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獣耳ワンダーランド!

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン #ふざける方のみみずね

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#【Q】
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#ハロウィン
#ふざける方のみみずね


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●ハッピーハロウィン
 今年もかぼちゃの季節がやってきた!!
 仮装の準備はOK?
 お菓子はたっぷり用意した?

 さあ街へ……否、ぼくらの森へ繰り出そう!

●それはそうと
「ハロウィンっていつからコスプレ大会になったんだろうな……?」

 はいはーい、みんな大好きハロウィンの時間だよー!
 ……くらいのノリでひとを集めるのが常であろうパリピめいた男、だが今はこのテンションであるグリモア猟兵は、黒髪の男エリオス・ダンヴィクトル。
 ひとしきり首をひねって見せたあと、仕方ないからとでも言いたげに次の言葉を続ける。
「えーとな。今回行ってほしい依頼はアリスラビリンスから。こないだ戦争やったばっかってイメージのやつもまだいると思う。まぁ、実際あのとき出てきたオウガ・オリジンってやつの関係なんだけど」

 知らないやつにも一応説明しとくと、オウガ・オリジンっていうのは『はじまりのアリス』にして『はじまりのオウガ』だとか言うやつだ。戦争のときには、“ありとあらゆる”と言っていいくらい色々な現実改変ユーベルコードで猟兵たちを苦労させた激強オブリビオンだったのだが……。ま、その辺は過去形で話しておくとして。
 で、今回の事件はそのオウガ・オリジンの置き土産。現実改変で『ハロウィンの国』に書き換えられた国がアリスラビリンスのあちこちで見つかったという話だ。
 楽しそうだと思う? そうだな、ハロウィン楽しいよな。仮装行列楽しみにしてるやつも多いと思う。でも今回エリオスのテンションが低い理由は最初に言ったところに戻る。

「森からコスプレ衣装が飛んでくるんだってよ?」
 説明しながら語尾に『?』がついてるがこれでもまだ正気である。
「いいか、真面目に言うぞ。『ハロウィンの国』には『ハロウィンの国』のルールがある。つまり今回の場合、“その場に合ったコスプレをすること”が大事なポイントになる」
 なにが大事かって?

 それは、【ちゃんとコスプレするとパワーアップする】だ。

「……何言ってるか分からねーと思うが正直俺もよく分からねぇ。だが敵として出てくるオウガたちもそれを利用してパワーアップしてることを考えれば、こっちがコスプレしないで戦力ダウンするのは馬鹿らしい。だろ?」
 ちなみに森から飛んでくる衣装はランダムのようなのでそこんとこは諦めてもらうしかない。いや、まぁ。どうしても絶対自分はコスプレしないと言うのならそれも止めはしない。エリオスには強制する力はないので、頼むから無事に帰って来てくれよと拝んでおくに留めるが。

「ってな訳で、転送先は(オウガ的には)愉快なハロウィンパーティーの真っ只中。しかもボスのオウガはコスプレの力か知らんが“ほぼ無敵”とくる」
 攻撃も苛烈だ。……そんな無敵のボスをどうやって倒すかって?
「『ハロウィンの国』のルールを逆に利用するのさ」
 ハロウィンには「トリック・オア・トリート」って決まり文句があるだろう? オウガは『ハロウィンの国』のルールで強化されているが、その分強くそのルールに縛られている。
「[トリート]……つまり、おもてなしとして食べ物を差し出されたら食っちまうんだな、自動的に」
 下手でもなんでも、心がこもってればそれでいいらしい。おもてなしだからな。大丈夫、キッチンならそこら中にある。ハロウィンパーティー用のやつが。
「で、腹一杯になって眠ったところなら……一発」

 ずどん。とエリオスは指で銃を作って見せる。

「まぁ、どんなコスプレでも楽しめるやつ、料理が得意なやつとかがいたら是非協力を頼みたい、ってとこだ」
 ハハハ、俺だったら御免こうむるけどな。乾いた笑いを浮かべながら。それでも行ってくれるというのなら、君たちをそこへ送り出そうと言う。
「なんつーか……うん、強く生きてくれ」
 軽く手を振って、転送を開始する。そういうことで。じゃあみんな、あとはよろしく。

「Good Luck」


みみずね
(【注意事項】)
 1.トンチキシナリオとなる予定です。
 2.全二章で短く完結する特別シナリオです。
 3.マスターが苦手分野に敢えて挑むシナリオです。

 以上を踏まえた上でご挑戦ください。

 ……さて、いまさらですが、初めましてまたはお久しぶり。みみずねとか申します駆け出しMSでございます。今回はなんと二章で完結するレアなシナリオ。そして季節ネタですね。ハロウィンです。
 今回、ノリは限りなく軽く、頭空っぽで挑みます。何が起きても恨まないでください。

●第一章(集団戦)
 コスプレ集団との戦闘です。森から出てきた衣装でコスプレするプレイングをすることでボーナスを付与します。コスプレする場合にはどんな衣装なのかを、コスプレしない場合はその旨をプレイング文にお書きください。

●第二章(ボス戦)
 前述の通り、ほぼ無敵なボスです。でも料理でおもてなしをすると食べます。とにかくその場で作ってなんでも食べさせてやってください。そうでない場合は逃げに徹する羽目になる……かもしれません。

 オープニング公開直後よりプレイングの受付を開始いたします。二章は追加情報が投下されると思いますのでその時点から受付開始です。
 執筆は基本的には平日昼〜夜を予定しております。締切は期日を設定いたしませんが、書けるだけ書いたらそこでストップとします。
 マスターの体力があまりありませんので執筆速度、分量ともにまちまちになりますことをご了承くださいませ。詳しくはマスターページやTwitterをご参照ください。
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第1章 集団戦 『サーバントバニー』

POW   :    ウサキ~~ック!
単純で重い【高く跳んでからのジャンプキック 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ウサキッス
【投げキッスをする事で放つ衝撃波 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【にハート型のマークを刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    ウサウサスカイジャンプ
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●森を抜ければ。
  →→【入口】

 そこにはハッピーな感じのハロウィンの飾り付けがなされた蔦の絡まるおしゃれなアーチ。そしてその横には、『獣耳以外立ち入り禁止』の立て看板。
 ……もちろんそれに従うも従わないも、きみたちの自由だ。

 アーチのゲートをくぐれば、
「は〜い、いらっしゃぁい☆」
 バニーさんたちが迎えてくれる。
「ご主人様のご命令でぇ……おもてなし[トリート]の時間だよぉ♡」

▼マスターより
 問答無用な感じでバニーが襲いかかってきます。これらをなんとかしないと、この世界に巣食うボスオウガのもとへは辿り着けません。コスプレしたりしなかったりしながら撃退しましょう。
檪・朱希
アド◎
WIZ
ハロウィンと言えば……コスプレって、仮装のことだよね?
とりあえず、仮装するけど……守護霊の雪と燿も来てもらって、一緒に仮装して戦おう。
仮装して戦うのって、なんだか新鮮だね?

