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ふりるでれぇすなおめしもの

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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●これはない
「ああ、ああ、もう、もう……楽しい楽しいお茶会のはずなのに……!」
 ぎり。忌々しげに爪を噛んで、少女がぶつぶつと呟いている。
 少女の目の前を巨人型のオウガがのしりと歩き、長い長い行列の一員となっていく。
 ハロウィンの仮装をお披露目するためだけにあるような、長い道。そこを律儀に列をなして進んでいく巨人達からぷいっと目をそらして、少女は手にしたフォークでクマのぬいぐるみを突き刺した。
 ただの、八つ当たりだ。
 『アリス』が催す楽しいハロウィンパーティのはずだったのに、目の前の光景ときたら。
 どこを見ても無骨な巨人、巨人、巨人。
 それが、ぽんっと仮装衣装を吐き出す森から衣装を纏って進んでいく。
 ただでさえ屈強そうな彼らに、更に力を与えているらしい衣装は。
 ――全部が全部、びらっびらでふりっふりな服だった。

●イヤよイヤよも問答無用
「ハロウィンだねぇ。今回はそれにちなんだ仕事だよ」
 のんびりとした口調でメモをめくるグリモア猟兵エンティ・シェア(欠片・f00526)は、此度のアリスラビリンスで起きたハロウィンな事件の概要について語る。
 オウガ・オリジンの現実改変ユーベルコードの力によって改変された『ハロウィンの国』が幾つも見つかったとのこと。
 その国はコスプレ衣装が飛び出てくる森があり、ありとあらゆる材料が揃ったキッチンがあり、ちょっぴり不気味ながらもポップな雰囲気のある装飾が施された長い道などもある。
 要するにハロウィンパーティをするためにあるような国なのだ。
「そんな国の法則ゆえかね、森から飛び出した衣装を着用すると、パワーアップするらしいね」
 にこにことしているエンティは、メモに挟んでいた紙を取り出すと、折りたたんでいたそれを開いて見せる。
 そこに描かれていたのは、ふんわりとしてひらひらとしたフリルやレースがふんだんに使われた衣装色々。
 中世ヨーロッパ風と思しき雰囲気から、ロリータな装い、和装も中華も民族衣装も一様に『それ風』のイメージを残しつつもフリル&レースがあしらわれているものばかりだった。
「この森が吐き出す衣装がねぇ、全くのランダムなんだそうだけど、どうやら法則が一つあって。全部、こんな感じでフリフリなんだそうだよ」
 可愛らしいねぇ、とにっこり微笑んだ彼は、紙を畳み直して再びメモに挟むと、それでね、と話を続ける。
 このふりふりを着たオウガの軍勢が可愛らしく仮装行列しながら蔓延っているので、まずは倒してきてほしいとのこと。
 勿論、あちらも衣装を着てパワーアップしているので、こちらもぜひとも衣装を着て臨んで欲しいと付け加える。
「好みに合わないものもまぁ出てくるだろうけど……そこはほら、森が出したものだから。君の趣味ってわけではないから。お仕事のためだから。ね。それに勝利のために趣味に合わぬものを着て奮闘する姿に森が心打たれて(?)より力を貸してくれるかもしれないし」
 宥めすかしつつ話を戻せば、オウガの群れを倒せば彼らを率いるボスとの対峙。
 こちらはハロウィンの国の支配者であるゆえか、攻撃がほぼ効かない無敵状態なのだと言う。
 しかしこれを打破する手段が一つある。それは、美味しい料理を食べさせること。
 味や見た目はともかく心さえこもっていれば、オウガは食べざるを得ない。これもまた、ハロウィンの国の法則ゆえだ。
 そして一度口にすれば、オウガはその美味しさを事細かに称賛し、段々と眠くなって行くのだ。
「眠ってしまえば、無敵ではなくなる。一撃で倒せるほどに弱体化するんだ」
 けれど、その間は無敵のオウガが一方的に攻撃してくることとなる。
 料理を作る邪魔をされないように敵の攻撃を凌ぐことも重要になるのだそう。
「料理を作るのが苦手な子は、いっそ割り切って敵を止める事に集中してもいいよ。ただし、誰も料理を作らなければ倒すことは不可能だから、そこは留意してもらいたい」
 焼いただけ調理でも構わないから、心を込めて食材と向き合う一瞬は設けてもらいたいとエンティは言う。
「なかなか特殊な戦いになりそうだけれど、武運を祈るよ」
 そうして、アリスラビリンスへの道を開くのであった。


里音
 アリスラビリンスでハロウィンなお仕事です。
 当シナリオは集団戦、ボス戦の『2章構成シナリオ』となっております。
 また、10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日や、やがて始まる「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれません。

 OPに記載ありますように、コスプレ衣装によるパワーアップ、料理攻めによる無敵解除が勝利には必須となります。

 コスプレ衣装に関してはランダムな内容となります。
 基本的にはダイスを振ってハロウィンの仮装アイデア表に即したものです。
 これに、フリルでレースなアレンジが加わります。
 もれなくフリフリになります。その分露出度は下がると思います。

 料理に関しては「焼きリンゴつくりました!」でも基本的にオッケーです。
 が、ボス敵さんを思って焼き加減の調節やトッピングの追加なんかをしてあるとなお効果的です。

 31日までの完結のため、早い段階で締め切りが発生する場合があります。予めご了承頂けますと幸いです。
 皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 集団戦 『トランプの巨人』

POW   :    巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

崎谷・奈緒
うふふ、フリフリした衣装を堂々と着られるなんて、まさに女の子の憧れ!年甲斐もないとは思うけど、折角だし思いっきり楽しんでやるわー!
まず森から飛び出してきた衣装を着込むんだね。ここは最初に飛び出してきた衣装をキャッチ!あたしなら、どんな衣装も似合うはず!と、妙な自信を見せてみる!
衣装を着たら、UCでバックコーラスのみんなを呼ぶよ。演奏するのは……お祭りらしくミュージカル!楽しい感じの衣装なら楽しい歌を、ダークな衣装なら、悲劇を歌った一曲を披露しよう。コーラスのみんな、お客さんが感動する演奏、よろしくね!テンションを上げきったら、衝撃波で一気にオウガの軍勢に攻撃!あたしのステージ、見逃さないでね!



