの刺突やビーム砲の砲撃は『眼頭』の数も相まって捌ききるのは至難を極めるだろう。
「くっ……ちょろちょろと!」
 それはもちろん『希望を摘み取る者』も例外ではない。
 それでも先の暗殺者集団なら避け続けられなかったであろうその猛攻を、あの『希望を摘み取る者』は捌いている。たまに小枝子自身も騎兵刀で攻撃するが、それも寸でで回避して見せる。
 暗殺者集団のボスは伊達ではない、と小枝子は思う。
 先のやり取りを思い返せばわかる通り、『希望を摘み取る者』は好戦的な性格だ。それが防戦一方になっている今が好機でもある。
「いい加減……目障りよ!」
 そのうち『希望を摘み取る者』は腹立たし気に槍を振り上げ、振り回す。
 その槍が次々と『眼頭』を打ち、地に落とす。
 兵器『眼頭』が小枝子の思考によって操作できているのは小枝子のUC【小さな恐楽隊】によるものだ。ならば、それを打ち消すのもやはりUCである。
 それこそは『希望を摘み取る者』のUC【否定されたご都合主義】。その槍の一撃は、UCを相殺する効果を持っていた。
 しかし……小枝子はむしろ、このタイミングを待っていた。
「今だ、超音波催眠術!」
 口頭で『眼頭』に命令を下すと、丁度『希望を摘み取る者』の四方を囲んでいた四機が同時に超音波を放つ。
 それらは互いに干渉せず相殺しない角度を計算し、すべてを『希望を摘み取る者』に向けて放出する。
「なッ……う、頭が……!?」
 超音波に当たり、たまらず膝をつき頭を抱える『希望を摘み取る者』。
 防戦一方の戦況にストレスを抱え、そして痺れを切らして強引な攻勢に出る。このタイミングにこそ最大の隙が生まれる。
 小枝子は跳躍する。
 その時、最早小枝子の怒りを抑える必要は無く、ただただ小枝子は怒りを燃やした。
 この者こそが、ハジメの希望を奪い、襲う絶望。この者のせいで、ハジメは一時は死を受け入れるまでになった。
「お前が! 絶望が!!」
 手にした『亡国の機械鎌散弾銃』は音を立てて変形する。より確実に『希望を摘み取る者』を葬るために。――その姿は戦鎌。
 両手で力いっぱい握りしめ、それは落下と共に振り下ろされる。
「――壊れろ!!!」
 振り下ろされた戦鎌の一撃は、槍による防御を貫通し……『希望を摘み取る者』に届いた。

 自分達が希望だ。
 そう口にした彼女、小枝子はハジメの前で戦い続ける。
 軍人、兵士としてのシビアな感性を持つが、一方で戦いの先に不器用ながら希望を見ようとする。
 その姿は、すでに幾度もハジメは見てきたものである。
 不器用な姿は、どことなく弟のナオに似ている気もした。
 その時、朱鷺透・小枝子はすでに、ハジメの『希望』のひとりとなっていた。
大成功 🔵🔵🔵

ビビ・クロンプトン
…希望は無限じゃないかもしれない
けれど、絶望だって無限じゃない
あなたがもたらす絶望は、私が撃ちぬく

真の姿は継続
前衛は引き続きサンディ(f03274)さんに任せるよ
私は後方から特注ブラスターで【援護射撃】
相手に余裕なんて与えない…
相手の動きを【ミライヲミルメ】で予測し【見切り】狙い撃つ…!
大丈夫。相手の動きをきちんと見切れば、相殺されないタイミングで撃てるはず…!

ハジメさん、大丈夫だよ
アレに…『希望を摘み取る者』なんかに、ハジメさんの希望を…想いを、消させたりしない
…ハジメさんを、絶対に死なせたりなんか、させない


サンディ・ノックス
女に言うことは無い
価値観の違う者同士話したって殺し合う結末は変わらないし
ハジメさんの障害だという認識だけで充分

真の姿継続
UC青風装甲で加速、一気に敵の懐に飛び込む
黒剣を振るい敵がどのように行動するか見る
――槍が厄介だな
ならば仮に全ていなされようとダメージを無にされようとひたすら攻め立て
槍を俺以外に振るわれないように注意を引きつける
致命傷を与える役はビビ(f06666)、任せたよ
ビビの攻撃を打ち消す余裕も与えるつもりはない

