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闇に飲まれてメガリス探索

#グリードオーシャン #メガリス

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#グリードオーシャン
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#メガリス


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●闇より降った無人島
 今日のロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は普段とは少し心持ちが違っていた。それもそのはず。
「すみません! 今日は私が『悪夢』の中で見つけた無人島についてのお話をさせてください!」
 つまり、グリードオーシャンという世界の中に無人島の存在を予知した、ということだ。
 島民が圧制に苦しんでいるだのなんだのと、暗い話をしなくて済む。
 しかし猟兵達に話を持ち掛けているのは、無人島とは言えそれなりの事情があるからだ。
「私が見つけた無人島ですが、メガリスが隠されていることがわかっています。無人島ですからまだ誰の手にも渡っていませんが、放置しておくとコンキスタドールが手にして新たな力を得てしまうかもしれません。そうなっては困りますから、皆さんにはその前にこの島のメガリスを確保してほしいんです」
 メガリスをコンキスタドールの手に渡さなければ、未来に起こるはずだった事件を防ぐことにも繋がるだろう。猟兵としてはやっておくべき仕事の一つだ。
「島の情報をお伝えしますね。島の名前は『ダクルム島』といいます。『悪夢』の中で浮かんできた名前ですので、せっかくですしそう呼んでおきましょう。ダクルム島は『ダークセイヴァー』から落ちてきた島で、島内部はダークセイヴァーのように真っ暗な状態になっているようです」
 島の外観も闇のオーラに包まれたような禍々しい雰囲気のようだ。
「地形としては主に森林と山地で構成されているようです。また、無人島ではありますが、動物はそれなりにいるようで、中には凶暴なものもいますから注意してください」
 狼や蛇など、彼らの縄張りに足を踏み入れてメガリスを探すことになる。それなりの対策は必要になりそうだ。
「島に隠されたメガリスの正確な位置まではわかりませんでしたので、皆さんに探して頂くことになります。もしかしたらすでにコンキスタドールが島に上陸して探し始めているかもしれませんので、出会った場合には撃破もお願いしたいです」
 コンキスタドールが出現すれば、たとえメガリスが猟兵達の手にあろうと戦わなければならないだろう。猟兵がメガリスを持っていると知れば、奪いに来るのは明白だ。
「……それで、いつも色々頼んでばかりで申し訳ないので、今回はちょっとした船旅を用意しました。島に着くまでの少しの時間ですが……自由に過ごされてはどうでしょうか」
 普段なら最短航路で事件がある島に向かうところ、今回は予知の中にコンキスタドールの存在までは視えていなかったこともあり、時間に少し余裕を持たせ船旅を楽しんでもらおう、というロザリアなりの心遣いのようだ。
「このような形でしか皆さんに憩いの一時をご提供できないのは心苦しくもありますが……グリードオーシャンという世界を守るために、どうかよろしくお願いします」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 なるべく多くのシナリオフレームを使っていきたいですね。

●フラグメント詳細
 第1章:日常『船の上での過ごし方』
 特に言うことはないです。好きなように過ごしてください。

 第2章:冒険『闇の中へ』
 ダークセイヴァー的な島の中を冒険します。
 スタートが山地になるか森林になるか、はたまた別物になるか(レアケース)はプレイングに合わせて考えます。
 探索的な手法が何かしらプレイングにあると、「おっ、探してるな」って感じでいい結果に繋がりそうな気がします。

 第3章:ボス戦『『少女海賊』キャプテン・マリーナ』
 猟兵が確保したメガリスを横取りしようとやってきます。
 撃破しましょう(無慈悲)

●MSのキャパシティ
 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 ゆったりペースで進行予定です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『船の上での過ごし方』

POW   :    船の上でも体を鍛えて冒険に備える

SPD   :    持ち込んだ道具でレジャーを楽しむ

WIZ   :    船内で食事や休息などまったり過ごす

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ゆったりとした船旅、どこまでも続く青い海、そして美味しい海の幸!
 初めてなことばかりで不安もあるけど、それ以上にとってもワクワクしているわ!

 【WIZ:船内で食事や休息などまったり過ごす】ことにするわ。この船のお料理、とっても美味しくていくらでも食べられるわね!

 美味しい料理を頂いたお礼に、ゾーヤさんもお礼に〈料理〉を振舞いたいわね。故郷の煮込み、こっちだとボルシチっていうらしいわね。厨房を間借りして、食材を分けて頂いて、一日かけてじっくり丁寧に作っていくわね。海風で冷えた身体に染み渡る、そんなボルシチを皆さんに振舞うわね。喜んでもらえると良いのだけれど。

(連携アドリブなど全て歓迎です)



●お料理異文化交流
 今日のグリードオーシャンは清々しい青空が広がっていた。
 航海は冒険に挑む前の憩いの一時。だからこそ、まずはリラックス。
「ゆったりとした船旅、どこまでも続く青い海、そして美味しい海の幸!」
 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は甲板先端で太陽に向かって大の字に立っていた。潮の香りもぽかぽかした日光も全部その体で受け止めるように。目を閉じ、しばし自然の恵みを堪能する。
 無人島でのメガリス探索。初めてなことばかりで不安もあるが、今のゾーヤにはそれにも勝るワクワク感で胸がいっぱいだった。
 んん~、と体を伸ばしながら新鮮な空気を目一杯吸い込んで。
「ご飯食べてこよーっと!」
 ぷはぁと吐き出しながら宣言して、とたとたと船内に向けて駆けていった。

