#クロムキャバリア
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●宗教国家レミュール
荒廃した大地に、不釣り合いな真白い壁に囲まれ、雑踏は同じく、白き法衣が、静かに列を為す。しゃありしゃありと、乾いた土を踏みしめ、信者達が礼拝堂に集う。司祭が経典を読み上げ、教えを説くのに合わせ、信者が続いて読経し、礼拝堂に声を響かせる。飾られたステンドグラスに描かれるのは慣れた巨人の雄々しき姿。守護神と称えられるこの国、レミュールの誇るジャイアントキャバリア。即ち、ユミルの子と、その操者である巫女の姿。礼拝堂の奥に飾られた銅像も、白の法衣に身を包み、両手を合わせ、祈りを捧げた少女の姿を象っている。
「そう……あなたは、アーヴと言うのですね」
大教会の地下で、滴る水音に、少女は穏やかに瞼を開く。仄かに全身を覆っていた緑光が消え、足下に描かれた法陣がゆっくりと、輝きを失っていく。同時に、地下に吊されたカンテラがぼんやりと周囲を灯していく。
地下水の敷き詰められた空洞内には、少女を囲う様に物言わぬ巨人、ユミルの子が、その半身を湖に収めている。少女は円形の石の上で跪き、1体のユミルの子を見上げた。
「洗礼はお済みになったご様子……それでは、お願い致します」
「はい。全てはレミュール様のご意向の侭に」
「レミュール様のご意向の侭に」
額に宿った紋章が一際大きく輝き、増設されたコクピットに、白の法衣に包まれた少女が吸い込まれるように転移する。アーヴと呼ばれたユミルの子が、歓喜の雄叫びを上げ、水を蹴り、網の目のように張り巡らされた地下水路を疾駆し、途中に置かれていた兵装を纏う。共鳴率は高く、彼女の思った通りにアーヴは動き、共存は笑みが零れそうになるほど、心地良い物だった。然し、そう思うのも束の間、アーヴの意識が次第に黒く淀み、彼女の心に入り込む。
締め付けられるような感覚に、か細い悲鳴を上げながら、通信を試みるが、アーヴの意識がそれを許さず、彼女の意識は程なく、暗闇の中に沈む。
「だれ……か……」
地下水路を抜け、壁外は紅蓮の戦場。響く爆音と銃声、視界を埋め尽くす閃光と弾幕の雨。プラントの争奪ポイントとして指定された前線で、ジャイアントキャバリアは暴走し、立ち塞がる者を喰らい、紅蓮の鋼を形作る。
●グリモアベース
「クロム・キャバリアで、事件が起きとるみてえじゃけー、皆に解決を依頼するな」
海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は集まった猟兵に資料を配り、クロム・キャバリアについて、説明を始めた。
「知っとる人は適当に聞き流してな」
クロム・キャバリアは無数の分裂した小国家が体高5mの人型兵器、キャバリアを主力に、プラントを奪い合う世界だ。この小競り合いは100年ほど続いており、高度な文明を保持していたと推測するのは容易だが、今は見る影も無くなっている。
「プラントは遺失技術じゃな。色んな物が生産出来るらしい。水から食糧、兵器、キャバリアの動力、エネルギーインゴットとかな。大体15m程の建造物で、これを目的とした小競り合いが続いとる感じよ」
遺失技術である暴走衛星によって高速飛翔体が迎撃されてしまう他、広域通信網も全て破壊され、世界全体の情勢や地形を知る方法が根絶されており、戦乱に拍車を掛けている様だ。
「後、オブリビオンマシンが搭乗者の思想を歪めて戦火を拡大させとるのも、大きな原因の一つじゃな。一般人にはどれがオブリビオンマシンかどうか分からんのよ。今回みてえな場合でもな……待たせたけど、ここからが本題じゃ。事件が起きとんのは、このクロム・キャバリアに有るレミュール。ユミルの子を信仰しとる宗教国家じゃな。小国家とは言え、国民全員が信徒の国じゃ」
レミュールはその信仰から、量産型キャバリアを主軸としつつ、クロム・キャバリアを使用せず、個体数の少ないジャイアントキャバリアを精鋭部隊として採用している。
「調べたけど、あんまり良え印象は持てんかった。素質のある子を巫女と称して、その善意と信仰を利用して、兵隊にしとるだけよ」
巫女と呼ばれる、比較的年若い少年少女は、素質を見極められると、洗礼と称してユミルの子と面会し、選ばれた彼彼女等は、そのまま、予め言い含まれた戦闘地域へと出向く事になる。
「この過程でどうも、ユミルの子が暴走したみてえでな。それ自体は許容範囲内みてえじゃけど、どうも姿を変えとるらしい。オブリビオン・マシンの可能性が高え。火種を取り除く為にも、これを止めて欲しい」
場所はプラントの防衛戦線、現状は敵味方構わず攻撃行動を繰り返している。
「オブリビオンマシンは破壊すれば、中に居る操縦者は元に戻って救出されるよ。覚えといてな。あと、量産型キャバリアはこの国じゃと調達が難しいが、選ばれれば、勝手にジャイアントキャバリアを持ち出しても構わんらしいし、戦線で思わぬ出会いも有るかもしれん。欲しい人は、色々やってみるのも良えじゃろ……やり方は任せるけー、宜しく頼む」
最後に深く頭を下げると、鎮は猟兵達を送る準備をし始めた。
紫
●挨拶
紫と申します。
今回も引き続きクロム・キャバリアです。
●シナリオについて
・章構成:ボス戦→冒険→ボス戦です。
・ステージ:プラント防衛戦線の荒野です。遮蔽物は有りません。
・ギミック
1:選ばれれば、レミュールが保有しているジャイアントキャバリアを持ち帰る事が可能です。
2:量産型キャバリアはレミュールから配布されず、レミュールにクロム・キャバリアは存在しません。
3:各種キャバリアは、全章通じて、あらゆる手段や偶然によって入手可能です。
4:パイロットである少女は意識を失っています。
5:ユミルの子【アーヴ】に意識はあります。
●その他
・1章毎にオープニングを作成致します。
・今回の第1章は割と何をしても良い形にしています。
PSW気にせず、好きに動いてみて下さい。
・途中参加:歓迎。
・ロボットの知識や機械知識皆無でもお気になさらず気軽にどうぞ。
生身での戦闘も可としております。
●最後に
なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
宜しくお願い致します。
第1章 ボス戦
『ブレイジング・バジリスク』
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POW : ブレイジング・シュート
【ライフルの集中射撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : バジリスク・ランページ
【右腕のライフル】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : エンジンキラー
自身の【オブリビオンマシン】から【漆黒のオーラ】を放出し、戦場内全ての【エンジン】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
支倉・錫華
宗教国家は構わないけど、こういう国ってやってることがだいたい同じだよね。
『信仰』とか『巫女』とか、権力者が都合よく使ったらいけないんだけど、
ま、だいたいやるよね。
純真に信じている子が犠牲になるから、後味悪いんだよね。
今回は手遅れになる前に助けられたらいいんだけどな。
キャバリアは……ジャイアントキャバリアは趣味じゃないし、
レンタルもなさそうだから、自分のを使わないとかな。
アミシア、スヴァスティカでいくから調整よろしく。
チューニングは攻撃力5倍、攻撃回数半分で、一撃仕様でいくよ。
相手が相手だから、中途半端な攻撃は通りそうにないし、
コクピット狙うわけにもいかないから、動けなくしないといけないしね。
村崎・ゆかり
祭政一致の宗教国家ね。あたしからしたらアリだと思うけど、上層部が腐敗してたりしないでしょうね?
