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極寒の砦に流れる血

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「……な、なあ……俺たちこんなことして良いのか?」
「仕方ないだろ! こうしないと俺たちだって死ぬんだ」
「……そ、そうだ、俺たちだって好きでこんな姿になったわけじゃないんだ」
「あ、ああ……そうだよな……」
 そこは、誰もいないはずの廃砦。
 近隣の村から食料や必需品を盗み、生計を立てる脱走者達。
 彼らが人狼にさせられ、元々の村から追い出されてきた人狼たちだ。
「そういえば、ウルのやつがいねえぞ?」
「……どこかにいるだろ、この猛吹雪だ。砦から出たら死ぬぜ」
 今にも凍えるように言った、その時。部屋に慌てて飛び込んでくる人狼があった。
「た、大変だ!」
 彼は堰を切ったように慌てて話始めた。
「ウルが、死んでる……殺されてる!」
「な、なんだって!?」
 逃げ場もない猛吹雪の中。廃砦。
「爪か剣か、なんかに切り裂かれてんだよ!」
 密閉した逃げ延びた生活圏に死の匂いが充満する。

 ◇◇◇

「暗く澱んだ過去が牙を剥く……絶望へと導く災禍の福音だ」
 コクヨウ・ダークネスシャドウ(人狼の化身忍者・f29880)が言うには、これはオブリビオンの仕業だという。
 人狼が廃砦に作ったコミュニティ。その中のオブリビオンが潜伏している。
 猟兵達は、この廃砦に辿り着き、そのオブリビオンを見つけ出さなくてはいけない。
「はだかるは、灯火を阻む険しき氷の女神の息吹、挑むなら、心してかかれ」
 猛吹雪が、廃砦までの山に吹いている。
 まずは凍えずに、廃砦までいく算段を立てなければいけない。
 小屋や岩影なら多い。火を起こし暖めること位ならできるだろう。
「気を付けろ」
 コクヨウは鋭く言うと猟兵を送り出した。


熱血漢
 第一章、吹雪いてる雪山を踏破してください。

 時々火を起こしたりして暖まったり、完全防寒バリアを展開したり、同行者同士で暖めあったりして、砦を目指してください。


 第二章で、砦の中でオブリビオンを探索し
 第三章で、見つけたオブリビオンとの戦闘です。

 砦の中は第二章でまた追加描写します。

 プレイングお待ちしています!
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第1章 冒険 『雪山の砦に向かおう』

POW   :    ありあまる体力に任せ、全力で砦に向かう。

SPD   :    一直線の最短ルートで砦に向かう。

WIZ   :    事前にルートを決め装備を調え、砦に向かう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルク・フッシー
ルークさん(f06946)と一緒

ほ、ほ、ホントに寒い、ですう…
これでも服の裏には適温の紋様が描かれてるんですけど…防ぎきれないです…

で、でも地面を魔法の塗料で塗って、オレンジ色の暖かい道を作れば…えええ、塗る前に塗料が凍っちゃいます!!

洞窟…ラッキーです!早く避難しましょう!
…やっぱり洞窟も寒いです。外よりマシですけど…

裸?裸なんで?
抱き合うのはいいですけど、温まるなら服を着ましょうよ…死んじゃいますよぉ…

はあ…ルークさん、もふもふで柔らかいです。ボクはこんな鱗で…冷たくないですか?

おはようございます、ルークさん…あ、晴れてる…良かった…
よし、塗料も凍らず塗れます〜
頑張りましょう、ルークさん


ルーク・アルカード
ルク(f14346)と一緒。

SPDで

・心情
雪山って寒いな。(マフラーに口元を隠して暖をとってます)
大事なマフラーのおかげでお鼻は寒くないけど。
雪がいっぱい降る前に、いそいでお仕事の場所までいかないと。