 この船には今回の冒険に乗り出した猟兵達の他に、船旅をサポートする海賊達が乗っている。この世界での船旅を最高の時間に。そう志願した者達だ。
 食堂はビュッフェ形式になっていた。そしてグリードオーシャンは様々な世界から落ちてきた島で構成される多文化世界。
「あー! あれもこれもそれも、どれも美味しそー!」
 ゾーヤの目を、そして舌を満足させるに十分な料理が取り揃えられていた。
 皿を手に取ると並べられた料理へとしゃかしゃか進み、魚料理に肉料理、スープにサラダ、デザートと、ちゃっちゃっちゃっとしっかり揃える。速い。
「いただきまーす!」
 席に着くと、パン、と両手を叩くように揃え、まずはスープを一口。温かくコクのあるスープがすっと体に染みわたるように喉を通っていく。
 それからサイコロステーキのじゅわっと染み出る肉汁と柔らかな歯ごたえを味わい、白身魚のカルパッチョでさっぱりとした舌触りを楽しむ。
「んんーふふふふふ」
 料理の美味しさに思わず笑いも零れてしまうというものだ。
「この船のお料理、とっても美味しくていくらでも食べられるわね!」
 量が減ればすぐに補充がやってくる。猟兵達が決して不快な思いをしないように、隅々まで海賊達のサービスが行き届いていた。
 どこかの世界では料金に0が5個も6個もついてしまいそうなくらいのサービスっぷりだが、猟兵達は全て無料でこの船でのサービスを受けることになる。これから向かう島でメガリスを確保するという重大な使命が待っているわけだが……しかしそれでもゾーヤはどこかむず痒さを感じていた。
 そこで、テーブルへ運んできた料理を全て食し、満足したゾーヤは思い立つ。
「せっかくだから、ゾーヤさんもお礼に料理を振舞うわ!」
 そんなことを宣言し、食器を片付けがてら厨房へ顔を出す。
「ねぇ、ちょっと料理を作りたいんだけど、どこかスペースを使わせてもらえないかしら?」
「料理、ですか? えぇ、では少し片づけますので、この辺を使ってください」
 本来もてなすべき相手が厨房に来るなり料理をするなどと言い出したので、厨房にいた海賊達も一瞬ぎょっとした表情を見せたが、ゾーヤの申し出を受け入れスペースを作ってくれた。
「よーし、やるわよ!」
 ゾーヤの気合は十分だ。スペースを空けてもらい、材料もあるものならどれでも使っていいと許可を貰った。
 料理の腕に自信があるわけではないが、一つだけ、これなら作れるというものがあった。
 材料を並べると、手の空いた海賊の一人が尋ねてくる。
「何をお作りになるんですか?」
「故郷の煮込み料理……ボルシチ、って言うんだけど、聞いたことあるかしら?」
「ボルシチですか、いいですね! 実家に帰ると母がよく作ってくれるんですよ」
「あら、そうなの。そのお母さんの味には負けると思うけど、頑張って作るわね!」
 どうやら、ボルシチの文化がある島出身の海賊だったようだ。二、三、会話を弾ませた後、ゾーヤは調理に取り掛かった。
 とんとんとん、と包丁の音はそこかしこから聞こえてくる。海賊達もまた他の猟兵達に料理を振舞う中、ゾーヤも目の前の料理に集中し、丁寧に、丹精込めて作り込んでいく。
 どれくらい時間が経っただろうか。煮込んだスープを一口、味見して。
「……うん、完成ね!」
 ゾーヤの顔に笑顔が浮かぶ。満足のいくものができたようだ。
 中には海風に晒され続けながらも任務をこなし、体を冷やしている者もいるだろう。そう考えて、体温まるものを作った。
 この船で自分達のために働いてくれる海賊達に。
「皆、お疲れ様!」
 厨房の片づけを始めていた海賊やら、船の見回りを終えた海賊やら。
 お世話になった皆へ感謝の気持ちを込めたボルシチは、海賊達の体も心も温める。
 もちろん、かのボルシチをおふくろの味として知る海賊も、笑顔をほころばせて喜んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラガルルク・デンケラ
WIZ

大勢での船旅はいいものだね。何せ対話が可能だ
僕はずっと一人旅をしていたから、これから船を降りるのが惜しいくらいに人に飢えているよ。勿論、お腹だって空いている
ああ、取って食うわけじゃあなくてね、皆と一緒に食卓を囲みたいんだ
どうだろう、僕と一緒に賑やかな時間を過ごしてくれないか?

食事の後は、甲板を散歩しようか。ダクルム島に眠るメガリスの事を思い浮かばせながらね
宝探しは楽しいが、その宝がどんなものかを空想することも楽しいものだ。幾つになっても心は躍るよ



●船旅は大勢も良き哉
 まるで悪戯の標的を見つけたように。ラガルルク・デンケラ(先見の魔女・f28988)は物陰からひょっこり姿を現した。
「ねぇお前達、どうだろう、僕と一緒に賑やかな時間を過ごしてくれないか?」
 それはデートの誘いのようでもあり。しかしラガルルクは当然と言わんばかりに無邪気にニコニコしているのだ。
 言われた船の乗組員、海賊達は一瞬あっけに取られていた。
「俺達が……ですか?」
「当然だよ。……ああ、取って食うわけじゃあなくてね、皆と一緒に食卓を囲みたいんだ」
「いやいや、そんな」
 おどおどしているのは、どこかラガルルクを恐れているから――そんな深読みを匂わせて、ちょっとからかってもみせた。
 大の大人がたじろぐなんて。ラガルルクはくすくす笑っていた。しかし実際は、おそらくラガルルクのほうが何倍も年上なのだろう。
 それでも外見が十六だからか、戯れる様子は微笑ましい。
「俺らを誘ってくれるなんてありがてぇことです。猟兵さんと話せる機会なんてなかなかねぇですから」
 ようやくラガルルクの申し出を理解して、場は俄かに騒がしく。海賊達の間に歓迎ムードが沸き立ってくる。
「なら決まりだ。さぁ、早く行こう」
 ラガルルクは目の前の海賊達をぴゅーと追い抜いて食堂へ駆けていく。海賊達も笑いながら後を追った。

