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爆発的な結末を!

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #スパヰ甲冑

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#サクラミラージュ
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#幻朧戦線
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#スパヰ甲冑


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 帝都の郊外、広々と開放的な平地に、一軒の豪邸がある。
 屋敷の主人は、帝都でも有数の財閥を率いる女性である[卯月・アソギ]。文化の保護者としての顔も持つ彼女は、日々様々な催事を計画、実行し続けている。
 今日の出来事もその一つ。別荘を開放して、人気のアーティストや最新技術を披露するパーティーが行われるのだ。
 来る人皆が、思い思いの期待に胸を膨らませ、或いは心中に政治的な計略を忍ばせる中。
「さあ、契約を果たそう——」
 ここに一人、変わった望みを持って屋敷を訪れる者がいる。大きな組織に裏付けられ、悪意ある行動を起こすべく現れた侵入者。
 帝都の人はそれを、スパイと呼ぶ。

「お集まり頂き、ありがとうございまーす!」
 一年中美しく桜が咲き誇る庭で、屋外の立食パーティーが催されている。司会を任された奇術師の少女は来客を楽しませつつ、食事の用意をするスタッフ達に命令する。
「あーすみませんそこの女給さん! 丙テェブルのチキンが無くなりそうだとキッチンに伝えておいてください!」
「あ、えっと、へ、丙テェブルですね? 分かりました!」
「えぇ、大皿に山盛りで! たくさん持ってきちゃってください」

「帝都の誇る、素晴らしき文化の未来に」
 各界の重要人物が集う会議室で、乾杯が行われる。屋敷の主人たる黒いドレスの女性は、談笑と商談がない混ぜになった空間を悠々と歩き、部屋中の人間に目を配る。
「おや……高橋様、グラスが空ですよ。お注ぎしましょう」
「あ、いや、貴方の手を煩わせることは……」
「遠慮は無用ですわ。今日は祝いの場ですもの、ね?」

「エンジン点火に耐えられる機構を作んだよ! 超速度の特攻(ブッコミ)こそ漢の浪漫、実現して見せるのが俺ら科学者だ!」
 地下に設けられた研究所で、白衣の男性が檄を飛ばす。様々な製品や技術の開発が日夜行われているこの場所は、帝都で最も先進的、かつ危険な場所の一つだ。
「ん……おい! そっちのドアの先は一般研究員(パンピィ)の管轄じゃねえぞ! テメェどこ大だ、どの教授(ヘッド)の舎弟だ? 連れてってやるよ」
「……ああ、ありがとうございます! 松本先生の助手なのですが、迷ってしまって……」
「松本の爺さんか! じゃこっちだ。きっちり道覚えろよ? こんなとこで迷子になった奴は不幸(ハァドラック)と踊(ダンス)ることに——」

「……それでは、計画には遅れが出る、と?」
 屋敷のとある場所で、一人の人間が何者かと通信していた。人気のない空間に、くぐもった声が怪しく響く。
「まあ、問題ない。過程はどうあれ地下にさえ入れば目的の殆どは達成されるし、今回は……」
 右手に握ったスイッチに目を落とし、
「バレても問題ないよう、ちょっとした仕掛けをしてある。爆発的な、ね」
 静かに笑い声を響かせるのだった。

「サクラミラージュで事案が発生です。しかも、あの『幻朧戦線』絡み」
 長く語っている暇はないとばかりに、グリモア猟兵は最初から要点に切り込んだ。
 『幻朧戦線』と言えば、サクラミラージュにて活発に活動している組織の一つであり、猟兵たちからは最も警戒すべき対象と認識されている。彼らの活動目的は概ね一つに集約できる……『大正の世の終わり、それによる人類の進化』。そのためにはオブリビオン、影朧の力を使うことも厭わないのが幻朧戦線なのだ。
「とある文化保護財団が、所有する別荘でパーティーを開くことになっています。集められているのは、主に帝都以外の国の偉い人たちですね。この会場にスパイが紛れ込む、という予知がありました……」
 サクラミラージュは帝国の元に統一された世界だが、あらゆる国が無くなったわけではない。安定した統治を維持するため、政治家や企業家たちは今も、国際関係の調整に苦心しているのだ。
 その日常の水面下では、苛烈な情報戦が日々繰り広げられている。とはいえそれは政治活動の範疇であり、猟兵が介入するような事態ではない。しかし。
「どうやら、そのスパイは。本国がそれを知っているかどうかは不明ですが、『幻朧戦線』との繋がりを持っているようです」
 ……そうなると話は別だ。複雑な国際関係が、骸の海からの客人を招いてしまったのなら、それに対応するのは君たちの仕事。
 とはいえ猟兵が関与すべきは幻朧戦線に関連する事柄のみ、スパイを送り込んできた国との外交関係は帝都の人間が政治的に対処することになっている。
「ということなので、皆さんの仕事はスパイを見つけ出し、そこから幻朧戦線との繋がりを見つけ、やっつける。この三つとなります。詳しいことは向うの御屋敷で、財団のリーダーさんから聞いてください!」
 最後に學徒流の方法で君たちの幸運を祈願すると、グリモア猟兵は転移の術式を開始するのであった。


眠る世界史教師
 毎度お疲れ様です、眠る世界史教師・ザ・ボンバーです。ラッキーカラーが赤色だったら、それを理由に赤色を切るタイプです。
 やんごとなき人たちのパーティー、潜り込んだスパイ、そして地下に眠る兵器。あつらえ向きに活劇的な冒険をお送りします。
 一章ではパーティーの関係者として振舞いながら、スパイ、並びにその協力者を見つけ出していただきます。断章にて情報を提供しますので、それに基づいて『怪しい人物を見つけ、見事その正体を暴いた——』というプレイングを送ってください。
 二章ではスパイの親玉がしかけたとある仕掛けを解除していただきます。詳しい内容は言えませんが……時限式で……凄い威力の……高温と衝撃を撒き散らす……とある物体を、五種類ほど用意しましたので、それぞれ得意な領域を活かして頑張って、その、解体してください。
 三章は『スパヰ甲冑』とやらに身を包んだスパイとのボス戦になります。全力で戦いましょう。戦場の近くに偶然超高威力の巨大爆弾が鎮座している、なんて状況になったら別ですがね。
 それでは、プレイングお待ちしております。
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第1章 日常 『貴き時間』

