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【続】開けても、開けても。

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●呼び起こされたモノ
 呼び出せ、呼び起こせ。さらなる力を得るために。
 倒せ、倒せ。己を滅ぼさんとする者を。

 私は想像より生まれしモノ。
 猟兵を倒す願いのために幾度も作られたモノ。
 幾千、幾万の想像から這いずり上がったモノ。

 倒さなければ。猟兵に邪魔をされるのなら。
 倒さなければ。安らかな眠りを手に入れるために。

 ―――倒してやる。

●呼ばれたモノ
「……前回の炭鉱事件、覚えてる人はいるかな。アレの続きなんだ」
 深刻そうな顔をしているのは火影・サイト(《無邪気な歌声》[イノセント・シンガー]・f29997)。以前、炭鉱のある街での事件―――領主が何かを掘り出しているという噂があったが、真相は闇の中で分かっていない―――の話を軽く説明したあと、彼は続けて今回の予知についての説明を行う。
 なんでも前回逃げてしまった領主がついに炭鉱で目的のものを掘り当て、己の偶像だった吸血鬼に肉体を与えることに成功したのだという。さらに呼び起こされた吸血鬼はすべての元凶が猟兵である、と叫んでいるのだとか。
「だから今回のは、はっきり言っておびき寄せられてる。それでも連中を野放しにしておいたら世界が危機に陥るし、それを止めるのが俺たちの役割だ。……倒すのを手伝って欲しい!!」
 頭を下げ、大きな声で猟兵達に懇願するサイト。顔を上げろと声をかけられれば彼は顔を上げて、皆をしっかりと送り出す。
 オブリビオンと猟兵の戦いは、今ここに始まる。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 拙作「開けても、開けても。」の続編シナリオとなります。
 前作ご参加いただいた方にも、今作から参加される方にも楽しめる内容となっております。

 MSページ、並びに以下の章説明をよくお読みください。

●第一章:ボス戦シナリオ。
 前作に逃げた領主が呼び出した吸血鬼の指示に従い、猟兵達の行く手を阻みます。
 殴ろう。

●第二章:集団戦シナリオ。
 吸血鬼が解き放った亡霊達が襲いかかってきます。
 殴ろう。

●第三章:ボス戦シナリオ。
 吸血鬼が怒り任せに殴りかかってきます。
 殴ろう。

 殴るしかないシナリオですが、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『元人間の吸血鬼貴族とその従者達』

POW   :    猟兵なんぞあのお方が奇跡的に現れ蹴散らして下さる
無敵の【偉大で高貴な吸血鬼様】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    わ、わしのせいではないぞ!お前のせいだぞ!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【失敗した時の責任をなすり付けられる味方】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    水が無ければ、血を飲めばよいではないか!ガハハ♪
戦闘力のない、レベル×1体の【自分に媚びへつらい持て囃してくれる狂信者】を召喚する。応援や助言、技能「【血を捧げる】」を使った支援をしてくれる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はララ・エーデルワイスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

叢雲・雨幻
いやぁ、お前さんもしぶといねぇ。
猟兵になってりゃ線いってたかもよ、いやホント。
まっ、そうじゃないワケだし容赦しないがね。

【POW】
「まさか忘れたわけじゃないだろう?
前にそいつがおいさんと戦ってどうだったかね?」
強くなってたとしても、"前回通用しなかった"って言う【傷口をえぐる】事で弱体化を狙うよ。

弱くなればこっちの物、まずUCを用いて命中を上げる。
でもって敵の攻撃を【見切り】【フェイント】を交えつつ【早業】で潜り込み【カウンター】を決めて行こうか。今回は狙えるならば本体にもね。
前回の【戦闘知識】を活かして、より動きを変則的・攻撃的にね。

ついでに一応話が聞けそうなら、誘い込んだ理由でも聞こうかね



●呼び寄せられたモノ
 カツン、カツン、と。革靴が大理石の床を踏みしめる。城の内部は静まり返っていて、かえって不気味な雰囲気だ。
 そんな不気味な雰囲気の廊下を歩くのは、叢雲・雨幻(色褪せた根無し草・f29537)。以前、炭鉱の者達に解放を約束して再びこの地へやってきた者。任務の際にあの領主におびき寄せられていると聞いて、ふと思い浮かんだのは己が歩んできた道だ。
「……ありゃぁ猟兵になってりゃ、イイ線いってたかもしれないんだよねぇ」
 ポツリと呟きつつも、領主の姿を探す。同じ道を歩むかもしれなかった、既に道を違えた者として討伐するために。
 直線の通路を歩き、次に曲がると……その強烈な気配に、一度身を引いた。既に領主が呼び出していた妄想の吸血鬼が、雨幻の姿を見た瞬間に手を伸ばしてきたからだ。身を引いていなければそのまま首を奪われていたかもしれないと思うと、冷や汗が止まらない。
「おいおい、随分とやる気じゃないか。おいさんびっくりしちゃったよ」
「黙れ、黙れ! お前達猟兵など、あの方が蹴散らして下さるのだからな!!」
 再び吸血鬼の腕が雨幻に伸びる。それを受け取らないように、雨幻は上手く愛剣・黒雲で弾きつつ吸血鬼から距離を取り、更には領主と吸血鬼の距離を引き剥がすように壁を蹴っては幅広く動き回る。
 隙を見ては吸血鬼の身体に傷を残そうとするものの、僅かな傷しか与えることができていない。やはり今は、疑念が生まれていないためにほぼ無敵の存在となっているようだ。
 吸血鬼と領主の距離がしっかりと空いたところで、領主へと向けて疑念の言葉を投げる。それは前回の戦いで何が起こったのかを、今一度思い出させて脳裏に刻み込むためだ。
「まさか忘れたわけじゃないだろう? 前にそいつがおいさんと戦って……どうだったかね?」
「ど、どう……とは……」
 静かな水面に石を投げたときのように、領主の想像を揺らそうと言葉をねじ込む。それを止めようと吸血鬼が雨幻に手を伸ばすも、最初の勢いが全くない。
 弱体化の兆しが見えたところで、雨幻はユーベルコード『連結:黒雲霧』を発動。愛剣・黒雲と愛剣・黒霧を連結、ダブルセイバーモードに変化させて攻撃の命中力を増強させた。
「はーい、こっからオジサンの本気でござーい……なんつってな」
 素早く吸血鬼の身体を切り裂き、先に与えていた僅かな傷を広げるために黒雲霧の連続攻撃をしっかり命中させる。吸血鬼の身体は口から悲鳴を上げることはないが、代わりに砂を吐き出して痛みを表現していた。
 雨幻は前回の戦闘知識を振り絞り、より変則的な動きを見せた。それは領主も想定外のことだったようで、吸血鬼も領主も彼を目で追うことに必死になっている。
 何度も何度も、吸血鬼はその腕を伸ばして雨幻を捉えようとしていた。しかし既に領主に疑念の生まれた状態では、その身体を維持することさえも難しくなっているようで。ザラザラと砂を吐いては、肉体が削れてゆく。
 ここまでくれば吸血鬼からの攻撃はほぼ雨幻には届くことはない。そうなれば、狙うはただ一つ。素早く領主へと近づき、同じように連続攻撃でしっかりと痛みを刻み込んだ。
「ああ、そうだ。猟兵を誘い込んだ理由とか、聞いてもいい?」
 最後になるかもしれないからさと、雨幻は一度攻撃を止める。しかしその隙に乗じ、領主は吸血鬼と同時に最後の一撃を放つ。それは虚しくも雨幻の身体を通り過ぎて虚空を切ったのだが、それだけで十分逃げる時間を稼ぐことが出来たようだ。
「あっ。……あー、逃げられたか……」
 あれだけ傷を負いながらも逃げおおせるあたりも、なかなか感心できる。雨幻は逃げた先へと再び足を踏み入れ、領主を探し回るのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
(逃げられるとは…遊びが過ぎたのだわ)
聞いて思ったのはやっちゃった…というあれ
呼ばれたら【ボク】は興味をなくしたわ
だから【私:女性人格】が尻拭いに動くの

