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幸も不幸も祭り囃子の彼方から

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 カクリヨファンタズム――その過去の遺物で組み上げられた世界に、寂れた神社があった。石段の上、まるでこの世を見渡し守るかのような静かな聖域。しかし、今夜はそこは華やかであった。

 祭り囃子に露天を楽しげに眺める妖怪達の笑い声。祭りだ。今夜ばかりは見守るだけの神社にも、懐かしい騒がしさが訪れていた。

「幸と不幸の境目は、どこにあると思うかね?」

 その騒がしさを遠くに聞きながら、白き龍が呟く。『調律竜』フェンネル――幸運を司る白竜に、不運を司る貧乏神の骸魂が取り憑いたオブリビオンだ。

「ああ、ああ、それを知る者がこの世にいるのだろうか? いや、いまい。幸と不幸は表裏一体、一枚の紙の裏表。誰かの不幸が、誰かの幸福であり。誰かの幸福が、誰かの不幸なのだから」

 笑う。幸運を司るモノが、邪悪に笑う。

「では、ワタシがキミ達の運気を調律し証明しよう。表裏一体の幸と不幸を――」

 ――その瞬間、祭りに不幸が訪れた。地面が砕け、妖怪達の幸福を飲み込む大穴が空いたのだった……。



「懐かしさを求める妖怪達に、ひどい真似をするわい」

 忌々しそうに顔を歪め、ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は吐き捨てる。

「今回はカクリヨファンタズムで起きる異変の対処が依頼じゃ」

 石段の上、寂れた神社にいつの間にか建造された縁日。そこに集う妖怪達が崩壊に巻き込まれ、多くが命を落とす事となる――まずは、妖怪達を避難させてやってほしい。

「妖怪達も、楽しんでおってこちらの言葉に耳を傾けはせんだろう。一緒に祭りを楽しみ、仲良くなって説得してやってくれ」

 射的や金魚すくい、型抜きや輪投げ――そんな露天が縁日にはいくつもある。そこでしっかりと楽しみ、妖怪達を逃しておけば後で訪れる地面の崩壊にもかなり対処しやすくなるだろう。

「『調律竜』フェンネルというオブリビオンがどこにおるのか、定かではなくてな。だからこそ、まずはこの崩壊での被害を最小限度に抑えるのが重要じゃ。その後でオブリビオンどもとの戦いがあるじゃろう――よろしく頼むぞ」


波多野志郎
祭りを懐かしい、と思うのは年をとった証拠でしょうか? どうも、波多野志郎です。
今回はカクリヨファンタズムでオブリビオンが企む、夜に行われる祭りを崩壊させる騒動に対処していただきます。

特に第一章は、祭りをいかに楽しんで妖怪達と仲良くなり、逃げるように説得するかが鍵になります。祭りにこんなのあったなぁ、と思い出しながら楽しむプレイングをいただければ、後に崩壊する対処へのボーナスがあるでしょう。

それでは祭り囃子と幸と不幸、その果てにてお会いしましょう。
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第1章 冒険 『崩壊する建物』

POW   :    力技で崩れてきた壁や瓦礫を排除する

SPD   :    素早く移動して脱出する

WIZ   :    崩壊の速度や落ちてくる瓦礫の角度を計算して回避する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ソラスティベル・グラスラン
カクリヨファンタズム、わたし、始めて来るのですよね!
UDCアースやサムライエンパイアにも似た雰囲気
ふふ、これがこの世界のお祭り……一杯楽しんじゃいますよ!

【勇気】も【気合】も十分っ、いざ参らん!
金魚すくい……あれ?一撃で破れちゃいましたけど
射的……な、なぜ当たらないのですか!?
輪投げ……あ、入りましたよ!え?引っかかるのはダメなのです?

ど、どれもなかなか一筋縄ではいかないのですねえ…(食べ物はどっさり買い込み)
並行して避難の説得をかけて回りましたが、そちらはせめて成功してほしいものです
あ、あちらの粉物屋さんはまだでしたね!
たこ焼き五つくださいっ、ついでに斯く斯く云々で避難の準備も!


ディアリア・ラプラシアン
型抜きしてたのに粉末が出来ましたですじょ?金魚の逃げ足は安来ですじょ?おのれ、次行ってみよう~!

●ソイヤソイヤと逃げ出しましょう~
おお、忘れてました。逃がすためのたくらみ、開始です~。
それではここに取りだしたりますは……じゃじゃ~ん!【今日の謎アイテム】~『神輿はまた担ぐ』です~
このアイテム、かつぎ棒の所についてるオッチャン人形が「ソイヤ!ソイヤ!」と叫んでやる気を出させるだけの神輿だったりするのですがね?

祭りの目玉はやっぱりコレでしょう~!と神輿を勧め、神社に来てないみんなにも祭り気分を運びましょうという名目で神輿担ぎを広め、神輿担ぎをしながら離れてもらって楽しい避難を促しますよ~♪



●祭り囃子は夜に響く

 夜の神社に、喧騒が響き渡る。器物の小妖達が所狭しと埋め尽くすお祭りの光景に、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は目を輝かせた。

「カクリヨファンタズム、わたし、始めて来るのですよね! UDCアースやサムライエンパイアにも似た雰囲気。ふふ、これがこの世界のお祭り……一杯楽しんじゃいますよ!」
 【勇気】も【気合】も十分っ、いざ参らん! ソラスティベルが意気揚々と小妖達に混じって縁日へと繰り出していく。

「あれ? 一撃で破れちゃいましたけど」
『姉ちゃん、姉ちゃん。それ、紙だから。後、撃計算は違うぜ』

 金魚すくいの紙のポイ――すくい枠とも呼ばれるそれは、もちろん水に濡れれば破れるのが道理だ。出目金のお面顔の小妖は、愉しげに笑って小さな網で金魚を一匹すくってくれる。

『ほい、残念賞な。うちのは元気がいいぜ、ちゃんと育てたらおっきくなる』
「……いいのですか?」
『すくえなくても一匹はもらえる。それが金魚すくいの古き良き伝統ってもんよ』
「ありがとうございます。それとあまり長くはおられず、避難してくださいね」

 小さなビニール袋に入った金魚を手渡し、古き昭和ルールを口にした小妖が豪快に笑う。ソラスティベルは礼を言うと、本題を口にした。

「ど、どれもなかなか一筋縄ではいかないのですねえ……」

 縁日の食べ物をどっさりと両手に持ったソラスティベルは、『戦果』を思い出す。金魚すくいはもちろん、射的は何故か当たらず投げ輪も引っかかるのがせいぜいで入るのは至らなかった。

(「でも、不思議と損をした気分にはならなかったですね」)

 もぐもぐとフランクフルトを食べながら、ソラスティベルに無駄金を使ったという後悔はない。祭りの空気、というものだろう。成功するのも、失敗するのも同じ思い出。楽しい記憶というのは、成否に関係しないという好例だ。

