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にゃんにゃんワイルドハント

#グリードオーシャン #獣拳士ウリン #ヤマゴボー星人 #収穫祭 #にゃんにゃん

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#グリードオーシャン
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●忍び寄る影
 ――ぐぎゅるるるううううううううううう。

 グリードオーシャンに浮かぶ、とある島。
 その奥深く隠されたアジトから獣の唸り声のような音が轟き、少し遅れて幾つもの声が軽快に飛び交う。
「魚とか野菜じゃなくって、ボクは甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレが食べたいんだよっ!!」
 四肢を床に投げてジタバタと赤子のように駄々をこねていたのは、猫耳の少女。
 その面影は愛嬌があって可愛らしく、けれど床に伸ばした四肢と体つきは良く鍛えられており、まるで俊敏な肉食獣のよう。
「ゴ、ゴボー、そう申されましても……」
「それが何かはっきりおっしゃってくださらないと、わかりませんゴボー」
 少女の周りには、2メートル程あるヤマゴボウに手足を生やしたような異形――ヤマゴボー星人たちが新鮮な魚や野菜を両手いっぱいに抱えたまま、揃って重いため息を吐いておりまして。
 と、その時だった。
 少女がばたつかせていた手足をピタッと止め、頭に生えた猫耳をぴんと伸ばす。
 同時に。大きな金の瞳も獲物を狙い定めるかの如く、鋭利に煌めかせた。
「ねえねえ、近々ケットシーたちの村で収穫祭があるよねっ♪ ちょっとその村に行ってアレを根こそぎ奪ってきてくれないかなっ☆」
 まるでお使いでも頼むような態度。しかしヤマゴボー星人たちは揃って瞳を輝かせる。
 だって、彼らはオブリビオン。
 見た目はアレだけど、この世界ではコンキスタドールと呼ばれる悪い奴らなのだ!
「さすが、獣拳士ウリンさまだゴボー」
「ウリンさますごいゴボー! とっても賢いゴボー!」
「我々がサクっとささがきにされ、ババッとアク抜きされる前に、アレをたくさん奪ってくるゴボー!」
 一縷の望みを賭け、ヤマゴボー星人たちは、えいえいおーと声を揃える。
 収穫祭なんだし、甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレもきっと、たくさんあるよね!

●にゃんにゃんワイルドハント
「甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレ…わしが食べてるリンゴに似――」
「いくらユルユルでも、ネタバレ禁止っ!!」
 猟兵たちのツッコミに満ちた視線を受けつつ、ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)は、のんびりと話を切り出す。
「皆さまに赴いて欲しいのは、グリードオーシャンに浮かぶ『キンクテイル島』。その昔、アルダワ魔法学園のケットシーがいっぱいの場所から落ちてきたと伝えられている島なのですじゃ」
 この島の住人の大半が今もなおケットシーたちで、暖かくて穏やかな気候に順応し、のんびりまったり島ライフを営んでいるという。
 周囲は海なので御馳走のお魚がいっぱい。そして、海沿いにそびえる山の斜面を生かして作られた果実園と野菜が、この島の名物だとか!
「ケットシーさんの村は海沿いに広がっておりますのじゃ。村では秋の収穫祭が行われていて、海で獲れた新鮮なお魚さんや、山に実った瑞々しい果実で作られた食べ物や飲み物が、たくさん振るわれておりますのじゃー」
 この島のケットシーたちは、異なる種族の来訪者が来ても、全然気にしない♪
 収穫祭を楽しむ者は全て拒まずの精神で、肉球を上げて歓迎してくれるけれど……。
「郷に入っては郷に従えとも言いますし、よりケットシーさんに近づけば近付くほど、きっと仲良くなると思いますのじゃー」
 ――ねこに変身して、ケットシーさんとまったりくつろぐのもよし!
 ――ねこみみ、ねこ尻尾をつけて、モフモフしあうのもよし!
 ――キャラ変はちょっと…と思う貴方はそのままの姿でも、好奇心旺盛なケットシーたちは「珍しいお客さんだね」と、興味津々の眼差しで迎えてくれるだろう。
「一見、この平和な楽園のような島の裏側でも、コンキスタドールが虎視淡々と陰謀を企んでおりますのじゃ」
 彼らのアジトの場所は掴めなかったものの、その目的ははっきりしている。
 収穫祭で振る舞われるであろう『甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレ』を突き止め、根こそぎ奪うことだ!
「幸い、手下のヤマゴボー星人たちは逃げ足以外はとっても脆弱。甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレの所在が判明しましても、周囲の気配が薄れるまでは近くに隠れて様子見しようとしますのじゃ」
 周りから人の気配が薄れた瞬間、謎の植物系人種であるヤマゴボー星人たちは、持ち前の俊敏な逃げ足を生かして、強奪に動こうとする。
「なので、皆さまが収穫祭を全力で楽しむほど、ヤマゴボー星人たちは動きにくくなり、収穫祭を楽しむケットシーさんたちの安全にも繋がりますのじゃー」
 ウキウキとユーゴが告げると同時に、琥珀色のグリモアの輝きも増していく。
「ケットシーさんたちは笑顔のままで。コンキスタドールだけを人知れず倒し、そっと立ち去ることができたら、きっと素敵だと思いますのじゃ」
 平和な島を悲しませる必要はないのだからと、ユーゴは破顔する。
 そして、大いに楽しんできてと、キンクテイル島に向かう船上へ転送するのだった。


御剣鋼
 御剣鋼(ミツルギ コウ)と申します。
 技能等はあまり気にせず、気軽に楽しんでいただけますと幸いです。
 ぶっちゃけ、アレの所在が分からなくても大丈夫です。参加者全員が盛大にボケをかましても、何とかなるユルユルな難易度です。

●プレイング受付期間:1章は11月12日(木)9時から受付開始
 1章は上記時刻から、2章と3章は導入文が入り次第、プレイングを受け付けます。
 進捗などはマスターページ、ツイッターでもご案内しておりますので、合わせてご確認頂けますと幸いです。

●各章につきまして
 1章:日常パートです。モフモフなケットシーたちと収穫祭を楽しみましょう。
 気候は温暖。新鮮な魚や果物を使った料理を振る舞ってくれるほか、成人以上の方には果実酒が、未成年の方にはフルーツジュースがご用意されております。
 飛び入りで料理を振舞っても、フレンドリーな彼らは歓迎してくれるでしょう。

 2章:『ヤマゴボー星人』たちとの集団戦です。接触の仕方は1章での皆様の行動によって楽し〜く決まります。さくっとささがき…ゲフンボコりましょう!

 3章:ボス戦『獣拳士ウリン』との戦いになります。ウリンはハラペコのせいか、戦闘力はそれほど高くありません。戦い以外のアプローチもできるかもしれませんね。

●その他
 御剣鋼の場合、2〜3名様を組み合わせて描写することが多いです。
 ソロでの描写をご希望の方はプレイングの冒頭に「★」をつけてくださいませ。

 ご一緒したい方がいる場合は【相手のお名前】を明記して頂けますと助かります。
 旅団の皆様でご参加の場合は【グループ名】で、お願いいたします。

 有り難くもたくさんプレイングを頂けました場合、
『参加シナリオ数が0〜2の方>御剣鋼のシナリオが初めての方>それ以外の方』
 の順で優先しますが、可能な限り頑張って採用する方針でおります。

 皆様の素敵な収穫祭、心よりお待ちしております!
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第1章 日常 『ねこのしま』

POW   :    ケットシー達とノンビリ過ごして交流

SPD   :    ケットシー達と食事しながら交流

WIZ   :    ケットシー達と歌って踊って遊びながら交流

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
ああなるほど、アレのことだねアレ
美味しいよねーアレ
…あっ、梓は分かってないなこりゃ
と察したけど、向こうから「教えて下さい」と言うまで
敢えて言わないでおこう

わぁ、どれも美味しそう
ケットシーがいっぱいの島だけど
ちゃんと人間サイズでも食べやすい料理が
揃っていてありがたいね
新鮮な魚の味がダイレクトに楽しめるお刺身や
スープの最後の一滴まで楽しめる
ブイヤベースやアクアパッツァを堪能

梓に続いて果実酒を一杯いただく
この後戦いもあるし飲みすぎないようにしとかないと
梓は気にせず飲みまくってるけど…この酒豪
…あっ、これってまさにアレで作ったお酒だ
でもこの状態だと梓は気付いてないだろうなぁ…


乱獅子・梓
【不死蝶】
え?甘くてシャリシャリした黄緑色のアレ?
セロリか?いやそれは甘くはないしな…
…あ、ああ!そ、そうだなアレアレ!
コンキスタドールが狙うのも分かるぞアレ!
…勢いで綾の話に合わせてしまったが
今更「実は分からんから教えてくれ」と
聞くのも恥ずかしい…!
何としても自力で突き止めねば!

まぁ祭りを楽しんでいれば自ずと分かるだろう、多分
この料理の数々、ケットシーたちが
あの肉球ハンドで器用に作っていると思うと凄いな…
食べながら、可愛い仔竜たちに分けてやることも忘れない

ほう、綺麗な色の酒だな
透き通った黄色の果実酒をいただく
…美味い!甘くてスッキリした味わいで飲みやすいな
何杯でもいけそうだ(ぐびぐび



●海の幸と黄色の美酒の魅惑
「え? 甘くてシャリシャリした黄緑色のアレ? セロリか? いやそれは甘くはないしな……」
 セロリは絶対違う、そんな気がする。
 港町に踏み入れた乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の独り言にも似た呟きに、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は心地良い海風に只でさえ細い双眸を細め、ゆるりと笑みを返して見せて。
「ああなるほど、俺が思うには、アレのことだねアレ」
「…あ、ああ! そ、そうだなアレアレ! コンキスタドールが狙うのも分かるぞアレ!」
 穏やかに微笑む綾から余裕っぽいものを感じたのか否か、梓が勢いのまま話を合わせてしまったのも、もはやあとの祭りというもの。
「美味しいよねーアレ」
「あ、ああ! なあに、俺がいる限り心配は無い!」
 ……否、これは非常に不味いと梓は密かに思う。
 今更「実は分からんから教えてくれ」と聞くのは、とっても恥ずかしいじゃないか……!
(「まぁ、祭りを楽しんでいれば自ずと分かるだろう、多分」)
 ――何としても、自力で突き止める!
 固く胸の内に秘め、先陣を切って歩き出した梓の背を、相棒の炎竜の焔が「キュー」と、氷竜の零が「ガウ」と楽しそうに応え、パタパタと羽を動かして追いかけていく。
 誰よりも目立つ来訪者たちの訪れ。収穫祭を楽しんでいたケットシーたちも耳と尻尾をピンと立て、キラキラと宝石のような瞳を輝かせた。
「にゃ、大きなお客さんたちが来たにゃー!」
「いっぱい食べて、いっぱい楽しんでちょうだいねー」
 大きな人とドラゴンは、ケットシーだらけのこの島ではとても珍しい。
 たちまち好奇心旺盛なケットシーたちに取り囲まれた梓たちに綾は目尻を細め、自身にしか聞こえぬ呟きを、そっと洩らす。
「…あの様子だと、梓は分かってないなこりゃ」
 薄々感じていたけれど、向こうから「教えて下さい」と言われるまで敢えて言わないというのは、彼なりの優しさなのだろう、……きっと。
 綾が歩きながら街並みを見回すと、地中海風の家屋に所々蒸気機関の痕跡が顔をのぞかせており、今は収穫祭ということもあって野菜や果物、肉球スタンプなどで、無機質な真鍮色が可愛らしく色とりどりにデコられていて。
 街の中心部に近づくと道に沿って屋台がずらりと並び、香ばしい香りに誘われたふわもふのケットシーたちで、大いに賑わいを見せていた。
「ケットシーがいっぱいの島だけど、ちゃんと人間サイズでも食べやすい料理が揃っていてありがたいね」
 人混みもといケットシー混みの中、背丈がある梓と綾はとても目立っている。
 屋台のケットシーたちもテンションが上がったのか、シェフの格好をしたケットシーは人間用の食器を並べると手早く刺身とフルーツソースを添え、漁師風のケットシーも負けじとばかりに肉球をブンブンと振って、2人を呼び止めた。
「新鮮な魚で作りましたにゃ、フルーツソースが隠し味ですにゃー」
「アクアパッツァとブイヤベースもどうだい? 今朝獲ってきたばかりの魚貝類さ!」
「わぁ、タイのカルパッチョだね」
「ほう、これは見事だな」
 次々と差し出される料理に綾は足を止め、梓の口元も自然と緩んでしまう。
 2人が最初に口に運んだのは、タイのカルパッチョ。
 新鮮な魚特有のコリコリした歯応えとともに口の中に爽やかに広がるのは、さっぱりとした柑橘系のソースだ!
「この金目鯛とアサリのアクアパッツァも美味しいね。ブイヤベースの方はどうかな」
 新鮮な海の幸を香味野菜でじっくり煮込んだ鍋料理は、スープにも魚貝類の旨味が優しく染み込んでいて、口当たり良く飽きの来ない逸品に仕上がっている。
 どちらも味わうようにゆっくり最後の一滴まで楽しんだ綾が横を見やると、梓は既に2周目に突入している様子。
 正確にいうと、1人と相棒たちの分。
 梓は新鮮な海の幸をモグモグと味わいながらも、可愛い仔竜たちにもお裾分けすることを、忘れていなかった。
「この料理の数々、ケットシーたちがあの肉球ハンドで器用に作っていると思うと、凄いな……」
 炭火でじっくり焼きあげた魚の串焼きを美味しそうに頬張る焔と零から視線を外し、梓は改めて収穫祭の中心となった街並みを、ぐるりと眺める。
 その視線は、パン生地を肉球で上手に捏ねていたケットシーを通り過ぎ、少し遠く離れた屋台に並べられていた、透き通った黄色の果実酒に止まった。
「ほう、綺麗な色の酒だな」
「……あっ、それ俺にも1つ」
 魚介の旨味を堪能した酒豪が求めるのは、なんと言っても御酒ですよねっ!
 嬉しそうに透明感のあるグラスを取った梓に、綾もまた一杯だけならと、美酒をとる。
 その意に反して鼻腔を誘い、くすぐってくる、甘い果実酒の誘惑。
 けれど、このあとコンキスタドールとの戦いも控えているのは百も承知。綾は飲みすぎないようにと心に枷を付け、小さくグラスに口をつけた。
(「…あっ」)
 透明感のある黄色。グラスから漂う仄かな香りから、何となく察するものはあった。
 そう、口に広がる甘々しくも果実特有の瑞々しさは、紛れもなく――!
(「これ、まさにアレで作ったお酒だ」)
 綾が僅かに双眸を細めたのも一瞬、すぐに顔を上げて相方の方を見やる、と。
「…美味い! 甘くてスッキリした味わいで飲みやすいな」
「大きいお兄さん、とってもいい飲みっぷりですにゃー」
「…梓、それ何杯目?」
 ……この酒豪。このあと戦いが2連戦あるんですよ、わかってます?
 というか、この状態だと気付いてないだろうなぁと、綾は黙したままグラスを口に運ぶ。当の本人は気にせず飲みまくっているのが、何とも清々しい。
「なるほど、これは梨のリキュールか! 何杯でもいけそうだ」
「瑞々しい味わいでスッキリとした甘さのお酒ですにゃ、ソーダ割りもオススメにゃ!」
「それも美味しそうだね」
 言わぬが花。物事は露骨に言ってしまっては、興醒めするだけだろう。
 美味しそうに梨の果実酒を飲み干す梓の横顔を、綾だけが涼しげな笑みで眺めていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

惑草・挧々槞
この島はアルダワ魔法学園から落ちてきた、と。
きっとその際には蒸気機械の類も幾つか一緒に落ちてきていた事でしょう。中には調理器具的な物もあったはず。
つまり件の予兆で敵が宣っていた『甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色』とは!メロンシロップのかかったかき氷の事に違いないわ!

という訳で、氷塊とかかき氷器とかを何処かに纏めて置いていたりしないか、お食事をご馳走になりがてら訊いてみましょう。
……特にそういう物は無い、なるほど。まあいいや切り替えていこう。くだものおいしい。

あ、これ美味しいわね。シャリシャリして甘い。これ何?
私はケットシーでは無いけれど、猫の姿してるよしみで詳しく教えて頂けないかしら。



●迷探偵と甘くてシャリシャリした黄緑色のアレ
「この島は、アルダワ魔法学園から落ちてきた、と」
 海風にツインデールを靡かせ、船上から颯爽と降り立った惑草・挧々槞(浮萍・f30734)は、金の双眸を細める。
 眼前に広がる港町は地中海風の家屋が多いけれど、所々にアルダワの痕跡が見られ、人や大きな物質の往来にも支障がない、堅牢な造りになっていて。
「私の推理通り、蒸気機械の類も幾つか一緒に落ちてきていたのは、間違いなさそうね」
 ――ならば。中には、調理器具的な物もあったはず。
 挧々槞が見渡す限り、蒸気機関の殆どが機能を停止している。今は収穫祭ということもあって野菜や果物でデコられていたり、肉球でペタペタされていて大変なことになっていたけれど、この島の器用なケットシーたちなら過去の遺物を改良し、上手く使いこなしていても、おかしくはない。
「つまり、件の予兆で敵が宣っていた『甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色』とは!」
 挧々槞の双眸の端が、剣呑さを帯びる。
 ――マドウクシャ。100年の歳月を経て妖怪と化した彼女が導き出した答えとは!
「メロンシロップのかかった、かき氷の事に違いないわ!」
 ――ばばーん!
 挧々槞が人差し指を向けた先にあるのは、この街で一番賑わっている酒場だった。
 
「氷塊とか、かき氷器とかを何処かに纏めて置いている場所はないかしら?」
「氷塊なら山奥の氷蔵にたくさんありますにゃ、おっきな壊れた蒸気機関をリサイクルしてますにゃー」
「壊れた蒸気機関を冷凍庫代わり…アルダワ魔法学園の人が聞いたら驚きそうね」
 場所は変わって、海沿いにある酒場。
 今は収穫祭というのもあり店は広く開放されていて、多くのケットシーたちが収穫祭で火照った身体を休めていて。
 モフモフ愛好家にとっては居心地が良い空間になっていたけれど、探偵にとっては情報源の1つに過ぎぬ。そう、どんな時も名探偵は聞き込みは欠かせないのだ!
「あとは、かき氷器の在処ね」
 見通しの良いオープンテラスに座った挧々槞は、果実たくさんのホットケーキを味わいながらも、店を訪れるケットシーたちに積極的に訊きこんでいく。
 猫の姿をした挧々槞に親しみを感じたケットシーたちは、揃ってフレンドリーに答えてくれた、けれど。
「ジェラートとは違うのか、にゃ?」
「私も聞いたことないにゃ。奥さまはどう、旦那さんが菓子職人でしょ?」
「うーん、みたことありませんにゃー」
 ケットシーたちから良い話は聞けず、この島の情報網と呼ばれるバーテンダーにも訪ねてみたけれど、無口な彼も申し訳なさそうに、首を横に振った。
「……特にそういう物は無い、なるほど」
 振り出しに戻ってしまったか。
 口元を結んだのも一瞬、挧々槞は気持ちを切り替えるように、メニューを広げる。
「まあいいや、ここのくだものおいしい」
 そう、腹が減っては推理はできぬ!
 ホットケーキを平らげた挧々槞が次に頼んだのは、本日のお薦めタルト。
 運ばれてきたタルトは仄かにアーモンドが香り、サクサクビスケット生地の上に美しく並べられた黄色の果実は、まるで花の花弁のよう。
「あ、これ美味しいわね。シャリシャリして甘い。これ何?」
 口に広がる温かみのある甘さと瑞々しい食感に挧々槞が猫耳をピンと立てると、至福の逸品を運んできたケットシーは、嬉しそうに微笑みを返す。
「梨のタルトですにゃ、収穫祭でもたくさん振舞われておりますにゃー」

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と

甘くてシャリシャリ?
一体何かしら

あらまあ
右を向いても左を向いてもモフモフな方達

よろしゅうございますよ?
黒猫の耳と尾をつけ
語尾もにゃんと申してみましょうか、にゃん
郷に入っては郷に従えと申しますもの、にゃん

あらお上手
天国の様な場所はこれからですよ

アルフィードさんもお似合いです
大変凛々しいケットシーの殿方だこと
耳、触れても?ふふ、もふもふ

折角の祭典
遠慮なくご馳走になりましょう
杏酒と果物をいくつか
斯様な心が浮き立つ祭は久方ぶり
さあどうでしょう?

可能ならケットシーさんとも触れ合いたいです
その、にくきゅうといいますの?
触れてもよろしくて?
大変心地よく……

時を忘れぷにぷにと


アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と一緒に

甘くてシャリシャリって多分丸くて美味しい果実だよ

わぁ!!本当にもふもふだからけだねー!
ケットシーちゃん達可愛いね!
ふふっ、環ちゃんが耳と尻尾つけたらもっと可愛いだろうなーみたいなー
えっ!?着けてくれるの!?
それも、にゃん!

可愛い!環ちゃんの可愛い姿見れて俺天国行くかもしれない!

俺も耳と尻尾着けれて
似合う?良かった…
ん?触っていいよ
頭を触りやすい様に向けて

そうだね!果実も果実酒も美味しい!
環ちゃんのもっと可愛い姿見れるかな?