●53:サクラミラージュ風
 ぞろぞろと隊列を組んで進む巨人の群れを横目に、ぽんっ、と飛び出した衣装をナイスキャッチ。
 びらっ、と広げたその衣装を見て、崎谷・奈緒(唇の魔術・f27714)は、うふふと楽しげな笑みを浮かべた。
「フリフリした衣装を堂々と着られるなんて、まさに女の子の憧れ!」
 七夕生まれの23歳、流石に成人してからはこんな衣装を堂々と着る機会はなかなか恵まれないものだ。
 ハロウィンだからはっちゃけてもいいよね! なんて口では言いつつも、選ぶ装いは堅実かつ大人っぽいスレンダーなものや、冒険したとしてもちょっぴりセクシー路線だったりして。
 ふんわりフリフリの衣装には、どことなく『少女』を想像していたのだ。
 でも今日はお仕事だ。年甲斐なんてぽいっと捨て去って、思いっきり楽しんでこそであろう!
「あたしなら、どんな衣装も似合うはず!」
 妙な自信は人一倍。だってそうだろう。こういったものは堂々と着こなす方が格好いいものだと相場は決まっているのだから。
 さて、改めて眺めてみた衣装はどうやら女学生風のものらしい。
 ゆったりとした臙脂の着物の袖口にはふんわりと波打つたっぷりのフリル。襟には柔らかなレースがあしらわれ、きゅっとしたハイウエストの袴には、濃紺の上に薄紫のレース生地が重ねられ、柔らかなシルエットを描いている。
 帯とリボンは色違いで揃いの縁取り。ひらりと垂れるのはこれまた細かな意匠のレースで、奈緒の金の髪をふんわりと彩る薄紅色。
 最後にきゅっ、とレースの手袋をはめれば、完成だ。
「ふ、ふふ……ちょっとだけ若返った気分」
 くるり、ヒールの編み上げブーツでターンを決めれば、リボンや袖がふわりと翻る。
 『学生』であった時期は過ぎたわけだが、こういったものは何度袖を通しても気持ちが引き締まる気がするものだ。
「なんだか盛り上がってきたね。力も湧いてきた気がするし、一曲ご披露しようじゃないか!」
 行くよみんな。ぱちんと指先鳴らして呼び出したのは、バックコーラスの面々。
 今日も陽気な彼らと笑顔を交わし、スタンドマイクを手にとった奈緒は、ふわり、袖を掲げて、ジッ、と見つめる。
 お祭りらしくミュージカルな一曲を。さぁ、今日の装いに合うのはどんな曲?
 激しくロックな音楽よりも、しっとり悲壮な音楽よりも、爽やかで華やかで、そう、心躍る麗らかな春模様。
 一人の乙女が人生を楽しく謳歌する。そんな曲がぴったりだ。
 ぱちりと目配せすれば、バックコーラス達はお任せあれとメロディを紡ぎ出す。
 その音に釣られるように――あるいは、『アリス』を追い詰めようとする習性に促されたかのように。フリルな衣装を着た巨人達が奈緒へと向き直り、ドレスの裾を跳ね上げてどすどすと突進してくる。
「感動するのは結構だけれど、舞台に上がりこむのは勘弁してくれないかな」
 主役の乙女が驚いてしまうじゃないか。軽く肩を竦めつつも、次第に盛り上がっていく音楽に身を委ねれば、巨人の突撃にだって怖さなんて欠片も感じない。
 心の赴くままに歌う奈緒の気持ちもまた、盛り上がって、声に高揚が乗っていく。
 巨大なトランプのカードが召喚され、奈緒目掛けてけしかけられるけれど。
 彼女を捕らえられるのは、心躍る音楽だけなのだ。
「――ほら、そこが最前列。あたしのステージ、見逃さないでね!」
 響き渡る歌は、声は。バックコーラスと共鳴するように、衝撃波を放つ。
 フリルとレースをはためかせながら、放たれたトランプごと、放った曲すらも吹っ飛ばす勢いは、常には見ない程で。奈緒は一瞬呆然としたが、ふわり、靡いたフリルの袖が目に入って、はは、とおかしそうに笑った。
「もう一曲、聞いていく?」
 素敵な衣装と力を与えてくれた森へ微笑みかけて。奈緒は次曲を歌い上げる。
 ステージは、まだまだ始まったばかり。さぁ、盛り上がっていこう!

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

コスプレと言うと変な感じがするのなんでだろう?
衣装は露出が高いものでなければ女物でも気にしない。
スカートも行燈袴と変わらんし、さすがにサイズ的に入らん物は来ないだろうし。
というか普段からシンプルなの多いから、こういう時に体験するのもいいかなって。

存在感を消し目立たない様に立ち回り、マヒ攻撃を乗せた暗殺のUC五月雨で合体されないうちに攻撃。
同時に投げられるだけの飛刀も投擲、確実にダメージを与え倒すようにする。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで流しカウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。



●94:アポカリプスヘル風
 コスプレ、という言葉の響きはなんだか変な感じがする。仮装というとそうでもないのに、不思議なことだ。
 それはそれとして、だ。黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はやや困惑していた。
 森からぽぽんっと飛び出してきたこの衣装。フリルでレース以外の部分のコンセプトはなんだろう、と。
 多分これは白衣だ。しかし貴族の羽織る外套かなにかのように、袖には柔らかなフリルが覗いているし、なんか背面にはトレンチコート的なリボンが揺れている。
 白衣の下に着用するらしい黒シャツもしっかりフリル。そして一番困ったのが装飾として追加されている、やたら長いレースのリボン、これは一体なんだろう。
「…………包帯か?」
 ピン、ときたのは白衣と思しき外套の裾にあしらわれたレースが真っ赤だったゆえに。しかも、縁取るための均一なものではなく、まるで飛び散る鮮血を模したかのような配置で縫い付けられている。
 そして何より、白衣の内側にメス的な刃物を収めるための部位が複数備え付けられているのだ。
 これはズバリ闇医者だろう。そしてこの包帯もどきと課したレースを巻きつけて死者の要素がつくのだろう。
「存外、何でもありだな」
 この際女性物でも気にしないと思っていた瑞樹だが、アレンジの方向性が迷子なのは、森のチャレンジ精神7日もしれない、なんて。
 ともかく、スカートも行燈袴も対して変わらぬと思っている瑞樹にとって、むしろパンツスタイルは都合がいいくらいのものだ。
 見れば見るほど貴族のおしゃれ着だが、たまにはこういう、実用を度外視した装飾がついた服も悪くはない。
 視界を遮らない程度にレースの包帯を巻き付けて、きゅ、と結べば、なんとなくパワーアップしたような気がする。着方は合ってたらしい。
「さて」
 助力を得られたなら、後は敵を屠るだけ。
 右手に刀、左手にはナイフ。二刀を握る手は今日もしっくりと馴染む躊躇のない指先。
 ぞろぞろと列を成すふりふりドレスの巨人集団を視界に捉え、彼らの死角となる位置を探りながら、足音を忍ばせて素早く近づく。
 ハロウィンらしい歪な形をした木の外灯に身を潜め、コツン、と足蹴にしたカボチャ型の飾りを、行列の真ん中に飛ばしてやる。
 意識を奪われ振り返った巨人のドレスがふんわりと靡く、その動きに合わせて斬りつければ、がくん、と一体が膝を折る。
 麻痺を乗せた攻撃が行列を乱した瞬間、それに気づいた他の個体が、ふりっふりのチャイナドレスを揺らしながらトランプの胴を持つ兵隊を召喚した。
 ハートにスペード、クラブにダイヤ。四種のスートの『1』達がぞろぞろと出てきては瑞樹に向かってくる。
「――喰らえ!」
 その刻印された数字が合体によって増える前に。90を超える自身の本体であるナイフ――黒鵺を複製し、刃の雨のごとく、浴びせてやった。
 トランプ兵も、巨人も一緒くたに纏めて斬り捌く刃の群れにまぎれて、ありったけの飛刀を投げつけてやれば、レースが裂け、フリルが飛び散り、行列はしっちゃかめっちゃかの大混乱。
 どすんどすんと大きく響く足音とその巨躯に紛れて、目立たぬようにと立ち回る瑞樹をなかなか捕らえられないでいた。
「折角の衣装、勿体なかったかな」
 足元に転がるフリルな布を拾い上げて肩を竦める瑞樹だが、もしかしたら衣装を剥げばパワーアップも解除できるのでは? などと割り切ってどんどん掻っ捌いていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルメッテ・アインクラング
「素敵な御召し物。心が弾んで参りました」
作業しやすい格好(メイド服風)ですと尚嬉しいですが、何でも喜んで着させて頂きます