「並行して避難の説得をかけて回りましたが、そちらはせめて成功してほしいものです……あ、あちらの粉物屋さんはまだでしたね!」
『へい、らっしゃい! うちのは新鮮だよ!』

 そうソラスティベルを出迎えたのは、タコの小妖だ。脚がしめて六本なのは、演出かそれとも――。

「たこ焼き五つくださいっ、ついでに斯く斯く云々で避難の準備も!」
『おう? よくわからんが、そうさな。ちょうど嬢ちゃんので材料も切れたし、ここらで店じまいにしとくぜ』

 ほい、ご百万円な? まいどあり! とお約束のボケをかましながら、タコの小妖は手際よく大玉のたこ焼きを焼き上げる。ソースの良い匂いと、踊る鰹節――食欲を誘う香りに、ソラスティベルは満面の笑みを見せた。

●ソイヤソイヤと高らかに

「型抜きしてたのに粉末が出来ましたですじょ?」
『いや、こう何か……違う意味で景品あげたくなる勢いだったぜよ?』

 ディアリア・ラプラシアン(のんきなトラブルクリエイター・f16673)に、千枚通し――あの穴をあける針のアレだ――の小妖が、いっそ感心したように言った。

 型抜きとは精糖などを用いた型を、ピンを使って型の通りに抜けるとお金がもらえるという昔の縁日では定番だったものである。繊細な作業を必要とし、ディアリアのように豪快にやれば食べられる高い粉末が出来上がるのだ。

「金魚の逃げ足も安来でしたじょ? おのれ、次行ってみよう~!」
『おう、まいどあり! 楽しんでくるぜよ!』

 立ち上がり歩き出そうとしたディアリアは、ふと足を止める。それに、千枚通しの小妖が声をかけた。

『お、どうしたぜよ?』
「おお、忘れてました。逃がすためのたくらみ、開始です~」
『ん?』

 ディアリアががさごそと何かをあさり出すと、周囲の小妖達が何事かと覗き込んで来る。あったです、と目を輝かせ、ディアリアはそれを掲げた。

「それではここに取りだしたりますは……じゃじゃ~ん!【今日の謎アイテム】~『神輿はまた担ぐ』です~」
『ソイヤ! ソイヤ!』

 それは今日の謎アイテムで召喚された、かつぎ棒の所についてるオッチャン人形が「ソイヤ!ソイヤ!」と叫んでやる気を出させるだけの神輿であった。

『おおー! 神輿、神輿だ!』
「祭りの目玉はやっぱりコレでしょう~!」

 周囲の小妖達が、目を輝かせで担ぎにやって来る。そこにちょうど、出目金のお面顔の小妖が出くわした。

『おお、どうしたい? 神輿たぁ、気が利いてるじゃないか』
「おお、金魚すくいのおじさん! もう店じまいです?」
『あんた以外にも避難しろって嬢ちゃんがいてさ、んで、早めに店じまいよ』

 出目金お面の小妖は豪快に笑うと、小さな腕を腕まくりして神輿に近づいた。

『よぉし、久しぶりにいっちょ担ぐか!』
『おお、そいつはいいぜよ! 昔を思い出すぜよ!』

 ソイヤ! ソイヤ! の掛け声と共に、小妖達が神輿を担いで練り歩く。ぽっかりと一角だけだが、確かにそこに空白が生まれた。

「うんうん、楽しい避難といきますよ~」

 その後に続いて、ディアリアはソイヤと声を掛けながら歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロイド・テスタメント
【Attentat】

心情:大変な事になっている様ですので、手助けに参りましょう。
念のために和服で向かいましょう

行動:
【世界知識】を活かして【礼儀作法】の知識を駆使しつつ会話に混ざりましょう
「こんばんは、私はこういう祭は初めてなので案内していただけませんか?」
大人よりも、子供に目線の高さを合わせながら優しくお願いしましょう
「お礼に食べたこともない、お菓子を差し上げましょう。前払いで、ね?」
甘い香りがするサツマイモの焼き菓子を渡しておきます
色々と教えて貰ったら、【目立たない】様に避難経路を書いた紙を月さんに渡す
避難場所で待ち、逃げてきた人々を優しく声を掛けて安心させます

※クレヴィスを【月】呼び


クレヴィス・ムーンブラスト
【Attentat】

心情:なんという事が……沢山の命を守る為にやるしかないね

行動:
ロイド君には人心把握と縁日の規模、そして何より大切な逃げ道の確認をお願いしておいたよ
「さぁ、皆さん〜異国の物語を元にした占いをしてあげるよ」
武器の【蒼玉】を占い用の水晶代わりに使い、悩みや他愛もない話をしつつ【占星術】で占う
ロイド君と連携して占いを当てて信頼を得てみよう
「大変だー!今からこの場所で災いが起こる!」
大袈裟に叫んで、【白銀ノ七星】を呼び出すね
「あれは神の使い。皆を安全な場所まで案内すると言っておるよ」
白銀ノ七星で誘導させて避難を促すよ
「何があっても神の使いが皆を守ってくれるよ」

※月呼びは気にしてない



●礼儀正しく、救いの手を

「こんばんは、私はこういう祭は初めてなので案内していただけませんか?」

 そう小さな浴衣姿のネズミ妖怪達に声をかけたのは、和服姿のロイド・テスタメント(全てを無に帰す暗殺者・f01586)だ。視線を合わせるためにしゃがみ、優しく語りかけるロイドに、ネズミの妖怪達は耳をピクピク動かす。

『うん! いいよいいよ!』
『おおぜいがたのしいよ! たのしいよ!』
「ありがとうございます。お礼に食べたこともない、お菓子を差し上げましょう。前払いで、ね?」

 ロイドが手渡す甘い香りがするサツマイモの焼き菓子に、ネズミの妖怪達ははしゃぎながら祭りを案内してくれた。どこに何がある、どこにどんな店がある――ネズミの妖怪達は、この神社についてとても詳しく教えてくれた。

『ぼくたちね! ここにすんでるの!』
『でも、したにはいっただめなんだよ! あぶないんだよ!』
「おや、どうしてですか?」

 懐いてくれたのか、両手に二体のネズミ妖怪が手を繋ぎながら左右から教えてくれた。

『どうくつがね、あるんだよ!』
『どうくつはくらくって、とってもふかくてあぶないの!』
「なるほど、下は危ないのですね……」

 ならば、避難はその洞窟のない場所に誘導しなくてはいけませんね、とロイドはしっかりと避難経路に入れておいた。表向きにはわからない、住人でなければわからなかった貴重な意見だ。

「さぁ、皆さん〜異国の物語を元にした占いをしてあげるよ」
『占い、占いかぁ』
『お、オイラを占っとくれよ!』
「はいはい、順番だよ! 並んで並んで」

 そんな時だ、そんなよく通る声が鳴り響いたのは。石段の隅にいたのは、クレヴィス・ムーンブラスト(不老の呪いを受けし永遠の乙女・f20897)だ。蒼玉を占い用の水晶代わりに、辻占いで小妖達を集めていた。

