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血の流れが集う場所

#ヒーローズアース #戦後 #知られざる文明

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 ――ヒーローズアースの海の中。
 今日もまた、1匹の魚がサメの餌食となって血を流す。
 突き立てられた牙から、血が噴き出す。
 噴き出した血は、海を紅く汚した。
 その汚れは海水に希釈され、徐々に色を失い、やがては海の一部へと還る。
 そのはずだった。
 突然、その血がある方向へ向かって引き寄せられていく。
 その現象が海のあちこちで起こり、それらの流れが一つに合流し、海の中で血の川となっていた事は、全国一面のニュースになった。

 ――グリモアベースにて。
「今回の仕事はヒーローズアースのアトランティス、その海底洞窟に潜むオブリビオンの討伐だ。」
 灰色の腰まで伸ばした髪を雑に一纏めにした男――ヴォルフ・バイリンフェルトがそう言って、集まった猟兵たちを見渡した。
「俺は少し前に予知でヒーローズアースで復興中のアトランティス文明の都市の一つが襲撃されるのを見た。」
 ――アトランティス。
 ヒーローズアース2019の結果、ヒーローズアースの仲間に加わった『知られざる文明』のうちの一つだ。
 アトランティスは、太平洋の海底にある、高度な海洋文明。
 多くの海底人は人間と同じ肉体構造で、特殊な『適応光線』を浴びて海中生活をしているという。
 といっても、長年ジェネシス・エイトを筆頭とするオブリビオンによって支配されてきたため、現在は復興中だ。
「んで、現場を下見してきたんだが、こいつを見てくれ。」
 ヴォルフは猟兵たちに見えるように、ヒーローズアースの新聞を広げる。
 そこには一面でこう書かれていた。
『怪奇! 海中を流れる血の川! 流れつく先はアトランティスか!?』
「海の中で流れた血が、現場近くのアトランティスにある海底洞窟の一つに集められていた。ビンゴ! ってやつだな。」
「目標は血を操って鎧にしてる人型のオブリビオンだ。その配下には水を操るカワイ子ちゃんたちがいる。」
 ヴォルフはそう言うと、グリモアゲートを開く。
 その先は、目標の海底洞窟の近くにある、復興中のアトランティス文明の都市。
「血の川は今も流れ続けてる。向こうに行って見渡せばすぐわかるはずだ。」
「ぶちのめしたら、後始末ついでに、せっかくのアトランティスだ。楽しんでくるのもありだと思うぜ。向こう(アトランティス)からは、復興とかアトランティスのPRとかに協力してほしいって要請もあるから、それに乗るのもいい。」
「行った先は海中だが、向こうの協力があるから、細かい心配はいらねぇ。そんじゃ、幸運を祈ってるぜ。」


二次元の虫
 はじめましての方ははじめまして。二次元の虫と申します。
 今回はヒーローズアースのアトランティス、海の中での戦いとなります。
 第一章、第二章と戦闘が続き、第三章にてアトランティスでの復興手伝いを行います。

 プレイング受付は、全章ともそれぞれの断章が掲載されてからとなります。
 リプレイの執筆は随時行ってまいりますので、章の終了は章のクリア条件を満たし次第となります。
 共同NGな場合はプレイングの最後に×とお書きください。

 海中ではありますが、呼吸や水圧の心配はいりません。
 自前の対策があればそれを使ってもいいですし、なくてもアトランティスの技術によってなんとでもなります。
 動きも、海底に立って地上と同じような動きをしたり、海中ならではの動きをしたりと自由に動けます。

 第一章は、アクア・ガールズ。
 彼女たちは、水でできた変幻自在の武器、【アクア・ウェポン】で攻撃してきます。
 特に水中ではかなり自由度が高いようで、侮れない相手です。
 さらに、戦闘不能者が増えるほど、【アクア・リヴェンジャー】によって強化されていきますので、倒す時は範囲攻撃などで一気に倒すのがいいかもしれません。
 また、奥に潜むボス敵の性質を考えると、血を流させない事も大事になってきます。
 以上を考慮したプレイングには、プレイングボーナスが付きますので、是非とも考えてみてください。
 第二章はボス敵で、詳細は二章断章まで伏せますが、血を操る能力で広い海に流れた血をかき集め、かなりパワーアップしています。
 ただ、このボス敵、水中での戦闘においてある大きな欠点を抱えています。
 その欠点に気付いたり、欠点を突いたりするプレイングには、大きなプレイングボーナスが付き、有利に戦いを進めることができるでしょう。
 第三章では、アトランティス文明を復興させるための活動になります。
 直接復興の手伝いをしてもいいですし、アトランティス文明ならではの魅力を楽しんで、その様子を動画や写真などで発信するだけでも十分なお手伝いとなります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『『海を統べる者の従者』アクア・ガールズ』

POW   :    アクア・リヴェンジャー
全身を【倒れた仲間の体で構成する水のオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【戦闘不能者数】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD   :    アクア・ウェポン
装備中のアイテム「【アクア・ウェポン】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    アクア・ボール
【周囲の水を集めて作ったアクアボール】を降らせる事で、戦場全体が【水中】と同じ環境に変化する。[水中]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 転移して、辺りを見渡す。
 すると、頭上に大きな血の流れ――ニュースなどで血の川と呼ばれているものがすぐに見つけられた。
 その流れは、緩やかに海底へと近づきながら、ここから少し離れた場所へと流れていっているのが見える。
 猟兵たちはその流れを辿っていく事にした。

 しばらく辿っていくと、あちこちから集められた血の川が束ねられ、海底洞窟に吸い込まれるように流れていくのを見つけた。
 あの海底洞窟が件のオブリビオンのいる場所だろうか。
 海底洞窟の入り口に近づくと……。
「くせものー! であえであえー!」
 可愛らしい声と共に、洞窟の奥から次々と現れたのは、水色の髪と瞳を持った可愛らしい少女たち。
 とはいえ、オブリビオンの気配を感じる。敵で間違いないだろう。
 手にはそれぞれ水でできた武器が握られているが、水の中なせいか見えづらく、武器の種類や武器の間合いが掴みづらい。
「ここから先は通しません!」
 少女たち――アクア・ガールズがそれぞれの武器を構える。
「水の中は私たちの領域だって事……思い知らせてあげる!」
 ――そして、戦いが始まる!

『血を……もっと血を寄越せ……。』
 洞窟の奥、血の川の終着点にて、蠢きながらつぶやく赤い影が一つ。
スピーリ・ウルプタス
「以前はダイ様と楽しみましたので今回はフジ様と海中遊泳兼ねて、と思いましたが。
 そうもいかぬようですねぇ」
水の乙女たちの数見れば、召喚蛇に怪我があっては大変と思案顔
※ダイ様フジ様:別UC召喚蛇の名

UC発動
あまたの本体の分身。その鎖たちを伸ばし、しならせ、敵1体に5~6冊で囲み捕らえ。
ある程度の数捕らえたら他猟兵さんに同時攻撃してもらったり
(連携不可であれば)鎖の締め付けで窒息狙う方向

「古き文明とはいわば“触れられる過去”…
 慈しみ護りこそすれ、此方で悪さはいけませんよ」
乙女な容姿の敵さんにも笑顔で容赦なし(どMとは裏を返せばどS也)
防御は本を盾にしたり

ダメージ時「…ッ――これは、中々っ」※悦び


黒木・摩那
アトランティスも久しぶりですね。
前の戦いであらかた片づけたと思ってましたが、まだオブリビオンがいたのですか。
放っておくと、また世界の危機にもなりかねませんから、きっちりと片づけおきましょう。

