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ハニーバニーパーリィ

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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「国をひとつゲットしてきてほしいんですよ」
 大体『お菓子買ってきてほしいんですよ』くらいのノリで、ニノン・トラゲットはそんなことを言い出した。
「……真面目に説明しますと、オウガ・オリジンの『現実改変ユーベルコード』ってあったじゃないですか? あれの力で、お菓子や南瓜のデコレーション、衣装が飛び出す森に大きなキッチンとダイニング、行列で埋め尽くしてくれと言わんばかりのストリートとか、とにかくハロウィンにうってつけの物で溢れた『ハロウィンの国』が沢山できてたんですよね」
 それだけならまあいい、と言うかむしろ嬉しい話なのだが、そこはオウガ・オリジンの改造した国のこと。
 件の国にはオリジンから力を授かった凶悪なオウガが潜み、訪れる者を襲って喰おうと待ち構えているのだという。
「まあつまり、そのオウガ達をぶっ飛ばして、素敵なハロウィンの国をいただいちゃおう! ってことですね。で、オウガ達との戦い方なんですけど」
 何せオウガ・オリジンから直接力を与えられた精鋭のオウガが、不思議の国の不思議な力も利用して襲い掛かって来るのだ。こちらとて、相応の対策は必要だろう。
「まずこの国に踏み込んだ人に最初に襲い掛かって来るのは、バニーガール姿のオウガですね。見た目や言動はふわふわで可愛いですけど、このバニー服が曲者なんですよ」
 曰く、それは先の『ハロウィンの国』の説明にも上がった『衣装が飛び出す森』の産物であり、身に付けた者の戦闘力をぐーんと上昇させる代物なのだという。
 ところで、身に付けた者の、だ。身に付けたオウガの、ではない。
 つまり。
「森から飛び出してくる衣装の恩恵を受けられるのは、こっちも一緒です。遠慮なく衣装を拝借してパワーアップした状態で戦えば、決して難しい相手じゃない筈です! ……まあ、どんな衣装が飛んでくるかは完全に運なんですけど、この国の森で飛んでくる衣装はこころもちバニー多めみたいですね」
 しらっとそう付け加えた後、咳払いをひとつ挟んでニノンは続ける。
「で、パーティにぴったりの広いテラスで待ち構えてるオウガの親玉――なんでも食べる土の巨人みたいなやつなんですけど、こっちは最初はほぼ無敵です。どれだけパワーで殴っても、殆ど通じません。ただ、『美味しい料理や心のこもった料理を出されると絶対に食べてしまう』というこの国の法則に縛られているみたいですね。そして……美味しいものを食べると、こいつはだんだん眠くなっちゃいます。ご飯やお菓子を与え続けて完全に眠らせれば、その時は無敵も解除です。一撃でやっちゃえます!」
 もっともこのオウガは、戦闘中に食べたものの量と質に応じて戦闘力を向上させるユーベルコードを持っている。ただでさえ苛烈な攻撃が食事をとらせる度に更に強化されるという点には留意しつつ、敵の攻撃を耐え抜いて料理を作る必要があるだろう。
「オウガ・オリジンの置き土産は片付けておきたいところですし、それにこんな素敵な場所、オウガのねぐらにしておくには勿体ないですからね! そういうわけなので、ひと暴れよろしくお願いします!」
 元気よくそう説明を締めくくって、ニノンは猟兵たちをハロウィンの国へと送り出すのだった。


猫目みなも
 こんにちは、猫目みなもです。
 ハロウィンパーティ前に、ハロウィンの国のオウガ退治をよろしくお願いします!

※このシナリオは「2章構成」となっております。各章の特殊条件は下記の通りです。

●第1章
 ハロウィンの国の入口に存在する、森の中での戦いとなります。
 森からはひっきりなしにランダムな「コスプレ衣装」が飛来し、これを着て戦うとパワーアップします(プレイングボーナスが発生します)。
 飛来する衣装にプレイヤーさん側でご希望があれば、プレイングでご指定ください。特にバニーでなくてもOKですし、やばいやつ以外はだいたい採用します。

●第2章
 森を抜けた先にある素敵なガーデンテラスで、ボス敵が新しいご馳走を待ち構えています。
 ボス敵はハロウィンの国の法則で「ほぼ無敵」ですが、オープニングにある通り「美味しい料理」を出されると必ず食べてしまい、かつだんだん眠くなってしまいます。
 料理を振る舞い続けて完全に眠らせれば、無敵状態の解除されたボスを一撃で葬れます。
 テラスの奥に立派なキッチンとだいたいの食材がたっぷり用意された食糧庫があるので、ボスの攻撃を凌ぎつつ美味しい(或いは味はいまいちでも心のこもった)料理を振る舞ってください。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『サーバントバニー』

POW   :    ウサキ~~ック!
単純で重い【高く跳んでからのジャンプキック 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ウサキッス
【投げキッスをする事で放つ衝撃波 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【にハート型のマークを刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    ウサウサスカイジャンプ
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
バニーか~~…
バニーかぁ…
あんまりさあ、ああいう露出高いの好きじゃないっていうか…
見るのは好きだけど、着るのはちょっとというか…
まあ着るよ、そりゃ着るけどさ
すーすーするから不安になるんだよね、これ


はいはい、じゃあさっさとバニーに着替えますかね
とうっ!はい、バニーガール
よくよく考えると身に付ける…だから別に服の上にバニー着てもよくない?
ダサいからやんないけど

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【光剣解放】を起動
30本1組で光の剣にチームを組ませてバニーへ攻撃開始