「ごめんなさい人の言葉で話してくださる?
私生憎豚語は履修してないの
いえ豚はもっと綺麗好きね
ごめんなさい
例えに出した豚さん」

罵倒しながら思考を回すわ
…毒はどうしたのかしら?
もしかして耐性あるのかしら?貴族みたいだし…
という訳で毒は使わなくなるわ

その代わりUCで黒纏強化・血液の補給しながら攻撃してくの

相手も回復する?
ふふいたぶれる時間が増えるわね!
最初から血まみれなら技能関係ないわね
使わないのでなくて?
でもこの空間は…正気のものには牙を向くのだわ



●今度は、逃がさない。
(逃げられるとは……遊びが、過ぎたのだわ)
 前回、【ボク】が相手を逃がしてしまうとは思わず、ほんの少しだけ顔を青ざめているのは尾守・夜野(墓守・f05352)。現在は多重人格の中でも愛情への傾向が強い人格、女性の人格である【私】が出ていた。【ボク】の尻拭いのためであり、また彼自身が興味をなくしてしまったのもあって彼女が前を貰ったのだという。
 廊下を歩けば、既に血まみれになっている領主の姿を見つける。既に誰かが相手をしていたのか、それとも前回の毒がまだ回っているのか……それは夜野には計り知れるものではない。
「なっ、まだ猟兵がうろつきまわっているだと!? 貴様、どこから入った!?」
 夜野を見つけた領主が声を荒げる。それに対して夜野は小さく首をかしげながら、煽る。
「ごめんなさい、人の言葉で話して下さる? 私、生憎豚語は履修してないの」
「んなっ!?」
 夜野の罵倒に対し、領主はワナワナと震え始めた。領主となってから久しくそんな煽られ方をしていなかったのか、元々の煽り耐性が低いのか……よく効いているようだ。
「いえ、豚はもっと綺麗好きね。ごめんなさい、例えに出した豚さん」
「き、き、貴様……!!」
 怒りが頂点に達した領主はその怒りを発散させるように声を荒らげ、狂信者達を呼び寄せる。領主に媚びへつらい、持て囃してくれる者達は領主の周りを陣取って夜野の壁となる。狂信者達は様々な助言を領主に与えていたが、夜野にとってはただの耳障りなBGMだ。
 その間に夜野は罵倒を続けながらも別な部分に思考を向けていた。以前使用していた毒は強力なものだったはずだが、既に領主の身体に毒が回っている様子がない。耐性を得られたか、あるいは今取り囲んでいる狂信者達によって吸い出されたか、また別な方法をとったか。いずれにせよ、既に使った毒は使用できないものと判断した。
 領主は狂信者達にあらゆる助言をもらい、夜野へ向けて血の刃を射出。これなら相手の血がなくなるまで動き回れば良いと考えていたが、どうもそういうわけにはいかないようだ。領主は己の血を使うことなく、刃を生み出していたのだから。
「あら、それじゃあ『同じ』ようにしましょうか」
 ユーベルコード『死散血餓』を発動させ、館に血の雨を降らせた。降り注ぐ血の雨の力により、たった今、館の中は正気でいようとすればするほど、死に近づく空間へと変化した。その適応力は夜野にも含まれるのだが、彼女にとってこの空間は適応しているも同然。
 では、領主はどうなのか? ……領主は、半分は適応に等しい。虚像から現実を生み出すというその力は正気であるとは言い難いが、虚像を信仰するというその行為では正気なのだろう。夜野よりは行動力が下がっているものの、領主はまだそこに立っていた。
「あら、あら、あら。いたぶれる時間が、増えるわね」
 麗しい唇がゆるりと孤を描く。彼女のその様子はまさに、純粋な嬉しさと高揚感が顔に出ている。
 こわしても大丈夫だと、こわれても大丈夫だと、こわすのは問題ないと、立ち尽くすその存在―――領主の姿を改めて目に焼き付ける。
 黒纏で二つの血を吸い上げ、その形状を変化させて彼女は領主を『壊す』ように動く。領主は領主で、血の雨が降り注ぐせいで上手く血の刃を撃つことが出来ずに夜野の攻撃を受け続けた。何度も狂信者を盾に使いながらも逃げ惑うが、それも時間の問題だった。
 絹を切り裂く音、雨を切り裂く音、石を切り裂く音がいくつも重なり、やがては領主に痛手を負わせる。苦し紛れに領主は狂信者達をどんどん夜野にぶつけ、彼女の視界を奪い始めた。
 ぶつけられた何人もの狂信者達を倒しては、その視界を開く。だが既にそこに領主の姿はなく、赤い雨が降り注ぎ続けていた。
「……?」
 ふと、夜野は領主の逃げたであろう方向を見やる。何もいないはずなのだが、なぜか目を離すことはできず。
 思わず声をかけたが返答はなく、ただ、何もない感触だけが夜野の頭の片隅に残された……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…以前の事件の時は美味く逃げ延びたみたいだけど、
二度も三度も逃げきれるとは思わない事ね

…お前が奉じる"あのお方"とやらと一緒に、骸の海に還してくれるわ

今までの戦闘知識と経験から敵の殺気の残像を暗視して捉え、
攻撃の死角を見切って切り込み、大鎌をなぎ払うカウンターで迎撃

…成る程。確かに偶像とは思えないほど強力だけど…無駄よ

お前が夜の眷族である以上、太陽の光からは逃れられないと知れ

第六感が好機を捉えたら両手を繋ぎ魔力を溜めUCを発動
吸血鬼のみを浄化する光剣による早業の2回攻撃を行い、
太陽のオーラで防御を無視する光属性攻撃の斬撃を放つ

…お前の底は見えた。さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい



●吸血鬼狩りの業を知れ
 走る。走る。走る。 領主は城の中を走り、逃げ続ける。
 彼女が追いかけてくるから。彼女がその刃を向けてくるから。
 吸血鬼を狩るために、彼女はやってきた。
 彼女の名は、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。吸血鬼を狩るために、長き道を、今を歩き続けてきた。
「…以前の事件の時は上手く逃げ延びたみたいだけど、二度も三度も逃げ切れるとは思わない事ね」
 高らかにヒールの音を響かせて、領主を奥へと追い詰めるように通路を歩く。大鎌を持ったその姿は、領主にとっては死神にも見えるようだ。
 しかし領主は、リーヴァルディから逃げ続けるばかりで何もしてこない。長く逃げ続けているだけあって領主も体力がなくなっているだろう。だが追い詰められた者が何をしてくるか、反撃の狼煙を上げてくるのはいつなのか、タイミングを見誤ればこちらが不利に陥るためリーヴァルディは冷静に歩き続けた。
 やがては城の一角にある部屋へと領主は逃げる。隠れるつもりか、はたまた反撃をしてくるか。一度リーヴァルディは扉から少し離れた場所に立ち止まり、深呼吸。今まで培ってきた戦闘知識とその経験を全て頭に思い浮かべ、扉を思いっきり破った。
 流れ込んできた僅かな殺気を読み取り、彼女は扉を破ってすぐに大鎌を大きく薙いだ。伸びてきていた吸血鬼の腕を切り落とし、破った扉を今一度盾に取って吸血鬼が伸ばしてくるもう一つの腕をカウンターで迎撃。ぼとり、と二つの白い腕を落とした。
 しかし偶像から生まれた吸血鬼には痛みもなければ、血も流れない。落とした腕はザラザラと砂に返され、肉体からはまた新たな腕が生えてくるのを目にする。
「……成程」
 その驚異の再生力に、リーヴァルディはゆっくりと笑みを浮かべる。その様子が恐怖のあまりに笑っているように見られていたのか、呼び出した吸血鬼の後ろで領主が彼女を煽ろうと必死だ。
「ふ、ふん! 貴様ら猟兵なんぞ、我が主の爪にかかれば一発だ! わかったらさっさと倒れろ!」
「そうね。確かに、その爪は偶像とは思えないほど強力。……だけど、無駄よ」
「な、なんだと……?」
「お前が、お前達が夜の眷属である以上、太陽の光からは逃れられないと知れ」
 リーヴァルディは領主の言葉に返答すると、大鎌から手を離して両手を繋ぎ素早く魔力を貯め始める。魔力はやがて光の刃を作り出し、その両手に収まる。
 ユーベルコード『吸血鬼狩りの業・破邪顕正の型』。彼女の吸血鬼狩りとしての業を形にする力であり、吸血鬼が最も嫌う太陽の力を刃として作り上げて攻撃するためのものだ。
 太陽の力は、遠くにいても吸血鬼の肌に刺さる。領主も呼び出された吸血鬼も、その刃に触れぬように立ち回りながらリーヴァルディへ手を伸ばし、爪で切り裂こうと動き始めた。しかし、太陽に触れるという恐怖が二人の吸血鬼の動きを鈍らせていた。
「……奥義、抜刀」
 動きの鈍さを第六感で感じ取り、ここぞとばかりにリーヴァルディは光の刃を振るう。早業の二連続攻撃は偶像から生まれた強力な吸血鬼といえども、太陽の光によって吸血鬼の因子を焼かれて身動きがとれなくなる。
 ザラザラと砂に戻る偶像を横に、再び逃げようとする領主。しかしリーヴァルディはそれを逃すことなく、光の刃を領主へと突き立てた。吸血鬼は一人残さず、しっかりと倒さなければならない。
 何かが焼ける音が響き、領主の悲鳴が撒き散らされる。これで終わり……そう思っていたが、領主はリーヴァルディに向けて偶像が散った時に出来た砂を思いっきり投げつけてきた。思わず手で振り払うのだが、その拍子に刃まで抜けてしまい、瞬時に逃げ出されてしまった。
「……逃げた、か。けれど……」
 床を見れば、領主の身体から流れた血が筋となって残されていた。もはや立っていることが不思議なほどの血液量のため、追いかけようと考えたが……深追いしてこちらが痛い目に遭っては危険だと判断。リーヴァルディは一度撤退の意向を示した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
何かの後始末らしいな
ともあれ働くか

