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【Q】ハロウィンの国の戦い~その未練の味は~

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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「あぁ我らが主、はじまりのアリスにしてはじまりのオウガ、偉大なるオウガ・オリジンよ」
 その人物は黒い執事服の袖に通した腕を、真っ白の手袋に包まれた手を、大きく天へと掲げる。
「猟書家なる不埒者共、そして猟兵がいなければ、貴方は今も我らの上に傲慢に君臨しておられたのでしょう」
 その人物の声色は、いかにも悲し気だった、けれど。それはわざとらしすぎた、まるでそう演じているかのように。
「オウガ・オリジンよ、貴方は今年のハロウィンを待ち望んでおられた、故にこのように、その力を以てハロウィンの国を強欲にいくつも用意された」
 両手を前に突き出す人物。その先に広がるのは、本来ならばキャンディの花が所狭しと咲き誇る丘だったはずの場所。けれど今はいくつもの異物が闊歩している。
 一つ、ケタケタと笑いながら「Trick and Treat♪」と歌う顔のついた南瓜達。
 一つ、先の見えない深い森とそこから飛び出す様々な衣装。
 一つ、この国本来の住民、愉快な仲間達を追いかけ回す人間サイズの藁人形達。何故かみな飛び出して来た衣装を纏っている。
 一つ、食材が完備された清潔そうなキッチンが鎮座している。
「我らが主の暴食により体を食われたアリス達、けれどその怠惰故に食べ残しは棄てられ放置され……えぇえぇ、大変美味しい未練ばかりでございました。そして怨念はあのように再利用させていただいております」
 人物の頭部、可愛らしいひつじの被り物の内側で、舌なめずりの音がする。人物、ひつじの被り物をしたしつじは、衣装を纏いコスプレをした藁人形に襲われ逃げ惑う住民達をみて、愉快そうに宣言する。
「我らが主、オウガ・オリジン! 貴方の残したこのハロウィンの国で! 貴方から与えられたこの『無敵』の力で! 貴方の代わりに悲劇を作りましょう! そうして私は、もういない貴方の未練を頂きます!」


「アリスラビリンスで事件が起きました。住民達を苦しめるオウガ達を排除してきてくださいませんか? コスプレして」
 グリモアベースで真月・真白(真っ白な頁・f10636)はそのように呼びかける。興味を抱き集まった猟兵達に、真白は感謝を述べると本を開いた。
「倒されたアリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラーだったオウガ・オリジン。彼女はその強力な現実改変ユーベルコードを用いて、既存の国を幾つもハロウィンの国に改変していたようなのです」
 そして特別に直接力を与えたオウガを潜伏させていたのだ。その目的は悲劇を作る事。恐らくは存命であれば今年のハロウィンの日に合わせて多くの悲劇を作ろうとしたのだろう。
「オウガ・オリジンは倒されましたが、派遣されたオウガ達は与えられた命令通しに動き始めました。
 今回向かってほしいのはそのうちの一つだという。待ち受けるのは人間サイズの藁人形、食べられたアリス達の怨念で動いているという集団。そしてひつじの被り物をした執事だ。
「藁人形の方は森から出現するコスプレ衣装を纏いパワーアップしています。このパワーアップ効果は猟兵のみなさんが纏っても発揮されますので是非コスプレ衣装を纏って対処してください。そしてもう一段階パワーアップを果たす方法もありのですが……」
 そこで真白は一度言いよどむが直ぐに続ける。
「飛んできたコスプレ衣装が、本人の全く望まない衣装だった場合、それを嫌がりながら纏う事がその条件となります」
 さすがは悲劇を作るために用意された国である。真白は気を取り直して執事の方を語る。
「ボスとなるこちらは一体のみですが、ハロウィンの国の法則によってほぼ無敵となっています。倒す方法はただ一つ、美味しい料理を食べさせる事、です」
 実際は気持ちがこもった料理であればよいらしい。作られた料理を執事は拒絶出来ない、それもまたハロウィンの国の法則なのだ。
 食べた料理が美味しかったり気持ちが籠っていれば、執事はそれを批評、賞賛しながら眠気を覚え始める。食べさせ続ける事で完全に眠りに落ち、その状態でなら無敵は解除されて攻撃が通じるだろう。
「つまり、猟兵の皆さんは執事が完全に眠るまで、攻撃に耐え忍びつつ料理を作って食べさせ続けてください。眠ってさえいれば一撃程度でこの執事は倒せますから」
 説明を終えると真白は本を閉じる。
「オウガ・オリジンの残した『過去(未練)』を断ち切り、悲劇を回避してください。それはきっと『未来(このさき)』に待ち受けるアリスラビリンスの猟書家戦にも影響を与えるでしょう。どうかよろしくお願いします」
 深々と頭を下げると、真白は猟兵達の転送準備にはいるのだった。


えむむーん
 閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。

●シナリオの概要
 集団戦、ボス戦の、本邦初公開の「2章構成のシナリオフレーム」です。

 オウガ・オリジンが遺した改変によってハロウィンの国に作り変えられた国で、力を与えられたオウガを倒し、悲劇が作られるのを回避してください。

●ギミック
 集団戦では森から現れたコスプレ衣装を敵が身にまといパワーアップしています。猟兵達も森から出てきたコスプレ衣装を身にまとうことでパワーアップしプレイングボーナスを得られるでしょう。
 さらに飛んできたコスプレ衣装が望まないもので、いやいや着た場合は更に沢山のプレイングボーナスが付きます。
 もしよかったらプレイングに自分のキャラに着せたいコスプレ衣装とその反応を書いて頂けると嬉しいです。(リプレイ上ではランダムに手にした衣装ということになります)
 特に指定が無い場合は、変な着ぐるみだったりヒゲ眼鏡だったり禿カツラだったりという、カッコ悪い感じの衣装に成ると思います。

 ボス戦では敵は無敵になっています。この無敵を解除する為にはボスに美味しい料理、あるいは思いの籠った料理、を食べさせ続け眠らせる必要があります。
 現地には食材とキッチンが完備されていて、作られた料理をボスは絶対に口にしなければいけないため、料理を作る事と、眠ってしまうまで攻撃を耐え続ける手段があれば十分です。

 ※10/31までに成功したシナリオ本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、そしてやがて始まるだろう「アリスラビリンスでの猟書家戦」に何らかの影響があるかもしれません。
 間に合うように執筆頑張りたいと思います。

●合わせ描写に関して
 示し合わせてプレイングを書かれる場合は、それぞれ【お相手のお名前とID】か【同じチーム名】を明記し、なるべく近いタイミングで送って頂けると助かります。文字数に余裕があったら合わせられる方々の関係性などもあると嬉しいです。
 それ以外の場合でも私の独断でシーン内で絡ませるかもしれません。お嫌な方はお手数ですがプレイングの中に【絡みNG】と明記していただけるとありがたいです。

 それでは皆さまのプレイングをおまちしております、よろしくお願いします!
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第1章 集団戦 『ストローマン』