『なんで朱希は妖精っぽい衣装で、雪はドラキュラでさ、俺は虎の着ぐるみなんだよ! 銃が使えねぇし動きにくいっ!!』
『……何とかやるしかないだろう』
『しゃーねぇ、バニーども! この虎の格闘技に平伏すがいい!』

なんだかんだ、燿も楽しそうな『音』がして、その音を口ずさんでから戦うよ。

攻撃は、「聞き耳」で敵の音を拾って、「空中浮遊」で回避。
2人の連携に合わせ、貰った五鈴鏡の複製で殴る、でもいいかな?

使い方、間違ってる……?



●三者三様、3、2、1 !!
「ハロウィンと言えば……」
 不安そうにそう口に出すのは檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)。グリモア猟兵はなんと言っていたか。朱希の記憶が確かなら『ハロウィンっていつからコスプレ大会に』……?
「“コスプレ”って、仮装のことだよね?」
 確認のため二人の顔を見る。二人──すなわち、朱希と共にいる守護霊の二人。ユーベルコード【祈り守りし二つの鎖-雪と燿-】によって現出している彼ら、雪と燿はそれぞれに『そうだろう』『たぶんな』と肯く。
 そして、三人の目の前には……果たして、森から飛び出てくるコスプレ衣装。うん。つまりこれを着ていけばいいわけだ。
「仮装して戦うのって、なんだか新鮮だね?」
 守護霊の二人と並んで戦うのは珍しくないが、みんなして仮装して戦う、という発想は……当然、なかった。

 結果。

『なんで朱希は妖精っぽい衣装で、雪はドラキュラでさ、』
 他の二人の仮装を指差していくのは守護霊の一人、橙色の髪の少年に見える燿。
 一人目は主たる朱希。薄い羽根を背に、頭には花かんむりを飾る愛らしい姿だ。そして燿の相棒でもあるもう一人の守護霊、青い髪の雪。黒いマントをたなびかせ、どうやって着けたのか口からちょっとだけ見える偽物の牙。どちらもそれなりに可愛い、カッコいい衣装である。
 だが燿はしかし、森から出てきたランダム衣装に物申す。
『で!! それでなんで俺は虎の着ぐるみなんだよ!?』
 そう。燿に割り当てられたのは彼の言う通り、どこからどう見ても着ぐるみであった。それも虎の着ぐるみである。いわゆるひとつのタイガー。ご覧くださいこの完成度。この肉球。これはジャガーも唸るに違いない。
『銃が使えねぇし動きにくいっ!!』
 だというのに燿はご不満らしい。キシャーと音がしそうなほどに吼える。そもそも燿の武器は見えぬ鎖纏う拳銃『鴉』である。手が肉球では引鉄どころか握るのもままならぬゆえ。
『……何とかやるしかないだろう』
 が、燿の言葉にも雪は全く動じない。というか聞く耳持たない。元より衣装は選べないという話であったし、主である朱希が戦えないよりよほどマシだ。それとも一人だけ衣装を捨てて不利な状況で戦うつもりか……と問われれば燿とて否と言うしかない。

「えっと、燿……」
 朱希が躊躇いがちに声をかけ、雪が視線だけで訴える。目の前にはバニーさん。うさ耳ぴょこぴょこさせながら、にこにこ笑顔で手招きしている。
「いらっしゃ〜い♡」
 猟兵でなくとも理解出来よう、【うだうだ言ってる場合じゃねぇ】と。
『……っ、だあ!! しゃーねぇ、バニーども! この虎の格闘技に平伏すがいい!』
 一瞬で開き直った燿は虎気纏う。まさにコスプレとも一心同体、タイガーの構え。

 ふ、と朱希は思わず笑みをもらす。なんだかんだ、燿からも楽しそうな“音”がする。その音を、メロディとして口ずさむ。ハッピーハロウィン。そう、ハロウィンはみんなで楽しむもののはずだ。オウガに蹂躙されていいイベントなんかではない。
 よしと気合を入れて改めてバニーさんに向き合う。耳を澄ませて……。

 たんっ!

 朱希の耳が拾ったのは、バニーが跳躍した音。どこから、どこへ?
 目視することなく、音だけで判断する。すばやく空中浮遊で回避。ひらり、妖精の羽根を背につけた朱希が宙を舞う。そして──
『……行くぞ、燿』
『おう!』
 飛び蹴りを回避されて着地しようとするバニーを、ドラキュラ姿の雪の『月花』その刃がひらめき、刈り取ろうとする。またそれを器用にジャンプで避けようとしたのも、タイガーと化した燿の肉球アタックが阻んだ。喰らえ渾身のにくきゅうパンーチ!
『って何が出来んだよこれで!!』
『いや、それでいい』
 雪が静かに、ドラキュラの牙を見せてにやりと笑う。えっ、カッコいいじゃんやっぱずるいな?
 ……とか思っている隙に。

「えいっ」
 ボコッ。

 朱希が手にした鏡でバニーさんを“ぶん殴った”。

『……え?』
 もう少し丁寧に説明しよう。朱希が誕生日に大切なひとからもらった五鈴鏡の複製。それでバニーさんを“がっつり殴った”。跳躍攻撃を回避したところから守護霊二人との連携、更にはそこからのトドメ。見事な流れではあった。が。
 目が点になっているのはタイガー燿である。ドラキュラ雪もちょっと顔を背けている。
「え。」
 さすがに何かまずったらしい、とは朱希も気付いた。不安、心配、そんな“音”が二人からする。その視線は手にした鏡に集まっている。
「……もしかして。使い方、間違ってる……?」
 きゅー、ぱたん。と倒れたバニーさんの代わりに、守護霊ふたりは顔を見合わせ……、

『さすがに』
『違うと思う……』

 言いづらそうに、しかし口を揃えて答えた二人を前に、妖精さん朱希が何を言い返せる訳もなく。ただ、ひら、と花かんむりから花びらが散ったのを見たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
心情)笑うわ。場にあったコスプレねェ。つまっとこケモミミならなんでもいい感じかね。ンじゃコヨーテの耳とタキシード、あるかい。時計ウサギみたいなやつさ。俺ぁなんでも着るから精神的なダメージはないが、服がなァ。俺にくっつくと腐り落ちちまう。くっつく前に結界で覆わせてくれな。
行動)なんでコヨーテの耳選んだかって、そりゃアこいつと揃いにするためさ。さァ来いマー坊。ウサギがいるぜ。説得にゃ応じなさそうさ。お前、食べておやり。俺ぁ眷属のデカい虫に乗って待避してらぁ。マー坊に投げキッスが当たりそうになったら、鳥だ虫だをやって盾にしよう。ああ、せっかくの時計うさぎコスだ。タイムでもはかっていようかね。ひ、ひ。



● 生態系のことわり
 笑 う わ 。

 説明を受けたまずはじめの感想はそれである。いや笑うわ。場にあったコスプレをしろとか。出てくる衣装はランダムなのに。しかしそれでパワーアップするからとか、無茶苦茶言いよる。