破界で掃討
対象は召喚物含むオブリビオン及びその全行動
それ以外は地形含め「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、周囲全方向への斉射を実行
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

更に斉射の瞬間を『再帰』にて間断なく無限循環
回避の余地も反撃の機も与えず討滅まで攻撃を継続
物量で全て圧殺する

万一自身へ届く攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



●根源からの消去を
「何かの後始末、か」
 話を聞いて城へと急行したアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。領主が以前やった行いと、それに連動して起きた今回の事件の話を聞いて、彼がどのような気持ちになったのかは定かではない。しかし、例えどのような気持ちになったとしてもそれを放置しておく理由には至らない。速やかに、対象を排除することを誓った。
 城の中はしっかりと血に塗れていた。幾人かの猟兵が既に領主に手をかけており、残る命も僅かだという話を聞いている。故に、ターゲットを見つけることは容易だった。
 息も絶え絶えな領主の姿を発見。その周囲には領主を守るように付き人である狂信者達がその血を領主へ捧げていた。残る命を僅かでも繋ぎ留めて、しぶとく生き延びようとしているのだろう。
「しぶとい。……が、それもここで終わりだ」
 ユーベルコード『破界』によって生み出された、蒼光の魔弾が射出される。その光は障害となるものを無視して万象を根源から消去するための力を持っており、アルトリウスが目にしている者達―――オブリビオンたる領主とその召喚物、更にはその行為を全て消去しようと試みる。
 幾重にも重なる狂信者の壁は、ことごとく蒼光の魔弾によって消去されてゆく。血も狂信も消え去ったというのに……領主はまだ、生きていた。光を免れるために何人もの狂信者を盾に取っていたためだ。
「ならば、これでどうだ?」
 例え蒼光の魔弾の猛威から逃れられようとも、彼にはまだその力を増幅させる術がある。高速詠唱をいくつも重ね、刻真の光で世界の底に揺蕩う万象を包み、再帰の光で無限を成す礎の原理を利用して蒼光の魔弾の軌道を倍増させて城の中を全て埋め尽くす。
 更には軌道上に再帰の光を配置させ、絶え間なく魔弾の無限循環を執り行う。回避の隙を与えぬように弾幕を張り巡らせ、己への攻撃さえも届かぬように。
「ま、まだだ! わしにはまだ、あの方から頂いた力が!!」
 領主の苦し紛れの言葉が聞こえる。凄まじい弾幕の中、狂信者という盾をいくつも消費しながら領主はアルトリウスの前まで近づいてくる。その手に伸びた爪を振り下ろして鈍い音を響かせたが、それはアルトリウスには届いていない。
 領主の爪を通り抜けたアルトリウスの周囲を、光を包む込む。世の理から術者を切り離す楔たる絶理の光はアルトリウスをこの世から切り離してその爪の攻撃をすり抜け、存在を覆う繭となった無現の光は彼の存在消去を否定したため、一瞬の合間だったがアルトリウス・セレスタイトという存在を確立させていた。
(……流石に魔力を使いすぎている、か……)
 ふらり、と少しだけアルトリウスの身体が揺れる。大量に発した蒼光の魔弾に、己の防御のために与えた光。それらを一人で扱うには、通常なら魔力の大量消費で倒れていてもおかしくはない。
「ふ、ははは! 貴様、既にわしよりも倒れそうではないか! さっさと倒れてはどうだね!」
 領主の下卑た笑い声。アルトリウスは少しだけ眉を顰めるが、素早くもう一つの光を展開させる。世界の外より導かれる最古の理の光が、彼に尽きることのない魔力を生み出す。超克の光は更に蒼光の魔弾への魔力供給を途絶えさせることなく、アルトリウスにも力を与え続けた。
「な、な……?!」
「倒れなくて悪かったな。さあ、これでトドメだ」
 蒼光の魔弾は狂信者達に動く隙を与えることなく全てを消去。領主は魔弾をなんとか避け続けてはいたが、先立って受けていた傷が影響しているためか、徐々に魔弾に当たり始める。

 やがて領主の身体は魔弾の力によって貫かれ、死を迎える。
 ……迎えたのだが、どうやら領主は死に際に何かを発動させたようで、おぞましい気配が漂い始めた。
 城の中は綺麗さっぱり、血にまみれている。だがその気配は城の中ではなく、外から発せられていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 一つの偶像を現実のものへと成すためだけに奪われた、人々の命。
 開けても開けても見つからぬために、領主に奪われた命。
 逃げるために、壁に取り込まれた命。

 事故で。逃走で。反抗で。
 反乱で。狂乱で。騒乱で。

 どれだけの命がこの炭鉱で奪われていたのかは、わからない。
 彼らがどのような想いを抱えて死んでしまったのかは、わからない。

 ただ一つわかるのは。

 この土地で苦しみ続ける人々が、まだいるということ。

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 領主の討伐に成功しました。おめでとうございます。

 しかしこの土地に根付いている幽霊達が呼び起こされてしまったようです。
 戦闘場所は城の外となります。
 炭鉱も近くにあるため、道具も使用可能です。

 プレイング受付:即時募集
 MSページをご覧の上で送付をお願いします。

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尾守・夜野
亡霊…ね
私から何かを言う事はないわ
早かろうと間に合わぬ物はあるし両手で掬える数は限られてる

故に彼らは切り捨てるわ

…そう…でも救いを求めるのね
私に憑いても行き先は地獄なだけなのに…
可愛そうな人

…悲鳴って私達が私の頭の中で喋るのとどちらが煩いのかしら

後、神の呪いと…亡霊の呪いが等しいと?

