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命みぢかし恋せよ猟兵(強要)

#ダークセイヴァー #異端の神々

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#ダークセイヴァー
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#異端の神々


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●かくて純白は狂気に染まる
 わたしがわたしで無くなっていく。
 ソレを知らない訳ではない。良いと思いもする。それも愛おしい全ての生命達が生みえる美しい物の一つだ。けれど全てではない。全てでは、無いのに。ちがうのに……。
「あ、あ」
 恐ろしい。恐ろしい。自分が変わって行く感覚。心が染められて行く感触。魂に迄入り込まれる蹂躙。何よりも恐ろしいのは、その感覚が、感触が、蹂躙が、とてもとても気持ち良いと言う事。
「あ、ぁ、あ……あああああああ」
 とろけてしまう。くずれてしまう。抵抗すらできなくなって行く。それが致命的な堕落で、取り返しのつかない事だと知っているのに。そうなってしまいたいと……。ゾクゾクと全身を駆け上がる心地良さに陥落してしまいたいと。そう思ってしまって……。
「ああああ。ああ、ああああああああ。あは、あはは、あははははははは」
 変ワッテイク。染マッテイク。入ッテクル。
 堕チテ……。

●オブリビオンだって見守りたい
「そうしてオブリビオンは、カプ厨になってしまったのです」
 沈黙がその場を支配した。
 ……え、今何て?
「オブリビオンはカプ厨になりました」
 グリモアの齎す予知の元、猟兵達を招集したハイドランジア・ムーンライズ(翼なんていらない・f05950)は真剣な顔で猟兵達に頷いて見せる。
 いや、ちゃんと説明して?
「カプ厨と言うのは、主にアースで見るネットスラングですわ。その要旨は『何でもかんでもカップリングしたがる、少し行き過ぎの人』。この場合のカップリングとは……」
 いや、言葉の説明じゃなくて事情を説明しろと言うのだ。
「……ちっ」
 今舌打ちしやがったぞこの女。

「先ず前提としてだな。ヴァンパイア共に支配されてるってぇフレコミのダークセイヴァーだが、実ぁ辺境はそーでもない」
 先程迄のお嬢様ぶった猫を盛大に投げ捨てた調子でハイドランジアは説明する。椅子の上にスカートで胡坐かくの止めてくれないかな……と思う猟兵も居たが、どうせ言って聞く性格ではない。
「知ってる奴も居るだろーけど、辺境にゃ化け物が住んでやがんのよ。『異端の神々』っつー、頭のおかしい超存在がな」
 勿論、ヴァンパイア達は制圧に乗り出した。結果、オブリビオンの軍勢は数々の神々を殺し……そして死んだ神々はオブリビオンに憑依し、その肉体を乗っ取った。
「通称『狂えるオブリビオン』。オブリビオンのガワに異端の神々っつーウチワケだ」
「それが何でカプ厨なんだよ」
 至極尤もなツッコミが入った。ハイドランジアは細く長い溜息を吐く。
「知らん」
 知らんて。
「まー、乗っ取られたオブリビオン自体『全ての命を愛している』っつー奴だしな。嗜好やら思想が影響したのかも知れん。もしかしたら抵抗した挙句混ざったとかかもな」
 だが、どれだけ考えた所で推測に過ぎない。
「兎も角カップルをメインに、恋愛沙汰全般を滅茶苦茶好む様になってる。……まあ、徹頭徹尾狂ってるし実際どうなのかは分からん。実は何の意味も無い電波垂れ流してるのが、俺らにはカップル萌えに聞こえるだけなのかもな。ほら、鳥の鳴き声が言葉に聞こえる的なノリで」
 どんな鳴き声だ。
「だが狂気の方向性が分ってるのはある意味有難い。対処し易いからな」
 討伐に向かうなら、まずは住処である深い森に踏み入る事になる。
「まあ体力全振りで強行突破するなり、素早く走り抜けるなり、異端の神の力を辿って最短コースを探すなり、割と何でもなる。……森自体はな」
 だが其処には常に狂えるオブリビンの声が流れ続けている。それは理性を奪い狂気を伝播させる呼び声。
「『猟兵、カプ萌えはいいぞ』って」
 狂気ってなんだろう。
「仮にも神なんて銘打たれてる存在の呼び声だ。対処無しに聞き続ければ、猟兵であっても狂気に魂を支配されちまう。具体的には、カップルにされる」
 ……何て?
「凄い勢いで恋愛感情を掻き立てられて、手近に居る奴と恋人関係にされる」
 うわあ。
 猟兵達はドン引いた。
 いないなら、作ってしまえラブラブカップル。
「ただ、別に記憶を弄られるとかじゃないから、仕事にゃ支障来たさないんだよな。だから別に良いっちゃ良い」
 良くねーよ。
「当然男女問わず。つーか種族も問わんらしいぞー。あー……使い魔とか居る奴ぁその、今回は置いてった方が良いんじゃねえかな」
 狂ってる。猟兵達は呻いた。
 そーだよ。ハイドランジアはにべもなかった。
「だが安心しろ、対処策はある。しかも複数な」
 ニヤリと笑うその顔が、今日初めて心強く感じた猟兵達であった。
「先ず一つ目。元からカップルのコンビで行く」
 独り身の猟兵達が死んだ。
「いや死ぬなよ……だって道理だろ。カップルが見たくてやってる事なんだから、最初からカップルなら大喜びで眺めるだけだよそりゃ。齧り付きでガン見だよ」
 それはそれでなんか嫌だな……相手持ちの猟兵達もちょっと遠い目をした。
「二つ目ー。恋人やら想い人やらの事を熱く語りながら進む」
 なんじゃあそら。
「相手方が不参加だったり、片思いだったりでも大丈夫って事だ。関係性に萌えてるんだから、両者必須って訳じゃないっつーこった。何なら恋愛相談とかしても良いんじゃね」
 辺境の地を歩きながら何処からか聞こて来る狂えるオブリビオンの声に恋の相談。
 凄い字面である。
「で、三つ目。同志認定を受ける」
 何だそれ。
「カップル萌えの気持ちが分かるって奴ぁ、『分かるー!』って感じで語り返してやれって事だよ。オタクってのは、ジャンル仲間にはめっちゃ好意的なものらしくてな」
 今はっきりオタクって言ったぞこいつ。
「『良いよね……』『良い……』で通じ合えるレベルになりゃ、これはこれで歓迎して通してくれる筈だ」
 ああそうだとハイドランジアは指を立てる。
「勿論演技で行くって手もある。ただ地盤が嘘な分、難易度が高くなるのは覚悟しとけよ。後、どうしようと恋愛的な欲求をガンガンに掻き立てられてる事に違いはねえからな」
 カップルは普段の4~5倍イチャつく事になるし、想いも悩みも煽られまくるだろうし、萌えトークにも一層熱が入るだろう。……実に酷い事になりそうな話である。
「森をある程度進めば、手下のオブリビオンが群れを成して襲ってくる」
 狂えるオブリビオンの狂気に惹かれ、理性を失った者達だ。つまり。
「当然カプ厨だ」
 ええ……。
「元々、世の中の上手く行かねえ事への逆恨みやら責任転嫁が凝縮して生まれた見てえな奴らでな。そこから拗れたからか、『自分達は恋の障害である』とか自認してる」
 思考は兎も角強さは普通に厄介だから気ぃつけろよーとハイドランジアは雑く注意した。
「最奥に辿り着ければ、狂えるオブリビオンは其処に居る。元々凄ぇ強力なオブリビオンだった奴だ。言動は狂ってるが、強ぇぞ」
 だが先にハイドランジアが言った通り、その狂気の方向性は明確だ。工夫すれば油断や隙を生む事も出来るかも知れない。
「チャンスっちゃチャンスな訳だ」
 上手く撃破しその地を解放すれば、そこはヴァンパイアの支配下にない居住地となる。
 猟兵の活躍により切り拓かれつつあるとは言え、それはまだまだ大きな成果だ。
「頼むぜ猟兵。ダークセイヴァーの辺境に新たな光を!」
 ハイドランジアはグリモアに手を伸ばし、力強く親指を立てた。
 ……それっぽくまとめて流そうとしてるなこいつ。


ゆるがせ
 何かごめんなさい。ゆるがせです。
 愛の話のお次は恋の話です。酷えなと罵って頂ければ幸いです。

●一章 冒険『異端の神々の庭』
 森の中を進む事になりますが、異端の神/狂ったオブリビオンの影響でなんかムード溢れる土地になっています。
 OPの説明通り、下記の対処等を取る事で無事の突破が可能です。
 カップル(夫婦でもOK)で行く。
 恋愛対象への想いを語る(恋愛相談する・恋に恋する想いを語る等でもOK)
 カプ萌え語りをして同好の士だと認められる。

 逆に、対処を取らない事で即席カップル祭りで遊べます。楽しいヨ!
 相手を指定して下さればなるべくその通りにします。
 指定が無かったり指定の相手が来なかった場合、他のフリーの人と勝手に遠慮なく容赦なく男女種族問わずカップリングします。フリーの人が居なければ通りすがりのニャンコとか猿とか宛てがいます。酷いことになります。
 また、対処もせず影響も工夫して防ぐ挑戦も可能ではあります。ただし、成功率(≒採用率)が下がる事は予めご了承下さい。

●二章 集団戦『風車男』
 老人の顔をした赤ん坊を背負い、巨大な風車を回す首の無い男達。
 本来は不気味で悪辣な存在なのですが、すっかりアホに……もとい狂気に侵されています。
 恋愛の試練となるべく割と真面目に襲い掛かってきますが、それはそれとしてカップル萌えトークを振ると乗ってきます。

 ネタは良いですが、歌詞そのままは当然マスタリングしますのでご了承下さい。

●三章 ボス戦『純白のリリィ』
 遍く全ての命を愛し、その愛故に『食べてあげたい』と言う願望と行為に走るオブリビオン。
 本来は非常に危険かつ恐ろしい存在ですが、すっかりパッパラパーに……ではなく、ええと、あの、そうそう、狂気に染まっています。怖いですね狂気。
 カップルは愛でます。萌えトークには食いつきます。それだけ言うと無害に聞こえますが。『愛するものを食べる』と言う行動規範は失われていません。つまり愛おしいカップルも片思いさんも同志も、みな食べてしまう。となるため、結局のところ殺し合いとなります。
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第1章 冒険 『異端の神々の庭』

POW   :    とりあえず突っ込む。

SPD   :    森を走り抜ける。

WIZ   :    魔力の痕跡を探す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂気の呼び声
『はぁぁぁん! 恋の香りが足りない甘酸っぱい香り優しい香り切ない香りこの森一杯になーれ! なれ! やっぱり王道は両想いよねそれもお互い好き合ってるのに薄々分かり合ってるのにそれでも最後の一歩が踏み出せないーって言うモダモダ感のある関係とかもう辛抱たまらんですよわよねですよね! 或いは片思いも良いわね高得点よ甘く切なく辛いけどその辛さがあなたを何時か大人にするのよ階段を上るのよ嗚呼でもちょっと爛れてる位の大人の関係もビターなテイストで素敵に無敵で華麗よね三角関係もエモいわーエモいって良く分かんないんだけど何だかシックリ来る言葉だわーあーもー世界中の全ての人がエモい恋をすればいいのにするべきよねしないなんて罪よねまったくもーこまったものだわあっそうだいっそもっと踏み込んで殺し愛なんかもお洒落かしらクール&スタイリッシュかしら血と死線の合間にふっと触れ合う心と心想いと想いわたしとあなたキャー!!!! だめ! 私死んじゃう! 寧ろ今死んだ! そして生き返った尊さで!!』
 以上、森の入り口で耳を澄ませた時に聞こえて来る狂えるオブリビオンの囁き声の一部抜粋である。一部である。本当はまだまだ無限に続く。
 かえりたぁい……誰かが呟いた。誰も責めなかった。
 囁き声じゃねえよ妄言だよ……誰かが呟いた。誰も否定しなかった。
 これ、森の中でずっと聞こえるんですか……誰かが呟いた。
 幸いにしてこれにだけは否定が入った。詳細情報によると、森に一歩でも入った途端聞こえるのは夫々の身の上に合わせた声になるのだと。
 カップルであれば寧ろ邪魔をするまいと静かな位らしい。時々我慢しきれずに漏らした感のある声援が聞こえるそうだが。恋愛相談なんかした日にはいっそ親身にガッツリ相談に乗って来るとか。本当になんなのこのオブリビオン。一体どうしたの……ああいや狂ってるんだったっけ。そうか……
 そして強制カップリングの呼び声は、寧ろ優しく誘いかける様な囁きらしい。まあ、分別するなら通り悪魔の囁きに類する物だから。道理ではあるか。
 兎も角一歩を進めばそうなるのだ。それはそれでちょっと嫌だし覚悟もいる感じだが、それはそれとして……
『年の差カップルも良いわよね大人のおじ様に女性として見られない悔しさを募らせる少女いえ男女逆でも美味しいかしらいっそ少女とお姉さんや少年とおじ様も良いわねでもおじ様だと逮捕されそうね何と無くああでも幼馴染のパワーは何時だってガッツリよ料理で言うならかつ丼よ分かってる私分かってるちょっと目を逸らしたりすれ違ったりするけど最後には指の先でそっと手を握り合う感じに心が通じ合ってキャー!!』
 すいませんもう良いです。
 猟兵達は取り急ぎ歩を進めるのであった。
黒沼・藍亜
まずはUC【12/24×2/14】
今この時よりこの森は「思わず想いを告白したくなるあの日の雰囲気に適応した者の行動成功率が上昇する」ロマンチック会場っすよ!
いきなり何をって、そうした方がカップルのいちゃつきだの思いの丈の暴露だのしやすいでしょ?ボクはそれを堪能する為に来たんすよ!!

む、王道両想いに同意。両想いのくせになかなか最後の一歩が踏み出せない早くくっついちゃえよ案件も二度おいしいっすよねー

年上×年下は紳士のおじ様×憧れを抱く少女もいいっすけど世間とかにくたびれ気味の年上×元気に溢れた振り回し系年下もアリじゃないっすか?他にも……

(※自身の恋愛事関心無し。他者のいちゃらぶを見るのは大好き)



●猟兵身中の名演出家
 其処は『異端の神々の庭』と称される辺境の森。
 鬱蒼と生い茂る木々。不安を掻き立て、共に歩む者に寄り添い縋りたくなる寒々とした空気。それで居て随所に美しい花が顔を見せ、その目を和ませ浮つかせる。所々では蛍が飛び交い、幻想的なムードを演出。挙句の果てには先程からしんしんと雪が降り、ロマンス的な神が大挙して押し寄せそうな有様となっている。
 まあ、要するに。さり気なくテクニカルに『良い雰囲気』を演出しようと躍起になっているロケーションな訳だが。異端の神々がそう言う物だと考えるのは流石にそれは風評被害である。
 何より、雪はオブリビオンの仕業では無い。猟兵の手に拠る物なのだ。
「今この時よりこの森は『思わず想いを告白したくなるあの日の雰囲気に適応した者の勝利し易くなる』ロマンチック会場っすよ!」
 そんな黒沼・藍亜(人間のUDCエージェント・f26067)の宣言が森の中に響き渡った。
 つまり彼女が下手人だ。その名も【12/24×2/14(ホラサッサトコクハクシチャエ)】。幻の雪により周囲の環境と雰囲気を名の通りあのイベントやこのイベントの日っぽく変化させ、想いを告白したくならせるユーベルコード! ……何ですこれ。他のユーベルコードとの温度差が凄いんですけど。
 だがそんな事を言う者はそこには居なかった。皆それ所では無いのだ。
 聞こえるとすればそれは狂えるオブリビオンの声だけで。
『やだやだいきなり何これロマンチックー! 良いわねこう言う演出。捗る、捗るわ。こう言うの助かる~』
 ……好評みたいですね。
「いきなり何をって、そうした方がカップルのいちゃつきだの思いの丈の暴露だのしやすいでしょ? ボクはそれを堪能する為に来たんすよ!!」
 そして真っ向ぶっちゃけ宣言。
「王道両想いに同意。両想いのくせになかなか最後の一歩が踏み出せない早くくっついちゃえよ案件も二度おいしいっすよねー」
 更に流れる様にカプ萌えトーク。
「年上×年下は紳士のおじ様×憧れを抱く少女もいいっすけど……」
 黒沼・藍亜は【昏く暗い黒い沼】と言う名のUDCに憑りつかれたUDCエージェントである。だがそれ以前にマンガ好きのオタ気味レディであり、あまつさえ実は恋愛話が好きだったりもするのだ。
「世間とかにくたびれ気味の年上×元気に溢れた振り回し系年下もアリじゃないっすか? 他にも……」
 つまり今回の首魁たる狂えるオブリビオンとの相性バッチリ。シームレスに提案されたカプ萌えテンプレートに、異端の神の庭たる森は脈動する様にザワザワとさざめく。丸で是非を話し合っているかのように。例えて言うなら、こう、審議中と言う感じに。
 ──ガササササササッ!
 そして突然。木々がその幹と枝をたわませ、人一人が容易に通れる隙間を開けた。
「合格って事っすね」
 藍亜は我が意を得たりと歩み出す。けれどそのその歩みは決して早くは無い。
 だってそれはそうだろう。彼女の放った幻の雪が演出するこの森は今より正に色恋の巷。自分の恋愛事には関心が無いが、他者のいちゃらぶを見るのは大好きな彼女に取って見れば……
 そう、これからがお楽しみなのだ。


●狂える神の声(サムズアップ)
『良いわね良いわねそのカプ論実にイエスだわよねありかなしかで言ったら超ありよね。やさぐれたりくたびれたりした大人の心を元気いっぱいに振り回す年下の関係は美しいわね。その場合私的には大人は男でも勿論キュンキュンだけど煙草とか咥えて眉間に皺寄せたお姉さんでも良いかも。でも結局キモは年下の純真さに負けちゃう大人の葛藤だと思うのどうかしら!』

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
古いダチと/f28022
心情)ありがてェハナシだ。お前さんが戻ってきてくれたおかげで、こォいうトンチキ依頼に巻き込める。いつかの戦争でもこォいう依頼に入ったンだが…こっちは恋。つまり病か。ンで・お相手が必要と。なら《あの女(*宿敵)》しかおるめェよ。動くも眷属呼ぶも出来なくなっから運んでくれやオニキス。ああ俺に惚れる? いいとも好きにおし。そォいうンは慣れてるさ。
言動)俺の敵はどこにいる? 多元の蓋然をさらい尽くして、ただお前だけが俺とおなじ。魂より深く命より暗い、冥夜の奈落からお前を思う。愛より醜くお前を求め、殺意より鋭くお前を拒む。憎悪(*あい)しているよ、俺の敵。この思いに果てはない。


オニキス・リーゼンガング
旧知/f16930 周囲にヒトがいなければ『まったり雑味』
心情)おかしな依頼にばかり私の袖を引くのは、ぜひともやめてもらいたいね。
とはいえ足を運んだのは私。ならば行くしかあるまいよ。
しかし、恋か。無縁だな。理解のフリも難しい。
申し訳ないが、君に惚れよう。巻き込んだのだ、構うまいね?
行動)彼との契約、その恩恵を使って彼を背負う。視力はないが、オーラを走らせて周囲を把握するから転ぶことはないよ。
さあ、いま私は惚れた相手を背負っていることになるが。
その本人は、ずっと別の相手への思いをつぶやいている。
気が狂いそうだが口にはすまいよ。したところで同じ景色は見えまい。
唸るくらいは広い心で許してくれたまえ。



●神々の恋愛事情、或いは因果。
「ありがてェハナシだ。お前さんが戻ってきてくれたおかげで、こォいうトンチキに巻き込める」
 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は笑った。
「おかしな依頼にばかり私の袖を引くのは、ぜひともやめてもらいたいね」
 オニキス・リーゼンガング(月虹に焦がれ・f28022)は笑わなかった。
 二人は……いや二つの存在は古馴染であった。一口に古い旧いと言えど方や病と毒を弄ぶ凶つ神、方や死し悪霊と化して尚冬の権能の欠片を持つ竜神。その関係がどれ程の昔に遡るかなど、誰にも推し量る事は出来まい。
「いつかの戦争でもこォいう依頼に入ったンだが…こっちは恋。つまり病か」
 それなら俺の領分だなァと神が笑い。
「恋か。無縁だな。理解のフリも難しい。とはいえ足を運んだのは私。ならば行くしかあるまいよ」
 竜神は笑わない。
「ンで、お相手が必要と。ならあの女しかおるめェよ。動くも眷属呼ぶも出来なくなっから運んでくれやオニキス」
 その言葉にオニキスは片眉を上げ、けれど良いともと応じる。
「私の方は申し訳ないが、君に惚れよう。巻き込んだのだ、構うまいね?」
 その身をグズリグズリと変じさせながら問う。永い付き合いなれば返事など分かってはいるのだが、それでも筋は通さねば。大切な相手なればこそ口調こそ常には無く雑くはあれど、大切な相手なのだ。この絆は、別に歪められずとも誓いによって定まっている。
「いいとも好きにおし。そォいうンは慣れてるさ」
 果たして疫毒の神は鷹揚に応じ。他ならぬ己との契約に基づき、その恩恵を以って身を疫毒のカタマリへと変じさせたオニキスの背に乗る。神と竜神の間に交わされた契約がどの様な物かは分からねど、その互いに遠慮と躊躇の無い仕草にその縁の糸の強さが映る様ではあった。
 実の所。
『……あの、古いダチとか、旧知とか、良いわよね。良いですよね? それも神様規模って言う凄い長い奴。永い奴! 熟成された高級ワイン的なね! 味わいと芳醇な香りがね! ヤバヤバのヤバな関係性よね何かもうちょっとしたやり取り一つ一つに積み重ねがね! あー! もー! いけませんお客様! あ゛あ゛ー!!』
 とか囁き声がずーっと聞こえてるのに、動じる仕草を見せないのは流石神の類ではあるのだが……しかしそれでも尚、神と竜神は内心いっそ感心していた。その心に、魂に、恋心を煽る響きが着実に沁み込んできているからだ。恋は病、愛は毒、言葉遊びなれど言葉は言霊、遊びの遊の字は神の戦姿。守備範囲に入るその領分ですら防がせぬオブリビオンの力。中々どうして、大したものだと。

 ユーベルコード禍宮の加護(ヒカゲモノ)により変容した肉体で、逢真を背負って森を走る走るオニキス。盲目たる彼の眼窩には暗い闇があるのみだが、しかしだからこそ暗い木々の合間を不自由なく駆ける。周辺へのオーラを網目の様に走らせ、情報を把握する事で近くする彼に取っては、草木の命に溢れた森の中は寧ろ容易く見通せる空間だ。転ぶこと等ない。けれど……
「────!」
 順調な道行きとは逆に、その口からは唸り声が漏れる。
 その理由は彼の背の上の神にある。元より気の置けぬ彼、異端の神に掻き立てられた今は恋しい惚れた相手。その愛おしい男が。
「『俺の敵(お前)』はどこにいる? 多元の蓋然をさらい尽くして、ただお前だけが俺とおなじ」
 けれど自分を見ていない。
 呟く其れはオニキスではなく別の相手への想い。恋心。
「お前は俺の対極。俺はお前の対極。魂より深く命より暗い、冥夜の奈落からお前を思う……」
 グラグラと煮え滾る様な敵意(想い)。どんな毒よりも尚猛毒でどんな病よりも尚邪悪な敵意(慕情)。此れは女の手で男に堕ち、其れは男の手で女に堕ちた。故に彼は彼女を許さず、きっと彼女も彼を許さない。相似の対極、一対の闇と光、その赤い瞳が睨むのはただ一人の宿敵だけ。
「この思いに果てはない。愛より醜くお前を求め、殺意より鋭くお前を拒む。憎悪(あい)しているよ、俺の敵」
 その昏い目に映って居るのは、愛を向けられているのは彼女だけ。オニキスは、一瞥すら向けられてない……!
 一つの地獄が此処に合った。惚れた相手を背負っていると言う、それだけで言えば幸福の一時と言っていい筈の状況が、環境が、想い人の想い一つで魂を責め苛む業火となる。
 はたして彼が命を喪ってから、オブリビオンを屠る役目と引き換えに再び現世に浮かび上がるまでの間。生死の狭間たる煉獄においてすら、果たしてこれほどの責め苦を受けただろうか。
「……────」
 気が狂いそうだ。けれど口にはしない。口にした所で、彼の唯一に夢中の彼には聞こえているかすら怪しい。
 ……そうだ。同じ景色は見えない。同じ景色を見てくれ事も、きっと無い……
「──! ────!!」
 せめて、唸るくらいは広い心で許してくれたまえ。そしてオニキスは食い縛った口から想いの残滓を漏らす。
 それは、怒りか、悲しみか、望みか、欲望か……或いはその全てを一言にまとめ、恋慕と言うのだろう。
 凶神は笑い、竜神は笑わない。
 ただ二つの猟兵(存在)が、共に深い森を駆け抜ける。


●狂える神の声(エキサイト中)
『何何何!? これは何! 私は何を見せれているの!? 魂の敵手への愛! 対極の存在的なこう永久に交わる事のない天敵的な存在との愛? 何その滾るシチュエーションそれだけでもバッチリなのにその上に重なる同好者の片思い!? 横恋慕!? 夢の競演! 恋と恋の協奏曲! 隣と言うか上に居るのに自分を一瞥もしない憎い愛しい男への切ない思いに狂いそうとかああああああーもーーーーー私が狂うわ! 狂ってしまうわ! そう言えばもう狂ってたわ! しかもしかも美男と美男の耽美ですよでも一方の想い人は女性ですよヤッバヤバのヤバよもう夢中よ夢の世界ですよ。世界が拓けるわよ新たに生まれちゃうわ! 生まれる! 生まれた! いけないわね……ウッカリ新たな世界を創ってしまったわ創造神だったのかしら私……!』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーザリア・シン
(インド人なのでインド風にカプ語りします)

ここで死んだカップルの亡霊を大量に引き連れて
ムーディな音楽(インド風)と共に踊りながら目的地へ練り歩くぞ(POW!