水中についてはアトランティスの技術にお任せです。

今回のオブリビオン相手には血を流すのは良い手ではなさそうです。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
ヨーヨーで相手の武器を狙って【武器落とし】、それを【念動力】で遠くに飛ばして武装解除したところを、ワイヤーで絡めて、引っ張ることで【敵を盾にする】します。

乱戦に持ち込んで、敵が集まったところをUC【風舞雷花】で一網打尽にします。
水中は電気が通りやすくて助かります。



 アクア・ガールズの前に、まず先陣を切るのは、猟兵二人。
「以前はダイ様と楽しみましたので今回はフジ様と海中遊泳兼ねて、と思いましたが。」
 焦茶色の髪に黒い瞳の美丈夫が、厳重に鎖を巻かれた分厚い本を携える。
「そうもいかぬようですねぇ。」
 袖や裾、そしてネクタイに赤い花柄があしらわれた焦茶色のスーツ姿の彼――スピーリ・ウルプタスは、やれやれと肩をすくめた。
「まったくですね。前の戦いであらかた片付けたと思っていたのですが。」
 その隣に立つのは、茶色い瞳に艶やかな黒い長髪をたなびかせる大人びた少女。
 赤いチャイナ服の上に丈の短い黒のレザージャケットを着た彼女――黒木・摩那は、手に持ったヨーヨーを弄びながら、立ち塞がるアクア・ガールズを見つめた。
「放っておいて、また世界の危機になっても困るし、きっちりと片付けておきましょう。」
 猟兵とオブリビオン、両者が構えながらじりじりと近づいていく。
 その間、スピーリは警戒を怠らないまま、思案顔で隣の摩那に声を掛ける。
「それにしても、少々難儀ですね。血を流しても流させても恐らくは。」
 その言葉に摩耶はうなずく。
「そうですね……拘束してまとめられませんか?」
 彼女の提案に、スピーリは頷いた。
「えぇ、その程度ならお安い御用です。」
 その言葉と共に、彼はユーベルコードを発動する。
 現れるのは彼が持つ鎖が巻かれた分厚い本と同じ物、それが70冊程度。
 水中に浮かぶ本――ヤドリガミである彼の本体たる禁書を複製した物――は、一斉にアクア・ガールズに向かって飛んでいく。
「本が飛んできた!?」
「落ちついて。飛んでくるだけなら叩き落せば……。」
 そう言って、飛んでくる禁書を叩き落そうと武器を構える彼女たちを前に、禁書たちは厳重にその身を縛っていた鎖を解き、その鎖を一斉に彼女たちに向かって飛ばしてきた。
「えぇっ!?」
 ただの封印のための鎖だと思っていた彼女たちは、それでも即座に対応し、飛んできた鎖たちを武器で叩き落す。
 しかし、弾かれた鎖はすぐさま再びアクア・ガールズに向かって襲い掛かり、数人が少し縛られた。
「ぐっ……た、助けて!」
「今助ける……きゃぁっ!」
 力づくで鎖を千切ろうとしたり、刃のある『アクア・ウェポン』で切り裂こうとしたり、と解放を試みるも、その間にも次々と飛んでくる鎖たちによって、それは妨害されてしまう。
「あいつ! あいつを倒せば!」
 また数人捕らえられた彼女たちは、埒が明かないとターゲットをニコニコと見物を決め込んでいるスピーリへと定めた。
 禁書と鎖の包囲網をなんとか突破したアクア・ガールズの一人が、スピーリの頭上から剣の『アクア・ウェポン』で襲い掛かる。
 整った顔を貫いてやると上から迫ってくる剣に対して、スピーリはニコニコとした顔を一切崩さずに見上げ、周囲に浮かんでいた禁書を手に取って盾にした。
 ザクリ、と勢いよく禁書を貫く剣だったが、分厚い事が幸いしたのかページの半ばほどで止まる。
 盾となった禁書の陰から、スピーリがアクア・ガールを覗く。。
「古き文明とはいわば"触れられる過去"。慈しみ護りこそすれ、此方で悪さはいけませんよ。」
 ――そして、サディスティックな笑顔でこう言った。
「お仕置きの時間です。」
 ゾクッとして彼女の顔が青ざめた瞬間、周りを漂っていた禁書たちから鎖が放たれ、彼女を雁字搦めにする。
「いやぁっ!?」
 目の前で雁字搦めにされる彼女に、彼はさらにサディスティックな笑顔を深めていった。
 そこへ、槍の『アクア・ウェポン』を持ったアクア・ガールが彼に襲い掛かる。
「その子を放せぇ!」
 彼女が突き出した槍が伸び、彼に向かって襲い掛かるが。
「私を忘れてないかしら?」
 摩耶の声と共に、横から飛んできたヨーヨーが槍を弾いた。
「くっ!? そんなおもちゃで!」
 ヨーヨーが高速で回転しながら、摩耶の手元に戻っていく。
 アクア・ガールも伸ばした槍を元に戻して、ターゲットを摩耶に変えた。
「伸びろ!」
 彼女がそう言って見えづらい水の槍を突き出し、その穂先を摩耶に向かって伸ばす。
 変幻自在の『アクア・ウェポン』。
 さらには水の中では見えづらくなって、間合いを掴ませない特性を持っている。
 それを利用して、直線的に伸びている――と見せかけて、少し違う角度で槍の穂先を伸ばし、摩耶を貫かんと襲い掛かるが。
 まるで見えているかように、その穂先に向かってヨーヨーを投げつけて弾いた。
「どうして!?」
「視線で丸わかりなんですよ。」
 それをアクア・ガールの視線を観察することで見破った摩耶は、彼女が槍を戻す前に素早くヨーヨーを戻し、反撃とばかりに投げつけた。
 高速回転し、刃を出してアクア・ガールに襲い掛かるヨーヨー。
 彼女は慌てて槍を元に戻し、ヨーヨーを弾くが。
「おっもい!?」
 想像以上の重さに負け、槍が弾き飛ばされた。
 もちろん、これにはタネがある。
 摩耶の持つヨーヨーは特別製で、彼女の意思に応じて、質量をある程度変えられるのだ。
 今回の場合は槍に当たる瞬間に質量を最大にし、その重量でもって槍を弾いた。
 好機と見た摩耶は、腕を振り、ヨーヨーの軌道をアクア・ガールの周りを回るように変えた。
 ヨーヨーはグルグルと彼女の周囲を何度も回る。
 そして、締めとばかりに摩耶が再び腕を振ると、ヨーヨーが通った跡に張られたワイヤーが一瞬でアクア・ガールを捕らえた。
「なっ!? 放せー!」
 腕ごと胴体から縛られたアクア・ガールがジタバタと暴れるが、ワイヤーはびくともしない。
「ふぅ……武器が見えづらいというのは厄介ですね。」
 その様子に、一息つく摩耶。
 分かりやすいとはいえ、相手の視線から行動を推測し、透明に近い槍にヨーヨーを当てるのはかなりの集中が必要だった。
「それで、そろそろいいですか?」
 摩耶がそう言うと、スピーリが頷いた。
「えぇ、ある程度はまとめられました。」
 そう言って見つめるのは、雁字搦めにされた十数人と未だに禁書たちと格闘するアクア・ガールズ。
 禁書たちは、捕らえたアクア・ガールズを集め、捕らえられていない者もできるだけその場所に追い込んで乱戦状態に持ち込むことで、なるべく多く一ヵ所に彼女たちが集まるように誘導していた。
「それじゃぁ……いきますよ!」
 摩耶はそう言うと、ヨーヨーで捕らえたアクア・ガールと共に、乱戦内へ向かって跳躍する。
「励起。昇圧。」
 そのつぶやきと共に、彼女は魔法剣を取り出す。
 その魔法剣は、無数の七色の花びらとなって、乱戦の中に散っていく。
 乱戦内に突っ込んだので、彼女は捕まっていないアクア・ガールズに襲われるが、ヨーヨーで捕らえたアクア・ガールを盾にする事で、攻撃を一瞬躊躇わせた。
 彼女にとっては、その一瞬で十分だった。
「帯電を確認。敵味方識別良し……散開!」
 捕らえられたアクア・ガールズの近くに来たその瞬間、乱戦の中に散っていた花びらが一斉に高電圧を帯びて電撃を放つ。
 その電撃は海中を通して広範囲に拡散し、アクア・ガールズへと襲い掛かった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
 特に捕らえられていた者たちはモロに電撃を浴び、光が収まった頃には完全に息絶えていた。
 捕まってはいなかったが乱戦内にいた者たちも電撃を浴びて痺れ、身体が上手く動かせない。
 その隙に、禁書たちが痺れた彼女たちを次々鎖で捕らえていく。
「少しはしたないかもしれませんが……テンション上がりますね。」
 その惨状を少し離れた場所で見ていたスピーリは、サディスティックな笑顔をさらに深めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティー・アラベリア
水中での戦闘は初めてですが、今までとは違った楽しみがありそうですね!
水の中での爆発って、空や陸とは違った美しさなのでしょうね。
ふふふっ、とっても楽しみです!