通りすがるに等しい関わりですら手繰り、他者によって結ばれた縁さえ関係なく…

なら憑いた彼らは最早私の一部扱いでしょうね

あぁ可愛そうに
啜る何て一番駄目な奴を…
きっと我が身ごと焼かれるでしょう

まぁ私は慣れてるから適当なタイミングでパーツの一部を身代わりに離脱するわ

…それでも手繰っては来るのだけれど
※アドリブ・連携は歓迎



●縁は些細なもの
「……亡霊、ね」
 ポツリと呟いた夜野の周りを、嘆きの声を撒き散らす亡霊達が取り囲む。嘆きだけではなく、怒りと、苦しみの声も混じっているが、それらはすべて嘆きの波へと掻き消える。膨大な量の嘆きの声に、夜野はため息をついた。
 彼女から言うことは、もはや一つもない。早かろうと間に合わぬものがあれば、救えたとしても両手で掬える数には限りがある。多重人格者といえどその肉体はたった一つしかなく、肉体がいくつあろうと掬える数には限りがあるが。
 だからこそ彼女は、『切り捨てる』。そのまま手を掴んでしまって、あちら側に引きずり込まれたらそれが最後。助けることも、助かることも出来なくなってしまうからこその決断だ。
 彼女の判断に気づいたのか、それとも嘆きを広げるためか……徐々に周囲の亡霊達の姿が霞へと変わりゆく。緩やかな風に乗って散り散りとなった黒い霞は、やがては夜野の前から薄れ消えていった。
 ゆっくりと彼女は亡霊達の領域に入るかの如く、一歩だけ、足を踏み出す。助けるという思いが頭の中に微塵もない今、彼らを壊し得る方法だけを模索する。
 しかしそんな彼女の頭の中へ、亡霊達の嘆きの声がねじ込まれた。視線を地へ戻せば、足元から這いずる黒い霞。それらは夜野の身体をするりするりと蝕み、取り憑こうと痛みを与え続ける。その光景は救いを求めようと救世主へと手をのばす姿にも見えるだろう。
(……私に憑いても、行き先は地獄なだけなのに。可愛そうな人……)
 ほう、とため息を一つ。可愛そうと嘆く彼女の頭へ、ずるりずるりと何体もの亡霊達が住み着こうと這いずり上がる。嘆きの声を直接響かせるつもりでいるのか、彼女の思考を止めようと画策していた。
 それでもなお、夜野の顔に曇りは見当たらない。むしろ彼女は頭の中で様々な言葉を発しては、亡霊達の嘆きの声をかき消そうとしていた。興味本位の行動だったが、意外と亡霊達は彼女の行動に驚くばかりだ。
「ふふ、そう。驚くだけの精神は、持ち合わせているのね」
 小さく笑う夜野に対して、亡霊達は負けじと嘆きの声を届けるが……彼女にはその声が届くことは、もうない。
 邪神の贄にされた過去を持つ彼女―――『尾守・夜野』という基礎たる人物―――は、神に与えられた、あるいは擦り付けられた呪いを持つ。それらはあまりにも強く、彼女達の意志に関係なく通りすがるもの達の縁を喰らっては己のものへと差し替える。それは死した者とて、例外ではなく。
 嘆きの声は徐々に彼女の頭の中で小さくなる。どうやら夜野の意志に応じて彼らは体内を移動することができてしまっているようで、彼女が少し考えるだけでぞろぞろと手足の先へと集まっていく。
(……これ、いつ切り離しましょうか……)
 無限に体内をうろつく亡霊達に、困り果てる夜野。切り時のタイミングを見計らおうと周囲を眺めると……彼女を喰らおうと再び集まりはじめた亡霊達が再び彼女を取り囲み始める。
 ただでさえ切り離したいのに、これ以上の縁を喰らえばどうなるやら。軽くため息を付いた夜野は虚空へと言葉を投げかける。
「……今ここで、私が倒れたほうが困るかもしれないわ。力を、貸しなさい?」
 その呟きの後、彼女は己の血を啜り己を供物へと覚醒させ、ユーベルコード『月ニ吠エ虎ト化ス』の発動条件を満たした。その姿は己の宿敵の姿……の現し身。現実の姿には程遠く炎の勢いも弱いが、その力は少なくとも人の姿の時よりは格段に上がっている。
 特異なる炎の存在は周囲の亡霊達を焼き尽くし、嘆きをも虚無へと還す。揺らめく炎は周囲の亡霊達をすべて焼き尽くし、己の異質な存在をも焼き払った。そして、ブツリと腕を切り落として集まっていた繋がりを全て絶つ。身代わりとして焼き落としたその腕は、逃げようと這い出た者達をも焼き尽くし、やがては消滅した。
「一時的なものでしょうけれど、奪われるよりはマシね」
 人へと戻り、再び歩き出した夜野の背を追いかける者は、誰もいない。
 しかし彼女が歩けば歩くほど、手繰り寄せられる者は現れる。何度絶っても、いくつ絶っても―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
終わったものであれば正しく眠れ

天楼で捕獲
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
即時起動し数の利を奪う

捕らえたものは等しく惑うが迷宮
呪いという概念、或いは霊体とて例の外に漏れぬ

破壊の手段はあるまい
あっても間に合わねば同じ事だが

出口は自身に設定
万一辿り着くなら『討滅』の破壊の原理を乗せ打撃で始末
万象に終わりを刻む破壊の原理は霊体も等しく終わらせる

自身への攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



●終わりへ至る道を
 終わりを正しく迎えることが出来なかった者達が、アルトリウスを引き入れようとその手を伸ばす。
 己と同じ痛みを、己と同じ怒りを、己と同じ嘆きを味わえと声を発しては、彼を取り囲む。
「残念だが、俺はお前たちのようになる気はない」
 はっきりと言い切ったアルトリウスは、集まり始めた亡霊達に視線を向けてユーベルコード『天楼』を発動。今回であれば集まり続ける亡霊達のみを対象とし、それらを捕らえる迷路を作り上げた。
 迷路は先程の魔弾と同じように『刻真』の光と『再帰』の光を用いて無限に作られ、どこまでも、どこへいても捕らえる事のできる檻へと変貌する。どれだけ数が多かろうが、どのような存在であろうが、無限の迷路は亡霊達を等しく迷わせていた。
 そしてその間、アルトリウスは迷路の最終的に行き着く先を己へと設定し、亡霊達が迷う様を眺める。複雑に入り組むその迷路は、自壊の原理を用いて作られた壁を持つために、触れればその存在自体を消去する。痛みもなければ消去という工程に気づくまでの時間がなく、亡霊達は次々に迷路の壁に触れて消えてゆく。
(これならば俺は何もする必要がなく終わる、か……?)
 アルトリウスは僅かに安堵した。何をすることもなく、亡霊達が全て消滅するという未来を思い描いたからだ。
 しかし、彼の思いとは裏腹に。亡霊達も触れることで消滅するということを少しずつ学習をしているのか、迷路を突破する者も現れた。無理矢理に壁に仲間を当てている隙にその部分を通り抜けるというゴリ押しを行う者も現れた。流石に出口を自分自身にセットしているため、アルトリウスは対処をとった。
 『討滅』の光をその腕に宿し、出口へ到達した亡霊達を殴りつけて万象一切の終わりを告げる。迷路の壁と違い、消滅ではなく破壊の原理を用いて等しく終わりを与えることに徹した。
 直接アルトリウスに攻撃できるようになったからか、亡霊達は彼の攻撃を受けて瀕死になるたびに姿が消えて新たな亡霊となり、その強さを増してゆく。恐ろしいほどの速度で強化されゆく亡霊達の手を、先ほどと同じように『絶理』の光と『無現』の光で弾き返す。それでもなお亡霊達はアルトリウスに手を伸ばし続ける。
「お前達は終わったものだ。終わったものであれば、正しく眠れ。それがお前達が進む道だ」
 再び迷路を作り直し、すべての亡霊達を閉じ込める。先ほどと違う迷路構造に、亡霊達は再び迷い始める。
 全てが等しく終わるまで彼は何度も同じように亡霊を惑わせ、出口に辿り着いた者を破壊して終わりへ至る道を指し示すのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・雨幻
※共闘歓迎
あーらら、なんだか厄介な事になってきたねぇ。
あれらも元はここの…って事なんだろうかね。
なら、考えるまでも無い…か。
オジサンが終わらせてあげようじゃないか。