POW   :    カースバースト
自身の【身体と込められた全ての怨念】を代償に、【恐るべき呪い】を籠めた一撃を放つ。自分にとって身体と込められた全ての怨念を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    リスポーン
自身が戦闘で瀕死になると【新しいストローマン】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    ネイルガン
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【五寸釘】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「きゃあああ!」
「うわー! こわいよー!」
 怯え逃げ惑う愉快な仲間達。彼らを追いかけるのは人間大の大きさの藁人形の群れ。
 学校の制服の様な物からハロウィン定番の魔女を思わせる衣装まで、多種多様なコスプレ姿で暴れ回る藁人形達は、その珍妙な姿が故に逆に不気味さを増していた。
「……!!」
 声なき声で上げるは怨嗟。一人二人ではない膨大な犠牲者(アリス)達の怨念が藁の中にには詰め込まれている。
 肉を失い、心を失い、記憶も未練も全て失って怨念のみとなったそれは、最早誰を何を恨んでいたかなど判断がつかない。目の前を逃げ回る存在へ怨嗟を叩きつけるだけなのだ。
暁・アカネ
【雑居】

こすぷれってアレね!普段と違う服を着るお祭りよね!
他の皆も一味違う感じになるのよね、楽しみ!さーて私のは何かしら?
(お出しされる編み笠を被った丸っこい三角耳の被り物、黒っぽい毛並みに真っ白いお腹のキグルミ、信楽焼の狸である)

こ、これは…狸じゃないの!狐なのに狸だと思われちゃう…
これを着なきゃなの…?むぅ…
他の人のこすぷれならまだ…交換しちゃダメかしら?ダメ?ダメかー…

着たのは良いけどこのままじゃ愉快な仲間達から狸扱いされちゃう!よし決めた!狐らしい攻撃でアピールよ!
周りに【狐火】をフヨフヨ漂わせて狐っぽさを主張!それから藁人形を狐火で燃やして攻撃!
どうよ!狐っぽいでしょ!?


ルエリラ・ルエラ
【雑居】
じゃーん。私だよ。今年もきたねハロウィン
相変わらず変な事になってるけど細かい事は気にしたら負け負け
コスプレどんとこーい

………うん、包帯グルグル。これはあれだね。ミイラ
美少女なのに顔が隠れちゃう衣装?というのはすっごくよろしくない
はぁ、テンション下がったよ。アカネかバルドヴィーノみたいなのでよかったのに。あやのは…ちょっときついかな。というかバルドヴィーノいいね。写真撮っとこ
とりあえず、手から伸びた包帯で鞭みたいにベシッ。敵に巻き付けてぐるぐるー。そのまま『メカ・シャーク号』にのって【リミッター解除】!アリラビ引きずりまわしの刑だー!
私のガッカリパワーで八つ当たりだー!


天道・あや
【雑居】

せっかく平和になったばかりのアリスラビリンスで行われるハロウィンの邪魔をしようなんて、そんなの勿論阻止お菓子よし!仮装はまだ!でも準備ok!!というわけで、行きまショータイム!皆さん!

確か仮装しないといけないんだよね。えーと、衣装は…おっ、あった!


て、これちょんまげかつらに派手な着物。そして白塗り用の化粧道具。…こ、これってもしかして、もしかしなくても…!?い、いやー、流石ににこれは……いや、でも他にないし。…ええい!ままよ!!平和の為に着まショータイム!

というわけで、着たら敵へとやけくそテンションでUC発動!

…あ、そう言えば皆の仮装はどんなの…!?…ウン、ミンナメッチャCOOLダネ!


バルドヴィーノ・バティスタ
【雑居】
ハロウィンの国だァ?また迷惑な置き土産遺してくれたもんだな?
ま、避けさせる気のねェ攻撃を掻い潜れだのに比べりゃ飛んでくる衣装着ろなんて楽な、
ゲェーッ!!メイド服(クラシカル)!!!
男!!オレ26の男!!合ってねェだろが服の性別が!?
…ご丁寧にサイズピッタリだし!ウィッグだの小物類無駄に充実してやがるし!!
…何見てんだ藁人形テメェ。人形はいいよなァどんな服でもよくて。

おーし把握した。残さず潰す。湧いた側から潰す。オレん姿見に近づく奴ァ全力で潰してや…足下スースーするな…
…死ねェェーーッッ!!
見てない?誰彼なしに怨み叩きつけといてんな言い訳通るか!そういう目をした!!
死ねェェーーッッ!!!




「じゃーん。私だよ。今年もきたねハロウィン」
 ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)はカメラ目線で手を振る。
「相変わらず変な事になってるけど細かい事は気にしたら負け負け。コスプレどんとこーい」
 まとめられた青い髪が肩にかかっていたのを直しながらそう言い放つルエリラに、暁・アカネ(アホの狐・f06756)は漆黒に艶めく狐尾をピンと立てながら早口で話しかける。
「こすぷれってアレね! 普段と違う服を着るお祭りよね! 他の皆も一味違う感じになるのよね、楽しみ!」
 その名が示すほの暗い赤を宿す瞳はくりくりと周囲を見回し、好奇心を抑えられぬ胸の内を表している。
「ハロウィンの国だァ? また迷惑な置き土産遺してくれたもんだな?」
 一方、不快感を示していたのはバルドヴィーノ・バティスタ(脱獄狼・f05898)だ。鋭さのある灰色の瞳で改変されたこの国の惨状を見ながら彼は、オウガ・オリジンへの文句を吐いた。彼のオブリビオン・フォーミュラーとバルドヴィーノが相対したことは無かったが、その能力故の厄介さは他の猟兵から聞き及んでいたのだろう。
 三者三様の反応を見せる仲間達に向かって、天道・あや(目指すぜ!皆の夢未来への道照らす一番星!・f12190)は手を叩いて意識を向けさせる。
「せっかく平和になったばかりのアリスラビリンスで行われるハロウィンの邪魔をしようなんて、そんなの勿論阻止お菓子よし! 仮装はまだ!でも準備ok!! というわけで、行きまショータイム! 皆さん!」
「「「おおー!」」」
 アメジストの瞳をぱちりとウィンク。拳を振り上げポーズを取って宣言したあやに応える三名。かくして彼らはこの国を救うために駆け出した。

●雷狼
「ま、避けさせる気のねェ攻撃を掻い潜れだのに比べりゃ飛んでくる衣装着ろなんて楽な、ゲェーッ!!メイド服(クラシカル)!!!」
 縛られざる者として名を知られるようになるまでに経たいくつもの修羅場を思い出せば、と気楽に飛び出した布を掴んだバルドヴィーノは、それを開いて確認し、絶望した。
 メイド服(クラシカル)。昨今一部世界ではすっかりサブカルチャーの一つとして定着し、所謂萌えのカテゴリとして認知された服。元々は貴族などに仕える家事使用人やハウスキーパーの仕事着として作られたエプロンドレスの一部である。
 サブカルチャーにおいては様々なデザインや改造の変遷があるが、今バルドヴィーノの手の中にあるのは、前述した元々の役割を果たすために用立てられた制服である。
「男!! オレ26の男!! 合ってねェだろが服の性別が!?」
 もっとも、当の本人にとってはそのメイド服がクラシカルなものか改造されたものか等は関係な……いや、ミニスカメイド服だった場合のダメージは今より大きかったかもしれないが……とにかく女物というだけでアウトだった。

