獣の国のハロウィン・キュイジニエ
●ハロウィンの国はとてももふもふ
「にゃ!」
「ハッピーハロウィン、にゃ!」
ここはアリスラビリンス、オウガ・オリジンの作り出した「ハロウィンの国」。
ハロウィンを彩るに相応しい、喋るジャック・オー・ランタンやコスプレ衣装が際限なく飛び出す森、ハロウィン料理を作るに十分な食材の揃ったキッチン、配るお菓子が湧き出す泉が彩る不思議の国だ。
とはいえもちろん、オウガ・オリジンの作る国。平和な国だなんてあるはずがない。
今日もにゃんこずきんちゃんが、小さい身体を仮装に包んで、トリックオアトリート、ハッピーハロウィン。
ここはオウガのひしめく国。オウガがハロウィンを楽しむ国。
お菓子をうまうまと食べながら、にゃんこずきんちゃんは森の中でこてりと首を傾げる。
「にしても、あたしたちがこれを身につけて、何か意味があるのかにゃ?」
「なんか強くなってる気がするし、これも仮装だから気にしたら負けにゃ」
そう話すにゃんこずきんちゃんの仮装は。
きつねとたぬきの着ぐるみだった。
●グリモア猟兵は元々もふもふ
「皆、アリスラビリンスで『ハロウィンの国』が見つかったようだ」
ダレン・コリデール(紙の上にこそ救いあれ・f25540)は瞳孔の倒れた瞳を細めながら、グリモアベースにて猟兵たちを見回した。
オブリビオン・フォーミュラの倒されたアリスラビリンスで、オウガ・オリジンの作り出した「ハロウィンの国」が見つかった。
その報が駆け巡るや、次々に発見されていくハロウィンの国。そして、その国でハロウィンを楽しむオウガたち。
ここでオウガを撃破し、「ハロウィンの国」を猟兵たちが手に入れれば、来たる10月31日のハロウィン当日、パレードをするのに役に立つかもしれない。
あるいは、いずれ来るであろう猟書家と、オウガ・フォーミュラとの戦いにも、役立つことがあるかもしれない。
ダレンはそう話して、猟兵たちをぐるりと見まわした。
「このハロウィンの国には、独自の法則があってね。簡単に言うと……『ハロウィンを満喫していると強化される』ってところかな。仮装をする、お菓子や料理を振る舞う……そうしてハロウィンを楽しんでいると、パワーアップする。猟兵もオウガもね」
そう話して、ダレンはカツカツと蹄の先で床を叩いた。
ハロウィンの国はハロウィンを楽しんでいれば、世界が力を与えてくれる。そこに猟兵もオウガも関係はないらしい。
ともあれ、立ちふさがるオウガは倒すのみ。気を引き締める猟兵に、ダレンがこくりと頷いた。
「順を追って説明しよう。ボスのオウガが待ち構えているキッチンに向かうには、『コスプレ衣装の飛び出してくる森』を抜ける必要がある。ここは今、にゃんこずきんちゃん……この、ケットシーらしい姿をしたオウガがたくさんいて、仮装を楽しんでいるようだ」
スマートデバイスから映像を映しながら説明するダレン。そこには背丈の小さい、白い毛皮をしたケットシーらしい姿のオウガが、たくさんちまちまと歩き回っては手にした籠からお菓子を渡し合っている。
そのいずれもが、一様に仮装をしていた。ころころしていて大変かわいい。
「で、仮装をしているから強化されている。森は君たちにも仮装の衣装を渡してくるから、それを身につければ君たちも強化されるのだが……ね」
そう、勿体つけながら話すダレンが苦笑した。それもそのはず、このにゃんこずきんちゃんたち、いずれもが着ぐるみを身に纏っているのだ。動物モチーフからなんかちょっと季節外れなもの、はたまたなんだそれはとつっこみたくなるようなものまで。
「この森はどうも、着ぐるみばかり渡してくるらしい。内容も様々、種類も様々……モチーフは完全ランダムなようだから、意に沿わない着ぐるみを渡されるかもしれないけれど、どうか耐えて着てほしい。きっと、大いにパワーアップするだろうから」
曰く、意に沿わない仮装を渡されても「勝つためにしょうがなく着るのだ!」みたいな割り切りがあれば、よりハロウィンを楽しんでいると判断されて大きな力を渡されるとのこと。
なんだそれは。
ともあれ、森を抜けたら次の場面はキッチン。そのキッチンとつながる食堂で、ボスオウガ「シンデレラ」は着席して待っている。
「僕の見たところ、シンデレラはオウガ・オリジンに直接力を与えられ、非常に強化されているようなんだ。通常では、一切の攻撃を受け付けない。その守りを破るには、ただ一つ……」
一転して真剣そうな表情になったダレンの言葉に、猟兵たちが揃って生唾を飲み込む。
しばしの沈黙の後、ダレンが言った。
「料理を食べさせ、眠らせることだ」
その言葉に、水を打ったように場内が静まり返った。
なんて?