【SPD】
敵の声の対象にならない様【目立たない】位置取りをして潜み、
ふと数多いる亡霊を見ながら苦笑を見せつつ
「すまんなぁ。救ってやりたいのは山々なんだが…
もうこれしか助け方がなくてね」
刀剣を構えUCの準備を行い、そんなことを呟きながら。
見つかった時は、【スモークグレネード】を使って撒いてから再度準備を行うとするか。
構え完了と同時に見える範囲の亡霊全てにUCで【切り込み】、【早業】でせん滅を狙う。
まっ、なんだ…ゆっくり休むといいさ。



●終わりの一太刀
「あーらら、なんだか厄介なことになってきたねぇ……」
 ぞろぞろと集まる亡霊達が、雨幻の周りを奔る。嘆きの声を流して雨幻の耳に入れようと躍起になって飛び回る者もいれば、ただただその苦しみを伝えたいだけの者もいる。目で追いかけようと試みるものの、亡霊達のあまりの速さに諦めた。
 どうしたものかと軽くため息を付いていると、亡霊達の嘆きの声が徐々に変化を遂げていくことに気づいた。最初はただの嘆き声だったのだが、その中に混ざって声ではない別の言葉が混ざっていた。それは少しずつ雨幻の耳へと入り込み、脳の中を揺さぶり始める。
 流石にその言葉を聞いてはまずいと、足を前に出して亡霊達の輪から抜け出す。と同時に亡霊達に目をつけられぬように目立たない位置取りをしつつ、声の範囲外へと移動。少なくとも亡霊達は炭鉱の入り口で待機する雨幻を見失ったようだ。
 ふと、頭の中に過ぎったのは助けられるはずだったのに助けられなかった炭鉱夫の者達。奇妙な壁によって取り込まれ長い間風にさらされて人に戻ることなくその生涯を終えた人々が壁に取り込まれても、なお叫んでいた言葉を思い出す。
 ―――助けてという、言葉を。
 亡霊となって飛び回る彼らの中にも、同じ言葉を叫んでいる者はいる。しかしそれらは精神を揺るがす呪いの言葉を重ねられ、雨幻の耳にはわずかにしか届かない。
「……すまんなぁ」
 空を見上げ、飛び回る亡霊達に声をかける。その言葉が空を舞う彼らに届かなくとも良い。本人なりのけじめとして、助けるべき相手にこれから行うことを謝罪したかっただけなのだ。
「救ってやりたいのは山々なんだが……もう、これしか助け方がなくてね」
 そうして雨幻は、愛剣である黒雲を片手に鉱山口から走り出し、ユーベルコード『雷雲撫で』の準備を開始する。彼の姿を見つけた亡霊達は呪詛の入り交じる呟きを届けようと、雨幻へと近づいた。
 わずかでも準備が整いやすくなるようにスモークグレネードを投げて煙幕を張り、周囲の視界を遮る。飛び回る亡霊達によって風が巻き上げられているため、本当に数秒の煙幕だ。
 それでも彼の準備は、煙幕によって邪魔されることなく整った。鯉口を切り、柄に手をかけ……煙幕が晴れ、亡霊達が雨幻へと近づくのを待つ。
 風によって巻き上げられた煙幕が晴れ、多数の亡霊達が雨幻に向かって突進してくる。言葉を頭に流すため、己が受けた凄惨な過去を雨幻へ見せるために。
 だがその声が、過去が、雨幻へ流れることはなかった。
 目に見えぬ速度で黒雲を抜いて第一陣の亡霊を崩し、抜き付け、振りかぶりで第二陣の亡霊を切り込み、切り下ろしにて第三陣、第四陣と払いのける。たったこれだけの動作を雨幻は早業と高速移動を用いて連続して執り行い、目に見える範囲にいた亡霊達を全て切り払った。
 刃に付着した亡霊達の呪詛と嘆きを振り払うように、残心。その後、黒雲を鞘に収める。亡霊を切ったというのに黒雲のその切れ味は衰えることなく、するりと鞘へと戻る。
「……ゆっくり、休むといいさ。お前さん達の無念は、俺が晴らすからさ」
 塵のように散った亡霊達に一言残し、雨幻はその場を後にする。
 彼らの無念を背負い、元凶を討伐するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…領主の圧政の犠牲になった人達の魂、ね
…貴方達が復讐すべき相手は既に討ち果たした

…これ以上、現世に縛られ苦しむ必要はない
…迷うことなく逝けるように、葬送してあげる


…それが、間に合わなかった私が貴方達にしてあげられる唯一の手向けよ

UCを発動し"御使い、呪避け、韋駄天、暗殺者、
狂気避け、破魔、闇夜、迷彩"の呪詛を付与

敵の精神属性攻撃は強化した●呪詛耐性と●狂気耐性で流し、
全身を●迷彩の●オーラで防御して●闇に紛れ、
敵の死角から●存在感を消した●ダッシュで切り込み、
●破魔の魔力を溜めた大鎌を●怪力任せになぎ払い、
敵を●暗殺して回り心の中で祈りを捧げる

…もう苦しむ必要は無い。眠りなさい、安らかに…



●もう、苦しむ必要はない。
 周囲を飛び交う亡霊達を見上げては、嘆きの声を背景に立ち尽くすリーヴァルディ。彼らの魂はこの土地の領主によって殺された人々のものであり、復讐の嘆きに心を痛めていた。
 だが、それらはもう終わった。領主は死に絶え、彼らを脅かす存在は領主が呼び出した吸血鬼のみ。その吸血鬼の元へ駆けつける者もいるだろうし、死した者達の嘆きを続かせることはない。……それを伝えるために、彼女は空で舞い続ける亡霊達に言葉を渡す。
「貴方達が復讐すべき相手は既に討ち果たした。これ以上現世に縛られ、苦しむことはない。……迷うことなく逝けるように、葬送してあげる」
 ―――それが、間に合わなかった自分が出来る、最初にして最後の唯一の手向け。
 彼女の言葉が終わると同時に、亡霊達の呟きがより一層酷くなる。恨みを与え、苦しみを与えようとするその呟きに彼女は呪いが込められていることに気づく。
 大鎌をしっかり握りしめ、ユーベルコード『吸血鬼狩りの業・千変の型』を用いてあらゆる呪詛をその身に付与。『御使い』『呪避け』『韋駄天』『暗殺者』『狂気避け』『破魔』『闇夜』『迷彩』……今回使用する呪詛はこの8つ。
 亡霊達の言葉を狂気避けの呪詛で己の精神を強化させ、呪避けの呪詛で自動詠唱防御を行い己の呪詛耐性と狂気耐性を用いつつ言葉を受け流す。
 闇夜の呪詛で全身を漆黒の影へと変貌させ、迷彩の呪詛で森羅万象のあらゆる色彩に―――今回は炭鉱付近が闇に近いため、その闇を増加させたように見せかけ―――溶け込む。御使いの呪詛で攻撃を遮断しながら、オーラを纏って更に防御を強化して、亡霊達の視覚を騙すことに成功した。
「……もう、苦しむ必要は無い」
 ポツリと呟いた一つの言葉は、亡霊達に届くことはない。既に彼らにはリーヴァルディの言葉を受け入れる耳など持っていない。例え持っていたとしても、正常な思考を持たないため届いても理解はしないだろう。
 韋駄天の呪詛を解放させ、脚力を大幅に上げる。力を与えた足は勢いよくリーヴァルディの身体を奔らせ、亡霊達の死角を取ることが出来た上に彼らの呪詛の混ざった呟きを風でかき消す。
「さあ、もう眠りなさい。貴方達はもう、安らかに眠っていいのだから」
 破魔の呪詛を用いて呟きから見える幻術を打ち破り、暗殺者の呪詛を用いて更に迷彩力を増してからゆっくりと亡霊達の前へ。その手には破魔の魔力を付与された大鎌があり、彼女はほんの僅かに聖母のような笑顔を向けてから……その大鎌を振り下ろす。
 力任せに薙ぎ払ったおかげでその衝撃波は何人もの亡霊達を切り裂いた。刃に触れることなく消えていく亡霊達の無念を晴らそうと、他の亡霊がリーヴァルディの周りを飛び回る。
 何度も振って、何度も切って、何度も薙ぎ払って、何度も振り下ろして。それでもなお、彼女の力が衰えることはない。苦しみを与えることなく、一撃で仕留めるために呪詛や魔力で編まれた破魔の大鎌は全ての亡霊達を切り終えるまで振り回され続けていた。
 ―――大鎌で真っ二つにされた亡霊達が最期に見たのは、リーヴァルディの姿ではなく……柔らかな"光"だったそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ミスト・ヴァーミリオン』