ま、いいわ。あたしがすることは、オブリビオンマシンの破壊のみ。
この国の政治は民が決めればいい。
「式神使い」と器物覚醒で『GPD-331 迦利(カーリー)』(登場二回目以降は「迦利」のみで可)を起動。
飛鉢法で並んで飛びながら、目標の許へ向かう。
「レーザー射撃」の「弾幕」による「制圧射撃」を目標に加え、怯んだところを、先端に「オーラ防御」と不動明星火界咒を展開して、破城槌のように目標を穿つ。
エンジンの停止? 悪いけど『迦利』は元々エンジンで動いてる機械じゃなくてね。
突撃を決めた後は、周囲を遊弋し射撃続行。
アトシュ・スカーレット
◎
うーん、あの国の人たちが納得してるなら何も言わないけど…
なんだかなー…
バイクで急行するよー
このまま戦と…あれ!?なんでコックピットに変形すんだよ!?
あれ?何このキャバリア…
……え、このキャバリアあんたらの国のなの!?
バイク買った時そんなのなかったぞ??
【付与術・天災式】を使って武装を顕現させるよ
腐敗の【呪詛】もおまけでつけとこ
【空中戦/空中浮遊】で空飛んでるから上空からの強襲が基本だね。速度は…【残像】が見えるくらいまでは加速したいから…ちょっと低めで飛ぶよ!
エンジンキラーが来る前になんとかしたいな…
【武器落とし/鎧砕き/鎧無視攻撃/切り込み/2回攻撃/属性攻撃】で可能な限り攻撃していくよ!
シーザー・ゴールドマン
脳無き巨人、ユミルの子を信仰か。ハハ、余計な知恵を持っていない分、崇め奉るには適した存在と言えるかもしれないね。
まあ、どうでもいいことだ。今回は『ルベル』の試運転をさせてもらうよ。
(荘厳な印象を与える真紅のキャバリア。様々な世界の技術と魔法を融合してシーザーが創り上げた超越機)
『ルベル』に搭乗。『ウルクの黎明』を発動して力を通して戦闘態勢へ。
武装は今回は双剣。
敵POWUCを超低空を超高速で残像を残しながら躱しつつ距離を詰め、そのままコックピット以外を破壊していきます。
◎
エア・ルフェイム
◎
意思あるキャバリアかぁ…
お互い通じ合った者同士なんだし
機体も乗り手も無事にどうにか出来たらナー
無いなら奪う…借りればいいじゃない!
ってことで、戦場でキャバリア調達にトライ!
援護射撃で他の猟兵のサポートしつつ
隙見て黒猫狂想曲でロン君を巨大化
敵機がロン君に気をとられてる間に、
手近なレミュール側の機体の脚部を蒸気銃で狙い撃ち抜く
一瞬でも動き止まったら、
素早くコックピットを爆霊手でこじ開ける
こーんにちは!猟兵のエアです!
ちょっとこの子借りてもいいかナー?
話し通じる乗り手さんだったらよし
無理なら実力行使。力加減して気絶させちゃお
機体動かせそなら戦闘続行!
此処から先は通行止め。好きにはさせないんだから!
アリエル・ポラリス
はあっ、はあっ……!
初めてのクロムキャバリアだけど、どうにか勝てたわ……。
──オブリビオンマシンと全然関係ないとこで暴れてたジャイアントキャバリアに!!
さて、勝ったからには私が親分なのよ!
親分としてまずはお名前をつけてあげましょう……よし、今日からお前はシャティよ!
さあ、名前も決まったら初陣よシャティ! 悪いマシンをやっつけるの!
シャティの頭の上に乗って、UCの地獄の腕を展開するわ!
あら? シャティも地獄を出せるみたい……この炎も足せばいつもよりおっきな腕になるわね!
よーし、ライフルは物質化した炎の腕で防いじゃいましょう!
シャティは安心して近づいて、アイツをぶん殴ってあげなさい!
●緩やかな航路
「宗教国家は構わないけど、こういう国ってやってることがだいたい同じだよね」
大型ホバートラックが砂塵を巻き上げ、荒野を巡航速度で横断する。その操縦区画内で、パートナーユニットであるアミシアに話し掛けながら、支倉・錫華(Gambenero・f29951)は、操縦席で携帯食糧を一つ放り込み、ゆっくりと思考を巡らせる。光学迷彩を起動したまま、レーダーユニットが発見したプラントまでの距離と、予定航路がアミシアの隣に、立体投影モニタによって表示されている。
「権力者が都合良く使ったらいけないんだけど、ま、だいたいやるよね」
予定航路を順調に進んで行くのを、緑の瞳で確認しながら、携帯食料を咀嚼する。
「レンタルは無理そうだし、ジャイアントキャバリアは趣味じゃないし……アミシア、スヴァスティカで出るから、チューンよろしく。一撃仕様でね。後はいつも通り……」
帰還想定での待避などと、伝える必要も無く。緑色の瞳で投げかければ、パートナーは、長い黒髪を揺らして、作業に取り掛かる。
「後味悪いのは、嫌なんだよね」
●可能性の追求
炎熱に包まれた陣中で、少女は荒い呼気を吐く。巨人の一撃一撃は、一撃食らえば人狼の身体であろうとひとたまりも無く、兄が教えてくれた体術に感謝しながら、いよいよ吠え猛る元気の無くなった相手に、端々が焦げ付いた人狼装束を残念そうに見て、微笑んでみせる。
偶然にも事件発生前にプラントで発生したユミルの子。早々に暴走を開始してしまったにも関わらず、レミュールは放置した。正確には、暴走が自然に治まるのを待っていた。その現場にアリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)が降り立ったのは、幸運と言うべきか不幸と言うべきか、迷うことだ。
始めてクロム・キャバリアに降り立った彼女は、周囲を興味深げに観察していた所に、ユミルの子の暴走を目の当たりにし、良く状況が飲み込めないままに、振り翳された拳に地獄の焔を纏って対抗し、巨人の一挙手一投足を見逃さず躱しながら交戦し、殴り合い、時に一方的に燃やし、現在に至る。
流石に無傷とは行かないまでも、僅かながらに優勢を保ち、息切れを起こし始めたユミルの子の、一瞬の気の緩みを見抜き、地獄炎を纏った乾坤一擲の拳打が、人狼の膂力で、胴体を貫いた。
「どうにか……勝てたわ。さて! 勝ったからには私が親分なのよ!」
渾身を受けて地面に崩れ落ちたユミルの子を指差して、勝手に頭の上に乗り、気を失っているのに気付いて、目を覚まさせる為に、頭部を数度、ぺしぺしと叩く。ゆっくりと意識を取り戻したユミルの子が困惑しつつ目を覚ます。
「起きたわね! 親分として、まずは名前を付けてあげましょう! よし、今日からお前はシャティよ! 暴れてる子が居るみたいだから、早速初陣と行きましょう!」
上から更にぺしぺしと数度頭を叩かれながら、負けてしまったものは仕様が無いと考えたのか、暴走を止めてくれた事に恩義を感じたのか、名前を貰って嬉しかったかは定かでは無いが、案外素直にアリエルの言葉を聞き入れ、同族の居る方へと、頭上に居るアリエルを振り落とさないよう、気を付けながら、駆け出して行く。
●GPD-331『迦利』
「祭政一致の宗教国家ね。あたしからしたらアリだと思うけど、上層部が腐敗してたりしないでしょうね? ま、いいわ」
今回は気にしても仕様が無いだろうと、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は風除けの外套から、紫色の瞳を覗かせ、式神の目を借り、目標地点の割り出しと、周辺状況の確認を終わらせる。
「あたしがすることは、オブリビオンマシンの破壊のみ。この国の政治は民が決めればいい」
まだ事は起こって居らず、戦線には砲撃の応酬は続いているものの、安定している様だ。呪を小さな声で紡ぎ、自身を浮かせ、低空に霊力の尾を引きながら、目標地点を目指す。