「うん、まあ、つまりだね。このオウガ、ハロウィンの国の法則により、『振る舞われた料理は断ることを許されない』状態なんだ。出された料理は必ず食べる。そして批評と称賛をしながら、だんだん腹が膨れて眠くなる。完全に眠りに落ちたら、それでハロウィンは『おしまい』だからね。法則から外れて倒せるようになる、というわけだ」
つまり、眠りについたらそれで「ハロウィンの日」はそのものの中でおしまい、強化された力が外れるのだという。そうしたらもう、一撃で倒せてしまうのだとか。
「だから、キッチンでは敵の攻撃を耐え忍びながら料理を作り、振る舞う。そういう流れになる。料理の腕に自信がなくても、心を込めて作ればオッケーだ。ああ、仮装の着ぐるみについては君たちに任せるよ。着ぐるみに身を包んだまま料理するんでもいい」
そう話し、にっこり笑うと、羊のグリモア猟兵がポータルを開いた。開かれた扉の向こうから、漏れ出てくるのは楽しい笑い声と僅かに肌寒い空気。
「それじゃ、準備はいいかい? ハッピーエンドで締めくくれることを期待しているよ」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
今度は世界情勢に関わるハロウィン依頼です。
たくさん仮装して、たくさん料理して、オウガをやっつけましょう。
●目標
・シンデレラ×1体の撃破。
●特記事項
このシナリオは「2章構成」です。第2章がクリアになった時点で、シナリオが完成となります。
また、10/31までにシナリオが成功となることで、ハロウィンパーティー当日、そしていずれ始まるであろう猟書家との戦いにおいて、何かしらの影響がある可能性があります。
●戦場・場面
(第1章)
オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードで作り出した「ハロウィンの国」、コスプレの衣装が次々飛び出してくる森です。
にゃんこずきんちゃんが森から飛び出してきたコスプレ衣装を身に纏って、パワーアップしています。
こちらも森から飛び出すコスプレ衣装を身につけることで、パワーアップして戦うことが出来ます。
なお、飛んでくるコスプレ衣装は「ランダム」ですが、全て「着ぐるみ」です。
(第2章)
「ハロウィンの国」の奥にある、食材が完備されたキッチンと食堂です。
オリジンから直接力を与えられたシンデレラが、「ハロウィンの国」の法則によってほぼ無敵となり、皆さんを待ち構えています。
「ハロウィンの国」の法則により、シンデレラは「料理を目の前に出されると必ず食べて、食べるごとにだんだん眠くなる」ことが分かっています。
料理を食べさせ続けて完全に眠ったら、無敵状態は解除されます。
それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『にゃんこずきんちゃん』
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POW : 12時になると自爆するとは何か間違ってるのにゃ。
自身の身長の2倍の【12時になると自爆する『南瓜の爆車』】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : お魚やめるなんてもったいないのにゃ。
【相手が変形した部位や召喚物を魚】に変形し、自身の【自制心】を代償に、自身の【食欲と魚への反応速度】を強化する。
WIZ : どこかのおばあさんからもらった毒リンゴにゃ。
【毒リンゴを対象の口に放り込むこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
三上・チモシー
アドリブ連携歓迎
わあ、着ぐるみが飛び出してくるの? おもしろーい!
どんな着ぐるみが出てくるのかな。楽しみー♪
どうせならかわいい着ぐるみがいいなー、とか思いつつ、どんな着ぐるみが出ても気にせず着用
恥ずかしさとかは全然無いよ。楽しければそれで良し!
やだー、にゃんこずきんちゃんが着ぐるみ着てるー!
かーわーいーいー!
でも戦わないとダメなんだよね……
南瓜の爆車の進む方向を【見切り】回避しつつ、『熱湯注意』で広範囲をまとめて攻撃
ゴメンねー、熱いよ!
●もみの木さん
「やだー、にゃんこずきんちゃんが着ぐるみ着てるー! かーわーいーいー!」
不思議の国に飛び込むや、三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)は瞳をキラキラ輝かせながら敵のオウガを見やった。
にゃんこだ。
真っ白なにゃんこが赤い頭巾ではなく、犬やら熊やら、もこもこ着ぐるみを見に纏っている。
かわいい。
「にゃ!?」
「敵さんだにゃ!」
そんなふうに思われているとは露とも知らず、にゃんこずきんは歯を剥き出しにしてチモシーを威嚇した。
威嚇する姿もかわいい。にゃんこずるい。
「えー、でも戦わないとダメなんだよね……」
そのにゃんこの可愛さに負けてしまいそうになりながら、チモシーは構えを取る。
しかし相手は着ぐるみを身に纏っているのだ。このままでは一方的に叩きのめされて終わりだろう。
「というか着ぐるみが飛び出してくるの? おもしろーい! どんな着ぐるみが出てくるのかなー……」
そんなことを言いながら、どんな着ぐるみが自分に飛び出してくるのかを待っていると。
ぼふっ。
「えっ」
チモシーの手の中に飛び込んできたのは、枝葉の付いたままの木……ではなく。
木の着ぐるみだった。顔を出せるように、幹には穴が開いている。
「これって……木? あははこんなのまで飛び出してくるの!? 楽しいー!」
予想外のチョイスに面食らいながらも、チモシーは楽しそうに笑う。そうして木の背面のジッパーを下げて、中にもぐりこんでから、枝の部分で器用にジッパーをじーっ。
「よし、これでOK!」
ここに、もみの木inチモシーが爆誕した。
ででーんと胸を張るもみの木に、にゃんこずきんが慌てふためく。
「にゃにゃ!」
「でっかい木が動いてるにゃ! はね飛ばすにゃ!」
かぼちゃの馬車ならぬ、かぼちゃの爆車を召喚したにゃんこずきんは、中に乗り込んでエンジン全開。チモシーの方に向かって走ってきた。
その進むルートを、ぎりぎりまで見極めるチモシー。
「爆車の進む方向は……そっち!」
「にゃ!?」
そして自分にぶつかる間際で、ぐっと身体を隙間にねじ込み緊急回避。無傷で躱されたことににゃんこずきんが困惑の声を上げた。
そこに、チモシーの手から放たれた熱湯が爆車にぶちまけられる。
「ゴメンねー、熱いよ!」
「にゃー!!」
「熱いにゃー!!」
熱湯にのたうち回るにゃんこずきん。そのままコントロールを失った爆車は、森の木に激突して爆散していった。
成功
🔵🔵🔴
バロン・ゴウト
ハロウィンの国、これもまたアリスラビリンスらしい愉快で不思議な国なのにゃ。
渡された着ぐるみはボクだけじゃなくてシトラスの分もあったのにゃ。
えへへ、シトラスとお揃いの着ぐるみ、嬉しいのにゃ♪
【POW】
南瓜の馬車に乗って戦うにゃんこずきんちゃんに対抗して、ボクもシトラスに乗って戦うのにゃ。
ボクだけじゃなくシトラスも着ぐるみを着てるから、パワーアップも2倍なのにゃ!