愛する二人は美しい…見よ彼らの笑顔と腰のキレ
言葉はなくともダンスがあれば愛するカップル無限大であり
導くロードが新たな光で王道楽土をメイクアップするわけであるな(魅惑のカメラ目線
分からぬか? つまり(一斉に愛のステップを踏み始める男性陣と妾)であり(ワーオ!と恥じらう女性陣と妾)これこれこれよ分かるかそなた 
なに?酔っておるのかだと?
たしかに酔っておるか…『恋』に…な(おちゃめなウィンク(カメラ目線(ワーオ!となるカップル亡霊の皆さん
以上だ。



●ハンドルを右に。後、ブレーキはどうした。
 その女はインド人だった。
 そして「いやインド人じゃねえだろ」とツッコむ者も居なかったので、最初から最後までインド人で通し、インド風にカプ語りをした。これは、そんな傲岸不遜の聖女の抒情詩……。

「愛する二人は美しい……」
 ひょこっと柱(風に飾り付けた森の大樹)の影から顔を出し、ユーザリア・シン(伽藍の女王・f03153)は歌う様に言う。
 そしてそれを肯定する様に流れ出す歌声。ハンニャラム~ダ~ハ~エ~とか大体そんな感じに聞こえる(※個人の感想です)その歌声は、まさしくインド歌謡。
 そして豊満な体をクネらせながら踊るのは彼女だけではない。彼女の横には、周りには、エクトプラズムの人がいる。それも大量に。睦まじい男女、この森で死んだカップル達の亡霊の群だ。
 伽藍の女王のユーベルコード【狐と踊れ(ダンシング・マハラニ)】。
「~♪」
 歌と共に流れるムーディな音楽(インド風)に乗り、彼女は亡霊達を引き連れ踊りながら練り歩く。
 群衆による一糸乱れぬダンス。カップル達が手を舞わせながら踊る横を、その手の動きに加速される様にしてクルクルと回りながらユーザリアが進む。かと思えば腕と肩と腰を連動させてカクカクと揺れるダンピールの背後を、女達が右に左に衣を靡かせ走る。
「見よ彼らの笑顔と腰のキレ」
 魅せ付ける様に両手を広げるユーザリアの左右を、男の手に腰を支えられた女達が羽を広げる鳥の様に反り返る。
「言葉はなくともダンスがあれば愛するカップル無限大であり」
 その言葉の通り、異国後の歌こそあれど彼らは言葉を交わしていない。けれど成程、その笑顔は一様に幸せそうで、死して尚途切れぬ互いの絆を確信するかのような輝き。これぞトゥルーのロマンス。
「導くロードが新たな光で王道楽土をメイクアップするわけであるな」
 そう言葉を結んだユーザリアはカメラ目線に魅惑の流し目を送ってくる。いや、こっち見んな。
 或いは、その視線は狂えるオブリビオンに向けた物か。
「分からぬか? つまり……」
 言葉の合間に足を踏み鳴らす。合わせる男性陣と共に時に足を交差し、時にくねりと曲げ、或いは打ち鳴らしながら踏み鳴らす其れは愛のステップ。
「であり!」
 情熱的な想いを表現された女性陣(と踊りながら何時の間にかそっち側に移動していたユーザリア)がワーオを頬に手を当て恥じらいのポーズを取る。
 と言うか今のステップが説明だったらしい。
「これこれこれよ分かるかそなた」
 分からねえよとツッコむ者は矢張りその場には居ない。ツッコミ不在って恐ろしいね。
 だが、ユーザリアの言葉も出鱈目とは言えない。物の本によればインドと言うアースの国は性表現による規制が非常に厳しく、そう言った描写を伴わず恋愛の熱情を表現する為に、集団での歌と踊りを多用する様式となったとも覚え聞く。その理解が正しいとするならば、彼ら彼女らの歌と踊りには『直接的な表現』に匹敵するだけの情愛が込められていると言う事なのだ。
 ……問題はそのインド人が何処に居るんだよって話なのだが、そこは指摘する人が居ないので……
「なに? 酔っておるのかだと?」
 ダンピールの聖者は誰にともなく言う。
 酒を飲んだわけではない。けれど確かに、狂気の声に誘われ続けている現状は、強力な毒酒を煽らされ続けている状態も同然とも言える。
「たしかに酔っておるか……」
 踊りを緩やかに締めに向けながらユーザリアはまたカメラ目線を見据え。
「『恋』に……な」
 そしてバッチーン☆とお茶目なウィンクで決めた。亡霊達は今度は男女皆一斉にワーオ! となった。何だよこの力技(POW)。
「以上だ」
 以上だて。


●狂える神の声(思わず集中して見てた)
『……こう言うのも良いわね!』

成功 🔵​🔵​🔴​

桜田・鳥獣戯画
実は今まで黙っていたが私は限界オタクが好きだ
推しカプ談義を聞いているだけで森林浴かのようなマイナスイオンに満たされる
ここへ来れば良質な狂気が摂取できると聞いてな
…ククク聞こえるぞ、神の庭に響くこの鮮度の高い妄言!!
辺境の地の神! 貴様だオブリビオン!!
貴様がカプ萌えに狂喜乱舞するさまを私は拝みに来たのだ!!
不審な挙動!新鮮な悲鳴!もっと私の知らぬ専門用語で尊みを叫ぶがいい!!

カップリングだと?
異性同性異種族左右オールOK地雷無しだが見てわかるだろう、生憎私は忙しいのだ
カップルらしいことは手を繋ぐ、庇う、踏み台になる、相撃ちで倒れるくらいしかできんがもし組まされた者(動物)は許せ!
森を進むぞ!!


スピーリ・ウルプタス
「フジ様、お願いしますね」
UC発動
召喚蛇に乗って猛スピードで森を潜り抜ける算段

まんまとカオス狂気の餌食
もしもランダムお相手がいれば、ひたすらに褒めちぎる
「鍛え抜かれた筋肉美ですね…!さぞや強烈なパンチがなされるのでしょうっ。そちらを独占するのは私めでありたいものです」
「麗しきまなこに見つめられながら、その細く鋭い踵に踏まれる権利をどうか私に戴けないでしょうか……!」
等々
正常な者が聞けばドン引く台詞
ある意味通常運転
狂気と変態は紙一重、否、時に同類か

お相手いなければ、自身の召喚蛇さんと全力で仲睦まじい方向
「ヒトと獣…ヤドリガミと大蛇様…ふふっ、異種族だからこそ愛という結びつきは強くなりましょう!」



●割れてるとか綴じてるとか最初に言い出したのは誰なのかしら
「実は今まで黙っていたが私は限界オタクが好きだ」
 桜田・鳥獣戯画(デスメンタル・f09037)は唐突にそう言った。記憶という足場も、過去という礎も持たない彼女は、なのに滅茶苦茶態度が大きいので自信満々に見える。勿論、実際の所は分からないのだが。
「推しカプ談義を聞いているだけで森林浴かのようなマイナスイオンに満たされる。ここへ来れば良質な狂気が摂取できると聞いてな」
 確認する様に耳を澄ませ、直ぐに歯を見せて笑う。
「…ククク聞こえるぞ、神の庭に響くこの鮮度の高い妄言!! 辺境の地の神! 貴様だオブリビオン!!」
 そう、彼女が語りかけているのは仲間である猟兵にでも森の動物に対してでも無く、敵手たる狂神だった。
「貴様がカプ萌えに狂喜乱舞するさまを私は拝みに来たのだ!! 不審な挙動! 新鮮な悲鳴! もっと私の知らぬ専門用語で尊みを叫ぶがいい!!」
 また斜め上の目的である。
 だが、そんなある意味猟兵の仕事を何だと思ってるんですかあなた的な宣言に一人分の拍手が起こった。パチ、パチ、パチと落ち着きのある上品な喝采。
「素晴らしい。強き魂と意志の篭った大音声……。提案があります、私でよければ」
 恋のお相手になりたい。そう語り掛けたのは艶めかしい淡藤色の大蛇に乗った紳士。甘いマスクに柔和な笑顔、社交的で礼儀正しい所作。ロマンス小説から出て来たような男が。
「美しく見えて引き締まり鍛え抜かれた筋肉美ですね……! さぞや強烈なパンチがなされるのでしょうっ。そちらを独占するのは私めでありたいものです」
 何か微妙に変な事を言い出した。カモーンって感じで手をクイクイってやってる、自分の頬を示して。
「天にただ一つ浮かぶ月の様に麗しきそのまなこに見つめられながら、そのスラリと伸びる脚の先の鋭い踵に踏まれる権利をどうか私に戴けないでしょうか……!」
 秒でダイレクトに変な物言いにランクアップした。と言うか変態だ。正常な者が聞けばドン引く台詞だが、これが彼の通常運転。そう、この男、正確にはヤドリガミであるスピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)は、苦痛を快楽とする矛盾に満ちた特殊性癖者。要するにドMなのである!
「恋のお相手だと?」
 ああ、カップリングだったかと鳥獣戯画は頷く。良かった一応説明は覚えてた。
「異性同性異種族左右オールOK地雷無し! だが見てわかるだろう、生憎私は忙しいのだ」
 そして全然ドン引かなかった。と言うか何かSNSのプロフィール欄見たいな事を言い出した。けれどその返答は色よい物では無い。そうだ、彼女は忙しいのだ。……え、何に?
「森にライブ配信中の妄言を聞かねばならんし。カップルらしいことは手を繋ぐ、庇う、踏み台になる、相撃ちで倒れるくらいしかできん!」
 どうでも良い用事だったし、後半は更に寝言だった。
 いや、恋愛事に疎いと言う意味であれば正直で端的な説明とも言えるが。
「嗚呼、そんなつれない事を言うその声ですら宝石の様だ。怜悧にして美麗なるその雄々しい言葉に……ん? 今何とおっしゃいましたか?」
 めげず怯まずひたすらに褒めちぎる姿勢だったスピーリが、重要な事に気づいたようにその目を見開く。
「ん? だから出来るのは手を繋ぐ、庇う、踏み台になる、相撃ちで倒れるくらいで……」
 基本人の話は右から左へ受け流す鳥獣戯画だが質問にはちゃんと答える。復唱したその言葉の最後を『それです!』と変態紳士が留めた。
「相撃ち、それはつまり撃ち合うと言う事。……フジ様、お願いしますね」
 後半は己が身体を預ける【守り蛇】への言葉、ヤドリガミはその背でゆらりと構えを取った。
 フジ様と呼ばれた召喚蛇は彼が頼りを置く二匹の内、探索や防御を担当するもう一匹の『攻』に対して『受』……あ、いや『守』に当たる。本来森を猛スピードで森を潜り抜ける算段で召喚したのだが、『相撃つ』のが前提であればこれもある意味適任と言える。
「なるほど! そう言う逢瀬ならば私もチョットデキル」
 鳥獣戯画も大歓迎だとばかりに拳を握る。何で突然バトルが始まろうとしてんの? とツッコむ者は残念ながら居なかった。

 ガゴッ! ベキグシャッ

 二つの影が交差し、一方だけがポーンと飛んで激突した木をその身体でへし折る。
「ゴフッ……ふ、ふふふふふふ! 思った通りの強烈なパンチ! 素晴らしいですよレディ。貴女こそマイフェアクイーン!」
 変態と言う名の紳士は最高潮であった。
「あー! 貴様今攻撃するフリだけして無防備で喰らっただろう!? ズルいぞそう言うの! ズルだズル!」
 鳥獣戯画はおこだった。
「ふふっ、拳を交わす事は魂の交友。重ねてこそ愛という結びつきは強くなりましょう!」
 さあもう一回カモーン! と構えを取りつつ、付き合ってくれている守り蛇の顎を自然な仕草で撫で労う。ヒトと獣、ヤドリガミと大蛇、種族は違えどそれもまた確かな絆。
「む! むむむそれ何か腹立つ! よし分かったもう一回行くぞ! でも次は貴様もちゃんと攻撃しろよ? 絶対だぞ!?」
 仲睦まじい様子に嫉妬を感じている辺り、多重人格者(だが性格は全員一緒だ)の海賊女の方にもきっちり恋愛強制狂気の呼び声は効いている。……発露の仕方がおかしくて絵面がアレだけれども
「勿論デスとも麗しの君!」
 ハイテンション変態の方もまたそうだ。……だが狂気と変態は紙一重。否、或いは時に同類か。

 ドゴッ! ボキゲショッ

「ふふっふふふふふフゥーーーッ! 最ッ高デス!」
「あーー! また貴様ーーーー!!」 
 楽しそうだな君ら。
 2人が満足し、森を再度進み出すまでにはもう少しの時間が必要そうではあった。


●狂える神の声(海の様に広い受容の心)
『……良いわね。こう言うのも何か良いわ好き。これ好き。キャー! とかウヒャーー! って感じでは無いけど何だかニコニコしちゃうわねこう言うの。凸凹がキッチリ噛み合ってる様でもあって噛み合ってない様でもあってちっとも一般的ではない二人だけどでも間違いなく仲良しで2人也にイチャイチャしててそこには確かな絆があるのよーって感じ。何かしら何かしらこう心の奥からポカポカとひどくラブが沸いてくるわあ』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

敢えてその辺の猿やにゃんこをパートナーに選ぶわ♡
大丈夫、化術神罰の肉体改造で私好みのロリショタ男の娘化できるから♪
あ、一応フリー枠で余った方とのカップリングもOKよ。でも、指定UCがこれで私の頭の中は薄い本みたいな妄想でいっぱいなので、夢や精神世界の中は大変酷いことになっております。
百合カプもいいけどやっぱり男の娘同士のカプが至高だと思うの♪でもでも、女の子に逆レされちゃう男の娘とか、メスガキをわからせる男の娘とかそういうのもいいわよね☆
式神使いでそんなカップルがうようよいる夢の世界となっているわ♡
カプ厨さんとも合体して特等席にご案内とか出来るかしら?



●変態と言う名の淑女
 アースの中国と言う国に、邯鄲の枕と言う故事がある。別称を黄粱の一炊、邯鄲の夢とも。仙人に授けられた枕による一睡の夢にて一生を体験する奇譚、栄枯盛衰の全ては儚く幻の如き物であると表す物語。……だがそれは裏を返せば。
「夢の中なら一晩で一生分の経験が可能よ♪」
 そう取る事も可能と言う訳だ。
 故事成語の教訓など知った事かとブチ退けて、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)は組み敷いた美少年の首筋を一舐めする。少女にしか見えないほどの美貌の少年は、スカートの中から伸びる尻尾をピンと立て、フカフカの猫耳をフルフルと震わせながら身じろぎする。素振りこそ抵抗している物の、その眼を見ればトロンと潤んだ瞳一杯にサイキックヴァンパイアの少女が映って居る。
「にゃぁ……」
 その声は甘く媚態を含み、猫耳と合わせてアリスの嗜好かとも思えるが。そもそもこの少年……見目と服装から考えて男の娘と言うべきか……はそもそも人間では無く、この森に住んでいたただの山猫である。それを一時なりとも人の形に誂えているのはアリスの化術。悪霊の少女が神罰と称する御業。
「女の子に逆に襲われちゃう男の娘……可愛いわあ。後は百合カプもいいけど……でもやっぱり男の娘同士のカプが至高だと思うの♪」
 ねえ? と声を掛けた先に居るのは、彼女たちとはまた別のカップル……それも彼女が至高だと言った通りの二人だ。それだけでは無い、周囲にはそれ以外にも幾つものカップル達がうようよと居て。彼らは一様に、まあ……イチャイチャしている(レンジの広い表現)。
 勿論、彼らは猟兵では無い。アリスの式神と、そして化術で姿を変えられた森の動物達。だが式神も化術もそこ迄万能な物では無い、それがこの様な有様を埋める事には当然種と仕掛けがある。
 ユーベルコード【不可思議なる邯鄲乃夢(ワンダードリームランド)】、夢や精神世界を混ぜ合わせ一つの肉とする彼女の混沌魔術。その一端。彼女の知覚範囲に制限はされている物の、今此処はアリスが望み好む妄想と欲望に満ち満ちた世界と化している。
 異端の神の庭だ。狂気の呼び声響き続けるオブリビオンの領域である。それを一部なりとも上書きする結界術……正に絶技と言う他にない。
「でもでも、わたし見たいなメスガキをわからせる男の娘なんてのも……確かさっき羆いたわよね」
 まあ、目的と用途は相当に放埓と言うか色々酷いけれども。
 けれど欲望のままに動こうとした少女の腕を、組み敷かれた少年(猫)が掴んだ。他の人を見ないで、とばかりにフルフルと首を振り見つめる。
 快楽主義者である普段のアリスであれば、そんな腕はアッサリいなしていたかもしれない。
「……ぁ、う」
 けれどアリスは赤面した。小悪魔少女が、丸で初心な少女の様に身を震わせ目を伏せる。
 放蕩なる性根を乙女の如く引き倒す。それもまた恋の魔力だ。
「……にゃあ、なあご」
「う、うん……」
 甘い鼓動に逆らえず、頷いてしまう。彼女の瞳にも、一杯に相手の顔が写っている。
 全てアリスの望み通りではある。自分好みの男の娘との逢瀬、周囲の夢世界化、そして実は自信家の彼女はカプ厨さん(狂えるオブリビオン)も特等席にご案内とばかりにその精神を合体の範囲に入れ、一部ではあれど成功している。
 呼び声から逆に辿り絡めとり……結果的に。
『食ベテアゲタイ』
 そのオブリビオンが元々説明通りに『ヤバい』存在で、非常に……そう、異端の神に乗っ取られた事が不思議なほどに……強力な個体である情報を実感を以て得ている。それは実の所決して軽くない成果なのだが。
「「……」」
 見つめ合う二人にとって、大事なのはそこでは無いのだ。……今はもう少しだけ、一時の夢の中に。


●狂える神の声(特等席に案内中)
『うわー。これはまた……ああ、でもこういうのも良いわよね萌えるわね。恋が女を変えるのよ! 変えちゃうのよ! 少女みたいな男の子のガッツがそれを成すって言うのも大変エモエモ! 良いわね良いわね。ああ、後ね、ゴチソウサマ』

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ジェイ・ランス
【SPD】※アドリブ、連携歓迎
■心情
んー、面白い体験できそうだし、行くっきゃねえよな。
恋ねえ。恋はいいよねえ。恋もいいけど愛も欲しい!なんてな!
あー、でも恋愛対象があったほうがいいか。うし、じゃあその"狂えるオブリビオン"ちゃんに決定!欲張りなオレに、愛を御教授願えますかね?
―――Ubel:Code Edler_Löwe Dame.