POW   :    とにかく楽しんでいるという事を最大限にアピールしよう

SPD   :    話術で場の空気を掴むのは任せてほしい

WIZ   :    礼儀作法の見本を見せてあげようじゃないか

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「向こうであらかた話は聞いてると思うが、うちのパーティーに鼠が潜り込んでるらしい」
 私室に君達を集めた資産家の女性、卯月アソギ。彼女は銀色に輝くナイフを研ぎながら、顔を上げずに話し始める。
「まあ、こちとら商売人だ。情報が命の産業で、スパイの一人や二人覚悟してるさ」
 私だってやってるしな、と何でもないことのように呟くと、暫くの間黙って、研いでいたナイフを灯りに翳して輝かせる。
 するとその気怠げそうだった瞳に、刃のような鋭い輝きが映った。
「だがまあ、『幻朧戦線』となると話は別だ……これはアンタらの領域、そうだろ」
 そう言うと、机の引き出しから一枚の写真を取り出してくる。
 何かの地下室を写した物のようで、背景は全て灰色のコンクリートだ。しかし何よりも目を引くのは、中央に鎮座する巨大な円筒型の物体。
 周囲に何人かの人間が居るのと比較するに、海と島の世界に住まう巨人と同じくらいか、それ以上の大きさがありそうだ、と君達は思う。それを確認すると、女性は写真をしまい直して再び話し始めた。
「ここの地下で作ってる巨大爆弾、通称"大老"。新型の液体火薬を贅沢に詰め込んでる。帝都の中心で爆発したら、世界で一番大きな幻朧桜だって危ないかもな」
 にこりともせずに告げる。
「ぶっちゃけ、今回の目玉商品はこれだ。色んな国のお偉いさん呼んで、帝都の技術力を存分に楽しんでいただく。対価は私らと向こうさん、両方が笑顔で手を取り合って歩む未来、ってとこだ」
 この爆弾自体は大きすぎて何の実用性もない置物だが、それはそれで利用価値がある、という。つまり、示威行為。戦争は何も、互いに銃火を交わし合うことだけを指すわけではない。
「で、奴さんの目的は爆弾の技術だろうさ。小型化すれば何とか使えないこともない。……この時代を終わらせる、とかいう、クソッタレな目的のためにな」
 声に滲んだ怒りを抑えるように、女性は二本目の刃物を研ぎ始め、そしてそのまま、君達にやるべきことを伝えてくる。
 潜り込んでいるスパイとその協力者を、一網打尽にしてくれ。彼女の要求はシンプルだった。
「一階と庭では、芸能人や来賓の家族をもてなす宴会をやってる。人目が多いから、事前にこちらの方に潜り込むのは困難だろうが……余地があるとすれば【雇われのスタッフか、余興の音楽家や芸人】だろうな。私の娘の[ナユタ]がもてなしをしながらその辺の人事も管理してるから、何かあんなら遠慮なく使ってくれ」
「二階では色んなとこの社長や政治家集めて、もうすぐ大人の話し合いがある予定だな。ここに関してはそこらの【立場の高い来賓】に鼠が紛れてる可能性が高い。案外な。こういう手合いは身体検査が入らないから、【変装は簡単】なんだわ。客について聞きたいことがあったら私に言え」
「そんで、地下には財団の総合研究所がある。その一室に例の"大老"がある訳だな。奴らの最終目標だ。"大老"の部屋に繋がる門には警備員が常駐してる。長年雇ってる、【絶対信用のおける】人間だ。問題は【末端研究員】の方だな……どうやって部屋に入るつもりかは知らんが。研究員に関しては私の側近の[皐月・コウガ]って男が総括してる。こいつは一応"大老"の開発責任者でもあるな」
 屋敷の見取り図を示しながら、一つずつ説明が行われる。
「つー訳で、あんたらは向こうにバレないように気を付けて、鼠の正体を探ってくれや。そうだな、イベントのスタッフや警備員、或いは来賓に化けるってのも手だな。こちらからも最大限協力するから……」
 彼女は眩いばかりに輝き始めたナイフを灯に翳し、
「必ず、仕留めてくれや」
 壁に貼り付けられた世界地図に向かって投擲。
 帝都のある場所に、白刃が突き立った。
ティファーナ・テイル
「砂漠や太陽の国でのおもてなしを披露するね♪」
と国や文化は違えど舞人踊りで空気を和ませて気になる話などを聞きながら猟兵にも聴いて貰います。旅芸人などを演じてスパイが近付いても気付かないフリをして踊り話し笑顔を振り撒き『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回りながら『ゴッド・クリエイション』で王室執事(バトラー)を創造して踊り子と執事でパーティー関係者や協力者を見付けて、話しや会話をしながらスパイを見付けたら「え?!ウソ…」と人混みや外れへと移動して『ゴッド・クリエイション』で名探偵を創造し直して一緒にスパイをビシィ!と指さして「キミを看過したよ!」と言い切ります♪
逃げ様としても髪の毛で捉えます



「Hola!Buenas tardes. Cómo está!」
 華やかなりしパーティー会場に、絢爛なシャンデリアにも劣らぬほど明るく輝く声が響く。
 声の主、会場の中心に位置するステージに上がった少女は、国際色豊かな帝都にあっても目を惹く容姿を持っていた。巨大な翼に蛇を思わせる身体、そしてそれ自体が衣装のように長くたなびく金色の髪。会場中の視線が彼女に集中する。
「ボクは砂漠から来た旅の踊り子……太陽の国のおもてなしを披露するねっ♪」
 会場中から新たな催しを歓迎する拍手が響く。いつの間にやら現れていた楽団が、打楽器やギターを中心としたリズミカルな音色を奏で始める。
 三拍の手拍子の後……少女は天を舞った。
 会場の拍手が鳴り止んだのは、彼らの興が醒めたのではなく驚きのためであった。ステージを文字通り飛び出した踊り子が、ライトアップされた空を踏み鳴らしてステップを刻む。一度それを見た人は、もはや二度とは目が離せなくなってしまうほどの舞踏。
 少女は会場を縦横無尽に飛び回る。一見本能のままに動いているようにも見えるそれは、自分の美しさを自覚している人間が、それを最大限引き出すための洗練された動きであった。
 彼女の演目は、多くの贅を尽くしてきた重客たちにとっても忘れられない一時となり──

 会場の隅でその姿に見惚れていた一人のスタッフにとっても、忘れられないものとなる。
 彼は焦っていた。突如として始まったパフォーマンスに釘付けになってしまい、果たすべき『仕事』を忘れてしまっていたのだ。今すぐに会場を出て行きたいが、そのせいで機を逸してしまった。
「──どうされました、そこのお方」
「いっ!?」
 声を掛けられれば、文字通り飛び上がって驚く。振り向いた先にいたのは、いでたちは従者のものでありながら高貴さを感じさせる振る舞いの老人であった。
 只のスタッフではない……この屋敷に長年仕えている人間かもしれない。
「いや、えっと……ちょっと、ここから出なきゃいけない用事があるんですが、仕事が忙しくて……」
「そうでしたか」
 老人は目を細め、人の好い笑みを浮かべる。その姿を見て、青年は少し安心した。目の前の老人は、少なくとも自分に嫌疑をかけているわけではないようだ。老執事はさらに彼にとって嬉しい言葉を続ける。
「では、役分は不詳この私目が代わらせていただきます。貴方は急いで御用事にお向かいなさい」
「ほ、本当ですか!」
 老人は微笑んだまま頷く。彼は謝辞を述べた後、周りの客にぶつからんばかりの速度で会場の外へと駆け出した。
 親切な老人、そして先ほどまで見惚れていた踊り子がどのように自分を見ていたかなどには、気付く由も無かった。

 会場から少し離れた灯の下に走る。向かう先には一人の背の高い男がいた。きっと彼が自分の『取引相手』だと思ったスタッフは、懐から一枚の封筒を取り出す。
 息を切らせるスタッフに、男が話しかけた。
「遅いですよ。待ちくたびれました」
「す、すみません……少し、立て込んで……」
 謝罪しながら、男に封筒を渡す。
「ふむ……これが」
「そうだ、約束のものだ……なあ、コレでいいんだろ!? さあ、早く報酬を──」
「屋敷の地下の見取り図に、何かのタイムテーブル……成程ね、そういうことか」
「そういうことか? おい、それってどういう……」
 スタッフは不信を感じ、目の前の男を問い詰める。
「いや、君が知る必要はないよ」
 男はこともなげに言うと、身体を半歩横にずらして見せる。その先には、縄で全身を縛られた別の男がいた!
 スタッフ……否、協力者は全てを察した。あの男こそ真の『取引相手』だと。そうなれば今自分が話しているのは……
「ち、畜生!」
 彼は悪態をつくと、踵を返して逃げ出そうとする。しかし、その両足を何かが絡め捕った。
 為すすべもなく大きな音を立てて転倒した彼は、涙目で飢えを見上げ、自分を捉えた人間の姿を確かめようとする。
 そこにいたのは……