パワーアップした【ダッシュ】力で一気に近づき、南瓜の馬車を思いっきり【吹き飛ばす】のにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●しばいぬさん
着ぐるみがポンポンと飛び出しては通り過ぎていく森の中。
バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)とお供の仔ライオン、シトラスは飛んでいく着ぐるみたちを見ながら、森の中を進んでいた。
「ハロウィンの国、これもまたアリスラビリンスらしい愉快で不思議な国なのにゃ」
この森の向こうにはキッチンがあるという。なんとも摩訶不思議、それこそがアリスラビリンスだ。
と、低空飛行で飛んできた着ぐるみが、シトラスの上に跨ったバロンの顔にぶち当たる。
「にゃっ!」
「あぅっ!」
と、同時にシトラスも声を上げた。何事かと見れば、シトラスの足元にも着ぐるみが。ぶるぶるとシトラスが頭を振っているあたり、どうやらもっと低空飛行で飛んできたらしい。
その着ぐるみ、なんとどちらも同じもの。小麦色の毛並みをしたしばいぬさん着ぐるみだ。
「あっ、この着ぐるみ、シトラスの分もあったのにゃ!」
シトラスから降りて、いそいそと着用。シトラスが着るのも手伝ってあげて、改めてバロンはその上へと跨った。
いつもと違ってもふもふ着ぐるみに身を包んだシトラスの上。もふ感五割増しだ。
「えへへ、シトラスとお揃いの着ぐるみ、嬉しいのにゃ♪」
「あぉぅーん!」
大好きなバロンと同じ格好を出来て、心なしかシトラスも嬉しそう。
すると、視線の先に、きつねとたぬきの着ぐるみに身を包んだ真っ白にゃんこがやってきた。
「にゃにゃ!」
「にゃんこを入れたわんこがにゃんこに乗ってやってきたにゃ! 爆車で対抗するにゃ!」
「シトラスはにゃんこじゃないにゃ!」
かぼちゃの爆車に乗り込むにゃんこずきんちゃんに、文句を言いながらバロンはシトラスの胴体を軽く叩いた。その意を汲み取ったシトラスがダッシュを開始する。
「ボクだけじゃなくシトラスも着ぐるみを着てるから、パワーアップも二倍なのにゃ! んーーー……」
いつもよりスピードを上げ、いつもよりパワフルに。着ぐるみパワーでパワーアップした一人と一匹、チャージ力もいつも以上だ。
勢いをつけて、こちらに突っ込んでくる爆車に体当たり。
「にゃー!!」
「あぅーっ!!」
「「ぎゃにゃーー!?」」
二人分の勢いに負けて、爆車が見事に吹っ飛んでいく。空中で爆散するそれを見ながら、バロンとシトラスは改めて森の奥へと進んでいった。
成功
🔵🔵🔴
ノイシュ・ユコスティア
「オウガもハロウィンを楽しむんだ…。」
少し離れたところから敵達の様子をうかがう。
かわいいなぁ…もふもふしたい。
着ぐるみ=もふもふ、というイメージ。
つまり着ぐるみは気持ちいい仮装なんだ!
なんだこれは?…と思ってもとりあえず着よう。
見た目は気にしない。敵を倒すため。
ユーベルコードを使用し、流花を召喚。
え?まさか流花用の着ぐるみもある?
手早く着せて…
動きにくそうだけど…
流花に乗ったままゆっくりと
できるだけ気づかれないように射程距離まで近づき、そこからロングボウで狙う。
1体ずつ確実に倒していこう。
至近距離まで近づかれたらダガーで攻撃。
相手の攻撃はカウンター。
それにしても暑い…。
●つきのわぐまさん
「オウガもハロウィンを楽しむんだ……」
呆気にとられたように言いながら、ノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は草葉の陰からその様子を見た。
オウガであるにゃんこずきんちゃんが、いぬやらうさぎやらの着ぐるみを身にまとって、もふもふ度合い三割増しでハロウィンを楽しんでいる。
さすがハロウィンの国、オウガであろうとそのルールからは逃れられなくて。
そして。
「かわいい……」
ノイシュの口から本音が漏れた。
かわいい。もふもふしたい。着ぐるみはもふもふだから、きっとあの仮装をしているにゃんこずきんちゃんたちは気持ちいいことだろう。なにせもふもふだから。
そんなことを考えながら、ノイシュが相棒のハヤブサたる流花を召喚しようとしたところで。
「おいで、流花――ぶっ」
「ピィッ?」
ノイシュの顔面に、ぶつかるようにしてもふもふしたものが激突する。ぶつかってきたそれを手に取ると、それは。
「着ぐるみ……が、二着?」
「……ピィ」
一着はツキノワグマの、一般的な構造の着ぐるみだ。それはいい。問題は一緒に飛んできたもう一着だ。
モチーフとしては恐らくカラスだろう。真っ黒な羽が全身を覆っている。しかし、どう見ても人間が着られるような構造をしていない。おまけにやたらと大きい。
それをまじまじと見て、ノイシュは零す。
「もしかして、流花の分も……?」
お互いに顔を見合わせたノイシュと流花。一人と一羽の目が合ってしばし。
ノイシュはいそいそと、流花にカラスの着ぐるみを着せ始めた。翼を通して、足を入れさせて、ジッパーを上げる。
対してノイシュもツキノワグマの着ぐるみを身にまとい、なんとかジッパーを上げる。
ここに、着ぐるみon着ぐるみが、もう一組爆誕した。
いつもよりもふもふ度合いがアップした流花に乗って、ノイシュは弓を引き絞る。
銃と異なり、弓は隠密性抜群だ。矢を放っても音が響かない。射程ギリギリからゆっくり近づいて撃てば、相手は気付かないものだ。
「にゃー!?」
「どこから攻撃されてるのにゃ!?」
「ああもう、かわいい……!」
にゃんこずきんちゃんの慌てふためく様子に気持ちを沸き立たせながら、ノイシュは攻撃を続行。
もふもふと空を飛びながらオウガを倒し、先に進むのだった。
「それにしても暑い……」
成功
🔵🔵🔴
パルピ・ペルポル
着ぐるみねぇ。着るのは構わないけどできればもふりたいんだけど。
てかこの着ぐるみ普通の人間サイズじゃない。
しかもなんか作りがかなりリアルな気がするんだけど。
まぁこれ着るしかないのよね。雨紡ぎの風糸と念動力で支えて、と。
手足届かないところは折り紙でバネ作って入れときましょ。
やっぱり動きにくいというか動かしにくいというか。
キャバリアの操縦ってこんな感じなのかしら…?