 蒼玉を覗き込む事しばし、クレヴィスは芝居がかった口調で声を張り上げる。

「大変だー! 今からこの場所で災いが起こる!」
『おお!?』

 突然叫んだクレヴィスよりも、小妖達を驚かせたのは唐突に姿を現したホワイトプラチナハーフムーン形態の七星――白銀ノ七星だ。

「あれは神の使い。皆を安全な場所まで案内すると言っておるよ」
『いやいや、災いってなんなんだって話じゃね?』

 小妖の声に、クレヴィスはふとロイドに視線を向ける。ロイドはネズミの妖怪達へ優しく言った。

「災いが起きると大変なので、あの神の使いについて行ってくださいね」
『うん、おにいちゃんがそういうなら!』
『いこういこう!』

 ネズミの妖怪達が白銀ノ七星に続くと、小妖達も釣られてようにその後に続いていく。集団心理、というものだ。誰かが行けば、自然と自分も――特に力が弱く群れる事を常とする小妖であれば、なおの事だった。

「では月さん、よろしくお願いしますね」
「任せて」

 ロイドから密かに手渡された紙を、クレヴィスは確認する。それはロイドがネズミの妖怪達と縁日を回って得た、貴重な情報だ。それに従い、クレヴィスは白銀ノ七星に小妖達を誘導させた。

「沢山の命を守る為にやるしかないね」
「ええ」

 クレヴィスの言葉に、ロイドは小さくうなずく。まだ、仲間達も避難誘導を行なっている――ならば、自分達が出来る範囲でやるだけだ。

「それでは私も避難場所で待っていますので――」
「ええ、わたくしは引き続きここで」

 ロイドは気配を消し、闇に紛れて消えていく。クレヴィスはコホンと咳払いすると、新しく石段を登ってきた小妖達へ神妙な顔で告げた。

「さぁ、皆さん〜異国の物語を元にした占いをしてあげるよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

久坂部・匡弥
縁日は思いっきり楽しむ事
そうすれば祀られている神様も喜ぶんだ…ってお袋が言ってたなぁ

いや~縁日は開催する側だったんで新鮮だわ

主に射的で遊ぶ
昔は悔しい思いをしたもんだが今ならいけんだろ
んん?落ちねえな…
店主のアドバイスに耳を貸してもう1回トライ
よっし、イケた!
後は他妖怪らの成果を褒めたりで仲良くなっちゃうぜ?

で、そろそろ頃合いか

避難は声かけを主に行動
UC発動、コミュ力強化
この場所は今から崩壊するから離れるんだ!オレは何者だって?お前らを助けに来た猟兵だよ!
動きが鈍い奴には、心は痛むが逃げるよう恫喝まがいに命令
いざ崩壊が始まったらオレが抱えて移動したり、
他の猟兵に任せたりで安全な場所へ移動させる


荒珠・檬果
お祭り、縁日。それは楽しむものですね!

お面屋台で、お多福お面買ってつけて。飴細工のお店によって、虎猫のを作ってもらいましょう。
ああ、こうして出来るのを見るのはいいですね…!(ほわーん)
周りの妖怪さんたちとも一緒に見て楽しめる。それが飴細工屋台…!

あ、私、猟兵です。実は、この付近が崩落する恐れがありまして。今逃げたら、命が助かるんです。って正直に。

もし逃げられない方がいましたら、【無限袋】に避難をさせます。もふもふですよ。


御剣・刀也
POW行動

祭りか
祭りと言えばラムネに射的だな
まぁ、大体こういう屋台の射的って景品に重りが入ってたりするもんだが、人間のじゃないしそんなことはないだろう
じゃんじゃか落とすぞ

ラムネを飲みながら祭りの中を歩いて射的屋を探す
人間の祭りでは景品に重りが入ってるんじゃないかと一悶着起こしたがここはそんなこと無いはず
大量ゲットできればお菓子は小さな子にあげる
全然ダメなら笑ってる連中に怒鳴って祭りの外にぶん投げる



●お祭りを楽しむ者達

「お祭り、縁日。それは楽しむものですね!」

 仮面屋でお多福お面を買ってつけた荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)が、神社の提灯が揺れる無数の明かりの下を歩いていた。どうせなら、お祭りを楽しまないのは嘘だ。ふと、お面以外の目的の屋台を見つけ、檬果は近づいた。

「すみません」
『おう、らっしゃい。ほしい飴細工はあるかい?』

 飴細工屋台である棒キャンディの小妖が、朗らかに笑う。顔はどこかわからないが、笑っているのは伝わるのが不思議だ。檬果が屋台に視線を落とすと、そこには見事な干支十二匹の飴細工が並んでいた。

「虎猫ってできますか?」
『おう、当然よ。面白いとこ、突くね』

 ケタケタと店主の小妖が身をくねらせる。干支の虎とは違い、同じ模様同じ姿形でソレと分からせる――面白い、と棒キャンディの小妖は、黒と黄色の飴を手に取ると組み合わせ始めた。

「ああ、こうして出来るのを見るのはいいですね……!」

 檬果が感心したように言うと、わっと周囲の小妖達からも喝采と驚きの声を上げる。そう、混ぜ合わせるのではなく組み合わせる――黒と黄色の長い飴を複雑に絡めあわせてはヘラで形を整え、切って、整え、切って。その動きに迷いはなく、傍から見れば魔法のように形ができあがっていった。

『ほい、どうぞ』
「ありがとうございます!」

 そうして完成したのは、招き猫の形をした虎猫の飴細工だった。なるほど、虎を描写する時にこの形は選ばない――感心して、檬果は出来上がったばかりの飴細工を受け取った。

 ――その背後で、久坂部・匡弥(彌駆徒・f30222)はどこか懐かしそうに周囲の光景を見ていた。

「いや~、縁日は開催する側だったんで新鮮だわ」

 義理人情を重視する組頭に恵まれ四十年年余り、円満に引退という時に猟兵に目覚めた匡弥にとって、この光景はただがむしゃらに駆けていた若い頃そのままだった。空気が、人々の賑わいが、胸の奥から郷愁を引き出すような想いだった。

「縁日は思いっきり楽しむ事。そうすれば祀られている神様も喜ぶんだ……ってお袋が言ってたなぁ」
『はは、いい事言うね、あんた。祀られる神様ってのはみんな寂しがり屋で、お祭り好きなもんさね』

 答えを求めた訳ではない匡弥の声にそう返したのは、頭が円形の的になった小妖だ。こういう気安い客とのやり取りも、縁日の屋台側としてはよく見た光景だった。的顔の射的屋の店主に小銭を払い、匡弥はおもちゃのライフル型空気鉄砲を手に取る。十二発で百二十円――昭和も四十年台、自分が子供の頃でも良心的なお値段だ。