UC『休仕符』を発動し、ゆったりとお料理開始
特別な日には特別なステンドグラスクッキーを作りましょう
生地を作って型を抜き、少し焼けたら砕いた飴を入れて再度オーブンへ
周囲には腕輪でシールドを張り【オーラ防御】でございます
「気になりますか?慌てずお待ち下さいね」

形はトランプの柄で統一してみました
御味はいかがですか?

「それは何よりです。では……」「只今より、お相手致しましょう」
お食事の間に乗り込ませて頂いたキャバリアの銃口を、巨人へ向け。BS重力砲の引金を引き【制圧射撃】でございます



●70:ヒーローズアース風
 森が差し出す衣装は気まぐれ。何が届くかわからない。そう聞いても、メルメッテ・アインクラング(Erstelltes Herz・f29929)の弾む気持ちは変わらない。
 普段からメイドとしてフリルの付いた服を着こなしている彼女にとっては、普段と形が違うものになるかもしれない、程度のことで。
 新鮮さを感じこそすれ、抵抗感は一切ないのだ。
 そうしてぽんっと吐き出された衣装を手にとって、メルメッテは「まぁ」と楽しげに呟く。
「素敵な御召し物。心が弾んで参りました」
 袖を通したそれは、レオタードと呼ばれる類のコスチュームなのだろうと察せた。
 レザー素材で袖のある衣装の、肌にフィットする感覚はやはり新鮮で。足元がやや落ち着かないものの、動きやすくもあるのは非常に好感触ではある。
 ハロウィンということもあってか、ヒーローズアースにおける『ヴィラン』を想定しているのだろう。暗めの色合いはメルメッテの淡い桃色と対比して、より特徴的な印象を醸し出している。
 勿論この国らしいアレンジが入っているそれは、鎖骨から肩、首を覆う部分がやや透け感のある黒のレース生地となっており、腰の周りに短いスカートのようなフリルがあしらわれていた。
 露出する形となる足をほぼ覆うような長いレザーブーツも、強烈そうなピンヒールとはどこか対象的なレース生地で編み上げ部分の全面が飾られているのだ。
 何より上から羽織るためのマント。幾重にも布を重ねたたっぷりのボリュームは、さながらドレスのトレーンの用に長く伸び、グラデーションを描いていた華やかな後ろ姿で。
 メルメッテが思い切ってくるりと一回転してみれば、その動きに合わせて大きく揺蕩い、布が踊るのだ。
「着替えはこれで良さそうですね。さて、それでは――」
 今日という特別な日に、メルメッテが用意するものは、特別なお菓子。
 お茶会を楽しみにしている様子のボスと対峙する前に、予行練習と行こうではないか。
「終わり次第そちらへ参りますので、少々お待ちくださいませ」
 ドレス(だと思われる)ふりふりの衣装を靡かせてずしずしと進む巨人の集団に深々と礼をして、メルメッテはゆったりと調理の場に向かう。
 途端、彼女の周囲にサイキックパワーに依る透明なバリアが展開される。
 阻害の心配がないこの場所は、思う存分、お菓子作りに没頭出来るのだ。
 お菓子の定番といえばクッキー。けれど今日は特別だから、可愛い形のクッキーを、より愛らしく、煌めかせよう。
 きゅ、と型を抜いてつくるのはハート型。それからダイヤにスペード、クラブも勿論忘れては居ない。
 もう一回り小さい型で中をくり抜いた生地をオーブンに入れて、焼くのは生地が薄く色づく程度まで。
 とっておきはここからだ。焼けた生地の真ん中に砕いた飴を敷き詰めて再度オーブンへ。
 メイドらしく手際よく。けれど焦らずのんびり集中して。非戦闘行為に没頭するメルメッテへ、巨人達は次々と押し寄せては小さなトランプ兵と共に武器を振り上げているけれど、バリアが全てを遮断する。
「気になりますか? 慌てずお待ち下さいね」
 にっこり。慌てるべきは攻め込まれているメルメッテの方のはずなのに。
 余裕すら見せるメルメッテに、躍起になって武器を打ち込む巨人達をそっと無視して、メルメッテはオーブンの中身を確かめて。
 あぁ、ほら、とっても美味しそうに焼けました。
 アリスラビリンスのハロウィンらしく、トランプのスートで統一されたステンドグラスクッキー。
 飴の部分のきらきら具合を満足気に見つめて、焼けたそれを籠に目一杯詰め込んだ。
「さぁどうぞ、皆様も召し上がって下さいませ」
 音もなくバリアが消えるのを見止め、妨げられていた武器が勢いよく振り下ろされるのを見ながら、とん、と後ろへ飛んだメルメッテは、雄叫びでも上げそうな巨人達の口に、クッキーを放り込んでやる。
 ばりばりと噛み砕く音が一瞬。意表を突かれたのか、それとも美味しさに心奪われたのか。
 わずかに動きが止まったのを認めて、メルメッテは自身のキャバリアに乗り込んだ。
「美味しく味わって頂けたようで何よりです。では……」
 向けられた銃口は、高圧の重力球を放つもの。
 調理の間は外していたレザーの手袋を装着し、メルメッテはにこりと微笑み引き金を引いた。
「只今より、お相手致しましょう」
 その振る舞いがなんとなく衣装的にもぴったりだったのだろう。コスプレ衣装パワーを存分に発揮した攻撃は、巨人達を重力で以て圧し潰し、次々と制圧していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
【ニコうさ】
おぉー!すげぇ!
ちゃんとフェアリーサイズの衣装が飛んできた!
なんて種族フリー!
おらっニコ!お前もさっさと着替えるのだ!