念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用するわ。
で、折り紙で立体の魚を複数折ってUCで増やしてにゃんこずきんに突撃させるわ。
魚に反応したら糸で絡めて切り裂いて。
戻ったらもふらせてもらいましょ。
●どらごんさん
「着ぐるみねぇ。着るのは構わないけどできればもふりたいんだけど」
もふもふしたものが好きなパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は、そう零しながら森の中を進んでいた。
自分がもふもふするのもいいが、どうせならもふもふしたものをもふりたいので。なんならにゃんこずきんちゃんをもふりたい。
「さて、着ぐるみは……わっぷ」
呟きながら辺りをきょろきょろしていると、飛んできた。でっかいのが。
ドラゴンの着ぐるみだ。雄々しい外見をしながらその身体はファーで作られており、もっふもふである。
「って、この着ぐるみ普通の人間サイズじゃない。しかもなんか作りがかなりリアルな気がするんだけど」
しかし、問題が一つ。通常の人間サイズで、しかもやたらと縫製が細かく、作りが凝っている。フェアリーであるパルピが着るには大きすぎるのだ。
「……まぁ、これを着るしかないのよね。仕方ないわ」
そうぼやきながら、パルピはドラゴンの背中のジッパーを下ろした。
外周の翼や尻尾には雨紡ぎの風糸を張って支え、頭も落ちないように糸で支える。それに念動力を加えて補強すれば、しっかとドラゴンの足が地面を踏んだ。
後は中、手足が届かないところに折り紙でバネを作って差し込む。これで歩いたり腕を振ったりも出来る。
「よし、これで何とか……いけるかしら」
準備が出来たことを確認して、着ぐるみの中に飛び込んでジッパーを上げる。そうして歩き出したパルピの目の前に、二匹のにゃんこずきんちゃんがやってきた。それぞれ黒猫と茶トラ猫の着ぐるみを着ている。かわいい。
「にゃにゃ!?」
「ドラゴンさんにゃ! 本物みたいだにゃ!」
「いたわね……あぁもう、動きにくいというか動かしにくいというか。キャバリアの操縦ってこんな感じなのかしら……?」
着ぐるみの覗き穴から外を確認しながら、パルピがぼやく。自分の身体よりも何倍も大きなものを動かすのは、確かに難しい。キャバリアの操縦にも通じるものはあるだろう。
ぼやきながらもやるべきことはしっかりこなす。着ぐるみの周囲に雨紡ぎの風糸を張り巡らせれば、突撃してきたにゃんこずきんちゃんがそれに囚われ絡め取られた。
「にゃー!?」
「なんにゃー!? 動けないにゃー!!」
動きを封じられたにゃんこずきんちゃんがもがくも、糸はなかなか離れてくれない。
「よし、捕らえたわね。いってらっしゃい」
それを見たパルピが、着ぐるみの隙間から折り紙の魚を飛び出させた。ユーベルコードで複製された紙の魚が、次々ににゃんこずきんちゃんに突撃していく。
「「にゃー!!」」
「はいオッケー。戻ったらもふらせてもらいましょ」
にゃんこずきんちゃんを無事に倒したパルピは、倒れたにゃんこをその場に置いて、のっしのっしと着ぐるみを繰りながら森の奥へと進みだした。
成功
🔵🔵🔴
春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。
基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。
シリアス以外ならいたずら好きの面も。
テラ・ウィンディア(サポート)
「我が武を以て挑ませて貰うぞ!」
一人称
おれ
二人称
あんた(敵でも尊敬できる人
お前(敵
貴様(激怒した時
エルフの女の子だが突撃志向で戦闘を好む
基本戦術
【戦闘知識】で敵の動きや陣形等の捕捉と把握
闘いながら敵の性質や心の在り方の把握に努める
その後は敵陣に突撃して暴れまわる
【空中戦】を好んで空間全てを利用した闘い方を好む
敵の攻撃に対しては
【見切り・第六感・残像】を駆使して回避
ユベコで主に使うのは
グラビティブラスト(敵が多数の時
【一斉放射】で破壊力増強
メテオブラスト(敵が単体の時
【踏み付け】で破壊力増強
基本フォローが目的なんだろうが
おれはやっぱり之が一番得意だからな
全霊を以て暴れまわるぞーーーー!!!