「昔は悔しい思いをしたもんだが今ならいけんだろ」

 ポン、と気の抜ける音と共に、コルクの弾は勢いよくブリキのおもちゃの箱に当たった。しかし、箱は重みがあるのか倒れる気配もしなかった。

「んん? 落ちねえな……」
『大物狙いの時は、一発じゃ落ちんよ。景品自体に重みがあるからな。景品の置かれ方を見て、重心がどこか見極めんと』

 的顔の店主に言葉に、ふむと匡弥は納得する。少なくとも景品の後ろに落ちない細工があるような、あこぎな店ではないらしい。特にブリキのおもちゃの箱を横ではなく縦にしている辺り、落ちやすさを計算している良心な屋台だ。

 匡弥は改めてコルクの弾を詰め直し、箱の上側に狙いをつける。一発、ニ発と箱が揺れ、三発目でついに箱が下へと落ちていった。

「よっし、イケた!」
『ほい、見事なもんだ。あんた、やってた節かい?』
「お前さんと同じ側だがね」

 景品を手渡され、匡弥はニヤリと笑う。的顔の店主も、愉しげにそれに返そうとした時だ。

『おおおおおおおおおお!!』

 同じ射的屋で、小妖達の驚きの声が上がる。それに的顔の店主も肩をすくめた。

『おいおい、また落としたのかい』
「お、荒らしかい?」
『ははは、上客って意味だがね』

 そんなやり取りがされているとは露知らず、片手で器用にコルクを詰め直すのは御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だった。

「祭りか、祭りと言えばラムネに射的だな」

 残った片手でラムネを傾ける姿は、一歩間違うとビール缶片手に射的を楽しむその道のお兄さんのようだった。

(「人間の祭りでは景品に重りが入ってるんじゃないかと一悶着起こしたが……」)

 刀也の心配も、杞憂に終わった。むしろ逆で、きちんと当たれば景品は落ちるし、景品が倒れたらそれも落ちた扱いにしてくれる始末だった。

「儲けになるのか?」

 思わずそんな疑問を刀也が投げかけてしまったが、的顔の店主は心地よい笑みと共に笑い飛ばした。

『外なら泣きっ面に蜂だがね。ここはカクリヨファンタズム、客が楽しんでくれるのが一番さ……そういう意味じゃ、本当に屋台の店主ができてるって思うよ』

 その言葉に嘘偽りのない本音が感じられて、刀也もそれ以上は言葉を重ねなかった――そんな刀也の袖を、小さい手が引いた。風鈴の頭を持つ、女の子の小妖だ。

『兄ちゃん、兄ちゃん! 次、あのお菓子!』
「おお、任せとけ」

 刀也はそれを笑って請け負い、お菓子袋へとライフルの銃口を向けた。

●そして、不幸の開幕へ――

『兄ちゃん、ありがと!』
「おう、遅くならない内に帰るんだぞ」

 鈴の音のような声で手を振って去っていく風鈴の小妖と他の子供の小妖達を刀也は見送った。子供達の手には、刀也が射的屋で取ったお菓子があった。

『こいつぁ、店じまいしとくかね――』

 的顔の店主が店の片付けをいくらか終えた、その時だ。

 ――ピシリ、とどこかで決定的な何かが壊れる音がした。それが何なのか理解する前に、匡弥が叫んだ。

「この場所は今から崩壊するから離れるんだ!」
『あん? あんた、いきなり――』
「オレは何者だって? お前らを助けに来た猟兵だよ!」

 心が痛むが命には変えられない、と匡弥が恫喝する。その勢いに、小妖達が逃げ出した刹那――地面が、砕け始めた。

「おい!」
「言われなくても!」

 匡弥の呼びかけに、刀也も地面の崩壊に巻き込まれそうだった小妖を抱え、後方へ跳んだ。

『屋台が――!』

 匡弥に抱えられた棒キャンディの小妖や、悲痛の声を上げる。彼の飴細工の屋台が、地面の崩壊に飲まれる――そう思った時だ。

「大丈夫! させませんよ!」

 崩壊に飲まれそうになった屋台を、檬果は無限袋(ヨクアルベンリナフクロ)で吸い込んでいく。その一角は既に金魚すくいや型抜き屋など、いくつかの屋台が店じまいを終えていて人の流れも途絶えていたのが、不幸中の幸いだ。

 ガゴ! と大きな穴が、境内に開く。その中からする気配に、檬果は叫んだ。

「――来ます!」

 その警告と同時、大穴から黒い蝙蝠がごとき群れが神社の境内へと飛び出してきた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『流しヒトガタ『ヒンナ』』

POW   :    ヒンナの権能
攻撃が命中した対象に【最高の金運】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と発生する「死への苦痛」】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    ケガレ
【首くくり縄に変化させた穢れ】【足枷に変化させた穢れ】【手枷に変化させた穢れ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増えていく
レベル×1体の、【黒い紙の体】に1と刻印された戦闘用【式神(自身と同じ形)】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●禍福は糾える縄の如し

「幸と不幸を縄に例える者もいるが、今のそれは幸の裏返しかね? 不幸の裏返しかね?」

 地の底、神社の地下にあった洞窟から天を見上げ、『調律竜』フェンネルは自問自答した。その答えはどちらも正解であり、間違いである――フェンネルにとっては、いつもの答えであった。

「だが、キミ達は――この結果を導き出した猟兵なら、完全な正解が出せるのかね?」

 それを問いたい。しかし、まずはその資格を問うのが先だ。

「行きたまえ。答えの資格を問うために」

 フェンネルの足元から、膨大な数の『黒』が飛び立った。流しヒトガタ『ヒンナ』――人の不幸を背負ったヒトガタの群れが、今、夜空へと飛び立つ。皮肉にも、誰かのために作られたモノが、命を奪うそのために……。
御剣・刀也
答え?
そんなもん知るか。俺は俺の魂の命ずるまま生きる
俺が答えにたどり着くかどうかなんて知らん。どんな答えだろうと、死ね時に笑って死ねればそれでいい
答えが正しいかどうかは後の人間が勝手に決めることだ

ヒンナの権能で金運を最高にされても金に興味がないので、無視して攻撃する
ヒンナの攻撃は第六感、見切り、残像で避けてカウンターで斬り捨てる
遠距離からならば、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで間合いを詰めて捨て身の一撃で斬り捨てる
「金なんてあっても困るだけだ。必要なだけあればそれで良い。俺が欲しいのは金じゃ手に入らないんだよ」


荒珠・檬果
(無意識に)あれまあ。昔に作った彼らではないか。
(はっとして)…はて、私は今、いったい何を言った?

とにかくです!群れをどうにかしないと!
カモン【バトルキャラクターズ】!召喚せしは、魔法使い。
浄化+火属性攻撃の魔法を、多重詠唱で…!