うわ、バニーめっちゃジャンプすんじゃん
逃げられないよう包囲するように光剣を操作
四方八方から『串刺し』にしてとーどめ



「バニーか~~……」
 森に入るなり真っ正面から飛んできた衣装を目の前に両手でぶら下げたまま、月夜・玲(頂の探究者・f01605)はテンション低く呟いた。
「バニーかぁ~~~……」
 もういっぺん呟いた。
 すらりと長く伸びた耳付きカチューシャ、胸元の大きく開いたエナメルのレオタード、きらきらのボタンで飾ったカフスにふわふわのしっぽ。どこからどう見てもオーソドックスなバニー衣装だ。
「見るのは好きだけど、着るのはちょっとと言うか……」
 露出が多くてすーすーするのが玲的にはどうも不安で落ち着かないのだが、それはそれ。戦いをよりやりやすい形で進めるためには致し方ないのだ。致し方ないのだ!
「とうっ!」
 と言うわけで己自身を鼓舞するように高らかに声を上げ、勇ましくサーバントバニー軍団の前に躍り出る玲バニー。その踵が土を打つより早く彼女が両手で抜き放ったのは、黒き刃と光の剣。それぞれに輪廻と幸福を名に冠する双剣でサーバントバニーの挨拶代わりの一撃を押し返せば、黒剣の腹を踏みつけて敵が跳んだ。
 樹の幹を蹴り、仲間の肩や背を蹴り、或いは空中を自在に蹴って、サーバントバニーたちは四方八方から楽しげな笑いを響かせる。
「うわ、なるほどなぁ……狩りついでの遊び気分ってわけね」
 舐められたものだと心中で零しつつ、けれど舌打ちのひとつすら表には出さず、ならばと玲はフォースセイバーをくるりと一度回して。
「機能解放」
 低い呟きに応えるように、鬱蒼と茂る森に切り裂くような光が差した。否、灯った。
 およそ九百は下らない数の光剣の群れが、そうして森の中を駆け巡る。さながら星座を結ぶように、幾何学模様を描いて複雑に飛翔する光剣の嵐に射貫かれてはたまらない。そう言わんばかりに再び空を蹴って上方へ逃れようとするバニーを、それでも編隊となって飛び回る剣は逃がさない。飛び交う刃が次々にあらわな肌を切り裂き、宙に血の花を咲かせて、そして。
「めっちゃジャンプすんのはもう知ってる。……はい、とーどめ」
 急角度で進路を変えた光の剣は、いつの間にか標的を見事に取り囲んでいた。つと手にした剣の切っ先を上げれば、たちまちそれらは背を合わせるようにして空中で固まっていた四体のサーバントバニーへと殺到する。
 互いの背と腹を縫い留められるようにして絶命し、地に落ちるサーバントバニーの骸を一瞥し、そこでふと玲は気付いたように瞬いた。
「よくよく考えると身に付ける……だから別に服の上にバニー着てもよくない?」
 一瞬思い浮かんだ考えは、けれど『ダサいから』というシンプルかつ深刻な一点で振り捨てて、彼女は残る敵へと向き直ることにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

可惜夜・ルネ
なるほど、これはバニー
どこからどう見ても、誰が見ても、まごうことなき立派なバニー
スカートのバニースタイルって可愛いのね
黒衣装のスカートバニー、わたし、これ似合うのかしら……?
本で眺めたことがあるから着方は大丈夫よ
……熟読なんて、してないわよ?

初のコスプレがバニーとは、人生ほんとに何があるかわからない
わからないからこそ面白い
ねえ、あなたたちもそうは思わない?

ものすごくジャンプされても飛翔する魔法剣で狙い撃つわ
ついでにちょっと生命力もいただいちゃうわね、ごちそうさまー
初のお仕事で実は緊張してるのよ
あー、ドキドキした!



「なるほど」
 飛来した衣装を身に着けてその場でくるりと一回転してみた後、可惜夜・ルネ(謐・f30521)はかすかに頷いた。着方は間違っていない筈、これで本で見たそのままだ。
 弧を描いて揺らめく長い耳、ひらりと翻る夜色の裾、大胆に開きつつも決していやらしさは感じさせない胸元のライン。どこからどう見ても、紛うことなき立派なバニーだ。
「わたし、これ似合うのかしら……?」
「かわいいかわいい~!」
 スカートの裾をつまんで首を傾げるルネの頭上に、不意に響く甲高い声。見上げれば、樹上に潜んでいたのだろうか、数体のサーバントバニーがこちらへ今しも飛び降りてくるところだった。
「!」
 咄嗟に飛び退り、距離を取ろうとしたものの、敵とて決して鈍くはない。少しでも距離を離すべく放った魔法剣を、サーバントバニーはひらりとジャンプして飛び越えた。
「ウサジャ~ンプ! からのパ~ンチ!」
「ぱ~んち!」
「さらにパ~ンチ!!」
 繰り出されるバニー軍団の連続攻撃を箒の柄でなんとか捌きつつ、ルネは静かに思考を巡らせる。生半可な攻撃ではかわされる。かと言って、彼女たちを振り切れるほど自分は速くない。敵に気取られないよう、ゆっくりと呼吸を整える。緊張はまだある。けれど、固まっている場合ではない。敵の耳に、この鼓動を聞かせてなるものか。背の後ろに回した指先でつと宙をなぞって――そして、ルネは出口の方角目指して勢いよく駆け出した。すぐ後ろを、楽しげな笑い声が追ってくる。
「逃げるの~?」
「逃がさない~!」
「わたしたち、はや~いもん!」
 ルネが不利を悟って逃げを選んだと見たのか、その声には嘲りの色すら浮かんでいる。それを聞き取り、ルネは密かに拳を握り締めた。――それでいい。
 頭上でがさりと音がする。生い茂る枝葉を突き破って、急降下攻撃を仕掛けるべくバニーたちが跳んでいるのだろう。足を止め、振り返って、不意にルネはそちらへ語りかけた。
「初のコスプレがバニーとは、人生ほんとに何があるかわからない。わからないからこそ面白い。ねえ、あなたたちもそうは思わない?」
「わたしたちが面白いのはねぇ」
「あなたをここで殺しちゃえるのがわかってる~ってこと!」
「こと!」
 木漏れ日が消える。兎の影が頭上に迫る。それを避けようともせずに、ルネは片手を閃かせた。
 瞬間、森に悲鳴が響いた。木立に隠れるようにして飛翔を続けていた魔法剣の群れが、サーバントバニーの脚を斬り下ろし、急角度で地面に叩き落としたのだ。剣を通じて自身に温かな力が流れ込むのを感じ取り、ここぞとばかりにルネは両足に力を込めた。
「ごちそうさま。それじゃ、わたしは今のうちに失礼するわね」
 無理に相手を続けるよりは、敵が地面に転がり喚いている今のうちに前進した方が得策だ。そう判じて、夜色の少女は森の向こうをまっすぐに目指す。

