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赤ずきんと迷いの森

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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●迷わせの森で
 オウガ・オリジンが「現実改変ユーベルコード」によって生み出した不思議の国の一つ――「ハロウィンの国」。迷宮災厄戦で猟兵たちによって撃破されたオリジンだが、その前にいくつものハロウィンの国を生み出していたようだ。
 森の中を赤い頭巾をかぶった少女が歩いていた。木々にはすっかりハロウィンの飾り付けがされ、それを好奇心に満ちた瞳で見つめている。
「これから楽しいパーティーがはじまるのね」
 おつかいの籠を持って森を行く少女は、立ち止まってはゆっくりとそれらを眺める。この南瓜のランタンなど今にも話しかけてきそうだ。
「まるで童話から抜け出したみたいなお嬢さんだ」
「まあ、このかぼちゃはお話しできるのね」
 なんて楽しいのかしら、とぐるりと森を散策して。
「道草をしたら怒られるかしら。でもね、わたしはおおかみさんなんて怖くないの」
 愛らしい少女の姿をしていても彼女はオウガ。オウガ・オリジンから直接力を与えられた凶悪な存在なのだ。ましてやこの国にいる間は法則に従いほぼ無敵でいられるのだから。
「さあ楽しいパーティーをはじめなくっちゃ。この国から出たくなくなるような……」
 少女はうきうきとした調子で森を抜けていく。この場所がどこか長閑でメルヘンチックな世界だとしても、ここはオウガ・オリジンが悲劇を作るために用意した国なのだ。
 この国で本当の意味で楽しいパーティーを開くためには――オウガを倒し、その支配から解放する必要があるだろう。

●グリモアベースにて
「いよいよハロウィンが近づいてきましたね」
 様々な世界で催されるこのイベントに、猟兵たちの多くも当日を楽しみに仮装の準備を進めていることだろう。当日を楽しみにしている猟兵たちに向かって、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は微笑みながらそう言葉をかけ、その前に一仕事お願いしたいのですと切り出した。
「アリスラビリンスでの大きな戦いは終わりましたが……いえ、まだ各世界への侵攻を企む猟書家が消えたわけではないので、本当の意味では戦いは終わっていないのかもしれませんが……とにかく、アリスラビリンスにオウガ・オリジンによってハロウィンの国に改変された場所がいくつも見つかったんです」
 それはハロウィンの国という名にふさわしい、不思議な国。
「ハロウィンと言えば仮装ですよね。準備していかなくても森からは仮装の衣装が飛んでくるそうです」
 なぜかこの衣装を着ればいつも以上の力が出せるという。だから自前で用意するのではなく、この森で手に入れた仮装に身を包み、森の中を進んでいってほしいとユディトは説明する。
 そしてそれは敵も同じこと。だが、今回猟兵たちが相手にするのは、迷わせの森というオウガだ。ハロウィンの飾り付けがなされた木々はパワーアップしており、訪れた猟兵を閉じ込めようと迷路を作り出す。
 ただ、森から抜け出る方法はある。森の至る所に吊るされている南瓜のランタンは猟兵たちを見つけては声をかけてくる。なぜか仮装に対して厳しいファッションチェックをしてくるので、それに対してコンセプトやアピールしたい点などを述べてもらいたい。南瓜のランタンが納得すれば、迷路は消え、出口が現れるという。
「望んだ衣装が手に入るとは限りませんが……皆さんが着れば何でも素敵な仮装になると思います。思い切って自慢してきてくださいね」
 万が一南瓜のランタンが納得しなくても、攻撃して破壊すれば最終的には何とかなるようだ。
「森を抜ければ、オウガが皆さんを待ち構えています」
 レッドキャップという赤ずきんのような愛らしい姿をしているボスオウガは、この国の法則によりほぼ無敵となり、猟兵が倒すしかない。
 ほぼ無敵のオウガを倒す方法はただ一つ。美味しい料理を食べさせることだ。
「調理器具や食材はなんでもそろっています。オウガ相手ではありますが、ぜひ心を込めた美味しい料理を作ってください」
 ほぼ無敵であると同時に、料理を前にするとオウガは食べずにはいられなくなるという。そして料理を食べ進めるごとにだんだん眠くなってしまうというのだ。完全に眠らせることができれば無敵状態は解除され、一撃で倒すことが可能になる。
「オウガはパーティーを楽しみにしているようなので、攻撃されない限りは興味深そうに料理作りを見守っているようです」
 だから、全力で料理作りに専念してくださいね、とユディトは微笑んで。
「各世界でハロウィンを楽しみにしている人たちがいると思います。どうか無事に当日を迎えられるよう、ご協力をお願いしますね」


湊ゆうき
 こんにちは。湊ゆうきです。
 ハロウィン好きなので、駆け足でがんばります!

 こちらは2章構成のシナリオとなります。10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、そしてやがて始まるであろう「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれないそうです。

 一章では森から飛んでくる何かのコスプレ衣装を着てもらいます。一応ランダムということになっていますが、何を着るかを書いていただければと思います。喜んで着ても、嫌々着てもいいですし、何を着ても多分いい感じの仮装になっているので、それを南瓜のランタンの前で全力でPRしてください。南瓜さんが最終的にめっちゃ褒めてくれると思うので、そうすればこの森を突破できます。
 二章は赤ずきん風オウガに美味しい料理を食べさせてください。調理器具と材料はなんでもそろっています。美味しい料理が効果的ですが、心を込めて作った料理でも大丈夫です。好奇心旺盛なオウガなので料理に興味津々です。無敵だし、いつでも敵を倒せるよねと思っているので、攻撃されない限りは攻撃してこないので、良ければ料理作りに専念してください。

 一部のみの参加も大歓迎です。プレイングはOP公開後すぐ受け付けます。
 できる限り31日までに間に合うように完結させる予定です。
 ご参加をお待ちしております!
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第1章 集団戦 『迷わせの森』

POW   :    絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    絡まった枝の迷路
戦場全体に、【互いの枝を絡ませて作った壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

蒼・霓虹
〔コスプレ〕
わたしは地獄の料理長の堕天使ニスロク
彩虹さんは、その主の蝿の王の仮装……な感じで希望してみちゃいましょうか

料理で誘惑し、果実を使う料理が得意と言われている……とも言い伝えがありますが

取り敢えず彩虹さんには蝿の王らしくふんぞり返って貰って、南瓜のランタンさんと彩虹さんの前で持ち込んだ完熟桃をカレーの鍋に入れ【属性攻撃(熱)】で熱しながら、グツグツ煮込んで【料理】し

出来た桃入りカレーを、膝待ついて蝿の王に差し上げる……感じのアピールをして見ましょうか

ついでに南瓜のランタンさんを誘惑して契約をちらつかせるとか

因みにだいぶ辛みが和らぐので、少しカレーは辛めのを


〔アドリブ絡み掛け合い大歓迎〕



●地獄の料理長と蝿の王
「迷わせの森、ですか……」
 アリスラビリンスでたくさんのハロウィンの国が見つかったことは聞いていた。教え子の後を追うように最近猟兵になった蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)だが、既に他の依頼でもこの不思議なハロウィンの国を訪れていた。それぞれの国によっていろいろと特色があるようだが、ここは辺り一面がハロウィンの飾り付けでいっぱいだった。
「彩虹さん見てください。橙色と紫色の配色が多いですよ。虹の色が使われていて、なんだか嬉しいですね」
 霓虹は虹と幸運を司る竜神の虹龍だ。その力が顕現した意志を持つ戦車である彩虹にそう話しかけ、嬉しそうにふふふと笑う。
「さて、仮装の衣装はどんなものが手に入るでしょうか。やってみたい仮装はあるのですが……」
 この森自体がオウガなのだが、ハロウィンの飾り付けをされた森は力を増してはいるものの、祭りの持つ独特の高揚感が感じられ、望む衣装を出してくれそうな雰囲気を醸し出していた。
 そして霓虹は幸運を司る竜神。森から飛び出してきた衣装は霓虹が望んだものだった。
 全体的に黒を基調とした丈の長い衣装は悪魔らしさを表している。そこに白の前掛けをつけ、小道具に包丁を持てば……。
「地獄の料理長の堕天使ニスロクの完成です」
 そして美味による誘惑と食卓の楽しみの権威者とされているニスロクがその腕を振るったのは――。
「彩虹さんは蝿の王です」
 戦車の機体に髑髏が描かれた昆虫の翅を、そして竜の頭に触角をつけた彩虹もしっかり仮装に参加している。蝿の姿をしていても悪魔を統べる力のある王なのだ。
「そうですそうです。偉そうにふんぞり返っててください」
 しっかりと仮装を自分のものにすると、霓虹は木々が作り出した出口のないという迷路を進んでいく。少し行けば南瓜のランタンが吊るされていた。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
 大きな南瓜をくりぬかれて作られたジャックオーランタンがかたかたと揺れながら、霓虹へと話しかけてくる。
「さあさあ、その仮装は何だ? つまんなかったりやる気のない仮装は却下だぞ!」
 ランタンとして明かりを明滅させながら南瓜がずずいと迫る。
「地獄の料理長の堕天使ニスロクとその主の蝿の王です」
「ほう、なかなか他に類を見ない個性的な仮装だな。それでそれで?」
 霓虹は彩虹に積載して持ってきたカレーの入った鍋と簡易コンロを取り出す。そしてそこに完熟桃を投入し、ぐつぐつと煮込み始めた。
 蝿の王に料理長として仕えたニスロクは、楽園にある禁断の果実を使って料理に味付けをしたという。
「なんと! 小道具を持ち込んでまでなりきるとはこれは恐れ入った……! それに、なにやら美味そうな匂いが……」
 初めは辛そうな匂いだと思ったが、完熟桃が煮込まれるにつれ、甘い匂いも漂ってくる。霓虹は頃合いを見てカレーを器に盛り、跪くと、蝿の王へと恭しく捧げる。
「おおお、完璧になりきっている! 小道具を使いこなし再現するとは……!」
 かなりの手応えを感じたが、もう一押しとばかりに霓虹は南瓜の方へと意味深な視線を投げかける。
「魅惑の料理を食べてみたいと思いませんか? ニスロクが作った最上級の一品です」
「お、おお……食べたい……食べたくなってきたぞ……!」
「では、悪魔と契約する覚悟がおありなんですね?」
 ふんぞり返っている蝿の王もその威厳のままにどうだと南瓜のランタンに迫る。その姿に南瓜のランタンはふるふるとその顔とも身体ともつかないものを小刻みに震わせる。
「完璧だ! 何もかもが! よーし、いいだろう。ここを通してやる!」
 霓虹の素晴らしいパフォーマンスに絶賛の意を示した南瓜のランタンがそう告げると、森の迷路は消え、そこに出口が現れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星宮・夜
ハッピーハロウィンのためにも頑張らなきゃね
よーし、気合い入れてコスプレするよー!