●うさぎさんとしかさん
森の中で偶然居合わせた春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)とテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、着ぐるみがあちこちで見て取れる森を見てにこやかに笑った。
「これは実に愛らしい森だな! 我が武を以て挑ませて貰うぞ!」
「着ぐるみの森……子供たちが知ったら、きっと喜びそうですね」
たしかにこんな森があったら、子供たちは喜びそうだ。オウガさえいなければ平和な森だったろうに。
気を取り直してテラが足を踏み出したところで。
「さて、それじゃ――わっ!」
「わぷっ!? ……これは」
飛んできた着ぐるみが二人にぶつかった。ぶつかってきたそれを手に取った遙が目を見張る。
「うさぎさん?」
「こっちは牡鹿か! 雄々しくていいじゃないか、おれにぴったりだ!」
遙のところに飛んできたのは真っ白なうさぎの着ぐるみ、テラに飛んできたのは角が立派な牡鹿の着ぐるみだった。サイズもちょうど、自分にぴったりである。
早速着替え始める二人だが、着慣れないこともあってかどうしても、背中のジッパーを上げられない。
「くっ、ジッパーが上げづらいぜ……!」
「あ、お手伝いしますね。腕を後ろに伸ばして……」
苦戦するテラに、遙が背中側に回ってサポートする。上げ終わったら今度は遙の着用サポートをテラがして、これで完了、いざ進もう、というところで。
「にゃにゃ!」
「着ぐるみさんを発見にゃ!」
やってきたのは犬と羊の着ぐるみを身にまとったにゃんこずきんちゃんだ。こちらを見つけてバスケットを突き付ける。
その姿を見て、テラが刀を構える。
「敵だな! 全霊を以て暴れまわるぞーー!!」
「行ってください、援護します!」
二刀を腰に差し、その柄を握りながら突進するテラの後ろから、遙が護符を持って援護する。にゃんこずきんちゃんに接近しながら、テラの手が僅かに刀を抜いた。
「我が技……我が武……風、嵐をも破らん……!」
「にゃにゃ!?」
そこから瞬時に放たれる居合、風の刃。着ぐるみを切り裂かんばかりの衝撃に、にゃんこずきんちゃんが狼狽する。
他方では、遙が呪詛を護符に乗せてにゃんこずきんちゃん目掛けて放っていた。
「諸々の禍事、罪、穢れ、大いなる災いの一抹を此処に顕し給え……!」
「ぎゃにゃー!?」
飛んできた護符を魚に変える余裕もない。呪詛に焼かれてにゃんこずきんちゃんが悲鳴を上げた。
そして、テラの二刀がもう一度炸裂する。
「これで……トドメだーー!!」
「「にゃーん!!」」
風の刃が迸り、にゃんこずきんちゃんの身体を吹き飛ばしていく。周囲にオウガの気配はない。これで片付いたと言えるだろう。
「よし、片付いたな! 行こうぜ!」
「はい! ……この着ぐるみ、持ち帰ったら子供たち喜ぶかなぁ……」
遙がそんなことを言いながら、先に進むテラの後を歩く。目指すは森の奥、この国の最深部だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『シンデレラ』
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POW : カボチャキャバリア
自身が操縦する【カボチャの馬車に乗り、そ】の【UC耐性を持つ馬車の重装甲】と【轢き逃げ攻撃の威力・速度】を増強する。
SPD : 魔性の硝子細工
【ガラスの靴】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、ガラスの靴から何度でも発動できる。
WIZ : ビードロキック
【防御貫通効果を持つ、蹴り】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●しんでれらさん
森を抜けると、そこは食堂だった。
食堂の中央に置かれた大テーブルに、金髪をまとめ、青いドレスを身にまとった少女が座っている。
「やっとシェフが来たわね、待ちわびたわ!」
明るい笑顔でそう言いながら、少女は椅子から立ち上がった。
「もうお腹が空いてぺこぺこなの! 早く最高の料理を食べさせてくれないかしら! そうでないと私、お腹が空き過ぎて暴れちゃいそうだわ!」
そう話す少女の足元で、硬質な音が鳴る。見れば、彼女が足に履いたガラス製のハイヒールが、その音を立てているようだ。
テーブルから離れながら、少女がこちらに歩み寄ってくる。
「だって、私はオウガ・オリジン様から力を授かったんだもの……暴れる私を取り押さえるなんて、できっこないのよ!」
そう叫びながら少女は力強く床を蹴って、こちらに駆けてきた。少女を直接相手するのは骨が折れそうだ。まずは彼女の腹を満たしてやらねば。
●特記事項
・現場は「ハロウィンの国」の奥にある、食材が完備されたキッチンと食堂です。
オリジンから直接力を与えられたシンデレラが、「ハロウィンの国」の法則によってほぼ無敵となっています。いかなるユーベルコードを使用しても、ダメージはほぼ通りません。
シンデレラは「料理を目の前に出されると必ず食べて、食べるごとにだんだん眠くなります」。料理を食べさせ続けて完全に眠ったら、無敵状態は解除され、一撃で倒せるようになります。
●連絡事項
・プレイングの受付〆切は【10/30(金) 21:00】となります。
それ以降にお送りいただいたプレイングも可能なら採用するつもりですが、期限内にお送りいただけると助かります。
ノイシュ・ユコスティア
着ぐるみはもったいないけど脱ぐ。
ユーベルコードで騎士マクシムスを召喚。
料理を作っている間、敵の相手をお願いする。
「まぁまぁ、落ち着いて。
今から料理を作るからね。」
料理は作るのも食べるのも好き。
まずは前菜のシーザーサラダを手早く作る。
レタス、紫タマネギ、トマト、コーン、ハム、クルトンで彩りよく。
大量に作って時間稼ぎ。
敵が食べている間に
「ハロウィンといえばカボチャだ。」
カボチャのシチュー。
硬めに焼いたパンを添える。
ひき肉、細かく切った野菜、米を味を付けて炒めて
パプリカの中に詰めたものを出す。
敵に振る舞うとしても、食べてもらうならそれなりのものを。
攻撃のチャンスがあればロングボウで狙う。
皇・美虎
●WIZ
なんでぇ、いきなり人様を飯炊き女呼ばりしやがってよ
無敵だがなんだが知らねぇが、攻撃しても無駄なりゃあ【グラフィティスプラッシュ】で絵の具を床一面にぶちまけて足止めしてやらぁ!