「よし! キミの正体は看過したよ、スパイめ!」
「……恐れながらお嬢様。看過ではなく看破、では!」
「どっちでもいいの! さ、ボクはもう一曲踊って来るから、引き続きお願いね!」
 輝かしい舞台にも、必ず影がある。
 しかしそれを悟られないのが、真の演出者なのだ──

大成功 🔵​🔵​🔵​

エゼルミア・トリストラム
うん、この世界の料理も中々美味しいね(もぐもぐ)。ん、あの展示品は最新技術ってやつかな?ふむふむ…へー…
…おっといけない。スパイを探さないとだったね。UCを発動して猿をこっそり会場に放つよ
身体検査を受けてない来賓がいるみたいだから、2階の客の懐に猿を忍び込ませ、怪しい物品がないか調べるよ。怪しいものがあれば転移能力で奪ってしまおう。上手くいけば慌てて尻尾を出すかもしれないからね

ん、猿達がうまくやったみたいだ。後は警備の人に任せよう。
…え、芸をやれって?雇われ芸人と間違われたかな。じゃあ猿の転移能力を使って手品をしてみせよう。ものが消えたり現れたりする手品さ。ふふ、大道芸で路銀を稼ぐのは得意だよ



「へええ、これが帝都名物の桜あんみつか。どれどれ……」
 企業や政治界の重鎮ばかりが集まる、選ばれた人間しか立ち入れない宴会場。そんな場所を我が物顔に歩き回り、女給が配っている料理をつまんで行く女性がいる。
 エゼルミア・トリストラム。別の世界の長命種の血を引き、その見た目からは想像もできない程の年月を生きてきた魔法使いだ。そうは言っても、ここにそれを知っている人間は殆ど居ない。
「あちらの展示品は、この世界の最新技術が使われているようだね? 成程、面白い機構をしている……」
 今度は壁際に置かれた電飾に目を止め、しげしげと観察する。傍に控える技術者が、対応を決めかねて困り顔を浮かべている。
 格好も振る舞いも、立場から来る重責とは無縁。あらゆる面で周りから浮いている彼女は、結果として周囲の好機の目線を一身に浴びていた。
(……おい、猟兵)
 そんな彼女に話しかけてくる人間は、事情を知っている依頼人くらいのものだ。黒いドレスに身を包んだ企業人は、明後日の方向を見据えていたが、小さな声は明らかにトリストラムに向けられていた。
(テメエ、観光に来たんじゃないだろうな!? さっきから食うか見るかしかしてねえじゃねえか!)
『勿論、仕事は果たしているとも』
 返答は相手の意識に直接届ける。彼女にとってこの程度の魔術は児戯に等しい。
『予期していない物は往々にして見えにくい。そして原理を知らない物はよりいっそう認識しづらい。この科学の都にあっては、魔術というのはそういうものだよ。つまり何が言いたいかというと、見えないように見えて仕事はしているから安心しろってこと』
(ってもよお……)
「ミセス!」
 依頼人が言うよりも早く、聞こえない会話に割り込んでくる声があった。白い髭を蓄えた大柄な紳士であった。黒いドレスの女性は彼を見ると、グラスを置いて恭しく一礼する。
「これはミスターハービンジャー。お会いできて喜ばしく思いますわ。どのようなご用事でしょう?」
「いえ、少し気になりましてな。そこのミステリアスな彼女は、一体どなたなのか」
 彼が指したのは、トリストラムであった。彼女は壁際の装置から目を離す。企業家が頬に冷汗を流しつつ、外国の重鎮に答える。
「彼女は……私が雇った者です。ちょっとした余興をお見せしようかと」
「おお、パフォーマーですか!」
 言いながら、黒いドレスの女性は横目で魔術師を見る。その台詞には、半分はこの場を凌ぐため、もう半分は『お前ならこれくらい何とかできるんだよな?』という無言の圧力が込められているようだった。
 水を向けられたトリストラムは依頼人に倣って礼をしつつ、彼女の芝居に乗ることにした。
「初めまして、ハービンジャー君。私はエゼルミア・トリストラム、流れの手品師だよ」
 VIPに向かってのものとは思えない物言いに依頼人の顔は青くなったが、当の本人は愉快そうに笑っていた。彼女も、彼がそういう人物だと分析した上で口調を選んでみせたのだ。
「それでは、亜tだ今から手品をお目に掛けよう。名刺を借りても?」
 ハービンジャーから名刺を受け取った彼女は、持っていた木のロッドでその表面を三回軽く叩く。そして一度大きく振って見せると──
「この通り、ダイヤのトランプへと早変わり。豊かで幸福な人生を象徴するスートだ……差し上げよう」
 彼女の手に握られていたのは、名刺とちょうど同じサイズの一枚のトランプカードだった。
 いかにも何か種や仕掛けがありそうな、しかし見破れない上等な手品。富豪の男性は満足そうに笑い、周囲の観衆からも感嘆の声が漏れる。
 ……実際のところ、それは"手品"などではない。
『例えば部屋中を見えない猿が走り回っていたとしたら、私は猿から品物を受け取るだけでいい。そうだろ?』
 "例え"と言いながら、彼女の言葉は一片の曇りも無き真実だったのだ。
(……お前、それどこから持ってきた?)
『中庭から』
 同時刻、中庭で奇術を披露しようとしていたとある少女は悲鳴を上げていた。
 続けてトリストラムは壁に掛けられていた装飾用の剣を手に取り、大袈裟に掲げる。
「古来から、剣は偽りを断ち真実を白日に晒す力の象徴だった」
 彼女は適当な紙を折り畳んで箱と為し、それを机の上に置いて剣を振り下ろす。
 何かが入って居ようはずがない紙の箱が両断されると、その中には一枚の封筒が入っていた。観客からは歓声が上がる。魔術師は礼で応える。
(……お前、その封筒)
『見えるかな? 今慌てて会場を出た彼』
 彼女の返答はシンプルだった。主催者が何か合図をすると、二人組の警備員が即座に会場を飛び出す。
『言ったろ? 仕事はしてる、って』
 その後も彼女の"手品"は続いた。観客の目を釘付け、一身に注目を浴び。その裏にある種と仕掛けは、決して白日に晒すことなく──

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルル・マーナガルム
よーし
今回はボクが囮役ね
こー言う余興っての
一度自分でやってみたかったんだー
ハティの子機を8匹借りてドッグパフォーマンス
色んな中型犬のホログラムを纏った彼らとボクの華麗なドッグアクトをご覧あれ!
『ウルル、任務をお忘れなく』
ハティと残りの子機は姿を消して情報収集
お客さん達のバイタルデータから
会話内容、視線の動き、行動パターンまで
片っ端から全部拾って解析
狙撃補助用の予測機能をフル活用だ
探すのは
まるで何か行動を起こす瞬間って感じの不自然な変化
『体温上昇、心拍数増大、随分緊張なさっているご様子で』
逃げたって無駄無駄
ホログラムで隠してたライフルで
群衆の隙間を縫ってスパイを狙撃
会場で走り回ったら怒られるよ?