そして着替え終わり
じゃじゃーん!どうだニコ!可愛いだろ!
新しいうさみっちゆたんぽシリーズの
衣装に使えるかもしれないなコレ!
※「うさみっち様は何着ても似合うからな!」と
思っているので基本的に何でもノリノリで着こなす

ニコは……味があるな!!(精一杯の褒め言葉
記念に一枚撮らせろー!
スマホ構え追いかけ回し

チッ、いいところで邪魔者が!
いでよワルみっち軍団!※全員お揃いフリフリ衣装
合体さえしなければ単に数が多いだけだ
合体する暇も与えないくらい高速で撃つべし撃つべし!


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
衣装に選択の余地が無く、しかも悉くがフリフリしている、だと…!?
うさみよ、少し考え直しては如何か
幾ら仕事の為とはいえ、幾ら何でも…
ああっ、既にうさみが衣装を受け取ってウキウキしている!
しかもノリノリであっと言う間に着替えてしまった!

か わ い い
俺の伴侶が世界で一番可愛い、異論は認めんぞ
良かろう、ならば俺もお前に相応しい男で在らねばな…
着てやろう、フリフリ衣装とやらをな!来い!!
※早着替えなんて便利技能はないので普通の着替えをご覧下さい

…褒め言葉と受け取っておこう(震え声)(歯を食いしばる)
止めろ、写真は駄目だ!思い出は心の中だけに取っておけ!
フリフリ衣装を乱して精霊銃を撃ちまくる



●25:アックス&ウィザーズ風+77:カクリヨファンタズム風
 ハロウィンの国でコスプレ衣装を着るとパワーアップするらしい。
 それだけを聞けば、なるほどよくわからないがアリスラビリンスらしい愉快さの範疇だろうと受け取れる。
 しかしそのコスプレの内容に選択の余地はなく、しかも悉くがフリフリのひらひらだと聞けば。
「うさみよ、少し考え直しては如何か」
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が真顔キメるのも当然のことと言えよう。
 彼は別にコスプレが大好きなわけではない。ハロウィンのノリに乗っかるくらいはまぁ良しとしても自由意志に基づいてという前提があってこそだ。
 仕事だから。そう言われれば多少の無茶振りは呑もうと思う。そういう依頼もあるものだと言い聞かせて納得できるなら許容範囲だ。
 しかし今回の内容はその許容からは外れていた。かなり割と結構大きめに外れていた。
「幾ら仕事の為とはいえ、幾ら何でも……」
 種族を超えた伴侶である榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)に辞退を促す程度には外れていた。
 が。
「おぉー! すげぇ! ちゃんとフェアリーサイズの衣装が飛んできた!」
「ああっ、既にうさみが衣装を受け取ってウキウキしている!」
 なんて種族フリー! ときゃっきゃしているうさみっちはハチャメチャに可愛い。楽しそうで何よりだなと思わずほっこりしてしまう程度には可愛い。
 人類の六分の一のサイズというハンデなど物ともせず、何でも出すぜ! と意気込む森からのフリフリの恩恵を掲げていたうさみっちは、ニコの進言など全く聞こえていない程度にはノリノリに着替え始めていた。
「おらっニコ! お前もさっさと着替えるのだ!」
 こっちばっかりチラチラ見てるんじゃない、と背を向けたうさみっちと、巨人達にぽんぽんと衣装を提供しまくる森とを見比べて、ニコはゆっくりと額を抑えた。
 うさみっちがノリノリな以上引き返すことは出来ない。しかしあの巨人の群れは見れば見るほどヤバい。
 パニエでボリュームアップさせたふわふわのスカートから覗くずんぐりむっくりの足とか、アポカリプスヘルとかで世紀末な雰囲気を醸し出す肩装備と大差ないふんわりしたバルーンスリーブとか、大変に視界の暴力だ。
 そして服の内容によってはその暴力の一部とかしてしまいかねない己。ヤバいつらい頭痛が痛い。
 そうこうしている内にあっという間に着替え終えたうさみっちが、「じゃじゃーん!」とその衣装を披露する。
「どうだニコ! 可愛いだろ!」
 ふふん! と胸を張るうさみっちの衣装は、袖の長い中華風の道着といった装い。
 大きな帽子にぺたりと貼り付けられた御札から察するにキョンシーなのだろう。
 得意満面なその姿に、ニコは思わず目を見開いた。
「か……」
「んぉ?」

 か わ い い !