 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は半笑いのまま件の森を歩いていた。なるほど、確かに森から衣装が出てくる。ドレスやおばけシーツ、スーツに……ちょっとよく分からないものまで。
 見れば入口の立て看板には『獣耳以外立ち入り禁止』の文字。
 なるほど“場にあったコスプレ”、というのはこういう条件のことかと納得しそうになったが、それでどうしてパワーアップするという話になったのかはやはり分からん。いや、別に分かりたくはないが。
「マァ、わざわざ親切に書いてくれてンだから、従うとするかね」
 郷に入っては郷に従え。逢真が猟兵であろうと神であろうとそこは変わりない。『獣耳以外立ち入り禁止』であるならば、
(つまっとこ、ケモミミならなんでもいい感じかね?)
 ゲートの中をひょいと覗くが、うさ耳をつけたバニーさんたちがいるだけなので参考にはならない。

 ふむ。お題を確認したなら、改めて何のコスプレをするか考えねばなるまい。逢真は森から出てきた衣装を見比べる。
 獣の耳ならなんでもいい、というのなら、今回はコヨーテがいい。ついでにタキシードなんかあれば完璧だ。小道具に金時計。おとぎ話に出てくる時計ウサギ……ならぬ、時計コヨーテが出来上がる。
「……と、その前に」
 やっておかねばならないことが少しだけ。逢真ゆえにしなければならないことだ。
(俺ぁ衣装を変えること自体はなんてことないが)
 もとよりどちらかと言えば自由に色々な服を着るほうである。コスプレ衣装が何であろうと恥ずかしいだのなんだのという精神的ダメージはないが、衣装が“着られない”のでは話にならない。
 ……何かと言えば、“コスプレ衣装をわざわいから遠ざける”ことをしなければならないのである。逢真は普段自らの権能を含んだとくべつの服を纏っている。彼の身体も服も、触れるだけで穢れ、くされ落ちる毒そのものなのであり──それは、森から出てきた衣装もまた例外ではなく。普通に着ようと触れれば衣装が腐れて台無しになってしまう。
 ゆえに逢真は自身の身を結界で覆い、衣装を護らなければならない。つまり、身を守るのではなく、身から出る毒を封じるための結界だ。

 さて、そんなひと手間をかけつつも、完成したのはタキシード姿の時計ウサギならぬ時計コヨーテ。【入口】と書かれた蔦のアーチをくぐる。
「きゃ〜ん、かわいいコヨーテさん! いらっしゃいませ〜っ☆」
 ……熱烈歓迎を受けてしまった。

 サテ。そろそろ種明かしの時間だ。獣耳ならなんでもいいだろうと言っておいてどうしてわざわざコヨーテを選んだのか。
「ひ、ひ。お揃いだぜ、マー坊」
 サァ来い。ウサギがいるぜ。
 逢真の声に応えたのは、変身するコヨーテの名を持つそれ。ユーベルコード【変怪の犬狼】によって喚び出されるマヒ・ナ・ティーヒー略してマー坊。
 おおん、と一声咆えると、その姿が変じていく。
 胴まで裂けた口、五つの目……どこからどう見ても怪物であるが、その本質は変わらず犬狼。憐れな獲物[バニーさん]を狩る捕食者たる肉食獣そのものである。
「お前、食べておやり」
 優しげな口調で逢真が言う。ウサギは獲物だ。話し合いには応じそうにもないあれは、そうでもしないと止まらないだろう。
「かっ、可愛くないほうのコヨーテさんっ……!」
 バニーさんが叫ぶが余計なお世話である。逢真は召喚した眷属の背に乗って、文字通り高みの見物を決め込む。毒と病を媒介するもののひとつ──巨大な蟲は、その巨躯ゆえに何者も寄せ付けない。
 ああ、いや。見物するだけというのもなんだしな。せっかく時計ウサギならぬ時計コヨーテのコスをしているのだ。あのウサギっこがマー坊相手にどこまで耐えるか、タイムでも計っていようかね。
 ひ、ひと嗤って逢真は金の時計の針を見る。

 マー坊の噛みつきひとつ。体当たりひとつ。バニーも持ち前の跳躍力で躱したり躱せなかったり。バニーさんが放つ投げキッス(ウサキッス)から生ずる衝撃波はしかし逢真が呼び出す眷属たちが盾になることによって防がれる。
 え、タイムはかってるだけじゃなかったのかって?
 ……そんなことは一言も言っていないが?

 ハート型に穿たれた地面の上で跳びはねるバニーさんをしかし、5ツ目の邪視が睨み据え、怯んだところに結構な威力の体当たりを打ちつけ、また胴まで裂けた口がかぶりついた。
「ほぉ」
 逢真が感嘆に近い声をもらした。眺めていた時計の長針がひとつ進んで。そう、『思ったより保ったな』と。
 時計コヨーテな逢真は、ごくりと丸呑みにされる兎を見ながら、そんな感想を抱いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水澤・怜
※衣装:シロとお揃いな犬着ぐるみ

看板に首を傾げる男(と犬)
…けものみみ?
まぁこれも任務遂行の為だ
一時の恥も少しの辛抱…着るしかあるまい

…数分後、森には白いモフわんこ二匹(正確には一人と一柱)が立っていた
あんまりな姿に絶句するも軍帽はちゃんと頭に乗せる


現れたバニーに再び絶句
何だその破廉恥な格好は!一体それのどこが獣なんだ!?

敵の技は威力は高いが動きは単純
【見切り・ダッシュ】で確実に回避しつつ【残像】と青藍の【投擲・マヒ攻撃】で牽制

残像やマヒに掛かればこちらのもの
シロの たいあたり!
敵の体勢を崩しUC発動
月白で一閃


真の姿になると私の力が増して怜も犬耳犬尻尾になるよ…とはとても言えないシロであった



● 獣耳であることについての考察
 果たして森を抜け、オウガたちがパーティーを楽しんでいるという会場の入口に経つ水澤・怜(春宵花影・f27330)。隣にはふわもこの白い犬、シロ。
『獣耳以外立入禁止』
 ゲートの横に設置された看板の、その文面を読み返す。
「……けものみみ?」
 獣の耳以外立入禁止、とは?
 シロと揃って首を傾げる。いや、シロは元から獣の姿であるから耳は獣である。入っても誰も咎めまい。だが怜は……桜の枝が頭に生えた桜の精である。これを獣耳と言い張るにはさすがに無理があろう。
「まぁ、これも任務遂行の為だ」
 一時の恥も少しの辛抱……そう、ほんの少しの間、我慢して獣耳とやらを装着すればいいだろう……、