・行動
山の上の砦にいけばいいんだよね?
まっすぐいけばつくよ。

……ここどこだろ?真っ白すぎでわかんなくなっちゃった。
まっすぐ進んでたのに不思議?
雪が凄くなってきちゃった。どこかで休まないと。
あ、そこの洞窟でやすもう。

……寒いね。そういえばUDCのてれびでこういうときは裸で温め合うと良いっていってたよ。
そうすれば温かいんだって。

ん、おはよう。雪やんだみたい。
あそこに見えるのが砦かな?
お仕事頑張ろーね。



 ごうごうと数秒動きを止めれば容赦なく積もる雪に埋もれてしまうような猛吹雪。視界も真っ白な中を進む猟兵が二人いた。
「雪山って寒いな」
 と、マフラーに鼻先を埋めるルーク・アルカード(小さな狩人・f06946)と。
「ほ、ほ、ホントに寒い、ですう……」
 と涙も瞬く間に凍る寒さに震えるルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)だ。
「これでも服の裏には適温の紋様が描かれてるんですけど……」
 そう言うルクだが、この雪が体温を奪い冷風が吹き付ける、温度の簒奪状態に追い付いていない効果に愕然としていた。
 もっと大丈夫だと思っていた見通しの甘さが偲ばれる。
「雪がいっぱい降る前に、仕事の場所に着きたかったけど……」
「結構すぐに吹雪が、き、来ちゃいましたね……っ」
 山の天気は変わりやすい等とは言うが、あっという間だった。最初こそ空も青かったというのに、とルクは閃いた。
「青空を塗るのは出来ないですけど、これなら!」
 と筆を出し、オレンジの塗料で、陽だまりのような暖かい道を……。
「凍ってるね」
「……塗る、前に……」
 線を引こうとした直後、かつんという固い感触に見てみれば、色を塗る以前に塗料が固まってしまっている。これでは何かに描くなんて到底無理であった。
「ひ、ひうう、ごめんなさいぃ」
「大丈夫……でも」
 とルークは、回りを見渡す。なにも見えない。歩いた感覚、まっすぐに砦を目指せていたらとうに着いている筈なのに。
「逸れちゃった? ……そろそろルクも僕も休まないと」
 とその時風の隙間に洞窟が見えた。岩影の小さな洞穴だけど、少し風から身を守るなら十分だ。
「ルク、こっち」
「え、わわ」
 ルクの手を引いて、ルークは見つけたそこへ駆け込んだのだった。

 ◇◇◇

「洞窟……ラッキーですね」
 と、ルクは風が無いだけで、体感温度に差が結構ある事実に、悴んだ頬を緩める。
「少し雪が緩まるまで待ってようか」
 ルークは、外の雪の勢いに考えた。雪の量の勢いにも波がある。和らいだ時にいかないとまた、方角を見失う気がしていた。
「ぁう、でも……寒いですね……」
「こういうときは裸で暖めあうんだよ」
 ルクが腕を擦って言うのに、ルークはUDCアースの映画かなにかで聞いた知識を披露していた。
 それを聞いたルクの反応はというと『裸? 裸なんで?』だった。
「えっと……抱き合うのはいいですけど、温まるなら服を着ません?」
「そうすれば温かいんだって」
「え、え……え!?」
 凍えちゃいますよ、と言うルクの前で既に裸になったルークに、慌てて同じく裸になってなけなしに適温の紋様を施しているルクの服とルークの服を巻き付けていた。
 もふもふとしたルークを抱き締めれば、確かに体温を感じられて暖かい。
「はあ……ルークさん、もふもふで柔らかいです」
「ね?」
 生肌が触れあう恥ずかしさよりも今はその温度がありがたい。
「でも、ボクはこんな鱗で……冷たくないですか?」
「ん、大丈夫」
「ひゃう……!?」
 足を絡ませ、出来るだけ広く密着しながら聞いたルクにルークは、言うや否や、ルクの尻尾の下、ルクとルークの体の隙間部分に、手を差し入れていた。
 冷たさでなく、温度に弛緩していた所に敏感な箇所に触れられて、驚いた。確かに血管が集まる温かい場所だけど、と恥ずかしさにルークを睨みながらも、ルークの手の感触に心地よさを感じていたのだった。

 ◇◇◇

 それから、そんなに時間は経っていない気がする。時計もないから感覚だったが。ふと風の音が和らいだ。
 だが、まだ世界は真っ白。
「……まだ、晴れはしないですね、っあ!」
 ルクが残念そうに言った直後、風の切れ目に見えたのは、確かに人工物の壁だった。
 意外と近くまで来ていたらしい。離れてもいない距離に見えたそれをルークも見ていたようで。
「お仕事頑張ろーね」
 そう言って支度を始めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎

「それじゃあ、お願いするね~♪」と『フェアリーランド』に声を掛けて風/火/氷の精霊・聖霊・月霊を呼んで氷の精霊に周囲の警戒しながらルートを調べて貰い、風の精霊にバリアを張って貰いながら中で火の精霊に暖を取って貰って安全に確実に進みます☆彡
進みながら“七色こんぺいとう”を配って、強風や吹雪が吹いたら『月世界の英霊』で安全な場所を聖霊・月霊に聴きながら空間飛翔をします♪
「ミンナ~、砦って言う大きな建物が見付ったら教えてね~☆彡」と伝えて「見付けてくれたら、お菓子の小部屋に入れてあげるよ~♪」と応援します☆