成功 🔵​🔵​🔴​

火土金水・明
「バニーガールの衣装ですか。まあ、服装に関しては恥ずかしいというよりも、動き易いと思いますけど。」「このバニーガールの衣装は持って帰ってもいいのかな?。」
【SPD】で攻撃です。
攻撃方法は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡め【限界突破】した【銀の流れ星】で、『サーバントバニー』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



 下草を踏み鳴らし、駆けていく足音がまたひとつ。とうにバニー衣装に着替えた火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、走りは止めないままにマイペースなことを考えていた。
(「この衣装、持って帰ってもいいのかな」)
 特に持って帰ると消えるとか持って帰ると危ないとか、そういう注意はされなかった。つまりは別に持って帰っても大丈夫なんじゃないんだろうか。頭の中でそう決着をつけ、同時に彼女は更に深く踏み込んだ。
「――残念、それは残像です」
 一瞬前まで明のいた場所に、深々とハートの印が刻まれる。それはサーバントバニーの放つユーベルコードの効果だと、明は既に知っていた。
「よけられた~」
「残念~」
「そこどいて~」
「どきませんよ。そこを踏まれると、私が不利になるので」
 印を刻まれた地形の上に立たれれば、敵の強化を許すことになる。逆に言えば、そこにさえ立たせなければ何の問題もない。サーバントバニーとその攻撃の残滓の間を塞ぐように立って、明は銀色に煌く刃を引き抜いた。
「動き易い衣装が来てくれて幸運でしたよ。では、あなた方にこそどいてもらいますね」
 バニー衣装の上に重ねて羽織った黒いマントが翻る。踏み込み、切り払うかのように見せかけ、一拍遅らせてまっすぐに突く。エナメルの衣装を容易く破った刃を素早く引いて、もう一突き。流星のごとき連撃に、周囲のバニーがきゃあきゃあと声を上げた。
「なにそれずるい~!」
「でもカッコいい~!」
「……何とでも言ってください」
 飛んできた投げキッスの威力を纏うオーラで相殺し、剣先を下ろして相手の動きを伺いながら、明は感情を込めることなく切り捨てる。一瞬の睨み合いの後、深く考えた風でもなく飛び込んできたバニーのタックルをかわして一閃。振り抜く最後のひと押しにさらに力を込めれば、吹き飛んだ敵の身体はごろごろと土の上を転がり、そのまま動かなくなった。
「まずは一体」
 足を踏み替え、振り返る。視界に別のバニーが入る。目が合った瞬間、その瞳に明らかな恐怖の色が見えた。目を逸らすことなく、動作を止めることもせず、明は相手に問いかける。
「どいてくれますか。それとも――消えてくれますか」
 斬撃音がひとつ。そして、次の敵もまた、答えを返す間すらなく沈黙した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨咲・ケイ
なるほど、コスプレ勝負(?)というわけですね。
中々趣があって良いと思いますよ。
私は……メイド服ですか……。
うん、メイド服は戦闘服ですからね。(謎理論)
これでいきましょう。

【POW】で行動します。

うん、なんか戦闘力が上がったような気がします。
おっと、敵も来たようですね。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
といった所でしょうか。
……変な気分になる前にやっつけちゃいましょう。

天霊のオーラを纏って【グラップル】による
接近戦を仕掛けましょう。
敵のジャンプキックに対しては
【光明流転】による【カウンター】を放ちます。
……メイド服もなんか悪くない気がしてきました。

アドリブ歓迎です。



「なるほど、コスプレ勝負というわけですね」
 そういうわけなのだろうか。でもまあ、お互いコスプレ衣装を身に着けるとパワーアップするわけだから、そういう解釈でも間違いではないのかもしれない。ともあれ雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)も、森が飛ばしてきた衣装をその手に取っていた。
 たっぷり長い、けれど脚に絡まるような邪魔さはないロングスカートのワンピース。盛りすぎないフリルが清楚で愛らしい印象を与えるエプロン。お揃いのフリルで飾ったヘッドドレス。しばしそれを上から下まで眺めた後、ややあってケイは誰にともなく頷いた。
「うん、メイド服は戦闘服ですからね」
 十四歳の少年であるところの自分に言い聞かせたのかどうか、それは定かではない。着ることで戦闘力が上がるのなら何も問題はないのだ。そう、何も。袖を通せば指先まで熱くなるような感覚も、不思議の国の法則の賜物なのだ。そういうことにしておこう。
 そうしてメイド姿で森の中を行くことしばし、ふとケイは足を止めた。――いる。軽やかな足音が、確かにこちらへ近づいてくるのが聞こえる。やがて、うさみみを揺らして駆け来る敵の姿がはっきりとケイの目に映った。片足を軽く引き、いつでも構えられる体勢を取りながら、ケイはなんとなく唇を開いてみた。
「いらっしゃいませ、ご主人様?」
 ……衣装に合わせる形で言ってみたが、なんだか喉のあたりがむずむずする。湧き上がりかけたよくわからない気持ちを振り切るように、少年は勢いよく地を蹴った。ほぼ同時に正面の敵もまた土を蹴散らし、高く高く跳び上がる。けれどその軌跡は、ケイの目にはあまりにも直線的に、単純に映った。文字通り、読むように次の動きが見える。息を吸い、身体を捌き、ジャンプキックの直撃地点から自身の体軸をずらす。
「ッ!!」
 同時に高めに構えて突き出した拳が、バニーの腹部に突き刺さった。自身のキックの勢いを上乗せされる形で叩き込まれたカウンターの一撃に、オウガは可憐な顔を歪めて呼気と唾液をひとまとめに吐き出し、背中から地に転がって跳ねた。軽く息をつき、ケイは次の敵に向き直る。その動きを追うように、ふらりとスカートが広がった。
「……メイド服もなんか悪くない気がしてきました」
 零れた自分自身の呟きに、数秒空けてケイはぶんぶんと首を振る。いけない。毒されてきている気がする。こうなったら、一刻も早く立ちふさがる敵をどうにかして突き進まなければ。
 ――そして、再び少年の拳が唸りを上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