わたしのコスプレは『星占術師』
夜色のドレスに身を包み、同じく夜色のヴェールを着用
星の飾りを身につけて
聖者の光でキラキラさせて神秘度アップさせようね
水晶玉で占いましょうか?それともタロットカードがお好み?

コンセプト?んーなんだろう
自分が今一番したいコスプレ?
星大好きだもん
星と夜に関係するものが、わたしに一番似合うのよ
おっと、もう少し淑やかに振る舞わないと
神秘度アップが台無しになってしまう

ファッションチェックはどうかしら?
ロングスカートをひらりと翻して、キラキラをちりばめて
ふふ、まるで夜空に耀く星のようでしょう?



●星を詠む乙女
「ハッピーハロウィンのためにも頑張らなきゃね。よーし、気合い入れてコスプレするよー!」
 次に迷わせの森に現れたのは、夜色の髪の乙女。夜を綴る星の物語が書かれた本のヤドリガミである星宮・夜(謐夜・f30532)はやる気に満ちていた。
 星と静謐な夜が好きな夜にとって、毎晩の星見は欠かせなく、夜更かしは日課となり、いつも昼間は眠そうにしているのだが、その気合いの入りようから、今日は眠気はどこへやら。明け方の空に似た美しい青の瞳を輝かせながら、森を彩るハロウィンの飾り付けを観察していた。楽しいハロウィンを迎えるためにも、ここはひとつ頑張らなくてはいけない。それがたとえコスプレだとしても。
「そうね、コスプレするなら……」
 着てみたい衣装を頭に思い浮かべる。それが夜に似合う服だと森も判断したのか、ぽんっと森から飛び出した衣装は、夜にとって望み通りのものだった。
 光を受けるときらきらと星が輝くように煌めくスパンコールで飾られたドレスは夜色。同色のヴェールは透け感のある柔らかな素材で髪と口元を覆っている。ヴェールにあしらわれた星のチャームや、耳を彩るイヤリングと首元を飾るネックレスも星の煌めきを宿したもの。聖者である夜が内に秘めた生まれながら持つ光が、彼女をより神秘的に輝かせていた。
 夜空に瞬く星や天体からあらゆることを紐解く星占術師の姿である。
「ふふ、悪くないわ」
 そうして先を進んでいくと、そこには南瓜のランタンが吊るされていた。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
 しゃべる南瓜に、夜は神秘的な微笑を浮かべて、こう問いかける。
「水晶玉で占いましょうか? それともタロットカードがお好み?」
「おお! 占い師か! ふむふむ、それも星の……星占術師か!」
「ええ、そうよ。ふふ、まるで夜空に耀く星のようでしょう?」
 輝く星の瞬きを閉じ込めたドレス。何層にも重ねられたそのスカートは、一番上がヴェールと同じ素材のレースでできていてふわりと揺れる。丈の長いスカートの裾を翻す度、星が瞬くように美しく煌めいた。
「おお、まさに夜空の星の如く! そのヴェールも謎めいていて想像力をかきたてられるな! それで、一番のコンセプトは何だ?」
「コンセプト? んーなんだろう……」
 南瓜のランタンの問いかけに、思わず素になって応えてしまう夜。強いて言うなら自分が今一番したいコスプレだろうか。
「星大好きだもん。星と夜に関係するものが、わたしに一番似合うのよ」
 言ってからもう少し淑やかに振舞わなければ、せっかくアップした神秘度が台無しになってしまうかと心配したけれど。
「なるほどなるほど。自分に一番似合うものを理解している……それはとても重要だ。それが好きなものであればなおさら」
 なにやら南瓜はひどく納得していた。
「夜を綴る星の物語……あなたに聞かせてあげようか? でも残念、時間がないみたい」
 タロットカードに見たてた護符を南瓜に貼り付けると、この森を迷路たらしめていたユーベルコードが解除される。
 夜はふわりと微笑むと、煌めく星のスカートを翻して、森を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
狼が怖くないですって?
北欧出身の私はその恐ろしさを神話でよく聞いた
パパには「狼がいるから森に行くな」と言われたし
ママには「男はオオカミなのよ」って教わったの
狼がとっても怖いって、仮装で教えてあげるわ!

カモン、不思議の森さん! 狼の着ぐるみを頂戴
月色の毛を纏う最強の狼マーナガルムのように
猛々しく雄々しい聲を森に響かせるのワオーン!

ミスター・ジャック・オ・ランタンはどうぞ褒めて下さいな
彼の饒舌を煽るように尻尾をフリフリ、耳をピョコピョコ
爪を立てた前脚でダウンのリズムをキメながらダンス
ミスターもいいツヤしてる、目元がクールねって褒めましょう
褒め言葉のシャワーを浴びせ合い、テンションアゲて行くわよー!



●狼の皮を被った花売り娘
「狼が怖くないですって?」
 ハロウィンの飾りで彩られた迷わせの森を歩きながら、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は首をかしげていた。グリモアベースで聞いた話では、赤い頭巾を被ったオウガは狼を恐れないと言ったそうだ。けれどこの言葉は、ニコリネには聞き捨てならないものだった。
 美しい金色の髪と透き通る乳白色の肌を持つニコリネは北欧出身。小さい頃から聞いて育った神話にたくさん出てくる狼の恐ろしさは幼心にも深く刻まれている。
「パパには『狼がいるから森に行くな』と言われたし、ママには『男はオオカミなのよ』って教わったの」
 狼はいつだって恐ろしいものの象徴だった。それを正しく恐れないなんて、無謀と勇気を履き違えて起こるのは悲劇なのだ。
「狼がとっても怖いって、仮装で教えてあげるわ!」
 ぐぐぐっと拳を握りしめて、ニコリネは力強く宣言した。となれば仮装は決まったようなもの。
「カモン、不思議の森さん! 狼の着ぐるみを頂戴」
 この不思議な迷わせの森は、強い想いに応えてくれるようで。ニコリネが願った仮装衣装は望みのままぽんっと飛び出してきた。
 美しく輝く月色の毛並みの着ぐるみを身に着け、近くにあった岩に前足に見たてた手をついては、ニコリネはその愛らしい顔に不釣り合いなほどの猛々しく雄々しい遠吠えを森に響かせるのだった。
 それは北欧の神話で最強の狼と称されるマーナガルムのように。
 出口のない迷路と化した迷わせの森を進んでいくと、そこに南瓜のランタンの姿を見つける。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
「ミスター・ジャック・オ・ランタン、ごきげんよう」
 ニコリネが花を買いに来てくれる客に向けるような明るく感じのいい笑顔を南瓜のランタンに向ける。
「おお、礼儀正しいお嬢さん。あんたの仮装は……」
「ふふ、狼なのよ。どうぞ褒めて下さいな」
 耳をぴょこぴょこさせながら、全身くまなく見れるようにとくるりと一回転して。さあ褒めてと尻尾をフリフリしている姿は南瓜の心を一瞬で鷲掴みにしたようだった。
「あんたみたいな美人は他にもいろいろあっただろうに……いや、でもそこがいい! 美人が狼……そのギャップがな……こんな美女になら食べられてもいい……!」
 橙色の南瓜の顔がほんのり赤く染まっているような。なんだかちょっとでれでれしながら、心の声がだだ洩れている南瓜に、ニコリネはにっこりと微笑むとこう告げた。
「ミスターもいいツヤしてる、目元がクールね」
「そ、そうか! 栄養はたっぷりもらって育ったからな。目元は作ってくれた奴のおかげだな。たまに情けない顔になる奴もいるからな」
 照れながらもご機嫌な南瓜に向かって、ニコリネは更にアピールしようと爪を立てた前足でダウンのリズムをキメながら、軽やかなダンスを披露。ふさふさの尻尾やぴょこんとした耳がリズムを取るたびに揺れるさまは、最強の狼の皮を被っているとはいえ、とても愛らしくキュートだった。
「おお、その軽やかな身のこなし。まさに狼! 外見が狼だとしても思わず心を許してしまいそうだ!」
「さあ、ミスターもリズムに乗って!」
「こ、こうか?」
「ふふ、とっても上手よ。さすがハロウィンの顔ね」
 お互いを褒め合いながら、テンションのボルテージは上がっていく。
「いやあ、こんなに楽しかった時間は初めてだ。ちょっと名残惜しくはあるが……ここを通してやろう!」
「ありがとう、ミスター。良いハロウィンを!」
 ニコリネは極上のスマイルを浮かべると、現れた出口へと歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩瑠・翼
ハロウィンパーティーとアリスラビリンスってすごくよくけど
コスプレかぁ…えーと、何来るんだろ?