さてと、腹の虫がなりすぎて虫の居所が悪ぃあの女に何か作ってやんねぇと…おっ、こいつは良いカボチャじゃねぇか
そういやぁ、しんでれらと言えばカボチャだな
んなら、そいつに洒落て馳走してやっか
はろうぃんの菓子なんて作ったことはねぇし…煮っころがしでも作るか
味付けははちみつと醤油でっと
出来るまで手持ち沙汰になったちまったし、余ったカボチャの種でもう一品作るか
種は綺麗にワタを取ってレンチンして、ワタはカボチャスープにしちまうぜ
バロン・ゴウト
ふむふむ、良い食材が色々揃ってるみたいだにゃ。かぼちゃ料理やお菓子は他にも作ってる人がいそうだし、ボクは秋が旬のお魚料理に挑戦なのにゃ!
まずは秋刀魚を三枚おろしにするのにゃ。(レシピメモを見ながら)えーと、最初に頭を落として、尻尾から包丁を……。
やった!ちゃんと三枚おろしできたのにゃ!……っと、まだこれは下準備にゃ。小骨もしっかりとって、お塩とハーブをすり込んだらくるっと巻いてオーブンで焼くのにゃ。
焼き上がったらトマトソースを添えれば、秋刀魚のロール焼の完成にゃ!
お腹いっぱいになったシンデレラが眠ったら、シトラスと一緒に攻撃にゃ。
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
三上・チモシー
お腹がすいてイライラしてるのかなぁ……
待っててねー、おやつ作るから!
着ぐるみだとちょっと動きにくいけど、簡単なものだったら作れそう
『猫聖譚曲』で猫のるーさんたちを召喚して、調理中は敵が近付けないようにしてもらうよ
それでも接近されたら、巨大熱帯魚のライ麦ちゃんに守ってもらおう
今の季節なら、リンゴのおやつがいいよね!
くし切りしたリンゴに砂糖をまぶして、フライパンで焼くよ
途中でバターをからめて、こんがり焼き色がついたらOK!
んー、ちょっと見た目が寂しいかな……あっ、アイスクリーム発見!
リンゴにバニラアイスを添えて、砕いたナッツを散らせば
じゃーん、リンゴのキャラメリゼ!
どうぞ召し上がれ!
パルピ・ペルポル
まずは着ぐるみを脱ぐわ。
念動力で雨紡ぎの風糸を周囲に張り巡らせておいて。
ハロウィンだしかぼちゃのセイボリータルト作りましょ。
タルト台を食べやすいようミニサイズで作って空焼きしておいて。
かぼちゃは種とワタをとって一部皮つきを残して残りを皮とってレンチンなり蒸すなりで柔らかくして潰して。
皮つきはいちょう切りにして1cm角に切ったベーコンと共に炒めて。
玉ねぎを薄切りにして炒めて、冷めたら潰したかぼちゃに混ぜてマヨネーズと塩こしょうで味付け。
これをミニタルト台に詰めて表面をならして上に炒めたかぼちゃとベーコン、小さく切ったチーズも乗せて完成ね。
かぼちゃタルトは甘いの多いけど、塩味もいいと思うのよね。
●いただきます
テーブルをカツカツと叩く音が聞こえる。シンデレラの空腹は、もう我慢の限界、というのがありありと見て取れた。
今にも暴れ出しそうな彼女へと、ノイシュとチモシーが召喚したものをさし向ける。
「マクシムス、お相手よろしく」
「待っててねー、今からいろいろ作るから! るーさんたちも、よろしく!」
皇・美虎(壁絵描きのお虎・f18334)も一緒になって、彼女の足元に思いっきり塗料をぶちまけた。
「おらっ、攻撃が効かねぇってんならこいつでどうだ!」
グラフィティスプラッシュ。今回はダメージを与えることよりも、彼女の周囲を塗料で書こう事が重要だ。跳ねる塗料を慌てて避けながら、シンデレラが声を上げる。
「きゃぁっ! もう、乱暴してくるヒマがあるなら、さっさと料理に取り掛かってちょうだい!」
騎士マクシムスと灰猫るーさんと取っ組み合いになる彼女の言葉に苦笑しながら、猟兵たちは苦笑しつつ頷いた。もとより、料理をするために彼らに相手をお願いしたのだ。
厨房に下がり、バロンが肩をすくめる。
「だいぶご機嫌ななめなのにゃ」
「お腹がすいてイライラしてるのかなぁ……」
チモシーも一緒に小さく頭を振った。空腹になると、人はどうしてもイライラしてしまうものだ。オウガであってもそれは同様、ということなのだろう。
ドラゴンの着ぐるみから抜け出したパルピが、そっと襟元を正す。
「そうね。相手はあっちでしてくれるし、私達は料理に集中しましょ」
「おう、腹の虫がなりすぎて虫の居所が悪ぃあの女に、何か作ってやんねぇとな」
「うん、どんどん作っちゃおう」
美虎もノイシュも、真剣な面持ちになりながら頷いた。ノイシュもくまさんを、バロンもしばいぬさんを脱ぐ。
そうして厨房の食材を吟味する猟兵たちだ。肉に野菜、魚に乳製品、質のいいたくさんの食材が山と揃っている。
「しかし、色々揃ってやがんな、なんか……ん?」
厨房の中をのっしのっしと進んでいた美虎が、野菜の山の中からそれを持ち上げた。
「おっ、こいつは良いカボチャじゃねぇか」
「あっ」
彼女が手にしたカボチャを見て、ノイシュが声を上げる。
折しもハロウィン。さらに相手はシンデレラ。
「ハロウィンといえば……」
「あと、しんでれらと言えば……」
美虎とノイシュが顔を見合わせて笑う。これはなんともおあつらえ向きだ。パルピも頷いて笑った。
「そうね、どちらもカボチャは付き物だわ。ちょうどいいじゃない」
ノイシュ、美虎、パルピの三人はカボチャ料理を作ることに決めたようだ。方向性が定まったところで、バロンも胸を叩く。
「それじゃ、カボチャ料理は三人に任せて、ボクは秋が旬のお魚料理に挑戦するのにゃ!」