 猟兵のラガルルクが共に食事を、と言うのであれば仕事中の身である料理人の海賊達には何も言うことがない。むしろ相伴に預かれる海賊達を名誉なことという声さえ厨房で上がっていたのをラガルルクは知ってか知らずか。
 ともかく、ラガルルクを囲む一大パーティーのような雰囲気が食堂に出来上がっていた。
「気を遣わなくていいからね、料理は自分で取りに行くよ」
 誘いを受けたとは言えあくまで自分はもてなす側、と着席を促した海賊を制し、ラガルルクは料理までたったかステップを踏んでいく。後ろでは件の海賊が、ポイントを稼ぎ損ねたなとからかい交じりに小突かれていた。
 ラガルルクを先頭に並んだ料理をぐるりと一周、各々好き勝手に取り皿に盛った。そうして席に着くと、料理片手に会話の華が咲く。
「お前達は、いつもこんなに大勢で船旅をしているんだね」
「えぇ。ですがそれも、猟兵さん達あってこそで。こうして船を出せるのがどんなに幸せか気づかせてもらいました」
「なるほど。……僕はずっと一人旅をしていたから、こういうものには縁遠くてね。だから、これから船を降りるのが惜しいくらいだよ」
「なんなら、いつでも呼んでくだせぇ! どこにでもついていきますぜ!」
 軽く大口を叩いた海賊に、どっと笑いが巻き起こる。ラガルルクも海賊達ほど豪快ではないが、顔をほころばせていた。
 人と共にいることが、人と会話をすることが楽しくて仕方なかった。手にした料理を口へ運ぶのを忘れてしまうことも時折あった。それを海賊達に指摘されて慌てて口へ運ぶのも、どういうわけだか楽しかった。
 船を降りるのが惜しいというのも――どこかには本音が混ざっていたことだろう。
 そんな楽しい時間も、残念ながら永遠ではない。ひとしきり騒ぎ通してそろそろお開きに、という雰囲気になった。
 使った食器類は食堂担当の海賊に預け、ラガルルクは甲板に出向く。楽しい時間の余韻が残るラガルルクには海風が気持ちよかった。
 目的の島、ダクルム島に眠るメガリスとは如何なるものか。色は、形は、大きさは。全てが不明で、だからこそ空想は無限に広がっていく。宝探しという行為も楽しいものだが、目的の宝がどんなものかを空に描くこともまた楽しいもの。
 ラガルルクは甲板の手すりに寄り掛かり進路を見る。先には闇深い島があり、その中に輝くお宝があるのだ。
 そう考えると心が躍って、ラガルルクはふふっと笑い声を漏らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『闇の中へ』

POW   :    自ら闇の中へ飛び込む

SPD   :    気配を消して進む

WIZ   :    注意深く行動する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●闇へと足を踏み入れよ
 着岸する頃には、日が落ちたように辺りは暗くなっていた。
 気が付けば、という言葉がよく合う。それほどに闇はさぁっと猟兵達が乗る船を包み込んでいた。
 海賊達の手助けも今はここまで。帰りの船に乗る頃には、この島にあるというメガリスを手にしていなければならない。
 未開の島――ダクルム島に待つは何か。猟兵達の対応力が問われるところだ。
ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ここがダクルム島ね。さぁ、張り切って探すわよ!
 とはいっても、この広さだと闇雲に探すわけにはいかないわね。
 まずは、状況の把握からしっかりやらないと。

 【UC:狼の鋭感】(WIZ)を発動させて、眼前に広がる鬱蒼とした森林の音を聞き、匂いを嗅ぎ分け、薄暗い先を見通すわ。強化された五感と〈野生の勘〉を発揮して猛獣や不自然な地形を見つけていきたいわね。気絶から回復したら、強化した感覚で見つけた不自然な地形や怪しいモノを〈追跡〉していくわ。

 ダークセイヴァーから落ちてきた島のメガリス、いいものはずが無いわ。コンキスタドールよりも先に見つけなくちゃ。

(アドリブ連携等々全て歓迎です)


ラガルルク・デンケラ
さて、さて。どこから探して行こうかしら。気ままに動いて終えば目的から外れてしまうことが多い
明りは親切にしてくれた海賊たちから少し分けてもらったが……手で持たずに腰に下げても、僕には荷が重いね

お前たち、僕を助けてくれないかな? 皆で光を支えて、闇を照らすんだ
獣が襲ってきても、海竜が盾になるからね。反撃もそのまま海竜にお願いしようかな
ハサミで腹を切り開いたら、胃袋に仕舞われたメガリスが出てきたり、ね。そんな小さなサイズの宝を探すのは、大変かも