POW   :     ヴァーミリオンミスト
対象の攻撃を軽減する【朱き霧】に変身しつつ、【万物を犯す強酸の霧】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ディアボリックウェイブ
【霧化した体より放つ瘴気の波濤】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を穢し尽くして】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    トキシックミスト
見えない【猛毒の霧となった体】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 霧から現れる吸血鬼は何を思うか。
 妄想より生まれし吸血鬼は何を思うか。

 否、何も思わない。

 ただただ猟兵を倒すというために生まれたものに思考など無い。
 血を吸えば強くなれることだけは、頭に残る。

 民のことなど知ったことではない。
 それらは全て、地に生えた雑草と同じ。

 さあ来たれ、猟兵共よ。
 さあ来たれ、戦いに飢えた者共。

 ―――最後の戦いを始めよう。
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 亡霊達の討伐、お疲れさまでした。
 これにより妄想より生まれた吸血鬼が出現しました。

 なお、妄想から生まれた故に思考というものが存在しないため、
 言葉を交わすことが出来ても答えはメチャクチャなものになるでしょう。

 プレイング受付:即時募集
 MSページをご覧の上で送付をお願いします。

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アルトリウス・セレスタイト
妄念が形を持ったか
では速やかに始末しよう

絢爛を起動
起点は目の前の空気
因果と破壊の原理を以て戦域の空間を支配
因果の原理によりオブリビオンのみを対象とし、
破壊の原理で戦域全てのオブリビオンという要素を討つ

万象一切を砕く破壊の原理は、有機無機現象概念全て等しく崩壊させ終わりに導く
見えるか否か、或いは形の違いなど意味を成さぬ
高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
会敵次第即時起動し機を奪う

状況は『天光』にて随時逃さず把握
自身への攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



●妄執の念は牙を剥く
 霧を纏いゆるりと歩く吸血鬼の前に、アルトリウスはゆっくりと立ちはだかる。ただの妄想から肉体を持っただけの吸血鬼は目の前に立つ人物が誰なのかも理解することは出来ないが、『それ』が敵であることは身体が覚えている。
 言葉を交わすことはなく、吸血鬼はただ怒り任せに手に入れた力を発現させる。己の肉体を見えない猛毒を帯びた霧へと変貌させ、前に立ちはだかる者を苦しめるために。
「そう来たか。お前が目に見えぬ霧ならば、こちらは原理を持って対抗しよう」
 キラリと光が煌めけば、周囲の空間が僅かに歪む。アルトリウスのユーベルコード『絢爛』は己のある程度の範囲内にある無機物を起点に、周囲の空間を完全に支配するもの。彼は今回、目の前にある空気を起点としてこの周囲を支配する。
 吸血鬼は空間支配を逃れようと距離をとったが、アルトリウスはそれを逃さない。範囲へ逃れようと身動きを取れば、アルトリウスのいくつもの光の中でも特に視ることに特化した『天光』の力を以てそれを捉えるのだ。
「―――!!」
 言葉にならない声が吸血鬼から聞こえた。それは、逃してほしいと叫んだのか、あるいは殺してやると叫んだのか、あるいは助けてほしいと叫んだのか。どのみち吸血鬼がどのような言葉を叫んだとしても、アルトリウスが揺らぐことはないのだが。
「助けを乞うたとして、俺がお前を助けるとでも?」
 空気を利用して、再び空間を掌握。僅かな量の吸血鬼の霧が空間に取り込まれ、音もなく塵へと帰った。万象一切を砕く破壊の原理を用いれば、肉体を持った者でも霧となった者でも、等しく痛みも苦しみも無いままその物体を破壊する。
 高速詠唱を幾重にも重ね、魔弾や迷路と同じく『刻真』と『再帰』の光で空間を循環させる。必要な魔力は全て『超克』の光を用いて世界の外から汲み上げ、己の肉体を通して空間へ供給、安定維持を行う。
 そんな無限の力を前に吸血鬼は、周辺の岩をアルトリウスに向けて投げ始める。霧は遠距離のものを掴むことが出来るようで、炭鉱も近いためにこのような行為に及んだようだ。
 万象を見通す瞳となる全知の原理『天光』の光を持って周辺の地形を把握し、『絶理』と『無現』の光を用いて降り注ぐ岩を回避する。どんなに投げられようとも、彼には岩が砕けた衝撃しか襲ってこない。
 何度もうまく避け続けることが出来ていたのだが、ふと、アルトリウスは身体の違和感に気づく。それは長時間に渡っての猛毒の霧と対峙していたことが原因のようだ。
(……まずい、毒の勢いが強くなっているな)
 アルトリウスの目の前の空気は、『絢爛』の力によって破壊の原理によって入り込んだものをすぐに塵へと返す。だがそれを行う前のほんの僅かな、コンマ数秒の刹那に毒で汚れた空気を彼は吸い込むことになる。
 微量ならば問題がない毒も、積もれば多大な痛手となる。予想外の苦しみに、アルトリウスは一瞬戸惑いの表情を見せた。
「―――!!」
 吸血鬼の叫び声がまた響く。猛毒の霧を使って再びアルトリウスに大岩を投げ、目の前の視界を封じる。光を持ってそれを破壊するものの、既に目の前にいたはずの吸血鬼はその姿をくらましていた。
「……逃した、か」
 逃げられた悔しさに唇を噛みしめるアルトリウス。己が与えた傷がどこまで吸血鬼に影響を及ぼしているのか、それは万象を見通す瞳で視ただけではわからない。彼は毒で減り続けた体力を振り絞り、一度帰還することとなった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
得意なのはサポートで、NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能

接近戦で戦う場合は鎖鎌の【薙ぎ払い】と鎖分銅の【ロープワーク】による【2回攻撃】がメイン。
遠距離戦では宇宙バイク内臓のビーム砲で【薙ぎ払い】
その他状況によって【属性攻撃】や【破魔】等使用。

猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる。



●開けても開けても、苦しみばかり。
「いやぁ~~、弱いものイジメのために生み出されたヤツがこの世界にもいるとはねぇ」
 霧に身体を揺らめかせる吸血鬼を前に武器を振り回しているのは、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)。弱い者を助け、みんなが笑顔で暮らせる世界を作ることを考えている彼にとって、まさに目の前にいる吸血鬼はヴィランそのものだ。こいつがいては、みんなが笑顔で過ごせない。
 リカルドの周囲を、吸血鬼が己の身体を変貌させた紅い霧で包む。触れたものが一瞬で溶けることから、強酸の霧が放たれているようだ。周囲の無機物が泡を立て溶けており、リカルドも霧から距離を取りつつ様子をうかがっていた。
 距離を保ったまま伸縮性のある鎖鎌を振り回し、霧を風で防御しつつ鎖を伸ばして吸血鬼への本体へ切り込みを仕掛ける。肉体を霧に変えたとはいえ、その本体は肉を残しているためしっかりと切り刻まれる。
 吸血鬼は苦しむ様子を見せない。全てを虚無に捉えているのか、敵だと判断している猟兵以外は目に映らない。その手を伸ばして強酸の霧を操り、リカルドの鎖鎌を避けるように霧を滑らせる。
 吸血鬼は死を恐れない。妄想の存在だったゆえに死の概念を持たず、戦い続けるのみ。リカルドの鎖鎌を受けようとも、その体につけられた傷は痛みはあっても気にするものではない。
 ただ、彼の吸血鬼は猟兵を倒すために生まれた。だから、目の前にいる猟兵を倒すために動き続けるのみ。
 例え己が傷つこうが、戦いを止めることはない。それが自分を想像して創造した者の願いだからだ。
リカルドには吸血鬼のその意志を知る由はない。ここでこの吸血鬼を止めなくては、自分の望む世界が手に入らない。だから戦うのみ。
 双方の攻防は壮絶なものだった。だが、吸血鬼の一撃がリカルドの身体を掠めその服を溶かす。長時間戦い続けた影響で体力を相当消耗しており、その霧を避けることさえもままならくなってきた。
 ここで死ぬのは勘弁したいものだ。その一言が脳裏に浮かぶや、リカルドは素早く鎖鎌の分銅を高台の木へと巻きつけ、振り子の原理を利用してその場を離脱する。惜しくも吸血鬼を討伐することは叶わなかったが、次にやってくる猟兵達に後を託すことにしたようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