■行動
"事象観測術式"で【世界知識】より【情報収集】し、探索(偵察、索敵)。UCで目標に向かって高速移動します。
狂気による衝動は特に抑えず、"狂えるオブリビオン"に対する恋心を糧に森を突き抜けます。

……ああ、花束が欲しいね。彼岸花がいいかな。



●防衛AIは花の香りの恋をするのか
「恋ねえ。恋はいいよねえ。恋もいいけど愛も欲しい! なんてな!」
 笑うジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)は人間ではない。キマイラフューチャーのバーチャルキャラクターでありAIだ。古代のアニメ作品のキャラクターだと思われていた彼は、それ故か自身を物語の登場人物として捉えている。
 だからこそ、恋を強要されるも同然の今回の仕事を聞き、彼は「んー、面白い体験できそうだし、行くっきゃねえよな」と寧ろ積極的な態度を見せていた。
 実の所『おばけがこわい』彼からすると、鬱蒼と木々生い茂る暗いこの森は余り歓迎したいロケーションではないのだが……今はそれより好奇心と目的意識が先に立っているのだろう。電脳の産物たる自身の存在にすら影響を与える狂える神の浸食を感じつつも、ジェイは慌てず騒がず算段を付ける。
「やっぱり、衝動自体を抑えるのは現実的じゃない。と……」
 その名をワード・オブ・ディスティニー……プログラムによる事象観測術式が走る。道化のように振舞いつつも実は冷静沈着なAIの情報収集は、異端の神の力によって一つの特殊な世界と化したこの森の状況を正しく観測して行く。
「なら恋愛対象があったほうがいいか。うし、じゃあその"狂えるオブリビオン"ちゃんに決定!」
 そして声高らかに宣言する。
 討伐対象である狂えるオブリビオン。名前と姿だけを聞いたその女性をあえて、湧き上がるこの恋心の対象とすると。
「欲張りなオレに、愛を御教授願えますかね?」
 ニっと笑って語り掛ける。相手は先ほどから聞こえる囁き声の主……いや、先の宣言に少なからず驚いたのか、今は声が聞こえない。だが気にはしない、電脳の黒獅子は面白おかしい道を選ぶのだ。
「―――Ubel:Code Edler_Lowe Dame.」
 紡がれるのは詠唱……いや、システムメッセージと言うべきか。ユーベルコードの発動と共にその身体の一部が強化型慣性制御術式へと変異、或いは再構築されて行く。『高貴なる獅子(イドラーローヴェ)』と謡われるそのプログラム術式は名の通り慣性を制御し、黒き獅子は飛ぶが如く高速で……或いは落ちる様に森を走る。恋しい姫の元へ馳せ参じようと。
 こうなれば狂気は抑える必要が無い。この恋心は寧ろ前進への糧なのだから。ノイズの様に、或いはエラーの様にプログラムを焼く恋心。面白い。興味深い。そして愛おしい。
 奔れ獅子よ、森を突き抜けてしまえ。疾く、愛しの彼女に相対する為に。
「……ああ、花束が欲しいね。彼岸花がいいかな」
 邂逅の時を想い、男はふと呟いた。
 恋慕を向ける相手への初めての出会いなのだ。それ位は必要だろう。それが即ち、戦いの始まりであろうとも。


●狂える神の声(動揺)
『えええええマジでマジでデジマー!? 困っちゃうなエヘヘヘヘ私が好きなんだってンマーどうしましょったらどうしましょ! AIでしょプログラムでしょ知ってるよ私だったか『私』だったかが前に食べた人の頭の中にあったよその知識。人に造られしモノが初めての感情、恋心に戸惑いその回路を混乱させるーとかそう言うエモさが見れるかと思ったらまさかの直突き! やられたわタハーやられたわ悪い気しなーい! ドッキドキねドッキドキ! 不整脈? ノンノンときめき☆ラブハート! 萌える思いとか乗ってそう! やーだーもー! しかも花束とかー! やーん楽しみ!』

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼桐・相馬
顔には出ないが若干後悔
何故俺はこの依頼を受けた

【POW】
一緒に行くと言って聞かなかった相手は本日風邪で欠席、且つ特段相談事もない
翼が濡れると鳥臭くなるのが気になる位か

ということで適当な相手と組んで貰おう
猟兵でも通りすがりでも問題ないができれば人型で頼む
任務の為とはいえ、本来の相手が知ったら確実に拗ねる案件だな

[狂気耐性]で囁きや狂気をスルー或いは耐えつつ森を移動
ひとつ疑問と興味が湧くことがある
俺、装備品で感情や欲求を制御しているんだがどの程度効果があるんだろうか

ま、何とかなるだろ
[学習力]でカプ厨耐性を取得しながら森を抜ける
何か起きても[落ち着い]て対処するよ

※連携・アドリブ歓迎 全てお任せ


セフィリカ・ランブレイ
※フリー枠での参戦

まさに悪魔合体としか言いようのない事の起こりだね
『狂い方にも手心が欲しかったわね。……で、セリカ、策はある?』
シェル姉……相棒の魔剣が疲れた声をあげる

ま、出たトコ勝負でいいよ。基本駆け抜けていけば何とかなるでしょ
それにもしかしたら、インスタントに恋のときめきを感じられるかもしれないし?
私、なーんかそういうの感じたことないんだよね
お城抜け出して町で結構暴れて男の子達ともバカやったりはしてたけど

『そも、あんた恋に興味でもあるの?維持できる甲斐性そもそもある?』
どうなんだろうね? ただ、自分以外に優先する人ができるってどんな感じなんだろ、って、さ



●恋の始まりと言ったらこれ。聖典にもそう書いてある(書いてない)
「まさに悪魔合体としか言いようのない事の起こりだね」
 真紅のマントと桃色のリボンをたなびかせ森の中を駆けながら、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)はそう言った。
 並走する者は居ないが、しかしそれは独り言では無い。
『狂い方にも手心が欲しかったわね。……で、セリカ、策はある?』
 答えを返したのは魔剣シェルファ。物憂げだが面倒見のいい女性の人格を持つ相棒は疲れた声を上げた。
「ま、出たトコ勝負でいいよ。基本駆け抜けていけば何とかなるでしょ」
 軍事国家の姫君として生まれた彼女は考えるより動くタイプだった。
「それにもしかしたら、インスタントに恋のときめきを感じられるかもしれないし? 私、なーんかそういうの感じたことないんだよね」
 姫と言えど箱入りでは無い、寧ろ真っ向おてんば姫だったセフィリカは子供の頃からお城を抜け出しては当人に曰くの『馬鹿』をやっていた。けれどその時一緒になって暴れていた男の子達との間にも、そう言う感情を交わした経験は彼女には無い。
『そも、あんた恋に興味でもあるの? 維持できる甲斐性そもそもある?』
 勿論相棒である意志持つ魔剣もそれを知っている。だからこそ出て来る言葉は疑わし気で。
「どうなんだろうね? ただ、自分以外に優先する人ができるってどんな感じなんだろ、って、さ」
 蒼剣姫の返事もまた、曖昧でフワフワしたもの。だけど。
『世界はそれをフラグと言うんだぜ♪』
 狂ったオブリビオンの(歌)声が聞こえた気がした。

「何故俺はこの依頼を受けた」
 開口一番鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)の声には若干の後悔が滲んでいた。
 鉄面皮の羅刹である彼の顔には出ていない物の、内心で彼が嘆くのも無理はない。
「まさか風邪で欠席とは」
 この場にいない相手の事を思う。絶対に一緒に行くと言って聞かなかったのはあっちなのに。風邪て。そんな、学校の遠足休む見たいな理由で。
「且つ特段相談事もない……翼が濡れると鳥臭くなるのが気になる位か」
 帽子の鍔を弄り溜息を一つ。
『そう言うのって雑菌でしょ。日光消毒……日向ぼっこ? でもそれよりなにより、それ絶対相手に言っちゃだめよ?』
 当たり前の様に返事が来て相馬は更に溜息を繰り返す羽目になった。
 ……だが、相手はダークセイヴァーのオブリビオンであり異端の神の筈だ。それが当たり前の様に雑菌と言う概念を把握している……この時点では未だだが、後に合流した猟兵の情報と合わせた相馬は、このオブリビオンが恐らくは猟兵であろう異世界の存在を複数食って居る事を推察する事になるのだが。取り敢えず今は無駄にフレンドリーな妄言アドバイザーである。
「適当な相手と組んで貰おう。猟兵でも通りすがりでも問題ないができれば人型で……」
 取り敢えず無視して算段と願望を口にしながら歩を進める。
「……任務の為とはいえ、あいつが知ったら確実に拗ねる案件だな」
 ふと零れた呟き。表情は相変わらず変わらないが、その声には少しの温かみがある。誰かさんの決して悪くない居心地の空気と、それからジャスミンに似たやわらかい香りを思い出したからか。
 そんな風に考え事をしていたせいだろう。その先の道の角でその少女と衝突してしまったのは。

「いたたた……って、大丈夫!?」
 衝突の瞬間回避しようとした事で転んだセフィリカは、慌てて身を起こし相手の安否を確認する。
 そのままもうちょっと居ればラッキースケベも完成したのに……じゃなかった。彼女からすれば心配するのも当然である。何せあの後ユーベルコードを発動し飛翔状態になった矢先の激突だったのだ。その銘、二つ名に同じく【蒼剣姫(ソードプリンセス)】、今の彼女の地からすれば実に時速450kmの最高速度を誇る技だ。勿論最大加速中では無かったとはいえ、相手が猟兵でなければえらい事である。
「ああ、大丈夫だ」
 だが幸い相手は猟兵であり、返されたのは相馬の冷静でストイックな声。
 そして二人の目が合い、BGMが流れ出した。
『~~~♪』
 狂ったオブリビオン謹製の。
「……!」
 普通ならツッコミの一つも入れたかもしれない。後、冷静に考えたら何で森の中に道の角があるんだって事にも気付き、此処が異端の神の庭である事への警戒をより強めたかもしれない。けれどこの時セフィリカはそれ所では無かった。
「あ、ああ、あのええと平気なら! よ、良かった……」
 冗談の様に顔が熱い。心臓がバクバクと五月蠅い。なのに喉に何かが詰まったように声が上手く出ないし力なく小さくなって行く、何なら呼吸だってし難い。動悸も息切れも特訓好きの彼女からすれば馴れた物の筈なのに、全然上手く整えられない。元気印と形容されたその顔が、挙動不審か自信喪失かと言った有様で俯いて視線を泳がせる。
『……セフィリカ』
 シェルファが驚きとも心配ともつかない声を漏らしたけど、聞こえちゃいない。そんな事より目の前の男の、呪によって病床にある父王を思わせる……けれどよく見れば全然似ていない気もするその双眸が、自分を見ている。見ている。自分を! 今更になって今日の衣装がどうなったかが気になる。リボンは固定だが他の装飾は耳飾りは青だっけ? 髪のセットはちゃんとしたっけ顔色はどうかなああまさか寝癖何かついてたりしないかそれよりええとああもうその目が金の瞳が見てる見てうわあああ!?
 パニックである。初恋も未だの乙女が突然恋心を押し付けられれば無理も無い話だ。
「……お前こそ、大丈夫か?」
 気遣う相馬はそれと比較すれば冷静。に見えた。外からは。
 だがこちらも内心は大わらわ。相手が居る事、三十路も程近い年齢、持ち前の学習力で呼び声から学びこれまでの道中に補強した狂気耐性の技術、そして何よりコートと福用剤に仕込まれた精神拘束の呪いと術式が彼の心と言動をギリギリで取り繕わせている。
「な、なんというかその。すまない」
 逆に言えば、それだけ重ねても尚恋情を煽られる事自体は防げない事が此度の敵手の恐ろしさを示しているのだが……今はそんな余裕はない。顔は相変わらずの無表情だが、頬が朱に染まる事迄は抑えれていないでいた。
「と、兎も角。早い所進もう」
 猟兵であれば今回のオブリビオンの影響は知っているだろうと、先を促す。
「……う、うん。……あ、あの」
 セフィリカも頷きはする。けれど先の通り彼女は余りに条件が悪い。神器の扱いやメカニックの腕前でなら誰にも負けない彼女は、けれど色恋に関しては経験も知識も致命的に足らない。だから、つい思い余った事だって聞いてしまうのだ。
「その、あなたの名前……は?」


●狂える神の声(最高潮)
『────!!!──────!!!!(何かもう言語になってない悶え声)』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…むう。確かに恋仲になった今でもたまに小娘扱いするのよね

…年の差がどうのと言うけれど、
出会った当初ならともかく、私も16歳になったんだから、
もう少しドキドキしてくれても良いと思うの

…だけど自分からそう言うのは誘っているみたいで恥ずかしいし……はっ!?

……危ない。危うく敵の術中にはまってしまう処だった

…生憎だけど、私は此処に恋愛相談しに来たわけではない
神の狂気を祓い、この地を解放する為に来たの

…これ以上、お前の戯れ言に惑わされる私ではないわ

UCを発動し"飛翔、御使い、韋駄天、狂気避け"の呪詛を付与
神の狂気を●狂気耐性の●オーラで防御して耐え、
"血の翼"を広げ●空中戦機動の●ダッシュで先に進むわ



●騎士の想いと意志
「……むう」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は少し赤面した顔で不満げな声を漏らす。
 雪の様な白肌に朱が差しているのは狂えるオブリビオンの声が彼女の想いを増幅しているからに他ならず。増幅された想いとはつまり。
「確かに恋仲になった今でもたまに小娘扱いするのよね」
 勿論、恋人への想いだ。
『良いわね良いわね正にそれよそれそれ。って興奮しちゃうけど、確かに本人からしたら腹の立つ話なのよねー』
 そして当然の様な態度でやり取りしているオブリビオンである。
 ダークセイヴァーにダンピールとして生まれ、黒騎士として戦う彼女だ。ガワとは言え憎むべきヴァンパイアの声を普通に流している時点で正常では無いとも言える。勿論、前情報の通り記憶を弄られている訳では無い。ただ単にそれ以上に。
「……年の差がどうのと言うけれど、出会った当初ならともかく、私も16歳になったんだから」
 想いが強すぎて他事が頭に浮かばない状態なのだ。
「もう少しドキドキしてくれても良いと思うの……」
 感情の現れにくい無表情顔に、しかし確かに微かな不満の色が映っている。それは怒りと言う程強くは無く、けれど確かに悩みを篭めたいじらしい少女の不満。普段無口な彼女からは想像しにくい程に多弁に、年上の恋人への不満を呟く。
「……だけど自分からそう言うのは誘っているみたいで恥ずかしいし……」
 恥じらう声。揺れる紫の瞳。黒騎士であり魔法騎士でもあるリーヴァルディはしかし、今この場に置いてはただ恋に悩む一人の乙女だ。
『ベタだけど、大人になったんだって事に気づかせる様なアプローチがセオリーなんじゃない?』
「それこそ恥ずかし……はっ!?」
 言葉の途中で気付いた。ガバリと身を翻し周囲を睨む。
「……危ない。危うく敵の術中にはまってしまう処だった」
 呼吸を整える。想いの増幅が消えたわけでは無い、彼の顔が頭に浮かんで消えないほどに。けれど己が成すべき事は今は其方では無い。
「……生憎だけど、私は此処に恋愛相談しに来たわけではない。神の狂気を祓い、この地を解放する為に来たの」
 言葉と共に湧き上がるオーラの防御が、少しでも狂気の浸食を抑えるべくその身を包む。
「……これ以上、お前の戯れ言に惑わされる私ではないわ」
 そう言った瞬間、正確には0.05秒後には準備は万全となっていた。【吸血鬼狩りの業・千変の型(カーライル)】。術式換装によりその身と魂に呪詛が宿り、オーラに加えて全身を覆う魔力が風に乗る飛翔の力を、花びらの如き御使いの光が防御を、脚部への魔力集中が神速を、そして狂気への更なる守りを成す。
「……」
 そして無口なる吸血鬼狩りに戻ったリーヴァルディは、血の翼をバサリと広げ森の中空を高速機動し進む。
 ただ真っ直ぐ、倒すべき敵に向けて。


●狂える神の声(※倒すべき敵)
『残念ー。でもそれなりに聞けたし可愛かったし素敵だし―。相手の子もきっとあれよね出会った頃に子供だったなら実感が沸き難いって奴よね多分。或いは大人になってるのは割ってるけど大事で大事で大事過ぎて壊れ物を扱うみたいにーって奴? それはそれで愛情だし見てるこっちからするとごっつぁんですって感じだわーやーんキュンキュンしちゃうー。そしてだけれど少女は一歩一歩大人になっているのであった。なんちゃってなんちゃって! 良いわー! 良いわよねー! ああいうクールで強くてカッコいいけど実は愛を求めてるって感じの少女って応援したくなっちゃうわー! あ、でも成就はしてるのか。良いわね!』

成功 🔵​🔵​🔴​

平平・晴
今回の人格:夢晴

ダークセイヴァーってこんな感じの所でしたっけ…?
兎も角カプ萌え語りすればいいんですね

男女カプの醍醐味は何と言っても体格差にあると思うんです同性カプでも多少差あれど男女は体格差が顕著に出るのが尊いですね互いが互いの魅力を引き立てると言うか精一杯背伸びして彼の首に抱き着いてキスするのも可愛いですし腰をかがめて彼女の顔を覗き込むのも可愛いしいっそこうしたら目線が合うだろなんて逞しい腕で軽々と姫抱っこなんてされようものならもう死ねますねあっ高い所にある物を何気なく取って寄越してくれたりとかいいですね
えっもう森抜けちゃうんですかまだ話し足りないんですがあんなカプこんなカプまだまd



●楽しいひと時ほどあっと言う間に
「ダークセイヴァーってこんな感じの所でしたっけ……? 兎も角カプ萌え語りすればいいんですね」
 最初は、彼女自身そんな程度の認識だった。

 平平・晴(一般人・f27247)は猟兵である。前に隠れオタである。一般人に擬態している故に痛バッグや缶バッジを表に出せる状況は限られている。まして堅気さん(比喩表現)達の前で応援うちわやペンライトソードを振り回せるはずもない。けれどメイクには推しのさり気なくイメージカラーを仕込んであるし、推しのキャラぬいぐるみとは何時でも一緒だ。そんな彼女だから。
「男女カプの醍醐味は何と言っても体格差にあると思うんです同性カプでも多少差あれど男女は体格差が顕著に出るのが尊いですね互いが互いの魅力を引き立てると言うか」
 狂えるオブリビオンに後れを取ろう筈もない。
『分かる分かる分かるわあ良いわよね身長の差目線の違』
「精一杯背伸びして彼の首に抱き着いてキスするのも可愛いですし腰をかがめて彼女の顔を覗き込むのも可愛いしいっそこうしたら目線が合うだろなんて逞しい腕で軽々と姫抱っこなんてされようものならもう死ねますねあっ高い所にある物を何気なく取って寄越してくれたりとかいいですね」
 と言うかオブリビオンより語り倒してる。どこで息継ぎしてるんだろうこの人。
『やーだもーおー凄い凄い凄いじゃなーいそう言うの頂戴もっと頂戴! 身長差は宝の鉱脈ねーあっそうだわ愛し合う二人の身長差を調べて自分の身長に足した高さに線とか引いたら二人の視差を直接体感できるんじゃ』
「基本ですね」
 基本なんだ……。
 晴は……いや、正確には多重人格者(ただし違うのは概ね趣味嗜好だけ)である晴の人格のうち、男女カップリング通称NLを好む人格である【夢晴】は、どうやらオタク強度がオブリビオンより随分と高いようだ。オタク強度って何だよと聞かれても困るけど。
『やーん。やるわねやるわね凄いわねニワカの私とは格が違うわー。センパイって呼ぶべきかしら!』
「いや、それはどうなんですか」
 カプ萌え語りをすれば良いと言う認識が間違っていた訳ではない。
 認識が違っていたのはオブリビオンの態度。違っていたと言うか……まさかここまで好意的とは流石に誰も思わないと言う話である。
 俗に毒親と呼ばれる類の両親の元に生まれ、自己肯定感の低い彼女だ。いっそ尊敬交じりのこの声が不愉快な筈もない。……オブリビオンの声だが。
 とある作品のキャラクターにドップリ沼って以来、公式からの供給を糧に生きてきた彼女だ。墓が幾つあっても足りない位萌え死にしまくって来た彼女だ。漫画アニメでこそ無くともオタトークと呼んで差支えも無いレベルのこの会話が嫌な理由も無い。……相手はオブリビオンだが。
『キャー! センパイ素敵! もっと聞かせて! て言うかさっき聞いた物語私も読みたーい』
 実の所、夢晴は豪雨の如く喋りながらもユーベルコードを使用している。その名を【同担歓迎(ドウタンカンゲイ)】、推しをプレゼンする事で相手に推しへの興味と好意を与える技だ。……それ、プレゼン力が高ければユーベルコードじゃなくても同じでは? って話ではある。そして実際、使う前からレスポンスの良かった狂えるオブリビオンに効き目が出ているのかどうかいまいち判別がつかない。て言うか結局センパイ呼ばわりしてるし。
 しかし。
「えっ」
 無限に続くかと思われたトークが突如途切れる。
「もう森抜けちゃうんですかまだ話し足りないんですがあんなカプこんなカプまだまだ……」
 そう、森の切れ目が見えたからだ。て言うか不満げにしているがこの隠れオタ、歩きながら軽く数時間話し徹しだった。それでも未だ考えていたストックは山ほど残っているのにと呟く情熱は本当に半端では無い。
『そーよねー。残念だわ……』
 狂えるオブリビオンの声も名残惜しそうにシュンと沈んでいる。
「……?」
 その余りにも悲し気な響きに、夢晴は少しだけ違和感を覚えた。いやまあ、狂ってるだけあって最初から最後まで違和感の塊なのだがこのオブリビオンは。
 その棲み処は森の最奥だと聞いた。であればこの切れ目は森の端ではなく、間に待ち受けるとされる手下達のフィールドだろう。
 物足りなくはあるが、オタ友とだべりながらの帰り道に最寄り駅のベンチに座ってトーク延長するんじゃあるまいし、進まない訳にもいかないだろう。夢晴は溜息一つで切り替え、次の戦場に向かうのであった。
 どう言う戦場かは置いておいて。


●狂える神の声
『また、後でね』

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『風車男』

POW   :    風車男は見つからないよ。風車男には首が無いんだ
全身を【首が無いゆえにその存在を知覚し難い状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    黄金虫は金持ちだ
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【黄金の黄金虫】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    楽しかったあの頃に戻れないのは、風車男のせいだ
【過去も未来も掌の上で弄ぶように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●何が彼女を狂わせたのか
 そもそも異端の神はオブリビオンより強いのかと言う話だ。
 元を正せば戦いに敗れ屠られたから憑依したのである。そう考えれば寧ろ、オブリビオンの魂と肉体を奪い取った神はつまりオブリビオンより弱い筈では無いのか。
 勿論、事はそこ迄単純な話ではないだろう。強さの方向性や相性と言う物もあるだろうし、ヴァンパイア達は軍勢で攻めたのだから、個体毎の強さにバラつきがあって当然でもある。要は、異端の神の中でも強い方の個体がより強いか複数のオブリビオンに敗れ殺され、自分より弱い個体のオブリビオンに憑依した。そう考えれば矛盾は無い。
 では、此度の場合もそうなのか?