・戦闘
専門は空中戦ですが、敵味方が3次元的な索敵が必要という点である程度ノウハウが通用すると思うのです。
水中装備はアトランティスにお任せしますが、可能であれば99式戦闘機動機構で機動力を増強します。
92式魔導波探信儀で敵の位置を特定しつつ、火力投射型魔杖の広範囲火力と思念誘導型魔杖の誘導弾で徹底的に敵を追い詰めます。
ある程度敵を誘導した後、UCと保有火力全てを用いて一挙に殲滅いたします。

同様の戦法を志向する方がいらっしゃれば、共同致します。



「離れて一斉に攻撃すれば!」
 先ほどの攻撃によって、接近戦が危険と判断したアクア・ガールズは、洞窟の入り口から、広い場所へと戦場を移す。
 水の中は自らの領域だと豪語するだけあって、その動きは素早く、一瞬で距離を離して上を取った。
 そして、『アクア・ウェポン』を銃の形に変形させて、一斉に構える。
「うてぇ!」
 彼女たちが引き金を引くと、水の弾丸が放たれた。
 水の中では不可視の弾丸、さらには上からの弾幕は、相当に厄介で接近は困難を極める。
 そこで猟兵の一人が動いた。
「家庭用人形ティー・アラベリア、いっきまーす!」
 メイド服を着た金髪碧眼の少年が、二つの杖を携えて飛び出す。
 彼は泳ぎではありえない速度でアクア・ガールズに向かっていった。
 そのタネは、魔力の光を放つ脚部。
 彼はただの人間ではなく、ミレナリィドールと呼ばれる人型の機械人形なのだ。
 脚部に仕込まれた、本来は高度な空中機動を可能とする機能――99式戦闘機動機構によって、彼は推進力を得て高速で水中を移動することを可能としていた。
「近づけるなー! うてうてぇ!」
 高速で接近してくる彼に向かって、アクア・ガールズは銃の『アクア・ウェポン』を連射し、弾幕を展開した。
 不可視の弾丸で構成された弾幕が、彼に迫る、が。
「ヒャッホウ!」
 彼は勢いはそのままに、身体を捻ったり、ずらしたりすることで弾幕の間をかいくぐった。
 彼に搭載されている機能はなにも一つではない。
 特殊な魔導波を発振し、敵味方の位置を特定するための機能を持った髪飾り――92式魔導波探信儀の応用によって、彼は水の弾丸の位置を把握していた。
「うそ!? 見えないのにどうして!?」
「答える必要はないね!」
 動揺するアクア・ガールズにそう返した彼は、携えた杖のうちの一つを彼女たちに向けた。
「まずはこれかな。照準。」
 彼のその言葉と同時に、杖の先から光の線が伸び、アクア・ガールズが集まっている場所の中心まで伸びて消える。
 嫌な予感を感じた彼女たちが散開しようとした瞬間。
「炸裂!」
 その光の線が示した場所に、一瞬魔力の光と水が収束したかと思うと、次の瞬間に爆裂した。
 水の中だからか、鈍い爆発音と共に水中が震え、衝撃と水流がアクア・ガールズを襲う。
「きゃぁぁぁぁ!?」
「へぇ、水の中ではこうなるんだ。」
 その爆発の様子を興味深く観察し、ご満悦な様子のティー。
 ただ、戦闘不能になるまでのダメージは受けなかったアクア・ガールズは、今度は固まらないように散開しつつ、彼を包囲して水の弾丸を放った。
「おっとっと。」
 上下左右から飛んでくる弾丸を、縦横無尽に動き回ることで回避するティー。
 そして、彼は回避しながら、もう一つの杖を取り出してアクア・ガールズへと向けた。
「お次はこれ! 射出!」
 その言葉と共に、杖の先端から次々と光球が放たれ、高速で彼女たちへ向かって飛んでいった。
 当然、彼女たちは回避行動を取るが、光球は彼女たちに向かって軌道を変える。
「誘導弾!?」
 そんな光球が次々とティーから放たれ、戦場は光と水の弾丸が飛び交う乱戦へと発展していた。
 そんな乱戦がしばらく続いた後、ふとアクア・ガールズの一人が気付く。
「しまった!? みんな、散開して!」
 乱戦の中で、彼女たちはいつの間にか一ヵ所に固まるように誘導されていた。
 また爆裂で一網打尽にされると思い、散開しようとするが、それを防ぐかのように無数の光球が立ち塞がる。
「ただの誘導弾じゃない!?」
 全ては敵の作戦の内だった、と彼女たちは気づいて愕然とする。
 その間に、ティーは既に250体にも及ぶ妖精――魔導砲撃妖精たちを召喚し、照準を定めていた。
「砲撃妖精躍進射撃! すべての火力を前方に! すべての敵を灰燼に!」
 彼のその号令と共に、魔導砲撃妖精が一斉に輝き、彼女たちに向かって魔力の光を放つ。
 そして、それぞれの光が一つに収束し、大きな光の奔流となって彼女たちを跡形もなく消し飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