尾守・夜野
(見れば見るほど故郷の邪神に近く感じるわねぇ)
どうあれ倒すに代わりないのだけれど
己が信じる神を呼ぶなんて…
身に余るとは思わないのかしらね
呼び出す、呼びつけるとは己より下であると考えるも同義じゃない
彼に聞いてみたいわね
「呼び出された現世はどうかしら?幻滅したなら骸の海に送ってあげてもよろしくてよ」
まぁまともな答え帰ってくるとは考えてないけど
…霧かぁ…
非物理とは相性最悪なのよね…
まぁ一撃で殺されるくらいの攻撃でない限り相手からの攻撃も効かなくなるけれど
取れる手段を片っ端から試してくのだわ
初撃は耐性で耐えUCで作り替え後は気にしないわ
なお顔とか無事な部分にちょっと攻撃の影響出るようならぶちぎれるわ



●返答を、聞いてみた。
 ゆらゆらと歩く紅い霧を纏う吸血鬼。ある程度のダメージが響いているのか、その肉体の足取りはおぼつかない。
 そんな中、物陰からこっそりと吸血鬼の様子をうかがっていた夜野。相手が霧を使うためか、若干相性が悪いと感じている。無論相性が悪いだけで、完全に無効化されるわけではないのが救いではある。
(それにしても、見れば見るほど故郷の邪神に近く感じるわねぇ)
 吸血鬼の足取りを眺めれば眺めるほど、己の故郷にいたと言われる邪神に近く思えてきた。少なくとも今は語るべき部分が多くはないため省略するが、夜野が惹き込まれたのはこの吸血鬼が因縁のある邪神に近かったからというのもあるのかもしれない。
 ならば、一つ尋ねてみたいことが増えた。元々この吸血鬼は妄想の力で作られた存在であり、現実には一切存在していなかった者。勝手に妄想されては勝手に呼び出されて、勝手に崇拝されては勝手に肉体を与えられ、そして勝手に戦っている。ただそれだけの存在に、尋ねることは一つ。
「ねえ、貴方。呼び出された現世はどうかしら?」
 こんなことを聞いて何になるのか。傍目から見れば、彼女の問いかけは無意味な行為に見えるだろう。その問いかけの意味も、答えも、理解できずとも良い。ただただ、純粋に問いかけたかっただけなのだ。
 無論、吸血鬼の答えは『無い』。はっきりとした言葉で否定するでもなく、身体で否定するでもなく、ただただ己の身体から排出される強酸の紅い霧を、夜野へと滑らせるだけだ。
「現世に幻滅したのなら、骸の海に送ってあげてもよろしくてよ。……まあ、これを伝えたところでまともな答えが返ってくるとは思えないのだけれど」
 ふう、と小さくため息を付いて素早く霧から距離を取る。視認性のある霧は動きもわかりやすいから、避けやすいものだ。
 だが先にも言ったとおり、夜野と霧は相性が悪い。彼女の身体は―――厳密には主人格の肉体に値する部分だが―――様々なパーツで補っている。その部分に対して物理的なものであればうまく絡ませて反撃をも行うことが出来るのだが、霧のような非物理は絡めることも出来なければ吸収も難しい。更には一撃必殺の技でなければ、彼女を倒すことも難しいのだ。
「……でもまあ、片っ端から試してみましょうか」
 様々な力を兼ね備えているからこその、この発言。余裕を持ってユーベルコードの発動条件が揃うものを一つずつ試すことにしたようだ。
 紅い霧が夜野の身体へ滑り込む。チリチリと焼け付く痛みは彼女を蝕み、肉体の皮膚を瞬時に灼いて痛みを奔らせ精神を揺さぶる。溶ける音は強酸を受けたものとしてはっきりと耳の奥へと残され、彼女の視界を一瞬だけ揺さぶった。
 それでも夜野は耐える。痛みは慣れているとはいえ、連続して受けるのはきついものだ。足を、腕を、肢体を焼かれながら発動できるユーベルコードを探し出す。
「っ……これなら、食らいつくせそう」
 灼熱の炎へ放り込まれたような痛みの中で、彼女はやっと見つけた。この紅い霧に対抗する手段を。
 ユーベルコード『摂食変換』。これならば彼女自身が受けたダメージを喰らい、そのダメージを回復した上で抗体をつける。さらには紅い霧に対して有効なものを刻印から取り出すことで自身を強化できるという、まさにうってつけのユーベルコードなのだ。
 素早く今まで受けたダメージを変換し、強酸への抗体を得る。また霧を除去するものとして風が刻印から送り込まれ続けた。夜野へ向けられる霧を全て風で払うことで、近づけさせないようにする手法。最初はそよ風だったが、徐々に台風並みの風が吸血鬼を襲う。
「……あ」
 台風並みの風が吸血鬼へと向けられれば、一点集中された風が猛威を振るう。地に足をつけることさえもままならず、そのまま吸血鬼ははるか彼方へ飛ばされ……風がなくなったところで、地に叩きつけられた。
「……まあ、別にいいわよね。これも討伐の方法でもあるんだし……」
 なんだか締まらないなと思いつつも、夜野は一度吸血鬼から離れ己の身体を確認する。肉体を回復できたとしても、精神のゆらぎが収まらない。今は少しでも落ち着くために、彼女は戦場を後にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…どうやら、ようやく本命のお出ましみたいね

…あの吸血鬼の空想から生まれた虚ろな存在だとしても、
このまま放置すれば更なる災いとなる以上、
お前の存在を許容する気は無い

…目覚めて早々で恐縮だけど、知恵をつける前に狩らせてもらうわ

"写し身の呪詛"を武器改造し殺気を放つ残像を乱れ撃ち、
敵の第六感や暗視を惑わし攻撃を武器(分身)で受け闇に紛れ、
瘴気の余波は全身を覆う呪詛耐性のオーラで防御する

…最後はせめて、お前と同じ闇の眷族の力で葬ってあげる

敵の死角を見切りUCを発動して懐に切り込み、
大鎌の刃に魔力を溜めて怪力任せになぎ払い、
限界突破した血の斬撃を放つ2回攻撃を行う

…残された魔力を、ここで全て解放する…!