バニー!ウサギさんだー!とわくわくしながら衣装が飛び出してくるのを待ってるね♪
森に飛び込んだら飛んできた衣装をキャッチしてさっそく木陰でお着換え☆
立派なウサギの着ぐるみを着た妖精さんが飛び出してきます?幼女にバニースーツはまだ早かったらしい!

嬉しそうにぴょんぴょこ飛びながらバニーに攻撃だ!
投げキッスの衝撃波をぴょんぴょんと【スカイステッパー】で空中に飛び上がって回避すると
落下速度を加えたレイピアで「貫通攻撃」をお見舞だー!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



「バニー! ウサギさんだー!!」
 この森から飛んでくるコスプレ衣装は、どういうわけだかバニーが多い。……伝え聞いた情報にそんな無邪気な歓声を残し、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)が森へ元気よく飛び込んでからしばらくの後。
「ウサギさん……ではあるなー!」
 木陰からちっちゃなもっこもこのウサギさんが飛び出してきた。全身を余すことなく包み込み、妖精姫の可憐な顔だけはばっちり見せるもっこもこ。つまりはウサギさんの着ぐるみである。もしかしたらそれは『君にはまだ早い』という天の思し召しだったのかもしれないが、これはこれでもこもこかわいいので、ティエル的にはオッケーらしい。空飛ぶ翅は一時畳んで、ウサギさんらしくぴょんぴょこ跳ねながら、ティエルは森の出口へ至る道を塞ぐバニーにレイピアを向けた。
「さあ、勝負だよ!」
「やだかわいい~!」
 サーバントバニー的にも着ぐるみうさちゃんはかわいい判定らしい。らしいが、それはそれとしてここにいるのはオウガと猟兵。となれば、お互いやることはただひとつだ。サーバントバニーの放つ投げキッスは、その実猛烈な悪意を含んだ遠距離攻撃。その直撃を受けてはたまらない――痛いし、何よりかわいい衣装が傷んでしまう!
 そうはさせじと勢いづけるように軽く飛び跳ね、そのままティエルは空中へ跳び上がる。羽ばたくのではなく、空気を蹴って上へ、上へ、さらに上へ。投げキッスが到底届かないであろう高度まで二本の脚による連続ジャンプだけで至ってみせた妖精は、遮るもののなくなった太陽を背にして悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「行くぞーっ!」
 剣先を下に向け、自身の頭を下にして、一層強く空気を蹴る。フェアリーの軽い身体とは言え、これだけの速度からの急降下を乗せれば、その突きの威力は目覚ましい。まっすぐに降ってきたレイピアの一突きを笑み混じりに受け流そうとしたサーバントバニーが、骨まで届く刃の痛みに悲鳴を上げた。
「まだまだ!」
 着地することなく空中を蹴り、一撃、また一撃。連続ジャンプの要領であちらの敵を斬ってはこちらの敵を突き、まるで遊び回るような軌跡を描いて、ティエルは数で勝る敵を翻弄していく。そしていつしか最後の一体となったサーバントバニーに、ティエルは一度くるりと背を向けて。
「ごめんね、これから行くとこあるんだ! ……それじゃ!」
 空中での半回転を加えた一撃が、そうして最後のバニーの心臓を穿ち抜く。血の匂いを吹き払うような風が吹き抜け、森を騒がせて消えていく。そうして静かになった森の道を見回して、よし、とティエルは拳を握った。
 オウガの親玉が待ち受けるテラスは、もうすぐそこだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『モグモグちゃん』

POW   :    お腹が減って仕方がないんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【筋力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    お腹が背中にくっつきそうなんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【瞬発力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    お腹が満たされないんだよぉ~……
戦闘中に食べた【無機物または有機物】の量と質に応じて【思考力が向上し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠竹城・落葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジュウラ・ガイロストール
振る舞う……そうね、話は聞いたわ?
料理の心得はあまりないけれど、手頃な真心詰め放題を形にするなら
そうね、単純だけどオニギリなんてどう?海苔もちゃんと付けてましょうね
しょっぱい具材を選んで、思いぶん力を込めてぎゅっとね
キツめにかたーく握ってあげる

無敵な状態を崩せるとは思わないわ
私の独断で料理を決めてしまったけれど、思考力が上がっているならどんなものが好きなのか、訪ねてみようかしら?
例え答えてくれても
ふーん、と右から左に聞き流すのだけれど

攻撃はあえて避けない
貴方が強い分だけ、逆に生命力を奪うわ
私の影は横暴なの…ごめんなさいね?