 彼女は『純白のリリィ』と呼ばれるオブリビオン。実の所ヴァンパイアなのかどうかはハッキリとしていない。何故なら彼女は血だけではなく、犠牲者の全てを食べてしまうから。
 美しいものも醜いものも、全ての命を偽りなく心底より愛している。けれど、愛しているから食べてあげたいと語り。その言葉通りに全てを食らってしまう凶悪なオブリビオン。それが彼女、純白のリリィだ。
 相性で言うなら、会話は出来ても話は通じないと言われる類の狂人。最初から狂っている彼女は、異端の神々の狂気の浸食に対し寧ろ相性が良い筈だろう。
 強さを見るなら、事前情報にある以上に一部の猟兵達は既に体感している。彼女は強い。凶暴で強力な存在であると。
 であれば何故彼女は憑依に屈したのか。齎される狂気の一体何に、抗えぬ程の魅力を感じてしまったのか。
 ……或いは何か、心の隙でもあったのだろうか。
 もしそうだとするなら、それは彼女を打ち果たすべく向かう猟兵達にとっても有用な情報となる筈で……


●確かな事は分からない
『カップルの恋心を燃え上がらせたいかー!?』
『『『おおおーー!!』』』
 真面目な考察の空気が粉々に砕け散った。何してくれるの君ら。
『寄り添い支え合う二人は無敵かーー!?』
『『『おおおおーーーー!!!』』』
 煌々と照る月の下、放棄された病院と思しき廃墟でオブリビオンの群が叫んでいる。
『その絆をより堅固にする為に必要なのはなんだーーー!?』
『『『敵! 障害!! 試練!!!』』』
 屋上に建った巨大な風車がグルグルと回っている。
 こんな悪目立ちする建造物が、けれどこの場に辿り着くまで猟兵達には一切目視できなかった。此処は異端の神々の庭……狂気と理不尽が横行する敵地なのだ。
『ならば我らの為すべき使命はなんだーーーー!?』
『『『カップルや想いを抱える者の前に立ち塞がる!!!!』』』
 そして居並ぶ顔の無い男達。背には老い萎びた顔の赤ん坊。巨大な風車を回す、全ての上手く行かない事の元凶……そう定義された責任転嫁の権化。不気味で性質の悪いオブリビオンの軍団。
『狂い咲くのはーーーーー!?』
『『『人間の!!! 証明だーーーーーー!!!!』』』
 うるさいよ!?
 厄介な敵だとは分かっている。分かっているのだが、やってる事と言ってる事がアホ過ぎて緊張感が持続しない。
 と言うかなんか色々間違った事言い出してるし。
『さあ行くぞ! 我ら恋の試練! 我ら愛の障害!! 我ら恋人達の敵!!!』
『『『うおおおおおおおおーーーーーー!!!!』』』
 そしてオブリビオン達は一斉に突撃して来る。
 ……と言うか君ら、猟兵達が来てるのに気づいた上であの妄言叫んでたのか。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

先程の猫ちゃん(男の娘化継続中)をお姫様抱っこしてイチャラブに耽るという戦闘には不利な行動で戦闘力を増大。
存分に猫ちゃんとイチャラブし2人だけの世界に浸れる妄想世界(結界術)を展開。
人の恋路を邪魔する者は馬(式神使い/集団戦術)に蹴られてしまえと、ルールの制定。過去も未来も掌の上で弄ぶ?関係ないわねぇ、未来を見ようと過去を改竄しようと定めたルールは変わらない。ならば、馬に蹴られるか、神罰を受けるかの2択しか風車男には無いのだ。
恋する乙女にちょっかいを出す愚か者は、その情熱の炎に身を焦がして理解するだろう。敵も障害も試練も恋する乙女の前には無力だと。


ジェイ・ランス
【WIZ】※アドリブ、連携歓迎
■心情
嗚呼、聞こえる聞こえますよリリィ、貴女の声が確かに聞こえる。疾く来たかいがありました。花束の瑞々しさの失われないよう、確かな愛の枯れないよう、速やかに確かに颯爽と、障害は【蹂躙】してしまいましょう。

■戦闘
引き続き、狂気には抗いません。
"慣性制御術式"と"重力制御術式"によって【滑空】し、ランダム機動(残像、フェイント、ダッシュ、瞬間思考力)で翻弄します。
UC他、"光線"、"ガトリング砲"、"電送砲"にて【乱れ撃ち】、【制圧射撃】していきます。

―――おや、自称「立ちふさがる者共」が、よもや自ら避けて道を作ってくださるなんて、あり得ませんよねえ???



●蹂躙と処刑
 群れを成し襲い来るオブリビオン! 対する猟兵は……
「ふみゃぁ……にゃあ」
「うふ、ちょっと止めなさい私の頬は甘くないわ? もー、舐めるならもっと良い所があるのに♪」
 ……イチャついていた。
 術によって男の娘化した山猫をお姫様抱っこしたアリスである。森を歩く間中散々色んな意味でイチャイチャ(曖昧な表現)して置いて未だにラブラブ全開。それが快楽主義者である彼女の素なのか、呼び声によって喚起された恋心故かは彼女のみが知る所だ。
『うおおお!!』
 風車男たちはエキサイトした、人が襲い掛かっとるのに何イチャついとんじゃワレー……と言う理由では勿論ない。寧ろ彼らは今最高潮だった。何せ。
『愛し合う二人に迫る凶刃! これぞ恋人達への試練!』
 ……ですって。
「あら、人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られるし、神罰に炎に焼かれるわよ?」
 チラリとだけ一瞥をやって笑うアリスは余裕の態度だが、何せお姫様抱っこ中でその両腕は塞がっており、あまつさえ彼女しか目に入って居ない様子の男の娘がその舌でああうん描写は控えておきますね? 兎も角戦闘が出来る状態には見えない。
 だが。
 ──ドガガガガガガガッ!
 オブリビオン達の身体を横合いからの轟音が遮った。戦車、或いは化物に対しての使用を想定された機関砲ローヴェシュトゥントの掃射だ。
「嗚呼、聞こえる聞こえますよリリィ、貴女の声が確かに聞こえる」
 ヒーロー登場とばかりに現れたのはジェイだ。
 尤も彼自身はアリスの事を一瞥もせず、恋の相手と定めた敵首魁の呼び声に夢中。恋心を寧ろ前進の燃料とする彼は未だ狂気に逆らわず、只管熱い恋心にその魂を燃やしているのだ。
「やぁだ、音何て気にしないで。あなたは私の声だけ聞いてればいいのよ」
 まあ、アリスの側もネコ(ダブルミーニング)との傍目に百合めいた触れ合いに夢中だから御相子なのだけど。今さっきガトリングの銃弾が鼻先通ったのに動じやしねえ。
『恋にの為に走る男か……これはこれで!』
『我らが立ち塞がるべき相手! 行くぞ、我らこそ貴様の恋の障害なり!!』
 君ら(風車男共)も大概マイペースだなオイ。
「疾く来たかいがありました。花束の瑞々しさの失われないよう、確かな愛の枯れないよう、速やかに確かに颯爽と、障害は蹂躙してしまいましょう」
 アッサリとした風に、何の事は無い様にジェイは言う。
 ──ガチャッ! ブォン
 機械音と共に起動する兵装。どれもオーバーテクノロジーの上に成り立った超兵器。先のローヴェシュトゥントに加え重力偏光式全方位光線ラィヒターレーゲン、帯状魔法陣を使ったプラズマ兵器ブリッツカノーネ、そしてその数415機に及ぶ自爆特攻兵器の群。
「Ubel:Code Lowen_Bataillon Dame.」
 ユーベルコード獅子の大隊(ローヴェンバタリオン)。さしものアホ共……もとい風車男達も、これらの全てをまともに喰らうのは不味いと構えを取る。
 風車がグルグルと周り、老人の顔をした赤ん坊がギャアギャアと嗤う。猟兵達の動き、その過去と未来の全てを読み取り弄ぼうと。さすればどれ程の銃弾の雨であろうと躱す事は可能な筈。
「おや、自称「立ちふさがる者共」が、よもや自ら避けて道を作ってくださるなんて、あり得ませんよねえ?」
 そんな彼らの存在しない耳朶を、ジェイの嘲り声が打つ。
 あからさまな挑発だった。自らが自認する使命の為、その身を投げ打ち全うする。そんな事がお前達に出来るのか。そう問う様に。
『『『出来らあっ!!』』』
 そして風車男達はアホになっていた。あ、いや、狂気に侵されていた。
 ジェイは嘆息を一つ吐く。今は偽りなく心より純白のリリィの元へと急ごうとする彼からすれば、寧ろ彼らが道を開けてくれた方が都合が良いと言えば良かったのだ。
 だがこうなれば遠慮する理由は無い。プログラムが走り、慣性制御術式がその身を浮かばせる。そして重力制御術式がランダム機動を以て中空を躍らせる。
 ──さあ、撃鉄を起こせ。蹂躙の時間だ。


「……大した物ですね」
 激しい(だが一方的な)戦いの間、普段のそれとは違い事務的な口調となったジェイは過度な軽口を叩かなかった。だが、そんな彼が少し呆れた様にボソリと零す。
 視線の先、死屍累々と詰みあがったオブリビオンの屍……そして、その後ろから同程度の数迫るオブリビオンの群。倒す事はまだまだ可能だ。だが、余りに数が多い。
『……世界全ての上手く行かない事を担うのだ。寡兵では務まらないとも!』
 吠える風車男達。無限の如く湧き出るその数。言動はアホでも、悪辣で厄介……なるほど、情報通りだ。
 けれど。
「もう良いわよ。おかげで予定よりずっと長くイチャラブに耽れたし」
 此処にはもう一人いた。戦いの間ずーっと恋人(猫)とイチャ付いていた変態淑女アリスである。
 駆け付けた新手の風車男達がその周りを囲む。恋に狂う電脳の男は挑発と兵装の数を以てその回避を封殺したが、アリスは呆れた事に未だに美少年(娘)を抱きすくめたままだ。視界と思考の間を縫うように動く風車男達の動きに付いて行ける道理はない。筈なのに。
「過去も未来も掌の上で弄ぶ? 関係ないわねぇ、未来を見ようと過去を改竄しようと定めたルールは変わらない」
 次の瞬間、オブビリオン達が一斉に吹き飛んだ。丸で何かの強靭な脚に蹴り飛ばされたかの様に。更に倒れ伏したその身体が燃え上がり始める。
「ならば、馬に蹴られるか、神罰を受けるかの2択。さっき、ちゃんとそう言ってあげたわよね?」
『『『!!』』』
 オブリビオン達が周囲を見渡す。何が変わった訳では無い、だが何かが決定的に変わっている。空気を塗り替え、色を塗り潰し、ルールを書き換えられた、此処は既に悪霊の展開した結界の中、彼女の妄想世界。
「ここはもうわたしが存分に猫ちゃんとイチャラブし2人だけの世界に浸れる世界」
 ユーベルコード不可思議で淫靡なるルールの制定(イマジネイションブラスト)。それは彼女の扱う混沌魔術の多重連鎖術式(マジックコンボ)。
 敵前で睦み合うと言う不利な行動を取る条件術式がその地力を強化し、同時にその様を魅せつける事その物が術式強化の儀式となり、先に『宣言』された攻撃手段がルール定義を補強する。そうして組み上げられた結界。ましてジェイが戦っている間中この工程を繰り返し続けたのだ。その密度と緻密さは森の道で展開したそれを遥かに上回る。
「自重? なにそれおいしい? この未知に終わりなんてないわよ?」
 恋人の喉を撫でながら(恋人はゴロゴロ言ってる)笑うケイオト魔少女と、彼女の制定したルールに反する全てを焼き尽くす神罰の炎。
 ジェイは肩を竦めると両の手をポケットに入れ、無造作に先へ歩を進め出した。燃え盛るその背の向こうの風景を顧みる事すらしない。
「これはもう手伝いいらないよな~」
 その口調が普段のそれに戻っている。
 だって此処はもう戦場では無い。……処刑場だ。彼女が飽きるまでの。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒沼・藍亜
ばっきゃろー!!
第三者の横恋慕、世間の目、仲を引き裂こうとする親族、チラつく過去の異性の影、先の見えない将来設計、突きつけられる夢と家庭の二択……

カップルを襲う困難なんか腐る程あるのに、わざわざワンパターンな仕込み増やしてどうするんすか!
アンタらベタなカップルくっつけ作戦に出て来る「彼女に絡んで彼氏に蹴散らされるヤンキー役」か!

足りないのは何すか!知識か正気かやる気か……おい「首」っつった奴!
さあ【祈り絶え、果てに病め】で思想信条改竄による再教育っすよ!

治らないなら邪魔させる訳にいかない
スカート内から足元に滴らせたUDCの粘液の沼の中へ、伸ばした触腕で捕まえ引き込み……この世にさようならっすよ


平平・晴
人格:腐晴

推しカプ愛が暴走して空回りしてるんですかね…風車だけに
でもその気持ち解ります

障害が多い程恋は燃えて萌えるし
愛し合う二人の尊い世界は不可侵の聖域で
推しカプの家の壁や天井目線でただひたすらに推しの幸せ願い祈る私でも
時には愛故に推しカプに介入してめちゃくちゃにしてやりたいと
心の中のモブおじさんが叫ぶ事があります

つまりあなた方はモブおじさんですね
最近どうですかモブおじ業界は
どんな活動されてるんですかやり甲斐はありますか良いカプ居ましたか

もっと聞きたいのは山々なんですが私一応猟兵なので仕事します…すいませんっ!
モブおじさんに負けたりしたらR-18展開待ったなしじゃないですか断固阻止です



●同じオタクでも考え方は人それぞれ
「ばっきゃろー!!」
 のっけから罵倒である。
 普段のだらしない態度はどこへやら、藍亜はその漆黒の瞳を怒りに燃やしていた。
 風車男達はただの敵対心とは思い難いその態度に少し戸惑ったように様子を見ている。
「第三者の横恋慕、世間の目、仲を引き裂こうとする親族、チラつく過去の異性の影、先の見えない将来設計、突きつけられる夢と家庭の二択……」
 そして指折り上げて行く。それは例示だ。
 ……何か実感篭ってる様に聞こえるなあとか呟いた風車男の脇腹に別の風車男が肘を入れて黙らせた。まあ、その実感の元が3次元か2次元かは藍亜にしか分からないのだけど。
「カップルを襲う困難なんか腐る程あるのに、わざわざワンパターンな仕込み増やしてどうするんすか!」
 いや、俺ら仕込みじゃなくてガチで襲うんですけど……とか遠慮がちに弁明しようとした風車男が他の風車男にはたかれて黙った。
「アンタらベタなカップルくっつけ作戦に出て来る『彼女に絡んで彼氏に蹴散らされるヤンキー役』か!」
『『『そう、それそれ!!』』』
 誰も止めない所か一斉に喰い気味で肯定しやがった。
「それじゃないっすよ!? そこのアンタ今さっきガチで襲うって自分で言ってたじゃないっすか!」
 ちゃんと聞いていた言葉の矛盾点を指摘し更にキレる藍亜。いやあ面目ないと頭を掻く風車男。何だこの絵面。
「推しカプ愛が暴走して空回りしてるんですかね……風車だけに」
 そこに割り込んだ声が一つ。
 新たなオタクのエントリーである。その名も平平・晴……いいやその人格のBL担当腐晴! いや、真面目な話なんで交代して来たの。え、風車男にBL要素見出したの? 後、誰が上手い事言えと言ったか。
「でもその気持ち解ります」
 しかも腐晴さんてばあっさり風車男の方を肯定する始末。君はどっちの味方なのか。
「障害が多い程恋は燃えて萌えるし」
『そうそう! 正に火に油だよね!』
「愛し合う二人の尊い世界は不可侵の聖域で」
『ほんとソレな! て言うか恋する乙女が無敵過ぎて仲間が虐殺されたりする』
「推しカプの家の壁や天井目線でただひたすらに推しの幸せ願い祈る私でも時には愛故に推しカプに介入してめちゃくちゃにしてやりたいと心の中のモブおじさんが叫ぶ事があります」
『君そのノンブレス発声法どうやってんの?』
 恙なく盛り上がり出してる腐晴。それで良いのか猟兵。
「つまりあなた方はモブおじさんですね」
 そして何だその結論。
『俺達が……モブおじさん!? そう、だったのか!?』
『そうかな……そうかも……』
 君らも納得しかけてるんじゃないよ。
「最近どうですかモブおじ業界は。どんな活動されてるんですかやり甲斐はありますか良いカプ居ましたか」
『あ、それは私も気になるー』
 業界とかあるんだ……。
 何かもうピクニックシート敷いて座って話し込みだしそうなノリになって来た。後、混ざるな首魁。風車男達の領域のせいか、廃病院の敷地内では薄れていた狂えるオブリビオンの声だが、時々はこうして明確に聞こえたりもする様だ。
「違-う!!」
 そこでようやくツッコミが入った。勿論、腐晴の話が一通り終わるまでは取り敢えず聞いてた藍亜である。マナーのなっているオタクだった。
「足りないのは何すか! 知識か正気かやる気か……」
『……えーと、首かな──
「おい『首』っつった奴!」
 間髪入れぬ見事なインタラプトツッコミだった。
「さあ【祈り絶え、果てに病め】で思想信条改竄による再教育っすよ!」
『え、何その怖いフレーズ!? それ教育じゃなくない!?』
 割と正論っぽいリアクションを取ったオブリビオンの背後、黒い影が立ちあがる。……影、影だ。人影では無い文字通りの影だ。昏く暗い黒い影。それは多分、風車男自身の影の中から現れた。
『本当に、それはカップルのためなんすか』『本当に?』『自己満足じゃ?』『ほんとうに?』『ミガッテな』『ホントウニ?』
 それは対象の心に直接届きその精神を汚染する囁き。行動理念の根幹、思想や信条までも歪める邪術。藍亜に憑りついたUDCが齎す精神拘束術式。
『…………』
 対象とされた風車男は、いや、他の風車男達さえも同期する様に動きを止めている。想定以上の成果であり、藍亜は違和感と嫌な予感を覚える。
 高校時代の事件が元でエージェントとなって以来、幾たびもこなした仕事の中で感じた覚えのある予感。これは、処置と対象のUDCの相性が想定以上に良すぎた時の様な……。
『           !』
 こちらを見た。
 風車男達の、存在しない筈の目がこちらを見た。確かに。一斉に。
 振れた気。触れる心。走るノイズ。


●けれど
 凹凸の無い綺麗な形である程、傷は目立つ。どんなに小さくても。
 それが己の生き様とどれ程強固に定めていても……いや寧ろ、固く決めて居るほど尚、そう決まり切っていて絶対に覆らないと言う安定は、極小さな不満や一抹の寂しさを生み得る。
 例えば、全部あいつのせいだと全部あいつが悪いのだ早くあいつを殺せと、誰もから疎まれ憎まれる概念の元に生まれて。そうだ自分達はその通りの存在だともと己を定め、世の中全てを貶め台無しにする悪行を為し続ける中で。ほんの少し、ほんの少しだけ……どうして自分達がこんな事を押し付けられなくてならないのだと……どうして胸を張れぬ生き様を最初から強要されているのだと。そう微塵も思わない事は、果たして感情を備えた存在に可能だろうか。
 モシモ、ソノ行為、ソノ生キ方、ソノママデ、ケレドソレガ恋人達ノタメナノダト『胸ヲ張レル』トシタラ。
 たった一欠けら。一欠けらで良い。ほんの僅かな罅が走ればそれで充分。
 ネエ。ウレシイトハ、思ワナイ?
 そこにソッと指が掛かる。そしてそこから……


●オタトークはまた後で
「っ!」
 多分、数秒だったのだろう。
 藍亜のユーベルコードの対象となったと思しき風車男達は未だに動きを止めている。
 範囲から外れたと思しき数体は普通に動いてるけど。
「もっと聞きたいのは山々なんですが私一応猟兵なので仕事します……すいませんっ!」
 そちらは戦いの構えを取り始めている腐晴に任せて良いだろう。
 これで実は小一時間経ってて、その間こいつらずっとオタトークしてたんだったらどうしようとかちょっと思ったけど流石にないだろう。無い無い。無いって。
「それにモブおじさんに負けたりしたらR-18展開待ったなしじゃないですか断固阻止です」
 ユーベルコードからの逆流。見えたのは恐らく、このオブリビオンの群が狂気に屈した理論、その一端の情報。それは寧ろ成果だ。それはそのまま首魁の弱点の推定に繋がるのだから。
『それは聞き捨てならねえな。困難に立ち向かうカップルが好きなんであって……バッドエンドが見たいわけじゃねぇんだよ俺ぁ……』
『え、俺的には在りだけど』
『何だと貴様ー!?』
 軽く仲間割れし始めたアホ共を見やる。本当にバカだ。アホだ。明るく、はしゃいでいる。……存在しない筈のその顔が、笑っている様に見える気がした。
「……………………」
 一変、言葉所か全ての心の動きが無になった様な様子の腐晴が容赦なく無差別にフルボッコし始めている。何アレ怖い。……でも何かあの雰囲気は覚えがある気もする。何か、こう、ゲームとかやってる時に……あの、携帯端末でやる的な。周回を……ガッチガチにパーティ組んで、【脳死周回】……うっ、頭が。
 ……まあ良い。それは後で良い。今はそれより。
「治らないなら邪魔させる訳にいかない」
 未だ自分の術で影に縛られ、身動き一つ取らない風車男達を見やる。彼らが彼らの心の中でどうなっているのか、覗けばまた覗けるのかもしれないけど……。
 もう、良いだろう。
 トロリ トロリ
 そのスカートの内から滴る黒い粘液。広がり溜まり暗い沼。昏く果ての無いその奥底から幾重にも伸びる触腕の群。オブリビオン達の身体を捕まえ、引き摺り込む。
「……この世にさようならっすよ」
 居場所が無いのであれば、それが正しい末と言う物だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

八重垣・菊花
遅刻した時は口に食パン咥えて、遅刻遅刻ー!って言うたらええって近所のおっちゃんが言うてたからな、多分これで大丈夫やわ(食パンもぐ)
カップルを観賞するに最適な場所やって聞いてきたんやけどほんま?
とりあえず菊の花びらを景気よく巻き散らかしてカップルを祝福しまくったらええかな!
えっちょっと首あらへんの出てきたやん!
首がないんだじゃあらへんわ!
え?障害は恋愛のスパイス?そりゃまあ、恋愛小説で上手くいきかけた二人に障害がって言うんはようある話やって聞くけど…多分物理的に首のあらへんもんに襲われるんは想定外やし、それはホラー映画とかやで!
あっもう丁度ええわ!カップルに撒き散らかすついでにこうや!(UC)


セフィリカ・ランブレイ
相馬さん(f23529)と(お花畑継続)

シェル姉。さっき私全速力で走ってたでしょ?
髪乱れてない?私何時もかわいいけど今日もかわいい?
『ハイハイ可愛いんじゃねーのかしらね』

ドキドキが止まらない。隣の彼を目で追う私にシェル姉、相棒の魔剣の返答は投げやり

相馬さんってどんなタイプが好みで……あ!今聞く事じゃないね!
敵が来てるし!