精霊たちが「急いだ方が良い」とか教えてくれたら素直に従います☆彡



 雪が視界を遮る真っ白か真っ暗か、そんな事も分からなくなりそうな猛吹雪の中。
 ビュウビュウ、と荒ぶ音に負けないような明るい声があった。
「それじゃあ、お願いするね~♪」
 そういう彼女の金色の髪は、周りの豪風など知らないとでも言うように柔らかく揺れるばかりだ。
 その周囲に舞う光。
 フェアリーランドから呼び出した精霊たちが、それぞれに風や火、氷の光で彼女を補助している。
 脚を踏み出して沈む雪にも火の温もりが灯り、同時に氷の精霊が沈まないように氷の足場を作り、風の精霊が凍える風からティファーナを守っている。
 万難を抱えた雪道のはずが、快適な散歩道そのものだ。
 かこんと小さな缶を開けたティファーナはその中の収まっていた虹色の欠片、七色こんぺいとうを舞う光にあげながら進む。
 少しずつ風が強まってきている。精霊の守りが厳しくなってきているようだった。
「吹雪いてきたねえ~、んー、どこかに風を凌げるような所ないかな?」
 聖霊、月霊がそんな彼女の言葉に四方へと光を放つ。
 数秒後、踊るように揺らいだ彼らの光を見つめれば、ティファーナは岩肌の目の前にいた。
 風がやんで、パッと散った光に柔らかな温度が全身を包む。
「わ、ありがとうー♪」
 空間跳躍と、熱のベールのお礼にこんぺいとうを配りながら彼らの声に耳を傾ける。
「でも、急いだ方が良いんだね? うん、少し休んでいこっか」
 砦って言う大きな建物が見付ったら教えてね~☆彡、とお願いする。
 出来るだけ早くつけるようにと手は打っておく。
 でないと、どうやら誰かが死ぬということらしい。
 ひとまずそれは望んでないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白羊郷・浅未
 ううん……、眠たいんだけど……、助けて欲しいっていうなら仕方ないよね。

 でも、眠いから、夢にお願いしようかな。

 UC発動。
 モコモコの綿雲に包まれて、寝てる間に運んでもらうよ。

 完全防御の綿雲なら寒さも風も関係ない。事前に理想のルートを確認してるから、あとは砦に一直線(綿雲が)

 ……寝てるだけ? でも、それがぼくがやれることだから……。

 ちゃんと砦についたら悪いやつ見つけるよ。うん、大丈夫。

 アドリブ連携歓迎 



「うーん、……まだ?」
 眠たげな目を擦り、顔を上げたら猛吹雪だった。
 まだ着いてないか。と綿雲にくるまって、微睡んでいる少年は言う。
 青いパジャマのまま、極寒の山にいる白羊郷・浅未(眠れる仔羊・f30484)だが、まるで寒くなさそうである。
 というのも、彼の布団であり、世話役である綿雲が、寒さも風もすべてカットして快適を与えているのだ。
 パタパタと綿雲の上で、脚をばたつかせる。膨らんだ裾から中が見えようと、誰もいないここで気にする事もない。
 いや、そもそもここが町中でも気にするか分からないのが浅未という男の子だった。
「どれくらい進んだかな」
 あらかじめ見ておいた、真っ直ぐな進行ルートを綿雲に進ませているけれども、途中寝ていた彼自身にはどれくらい進んだかは分からない。
 考えているのは、あとどれくらい寝れるかなと言うことで、一体何をするつもりでここまで来たのかと疑いたくもなるが、彼にとってはこれが最適解なのだ。紛れもなく。
 この雪山を踏破できる体力なんてない訳で、それでも砦の人狼を助けたいという思いでここに来ている。
 ちゃんと砦についたら、動くつもりなのだ。
 多分。
「もうちょっと寝れるかな」
 急いでいるのかいないのか、最短距離を進みながら、ゆっくり睡眠を再び取り始めた彼は、それでも着実に砦に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『闇夜を切り裂く断末魔』

POW   :    不審な人影を取り押さえる

SPD   :    町人に聞き込みを行う

WIZ   :    囮となって切り裂き魔をおびき寄せる

👑11
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 猟兵達が砦に着き、人狼達は彼らを警戒していた。
 突如現れた不審者。だがそんな膠着を事態は許してくれない。
「た、大変だ!」
 そんな声が駆け込んできた。
「ウルが、斬られた! 死にそうになってる! 誰か助けてくれ!」
 事件が始まってしまった。

 ◇◇◇

 第三章、人狼の砦での調査です。

 砦には人狼の人々が住んでいます。
 家族で逃げてきたもの、子どもだけでたどり着いたもの、他の家族を亡くしたもの。様々です。

 傷付いた人も多いでしょう。
 彼らを癒せば、よい情報が得られるかもしれません。
 囮であれば、上手いこと自分に意識を向けさせることで成功確率が上がるでしょう。
 不審者を見つけるにも、いかに見つけ対象を絞るか、その手法が重要かもしれません。

 でもだいたいなんでもオッケーです。

 プレイングお待ちしています!
ルーク・アルカード
ルク(f14346)と一緒。

アドリブ歓迎。
SPDで判定。

・心情
斬られたの?
ケガって痛いよね……。
殺すのは得意なんだけど、こういうのどうすればいいんだろ?
ルク治せるかな?僕、治せないからルクに任せよ。

・行動
傷口を観察し、武器や癖を確認。
僕の武器とやり方に似てる?気のせい?
足跡や気配はないかな……。
周辺を回って痕跡を確認してみよう。

ケガしてないジンローのヒト達にも誰か見てないか聞いてみよ。


ルク・フッシー
ルークさん(f06946)と一緒です
アドリブ歓迎

た、大変です!助けないと…!
【修復描画】を使い、人々のケガを癒やします
魔法で作った塗料を傷に塗り、ケガそのものを描きかえ修復します
大丈夫です…しみるかもですけど、治しますからね…

亡くなった方はどうにもできないですけど、一人でも多くの人を助けないと!