 会議に出席する重鎮の子供や親類が集められた中庭。あちこちで様々な催しや食事が振舞われている中で、特に多くの人目を惹きつけている一角があった。
「ハイ、整列! 回れ右……敬礼!」
 見慣れない格好をした少女の号令に合わせて、品種も体の大きさも様々な犬たちが一糸乱れぬ動きを見せる。その様はよく訓練された猟犬の域を超え、一つの軍隊のようであった。
 命令を聞くだけではない。自分の身長の何倍もの高さに掲げられた輪に飛び込んだり、放られた円盤を三枚纏めて咥えてみせたり。その運動能力に関しても目を見張るものがある。
 指示を出している少女も並大抵ではない。犬たちに命令を出し、道具を準備しつつ、観客を煽る事も忘れない。しかもその方法というのも、天真爛漫な立ち振る舞いからは想像できないが、この場に相応しい気品をどこかに感じさせるものであった。
 総じて、それは素晴らしいドッグアクトだったのだ。観客は皆その技術に圧倒され、感情を高ぶらせ、次の演目を今か今かと待つ……それが、普通の反応。
 しかし、中庭にいた人間のうち数人は、その空間に言いようのない不安を感じていた。愛嬌あふれる少女と犬が繰り広げる技術の展覧、その統率が次の瞬間、自分に対して一斉に牙を剝くのではないか、という不安だ。他人からしてみれば、過敏になっているとしか思えない。実際彼らは過敏であった。そうならざるを得ない事情があった。何も起こっていない平和な空間で追い詰められた精神は、存在するはずもない犬が自分のすぐ傍でうなっているかのような錯覚までも生んだ。
 やがて──一人が、その感情に耐えきれずに駆けだす。四角く区切られた会場の外へ。人間が、まるで鬱蒼とした森の木のように密集した重苦しさから抜け出そうと。しかし、彼は転んでしまった。
 そして、起き上がることは出来なくなっていた。体が重い。神経だけが経ち切れたかのように、脳と肉体の働きが一致しないのだ。
 薄れゆく意識の中、彼は猟犬の唸り声を聞いた。

『──新たに一人。西側区画の乙テーブルの男性です』
『オッケー、ハティ!』
 この屋敷、この中庭は、サクラミラージュの中でも最先端の技術が集積している場所の一つだ。観客たちも、そういった奇想天外な科学には目が肥えている。
 しかし、そこで繰り広げられていたのは、文字通り別世界の話。世界観の交流が活発になった現在でも、まるで生きている犬のように動く絡繰、そしてそれに生きている犬の外見を与える塗装にまでは想像が及ばないのだ。
 ウルル・マーナガルムとその相棒兼お目付け役であるハティの取った作戦はシンプル。片方が衆目を惹き付け、もう片方が姿を隠してスパイを探る。見た目をどれだけ取り繕おうと、感情を数値化する技術をもってすればその見分けは容易いことだ。
『標的が動きました』
「はいここまで……大ジャンプ! よく出来ましたー!!」
『……ウルル』
 ドッグアクトに夢中になっている主人を、機械の従者が窘める。彼女は以前より、こういった余興に憧れがあった。
『大丈夫だって』
 通信機に託した返答は短く、力強い。視界に共有された映像から得物の動きを把握し、最適なタイミングを待つ。
「それでは、拍手! 右手で大きく──」
 彼女自身が集めた、黒山の人だかり。隠れて物事を進めるのに衆目環境は向かないように思われるが、少なくとも彼女……彼女とその相棒にとってはそうではない。
 周囲から万雷の拍手が沸き上がると同時に、右手を大きく掲げる。その手に握られているのは、この場には余りにも不似合いな銃器。しかし観客がそれに目を向けることは無い。そこには"何も無い"のだから。
「礼!」
 影も、形も、音も無い弾丸。目を輝かせる子供と菓子を頬張る婦人の間を抜けて、今まさに会場を去ろうとしていた何者かに突き刺さる。直ぐに麻酔作用が働き、彼は一見何かにつまずいたかのように倒れこんだ。
 この程度の障害物は、彼女たちにとっては障害にはなり得ない。石畳と電灯で装飾された中庭は、今や一方的な狩場に変貌していた。
『やったー! 今の見てた、見てた?!』
『……見ていましたよ』
 誰にも気付かれない喜びは、ただ彼女の従者だけが知るところであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『矢弾が降ろうと槍が降ろうと』

POW   :    罠を力ずくで破壊する、わざと罠にかかって仲間を守る

SPD   :    紙一重で発動した罠を回避する、器用に罠を解除する

WIZ   :    罠の配置を予測し、罠のありそうな場所を避けて進む

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……あらかた片付いたか?」
 会議が一段落し、少しだけ落ち着いた屋敷。パーティーの主催者は屋敷の見取り図と向き合って、呟いた。
 様々な場所に潜んでいたスパイの協力者は、次々と確保されている。事態の収束は目前に見えた。
「いやあ、流石猟兵さん……これで何とかなるよね、お母さん!」
「……どうだろうな」
 奇術師の少女はその報告に飛び跳ねて喜んでいるが、アソギは深刻な表情のままだ。
 協力者は確保されたが、肝心の大元であるスパイへの手がかりは未だ見つからないままだ。相手の正体や目的は、謎に包まれたまま。それを明らかにするまで、この事件は終わらない。
 そして彼女には確信があった。これだけの協力者を事前に発見され、計画を阻止した今、相手は事態を動かすために必ず行動を起こす。
 果たして、部屋の重厚な扉が乱暴に開かれ、一人の男が転がり込んでくる。
「アソギの姉御! ヤベえ緊急事態だ! 研究室に爆弾が仕掛けられた!」
「ば、爆弾!?」
 それに続くようにして、屋敷のあちこちから報告が上がってくる。その内容は全て、爆弾に関するもの。
 柱時計の中に……爆弾!
 遊戯室に置かれたスロットが……爆弾!
 来賓客の老紳士が……爆弾!
 メイドさんが運んできた大量のローストチキンが……爆弾!
 そのメイドさんすら爆弾!
「ひええっ」
 上がってきた報告の数々に、ナユタが顔を真っ青にする。各界の重要人物が集められたこの屋敷は、たった今から殺戮兵器が溢れる死の鉄檻と化したのだ。
「ひひひ、避難誘導!?」
「落ち着け、どうせ門にも爆弾だ。それよか解除した方が早いだろうな」
 対するアソギは落ち着き払ってそう言うと、猟兵たちへの連絡を始める。
「屋敷の各所に爆弾が仕掛けられている。ある程度はうちの技術班や學徒が対応するだろうが、そちらにも協力を頼みたい——」

●楽シイ爆弾目録
壱.赤か青、もしくはそれ以上のコードの中から正しい一本を切らないとドカン! 時限爆弾『ワンミニッツ』
弐.チャンスは一度きり、大当たりを出さないとドカン! 天運爆弾『ジャックポット』
参.大勢の来賓の中から頭に爆弾が埋め込まれたロボットを当てないとドカン! 人型爆弾『ボムガ博士』
肆.山盛りのご馳走を食べつくし、偽物を探し出さないとドカン! 飽食爆弾『チキンレェス』
伍.機嫌を損ねないように会話をして仲良くならないとドカン! 恋愛爆弾『メイドの藤月さん』
エゼルミア・トリストラム
爆弾がたくさん…それは大変だ。私もできる事を手伝うよ
それじゃあ私は人型爆弾を探そう

UCの魔力を自身に発動し、会場の物品を愉快な仲間たちに変身させるよ
「爆弾魔(ボマー)には気をつけな」と肩ポンしてくるお皿
「平穏な生活を願うだけなのに…」とボヤく花瓶
「一緒に爆弾探して友達に噂されると恥ずかしいし」とか言ってる肖像画…etc、etc
(好き勝手行動する愉快な仲間たちに対し)…おーい、ちょっと、話を聞いてくれよ。でないと君たちも爆破で吹き飛んでしまうよ?
いいかい、君たちは会場にずっと置いてあった物だ。だから来賓の顔は分かるだろうし、既に怪しい人物を見てるかもしれない。さあ、皆で手分けして人型爆弾を探そう