「黒き母の名を借り、顕現せよ。我が下知に応じ、手足の如く動くべし! 急急如律令!」
低空飛行中に愛用の白一緒の霊符をばら撒いて、法陣を描く。呪が描かれた逆三角形型の鉄巨人、GPD-331 迦利が、式に応じて顕現し、付き従うようにゆかりと速度を合わせ、低空を駆けて行く。
●掘り出し物
「なんだかなー」
乾いた風が、セミロングの黒髪を気紛れに撫で上げる。白壁の街並みで、生を営む国民全てが信者と言えど、戦力の要、生活の足に不可欠な、機械技師は存在している。国全体の区画整理は行き届いている。
機械技師や生活用の金属加工、それらの修理を雑多に扱う職人街の一角で、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は、歩くのを止める。何気ない呟きに、羽織った上着のフードから、同居人が顔を出して小首を傾げ、小さな鳴き声を上げ、問い掛ける。
「何でも無いよ、ルルディ」
首元を軽くくすぐってやると、気持ちよさそうに目を細めて、ルルディと呼ばれた小竜は、すぐに顔を引っ込めた。
そこかしこで鋼の加工音が響き、時には試運転をしているのか、動力機械の起動音がけたたましく雄叫びを上げる。二輪の並ぶ軒先で足を止めたアトシュに、技師が声を掛ける。
「いらっしゃい。お眼鏡に適う物はあったかい?」
「……正直、良く分からないんだ。戦場まで向かえて、頑丈なのは有る?」
「ってなると、巫女様御用達みてえな奴だなあ。動かせるなら、其処のを持って行きな。周辺部品なんかはこっちでどうにかなるから、稼動状態までは持って行けるんだが……原理が分からん。ウチに流れて来るって事は、お抱えが匙投げた曰く付きだがな」
技師が指差した自動二輪、とりわけ長距離ツアーリングに適した大型モデルのシートに、アトシュは軽く掌を乗せ、魔力を流し込むと、慣れ親しんだ蒸気魔導式エンジンに近い待機駆動音が、空気を静かに震わせた。
「うん。動くみたいだね。幾ら?」
「こりゃあ驚いた……どうせ誰にも動かせねえ代物だしな。やるよ。持って行きな」
「ラッキー。それじゃ、遠慮無く」
技師は2.3度目を瞬かせ、バイクに跨がったアトシュを見送った。
●ルベル
「脳無き巨人、ユミルの子を信仰か」
レミュールの信仰を思い返し、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は中々に面白いと、嘲笑う様に破顔した。
「余計な知恵を持っていない分、崇め奉るには適した存在と言えるかもしれないね」
表情をすぐに戻すと、自身にはどうでも良いと、指を弾く。宙空に深紅の魔法陣がオドによって描かれ、深紅と荘厳を纏う巨人が、法陣から空間を裂いて現れる。
「君を試すには丁度良い機会だ。ルベル」
コクピットに自身の身を納め、暇に武装、稼働率、供給率と言ったデータを確認、ルベルとの意思疎通を楽しんだ。
●Aurora
「このまま戦と……」
市街から、戦線にバイクで急行している途中に、勝手にモニタが投影され、システムログと音声案内が立ち上がる。
――適合する魔力供給を確認、供給率、同調率、共にシステム起動条件をクリア。Auroraコアシステムをアンロック。パイロットの声紋認証を要求します。――
「え、あれ!? 何だよコレ!?」
――声紋認証、クリア――
困惑するアトシュを置き去りにして、疾走する大型二輪が、見る見る内に二足歩行機人へと変形する。足下に生じた動輪は変わらず駆動し、加速は損なわれぬまま、荒野を疾駆する。機械鎧と化した大型二輪に、アトシュは戸惑いながら声を上げる。
「マジで何だコレ、キャバリアっぽいけど……どう言う事なの?」
――Auroraコア、正常動作を確認。可変機構システム稼働率、オールグリーン。進行方向に交戦地帯を確認、パイロットの生命保持の為、Auroraの召喚を実行します―
「せめて同意を求めろよ! おかしいだろ!」
全てがブラックボックスであるAuroraは、彼も知らなかったが、レミュールの教会側がユミルの子の人為的、電気的再現を掲げ、遺跡から出土したブラックボックスを元に作り上げた、超能科学の結晶である。性質的に、リュミールで巫女として扱われている者にすら起動出来ず、教会は試作機にすら出来なかったと、廃棄し、放逐した。詰まる所、今起きている事は、電脳化したユミルの子の意思と言っても、さして違いは無い。特殊空間に格納されている胴体部分が、変形した機人に取り付き、アトシュの登場部分はコクピットとして全方面を覆い、肩部、腰部にそれぞれ手足が装着される。各稼働率を投影モニタが映し出し、大揚力と推力を発生させる、羽根型のスラスタが背面で開く。
「あー……まあ良いか。お前なら、操作に面倒も無さそうだしな……」
コクピット内部に投影されるモニタに武装の一覧が表示され、それらが全て異空間に格納されている事が示唆される。彼にとっては、何時もの手順と何も変わらない。
――成功……パイロット。私のマスターとなってくれた貴方に、感謝致します――
●交戦
戦場に炎熱が伝う。
敵も味方も区別無く、鋼を紅蓮へと変じさせながら、一機のオブリビオンマシンが、雄叫びを上げる。変じた身体の使い方を理解し、意思を獰猛な牙と変じさせ、目的を忘れ、猛って狂う。誰のために、何を望み、どうしていたのか。
。「意思有るキャバリアかぁ……お互い通じ合った仲なんだし、機体も乗り手も無事にどうにか出来たらナー」
弾幕と轟音の飛び交い、炎熱さえも混じり始めた戦場に、やや場違いとも言える声音で、エア・ルフェイム(華焔・f02503)は呟きながら、絡繰黒猫のロンを手繰る。
「さあさ、ロン君、そう言うわけだから、レッツゴーショータイム!」
前後不覚に陥りながら、視界を埋める全てを出鱈目に銃で薙ぎ払おうとした紅蓮の巨人の関節を、蒸気銃を早抜き、炎を纏う弾丸で打ち抜き、僅かな怯みに、手繰る絡繰り黒猫を巨大化させ、敵機の動きを止める様に組み合いを指示。右腕のライフルを打たせないように弾き、真正面から取っ組み合う。
敵機も味方も突然の事態に困惑し、構わず両方撃てと指揮が降る。困惑の最中に、エアは迷い無くレミュール側の機体に取り付き、身の丈程有る黄金色の縛霊手を展開、鉤爪型の巨大な五指を装甲の隙間に溶かしながら突き立て、コクピットを人外の膂力でこじ開ける。
「こーんにちは!猟兵のエアです! ちょっとこの子借りてもいいかナー?」
「こ、この機体は神聖なるレミュールより授かった貴重な……!」
全て言い終わる前に頭を適度な力で殴り、気絶させた。戦場に放るかどうか暫し考え、近場に居たレミュール機の方へ、適当に放り投げた。機体フレームは支援砲撃、鈍重だが、威力は高そうだ。残弾を確認し、コクピットを開いたまま、鈍重な機体を強引に振り回し、行動を封じるように、肩部の砲を照準を合わせつつ、数発を撃ち上げる。周囲の機体が機動の異常と、放り出された兵士の報告から、レミュール側の機体が取り押さえようと動くのを、唯一格納された近接格闘兵装である、ヒートナイフを軸に格闘戦で立ち回る。
「シャティ、あのマシンよ。悪いマシンをやっつけるの!」
地獄の炎を纏い、双方の軍を掻き分けて戦場に割り入りながら、羽交い締めにし、黒猫からジャイアントキャバリアを引き剥がす。
「あら、シャティも地獄を出せるみたい? この炎を足せば、いつもよりおっきな腕になるわね!」