あぁ、にくきゅうってぷにぷにして気持ちいいよね
愉しげに過ごす彼女をにこにこと眺めながら俺も笑みがこぼれる



●黒と白のもふもふ日和と実りの宝石箱
「甘くてシャリシャリ? 一体何かしら」
 収穫祭で賑わいを見せる港町を眺めながら、雨絡・環(からからからり・f28317)がゆるり言葉を紡ぐと、思い当たるところがあるのだろう、傍らに立つアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)が柔らかく微笑んで。
「甘くてシャリシャリって、多分丸くて美味しい果実だよ」
 それ特有のシャリシャリした食感と甘い瑞々しさに、虜になった者も多いとか。
 ……おそらく。この島の収穫祭でも、大いに振る舞われているに違いない。
 賑わいをみせる街の通りに沿って歩くと、すぐにアルフィードの鼻腔を美味しそうな旬の香りがくすぐってくる。
 ふわもふなケットシー混みの中。ぽつりぽつりと猟兵らしき顔ぶれも垣間見えるけれど、収穫祭を楽しんでいる多くが、この島のケットシーたちだった。
「あらまあ、右を向いても左を向いてもモフモフな方達」
「わぁ!! 本当にもふもふだらけだねー!」
 箒の先のような見事なしっぽの持ち主もいれば、耳がふさふさな者もいて。
 旬の幸を抱えて楽しそうににゃーにゃーと駆け回るケットシーたちに環は銀の瞳を細め、アルフィードの口元にも自然と笑みが溢れていく。
「ケットシーちゃん達可愛いね!」
 常に温暖な気候で温かいこの島でも、ケットシーたちの毛並みは揃ってもふもふ。
 新鮮で美味しいものを口にしているのか、ケットシーたちの毛艶はとても良い。空に向かってピンと立った猫耳と、フワフワ揺れる何とも魅力的な尻尾から視線を外したアルフィードは、ふと環の顔を覗き見る。
「ふふっ、環ちゃんが耳と尻尾つけたらもっと可愛いだろうなーみたいなー」
「よろしゅうございますよ?」
「んーやっぱり駄目……えっ!? 着けてくれるの!?」
 思わぬ二つ返事にアルフィードが左の瞳をぱちくりと瞬かせると、環は何処からか取り出した黒猫の耳と尻尾をつけ、穏やかに微笑み返す。
 佇まいだけでも美しいのに、黒猫の耳と尻尾は言わずもがな……約束勝利である!
「わぁ!! 環ちゃん、可愛い!」
「語尾もにゃんと申してみましょうか、にゃん」
 にゃん、だとッ!
「えっ!? にゃん! 俺、天国行くかもしれない!」
「あらお上手、天国の様な場所はこれからですよ、にゃん」
 いえいえ、お上手なのは貴方の方ですよ、にゃん。
「もう天国にいるのかも!」
 環の愛らしい姿を拝めただけでなく、語尾が「にゃん」な、パーフェクト仕様!
 こんにちわ天国、ようこそパラダイス。
 尊さが限界突破したアルフィードが両手で顔を覆うと、環は口元の弧を緩め「アルフィードさんもぜひ」と、優しく微笑んで。
「郷に入っては郷に従えと申しますもの、にゃん」
「そうだね! 俺も耳と尻尾を着けて……似合う?」
 アルフィードがいそいそと己の身体に着けたのは、白色の猫耳と猫しっぽ。
 環が黒猫なら、アルフィードは白猫。並ぶと黒白のコントラストが眩しく冴えて。
「アルフィードさんもお似合いです、大変凛々しいケットシーの殿方だこと。……耳、触れても?」
「良かった……ん? 触っていいよ」
 青空の下。アルフィードの金の髪にぴょんと生えた猫耳は、何とも愛らしくて。
 触りやすくなるようにアルフィードが少しだけ屈むと、環の白磁色の指先が優しく彼の猫耳に触れる。
「ふふ、アルフィードさんの耳も、もふもふです」
 心地良い海風が、優しく2人の側を駆け抜ける。
 指先から伝わる肌触りは太陽を浴びてほんのり温かく。そして、少しだけお日様のような香りがした。

「折角の祭典、遠慮なくご馳走になりましょう」
「そうだね! 記念品のバスケットをもらったけど、いろんな果実が入ってるね」
 もふもふを堪能したあとは、いよいよ収穫祭!
 会場に隣接されたオープンテラスの2人用のテーブルに環が杏酒のグラスを並べると、その隣にアルフィードが旬の果物が入ったバスケットを、そっと置く。
 中にはイチジクと梨、柘榴、柿がぎゅっと詰まっており、温かな日差しを受けてキラキラと輝く果実は、まるで秋色の宝石のよう。
「斯様な心が浮き立つ祭は久方ぶり」
 環の指先が赤く艶やかな柘榴を丁寧に割ると、爽やかな香りの玉石の粒が溢れて。
 一粒だけ手にとって唇に運ぶと、口の中を淡泊でほのかな甘みが広がっていく。
 見た目も、食べる瞬間も、口に広がる味わいも楽しめる果実たちは、その1つ1つがケットシーたちの努力の結晶であり、宝石箱なのだろう。
「果実も果実酒も美味しいね!」
 共に秋の実りに舌鼓を打ちながらも、アルフィードの視線は環に止まっていて。
 ――環のもっと可愛い姿を見てみたい。
 そう願った時だった。アルフィードたちの目の前に果物のバスケットを差し出したケットシーが「ぶどうを入れ忘れてたにゃー」と、慌ててやってきたのは。
「にゃー、ごめんなさいにゃ! お詫びにオマケもつけますにゃー」
「あ、でしたら、その、にくきゅうといいますの? 触れてもよろしくて? にゃん」
 予想外のにゃん!
 それが告げるのは福音か、こんにちわ天国か、ウェルカム至高の楽園なのかッ!
「にゃ! それだけでいいのかにゃ? お兄さんもぜひぜひ触ってくださいにゃー」
「えっ!? 俺もいいの!?」
 ――可能だったら、ケットシーさんとも触れ合ってみたい。
 密かな願いが叶った環が嬉しそうに指先を上げると、ケットシーも合わせるようにお手手をあげ「遠慮なくどうぞにゃー」と、プニっと肉球を押し付ける。

 ぷにぷにぷにぷにぷにぷに。
 ぷにぷにぷにぷにぷにぷに、ぷにぷにぷにぷにぷにぷに。

 アルフィードの猫耳が陽だまりの心地良さならば、目の前の魔性の肉球はクセになる弾力感と柔らかさと温もりと安心感と――嗚呼、やめられないとまらない!
「大変心地よく……」
「あぁ、にくきゅうってぷにぷにして気持ちいいよね」
 収穫祭の賑わいは、まだまだ始まったばかり。
 時を忘れるように肉球の柔らかさを堪能する環を眺めながら、アルフィードの口元にも自然と笑みが溢れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

有海・乃々香
※連携・アドリブ歓迎

わーっ、ねこさんがいっぱいだね、サメさん!
ののかも、おまつり行きたい!
……あ、でも、サメさんこわがられちゃうかな
ねこさんにへんそーすれば、だいじょぶかなぁ

猫耳と尻尾をすちゃっと装着
連れたサメさんにも猫耳つけて、いざ出陣

もし怖がられたら
ぷかぷか宙に浮かぶサメさんに乗り、収穫や給仕のお手伝いして誤解を解く
だいじょーぶよ、食べないよ!
今日はサメさん、おさかなの気分だから!

そういえば、甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレ……ってなんだろーね、サメさん
ののかも食べてみたいなぁ

ねこさんたちと遊びつつ
サメさんとジュースで乾杯
おさかなも、やさいも、くだものも、みんなおいしいね!



●海風と晴天の下で咲く笑顔
「わーっ、ねこさんがいっぱいだね、サメさん!」
 緑の瞳をキラキラと瞬かせた、有海・乃々香(愛情欠乏症・f26728)の視界いっぱいに広がるのは、秋の色どりに装飾された街並みと、祭りを楽しむふわもふなケットシーたち。
 海沿いから吹く心地良い風に乗せた乃々香の弾む足取りが、不意にピタリと止まる。
「……あ、でも、サメさんこわがられちゃうかな」
 心配そうに後ろを振り向く乃々香の視界に入ったのは、楽しそうに宙をふわふわと浮かぶサメさん。
 乃々香にとってサメさんは勇敢で、自身のひかりでもあるけれど、この島のケットシーたちにとっては、きっと未知の存在だ。
「ねこさんにへんそーすれば、だいじょぶかなぁ」
 転送してくれたグリモア猟兵も、ケットシーに近づけば近付くほど仲良くなりやすいと、言っていたはず……。
 乃々香はポシェットから猫耳と猫尻尾を取り出すと、まずは自分にすちゃっと装着。
 そして。連れていたサメさんの頭にも――。
「よし、これでサメさんもだいじょうぶ、だよね?」
 なんと、サメさんもケットシー化!?
 サメさんの頭の上でぴょこぴょこと揺れる猫耳は何とも愛らしく、乃々香の口元も自然と弛んでいく。
 これならきっと大丈夫、今度こそいざ出陣! ……のはずだったのですが。
「オレっちの店にも寄ってらっしゃい見て――にゃにゃっ!!」
「にゃ、サメにゃー」
 早々に、お魚屋さんの厳ついケットシーが目をまんまるくし、彼の奥さんと思われる三毛猫のケットシーが、ひゅっと店の奥へ姿を消してしまう。
 ……やっぱり、怖がられてしまった。
 乃々香はぷかぷか宙に浮かぶサメさんに軽やかに飛び乗ると、硬直したままのお魚屋さんを安心させるように、にっこり微笑んで。
「だいじょーぶよ、食べないよ! 今日はサメさん、おさかなの気分だから!」
 ――ケットシーたちの誤解を解いておきたい。
 少しでも仲良くなれればと、乃々香が魚屋さんのお手伝いを買って出ようとした、その時だった。
「お待たせしましたにゃー」
 店の奥から出てきた奥さんが両手いっぱいに抱えていたのは、新鮮な小魚がたくさん入った木箱。サメさんを一目みた彼女は「店に並んでるものじゃ足りないにゃ!」と、急いでサメさんの分を見繕ってくれたのだろう。
「2人でいっぱい食べるにゃ、この木箱のお魚、まるっと持っていくにゃ!」
「えっ、いいの?」
「ああ、オレっちからも頼む。嬢ちゃんのサメとてもいい子だな、驚いてしまってすまないにゃ」
「ウチの亭主はガタイだけ。気はとってもビビリにゃ!」
「わぁ、ありがとう、サメさんよかったね!」
 魚屋さん夫妻から木箱を受け取った乃々香が振り向くと、猫耳をつけたサメさんに興味津々なケットシーたちが集まっていて。
「猫耳なサメさん可愛いにゃ♪」
「わたくし、宙を浮いてるサメなんて、初めてみますにゃ!」
「さ、触ってみてもいいですかにゃ?」
 ケットシーたちの申し出に断る理由はなく、乃々香は快く二つ返事を返すのだった。

「そういえば、甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレ……ってなんだろー」
 ケットシーたちと別れた乃々香たちが次に向かったのは、ジューススタンド。
 ジュースを2つ受け取ってベンチに腰掛けると、サメさんに向かって、ちょんと首を傾げてみせて。
「ね、サメさん、ののかも食べてみたいなぁ」
 乃々香がサメさんと一緒に「乾杯!」と掲げたジュースは、透明感のある黄色――梨のジュース。
 口に運ぶと、はじめに絞りたて特有の濃厚な食感が口の中に広がるものの、梨の瑞々しさと隠し味のレモンが絶妙で、とてもさっぱりしていて飲みやすい!
「おさかなも、やさいも、くだものも、みんなおいしいね!」
 お祭り日和と呼べる青空の下、乃々香は満面の笑みで微笑む。
 その笑顔に応えるように、サメさんもまた楽しそうに猫耳を揺らすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルファ・オメガ
がう!食いしん坊なケットシーが必要と聞いて!
まかせて、いくらでも食べるし、全力で楽しむよ!

そんなわけでねこのしまにとうちゃーく!
さっそく村にいってみよー!

おっさかな、おっさかな、へいっ♪(村人ケットシーと肉球はいたっち)

やっぱり新鮮なお魚は美味しいね!
生も焼きも煮るもどれも捨てがたい

お腹がいっぱいになったらちょっと運動しよう

潮風のする場所で猫たちが集まったなら、やることはひとつ!
組み手だよね!(某カンフーしているような猫写真的な)
ふふふ、ボクの荒ぶるケットシーのポーズのキレについてこれるかな!?

周りから見たらケットシーたちが踊っている様に見えるかもだけど
それはそれでアリだよね

※アドリブ連携OK



●潮風に舞うもふもふ演武
「がう! 食いしん坊なケットシーが必要と聞いて!」
 港街に悠然と足を下ろした、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)もまた、弾む足取りもといに肉球で、ぴょこぴょこと収穫祭を駆け回っていて。
 祭りもちょうど半ば。焦茶の瞳には職人たちの自慢の料理が次々と飛び込み、これでもかと言わんばかりに、香ばしい香りが鼻腔をくすぐっていく。
「まかせて、いくらでも食べるし、全力で楽しむよ!」
 五感を刺激する秋の味覚に、アルファも全力で挑む気満々!
 ならば、自分も一肌ならぬ一毛並み脱ぎ、底無し胃袋を開放するまでであーる。
「そこのケットシーさん、おっさかなおっさかな、いらんかね♪」
「おっさかな、おっさかな、へいっ♪」
 元々ケットシーであるアルファに対しては、島のケットシーたちも同郷のように接していて。
 アルファが肉球を掲げると、屋台で串焼きを作っていたケットシーも手を止め、ぷにっと肉球でハイタッチ。
 そして、そのまま焼き立ての串焼きをアルファに握らせると「また来てにゃー」と、ぶんぶんと肉球をフリフリしてくれた。
「やっぱり新鮮なお魚は美味しいね!」
 まずは、貰ったばかりの串焼きを、横から豪快にガブリッ。
 炭火でパリッと焼けた皮の食感と絶妙な塩加減が浸透すると同時に、ホクホクで柔らかな白身の上品な味わいが、アルファの口いっぱいに広がっていく。
「生も焼きも煮るもどれも捨てがたいなあー」
 新鮮な海の幸と野菜でじっくり煮込んだブイヤベースは、魚貝類の旨味がぎゅっと濃縮されており、何杯でもお代わりができてしまう。
 口直しのお刺身は新鮮な魚特有の弾力が残っていたけれど、びっくりするくらい柔らかく、するりするりと喉の奥へと流れて、胃袋を美味しさで満たしていった。
「がう、あっちにも美味しそうな匂いがする!」
 息継ぐ間もなくアルファの瞳に飛び込んできたのは、100人分はあると思われる、巨大パエリアの鍋!
 順番に並んで手に入れたパエリアは魚介の旨味がご飯にも浸透し、とても深みのある味わいになっていて。
 しっとり炊き上がった部分とパリッと香ばしいお焦げのバランスも、実に絶妙だ!
「お腹いっぱいになったし、ちょっと運動しようー」
 たまに休憩を入れるのも、食べ歩きのコツ。
 隣接されたオープンテラスに足を踏み入れたアルファは、ぐるりと周囲を見回す。
 海風が心地良いこの場所では、多くのケットシーたちが集まっている。
 ――ならば、やることはひとつ!
「組み手だよね!」
 フンッと鼻息を鋭く吐いたアルファは右手で拳を作ると、胸の前に構えた左手の肉球に向けて、軽く拳を撃ち付ける。
 その独特の構えを知る者がいれば、中国武術の所作の1つと気付くだろう。
 まずは腰をゆっくり深く落とす。緩急をつけた独特の所作に、何だ何だとケットシーたちが集まってきた。
「にゃにゃ! パフォーマンスかにゃ?」
「見たことがない踊りにゃ!」
 周囲の熱い視線を浴びながら、アルファは腰を落としたまま動きを止める。
 ――刹那。呼吸に合わせて左足を前方に強く踏み込むと、右手の拳を鋭く突き出した。
「ふふふ、ボクの荒ぶるケットシーのポーズのキレについてこれるかな!?」
 流れるように右足を大きく振り上げ、再び腰を落として両腕を素早く突き出す。
 ――五歩拳。最高の名拳法を学ぶなら必ず押さえておきたい動作であり、それをベテランの猟兵であるアルファが繰り出す様は、華麗に踊っているようにもみえて。
「すごいにゃ、拳がみえないにゃ!」
「キレッキレにゃー!!」
 演武を終えてペコリと頭を下げたアルファを、大きな歓声と拍手が包み込む。
 後日。異国の演武に似たダンスが流行ったのは、また別のお話――♪

大成功 🔵​🔵​🔵​

御伽・柳
【SPD】

もふもふパラダイス……っ(……いや、モフるのは流石に事案では……?見た目がちょっと違うだけで相手は人類……人類だぞ俺……)
とりあえず服装は今年の南瓜行列で使った物を流用で、仕事の役に立つとは思わなかった

とりあえずもふもふパラダイス仕事の前報酬ということで、果実酒でもゆっくり飲みながら旅行記にこの景色を残そうと思います
そもそもグリードオーシャンに仕事に来たのも初めてですしね、記録はぜひ残したいです

……あ、これ美味しいな、魚料理にも合うし
果実酒はともかく魚料理はレシピ教えてほしい……なんて
無理は言いませんよ、モフりたいとも言いません絶対に


村瀬一・鵺宵
少し恥ずかしいですが……ケットシーさんと仲良くなるためです
ねこみみとねこ尻尾をつけましょう

どこを見てもケットシーさんばかり
ふふ、和みますね
さて、料理をいただくその前に、黄緑色の食べ物はどれなのか少し見渡してみます
アレの正体が僕にはピンと来なかったので、分かれば良いなぁと思いまして
その後で、ケットシーさんにおすすめ料理を伺いますね
えっと、おすすめの料理はありますか?
美味しそうですね、しっかり味わっていただきましょう
お酒はあまり強くないのですが、折角のお祭りです
果実酒も少しいただきたいですね

皆さん楽しそうですし、僕も楽しいです
素敵な収穫祭ですね
……ケットシーさんたちの笑顔、必ず守りましょう



●とある魔術師と書生のもふもふ紀行
「これは何という、もふもふパラダイス……っ」
 多くの猟兵が訪れるだけでなく、パフォーマンスを披露する者も現れたのもあり、住人のケットシーたちもアゲアゲのハイテンションで、盛り上がりを見せていて。
 収穫祭を駆け回る愛らしいもふもふ――否、ケットシーたちに、御伽・柳(灰色の渇望・f12986)は静かに片手で顔を覆うと、そっと瞼を落とす。
 ――俺よ、よく考えてみろ。
 相手は初対面のケットシーたちだ。しかも自分のような大人の男が嬉々と彼らをモフるのは、流石に事案になってしまうのでは?
 彼らは猫ではない。見た目がちょっと違うだけで、相手は人類……人類だぞ俺……。
 と、心にしっかり枷をかけ、固く決心した柳は、藍色の瞳をゆっくり見開く。
「……先程よりも、もふもふが増えてますね」
 眼前に広がるのは収穫祭の賑わいに釣られて増していく、ふわもふが至高な楽園!
 このまま自問自答を繰り返しては、可愛いもの好きの心が持たな――否、仕事に支障が出てしまうと確信した柳が、力強く一歩踏み出した時だった。
「どこを見てもケットシーさんばかり、ふふ、和みますね」
 収穫祭で賑わう街並みに琥珀の瞳を柔らかく細め、柳を呼び止めたのは、村瀬一・鵺宵(奇談ヲ求ム者・f30417)。
 煤竹色のゆったりとした書生服をふわり潮風に靡かせ、鵺宵は小さくはにかむ。
 柳の視線が、己の身体につけた猫耳と猫しっぽに、止まっていたからだ。
「少し恥ずかしいですが……ケットシーさんと仲良くなるためです。キミもですか?」
「そうですね。まさか、この仮装が仕事の役に立つとは思いませんでした」
 頷き返した柳の装いもまた、今年の南瓜行列で使ったという、大正浪漫風の火車猫の衣装を流用したもの。
 猫耳に猫しっぽ。帽子の中央についている肉球のプレートが愛らしく、けれど口元は赤いストールで隠すことを忘れない。
 その姿を穏やかに観察していた鵺宵は、もう一度ゆるりと唇を開く。
「黄緑色の食べ物はどれなのか少し見渡してみたのですが、アレの正体が僕にはピンと来なかったので、どこかで情報交換をしたいなぁと思いまして」
 鵺宵の琥珀の眼差しが、柳が持つ書きかけの旅行記に、一瞬だけ止まる。
 奇談や伝承を好み、時々里を離れては各地の不思議な話を蒐集している鵺宵の興味を引くには十分な逸品で、だからこそ呼び止めたのだろう。
「とりあえずも……いえ、仕事の前報酬ということで、果実酒でもゆっくり飲みましょうか」
 柳も、この賑やかで愛らしい景色をどこかで書き留めたかったと、鵺宵に同意する。
 そもそも、柳がこのグリードオーシャンの世界に仕事で来たのは初めてのこと。自分の足で赴き、自分の目で見て、自分の耳で聞いた世界は、自分だけの唯一無二のものであることをよく知っている。だからこそ、記録に残したいと強く思っていて。
 ……けして、モフりたいだけではないのだ!
「では、あのお店にしましょうか、スタッフさんもお客さんも皆さん楽しそうですし」
 鵺宵が指差したのは、ビストロ・エマブルという看板が掲げられた、レストラン。
 モダンな木製の扉を開けるとカランコロンと真鍮の鈴が鳴り、双子のもふもふなケットシーの少女たちが、2人を明るく出迎えてくれた。
「えっと、おすすめの料理はありますか?」
「今なら収穫祭限定の魚介のパスタ、季節野菜のリゾット、フルーツソースを使ったカルパッチョと――」
「季節のフルーツタルトかジェラート、収穫祭の果実を使ったお酒がお勧めですにゃ」
「どれも美味しそうですね」
 1人で食べる量としては多いけれど、幸い2人いる。
 折角の収穫祭。しっかり味わって頂きましょうと鵺宵はお勧めの料理を一通り注文すると、少し思案するように一拍置き、アルコールのラインナップへ視線を止める。
 ――収穫祭の果実を使ったお酒。ここにヒントがあるかもしれない、と。
「お酒はあまり強くないのですが、甘くて瑞々しい黄緑色の食べ物を使ったものはありますか?」
「甘くて瑞々しい黄緑色ですかにゃ? それなら、梨の果実酒がお勧めですにゃ」
「食前酒にはスパークリング、お魚料理にはリキュールもしくはフルーツカクテルが合うと思いますにゃ。どちらもあっさり飲みやすいにゃ」
 ピンときた鵺宵が顔を上げると、柳も何かを察したのだろう、視線が合う。
 ここまで絞り込むことができたのなら、あとは検証を重ねるだけだ。
「では、梨のリキュールを少しいただきたいです。あとは、梨のタルトもお願いします」
「俺はフルーツカクテルにしてみます」
 運ばれてきた梨の飲み物は透き通った黄色だったけれど、その味わいはどちらもすっきりした甘さで瑞々しくて。
 ――そして。
 鵺宵が梨のタルトを口に入れると、口の中にシャリシャリとした独特の食感が広がっていく。まだ確証できないものの、コンキスタドールが狙っている食べ物の最有力候補と呼んでも、過言ではないだろう。
「……あ、これ美味しいな、魚料理にも合うし」
 どうやら今年は梨が豊作らしく、梨の果実酒が多く振る舞われているらしい。
 梨をベースに柑橘系で味を整えたフルーツカクテルに舌鼓を打ち、柳は黙々とヒラメのカルパッチョを平らげてみせて。
 お勧め料理を次々と美味しそうに堪能する2人に双子のケットシーたちも嬉しくなったのだろう、同時に右と左から「ありがとにゃ!」「嬉しいにゃ!」と、抱きついたああ!?
「お兄さんたち、とってもいい目と舌をしてるにゃ!」
「特別にレシピも教えちゃうにゃー! パパ……ゲフン店長には内緒にゃ」
 遠慮がないのは2人が仮装をしているせいか、はたまた彼女たち流のスキンシップなのか、おそらく両方ですね、きっと♪
「喜んでいただけて何よりです」
「……ありがとう」
 鵺宵は穏やかに微笑み返していたけれど、柳はポーカーフェイスを保ったまま。
 これは至高の楽園なのか、試される試練なのか。
 無理は言うなよ俺。もっとスリスリしてもいいですよとか、触ってもいいですかとか、絶対言うんじゃないぞー!
「素敵な収穫祭ですね」
 楽しいお祭りにケットシーも人間も、住んでいる世界にも、垣根はなく。
 ――だからこそ、ケットシーたちの笑顔を守りたい。
 窓辺から差し込む海風に眼差しを弛め、鵺宵もまた戦いの前の穏やかなひとときに浸るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
あらまあ可愛らしい島だコト
そうねぇ、折角ならミンナと仲良くなりたいし
でも素で猫耳は生えないから、良ければケットシーちゃん達に見繕って貰えないカシラ
オレに似合いの耳と尻尾つけてもらえる?
本物サン達のと触り心地を比べたりして、もふもふタイムもしっかり満喫しときたいわぁ