火土金水・明
「相手に血を流させないようにするために、氷系の攻撃でいきましょうか。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【無酸素詠唱】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『『海を統べる者の従者』アクア・ガールズ』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【水中機動】【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 次々とアクア・ガールズが撃破されていく中、その激戦から少し離れた場所で、一塊となっている彼女たちがいた。
「これだけ固まっていれば、大丈夫だよね?」
 様々な方法で撃破されていく味方に、彼女たちは少し弱腰だ。
 そんな彼女たちは、一塊になって水を圧縮した球状の結界の中に閉じこもっていた。
 これは彼女たちの能力のうち一つ、本来なら地上で水を球状に集めることで、水中環境を作り出す能力なのだが、元から水中だと少し話が変わる。
 水を集めて球状にする事は変わらないが、水を操作する事によって水圧の壁を生み出し、それを強力な防壁として利用していた。
 その様子を眺める猟兵が一人。
「さて、と。どうしましょうか。」
 その魅力的なスタイルを惜しみなく晒した黒のウィザードローブ姿で、艶やかな黒髪をポニーテールにした少女――火土金水・明は、頭にかぶった大きなとんがり帽子の位置を直しながら、彼女たちを見つめ、どう攻めるか思考していた。
(相手に血を流させないように、氷系の攻撃でいきましょうか。)
 そして思考がまとめた彼女は、七色に輝く杖を取り出し、小さく詠唱をはじめながら、アクア・ガールズへ向かって素早く泳ぎだす。
 それを見つけたアクア・ガールズは、即座に銃の『アクア・ウェポン』で彼女に向かって攻撃した。
「く、くるなー!」
 彼女たちの叫びと共に、不可視の弾丸が明に向かい襲い掛かる。
 如何に素早いとはいえ、不可視の弾丸による弾幕を探知手段なしで避けれるわけがなく……。
 ――その弾丸が明に当たると、その姿が幻のように消えた。
「え!?」
 流石におかしいと彼女たちが周囲を見渡すと……。
「残念、それは残像です。」
 複数の明の姿が、様々な角度から彼女たちを取り囲んでいた。
「ど、どっちが本物!?」
 彼女たちが戸惑っている間にも、詠唱は進んでいく。
「ええい、全部うてー!」
 やけっぱちになった彼女たちは、己の直感任せに銃を乱射した。
 しかし、狙うターゲットが分散したことで、弾幕が薄れ、明に回避する余裕を与えてしまう。
 それでも、不可視と言うのは恐ろしく、探知手段がない明本体にも流れ弾のように当たってしまう事もあるが、それは事前に纏っていた魔力のオーラによって弾く。
 ――そして、その時は来た。
「我、求めるは、冷たき力。」
 明の締めくくりの詠唱と共に、アクア・ガールズの水球結界を取り囲むように、無数の氷の矢が現れた。
 そのまま、彼女たちに向かって次々と殺到する。
 しかし、氷の矢と彼女たちの間に存在する水圧の壁によって矢は阻まれ、砕け散っていった。
「ふぅ、なーんだ……。」
 その様子に、彼女たちは安心しきっていたが、これも全て明の計算通り。
 氷の矢が尽きるまで水球の維持に集中していた彼女たちは、ふと身体を震わせる。
「あれ……寒い?」
 炸裂した氷の矢は、その周囲に冷気となって散り、水温を急激に下げていく。
 それを通して、水球の中の水温が徐々に下がりつつあったのだ。
 そして、氷の矢の殺到が止まった頃には、彼女たちを守る水圧の壁は、完全に凍りつき、自らを閉じ込める氷壁と化していた。
「ひ、ひぃ!? さむいよぉ!」
 中の水温はもはや真冬の海を通り越して、凍結寸前。
 凍死する未来しか見えなかった彼女たちは、脱出するべく氷壁に向かって水の弾丸を放つが効果はいまひとつ。
 それでも、一心不乱に氷壁を削るが……その透き通った壁の奥に、彼女たちは絶望的な物を見た。
 ――それは、周囲を取り囲み、こちらに先端を向ける氷の矢たち。
「ふぅ……。」
 その向こう側から、息を切らした明が彼女たちへ杖を向けていた。
(これだけの魔法を連続で使うと、流石に疲れますね。)
 彼女の氷の矢の魔法『コキュートス・ブリザード』に、本来ここまでの冷却効果はない。
 それを、今回は魔法の持つ氷属性の力を増幅させた事でこのような現象を引き起こした。
 その分、詠唱は長くなり、消費する魔力量も増える。
 さらにはそれを短い間に2回も唱えるとなれば、消耗は大きかった。
「我、求めるは、冷たき力……!」
 彼女が絞り出すように詠唱を締めくくる。
 それと同時に、再び氷の矢がアクア・ガールズに向かって殺到した。
 最初のうちは氷の矢が氷壁に阻まれて炸裂するが、破損した氷壁から中に向かって冷気が流れ込んでいく。
 既に凍結寸前であった中の水温がさらに下がっていき……。
「さ、さむ……!」
 それが彼女たちの最期の言葉。
 氷の矢がすべて撃ちつくされた頃には、アクア・ガールズが中で固められた氷の球体が完成していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『鮮血のマーズ』

POW   :    血脈のミノタウロス
戦場全体に、【飛び散ることで衝撃を吸収する、自身の血液】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    血戦のネメアー
全身を【自身の血液で作りあげた自由自在に動く鎧】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃を血液に変換して吸収し血液の総量】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    血肉のウロボロス
【体外で自由自在に操作できる自身の血液】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を自身へ還元できる血溜まりへと変換して】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠トール・ペルクナスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『ふん、使えんやつらだ。』
 洞窟の奥からゾッとするような冷たい声が響く。
 その直後、洞窟から赤黒い固まった血液が伸びてきた。
 それは、血の槍となって、戦闘不能となったアクア・ガールズを貫かんとする。
 ――しかし、血の槍は彼女たちの肌にぶつかると、意外にも脆くポキリと折れた。
『チッ、即席では強度が足りんか……。』
 その言葉と共に、血の槍は解けて血液となる。
 そして、今の今まで洞窟の奥へ向かって流れていた血の川の流れが、止まった。
『もう少し血を集めておきたかったが……まぁいい。』
 ズシン、と洞窟の奥から重たい足音が水の中で鈍く響く。
『貴様らを血の糧とすればいい話だ。』
 重たい足音が徐々に近づいていき……それは姿を現した。
 高さ3m以上はある、超巨大な赤黒い全身鎧。
 それが洞窟の奥から海底を踏みしめながら現れた。
 オブリビオンの気配は、鎧そのものではなく、その中から感じられる。
 さながらキャバリアのように、血でできた巨大な鎧を中から操っているのだろう。
「血を……寄越せ……。」
 その言葉と共に、流れを失い、水中を漂っていた血液が、再び動き出す。
 その流れは彼の鎧の周りを、まるで赤黒いオーラを纏うかのように渦巻いた。
「さぁ、血を寄越せ!」
 そして、彼――鮮血のマーズは、猟兵たちに向かって襲い掛かった!
風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携歓迎

約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも調べる伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。

戦闘は剣士の動きだ。
フェイントを多用する。相手が格上や多数の場合は挑発をして隙を作ることもある。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。


ライザー・ヴェロシティ(サポート)
・出身世界「アックス&ウィザーズ」の猟兵だ
元の世界でも傭兵として活動していた
依頼の傾向は純戦闘
重視するのは報酬だ(金銭、食事等)

仕事は仕事として割り切るスタンスだな
あとは強敵と戦う依頼を好む


・性格は荒っぽいほうだろう
デジタルとか近未来の文化にゃ馴染みがない

・風属性の魔法を主体とするマジックナイトだ
剣に風属性を付与して行う近接戦闘を主とするぞ
使用するユーベルコードは主に近接の強化
または攻撃のレンジや範囲を補うモノだ