引き絞られる銃口に、物質化した巨大な炎の腕でアリエルを庇い、中に乗っている事を把握しているのか、肩部装甲を五指で掴み、肉と骨までを地獄の焔の熱で溶かし尽くすのみに留め、後方に跳ねる。
「丁度良いタイミングだね」
「我が身に宿れ、灼熱の業火、全てを凍てつかせる氷雪、天駆ける雷。天災の力、ここにあり! 追い付いてくれよ……!」
爆撃に混じり、滑空に近い状況でシーザーの駆るルベルが、残像を撒きながら、片足を削ぎ、アトシュの操作するAuroraが、残像を残す速度で、残るライフルを削ぎ落とす。
急に現れたユミルの子と、常人には知覚出来ない速度で起こった2撃に、双方の軍が慌てて後退を始め、火砲の轟音が止んでいく。
「伝達ロスはほぼ無いね。我ながら、良い仕事をしたものだ」
推力の減衰をせず、そのまま距離を取る2機に合わせ、逆三角形の機体、迦利が幾筋もの光線を放ちながら吶喊。
「ノウマク、サラバタタギャテイビャク、サラバボッケイビャク、サラバタタラタ、センダマカロシャダ、ケンギャキギャキ、サラバビギナン、ウンタラタ、カンマン」
加速を続ける迦利のやや後方で、白一色を展開し、手早く真言を唱えながら、印を結ぶ。破城槌と化した先端が、残る片腕を吹き飛ばす。
「これなら、多少省いても良さそうかしら……?」
威力の結果に満足しつつ、低空を旋回、動けそうに無い機体を油断無く見遣り、光線の射出タイミングを見極める。
「今よ、アミシア」
交戦区域ギリギリから、愛機を発進カタパルトから射出。背部スラスタを機動。目標までを一直線に疾駆し、細身の実体剣を逆手に構え、四肢を捥がれ、膝を付いた目標に、翁草の花弁が散る。歌仙の澄んだ一太刀が、背部ブースターを機体から削ぎ落とす。コクピットのみを残し、行動不能に陥った敵機を確認し、ホバーキャリアの離脱先に、一時帰投する。
●脈動
四肢を失い、焼き焦がされ、地に倒れ伏した脳無き落とし子の意思が脈動する。目的の為に自身を作り替え、行き過ぎた黒の思想を受け入れ、誰かの望む儘に肉体を瞬時に修復する。再度の雄叫びを置き去りに、超速で戦場を駆け抜ける。
猟兵の目で有れば終える超速に、すぐさま追撃を掛けようとすれば、レミュール側の機体が一斉に砲火を向け、猟兵を阻害する。
「ちょっと! 何するのよ!」
「十中八九、上からの命令だろうけど、この待遇はあんまりよね」
「彼等にも思惑が有るのだろう。単純に考えれば、実験結果を見たいと言う所かな」
「大体合ってるっぽいネ。何か遠回しにあの子の逃亡を手助けしろ、援護しろーって一斉通信が入ってたしー!」
「何だそりゃ、どうっすかな……」
アリエルが騒ぎ始めたのを皮切りに、猟兵達は、待避か、戦線を無理して突破しつつの追撃かを思案する。
「間に合うといいんだけどな」
ホバーキャリア内でアミシアが傍受した通信を聞きながら、錫華はゆったりと目を閉じた。
大成功
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第2章 冒険
『脱出援護』
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POW : 派手に暴れて敵兵を引き付ける
SPD : 脱出ルートを見つけ、兵士達を誘導する
WIZ : 変装し、敵地に怪しまれず潜入する
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●狂信
超速で疾駆するオブリビオンマシンマシンが、戦線を掻き乱す。味方を風圧で弾き飛ばし、摩擦で削る。自身がそれによって死に近付こうと、構わず彼等がジャイアント・キャバリアを護衛しようと銃口をあらゆる勢力に向け、先にある障害へと砲弾を放つ。
前線は混迷を極め、乱戦地帯と化し、白兵武器での応戦を強いられる内に、敵軍に囲まれる部隊が出るのも、自明の理と言える。
信仰の末に散るならば本望と、或いは、巫女様を守護した結果ならばと、いとも容易く投げ捨てる。
●状況判断
オブリビオンマシンは四肢を再生し、その身をまた別の姿に変えながら、猟兵達の前から逃亡した。事態は厄介な方向に動いている。
レミュール側は猟兵の行く手を阻み、侵攻側も事態の把握が出来る訳も無く、双方とも敵と言って良い状況だ。
その中で、敵側に囲まれたレミュールの部隊が有る。自業自得では有るが、彼等は、理由はどうあれ、巫女を守りたい一心だった様だ。猟兵はこれを助けても良い。
助けない場合、オブリビオンマシンの追跡に専念する事になる。
此方は大まかに二通りの方法が考えられる。敵だらけの戦線を突っ切るか、一時退避の後、迂回ルートをどうにか見付け、静かに追跡するか。勿論、思い付けば他の手段を取っても良い。
猟兵は自身の考えに従い、行動を開始する。
村崎・ゆかり
「式神使い」と器物覚醒で、引き続き『GPD-331 迦利(カーリー)』を制御。(表記は前回に準ずる)
あたしは飛鉢法で追随する。
冷たい言い方だけど、人と人の争いに猟兵は介入するべきじゃない。あたしたちが狩り立てるのは、あくまでオブリビオン。
黒鴉召喚で広範囲を「偵察」し、オブリビオンマシンを追える最も安全なルートを組み上げ、「目立たない」ように戦場を通過していくわ。
なるべく使いたくないけど、一般機が邪魔なら「レーザー射撃」で牽制する。
接近したら、取りあえず距離を保って、黒鴉の式に他の猟兵を呼びに行かせましょうか。
四肢を砕いてもまた再生するオブリビオンマシン……。パイロットを助け出すしかないかしら。
アトシュ・スカーレット
◎
【SPD】
え、いや、君らの人生だから好きにして??
でもオブリビオンマシン追わせて??あ、そっか。彼らには認識できないんだっけ…
取り敢えず【空中浮遊/滑空/空中戦】で必要な分だけ上昇するかー…
武装の中に近接武器とか遠距離武器があるなら牽制に使えるかな?
【マヒ攻撃/武器落とし/見切り/敵を盾にする】でなるべく穏便に行きたいかな
【希望への軌跡】で回避できるならそうしたいところ
【追跡】で追っていくねー
支倉・錫華
思惑がめちゃくちゃすぎて混乱の極みだね。
これだから偉い人って言うのは……。
ま、この乱戦だと、いろいろ考えなくていい感じかな。
チューンは移動力5倍、装甲半分のまま。冷却や出力補正はアミシアに任せよう。
「アミシア、このまま行く。バランス任せるね」
とりあえず、両陣営に呼びかけはするけど、
聞いてくれなければ、猟兵の乗る機体以外はたたき伏せていっていいよね。
「双方退いて。同士討ちは望むところではないでしょう?」
攻撃するときは【モーターブーム】で、
相手キャバリアの手足を落として、行動不能にしていくよ。
コクピット狙うわけにはいかないしね。
追撃速度は少し鈍るけど、
あまり被害は出したくないし仕方ないところかな。
アリエル・ポラリス
◎
私は猟兵、今の世を生きる人たちを見捨ててはいけないの。
というわけでシャティ、全員ぶっ飛ばすわよ!
みんな吹き飛べば囲まれてる状況も解決だし、私も先に行きやすいもの。
シャティ、手を出してごらんなさい。良いものをあげる!
それはお兄ちゃんがくれた平和的爆弾なのよ!
巨人の腕力で思いっきり投げつけちゃいなさい!
囲まれてる状況さえ解決すれば、あの人たちも自力で戦えるでしょ!
その時の苦労や吹っ飛ばされる時の怖い思いくらいはさっきの意地悪のお仕置きってことで。
あれ、シャティ、足元にばらまいて何を……!?
ば、爆風を踏み台に一気にオブリビオンマシンに追いつくの!?
そんな……もう私より賢いじゃない、シャティ!