●同族殺しの黒騎士は災いを絶つ
「……どうやら、ようやく本命のお出ましみたいね」
 ポツリと呟いたリーヴァルディの視線の先には、よろめきながら歩き続ける吸血鬼の姿。様々な攻撃を与えられたのだろう、既にその様子はボロボロだ。
 領主たる吸血鬼の空想から生まれたものだとしても、このまま放置することは新たな災厄を生み出す事になりかねない。よって、彼女ははっきりと吸血鬼に対して言い放つ。
「……目覚めて早々で恐縮だけど、知恵をつける前に狩らせてもらうわ」
 写し身の呪詛を改造し、本来であれば戦闘力のないただの残像を生み出すその力を変換。殺気を放ち存在感を知らしめる残像を無数に撃ち、吸血鬼の第六感や暗視を惑わす。かの吸血鬼にそこまで知恵があるかどうかは不明だが、少なくとも残像を放つことによってリーヴァルディ本人を見つけることが難しくなっている様子。
 故に、吸血鬼は残像もろともリーヴァルディを一掃しようと考えついたようだ。霧となった己の身体から放たれる瘴気を、一気に広範囲へと広げ残像を溶かしてゆく。リーヴァルディ本人もうまく避け続けてはいるが、起動の読めない瘴気は僅かに彼女の身体を掠める。
「……ここまで知恵をつけているのなら、生半可な力では無理ね。最後はせめて、お前と同じ闇の眷属の力で葬ってあげる」
 霧の行動範囲から吸血鬼の視界を見切り続け、死角の位置を判断。ユーベルコード『限定解放・血の寵児』を発動し、僅かな時間だが彼女は鮮血の仮面を纏って己を吸血鬼へと変貌させ、その力を格段に跳ね上げる。
 己の内に眠る吸血鬼の魔力を軽々と操ることも可能となった故に、彼女は素早く吸血鬼の懐に潜り込み、大鎌の刃に吸血鬼の魔力を圧縮させて怪力任せに大きく薙ぎ払う。血色の斬撃は周囲の紅い霧を更に紅く染め上げるが、それは一撃では終わらない。
「……残された魔力を、ここで全て解放する……!!」
 決意は彼女の魔力を更に大きく膨らませた。大鎌もそれに答えるように再び吸血鬼の魔力を纏い、彼女の力に同調しながらも大きく吸血鬼を切り裂いた。一回目の血色の斬撃が捉えていない箇所を、一気に、バッサリと。
 その対処に吸血鬼は一瞬だけ間に合わなかった。大きく斜め十字に切り裂かれたその身体からは血しぶきが飛び、周囲に降り注ぐ。紅い霧と同じように視界と大地を染め上げる血は、リーヴァルディの肉体をも緋色に染める。だが彼女は振り払うことはせず、ただ、じっと動かない吸血鬼を見据える。
「……っ!!」
 刹那、リーヴァルディの呼吸が一瞬だけ止まって、大きく咳き込んだ。
 彼女は紅い視界に気を取られてしまい、吸血鬼の身体から溢れ出ていた瘴気を1秒にも満たない時間だが吸ってしまっていたのだ。形容し難い奇妙な痛みが胸の中に広がったが、僅かな量のためそこまで被害は大きくなく、またすぐに吐き出したことから身体に大きな被害はなかった。
 だがその数秒の出来事だけで、吸血鬼が逃げることは容易いことだった。咳き込んでいるその間に吸血鬼はリーヴァルディから離れ、新たな力を蓄えるように隠れてしまった。リーヴァルディは一度追いかけたものの、限界解放を行った故にほとんど魔力が残されていないことを考慮して、追いかけることを止めた。
「……それでも、あなたはもう……」
 呟きは誰にも届くことはなく、ただ、暗闇の先へと流れるだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・雨幻
へぇ、おたくが件の神様兼吸血鬼様ねぇ。
中々強そうだけど…その強さの為に、ちと命を借入すぎじゃないかい?
オジサン借金取りじゃぁないけど、…全額返済してもらおうかね。

【WIZ】
「オイオイ、毒なんて喰らったら死んじゃうじゃないの!
…おっと、まずった!」
と慌てた様子で言いつつ【スモークグレネード】を落としてしまい、
不慮で視界不良に…なったと見せかけていく。
実際はその状況を利用しUCを発動。
更に、煙が猛毒の霧接近に対するソナーみたいな役目にもなるだろうね。
紙一重で【見切り】
「…なぁんちゃって。」
間髪入れずに【早業】でUCを乗せた【カウンター】の斬撃をお見舞いしようか。
ここいらで終幕と行こうじゃないの。



●命の返済を、今ここに。
 紅い霧を纏う吸血鬼はフラフラと歩き、止まる。
 目の前にいる猟兵を倒さなければならないという本能が、かの吸血鬼を支配する。
「へぇ、おたくが件の神様兼吸血鬼様ねぇ……」
 道を塞いでいた猟兵とは、雨幻だった。彼は吸血鬼の頭から足までしっかり見通すと、煽りを込めて吸血鬼へと言葉を投げた。
「なかなか強そうだけど……その強さのために、ちと命を借入すぎじゃないかい? オジサン借金取りじゃぁないけど……全額、返済してもらおうかね」
 意味ありげな含み笑いを見せつつ、余裕の表情を見せる雨幻。吸血鬼には彼の言葉を理解しようとも、理解するための感情も持ち合わせていないため、ただただ"猟兵"に向けて手をのばす。
 伸ばした手の先はスルスルと糸がほどけるように消えてゆく。それは手が消えているように見えているだけであって、実際には自分の肉体から変換した猛毒の霧を透明にしたものを排出しているだけだ。
 雨幻も最初はそれが何なのか、理解が追いつかなかった。だが己の身体に毒が盛り込まれていると気づけば、すぐに猛毒の霧から離れるように距離を取る。
「オイオイ、毒なんて喰らったら死んじゃうじゃないの!」
 距離を取りつつ吸血鬼を叱る雨幻。その余裕も吸血鬼との距離を取るために走り込んでいるため、徐々になくなり始めていた。そのおかげでか、彼の懐にしまい込んでいた『何か』がコロンと落ち……カツン、と、地面と接触する。
「おっと、まずった!!」
 彼が『何か』が落ちたことに気づいて回収する前に、それは爆発する。それは爆発した直後に白い煙をもうもうと排出し、身体の先端がなくなっている吸血鬼も、透明な猛毒の霧さえも飲み込んで視界を白の世界に閉ざした。
 爆発した『何か』の正体は……スモークグレネード。もちろんこれは不慮の事故で落ちたわけではなく、これも雨幻の策の一つ。ユーベルコードの発生条件を満たすための動作の一つに過ぎない。
 ユーベルコード『闇霧纏い』は霧や煙、闇などの視界不良の場所にいる場合にのみ真価を発揮する力。この場合だと、彼の視界不良によって起きるのは猛毒の霧の探知が容易になるというもの。白の世界に紛れ込んだ透明は、目視では確認できずとも力の糸として探知できるようになるのだ。
 しかし吸血鬼とて、その時の対策はしっかりと考えている。猛毒の霧によって相手に気づかれるのならば、己が殴り込めばよいのだと。相手が猛毒の霧に気を取られている間に、叩けば良いのだと。なんとも脳筋な思考だが、呼び出した者が呼び出した者なのだから仕方がないのかもしれない。
 細腕が煙を払うように振りかぶられ、風が巻き起こる。ほんの僅かに気配がするところへ近づけば腕を振り回し、なんとか猟兵を見つけようと試みる。
 その爪の先が一瞬だけ、肉を掠る。小さく痛みに耐える声が聞こえたことから、猟兵はここにいると吸血鬼は判断し、大きく腕を振りかぶった。
「……なぁんちゃって。此処は今や、オジサンの得意領域、ってね」
 間髪入れず、雨幻の刀・黒雲が早業のカウンターとして振るわれた。吸血鬼は彼の強い攻撃の意思を感じ取ることは出来たのだが、腕を下げる判断が一瞬遅れたためにザックリと切り落とされる。
 柔らかく、しかし切った感触が薄い。あたりに強烈な匂いが漂ったことから切り落としたことを判断できたため、追撃を行う雨幻。スモークグレネードの煙が切れないうちに、何度も、何度も早業の刀を白の世界へと振るう。
 そして、ある程度の攻撃を終える。相手からの様子を伺いたくもあって、彼は一度刀を引いて吸血鬼の次の動作を待った。しかし待てども待てども、吸血鬼からの攻撃が来る様子はない。
 煙が晴れ、視界が開けた時。既に目の前には吸血鬼は存在していなかった。むしろ新たに、切り刻まれた者が存在している。元は妄想から生まれた者が、無様にも。
「……これで、清算出来たかねぇ」
 空へと向けて、ポツリと一言。その言葉に反応する者は誰もいなかったが、雨幻は満足そうな表情だ。

 一つの炭鉱から始まった物語は、これで終わった。
 これでまた一つ、救われる村があることだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年11月03日


挿絵イラスト