オレ、かっこいいのがいいなー…って、

(飛んできたのはフリルとレースがいっぱいの
「不思議の国のアリス」なアリスの衣装)

げ。
そんなベタな…というか、
ここで王道のアリスコスプレする必要あるの?!
(さらに金髪ウィッグまで飛んでくれば、うわー、となり)

これコスプレっていうかただの女装じゃないの?!
(UCで白馬召喚するも、白馬はやる気なしだった)

そういえば、こーゆーの何かあるごとに
父さんがオレおもちゃにしてたな…って、
やだ、オレ、カッコいいのがいい!
え、似合ってる?
いやいや、それ褒め言葉じゃないよ、嬉しくないよ?!



●不思議の国の少年アリス
「ハロウィンパーティーとアリスラビリンスってすごくよく似合うけど……」
 目の前には不思議の国の不思議な迷いの森。童話じみた世界観はこの光景に似つかわしい。彩瑠・翼(希望の翼・f22017)もまたそんな不思議な国のひとつを依頼で案内し、お茶会を楽しんだりしたのだ。
 パーティーを楽しむために、まずは仮装から。それもまた依頼のためとはいえ、楽しそうではある。
「コスプレかぁ……えーと、何来るんだろ?」
 この迷わせの森は、ここから出してはくれないが、衣装に関しては本人が望む仮装や似合いそうな衣装を用意してくれる優秀ぶりだった。そんなことを翼は知らないが、絶賛身長が伸び盛りの成長期真っ只中の少年なのだ。できればかっこいい仮装をしてみたいと思うのは当然なのだが……。
「オレ、かっこいいのがいいなー……って」
 ぽそりと呟いた時、森から飛び出してきた衣装が翼の手の中に収まっていた。
「んん?」
 気のせいだろうか。なんだかフリルとかレースがいっぱいついている気がする。恐る恐る衣装を広げてみれば。
「げ」
 水色のエプロンドレスの袖はパフスリーブになっていて愛らしく、ひざ丈のスカートはふんわりと広がり、その下にエプロンと同じ白のフリルがあしらわれている。エプロンにもこれでもかとフリルとレースが盛り込まれている、いかにもな不思議の国のアリスの衣装である。
「そんなベタな……というか、ここで王道のアリスコスプレする必要あるの?!」
 翼は衣装を寄こした森にひどく真っ当な意見とも苦情ともとれる言葉を投げかけてみるも、森は返事の代わりに金髪ウィッグを投げてよこしてきたのだった。
「ううう……カッコいいのが良かったのに……」
 それでも仕方なく衣装を律義に着る翼。だってこれは依頼だもの。みんなが楽しくハロウィンを楽しむために必要なことだから!
 そう言い聞かせて、最後に金髪ウィッグを被った翼は、どうみても愛らしい女の子のようで。日本人の父とドイツ人の母を持つ翼はハーフなのだが、母によく似た美しい上の姉と違ってその特色が外見にあまり出ていなかった。それでも大きな瞳とくせのある父親譲りの黒髪が神秘的な魅力を引き立たせ、ボーイッシュな女の子に間違えられることも少なくなかった。
「これコスプレっていうかただの女装じゃないの?!」
 そんな不満をぶちまけても森はつんとすましたままで。それでも翼は律義にユーベルコードで光り輝く白馬を呼び出してみる。これなら王子の衣装とか出てこないかな、とちょっと期待したが無駄だった。そして白馬もまた、え? 自分必要ですか? と言いたそうな顔をしてやる気が皆無のようだった。
 そんな一人で奮闘している翼はやっとの思いで南瓜のランタンを見つける。こうなればなんでもいい。とにかくここを抜けなければ。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
 南瓜は陽気に翼に声をかけ、その姿にほう、と感嘆の声を漏らす。
「おお、気合いの入ったお嬢さん。これは王道……アリスの衣装だな!」
「お嬢さんじゃなーい!」
 翼の声に南瓜はランタンの身体をぐぐっと前に乗り出して見つめてくる。
「ん? 少年か? まあ、どっちでもいいだろう。良く似合ってるしな」
「え、似合ってる? いやいや、それ褒め言葉じゃないよ、嬉しくないよ?!」
 年頃の男子なのだ。女装が似合うと言われても嬉しくない。どうせ褒めてもらうなら、かっこいいと言われる格好がしたかった……。
「そうなのか? 全く違和感ないし、異性の服を着慣れているのかと……」
 翼自身は全く望んで着た覚えはないが、そこに過去の記憶が蘇る。
「そういえば、こーゆーの何かあるごとに、父さんがオレおもちゃにしてたな……」
 おそらく似合ってしまうから着せられる羽目になるのだが……父のコーディネートがまた完璧だったことをふと思い出してしまう。
「うーん、いやでも見れば見るほど完璧だな……よし、一発合格!」
「え!?」
 いや、ありがたいのだが、なんだか釈然としない。
「もうちょっとアピールしたりとか何かしないでいいの?」
「あ、大丈夫大丈夫」
 軽い調子で言われ、白馬にも鼻先でつんと背中を押され。これも全世界のハロウィンを楽しむ人のためなのだと言い聞かせて。
 違う意味で迷子になりそうな心地がしながら、翼はこの森を後にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)。
帽子を含め黒尽くめの魔女の仮装を着る。
…黒猫の耳と尻尾も用意してあるのか…。
自分では似合っているかどうかわからん。
まあ動きやすい服装だからよしとする。
それらしい箒もあるのか。貰っておこう。

露は更にくっついてくるな。うっとおしい。
「歩くのが邪魔だ。少し離れてくれないか?」
一応は露に言ってみるがやはり無駄だった。
可愛いや素敵はいつもの露が述べる単語だが。
流石妹ねと連呼されるのはやめて欲しいな。
ついこの前の依頼から私を妹…妹と。

南瓜のランタンの前でPRをしよ?…ほう。
「黒猫の魔女だ。シンプルに黒尽くめにした」
何?もっとアピールしろ?…そうだな。
「それらしい箒が気に入ってる。以上」


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
あたしはどんな仮装にしようかしら~♪
「うーん。そうねそうね~…あ! これ」
白色ワンピースと白の猫耳と猫尻尾発見~。
えへへ♪素敵素敵。白猫なあたし素敵ねー♪

で。レーちゃんは…きゃあー妹が可愛いわ!
振り返ったら可愛い黒猫魔女さんがいたわ。
「流石あたしの妹ね♪ 使い魔になりたいわ♪」
ひっついたら目を細めて不服そうにしてたけど。
うん。可愛い♪何時もと同じ表情だけど妹可愛い♪
妹って連呼する理由は一つよ!改めて言うわ。
「だって。あたしの方が妹よりも年上何だもん!」