シーザー・ゴールドマン
さて、どうするか……そうだね、ルベルには経験を積ませたい。
一直線に追うとするか。
今回も『ルベル』に搭乗したまま。
『ウルクの黎明』で戦闘力を高め、機体全体にオド(オーラ防御)を纏ってオブリビオンマシンを一直線に追います。
邪魔なキャバリアは巨大なオーラセイバーを具現化して振るい、時に大魔法(属性攻撃:魔力×範囲攻撃×全力魔法)を放って排除しながら進みます。(とはいえ無力化するのみでパイロットの命を取ることはしません。少なくともシーザーの攻撃では)
戦い方を覚えたまえ。私が不在でも同程度のことができるようにね。
●諜報継続
「思惑がめちゃくちゃすぎて混乱の極みだね」
ホバーキャリアの格納エリア、スヴァスティカのコクピット内で、リアルタイムで送られてくる映像と、傍受している通信音声、双方を視聴覚から頭に認識させ、冷めた目で、髪飾りを弄る。
「これだから偉い人って言うのは……」
数珠繋ぎになっているアクセサリの感触を楽しむ様に指でなぞり、飽きた頃に指を離す。
「ま、この乱戦なら、いろいろ考えなくていい感じかな。アミシア、このまま行く」
パートナーを呼び出し、雑把なチューン方針をデータログで直接指示。受け取ったデータ群を認識すると、静かな首肯と共に、愛機の調整に取り掛かる。
「バランス、任せるね」
背面に大型推力発生の機械翼、脚部に動力付きの小型車輪が換装ユニットによって換装され、、冷却と出力補正はアミシアが補佐、管理する。
「あと」
通信介入の事で有れば、現在実行中であると告げて、アミシアは頭を下げた。
射出カタパルトから、準備完了の通知。スヴァスティカを滑らせ、固定台がレールの上で火花を散らし、愛機と共に、支倉・錫華(Gambenero・f29951)を、混迷極まる戦場へと舞い上げる。
●天の裂け目に霧霞
向けられた砲火を猟兵はそれぞれ、自身に出来る防御手段を持って難なく切り抜けていく。アリエル・ポラリス(焼きついた想いの名は・f20265)はシャティと共に地獄焔を展開し、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は機体を通じて魔力障壁を展開、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は試しにと、無操縦状態でルベルに判断を委ねれば、機体性能面から対応は不要と、敢えて無策で爆撃を受け止める。
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)はGPD-331 迦利の持ち前の機動性を駆使し、兵装しながら、戦線の弾幕を低空飛行で掻い潜る。
放たれた質量兵器は、例えば、アリエルとシャティの地獄焔に辿り着く前に誘爆し、アトシュと愛機が展開した魔力障壁、ルベルの装甲を貫通出来ず、弾頭を拉げさせ、爆風を残すのみ。
「え、いや、君らの人生だから好きにすれば? でもあの機体は追わせて!? あ、そっか」
この世界の住民は一般的にオブリビオンマシンを区別できない。特にジャイアントキャバリアともなれば、少々変わった暴走程度と捉えられても不思議では無く、良い表現で言えば、敬虔な信徒ともなれば、守護に傾くのも仕方ない事ではあるだろうと、アトシュは溜息を吐きながら、機体を操作、機体を押し上げて浮遊させつつ、牽制用の兵装を探る。
「なるべく穏便に行きたいんだけど、何か無いかな?」
なんとはなしにコクピットの中で、居るはずの誰かに問う。
――規定魔力量の超過を確認、パイロットの安全保障、クリア。chasmatisシステムの封印を解除。思念伝達による兵装説明に移行します。オートパイロットによる機体制御及び安全保障を実行。
「面倒は無いんだけど……絶対やばいの掴んでるよなあ、これ」
魔力を媒介に、直接送られてくるイメージ映像が、本来ならば数分を要する説明を、瞬きの間に終了させた。
「……ああ、うん。この手のは得意分野だけど、お誂え向きすぎて、正直怖い」
乗り手の意思と魔力によって、兵装を作り出す機構。明確なイメージが無く、何となくこの様な物が欲しいと言う要望で有れば、機体側が補正し、作り出す。多少の増幅機構は有るにせよ、持続時間は本人に宿る魔力量次第。
理解し、アトシュは機械兵器の致命となる電子介入兵装を思い描く。宿主を変えて宿り続け、伝染伝播する非実体の電磁ウィルス。
「これなら負担も軽いよね?」
マニピュレーターを宙空からレミュールの機体に向け、微弱な電撃を放つ。機体の間接部が焼け焦げると同時、投影モニタ、武器管制、姿勢制御、カメラ制御を狂わせ、膝を付く。その機体を宿主として、目に見えぬ微弱な電流が蜘蛛の巣の如く、周辺機体全てに伝播し、ウィルスが際限なく増殖し、機体の制御を簒奪し、沈黙させていく。
「凄いわね……オブリビオンの位置特定とルートはこっちでやるわ。少し時間をくれないかしら?」
安全確認を終わらせ、飛翔したAuroraに追従する形で、ゆかりが中に居るアトシュに提案を持ち掛ける。
「うん、この機体、正直まだ不慣れでさ。お願いしても良いかな? 障壁くらいはこっちで張るし」
「助かるわ。急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり!」
はらはらと愛用の白一色の呪符を撒き、印を結んで霊力を流し、53の黒鴉の式神に変化させる。
「高速がどの程度か分からないけれど、鳥の飛行速度くらいなら、大丈夫よね? この程度の距離なら捕捉もされないみたいだし……一応、隠形法も掛けておきましょうか」
暴走衛星の範囲感知を推測しつつ、安全なルートを割り出しながら、隣の機体と迦利、鴉も巻き込む様に、真言と共に摩利支天に関する二つの印を順に編む。
「オン、アニチヤ、マリシエイ、ソワカ」
霧鴉に偵察をさせつつ、猟兵の襲撃を計算に入れ、ルートを割り出し、迦利と共に、先
んじて、アトシュの機体を誘導する。
(冷たい考え方だと思うけど、猟兵が駆り立てるのは、あくまでオブリビオン。人と人の争いに、介入するべきじゃない)
終わった後に、恋人を弄り倒そう等と考えながら、ゆかりは迂回ルートから、静かにオブリビオンを追跡する。
「再生するなら、パイロットを助け出すしかないかしら」
「どうかなあ。それらしいパーツが有れば狙っても良いと思うけど」
●多分努力家
「ふむ、周辺地域はこれで沈黙かな。さて、此方は踏み込んで行こうか。ルベル、引き続き演習を続けたまえ。次の時には、私が不在でも同じ様に振る舞えるようにね」
ルベルは静かに頷く代わりに、自身の身体に注がれた力に、紅を纏って急加速し、戦場を横断する。両刃の巨大な非実体剣を出現させ、深紅の軌跡を描き、降り注ぐ無数の砲弾を撃ち落とし、白兵の間合いに至る前に、機体の脚部を圧し斬る。大振りの得物とみて、急接近をした機体には、肉厚の刀身で受け止め力任せに武器ごと腕部を飛散させる。四方を部隊に囲まれれば、八方の宙空に法陣を描き、巨大な赤雷を落とし、機体のみを機能不全に追い込んで行く。
組み上げ、与えたシミュレートシステムとシーザー自身の戦闘情報。それらを意思持つ機体は事細かに拾い上げ、統合し、恐らくは事前に幾千幾万に及ぶ試行を終わらせ、今、実際の戦場で遺憾なく出力し、実体験としての、新たな経験を積み上げる。
「ふむ。この分なら、そう遠くない内に、私の演習相手も務まりそうだ。いや……興が乗ってうっかり壊してしまうには、まだ惜しいね」
冗談に聞こえないシーザーの呟きに、ルベルは内心で冷や汗を掻いていたかもしれない。
●多分割と脳筋
「私は猟兵、今の世を生きる人たちを見捨ててはいけないの。シャティ、手を出してごらんなさい」
攻撃が止んだ所で、アリエルは兄と一緒に作った衣装の埃を、シャティの頭上で軽く払ってから、巨人の肩に飛び降り、快活な足音を立てて、掌の上にとんと収まって、スカートの両端を軽く摘まみ上げる。
「だから……それ使って全員ぶっ飛ばすわよ! あ、お兄ちゃんがくれた平和的爆弾だから、遠慮無用よ、シャティ!」
人狼病の治療法を探す為に、薬学に明るい兄が、淑女の嗜みだと手渡した代物で、衝撃も爆煙も爆音も起きるだけの、とても派手な爆竹だそうだ。凝り性なのか、その再現度は、人体に然程の被害を及ばさない以外は、本物の爆弾と相違無い。