一通りケガを治したら、人々と話をしてみましょう
有用な情報もほしいんですけど、ここの人たちの心も少しでもケアしたいです
異世界の光景とか、出会った人々とか、ボクが今まで描いた絵を見せながら話をしたいです

少ないですけど、スケッチブックと色鉛筆をプレゼント
色鉛筆なら凍らないですよね…たぶん



 そのウルという人狼の元へと案内されたルーク・アルカード(小さな狩人・f06946)は、深く裂かれた傷口を眺めて、一つ頷いて、こう言った。
「斬られたの? ケガって痛いよね……」
「痛いですよね……って、そうじゃないですよ!? た、助けないと……!」
 冷静すぎるルークに思わず同意を返してしまったルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)は、致命傷な人狼に慌てて筆を振るっていた。
 損傷を補修する塗料を傷に走らせた跡に、じんわりと傷が塞がっていくのにルークはルクに流石、と言う。
「う、ぐう……」
「し、しみるかもですけど治しますから……!」
 筆が走り、魔法の塗料が傷を覆うかさぶたや皮膚を描いていけば、その通りに傷が失せていく。
 ルークは殺すのは得意なんだが、こういうのはどうすればいいのか分からなくなってしまう。
 だから、初めから治癒はルクに任せて、ルークは傷口を観察していた。
「……?」
 どんどん消えていく傷痕に、ルークは首をかしげていた。なんだか見たことがあるような、そんな気がしていた。
「……なんだろ、気のせい?」
「ふう……間に合って良かった」
 と思考をルクの声が遮っていた。安堵するルクの回復技を見ていた人狼は、慌てるように感謝を告げて、こう言っていた。
「すまない、他にも斬られた奴がいて……」
「ええ、大変じゃないですか!」
「頼めるか?」
「勿論です!」
 即答したルクは、たた、と駆け出していく。
 
 ◇◇◇

「わ、きれーい」
 子供の明るい声がする。
 ルクは、治癒をして回った後、目の前で大人が傷つけられたのをみた人狼達に、情報収集もかねて、ケアをしていた。
「こことは違う世界ですけど、いっぱい面白いものがあるんですよ」
「へえ、行ってみたいなあ」
「この世界にも、知らないものがいっぱいありますから、……あ、そうだ」
 そう言ってルクが取り出したのは、色鉛筆とスケッチブックだった。それを子供に渡してあげた。
 塗料と違って、これなら凍りついてしまうことは無いだろうから。
「……いいの?」
「うん、これで色んなものを、描いてみてください」
 鮮やかなそれらを嬉しそうに眺める子どもとルクを脇目に、ルークは僅かに空中に残る血の香りに集中していた。
「……足跡は残ってない。そういう歩き方なんだ」
 床に着いた切り傷。どれ程小さな子どもだとしても、床に引きずる大きさの剣を常に持っていれば流石に警戒されるはずなのに。
「……殆ど見られてない」
 人の意識を縫うのが上手い。つまり、暗殺の技術。
 怪我をしなかった人狼達に聞いてまわっても、いつの間にか切られていたとか、そんな情報しかなかった。
 極めつけは、その武器。ルクが治したのを見ていたけれど、傷が毎回違う武器でつけられているような傷になっていた。
 それだけ多くの武器を持っているのか。もしくは。
「……武器のかたちがかわるか」
 ルークは、腰に下げた剣の柄を握ったその時。
「ルークさん」
 とルクが話しかけてきた。
「どうやら、殆ど話したことのない子がいて、その子の姿が見えないらしいです」
「うん、『見つけた』」
「え?」
 ルクのことばに確信する。そうと分かったらルークにとってはその気配を追うのは簡単だ。
 他でもない自分の気配。消しかたをよく分かってる気配なのだから。
「こっち」
 ルークはルクの手を握り、その僅かな気配を追いかけていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎

「ミンナ~♪一緒に頑張ろうね!☆彡お手伝いをお願いね♪」と『フェアリーランド』の壺の中から風/生命/闇の精霊・聖霊・月霊を呼んで“七色こんぺいとう”を配って不審な人影や町人を探してもらいティファーナは輝きを放ちながら自ら囮になって精霊・聖霊・月霊の情報を元に動いて色々と聞きながら“金平糖”を配って「あの、聞きたい事を教えてくれませんか?♪」と笑顔で『切り裂き魔』の事を聞いて回ります☆彡
切り裂き魔や不穏な輩が現れたら『クリスタライズ』で姿を隠して様子を伺いながらチビ鉛筆でチビノートにメモを書き残して置きます♪