 ニコ、心の叫び。
 だが待ってほしい。よく見てほしい。
 広げられた両手をすっぽりと覆いなお垂れ下がる袖口にはふわふわとフリルが縁取られ(しかも二段ティアードのボリューム感で)、うさみっちがぱたぱたと手を動かす度にふりふりと揺れる。
 道着自体が上品な赤色の総レース地で可愛らしく細やかな意匠が小さな全身を包んでいるのもさることながら、ふっくらとしたシルエットを描くスカートタイプ。裾からちょん、と覗く爪先がまた愛らしい。
 くるりと回れば自前の羽根が相変わらず可愛らしく、それを邪魔しない帯は前面で結ぶリボンになっているのだ。
 可愛いが可愛いを着て可愛く振る舞っているのだから可愛いに決まっている。
 そうだ、俺の伴侶が世界で一番可愛い。異論など認めはしない!
 うさみっちを褒め称える感想を脳内で爆速で迸らせたニコは、ゆるりと甘い表情で、ふりふりされている袖に指先を添わせ、微笑む。
「うさみよ、よく似合っているな」
「まぁ、うさみっち様は何着ても似合うからな!」
 御札をぶら下げたドヤ顔すら可愛い。むしろ可愛くない部分があるか? いや無い。
 うさみっちがこんなにもノリノリで楽しそうにコスプレをしているのに、ニコよ、何を躊躇っている?
「良かろう、ならば俺もお前に相応しい男で在らねばな……」
 キッ。鋭い視線を走らせたニコは、コスプレ衣装を延々飛ばし続ける森と対峙する。
「着てやろう、フリフリ衣装とやらをな! 来い!!」
 待ってましたと言わんばかりに飛んでくるコスプレ衣装を華麗にキャッチして、いそいそと着替えだすニコ。
 早着替えなどという便利技能は持ち合わせておりませんのでお着替え完了まで暫しお待ち下さい。
 ――そして。
「うん、なんというか……味があるな!!」
「……褒め言葉と受け取っておこう」
 震える声でなんとか紡ぎ出し、ぐっ、と歯を食いしばるニコ。
 無事に着替えを終えたニコは、うさみっちと対峙した時点で我に返った。
 着ている途中からこれはガッツリめの女装なのではと思い始めていたが引き返せなかった。
 ゆったりと長いエンジェルスリーブはそれそのものがフリル感たっぷりのふわふわシルエット。
 ややゴシック感を抱かせる黒の纏は魔法使いのローブとも言えそうだが、きゅっと絞られたコルセットから伸びる裾はどう見てもスカートだった。しかもうさみっちの袖よりも更にボリュームたっぷりの三段ティアード。足が見えない長さなのは温情だろうか。
 しかしながら嬉しい面もある。コンセプトは妖精の魔法使いらしく、背面に透き通ったレースの羽根がついているのだ。
 うさみっちとお揃いだ。それだけは救いと言えよう。
 ニコがお披露目ターンをしてくれないので自分でくるくるとニコの周囲を飛び回り、上から下まで眺めたうさみっちは、スッ、とスマホを構える。
「おい、待て」
「一枚撮らせろー!」
「止めろ、写真は駄目だ! 思い出は心の中だけに取っておけ!」
 即座に踵を返し、スマホを構えて追いかけてくるうさみっちから逃げるニコ。その前に立ちはだかる巨人の集団!
「チッ、いいところで邪魔者が!」
 楽しそうなところ申し訳ないですがお仕事です、これはお仕事ですよ!
 写真を一旦諦めてスマホを片付けながら、うさみっちはふりふりの袖を掲げる。
「いでよワルみっち軍団!」
 武器を掲げて迫るトランプの巨人と、彼らが呼び寄せたトランプ兵達に対抗すべく、うさみっちは黒スーツにサングラスのマフィア風うさみっち集団を召喚した。
 したはずだが!
「かわいいが過ぎるな!?」
 うさみっちのノリノリ気分の影響か、何故だか全員うさみっちとお揃いのふりふりキョンシー衣装になっていた。
 思わず声を上げたニコは、ごほんと気を取り直し。
「契約の下に疾く来たれ、我が炎の愛し子よ」
 フリルの袖をたくし上げて精霊銃を構えると、ワルみっち達と共に巨人へと銃撃を放る。
 炎の弾丸を撃ちまくる姿は格好いい。大丈夫しっかり格好いい!
 そしてふりふりの萌え袖ワルみっち達がどうやって銃を撃ったかなんて気にしちゃいけない。
 可愛いの前では全てが万事解決するのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
禄郎◆f22632
アドリブ◎

禄郎と交わした約束が叶って嬉しいわ
あなたの扱う武器や力をマリアへ魅せて頂戴
それとは別に…
此処はハロウィンの国なのでしょう?
ちょっぴり遊んでも怒られ…駄目かしら?(小首傾げ
巨人さん達が現れたら、しっかり禄郎をサポートするわ

まぁ!この衣装もとっても素敵
どれも着てみたいのよっ(テンション高め
大丈夫よ、禄郎
レースでも似合っているのだわ!紳士よ
敵のフリフリなんて目じゃないのだわ!

後衛
衣装を着て竪琴構え
ハロウィンらしくダークでポップな綺麗な音を演奏し楽しく謳う
麻痺の糸絡めた旋律で巨人達の動き鈍らせ
耳飾りを変換させトランプや巨人へ【茉莉花の雨】使用

禄郎ったら本当に強いのね
美事だわ


氏家・禄郎
マリア◆f03102
アドリブ◎

さて、マリア君
約束を果たす時だ

で、あのふりっふりの巨人は何だい?
……なるほど、ハロウィンの国
つまりは仮装
なら、私もその流儀に乗るとしよう

マリア君は何を着るんだい、何を着ても似合いそうだけれども
どちらにしても楽しみだ

さて、私だが……本当に似合ってるの?
ならいいけれど
では、魔法少女探偵屋の出番だ(察して!)

では仕事といこう
巨人達は大きい、だから影があり、私は【闇に紛れる】ことが出来る
懐にもぐりこんだら『嗜み』でバランスを崩してもらい、マリア君の起こした水晶の嵐へと転がってもらう
勿論、生き残った敵には拳銃で【咄嗟の一撃】さ

このような感じでよろしいでしょうかレディ?