ハジメさん
良かったら見えてきた希望を口にしてくれないかな
断片でいい
想いは口にすると力が強くなるんだよ

彼女の希望を聞いて敵が苛立てば一石二鳥
苛立ちは隙を生む
一気に畳み掛けてやろう


●雪崩れ込む
 猟兵の攻撃によりダメージが蓄積する『希望を摘み取る者』。
 一度猟兵やハジメから距離を取り、静止する。その動きは、回復のあてがある行動だ。
 そこへ、空かさず熱線を浴びせる者が居る。
「余裕なんて与えない……」
 パワードスーツ姿のビビ・クロンプトン(感情希薄なサイボーグ・f06666)は、手に持った『特注ブラスター』……熱線銃を『希望を摘み取る者』に向けていた。
「確かに……希望は無限じゃないかもしれない」
 背に庇うハジメを一瞥し、ビビは両手で熱線銃を構える。
「けれど、絶望だって無限じゃない。あなたがもたらす絶望は、私が撃ちぬく」
 ごつごつとしたパワードスーツから聞こえる少女の声に、『希望を摘み取る者』は舌を打つ。
「生意気な小娘ね……そんな玩具みたいな銃で私を倒す気なの?」
 防御した体勢を解き、立ち上がる『希望を摘み取る者』。その足で、ビビに歩み寄っていく。
 ビビが持っている得物が熱線銃と見て、接近戦を仕掛けるつもりのようだ。
 それは確かに有効な戦術であっただろう。相手がビビひとりであれば。
 ……そこへ『青い風』が駆け抜ける。
「……ッ!?」
 通る風に違和感を覚えた『希望を摘み取る者』は咄嗟に槍を縦に構えなおす。
 次の瞬間には、そこに剣が打ち付けられ、高く鋭い音が鳴り響く。
「……へぇ、今のをかわすんだ」
 距離を取ろうとする『希望を摘み取る者』を、青い風と赤い竜人は追いすがる。
 行く手を制限するかの如く、上段中断下段、上下左右、あらゆる方向から剣で斬り付ける。
「でも……逃げられると思ったの?」
 赤き竜人の姿をした少年、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の剣を槍で抑え、『希望を摘み取る者』は睨みつける。
「ッ……あなたも私の邪魔に来たクチ?」
「そうさ。……ああ、お前に言うことは無いよ。価値観の違う者同士話したって殺し合う結末は変わらないし」
 ただ、とサンディは言葉を切る。
「お前はハジメさんの障害だという認識だけで充分だよ」
「気に入らないわね」
 その次の瞬間から、また剣と槍は拮抗し始めた。

 ……動きが速い。
 ハジメを連れたビビは、サンディと『希望を摘み取る者』の戦いを俯瞰していた。
 先に相手をした暗殺者集団に比べるとなるほど、この『希望を摘み取る者』は戦い慣れしているのが行動の端からうかがえる。
 ただ剣に対して槍で対処しているだけのように見えて、その実はサンディでビビの射線を遮るような位置取りで立ち回っている。
 一発でもサンディを誤射してしまえば、大きく不利が付いてしまう。そうでなくとも、あの『希望を摘み取る者』はUCでこちらのUCを相殺してくる。
 そのおかげでビビの熱線銃の引き金は、いつも以上に重かった。
 また、その様子を眺めているのはビビだけではない。
「だ……大丈夫なの……?」
 ビビに手を引かれるハジメも、サンディの戦いをハラハラとした表情で見ていた。
 一般人であるハジメには、これも『なんだかすごい戦い』という認識なのだろうが、それでもハジメはしっかりと目をそらさずに戦いを見ていた。
「ハジメさん、大丈夫だよ」
 ハジメの手を放し、かわりにハジメの肩に手を置く。
「アレに……『希望を摘み取る者』なんかに、ハジメさんの希望を……想いを、消させたりしない」
 ここ今に至るまで、ビビは何度もハジメを励ましてきた。
 その甲斐あって、ハジメの感情は今やしっかりと機能している。
 今回は単に、ハジメとビビ自身が安心するための、そんな言葉だった。
 改めて、ビビは熱線銃を構える。
(大丈夫。相手の動きをきちんと見切れば、相殺されないタイミングで撃てるはず……!)
 深呼吸し、一度目を瞑る。
 この戦いは、おそらく目を酷使する。
「全て、見通す……!」
 それは決意と共に、ビビの【ミライヲミルメ】は開かれた。