私が冷たい目をしてる?気のせいよ
ただ、……満たされないなんて、可哀想に



 森が開け、行く手に可愛らしいガーデンテラスが見えてくる。不思議な曲線を描く植木や季節の花々に囲まれた庭の真ん中に、巨大な木製のテーブルがしつらえられているのがまず見えた。そして、その正面に鎮座していたのは、並の人間を軽く見下ろす大地の巨人。もはや食事が待ちきれないのか、ばりばりもぐもぐとテーブル上の皿や銀食器を貪り食いながら、巨人――モグモグちゃんは、嘆くように声を震わせた。
「ああ、お腹が空いたんだよぉ~……美味しい物が食べたいんだよぉ~……」
 それはこのオウガの元来の性質なのだと、ジュウラ・ガイロストール(旋律の駆け手・f30194)は既に伝え聞いている。彼の望み通りに『美味しい物』を食べさせてやるのは猟兵の唯一の勝利への道であると共に、敵の攻撃をより苛烈なものに変える諸刃の剣だということも。
「話は聞いたわ? 料理の心得はあまりないけれど、手頃な真心詰め放題を形にするなら、そうね……」
「料理? 料理が来るのぉ? うれしいな、ああ、うれしいなぁ~! だけど……」
 ばきり、とモグモグちゃんの口元で頑丈な陶器の皿が砕け散る。その勢いのまま、モグモグちゃんは目の前の新鮮なお肉、もといジュウラへと拳を振り上げて。
「待ちきれないんだよぉ~!」
「まあ、もう少しだけ待って頂戴。すぐにできるものだから」
 咄嗟に全身を漆黒の粘液で覆い、何とか受け止めはしたが、思っていた以上に一撃が重い。横暴な影に敵の生命力を喰い返させたとしても、あまり長くは耐えきれまい――嫌な確信を緩やかな瞬きひとつで脇によけ、ジュウラはキッチンの大きな炊飯器を開けた。途端にふらりと甘い香りの湯気が立ち、つやつやに炊き上がった白米が顔を出す。それをしゃもじで取ったら掌に水を付け、温かいごはんを掬い上げて、くぼませたその真ん中に塩気しっかりの塩鮭をまずはひと切れ。ぎゅっと力を込めて握り上げたら、最後は海苔をくるりと巻いて出来上がり。
「わぁぁぁ……おにぎり! おにぎりだね! 食べていい? いいよねぇ?」
「ええ、勿論。お代わりもどんどん作るから、召し上がれ」
「わぁ~い、いっただっきまぁ~す!」
 ぱくり。大きく開けた口に鮭おにぎりをまるごと投げ込んで、モグモグちゃんはご機嫌顔で顎を動かし始めた。途端、その目がかっと光を増して。
「か……かったぁ~~~~い! カッチカチなんだよ! そうだよねきみどう見ても全力込めて握ってたもんね! でもこれはこれで食べ出があってボク的には結構オッケー! 中の塩鮭もがっつりしょっぱくて、カッチカチのお米を噛み締めた後の甘みと溶け合って不思議と美味しい! って言うかまず手作りおにぎりっていうチョイスが真心ごはんって感じでお腹に美味しいんだよぉ! ところでおかわりあるって言ってたよね! ちょうだい~!!」
「はい、どうぞ」
「ぱく……梅干し! 昔ながらのめちゃくちゃしょっぱいやつ! しかも大粒で果肉たっぷり、どれだけ食べ進めてもご飯がひとりぼっちにならないよぉ! もぐ……こっちは昆布の佃煮! これもがっつりしょっぱいけど、さっきまでとは違うお醤油のしょっぱさだぁ! しょっぱい系で統一しながらしっかりバリエーションで楽しませてくれるの、とってもニクいんだよぉ~!! ……ふにゃ」
「……もしかして、上がった思考力の使い道ってその食レポに充てられていたりするの?」
 ぺらぺらとおにぎりの批評を喋り倒しながら一瞬眠そうに首を傾けたモグモグちゃんを前に、ジュウラは半目で首を捻る。もっともっととお代わりを要求してくるオウガに次なるおにぎりを差し出しながら、彼女は前髪の下で密かに右目を冷たく伏せて呟いた。
「……満たされないなんて、可哀想に」

成功 🔵​🔵​🔴​

ティエル・ティエリエル
ようし、ボクが作れるのはパンケーキだけだけど一生懸命作っちゃうよ♪

【フェアリーランド】の壺の中にパンケーキに必要な材料・器具を放り込んでいくね♪
モグモグちゃんに見つかったら逃げ回りながら「物を隠す」で壺をキッチンの片隅に隠して壺の中に飛び込んじゃうぞ☆

ふぅ、ここなら安心だと思いながらもゆっくりしてたらいつ壺ごと食べられるか分からないからね!
急いでパンケーキを焼いて行っちゃうよ!

パンケーキが出来たら壺から飛び出すけど……わわわっ、間一髪!
とっておきの「はちみつ」もいっぱい掛かったパンケーキを召し上がれだよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