●04:スペースシップワールド風+39:キマイラフューチャー風
 いつか、機会があれば。
 なんとも言えぬ愉快な理不尽下で交わされたささやかな約束が、氏家・禄郎(探偵屋・f22632)とマリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)の間にはあった。
 そして、今。それが果たされる時。
 あなたの愛用する武器はなんなのかしら。その腕前は?
「あなたの扱う武器や力をマリアへ魅せて頂戴」
「恵まれた機会だ。喜んでお披露目しようとも」
 ふわりと微笑むマリアドールに笑み返し、それにしてもと禄郎は振り返る。
「あのふりっふりの巨人は何だい?」
 ごつい体躯を覆うふんわりふわふわは、なまじサイズ感が合っていて、元々そういうフォルムだったかもしれないくらいにはフィットしているけれど、何一つ取り繕わない所作が全てを台無しにしたアンバランスさを生んでいる。
 それらが列を成す光景はなかなかに異様だけれど。
「此処はハロウィンの国なのでしょう?」
「……なるほど、ハロウィンの国」
 つまりは仮装。一見奇抜な装いも、ハロウィンだからという言葉でねじ伏せられるのは便利なものだ。
 肩を竦めつつ、禄郎はならばと衣装を提供しているらしい森へと視線を移す。
「私もその流儀に乗るとしよう」
 お待ちしておりましたとばかりにぽんっと衣装を飛ばしてくる森の木々達。
 禄郎と共にふわふわの布を受け取りながら、マリアドールは少しのワクワクに顔を綻ばせる。
「ハロウィンの国なら、ちょっぴり遊んでも怒られ……」
「マリア君?」
「……駄目かしら?」
 ことりと首を傾げて見せるマリアドールに禄郎はまた肩を竦める。
 はしゃぐのは結構。けれど遊び過ぎは禁物だと、少女を嗜める大人の顔をする禄郎に、マリアドールは衣装を抱きしめて笑顔を弾けさせた。
「勿論、しっかり禄郎をサポートするわ」
「良いお返事だ。さてマリア君は何を着るんだい、何を着ても似合いそうだけれども」
「巨人さん達がきている服もどれも可愛らしくて素敵だもの。どれも着てみたいのよっ」
 けれど今は、飛び出てきたこの服を。袖を通して見れば、それがケーキをモチーフとした衣装だということに気がつく。
 ふっくらと膨らんだスカートスポンジ色の裾の上に、ふわっふわの生クリームを模したフリルがたっぷり。白をメインとしながらも、そればかりでは味気ないと言わんばかりに色とりどりな短いフリルが幾重にも重ねられている。
 イチゴ色のふんわりスカーフを重ねる上半身は、コルセットできゅっと引き締まったシルエットを作りながらも、これまたカラフルなフリルを備えた姫袖が広がっていて。
 甘くてふわふわ、少女の夢を目一杯詰め込んだような衣装に、マリアドールはテンション高めにくるりと回る。
「禄郎、どうかしらっ」
「思ったとおりよく似合っているね。さて、私も着替えたわけだが……」
「大丈夫よ、禄郎。レースでも似合っているのだわ! 紳士よ」
 本当に? と一瞬訝る目をした禄郎は、改めて己の服を見る。
 マリアドールのふわふわスカートに引けを取らないふんわり感。
 全体的に見れば星空をイメージした暗色にキラキラと光沢のある生地がとっても上品な感じだ。
 しかしフードの付いたケープはしっかりフリルの二段重ね。勿論フードにもレースの縁取りが完備されている。
 腰から下のふわっと膨らんだデザインはマリアドールの衣装に引けを取らないボリュームで、端的に言えばスカートだ。星空生地に揺蕩うグラデーションなフリルの煌めきは、さながら天の川のようで。
 レースの手袋を装備すれば、その手に軟化ステッキ的な物を握っていてもきっとおかしくない姿になっていることだろう。
「敵のフリフリなんて目じゃないのだわ!」
「うん、うん……そうか。ならいいけれど」
 マリアドールがそう言うのだから大丈夫なのだろう。
「――では、魔法少女探偵屋の出番だ」
 大丈夫じゃなくてもまぁ行くしか無いというのは、よくわかっているのだけれど!
 前衛として立つ禄郎をサポートすべく、マリアドールは彼の後ろで竪琴を構える。
 ハロウィンの国に心躍らせるマリアドールが奏でる旋律は決まっていた。ダークな雰囲気を有しながらも、弾むようなポップなメロディ。
 さぁ、どなた様も手を取り合って。楽しく踊って、謳いましょう。
 麻痺の糸を絡めた旋律は、巨人達を縫い止めて、その動きを鈍らせる。
 敵がいかに巨大なトランプのカードを放とうとも、その動きが緩慢であれば見切るのは容易いこと。
 そうして旋律に翻弄されている巨人達の群れには、その体躯に相応しく広々とした影ができる。
 闇に紛れるには、星空の纏は些か華やかに思えたけれど。ふわりと揺れる天の川の煌めきに目をくらまされている内に、禄郎は悠々とした所作で敵の懐へと潜り込む。
 足元に群れてくる小さなトランプ兵達はひょいと掴んで放り投げて。沿わせるように添えた手が、ぐいと巨躯の重心をずらしてやった。
「英吉利仕込みのなんとやらってやつでね」
 無防備な懐で、足を掛けられ傾けられれば、崩れ落ちるのは必至。体勢を崩した輩達は、そのまま地面へ転がして。
 幾重にも重ねられた布を巻き上げて吹き荒れる水晶の花嵐へ、ご案内。
「ハルモニアの華と共に咲き匂いましょう舞い踊りましょう」
 ──さぁ、マリアに見せて頂戴? 神が与えし万物を。
 甘く微笑むマリアドールが起こす花びらの乱舞に巻かれ、巨人達が切り刻まれていく。
 無論それだけで仕留められぬ者が居るのは織り込み済み。そんな者らを仕留めるべく、禄郎は銃を構える。
 英吉利製の回転式拳銃は、彼の愛用。
 マリアドールにもよく見えるように、ほんのわずかの間だけ闇からその姿を晒した禄郎が放つ弾丸は、立ち上がろうとする巨人の眉間を撃ち抜いて、再び地面へと崩れさせ。
 くるりと身を翻してまた新たな巨人を花嵐の檻へと叩き込むべく、己の『嗜み』を披露していく。
「――このような感じでよろしいでしょうかレディ?」
「禄郎ったら本当に強いのね。美事だわ」
 大仰な所作で窺う禄郎と、楽しげに笑うマリアドールがそんな言葉を交わしたのは、巨人達が駆逐された頃。
 このハロウィンの国を支配する存在への道が切り開かれた時であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『おねだりさま』

POW   :    それは偽物。中身を引き裂いたら分かるわ!
【手にしたフォーク】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    私可愛いでしょ?素敵でしょ?こいつらよりも!
【不気味】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【今で喰らったアリス達の残骸】から、高命中力の【恐怖に満ち、救いを求める鋭い骨の手】を飛ばす。
WIZ   :    私はアリス!そうよお茶会を開きましょう!
【血肉で作られた紅茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいる血肉で作られた紅茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ジェット・ホークスアイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●美味しいものには抗えない
 目に悪い巨人の群れがいつの間にか居なくなっていた。
 それはいい。それはいいのだけれど、それはつまり誰かが彼らを倒したということで。
 それは誰? アリス? いいや、いいや。アリスは私。私がアリス。だからアリスを名乗る誰かがここに来るならば、それはきっと偽物なんだ!
「お茶会、お茶会をするの。私はアリスだから。楽しいお茶会をするのよ!」
 誰かが来たなら巻き込んで。私をアリスと認めさせる。
 うふふ、あはは。なんだかとっても、いい気分――。
 ――少女は綿のはみ出たクマのぬいぐるみをゆらゆらと振り回しながら笑っていた。
 そうして、猟兵達がその場にたどり着けばにんまりと口角を上げる。
 ハロウィンの国の支配者として無敵の力を得ている少女を倒すには、美味しい料理を振る舞うほかない。
 材料はある。いくらでも。器具もある。いくらでも。
 けれど料理を作るのを待ってくれるような配慮はこれっぽっちもない。
 少女――おねだりさまの攻撃を防ぎ、あるいは掻い潜りながら、彼女の舌を唸らせるような料理を作るしか無いのだ。
 愛と真心を携えて。さぁ、いざキッチンという名の戦場へ!
黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

料理は人並みにできるけど、オウガとはいえ人様に出せる腕とはいいがたいと思うし。
あんまり人に対してって事全般に自信はないんだよな…。
せいぜい盾や囮ぐらいにしかなれん。

相手するならいつものような隠密は避けるか。
あと食べて貰らって眠りにつくまではいくら攻撃しても意味ないしな、防戦メインか。
UC鳴神で防御力を上げ、相手の攻撃を流したりといった回避防御に専念。
通るかわからないけど隙を見てマヒ攻撃を仕掛けてもみる。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで流しカウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。