祭の散策は猫の気分で足取り軽く
食べ物飲み物も気になるケド、調理される前も気になるトコ
材料が売ってたら買っていって、猫化のお世話になったコ達へのお礼に何か振舞おうかしら
新鮮な魚のカルパッチョにソテー
ソースはこの島の果物を使って……そう、林檎とか合いそうよねぇ

調理場かりて作らせてもらいつつ
さり気無く人気の少ない場所を気に掛けてもおくわねぇ



●紫雲の猫は晴天を軽やかに駆ける
「あらまあ可愛らしい島だコト」
 心地良い潮風に薄氷の瞳を細め、コノハ・ライゼ(空々・f03130)は、とんっと石畳を軽く蹴る。
 この島は、UDCアースの地中海に似た気候と景色で、空は青々と晴れ渡っている。
 大きく異なるのは、所々にアルダワ世界の真鍮色がひょいっと顔を覗かせていること、住人の大半がケットシーというところだろう。
 そして、今は楽しい収穫祭の真っ最中。
 無機質な蒸気機関も色とりどりの野菜や花、肉球スタンプでペタペタとデコられており、コノハの視界を大いに楽しませていて。
 しかし、何かが足りないと思ったコノハは、おもむろに足を止めた。
「素で猫耳は生えないし、ケットシーちゃん達に見繕って貰えないカシラ」
 ――折角の機会、この島のケットシーたちと仲良くなりたい。
 コノハの双眸が捉えたのは、サルトリア・ミレットという看板を掲げた仕立て屋さん。
 空色の扉を開けると、店員らしき白猫と黒猫のケットシーと、彼らの客人たちが好奇心に満ちた眼差しをコノハに向ける。
「オレに似合いの耳と尻尾つけてもらえる?」
「はいですにゃ、色合いは髪に合わせるのが良さそうにゃ。お客さんは細身にゃので、耳は大きめのV字型、長めのしっぽが合って――」
「姉よ、其れは定番すぎるぞ。此処は敢えて我のようなふさふさしっぽと毛長の耳で王者の如き気品を顕現し、色彩にも銀と紅を些細に織り交ぜて――」
「もー、あんたはすぐ毛長を布教する! あ、お客さんごめんなさいにゃ」
「ふふ、大丈夫ヨ、よければ本物サン達のと触り心地を比べてみたいわねぇ」
 姉弟のやりとりにコノハの口元に笑みがこぼれ、客のケットシーたちも「確かに触り心地は大切にゃ」と、互いの顔を見合わせて。
「失礼、私は短毛で耳が丸く鍵しっぽだが、誰よりも毛並みに自信があるね」
「わ、わたしの尻尾も、どうぞ触っていってください、にゃ」
「ククク、我の漆黒色も遠慮なくモフるが良い」
 彼らの好意を断る理由はなく、もふもふタイムをしっかり満喫したコノハの足取りは猫の気分で軽やかに。
 祭りの晴天の下。紫雲色の猫耳と猫しっぽが僅かに織り交ぜた銀と紅の輝きを添え、陽光を受けて煌めいていたという。
 
「あのコ達へのお礼に何か振舞おうかしら」
 猫の気分で港町を散策すると、職人たちが振舞う自慢の料理や美酒の香りが、次々とコノハの鼻腔をくすぐっていく。
 だからこそ、本来の食材が気になるのが料理人の性というもの。コノハの弾む足取りが向かったのは、旬の食材を扱う屋台の一帯だった。
「寄ってらっしゃいみてらっしゃいにゃ、粋のいいタイが入ってるよー」
「そうねぇ、そのタイと横にあるヒラメをお願いできるカシラ、あとはソースに使える果物が幾つかあるといいのだケド」
「果物ならウチの店に任せるにゃ、オマケもたくさんつけますにゃ!」
 コノハが足を止めたのは、魚屋さんと果物屋さんの屋台。
 新鮮なタイはカルパッチョに、淡白で上品な味わいのヒラメはソテーにしよう。
 そして、ソースはこの島の果物を使って、腕によりを掛けたものを――。
「そう、林檎とか合いそうよねぇ」
 コノハの薄氷の瞳が、閃きで輝いた時。
 ほぼ同時に「私も興味あるにゃ」と、恰幅のいいケットシーが、すぐ横に立つ。
「話はこっそり聞いたにゃ。よければ私のお店の厨房を使って欲しい。あ、私はビストロ・エマブルのシェフ兼店長ですにゃ」
「「にゃんだって!!」」
「「双子の看板娘が可愛……ゲフン、前菜からデザートまで高評価の!」」
 シェフ兼店長なケットシーの装いは、誰がみてもイタリアン料理のシェフ。
 周りのケットシーたちの反応からも彼が凄腕のシェフであり、調理器具や調味料も一流が揃っていると察したコノハは、唇を艶やかに緩めて。
「それでは、お言葉に甘えようカシラ」
 快く二つ返事を返したコノハは、さり気無く人気の少ない場所を気に掛けてもおくのも忘れない。
 一瞬だけ周囲に視線を走らせる。
 不意に。視界の端に妙な影を見つけたコノハは、さらに注意深く双眸を細める、が。
(「覚えのある気配がしたケド、気のせいカシラ?」)
 コノハは店に向かって踵を返す。少し離れたところでタヌキ模様のお狐さまが、トテトテとキャットウォークしていたのは、また別のお話♪

大成功 🔵​🔵​🔵​


●我輩は狸でも狐でもなく猫ちゃんである
(「ん、コノ…?」)
 ――きっと、気のせいだよね?
 狐の姿で街をテクテク散策していた火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、覚えのある気配に足を止めると、ちょんと首を傾げて。
 けれど、それはすぐにケットシー混みに掻き消されてしまい、さつまは再びトコトコと歩き出す。
 狸っぽい色合いもあってタヌキ扱いされることもあるけれど、左右にパタパタと揺れるふわもふ尻尾も含めて、全てが自慢の毛並み。
 しかし、試される大地もといアイデンティティは、突然やってきた。
(「あの、ケットシーさんたちに、しようかな?」)
 さつまの円な瞳が、噴水の前できゃっきゃと遊ぶケットシーの子供たちに止まる。
 彼らの前にぴたっと足を止めたさつまは、ぴんと胸を張り、――そして!
「こ、……こにャ~ん!」
 どうみてもタヌ――否、狐なさつまの喉元から出たのは、猫っぽい狐鳴き!?
 なんとも不思議で愛らしい声が響きわたると同時に、好奇心いっぱいの子供たちも「にゃんだにゃんだ?」と足を止めて。
「にゃにゃっ! もふもふな猫さんだにゃ?」
「え、ボクはタヌキだと思ったにゃ……」
「タヌキさんじゃないにゃ、にャーと鳴いたにゃ!」
「どっちでも可愛いにゃ、お魚食べるかにゃー?」
 子供たちよ、それでいいんかーいっ!!
 君たちの前でちょんとお座りしているのは、タヌ……違った、狐ですよ、狐っ!
(「だいじょうぶ、がんばれ、俺!」)
 子供たちの熱い視線を集めることに成功したさつまは、もふもふしっぽを空に向けてびゅんっと伸ばし、今度は堂々と闊歩する。
 ぎこちなくも全身全霊を込めたキャットウォーク。最後にピタッと動きを止めると、おもむろに前足の片方を上げて――。
「きゅにゃ!」
 突然のモデル張りの決めポーズもとい、肉球上げてのご挨拶♪
 魔性のプニプニ肉球を浴びる形になった子供たちは「すごいにゃ」「可愛いにゃ!」と歓声を上げ、さつまをぎゅっと抱きしめると、肉球をプニプニモフり出す。
(「俺、今、ねこちゃんに『変装』出来てる! 気がする!」)
 子供たちに揉みくちゃにされながらも、やり切ったさつまは円な瞳をキラキラと瞬かせていて。
 此処まできたら後はお手の物。頬をもふもふっと寄せ合う子供たちに返すように、さつまも猫のように頬を優しくすり寄せるのだった。

「きゅっ、きゅにゃ、きゅニャァー」
「猫さんは、甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレを探してるにゃ?」
「甘いといえば、きっと食べ物にゃ!」
 互いに充分もふもふを堪能して仲良くなったさつまは、さっそく黄緑色のアレの情報収集を始めていて。
 子供たちには大人とは違う情報網がある、けして侮ることはできない。
「きゅにゃ~ん、きゅっ! にゃ~?」
「ふむふむ、しゃりしゃり…みずみずし…こおらせた、すだちとかかな、といってるにゃ」
「すだちの色は緑色にゃ。林檎に似てる? うーん似てないにゃ」
 凍らせたものや、すだちではない。
 さつまの狐耳がしょんぼりと垂れたのも一瞬、ぱっと青色の瞳を輝かせて。
「きゅっ、きゅっ、きゅっにゃ~ん!」
「じゃ、じゃ、あおりんご! って言ってるにゃ?」
「あおりんごなら、黄緑色にゃ! でもシャリシャリとはちょっと違うにゃ?」
 ……青りんごも違う。ならば、もう1つだけ。
 さつまは、ふさふさしっぽをびゅんっと上げると、尻尾を大きく振りながら「「ちがう? ちがう? なし??」と、告げるように鳴いてみせて。
「うん、ナシなら甘くてシャリシャリして、みずみずしい黄緑色だにゃ!」
「よし、みんなで食べるにゃ、あっちの店に大きいナシがたくさんあったにゃ!」
「きゅきゅ、きゅにャ~ん!」
 善は急げと駆け出した子供たちは、すぐに梨を持ってきてくれた。
 お店の人が子供でも食べ易いように切り分けてくれたのだろう、食べたいと尻尾を大きくふりふりしていたさつまの口にも、ぽんっと1口。
「きゅっ!!」
 口の中に転がってきた幸せのお裾分けは、シャリシャリして瑞々しい食感と、新鮮な果実の甘味を醸し出していて。
 ――その正体は『梨』に間違いない。
 確信を得たさつまが顔を上げるのと、ケットシーたちがひそひそと話し合う声が飛び込んできたのは、ほぼ同時。
「ナシがあったお店の裏側、あんなに木が生えていたかにゃ?」
「2メートルくらいのが、100本はあったニャ!」
「今年は豊作にゃ! 木がたくさん生えても、おかしくないにゃー!」
火狸・さつま
狐姿にて参加
人語は話せず狐鳴き
『動物と話す』のは得意だから無問題

「こ、……こにャ~ん!」
今回はちょっと猫っぽい狐鳴き

しっぽをびゅんっと上げて
堂々ととてちて闊歩すれば…
「きゅにゃ!」
肉球を上げてご挨拶

俺、今、ねこちゃんに『変装』出来てる!気がする!(きらきらおめめ)

もふもふ挨拶も毛繕いもお手の物
充分堪能して仲良くなったら
「きゅっ、きゅにゃ、きゅニャァー」
甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレの『情報収集』
「きゅにゃ~ん、きゅっ!にゃ~?」
しゃりしゃり…みずみずし…こおらせた、すだちとかかな
林檎に似てる?
じゃ、じゃ、あおりんご!
ちがう?ちがう?なし??
きょだいなのもある?
わぁわぁ食べたい!



●我輩は狸でも狐でもなく猫ちゃんである
(「ん、コノ…?」)
 ――きっと、気のせいだよね?
 狐の姿で街をテクテク散策していた火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、覚えのある気配に足を止めると、ちょんと首を傾げて。
 けれど、それはすぐにケットシー混みに掻き消されてしまい、さつまは再びトコトコと歩き出す。
 狸っぽい色合いもあってタヌキ扱いされることもあるけれど、左右にパタパタと揺れるふわもふ尻尾も含めて、全てが自慢の毛並み。
 しかし、試される大地もといアイデンティティは、突然やってきた。
(「あの、ケットシーさんたちに、しようかな?」)
 さつまの円な瞳が、噴水の前できゃっきゃと遊ぶケットシーの子供たちに止まる。
 彼らの前にぴたっと足を止めたさつまは、ぴんと胸を張り、――そして!
「こ、……こにャ~ん!」
 どうみてもタヌ――否、狐なさつまの喉元から出たのは、猫っぽい狐鳴き!?
 なんとも不思議で愛らしい声が響きわたると同時に、好奇心いっぱいの子供たちも「にゃんだにゃんだ?」と足を止めて。
「にゃにゃっ! もふもふな猫さんだにゃ?」
「え、ボクはタヌキだと思ったにゃ……」
「タヌキさんじゃないにゃ、にャーと鳴いたにゃ!」
「どっちでも可愛いにゃ、お魚食べるかにゃー?」
 子供たちよ、それでいいんかーいっ!!
 君たちの前でちょんとお座りしているのは、タヌ……違った、狐ですよ、狐っ!
(「だいじょうぶ、がんばれ、俺!」)
 子供たちの熱い視線を集めることに成功したさつまは、もふもふしっぽを空に向けてびゅんっと伸ばし、今度は堂々と闊歩する。
 ぎこちなくも全身全霊を込めたキャットウォーク。最後にピタッと動きを止めると、おもむろに前足の片方を上げて――。
「きゅにゃ!」
 突然のモデル張りの決めポーズもとい、肉球上げてのご挨拶♪
 魔性のプニプニ肉球を浴びる形になった子供たちは「すごいにゃ」「可愛いにゃ!」と歓声を上げ、さつまをぎゅっと抱きしめると、肉球をプニプニモフり出す。
(「俺、今、ねこちゃんに『変装』出来てる! 気がする!」)
 子供たちに揉みくちゃにされながらも、やり切ったさつまは円な瞳をキラキラと瞬かせていて。
 此処まできたら後はお手の物。頬をもふもふっと寄せ合う子供たちに返すように、さつまも猫のように頬を優しくすり寄せるのだった。

「きゅっ、きゅにゃ、きゅニャァー」
「猫さんは、甘くてシャリシャリしてみずみずしい黄緑色のアレを探してるにゃ?」
「甘いといえば、きっと食べ物にゃ!」
 互いに充分もふもふを堪能して仲良くなったさつまは、さっそく黄緑色のアレの情報収集を始めていて。
 子供たちには大人とは違う情報網がある、けして侮ることはできない。
「きゅにゃ~ん、きゅっ! にゃ~?」
「ふむふむ、しゃりしゃり…みずみずし…こおらせた、すだちとかかな、といってるにゃ」
「すだちの色は緑色にゃ。林檎に似てる? うーん似てないにゃ」
 凍らせたものや、すだちではない。
 さつまの狐耳がしょんぼりと垂れたのも一瞬、ぱっと青色の瞳を輝かせて。
「きゅっ、きゅっ、きゅっにゃ~ん!」
「じゃ、じゃ、あおりんご! って言ってるにゃ?」
「あおりんごなら、黄緑色にゃ! でもシャリシャリとはちょっと違うにゃ?」
 ……青りんごも違う。ならば、もう1つだけ。
 さつまは、ふさふさしっぽをびゅんっと上げると、尻尾を大きく振りながら「「ちがう? ちがう? なし??」と、告げるように鳴いてみせて。
「うん、ナシなら甘くてシャリシャリして、みずみずしい黄緑色だにゃ!」
「よし、みんなで食べるにゃ、あっちの店に大きいナシがたくさんあったにゃ!」
「きゅきゅ、きゅにャ~ん!」
 善は急げと駆け出した子供たちは、すぐに梨を持ってきてくれた。
 お店の人が子供でも食べ易いように切り分けてくれたのだろう、食べたいと尻尾を大きくふりふりしていたさつまの口にも、ぽんっと1口。
「きゅっ!!」
 口の中に転がってきた幸せのお裾分けは、シャリシャリして瑞々しい食感と、新鮮な果実の甘味を醸し出していて。
 ――その正体は『梨』に間違いない。
 確信を得たさつまが顔を上げるのと、ケットシーたちがひそひそと話し合う声が飛び込んできたのは、ほぼ同時。
「ナシがあったお店の裏側、あんなに木が生えていたかにゃ?」
「2メートルくらいのが、100本はあったニャ!」
「今年は豊作にゃ! 木がたくさん生えても、おかしくないにゃー!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ヤマゴボー星人』

POW   :    大地の加護(ゴボー・ホリ)
非戦闘行為に没頭している間、自身の【周囲の時間の流れ】が【緩やかになり】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD   :    大地の民の祭(ゴンボ・ヌキ)
技能名「【ダッシュ】【逃げ足】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    大いなる大地の恵み(ヤマゴボー・ヨーシュ)
【紫色の果実】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を紫色に染め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●疾走、帆走、ヤマゴボーチェイス!
「ククク、我らの大地の加護(ゴボー・ホリ)もとい、木に変装する作戦は、大成功ゴボー」
「でも、果物屋さんの周りは全然人が減ってないゴボーね、大繁盛だゴボー」
「さすが我らの主人、獣拳士ウリンさまの大好物だゴボー」
 収穫祭は、たくさんの猟兵たちの参加で、ますます盛り上げをみせていて。
 甘くてシャリシャリして瑞々しい黄緑色のアレ――梨が多く売っている屋台のウラでは木に扮したヤマゴボー星人たちが、作戦の時を待つようにピタリと動きを止めている。
 だがしかし、非戦闘行為に没頭している間は自身の周囲の時間の流れが緩やかになるという、そのユーベルコードの性質もあり、彼らがハッと気づいた時には――。
「ひょっとして、取り囲まれてるゴボー?」
「なんだとッ、我らの偽装が暴かれることなんて、不可能だゴボー!」
 つぶらな瞳を一斉にパチパチと瞬けば、果物屋さんの屋台はいつの間にか安全な場所に移動され、自分たちはお客さん――否、殺気めいた猟兵たちによって、ぐるりと包囲されているではないかッ、まあ怖い。
「コンキスタドールたちめ、やっと気づいたか……鈍すぎるんだよ」
「はぁ、隠れているつもりでしたか。小柄なケットシーたちの街で2メートル級のゴボウがぎゅっと一箇所に固まっているんですよ、見え見えなんですよ」
「お前たちは既に包囲されている、大人しくお縄につくんだな」
 もはや袋のネズミ、もといタイムセールで袋詰めされた、ゴボウと呼ぶべきか。
 だがしかし。そんな不利な状況でも「はいわかりました!」と、屈するヤマゴボー星人は、この場所に1本たりともいなかった。
 だって、彼らはオブリビオン。
 見た目はアレですが、この世界ではコンキスタドールと呼ばれる悪い奴らなのだ!
「「「ずらかるゴボー!!」」」
 ステルス作戦から一転、100本あまりのヤマゴボー星人たちは、くるりと踵を返す。
 ――瞬間。ヤマゴボー星人たちは一斉に逃げ出したあああああ!??
「あれが、大地の民の祭(ゴンボ・ヌキ)か。速いな」
「……うん。揃って同じ方向を目指しているのが、幸いだね」
「追いかけながら倒そう! もしかして、全員が敵のアジトを目指しているのかもしれないよ!」
「いやいやいや、まさかまさか!!」
 猟兵たちの間に気まずーい沈黙が支配する。
 それも一瞬。気持ちを切り替えた猟兵たちは、アジトの場所を掴むため、ボス戦への露払いをかねて、ヤマゴボー星人たちを追いかけるのでした。

●マスターより
 続けてお世話になります、御剣鋼(ミツルギ コウ)と申します。
 1章に参加された猟兵さんのご活躍の結果、集団戦は街と敵のアジトのほぼ中間点の山間でのカーチェイスもとい、ヤマゴボーチェイスになりました。

 ヤマゴボー星人たちは持ち前の逃げ足でアジトに逃げ込もうとするもの、山間の木に扮して猟兵たちを出し抜こうとするもの(バレバレですが)、降参するフリをして紫色の毒々しい果実を投げつけてくるものなどおりますので、皆さまの好みで煮るなり焼くなりささがきにしてやってくださいませー。
 なお、本物のヤマゴボーは根に毒を持っているとのことです、残念!