「ようし、ボクが作れるのはパンケーキだけだけど一生懸命作っちゃう……」
「いただきまぁ~す!」
「よ!!」
 いきなり襲い掛かってきたモグモグちゃんをひらりとかわし、キッチンに積まれた木箱の陰まで咄嗟に転がした壺の中までびゃっと逃げ込んで、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は危ない危ないと息をつく。幸い、必要な食材や調理器具は全て壺の中に――つまりはフェアリーランドの中に放り込んだ後だ。ここなら存分に、安心して調理に励めるだろう。
「……でも、ゆっくりしてたらいつ壺ごと食べられるか分からないよね」
 何せ相手は皿もフォークもお構いなしにばりばり食べるはらぺこオウガだ。見つけ出しさえすれば、ティエルのことだってフェアリーランドの壺ごとぱくりだろう。軽く翅を震わせ、童話じみたバッドエンドの予感を振り払って、ティエルはよし、と気合を入れるように拳を握った。
 産みたて卵に牛乳を溶いたら、ダマをしっかり崩した砂糖と薄力粉、ベーキングパウダーを加えてさっくり混ぜて。ほどよく温まったフライパンに落としたバターが溶けていい匂いを立て始めたら、クリーム色の生地をお玉で綺麗な円に流し入れる。表面にぷつぷつ泡が立ってきたら、それを合図に裏返し、綺麗なキツネ色になった半面とご対面。もう半面もしっかり焼けたら、皿に移して次の一枚へ。
 そうしてリズムよく踊るようにコンロと調理台の間を往復し、やがてティエルが白い皿に積み上げたのは、ふわふわ熱々のパンケーキタワー! てっぺんにバターをひとかけ乗せて、その上からとっておきの蜂蜜もたっぷり垂らせば、つやつや黄金色の煌きが素敵なひと皿の完成を告げた。
「さあ、召し上がれだよ! ……?」
 両手でパンケーキの皿を掲げ持ち、フェアリーランドから飛び出すなり、生温かい風がティエルの頬を撫でた。いや、違う。目の前に、今しも壺を飲み込もうとするモグモグちゃんの大口があった。慌てて(けれどパンケーキは決して落としたりひっくり返したりすることのないよう器用に)一メートル近く飛び上がり、せわしなく翅を羽ばたかせながら、ティエルは眼前のオウガに向けて必死に叫ぶ。
「わわわわ待って待って! 壺なんて食べても美味しくないよ! それよりほら! これ!!」
「……? なんだかとっても甘~い匂いがするんだよぉ」
 食べていいの? と首を傾げたモグモグちゃんの口の端から、たらーりと大粒の涎が溢れて落ちる。どうぞどうぞと改めてテーブルの上に皿を下ろせば、しばしそれを見つめた後でモグモグちゃんは銀のナイフとフォークを両手に取った。
「いただきまぁ~す。……こ、これは! 表面は蜂蜜がしみてしっとり、そしてその中はとろけるようにフワッフワ! まるでソフトクリームみたいな口当たりでいくらでも食べられちゃうんだよぉ! 乗っかったバターは塩気のあるやつだね、これがケーキ本体の控えめで優しい甘さを引き立ててふわふわ夢心地になっちゃうねぇ~……それに、何と言ってもこの蜂蜜! こんなにたっぷりかけられたら、しあわせ~にしかなれないよぉ! それに、ほんのり香るお花の香りが何とも言えずエレガントで……ふわぁぁ」
 よしよし効いてる効いてる。密かにガッツポーズを決めて、ティエルは壺の中から黄金色に光る瓶を取り出してみせる。
「追い蜂蜜もあるよ、かけてあげるね!」
「そんな、下の段のケーキまでばっちりしっかり蜂蜜味になんて……とってもとってもしあわせ~、以外の何物でもないんだよぉ!」
 がばりと顔を上げ、万歳とばかりにナイフとフォークを掲げるモグモグちゃん。その声音は嬉しげだが、明らかに先ほどよりもふわんふわんと眠そうだ。ならば心を込めた追い蜂蜜で追い打ちだ。蓋を取った大きな瓶を両腕でしっかり抱えて、ティエルは力いっぱいパンケーキの上まで羽ばたいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
んーんー…
料理…料理かあ…
まあ、これだけ設備が揃ってるならまあなんとかなるか
ちょっとお菓子でも作ろう

まずは中の具を作ろう
種類は餡子、白餡、カスタード、チョコレート、うぐいす餡くらいかな
焼き型を十分熱して、油を敷いて
生地を注いで、具を入れて
更に生地を注いでしっかり焼いて出来上がり

これが大判焼きだよ
色々な味の今川焼きを作ったから食べ比べてみてよ
個人的には回転焼きは餡子とクリームが2大巨頭だと思うんだけど、どう思う?
でもたまに白餡食べると癖になるのもパンセポンセの良い所
しっかりご賞味あれ!

……ところで君は、この餡子入り焼き菓子の事なんて呼ぶ?

調理中の敵の攻撃は【神器複製】で生成した複製剣で武器受け!