「さーて私のは何かしら?」
 心ここにあらずだったアカネにはバルドヴィーノの悲鳴は聞こえなかった。そんな彼女が手に取ったのは。編み笠を被った丸っこい三角耳の被り物。黒っぽい毛並みに真っ白いお腹のキグルミ。
「こ、これは…狸じゃないの!」
 まごうこと無き信楽焼の狸である。
「狐なのに狸だと思われちゃう……これを着なきゃなの……? むぅ……」
 アカネの白磁がごとき頬がみるみる膨らむ。それに反して先ほどまで膨れ上がっていたワクワクとした気持ちが萎え萎んでしまった。
「他の人のこすぷれならまだ……」
 未練と共に横を向いたアカネの視界に入ったのは。
「………うん、包帯グルグル。これはあれだね。ミイラ」
 大量の包帯を手にしたルエリラだった。
「美少女なのに顔が隠れちゃう衣装?というのはすっごくよろしくない」
 テンション下がったよとため息をつくルエリラ。心なしかそのエルフ特有の尖った耳も垂れているように見える。
「アカネかバルドヴィーノみたいなのでよかったのに。あやのは…ちょっときついかな」
 ルエリラの言葉にアカネはあやを見る。
「……こ、これってもしかして、もしかしなくても……!? い、いやー、流石ににこれは……」
 動揺するあやの手元にあるものは、ちょんまげかつらに派手な着物。そして白塗りの化粧道具。UDCアースの日本出身である彼女にはこれが何のコスプレかピンときた、気づいたのだ。もしかしたら気づきたくなかったかもしれないが。
「交換しちゃダメかしら? ダメ?」
 四社四様に固まる面々の中でアカネが懇願する。が。
「ダメかー……」
 ダメです。
 まるで誰かがそう言っているかのように、オウガが今まさに愉快な仲間達に襲い掛かろうとしているのだ。お互いに相談し、納得のいくコスプレを交換している余裕はないだろう。今手に持っているものを身に着けるだけの時間しか、丁度ぴったり偶然にもないだろう。ないったらないのだ。
「ええい! ままよ!! 平和の為に着まショータイム!」
 やけくその様なあやの叫び声で御着替えタイムは始まった。

「はぁはぁ……きゃあ!」
 小さな足で必死に逃げ回っていたぬいぐるみの住人が、ついに足をもつれさせ転んでしまう。そこに迫る藁人形(セーラー服)。
「た、たすけてー!」
 藁人形の内からあふれ出した怨念が、眼前の住民い叩きつけられようとしたその時風が吹いた。
「危ねえ危ねえ。怪我はねぇか?」
 風、バルドヴィーノは助けて抱きかかえていた住民を降ろしてやる。住民はキラキラと目を輝かせて彼を見上げていた。
「メイドさんだー!」
「ちっげー!」
 がっくりとうなだれるバルドヴィーノの頭には長い髪のウィッグがつけられ白いフリルのついたカチューシャが乗っている。身に着けているのは勿論メイド服(クラシカル)だ。
「……ご丁寧にサイズピッタリだし! ウィッグだの小物類無駄に充実してやがるし!!」
 どこからどこまでがコスプレ服として定義され得るのか。ハロウィンの国の法則を利用するなら、とんできた一式を身にまとわねばならないのだろうとバルドヴィーノは渋々きっちり身に着けていたのだが。尤も不気味なのはメイド服(クラシカル)本体が自身の体にぴったりフィットした事だろう。
「……何見てんだ藁人形テメェ。人形はいいよなァどんな服でもよくて」
 獲物を横取りされ近づいて来る藁人形(セーラー服)へガンを飛ばすバルドヴィーノ。完全に八つ当たりである。
「おーし把握した。残さず潰す。湧いた側から潰す。オレん姿見に近づく奴ァ全力で潰してや…足下スースーするな……死ねェェーーッッ!!」
 咆哮は力となり藁人形達をまとめて引き裂く。それに合わせてビリビリッとしたエフェクトを纏った『♪』が追撃する。あやだ。
「よーし! テンションフルMAX!! 雷鳴のように世界へ掻き鳴らすぜ! あたしの思い! あたしの気持ち!」
 そう叫びながらギターをかき鳴らすあや。彼女はおそらく人生で初めてしたであろう白塗りで顔を真っ白にし、これまら恐らく初めての経験であろうちょんまげカツラを被って、橙色をベースにしたど派手な着物を身に纏っていた。完璧だった。何がかはわからないが。
 その様子はどこかやけくそに見えたが、奏でられる音楽に妥協の色はない。何故なら彼女はスタァだからだ。
「見てない? 誰彼なしに怨み叩きつけといてんな言い訳通るか! そういう目をした!! 死ねェェーーッッ!!!」
 寧ろその激しいビートは、同じく激しい思いの籠ったバルドヴィーノの咆哮と完全に調和し、絡み合い高め合い、ある種の音楽芸術へと昇華され、雷撃の咆哮(うた)は周囲の藁人形達を尽く痺れされはじけ飛ばせたのだった。

●鮫狐
「アカネかバルドヴィーノみたいなのでよかったのに。あやのは……ちょっときついかな」
 魂の叫び(うた)で暴れる二名を見ながらルエリラは独り言つ。「というかバルドヴィーノいいね。写真撮っとこ」としっかりカメラに二人の勇士を収めるのも忘れない。
 そんな彼女は今船上の人だった、否、鮫上のミイラだった。白い肌も青い髪も、今は包帯にぐるぐる巻きにされ隠され、覗くのは瞳と、息ができるようにあけられた口元だけだった。
 そんなルエリラを乗せて1m程度浮遊しているのは、彼女の愛機『メカ・シャーク号』だ。
「着たのは良いけどこのままじゃ愉快な仲間達から狸扱いされちゃう!」
 ルエリラの背後で嘆くのはアカネだ。丸みのあるふかふかの狸の着ぐるみに包まれ、編み笠さ付の耳がある被り物をした彼女は、恐らく第三者の評価で見ればとても可愛らしいものだ。けれど妖狐としては狸はどれだけ可愛くてもNGなのだ。
 とにもかくにも気を取り直してルエリラはメカ・シャーク号を発進させる。
「そりゃ!」
 藁人形(ナース服)の間をすり抜けながらルエリラは手から伸びた包帯を振るう。鞭の様に器用に藁人形(ナース服)に叩きつけられたそれは巻き付き動きを捕える
「サメが出たぞー!」
 そしてメカ・シャーク号のリミッターを解除。動力炉は唸りを上げ、眼前のモニターには出力が跳ね上がっているデータが映し出される。
「私のガッカリパワーで八つ当たりだー!」
 メカ・シャーク号は藁人形(ナース服)達を引きずったまま空中を泳ぎ出す。その様はリアルな鮫と遜色無く、そして非常に速くパワフルだった。
 憐れ引きずりまわしの刑となった藁人形(ナース服)達を、後ろに相乗りするアカネは見ていた。彼女の頭を占めるのはたった一つ。
「着たのは良いけどこのままじゃ愉快な仲間達から狸扱いされちゃう!」
 如何に狐らしさをアピールして戦うかだった。
 アカネは着ぐるみ越しに器用に指先で印を結ぶと、引きずられる藁人形へ向けて突き出す。
「"暁を我が狐火にて染め上げん!"焼き尽くせ!燎原火が如く!!」
 力ある言葉に導かれ無数の狐火が舞い踊る。その全てをアカネは意のままに操る事が出来る。
「行けっ!」
 掛け声とともに狐火達は藁人形(ナース服)へと襲い掛かる。燎原の火が如く在れと定義されたが故か、火は瞬く間も与えずに藁の塊を燃やし尽くしていく。
「どうよ! 狐っぽいでしょ!?」
「いいねいいね。じゃあもういっちょいこうかー」
 ガッツポーズを掲げる狸(狐)。ルエリラは彼女に応えると、次なる八つ当たり対象へ向けて愛機のアクセルを踏み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。

ハロウィンの国、大にぎわいだね。

稲刈りも終わったトコだし。(サムエンにて)
案山子さんが暴れても、しかたないのかなあ?