「さあ、思い切り投げ付けちゃいなさい!」
降りて来た時よりはやや足早に、肩まで駆け上がって再び頭上に飛び乗り、人狼特有の視力で包囲部隊を突き止め、方角をびしりと指差すと、シャティが後を追うように、ぐるりと其方を向く。包囲され、砲火を上げる部隊を、巨人が捉えたかどうかは別として、ゆっくりと巨大な五指を握り締め、腕を大きく振り被り、投げる。力は程々、放物線を描いて落下した爆弾が、派手な爆音と爆風で孤立したレミュール部隊の機体諸共、敵側を吹き飛ばす。
「この状況だし、後は自力でどうにか出来るでしょ! さっきの意地悪のお返しよ! あれ、シャティ、どうしたの? 爆弾がもっと欲しいのかしら?」
掌を同じ様に開いたシャティの意図を察して、もう一度肩に飛び降りる。今度は楽が出来る様に傾斜を作り、滑るように駆け下り、残っていた爆弾を掌に落とす。もう一方の掌を寄越し、意図を汲み取ったアリエルが飛び乗るのを確認すると、自身の頭の上に戻し、貰った爆弾を足下に零す。
「あれ、シャティ足下にばらまいて何を……!? え、爆風を踏み台に、一気にオブリビオンマシンに追い付くの!?」
自身より頭を使っている巨人に、アリエルは思わずその名を呼んだ。一つ欠点が有るとするならば、自身の跳躍によって発生する風圧によって、頭上に入る人狼の少女が、必死にしがみ付く事、だろうか。人狼のアリエルにとっては、少々しんどい程度で終わるだろうが。
●停戦
打ち崩された一部の戦線と、風穴を開けていく血色の暴風、敵味方共に巻き込んで爆破物の投擲を見て、錫華は僅かに首肯する。
「双方退いて。同士討ちは望むところではないでしょう?」
非戦闘区と化した地帯に降り立ち、標準搭載されている拡声器と、拡大投影モニタを通じて、現在の状況と、アミシアが集めたレミュールの情報を公開していく。大規模な通信介入を終わらせたアミシアが、拡声器に届かない敵兵に、情報を拡散した。
現在の状況はレミュール上層部によって引き起こされており、単純なジャイアントキャバリアの暴走では無い事、オブリビオンマシンという世界混乱の元凶を叩きたい事、また、レミュールの上層部が、今回、巫女の帰還を想定していない事。
「隣国のあなた達にとっては、厄介な敵国の主戦力、ジャイアントキャバリアが一機、苦労なく減る訳だし、悪い話ではないと思うよ。それと、レミュールの兵士さん、巫女は、調べた限り、あなた達を守ろうと動く良い子ばかりみたいだけど、見捨てていいのかな? 少なくとも、私達は助ける為に向かうんだけど……」
レミュールの信仰は、貴方達の良心は何処かと問い掛ける。
機体脱出すら侭ならないレミュール側の兵士達は、言葉を詰まらせ、戸惑いの表情を見せ、敵国は、オブリビオンマシンに関するトラブルを経験していた為か、思いの外手早く、侵攻取り止めの打診をし、ゆったりとだが、戦線を下げていく。
その様子を見て、レミュール側もゆっくりと撤退を始め、敵軍に包囲されていたパイロット達も、無事に合流し、無事、友軍との合流を果たした。猟兵達に、巫女のことは貴方達に任せたと、包囲されたパイロットは口を揃えて願い出る。信仰以上に、彼等は巫女に多く戦地で助けられている事を個人的に感謝していた様だった。
仕事を終えた錫華の愛機のカメラに、鴉の式神が映り込み、案内するように翼を広げ、羽根を零す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『電脳巨兵オリバレス』
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POW : ユミルの落とし子
自身の身体部位ひとつを【プラントで生まれ損なった巨人】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : シンクロゲイザー
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【電脳】から【洗脳電波】を放つ。
WIZ : UCフィールド
【電磁バリア】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、電磁バリアから何度でも発動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナギ・ヌドゥー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●国家としては正気、人としては狂気
始祖レミュールというジャイアントキャバリアの稼動痕跡に、保有遺跡、ジャイアントキャバリアの制御技術自体には、労力は然程必要が無い。
また、豊富な地下水は、有機的な肉体を持つジャイアントキャバリアの冷却には効果的であり、そう言った意味でも、立地には恵まれていた。人的資源は限られてしまうものの、乗り手となる素質を持つ物は定期的に十分な人数が現れ、地下に置かれているジャイアントキャバリアと邂逅する事で、組み込んだ紋章機構によって、共鳴、共存の意思を図り、選出する。
巫女とジャイアントキャバリアは、レミュールにとってクロム・キャバリに匹敵する戦力であり、建国以来、国の守護の要でも有った。然し、時が経つにつれ、それが仇となり始める。ジャイアントキャバリアは巫女と共に国としての象徴だ。
軍事力としてクロム・キャバリアを採用する事は、自信の信奉する神への冒涜以外の何物でも無かった。果てにレミュールの上層部は、近場に有る遺跡を片端から探索し、二つの遺物を見付けた。一つは、二指で摘まめる程度の、魂と肉体を内包した透明な球体、一つは、精神を糧とした自己進化によって魂と肉体を電脳化する技術法。
彼等はこの探索の後、今までの技術蓄積を元に、この二つの研究を進めた。一つは結晶を媒体とし、簡易の電脳化まで漕ぎ着けたが、最後まで適合者が見付かることは無く、失敗作として、知識の有る一般の技術者の手に渡ることになる。
一つはこの失敗を元に、1体のユミルの子を電脳化する研究が進められていく。必要なのは経験の備蓄。選んだ巫女を抱えて散らせ、人の感情を学ばせ、有るか無きかの精神に、臨界を幾度も幾度も踏み越えさせる。
試験体は遂に自我を持ち、明確な意思を持ち、その身を変じさせる。共鳴機構によって巫女の内面を知り、意思が完全に一致した瞬間に、目的の為に巫女の意思を絡め取り、眠らせた。
●電脳巨兵オリバレス【試験体:アーヴ】
黒い意思に囚われながら変化する身体に、四肢を捥がれ、焦熱に当てられ、息絶え絶えとなっても、目的の為に、縺れた感情を発露させれば囚われた意思に沈みながらも、目的が明確になり、彼に光が差した。失った四肢はより強く、目的の為にはこの程度では足りず、何より、この身体は目的と全く反対の事を要求し、実行し続ける。
組み替える。もっと強く。組み替える。もっと丈夫に。もっと早く、誰も脅威にならないように。もっと。生まれる事無く散った無念が有るなら、手を伸ばそう。
もう、けして……を繰り返さないように。
●状況把握
両軍は撤退し、代わりに、レミュール巫女の救出を猟兵は任された。
逃走先のオブリビオンマシンは僅かな時間ながらに、その身を既に変質させている。進化速度には目を見張る者があるが、此処で食い止めれば問題は無いだろう。電脳化し、完成に近付いたオブリビオンマシンとは言葉を交わす事も出来る。
最終的には武力行使となるだろうが、言葉を交わしてみても良いだろう。
状況把握を終え、猟兵は行動を開始する。
星川・杏梨(サポート)
『この剣に、私の誓いを込めて』
人間のスーパーヒーロー×剣豪、女の子です。
普段の口調は「聖なる剣士(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
時々「落ち着いた感じ(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで凛とした雰囲気です。
常に冷静さを念頭に置く様に努めており、
取り乱さない様に気を付けています。