メルメッテ・アインクラング
先程のお着替え……非常に楽しい体験でした
できればもう一着、着てみたいのですが叶うでしょうか?
難しければ同じ衣装のままで構いません

『休仕符』を発動。ケーキを【料理】しましょう
土台の生地を焼き下準備をしたら色付けしたバタークリームでバラを絞り、次々に飾ります
「怖がられたいのですか?生憎、私は不気味とは感じません
それよりも、アリスであると言うならば、あなた様はこの物語の主役。もてなされるべきと私は考えます」

完成したケーキは好きなだけお召し上がり下さい
合わせて紅茶をお淹れするなど【奉仕】でございます

……この物語も終わりが近いのですね
「どうぞ、安らかにお眠り下さい」
優しく告げ、迷いなく短銃を撃ちましょう


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
折角うさみが手ずから茶会の準備をするというのに
大人しく待つ事すら出来ぬとは、マナーのなっていないお嬢さんだ
料理を手伝いたい気持ちもあったが、
心得た、監督代行として立派に務めを果たしてみせよう
ウインクの愛らしさに仰け反りつつも、やきゅみっち達を預かる

という訳で、悪いが此処は一歩も通せぬな
やきゅみっち軍団、前進守備だ!
相手はバット代わりにフォークで挑むようだが
投手うさみの魔球で粉砕してやれ…あれっ打たれた!?
だが内野ゴロだ、落ち着いて処理すれば問題無い!

もう手加減は無用だ、何なら投球であのフォークを粉砕してやれ
いざとなったら監督代行たる俺が乱闘でベンチから出る
(拳を固めながら問題発言)


榎・うさみっち
【ニコうさ】
作ってる間オウガが邪魔してくるのか!
空気読めない奴め!
仕方ない、いつもならニコは俺の助手だが
今回はお前は守りに回るのだ!
これも美味しい料理を作るための
立派な共同作業だぜ☆(ウィンク
いざとなったらこいつらも使え!監督権をやろう!
やきゅみっち団を呼び出しニコにつかせる

うさみの何分かクッキング~!
オウガはお茶会をご希望!
お茶会にぴったり、ドロップクッキーを作る!
指定の材料を混ぜたら天板の上に落として焼くだけ!
生地を寝かせる必要も無いから時短で簡単
初心者にもオススメのクッキーだ!
王道のチョコチップと、ナッツと
俺の大好きな抹茶味の三種類作るぜ!
頑張った褒美にニコにもあとで食わせてやろう!