 そんな風に思っていた頃がありました。

 数分後、そこに現れたのは白いモフわんこ二体。……正確には一柱と一人。つまり片方は元々モフわんこである(ではない)シロ。もう片方は……全身モフモフの白い犬の着ぐるみを着た怜である。
 ふっかふかである。そしてちゃんと犬耳である。これで看板にあったところの条件は満たしたはずだが……しかし着ぐるみである。動きづらいことこの上なく……そして情けない姿であることこの上ないが、それはそれとして怜は律儀にきゅ、と軍帽をかぶる。犬の着ぐるみの上にではあるが、かぶらないのも落ち着かないので。
「……」
 自らの姿を省みての絶句はさておいて、怜はゲートをくぐる。そう、さっさと任務を遂行すべきだ。そうすればこの意味不明なコスプレなどともおさらばなのだと自身に言い聞かせ……、

「あら〜、かわいいワンちゃんたち♡ いらっしゃぁい☆」
「……」
 そして、眼前に現れたバニーにまた絶句した。

 ああ、確かに獣耳以外立入禁止と書いてあった。故にその向こうには獣の耳を生やしたかそのコスプレをしたオウガなりがいるのはまだ予想していた。だが、ちょっと待ってほしい。
「なんだその破廉恥な格好はっっ!?!!」
 背中丸出し、網タイツにタイトなスーツのバニーさんが出てくるのは予想していなかった。というか、
「一体それのどこが獣なんだ!?」
 いや確かに頭の上にはうさぎのような耳がにょっきり出ているが。それと尻尾を除けば、バニーさんとは実際のところ、

 ・・・・
 ほぼ人間では?!

 即ち、怜も着ぐるみを着てまで獣の格好を真似ることはなかったのでは──?!
 という素朴な疑問が頭を駆け巡る。いやしかし、ちょうど出てきた衣装が着ぐるみだったので致し方なかった。あの時点では選択肢がなかったのもまた事実。
 とは言え、無駄な恥をかいている感は拭えない。

「おもてなし[トリート]、しちゃいま〜っす☆」
「っ!」
 ……なんて色々と細かいことを考えている場合ではない。地を蹴り高く跳ね上がったバニーさんがウサキックを振り下ろそうとしている。
 だが怜はこの攻撃を見切りで確実に回避しつつ、残像を残し追撃を許さない。攻撃自体は単調だ。避けるのは難しくなかった。更には青藍──鋭く磨かれたメスを投擲して、その動きを封じていく。
「はへ?」
 ウサキックをかましたつもりが残像だった。その上、死角から放たれたメスの投擲に遭ったバニーさんは間の抜けた声をあげる。
 よし、今だ。

 シロ の たいあたり !

 ごすっ。
「んにゃあッッ?!」
 不意打ちした形になり、奇声とともにバニーさんが崩れ落ちる。その声はうさぎではなく猫じゃないのかとも気になるところだが今はさておくことにして。
「……砕けろ」
 一閃。蒼白き軍刀、月白が走る。その刀身に込められた浄化の力が、バニーをたやすく斬り伏せた。

「……ふん」
 きゅ、と怜は着ぐるみの上からかぶった軍帽を直す。

 それを見上げるシロは──
 怜は未だ知らない。彼にその加護を与えた幻朧桜の化身たる神であるシロは。
(真の姿になると、私の力が増して怜も犬耳犬尻尾になるよって)

 さすがに今この場で告げるのは酷であろう……と思いつつ、その口を閉ざしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
POW

「一説には、魂を奪いに来る悪霊達に自分が人間だと気付かれない為に仮装をするのだとか。・・・『コスプレ』で、というのは何とも『らしい』ですね」と苦笑。
「ご高説も結構だが、来てるぞ」
飛んできた衣装を空中でキャッチした闇色の狼の姿のUDC「ツキ」がほら、とそれをこちらに放ってきます。
狼の仮面に、鋭い爪が付いたもふもふした素材の手袋、付け尻尾・・・狼男ですね。ハロウィンのコスプレとしては正統派でしょうか。
「狼なんて、あなたとお揃いですね」

【クイックドロウ】高威力の詠唱銃で【破魔】の魔力を込め攻撃。キックの足元を撃ち【体勢を崩】させます。
「狼男の武器が銀の弾丸なんて、皮肉ですよね」
指定UCで攻撃。



● その弾丸には加護が在る
 ハロウィンの起源やそのイベント内容、趣旨には諸説あるが。
「一説には、魂を奪いに来る悪霊達に自分が人間だと気付かれない為に仮装をするのだとか」
 悪霊たちと同じような格好……シーツをかぶったおばけや、魂を奪いにくる悪霊ジャックの姿を模して仮装することがあるのもその名残ではないかという説もある。だが、その中でこの依頼。
「……『コスプレ』で、というのは何とも『らしい』ですね」
 と苦笑するのはシン・クレスケンス(真実を探求する眼・f09866)。コスプレと仮装は大いに違うと思うのだが……。
「ご高説も結構だが、来てるぞ」
 知識と照らし合わせるシンに声をかけたのは、彼の隣を歩いていた闇色の狼の姿をしたUDCのツキだ。森から飛び出てきた衣装を空中でキャッチして、ほら、とシンへとそれを放ってやる。

 衣装はランダムだという話だったが。さて何が出てきたのやら。
 ツキがほうって寄越したそれを一揃い、眺めてみる。狼の仮面に、鋭い爪がついたもふもふ素材の手袋。それに付け尻尾……。
(なるほど、狼男ですね)
 ハロウィンのコスプレとしては正統派でしょうか。

 頷いたシンはそれらをひとつひとつ身に着けていく。
「狼なんて、あなたとお揃いですね」
 手袋をして、爪の具合を確かめる。……攻撃に使うためのものではなさそうだ。特に邪魔になるほどのものでもない。それから仮面をかぶる。顔が分からないようにするのも仮装では重要なファクターだ。
 最後に……尻尾。必要かどうかは分からないが、『コスプレ』としての完成度には大事かもしれませんね。

 はい、狼男・シンの完成です。(たったら〜♪)

 そんなこんなで二頭の狼……否、一匹の狼と一人の狼男は入口のゲートをくぐる。ハッピーなハロウィン飾りのその向こうは、バニーさんの楽園だった。
「あら〜? かわいいオオカミさんたち♡」
「……どうも?」
 謎の歓迎にちょっと戸惑うシン。だがその手にはすでに詠唱銃が握られている。
「おもてなし[トリート]、」ダァン!!!
 「しちゃうぞ〜☆」を言わせる前のクイックドロウ。そもそも『トリック・オア・トリート』はどこへいったのか。この場においてはトリート一択なのか。
「にゃあん、ひどぉい!!」
 抗議の声を上げるバニーは次々と足元に撃ち込まれる弾丸に容赦はない。はわわ、はわわとウサウサなジャンプとステップでかわそうとするがその甲斐もない。
 体勢を崩したところへ放たれる──【魔を撃ち抜く銃弾】。詠唱銃に込められた超高威力の“銀の弾丸”が、バニーさんを貫く。
「みに゙ゃっ!」
 ぱたりと倒れ伏したバニーさんを後目に、シンはもう一度苦笑する。銀の弾丸と言えば伝承では穢れあるもの、吸血鬼や人狼に有効とされるが……。
「狼男の武器が銀の弾丸なんて、皮肉すぎますね」
 当の狼男が銀の弾丸を操るのでは、バニーさんにも勝ち目がなかろう、と笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アニカ・エドフェルト
獣耳以外、立入禁止、ですか…。
ランダムでも、ちゃんと、獣耳、ついてると、いいのですが…。

っと、これは…(飛んできたアイテムを手に取り)
透明な猫耳、ですね、ちょっと、無機質な、感じが…(頭につける)…わわっ!?
(髪の毛と一体化した猫耳がついてる)
わ、すごい、ですね、ほんとに、耳がついてる、ようです。
(衣装も飛んでくるならそれも着る)

さて、これで条件、満たしました、よね。
殴りは、しませんけど、殴り込み、です!