【月詠ノ祓】で攻める!
厄介な虫が合体する前に全部切り落とす!
『セリカ、浮かれすぎよ!』
シェル姉に注意される程ふわふわな私は、何処か本調子でなく隙が

相馬さん、私を守ってくれて…
広い背中だ、……男の人の

あ、ありがと。……お転婆は、キライかな?
そう聞く顔は、さっきよりも熱く感じた


鬼桐・相馬
セフィリカ(f00633)と

セフィリカと呼んでいいだろうか
普段なら気にも留めず呼び捨てるんだが――大丈夫か俺
[冥府の槍]から排出される炎もかなり不安定だ

騒ぐ敵のお陰でセフィリカの言葉がうまく聞こえない
聞き直そうと思った矢先に駆け出す彼女を追う

UCを発動し終わった彼女の隙を埋め[かばう]ように敵との間に立つよ
お転婆なお姫様だな
つい率直な感想を口にしてしまいそうだ

敵を知覚し辛いというのなら一帯を燃やし尽くせばいい
UC発動し全て[焼却]を

いや、いいんじゃないか
彼女の問いに答えた後、俺よりかなり小柄な彼女の視線から逃げるように制帽を目深に被ろうとするができない
角を通してあるんだった

どうにも調子が狂うな



●パニックホラー
「遅刻遅刻ー!」
 麗らかな朝の通学路……では無く廃病院を食パンを咥えた少女が走る。
 いや、なんでだ。
「遅刻した時は口に食パン咥えて、こう言うたらええって近所のおっちゃんが言うてたからな、多分これで大丈夫やわ」
 その男性もまさか自分のアドバイスが戦場への遅刻に活用されるとは思ってないと思う。
 喋り難さにちょっと顔をしかめ立ち止まり食パンをもぐもぐ、両手の指に付いたパンくずも順にちょいちょいと食べてから周囲を見回す。そんな愛らしい仕草は一見ただの少女だが……しかし彼女、八重垣・菊花(翡翠菊・f24068)は年経た香炉が変じたヤドリガミだ。猟兵である彼女が戦場となったこの地の土を踏む理由は明白だろう。
「ここ、カップルを観賞するに最適な場所やって聞いてきたんやけどほんま?」
 君さあ!?
「とりあえず菊の花びらを景気よく巻き散らかしてカップルを祝福しまくったらええかな!」
 そう言う少女の笑顔はなるほど花の様ではあったが、銃弾やら術式やら粘液やらが飛び交う戦場でこの物言いはお転婆が過ぎる。
『恋に落ちていないって事は同志か?』
 そんな菊花を伺う様に風車男が近づいて。
「えっちょっと首あらへんの出てきたやん! 何で首ないん!? え? 何言うとるんよ首がないんだじゃあらへんわそないな事より一体どこ落としたん一緒に探す!?」
『やだこの子めちゃくちゃ喋る!? ちょ、援軍! 誰か!』
 ちょっと手に負えないと考えたオブリビオンは慌てて仲間を呼ぶ。
「え? 障害は恋愛のスパイス? そりゃまあ、恋愛小説で上手くいきかけた二人に障害がって言うんはようある話やって聞くけど……多分物理的に首のあらへんもんに襲われるんは想定外やし、それはホラー映画とかやで!」
 でも説明したらしたでツッコミが飛んで来るのであった。
「あっ囲まれとるしもう丁度ええわ! カップルに撒き散らかすついでにこうや!」
 目まぐるしい展開に軽くパニックを起こす風車男達の周囲を、華やかな菊の花弁が舞う。
 綺麗だな等と呑気な事は言えない。何故ならその花びらは一つ一つがその身に触れた瞬間、機関銃の威力でその身を穿つからだ。
 ユーベルコード【菊花繚乱(キクカリョウラン)】。
「十重に二十重に舞い散る菊花、とくとその目で御覧じろ! あ……目、あらへんな?」


●メロドラマ
 一陣の青い風が吹き、幾人もの風車男達が次々と倒れる。
 そのどれもが一刀の元に切り伏せられている。
「シェル姉。今私全速力で走ったでしょ? 髪乱れてない? 私何時もかわいいけど今日もかわいい?」
 もっとも、それを成した当人であるセフィリカはあからさまに浮ついていた。青刃の魔剣を持たぬ方の手でちょいちょいと自分の前髪を触っていた。
『ハイハイ可愛いんじゃねーのかしらね』
 相棒たる魔剣の声はスッカリ投げやりだった。
 無理も無い。何せこのやり取りは彼女が一撃を放つ度に発生しているのだ。これでもう何度目なのやら、面倒見が良い性質のシェルファがとっくに数えるのを止めている始末だった。
「ドキドキが止まらない……」
 呟く乙女の視線の先に、紺青の炎に巻かれた黒槍を振るう相馬がいる。
「……お揃いの色」
 青い刀身の魔剣を手に、その炎を見て呟いたりもする。『止めなさいよそれだとお揃いなの私の髪じゃないの』と、人間形態にもなれる魔剣が冷たい言葉をかけていたりするのだけど聞こえちゃいない。セフィリカ・ランブレイ、すっかり御花畑状態である。
『このお嬢ちゃん、逸材だな』
『確かに。初々しさが半端無いわ』
 斬られ倒れ伏した風車男達がコソコソと言葉を交わす。君ら丈夫だな。
『セリカ、浮かれすぎよ!』
 響いた声は魔剣のそれ。
 振り返れば、セフィリカの背後で夥しい数の黄金虫たちが互いを喰らい合い、巨大な一になろうとしていた。
「一式、【月詠ノ祓】」
 夕凪神無式剣術の基礎にして奥義の一。多対一の構え。
 その一瞬だけは其処に立つのは初恋に惑う乙女では無く、一拍の後には巨大化中の塊所か集まる途中の虫達迄全てが等しく両断されて地に落ちる。
 残心も怠らず、怜悧な視線でし遂げた事を確認した蒼剣姫は。
「相馬さんってどんなタイプが好みで……」
 シームレスに恋する少女に戻った。魔剣が呆れた様な溜息を零す。
「……すまないセフィリカ。今何と……」
 風車男達の声と回る風車の轟音と虫の羽音に赤子の笑い声、戦場は騒音著しく上手く聞き取れなかった羅刹の男が聞き返すが。
「あ! 今聞く事じゃないね!」
 未だ恋愛偏差値の低い少女は逃げる様に……いや、うん。逃げた。
「……セフィリカ、か」
 相馬もまた複雑な心境で、少女の背を見送りその名を口の中で転がす。
 名前で呼ぶ事に妙な遠慮を感じてしまい、先程当人に呼んでいいだろうかと聞いてしまった。普段なら誰の名前だって気にも留めず呼び捨てる彼なのにだ。
「大丈夫か俺」
 複雑な心境を乗せて呻き、手の中の冥府の槍から排出される炎を見る。……普段より随分と澄んだ色をしている……と思えば普段よりどす汚れた色にもなる。不安定の極みである。
 戦場で思い悩めばそれは隙以外の何物でもなく、立ち止まった相馬の周囲を敵の気配が囲む。
 だが見えない。空気に混ざる様に薄れ、風景に溶ける様に擦れ、首が無い彼らの姿を彼の金の瞳は上手く捉えられず。
「知覚し辛いというのなら一帯を燃やし尽くせばいい」
 猟兵鬼桐相馬。女性の扱いは兎も角、戦働きであれば冷静沈着。
 突き立てた黒槍を中心として、周囲に地割れが広がる。そしてその下から溢れ出るは冥府よりの火柱。ユーベルコード【劫火境】。
「逃げ場など、ない」
 無慈悲な言葉と共に焼き尽くされる風車男達。業火を以て邪魔者を排除した男は乙女を追う。

『……セリカ、貴女だって分かってる筈よ。狂えるオブリビオンの声を受けているのは』
 相手だって同じなのだ。と、相棒にそう言う魔剣の声には当然悪意等ない。世話焼きの彼女は心配しているのだ。相馬が大人の男性である事は一目瞭然、であれば当然、彼にはすでに相手がいる可能性がある。
「……!?」
 その時セフィリカは何と答えようとしたのだろう。それが分かる前に黄金虫がその目前を横切った。
 気付かれ難い様あえて合体を狙わず、死角より襲い来た一匹。油断だ。注意されても尚ふわふわな精神状態だったエルフの少女は、やはり何処か本調子では無く。高速の剣を放った後の少し崩れた態勢、その首筋に小さく旋回した虫の咢が迫り。
「お転婆なお姫様だな」
 実直な声が響いた。虫の咢は少女の柔い喉笛では無く、無骨な軍制コートの表面に噛み付き。鎧並のその固さを貫けずにいる間に手袋に覆われた手がその身を握り、焼き落とす。間を置かず、虫の放ち手たる風車男は機関銃の弾に撃ち抜かれて倒れた。
 内心、思わず率直な感想を口にしてしまったと考えながら。相馬は相変わらず表情に感情を表さない。後、率直な感想って言うかめっちゃ気障だと思います。
「相馬さん、私を守ってくれて……」
 己を庇って立つ男を見る少女。
 広い背中だった。異性の背などこれまでの人生で何度だって見てきた筈なのに、でも初めて見た様な新鮮な驚きと、そして胸の高鳴りが少女の心を千々に砕く。
 それはただの背中ではない。『男の人』の背中だ。
「あ、ありがと。……お転婆は、キライかな?」
 どうしてそんな事を聞いてしまうのだろう。さっきよりも更に熱く感じる頬の熱のせいだろうか。
「いや、いいんじゃないか」
 舞い散る菊の花びらを背に振り返り男は答える。何でもなさそうな態度とは裏腹に、少女の目が赤い宝石の様に煌めいて見えてしまった相馬は、己より小柄な彼女の視線から逃げる様に制帽を目深に被ろうとして。
「……どうにも調子が狂うな」
 出来なかった。羅刹ならではの角が、帽子を固定する様に通っているから。何時もの事の筈なのに、そんな事も失念していた。
「……クスッ」
 セフィリカが笑う。黄金色の髪がふわりと揺れる。
 視線から逃げられないままの相馬は、その様に思わず見入って。
「「……」」
 交わされた二人の間を優しい風が通り。


●スラップスティック
「浮気やーーーーー!?」
 所で菊花は相馬と友人である。愛らしい少女は無骨な男の心を癒すし、少女は無表情な男の優しい性根を知っている。後、何時も一緒にいる女性の事も知っている。
 そんな相馬が知らない女性と物凄い良い感じで見つめ合って居たのだ。と言うか実の所それより割と前からその場にいたのだ。そりゃこうも言おう。
「ち、違うぞ菊花。俺は浮気をしている訳ではない」
 こんな状況でも語尾に『!』のつかない一角鬼は流石の鉄面皮ではあったが。流石にその声に動揺は浮かんでいる。
「浮気って……え、まさか相馬さんこんな小さな子と!?」
 セフィリカはセフィリカで何か斜めにズレた勘違いをしていた。
「あっ。そうや、うちというものがありながら……」
 挙句ノリの良い香炉の乙女が乗った。ハンカチを噛むジェスチャーまでしてる。
「それはもっと違う。子供に手を出すわけが無いだろう」
 この期に及んでも未だ声を荒げない不退転相馬。
「こ、子供にって。じゃあ何歳から子供じゃないの!?」
 そっちに食いついたかあ。
『セリカ、凄い勢いで話がズレてる』
 ツッコんだシェルファだが、じゃあどこに話を戻せば良いのかは正直分かっていない。
「……ぬう」
 進退窮まった羅刹は敵を探したが、その時には何か風車男達は皆遠くに離れていた。あまつさえ『あ、どうぞごゆっくり』って感じで手を左右に振ってる。
 ギャーギャーワーワーと事態は炎上する。その炎たるや地獄の業火より熱そうで。
 逃げ場など、ない。さっき自分が言った言葉である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

朱酉・逢真
古いダチと/f28022
(ツレがいるのでノーガード発狂・敵を《あの女》勢とかんちがい中)
心情)ああ、ああ。にぎやかだ。喧騒だ。あかるいね。死にゆくよ。光。かがやき。狂い咲きかい? 破壊光輝熱現実強さ。《てめぇ》は勝利と変化だった。敗北と不変の哀しさ、《てめぇ》にゃわかるまい。
行動)闇だ。闇だよ。《お前》、なつかしいだろう。輝けよ。光ごとくだいて闇に帰してやる。いのちは大事さ。俺はいのちじゃないから大事じゃないぜ。絶対回避? 無敵? 無効だ無効! よくないぜそォいうの。他の秩序を持ち込むなよ俺と《お前》の戦争だろう。向こう千年の明暗さだめる闘争だ。いっちょやろうぜ。今度は俺が勝つよ。なあ…


オニキス・リーゼンガング
旧知/f16930 ヒトがいるので『やんわり丁寧』
(まだ理性的だが嫉妬で塩対応)
心情)あーあ。節操なしになんでも受け入れるからそうなるのです。
うずくまって闇を放つだけなら放っておきましょう。
いまの友ならば、闇が世界を飲み込む前に死にますから。
最近なんだかマトモっぽかったので、こうなってむしろ安心しました。
とはいえいま死なれると困りますし、一分以内に片付けてしまいましょうか。
行動)無敵のルールは無効化されていますので、全員殴って殺します。
知覚しづらいならオーラを走らせて見つけましょう。
良いところにいてくださいました。苛立ちを発散したかったので。
ああ動かないでください。時間がおしているんですよ。



●神々の恋愛事情、或いは因果
 勝利があれば敗北がある。止まらざるものの対としての動かざるものが在る。
 それが両極と言う物だ。
「ああ、ああ。にぎやかだ。喧騒だ。あかるいね。死にゆくよ。光。かがやき。狂い咲きかい?」
 ブツブツと呟き乍ら戦いの場たる廃病院の敷地内をフラフラと歩む逢真は、有体に言って正気のそれでは無かった。その身(宿)を構成する病毒と狂気の恋との相性が良すぎる為か、或いは恋の相手と定めた存在との因(ちなみ)が重すぎるのか。厄神はこの場に居ない己が対の存在を幻視している。
「破壊光輝熱現実強さ。《てめぇ》は勝利と変化だった。敗北と不変の哀しさ、《てめぇ》にゃわかるまい」
 であれば彼自身はかつて再生と常闇と冷と夢幻と弱さを抱く神であったのだろうか?
 その真偽を知る者は今や極僅かであろう。
「節操なしになんでも受け入れるからそうなるのです」
 その極僅かの側と思われる竜神オニキスが、その背を見て呆れた声を漏らす。
 その視線と声が冷たいのは気のせいではない、今の彼は他ならぬ逢真を恋の病の相手としているのだから。そして森を進む最中ずっと、そして今に至っても己以外の存在を求め続け、立ち塞がるオブリビオン達の姿に重ねる程に狂し続ける彼の姿を見ているのだ。時を経て多少冷静さを取り戻せど、嫉妬の念が消える道理も無し。態度が素っ気無く、当世風に言うなら塩対応になるのもむべなるかなと言う話だった。
『ううむ、戦うべき敵に想い人の姿を重ねているのか。因縁の相手への狂おしい恋……良いな』
『良い……だが、ならば真の敵は彼自身の中。代理に過ぎぬ我々は戦いを長引かせる事に徹するべきだろう』
 所で風車男達はすげえ真剣に審議していた。本当に何なんだ君ら。いや、狂えるオブリビオンか。
 ともあれその言葉の通り、長期戦を狙うと決めたオブリビオン達の姿がスウッと薄れ行く。正確には見えているのに知覚できない、そんな存在に。首が無いと言う事は貌と言う認識の標を持たないと言う事。だから見えない。そして見えない存在は居ないも同じ。居ないものは何もできないし、何もされない。故に絶対の無力にして無敵。
 そんな屁理屈が、風車男達を不可知と不可触の守りの中に囲う。
「よくないぜそォいうの。他の秩序を持ち込むなよ」
 曖昧な様子だった逢真がクイと顔を上げた。その顔にハッキリと色濃い不満が浮かぶ。
「無効だ無効! 孵り還るは母なる深淵、かいなに秘せよ吾が異面」
 絶対や無敵等無粋の極みだと、そう言った神からヌジュリと闇が滲み出た。身体から……いや、もっと奥から出た様な、中に何も見えない真闇。そこから夜陰の様な闇が更にブワリと広がる。闇から生まれた闇は冷え冷えと戦場を凍えさせ。
『『『!?』』』
 その中に捉えた風車男達の姿をポッカリと浮かび上がらせた。
 文明の光の無い星の無い遥か原初の夜の優しい漆黒は、誰も彼も分け隔て無く包み愛する大母の陰極。首が無い事位で、差別も区別もするものか。
「闇だ。闇だよ。《お前》、なつかしいだろう。輝けよ。光ごとくだいて闇に帰してやる」
 だが、強大な力の放出と引き換えにその存在其の物へ負荷がかかる。その場にヨロヨロと蹲る逢真。けれどそれでも尚、陰鬱に笑う。顕わにされた貌は【凶星の異面】。変化と絶対と、そして秩序を否定する原初の夜の闇。
「あーあ。まあ、闇を放つだけなら放っておきましょう」
 龍神は一層呆れた顔でため息を吐いた。他の猟兵が近場で戦って居るから多少はやんわりと丁寧な口調を取り繕っているものの、人目が無ければ更に粗雑に言っていた事だろう。
「いまの友ならば、闇が世界を飲み込む前に死にますから」
 アッサリとそう切り捨てる。と言うかこの人(存在)はこの人で色々聞き捨てならない事言ってるなあ。
「いのちは大事さ。俺はいのちじゃないから大事じゃないぜ」
 逢真から返事の様な言葉が出てきて、オニキスが目を見開く。まさかようやくほんの僅かにでも此方を顧みたのかと、自分を見てくれるのかと、狂気に煽られた恋心のもとにその顔を想わず確認する。
「俺と《お前》の戦争だろう。向こう千年の明暗さだめる闘争だ。いっちょやろうぜ。今度は俺が勝つよ。なあ……」
 熱に浮かされた様な声。情熱と執着の篭った声。変わらず……或いはより一層に『お前』の事しか見ていない深淵のまなこ。
 思わずギリと歯を鳴らした。激情を爆発する寸での所で堪える。
「最近なんだかマトモっぽかったので、こうなってむしろ安心しました」
 声の震えを抑え、努めて素っ気なくそう言って手近な風車男を殴り殺す。
『………!?』
 余りに何気ない動きと呆気の無い結果に、他の風車男達は気付くのに数秒の間を要した。
 その風車男達も次々と屠られる。熱を持たぬその身の、凍気を纏う拳の、ただの無造作な一撃にだ。
「とはいえいま死なれると困りますし、一分以内に片付けてしまいましょうか」
 今の逢真では真闇を放出し続ければせいぜい一分半保つ程度だからと。そう言うその様子は気軽な物で。それは、神たる彼であれば死などその身体(宿)の瓦解程度の事だと思っているからと言うのもあるだろう。だがそれ以前に。
「そっちでしょう? わたくしは確かに盲目ですが、オーラを走らせれば」
 一分で自分達の周囲のオブリビオンを皆殺しにする程度、容易く出来ると持っているからだ。そしてまた1人風車男が殺された。
「良いところにいてくださいました。苛立ちを発散したかったので」
 砕く。壊す。殺す。殺す。殺す。ただ殺す。
 疫毒の神の放った原初の闇に晦ましの術を無効化された今、風車男達にその暴威を避ける手段などありはせず。
「ああ動かないでください。時間がおしているんですよ」
 報われぬ恋心に猛る竜神に、慈悲の心などありはしないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スピーリ・ウルプタス
「愛の障壁となる…それは素晴らしいですね!」
猟兵たちに突撃してくる敵さんに、むしろ混ざりたそうな視線を送る変人。
障壁(物理)になったあかつきにはどれ程の快感もとい達成感があるでしょうかねぇ
等とついつい思案巡らしながら

UC発動
幾冊もの本体vs黄金虫
「どちらが障壁にふさわしいか、勝負といきましょうか!」
何故
そんな斜めった対抗意識の下、一見すれば真面目任務遂行

「おっと、野暮はいけません」
カップルさん(仮)に当たりそうな攻撃は本体たちで盾となって庇ったり
痛みはただのご褒美
「愛の障害となりたいのならば、まずはお相手をよく観察する事です。
 時にはお邪魔してはいけないタイミングというものもあるのですよ」


桜田・鳥獣戯画
力比べと行きたかったが連中は首がない、あれは死なないので厄介だ
故に速さ(SPD)勝負と行こうか!
自信はないので誰かと連携できれば有り難い!ドM卿(f29171)が居れば尚有り難い!!
私が愛しいものを喰うのは最奥の君と同じだが、この右腕の顎は雑食だ
背中の赤ん坊ごと私の血肉になるがいい!

上手く行かない事への憎悪だと?
当然のことではないか。みんな他人のせいにしたいのだ
つまり貴様らは生まれるべくして生まれた存在、そこで誰かの障害となることに存在意義を見出すなど愚の骨頂

だがカプ厨たる在り方を信念とするならば、それは美しい!
私がその誇りのまま風車男を殺してやる
明日の風に吹かれる前に、ここで戦って散れ!!