 ――槍が厄介だな。
 それが、何合か立ち会ったサンディの印象だった。
 長物による防御能力はもちろんの事、その槍はこちらのUCを打ち消すUCを使う要だ。
 思っていたよりビビの援護射撃が来ないのもそのためだろう。誤射対策もあるが。何より闇雲に撃っていると、そのうち熱線銃自体が通用しなくなってしまうかもしれない。
(それでも、ビビには撃ってもらわないと)
 サンディの青い風を纏うUC【青風装甲】によって、UC【絶望の光槍】を使った『希望を摘み取る者』を追いかける事は出来ている。
 しかし、何度か打ち合ってみたが今のところ有効打は与えられていない。
 好戦的な態度とは裏腹にこの『希望を摘み取る者』という奴は無理には攻め入ってこない。おそらく、こちらにハジメが居るためにそのうち息切れすると踏んでいるのであろう。
 そして、その状況を嫌がるあまり無理にこちらが攻めれば敵の思うつぼ。それだけは避けたかった。
 サンディはそのまま、常に『希望を摘み取る者』に接近し、剣で牽制し続ける事を選ぶ。ビビやハジメに攻撃の手が向く事を防ぐために。
「……ねぇ、ハジメさん」
 目の前の『希望を摘み取る者』と切り結びながら、サンディはふと、ハジメに語り掛ける。
 敵にかける冷酷な声からは想像もできない、優しい声で。
「良かったら見えてきた希望を口にしてくれないかな? 断片でいい」
 それはサンディやビビ、その他猟兵が補填した希望だ。
 希望を取り戻しつつある今のハジメならば、それが口にできるのではないか。
「……想いは口にすると、力が強くなるんだよ」
 敵と戦うサンディの動きは速かったが、おそらくその表情は笑っていたはずだ。
「わ、私は」
 そして、その問いを受けて、ハジメは震える唇で言葉を紡ぎ始めた。
「私は、行きたい。生きて帰りたい」
 震える肩、腕。俯く顔。
 しかし、顔はすぐに上がる。
「そして……強くなる。誰にも心配されないように……私はナオのお姉さんだって、胸を張って言えるように!」
 目に涙をため、それでもハジメはサンディの問いに、真っ向から答えてみせた。
「上出来」
 これを受けて、サンディはハジメの希望を満足げに見届け、背を向けた。
 その正面には、眉間にしわを寄せた『希望を摘み取る者』が立っている。
「希望、希望、希望、希望! ああ、もううんざりだわ!」
 槍からの光を一気に纏い、『希望を摘み取る者』は閃くように駆け始める。
「今ここで殺してあげる! あなたの希望諸共!!」
 狙いはビビとハジメに移ったようだ。それは目にもとまらぬ速さで、接近する。
 サンディは笑う。これなら対処可能だと。
「ビビ、頼んだよ」
 言うが速いか、銃声が鳴り響く。その数、十数発。
「……な、ぁ!?」
 その熱線は銃声と同じ数だけ放たれ、その全てが『希望を摘み取る者』を貫いていった。
 おそらく最大速度だったのだろう、それを的確に撃ち抜かれた『希望を摘み取る者』は怯み、その場に停止する。
「苛立ちは隙を生むのさ。……もう、攻撃を打ち消す余裕を与えるつもりはないよ」
「……ハジメさんを、絶対に死なせたりなんか、させない」
「ぐっ……おのれ、猟兵……おのれ、希望!!」
 動きの止まった『希望を摘み取る者』に対し、今まで控えめだった分を取り戻すほどの熱線を、苛烈だった斬撃はさらに切れ味を上げ。
 それらを、阻む物はすでになかった。

 強くなる、と言った。
 正直、ハジメ自身も驚いていた。強くなる、だなんてと。
 きっと、そう思ったのは、あのふたりや他の猟兵の姿を見てきたからだ。
 そう、まずは『あの人達』のように強くなる。
 サンディとビビ、他の猟兵を見て、ハジメはその決意を固めていった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