戦闘は、剣・銃・魔法と一通りこなせます。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」
楽観的で感情豊か、夢見る乙女な性格の少女
年相応に無邪気であり、根本が人でない故に残酷
神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も一応遵守しようとするが、それはそれとして楽しそう、面白そうで物事を判断し、それを優先して行動する
バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ
戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、捕食等の野性味溢れる攻撃スタイル
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる
ヘンペル・トリックボックス(サポート)
「ヘンペルと申します、しがない紳士です。お茶のついでにちょっとしたマジックでも……如何ですかな?」
【設定】
UC偽身符で作られた、本物そっくりの式神です。
【イメージ】
のらりくらりと現れる、紳士姿の胡散臭い奇術師です。胡散臭いの延長線上で、符術も使います。
【性格】
常に礼儀正しい姿勢ではいますが、要所要所でしれっとボケを入れる剽軽モノ。放っておくと延々戯言を垂れ流します。
【行動理念】
『誰かの笑顔のために』行動します。水面下で老体に鞭打って頑張るタイプです。
【好き/嫌い】
笑顔、のんびり、甘いもの/作り笑い、不実、紳士的でない行動
【その他】
ノリは良い方です。感覚で動かしていただいて結構です。
●戦前ティーブレイク
「やあ、初めまして、お嬢さん、ご機嫌は如何でしょう?」
彫りの深い、髭を蓄えた顔が印象的な、ワインレッドの礼服の埃を丁寧な所作で払う。穏やかな笑みを湛え、巨人を前にして、丁度、通り縋った所で気になって寄ってみたと言うように、ふらりと姿を現した。
「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。猟兵とお見受け致しますが……私に何の用でしょう?」
「ああいや、これは失礼。私はヘンペルと申します。見ての通り、しがない紳士でして、お茶のついでにちょっとしたマジックでも……如何ですかな?」
礼服と同じ色の赤茶色の帽子を取り、ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)は丁寧に頭を下げ、数秒静止させてから、頭を上げ、礼服と同じ、ワインレッドの帽子を被り直し、指を鳴らす。虚空から現れたティーセットからは、蒸らし終わった茶葉の香りが、湯気と共に周囲を満たしていく。ヘンペルが、ティーポットを手に取り、素早く高い位置に持ち上げながら、カップへ一気に紅茶を注ぐ。
彼女には持てないであろう、小さなカップを浮かせ、口元に持って行きながら、仕込み杖を手元で軽やかに回し、軽妙な炸裂音と共に、花束を出してみせる。
「お口に合いますかね?」
「この様にもてなされるのは、初めてなのですが……不思議な味がするものですね。でも温かく感じます」
「素直なお嬢さんで良かった。どうして、私達が出張る様な事態に?」
「私は、目的の為ならば、倫理や道理と言った物を容易く排除し、効率化出来る存在です。それ以外は望まない、必要が無い。人の世にはそぐわない存在だと自覚しています」
「成程、然し、目的とやらは明かしては、くれないのでしょう?」
無言で、ヘンペルの力に頼らず、自身の力でカップを浮かせ、傾ける。話すかどうか迷う様な仕種に、ヘンペルは顎髭を撫でた。
「肯定します。これは既に私の存在意義でもあり、共有することに意味を見出せません。」
「そうですか……」
ヘンペルは悲しげに瞳を曇らせ、カップを持ち上げ、紅茶を多めに流し込む。何時も通りの砂糖の量に、少々苦味がきつく感じるのは、きっと気の所為だ。
●怪物と怪物
「おじさんばっかりずーる-い! わたしも遊びたいんだよう! ねーねー、お名前、お名前教えて!」
我慢が効かないとはしゃぐ度に、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)の、ゆるくウェーブの掛かった、ボリュームの有る金髪が風に揺れる木の葉の様にざわめき、好奇心を湛えた大きな瞳が青く光る。二足歩行に適した骨格が四足歩行に適した物に変質し、膨れ上がる筋肉に耐え得る骨質に作り替えられ、口が大きく裂けると共に、犬歯が伸び、竜の顔を形作る。長いプラチナブロンドはそのまま、しなやかな背の上で、鬣のように蓄えられ、会話が終わった敵に、凄まじい脚力でじゃれつく様に突貫する。
「先程の彼は兎も角。貴方に名乗る義理は無いようです。考えるに、貴方は私と同じ、災害を振り撒く側なのでしょう?」
「さいがい? 何のこと? 意地悪するなら、それでもいいもん!」
宙空に逃げた巨体を捉え損ね、すぐさま脚に力を込め、遊び相手を逃すまいと、ために跳躍。
「円を以て星を記し、線を以て辰を成す。ただ、紙と丹にて世の理を示す。土行鎮星、喼急如律令。お嬢さんと戦うのは、あまり気が進みませんねえ……」
ヘンペルが印を結ぶと共に、アウルの周囲に防護結界が展開される。飛翔と共に耳を打つ洗脳電波を打ち払う。遊びと称した、体を刈り取る凶悪な爪撃は、惜しくもアーヴには届かない。
「空に逃げるなんてずーるーいー! おりてこーい!」
アウルが空に描かれる軌跡を地から追走する。
●帚星
「……少しだけ、羨ましいわ」
限定された情報で、断片的に事情を察した星川・杏梨(聖炎の剣士・f17737)は、不足情報を敢えて切り捨て、多くの幸福を守る事に決めた。揺るぎのない意志力が、黄金色の粒子光となって、彼女の全身を覆う。細身の両刃剣を、腰を落とし、胸の位置で突き出す様に構え、敵の機動を予測。後ろ足を蹴り、一足飛びで跳躍。黄金色の流星が、白色の巨人に追い縋る。離脱が間に合わないと判断し、防御手に差し出した腕を押し貫くと同時、生まれ出た頭に、躊躇無く、力任せに切り上げると、瞬く間に腕が再生する。単純な剣撃では効果が薄いと、一度、敵を蹴り、反動で離脱、追い打ちに、愛用のライフルを取り出し、エネルギーカートリッジを装填、銃口の光弾収束を見切り、トリガーを引く。三度瞬いた帚星が、白金の軌跡を限定する。
「このまま、支援砲撃に移行ね……」
敵の弱点を探りながら、ヘルメットを被り、バイザーを下ろす。表示される各種データを処理しながら、杏梨は、冷静にライフルの弾道を見極め、照準を定め、引き金に指を掛ける。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アトシュ・スカーレット
◎
うーん…遠距離で戦った方がいい感じ?
洗脳電波は厄介だけど…
防御用の近距離装備(武器受け)とか援護に使えそうな遠距離武器(援護射撃)がないか調べて、あったら具現化させるよ
【展開術・剣聖式】と同じ【呪詛】を武器に纏わせていこっか
機会があれば【鎧無視攻撃/鎧砕き/2回攻撃】で戦っていこう!
防御は【激痛耐性/狂気耐性/結界術/オーラ防御/残像】で回避しておいて、当たった場合の保険も込みでやっとくか
シーザー・ゴールドマン
さて、どうやら喋れるようになったようだね。
何か主張したいことがあるのなら最期なのだ。思い切り話たまえ。
君の望みが叶えられるかは保証しないがね。
『ルベル』に搭乗したまま(ウルクの黎明は継続。今回は自分で操縦)
超音速で近づいてオーラセイバーを剛柔自在に振るっての戦闘。
敵powucは変形の起こりを見切って、頭部が具現化した瞬間、衝撃波で破壊します。
ある程度、弱らせたら後付けのコックピットを抉り取り、巫女の安全を確保してから大上段からの振り下ろしと、その剣尖から発した衝撃波で両断します。
◎
村崎・ゆかり
「式神使い」と器物覚醒で『迦利』を制御。
「空中戦」で飛びながら、目標と交戦。向こうも飛べるみたいだから、「レーザー射撃」の「一斉発射」「制圧射撃」「弾幕」で削っていくわ。電磁バリア、破れるかしら?