●悪食の鰐と変態紳士
「力比べと行きたかったが、貴様等には首がない。それでは死なない」
 銀錆色のマントを翻し、鳥獣戯画は厄介だなと肩を竦めた。
 だがその顔は凶暴な笑顔。
「故に速さ勝負と行こうか!」
 吶喊。
 居並ぶオブリビオンの群に向かい、恐れる事等無いとばかりに走り込むその手にはけれど何も持たず。
『黄金虫は~』
 けれど容赦する風車男では無い。一斉に歌い、虫達を放とうと手を伸ばし。
 ガブンッ
 酷く身も蓋も無い音が響いた。
『~~ッッッ!?』
 飛び立つ寸前だった黄金虫が居ない。その虫が乗っていた風車男の手も無い。代わりにあるのは鰐の口。虫と腕を一口に食らった鰐の顎。鳥獣戯画の右腕が変じた鰐の顔。
 ユーベルコード【狂乱黒子太夫(キョウランクロコダイル)】。
「私が愛しいものを喰うのは最奥の君と同じだが、この右腕の顎は雑食だ」
 ガジジュッ ミチギチ
 咢を開ける、閉じる、咀嚼する。そしてまた開ける。その繰り返し。
「背中の赤ん坊ごと私の血肉になるがいい!」
 肉食猟兵とは良く言った物だ。人の形をした化物を食う事を厭う様な繊細さを持っていては、そもそもデスメンタル等とは呼ばわれまい。風車男の脚の先を残し全てを咀嚼した女は、御馳走様とばかりに歯を見せて笑う。
『『『……!』』』
 風車男達の動きが激しくなる。前に立てば食い殺される。ならば囲め、多数で嬲り殺しにしろと一斉に黄金虫を放つ。四方からの虫を一斉には食えず、さりとて避ければ鳥獣戯画が退いたそこで虫達は合体し強力な一となる。
「おっと、それはいけません」
 だが、その虫の群を本の群が遮った。鎖で封じられたそれらは、虫の咢で噛み千切られながらもその全てを跳ね飛ばす事に成功する。
「愛の肉盾、罷り越してにございます」
 変態紳士スピーリ・ウルプタス。ヤドリガミである彼の本体。ユーベルコード【命舞の書(メイブノショ)】によって複製された総勢七十八冊の禁書の防壁だ。
「ドM卿ー!」
 鳥獣戯画が嬉し気に叫んだ。
 対するスピーリは優雅に一礼して見せた後、優しく微笑み。
「ごふっ」
 そして爽やかに血を吐いた。だって本体を盾にしてるんだしな。複製でも本体は本体である。
「ドM卿ー!?」
 鳥獣戯画が再び叫んだ。丈夫な喉だなあ。
 だがスピーリは満足げだ。猟兵としての任務を遂行する為ならば我が身の痛みも厭わない、正に不惜身の心意気。何という真面目さ……
「ウッフッフ……ふぅ。心地良い……結構なお手前で」
 ではなく、彼に取って痛みはただのご褒美なだけだった。
「愛の障壁となる……それは素晴らしいですね!」
 そして敵手を讃える。これも大変紳士的な所作に見えるが騙されてはいけない、その目は寧ろ向こうに混ざりたそうな視線を送っている。内心『障壁(物理)になったあかつきにはどれ程の快感もとい達成感があるでしょうかねぇ』とか考えてる。
「ぶっちゃけ自信はないので連携できるのは有り難い! それが貴様であれば尚有り難い!!」
 その思案を割る様に、鳥獣戯画が力強く前に踏み出した。彼女はオフェンス。
 鰐の顎VS風車男!
「心得ましたクイーン。さあ、ではどちらが障壁にふさわしいか、勝負といきましょうか!」
 紳士は柔和に微笑み、再び幾冊もの書を周囲に展開する。彼がディフェンス。
 禁書(本体)VS黄金虫(使役)!
 ……何か、こっちは物凄く偏ったカードに感じなくもない。


●黄金の星と優しき宿り神
 戦いはゆっくりとだが着実に終わりに向かっている。そう、猟兵達は感じ始めていた。
 理由は単純にして明白。無限に現れ続けるかの様だった風車男達の数が、目に見えて減り始めたからだ。それぞれの個体も動きが少し鈍くなり、疲弊や消耗を感じ取れる様子。
「……」
 結果開いた数秒の間の間に、返り血を払いながら鳥獣戯画は思案気な顔をする。
 長く戦い尚、依然健在。敵手を食い散らかし生命力を奪う彼女のユーベルコードは長期戦に向いているのだ。
「上手く行かない事への憎悪だと? 当然のことではないか。みんな他人のせいにしたいのだ」
 それは事前情報で聞いたオブリビオン達の起源。
「つまり貴様らは生まれるべくして生まれた存在、そこで誰かの障害となることに存在意義を見出すなど愚の骨頂」
 そして狂気によって変じた彼らへの痛烈な否定だった。
『……!』
 果たして、オブリビオン達の動きが鈍くなる。痛い所を突かれた様に。
「そう言えば私、参じる前に数組のカップルさんをお守りしたのデス」
 横からスピーリがそう重ねる。彼もまた長期戦に関わらず未だ意気軒高。……いや、己自身を盾に使い続けた結果全身ズタボロなのだが……でも元気である。寧ろテンションが高い。マゾヒズムってすごい。
 居なくなったと思ってたらそんな事をしていたのかと感心する鳥獣戯画に、しかし男は首を振り。
「いえ、ただ聊か野暮でしたものデ」
 そうして風車男達をチロリと横目で見やり、言葉をそちらに向ける。
「愛の障害となりたいのならば、まずはお相手をよく観察する事です。時にはお邪魔してはいけないタイミングというものもあるのですよ」
 それは批判だ。タイミングが悪い、やり方が悪い、入り方が悪い。つまり彼らの『障害』としての質が悪いと。
 変人ではあれど紳士たる彼は直接口に出す事はしないが。
『……だろうな』
 ポツリと、肯定の言葉が零れた。
 異端の神に端を狂気に影響され狂ったオブリビオンの群。それが彼らだ。
 積み重ねもない即席の生き様では、質が悪いのも当然。
 そして愚の骨頂と言われても反論の余地がない。猟兵達は精強だから彼らを返り討ちに出来るのだ。そうでないカップルへ障害として彼らが襲い掛かれば……その後に待つのはカプ萌え等ではない。所詮彼らの本質は鳥獣戯画の言う通り、憎悪。
 ハシャぐバカには2種類いる。モノホンの喧しいバカと、ハシャぐ事で見たくないものから目を逸らすバカだ。
『俺達は……』
 紛い物だと。そんな諦めが零れるその直前。
「だがカプ厨たる在り方を信念とするならば、それは美しい!」
 デスメンタルが引っくり返した。
 愚の骨頂だと面罵して置きながら、けれど問題は今なのだと。
 今この時、貴様らがそれを己の真実だと定めるなら。
「私がその誇りのまま風車男を殺してやる。明日の風に吹かれる前に、ここで戦って散れ!!」
 今日が最後の日であれば、それはつまり一生の誇りだったと言う事となる。
 風車男達が存在しない顔を上げる。勢いを取り戻した、木や寧ろ今日一番力強い黄金色の虫の群が鰐の顎を迎え撃つ。
 いや、何敵を元気付けてるんだって話とも言えるが……。
「……アウレア・ステッラ」
 けれど、ヤドリガミの紳士は静かに笑った。そして自らも再び戦いの場へと踏み出す。
 何れにせよ、決着の時は遠くないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…

…それが大切な人達から受け継いだ私の誓い
私は愛する人と別離する危険を犯してでも、
この世界を救い誓いを果たすと心に決めたの

…恋の障害?愛の試練?考え違いもはなはだしい
…お前達は元々、存在するだけで害悪なのよ

"狂気避けの呪詛"と"血の翼"を維持(狂気耐性、空中戦)してUCを発動
完全に吸血鬼化した第六感で敵の殺気を見切り、
残像が生じる超高速の空中戦機動で敵陣に切り込み、
限界突破した魔力を溜めた大鎌を乱れ撃つ早業で、
無数の血の斬撃を放ち敵陣をなぎ払う闇属性攻撃を行う

…さあ、ばか騒ぎの閉幕はすぐそこよ
お前を討ち果たし、この地を解放してみせるわ。必ず、ね



●過去の終幕
「……恋の障害? 愛の試練? 考え違いもはなはだしい」
 冷たい声でそう言い捨て、リーヴァルディは大鎌を振るい血糊を落とす。
「……お前達は元々、存在するだけで害悪なのよ」
 視線の先にあるのは死屍累々の屍の山。妄言を吐く暇も与えず刻んだ風車男達の躯。
 恋人への想いが薄れた訳では無い、呼び声による想起は今も少女の心を煽る。けれど狂気避けの呪詛が、その想いを想いの範囲で留めている。判断を歪ませたり行動を阻害する事の無い水準に。
「……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……」
 それは宣誓だ。大切な人達から受け継ぎ、幾たびも繰り返した誓いの言葉。その信念が心にある限り。ダンピールの黒騎士は狂える呼び声如きに膝を折る事は無いのだと。
「私は愛する人と別離する危険を犯してでも、この世界を救い誓いを果たすと心に決めたの」
 呟くと同時、第六感にて殺気を見切り紅い羽根を羽搏かせる。
 背後より飛来していた巨大な黄金虫の咢は空振り、血の翼を持つ黒騎士はその背後に。両断された五十の数字を持つ黄金虫は、数字と同じ数の死骸に戻りながら崩れて行く。
『……』
 これまでの激戦の中で風車男達の数は更に減っている。だが未だ侮れはしない人数が廃病院の一角を埋め、リーヴァルディを囲んで居る。
 先の辛辣な少女の言葉に、反論する者は居ない。正論だからだ。
 彼らは害悪である。憎悪から生まれ、人の世を貶め苛むオブリビオン。彼ら自身がそれをどう思って居ようと、狂気によって一時的に薄められようと、その事実は変わらず。
「……土は土に。灰は灰に。塵は塵に」
 それは聖典の記述に端を発する葬送の言葉。紡ぐ猟兵が振るうは『過去を刻むもの』。
 聖句にて送るのは人だ。歪んだ恩恵や脅威や支配から大切な者達を守ろうとし続けた人、リーヴァルディに力の使い方と責任を教えてくれた人、護ってくれた人、誓いを受け取った人、どう成り果てようが彼ら彼女らは人。だから悼む、懐かしむ、誓う、心を共にする。そうし得る。
 だが、彼らは……オブリビオンは『過去』だ。
「過去が私の前に立たないで」
 己が生地ダークセイヴァーの明日が為、ヴァンパイアを狩る道を一途に歩む騎士は。
「……限定解放。忌まわしき血に狂え、血の寵児」
 その為に、憎き敵に連なる力すらその手に握る。
『『『……!?』』』
 風車男達が一斉に身を仰け反らせた、彼らが放ち周囲を幾重にも旋回していたボイ正しい数の黄金虫。その全てが一斉に粉々に切り刻まれ潰えたからだ。
 血統に覚醒し、一時的にヴァンパイアそのものと化す彼女の手札。その更に奥義と言える切り札【限定解放・血の寵児(リミテッド・ブラッドアニマ)】。
「……さあ、ばか騒ぎの閉幕はすぐそこよ」
 そう言う彼女の顔は、何時の間にか鮮血の仮面に覆われている。
 表情が見えないと言う点では風車男達と同じ。しかし、その奥に垣間見える紫いろの輝きは、断じて過去の残滓などでは無い。過去を糧とし未来を見据える、騎士の瞳。
『『『……?』』』
 応戦しようと動き出した風車男達が、先頭側の仲間達が動かぬ事に気づきその身体に触れる。そしてボロボロとその身体がバラバラになって崩れる、先の一撃で既に、黄金虫のついでの如く刻まれていたのだ。
 絶句してそれを成した黒騎士の方を見直す。死神を意味するグリムリーパーと言う言葉で表される大鎌を手にした少女は未だ先程と同じ位置に浮かんだままで。
 その筈なのに彼らの身体がバラバラになった。
「お前を討ち果たし、この地を解放してみせるわ」
 残像が薄れて消えた時、既に敵陣のど真ん中で風車男の大半を鏖殺せしめた血の寵児。その言葉も目も、既に風車男達等には向いていない。見据えるはただこの先に待つ、狂える異端の神のみ。
 勿論、この場のオブリビオン達とて案山子では無い。せめて一矢報いようと残り少ない総勢で一斉に飛び掛かり……しかし斬撃がその全てを呆気なく切り刻む。正に鎧袖一側、限界突破した魔力の篭った大鎌は敵陣を文字通りに薙ぎ払う。
「必ず、ね」
 短く誓い、先と同じ様に得物を振るい血糊を払う。周囲に最早『過去』は居らず、全て刻まれ地に転がるのみ。これより後は、閉ざすべき『未来』が待つ最後の舞台へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『純白のリリィ』

POW   :    今日の私はあなたが欲しい
【その美貌】を披露した指定の全対象に【自らの血肉や命を捧げたいという衝動的な】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    綺麗に食べて差し上げますから、安心して眠って
【対象が望む幸せな夢を強制的に見せる花香】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ   :    Hallelujah!
【レベル×1体の狂信者】の霊を召喚する。これは【対象を供物として捧げようと、痛覚】や【身体の自由を奪う麻痺毒】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は夏目・晴夜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●穢された純白。されど、穢れども純白は純白
 絶世の美。そう形容して良い美貌。心を蕩かせ、夢うつつの快楽に誘う芳香。
 道理で遠い距離を置いてすら魂を蝕む呼び声を響かせる筈だ。そのオブリビオンはこの上なく蠱惑的で、魂を引き寄せる様な魅力を垂れ流し。そして艶やかな唇が蜂蜜の様な甘い声で囁く。
「あ、いらっしゃーい。入って入ってーごめんね散らかっててねーこれでも片付けたのよー? えへへへへー」
 えへへへじゃないよ。
「お菓子とか食べる―? お茶はねー。あんまり良い茶葉無いんだけどねー。さっき初挑戦して見たブリオッシュが割と良い出来でー」
 ちょっとお洒落なお菓子作りに挑戦してるんじゃないよ。
「そーだ。カップルさん達に質問とか良い? ほら、あれ、インタビューって奴。やっぱり公式からの供給が一番凄いから! 尊みでうっかり死ぬかもしれないし試してみても良くない? 良くない! ホラホラー!」
 テンション高くそしてフレンドリーに喋くり倒しながら、両手を握ってクネクネするその様はまあ……残念なオタクそのものだ。だが。
「ねえ。駄目? 別に焦る必要無くない? 萌えトークとかもしたいしさ。ちょっとノンビリしようよお。疲れてるでしょ? 治療とかもして良いよ。話に付き合ってくれるならだけどねー例えばカプ談義。主にカプ談義。寧ろ全てがカプ談義!」
 イエーイと笑うその笑顔はパッパラパーそのものだ。だが。
「良いでしょ? お仕事なのは分かるけどさ。直ぐ終わっちゃったら寂しいじゃない……」
 シュンと顔を俯かせるその顔は本当に寂し気で悲しそうだ。だが。
「だからね。後にしましょ? 損は無い筈よー。貴方達休める。私は供給が入って嬉しい! ねえ、どっちも得しかしないじゃない! こう言うのウィンウィンって言うんでしょお。異世界には良い言葉があるわよねー。だからさー。ねー」
 その足元に、紅い泉が幻視(み)える。白百合の花咲く暗い水辺。
 夥しい数の死で出来上がった血の泉。無数の骸の手が伸びる被捕食者達の末路。
「食べるのはあ。後にしましょー?」
 狂えるオブリビオンは人懐っこく笑う。
 狂って居るからこの程度なのだ。異端の神が乗っ取っているからこれで済んでいるのだ。カプ厨萌え何て言う事に夢中になって全てを台無しにして尚、この圧迫感なのだ。
「ね?」
 悪戯っぽく笑うその貌は最早魅了の術も同然で、猟兵達の脳幹を甘い痺れが襲う。これは危険だ。途方も無く危険な存在だ。まともにやればあらゆる意味で食い尽されかねない程に。
 隙を突けば良いだろうか。最初に説明された通り、その狂気に沿う様に。
 ……或いは、猟兵達がこれ迄の道程で得た推察。彼女が狂気に負けたそもそもの原因。その心の疵を詳らかにする事が出来れば、より大きな動揺と隙を誘える筈だ。
「大丈夫だよー。寂しいけどさ、『最後にはちゃあんと、綺麗に食べて差し上げますから』」
 チラリと、何かが垣間見えた。
 口調が少し違う……いや、恐らくはこれが彼女本来の。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

あら、ご同類?私も『あの子』を始めとした数多のオブリビオンと“なかよし”になって“1つになった”から気持ちはわかるわ♡(降霊/式神使い)
ま、シャーマンとしてはお話して“なかよし”になれるなら願ったり叶ったりよ♪心通わせたオブリビオンが多ければ多いほど力になるからね☆
お話ししながら破壊の衝動やら諸々をカプ厨魂の情熱に焚べて燃え上がらせましょう。
血肉が欲しいならあげましょう、今の私にはこれは飾りだし。代わりにあなたの魂は頂くわね?(降霊/略奪/捕食/結界術)
ではでは楽しいオタトークを始めましょうか♪


ジェイ・ランス
【POW】※アドリブ、連携歓迎
■心情
嗚呼、こんばんは初めまして、リリィ。貴女に恋した者です。さあさあ食べてくださいな。
……え?お話もしたい?
ああ、それなら大丈夫。私はそうそう死なないので。食べながらでも、お話しできるでしょう。
我が血は白く、貴女のドレスも汚さない。我が体は事象片の寄せ集め。生クリームから道路標識まで、様々なフレーバーが楽しめるでしょう。まあお食べください。愛してるのならば。

■戦闘
自身を差し出しつつ(鎧無視攻撃、目立たない、罠使い、呪殺弾)、お茶会をします。その間、【世界知識】から【情報収集】、折を見て食べられた自身の身体を【ハッキング】。内側から全装備を【一斉発射】します。


オニキス・リーゼンガング
旧知/f16930 口調『やんわり丁寧』
心情)やっと起きましたか、この寝坊助。
作戦を聞いたときには正気を疑いましたが、うまくいってなによりです。
わたくしは先程のやつあt…戦いでスッk…理性を取り戻したので問題ありません。
ええ。あなたにすこし似た、彼女が殺害対象です。
行動)盲目なもので、いかにあなたが美しかろうと知ったことではありませんね。
おや、そちらの信者ですか。邪魔ですから殴り殺しますね。
まったく、これに惚れるなどいい面の皮です。腹立たしい。
杖で薙ぎ払ってやりましょう。地形をも壊す力、思い知りなさい。
異端だかなんだか知りませんが、あれを愛せるものなら愛してご覧なさいな。
わたくしは遠慮します。


朱酉・逢真
古いダチと/f28022
心情)フゥ―…さて。ああ、まったく。最後までボケてンのも無礼がすぎらァ。ああ、恋は病というだろう。さっきまでの俺ァ、だれが見たって病んでたな。つまりは《病》、俺のうちさ。なら取り除くもカンタンさ。ひ・ひ、楽しい作戦だった。おはようオニキス。敵はあの嬢ちゃんかい。なるほど、"すこし"ね。さすがはダチ公。
行動)なんであれ《毒》は俺の手のひら。俺とダチへのそれらは逸らして。さアお嬢さん、ハナシをしよう。ひそむ恐れを見せとくれ。ああ、安心おし。治しやせんよ。それもお嬢さんなのだから。その後で俺を愛したいンなら食われてやろう。愛されてあげよう。お前さんは死ぬが、かまわんだろう?


スピーリ・ウルプタス
「食んでいただけるのは大歓迎したいところですが」
本気でもったいなさそうなトーンで述べつつ

UC発動
「それ程に尊いお気持ちを抱いている状態のまま、是非永久の眠りを贈って差し上げたい。
 それが『私』の望むところでもありますので」
双方叶えられないのがジレンマです、とそれはそれで心地よさそう

うっかり眠らされる召喚主より先に、匂いに敏感な蛇君は俊足で匂い範囲から逃れ。
夢(寝言):ああっまだまだ渾身のパンチを戴けるんですね!
道中のクイーン(f09037)との殴り愛が相当至福だった模様

蛇君、負傷が回復最中でも容赦なく変人を尻尾ビンタで起こす
「はっ! レディの眼前で眠るとはとんだ失礼をっ」
自ら囮
蛇君攻撃役


平平・晴
お邪魔します
アッお菓子有難うございます

●腐晴
カプ談義と言えば途中ずっと風車男BLの可能性について考えていました
風車男×風車男は関係性無限大だし風→風車男の永遠の一方通行片想いもしんどいしスパダリ攻黄金虫×卑屈受風車男なんて萌えます風車男×赤子のおにショタ…いやショタおにも捨て難い
第三者的な所謂神視点で関係性を眺めていたいんです
リリィさんは神だけにBL派ですか?

●夢晴
私は夢主総愛され逆ハーが好きですね
色んなタイプとの疑似恋愛が楽しめるし三角四角関係に巻き込まれるのも良き
アッでもたった一人の愛する相手と二人の世界を構築するのも胸キュン
イケメンに言い寄られるのは乙女の夢
リリィさんもそう思いませんか?


黒沼・藍亜
アンタ、表立って認められないけどこういう趣味元々あったとかない?

何故って、こういうのはゼロから無理やり植え付けるより元々あるのを伸ばす方がやり易く長続きするもんなんすよ

それにさっき見たから。
己の在り方への疑問を抱き、それを神様が優しく肯定し狂わせ、
それでも在り方から逃れられなかった“害悪”達の話


……で、どうする?これ
“正しい”「オブリビオンと猟兵の戦い」で終わらせる?
それとも
“狂った”「カプ厨女とカップルその他のバカ騒ぎ」で終わらせる?
好きな方を選べばいいっす
どっちにしろ、ボクとこの子は出せる手は尽くすし

……自由になれなかったカプ厨女とやられ役ヤンキー達の事、
覚えておくから

※アドリブ他歓迎


セフィリカ・ランブレイ
相馬さん、菊花ちゃんと行動

『言動で侮ると危険よ、セリカ』
シェル姉、相棒の魔剣の声も堅い
確かにヤバいのがわかる

でも頼れる仲間が二人も増えた!
元気をくれる菊花ちゃん
え、あれに臆せずに切り込んでいく!?物怖じのなさは流石!

頼りになる相馬さん
物静かでも冷静かつ果敢に戦う姿は頼もしい!

カップルでなくても繋がりが心を強くする!
恋以外、友情にもときめきがあると証明する!

【黄槍の飛竜】を呼び、背中に搭乗
影響を感じたら高速離脱して正気を保ち、牽制目的の攻撃
相手の注意を引く


寂しかったのかな、彼女
恋のドキドキは、素敵な経験だったし、錯覚だったのは残念かな。ちょっとだけ
『いい男の競争率は高いのよ。磨きなさい、セリカ』


鬼桐・相馬
セフィリカ、菊花と

いつもの調子でよく喋る菊花に[落ち着き]を取り戻して行く
セフィリカも大分冷静になっているようだ
おい菊花、話をややこしくするんじゃない

敵の言動に「食べちゃいたい程可愛い」という表現を連想する
全てを愛し過ぎたのだろうか

昼ドラ展開に持ち込まれる前にUC発動、黒鼬に狂気と麻痺の継続解除をさせる
セフィリカの作り出した敵の隙に合わせ[冥府の槍を怪力]で振るい、敵を纏めて[範囲攻撃し焼却]

しかし、皆はこんなにも鮮烈な感情と共に生きているのか
精神を拘束し続ける俺には縁のないもの
――少し、羨ましいよ

セフィリカ、今回はお互い自らを知るいい経験になったな
菊花は……口止めも兼ねスイーツ辺りで買収か


八重垣・菊花
セフィリカさんと相馬くんと

恋人を祝福するはずが浮気現場を発見とは天使様でも思わへんで!
正妻は…うちや!(昼ドラ風)
お茶会するん? うちほうじ茶ラテな、これ美味しいよって飲んでみ
そんで、リリィさんは何が聞きたいん?
うちは愛されることに定評のある香炉のヤドリガミやさかいな
愛されへんかったとか、大事な人を失くしてしもたとかはさっぱりわからんのやけどな
恋人同士に昔の自分を重ねてんの?
夢小説っちゅーやつみたいに叶わんかったもんを疑似体験してんの?
ちゃうんやったらええ趣味してるなとしかよう言わんな!
分厚い本とか作ったらええと思うで

戦闘は二人のサポート
失くしたもんは戻らへんよ、前向いてかなしゃーないんやで


桜田・鳥獣戯画
痛々しいぞカプ厨神!
まるでジャンル同志を初めて部屋に呼んだモラトリアム女子大生ではないか!!
どうせ貴様、萌えを愛し同志(カプ厨)も愛して皆食ったのだろうが!!
「食べたらなくなる」子どもでもわかることがなぜわからん。
限界オタクというものは同志がいてこそ輝くからな。私は詳しいのだ
貴様は同志が居なくて寂しいだけだ。
そんな貴様にキーワードをやろう

『一次創作』

これぞひとりでできる萌え!!!!!