南瓜さんへのPRはくるくる回転しながらするわ。
「このワンピースの簡単な飾り付けが可愛いわ♪」
言いながら猫のポーズv



●白と黒の猫
「レーちゃん、見てみて。ハロウィンの飾り付けがいっぱいだわ~」
 不思議なハロウィンの国にある迷わせの森に明るい声が響く。神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)にくっついて歩きながら、木々に飾られたデフォルメされたお化けや蜘蛛の飾りを指差しては目を輝かせる。
「確か仮装をしなければならないのだったな」
 浮かれる露と対照的に、シビラは冷静に辺りを観察しては呟いた。森から勝手に衣装が飛び出してくるという話だったが。
「うん、そうよ。レーちゃんはどんな仮装かな? 何を着ても似合いそうだけど♪」
 この森は来訪者が望む衣装や似合いそうな衣装を勝手に提供してくれるのだが、この二人に関しては、似合いそうな衣装が多かったのか、ぽんっと森から飛び出してきた衣装は何やらたくさんだった。選びきれなかったので好きなのを選んでほしい――そんな意図さえ感じられた。
「森から衣装が出てくるなんて不思議ね。あたしはどんな仮装にしようかしら~♪」
 それでも細かいことは気にせず、露は衣装を手に取るとひとつひとつ確かめる。様々な色のワンピースに各種動物のつけ耳、つけ尻尾が選び放題だった。
「うーん。そうねそうね~……あ! これ」
 ピンときた衣装を手に取って早速着替えてみる。
 ノースリーブの真っ白なワンピースはレースやフリルがあしらわれていて愛らしい。白い猫耳と猫尻尾もつければ、露の純真無垢を体現したような可愛らしい白猫の仮装の完成だ。
「えへへ♪ 素敵素敵。白猫なあたし素敵ねー♪」
 自身の姿を見渡して、くるんと尻尾を揺らしては露は満足そうに微笑む。
「露は白猫か」
 シビラも衣装の山から選び出した仮装に身を包んでいた。
 それは黒の魔女。丈の短い黒のワンピースに、同色のニーハイソックス。黒マントの裏地は緋色で、黒ずくめの中の明るい差し色になっている。
「レーちゃんはやっぱり黒なのね。えへへ、でもあたしと対な感じがして素敵素敵♪」
 シビラの周りをくるくる回って全身確かめた露は、でも対ならこれもつけないと、と黒猫の耳と尻尾をシビラに手渡す。魔女の帽子は小さめのものなので、猫耳をつけても隠れることはないようだ。
「……黒猫の耳と尻尾も用意してあるのか……」
「……きゃあー妹が可愛いわ!」
 黒猫魔女さんに大興奮の露だが、妹という言葉にシビラはぴくりと眉を動かした。
「流石あたしの妹ね♪ 使い魔になりたいわ♪」
 そう言いながらいつも通りシビラにぎゅっと抱きついてくる露が、「おねえちゃんって呼んでいいのよ?」とでも言うような無言の圧力をかけてきたので、そっと目をそらした。
「自分では似合っているかどうかわからん」
「うふふ、可愛くて似合ってるわよ~。妹可愛い♪」
「……まあ動きやすい服装だからよしとする」
 そして小道具にと衣装と一緒に飛び出してきたものの中から箒を選んで持っていく。
「露、歩くのが邪魔だ。少し離れてくれないか?」
 妹可愛い、素敵を連呼しては、さらにぎゅっとくっついてくる露に向かってシビラはそう告げるのだが、あまり効果はない。この前の依頼で自分へのスキンシップについて少し控えるようにと手紙にしたため、注意を促したつもりだが、スキンシップが減った気はしない。
「だってだって、可愛い妹が森で迷子になったら大変でしょ? 姉として見守らなくちゃ!」
「……その妹連呼はさすがにやめて欲しいのだが」
 この前一緒に行った依頼で訪れた表現祭で、露はシビラへの想いを歌に乗せて歌ったのだ。それは自分を姉と呼んでほしいという露の切実かつ思いつきの想いだったのだが、その歌を耳にした時のシビラはきっと今までで一番呆れ果てた顔をしていたことだろう。
 露はえーと言いながら、改めて自分の気持ちを伝える。
「だって。あたしの方が妹よりも年上なんだもん!」
 見た目こそ同い年くらいに見える二人ではあるが、露は数千年もの間、月光だけ浴び続けたブルームーンストーンのヤドリガミ。シビラだって三百年はゆうに生きているダンピールなのだから、一般的な歳の差というものには当てはまらない気もするが。
「だからね、レーちゃんはいつだってあたしをおねえちゃんって呼んでいいのよ?」
 期待に満ちた目をしてますますくっついてくる露に、シビラは深い深いため息をつく。姉を名乗るならもっと大人びた振る舞いをしてほしいという思いは心のうちに留めて。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
 森を歩いているうちに、木に吊るされた南瓜のランタンが二人を見つけて話しかけてきた。
「わあ、しゃべる南瓜さんね。ちゃんと仮装してきたわよ♪」
 言うなり露はその場でくるりと回転してみせる。白いワンピースと猫尻尾が可愛らしく揺れる。
「なんと愛らしい猫のお嬢さんが二人! そっちの黒猫のお嬢さんは魔女か?」
「ほら、レーちゃんもアピールしないと!」
 露に背中を押され、シビラはしぶしぶ南瓜の前までやってきては口を開く。
「黒猫の魔女だ。シンプルに黒尽くめにした」
「おお、魔女は人気の仮装だがその分バリエーションも豊富だからな。黒猫っていうのがアイデアだな。他には?」
 簡潔に述べたシビラだが、どうもそれだけでは足りないようだ。
「それらしい箒が気に入ってる。以上」
 箒を前に出し、笑顔を見せるでもなく淡々と告げる。実にシビラらしいのだが、それじゃあ足りないかと露がさっと前に出る。
「えっと、えっと、あたしはね。南瓜さん見てみて、このワンピースの簡単な飾り付けが可愛いわ♪」
 今度は踊るようにその場でくるくると何度も回ってみせて。そうして最後に拳を握って顔の近くに持っていっては猫のポーズ。
「ほら、レーちゃんも!」
 かなりしぶしぶ猫のポーズをするシビラ。
「ふむふむ、いや……かなりいい! 素晴らしい! 二人が対照的なのがいいな! 白と黒。愛嬌と冷淡。黒猫のお嬢さんにはもっと笑ってほしいが、そんな冷たいところがまた、いつか自分にだけ優しくしてくれるのではと想像力をかきたてられるな! 白猫のお嬢さんはただただ可愛い! 癒される!」
 南瓜のランタンの好みにドンピシャだったらしく、そのあとも長々と二人に対する称賛の言葉が続く。
「よーし、いいぞ! ここを通してやる!」
「やったわね、姉妹の勝利よ!」
 露は嬉しそうにシビラに抱きつくと、二人は現れた出口から森を抜けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
衣装を飛んでくるのは助かりますが…、何が飛んでくるかわからないのが何とも
あ、言っている傍から衣装が

(どきどきしながら手に取った衣装はオフショルダーのトップスに胸の所がコルセット・スカートの部分がアシンメトリーになったワンピース)
これは…、海賊、でしょうか?(グリードオーシャンで見たことがあるような?)
衣装に着替え髪をそれっぽく纏めたら、いざ南瓜殿の元へ

ど、どうでしょう、この衣装!
ロングスカートでもアシンメトリーだから足捌きの邪魔になりません!
大胆に露出した肩や足で敵を魅了させつつも、いやらしくなりすぎない!
それが女海賊衣装なのです!

(アピールってこれでいいのでしょうか?ちょっと恥ずかしいです)



●女海賊の流儀
 すっかりとハロウィンの装いがなされたアリスラビリンスの不思議の国。迷わせの森を歩きながら、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は感慨深げに呟いた。
「どの国でもハロウィンは楽しいお祭りであってほしいですね」
 昨年はアルダワのハロウィンパーティーで災魔を倒したことが思い出される。災魔を倒すという依頼ではあったけれど、仮装をして楽しいパーティーだった。あの時、狐珀は洋装のドレスを着て、お嬢様の仮装をしたことを懐かしく思い出す。そう、ハロウィンに仮装は必須なのだ。
「衣装が飛んでくるのは助かりますが……何が飛んでくるかわからないのが何とも」
 それは福袋のようなもので、わくわくすると同時に何が出てくるか予測ができないという不安要素もある。なんだか想像もしていないものだったらどうしようと考えているそばから、森から衣装が飛び出すと、狐珀の手元に収まった。
「一体どんなものでしょうか……」
 どきどきしながら衣装を広げてみる。オフショルダーのトップスに、胸の所が革の素材でいくつもの留め具がついたコルセットとスカートの部分がアシンメトリーになったワンピースだった。その衣装に狐珀は見覚えがあった。グリードオーシャンで見たことがある気がするのだ。
「これは……海賊、でしょうか?」
 小道具とばかりに一緒に出てきた海賊帽と革のブーツを見て確信を持つ。これならば大丈夫と狐珀は着替えると、髪もそれらしく束ねてみる。自分ではきちんと着れていると思うし、それっぽい雰囲気は出ていると思う。この森の番人とも呼ぶべき南瓜のランタンに認めてもらわなくては。そう思いながら森を歩き進んでいると、ほどなくして木にぶら下がっている南瓜のランタンは見つかった。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
 顔の形にくりぬかれた南瓜のランタンは、かたかたと顔を揺らしながら狐珀へと話しかけてくる。
「ほうほう、これは勇ましい女海賊か!」
 口数が多い方でなく、物静かな場所を好む大人しやかな性格の狐珀であるが、ここを突破するためには自分からアピールしなくてはと南瓜を前に思い切って口を開く。
「ど、どうでしょう、この衣装!」
 言って全身がわかるようにくるりとその場で一回転。スカートが揺れ、美しい脚線美が少しだけ露になる。
「ロングスカートでもアシンメトリーだから足捌きの邪魔になりません!」
「ほうほう、戦いに身を置く女海賊としてはそこは大事だな。デザインと実用性を兼ねているわけだ」
 南瓜の言葉に勇気をもらい、狐珀は更に続ける。
「大胆に露出した肩や足で敵を魅了させつつも、いやらしくなりすぎない! それが女海賊衣装なのです!」
 肩を露出しているが、二の腕は布で覆われており、露出過剰になりすぎない。スカートから覗く足もいつも太ももが見えているわけではなく、ここぞという時に相手を引きつけることのできる女の武器だ。
(「アピールってこれでいいのでしょうか?」)
 南瓜の手前、堂々と言ってはみたものの、なんだかちょっと恥ずかしくて。
「自分の仮装の魅力をしっかりと理解してそれを引き出している……実に素晴らしい!」
 心配もなんのその、南瓜は手があれば拍手喝采していたのではという勢いで狐珀の仮装を褒め称えた。
「しかも海賊のような荒々しいことをしなさそうな可愛らしいお嬢さんがする女海賊は実に趣深い。うむうむ、眼福眼福……」
 満足そうな南瓜に、狐珀はそっと問いかける。
「ええと、あの……ここを通していただいても?」
「ああ、もちろんだ! いやー良かった。実に良かった!」
 なんだかご機嫌な南瓜の様子にほっと胸をなでおろし、狐珀は笑顔を浮かべると、現れた出口へと歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
アカネは是非ゴスロリを着たいです!
茜姫も是非に!