出逢った人には“祈り/祝福/浄化/鼓舞/勇気”の舞と歌唱を☆



「ミンナ~♪一緒に頑張ろうね!☆彡お手伝いをお願いね♪」
 と警戒と疑心渦巻く暗い砦の中で明るい声が弾けた。小さなフェアリーである祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)だ。
 彼女は、フェアリーランドに繋がる壺を抱えて、呼び出した精霊や聖霊、月霊たちに砦の中を探してもらっているのだ。
 七色こんぺいとうをかじりながら方々へと散っていく彼らを見送ってティファーナは、砦の中をふわふわと飛んでいく。
「ん、お……え?」
 光を纏いながら飛ぶ彼女の姿は、人狼ばかりのこの砦ではやはり目立ってしまうもので、遠巻きにも視線を集中的に浴びてしまっていた。
「あの、聞きたい事を教えてくれませんか?♪」
 そんな警戒もいざ知らず、いや知っていてなおか、人狼へと歩み寄っていくテファーナは、笑顔でそう問いかけていた。
「き、ききたいこと?」
「はい! その、切り裂き魔を見たり、怪しい人がいなかったか、なんですけどね?☆」
「い、いや……知らんな、気付いたらもうやられてて」
 たじたじとしながらも、答えてくれた人狼の男性は、他の猟兵が治療したのか、今は眠っている被害者に目をやっていた。
 やはり心配なのだろう。ここに人は集まっている。
「そうですかー、ありがとうございますっ!」
 ペコリと頭を下げて、ティファーナはその部屋を出ていった。
 そして、人のいない廊下に差し掛かった辺りで角を曲がりすぐに、姿を透明化させていた。光ながら飛び回っていれば目立つ。それが切り裂き魔の、自分の事を調べていると知れば何かしらの行動を起こすだろう。ということだった。
(……あ)
 そして、彼女のもくろみ通り、僅かな気配が廊下に現れた。
 だが、すでにティファーナの姿はないことに警戒したのか、気配が遠ざかっていく。
(……こども、?)
 ティファーナが見たのは、まだ幼い人狼の、灰色に汚れた尻尾の先だけだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

白羊郷・浅未
◎☆アドリブ歓迎

 ふあ……。ついたのかな?

 それじゃあ、UCを起動しながらお話聞いてみようかな。【祈り】【催眠術】
 傷付いた人を綿雲に寝かせて治療しながらお話を聞く。聖者だから、一緒に眠気を覚えたら傷が消えてくんだ。不思議だよね……。

 ん、でもこのままうたた寝しちゃダメなんだよね、お話は聞かなきゃ。

 でも死ななくて良かった。
 死んじゃったら、どうしようもないから。

 ちょっと抱きついて暖を取りながら、生きてるんだなって思う。

【優しさ】と【情報収集】。
 人狼の人が寝ちゃったら夢現の追跡者の召喚で夢を覗いてみるね。

 少しでも見てる人がいたらいいんだけどな。

 



 ふあ……。
 あくびをしながら白羊郷・浅未(眠れる仔羊・f30484)は砦の中をぺたぺたと歩いていた。
「……あ、けが……してる」
 部屋の隅で体を投げ出すように倒れる人狼に、不用心に浅未はそれに歩み寄っていって、その隣にぺたりと座りこんでいた。
「……ぁ、」
 じい、と人狼のかすかに空いた目をのぞきこんだ浅未に、意識もあいまいに疑念の視線を向けた人狼は、次のその彼の行動に理解が追い付かなかった。
 もくもくと、どこかからか沸いた綿雲が彼らの周りに集まり、人狼と浅未を掬うようにしたその上に、浅未は倒れこんだのだ。
 いや、たおれこんだというより寝ころんだが、正しいか。
 まるで幼子が親にそうするように、はたまた恋人に甘えるように。浅未は人狼の胴体に腕を回して、胸に顔を埋めるのだ。
 柔らかい感触が人狼に触れる。あたたかな匂いが肺に満ちていく。
「……う、ぁ?」
 眠気が襲い来る。
 ああ、死ぬのか、と漫然と思うなか、しかし、その予想に反して体中の痛みが消えていくのに気づいていた。痛みが引いていく、だけではない。
 力なく倒れていただけのはずの思考が巡り始めて、確信する。
 この眠気は、本当に心地よいがための睡眠欲求だと。