さて、ぴょんぴょん、飛ばれてます、けど…
〈空中浮遊〉他で、どれだけ、追いつける、でしょうか。
まぁ、いつかは、降りてくる、でしょうから、そのまま捕まえて、地面に、叩きつけて、あげます、ね。



● きらきら猫にゃん
「獣耳以外、立入禁止、ですか……」
 入口の傍に立てられた看板を読み上げ、ピンクの髪に白い花を咲かせたオラトリオの少女……アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)は首を傾げる。立入禁止、と言われても、アニカには獣の耳は生えていない。聞いた話では森からランダムで衣装が出てくる、ということだったが……。
(ランダムでも、ちゃんと、獣耳、ついてると、いいですが……)
 不安しかない。獣耳無しで立ち入った場合やはり怒られてしまうのだろうか。

「……っと」
 そんなアニカの心配をよそに、飛び出しきた一つのアイテム。
「これは……」
 それは透き通る猫耳だった。硝子細工のように透明な、獣というにはあまりに無機質な付け耳だ。おそるおそる、そっと頭に着けてみる。
 ……?!
 謎の安定感がさらなる不安を呼ぶ。
「……わわっ!?」
 えっ、髪と一体化した猫耳がついてる。頭に。どういうこと。さわさわと触れて確認してみても事実は変わらない。
「わ、すごい、ですね。ほんとに、耳がついてる、ようです」
 どうなってるのか分からないが、とにかくすごい。関心しきりであるが、しかし驚いてる暇もなく森からは付随の衣装が飛んでくる。黒いスカートに……白いエプロンに……付け尻尾。尻尾は耳と合わせたのか、これも透明なものだ。
 結構なぶかぶかサイズ(とは言ってもたぶん普通の大人サイズなのだろうが)のようだから、上から着るのでも大丈夫だろう。

 果たして。透明な猫耳とメイド服を身に着けたアニカはゲートの前に立つ。さて。
「これで条件、満たしました、よね」
 立入禁止はこれで解除のはずだ。
「殴り込み、です!」
 ……アニカの普段からの戦法として実際に殴りはしないのだけど、気合としては殴り込みである。
 ゲートをくぐれば。
「あらら〜、キュートな仔猫ちゃん☆」
 バニーさんによる歓迎が待っていた。……歓迎とは言っても、熱烈な攻撃、という意味ではあるが。
「ウフフ♡ 遊びましょ〜っ」
 言いながら、バニーさんは地を蹴り、跳び上がる。
(どれだけ、おいつけるでしょうか)
 空中浮遊、空中戦の能力には決して特筆して長けているわけではない。空中では攻撃されないよう、回避するのが精いっぱいだ。
 だが、ぴょんぴょんと空中を飛び跳ねるバニーさんを前にしかし、アニカはじっと、その機会を待つ。バニーさんとて、無限に空中を跳び回れるわけではないはずだ。
(いつかは降りてくる、でしょうから)
 案の定、バニーさんは数段の空中ジャンプの果てに、地面に着地……しようとした。そこに待つ猫耳少女が、それを待ち構えていたとも気付かず。
(そのまま、捕まえて──!)
 それはアニカの得意技。グラップルと怪力を存分に発揮しての、【転投天使】。素早く相手の懐に入っての、渾身の投げ技で……
「そこで、寝ていて、くださいっ!」
 アニカはバニーさんを地面に、叩きつけた。

「み゙ぃっ」

「……ふぅ」
 一撃で沈黙したバニーさんを前に、クリスタル猫耳メイド服オラトリオのアニカは小さく息を吐く。……あまり深く考えるべきではないのだろうが。くるりとその場で回り、広がるスカートとその上に乗った猫のしっぽを見やる。
 ……どうしてこうなったのだろう……?

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『わるい狐さん』

POW   :    おいしそうだなあ
【恐ろしく尖った爪や牙で 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    なにもしないさ
【嘘を吐く 】事で【親切そうな紳士のふりをした姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    大人しくしたまえ
【魔法の力を持つ不思議なパイプの煙 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジャム・ドラドスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ようこそ我らの『ハロウィンの国』へ
「おやおや……」
 そう声をかけてきたのは、狐の紳士。
「わたしのサーヴァントたちはやられてしまったのかな?」
 すこし悲しそうに眉を下げてみせるその獣は、しかし。

「ああ、でもその代わり──君たちをいただくのも悪くなさそうだなあ?」
 決して紳士などではなく。
 だが物語に出てくる空腹の狼さんにも似て。

「さあ諸君。トリック[楽しく食べられるか]・オア[それとも]・トリート[素直に食べられるか]?」

▼マスターより
 お腹を空かせた狐さんです。パーティー会場には材料も設備も整っておりますので、その場で何かしらの料理、お菓子などを作って食べさせてあげてください。失敗しても大丈夫、「狐さんに食べてほしい!」という気持ちがこもっている限り食べます。ついでに講評してくれるらしいです。
 お腹いっぱいになると狐さんは戦闘不能になり、猟兵たちの勝利となります。
檪・朱希
アド◎
……トリックオアトリート、うん、お菓子とか、食べ物を持っていけばいいんだよね?

仮装はしたまま、食べ物を作って持っていこう。
そこの狐さんは、待っていてね。
えっと、雪、燿、(仮装したまま)手伝ってくれるかな?
『俺、また虎の着ぐるみのままなんだけど……!』
『配膳くらい出来るだろ』

2人には材料を持ってきてもらって……燿も手伝ってね。
作るのは、パン……なんだけど。えっと、ちゃんと作り方とか覚えたから、大丈夫……多分。

(出来上がるのは堅いパン。全粒粉入りの栄養満点なパン。)
じっくり焼くと、こういうパンが出来るんだよね。(かなり)焦げたけど、大丈夫だよね……?
食べてくれるといいなぁ。