木を隠すなら森の中。だったなら、その木一本ずつにヒントがあったりしないものかしらね
人工的な群生をしていれば最もわかりやすいけど、結局は力技で踏破するのが一番だ



●進め森林の奥深くへと
 空を見上げれば、そのまま闇に吸い込まれそうだった。それがダクルム島だ。
 この島のメガリスを求めて、岸に付けた船から猟兵達が降りてくる。
「さぁ、張り切って探すわよ!」
 ゾーヤは暗黒の世界の中でもさながら太陽のように明るく振舞う。猟兵パーティーの中ではムードメーカーにあたる存在だ。
「ああ、お前たち、見送りと明かりの提供感謝するよ」
 ラガルルクは船を降りる際、海賊達に声を掛けた。真っ暗闇の中を手ぶらで歩いてはいけないと、猟兵各々にランタンが手渡されていた。
 船を降りた猟兵達を最初に迎えたのは猫の額ほどの岩場だった。それをトントンと軽く越えていくと、鬱蒼とした森林が待ち構えていた。
 明るさに変化がなく入った実感が湧きにくかったが、気づけば視界の中に樹木の幹が増えている。足元も硬い岩盤から柔らかな土壌に変わっていた。
「さて、さて。どこから探して行こうかしら。勝手気ままに動くだけでは目的から外れてしまうことも多いからね」
「そうね……こうも広いと闇雲に探すわけにはいかないわ。まずは、状況の把握よ!」
 一旦立ち止まり方針を固める。ゾーヤは神経を研ぎ澄ませ、森林という大きな存在を耳と鼻で感じ取る。
 視界の限界――その先へ。風が駆け抜けるようなイメージで島のまだ見ぬ光景を脳裏に作り上げていった。
「……真っ直ぐ行くと……獣道? 沿って進めば歩きやすいけど……猛獣が、いる……?」
 目を閉じて光景を鮮明に保ちながら、感じ取ったものを周りに伝えていく。猛獣の影は始めゆらゆらと形が揺らいでいたが、強化された聴覚と嗅覚、そして野生の勘で、それが四つ足の、ネコ科に近そうな存在であることを探り当てた。
 やがてゾーヤは目を開ける。
「……ふぅ、とりあえずここまでね……」
「上出来だよ」
「ありがと……あと、ごめ――ちょっと休む」
 ふわっと体が軽くなる感覚と共にゾーヤの意識が遠のく。力の代償だった。
「お前たち」
 気付くのが早かったラガルルクは一声で号令をかける。召喚された小型魚達は群れをなして宙を泳ぐと、ゾーヤの倒れていく体を両の腋下から押し上げるように支えた。
「やれやれ……それにしても、やはり獣がいるんだね。なら、お前に護衛を任せておくよ」
 ラガルルクは続けて海竜「赤星」に呼び掛けた。ロブスターに似た外見の海竜は身を挺するようにしてハサミを振り上げながらラガルルクの傍らに鎮座する。
「あとは……うぅん、やっぱり手に持っても腰に下げても、僕には荷が重いね」
 ゾーヤの意識が戻るまであれこれと身支度を整えるラガルルク。両手や腰回りをふらふらするランタンはどうにも行き場を失っているようで。
「お前たち、僕を助けてくれないかな?」
 ゾーヤを支える小型魚達に言うと、一部が別れてラガルルクの元へ。ランタンの吊り輪部分を受け取ると、ゆったりと宙に留まっていた。
「……んぅ……あっ」
 意識を失ってからちょうど一分。ようやくゾーヤが夢の中から戻ってきた。
「お目覚めかしら、お姫様」
「うん……って、お姫様!? いやいやいやいや」
 ラガルルクのちょっとした冗談に意識が未だぼんやりしていたゾーヤは慌てふためく。くすくすと笑いながらラガルルクが深呼吸を促すと、ようやく気を取り戻した。
「で、獣道だったね。そこを辿ったほうがいいのかな?」
「うん、周りは草むら……っていうか、藪? も多かったし……」
 ぼやけていく光景を繋ぎ留めながらゾーヤは語る。
「ならそうするとしよう。お前たち、行くよ」
 役目を終えた小型魚達はラガルルクの後ろをついていくように飛び回る。海竜はラガルルクやゾーヤの前を行き、警戒に当たっていた。
 二人の眼前にはゾーヤが口にした情報がそっくりそのまま再現されていく。やがて目の前を横切るように走る獣道へと突き当たり、入っていくと多少は地面が慣らされている分歩きやすかった。
「……さて、そろそろだね」
「……うん」
 どこまでも普段通り、冷静に振舞うラガルルク。対しゾーヤは普段の明るさを潜めたように神妙な面持ちをしていた。
 不意にがさがさと草木を揺らす音が響く。それは次第に大きくなり――。
「……右!」
「盾になれ!」
 ゾーヤの声に合わせラガルルクが海竜へと指示を出した。海竜は俊敏に動き、藪から飛び出す影の前に立ちはだかる。ズンと鈍い音がして影はくるくると宙を回り枝の上へ着地した。
 チーターを一回り細くしたような身軽なシルエットが地上の二人を睨む。
「もう一度来たら反撃でもお願いしようかな」
 ラガルルクが静かに声を出すと、海竜はハサミを掲げて迎撃の意思を見せる。
 それに怯んで逃げれば良し、と思ったが――それはまるで恐怖を知らないのか、海竜目掛けて枝を飛び降り、空中からの突進を見せた。
 前足には鋭い爪が光る。それを振り下ろしての一裂きに対し振り上げるハサミがぶつかった。ざしっと海竜の足元の土が抉れる音が微かに耳に届いたが、それよりもなお耳を劈いたのは、
「ギャウウゥゥン!!」
 猛獣の悲鳴だった。爪を弾かれた猛獣は追撃で胴体を切られ、そして突進の勢いのままに反対の藪へと落ちていく。それきり音は聞こえなくなり、ようやく二人は勝利の気配を感じ取る。
「よくやったね。しかし……もしあの獣の腹の中にでも、メガリスが仕舞い込まれていたら――」
「えぇ~!? そんなの探すの無茶だよ~!」
「ああ、そんな小さなサイズの宝だったら探すのは一苦労だよ」
 海竜を労いつつ、ゾーヤをちょっと茶化してみるのも忘れない。ラガルルクにとって、ゾーヤの派手なリアクションは何とも楽しいのだ。
 猛獣を撃退した二人はさらに獣道を道なりに行く。歩みは進むが、果たしてこれで目的のメガリスへ近づいているかどうか。
「……なるほど、どうやら当たりのようだよ」
「え? 当たりって?」
 先を行くラガルルクが何かに納得したように声を上げた。ゾーヤは不思議そうに聞き返す。
「『木を隠すなら森の中』という言葉がある……もしかしたら、何の変哲もない木々の中に重要なヒントが紛れているかもしれないということだよ。それがほら、そこに」
 ラガルルクの視線に合わせて小型魚がランタンを動かした。光の先に生え揃う樹木が見える。
「枝が一定の方向に、やけに長く伸びているね。おそらくメガリスの力の余波を受けているんだよ」
「じゃあ、これを追っていけばメガリスに辿り着ける!?」
「ああ、おそらくね」
 道ができているとはいえ、ただ歩き通すだけでは少々退屈していたところだった。メガリスへの手がかりが見つかったとわかり、ゾーヤは俄然やる気を見せる。
「なら、ぱっと行ってぱっと取っちゃおう! ダークセイヴァーから落ちてきた島のメガリスだもの、いいもののはずが無いわ。コンキスタドールよりも先に見つけなくちゃ!」
 ランタンをぶんぶんと振りながら今度は先行して突き進むゾーヤの背中を、ラガルルクはまたくすりと笑って追いかけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リク・ネヴァーランド(サポート)
「大丈夫、“僕たち”が来た!」
うさぎ人の住む不思議の国、ラパンドール王国の元王子様です。
魔法の本の中に王宮を封じ込めることにより、王国と国民を携帯している状態にあります。
本の中から国民や過去助けた愉快な仲間達を召喚したり、剣を用いたりして戦います。

利発そうな少年といった口調で話し(僕、~さん、だね、だよ、~かい?)、年上の人や偉い人には敬語を使います。戦闘中は凛々しく台詞を言い放つことも多いです。

ユーベルコードは設定したものを何でも使いますが、命よりも大切な魔法の本に危害が加えられる可能性がある場合は本を用いず、自分自身の力で何とかしようとします(他の猟兵と連携が取れそうなら取りに行きます)。



●闇に飛ぶ狩人
 樹木の変質。それがメガリスへの手がかりとなった。
 しかし、植物が影響を受けているということは、付近に潜む動物もまたメガリスの力による変質を遂げている。
 気配が刺さる。リク・ネヴァーランド(悠久ノ物語・f19483)はそう感じていた。
「……大丈夫」
 本を握り締め、リクは呟く。
 王国と国民を預かる者として、困難を前に怖気づいてはいられない。握り締めた手はその決意を示すように力が入る。
 不意に、肌に電撃が走るような感覚を受けた。闇から放たれる敵意――リクは素早く反応していた。
『“フクロウたちにご用心、彼らはいつも見ているぞ──”』
 ランタンの光に照らされる中に現れたのは鋭い鉤爪を持つフクロウだ。闇を見通すフクロウは敵意の発信源を感知すると一直線に飛んでいき、鋭い鉤爪を突き立てる。

 ――ギャア!! ギャア!!