 プレイング受付期間:導入文が掲載された現時点から受付開始(導入文掲載前に頂いているプレイングは、全てサポートプレイングになります)
 皆さまのゴボウ抜きなプレイング、楽しみにお待ちしております!
惑草・挧々槞
ふむ、ヤマゴボー星人。
実が付いてるのを見た感じ、アザミの方じゃなくてヨウシュヤマゴボウとかの方かしら。毒ありそうで嫌ねえ。
お洋服が汚れちゃいそうだからあまり近づきたく無いし、数が多いと追うのも面倒……手始めに頭数を減らすべきかしらね。

《槌転驚倒》を使用。
魔王槌でその辺を叩いて魑魅魍魎を召喚、敵共にけしかけましょう。
地面が汚される前に物量活かして圧殺しちゃいなさい。

私自身は敵から少し距離を取りつつ猫南瓜爆弾を投げて攻撃。
他の猟兵さん達がいるかも知れないし、爆撃に巻き込まないよう十分気をつけなくっちゃ。
……魑魅魍魎の方については気をつけなくていいのかって?ああ、あいつらは別にいいのよ。死なないし。


有海・乃々香
※連携・アドリブ歓迎

ヤマゴボーさん速いねぇ、サメさん
でもね、でもね、ののかのサメさんたちも負けないんだから!

【空中浮遊】するサメに【騎乗】し
シャーク・トルネードで回転ノコギリ付きの空飛ぶサメたちを召喚
大群引き連れ、ヤマゴボーチェイス
全速力で追いかける

飛んでくる毒々しい果実は
避けたり、回転ノコギリで切り裂いたりして対処
気になっても食べちゃダメだよ、サメさん
毒があったら、たいへんだもん!

追いついたら、容赦ゼロで元気にお料理タイム
ノコギリぶんぶん、ヤマゴボーたちを刻んで刻んで刻みまくる
本日のメニューはきんぴらごぼうです
はいはーい! ののか、しってるよ!
ごぼうは『ささがき』にするんでしょ?



●逃走、毒走、嘘つきヤマゴボーに慈悲はない
「ふむ、ヤマゴボー星人。実が付いてるのを見た感じ、アザミの方じゃなくて、ヨウシュヤマゴボウとかの方かしら」
 薄暗い山間を集団で疾走する、ヤマゴボー星人の頭で揺れる艶やかな果実は、キラキラと嫌でも目に入ってきて。
 先陣を切って追跡を始めた、惑草・挧々槞(浮萍・f30734)は、その毒々しい色彩を幾つも瞳に捉え、射抜くように見据える。
「数が多いと追うのも面倒ね……手始めに頭数を減らすべきかしら」
 果実が推理通りの毒だった場合、無数に放たれる毒弾でお洋服が汚れてしまうというのは、とても困るもの。
 あまり近づきたく無いわね。というのが挧々槞の本音だし、それを咎めるものは、きっといないだろう。
「手始めに頭数を減らすべきかしらね」
 目を細めたのは一瞬。
 最後尾にギリギリ届く間合いまで詰めた挧々槞は、可愛らしくリデコレートされた槌を、ぶんっと振う。
 鋭く振り下ろされる高速の一打。最後尾のヤマゴボー星人は慌てて身を引き、かろうじてそれをかわす。
「フフーン、当たってないゴボー……って、アレはなんだゴボ!!」
 もちろん、攻撃が外れるのは想定内。
 そのまま強く地面を打ちつけた槌の下からぶわっと溢れたのは、無数の魑魅魍魎。
 見た目はファンシーにデコられているけれど、その槌が冠する名は魔王。然る大妖怪から貰った、気丈さを讃える偉大な槌である。
「さあさあお立会い、鬼が出るか蛇が出るか!」
 ――槌転驚倒(ヴンダーハンマー)。
 挧々槞のユーベルコードによって顕現した現世ならざるモノたちが数の暴力と化し、瞬く間にヤマゴボー星人たちを呑み込み、食い尽くさんとして。
 と、その時だった。
 山間の障害物を物ともせず全速力で空間を駆け抜けるサメと、その背に騎乗する、小さな少女が現れたのは。
「ヤマゴボーさん速いねぇ、サメさん」
 緑の眼差しをキラキラと輝かせ、有海・乃々香(愛情欠乏症・f26728)はサメさんの背を労うように優しく撫でると、キリッと前を見据える。
 道中で分かれたのか、あるいは隠れたのか、瞳に捉えたヤマゴボー星人たちは全体の一部だったけど、それでも数が多く、何よりも逃げ足がとっても速い。
「でもね、でもね、ののかのサメさんたちも負けないんだから!」
 せっかくの好機を逃しはしない。
 魑魅魍魎でさらに薄暗くなった視界に、乃々香の明るい声が弾むように響く。
 その声援にも似た声に後押しされたサメさんが大きく前進すると、周囲に回転ノコギリ付きの空駆けるサメたちが、幾つも現れた。
 ――その数69体。
 あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与えたサメたちは、木々の中を素早く泳ぎ切ると、魑魅魍魎もろともヤマゴボー星人たちへ襲い掛かる。
「地面が汚される前に物量活かして圧殺しちゃいなさい」
 その光景に挧々槞もまた眉1つ動かさず、服が汚されないようにひらりと後ろへ飛び退くと、木々の間を軽やかに疾駆し、南瓜型の爆弾を投げつける。
 大群を引き連れたヤマゴボーチェイス。加えて炎と共に毒煙を撒き散らす光景は、敵味方関係なく――。
「ちょっと待つゴボー、一旦タイムだゴボー!」
「我らが悪かったゴボー、許してくださいゴボー!」
 ……このままだと我ら、塵すら残らないのでは?
 ズラっと横一列に並んだヤマゴボー星人たちは、乃々香と挧々槞に向けて五体投地の姿勢で、頭を180度に勢い良く倒す。
 ――刹那。彼らのつぶらな瞳が、キラーンと怪しく煌めいた。
「「なーんて言うと、思っていたかゴボー!」」
 その瞬間。ヤマゴボー星人たちの頭に飾り付けてあった紫色の果実が、2人に向けて一斉に撃ち出される。
 だって、彼らはオブリビオン。
 見た目はヤマゴボウでも、コンキスタドールと呼ばれる悪い奴らなのだ!
「……やっぱり毒ね」
 突然の不意打ちに、しかし挧々槞は冷静に身体を横に逸らす。
 僅かに遅れた白い尻尾が、ツインテールが鋭く横になびいた直後、すぐ後ろにあった木に弾丸が幾つもパンッパンッと弾け、瞬時に木々を毒々しく染めていく。
「たいへん! 気になっても食べちゃダメだよ、サメさん」
 薄闇が僅かに紫色に染まる中。挧々槞の警告を耳にした乃々香の声に、サメさんも「心得た」と大きく前進し、空を駆ける。
 人鮫一体。乃々香とサメさんが飛び交う果実に意識を集中すると、回転ノコギリ付きのサメたちが自慢のノコギリで突き、払い、切り捨て、毒弾の軌道を逸らす。
 切り開かれた光路は、ヤマゴボーたちの間合いへの最短ルート。
 その好機を逃さず乃々香とサメさんは一気に距離を詰め、ぐるりと回り込んだ。
「本日のメニューはきんぴらごぼうです」
 互いの間合いは、ほぼ至近距離。
 材料を手中に収めたら、いよいよお待ちかねのクッキングタイムです♪
 容赦も零距離な笑顔をにっこりと浮かべ、乃々香は何処からか取り出したノコギリをぶんぶん振り回してます、楽しそうですね!
「……待ってくれ、さっきのは頭がスベっただけだゴボー」
「そうそう、下手な方法で刻むと、我々の毒も散って危険だゴボー、多分」
 対して、ヤマゴボー星人たちの間に漂うのは、もはや絶望にも似た空気……。
 身を寄せ合ってガクブルするヤマゴボー星人たちに、乃々香はさらに笑みを深めて。
「だいじょうぶだよ、サメさんたちに手伝ってもらったら、一瞬だよ!」
「「違う、そうじゃない、ゴボー!!」」
 花のような乃々香の笑みに、よせやめろおちつけと戦慄するヤマゴボー星人たち。
 そんな中。少し離れたところで状況を観察していた挧々槞が、コクリと頷いた。
「そうね、近くに他の猟兵さん達がいるかも知れないし、爆撃に巻き込まないように、十分気をつけなくっちゃ」
「そうそう、そっちのリボンの子はよくわかってるゴボーね」
「何言ってるのかしら、猟兵さん以外は圧殺よ」
「「いやああああああ!!!」」
「「だめだ、可愛い顔して、こいつら危険だゴボー!」」
「「ウリン様よりヤバイゴボー!!」」
 このままでは詰んでしまうと、ヒソヒソ話し合うヤマゴボー星人たち。
 一拍置いてしっかり頷き合った彼らは、挧々槞と乃々香に真摯な眼差しを向けた。
「サメさんたちも、魑魅魍魎さんたちも、巻き込まれるゴボーよ?」
「可哀想だと思わないかゴボー?」
 今度はそうきたか。
 ある意味全うとも言える彼らの抗議に、しかし挧々槞は魔王槌をすぅと構える。
「ああ、あいつらは別にいいのよ。死なないし」
「「な、ん、で、そ、う、な、る、ゴボ!!」」
「……。もしかして、最初から詰んでたゴボー?」
 ヤマゴボー星人たちの悲鳴に似た絶叫だけが響く中、乃々香が元気よくぶんぶんと手を振って見せて。
「はいはーい! ののか、しってるよ! ごぼうは『ささがき』にするんでしょ?」
「ワ、ワレラ、オイシクナイデスヨ?」
「ふむ。ささがきの練習にはなりそうねえ」
「「――!! いやああああああ!!!」」
 山中に新鮮なゴボウの香りと阿鼻叫喚が轟く中、乃々香は楽しそうにヤマゴボー星人たちをゴボウ抜きに刻んで刻みまくり、挧々槞も淡々と魑魅魍魎たちをけし掛けるのでした。合掌。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
甘くてシャリシャリする黄緑色のアレ…そう、梨だ!
あんな美味い果実を無理やり奪おうと
企んでいたとは悪い連中だ
アジトを突き止めてボスごとこらしめるぞ!

チッ、普通に走って追いつくのは厳しいな!
行くぞ焔!
成竜に変身した焔の背に乗り
飛んでヤマゴボーたちを追いかける

追いかけつつUC発動
辺り一帯を闇夜へと変化させる
右も左も分からない暗闇では
アジトへのルートも分からなくなるだろう
こうして奴らが右往左往している隙に攻撃を…

って、いてぇ!?
なんか飛ばしてきやがった!
ギャー!コートに紫色が染み付いてるし!
許さん!焔のブレスで焼きゴボーにしてくれる!

お前、食えたら食う気だったのか…?
あーはいはい、今度な今度


灰神楽・綾
【不死蝶】
どさくさに紛れてちゃんと
アレの正体が分かったようだね梓
良かった良かった
えらいね~とまるで親のような気持ちになる

じゃあ俺はこれで追いかけようか
UC発動し、羽根による飛翔能力で移動
梓のUCで敵がうろたえている隙に先回り
上空からナイフを次々と投げて攻撃していく
敵が投げつけてくる怪しげな果実は
Emperorをバットのように構えて迎撃
カキーンと打ち返して敵に当ててやる勢いでね

地上に降りて、Emperorで存分に
輪切りにしたりささがきにしたりしちゃおう
トドメに焔のブレスを浴びてて何だか料理みたい

いい具合にこんがり焼けたけど
確か毒あって食べられないんだっけ、残念
梓ー、今度きんぴらごぼう作ってよ



●怪しい紫色の果実は焼きゴボーの香り
「甘くてシャリシャリする黄緑色のアレ…そう、梨だ!」
 ケットシーたちが丹精込めて育てた、甘くて瑞々しくて美味しい果実。
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、それを無理やり奪おうと企んでいた悪い連中――ヤマゴボー星人たちを眼前に捉えるべく、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と共に、薄暗い山の中を力強く駆け抜ける。
「綾、アジトを突き止めてボスごとこらしめるぞ!」
「はいはい、戦闘中のフォローはお願いするよ」
 振り向かず然りと前を見据える梓の大きな背中を、しかし綾は子供を見守る大人のような、穏やかな眼差しで見つめていて。
(「どさくさに紛れて、ちゃんとアレの正体が分かったようだね、梓」)
 良かった良かった、えらいね〜。
 と、まるで親のような温かな気持ちを抱いていたのは、綾のみぞ知る。
 当の本人である梓はそのことを知る術もなく、さらに速度を上げてみせる、が。
「チッ、普通に走って追いつくのは厳しいな!」
 ここは木々が入り組んでいる山間、しかもヤマゴボー星人たちの脚力は相当高く、猟兵の中でも精鋭クラスである梓と綾でも、舌を巻くレベルである。
 これではキリがない。
 梓は併走して宙を駆ける仔竜を呼び止めると、ニヤリと唇の端を上げた。
「行くぞ、焔!」
 主人の期待に応えるべく、人懐こい炎の仔ドラゴンは「キュー」と一鳴きすると、その姿を成竜のものへと、大きく姿を変えていく。
 己の背丈の倍以上に変身した焔の背に梓が飛び乗ると同時に、綾も愛用のハルバードの刃をきらりと煌めかせた。
「じゃあ、俺はこれで追いかけようか」
 ――あんまり好きじゃないけどね、この姿。
 綾が薄闇にぽつり呟きを落とした刹那、その姿が紅い蝶の群れを纏った、美しくも狂気すら覚える、ヴァンパイアへと変貌する。
 先程までの穏やかな容貌と一転、構えたハルバードは禍々しく輝き、背に生えた蝙蝠のような漆黒の羽根を力強く羽ばたかせた瞬間、綾は神速の紅き突風と化した。
「ん、なんか光ってるゴボー」
「凄い勢いで何か向かってくるゴボー、全員速度を上げ――ッ、今度はなんだゴボー!」
「周りが真っ暗になったゴボー、何も見えないゴボー!!」
 薄闇を音速で疾駆するのは成竜になった焔と、姿を変えて飛翔する綾だけではない。
 焔の背に騎乗した梓もまた、戦場全体を紅い蝶と闇夜で塗りつぶす、ユーベルコードを発動していたのだ。
「美しいだろう? 闇に輝くこの紅は」
 突然の紅き闇夜の訪れに、梓が捉えたヤマゴボー星人たちは、揃って狼狽えていて。
 視界と方向感覚を失った彼らが右往左往する様子を然りと見据えた綾もまた、敵群の退路を断つように素早く回り込むと、上空から無数のナイフを次々と閃かせた。
「輪切りかささがき、どっちがいいかな」
 口元を楽しそうに歪ませた綾は、何処か鋭利なものを抱いていて……。
 梓が生成した闇夜に即座に適応した綾の手中から繰り出されるナイフは、更に鋭い軌跡を描き、直前で幾つもの紅い蝶に爆ぜ、最後は羽の斬撃となり、ヤマゴボー星人たちをくまなく切り刻んでいく。
「右も左も分からない暗闇では、アジトへのルートも分からなくなるだろう」
 紅き闇夜に乱れ狂う刃の嵐。
 綾の猛攻に促されるような速さで焔を躍動させた梓はほくそえみ、さらに追撃を与えようとした時だった。
「って、いてぇ!? なんか飛ばしてきやがった!」
 ヒュンと空気を裂く僅かな気配を察した梓は、本能的に身体を横に逸らす。
 その瞬間、無数の紫が弾ける。
 放たれた毒弾は直撃すらしなかったものの、梓の白地のコートにその痕跡を、くっきりはっきり鮮明に残してくれまして……。
「ギャー! コートに紫色が染み付いてるし!」
 白色のコートにバッチリこびりついていたのは、毒々しいまでの紫色のシミ。
 まるで、子供が洋服にうっかり食べ物をこぼしてしまったような、シチュレーション……否、なんで黒地のシャツとパンツの方じゃなくって、よりによって真っ白な方なの?!
 これ、クリーニングでも取れないかもな…と、絶望に似た何かがよぎった瞬間、四方八方からヤマゴボー星人たちのヤジが、やーいやーいと飛んできた。
「山の中を走るのに、白いコートを着ている方が悪いゴボー!」
「そうだそうだ、自業自得だゴボー!」
 先ほどの混乱とは一転、梓を煽って煽りまくる、ヤマゴボー星人たち。
 だがしかし、それは火に油をこれでもかと注ぎまくる、危険行為でもありまして……。
「許さん! 焔のブレスで焼きゴボーにしてくれる!」
「「ギャアアアア、暴力反対だゴボー!!」」
 んゴゴゴゴゴゴ、と空気が振動する。
 梓の怒りを帯びた咆哮が戦場に轟き、焔の口からはトドメと言わんばかりの強烈な炎のブレスが力強く吐き出される。
 一瞬の予備動作すらなく、大きな口から容赦ゼロで繰り出された炎撃は、紅き闇夜の底を舐め、ヤマゴボーたちの一角を火だるまにして。
 まるで、猛る灼熱グリル。
 炎が過ぎ去ったあとに残ったのは、こんがりと香ばしく焼き上がったヤマゴボー星人改め、焼きゴボー星人たちだけだった。
「何だか料理みたいだね」
 美味しくできたね、えらいえらい〜。
 と、いう親心にも似た気持ちをそっと胸に秘め、トンッと軽く地面に降りたった綾は、眼前のヤマゴボー星人に狙いを定めると、輪切りの如く横に一刀両断する。
「こっちはささがきにしちゃおう」
 振り向きざまにハルバードを返すと、傍らに迫っていたもう1体をささがきの要領で、サクッサクッと斬り伏せる。
 ハルバートの刃で斬り払い、斧部の反対側のハンマーの部分で、突き、打ち、穿つ。
 仕上げに軸足に体重を乗せて刃を振り抜くと、たちどころに紅夜の暴風が吹き荒れた。
「綾、後ろだ!」
 梓が発した声に綾が即座に身体を動かすと、幾つもの紫色の弾道が迫らんとしていて。
 思考は一瞬。
 薄く笑みを浮かべた綾は腰を低く落とすと、ハルバートをバットのように構える。
 ――一閃。力強く半歩踏み込むと同時に、そのまま勢い良くフルスイングッ!!!
「あ、とっても嫌な予感が――ぶべらっ!!」
 キィン。と、空切る音。
 渾身の力で打ち返した打線はきっちりヤマゴボー星人たちの鳩尾にヒット。休む間もなく3体目、4体目を錐揉み回転で吹き飛ばすと、綾はうーんと背筋を大きく伸ばした。
「いい具合にこんがり焼けたけど、確か毒があって食べられないんだっけ、残念」
「お前、食えたら食う気だったのか……?」
 気がつけば、辺りにはいい具合に輪切りやささがきにされた挙句、こんがりと焼き上がったヤマゴボウの香りが、美味しそうに香ばしく広がっておりまして。
「梓ー、今度きんぴらごぼう作ってよ」
「あーはいはい、今度な今度」
 食欲を注がれる香りに綾は笑みを深め、梓もまた飄々と二つ返事を返しながらも、軽く肩を竦めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

村瀬一・鵺宵
僕はヤマゴボー星人が木に扮してないか目を凝らしておきますね
屋台裏で木に扮していた時はバレバレでしたが……ここは山間です
簡単には見つからないかもしれま……あ、居ました
どうしましょう、あっさり見つかりました
こうもバレバレだと此方が戸惑うような
もしかして「バレバレですよ!」というツッコミ待ちなのでしょうか?
ええっと、とにかくUCの飛来刀舞を展開です
複製した妖刀でヤマゴボー星人を取り囲み逃走対策を
すぐに斬り刻むのも可哀想な気が
声を掛けて(ツッコんで)みましょうか
あの、非常に言いにくいのですが……バレバレです!
逃げ出しそうならササッとささがきに
このまま木に扮する敵を見つけて辿ればアジトに着くでしょうか?


御伽・柳
さて、思いもよらぬ幸運を得てしまった以上手を抜くわけにいきませんね

ですがうーん……俺、ぶっちゃけ普通の人程度のスピードでしか走れないんですよね、GPS的な能力も持ってないですし
なので……うん、じゃあ素直にこれ(閃光手榴弾)を使って足止めします、数を減らしましょう

で、そこのオブリビオン
知ってますか?俺の故郷の世界にはトマトを投げ合うって祭りをする国があるんですよ
つまり野菜は概ね『球』です
そしてお前らの外見はヤマゴボー、つまり野菜

あとは、分かりますね?

翔べ……っ!