黒と白を基調にしたヒラヒラ辛口なゴスロリです
スカートふんわりリボンもたっぷり
お人形さんみたいな華やかなドレスに身を包んでポーズ
茜姫はアカネとネガポジなゴスロリです

アピールポイントはこの胸元のリボンです!
黒ベルベットの中心にあるルビーが素敵でしょう?
ドレスもこのレースの色合が綺麗で…

「このようなヒラヒラで派手な衣装恥ずかしいですわ!」
「どうせ似合いませんもの!」
「笑いたければ笑えばいいのです!」
などと言いつつランタンに褒められれば顔を真赤にして攻撃
恥ずかしがりながらも鏡に映った姿に
ちょっと満更でも無さそうに笑われたのは
アカネの胸に仕舞っておきますね



●白と黒のゴスロリ少女
「茜姫、茜姫、ハロウィンです、仮装です!」
 うきうきとハロウィンの飾りに彩られた迷わせの森を歩くのは、頬を紅潮させ、お祭りに浮かれるアカネ・リアーブル(ひとりでふたりのアカネと茜・f05355)。
「もう、アカネってばはしゃぎすぎですわよ。わたくしたちは悪いオウガをやっつけにきたのではなくて?」
 呆れた声でアカネを窘めるのは、アカネの魂の親友・茜姫。後天的な多重人格者であることが最近判明したのだが、ユーベルコードを使えば、こうして一緒に行動することができるのだ。
「もちろんそうです! 忘れていたわけではありませんが……仮装をすればパワーアップするといいますし、それを使わない手はありませんよね?」
 アカネだってグリモア猟兵として猟兵たちを別のハロウィンの国に案内したのだ。いや、だからこそ今度は自分が仮装できるという思いが募ってしまったというのもある。アカネが案内した依頼ではみんなゴスロリ衣装に身を包んでいたのだ。
「アカネは是非ゴスロリを着たいです!」
 森に向かって叫んでみる。この森は大体は来訪者の望みを叶えてくれるので、想いを叫ぶのは間違いではなかった。
「ごすろり……ですの?」
「そう、ゴスロリなのです! 茜姫も是非に!」
 拳をぐぐっと握りしめ、アカネはゴスロリファッションに身を包んだ二人の姿を想像する。茜姫と一緒に同じ仮装ができたら、双子コーデみたいで楽しいと思うのだ。
「まあ、わたくしは特に希望はありませんが……」
 そう言っているうちに、森から衣装が飛び出し、二人の手元へと届けられた。
「やりましたよ茜姫! ゴスロリドレスです!」
 衣装を胸の前で広げて見せて、アカネは幸せそうに微笑んだ。黒と白を基調にした、アカネが望んだひらひらかつ甘すぎないゴスロリドレスだ。
 早速着てみると、スカートはふんわりしていて、リボンもたっぷりついている。まるでお人形さんにでもなったような気分だ。ヘッドドレスと厚底のブーツを身に着けて、茜姫の前でポーズを決めて見せる。
「まあ、茜姫もとてもよく似合っています!」
 茜姫はアカネと対になるような、アカネが黒の部分は白、アカネが白の部分は黒といった配色のドレスだった。
「こ、こんな服を着たのは初めてですわ……に、似合ってなんて……」
 サムライエンパイアで育った茜姫は普段は和装で、ドレスを着た自分が似合っているかどうかもよくわからない。アカネはなんでも褒めてくれるけれど、本当に似合っているのかしら、と自信なさそうにそっぽを向く。
「似合ってるかどうか、南瓜のランタン様にお伺いに行きましょう!」
 茜姫の手を取ると、アカネは森を歩き出す。ここは迷わせの森。はぐれたら大変だ。アカネと茜姫の未来へ続く道も、正しいゴールがまだはっきりと見えないけれど。でもこうして手を取り合って、歩いて行きさえすればきっと辿り着ける。
(「交換日記にも今日の思い出を記しておきましょう」)
 そうして歩みを進めると、やがて木に吊るされた南瓜のランタンのもとへと二人は辿り着いた。
「トリックオアトリート! 仮装を楽しまないとここからは出さないぜ!」
「南瓜のランタン様、初めまして。アカネ・リアーブルと申します。せっかくですので、アカネたちの衣装を見ていただけますか?」
 丁寧に挨拶とお辞儀を済ませると、アカネは笑顔でそう提案する。
「なんと礼儀正しいお嬢さんだ! ああ、もちろんだ! ふむふむ、ゴシック・アンド・ロリータ か……」
 南瓜がアカネと、続いて茜姫の方に視線を向けると、茜姫は耐えきれないように赤くなって叫んだ。
「このようなヒラヒラで派手な衣装恥ずかしいですわ!」
「そっちのお嬢さんは恥ずかしがってるのか? いや、よく似合っているぞ!」
「そんな言葉に騙されませんわ。どうせ似合いませんもの!」
 だって相手はこの迷わせの森が生み出したオウガなのだ。茜姫を褒めてくれるはずがない。
「はい! アカネも茜姫はとてもよく似合っていると思います。南瓜のランタン様、ここを見てください。この胸元のリボンです。黒ベルベットの中心にあるルビーが素敵でしょう?」
 アカネは胸元のリボンを指差してにっこり微笑む。同じ部分は茜姫は白ベルベットにサファイアがあしらわれている。
「おお、宝石がアクセントになっていてごてごてしすぎずスタイリッシュさを生んでいるな。そしてお嬢さん二人が白と黒が反転していて面白い。性格の方も同じではないようだしな」
「はい。アカネと茜姫はそれぞれ違います。でもふたりでひとり……ひとりでふたりなのです」
 そうしてアカネは恥ずかしがる茜姫の背中を押して、さらに仮装をアピールする。
「見てくださいませ。ドレスもこのレースの色合が綺麗で……」
「わ、わたくしがこのような着慣れないドレスを着ているところを……笑いたければ笑えばいいのです!」
「いやー、そういう自分の魅力を認められない意地っ張りなところも嫌いじゃない。ほら、ちゃんと鏡を見てみたのか?」
 そういうと森からはぽんっと手鏡が飛んできて。映った自分の姿に茜姫はまんざらでもなさそうな表情を浮かべる。そしてほんの少し笑みを浮かべたのをアカネは見逃さなかった。
(「このことはアカネの胸に仕舞っておきましょう」)
「ほらほら、自分でも悪くないって思っただろ?」
「う、うるさいですわね、この南瓜は!!」
 思わず攻撃しようとする茜姫をアカネがやんわりと押しとどめて。
「せっかくのハロウィンなんだ。仮装を楽しむのも大事だぞ。よーし、いいだろう。ここを通してやる!」
「南瓜のランタン様、ありがとうございます。ハロウィンパーティー楽しんできますね」
「わ、わたくしはアカネがついてきてほしいって言うから、仕方なく行くんですからね」
 アカネは何も言わず、そっと茜姫の手を握る。
 二人のゴスロリ少女はそれぞれの思いを胸に、迷わせの森を抜け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『レッドキャップ』

POW   :    おおかみさんなんかに、まけないもん!
単純で重い【大鎌】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    たすけて、りょうしさん!
【猟師さんたちに助けをもとめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大勢の猟師たちが一斉に猟銃】で攻撃する。
WIZ   :    おばあさん、りんごをどうぞ
【大量のりんご型爆弾】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヘルメス・トリスメギストスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●パーティーのはじまり
「さあ、楽しいパーティーをはじめなくっちゃ。ええと、必要なものは……」
 赤い頭巾を被った少女はあどけない顔で首をかしげる。
「かざりつけはすんでいるし、あとはお料理かな」
 ここには調理器具も食材も全てがそろっている。お母さんに聞いたレシピでパイを焼こうか。ああ、それと一緒に楽しんでくれるお客さんも必要だ。
「迷わせの森に何人か迷い込んだみたい。もしあの森を抜けることができたのなら、一緒にパーティーを楽しみたいわ。……永遠に」
 ふふふと無邪気な顔で笑うと、赤ずきんはたくさんの客を迎えられるように、テーブルセッティングを始めるのだった。
 
ニコリネ・ユーリカ
ふふ、いたわね赤ずきんちゃん
恐い狼が来たわよ(着ぐるみ継続)
この大きなお口はお前を食べる為に、いいえ、手料理を食べて貰います!

料理は得意よ
一人暮らしをしてる上に恋人も居ないから
オフの日は手の込んだ料理を……言ってて悲しくなるけど!
今日は貴女に美味しい南瓜のグラタンを作ってあげる

先程のミスター・ジャック・オ・ランタンにヒントを得たの
小さな南瓜をスパッと切って器と蓋にして
中に材料を入れていきまーす
南瓜はレンチンで手早く柔かくして、グラタンはオーブンで12分!
その間に蓋の表面にナイフを入れて、ミスターの顔を彫りましょう

おいしくなぁれの魔法を掛けて
はい、ハロウィンらしく見た目も可愛い料理の出来上がり!