なんでもない。忘れてくれ。
厨であることが人に害成すことは我々には赦されんのだ。
だが私は限界オタクが好きだ。ゆえに貴様を愛して食ってやろう!!
尊みで死ね!!

最期に我々猟兵が、供給できたなら良かったのだがな。…浮気!?


リーヴァルディ・カーライル
…確かに、お前はただ恋を語っているだけなのかもしれない

…だけど、それが如何なる狂言や戯れ言であれ、
今を生きる人達には抗えない神威が宿っている以上、
お前をこのまま放置する事はできない

左眼の聖痕に魔力を溜めUCを発動して、
【代行者の羈束・魔人降臨】を九重発動

…神を愛し神を喰らった狂えるオブリビオン
その独りよがりな愛がこの世界を滅ぼす前に、お前を討ち果たす
…それが、猟兵としての私の使命よ

全能力を限界突破して倍化し敵の精神属性攻撃を防ぎ、
全身を生命力を吸収する呪詛のオーラで防御して敵陣に切り込み、
魔力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払う闇属性攻撃を放つ

…この一撃を以て手向けとする。眠りなさい、永遠に…



●talk
 妄言とも言えるオブリビオンの提案を、しかし猟兵達は一旦受け入れた。
 一つは疲労が溜まっているのが事実だったからだ。敵手たる純白のリリィの言を認める事は業腹なものの、先の戦いは長く激しかった。皆まだまだ意気軒昂ではあるが、休息を挟めるのであれば挟んだ方がそれはその方が良いだろうと言う話になる。
 勿論、常であれば罠や策謀を疑うだろう。だが此度の対象はあらゆる意味で『狂っている』。その狂気に沿った狂態である限り、例外的に信頼を置くに値するのだ。
 そんな、冷静な判断の元に。
「お邪魔します。アッお菓子有難うございます」
 的確な損得勘定の元に。
「ではでは楽しいオタトークを始めましょうか♪」
 あのー、猟兵さん方?
「お茶会するん? うちほうじ茶ラテな、これ美味しいよって飲んでみ」
 ……あんまり関係ない気もして来た。
「痛々しいぞカプ厨神! まるでジャンル同志を初めて部屋に呼んだモラトリアム女子大生ではないか!!」
 無駄に的確だなその表現。後、カプ厨神て。
「嗚呼、こんばんは初めまして、リリィ。貴女に恋した者です」
 特にオブリビオンに対して踏み込むのは当然の如くジェイだ。道すがらちゃっかり調達して来たらしい花束を差し出され、リリィはキャーと頬に手を当てつつ受け取る。
「さあさあ食べてくださいな」
 あまつさえ違う意味でも前のめりだった。
「あー、えー? うーん、それは後にしなあい? 今はお話がしたいな……」
 オブリビオンの目が泳いでいる。その様子に幾人かの猟兵の目が細まった。
 純白のリリィの強大な力、その内訳の情報は既に抜いている。その一つは周囲の存在に『自らその身体を捧げさせる様に仕向ける』力だ。つまり食べて下さいと望まれる事に彼女は慣れている筈なのだ。
「……え?お話もしたい? ああ、それなら大丈夫。私はそうそう死なないので。食べながらでも、お話しできるでしょう」
 では何故戸惑うのか。何故困るのか。
「あのー、そのー嬉しいわよ? 嬉しいけどその。ほら、貴方を食べ出したら、貴方が平気でも他の猟兵さん達が黙ってられないかなーって……」
 どうして後に回そうとするのか。
 苦し紛れの言葉ながら、他の猟兵達が戦いを始めてしまうと言う理屈はその通り。渋々一度引きお茶会を補助する側に回ったジェイにホッとした顔のオブリビオンを。
「あ、これ本当に美味しいですね。初挑戦でこれは才能ありますよ」
 普通にブリオッシュのご相伴にあずかった晴が誉める。
「そう? そう!? 参っちゃなー私―お菓子作りが得意なんてもっとモテちゃうー」
 クネクネ喜ぶオブリビオン。本当に何だこの絵面。
「所で、カプ談義と言えば途中ずっと風車男BLの可能性について考えていました」
 そしてスムーズにオタトークを始める晴……いや、周囲の男性猟兵達の存在など知らぬとばかりにBLを語り出す彼女は貴腐人の猛者、腐晴!
「ほっほー、顔の無いあの子達でも萌えれるとは流石腐晴センパイ」
 興味津々のリリィ。後、先輩呼びがすっかり定着してやがる。
「風車男×風車男は関係性無限大だし風→風車男の永遠の一方通行片想いもしんどいしスパダリ攻黄金虫×卑屈受風車男なんて萌えます風車男×赤子のおにショタ……いやショタおにも捨て難い」
 風車男達が聞いて居れば『マジか』『え、どうよ。あり?』『俺以外でやってるの見るならあり寄りのあり』『お前それズルくね?』『ねりもの大御神』『相変わらずこの人どこで息継ぎしてんの』『赤ちゃんと俺、か……悪くもねえな』等とどうでも良い審議が始まって居た事だろうが、幸い彼らはこの場に居ない。と言うか今なんか変なの居たぞ。
「私は第三者的な所謂神視点で関係性を眺めていたいんです。リリィさんは神だけにBL派ですか?」
 女性でBL……ボーイズラブに傾倒する場合。確かに第三者視点で嗜む者は比較的多いだろう。観測対象と性別が違うのだから道理ではある。勿論、そんなの知らねえと自分を置き換える者も居るだろうけど。
「……そう、ね。私はそっち派だわ。うん、そっちの方が都合良いもの」
 妙な位に深く思案した様子を見せた後、オブリビオンは同意する。
 だがそうやって意気投合されては黙って居られない者も居るのであった。
「私は夢主総愛され逆ハーが好きですね」
 そう、NL派の猛者、夢晴!
 どっちも晴じゃねーか。と言うか何時の間に人格入れ替えたのと猟兵達は思った。でもよく見たら腐晴も普通に横に居る。
「あら夢晴センパイ? 何時の間に分裂したのー?」
 リリィはマイペースだった。後、普通に見分けてるのはオブリビオンとして凄いのかただのオタク力なのか。
 ユーベルコード【オルタナティブ・ダブル】。もう一人の自己を現出させ、協力を得る多重人格者猟兵の得意手。を、萌え談議に使ってやがられるんですねこの人……ある意味なるほど、流石のセンパイぶりである。
「色んなタイプとの疑似恋愛が楽しめるし三角四角関係に巻き込まれるのも良き」
 あー、それは確かに他人事じゃ楽しめないわねーと真剣な顔で頷くリリィ。
「アッでもたった一人の愛する相手と二人の世界を構築するのも胸キュン」
 と言うか元々の『私』はそっちが基本だったとも言えるのよね……とオブリビオンはまた少し深い思案に入った様子ではあった。
「イケメンに言い寄られるのは乙女の夢。リリィさんもそう思いませんか?」
 どうでしょう!
 とばかりに詰め寄られ。実際にこれまで数多の存在から言い寄られ……その想いに答えて食べ尽くしてきた筈のオブリビオンは……けれど何故かうーんと酷く悩む顔を見せている。
「アンタ、表立って認められないけどこういう趣味元々あったとかない?」
 その横から、藍亜の言葉が不意に突き刺さる。
「えっ? ……あ、駄目よ藍亜ちゃんパン屑零れてる。だらしないわよー」
 パタパタと誤魔化す様に甲斐甲斐しく掃除を始める。
「何故って、こういうのはゼロから無理やり植え付けるより元々あるのを伸ばす方がやり易く長続きするもんなんすよ」
 藍亜は言葉を緩めない。
 彼女は見ていたのだ。これまでのリリィの言動を。無理やり植え付けられた末の有様……と見るには余りにも自然なその態度を。楽しそうなその様子を。
「……そう、ね。元々『私』も好きだった筈よ。だって、愛する子と愛する子がそれぞれに愛し合ってる。素晴らしい事よね。100万ラブパワー+100万ラブパワーがカップリングで2倍になって400万ラブパワー。そして、いつもの3倍の回転を加えれば……」
 加えんなそんなもん。
 とは藍亜はツッコまなかった、ただ笑うその顔をジッと見て、言葉を重ねる。
「それにさっき見たから。己の在り方への疑問を抱き、それを神様が優しく肯定し狂わせ、それでも在り方から逃れられなかった“害悪”達の話」
 リリィは困った様に笑った。
「……疑問って程じゃないわあ。ちょっとしたしこりとか、喉に刺さった魚の骨とか、その程度の小さな小さな……でも、完全に無視する事は出来なかった。私はそれに付け込んだだけよ」
 えへへと笑う。悪戯が見つかった子供の様な顔。
 それは、風車男達だけの話ではないと。ちゃんと分かっている顔だった。
 分かってはいるけれど。でも。


●artifice
「あら、ご同類? 私も『あの子』を始めとした数多のオブリビオンと“なかよし”になって“1つになった”から気持ちはわかるわ」
 語尾にハートマークを付けながらアリスが笑う。
「え、それってひょっとして性的な意──」
 よしちょっと黙ろうかリリィ。
 勿論違う。違うよね? パラダイムシフトと呼べるほどの革新を成すならば、寧ろ現行に対する広く深い造詣が無ければならない。アリスは超技巧の結界術を中心にあらゆる魔道に通じている。降霊の儀、式神の術、そしてオブリビオンを含む慮外の霊的存在と相通ずるシャーマンの秘奥。
 ユーベルコード【不可思議な祈祷師の秘儀(ワンダーシャーマンズミステリー)】。信仰にせよ己への自信にせよ、信念が揺らげば途端に瓦解し得る繊細な術式だが。
「お話して“なかよし”になれるなら願ったり叶ったりよ♪」
 オブリビオンが多ければ多いほど力になるからね☆ と笑う彼女の心は盤石そのものだ。狂気の恋に浸食されても尚、彼女は彼女。愛し恋人と睦み合う最中ですら、その芯は不可思議な腐敗のケイオト魔少女。心通わせる事で繋がったなら、より強い方が弱い方に浸透するのが道理であり。
「じゃあじゃあ、聞いてくれる? この間食べたカップルなんだけどねー」
 嬉しそうに話すリリィに笑い掛けながら、ダンピールの悪霊はゆるゆるとその精神を辿る。破壊の衝動、食欲、暗い情念、そう言った物を最も明るく燃え上がるカプ厨魂の情熱に焚べてしまう。
 そうする事でオブリビオンの力を削ぎ、同時に彼女自身の力としてその熱を奪う精神内の結界術。和やかなお喋りの裏で、彼女の術式と戦いは既に始まっていると言えた。
「フゥ―……さて。ああ、まったく。最後までボケてンのも無礼がすぎらァ」
 昏い声が嗤う。
「やっと起きましたか、この寝坊助。作戦を聞いたときには正気を疑いましたが、うまくいってなによりです」
 やれやれと言う声が続く。
「ひ、ひ、ひ、こりゃ凄い」
 アリスの展開した結界を見やり、その緻密さに感心の表情を浮かべるは逢真。今の今まで狂気の恋の中で曖昧な状態を続け、竜神オニキスに連れられていた筈の凶神だ。
「あら、凄い深いとこ迄入ってた灯ったんだけど。大丈夫なの?」
 オブリビオンが少し不思議そうに首を傾げる。彼女の呼び声に対し、抵抗の度合いは個々人でブレ幅があった物の。ダントツで根付いていたのが彼だ。それが何時の間にか綺麗さっぱり消えて居れば首を傾げるのも当然ではあった。
「さっきまでの俺ァ、だれが見たって病んでたな。つまりは《病》、俺のうちさ」
 なら取り除くもカンタンさと笑うその様子に。リリィは……いや異端の神はこれまでで初めてその目に警戒の色を乗せた。系列は違えど神同士、相性によっては他の猟兵達とは毛色の違う危険がある故に。
「わたくしは先程のやつあた……戦いでスッキ……理性を取り戻したので問題ありません」
 お前さんはどうだいと水を向けられ、竜神はと言えば素っ気なく答える。狂気は薄れど矢張り少し不機嫌は残っているとも見え。
「……ツンデレ?」
 オブリビオンは余計な事を言った。
「良いからこそ使い古されるの王道の好例っすね」
 藍亜がなるほどと手を打つ。オニキスはものやわらかな態度のままながら、ちょっとだけ鼻白んだ。
「ひ・ひ、楽しい作戦だった。おはようオニキス。敵はあの嬢ちゃんかい」
 そんな旧友を揶揄う様に笑いながら神に問われれば、直ぐにその貌を平静に戻す。
「ええ。あなたにすこし似た、彼女が殺害対象です」
 盲目の彼には、異端の神がどの様に見えているのか。『いかにあなたが美しかろうと知ったことではありませんね』と言わんばかりに、どうと言う気負いも無く言われたその言葉。オブリビオンは少し瞬きをした。
「なるほど、"すこし"ね。さすがはダチ公」
 哂ってズイと近付く疫毒の神。
 アリスとの間に展開されている結界は、今の彼の力で掌握出来る精度と密度では無かったが、そもそも使い手は敵では無く。二つ目の色の銘を持つ少女は肩を竦め『ちょっと道を開ける』程度の隙間を開ける。……そもそも気軽にそんな精妙な操作をする辺りが既に埒外なのだが、それは兎も角。
「さアお嬢さん、ハナシをしよう。ひそむ恐れを見せとくれ」
 ユーベルコード【夢見の小鳥(オネイロイ)】。望むゆめ、恐れるゆめを見せる術。そしてゆめを具現化して暴力と成しえる術式。今は未だ、前半の権能だけだが。
 心に直接触れる男の物言いに、リリィは少しだけむくれる。
「恐れ何て別に何も無いわよお。皆私の愛おしい子達だもの……」
 そう言いながら、少しだけ怯んで見えるのは気のせいかどうか。
 まあ、傍目には男性が女性に迫ってる絵面なので。視界で把握してないオニキス以外の猟兵達がちょっとだけうーんって顔をしてたりもするのだが、まあそれは関係ない。筈。
「安心おし。治しやせんよ。それもお嬢さんなのだから」
 クイと引きあがる口の端、笑顔の筈のそれはまるで陰暦3日の夜の朱月。
 見せられたその『ゆめ』はどんな物なのか。異端の神は、狂えるオブリビオンは、少しだけ悲しそうに目を逸らした。
 二つの術が、ユルリユルリとその力を削ぐ。だがそれでも尚オブリビオンの放つ存在感と力は強大さを保っており、猟兵達はもう少しの時を使うべきだと判断する。


●jackpot
『言動で侮ると危険よ、セリカ』
 和気藹々と話し合う様子は一見和やかだ。しかし油断は出来ないし、するべきではない。相棒たる魔剣シェルファの堅い声に、セフィリカはコクリと頷く。
 その心から呼び声の恋の狂気は少しずつ薄れている。だがそれは神の力が減じている事では無い。目前のオブリビオンから、元々受けていた狂気を消し飛ばしかねないほどの誘惑の力が漏れ出て襲い来ているからだ。
「確かにヤバいのがわかる。でも頼れる仲間が二人も増えた!」
 そう言って傍らの二人を見る。
 経験が少なく初心と言うのは、裏を返せば成長の伸びしろが大きいと言う事だ。
「そんで、リリィさんは何が聞きたいん?」
 菊花はほうじ茶ラテを手にズイズイ聞いている。華やかに明るい彼女は居るだけで元気をくれる。
「え、あれに臆せずに切り込んでいく!? 物怖じのなさは流石!」
 流石って言うか凄いマイペースさではある。て言うか普通に持参の魔法瓶からほうじ茶ラテ出してオブリビオンにも渡してるし。ちなみに割と好評。
「うちは愛されることに定評のある香炉のヤドリガミやさかいな。愛されへんかったとか、大事な人を失くしてしもたとかはさっぱりわからんのやけどな。恋人同士に昔の自分を重ねてんの?」
 相変わらずこの少女良く喋る。
 躊躇の無いその踏み込みにリリィがグっと言葉を濁している。と言うか森の入り口ではあれだけ喋くり倒してた癖にいざ直接会うと口数が普通になる辺り。こいつ俗に言うネット弁慶の亜種だな?
「む、昔の事は流石に覚えてないし、重ねるのはまあしなくも無いけど結局食べる訳だしい……と言うか菊花ちゃん堂々愛され宣言凄いわね。自信が女を輝かせるのねえ……」
 目を泳がせながらゴニョゴニョ答える言葉に、また幾人かがピクリと反応する。
 菊花のどの言葉に動揺しているのか。どの部分への反応を避けたのか……それはオブリビオンを探る道標となり得る。
「おい菊花、話をややこしくするんじゃない」
 だがこの段階で刺激過ぎるのも不味いと、少女の言葉の機関銃をそっと諫めたのは相馬だ。気心の知れた少女の何時もの調子の喋りぶりを見て、彼はすっかり落ち着きを取り戻している。
 物静かで冷静、頼りになる男だと言う認識は狂気の恋が薄れた今でも変わっていない。
 尚、此処に辿り着く少し前。
『恋人を祝福するはずが浮気現場を発見とは天使様でも思わへんで! 正妻は……うちや!』
『待て菊花。此処に偶然とあるパーラーのフルーツサンドのサービスチケットがあるんだが……』
『きゃーん相馬ちゃんサイテー』
 ノリノリで昼ドラごっこを続ける菊花をスイーツで買収した相馬の姿が、果たして頼りになる有様だったかどうかに付いては意見が分かれる所である。尚、それでその場は矛を収めた菊花が、今後も口を噤んでくれるかどうかは彼女のみ知る事だ。
「『食べちゃいたい程可愛い』という表現を連想するな……」
 その相馬がボソリと零す。その目は『そう言えばさっは普通に混ざって煽ってくれてたんだったなこの女』と言う若干の私怨が浮かんでいたが、リリィは嬉し気に手を打って笑う。
「そうそうそうなのよ! 皆可愛くて可愛くて食べちゃいたいのー!」
 イヤンイヤンと身を捻りながら笑うオブリビオンを眺めながら相馬はその目を少し真剣に細める。
「全てを愛し過ぎたのだろうか」
 確認する様な声色と、その鋭い眼光に純白のリリィはふと動きを止め。
「そうね。『そうですね、私は本当に。皆、全ての皆を心から愛していますから』」
 ウットリと笑う。
 ゾワリと、猟兵達は総毛立った。時折見せる異端の神の狂気抜きの、オブリビオンとしての素の様相。その威容。だが其処に紛れて見え隠れする彼女の真。
 改めて認識する。どれ程歪んでいても、異様であっても、彼女が全ての生命を偽りなく愛している事自体は、紛れもない事実なのだろうと。しかし、それでは。
「夢小説っちゅーやつみたいに叶わんかったもんを疑似体験してんる訳やないの?」
「夢ジャンルは懐が深いっすからね! そう言う切欠で沼堕ちした人も確かに──」
 すいません座ってて下さい夢晴さん。
「ちゃうんやったらええ趣味してるなとしかよう言わんな! 分厚い本とか作ったらええと思うで」
 いっそ天晴と菊花は笑う。W(ダブル)晴はギラリと目を光らせる。え、合同誌とか作りたいの?
「しかしジャンルを形成するには人数が必要だ。だが、どうせ貴様、萌えを愛し同志(カプ厨)も愛して皆食ったのだろうが!!」
 ビクリと、オブリビンの肩が一度跳ねた。
「『食べたらなくなる』、子どもでもわかることがなぜわからん。限界オタクというものは同志がいてこそ輝くからな。私は詳しいのだ」
 ビシリと指を突き付け。鳥獣戯画は確信に満ちた声で叫ぶ。
「貴様は同志が居なくて寂しいだけだ。そんな貴様にキーワードをやろ……」
 しかしその言葉が不意に止まる。指を突きつけた先、純白のリリィの美貌が、蠱惑的な魅力を称え全てを魅了するその妖艶な貌が……丸で、迷子の子供の様に固まっていたから。
「……分かってるわよ」
 どれだけ残念な事を言おうが、どんなに馬鹿を晒そうが疵一つ行かなかったそのかんばせに、大きな亀裂が走った様に見えた。
 アリスが笑い結界術式を更に編む。此処が奪い所だと。
「分かってるわよお。そんな事……」
 小さなしこりと言った。魚の小骨と言った。けれど小さな瘤で、喉のチクチクとした痛みで、涙を零す事だって時にはあるのだ。……こんな風に。
 逢真が顎を弄り苦笑する様にひひひと笑った。オニキスがゆるゆると首を横に振る。なるほど、と。それはそれは、何とも拙く人間臭い事だと。
「『私はそんなの平気ですって』言うけど、でもどうしても考えちゃうじゃない。私、『私』、『美味しく食べて』、一つになったって。とっても満たされるけど『断じて私は一人じゃないのですけれど』でも、でも考えちゃうじゃない。食べ終わった時。どうして。どうしてどうして」
 魘される様な声。ヨロヨロと立ち上がる。
 応じる様に猟兵達も立ち上がる。得物を取り出す。ブリビオンの力が増している……いや、違う。これはただタガが外れただけだ。
「寂しかったんだね、貴女……」
 相棒をスラリと抜きながら、セフィリカが静かに呟く。
 オブリビオンの力が堰を切って溢れている、アリスが流れ込んでくる力の奔流を受け止め切るのに苦慮し始めていた。処理が追いつかない。
 要するに、暴走を始めているのだ。
「『私以外、誰も居なく』なっちゃうのよ……」
 呟く様なその泣き声が、しかし森奥の小屋を内側から粉々に砕け散らせた。