アンちゃん変身……お姫さまだ!
でも、うさ耳は禁止だから……あれ、取れない?(しっかり)
しかたないね、母ちゃんにはナイショにしとこー?

仮装は楽しいよねー♪
おいらは何になるかなあー?
(ワクワク)

じゃじゃーん、狼王子ー♪
カボチャパンツに白タイツ、マントに長靴の王子様服。
レイピアぽい小剣を携えて。

え、いつもと変わんないって?(がぁーん)
もう、たまこが勝手に暴れればいいと思う!(拗ねた)

(最後にスマホでかしゃり)
うさ耳姿、父ちゃんには送っておかなきゃーだ♪


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

大食らいで、独りぼっちだったオリジンが楽しみにしてたハロウィン
…ん、一緒に遊んであげる

追いかけられてる住人達にオーラを飛ばしてオーラ防御
安心して、わたし達が守る

きっと睨んだ藁人形は……メイド服?
わたし達に飛んでくる衣装は

(ぽん)

はっ!こ、これは…お姫様風
だけど、頭をそっと触ると触れるウサミミ
!ウサミミつけちゃダメっておかあさんに言われてるのに!(ふるふる)

…約束破るのは嫌だけど仕方ない
このまま戦う
………まつりんは、あんまり変わり映えないね(ぽそっと

【花魂鎮め】発動
瀕死になると新たに個体が増える
なら、高速で近接し衝撃波で一気にその魂、骸の海に還してあげる



●鶏兎
 四人の猟兵達が快進撃を続けている地域から少し離れた場所で、こちらでも二人の猟兵達が駆けていた。
「安心して、わたし達が守る」
 ヒラヒラのクラシカルなメイド服を纏った藁人形達に追いかけられ、逃げ惑う住人達にオーラ防御をかけていくのは木元・杏(マスター縁日・f16565)。
「ハロウィンの国、大にぎわいだね」
 住人たちが逃げられるように藁人形(メイド服)の気を引いているのは木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)。双子の猟兵達だった。
「稲刈りも終わったトコだし。案山子さんが暴れても、しかたないのかなあ?」
 暮らしているサムライエンパイアの村でつい先日終わった収穫を思い返す祭莉。
「ん、大にぎわい」
 双子の兄の言葉に首肯しながら杏が思い返すのは、かつて料理を振る舞ったオウガ・オリジンの事だ。
「大食らいで、独りぼっちだったオリジンが楽しみにしてたハロウィン……ん、一緒に遊んであげる」
 杏はきっと藁人形(メイド服)を睨みながら飛んできた衣装に手を伸ばす。ぽん。と小気味よい音と白い煙が当りに広がると、彼女の装いは大きく様変わりしていた。
 上半身をぴったりフィットさせ、切り返しのあるウェスト部分からボリュームのあるスカートがふんわりと広がる。胸元には首飾りが光り、細い腕はロンググローブに包まれている。 
「はっ! こ、これは…お姫様風」
「アンちゃん変身……お姫さまだ!」
 ほう、と息を吐いてくるりとその場で一回転。ふわりとスカートが膨らみ回る。地面の影も同じ動きを追従し、頭の耳も揺れた。
「……耳?」
 硬直し恐る恐る頭にそっと触れる杏。ドレスと共に出現したティアラの硬質な感触が指に伝わり、そこから伸びるモフモフとした肌触り。
「! ウサミミつけちゃダメっておかあさんに言われてるのに!」
 その正体を理解した杏はふるふると頭を振るう。それにつられて揺れるウサミミ。二人を親元から旅立たせて暮らさせている母親だが、何故かウサミミだけはつけちゃダメと言われているらしい。理由は筆者にもわからない。いずれ語られる時もあるかもしれない。割と知りたいマジで。
「でも、うさ耳は禁止だから……あれ、取れない?」
 祭莉が取ってあげようとするのだが、ティアラごとしっかり頭について離れようとしない。どうやらコスプレ衣装の一部だけを外すということは許されないらしい。
「しかたないね、母ちゃんにはナイショにしとこー?」
「……約束破るのは嫌だけど仕方ない。このまま戦う」
 慰める祭莉の言葉に力なく首肯する杏。お姫様のドレス自体は嫌な衣装ではないのだろうが、ウサミミという一点で、母との約束を破るという事でテンションは下がったようだ。
「仮装は楽しいよねー♪ おいらは何になるかなあー?」
 妹の気持ちを和ませようとしたのか、祭莉はワクワクした声色で衣装に手を伸ばす。先ほどと同じ音と煙に包まれた祭莉の姿は。
「じゃじゃーん、狼王子ー♪」
 橙色のカボチャパンツから伸びる足は真っ白のタイツに覆われ、その先は金の縁取りがされた長靴。服もまた煌びやかな金刺繍が施された王子様然としたもので、腰に携えた鞘からレイピアのような小剣を引き抜いて天に掲げるのだった。
「………まつりんは、あんまり変わり映えないね」
「え、いつもと変わんないって?」
 杏の評価に、がぁーん。と口を大きくあけて固まりショックを受ける祭莉。
「もう、たまこが勝手に暴れればいいと思う!」
 頬を膨らませて拗ねた祭莉はメカたまこを繰り出す。
 メカたまことは、彼らの暮らす村で飼っているとても強いニワトリ、たまこをモデルにしたロボだ。そしてとても狂暴。
 解き放たれたメカたまこ達はメタルの翼を広げながら地面を駆け藁人形(メイド服)の群れへと突撃していく。メタルボディを使った激しい体当たり。跳躍からのメタル翼による切断。足元からメタル嘴で啄み藁を解体とやりたい放題に暴れ回る。ここに集った藁人形(メイド)の半数があっという間に倒されていく。
 しかし残り半数、悪運強く辛うじて瀕死の状態で踏みとどまった個体は、無事な仲間を召喚し体勢を立て直し始める。
「なら、高速で近接し衝撃波で一気にその魂、骸の海に還してあげる」
 ドレスに身を包んだ杏の周りに花弁が如き白銀のオーラが舞う。一歩踏み出した彼女は、白銀の残光だけを残し風となった。
 杏は高速で藁人形(メイド)の間を翔け抜ける。そして一度止まりあえて姿を見せて引き付けると、再び捉えられるほどの速さで距離を取った。藁人形(メイド服)の残党全てを間合いに収めたのだ。
「……霊導へ還れ」
 疾る一閃。振るわれた白銀の斬撃は、その軌跡に沿って衝撃波を生み出し一斉に断ち切った。
「うさ耳姿、父ちゃんには送っておかなきゃーだ♪」
 かしゃりと杏の背後でシャッター音が響くが、彼女の耳に届いていたかはわからない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

深護・刹那
ではでは、不肖、深護・刹那、参ります♪

うーんコスプレ
こう、あれですわ
胸のボリュームは足りませんが
バニーとかケモミミびーすととか!
可愛さで勝負!