・耳がいい
乱戦時とかにゃ僅かな音を頼りに見えない敵の位置を把握するぜ

ただ耳がよすぎるんでな、歌や高音は聞きすぎると頭が痛くなる
特に歌は嫌いだ
味方なら兎も角、敵が歌ってんなら全力で止める


火奈本・火花(サポート)
人探しや潜入を得意とする、UDC組織所属のエージェントです

■平時
『大切な人達の光の為に、私達が闇に立ち向かいましょう』
普段は礼節を弁え、理知的で物腰穏やかな対応を心掛けます
世間一般に「紳士的」とされる態度と相違ありません

■戦闘時
『我々は人類を邪悪や狂気から守る。その為には冷酷を貫く事も厭わない』
UDCや関連団体に相対した時は、非情に徹します
一人称は誇りをもって「我々」と呼称します

■行動傾向
日常・冒険:変装や演技、Dクラス職員や組織の支援を駆使した情報収集が得意です。自らの身を削る事にも躊躇しません
戦闘:機動部隊との連携を基本に、火器や状況を利用した奇襲・速攻を得意とします。ヤドリギは奥の手です


黒木・摩那
やっと洞窟から出できましたね……って何あの鎧。
ああいう重装甲の相手は苦手なんですよね。

ただ、相手もまだ血が全然足りてないようですから、力が出せていないようです。
今のうちに倒さないと大変なことになります。
倒すには血を与えないことが一番です。

魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
UC【トリニティ・エンハンス】で剣に【風の魔力】を付与し、
周囲をかき混ぜることで、血のめぐりを悪くします。
また、【ダッシュ】で急接近し、【鎧無視攻撃】で鎧の隙間を狙って、【衝撃波】な風を送り込むことで、鎧の内側からも血をかき出して、弱体化を狙います。

迷路の答えはスマートグラスのセンサーとGPSでサクッとクリアしたいです



 赤黒い鎧の巨人が、水中とは思えぬ素早い動きで腕を振り上げ、猟兵たちに向かって振り下ろす。
 猟兵たちは散開して、それを回避した。
 轟音と共に、海底がえぐれ、砂が舞い上がる。
「血の塊でできた鎧ですか、厄介な……。」
 長い黒髪を靡かせながら、バックステップで回避した黒木・摩那は顔を顰める。
 その横を、黒い影が横切った。
「血を操るヴァンパイアというのは珍しくないが……。」
 その言葉と共に、飛び出したのは、白い肌に白い髪、そして赤い瞳を持ち黒一色に身を包んだ男――風雷堂・顕吉(トルトニス・フォルトゥナトス)。
 彼は手に持った呪われし刀――ドラクリヤで巨腕に斬りかかる。
 しかし、当然のようにその巨腕は刃を通さない。
 とはいえ、それをある程度予想していた彼は、表情を変えずにすぐさま離脱した。
「量を集めればここまでできるか……。」
 様子見とばかりに彼は鎧の巨人を興味深く見つめながら、一旦刀を納める。
 それと同時に、巨人は腕を上げて姿勢を戻した。
 振り下ろした跡には、小さなクレータとその中に満ちた血だまりが残る。
 その血だまりは、時間と共に血の流れとなって浮かび上がり、巨人を渦巻く血の流れに合流していった。
「分析する限り……どうやらあのオーラのような血の渦巻きから少しずつ、血を鎧の表面へ付着させているようですね。」
 その様子を遠巻きで見つめていた色白で藍色の髪をショートカットにしたスーツ姿の少女――火奈本・火花が伊達メガネの位置を直しながら、猟兵たちへ分析した情報を伝える。
「付着したばかりではそこまで強度はありません。なので……。」
「先手必勝ってワケだ!」
 彼女の言葉を遮るように、灰色の影が飛び出す。
 灰色のポニーテールを振り乱しながら飛び出したのは、板金服の上から黒いマントを羽織った男――ライザー・ヴェロシティ。
 彼は風の足場を発生させて、それを踏むことで勢いをつけ、素早く巨人へ接近する。
 当然、その接近を簡単に許すような巨人ではなく、腕を横なぎに振って追い払おうとするが。
「おせぇ!」
 彼はアクロバティックな動きで身体の向きを変え、足元に生成した風の足場を踏んで強引に方向転換する。
 腕を掻い潜って接近すると、巨人の胴体部分に風の魔力を纏った片手剣で表面をなぞるように斬りつけた。
 彼の斬撃は確実に鎧の表面を削り取る。
 さらに、暴風の如き風の魔力によって、水中が泡立ち、巨人が纏っていたオーラの如き血の渦巻きが乱れた。
「このまま、丸裸になるまで削り取ってやる!」
「なるほどね。」
 その様子を見た摩那は、手に持つ魔法剣『緋月絢爛』に風の魔力を纏わせる。
 そのまま、海底を踏みしめ、巨人に向かって素早く踏み込んだ。
「削ると同時に、補強を防ぐなら、これが最適解ね。」
 そのまま、ライザーと同じ要領で、脚部の表面を削り取るように剣を振りぬいた。
 削り取られた表面は血液となって水中を漂う。
 本来ならば、この血液もマーズによって血の渦巻きに収束させられるはずが、ライザーと摩那が風の魔力によって海中をかき乱すせいで、それができない。
「……見つけた!」
 さらに、削った事で生じた、血の鎧のわずかな隙間を見逃さず、摩那はその隙間に向かって剣を叩きつけた。
 当然、刃が通るほど大きな隙間ではないが、目的は風の魔力を宿した剣を叩きつける事で生じる風の衝撃波。
 そのわずかな隙間に風が浸透する。
 さらにこの場は海中、風が浸透したそばから海水も浸透し、固められた血を内側から解していく。
「ええい、チマチマと!」
 マーズも腕を振り、足を上げて抵抗するが当たらない。
 血を操る能力によって、サイズに反した素早い動きが可能といっても、あくまでもその程度。
 素早く動く小さな的相手に、腕や足を当てられるほど素早い動きはできない。
 ライザーが上半身を、摩那が下半身を、それぞれヒット&アウェイの動きで少しずつ削り取っていく。
「チッ!」
 その巨体が一回り小さくなった時、マーズが舌打ちしたかと思うと、巨人の動きが止まる。
 その様子にライザーと摩那は異変を感じて咄嗟に離脱しようとするが、そこに彼らの周囲を漂っていた血液が一瞬で固まって、二人を拘束した。
「なっ!?」
「くそっ!」
 意識の外であった突然の拘束に驚いたのは一瞬。
 二人は脱出しようともがく。
 すると、思いのほかあっさりと血の拘束が脆く崩れた。
 とはいえ、一瞬とはいえ動きを止められたのは事実。
 再び動き出した巨人の腕と足を回避するために、二人は一度大きく離脱した。
「……なるほど、それが弱点か。」
 その様子を見ていた顕吉は、確信を得たように頷く。
 その隣で、これまた様子を見ていた火花が思案していた。
「血液を即席で凝固させると、どうしても水中では水という不純物が混じってしまうために、強度が落ちるようですね。」
 そこまで言って、彼女の視線は鎧の巨人に向く。
 彼女の目にはコンタクトが付いており、そのコンタクトに多数の情報が映し出されていた。
「不純物を取り除いて固める事も可能なようですが、そのためにはある程度の時間が必要なようです。」
 時折伊達メガネに触れながら、彼女はさらに言葉を続ける。
「とはいえ、このままでは詰めの一手が足りませんね。」
 そこで、顕吉が彼女に質問する。
「どうすればいい。」
「関節部を狙って渾身の一撃を。あれだけの動きをしている以上、どう足掻いてもこの部分は他の箇所より柔らかくせざるをえないでしょうから。」
「了解した。」
 そんなやり取りと同時に、彼は走り出す。
「全力だ。」
 巨人へと近づく間に、彼の深紅の瞳が輝き、禍々しい気配が増していく。
 それに気づいたマーズが、足止めをせんと周囲を漂う血液を拘束具として彼を捕えようとするが、その尋常ならざる力によって、一瞬で拘束が崩れた。
 彼はダンピール。
 人間とヴァンパイアの間に生まれた半魔半人の存在であり、そのヴァンパイアの血を覚醒させる事で、爆発的に戦闘能力を増大させたのだ。
 そのまま、一瞬で巨人の足元へ踏み込み、左脚の関節部へ向けて、手に持った刀――ドラクリアで斬りつけた。
 鈍い音と共に刃が止まるが、先ほどとは違い、少しずつ刃がめり込んでいく。
 そして、身体能力に任せた、圧倒的な力技で刀が振り抜かれた。
 左脚が切断され、巨人が大きくバランスを崩す。
「ぬぉぉぉぉ!?」
 マーズが狼狽える。
 それを好機と見た、ライザーと摩那がバランスを崩した巨人へ向かって踏み込んだ。
 ライザーが右腕、摩那が左腕の関節部に向かって風の魔力を纏った武器を振り上げる。
「これで!」
「ダルマいっちょあがりだ!」
 ――そこで、マーズは決断した。
「ええい! 血の迷宮よ!」
 一瞬でマーズが纏う血の鎧が解け、二人の武器が水を斬る。
 その次の瞬間、血が水の中を覆いつくし、猟兵たちの視界を塞いだ。
「むっ!?」
「往生際の悪い!」
「最後の足掻きってやつか!」
 近くにいた三人が血の中に消える。
 そして、血は一瞬で広範囲に広がり……。