『──つーわけだ、こっちでは対処できない爆弾の解体を頼む』
「爆弾とは……相手も奇抜な手を使ってきたね」
 トリストラムは依頼主との通信を終えると、自分のいる来賓室を見渡した。ここに仕掛けられているのは、見た目は来賓客そっくりに似せられた人造人間に隠された爆弾。万一爆発したら最も被害の大きい場所で、何としても解体しなければならない。
 各界のVIP達は大騒ぎで避難させるよう要求しているが、来賓客の中に爆弾が紛れている以上彼らを部屋から出すわけにはいかなかった。結果として部屋の中では、あちこちで来賓客と警備員、學徒兵との間で口論となっていた。
「この際、多少変わったことが起きても酷い騒ぎにはならないだろう」
 誰も注目されていない部屋の隅で壁にもたれながら、彼女は紫色の息を吐く。
 必要なのは、会議の間ずっとこの来賓室にいた人物の助け。主催者の力を借りれば客を一人一人確認することは出来るかもしれないが、それでは時間が足りない。そもそも彼女は今事態の収拾で手いっぱいだ。彼女自身も来賓の顔をすべて一致させてはいない。率直に言って、条件に当てはまる人間は存在しなかった。
「ならば、人間以外から聞き出すとしようか」
 彼女が指を振ると、そこから微弱な魔力が発せられる。
 紫色の残響を纏った魔力は部屋中に散らばると、壁に飾られた絵画や高級な花瓶、観賞用の皿などに当たって弾ける。と思うと、それらは見えない糸に操られているかのように浮かび上がった。
「君たちー、協力して欲しいんだ。部屋の来賓客に紛れた爆弾を探してくれ」
『爆弾魔(ボマー)がまた出たらしいな……』
『やれやれ……私はただ、花の心のような生活が送りたいだけなのだが』
『一緒に爆弾探して、友達に噂とかされると恥ずかしいし……』
 この術式は無機物に対して意志を与えるものだ。しかし命令を聞かせられるわけではなく、愉快な仲間となった調度品たちはやけに恐ろしい台詞を吐きながらふらふらと飛び回る。
「おーい、ちょっと、話を聞いてくれよ……君たちも吹き飛んでしまうよ?」
 彼女が少しだけ声を張ると、彼らの動きがぴたりと止まる。
「いいかい、君たちは会場にずっと置いてあった。少なくとも会議が始まる前から、そうだね? つまり来賓客の顔を見てるってことだ」
『ニッキー、ハービンジャー、カッスール……このパーティーの“来賓”だった連中……』
『勿論知ってるわ。私達幼馴染だもの』
「それは重畳……やってくれるかい?」
『この私に、今まで乗り越えられなかったトラブルなど……一度だって無い!』
 彼らは客の喧噪に紛れるようにして元の場所まで戻り、再び調度品としての役目を果たし始める。
 彼女自身もまた、鍔の広い帽子の奥から油断のない視線を部屋中に向けていた。
『やはり納得いかない……この来賓記憶に合わないな……!』
『永遠に誰にも自分の本性を隠したまま生きることなど出来ない』
『あっ、良く参加できたわね。この人が居なければもっと楽しかったのに……』
(ふむ……順調のように見える)
 調度品によって本性の暴かれた爆弾を、秘密裏に警備員に伝達して様子を伺いつつ、彼女はもう一つ紫色の息を吐いた。
(しかし、相手の目的は地下の爆弾の筈……つまり、この爆弾騒ぎすら陽動に過ぎない訳だ)
 会場の爆弾を解体し終えたら、聞かなければならないだろう。最初に爆弾の報告を持ってきた地下室の統括者、彼に爆弾の情報を伝えた人間について。
 来るべき決戦の気配は、まるでカウントダウンが進む爆弾のよう。トリストラムはパイプから昇る煙を眺めながら、そんなことを思ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルル・マーナガルム
『ウルル、爆発物処理の訓練を覚えていますか?』
覚えてるって
凍結保存して遠くに運んで爆発させるヤツでしょ?
『……現状では不適切な方法です』

こー言うのは思い切りが大事
弍のスロット爆弾にチャレンジするよ
要は目押しで揃えちゃえばいいんでしょ?
ガシャンとレバーを倒して
スロット回転スタート
スナイパーは動体視力とか瞬発力だって高水準
一発で揃えるくらい余裕だもんね
『念のため絵柄のパターンをスキャンしてから、』
ここだ!(スロットを止めるボタンを一気に押す)
素早い目標を狙って撃つなんていつもの事だもん
これくらい簡単簡単

(ハティはウルルが話を聞かずに行動する事も想定済み。最悪の場合に備えてシールドを準備している)



「こうやってリールが回転するスロットって、初めて見たかも」
『最近は電子化が進んでいますからね』
 先程までは大勢の客で賑わっていたが、今は数人の関係者を残して誰も居なくなってしまった遊戯室。
 蓄音機から流れる軽快な音色と派手な電飾が虚しく空回りしているこの場所で、少女は一台のスロットマシンの前に腰かけていた。機械は五列にわたって、様々な絵柄を延々と回転させ続けている。
「……でさあウルル、ボクいつまで待ってれば良いの? もう五分くらい、ずーっと回ってるのを見てるだけなんだけど」
『絵柄のパターンとそれぞれのリールの回転スピードを把握し、最適なタイミングを計算するためです』
 どれほどの規模の爆弾かは分からないが、ここが各国の要人が集められた場所である以上その対応には慎重に慎重を重ねなければならない。