って着ぐるみぃぃぃ!!(くま
しかもフルフェイス被り物ver!
これわたくしの意味無いのではありませんか!?

でもすぐそこまで敵が
くっ、仕方ありませんわ!
くまで戦います
ああもうポニテが入らないんですが!(それでも着込む

この世界に縛られた哀しい想い
わたくしの声と剣で解き放って差し上げますわ!
(カッコつけてるけどくま

【ブレード・ダンサー】で仕掛けますわよ!
心象は雨
それでも舞うように剣を手に取り
解き放たれよと想いを込めて投擲
何体いようと全てここで仕留めて差し上げます



●舞熊
「ではでは、不肖、深護・刹那、参ります♪」
 深護・刹那(花誘う蝶・f03199)もまたこの国に訪れていた。森へ向かって歩きながら想像を広げていく。その夏の空のような澄んだ青い瞳に浮かぶのはコスプレ姿への期待に満ちた光。足運びもどこか軽やかでリズムを取って、知らず知らず鼻歌が出てしまう。
「こう、あれですわ、胸のボリュームは足りませんが」
 バニーとか
 ぴょんぴょん、と付け耳のとなりで手を耳の様に動かしながら、体を傾けて見上げてくる真っ白バニーの刹那。
 ケモミミびーすととか!
 にゃーん、とネコ科の手袋で手招きをする猫耳尻尾をつけた刹那。
「可愛さで勝負!」
 ぐっと振り上げた拳に向かって、森から飛んできたコスプレ衣装が当たる。ワクワクしながらそれを広げた刹那は愕然とした。
「って着ぐるみぃぃぃ!! しかもフルフェイス被り物ver!」
 それはくまを模した着ぐるみだった。きっちり被り物もついている。つまり完全に顔も隠れてしまう。
「これわたくしの意味無いのではありませんか!?」
 大事なのは中身ですよ中身。
 そんな声が聞こえたわけではないが、気が付けば藁人形(シスター服)達がもうそこまで近づいてきていた。
「くっ、仕方ありませんわ! くまで戦います」
 もう時間は無い、観念した刹那は着ぐるみを着こみ始める。
「ああもうポニテが入らないんですが!」
 なんとか着こむのだが刹那の豊かな髪の一部が入りきらず、結果としてチャックに隙間を残し着ぐるみくまの後頭部からポニーテールの一部がちょこんと飛び出す結果になった。
 藁人形(シスター服)達が刹那(くま)を取り囲む。一触即発の空気の中、不意に藁の表面に水分が当たる。ぽつり。ぽつり。それは次第に頻度を増していく。雨だ。
 藁人形(シスター服)にはもはや怨念しか残っていない。故にこの雨への疑問は抱かない。けれどこれは確実に異常事態だった。今この国はオウガ・オリジンの強力な現実改変ユーベルコードにより、ハロウィンの国へと作り変えられている。ハロウィンの国の法則に支配されたここで雨など降りはしない。ならばこれは何か。
 歌が聞こえる。しなやかに、のびやかに。少しだけ寂しい、涙歌。
 歌っているのは刹那だ。緩やかに踊りながら歌っている。その刹那を中心に『雨』が広がっているのだ。雨は大地に降り注ぐ前に剣へと返事て大地に刺さり、塗り替える。
 本来この国にあった飴が咲く花も、ハロウィンの国に作り変えられて生まれた歌うかぼちゃも、コスプレを生み出す森も、何もかもが『雨』に飲まれ、塗り替えられ、消えていく。後に残るは『丘』と無数に突き立つムゲンの『雨(剣)』のみ。
「この世界に縛られた哀しい想い。わたくしの声と剣で解き放って差し上げますわ!」
 『丘』の中央に立つ刹那(くま)が高らかに宣言する。
「さぁ、覚悟の程は十分でして?」
 戦いの舞いが始まる。刹那は一番近くに突き立つ剣を抜いて、手近な藁人形(シスター服)を一薙ぎ。藁人形(シスター服)はコスプレ衣装ごと上下を切断される。そしてっ刹那の手の中にあった剣は、硝子のように砕け散る。
 他の藁人形(シスター服)が巨大な五寸釘を撃ち込むべく構えた瞬間には、もうそこに刹那(くま)はいなかった。既に背後を取られ新たな剣で背後から一突き。崩壊する藁人形(シスター服)と砕ける剣。
 さらに手近な剣を二本抜くと左右別々に投げつける。解き放たれよ願いを込めて放たれた剣は、それぞれ別の藁人形(シスター服)の顔面に突き刺さり、砕けながらその怨念を光へと導いていく。
「何体いようと全てここで仕留めて差し上げます」
 これなる『丘』に在るは『剣(ムゲン)』。故に幾千幾万集おうと敵う道理は無し。熊は剣舞を続け、怨念達を終わりへ導き続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『ひつじのしつじさん』

POW   :    食事の時間だね
【銀製フォーク】が命中した対象を切断する。
SPD   :    痛いのは好きじゃないんだ
全身を【もふもふの羊毛】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    願い事を叶えてあげよう
小さな【ティーポット】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【対象の理想が全て叶った世界】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エンティ・シェアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 貪られ啜られ、人としての形を命と尊厳を奪われたアリス達の残滓、ただただ食べ散らされた後の怨念は、猟兵達の活躍により散り、浄化された。依代となった藁人形は倒れ、その存在自体が夢であったかのように泡になって消えていく。
 一つ課題を終えた猟兵達へひつじ頭の執事は拍手をしながら近づいて来る。
「ゴミの処分をどうもありがとうございます、猟兵の皆さま。お礼に貴方方は私が処分してあげましょう。ご安心ください、すぐには殺したりしませんから。幾多の世界を救い、我らが主すら屠った貴方方が、ここで『無敵』である私に打つ手無く、じっくりゆっくりと嬲り殺されるという無念、未練……あぁ、もう既に涎がとまりません」
 可愛らしいひつじの被り物の奥から、じゅるりと汚らしい音が聞こえる。
 しつじの言う通り。彼はハロウィンの国の法則により『無敵』となっている。如何なる攻撃であってもこのままでは通用しない。だが、法則は必ずしもメリットだけをもたらさない。同じく法則による縛りにより、執事はこの場で作られた料理を食べずにはいられない。美味な、あるいは心のこもった料理を食べ続ければ、執事は眠りに落ち『無敵』は失われる。その時まで攻撃に耐え続け料理をしなければならない。
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

ひつじ、藁人形達をゴミって言った
仲間を大切にしない、許さない
それはわたしと一緒にご飯を食べたオリジンが求めた国には反する、きっと

うさみん☆、【Shall we Dance?】
音楽と共に踊り、ひつじの動きを鈍らせ、
皆を攻撃から庇い守ってね

わたしはその音楽に合わせ、お料理開始
くるくるとお米を研いで、炊飯器に火をかける
炊き上がったふわふわ白ご飯をお茶碗に盛り、たまこ(飼い鶏)の生たまご
そして、お醤油
そう、たまごかけごはん
まつりんと、そしてオリジンとも一緒に食べた
親愛なる一品

貴方も、食卓一緒に囲もう
それがオリジンの本当の気持ち、そう思う

寝る間に羊毛刈り取り
灯る陽光で攻撃


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とだよー。

わあ、ひつじさんだ。
こんにちは!(礼儀正しくぺこりする狼王子)

あれ。ウサ耳揺れてる。
アンちゃん、怒っちゃった?
あー、やる気まっくす。うわ、おいら知らないっと。

お料理はアンちゃん担当、おいらはひつじさんと遊ぶね♪
楽しく踊りながら、銀フォークを拳のナックルで受け止め、がきんと逸らす!