「じゃ、自分はおやつでも作ろうかな! 今の季節なら、リンゴのおやつがいいよね!」
チモシーも作りたいものは決まったらしい。さて、各々料理に取り掛かろう、かというところで。バロンがチモシーへと視線を向けた。
「ところでチモシーさん」
「ん?」
返事をするチモシーが小首を傾げる。それと一緒に頭上の「それ」が傾げられて。
その様を見ながら、バロンが眉尻を下げながら問うた。
「その着ぐるみ、着たままで料理するのにゃ?」
「木って、また作業しにくそうなものを着てるわね。大丈夫なの?」
パルピも彼の頭上を見上げながら言う。
五人の中で唯一、チモシーは先の森の中で飛んできた着ぐるみを着たままだった。つまり、もみの木の着ぐるみを。一応両腕は出せる構造だから、料理をすることは出来るだろうが、動きにくいことこの上ない。
それでも。
「えっと、うん、まあほら、これ着てても簡単なものなら作れるでしょ!」
どうやら、脱ぐという選択肢はチモシーにはないらしい。
●ごちそうさま
一番初めに料理を持っていったのはノイシュだった。木製の大きなボウルを手に食堂へ行くと、マクシムスとるーさんが食堂の隅でへばっている。どうやら、相手をしていて力尽きたらしい。
だが好都合だ。これからどんどん料理が運ばれてくるのだから。
「はい、まずは前菜のシーザーサラダからどうぞ」
「待ちかねたわ!」
ノイシュの持って来たボウルの中には、色とりどりの野菜がこんもりと盛られていた。野菜だけではなく薄切りのロースハムも混ぜ込まれ、食べ応えも十分。別添えのシーザードレッシングも、おいしそうな香りを放っている。
フォークで野菜を刺し、口に運ぶシンデレラ。咀嚼して、飲み込んで、彼女の口が動き出した。
「ふんふん……レタス、紫タマネギ、トマト、コーン、ハム……彩り豊かね。シーザードレッシングは……ああ、これもチーズのいい香り。クルトンもよく水分が抜けているわ」
「たくさんあるから、どんどん食べてていいよ」
ドレッシングをかけながら野菜を食べていく彼女に、ノイシュは優しく笑いかけた。
美味しい野菜をたくさん食べて、胃も動き出す。たっぷり食べたはずなのに、まだまだお腹は空いていた。
シンデレラがお腹を押さえながら嬉しそうに笑うと、次にやってきたのは美虎だ。
「んん……美味しい……」
「あいよ、お次はスープと、もう一つ先付けだ」
両手にスープ皿と小鉢を一つ。カトラリーは箸とスプーンだ。目の前に置かれた二つの皿に、シンデレラが目を見張る。
「これは、カボチャ?」
「おう、カボチャの煮っころがしと、カボチャのワタで作ったカボチャスープだ」
彼女が作ったのはカボチャの煮っころがしだ。丁寧に取り除いたワタも、ポタージュスープに使うという無駄のなさ。更にはカボチャの種までも、電子レンジで乾燥させて使えるようにしてある。
ポタージュスープを一掬い、口に運ぶとカボチャの優しい甘さと、タマネギのコク、ジャガイモの旨味が渾然一体となって口の中に広がった。
「あら……優しい味。ワタも手間をかけるとこんなに美味しいのね。これは、タマネギ……それとジャガイモかしら? 丁寧にアクを取り除いているのね」
「おう、手間ひまかかってんだぜ」
自信満々に美虎が胸を張った。次にシンデレラは箸を取り、慣れない手つきながらもカボチャをつまみ上げる。口に運ぶと、ほくほくとしたカボチャが解けた。
「こちらの煮物は、甘辛くて美味しいわ……懐かしい味。棘が無い甘さだわ」
「煮っころがしってやつだ。よく出来てるだろ?」
醤油とはちみつで味をつけた煮っころがし。その出来栄えを褒められて美虎がもう一度胸を張る。やはり、美味しいという言葉を貰えるのはいいものだ。
「そうね、ん……いいでしょう、次をお願いするわ」
「あいよ」
次の料理を要求してくるシンデレラに頷いて、美虎が厨房に下がる。シンデレラが煮っころがしを食べ終わる頃、次に料理を持って来たのはバロンだった。
「お次の料理はこれなのにゃ!」
彼からすれば大きな皿を頭上に掲げ、シトラスに乗って運んでくるバロン。その皿を目の前に置かれたシンデレラは小首を傾げた。
魚の切り身と思しきものが、巻かれた状態で焼いてある。ほんのりと、バジルの香りも鼻をついた。
「お魚料理かしら?」
「旬の秋刀魚を使った、秋刀魚のロール焼きなのにゃ!」
秋が旬の秋刀魚を三枚おろしして、身に塩とハーブをすり込んで巻いたものを、オーブンで焼いた料理だ。巻かれることで焼いた時に出てくる脂が逃げ出さず、ジューシーに仕上がるようになっている。
ロール焼きを一つ取り上げたシンデレラが、熱々のそれを口に運んだ。
「あっ、あふ……小骨がちゃんと取り除かれていて、食べやすいわ。ハーブの香りもなかなか……お魚の脂もよく出ていて、んん」
「今回のは自信作なのにゃ! 三枚おろしもちゃんとやったのにゃ!」
自信満々にバロンがこぶしを握った。練習してきた三枚おろしもそうだが、小骨を丁寧に取り除くのまでしっかりやった。手間はとてもかかっている。
彼の頑張りに、シンデレラもこくりと頷く。
「んん、なかなかいいわね……美味しいわ」
「よかったのにゃ!」
嬉しそうに笑うバロンが、再びシトラスに乗って下がっていく。それと入れ替わりになって、ノイシュがまた姿を見せた。
「メイン料理……の前に、もうちょっと腹ごなしといこうか。カボチャのシチューだよ」