●妖刀とヤマゴボー星人たちは宙を舞う
「さて、思いもよらぬ幸運を得てしまった以上、手を抜くわけにいきませんね」
 猟兵たちが恐れていたのは、ヤマゴボー星人たちによって祭りが荒らされ、多くのケットシーたちの身体と心が傷ついてしまうこと。
 しかし、多くの猟兵たちの活躍の結果、そのフラグを全てへし折っただけでなく、敵の方からアジトに招待(?)してくれるという、又と無いチャンスを掴むことができた。
 ――せっかくの好機を逃しはしない。
 身を低くして薄闇の底を疾駆しつつ、御伽・柳(灰色の渇望・f12986)は、さてさてどうするべきかと、少しだけ思案に耽っていて。
 その横を併走しながら周囲の状況を見回していた、村瀬一・鵺宵(奇談ヲ求ム者・f30417)は、「少しだけ立ち止まってみましょうか」と、提案する。
「逃げ足の速いタイプは先陣の皆さんが対処されてますが、中には隠れてやり過ごそうとしている、ヤマゴボー星人がいるかもしれませんね」
 ヤマゴボー星人は、逃げ足以外はとっても脆弱。
 敢えて、山間にじっと隠れようとしているモノも、きっと少なくはないはず……。
「俺、ぶっちゃけ普通の人程度のスピードでしか走れないんですよね、その作戦なら俺の武器と、ユーベルコードとの相性も良さそうです」
 騎乗するものもなければ、GPS的な能力も持っていないと柳が付け加えると、鵺宵も「僕も似たようなものです」と、小さく頷き、柔らかな笑みを返して。
 自然と、自分たちがやるべきことが、絞られてきた。
「……うん、じゃあ素直にこれを使って足止めして、あとは数を減らしましょうか」
 柳が手の平を広げると、手中に収まっていたのは、閃光手榴弾。
 主に敵を驚かせたり注意を逸らすのが目的のため、殺傷力は抑えられているものの、目潰しによる足止めには打ってつけの逸品に、鵺宵もまた満足げに口元を弛めて。
「なら、僕はヤマゴボー星人が木に扮してないか、目を凝らしておきますね」
 果物屋さんの屋台裏で木に扮していた時はバレバレだったけれど、ここは山の中。
 草や木々がこんもりと茂げっている周囲は陽光が遮られていて薄暗く、獣道らしきものも見当たらなく……。
 ――そう簡単には見つからないかもしれない、鵺宵が長期戦を覚悟した時だった。
「……あ、居ました」
「そうですね、簡単には見つからな……え?」
 思わず顔を見合わせた2人がもう一度目を凝らしてみると、周囲の木々と明らかに色も太さも違う上に、頭には毒々しい紫色の果実をキラキラと煌めかせた物体たちが……。
 よくよく見ると、戦隊モノの服も着ているし、とっても目立ってますねっ!
「どうしましょう、あっさり見つかりました」
「すみません、俺はノーコメントで」
 あまりのバレバレっぷりに鵺宵は珍しく戸惑いに似たものを浮かべ、柳も閃光手榴弾を投げるタイミングを失ってしまった様子。
「もしかして「バレバレですよ!」というツッコミ待ちなのでしょうか?」
「なるほど、それは考えられ――」
「「ツッコミ待ちじゃないゴボー!!」」
「「我々はそんなに間抜けではないゴボー!!」」
 あ、聞こえてた。
 クレームがたくさん聞こえてきた方角に柳は振り向くや否や、一寸の迷いもなく閃光手榴弾のピンを引き抜き、ビュンと力いっぱい投擲する。
 ――ピカッ。
 辺り一面を強烈な閃光が覆い尽くし、容赦なく視界を奪う。
 ヤマゴボー星人たちが「目が、目が!!」と、のたうち回る中、投擲した柳と事前に知らされていた鵺宵は直前に目を伏せてガード、即座に動き出した。
「ええっと、とにかく行動開始です」
 まずは、逃走経路を断つことが先決。
 視線を前方に見据えたまま、静かに妖刀に触れた鵺宵は、瞬時に鯉口を切る。
 一迅の鋭さを持って素早く半歩踏み込むと、低い態勢のまま一閃を横に奔らせた。
「お見せしましょう、宙を自在に飛来する刀の舞を」
 ――飛来刀舞(ヒライトウブ)。
 鵺宵が閃かせた刀は瞬く間に幾つも複製され、まるで各々が意思を持つかのように、ばらばらに宙に煌めき、華麗に舞う。
 その数、61本。
 血液を糧に力を高める刀は、まるで血肉に飢えるかの如く、瞬く間にヤマゴボー星人を取り囲んでいく。
 しかし、すぐに斬り刻んでしまうのもなんとなく可哀想な気がした鵺宵は、一瞬だけ迷いながらも、思い切ってツッコミ――否、言葉をかけた。
「あの、非常に言いにくいのですが……バレバレです!」
「「な、なんだってッ!!」」
「「我らの偽装が暴かれることなんて、不可能だゴボー!」」
 鵺宵の勇気あるツッコミに、視界を潰されながらも辛うじて木に扮していたヤマゴボー星人たちが、一斉にビクッと戦慄する。
 そして。一瞬の予備動作すら見せつけない速さで、逃げ出したあああ!?!?
「ダメ押しの一言で敵の無敵状態を完全に解除したんですね、さすがです」
「すみません、僕もノーコメントを貫いてもいいでしょうか」
 ――大地の加護(ゴボー・ホリ)。
 非戦闘行為に没頭している間は如何なる攻撃を遮断してしまう無敵モードも、いざ逃走を開始してしまえば、逃げ足が速いだけの只のヤマゴボー星人であーる。
 退路は鵺宵の刀たちが既に塞いでいる。それに促されるような迅速さで鋭く地を蹴った柳は、逃走を謀ろうとする一群の前に素早く回り込んだ。
「そこのオブリビオン、知ってますか? 俺の故郷の世界には、トマトを投げ合うって祭りをする国があるんですよ」
「む、トマトを投げ合う、だと!」
「それはどんな祭りか、話してみるがいいゴボー」
 あ、意外とノリがいい。
 同じ野菜のよしみか否か、興味を持ったヤマゴボー星人たちは、足を止めてしまう
 ――チャンス到来。柳は藍色の瞳を静かに細めると、さらに言葉を重ねていく。
「つまり野菜は概ね『球』です、そしてお前らの外見はヤマゴボー、つまり野菜」
「ほうほう、確かに我らはヤマゴボー星人ゴボー」
「でも、野菜じゃないゴボー、コンキスタドールという悪い奴だゴボー!」
 自分で自分を悪い奴だというものがいるとは……。
 ドヤ顔を決めたヤマゴボー星人たちに、柳は半ば呆れながらも双眸だけは険しくして。
「あとは、分かりますね?」
「???」
 ――早気(ハヤウチ)。
 柳が使おうとしているユーベルコードは、78分の1秒で己が『たま』だと認識したものを発射できるというもの。
 けれど、そのことを知る術がないヤマゴボー星人たちは揃って「?」を頭の上にふわふわと浮かべており、気づいた時には後の祭りであーる。
「野菜も『たま』でしょう? なら、翔べ……っ!」
「えっ、キャアアアアア!!」
「アアアア、アイキャンフラ〜イ、ゴボ!!!」
 柳の力強い言葉とともに、ロケットスタートさながらの勢いで宙を飛び交う、ヤマゴボー星人たち。
 それを天駆ける刀でサクサクっとささがきにしながら、鵺宵はゆるりと空を仰ぎ見る。
「このまま木に扮する敵を見つけて辿れば、アジトに着くでしょうか?」
 ヤマゴボーチェイスもそろそろ中間地点、のはず。
 調理……否、敵の掃討を柳に託した鵺宵は、再び木に扮しているヤマゴボー星人を探すべく、琥珀色の瞳を細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スピーリ・ウルプタス


ゴボー様…それなる身には毒を持たれるものもいらっしゃるとか。
是非受けてみたいですね(うっとり)
や……なんとお速い

蜘蛛のコ散らすもといゴボーの脱兎、
目にも止まらぬ速さに自分では追い付けなそうだと、残念そうに吐息一つ。
「ダイ様お願い致します!」
UC発動
黒蛇の背に乗って追いかける
山間部も蛇の滑り走りならなんのその
例え隠れても嗅覚(蛇のシュルシュルいう舌は空気を舐めて臭いかぎ分ける)にて発見
巻き付く、噛む、へし折る

頑張ってる蛇くん
故に、全速力出せばもしかしたらたまーにその背の変人を落っことしている、かもしれない
「私の事はお気になさらず! むしろありがとうございます!」
痛いのはご褒美なだけな変人



●それは毒でも薬でもなく、すべからく愛しいモノ
「ゴボー様…それなる身には毒を持たれるものもいらっしゃるとか」
 ――是非受けてみたいですね。
 スピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)が、薄闇にぽつりと洩らした呟きは、他人からするとツッコミの嵐であるものの、彼の目尻は恍惚に似たモノを帯びてまして……。
 さらなる刺激を求めたのか否か、単身で山間の深い場所に踏み込んだスピーリが、己の背丈をも越えている茂みを掻き分けた、その時だった。
「おやっ?」「……あっ」
 面と向かって出会う形となってしまった変人さんと、ヤマゴボー星人たち。
 単独で行動していたスピーリに対して、ヤマゴボー星人の数は5体。
 想定よりも少ないのは、先陣を切った猟兵たちが倒しまくったからか……否、状況から察すると、この5体は本隊から逸れた残党というのが濃厚だ。
「ヒイイイ、ここにも追手がいたゴボー!!」
「こうなったら……」
「バラバラになって、逃げるゴボー!!」
 ――瞬間。目にも止まらぬ速さで四方八方に逃げ出す、ヤマゴボー星人たち。
 一瞬の出来事にスピーリは漆黒の瞳を瞬くものの、すぐににこりと嬉しそうな微笑を浮かべて見せて。
「や……なんとお速い」
 蜘蛛の仔を散らす、もしくは脱兎もとい脱ゴボウとも言いますか……。
 脊髄反射の如く、散り散りバラバラになって逃げ出した敵影。スピーリは自分の足では追い付くことが出来ないと、残念そうなため息を1人洩らす、が。
 追い込まれれば追い込まれるほど心躍る性分というのは、ピンチの時に輝くものだ。
「ダイ様お願い致します!」
 こういう時は、他力本願で心地良く事を運ばせるのに限る。
 スピーリは微笑みを浮かべたまま、すっと右手を上げる。同時に、自身の背丈の2倍程もある黒い大蛇が、薄闇の中から浮かぶように顕現した。
「いらっしゃい締め付け担当さん!」
 スピーリは大蛇の頬をそっと撫でると、素早くその背に騎乗する。
 それを合図に、漆黒の大蛇は音を立てず、静かに薄闇の中をするすると疾駆する。
 地形や傾斜が複雑な山間の中を何のその、しなやかに動く大蛇は物ともせずに身体を自由にくねらせて滑り走ると、ふと小さく鎌首を持ち上げた。
 ――シュルシュル。
 黒蛇の舌が臭いを嗅ぎ分けるように微動して空気を舐め、一拍置いて再び前進する。
 その速度は最初よりも迅速。
 例え隠れていたとしても、姿を見失ったとしても、ヤマゴボー星人たちが持つゴボウ特有の匂いを嗅ぎ分けるのは、蛇にとっては造作でもないこと。
「……」
 すぐに敵影の1つを目視した大蛇は音もなく忍び寄ると、渾身の力で巻きつく。
 首筋付近を深く噛んで動きを止めると、瞬時に身体に力を込めて胴をへし折った。
「ギャアアア、ヘビが――ウッ!!」
 その動作は、巻きつき、噛みつき、へし折るという、至ってシンプルなもの。
 1体目を一撃で仕留めた大蛇は続けてもう一体に向き直り同じように息を止め、3体目に狙いを定めるべく、さらに速度を上げていく。
「蛇くん、頑張って!」
 孤軍奮闘で戦う愛する漆黒の大蛇に、スピーリがエールを送った時だった。
 それに嬉々と応えようとした大蛇は、一瞬だけ変人……ではなく、人を乗せていたことを忘れてしまったのだろう、思いっきり全速力で疾走してしまいまして――。
「――!」
「――あっ」
 大蛇の背が軽くなったのと、スピーリの身体がぽんっと宙を舞ったのは同時。
 そのまま勢いよくスピーリの顔面が木の枝にべしっとぶつかるのも、もはやお約束♪
「私の事はお気になさらず! むしろありがとうございます!」
 ……本当に本当? 大丈夫??
 そう気遣うように恐る恐る顔を覗く黒蛇に、スピーリは快楽を交えた笑みを浮かべて。
 痛いのはご褒美です!
 スピーリにとって、この身で得たモノは、すべからく愛しくて仕方がないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
狐姿で参戦
人語は話せず狐鳴き

きゅ!(ごぼう!)
頑張て沢山収穫!お土産にする!
美味しゴハン、作て貰う!と意気込んで

狙い定め、前足タシタシッ!さぁゆくぞの構え
きゅ!きゅヤ!(待て!ごぼ天!)
ダッシュ追跡ぐんぐん距離詰め
きゅきゅきゅ…っ!!(たきこみごはん!!)
雷火の雷撃範囲攻撃
きゅっっにャァアん!!!!(きんぴらごぼー!!!)
更に雷撃誘導弾

きゅー!!(収穫ー!!)
きゅっ?(えっ?ヤマゴボ?毒?食べれない、の??)
ぎュ…!!!(楽しみしてたのに…!!!)
ならばと早業多重詠唱
数多の狐火纏め上げ全力で燃やす


攻撃は見切り躱す
もし果実が当たれば
こにャアーん!(自慢の毛並み、紫、なた!ゆるさない!)
執拗に狙う


アルファ・オメガ
がうー、ゴボウかー
お味噌汁が美味しいよね(じゅるり

ボクの爪でささがきするしかないかー
え?腰の得物?
がう……刀でささがきかー…
がんばろー(『ぶらっく・せいばー』ちゃきっ

あっ、にげるなー!
だったら【猫の毛づくろい】で摩擦抵抗を無くしてー(ぺろぺろ
ヤマゴボー目掛けてヘッドスライディングだー!
ふははは、摩擦抵抗が無いことによってボクはどこでも高速で滑っていけるのだ!
弱点は方向転換できないこと!
誰かとめてー!!
(イメージはゴボーたちに激突するボーリングの球)

ううう、危うく海まで飛び出すところだった…
でもとりあえず捕まえたからささがきごぼーつくるよー!
おいしくなぁれ☆(スキルでは無い)

※アドリブ連携OK



●裏切りと怒りのモフモフ狂奏曲
「きゅ!」
「がうー、ゴボウかー お味噌汁が美味しいよね」
 より薄闇が深まった山間を疾走するのは、愛らしい2人のモフモフさんたち。
 大きな尻尾を上機嫌にフリフリして、頑張って沢山収穫してお土産にするんだと意気込む、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)とは反対に、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)は不安げな眼差しで、己の爪をじーっと見つめていて。
 相手は2メートル程の背丈の持ち主。
 対する自分たちは小柄なケットシーと、タヌ……ゲフン、フワモフなキツネさん。
 愛らしさは倍増でも、ささがきにするには、ちょっとだけ心許ないかもしれない……。
「ボクの爪でささがきするしかないかー え? 腰の得物?」
「きゅ!」
 ちょんちょんちょん。
 思わず足を止めたアルファの腰に差してある刀を、さつまは「これならだいじょうぶ!」と励ますように、肉球で柔らかく突いてみせて。
 ――ぶらっく・せいばー。
 その鞘には、愛刀である黒い刀身のサムライブレイドが納まっている。
 もちろん、それを見抜いたさつまは只のキツネではない。けれど、そのことについては此処では割愛しておこう。
「がう……刀でささがきかー… がんばろー」
「きゅ! きゅ!」
 素早く鯉口を切ったアルファは、刀先をえいえいおーと高らかに掲げてみせて。
 アルファの意気込みに促されたさつまも、美味しいゴハンを作って貰うと言わんばかりに後ろ足でちょんと立ち上がると、えいえいおーと前足を高く掲げようとした、その時だった。

「あいつらしつこいゴボー!」
「ここは円陣を組んで気合入れるゴボー、えいえいおーゴボー!」
「「「えいえいおーゴボー!」」」
 
「がう、あの声は!」
「きゅ!」
 静かに顔を見合わせた2人は、声が聞こえた方向へ忍足で近付いていく。
 ぷにぷにの肉球を使って、そっと茂みをかぎ分けると……。
 そこにいたのは、円陣を組んで気合を入れ直す、ヤマゴボー星人たちだった。
「がう、もしかして奇襲のチャンス?」
「きゅ!!」
 その好機を逃しはしない。
 ぎゅっと身を低くしたさつまは「さぁゆくぞ」と気合を入れるように前足で地面をタシタシ叩くと、鋭く地を蹴って駆け出した。
「きゅ! きゅヤ!」
 さつまの頭の中に、とっても美味しそうなゴボ天が浮かんだのも、一瞬。
 敵影を真っ直ぐ捉えたまま一気に距離を狭めると、ヤマゴボー星人たちの目前でとんっと大きく跳躍する。
「きゅきゅきゅ…っ!!」
 バチッとさせたら、美味しい炊きこみゴハンの素ができる、はず!
 ヤマゴボー星人たちの目線と同じ位置になったさつまは、そのまましなやかに身体を捻ると、少し遅れて尻尾がふわりと弧を描き――瞬間、漆黒の雷が勢いよく爆ぜた。
「あばばば、焼きゴボウになってしまうゴボー!」
「こうなったら、アレをするしかあるまいな、ゴボー」
「ああ。我らの必殺技、その名も大地の民の祭(ゴンボ・ヌキ)を……」
 ……ゴクリ。
 ヤマゴボー星人たちの真剣なやりとりに、一瞬だけ静寂が訪れる。
 必殺技。そう言われたら、心がくすぐられてしまうのが、男の子じゃないですかー!
「「「とっととずらかるゴボー!!」」」
「あっ、にげるなー!」
 しかし、2人の期待を大いに裏切り、ヤマゴボー星人たちは逃走開始ッ!!
 けれど、その動きは想定内。アルファは焦茶の双眸をキリッと細めると、猫の毛づくろいの要領で、素早く毛並みを整えた。
「がう! いっくぞー!」
 徹底的に摩擦抵抗をなくしたアルファは薄闇をするりと滑り降りるように、ヤマゴボー星人たち目掛けて、ヘッドスライディングッ!
 まるでボウリングのピンの如く吹き飛んでいくヤマゴボー星人たちに、アルファは笑いが止められない止まらない!
「ふははは、摩擦抵抗が無いことによって、ボクはどこでも高速で滑っていけるのだ!」
「わ、我々はボウリングのピンじゃないゴボー!」
「待って、止まって、タンマ、ストッ――ア〜レ〜!〜!」
 最後の1体にも、きっちりタックル&華麗なるストライク。
 錐揉み回転で吹っ飛んでいくヤマゴボー星人を、退路を断つように回り込んでいたさつまが、ぴょんぴょんと張り切って追従する。
「きゅっっにャァアん!!!!」
 どうやら、ゴボ天と炊き込みごはんに加えて、きんぴらも追加されましたね♪
 吹き飛ぶ敵影に狙いを定め、きっちり雷撃誘導弾を撃ち込んださつまは、後足の肉球に力を込めると、今後はアルファを追い掛けて???
 なぜならば――。
「誰かとめてー!!」
 勢いをつけすぎたアルファは、そのままゴロゴロと山間を転がってまして……。
 アルファはさつまに軽くモフっと体当たりして貰い、ようやく止まることができたのでした。

「ううう、危うく海まで飛び出すところだった…ありがとう!」
「きゅ!」
 アルファはさつまに礼を述べ、お縄にしたばかりのヤマゴボー星人たちに向き直る。
 そう、待ちに待った収穫とクッキングタイムの時間がやってきたのだッ!!
「ささがきごぼーつくるよー!」
「きゅー!!」  
 ――シャキーンと、空切る音。
 アルファが黒い刀身のサムライブレイドを掲げると、さつまも待ってましたと言わんばかりに、自慢のモフモフ尻尾を大きくフリフリしてみせて。
 そのときだった。2人にとって予想外の出来事と不幸が同時に襲ったのは――!!
「我々を甘く見るなよ、ゴボー!」
「大いなる大地の恵みを喰らえ、ゴボー!」
 それは、予想外の“果実”
 ずっと項垂れていたヤマゴボー星人たちがガバッと顔を上げるやいなや、頭につけた毒々しい果実を、無慈悲にもフワモフな2人目掛けて撃ち出したのだ!
 そして、残酷な仕打ちと現実は、それだけで収まってくれなかった。
「ククク、我々は果実だけではなく、根っこな身体も毒なのだよゴボー!」
「食べられなくて残念だったなゴボー!」
「がう!?」「きゅっ?!」
 突然のカミングアウト(?)に、驚愕で瞳を見開く、モフモフさんたち。
 お縄にされたまま不敵な笑みを浮かべるヤマゴボー星人たちの前には、自慢の毛並みを毒々しい紫色に染められた上に食べられませんと宣言されてしまって、呆然自失となった、アルファとさつまが……!
「がう、ゆるせない!」
「ぎュ…!!!」
 しかし、2人がファンシーな置物と化したのも、一瞬。
 アルファの瞳にはメラメラと闘志の炎が宿り、食べることを裏切られたさつまに至っては、物凄い速度で詠唱を多重にギュギュギュッと練り上げてます、まあ怖い!
「ま、待って、モフモフさんたち落ち着いてゴボー」
「話し合えばきっとわかるゴボー……」
「がう! みんなおいしくなぁれ」
「こにャアーん!」
「「「ギャアアアアア!!」」」
 モフモフさんたちを怒らせた奴らに、慈悲はない。
 もはや、何度目かとなった悲鳴と香ばしい香りが、山間いっぱいに広がっていく。
 アルファが疾風の如く刃を煌めかせ、さつまも数多の狐火を練り上げまくって、全力全開のささがきとグリルに仕上げたという、合掌。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と

牛蒡は金平を頂いた事がありますけれど
衣を纏うもお話する姿も初めてね

あらとても御速い
けれど皆さま同じ方向に……

ええと、どうなさいます?
追いかけます?
まあアルフィードさんもお速い

お仕事ですものねえ
それに
追いかけっこも嫌いでは御座いませんの
参りましょうぞ
【勝虫】

高速移動で追い抜き回り込み
これぞ牛蒡抜き、なぁんて
有難う存じます
ずうっと和装で居りますもの
あら、猫耳を付けたままでしたにゃん

絲を放ち切り舞いましょう
木々にお隠れなら諸共に
わたくしおさんどんは不得手ですの
もっとお上手な方が
ほうら其方に

そうねえ、金平ですかしら?
わたくし?
……炭か黒炭しか作った事が御座いませんよ?


アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と一緒に

ん?アレはゴボウ??
ねぇねぇ、見て見て!環ちゃん!
ゴボウだよ!ゴボウ!!
ゴボウが服着て動いて喋ってるよ!
凄いねー!

えっ!?と彼女が追いかける?と問い掛ける前に追っかけてる
だって今日の晩御飯!!
環ちゃん着物なのに凄い!!でも無理しないでね!
にゃん可愛い!にゃん最高ー!