ごはんの炊けるいい匂いがしてきたー。
お茶碗準備、お箸並べて。
番茶入れよっか(とぽぽぽぽ)
あ、茶柱立ったよ、ラッキー♪

たまごコンコン。ぱか。
あ、殻が入っちゃった。
まいっか、三つ葉散らして誤魔化しちゃお♪

炊き立てご飯は幸せの味♪

ひつじさん、オリジンちゃんにヨロシクね!(ぱんち)


天道・あや
【雑居】

羊の…執事!…流石ラビリンス(?)そして、そんな執事さんの主はあのアリス・オリジンかー。…主さんを倒したのは悪く…いや、あんまり思ってないですけど。だって、皆に迷惑かけてたし?いや、この世界創ったみたいですけどね?

だからまー、あたしが言いたいのは…食材よし!料理人よし!あたしよし!あたし達の思いの籠った料理を堪能して、主の所へいってください!


あたしは皆が料理をしている間、羊さんの妨害を邪魔ブロッカー!【挑発、おびき寄せ】で羊さんの注意をこっちに向ける!

そして攻撃を【見切り、激痛耐性】防いだりしながら、時間を稼いで、料理…料理?が出来たらUC発動!あたしとこの国の皆の思いを料理に込める!


ルエリラ・ルエラ
【雑居】
羊で執事で羊だ!
有能そうな執事だけど羊だー!

よーし芋煮の調理は私に任せろー
・・・・・・・・・
んー、普通の美味しい芋煮だとなんかパンチ足りなくない?
気持ちを籠めるってぐらいだし、サプライズ感が足りなくない?ここは闇芋煮いってみるかー!
幸いバルドヴィーノが普通の食材の他にも変な食材いっぱいお出ししてくれてる、ここは目隠しで食材を選んでお鍋に投入していこう

なにこれぐにょぐにょしてる。採用!

こっちは・・・硬い?採用!

痛!噛んだ!?よし採用だー!

という訳で、目隠して調理した芋煮の完成だよ。美味しくなって!って必死な気持ちがいっぱい籠ってるから美味しいはず。味見はしてない
あ、私たちの芋煮は普通ので


暁・アカネ
【雑居】
ふぅ、狐らしさを出したらお腹空いてきたわね
あれは…しつじのこすぷれね!
んん…?ひつじのこすぷれ…?
んー…どっちかしら?

料理を作るとオウガが倒せる!更に美味しい芋煮を食べられる!
頑張ってねあやちゃん!良いのを作ってくるから大人しくさせててね!

お料理はやらないけど分担すれば大丈夫!
バルドヴィーノさんが凄い顔しながら食材を切ってる!これも切って!油揚げ!
私は火の番!【狐火】で強火も弱火もなんでもござれよ!
そして味付けのルエリラちゃんは凄いわよ?芋煮のプロよ
任せたら良い感じにしてくれるわ!面白そうなの一杯入れて…今日は闇鍋だったか!所で火加減はこんな感じでいいかしら?

闘いの後の芋煮は美味しい!


バルドヴィーノ・バティスタ
【雑居】
…。
…フ。そーかそーか。お前が元凶だな?元凶じゃなくとも関係者だな??
オレがあんな格好する羽目になったのもついでに写真撮られたのもテメェのせいだな???首と手ェ洗って待ってろよ…!

無敵なんてのに馬鹿正直に付き合うつもりはねェよ、あやに任せてる間にパパッと済ませちまおうぜ!
さーて用意した肉野菜芋その他何か色々。コイツを、
首。(刃を振り下ろして材料を切る)
皮。(里芋の皮を剥く)
動脈…!(蒟蒻を一口大に引きちぎりながら)
よく言うだろ?料理は相手のことを考えて作るものだって。刃物を握る手にも力が入るってもんだよなァ…!(殺気)
切った材料はルエリラとアカネにパスだ!本場の芋煮味を叩きつけてやれ!



●怒りの卵かけご飯
「わあ、ひつじさんだ。」
 こんにちは! と元気に礼儀正しく挨拶するのは狼王子姿の祭莉だ。しかし彼は頭を下げた視界の隅に捉えた、隣にいる杏の影に首を傾げる。
「あれ。ウサ耳揺れてる」
 ゆっくり頭を上げて隣をみる祭莉。笑顔を貼りつかせたまま汗が一筋。
「アンちゃん、怒っちゃった?」
 となりにいる双子の妹、杏。引き続きうさ耳お姫様スタイルの彼女の顔は、一切笑っていなかった。
「ひつじ、藁人形達をゴミって言った」
「おや? 何かお気に障りましたか?」
 杏の鋭い視線を全く意に介さず、執事は首を傾げる。
「仲間を大切にしない、許さない。それはわたしと一緒にご飯を食べたオリジンが求めた国には反する、きっと」
「……ぷ、ぷはははははははっ! 仲間? オリジンが求めたぁ!?」
 執事は杏の言葉に一瞬呆ける。しかしその言葉が耳から脳に辿り着いた時、彼はいつもの執事然とした仕草を忘れ、腹を抱えて笑い出した。
「仲間、仲間ぁ? くくくははははは! いやぁ、勘弁してください。えぇえぇ、そりゃあ確かにあのゴミも、分類としてはオウガでしょうがね? 所詮は食べ滓でしかありませんよ。それに? オリジンの求めたぁ? ぷはははは! あの唯我独尊傲岸不遜の塊みたいな糞主が、そんな仲良しこよしな関係なんて求めるわけないじゃないですかぁ」
「……」
「あー、やる気まっくす。うわ、おいら知らないっと」
 無言で怒りのプレッシャーを高める杏の横で、祭は彼女の怒りの深さを感じる。生まれる前から一緒にいた妹だ。怒った時の彼女の怖さは誰より良く知っている。
「まぁ貴方方がどんな見当違いをしていても、それは私には関係ありませんがね。『無敵』の私になす術無くいたぶられながら、後悔と未練に塗れて言って下されば、ねっ!」
 言葉を言い切る前に、その巨大で鋭い銀のフォークを突きだす。狙うは杏。
「よいしょっ!」
 鋭い突きに対応したのは祭莉。軽い掛け声とは裏腹の鋭い掌底打ちがフォークの側面に当たり大きく軌道を変える。
「お料理はアンちゃん担当、おいらはひつじさんと遊ぶね♪」
 ナイフを引き戻す執事へ祭莉は跳躍して飛びかかる。
「あんちゃん。ひつじさんはオリジンちゃんが何を食べたのか知らないから。教えてあげればいいよ」
 執事へ飛び膝蹴りを仕掛けながらそう言い残した祭莉は、バックステップで逃れた執事へさらに肉薄し、杏から引き離しにかかる。
「やれやれ、無駄な事を……まぁ構いません。その無駄がやがて絶望になり、貴方の未練をより美味しくするのですから。下ごしらえのようなもの、付き合ってあげますよ」
 執事は舌なめずりをしながらフォークを振り抜く。祭莉はフォークに手を添えてくるりと回って避けると、着地からそのまま膝のバネを全力で使ってバク転。執事の頭部にサマーソルトキックを叩きこむ。ひたすらに硬い。体の周囲に目に見えない壁があるように感じる。執事はよろめきすらしない。恐らくはこれが『無敵』の能力なのだろう。
「うさみん☆、Shall we Dance?」
 祭莉の様子を見た杏はうさみみメイドさんズを呼びだす。楽器を持つ者は演奏を始め、無主の者は踊りながら祭莉の元へと向かった。
「音楽と共に踊り、ひつじの動きを鈍らせ、皆を攻撃から庇い守ってね」
 こちらからの攻撃が全く通じない、一方的な防戦を強いられる祭莉の周りにうさみみメイドさんズが集い踊りだす。祭莉もそれに合わせて楽しそうに踊りはじめ、その動きでもって執事のフォークを躱し、いなしていく。
「ん、待ってて」
 小さな拳をぐっと握り、杏はこの国に追加されたキッチンへと向かう。しっかりと手を洗ったらうさみみメイドさんズの奏でる音楽に合わせて調理を開始。
 綺麗な流水の中で手をくるくる回してお米をダンスさせる。踊り疲れた彼らへは炊飯器のベッドに水の布団。火をかけてほかほか、ぬくぬく、ぐつぐつと。
 炊きあがった真っ白ふわふわな宝石(ご飯)を盛り付ける。祭莉はどうなったかと見れば、祭莉とうさみみメイドさんズの他の猟兵も加わり防戦を繰り広げていた。
「アンタ! 丁度いいからこっちも一緒させてくれ!」
 杏が振り向けば短い金髪を揺らしながら、大きな鍋を抱えて走りくる猟兵の男。その動きは危なげを全く感じさせない。
「ん」
 杏は短く首肯するとテーブルに盛りつけた茶碗を置き、生たまごの入った小鉢、そして醤油を並べていく。中央には鍋を置くためのスペースもあけて。
「まつりん!」
「おっけー!」
 杏の掛け声に準備が整った事を察した祭莉。共に戦っていた猟兵の手を取ると、執事を全力で蹴りつけて、その反動を利用して一気に杏の元へと戻ってくる。
「一体何を……あぁ、そういうことですか」
 怪訝そうな執事はテーブルに並ぶ食事を見て全てを理解し、不愉快そうに鼻を鳴らすのだった。