蒼・霓虹
料理している間は、攻撃してこないのは有難いですね

料理している間待たせているのも悪いですし、此処に来る前に作った完熟桃入りカレーでも食べて待っていて貰いましょうか。

[料理]
果実と言うにはアレですけど、冬の縁起物の南瓜で、南瓜きんとんをデザート的な感覚で【料理】しちゃいましょう

南瓜を茹でて頃合いになったら
熱い内にマッシュして砂糖・バター・塩を混ぜて、中に南瓜と相性が良く、金運の縁起物の栗の甘露煮を入れて

正月には若干早いですけど

それから、丸めて箸で縦の線をいれて丸みを出すように南瓜の形に整え

皮で顔と南瓜のヘタのパーツを作り、そこに張り付け表情を作って出来上がりです。

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]



●ハロウィンのおもてなし
 迷わせの森を抜けると、そこはどこか牧歌的な風景が広がっていた。
 煙突のあるログハウスのような家の裏には牛や馬、鶏も飼われている牧場があり、畑には新鮮な野菜も実っている。そして屋外に木でできた大きなテーブルがあり、レッドキャップ――童話から抜け出したような赤い頭巾を被った少女がテーブルクロスをかけて食卓の準備を整えていた。
「ふふ、いたわね赤ずきんちゃん」
 そんな少女の姿を見つけ、先ほど迷わせの森で手に入れた狼の着ぐるみを着たままのニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は、狼の恐ろしさを正しく伝えるため、赤ずきんに迫る。
「恐い狼が来たわよ!」
 ガオーと両手を掲げ、着ぐるみの口を大きく開いて牙を見せる。
「まあ、おおかみさんね。でもね、わたしには怖いものはないのよ。おなかを空かせてやってきたの?」
 赤ずきんは目を見開くが、特に驚いた様子を見せずに、テーブルに空の花瓶を置いていく。
「そう、おなかがぺこぺこで……この大きなお口はお前を食べる為に……」
 そこまで言って、ニコリネはばっと着ぐるみから顔を出してにっこりと微笑む。
「……いいえ、手料理を食べて貰います!」
「まあ、まあ。ちょうどお料理を用意しようと思っていたの。おおかみのおねえさんにお願いできる?」
「ふふ、任せてちょうだい。ついでにテーブルに飾るお花の方もね」
 花屋としてこういう場に相応しい花のアレンジメントも得意なニコリネは片目を瞑ってみせる。近くに咲いている野の花を選んで摘んではテーブルを飾ってから、ログハウスの中の調理場に向かう。
 同じ頃、地獄の料理長姿の蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)もこの場にやってきていた。
「あらいらっしゃい。今日はお客さんがいっぱいね。その姿……あなたも料理を作ってくれるの?」
 銀の食器を磨いていた赤ずきんは、霓虹の姿に顔をほころばせ首をかしげる。
「はい、蝿の王に仕える地獄の料理長ですから」
「じごくの? ふふ、でも今のわたしに怖いものはないのよ。だって無敵なんですもの」
(「攻撃してこないのは有難いですね」)
 だからこそこのオウガは攻撃してこないのかと霓虹は納得し、先ほど森で南瓜のランタンに振舞った完熟桃入りカレーを差し出す。
「これから料理をしますが、待たせてしまいますので、まずはこれをどうぞ」
「まあ、ありがとう。……フルーツの香りがするわ」
 席についていただきます、とお行儀よく挨拶してからカレーを口にすると、美味しいわと笑顔を見せる。
 それを見届けてから霓虹も調理場へ向かうと、ニコリネが小さな南瓜にナイフを入れているところだった。
「気が合いますね。わたしも南瓜を使った料理を作ろうと思っていたのです」
「ハロウィンだものね。先程のミスター・ジャック・オ・ランタンにヒントを得たの」
 ニコリネが作るのは、南瓜のグラタン。小さな南瓜を器と蓋にして、中をくりぬき材料を入れていく。
「料理は得意よ。一人暮らしをしてる上に恋人も居ないから……」
 不思議の国の不思議な電子レンジで手早く南瓜を柔らかくし、手際よくグラタンを作っていく。
「オフの日は手の込んだ料理を……言ってて悲しくなるけど!」
「高嶺の花だと思われているんじゃないですか」
 料理をするために一旦着ぐるみを脱いだニコリネは笑顔が素敵な美しい女性で。隣で南瓜を茹でていた霓虹は思わずそう呟く。
「まあ、ありがとう」
「ねえ、なんのお話?」
 桃カレーを食べ終えた赤ずきんが調理場へとひょっこりと姿を現す。
「ガールズトークよ、赤ずきんちゃん。男はオオカミなんだって覚えておいてね?」
 ニコリネはグラタンをオーブンで焼きあげている間に、蓋にした南瓜の表面にナイフを入れて、怖い顔を描いては赤ずきんに見せる。別の蓋には先ほどまで語り合ったミスター・ジャック・オ・ランタンの顔を。
「今日は貴女に美味しい南瓜のグラタンを作ってあげる」
「わあ、楽しみだわ」
 霓虹は茹で上げた南瓜を熱いうちにマッシュすると、砂糖にバター、塩を手早く混ぜる。成形する際に、南瓜とも相性が良く、金運の縁起物でもある栗の甘露煮を入れるのがポイントだ。
「なんだかおめでたい感じね」
「正月には若干早いですけど」
 けれどお祭りを祝うにはとてもぴったりで。丸めて箸を使って縦の線を入れて、さらに丸みを出すように南瓜の形に調えて。霓虹が作っているのは南瓜きんとん。果実を使った料理を得意とする地獄の料理長にちなんで、冬の縁起物の南瓜を使ったデザート感覚の一品。仕上げに残った皮で顔と南瓜のヘタのパーツを作り出し、それを張り付けてみれば表情豊かな南瓜きんとんの出来上がり。
「見た目もかわいらしいわ。パーティーにぴったりね!」
「さあ、どうぞ召し上がれ」
 ニコリネが笑顔でおいしくなぁれの魔法を掛ければ、テーブルについた赤ずきんは瞳を輝かせて食事を始める。
「かぼちゃのグラタン、ほくほくでおいしいわ」
 食べ進めるにつれ、ちょっと目をしょぼしょぼさせ、眠そうな様子を見せるが、南瓜きんとんの優しい甘さに頬に手を当てとろけるような笑顔を浮かべる。
「おかあさんが言っていたのよ。料理にはまごころが大事だって。おねえさんたちの料理にはそれがあるのね」
 器や見た目にも食べる者を目で楽しませるその気遣いに心を打たれた赤ずきんは、全てを美味しく平らげると、ごちそうさまと手を合わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
お料理です!
アカネはエリシャ様に教えて頂いたミネストローネを作りましょう!
赤がとてもハロウィンです
茜姫もご一緒に!

包丁など持ったことがない、と渋る茜姫を宥めて
一緒にチャレンジです
とても覚束ない危険な手付きにドキドキ
エリシャ様もこんな風に見守ってくださったのでしょうか?

新鮮なトマトをたっぷりと
玉ねぎ人参じゃがいもセロリ
厚切りベーコンもカットです
刻んで刻んで炒めましょう
炒めて煮込めばできあがり

四苦八苦しながら作ったミネストローネは
とっても美味しくなりました!
指を沢山切りましたが
自分も何かを生み出せるのだと
茜姫は感動されているご様子

簡単・美味しい・栄養満点
エリシャ様自慢のレシピを
さあどうぞ召し上がれ



●一番の調味料
 迷わせの森を抜け、辿り着いたのは長閑な風景が広がる世界。先についた猟兵が既に調理を始めているのだろう。ログハウスのような造りの建物の煙突から煙が、そして窓からはいい香りが漂っていた。
「茜姫、お料理です!」
「ど、どうしましたの、急に」
「お料理を作って食べてもらえばオウガは弱体化するそうです。なのでお料理を作るのです!」
 アカネは茜姫の手を取り、調理場へ向かおうとするが、茜姫が渋る様子を見せたので立ち止まって首をかしげる。
「それはわかっていますけど……わたくし、料理なんて……」
「大丈夫です! アカネも初めは全くでしたが、練習して少しは上手に作れるようになりました。ですから茜姫も。ひとつひとつ教えますから……一緒に」
 里の中で、母に守られて何不自由なく暮らしてきた茜姫が自ら料理することなどなかったのだろう。けれど、そんな些細なことすら、茜姫のことを以前よりよく知れた気持ちになれて、アカネはなんだか嬉しかった。一緒に料理できるならもっと嬉しい。
「わ、わかりましたわ……一応努力はしますけど……期待しないでくださいませね」
 二人は辺りに広がる畑から新鮮な野菜を引き抜いては調理場へと持っていく。
「ミネストローネを作りましょう!」
 人参にじゃがいもにトマト。畑から取ってきた新鮮な野菜に、せっかくだから南瓜も入れてみよう。他にも必要な材料を確保して。以前依頼で訪れた満腹が失われた世界の妖狐の里で作った料理――それがミネストローネなのだ。
「エリシャ様に教えて頂いたのです。お野菜は季節ごとに変えてもいいうえに、とってもヘルシーなのです」
「でも、難しいのではなくて?」
「野菜を切って煮込むだけの簡単なのに美味しい料理なんです」
 さあ、とアカネは包丁を茜姫に手渡す。
「切るだけと言われても、わたくしは包丁など持ったことがありませんし……」
「では持ち方からお教えしますから」
 渋る茜姫をなだめながら、丁寧にひとつひとつ教えていくアカネ。
「こ、こうですの?」
「そうです……あ、そこに指を添えると危ないです!」
 時々包丁で指を切りながら、いくつも絆創膏をその指に巻きながら、茜姫は四苦八苦しながら野菜を切っていく。
(「エリシャ様もこんな風に見守ってくださったのでしょうか?」)
 茜姫の包丁使いは覚束なくて、見ていてとても冷や冷やする。けれど、自分もそんな風に見えていたのかもしれない。それを成長と受け取って、そして諦めず自分の力でやることが大事だと改めて思うから。
「ちょっと……涙が止まらないですわ」
 玉ねぎを切って涙する茜姫にハンカチを差し出して。泣いて笑って、それもまたいい思い出で。人参にじゃがいも、セロリを同じ大きさに切って。南瓜は硬いからアカネが切るのを担当して。厚切りベーコンも同じようにサイコロ状に切ってしまえば、あとは炒めて煮込むだけ。
「新鮮なトマトをたっぷりと……赤がとてもハロウィンだと思いませんか?」
 ぐつぐつといい香りを漂わせながら煮込まれる鍋の中身に、アカネは笑顔で茜姫に問いかける。
「ふふ、そうね。いろあざやかでとってもきれい」
 応えたのは茜姫でなくトマトのような赤い頭巾を被った少女だった。
「もうすぐ完成しますから待っていてくださいね。茜姫が初めて作ったお料理なのですよ」
「わ、わたくしはアカネに言われて仕方なくやっただけですからね。別にあなたに食べてもらいたかったわけではありませんから!」
 切った指を誤魔化すように手を後ろに隠すと、茜姫はぷいっとそっぽを向く。
「では、味見を……」
 アカネが味見用の皿にすくったスープを一口。
「とっても美味しいです。さ、茜姫も味見を」
「……美味しいですわ……」
 自分が苦労した切った野菜が、炒めた材料が、こんな風に深い味になるのだと、自分にも何かを生み出すことができるのだと、茜姫はひどく感動していた。
「ねえ、早くわたしにも食べさせて」
 赤ずきんが待ちきれずにそうねだると、アカネはミネストローネを器に盛ると食卓まで運ぶ。
「簡単・美味しい・栄養満点。エリシャ様自慢のレシピをさあどうぞ召し上がれ」
 いただきます、と呟いてから赤ずきんはスプーンを口に運ぶ。
「やさいの味がいっぱい染み込んだスープは優しい味がするわ。やさいもごろごろたっぷり入っていておいしい」
 アカネは茜姫にやりましたね、と会心の笑みを向けると、赤ずきんに語り掛ける。
「料理に大切なのは技術だけじゃなくて、食材や食べてくれる人への愛情が大事なのだとアカネも教わりました」
 まだまだ料理の腕は一人前だと言えないけれど。兄のレシピを再現することだけを考えているだけではダメなのだと気づいた。まずは一歩ずつ、丁寧に愛情をこめて食べてくれる誰かのために。
「美味しく実った野菜と食べてくれる人がいるからこその料理なのです」
「だから優しい味がするのね」
 おかあさんが作ったみたいな、そう呟く赤ずきんは眠たそうに目をこすっている。この調子で料理を食べてもらえばきっと大丈夫だろう。
「茜姫、また一緒に料理をしましょうね」
「そ、そうですわね。気が向いたらまた手伝ってあげなくもないですわ」
「はい、約束ですよ?」
 そう言ってアカネは満面の笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
ふむ。オウガに美味い料理を食わせるか…。
仕方がない。私の作る料理は三つだ。