【咎力封じ】のロープなのでぐるぐる巻きして動きを止めるよ!

さて、料理の時間です。
最凶クッキングナイフでお料理を開始

煮付けに天ぷら、きんぴらに
環ちゃんは何が食べたい?
きんぴらだね!!じゃ笹がけにして美味しく作るぞー
楽しみにしてね♪
環ちゃんのお料理も気になるな
それでも食べたい!



●大地の恵みに踊る絲と刃は、ほんのり危険なカオリ
「ん? アレはゴボウ?? ねぇねぇ、見て見て! 環ちゃん!」
 ヤマゴボーチェイスも終盤戦。
 未だ残っているヤマゴボー星人は揃って疲労の色を濃くしているものの、猟兵たちの追撃の手は陰りも衰えも見られなく。
「ゴボウだよ! ゴボウ!! ゴボウが服着て動いて喋ってるよ! 凄いねー!」
 残党も順調に減ってきている中、左眼に飛び込んできた如何にもバレバレなカモフラージュに、アルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)がまじまじと瞳を瞬いたのも一瞬、すぐに雨絡・環(からからからり・f28317)を呼び止める。
「牛蒡は金平を頂いた事がありますけれど、衣を纏うもお話する姿も初めてね」
 ゆるり細めた環の瞳に映るのは、周りの木々と明らかに違う色合いな上に、頭には毒々しい果実を煌めかせる、戦隊モノの服を纏った異形たち。
 誰もがツッコミを隠せない光景に、2人の反応は、といいますと……。
「環ちゃん、凄いねー!」
「ええ、金平もたくさん作れますかしら?」
 なんと1人はとっても楽しそうに、1人は温かな眼差しで見守ってます、どうします?
「同志たちよ、このままでは我々笑顔で、ささがきにされてしまうゴボー」
「ウリンさまも怖いけど、こいつらよりマシだゴボー」
 アルフィードと環が黙したまま、温かく見守る中。
 木や茂みに扮した状態のヤマゴボー星人たちの内緒話が、ぴたりととまり……。
「「「というわけで、とっととずらかるゴボー!!」」」
 もはや、唐突ともお約束と呼べる、大地の民の祭(ゴンボ・ヌキ)。
 彼らの逃げ足っぷりは、揃って神がかりと言っても過言ではなかった、けれど。
「あらとても御速い、けれど皆さま同じ方向に……」
 ――もしかして、何かしらの作戦かしら?
 その場合、今すぐ追い掛けた方がいいかもしれないけど、まずはアルフィードと相談してからだと、環は振り向く。
「ええと、どうなさいます? 追いかけます?」
「――えっ!?」
 環の銀の瞳が捉えたのは、追い掛けっこを開始している、アルフィードの姿。
 脊髄反射の勢いでスタートダッシュを切ったアルフィードは更に加速、最後尾のヤマゴボー星人と併走する、健脚っぷりをみせていて。
「まあアルフィードさんもお速い」
 思わず瞳を瞬いた環に返ってきたのは「だって今日の晩御飯!!」と、ハイテンションで笑う、アルフィードの声。
 振り向かずとも然りと聞こえる楽しそうな声色に、環の艶やかな唇が笑った。
「そうねえ、お仕事ですものねえ」
 ――それに。
 そう短く区切った環の身体が、長い黒髪と共に、しなやかに動く。
「追いかけっこも嫌いでは御座いませんの、参りましょうぞ」
 着物を物ともせず、軽やかに疾駆する環の周りに雨霞がぽつぽつと浮かび上がる。
 姿を隠す雨霞をまとった環がさらに速度をあげると、獲物を待ち焦がれたように、蜘蛛の絲も鋭さを増していて。
「環ちゃん着物なのに凄い!! でも無理しないでね!」
「有難う存じます、ずうっと和装で居りますもの、にゃん」
 アルフィードの労いの言葉が跳んできたのと、環が猫耳を付けたままだと気づいたのは、ほぼ同時。
 環にとっては戯れでも、アルフィードには思いがけぬ天国の再来となった。
「にゃん可愛い! にゃん最高ー!」
 帰ってきたよ天国、ウェルカムバックヘヴン、ありがとう猫さんたち!!
 幸せに満ちたアルフィードの足取りが一瞬だけ疎かになった瞬間、環は疲労を濃くしていたヤマゴボー星人たちごと、軽やかな足取りで追い抜いた。
「これぞ牛蒡抜き、なぁんて、にゃん」
 そのまま退路を断つように回り込んだ環は、触れるもの全て切断する蜘蛛の絲を、ふわりと舞うように解き放つ。
 ひらりと宙を舞う絲は、確かな手応えを得た瞬間に、凶刃と化した。
「わたくしおさんどんは不得手ですの」
 放ち。斬り。薙ぎ。全てが舞い踊るかのように。
 謙遜に似た柔らかな微笑みとは反対に、環から解き放たれた絲はヤマゴボー星人たちの四肢を執拗に狙い、絡めとり、斬り裂いていく。
 慌てて木々に隠れたヤマゴボー星人がいれば、素早く絲を手繰り寄せて隠れている木もろとも両断して見せて。
「ここはウリンさまのナワバリゴボー、ちゃんと狙うゴボー」
「ウリンさま怒ると怖いゴボー!」
「あら、それならもっとお上手な方が、ほうら其方に」
「え?」
 ヤマゴボー星人たちがくるっと後ろを振り向けば、満面の笑みのアルフィードが。
 そうだった。どちらかというと、男性の方が要注意人物だった。
「はいはい! 俺のことかなー」
 一迅の鋭さを持って環が退路を断つと同時に、それを視界の隅に留めながらアルフィードも素早く反対側に回り込んでいて。
「速攻でぐるぐる巻きして止めちゃうよ!」
 ほぼ死角から放たれる形となったアルフィードの拘束ロープは、ヤマゴボー星人たちの力を奪い、その身に刻まれたユーベルコードを封じ込める。
「これでチェックメイトかな?」
 にっこり笑みを深める、アルフィード。
 走れないヤマゴボーなんて、ただのゴボウ。そして、最後にやることがもう1つ。
「さて、料理の時間です」
「「キャアアアアア」」
 そうそう、煮付けに天ぷらもいいけれど、きんぴらも美味しいよね♪
 神父服のアルフィードがクッキングナイフをきらり煌めかせながら告げるのは、なんとも言えぬ迫力があるといいますか、死刑宣告にしか聞こえないような……。
「ククク、我々は果実も根っこな身体も全て毒なのだよゴボー!」
「だから食べられないゴボー、残念だったなゴボー!」
「なるほど! ねぇねぇ環ちゃんは何が食べたい?」
「そうねえ、金平ですかしら?」
「きんぴらだね!! じゃ笹がけにして美味しく作るぞー」
 奥の手もとい、食べられませんアピールは食通には、効果的面のはずッ!!
 なのに効いていない――否、まったく聞いてくれない、だとッ!?
「環ちゃんのお料理も気になるな」
「わたくし? ……炭か黒炭しか作った事が御座いませんよ?」
「それでも食べたい!」
「「イヤアアアアアアア」」
 もはや恒例となってしまった悲鳴と香ばしい香りが、深い山間にも広がっていく。
 けれど、他のグループと違って、ちょっとだけ消し炭のような危険な香りがしたのは、また別のお話し♪

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
あは、食材がたぁくさん
どう調理してほしい?

いちおしっかり追跡しながらプレッシャー与えて
できるだけ多くを相手取れるよう誘導してこうかしら
アジトまで案内してくれるってんなら感謝しないとねぇ
タタキにされるのとこんがり焼かれるのとどっちがお好み?
【焰宴】でフライパン召喚
範囲攻撃でしっかり料理しましょうか
敵の反撃はフライパンで受け止めてソースにでもしてやるわ

……あ、火ぃ通す前に切るの忘れちゃった
料理人として失格ねぇ
じゃあ仕切り直して「柘榴」構え恐怖を与える精神攻撃も追加しとけば
後々も楽かしらねぇ



●大いなる恵みの誘いの先に鎮座するもの
「あは、食材がたぁくさん、どう調理してほしい?」
 山間を全力で駆け抜けるヤマゴボー星人たちが次々に狩り尽くされていく中、コノハ・ライゼ(空々・f03130)は、残党をしっかり追跡しながらも、彼らにプレッシャーを与えることを忘れない。
 そうすれば、満身創痍の末端戦闘員がやるべきことは、自ずと絞られてくる。
 1つはボス助けてくださーい、もう1つは先生お願いしますッであーる。
「我らは毒だらけなのに、お前ら揃って頭おかしいゴボー!!」
「そうだそうだゴボー、コンキスタドールにも人権はあるはずゴボー!」
「え、そこに食材があるからでショ?」
 ――しーん。
 さらりと言い放ったコノハに、ヤマゴボー星人たちは揃って絶句。
 しかし、コノハにとっては如何なる食材でも料理人としては美味しく調理するのが当たり前だし、むしろドン引きする食材もといヤマゴボー星人が、不思議なくらいでして。
(「何はともあれ、アジトまで案内してくれるってんなら感謝しないとねぇ」)
 薄氷の双眸が捉えていた、ヤマゴボー星人たちは8体だけ。
 できるだけ多くを相手取るように誘導したかったものの、ノリにノリまくった猟兵たちが料理…ゲフン、追撃に回っていたのもあり、これ以上増える様子はなさそうだ。
 ……ならば、この辺が潮時かもしれない。
 そう判断したコノハはダメ押しのプレッシャーを与えるべく、唇を艶やかに上げた。
「タタキにされるのと、こんがり焼かれるのとどっちがお好み?」
「ヒィィィ、どっちも嫌だゴボー!」
 一見、柔らかな言葉使いでも、その端々は凄みに似たものを帯びていて。
 コノハは有無を言わせぬ勢いで、召喚したフライパンと蒸留酒から激しく渦巻く月白のフランベを作り上げると、そのまま軸足に体重を乗せて、フルスイングッ!
「召し上がれ」
 強烈な一打が空気を轟と震えさせ、たちどころに熱風が吹き荒れる。
 その直後、堅く鋭い響きが連続する。反撃に転じた一部のヤマゴボー星人たちが、コノハ目掛けて毒々しい果実を、一斉に撃ち込んだのだ。
「ハッ、全部ソースにでもしてやるわ」
 その行動は全て想定内。
 振り向きざまにフライパンを返して受け止めてみせた、コノハの艶やかな唇が笑う。
 真横から来た毒弾も軽やかに後方に跳んで回避すると強く踏み込み、瞬時に間合を詰め上げた。
「……あ、火ぃ通す前に切るの忘れちゃった、料理人として失格ねぇ」
 ――しーん。
 コノハの唇は薄く弧を描いていたけれど、薄氷の瞳は鋭さを帯びたまま。
 ヤマゴボー星人たち側も、もはや何を言っても事態が好転することはないと、悟っている様子だったけど。
「沈黙は肯定の意味ヨ、しっかり料理しましょうか」
「「違う、そうじゃないゴボ!」」
「「オーマイゴボオオオ!!」」
 視線を鋭く前方に見据えたまま、磨いだ鉱石の貌の一対のナイフを水平に構えたコノハは、素早く逆手に持ち替える。 俗に言われる殺し屋持ちと呼ばれるスタイルだ。
「我ら絶体絶命だゴボー!」
「こうなったら、奥の手しかあるまいゴボー」
 一撃必殺ではなく、ジリジリとこんがりグリルにされ、更にささがきのように削られたヤマゴボー星人たちは、くるりと踵を返して方向転換。そして!
「うわああああん、ウリンさまあああー!」
「ウリンさま、助けてくださいゴボー!」
 追い詰められたヤマゴボー星人たちは、ぐんっと速度を上げると、光が差す方角に向けて一斉に走り出す。
 コノハはボスと合流されない範囲で1体づつ倒していくと、不意に追撃の手を止めた。
「ここがアジトで間違いなさそうネ」
 最後の1体を仕留めたコノハは、敵のアジトらしきものを仰ぎ見る。
 射抜くように細めた薄氷が映し出したのは、蒸気機関の残骸を寄せ集めて造られた、真鍮色のガラクタ砦。
 それは、深い山間を抜けた先に広がる入江に、浩然と浮かんでいたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獣拳士ウリン』

POW   :    貪喰なる獣頭「グラトニーヘッズ」
命中した【対象を威圧して束縛する覇気を込めた大咆哮】の【指定した言葉の該当する部分・場所】が【あらゆる存在を喰らい尽くす魔獣群の大顎】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    メガリス「賢人の識腕」
レベル×1tまでの対象の【ユーベルコードを含めた攻撃や防御、投射物】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
WIZ   :    闘気狼襲撃
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【拳撃や蹴撃から放たれる闘気で形成された狼】で包囲攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシララ・ミーファです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ガラクタ砦の獣拳士
 敵のアジトがあったのは、深い山間を抜けた先にある、青々とした入江だった。
 その中に浮かぶガラクタ砦は、蒸気機関の残骸を集めて造られており、真鍮色の無機質な外観が、周囲の自然豊かな景観と完全に浮いていて。
「ヤマゴボー星人たちを掃討した今、この中に残っているのはボスだけだな」
「ええ、確か名前は――」
 アジトの前に集まった猟兵たちが決戦を仕掛けようとした、その時だった。
「待ちわびたよ♪ ボクの子分た――アレ??」
 ガラクタ砦の中からぴょんと飛び出してきたのは、獣耳の少女――獣拳士ウリン。
 小柄ながらもその手足は俊敏な獣のように引き締まり、軽々と駆け下りてくる足取り1つを見ても、彼女が手練れであることを容易に察することができる。
「うーん、子分たちじゃないねっ☆」
 不思議そうに金の瞳を瞬いたウリンは、視界に入ったのが子分のヤマゴボー星人ではなく、武装した猟兵だったことに、小さく首を傾げて見せる、が。
「ねえねえ、ボクは子分たちに甘くてシャリシャリしていてみずみずしい黄緑色のアレを、いっぱい奪ってきてって言ったんだけど♪」
 取り囲まれてもなお、猟兵たちに問い掛けるウリンは、とても楽しそうで……。
 その瞬間。招かざる客を見回していた双眸が剣呑さを増し、不敵にギラリと輝いた。
「キミたち、何か知らないかなっ☆」
 ――さあ、ガラクタたち♪ あいつらを食べちゃえっ☆
 弾むような声から一転。覇気を帯びた咆哮が振動し、ウリンの周囲のガラクタの一部が魔獣群の大顎に変形、猟兵たちに向かって突き刺さるように降り注ぐ!
 ――貪喰なる獣頭「グラトニーヘッズ」
 激昂の気合と共に放たれたユーベルコードが猟兵たちに牙を剥けた、その刹那。

 ――ぐぎゅるるるううううううううううう。

 ウリンのお腹を中心に、盛大に鳴り響く腹の虫。
 一拍置いて。鋭く描いた大顎たちの軌道が突如、へちょりと弱々しくなり、後方に跳躍した猟兵たちに届くことなく、カツンカツンと乾いた音を立てながら落ちた。
「うう、お腹減ったよう、梨食べたいよう」
 ――ぐぎゅるるるううううううううううう。
 ウリンの腹の虫は、真剣な戦いの場でも、抗議を止める様子はなく……。
 その音を聞いた猟兵たちは、ある者は「これは好機だね」と頷き、ある者は「え、こんなのでいいのっ!?」と、戸惑いに似たものを浮かべていて。
「これ、チャンスだよね?」
「うん……でも、ちょっと申し訳ない気がするなぁ」
 チャンス到来だと袋叩きにするか、あるいはちょっとだけ慈悲を施すか。
 最後の戦い(主に空気感!)は、猟兵たちの手に委ねられたのだった……!!

●マスターより
 皆さまのご活躍の結果、獣拳士ウリンとの戦いは「ハラペコモードのウリン(攻撃力が大きく低下)」との戦いになりました。
 ただし、耐久力が高めなのは変わらず、隙あらば叩き込んできますので、コミカル要素が絡みつつも、緊張感がある描写になるかなと思っております。
 足場はガラクタだらけですが、ウリンと皆さま双方の動きに支障はありません。

 ※特殊ルール「大好物の梨をウリンに食べさせる」
 ウリンに梨をあげると梨をあげた猟兵さんが戦うシーンだけ、一時的にウリンが満腹時になり、攻撃力と冷静さが元に戻ります。(判定も少しだけシビアになります)
 なお、梨を食べてもウリンの体力は回復しませんのと、後続の猟兵さんの戦いに梨効果が持ち越すことはありませんので、強敵との戦いをご所望の方は、お気軽にご利用ください♪

 なお、梨以外の食べ物もあげることが可能ですが「やっぱりナシが食べたいんだよっ☆」と、駄駄を捏ねるだけになるかと思います(少しだけ元に戻る程度)。
 また「やっぱやーめた」など、お預けされると怒って執拗に狙ってきますので、いい感じにご利用……ゲフン、ご注意ください。

 皆さまの決戦、楽しみにお待ちしております!
惑草・挧々槞
ああ、あの美味しい梨。あれなら私もお土産に数個戴いたけれど……さておき。

さっきの“ガラクタを魔獣に変えた”技、変えられる物に制限があるかどうかが気になるわね。
槌で殴りつつ探りましょうか。単に防ぐだけに留まらず、技を使ってくれば──
(貪喰なる獣頭の直撃を受け)
──成程、結構融通が利くってわけ。
まともに当たったら動けないわね、これ。

 

じゃ、仕切り直し。
良い気になってる所悪いけれど、それ偽物だから。ちなみに梨を戴いたっていうのも嘘よ。

推察するに、物体名を明確に言葉で表した上で咆哮する必要がある、って感じかしら?
偽物を自爆させたりして奴の周囲に毒煙を撒いて、発声──と、呼吸自体を阻害すれば良さそうね。



●貪喰穿つ毒煙
「ああ、あの美味しい梨。あれなら私もお土産に数個戴いたけれど」
「な、なんだってっ☆」
 真顔で金色の双眸を細めた惑草・挧々槞(浮萍・f30734)に、ウリンが脊髄反射のごとく獣耳をピンっと立てたのも無理もない。
 大好物の梨を奪って来いと命令した子分たちは1人残らず帰って来ず、自身は腹ペコのまま正座待機していたようなもの。
 火に油を注ぐというのは、まさにこのことを言うのだろうか。
「許さないっ☆ そこのチビからガラクタ共の餌食にしてやるよっ♪」
「そうね、背が低いのはお互い様ね」
「むぅぅぅ、ギッタンギッタンに噛み殺してやるっ☆」
 ウリンの金の瞳にメラメラと怒りの炎が燃える中、対する挧々槞は敵影を淡々と瞳に捉えたまま、思考だけは「それはさておき……」と、一瞬だけ別の所へ向ける。
(「さっきの“ガラクタを魔獣に変えた”技、変えられる物に制限があるかどうかが気になるわね」)
 挧々槞は愛らしくデコられた魔王槌をブンッと軽く横に振るうと、ちらり後続の猟兵たちを見やる。
 彼らも出方を探っている様子……ならば、単に防ぐだけに留まらせるつもりはない。
(「槌で殴りつつ探りましょうか、もう一度あの技を使ってくれば御の字ね」)
 まずは一打。先陣を切って駆け出したのは、白と赤の流影が2つ。
 挧々槞が躍動すると同時にウリンもしなやかに疾駆し、怒りに似た咆哮を轟かせた。
「「「さあ、ガラクタたち♪ アイツを食べちゃえっ☆」」」
 耳を裂くような咆哮がガラクタ砦を振動させ、瞬時に無数の大顎へと変えていく。
 それは、豪雨のように激しく降り注ぐ衝撃。
 しかし、一歩も引かず更に前に踏み込んだ挧々槞は、迫り来る1撃目と4撃目を槌で豪快に薙ぎ払うと、5撃目から9撃目を連続で跳び退いてかわし、10撃目から13撃目に備えて腰を落とし、再び槌を叩き込もうとした、その時だった。
「──っ」
 14撃目の貪喰の顎が躱しきれず側頭部に直撃。鬼気迫る超弩級の一撃は骨の髄まで浸透し、激しい衝撃に挧々槞の視界がぶれて、倒れ伏す。
 思考は一瞬。
 それを視界に留めたウリンは好機を逃すまいと、瞬時に間合いを詰める、が。
「フン、真正面から突っ込んでくるからだよっ☆ ──っ!?」
 ──ボンッ!!!
 ほぼ零距離まで肉薄した刹那、倒れ伏した挧々槞の身体が、勢い良く爆ぜる。
 そしてほぼ同時に、聞き覚えのある少女の声が、なぜかウリンの背後から──?!
「成程、結構融通が利くってわけ。まともに当たったら動けないわね、これ」
 ──何てこと! 私が殺されちゃった! ……なーんて、ね。
 辺りに毒々しい煙がたちのぼる中。鮮明に浮かび上がる声と姿は、先程倒れたはずの挧々槞のもの。
 ウリンの瞳が一瞬だけ驚愕で見開くものの、挧々槞の眼差しは変わらぬままで。
「良い気になってる所悪いけれど、それ偽物だから。ちなみに梨を戴いたっていうのも嘘よ」
「っ、どういうことなんだよっ☆」
 ──慙愧ゼロ(ノーコンテスト・コンティニュー)。
 自身が瀕死になるとそれが偽物だったことが判明し、本物の自身が召喚されるという、挧々槞のユーベルコード。
 それを知る術もなく動揺を隠しきれないウリンを見据えたまま、挧々槞は「仕切り直し」と、淡々と槌を構える。
「先程からも推察するに、物体名を明確に言葉で表した上で咆哮する必要がある、って感じかしら?」
「それがどうしたんだよっ☆ 何度でも喰ってやるっ♪」
 一迅の鋭さを持って敵の懐まで斬り込んだ挧々槞は、軸足に強く力を込める。
 それに促される速さでウリンも再び貪喰なる獣の顎を見舞ってやろうと、鋭く息を吸い込んだ時だった。
「ケホケホっ! なんだよっこの煙、とっても苦しいっ!!」
 一瞬とはいえど、発声と呼吸を同時に阻害されたウリンが隙を見せたのは大きい。
 ──否、全てが計画通り。ウリンが思いっきり咳き込んだ刹那、挧々槞は己の感覚を研ぎ澄ますように、更に半歩前に踏み込んだ。
「どう? 偽物を自爆させた瞬間に、毒煙を撒いて置いたのよ」
「──!!!」
 軸足に体重を乗せて振り抜く槌がウリンの鳩尾を捉え、身体を軽々と吹き飛ばす。
 さらに追撃を狙うべく振りかざした槌をウリンは腕を交差させて受け止めるものの、衝撃は殺せずそのままガラクタ砦の壁に激突した。
「体力も随分あるわね。一旦、検証はここまでかしら」
「ハッ、やるねっ☆ 楽しくなってきたよっ♪」
 確かな手応えを感じた挧々槞はツインテールを揺らして後続と交代する。骨まで浸透する重い一撃を耐えながら、けれどウリンの唇は楽しそうに弧を描いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

うーん、腹ペコサンは満たしてあげたい(と思う気持ちも少し位はなくはない)ンだけど……

唸ってたらたぬちゃん(梨付き)見付け
【震呈】で召喚したフライパンを勢いよく差し出す
丁度イイわ、ソレひとつ!あと火も頂戴な

さあ、とっておきを御馳走してアゲル
なんやかんやでバターソテーっぽく仕上がった梨(フライパン)でフルスイング
パワーアップ?へーきへーき
ソレはコッチもだからネ
動き見切って攻撃躱しつカウンター狙って2回攻撃でもう一撃……と同時にホラたぬちゃん火!
しっかり(腹ペコな)傷口抉っていきましょ

気持ちは分かるケド、盗み食いじゃあダメなのよ
最後に梨の一切れくらい、あげてもいいかしら


火狸・さつま
コノf03130と
狐姿
人語ムリ狐鳴き

「きゅ?」
お腹、空いてる、の?
ぺこぺこ、悲し…!
すちゃり梨取り出し
「きゅヤ!きゅ…」
この梨ね、美味し、よ!美味し…
美味しさ思い出せば思わず自分でシャク!
だて、運動したし、ゴボウ…
ゴボウ手に入らなかった食べれるヤツ
「ぎュ…!」
むかぷん!してたら
この声…!!!
おみみぴこり!
しっぽぶんぶん!!
「きゅっヤ~」
コノ!コノちゃぁあん!!
大喜びで抱き付…え?梨?あ、ハイ
新たに梨取り出しコノへ投げ渡し
燐火の仔狐炎も向わせる
コノの料理、美味し!よ!最高!(ドヤァ)
きゅ!炎追加ー!
あの梨、ユーゴ君へのお土産だたけど…良い、よね!