機を見て、機体の鋭角部に「全力魔法」の「オーラ防御」を展開。一気に突っ込んで、オーバーフレームに「貫通攻撃」。そのまま「なぎ払い」、傷口を広げて。
アーヴ、だったかしら? 巫女と引き替えにした自由の味はどう?
この国の技術者達の考えに振り回されたことには同情するけどね。
兵器に自我を与えるべきではない。
兵器は所詮使い潰す物。その一つ一つに感情移入してたら戦争は出来ないわ。
心を得たのが不運と思って散りなさい。
●光帯
地上にはアウルとヘンペル。宙空は絶え間なく帯状の光弾が放たれ、限定された機動は幾ら高速で有ろうと、目標に食らい付くのに大した手間は掛からない。村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は風天の印を結び、真言を紡ぎ、GPD-331迦利と自身を更に加速させ、後部から、光線を包囲するように拡散させ、射出させる。食い付いた二つの影と迫り来る脅威に、アーヴは躊躇無く障壁を展開し、光線の弾幕を歪曲させる。
「アーヴ、だったかしら? 巫女と引き替えにした自由の味はどう? 貴方の境遇には同情するけどね」
「犠牲にして来たのは彼等です。私が、無関心に居られたと、貴女は言うのですね」
「あら、思ったより優しいのね? でもね、兵器に自我を与えるのが間違いなのよ。兵器に一々感情移入していたら、戦争は出来ないわ」
「同意しましょう。猟兵、貴女の言っている事は正しい。私は生まれて来るべきでは無かった。それでも、私は……」
「あー……思ったより物分かりも良くて調子が狂うわ! 分かった、分かったわよ! 譲れない物が有るのね。なら、私が出来るのは全力で貴方に付き合う事だけよ! 負けてなんてあげないから、せめて、心を得たのが不運と思って散りなさい! 名前くらいは覚えておいて上げる! 迦利!」
呼びかけと共に、機体周辺に無数の光球が浮かび、無数の帯状の光線が放たれ、アーヴを追尾し、屈折しながら、追い立てる。愛用の白一色を展開。52枚の呪符を反射ユニット及び補給ユニットとして変幻自在の軌道を描かせ、アーヴを苛烈に追い立てる。
●白夜と極光
「……遠距離で戦った方がいい感じ? 洗脳電波は厄介だよね」
後方から展開する高機動戦を確認し、彼処に混ざるかどうかを考え、自身の好む攻撃方法を思い返し、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は一応の距離を保ちつつ、Auroraのマン・マシン・インターフェイスの理解を深め、武装を手動操作で探り、頭に入れて行く。
「基本はさっきのシステムによる生成だけど、プリセットも有るよね。障壁機構なんかは予め組み込まれてた訳だし。後は一度生成した分はそっちが自動登録したり、こっちで手動登録出来る感じかな。今必要なのはっと」
予め登録された武装から、現在に必要な武装を引き出し、予め登録されていた武装を魔力を注いで生成する。機体が極光色の魔力外套を纏う。
「遠距離は魔力放出系しか無いみたいだけど、何で効率化しなかったの?」
――データベースより、Auroraプロジェクトは機体完成と共に中断され、予定されていた兵装開発は打ち切られました。
「……まあいっか。戦えない訳じゃないし。腐食の焔。極夜と交わりて、我等の敵を灰燼と帰せ!」
――目標の熱源特性を把握。魔力充填、完了。
詠唱と共に、機体周辺に無数の黒白の光球、紫色の光線に追い立てられる敵に向け、腐食を宿した魔力の炎球が、遙か先の敵を照準に定め、螺旋を描き、高速で追尾する。魔力式の非実体弾頭が、アーヴに取り付き、展開された電磁障壁と同化し、障壁を文字通り食い破る。その特性のみを学習し、腐食の非実体弾頭を遙か遠方に居るアトシュに向け、雨の様に降り注がせた。
「位置特定されてるの!? 高性能だなあ」
飽和攻撃に、極光色の外套が空気を揺らめかせ、機体の所在を僅かにズラす。 飽和する非実体の腐食光弾を分解し、純粋な魔力として吸収する。
「保険掛けておいて良かった。この調子でどんどん行くよー」
●目的は単純
「ふむ、中々に奥ゆかしいと言うべきかな。まあ、最期を迎える時に改めて、聞いてみるとしよう」
紫の光線に腐食の黒白、地上戦力と、更に精度を増し、位置と角度を変え、飛来する流星の様な魔力弾頭、アーヴの逃走経路は塞がれ、頼みとなっている電磁シールドは食い破られ、洗脳電波は各々が対処法を持っている。
軌道を限定されて行く中で、紅と荘厳を纏う機体が、仲間の砲火の軌道すら予測し切り、超音速で駆け抜け、あっさりとアーヴの隣に並び、電磁バリアごと、加速を乗せた光剣の一刀が片腕を斬り落とす。負傷再生の間を与えず、電磁バリアを食い破った黒白の焔が傷口に取り付き、再生を阻害。戸惑いも抵抗の暇も与えずに、怜悧な剣閃が上空から叩き切る軌道で、もう片方の腕を削ぐ。高速戦闘下で敵の逃走経路を潰しながら、ルベルが縦横無尽に空を舞う。アーヴの動きが封じられ、好機と見たゆかりが、迦利の鋭角に霊力を集中。風天の印を結び、更に加速。機体を突貫させる。纏う電脳の皮膚に亀裂が入り、そのまま亀裂を広げるに薙ぎ払う。
「そろそろ、コクピットを頂こうか」
胴部に有るコクピットを双剣で綺麗に抉り取り、オドを操作し、地上に居るヘンペルの近くに送り届けた。
「……さて、敗北は決定的だと思うが、主張したい事はあるかね?」
「私は彼女を……守りたかった」
「結果だけ言ってしまえば、君は守り切る事が出来なかった。残念ながら、その望みを叶える事は出来ないだろう。彼女は、君を守りたいと思っていたのだろう? 勿論、君だけでは無いだろうからね」
光剣を大上段にゆっくりと振り上げ、交差する様に振り下ろす。血色の剣風、膨大な魔力の奔流が、ユミルの子を塵に帰す。
●事後
コクピットから目覚めた巫女が意識を取り戻し、猟兵の姿を確認すると、事態を把握し、命を救ってくれたことに礼を言って、丁寧に頭を下げた。意識を引っ張られた時は怖かったが、暫くすると、ゆっくりと眠って過ごす事が出来たと告げ、アーヴを葬った事を伝えると、コクピットの一部品を地面に埋め、墓の代わりとした。
「高価な部品でも無いですし、この程度は良いと思います。アーヴ以外に、認められると良いのですが」
「君を守りたかったと、彼女は言い残していたけどね」
「……その言葉は、とても嬉しく思います。だから……」
それだけで十分だと、少女は言う。巫女を兵器としか見ていないとしても、彼女と関わる国民を嫌う理由も、戦場を共とする巫女の同胞を置き去りにする理由も、彼女には無く。だからこそ、アーヴは守りたいと願ったのだから。
教会からの迎えが来ると、もう一度、軽く頭を下げる。これからは、猟兵を名乗る者達を歓迎するようにと、教会に言い含めながら、帰路についた。
●終幕
アトシュは事が終わった後、暫くAuroraの機能把握に努め、武装を見繕おうか思案したが、根本的に魔力で動いている以上、この世界で相性の良い武装を探すより、別世界で見繕った方が良いと早めに結論付けた。
シーザーはルベルの負傷チェックとメンテナンスを手早く済ませると、暫く身体の使い方を教え込む。
ゆかりは幾つか興味深い資材を国内で見繕い、自分の研究室へ持ち帰る。
ヘンペルの偽身は霊力が切れ、身体を構成していた符が風に浚われ、はらはらと世を渡る。
アウルは遊び相手を探してそのまま隣国に突撃し、竜の姿で思う存分キャバリアと遊んだ様だ。
杏梨は事情を知り、今回の件を、結論は決まっているが、改めて考えたかもしれない。
猟兵達はそうして、日常へ戻っていく。
大成功
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