『ウルル、爆発物処理訓練の内容……覚えていますね?』
『もちろん! 凍結保存して遠くに運んで、遠隔で信管抜いて爆発させるんでしょ!』
『……』

 祖父からの教えに忠実なことが裏目に出ているウルルのため、ハティは情報分析を行うことで確実に『幸運』を掴もうとしていた。
「そんなの要らないって、目押しで十分! こういうのは、思い切りが大事なんだよ?」
 心配性なAIに対して、主人はあくまで楽しげである。
『チャンスは一度と書いてあったのですから……分析完了しました。約四十七秒後に揃います』
「ん」
 軽口を叩きあっていた二人だったが、それを合図にしたかのように言葉を止める。ウルルはスロット台に向き合い、目を僅かに細める。その瞳は純朴な少女ではなく、獲物を追い詰める狩人のもの。
 祖父から受け継いだ天賦の才と、"憧れ"が支えた不断の努力。それがウルル・マーガナルムという少女を作っていた、視界を横切る鷹、草陰を逃げ回る兎、突進してくる猪、そしてオブリビオン。それらを相手にしていた彼女にとって、高速で回転するスロットの絵柄を五つ同時に把握するというのは、少し"簡単過ぎた"。
 四十四秒が経った。レバーを握る手に力が込められた。
 四十五秒が経った。遊戯室から息遣いが消えた。
 四十六秒が経った。少女の目が見開かれた。
 そして──
 四十八秒が経った。
「……まあ、ざっとこんなものだね!」
 どこか気の抜けるファンファーレを響かせるスロット。コインは出て来ないが、静止した絵柄は彼女の目押しの結果を雄弁に語っていた──『七 七 七 七 七』。
「ねえハティ見た? 見たよね! ボクの華麗な──」
『センサーに異常……これは』
 しかし、無邪気に喜ぶ少女に掛けられた言葉を、鋼鉄の猟犬は返さなかった。空気中に漂う粒子をも認識できるその鼻が捉えたのは、ある意味良く慣れ親しんだ匂い。
『火薬!』
 一瞬だった。大音響とともにスロットの上部が弾け飛ぶ。目も眩む光が電飾よりも明るく、遊戯室を照らす。
 全てを奪った白色が、やがてその姿を消すと……
「……なにこれ」
『……』
 弾け飛んだスロットから、一枚の紙が飛び出していた。よく目に付くはっきりとした大きな文字で……『おめでとう!』。そう書かれている。
 先程の光は、ただの花火。恐らくは犯人が仕掛けたものだ。最後まで悪辣なことを考えるものだが……ウルルが疑問に思っていたのは、それでは無かった。彼女を覆うようにして広がっていた、青色の光の膜。
 磁力と電磁波を利用して形成される、シールド。そんなことが出来る人間……否、存在は、この場にただ一人。
「ハティ……コレ準備してたの?」
『……』
 シールドの展開にはエネルギーのチャージが必要だ。彼は火薬の匂いを感じる前、ウルルがスロットを止めるよりも前から、シールドを準備していたことになる。
「これってまさか……爆弾が爆発した時のため?」
『……ええ、まあ』
 ハティは内心いたたまれなかった。爆弾が作動したと思って慌ててシールドを展開させたら、相手は花火だった。神経過敏を笑われるかもしれない、と思った。
 だが、主人はそれよりも別のことが気になるようだった。
「それってどういうこと……ボクが失敗するかもって思ってたのーっ!? 酷いや、ボクのこと信じてないんだ!」
 爆弾が爆発した時の備えをしていたのが、彼女の技量を疑っていると解釈されてしまったらしい。ウルルは拗ねてしまった。
 もしもハティに呼吸器官があれば、大きくため息をついていたかもしれない。『信じていなければ、そもそも目押しなどさせませんよ──』と言っていたかもしれない。しかしハティはあくまで平静を装い、言葉を返す。
『ウルルのことを信じていないわけではありませんよ。むしろその逆です』
「えーっ、どういうこと?」
『ウルルなら話を聞かずに勢いでレバーを引きかねないと信じていたからです』
 一人の少女の不服の声が、遊戯室に響き渡る音響をかき消したのだった──

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「肆、山盛りご馳走を食べつくして、偽物を探し出さないとね!」
今度は『ゴッド・クリエイション』で大食魔人を創造して綺麗にかつ速く食べて回り一緒にパクパク食べながらチラチラ大食魔人を眺めながら“飽食爆弾”を食べ続けて『チキンレェス』で偽物を注意深く探します!
会場や食品の場所が広ければ『スカイステッパー』で素早く動いて持って集めます♪
“飽食版件”を当てたら『ゴッド・クリエイション』で鋼鉄守護神を創造し直して『神代世界の天空神』で迅速かつ素速く囲って周囲への爆発の被害を防ぎます。。
同時に『神代世界の天空神』で敵や障害のUCを封印/弱体化して守護・防衛を計ります!



「山盛りのご馳走を食べつくすって!?」
 本日のパーティーの立食会で給されていた、ローストチキン。帝都特性の桜ジャムを隠し味に使った特別製。
 その中に爆弾があると聞き、初めはチキンを食べられることにうきうきともしていたティファーナだったが、彼女の身長の二倍ほども積み上げられたローストチキンの山を見ると流石に言葉を失ってしまった。
「ほ、本当に沢山だね……これで全部?」
「あ……あと、この山と同じ量が、厨房に三せっとほど用意してあります……」
 ついてきた奇術師の少女の言葉に、うーんと唸って考え込む。流石にこの量を一人では無理だ。というか、五人で掛かってもこの一山を食べきれるか怪しいだろう。
 しかしこういう状況に最適な仲間が、彼女にはいた。
「……お呼びですかな」
「うん! あのね、このチキンの山を食べつくして欲しいんだ!」
 虚空から現れたのは、青白い肌をした細身の男。彼は指し示された肉の山を見上げ、僅かに戸惑ったように見えた。
「あのう……それはちょっとまずいんじゃないかなー、って……」
「……そうですね。これは良くない」
 隣で見ていた奇術師の少女が、おずおずと声を掛ける。この状況で、この男を呼び出すのが適切だとは思えなかったからだ。チキンの山どころか、朝は賢くトースト一枚だけで済ませていそうな体つきであった。
 男の方も、そんな奇術師の言葉に応える……が、その反応は想定とは真逆だった。
「足りませんね。替えがあるのなら今から持ってきていただきたい」
「ええ……ええーっ!?」
「分かった! ナユタちゃん、ちょっと厨房に入らせてもらうね!」
 男は両の手でチキンの持ち手を鷲掴みにする。混乱している責任者を放置して、ティファーナは空を舞った。
 踊るように、泳ぐように、厨房までの道を最短ルートで飛び抜け、驚いている女給への説明もそこそこに、運搬用の容器に盛られたローストチキンを運び出す。
 再び立食会場に戻ると、そこには先ほどの通り、男と奇術師の少女がいた。変わっているのはただ一つ、チキンの山の有無だけ。
「待っていました」
「さんきゅー! キミ、やっぱり食べるの早いね!」
「"朝飯前"ですよ。まだあるのなら持ってきてください。私はこれからこの山を……ティファーナ様、これ運んでくる途中に少し食べてませんか──」
「おっけーおっけー!」
 何か言おうとした男と、思考停止してトランプを混ぜ始めた奇術師を振り切って、彼女は再び駆けだした。
 先程よりもタイムを縮め、チキンを一個拝借もしながら、立食会場へとチキンを運ぶ。今度はチキンの山は無くなっていなかった。男は最後の一個を食べようとしているようだ。
「それで最後?」
「ええ。どうも一つだけ異様に固いチキンです。調理に失敗したのか……しかし大丈夫、問題なく食べて──」
「ストーップ!!」
 大口を開けて"異様に固い"チキンを呑み込んでしまおうとする男を慌てて制し、そのチキンに耳を近づける。
「これ、爆弾だ!」
「なんですって!」
 爆発まで残り僅かだと、直感が告げていた。ティファーナ本人やその創造物である男はともかく、未だトランプで遊び続けている奇術師を巻き込む訳にはいかない。
 抱えて運び出すには時間が足りなかった。彼女は咄嗟に手を掲げ、叫ぶ。
「護って!」
 その瞬間、大きな閃光と爆音が辺りを包む。我に返った奇術師が目を擦りながら周囲を見渡すと……
「あ……危なかったあ」
 そこには、自分たちを爆発から護り抜いた鋼鉄の巨人と、疲れ果ててへたり込むティファーナがいたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW   :    モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD   :    影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ   :    スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『おい、爆弾の方は片が付いたか!?』
 任務を遂行する猟兵たちの元に、主催者からの連絡が届く。彼女の声から、その逼迫が伝わってきた。
『屋敷中全部洗って今回の主犯を洗ったが、どこにもいねえ。変装もしてねえ、身内にもいねえ。となると、後は一つしかない!』
『地下研究所の格納庫……保管された爆弾、"大老"の中だ!』