炎と雷撃で援護射撃しつつ
攻撃見切り躱すかオーラ防御



●貪喰に捧げる香しき青き炎
「きゅ?」
 ……もしかして、お腹が空いているからだろうか?
 自身を取り囲む猟兵たちに覇気を持って迎え撃つものの、何処か動きに精度が欠けるウリンに、タヌキのような狐──火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、ちょんと首を傾げてしまう。
 けれど、悲しそうに「きゅ…」と項垂れたのも一瞬。さつまは肉球にすちゃっと梨を乗せると、先陣の猟兵と火花を散らすウリンに向けてフサフサ尻尾を大きく振り回し、「この梨ね、美味し、よ!」と告げるように、大きくアピールしてみせる、が。
「きゅヤ! きゅ…」
 不意にさつまの脳裏に浮かぶのは、ケットシーの村での甘くて瑞々しい果実の記憶。
 その時の楽しさと口いっぱいに広がる美味しさを思い出した瞬間、さつまは自分のお口にシャクッと梨を入れてしまいまして。
「あああ!! タヌキさんずるいっずるいよっ☆」
「ぎゅ…!」
 さつまがとっても美味しそうな顔をしていたのだろう、最前線からビュンと飛んできたウリンが悔しそうに地団駄を踏み始めるけれど、さつまは逆に不機嫌になってしまって、ムゥと眉間にシワを寄せる。
 タヌキと呼ばれたことではない。子分任せで待っていただけのウリンと違って、自分は運動と言う名の調査と追跡をしていたこと、何よりもゴボウ……そう、食べれるゴボウが手に入れられなかったことに、さつまは強い憤りを感じていたのだ!!
 ……なので。
 自分はうっかり摘み食いしてしまっても、良い、よね的な、言い訳もとい抗議の眼差しをキリッと向けた、その時だった。
「うーん、腹ペコサンは満たしてあげたいンだけど……」
「ぎュ…!」
 さつまの背後から聞こえたのは、猟兵業と料理人の狭間で悩みに悩んでいた、コノハ・ライゼ(空々・f03130)の声。
 馴染みがあり、何処かほっとするような、その声を聞いた瞬間、ムカプンしていたさつまの狐耳が上機嫌にぴこっと立ち上がり、360度回転の勢いで振り回した尻尾ごと横に身を捻ると、そのままぴょんと大きく飛び跳ねた!
「きゅっヤ~」
 ──コノ! コノちゃぁあん!!
 突然の再会シーン。嬉しくて抱き付こうとするさつまに、しかしコノハはにっこり笑みを返すと、持っていたフライパンを、ビジッと勢い良く差し出したあああ?!
「丁度イイわ、ソレひとつ! あと火も頂戴な」
「きゅ? きゅヤ? きゅ、きゅう」
 ご注文は感動の再会でもモフモフでもなく、梨ですかそうですか、あ、ハイ……。
 さつまは気を取り直して梨を取り出すと、鼻先でポンっとコノハのフライパンへ。
 ──同時に。愛らしい仔狐の形を成した狐火たちが梨を追い掛けるように、次々とコノハのフライパン目掛けて飛び込んだ。
「とっておきを御馳走してアゲル」
 フライパンを通して伝わってくる、狐火たちの熱と躍動。
 新鮮な食材と、元気良く弾む火力が追加されて嬉々と唸り上げるフライパンを構え、コノハは力強く真鍮色の大地を蹴る。
 狙い定めるは1点。なんやかんやでバターソテーっぽく仕上がった梨をフライパンに乗せたまま、瞬時にウリンに肉薄したコノハは更に1歩、深く踏み込む。
「さあ、遠慮なく」
 そのまま軸足に体重を乗せて、鋭く振り抜くように、フルスイングッ!!
 虚を突かれたウリンは慌てて身を引くものの、美味しそうな香りに惹かれて全て避けきれず、強烈な一撃を見舞った身体が、軽々と吹き飛ばされる。
「……っ、──コレ、とっても美味しいっ☆」
 しかし、ウリンもタダでは転ばない。
 健康的な口元には美味しく調理された梨の一欠片が垣間見え、ペロリと舐め干す。
 まさに好物への執念ッ、その一部に触れたウリンの唇が一瞬だけ、恍惚に満ちた。
「美味しいっ美味しいっよ☆ もっともっと、寄越すんだよっ♪」
 ──さあ、ガラクタたち♪ あのタヌキとヒョロイのを食べちゃえっ☆
 耳を裂くような咆哮が周囲のガラクタを震わせ、無数の獣の大顎へと変えていく。
 それは先陣を切った猟兵に剥けられたモノよりも鋭く速く、餓えた獣の群れとなり、2人に襲い掛かる、が。
「パワーアップ? へーきへーき、ソレはコッチもだからネ」
 乱れ狂う貪欲なる牙の嵐の中。
 けれど、コノハの艶やかな唇は、楽しそうに弧を描いていて。
 紙一重どころか髪一本の距離で辛うじて避けてみせると、もう1度強く半歩踏み込み、素早く腕を振り抜く。
「ホラ、たぬちゃん火!」
 同時に。コノハの視界の端に入ったのは、オーラで守護の力を高めながら、ぴょんぴょんと弾むように身を躱していた、さつまの姿が──。
「きゅ!」
 ──コノの料理、美味し!よ!最高!
 さつまもまた、相方の料理を自慢するように、ドヤァと大きく胸を張ってみせて。
 2つめの梨が、グリモア猟兵へのお土産だったのがちょっとだけ心残りだけど、さつまはコノハの期待に応えるべく大きく飛び跳ねると、くるりと宙返り。一拍置いて追加の狐火たちが、軽やかに戦場を疾駆する。
「あの青いの、とってもめんどくさいなっ☆ ──っ!」
 人狐一体もとい、一心同体。
 ウリンが狐火に気を取られた刹那、カウンターの要領でコノハが打ち込んだ強烈な横薙ぎの一打が、轟と空気を振動させる。
 空気を裂く僅かな気配を察したウリンは本能だけで避けようとするものの、燃え盛る炎渦から逸れようと僅かに身を引いた瞬間、素早く繰り出された二撃目が深く鳩尾に食い込んだ。
「──っ☆」
 深い一撃を受けたウリンが大きく後退すると、コノハも深追いはせずひらりと後方へ跳び退き、一旦距離を取る。
 予想していた通り、主人を守ろうとする魔獣群の大顎たちが、自分とさつまを喰らい尽くさんと執拗に迫り来るものの、コノハは艶やかに口の端を上げてみせて。
「気持ちは分かるケド、盗み食いじゃあダメなのよ」
 料理人として、腹ペコさんのお腹を満たしたいと思う気持ちは、少なからずある。
 けれど、コノハの薄氷の眼差しに浮かぶのは、慈愛に似た料理人のソレよりも、狩場を求める悪食家のモノが、鋭く、強く──。
「ぎゅ…!」
 それに促されるような迅速さで前に飛び出したさつまが、尻尾から放った炎と雷撃で大顎の軌道を逸らしてコノハを護り、同時に次の行動をアシストする。
 貪喰なる牙と青炎の応酬の中。無数の炎と雷が爆ぜ、香ばしくて甘い梨のバターソテーの香りが、無慈悲にも広がっていく。
「うぅ、お腹減ったようっ……」
 口に入れた梨が僅かだったため、電池が切れたウリンは再び腹ペコモードに。
 そんな彼女にとって、戦場にふわり広がる温かなバターと甘く焼かれた梨の香りは、だいぶ酷な状況かもしれないけれど……♪
「たぬちゃん、しっかり腹ペコな傷口抉っていきましょ」
「きゅっ!」
 ──最後に梨の一切れくらい、あげてもいいかしら?
 そう思いながらも、コノハはさつまと力を合わせて、ウリンが繰り出す大顎と激しい火花を散らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨絡・環
アルフィードさん(f00525)と

ほらアルフィードさん
本物の猫耳さんですわ

お腹がすいていらっしゃるの?
それは可哀想ねえ

アルフィードさんはあの方の仰るアレ、お分かりになります?
甘いシャリシャリだそうですけれど
あら、梨の事でしたのね
それなら先ほど頂いたものが
あら器用でいらっしゃる

どうぞ召し上がれ
アルフィードさんも召し上がります?
あら、わたくしも宜しくて?

まあ……うふふ
素晴らしい気迫ですこと
元気におなりにあって何よりです

さあ参りましょう
先んじて舞えば【返し縫い】
その大きなお口を縫い留めましょう
わたくし
縛られるより
食べられるより
縛る方が
食べる方が好みですの

動きを留めれば、ほら
またお料理のお時間かしら


アルフィード・クローフィ
環ちゃん(f28317)と一緒に

わぁ!今度はにゃんこさんだ!!
ん?アレ?なんかお腹すいてるみたいだね?
黄緑色の甘くてシャキシャキ?あっ、それは梨だね!
じゃじゃーん!梨をにゃんこや可愛く飾って!
食べたい?
敵の前で片手を出して
じゃ、お手!おかわり!!
よく出来ました!!
良い子にはご褒美だね!
頭を撫でて、梨をあげる
わぁ!環ちゃんの梨!頂きます!
お礼に俺の梨をあげるね!

お腹いっぱいになったかな?
じゃ、遊ぼうか!!
神も悪魔も面倒くさいだろうけど力を貸して!最恐の戯れを!
攻撃をアップさせて
最凶クッキングナイフを持ち構えて攻撃

今度は君をお料理するぞ!!

良い子にしたら梨沢山あげるのにな。



●黄緑色の安寧に捧ぐ凶舞
「ほらアルフィードさん、本物の猫耳さんですわ」
「わぁ! 今度はにゃんこさんだ!!」
 獣耳と尻尾を靡かせて戦場を疾走するウリンに、雨絡・環(からからからり・f28317)が銀の双眸を細めると、獣のような俊敏な動きを捉えたアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)も、楽しそうに口元を緩め──ふと、敵の動きに違和感を覚える。
「ん? アレ? なんかお腹すいてるみたいだね?」
「まあ……可哀想ねえ」
 先の猟兵が放ったユーベルコードの影響だろうか。戦場にはバターの香ばしさと焼き梨の甘い香りがフワフワと漂い、少し遅れてウリンのものと思われる腹の虫が盛大に鳴り響いてまして。
「うう、お腹減ったよう、もっとアレを食べたいよう☆」
 ――ぐぎゅるるるううううううううううう。
 戦闘中でも鳴り止まない腹の虫。むしろ、始めの時よりもだんだん酷くなっているような……と、環とアルフィードは互いの視線を見合わせる。
「アルフィードさんはあの方の仰るアレ、お分かりになります? 甘いシャリシャリだそうですけれど」
「黄緑色の甘くてシャキシャキ? あっ、それは梨だね!」
 ぱんぱかぱーん!
 某猫型ロボット的な効果音付きの勢いでアルフィードが環にお披露目したのは、キラキラと輝く、大きな大きな黄緑色の果実。
 しかも、にゃんこっぽい耳や尻尾が可愛らしくデコられているという、拘り抜いた逸品でして。
 見た目もファンシーに仕上がった梨に環は目を見張るように瞳を瞬くと、自身の着物の袖の内にすっと指先を伸ばした。
「あら、梨の事でしたのね。それならわたくしも先ほど頂いたものが……」
「わぁ! 環ちゃんも?」
 環がアルフィードに見せたのも、これまた旬を迎えた、大きな大きな梨。
 2人の間に笑みが広がった瞬間、さっと朱色の影が割り込む――獣拳士ウリンだッ!!
「うわぁ、美味しそうな梨みっけっ☆ それ全部ボクに頂戴っ♪」
「食べたい?」
「うんっ♪」
 アルフィードの問いかけに、ウリンは2つ返事で金の瞳をキラキラと輝かせる。
 しかし、アルフィードが差し出したのは、可愛らしい梨ではなく、反対側の片手でして……。
「じゃ、お手!おかわり!!」
「フニャッ♪ にゃっ☆」
 アルフィードが片手を差し出した瞬間、ウリンはボクサーも舌を巻く高速のジャブを、パシッパシッと鋭く繰り出す。
 けれど、その威力は手に添える程度のもの。攻撃ではなく彼女なりの全力のお手とおかわりであることを察したアルフィードの表情が、ぱっと輝いた。
「よく出来ました!! 良い子にはご褒美だね!」
「やったああっ☆ ガブッといっくぞっ♪」
 ――ぱくんっ、シャリシャリシャリシャリムシャムシャムシャ。
 嬉しそうに破顔するアルフィードの手から、奪い取るように梨を頬張ったウリンの顔色が、みるみるうちに明るみを帯びていく。
 見事な技を繰り出したウリンの頭をヨシヨシと撫でるアルフィードに、環もにこりと微笑むと、2人の前にすっと歩み出て……。
「あら器用でいらっしゃる、此方の梨もどうぞ召し上がれ」
「やったあっ♪ いっただきまーすっ☆」
 環は自分が持っていた梨をウリンに差し出すと、一拍置いて着物の袖の内から、大きな梨をもう1個取り出す。
「アルフィードさんも召し上がります?」
「わぁ! 環ちゃんの梨! 頂きます! お礼に俺の梨をあげるね!」
「あら、わたくしも宜しくて?」
 シャリシャリシャリシャリシャリシャリ。
 先程まで戦意と闘争心で満たされていた戦場に、まったりとしたひとときと、平穏な空気が流れていく。
 そして、1分後。
「フフフ☆ これで思いっきり暴れられるっ♪ さあ、もっともっと梨を寄越すんだよっ!!」
 ――さあ、ガラクタたち♪ あの2人から梨をもっともっと奪うんだよっ☆
 満腹モードになったウリンは2人に礼を述べることなく、全力で獣の大顎を差し剥ける。
 だって、彼女は貪喰の主人でありオブリビオン、そしてコンキスタドールと呼ばれる、悪い奴の親玉なのだっ!
「まあ……うふふ、素晴らしい気迫ですこと、元気におなりになって何よりです」
「よかった、お腹いっぱいになったみたいだね!」
 だがしかし。対する2人の猟兵は、この状況を心の底から楽しんでいて。
 小さく微笑を洩らす環の唇は嬉しそうに弧を描き、ほっと安堵を浮かべたアルフィードに至っては、手の中で然りと握り締めていたナイフをくるりと回転、素早く逆手に持ち替える。
「じゃ、遊ぼうか!!」
 ニヤリと唇の端を上げたのは自分たちとウリン、どちらが先だろう。
 その直後。堅い物が打ち付け合う、鈍く、鋭い音が響く――!!
「はいはい、君達の気紛れでもいいから、俺を手伝ってね!」
 神も、悪魔も、きっと、この状況を面倒くさいと思っているに違いない。
 しかし、この戯れを最高で最恐のモノにするため、アルフィードは強く、祈り、願う。
 ただ短く一言、――力を貸して、と。
「今度は君をお料理するぞ!!」
「ハッ、やれるもんならやってみろっ☆」
 瞬時に鋭さを増すクッキングナイフから伝わるのは、確かな力と加護。
 神と、悪魔と、死霊の力を呼び寄せて己の肉体と五感を強化したアルフィードは、一迅の鋭さを持って敵の懐に滑り込むと、身を低くして速度をあげたまま、高速の刃を見舞う。
 それに促されるような速さで躍動したウリンも、鋭利な軌跡を僅かに身を捻るだけで避けてみせると、獣の大顎の軌道をアルフィードに向けて一点集中、叩き込もうとする、が。
「でしたら、その大きなお口を縫い留めましょう」
 敵が繰り出す一斉放火よりも先じて、環の身体と黒髪がしなやかに舞うように、動く。
 同時に。環の白い指先からふわり漂っていた蜘蛛の絲が鋭利に煌めき、まるで、醒めぬ恋心でも抱いたかのように、ウリンと大顎の群に狙いを定めると、一心不乱となって宙を駆け、躍動した。
「蜘蛛は獲物を逃しは致しませぬよ」
 ――返し縫い(カエシヌイ)。
 絡め取るように、抱きつくように、あるいは泣きすがるように。それは、攻撃というよりも、優しい抱擁に等しくて。
 あくまで肉体は傷つけず、攻撃と動く意思だけを奪い取ろうとする環の蜘蛛の絲は、魔獣の大顎から貪喰さを根こそぎ奪い、ウリンの動きたいという意思も鈍らせていく。
「……っ、ボクの獣の顎たちがっ!」
「わたくし、縛られるより、食べられるより、縛る方が、食べる方が好みですの」
 ――動きを留めれば、ほら。また、お料理のお時間かしら?
 唇に艶やかな微笑を浮かべた環が僅かに身を引いた刹那、入れ違うように刃を閃かせたアルフィードが、再び肉薄する。
「そうそう、まだお料理の時間は終わってないよ!」
 眼前の敵がオブリビオンでなければ梨を沢山あげるのに……と、思ったのも一瞬。 未だ動きがままならぬウリンの懐に難無く滑り込んだアルフィードは、そのまま刃を一気に横に奔らせる。
 そして、其れは鋭く斬り裂く剣戟へ変貌し、環の蜘蛛の絲と共に、ウリンと獣の群を幾重にも削るようにして、追い詰めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

灰神楽・綾
【不死蝶】
うーん、コンキスタドール言えども腹ペコの女の子を
一方的にいじめるのは気が引けるなぁ
どうせなら万全の状態でお相手願いたいね

というわけで
こんなこともあろうかと、梨を持ってきたよ
ほら、たーんとお食べ
ウリンに梨を投げ渡し食べさせる

UC発動し、生成した大量のナイフを念動力で操り
迫りくる狼に向かって投げつけ迎撃
それでも数はあちらが上
ナイフで対処しきれない攻撃は
両手のDuoで受け止めたり
ジャンプやスライディングで躱そう
それでも喰らえば激痛耐性で堪える
いやぁ可愛い顔してやるじゃないか
やっぱり戦いはこうでなくっちゃね

梓に梨を渡し
ギリギリの戦いをずっと楽しんでいたかったけど
そろそろケリをつけようか


乱獅子・梓
【不死蝶】
見た目や話し方はただのやんちゃ娘のようだが
流石はコンキスタドールのボス
確かな実力者のようだ
だが空腹で弱っている今がチャンスだな

って、おい!なに敵に塩送ってんだ!
これは梨だよってそういう問題じゃない!
ああ、こんなとこであいつの悪い癖が出るとは…
成竜の焔に庇ってもらいながら
綾が満足するまで敵の攻撃を凌ぐ

綾!そろそろ満足したか!
じゃあ次は俺の番だ
綾から梨を1つ貰いウリンにチラつかせる
ほぉら、俺からも梨のお裾分けだぞ
そして梨をあげる……フリをして焔に食わせる
奴は怒って俺や焔を狙ってくるだろうが
その隙を狙って零がブレスを浴びせUC発動
捕縛し敵の動きもUCも封じ込め
焔の渾身のブレス攻撃をお見舞い