● 妖精とエプロン(全粒粉パン)
 『トリック・オア・トリート』……。
 狐さんの言葉、そして最初に受けたグリモア猟兵の説明を反芻するのは妖精さんの仮装をしたままの檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)。ハロウィンの決り文句だというそれは、つまり『いたずらされたくなければおもてなししろ』の意味で、極端には『お菓子を寄越せ!』の意味だったはず。
 うん。
「お菓子とか、食べ物を持っていけばいいんだよね?」
 朱希は守護霊の二人にまた確認をする。雪と燿──ドラキュラと虎の仮装(着ぐるみである)をしたままの彼らはそれぞれに肯いた。
「狐さんは、待っていてね」
「えっ」
 突然の『待て』に戸惑う狐さん。狐さんは犬じゃないのだが……狐はネコ目イヌ科である。ステイと言われたらついステイしてしまった。紳士な狐さんはお行儀よくテーブルに座って待っている。

「えっと、雪、燿、手伝ってくれるかな?」
 さて、と髪が落ちないようにとまとめながら、朱希は二人へと声をかける。
『え゙っ、このままでか?!』
『着替える時間があるとでも?』
『お前と違って俺、着ぐるみのままなんけど……!』
 着ぐるみタイガーな燿の言い分にしかしドラキュラ雪は、
『配膳くらいできるだろ』
 それを、あっさりと切って捨てた。着ぐるみの肉球で一体何が配膳できるかだろうか。とりあえず水でも出して来ようかと頭をひねりはじめた。

 まずは何からだろう。朱希はキッチンに立ってみる。調理器具は一通りあるようだから……まずは、材料を揃えるところから。
「材料を持ってきてもらいたいんだけど……燿も手伝ってね」
 なにやらまだ言い合っている二人へとまた声をかける。
『分かった。何が必要だ?』
 応えたのは雪だった。
「作るのはパン……なんだけど」
 つまり、必要なのは粉、砂糖、発酵のためのイースト、少々の塩に、それから水……大して種類は多くない。それより、心配なのは。
 雪はじ、と朱希の顔を見る。
「えっと、ちゃんと作り方とか覚えたから、大丈夫……多分」
 先細りになる『大丈夫』と付け加えられた『多分』が少し不安だが、大丈夫だというならきっと大丈夫なのだろう。
 燿には水を持ってきてもらい、雪がその他の材料を選んで運んでくる。朱希は記憶している手順をそのままに、粉を混ぜたり混ぜたり捏ねたり丸めたりするだけだ。
(確かこう……で、合ってるはず……)
 少なくともバラバラになったりはしていない。ちゃんとこれからパンになりそうな形になって、プレートの上に並んでいるタネを見て、朱希はうんと自分にひとつ頷いてやる。あとは発酵を待って、窯に入れるだけだ。

 〜数十分後〜(ぱっぽー♪)

「……できた!」
 窯から取り出されたのはほかほかのパン(にちゃんと見える)。全粒粉入りの、栄養満点のパンである。食物繊維、ミネラルやビタミンも豊富な健康食。……焼きすぎたのか、ちょっと(かなり)焦げ目がついてしまったが。
「……大丈夫だよね?」
 これでも料理は料理。気合を入れて作ったものだ。
(食べてくれるといいなぁ)

「全く、いつまで待たせるのかと思ったよ」
 そう言ったのはこれまで律儀にテーブルで待っていた狐さん。さすが紳士。
「狐さん、トリック・オア・トリート……のトリートだよ」
 さあ召し上がれ、と朱希は出来たてのパンを差し出した。

「ふむ……」
 狐さんは皿に盛られたパンの一つを手に取り、まじまじと見る。ひとつまみちぎって、弾力も確認してから口に放り込む。
「少し焼きすぎ……表面に焦げの苦味が出てしまっているが……」
 またひとつまみ、今度は焦げていない部分から、中身を多めにちぎって食べる。
「しかしタネの混ぜ具合は悪くない。うむうむ、全粒粉の食感を殺さない程よい配合。噛むごとに味わい深く、どこか懐かしい故郷の味を思わせる……」
 感慨深げにうっとりと目を閉じる狐さん。狐さんの故郷ってどこなんだろう。……分からないが、どうやら満足しているようなのでよしとしよう。
「次にお客に出すときには、ジャムを添えるといい。それと香りのいい紅茶だな」
 ついでに謎のアドバイスまでついてきた。お客にパンを振る舞うことが今後あるかどうか、疑問ではあるが。

 とにかく、狐さんは朱希たちに対してはもはや敵意を抱いていない。「トリック・オア・トリート」は、どちらかを選んだ時点でもうひとつの選択肢は失われる……どうやらそういう仕組みであるようだ。
 狐さんはこれ以降朱希に攻撃はしてこない、代わりに朱希もまた『トリート』を選んだ以上、狐さんに攻撃は行わない……これがハロウィンの国の“ルール”ということだ。

『……で、俺はいつまで着ぐるみ着てりゃいいんだ……?』
 手作りのパンを食べてもらって心なしか高揚していた妖精さん朱希も、その傍で盛り付けを手伝っていたドラキュラ雪も、次のパンへと手を伸ばした狐さんでさえ──着ぐるみタイガー燿への答は持ち合わせていなかった。

 case.01【妖精さんの全粒粉パン】
 ごちそうさまでした!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
心情)料理かァア………(がっつり結界で覆いながら料理する手間を思う)(つか料理わかんねェな)(ムリでは?)(よし) こちとら向上心なんぞ持ち合わせねェ身、わかりきった失敗の再現も観客にとっちゃ退屈なハナシさ。得意なやつにやってもらおうかィ。
行動)元・信者のひとりを喚んで作ってもらわァ。宮廷シェフだったやつさ。攻撃せんでもよかろってンなら戦えんやつも喚べるってモンよ。しっかり講評されるらしいぜ、気合いれなィ。…手伝うかい?(「毒が入るから手を出さないで」って感じのことをやんわり言われ) はァいよォ。(隅っこで三角座りして) フルコースじゃねェか。マ・残さず食べてもらえッてンなら気合も入るかァ。



● 毒物混入・駄目ゼッタイ(宮廷シェフのフルコース)
(料理)
 提示された条件を思い返すは毒と疫病の神、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)そのひと。
(料理かァア……)
 ため息がちに想像してみる。料理というのはそもそもがヒトを生かすために作られるものだ。誰かを想い、誰かの為に美味しい料理を作る……ああ、ヒトの営みにそれは確かに欠かせないものだ。
 だが。もうひとつ想像してみよう。逢真がそれを行うには、まず身から出る毒を完全に封じねばならない。調理のどの過程においても、食材、調味料のどれひとつに至っても、触れれば即それは毒に侵される。
(がっつり結界で覆いながら料理する?)
 最初から最後まで完全な結界を維持し、更にはやったこともない料理をする手間に思いを馳せる。
(ムリでは?)
 結論:無理では???
 そもそも料理なんてものが分からない。出来たものの味も確認できない。よし。ムリ。

 早々に結論付けた逢真。
 料理自体は失敗しても別に問題ないということではあったが、失敗するのが分かりきった演目に興じるのも面白くあるまい。それでもなんとか失敗するまいとするほど、向上心の持ち合わせがあるでもなし。
(そりゃ退屈なハナシさ)
 誰もそんなものが見たいとは思わんだろ。
「得意なやつにやってもらおうかィ」
 餅は餅屋だ。ユーベルコード【余生】……死後も逢真を信奉するものを召喚するコードである。どうやら相手さんも攻撃してくる感じじゃねェし、こっちからも攻撃せんでもよかろってンなら戦えんやつも喚べるってモンよ。