●lost
 例えばこんな小話を聞いた事は無いだろうか。
 小さな子が大好物を嬉しそうに食べていて、突然泣き出してしまう。宥めて訳を問えば、大好きなその食べ物が無くなってしまうのが悲しいのだと。
 道理を知らない幼い子供の感性から来る、思っても見ないような物の見方。それはいっそ微笑ましいちょっとした笑い話。けれどそれは、下らないけれど、真実だ。
 そうだ。その通り。食べれば無くなるのだ。
『無くなりませんよ。私と、一つになるんです』
 けれど目の前からは居なくなる。
『いいえ、ずっと一緒に居るんです。溶けて混ざって。食べてあげた皆の事。私は全部知っていますよ』
 見る事も話す事も出来なくなる。
『一時的になら、戻って来て貰う事も出来ます。彼らは私の為に新しい食べ物を捧げてくれます』
 一時的にだ。ずっと一緒ではない。そもそも霊と化した彼らと生前と同じようにコミュニケーションが取れるのか。悪霊と化してまで明確な自意識と存在を維持できるのは、猟兵などの特別な一握りだけでは?
『それは……』
 貴女は幼い子供では無い。彼らが只の食糧なら、美味しい食べ物に過ぎないなら、そんな事気にもならないでしょうね。でも貴女、彼らの事。皆の事、愛しているんでしょ?
『……私』
 ねえ? 愛している相手がいなくなるの、悲しいよね? 私なら嫌だなー。貴女は違うの?
『……』
 見えなくなっちゃうの。話せなくなっちゃうの。消えちゃうの。もう、会えないの。寂しいな。そうでしょ?
『…………』
 美味しさとか。溶けあう一体感とか。快楽で脳みそキューンってなるとね。そんなの忘れちゃえるんでしょー。だから普段は気にもしないんだよねー。実際貴女程の存在にとっては小さな小さな事だものねー。
 でーもー、こうやってさー、私達異端の神々と殺し合うのに手一杯で間が空くとー。どーかなー。此処ん所食べてないんだよね。
 つまりずっと一人ぼっちだったんだ。
『………………』
 眺めてる間は、消えないよ?
 愛でてる間は、居なくならないんだ。
 可愛いなーってキュンキュンするなーって幸せそうだなーって。そう言う気持ちでお腹いっぱいになる思想、概念、この間食べて学んだでしょ? それで誤魔化せてる間はー。一人ぼっちに、ならないで、済むよ?
『私……』
 そうやって泣かないで済むよ?
 私と一緒になっちゃえば。ねえ、馬鹿の方が幸せだと思わない? 馬鹿になれるのってさ。才能だと思うな私。
 ねー。終わっちゃうのが悲しいなら。終わらせない様に後回しにしちゃおう!
『……………………』
 そしたらさ、楽しいぞー?
『でも、結局最後は。食べてしまって。終わってしまうんですよね……?』
 そだね。それは、そう……だよ。
 それでも、それでもね。直ぐ終わっちゃうよりはずっとさ。ずっと……


●bonds
「『あ、あ、あ、あ、あ……』」
 森を侵食する様に広がり続ける血の泉。わらわらと伸びる犠牲者の手の群の幻想。中心に立つ女性は凄絶の美貌を湛え、ただその目を愛と食欲にギラつかせる。
「……確かに、お前はただ恋を語っていただけだったのかもしれない」
 その真正面に立つは黒騎士リーヴァルディ・カーライル。
 こうなる前、先ほどまでの彼女の様相を思えば。その事自体を理解しないほど彼女は狭量では無い。しかし。
「……だけど、それが如何なる狂言や戯れ言であれ、今を生きる人達には抗えない神威が宿っている以上、お前をこのまま放置する事はできない」
 暴走せずとも同じ事だと断する。吸血鬼狩りは一切の差別なく、このダークセイヴァーの世界に仇為す存在を許しはしない。
 閃くマスケット銃、穿たれる死刺の弾丸。暴走によってその力の奔流には幾つもの隙が生じている。けれどまだ本命の一撃を入れるには早い。
「では私めが囮に。食んでいただけるのは大歓迎したいところですが」
 前に出たスピーリのその声は本当にもったいないと思って居るトーンだった。その辺本当に歪みないこの変人氏は、先程までは歓談に水を差すのは紳士の行いではありませんのでとばかりに聞き手に徹しその傷を癒していたのだ。……決してセルフ放置プレイに興じていた訳では無い。きっと違う。違うよね?
「それ程に尊いお気持ちを抱いている状態のまま、是非永久の眠りを贈って差し上げたい。それが『私』の望むところでもありますので……いらっしゃい締め付け担当ダイ様!」
 高らかに指を鳴らし大蛇を召喚する紳士が尊いと寿ぐその気持ちは、勿論食欲の事では無いだろう。本気の色を持つその柔和な声に、オブリビオンはノイズの様に意識の混じる目でスピーリを見返し。
「あ、食べるならモモからが宜しいですよレディ。こちらはこちらで心地よい……Zzz」
「寝てるー!? いや眠らせたの私だけど!!」
 幸せなゆめを齎す花香に、うっかり即落ちで眠ってろくでもない寝言を零す紳士。
「ああっまだまだ渾身のパンチを戴けるんですねクイーン! 光栄の至り……zzZ」
 これも寝言である。どうも先の鳥獣戯画との殴り愛(一方的)に相当な至福を感じ味を占めている様だ。
「これ、食べても良いのかしら……ッ!?」
 思わず誰とも無く聞いてしまったオブリビオンの顔スレスレを黄色の疾風が掠めた。
「七虹最速のその姿! 目に焼き付けることができるかな!」
 その声は飛竜の背に乗ったセフィリカだ。いいや……正しくは細身の騎士甲冑の如き姿から飛竜型に変形した黄槍のゴーレム。ユーベルコード【黄槍の飛竜(フェインナルド)】。その高速機動は戦場を縦横無尽に飛び交い、オブリビオンの放つ眠りの花香の効果範囲を、一撃のその都度抜け出ては戻る戦術を可能としている。
「……『可愛い子、美味しそうですね』、でもその竜ちゃんは固そー」
 槍をギリギリで回避したリリィが飛び去るその背を目で追いながら、身を起こそうと動き。
「それを許す程甘くは無いな」
 青い焔を纏った黒槍がその背を穿つ。
「……愛の連携かしら」
 振り返ったオブリビオンが確認する様に呟く。セフィリカが高速機動で生んだ隙に、相馬が一撃を入れる。確かに今日初めて会ったとは思えぬ連携である。だが。
「カップルでなくても繋がりが心を強くする! 恋以外、友情にもときめきがあると証明する!」
 旋回し戻って来たセフィリカの一撃がそれを一蹴する。
「しかし、皆はあんなにも鮮烈な感情と共に生きているのか」
 合わせて冥府の槍を振るう相馬もまた、その感情を過去形で語っている。その肩に相馬のそれとは色の違う焔を纏う黒鼬が一匹。
 ユーベルコード【不知火鼬(シラヌヒイタチ)】。一見愛らしいそれは戦闘力を持たぬが、その代わり相馬とその仲間の状態異常を解除する力を持つ冥府産の鼬だ。二人にはもう狂気の恋の悪影響はほぼ無くなっている。
「精神を拘束し続ける俺には縁のないもの――少し、羨ましいよ」
 何処か眩しい物を見る様に少し細めた目に、既に恋の狂騒は映っていない。
「そう、もうカップルじゃないのね……」
 少し残念そうな呟きを零すリリィを慰める様に、足元の泉から亡者達がはい出て来る。それは彼女の狂信者達。その血肉を捧げても尚、純白のリリィが為他の血肉も捧げようと這い出る亡霊の群。
 ガガガガガガ!
 だが、それらを無数の弾丸が撃ち抜き屠る。
「失くしたもんは戻らへんよ、前向いてかなしゃーないんやで」
 あっけらかんと言う菊花のユーベルコード【黄菊の誓い(コウギクノチカイ)】。その黄菊の瞳が見つめるものを全て撃ち抜く言葉では無く本物の機関銃の弾丸達。
 セフィリカの速度で翻弄し、相馬の一撃で攻め。二人の行動の隙間を菊花のサポートが埋める。それは恋人の絆では無い。けれど。そこはセフィリカの言う通り、色恋とはまた違う信頼と絆が明確に存在している。
「『……そうですか』」
 オブリビオンは、少し呆然と呟き。
「そっか……」
 オブリビオンは、何故か少しだけ嬉しそうに笑った。


●eat
「レディの眼前で眠るとはとんだ失礼をっ」
 平身低頭の構えの紳士は、その頬がメッチャ腫れていた。
「眠らせたの私だってば。て言うかドM卿ちゃんどしたのその頬、私やった覚え無いよ?」
 歪みない精神性を前にする為か、スピーリに対しては割と安定した態度を取るリリィである。と言うか呼び名はそれで定着なのか。
「レディに尊き最期をと言う願い。レディに眠らされその間にモグモグガリガリされたいと言う願い……双方叶えられないのがジレンマですが」
 淑女の疑問にお答えするは男の義務と言わんばかりにしなやかな指先を伸ばし、説明する変態紳士。所でその二つの願いって並列に並べて良い物なのだろうか。良いんだろうなあ、彼には。
「……ダイ様に容赦のない尻尾ビンタで起こして頂けば取り敢えず眠りは醒める様でして」
 身も蓋も無い結論に帰結した。
 グッドって感じにジェスチャーをするスピーリの横で巨大な黒蛇がビシィッと尻尾を地に打ち鳴らす。その尾で思いっきりぶたれたら首の骨折れそうだけど……とオブリビオンはちょっと思ったが、取り敢えず紳士が余りに爽やかかつ満足気な笑顔なので何も言わないで置いた。
「良い仕事だドM卿! 厨であることが人に害成すことは我々には赦されん。さあ行くぞカプ厨神!」
 その側面を鳥獣戯画の振るうコンクリート瓦礫が襲う。人柱2036と銘打たれた何が何だか良く分からない残骸ないし鉄柱塊は、その質量を以てオブリビオンの身体を引き裂き。
「だが私は限界オタクが好きだ。ゆえに貴様を愛して食ってやろう!! 尊みで死ね!!」
 その欠片を女は喰らい力とする。
 ユーベルコード【弱肉狂喰(ジャクニクキョウショク)】。
「貴様は只今より私の肉だ。私以外への供給は禁じられる!!」
 大宣言。オブリビオンと概ね同じ事をオブリビオンを相手にしているこの有様。純白のリリィはパチクリと目を瞬かせた。愛しているから食べる事は日常でも、愛しているから食ってやると言われる側に回った事は無かったのだろう。と言うか普通無い。
「……Zzz……はうっ! ダイ様、有難うございます!」
 そしてオブリビオンの放つ眠りの香りは猟兵達の動きを鈍らせるが、匂いに敏感なスピーリの守り大蛇は俊足で範囲外に逃げ、即座に戻り眠りこけるスピーリを乱暴に殴り起こす。後、鳥獣戯画の事は優しく揺さぶり起こす。
 此処にもまた、狂える神の呼び声が間接的に生んだ縁の連携が、狂える神自身を苦しめる形となって表れている。リリィは着実に追い詰められ、消耗して行く。
「苦しいでしょうリリィ。さあ、今度こそ私をお食べ下さい」
 そんなオブリビオンの傍ら、何時の間にか傅く男が一人。
「我が血は白く、貴女のドレスも汚さない」
 ジェイだ。オブリビオンの齎した恋心をオブリビオンに向け、その想いの炎のままにオブリビオンに食われようとする男。……だが、狂気に堕ち切っているとも言い難い。仲間の猟兵達の都合に免じ一度引いたその目には、確かに理性が混ざっている。
「我が体は事象片の寄せ集め。生クリームから道路標識まで、様々なフレーバーが楽しめるでしょう」
 詩でも歌う様に滔々と語る。
 それは愛を捧げる詩。そして我が身を捧げる歌。広がり続ける己の力によって全ての生命を狂わせ、自らその血肉を捧げさせて来たリリィだ。
「まあお食べください。愛してるのならば」
 情熱的にそう掻き口説かれれば、断る事など出来よう筈もない。
「『ぁ……ん』」
 ガジリ
 ムシャリ
 他の猟兵が止めるまでも無くその身が食われ行く。
「ああ、そう言えばお話もしたいのでしたか。宜しければ愛を語りましょうかリリィ」
 なのにジェイは陶然と笑う。それは狂気の神の術中の様にも見えたが……。
「だったら品目は多い方が良いだろ。なぁに、面白い『恐れ』を見せてくれた礼さ。愛されてあげよう」
 あまつさえ、逢真がその狂態に己もと進み出た。お代わりをどうぞとばかりに両手を広げその身を向ける。この神は毒や病と定義できるオブリビオンの狂気を逸らし避けている筈なのに。
「異端だかなんだか知りませんが、それを愛せるものなら愛してご覧なさいな」
 共にある竜神もそれを止めようとしない。わたくしは遠慮しますと冷たく言い捨て放置の構えだ。
「……やっぱりツンデレ?」
「違います。まったく、作戦とは言えこれに惚れるなどいい面の皮です。腹立たしい」
 出来ないと言う訳では無いだろう。寧ろ彼は先程からリリィの周りを固める狂信者達を無造作に虐殺しているのだ。
『おや、そちらの信者ですか。邪魔ですから殴り殺しますね』
 最初、並み居る亡者の群を前にアッサリと言い。後は一方的。素っ気なく『枝』とだけ銘打った彼の杖、彼自身と同じく冬色をしたそれが振るわれる度に亡霊達は薙ぎ払われ、余波を受けた地面は地形が変わってしまう程に穿たれている。
 その身と四肢で山や谷を作る文字通り神の所業。その威力をリリィに向ければ、旧知の仲の神をみすみす食われる事は無いだろうに。
 バグリ
 グジュリ
「血肉が欲しいなら私もあげましょう、今の私にはこれは飾りだし。代わりにあなたの魂は頂くわね?」
 更にアリスすらその艶やかな肢体をオブリビオンに晒す。その顔には寧ろ嗜虐的な笑みが浮かんでいて、不穏な言葉と合わせて普通なら躊躇するのが当たり前だが……生憎とこのオブリビオンは狂っている。
 ジュリッ
 ガリゴリ
 鈍い音を立てて喰らわれて行く仲間達を尻目に竜神はボソリと。
「思い知りなさい」
 誰に向けてとも無く、そう呟いたきりだった。


●virus
「……で、どうする? これ」
 3名もの猟兵を喰らったオブリビオンに声を掛けたのは藍亜だった。
 力を喰らい吸収して力を取り戻したであろう敵手を、しかし恐れる様子も無く歩み寄り問う。
「“正しい”『オブリビオンと猟兵の戦い』で終わらせる?」
 それは今の状況だ。どちらが勝つにせよ、お題目はそうなるだろう。
 しかしUDCエージェントは手を軽く挙げ、それともと続ける。
「“狂った”『カプ厨女とカップルその他のバカ騒ぎ』で終わらせる?」
 それは、こうなる前の状況だ。だが今更、そこに戻そうかと問われても。ましてやこの状況で。
「『……?』」
 首を傾げるリリィに、しかしあくまで藍亜は平然と最終選択を迫る。
「好きな方を選べばいいっす。どっちにしろ、ボクとこの子は出せる手は尽くすし」
 そのスカートの内側からジュルリジュルリと黒の粘液が滴り落ちる。オブリビオンの血の泉を染め直すように地に広がるそれは、彼女が先にも見せた彼女に憑り付くUDC。
 ユーベルコード【祈り絶え、果てに病め】、その力はもう知っている。脅威ではあるが、既に半ば暴走状態にあるリリィからすれば、致命的な一打となるとは思えず。オブリビオンはその身を喰らおうと一歩迫り。
「……そっすか」
 藍亜が小さく呟き。力を振るう。
 オブリビオンの心の内側は確かに揺らぐが、予想の通り致命傷となるほどでは無く。
「『……!?』」
 けれどオブリビオンの身体が弾け飛んだ。
 たった一欠けらのエラーが、致命的なバグを引き起こす場合とてある。
 ほんの少しの揺らぎが、抵抗力の隙を生み病毒の浸食を許す事とてある。
 彼女の狂気自体がそうだっただろう。たった一つの罅を鎹にして呪は発動する。
「すいませんねリリィ。先に言った通り、我が体は事象片の寄せ集めですから」
 食われた筈のジェイが当たり前の様に肩を竦めた。ユーベルコード【Doppel_Löwe(獅子は去らぬ)(ドッペルローヴェ)】。彼の意志は電脳空間を経由し新しい身体へと容易く入れ替わる。
 食われた身体は既に抜け殻……しかし後程ハッキングする為のバックドアをキッチリ仕込まれたトロイの木馬。消化される前の全装備がリモートアクセスにより一斉に火を噴き、リリィの身体を内側から砕いたのだ。
「笑え、咲え。此処はてめぇが咲く森だ」
 食われた筈の逢真の昏い笑い声が聞こえる。
 そもそもずっとこの身(宿)は病と毒の塊だと言ってるぜ? 食えばそりゃあ死ぬ。が、かまわんだろう? それが愛すると言う事だ。
「うふふふ、魂まで吸い尽くしてあ・げ・る♪」
 さっきそう言ったでしょ? とばかりにアリスが笑う。最初の時点で繋げた精神の繋がりは未だに健在であり、そのパイプの中でアリスと言う存在が内に外に自在かつ好き勝手に無体を行う。ある種彼女の存在そのものが魔術的なウィルスと言えた。
「『うぐぁ……』あああ、あ……」
 苦しめど内側にある暴威に抵抗する手段などありはしない。
 周囲に湧き出る狂信者達にとて手が出せるものでは無い。だが、それでも尚強大なオブリビオンは足掻き歩む。病毒を得てこの身が崩れるなら、それに抗しきれる程の栄養と滋養を得れば良いのだと。
「……神を愛し神を喰らった狂えるオブリビオン。その独りよがりな愛がこの世界を滅ぼす前に、お前を討ち果たす」
 けれど、それを許す彼女では無い。
「……それが、猟兵としての私の使命よ」
 普段、ダークセイヴァー以外の世界の事は余り興味がないと言う吸血鬼狩りの少女が今、あえて猟兵と言った。其の言葉にどの様な意味があるのか、それは彼女にしか分からないけれど。
「……限定解放。代行者の羈束、最大展開開始。起動せよ、血の光輪……!」
 左目の聖痕が輝く。
 名も無き神の力の顕れが、神の器と詠われるリーヴァルディの背に巨大な血色の光輪として現出した。【限定解放・血の光輪】は時間を圧縮し、世界に一時少女だけの時間を作る。
「……汝ら、この瞳をくぐる者、一切の望みを棄てよ」
 そしてその時を使い展開されるは九つ重なる術式発動。九重の【代行者の羈束・魔人降臨】。在り得ぬ程の難度の同時展開を、限界突破された全能力と、生命吸収を成す呪詛によって僅かな時間成し切る。寿命を削ろうが構わない。其れは己が使命の為。魂に刻んだ誓いの為。
「……この一撃を以て手向けとする。眠りなさい、永遠に……」
 振り上げられる大鎌。死を与え、死に寄り添う神の象徴とされる刃。
 その一撃は、文字通りに白百合の命を一撃にて刈り取った。


●dream
「これで……終わりかしら」
 ポロポロと崩れて行く己の身体を一顧だにせず、ただオブリビオンは茫洋と呟く。
「そうなるだろう。最期に我々猟兵が、供給できたなら良かったのだがな」
 鳥獣戯画が頭を掻いて周りを見回す。
 生憎と本当のカップルは来なかったからなと呟き、恋人持ちの心当たりと相馬の方を向いて。
「……そう言えば浮気とか聞いたのだが」
「待てギガ、それはどう考えても今蒸し返す話では無い」
 声にだけ少しの動揺を見せる鉄面皮の男の様子に。クスクスと笑い声が漏れる。
 死に行くオブリビオンが笑っている。
「『終わってしまえば、全部無いも同じなのでしょうか』」
 無くなってしまうのかな。
 リリィ本来の大人びた口調が、けれど何処か幼な子の問い掛けのように響く。
「まさか! 貴女から貰った力、ちゃあんと私の中にあるわよ☆」
 平然と身体を作り直したアリスが笑う。思えば最初から最後まで好き勝手やっていた彼女を見返し、リリィはまたクスクスと笑い返した。
「そもそも面白い体験できそうだって来たんだし、忘れる予定はねえな」
 恋心こそ消えど、ジェイもそこで冷たい言葉をかける男では無い。
「セフィリカ、今回はお互い自らを知るいい経験になったな」
 敵たるオビリビオンに直接言う事は避けつつも、相馬もまたウザ絡みしてくる鳥獣戯画を押し退けつつ言外に得る物はあったと肯定する。
「恋のドキドキは、素敵な経験だったし」
 水を向けられたセフィリカも迷わず頷く。
「寧ろ錯覚だったのは残念かな。ちょっとだけ」
 寧ろそんな風に言ったりもする。
『いい男の競争率は高いのよ。磨きなさい、セリカ』
 相棒たる魔剣のコメントは辛辣で。少女は少しむくれ、オブリビオンはまた少し笑った。
「さっきは言い損ねたが、貴様は『一次創作』に向いていると思うぞ。これぞひとりでできる萌え!!!!!」
 相馬に絡む事を止めた鳥獣戯画が、そんな妄言を吐いて。
「……なんでもない。忘れてくれ」
 直ぐに引っ込んだ。
 丸でこの後の事がある様な物言いに、リリィはまた目をパチクリと瞬かせて。
「『私は、オブリビオンです。全ての生命を偽りなく愛し、愛しているから食べてあげる。そうして一つになって。全部食べ尽して、きっと最後は世界全部私になる。そんな』」
 化け物。
 相容れぬ害悪。
 猟兵達が例外なく討ち果たすべき存在。
「その事をね、後悔した事なんて別に無いのよー。今だってそう。ぜーんぜん悪い何て思ってなーいない。えへへへへ」
 悪辣で凶悪で有害な。身勝手の権化。
 ただ、一欠けらだけ、気の迷いがあった。それだけだ。
 だから。
「……私は、自由になれなかったカプ厨女とやられ役ヤンキー達の事、覚えておくから」
 藍亜がその言葉で遮った。あなたの言い分なんて知らないと。今際の言葉を切って捨て、自分の気持ちだけを一方的に宣言した。
 彼女が自由を欲していたかどうかすら関係ない。そう思うから、そう言ったのだ。それだけだ。そう決めた彼女の声は、歴戦のエージェントと言うよりただの少女のような声色で。
「『   』」
 最期の瞬間、砕け散る寸前に何と言ったのかは分からない。
 ……ただ、笑っていた事だけは間違いない様で。
 そうして。傍迷惑で頭のおかしい、狂ったポンコツカプ厨女とカップルその他の愉快なバカ騒ぎは幕を下ろしたのだった。それはただ、それだけの話。
 その後どうなるか何て誰にもわからない、終わりの無い物語。その一幕。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月03日
宿敵 『純白のリリィ』 を撃破!


挿絵イラスト