「んーんー……」
 食糧庫をあちこち歩き回り――と言うよりはモグモグちゃんの拳をかわして駆け回りながらしばし思案した後、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は調理台の前に大荷物を抱えて戻ってきた。広い台上に並べられていくのは、小麦粉の袋に砂糖の袋、卵にはちみつにベーキングパウダー。更に牛乳や生クリーム、チョコレートもあればや豆入りのボウルもある。小豆にインゲン、青エンドウと彩り豊かな三色のボウルの縁に目をやって、やれやれと玲は息をついた。
「よくよく考えたら、豆が煮えるまで向こうの攻撃を耐え続けるのって大変じゃない? って思ったけど……さすがパーティの国の厨房、なんでもあるね」
 いい感じに煮えたり水に浸かって膨れたりした状態の豆が用意されていたため、当初の予定を変えることなく調理に移れそうだ。その幸運に軽く笑って、玲は袖をまくり上げた。
 ――そして、しばしの後。ユーベルコードで複製されて宙を飛び回り、モグモグちゃんの攻撃を凌いでいたガジェットたちが役目を終えたように床に落ち、転がる音が重なった。同時に玲が振り返り、焼きたて熱々のお菓子を並べたプラスチック容器をモグモグちゃんへと差し出してみせる。
「これが大判焼きだよ」
「焼きたてほかほかのあま~いお菓子! これは出来立てをいただくのが最高のやつと見たよ、いただきま~す!」
「うんうん。色々な味で作ったから食べ比べてみてよ。今川焼き」
 早速開けた大口にいちばん端のものから焼き菓子を放り込もうとしたモグモグちゃんの動きが一瞬止まった。あれ? なんか今違う名前出なかった? まあでも、美味しければなんでもいいや! ……なんて思ったのかどうかは定かではないが、気を取り直したように巨体のオウガは焼き菓子をひと口で口内に収め、もぐもぐとしっかり咀嚼してから飲み込んで。
「ふわふわながらもずっしりとした生地、それにこのコクのある甘み……お砂糖だけじゃなく、蜂蜜も使ってるね! 美味しい! 中の餡子も甘すぎず控えめすぎず、絶妙なバランスの味付けだよ! 小豆の皮のぷちぷちした食感が残ってるのも楽しいねぇ~!」
 そこまで一気に語った後、待ちきれないと言わんばかりにモグモグちゃんは次々焼き菓子を口の中へと放り込んでいく。
「もぐ……これもまた餡子! 今度はこしあんだぁ! 粒あんとは違うさらっとした口当たりが上品で……いいね! はぐ……カスタードだぁ! え、これクリームも手作りなの? 洋風のとろとろあまあまが餡子の口に優しいインパクトを叩きつけてくるんだよぉ! ぱく……チョコレート! 湯煎したチョコに生クリームを加えて柔らかい生チョコ風にしてあるんだね! ふかふかの生地に濃厚なチョコが噛むたび絡んで美味しい~!」
 食べては喋り食べては喋りと忙しそうなモグモグちゃんは、もはや攻撃どころではない。当然だ。玲の焼いたお菓子はまだまだある。向こうは出されたご馳走は何であれ絶対に食べてしまう以上、猟兵よりお菓子の方へ手が伸びたっておかしくはない。
「個人的には回転焼きは餡子とクリームが二大巨頭だと思うんだけど、どう思う?」
「どれもこれも美味しくて甲乙つけがたいなぁ~……でもでも、この生地にはやっぱり餡子がいちばんほっとする味って感じかなぁ? ああだけど餡子の合間にさっきのクリームやチョコのやつを食べると味変感覚でまた食が進んじゃうし、こっちの青いお豆の餡子も彩りがきれいで目にも美味しいし~……」
「たまに白餡食べると癖になるのもパンセポンセの良い所だよね」
「そう! 白餡のこの味わいってなんなんだろうね? 上品でどこか懐かしくて……ふわぁぁ」
 大あくびをひとつ零しながら、なおもモグモグちゃんがお菓子をつまむ手は止まらない。その巨大な顔を見上げて、玲はからかうように問いを投げた。
「……ところで君は、この餡子入り焼き菓子の事なんて呼ぶ?」
「むぐ? もぐ、ももぐ……」
 急かつトラップのような問いかけに、しばしモグモグちゃんは喉に詰まらせた小麦粉生地と格闘することになったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宙夢・拓未
こういう腹ペコな奴には、がっつりボリューム系だな!

しっかり【料理】に没頭して、【時計仕掛けの心臓】を発動させるぜ
攻撃はバリアで弾く

ご飯を炊き始めつつ、キャベツを千切りに

煮干しで出汁を取って、ワカメと、切った豆腐を入れて煮立て、味噌を溶かす

塩胡椒を振った豚ロースに薄力粉をまぶし、溶き卵を絡めてパン粉をつけ、熱した油で揚げれば、トンカツの出来上がり

皿に千切りキャベツを盛って、切ったトンカツを乗せ、ドレッシングとソースを添える
ご飯と味噌汁を椀に盛りつければ……

待たせたな
トンカツ定食の完成だ!
さあ、たーんと食べてくれ!

完全に眠ったら、『オブリビオン・キラー』でとどめを刺すぜ
足りなければ、次の猟兵に託す


雨咲・ケイ
確かにこれは食欲旺盛なオブリビオンに見えますね…。
そして、中々厳しい条件のようですがやってみましょう。

【POW】で行動します。

料理は愛情といいますからね。
そういう事で(?)肉じゃがを作りましょう。
味付けはもちろん煮込み時間も重要ですからね。
敵には銀霊縛鎖を【投擲】して【捕縛】する事で、
しばしの間大人しくして頂きましょう。
それでも攻撃してくる場合は【オーラ防御】と
【盾受け】で体を張って料理を守ります。
具材が柔らかくなって、味も浸み込んだら完成です。
時間と手間をかけましたから、きっと美味しいはずです。