 闇に潜む敵もまた同類だったのか。野太い鳥のような叫びがリクの耳に届く。
 ややあって、尖兵となって飛び立ったフクロウが戻ってくる。リクはフクロウが戻るなりその状態を確かめたが、特に傷らしい傷は負っていなかった。
「進んでも大丈夫そうだね。じゃあ、先を急ごう」
 フクロウ達を従え、リクは導く。
 周囲の樹木の枝はより長く伸びるようになり、ねじれたり反ったりするような奇妙な変質も見られるようになった。
 メガリスへ着実に近づいている――樹木達がそう教えているようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

臥待・夏報(サポート)
やっほー
実は最初から此処に居た夏報さんだよ

隅っこで怯えてる一般人の捕虜とか
はたまたフードを目深に被った敵の一味とか
もしかしたらボスの傍らに侍ってる女とかいるじゃない?
そういうモブのうちの一人が、『目立たない』よう『闇に紛れ』て『情報収集』している夏報さんだったって寸法さ

とは言っても夏報さんはしがないエージェント、身体能力は一般人に毛が生えた程度
そんなに派手なことはできないね
実弾式記憶消去銃『MILK-DIPPER』による情報操作や暗殺
毒針付きフックワイヤー『釣星』による罠の仕掛けや暗殺
ま、こんな話をしている頃には地味な仕事は終わっている
戦闘に巻き込まれる前に、『逃げ足』を活かして退散しておくよ



●闇に紛れて
 木を隠すなら森の中であり、闇が紛れるなら闇の中なのである。
 臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は島を包み込む闇に同化するがごとく気配を抑え、情報を集めていた。
 進むべき道に問題がないか。地形はどうか。猛獣などの存在があるか。あらかじめ知っておくことで、他の猟兵達の歩みも捗る。
「いやあ、最初から居たんだけどねえ」
 見上げながら、夏報は苦笑しつつ呟いた。枝葉はやはり一定の方向に大きく伸び続けているが、その密度は増しているように感じた。
 斥候を買って出た時は他の猟兵達に驚かれた。一体いつから、どこからいたのか誰にもわからなかったのだ。
 隠密に長けていればよくある反応だ。今日もいつも通りと朗らかに笑いながら、先行して進んでいた。
「あー……これは」
 夏報は足元の異変に気付きしゃがみ込む。下に覗くは更なる闇か。地面が抉れたように切り立った崖を作っていた。
 高低差はそれほどあるわけでもない。だが気づかなければ思わぬ大怪我を負う可能性があり、またその先の樹木の濃密さが今までの比ではなかった。
 メガリスの影響がかなり強く出ているようで、全ての枝がそれぞれ絡み合うように入り組んでいる。避けていくにしても、切り飛ばして道を開くにしても、時間はそれなりに費やしそうだ。
 その間にコンキスタドールが先着せぬよう、今のうちに対策を立てておきたいところ。
「……とりあえず、一度戻ろう。話は皆と合流してから、だね」
 夏報は確認した情報を頭に入れて、また闇に紛れ戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルル・ハルピュイア(サポート)
 フェアリーのビーストマスター×バロックメイカー、13歳の女です。
 普段の口調は「女性的(僕、相手の名前、だね、だよ、~的な?)」、異性の前では「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」。
 ユーベルコードは「アサルト・シルバーアウル」を優先的に使用します。怪我は厭わず積極的に行動し、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 おいしそうなものを見つけたら飛んでいきます。あとはおまかせします。どうぞよろしくおねがいします!



●暗夜に飛べ銀の梟
 小さな体にとっては、森林はより一層深く大きく、暗く見える。
 その中を果敢に飛んで進むのはメルル・ハルピュイア(ハートフルぼっち・f30256)だ。
 とは言っても、実際に羽をはばたかせているのはメルルが乗っているフクロウの「ふっくん」だった。
 肥大した幹の間、複雑に絡み合う枝葉の隙間をするりするりと抜けていく。
 事前に知った地形の情報。そこを突破するのに最適なメンバーとしてメルルは選ばれ、メガリスへいち早く到達する役目を任された。
 後方では他の猟兵達が枝葉の網を掻き分けながら向かっているはず。
 それを信じ、メルルは真っ直ぐ前を見ていた。
「……あっ! ふっくん、あれ!」
 闇の島に光が見えた。黒紫の輝きは存在感を放ちながら視界の中に浮かび上がってくる。
 その場所まであと一息。銀色のフクロウは進路をうまく取りながら、ついに樹木の密林を突破した。
 まるで鳥籠のようだった。円柱状にくり抜かれた空間。そこは一つの大きな水晶が鎮座する聖域であった。
 何者も寄せ付けず、そして周囲のあらゆる存在に力を及ぼす秘宝――メガリスだ。
 その高さは1メートルはあるだろうか。並みの猟兵でも、しっかり抱えるなり担ぎ上げるなりしなければ運べそうにない。
「これが、メガリス……」
 宙に留まるフクロウの上でメルルは声を漏らす。邪悪的であり、神秘的でもある秘宝は、魅入られれば深い闇に堕ちてしまいそうで。
 メルルは気を取り戻すようにぷるぷると顔を左右に振る。
「敵は……うん、まだいないね。早く皆にこの場所を伝えないと」
 樹木、枝葉に遮られ道を失えばそれだけ時間を無駄に消費する。
 メルルは他の猟兵達のところへ舞い戻る。

 程なくして、メルルの導きにより猟兵達は見事、メガリスの元へと到達した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『少女海賊』キャプテン・マリーナ』

POW   :    「おっと、船長には指一本触れさせませんぜ」
いま戦っている対象に有効な【武器を使用する海賊幹部】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    ちょっと、あんた達まじめにやりなさいよ
戦闘力のない、レベル×1体の【小型の子分鮫】を召喚する。応援や助言、技能「【空中浮遊と大食い】」を使った支援をしてくれる。
WIZ   :    あの方の恩義に報いる為に、あの時の姿を取り戻す‼
「【あの方(コンキスタドール)の恩義に報いる】」という誓いを立てる事で、真の姿に変身する。誓いが正義であるほど、真の姿は更に強化される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●少女海賊キャプテン・マリーナ
 長旅の末にようやく発見されたメガリス。しかし、いざ持ち帰ろうかと猟兵達がメガリスに近づいた瞬間、彼らと反対側の枝葉をバリバリと食い破って空飛ぶ鮫が姿を現した。
「あー! あったあった! メガリス!」
 鮫に続いてやってきたのは、海賊衣装に身を包んだ一人の少女だった。
 そして少女は猟兵達を認めると、目を吊り上げて睨みを利かせる。
「あんた達、もしかしてそのメガリスを持ち帰る気! そんなことさせるわけにはいかないわ! それはあたしのものなんだから!!」
 鮫を従えた少女――キャプテン・マリーナはメガリスを横取りしようと、猟兵達へと襲い掛かってきた。
ゾーヤ・ヴィルコラカ
 あなたがコンキスタドールなのね!
 悪いけれど、これはあなたに渡せないわ、諦めてくれないかしら!?