●防衛戦
 時刻は少し遡る。
「羊で執事で羊だ! 有能そうな執事だけど羊だー!」
「あれは……しつじのこすぷれね! んん……?ひつじのこすぷれ……? んー……どっちかしら?」
「羊の……執事! ……流石ラビリンス」
「……」
 四名で戦っていた猟兵達は少年の猟兵が執事と戦い始めたのを見て、好き勝手に批評していた。否。一人だけ無言だった。
 その一人であるバルドヴィーノは瞳の鋭さを増す。
「……フ。そーかそーか。お前が元凶だな? 元凶じゃなくとも関係者だな??」
 バルドヴィーノの姿は既に普段の服装に戻っている。『無敵』の相手にはいくらパワーアップしても効果は無い、仮に効果があったとしてもこれ以上身に着けているのは御免だった。
「オレがあんな格好する羽目になったのもついでに写真撮られたのもテメェのせいだな??? 首と手ェ洗って待ってろよ…!」
 濡れ衣である。徹頭徹尾冤罪である。
 この国の法則を作ったのはオウガ・オリジンだし、メイド服(クラシカル)をお出ししたのは森で、写真を撮ったのに至っては仲間である。だが、そんな細かい事はどうでもいいのだ。
「無敵なんてのに馬鹿正直に付き合うつもりはねェよ、あやに任せてる間にパパッと済ませちまおうぜ!」
「料理を作るとオウガが倒せる! 更に美味しい芋煮を食べられる! 頑張ってねあやちゃん! 良いのを作ってくるから大人しくさせててね!」
「うん、あたしに任せて! ……それにしても、執事さんの主はあのアリス・オリジンかー……主さんを倒したのは悪く……いや、あんまり思ってないですけど。だって、皆に迷惑かけてたし?いや、この世界創ったみたいですけどね?」
 バルドヴィーノとアカネの言葉に応えながらあやは、一人執事の方へ向き直る。見れば戦いは少年の猟兵だけでなく、その周囲に人形の様な者達も加わっていた。
「だからまー、あたしが言いたいのは…食材よし! 料理人よし! あたしよし! あたし達の思いの籠った料理を堪能して、主の所へいってください!」
 ビシッとポーズを決めて加勢するべくあやは飛び出す。
「やれやれ、うっとおしいですねっ」
「えいやっ!」
 鋭く突き出されたフォークを、祭莉は琥珀製のナックルをはめた拳で打ち返す。全身のバネを使い放たれた一撃は琥珀の煌きを残像に残す。本来ならば銀で出来たフォークすら砕く筈の一撃は、しかし何の影響も与えない。
「やれやれ、ならばこちらにしますか」
 如何に『無敵』となっても、それは一切の攻撃が無効化されるだけで執事自身が強くなっているわけではない。肉弾戦で制しきれないと感じた執事は、フォークの代わりに白磁のティーポットを取り出した。
「させませんよ!」
「むっ! 新手ですか」
 その小さなティーポットを持って祭莉に殴り掛かろうとした執事。両者の間に実体化した♪が飛び込んでティーポットに当たる。すると♪はたちまちのうちにティーポットの中に吸い込まれてしまった。
「手伝いに来たの。アレ触ったらまずそうよ」
「みたいだねー、ありがとうおねーちゃん」
「何人増えようが『無敵』の私は倒せませんよ。精々たっぷり絶望して未練を深めてください」
「(ですよねー……全ては料理にかかってる。頼んだよ、みんな)」
 あやは油断なく身構えながら、今まさに『無敵』を打ち払う一矢となるであろう調理をしている仲間達を思った。