そう言って、ノイシュがシチュー皿とパンを盛ったバスケットをシンデレラの前に置く。それに彼女が目を見張った。
「あら、具だくさんだわ……カボチャ、しめじ、ブロッコリーに……これは、鶏肉かしら?」
「うん、鶏肉。美虎さんのポタージュほどカボチャを味わえるわけじゃないけれど……」
ノイシュの作ったシチューは、実に具だくさん。食材がごろごろと入っていた。カボチャはしっかり形を残し、ブロッコリーも存在をしっかり主張している。その間に覗く鶏肉としめじ。なんならタマネギも入っている。
シチューをスプーンで一掬いして、口へ。咀嚼して飲み込んだら、焼き立てのパンを手で割って一齧り。小麦とバターの味が口いっぱいに広がる。
「これもこれで、美味しいでしょ?」
「そうね……そうだわ」
にっこり笑うノイシュへと、シンデレラはぼうっと呆けたようになりながら頷いた。
●おやすみなさい
「そろそろメイン料理と行きましょ」
そう言いながら次にやってきたのはパルピだった。再び登場したノイシュが手に持った皿を、シンデレラの前に置く。
と、内容を見たシンデレラが目を見張った。
「タルト?」
「そうよ。でもセイボリータルトだから、甘さは無いわ」
皿の上に乗っていたのは、カボチャとベーコンの乗ったミニサイズのタルトが複数。その隣には真っ赤なパプリカの肉詰めが鎮座している。
「それと、パプリカの肉詰め。柔らかいから注意してね」
そう言いながらノイシュが笑った。その笑顔をちらと見たシンデレラが、フォークを手に取る。
「それじゃ、まずはこちらを……」
シンデレラがフォークで刺したのは肉詰めの方だ。中身が零れないように注意しながら食んで、飲み込んでから息を吐く。
「あっ、お野菜のいい味……それに、これはお米かしら? リゾットのようになっているのね」
その言葉に笑って頷くノイシュ。この肉詰めはただ挽き肉を詰めたわけではない、みじん切りにしたタマネギにニンジン、セロリ、さらには生米を挽き肉と一緒に炒めつつ味付けをして、それをパプリカに詰めたのだ。
うっとりした表情になったシンデレラが、次にタルトに手を伸ばす。
「タルトは……んっ、驚いたわ、本当に甘くないのね」
「そうよ、蒸してマッシュしたカボチャと、炒めたカボチャ、タマネギにベーコン、チーズを入れているの」
そう言いながらパルピが自分の腕を叩いた。
セイボリータルトはフィリングに甘味を持たせず、おかずとして食べられるように作ったタルトだ。その塩茹でした野菜、肉類、食材の選択肢は色々あるが、パルピはここにカボチャを選択した。
蒸してマッシュしたカボチャと、いちょう切りにした皮つきカボチャの二種類を用意し、マッシュしたカボチャはタマネギ、塩胡椒とマヨネーズで味をつけてタルトの土台に、皮付きの方はベーコンと炒めてタルトの上に、さらにそこにチーズを乗せた形だ。
何とも目に眩しい、そして味も美味しいタルトだ。
「んん……そうなの、意外だわ。これならいくらでも食べれちゃいそう。こっちの肉詰めも、肉汁が染み出して美味しいわ」
「うん、よかった」
お褒めの言葉を受け取って、パルピとノイシュが揃って笑う。既にシンデレラはだいぶ眠たそうだ。起きているのもやっと、という有り様である。
そんな彼女の元へと、トドメとばかりにやってきたのはチモシーだ。
「ふあ……」
「お待たせしましたー! デザートでーっす」
もみの木の着ぐるみを着たままのチモシーに面食らいながらも、シンデレラは運ばれてきた皿を見てフォークを手に取る。そして、彼女はぴたりと動きを止めた。
「これは……リンゴと、アイスクリーム?」
「そう、リンゴのキャラメリゼ! 散らすナッツの代わりに、乾燥させて砕いたカボチャの種を使ってみたんだ。どうぞ召し上がれ!」
にっこり笑うチモシー。彼の言葉を受けてシンデレラのフォークがリンゴを刺す。
口に運ぶと、甘い。そして熱々だ。砂糖をかけられてキャラメリゼされたリンゴが、口の中で果汁をはじけさせる。
「んっ……いい歯ざわりだわ。瑞々しくて甘い……アイスクリームも、んんっ」
そこに冷たいバニラアイスクリームを含めば、一気に味わいが変わる。カボチャの種を砕いたものも、いい香りを出していた。
あれよあれよという間に食べ終えて、シンデレラがほうと息を吐く。
「どうかな? 結構自信作なんだけど」
嬉しそうに笑ったチモシーに、シンデレラがちらと視線を投げる。そうして、お腹を押さえながらほうと息を吐いた。
「美味しいわ……とて、も、満足……すぅ……」
そしてそのまま、寝息を立て始める彼女。ぐっすり眠って、ちょっとやそっとでは起きそうにない。
それにチモシーが目を細める。これで、「ハロウィンの国の魔法」は解除されたはずだ。
「……うん。いいよー皆」
彼に呼ばれて、残りの四人もやってくる。すやすや眠るシンデレラを取り囲みながら、口々に武器を取り出した。
「ようやくか、やれやれ」
「満足してもらえてよかったのにゃ」
「これで本当に、攻撃が通るようになっているのよね」
「そのはずだね。それじゃ、せーので……」
ノイシュの言葉に合わせて、全員が一斉に己の武器を構えた。
そして。
「「せーのっ!」」
猟兵たちが声を合わせて、それぞれの武器の攻撃をシンデレラへと叩きつける。
攻撃を受けたシンデレラの身体は途端に霧散して、後には空っぽの皿とカトラリーだけが、食堂に残されたのだった。
大成功
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