 距離を取って〈時間稼ぎ〉をしながら対話を試みるけれど、そう上手くはいかないようね。向こうがやる気だっていうなら、わたしも本気でいかせてもらうわよ!

 彼女を倒してでもメガリスを守るという〈覚悟〉を決めて、【UC:絶対零度の眼差し】(WIZ)を発動よ。彼女に鋭い視線を向けて、天から雨あられと氷を降らせるわ。〈属性魔法〉の追撃も忘れないわ。氷の魔力を〈多重詠唱〉〈高速詠唱〉で弾幕みたいに射出するわね。

 私の全力、避けられるもんなら避けて見なさい!

(アドリブ連携負傷等々全て歓迎です)



●譲れない意地と覚悟
「あなた……コンキスタドールね!」
 鮫と共に現れたマリーナに強い警戒心を見せるゾーヤ。メガリスの傍らに立ち身構える。
「悪いけれど、これはあなたに渡せないわ、諦めてくれないかしら!?」
「何よ! あんた達が諦めなさいよ!!」
 後から来たというのにマリーナはなかなか傲慢な物言いだ。周りの鮫達もそうだそうだと囃し立てる。
 睨みを利かせて牽制していたゾーヤに、マリーナは幼い顔に似合わず眉間に皺を寄せてむぎぎぎと睨み返し、バチバチと火花が散る。
(コンキスタドール相手に対話で解決するのは……さすがに上手くはいかないようね)
 マリーナの辞書に諦めるという言葉は載っていないようだ。互いに引く気がないのであれば、猟兵とコンキスタドールという関係上、やることは一つしかない。
「どうしてもって言うなら、あんた達全員ぶっ飛ばしてやるから覚悟しなさい!」
「やる気だっていうなら、わたしも本気でいかせてもらうわよ!」
 開戦のゴングが鳴った。ゾーヤは双眸に力を込める。
(彼女を倒してでも――メガリスを守る!!)
 強い覚悟を湛えた視線がマリーナの気迫を押していた。ゾーヤとマリーナ、互いが纏う空気のぶつかり合い。均衡が崩れる。
『この咎人め! これでも食らいなさい!!』
「ひっ!」
 マリーナが気圧される。その瞬間、空がピキピキと凍り付き数多の氷塊が出来上がった。まるで暴風に乗ったかのように渦を巻きながらマリーナの元へ降り注ぐ。
「いたっ、ちょ――いたぃ~っ!!」
 頭を守るように帽子を押さえて逃げ回るが、氷の嵐はマリーナに纏わりついて離れない。腕や足にビシビシと突き刺さる様は見ているだけでも痛々しい。
「まだまだっ!!」
 ゾーヤは続けて空中に氷の魔力を解き放つ。針状の細い氷柱が幾重にも重なって分厚い壁のようなものを形成していた。
「船長! 危ねぇ!!」
 危機を察知し、鮫達がマリーナの前に集まる。
 盾になろうというのだ。小さな体では心許なそうに見えたが、
「これまでの恩義は忘れてねぇぜ! だから……あの時の姿を取り戻す!!」
 鮫達は叫ぶと、ぼん、ぼぼん、と次々に巨大化し、さらにファンシーな顔つきもリアルで凶悪なものへと変化した。生え揃った牙がギラついている。
「あんた達……」
「オレ達……船長と一緒にいられて嬉しかったっす」
 自分達を率い、導いてくれたその恩義。応えなければ鮫の名が廃るというもの。
 ある種の正義がそこにはあった。
「何が何でも守り通すぜ!!」
「避ける気はないようね……なら、わたしの全力、受けてみなさい!!」
 氷柱が放たれた。狙うは一点、しかしその射線には鮫の壁があった。
 突き刺さる氷柱。鮫肌は剣山の様相を呈した。
「うおおぉぉ!! 船長っ!!」
 痛かろう。しかし鮫は耐える。ゾーヤの弾幕を前に、正義を貫く意地を見せている。
 マリーナと鮫達の間に何があるのか、ゾーヤは知るはずもない。故に、その正義を否定することはできない。
(何が何でも守る気ね……だったら)
 ならば、それを上回る覚悟を。
(こっちだって、『何が何でも』メガリスを守り切る!!)
 叩きつけるように鮫の壁を襲う弾幕が、ゾーヤの覚悟に呼応するように厚みを増した。高速で詠唱を重ね、意地を、覚悟を、壁の向こう側へ――!
「あ……あぁ、船長……」
「ちょっとあんた達、いいこと言ったなら最後まで……きゃああああ!!!」
 一匹の鮫が力尽きると、伝播するようにボロボロと壁が崩壊し弾幕が突き抜けた。マリーナの凍傷を引き起こしていた肌に追い討ちをかけるように氷柱が刺さり、斑点のように血が滲んだ。
「……どう!? わたしの全力は!!」
「うぐぅ……こんのぉ~!」
 さすがに力を使い過ぎたか。肩で息をしながらも、ゾーヤは打ち勝った覚悟を誇示するように叫ぶ。
 対するマリーナは寒さに震えながらも、傷ついた体でゾーヤを恨めしそうに睨みつけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラガルルク・デンケラ
ふふ、残念だけどこれは僕のものだよ。うんうん、悔しいだろう。でも早い者勝ちなんだ
お前と僕は海賊であれど仲間ではないからね。分け前をあげるわけにはなあ……海賊を辞めたら、あげてもいいよ。なんてね
挑発してみるけど、どうかな。からかいが効いてなくても、攻撃は当てないとね!