一つ目はスイートパンプキン。
スイーツポテトの南瓜バージョンだ。
ハロウィンらしく形を幽霊や魔女帽にする。
幽霊に様々な表情をつけるのもいいかもな。
二つ目は南瓜プリン。
手のひらサイズの南瓜を使ったプリンだな。
カラメルソースを上からかけて完成させる。
乾燥させた南瓜の種を二つほどのせてみる。
プリンの容器を中をくり抜いた南瓜にする。
三つ目は一口ミートパイ。
抜いた中央に混ぜたひき肉と野菜を乗せ焼いた。
トッピングにミニトマトやパセリを乗せようか。

「…味は保証しない」
オウガに振る舞う。…いや君も食べるのか。露。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。

レーちゃんがお料理ならあたしは飲み物でも♪
…味が濃いのとか甘いお料理作るのね…。
じゃあじゃあ紅茶でも淹れようかしら~。
どの茶葉が料理にいいかしら…うーんうーん。
柑橘類の匂いと爽やかな味のアールグレイに。

妹の作るお料理美味しそうだわ。お腹減った。
ちらちら手際のいいレーちゃん観てるわね。
黙々と作る横顔がなんだかカッコいいわ♪
なんだ?ってレーちゃんに聞かれたら。
「手際いいなーって思ったのv」
って笑顔で答えるわ。えへへ。えへへ♪

「レーちゃんの料理と一緒にどうぞ♪」
お料理が完成するのを見計らって淹れるわ。
本当に美味しそう。あたしも食べる!
「えー!あたしも手料理食べたいわ!」



●三種の南瓜料理と紅茶のおもてなし
 森を抜けた先で二人が目にしたのは、どこか長閑な風景で。
「いらっしゃい。本当に今日はお客さんが多いわね」
 眠たそうに目をとろんとさせたボスオウガ――赤ずきんが猫耳のついた仮装をしたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)と神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)を歓迎する。
「あなたたちも料理を作ってくれるの? どんな料理か楽しみだわ……」
 欠伸を噛み殺しながら赤ずきんは眠気と戦いながら二人を調理場へと案内した。
「ふむ。オウガに美味い料理を食わせるか……」
 二人を案内してはふらふらと屋外に設置された大きなテーブルへと戻っていた赤ずきんは、他の猟兵たちが食べさせた料理の影響でかなり眠くなっているようだった。もう一押しといったところだろう。
「レーちゃんはどんな料理を作るの? あたしは飲み物でも用意しようかな♪」
「私が作る料理は三つだ」
「わあ三つも!」
 うむ、とシビラは頷く。美味しい料理を作って食べさせなければいけないというのなら仕方ない。料理は苦手ではないし、せっかくならハロウィンにちなんだ料理を提供したいと考えた。
「スイートパンプキンに、南瓜プリン、そして一口ミートパイだ」
「……味が濃いのとか甘いお料理作るのね……。じゃあじゃあ、あたしは紅茶でも淹れようかしら~」
 食事にもスイーツにも合う紅茶にしようと露は考えて、置いてある紅茶の茶葉の缶をひとつずつじっくりと眺める。
「どの茶葉が料理にいいかしら……うーんうーん」
 じっくり迷ってようやく決めたのは、柑橘類の匂いと爽やかな味が広がるアールグレイ。シビラもよく飲むというその茶葉を手に取って調理場に戻ると、シビラが慣れた手つきで茹でた南瓜を裏ごししていた。バターと砂糖を加え、混ぜていき、生クリームや卵黄を入れてさらに混ぜ、鍋に入れて水分を飛ばしていく。
(「自給自足の生活ができるって言ってたもんね。いいな~。あたしもレーちゃんのお家に行って手料理を振舞ってもらいたいわ」)
 露はそんなことを思いながら、シビラの手の中で、幽霊や魔女の帽子へと姿を変えるスイートパンプキンを見つめていた。
「露、君も幽霊に表情をつけてみるか」
「いいの!?」
 嬉しそうに猫耳と猫尻尾を揺らしながら、露はスイートパンプキンの幽霊に表情をつける。
「かわいくできたわ~」
 目がきらきらしている可愛らしい幽霊の誕生に露は満足げに微笑む。あとはオーブンで焼けば完成だ。そうしている間にもシビラは次なる料理にとりかかっていた。
 先ほどの茹でた南瓜を小さくして潰し、卵や砂糖、牛乳を加えてなめらかにしていく。器には、手のひらサイズの小さな南瓜をくりぬいたものを使用。プリンを蒸しあげている間に砂糖と水を入れた小鍋でカラメルソースを作っていく。仕上げに出来上がったソースをかけ、乾燥させた南瓜の種を二つほど乗せれば見た目も楽しい南瓜プリンの完成だ。
 黙々と作業を進めるシビラの横顔をうっとりと露が眺めていると、視線に気づいたシビラが問いかける。
「なんだ?」
 露はふるふると首を横に振ってから、にこにこと応える。
「手際いいなーって思ったの」
 こんなに料理上手な妹だったなんて。自分もおねえちゃんとして料理ができた方がいいのかしら、と一瞬そんなことが頭をよぎったけれど、妹が作った料理を美味しく食べるのも姉の務めかもしれないと思いなおして。シビラの手料理を食べる姿を想像してはえへへ、と輝く笑顔を浮かべるのだった。
「料理は手際が大事だからな」
 そう言いながら、既に三つ目の料理に取り掛かっているシビラ。南瓜や幽霊の形に切り抜いたパイ生地の上に、味付けしたしっかり練ったひき肉や彩りも鮮やかな野菜を乗せていく。オーブンで焼いて、仕上げのトッピングにはミニトマトやパセリを散らそうか。
 可愛い一口サイズのミートパイの出来上がりだ。
「妹の作るお料理美味しそうだわ~。お腹減ったわ~」
 ちらちらと露が視線を送ってくるが、シビラは聞こえないふりをして料理を器に盛りつけ、オウガの待つ食卓へと運ぶ。慌てて露も完成を見計らって淹れていた紅茶のポットをテーブルへと運ぶ。
「……味は保証しない」
 そう言って並べられた料理は見た目にも楽しく美味しそうで。赤ずきんは眠そうだった目を大きく開いて嬉しそうに料理に手を伸ばす。
「レーちゃんの料理と一緒にどうぞ♪」
 一緒に出されたアールグレイ紅茶の芳醇な香りが食欲を刺激する。
「まあ、こんなにたくさん。どれから食べようかしら」
 まずはスイートパンプキンから。幽霊の表情の豊かさに思わず笑ってしまう。
「とってもなめらかで、こくがあるのに優しい甘さだわ」
 その次にはミートパイに手を伸ばし、その色どり鮮やかな野菜のシャキシャキ感とスパイスをきかせたひき肉のジューシーさにうっとりとする。
「……本当に美味しそう。あたしも食べる!」
 我慢できずにミートパイに手を伸ばした露の背中にシビラの冷静な声がかけられる。
「……いや、君も食べるのか。露」
 かけられた声に振り返って、露は頬を膨らませて不満の意を表明する。
「えー! あたしも手料理食べたいわ! もしダメならレーちゃんの家で手料理振舞ってほしいわ!」
「あら、パーティーだもの。みんなで食べていいのよ?」
「……だそうだ」
 家で料理を振舞うことは回避され、シビラは内心安堵する。味の方もそんなに自信があったわけではないが、オウガは気に入ってくれたようだ。
「妹の手料理美味しいわ~。幸せだわ~」
 最後に南瓜プリンを露の入れた紅茶と一緒に楽しむと、赤ずきんはますます眠そうに目を瞬かせる。
「なんだか眠くて……でもわたしは無敵で、何かあればいつでも倒せるんだから……」
 猟兵たちの料理は確実に赤ずきんを眠りへと誘っていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
可愛らしい方ですが、持っているものがなかなか物騒ですね…

悪戯をされる前にお菓子を食べて頂きましょう
まずは南瓜を蒸して柔らかくしたらた三等分に
1つ目は南瓜餡にして作るのはどら焼き
生地に焼きごてで顔を描いてハロウィン仕様に
2つ目は裏ごしして寒天混ぜ合わせて作った南瓜羊羹
小倉羊羹との二層仕立てです
3つ目は裏ごしした南瓜で白餡を包んで茶巾絞りに
残しておいた小倉羊羹を目と口の形にくり抜いてつければジャック・オー・ランタン風茶巾絞りの完成です

お待たせしました!
和菓子で精一杯おもてなしさせて下さい
和風ハロウィンも楽しいと思うんです!