 さても喚び出されたのは元・信者のひとり、宮廷シェフ。
「しっかり講評されるらしいぜ、気合いれなィ」
 はいと張り切って腕を捲くり、調理場を縫うようにさくさくと動き始めるシェフ。食材を目利きし、選び抜き、そして下拵えも丁寧に、手際よく鍋を、オーブンを温めて……。
 たった一人ですべてをテキパキと行なっていくその姿に、一応声をかけてみる。
「……手伝うかい?」
 信奉した神さまからのお言葉である。遊び心も含まないではないかもしれないその言葉に、シェフは一瞬動きを止め──
「…………衛生上のことがありますから、ご見学を」
 えらく遠慮がちに遠回しに、『毒が入ると困るからむしろ手を出さないでください、っていうか近寄るな』とのたもうた。
「はァいよォ」
 本当のことなので仕方ない。神様であろうと向いてないものは向いてないので逢真は三角に座ってただシェフの手際を見守る。次々と作り出されていく色とりどりの料理たち。マァ一人のお客さんに出すにはずいぶんと凝ったものだねえ。
「フルコースじゃねェか」
 食前酒に始まり、前菜、スープにサラダ、魚料理に肉料理……様々の料理が拵えられていく。
(マ・残さず食べてもらえッてンなら気合も入るかァ)
 さらには講評つきであるならば、料理人には力も入るというものなのだろう……知らンけど。

 さて、配膳の段に至っても逢真がうっかり触れてもいけないので、結局遠くからの見物をするに留めることになった。
 紳士風の狐はテーブルにきれいに収まって、ナプキンを広げ食前酒を味わっている。
「なるほど、軽やかな香りの酒だな……」
 すんと鼻を鳴らせて、香りを楽しみ、味わいを愉しんでいる。
 続いて出される前菜、スープに魚料理、肉料理。どれも冷めないうちに、美味しさのベストなタイミングでテーブルへと運ばれる。
「なんともワクワクさせてくれる前菜。ゆったりとした間合いのスープ……おお、隠し味が気になる魚料理。これは……さてはソースに木の実と香辛料を使っているのかな」
 もりもり、もくもくと綺麗に平らげては次の料理へと手を伸ばす狐紳士氏。
「肉料理! メイン・オブ・メインだがこれは……一見質素にしてしかし手の込んだ仕込みがされている……ふむ。実に良い。素材の味を極限まで活かす技法は他に類を見ない……」
 よく喋るなァ、この狐。
 見ていてなかなか愉快……というか、滑稽にも映るが、料理を作った当のシェフは真剣そのものの目つきで料理を作っては運んでいく。
 そして最後のデザート、フルーツまでたどり着いて。
「何たる完璧な調和のフルコースであったことか……これほどの腕前、……勿体ない」
 紳士はぽつりと、シェフの匂いを嗅いで残念そうに呟いた。それは……料理を作ったのが猟兵ではなかったことへ、ではなく。オウガとはまた違った意味で既に過去となってしまったシェフの腕前への最大の賛辞でもあった。
「ありがとうございます」
 シェフは宮廷でそうであるのと同じに、恭しく賛辞への礼を言った。
「しかし、この身分でなければ、今こうして料理を供することもなかったでしょう」
 ちらりと逢真へと視線を向ける。シェフは彼のユーベルコードによって召喚される酔狂な信者のひとり。現世で居場所を無くし、神へとすがった。来世の幸福には用が無いという停滞した存在、そのひとりだ。
 だがその選択に後悔はないのだと、礼儀正しく客の前を辞した。その姿を、逢真はやれやれといった様子で見守っていた。最後まで、ただただ見守っていた。

 case02.【宮廷シェフのフルコース】
 ごちそうさまでした!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
ツキは狐紳士さんに向けて「こいつ(シン)は俺の獲物だ」と威嚇中。
狐さんにもあなたにも喰われる気はありません。少し大人しくしていてください。
「戦わないのかよ、つまんねぇな」とツキは不満げ。

【料理】は得意なので、任せてください。【早業】でテキパキ進めてしまいましょう。
ハロウィンにちなんだ料理はいかがですか?
クラッカーをお墓に見立てたパーティーディップ、オレンジピーマンをジャックオーランタンのように切り取ったチキン詰め、お化けの形のシュガークッキー·····食卓を様々な料理やお菓子で彩って。味も保証しますよ。

ツキは、戦闘じゃないなら俺の出る幕じゃないとばかりに足元に伏せて退屈そうにあくびをひとつ。



● 狼青年のプチビュッフェ(ハロウィンパーティーコース)
 がるる、と牙を剥き出して狐紳士を威嚇するツキを見て、シン・クレスケンス(真実を探求する眼・f09866)は嘆息する。闇色狼は、シンへの「食べてしまおうか」という発言に対して警戒心を抱いているのだ。
 即ち、「こいつは俺の獲物である」と──
 とは言え、狐紳士は話の通りならほぼ無敵。いつものように噛み付いてもその効果はほぼないだろう。
「落ち着いてくださいよ」
 今回はツキの出番はない。それに、そもそも。
「狐さんにもあなたにも食われる気はありません」
 少し大人しくしていてくださいと静かに諭す。
「……戦わないのかよ、つまんねぇな」
 不満げなツキだが、相手がほぼ無敵と分かっているのに戦いを挑むのが馬鹿らしいのは承知だろう。狐を睨みながらも、無謀な攻撃に出たりはしなかった。

 さて、それでは本題の料理といきますか。
 シンは調理場へと向かう。
 これでも料理は得意なので、任せてください。方針さえ決まっていれば、早業でテキパキと進めてしまいましょう。
「……方針って?」
 興味なさそうに、ツキが問う。
「ハロウィンにちなんだ料理はいかがですか?」
 そう、だってここは『ハロウィンの国』。季節感溢れた食材だって豊富にある。
 まぁ、いかがと言われても別にツキが食べるわけではないので勝手にしろといったところか。ふわあ、と退屈そうにあくびをして、足元に丸まった。戦闘じゃないなら俺の出る幕じゃないとばかりに昼寝を決め込んだようだ。

 シンは頭の中で組み立てた予定通りにさくさくと料理を作っていく。ひとつひとつは決して難しいものではないが、凝ったものも多い。
 例えばこれは、クラッカーをお墓に見立てたパーティーディップ。こっちはオレンジピーマンをジャックオーランタンに見立てて切り取ったチキン詰め。それからお化けの形に抜いたシュガークッキーも。
 どうです。ちょっとした手間で、なかなか華やかになるものでしょう?
 食卓を様々な料理とお菓子で彩って……もちろん、見た目だけでなく味も保証しますよ。