まずは周りの鮫から削って本体を手薄にすべきかな。結界術でUCを放ちつつ、時間稼ぎといこう
正義を思う子は義理堅いね。立派なことだ
ああ、そうだった。メガリスを独り占めしようとは思わないよ。そう、言葉を訂正するべきだ。あれは僕らの宝よ

防御は引き続き海竜にお願いするよ。お前は美味しいから、齧られても食べられないように気を付けようね



●海賊同士のタッグバトル
「ふふ、残念だけどこれは僕のものだよ。うんうん、悔しいだろう。でも早い者勝ちなんだ」
「はぁぁぁぁあ!? 誰がそんなこと決めたのよ!!」
 ラガルルクの勝ち誇ったような、それでいて澄ました表情に、マリーナは寒さに歯をカチカチ鳴らしながらも猛烈な抗議の視線を向けていた。
 それが正当かどうかは、ともかく。
「お前と僕は海賊であれど仲間ではないからね。分け前をあげるわけにはなあ……」
「こっちだって、分けてもらうなんてまっぴらごめんよ! あんた達! 早く起きてメガリスを奪いなさい!!」
 鞭を打つようなマリーナの言葉に、鮫達はむくりと起き上がってくる。
「船長すいません! 今度こそ……行くぞおめぇら!!」
 再度奮起し、ラガルルク目掛けて魚雷のように飛んでくる鮫達。並んだ牙をこれでもかと剥いてくる。
 しかし体力の消耗もそれなりにある。怒りに任せて鮫を突っ込ませたマリーナの判断はどうか。
「燻る黎明は光裂く毒の花――」
 ラガルルクは静かに詠唱を始める。解放した魔力を張り巡らせて結界を成した。
 それは鮫を捕らえる網だ。猛然と突っ込んでくる鮫達が結界を突き破らんとするなら、
「発火した煙霧は独の奏律を汚染するだろうよ」
 闇の世界に光が走る。極太のプラズマスパークは結界に流れる電流だ。鮫達が触れたことで結界の模様が綺麗に浮かび上がってきた。
「うぎゃああぁぁ!!」
 そしてプラズマスパークに撃ち抜かれた鮫は水揚げされたようにびくんびくんと宙で震えながら落ちていく。抵抗できるほど体力は回復していなかった。
 次から次へと。結界網の鮫漁は大量のようだ。
「正義を思う子は義理堅いね。立派なことだ」
「ちょっと! もう少し根性見せなさいよー!!」
 マリーナは喚くが、喚いたところで鮫達はどうしようもない。ラガルルクに捕らえられ、手薄になった鮫の守り。その先に改めて狙いを定める。
「もー!! もっとあんたも、あんたもあんたも、行きなさーい!!」
 マリーナは続々と鮫達を攻撃参加させる。それで自身の守りはどうするのか。
 ラガルルクはそんなことを問う気はない。黙って狙撃してやればいいのだ。
「さて、僕は少しばかり鮫を相手にできないからね。引き続き、防御は頼むよ。お前は美味しいから、齧られても食べられないように気を付けてね」
 海竜「赤星」は待ってましたと言わんばかりにハサミを振りかざした。シャカシャカと前進し、鮫達の牙をがっちりと受け止める。上顎を押し上げて鮫が口を閉じるのを防ぎ、しっかりとラガルルクの言いつけを守っていた。
 その後方でバチバチと電撃が弾ける。ラガルルクはプラズマの力を溜めていた。
 マリーナには特大の一発を。
「ちょっと! あんなの来たらやばいじゃない! 守りなさいよー!!」
「船長! 数が足りませんぜ!!」
 マリーナは鮫に壁となるよう指示を出すが、目の前の特大プラズマを防げるだけの鮫がいない。
 中央で海竜とやり合っている鮫達はハサミで逆に海竜に掴まれ戻れない。
 バチッ、とまた一回りプラズマが膨れた。
「ああ、そうだった。メガリスを独り占めしようとは思わないよ」
 ラガルルクの語らいはもはや独白に過ぎなかった。マリーナは聞く暇もなく必死に鮫達へ無意味な命令を出し続けている。
「そう、言葉を訂正するべきだ。あれは僕らの宝よ――だから、お前には、渡さないよ」
 濃密なスポットライトのように発射された極太プラズマスパークは海竜と鮫達の鍔迫り合いの真上を抜け、マリーナへと降り注いだ。その手前にはわずかな鮫達もいたようだが、タンポポの綿毛のように吹き飛んだ。
「きゃびっ――ひいぃぃぃ!!」
 閃光に塗れて痺れて焼けた。体中を熱した剣山でガリガリと削られているようだった。
 マリーナにとっては短くも長い時間だった。ようやく闇の世界に戻ってきた時、けぽっと黒い煙を吐き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「見た目は小さな女の子ですけど、相手はコンキスタドールですから手加減無しでいきますね。」「もちろん、メガリスも渡しませんよ。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【高速詠唱】で【属性攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【コキュートス・ブリザード】で、『『少女海賊』キャプテン・マリーナ』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