「……まあ、恐らく君たちは。僕の目的がこの爆弾の技術だと思っていたろうね。だからこそ屋敷を厳重に封鎖して、中から外に出て行く人間を徹底的に監視していた訳だけど」
 歯車、滑車、吹き出る蒸気。最高峰の技術を詰め込んだ大型爆弾"大老"の内部は、そんな装置がひしめき合っており……中央部に開けた空間には、熱気を持つ大きな柱、そして一人の人影があった。
 人影は直線的な造形をしていた。赤く塗装された、金属製の鎧。その視線が向いているであろう方向は、君たちではなく巨大な柱。
「それは勿論正しいんだけど、僕としてはさあ……ここでこの"大老"がどんな輝きを見せるのか、それを知れるのなら、大満足なんだ……命も惜しくない」
 "彼"は独り言のように呟くと、右手で何かを操作する。それと同時に、空間の内部の熱気が急激に上昇する。あちこちの装置が、軋む音を立てて動き始める。
「大老……彼は爆弾だよ? 爆発するために生まれてきたんだ。それなのに、日の当たらない場所で埃を被るだけなんて……可哀そうじゃないか」
 咲いた花が枯れるように、人がいつか死ぬように、そして──
「興った文明が滅びるように。それぞれに散るべき瞬間があり、その瞬間こそ最も大きな命の輝きが生まれる」
 ここでやっと視線を君たちの方へ向け、彼は大袈裟に両手を広げてみせた。
 文明の崩壊に美を見出す。この人物の思想は、幻朧戦線に大きく影響を受けている。身に着けている装備も、そこに由来するものだ。
「とはいえ、彼が目覚めるまでには多少時間がかかる。そうだな……上手くコトが進めば十五分ってところか。それまで、僕と追いかけっこでもしよう」
 大きくなる空間の振動に呼応するかのように、彼の身に着ける鎧が赤熱し、唸り始めた。
「上手くいけば、君たちも見れるかもしれないよ? 彼の一世一代の美しい姿がさ」

【MSだより】
三章、ボス戦です。場所は巨大爆弾の中。傍じゃありません。
スパイの手によって大老が起動しました。起爆したら、まあえらいことになります。スパイを倒し、その解除装置を手に入れてください。
スパイは起爆までの時間稼ぎをするために、歯車やら蒸気やら多くの障害物がある空間で逃げることに専念します。また、爆弾の内部は現在大変高温になっています。逆に気温を下げることが出来れば、行動がしやすくなるほか、大老の起爆時間を遅らせられるでしょう。その点を踏まえてプレイングをして頂けるとボ=ナスとなります。
では最終決戦、奮ってご参加ください。お待ちしております。
氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「こ……ここは暑すぎます!」
 機械がうなりを立て始めた爆弾の中で、一つの悲鳴が上がった。喧しい駆動音に紛れてしまいそうな声の主は、涼しげな印象の空色の髪と目を持つ少女。
 その見た目通り、雪や氷などの冷たい物、そして涼しい季節が好きな彼女にとって、その場所は……作動を始めた燃料棒が灼け付くような熱気を撒き散らしている、正に地獄のような場所だった。
「そ……その上、爆弾を爆発させるなんて。そんなことは、許せません!」
 戦いが始まる前から暑さで半分瀕死のような状態になりつつも、スーツの温度調節機能で何とか耐え、彼女は右腕に円筒型のエネルギー砲を取り付ける。
 灼熱の鉄の檻の中でも消えない冷気が、その手に収束し始める。この場所とは正反対の神秘に由来する力によって、元素運動の『静止』そのものが増幅され……
「発射!」
 叫び声と共に放たれたエネルギーが、燃料棒に直撃した。
 爆弾自体に傷がつかないよう、調整された威力。しかし機械の作動を止めるには十分なほどの冷気。熱放出に異常をきたしたことで起爆のプロセスが滞り、機械の唸りが緩やかになり……そして何より、彼女の待ち望んでいた『冷たさ』が訪れたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィオリナ・ソルレスティア(サポート)
◆性格
普段から冷静沈着で人当たりが良く優しいお姉さん。
実は猫と弟を溺愛する困ったさん。隠しているつもりが割とダダ洩れ
口調は「私~だわ」「私~かしら」『下の名前+さん付け』
胸にトラウマがあるため巨乳の敵には容赦しない。絶対に。

◆戦闘
オートフォーカスで敵をロックオンし、遠距離からの魔法系UCで戦う。
アイギスの盾で相手のUCを相殺したり、敵の弱点に応じた属性攻撃等を
得意とする。フィニッシュはバベルの光が多い。
TPOに応じて愛用の宇宙バイクで戦うことも。意外と乗りこなす。

◆非戦闘
動物と話す等、情報収集を中心にしつつも、ハッキングやシステム破壊等
荒業で対応することも


鈴木・志乃(サポート)
鈴木です。よろしくお願いしますね。

DS生まれCF育ちです。
皆が幸せな世界になったらいいのになァと思って、戦ってます
単純な火力よりかは光の鎖を使った捕縛とか
トラップ使った搦手が得意ですね
高速詠唱で幻影を作ることも多いかも

劇団に所属してて、CFでは配信者やってます
面白いことなら大体好きですね
歌、踊り、演技ならそれなりに出来ますよ
敵を騙す為にわざと怪我を負ったりします
自分が傷つくのは厭わない方かもしれません

人の笑顔の為なら結構無茶します
必要ならシリアスもネタもカオスもどんとこい
ただし公序良俗に反する行動は、依頼達成の為でもしません


叢雲・雨幻(サポート)
真正面から、と言うよりは掠め手で相手を惑わせて
攪乱しながらのらりくらりと追い詰める戦い方を好むよ。
ただし共闘者がいて危ない時は飛び出して守りに行くかな。

使う武器は【黒雲】【黒霧【対】】の二刀流での戦闘が主。
使うUC次第では連結してダブルセイバーにしたり、
そもそも剣を【武器受け】用として使い、影を操る攻撃で戦ったりするよ。

基本的に相手の攻撃を【見切り】、【早業】で【武器受け】をしながら動きを観察し、隙を見つけて【切り込み】もしくは【カウンター】を決めて離れる飄々とした動きのヒット&アウェイスタイル。
戦闘中も仲間やボスにも冗談を交えて話しかけたりする。
ただしあまりにも非道な相手の場合は別だがね。