●(ガチで)闇の芋煮込
 あやの仲間達はキッチンの前に集まっていた。まな板の上にはバルドヴィーノが持ってきた食材が並んでいる。
「さーて用意した肉野菜芋その他何か色々。コイツを」
「首」
 おもむろに包丁を振り下ろして野菜を切断していくバルドヴィーノ。
「皮」
 ピーラーでガリガリと皮を削っていくバルドヴィーノ。
「動脈……!」
 蒟蒻を一口大に引きちぎるバルドヴィーノ。
「よく言うだろ?料理は相手のことを考えて作るものだって。刃物を握る手にも力が入るってもんだよなァ……!」
 多分それはそういう意味ではない。
「バルドヴィーノさんが凄い顔しながら食材を切ってる! これも切って!」
 アカネが取り出したのは油揚げだ。受け取ったバルドヴィーノは油揚げも食べやすいサイズに切っていく。
 そんなこんなで食材の下準備を済ませると、それをルエリラとアカネに手渡した。
「本場の芋煮味を叩きつけてやれ!」
「よーし芋煮の調理は私に任せろー」
「お料理はやらないけど分担すれば大丈夫!」
 食材を受け取ったルエリラがおー、と拳を振り上げるとアカネも合わせて拳を振り上げる。
「私は火の番! 狐火で強火も弱火もなんでもござれよ!」
 手から大小様々な狐火を生み出して胸を張るアカネ。
「そして味付けのルエリラちゃんは凄いわよ? 芋煮のプロよ」
 任せたら良い感じにしてくれるわ! というアカネの期待を一身に受けたルエリラは。
 砂糖と醤油とお酒を適量使いながら調味料を整え、鍋に水と共に投入。メインである里芋から鍋に入れつつアカネに火力を指示して順調に煮込んでいたのだが……
「んー、普通の美味しい芋煮だとなんかパンチ足りなくない?」
 物足りなさを感じていた。気持ちを込めるというぐらいだしサプライズ感が足りないのではないか……ならば。
「ここは闇芋煮いってみるかー!」
 視線を向ければそこにあるのはバルドヴィーノが持ち込んだ食材残り。こういう事態を想定していたかは不明だが、普通の食材以外にも持ち込んでいたのだ。ルエリラは目隠しをすると適当に選んだ食材を鍋に投入し始めた。
「なにこれぐにょぐにょしてる。採用!」
「あっ」
「こっちは・・・硬い? 採用!」
「えっ」
「痛!噛んだ!?よし採用だー!」
「おっ……面白そうなの一杯入れて…今日は闇鍋だったか!」
 躊躇しないルエリラ、見てても止めないアカネ。やがて。
「という訳で、目隠して調理した芋煮の完成だよ。美味しくなって! って必死な気持ちがいっぱい籠ってるから美味しいはず。味見はしてない」
 ルエリラは戦いの余波が調理場まで及ばないよう、食材を切った後は警戒をしてくれていたバルドヴィーノを呼び、出来たばかりの芋煮(闇)を手渡した。彼がそれを持っていくのを眺めながら、もう一つの鍋を取り出す。闇進化させる前に分けておいた普通の芋煮鍋だ。
「あ、私たちの芋煮は普通ので」
 とその鍋を持ってアカネとゆっくり後を追いかけるのだった。

●実食
「ふん、料理ですか。くだらない……まぁこの国の法則ですから、食べてやりますよ」
 テーブルに置かれたご飯と玉子、そして芋煮(闇)を見てつまらなそうに言い捨てる執事。
「まぁまぁちょっと待って、最後の仕上げがあるんだから」
 あやはそういうと、藁人形達がいなくなり、恐る恐る遠巻きに眺めていたこの国本来の住人達に呼びかける。、
「どもー! あたしの名前はあや! 天道あや! 突然だけど、皆ー! 皆の夢や目標、未来を教えて! あたし! 皆の道を照らしたいの! だからお願い!」
 両手を左右に開いて呼びかけるあや。特に何という特別な動作は無い。音楽も無い。証明だってない。それでも。それでも尚、彼女は美しく輝き住人達の目を引き付ける。
 未来を信じて。そんなあやの気持ちを感じた住人たちは口々に語りだす。怖い事が無くなってほしい、今まで通りの暮らしがしたい、それに、折角だからハロウィンを楽しみたい。
 未来(あす)を思い願う彼らの気持ちと、此処に集った猟兵達の思いをあやは束ねる。歌い踊る彼女からそれは羽ばたく音符となって食事へと降り注いだ。
「さ、召し上がれ!」
「ふん!」
 法則によって『無敵』を得た執事は、同時に法則に縛られてそれを拒絶出来ない。普通のサイズのフォークを取り出し、鍋の中身を刺して口元へと運ぶ。
「里芋か、しっかりと火が通っていて柔らかい。そして味が染み込んでいる。蒟蒻もだ、千切る事で味を染み込みやすく工夫しているな」
 出だしは普通の具材を引き当て上々の様子。しかしこれは芋煮(闇)だ。
「なんだこれは……ぐにょぐにょして……キノコか。こっちは……ふん、南瓜か、最初は硬かったかもしれんが今は完璧な火の通り具合でホクホクしているな。こっちは……栗か、これも良く煮込まれている。栗の甘みがアクセントになるな」
 それはただの偶然か、はたまたあやの異能で集められた住人たちの祈りがもたらした奇跡だったのか、投げ込まれた闇具材、ぐにょぐにょはキノコで、硬いのは南瓜、そしてルエリアが噛んだと思ったのは栗の棘であり、鍋に放り込むときに『偶然』弾けて、中の食べられる実だけが鍋に入ったのだった。
「……芋煮定番の味もさることながら、少し変わった具材という珍しさもあり飽きさせなかった……やるな、猟兵」
 執事は芋煮(闇)を完食し、ふらふらとしていた。既にかなり眠そうだ。
「ん、次はこっち」
 杏はほかほかご飯と生たまごにお醤油を執事の前に並べる。
「ごはんの炊けるいい匂いがしてきたー」
 たっぷりと体を動かしたからか、くぅ、とお腹を鳴らした祭莉は自分の茶碗にもご飯を盛る。そして番茶を入れる。
「あ、茶柱立ったよ、ラッキー♪」
 たまごをコンコンと割ると。
「あ、殻が入っちゃった。まいっか、三つ葉散らして誤魔化しちゃお♪」
 そんなこんなでご飯にかけて口へと運ぶ。
「炊き立てご飯は幸せの味♪」
 落ちそうになるほっぺたを支えながらご満悦の祭莉。
「貴方も、食卓一緒に囲もう。それがオリジンの本当の気持ち、そう思う」
 幸せそうな兄の様子に笑みを浮かべた杏は、そう言って執事を促す。
「……コメにしっかりと熱が入っているので柔らかく、噛むほどに甘みが増しますね。新鮮なたまごが絡みついてするすると喉を伝っていく。醤油の味が旨みを引き立てています」
 すぐに平らげ、さらにお代わりをしてそれも完食すると、執事はゆっくりと食器をテーブルに置いた。
「オウガ・オリジンは……あの女は、こんな料理を望んだり……誰かと一緒に食べたいなんて、思っちゃ……いませんでしたよ……いて、たまるもの、ですか……」
 それが執事の心からの本音だったのか、はたまた敗北を悟る中で少しでも杏の心に傷をつけたい悪あがきだったのか。それを確かめる術はもうない。執事は眠ってしまった。
「ん」
 それでも、他の者には違って見えていたのだとしても、『彼女が見た。彼女が知っている』それは彼女だけの真実である事は揺るがない。
 執事がテーブルに崩れ落ち、完全に意識を失ったのを見た猟兵は、抱きかかええてテーブルから離れた所へと寝かせる。杏がその手に取りだした白銀の光をナイフへと変え、振るうと、被り物であるひつじ頭の羊毛を刈り取る事に成功した。『無敵』は此処に確かに失われた。
「ひつじさん、オリジンちゃんにヨロシクね!」
 お腹いっぱい元気いっぱいの祭莉が、全身の力を使って拳を打ち込み、杏が大剣へと変じさせた陽光で斬りかかる。
 琥珀の煌きと白銀の閃きが駆け抜け、後には何も残っていなかった。


 かくしてこの国の脅威は取り除かれた。ハロウィンの国への改変効果はまだ続いているが、オウガはもういない。
 住人は猟兵達を取り囲んで感謝の雨を降らせる。いや飴だ。この国に元々存在する不思議な飴の花からとれる飴だ。
 集った猟兵達はお互いが作った料理を持ち寄って、勝利の宴を始める事にした。住人たちのテンションを見るに、恐らくこのままハロウィンパーティーへとなだれ込む事になるのだろう。

 Hapyy Halloween!!
 It's a Party!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日


挿絵イラスト