 傍迷惑なティーパーティー。その主催者を自称する少女、『おねだりさま』を鋭く睨み据え、黒鵺・瑞樹はトランプの巨人を幾つも斬り捨ててきた両手の二振りを握り直す。
 そうして、自分と同じようにその場に立つ猟兵達をちらと振り返った。
「料理の方は、任せた」
「焼くだけでも構わないと、仰ってましたが……」
 小首を傾げるメルメッテ・アインクラングに、瑞樹は肩を竦める。
「人並みには出来るけど、オウガとはいえ人様に出せる腕とはいいがたいと思うし」
 そもそもが、瑞樹自身は他人に対して何かをするということ全般に自信がないタイプだった。
 対してうまくは出来ないという自覚でもあるだろうが、『上手くはないなりに心は込めた』という確信が持てない。
 目に見えない不確定な要素を、こと、それを必要とされる場面で無理に発揮するよりは。
「せいぜい盾や囮ぐらいにしかなれん」
 こちらの方が、ずっと、真摯に貢献できると、確信できた。
 なるほど、と呟き、差し出がましいことを申し上げましたと深く頭を垂れたメルメッテは、ならばメイドとしてより慣れた自身が勤めるべきと踵を返す。
 キッチンへと向かい、それではケーキを、と嵌めていた手袋を外そうと手に掛けた瞬間。
 なんだか、森と目が合ったような気がした。森に目とか無いけど。
 あるいはそれは、メルメッテの期待か。素敵な衣装を出してくれた森に、もう一着をねだるような眼差しが向けられる。
 それを受けて、森は張り切ったように木々を揺らし、ぽぽぽぽん! とすごい勢いでふりふりな衣装を量産していく。
 巨人達が居なくなってきてくれる者がいないのが寂しい! と言わんばかりに。
「まぁ……」
 素敵なお召し物がたくさん。顔を綻ばせたメルメッテの手元に、ふわり、一着の衣装が舞い降りる。
 それは、彼女にとっては見慣れた形。ふんわりとしたエプロンにふっくらとしたシルエットを描きながらも機能的な袖。ひらりと長く、それでいてボリューム感のあるスカートと、それを縁取るフリル達。
 クラシカルかつフリル増し増しなメイド服がそこにあった。
 キッチンを戦場をしようとするメルメッテを鼓舞するような衣装の提供に、にっこりと微笑んだ彼女は素早く着替えて。
「これは、負ける気がしませんね」
 早速、調理に取り掛かった。
 おねだりさまを見て、キッチンを見て、最後に隣のパートナーを見たニコ・ベルクシュタインと榎・うさみっちは、こくりと頷きあって、それぞれの持場につく。
 即ち、ニコはおねだりさまとの対峙へ、うさみっちはキッチンへ。
「オウガが邪魔してくるなら仕方ない、いつもならニコは俺の助手だが今回はお前は守りに回るのだ!」
「あぁ、任されよう。折角うさみが手ずから茶会の準備をするというのに、大人しく待つ事すら出来ぬとは、マナーのなっていないお嬢さんだ」
 本心で言うなら、うさみっちの手伝いをしたい。フリフリ衣装で料理に勤しむうさみっちをじっくり眺めていたい。
 そんな気持ちがちらりと振り返った視線に現れたのか、ぱちっと目が合ったうさみっちは、仕方のないやつめと言うように腰に手を当て胸を張る。
「これも美味しい料理を作るための立派な共同作業だぜ☆」
「ぅぐっ!?」
 ばっちこーん☆ と可愛らしくウインクされて、思わず仰け反るニコ。
 自制心を取り戻すのにやや時間を要したが、大丈夫、まだ血は吐かない。取り繕える。
「いざとなったらこいつらも使え! 監督権をやろう!」
「心得た、監督代行として立派に務めを果たしてみせよう」
 うさみっちの頼れる伴侶として、役割を果たすべく。召喚された9体の野球チームは、今日も可愛い容姿で可愛らしくない武器をブンブン振り回している。
(……こっちはふりふりじゃないのか)
 ちょっぴり残念なような気もしたが、100%可愛いので何の問題もなかった。
 そうして、瑞樹と、ニコ率いるやきゅみっち軍団はおねだりさまとの対峙を果たし、その間、メルメッテとうさみっちは調理に励むこととなった。
「私の方はご心配には及びません。調理中は、邪魔を受け付けませんので」
 『休止符』にてサイキックのバリアに包まれたメルメッテが微笑むのに頷いて、瑞樹はおねだりさまに斬りかかる。
「境の先へ……!」
 いつものような隠密行動ではない。これは、注意を引くための立ち回り。
 渡の力、月の力、龍の力。それぞれを込めた自身の防御力を底上げして、挑む。
 どうせ敵は今の状態では無敵だ。攻撃は通らない。当てるよりは牽制する気で振るわれた刃は軽く躱されるけれど、その分キッチンから距離を稼げれば、十分だ。
「邪魔よ、邪魔、邪魔。私のお茶会にはあんた達みたいな硬そうなのより柔らかいのがいいの」
「悪いが此処は一歩も通せぬな」
 アリスを自称したところで、どこまでもオウガなのだなと胸中で思案して、ニコは監督代行としてやきゅみっち達へと指示を飛ばす。
 前進守備を支持されたナインは、わぁっと釘バット片手に飛び出し、おねだりさまの前でぴょこぴょこ飛び跳ねる。
 通せぬー。一歩も通せぬー。とニコの台詞を真似るあざと可愛さを発揮しながら立ちはだかるやきゅみっち達へ、おねだりさまは忌々しげにフォークを振りかざした。
「投手うさみよ、魔球で粉砕してやれ!」
 合点承知と繰り出される鉄球による魔球がおねだりさまのフォークへと迫り――。
 かっきーん!
「あれっ打たれた!?」
 金属同士がぶつかるいい音がした。
「い、いやだが内野ゴロだ。落ち着いて処理すれば問題無い!」
 しゅっと鉄球を拾い上げて投手へ投げ戻す守備勢に、いいぞ、その調子だと声を掛けるニコ達を、微笑ましいものを見るような目で見つめ、メルメッテは、焼き上がったスポンジ生地にクリームを絞っていく。
 薔薇の形に整形されたクリームが次々とスポンジを華やかに飾っていく傍ら、うさみっちは簡単お手軽ドロップクッキーを作っていた。
 こねこねと根気よく混ぜた生地はいい感じにねっとりなめらか。天板に並べられていく生地はチョコチップ、ナッツ、抹茶の3種類に分けられている。
「寝かせる必要もないから手早く作れてお茶会にもぴったり! 初心者にもオススメのクッキーだ!」
 視聴者(概念)へのワンポイントアドバイスも忘れない。
 なお、うさみっちはサイズ的な関係で、人間ならばスプーンで落とすだけの作業が掘削並みの重労働になっていることを忘れてはならない。
 こんな時こそニコの出番だが、今回ばかりは仕方がない。
「耐えろ、耐えるんだやきゅみっち。いざとなったら監督代行たる俺が乱闘でベンチから出る」
 歯を食い縛り覚悟せよ、と拳を固めるニコこそが手伝いに踵を返したい衝動を耐えているようで。
 行ってもいいんだぞと喉まで出かかった言葉を飲み込んで、瑞樹は振り下ろされたフォークを本体のナイフで受け流した。
 そこへ、ふわり、甘い香りが飛び込んでくる。
「さぁ、どうぞ召し上がれ」
 クリームで飾られた華やかなホールケーキを手に現れたメルメッテに、おねだりさまの攻撃がピタリと止む。
 無敵の支配者は、それゆえに饗された料理の誘惑には抗えない。
 食べなければ。食べなければ。吸い込まれるようにしてケーキを切り分けられたテーブルについたおねだりさまに、メルメッテは紅茶を淹れて差し出した。
 その顔をぎょろりと睨みあげたおねだりさまに、メルメッテはにっこりと微笑んで小首を傾げた。
「不気味な素振りで、怖がられたいのですか? 生憎、私は不気味とは感じません」
 うぞうぞと、おねだりさまの背後でメルメッテを狙いすますように蠢いていた骨達が、真っ直ぐな答えに行き場をなくす。
「それよりも、アリスであると言うならば、あなた様はこの物語の主役。もてなされるべきと私は考えます」
 たくさん食べてくださいね。促すメルメッテに、おねだりさまはそぅ、とケーキを口に含んだ。
「あまい……」
 それでいて全然しつこくない。
 バターの風味がとても濃厚で、なめらかな口当たり。すぅっと溶けて行くのに深い味わいがいつまでも口の中に残る。
 そんな甘さに紅茶がよく合う。口の中をそっと洗い流して、二口目もまた新鮮な気持ちで食べられるようにしてくれる。
「美味しい……」
 事細かに語りながら、とろん、と。どこか眠たげな顔をして、夢中でケーキを食べるおねだりさまが、ケーキを食べ尽くそうとした頃。
 香ばしく焼けたクッキーをカゴいっぱいに入れて、うさみっちが登場した。
「こっちもぜひ食べてくれ!」
 紅茶のおかわりも準備万端。ずいと勧められた籠に伸ばした手が手にとったのはチョコチップクッキー。
 ざっくりとした食感はドロップクッキーならでは。噛みしめれば香ばしさの中にチョコレートの甘さが優しく広がり、小気味良い音とともに口の中で踊るよう。
 転じてナッツは香ばしさを一層引き立てる味わい。ザクザク、カリッ。と変化する瞬間がたまらない。
 抹茶の風味は甘さに変革を齎す。ちょっぴりの苦味が逆に甘さをより深くし、ザクザクの中にしっとりを含むような上品さを醸し出す。
 あぁ、こちらも美味しい。
 手が止まらない。
「上手く出来たみたいだな。頑張った褒美にニコにもあとで食わせてやろう!」
「本当か!?」
 ありがたみをもって味わうが良い、と再び胸を張るうさみっちに、うさみもお疲れ様だとそっと撫でる手が添えられる。
 そうやって気を抜いた顔を出来るほどに、おねだりさまの表情はもう随分と眠そうで。
 美味しい、と繰り返し、何度も何度も感想を紡ぐ少女の姿を見て、メルメッテはいつの間にか空になったティーポットの代わりに、短銃を手にとった。
「……この物語も終わりが近いのですね」
「そうだな……終わる時は、一撃だ」
 今は降ろされている刀を、再び構え直せば。あとはもう、一瞬のこと。
 そうして、その時は遠からず訪れる。
 ――おいしかったぁ。
 満足気に呟いた少女が、重たくなった瞼をゆっくりと下ろして眠りにつくのを見届けて。
 瑞樹は刃を、振り上げる。
「どうぞ、安らかにお眠り下さい」
 優しい声と銃声が響くのはほぼ同時で。
 硝煙の匂いがふわりと立ち上って――消えた。
 後に残るは、まだ熱を持ったオーブンから漂う甘い香りばかりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月25日


挿絵イラスト