 さあ、召し上がれ。
 テーブルいっぱいのパーティー料理を前に、狐さんも目をぴかぴかさせる。
「これは、これは」
 嬉しそうにお墓クラッカーをひとつつまんで、ひょいと口に放り込む。とりどりのディップを味見していく。
「見た目にも気を遣った、それでいて気軽なメニュー……うん、どれもそれぞれに違った色合い、味わいがあっていい。アクセントが効いている」
 ぺろりと平らげて、次の品。ぱちぱちと手を鳴らして喜ぶ。
「ああ、かわいいジャックだね。細やかに手が込んでいる。これならピーマン嫌いの子どもでも喜んでくれそうだ。それに……中のチキンも味付けが濃いめなのが良いねえ」
 これもぺろり。最後に残ったクッキーも、
「お化けのクッキーか。うんうん、実にお約束、だが故にこそ鉄板。香ばしい香りに、口の中でほどける甘み。おお、これぞハロウィン! 素晴らしい!!」
 ご機嫌な様子の狐紳士。

「……なんだ、終わったのか……」
 いやまだ終わってなかったのか。シンの足元で丸まっていた闇色が、ふわあとまたひとつあくびをした。
「おや、本当に寝ていたんですか」
 残念ながらあなたの分はないですよ、という言葉に。
「いらねぇよ」
 『花より団子』の逆はなんと言うのだろうか。戦いそびれたツキは、フン、とつまらなそうに鼻をならした。

 case.3【ハロウィンプチビュッフェ】
 ごちそうさまでした!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

水澤・怜
キッチンがあるのに何故か木を組み火を焚き始めた軍帽白犬着ぐるみの男
ちなみにもう一匹は火が苦手なので帰った模様

俺は寮暮らし故、自炊は殆どしない
だが戦場での最低限の自炊法は勿論心得ている

…飯盒炊爨だ

まず米を研ぎ水に30分程浸す
…何?長いだと?
ここでしっかり水に浸さねば芯の残った不味い飯になる
しばし待て

続いて飯盒を火にかける
…何?まだかだと?
米の炊き上がりは五感を総動員して見極めねばならん
少し静かにしてくれないか

最後は飯盒を返して蒸らす
馬鹿者、蓋を開けようとするな!

おかず?そんなものはない
焚き火の跡が多ければ敵に見つかる可能性も上がるからな
だが炊きたての飯は旨いぞ?
…腹持ちもいいしな

さあ、食うといい



● 軍人流・野戦式ご飯(飯盒炊爨の白米)
 さてもハロウィンパーティー会場には様々の食材が揃っており、またそれを調理するための調理場も完備されている。
 ……だというのに、それとは少し離れた場所で、枯れ木を拾い枝を組み、焚き火を始める男がひとり。……男? いや確か男である。白い犬の着ぐるみに軍帽をちょこんとのせた彼の名は水澤・怜(春宵花影・f27330)。会場に着いたときにはもう一匹(一柱)の白いもふもふのわんこ(ではない)を連れていたが、そちらは焚かれはじめた火を嫌って早々に退散してしまった。

 ……で、何してるんですかね。料理をするのだったのでは??
「俺は寮暮らし故、自炊は殆どしない」
 キリッと答える怜。つまり料理はあまりしたことがない。
「だが戦場での最低限の自炊法は勿論心得ている」
 それすなわち、

 ……飯盒炊爨だ。

「……は?」
 黙って見ていた狐さんもさすがに聞き返す。なんて?
「飯盒炊爨だ」
 二度目。聞き間違えでもなんでもなかった!! どこからともなく飯ごう取り出したぞこの着ぐるみ?!

「まず米を研ぎ、水に30分浸す」
 長くない?????

 しかし怜は静かに否、という。
 ここでしっかり水に浸さねば芯の残った不味い飯になる。しばし待て。
「む。むぅ……」
 待てと言われると待ってしまう狐さん(ネコ目イヌ科)である。

 ……30分後。(ぴよぴよ)

「続いて飯盒を火にかける」
 ……黙々と作業を続ける怜。ぱちぱちと焚き火の火が跳ねる。薪を焚べたり遠ざけたりして火力を調整している。
「……まだなのか?」
 待てと言われて椅子に座ったまま待っている狐さんも流石に焦れてきた。
「何を言う。米の炊き上がりは五感を総動員して見極めねばならん」
 少し静かにしてくれないか。そうピシャリと言われて耳と尻尾をしょんぼり垂らす狐さん。

 ここだ、というタイミングで加熱をやめ、焚き火の火を落とす。
「出来たのか? ん? 完成か??」
 待ちきれない、と言った様子の狐さん、とうとう覗きにやってきてしまった。
「馬鹿者、蓋を開けようとするな!」
 ビクーーーーッッッ!!!
 怒鳴られて毛を逆立てる狐さん。
「赤子泣いても蓋取るな、という言葉を知らんのか」
 飯盒を返して蒸らす、この時間が味を分けるポイントであるのだ。赤子が泣こうがオブリビオンが喚こうが、決して蓋を取ってはならないという古からの言い伝えである(?)。

 ……ちなみにであるが、さっきから飯盒のご飯にかかりきりの様子。他のおかずなどは……?
 ぱたぱたとしっぽを振りながら、恐る恐る尋ねる狐さんに怜は、
「そんなものは、ない」
 キッパリと言い捨てた。
 そもそもこれは戦場で孤立したときに、ひとりでサバイバルするための知識と技術なのだ。おかずなどという贅沢なものは想定されていない。
「焚き火の跡が多ければ敵に見つかる可能性も上がるからな」
 それは無論そうだ。しかしここは戦場ではないのだが????
「だが炊きたての飯は旨いぞ?」
 あっ、はい。
「……腹持ちもいいしな」
 ふんふんと鼻歌まじりに、ようやくできたご飯をよそう。ぴかぴかのお米である。狐さんも思わずふんふんと鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる。
「さあ、食うといい」

 果たして小一時間かかって出てきた一人前のご飯。おかずも何もないが、炊きたてのご飯である。
 ぱくり、大きな一口で頬張る。
「うむ。……うむ」
 もぐもぐ、ごくん。ぱくり、もぐもぐ。
 猛然とした勢いで食べる。もぐもぐ、もぐもぐ。もぐもぐ。
「……ふぅ。いや、ただのコメ。たかが白米。されど食事の中心となるはずの主食……空腹という最高のスパイスとともに供されるただのご飯の、なんと甘美なことか……」
 うっとりと、元から細い目を細めた狐さんは、そのまま……

 スヤァ……

 空腹から一転、至福の満腹感に包まれ、眠りについた。

 case.04【飯盒炊爨のごはん】
 ごちそうさまでした!!!


●無敵解除
 さて。
 楽しいハロウィンパーティーはお終いの時間だ。

 お化けたちは行列を成して彼岸へと帰っていく。
 きみももう、還る時間だ。……おやすみ狐紳士さん。

 美味しい思い出と共に、お休みなさい。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月28日


挿絵イラスト