「これは……血の迷路ですか。」
 その血が固まり、視界が開けた時、目の前には広大な血の立体迷路が広がっていた。
 遠くにいたにも関わらず、迷路内に巻き込まれたために孤立した火花は、それでも冷静に状況を判断すると、懐から拳銃を取り出す。
 そして、水中でも使用可能な弾丸を装填して、壁に向かって構えた。
「とはいえ、即席で完成した以上……。」
 そのまま、血の壁に向かって何発か発砲すると、あっけなく壁に穴が開いた。
「やはり、強度はそこまでではないですね。とはいえ、時間と共に固まっていくでしょうから、急ぎましょうか。」
「その必要はない。」
 ゾッとするような冷たい声に、ハッと振り返る彼女。
 そこには、赤黒いローブに身を包んだ男がいた。
 咄嗟に身を翻し、距離を取ろうとする火花だったが、その前に男――鮮血のマーズが左手で彼女の首を掴み、身体を持ち上げる。
 その過程で、彼女が掛けていた眼鏡が外れてゆっくりと海底に向かって落ちていく。
「さぁ、血を……寄越せ!」
 右手に血液を収束させた短剣を生成し、それを彼女の首筋へ突き立てようとした。
 確実に殺せる。
 そう彼が確信した瞬間だった。
「私の血が欲しいの?」
 この場に似合わぬ、透き通った可愛らしい声が、水中にも関わらず、やけにハッキリと聞こえた。
「なに?」
 思わずマーズは彼女の顔を見つめ――戦慄する。
 彼女は――嗤っていた。
 その瞬間、嫌な予感に従ってマーズは彼女を手放すが、遅い。
 彼女の目の前に、葉っぱの塊が召喚される。
 そして、その塊から、何かがマーズに向けて放たれた。
 左肩に命中した『それ』――ヤドリギの種は、一瞬で彼の肩に根を張り、急成長をはじめる。
 彼が纏う血液を啜りながら、さらなる血液を求めて、彼の心臓に向けて根を伸ばさんと成長していった。
「ぬぉぉぉぉぉ!?」
 本能的にマズいと感じたマーズは、自らを奮い立たせるように叫び、ヤドリギが根を張ったために、使い物にならなくなった自らの左肩を根元から切り落とした。
 それと同時に、周囲の壁を壊して、摩那、ライザー、顕吉の三人が現れる。
「見つけたぜ!」
 ライザーが荒れ狂う風の魔力を纏わせた槍を振りかざす。
「いい加減に!」
 摩那が風の魔力を宿した魔法の剣を構えた。
「ここまでだ。」
 顕吉が禍々しい気配を漂わせた刀を振りかぶる。
 三人がそれぞれ違う方向からマーズに向かって斬りかかった。
 肩を失った強烈な痛みを感じているにも関わらず、マーズは咄嗟に血の鎧を形成するが、先ほどの鎧の巨人と比べれば、強度が圧倒的に足りない。
 彼は三方向から鎧ごと切り裂かれ、海中に血が溢れた。
「ぐぅっ!?」
 大きなダメージを受けたマーズだが、咄嗟に自身の血を固めて止血、さらには周囲に漂う大量の血液を濃縮して、小さな立体迷路を構成した。
 四人をその中に閉じ込め、自身はその場から離脱する。
 当然、壁を壊してすぐさま追撃しようとする四人だったが、血の濃度が高い場所で生成されたからか、先ほどのように簡単に壊すことができず、逃走を許してしまう。
「はぁっ……はぁっ……。」
 左肩を失い、満身創痍のマーズ。
 彼が逃げる先は、自身が掻き集めた大量の血液が漂う、洞窟の入り口近く。
「血を……血を……!」
 そうつぶやきながら、彼はノロノロと泳いでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

神楽坂・神楽
まずは、両手の刻印で洞窟入口近くの血を全て吸収しよう

血を操る敵とは何回か戦ったことがあるが、お主のようにサメの食べ残しを集めるような輩は初めてだ
加えて、かような洞窟に閉じ籠もっているとあれば、放っておいても良いかと思ったのだが――先の戦いを見るにそうも言っていられぬようだな
ここで引導を渡してやるゆえ、覚悟せよ

再び海中より血を集めて鎧を形成する暇など与えぬよう、氣を纏って水流を攪乱しながら一気に接近
拳や脚に氣を集約して攻撃し、ガードを空けさせたならば、UCにより[貫通攻撃]を込めた一撃を放とうぞ