こちらに来るケガレには、浄化つきの結界術で対抗しましょう。
出来そうになかったら…第六感で回避を。とくに首くくり縄は避けないと。
いや、私の首どこだって話ですが。

幸も不幸もコインの裏表。私はそう思ってますよ。


ディアリア・ラプラシアン
はっはっは~♪いっぱい出て来ましたねぇ……むり。我輩逃げますですよ~!

●木を隠すなら森の中、爆破を隠すなら煙の中~
もう【逃げ足】フルスロットルでとことん逃げ回りますよ!?
増えまくるヒトガタさんを妨害するために<ばくだん(偽)><おやつポシェット>からバナナやらまきびしやら【投擲】しまくっちゃいますよ!?
あっというまに煙だらけまきびしだらけの大惨事ですよ!?
……ああ、ヒトガタさんたち?もう我輩追いかけるのやめた方が良いですよ?
な・ぜ・な・ら♪
<イタズラメディスンセット>から取りだしたりますこの【毒(使い)】薬。煙の中にポイッと投げると反応して~爆♪発♪しちゃうからですよ~♪

アドリブ・共闘OK


久坂部・匡弥
判ってた事だが、イイ時間をぶっ壊しやがってクソったれが
こういう悪意マシマシな理不尽にゃ幸も不幸も無えんだよ

敵の動きから攻撃を事前察知して回避するが
当たっちまったら効果範囲外まで移動しつつ
原因の敵を銃で攻撃、権能を外してえ所
食らった苦痛は気合いで耐えんぞ!
…この、胴元の掌の上でいいように転がされてるような
嫌な感覚には覚えがありすぎるしなぁ
慣れたもんよ

しっかしチマチマやってたんじゃキリないぜ
UC発動、攻撃回数重視で動く
敵が多く群れてそうな所を見当付けて突っ込んでいくぞ
釘バットを一発ブチ込んでまとめて撃破を狙ったり
間近に敵が居ねえ場合は、銃の早撃ちを当てて手早く数を減らす
そろそろ親玉の顔を拝みてえわ


ロイド・テスタメント
【Attentat】
※他の人と連携可

心情:ヒトガタ……これは、月さんを連れてきて正解でしたね
資格? 幸があるからこそ不幸があり、不幸があるからこそ幸を得た時の幸福感が強く感じるのです
完全な正解なんてありません! 

戦闘:
沢山突っ込まれる前に【罠使い】で『Blau Kreuz』を張り巡らせ【呪詛】を込めておきましょう
「数が多ければ、さっさと減らす方が優先で良いか? 月」
攻撃は【第六感】【残像】で回避、もしくは鉄の処女で【武器受け】ましょう
敵のUCで増えたら私のCUで数を更に減らします
「さぁ、全てを、過去へ……」
不意打ちは『咎人の双剣』で【先制攻撃】で【投擲】


※クレヴィスを【月】呼び


クレヴィス・ムーンブラスト
【Attentat】
※他の人と連携可

心情:なるほど、人の厄を宿して浄化させるモノであり、変わり身として使うのに……
単純じゃな。

戦闘:
「任せて、ロイド君。七星、結界を張る!」
【高速詠唱】で【結界術】【オーラ防御】を張って奇襲、数の攻撃に備えるね
『白銀ノ七星』は炎【属性攻撃】で【範囲攻撃】によってヒンナを燃やすよ
「不浄なるヒトガタ、ヒンナよ。全て燃やし尽くしてあげるわよ!」
『彼岸ノ彼方』を手にして、UCを【高速詠唱】で発動させて厄もついでに浄化してあげようね
「炎って、一番簡単で一般人でも出来る浄化方法だけど、地縛霊限定なのよね」
本当、神様以上に何を考えているのか分からないわ

※月呼びは気にしてない



●流しヒトガタ

 神社の境内に空いた大穴、そこから溢れ出す黒いヒトガタの群れを見上げ、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は呟いた。

「あれまあ。昔に作った彼らではないか」

 その呆然とした呟きは、無意識なものだ。ハっと我に返ると檬果はこぼした。

「……はて、私は今、いったい何を言った?」
「はっはっは~♪ いっぱい出て来ましたねぇ……むり。我輩逃げますですよ~!」

 ディアリア・ラプラシアン(のんきなトラブルクリエイター・f16673)が思わず、その場から駆け出す。蝙蝠のように周囲へと飛び散る流しヒトガタ『ヒンナ』の群れに、久坂部・匡弥(彌駆徒・f30222)が吐き捨てた。

「判ってた事だが、イイ時間をぶっ壊しやがってクソったれが。こういう悪意マシマシな理不尽にゃ幸も不幸も無えんだよ」

 匡弥が言い捨てた瞬間、流しヒトガタ『ヒンナ』達が夜を覆い尽くすように増幅していった。小妖達を逃し終えたロイド・テスタメント(全てを無に帰す暗殺者・f01586)は、しみじみと隣のクレヴィス・ムーンブラスト(不老の呪いを受けし永遠の乙女・f20897)へ告げた。

「ヒトガタ……これは、月さんを連れてきて正解でしたね」

 その視線と言葉に、クレヴィスはうなずく。白銀ノ七星を眼前に浮かべ、言った。

「なるほど、人の厄を宿して浄化させるモノであり、変わり身として使うのに……単純じゃな」

 呪術という面で考えれば、単純であれば単純であるほど恐ろしく――そして、強い。ならばこそ、この穢れを引き受けるために増えるという単純な効果でさえ強力なものだ。

「とっとと終わらせるとするか」

 御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は獅子吼を抜き、言い放つ。本命はこの先――地の底にいる者だ。

 だが、それを流しヒトガタ『ヒンナ』の群れは許さない。神社そのものごと押し潰す勢いで、襲いかかってきた。

●黒いヒトガタ

「任せて、ロイド君。七星、結界を張る!」

 クレヴィスが高速詠唱で展開したのは、結界だ。オーラの障壁が、黒い雪崩となった流しヒトガタ『ヒンナ』の群れを真っ向から受け止め――白銀ノ七星が放つ炎が、黒を飲み込んでいく。

「さすがに一気に燃やし切るのは無理ね」

 クレヴィスの判断は的確で、冷静だ。この最初の接触では動きを止めるだけで十分――ロイドが既に手を打っている。

「数が多ければ、さっさと減らす方が優先で良いか? 月」

 ロイドが右手を振るった刹那、結界に忍ばせるように張り巡らせていたBlau Kreuzの青い鋼糸が、黒いヒトガタを細切れに切り裂いていった。

「とにかくです! 群れをどうにかしないと! カモン【バトルキャラクターズ】! 召喚せしは、魔法使い」

 檬果が召喚したのは、赤いローブの魔法使い達――バトルキャラクターズだ。魔法使い達はその真紅のガントレッドをガシャン! と展開、無数の炎の旋風が『ヒンナ』を飲み込んだ。