 つまりは、五体満足の証だと。

 安堵。手の中にある安らぎの温かみに、人狼はゆっくりとその目を閉じていく。

 ◇◇◇

 浅未は、規則正しく上下する胸に額をつけて、少し肌寒い砦の空気から逃れるように人狼の体に密着する。
 そうして感じられる熱。少しさっきよりも高ぶるそれに安心する。ちゃんと息をしている。冷たくもなっていない。
 熱が全身をめぐっている。
 そうして、目をつむった浅未は、夢を覗く透明な雲を召喚していた。
 人狼の記憶を覗くためだ。
「……」
 そして、彼は人狼が目撃したその下手人を見つけた。

 それは、小さな、白い人狼の子供だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『追憶の小さな暗殺者』

POW   :    バラバラにすればいいよね?
【自身の感情と血】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【処刑執行形態(形状自由)】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    死んでくれる?
【肉体の負荷を省みない】事で【超人的な速さで動く暗殺遂行モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    もっと僕を褒めて?
戦闘力のない【影のような人型】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【褒められること】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ルーク・アルカードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 抵抗された。
 刺し貫いた人狼(オトナ)の反撃の爪が、ぼろ布の服を裂いて左肩から腰まで傷をつけている。
 血が流れてる。
(けど、……べつにいい)
 それを止血する気もない。血を吸った刃が、その感情に応じて形を変える。
 何を思うのか。同じ形をした人狼を殺し、流れてきた彼に優しくしてくれたオトナを殺し。
(……?)
 だが、彼は首を傾げた。
 死の香りが感じられない。死を目の前にした騒がしさがない。それどころか、流れてくる音や匂いに感じられるのは安堵ですらある。
(殺せなかった?)
 十分に殺せる傷だったはず。
 それでも、殺せていないものは殺せていないのだ。
 だから。
 刃が渦巻く。まるで感情の荒ぶりを示すように、凶悪にうごめいていく。
「……殺さなきゃ」
 白い人狼は、ふらりと足を進ませる。

 ◇◇◇

 第三章。『追憶の小さな暗殺者』との戦闘です。
 狭い通路を全面跳ねるように、もしくは部屋の繋がりを利用した奇襲じみた攻撃などを行ってきます。

 プレイングお待ちしています!
白羊郷・浅未
……見つけた。

きみにうらみ?とかないけど、……君がいるとみんな安心してねむれないから。【優しさ】

リアライズ・アサルトシープで羊たちをぶつけるよ。【生命力吸収】

なんだか、しゃべってるのかな……、あの影もいい感じしない、し……。
一緒に攻撃。

……そう、そういえばきみににた猟兵の人、いたよね。

因縁があるんなら、そのひとにお任せしていい……かな

だから【時間稼ぎ】

ここから逃がさないように、綿雲羊を繰り返し突撃させるね。

◎☆アドリブ歓迎



「……みつけた」
 白羊郷・浅未(眠れる仔羊・f30484)は剣を引きずるようにして歩く人狼に相対した。
「……」
 じ、と人狼は浅未に警戒を発し、動きを見定めんとしていた。
「きみにうらみ? とかないけど……」
 浅未はゆっくりと眠たげな目で、それでも、はっきりと人狼へと敵対宣言をする。
「君がいるとみんな安心してねむれないから、倒すね」
 そして、彼の周囲からポンポンと、無数の綿雲が、いや、綿雲の体をした角のある羊が廊下を埋め尽くさんばかりに現れて、人狼へと突っ込んでいった!
 体は柔らかそうでも、その角で突かれたら致命傷にもなりえる。人狼は、壁を蹴って飛び上がって羊を避けると、それはキキイ! とブレーキ音を立てて反転して再び人狼を追いかけ始めた。
「……っ」
『大丈夫、よく避けたね』『強いな早いな、お前はすごい』『さあ、反撃をするんだ。お前なら出来るさ』
 空中で歯を噛み締める彼に、壁から天井から生えるようにして立つ人の影のようなものが声を発していた。
 瞬間、人狼の目に光が点る。床に着地した瞬間、迫り来る羊たちに斬撃が見舞われた!!
 まるで巨大な剣を振ったような範囲。いや、実際に巨大な剣だった。人狼のちをすって変形した剣が羊たちを吹き飛ばす。
「……」
 そんな光景に、しかし浅未は冷静に再び羊を呼び出していた。
 実際、かれの思惑は、人狼を倒しきることではなかった。
(そういえば似た猟兵の人、いたよね)
 白い毛の人狼。どことなく面影も似ているその猟兵がここに来るまでの時間稼ぎだった。
 なにか縁があるなら、その人に任せてもいいかな、と思っている。
 だから、浅未が狙うのは人狼本体ではなくで、彼を鼓舞しているあの影達。
 人狼に大半を向かわせる中で、数匹の綿雲羊で影を貫いていく。
「……、ふう」
 撃破される羊を繰り返し呼び出す。そんな疲労に少しずつ眠気を蓄え、それを邪魔するこの人狼と影へ羊の突撃を繰り返す。
 羊が145匹、146匹、147匹。
 浅未は羊を数えながら、人狼をここに足止めすることに成功しているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ歓迎