●凍てつきの矢を放て
「船長……大丈夫ですかい……」
「大丈夫……と言いたいところだけど、ちょっときついわね……」
 ボロボロな船長とボロボロな鮫達の寄せ集め。それが今のマリーナだ。
「見た目は小さな女の子ですけど、やはり相手はコンキスタドールですね」
 それでもまだ闘志を燃やしメガリスを狙ってくる様を、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は冷静に見つめていた。
「では、手加減無しで――」
 辺りが急速に冷えてくる。明の魔力が場を満たし始めていた。
 対し、鮫は船長を守りたいという一心で変化を遂げていた。熱き魂で猟兵達を迎え撃つ。
 冷気と情熱、どちらが勝るか。
『我、求めるは、冷たき力』
 空中に浮遊した小さな氷の粒が瞬く間に成長し針へ。
 そして棘へ、氷柱へ、と更なる成長を果たし、最終的には冷気を纏った矢となった。
「メガリスは、渡しませんよ」
 狙うべきはマリーナただ一人。そこへ鮫が塞がってくるなら物量で押し切るまでだ。
 明は二度の詠唱を高速で重ねていた。それはそのまま矢の数となって現れる。
 針千本ならぬ矢千本とも言うべきか。実際は九百本あまりだが――それでも場を制圧するには十分すぎる数と言える。
 大量の矢は間髪入れずに、雪崩のように発射された。それはスコールと言ってもいい。
 密集した矢はアリ一匹通さないほどに、冷たく鮫達の進路を閉ざす。
「船長には一本も触れさせるな!!」
 鮫達は矢を強引に噛み砕きにかかっていた。魔法の矢だが、鮫達も魔法生物のようなもの。
 口を大きく開けてバリっと牙の餌食にしたが、それでも消失した矢は全体の一割に届くかどうか。
 圧倒的な物量差に鮫の熱が射抜かれていく。
「せ、船長ぉぉぉ!!」
「あんた達……少しはあたしをちゃんと守りなさいっ!!」
 マリーナは矢が命中し吹っ飛ばされてきた鮫の尾びれをむんずと掴むと、ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばした。ほぼ水平に飛んだ鮫に矢がぶすぶすと突き刺さるが、構わず突き抜けてきた鮫の体が矢の雨を突破して明の眼前へ。
 鮫は白目を剥いていた。もはや意識はなく、ただ投擲された勢いで飛んでいるだけだ。
 それでもぶち当たれば痛手となる。鋭利な牙は肉を裂き、骨を貫くかもしれない。
「悪あがきも……無駄ですよ」
 明は努めて冷静にオーラの壁を張った。正面に飛んでくるのだ。敵の攻撃に対し対応策を考えていれば簡単なことだった。
 ずん、と壁に衝撃が走りわずかに揺れた。弾かれた鮫の体は放り出されたように力無く、放物線を描いて転がった。
「少々鮫に削られたようですけど……少しでもダメージは与えて、残りは後の方にお任せしますよ」
 矢を操る。遠慮はいらない。次は先手で鮫を射抜き、本命のマリーナへ。
「防御、防御――っ、いやっ!」
 近くにいる鮫を掴んで盾にしようと思ったが遅かった。思わず顔を庇った両腕にずどどどと矢が突き立てられた。
「あああっ!!」
 射抜かれ、防御が弾かれたマリーナを更なる矢が襲い掛かる。体に、足にとまるで磔にされるかのように全身に矢を浴びて、ぐったりと倒れ込んだ。
「メガリス……あたしの、メガリス……」
 マリーナを突き動かすメガリスへの歪んだ情熱も、今は灯火のよう。それはある種の執着のようでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
この世界のオブリビオン……コンキスタドールは、呪いの秘宝メガリスを手にし、死した者達と聞く。
その歳でコンキスタドールになったということは、おぬしは誤ってメガリスに触れてしまったのであろうな。
なんとも不憫なことじゃ。

分相応の力を手に入れて我儘放題をしている子供は、少し躾をしてから親元に返してやるのが筋であろうが、おぬしは既に死した身。家族とて今のおぬしを受け入れることはできまい。
わしにしてやれるのは骸の海に還すことだけじゃ。すまぬが覚悟せよ。

召喚された部下達の動きを見切り、それらの武器を光剣で弾き、捌きながらマリーナに接近。
光剣にUCの力を込め、痛みを感じることのないよう核を破壊しようぞ。



●悪い子なれども、眠れ
「……なんとも不憫じゃの」
 倒れているマリーナに、クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)は他の猟兵とは違った感情を抱いていた。
「な、何、が……よ……」
 小さな体をぶるぶると起こすマリーナ。眉間に皺が寄り、その表情は険しい。
「コンキスタドールは、呪いの秘宝メガリスを手にし、死した者達と聞く。見れば、おぬしはまだ十かそこらの子供ではないか。その歳でコンキスタドールになったということは、おぬしは誤ってメガリスに触れてしまったのであろうな」
 若くしてメガリスに未来を閉ざされ、コンキスタドールとして世界を彷徨うこととなった境遇については、いくらか心を寄せる余地があるとクレアは感じていた。
「だから……なん、なのよ……!」
「あまり深くは考えておらぬか……知らぬが良いこともある。今の生を疑問なく全うしておるのなら……それが唯一の救いかの」
 メガリスが悪いのか、それともメガリスというものが存在するこの世界そのものが悪いのか。
 定かではないが――世界の理に則り、クレアは年長者としてすべきことがある。
「分相応の力を手に入れて我儘放題をしている子供は、少し躾をしてから親元に返してやるのが筋であろうが、おぬしは既に死した身。家族とて今のおぬしを受け入れることはできまい」
 クレアはすらり、光剣を抜く。
「わしにしてやれるのは骸の海に還すことだけじゃ。すまぬが覚悟せよ」
 言い切り、クレアは疾駆した。ゆらりと立ち上がるマリーナとの距離を一気に詰める。
「船長……逃げて、くだせぇ……」
 地面に転がる鮫が残る力を振り絞って逃走を促す。
「だ、だめよ……! 目の前に……メガリスが、あるのに……!」
 まさに駄々をこねる子供だった。口ではそう言うが、力はもうそれほど残されていない。
「くっ、こうなったら……!」
 周りの鮫達は次々にカトラスを手にした海賊幹部達を召喚する。
「後は……任せた、ぜ……」
 そして力を使い切った鮫達はさらりと砂へ変わり消滅していった。
 自分の身を犠牲にしなければ、満足な召喚ができなかった。
 後を託された幹部達がクレアへと立ち向かっていく。悪なりの思いが籠められた太刀筋は鋭く、白銀の色を放つ。
 刃が伸びてきた。クレアは互いに接近する中でもその突きを見切り、そして追撃の薙ぎ払いを光剣で受けた。
 攻撃の初動、わずかな動き出しもクレアの瞳は捉え、自らの受けを繰り出していく。光剣に受けた刃を弾き返し突き進む。
 幹部達を丁寧に相手取る必要はない。攻撃を弾き、道を作れればよかった。
 追い縋る幹部も光剣の射程を生かして軽くあしらい、マリーナの元へ。
 その体躯は想像以上に小さかった。
「こ、来ないで……!」
「安心せい。痛みは与えん」
 光剣を上段に構え、そして一思いに振り下ろした。
 光が闇を切り裂く。マリーナの体に一筋、光が走った。
「あ……」
 光が力を奪っていく。体が動かなくなっていくのを感じ、自分の生が終わりを告げることを子供ながらに悟ると悲しげな表情を見せて。
「いい子で……眠るんじゃよ」
 最後に少し優しげな笑みを浮かべたクレアに看取られ、マリーナは世界から消え去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月01日


挿絵イラスト