 炎の竜巻が熱風を巻き上げる――それと同時、内側から炎が爆ぜた。式神の黒いヒトガタが合体して巨大化、燃えながら溢れ出したのだ。

「……この、胴元の掌の上でいいように転がされてるような、嫌な感覚には覚えがありすぎるしなぁ。慣れたもんよ」

 燃えながら神社や周囲の建物に落ちようとする黒いヒトガタを、匡弥は拳銃で撃ち抜いていく。落ちる軌道が逸れたヒトガタを、落下地点を読んだ刀也が獅子吼の一閃で両断。駆逐していった。

「まったく。数はいても斬り応えがない――」

 だが、バサバサバサバサ! と式神を囮に本体の『ヒンナ』の群れは四散していく。その一部に追いかけられ、ディアリアは疾走していた。

「むりむりむり、この数はさすがに無理ですよ~♪」

 ぽいぽい、と投げつけるのはばくだん(偽)やおやつポシェット(臨戦仕様)から取り出したバナナやらまきびしやらだ。ぼん! と軽い破裂音と共に、ばくだん(偽)が爆発し、モクモクと煙幕が視界を覆う。

 それでも『ヒンナ』の群れは追いかけるのを止めない。だから、ディアリアもフルスロットルで逃亡を続行。奇妙な追いかけっ子は、続いた。

●運も不幸も誰のもの?

 流しヒトガタ『ヒンナ』の恐ろしさは、その圧倒的な数だけではない。金運を与える代わりに死の苦痛を味あわせる、ヒンナの権能。さまざまな呪詛による拘束を与えて能力を封じる、ケガレ。その呪詛を、数の暴力で叩き込んでくる事――それこそが、脅威であった。

 だが、ここには流しヒトガタ『ヒンナ』にとっての天敵が存在していた。

「とくに首くくり縄は避けないと。いや、私の首どこだって話ですが」

 放たれる『ヒンナ』からのケガレを、檬果が結界術で浄化していく。その呪詛の基礎を把握しているかのような効率的かつ的確な浄化に阻まれ、ケガレは猟兵達へと届かなかった。

 そして、ヒンナの権能を真っ向から受けながら刀也は強く踏み込む。死の苦痛を感じていないのではない、ことごとく無視しているのだ。

「金なんてあっても困るだけだ。必要なだけあればそれで良い。俺が欲しいのは金じゃ手に入らないんだよ」

 大上段からの斬撃で、巨大な式神を両断。刀也は笑みさえ浮かべ、言ってのける。苦痛を耐える、それも一つの正解だった。

「しかし、数が多すぎるな――」

 匡弥が釘バットで『ヒンナ』達を殴打、叩き落としながらふと視線を神社の裏にある森へと向けた。『その』気配に、匡弥は気付いたのだ。

 ――その頃、神社の森で『ヒンナ』の群れに追われていたディアリアは大木の幹に背を預けていた。そして、自分を囲むように隙なく展開する黒いヒトガタ達へ、ディアリアは笑った。

「……ああ、ヒトガタさんたち? もう我輩追いかけるのやめた方が良いですよ? な・ぜ・な・ら♪」

 ディアリアがイタズラメディスンセットから取り出したのは、毒薬だ。噴煙に塗れた森の中で、とびっきりのイタズラが成功した笑顔でディアリアは言った。

「煙の中にポイッと投げると反応して~爆♪ 発♪ しちゃうからですよ~♪」

 ――直後、神社の裏の森に鈍い爆発音が鳴り響いた。たまらず逃げ出した『ヒンナ』の群れ――それを檬果の操る魔法使い達が、炎の渦で焼き尽くしていく!

「あ、漏れはお願いします」
「おう」
「命賭けるんだ。気を引き締めねえと、なぁ?」

 炎の渦から漏れた『ヒンナ』を、刀也の獅子吼による剣刃一閃と匡弥の釘バットによる乾坤一擲が斬り伏せ、叩き潰した。

「不浄なるヒトガタ、ヒンナよ。全て燃やし尽くしてあげるわよ!」

 そこへ、彼岸花の彫刻が施された年期の入った漆黒の杖――彼岸ノ彼方をクレヴィスが振るう。放たれたのはウィザード・ミサイル、膨大な数の炎の矢だ。

「炎って、一番簡単で一般人でも出来る浄化方法だけど、地縛霊限定なのよね」

 本当、神様以上に何を考えているのか分からないわ、とクレヴィスの目の前で『ヒンナ』の群れが灰になっていく。そして、咎人の双剣を投擲し巨大式神を穿ったロイドが言い捨てた。

「さぁ、全てを、過去へ……」

 放たれた天から降り注ぐ無数の黒い槍――ロイドの過去を屠る黒(アートルム・プラエテリトゥム)が止んだ時、そこには黒いヒトガタは一枚たりとも残ってはいなかった。

「そろそろ親玉の顔を拝みてえわ」
「まったくだ」

 匡弥と刀也が、地面に空いた大穴を見下ろす。まるで地獄の底まで届くような空洞――そこから、巨大な力が舞い上がって来ようとしていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『調律竜』フェンネル』

POW   :    不運を招く黒布
【貧乏神の布切れに似た黒いオーラ】が命中した対象を切断する。
SPD   :    白炎の奔流
【白炎のブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    常時発動型UC『ホイール・オブ・フォーチュン』
【対象の肉体に不運を放ち、行動の失敗や】【ユーベルコードの不発を誘発させる。】【あらゆる行動の成功率を上げる幸運】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アイン・セラフィナイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『調律竜』フェンネル

「見事、認めざるを得ないだろう」

 大穴の底から浮かび上がった『調律竜』フェンネルは、神社の境内に降り立つ。激戦の跡が生々しい戦場を見渡し、幸と不幸を操る白竜は告げた。

「見届けた、猟兵。キミ達は、答えを持ち得る者だ。幸運とは何か? 不運とは何か? その答えを出せる者は、何かを果たした者だけなのだから」

 厳かに、あるいは淡々と、フェンネルは続ける。幸運の白竜と不運の貧乏神、その双方の力を持つ竜は、だからこそ問う。

「さぁ、答え合わせだ。キミ達の答えを、この戦いの先に見せるがいい――!」
御剣・刀也
答え?
俺の答えはいつだってシンプルだ。俺の道の邪魔をするやつは斬り捨てる
で、今はお前が邪魔だ。だから斬る。それだけだ

不運を招く黒布は第六感、見切り、残像で避けるか、武器受けで弾き飛ばし、勇気で不運も痛みも恐れずダッシュで一気に自分の間合いに持ち込んで、捨て身の一撃で斬り捨てる
運も不運も関係なく、そんなまぐれのようなものが入り込めるような底の浅い戦いではないと一太刀に全てを込めて斬り捨てる
「運だの不運だの、そんなの関係ない。戦いになったら、俺はいつだってベストコンディションだ。そんなもんが入り込む余地はねぇよ」


荒珠・檬果
(無意識に)何じゃおぬし。彼らを使いおって。さらに大事にしよってからに。気にくわぬわ。
(?となり)ん?…まあ、気にくわないのは本当なので。

【兵貴神速】で相手を押し込めてつつ、私は紅紋薙刀でのなぎ払い(継続ダメージつき)を行いますね!
さらに、薙刀だけにあらず。七色竜珠のビーム攻撃もありますよ。遠近両方できるようにしてますから。
相手からの攻撃は第六感と見切りで回避を試みます。結界術で多少の遅れを出させるのも手かな、とは思っていますが。

※七色竜珠の赤だけ『紅紋薙刀』に変換してるので、その色だけ欠けています。


久坂部・匡弥
煙草に火を付けて一服、思考力をクリアに。

幸不幸ってのは人によるんだよ。
例えば、さっき祭を楽しんでいた奴らからすると
幸運ってのは何事もなく祭を楽しめる機会であり、
不運ってのはテメェみてえな無粋者に楽しみを邪魔される事だろうよ
オレとしては、テメェをブン殴れる機会に巡り合えて
幸運に恵まれてると思ってるがな!