オウガが満腹になって眠り始めたら、ウケ、ウカ、お願いしますね?


彩瑠・翼
料理はいいんだけど、この格好のまま?
でもハロウィンだし…仕方ないのか…
(遠い目)

でも何作ろ
今までにオレが先生(父親の幼馴染)に
教えてもらったのって
珈琲淹れることだけなんだけど…
(悩んでいたがぽむりと手をうち)

そうだ、コーヒーゼリーにしよう!
ちゃんと淹れたヤツでと思ったけど、
ここは先生から教えてもらった時短にしちゃおう

グラスに
インスタントコーヒーと
砂糖と粉のゼラチンを
熱湯で溶かしてー
そこに氷を入れて混ぜながら一気に冷やす!

すごい、ホントにさっくりできちゃった

えーっと、そこにホイップしたクリームを載せて
スプレーチョコとかチョコソースでトッピングして
できあがり!
ね、いいでしょ?
デザートにどうぞだよ!



●最後は眠りへ誘うデザートを
「可愛らしい方ですが、持っているものがなかなか物騒ですね……」
 森の木の陰から辺りの様子を窺い、赤ずきんの姿を見つけると、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)はそう言葉を漏らす。
 迷わせの森を抜けると、そこには屋外にセッティングされたテーブルと席について猟兵たちが作る料理を美味しそうに食べている童話から抜け出したような赤い頭巾を被った少女姿のオウガ。そのそばには彼女の身長よりも巨大な大鎌が置かれている。今のところ猟兵に危害を加える気はなさそうだが、そうはいってもオウガなのだ。油断はできない。
「でもかなり眠そうだよね。あと一息ってところかな」
 同じく狐珀の近くで木の陰から様子を窺う彩瑠・翼(希望の翼・f22017)は、赤ずきんがしきりに目をこすっていることに気づく。
 幼い子供のように、食事をしながらもうとうととしていて、それでもこの国のルールのせいか、食事をやめる気配はない。あともう一押しで完全に眠らせることができそうだ。
「では、悪戯をされる前にお菓子を食べて頂きましょう」
「うん、そうだね。……でもこの格好のまま?」
 隣の狐珀はかっこいい女海賊姿だから様になっているけど、翼はひらひらのエプロンドレスのアリス姿なのだ。……なんだかキマらない。
「仮装のままの方がオウガも油断するかもしれませんし」
「まあハロウィンだし……仕方ないのか……」
 翼は遠い目をして諦めると、気を取り直して調理場があると思われるログハウス風の建物に向かった。

「狐珀さんは何を作るの?」
 早速材料を集めては南瓜を蒸している狐珀に、特に何を作るか考えてこなかった翼は訊ねる。
「私は南瓜を使った和菓子ですね。せっかくのハロウィンですから」
「わあ、和菓子! すごくいいと思う!」
 目を輝かせる翼に、狐珀も微笑み返すと、蒸しあがった南瓜をまずは三等分にする。
「この南瓜から三つの和菓子を作ります」
 柔らかくなった南瓜を鍋に入れ、砂糖と少しの水を加え、火にかけながら混ぜていけば黄金色が美しい南瓜餡の出来上がり。これを使って南瓜のどら焼きを作るのだ。餡を挟んだ生地に焼きごてで顔を描けば、ハロウィン仕様に。
 蒸した南瓜の残りを今度は裏ごしして使用する。寒天と砂糖と水を鍋にかけ、そこへ裏ごしした南瓜を混ぜ合わせて少し加熱する。ある程度固まったところで型に流しいれるが、半分だけ。
「小倉羊羹との二層仕立てです」
 同じ要領でもう一つ、彩りも味も違う羊羹を作って、美しい二層の羊羹を作る。
「うーん、オレは何作ろう……」
 手早く次々と和風スイーツを完成させていく狐珀を横目に、翼はまだ何を作るか決めかねていた。十一歳の少年なのだ。お菓子作りが趣味というわけではない。けれどカフェ巡りも甘いものだって好きなのだ。おそらくきっかけは父の幼馴染――翼は先生と呼んでいる――が素敵な喫茶店を経営していて、とてもおいしい珈琲や紅茶を淹れてくれるからだ。
「今までにオレが先生に教えてもらったのって、珈琲淹れることだけなんだけど……」
 何かヒントはないかと考えていたが、ぱっといいアイデアが閃いた。ぽむ、と手を打ち思わず叫ぶ。
「そうだ、コーヒーゼリーにしよう!」
「とてもいいと思いますよ」
 隣で作業を進める狐珀にもそう微笑まれ、翼は嬉しそうに頬を掻きながら材料を取りに向かう。
「ちゃんと淹れたヤツでと思ったけど……ここは先生から教えてもらった時短にしちゃおう」
 先生から教えを受けた手順でしっかりした珈琲を淹れて、それで作るのもいいと思ったが、それだと少し時間がかかりすぎるかもしれないし、先生から教えてもらった時短のレシピがあったのを思い出したのだ。
「えっと、まずはグラスにインスタントコーヒーと砂糖と粉のゼラチンを熱湯で溶かしてー」
 沸かしたお湯を注いではぐるぐるとスプーンでかき混ぜる。
「そこに氷を入れて混ぜながら一気に冷やす!」
 今度は氷をいくつか入れてからすぐにぐるぐるとかき混ぜる。熱を持っていた液体が氷により急速に冷やされ、やがてゼリー状に固まっていく。
「すごい、ホントにさっくりできちゃった」
 ここまでは、カップ麺にお湯を入れて待つぐらいの時間もかかっていない。でもこれだけだと寂しいので、トッピングにホイップしたクリームやスプレーチョコやチョコソースで飾り付ける。
「できあがり!」
「短い時間でとても素敵な一品ができましたね。私ももう少しで完成します」
 狐珀の三つ目の和菓子は、裏ごしした南瓜で白餡を包んで茶巾絞りにしたもの。先ほど作って少し残しておいた小倉羊羹を目と口の形にくりぬくと、それを茶巾絞りにつけていく。
「ジャック・オー・ランタン風茶巾絞りの完成です」
「わあ、これはオウガじゃなくても食べたくなるね!」
「和風ハロウィンも楽しいと思うんです!」
 せっかくなので和の趣を大切に漆塗りのお盆に盛り付けて。二人はそれぞれ自分が作ったデザートを、屋外のテーブルでうとうとしながら待っている赤ずきんの元へと運んでいく。
「お待たせしました! 和菓子で精一杯おもてなしさせて下さい」
「たくさん料理を食べたんだよね? デザートにどうぞだよ!」
 赤ずきんは出されたデザートを見ると、眠そうにしながらも顔を輝かせる。
「まあ、まだお客さんが来てくれていたのね。とっても素敵なデザートね」
 まずは見た目を楽しんでから、そうして赤ずきんはいただきますと手を合わせてからデザートに手を伸ばす。
「見た目もとってもかわいいわね。これは初めて食べるわ」
 南瓜餡のどら焼きを頬張ると、優しい甘さが口一杯に広がって赤ずきんの目はますますとろとろと眠気で瞼が落ちそうになる。
 翼の作った時短コーヒーゼリーは、ほろ苦さと甘さのバランスがほどよく、口の中をすっきりとさせてくれる。そうして、ハロウィンカラーの羊羹も美味しそうに口に運び、ジャック・オー・ランタン風茶巾絞りを可愛いと言いながら食べ終える頃にはもう瞼が閉じ切っていた。
「……眠っちゃったのかな?」
 翼がそっと覗きこんで見るも、反応はない。
「ウケ、ウカ、お願いしますね?」
 ユーベルコードで狐珀を守る黒狐と白狐に眠る近衛兵の霊を呼び出すと、無敵状態を解除されたオウガへと四神の力を宿した宝玉が埋め込まれた神剣の斬撃と破魔の力を宿し全てを浄化する弓矢が赤ずきんへと迫る。
 愛らしい姿をしていてもオウガ・オリジンから直接力を与えられたオウガなのだ。オブリビオンは骸の海へと還ってもらわなければならない。
「これでちゃんとハロウィンを迎えられるかな?」
「ええ、きっと……」
 仕事を果たしたウケとウカを労いながら、狐珀は主なき食卓に目をやる。猟兵たちが作った料理は全て綺麗に平らげられていた。
 猟兵たちのもてなしの心は料理へと伝わり、無事ハロウィンの国の一つを獲得したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日


挿絵イラスト