さて、お主は血が好物のようだが、わしの刻印に好き嫌いはない
欠片も残さず、お主を喰らってやろう



 マーズが洞窟の入り口にたどり着いた時、無我夢中だった彼はようやく気付いた。
「これは……血が……!?」
 海中に漂っている血の量が明らかに少なくなっている。
 海中である以上、時間が経つにつれ血が拡散するのは当然の事であるが、戦いがはじまってからまだ一時間も経っていない。
「血を操る敵とは何度か戦った事はあるが……。」
 その声に振り向くと、両手をかざし、その手のひらの刻印で血を吸収している、黒髪の白いチャイナドレス姿の少女がいた。
「お主のように、サメの食べ残しを集めるような輩は初めてだ。」
「ッ! キサマァ!」
 マーズはその言葉に逆上し、血の槍を形成し、それを彼女に向けて伸ばした。
 それを彼女は、おっと、と血を吸収するのを中断し、軽く避ける。
「これほど薄めても尚、そのような芸当が可能とはのぅ……放っておいても良いかと思っていたが、そうも言ってられぬようだな。」
 認識を改めた彼女――神楽坂・神楽はマーズに向かって構える。
「ここで引導を渡してやるゆえ、覚悟せよ。」
 その言葉と共に、海底の砂が舞う。
 刹那、マーズが吹き飛んだ。
「カハッ!?」
 気がつけば、先ほどマーズがいた場所に神楽が手の平を突き出して立っている。
 吹き飛ばされたマーズが態勢を立て直し、血を集めようとするが――。
「暇は与えん。」
 再び砂が舞う。
「ぐぅっ!?」
 マーズは咄嗟に転がり、かろうじてその一撃を回避する。
 が、後先を考えず転がったために、無防備な状態を彼女の目の前に晒してしまっていた。
 それを見逃さず、彼女は無防備な彼を蹴り上げる。
「ごっぼぉ!?」
「さて、これ以上は弱い者イジメだの。」
 浮かび上がったマーズを見上げ、神楽は海底を踏みしめる。
 たったそれだけで、その足元にはクレーターができるほどの強い力で。
 彼女の肉体は一見、それほどの力を秘めているようには見えない、女性的で色気のある、健康的な体つき。
 しかし、その実、長年の鍛錬によって己の肉体に10層もの氣を纏うに至った武術家なのだ。
 そして、彼女はその氣を両の手に収束させる。
「これで終わりじゃ。」
 マーズが咄嗟に血の鎧を形成しようとするが、ここで気づく。
「血が……ない!?」
 マーズが瞬間的に制御可能な範囲には、既に血液が存在していなかった。
 あれほどの一撃にも関わらず、彼女はマーズに対して一滴の血も流させていなかったのだ。
 マーズが絶望した瞬間、先ほどとは比べ物にならない量の砂が舞った。
 彼女がマーズに肉薄し、その両の手を彼の肉体にかざすように触れる。
 その瞬間に、氣を解放し、マーズの肉体を貫いた。
「がぁっ!?」
 まるで電気ショックを浴びたかのように身体を痙攣させるマーズ。
 しかし、先ほどのように吹っ飛ばさず、彼女の両の手は彼に触れたまま。
「さて、お主は血が好物のようだが、わしの刻印に好き嫌いはない。」
 彼女の両の手の刻印が妖しく輝く。
 ――その刻印は、彼女と共生関係にある、万物を喰らい、吸収する魔術装置。
「欠片も残さず、お主を喰らってやろう。」
 ――鮮血のマーズの野望は、ここに潰えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『知られざる文明を復興しよう』

POW   :    体力で復興を手伝ったり、体当たりで文明の魅力を伝える動画を撮影する

SPD   :    手早く復興を手伝ったり、その文明の特別な技術等を「やってみた」動画で紹介する

WIZ   :    復興の為の書類仕事を手伝ったり、その文明の魅力を伝える文明紹介動画を作成する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


仕事を終えた猟兵たち。
掻き集められた血液は未だに漂ってはいるものの、時間が経つにつれて薄められ、やがては海の一部となるであろう。
この件は一件落着といったところか。
ところで、鮮血のマーズが陣取っていた海底洞窟は、アトランティス文明の街とそこまで離れていない。
少し上に泳いで眺めるだけで、街並みが見えてくるだろう。
アトランティス文明ならではの、階層ごとに入り口があるビルや、海に存在する様々な物をモチーフにした、ユニークな形の建築物等が立ち並んでいる。
といってもまだまだ復興中のようで、ちゃんとした建物が立ち並ぶ中に崩れた建物や建設中の建物も混じっているようだ。
――もし鮮血のマーズを倒せていなかったら、崩れ去っていたであろう光景。
猟兵たちが守ったその街で、少しばかり楽しんでいくのも悪くない。
水中ならではの娯楽施設に、海中の景色を楽しめる観光施設もある。
何もせずにただ漂うのも魅力的かもしれない。
真面目な者は復興の手伝いをするのもアリだろう。
力仕事や書類仕事、人手はいくらあっても足りないという事はない。

戦いに関わった者も関わってない者もいらっしゃい。
ここは海の中、アトランティス文明の街。
黒木・摩那
アトランティスでゆっくりするのは初めてです。
せっかく来たからにはその魅力を余すこと味わいたいですね。

アトランティスといったら海!
海と言ったら海の幸でしょう。
活きの良さはピカイチ、間違いないです。

ここはアトランティスの海の幸を堪能するしかないですね。
どんな料理方法があるんですかね。
焼く? 煮る? 炒める? それとも素材のまま?

海の料理店にもお客さんがたくさん来てほしいですから、
おいしくグルメレポートしたいです。



「お邪魔します。」
 そう言って、艶やかな黒髪をたなびかせながら、アトランティス料理店に入った女性――黒木・摩那は、表情は凛としているものの、目を僅かに輝かせて、興味津々とばかりに店内を見回した。
 内装はそこまで地上と変わらない、テーブル席とカウンター席のある普通の料理店だ。
「いらっしゃい! 見ない顔だね。地上から観光かい?」
 彼女を出迎えるのは屈強な体つきの気前の良さそうな男。
「えぇ、そんなところです。どういう料理があるんでしょう?」
 彼女が率直な疑問を提示すると、男は胸を張って言った。
「おう! それじゃあそこに座ってな。アトランティスが誇るグルメシリーズを御馳走してやるぜ!」
 そう言って、男は彼女をカウンター席に誘導した。
 カウンター席は目の前が調理場になっており、調理の様子を見ることができるようになっている。
「えぇ、楽しみにしています。」

 調理場に立った男は慣れた手つきで、取り出した魚(見たところマグロに似ている)を素早く三枚におろし、おろした身を一口サイズに切り分けて、花のような形になるように皿に盛りつける。
「わぁ……すごい。」
 その様子を見ていた摩那は思わずそうつぶやいた。
「はい、お待ちどうさん。まずはコイツだ、アマシオマグロ。」
 そう言って男が彼女の目の前に置いたのは、一見すると何の変哲もない、脂ののった赤身魚の刺身。
 それを見て、彼女はふと思い出したかのように、キョロキョロと周りを見渡した。
 が、目的の物が見当たらない。
「あれ、醤油や山葵のような調味料はないんですか?」
 その様子に、男はいいや? とガシガシと後頭部を掻いた。
「あー、そういや地上ではショウユとかワサビとか、チョウミリョウってやつ? 使うんだっけか。」
 チョウミリョウ、という明らかにぎこちない感じの言葉を口にする男に摩那は目を見開く。
「もしかしてアトランティスには調味料という概念がないんですか!?」
 男はその言葉に頷き、さらに補足するように衝撃の事実を告げた。
「ついでに、アジツケって言葉もよく地上からのお客さんから聞くんだが、よく分かってねぇんだよな……。」
 カルチャーショック!
 彼女が固まってる間にも、男は言葉を続ける。
「まっ、騙されたと思ってそのまま食べてみな。」
 その言葉によって落ち着きを取り戻した彼女は、いただきます、と手を合わせて……致命的な事に気がついた。
「……ん? 箸がありませんね? それにフォークもナイフもスプーンも見当たらないんですが。」
「なんだそりゃ?」
 カルチャーショック!