UC大撲殺発動
瞬間思考力と戦闘知識を総動員して最良の選択をしたいもんだ
白炎をどうせ食うなら、その最中に不意打ち反撃をする勢いで特攻
敵の柔らかそうな箇所や、
他猟兵の攻撃を受けて損傷している箇所を狙って釘バット連打
その傷を抉ってやんよ

なあ、今の気分はどうだ
幸せか?不幸せか?
…そうかい、そりゃ良かったな


ディアリア・ラプラシアン
幸運と不運の論理は同意見ですね~。ただ……運の良し悪しはあなたでも全てを操り切る事はできませんですよ~?

●幸運か不運かは、最後の結果が出るまで確定しない物なのですよ~
一撃をぶつけて、ありえない不運の連鎖の楔を打ち込むのですよ~♪
【逃げ足】発揮して闘う気を無くしていると【演技】して興味を無くすようにして【目立たない】ようになってから、【化術】で風景の一つに化けて近づくのを待ってから、【だまし討ち】して一撃を叩き込みますよ♪
あとは、UC範囲を保ちつつ次々不運に巻き込まれるのを楽しませてもらいますよ~

「幸運使ってしのぎました?でも、それを凌いだのははたして『幸運』でしょうかね~?」

アドリブ・共闘OK


ロイド・テスタメント
【Attentat】
※他の人と連携可

心情:
幸か不幸か……それを決めるのは己自身、と親父は言ってましたね

戦闘:
「マイナスにはマイナスをぶつけてしまえば良いのです」
敵の攻撃は【第六感】【残像】で回避、もしくは『暗殺ナイフ』で【武器受け】して【呪詛】で相殺したいです
「流石、月。ならば、こっちもこっちでやるしかないな」
UCを使用し【傷口をえぐる】ながら【吸血】して、【2回攻撃】のナイフで切り付けて【生命力吸収】します
「神にも先が見えない者たちの」
答えは一つではないですから、生きるモノ全て個々に答えがあります
表裏一体とは、アナタ達であり永遠の課題でもある

※クレヴィスを【月】呼び


クレヴィス・ムーンブラスト
【Attentat】
※他の人と連携可

心情:
何? 呪われた身に対してその問いは愚問よ?
背負わされた運命は重たくとも、悲しくとも、手を取ってくれたロイド君の父君との出会いはとても幸運よ

戦闘:
「負は連鎖するが、元を絶ってしまえば終わってしまうわ」
『白銀ノ七星』に【結界術】の【オーラ防御】で守ってもらうの
UC使用して黒き炎に聖【属性攻撃】で貧乏神へ少しでもダメージを与えれば……そうよ!
「奪わせて、貰うわ!」
黒い炎から【生命力吸収】すればじわじわと弱らせれるね!
「答えは、その数だけの回答があるのよ」
心がある生き物はそうなんだと、大昔から見ているわたくしでさえ思うもの

※月呼びは気にしてない



●表裏一体

 久坂部・匡弥(彌駆徒・f30222)は、咥えた『Bad Luck』に火を点ける。

「はぁ……」

 息を吸い込めば、ほんのり甘い紫煙が肺を満たしていく。その濃厚で重い肺にこもる感覚に、匡弥は自身の意識がクリアになっていくのを感じた。

「幸不幸ってのは人によるんだよ。例えば、さっき祭を楽しんでいた奴らからすると、幸運ってのは何事もなく祭を楽しめる機会であり、不運ってのはテメェみてえな無粋者に楽しみを邪魔される事だろうよ」
「ほう? それで?」

 黒布まとう白竜『調律竜』フェンネルが視線を向け、先を促す。それを感じながら、匡弥は紫煙と共に吐き捨てた。

「オレとしては、テメェをブン殴れる機会に巡り合えて幸運に恵まれてると思ってるがな!」
「幸か不幸か……それを決めるのは己自身、と親父は言ってましたね」
「……ふむ」

 継ぐように告げたロイド・テスタメント(全てを無に帰す暗殺者・f01586)に、フェンネルも興味深げにうなずく。そのうなずきに、クレヴィス・ムーンブラスト(不老の呪いを受けし永遠の乙女・f20897)が笑って言った。

「呪われた身に対してその問いは愚問よ? 背負わされた運命は重たくとも、悲しくとも、手を取ってくれたロイド君の父君との出会いはとても幸運よ」
「なるほど、全ては気の持ちようと言う訳か」

 フェンネルが無感動に、その言葉を受け止める。それに、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が言い切った。

「答え? 俺の答えはいつだってシンプルだ。俺の道の邪魔をするやつは斬り捨てる。で、今はお前が邪魔だ。だから斬る。それだけだ」

 刀也の剣気を受けて、フェンネルが一歩前へ出る。その動きを見たディアリア・ラプラシアン(のんきなトラブルクリエイター・f16673)が、告げる。

「幸運と不運の論理は同意見ですね~。ただ……運の良し悪しはあなたでも全てを操り切る事はできませんですよ~?」
「それを試すとしよう」

 その直後、フェンネルが放った白炎の奔流が猟兵達の視界を埋め尽くした。

●幸運の悪運の果てに

 神社の境内を埋め尽くす白竜の吐息が、踊るように広がっていく。

「――む」

 フェンネルが咄嗟に黄金の珠を眼前に構えた。ドォ! と炎が内側から弾け、白い光を纏った召喚騎馬兵の突進を黄金のオーラが障壁となって受け止める。

 その召喚騎馬兵の背に乗っていたのは、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)だ。

「何じゃおぬし。彼らを使いおって。さらに大事にしよってからに。気にくわぬわ」

 その言葉は、こぼれ落ちるように檬果は呟いていた。完全な無意識だ、だから言ってから自分で小首を捻る。

「ん? ……まあ、気にくわないのは本当なので」
「合点がいった。ならば、ワタシも避けられないな」

 ヒュガガガガガ! とフェンネルの黒布が召喚騎馬兵を横へ薙ぎ払った。それと同時に、刀也と匡弥が白炎の中を突っ切り刀と釘バットを振るった。

『――お、おおおおおおおおおおおおおおお!!』

 ガギン! とフェンネルが二つの宝珠で刀也と匡弥の一撃を受け止めた――そのはずだった。しかし、二人は構わない。渾身を込めて、己の武器を振るって宝珠を吹き飛ばす!