●赫く猛る狂刃、滅却の氷炎
「見た目や話し方はただのやんちゃ娘のようだが、流石はコンキスタドールのボス、確かな実力者のようだ」
 ――この好機は、絶対に逃さないようにしよう。
 ウリンは空腹と共に疲労を浮かべ始めたものの、廃棄された蒸気機関で造られた、このガラクタ砦が彼女のホームグランドであり、武器であるのは変わらない。
 戦いは中盤戦。空腹で弱っている今だからこそ、一気に畳み掛けるチャンス!
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は最前線へ飛び出すと同時に、ちらりと合図代わりの視線を相方に送る、けれど。
「うーん、コンキスタドール言えども腹ペコの女の子を、一方的にいじめるのは気が引けるなぁ」
 どうせなら、万全の状態で戦いたい。
 梓とは正反対の想いを抱いていた、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の手には、黄緑色の甘くて瑞々しくて美味しそうな梨が、すっと収まっておりまして。
「ちょっと待て! 綾、それは何だ!」
「こんなこともあろうかと、梨を持ってきてたんだ。ほら、たーんとお食べ」
「これは梨だよってそういう問題じゃない! って――あっ!!」
 時は既に遅し♪
 梓が制止しようとした時には、綾はウリンに向けてポーンと梨を投げ渡しており、ウリンも上手にお口を使って、ぱくんと梨をナイスキャッチ!
「美味しいっ♪ 丁度喉が渇いてたんだよねっ☆」
「って、おい! なに敵に塩送ってんだ!」
 というか、梨を送るタイミングが良くも悪くも……否、一番最悪じゃありませんか?
「いやぁ、一方的に殴るよりも、もう少し血腥い方がいいかなって」
「ああ、そうだった……お前はそういう奴だったな!」
 物凄い勢いで美味しそうに梨を頬張るウリンを背景に、綾は涼しい顔でにっこりと微笑み、梓はこんなところで悪い癖が出るとは……と、空を仰ぎ見る。
 嗚呼、周りをよくよく見ると、味方も揃いも揃って、戦闘狂だらけじゃないですか。ツッコミ&オカン気質がやることは、もう決まってるようなものですね!
「焔、綾が満足するまで、敵の攻撃を凌ぐぞ!」
「キュー」
 何処かヤケっぱち気味の梓に応え、成竜となっても人懐っこさが残る炎竜は短く一鳴きすると、軽い足取りで疾駆する綾を追い掛けるように、力強く羽ばたく。
「さあ、殺し合いを始めようか」
「その言葉☆ そっくりそのまま返してやるよっ♪」
 絡み合う視線。
 一迅の鋭さを持って斬り込んで来た綾目掛けて、ウリンの蹴撃が鋭い弧を描き、轟と空気を振動させる。
 その威力は、軽量級ボクサーの比ではない。
 鍛え抜かれた脚力から放たれた闘気は、幾何学模様を複雑に描きながら無数の狼の姿に変え、綾と梓たちを同時に包囲せんと、疾風の如く襲い掛かる、が。
「いやぁ、可愛い顔してやるじゃないか」
 息継ぐ間もない激しい奔流を前に、しかし綾は相変わらず笑顔のまま……。
 むしろ、唇に笑みすら浮かべて黒と赤の一対の大鎌を構え直すと、属性のオーラを纏った大量のナイフを周囲に展開、素早く念動力で手繰り寄せる。
「ハッ、お前もなかなかやるねっ♪」
「俺のは魔法使いの真似事みたいなものだよ」
 ――その数、475本。
 思考は一瞬。綾は迫り来る狼に狙いを定めると、無数のナイフを一斉に投擲する。
 その1つ1つが意思を持ったように宙を跳び回り、鋭い弧を描きながらウリンと狼たち目掛けて勢いよく降り注ぐ。
「それでも、数はあちらが上なのは、恐れ入るね」
 天と地を埋め尽くす狼と刃がぶつかりあい、激しく火花を散らす。
 その光景は、まるで崇高なる舞踏のよう。
 ナイフを擦り抜けてきた狼の牙を、対を成す両手の大鎌で受け止めて見せた綾は、迫るウリンの動きを見、素早く跳び退く。
「このままだとキリがないな!」
 たたみ掛けるように飛来してくる狼たちを、梓と焔も順番に対処していく。
 眼前の1体を蹴撃で薙ぎ払えば、傍らに迫っていたもう1体を炎で焼き払い、綾の動きをサポートしながら、着実に自分たちの身を護っていて。
「そう? 俺は――」
 頰から滲む痛みも、ウリンの身から弾ける赤も、綾にとって全てが心地良くて。
 乱れ狂う牙と刃、互いの間で爆ぜる赫。もはやそれが、自分のものなのか、相手のものなのかも、判然としてこないけれど……。
「とても楽しいよ」
 綾は紙一重どころか髪一本の距離を辛うじてスライディングで躱し、それでも避けきれない牙は己の耐性で持ち堪えようと腹を括った瞬間、目の前に奔った焔のブレスが即座に撃ち落とし、塵へと変えた。
「綾! そろそろ満足したか!」
 このまま続けられては、庇いながら戦う自分と焔の身が持たなくなる。
 次は俺の番だと梓が力強く最前線に飛び出すと、入れ違いに後方に跳び退いた綾が梓の顔に向けて、ポンと梨を放り投げた。
「ギリギリの戦いをずっと楽しんでいたかったけど、そろそろケリをつけようか」
「ああ、任せろ!」
 然りと梨をキャッチした梓は、綾との戦いでさらに疲労を濃くしたウリンに向けて、梨をチラッチラッとちらつかせる。
「ほぉら、俺からも梨のお裾分けだぞ」
「――! それもボクに寄越すんだよっ☆」
 綾のナイフに斬り刻まれて血を流していたウリンは、飛びつくように梓に肉薄する。
 梓はウリンに梨をあげる――フリをして、焔にシャクッと食わせたああ?!
「「「あああああ、何してるんだよっ!!!」」」
「ん、どうした? 俺はお前にやるなんて、一言も言ってないぞ?」
「「「ボクを騙したなっ! 許さないよっ♪  絶対許さないっ☆」」」
 ウリンの激しい怒りと敵意が、シャリシャリと美味しそうに梨を食べ続ける焔と、しらばっくれる梓に剥けられたのは、誰の目から見ても明らかで。
 けれど、全てが計算通り。
 猪突猛進。怒りに駆られて真っ直ぐ突き進むウリンの背後に突如、大きな影が音もなく静かに落ちる。焔と対を成すもう1体の竜――氷竜の零だ。
「――っ、今度はなんなんだよっ!」
「かかったな! 氷の鎖に囚われろ!」
 梓の合図と共に吐き出された極寒のブレスが、瞬く間に戦場を白銀で覆う。
 絶対零度が過ぎ去ったあと。闘気で形成された狼たちも周囲から消え失せ、零のブレスが直撃したウリンは健在であるものの、氷に自由を奪われてしまう。
 ――チャンス到来。梓がサングラスの奥の双眸を鋭く細めたのは、ほぼ一瞬!
「焔、渾身のブレスを見舞ってやれ!」
「キュー」
 敵の動きが全て止まった、その刹那。
 ウリンの眼前に悠然と降り立った焔が、ほぼ零距離から灼熱のブレスを轟かせる。
「やっぱり戦いはこうでなくっちゃね」
 真鍮色の無機質な地面から嫌でも伝わってくる、熱と衝撃。
 周りの景色も白銀から灼熱に移り変わる中、綾は戦いの熱に駆られるように、再び戦場の赫き風となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

有海・乃々香
※連携・アドリブ歓迎

んーと……おなかすいてるの?
でも、ののか、今はなんにも持ってないし……あ、そうだ!

【空中浮遊】するサメに【騎乗】しながら
善意100%の笑顔で来た方を指差し

あっちの方に、ささがきの練習したごぼうならあるよ!
たくさんあるから、きっとおなかいっぱいになるよ!
え、あまくてシャリシャリの方がいい?
……そっかぁ

敵の動きを見ながら、攻撃を器用に躱し
掴まれそうになったら、他のサメさんに護ってもらい回避

どうしようね、サメさん……こまったね
ののかたち、ごちそうする側じゃなくて、たべる側だもんねぇ
――こんなふうに

隙を突いて、残っているサメたちと突撃
包囲して皆で【捕食】攻撃

ね、たべる側でしょ?


アルファ・オメガ
がうー、甘くてシャリシャリしていてみずみずしい黄緑色のアレ、かぁ
美味しいよねー
お腹空いてきたなー

よし、ゴボー食べ損ねたし早く帰ってナシゴレン食べよう!
キミもナシゴレン好きだよね!?
がう?……ナシ違い?
そうかー相容れないかー
仕方ない、ボクの空腹の前に倒れるがいい!

とにかく何でも掴んで持ち上げるということだけど
熱線はどう掴むのかな?
というわけで、うけてみろー!
【れっど・ふぁいあ・まきしまむ】!
いつも思うけど、これ銃っていうよりバズーカだよね!(反動で後ろに転がりながら

熱線を掴んだらそれはそれですごいんだけど、熱くない?毛燃えない?大丈夫?
同じケモ属性として心配になっちゃうよ

※アドリブ連携OK



●相容れぬ食物連鎖を屠り貫くもの
「んーと……まだおなかすいてるのかな?」
 戦いも終盤に差し掛かった頃。
 激しい火花を散らしながらも、時折猟兵たちがウリンに梨をお裾分けする光景に、有海・乃々香(愛情欠乏症・f26728)は小さく首を傾げ、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)も「ボクもお腹空いたなぁ」と、ポツリと洩らす。
「がうー、甘くてシャリシャリしていてみずみずしい黄緑色のアレ、かぁ、美味しいよねー」
「でも、ののかたち、今はなんにも持ってないし……あ、そうだ!」
 思考は一瞬。
 緑色の瞳をキラキラと輝かせた乃々香は、傍らをふわり浮遊するサメさんに騎乗すると、軽やかにウリンの元へ疾駆する。
「がう、本当にお腹空いてきたなー ……んっ?」
 その小さな背中を視界に留めたアルファの耳に、ふとウリンのモノと思わしき腹の虫が飛び込んできたのは、ほぼ同時。
 ――ぐぎゅるるるううううううううううう。
 他の猟兵たちには些細なノイズかもしれないけれど、ケットシーのアルファにとっては、耳の側で「お腹が空いたよ!」と、叫ばれるようなものでして……。
「よし、ゴボー食べ損ねたし、早く帰ってナシゴレン食べよう!」
 このままでは、自分のお腹も一緒に鳴ってしまいそう……。
 急ぎ、鋭く地面を蹴って駆け出したアルファが敵影を鮮明に捉えると、丁度乃々香がウリンと対峙したところだった。
「お前たちもボクと戦うつもりかなっ♪ 纏めて相手してやるよっ☆」
 肩で荒く呼吸を整えたウリンは、訝しげな眼差しを2人に剥けるものの、乃々香は善意100パーセントの微笑みを浮かべ、自分たちが来た方を嬉々と指差す。
「あっちの方に、ささがきの練習したごぼうならあるよ!」
 沢山あるから、きっとお腹いっぱいになるよっと、乃々香はにっこり微笑む。
 それが、手下たちの末路だと知る術が無いウリンは、あまり興味が無さそうに、イヤイヤと首を横に振った。
「ボクは梨が食べたいんだよっ♪ ゴボウは食べたくないんだよっ☆」
「がう? キミはナシゴレンが好きじゃなかったの!?」
「ゴボウとかナシゴレンじゃなくって、ボクは甘くてシャリシャリして、みずみずしい黄緑色のアレ――梨が食べたいんだよっ☆」
「がう? ……ナシ違い?」
 アルファが焦げ茶色の大きなお目目をパチパチ瞬くと、乃々香も少しだけ困ったように、サメさんの方をちらりと見やる。
「え、あまくてシャリシャリの方がいい? ……そっかぁ」
「がう……そうかー相容れないかー」
 乃々香とアルファが、とっても残念そうなため息を零したのは、ほぼ同時。
 ならば、あとはぼうりょ――否、拳で解決するまで!
 すぐに前を見据えた乃々香がサメさんの速度を上げると、アルファは逆に距離を取るように後方に飛び退き、肩に担いでいたケットシー用の大口径熱線銃を構え直す。
「仕方ない、ボクの空腹の前に倒れるがいい!」
 銃口をウリンに突きつけたアルファは精神を研ぎ澄まして、魔力を高めていく。
 熱線銃の充電が終わるまで、あと10秒。
 銃口から発する熱が戦場の空気をじわりと焦がす中、ウリンは更に半歩踏み込む。
「メガリス「賢人の識腕」よっ☆ ボクに力を貸しておくれっ♪」
 ――瞬間。ウリンの二の腕についていた識腕が、瞬く間に輝きを増していく。
 そして、敢えて挑発するように、アルファの正面で低く腰を落とすと、「さあ、来いっ☆」と宣言するように、唇をニヤリと歪めてみせて。
「何でも掴んで持ち上げるということだけど、熱線はどう掴むのかな?」
 相手がそれを企んでいるのは明白、しかし狙撃のタイミングは今しかない。
 ――ならば、迷うモノは何も無い。
 アルファは己の感覚を研ぎ澄ませるように標準を合わせ、素早くトリガーを引く。
「というわけで、うけてみろー! れっど・ふぁいあ・まきしまむ!!」
 銃口から勢い良く吹き荒れる、激しい衝撃と熱量。
 瞬時に解放されたブーストフレアブラスター弾は、銃弾というよりも対戦車ロケット弾の威力を乗せたまま、ウリン目掛けて轟と空気を振動させる。
「いつも思うけど、これ銃っていうよりバズーカだよね!」
 反動で後方にコロコロと転がっていくアルファを、ウリンは「フンッ♪」と、鼻で嘲笑い受け流すと、先程と変わらぬ態勢のまま、熱線を迎え撃つ。
「今度はボクの番だねっ☆ いっくよおおおおっ♪」
 間近に迫る熱量にウリンは臆することなく、力強く前進する。
 そして。むんずと熱線を掴んでみせると、軸足に体重を乗せて振り抜くように猛スピードで持ち上げ、そのまま勢い良く地面に叩きつけたッ!!
「わわっ、サメさん上に飛んで!」
 真鍮色の地を舐めるように吹き荒れる、暴風にも似た熱量。
 乃々香が警告を発すると同時にサメさんが加速、一気に上昇して衝撃を躱した。
「すごいんだけど、熱くない? 毛燃えない? 大丈夫?」
「フフーン☆ ボクはメガリスのお陰で、へっちゃらだよっ♪」
 後方に跳ばされたのが功を奏して軽傷だったアルファは、同じケモノ属性のよしみもあって、本気の心配の眼差しをウリンに向けていて。
「どうしようね、サメさん……こまったね」
「そうそう☆ ボクのメガリスは、そのサメを掴むことも出来るよっ♪」
 素早く態勢を立て直しながらも、何処か戸惑いに似たものを隠せない乃々香に、ウリンはドヤ顔で大きく胸を張ってみせる。
 けれど、首を横に振って返された言葉は、ウリンが望むモノではなかった。
「ううん、ののかたち、ごちそうする側じゃなくて、たべる側だから」
 ――そう、こんなふうに。
 その刹那。乃々香の周囲を埋め尽くすように顕現したのは、自身の身長の2倍の飛行能力を持つ、サメさんの大群。
 宙一杯にひしめくサメさんたちに乃々香は瞳を細め、元気いっぱいに声を上げた。
「サメさんたちーっ、いっくよー!」
 戦場に弾むように響く明るい声。
 その声に応えるべく、サメさんたちは鋭い弧を描きながら、流れるように宙を旋回。1体1体が意思を持つように鋭く躍動し、ウリン目掛けて口を大きく開いた!
「ハッ♪ さっきの熱線みたいに掴んで振り回してやるっ☆」
 ウリンは再び賢人の識腕を光らせると、素早く距離を詰め、腰を低く落とす。
 そして。乃々香と彼女が騎乗するサメさんを護ろうと割って入った1体の尾を強く掴むと、そのままぶんっと大きく振り回して――!
「がう、大丈夫かな?」
 しかし、アルファの心配は杞憂に終わる。
 宙に残ったサメさんたちの数は無数。その隙を突くように一斉に突撃を仕掛けたサメさんたちは、一迅の鋭さを持ってウリンの四肢に深く喰らい付いたのだ。
「ね、たべる側でしょ?」
 乃々香の作戦は、狙い通りに届く。
 数体なら持ち上げることが出来ても、多数無数を同時に掴んで振り回すような離れ業は、連戦で疲労を重ねていたウリンにとって、容易ではないはず……!
「がう、もう一度! まっくすれべる、しゅーと!!」
 その好機を逃さず、アルファは熱線銃の標準をしっかり合わせる。
 包囲を完了したサメさんたちが一斉に捕食を開始し、それに促されるようにアルファの熱線銃が、再び轟音を吹く。

 ウリンの身体から無数の赤が弾ける。
 一拍置いて。貪喰の拳士は始めて片膝を地面に付けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

村瀬一・鵺宵
僕が梨のタルトやお酒を堪能したことは秘密にしておきましょうか
怒ったり羨ましがられるかもしれませんので

美味しいですよね、梨
食べたい気持ちはよくわかりますが強奪はいけませんよ
それにキミはコンキスタドール、倒すべき存在です
空腹というのは少し可哀想ですが……全力でお相手しましょう

大咆哮の威圧に呑まれないよう落ち着いて対処します
大顎は素早く避けるか、式神『夜揚羽』に防いでもらいましょう
空腹でもなかなかやりますね
どうやらキミを倒すにはこの技を使わないといけないようだ
UCを発動させたら攻撃を避けつつ走り、一気に間合いを詰めて妖刀を振るいます
同時に生命力吸収し空腹感を増やして更なる弱体化を狙えないでしょうか?



●終焉を告げる紅き華
(「僕が梨のタルトやお酒を堪能したことは、秘密にしておきましょうか」)
 辛うじて、猟兵たちの猛攻を振り切ったウリンは、ほぼ満身創痍の状態で……。
 察するに、彼女の腹の虫も、ピークを迎えている頃だろう。
 だが、窮鼠猫を嚙むという諺がある。このタイミングでカミングアウトした場合、更なる怒りを買ってしまう恐れがあるかもしれないと、村瀬一・鵺宵(奇談ヲ求ム者・f30417)は、静かに口元を閉じる。
「うう、梨食べたいよぅ☆」
「美味しいですよね、梨。食べたい気持ちはよくわかりますが、強奪はいけませんよ」
「っ、また新手が来たんだよっ! でも1人なら……今のボクでも勝てるかなっ☆」
 ――さあ、ボクのガラクタたち☆ アイツを跡形もなく食べちゃってっ!
 ウリンが腹底から咆哮を轟かせると、ガラクタたちは瞬時に獣の大顎へ変貌する。
 その勢いは主人がボロボロ状態であっても衰えず、激しい豪雨のように降り注ぐ、が。
「空腹というのは少し可哀想ですが……全力でお相手しましょう」
 次から次へと飛来する敵の威圧。それに呑まれないよう鵺宵は腹の辺りに力を入れると、迫り来る脅威に冷静に対処していく。
 目前に迫る大顎の群を即座に身を翻して躱すと、横手から現れた数体目掛けて、傍らで揺蕩う夜色の揚羽蝶たちが主人を護るように広がり、盾となって強襲を防ぐ。
 それでもなお、大顎たちの猛攻は終わらない。
 其れを全て紙一重で躱し、避けながらも、鵺宵は真っ直ぐウリンを見据えた。
「っ、さっさと倒れて欲しいんだよっ☆」
「キミも、その状態で、なかなかやりますね」
 流影と流血ふたつ。
 ウリンだけではない。鵺宵の衣と茶色の髪にも、僅かながら紅色が滲んでいて。
 好物で心身を満たしたい想いは、奇談や伝承を好む鵺宵にも理解できるものがある。
 けれど、鵺宵は琥珀色の双眸を一瞬だけ細めると、ただ一言、短く告げる。
「ですが、キミはコンキスタドール、倒すべき存在です」
 ほぼ常時空腹状態で猛攻を浴び続けていたウリンは、何時倒れてもおかしくない。
 それでも、猟兵たちに立ちはだかるのは、彼女が手練れの拳士だからだろう……。
 ――ならば、全力を持って相手をするまで。
 鵺宵は腰の一振りにそっと触れると、瞬時に鯉口を切った。
「どうやら、キミを倒すにはこの技を使わないといけないようだ」
 ――妖刀「血喰らい」。血液を糧に力が増すとされる、一振りの刀。
 素早く刀を携えた所作を見るだけでも、鵺宵の腕前は確かであると言えよう。
 しかし、その剣豪を持ってしても、一瞬だけ躊躇する禍々しさが、この刀に在った。
「この技は、あまり使いたくないのですが……致し方ありません」
 視線を前方に見据えたまま、鵺宵は水平に構えた刀を、鈍く手元で閃かせる。
 ウリンが滴らせる鮮血はもちろん、鵺宵の煤竹色の書生服に滲む紅色も貪欲に吸って封印から解放された妖刀は、瞬く間に刀身を紅く染め上げ、剣呑さを帯びて――。
「その紅い色っ、とってもイヤな予感がするんだよっ☆」
 一度態勢を立て直そうとウリンが僅かに身を引いた刹那、鵺宵は迫る大顎の群れを掻い潜るように一気に戦場を駆け抜け、瞬時に間合いを詰める。
 ――そして!
「キミを倒す為、血喰らいの真の姿をお見せしましょう」
 地を舐めるように身を低くして速度をあげた鵺宵は、さらに半歩踏み込むと、すれ違いざまに妖刀を横に奔らせる。
 ――一閃。
 無数の紅華が咲くように弾ける。この身体から。相手の身体からも。
 もはやそれが、自分なのか、相手のものか判然としない中、先に地面に倒れ伏したのは、傷口からなけなしの生命力を根こそぎ奪われた、ウリンだった。
「ああ……お腹、減ったなっ♪」
 ウリンの唇は薄く弧を描いていたけど、その身体は二度と動くことはなく……。
 戦いの剣戟が消え、地面に落ちた賢人の識腕が、カランと乾いた音を立てる。
 辺りに静寂と入江に打ち付ける波の音が戻ってきた時。村の方角からフィナーレを迎えた祭りの楽しげな音色と歓声が、僅かに聞こえてきた。
「収穫祭も、無事に終わりを迎えそうですね」
 キンクテイル島の平和を脅かす、コンキスタドールたちは、もういない。
 祭りの余韻を耳にしながら、鵺宵と猟兵たちは、静かにケットシーたちの楽園を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月14日
宿敵 『獣拳士ウリン』 を撃破!


挿絵イラスト