 度重なるカルチャーショックを受けた摩那であったが、刺身を調味料なしで食べる、という事自体には抵抗はない。
 慣れない手つきで、刺身を指先でつまみ、ひょいっと口の中に放り込み、咀嚼する。

 その瞬間、ほのかな甘味と少しの塩味、そして濃厚なうま味が口の中に広がった。

「えっ!?」
 てっきり素材そのものの味だろうと想定していた彼女は、思わず驚きを口に出した。
 不味いわけではない、むしろ美味しい。
 美味しいのだが予想外の方向の美味しさに混乱しているのだ。
 その様子を見た男がしてやったりとばかりにニヤニヤと笑う。
「どうよ、アトランティスが誇るグルメシリーズの一つ、グルメフィッシュの味は。」
 その言葉に落ち着きを取り戻した摩那は男に確認するように問いかける。
「これは……魚そのものに味が?」
 男はおうよ、と頷いた。
「ご先祖様の知と涙の結晶さ。」
 最初の刺身を食べ終えた摩那は次なる刺身を口に放り込む。
「ん……この味、醤油を付けた刺身に似ていますね。噛めば噛むほど味が濃くなって……。」
「それでいて素材の味も失われてません。不思議です……。」
 調味料で味付けされた魚とも違う、醤油のように調味料を付けて食べるのとも微妙に違う、そんな不思議な味に、彼女は魅了されていた。
 その様子に満足した男は、次なる料理の準備をはじめていた。
「まだまだグルメシリーズはたくさんある。たんと味わってくれよな! ついでに宣伝もしてくれたら助かるぜ。」

 後日、アトランティスPRのためのブログ記事に、彼女は興味本位で調べたアトランティスの食事情も添えて、グルメレポートをアップロードした。

 ~~(一通りのグルメレポートを終えて。)
 アトランティスにおいて、味というのは食材そのものの味を意味しているようです。
 というのも、海の中では調味料で味を付ける、という行為ができません。
 塩のような粉末の調味料もソースのような液体の調味料も、全部海に溶けてしまうからです。
 そんな味に乏しいという問題は、グルメシリーズという、アトランティスの科学力の限りを尽くして生み出された味付きの食材を栽培・養殖する事で解決されました。
 その味は多種多様で、調味料等で味を付けるのとはまた違った美味しさがありますよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神楽坂・神楽
オブリビオンの支配から解放されてわずか1年弱。
街はまだ復興の最中との話じゃ。
さすがにそのような状況でのんびりと楽しむわけにはいかぬであろうな。

さらに、この世界にも猟書家の手は伸びておる。
ならば、街の復興・復旧が第一であろう。
あまり長くは居れぬが、力仕事ならば手伝わせてもらおうかの。

と言っても、わしにできるのは整地くらいのものか。
3分もあれば、この廃ビル程度ならば平らにすることができるでじゃろう。
破片は周囲に飛び散らぬよう、UCで《刻印》に喰わせるとしようぞ。

と、このくらい汗を流せば、海底温泉にゆっくり浸かったとして罰は当たるまい。
新鮮な海の幸……それに、どんな酒があるのか楽しみじゃのう。



「ふむ……やはりまだまだ手が回っておらん所が多いみたいじゃの。」
 そう言って、廃墟を眺めているのは、白いチャイナドレスに身を包んだ十代の少女の姿をした女性――神楽坂・神楽。
「あの血の川の原因を取り除いていただいただけでも十分でしたのに……なんだか申し訳ないです。」
 そう恐縮した様子で彼女に話しかけるのは、アトランティス復興計画を担う女性。
「よいよい。ここ最近は"色々"と騒がしいからの。復興・復旧は大事じゃ。」
 といってもな、と神楽は少し苦笑を浮かべ、少し前のめりに構えた。
「わしにできるのは整地くらいのものじゃ……なっ!」
 彼女はその言葉の途中で、強く――といっても地面がえぐれない程度に加減して――踏み込み、廃墟に向かって飛び出した。
 そのまま崩れた廃ビルの目の前に立つと、少し溜めるような構えをした後、正拳突きを繰り出した。
「せいっ!」
 その小さな身体に見合わぬ、強烈な衝撃が海を揺るがす。
 しかし、拳を振るわれた廃ビルはびくともしていない。
 ……ように見えただけ、というのは数秒後に明らかになる。
 廃ビルは正拳突きの数秒後、その形を保ったまま、一瞬で粉微塵と化した。
 そのまま、粉の塊と化した廃ビルは、重力に引かれて下に落ちていく。
 その粉塵の大半が海に溶けるが、溶けない程度に大きな粒もある。
 それらは、彼女の両手に刻まれた刻印によって吸収されていった。
「さて、次じゃ。」
 彼女がその場を立ち去る頃には、建物があったという形跡すら残ってはいなかった……。

「ふぅ、こんなもんかの。」
 三分後、辺り一面を更地にした彼女は達成感を感じながら額を拭った。
「お疲れ様です。助かりました!」
 そこに復興計画を担う女性が声を掛ける。
 その手には海の水とは異なる液体の入ったガラス瓶が握られていた。
「ご要望通り、アトランティスのお酒を持ってきましたよ。」
「うむ。それを待っていた!」
 神楽は早速手渡されたガラス瓶を……。
「……む? これはどうやって飲むのかの?」
 彼女が見たところ、このガラス瓶、蓋がない。
 穴も見当たらず、ただ液体が閉じ込められてるだけのように見える。
「あっ、すみません。この瓶はバブルガラスでできてるんです。口の部分に唇を当てて地上でいうストローのように吸ってみてください。」
「ふむ……?」
 神楽は彼女の言うとおりに、通常のガラス瓶で言う口の部分に唇を当てて、吸う。
 すると、まるでストローで吸うかのように、口の中に液体が流れ込んできた。
「ぬおっ!?」
 慣れない感覚に、思わず唇を瓶の口から離す。
 すると、口の中にあった液体が味わう暇もなく外――海の中に漏れてしまった。
 全くの未知の現象に、神楽はその疑問を言葉にすらできずに首を傾げる。
「あらら。飲みこむ前に離しちゃうとそうなっちゃうんですよ。」
 彼女の疑問を察したかのように、女性が説明をはじめた。
「適応光線を浴びた人間は、海水が身体の奥に入ると分解されて、海水内の酸素などの必要な物をを取り入れて、その他不要な物は吐き出すという仕組みになってるんですよ。」
「つまり、我々は常に海水を飲みこんでいるようなものなので、それ以外の液体を海中で摂取するには、色々と工夫がいるんですよねぇ。」
 その言葉に合点がいったように神楽は頷いた。
「なるほどの。考えてみれば水の中でそれとは異なる水を飲む、となれば工夫が必要なのも頷ける。」
 そうですね、と女性は相槌をうって説明を続ける。
「このバブルガラスと呼ばれる素材でできた瓶は、瓶の口と人の口の中を繋げる事で、海水のない空間を作り、そこから液体を流し込む、という仕組みなんです。」
 ふむ、とその説明を聞いた神楽は、再び瓶の口に唇をつけて吸う。
 今度はちゃんと中身の液体を吸い出し、味わって飲みこんでから唇を離した。
「うむ、美味い。」
 神楽は満足そうにそう言った。
「お気に召していただけたようでなによりです。」
 さて、街に戻りましょう、と女性が言って、神楽と共に歩きだす。
「戻ったら温泉に案内いたしますよ。」
「ほぅ、海の中で温泉、というのは想像がつかんな。」
「地上の温泉とは色々と違いますからね。温かい海水を巨大な球状のバブルガラスに閉じ込めて、その中に入るといった感じです。」
「ふむふむ。」
「温泉には食べ物や飲み物を持ち込めますから、私のおすすめ料理を御馳走させていただきますよ。」
「おぉ、それはそれは! どんな美味が待ち受けているか、今から楽しみじゃ。」
 二人は和気あいあいと話をしながら、街へと帰っていくのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月18日


挿絵イラスト