「キミの武器から“悪しき臭い”が出ているね…還らざる刻の狭間に眠りの森に…☆」と“祈り/歌唱/浄化/勇気/優しさ”をもって『フェアリーランド』の壺の中から風精霊・聖霊・月霊・死神を呼んで『クリスタライズ』で姿を隠して精霊・聖霊・月霊・死神に“七色金平糖”を配って『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃をして、『聖精月天飛翔』でWIZを強化して『月世界の英霊』で攻撃を空間飛翔をして避けて『月霊覚醒』で敵のUCを封印/弱体化させます。
『シンフォニック・メディカルヒール』で解呪と清浄を祈り『祝聖嬢なる光輝精』で治し癒し、死神に「苦しませないで」と…



 際限無く襲いかかる羊の群れをかわし、いくつかの部屋を渡った人狼の目の前に、フェアリーが現れた。
「キミの武器から“悪しき臭い”が出ているね……」
 そんな言葉が祈るような声色と共に紡がれる。
 祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、その人狼、オブリビオンが真に悪の心を持っているとは思えなかったのだ。なにか、そうなってしまう外的要因によって、彼は狂わされたのだろうと。
 故に言葉には優しさがこもり、瞳には浄化の願いが宿る。
「還らざる刻の狭間に眠りの森に……☆」
 キン、と高い音が上がった瞬間、共に光が弾けてティファーナの姿はそこにはなくなっていた。
 その代わり、そこに現れたのは風を纏う精霊やその上位の存在達。死神なんて言われるものまでそこにいた。
「どうか苦しませないで……」
 ティファーナの声だけが、いや、彼女自身はそこにいる。透明化し、目に写らないだけだ。その彼女が彼らへと願った。
 声はなくとも、肯定の意志が伝わる。ティファーナは、剣を握る人狼に囁きかける黒い影それぞれ挑みかかる聖霊達の間に光の矢を打ち放って、人狼を追い詰めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルク・フッシー
ルークさん(f06946)と一緒

えっ、あれっ。あの子、ルークさんに似てませんか?
でも、人々を傷つけるなら、倒さなきゃ…

あの子もルークさんみたいに、凄いスピードで戦うんですか?だったら、いっそボクは事前準備に徹します

ルークさんの体に直接『生命』の紋様を描きます。二人とも命を削りながら戦うタイプですけど、この紋様で回復力を与えればルークさんは相手より長く戦えるはずです
指で触れてそのまま絵の具を作り出せば、凍る前に描けます
(代償は…辛いですけど…ルークさんはもっと苦しいでしょうから…がまんしないと…)

描き終えたらボクは砦に隠れます
しっかり隠れないと。ルークさんの邪魔したくありませんから。


ルーク・アルカード
ルク(f14346)と一緒。

・心情
やっぱり僕だ。昔の僕。
あのヒトはもういないんだよ。
だから、嫌なお仕事はもうしなくてもいいんだよ。
大事にしてくれて、褒めてくれて、いっぱいいっぱい嬉しいをくれる大切なヒトもできたんだよ。
だから、終わりにしよう?

・戦闘
ルクが手伝ってくれるから、傷しても攻撃し続けるね。
大丈夫、負けないから。

武器に『吸血』させて『武器改造』。
『地形の利用』をし、立体軌道で剣戟の応酬。

※苦戦したり怪我したりところからの逆転描写希望です。



あれは僕だ。
 昔の、今とは違う、いつかの、僕だ。
 生きるように死んでいる。

 ◇◇◇

『偉いな、それでいい』
『さあ、殺すんだ。手足をもいで最後に腹を裂け』
『強い、お前は強くなる』
『いい子だ』
『お前はいい子だな』『いい子だ』『いい奴だ』『よくやった』