『そんな攻撃じゃ、僕を捉えることは出来ない。どれだけ温度を下げても、僕を止めなければ……君たちが"彼"に犠牲を強いて作り上げた文明は、美しく滅んでしまうよ』
 一度下がった気温がまた上がりつつある爆弾の中を、挑発的な言葉を吐きながらスパイは飛ぶ。空中浮遊。高速機動。更に透明化。逃げることに特化した甲冑を認識し、更に攻撃を当てることは、極めて困難な芸当だ。
 或いは広範囲の大火力で薙ぎ払えば彼を仕留めることは出来るかもしれない。そしてそれが可能な人材は猟兵には珍しくないのだ。
 しかし、ここは帝都に壊滅的な被害を与え得る兵器、そのものの中。自分の命すらも賭け金に据えた文明の崩壊への狂気的な意志が、攻撃の手を鈍らせていた。
「まずいですね……爆弾がまた動き始めている」
「いやぁ、大変だねぇ、これは……」
 だんだんと激しくなる機械の駆動音に焦りを隠せない演者の女性と、言葉とは裏腹にこの状況を楽しんでいるような声色の自由人の男性。二人は燃料棒の周囲を飛び回る敵に意識を集中させながら、事態を打破する方法を求めていた。
「鈴木ちゃん、アレ使えないのかね? あの光る鎖。あれでガッと捕まえるってのは」
「まだ……厳しいと思います。叢雲さんは……」
「オジサンは駄目だね。向かってくる相手ならどうとでも出来るんだけど、逃げる相手は得意じゃないんだよ」
 鈴木志乃は神秘に由来する多くの技能を持つが、その中でも得意とするものの一つに自在に動く光の鎖での捕縛がある。
 しかし、甲冑の機能を全て開放した相手に当たるかどうかは五分五分。何よりも「当たらない可能性がある」という懸念自体が、その力を不十分なものにしてしまう。鎖は彼女の意志の力によるものなのだ。
「一度動きを止められれば、確実に捕縛できます……こんなのは本末転倒な気がしますが」
「そうだねぇ……例えば、アイツを止めるんじゃなく、あの甲冑だけを止める、って考えてみるとか?」
「……それなら、行けるかもしれません」
 膠着した会話に投げかけられた声は、赤い髪をした少女のものだった。緊張した面持ちで、顔だけは敵の捕捉に努めつつ、横目で二人と意思を交わす。
「身に纏っているものが、機械の範疇なら、或いは……!」
 神秘の力と同時に、サイバー空間を操る技術も会得してるフィオリナ・ソルレスティア。彼女の髪飾りからは、駆動する機械の思考中枢とも呼べる部品に直接働きかけることの出来る電波が発せられる。
 相手の姿が見えなくとも、その速度が桁外れだとしても……空間中を覆いつくす電波が、その力を断ったとしたら。
『ッ』
 空を縦横無尽に駆けていた鋼鉄が、その動きを一瞬だけ固めた。
「今です!」
 間髪入れずに放たれた光の鎖が、目標を誤らずに静止したスパイへと伸びる。
『や……止めろ!』
 スパイはここで初めて焦ったような声を出した。鈍くなった金属の身体を何とか動かし、備え付けられた銃による乱射。自分へと迫る鎖の主を抹殺しようと試みる。
 数十の弾丸が、少女たちに降り注ぎ……
「……少々、おいたが過ぎたなァ?」
 その全てが、四つ、八つの破片と化して、彼方へと飛び去った。
 それを為したのは、二振りの黒剣。剣の主は、先程とは別人のような雰囲気を纏っていた。振るう刃よりも鋭い視線で、宙に浮かぶ敵を真っ直ぐに見つめて。
「ありがとうございます……おかげで、捉えられました」
 自らの選択を後悔する暇も、もはやそこには存在しない……意志の輝きを秘めた鎖に貫かれ、機械で出来た鎧に鈍い音を響かせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ウルル・マーナガルム
狩人相手に鬼ごっこを挑むなんてね
『狼の狩りの如く。追い詰めてやりましょう』

ハティの子機を爆弾内部に散開させて
内部構造をマッピングするついでに
通せん坊して逃げ道を物理的に塞いでもらおう
見た目だけ透明になっても
センサーには引っかかるでしょ?
内部温度の上昇を抑えてくれてる味方の邪魔にならないルートへスパイを誘導
できれば子機の【捕縛】技能を使って取り押さえられないかな
跳弾も狙ってみたいけど
『やめておきましょう。重要な部品を破損させる確率が高く、プロトコル3(パートナーを保護せよという命令)の遂行に支障をきたす恐れが』
はいはい、分かったよ
子機に誘導されて
ボクの前に狩り出された時が狙い目だね



『子機展開完了……地形把握プロセスを進行……』
 歯車と蒸気で構成された機械の中ではいささか異質な存在が、そこに一つ。鋼鉄とは違う金属が、燃料炉の赤色に反射して輝く。
 人造の猟犬は、目まぐるしく動く機構の中にあってただ一点だけを見つめ、演算を続けていた。
『熱探知センサーは未だ使用不可能ですが、音感センサーに調律を掛ければ……』
 その"狼"の狩りは、普通の方法では行われない。彼は一歩も足を動かすことは無い。彼の身体となるのは、高精度のセンサーを備え付けた子機。
 それは何も見逃さず、何も聞き逃さない。粒子という形で微かな匂いを『見分ける』ことすらも出来る。その為……
『──逃れることは出来ません』
『っ!』
 光学迷彩を付けて逃げ回る相手を補足することも、その目の前に現れることも出来る。
 正確に言えば、今彼が行ったのは地形からの逃走ルートの予測、並びに子機へのAIデータの移行である。文字通りの技術が、彼にとっては狩人として、知識や経験に基づく技術を代用するための手段なのだ。
 既に鎧の一部を破損していたスパイは、目の前に現れた金属の猟犬の姿に驚いて飛ぶ向きを逆転させた。
『無駄ですよ。既に地形は掌握しています』
『どうやら……そうみたいだ。君はそのために作られているのだろう』
 歯車と滑車が鬱蒼と茂る鋼鉄の森林で、猟犬の狩りが始まる。スパイの向かう方向を予期して、待ち伏せ、先を読み、迂回し、立ち止まり、突破する……ドッグファイトさながらの光景が繰り広げられていた。
『……なあ、君なら分かってはくれないか。作られた目的に殉じる事を喜びとする君なら……僕はただ、"彼"が作られた目的を果たさせてあげたいだけなんだ』
『はあ』
 軽口を叩きあいながらも、追跡の手は緩めない。袋の口を締めるように、着実に包囲を形成する。
『私は別に、自分の為にこうしているわけではありません』
『そんな生は虚しいだけだ。何の感情も無く主人に従うなんてのは、君の本当にやりたい事じゃあ──』
 スパイは、ここで一瞬言葉を切る。逆噴射を行って俄かに動きを止めたかと思うと、方向転換……噛み合って回る二つの歯車の間へと突進し始めた。
 歯車の歯が代わるがわる行き交う、その間に僅かな時間生まれる僅かな隙間……少し間違えれば押し潰される、そんな脱出口に向かって。
『っ、まさか!』
『そう、僕はここで立ち止まるわけにはいかない!』
 叫ぶと、今まさにその身体を嚙み切ろうとしていた二つの歯の間を潜って見せた。
 猟犬は焦りの声を上げる。何万のシミュレートの末、導いた結論に基づく配置。『合理的』に考えて、存在しないルート。そこには自分の子機は配置してなかったのだ。
 彼は猟犬である。知識や経験に基づく技術を、文字通りの技術で補っている。しかし、そんな技術では模倣しきれない部分もある。そこを突かれてしまえば、もはや対処の方法は……
「──逃げることは出来ないんだよ」
 "彼女"に頼る他、無い。
 割れた鋼鉄の仮面から覗く、勝利を確信した笑顔が凍り付いた。歯車を抜けた先にいたのは、一人の少女。無邪気にも見える笑顔で、歌うように呟いて……引き金を引いた。

『……ですから、重要機器破損の可能性を考えて銃弾は使わないようにと』
「その辺も計算して撃ったってば! 結局無事だったでしょ?」
 銃弾はスパイの心臓を打ち抜いた。正確には、彼が操る甲冑の心臓部を打ち抜いた。過たず、正確に……直角に入り込んだ銃弾はその中で動きを止め、僅かな破片も飛び散ってはいなかった。
『そうは言っても……』
 猟犬は、そこで言葉を止めた。
 元々、彼はあの場所で銃を使うこと自体に反対だった。相手は鋼鉄に身を包んでいる。狙いが逸れずとも、甲冑で銃弾が弾かれたら。それが射手へと襲い掛かったら。その可能性を排除できない以上、彼はその方法を推奨することは出来なかった。彼女を最も可能性の低いルートに配置していたのは、その為でもある。もう半分の理由は、彼女自身が『ここに来そうな気がする!』と直感したからだったが。
 兎も角として、結果論としてスパイはあの路を通り、彼女は引き金を引き、跳弾は発生しなかった。結果だけ見れば完璧だが、彼はそれを以て良しとすることは出来ない。
「珍しいね、黙るなんて。何考えてるの、ハティ?」
『手のかかる主人に従うというのは、無感情で出来ることではないなと。それだけですよ、ウルル』
「……どういうこと?」
 感情は装甲に隠して、本音は皮肉に載せて。
 二人の"狩人"の会話は、夜が更けるまで続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月29日


挿絵イラスト