敵の無敵状態が解除されたら、眠っている所で
心苦しいのですが【魔斬りの刃】で骸の海に
帰って頂きます。



「中々厳しい条件のようですが、やってみましょう」
 相手は既に複数の料理やお菓子を腹に収めている。つまりそれは、相手が既に相応の強化を得ているということだ。調理を終わらせる前にこちらが殴り倒されては元も子もないと考えて、ひとまず雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)は退魔の銀鎖をひゅんと頭上で唸らせた。
「しばしの間お待ちいただけますか。何分時間がかかりますので」
「そんなぁ~!」
 しなりを付けて投げつけられた鎖に全身を絡め取られたモグモグちゃんが、抗議するような悲鳴を上げる。とは言え鎖の下で何とかもがこうと頑張る土の巨人の力は強大だ。万一あれを振りほどかれたり引きちぎられたら、身体を張ってでも料理は守らなければ――覚悟を決めつつ、ケイはそうしてキッチンに立つ。
「なるほど、考えたな。それじゃ、こっちも安心して始めさせてもらうとするか」
 感心したように頷いて、宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)もまた彼と並んで厨房に立った。米を研ぐ小気味よい音に、チクタクと時計の針を思わせる音が重なる。それこそは、拓未の胸の奥にあるもの――非戦闘行為への没頭をトリガーとして、彼自身を護る障壁を発生させる時計仕掛けの心臓だ。適度に水分を吸わせた米を炊飯器に入れ、スイッチを押して、拓未はちらりとケイの手元に目をやった。
「豚肉、ジャガイモ、玉ねぎに人参……と来ると、そっちは肉じゃがか?」
「ええ。そちらは?」
「こういう腹ペコな奴には、がっつりボリューム系だろ? トンカツメインで行こうと思ってる」
「なるほど」
 頷き、ケイは再びジャガイモを剥く作業に集中し始める。泥を落としたジャガイモの皮を回し剥き、有害な芽を余さずしっかり抉り取ったら、ごろごろサイズに切り分けて水に晒してアクを抜く。同様に乱切りにした人参も水に漬け、玉ねぎは均等なくし形切りに。
 一方の拓未はと言えば手際よく煮干しで出汁を取り、ワカメと賽の目切りの豆腐を加えて煮立て、流れるように鍋の中身を料理へと変えていく。最後に味噌を溶き、これ以上沸騰することがないようコンロの火を弱めて、彼はケイと立つ位置を入れ替えた。
 油を敷いて熱された厚手の鍋に、次々食材が落ちる音が響く。既に食欲をそそるその音を、そして油の回った肉と野菜がことこと煮込まれる音をBGMに、豚ロース肉が塩胡椒を、薄力粉を、溶き卵を、パン粉を纏っていく。衣が油に触れる軽快な音が猟兵ふたりの耳を打って、そして。
「ああ~……この音、この匂い、ご飯の炊き上がる気配! もう限界なんだよぉ!!」
 遂にモグモグちゃんがケイの鎖を振りほどいた。一直線に突っ込んでくるオウガを、けれど猟兵は恐れない。なぜなら――今この瞬間、既に料理は仕上がっている。
「おう、お待ちどおさん。がっつり食って満腹してくれよな」
「時間と手間をかけましたから、きっと美味しいはずです」
 そう言ってふたりの猟兵がテーブルにそれぞれ並べた料理たちを、モグモグちゃんはゆっくりと順番に見回した。
「定食……定食だね? トンカツに肉じゃが、お肉の入った料理がふたつも入ってて、ボリューム満点な上にまとまり感もあるねぇ! さっそくうれしさポイントがどんどん増えちゃうよぉ! いっただっきまぁす!!」
 ぶっとい指で器用に箸を操り、まずは肉じゃがをひと口。瞬間、モグモグちゃんの目が光を増した。
「ほっくほくの……ほろっほろ! ジャガイモの口当たりが最高だよ! 丁寧に面取りしてから煮込んであるから煮崩れもなくって食べやす~い! その上でこの柔らかい歯ごたえ、この味の染み具合! お醤油や油の味はもちろんお野菜の甘みもしっかり吸ってて、何層もの味わいが舌の上でほぐれるねぇぇ~……」
 温泉にでも浸かっているかのようなとろけ具合でそうしみじみと語尾を伸ばし、続いてモグモグちゃんはトンカツの皿にも箸を向けた。
「そろそろがっつり系のおかずも食べたかったボクには何よりこのトンカツってチョイスがまず嬉しいよねぇ~。そして……うわぁぁ~っ、揚げたての衣がサクッて! それでもって閉じ込められてた肉汁がじゅわぁあ~~って! サクじゅわ~って!! 口の中で油と肉汁が弾けて踊るんだよぉ! 更にそこへ~……キャベツ! ざっくざくの千切りキャベツ! こってり油でコーティングされた口をさっぱり甘く整えてくれるニクい奴なんだよぉ! それをこう、お出汁のしっかり効いたお味噌汁で更にリセットして……ご飯をひと口食べたら、また肉じゃがへ行ってぇ……あぁぁ、口の中がレインボーなんだよぉ! 三角食べが止まらないんだよ!!」
 咀嚼してはしっかり飲み込み、ぺらぺら喋ってはまた別の料理を口に運び、しっかりがっつりよく噛んで飲み込んでまた喋り……以下エンドレス。なんとも嬉しそうなオウガの様子に、どこか感心した風にケイは呟きを零した。
「見た目通りと言うか……本当に食欲旺盛なオブリビオンですね」
「食べてるのが俺らの作った普通の料理な分、いっそ見てて気持ちいいよな」
 これが哀れなアリスを貪り食らうところなどだったら到底そうは言っていられないが、何せ向こうが本気で食べているのはこちらが本気で作った料理だ。奇妙な満足感のようなものを覚えつつ、オウガの前のお椀が空になりかけるタイミングを見計らって、拓未はさりげなくご飯と味噌汁を追加で出していく。
「欲しいタイミングでお代わりをくれるその気遣い! 最高!! ……ふにゃ」
 ぐっとサムズアップして勢いよくご飯を掻き込んだモグモグちゃんの首が、不意にがくんと折れる。さしもの大食いも、そろそろ満腹が近いらしい。オウガの後ろで密かに視線を交わし、ふたりの猟兵は声もなく頷き合った。そして。
「ご、ご馳走様ぁ~……どれもこれも、とっても美味しかったん、だよぉ……」
 きっちりテーブル上の全ての料理を完食し、口を拭ったところで、モグモグちゃんは遂に陥落した。残された食器の上に派手な音を立てて突っ伏し、大いびきをかき始めたその肉体に、もはや無敵の加護はない。
 そして、ケイの輝く手刀がオウガの首を斬り飛ばし、宙に飛んだそれを拓未の小型チェーンソーが粉々に砕いた。頭部を失ったオウガの巨体は、見る間に土くれへと崩れ、やがて溶けるようにして消えていく。
 かくしてここに、ひとつの『ハロウィンの国』は制圧されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月28日


挿絵イラスト