『よくやったな、ルーク』

 ◇◇◇

 ルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)は、糖蜜のように粘る唾をどうにか飲み込んで、傍らの人狼を見た。
「……あの子――」
 ルークさんに似てませんか?
 そんな風に問いかけようとした声が詰まる。暗い影が白い毛を纏う赤目の人狼へと向けた言葉に、名前に。
「うん」
 隣に立つ、同じようなアルビノの色をした人狼が、ルーク・アルカード(小さな狩人・f06946)が頷いた。
 それ以上彼に何かを問いただす事は憚られて、冷たい空気を吸い込んでから思いっきり吐いた。
「――人々を傷つけるなら、倒さなきゃ……ですよね」
 ルクは、失礼します、とルークの腕を取って、指を這わせる。
 指先に塗料を生み出し、線を引く。ブラシ越しなら描ききる前に固まってしまう寒さの中でも、これならば描くことができる。
(きっと、『あのルークさん』も同じように命を削り力を振るうはず)
 ルーク自身が以前からそれ以外の闘いを知らない事をルクは知っていた。
「――ッ」
 ルクの体に激痛が走る。口の中の鉄の味が広がる。体の中身がどこか破れたか。早鐘を打つ心臓が脳を揺さぶるような頭痛が襲ってくる。
 描く紋様が意味を成すほど、完成へと近づくほど高まる痛みに、しかし、ルクは歯を食い縛り手を止めることはない。
(一度、戦いが始まれば、きっと手出しできない……そうすれば、ルークさんはもっと辛い苦しさを……これくらい、我慢しないと……ッ)
「ありがと」
 紋様を描き終わると同時にルクの手を、ルークが掴んで離した。
 顔をあげた先、ルークの視線の先には、こちらを虚ろな目で見る人狼がいた。
「……っ」
 感情はなく、ただ倦んだ殺意の視線。それんkルクが息を呑んだその瞬間には、既に刃が眼前に閃き、ルークの腕がそれを防いでいた。
 血飛沫が跳ねる。蹴り足の音とギン! という刃の交わる音がしてルクは、転がるようにその場を離れて身を隠した。
(……、ルークさん)
 苛む苦痛に反応が遅れた。ルークが庇ってくれなかったら死んでいたかもしれない。ルクは彼のその傷を憂慮し、祈る。
 あの戦闘に加われば足手まといになる。紋様の代償に痛む体を抑え、ルクは息を潜めるのだった。

 ◇◇◇

 庇った傷から血が流れ、それを刀が吸う。
 変形し鉤をつけた刃先で壁をひっかいて、無理やりに軌道を捻じ曲げて、空中でくるりと一回転。一瞬後ルークのいたはずの場所を抜けていくレイピアの刃を真上から叩き落したルークの眼前に、人狼の蹴りがぶちかまされた。
 体重は、ルークの方が上だろう。だが、一瞬目を瞑れば即座に姿を見失うようなこの速度でぶつかった蹴りは、軽い体重であることなど忘れさせるような強烈な威力を持ってルークに牙をむく。
「――ッ!」
 吹き飛ばされ、壁に叩きつけられたルークに、息を整える暇は与えられない。急く肺に息を流し込もうとしたその瞬間を、鎖鎌が刈る。咄嗟に幅広の剣へと姿を変えた血晶刀・金盞華で防御したルークは、息を吸うのもそこそこに地面を蹴る。
 足を止めれば、瞬く間に置いていかれる。
 技術だけでいうのなら、きっとルークが上手だ。だが、それ以上に、自分の命を何の躊躇いもなく削り、動きを研ぎ澄ませていく人狼が、そのさらに上を行っている。両頭の剣で円を描き小刀の脇腹をえぐり取る一撃を弾き、背をたたく足を切りつけんとした攻撃の隙を杭のような鎚がルークの胴体を打ち抜いた。
 全身の力が抜ける。猛烈な吐き気とともに喉が焼けて、腹の中身をすべて吐き出していた。
 その首を叩き切るギロチンの刃を辛うじて避けたその足を槍の穂先が貫いた。
「ぐう……ッ!」
 激痛にうめく。
 引き抜かれた槍を、元の刀へと戻し、尻餅をつくルークに人狼が迫る。
 その見下ろす冷たい瞳に映る感情は何か。
 ルークはそれを知っている。
 振り下ろされた刀の一撃を、それでもルークは弾き返した。
「あのヒトはもう……いないんだよ」
 ぐぐ、と体を持ち上げる。ルクの描いてくれた紋様が力を与えてくれる。傷の痛みを和らげてくれる。
「嫌なお仕事はもうしなくてもいいんだよ」
 後退した人狼を追って、振り抜いた刃が周囲の黒い影を切り散らす。
「大事にしてくれて、褒めてくれて、いっぱいいっぱい嬉しいをくれる大切なヒトもできたんだよ」
 肉薄する。
 いつも、ルークはその感情とともにあった。
 それを知っている。

 恐れていた。怯えていた。

 でもそれはもう過去だ。
 だから。
「だから、終わりにしよう?」
 ただまっすぐ突っ込むだけの攻撃に、人狼は反応しなかった。いや、できずにいたのか。
 それは分からない。わかるのは、その刃がアルビノの人狼の過去、その心臓を貫いたということだけだ。
 血があふれる。
 それを人狼が操り、ルークを刺し穿つこともできたはずだが、しかしそれは為されない。
 人狼は静かに目を瞑る。ルークも静かに目を瞑る。
 瞼の裏の景色は、きっと違う光景が広がっている。
 ルークのそこには、あたたかな笑みと撫でてくれる柔らかい大きな手がある。
「おやすみ、僕」
 握る刃に、もう鼓動は伝わらない。

 ◇◇◇

 そうして、人狼の砦に平和が戻った。
 斬られた人々は回復し再び生きるために動き出すだろう。
 猟兵達は、吹雪がやむのを待って、砦を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日
宿敵 『追憶の小さな暗殺者』 を撃破!


挿絵イラスト