「やってくれる!」

 だからこそ、その連撃を飛び越えたフェンネルが己の白竜の尾を振るった。獅子吼が、釘バットが丸太のような竜の尾を防ぎ、二人は逆らわずにそのまま後方へ弾かれた。

「今日のアナタの運勢は〜天☆中☆殺☆」

 フェンネルの着地の瞬間、ディアリアがデコレーションズ・エアを繰り出す。尾でそれを受け止めたフェンネルは――しかし、着地の瞬間に足場が崩れ体勢を崩した。

「これは――不運による連鎖反応か」
「幸運使ってしのぎました? でも、それを凌いだのははたして『幸運』でしょうかね~?」
「ふん、面白い――!」

 次々と足場が崩れていく。自分が選んだ空洞というトリック、それが不運の連鎖によってフェンネルに牙を剥いたのだ。

 駆けながら、フェンネルは黒布を放つ。それに立ち塞がったのは、ロイドだ。

「マイナスにはマイナスをぶつけてしまえば良いのです」

 ロイドの追う死神(デス・チェイサー)――Blau Kreuzから伸びる青い鋼糸が鞭となり、空中で黒布を次々に相殺していった。そこへ、フェンネルは黒布ごと押し潰すように白炎の奔流が放たれた。

「させないわよ!」

 クレヴィスの意志を受けて飛んだ白銀ノ七星が、その白炎を白銀のオーラによる障壁で受け止める。ボォ! と二つに爆ぜた炎が、吹き抜ける夜風に散っていった。

「良い、とても良い。それでこそ、なればこそ――この戦いの先に、一つの答えがある!」

 フェンネルは吼え、不運の連鎖も物ともせず猟兵達へと挑みかかった。

●表裏の意味を、裏と表は問うて――

「いや~、馬鹿です? 馬鹿以外の何者でもないですよね~?」

 神社の屋根の上からその光景を見下ろし、ディアリアが笑った。笑う以外なかった。それほど、不条理な光景が眼下に広がっていたのだから。

「先程の問いに答えよう。凌いだのは、幸運だとも」

 フェンネルが、そう言い放つ。もはやどこまでも膨大となった不運でさえ届かない幸運――常時発動型UC『ホイール・オブ・フォーチュン』のあらゆる行動の成功率を上げる幸運が、その不条理を可能としていた。

 それはさながら、糸で引きずる磁石のような光景だ。引きずる度に砂鉄で重くなっていくというのに、強引に引きずり続けるような――力技、そう呼ぶしか無い。

「そう、これは幸運だ! 幸運と呼ぶしか無い。確かに不幸を決めるのは自分だ。だが、それは結果だ。幸運と不運の結果に過ぎない!」

 幸運と不運の先にあるのが、幸福と不幸なのだろう。

「ならば、何故幸運と不運という過程を司る者がある! 幸運の司る白竜と、不運を司る貧乏神! 運をもたらしながら、その何が違う!?」

 その答えを知りたいのだ、と――少なくとも、この場にいる『調律竜』フェンネルは吼える。

「来い! ワタシが知りたい答えは、この先だ! お前たちがもたらす結果こそが――」
「――そうかい」

 刀也が、言葉の途中で駆け出した。頭上へ掲げる獅子吼――ただ、全身全霊を持ってフェンネルへと挑んだ。

 雲耀の太刀――二の太刀を考えない捨て身の太刀が、振り下ろされる! だが、『ホイール・オブ・フォーチュン』のあらゆる行動の成功率を上げる幸運は、その捨て身さえ超えて回避させる――はずだった。

「ッ!?」
「運だの不運だの、そんなの関係ない。戦いになったら、俺はいつだってベストコンディションだ。そんなもんが入り込む余地はねぇよ」

 浅く、しかし、確かに幸運を超えて刀也の太刀が届いた。フェンネルは大きく、後方へ飛ぼうとして――だが、不意にフェンネルが大きく体勢を崩す。滑った、そう言っていい転倒の途中で、フェンネルが『原因』を見た。

「バナナの、皮――!?」
「んぐんぐ。いや、それですよ。それが見たかったんですよ~♪」

 おやつポシェット(臨戦仕様)から取り出したバナナを食べ終え、ディアリアは会心の笑みを浮かべる。風景に紛れて、踏み出すタイミングに合わせたバナナの皮の配置――それは、まさに不運をお通しする一手だった。

「さーて、覚悟を決めろよ?」

 そして、空中で体勢を崩したフェンネルへ、匡弥が釘バットを振りかぶり待ち受けていた。フェンネルは翼で空中で急停止――するよりわずかに早く、匡弥の大撲殺(クギバットミダレウチ)が炸裂した。

「が、は!?」

 ゴォ!! と地面が砕け、猟兵達ごとフェンネルが落下する。煙草を咥え直し、匡弥は改めて問う。

「なあ、今の気分はどうだ。幸せか? 不幸せか?」
「悪く――は、ない――!」
「……そうかい、そりゃ良かったな」

 フェンネルが、空中で停止する。頭上に空いた大穴、その先からクレヴィスが翼が生えた夜色の狐へと变化、黒い炎を放った。

「奪わせて、貰うわ!」
「流石、月。ならば、こっちもこっちでやるしかないな」

 土の断層を蹴って、ロイドが加速する。クレヴィスの夜雀による黒い炎に生命を奪われるフェンネルへ、Τισιφόνηを突き立て、その血を吸い取った。

「答えは、その数だけの回答があるのよ。心がある生き物はそうなんだと、大昔から見ているわたくしでさえ思うもの」
「答えは一つではないですから、生きるモノ全て個々に答えがあります。表裏一体とは、アナタ達であり永遠の課題でもある」

 クレヴィスの、ロイドの言葉に、フェンネルが返した返答は白炎だ。ロイドが離れ、それをクレヴィスが拾う。黒布を自身で覆うように操りながら、フェンネルは再び上空へと飛んだ。

「それも答えだ! だが――」
「……問い続けた先に、答えがなければそれは地獄、かえ?」

 そこに待ち受けていたのは、兵貴神速(ゴッドスピードストラテジー)を従える檬果だ。次々に襲いくる召喚騎馬兵を、無数の黒布が薙ぎ払っていき――橙・黄・緑・青・藍・紫の七色竜珠による六色のビームが、フェンネルを捉えた。

「が、あ……――――」
「さようなら、です」

 そして、落下した檬果の赤い竜珠が変じた紅紋薙刀の一撃がフェンネルを両断する。その身体は黒と白、互いが絡み合うように粒子となって掻き消えていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月03日


挿絵イラスト